JP2004194027A - 弾性表面波装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好なVSWRを有する通過帯域幅が広い弾性表面波装置を提供する。
【解決手段】圧電基板上に、弾性表面波フィルタ201、202と、前記弾性表面波フィルタ201、202に電気的に接続された弾性表面波共振子217、218とを備える弾性表面波装置200において、前記弾性表面波共振子217、218における反共振点が前記弾性表面波フィルタ201、202の通過帯域よりも高周波数側に設定している。そして、前記弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚に対して、前記弾性表面波共振子217、218の電極膜厚が厚く形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】圧電基板上に、弾性表面波フィルタ201、202と、前記弾性表面波フィルタ201、202に電気的に接続された弾性表面波共振子217、218とを備える弾性表面波装置200において、前記弾性表面波共振子217、218における反共振点が前記弾性表面波フィルタ201、202の通過帯域よりも高周波数側に設定している。そして、前記弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚に対して、前記弾性表面波共振子217、218の電極膜厚が厚く形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯電話等の通信装置に用いられる弾性表面波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯電話機等の通信装置の小型化、軽量化に対する技術的進歩は目覚しいものがある。これを実現するための手段として、各構成部品の削減、小型化はもとより、複数の機能を複合した部品の開発も進んできた。
【0003】
弾性表面波装置は、携帯電話機用のRFフィルタとして広く一般的に用いられるようになっている。近年においては、携帯電話に用いられる周波数不足から、上記弾性表面波装置において、通過帯域幅を広くするなどの要求が強まってきている。また、携帯電話機における感度は、どの周波数チャンネルを使用しても一定であることが望ましく、通過帯域内の平坦性などの高性能化も求められている。
【0004】
弾性表面波装置を高性能化する手法としては、例えば特許文献1に記載されているように、弾性表面波フィルタ、特に縦結合共振子型弾性表面波フィルタに弾性表面波共振子を直列接続する構成が広く用いられている。上記特許文献1では、図12のように、3つのくし型電極部(Inter-Digital Transducer、以下、IDTという)を備える縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101に、弾性表面波共振子102が電気的に直列に接続されている。その際、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101における周波数と弾性表面波フィルタ102における周波数との関係は、弾性表面波共振子102の反共振周波数が、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101の通過帯域より高周波数側に位置し、さらに、弾性表面波共振子102の共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101の通過帯域内に位置するように設定されている。これにより、弾性表面波共振子102の反共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101の通過帯域より高周波数側に位置しているので、通過帯域高周波数側ごく近傍の減衰量が大きくなり、かつ、弾性表面波共振子102の共振周波数が通過帯域内に位置しているので、通過帯域内に位置している通過帯域内の挿入損失の大きな劣化は生じない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−30367号公報(公開日1995年1月31日)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成の弾性表面波フィルタでは、通過帯域幅を広くした場合、良好なVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が得られないという問題があった。
【0007】
最も良好なフィルタ特性が得られる弾性表面波フィルタの電極膜厚は、そのフィルタの中心周波数によって異なってくる。つまり、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと、弾性表面波共振子とでは、周波数特性が異なるので、最適な電極膜厚は異なることになる。しかし、上記特許文献1では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと弾性表面波共振子とにおける電極膜厚は等しい。そのため、仮に縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極が最適な膜厚であり、最も良好なフィルタ特性が得られていたとしても、弾性表面波共振子の電極は最適な膜厚からずれていることになる。したがって、弾性表面波共振子の電極が最適な膜厚である場合のフィルタ特性と比較して、特性が悪くなっていることが考えられる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚と、弾性表面波共振子の電極膜厚を互いに異ならせ、それぞれの最も良好な特性を得ることで、良好なVSWRを有する通過帯域幅が広い弾性表面波装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波装置は、上記の課題を解決するために、圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つ以上のくし型電極部を有する弾性表面波フィルタと、前記弾性表面波フィルタに電気的に接続された、くし型電極部を有する少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える弾性表面波装置において、前記弾性表面波共振子における反共振点が前記弾性表面波フィルタの通過帯域よりも高周波数側に設定されており、前記弾性表面波フィルタの電極膜厚と前記弾性表面波共振子の電極膜厚とが互いに異なっていることを特徴としている。また、前記弾性表面波フィルタの電極膜厚よりも前記弾性表面波共振子の電極膜厚の方が厚いことが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、弾性表面波共振子における共振点と反共振点との間隔を広げることにより比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、弾性表面波装置におけるVSWRを改善することができる。
【0011】
また、前記弾性表面波共振子は、前記弾性表面波フィルタに直列に接続されていても、並列に接続されていてもよい。
【0012】
また、前記弾性表面波フィルタは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタであることが好ましい。
【0013】
また、上記弾性表面波装置は、不平衡−平衡変換機能を有することが好ましい。
【0014】
