図1に示される真空ポンプ1は、例えば半導体製造装置の真空チャンバ(ともに図示略)に取り付けられ、真空チャンバ内を真空にする。真空ポンプ1は、ドライポンプやオイルポンプといった種々の型式を採ることができる。本実施形態の真空ポンプ1は、ドライポンプのうちのターボ分子ポンプである。真空ポンプ1は、ポンプ本体10と、真空ポンプの評価装置の一例である制御装置40とを備える。ポンプ本体10および制御装置40は、互いに間隙を空けて配置され、ケーブルCBによって電気的に接続されている。
ポンプ本体10は、真空チャンバ内の気体を吸排気するポンプ部20と、ポンプ部20を駆動させるモータ部30と、ポンプ部20およびモータ部30を収容する金属製のハウジング11とを備える。ポンプ本体10は、モータ部30によってポンプ部20が駆動されることにより、真空チャンバの気体をハウジング11の吸気口12を介して吸気し、ハウジング11の排気口13を介して排気する。
ポンプ部20は、複数のロータ翼21およびロータ円筒部22が形成されたロータ23と、複数のステータ翼24、ステータ25、および、軸体26を有する。軸体26は、ロータ23の回転軸と同軸に固定されている。ロータ23の軸方向(以下、軸方向)において、複数のロータ翼21は間隔を空けて配置され、複数のステータ翼24は複数のロータ翼21の間に配置されている。複数のロータ翼21および複数のステータ翼24は、ターボポンプ部TPを構成している。軸方向に直交する方向(以下、単に径方向)において、ステータ25は、ロータ円筒部22の外側に対向するように配置されている。ロータ円筒部22およびステータ25の少なくとも一方には、ねじ溝が形成されている。ロータ円筒部22およびステータ25は、ドラッグポンプ部DPを構成している。
モータ部30は、永久磁石31、ステータ32、3つの磁気軸受33、3つの保護ベアリング34、回転センサ35、および、コネクタ36を有する。永久磁石31は、軸体26の外周面に取り付けられている。ステータ32は、永久磁石31と径方向に対向して配置されている。ステータ32は、コイル32aを有する。本実施形態のモータ部30は、3相ブラシレスモータである。3つの磁気軸受33は、複数の電磁石を有し、軸体26を非接触状態で回転可能に支持する。3つの磁気軸受33のうち永久磁石31およびステータ32の軸方向の両側に配置された2つの磁気軸受33は、軸体26を径方向に支持するラジアル磁気軸受であり、残りの1つの磁気軸受33は、軸体26を軸方向に支持するアキシャル磁気軸受である。保護ベアリング34は、非常用の軸受であり、例えば磁気軸受33が作動していないときに軸体26を回転可能に支持する。回転センサ35は、磁気軸受33(アキシャル磁気軸受)の付近に配置され、軸体26の回転状態を検出する。一例では、回転センサ35は、軸体26に取り付けられた永久磁石(図示略)の磁極に応じた信号を制御装置40に出力する。コネクタ36は、ハウジング11の外側面に取り付けられている。コネクタ36は、コイル32aと電気的に接続されている。コネクタ36にはケーブルCBが接続されている。コネクタ36は、ケーブルCBを介して制御装置40と電気的に接続されている。
ハウジング11の外側面には、ヒータ14および温度センサ15が取り付けられている。ヒータ14は、巻線抵抗やブロック抵抗で構成され、加熱対象部を加熱する。加熱対象部の一例は、ハウジング11におけるドラッグポンプ部DPを収容する部分である。一例では、ヒータ14は、ハウジング11の全周を覆っている。温度センサ15は、ハウジング11におけるヒータ14付近の温度、すなわち加熱対象部付近の温度を検出する。温度センサ15は、ケーブル16を介して制御装置40に電気的に接続されている。
