先ず、本発明に使用されるポリエステルフィルムについて説明する。
本発明で使用されるポリエステルフィルムは、缶の内面側に被覆される(I)層/(II)層の複合構成のポリエステルフィルム(AF)と、缶の外面側に被覆される単層のポリエステルフィルム(BF)であり、該ポリエステルフィルム(AF)は(II)層側を金属板に相接して被覆され、更には、製缶性と内容物を充填・密封した後に施される殺菌処理時の白化の問題から、該ポリエステルフィルム(AF)の(I)層、及び該ポリエステルフィルム(BF)は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを60:40〜30:70重量%の混合比で混合し、該混合ポリエステル100重量部に対してワックスを0.01〜0.15重量部配合してなる混合ポリエステルからなるポリエステルフィルムであり、該ポリエステルフィルム(AF)の(II)層は、全酸成分残基の95モル%以下がテレフタル酸残基で、且つ5モル%以上が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸よりなるポリエステルからなるポリエステルフィルムである。
上記ポリエステルフィルム(AF)の(I)層、及び上記ポリエステルフィルム(BF)は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを60:40〜30:70重量%の混合比で混合した混合ポリエステルであることが必要である。
上記混合ポリエステルにおいて、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルが40重量%未満では、内容物を充填・密封した後に施されるレトルト殺菌処理と言った熱水処理や、パストロ殺菌処理と言った温水処理でフィルムの白化現象が起こり、特に缶の外面外観を損ねるため、好ましくない。
一方、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルが70重量%を超えると製缶性に問題が発生し易く、特に缶外面側のフィルムが、しごき加工で缶高さ方向に縦疵が入る、通称、「カジリ」と呼ばれている現象が起こり、印刷外観を損ねるため、製品にならず好ましくない。
カジリは、特にしごき加工の加工度が高くなると発生しやすく、生産歩留まりが低下するだけでなく、場合によっては製造ラインをストップして金型の手入れを行う必要があり、生産性を著しく低下させる原因となるため、極力、回避しなければならない問題である。
本発明では、ポリエステルフィルム(AF)の(I)層、及びポリエステルフィルム(BF)には、缶内面側ではパンチ離型性の向上、缶の外面側は耐カジリ性の向上のため、ワックスを混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜0.15重量部配合することが必要である。
混合ポリエステルにワックスを配合することにより、得られるポリエステルフィルムの動摩擦係数を低下させ、滑り易くする効果を有するようになり、このことがパンチ離型性の向上や耐カジリ性を向上させている、と考えられ、ポリエステルフィルム表面の動摩擦係数(μ)としては0.2以下の値を示すことが好ましい。
ワックスが混合ポリエステル100重量部に対して0.01重量部未満の場合、80缶/分以上の高速製缶でパンチ離型性の低下やカジリが発生し易くなり、好ましくない。
一方、ワックスが混合ポリエステル100重量部に対して0.15重量部を超えても、80缶/分以上の高速製缶でのパンチ離型性や耐カジリ性の向上は飽和しており、経済的でない。又、0.15重量部を超えると、場合によっては、フィルムの透明性が局部的に劣る透明欠点が生じ易くなることがあり好ましくない。
混合ポリエステルに配合されるワックスは、製膜の安定性(押出機へ供給する際の取り扱い性)の点からパラフィン系ワックス、ポリエチレンワックス、エステル系ワックス、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノアミドから選ばれた1種、又は2種以上であることが好ましい。
混合ポリエステルへのワックスの配合方法は、特に限定するものでなく、例えば混合ポリエステルとワックスを溶融混練して得たポリマーを用いてフィルムを作製する方法、混合ポリエステルとワックスとの混合物を用いてフィルムを作製する方法、等が使用できる。又、ワックス以外の無機又は有機粒子よりなる滑剤を併用してもかまわない。
本発明におけるポリエステルフィルム(AF)の(II)層は、全酸成分残基の95モル%以下がテレフタル酸残基で、且つ5モル%以上が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸よりなるポリエステルであることが必要である。
炭素数が10以上の脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、エイコ酸、デカンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
ダイマー酸は、オレイン酸等の高級不飽和脂肪酸の二量化反応によって得られ、通常、不飽和結合を分子中に有するが、水素結合をして不飽和度を下げたものも使用できる。水素添加をした方が耐熱性や柔軟性が向上するためより好ましい。又、二量化反応の過程で直鎖分岐状構造、脂環構造、芳香環構造が生成されるが、これらの構造や量は特に限定するものではない。
本発明におけるポリエステルフィルム(AF)の(II)層は、缶の内面側となる金属板表面に相接して被覆され、耐デント性の向上を目的としたものであり、柔軟性を有するポリエステル樹脂であることが必要である。ところが、こうした樹脂は同時に耐熱性は劣る、と言った特性を一般に有している。
炭素数が10未満の脂肪族ジカルボン酸残基では衝撃強度に対する柔軟性が充分でないため、耐デント性の向上は見られず、好ましくない。
耐デント性について言えば、(II)層に炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基からなるポリエステル樹脂を適用することで、優れた耐デント性を有するポリエステルフィルム被覆金属缶が得られるが、前述したように、こうしたポリエステル樹脂は耐熱性が劣るため、たとえ本発明のように(I)層にパンチ離型性の良好なポリエステルフィルムが存在していても、被覆材を成形する際、缶からパンチが抜け難い、と言ったパンチ離型性が劣り、連続製缶性の点で問題となる場合がある。
このようなパンチ離型性の問題点を回避し、耐デント性を確保するには、本発明のように(II)層が全酸成分残基の95モル%以下がテレフタル酸残基で、かつ5モル%以上が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基よりなる、ポリエステルからなるフィルムを適用することで達成される。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量が5モル%未満では、テレフ
タル酸残基からなるポリエステル樹脂の影響が大きく、パンチ離型性は良好である
が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸と共重合させた効果が余り現れず、耐デ
ント性の向上は見られない。
一方、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量が多くなると、耐デント性は向上してくるが、パンチ離型性の低下が起こり易くなる。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量の最適範囲は、パンチ離型性等の連続製缶性と、耐デント性の両者の観点から決めるのが好ましく、勿論、連続製缶性が問題となる程、パンチ離型性が劣ってくるか否かは、成形速度と加工度によって決まってくる要素があり、一概には言えないが、含有量が20〜25モル%を超えたあたりからパンチ離型性の低下傾向が現れてくるので、それ以下とするのが好ましい。
ポリエステルフィルム(AF)の(II)層を構成するポリエステルは、テレフタル酸残基と炭素数が10以上の脂肪族ジカルボン酸残基が、前記の範囲を満足していれば、これらの酸以外のジカルボン酸残基を含むことを、特に限定するものではない。
又、炭素数が10以上の脂肪族ジカルボン酸残基は1種類であっても良いし、2種類以上を併用しても良い。
更に、ポリエステルフィルム(AF)の(II)層を構成するポリエステルのグリコール残基は特に限定するものではなく、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールの残基で良い。
本発明に使用されるポリエステルの融点は180℃以上であることが、製缶性(特に、絞り・しごき加工において、缶の内面側はパンチの離型性の確保、缶の外面側は樹脂の耐カジリ性)の点から好ましい。ポリエステルの融点は、更に好ましくは200℃以上、特に好ましくは220℃以上がパンチの離型性や耐カジリ性の観点からは良い。
本発明ではポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの特性を損なわない範囲で、テレフタル酸以外のジカルボン酸とエチレングリコール及びブタンジオール以外のグリコール成分を使用することは可能である。
例えば、ジカルボン酸として、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボ酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、P−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。又、エチレングリコール及びブタンジオール以外の成分として、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールが使用できる。
本発明におけるポリエステルの製造方法については特に限定しない。即ち、エステル交換法、又は直接重合法のいずれの方法で製造されたものであっても使用できる。又、分子量を高めるために固相重合法で製造されたものであってもかまわない。更に、缶に内容物を充填・密封した後に実施されるレトルト殺菌処理、パストロ殺菌処理等でのポリエステル樹脂からの溶出オリゴマー量を少なくする点から、減圧固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステルを使用することは好ましい。
なお、本発明におけるポリエステルには、必要に応じて酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤、無機又は有機粒子よりなる滑剤等を配合させてもよい。
次に、本発明の、金属板被覆用ポリエステルフィルムの製造について述べる。
