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JP2010187542A - 有機酸の製造方法 - Google Patents

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JP2010187542A JP2007156990A JP2007156990A JP2010187542A JP 2010187542 A JP2010187542 A JP 2010187542A JP 2007156990 A JP2007156990 A JP 2007156990A JP 2007156990 A JP2007156990 A JP 2007156990A JP 2010187542 A JP2010187542 A JP 2010187542A
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佳宏 臼田
Keita Fukui
啓太 福井
Kazuhiko Matsui
和彦 松井
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Ajinomoto Co Inc
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    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P7/00Preparation of oxygen-containing organic compounds
    • C12P7/40Preparation of oxygen-containing organic compounds containing a carboxyl group including Peroxycarboxylic acids
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    • C12P7/46Dicarboxylic acids having four or less carbon atoms, e.g. fumaric acid, maleic acid

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Abstract

【課題】
より生産効率の高い有機酸の製造方法を提供する
【解決手段】
腸内細菌科に属し、有機酸生産能を有する細菌をグリセロール、特に粗グリセロールを炭素源とする培地に培養し、培養物中に有機酸を生産・蓄積させ、該培養物から有機酸を採取することにより、有機酸を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、腸内細菌群等の細菌を用いた有機酸の製造方法に関するものである。
コハク酸などの非アミノ有機酸を発酵により生産する微生物としては絶対嫌気性グラム陰性細菌Anaerobiospirillum succiniciproducens(特許文献1)、通性嫌気性グラム陰性細菌Actinobacillus succinogenes (特許文献2、非特許文献1)、通性嫌気性グラム陰性細菌Escherichia coli(特許文献3、特許文献4)、好気性グラム陽性細菌Corynebacterium glutamicum(特許文献5)などが知られている。
有機酸の発酵生産においては、炭素源として糖類、すなわち、グルコース、フラクトース、スクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物等が使用されている。
米国特許第5,143,834号公報 米国特許第5,504,004号公報 米国特許第2005170482号公報 米国特許第2006046288号公報 公開特許公報平17−027533号 Int. J. Syst. Bacteriol. 1999, 49, 207-216
本発明の課題は、より生産効率の高い有機酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、腸内細菌科に属し、有機酸生産能を有する細菌をグリセロールを炭素源とする培地に培養することにより、糖類を炭素源とする培地と同等またはそれ以上に有機酸を生産できることを見出した。さらに、グリセロールとして、全世界的に工業生産が行われているバイオディーゼル燃料生産において副生物として生成する純度の低い粗グリセロールが、純粋なグリセロールよりも高い生育促進効果と有機酸生成能の向上効果を有することを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)
腸内細菌科に属し、有機酸生産能を有する細菌をグリセロールを炭素源として含む培地に培養し、培養物中に有機酸を生産蓄積させ、該培養物から有機酸を採取することを特徴とする有機酸の製造法。
(2)
培地中のグリセロールの初発濃度が1〜30w/v%である(1)に記載の製造法。
(3)
前記培地が粗グリセロールを添加した培地である(1)または(2)に記載の製造法。
(4)
前記粗グリセロールがバイオディーゼル燃料生産において産生される粗グリセロールである(3)に記載の製造法。
(5)
前記細菌がエシェリヒア属に属する細菌である(1)〜(4)に記載の製造法。
(6)
前記細菌がパントエア属に属する細菌である(1)〜(5)に記載の製造法。
(7)
前記細菌がエシェリヒア・コリである(5)に記載の製造法。
(8)
前記有機酸がコハク酸である(1)〜(7)に記載の製造法。
(9)
前記細菌が乳酸デヒドロゲナーゼ活性が低下した細菌である、(1)〜(8)に記載の製造法。