制御装置40は、表示部41、警報装置42、モータ電流検出部43、ポンプ温度検出部44、および、評価部の一例である制御部45を有する。表示部41は、例えばユーザによって真空ポンプ1を操作するための操作情報や真空ポンプ1の状態(温度やモータ部30の回転速度)を表示する。警報装置42は、モータ部30を構成する部品のうちの残存寿命を評価する対象となる部品(以下、評価対象部品MP)の残存寿命に応じて、評価対象部品MPの交換時期が迫っていることをユーザに報知するウォーニングと、評価対象部品MPの交換が必要であることをユーザに報知するアラームとを実行する。モータ電流検出部43は、制御装置40の電源部(図示略)と各相のコイル32aとの間に流れる電流(以下、モータ電流MI)を検出する。電源部は、商用電源の交流電力を直流電力に変換する電源回路と、電源回路からの直流電力を交流電力に変換して各相のコイル32aに供給する各相のスイッチングアームを有するインバータ回路とを含む。ポンプ温度検出部44は、温度センサ15の検出結果に基づいて加熱対象部の温度(以下、ポンプ温度PT)を演算する。本実施形態では、ポンプ温度PTは、ハウジング11におけるヒータ14付近の部分の温度である。なお、ハウジング11が金属製であるため、ヒータ14による熱およびモータ部30の発熱によってハウジング11が加熱されたとき、ハウジング11の温度は概ね均一になる。すなわち温度センサ15により検出された温度は、ポンプ本体10におけるヒータ14付近以外の部分の温度、例えば吸気口12や排気口13の温度と概ね等しい。一例では、温度センサ15により検出された温度と、吸気口12や排気口13の温度との差は、5℃程度である。
制御部45は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部45は、カウンタ積算部46および記憶部47をさらに含む。カウンタ積算部46は、真空ポンプ1の使用開始からモータ部30に供給された電流の合計を反映した積算値の一例であるカウンタ積算値CIVを演算する。カウンタ積算値CIVは、評価対象部品MPの残存寿命の評価に用いられる。記憶部47には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶されている。制御部45は、ヒータ14、モータ部30、表示部41、および、警報装置42を制御する。具体的には、制御部45は、軸体26を定格速度で継続して駆動させる定格制御、ポンプ温度PTを所定の温度に維持する温度調節制御、および、評価対象部品MPを交換するか否かを判定する判定制御を実行する。
定格制御は、インバータ回路をPWM(Pulse Width Modulation)制御により制御して、軸体26の回転速度を予め設定された所定の定格速度に維持する制御である。定格制御において、制御部45は、モータ電流検出部43の検出結果、すなわち各相のコイル32aに供給される各相の電流と、回転センサ35の検出結果、すなわち軸体26の回転速度とに基づいて、インバータ回路の各相のスイッチング素子のオンオフを制御する。
温度調節制御は、ヒータ14の加熱対象部の温度が予め設定された目標温度または目標温度範囲内になるようにヒータ14への通電を制御するものである。温度調節制御において、制御部45は、ポンプ温度PTが目標温度以下の場合または目標温度範囲の上限値以下の場合、ヒータ14に通電する。一方、制御部45は、ポンプ温度PTが目標温度以上の場合または目標温度範囲の上限値よりも高い場合、ヒータ14の通電を停止する。
判定制御は、カウンタ積算値CIVに基づいて、評価対象部品MPの残存寿命の評価の一例としての評価対象部品MPの交換が必要か否かを判定する制御である。具体的には、判定制御において、制御部45は、評価対象部品MPの交換が必要か否かを判定するための判定値DXとカウンタ積算値CIVとを比較し、カウンタ積算値CIVが判定値DX以上である場合、評価対象部品MPの残存寿命が0、すなわち評価対象部品MPの交換が必要であると判定する。判定値DXは、評価対象部品MPにおいて仕様で決められた耐用期間に相当する値であり、試験等により予め設定される。評価対象部品MPは、永久磁石31、ステータ32、磁気軸受33、保護ベアリング34、回転センサ35、および、コネクタ36が挙げられる。評価対象部品MPとしては、モータ電流MIが流れる部品、すなわちステータ32のコイル32aおよびコネクタ36であることが好ましい。本実施形態の判定制御では、評価対象部品MPとして、モータ電流MIが流れる部品のうちの最も故障しやすいコネクタ36の交換が必要か否かを判定する。
