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JP2014156061A - 下地層及び撥水膜を有する基体、及びこの下地層及び撥水膜を有する基体を含む輸送機器用物品 - Google Patents

下地層及び撥水膜を有する基体、及びこの下地層及び撥水膜を有する基体を含む輸送機器用物品 Download PDF

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JP2014156061A
JP2014156061A JP2013028136A JP2013028136A JP2014156061A JP 2014156061 A JP2014156061 A JP 2014156061A JP 2013028136 A JP2013028136 A JP 2013028136A JP 2013028136 A JP2013028136 A JP 2013028136A JP 2014156061 A JP2014156061 A JP 2014156061A
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JP2013028136A
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Yosuke Takeda
洋介 竹田
Hirokazu Kodaira
広和 小平
Takashige Yoneda
貴重 米田
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AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】高い耐久性を維持したまま、耐薬品性及び初期の滑水性に優れた撥水膜を有する、下地層及び撥水膜を有する基体、及び該基体を含む輸送機器用物品を提供する。
【解決手段】(A)式(1)で表される化合物、及び(B)式(2)で表される化合物を含む下地層形成用組成物を用いて形成される下地層、並びに前記下地層上の少なくとも一部に、(C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選択される少なくとも1種を含む撥水膜形成用組成物を用いて形成される撥水膜を有する基体、並びに、該基体を含む輸送機器用物品。
【選択図】なし

Description

本発明は、下地層及び撥水膜を有する基体、及びこの下地層及び撥水膜を有する基体を含む輸送機器用物品に関する。
従来から、各種技術分野において、基体の表面に撥水性を付与することが強く求められている。基体の表面に撥水性を付与する方法としては、基体の表面に撥水性を有する被膜を形成することが一般的に行われており、撥水性を有する被膜を形成するための組成物に関する技術開発がなされている。特に、基体が、自動車ガラス等である輸送機器用物品に含まれる基体である場合、撥水性の被膜に、耐塩水噴霧特性や耐摩耗性等の耐久性の性質を付与することが求められている。このような性質を有する基体として、特許文献1には、ビスシラン化合物の下塗り剤を用いて形成される下塗り層と、少なくとも1種のフッ素化アルキルシランを含む疎水性被膜を前記下塗り層の上に形成することにより得られる、疎水性被覆を有する基材が開示されている。
特表2009−502470号公報
特許文献1に開示された基材が有する疎水性被膜は、耐久性、特に耐塩水噴霧特性に優れたものである一方、耐薬品性(例えば、耐アルカリ性)や初期の滑水性の点で改善の余地があることが、本発明者らの研究により見出された。本発明は、上記観点からなされたものであって、高い耐久性を維持したまま、耐薬品性及び初期の滑水性に優れた撥水膜を有する、下地層及び撥水膜を有する基体、及び該基体を含む輸送機器用物品の提供を目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1](A)式(1):A Si−(CHR−SiA
(式中、
は、それぞれ独立して、加水分解性基又は水酸基であり、
は、H又はCHであり、
aは、1〜9の整数であり、ここで各(CHR)単位は、同一であっても、異なっていてもよい)で表される化合物、及び
(B)式(2):SiX
(式中、Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基又はイソシアナト基である)
で表される化合物を含む下地層形成用組成物を用いて形成される下地層、並びに前記下地層上の少なくとも一部に、(C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選択される少なくとも1種を含む撥水膜形成用組成物を用いて形成される撥水膜を有する基体。
[2](C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物が、
(c1)ポリフルオロアルキルシラン化合物、
(c2)ポリフルオロポリエーテルシラン化合物、及び
(c3)式(3):Rf1−(SiR O)−SiR −Y−Si(R(X3−c
(式中、
f1は、炭素原子数1〜8の直鎖状のポリフルオロアルキル基であり、
は、炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基であり、ここで、各SiR O単位は同一であっても、異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基であり、
は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、
bは、5〜150の整数であり、
cは、0〜2の整数である)
で表わされる化合物
からなる群より選択される一種以上のシラン化合物である、[1]記載の基体。
[3] (c1)ポリフルオロアルキルシラン化合物が、
式(4):Rf2−Q−SiR 3−d
(式中、
f2は、基:C2e+1(ここで、eは、1〜8の整数である)であり、
は、炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基であり、
は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、
は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
dは、0〜2の整数である)で表される化合物であり、
(c2)ポリフルオロポリエーテルシラン化合物が、
式(5):Z−Rf3−Z
(式中、
f3は、−O−(C2fO)−(ここで、fは、1〜6の整数であり、gは、1以上の整数であり、各−C2fO−単位は、同一であっても、異なっていてもよい)であり、
及びZは、それぞれ独立して、Rf4、又は基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであるが、いずれか一方は基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであり
(ここで、
f4は、基:C2k+1(ここで、kは、1〜6の整数である)であり、
は、−(CH−(ここで、mは、2〜12の整数である)であるか、又はエステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合及びフェニレン基から選ばれる1種以上を含有する−(CH−であり、−CH−単位の一部又は全部は、−CF−単位及び/又は−CF(CF)−単位によって置き換えられていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であって、該炭化水素基は置換基を含有していてもよく、
は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
hは、0〜2の整数であり、
jは、1〜20の整数である)で表される[2]記載の基体。
[4]式(4)の化合物が、数平均分子量2600以上である化合物又はその部分加水分解縮合物である、[3]記載の基体。
[5] 式(1)において、Aがアルコキシ基又はイソシアナト基であり、RがHであり、かつaが1〜3の整数である、[1]〜[4]のいずれか記載の基体。