本発明によれば、新たな安価な炭素源を用いることにより、高効率で安価にコハク酸などの有機酸を製造することができる。得られたコハク酸などの有機酸は食品添加物や医薬品、化粧品等に用いることができる。また、得られた有機酸を原料として重合反応を行うことにより有機酸含有ポリマーを製造することもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明で使用するグリセロール
グリセロールは、正式名称Propane-1,2,3-triolである物質を指す。本発明において、粗グリセロールは、工業的に生産される不純物を含むグリセロールをいう。粗グリセロールは、油脂を高温、高圧下で水と接触させ加水分解することによって、あるいは、バイオディーゼル燃料生産のためのエステル化反応によって、工業的に生産される。バイオディーゼル燃料とは、油脂とメタノールからエステル交換反応により生成する脂肪酸メチルエステルのことであり、この反応の副生物として粗グリセロールが生成する(Fukuda, H., Kondo, A., and Noda, H. 2001, J. Biosci. Bioeng. 92, 405-416を参照のこと)。バイオディーゼル燃料生産プロセスでは、エステル交換にはアルカリ触媒法が用いられることが多く、中和時に酸を加えるため、水と不純物を含んだ純度70〜95重量%程度の粗グリセロールが生成する。バイオディーゼル燃料生産において産生される粗グリセロールは、水に加えて、残存メタノールや触媒であるNaOH等のアルカリとその中和に用いられるK2SO4等の酸との塩を不純物として含んでいる。メーカーや製法により差はあるが、このような塩類やメタノールは数パーセントに達する。ここでナトリウム、カリウム、塩化物イオン、硫酸イオン等の、アルカリやその中和に用いられた酸に由来するイオン類は、粗グリセロールの重量に対し、2〜7%、好ましくは3〜6%、さらに好ましくは4〜5.8%含まれていることが好ましい。メタノールは、不純物として含まれていなくてもよいが、望ましくは0.01%以下含まれていることが好ましい。
さらに、粗グリセロール中には、微量の金属、有機酸、リン、脂肪酸などを含むことがある。含まれる有機酸としては、蟻酸、酢酸等が挙げられ、不純物として含まれていなくてもよいが、望ましくは0.01%以下含まれていることが好ましい。粗グリセロールに含まれる微量の金属としては、微生物の生育に必要な微量金属が好ましく、例えばマグネシウム、鉄、カルシウム、マンガン、銅、亜鉛等が挙げられる。マグネシウム、鉄、カルシウムは、粗グリセロールの重量に対し、合計で0.00001〜0.1%、好ましくは0.0005〜0.1%、より好ましくは0.004〜0.05%、さらに好ましくは0.007〜0.01%含まれていることが好ましい。マンガン、銅、亜鉛としては、合計で0.000005〜0.01%、より好ましくは0.000007〜0.005%、さらに好ましくは0.00001〜0.001%含まれていることが好ましい。
粗グリセロールのグリセロールの純度としては10%以上であればよく、好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。不純物の含有量が上記の範囲を満たす限り、グリセロールの純度は90%以上であってもよい。
本発明において好ましい粗グリセロールは、バイオディーゼル燃料の生産において産生される粗グリセロールである。また本発明において好ましい粗グリセロールは、炭素源として用いたときに同量の試薬グリセロールと比較して、より多くの有機酸を生産することが出来るグリセロールを意味する。試薬グリセロールと比較して、より多くのL−アミノ酸を生産するとは、試薬グリセロールを炭素源として用いた場合に比べ、有機酸の生産量が5%、好ましくは10%、さらに好ましくは20%以上上昇することを意味する。「試薬グリセロール」とは、いわゆる試薬グレードとして市販されているグリセロール又はそれと同等の純度のグリセロールを意味し、純度が99重量%以上であることが好ましく、特に好ましいのは純グリセロールである。「粗グリセロールと同量の試薬グリセロール」とは、粗グリセロールが水を含む場合、水を除いた残部の重量と同量の試薬グリセロールを意味する。
本発明において、粗グリセロールは、水等の溶媒で希釈して使用してもよい。その場合、上記のグリセロール及び不純物の含有量に関する記載は、希釈前の粗グリセロールに適用される。すなわち、粗グリセロールが水等の溶媒を含む場合、溶媒の含有量が好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下となるように溶媒を除去したときに、上記のグリセロール及び不純物の含有量の範囲を満たせば、本発明における「粗グリセロール」に該当する。
<2>本発明で使用する細菌
本発明においては、腸内細菌科に属し、L−アミノ酸生産能を有する細菌を使用する。
腸内細菌科は、エシェリヒア、エンテロバクター、エルビニア、クレブシエラ、パントエア、フォトルハブドゥス、プロビデンシア、ラウロテラ、サルモネラ、セラチア、シゲラ、モルガネラ、イェルシニア等の属に属する細菌を含む。特に、NCBI (National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌が好ましい。
エシェリヒア属に属する細菌とは、特に制限されないが、当該細菌が微生物学の専門家に知られている分類により、エシェリヒア属に分類されていることを意味する。本発明において使用されるエシェリヒア属に属する細菌の例としては、エシェリヒア・コリ(E.coli)が挙げられるが、これに限定されない。