本発明の方法では、缶の内面側に被覆されるポリエステルフィルム(AF)の(I)層として、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを60:40〜30:70重量%の混合比で混合し、該混合ポリエステル100重量部に対してワックスを0.01〜0.15重量部含む混合ポリエステルを公知の1軸、又は2軸押出機内で溶融し、又、ポリエステルフィルム(AF)の(II)層として、全酸成分残基の95モル%以下がテレフタル酸残基で、且つ5モル%以上が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸よりなるポリエステルを別の1軸、又は2軸押出機で溶融し、それぞれのポリエステルを、Tダイを用いて層状にキャストした溶融樹脂膜を冷却ロールで冷却固化させる。その際、冷却ロールの表面粗度(Ra)は、Tダイから層状に押出す速度との関係でフィルム製造の重要な要件となっており、本発明の方法では表面粗度(Ra)は0.2μm以上〜4.0μm未満であることが必要である。
又、缶の外面側に被覆されるポリエステルフィルム(BF)として、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを60:40〜30:70重量%の混合比で混合し、該混合ポリエステル100重量部に対してワックスを0.01〜0.15重量部含む混合ポリエステルを公知の1軸、又は2軸押出機内で溶融し、Tダイを用いて層状にキャストした溶融樹脂膜を冷却ロールで冷却固化させるが、ポリエステルフィルム(BF)においても冷却ロールの表面粗度(Ra)は、Tダイから層状に押出す速度との関係でフィルム製造の重要な要件であり、本発明の方法では表面粗度(Ra)は上記範囲と同様に0.2μm以上〜4.0μm未満であることが必要である。
即ち、Tダイから層状に押出した溶融樹脂膜を30m/分以上の速度で冷却固化した場合、冷却ロールに沿って流れる空気が高速になり、高速になる程空気は逃げにくくなるため、冷却ロールの表面粗度(Ra)が0.2μm未満の場合はフィルムに微細な凹凸を発生させ易くなる。こうした状態のフィルムを金属板に被覆させた場合、金属板とフィルムの間に気泡を巻き込んでしまい、成形でこの気泡を起点とした微細な破れがフィルムに発生するため、好ましくない。
一方、冷却ロールの表面粗度(Ra)が4.0μm以上の場合、冷却ロールに沿って流れる空気は逃げ易くなるが、熱伝導が不十分になってTダイから層状に押出した溶融樹脂膜の冷却固化が不完全となる場合があり、更にはロール表面の粗度プロフィルがフィルム面に転写してしまう場合があり、好ましくない。
特に、ロール表面の粗度プロフィルがフィルム面に転写した状態のフィルムを被覆させた場合、フィルム表面が斑状の外観になり、特に缶外面側で使用するフィルムの場合は外観不良となり易く、商品価値が低下する原因となり、好ましくない。
冷却ロールの表面粗度(Ra)は、溶融樹脂膜の冷却固化速度や得られるフィルムの表面外観から最適範囲を選定することが必要であるが、好ましくは0.2〜3.5μmの範囲、更に好ましくは0.2〜2.5μmの範囲が最適である。
又、冷却ロールの表面粗度(Ra)は、後述するロール表面温度、更には冷却ロール径等の関係からも、最適範囲が決まってくるが、基本的には冷却固化速度が速い場合には冷却ロールの表面粗度は大きく、ロール表面温度は低めで、ロール径は大きい方が良い。
冷却ロール表面に形成する表面粗度(Ra)の形状は、特に限定するものではなく、スパイラル状の溝に仕上げたもの、ダイヤカット状の溝に仕上げたもの、梨地状に溝を仕上げたもの等が使用できるが、特に梨地状の形状の粗度プロフィルを有するものが、空気の流れ問題、及びロール表面粗度プロフィルのフィルム面への転写問題の両立面から、バランス良く両立する範囲が広く、好適である。
なお、本発明における冷却ロールの表面粗度(Ra)は、冷却ロールの幅方向に測定した値を示すものである。
又、層状に押出した溶融樹脂膜を冷却固化させるに際し、冷却ロールの表面温度を50℃以下にすることが好ましい。冷却ロールの表面温度が50℃を超えると、製膜性には直接影響を及ぼすことはないが、後述するように、その後に行う縦方向の延伸でフィルムに微細なクラックが入る場合がある。特に、縦方向の延伸倍率を大きくするとフィルムに微細なクラックが入り易くなる傾向が見られるため、好ましくない。冷却ロールの表面温度は45℃以下がより好適である。
但し、冷却ロールの表面温度が低すぎると、冷却ロール表面が結露する場合があり、水滴がフィルムに触れると表面状態や結晶状態が変わるため好ましくない。
本発明では溶融樹脂を冷却ロールに接触させる際、強制的にエアーを吹き付ける方法、又は静電気で密着させる方法を採用することが好ましい。又、強制エアー吹き付け法、静電密着法のいずれにおいても層状樹脂の両端部と中央部を独立させて実施する方法がより好ましい。更に、溶融樹脂が冷却ロールに接触する際、反対側を減圧して随伴流を低減させる方策(例えば、バキュームチャンバー、バキュームボックス等の装置)を併用することがより好ましい。
冷却固化後のフィルム中央部の平均厚みは、250μm以下が、延伸性良好となり好ましい。
本発明では冷却固化させた後、少なくとも縦方向に1軸延伸し、次いで両端部を切断除去してポリエステルフィルムを得ることが必要である。縦延伸条件としては、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で縦方向に1.3〜6.0倍延伸することが好ましい。縦延伸を実施しない場合、フィルムの両端部を切断除去する際フィルムの破断が起こり易く好ましくない。又、フィルムの両端部を切断除去しなければ、金属板に被覆させた場合、被覆金属板の両端部のフィルム厚みが厚くなり、その部位は製缶に供することができなくなるため、金属板、フィルム双方の材料ロスが増大し、経済的に好ましくない。
又、本発明では、両端部を含む樹脂をポリエステルフィルムとして再利用する場合、再使用率は特に限定しないが、5〜60重量%の範囲に留めることが好ましい。
本発明では、ポリエステルフィルムの生産性を向上させるために、縦延伸後に横延伸を実施することは、勿論可能である。又、一般に縦延伸フィルムもしくは縦横延伸フィルムは、一般的に熱収縮率が大きい特性を有しており、被覆の際フィルム収縮が起こり易く、必要とする被覆幅が得難い場合がある。こうした場合には、必要に応じて延伸後のポリエステルフィルムを緊張下で50℃以上〜ポリエステルの(融点−20℃)の温度範囲で1〜20秒間熱処理を行い、フィルムの延伸後の熱収縮率を制御することも可能である。
次に、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板について述べる。
本発明において、ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法としては、ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点近くに加熱された金属板の両面に、ポリエステルフィルムを圧着させて被覆させ、更に金属板をポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上の板温度となるように加熱した後、急冷することで達成される。
本発明におけるポリエステルフィルムを金属板に被覆させる方法は、例えば缶の外面側となるポリエステルフィルム(BF)で言うと、第1の要件であるポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの(融点−10℃)から(融点+50℃)に加熱された金属板の両面に、ポリエステルフィルムを圧着させて被覆させること、及び第2の要件であるポリエステルフィルムを被覆させた後、金属板をポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後、急冷すること、の2つの要件から成っている。
通常、第1の要件は、金属板の温度をポリエステルフィルムの融点以上の温度に加熱して、ポリエステルフィルムを被覆させるのが一般的に行われている方法であるが、本発明では、前述したようにポリエステルフィルムは少なくとも縦方向に延伸されており、その延伸する程度(延伸倍率)にもよるが、ポリエステルの融点−10℃からの被覆が可能となり、本発明の効果として現れている。
缶の内面側となる(I)層/(II)層の複合構成のポリエステルフィルム(AF)の場合、(II)層が金属面に相接するように被覆するが、その時の金属板の温度は上記範囲(ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの(融点−10℃)から(融点+50℃)で特に問題はない。特に金属面に相接する(II)層のポリエステルの融点を基準にする必要はない。
金属板に被覆させる手段としては、圧着ロールを用いてフィルムを同時あるいは逐次に被覆させる方法、等の周知の方法が適用できる。
ポリエステルフィルムを金属板へ被覆させるためのフィルム供給方法としては、フィルム製造設備と被覆設備が一貫ラインとしてある場合は、製膜後のフィルムをインラインで被覆させることができる。
フィルム製造設備と被覆設備が別ラインの場合は、製膜したフィルムを一度巻き取り、被覆設備で巻ほどいて金属板に被覆させることができる。どの方法を採用するかは、設備との関係で適宜選択することが可能である。
金属板の加熱方法としては、電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、高周波で誘導加熱する方法、等の加熱方法が採用できる。
又、急冷する方法としては加圧空気(または圧縮空気)や冷却された加圧空気(または圧縮空気)を吹きかけて冷却する方法等が採用できる。又状況によっては水等に浸漬して冷却する方法も可能である。
本発明において、金属板に被覆されているポリエステルフィルムの密度は、1.320g/cm3以下であることが必要である。
ポリエステルフィルムの密度は、それが結晶性であるか否かで変化し、密度が1.320g/cm3以下であると言うことは実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い結晶状態であることを意味している。このことは、金属板に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にすることで密度1.320g/cm3以下を達成できることを示している。
本発明では、金属板に被覆されているポリエステルフィルムの密度は1.320g/cm3以下であるので、フィルムを絞り・しごき加工に追随させることができる。
金属板に被覆されているポリエステルフィルムの密度が1.320g/cm3を超えると、即ちフィルムが結晶化するとフィルムの伸び特性が落ちてくるため、特に缶壁部の板厚減少率が大きい高加工度に追随できず、局部的フィルム破断が起こり、缶の内外面フィルムの健全性は確保できないことがある。
