JP2004131422A - 土壌病害防除剤および土壌病害防除法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物を含有する土壌病害防除剤、および、これら土壌病害防除剤を植物栽培土壌に施用して土壌病害を防除する方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌病害防除剤および土壌病害防除法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、堆肥等有機質肥料使用量の低下や、収益性のよい作物の連作により栽培植物の土壌病害が多発しており、これらの多くは土壌病原性微生物が関与していると言われている。このような土壌病害の原因となる土壌病原微生物から栽培植物を保護するために、従来は、メチルブロマイド等の化合物を用いた化学的な土壌消毒が広く行われてきた。しかし、これらの化合物の持つ殺菌力は強力であるため、それらの化合物を用いて土壌消毒を行うと、土壌病害を引き起こす土壌病原微生物を殺すだけでなく、土壌に含まれる有用微生物群までも殺してしまう。このように土壌中の微生物を壊滅させてしまうと、土壌消毒の効力が消滅した後に病原性微生物が土壌に混入してきた場合に、その病原性微生物の大増殖を招くという問題があった。また、メチルブロマイド等の化合物は何れも人体に対する毒性が強く、危険性が伴うという問題もあった。さらに、メチルブロマイドはオゾン層の破壊など環境に悪影響を与えるとして2005年に使用の全廃が予定されている。したがって、メチルブロマイド等の化合物に代わる安全性が高くかつ環境負荷の少ない土壌消毒剤が求められていた。
【0003】
そこで、近年、栽培植物を各種土壌病害から保護する方法として、安全性、環境面、効果の持続性を考慮して、各種土壌病害を引き起こす病原体と拮抗する微生物を用いて病虫害を予防する方法が広く用いられるようになった。そのような方法として、グリオクラディウム属に属する菌の培養物を用いて土壌病害を防除する方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。また、グリオクラディウム属に属する菌および/またはトリコデルマ属に属する菌の培養物に、これらの菌の栄養源を混和することにより、農作物の生育期間の全般にわたって安定的に土壌防害防除効果を持続させることのできる土壌病害防除用資材が提案されている(特許文献3参照。)。また、土壌病害に拮抗作用を有するグリオトキシン(Gliotoxin)の生産能を有するグリオクラディウム・ビレンス(トリコデルマ・ビレンス)G2菌株(FERM P−17381)を用いた土壌病害防除剤および土壌病害防除法が提案されている(特許文献4参照。)。このように、微生物を用いた土壌病害防除剤はいくつか知られているが、実用上、より効果の高い微生物土壌病害防除剤が求められていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−53317号公報
【特許文献2】
特開平10−17422号公報
【特許文献3】
特開2002−138005号公報
【特許文献4】
特開2002−53414号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたものであり、安全性が高く、かつ自然に悪影響を及ぼすことなく、かつ実用上、より効果の高い微生物土壌病害防除剤および土壌病害防除法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株が、植物病原菌に対して高い防除効果を有していることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物を含有する土壌病害防除剤。
(2)トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物とこれらの菌の栄養源を含有する土壌病害防除剤。
(3)栄養源が、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、グルコース、硫酸アンモニウム、尿素の群から選択される1種または2種以上の栄養源である(2)に記載の土壌病害防除剤。
(4)土壌病害が、糸状菌、細菌または微生物媒介ウィルスにより発生する土壌病害である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の土壌病害防除剤。
(5)植物を栽培する土壌にトリコデルマ・ビレンス(Trichodermavirens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物を施用することを特徴とする土壌病害防除法。
(6)植物を栽培する土壌にトリコデルマ・ビレンス(Trichodermavirens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物とこれらの菌の栄養源との混合物を施用することを特徴とする植物の土壌病害を防除する方法。
(7)栄養源が、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、グルコース、硫酸アンモニウム、尿素の群から選択される1種または2種以上の栄養源である(6)に記載の土壌病害を防除する方法。
(8)土壌病害が、糸状菌、細菌または微生物媒介ウィルスにより発生する土壌病害である(5)〜(7)のいずれか1つに記載の植物の土壌病害を防除する方法。
(9)土壌が、作付け前の本圃土壌または移植前の育苗培土である請求項(5)〜(8)のいずれか1つに記載の植物の土壌病害を防除する方法。
