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JP2008311147A - 膜−電極接合体及びその製造方法、並びに固体高分子型燃料電池 - Google Patents

膜−電極接合体及びその製造方法、並びに固体高分子型燃料電池 Download PDF

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JP2008311147A
JP2008311147A JP2007159421A JP2007159421A JP2008311147A JP 2008311147 A JP2008311147 A JP 2008311147A JP 2007159421 A JP2007159421 A JP 2007159421A JP 2007159421 A JP2007159421 A JP 2007159421A JP 2008311147 A JP2008311147 A JP 2008311147A
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Hiroshi Shinoda
浩志 信田
Hiroyuki Kurita
寛之 栗田
Shin Saito
伸 齋藤
Ryuma Kuroda
竜磨 黒田
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】十分に優れる発電性能を有する膜−電極接合体及びその簡便な製造方法を提供し、さらにこれを用いた固体高分子型燃料電池の発電性能の更なる改善を図ること。
【解決手段】
対向配置されたアノード触媒層14a及びカソード触媒層14bと、アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bの間に設けられた高分子電解質膜12と、を備え、
アノード触媒層14aが、触媒と、フッ素系高分子電解質と、を含有し、カソード触媒層14bが、触媒と、炭化水素系高分子電解質と、を含有する膜−電極接合体20。
【選択図】図1

Description

本発明は、膜−電極接合体及びその製造方法、並びに固体高分子型燃料電池に関する。
一次電池、二次電池、あるいは固体高分子型燃料電池等の電解質膜として、プロトン伝導性を有する高分子電解質から形成された高分子電解質膜が用いられている。高分子電解質膜を形成する高分子電解質としては、例えば、ナフィオン(デュポン社登録商標)をはじめとするフッ素系高分子電解質が現在、主として検討されている。しかし、フッ素系高分子電解質から得られる高分子電解質膜は、非常に高価であること、耐熱性が低いこと、膜強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないこと等の問題が指摘されている。
こうした状況において、フッ素系高分子電解質に替わり得る安価で特性の優れた高分子電解質の開発が近年活発化しており、特に、フッ素原子を高分子電解質の主な構成成分として有しない高分子電解質である、炭化水素系高分子電解質が注目されている。炭化水素系高分子電解質から得られる高分子電解質膜は、安価に製造できること、耐熱性が高く高温での作動にも耐えうること、リサイクルが容易であること等の点において、フッ素系高分子電解質膜よりも実用性が高いと考えられる。
ところで、固体高分子型燃料電池は、一般に、水素と酸素の酸化還元反応を促進する触媒物質を含む電極触媒層(アノード触媒層及びカソード触媒層)と呼ばれる電極を電解質膜の両面に形成した構成を有する膜−電極接合体(以下場合により「MEA」という)と、ガスを効率的に電極触媒層に供給するために電極触媒層の外側に設けられたガス拡散層とを備える。電極触媒層には、一般に、触媒物質及びこれを担持する担体からなる触媒担持担体と、プロトン伝導性を有する高分子電解質とが含まれる。燃料電池の発電特性を向上させるためには、高分子電解質膜の特性の向上と併せて、電極触媒層における水素の酸化反応及び酸素の還元反応をスムーズに進行させることが有効であり、電極触媒層における反応効率を高めるための検討が数多くなされてきた。
例えば、特許文献1には、イオン交換当量重量の異なる少なくとも2種類のプロトン伝導性ポリマーを含む電極触媒層及びこれからなるMEAが開示されている。また、特許文献2には、触媒層を形成させるための前駆体である触媒インクにおける高分子電解質の粒子径を制御し、高分子電解質と触媒物質を均一に接触させた触媒層及びこれからなるMEAの製造方法が開示されている。
特開平10−284087号公報 特開2002−63912号公報
しかしながら、特許文献1、2に開示されたものをはじめとする従来のMEAを用いた燃料電池の発電特性は必ずしも未だ満足できるものではなく、発電特性の更なる改良が望まれている。また、上記特許文献1、2における電極触媒層の作製は煩雑であるという問題もある。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、十分に優れる発電性能を有する膜−電極接合体及びその簡便な製造方法を提供し、さらにこれを用いた固体高分子型燃料電池の発電性能の更なる改善を図ることを目的とする。
本発明者らは、MEAの発電性能の更なる向上方法を種々検討したところ、アノード触媒層のプロトン伝導性高分子をフッ素系高分子電解質とし、かつカソード触媒層のプロトン伝導性高分子を炭化水素系高分子電解質とすることで、発電性能が向上することを見出し、係る知見に基づいて更なる検討を重ねた結果、本発明を完成に至った。
すなわち、本発明は、対向配置されたアノード触媒層及びカソード触媒層と、アノード触媒層及びカソード触媒層の間に設けられた高分子電解質膜とを備える膜−電極接合体(MEA)に関する。本発明のMEAにおいて、アノード触媒層が、触媒物質とフッ素系高分子電解質とを含有し、カソード触媒層が、触媒物質と炭化水素系高分子電解質とを含有する。
本発明者らは、特定の理論に拘束されるものではないが、上記構成を備えることにより、一般に比較的吸水率の高い炭化水素系高分子電解質を含有するカソード触媒層から、一般により吸水率の低いフッ素系高分子電解質を含有するアノード触媒層への水の逆拡散が促進され、高分子電解質膜の保水性が保持されるため、低加湿条件下においても高分子電解質膜のプロトン伝導度が高く維持され、結果的に高い発電性能を発現することができると推察している。