本発明において使用することができるエシェリヒア属に属する細菌は、特に制限されないが、例えば、ナイトハルトらの著書(Neidhardt, F. C. Ed. 1996. Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition pp. 2477-2483. Table 1. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に記述されている系統のものが含まれる。具体的には、プロトタイプの野生株K12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
これらの菌株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所 P.O. Box 1549 Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
特に、パントエア属細菌、エルビニア属細菌、エンテロバクター属細菌は、γ−プロテオバクテリアに分類される細菌であり、分類学的に非常に近縁である(J. Gen. Appl. Microbiol. 1997, 43: 355-361; Int. J. Syst. Bacteriol. 1997 47: 1061-1067)。近年、DNA-DNAハイブリダイゼーション実験等により、エンテロバクター属に属する細菌には、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)又はパントエア・ディスパーサ(Pantoea dispersa)等に再分類されているものがある(Int. J. Syst. Bacteriol. 1989, 39: 337-345)。また、エルビニア属に属する細菌にはパントエア・アナナス(Pantoea ananas)、パントエア・スチューアルティに再分類されているものがある(Int. J. Syst. Bacteriol. 1993, 43: 162-173 参照)。
エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。具体的には、欧州特許出願公開952221号明細書に例示された菌株を使用することが出来る。エンテロバクター属の代表的な株として、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株やエンテロバクター・アエロゲネスATCC13048株等が挙げられる。
パントエア属細菌の代表的な菌株として、パントエア・アナナティス、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)パントエア・アグロメランス、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。具体的には、下記の菌株が挙げられる。
パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)(欧州特許出願公開0952221号明細書)
パントエア・アナナティスAJ13356株(FERM BP-6615)(欧州特許出願公開0952221号明細書)
尚、これらの菌株は、欧州特許出願公開0952221号明細書にはエンテロバクター・アグロメランスとして記載されているが、現在では、上記のとおり、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティスに再分類されている。
エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ、エルビニア・カロトボーラが挙げられ、クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラが挙げられ、ラウロテラ属細菌としては、ラウロテラ・プランティコーラが挙げられる。具体的には、下記の菌株が挙げられる。
エルビニア・アミロボーラ ATCC15580株
エルビニア・カロトボーラ ATCC15713株
クレブシエラ・プランティコーラAJ13399株(FERM BP-6600)(欧州特許出願公開955368号明細書)
クレブシエラ・プランティコーラAJ13410株(FERM BP-6617)(欧州特許出願公開955368号明細書)
ラウロテラ・プランティコーラ ATCC33531株
本発明において、本発明において、有機酸生産能を有する細菌とは、培地にて培養したときに、培地中に有機酸を蓄積する能力をいう。また、好ましくは、目的とする有機酸を好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上の量を培地に蓄積させることができる細菌をいう。有機酸は、TCA回路の代謝中間体の有機酸をいい、例えば、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、クエン酸、イソクエン酸、シス-アコニット酸などが挙げられるが、この中でもコハク酸、リンゴ酸、フマル酸が好ましく、コハク酸がより好ましい。
コハク酸生産菌としては、酢酸、乳酸、エタノール、蟻酸の形成能を欠損した株を使用することが出来、具体的には、エシェリヒア・コリSS373株(国際公開99/53035号パンフレット)が挙げられる。酢酸、乳酸、エタノール、蟻酸の形成能を欠損した株は、最小培地で酢酸、乳酸を資化できない株を取得すること、または、以下の乳酸の生合成系遺伝子、酢酸の生合成系酵素の活性を低下することによって取得することが可能である。(国際公開2005/052135号パンフレット)
また、モノフルオロ酢酸耐性(US5,521,075)を付与することによっても取得することができる。
その他にコハク酸生成能が向上した株を取得する方法として、蟻酸と乳酸の両方の形成能を欠損した株を用いて嫌気条件化でグルコース資化能を付与する方法が挙げられる(国際公開1997/16528号パンフレット)。