(10)トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の土壌病害防除剤は、トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物を含有する土壌防害防除剤である。
【0010】
トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)は、以前はグリオクラディウム・ビレンス(Gliocladium virens)であったが、属名が変わり、現在トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)となっている(Can. J. Bot., vol 69, 1991 参照)。
【0011】
トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、それぞれ植物混圏および土壌から分離して入手した菌株である。また、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、2002年7月9日より、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにそれぞれ受託番号FERM P−18927、FERM P−18928で寄託されている。
【0012】
このトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株の形態学的性質は、トリコデルマ・ビレンス種に特有の形態学的性質を有している。すなわち、その分生子柄は、無色、直立、単純または分岐した形態を有し、その高さは、60〜150μmである。そして、一次分岐metulaは、輪生または対生で、その長さが6〜14μmであり、その最先端のフィアライド上に、分生胞子塊を形成している。この分生胞子は、淡緑色であり、集合体は暗緑色で、広楕円形または亜球形をなし、単胞で一端がやや突出しており、その大きさは、2〜5μm×2〜4μmである。さらに、厚膜胞子は、球形または亜球形であり、その直径が8〜12μmである。
【0013】
トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株の培養方法については、通常の微生物の培養方法と同様の方法により培養することができる。すなわち、往復動式振盪培養、ジャーファーメンター培養などによる液体培養法や、固体培養法によることができる。この培養に際して、用いる培地成分としては、特に制約はなく、炭素源としてグルコース、シュークロース、糖蜜などの糖類、クエン酸などの有機酸類、グリセリンなどのアルコール類、また窒素源としてアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩や硝酸塩が用いられる。また、有機窒素源としては、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、肉エキス、小麦胚芽、ポリペプトン、大豆粉などが用いられる。さらに、無機塩類として、リン酸、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第1鉄などを用いることができる。
【0014】
また、培養条件は、通気攪拌や振盪培養などの好気的条件下で行われる液体培養や固体培養が望ましく、培養温度は、10〜37℃の範囲が好ましく、15〜32℃がより好ましい。そして、培養期間は、1〜14日間、好ましくは2〜7日間である。さらに、大量培養する場合には、タンク培養などの通常の液体培養でもよいし、また、フスマや大麦粒などの植物由来の固体成分、糖類や窒素源を含浸させた多孔質体などを用いた固体培養を採用してもよい。また、本発明に用いるトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株の菌体は、土壌病害防除剤の製品としての保存性の観点から、胞子であることが好ましい。したがって、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株を胞子化させるため、培養の終期において、培地の組成、培地のpH、培養温度、培養湿度、培養する際の酸素濃度などの培養条件を、その胞子形成条件に適合させるように調製することが好ましい。
【0015】
培養で得られた培養物は、そのまま用いることもできるが、培養物を培地とともに粉砕または細断して用いてもよい。また、培養物中の培地から菌体をかき取って用いてもよいし、この培養物を遠心分離することにより菌体を分離して用いてもよい。さらに、ここで回収した培養物の粉砕物や菌体は、自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥粉末として用いるのがよい。この乾燥粉末は、水分含有量20質量%以下であるものが好ましく、粒径は5mm以下であるものが好ましい。
【0016】
このようにして得られるトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株および/またはGv1001菌株の培養物や、その粉砕物あるいはその乾燥粉末をそのまま土壌病害防除剤として用いることもできるが、さらに、この培養物に栄養源を配合して、これらの混合剤の形態で用いるのが好ましい。
【0017】
ここで用いる栄養源としては、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、グルコース、硫酸アンモニウム、尿素の群から選択される1種または2種以上の栄養源が好適に用いられる。
【0018】
