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JP2012216426A - セパレータ材料及びその製造方法、並びにこれを用いた電池 - Google Patents

セパレータ材料及びその製造方法、並びにこれを用いた電池 Download PDF

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JP2012216426A JP2011081161A JP2011081161A JP2012216426A JP 2012216426 A JP2012216426 A JP 2012216426A JP 2011081161 A JP2011081161 A JP 2011081161A JP 2011081161 A JP2011081161 A JP 2011081161A JP 2012216426 A JP2012216426 A JP 2012216426A
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仁志 立野
Koji Wakizaka
弘二 和氣坂
Toshio Kamisasa
利夫 上笹
Yuki Nakahata
有貴 中畑
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Abstract

【課題】 緻密性及び地合の均一性に優れ、アルカリ二次電池のセパレータとして使用した際耐ショート性が高く、充放電サイクル寿命の長寿命化を達成するセパレータ材料とその製造方法、及びそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 本発明のセパレータ材料は、繊度が0.5dtex以下の極細繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含む湿式不織布からなり、前記湿式不織布は、前記高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されており、圧縮試験を繰り返し100回測定したとき、圧縮レジリエンスが80%以上であり、圧縮剛さ、圧縮率、及び最大荷重時厚みから選ばれる少なくとも一つが、特定の範囲を満たすことを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ニッケル−水素電池やニッケル−カドミウム電池に代表されるアルカリ二次電池、リチウムイオン二次電池、あるいは電気二重層キャパシタ、コンデンサーなどの電気素子、あるいはイオン交換セパレータ(イオンキャッチャー)などに用いられるセパレータ材料とその製造方法、及びそれを用いた電池に関するものである。
従来、セパレータ材料として、突き刺し強力、引張強力を高めることで耐ショート性を向上させるために、2種類の異なる熱可塑性樹脂を構成単位とした、いわゆる芯鞘型複合繊維を用意し、この芯鞘型複合繊維をより高強度の繊維としたセパレータ材料や、より細繊度の繊維にしたセパレータ材料が多数提案されている。
例えば、特開2004−296355号公報では、耐ショート性、生産性を高めるために単繊維強度が4.5cN/dtex以上の複合高強度ポリプロピレン系繊維のみからなり、平均5%モジュラス強度が50〜120N/5cmの電池用セパレータが提案されている。また、特開2004−335159には引張り強さが4.5cN/dtex以上の複合高強度ポリプロピレン系繊維と、繊維径が4μm以下の極細繊維を所定量含む、加圧下における電解液の保持性に優れた電池セパレータ材料が提案されている。
特開2004−296355号公報 特開2004−335159号公報
特開2004−296355号公報で提案されている、単繊維強度が4.5cN/dtex以上の複合高強度ポリプロピレン系繊維のみからなるセパレータは、高強度複合繊維のみで構成することでセパレータの突き刺し強力や引張強力といった機械的特性が高められる。しかし、芯鞘型複合繊維は0.1dtex以下の繊維にすることが難しく、芯鞘型複合繊維のみでセパレータを製造すると、分割型複合繊維が分割して得られる極細繊維や海島型複合繊維から海成分を溶脱して得られる極細繊維を含むセパレータよりも地合が悪くなる恐れや、平均孔径が大きくなりすぎる恐れがある。また、極細繊維を含むセパレータと同程度に緻密にするために、高い温度で構成繊維間を熱接着させたり、加工時間を長時間にして構成繊維間を熱接着させたりするとセパレータの繊維間空隙が過剰に埋まり、樹脂フィルム状になることで通気性、保液性が低下する恐れがある。
特開2004−335159で提案されている電池セパレータ材料は、電池セパレータ材料の潰れにくさを判定する尺度として厚み保持率を規定し、厚み保持率が90%以上のものが好ましいとされている。この厚み保持率は、マイクロメータによる1000g荷重時の厚みの、500g荷重時の厚みに対する百分率で定義されているが、二次電池で充放電を行うと充電時には電池筐体内部の圧力が上昇し、数十MPaの圧力が電池セパレータに加わるとされていることから、充電時の電池セパレータがおかれる環境に関する検証としては不十分である。また、特開2004−335159では、湿式抄紙して得られた繊維ウェブを熱風乾燥、いわゆるエアスルー方式で乾燥させている。繊維ウェブをエアスルー方式で乾燥・熱処理すると、嵩高な熱接着不織布が得られやすいが、繊維と繊維の接触・融着が交点のみで行われるため、繊維間の接着力が弱くなり、機械的強度が不足したり、寸法安定性に欠けたりするおそれがある。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、セパレータ材料としての緻密性および地合の均一性に優れるとともに、各種アルカリ二次電池のセパレータとして使用した際、耐ショート性能が高く、優れた充放電サイクル寿命を有するセパレータ材料とその製造方法、及びこれを用いた電池に関するものである。
本発明者等は前記課題を克服するため、セパレータ材料の使用状況、すなわち充放電を繰り返した際、電極材が膨張・収縮を繰り返すため、セパレータには加圧・減圧が繰り返され、セパレータ材料に対して圧縮と圧縮の解放が繰り返されるという点に着目した。セパレータ材料が、厚み方向に圧縮を受けたときには、適度に押しつぶされることで、電極材の膨張時の圧縮力に対して破損することなく圧縮力を吸収することができる一方、電極材が元の厚みに戻ろうとしたとき(収縮したとき)に、電極材に追随して圧縮から解放されて嵩を回復することができるセパレータ材料が耐ショート性およびサイクル寿命が高くなることを知った。具体的には、繰り返し圧縮試験によって測定される圧縮レジリエンス(以下、圧縮回復率、RCとも称す)を所定の範囲とし、圧縮剛さ(以下、LCとも称す)、圧縮率(以下、EMCとも称す)、及び圧縮厚み(以下、Tmとも称す)から選ばれる少なくとも一つを所定の範囲内にすることで、充放電の際、電極材が膨張してもセパレータが適度に圧縮されることで内圧の上昇を防ぎ、セパレータに加えられる圧力を低下させることでセパレータの破損が起こりにくくなり、ショートが発生しにくくなることを見出した。
すなわち、本発明のセパレータ材料は、繊度が0.5dtex以下の極細繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含む湿式不織布からなり、前記湿式不織布は、前記高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されており、後述する方法により測定した繰り返し圧縮厚み測定において、圧縮剛さ(LC)が0.73以下であり、圧縮レジリエンス(RC 圧縮回復率とも称す)が80%以上であることを特徴とするセパレータ材料である。かかる構成とすることにより、充放電の際に電極材が膨張しても、セパレータが電極材の膨張に追随して、上昇する圧力に応じて圧縮されるため、効果的に内圧の上昇を防ぐだけでなく、放電時に圧力が減少することでセパレータの厚みが回復して電極材と間に隙間を発生させないため、充放電を繰り返しても内部抵抗の上昇しにくく、優れた充放電サイクル寿命を有するセパレータ材料となる。
また、本発明のセパレータ材料は、0.5dtex以下の極細繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含む湿式不織布からなり、前記湿式不織布は、前記高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されており、後述する方法により測定した繰り返し圧縮厚み測定において、圧縮率(EMC)が50%以上であり、圧縮レジリエンス(RC)が80%以上であることでも特定できる。かかる構成とすることにより、充電の際、電極材が膨張してもセパレータが上昇する圧力に応じて適度に圧縮されることで内圧の上昇を防ぐだけでなく、放電時に圧力が減少することでセパレータの厚みが回復して電極材と間に隙間を発生させないため、充放電を繰り返しても内部抵抗の上昇しにくく、優れた充放電サイクル寿命を有するセパレータ材料となる。
さらにまた、本発明のセパレータ材料は、0.5dtex以下の極細繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含む湿式不織布からなり、前記湿式不織布は、前記高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されており、後述する方法により測定した繰り返し圧縮厚み測定において、圧縮レジリエンス(RC)が80%以上であり、最大荷重時厚み(Tm)が90μm以下であることでも特定できる。かかる構成とすることにより、充電の際、電極材が膨張してもセパレータが上昇する圧力に応じて適度に圧縮されることで内圧の上昇を防ぐだけでなく、放電時に圧力が減少することでセパレータの厚みが回復して電極材と間に隙間が生じにくいため、充放電を繰り返しても内部抵抗の上昇しにくく、優れた充放電サイクル寿命を有するセパレータ材料となる。
本発明のセパレータ材料の製造方法は、繊度が0.5dtex以下の極細繊維もしくは前記極細繊維を発生し得る繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含むスラリーを湿式抄紙して繊維ウェブを得る工程、前記繊維ウェブを熱処理により少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって構成する繊維同士が熱接着させた熱接着不織布を得る工程、前記熱接着不織布を、熱カレンダーロールにより少なくとも1回厚み調整を行う工程を含み、厚み調整工程を行う前の前記熱接着不織布の不織布厚みをT1、厚み調整工程後の前記熱接着不織布の厚みをT2としたとき、工程前後の厚み比(T2/T1)が0.65以下になるように厚みを調整することを特徴とする。この製造方法で得られるセパレータ材料は、高い圧力加えた際、適度に圧縮されるだけでなく、圧力を解放すればその厚みが回復するためへたりにくく、電池内部にセパレータとして組み込んだ際、内圧の上昇を抑え、充放電を繰り返しても内部抵抗の上昇を抑える優れた充放電サイクル寿命を有するセパレータ材料となる。
本発明のセパレータ材料に用いることができる、各種分割型複合繊維の模式的断面図である。 本発明のセパレータ材料の繰り返し圧縮試験における圧縮時(行き)及び圧縮解放時(戻り)変位−荷重曲線、及び圧縮剛さ、圧縮レジリエンス、圧縮率の算出方法を示すグラフである。
本発明のセパレータ材料に用いられる極細繊維は、繊度が0.5dtex以下であれば特に限定されない。極細繊維が前記繊度の範囲を満たすことで、得られるセパレータ材料が緻密で地合の良好なものとなり、耐ショート性を向上させることができる。また、繊維の比表面積が増加することで、スルホン化処理やフッ素ガス処理あるいはコロナ放電処理などの親水化処理において比較的弱い条件で処理しても十分な親水性を与えることができ、電池のサイクル寿命を向上させ、内圧、内部抵抗の上昇を抑制することができるほか、親水化処理による不織布の強力劣化を抑制することができる。極細繊維の繊度は0.005dtex以上であることが好ましく、0.01dtex以上0.3dtex以下がより好ましく、0.05dtex以上、0.15dtex以下が特に好ましい。