[6] 式(1)の化合物と式(2)の化合物との質量比が、0.1:0.9〜0.9:0.1である、[1]〜[5]のいずれか記載の基体。
[7] 基体がガラスを含む、[1]〜[6]のいずれか記載の基体。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれか記載の基体を含む、輸送機器用物品。
本発明によれば、高い耐久性及び耐塩水噴霧性を維持したまま、耐薬品性及び初期の滑水性に優れた下地層及び撥水膜を有する基体、並びに下地層及び撥水膜を有する基体を含む輸送機器用物品の提供ができる。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記説明に限定して解釈されるものではない。
本明細書において、式で表される化合物又は基は、その式の番号を付した化合物又は基としても表記し、例えば式(1)で表される化合物は、化合物(1)とも表記する。本明細書において、「化合物(1)由来の部分」は、化合物(1)の部分加水分解縮合物及び化合物(1)と他の加水分解性シラン化合物の部分加水分解共縮合物における化合物(1)に由来する単位と未反応の化合物(1)を総称する用語である。また、本明細書において全固形分とは、下地層又は撥水膜形成用組成物が含有する成分のうち、最終的に下地層又は撥水膜の構成成分となる成分をいい、有機溶剤等の層形成過程における加熱等により揮発する揮発性成分以外の全成分を示す。
[下地層及び撥水膜を有する基体]
本発明の下地層及び撥水膜を有する基体は、基体と、(A)化合物(1)及び(B)化合物(2)を含む下地層形成用組成物を用いて形成される下地層、並びに前記下地層上の少なくとも一部に、(C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選択される少なくとも1種を含む撥水膜形成用組成物を用いて形成される撥水膜を有する。本発明の下地層及び撥水膜を有する基体は、基体側から順に下地層及び撥水層を有する。本発明において、下地層と撥水膜層との間に更に中間層を有していてもよいが、下地層と撥水膜のみを有する基材であるのが好ましい。
以下、本発明の下地層及び撥水膜を有する基体の構成要素を説明する。
<基体>
本発明の下地層及び撥水膜を有する基体おける基体は、一般に撥水性の付与が求められている材質からなる基体であれば特に限定されない。このような基体として、金属、プラスチック、ガラス、セラミック、又はその組み合わせ(複合材料、積層材料等)が挙げられる。中でも、ガラスが好ましい。
ガラスは、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス及び石英ガラス等が挙げられ、ソーダライムガラスが好ましい。なお、基体がソーダライムガラスである場合は、Naイオンの溶出を防止する膜を更に設けることが耐久性の点で好ましい。また、基体がフロート法で製造されたガラスである場合は、表面スズ量の少ない面に、下地層及び撥水膜を設けることが耐久性の点で好ましい。
基体の形状は、特に限定されず、板状又は全面若しくは一部が曲率を有する形状であることができる。基体の厚さは、撥水膜を有する基体の用途により適宜選択でき、1〜10mmであることが好ましい。
下地層及び撥水膜を有する基体において、下地層及び撥水膜は基体上の少なくとも一部の表面に形成される。基体表面の下地層及び撥水膜が形成される領域は特に限定されず、用途により適宜選択できる。基体が板状の場合、下地層及び撥水膜は、通常基体の両方の主面又はいずれか一方の主面の全面に形成される。
<下地層>
本発明の下地層について説明する。本発明において、下地層は、化合物(1)及び化合物(2)を含む下地層形成用組成物を用いて形成される。本発明の下地層は、化合物(1)由来の−(CHR−基の作用により疎水性が発現され、撥水性を維持することが可能であり、−(CHR−基は加水分解を受けにくいことから、耐薬品性及び耐塩水噴霧性を向上させることができる。一方で、化合物(1)を単独で用いると、化合物(1)由来のSi−OH基が膜表面に飛び出しやすく、飛び出したSi−OH基は水と相互作用を持ち滑水の妨げとなる。化合物(2)を併用することで、化合物(1)を単独で用いる場合に比べて、化合物(1)由来のSi−OH基が膜表面に飛び出すことを抑制でき、耐久性、耐薬品性及び耐塩水噴霧性を維持しながらも、滑水性を向上させることができる。
<(A)化合物(1)>
化合物(1)について説明する。化合物(1)は、上記式(1)で表される。
上記式におけるAは、加水分解性基又は水酸基である。ここで、加水分解性基とは、Si−A基の加水分解によって、Si−OHを形成し得る基であり、例えば、アルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、イソシアナト基、ハロゲン原子等が挙げられる。Aは、化合物(1)の安定性と加水分解のし易さとのバランスの点から、アルコキシ基(例えば、炭素原子数1〜4のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br及びI)及びイソシアナト基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子及びイソシアナト基がより好ましく、メトキシ基及びイソシアナト基が特に好ましい。複数個存在する場合、Aは、同一であっても異なっていてもよいが、入手容易性の点から、同じ基であることが好ましい。
上記式におけるaは、1〜9の整数であり、1〜3の整数が好ましい。aが上記範囲にあることで、下地層が適度に疎水性を有し、かつ撥水膜の撥水性及び滑水性を向上させることが可能となる。なお、mが9を超えると、撥水性及び滑水性が悪化する点で問題である。
化合物(1)として、具体的には、(CHO)SiCHCHSi(OCH、(OCN)SiCHCHSi(NCO)、ClSiCHCHSiCl、(CHO)SiCHCHCHCHCHCHSi(OCH等が挙げられ、好ましくは、(CHO)SiCHCHSi(OCH及び(OCN)SiCHCHSi(NCO)である。
化合物(1)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。化合物(1)は、一般的な製造方法で製造可能であり、また、商業的に入手可能である。
<(B)化合物(2)>
化合物(2)について説明する。化合物(2)は、上記式(2)で表される。
上記式におけるXは、塩素原子、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はイソシアナト基であることが好ましく、4個のXは同一であることが好ましい。化合物(2)として、Si(NCO)、Si(OCH、Si(OCが挙げられ、Si(NCO)、Si(OCHが好ましい。
化合物(2)は単独でも、2種以上を併用してもよい。化合物(1)は、一般的な製造方法で製造可能であり、また、商業的に入手可能である。なお、化合物(2)のX及び化合物(1)のAは、同じであることが好ましい。ただし、化合物(2)のX及び(1)のAが共にアルコキシ基の場合は、そのアルコキシ基の種類が異なっていても問題はない。
下地層形成用組成物における、化合物(1)由来成分と化合物(2)由来成分との含有割合は、[化合物(1)由来成分:化合物(2)由来成分]で示される質量比として、0.1:0.9〜0.9:0.1の範囲であるのが好ましく、0.1:0.9〜0.6:0.4の範囲であるのがより好ましい。下地層形成用組成物が化合物(1)由来成分と化合物(2)由来成分とをこのような質量比で含有することにより、耐久性、耐薬品性及び耐塩水噴霧性を維持しながら、撥水性及び初期の滑水性の向上が可能となる。
下地層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、触媒、有機溶剤、金属酸化物の超微粒子、染料又は顔料等の着色用材料及び防汚性材料を含むことができる。
下地層形成用組成物は、経済性、作業性、得られる下地層の厚さ制御のしやすさを目的として、有機溶剤を含むことができる。有機溶剤は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、パラフィン系炭化水素類、エステル類(例えば、酢酸エステル類)が挙げられ、アルコール類、エステル類が好ましい。有機溶剤は単独でも、2種以上を併用してもよい。下地層形成用組成物における有機溶剤の割合は、化合物(1)由来成分と化合物(2)由来成分の合量質量の100質量部に対して、400〜100,000質量部が好ましく、700〜3,500質量部がより好ましい。