本発明の膜−電極接合体は、高分子電解質膜が、炭化水素系高分子電解質を含有することが好ましい。このような膜−電極接合体は、発電性能がさらに向上すると共に、耐熱性にも優れるものとなる。
また、本発明の膜−電極接合体は、高分子電解質膜中の炭化水素系高分子電解質が、イオン交換基を有する繰返し単位から構成される第1のブロックと、イオン交換基を有しない繰返し単位から構成される第2のブロックと、を含むブロック共重合体であることが好ましい。これにより、発電特性の向上の効果がより一層顕著に得られる。
また、本発明は上記本発明の膜−電極接合体を製造するための製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、水及び親水性溶媒から選ばれる溶媒と、触媒物質とを含み、さらに炭化水素系高分子電解質の少なくとも一部が前記溶媒に分散した状態で含有する触媒インクを用いて形成されたカソード触媒層を、高分子電解質膜上に設ける工程を備える。
この方法によれば、均一な溶液を用いる場合と比較して、カソード触媒層を形成させる際に高分子電解質膜の部分的な溶解が起こり難くなるため、簡便に膜−電極接合体を作製することができ、得られる膜−電極接合体は十分な発電特性を有している。
さらにこの場合、カソード触媒層は、高分子電解質膜上に触媒インクをスプレー法によって直接塗布することにより形成されることが好ましい。この方法によれば、高分子電解質膜と触媒層と密着状態がより緊密になって、発電特性が更に向上する。
さらに、本発明は、一対のセパレータと、該一対のセパレータ間に配置された一対のガス拡散層と、該一対のガス拡散層間に配置された膜−電極接合体を備え、膜−電極接合体が上記本発明の膜−電極接合体である固体高分子型燃料電池を提供する。このような燃料電池は、本発明の膜−電極接合体を備えることから、十分に高い発電性能を有し、高効率で発電可能なものとなる。
本発明によれば、十分に優れる発電性能を有する膜−電極接合体及びその簡便な製造方法を提供し、さらにこれを用いた固体高分子型燃料電池の発電性能の更なる改善を図ることが可能となる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、燃料電池の一実施形態を示す断面図である。図1に示す燃料電池10は、高分子電解質膜12と、高分子電解質膜12を挟んで対向配置されたアノード触媒層14a及びカソード触媒層14bとから構成される膜−電極接続体(以下場合により「MEA」という)20を備える固体高分子型燃料電池である。燃料電池10は、更に、各電極触媒層14a,14b上に内側から順に設けられたガス拡散層16a,16b及びセパレータ18a,18bを備える。
燃料が水素ガスである場合、アノード触媒層14aに供給された水素からプロトン及び電子が生成し、生成したプロトンが高分子電解質膜12を通ってカソード触媒層14bまで移動し、カソード触媒層14b内でプロトン、酸素及び電子から水が生成する。
高分子電解質膜12を構成する高分子電解質としては、プロトン伝導性を示すものであれば特に限定されず、フッ素系高分子電解質及び/又は炭化水素系高分子電解質を用いることができる。高分子電解質膜12に含まれる高分子電解質は、アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bの高分子電解質と同種でも異なっていてもよい。
本発明に係る高分子電解質は、酸性又は塩基性のイオン交換基を有している。イオン交換基は酸性であることが好ましく、酸性のイオン交換基を有する高分子電解質を用いることにより、一層発電性能に優れた燃料電池が得られる。酸性のイオン交換基としては、例えば、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホン酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキシホスホリル基(−P(O)(OH)−)、スルホニルイミド基(−SONHSO−)、フェノール性水酸基が挙げられる。これらの中でも、酸性のイオン交換基としては、スルホン酸基又はホスホン酸基がより好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。
炭化水素系高分子電解質の代表例としては、以下の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)が挙げられ、フッ素系高分子電解質の代表例としては、以下に示す(F)が挙げられる。
なお、「炭化水素系高分子電解質」とは、炭化水素を主成分として含有しフッ素原子等のハロゲン原子を本質的に含有しないものである。具体的には、炭化水素系高分子電解質中に含まれるハロゲン原子の量は炭化水素系高分子電解質全体の質量を基準として15質量%以下である。炭化水素系高分子電解質は、主として炭化水素から構成される主鎖を有する。ただし、炭化水素系高分子電解質の主鎖が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子及びケイ素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
(A)脂肪族炭化水素からなる分子鎖と、該分子鎖に結合しているスルホン酸基及び/又はホスホン酸基とを有する炭化水素系高分子電解質
(B)芳香環を有する分子鎖と、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基とを有する炭化水素系高分子電解質
(C)脂肪族炭化水素からなる繰返し単位とシロキサン基及びフォスファゼン基などの無機の繰返し単位とを有する重合体からなる分子鎖と、該分子鎖に結合しているスルホン酸基及び/又はホスホン酸基とを有する炭化水素系高分子電解質
(D)上記脂肪族炭化水素からなる分子鎖、芳香環を有する分子鎖、並びに脂肪族炭化水素からなる繰返し単位とシロキサン基及びフォスファゼン基などの無機の繰返し単位とを有する重合体からなる分子鎖から選ばれる2種以上の分子鎖を含む主鎖と、該主鎖に結合しているスルホン酸基及び/又はホスホン酸基とを有する炭化水素系高分子電解質
(E)窒素原子を含む主鎖又は側鎖と、該主鎖又は側鎖に対してイオン結合により導入された硫酸及びリン酸等の酸性化合物とを有する炭化水素系高分子電解質