前記極細繊維の繊維長は特に限定されないものの、繊維長は0.5mm以上25mm以下であることが好ましい。繊維長を0.5mm以上とすることで、繊維の脱落が発生したり、得られるセパレータ材料表面が毛羽だったりすることがなく、繊維長を25mm以下とすることで湿式抄紙法によって湿式不織布を製造する際、スラリー中における繊維の分散性が低下することがなく、均一な不織布が得られやすいからである。本発明のセパレータ材料に使用する極細繊維の繊維長は1mm以上20mm以下が好ましく、3mm以上10mm以下がより好ましく、3mm以上6mm以下が特に好ましい。
前記極細繊維は前記繊度の範囲を満たせばその製造方法は限定されない。極細繊維はいわゆる海島構造の断面を有する複合繊維から海成分を溶脱して得られる極細繊維が使用できるほか、メルトブローン法、或いはエレクトロスピニング法で比較的長い繊維長の極細繊維を製造した後、適度な繊維長、例えば前記の繊維長となるように切断し、所望の繊維長の繊維を選別したものを使用してもよい。しかし、比較的容易に製造できる点や、所望の性質を有する極細繊維が製造しやすい点から前記極細繊維は、2種類の樹脂成分からなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維を使用することが好ましい。分割型複合繊維の分割前の繊度は、分割処理によって発生する極細繊維が前記極細繊維の繊度の範囲を満たせば特に限定されないが、好ましくは0.1dtex以上4dtex以下であり、より好ましくは0.5dtex以上3.3dtex以下であり、0.8dtex以上2.2dtex以下が特に好ましい。
前記分割型複合繊維は分割処理によって異なる樹脂成分で構成される極細繊維を複数発生させるものであれば特に限定されず、2成分の分割型複合繊維であってもよく、3成分以上の樹脂成分に分割可能な分割型複合繊維であってもよいが、分割型複合繊維の生産性、分割性を考慮すると、異なる2種類の樹脂成分からなる分割型複合繊維が好ましい。異なる2種類の樹脂成分には、熱可塑性樹脂であれば特に限定することなく使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどのポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体といった、ポリオレフィンのモノマー同士の共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックが使用できる。前記分割型複合繊維にはこれらの樹脂が使用できるが、セパレータ材料を電池に組み込んで使用する際、水酸化カリウム水溶液といった強アルカリ性の水溶液を電解液としてセパレータ材料に含浸させるので、耐アルカリ性の高い、ポリオレフィン系樹脂同士を複合した分割型複合繊維が好ましい。
前記分割型複合繊維は、その断面形状が限定されず、図1(a)に示す中空部分のあるオレンジ状断面(以下、単に中空オレンジ状断面とも称す)や、図1(b)に示す中空部分のない、いわゆる中実のオレンジ状断面(以下、単に中実オレンジ状断面とも称す)、特開2000−328348号公報及び特開2002−88580号公報で開示されているC型のオレンジ状断面(以下、単にC型オレンジ状断面とも称す)のほか、オレンジ状断面において、図1(c)に示すように、図中の単一樹脂からなるA成分と、芯成分22と鞘成分24で構成されるB成分(複合樹脂成分)からなる中空複合分割型断面(以下、単に中空複合分割型オレンジ状断面とも称す)、図1(d)に示すように、図中の単一樹脂からなるA成分と、芯成分32と鞘成分34で構成されるB成分(複合樹脂成分)からなる中実複合分割型のオレンジ状断面(以下、単に中実複合分割型オレンジ状断面とも称す)、また多層バイメタル状の断面形状など、分割処理によって2種類以上の極細繊維を発生し得る公知の分割型複合繊維の断面形状であれば、いずれの断面形状であってもよい。この中でも分割型複合繊維の生産性、分割性を考慮すると、中空オレンジ状断面、中実オレンジ状断面、C型オレンジ状断面、中空複合分割型オレンジ状断面、中実複合分割型オレンジ状断面が好ましく、中空オレンジ状断面、C型オレンジ状断面、中空複合分割型オレンジ状断面がより好ましい。分割数は特に限定されず公知となっている分割数であればよいが、4〜32分割が好ましく、4〜24分割が好ましく、8〜16分割が特に好ましい。
前記分割型複合繊維は前記の通り、複数成分の異なるポリオレフィン系樹脂で構成させると得られるセパレータ材料が電解質やアルカリに対して耐性の高いものとなるため好ましい。本発明においてポリオレフィン系樹脂は、各種α−オレフィンの単独重合体や共重合体、三元共重合体(ターポリマーとも称す)が含まれる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリ(4−メチルペンテン−1)、および4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体等のポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(以下PPとも称し、チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリプロピレンのほか、メタロセン触媒で重合したポリプロピレンも含む)、ポリエチレン系樹脂(以下PEとも称し、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリエチレンのほか、メタロセン触媒で重合したポリエチレンも含む)、ポリブテン−1、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(以下EVOHとも称す)系樹脂が挙げられる。
前記のポリオレフィン系樹脂のほか、公知のポリオレフィンからなる樹脂を前記分割型複合繊維の各樹脂成分に使用できるが、分割型複合繊維の生産性や分割性を考慮すると、前記分割型複合繊維を構成するポリオレフィン系樹脂の組み合わせとしては、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合体系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、といった樹脂の組み合わせが好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂の組み合わせがより好ましい。
本発明においてポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合樹脂、及びプロピレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にプロピレンを85モル%以上含んでいるものをポリプロピレン系樹脂と称す。前記ポリプロピレン系樹脂は特に限定されないが、紡糸性、延伸性、得られる分割型複合繊維の分割性を考慮すると、前記ポリプロピレン系樹脂は紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲内において、溶融時の流動性が低いポリプロピレン系樹脂のほうが、得られる分割型複合繊維の分割性が高くなる傾向があり好ましい。
本発明においてポリエチレン系樹脂とは、エチレンのホモポリマー、エチレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、及びエチレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にエチレンを85モル%以上含んでいるものをポリエチレン系樹脂と称す。前記ポリエチレン系樹脂も前記ポリプロピレン系樹脂と同様、特に限定されないが紡糸性、延伸性、得られる分割型複合繊維の分割性を考慮すると、前記ポリエチレン系樹脂も紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲内において、溶融時の流動性が低いポリエチレン系樹脂のほうが、得られる分割型複合繊維の分割性が高くなる傾向があり好ましい。また、前記ポリエチレン系樹脂としては前述のとおり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどの各種ポリエチレンを用いることができるが、分割型複合繊維を構成する各樹脂成分において、含まれるポリマーの結晶性が高いポリマーであるほど分割性が向上する傾向があるので使用するポリエチレンの密度は0.94g/cm3以上であることが好ましい。
本発明においてポリメチルペンテン系樹脂とは、4−メチルペンテン−1のホモポリマー、4−メチルペンテン−1と、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デカン−1、テトラデカン−1、オクタデカン−1等の炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、および4−メチルペンテン−1のホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中に4−メチルペンテン−1を85モル%以上含んでいるものをポリメチルペンテン系樹脂と称す。前記ポリメチルペンテン系樹脂は特に限定されないが、その融点が210℃以上245℃以下であることが好ましく、ASTM D 1238に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度260℃、荷重5.0kgf(49.0N)、以下MFR260とも記す。)が120g/10分以上280g/10分以下であることが好ましい。本発明のセパレータ材料に使用できるポリメチルペンテン系樹脂としては例えば三井化学(株)製「TPX」(登録商標)がある。
本発明においてエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とはエチレンとビニルアルコールとからなる共重合樹脂、もしくはエチレンとビニルアルコールとからなる共重合樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にエチレンとビニルアルコールをあわせて50モル%以上、好ましくは85モル%以上含んでいるものをエチレン−ビニルアルコール系樹脂と称す。前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、エチレン含有量が20モル%以上70モル%以下であることが好ましい。また前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、ASTM D 1238に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度210℃、荷重2.16kgf(21.2N)、以下MFR210とも記す。)が1g/10分以上50g/10分以下の樹脂を用いると、紡糸性に優れるため好ましい。より好ましいMFR210の下限は10g/10分以上である。より好ましいMFR210の上限は30g/分以下である。本発明のセパレータ材料に使用できるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂としては日本合成化学工業(株)製「ソアノール」(登録商標)がある。
前記分割型複合繊維は、異なる熱可塑性樹脂からなる樹脂成分が体積比で30:70〜70:30であることが好ましい。樹脂成分の体積比が30:70〜70:30になることで、分割型複合繊維を溶融紡糸する際、繊維断面形状がいびつな形状になったり断面形状が崩れたりすることなく溶融紡糸が行えるだけでなく、分割後の極細繊維が、一方の樹脂成分からなる極細繊維の繊度が極端に大きくなることもない。前記樹脂成分の体積比は40:60〜60:40が好ましく、50:50すなわち樹脂成分が同体積になるように溶融紡糸を行うことが最も好ましい。
