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JP2009542225A - 組換え法によりfviiiタンパク質を生産する方法 - Google Patents

組換え法によりfviiiタンパク質を生産する方法 Download PDF

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Abstract

VIII因子タンパク質を生産するための方法及び組成物をここで提供する。このような方法は、プロモータに作動可能に連結したVIII因子タンパク質をコードする核酸分子を細胞に導入するステップであって、前記プロモータが、商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を生産する能力を特徴とする、ステップと;商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を生産する条件下で前記細胞をインキュベートするステップとを含む。更に、ここで提供する方法で用いてもよい、チャイニーズ・ハムスター伸長因子1-α(CHEF1)プロモータに作動可能に連結した、VIII因子タンパク質をコードする核酸分子も提供する。

Description

発明の背景
関連出願
本出願は、2006年6月30日に提出された米国仮出願 60/818,177号に基づく優先権を主張するものである。
発明の分野
本発明の実施態様は、概略的には、組換えFVIIIタンパク質の生産に関する。更に本発明の実施態様は、血友病Aの処置のための組換えFVIIIタンパク質の過剰発現又は生産にも関する。
関連技術の説明
出血障害は、正常な恒常性、即ち血液凝固、に必要な、まとめて血液凝固因子として知られる血中タンパク質のうちの一種以上の機能レベルに欠陥があることから生じることがある。出血障害の重篤度は、機能的凝固因子の血中レベルに依存する。中度の出血障害は、ある凝固因子の機能レベルが正常の約5%に達したときに一般的には観察されるが、その機能レベルが1%未満まで落ちると、重篤な出血が発生して血管系にいずれかの傷害が起きる可能性が高い。
医療上の経験では、基本的に正常な恒常性は、血液凝固因子のうちの一つ以上を含有する生物学的製剤の静脈内輸注により、一時的に回復させることができることが示されている。出血時に(オンデマンドで)、あるいは出血を防ぐために(予防的に)、欠陥した血液凝固因子を含有する生物学的製剤を輸注するという所謂置換療法が、幅広い出血障害のある患者を管理する上で有効であることが示されてきた。一般的には、置換療法が有効であるためには、欠けた凝固因子の静脈内輸注が、正常の5%をゆうに越えるレベルを2乃至3日間の間で達成することを目的に行われる。
歴史的には、第8血液凝固因子(血友病A)又は第9血液凝固因子(血友病B)の欠陥を原因とする遺伝性出血障害である血友病に罹患している患者は、全血、又は、様々な程度の純度の血漿画分の定期的な輸注により、成功裡に処置された。
より最近では、バイオテクノロジーの出現により、合成(組換え)血液凝固因子の生物学的に活性な製剤が、血液凝固障害の処置用に商業ベースで入手可能になった。組換え血液凝固タンパク質には、ヒト血液由来の高純度の商業用製剤に依然伴うヒト病原体混入というリスクが基本的にはない。
出血障害の充分な処置は、概して、世界の中でも経済的に発展した地域に限られている。血友病の場合、世界中の患者人口の75%を超える人が、彼らの疾患について不十分な処置しか受けられていないか、あるいはひどい場合は全く処置を受けられていないと推定される。世界の多くの地域で、凝固因子の安全かつ有効な商業用製剤のコストは、出血障害の慣例的な管理にとっては法外であり、場合によっては、献血製品による緊急処置しか、得られない。
世界のうちでも、出血障害の充分な処置が潜在的には受けられる地域であっても、そのコストは大変高く、患者はほとんどの場合、必要な商業製品を手に入れるために、例えば健康保険又は政府助成プログラムなどの第三者の支払い者に依存している。平均では、米国内の血友病処置は、慣例的な、オンデマンドの手当てに必要な商業用製品の場合、1年当り約5万ドルがかかると推定される。しかしながら、このコストはもっと高い可能性がある。なぜなら、米国血友病基金の医学及び科学諮問委員会は患者は予防的処置を受けるべきだと推奨しているからであり、その場合、成人の血友病患者では、年間のコストは1年当り優に25万ドルを超えることになるからである。約100万ドルという生涯保険限度枠が、一般に、米国内での大半の保険契約に伴っていることを考えると、血友病患者は、彼らが手当てに掛けられる商業用製品量という点では大きな制約を負わされていることになり、このことは、少なくとも、成人期間の彼らの生活の質に大きな影響を与え、そして最悪の場合には、生命に危険を及ぼすリスクを高くする。
過去25年ほどに渡って、バイオテクノロジーは低コストの生物薬剤製品を生産するという期待を提供してきた。残念ながら、この期待には沿われていない。その原因は、部分的には、天然発生型の生物分子固有の複雑性であり、また、遺伝子操作された細胞内でのそれらの組換えタンパク質相対物合成に伴う多様な限界である。合成に選択される、例えば動物、細菌、酵母、昆虫、植物といった細胞種とは関係なく、タンパク質は、安全かつ有効な治療的使用のためには、特定の最低限の構造上の特性を達成せねばならない。場合によっては、組換えタンパク質は、適正な機能に必要な三次元構造を獲得するためには、合成後に単に正確に折り畳まれればよい場合がある。他の場合では、組換えタンパク質は、コアタンパク質が細胞内で合成された後、広汎な、酵素に指定された、翻訳後修飾を行わねばならないことがある。加えて、外来の組換え細胞内で作られたタンパク質はその細胞から成功裡に分泌されなければならない。数多くある細胞内輸送又は酵素活性のいずれか一つに欠陥があると、非機能的なタンパク質が形成される割合が高くなり、商業使用を目的とした生物薬剤製品の経済的な生産に向けた遺伝子操作された細胞系の実用性に制限ができる。
発明の概要
組換え技術による高レベルの機能的FVIIIタンパク質の達成は、部分的には、適したFVIII発現系の入手可能性不足という制限を受けてきた。商業的に実用性あるFVIIIを生産するのに必要なレベルでFVIIIを過剰発現させようとする他の試みは失敗している。血友病Aなどの出血障害を処置するのに必要な世界中の医学的ニーズを満たそうと血液凝固FVIIIの入手可能性を増すには、遺伝子操作された細胞からの完全に機能的なタンパク質であるFVIIIの生産における向上が必要である。大量の機能的FVIIIを生産することのできる新しい組換え発現系が求められている。野生型FVIIIはトランスフェクション研究では比較的に低レベルでしか、分泌されないため、野生型FVIIIに比較して分泌率の高い、大量のFVIIIタンパク質を生産することのできる発現系を提供することが更に好ましいであろう。本出願は、商業生産にとって充分な収率で組換えFVIIIを生産する方法へのニーズに応えるものである。
本発明の更なる局面、特徴及び利点は、以下の実施態様の詳細な説明から明白となるであろう。
ここでは、組換えFVIIIタンパク質を過剰発現又は生産する方法を提供する。提供される方法は、プロモータに作動可能に連結した、FVIIIタンパク質をコードする核酸分子を細胞内に導入するステップであって、前記プロモータは、商業的に実用性あるFVIIIタンパク質を生産する能力を特徴とする、ステップと;FVIIIタンパク質を過剰発現又は生産する条件下で前記細胞をインキュベートするステップとを含む。FVIIIタンパク質の組換え生産に用いる細胞は哺乳動物細胞であってもよく、更に、COS-1、CHO 及び
HEK 293 細胞から成る群より選択されてもよい。プロモータに作動可能に連結した当該の核酸分子はFVIIIタンパク質をコードするcDNAを含んでもよい。FVIIIタンパク質をコードする核酸分子に作動可能に連結したプロモータはチャイニーズ・ハムスター伸長因子1-α (CHEF1) プロモータであってもよい。
ここで提供する組換え法により過剰発現又は生産されるFVIIIタンパク質は、一実施態様ではヒトタンパク質である野生型FVIIIタンパク質であってもよい。FVIIIタンパク質は、過剰発現又は生産しようとするFVIIIタンパク質の分泌及び/又は発現を亢進する修飾を含んでいてもよい。従って、FVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときにArg740位で始まるBドメインの欠失を含んでいてよく、その後に、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサの追加が続き、この場合、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサにより、Bドメイン欠失FVIIIタンパク質の分泌又は発現が促される。該FVIIIタンパク質は更に、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに750位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、6箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する226アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてもよい。またこのFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに769位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されたアミノ酸配列は、一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する29アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてもよい。また該FVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに794位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、2箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する55アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに857位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、3箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する117アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに903位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、4箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する163アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに946位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、5箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する206アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに1009位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、8箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する269アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。
更に、a)プロモータに作動可能に連結した商業的に実用性あるFVIIIタンパク質をコードする核酸分子を細胞内に導入するステップであって、前記プロモータが、商業的に実用性あるFVIIIタンパク質を過剰発現又は生産する能力を特徴とする、ステップと、b)FVIIIタンパク質を過剰発現又は生産する条件下で前記細胞をインキュベートするステップと、c)他のクローンに比較して高レベルのFVIIIを発現するクローンを選抜するステップと、d)ステップc)で選抜された細胞を再クローニングするステップと、e)ステップc)で選抜されたものに比較してより高レベルのFVIIIを発現する少なくとも一つのサブクローンを識別するステップと、を含む、商業的に実用性あるFVIIIタンパク質を発現する細胞を識別する方法を、ここに提供する。この方法は、更に、f)ステップe)で識別された少なくとも一つのサブクローンを再クローニングするステップと、g)ステップe)で選抜された少なくとも一つのサブクローンに比較してより高レベルのFVIIIを発現する少なくとも一つのサブクローンを識別するステップ、を含んでもよい。
更にここでは、プロモータに作動可能に連結したFVIIIタンパク質をコードする核酸分子であって、前記プロモータが、商業的に実用性ある量のFVIIIタンパク質を過剰発現又は生産する能力を特徴とする、核酸分子も提供する。核酸分子は、FVIIIタンパク質をコードするcDNAを含んでもよい。前記核酸分子に作動可能に連結したプロモータは、チャイニーズ・ハムスター伸長因子1-α (CHEF1) プロモータであってもよい。FVIIIタンパク質をコードする核酸分子は、過剰発現又は生産しようとするFVIIIタンパク質の分泌及び/又は発現を亢進する修飾を含んでいてもよい。従って、前記核酸分子は、当該タンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときにArg740位で始まるBドメインの欠失を含み、その後に、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサの追加が続き、この場合、この少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサにより、Bドメイン欠失FVIIIタンパク質の分泌又は発現が促されるようなFVIIIタンパク質をコードするものであろう。該FVIIIタンパク質は、750位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、6箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する226アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてもよい。またこのFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに769位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されたアミノ酸配列は、一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する29アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてもよい。また該FVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに794位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、2箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する55アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに857位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、3箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する117アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに903位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、4箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する163アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに946位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、5箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する206アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。またFVIIIタンパク質は、このタンパク質を野生型FVIIIとアライメントしたときに1009位に挿入されたアミノ酸配列を含んでいてもよく、この挿入されるアミノ酸配列は、8箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する269アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換しているものとしてよい。
図1Aは、野生型FVIII及び第5因子のドメイン構造の図である。図1Bは本発明の失活耐性FVIIIの図である。 図2は、本発明のA-1変異型FVIIIタンパク質の分泌活性を野生型FVIIIに比較して示した表である。 図3は、本発明のAPC耐性FVIII及び野生型FVIIIのスロンビン活性を示したグラフである。 図4A及び4Bは、本発明のAPC耐性FVIIIの発現及びスロンビン切断を示したゲルの写真である。 図5A及び5Bは、本発明のAPC耐性FVIIIのAPC切断を示したゲルの写真である。 図6は、精製済みの野生型及び本発明のAPC耐性FVIIIを示したゲルの写真である。 図7A及び7Bは、野生型及び本発明のAPC耐性FVIIIのAPC媒介性機能失活を示したグラフである。 図8は、本発明の一本鎖失活耐性FVIIIのドメイン構造の図である。 図9は、本発明の失活耐性へテロ二量体FVIIIタンパク質のドメイン構造の図である。 図10は、本発明の失活耐性FVIIIの相対的合成及び分泌レベルを示すゲルの写真である。 図11は、本発明の失活耐FVIIIの切断パターンを示すゲルの写真である。 図12は、野生型FVIIIに比較したときの、本発明の失活耐性FVIIIの機能活性化及び失活を示すグラフである。 図13は、野生型FVIIIに比較したときの、本発明のイムノアフィニティ精製済み失活耐性FVIIIの活性化及び失活速度低下を示すグラフである。 図14は、本発明の失活耐性FVIIIの抗体誘導性フォン-ウィルブランド因子(vWF)結合を実証するELISA検定の結果を示すグラフである。 図15は、スロンビン活性化後の、本発明の失活耐性FVIIIの抗体誘導性vWF結合を実証するELISA検定の結果を示すグラフである。 図16は、スロンビン活性化後の、本発明の失活耐性FVIIIの抗体誘導性vWF結合と、保持されたFVIII活性とを実証するELISA検定の結果を示すグラフである。 図17は、FVIII軽鎖エピトープの図である。 図18は、ESH8が、vWFの存在下では失活耐性FVIII活性を阻害しないことを示す図である。 図19は、失活耐性FVIIIのスロンビン活性化/ESH8がvWF解離を変化させないことを示すグラフである。 図20は、失活耐性FVIII-vWF結合及び解離の動態を示す。 図21A及び21Bはスロンビン活性化の動態を示す。 図22はESH8がある状態及びない状態での結合型FVIII-vWF複合体の活性を示す。 図23は、MabNMC-FVIII/5上に固定した失活耐性FVIIIへのvWFの結合を示すグラフである。 図24A及び24Bは、次第に濃度を高くしたvWFが、失活耐性FVIII/ESH8複合体のホスホリピドへの結合を阻害しないことを示すグラフである。 図25A及び25Bは、失活耐性FVIII/ESH8/SPIII複合体のホスホリピドへの結合親和性を示すグラフである。 図26A及び26Bは、ESH8はin vivoにおいて失活耐性FVIIIの半減期を増加させるが、野生型FVIIIとは対照的に、活性は阻害しないことを示すグラフである。 図27は、スロンビンがある状態及び無い状態におけるFVIII LC、FVIIIa LC、失活耐性 FVIII/ESH8についてvWFの存在下でのvWF 親和性、PL 親和性及びコファクタ活性を示す図である。 図28は、N連結多糖含有数を増加させたFVIII Bドメイン変異型の図である。 図29は、FVIII B ドメイン・バリアントの分泌の相対的効率を示したグラフである。 図30は、F309S及びB ドメイン・バリアント混合型 226aa/N6 (「F309/226aa/N6 バリアント」)の分泌の相対的効率を示したグラフである。 図31は、プラスミドDNAを尾の静脈に水力学的注射した後の血友病AマウスにおけるFVIII B ドメイン・バリアントの発現を示すグラフである。 図32は、FVIIIノックアウト・マウスにおけるFVIII B ドメイン・バリアントのin vivoでの発現を示すグラフである。 図33は、マウスにおける経時的FVIII活性を示すグラフである。 図34は、細胞抽出物及び細胞媒質中のFVIIIB ドメイン・バリアントの存在を示す。