缶の内面側のフィルムの健全性が確保できなくなると、素地金属の腐食に発展するため、内容物の保存性の点で大きな問題となり、好ましくない。従って、缶の内面側に相当するポリエステルフィルムを非晶質にし、その密度を1.320g/cm3以下にすることで、耐食性の優れた被覆金属缶の成形が達成できる。
金属板に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にし、その密度を1.320g/cm3以下にする方法としては、圧着ロールを用いてフィルムを被覆させた金属板を、ポリエステルフィルム(AF)の(I)層であるエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後、水冷又は/及び圧縮空冷等で急冷する方法、等が適用できる。
なお、金属板の加熱方法としては、電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、高周波で誘導加熱する方法、等の加熱方法が採用できる。
樹脂の平均分子量を示す指標である極限粘度(IV)は、本発明では特に限定するものではないが、少なくとも缶の内面側であるポリエステルフィルム(AF)の(I)層は、0.70dl(デシリットル)/g以上であることが好ましい。
缶の内面側について言えば、内容物が充填された缶を落とした場合、その部位の落下衝撃により材料が変形するが、同時にその時の衝撃と変形でフィルムにクラックが入る場合がある。前述したように、フィルムにクラックが入り易いか入り難いかと言った性質をフィルム特性の面から耐デント性と呼んでいるが、クラックが入った場合、その部位では金属腐食が起こる起点を作ることになる。そして、内容物が高腐食性の場合は、穿孔缶となる危険性を伴うため、好ましくない。
前述したように、耐デント性の確保は基本的にはポリエステルフィルム(AF)の(II)層が担っており、腐食性の弱い内容物、例えばビール、お茶類、コーヒー類等と言った内容物に対しては極限粘度が0.70dl/g未満でも問題ないが、やはりポリエステルフィルム(AF)の(I)層及び(III)層の極限粘度が0.70dl/g未満ではフィルムの衝撃破壊強度が小さく、前述した耐デント性が十分でない場合がある。
耐デント性は極限粘度が高い程良好であるが、0.70dl/g以上であれば多くの場合、実用上問題のない品質が確保されるが、コーラ、スポーツ飲料等の腐食性の強い内容物に対しては高い方が安心であり、好ましくは0.75dl/g以上、更に好ましくは0.80dl/g以上が良い。
本発明のポリエステルフィルム被覆金属板に被覆されるフィルム厚みは、缶の内面側に相当する金属板面に被覆されたポリエステルフィルム(AF)は、(I)層が5〜20μm、(II)層が5〜20μm、総厚みが10〜40μmで、缶の外面側に相当する金属板面に被覆されたポリエステルフィルム(BF)は、8〜20μmであることが好ましい。
缶の内面側に相当する金属板面のフィルム厚みは、内容物の保護の点から、金属の腐食を防ぐこと、即ち金属板の耐食性確保の点と成形性にかかわるパンチ離型性の点から限定するものである。
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層は直接パンチに接する面であるため、パンチ離型性の確保を考慮したものである。(I)層の厚みが5μm未満では、特に、加工度が大きい場合は(II)層の耐熱性や柔軟性が劣る、と言った特性の影響が現れ、パンチ離型性が問題となる危険性が発現する場合があり、好ましくない。
一方、20μmを超えても、加工度が大きい場合でもパンチ離型性の向上は余り見られず、効果は飽和してくる。
ポリエステルフィルム(AF)の(II)層は、耐デント性の確保を考慮したものである。(II)層の厚みが5μm未満では、厚みが薄いため、耐デント性の向上は顕著に現れることはなく、向上効果は余り見られない。
一方、20μmを超えても耐デント性の向上は飽和しており、それ以上の効果は余り見られないばかりか、逆にパンチ離型性が問題となる危険性が発現する場合があり、好ましくない。
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層と(II)層の厚み構成比であるが、(I)層厚み/(II)層厚みの比は、0.15〜1.00の範囲が前述したパンチ離型性と耐デント性の兼備からは望ましい。
ポリエステルフィルム(AF)の総厚みは10〜40μmであるが、総フィルム厚みが10μm未満では、前述した缶壁部の加工度及び内容物の腐食性にもよるが、金属板の内容物に対する防食性を確保するのは難しく、一方、40μmを超えても防食性は飽和し経済的でないばかりか、加工度によってはパンチの離型性が低下してくる場合があり、好ましくない。
缶の内面側に相当する金属板面のフィルム厚みは、耐食性と離型性の兼備の観点や経済性からは、12〜35μmが好ましい。
本発明のポリエステルフィルム被覆金属板に被覆されるフィルム厚みは、缶の外面側に相当する金属板面に被覆されたポリエステルフィルム(BF)は8〜20μmであることが好ましい。
缶の外面側に相当する金属板面のフィルム厚みは、製缶加工によるカジリの発生や肌荒れ等による生産性の低下の防止、更には、その後施される印刷の外観低下の防止、と言った観点から推奨するものである。
製缶加工、特に絞り・しごき加工の場合、缶壁部の加工度によるが、基本的にはフィルムの耐カジリ性は薄い方が良好であるが、8μm未満では高加工度の場合、カジリは発生し難いが加工による肌荒れが発生し、外観が劣ってくるので好ましくない。
一方、20μmを超えると、特に高加工度・高速製缶の場合、激しくカジリが発生し、フィルムは耐カジリ性を確保できなくなり、好ましくない。
缶の外面側に相当する金属板に被覆するフィルム厚みとしては、8μm〜16μmが好ましい。
次に、本発明の金属板について述べる。
本発明では、金属板として、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板が使用される。
鋼板は、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用鋼板として使用されているもの、具体的には絞り缶用、絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられている鋼板が使用される。
鋼板表面の施される表面処理も同様で、通称TFS−CTと呼ばれている電解クロム酸処理鋼板、Niめっき皮膜の上層に電解クロム酸処理を施した鋼板、等が使用される。
アルミニウム板やアルミニウム合金板も同様で、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用アルミニウム板として使用されているもの、具体的には絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられているアルミニウム板が使用される。
アルミニウム板やアルミニウム合金板の表面処理については、リン酸クロム処理やその他の化成処理が施されたアルミニウム板やアルミニウム合金板が使用される。
次に、本発明のポリエステルフィルム被覆金属缶について述べる。
本発明の金属缶は、缶胴は前述したように絞り加工や絞り・しごき加工によって得られる。特に、本発明の缶は絞り・しごき加工を行った後、開口部を正規の缶高さにトリミングした後、開口部を更に絞り加工を行い、開口部を缶胴の径に比べ小径に加工(ネックイン加工)した後、缶蓋を巻締められるようにフランジを加工(フランジ加工)し形成するシームレス缶や、絞り・しごき加工によりシームレス缶を製缶し、その後、シームレス缶開口部あるいは缶底部に絞り加工を行って、肩部を形成すると共にキャップで密封出来る径にまで縮径し、更にキャップで閉缶することが出来るようにネジ切り加工を行った、再栓可能なボトル型缶等の金属缶である。
従って、本発明の金属缶は最終的にどの形状の缶を得るかによって、前述した数式1で示される缶壁部の加工度は異なるが、加工度としては25%〜65%の範囲が最適である。
本発明における金属缶の、少なくとも内面側に被覆されているポリエステルフィルムの密度は、1.320g/cm3以下であることが必要である。
密度が1.320g/cm3以下であると言うことは、前述したように実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い状態であることを意味している。
本発明における金属缶に被覆されているポリエステルフィルムの密度を、1.320g/cm3以下にする理由は、次行程の成形性を確保するためである。
即ち、ポリエステルフィルム被覆金属板を絞り・しごき加工を経て製缶された缶は、前述したように開口部を更に絞り加工を行い開口部を缶胴の径に比べ小径に加工(この加工はネックイン加工と呼ばれている)した後、蓋を巻締めるためのフランジ出しを加工(この加工はフランジ加工と呼ばれている)をするのが、アルミ製の易開缶蓋(イージーオープンエンド、通称EOEと呼ばれている)の低コスト化から一般的である。
このネックイン加工及びフランジ加工は、開口部の小径化が大きいほど加工が厳しく、この部位でフィルム剥離が起こり易い。この理由は、フィルム被覆金属板を絞り・しごき加工を経て形成された缶の缶胴部のポリエステルフィルムは、加工時の熱と缶高さ方向への引き延ばし加工によって、缶の高さ方向に配向結晶化してくると同時に成形歪みが残存することになる。こうした状態下ではフィルムの密着性が著しく低下しており、次工程の加工でフィルム剥離が起こり易くなる。そして、当然、フィルム剥離が起こった缶は下地金属の腐食に繋がるため、製品としての使用は不可能となる。
こうした問題を回避するためには、被覆されているフィルムの伸び特性と下地金属との密着性を良好にさせる必要があり、そのためには、被覆されているポリエステルフィルムは非晶質状態が好ましく、密度を1.320g/cm3以下にすることで達成される。
又、前述した再栓可能なボトル型缶の場合は、成形が通常のシームレス缶の加工に比べ、肩成形加工、ネジ切り加工等、一層厳しい加工を受けることになるため、ポリエステルフィルムの密度は1.320g/cm3以下にする必要がある。
絞り・しごき加工で得られた金属缶に被覆されているポリエステルフィルムを実質的に非晶質化し、密度を1.320g/cm3以下にする方法としては、缶をもう一度、ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱し再溶融した後、急冷することが最も効果的である。
金属缶の再加熱により被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にする工程としては、(1)絞り・しごき加工で得られた金属缶の開口部をトリミングする前に脱脂剤で潤滑剤を脱脂後、少なくともトリミングされる開口部を非晶質にする、(2)絞り・しごき加工で得られた金属缶を加熱して潤滑剤を揮発させると同時に非晶質にする、(3)トリミング後、シームレス缶であればネック・フランジ加工前に、再栓可能なボトル型缶であればネジ切り加工前に、少なくとも加工該当個所を非晶質にする、等の工程によって行うことが可能である。どの工程で、どのような手段で行うかは、設備との関係で適宜選択することができる。