(F)水素原子の全て又は一部がフッ素原子に置換された脂肪族炭化水素からなる分子鎖と、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基とを有するフッ素系高分子電解質
上記(A)の炭化水素系高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸が挙げられる。
上記(B)の炭化水素系高分子電解質としては、主鎖中に酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレン・エーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレンから選ばれる単独重合体にスルホン酸基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報参照)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J.Appl.Polym.Sci.,18,1969(1974)参照)が挙げられる。
上記(C)の炭化水素系高分子電解質としては、例えば、文献(Polymer Prep.,41,No.1,70(2000))に記載されたポリフォスファゼンにスルホン酸基が導入されたものが挙げられる。(C)の炭化水素系高分子電解質は、ホスホン酸基を有するポリシロキサンに準じて容易に製造することができる。
上記(D)の高分子電解質としては、ランダム共重合体であってもよいし、交互共重合体又はブロック共重合体であってもよい。ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、例えば、特開平11−116679号公報に記載の、スルホン化ポリエーテルスルホン重合体が挙げられる。
上記(E)の炭化水素系高分子電解質としては、例えば、特表平11−503262号公報に記載の、リン酸を含有せしめたポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
上記(F)のフッ素系高分子電解質としては、市販品として、デュポン社製のNafion(デュポン社登録商標)、旭化成製のAciplex(旭化成登録商標)、旭硝子製のFlemion(旭硝子登録商標)などがある。
また、他のフッ素系高分子電解質の例としては、特開平9−102322号公報に記載された炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって得られる主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成されるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、米国特許第4012303号公報又は米国特許第4605685号公報に記載された、炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合体に、α,β,β−トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質としたスルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFEも挙げられる。
高分子電解質膜12は、上記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素系高分子電解質を含有することが好ましい。高い発電性能と耐久性を両立させるという観点から、特に、上記(B)及び(D)から選ばれる炭化水素系高分子電解質が好ましい。その中でも、耐熱性やリサイクルの容易さの観点から、芳香族基を含む主鎖を有する高分子である芳香族系高分子電解質が好ましい。芳香族系高分子電解質は、溶媒に可溶なものが通常使用され、これらは公知の溶液キャスト法によって容易に所望の膜厚の高分子電解質膜を形成させることができる。芳香族系高分子電解質の酸性基は、高分子の主鎖を構成している芳香族基に直接結合していてもよいし、アルキレン等の2価の連結基を介して結合していてもよい。または、それらの組み合わせであってもよい。
芳香族系高分子電解質の主鎖においては、例えば、ポリアリーレンのように2価の芳香族基同士が直接連結されていてもよいし、2価の芳香族基が2価の基を介して連結していてもよい。芳香族基を連結する2価の基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミド基、エステル基、炭酸エステル基、炭素数1〜4程度のアルキレン基、炭素数1〜4程度のフッ素置換アルキレン基、炭素数2〜4程度のアルケニレン基、及び炭素数2〜4程度のアルキニレン基が挙げられる。芳香族系高分子電解質の主鎖が有する2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフタレン基、アトラセニレン基及びフルオレンジイル基のような芳香族基、並びに、ピリジンジイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、イミダゾリル基、インドールジイル基及びキノキサリンジイル基のような芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族系高分子電解質が有する2価の芳香族基は、上述の酸性基を有していてもよいし、これ以外の置換基を有していてもよい。芳香族基が有する置換基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子が挙げられる。なお、芳香族系高分子電解質が、芳香族基に結合した置換基としてハロゲン原子を有する場合や、芳香族基を連結する2価の基としてフッ素置換アルキレン基を有している場合、当該芳香族系高分子電解質の元素質量の組成比で表すときに、ハロゲン原子の組成比は25質量%以下である。
炭化水素系高分子電解質は、成膜されたときに、第1のドメイン及び第2のドメインを有し、第1のドメインが第2のドメインよりも高いイオン交換基濃度を有する相分離構造(好ましくはミクロ相分離構造)を形成するものであることが好ましい。イオン交換基濃度が高い第1のドメインは主としてプロトン伝導性に寄与し、イオン交換基濃度が低いドメインは主として機械的強度に寄与する。