前記分割型複合繊維において、断面形状が中空複合分割型オレンジ状断面や中実複合分割型オレンジ状断面の複合分割型複合繊維とする場合、図1(c)、図1(d)のB成分で示される芯鞘型複合繊維となっている樹脂成分の芯部分(22,32)、および分割処理後に極細単一繊維となるA成分として、2種類の熱可塑性樹脂のうち融点がより高い熱可塑性樹脂が配され、図1(c)、図1(d)のB成分で示される芯鞘型複合繊維となっている樹脂成分の鞘部分(24,34)として、2種類の熱可塑性樹脂のうち、融点がより低い熱可塑性樹脂が配されるように溶融紡糸を行うことが紡糸性、及び得られる分割型複合繊維の熱接着性の面から好ましい。この場合、融点が高い熱可塑性樹脂と、融点が低い熱可塑性樹脂は、高融点の熱可塑性樹脂:低融点の熱可塑性樹脂=80:20〜40:60(体積比)となるように溶融紡糸をすることで、繊維断面形状がいびつな形状になったり断面形状が崩れたりすることなく溶融紡糸が行えるだけでなく、分割後の極細繊維が、一方の樹脂成分からなる極細繊維の繊度が極端に大きくなることがないため好ましい。分割型複合繊維の断面形状が中空複合分割型オレンジ状断面や中実複合分割型オレンジ状断面の場合、二つの熱可塑性樹脂成分の体積比は、高融点の熱可塑性樹脂成分:低融点の熱可塑性樹脂成分=75:25〜45:55が好ましく、70:30〜50:50となるように溶融紡糸を行うことが最も好ましい。
前記分割型複合繊維は繊維断面において、繊維長さ方向に連続する空洞部分を有さない、いわゆる中実断面であってもよいだけでなく、連続する空洞部分を有する中空断面やC字断面であってもよいことは前記の通りである。分割型複合繊維の分割性、分割後の極細繊維の繊度及び分割後に得られる極細繊維の繊維断面形状等を考慮すると、本発明のセパレータ材料に使用する分割型複合繊維は、繊維断面において、繊維長さ方向に連続する空洞部分を有する中空断面の繊維であることが好ましい。前記中空部分は空洞になっていれば中心(同心)に位置しなくても偏心していてもよいが、分割型複合繊維の生産性から考慮すると、同心に位置することが好ましい。また、中空部分の形状も円形、楕円形、異形のいずれであってもよい。また中空部分の中空率は、繊維断面積の5%以上40%以下の範囲であることが好ましい。中空率のより好ましい範囲は、8%以上30%以下であり、特に好ましくは10%以上25%以下である。中空率が5%未満であると、各構成成分を中空部分に露出させることが困難となり、中空部分が40%を超えると、生産性の点から困難となる傾向にあるからである。
前記分割型複合繊維から極細繊維を形成することは、後述するが、繊維ウェブ及び不織布製造の過程において、繊維に外部から力を加えて、分割型複合繊維を分割することにより行うとよい。繊維の分割は、例えば、高圧水流を噴射することにより実施することができ、あるいは、湿式抄紙法により不織布を製造する場合には、抄紙の際の離解処理時に受ける衝撃を利用して実施することができる。
本発明のセパレータ材料における前記極細繊維の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。極細繊維の含有量が5質量%以上であると、セパレータ材料内部において、繊維間空隙により形成される不織布の平均孔径が大きくなりすぎず不織布の緻密性が損なわれることがなく、セパレータ材料の耐ショート性が低下することもない。極細繊維の含有量が50質量%以下であると、極細繊維同士および極細繊維と他の繊維とが絡みつく、いわゆるファイバーボール現象を引き起こしたりして、地合が不均一な不織布になることもない。また極細繊維が不織布に過剰に含まれると、必要以上に緻密な不織布となり、電池内部での充放電時に電解液及びガスの通過性が悪くなり、内圧、内部抵抗が上昇しサイクル寿命が悪くなることがある。本発明のセパレータ材料における前記極細繊維の含有量は、10質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、18質量%以上38質量%以下であることが特に好ましく、22質量%以上32質量%以下が最も好ましい。
次に、本発明のセパレータ材料に用いられる高強度複合繊維について説明する。本発明のセパレータ材料において、前記高強度複合繊維はセパレータ材料の構成繊維間を熱接着させ、セパレータ材料の機械的強度の発現に寄与している。本発明のセパレータ材料に用いられる高強度複合繊維は、単繊維強度が4.0cN/dtex以上であれば特に限定されない。高強度複合繊維の単繊維強度が4.0cN/dtex以上であると、セパレータ材料の突き刺し強力、引張強力といった力学的特性が向上し、セパレータ材料の耐ショート性だけでなく、生産工程での取り扱い性も向上する。高強度複合繊維の単繊維強度の上限は特に限定されないが、8.0cN/dtex以下であることが好ましい。高強度複合繊維の単繊維強度が高すぎると、得られるセパレータ材料が必要以上に剛性の高い、しなやかさが失われたものになることがあり、また不織布作製時あるいは電池組立時の工程性が低くなることがある。前記高強度複合繊維の単繊維強度は4.2cN/dtex以上7.0cN/dtex以下であるとより好ましく、4.5cN/dtex以上6.5cN/dtex以下であると特に好ましく、4.8cN/dtex以上6.2cN/dtex以下であると最も好ましい。
前記高強度複合繊維は、その繊度は特に限定されないが、繊度が0.1dtex以上4.4dtex以下であることが好ましい。高強度複合繊維の繊度が前記範囲を満たすことで、抄紙工程で容易に抄紙ができ、地合が均一なセパレータ材料が得られるためである。高強度複合繊維の繊度は0.2dtex以上2.2dtex以下であることがより好ましく、0.4dtex以上1.2dtex以下が特に好ましく、0.5dtex以上0.9dtex以下が最も好ましい。
前記高強度複合繊維の繊維長は特に限定されないが、繊維長が0.5mm以上、25mm以下であることが好ましい。繊維長が0.5mm以上であることで、繊維の脱落が発生したり、得られるセパレータ材料表面が毛羽だったりすることがなく、繊維長を25mm以下とすることで湿式抄紙法によって湿式不織布を製造する際、スラリー中における繊維の分散性が低下することがなく、均一な不織布が得られやすいからである。本発明のセパレータ材料に使用する高強度複合繊維の繊維長は1mm以上20mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下であることが特に好ましく、3mm以上6mm以下が最も好ましい。
前記高強度複合繊維の伸度は特に限定されないが、伸度が25%より大きく60%以下であることが好ましい。高強度複合繊維の伸度がこの範囲を満たすことで、この高強度複合繊維を含む本発明のセパレータ材料が、金属バリや、電池を繰り返し使用した際に発生するデンドライトなどの針状金属異物と接触し、圧力を受けた際、適度に変形してセパレータ材料に加えられる圧力を分散するようになるため、変形はするものの異物が突き抜けにくいセパレータ材料となると考えられる。高強度複合繊維の伸度が25%以下であると、異物によって加えられた圧力を分散できず、異物と接触している部分にのみ強い荷重が加わり、その部分から割けやすくなることがある。高強度複合繊維の伸度が60%を超えると、高強度複合繊維が過度に伸びたり変形したりするため、セパレータ材料の突き刺し強力や引張強力が低下することがある。高強度複合繊維の伸度は、32%以上60%以下であることがより好ましく、32%以上55%以下であることが特に好ましく、35%以上50%以下であることが最も好ましい。なお、本発明でいう伸度とは、JIS L 1015に準じ、引張試験機を用い、試料のつかみ間隔を20mmとして引張試験を行い、破断したときの伸びをその繊維の伸度とする。
前記高強度複合繊維は、ヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満であることが好ましい。高強度複合繊維のヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満であることで、セパレータ材料における突き刺し強力や引張強力といった機械的特性と適度な柔軟性が両立され、セパレータ材料の機械的特性や耐ショート性を高められる。前記ポリオレフィン系芯鞘型複合繊維のヤング率は3530N/mm2以上4460N/mm2以下であるとより好ましく、3720N/mm2以上4460N/mm2以下であると特に好ましい。前記ヤング率はJIS L 1015に規定されている方法により測定した、初期引張抵抗度から算出した見かけヤング率の値を指し、前記初期引張抵抗度は、定速緊張形試験機によって測定した値をいう。
前記高強度複合繊維は、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂のうち、最も低融点の熱可塑性樹脂が繊維表面に露出し、その露出面積が、繊維表面全体の面積に対し、少なくとも20%以上を占める複合繊維であれば特に限定されない。このような複合繊維としては、異なる2つの樹脂成分が同心円状に配置された芯鞘型複合繊維、内側に配置される、いわゆる芯成分が繊維の中心よりずれている偏心芯鞘型複合繊維、異なる2つの樹脂成分を貼り合わせた並列型複合繊維(サイドバイサイド型複合繊維とも称す)、異なる2つの樹脂成分を重ね合わせた多層バイメタル型複合繊維が挙げられる。本発明のセパレータ材料は、主に高強度複合繊維によって構成繊維間を熱接着させるため、熱接着性の高い同心円状の芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維が好ましい。特に、同心円状の芯鞘型複合繊維または偏心芯鞘型複合繊維が好ましい。以下、同心円状の芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維を併せて単に芯鞘型複合繊維と称す。
前記高強度繊維が芯鞘型複合繊維である場合、高強度複合繊維の機械的特性は高強度複合繊維の中心付近に存在する芯成分に依存する傾向にある。また前記芯成分の外側に位置するいわゆる鞘成分は、芯成分を被覆し、繊維表面を覆う形で存在するとよい。前記鞘成分は、熱加工において適度に溶融し、構成繊維間を熱接着させる働きがあり、熱接着により構成繊維間のネットワークを強固にするので、繊維間の自由度を抑えられ、またセパレータ材料が緻密になり、機械的特性(突き刺し強力、引張強力等)の向上に寄与する。高強度複合繊維における芯成分と鞘成分の体積比(複合比もしくは芯鞘比とも称す)は、特に限定されないものの、高強度複合繊維そのものの機械的特性と、前記鞘成分による構成繊維間の熱接着力が最も高められるようにすることが好ましい。高強度複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、その複合比(芯/鞘)は、体積比で80/20〜30/70であることが好ましい。複合比が80/20〜30/70であると、高強度複合繊維の機械的特性に起因するセパレータ材料の機械的強度と、構成繊維間の熱接着に起因するセパレータの機械的特性が両立され、突き刺し強力や引張強力の高いセパレータ材料が得られる。複合比が30/70よりも鞘成分が多くなると、構成繊維間が強く熱接着されるものの、芯成分が少なくなりすぎて高強度複合繊維そのものの単繊維強度が低下するか、あるいは鞘成分の溶融した樹脂により繊維間の空隙が閉塞されて、セパレータ材料の保液性や通気度が低下することがある。一方、複合比が80/20よりも芯成分が多くなると、高強度複合繊維そのものの機械的特性は高くなるものの、セパレータ材料の構成繊維間が充分に熱接着されず、繊維間の自由度が大きくなって、電極のバリ等に対する突き刺し性が低下することがある。高強度複合繊維の複合比(芯/鞘)は、体積比で80/20〜50/50であることがより好ましく、80/20〜60/40が特に好ましく、75/25〜65/35が最も好ましい。