好適な実施態様の詳細な説明
本発明のいくつかの実施態様をここに解説するが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく改変に想到されようと考えられる。
本発明の目的は、世界規模での商業化に適した量で高レベルの第VIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する遺伝子操作された細胞を作出する方法を提供することである。本発明の更なる目的は、静脈内投与以外の方法により血友病患者に投与することのできる第VIII分子を提供することである。
世界規模での商業用途に向けて低コストの第VIII因子タンパク質生物薬剤を過剰発現又は生産するためには、(1)所望の一次区尾増を有する第VIII因子ポリペプチド鎖を大量に過剰発現又は生産する、及び(2)完全に機能的な合成生物薬剤製品を生産するのに必要な必須翻訳後修飾の全てを効率に行うことができる、遺伝子操作された細胞を生産に向けて作出せねばならない。
用語「第VIII因子タンパク質」又は「第VIII因子タンパク質」には、第VIII因子の生物学的活性を持つタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードする、野生型第VIII因子タンパク質、又はそのいずれかのフラグメント、誘導体、改変体、もしくはアナログが包含されるものと、意図されている。第VIII因子タンパク質及び同タンパク質をコードする核酸配列は、この引用をもってその全文をここに援用することとする米国一連番号 10/383,206号に紹介されている。第VIII因子タンパク質の例には、第VIII アイソフォームa前駆体 (引用をもってその内容をここに援用することとするNCBI 受託番号 No. NP_000123)
及び第VIII因子アイソフォームb前駆体 (引用をもってその内容をここに援用することとするNCBI 受託番号 No. NM_063916)がある。
ここで用いられる場合の「生物活性」又は「生物学的に活性な」は、ヒト血漿を由来とする第VIII因子標準について判断される。ある第VIII因子タンパク質の生物活性は、商業的に入手可能な第VIII 因子検定、コーテスト(原語:Coatest )(Kabi ファーマシューティカルズ社製)又は当業の他の検定を用いて判断できよう。コーテストは因子Xからの因子Xaの因子FVIII依存的生成を測定し、このとき一単位は 100 乃至200 ng/ml のプールされたヒト血漿1ml中のFVIII活性量と定義される(Vehar
et al., Biotechnology of Plasma Proteins, Albertini et al., eds. pg. 2155, Basel,
Karger, 1991)。プールされたヒト血漿
(George King Bio-Medical, Inc., Overland
Park, Kans.) をFVIII活性標準として用いてよい。
VIII 因子標準の生物活性は100%と考える。ある実施態様では、本発明の VIII因子は、VIII因子標準の活性の少なくとも5%を有する。他の実施態様では、本発明の VIII 因子は、VIII因子標準の活性の少なくとも10%、VIII因子標準の活性の少なくとも15%、VIII因子標準の活性の少なくとも20%、VIII因子標準の活性の少なくとも25%、VIII因子標準の活性の少なくとも30%、VIII因子標準の活性の少なくとも35%、VIII因子標準の活性の少なくとも40%、VIII因子標準の活性の少なくとも45%、VIII因子標準の活性の少なくとも50%、VIII因子標準の活性の少なくとも55%、VIII因子標準の活性の少なくとも60%、VIII因子標準の活性の少なくとも65%、VIII因子標準の活性の少なくとも70%、VIII因子標準の活性の少なくとも75%、VIII因子標準の活性の少なくとも80%、VIII因子標準の活性の少なくとも85%、又はVIII因子標準の活性の少なくとも90%を有する。「生物学的に活性」は「凝血原的に活性」と交換可能に用いられている。
ここで用いられる場合の用語「凝血原的に活性な」及び「活性な」FVIIIは、凝固検定で凝血原的活性を示す一種以上のポリペプチド又はタンパク質を言うために交換可能に用いられている場合がある。FVIIIという用語は、FVIIIaを包含するためにここで用いられている場合があり、また当業者であれば、この用語が用いられている文脈から、どの用語(スロンビン活性化前の型FVIII 又はスロンビン活性化後のFVIII
(FVIIIa))が意図されているかを理解されよう。ここで用いられる場合、用語「ポリペプチド」には、完全長タンパク質分子だけでなく、それだけで、又は他のフラグメントと一緒になって、凝固検定でFVIII凝血原活性を生ずるようなそのフラグメントも含まれる。本発明のタンパク質製品の合成ポリペプチドもまた、本発明の範囲内にあり、標準的な合成法で製造することができることは理解されよう。更に、ここで用いられるアミノ酸番号付けシステムにおいて、アミノ酸残基1は、天然の成熟FVIIIタンパク質の一番目の残基であることも理解されよう。更に、用語「ドメイン」とは、当業者に公知のFVIIIの隣接領域であることも理解されよう。
ここで用いられる場合の用語「VIII因子タンパク質をコードするDNA配列」は、VIII因子タンパク質をコードするDNAを意味し、即ちこのようなDNAは、VIII因子タンパク質をコードする完全長遺伝子であっても、あるいは、生物学的に活性なVIII因子タンパク質をコードする切断型遺伝子であっても、又は変異型遺伝子であってもよい。用語「DNA配列」はcDNAであってもよく、一般的にはポリデオキシリボヌクレオチド分子、そしてより具体的には、隣り合ったペントースの3'及び5’炭素間のホスホジエステル結合により互いに接続された直線状につながったデオキシリボヌクレオチド、又はその実質的に複製の配列、を言う。VIII因子タンパク質をコードするDNA配列の例には、ゲノム VIII因子 DNA (引用をもってその内容をここに援用することとするNCBI 受託番号No. NG_005114)及び cDNA(引用をもってその内容をここに援用することとするNCBI 受託番号No.’s
NM_000132 及び NM_019863)がある。VIII因子タンパク質をコードする核酸配列の一例はVIII因子タンパク質をコードするDNA配列である。
文言「実質的に複製の」は、ある配列に同一でないかもしれないが、それでも尚、標準的凝固検定においてVIII因子活性を有する発現産物、タンパク質、及び/又は合成ポリペプチドを生ずるような配列を含むものと、意図されている。実質的に複製の配列にはそのアナログ及び誘導体がある。
本発明によるVIII因子タンパク質は、少なくとも約20 IU/mL、少なくとも約30 IU/mL、少なくとも約40 IU/mL、少なくとも約50 IU/mL、少なくとも約60 IU/mL、少なくとも約70 IU/mL、少なくとも約80 IU/mL、少なくとも約 90 IU/mL、少なくとも約 100 IU/mL、少なくとも約 110
IU/mL、少なくとも約 120 IU/mL、少なくとも約 130 IU/mL、少なくとも約 140 IU/mL、少なくとも約 150 IU/mL、少なくとも約 160 IU/mL、少なくとも約170 IU/mL、少なくとも約180 IU/mL、少なくとも約190 IU/mL、少なくとも約200 IU/mL、又は少なくとも約210 IU/mL のレベルで、生物学的に活性なVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産することができる。
ここで用いられる場合の用語「商業的に実用性あるVIII因子タンパク質」とは、組織培養細胞から過剰発現又は生産したときに、少なくとも約 20
IU/mL、少なくとも約 30 IU/mL、少なくとも約 40 IU/mL、少なくとも約 50 IU/mL、少なくとも約 60 IU/mL、 少なくとも約 70 IU/mL、 少なくとも約 80 IU/mL、少なくとも約 90 IU/mL、少なくとも約 100 IU/mL、少なくとも約 110
IU/mL、 少なくとも約 120 IU/mL、 少なくとも約 130 IU/mL、少なくとも約 140 IU/mL、少なくとも約 150 IU/mL、 少なくとも約 160 IU/mL、少なくとも約 170 IU/mL、少なくとも約 180 IU/mL、少なくとも約 190 IU/mL、少なくとも約 200 IU/mL、 又は少なくとも約 210 IU/mL のレベルで、生物学的に活性なVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産することのできるVIII因子タンパク質を意味する。加えて、用語「商業的に実用性あるVIII因子タンパク質」とは、組織培養細胞から過剰発現又は生産したときに生物学的に活性であるVIII因子タンパク質も意味する。ある実施態様では、商業的に実用性あるVIII因子タンパク質は、少なくとも約 10% 生物学的に活性、少なくとも約 15% 生物学的に活性、少なくとも約 20% 生物学的に活性、少なくとも約 25% 生物学的に活性、少なくとも約 30% 生物学的に活性、少なくとも約 35% 生物学的に活性、少なくとも約 40% 生物学的に活性、少なくとも約 45% 生物学的に活性、少なくとも約 50% 生物学的に活性、少なくとも約 55% 生物学的に活性、少なくとも約 60% 生物学的に活性、少なくとも約 65% 生物学的に活性、少なくとも約 70% 生物学的に活性、少なくとも約 75% 生物学的に活性、少なくとも約 80% 生物学的に活性、少なくとも約 85% 生物学的に活性、又は 少なくとも約 90% 生物学的に活性である。
用語「プロセッシング因子」は広い用語であり、その中には機能的なVIII因子タンパク質の形成を促進するいずれかのタンパク質、ペプチド、非ペプチドコファクタ、基質、又は核酸分子がある。
本発明の目的の一つは、大量のVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産することで、完全に機能的なタンパク質のパーセンテージが、世界規模の商業的使用にとって低コストの生物薬剤製品を生産するのに充分であるような遺伝子操作されたCHO又は他の細胞である。
VIII因子タンパク質をコードする核酸分子は、トランスフェクションにより細胞内に導入できよう。大量の組換えタンパク質を発現する遺伝子操作された細胞を作出する数多くのトランスフェクション法が公知である。例えばモノクローナル抗体は通常、1000 IU/mLを越えるタンパク質レベルを発現する遺伝子操作された細胞から製造されている。本発明は、遺伝子操作された細胞を作出するために用いられそうないずれの特定のトランスフェクションにも依存するものではない。
数多くの発現ベクタを用いて遺伝子操作された細胞を作出することができる。発現ベクタの中には、トランスフェクト細胞の増殖後、選択された高発現性の細胞にとって有利な多種の条件下で大量の組換えタンパク質を発現するようにデザインされたものがある。また発現ベクタの中には、淘汰圧力下での増殖の必要なく、大量の組換えタンパク質を発現するようにデザインされたものがある。本発明は、いずれの特定の発現ベクタの使用にも依存するものではない。
大量のVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産させる遺伝子操作された細胞を作出するためには、VIII因子タンパク質をコードするcDNAを含有する発現ベクタをトランスフェクションなどにより細胞内に導入する。本発明では、至適成長条件下で最低20 IU/mLの標的VIII因子タンパク質を過剰発現又は生産することのできるトランスフェクト細胞が作出されることが要される。より高レベルの標的VIII因子タンパク質生産が達成できると思われ、また本発明において有用であろう。しかしながら、標的VIII因子タンパク質の過剰発現又は生産の至適レベルは20 IU/mL 以上のレベルであり、このレベルは、標的タンパク質の適切な翻訳後修飾を任意の細胞系で起こさせる、所定の同時にトランスフェクトされる酵素で標的タンパク質を発現させたときに、著しく機能的な形で得ることができる。
完全に機能的な合成生物薬剤製品を生産するのに必要な必須翻訳後修飾のすべてを効率的に行うことのできる遺伝子操作された細胞を作出するためには、選択された酵素を、VIII因子タンパク質と共に同時導入してもよい。
本発明の方法は、大量のVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産するように遺伝子操作してよい細胞の最初の選択を含む。
当該細胞は多種の源から選択してよいが、そうではない場合は、DNAを含有する発現ベクタを中に導入できそうな細胞であり、このDNAはある実施態様では、VIII因子遺伝子のcDNA、又は、その実質的に複製配列である。
トランスフェクト細胞のプールから、商業製品の生産にとって最低限許容可能である最も高いレベルから最も低いレベルまでの範囲(標的範囲)の量のVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産するクローンを選抜する。標的範囲内の量のVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する細胞クローンを組み合わせて、単一のプールを得ても、あるいは、高レベル、中レベル又は低レベルのVIII因子タンパク質を標的範囲内で生産する、当該クローンをクローン集団に分割した複数のサブプールを得てもよい。
標的範囲内のVIII因子タンパク質を生産する組換え細胞を分析すれば、完全に機能的なタンパク質を過剰発現又は生産する程度が判断できようことは、本発明の範囲内と考えられる。このような分析から、完全に機能的なタンパク質の生産を制限する特定の酵素欠陥への洞察が提供されよう。更に、高レベル、中レベル、又は低レベルの標的範囲内のVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する細胞クローンから成るサブプールを分析すれば、完全に機能的なタンパク質の過剰発現又は生産を制限する特定の酵素欠陥についての洞察が、様々なレベルのVIII因子タンパク質生産で提供されることも予測できる。このような分析から、細胞クローンの単一のプールについてなされるか、あるいはサブプールについてなされるかに関係なく、完全に機能的なタンパク質を生産するためには無くさねばならない特定の酵素欠陥が明らかになるであろう。
完全に機能的なVIII因子タンパク質の標的範囲内での過剰発現又は生産を制限する組換えクローンのプール内の酵素欠陥を無くすために、本発明の方法は、ある核酸分子を含有する発現ベクタに細胞のプールをトランスフェクトすることを提案するが、この場合の前記核酸分子は、細胞クローンに発現させたときに、酵素欠陥を完全に又は部分的に緩和するであろうタンパク質のcDNAであってもよい。更に、所定タンパク質のcDNAを含有する付加的な発現ベクタを細胞クローンに同時又は順次(順番に)トランスフェクトすることにより、二種以上の酵素欠陥を緩和したり、あるいは、VIII因子タンパク質の翻訳後修飾における欠陥の緩和に、二種以上の酵素又はタンパク質あるいは他のプロセッシング因子の活性の存在を必要としたりしてもよく、この二種以上の酵素又はタンパク質あるいは他のプロセッシング因子を、本発明の方法で提供してもよい。
本発明の目的は、標的範囲内のある量でVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する細胞クローンから、高いパーセンテージの完全に機能的なVIII因子タンパク質を得るために必要な最低限のタンパク質トランスフェクション要件を明らかにする方法を提供することである。
本発明の方法においては、標的範囲内でVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する細胞クローンのプールを順次トランスフェクトしていくことで、特定のタンパク質又は複数のタンパク質を多様な組み合わせで提供する。次に、細胞クローンのトランスフェクト後のプールを分析することで、多様なタンパク質を同時発現するトランスフェクタント・プールにより今や生産される完全に機能的なVIII因子タンパク質の相対的パーセンテージを判定する。過剰発現又は生産した同時発現タンパク質の数が最も少なく、完全に機能的なVIII因子タンパク質のパーセンテージが最も高いトランスフェクタント・プールを、その後のクローニングに向けて選抜する。
本発明の方法においては、付加的なタンパク質の同時発現により得られる、完全に機能的なVIII因子タンパク質の至適生産レベルを、選抜されたトランスフェクタント・プールをクローニングすることで判定する。標的範囲内でより小さい総量のVIII因子タンパク質を生産する細胞クローンからは、完全に機能的なVIII因子タンパク質がより高いパーセンテージで生産されると考えられる。他方、細胞クローンの中には、翻訳後プロセッシングに大きな向上がないままであってもVIII因子タンパク質の超生産体であるものもあるかも知れない。しかしながら、このような超生産体株は、全体的な生産レベルが高ければ、使用可能な量の機能的タンパク質を過剰発現又は生産するものである。至適生産レベルは、機能的VIII因子タンパク質の最も高いレベルであろう。
本発明の実施にあたっては、そうでないと明示しない限り、当業者に公知の範囲の分子生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を利用する。このような技術は文献に十二分に説明されている。例えばSambrook, et al., "Molecular Cloning; A Laboratory
Manual", 2nd ed (1989); "DNA Cloning", Vols. I and II (D. N
Glover ed. 1985); "Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait ed. 1984);
"Nucleic Acid Hybridization" (B. D. Hames & S. J. Higgins eds.
1984); "Transcription and Translation" (B. D. Hames & S. J.
Higgins eds. 1984); "Animal Cell Culture" (R. I. Freshney ed. 1986);
"Immobilized Cells and Enzymes" (IRL Press, 1986); B. Perbal, "A
Practical Guide to Molecular Cloning" (1984); Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.)のシリーズ、特にVols. 154 及び 155 (それぞれWu and Grossman, and Wu, 編); "Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells" (J. H.