本発明の弾性表面波装置は、上記の構成に加えて、前記弾性表面波共振子の膜厚比は、14%以下であることが好ましい。これにより、挿入損失の良好な弾性表面波装置を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図1ないし図10に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施の形態では、W−CDMA送信用の平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置を例にあげる。また、上記弾性表面装置では、不平衡側のインピーダンスが50Ω、平衡側のインピーダンスが200Ωとしている。
【0016】
図1に、本実施の形態にかかる弾性表面波装置200の要部の構成を示す。上記弾性表面波装置200は、2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202、および縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のそれぞれに直列に接続された弾性表面波共振子217、218を、圧電基板(図示せず)上に、備えている構成である。圧電基板には、LiTaO3、LiNbO3、水晶などを用いる。
【0017】
そして、上記弾性表面波装置200には、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202と用いて平衡−不平衡変換機能を持たせている。また、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子217が直列に接続され、同様に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子218が直列に接続されている。さらに、上記上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202は、それぞれ、平衡信号端子226、227に接続されている。
【0018】
また、上記弾性表面波装置200では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202と弾性表面波共振子217、218の周波数の関係は、弾性表面波共振子217、218の反共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の通過帯域高周波数側の近傍に、共振周波数が通過帯域内に位置するように設定されている。さらに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚をh1、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚をh2とした場合、h1<h2となっている。
【0019】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201の構成は、くし型電極部(Inter-Digital Transducer、以下、IDTという)204を挟みこむようにIDT203、205が形成され、その両側に反射器206、207が形成されている。図1に示すように、互いに隣り合うIDT203とIDT204との間、およびIDT204とIDT205との間の数本の電極指(電極指のピッチで決まる波長:λi)は、IDTの他の部分の電極指(電極指のピッチで決まる波長:λI)よりもピッチが短い(狭ピッチ電極指部208、209)。これにより通過帯域内の挿入損失を低減することができる。
【0020】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202の構成は、IDT211を挟みこむようにIDT210、212が形成され、その両側に反射器213、214が形成されている。また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と同様に、IDT210とIDT211との間、およびIDT211とIDT212との間には、狭ピッチ電極指部215、216が設けられている。また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202のIDT211の向きは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201のIDT204に対して、交叉幅方向に反転させている。これにより、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202における入力信号に対する出力信号の位相は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201に対して約180°反転されている。これにより、弾性表面波装置200は、平衡−不平衡変換機能を有することになる。
【0021】
また、本実施の形態においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のIDT204、211がそれぞれ平衡信号端子226、227に接続されている。さらに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のIDT203、205およびIDT210、212のそれぞれが、弾性表面波共振子217、218を介して、平衡信号端子225にそれぞれ接続されている。
【0022】
上記弾性表面波共振子217、218は、共に同じ構成であり、それそれIDT219、222を挟み込むように、反射器220、223と、反射器221、224とが形成されている。なお、本実施形態においては、弾性表面波共振子として、反射器を持たない弾性表面波共振子を用いてもよい。
【0023】
なお、図1においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202、弾性表面波共振子217、218は図を簡潔にするため、電極指の本数を実際の本数よりも少なく示している。
【0024】
ここで、上記弾性表面波装置200において縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202および弾性表面波共振子217、218の形成方法としては、蒸着法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、圧電基板に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202あるいは弾性表面波共振子217、218のいずれか一方を形成した後、残りのもう一方を異なる厚さで形成してもよい。また、例えば、圧電基板に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202および弾性表面波共振子217、208を膜厚の厚い方に合わせて形成した後、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202または弾性表面波共振子217、208のいずれか薄くする方をエッチング等で削ることにより形成してもよい。
【0025】
以下では、より具体的な例を挙げて本実施の形態について説明する。
【0026】
本実施の形態にかかる実施例1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の詳細な設計の一例については、以下の通りである。
【0027】
交叉幅W:32.6λI
IDT本数:(IDT203、IDT204、IDT2005の順):14(3)/(3)16(3)/(3)14本(カッコ内はピッチを狭くした電極指の本数)
反射器本数:100本
duty:0.60(IDT)、0.60(反射器)
電極膜厚h1:0.080λI
ここでλIは、狭ピッチではない電極指のピッチで決まる波長である。
【0028】