前記高強度複合繊維に使用する熱可塑性樹脂は、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂であれば限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂や前記ポリエチレン系樹脂;前記ポリプロピレン系樹脂、前記ポリメチルペンテン系樹脂、前記エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックが使用できる。前記高強度複合繊維にはこれらの樹脂が使用できるが、前記の通り、セパレータ材料を電池セパレータ材料として電池に組み込んで使用する際、水酸化カリウム水溶液といった強アルカリ性の水溶液を電解液としてセパレータ材料に含浸させるので、高強度複合繊維も耐アルカリ性の高いポリオレフィン系樹脂から2種類以上の異なる樹脂を選択して使用することが好ましい。
前記のポリオレフィン系樹脂のほか、公知となっているポリオレフィンからなる樹脂を前記高強度複合繊維の芯成分または鞘成分に使用できるが、高強度複合繊維の生産性や求められる単繊維強度といった機械的特性を考慮すると、前記高強度複合繊維を構成するポリオレフィン系樹脂の組み合わせとしては、芯成分/鞘成分が、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂が特に好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂が最も好ましい。
前記高強度複合繊維に用いられる前記ポリプロピレン系樹脂は特に限定されないが、紡糸性、延伸性、得られる高強度複合繊維の機械的特性を考慮すると、紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲で溶融時の流動性が低いポリプロピレン系樹脂のほうが、得られる高強度複合繊維の単繊維強度やヤング率等の機械的特性が高められる傾向にあり、好ましい。
前記高強度複合繊維に用いられる前記ポリエチレン系樹脂は特に限定されないが、紡糸性、延伸性、得られる高強度複合繊維の機械的特性や、熱接着特性、セパレータ材料の突き刺し強力や引張強力といった機械的特性を考慮すると、紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲で溶融時の流動性が低いポリエチレン系樹脂のほうが、得られる高強度複合繊維の単繊維強度やヤング率といった機械的特性が高められる傾向にあり、加えてポリエチレン系樹脂によって繊維間を熱接着させた場合、接着点がより強固に接着される傾向があることから好ましい。
前記高強度複合繊維に用いられる前記エチレン-プロピレン共重合樹脂は特に限定されず、市販のエチレン-プロピレン共重合樹脂を使用できるが、エチレン含有量が1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。エチレン含有量が1モル%未満であると、融点が上昇し、プロピレンのホモポリマーの物性に近くなるため、熱接着性が低下するおそれがある。エチレン含有量が20モル%を超えると、溶融紡糸時に繊維間融着が発生しやすくなり可紡性が低下するおそれがある。前記エチレン-プロピレン共重合樹脂の融点が120℃以上150℃以下であることが好ましい。また、前記エチレン-プロピレン共重合体系樹脂のJIS K 7210に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重2.16kgf(21.2N))が1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。
本発明のセパレータ材料における前記高強度複合繊維の含有量は、30質量%以上95質量%以下であると好ましい。前記高強度複合繊維の含有量が30質量%未満であると、セパレータ材料の構成繊維間が充分に熱接着されないことで充分な突き刺し強力や引張強力を得られないことがある。高強度複合繊維の含有量が95質量%を超えると、極細繊維と混綿しても地合が均一で、緻密なセパレータ材料を得られない場合がある。本発明のセパレータ材料内部において、前記高強度複合繊維の含有量は50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上85質量%以下であることが特に好ましく、68質量%以上82質量%以下が最も好ましい。
本発明のセパレータ材料は、本発明の効果が失われない範囲内において、前記極細繊維及び前記高強度複合繊維以外の繊維(以下、他の繊維とも称す)を含んでいてもよい。前記他の繊維はその種類が特に限定されず、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、ケナフ(洋麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ミツマタ、バガス等の天然繊維やビスコースレーヨン、テンセル(登録商標)、リヨセル(登録商標)、キュプラなどの半合成繊維(再生繊維とも称す)であってもよいが、合成樹脂からなる繊維が好ましい。他の繊維に使用できる合成樹脂からなる繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステルの単一繊維、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレンの単一繊維、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどのポリプロピレンの単一繊維、若しくはこれらのポリオレフィンのモノマー同士の共重合ポリマー、又はこれらのポリオレフィンを重合する際にメタロセン触媒(カミンスキー触媒とも称す)を使用したポリオレフィンなどポリオレフィンの単一繊維、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミドの単一繊維、アクリルニトリルからなる(ポリ)アクリルの単一繊維、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックの単一繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エンジニアリング・プラスチックの異なる種類の樹脂、又は同一の種類の異なるポリマー成分からなる樹脂(例えばポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート)同士を複合した複合繊維が挙げられる。前記他の繊維が複合繊維であった場合、その複合状態は特に限定されず、繊維断面において断面形状が芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、柑橘類の房状の樹脂成分が交互に配置されている分割型複合繊維や海島型複合繊維であってもよい。本発明のセパレータ材料には、アルカリ性の溶液に対する耐久性が求められるので、前記他の繊維としてはポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維や、ポリオレフィン系樹脂からなる複合繊維が好ましく、一例として、単繊維強度が高い(例えば6.0cN/dtex以上)のポリプロピレン単一繊維や、芯成分をポリプロピレン系樹脂、鞘成分をポリエチレン系樹脂として、140での熱収縮2.5%以下を抑えた低熱収縮性の複合繊維などが挙げられる。
前記他の繊維は、繊度、繊維長、他の繊維が複合繊維であった場合、複合比も特に限定されるものではない。一方、前記他の繊維が、高強度複合繊維の好ましい繊度の範囲や好ましい繊維長の範囲と大きく異なると、抄紙法によって湿式繊維ウェブおよび湿式不織布を生産する際に生産性が低下するおそれがあるだけでなく、本発明の効果が損なわれるおそれがあることから、前記他の繊維の繊度も0.2dtex以上4.4dtex以下であることが好ましく、0.5dtex以上3.3dtex以下であることがより好ましい。また、前記他の繊維の繊維長も1mm以上20mm以下であることが好ましく、3mm以上10mm以下であることがより好ましい。
前記他の繊維は、本発明のセパレータ材料中に50質量%未満の割合で含まれていることが好ましい。すなわち前記極細繊維と高強度複合繊維を合わせたものがセパレータ材料中に50質量%以上含まれていることが好ましい。極細繊維と高強度複合繊維を合わせた含有量が50質量%未満となると、セパレータ材料の機械的特性が低下したり、通気度、保液性が低下したりすることで、セパレータ材料として十分な電池特性が得られないことがある。本発明のセパレータ材料には、前記極細繊維と前記高強度複合繊維が合わせて70質量%以上含まれていることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、前記極細繊維と前記高強度複合繊維の2つの繊維が混合されることが最も好ましい。
本発明のセパレータ材料について、不織布の製造方法に従って説明する。繊度が0.5dtex以下の極細繊維もしくは前記極細繊維を発生し得る繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維、必要があれば前記他の繊維を用意する。これらの繊維が均一に分散したスラリーを、公知の抄紙方法に従って湿式抄紙して繊維ウェブを製造する。前記繊維ウェブに熱処理を施し、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって繊維ウェブを構成する繊維同士を熱接着させて本発明のセパレータ材料となる湿式不織布を作製する。前記繊維ウェブや熱処理を行った後の湿式不織布には、必要に応じて、繊維交絡処理に付してよいし、極細繊維を発生し得る繊維からの極細繊維の発生が少なければ、繊維ウェブや湿式不織布に対して、例えば高圧水流による分割処理を行ってもよい。
本発明のセパレータ材料に使用する湿式不織布は、緻密性や均一性の点から以下の方法で製造することができる。まず、極細繊維もしくは前記極細繊維を発生し得る繊維、高強度複合繊維、必要があれば他の繊維を混合し、これらの繊維が0.005〜0.6質量%の濃度となるように、水に均一に分散した水分散スラリーを調整する。このとき、離解機を用いて極細繊維を発生し得る繊維の少なくとも一部を分割させて、極細繊維を発現させることができる。前記離解機としては、パルパー、チェスト、リファイナー等が挙げられる。なかでも、パルパーが撹拌時間、回転数を制御することにより、前記極細繊維を発生し得る繊維から極細繊維の発現度合いを調整することができ、好ましい。湿式抄紙段階における極細繊維が発生している割合(前記極細繊維を発生し得る繊維が分割型複合繊維であれば分割型複合繊維の分割率)は、50%以上であることが好ましい。極細繊維が発生している割合が50%未満であると、得られる湿式不織布全体の緻密性が損なわれるおそれがある。次に、前記水分散スラリーを湿式抄紙して繊維ウェブを得る。この湿式抄紙法としては、従来公知の方法、例えば短網方式、円網方式、長網方式、又は長網・円網コンビネーション方式、短網・円網コンビネーション方式といった公知の抄紙方法のうちいずれかを組み合わせた湿式抄紙方式により繊維ウェブを形成できる。
次に、上述した各湿式抄紙法で得られた繊維ウェブは、熱処理が施されて、繊維ウェブの構成繊維間が熱接着される。このとき、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって構成する繊維同士が熱接着されて、熱接着不織布を得る。熱処理の条件は、繊維ウェブの目付、繊維ウェブの厚み、及び湿式不織布に含まれる繊維を構成する樹脂の種類等に応じて適宜選択される。熱処理に用いる熱処理機としては、公知の熱処理機を用いることができるが、前記繊維ウェブの構成繊維間を熱接着しながら乾燥させることができる熱処理機が好ましく、例えば、シリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)、熱風吹き付け加工機、熱ロール加工機、または熱エンボス加工機等を用いることができる。特にシリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)は、繊維ウェブを加熱ロールに接触させることにより熱接着処理を行うことができるので、構成する繊維同士の交絡点において単なる点接着にならず面接着となり、不織布の厚みを調整しながら、効果的に繊維同士を熱接着させることができ、好ましい。熱処理の温度は、例えば、前記高強度複合繊維の鞘成分がポリエチレン系樹脂である場合、120℃以上160℃以下であることが好ましい。特に、高密度ポリエチレンである場合は、130℃以上150℃以下であることが好ましい。