コハク酸生産能は、以下のコハク酸生合成系に関与する遺伝子の増幅や欠損によっても取得することが可能である。
コハク酸生産能は、乳酸の生合成系酵素である、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH 以下カッコ内は酵素名)の酵素活性が低下するように改変することによっても付与することができる。(国際公開2005/052135号パンフレット、国際公開2005/116227号パンフレット、米国特許5,770,435号公報、米国特許出願公開2007/0054387号公報、国際公開99/53035号公報、Alam, K. Y., Clark, D. P. 1989. J. Bacteriol. 171: 6213-6217)微生物によってはL型の乳酸デヒドロゲナーゼとD型の乳酸デヒドロゲナーゼを有するものがあるが、いずれか一方を低下させるように改変すればよいが、両方とも低下させることが好ましい。
また、コハク酸生産能は、ギ酸の生合成系酵素である、ピルビン酸―ギ酸リアーゼ(PFL)の酵素活性が低下するように改変することによっても付与することができる。(米国特許出願公開2007/0054387号公報、国際公開2005/116227号パンフレット、国際公開2005/52135号パンフレット、Donnelly, M.I., Millard, C.S., Clark, D.P., Chen, M.J., Rathke, J.W. 1998. Appl. Biochem. Biotechnol. 70-72, 187-198)。
コハク酸生産能は、酢酸の生合成系酵素である、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、酢酸キナーゼ(ACK)、ピルビン酸オキシダーゼ (POXB) 、アセチルCoA合成酵素(ACS)、アセチルCoAハイドロラーゼ(ACH)の酵素活性が低下するように改変することによっても付与することが出来る。(米国特許出願公開2007/0054387号公報、国際公開2005/052135号公報、国際公開第99/53035号公報、国際公開2006/031424号公報、国際公開2005/113745号パンフレット、国際公開2005/113744号パンフレット)
また、コハク酸生産能は、エタノールの生合成系酵素である、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の酵素活性が低下するように改変することによってもコハク酸生産能を高めることができる。(国際公開2006/031424号パンフレット参照)
また、ピルビン酸キナーゼ、グルコースPTS(PtsG)、ArcAタンパク質、
IclRタンパク質(iclR)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(gdh)及び/又はグルタミンシンセターゼ(glnA)、グルタミン酸シンターゼ(gltBD)、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下することによっても、コハク酸生産能を高めることが出来る。(国際公開第2006/017127号パンフレット、第2007007933号パンフレット、特開2005-168401号公報)
コハク酸生産能は、コハク酸生産に関与する生合成系酵素の増強によっても付与することが出来る。
コハク酸生産能は、ピルビン酸カルボキシラーゼ、マリックエンザイム、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フマラーゼ、フマル酸リダクターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性を増強することによっても高めることが出来る。(特開平11-196888号公報、国際公開第99/53035号パンフレット、2001. Biotechnol. Bioeng. 74: 89-95、Millard, C. S., Chao, Y. P., Liao, J. C., Donnelly, M. I. 1996. Appl. Environ. Microbiol. 62: 1808-1810、国際公開2005/021770号パンフレット特開2006-320208、Pil Kim, Maris Laivenieks, Claire Vieille, and J.Gregory Zeikus. 2004. Appl. Environ. Microbiol. 70: 1238-1241)これらの目的酵素の酵素活性増強は、下述するyidE遺伝子の発現の増強方法を参照にして行うことが出来る。
具体的には、腸内細菌科に属するコハク酸生産菌として以下の菌株が挙げられる。
エシェリヒア・コリ SS373株(国際公開99/06532号パンフレット)
エシェリヒア・コリ AFP111株(国際公開9716528号パンフレット)
エシェリヒア・コリ NZN111株(米国特許6,159,738号公報)
エシェリヒア・コリ AFP184株(国際公開2005/116227号パンフレット)
エシェリヒア・コリ SBS100MG株、SBS110MG株、SBS440MG株、SBS550MG株、SBS660MG株 (国際公開2006/031424号公報)
本発明に用いる細菌は、グリセロールの資化性を高めるために、glpR遺伝子(EP1715056)の発現が弱化されているか、glpA、glpB、glpC、glpD、glpE、glpF、glpG、glpK、glpQ、glpT、glpX、tpiA、gldA、dhaK、dhaL、dhaM、dhaR、fsa及びtalC遺伝子等のグリセロール代謝遺伝子(EP1715055A)の発現が強化されていてもよい。