また、土壌病害防除剤には、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株及び/又はGv1001菌株の培養物および栄養源の他に、増量剤を配合してもよい。
【0019】
増量剤としては、カオリンクレー、パイロフェライトクレー、ベントナイト、ジークライト、モンモリロナイト、珪藻土、合成含水酸化珪素、酸性白土、タルク類、粘土、セラミック、石英、セリサイト、バーミキュライト、パーライト、大谷石、アンスラ石、石灰石、石炭灰、ゼオライト、アタパルジャイトなどの鉱物質微粉末が好適に用いられる。
【0020】
つぎに、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株および/またはGv1001菌株の培養物に、栄養源を配合した混合物を土壌病害防除剤として用いる場合、これら各成分の配合割合については、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株および/またはGv1001菌株の培養物の乾燥粉末0.1〜10質量%、栄養源を0.001〜99.9質量%、好ましくは0.005〜99.5質量%とすればよい。
【0021】
また、このトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株および/またはGv1001菌株の培養物に増量剤や栄養源を配合して製剤する際には、液体担体を用いることができる。この液体担体としては、水、大豆油、菜種油、コーン油などの植物油、液体動物油、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物が用いられる。さらに、必要に応じて、デンプンの加水分解物やD−ソルビトール、ラクトース、マルチトース、CMCなどの可溶性増量剤、カゼインやゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸、ベントナイトなどの固着剤や分散剤、プロピレングリコールやエチレングリコールなどの凍結防止剤、キサンタンガムなどの天然多糖類やポリアクリル酸などの増粘剤を用いてもよい。
【0022】
そして、このトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株および/またはGv1001菌株の培養物やこれを有効成分として含有する土壌病害防除剤は、その菌濃度が、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株および/またはGv1001菌体のコロニー形成単位として、1×102〜1×1010 cfu/g、好ましくは1×103〜1×109 cfu/g、さらに好ましくは5×103〜1×108 cfu/gであるものが好適に用いられる。
【0023】
本発明の土壌病害防除剤は、植物を栽培する土壌に施用して用いる。例えば、作物の播種あるいは苗の植え付け前の本圃土壌や、播種または苗を移植する前の育苗培土に施用して用いるのがよい。また、この土壌病害防除剤の施用量は、本圃土壌10アール当たり、50〜500リットルとするのがよい。
【0024】
そして、この土壌病害防除剤は、糸状菌、細菌、微生物媒介ウィルスによって、植物の地下部に発生する土壌病害の防除に有効に作用する。これらの土壌病害の中でも、例えば、イネ科に属するコウライ芝のラージパッチ、ベントグラスのブラウンパッチおよびダラースポット、アブラナ科に属するブロッコリーの根こぶ病、ハクサイの根こぶ病、キャベツの苗立枯病および菌核病、ダイコンの萎黄病、ユリ科に属するネギの白絹病および萎凋病、タマネギの灰色腐敗病、アカザ科に属するホウレンソウの株腐病、立枯病および萎凋病、ヤマノイモ科に属するナガイモの褐色腐敗病、ナデシコ科に属するカーネーションの萎凋病、セリ科に属するパセリの萎凋病、キク科に属するレタスの根腐病、ナス科に属するトマトの萎凋病、根腐萎凋病、褐色根腐病および半身萎凋病、ナスの半身萎凋病、ジャガイモのそうか病、ウリ科に属するスイカのつる枯れ病、メロンのつる割病および黒点根腐病、ヒルガオ科に属するサツマイモの紫紋羽病、サトイモ科に属するコンニャクのピシウム病、バラ科に属するイチゴの萎黄病、ナシの白紋羽病などの土壌病害に特に有効に作用する。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
[実施例1]
<1>菌株の選定
トリコデルマ・ビレンスG2株より土壌病害防除効果が高く、土壌病害防除剤としてより有用な菌株を選定するために、トリコデルマ・ビレンスに属する菌株を用いて、対峙培養、抗菌物質の生産量の比較、胞子生産性の比較を行った。
(1)対峙培養
トリコデルマ・ビレンスに属する148種の菌株の中から、その土壌病害防除効果が高いものを選定するために、まず、その148種の菌株と9種の植物病原菌とを用いて、以下のような方法で対峙培養を行った。
【0026】
トリコデルマ・ビレンスに属する菌および植物病原菌をそれぞれ1種類ずつ選び、それらをポテトデキストロース寒天培地(以下、PDA培地という)上で28℃において前培養し、菌叢が十分広がったところで、直径8mmのコルクボーラーを用いて菌叢の縁から円形の菌叢を取り出した。そのようにして取り出したトリコデルマ・ビレンスに属する菌の菌叢および植物病原菌の菌叢を、PDA培地上に40mm間隔にのせて28℃で培養を行った。菌叢がPDA培地の全面に広がったところで、その菌叢の一部を取り出し、その菌叢をその植物病原菌の選択培地上で培養して、その菌叢に植物病原菌がどの程度含まれているかを確認した。その菌叢に含まれている植物病原菌の程度により、そのトリコデルマ・ビレンスに属する菌がその植物病原菌に対して有する防除効果を、高い(++)、中程度(+)、認められない(−)の3段階で評価した。この試験をトリコデルマ・ビレンスに属する148種の菌株と、9種の植物病原菌とのすべての組み合わせについて行った。その結果の一部を表1に示す。