下地層形成用組成物は、(A)成分及び/又は(B)成分の加水分解縮合反応を促進させるために、酸触媒及び/又はアルカリ触媒等の触媒を含むことができる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。触媒の量は、化合物(1)と化合物(2)の加水分解性基の合計モル数100モル部に対して、0.1〜10モル部が好ましく、0.2〜5モル部がより好ましい。
下地層形成用組成物は、加水分解縮合反応するための水を含んでいてもよい。水の含有量は、含まれる場合、化合物(1)と化合物(2)の加水分解性基の合計モル数100モル部に対して、1〜30モル部が好ましい。
下地層の形成方法は、含フッ素オルガノシラン化合物系の表面処理剤における公知の方法を用いることができ、例えば、基体の表面に、組成物を、はけ塗り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スキージ塗布、スプレー塗布、手塗りで適用し、大気中又は窒素雰囲気下において、必要に応じて乾燥させた後、硬化させる方法が挙げられる。硬化の条件は、適宜、選択することができ、例えば、温度20〜50℃、湿度50〜95%RHの条件が挙げられる。硬化のための時間は、適宜、選択することができ、例えば、1分〜72時間が挙げられる。下地層の厚さは、特に限定されないが、50nm以下であることが好ましく、例えば、2〜20nmの厚さとすることができる。
<撥水膜>
本発明の撥水膜について説明する。本発明において、撥水膜は、本発明の下地層上の少なくとも一部に、(C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選択される少なくとも1種を含む撥水膜形成用組成物を用いて形成される。
<(C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物及びその加水分解縮合物>
(C)成分について説明する。(C)成分は、ポリフルオロアルキル基の作用により撥水膜に撥水性の効果を付与する成分である。また、(C)成分は、加水分解性基を少なくとも1以上有するのが、撥水膜の密着性の向上のために好ましい。ここで、加水分解性基は、好ましいものも含めて、化合物(1)で例示されたとおりである。
(C)成分において、ポリフルオロアルキル基とは、直鎖状又は分岐状であり、非中断であるか、又はエステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、エーテル結合(−O−)、アミド結合(−C(=O)NH−、−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−)、フェニレン基、及び、式:−(Si(RO)−(式中、R及びbは、下記式(3c)で定義されるとおりである)で示される2価のオルガノポリシロキサン構造からなる群より選択される1以上により中断されているアルキル基であって、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基をいう。ポリフルオロアルキル基中のフッ素原子の割合は、(ポリフルオロアルキル基中のフッ素原子数)/(ポリフルオロアルキル基に対応する同一炭素原子数のアルキル基中の水素原子数)×100(%)で表現した場合に60%以上であるのが好ましい。
ポリフルオロアルキル基の炭素数は、所望の撥水性を得るためであれば、特に限定されないが、1〜200が好ましく、6〜100がより好ましい。
ポリフルオロアルキル基は、ペルフルオロアルキル基が、連結基として直接結合、又はアミド結合若しくは式:−(Si(RO)−を介してアルキレン基に結合している、ペルフルオロアルキル−アルキレン基であるのが好ましい。すなわち、アルキレン基(−CH−)の炭素原子が、少なくとも1つの加水分解性基が結合しているケイ素原子に結合するのが好ましい。ここで、アルキレン基は、炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖状のアルキレン基がより好ましい。
また、ペルフルオロアルキル基は、エーテル結合で中断されていてもよい、炭素原子数1〜100の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基が好ましい。
よって、ポリフルオロアルキル基として、ペルフルオロアルキル−アルキレン基、ペルフルオロアルキル−アルキレン−(Si(RO)−アルキレン基、ペルフルオロアルキル−ポリフルオロポリエーテル−アミド結合−アルキレン基が好ましい。
このようなポリフルオロアルキル基を有する化合物として、(c1)ポリフルオロアルキルシラン化合物、(c2)ポリフルオロポリエーテルシラン化合物、及び(c3)式(3)で示される化合物が挙げられる。
<(c1)ポリフルオロアルキルシラン化合物>
本発明において、ポリフルオロアルキルシラン化合物は、直鎖状又は分岐状であって、非中断であるか又はアミド基若しくはエーテル基で中断された、ポリフルオロアルキル基がケイ素原子に結合するシラン化合物である。なお、(c1)化合物は、2以上のエーテル基で中断されたポリフルオロアルキル基がケイ素原子に結合するシラン化合物を含まない。好ましくは、ペルフルオロアルキル基−非中断であるか又はアミド基若しくはエーテル基で中断されたアルキレン基がケイ素原子に結合する化合物である。このようなポリフルオロアルキルシラン化合物として、上記式(4)で示される化合物が好ましい。
式(4)において、Rf2は、直鎖状でも、分岐状でもよい。中でも、耐久性の点から、直鎖状の基:CF(CFe―1(ここで、eは、上記のとおりである)が好ましく、より好ましくはCF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−であり、特にCF(CF−及びCF(CF−が好ましい。
式(4)において、Qは、炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基であり、炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、アミド基を有するアルキレン基、エーテル基を有するアルキレン基等が挙げられる。中でも、耐候性の点から、炭素原子数1〜6の直鎖状のアルキレン基:−(CH−(ここで、tは1〜6の整数である)が好ましく、より好ましくは−(CH−、−(CH−、−(CH−であり、特に−(CH−が好ましい。
式(4)において、Rは、炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。中でも、耐候性の点から、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基又はエチル基である。複数存在する場合、Rは、同一であっても、異なっていてもよいが、入手容易性の点から同じであるものが好ましい。
式(4)において、Aは、水酸基又は加水分解性基である。Aは、好ましいものを含め、Aで例示された基が挙げられる。
化合物(4)としては、例えば、以下が挙げられる。式中、e、t、A、Rの例示及び好ましい態様は、上記のとおりである。
式(4−1):CF(CFe―1−(CH−SiA
式(4−2):CF(CFe―1−(CH−SiR
化合物(4)として、eが6及び8である、化合物(4−1)がより好ましい。
化合物(4)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。化合物(4)は、一般的な製造方法で製造可能であり、また、商業的に入手可能である。
<(c2)ポリフルオロポリエーテルシラン化合物>
ポリフルオロポリエーテルシラン化合物は、ポリフルオロアルキル基が2以上のエーテル結合で中断された基を有する化合物である。(c2)成分は、その片末端又は両末端に、ケイ素に結合した水酸基及び/又は加水分解性基を有する化合物であるのが好ましい。また、(c2)成分は、ペルフルオロエーテル基が、連結基としてアミド結合又は直接結合を介して、直鎖状又は分岐状のアルキレン基と結合し、アルキレン基の炭素原子がケイ素原子に結合しているのが好ましい。(c2)成分は、耐薬品性が優れている点で好ましい。