なお、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201におけるIDT204を、交叉幅方向に反転させているIDT211に代えている以外は縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と同様の構成である。
【0029】
また、上記弾性表面波共振子217、218の詳細な設計の一例については、以下の通りである。
【0030】
交叉幅W:19.7λI
IDT本数:301本
反射器本数:30本
duty:0.60(IDT)、0.60(反射器)
IDT−反射器間隔(電極指中心間距離):0.50λI
電極膜厚h2:0.0981λI
なお、弾性表面波共振子217、218の詳細な設計はすべて同じである。
【0031】
図2に、実施例1の弾性表面波装置200における、不平衡信号端子側の周波数に対するVSWRを、図3に平衡信号端子側の周波数に対するVSWRを示す。また、比較として、図1に示した弾性表面波装置200において、従来技術のように縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚と、弾性表面波共振子の電極膜厚とが等しい場合(以下、従来例とする)の不平衡信号端子側の周波数に対するVSWRおよび平衡信号端子側の周波数に対するVSWRも図2および図3に示す。
【0032】
図2、3より、従来例と実施例1とを比較すると、実施例1のVSWRの方が改善していることがわかる。具体的には、W−CDMA送信用フィルタの通過帯域周波数範囲1920〜1980MHz内において、従来例では不平衡信号端子側のVSWRは1.59、平衡信号端子側のVSWRは1.42であるのに対して、実施例1では不平衡信号端子側のVSWRは1.56、平衡信号端子側のVSWRは1.40となっている。
【0033】
また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚を変化させた場合の、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚と不平衡信号端子側のVSWRとの関係を図4に、平衡信号端子側のVSWRとの関係を図5に示す。このときの電極膜厚の値は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタおよび弾性表面波共振子におけるIDTのピッチで決まる波長に対する比(膜厚比)で示している。図4、図5より、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚よりも弾性表面波共振子217、218の電極膜厚を厚くすることで、不平衡信号端子側のVSWR、平衡信号端子側のVSWRとも改善されていることがわかる。
【0034】
以下、本発明における原理について説明する。縦結合共振子型弾性表面波フィルタと弾性表面波共振子とを同じ膜厚とし、弾性表面波共振子の反共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域高周波数側近傍に、共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域内に位置するようにした場合、図6に示すように、弾性表面波共振子のインピーダンスは共振点と反共振点との間の周波数範囲内では、誘導性(L性)となる。通常、図6に示すように、「弾性表面波共振子(トラップ)が誘導性(L性)として作用する周波数範囲<弾性表面波フィルタの通過帯域幅」という関係となっている。そのため、通過帯域全体を弾性表面波共振子(トラップ)のL性によって作用させることはできない。したがって、通過帯域内全体でインピーダンスの整合を取ることは困難である。
【0035】
弾性表面波共振子(トラップ)がL性として作用する周波数範囲を広げるには、弾性表面波共振子(トラップ)の膜厚を厚くする方法が考えられる。これは、弾性表面波共振子の膜厚を厚くすると共振点と反共振点との間隔が広がり、L性として作用する周波数範囲が広がるためである。しかし、弾性表面波共振子の膜厚を厚くした分だけ同じように弾性表面波フィルタの膜厚を厚くしたのでは、弾性表面波フィルタの通過帯域幅も広がるため、結局弾性表面波共振子がL性として作用する周波数範囲の比率は同じになる。そのため、インピーダンスの整合が取りにくく、VSWRが悪くなるという問題がある。
【0036】
ここで、実施例1で用いた弾性表面波装置における弾性表面波共振子217、218において設計パラメータは変更せず、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚のみを変えた場合の周波数に対するインピーダンス特性を図7に示す。図7に示すように、弾性表面波共振子の膜厚比を7.11%から、8.12%、9.15%、10.0%と大きくするにつれて、共振点と反共振点との間隔が広がっていくことがわかる。つまり、L性として作用する周波数範囲が広がる。したがって、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくし、共振点と反共振点との間隔を広くすることで、比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、VSWRを改善することができる。
【0037】
また、図8には、上記弾性表面波装置において、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚を一定にして、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚を変えた場合の弾性表面波共振子の膜厚比に対する挿入損失の変化、ならびに上記弾性表面波装置において、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚を一定にして、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚を変えた場合の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの膜厚比に対する挿入損失の変化を示す。図8より、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚を厚くしていった場合よりも、弾性表面波共振子の電極膜厚を厚くしていった場合の方が挿入損失の悪化が起こりにくいことがわかる。つまり、弾性表面波共振子の電極膜厚を厚くして最適な条件に適宜設定することが挿入損失の悪化を抑制する上で好ましい。また、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくしていった場合の挿入損失は、弾性表面波共振子の膜厚比が12%を超えた辺りから挿入損失が悪くなっていき、14%を超えると挿入損失が3.0dBを超えることがわかる。通常の弾性表面波フィルタとしての市場要求としては、挿入損失が3.0dBであることが要求されている。したがって、弾性表面波共振子の膜厚比は、14%以下であり、好ましくは12%以下である。
【0038】
図9に、従来例および実施例1の反射特性S11をスミスチャートで比較した図を示す。図9より、実施例1のように、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくして共振点と反共振点との間隔を広くすることで、従来例と比較して通過帯域内のインピーダンスが整合点に近づけることができ、VSWRを改善できることがわかる。
【0039】
以上説明したように、実施例1では、弾性表面波表面波フィルタの電極膜厚よりも前記弾性表面波共振子の電極膜厚を厚くしている。これにより、VSWRが良好な弾性表面波装置が得られる。
【0040】