ミクロ相分離構造とは、第1及び第2のドメインのドメイン幅すなわち恒等周期が数nm〜数100nmであるような形態を指す。恒等周期は好ましくは5nm〜100nmである。ミクロ相分離構造が形成されていることは、例えば、成膜された炭化水素系高分子電解質を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することで確認することができる。
ミクロ相分離構造の膜を形成する炭化水素系高分子電解質は、例えば、イオン交換基を有する繰返し単位から構成される第1のブロックと、イオン交換基を有しない繰返し単位から実質的に構成される第2のブロックとを有するブロック共重合体又はグラフト共重合体である。係る炭化水素系高分子電解質は、異種のポリマーブロック同士が化学結合で結合されていることにより分子鎖サイズのオーダーでのミクロ相分離が生じやすいことから、好適に用いることができる。特に、ブロック共重合体が好適である。
上記の好適なブロック共重合体において、第1のブロックは、当該ブロックを構成する繰り返し単位1個あたり平均0.5個以上のイオン交換基を含む。第1のブロックは、繰り返し単位1個あたり平均1.0個以上のイオン交換基を含むことがより好ましい。一方、第2のブロックも、イオン交換基を有する繰返し単位を、ミクロ相分離構造が形成される範囲で少量含んでいてもよい。具体的には、第2のブロックに含まれるイオン交換基の量、通常、当該ブロックを構成する繰り返し単位1個あたり平均0.5個未満である。第2のブロックに含まれるイオン交換基の量は、繰り返し単位1個あたり平均0.1個以下であるとより好ましく、平均0.05個以下であるとさらに好ましい。
好適なブロック共重合体の代表例としては、例えば特開2005−126684号公報および特開2005−139432号公報に記載されたような、芳香族ポリエーテル構造を有し、イオン交換基を有する繰返し単位から構成されるブロックとイオン交換基を有しない繰返し単位から実質的に構成されるブロックとからなるブロック共重合体を挙げることができる。本出願人が既に開示した、国際公開WO2006/95919号パンフレットに記載の、酸性のイオン交換基を有するポリアリーレンブロックを含むブロック共重合体を炭化水素系高分子電解質として用いることにより、イオン伝導性及び耐水性を高水準で達成する高分子電解質膜を形成できる。これら芳香族系高分子電解質と特定の触媒担持率を有する触媒層との相乗効果により、より発電特性が優れたMEAを提供することができる。
炭化水素系高分子電解質として好適に用いられるブロック共重合体の代表例としては、下記化学式(1a)、(1b)又は(1c)で表されるブロック共重合体が挙げられる。式中、n及びmは各繰返し単位の数を示す。式中「block」の表記は、各繰返し単位から構成されたブロックを有するブロック共重合体が形成されていることを示す。
Figure 2008311147
上記炭化水素系高分子電解質の分子量は、その構造により最適範囲を適宜求めることができる。分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量で表して、1000〜1000000が好ましく、5000〜500000がより好ましく、10000〜300000がさらに好ましい。
高分子電解質膜12は、高分子電解質に加えて、所望の特性に応じて、プロトン伝導性を著しく低下させない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、通常の高分子材料に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤が挙げられる。これらの中でも。耐酸化性及び/又は耐ラジカル性のような化学的安定性を高めるための安定剤が好適に用いられる。
特に、高分子電解質膜12は、耐ラジカル性を付与する安定剤を含むことが好ましい。燃料電池の動作中に、電極触媒層において生成した過酸化物が、電極触媒層に隣接する高分子電解質膜に拡散しながらラジカル種に変化して、これが高分子電解質膜を構成している炭化水素系高分子電解質を劣化させることがある。高分子電解質膜12が、このような劣化を抑制する安定剤を含有することにより、係る不都合を回避することができる。好適な安定剤として、本願出願人が既に見出し、特開2003−282096号公報で開示したような、芳香族ホスホン酸類が好適である。
上記芳香族ホスホン酸類としては、下記一般式(2)で表される芳香族ホスホン酸が挙げられる。
Figure 2008311147
ここで、ZはSO又はCOを示し、x及びxはそれぞれの繰り返し単位(構造単位)の重合比を示し、0.01〜0.99の範囲である。Arはヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数4〜18の2価の芳香族基を示す。なお、上記Arは置換基を有していてもよい。yはArを含む高分子部分の繰り返し単位当りのP(O)(OR’)(OR’’)基の平均置換基数を示し、yは8以下の正の数を示す。R及びR’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。
上記芳香族ホスホン酸類は、それを構成する繰り返し単位の共重合様式は特に限定されるものではなく、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合のいずれでもよいが、製造上容易であることから交互共重合の共重合様式が好ましい。また、P(O)(OR’)(OR’’)基で表される基は、ホスホン酸基(R’及びR’’が水素原子)であることがより好ましい。高分子電解質膜12は、x及びxの比率は上記の範囲であるが、xが0.60〜0.90であると好ましく、0.70〜0.90であるとより好ましい。
なお、上記芳香族ホスホン酸類は、上記一般式(2)で表されるように2つの繰り返し単位を必須成分として含むが、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、下記一般式(2a)のような繰り返し単位がわずかながら含まれる場合もある。
Figure 2008311147