このような、(c2)成分として、上記式(5)で示される化合物が好ましい。
上記式(5)におけるRf3は、−O−(C2fO)−(ここで、fは、1〜6の整数であり、gは、1以上の整数であり、各−C2fO−単位は、同一であっても、異なっていてもよい)である。ここで、−C2fO−単位は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、−CFCFCFCFCFCFO−、−CFCFCFCFCFO−、−CFCFCFCFO−、−CFCFCFO−、−CF(CF)CFO−、−CFCFO−、−CFO−が挙げられる。gは、所望の数平均分子量に応じて、適宜、調整することができる。
f3は、複数の単位の組み合わせであってもよく、その場合、各単位は、ブロックで存在していても、ランダムに存在していてもよい。例えば、耐光性の向上の点から−CFCFCFCFCFCFO−、−CFCFCFCFCFO−、−CFCFCFCFO−が含まれることが好ましく、合成容易性の点からより好ましくは−CFCFCFCFO−と−CFCFO−とを組み合わせた単位である−CFCFO−CFCFCFCFO−である。
f3は、具体的には、−O−(CFCFCFCFCFCFO)g1−(CFCFCFCFCFO)g2−(CFCFCFCFO)g3−(CFCFCFO)g4−(CF(CF)CFO)g5−(CFCFO)g6−(CFO)g7−(ここで、g1、g2、g3、g4、g5、g6及びg7は、それぞれ独立して、0以上の整数であるが、g1、g2、g3、g4、g5、g6及びg7の合計は1以上であり、各繰り返し単位は、ブロックで存在していても、ランダムに存在していてもよい)が挙げられ、好ましくは、基:−O−(CFCFO−CFCFCFCFO)g8(ここで、g8は、1以上の整数である)が挙げられる。
上記式におけるZ及びZは、それぞれ独立して、Rf4、又は基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであるが、いずれか一方は基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hである。好ましくは、ZがRf4であり、Zが基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであるが、両方が基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであってもよい。
f4は、基:C2k+1(ここで、kは、1〜6の整数である)であり、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。中でも、合成容易性の点から、直鎖状の基:CF(CFk―1(ここで、kは、上記のとおりである)が好ましく、より好ましくはCF−、CF(CF)−であり、特にCFCF−が好ましい。
基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hにおける、Qは、−(CH)s−(ここで、sは、0〜12の整数である)であるか、又はエステル結合、エーテル結合、アミド結合及びフェニレン基から選ばれる1種以上を含有する−(CH−であり、−CH−単位の一部又は全部は、−CF−単位及び/又は−CFCF−単位によって置き換えられていてもよい。Qは、−C(=O)NH−CH−、又は、−O−CH−を含むことが好ましく、より好ましくは−CFCFO−CFCFCF−C(=O)NH−CH−又は−CFCFO−CFCFCFCH−O−CH−である。
は、水素原子、又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であって、該炭化水素基は置換基を含有していてもよい。炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。中でも、入手容易性の点から、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基又はエチル基である。置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子)が挙げられる。複数存在する場合、Rは、同一であっても、異なっていてもよいが、入手容易性の点から同じであるものが好ましい。
は、水酸基又は加水分解性基であり、加水分解性基としては、Aにおける加水分解性基の例示及び好ましい態様が適用される。複数存在する場合、Aは、同一であっても、異なっていてもよいが、入手容易性の点から同じであるものが好ましい。
hは、0〜2の整数であり、密着性、耐久性の点から、0又は1が好ましく、より好ましくは0である。
上記式におけるjは、1〜20の整数であり、好ましくは1〜5の整数であり、例えば1が挙げられる。
化合物(5)は、好ましくは数平均分子量2600以上であり、耐薬品性及び耐塩水噴霧性の向上の点の点から、より好ましくは2800〜100000であり、さらに好ましくは2800〜10000である。ここで、数平均分子量は、NMR分析により特定した分子構造から算出した値である。
化合物(5)としては、例えば、以下が挙げられる。
式(5’):Rf4’−O−(CFCFO−CFCFCFCFO)g8−Q2’−CHCHSiA3’
(式中、
f4’は、CF又はCFCF−であり、
2’は、−CFCFO−CFCFCF−C(=O)NH−CH−又は−CFCFO−CFCFCFCH−O−CH−であり、
3’は、それぞれ独立して、アルコキシ基(例えば、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子)又はイソシアナト基であり、
g8は1以上の整数である)で示される化合物。
化合物(5)は、例えば、以下のようにして合成することができる。原料として、ペルフルオロアルキレン基の両末端に、それぞれ、CF=CF−O−、及びカルボキシ基又はカルボキシ基に転換可能な基を有する化合物を用意し、これをアルコール又はフッ素含有アルコールの存在下で重合させて、ペルフルオロ化されたオキシアルキレン単位を繰り返し単位として含む化合物を形成する。次いで、これをフッ素化した後、次いで、低級アルコールと反応させ、場合により、エチレン性不飽和結合を片方の末端に形成させた後、反応性基を有する加水分解性基含有シラン化合物を反応させることにより得ることができる。
上記以外にも、化合物(5)として、オプツールDSX、オプツールAES(ダイキン工業社製)、ダウコーニング2634コーティング(東レ・ダウコーニング社製)等の市販品を使用することもできる。また、特開2011−116947号公報に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物も使用することができる。この場合、組成物は、式(5)においてZ及びZの両方がRf4である化合物との混合物として供給される。
<(c3)化合物(3)>
化合物(3)について説明する。化合物(3)は、上記式(3)で示され、化合物(3)は、片末端にポリフルオロアルキル基を有し、もう一方の片末端に、アルキレン基を介して加水分解性シリル基が結合した、直鎖状のオルガノポリシロキサンである。化合物(3)は、初期滑水性が優れている点で好ましい。
式(3)におけるRf1は、基:CF(CF(7−t1)−(CHt1−(式中、t1は、2〜4である)が好ましく、CF(CF−(CH−であるのがより好ましい。
式(3)におけるRは、炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。炭素原子数1〜6の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。各SiR O単位は、それぞれ異なってもよいが、同一であるのが好ましい。
式(3)におけるbは、5〜150の整数であり、5〜120の整数が好ましい。bが上記範囲にあることで、優れた撥水性及び滑水性の両立が可能となる。化合物(c3)が、SiR Oの繰り返し単位の数が異なる混合物の場合、各繰り返し単位の数は平均値で示され、必ずしも整数で示されるわけではないが、好ましい数値の範囲は上記と同様である。