金属缶の加熱方法としては電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、高周波で誘導加熱する方法、等の加熱方法が採用できる。
従って、金属缶の外面に施す塗装・印刷工程の熱を利用して金属缶を加熱することも可能である。
又、急冷する方法としては加圧空気(あるいは圧縮空気)や冷却された加圧空気(あるいは圧縮空気)を吹きかけて冷却する方法等が採用できる。又状況によっては水等に浸漬して冷却する方法も可能である。
以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、実施例で行った評価法は以下の通りである。
(1)ポリエステルフィルムの融点(Tm)は、ポリエステルフィルム10mgを用い、窒素気流中、示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とした。
(2)樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法にて測定した。
(3)ポリエステルの極限粘度(IV)は、ウベローデ粘度計でオルトクロルフェノール溶液中にポリエステルフィルムを0.100±0.003g溶解し、25.0±0.1℃で測定した。
(4)共重合ポリエステルの組成比は、サンプル約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(9/1;体積比)0.7mlに溶解し、1H−NMR(varian製、UNITY50)を使用して求めた。積層フィルムを測定する場合は、金属と接していない面から順次削りだし、測定対象のポリマ−片をサンプルとして同様の測定を行って求めた。
(5)缶内面のフィルムと加工パンチの離型性は、成形缶上部に起こる缶の坐屈程度を観察し評価した。離型性の評価は、次のように評価基準を設定し、行った。
○:缶開口部の坐屈なく良好
□:軽微な缶開口部の坐屈あり
△:開口部円周の1/3程度坐屈
×:開口部円周の1/3以上坐屈
(6)缶外面のフィルムの耐カジリ性は、成形した缶の缶壁部外面のかじり発生程度を観察して評価した。耐カジリ性の評価は、次のように評価基準を設定し、行った。
○:カジリなく良好
□:フィルム表面に浅い軽微なカジリ発生
△:フィルム表面に円周の1/3程度にカジリ発生
×:フィルム表面に円周の1/3以上に激しいカジリ発生
(7)缶内面のフィルムの健全性(傷付き程度)については、1.0%食塩水に界面活性剤を0.1%添加した電解液を缶内に注入し、注入した電解液中に銅製棒電極を挿入して、缶を陽極、銅製棒電極を陰極とし印加電圧6Vで3秒後の電流値(mA/缶)を測定し、被覆フィルムの健全性の評価とした。(以降、この評価法をQTV試験と称する。)
(8)缶内面のフィルムの耐デント性については、缶にお茶を充填してから開口部を缶蓋で密封し、125℃で30分レトルト殺菌処理を行った後、4℃の保冷庫に保存し、缶の温度が4℃になった時点で、高さ45cmの位置から60°の角度で缶底部を下にして落下させ、その後、缶蓋のパネル部を切断除去して缶を開缶した後、落下によって変形した部位以外を絶縁物でシールし、前記QTV試験と同様に、缶内に電解液と銅製棒電極とを入れて、缶を陽極、陰極を銅製棒電極とし、印加電圧6Vで30秒後の電流値(mA)を測定し、デント部フィルムの健全性の評価とした。(以降、この評価法を耐デント性評価と称する。)
(9)内容物を充填・密封した後に施される殺菌処理時のフィルム耐白化性の評価は、125℃で30分レトルト殺菌処理を行った後のフィルムの白化程度を観察して評価した。耐白化性の評価は、次のように評価基準を設定し、行った。
◎:白化なく良好
○:ごくわずかな白化で実用レベルにある
×:明確に白化しており実用レベルにない
なお、実施例及び比較例に用いたポリエステルの略号と内容は次の通りである。
[1]PET−I :ポリエチレンテレフタレート(IV:0.75)
[2]PET−II :ポリエチレンテレフタレート(IV:0.75、平均粒子径1.5μmの凝集シリカを2000ppm配合)
[3]PET−III:ポリエチレンテレフタレート(IV:0.58、平均粒
子径1.5μmの凝集シリカを2000ppm配合)
[4]PBT−I :ポリブチレンテレフタレート(IV:1.20)
[5]PBT−II :ポリブチレンテレフタレート(IV:1.00)
[6]ポリエステルA:テレフタル酸/炭素数36のダイマー酸(モル比:90/10)とエチレングリコールとの共重合ポリエステル(IV:0.73)
[7]ポリエステルB:テレフタル酸/炭素数36のダイマー酸(モル比:95/5)とエチレングリコール/1,4ブタンジオール(モル比:30/70)との共重合ポリエステル(IV:0.85)
[8]ポリエステルC:テレフタル酸/炭素数36のダイマー酸(モル比:97
/3)とエチレングリコールとの共重合ポリエステル(IV:0.75)
又、実施例、及び比較例に用いたワックスの内容は次の通りである。
[9]ポリエチレンワックス(三井化学社製、商品名:ハイワックスNL500)
[実施例1]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体をそれぞれ280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、Tダイと冷却ロールとの間隔2cm、中央部と両端部は別々の装置で静電密着させ(中央部:4.5kV、両端部:6kVの直流電源を印加)冷却して固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが(I)層厚み6μm、(II)層厚み6μm、総厚み12μm(フィルム1)、(I)層厚み10μm、(II)層厚み15μm、総厚み25μm(フィルム2)、(I)層厚み14μm、(II)層厚み18μm、総厚み32μm(フィルム3)、(I)層厚み18μm、(II)層厚み20μm、総厚み38μm(フィルム4)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物を280℃(PET−Iの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、Tダイと冷却ロールとの間隔2cm、中央部と両端部は別々の装置で静電密着させ(中央部:4.5kV、両端部:6kVの直流電源を印加)冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが16μmのフィルム(フィルム5)を製造した。
得られたフィルム1〜フィルム5のフィルムは全て両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)で加熱された、板厚0.28mm、3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム1を、他の面にはフィルム5の組み合わせ(テスト1)で、同様にフィルム2とフィルム5の組み合わせ(テスト2)、同様にフィルム3とフィルム5の組み合わせ(テスト3)、同様にフィルム4とフィルム5の組み合わせ(テスト4)で、それぞれロール圧着させて両面にフィルムを被覆させ、更に板温が275℃(PET−Iの融点+24℃)になるように熱風炉中で加熱し、水中に浸漬して急冷して被覆アルミニウム合金板(テスト1〜テスト4)を得た。
なお、フィルム1〜フィルム4のフィルムは全て(II)層側が金属面と相接するよう被覆した。(以降の実施例、比較例においても全て同様に(II)層側が金属面と相接するよう被覆した。)
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、前記の缶の開口部をトリミングした後、金属板温度で272℃(PET−Iの融点+21℃)に熱風で加熱後直ちに急冷してポリエステルフィルムを非晶質にした後、次いで、開口部のトリミング加工、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶は、フィルム剥離はなく良好な外観を呈していた。缶内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例1のテスト1〜テスト4の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、一方、缶の外面側は良好な耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られた缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であるということができる。
[実施例2]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルB単体を、実施例1の手順に従って、それぞれ280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルBの融点+63℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が2.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に5.5倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み14μm、総厚み26μm(フィルム6)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物を、280℃(PET−Iの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が2.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に5.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが8μm(フィルム7)、13μm(フィルム8)、18μm(フィルム9)を製造した。
得られたフィルム6〜フィルム9のフィルムは全て両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、製造したフィルムの内容は表1に示した。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は5モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+23℃、ポリエステルBの融点+33℃)に加熱された、板厚0.28mm、3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム6、他の面にはフィルム7の組み合わせ(テスト5)で、同様にフィルム6とフィルム8の組み合わせ(テスト6)、同様にフィルム6とフィルム9の組み合わせ(テスト7)で、それぞれロール圧着させてフィルム被覆板を得た後、更に板温が270℃(PET−I融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱し、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト5〜テスト7)を得た。