また、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタでは、平衡信号端子の平衡度や、通過帯域外の減衰量を大きくする目的などで、設計を互いに異ならせても、同様の効果が得られる。また、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおいて、IDT−IDT間付近に狭ピッチ電極指部を設けているが、狭ピッチ電極指部を設けない構成でもよい。上記の構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
また、本実施の形態では、不平衡信号−平衡信号変換機能を有する弾性表面波装置について説明したが、平衡信号入力−平衡信号出力、または不平衡信号入力−不平衡信号出力の弾性表面波装置においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また、本実施の形態では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと不平衡信号端子間にのみ弾性表面波共振子が1つ直列に接続されている構成となっているが、弾性表面波共振子は特に1つである必要はない。例えば、図10に示すように、上記の構成において、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと平衡信号端子との間に弾性表面波共振子を追加した構成であってもよい。この構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
また、上記弾性表面波共振子では、弾性表面波装置における平衡信号端子間の平衡度や通過帯域外の減衰量を大きくする目的などで、設計を互いに異ならせてもよい。この構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0045】
図11に、本実施の形態にかかる弾性表面波装置1000の要部の構成を示す。上記弾性表面波装置1000は、2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202、および縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のそれぞれに並列に接続された弾性表面波共振子217、218を、圧電基板(図示せず)上に、備えている構成である。つまり、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子217が並列に接続され、同様に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子218が並列に接続されている。
【0046】
また、上記弾性表面波装置1000では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202と弾性表面波共振子217、218の周波数の関係は、弾性表面波共振子217、218の反共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の通過帯域高周波数側の近傍に、共振周波数が通過帯域内に位置するように設定されている。さらに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚をh1、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚をh2とした場合、h1<h2である。
【0047】
また、上記弾性表面波装置1000では、弾性表面波共振子の反共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域高周波数側近傍に、共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域内に位置するようにしている。
【0048】
上記の構成によれば、実施の形態1と同様に、弾性表面波共振子における、L性として作用する周波数範囲が広がる。したがって、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくし、共振点と反共振点との間隔を広くすることで、比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、VSWRを改善することができる。
【0049】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つ以上のくし型電極部を有する弾性表面波フィルタと、前記弾性表面波フィルタに電気的に接続された、くし型電極部を有する少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える弾性表面波装置において、前記弾性表面波共振子における反共振点が前記弾性表面波フィルタの通過帯域よりも高周波数側に設定されており、前記弾性表面波フィルタの電極膜厚と前記弾性表面波共振子の電極膜厚とが互いに異なっており、弾性表面波フィルタの電極膜厚よりも、弾性表面波共振子の電極膜厚の方が厚いことを特徴としている。
【0051】
上記の構成によれば、弾性表面波共振子における共振点と反共振点との間隔を広げることにより比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、弾性表面波装置におけるVSWRを改善することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる実施例1の弾性表面波装置の概略の構成を示す平面図である。
【図2】従来例と実施例1とにおける不平衡信号端子側のVSWRを比較するグラフである。
【図3】従来例と実施例1とにおける平衡信号端子側のVSWRを比較するグラフである。
【図4】実施例1おける弾性表面波共振子の膜厚比と不平衡信号端子側のVSWRとの関係を示すグラフである。
【図5】実施例1おける弾性表面波共振子の膜厚比と平衡信号端子側のVSWRとの関係を示すグラフである。
【図6】実施例1の弾性表面波装置の伝送特性と弾性表面波共振子のインピーダンス特性とを示すグラフである。
【図7】実施例1の弾性表面波共振子の周波数に対するインピーダンス特性を示すグラフである。
【図8】縦結合共振子型弾性表面波フィルタおよび弾性表面波共振子の膜厚比を変化させたときの弾性表面波装置における挿入損失を示すグラフである。
【図9】従来例と実施例1との反射特性を示すスミスチャートである。
【図10】実施の形態1の変形例を示す概略の構成を示す平面図である。
【図11】実施の形態2にかかる弾性表面波装置の概略の構成を示す平面図である。
【図12】従来の弾性表面波装置を示す概略の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
200 弾性表面波装置
201、202 縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
217、218 弾性表面波共振子
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯電話等の通信装置に用いられる弾性表面波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯電話機等の通信装置の小型化、軽量化に対する技術的進歩は目覚しいものがある。これを実現するための手段として、各構成部品の削減、小型化はもとより、複数の機能を複合した部品の開発も進んできた。
【0003】
弾性表面波装置は、携帯電話機用のRFフィルタとして広く一般的に用いられるようになっている。近年においては、携帯電話に用いられる周波数不足から、上記弾性表面波装置において、通過帯域幅を広くするなどの要求が強まってきている。また、携帯電話機における感度は、どの周波数チャンネルを使用しても一定であることが望ましく、通過帯域内の平坦性などの高性能化も求められている。