評価対象部品MPの交換が必要である場合の第1の例は、評価対象部品MPにおいて仕様で決められた耐用期間から評価対象部品MPの使用期間を減算した期間が0となる場合、すなわち評価対象部品MPの残存寿命が0となる場合である。具体的には、評価対象部品MPの交換が必要である場合の第1の例は、耐用期間としての判定値DXからカウンタ積算値CIVを減算した値が0となる場合である。評価対象部品MPの交換が必要である場合の第2の例は、真空ポンプ1の使用の安全性の観点から、評価対象部品MPの耐用期間に1未満となる所定の係数を乗算した期間から評価対象部品MPの使用期間を減算した期間が0となる場合である。所定の係数の一例は、0.8である。具体的には、評価対象部品MPの交換が必要である場合の第2の例は、評価対象部品MPの耐用期間に所定の係数を乗算した結果としての判定値DXからカウンタ積算値CIVを減算した値が0となる場合である。
カウンタ積算値CIVは、モータ電流温度カウンタ値MTVを積算することにより演算される。モータ電流温度カウンタ値MTVは、評価対象部品MPに加えられる負荷と評価対象部品MPの温度とを反映した値である。すなわちモータ電流温度カウンタ値MTVは、評価対象部品MPの温度が高くなるにつれて、または、評価対象部品MPに加えられる負荷が大きくなるにつれて大きくなる。モータ電流温度カウンタ値MTVは、モータ電流カウンタ値MIVと、温度係数αとの乗算により演算される乗算値である。
モータ電流カウンタ値MIVは、評価対象部品MPに加えられる負荷を示す指標であり、予め設定された経過時間に亘りモータ部30に供給された電流を示す。モータ電流カウンタ値MIVは、モータ電流MIと経過時間との乗算により演算される。本実施形態の経過時間は1秒である。モータ電流カウンタ値MIVの演算時のモータ電流MIの第1の例は、経過時間内におけるモータ電流MIの平均値である。モータ電流カウンタ値MIVの演算時のモータ電流MIの第2の例は、経過時間内におけるモータ電流MIの最大値である。本実施形態におけるモータ電流カウンタ値MIVの演算時のモータ電流MIは、経過時間内におけるモータ電流MIの平均値である。カウンタ積算値CIVは、記憶部47に格納される。
温度係数αは、評価対象部品MPの温度影響を評価対象部品MPの残存寿命に反映するための係数であり、記憶部47に格納されている。温度係数αは、ポンプ温度PTが高くなるにつれて大きくなる。このため、ポンプ温度PTが高くなるにつれて、モータ電流温度カウンタ値MTVおよびカウンタ積算値CIVに対する温度係数αの影響が大きくなる。好ましくは、ポンプ温度PTが高い場合におけるポンプ温度PTの温度変化に対する温度係数αの変化率は、ポンプ温度PTが低い場合におけるポンプ温度PTの温度変化に対する温度係数αの変化率よりも高くなるように設定されている。より好ましくは、ポンプ温度PTが高くなるほど、温度係数αの増加率が大きくなるように設定されている。温度係数αは、例えばマップ、テーブル、または、関数を用いた関係式を含む。本実施形態の温度係数αは、式(1)のような指数関数で演算される。
温度係数α=2^{(ポンプ温度PT−基準温度DT)/10} …(1)
上記式(1)においては、ポンプ温度PTが基準温度DTに対して10℃上がるごとに温度係数αが2倍となる式である。基準温度DTは、評価対象部品MPの耐熱温度や配置位置等に応じて異なる温度となるように設定される。本実施形態では、基準温度DTは50℃である。
図2は、温度A(60℃)、温度B(70℃)、および、温度C(80℃)のようにポンプ温度PTを上げたとき、予め設定されたモータ電流MIのパターンに基づいてモータ電流温度カウンタ値MTVがどのように推移するかを示している。図2のグラフG1がモータ電流MIのパターンであるモータ電流カウンタ値MIVを示し、図2のグラフG2がモータ電流温度カウンタ値MTVを示している。図2に示されるとおり、モータ電流カウンタ値MIVが同様に変化したとしても、温度A、温度B、および、温度Cの順に、モータ電流カウンタ値MIVの変化に対するモータ電流温度カウンタ値MTVの変化が大きくなる。つまり、ポンプ温度PTが高くなるにつれてモータ電流カウンタ値MIVの変化に対するモータ電流温度カウンタ値MTVの変化が大きくなる。このように、モータ電流温度カウンタ値MTVによってポンプ温度PTが高い状態でモータ部30に大電流が流された状態を把握しやすくなる。