又、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+23℃、ポリエステルBの融点+33℃)に加熱された、板厚が0.19mmの片面の付着量としてNiを500mg/m2 、その上層に金属クロム換算で6mg/m2の水和酸化クロム皮膜を有するNiめっき鋼板の一方の面にフィルム6、他方の面にフィルム8の組み合わせ(テスト8)で、それぞれロール圧着してフィルム被覆板を得た。更に板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆鋼板(テスト8)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板及び被覆鋼板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板及び被覆鋼板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が被覆アルミニウム合金板の場合は62%の、被覆鋼板の場合は56%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、次いで、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例2のテスト5〜テスト7の被覆アルミニウム合金板、及びテスト8の被覆鋼板は、共に缶の内面側は良好なパンチ離型性や、一方、缶の外面側は良好な耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であることが判る。
[実施例3]
実施例1で用いた、ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料、及び(II)層の原料を、実施例1の手順に従って溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を40℃にした表面粗さ(Ra)0.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:55m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み24μm、総厚み36μm(フィルム10)のフィルムを製造した。
又、同様に実施例1で用いたポリエステルフィルム(BF)の原料を用いて、ポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を40℃にした表面粗度(Ra)が0.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:55m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して厚みが15μm(フィルム11)を製造した。
得られたフィルム10及びフィルム11のフィルムは共に両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、製造したフィルムの内容は表1に示した。
なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃)に加熱された、板厚0.28mmの3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム10を、他の面にはフィルム11を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト9)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板、及び被覆鋼板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行って350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例3(テスト9)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、一方、缶の外面側は良好な耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であることが判る。
[実施例4]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=60/40重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に2.0倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み7μm、(II)層厚み30μm、総厚み37μm(フィルム12)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−I/PBT−I=60/40重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物を、実施例1の手順に従って、ポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に2.0倍延伸し、両端部を切断して厚みが16μm(フィルム13)のフィルムを製造した。
得られたフィルム12及びフィルム13のフィルムは共に両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で215℃(PBT−Iの融点−7℃、ポリエステルAの融点−14℃)に加熱された、板厚0.28mmの3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム12を、他の面にはフィルム13を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱し、水中に浸漬して急冷して被覆アルミニウム合金板(テスト10)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、次いで、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例4(テスト10)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側のパンチ離型性や缶の外面側の耐カジリ性は共に良好で、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であることが判る。
[実施例5]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=35/65重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が3.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:55m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み13μm、総厚み25μm(フィルム14)のフィルムと(I)層厚み12μm、(II)層厚み24μm、総厚み36μm(フィルム15)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−I/PBT−I=35/65重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物を、実施例1の手順に従って、ポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が3.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:55m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して、厚みが12μm(フィルム16)のフィルムを製造した。
得られたフィルム14、フィルム15、及びフィルム16のフィルムは、透明観はあったが空気の巻き込み跡がごくわずか残ったものであった。なお、両端部のフィルム割れはなかった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム14を、他の面にはフィルム16を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト11)を得た。
又、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例2で用いたNiめっき鋼板の、一方の面にフィルム15を他方の面にフィルム16を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬急冷し、被覆鋼板(テスト12)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板、及び被覆鋼板は、外観は良好で、空気の巻き込み跡がごくわずかに残った程度では、被覆外観には影響しなかった。なお、得られた被覆アルミニウム合金板、及び被覆鋼板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板、及び被覆鋼板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が被覆アルミニウム合金板の場合は62%の、被覆鋼板の場合は54%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例5のテスト11の被覆アルミニウム合金板及び、テスト12の被覆鋼板は、共に缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、一方、缶の外面側は良好な耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であるといえる。