【0004】
弾性表面波装置を高性能化する手法としては、例えば特許文献1に記載されているように、弾性表面波フィルタ、特に縦結合共振子型弾性表面波フィルタに弾性表面波共振子を直列接続する構成が広く用いられている。上記特許文献1では、図12のように、3つのくし型電極部(Inter-Digital Transducer、以下、IDTという)を備える縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101に、弾性表面波共振子102が電気的に直列に接続されている。その際、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101における周波数と弾性表面波フィルタ102における周波数との関係は、弾性表面波共振子102の反共振周波数が、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101の通過帯域より高周波数側に位置し、さらに、弾性表面波共振子102の共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101の通過帯域内に位置するように設定されている。これにより、弾性表面波共振子102の反共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ101の通過帯域より高周波数側に位置しているので、通過帯域高周波数側ごく近傍の減衰量が大きくなり、かつ、弾性表面波共振子102の共振周波数が通過帯域内に位置しているので、通過帯域内に位置している通過帯域内の挿入損失の大きな劣化は生じない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−30367号公報(公開日1995年1月31日)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成の弾性表面波フィルタでは、通過帯域幅を広くした場合、良好なVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が得られないという問題があった。
【0007】
最も良好なフィルタ特性が得られる弾性表面波フィルタの電極膜厚は、そのフィルタの中心周波数によって異なってくる。つまり、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと、弾性表面波共振子とでは、周波数特性が異なるので、最適な電極膜厚は異なることになる。しかし、上記特許文献1では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと弾性表面波共振子とにおける電極膜厚は等しい。そのため、仮に縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極が最適な膜厚であり、最も良好なフィルタ特性が得られていたとしても、弾性表面波共振子の電極は最適な膜厚からずれていることになる。したがって、弾性表面波共振子の電極が最適な膜厚である場合のフィルタ特性と比較して、特性が悪くなっていることが考えられる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚と、弾性表面波共振子の電極膜厚を互いに異ならせ、それぞれの最も良好な特性を得ることで、良好なVSWRを有する通過帯域幅が広い弾性表面波装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波装置は、上記の課題を解決するために、圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つ以上のくし型電極部を有する弾性表面波フィルタと、前記弾性表面波フィルタに電気的に接続された、くし型電極部を有する少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える弾性表面波装置において、前記弾性表面波共振子における反共振点が前記弾性表面波フィルタの通過帯域よりも高周波数側に設定されており、前記弾性表面波フィルタの電極膜厚と前記弾性表面波共振子の電極膜厚とが互いに異なっていることを特徴としている。また、前記弾性表面波フィルタの電極膜厚よりも前記弾性表面波共振子の電極膜厚の方が厚いことが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、弾性表面波共振子における共振点と反共振点との間隔を広げることにより比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、弾性表面波装置におけるVSWRを改善することができる。
【0011】
また、前記弾性表面波共振子は、前記弾性表面波フィルタに直列に接続されていても、並列に接続されていてもよい。
【0012】
また、前記弾性表面波フィルタは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタであることが好ましい。
【0013】
また、上記弾性表面波装置は、不平衡−平衡変換機能を有することが好ましい。
【0014】
本発明の弾性表面波装置は、上記の構成に加えて、前記弾性表面波共振子の膜厚比は、14%以下であることが好ましい。これにより、挿入損失の良好な弾性表面波装置を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図1ないし図10に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施の形態では、W−CDMA送信用の平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置を例にあげる。また、上記弾性表面装置では、不平衡側のインピーダンスが50Ω、平衡側のインピーダンスが200Ωとしている。
【0016】
図1に、本実施の形態にかかる弾性表面波装置200の要部の構成を示す。上記弾性表面波装置200は、2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202、および縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のそれぞれに直列に接続された弾性表面波共振子217、218を、圧電基板(図示せず)上に、備えている構成である。圧電基板には、LiTaO3、LiNbO3、水晶などを用いる。
【0017】
そして、上記弾性表面波装置200には、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202と用いて平衡−不平衡変換機能を持たせている。また、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子217が直列に接続され、同様に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子218が直列に接続されている。さらに、上記上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202は、それぞれ、平衡信号端子226、227に接続されている。
【0018】
また、上記弾性表面波装置200では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202と弾性表面波共振子217、218の周波数の関係は、弾性表面波共振子217、218の反共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の通過帯域高周波数側の近傍に、共振周波数が通過帯域内に位置するように設定されている。さらに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚をh1、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚をh2とした場合、h1<h2となっている。