前記熱処理された熱接着不織布は、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる低融点の樹脂成分によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着していれば特に限定されず、目付、厚み、平均孔径、引張強力などは特に限定されない。しかし、熱接着不織布の目付は、10g/m2以上100g/m2以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましい目付は、20g/m2以上90g/m2以下の範囲であり、特に好ましくは25g/m2以上80g/m2以下の範囲であり、最も好ましくは30g/m2以上80g/m2以下の範囲である。熱接着不織布の目付が10g/m2未満であると、不織布に粗密が生じて、セパレータとして使用したときに短絡が生じることがある。熱接着不織布の目付が100g/m2を越えると、セパレータの厚みも大きくなり、その分、電池内の正極および負極の量が少なくなるおそれがある。
前記熱接着不織布の厚みは、150μm以上350μm以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、200μm以上300μm以下の範囲内にあり、特に好ましくは230μm以上270μm以下の範囲内にある。熱接着不織布の厚みが上記範囲内にあると、繊維同士の熱接着が強固にされつつ、電池内で圧縮・解放が繰り返されるときに厚み方向に生じる圧力に対して、吸収・回復する厚みを確保することができるからである。熱接着不織布の厚みが150μm未満であると、地合いムラが生じるおそれや、セパレータ材料の突き刺し強力が低下するおそれがある。熱接着不織布の厚みが350μmより大きくなると、セパレータ厚みが大きくなるので電池内の正極および負極の量が少なくなる。
前記熱接着不織布は、比容積が3.5cm3/g以上6.0cm3/gの範囲内にあることが好ましい。熱接着不織布の比容積が3.5cm3/g未満であると、熱接着不織布が緻密になりすぎるため、得られるセパレータ材料も緻密なものになり、電解液の保持性が低下し、電池の内部抵抗が上昇することがあるほか、セパレータ材料の柔軟性が失われ、セパレータ材料としての工程性が低下するおそれがある。一方、セパレータ材料の比容積が6.0cm3/gを超えると、セパレータ材料の嵩が大きくなりすぎ、セパレータ材料の孔径を小さくすることが困難となり、その結果、微粉末短絡が発生しやすくなる傾向にある。本発明のセパレータ材料におけるより好ましい比容積は、3.7cm3/g以上5.8cm3/g以下であり、4.0cm3/g以上5.5cm3/g以下であることが特に好ましく、4.2cm3/g以上5.2cm3/g以下であることが最も好ましい。
次に、得られた熱接着不織布に対して、必要に応じて親水化処理を施すことができる。本発明のセパレータ材料は、ポリオレフィン系樹脂からなる極細繊維や高強度複合繊維を70質量%以上含んでいることが好ましいが、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂以外のポリオレフィン系樹脂は一般的に疎水性が強いため、セパレータ材料に求められる親水性を示さないことが多いため、親水化処理を行うことが好ましい。親水化処理は、セパレータ材料の製造において常套的に用いられている任意の方法を用いて実施してよい。親水化処理は、具体的には、フッ素雰囲気に晒す処理(以下、単にフッ素処理という。)、ビニルモノマーのグラフト重合処理、スルホン化処理、オゾンガス処理、コロナ放電処理やプラズマ放電処理といった、各種放電処理、界面活性剤処理または親水性樹脂付与処理、或いはこれらの親水化処理を繰り返す処理や、組み合わせて行う親水化処理等が挙げられる。
例えばコロナ放電処理であれば、熱接着不織布の両面にそれぞれ1〜20回処理するとよく、処理した総放電量が0.05〜10kW・分/m2の範囲で処理するとよい。フッ素処理であれば、熱接着不織布を窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈したフッ素ガスと、酸素ガスや亜硫酸ガス(二酸化硫黄ガスとも称す)、二酸化炭素ガス等との混合ガスにさらすことによって、熱接着不織布表面に親水基を導入する方法が挙げられる。なお、熱接着不織布表面に対して亜硫酸ガスを接触、反応させた後、フッ素ガスを接触、反応させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。フッ素処理を行った場合には、処理後の熱接着不織布を水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液中で中和処理し、温水洗浄、乾燥させて処理してもよい。
グラフト重合処理であれば、ビニルモノマーと重合開始剤とを含む溶液中に熱接着不織布を浸漬して加熱する方法、熱接着不織布にビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法等を用いるとよく、さらに、ビニルモノマー溶液と熱接着不織布とを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、熱接着不織布表面を改質処理すれば、効率的にグラフト重合でき好ましい。
スルホン化処理としては、濃硫酸を用いた処理、発煙硫酸を用いた処理、クロロスルホン酸を用いた処理、無水硫酸を用いた処理などが挙げられ、濃硫酸、発煙硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に、熱接着不織布を浸漬して熱接着不織布表面にスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス或いは三酸化硫黄ガスなど各種硫黄酸化物ガス含有雰囲気中で放電処理を熱接着不織布表面に作用させて、熱接着不織布表面にスルホン酸基を導入する方法などが挙げられる。スルホン化処理を行った場合には処理後の湿式不織布をアルカリ溶液中で中和処理し、温水洗浄、乾燥させて処理してもよい。
界面活性剤処理であれば、親水性能を有するアニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤の溶液中に熱接着不織布を浸漬し、あるいは塗布して付着させる方法等がある。なお、前記親水化処理方法は、上述したいかなる方法であっても、また、二種以上組み合わせても構わない。また後述する厚み調整工程の前に行ってもよく、厚み調整工程の後に行ってもよいが、厚み調整工程後に親水化処理を実施すると、熱接着不織布内部に付着させる成分や、熱接着不織布表面の炭素原子と反応させる成分(例えばフッ素ガスや亜硫酸ガス、発煙硫酸、硫黄酸化物ガスなど)が浸透しにくくなるおそれがあるので、厚み調整工程の前に実施することが好ましい。
本発明のセパレータ材料の製造方法において、得られた熱接着不織布に対して熱カレンダー加工を施して、少なくとも1回の厚み調整工程を実施してセパレータ材料に適する厚みに調整する。厚み調整工程を熱接着不織布に対して行う際は、40℃より高く、熱接着不織布の構成繊維が溶融する温度より10℃以上低い温度の1対のプレス機(熱カレンダーロール)を用いて、前記不織布を厚みが50μm以上300μm以下となるようにプレスされることが好ましい。かかる処理を施すことにより、熱接着不織布を所望の厚みに調整するとともに、熱接着不織布中に極細繊維が充分に発生していない極細繊維を発生し得る繊維が存在する場合、極細繊維の発生する割合をさらに高めることができる。1対のプレス機としては、ロール型、平板型などが挙げられるが、生産性を考慮すると平ロール型のカレンダー加工機を用いることが好ましい。より好ましい加工温度の下限は、45℃より高い温度である。より好ましい加工温度の上限は、不織布を構成する繊維の溶融する温度より30℃以上低い温度であり、さらにより好ましい加工温度の下限は、50℃より高い温度である。さらにより好ましい加工温度の上限は、不織布を構成する繊維の溶融する温度より40℃以上低い温度である。加工温度が低すぎると、不織布の幅方向で厚み斑が生じたり、加工後不織布の厚みが復元する(厚み回復)現象を引き起こしたりするおそれがある。加工温度が構成繊維の溶融する温度より10℃低い温度を超えると、不織布表面の繊維間空隙が閉塞され、電解液及びガス通過性を低下させるおそれがあるだけでなく、前述したスルホン化処理などの親水化処理を行った後に厚み調整工程を実施する場合において、厚み調整工程の温度により、親水化処理で付与された親水基が劣化して、熱接着不織布の親水性が減衰するおそれがある。
前記厚み調整工程において、プレス処理における線圧は、150N/cm以上1500N/cm以下であることが好ましい。より好ましい線圧の下限は、200N/cmである。さらに好ましい線圧の下限は、300N/cmである。より好ましい線圧の上限は、1000N/cmである。さらに好ましい線圧の上限は、800N/cmである。線圧が150N/cm未満であると、厚み調整工程が不安定になるおそれがあり、線圧が1500N/cmを超えると、不織布表面がフィルム化し易い傾向となり、ガス及び電解液通過性に支障をきたすおそれがある。
本発明のセパレータ材料の製造方法において、前記厚み調整工程は少なくとも1回実施すればよく、複数回実施してもよいが、厚み調整工程を行う前の熱接着不織布の厚みをT1、厚み調整工程を行った後の熱接着不織布の厚みをT2としたとき、厚み調整工程前後の厚み比(T2/T1)が0.65以下であることが好ましい。本発明のセパレータ材料の製造方法において、厚み調整工程の前後で嵩を大きく減少させることで、嵩回復性が高く、圧縮に対する追随性(吸収性)を有するセパレータ材料を得ることができる。具体的には、圧縮レジリエンスが80%以上であって、圧縮剛さが0.73以下、もしくは圧縮率が50%以上、の少なくとも一方を満たす柔軟で嵩回復性の高いセパレータ材料を得ることができる。前記厚み比が0.65以下となるためには、厚み調整工程前の熱接着不織布が比較的嵩高であることが好ましい。このような嵩高な熱接着不織布に対して厚み調整工程を行うことで、セパレータ材料に適した厚みを有しつつ、内部に空隙が残存しながら、厚み方向において必要以上に繊維同士が接着されずに自由度が保持したセパレータ材料となるので、圧縮レジリエンス(RC)が80%以上と嵩回復性が高く、圧縮剛さ(LC)が0.73以下、もしくは圧縮率(EMC)が50%以上と比較的柔軟で強い圧力がかかった際には嵩がつぶれ易いが、電池に組み込んだときに、充放電を繰り返した時の電極の圧縮・解放に対してその圧力を吸収し、回復できるため、耐ショート性及びサイクル寿命に良好なセパレータ材料が得られると推定される。前記厚み比が0.65を超えていると、厚み調整工程前の熱接着不織布が、既に緻密で内部に空隙の少ない熱接着不織布となっているため、厚み調整工程によって、さらに内部の空隙が少なくなるため、得られるセパレータ材料が剛性の高いものとなり、圧縮剛さが0.73を超え、圧縮率が50%未満となる場合がある。そのため、電池内部に装填した際、内圧の低減効果が少なくなることがある。
前記厚み比は、厚み調整工程を1回行う場合は厚み調整工程の前後の厚みから求めることができる。厚み調整工程を複数回行う場合は、1回目の厚み調整工程を行う前の厚みをT1とし、最後の厚み調整工程後の厚みをT2とする。なお、厚み調整工程前の厚みは、厚みが大きく変動していなければ、厚み調整工程を行う直前の厚みでなくてもよく、厚み調整工程前の厚みとして、湿式抄紙後の熱処理が終了した後の熱接着不織布の厚みを厚み調整工程前の厚み(T1)とし、厚み調整工程後の厚みが大きく変動していなければ、得られたセパレータ材料の厚みを厚み調整工程後の厚み(T2)としてもよい。より好ましい厚み比(T2/T1)が0.6以下であり、さらにより好ましくは0.55以下である。厚み比の下限は特に限定されないが、厚み比が0.15未満であると厚み調整工程で過度に圧縮されるため、熱接着不織布が緻密になりすぎる、あるいはフィルム状になるおそれがあり好ましくない。より好ましい厚み比の下限は0.3以上であり、さらにより好ましくは0.4以上である。