Miller and M. P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); "
Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology", Mayer and Walker,
eds. (Academic Press, London, 1987); Scopes, "Protein Purification:
Principles and Practice", 2nd ed. 1987 (Springer-Verlag,
N.Y.); 及び "Handbook of Experimental
Immunology" Vols I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds 1986)を参照されたい。背景及び本明細書で引用する全ての特許、特許出願、及び公開文献を、引用をもってここに援用することとする。
遺伝子操作技術
遺伝子操作によるクローニングされた遺伝子、組換えDNA、ベクタ、形質転換ホスト細胞、タンパク質及びタンパク質フラグメントの作製は公知である。例えばBell らの米国特許第
4,761,371号、カラム、3行目乃至カラム9、65行目;
Clarkらの米国特許第4,877,729 号、カラム4の38行目乃至カラム7、6行目;Schillingらの米国特許第4,912,038 号、カラム3の26行目乃至カラム14の12行目;そしてWallner らの米国特許第4,879,224 号、カラム6の8行目乃至カラム8の59行目を参照されたい。
ベクタは複製可能なDNAコンストラクトである。ベクタはここでは、VIII因子タンパク質をコードするDNAを増幅する、及び/又は、VIII因子タンパク質をコードするDNAを発現させる、のいずれかのために用いられる。発現ベクタは、VIII因子タンパク質をコードするDNA配列が、適したホストでVIII因子タンパク質の発現を行わせることのできる、適した制御配列に、作動可能に連結されているような複製可能なDNAコンストラクトである。このような制御配列の必要性は、選択されるホストや、選ばれる形質転換法に応じて様々であろう。一般的には、制御配列には、転写プロモータ、転写を制御する選択的オペレータ、適したmRNAリボゾーム結合部位をコードする配列、並びに、転写及び翻訳の終了を制御する配列、がある。
ある実施態様では、適した制御配列は、VIII因子凝固因子及び/又はプロセッシング因子の高レベルの発現を提供するための、チャイニーズ・ハムスター由来の伸長因子-1α(CHEF1)のためのプロモータを含む。CHEF1 ベクタは、両者とも引用をもってここに援用することとするDeer, et al.(2004)
“High-level expression of proteins in mammalian cells using transcription
regulatory sequences from the Chinese Hamster EF-1α gene” Biotechnol. Prog. 20:
880-889 及び米国特許第5,888,809号に解説された通りに用いられる。CHEF1 ベクタはチャイニーズ・ハムスターEF-1α由来の 5’ 側及び3’ 側フランキング配列を利用する。CHEF1
プロモータ配列には、EF-1αのSpeI 制限部位から開始メチオニン (ATG) コドンまで延びるほぼ3.7kbのDNAが含まれる。その DNA 配列は米国特許第 5,888,809号のSEQ ID NO: 1に記載されている。
増幅ベクタには発現制御ドメインは必要ではない。必要なのは、通常では複製開始点によりもたらされる、ホスト内での複製能と、形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子だけである。
ベクタはプラスミド、ウィルス(例えばアデノウィルス、サイトメガロウィルス)、ファージ、及び組込み可能なDNA断片(即ち、組換えによりホスト・ゲノムに組み込み可能な断片)を含む。ベクタはホスト・ゲノムとは独立に複製及び機能するが、あるいは、場合によっては、ゲノム自体に組み込まれる場合もある。発現ベクタは、発現させようとする遺伝子に作動可能に連結すると共にホスト生物内で作動可能なプロモータ及びRNA結合部位を含有していなければならない。
DNA領域は、それらが相互に機能的に関連しているときに作動的に連結又は作動的に関連していることになる。例えば、あるプロモータが当該配列の転写を制御する場合にそれはコーディング配列に作動的に連結しており;あるリボゾーム結合部位が翻訳を可能にする位置にあるときにはそれはコーディング配列に作動的に連結していることになる。
形質転換ホスト細胞とは、組換えDNA技術を用いて作製された一つ以上のVIII因子タンパク質ベクタで形質転換又はトランスフェクトした細胞である。
VIII因子タンパク質
本発明のプロモータに作動可能に連結した核酸分子は、いずれかのVIII因子タンパク質を含むタンパク質をコードするものである。VIII因子タンパク質及び同タンパク質をコードする核酸分子の例は、引用をもってその内容全体をここに援用することとする米国一連番号第10/383,206号に解説されている。
FVIIIをコードする精製済み及び単離済み核酸分子を、本発明の関連での使用に向けて、ここで提供する。A1ドメイン変異を含む、公知のヒトFVIII配列に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列を提供する。より具体的には、公知のヒトFVIII配列に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列を提供するが、この場合、アミノ酸残基309位のフェニルアラニンが変異している。ある実施態様では、Phe309 は欠失しているか、あるいは、セリンなどのいずれか他のアミノ酸残基で置換されている。別の実施態様では、当該のヒトFVIII 配列はBドメインが欠失している (BDD-FVIII)である。 その結果のFVIII タンパク質は、野生型FVIIIで典型的に得られるよりも高いレベルで分泌することができ、凝血原活性を保持している。
別の実施態様では、本発明の核酸配列はFVIII
B-ドメイン変異体をコードするものであり、この場合、Bドメインの一部分が欠失している。具体的には、N連結糖鎖付加部位を追加すると、BDD-FVIII の分泌を最高10倍まで向上させ、in
vivoでのFVIII 発現を増加させることができることが示されている。ある実施態様では、本発明の核酸配列は、FVIII
B ドメイン変異体をコードするものであり、この場合、Bドメインが切断されており、即ちBBD-FVIII が、Bドメインのアミノ末端側から、より多数のセグメント数を含む。ある実施態様では、アミノ末端側からのセグメント数が29アミノ酸分多いと、BDD-FVIIIの分泌が1.7倍に向上することが実証されている。更に別の実施態様では、アミノ末端側からのセグメント数が54アミノ酸分多いと、BDD-FVIIIの分泌が3.4倍に向上することが実証されている。更に別の実施態様では、アミノ末端側からのセグメント数が117アミノ酸分多いと、BDD-FVIIIの分泌が5.3倍に向上することが実証されている。更なる実施態様では、アミノ末端側からのセグメント数が163アミノ酸分多いと、BDD-FVIIIの分泌が8.5倍に向上することが実証されている。更に別の実施態様では、アミノ末端側からのセグメント数が226アミノ酸分多いと、BDD-FVIIIの分泌が10.8倍に向上することが実証されている。こうして本発明のFVIII B-ドメイン変異体は、それらのN連結多糖含有量に比例して増加した分泌を示すことが見出されている。
更なる実施態様では、本発明の核酸配列は、ここで解説する通り、FVIII B-ドメイン変異体及びPhe309変異体を含む、ハイブリッドFVIII分子をコードするものである。ある実施態様では、FVIII B-ドメイン変異体は 226 アミノ酸をB-ドメインのアミノ末端側に含む(ここではN連結糖鎖付加のための6箇所のコンセンサス部位を含む「b226N6 B ドメイン・バリアント」とも言及される。図28及び29を参照されたい)。この実施態様では、いずれかの変異単独に比較して優れた発現及び活性が得られる。
更なる実施態様では、FVIII B-ドメイン変異体の分泌効率は、Bドメインのアミノ末端側の226アミノ酸を含み、そしてN連結糖鎖付加部位のための6箇所のコンセンサス部位(ここでは「226N6 バリアント」又は「226aa/N6
バリアント」とも呼ばれる)を含み、点変異F309Sで更に亢進されている。組み合わされたF309S及び B ドメイン 226aa/N6 バリアントは、ここでは「F309/226aa/N6
バリアント」又は「309S/226aa/N6」とも呼ばれる。
更に別の実施態様では、最小のBドメイン含有量を持つ FVIII は、in vitro及び in vivo でより効率的な発現を提供することができる(図31)。
変異APC切断部位を含有する公知のヒトFVIII配列に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列もまた提供される。ある実施態様では、APC 切断部位 Arg336 及び Arg562 を、例えばそれぞれイソロイシン及びリジンなどに変異させる(R336I 及びR562K)。その結果のFVIII タンパク質はAPC耐性である。
更に、Bドメインを欠失させ、フォン-ウィルブランド因子結合部位(即ち軽鎖のアミノ末端の酸性領域)を欠失させ、スロンビン切断部位を変異させ、そしてアミノ酸配列スペーサをA2-及びA3-ドメイン間に挿入してある、公知のヒトFVIII配列に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列も提供される。この実施態様には、更に、ここで解説したAPC切断部位変異の一方又は療法など、APC切断部位変異を含めてもよい。ある実施態様では、スロンビン切断部位Arg740 を、例えばアラニン (R740A) 又はリジン (R740K)との置換などにより、変異させる。前記のアミノ酸配列スペーサは、A2-ドメインが軽鎖と共有結合したままで当該タンパク質がスロンビンで活性化してヘテロ二量体と成るのに充分な長さのものである。ある実施態様では、スペーサはほぼ54残基長である。別の実施態様では、スペーサは野生型FVIII B-ドメインのアミノ部分の54残基、即ち741から794位までを含み、このとき残基794はスレオニン又はロイシンである。スロンビンで活性化したときの一本鎖ポリペプチドはヘテロ二量体となり、精製済み野生型FVIIIと比較してほぼ5倍の比活性増加を有する。
更なる実施態様では、本発明の失活耐性FVIIIを、vWFへの当該タンパク質の結合親和性を増加させる抗体又は架橋剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、vWF結合部位を欠失させた、本発明の失活耐性FVIIIが、C2-ドメイン内のアミノ酸2248から2285でエピトープを認識する市販のマウスモノクローナル抗体(コネチカット州グリーンウィッチ、American Diagnostics社)であるESH8の存在下にあるとき、この失活耐性
FVIIIはvWFに結合する。実施例4に更に詳述するように、本発明の失活耐性FVIII は、野生型FVIIIと比較して少なくとも10分の1の対vWF親和性を有するが、ESH8の存在下では、それは僅かに2分の1まで減っただけの対vWF親和性を有する。最近、ESH8 が、スロンビンで切断したFVIII(FVIIIa)の対vWF親和性を増加させることにより、野生型FVIII活性化の阻害剤として働くことができることが報告された。Saenko, E. L. et al., Blood 86, Abstract No. 749 (1995)。vWFからのFVIIIaの解離を遅らせることにより、A2
解離及びその後のタンパク質分解により、FVIIIa
がvWFから完全に解離できてそのコファクタ機能を果たす前にそれを失活させる可能性が高い。C2-ドメイン内のアミノ酸2218から2307でエピトープを認識するヒト阻害剤抗体も報告されており、同様な機序で野生型FVIII活性化を阻害するようであり、vWF結合を誘導するために同様に用いられるかも知れない。Shima, M. et al.,
Blood 86, Abstract No. 748 (1995) and Shima, M. et al., British J. Hematol. 91:
714-721 (1995)。
また更なる実施態様では、本発明の核酸配列は、ここで解説するAPC耐性FVIIIをコードすると共に、Phe309に変異を有する。ある実施態様では、Phe309 を欠失させるか、又は、セリンなどの別のアミノ酸で置換する。更に本発明の核酸配列は、Phe309に付加的な変異を更に有する、ここで解説した失活耐性FVIIIをコードするものでもよい。やはり、Phe309を欠失させても、又はセリンなどの別のアミノ酸と置換してもよい。また本発明の核酸配列は、APC耐性FVIIIと、変異したB-ドメイン、即ちN連結糖鎖付加部位の追加、を、他の点でのBDD-FVIIIに有する失活耐性FVIIIアミノ酸配列をコードするものでもよいことは更に理解されよう。このように、本発明の核酸配列は、失活耐性及び/又は分泌増加を示すFVIIIタンパク質をコードしている。
本発明のタンパク質の比活性が増加しているため、低投薬量のタンパク質を血友病患者に投与しても、治療上有効なFVIII活性レベルを維持できることは理解されよう。コストが抑えられる上に、FVIII置換療法において本発明のタンパク質を利用することにより、患者の対タンパク質曝露量が抑えられるため、阻害剤形成の可能性が低くなる。更に、本発明のタンパク質は遺伝子療法関連処置においても有用であることも理解されよう。ヒトFVIIIのDNA配列は、発現法(例えば Toole et al., Nature 312:312-317
(1984);Wood et al., Nature
312:330-337、Vehar et al., Nature
312:337-342、米国特許第4,757,006号、WO 87/04187、WO 88/08035 及び WO 88/03558を参照されたい)と同様に公知である。本発明のFVIIIタンパク質をコードする精製済み及び単離済み核酸配列、即ち、ヒトFVIII、あるいは当業で公知であり、かつ、ここで解説された通りに改変されたそのバリアント、と実質的に同じポリペプチド配列をコードする核酸配列、は常法により作製できよう。し例えばPhe309 や APC 及びスロンビン切断部位での変異は、こうしてcDNAの部位指定変異誘発によって作製できよう。当業者であれば、「変異」とは、限定はしないが置換、挿入及び欠失を含むいずれかの変更を言うことは認識されよう。更に、FVIII核酸配列の残りの部分が米国特許第5,004,803号、WO 86/06101、及びWO 87/07144に開示されたものなどの付加的な改変を含有することにより野生型FVIIIとは異なっていてもよいことも理解されよう。FVIII類似体が、FVIII の活性化能、失活能、及びin vivo 効果にとっての具体的な構造上の要件をより良く理解するために開発されており、また本発明の範囲内である。至適化しようとする特徴には、調製の簡便化、投与の容易性、安定性、クリアランス/分散上の特徴の向上、免疫原性の低下、及び半減期の延長が含まれる。更に、本発明によるバリアントFVIII核酸配列には、個体間での天然のばらつきや、あるいは他のコドン置換又は欠失がありながらもFVIII型の凝血原活性が保持されている場合があるため、アレルのばらつき、即ち配列上のばらつきも含まれることは理解されよう。
VIII因子ゲノム、cDNA、及びヌクレオチドからの部分的又は全体的化学合成により調製されるDNAや、プロモータに作動可能に連結した、変異のあるDNAなど、代替的な核酸型も本発明の考察するところである。
本発明により提供される核酸配列を、プロモータ、オペレータ、レギュレータ等の同種又は異種の発現制御配列と関連させると、in vivo 及びin vitro での転写を行わせて、大量のFVIIIタンパク質並びに関連ポリ-及びオリゴ-ペプチドを提供するために翻訳に向けられるmRNAを形成することができる。このように本発明は、本発明の核酸配列の発現産物や、これらの発現産物の活性化型を含む。本発明の発現系においては、FVIII コーディング配列を調節性のプロモータ配列に作動的に結び付けて、哺乳動物細胞での転写及び翻訳を行わせ、例えば凝固活性を有するFVIIIを提供できよう。
適したウィルス性及び環状のDNAプラスミド・ベクタが潜在的に関与する、本発明の配列の原核性及び真核性ホスト細胞内への標準的な形質転換及びトランスフェクションプロセスによる導入も、本発明の考察するところである。本発明の核酸配列を含有すると共に本発明の核酸配列を発現させることのできる原核性及び真核性細胞発現ベクタは、当業者に公知の技術により、合成できよう。細菌性レプリコン、選択遺伝子、エンハンサ、プロモータ等のベクタの構成成分は、天然源から得ても、あるいは、公知の手法(例えば Kaufman et al., J. Mol. Biol. 159:601-621 (1982) 及び Kaufman, PNAS 82:689-693 (1995)を参照されたい)により合成してもよい。本発明のタンパク質を生産する上で有用な発現ベクタには、更にプロモータを含めてもよく、あるいは、当業で公知な通り誘導性の発現系を含んでもよい。
形質転換細胞株などの樹立細胞株はホストとして適切である。通常の二倍体細胞、初代組織のin vitro培養から得られた細胞株や、初代外植体(造血幹細胞などの比較的に未分化の細胞を含む)も適切である。選択遺伝子がドミナントに作用する限り、候補細胞は選択遺伝子に遺伝子型上の欠陥を持たなくともよい。
哺乳動物性のホスト細胞を用いると、例えば本発明の発現産物に至適な生物活性をもたらそうと付加する場合の、例えばタンパク質分解、糖鎖付加、チロシン、セリン、又はスレオニンリン酸化などによる翻訳後修飾に便利である。CHO (チャイニーズ・ハムスター卵巣) 細胞などの樹立哺乳動物細胞を用いてよい。代替的には、当該ベクタには、ウシ乳頭腫ウィルスゲノムの全部又は一部を含めてよく (Lusky et al., Cell 36:391-401 (1984)) 、そしてC127マウス細胞などの細胞株に安定したエピソーム性因子として運ばせてもよい。他の使用可能な哺乳動物細胞株には、HeLa、COS-1 サル細胞、Bowes細胞などの黒色腫細胞株、マウスL-929 細胞、スイスから得られる3T3 株、Balb-c 又はNIH マウス、BHK 又はHaK ハムスター細胞株等がある。
どの種類の発現ベクタを用いようとも、本発明のFVIII
核酸を、例えばWO 87/06101、WO 88/08035 及び米国特許第5,250,421号に解説された通りにウィルブランド因子(vWF)又はその類似体をコードする核酸配列と共に同時発現させてよい。当該タンパク質は、アプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤を、例えば約0.01乃至約5%、又は約0.5乃至約1.0% (vol/vol) (アプロチニン、15-30 トリプシン阻害剤単位 (TIU)/ml、シグマ社)、又は、他のプロテアーゼ阻害剤の活性単位量に相当する量、含有する媒質中で発現させてよい。
安定な形質転換体を、標準的な免疫学的又は活性検定により、凝血原産物の発現について、スクリーニングする。凝血原性タンパク質をコードするDNAの存在は、サザン・ブロット法などの標準的手法により検出されよう。発現ベクタをCOS-1サル細胞などの適したホスト細胞に導入してから数日間の間、凝血原性遺伝子の過渡的な発現を、この溶媒基中のタンパク質の活性又は免疫検定による選択なしで測定する。常法によるDNAの発現後、そのように過剰発現又は生産したタンパク質を回収し、精製し、及び/又は、すべて公知の方法により、物理化学的、生化学的及び/又は臨床パラメータについて特徴づけてもよい。
更なる実施態様では、本発明のヌクレオチド配列を、例えばFVIIIの欠陥により引き起こされる血友病を処置するためなど、遺伝子療法用途で用いてもよい。従って本発明の方法は、本発明のヌクレオチド配列を標的細胞に導入するステップを含む。移動を行うには、移動させようとするヌクレオチド配列を、標的細胞に形質導入することのできる伝播体に結び付けなければならない。当業者であれば、このような伝播体には、限定はしないがアデノウィルス、レトロウィルス、及びアデノ随伴ウィルスベクタや、リポソーム及びDNA-タンパク質複合体を含む公知の遺伝子療法送達系が含まれることは理解されよう。
複数のタンパク質の発現
FVIIIタンパク質をプロセッシングするために必要な酵素及びコファクタを細胞に提供することにより、より高収量の生物学的に活性なVIII因子タンパク質が得られる。充分なレベルの完全に機能的なVIII因子タンパク質を組換え細胞により過剰発現又は生産すれば、無用な、部分的に改変された、又は未修飾のVIII因子タンパク質を所望の産物から取り除くようにデザインされた長々しい精製ステップが避けられる。これにより生産コストが低減し、患者にとって望ましくない副作用を有するであろう不活性な物質がなくなる。
プロセッシング因子との同時発現によりVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する方法には、以下の技術を含めることができる。まず、2種以上のプロセッシング因子及びVIII因子タンパク質のコーディング配列を含有する一個のベクタを、選択されたホスト細胞に挿入することができる。代替的には、VIII因子タンパク質をコードするものと、一種以上の他のプロセッシング因子をコードするものの、2個以上の別々のベクタをホストに挿入することができる。この選択されたホスト細胞にとって適した条件下で培養すると、この2種以上のタンパク質が生産され、相互作用して、プロタンパク質の切断及び修飾が起きて成熟タンパク質となる。