【0019】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201の構成は、くし型電極部(Inter-Digital Transducer、以下、IDTという)204を挟みこむようにIDT203、205が形成され、その両側に反射器206、207が形成されている。図1に示すように、互いに隣り合うIDT203とIDT204との間、およびIDT204とIDT205との間の数本の電極指(電極指のピッチで決まる波長:λi)は、IDTの他の部分の電極指(電極指のピッチで決まる波長:λI)よりもピッチが短い(狭ピッチ電極指部208、209)。これにより通過帯域内の挿入損失を低減することができる。
【0020】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202の構成は、IDT211を挟みこむようにIDT210、212が形成され、その両側に反射器213、214が形成されている。また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と同様に、IDT210とIDT211との間、およびIDT211とIDT212との間には、狭ピッチ電極指部215、216が設けられている。また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202のIDT211の向きは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201のIDT204に対して、交叉幅方向に反転させている。これにより、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202における入力信号に対する出力信号の位相は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201に対して約180°反転されている。これにより、弾性表面波装置200は、平衡−不平衡変換機能を有することになる。
【0021】
また、本実施の形態においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のIDT204、211がそれぞれ平衡信号端子226、227に接続されている。さらに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のIDT203、205およびIDT210、212のそれぞれが、弾性表面波共振子217、218を介して、平衡信号端子225にそれぞれ接続されている。
【0022】
上記弾性表面波共振子217、218は、共に同じ構成であり、それそれIDT219、222を挟み込むように、反射器220、223と、反射器221、224とが形成されている。なお、本実施形態においては、弾性表面波共振子として、反射器を持たない弾性表面波共振子を用いてもよい。
【0023】
なお、図1においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202、弾性表面波共振子217、218は図を簡潔にするため、電極指の本数を実際の本数よりも少なく示している。
【0024】
ここで、上記弾性表面波装置200において縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202および弾性表面波共振子217、218の形成方法としては、蒸着法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、圧電基板に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202あるいは弾性表面波共振子217、218のいずれか一方を形成した後、残りのもう一方を異なる厚さで形成してもよい。また、例えば、圧電基板に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202および弾性表面波共振子217、208を膜厚の厚い方に合わせて形成した後、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202または弾性表面波共振子217、208のいずれか薄くする方をエッチング等で削ることにより形成してもよい。
【0025】
以下では、より具体的な例を挙げて本実施の形態について説明する。
【0026】
本実施の形態にかかる実施例1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の詳細な設計の一例については、以下の通りである。
【0027】
交叉幅W:32.6λI
IDT本数:(IDT203、IDT204、IDT2005の順):14(3)/(3)16(3)/(3)14本(カッコ内はピッチを狭くした電極指の本数)
反射器本数:100本
duty:0.60(IDT)、0.60(反射器)
電極膜厚h1:0.080λI
ここでλIは、狭ピッチではない電極指のピッチで決まる波長である。
【0028】
なお、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201におけるIDT204を、交叉幅方向に反転させているIDT211に代えている以外は縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と同様の構成である。
【0029】
また、上記弾性表面波共振子217、218の詳細な設計の一例については、以下の通りである。
【0030】
交叉幅W:19.7λI
IDT本数:301本
反射器本数:30本
duty:0.60(IDT)、0.60(反射器)
IDT−反射器間隔(電極指中心間距離):0.50λI
電極膜厚h2:0.0981λI
なお、弾性表面波共振子217、218の詳細な設計はすべて同じである。
【0031】
図2に、実施例1の弾性表面波装置200における、不平衡信号端子側の周波数に対するVSWRを、図3に平衡信号端子側の周波数に対するVSWRを示す。また、比較として、図1に示した弾性表面波装置200において、従来技術のように縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚と、弾性表面波共振子の電極膜厚とが等しい場合(以下、従来例とする)の不平衡信号端子側の周波数に対するVSWRおよび平衡信号端子側の周波数に対するVSWRも図2および図3に示す。
【0032】
図2、3より、従来例と実施例1とを比較すると、実施例1のVSWRの方が改善していることがわかる。具体的には、W−CDMA送信用フィルタの通過帯域周波数範囲1920〜1980MHz内において、従来例では不平衡信号端子側のVSWRは1.59、平衡信号端子側のVSWRは1.42であるのに対して、実施例1では不平衡信号端子側のVSWRは1.56、平衡信号端子側のVSWRは1.40となっている。
【0033】
また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚を変化させた場合の、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚と不平衡信号端子側のVSWRとの関係を図4に、平衡信号端子側のVSWRとの関係を図5に示す。このときの電極膜厚の値は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタおよび弾性表面波共振子におけるIDTのピッチで決まる波長に対する比(膜厚比)で示している。図4、図5より、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚よりも弾性表面波共振子217、218の電極膜厚を厚くすることで、不平衡信号端子側のVSWR、平衡信号端子側のVSWRとも改善されていることがわかる。