図3は、図2のモータ電流温度カウンタ値MTVを積算したカウンタ積算値CIVを示している。図3に示されるとおり、ポンプ温度PTが低い場合(温度A)では、モータ電流カウンタ値MIVが大きくても、すなわちモータ部30に大電流が流れてもカウンタ積算値CIVの増加は緩やかである。一方、ポンプ温度PTが高い場合(温度C)では、モータ電流カウンタ値MIVが大きくなるとカウンタ積算値CIVが急激に増加する。このように、カウンタ積算値CIVは、ポンプ温度PTが上昇するごとに増加度合が大きくなる。このため、ポンプ温度PTが高い状態でモータ部30に大電流が流される場合、評価対象部品MPの残存寿命が急激に短くなる。
図4を参照して、判定制御の処理の一例について説明する。判定制御は、処理が終了する毎に繰り返し実行される。
制御部45は、ステップS11において真空ポンプ1の使用開始時か否かを判定する。真空ポンプ1の使用開始時とは、製品工場から真空ポンプ1が出荷された状態から真空ポンプ1が初めて使用される場合である。制御部45は、真空ポンプ1の使用開始時にはフラグを「0」に設定している。そして制御部45は、ステップS11の判定後、フラグを「0」から「1」に変更する。制御部45は、ステップS11においてフラグが「0」か否かの判定に基づいて真空ポンプ1の使用開始時か否かを判定する。
制御部45は、ステップS11において肯定判定した場合、すなわちフラグが「0」の場合、ステップS12においてモータ電流温度カウンタ値MTVのカウントを開始し、カウンタ積算値CIVを演算する。
そして制御部45は、ステップS13においてカウンタ積算値CIVがウォーニング判定値DXW以上か否かを判定する。ウォーニング判定値DXWは、警報装置42がウォーニングを発報するか否かを判定するための判定値である。評価対象部品MPの交換時期よりも前にウォーニングを行うことを目的としているため、ウォーニング判定値DXWは、判定値DXよりも小さい。ウォーニング判定値DXWの一例は、判定値DXに1未満の所定の係数を乗算した値である。所定の係数の一例は、0.8である。
制御部45は、ステップS13において肯定判定した場合、ステップS14において警報装置42にウォーニングを発報させる。ウォーニングの一例は、警報音を発報したり、制御装置40がウォーニング信号(例えばLED発光)を出力したり、制御装置40の表示部41に評価対象部品MP(コネクタ36)の残存寿命が少なくなっている旨、すなわち評価対象部品MP(コネクタ36)の交換時期が迫っている旨を表示したりする。
そして制御部45は、ステップS15においてカウンタ積算値CIVが判定値DX以上か否かを判定する。制御部45は、ステップS15において肯定判定した場合、ステップS16において警報装置42がアラームを発報するとともに真空ポンプ1を停止する。この場合、制御部45は、カウンタ積算値CIVをリセットしてもよい。
一方、制御部45は、ステップS13において否定判定した場合、または、ステップS15において否定判定した場合、ステップS17において真空ポンプ1が停止しているか否かを判定する。真空ポンプ1が停止しているか否かの判定は、モータ部30のロータとなる永久磁石31が回転停止しているか否かに基づいて行われる。永久磁石31の回転状態は、回転センサ35の検出結果に基づいて検出される。制御部45は、ステップS17において肯定判定した場合、ステップS18においてモータ電流温度カウンタ値MTVのカウントおよびカウンタ積算値CIVの演算を停止し、ステップS19においてカウンタ積算値CIVを記憶部47に保存する。制御部45は、ステップS17において否定判定した場合、ステップS13に移行する。この場合、モータ電流温度カウンタ値MTVのカウントおよびカウンタ積算値CIVの演算は継続されている。
また制御部45は、ステップS11において否定判定した場合、すなわちフラグが「1」に設定されている場合、ステップS20において前回の真空ポンプ1の停止時、すなわち前回の判定制御の終了時のカウンタ積算値CIVを取得し、ステップS12に移行する。すなわち、真空ポンプ1の使用開始ではない場合、すなわち真空ポンプ1が少なくとも既に1度使用された場合、前回の判定制御の終了時のカウンタ積算値CIVに今回の真空ポンプ1の駆動にともなって演算されるカウンタ積算値CIVを加算する。