[実施例6]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=60/40重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.13重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み13μm、総厚み25μm(フィルム17)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−II/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.13重量部配合した混合物を、実施例1の手順に従って280℃(PET−IIの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して厚み12μm(フィルム18)のフィルムを製造した。
得られたフィルム17及びフィルム18は、両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム17を、他の面にはフィルム18を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト13)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例6(テスト13)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、缶の外面側は良好な耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であることが判る。
[実施例7]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−II/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−IIの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み10μm、(II)層厚み15μm、総厚み25μm(フィルム19)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−II/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物を、実施例1の手順に従って280℃(PET−IIの融点+29℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して厚み15μm(フィルム20)のフィルムを製造した。
得られたフィルム19及びフィルム20は、両端部のフィルム割れや外観不良もなく良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム19を、他の面にはフィルム20を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−IIの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト14)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶は、フィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例7(テスト14)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、缶の外面側は良好な耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であることが判る。
[実施例8]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−II/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルAを40重量%と、ポリエステルフィルム(AF)を得る前に切断除去した両端部を造粒したポリマーを60重量%配合した混合物を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−IIの融点+29℃、再利用フィルムAFの融点+46℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み13μm、総厚み25μm(フィルム21)のフィルムを製造した。
得られたフィルム21は、両端部のフィルム割れや外観不良もなく良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は9モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、再利用フィルムAFの融点+16℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム21を、他の面には実施例1で製造したフィルム5を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−IIの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、直ちに水中に浸漬して急冷し、被覆アルミニウム合金板(テスト15)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐かじり程度を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、実施例8(テスト15)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、一方、缶の外面側は良好な耐かじり性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものであることが判る。そして、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においても優れた方法であることが判る。
[比較例1]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=20/80重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸した後両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み13μm、総厚み25μm(フィルム22)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−I/PBT−I=20/80重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物を、実施例1の手順に従って、ポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚み16μm(フィルム23)のフィルムを製造した。
得られたフィルム22、及びフィルム23は、(AF)の(I)層及び(BF)のPBT−Iの配合割合が多すぎるため、冷却ロール後でフィルムの両端部の割れが多発し、フィルムが安定して得られなかった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得たフィルムの使用可能な部分を、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム22を、他の面にフィルム23を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト16)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶は、フィルム剥離は見られなかった。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例1(テスト16)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示したが、缶の外面側はカジリが発生し、実施例に比べ製缶性の点で劣っていた。又、得られた缶はレトルト殺菌処理での白化は見られなかったが、内面品質のQTV値や耐デント性が、同じ厚みのフィルムを使用した実施例1のテスト2に比べ若干劣っていた。フィルムの製膜については前述したように冷却ロール後で両端部の割れが多発し、フィルムが安定して得られず、フィルム製造方法としては好ましい方法ではなかった。
[比較例2]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=70/30重量%の混合比で混合した混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、実施例1の手順に従って、それぞれのポリエステルを280℃(PET−Iの融点+29℃、ポリエステルAの融点+51℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して、(I)層厚み13μm、(II)層厚み13μm、総厚み26μm(フィルム24)のフィルムを製造した。
又、ポリエステルフィルム(BF)の原料として、PET−I/PBT−I=70/30重量%の混合比で混合した混合ポリエステルにワックスを0.05重量%配合した混合物を、実施例1の手順に従って、実施例1の手順に従って、ポリエステルを270℃(PET−Iの融点+19℃)で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚み15μm(フィルム25)のフィルムを製造した。
得られたフィルム24、及びフィルム25のフィルムは、両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム24を、他の面にフィルム25を、それぞれロール圧着させて得た被覆板を、次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、直ちに水中に浸漬して急冷し、被覆アルミニウム合金板(テスト17)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例2(テスト17)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側は良好なパンチ離型性を示し、缶の外面側はカジリの発生もなく、良好な製缶性を示した。得られた缶は内面のQTV値は実施例との差異は見られないが、PBT−Iの配合割合が少ないために耐デント性が実施例に比べ劣っていた。又、レトルト殺菌処理での白化は激しく起こっていた。フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法においては特に問題はなかった。
[比較例3]