もう一つの代替法は、一方のホスト細胞がVIII因子タンパク質を発現し、他方のホスト細胞が一種以上のプロセッシング因子を発現し、これらが媒質中に分泌されることとなるような二種の形質転換ホスト細胞の使用である。これらのホスト細胞を、組換えVIII因子タンパク質と、同時発現した組換えポリペプチドとが発現及び分泌又は放出され得る条件下で同時培養することができる。
場合によっては、VIII因子タンパク質を発現する遺伝子を、他の遺伝子に対して複数コピー、2個以上、有する、又はその逆になるように有することが好ましい場合もあるだろう。これは、多種の方法で達成し得る。例えばVIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するベクタが、他のポリヌクレオチド配列を含有するベクタよりも高コピー数を有するような、あるいはその逆であるような、別々のベクタ又はプラスミドを用いてもよい。この場合、ホスト中にプラスミドが継続的に維持されていることが確認できるよう、この2つのプラスミドに異なる選択可能なマーカを付けることが好ましいであろう。選択的には、一方又は両方の遺伝子を干すとゲノムに組み込んで、これらの一方の遺伝子を増幅遺伝子(例えばdhfr 又はメタロチオネイン遺伝子の一つ)と結び付けてもよいかも知れない。
代替的には、異なる転写開始速度を有する2つの転写調節領域を利用することで、VIII因子タンパク質の発現を亢進するか、あるいは、VIII因子タンパク質に対して他のプロセッシング因子ポリペプチドのいずれかの発現を亢進してもよいかも知れない。もう一つの代替案として、一個のプロモータがVIII因子タンパク質を低レベルで構成的発現させるものであり、第二のプロモータが他の産物を高レベルで誘導性発現させるような、異なるプロモータを用いることができる。例えばよく知られている哺乳動物プロモータであるCMV、MMTV、SV 40 又はSRαプロモータなど、多種のプロモータが、選択されるホスト細胞について公知であり、当業者であれば容易に選択することができ、本発明で利用することができる。
ホスト細胞
適したホスト細胞には、原核生物、酵母、又は、哺乳動物細胞及び昆虫細胞などの高等真核細胞がある。哺乳動物などの多細胞生物を由来とする細胞は、組換えVIII因子タンパク質合成用のホスト細胞として適している。細胞培養におけるこのような細胞の増殖は慣例的な手法 (Tissue Culture, Academic Press, Kruse and Patterson, editors (1973))になっている。有用なホスト細胞株の例はVERO 及びHeLa 細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣 (CHO) 細胞株、並びにWI138、HEK 293、BHK、COS-7、CV、及びMDCK 細胞株である。このような細胞のための発現ベクタには、通常、(必要であれば)複製開始点、発現させようとするVIII因子タンパク質をコードするDNAの上流に位置するプロモータ、及び、リボソーム結合部位に沿ってそれに作動可能に繋げられたRNA
スプライス部位(イントロン含有ゲノムDNAを用いた場合)、ポリアデニレーション部位、及び転写終了配列が含まれる。ある実施態様では、発現をチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO) 細胞で、引用をもってここに編入することとする米国特許第5,888,809号の発現系を用いて行わせる。
脊椎動物細胞を形質転換するのに用いる発現ベクタ内の転写及び翻訳制御配列はしばしばウィルス源により提供される。例えば通常用いられるプロモータはポリオーマ、アデノウィルス2、及びシミアンウィルス40 (SV40)を由来とする。例えば米国特許第 4,599,308号を参照されたい。
複製開始点は、SV 40 又は他のウィルス(例えばポリオーマ、アデノウィルス、VSV、又はBPV) 源を由来とするなど、外因性の開始点を含めるようにベクタを構築することで提供してもよく、あるいは、ホスト細胞の染色体複製機序に提供させてもよい。ベクタがホスト細胞の染色体に組み込まれる場合、後者でしばしば充分である。
ウィルス性の複製開始点を含有するベクタを用いるのではなく、選択可能なマーカと、VIII因子タンパク質のDNAとによる同時形質転換法で哺乳動物細胞を形質転換することができる。適した選択可能なマーカの例はジヒドロ葉酸レダクターゼ (DHFR) 又はチミジンキナーゼである。この方法は更に、引用をもってここに援用することとする米国特許第4,399,216 号に解説されている。
組換え脊椎動物細胞培養でVIII因子タンパク質の合成に適応させるのに適した他の方法には、M-J. Gething et al., Nature 293, 620 (1981);N. Mantei et al.,
Nature 281, 40;A. Levinson et al., EPO 出願番号 117,060A 及び117,058Aに解説されたものがある。
昆虫細胞(例えば培養スポドプテラ-フルギペルダ(原語:Spodoptera frugiperda)細胞)などのホスト細胞や、バキュロウィルス発現ベクタ(例えばオートグラファ-カリフォルニア(原語:Autographa californica )MNPV、トリコプラシア-ニー(原語:Trichoplusia ni )MNPV、ラチプラシア-オウ(原語:Rachiplusia ou )MNPV、又はガレリア-オウ(原語:Galleria ou )MNPVを由来とするベクタ)などの発現ベクタを、本発明を行う際に、Smithらの米国特許第
4,745,051 号及び第4,879,236号に解説された通りに用いてよい。概略的には、バキュロウィルス発現ベクタは、発現させようとする遺伝子を含有するバキュロウィルス・ゲノムを、ポリヘドリン遺伝子に、ポリヘドリン転写開始シグナルからATG開始部位までの一範囲の位置で、バキュロウィルス・ポリヘドリンプロモータの転写制御下に挿入して含む。
原核生物ホスト細胞には、エシェリヒア-コリ(原語:Escherichia coli (E. coli) )又はバシリ(原語: Bacilli)などのグラム陰性又はグラム陽性生物が含まれる。より高等な真核細胞には、以下に解説するように哺乳動物起源の樹立細胞株がある。ホスト細胞の例はE. coli W3110 (ATCC 27,325)、E. coli B、E. coli X1776
(ATCC 31,537)、E. coli 294
(ATCC 31,446)である。幅広い適した原核生物及び微生物ベクタを利用することができる。E. coli は典型的にはpBR322を用いて形質転換させられる。組換え微生物発現ベクタで最も普通に用いられるプロモータには、ベータラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及び乳糖プロモータ系 (Chang et al., Nature 275, 615 (1978); 及び Goeddel et al., Nature 281, 544 (1979))、トリプトファン (trp) プロモータ系 (Goeddel et al., Nucleic Acids Res. 8, 4057 (1980) 及び EPO App. Publ. No. 36,776) 及び tac プロモータ (H. De Boer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 21 (1983))がある。このプロモータ及びシャイン-ダルガルノ配列(原核生物ホストでの発現の場合)を本VIII因子タンパク質をコードするDNAに作動可能に連結する、即ちこれらは、このDNAからのVIII因子タンパク質メッセンジャーRNAの転写を促進するように配置される。
酵母培養株などの真核性微生物も、VIII因子タンパク質コーディング・ベクタで形質転換できよう。例えば米国特許第4,745,057号を参照されたい。サッカロミセス-セレビジエ(原語:Saccharomyces cerevisiae)は、下等真核性ホスト微生物の中で最も普通に用いられるが、数多くの他の株が通常、利用することができる。酵母ベクタには、2ミクロンの酵母プラスミドからの複製開始点又は自律的複製配列(ARS)、プロモータ、一種以上のVIII因子タンパク質をコードするDNA、ポリアデニレーション及び転写終了のための配列、並びに選択遺伝子を含めてよい。プラスミドの一例はYRp7、(Stinchcomb et
al., Nature 282, 39 (1979); Kingsman et al., Gene 7, 141 (1979); Tschemper et
al., Gene 10, 157 (1980))である。酵母ベクタ内の適したプロモータ配列には、メタロチオネイン、3-ホスホグリセレートキナーゼ
(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255, 2073 (1980) 又は他の解糖酵素(Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg. 7,
149 (1968);及び Holland et al.,
Biochemistry 17, 4900 (1978))のためのプロモータがある。酵母発現で用いるのに適したベクタ及びプロモータは更にR. Hitzeman et al., ヨーロッパ公報 No. 73,657に解説されている。
本発明のクローニングされる遺伝子は、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、ブタ、及びヒトを含め、いずれかの起源種のVIII因子タンパク質をコードするものであろう。開示された、又は、引用をもってここに援用されたVIII因子タンパク質をコードするDNAとハイブリダイズ可能であるVIII因子タンパク質をコードする核酸分子も考察されるところである。このような配列のハイブリダイゼーションは、低ストリンジェンシーな条件又はストリンジェントな条件下で行われてよい(例えば標準的なインシトゥーハイブリダイゼーション検定においてここで開示されたVIII因子タンパク質をコードするDNAに対し、sh stringency of 0.3M NaClの洗浄ストリンジェンシー、0.03M クエン酸ナトリウム、0.1% SDS で 60° C 又は更に 70° C で表される条件。 J.
Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2d Ed. 1989)(Cold
Spring Harbor Laboratory)を参照されたい)。
上述したように、本発明は、機能的なVIII因子を提供する方法を提供する。本戦略には、VIII因子タンパク質を一種以上のプロセッシング因子と一緒に単一の細胞内で同時発現させるステップが含まれよう。概略的には、本方法は、VIII因子タンパク質及び/又はプロセッシング因子を発現するホスト細胞を培養するステップ;及びその後、当該タンパク質を培養物から回収するステップ、を含む。培養は、成長媒質を容れたいずれかの適した発酵容器内で、選ばれた特定のホスト細胞によるVIII因子タンパク質の発現に適した条件下で、行わせることができる。VIII因子タンパク質はこの培養基から直接採集することも、あるいはこのホスト細胞を溶解させ、そこからVIII因子タンパク質を採集することもできる。こうしてVIII因子タンパク質を公知の技術に従って更に精製することができる。
一般的な傾向として、本発明に従って過剰発現又は生産した組換えタンパク質の純度は、当該タンパク質の至適な活性及び安定性に至ることが当業者に公知の適した純度であろう。例えば、組換えVIII因子タンパク質は超高純度のものかも知れない。ある実施態様では、当該の組換えタンパク質は、アフィニティ・クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、及び/又はイムノアフィニティ・クロマトグラフィなどの複数のクロマトグラフィ精製ステップに晒されて、製造中、保管中、及び/又は使用中の当該タンパク質のフラグメント化、活性化及び/又は分解を引き起こす物質を取り除かれている。精製により取り除いてもよいこのような物質の例示的な例には、スロンビン及びフォン・ウィルブランド因子;修飾酵素などの他のタンパク質混入物質;ハムスター及びマウスタンパク質など、組換えタンパク質の生産中に生産細胞から組織培養基に放出されるタンパク質;脂質などの非タンパク質性混入物質;並びに、リポタンパク質など、タンパク質及び非タンパク質混入物質の混合物、がある。VIII因子タンパク質の精製は当業で公知である。
VIII因子 DNA コーディング配列や、その発現のためのベクタ及びホスト細胞もここで提供される。
更にここでは、商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を発現する細胞を識別する方法も提供される。同方法は、a)プロモータに作動可能に連結した、VIII因子タンパク質をコードする核酸分子を細胞内に導入するステップであって、前記プロモータは商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を過剰発現又は生産する能力を特徴とする、ステップと;b)VIII因子を過剰発現又は生産するための条件下で前記細胞をインキュベートするステップと;c)他のクローンに比較して高レベルのFVIIIを発現するクローンを選抜するステップと;d)ステップc)で選抜された細胞を再クローニングするステップと;そしてe)ステップc)で選抜されたものに比較してより高レベルのFVIIIを発現する少なくとも一つのサブクローンを識別するステップと、を含む。この方法には、更に、f)ステップe)で識別された少なくとも一つのサブクローンを再クローニングするステップと;g)ステップe)で選抜された少なくとも一つのサブクローンに比較してより高レベルのFVIIIを発現する少なくとも一つのサブクローンを識別するステップと、を含めてもよい。ここで提供するいずれのVIII因子タンパク質を、これらの方法との関連で用いてよい。
本発明は以下の例示的な実施例及び手法を参照されれば更に理解されるであろうが、これらの実施例及び手法は純粋に例であり、本発明の真の範囲を制限するものとして捉えられてはならない。実施例1では、本発明のA1-ドメイン変異型FVIIIの調製及び分析を解説している。実施例2では本発明のAPC耐性FVIIIの調製及び分析を解説している。実施例3では本発明の失活耐性FVIIIの調製及び分析を解説している。実施例4ではFVIIIaを安定化させる分子間タンパク質対タンパク質相互作用の特徴づけを解説している。実施例5ではFVIIIaのin vivoでの血漿安定性の増加を解説している。実施例6では本発明の失活耐性FVIIIの誘導性vWF結合を解説している。実施例7では本発明の失活耐性FVIIIの親和性及び活性を解説している。実施例8では、動物における失活耐性FVIII及び失活耐性FVIII/ESH8複合体の薬物耐性及び効験を解説している。実施例9では本発明のFVIII Bドメイン変異体の調製及び分析を解説している。実施例10では本発明のFVIIIBドメイン変異体の特徴付け及び分析を解説している。実施例11では操作されたFVIIIのin vivoでの発現を解説している。実施例12では、本発明のFVIIIタンパク質及びヌクレオチド配列の医薬組成物及び使用法を解説している。
実施例
実施例1
A1-ドメイン変異型VIII因子の調製及び分析
統計アルゴリズム(Blond-Elguindi,
S. et al., Cell 75:717-728 (1993)) を用いて BiP の7量体ペプチドのFVIII の226-336領域(残基1は天然の成熟型FVIIIタンパク質の一番目のアミノ酸残基)への結合可能性を予測した。+10を越えるいずれかのスコアはBiPに対する結合可能性が非常に高いのだが、残基 Leu303 からPhe309 までは+14のBiP 結合スコアを有することが見出された。 Fay, P.J. et al., J. Biol. Chem. 266:8957-8962 (1991)。この領域は、11個のアミノ酸残基のうちの7個がLeu 又は Pheである疎水性クラスタを含有する。
まず、潜在的BiP結合ポケットにある7個すべてのLeu及びPhe残基をAlaに変異させた。オリゴヌクレオチド重複−延長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異誘発法による部位指定変異誘発法を用いた。FVIIIの残基226-336をFV由来の相同な残基(残基198-313)に置換したFVIII/FV キメリックを作製した。Marquette, K.A. et al., J. Biol. Chem. 270:10297-10303 (1995)。図1Aは、野生型FVIII及びFVドメイン構造の図である。変異を含む部分的に相補なプライマを、FVIII/FV キメリック cDNA の226及び336のMluIを狙った2つのプライマと一緒に用いて、指定された変異を含有する2つの重複産物を増幅した。これら2つの断片を単離し、2つのMluI部位を含有するプライマを用いたPCRにより互いに融合した。こうしてその結果得られたMluI 断片を、発現ベクタpMT2に入れて、 MluI 消化後のFVIII/FV
226-336 キメラ中にサブクローニングした。全ての変異は、PCR増幅後の領域のDNA配列決定により確認した。これらの変異体をコードする発現ベクタを COS-1 細胞にトランスフェクトし、その調整培地を60時間目に採取して、コーテスト活性検定によりFVIII活性を分析した。潜在的BiP結合ポケット内の7個全ての7 Leu 及びPhe 残基をAlaに変異させた場合、その分子は分泌されなかった。次に、Phe 残基を個別にFV内の各アミノ酸残基に変異させた。F309S 変異体(単独で、又は、他の変異体と組み合わせて)の分泌はいくつかのトランスフェクション実験で再現可能に2倍に増加した。図2に示すように、他の隣り合う残基(F293S, F306W) での変異は分泌を向上させなかった。F309S変異体の分泌増加はFVIII抗原の2倍の増加と相関関係にあったことから、野生型FVIIIと同様な比活性が示された。 [35S]-メチオニンで20分間、代謝標識し、過剰量の未標識のメチオニンを含有する培地で4時間追跡したところ、F309 及びQ,F305/309K,S 変異体の分泌増加は野生型FVIIIに比較したときの分泌増加と相関関係にあることが示された。
F309S変異体を発現する安定にトランスフェクトしたCHO 細胞株を操作した。ジヒドロ葉酸レダクターゼ発現に向けて選抜した35の元のトランスフェクトCHO
細胞クローンのうち、有意なレベルのFVIIIを発現する5つのクローンが得られた(ほぼ1 U/ml/106 細胞/日)。これらのクローンのうち二つが、1000個を越える元のトランスフェクト細胞クローンをスクリーニングすることにより得られた元の10A1細胞株と同じレベルのFVIIIを発現する。Kaufman, R.J. et al., J. Biol. Chem. 263:6352-6362 (1988)。このように、低濃度のメトトレキセート内で、変異体では、高レベルのFVIII発現をより容易に得ることが可能になる。
メトトレキセート中の更なる選抜を行って、FVIII/細胞の最大生産性が向上するかどうかを判定する。実験を行って、安定にトランスフェクトしたCHO細胞中のF309W/S 機能的 FVIII変異体の分泌に関するBiP相互作用及びATP依存性を測定する。
実施例2
APC耐性VIII因子の調製及び分析
実験の手法
材料. FVIII欠陥血漿と正常なプールされたヒト血漿をGeorge King Biomedical社 (カンサス州オーバーランド・パーク)から得た。CL4B-セファロースに結合させたFVIII(F8)の重鎖に対するモノクローナル抗体を用いたが、これは公知の方法により調製できよう。活性化した部分的スロンボプラスチン(自動化APTT 試薬)はGeneral
Diagnostics Organon Teknika 社(ノースカロライナ州ダーハム)から購入した。大豆トリプシン阻害剤、フェニルメチルスルホニルフルオリド (PMSF) 及びアプロチニンはBoehringer,
Mannheim 社(ドイツ、マンハイム)から購入した。ヒト
Figure 2009542225
-スロンビンはSigma Chemical社 (ミズーリ州セントルイス)から得た。ヒトAPC はEnzyme Research Laboratories 社 (インディアナ州サウス・ベンド)から購入した。ダルベッコの改良イーグル培地 (DMEM)、イーグル培地の
Figure 2009542225
-改良 (
Figure 2009542225
-MEM) 及び無メチオニン DMEM はGibco BRL 社(メリーランド州ガイザーズバーグ)から得た。ウシ胎児血清はPAA Laboratories 社(カリフォルニア州ニューポート・ビーチ)から購入した。
プラスミドの構築。 前に解説されたように、ギャップのあるヘテロ二重鎖法により部位指定オリゴヌクレオチド媒介性変異誘発を行って、Arg336Ile (R336I) 及び/又は Arg562Lys (R562K) 変異を、発現ベクタpED6内にクローニングされた
FVIII cDNA に導入した。Pittman, D.D. et
al., Method in Enzymology Vol. 222 (San
Diego, CA; Academic
Press, Inc.) p. 236 (1993)) 及び Toole, J.J.