式(3)におけるXは、好ましいものも含めXにおいて例示された基が挙げられる。
式(3)におけるcは、0〜2の整数であり、密着性の点から、1又は0が好ましく、0がより好ましい。
式(3)におけるRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。中でも、耐候性の点から、炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基又はエチル基である。複数存在する場合、Rは、同一であっても、異なっていてもよいが、入手容易性の点から同じであるものが好ましい。
式(3)におけるYは、炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、直鎖状でも、分岐状でもよい。中でも、炭素原子数2(C)及び炭素原子数3(C)のアルキレン基が好ましい。本明細書において、「C」は、−CHCH−及び−CHCH−と−CH(CH)−との混合物を示し、「C」は、−CHCHCH−、−CHCHCH−と−CH(CH)CH−との混合物、及び−CHCHCH−と−CHCH(CH)−との混合物を示す。
化合物(3)として好ましくは、式(3)におけるRがメチル基であり、Rが炭素原子数5以下の直鎖状のアルキル基であり、Xが塩素原子であり、kが5〜150の整数であり、cが0である化合物である。
化合物(3)としては、以下の化合物(3−1)が挙げられる。式中、t1、R、b、Y、Xの例示及び好ましい態様は、上記のとおりである。
式(3−1):CF(CF(7−t1)−(CHt1−(SiR O)−SiR −Y−SiX
化合物(3)として、以下の化合物がより好ましい。式中、bの例示及び好ましい態様は、上記のとおりである。
13(Si(CHO)Si(CHSiCl
13(Si(CHO)Si(CHSi(OCH
13(Si(CHO)Si(CHSi(OC
化合物(3)は、公知の方法、例えば特開2001−81445号公報に記載の方法で製造可能である。例えば、式(3)において、末端にRf2−C−を有し、もう一方の末端にYとして−C−を介して加水分解性シリル基(Si(R(X3−c)を有する直鎖状のポリジメチルシロキサン(Rf1(Si(CHO)Si(CHSi(R(X3−c)は、両末端に水素原子を有するポリジメチルシロキサン(H(Si(CHO)Si(CHH)に、ヒドロシリル化触媒の存在下、CH=CH−Rf2、及びCH=CH−Si(R3−n(Xを反応させる方法により製造することができる。この反応で得られる化合物(3)は、Yが−CHCH−及び−CH(CH)−の混合物となる。また、上記反応において、CH=CH−をCH=CH−CH−とすることで、上記においてYが−CHCHCH−、−CH(CH)CH−及び−CHCH(CH)−の混合物である化合物(3)が得られる。
(C)成分は、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物であっても、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物の部分加水分解縮合物であっても、これらの混合物であってもよい。混合物は、未反応のポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物が含まれるポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。
ここで、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物の部分加水分解複合物とは、溶媒中で、酸触媒やアルカリ触媒等の触媒と水の存在下に、該化合物が有する加水分解性基の全部又は一部が加水分解し、次いで脱水縮合することによって生成するオリゴマー(多量体)をいう。部分加水分解共縮合物の縮合度(多量化度)は、適宜、調整することができる。
本発明の撥水膜形成用組成物は、効率的に撥水膜に耐薬品性及び耐塩水噴霧性を付与する点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分10〜500質量部であるのが好ましく、100〜300質量部であるのがより好ましい。
撥水層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、触媒、有機溶剤、金属酸化物の超微粒子、染料又は顔料等の着色用材料及び防汚性材料を含むことができる。
本発明の撥水膜形成用組成物は、作業性、撥水膜の厚さ制御等のし易さ等の点から、有機溶媒を含むことができる。有機溶媒としては、必須成分を溶解させるものであれば特に限定されず、アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、パラフィン系炭化水素類、エステル類(例えば、酢酸エステル類)等が挙げられ、中でも、フッ素原子を含む有機溶媒(例えば、フルオロアルコール、フルオロ炭化水素(ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロ−1,3−ジメチルシクロへキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等))が好ましい。有機溶媒は単独でも、2種以上を併用してもよい。本発明の組成物は、(C)成分の部分加水分解共縮合化合物を製造するために使用した有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒の割合は、(A)成分及び(B)成分、あるいは(A)成分及び(B)成分の加水分解共縮合物の合計質量を100質量部として、得られる撥水膜の均一性の点から、9900質量部以下が好ましく、より好ましくは3500質量部以下であり、例えば、700〜3500質量部とすることができる。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、機能性添加剤を含むことができる。機能性添加剤としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物の微粒子、染料、顔料、防汚性材料、硬化触媒、各種樹脂等が挙げられる。機能性添加剤の添加料は、組成物の固形分(有機溶媒等の揮発分を除いた成分)を100質量部として、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下であり、例えば、1〜10質量部とすることができる。
撥水膜形成用組成物を用いて撥水膜を形成する方法としては、下地層を形成する方法が挙げられる。なお、下地層形成用組成物の硬化は、撥水膜形成用組成物の硬化と同時に行ってもよい。具体的には、下地層形成用組成物を基体表面の所定領域に塗布し、必要に応じて乾燥した後、この表面に撥水膜形成用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥した後、上記と同様にして硬化処理を施すことで、下地層と撥水膜を同時に硬化させてもよい。
このようにして得られる本発明の下地層及び撥水膜を有する基体は、撥水性、耐久性、耐塩水噴霧性に優れるとともに、滑水性及び耐薬品性にも優れるものである。
[輸送機器用物品]
本発明の下地層及び撥水膜を有する基体は、これを含む輸送機器用物品として用いられる。輸送機器として、電車、自動車、船舶及び航空機が挙げられる。また、これに用いられる物品として、ボディー、窓ガラス(例えば、フロントガラス、サイドガラス及びリアガラス)、ミラー及びバンパーが挙げられる。本発明において、輸送機器用物品として、輸送機器用物品として、輸送機器用窓ガラスが好ましく、自動車用窓ガラスがより好ましい。
本発明の下地層及び撥水膜を有する基体又はこの基体を含む輸送機器用物品は、その撥水膜表面が撥水性及び滑水性の双方に優れることから、表面への水滴の付着が少なく、付着した水滴がすみやかに除去される。加えて、輸送機器の運行に伴う風圧との相互作用により、付着した水滴は表面を急速に移動し、水滴として溜ることはない。これにより、水分が誘発する悪影響を排除できる。また、本発明の撥水膜は、耐ネル摩耗性等の耐久性にも優れることから、例えば、輸送機器用物品を屋外で長期間使用する場合であっても、撥水性及び滑水性を維持することができる。