ここで、Xはハロゲン原子を示し、Ar’はヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数4〜18の2価の芳香族基を示す。yはAr’を含む高分子部分の繰り返し単位当りのXの置換数を示し、yは8以下の正の数を示す。また、xが複数存在する場合、複数あるxは同一でも異なっていてもよい。
高分子電解質膜12の膜厚は、発電特性向上の観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。一方、機械的な強度を保持するという観点から、高分子電解質膜12の膜厚は5μm以上であることが好ましい。なお、高分子電荷質膜12の膜厚は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境の下、マイクロゲージ等の手段を用いて測定することができる。
高分子電解質膜12は、その機械的強度を向上させる目的で、高分子電解質を含む電解質組成物と所定の支持体とを複合化した複合膜であってもよい。この支持体としては、例えば、フィブリル形状又は多孔膜形状の基材が用いられる。
高分子電解質膜12は、例えば、高分子電解質溶液を用い、溶媒キャスト法により形成することができる。ガラス基板等の基板に高分子電解質溶液を塗布して基板上で高分子電解質膜を形成し、これを基板から剥離して用いることができる。あるいは、触媒層に高分子電解質溶液を塗布して、触媒層上に高分子電荷質膜を形成させてもよい。
本発明に係る電極触媒層において、アノード触媒層14aは、触媒物質とフッ素系高分子電解質とを含有する電極触媒層であり、カソード触媒層14bは、触媒物質と炭化水素系高分子電解質とを含有する電極触媒層である。
アノード触媒層14aは、上述したフッ素系高分子電解質を含有することができ、市販品として入手可能であるデュポン社製のNafion(デュポン社登録商標)、旭化成製のAciplex(旭化成登録商標)、旭硝子製のFlemion(旭硝子登録商標)などをフッ素系高分子電解質として含有することが好ましい。
また、カソード触媒層14bは、上述した炭化水素系高分子電解質を含有することができる。カソード触媒層14bは、水及び親水性溶媒から選ばれる溶媒と、触媒物質とを含み、さらに炭化水素系高分子電解質の少なくとも一部が前記溶媒に分散した状態で含有する触媒インクを用いて形成することにより、本発明の効果をより一層有効かつ確実に発現することができる。なお、ここで触媒インクとは当業分野で広範に用いられる用語であり、触媒層を形成するための液状組成物を意味する。
高分子電解質膜と接するアノード触媒層14aの領域のフッ素系高分子電解質の単位面積当たりの質量(フッ素系高分子電解質の目付け)は、好ましくは1×10−2〜1.0[mg/cm]である。高分子電解質膜と接するカソード触媒層14bの領域の炭化水素系高分子電解質の単位面積当たりの質量(炭化水素系高分子電解質の目付け)は、好ましくは2×10−3〜0.6[mg/cm]である。
アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bを構成する触媒は、燃料の酸化還元反応を活性化するものであれば特に制限はなく、燃料電池において一般に用いられているものから適宜選択することができる。触媒の具体例としては、白金、白金−ルテニウム合金白金−コバルト合金のような貴金属類、及び金属錯体触媒(例えば、高分子学会燃料電池材料研究会編、「燃料電池と高分子」、103〜112頁、共立出版、2005年11月10日発行参照)が挙げられる。好ましくは、微粒子状の触媒が担体に担持された、白金担持カーボン等の触媒担持担体の状態で用いられる。
アノード触媒層14aにおける触媒の単位面積当たりの質量(触媒の目付け)は、好ましくは0.01〜1[mg/cm]である。カソード触媒層14bにおける触媒の単位面積当たりの質量は、好ましくは0.01〜1[mg/cm]である。
電極触媒層での電子の輸送性を向上するために、好ましくは、導電性の担体の表面に触媒が担持される。導電性の担体としては、カーボンブラック及びカーボンナノチューブのような導電性カーボン材料、並びに、酸化チタンのようなセラミック材料が挙げられる。
アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bは、以上のような成分に加えて、更に他の成分を含有していてもよい。例えば、触媒層の撥水性を高める目的で用いられるPTFEなどの撥水材、触媒層のガス拡散性を高める目的で用いられる炭酸カルシウムなどの造孔材、及びMEA20の耐久性を高める目的で用いられる金属酸化物などの安定剤から選らばれる添加剤が触媒層中に含まれることもある。
アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bを構成するその他の成分は任意であり、特に制限はない。例えば、電極触媒層の撥水性を高める目的で用いられるPTFEなどの撥水材、触媒層のガス拡散性を高める目的で用いられる炭酸カルシウムなどの造孔材、及びMEAの耐久性を高める目的で用いられる金属酸化物などの安定剤から選ばれる添加剤が触媒層中に含まれることもある。
アノード触媒層14aの厚みは、好ましくは30μm以下である。カソード触媒層14bの厚みは、好ましくは20μm以下である。電極触媒層が薄くなると、燃料電池の小型化に対して有利であるし、発電特性も向上する。アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bの厚さの下限は、通常0.5μm程度である。
MEA20は、例えば、触媒インクを用いてアノード触媒層14a及びカソード触媒層14bを形成する工程を経て作製することができる。触媒インクは、触媒及びこれを担持する担体を含む触媒担持担体と、高分子電解質と、これらが分散又は溶解している溶媒とを含有する。触媒インクを用いる方法は簡便であり、形成される各電極触媒層における触媒量等を容易に制御できるといった利点を有する。
触媒インクを用いてMEA20を形成する方法としては、例えば以下の(a)、(b)及び(c)がある。
(a)触媒インクを高分子電解質膜上に直接塗布し、塗布された触媒インクから溶媒を除去する方法
(b)触媒インクをカーボンペーパー等のガス拡散層としての基材上に直接塗布し、塗布された触媒インクから溶媒を除去して基材及び電極触媒層からなる積層体を得、この積層体をその電極触媒層側が高分子電解質膜に接するように配して、全体をプレスなどで圧着して接合する方法