遺伝子組換えにより、上記の有機酸生産菌を育種する場合、使用する遺伝子は、上述した遺伝子情報を持つ遺伝子や、公知の配列を有する遺伝子に限られず、コードされるタンパク質の機能が損なわれない限り、その遺伝子のホモログや人為的な改変体等、保存的変異を有する遺伝子も使用することができる。すなわち、公知のタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加等を含む配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
ここで、「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個を意味する。また、保存的変異とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換であり、保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、Valか
らMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。このような遺伝子は、例えば、部位特異的変異法によって、コードされるタンパク質の特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加を含むように公知の遺伝子の塩基配列を改変することによって取得することができる。
さらに、上記のような保存的変異を有する遺伝子は、コードされるアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有し、かつ、野生型タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
また、遺伝子の配列におけるそれぞれのコドンは、遺伝子が導入される宿主で使用しやすいコドンに置換したものでもよい。
保存的変異を有する遺伝子は、変異剤処理等、通常変異処理に用いられる方法によって取得されたものであってもよい。
また、遺伝子は、公知の遺伝子配列の相補配列又はその相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、公知の遺伝子産物と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
プローブとしては、遺伝子の相補配列の一部を用いることもできる。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
<3>有機酸の製造法
本発明の有機酸の製造法においては、グリセロールを炭素源として含む培地で腸内細菌科に属し、有機酸生産能を有する細菌を培養して、培養物中に有機酸を生産蓄積させ、該培養物から有機酸を採取する。
使用するグリセロールは、L−アミノ酸を製造するのに適した濃度であればどのような濃度で用いてもかまわない。培地中の単独の炭素源として用いる場合、好ましくは0.1w/v%〜50w/v%程度、より好ましくは0.5w/v%〜40w/v%程度、特に好ましくは1w/v%〜30w/v%程度培地に含有させる。グリセロールは、グルコース、フラクトース、スクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物などの他の炭素源と組み合わせて用いることも出来る。この場合、グリセロールと他の炭素源は任意の比率で混合することが可能であるが、炭素源中のグリセロールの比率は、10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%であることが望ましい。他の炭素原として好ましいのは、グルコース、フラクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、廃糖蜜、でんぷんの加水分解物やバイオマスの加水分解により得られた糖液などの糖類、エタノールなどのアルコール類である。これらの中ではグルコースが好ましい。また、特に好ましいのは、粗グリセロールとグルコースを50:50〜90:10の重量比で含む混合物である。
培養開始時のグリセロールの好ましい初発濃度は上記のとおりであるが、培養中のグリセロールの消費に応じて、グリセロールを添加してもよい。
本発明において好ましい培地は、粗グリセロールを添加した培地である。粗グリセロールを用いる場合は、グリセロールの純度に応じて、グリセロールの量として上記濃度となるように粗グリセロールを培地に添加すればよい。
また、グリセロール及び粗グリセロールの両方を培地に添加してもよい。
使用する培地は、微生物を用いた有機の発酵生産において従来より用いられてきた培地を用いることができる。すなわち、炭素源に加えて、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地を用いることができる。ここで、窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養源としては、ビタミンB、L−ホモセリンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。なお、本発明で用いる培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じてその他の有機微量成分を含む培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
培地には、例えば上記した有機原料、窒素源、無機塩などのほかに、炭酸イオン、重炭酸イオン又は炭酸ガス(二酸化炭素ガス)を含有させる。炭酸イオン又は重炭酸イオンは、中和剤としても用いることのできる炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウムなどから供給されるが、必要に応じて、炭酸若しくは重炭酸又はこれらの塩或いは炭酸ガスから供給することもできる。炭酸又は重炭酸の塩の具体例としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が挙げられる。