【0034】
以下、本発明における原理について説明する。縦結合共振子型弾性表面波フィルタと弾性表面波共振子とを同じ膜厚とし、弾性表面波共振子の反共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域高周波数側近傍に、共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域内に位置するようにした場合、図6に示すように、弾性表面波共振子のインピーダンスは共振点と反共振点との間の周波数範囲内では、誘導性(L性)となる。通常、図6に示すように、「弾性表面波共振子(トラップ)が誘導性(L性)として作用する周波数範囲<弾性表面波フィルタの通過帯域幅」という関係となっている。そのため、通過帯域全体を弾性表面波共振子(トラップ)のL性によって作用させることはできない。したがって、通過帯域内全体でインピーダンスの整合を取ることは困難である。
【0035】
弾性表面波共振子(トラップ)がL性として作用する周波数範囲を広げるには、弾性表面波共振子(トラップ)の膜厚を厚くする方法が考えられる。これは、弾性表面波共振子の膜厚を厚くすると共振点と反共振点との間隔が広がり、L性として作用する周波数範囲が広がるためである。しかし、弾性表面波共振子の膜厚を厚くした分だけ同じように弾性表面波フィルタの膜厚を厚くしたのでは、弾性表面波フィルタの通過帯域幅も広がるため、結局弾性表面波共振子がL性として作用する周波数範囲の比率は同じになる。そのため、インピーダンスの整合が取りにくく、VSWRが悪くなるという問題がある。
【0036】
ここで、実施例1で用いた弾性表面波装置における弾性表面波共振子217、218において設計パラメータは変更せず、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚のみを変えた場合の周波数に対するインピーダンス特性を図7に示す。図7に示すように、弾性表面波共振子の膜厚比を7.11%から、8.12%、9.15%、10.0%と大きくするにつれて、共振点と反共振点との間隔が広がっていくことがわかる。つまり、L性として作用する周波数範囲が広がる。したがって、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくし、共振点と反共振点との間隔を広くすることで、比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、VSWRを改善することができる。
【0037】
また、図8には、上記弾性表面波装置において、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚を一定にして、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚を変えた場合の弾性表面波共振子の膜厚比に対する挿入損失の変化、ならびに上記弾性表面波装置において、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚を一定にして、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚を変えた場合の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの膜厚比に対する挿入損失の変化を示す。図8より、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極膜厚を厚くしていった場合よりも、弾性表面波共振子の電極膜厚を厚くしていった場合の方が挿入損失の悪化が起こりにくいことがわかる。つまり、弾性表面波共振子の電極膜厚を厚くして最適な条件に適宜設定することが挿入損失の悪化を抑制する上で好ましい。また、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくしていった場合の挿入損失は、弾性表面波共振子の膜厚比が12%を超えた辺りから挿入損失が悪くなっていき、14%を超えると挿入損失が3.0dBを超えることがわかる。通常の弾性表面波フィルタとしての市場要求としては、挿入損失が3.0dBであることが要求されている。したがって、弾性表面波共振子の膜厚比は、14%以下であり、好ましくは12%以下である。
【0038】
図9に、従来例および実施例1の反射特性S11をスミスチャートで比較した図を示す。図9より、実施例1のように、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくして共振点と反共振点との間隔を広くすることで、従来例と比較して通過帯域内のインピーダンスが整合点に近づけることができ、VSWRを改善できることがわかる。
【0039】
以上説明したように、実施例1では、弾性表面波表面波フィルタの電極膜厚よりも前記弾性表面波共振子の電極膜厚を厚くしている。これにより、VSWRが良好な弾性表面波装置が得られる。
【0040】
また、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタでは、平衡信号端子の平衡度や、通過帯域外の減衰量を大きくする目的などで、設計を互いに異ならせても、同様の効果が得られる。また、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおいて、IDT−IDT間付近に狭ピッチ電極指部を設けているが、狭ピッチ電極指部を設けない構成でもよい。上記の構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
また、本実施の形態では、不平衡信号−平衡信号変換機能を有する弾性表面波装置について説明したが、平衡信号入力−平衡信号出力、または不平衡信号入力−不平衡信号出力の弾性表面波装置においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また、本実施の形態では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと不平衡信号端子間にのみ弾性表面波共振子が1つ直列に接続されている構成となっているが、弾性表面波共振子は特に1つである必要はない。例えば、図10に示すように、上記の構成において、縦結合共振子型弾性表面波フィルタと平衡信号端子との間に弾性表面波共振子を追加した構成であってもよい。この構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
また、上記弾性表面波共振子では、弾性表面波装置における平衡信号端子間の平衡度や通過帯域外の減衰量を大きくする目的などで、設計を互いに異ならせてもよい。この構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0045】
図11に、本実施の形態にかかる弾性表面波装置1000の要部の構成を示す。上記弾性表面波装置1000は、2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202、および縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202のそれぞれに並列に接続された弾性表面波共振子217、218を、圧電基板(図示せず)上に、備えている構成である。つまり、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子217が並列に接続され、同様に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ202と不平衡信号端子225との間に弾性表面波共振子218が並列に接続されている。