本実施形態の真空ポンプ1の作用について説明する。以下の説明において、モータ部品は、モータ部30を構成する部品を示す。
モータ部品は、真空ポンプ1の駆動時に想定される最高温度になったとしてもモータ部品が故障しないような耐熱温度のものが用いられる。耐熱温度の高いモータ部品は、耐熱温度の低いモータ部品よりも単価が高いため、真空ポンプ1の低コスト化の観点から、モータ部品として、真空ポンプ1の最高温度よりも若干高い耐熱温度のモータ部品が用いられる。このため、モータ部品の仕様で決められた耐熱温度と真空ポンプ1が最高温度のときのモータ部品の温度との差である温度マージンが小さくなる。またモータ部品の温度マージンは、モータ部品を小型化した場合にも小さくなる。
一般に、ポンプ温度PTがモータ部品の耐熱温度よりも十分に低い状態で真空ポンプ1が駆動する場合よりも、ポンプ温度PTがモータ部品の耐熱温度付近の状態で真空ポンプ1が駆動する場合のほうがモータ部品の残存寿命の減少速度が大きくなる。このため、ポンプ温度PTが高い状態で真空ポンプ1が駆動する時間が長いほど、モータ部品の交換時期が早まる。
また真空ポンプ1では、例えば反応生成物が真空ポンプ1に堆積することを抑制するため、ヒータ14によってハウジング11を加熱する。これにより、真空ポンプ1の内部、すなわちモータ部品の周囲温度は常に高温に維持されている。このため、ポンプ温度PTが高い状態で真空ポンプ1が駆動することが多い。すなわち、モータ部品の耐熱温度に近い状態で真空ポンプ1が駆動することが多い。したがって、モータ部品の残存寿命に対するポンプ温度PTの影響度合が大きい。
このような実情のもと、本実施形態の制御部45は、モータ電流MIおよびポンプ温度PTに基づいてカウンタ積算値CIVを演算し、カウンタ積算値CIVおよび判定値DXを用いてモータ部品のうちの評価対象部品MPの残存寿命を評価する。具体的には、制御部45は、カウンタ積算値CIVが判定値DX以上である場合、評価対象部品MPの交換が必要であると判定する。これにより、ポンプ温度PTの影響を反映した評価対象部品MPの残存寿命を評価できるため、評価対象部品MPの残存寿命をより正確に評価できる。
本実施形態の真空ポンプ1によれば、さらに以下の効果が得られる。
(1)制御部45は、モータ電流カウンタ値MIVと温度係数αとの乗算値であるモータ電流温度カウンタ値MTVを積算することによりカウンタ積算値CIVを演算する。ポンプ温度PTが高くなるにつれて大きくなる温度係数αによって、ポンプ温度PTが高くなるにつれてカウンタ積算値CIVにおけるポンプ温度PTの影響が大きくなる。これにより、ポンプ温度PTが高い状態において評価対象部品MPの残存寿命の評価、すなわち評価対象部品MPの交換が必要か否かの判定に対してポンプ温度PTをより顕著に反映できる。したがって、評価対象部品MPの残存寿命をより正確に評価できる。このため、評価対象部品MPの安全性を確認できる。
(2)ポンプ温度PTが高くなるほど温度係数αの増加率が大きい。このため、ポンプ温度PTが高い場合にはポンプ温度PTの増加に対してカウンタ積算値CIVをより大きく増加させるため、評価対象部品MPの残存寿命に影響を与えやすい真空ポンプ1の高温時において評価対象部品MPの残存寿命への影響を反映しやすくなる。したがって、評価対象部品MPの残存寿命をより正確に評価できる。
(3)制御部45は、温度センサ15の検出結果としてのポンプ温度PTを温度調整制御および判定制御に用いる。このため、評価対象部品MPの残存寿命の評価のための専用の温度センサを設ける必要がないため、真空ポンプ1の部品点数の増加を抑制できる。
(4)評価対象部品MPは、コネクタ36、すなわちモータ電流MIが流れる部品である。このため、モータ電流MIによって評価対象部品MP自体が発熱するため、評価対象部品MPの残存寿命の評価においてポンプ温度PTの影響がより顕著となる。このような評価対象部品MPに対して、制御部45がモータ電流MIおよびポンプ温度PTに基づいて評価対象部品MPの残存寿命を評価するため、評価対象部品MPの残存寿命をより正確に評価できる。