本発明の下地層及び撥水膜を有する基体又はこの基体を含む輸送機器用物品は、特に、各種窓ガラス等の透視野部での用途において、水滴の飛散により視野の確保が非常に容易となり、車輌等の運行において安全性が向上できる。また、水滴が氷結するような環境下でも撥水膜の表面には着氷しにくく、着氷したとしても付着力が小さいため自然落下し易い。更に、水滴の付着がほとんどないことから、清浄の作業回数を少なくでき、しかも清浄作業を容易に行うことができる。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[下地層形成用組成物]
下地層形成用組成物1〜15は、以下のようにして調製した。
(下地層形成用組成物1〜9)
撹拌機、温度計がセットされたガラス容器で、イソプロパノール(純正化学社製)8.77gに、表1に示す比率でテトラメトキシシラン(TMOS)(関東化学社製)とビストリメトキシシリルエタン(BTME)(関東化学社製)を合計0.39g添加し、25℃で3分間撹拌した後、0.463重量%硝酸水溶液を0.84g滴下し、1時間撹拌することで下地層形成用組成物として液状組成物1〜9を得た。
(下地層形成用組成物10〜15)
撹拌機、温度計がセットされたガラス容器で、酢酸ブチル(純正化学社製)9.50gに、表2に示す比率でテトライソシアナトシラン(SI400(商品名、マツモトファインケミカル社製))とビストリイソシアナトシリルエタン(以下「BTIE」ともいう。マツモトファインケミカル社製)を合計0.5g添加し、25℃で5分間撹拌して、下地層形成用組成物として液状組成物10〜15を得た。
Figure 2014156061

Figure 2014156061
[撥水膜形成用組成物]
本発明の撥水膜形成用組成物に配合する各成分は、以下のとおりである。
<化合物(C)>
化合物(c1−1):CF(CFCHCHSi(Cl (シンクエスト社製)
化合物(c1−2):CF(CFCHCHSi(Cl (シンクエスト社製)
化合物(c2):CFCFOCFCFO(CFCFCFCFOCFCFO)CFCFCFC(=O)NHCHCHCHSi(OMe)(n≒13である)
化合物(c2)は以下のようにして製造した
(工程1)
300mLの3つ口丸底フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム粉末の14.1gを取り入れ、AK−225(製品名、旭硝子社製、HCFC225)の350gを加えた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、内温が10℃を超えないように化合物(6)の100g、メタノールの15.8g、AK−225の22gを混合した溶液を滴下漏斗からゆっくり滴下した。全量滴下した後、更にメタノールの10gとAK−225の10gを混合した溶液を滴下した。その後、氷浴を取り外し、室温までゆっくり昇温しながら撹拌を続けた。室温で12時間撹拌後、再び氷浴で冷却し、液性が酸性になるまで塩酸水溶液を滴下した。反応終了後、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、固形分をフィルタによりろ過し、エバポレータで濃縮した。回収した濃縮液を減圧蒸留し、化合物(7)の80.6g(収率88%)を得た。
CF=CFO−CFCFCFCOOCH ・・・(6)、
CF=CFO−CFCFCFCHOH ・・・(7)。
化合物(7)のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):2.2(1H)、4.1(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl) δ(ppm):−85.6(2F)、−114.0(1F)、−122.2(1F)、−123.3(2F)、−127.4(2F)、−135.2(1F)。
(工程2)
還流冷却器を接続した500mLのナスフラスコに、工程1で得た化合物(7)の300g、トリフルオロエタノール(以下、TFEOとも記す。)の13.5gを取り入れ、炭酸カリウム粉末の9.34gを加えた。窒素雰囲気下、65℃で1時間撹拌した後、7時間かけて100℃まで昇温し、更に3時間撹拌した。NMRで化合物(7)のビニルエーテル基が完全に消失したことを確認した。塩酸水溶液を加えて、過剰の炭酸カリウムを処理し、水とAK−225を加えて分液処理を行った。3回の水洗後、有機相を回収し、エバポレータで濃縮することによって、高粘度のオリゴマーの279gを得た。再び、AK−225の110gで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AK−225)に展開して分取した。各フラクションについて、単位数(n+1)の平均値を19F−NMRの積分値から求めた。下式(8)中、(n+1)の平均値が7〜10のフラクションを合わせた化合物(8−i)の47g、(n+1)の平均値が13〜16のフラクションを合わせた化合物(8−ii)の19gを得た。
CFCH−O−(CFCFHO−CFCFCFCHO)n+1−H ・・・(8)。
化合物(8−i)のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:重アセトン、基準:TMS) δ(ppm):4.1(2H)、4.8(16H)、6.7〜6.9(8H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重アセトン、基準:CFCl) δ(ppm):−74.2(3F)、−84.3〜−85.1(16F)、−89.4〜−90.5(16F)、−120.2(14F)、−122.0(2F)、−126.6(14F)、−127.0(2F)、−145.1(8F)。
単位数(n+1)の平均値:8。
化合物(8−ii)のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:重アセトン、基準:TMS) δ(ppm):4.1(2H)、4.8(28H)、6.7〜6.9(14H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重アセトン、基準:CFCl) δ(ppm):−74.2(3F)、−84.3〜−85.1(28F)、−89.4〜−90.5(28F)、−120.2(26F)、−122.0(2F)、−126.6(26F)、−127.0(2F)、−145.1(14F)。
単位数(n+1)の平均値:14。
(工程3)
還流冷却器を接続した200mLのナスフラスコに、工程2で得た化合物(8−ii)の114.72g、フッ化ナトリウム粉末の8.1g、AK−225の101.72gを取り入れ、CFCFCFOCF(CF)COFの95.18gを加えた。窒素雰囲気下、50℃で12時間撹拌した後、室温で終夜撹拌した。加圧ろ過器でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCFCFCFOCF(CF)COFとAK−225を減圧留去した。シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:AK−225)で高極性の不純物を除去し、下式(9)中、単位数(n+1)の平均値が14である、化合物(9−ii)の94.57g(収率77%)を得た。
CFCH−O−(CFCFHO−CFCFCFCHO)n+1−C(=O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(9)。
化合物(9−ii)のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):4.4(28H)、4.9(2H)、6.0−6.2(14H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl) δ(ppm):−75.2(3F)、−80.0(1F)、−81.9(3F)、−82.7(3F)、−84.7〜−85.0(28F)、−86.0(1F)、−90.5〜−93.0(28F)、−121.1(2F)、−121.5(26F)、−128.0(28F)、−130.3(2F)、−132.5(1F)、−145.3(14F)。
単位数(n+1)の平均値:14。
(工程4)