(c)触媒インクをポリ(テトラフルオロエチレン)フィルム、ポリイミドフィルムなどの支持基材上に塗布し、塗布された触媒インクから溶媒を除去して支持基材及び電極触媒層からなる積層体を得、この積層体をその電極触媒層側が高分子電解質膜に接するように配して、全体をプレスなどで圧着して高分子電解質膜と電極触媒層とを接合し、その後支持基材のみを剥離する方法
これらの中でも、上記(a)の方法が好ましい。(a)の方法によれば、得られるMEAにおける高分子電解質膜と電極触媒層との接着性が強固なものとなり、更に優れた発電特性を備えた固体高分子型燃料電池を得ることができる。なお、上記(b)の方法によれば、電極触媒層の高分子電解質膜とは反対側にガス拡散層が積層された形態で、MEAが得られる。高分子電解質膜12、アノード触媒層14a、カソード触媒層14b及びガス拡散層16a,16bから構成される集成体は、膜−電極−ガス拡散層接合体(MEGA)と称される場合がある。
カソード触媒層14bを形成するために用いられる触媒インクは、炭化水素系高分子電解質が、水又は親水性溶媒から選ばれる溶媒に分散してなり、さらに触媒担持担体を含有することが特に好ましい。このような触媒インクは、例えば、炭化水素系高分子電解質が有機溶媒に溶解している高分子電解質溶液を準備する工程と、該高分子電解質溶液の有機溶媒を水又は親水性溶媒に置換して、炭化水素系高分子電解質が乳化分散してなる高分子電解質エマルションを得る工程と、該高分子電解質エマルションに触媒担持担体を加える工程とを含む方法により調製することができる。触媒インクに用いる好適な溶媒としては、例えば、アルコールや、水とアルコールとの混合溶媒が挙げられる。上記触媒インクにおける炭化水素系高分子電解質の濃度は0.1〜10質量%であることが好ましい。
アソード触媒層14aを形成するために用いられる触媒インクは、炭化水素系高分子電解質に代えてフッ素系高分子電解質を用いた以外は、上述した触媒インクと同様の工程を備える方法で調整することができる。また、アソード触媒層14aを形成するために用いられる触媒インクは、フッ素系高分子電解質が水と有機溶媒との混合溶媒に溶解又は分散している溶液を市販品として購入し、この溶液に触媒担持体を加える工程を備える方法により調整することもできる。
また、触媒インクの混合手段としては、超音波分散装置、ホモジナイザー、ボールミル、遊星ボールミル、サンドミルを用いることができる。
触媒インクを高分子電解質膜12上に塗布する手段としては、ダイコート法、スクリーン印刷、スプレー法及びインクジェット法等の既存の塗布方法を用いることができる。これらの中でもスプレー法が好ましく、上記(a)の方法においてスプレー法を適用することがより好ましい。カソード触媒層14bは、高分子電解質膜12上にスプレーを用い触媒インクを噴霧することにより形成されることが特に好ましい。
本発明に係るMEA20において、比較的吸水率の高い炭化水素系高分子電解質を含有するカソード触媒層から、それより吸水率の低いフッ素系高分子電解質を含有するアノード触媒層への水の逆拡散が促進され、高分子電解質膜12の保水性が保持されるため、低加湿条件下においても高分子電解質膜12のプロトン伝導度が高く維持することができる。このような電極触媒層を備えるMEA20から作製される燃料電池10は、高い発電性能を発現することができる。
ガス拡散層16a,16bは、MEA20をその両側から挟むように設けられており、アノード触媒層14a及びカソード触媒層14bへの原料ガスの拡散を促進する機能を有する。ガス拡散層16a,16bは、導電性の多孔質体であることが好ましい。例えば、多孔質性のカーボン不織布やカーボンペーパーが好適に用いられる。
セパレータ18a,18bは、好ましくは導電性材料から形成される。セパレータを形成する導電性材料としては、例えば、カーボン、樹脂モールドカーボン、チタン、及びステンレスが挙げられる。図では省略されているが、セパレータ18a,18bのガス拡散層16a,16b側には、原料ガスを供給するための流路として溝が形成されている。アノード側のセパレータ18aの溝からは水素等の燃料ガスが、カソード側のセパレータ18bの溝からは酸素等の酸化剤ガスが供給される。
燃料電池10は、例えば、上述のMEGAを得る工程と、該MEGAを一対のセパレータ18a,18bで挟み込み、これらを接合する工程とを備える方法により製造することができる。
燃料電池10は、例えば、ガスケット等で封止された状態で用いられる。燃料電池10を、直列に複数個接続して燃料電池スタックとして用いてもよい。燃料電池10は、燃料が水素である場合は固体高分子型燃料電池として、また燃料がメタノール水溶液である場合は直接メタノール型燃料電池として動作することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、本発明の好適な実施例について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)分子量の測定
下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、ポリスチレン換算を行うことによって高分子電解質の重量平均分子量及び数平均分子量を算出した。
(GPC条件)
・カラム:TOSOH社製 TSKgel GMHHHR−M 1本
・カラム温度:40℃
・移動相溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(LiBrを10mmol/dm含有)
・溶媒流量:0.5mL/min
(2)イオン交換容量の測定
高分子電解質を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に約10〜30質量%の濃度となるように溶解して高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液を、ガラス板上に塗布し、80℃で2時間乾燥することにより高分子電解質膜を得た。得られた膜を2N塩酸に2時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄して、高分子電解質膜のイオン交換基をプロトン型に変換した。次いで、ハロゲン水分率計を用い、105℃で膜重量が恒量になるまでさらに乾燥させ、プロトン型に変換された高分子電解質膜の絶乾重量を求めた。その後、この高分子電解質膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬し、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置し、膜を取り出した。次いで、膜を取り出した後の水溶液を、0.1mol/Lの塩酸で滴定し、中和点を求めた。そして、高分子電解質膜の絶乾重量と上記の中和に要した塩酸の量から、高分子電解質膜のイオン交換容量(IEC)を算出した。