実施例1で用いた、ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料、(II)層の原料、及びポリエステルフィルム(BF)の原料用い、実施例1の手順に従って、それぞれの原料を実施例1の温度で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が0.05μmの鏡面状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断してポリエステルフィルム(AF)は厚みが(I)層厚み12μm、(II)層厚み13μm、総厚み25μm(フィルム26)を、ポリエステルフィルム(BF)は厚み16μm(フィルム27)のフィルムを製造した。
得られたフィルム26、及びフィルム27のフィルムは両端部のフィルム割れはなかったが、空気の巻き込み跡が残り、透明観の劣るフィルムであった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム26を、他の面にフィルム27を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト18)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例3(テスト18)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側のパンチ離型性は良好であったが、缶の外面側はカジリが発生しており、製缶性が良くなかった。又、冷却ロールの表面粗度(Ra)が小さく、鏡面状であったため、得られた缶は、内面側で、気泡が原因と思われるフィルム破れが缶壁部で発生し、QTV値は実施例に比べ劣ったものであった。耐デント性は実施例に比べ若干劣るものであった。レトルト殺菌処理での白化はなく、良好であった。比較例3のフィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法は、実施例に比べ好ましくない方法であった。
[比較例4]
実施例1で用いた、ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料、(II)層の原料、及びポリエステルフィルム(BF)の原料用い、実施例1の手順に従って、それぞれの原料を実施例1の温度で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が4.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:55m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断してポリエステルフィルム(AF)は厚みが(I)層厚み13μm、(II)層厚み13μm、総厚み26μm(フィルム28)を、ポリエステルフィルム(BF)は厚み14μm(フィルム29)のフィルムを製造した。
得られたフィルム28、及びフィルム29のフィルムは両端部のフィルム割れはなかったが、冷却ロールの表面粗度(Ra)が粗いため、その表面の梨地の跡型が斑状に広がり、透明観の劣るフィルムであった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得られたフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム28を、他の面にフィルム29を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト17)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性、及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例4(テスト19)の被覆アルミニウム合金板は、缶の内面側のパンチ離型性は良好であったが、前述したように冷却ロールの表面粗度(Ra)が粗く、その表面の梨地の跡型が斑状に広がっているため透明観の劣るフィルムで、缶の外面側はカジリが発生して、外観も劣り、製缶性は良くなかった。又、得られる缶の内面はQTV値が実施例に比べ劣ったものであった。又、耐デント性も実施例に比べ、劣るものであった。レトルト殺菌処理での白化はなく良好であった。比較例4のフィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法は、他の実施例に比べ好ましくない方法であった。
[比較例5]
ポリエステルフィルム(AF)の原料にポリエステルAを用い、実施例1の温度で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸した後両端部を切断して、は厚みが26μm(フィルム30)の単層フィルムを製造した。
得られたフィルム30のフィルムは、両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(ポリエステルAの融点+19℃、PBT−Iの融点+28℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム30を、他の面には実施例1で製造した厚みが16μmのフィルム5を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト20)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
その結果、比較例5(テスト20)の被覆アルミニウム合金板は、パンチと接する面のフィルム組成が本発明品と異なっており、又、ワックスも配合されていないため、内面のパンチ離型性が悪く、缶の坐屈が激しく正常な缶は得られなかった。又、外面の耐カジリ性も、内面フィルムの影響か否かは不明だが実施例に比べ若干劣った結果であった。そこで、加工速度を60缶/分、加工度を56%まで下げてしごき加工を行ったが、やはり缶の坐屈が散発したのでその他の評価は行わなかった。
[比較例6]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料としてPET−II/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル(ワックスを配合しない)を、(II)層の原料としてポリエステルA単体を、又、ポリエステルフィルム(BF)の原料としてPET−II/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステル(ワックスを配合しない)を用いて、実施例1の手順に従って、それぞれの原料を溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの鏡面状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断してポリエステルフィルム(AF)は厚みが(I)層厚み12μm、(II)層厚み12μm、総厚み24μm(フィルム31)を、ポリエステルフィルム(BF)は厚み14μm(フィルム32)のフィルムを製造した。
得られたフィルム31、及びフィルム32のフィルムは全て両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+28℃、ポリエステルAの融点+21℃)に加熱された、実施例1で用いたアルミニウム合金板の一方の面にフィルム31を、他の面にフィルム32を、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで板温が270℃(PET−IIの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト21)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように90缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従って缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶はフィルム剥離はなく、良好な外観を呈していた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について、内面フィルムの健全性及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例6(テスト21)の被覆アルミニウム合金板は、フィルム(AF)、フィルム(BF)何れにもワックス無配合であるため、缶の内面側のパンチ離型性は実施例に比べ若干劣る程度であったが、缶の外面側は実施例に比べ劣っており、製缶性は実施例に比べ劣ったものであった。又、得られる缶の内面のQTV値や耐デント性も、実施例に比べ劣ったものであった。一方、レトルト殺菌処理での耐白化性については良好であった。フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法については特に問題はなかった。
[比較例7]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合させた混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量%配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体をそれぞれ280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、Tダイと冷却ロールとの間隔2cm、中央部と両端部は別々の装置で静電密着させ(中央部:4.5kV、両端部:6kVの直流電源を印加)冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸した後両端部を切断して、厚みが(I)層厚み22μm、(II)層厚み3μm、総厚み25μmのフィルム(フィルム33)を製造した。
得られたフィルム33は両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
なお、(II)層中のダイマー酸の含有量は10モル%であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃に加熱された、板厚0.28mmの3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム33を、他の面には実施例1で製造したフィルム5の組み合わせでロール圧着させて得た被覆板を、次いで板温が275℃になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト22)を得た。