et al., PNAS (USA) 83:5939 (1986)。この変異を、広汎な制限エンドヌクレアーゼ消化及びDNA配列解析で確認した。その結果の分子をR336I 又はR562Kと命名し、ここではAPC耐性FVIIIと呼ばれる二重変異体はR336I/R562Kと命名した。加えて、R336I/K338I 二重変異体も構築した。
合成及び分泌の分析。 プラスミドDNA をCOS-1 細胞にジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストラン法により解説された通りにトランスフェクトした。Pittman, D.D. et al., Method in Enzymology Vol. 222 (San
Diego, CA; Academic
Press, Inc.) p. 236 (1993)。トランスフェクションから60時間後に調整培地を 10% 熱失活ウシ胎児血清(FBS) の存在下でFVIII検定にむけて採集した。次に、細胞を前に解説した通りに[35S]-メチオニンで代謝標識した。Pittman,
D.D. et al., Method in Enzymology Vol. 222 )(カリフォルニア州サンディエゴ;アカデミック・プレス社) p. 236 (1993)。標識後の調整培地を採集し、CL-4Bセファロースに結合したF8抗体で免疫沈降させた。この調整培地から免疫沈降したタンパク質を、Triton X-100を含有するPBSで洗浄し、50 mM Tris-HCl pH 7.5、150 mM NaCl、2.5 mM CaCl2 及び 5% グリセロール(緩衝液A)に再懸濁させ、 37°C の8.5 U/ml のスロンビン有り又は無しで1時間、処理した。試料を硫酸ドデシル-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法 (SDS-PAGE) により還元条件下で分析し、En3hance(マサチューセッツ州ボストン、Dupont社)での処置による蛍光間接撮影後にオートラジオグラフィーで視覚化した。
FVIIIのAPC切断による分析。 放射性標識し、免疫沈降させたFVIIIを緩衝液Aで再懸濁させ、37°C の100
Figure 2009542225
g/ml イノシチン及び 10 mM CaCl2 の存在下で30
Figure 2009542225
g/ml のウシ APC で1.5時間、処理した。その結果のポリペプチドを SDS-PAGE で分離し、上述したようにオートラジオグラフィーで視覚化した。
CHO細胞株の作製及びFVIIIの精製。 大量のFVIIIを得るために、野生型及びAPC耐性FVIIIをコードするDNAを含有する、安定にトランスフェクトしたCHO細胞株を操作した。発現プラスミドをCla1で消化し、 CHO 細胞内にリポフェクション法を用いてトランスフェクトした。Pittman, D.D. et al., Method in Enzymology Vol. 222 (San
Diego, CA; Academic
Press, Inc.) p. 236 (1993)。調整培地を、CL-4Bセファロースに結合させたF8抗体のカラムに適用した。結合したFVIIIを、60%エチレングリコールを含有する緩衝液中で溶離させ、10% ポリエチレングリコール (MW 15K-20K) 含有緩衝液に対する透析で濃縮した。Fay, P.J. et al., J. Biol.
Chem. (出版物) (1996)。濃縮後の試料を5mM CaCl 2 (緩衝液B)を含有する改良緩衝液に対して透析した。この精製済み標品のFVIII 凝血活性は約20 U/mlだった。精製済みタンパク質の構造をSDS-PAGE 及び銀染色法 (Bio-Rad
Laboratories;カリフォルニア州ヘラクレス)で評価した。
FVIII検定。 FVIII活性をFVIII欠陥血漿を基質として用いた一段階凝血検定で測定した。一単位のFVIII 活性は、プールされた1mlの正常ヒト血漿中に測定される量である。スロンビン活性化のために、調整培地を緩衝液A内に希釈し、 1 U/ml を加えて室温でインキュベートした。次第に時間を長くしたインキュベート後、アリクォートを希釈し、FVIII活性について検定した。
FVIIIのAPC失活。 緩衝液B中に3 U/ml になるように希釈した精製済みFVIII試料を、100
Figure 2009542225
g/ml イノシチン及びヒト APC 100 ng/ml 又は対照としての緩衝液のみに混合した。
37°Cでの次第に長くした時間後、アリクォートを希釈し、残留FVIII を判定した。
APC耐性検定におけるAPC耐性FVIIIの効果。 20 U/ml の精製済み FVIII をFVIII 欠陥血漿で1 U/mlまで希釈した。これらの試料を市販の APC 耐性検定キット (Coatest APC レジスタンス;スウェーデン、モルンダール、Chromogenix社)でメーカに従って検査した。
結果
R336I、R562K、及びR336I/R562K 変異型FVIII分子は野生型FVIIIと同様なFVIII活性を備えた状態で効率的に分泌される。 FVIII変異体の活性及び分泌をCOS-1サル細胞の一過性DNA トランスフェクションで測定した。調整培地中のFVIII凝血活性は、全ての変異体が野生型FVIIIと同様なほぼ300 mU/ml のFVIII活性を有することを実証した(表1を参照されたい)。調整培地試料のスロンビン活性化は、スロンビン活性化の速度及び凝血原活性に何の違いもないことを示していた。図3に示すように、スロンビン添加後10秒で全試料がすぐに活性化し(3乃至5倍)、そしてすぐに失活した。図3で、記号は野生型FVIII (X)、R336I (・)、R562K (◇) 及びR336I/R562K (▲)を表す。FVIII分泌を測定するために、トランスフェクト細胞を[35S]-メチオニンで2時間、代謝標識し、その後4時間、過剰量の未標識のメチオニンを含有する媒質中で追跡した。分泌後のタンパク質を標識後の調整培地の免疫沈降で分析した。図4Aに示すように、野生型FVIII 及び全ての変異体は 300
kDa 一本鎖及び200 kDa 重鎖及び80 kDa 軽鎖と同じレベルで分泌した。図4Bに示すように、全ての分子でスロンビン切断は、予想通り、73 kDa で泳動する軽鎖と50 kDa のA1-ドメイン及び43 kDa のA2-ドメインに相当する重鎖由来フラグメントとを生じた(図4B)。加えて、野生型FVIII 及びR562K (図4B、レーン7及び9)では、残基336に何らかの切断があって45
kDa の種が生じていた。対照的に、R336I 及び R336I/R562K (図4B、レーン8及び10)変異体はこの 45 kDa の種を生じなかったことから、残基336でのイソロイシン変異は過剰なスロンビンによる切断に耐性であることが示された。図4A及び4Bでは、分子サイズマーカは左側に示されており、「Mock」はDNAを受け取らなかった細胞を表し、そしてsc、hc 及び lc はそれぞれ一本鎖、重鎖及び軽鎖を表す。
表1
調整培地中のトランスフェクトCOS-1細胞からのFVIII凝血活性
Figure 2009542225
データは平均±SD
R562K は変異部位でAPC切断に完全に耐性であり、そしてR336I はほとんど耐性である。 [35S]-メチオニン標識された免疫沈降させたFVIII をAPCで処理することにより、FVIIIaのAPC切断を評価した。野生型FVIIIのAPC切断産物をSDS-PAGEで5-15%勾配ゲル上で分析したところ、A1-ドメインを表す50 kDa 及び45 kDaの重鎖フラグメントと、A2-ドメインを表す43 kDa のフラグメントが検出されたが、これらはDNAを受け取らなかった細胞の調整培地中には存在しなかった。図5A、レーン2に示すように、25 kDa というより低分子量の産物が検出可能であり、A2-ドメインのカルボキシ末端を表していた。図5A、レーン3に示すように、R336I FVIII は残基336での切断に対し、50 kDa の切断産物の増加と45 kDa切断産物での減少に示されるように、部分的に耐性であった。R336I は25 kDa 種の量に何の変化も示さなかったことから、残基562での効率的な切断が示唆された。図5A、レーン4に示すように、R562K 変異型FVIII は、残基562での切断に対し、43 kDa フラグメントの増加と25 kDa フラグメントの消失に示唆されるように耐性であった。しかしながら、R562K変異体は、45 kDa フラグメントの集中的な増加に示されるように336で効率的に切断させられた。R336I/R562K
二重変異体をAPC処理したところ、野生型FVIIIに比較して50 kDa 及び43 kDa 種が増加し、45 kDa が減少し、25 kDa 種が消失した(図5A、レーン5を参照されたい)。R336I変異体のAPC切断を由来とする45 kDa フラグメントの泳動は8%のポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGEによる分析では僅かに減少した(図5B、レーン7及び8を比較されたい)。この変異体が残基338の隣接するリジンで切断され得るかどうかを判定するために、R336I 及びK338I 二重変異体を部位指定変異誘発法により作製した。R336I/K338I 変異体はAPC消化しても45 kDa フラグメントを生じなかった(図5B、レーン9)。図5A及び5Bでは、分子サイズマーカを左側に示し、「Mock」はDNAを受け取らなかった細胞を表す。
FVIII中のArg336 及びArg562 の両方での変異誘発が、APC失活に対する耐性には必要である。 フォン・ウィルブランド因子 (vWF) はFVIIIのAPC失活を阻害する。Koedam, J.A. et al., J. Clin. Invest. 82:1236 (1988) 及び Fay, P.J. et al., J. Biol. Chem. 266:2172
(1991)。従って、APC失活を研究するために、野生型及びAPC切断部位変異体FVIII分子を発現する、安定にトランスフェクトしたCHO 細胞を操作した。調整培地をFVIII精製に向けて採集した。図6に示すように、精製済みタンパク質の還元条件下でのSDS-PAGE及び銀染色法によるに分析で、全ての分子が、分解は最小限でvWFのない重鎖(hc)及び軽鎖(lc)の同様なポリペプチド組成を有することが実証された。次に、これらの精製済みタンパク質をAPCによる機能的失活について分析した。図7Aに示すように、R336I/R562K (▲) 二重変異体を除く全ての試料の活性が、37℃でAPCの非存在下で10分間インキュベートした後に80% まで減少し、その後は60分間の間、安定であった。APCの存在下では、野生型 FVIII
(X) は 38%の残留活性を10分目の時点で有し、そして8% の残留活性を60分目の時点で有していた。APCの存在下におけるR336I (・) 及びR562K (◇) 一重変異体の失活は同様であり、両者とも野生型FVIIIよりも遅かった。60分後、当初の活性のそれぞれ41% 及び30% がR336I 及びR562K 変異体について残っていた。対照的に、R336I/R562K (▲) 二重変異体は失活に対して耐性であり、60分後でも76%の活性が残っていた。このようにこの結果は R336I/R562K二重変異体はおおよそ耐性であり、両方の一重変異体は APC 失活に対しては部分的にしか耐性でないことを実証している。
APC耐性FVIIIを検出する上でのAPC耐性検定キットの能力。 現在のところ、市販のものを入手できるAPC耐性検定キット(Coatest
APC 耐性;スウェーデン、モルンダール、Chromogenix社)が、FV R506Q 変異に関連する血栓性疾患患者の血漿をスクリーニングするために用いられている。APC耐性FVIIIを検出する上でのこのキットの能力を、精製済み野生型又は精製済み変異型FVIIIのいずれかでFVIII欠陥血漿を再構築することにより、検査した。当該のAPC耐性比は、APC存在下における凝血時間の測定値をAPC非存在下での凝血時間で除算して計算された(表2を参照されたい)。R336I/R562K 二重変異体のみが、APC耐性表現型を示す数値である2よりも低いAPC耐性比を示した。Svensson, P.J. et al., N. Engl. J.
Med. 336:517 (1994)。
Figure 2009542225
市販の検定キットにおける野生型FVIII及び変異型のAPC耐性比
データは平均±SDを表す。
議論
変異体はすべて、野生型FVIIIに同様なFVIII活性を持った状態でCOS-1細胞から効率的に分泌された。APC切断の分析を、免疫沈降後の調整培地中のタンパク質の [35S]-メチオニン標識及びFVIIIの分析により行った。R336I 変異体は残基336での切断に対して部分的には耐性であったが、Arg562での切断には感受性だった。他方、R562K 変異体は残基562での切断に対して完全に耐性であったが、Arg336での切断には感受性だった。これらの結果は、Arg336 又はArg562 のいずれの単一の変異でも、変異後の部位での切断に影響すること、そしてFVIII中のこれら二箇所の部位にAPC切断に要される序列はないことを示している。二重変異体R336I/R562K は残基336での切断に対して部分的に耐性であるが、残基562では完全に耐性だった。R336I の切断はおそらくは隣の残基 Lys 338で起きたと考えられるが、それはなぜなら二重変異体R336I/K338I はこの部位での切断に対して完全に耐性だったからである。これらの結果は、FVIIIのAPC切断に干渉できること、即ち、それは切断にとってストリンジェントな間隔上の要件を有さないこと、を示している。
FVIII中のAPC切断の動態分析から、Arg562がArg336に比較して優先的に切断されたこと、そしてこの最初の切断はコファクタ活性の消失と相関する可能性が高いこと、が示された。Fay, P.J. et al., J. Biol. Chem. 266:20139 (1991) 残基562での切断耐性の結果としての、R562K一重変異体のゆっくりとした失活は、この仮説と、そして結果的な失活はArg336での切断が原因であったことと、合致した。しかしながら、R336I 一重変異体はArg562での切断で部分的にしか、失活しなかった。両者の一重切断部位変異体とも、ここで解説する条件下では同じような速度で失活したことが示されている。Arg336 及び Arg562 での切断が同時に起きると想定すると、FVIIIの失活にとってのArg336 又は Arg562 のいずれの切断の効果も同様であると思われる。野生型FVIIIの急速な失活は、FVIIIの失活にとっての Arg336 及び Arg562 での切断の相乗的な役割が原因だと考えられる。
現在のところ、FVIIIのAPC切断部位に変異を持つ患者の報告はない。これらの変異がAPC耐性表現型を有するかどうかを評価するために、APC耐性FVIII分子を市販のAPC耐性検定キット(コーテスト APC 耐性;スウェーデン、モルンダール、Chromogenix社製)で検査した。R336I/R562K
二重変異体のみがより低いAPC耐性比を示した。従ってこの検定キットは、FVIIIの単一APC切断部位変異体のいずれをも検出できない。FVIIIとは対照的に、FV APC 一重切断部位変異体であるArg306Gln 及び Arg506Glnの両者とも、この検定ではAPC-耐性比の低下を示した。このように、この結果は両者のAPC切断を阻害しない限り、市販のAPC耐性キットでは FVIII APC 耐性変異体を検出できないことを示している。
実施例3
失活耐性VIII因子の調製及び分析
実験手法
材料. CL-4Bセファロースに結合させた抗重鎖VIII因子モノクローナル抗体(F-8)と精製済み組換えVIII因子タンパク質とを
Genetics Institute 社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から得た。抗ヒトvWF 西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)-結合ウサギ抗体はDako 社 (カリフォルニア州カーピンテリア)から得られた。抗軽鎖 VIII 因子モノクローナル抗体 ESH-4 及びESH-8はAmerican Diagnostica社(コネチカット州グリニッチ)から得られた。VIII因子欠陥及び正常プールヒト血漿はGeorge
King Biomedical社 (カンサス州オーバーランド・パーク)から得られた。活性化した部分的スロンボプラスチン(自動化APTT 試薬)及びCaCl2 はGeneral Diagnostics Organon Teknika
Corporation 社(ニューカロライナ州ダーハムから得られた。ヒトスロンビン、大豆トリプシン阻害剤、フェニルメチルスルホニルフルオリド及びアプロチニンはBoehringer、 Mannheim 社(ドイツ、マンハイム)から得られた。O-フェニリンジアミンジヒドロクロリド (OPD) はSigma Chemical 社(ミズーリ州セントルイス)から得られた。 [35S]-メチオニン(>1000Ci/mmol)
はAmersham 社 (イリノイ州アーリントン・ハイツ)から得られた。En3Hance
はDupont 社(マサチューセッツ州ボストン)から得られた。ウシ胎児血清はPAA Laboratories
社 (カリフォルニア州ニューポート・ビーチ)から得られた。ダルベッコの改良イーグル培地 (DMEM)、無メチオニン DMEM、OptiMEM、ビオチン N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、及びストレプトアビジン-西洋わさびペルオキシダーゼ結合体はGibco
BRL 社(メリーランド州ガイザーズバーグ)から得られた。
プラスミドの変異誘発。 変異誘発を、FVIII
cDNA(pMT2VIII)を含有する哺乳動物発現ベクタ
pMT2(37) で行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いたオリゴヌクレオチド部位指定変異誘発法により変異型プラスミドを作製した。オリゴヌクレオチド指定変異誘発法の詳細な解説についてはSmith, M., Annu. Rev.