オートクレーブ(ニッケル製、内容積3L)を用意し、オートクレーブのガス出口に、0℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、及び10℃に保持した冷却器を直列に設置した。また−10℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す液体返送ラインを設置した。
オートクレーブにR−113の2,350gを投入し、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、20%フッ素ガスを、25℃、流速4.2L/時間で1時間吹き込んだ。次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、工程3で得た化合物(9−ii)の213gをR−113の732gに溶解した溶液を、29時間かけて注入した。
次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、R−113中に0.009g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の4mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。20分撹拌した後、再びベンゼン溶液の5mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作を更に7回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.4gであった。
更に、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。次いで、オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、下式(10)中、単位数(n)の平均値が13である、化合物(10−ii)の250.1g(収率99%)を得た。
CFCF−O−(CFCFO−CFCFCFCFO)−CFCFOCFCFCFCFO−C(=O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(10)。
化合物(10−ii)のNMRスペクトル;
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl) δ(ppm):−80.3(1F)、−82.0〜−82.5(6F)、−84.2(54F)、−86.9〜88.0(6F)、−89.4(58F)、−126.6(56F)、−130.4(2F)、−132.4(1F)。
単位数(n)の平均値:13。
(工程5)
500mLのPFA製丸底ナスフラスコに、工程4で得た化合物(10−ii)の110g及びAK−225の220gを入れた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、メタノールの3.5gを滴下漏斗からゆっくり滴下した。窒素でバブリングしながら12時間撹拌した。反応混合物をエバポレータで濃縮し、下式(11)中、単位数(n)の平均値が13である、前駆体(11−ii)の103g(収率100%)を得た。
CFCF−O−(CFCFO−CFCFCFCFO)−CFCFOCFCFCFC(=O)OCH ・・・(11)。
前駆体(11−ii)のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl) δ(ppm):−84.0(54F)、−88.2(3F)、−89.2(58F)、−119.8(2F)、−126.5(54F)。
単位数(n)の平均値:13。
(工程6)
300mLのナスフラスコに、工程5で得た前駆体(11−ii)の100.5g及びHNCHCHCHSi(OCHの4.38gを入れ、12時間撹拌した。NMRから、前駆体(11−ii)の98%が化合物(12−ii)に変換していることを確認した。また、HNCHCHCHSi(OCHのすべてが反応しており、副生物であるメタノールが生成していた。このようにして、下式(12)中、単位数(n)の平均値が13である、化合物(12−ii)を97%含む組成物を得た。この組成物を化合物(c2)として使用した。化合物(12−ii)の数平均分子量は、4,900であった。
CFCF−O−(CFCFO−CFCFCFCFO)−CFCFOCFCFCFC(=O)NHCHCHCH−Si(OCH ・・・(12)。
化合物(12−ii)のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):0.6(2H)、1.6(2H)、2.8(1H)、3.3(2H)、3.5(9H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl) δ(ppm):−84.1(54F)、−87.9(3F)、−89.3(58F)、−120.8(2F)、−126.6(52F)、−127.2(2F)。
単位数(n)の平均値:13。
化合物(c3):CF(CFCHCH(Si(CHO)Si(CHSiCl
化合物(c3)は、特開2001−81445号公報に準じた方法でCF(CF−CH=CH、CH=CH−SiCl、及びH−(Si(CHO)Si(CH−Hを用いて調製した。
[撥水膜形成用組成物の調液]
(撥水膜形成用組成物1)
化合物(c1−1)10質量%、酢酸ブチル(純正化学社製)90質量%の割合で混合し、5分間撹拌して、液状組成物(撥水膜形成用組成物1)を得た。
(撥水膜形成用組成物2)
化合物(c1−2)10質量%、酢酸ブチル(純正化学社製)90質量%の割合で混合し、5分間撹拌して、液状組成物(撥水膜形成用組成物2)を得た。
(撥水膜形成用組成物3)
化合物(c3)10質量%、酢酸ブチル(純正化学社製)90質量%の割合で混合し、5分間撹拌して、液状組成物(撥水膜形成用組成物3)を得た。
撥水膜形成用組成物4)
化合物(c1−2)5.8質量部、化合物(c2)1.28質量部、酢酸ブチル(純正化学社製)18.6質量部、ハイドロフルオロエーテル(AE3000、旭硝子社製、CFCHOCFCHF)74.4質量部の割合で混合し、5分間撹拌して、液状組成物(撥水膜形成用組成物4)を得た。
[下地層及び撥水膜の形成]
基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライムガラス基板(水接触角5°、300mm×300mm×厚さ3mm)を用い、該ガラス基板の表面に、表3及び表4に示すとおり、下地層形成用組成物1〜15のいずれかの0.5gをスキージコート法によって塗布し1分間乾燥して、下地層を形成した。その後、形成された下地層の表面に、表3及び表4に示すとおり、撥水膜形成用組成物1〜4のいずれかの0.5gをスキージコート法によって塗布し、50℃、60%RHに設定された恒温恒湿槽で48時間保持して撥水膜を形成し、下地層及び撥水膜を有する基体を得た。余剰な撥水膜形成用組成物が存在する場合は、紙ウェスにイソプロピルアルコールをしみこませたもので拭き取り仕上げを行った。
[評価]
上記の実施例1〜19及び比較例1〜10の下地層及び撥水膜を有する基体の評価を、以下のように行った。
<撥水性>
撥水性は、以下の方法で測定した水接触角(CA)で評価した。まず、以下の各試験を行う前に初期値を測定した。なお、初期の水接触角(CA)が100°以上であれば、実使用に充分耐える撥水性を有するといえる。
(水接触角(CA))
下地層及び撥水膜を有する基体の撥水膜表面に置いた、直径1mmの水滴の接触角をDM−701(協和界面科学社製)を用いて測定した。撥水膜表面における異なる5ヶ所で測定を行い、その平均値を算出した。
<滑水性>
滑水性は、以下の方法で測定した水転落角(SA)で評価した。また、以下の各試験を行う前に初期値を測定した。なお、初期の水転落角(SA)が15°以下であれば、実使用に充分耐える滑水性を有するといえる。
(水転落角(SA))
水平に保持した下地層及び撥水膜を有する基体の撥水膜表面に50μlの水滴を滴下した後、基体を徐々に傾け、水滴が転落しはじめた時の下地層及び撥水膜を有する基体と水平面との角度(転落角)をSA−11(協和界面科学社製)を用いて測定した。撥水膜表面における異なる5ヶ所で測定を行い、その平均値を算出した。転落角が小さいほど滑水性に優れる。