上記実施形態に関する説明は、本発明の真空ポンプの評価装置およびこの評価装置を備える真空ポンプが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明の真空ポンプの評価装置およびこの評価装置を備える真空ポンプは、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合せられた形態を取り得る。
・上記実施形態において、ポンプ本体10と制御装置40とが一体化されてもよい。この場合、真空ポンプ1からケーブルCBを省略できる。ケーブルCBを省略した場合、コネクタ36は、制御装置40の回路基板のコネクタ(ともに図示略)に接続される。
・上記実施形態の温度係数αは、式(1)のような指数関数に基づいて演算されたが、これに限られず、温度の増加にともない直線的に増加する一次関数に基づいて演算されてもよい。
・上記実施形態において、温度係数αは所定の温度範囲ごとの離散値であってもよい。一例では、温度係数αは、温度範囲として5℃または10℃ごとの一定値である。なお、所定の温度範囲は、可変に設定可能である。一例では、所定の温度範囲は、温度が高くなるにつれて小さくなる。
・上記実施形態において、予め設定された所定期間におけるカウンタ積算値CIVが高負荷判定値DCH以上となる場合、警報装置42は、短期間に高温度かつ高負荷で真空ポンプ1が駆動していることを示すウォーニングを発報してもよい。所定期間の一例は、24時間である。所定期間は、ユーザによって変更できるようにしてもよい。
・上記実施形態において、制御部45は、モータ部品のうちの複数の評価対象部品MPごとに残存寿命を評価してもよい。一例では、制御部45は、モータ部品のうちの第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の残存寿命を評価する。第1の評価対象部品MP1の一例はコネクタ36であり、第2の評価対象部品MP2の一例はコイル32aである。これら部品MP1,MP2の残存寿命の評価方法は、以下の(A)〜(D)が挙げられる。
(A)温度係数αは、複数の評価対象部品MPごとに設定されている。すなわち、記憶部47には、第1の評価対象部品MP1のモータ電流温度カウンタ値MTVを演算するための第1の温度係数α1と、第2の評価対象部品MP2のモータ電流温度カウンタ値MTVを演算するための第2の温度係数α2とが記憶されている。第1の温度係数α1および第2の温度係数α2は、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の配置位置、耐熱温度、各部品MP1,MP2を構成する材料等によって決められる。一例では、各温度係数α1,α2は、上記実施形態の式(1)に基づいて演算される。ただし、第1の温度係数α1に関する式(1)の基準温度DTと、第2の温度係数α2に関する式(1)の基準温度DTとは互いに異なる。例えば制御部45は、第1の評価対象部品MP1が第2の評価対象部品MP2よりも高温環境下に配置される場合、第1の評価対象部品MP1が第2の評価対象部品MP2よりも交換時期が速くなるように基準温度DTを設定する。具体的には、制御部45は、第1の温度係数α1の基準温度DTを第2の温度係数α2の基準温度DTよりも低くなるように設定する。また制御部45、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2に対して共通の判定値DXを用いる。
制御部45は、第1の温度係数α1とモータ電流カウンタ値MIVとを乗算した結果であるモータ電流温度カウンタ値MTVを積算することにより第1の評価対象部品MP1に適用されるカウンタ積算値CIVとしての第1のカウンタ積算値CIV1を演算する。また制御部45は、第2の温度係数α2とモータ電流カウンタ値MIVとの乗算した結果であるモータ電流温度カウンタ値MTVを積算することにより第2の評価対象部品MP2に適用されるカウンタ積算値CIVとしての第2のカウンタ積算値CIV2を演算する。制御部45は、判定制御(図4参照)において、第1のカウンタ積算値CIV1が判定値DX以上か否かに基づいて第1の評価対象部品MP1の交換が必要か否かを判定する。制御部45は、第2のカウンタ積算値CIV2が判定値DX以上か否かに基づいて第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かを判定する。制御部45は、各部品MP1,MP2の少なくとも一方の交換が必要であると判定した場合、真空ポンプ1の駆動を停止する。