本発明のセパレータ材料は、圧縮レジリエンス(RC)が80%以上であり、圧縮剛さ(LC)が0.73以下、圧縮率(EMC)が50%以上、及び最大荷重時厚み(Tm)が90μm以下の少なくとも一つを満たすことを特徴とする。上記特性値がそれぞれの範囲を満たすことで、セパレータ材料は緻密性および地合の均一性に優れるとともに、各種アルカリ二次電池のセパレータとして使用した際、セパレータ材料が圧力に対して適度に圧縮されて充電時の圧力の上昇を低減し、放電によって内部の圧力が低下した際は、それに伴い嵩回復して電極とセパレータの間に隙間が発生しにくくなる。また、セパレータ材料が異物と接触して圧力を受けても異物に対して適度に変形して吸収力が大きいので、突き刺し強力が高い。その結果、耐ショート性が高く、充放電サイクル寿命が良好なセパレータ材料となる。
本発明のセパレータ材料は、繰り返し圧縮された状態における圧縮特性に特徴がある。セパレータ材料を、例えば電池用セパレータとして使用される際、正極材と負極材の間に挟み込まれた状態で巻き回され電池筐体内部に装填されるため、ある程度柔軟であることが求められる。また、ニッケル−水素電池に代表される二次電池のセパレータとして使用された際を検討すると、アルカリ二次電池は、充電時に電極が膨張し、電池内部の圧力が高められる。そのため、セパレータがある程度圧縮されやすいと電池内部の圧力が上昇しにくくなるため好ましい。一方、放電時には電極が収縮するため、圧縮されたままのセパレータが嵩回復しないと電極とセパレータの間に隙間が生じ、電池内部の抵抗、いわゆる内部抵抗が上昇してしまう。従って、セパレータ材料には加圧が除かれた場合には速やかに嵩を回復する嵩回復性が求められる。これらの圧縮特性は、繰り返し圧縮試験を行ったときの圧縮剛さ(以下、LCとも称す)、圧縮率(以下、EMCとも称す)、圧縮レジリエンス(以下、圧縮回復率、RCとも称す)、最大荷重時厚み(以下、Tmとも称す)の代用特性で表される。
前記圧縮剛さ(LC)、圧縮レジリエンス(RC)、圧縮率(EMC)、及び最大荷重時厚み(Tm)は、カトーテック(株)製「KES−G5 ハンディー圧縮試験機」を用いて、以下の測定方法で求められる。圧縮子は先端部の圧縮面積が0.2cm2の円柱状圧縮子を用い、圧縮速度を0.003cm/秒、最大荷重を8900gf/cm2(872.8KPa)、初期厚み測定時の荷重を100gf/cm2の条件で測定する。更に具体的には、圧縮剛さ、圧縮レジリエンス、圧縮率、最大荷重時厚みを測定するセパレータ材料、あるいは熱接着不織布について、縦100mm、幅100mmの大きさに裁断したもの試料として用意する。この試料を前記試験機の支持体の上に置き、試料の上に縦46mm、横86mm、厚み7mmのアルミニウム製の板であって、中央部に直径11mmの孔を有する押さえ板を載置して試料を固定する。次いで、圧縮子として高さ18.7mm、底面直径2.2mm、先端部の形状が、加圧面積0.2cm2となる円柱状の圧縮子を用いて圧縮試験を行う。このとき、圧縮試験機の測定条件はSENS:10、圧縮速度:0.003cm/秒、最大荷重8900gf/cm2(872.8KPa)、初期厚み(T0)測定時の荷重:100gf/cm2の条件で圧縮し、設定した最大荷重まで圧縮して、前記最大荷重時の厚み(Tm)を測定した後、圧縮行程と同じ割合で、単位時間あたりの変位が一定、すなわち変位が0.003cm/秒となるように荷重を減少させて、圧縮時(行き)と圧縮解放時(戻り)の変位と荷重の測定を行う。そして、初期厚み時荷重点を点A、最大荷重点を点B、最大荷重時の変位点を点Cとしたとき、圧縮時(行き)の変位−荷重曲線と、圧縮解放時(戻り)の変位−荷重曲線との間の面積aと、後者の曲線と、辺BC、辺CAで囲まれる面積b、及び三角形ABCの面積から下記式により求められる。図2に、繰り返し圧縮試験のチャートの一例を示す。
圧縮レジリエンス(RC)(%)=100×{b/(a+b)}・・・式1
圧縮剛さ(LC)=(a+b)/三角形ABCの面積・・・式2
圧縮率(EMC)(%)=100×(T0−Tm)/T0・・・式3
なお、本発明において、前記圧縮剛さ(LC)、圧縮レジリエンス(RC)及び圧縮率(EMC)、最大荷重時厚み(Tm)は、セパレータ材料を繰り返し使用した際のセパレータ材料の特性を評価するため、前記手順で行う圧縮試験を100回繰り返して行い、100回目の値を代表値として用いるほか、少なくとも50回を超える回数の圧縮を行った後の値を代表値として用いてもよい(例えば60回目、70回目、80回目、90回目の圧縮−圧縮解放時の値)し、少なくとも50回を超える回数の圧縮を行った後の値から少なくとも3点の測定結果を平均した値としてもよい(例えば60回目、70回目、80回目、90回目、100回目の測定結果を平均し、その試料の値とする)。そして、いずれの値も上記範囲を満たすことが好ましい。
本発明のセパレータ材料の圧縮レジリエンス(RC)は、80%以上である。圧縮レジリエンスは、圧縮した後、徐々に荷重を取り除いた際の厚み方向に対する回復性を示し、圧縮レジリエンスの最大値である100%に近づくほど、その物質が圧縮されても回復性が高く、元の嵩に戻りやすいといえる。セパレータ材料において、圧縮レジリエンスが80%以上であると、例えば電池セパレータとして使用した際、充電時に強く圧縮されても、放電時にその荷重が徐々に減少することによってセパレータが圧縮前の嵩を回復するため、充放電を繰り返して、セパレータに繰り返し圧縮を行っても電極とセパレータの間に隙間が生じにくいため、充放電の繰り返しに起因する電池の内部抵抗を上昇が抑えられる。セパレータ材料の圧縮レジリエンスは80%以上であれば特に限定されないが、好ましくは83%以上であり、特に好ましくは85%以上である。
本発明のセパレータ材料の一形態は、前記圧縮レジリエンスの値が80%以上であって、圧縮剛さ(LC)が0.73以下となるセパレータ材料である。圧縮剛さは、圧縮による変位の直線性を表し、圧縮剛さが最大値である1に近づくほど、その物体が圧縮に対して剛く、圧縮時に荷重に対し変位量が比例して増加するといえる。本発明のセパレータ材料において、圧縮剛さの値が0.73以下であることで、セパレータ材料は加えられた荷重に対して大きく圧縮され、適度に潰れやすくなるため、例えば電池セパレータのように巻き回して筐体内に装填する際、小さい力でも大きく圧縮して巻き回せるため、巻き径を小さくでき、筐体に挿入しやすくなり生産性が向上する。また、電池内部といった圧力がかかる用途では、適度に圧縮されるため、内圧の上昇を抑制する効果が高いものとなる。セパレータ材料の圧縮剛さは0.73以下であれば特に限定されないが、好ましくは0.70以下であり、特に好ましくは0.67以下であり、最も好ましくは0.65以下である。圧縮剛さの下限は特に限定されないが、圧縮剛さが0.3よりも小さくなるとセパレータ材料が過剰に潰れやすくなり、電池特性が低下することがある。より好ましい圧縮剛さの下限は0.4以上であり、特に好ましい圧縮剛さの下限は0.45以上であり、最も好ましい圧縮剛さの下限は0.5以上である。
また、本発明のセパレータの別の一形態は、前記圧縮レジリエンスの値が80%以上であって、圧縮率が50%以上となるセパレータ材料である。圧縮率は圧縮試験時において、低荷重時(例えば荷重が0.5gf/cm2や、荷重が100gf/cm2)の際に測定される初期厚み(以下、T0とも称す)に対し、所定の最大荷重時における試料の厚み(以下、Tmとも称す)から求められ、圧縮率が大きいセパレータ材料ほど大きく圧縮される、圧縮されやすい不織布であり、圧縮率が小さいと圧縮される量が小さく、圧縮されにくい不織布である。本発明のセパレータ材料の一形態において、圧縮率は50%以上である。圧縮率が50%以上となることで、荷重が加わり圧縮された際、荷重に応じて大きく嵩が減少し、圧力の上昇を抑えたり、セパレータ材料が潰れることでスペースを生み出しやすくなったりする。前記圧縮率は51%以上がより好ましく、51.5%以上が特に好ましい。圧縮率の上限は特に限定されないが、80%以下であり、好ましくは70%以下であり、特に好ましくは60%以下である。圧縮率が80%を超えるとセパレータ材料が過剰に潰れやすい材料となっており、圧縮された際に破れといった破損が生じるおそれがある。
本発明のセパレータ材料は、最大荷重時の厚みであるTmが90μm以下であることが好ましい。最大荷重が8900gf/cm2(872.8KPa)である圧縮試験においてセパレータ材料の最大荷重時厚みが90μm以下であると、セパレータ材料が、圧縮される状況下において充分に圧縮され、厚みの少ない材料となり、電池用セパレータに使用した際は圧力の上昇を抑える効果や、セパレータ材料が適度に潰れることでスペースを生み出す効果の高い電池セパレータとなる。本発明のセパレータ材料は、最大荷重時の厚みであるTmが87μm以下であることがより好ましく、85μm以下であると特に好ましい。本発明のセパレータ材料は、最大荷重時の厚みであるTmの下限は特に限定されないものの、35μm以上であることが好ましい。前記Tmが35μm未満となると、異物が存在した場合に圧縮されると、厚みが極端に薄くなりことでセパレータ材料が破れたり割けたりして破損するおそれがある。最大荷重時の厚みであるTmの下限は40μm以上であることがより好ましく、45μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることが最も好ましい。
本発明のセパレータ材料のニードル貫通力測定における貫通点での応力(最大貫通力F 以下、「突き刺し強力」ともいう)は、12N以上であることが好ましい。セパレータ材料の突き刺し強力は、金属バリ等の混入した金属異物や、二次電池を繰り返し使用した際に発生するデンドライトに起因する短絡防止性(耐ショート性)の程度を表す代用特性であり、この値が大きいほど金属異物やデンドライトに起因する短絡が発生しにくいことを示す。セパレータ材料の突き刺し強力が12N未満であるとセパレータとして使用した際、金属異物やデンドライトに起因する短絡が発生しやすくなる。本発明のセパレータ材料のより好ましい突き刺し強力の下限は、12.5N以上であり、特に好ましい下限は、13N以上である。突き刺し強力の上限は、特に限定されないが、セパレータ材料の生産性、取り扱い性を考慮すると30N以下であることが好ましく、より好ましくは25N以下である。
ニードル貫通力測定による突き刺し強力及び最大変位量は、下記の方法で測定された値を指す。まず、測定するセパレータ材料、あるいは熱接着不織布について、縦30mm、幅100mmの大きさに裁断したもの試料として用意する。この試料を、ハンディー圧縮試験機(カトーテック(株)製 KES−G5)の円筒状貫通孔(直径11mm)を有する支持体の上に置き、更にその上に縦46mm、横86mm、厚み7mmのアルミ板の中央部に直径11mmの孔を有する押さえ板を、当該孔が支持体の円筒状貫通孔と一致するように載置した。次いで、高さ18.7mm、底面直径2.2mm、先端部形状が直径1mmの球形である円錐形状の針を、2mm/秒の速度で押さえ板の中央に垂直に突き刺した時の荷重と、前記円錐状の針によって試料が押され、変形した長さを測定し、測定した荷重のうち、前記円錐状の針が試料を貫通する貫通点での応力を最大貫通力F(突き刺し強力(N))とし、貫通点での変位量を最大変位S(mm)とした。突き刺し強力の測定は、1枚のセパレータ材料、もしくは熱接着不織布から4枚試料を採取し、それぞれの試料について異なる15箇所で測定し、計60箇所で測定した値の平均値をその試料における突き刺し強力及び最大変位とする。