Genet. 19:423 (1985)を参照されたい。
コンストラクト1 − 90/73 R740K。 ベクタ pMT290/73 をDNAテンプレートとして用いた。
90/73 コンストラクトは Nesheim, M. et
al., J. Biol. Chem. 266: 17815-17820 (1991) 及びPittman, D. et al., Blood 70, Abstract No. 392 (1987)に解説されている。概略的には、 90/73 コンストラクトは野生型 FVIII cDNA 配列であるが、この中でB-ドメイン及びvWF 結合部位(軽鎖の酸性領域)は欠失させてある(del 741-1689)。オリゴヌクレオチド指定変異誘発を用いてPCR断片
KpnI/R740K/ApaIを作出し、 KpnI/ApaI で消化した pMT290/73にライゲートした。
コンストラクト2 − 90/b/73 R740K。 ベクタ pMT2VIII をDNAテンプレートとして用いた。 オリゴヌクレオチド指定変異誘発法を用いて PCR断片 KpnI/b/1689 MluI (但しbは野生型配列のアミノ酸残基741から793をコードするDNA配列を表し、それにMluIの残基794及び795の予想上のアミノ酸スレオニン及びアルギニンが続く/1689)を作出し、これを
KpnI/MluI で消化したベクタ pMT2
VIII/1689/MluIにライゲートした。以下のアミノ酸配列(及び同アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)をアミノ酸配列スペーサとして用いてもよく、このとき残基794はスレオニンでも、又はロイシンでもよい:
Figure 2009542225
コンストラクト3 − 90/b/73 R740A。 ベクタ 90/b/73 を DNAテンプレート(但しこの場合のbは上述されており、残基794のスレオニンをコードするものである)として用いた。オリゴヌクレオチド指定変異誘発法を用いてPCR 断片
KpnI/R740A/b/ApaIを作出し、これを、 KpnI/ApaI で消化したpMT290/73にライゲートした。
コンストラクト4 − 90/b/73 R740A/R1689A (DM1)。 ベクタ 90/b/73
R740A をDNAテンプレート(但しこの場合のbは上述されており、残基794のロイシンをコードするものである)として用いた。オリゴヌクレオチド指定変異誘発法を用いてPCR断片
KpnI/R740A/b/R1689A/ApaIを作出し、これを、 KpnI/ApaI で消化したpMT290/73にライゲートした。
コンストラクト5 − 90/b/73
R336I/R740A (DM2)。 ベクタPMT2VIII/R336Iを SpeI 及び KpnIで消化した。この断片を、SpeI/KpnI
で消化した90/b/73 R740A (但しこの場合のbは上述されており、残基794のスレオニンをコードするものである)にライゲートした。
コンストラクト6 − 90/b/73 R336I/R562K/R740A (IR8)。 ベクタ PMT2VIII/R562K を BglII 及びKpnIで消化した。BglII/R562K/KpnI
断片を、BglII/KpnIで消化した 90/b/73 R336I/R740A (但しこの場合のbは上述されており、残基794のスレオニンをコードするものである)にライゲートした。
野生型FVIII cDNA 配列を含有するプラスミドをFVIII WTを命名した。全てのプラスミドは塩化セシウムを通じた遠心分離で精製され、制限エンドヌクレアーゼ消化及びDNA配列解析により特徴付けされた。
DNAトランスフェクション及び解析。 プラスミドDNAをCOS-1細胞にDEAE-デキストラン法によりトランスフェクトした。10%ウシ胎児血清の存在下で、トランスフェクト後64時間目に調整培地を採集した。FVIII 活性を、MLA Electra 750上での一段階APTT凝血検定により測定した。細胞をトランスフェクトから64時間後に30分間、 [35S]-メチオニン(300 mCi/ml
を無メチオニン媒質に入れて)で代謝標識した後、100-倍の過剰量の未標識メチオニン及び0.02% アプロチニンを含有する媒質中で4時間、追跡することにより、タンパク質合成及び分泌を分析した。標識されたタンパク質を含有する細胞抽出物と調整培地とを採集した。WT 及び変異型FVIII タンパク質を、等しい比率の細胞抽出物及び調整培地から、CL-4B セファロースに結合させたF-8により免疫沈降させた。免疫沈降物を洗浄し、ラエムリ(原語:Laemmli)試料緩衝液に再懸濁させた。還元性SDS-低ビス-8% ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により試料を分析した。このゲルをEn3Hance
で処理し、タンパク質をオートラジオグラフィで視覚化した。
タンパク質精製。 部分的に精製されたIR8 タンパク質は、過渡的にトランスフェクトしたCOS-1細胞を入れた200 mlの調整培地から、イムノアフィニティ・クロマトグラフィーにより得られた。部分的に精製されたFVIII WTタンパク質は、安定にトランスフェクトしたCHO細胞の200 mlの調整培地から得られ、同じ方法でイムノアフィニティ精製された。
エチレングリコール含有緩衝液中に溶離したタンパク質を透析し、ポリエチレングリコール(MW ~15-20,000)-含有緩衝液に対して濃縮し、
-70° Cで保存した。
FVIII
活性検定。 FVIII 活性を一段階APTT 凝血検定でヒトFVIII-欠陥血漿の再構築により測定した。スロンビン活性化については、タンパク質試料を 50 mM
Tris-HCl pH 7.5、150 mM NaCl、2.5 mM CaCl2 及び 5% グリセロールに希釈し、室温で 1
U/ml スロンビンと一緒にインキュベートした。次第に長くした時間のインキュベート後、アリクォートを希釈し、FVIII活性について検定した。一単位のFVIII活性は、1mlの正常ヒト・プール血漿中に測定される量である。
FVIII抗原決定。 FVIII抗原を、抗軽鎖抗体ESH-4 及びESH-8を用いたサンドイッチELISA法を用いて定量した。精製済みの組換えFVIII タンパク質を標準として用いた。
結果
FVIII失活耐性の発生。 上記の今ストラクの全ては、B-ドメイン(残基795-1647)及びvWF結合部位(残基1648-1688、軽鎖のアミノ末端の酸性領域とも呼ばれる)を欠失させた90/73に基づくものである。Nesheim,
M. et al., J. Biol. Chem. 266: 17815-17820 (1991) and Pittman, D. et al., Blood
70, Abstract no. 392 (1987)。図8は、野生型FVIII及び上記コンストラクトの該ドメイン構造と、APC及びスロンビン切断部位の変異を示す。ここで、そして図8で解説するように、「b」は、スロンビンにより当該タンパク質が活性化してヘテロ二量体に成れるように充分な長さのアミノ酸配列スペーサを表し、但しこの場合、A2-ドメインは軽鎖に共有結合したままである。ある実施態様では、該アミノ酸配列スペーサは、野生型B-ドメインのアミノ部分、即ちアミノ酸残基 741 乃至 793 と、それに続くMluI 部位(クローニング目的)の予測上の残基794/1689のアミノ酸スレオニン又はロイシンと795のアルギニンである。
図8は本発明のコンストラクトの活性化のモデルを示す。野生型FVIII及び変異型90/73 は両者とも、スロンビン活性化でヘテロ二量体と成る。アミノ酸配列スペーサを、スロンビン切断部位(del795-1688/Arg336Iso/Arg562Lys/Arg740Ala)に変異を含有する90/73のA2-及びA3-ドメイン間に導入した場合、スロンビンで活性化すると、切断は Arg372の後ろでのみ起き、FVIIIa ヘテロ二量体が生じる。IR8と命名されたこの新規な
FVIII タンパク質はスロンビン活性化後も安定な活性を維持する。
IR8の合成及び分泌。 FVIII WT 及び多様な失活耐性変異体を、cDNA発現ベクタのCOS-1細胞細胞への一過性DNAトランスフェクションにより比較した。トランスフェクトから60時間後に、[35S]-メチオニン-パルス標識された細胞からの細胞抽出物の免疫沈降により、合成速度を分析した。細胞内FVIII
WT がその一本鎖の形で検出され、ほぼ250 kDa で泳動していた(図10、レーン1)。変異型90/80 は、以前に特徴付けられていたBDD FVIII 変異体 (del741-1648) であり、最高170kDaで泳動し、合成効率の上昇と一致して、パルス-標識された細胞抽出物からの輝度増加を示す(図10、レーン3)。 90/73 は、酸性領域の残基の付加的な欠失のために僅かに速く泳動する(図10、レーン5)。IR8を含め、90/b/73ベースのコンストラクトはすべて、90/80 及び90/73 コンストラクトと同様なバンド輝度を示したことから、この複数のミスセンス変異が効率的なタンパク質合成には干渉しないことが示唆された。細胞抽出物内の更なるバンドは、抗FVIII特異抗体で免疫沈降させたモック細胞には観察されず、FVIII 特異タンパク質と、同時に沈降する細胞内タンパク質の両方となっている。4時間の追跡後、FVIII WT の大半は細胞抽出物から失われ(図10、レーン2)、その280 kDa 一本鎖、200 kDa 重鎖及び80 kDa 軽鎖の形で追跡調整培地から回収することができる(図10、レーン3)。4時間後追跡後の細胞抽出物内には、BDD 及び失活耐性変異体の全ての一次翻訳産物が有意な量、残っているのが示されたが(図10、レーン4、6、8、10、12)、それらは全て、一本鎖種として追跡調整培地から回収された(図11、レーン5、7、9、11、13)。従って、FVIIIコンストラクトの様々な変更は、分泌に対して大きな影響を有していなかった。
スロンビン切断後のIR8の構造安定性。 追跡調整培地から免疫沈降させた標識済みFVIIIタンパク質をスロンビン(1
U/ml) と一緒に30分間、インキュベートしてから、SDS-PAGE
分析を行った。FVIII WTは50 kDa A1 サブユニット、43 kDa A2 サブユニット、及び73 kDa スロンビン切断軽鎖である A3-C1-C2 (図11、レーン4)から成るヘテロ三量体フラグメントに効率的に切断された。90/73 WTもまた、前の観察と合致する、そして図1Aに描かれた通り、FVIII WT(図11、レーン6)と同様にヘテロ三量体のサブユニットに切断された。90/73
Arg740Lys は、50 kDa A1 のサブユニット及びA2-A3-C1-C2 融合軽鎖(図11、レーン8)と合致するヘテロ二量体のスロンビン切断サブユニットを生じた。90/b/73
Arg740Lys は、50 kDa A1/120 kDa
A2-b-A3-C1-C2 ヘテロ二量体である2つのヘテロマー種と合致するスロンビン切断フラグメントと、43 kDa A2 サブユニット、並びに、b-A3-C1-C2
融合軽鎖(図11、レーン10)と合致する最高85
kDa のフラグメントを示した。スロンビンと一緒のインキュベート後にA2サブユニットが出現したことは、Lys740
が、bスペーサの存在下でのスロンビン切断を完全に損なったことを示している。Ala740により大きなミスセンス変異を行うと、安定なヘテロ二量体種が示された(図11、レーン12)。スロンビン切断後のこの安定なヘテロ二量体構造は、Arg336Iso 及びArg562Lys へのミスセンス変異を行ったIR8にも維持された(図11、レーン14)。
スロンビン活性化後のIR8の機能安定性。 スロンビン切断時のIR8へテロ二量体の構造一体性を実証したところで、活性化及び失活に対するこの修飾の機能的帰結をin vitro 機能検定で調べた。イムノアフィニティで精製したFVIII WT 及びIR8 をスロンビンと一緒にインキュベートし、一段階APTT凝血検定法でFVIII活性について検定した。機能活性化及び失活の一例を図12に示すが、これは複数の反復実験の典型である。これらの条件下では、FVIII WT はスロンビンとのインキュベートから10秒以内に最大に活性化したが、その後次に5分間に渡って急速に失活した。IR8 はスロンビンとのインキュベートから30秒以内にはピーク活性に達せず、FVIII WTに比較してスロンビン活性化に対する感受性が中程度に減少したことが示唆された。加えて、スロンビン活性化したIR8についてのピーク活性はより低かった(ピーク時のスロンビン活性化したFVIII WT 活性の74.7 + 6.7% 、 n=3)ことから、コファクタとしての効率がいくらか減少していることが示された。しかしながら、スロンビンとのインキュベートから最初の10分間という、FVIII WT がほぼ完全に失活していた時間の間、IR8 はピーク活性を著しく保持したことが実証された (ピーク時のIR8活性の66.9 + 5.3%、 n=3)。スロンビンとのインキュベーションを延長するとピーク時IR8活性にも次第の消失があるが、IR8 はそれでも尚、スロンビンとの4時間のインキュベートの後でもピーク活性の最高38%を保持した。
IR8 はin vitroでFVIII 比活性の上昇を示す。 イムノアフィニティで精製された FVIII WT 及びIR8 をFVIII 活性について標準的な一段階APTT凝血検定法を用いて検定したが、このとき最初の時点は10秒だった。抗原判定はFVIII 軽鎖ベースのELISAを用いて行われた。図13は、比活性で表した場合の活性化及び失活速度低下を示す。IR8の比活性値はそのモル重量についての補正に基づいて計算された。IR8はFVIII WTに比較して5倍に増加した比活性を有することが観察された (102 ± 43 対 18.6 ± 7.4 U/mg のタンパク質)。
実施例4
FVIIIaを安定させる分子内タンパク質対タンパク質相互作用の特徴付け
FVIIIAの不安定性が一段階/二段階の活性相違の原因である
実験の手法
FVIIIaの不安定性がどのように一段階/二段階(1-st/2-st)の活性相違の原因になるかを実証するために、色素産生性二段階検定の改良法を用いた。具体的には、当該検定の第一段階中のインキュベーション時間を次第に長くしてタンパク質の分析を行った。
結果
第一段階のインキュベーションの16分間を通じて、野生型FVIIIは次第に多い量のFXaを生じ続けた。しかしんがら、 R531H、A284E 及びS289L は4分目に観察された以上のFXa
を8分後及び16分後でも生成できず、この検定の第一段階の早期で変異型FVIIIa分子の失活速度が増すことと一致した。
A2-A3サブユニット界面内に変異があると一段階/二段階の活性相違を示す
実験の手法
同様の1-st/2-stの活性相違を示す、予測上のA2-A3 サブユニット界面内の変異も評価した。COS-1細胞内での一過性の発現により、ミスセンス変異N694I、R698L 及びR698W をB-ドメインの無いFVIIIベクタ内に発現させた。各変異の結果、患者の血漿から報告されたのと同様な1-st/2-stの活性相違のあるタンパク質が分泌された。
結果
スロンビン切断すると、精製済みR698L 及びR698W タンパク質はそれぞれ、光学バイオセンサで分析したところBドメインの無いFVIIIコントロールに比較して2倍及び3倍のA2サブユニット解離速度の増加を示した。このように、予測上のA2-A3サブユニット界面に沿ったこれらの変異は、FVIIIaの不安定性増加について、A1-A2界面に沿って解説された変異と同じ分子機序を示す。このことは、予測上の偽の三回回転軸内に完全に密に充填された疎水性コアがFVIIIaの安定性に寄与していることを示唆するものである。両者とも引用をもってここに援用するPipe, S.W. et al., Blood 97:685-691 (2001) and Pipe, S.W. et al.,
Poster presentation at Congress of the International Society on Thrombosis and
Haemostasis, Paris, France, July 6-12 (2001)。
戦略的に配置されたジスルフィド結合による機能的形のFVIIIaの安定化
実験の手法
in
vitro 分析用のCOS-1細胞株の作製。 システイン変異を以下の部位: CYS282、CYS284 及びCYS531 のそれぞれに、オリゴヌクレオチド指定変異誘発法を通じて別々に導入し、この変異型プラスミドをCOS-1
細胞内で発現させて in vitro 分析に向けた。変異体の各々は成功裡に発現され、活性であった。次に、2つの相補なシステイン変異をA1 及びA2 サブユニットの両方に導入した。CYS282 又はCYS284
のいずれかのスルフヒドリル基は、CYS531のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を潜在的に形成するために充分に近いと考えられる。標準的なタンパク質分析技術を用いて、その結果できたA1及びA2サブユニット間のジスルフィド結合の存在を実証した。
A2-A3ジスルフィド結合はFVaのAドメインの分子モデルに基づいて得られるであろうことが示されて (Pellequer et al., Thrombosis Haemostatis, 84:849-57 (2000))いるが、試された複数の戦略では僅かに一個のジスルフィド結合しか生じていないため、この分子モデルではどのシステイン変異が有効であるかは予測できないことが示唆される。
結果
理論に縛られる訳ではないが、ジスルフィド結合の導入によりA2-A3の相互作用が安定化すると考えられ、従って、A2とA1/A3-C1-C2 ヘテロ二量体との親和性が増すのであろう。システイン変異は、このモデルで隣にあると予測され、ASN694、ARG698 及びMET1947で血友病点変異の研究から示唆される通りの残基に作られる。A2-A3界面での変異は、FVIIIにとって乱れにつながるような構造上の効果が小さく、詳細な分析のためのより効率的な発現を可能にすると考えられる。
実施例5
in vivoでのFVIIIaの血漿安定性の上昇
実験の手法
方法。 ここで解説する方法に従ってアミノ酸をFVの相同な残基に変更した三つのFVIII
変異体を調製した。変異体をCOS 細胞で発現させ、イムノアフィニティ・クロマトグラフィでタンパク質を精製した。
結果
比活性の低下。 変異体 M/F
2199/2200 W/W、L/L 2251/2252
L/S (L2252S)、及び M/F/L 2199/2200/2252
W/W/S は、大過剰のPLを含有する1-段階及び2段階の市販のaPTT検定において野生型FVIIIの 90-180% の範囲の比活性を有していた。PL-制限 Xase 検定(PS:PE:PCが 4:20:76で 0.15 μM PLの音波破砕されたベシクル) においては、該変異体はそれぞれ95%以上、 >95%以上、及び85%の比活性低下を有していた。ホスホリピド滴定では、変異体の最大活性は、800、800、及び200 μM の濃度で起きており、野生型FVIIIで1 μMで起きるのとは対照的にだった。飽和PL1000 μMを有する Xase検定では、当該変異体のIXa因子の見かけの親和性は、三つの変異体では4分の1に減少しており、最大触媒速度はそれぞれほぼ 50、80、及び50%、低下していた。PS含有量を4% から 15% PSに増加させると、三種類の変異体は全て、野生型FVIIIの60%内でXase 活性を支援したが、IXa因子の見かけの親和性は5分の1に減少した。
ホスホリピド及びIXa因子との特異的相互作用。 これらの結果をまとめると、M/F 2199/2200 及び L/L 2251/2252
から成る疎水性のスパイクは、V因子の相同残基のものとは異なる、ホスホリピド及びIXa因子の両方との特異的相互作用を有することを示している。 M/F/L
2199/2200/2252 W/W/S 、対、一個の疎水性ペアを変更してあるいずれかの変異体、の活性が等しいか、又は増加していることは、2つの疎水性ペアはPL及びIXa因子の存在下で協働的に相互作用している可能性を示唆するものである。すべて引用をもってここに援用することとする Gilbert GE, et al. J. Biol. Chem., in press (2002); Gilbert,
GE, et al. Oral presentation at the
annual meeting of the American Society of Hematology, Orlando, FL, Dec. 10
(2001); 及び Saenko E.L. et al., VOX SANG, in press (2002)
を参照されたい。
実施例6
失活耐性VIII因子の誘導性vWF結合