この構成によれば、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の個々に温度係数α1,α2が設定されるため、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の個々のカウンタ積算値CIVを演算できる。すなわち第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2のそれぞれの状況に応じたカウンタ積算値CIVを演算できる。したがって、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2のそれぞれの交換が必要か否かをより正確に判定できる。
(B)判定値DXは、複数の評価対象部品MPごとに設定されている。すなわち記憶部47には、第1の評価対象部品MP1の交換が必要か否かを判定するための第1の判定値DX1と、第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かを判定するための第2の判定値DX2とが記憶されている。第1の判定値DX1および第2の判定値DX2は、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の配置位置、耐熱温度、各部品MP1,MP2を構成する材料等によって決められる。例えば制御部45は、第1の評価対象部品MP1が第2の評価対象部品MP2よりも高温環境下に配置される場合、第1の判定値DX1を第2の判定値DX2よりも低くなるように設定する。また制御部45は、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2に対して共通の温度係数αを用いる。すなわち制御部45は、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2に対して共通のカウンタ積算値CIVを用いる。
制御部45は、判定制御において、カウンタ積算値CIVが第1の判定値DX1以上か否かに基づいて第1の評価対象部品MP1の交換が必要か否かを判定し、カウンタ積算値CIVが第2の判定値DX2以上か否かに基づいて第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かを判定する。制御部45は、各部品MP1,MP2の少なくとも一方の交換が必要であると判定した場合、真空ポンプ1の駆動を停止する。
この構成によれば、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の個々に判定値DX1,DX2が設定されるため、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2のそれぞれの状況に応じて各部品MP1,MP2の交換が必要か否かを判定できる。
(C)記憶部47には、第1の評価対象部品MP1のモータ電流温度カウンタ値MTVを演算するための第1の温度係数α1と、第1の評価対象部品MP1の交換が必要か否かを判定するための第1の判定値DX1とが記憶されている。また記憶部47には、第2の評価対象部品MP2のモータ電流温度カウンタ値MTVを演算するための第2の温度係数α2と、第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かを判定するための第2の判定値DX2とが記憶されている。第1の温度係数α1および第2の温度係数α2は、例えば上記(A)と同様に決められる。制御部45は、第1のカウンタ積算値CIV1および第2のカウンタ積算値CIV2は、例えば上記(A)と同様に演算する。第1の判定値DX1および第2の判定値DX2は、例えば上記(B)と同様に決められる。