本発明のセパレータ材料は、前記突き刺し強力を測定した際の前記最大荷重F(すなわち突き刺し強力(N))を最大変位S(mm)で除したF/S(N/mm)が6.2N/mm以上10.0N/mm以下であると好ましい。前記F/Sは、セパレータ材料に対して針が貫通するように圧力を加えた際、セパレータ材料を1mm変形させるのに必要な貫通力を示す指標であり、貫通力(Force)−変位量(Strain)曲線の傾きを示す。この傾き(F/S)が所定の範囲内にあると、異物に対してセパレータ材料が厚み方向に変形して異物の応力を吸収することができる。前記F/Sが6.2N/mm未満であると、セパレータ材料を貫通するように圧力を加えた際、セパレータ材料が過剰に変形することで突き刺し強力が低下し、異物が貫通しやすくなり、耐ショート性が低下するおそれがある。一方、前記F/Sが10.0N/mmより大きくなると、圧力に対してセパレータ材料が変形しにくくなり、セパレータ材料を貫通するように圧力を加えた際、セパレータ材料がほとんど変形しないため、圧力が分散しにくくなり、異物等から加えられる圧力がセパレータ材料と異物とが接触している一点に集中して異物が貫通しやすくなり、耐ショート性が低下するおそれがある。前記F/S(N/mm)は6.25N/mm以上8.0N/mm以下であることがより好ましく、6.3N/mm以上7.8N/mm以下であることが特に好ましく、6.4N/mm以上7.5N/mm以下であることが最も好ましい。
本発明のセパレータ材料は、厚みが50μm以上300μm以下であると好ましい。セパレータ材料の厚みが50μm未満であると、セパレータ材料の孔径、特に最大孔径が大きくなる傾向にあり、微粉末短絡防止性及びデンドライト短絡防止性が低下することがある。一方、セパレータ材料の厚みが300μmを超えると、電解液通過性が悪くなり、電池の内部抵抗が上昇することがある。また、電池体積当たりの電極板数が減少することになるため、電池性能も劣る傾向にある。本発明のセパレータ材料におけるより好ましい厚みは、70μm以上200μm以下であり、100μm以上150μm以下が特に好ましく、105μm以上140μm以下が最も好ましい。
本発明のセパレータ材料は、目付が10g/m2以上100g/m2以下の範囲内にあることが好ましい。セパレータ材料の目付が前記範囲を外れると、本発明のセパレータ材料の厚みや孔径が所定の範囲を満たさなくなることがある。本発明のセパレータ材料におけるより好ましい目付は、20g/m2以上90g/m2以下であり、25g/m2以上80g/m2以下であると特に好ましく、30g/m2以上80g/m2以下であると最も好ましい。
本発明のセパレータ材料は、比容積が1.5cm3/g以上3.5cm3/gの範囲内にあると好ましい。セパレータ材料の比容積が1.5cm3/g未満であると、セパレータ材料が緻密になりすぎて電解液の保持性(保液率)が低下し、その結果電池の内部抵抗が上昇することがある。一方、セパレータ材料の比容積が3.5cm3/gを超えると、セパレータ材料の嵩が大きくなりすぎ、セパレータの孔径を小さくすることが困難となり、その結果、微粉末短絡が発生しやすくなる傾向にある。本発明のセパレータ材料における比容積は、2.0cm3/g以上3.0cm3/g以下であることがより好ましく、2.2cm3/g以上2.7cm3/g以下であることが特に好ましく、2.3cm3/g以上2.6cm3/g以下であることが最も好ましい。
本発明のセパレータ材料は、平均孔径が4μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましい。平均孔径が4μm以上15μm以下の範囲内にあると、微粉末短絡防止性及びデンドライト短絡防止性に優れたセパレータ材料を得ることができる。平均孔径が4μm未満であると、電解液保持性が低下し、電池の内部抵抗が大きくなる傾向にある。一方、平均孔径が15μmを超えると、微粉末短絡、及びデンドライト短絡が発生する傾向にある。前記平均孔径は、4.5μm以上14μm以下であることが好ましく、4.8μm以上12μmであることが特に好ましく、5.0μm以上10μm以下であると最も好ましい。
本発明のセパレータ材料の引張強力は、特に限定されないが、少なくとも1方向(例えばMD方向(機械方向、縦方向とも称す)、CD方向(幅方向、横方向とも称す))の引張強力が50N/5cm以上であればよく、80N/5cm以上であってもよく、100N/5cm以上であってもよい。引張強力の上限は特に限定されず350N/5cm以下であればよい。セパレータ材料の引張強力が50N/5cm未満であると、他の機械的特性である突き刺し強力も低下する場合がある。また、セパレータ材料の生産時や電池の製造時にセパレータ材料の取り扱い性、生産性が低下する場合がある。
本発明のセパレータ材料は、下記の方法で測定される水酸化カリウム水溶液の保液率(以下、単に保液率とも称す)が150%以上であることが好ましい。保液率が150%以上であると、セパレータ材料の水酸化カリウムへの親和性が高いものとなり、水酸化カリウム溶液などの電解液を含浸して各種二次電池に使用した際、セパレータが電解液を放出しにくくなり、充放電を繰り返してもセパレータの液枯れが発生しにくくなり、電池の寿命が向上する。前記保液率は160%以上であることがより好ましく、180%以上であることが特に好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、用いる繊維の各種物性、得られた湿式不織布やセパレータ材料の物性は以下の方法により測定した。
[単繊維繊度]
JIS L 1013に準じて測定した。
[単繊維強度・単繊維伸度]
JIS L 1015に準じて、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとし、繊維が切断したときの荷重値を単繊維強度とし、切断したときの伸びを単繊維伸度とした。
[単繊維ヤング率]
JIS L 1015に準じて、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとして引張試験を行い、荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度P(N/tex)を求め、次式により算出した値を単繊維ヤング率とした。ただし、ρは繊維密度(g/cm3)である。
単繊維ヤング率(N/mm2)=1000×P×ρ
[厚み]
熱接着不織布及びセパレータ材料の厚みを、マイクロメータ((株)ミツトヨ 製 マイクロメータ MDC−25MJ)を用い、JIS B 7502に準じ、3枚の試料のそれぞれ異なる10箇所で、荷重が175kPaになるようにして厚みを測定し、計30箇所の平均値を求め、試料の厚みとした。
[引張試験]
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、切断時の荷重を測定し、引張強力(N/5cm)とした。
[孔径分布(平均孔径)]
パームポロメータ(Porous Materials INC.製)を使用し、ASTM F 316 86に準じ、バブルポイント法によって測定した。
[保液率]
まず、湿式不織布やセパレータ材料をホームベース形状の五角形(長辺15cm、長辺から延びる横の2辺12cm、尖る2辺8cm)に切断して試験片とした。この試験片の水分平衡状態の重量(W)を1mgまで測定する。次に比重1.30の水酸化カリウム水溶液(以下KOH溶液とも称す)中に試験片を浸漬し、KOH溶液を1時間吸収させたのち液中から引き上げて、長さが15cmの辺を上にして吊し、10分間放置した後、試験片の重量(W1)を測定し、下記式4から保液率を算出した。
保液率(%)=100×(W1−W)/W・・・式4
[繊維ウェブの構成繊維]
実施例、及び比較例のセパレータ材料を製造するのに際し、下記に示す繊維を用いた。
[分割型複合繊維]
分割型複合繊維1:一方の樹脂成分がエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、もう一方の樹脂成分がポリプロピレンからなり、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とポリプロピレンを複合比(体積比)が5/5、中空率が12%となるよう溶融紡糸を行って得られた、断面形状が図1(a)に示す中空16分割型であり、繊度が1.1dtex、繊維長が3mmの中空分割型複合繊維。
分割型複合繊維2:繊度が2.2dtex、繊維長が4mmである以外は、前記分割型複合繊維1と同様にして得られた中空16分割型複合繊維。
分割型複合繊維3:一方の樹脂成分がポリメチルペンテン、もう一方の樹脂成分がポリプロピレンからなり、ポリメチルペンテンとポリプロピレンを複合比(体積比)が5/5、中空率が12%となるよう溶融紡糸を行って得られた、繊度が1.8dtex、繊維長が3mmの中空8分割型複合繊維。
[高強度複合繊維]
高強度複合繊維1:芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンからなり、前記芯成分と鞘成分の複合比が(芯/鞘)=7/3となり、芯成分が露出しないよう、芯成分と鞘成分を同心円状になるように溶融紡糸を行って得られた、各物性値が下記の値である繊度が0.8dtex、繊維長が5mmの同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.25cN/dtex
・ヤング率:4325.8N/mm2
・伸度:41.0%
高強度複合繊維2:繊度が1.1dtex、繊維長が5mmである以外は、前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:4.87cN/dtex
・伸度:45.0%
高強度複合繊維3:繊度が1.4dtex、繊維長が5mmである以外は、前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.24cN/dtex
・伸度:58.9%
高強度複合繊維4:繊度が1.7dtex、繊維長が5mmである以外は、前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.38cN/dtex
・伸度:49.4%
高強度複合繊維5:複合比を(芯/鞘)=(8/2)に変更した以外は、前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:6.9cN/dtex
・伸度:28.4%
高強度複合繊維6:複合比を(芯/鞘)=(6/4)に変更した以外は、前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.69cN/dtex
・伸度:32.8%
・ヤング率:4331.8N/mm
高強度複合繊維7:複合比を(芯/鞘)=(5/5)に変更した以外は、前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.26cN/dtex
・伸度:29.2%
・ヤング率:4018.8N/mm2
[芯鞘型複合繊維]
芯鞘型複合繊維1:芯成分のポリプロピレン、鞘成分の高密度ポリエチレンを変更した以外は、前記高強度複合繊維7と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:3.94cN/dtex
・伸度:61.4%
・ヤング率:3137.1N/mm2
[実施例1〜10、比較例1、参考例1〜3]
まず、セパレータ材料に最適な湿式不織布の条件を検討するため、極細繊維を発生し得る分割型複合繊維、高強度複合繊維の物性や混合率を変更した湿式不織布を実施例1〜10、比較例1、参考例1〜3として作製した。表1、2に示す混合率になるように分割型複合繊維及び高強度複合繊維、他の繊維を計量し、用いた原綿が0.01質量%の濃度になるように水分散スラリーを調製した。調整したスラリーに対し、家庭用ミキサーを用いて毎分2000回転で1分間攪拌し、前記分割型複合繊維を各樹脂成分に分割させて極細繊維を発生させると同時に各構成繊維が均一に分散したスラリーとした。得られたスラリーを湿式抄紙し、目付が約53g/m2の繊維ウェブを作製した。繊維ウェブを、搬送用支持体で搬送し、140℃に加熱したシリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)を用いて、45秒間、ウェブに加熱処理を施して、繊維ウェブを乾燥させると同時に、含まれている高強度複合繊維および/または芯鞘型複合繊維で繊維同士を接着させて、熱接着不織布を得た。