(3)高分子電解質膜用の高分子電解質
(高分子電解質1の合成)
WO2006/095919号パンフレットの実施例1〜5記載の方法に準拠し、上記化学式(1a)で表される高分子電解質1を得た。重量平均分子量は2.3×10、数平均分子量は1.1×10、イオン交換容量は2.2meq/gであった。
(添加剤の合成)
ポリマーaの合成
減圧共沸蒸留装置を備えた2Lセパラブルフラスコを窒素置換し、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン63.40g、4,4’−ジヒドロキシビフェニル70.81g、N−メチル2−ピロリドン(NMP)955gを加え均一な溶液とした。その後、炭酸カリウム92.80gを添加し、NMPを留去しながら135℃〜150℃で4.5時間減圧脱水した。その後、ジクロロジフェニルスルホン200.10gを添加し180℃で21時間反応を行なった。
反応終了後、反応溶液をメタノールに滴下し、析出した固体をろ過、回収した。回収した固体はメタノール洗浄、水洗浄、熱メタノール洗浄を経た後乾燥して、275.55gのポリマーaを得た。ポリマーaの構造を下記に示す。ポリマーaはGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量が18000であり、NMR測定の積分値から求めたqとpの比がq:p=7:3であった。なお、下記式中の「random」の表記は、各繰り返し単位が、ランダムに共重合されていることを示す。
Figure 2008311147
ポリマーbの合成
2Lセパラブルフラスコを窒素置換し、ニトロベンゼン1014.12g、ポリマーa80.00gを加え均一な溶液とした。その後、N−ブロモスクシンイミド50.25g添加し、15℃まで冷却した。続いて、95%濃硫酸106.42gを40分かけて滴下し15℃で6時間反応を行なった。6時間後、15℃に冷却しながら10w%水酸化ナトリウム水溶液450.63g、チオ硫酸ナトリウム18.36gを添加した。その後、この溶液をメタノールに滴下し、析出した固体をろ過、回収した。回収した固体はメタノール洗浄、水洗浄、再度メタノール洗浄を経て乾燥し、ポリマーb86.38gを得た。
ポリマーcの合成
減圧共沸蒸留装置を備えた2Lセパラブルフラスコを窒素置換し、ジメチルホルムアミド116.99g、ポリマーb80.07gを加え均一な溶液とした。その後、ジメチルホルムアミドを留去しながら5時間減圧脱水を行なった。5時間後50℃まで冷却し、塩化ニッケル41.87gを添加して130℃まで昇温し、亜リン酸トリエチル69.67gを滴下して140℃〜145℃で2時間反応を行なった。2時間後亜リン酸トリエチルをさらに17.30g添加し145℃〜150℃で3時間反応を行なった。3時間後室温まで冷却し、水1161g及びエタノール929gの混合溶液を滴下して、析出した固体をろ過、回収した。回収した固体に水を添加して十分に粉砕し、5質量%塩酸水溶液で洗浄、水洗浄を経て、ポリマーc86.83gを得た。
ポリマーd(安定剤ポリマー)の合成
5Lセパラブルフラスコを窒素置換し、35質量%塩酸1200g、水550g、ポリマーc75.00gを加え105℃〜110℃で15時間攪拌した。15時間後、室温まで冷却し水1500gを滴下した。その後、系中の固体をろ過、回収し、得た固体を水洗浄、熱水洗浄した。乾燥後目的とするポリマーd72.51gを得た。ポリマーdの元素分析から求めたリンの含有率は5.91質量%であり、元素分析値から計算したx(ビフェニレンオキシ基1個当たりのホスホン酸基数)の値は1.6であった。ポリマーdを高分子電解質膜形成の際に安定剤ポリマーとして用いた。
Figure 2008311147
(4)高分子電解質膜の作製
上記で得られた高分子電解質1及び安定剤ポリマー(ポリマーd)の混合物(高分子電解質:添加剤=90:10、質量比)を、DMSOに約10質量%の濃度となるように溶解させて、高分子電解質溶液を調製した。次いで、この高分子電解質溶液をガラス板上に滴下し、ワイヤーコーターを用いて高分子電解質溶液をガラス板上に均一に塗り広げた。この際、0.5mmクリアランスのワイヤーコーターを用いて塗工厚みをコントロールした。塗布後、高分子電解質溶液を80℃で常圧乾燥した。次に、得られた膜を1mol/Lの塩酸に浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、さらに常温乾燥し、厚さ30μmの高分子電解質膜1を得た。
(5)電極触媒用の高分子電解質エマルジョン
(高分子電解質2の合成)
Dean−Stark管を備えた2Lのセパラブルフラスコに、ヒドロキノンスルホン酸カリウム13.04g(56.95mmol)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム34.71g(68.34mmol)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン29.35g(114.00mmol)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.50g(125.39mmol)、炭酸カリウム27.72g(200.58mmol)、ジメチルスルホキシド395mL及び、トルエン70mLを加え、アルゴン雰囲気下、バス温170℃(内温140±5℃)で3時間共沸脱水を行った。3時間後、トルエンを系外に除去し、さらに内温150℃で3時間反応を行った。反応はGPC測定により追跡した。反応終了後、反応溶液を80℃まで放冷し、3Lの2M塩酸水溶液に滴下し、ポリマーを析出させた。析出した白色のポリマーをpH7になるまで水洗し、次いで80℃の水で2時間処理する工程を2回行った。その後、80℃で乾燥し、下記式で表されるランダムポリマーである高分子電解質2を81.60g(収率97%)得た。得られた高分子電解質2の重量平均分子量は340000、イオン交換容量は2.0meq/gであった。なお、下記式中の「random」の表記は、各繰り返し単位が、ランダムに共重合されていることを示す。