【0027】
【表1】
NT:試験せず
これにより、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、トリコデルマ・ビレンスG2株その他のトリコデルマ・ビレンスに属する菌株があまり高い防除効果を有していない植物病原菌に対しても高い防除効果を有しており、表1に示されたトリコデルマ・ビレンスに属する菌株の中で、最も有用性の高い菌株であることが分かった。
(2)抗菌成分の生産量の比較
次に、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)を用いたバイオアッセイにより、トリコデルマ・ビレンスに属する菌株が産生する抗菌成分の生産量を比較した。このバイオアッセイに用いる製剤例は以下のようにして作製した。
【0028】
まず、トリコデルマ・ビレンスに属する菌株をPDA培地で28℃、7日間培養し、十分に分生子が形成されたところで、培地に滅菌水を加え、コンラージ棒で培地表面を擦ることにより分生胞子懸濁液を得た。二重ガーゼで菌糸を除いた後、200gのフスマに分生子懸濁液40mlを良く混合しながら加え、製剤例中に含まれるトリコデルマ・ビレンスの菌数が107 cfu/gになるように分生子懸濁液を希釈した。この製剤例を、栄養分が含まれていない水寒天培地上の5個所にスポットし、25℃で24時間培養した。この水寒天培地にB. subtilisを懸濁した1/4濃度の普通寒天培地を6ml重層し、37℃で24時間培養した。培養終了後に培地を観察したところ、培地上にスポットした製剤例の周囲に阻止円が形成された。この試験は2反復で行った。その阻止円の直径を測定した結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
表2から分かるように、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株を用いた製剤例が形成した阻止円の直径は、トリコデルマ・ビレンスG2株を用いた製剤例が形成した阻止円の直径より大きかった。したがって、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、トリコデルマ・ビレンスG2株より多くの抗菌物質を生産していると考えられた。
【0030】
また、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株が生産する抗菌物質が、トリコデルマ・ビレンスG2株が生産する抗菌物質であるグリオトキシン(GTX)と同一であるのかを調べるため、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株を培養したポリデキストロース液体培地(以下、PDB培地という)の上清からクロロホルム抽出して得られた油状物質の性質を調べた。その結果、この油状物質は、上述のバチルス・サブチリスを用いたバイオアッセイで阻止円を形成し、また、その油状物質とグリオトキシン(GTX)標品を薄層クロマトグラフィーにより分析したところ、両物質のプレート上の移動距離はほぼ一致した。したがって、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株から抽出して得られた油状物質は、トリコデルマ・ビレンスG2株が生産する抗菌物質であるグリオトキシン(GTX)であると考えられた。
(3)胞子生産性の比較
本発明に用いるトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株の菌体は、土壌病害防除剤の製品としての保存性の観点から、胞子であることが好ましい。したがって、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株およびG2菌株を培養し、その胞子生産性を調べて比較した。その結果、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、トリコデルマ・ビレンスG2菌株と同程度の高い胞子生産性を有していることが分かった。
【0031】
以上の(1)、(2)、(3)の実験結果により、トリコデルマ・ビレンスG2株より土壌病害防除効果が高く、土壌病害防除剤としてより有用であると思われるトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株を選定した。
<2>苗立枯試験による菌株比較
前述の実施例1<1>では、培地プレート上において、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株の植物病原菌に対する防除効果を調べた。そこで今度は、実際に土壌や植物を用いた場合であっても、そのような効果を有しているかを調べるため、以下のような苗立枯試験を行った。
【0032】