そして、炭酸イオン、重炭酸イオンは、1〜500mM、好ましくは2〜300mM、さらに好ましくは3〜200mMの濃度で添加する。炭酸ガスを含有させる場合は、溶液1L当たり50mg〜25g、好ましくは100mg〜15g、さらに好ましくは150mg〜10gの炭酸ガスを含有させる。
反応液のpHは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を添加することによって調整することができる。本反応におけるpHは、通常、pH5〜10、好ましくはpH6〜9.5であることが好ましいので、反応中も必要に応じて反応液のpHはアルカリ性物質、炭酸塩、尿素などによって上記範囲内に調節する。
本反応に用いる細菌の生育至適温度は、通常、25℃〜35℃である。反応時の温度は、通常、25℃〜40℃、好ましくは30℃〜37℃である。反応に用いる菌体の量は、特に規定されないが、1〜700g/L、好ましくは10〜500g/L、さらに好ましくは20〜400g/Lが用いられる。反応時間は1時間〜168時間が好ましく、3時間〜72時間がより好ましい。
細菌の種培養時は、通気、攪拌し酸素を供給することが必要である。一方、コハク酸など有機酸の生成反応は、通気、攪拌して行ってもよいが、通気せず、酸素を供給しない嫌気的雰囲気下で行ってもよい。ここで言う嫌気的雰囲気とは、溶液中の溶存酸素濃度を低く抑えて反応することを意味する。この場合、溶存酸素濃度として0〜2ppm、好ましくは0〜1ppm、さらに好ましくは0〜0.5ppmで反応させることが望ましい。そのための方法としては、例えば容器を密閉して無通気で反応させる、窒素ガス等の不活性ガスを供給して反応させる、炭酸ガス含有の不活性ガスを通気する等の方法を用いることができる。
以上のような細菌反応により、コハク酸、フマル酸、又はリンゴ酸などの有機酸が反応液中に生成蓄積する。反応液(培養液)中に蓄積した有機酸は、常法に従って、反応液より採取することができる。具体的には、例えば、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、イオン交換樹脂等で脱塩し、その溶液から結晶化あるいはカラムクロマトグラフィーにより精製するなどして、有機酸を採取することができる。
さらに本発明においては、上記した本発明の方法により有機酸を製造した後に、得られた有機酸を原料として重合反応を行うことにより有機酸含有ポリマーを製造することができる。
近年、環境に配慮した工業製品が数を増す中、植物由来の原料を用いたポリマーに注目が集まってきており、本発明において製造されるコハク酸は、ポリエステルやポリアミドといったポリマーに加工されて用いる事が出来る。コハク酸含有ポリマーとして具体的には、ブタンジオールやエチレングリコールなどのジオールとコハク酸を重合させて得られるコハク酸ポリエステル、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンとコハク酸を重合させて得られるコハク酸ポリアミドなどが挙げられる。
また、本発明の製造法により得られるコハク酸または該コハク酸を含有する組成物は食品添加物や医薬品、化粧品などに用いることができる
以下、実施例にて、本発明を更に具体的に説明する。実施例には、試薬グリセロールとして試薬特級グレード(ナカライテスク社製)、粗グリセロールとしてはバイオディーゼル燃料製造過程で生じた粗グリセロール(GLYREX、Nowit DCA-F、及びR Glycerin)を用いた。この粗グリセロールのグリセロール純度は、粗グリセロールGLYREXでは86重量%、粗グリセロールNowit DCA-Fでは79重量%、粗グリセロールR Glycerinでは78重量%であった。
GLYREXはイタリアFOX PETROLI社(FOX PETROLI S.P.A. Sede legale e uffici, via Senigallia 29, 61100 Pesaro)により製造され、イタリアSVG社(SVG ITALIA SrL Via A. Majani, 2, 40122 Bologna (BO))より動物飼料添加物として販売されている粗グリセロールを入手した。Nowit DCA-FはドイツNordische Oelwerke Walther Carrouxy社(Nordische Oelwerke Walther Carroux GmbH & Co KG, Postfach 930247 Industriestrasse 61-65, 21107 Hamburg)より販売されている。R GlycerinはドイツInter-Harz 社(Inter-Harz GmbH Postfach 1411 Rostock-Koppel 17, 25314 Elmshom, 25365 Kl. Offenseth-Sparrieshoop)より販売されている粗グリセロールである。
〔実施例1〕エシェリヒア・コリ由来コハク酸生産菌の構築
<1−1>エシェリヒア・コリのsucA遺伝子破壊用プラスミドの構築