実験の手法
イムロン2 マイクロタイタ・ウェル (ヴァージニア州チャンティリー、Dynatech
Laboratories社)を2
Figure 2009542225
g/ml の濃度のFVIII 抗体で0.05 M 炭酸/重炭酸ナトリウム pH
9.6の緩衝液中4℃で一晩、被膜した。ウェルを TBST (50 mM Tris HCL/pH 7.6,
150 mM NaCl, 0.05% Tween 20) で被膜した後、TBSTに入れた 3% ウシ血清アルブミン (BSA) で遮断した。タンパク質試料をTBST、3% BSA、1%
VIII因子欠陥ヒト血漿 +/- ESH8 (ESH8:FVIII タンパク質 = 2:1のモル比)で希釈した。試料を2時間、37°C で1.7 mlのマイクロ遠心管内でインキュベートした。その後、試料を更に2時間、遮断済み及び洗浄済みマイクロタイタ・ウェル内でインキュベートした。そこでウェルを、10 mM CaCl2を含有するTBST内で洗浄した。抗vWF-HRP 抗体をTBST、3% BSA、10 mM CaCl2 で希釈し、ウェル内で2時間、37°Cでインキュベートした。10 mM CaCl2を含有するTBSTで更に洗浄した後、 OPD 基質をウェルに加え、3分間、インキュベートした。 2 M H2SO4 で色彩反応を停止させ、光学密度 (O.D.) を 490 nmで EL 340 自動化マイクロプレート・リーダ(ヴァーモント州ウィヌースキ、Biotek Instruments 社)を用いて読み取った。
結果
FVIII-vWF結合。 図14はFVIII-vWF 結合ELISAの結果を示す。抗A2 ドメイン・トラップを用いた。FVIII欠陥血漿(1:100 希釈度)との4時間のインキュベート後、ペルオキシダーゼ結抗vWFabにより結合を検出した。図14に示すように、 IR8 対vWF の結合親和性が、野生型FVIIIに比較して10分の1であることが ESH8 の非存在下で観察され、ESH8の存在下では結合親和性が2分の1であることが観察される。
図15は、スロンビン (IIa) 及び/又は ESH8とのFVIII-vWF 結合ELISAの結果を示す。同じELISA法を用いたが、2倍のモル過剰量の ESH8 を利用し、IIa (1
U/ml) との4時間のインキュベートをFVIII欠陥血漿の存在下で行なった。図15に示すように、IR8 はスロンビン活性化の後も vWF に対する活性を保持することから、そのヘテロ二量体はスロンビン切断後も無傷のままであり、ESH8が軽鎖コンホメーションを安定化させる結果、それがvWFへのいくらかの親和性を保てることが示される。
上述の結合検定法はFVIIIのA2-ドメインのみを認識する「トラップ」抗体を用いるため、それが検出するのは、このタンパク質の残りと結合した状態にあるA2-ドメインを認識する
FVIII-vWF 複合体だけであろう。従って、過剰量のスロンビンの存在下で該タンパク質を4時間、インキュベートした後、FVIII 野生型は完全に活性化しているだけでなく、A2解離及び/又は更なるタンパク質分解による切断を通じて完全に失活し、この検定で認識されることとなる複合体状態のvWFとはもはや結合しないであろう。このように、本発明の失活耐性FVIIIは、スロンビンによる完全な活性化後であっても、誘導性の結合を保持する。
誘導性vWF結合型の本発明の失活耐性FVIIIが活性を保持していたことも示された。この検定では、抗vWF抗体をELISAの「トラップ」として用いた。同じインキュベーションをスロンビン及びESH8の存在下及び非存在下でも行なった。プレート上にFVIII-vWF複合体を固定した後、 FVIII活性をELISAウェル内で 色素産生性FVIII 検定キット(Coamatic、オハイオ州フランクリン、Pharmacia
Hepar社)を用いて測定した。図16に示すように、スロンビンによる活性化後、FVIII野生型については何の目に見えて活性なFVIII -vWF 複合体も観察されなかった。しかしながら、失活耐性 FVIIIはそれでも尚、同じ条件下で検出可能な活性を有していた。このことは、スロンビン活性化後、失活耐性 FVIII は切断されて、vWFに対するESH8誘導性結合を有するA2-b-A3-C1-C2 の修飾軽鎖と結合した状態のA1のヘテロ二量体になり、FVIII活性を保持していることを示している。
このESH8誘導性IR8-vWF 複合体の機能的影響を、FVIII活性をAPTTを通じて検定することでも評価した(表3)。ESH8の非存在下では、イムノアフィニティ精製済みのFVIII WT 及びIR8 は、FVIII欠陥血漿との37℃での4時間のインキュベートに渡って活性の最小限の消失を示した。ESH8の存在下では、FVIII WT 活性はほぼ70%阻害されたが、他方、IR8 はその当初の活性の100%を維持した。これらの結果は、ESH8の存在下でのWT FVIIIの失活はA2サブユニットの解離が原因である可能性と、IR8 は、A2サブユニット解離に感受性がないためにESH8による失活に対して耐性であることを示唆している。
Figure 2009542225
ESH8はvWFの存在下ではIR8活性を阻害しない
実施例7
IR8の親和性及び活性
フォン・ウィルブランド因子及びホスホリピドに対するIR8の親和性。 ELISA及び親和性バイオセンサ分析では、IR8はrFVIIIに比較してフォン・ウィルブランド因子(cWF)に対しては20分の1に低下した親和性を有するが、ホスホリピド(PL)に対しては34倍に増加した親和性を有することが実証された。これらの変化はARが原因であるとした。野生型FVIIIとは対照的に、これらの親和性はIR8のスロンビン活性化時でも変化しなかった。モノクローナル抗体ESH8は、in vitroではタンパク質分解によるARの除去に続くLCのコンホメーション変化を妨げることにより、スロンビンで切断されたFVIII LCのvWFに対する親和性を増す(図22)。
ESH8は、スロンビン活性化時、FVIIIタンパク質からのvWF解離速度を減らすことにより、in vitroでFVIII活性を阻害することが提案された。しかしながら、IR8/ESH8の複合体は、in vitroにおいてvWFに結合した完全な活性を保持しながらも、vWFに対する親和性増加を実証した(IR8
対 rFVIII、Kd=1.3 nM 対 0.3 nM)。 PL結合部位に特異的な抗FVIII抗体はそれでも尚、結合することができたことから、PL結合部位及びvWF結合部位はこのLCコンホメーションでは重複していないことが示唆された。更に、FVIII WTとは対照的に、 IR8/ESH8のスロンビン活性化は vWF 解離を変化させない(図19)。
IR8 及びvWFの動態。 IR8-vWF 結合及び解離の動態を図20に示す。IR8のスロンビン活性化の動態は、最初の30秒以内の活性消失を示し、その後数時間はピーク時活性のほぼ40%で安定のまま留まる (Pipe,
S.W. et al., PNAS (USA)
94(22):11851-6 (1997))。COAMATIC #1 及び #2間のIR8の活性の違いは この観察と合致する(図21)。ポスト-COAMATIC ELISAでは、IR8/ESH8 が検定中ずっとvWFとの複合体状態のままであることが確認される。ELISA ではLCを検出するため、 FVIII/ESH8 は、不活性の型でvWFと部分的に複合体形成した状態で検出されるが、これはA2サブユニット解離が原因であるか、あるいは、FVIII LC が vWFに結合したままでPL 結合部位が遮断されることが原因であろう。
IR8 の vWFに対する親和性はFVIII WTの10分の1未満であるが、ESH8
は FVIII WTと同様にIR8-vWF相互作用を誘導し、これはスロンビン活性化時でも変わらない。これらの結果は、ESH8は、ARの存在からは独立な対vWF高親和性を保持するLCのコンホメーションを誘導することを示唆している。理論に縛られるわけではないが、AR はFVIIIコファクタ活性の調節を担っていると考えられ、なぜならARの存在が、高親和性vWF 結合性 LC コンホメーションを誘導すると共にPL結合部位を遮断し、ARが存在しないと、vWFに対して低い親和性を有するLCコンホメーションが出来、こうしてPL結合部位が遮断されないからである。
IR8-vWF 相互作用はMab NMC-VIII/5によっては遮断されない
実験の手法
30 nM の IR8 又はFVIII WT を、10 ng/mm2になるように固定されたMab NMC-VIII/5に加えた。固定後、一番目の矢印でリガンドを緩衝剤に置き換え、それから30秒後に vWF を10 Mになるように加えた(一番目の矢印)(図23)。
結果
固定したFVIII WT へのvWF結合については何のシグナルも観察されなかったことから、NMC-VIII/5 がvWF 結合部位を完全に遮断することが示唆された。対照的に、vWF は、NMC-VIII/5 上に捕獲されたIR8に結合する(kon=1.4x105 M-1s-1、koff=4.2x10-3 s-1、kd=29.6 nM)。二番目の矢印では、IR8からの vWF の解離を開始させた(図23)。IR8
又は FVIII WT のNMC-VIII/5からの自発的解離の速度は取るに足らない(図23)。
vWFの濃度増加はIR8/ESH8 複合体のホスホリピドへの結合を阻害しない
実験の手法
SPIII は340 kDa のホモ二量体のジスルフィドで連結された vWFフラグメントであり(vWFの残基 1-1365 )、インタクトvWFと同様に FVIIIに対する親和性を有する。Saenko, E.L. et al., J. Biol. Chem.
270:13826-13833 (1995)。SPIIIの濃度増加 (曲線1ではSPIII なし、曲線2では10 nM SPIII、曲線3では25 nM SPIII、曲線4では 50 nM SPIII) が、 FVIII/ESH8 複合体のPSPC 単層への結合に及ぼす効果を図24に挙げた。
結果
次第に濃度を高くしたSPIII はFVIII/ESH8 (10 nM) のPSPC への結合を漸進的に阻害した(図24、パネルA)。SPIII の効果は、同じ濃度で加えられた
vWF のそれと同様だった(vWF単量体一個当り分子量270 kDaと想定して)。対照的に、IR8/ESH8 (3.2 nM) を次第に濃度を高くしたSPIII フラグメントと予備インキュベート(30分間、室温、HBS、5 mM CaCl2)すると、この混合物をPSPC単量体に加えた場合に観察されるプラズモン共鳴シグナルが増加した(図24、パネルB)。SPIII 濃度を高くすると(50 nMに)、このシグナルはSPIIIの非存在下でのレベルのほぼ2倍のそれで飽和度を増加させた。このことは、PSPC単層に結合するIR8/ESH8/SPIII
複合体 (1:1:1) の形成と合致する。
IR8/ESH8/SPIII 複合体のホスホリピドに対する結合親和性の判定
実験の手法
IR8/ESH8/SPIII
複合体の調製。 200 nM SPIII、200 nM ESH8を様々な濃度のIR8 (0.1 nM-6.4 nM)と一緒にインキュベート(30分間、室温)することによりIR8/ESH8/SPIII複合体を調製した。IR8/ESH8/SPIII のPSPC (25/75) との結合をHBS、5 mM CaCl2
中で平衡に達するまで測定した。曲線1-8に対応するIR8/ESH8/SPIII 複合体の濃度は、それぞれ0、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、3.2 及び6.4 nMである(図25、パネルA)。
Kd
値。 IR8/ESH8/SPIIIのPSPC単層へのKd値の判定を図25のパネルBに挙げる。白抜きの記号は曲線1-7から判定された平衡結合 (Be)
値である。実線は、結合が平衡にあることを述べた
Be 値の等式: Re=RmaxF/(Kd+F)に対する最適値を示す。この等式において、F は未結合のリガンドの濃度、Rmax - PSPC単層の最大結合能である。
結果
IR8/ESH8/SPIII 複合体のPSPC 単層への結合について判定されたKd値は0.286±0.022 nM であり、 IR8/ESH8のPSPC への結合(0.242 nM)のそれと同様であることから、,
indicating that SPIIIはIR8/ESH8 のPSPCに対する親和性に大きく影響しないことを示唆している。
実施例8
動物におけるIR8 及び IR8/ESH8 複合体の血漿中薬物動態及び効験
用いた方法
IR8 及び IR8/ESH8 複合体の血漿中薬物動態及び効験を、血友病Aのイヌのチャペル・ヒル染色法で評価した。IR8 タンパク質をチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞で産生させ、rFVIII (Baxter)に比較した。
実験の手法
血友病AのイヌにIR8 又は組換え FVIII (35 単位/kg 静脈内) を Mab ESH8有り又は無しで輸注した。IR8 及びrFVIII の両者とも全血凝固時間(WBCT)を正常範囲に補正した。32% の回復がrFVIII について、そして11%がIR8について検出された。血漿中半減期はIR8 ではrFVIIIに比較して減少していた(2時間、対、7時間)。rFVIIIに比べたときのIR8の回復の低下及び短い半減期の両者とも、IR8のvWF結合親和性の低下と合致している。
IR8 のvWFとの複合体形成能を高めるとその回復が向上するかどうか、又は、循環中半減期が延長されるかどうかを判定するために、IR8 及びrFVIII の両者をMab ESH8と、当該凝血性タンパク質の4倍のタンパク質濃度になるように混合した。ESH8の存在下では、輸注後のFVIII
WT の血漿中回復は低下した (16%)が、クリアランスの半減期は変わらず、in vitro での結果と同様にESH8によるFVIII WT 活性の阻害と合致した(図26)。対照的に、IR8 の半減期は IR8 の存在下では2倍になって4時間となり、血漿中回復には低下はなく、vWFへの結合増加を通じた血漿中の安定化や、コファクタ活性の阻害のないことと合致した(図26)。
注目すべきことに、ESH8の存在下及び非存在下の両方で、IR8 は血友病Aのイヌにおける二次クチクラ(cuticle)出血時間を正常範囲まで修正し、in vivoでのコファクタ活性に阻害がないことを示した。
結果
血漿中回復及びクリアランスを COAMATIC
検定、全血凝固時間、及びELISAにより観察した。 IR8 の血漿中回復はrFVIIIに比べて減少しており(11% 対32%)、血漿中半減期 (t1/2) は著しく短かった(2時間、対、7時間)。これらの結果は、in vivo でのvWFのIR8 への結合がないことと合致しており、vWF 欠陥のある患者に輸注されるFVIIIのt1/2に匹敵する。これにもかかわらず、IR8はそれでも尚、rFVIIIと同様に、クチクラ出血時間(CBT)を補正することができた。IR8/ESH8 複合体を、精製済みIR8 を4倍過剰のESH8と一緒にインキュベートすることにより調製した。活性及びELISA検定で測定したときの、この複合体中の IR8 の回復はそれでも尚11% で減っていたが、血漿中t1/2 は二倍の4時間にまで増加しており、vWFへの結合を通じた安定性増加と合致した。IR8/ESH8 複合体もまたCBTを補正したことから、IR8/ESH/vWF 複合体が in vivoで活性である可能性が示された。
これらの結果は、インタクトFVIII LC と同様に、ESH8がIR8内でLC vWF-結合性コンホメーションを誘導することと合致している。しかしながら、rFVIIIとははっきり対照的に、このIR8 LC コンホメーションでは同時の高親和性PL結合が可能であり、コファクタ活性には干渉しない(図26)。
要約すると、ARが取り除かれると、高いvWF 及びPL結合親和性を保持したFVIII
LCコンホメーションが残るのである(図27)。この結果は更に、vWF 結合部位及びPL結合部位は重複しておらず、また全てのFVIII LC コンホメーションで競合的でもないことも実証している。IR8/ESH8 複合体は高親和性vWF 及びPL 親和性の両者を残した固有のLCコンホメーションを有する。更に、IR8/ESH8/vWF複合体は、 in vitro 及びin vivoの両方で安定であり、かつ活性である。
実施例9
FVIII B ドメイン変異体はそれらのN連結オリゴ糖含有量に比例して高い分泌を示す。
実験の手法
FVIII変異体の調製。 FVIII 野生型(インタクトBドメイン)及び完全Bドメイン欠失分子をコントロールとして用いた。FVIII はvWFへの結合を通じて調整培地中では安定化しているため、FVIII 変異体のすべてをまず、軽鎖酸性領域(90/73)を有さず、従ってvWFへの親和性が著しく低下したBDD-FVIII ベクタ内で調製した。このように、調整培地から回収されたFVIIIでの向上は、分泌率が高まったことに起因すると、より容易に言えるだろう。全てFVIIIのアミノ酸(aa)残基741で始まる、次第に長くしたBドメイン配列を90/73に導入した。Bドメインのサイズの各増分は一個の付加的なN連結糖鎖付加部位を含んでいた。結果的なタンパク質をCOS-1 細胞内での一過性のトランスフェクションで発現させた。相対的な分泌率を、トランスフェクトから36乃至60時間後に回収した調整培地の FVIII ELISAで判定した。
次に、(3つの推定上のN連結オリゴ糖を有する)117アミノ酸のBドメイン含有コンストラクト内で、N連結糖鎖付加部位を(グルタミンに)変異させ、その相対的分泌率を以前の通りに判定した。この実験は、LC酸性領域を含有したコンストラクトでも繰り返した。vWF は血清含有培地では限られているため、同じ実験を、FVIII変異体と一緒にvWF発現ベクタの同時トランスフェクションにより行った。
結果
分泌増加
発現させたタンパク質はすべて、効率的に合成され、それらの相対的分泌に匹敵する高い比活性を残していた。90/73 の平均分泌は7.9 ng/ml であり、FVIII野生型のそれは 62 ng/mlだった。Bドメインのアミノ末端からのセグメントを増加させるとFVIII分泌が次の通りに向上した:29 アミノ酸、1.7倍;54アミノ酸、3.4倍;117 アミノ酸、5.3倍;163 アミノ酸、8.5倍;及び 226 アミノ酸、10.8倍(図28を参照されたい)。このように、Bドメインのサイズを増加させ、従って糖鎖付加部位の数を増加させると、最高10倍までの分泌増加があった。
天然117アミノ酸Bドメインコンストラクト(90/73に比較して5.3倍の分泌増加),に比較すると、一箇所のN連結部位を変異させると分泌が4.5分の1に減少し、2楷書のN連結部位を変異させると2.4分の1に減少した。従って、Bドメイン・スペーサには何のサイズ変化もないが、オリゴ糖含有量を減少させると分泌が減少した。この実験をLC酸性領域を含有するコンストラクトで繰り返した場合、鈍い応答が観察され、分泌の増加は僅かに2乃至3倍だった。従って、同じ実験をvWF 発現ベクタを FVIII 変異体と一緒に同時トランスフェクトすることにより行った。その結果から、N連結糖鎖付加部位数の増加につれて、培地から回収される同様のパターンのFVIII活性が最高10倍までの増加することが実証された。
226 個のアミノ酸Bドメイン及び6 箇所のN連結オリゴ糖では最大の分泌が観察された(図29)。非天然のBドメインは、N連結糖鎖付加が密であるにも関わらず、分泌増加を促さなかった (LAMP) (図29)。
Bドメイン媒介性相互作用。 理論に縛られるわけではないが、Bドメインは、その豊富なオリゴ糖含有量のおかげでERGIC-53との相互作用を媒介することで、そのERのゴルジへの輸送を促すと考えられる。BDD-FVIII は大半の血友病A遺伝子療法戦略において用いられてきたが、それはその完全長cDNAが大半のウィルスベクタにとっては長すぎるからである。これらの結果は、N連結糖鎖付加部位を追加するとBDD-FVIII の分泌を最高10倍まで向上させることができ、FVIII のin vivoでの発現を増加させられる可能性を示唆するものである。
Bドメインの構造及び機能。 更なる実験を行って、オリゴ糖の密度及び/又は配向の影響を評価した。無関係の糖タンパク質を由来とする、2つの密に糖鎖付加されたタンパク質セグメントLAMP-1 (5又は9箇所のN連結オリゴ糖を含有する)をBドメイン配列について置換したが、BDD-FVIIIに比較して分泌は向上しなかった。このことは、オリゴ糖の密度及び/又は配向が重要であると考えられることを示唆している。
実施例10
FVIII Bドメイン変異体の特徴付及び分析
実験の手法