次に、前記熱接着不織布に、温度60℃、線圧約320N/cmの条件で熱ロールを用いた厚み加工を行い、参考例1〜3は約160μm、実施例1〜10、比較例1の熱接着不織布は約120μmに厚みを調整し、セパレータ材料を作製した。実施例1〜10、比較例1、参考例1〜3の熱接着不織布に対し、セパレータ材料への適応性を評価するため、目付、厚み、突き刺し強力、引張強力の各項目を測定した。各項目を測定した結果を表1、表2に示す。
実施例1〜10のセパレータ材料は、突き刺し強力が12N以上の高い突き刺し強力を有するセパレータ材料が得られたのに対し、比較例1のセパレータ材料はいずれも突き刺し強力が12N未満となり、突き刺し強力、すなわち耐ショート性の充分に高いセパレータ材料が得られなかった。これは比較例1のセパレータ材料には高強度複合繊維が含まれないためと考えられる。
実施例1〜10の結果を更に検討すると、実施例1、3、4を比較すると、実施例4、3、1の順に突き刺し強力が上昇している。従って、突き刺し強力が高く、耐ショート性が高められたセパレータ材料を得るためには、芯鞘比(芯/鞘)が5/5よりも芯成分が多い6/4や、7/3の高強度複合繊維のほうが好ましく、参考例1と参考例3の比較から、芯鞘比(芯/鞘)が7/3前後の高強度複合繊維を使用することが特に好ましいと考えられる。
実施例1、5、6、7を比較すると、実施例7、6、5、1の順に突き刺し強力が上昇している。従って、突き刺し強力が高く、耐ショート性が高められたセパレータ材料を得るためには、高強度複合繊維の繊度がより小さいことが好ましいと考えられ、特に1.2dtex以下が好ましいと考えられる。
また、実施例1と実施例8、実施例5と実施例9を比較すると、より細繊度の分割型複合繊維を使用した実施例1、5のほうが突き刺し強力の高いセパレータ材料となっている。従って高強度複合繊維と分割型複合繊維を混綿したセパレータ材料において、より突き刺し強力が高く、耐ショート性が高められたセパレータ材料を得るためには、繊度がより小さい分割型複合繊維を使用することが好ましいと考えられる。
[実施例11〜13、比較例2、3]
前記分割型複合繊維1と前記芯鞘複合繊維1、必要に応じて芯鞘複合繊維8を用いてセパレータ材料を作製した。まず、表3に示す混合率になるように各繊維を計量し、用いた原綿が0.5質量%の濃度になるように水分散スラリーを調製した。調整したスラリーに対し、パルパーを用いて前記水分散スラリーに含まれる分割型複合繊維に対し、分割処理を施した。得られた水分散スラリーを短網式湿式抄紙機及び円網湿式抄紙機を用いて抄き合わせることで湿式抄紙ウェブを作製し、得られた湿式抄紙ウェブをヤンキードライヤー(シリンダードライヤーとも称す)を用いて140℃で加熱することで前記湿式抄紙ウェブを乾燥させるとともに、高強度複合繊維及び/または芯鞘型複合繊維の熱接着成分を融解させて湿式抄紙ウェブの構成繊維同士の少なくとも一部を熱接着させて熱接着不織布を得た。得られた熱接着不織布を採取し、目付、厚み(T1)、突き刺し試験、孔径分布の測定を行った。
次に得られた熱接着不織布に対し、フッ素ガスなどの反応性の気体を用いた親水化処理を行い、官能基を熱接着不織布表面に導入することで熱接着不織布に親水性を付与させた。
フッ素処理した熱接着不織布に対し、本発明のセパレータ材料に最適な厚みにするため、一対のプレーンロールからなる熱ロールを用いた厚み加工(カレンダー処理)を行った。前記厚み加工(カレンダー処理)は、熱ロールを60℃に加熱し、線圧500N/cmの圧力を熱接着不織布に加え、加工速度15m/分の条件で実施した。
前記厚み加工後の熱接着不織布に対し、親水性を更に高めるためにコロナ放電処理を熱接着不織布の両面に対し実施し、本発明のセパレータ材料を得た。コロナ放電処理は熱接着不織布の両面に対し、それぞれ4回ずつ、放電量1.0kW・分/m2でコロナ放電処理を施した(総放電量8kW・分/m2)。コロナ放電処理が終了し、得られた実施例1〜3、比較例1、2のセパレータ材料に対し、前記の測定方法で目付、厚み(T2)、突き刺し試験、繰り返し圧縮試験、孔径分布、保液率の測定を行った。その結果を実施例11〜13、比較例2、3の繊維構成、熱接着不織布の各種測定結果と共に表3に示す。
実施例11〜13のセパレータ材料と、比較例2のセパレータ材料を比較すると、比較例2のセパレータ材料は圧縮剛さが0.76であるのに対し、実施例11〜13のセパレータ材料はいずれも0.73以下の低い値となった。これは実施例11〜13のセパレータ材料が、熱接着不織布の段階で密度が低く、比容積及び厚みが大きい嵩高な熱接着不織布となっているため、厚み調整工程を行った後でも内部に空隙を多く残しているためと考えられる。実施例11〜13のセパレータ材料の圧縮剛さが0.73以下であることで、これらのセパレータ材料は圧力を加えた際、適度に潰れやすいものであり、各種二次電池のセパレータとして使用する際は、電極に挟んで巻き回した際、嵩が減少しやすいため電池筐体に装填しやすいものとなる。また、その圧縮率も比較例2よりも高いため、電池を充電した際は、電極材の膨張に追随し、上昇する圧力に応じて圧縮され、さらに圧縮される量も多いため、内部の圧力増加を低減する効果が高いものとなる。実施例11〜13のセパレータ材料は、圧縮剛さが0.73以下、圧縮率が50%以下の潰れやすく、潰れる量の大きいセパレータ材料であるにもかかわらず、圧縮レジリエンスが80%以上の高い値であるため、圧力が解放されることで容易に嵩が回復するセパレータ材料となった。これらの特徴を有することで、圧力により適度に潰れるため工程性が高く、電池セパレータとして使用した際、内圧上昇を低減する効果が高く、かつ充放電を繰り返してもこれらの効果が低下しにくいセパレータ材料が得られた。
また、実施例11〜13のセパレータ材料と、比較例2のセパレータ材料のF/Sを比較すると、実施例11〜13のほうが高くなった。これは実施例11〜13のセパレータ材料が高強度複合繊維を含み、熱接着不織布を嵩高で柔軟のものにした結果、セパレータ材料を厚み方向に貫通するように圧力が加えられた際、セパレータ材料が適度に伸びることで圧力を分散し、その結果貫通されにくくなったと考えられる。特に、比較例2と同じ繊維構成で作製した実施例12、13では突き刺し強力、F/S共に比較例1のセパレータ材料よりも高くなっており、熱接着不織布を嵩高で、柔軟な熱接着不織布にした後、厚み調整工程で、厚みが調整前の65%以下になるように調整することで、セパレータ材料に対し、厚み方向に突き刺すように圧力を加えた際、セパレータ材料が適度伸びて変形することで突き刺し強力、F/Sの高いセパレータ材料が得られることがわかる。一方、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含まない比較例3のセパレータ材料は、熱接着不織布を嵩高で柔軟なものであっても得られるセパレータ材料の突き刺し強力、F/Sが共に低くなっている。従って、高強度複合繊維を含まないと、繊維そのものの強度によって発現する機械的強度が得られないため、熱接着不織布が嵩高であってもセパレータ材料の突き刺し強力、F/Sが高いセパレータ材料が得られないことがわかる。
本発明のセパレータ材料は、アルカリ二次電池、リチウムイオン二次電池、あるいは電気二重層キャパシタ、コンデンサーなどの電気素子、あるいはイオン交換セパレータ(イオンキャッチャー)に用いられるセパレータとして好適であり、特にニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池用途に好適である。
A 成分A
B 成分B
6 中空部分
10 中空分割型複合繊維
20 中実分割型複合繊維
22 芯成分
24 鞘成分
30 中空複合分割型複合繊維
32 芯成分
34 鞘成分
40 中実複合分割型複合繊維

Claims (7)

  1. 繊度が0.5dtex以下の極細繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含む湿式不織布からなり、
    前記湿式不織布は、前記高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されており、
    下記の条件で圧縮試験を繰り返し100回測定したとき、初期厚み時荷重点を点A、最大荷重点を点B、最大荷重時の変位点を点Cとし、圧縮時(行き)変位−荷重曲線により囲まれる面積a、圧縮解放時(戻り)変位−荷重曲線により囲まれる面積bとし、初期荷重時の厚みT0、最大荷重時の厚みTmとしたとき、
    下記式(1)に示す圧縮レジリエンス(RC)は80%以上であり、
    下記式(2)に示す圧縮剛さ(LC)、下記式(3)に示す圧縮率(EMC)、及び最大荷重時厚み(Tm)から選ばれる少なくとも一つが以下の範囲を満たす、セパレータ材料。
    圧縮剛さ(LC)≦0.73
    圧縮率(EMC)≧50%
    最大荷重時厚み(Tm)≦90μm
    [圧縮試験条件]
    使用機器:ハンディー圧縮試験機(カトーテック(株)製 KES−G5)
    圧縮子:圧縮面積0.2cm2の円柱状圧縮子
    圧縮速度:0.003cm/秒
    最大荷重:8900gf/cm2(872.8KPa)
    初期厚み時荷重:100gf/cm2
    [式]
    圧縮レジリエンス(RC)(%)=100×{b/(a+b)}・・・(式1)
    圧縮剛さ(LC)=(a+b)/三角形ABCの面積・・・(式2)
    圧縮率(EMC)(%)=100×(T0−Tm)/T0・・・(式3)
  2. 前記湿式不織布は、ニードル貫通力測定における貫通点での応力(最大貫通力 F)が12N以上であり、且つ最大貫通力Fを貫通点の変位量(最大変位量 S)で除した値(F/S)が6.2N/mm以上である、請求項1に記載のセパレータ材料。
  3. 前記湿式不織布は、前記極細繊維が占める割合が5質量%以上50質量%以下であり、かつ前記高強度複合繊維が占める割合が30質量%以上95質量%以下である、請求項1または2に記載のセパレータ材料。
  4. 前記極細繊維は、少なくとも2種類の樹脂成分を含む分割型複合繊維を分割して得られた繊維であり、前記樹脂成分がポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、及びエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から選ばれる少なくとも一つの樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセパレータ材料。
  5. 繊度が0.5dtex以下の極細繊維及び/又は極細繊維を発生し得る繊維と、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含むスラリーを湿式抄紙して繊維ウェブを得る工程、
    前記繊維ウェブに熱処理を施し、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって繊維ウェブを構成する繊維同士を熱接着させた熱接着不織布を得る工程、
    前記熱接着不織布に熱カレンダー加工を施して、少なくとも1回の厚み調整を行う工程を含み、
    前記熱接着不織布の不織布厚みをT1、前記厚み調整後の不織布厚みをT2としたとき、厚み比(T2/T1)が0.65以下になるように厚み調整する、セパレータ材料の製造方法。
  6. 前記熱処理は、繊維ウェブを加熱ロールに接触させることにより熱接着を行うヤンキードライヤー処理である、請求項5に記載のセパレータ材料の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のセパレータ材料、または請求項5もしくは6に記載の方法で得られたセパレータ材料を組み込んだ電池。
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