エシェリヒア・コリMG1655株より、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼのE1サブユニットをコードするsucA遺伝子が破壊された株を作製した。ゲノム配列(Genbank Accession No. U00096)の塩基番号757929〜760730に位置するsucA遺伝子の塩基配列に基づいてプライマーを合成し、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型として、sucA遺伝子のN末およびC末断片をPCR法により増幅した。エシェリヒア・コリのsucA遺伝子を配列番号1、アミノ酸配列を配列番号2に示す。N末端断片増幅用PCR用プライマーには配列番号3、4のオリゴヌクレオチドを、C末端断片増幅用PCR用プライマーには配列番号5、6のオリゴヌクレオチドを用いた。配列番号3のオリゴヌクレオチドには、HindIIIサイトが、配列番号6のオリゴヌクレオチドにはXbaIサイトがそれぞれデザインされている。
PCR後の増幅DNA断片は、それぞれ、QIAquick PCR Purification Kit(キアゲン社製)にて精製し、精製したN末端DNA断片およびC末端DNA断片、配列番号1及び4のプライマーを用いて、クロスオーバーPCR法(Link, A. J., Phillips, D. and Church, G. M. 1997. J. Bacteriol. 179: 6228-6237)により、欠損型sucA断片を得た。精製したDNA断片を、HindIII及びXbaI(タカラバイオ社製)にて切断した後、同様にHindIII及びXbaIで切断した温度感受性プラスミドpMAN997(Matsui, H., Kawasaki, H., Shimaoka, M., and Kurahashi, O. 2001. Biosci. Biotechnol. Biochem. 65: 570-578、WO99/03988)にクローニングすることで、sucA破壊用プラスミドを構築し、pMANΔsucAと名付けた。
<1−2>エシェリヒア・コリMG1655株由来α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損株の構築
プラスミドpMANΔsucAでエシェリヒア・コリMG1655株を形質転換し、LB+アンピシリンプレート(アンピシリンを25μg/mL含むLB寒天プレート)で30℃にてコロニーを選択した。選択したクローンを30℃で一晩液体培養した後、培養液を1000倍希釈してLB+アンピシリンプレートにまき、42℃でコロニーを選択した。選択したクローンをLB+アンピシリンプレートに塗り広げて30℃で培養した後、プレートの1/8の菌体をLB培地 2 mLに懸濁し、42℃で4〜5時間振とう培養した。10000倍希釈した菌体培養液をLBプレートにまき、得られたコロニーのうち数百コロニーをLBプレートとLB+アンピシリンプレートに植菌し、生育を確認することで、アンピシリン感受性株を選択した。アンピシリン感受性株の数株についてコロニーPCRを行い、sucA遺伝子の欠失を確認した。こうしてエシェリヒア・コリMG1655株由来のsucA欠失株MG1655ΔsucA株を得た。
<1−3>エシェリヒア・コリ乳酸デヒドロゲナーゼ欠損株の構築
乳酸デヒドロゲナーゼはNADHを補酵素としてピルビン酸から乳酸を生成する反応を行う酵素である。エシェリヒア・コリの酸素制限下での培養において、乳酸の生成を抑えるために乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子の欠損株を構築した。本遺伝子の欠失は、DatsenkoとWannerによって開発された「Red-driven integration」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A. and Wanner, B. L. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97: 6640-6645)とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., and Gardner, J. F. 2002. J. Bacteriol. 184: 5200-5203)によって実施した。本手法により目的とする遺伝子の一部を合成オリゴヌクレオチドの5’側に、抗生物質耐性遺伝子の一部を3’側にデザインした合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて得られたPCR産物を用いて、一段階で遺伝子破壊株を構築することができる。さらにλファージ由来の切り出しシステムを組み合わせることにより、遺伝子破壊株に組み込んだ抗生物質耐性遺伝子を除去することが出来る。
<1−4>乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子欠損株の構築
WO2005/010175の記載に従って、ldhA遺伝子の一部に対応するプライマーの5’末端に、λファージのattLとattRの両端に対応する配列をプライマーの3’末端に、それぞれ有する合成オリゴヌクレオチドをプライマーに用いてプラスミドpMW118-attL-Cm-attRを鋳型としてPCRを行った。プライマーに用いた合成オリゴヌクレオチドの配列を配列番号7、8に示す。またエシェリヒア・コリのldhA配列を配列番号11に、アミノ酸配列を配列番号12に示す。増幅したPCR産物をアガロースゲルで精製し、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を保持するエシェリヒア・コリMG1655ΔsucA株にエレクトロポレーションにより導入した。次に、プラスミドpKD46が脱落したアンピシリン感受性株を取得し、ldhA遺伝子の欠失をPCRによって確認した。さらに、ldhA遺伝子内に導入されたatt-cat遺伝子を除去するために、ヘルパープラスミドpMW-intxis-tsにて形質転換し、アンピシリン耐性株を選択した。尚、前記pMW-intxis-tsは、λファージ由来のインテグラーゼ(Int)遺伝子と切出し酵素(excisionase、Xis)遺伝子を有し、複製が温度感受性のプラスミドである。