FVIII B-ドメイン変異体(ここでは「90/80/b226N6 バリアント」又は「b226N6 バリアント」とも言及される)はPhe309Ser 変異体及びb226N6 B-ドメインバリアントを含む。具体的には、ある実施態様では、FVIII B-ドメイン変異体は、N連結糖鎖付加のための6つのコンセンサス部位を持つ226アミノ酸のB-ドメインを含む。
結果
FVIII B-ドメイン変異体はCOS 細胞及びCHO細胞一過性発現で最大の発現を達成する。分泌された当該タンパク質は、高い比活性を持つ FVIII を生じ、細胞内プロセッシングのない一本鎖として分泌される。
これらの結果は、ハイブリッドFVIII分子がBDD-FVIIIに比較して15倍の高い発現を生ずるが、Phe309Ser 変異単独ではBDD-FVIIIに比較して6倍の増加を示し、そしてb226N6変異単独ではBDD-FVIIIに比較して8倍の発現増加を示すことを実証した。
またこれらの結果は更に、変異型Bドメイン226aa/N6 を含有するFVIIIコンストラクトの分泌効率は点変異F309S
によっても更に高められることも実証した(図30)。
実施例11
生物操作されたFVIIIのin vivoでの発現
実験の手法
血友病AのFVIII ノックアウトマウスモデルを用いて本発明のFVIII分子のin vivo 発現を分析した。
方法。 プラスミドDNA (100
μg) を2.5 ml の乳酸加リンガー液に希釈し、尾の静脈に10分かけて輸注した。眼窩血採集を24時間目及び48時間目に行い、FVIII 分泌をヒトFVIII-特異 ELISAで分析した。血中のFVIII 抗原及び活性を測定した(図31及び33)。図34から、細胞媒質中の226aa/N6及び
F309S/226aa/N6 の存在を確認できる。
結果
図31及び32はF309S/226aa/N6 コンストラクトを流体力学的に尾の静脈に注射した後の血友病AマウスにおけるFVIII Bドメインバリアントの発現増加を示している。具体的には、309S/226aa/N6 バリアントは 226aa/N6 バリアントに比較して48時間目の時点で発現増加を示した(図32)。得られたデータは、平均的なBDD-FVIII 発現は24時間後では123
ng/ml であり、そして48時間後では124 ng/ml であることを示した(図32を参照されたい)。
実施例12
医薬組成物及び使用
医薬組成物
本発明のFVIIIタンパク質は、当業で公知の手法に従って非経口的に許容可能な賦形剤及び医薬品添加物と共に、薬学的に許容可能な組成物に調合することができる。非経口投与に適した、本発明の医薬組成物は便利なよう、無菌の凍結乾燥型のタンパク質製剤を含めてよく、該タンパク質は、レシピエントの血液と等張であるなど、溶液を作製するために無菌の溶液を添加することにより再構築されるものでもよい。該製剤を、単位で提供しても、あるいは例えば密封したアンプル又はバイアルなど多数回分の溶液に入れて提供してもよい。
このような医薬組成物には、更に薬学的に許容可能な担体、希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、安定化剤、及び/又は当業で公知の他の物質も含めてもよい。用語「薬学的に許容可能な」とは、当該有効成分の生物活性の有効性に干渉しない非毒性の物質を意味する。担体又は他の物質の特徴は投与経路に依存するであろう。
本発明の医薬組成物中のFVIIIタンパク質量は、処置しようとする状態の性質及び重篤度、及び、患者が受けてきた以前の処置の性質に依存するであろう。最終的には、担当医がそれぞれ個々の患者を処置するためのタンパク質量を決定するであろう。同様に、静脈内療法の期間は、処置しようとする疾患の重篤度や、各個々の患者の状態及び潜在的特異体質的応答に依って様々であろう。
加えて、本発明のFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、当業で公知の手法に従って遺伝子療法送達系に繋げてもよい。このような送達系には、限定はしないが、アデノウィルス、レトロウィルス及びアデノ随伴ウィルスベクタやリポソーム及びDNA-タンパク質複合体がある。本発明の配列は、そのような送達系に入れられるか、あるいは、例えば充分な調節因子が用いられることで転写が可能な態様でそのような送達系に作動可能に連結されよう。このような遺伝子療法送達系を作出するための多様な戦略及び方法は当業で公知であることは認識されよう。
使用の方法
本発明のタンパク質を含有する医薬組成物は、FVIIIの欠陥により引き起こされる血友病に罹患した患者を処置するために用いられよう。
本発明の処置の方法を実施する際には、治療上有効量のFVIIIタンパク質を、FVIII欠陥により引き起こされる血友病症状を有する哺乳動物に投与する。用語「治療上有効量」とは、有意義な患者の利益、即ち出血の停止、を示すのに充分である、本方法又は組成物の各有効成分の総量を意味する。
本発明のタンパク質の投与は、多様な従来法で行うことができる。患者への静脈内投を行ってよい。静脈内注射により投与する場合、本発明のタンパク質は、発熱源のない非経口的に許容可能な水溶液の形であろう。静脈内注射用の医薬組成物には、本タンパク質に加え、例えば塩化ナトリウム注射、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウムの注射液、乳酸加リンガー注射液、又は当業で公知の他の賦形剤などの等張の賦形剤を含めてよい。本発明による医薬組成物には、更に、安定化剤、保存剤、抗酸化剤、又は当業で公知の他の添加剤も含めてよい。
皮膚又は皮下注射の場合、本発明のタンパク質は、発熱源のない非経口的に許容可能な水溶液の形であろう。このような非経口的に許容可能なタンパク質溶液の製剤で、pH、等張性、安定性等を有するものは当業で公知である。
本発明のタンパク質を含有する医薬組成物と同様に、本発明のヌクレオチド配列を含有する遺伝子療法送達系又は賦形剤も、FVIIIの欠陥により引き起こされる血友病に罹患した患者を処置するために用いてよい。治療上有効量のこのような遺伝子療法送達賦形剤は、FVIII欠陥により引き起こされる血友病状態を有する哺乳動物に投与される。本発明の賦形剤の投与は、製薬業でよく確立された手法、例えば標的組織又は部位への直接的な送達、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内及び経口投与を通じるなど、単独又は組み合わせたものによるであろうことは認識されよう。更に、遺伝子療法送達用賦形剤の投与に適した調合物は当業で公知であり、水性及び非水性の等張の無菌注射用溶液並びに水性及び非水性の無菌懸濁液があることも理解されよう。
前述の議論は本発明の例示的な実施態様を単に開示及び述べたものである。当業者であれば、このような議論並びに添付の図面及び請求項から、以下の請求項に定義されたとおりの本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多様な変更、改良及び改変がそれに対して可能であることは容易に認識されよう。
ここに引用されたすべての特許及び他の公開文献を、引用をもって援用することを明示しておく。

Claims (34)

  1. 組換えVIII因子タンパク質を生産する方法であって:
    プロモータに作動可能に連結した、VIII因子タンパク質をコードする核酸分子を細胞内に導入するステップであって、前記プロモータは、商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を生産する能力を特徴とする、ステップと;
    VIII因子タンパク質を生産する条件下で前記細胞をインキュベートするステップと
    を含む、方法。
  2. 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記哺乳動物細胞が、COS-1、CHO 及び HEK 293 細胞から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記核酸分子が、VIII因子タンパク質をコードするcDNAを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記核酸分子が、チャイニーズ・ハムスター伸長因子1-α (CHEF1) プロモータに作動可能に連結している、請求項1に記載の方法。
  6. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときにArg740位で始まるBドメインの欠失を含み、その後に、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサの追加が続き、この場合、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサにより、Bドメイン欠失VIII因子タンパク質の分泌又は発現が促される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに750位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、6箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する226アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  8. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに769位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されたアミノ酸配列は、一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する29アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  9. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに794位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、2箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する55アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  10. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに857位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、3箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する117アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  11. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに903位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、4箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する163アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  12. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに946位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、5箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する206アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  13. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに1009位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、8箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する269アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項6に記載の方法。
  14. 前記VIII因子タンパク質が異種の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  15. a)プロモータに作動可能に連結した商業的に実用性あるVIII因子タンパク質をコードする核酸分子を細胞内に導入するステップであって、前記プロモータが、商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を生産する能力を特徴とする、ステップと、
    b)VIII因子タンパク質を生産する条件下で前記細胞をインキュベートするステップと、
    c)他のクローンに比較して高レベルのVIII因子を発現するクローンを選抜するステップと、
    d)ステップc)で選抜された細胞を再クローニングするステップと、
    e)ステップc)で選抜されたものに比較してより高レベルのVIII因子を発現する少なくとも一つのサブクローンを識別するステップと
    を含む、商業的に実用性あるVIII因子タンパク質を発現する細胞を識別する方法。
  16. チャイニーズ・ハムスター伸長因子1-α (CHEF1) プロモータに作動可能に連結しているVIII因子タンパク質をコードする核酸分子。
  17. 前記核酸分子が、VIII因子タンパク質をコードするcDNAを含む、請求項16に記載の核酸分子。
  18. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときにArg740位で始まるBドメインの欠失を含み、その後に、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサの追加が続き、この場合、少なくとも一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有するアミノ酸スペーサにより、Bドメイン欠失VIII因子タンパク質の分泌又は発現が促される、請求項16に記載の核酸分子。
  19. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに750位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、6箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する226アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  20. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに769位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されたアミノ酸配列は、一箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する29アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  21. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに794位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、2箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する55アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  22. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに857位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、3箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する117アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  23. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに903位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、4箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する163アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  24. 前記VIIIタンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに946位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、5箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する206アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のVIII因子タンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  25. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに1009位に挿入されたアミノ酸配列を含み、前記挿入されるアミノ酸配列は、8箇所のN連結糖鎖付加部位を含有する269アミノ酸スペーサから成ることで、修飾後のFVIIIタンパク質のBドメインを部分的に置換している、請求項16に記載の核酸分子。
  26. 異種タンパク質をコードする、請求項16に記載の核酸分子。
  27. f)ステップe)で識別された少なくとも一つのサブクローンを再クローニングするステップと、
    g)ステップe)で選抜された少なくとも一つのサブクローンに比較してより高レベルのVIII因子を発現する少なくとも一つのサブクローンを識別するステップ
    を更に含む、請求項15に記載の方法。
  28. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときにArg740位で始まるBドメインの欠失を含む、請求項1に記載の方法。
  29. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに309位のフェニルアラニンをセリンにした置換を含む、請求項1に記載の方法。
  30. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに309位のフェニルアラニンをセリンにした置換を含む、請求項28に記載の方法。
  31. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときArg740位で始まるB-ドメインの欠失を含む、請求項16に記載の核酸分子。
  32. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときに309位のフェニルアラニンをセリンにした置換を含む、請求項16に記載の核酸分子。
  33. 前記VIII因子タンパク質が、前記タンパク質を野生型VIII因子とアライメントしたときArg740位で始まるB-ドメインの欠失を含む、請求項31に記載の核酸分子。
  34. 前記VIII因子タンパク質が少なくとも約 20 IU/mL、少なくとも約 30 IU/mL、少なくとも約 40 IU/mL、少なくとも約 50 IU/mL、少なくとも約 60 IU/mL、 少なくとも約 70 IU/mL、 少なくとも約 80 IU/mL、 少なくとも約 90 IU/mL、 少なくとも約 100 IU/mL、 少なくとも約 110 IU/mL、 少なくとも約 120 IU/mL、 少なくとも約 130 IU/mL、 少なくとも約 140 IU/mL、 少なくとも約 150 IU/mL、 少なくとも約 160 IU/mL、 少なくとも約 170 IU/mL、 少なくとも約 180 IU/mL、 少なくとも約 190 IU/mL、 少なくとも約 200 IU/mL、及び少なくとも約 210 IU/mLから成る群より選択されるレベルで生産される、請求項1に記載の方法。
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