まず、園芸用培土である「げんきくん1号」(JAくみあい製品)1Lを用意し、そこに苗立枯病の病原菌であるRhizoctonia solaniのフスマ培養物を0.5%(w/v)混合することにより人工的に汚染培土を作製した。次に、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株、Gv1001菌株、Gv1123菌株、Gv2710菌株、Gv0437菌株、G2菌株を用いて、上記<1>(2)で述べたのと同様の方法により製剤例を作製した。その際、各菌株について、製剤例中に含まれる菌数が107 cfu/gのものと106 cfu/gのものをそれぞれ用意した。その製剤例のそれぞれを、先ほど作製した汚染培土に0.1%(w/v)添加し、さらに適量の水を加えて混合したものを25℃暗条件にして3日間静置した。また、コントロールとして、製剤例を一切添加処理していない混合物を用意した。その後、それらの混合物をそれぞれ72穴セルトレーに詰めて、セルトレーの各セルに一粒ずつ、キャベツの種(品種:YRあおば甘藍)を播種した。セルトレーは、1製剤例あたり3枚作製した。これらのセルトレーを、人工気象器を用いて25℃、12時間明(10000Lx)、12時間暗条件とし、10日間栽培した。その後、立枯病にかかったキャベツの数(立枯本数)を計測した。3枚のセルトレーの立枯本数を平均することにより、平均立枯本数を得た。ここで、平均立枯本数を播種数で割った値を発病度とし、また、製剤例を添加して防除処理した土壌を用いたセルトレーの発病度を処理区発病度防除と、製剤例を添加せず防除処理していない土壌を用いたセルトレーの発病度を無処理区発病度とする。また、以下の数式により算出される数値を防除価とする。
表3は、上記の苗立枯実験により得られた発病度と防除価を、製剤例に用いたトリコデルマ・ビレンスに属する菌株ごとに比較した結果を表している。
【0033】
【表3】
▲1▼:106 cfu/gの菌数を含む製剤例を用いたもの
▲2▼:107 cfu/gの菌数を含む製剤例を用いたもの
表3の結果から分かるように、本願発明に係るトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、トリコデルマ・ビレンスの他の菌株であるGv1123菌株、Gv2710菌株、Gv0437菌株、G2菌株と比較して高い防除価を示した。また、防除価と、<1>(2)のバイオアッセイで得られた阻止円の直径との間には、それほど高くはないが、相関係数0.78の正の相関が認められた。阻止円の直径の大きさを左右しているのは、グリオトキシン(GTX)などの抗菌成分の量なので、トリコデルマ・ビレンスに属する菌株が植物病原菌に対して有する防除効果の一部は、グリオトキシン(GTX)などの抗菌成分によるものであると考えられた。
【0034】
以上の結果より、トリコデルマ・ビレンスGv0928菌株およびGv1001菌株は、トリコデルマ・ビレンスGv1123菌株、Gv2710菌株、Gv0437菌株およびG2菌株より土壌病害防除効果が高く、土壌病害防除剤として有用であると思われる。
[実施例2]
(1)トリコデルマ属微生物の培養
ポテトデキストロース培地中に凍結保存されているトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株の種菌を、ポテトデキストロース培地を用いて、2日間、28℃で培養した。培養担体として、オオムギ麦粒100kgを用い、このオオムギ麦粒にGv0928菌株の培養液と滅菌水を合わせた物を100リットル加え、均一になるように混合した。ついで、縦50cm、横50cm、深さ6cmのトレー10個に上記の培養液を加えたオオムギ麦粒を、厚さが5cmになるように入れた。このトレーの上面には、通気口を有する蓋をして、28℃で10日間培養した。この培養期間中は、光が当たる条件において培養し、培養開始から3日目に担体全体をかき混ぜた。培養の終了後、培養物を乾燥トレーに移しかえて、厚さ1cm程度に薄く広げ、表面を濾紙で覆って、30〜35℃の乾燥器で水分含量が10%以下になるまで乾燥した。ついで、乾燥した培養物を砕き、Gv0928株の培養物を得た。この培養物における菌濃度は、そのコロニー形成単位において、3.3×109 cfu/gであった。
【0035】
トリコデルマ・ビレンスGv1001菌株およびG2菌株を用いて、上記と同様にして、その培養物を得た。これらの培養物における菌濃度は、そのコロニー形成単位において、おのおの2.5×109 cfu/g、3.1×109 cfu/gであった。
(2)土壌病害防除剤の製造
このトリコデルマ・ビレンスGv0928菌株の培養物に、栄養源として大豆油およびフスマを、重量比において、1:10:89になるように配合することにより、土壌病害防除剤例1を製造した。この土壌病害防除剤における菌濃度は、そのコロニー形成単位において、3.0×107 cfu/gであった。
【0036】
トリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物およびG2菌株の培養物を用いて、上記と同様にして、土壌病害防除剤例2および例3を製造した。これらの土壌病害防除剤における菌濃度は、そのコロニー形成単位において、おのおの2.8×107 cfu/g、2.9×107 cfu/gであった。
[実施例3]
セルトレーに園芸用培土である「与作N15」(チッソ旭肥料(株)製品)を詰めて、ネギ(品種:東京夏黒2号)を播種し、最低温度を23℃に設定した温室で育苗した。ポットに詰める土壌は、より実際の圃場の土に近づけるため、小粒赤玉土とスーパーミックスA((株)サカタノタネ製品)とを1:1(v/v)で混合した土壌を使用した。ポットは内寸24cm×14cm×9cm(深さ)の小型コンテナを使用した。この土壌に、ネギ白絹病の病原菌であるSclerotium rolfsiiのフスマ培養物を0.75%(w/v)混和することによって汚染土壌を作製した。実施例2で製造した土壌病害防除剤例1を汚染土壌に0.1%(w/v)混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していないものを用意した。それらの混和した土壌をそれぞれポットに詰め、前述したように育苗したネギの苗を、ポット当たり5本移植した。移植してから3週間後にネギの様子を観察し、その発病の程度を、0:無発病、1:地際部葉鞘部にわずかに発病、2:葉鞘部の外葉が腐敗、3:地際部腐敗もしくは枯死、の4段階で評価して、それぞれの土壌の発病度を算出した。試験は5反復で行った。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表4に示す。