その後、アンピシリン感受性、かつクロラムフェニコール感受性により、att-cat及びpMW-intxis-tsが脱落しているldhA破壊株を取得した。得られたldhA欠損候補株より染色体DNAを調製し、配列番号9、10に示されるオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行い、MG1655ΔsucA株より調製した染色体DNAを鋳型としてPCRを行った場合よりも約1.0kb小さいバンドが認められたldhA欠損株を、MG1655ΔsucAΔldhA株と名付けた。

〔実施例2〕グリセロールを炭素源としたコハク酸生産培養
L−コハク酸生産菌であるエシェリヒア・コリMG1655DsucADldhAを、LB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 10g/L、寒天15g/L)にて37℃で24時間培養した。寒天培地上の細胞を掻き取り、本培養培地20mLを入れた500ml容三角フラスコに植菌し、培養温度37℃にて、48時間培養を行った。攪拌は、100rpmの回転数で、微好気条件にて実施した。本培養は、グルコース、試薬グリセロール、粗グリセロールを炭素源として用いた培地にて実施した。総炭素源量はいずれも40g/Lとした。
[本培養培地組成]
炭素源 40g/L
酵母エキス 2g/L
FeSO・7HO 10mg/L
MnSO・4HO 10mg/L
KHPO 1.0g/L
MgSO・7HO 1g/L
(NH4)SO 24g/L
ストレプトマイシン硫酸塩 20mg/L
CaCO3
培養終了後、生育度を600nmにおける濁度(OD)にて測定し、添加した糖とグリセロールの濃度をBF-5(王子計測機器)にて測定した。生成したコハク酸量は液体クロマトグラフィーにより分析した。カラムはRezex ROA-Organic Acid H+(Phenomenex)を二本直列接続したものを用い、サンプルは5mM p-トルエンスルホン酸を用いて50℃で溶出した。溶出液を5mM p-トルエンスルホン酸および100μM EDTAを含む20mM Bis-Tris水溶液を用いて中和し、CDD-10AD(Simazu)にて電気伝導度を測定することによりコハク酸を測定した。フラスコ2本ずつ行った培養の結果の平均値を表1に示す。
グルコースを炭素源としたときのコハク酸量に対し、試薬グリセロールを用いた場合、炭素源が残っているのにもかかわらず、コハク酸量は増大した。さらに、粗グリセロールを用いた場合には、いずれにおいても、炭素源の残量は試薬グリセロールよりも増加してしまっていたが、コハク酸量は同等以上であり、消費した炭素源に対するコハク酸の収率は試薬グリセロールを大きく上回った。
〔実施例3〕粗グリセロールの成分分析
GLYREX、Nowit DCA-F、及びR Glycerinの各粗グリセロールの成分分析を実施した。測定方法は、グリセロール、メタノールはガスクロマトグラフ法により測定した。全窒素はケルダール法、エーテル可溶分はソックスレー抽出法により測定した。ギ酸、酢酸は高速液体クロマトグラフ法、塩化物イオン、硫酸イオンはイオンクロマトグラフ法により測定した。ナトリウム、カリウム、銅は原子吸光高度法、リン、鉄、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法にて測定を実施した。100g当たりの含有量(g)の測定結果を表2に示した。
[配列表の説明]
配列番号1:エシェリヒア・コリsucA遺伝子配列
配列番号2:エシェリヒア・コリSucAアミノ酸配列
配列番号3:sucA遺伝子破壊用プライマー
配列番号4:sucA遺伝子破壊用プライマー
配列番号5:sucA遺伝子破壊用プライマー
配列番号6:sucA遺伝子破壊用プライマー
配列番号7:ldhA遺伝子破壊用プライマー
配列番号8:ldhA遺伝子破壊用プライマー
配列番号9:ldhA遺伝子破壊確認用プライマー
配列番号10:ldhA遺伝子破壊確認用プライマー
配列番号11:エシェリヒア・コリldhA遺伝子配列
配列番号12:エシェリヒア・コリLdhAアミノ酸配列

Claims (9)

  1. 腸内細菌科に属し、有機酸生産能を有する細菌をグリセロールを炭素源として含む培地に培養し、培養物中に有機酸を生産蓄積させ、該培養物から有機酸を採取することを特徴とする有機酸の製造法。
  2. 培地中のグリセロールの初発濃度が1〜30w/v%である請求項1記載の製造法。
  3. 前記培地が粗グリセロールを添加した培地である請求項1又は2に記載の製造法。
  4. 前記粗グリセロールがバイオディーゼル燃料生産において産生される粗グリセロールである請求項3に記載の製造法。
  5. 前記細菌がエシェリヒア属に属する細菌である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造法。
  6. 前記細菌がパントエア属に属する細菌である請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造法。
  7. 前記細菌がエシェリヒア・コリである請求項5に記載の製造法。
  8. 前記有機酸がコハク酸である請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造法。
  9. 前記細菌が、乳酸デヒドロゲナーゼ活性が低下するように改変された、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造法。
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