Figure 2008311147
(エマルジョン1の調整)
上記で得られた高分子電解質2を1−メチル−2−ピロリドンに濃度1.0質量%になるように溶解させて、高分子電解質溶液100gを作製した。次いで、この高分子電解質溶液100gを、蒸留水900gにビュレットを用いて滴下速度3〜5g/minで滴下し、高分子電解質溶液を希釈した。この希釈した高分子電解質溶液を、透析膜透析用セルロースチューブ(三光純薬(株)製UC36−32−100:分画分子量14000)を用いて72時間流水で分散媒置換を行った。分散媒置換後の高分子電解質溶液をエバポレーターを用いて、2.0質量%の濃度になるように濃縮し、高分子電解質2を含む高分子電解質エマルション1を得た。この高分子電解質エマルション1の平均粒径は437μmであった。
(6)燃料電池セル組立て及びその評価
実施例1
[触媒インク1調製(アノード用)]
5質量%ナフィオン溶液(溶媒:水と低級アルコールの混合物)6mLに50質量%白金が担持された白金担持カーボン0.83gを投入し、さらにエタノールを13.2mL加えた。この溶液を1時間超音波処理した後、スターラーで5時間攪拌して触媒インク1を得た。
[触媒インク2調製(カソード用)]
上記で調整した高分子電解質エマルション1 15mLに50質量%白金が担持された白金担持カーボン0.83gを投入し、さらにエタノールを4.2mL加えた。この溶液を1時間超音波処理した後、スターラーで5時間攪拌して触媒インク2を得た。
[MEA作製]
上記で作製した高分子電解質膜1の片面の中央部における5.2cm角の領域に、上記触媒インク1をスプレーを用い噴霧した。この際、吐出口から膜までの距離は6cm、ステージ温度は75℃に設定した。同様にして8回の重ね塗りをした後、ステージ上に15分間放置し、溶媒を除去して触媒層を形成させた。アノード触媒層として1.58mg/cmの固形分(白金目付け:0.6mg/cm、高分子電解質目付け:0.38mg/cm)が塗布された。続いて、もう一方の面に同様の操作で触媒インク2を噴霧して、カソード触媒層を形成させて、MEA1を得た。カソード触媒層として1.58mg/cmの固形分(白金目付け:0.6mg/cm、高分子電解質目付け:0.38mg/cm)が塗布された。
[燃料電池評価セル組み立てと評価]
市販のJARI標準セルを用いて燃料電池セルを作製した。上記で得られたMEA1の両外側に、ガス拡散層としてカーボンクロスと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータを配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効膜面積25cmの燃料電池セルを組み立てた。
上記燃料電池セルを80℃に保ちながら、アノードに加湿水素、カソードに加湿空気をそれぞれ供給した。この際、セルのガス出口における背圧が0.1MPaGとなるようにした。各原料ガスの加湿は、バブラーにガスを通すことで行い、水素用バブラーの水温は45℃、空気用バブラーの水温は55℃とした。ここで、水素のガス流量は529mL/min、空気のガス流量は1665mL/minとした。電流密度が0.2A/cmとなるときの電流密度の値を測定したところ、0.82Vであった。
比較例1
アノード触媒層及びカソード触媒層に触媒インク1を用いてMEAを作成した以外は実施例1と同様にして燃料電池セルを作製し、評価を行なった。電流密度が0.2A/cmとなるときの電流密度の値を測定したところ、0.78Vであった。
以上の実験結果から、本発明によれば、フッ素系高分子電解質を含有するアノード触媒層と、炭化水素系高分子電解質を含有するカソード触媒層を備えるMEAを用いて作製した燃料電池の発電性能が向上することが確認された。
好適な実施形態に係る燃料電池の断面構成を模式的に示す図である。
符号の説明
10…燃料電池、12…高分子電解質膜、14a…アノード触媒層,14b…カソード触媒層、16a,16b…ガス拡散層、18a,18b…セパレータ、20…膜−電極接合体(MEA)

Claims (6)

  1. 対向配置されたアノード触媒層及びカソード触媒層と、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の間に設けられた高分子電解質膜と、を備え、
    前記アノード触媒層が、触媒物質とフッ素系高分子電解質とを含有し、前記カソード触媒層が、触媒物質と炭化水素系高分子電解質とを含有する膜−電極接合体。
  2. 前記高分子電解質膜が、炭化水素系高分子電解質を含有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
  3. 前記高分子電解質膜中の前記炭化水素系高分子電解質が、イオン交換基を有する繰返し単位から構成される第1のブロックと、イオン交換基を有しない繰返し単位から構成される第2のブロックと、を含むブロック共重合体である、請求項2記載の膜−電極接合体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜−電極接合体を製造するための製造方法であって、
    水及び親水性溶媒から選ばれる溶媒と、触媒物質とを含み、さらに炭化水素系高分子電解質の少なくとも一部が前記溶媒に分散した状態で含有する触媒インクを用いて形成されたカソード触媒層を、高分子電解質膜上に設ける工程を備える、製造方法。
  5. 前記カソード触媒層が、前記高分子電解質膜上に前記触媒インクをスプレー法によって直接塗布することにより形成される、請求項4記載の製造方法。
  6. 一対のセパレータと、該一対のセパレータ間に配置された一対のガス拡散層と、該一対のガス拡散層間に配置された膜−電極接合体と、を備える固体高分子型燃料電池であって、
    前記膜−電極接合体が、請求項1〜3いずれか一項に記載の膜−電極接合体である燃料電池。
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