[実施例4]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例3と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表4に示す。
[比較例1]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例3と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表4に示す。
【0037】
【表4】
[実施例5]
セルトレーに与作N15をつめ、ブロッコリー(品種:緑嶺)を播種し、最低温度を23℃に設定した温室で育苗した。昨年、根こぶ病が発生した農家の畑の汚染土壌を採取し、内寸60cm×16cm×20cm(深さ)のプランターにつめた。このプランターに土壌病害防除剤例1を10a当たり200リットルになるように混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していないものも用意した。前述したように育苗したブロッコリーの苗を、プランター当たり10本移植した。移植してから4週間後に発病株率を調査した。試験は3反復で行った。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表5に示す。
[実施例6]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例5と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表5に示す。
[比較例2]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例5と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表5に示す。
【0038】
【表5】
[実施例7]
JAくみあい園芸用育苗培土「げんきくん1号」に、ホウレンソウ株腐病の病原菌であるR.solaniのフスマ培養物を0.5%(w/v)混合することにより汚染培土を作製した。この汚染培土を、内寸36cm×45cm×10cm(深さ)の育苗箱につめ、土壌病害防除剤例1を、10a当たり100リットルおよび200リットルになるように混和した。ホウレンソウの種(品種:おかめ)を育苗箱あたり100粒播種し、最低温度を23℃に設定した温室内で育苗管理した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していないものも用意した。播種後、発芽株数および発芽後立枯株数を3週間経時的に調査し、発病株率を算出した。試験は3反復で行った。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表6に示す。
[実施例8]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例7と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表6に示す。
[比較例3]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例7と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表6に示す。
【0039】
【表6】
[実施例9]
ホウレンソウ立枯病の病原菌であるPythium ultimumを、滅菌したベントグラスの種を用い、2週間25℃で培養した。JAくみあい園芸用育苗培土「げんきくん1号」に、P.ultimumのベントグラス培養物を0.5%(w/v)混合することにより汚染培土を作製した。この汚染培土を、内寸36cm×45cm×10cm(深さ)の育苗箱につめ、土壌病害防除剤例1を、10a当たり100リットルになるように混和した。ホウレンソウの種(品種:おかめ)を育苗箱あたり100粒播種し、最低温度を23℃に設定した温室内で育苗管理した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していないものも用意した。播種後、発芽株数および発芽後立枯株数を3週間経時的に調査し、発病株率を算出した。試験は3反復で行った。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表7に示す。
[実施例10]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例9と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表7に示す。
[比較例4]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例9と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表7に示す。
【0040】
【表7】
[実施例11]