【0046】
また、上記弾性表面波装置1000では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202と弾性表面波共振子217、218の周波数の関係は、弾性表面波共振子217、218の反共振周波数が縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の通過帯域高周波数側の近傍に、共振周波数が通過帯域内に位置するように設定されている。さらに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ201、202の電極膜厚をh1、弾性表面波共振子217、218の電極膜厚をh2とした場合、h1<h2である。
【0047】
また、上記弾性表面波装置1000では、弾性表面波共振子の反共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域高周波数側近傍に、共振点を縦結合共振子型弾性表面波フィルタの通過帯域内に位置するようにしている。
【0048】
上記の構成によれば、実施の形態1と同様に、弾性表面波共振子における、L性として作用する周波数範囲が広がる。したがって、弾性表面波共振子の膜厚比を大きくし、共振点と反共振点との間隔を広くすることで、比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、VSWRを改善することができる。
【0049】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つ以上のくし型電極部を有する弾性表面波フィルタと、前記弾性表面波フィルタに電気的に接続された、くし型電極部を有する少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える弾性表面波装置において、前記弾性表面波共振子における反共振点が前記弾性表面波フィルタの通過帯域よりも高周波数側に設定されており、前記弾性表面波フィルタの電極膜厚と前記弾性表面波共振子の電極膜厚とが互いに異なっており、弾性表面波フィルタの電極膜厚よりも、弾性表面波共振子の電極膜厚の方が厚いことを特徴としている。
【0051】
上記の構成によれば、弾性表面波共振子における共振点と反共振点との間隔を広げることにより比較的通過帯域幅が広い弾性表面波フィルタに利用しても通過帯域内全体のインピーダンスをより整合点に近づけることができる。これにより、弾性表面波装置におけるVSWRを改善することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる実施例1の弾性表面波装置の概略の構成を示す平面図である。
【図2】従来例と実施例1とにおける不平衡信号端子側のVSWRを比較するグラフである。
【図3】従来例と実施例1とにおける平衡信号端子側のVSWRを比較するグラフである。
【図4】実施例1おける弾性表面波共振子の膜厚比と不平衡信号端子側のVSWRとの関係を示すグラフである。
【図5】実施例1おける弾性表面波共振子の膜厚比と平衡信号端子側のVSWRとの関係を示すグラフである。
【図6】実施例1の弾性表面波装置の伝送特性と弾性表面波共振子のインピーダンス特性とを示すグラフである。
【図7】実施例1の弾性表面波共振子の周波数に対するインピーダンス特性を示すグラフである。
【図8】縦結合共振子型弾性表面波フィルタおよび弾性表面波共振子の膜厚比を変化させたときの弾性表面波装置における挿入損失を示すグラフである。
【図9】従来例と実施例1との反射特性を示すスミスチャートである。
【図10】実施の形態1の変形例を示す概略の構成を示す平面図である。
【図11】実施の形態2にかかる弾性表面波装置の概略の構成を示す平面図である。
【図12】従来の弾性表面波装置を示す概略の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
200 弾性表面波装置
201、202 縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
217、218 弾性表面波共振子
Claims (7)
- 圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つ以上のくし型電極部を有する弾性表面波フィルタと、前記弾性表面波フィルタに電気的に接続された、くし型電極部を有する少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える弾性表面波装置において、
前記弾性表面波共振子における反共振点が前記弾性表面波フィルタの通過帯域よりも高周波数側に設定されており、
前記弾性表面波フィルタの電極膜厚と前記弾性表面波共振子の電極膜厚とが互いに異なっていることを特徴とする弾性表面波装置。 - 前記弾性表面波フィルタの電極膜厚よりも前記弾性表面波共振子の電極膜厚の方が厚いことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波共振子が、前記弾性表面波フィルタに直列に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波共振子が、前記弾性表面波フィルタに並列に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
- 平衡−不平衡変換機能を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波共振子の膜厚比は、14%以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002360233A JP2004194027A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 弾性表面波装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002360233A JP2004194027A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 弾性表面波装置 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2004194027A true JP2004194027A (ja) | 2004-07-08 |
Family
ID=32759365
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2002360233A Pending JP2004194027A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 弾性表面波装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2004194027A (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2008136022A (ja) * | 2006-11-29 | 2008-06-12 | Kyocera Corp | 弾性表面波装置及び通信装置 |
-
2002
- 2002-12-12 JP JP2002360233A patent/JP2004194027A/ja active Pending
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