制御部45は、判定制御において、第1のカウンタ積算値CIV1が第1の判定値DX1以上か否かに基づいて第1の評価対象部品MP1の交換が必要か否かを判定し、第2のカウンタ積算値CIV2が第2の判定値DX2以上か否かに基づいて第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かを判定する。制御部45は、各部品MP1,MP2の少なくとも一方の交換が必要であると判定した場合、真空ポンプ1の駆動を停止する。
この構成によれば、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の個々に温度係数α1,α2および判定値DX1,DX2が設定されるため、上記(A)の効果および上記(B)の効果を併せて得られる。したがって、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2のそれぞれの残存寿命を上記(A)および上記(B)よりも正確に評価できる。
(D)真空ポンプ1は、第1の評価対象部品MP1の温度を検出するための第1の温度センサと、第2の評価対象部品MP2の温度を検出するための第2の温度センサとを備える。制御部45は、上記実施形態の式(1)においてポンプ温度PTを第1の評価対象部品MP1の温度に代えることにより、第1の評価対象部品MP1に適用される第1の温度係数α1を演算する。制御部45は、式(1)においてポンプ温度PTを第2の評価対象部品MP2の温度に代えることにより、第2の評価対象部品MP2に適用される第2の温度係数α2を演算する。そして制御部45は、第1の温度係数α1とモータ電流カウンタ値MIVとを乗算してモータ電流温度カウンタ値MTVを演算し、モータ電流温度カウンタ値MTVを積算して第1のカウンタ積算値CIV1を演算する。制御部45は、第2の温度係数α2とモータ電流カウンタ値MIVとを乗算してモータ電流温度カウンタ値MTVを演算し、モータ電流温度カウンタ値MTVを積算して第2のカウンタ積算値CIV2を演算する。
制御部45は、判定制御において、第1のカウンタ積算値CIV1が判定値DX以上か否かに基づいて第1の評価対象部品MP1の交換が必要か否かを判定する。制御部45は、第2のカウンタ積算値CIV2が判定値DX以上か否かに基づいて第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かを判定する。制御部45は、各部品MP1,MP2の少なくとも一方の交換が必要であると判定した場合、真空ポンプ1の駆動を停止する。
この構成によれば、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の個々の温度を正確に得られるため、第1のカウンタ積算値CIV1が第1の評価対象部品MP1の状況に即した値となり、第2のカウンタ積算値CIV2が第2の評価対象部品MP2の状況に即した値となる。したがって、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2のそれぞれの残存寿命をより正確に評価できる。
・上記(A)および(C)において、制御部45は、上記実施形態の式(1)のような共通の計算式を用いて第1の温度係数α1および第2の温度係数α2を演算することに限られず、異なる計算式、マップ、または、テーブルを用いて各温度係数α1,α2を演算してもよい。
・上記(D)において、第1の評価対象部品MP1および第2の評価対象部品MP2の交換が必要か否かの判定のために上記(A)〜(C)のいずれかを組み合せてもよい。なお、上記(D)を上記(B)に組み合せる場合、上記(D)の第1のカウンタ積算値CIV1および第2のカウンタ積算値CIV2を用いる。
・上記実施形態において、評価部は、制御部45とは別に設けられてもよい。この場合、評価部は、カウンタ積算部46を含んでもよい。また上記実施形態において、評価装置は、制御装置40とは別に設けられてもよい。この場合、制御装置40と評価装置とは互いに通信可能に構成されることが好ましい。評価装置は、警報装置42を含んでもよい。