JAくみあい園芸用育苗培土「げんきくん1号」に、ホウレンソウ萎凋病の病原菌であるFusarium oxysporum f. sp. spinaciaeのフスマ培養物を1.0%(w/v)混合することにより汚染培土を作製した。この汚染培土を、内寸60cm×16cm×20cm(深さ)のプランターにつめ、土壌病害防除剤例1を、10a当たり200リットルになるように混和した。ホウレンソウの種(品種:おかめ)をプランターあたり10粒播種し、最低温度を23℃に設定した温室内で育苗管理した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していないものも用意した。播種してから4週間後に、累積発病株率を求めた。試験は3反復で行った。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表8に示す。
[実施例12]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例11と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表8に示す。
[比較例5]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例11と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表8に示す。
【0041】
【表8】
[実施例13]
10aの圃場に、そうか病に罹病したジャガイモの皮を鋤き込み、一回ジャガイモを栽培することにより、そうか病汚染圃場を作製した。試験区は、1区1.4m×1.4mの3連制で行った。土壌病害防除剤例1を10a当たり、おのおの100リットルおよび200リットルになるように試験区に混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していない試験区も用意した。種ジャガイモの植え付けから3ヶ月後にジャガイモを掘り取り、その塊茎部へのジャガイモそうか病の罹病の状況を調査し、罹病芋率を算出した。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表9に示す。
[実施例14]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例13と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表9に示す。
[比較例6]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例13と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表9に示す。
【0042】
【表9】
[実施例15]
コンニャクを連作することにより、根腐病が発生するようになった畑を選定した。試験区は、1区6m2の3連制で行った。土壌病害防除剤例1を10a当たり200リットルになるように試験区に混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していない試験区も用意した。2年生の種イモ(品種:あかぎおおだま)を1区につき54個体植え付けた。種イモの植え付けから4ヶ月後に地上部の発病株率を調査した。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表10に示す。
[実施例16]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例15と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表10に示す。
[比較例7]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例15と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表10に示す。
【0043】
【表10】
[実施例17]
前作でサツマイモ紫紋羽病の発生が認められた畑を選定した。試験区は、1区10m2の3連制で行った。土壌病害防除剤例1を10a当たり200リットルになるように試験区に混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していない試験区も用意した。サツマイモの苗(品種:高系14号)を露地畦立てマルチ栽培、畦間100cm×株間30cmで植え付けた。苗を植え付けてから4ヶ月後に掘り取り、罹病芋率を調査した。防除価は以下の式により算出した。
【0044】
ここで算出した防除価を表11に示す。
[実施例18]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例17と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表11に示す。
[比較例8]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例17と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表11に示す。
【0045】
【表11】
[実施例19]
前作でナガイモ褐色腐敗病の発生が認められた畑を選定した。試験区は、1区40m2の3連制で行った。土壌病害防除剤例1を10a当たり200リットルになるように試験区に混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していない試験区も用意した。種芋(品種:青森県在来種)を、畦間75cm×株間30cmで、5月に植え付けた。翌年の融雪後にナガイモを掘り取り、罹病芋率を調査した。防除価は以下の式により算出した。