得られたテスト22の被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られたテスト22被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、前記の缶の開口部をトリミングした後、金属板温度で272℃に熱風で加熱後直ちに急冷し、ポリエステル樹脂フィルムを非晶質にした後、次いで、開口部のトリミング加工、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶は、フィルム剥離はなく良好な缶が得られた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について、内面フィルムの健全性及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例7であるテスト22の被覆アルミニウム合金板は、内面フィルムのパンチ離型性や外面フィルムの耐カジリ性と言った製缶性は実施例と差異がなく良好であった。又、得られる缶体はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質のQTV値も実施例と差異がなかった。しかし、耐デント性は内面フィルムが同一水準厚みの実施例に比べて劣っていた。フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法については、フィルム33は実施例と差異はなく優れた方法である。
[比較例8]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合させた混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量%配合した混合物、(II)層の原料としてポリエステルA単体をそれぞれ280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、Tダイと冷却ロールとの間隔2cm、中央部と両端部は別々の装置で静電密着させ(中央部:4.5kV、両端部:6kVの直流電源を印加)冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸した後両端部を切断して、(I)層厚み13μm、(II)層厚み25μm、総厚み38μmのフィルム(フィルム34)を製造した。
得られたフィルム34は両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃に加熱された、板厚0.28mm、3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム34を、他の面には実施例1で製造したフィルム5の組み合わせでロール圧着させて得た被覆板を、次いで板温が275℃になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト23)を得た。
得られたテスト23の被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られたテスト23の被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、前記の缶の開口部をトリミングした後、金属板の温度が272℃となるように熱風で加熱後、直ちに急冷し、ポリエステル樹脂フィルムを非晶質にした後、次いで、開口部のトリミング加工、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。得られた缶は、フィルム剥離はなく良好な缶が得られた。
缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた缶について、内面フィルムの健全性及び耐デント性を評価した。又、レトルト殺菌処理でのフィルムの耐白化性については内面及び外面のフィルムを調べた。結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例8であるテスト23の被覆アルミニウム合金板は、内面フィルムのパンチ離型性が実施例に比べて劣り、外面フィルムもカジリが発生しており、成形性に問題があった。又、缶の内面品質については、耐デント性は良好であるが、QTV値はフィルム厚みが同水準の実施例1のテスト4に比べ高い値を示した。これは、内面フィルムのパンチ離型性が低下したことによりフィルム面に傷が入り易くなったためと考えられる。
フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法については、フィルム34は実施例と差異はなく優れた方法である。
[比較例9]
実施例1のテスト2から得た缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を用いて、開口部をトリミングした後、缶を板温が245℃(PET−Iの融点−6℃)になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに加圧空気(又は圧縮空気)で急冷した後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造(テスト24)した。
得られた缶は、再加熱時の温度がPET−Iの融点に達しておらず、非晶質化が不十分であったと思われ、フランジ部でフィルム剥離が見られ、缶としては劣ったものであった。従って、比較例8(テスト24)は、他の評価は行わなかった。なお、缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示したが、この結果からも上記状況が推察できる。
[比較例10]
実施例1で用いた3004系アルミニウム合金板を加熱ロール(ジャケットロール)で230℃(PBT−Iの融点+8℃、ポリエステルAの融点+1℃)に加熱し、実施例1で得た総厚みが25μmのポリエステルフィルム(AF)と、厚み16μmのポリエステルフィルム(BF)を、それぞれ相対させて、アルミニウム合金板の両面に圧着させて被覆し、次いで板温が245℃(PET−Iの融点−6℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト25)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、実施例1の手順に従って、ポリエステルフィルム(AF)の面が缶の内面側になるように、350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、内面フィルムのパンチ離型性および外面フィルムの耐カジリ性を調べた。
更に、実施例1の手順に従い開口部をトリミングした後、缶の金属板温度が272℃(PET−Iの融点+21℃)になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに加圧空気を吹き付けて急冷し、ポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。
得られた缶は、製缶前の加熱が不十分であったため十分非晶質化されておらず、フランジ部エッジで若干フィルムの収縮が見られ、剥離が起こっていた。缶の内面フィルムの密度の測定結果は表2に示したが、この結果からも上記状況が推察できる。
こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。又、内外面についてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例10(テスト25)の缶は、ポリエステルフィルムを非晶質にするべく加熱する際に、PET−Iの融点に達していなかったため、十分非晶質化しなかったと思われ、QTV値が実施例に比べ高く、内面フィルムの健全性が劣っていることが判る。又、耐カジリ性も実施例に比べ劣っていた。但し、表2の缶内面フィルムの密度のデータが示すように製缶後の再加熱で非晶質化できたため、耐デント性は実施例と同等の値が得られた。
[比較例11]
ポリエステルフィルム(AF)の(I)層の原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステルに、該混合ポリエステル100重量部にワックスを0.05重量部配合させた混合物、(II)層の原料としてポリエステルC単体をそれぞれ280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、Tダイと冷却ロールとの間隔2cm、中央部と両端部は別々の装置で静電密着させ(中央部:4.5kV、両端部:6kVの直流電源を印加)冷却固化させた後、ポリエステルフィルムを予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、次いで両端部を切断して、(I)層厚み12μm、(II)層厚み13μm、総厚み25μm(フィルム35)のフィルムを製造した。
得られたフィルム35は両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
なお、(II)層中のダイマ−酸の含有量は3モル%であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で245℃に加熱された、板厚0.28mm、3004系アルミニウム合金板の一方の面にフィルム35を、他の面には実施例1で得られたフィルム5を、それぞれ相接するようにロール圧着させて被覆板を得た後、次いで板温が275℃になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト26)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板のフィルムの融点の測定結果は表1に、密度の測定結果は表2に示した。
こうして得られた被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、ポリエステルフィルム(AF)が缶の内面側となるように100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶を板温が272℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、加圧空気(または圧縮空気)を吹き付けて急冷し、ポリエステル樹脂フィルムを非晶質にした後、ネックイン加工およびフランジ加工を行い、開口部を絞った350mlサイズ缶を製造した。缶の内外面共にフィルム剥離はなく、良好な缶が得られた。なお、得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。また、内外面のフィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例11のテスト26の被覆アルミニウム合金板は、内面のパンチ離型性や外面の耐カジリ性と言った製缶性は良好であった。得られた缶は、内面品質は実施例と比較して同水準の性能を示したが、耐デント性は実施例に比べ劣っており、ダイマー酸の含有量が3モル%では耐デント性が確保出来ないことが判る。レトルト殺菌処理での耐白化性については良好であった。また、フィルムの製膜方法や被覆金属板の製造方法は実施例と同様に良好なものが得られた。