<耐薬品性>
(耐アルカリ性試験)
下地層及び撥水膜を有する基体を0.1規定NaOH水溶液(pH:13)に3時間浸漬した後、水洗、風乾し、上記方法により水接触角を測定した。
〔耐薬品性評価基準〕
上記耐アルカリ性試験について、試験後における水接触角(CA)が70°以上であれば、実使用に充分な耐薬品性を有するといえる。
<耐塩水噴霧性>
(塩水噴霧試験(SST))
JIS H8502に準拠して塩水噴霧試験を行った。すなわち、下地層及び撥水膜を有する基体の撥水膜表面を、塩水噴霧試験機(スガ試験機社製)内で300時間塩水雰囲気に暴露した後、上記方法により水接触角を測定した。
〔耐塩水性評価基準〕
上記塩水噴霧試験について、試験後における水接触角(CA)が70°以上であれば、実使用に充分な耐塩水噴霧性を有するといえる。
<耐摩耗性>
下地層及び撥水膜を有する基体の撥水膜表面に対し、下記試験条件にて耐ネル布摩耗性試験を行った後、上記方法により水接触角(CA)及び水転落角(SA)を測定した。
(耐ネル布摩耗性試験)
JIS L0849に準拠して下記試験機を用いて下記試験条件で耐ネル布摩耗性試験を行った。
試験機:往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)
試験条件:綿布(JIS L0803に準拠)、荷重1.2kg、摩耗回数3000回
〔耐ネル摩耗性評価基準〕
上記耐ネル布摩耗性試験について、試験後における水接触角(CA)が80°以上かつ水転落角(SA)が30°以下であれば、実使用に充分な耐摩耗性を有するといえる。
結果を表3及び4にまとめる。
Figure 2014156061

Figure 2014156061
表3及び表4に示されるように、実施例の基体は、耐塩水噴霧性、耐アルカリ性及び滑水性に優れ、良好な耐久性を維持していることがわかる。特に、滑水性はガラス上から水滴を除去するために必要な特性であり、実施例の基体の優れた滑水性は自動車の窓ガラス、建物の窓ガラス等に用いた際、雨滴を除去し良好な視認性を確保するのに非常に効果的である。また、優れた耐塩水噴霧性、耐アルカリ性を有することから、優れた水滴除去効果の長期持続が可能である。特に、撥水膜形成用組成物として、化合物(c3)を用いた実施例は、初期の滑水性の点で優れ、かつ耐塩水噴霧性試験後の撥水性の維持の点で優れていることがわかる。また、化合物(c2)を用いた実施例は、耐アルカリ性試験後及び耐塩水噴霧性試験後の撥水性の維持の点で優れていることがわかる。さらに、化合物(c1−1)を用いた実施例は、耐アルカリ性試験後の撥水性の維持の点で優れていることがわかる。一方、比較例1〜10では、化合物(1)及び化合物(2)のいずれか一方のみを含む下地層形成用組成物を用いて形成された下地層を有する基体であるが、耐塩水噴霧性、耐アルカリ性又は滑水性が十分でなかった。

Claims (8)

  1. (A)式(1):A Si−(CHR−SiA
    (式中、
    は、それぞれ独立して、加水分解性基又は水酸基であり、
    は、H又はCHであり、
    aは、1〜9の整数であり、ここで各(CHR)単位は、同一であっても、異なっていてもよい)で表される化合物、及び
    (B)式(2):SiX
    (式中、Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基又はイソシアナト基である)
    で表される化合物を含む下地層形成用組成物を用いて形成される下地層、並びに前記下地層上の少なくとも一部に、(C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選択される少なくとも1種を含む撥水膜形成用組成物を用いて形成される撥水膜を有する基体。
  2. (C)ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物が、
    (c1)ポリフルオロアルキルシラン化合物、
    (c2)ポリフルオロポリエーテルシラン化合物、及び
    (c3)式(3):Rf1−(SiR O)−SiR −Y−Si(R(X3−c
    (式中、
    f1は、炭素原子数1〜8の直鎖状のポリフルオロアルキル基であり、
    は、炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、
    は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基であり、ここで、各SiR O単位は同一であっても、異なっていてもよく、
    は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基であり、
    は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、
    bは、5〜150の整数であり、
    cは、0〜2の整数である)
    で表わされる化合物
    からなる群より選択される一種以上のシラン化合物である、請求項1記載の基体。
  3. (c1)ポリフルオロアルキルシラン化合物が、
    式(4):Rf2−Q−SiR 3−d
    (式中、
    f2は、基:C2e+1(ここで、eは、1〜8の整数である)であり、
    は、炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基であり、
    は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、
    は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
    dは、0〜2の整数である)で表される化合物であり、
    (c2)ポリフルオロポリエーテルシラン化合物が、
    式(5):Z−Rf3−Z
    (式中、
    f3は、−O−(C2fO)−(ここで、fは、1〜6の整数であり、gは、1以上の整数であり、各−C2fO−単位は、同一であっても、異なっていてもよい)であり、
    及びZは、それぞれ独立して、Rf4、又は基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであるが、いずれか一方は基:−Q−{CHCH(SiR 3−h)}−Hであり
    (ここで、
    f4は、基:C2k+1(ここで、kは、1〜6の整数である)であり、
    は、−(CH−(ここで、mは、2〜12の整数である)であるか、又はエステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合及びフェニレン基から選ばれる1種以上を含有する−(CH−であり、−CH−単位の一部又は全部は、−CF−単位及び/又は−CF(CF)−単位によって置き換えられていてもよく、
    は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であって、該炭化水素基は置換基を含有していてもよく、
    は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
    hは、0〜2の整数であり、
    jは、1〜20の整数である)で表される請求項2記載の基体。
  4. 式(4)の化合物が、数平均分子量2600以上である化合物又はその部分加水分解縮合物である、請求項3記載の基体。
  5. 式(1)において、Aがアルコキシ基又はイソシアナト基であり、RがHであり、かつaが1〜3の整数である、請求項1〜4のいずれか1項記載の基体。
  6. 式(1)の化合物と式(2)の化合物との質量比が、0.1:0.9〜0.9:0.1である、請求項1〜5のいずれか1項記載の基体。
  7. 基体がガラスを含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の基体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の基体を含む、輸送機器用物品。
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