ここで算出した防除価を表12に示す。
[実施例20]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例19と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表12に示す。
[比較例9]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例19と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表12に示す。
【0046】
【表12】
[実施例21]
前年にラージパッチ(病原菌 R.solani)の発生が認められた芝生(品種:コウライシバ)を選定した。1区30m2の2連制で行った。3月末に、土壌病害防除剤例1を10a当たり200リットルになるように試験区に散布した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していない試験区も用意した。5月末に発病面積を調査した。試験は3反復で行った。防除価は以下の式により算出した。
【0047】
ここで算出した防除価を表13に示す。
[実施例22]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例21と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表13に示す。
[比較例10]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例21と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表13に示す。
【0048】
【表13】
[実施例23]
セルトレーに与作N15をつめ、カーネーション(品種:キャンドル)を播種し、最低温度を23℃に設定した温室で育苗した。昨年、萎凋病が発生した農家の畑の汚染土壌を採取し、内寸60cm×16cm×20cm(深さ)のプランターにつめた。このプランターに、土壌病害防除剤例1を、10a当たり200リットルになるように混和した。また、コントロールとして、土壌病害防除剤例を一切添加処理していないものも用意した。前述したように育苗したカーネーションの苗を、プランター当たり10本移植した。移植してから4週間後に発病株率を調査した。試験は3反復で行った。防除価は以下のような式により算出した。
ここで算出した防除価を表14に示す。
[実施例24]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例2を用いた以外は、実施例23と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表14に示す。
[比較例11]
土壌病害防除剤例1の代わりに土壌病害防除剤例3を用いた以外は、実施例23と同様にして実験を行った。その結果得られた防除価を表14に示す。
【0049】
【表14】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、実用上、より効果の高い微生物土壌病害防除剤および土壌病害防除法を提供することができる。
Claims (10)
- トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物を含有する土壌病害防除剤。
- トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物とこれらの菌の栄養源を含有する土壌病害防除剤。
- 栄養源が、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、グルコース、硫酸アンモニウム、尿素の群から選択される1種または2種以上の栄養源である請求項2に記載の土壌病害防除剤。
- 土壌病害が、糸状菌、細菌または微生物媒介ウィルスにより発生する土壌病害である請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌病害防除剤。
- 植物を栽培する土壌にトリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物を施用することを特徴とする植物の土壌病害を防除する方法。
- 植物を栽培する土壌にトリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株の培養物とこれらの菌の栄養源との混合物を施用することを特徴とする植物の土壌病害を防除する方法。
- 栄養源が、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、グルコース、硫酸アンモニウム、尿素の群から選択される1種または2種以上の栄養源である請求項6に記載の土壌病害を防除する方法。
- 土壌病害が、糸状菌、細菌または微生物媒介ウィルスにより発生する土壌病害である請求項5〜7のいずれか1項に記載の植物の土壌病害を防除する方法。
- 土壌が、作付け前の本圃土壌または移植前の育苗培土である請求項5〜8のいずれか1項に記載の植物の土壌病害を防除する方法。
- トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)Gv0928菌株および/またはトリコデルマ・ビレンスGv1001菌株。
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2002
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