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JP2021174637A - リチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法 Download PDF

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JP2021174637A
JP2021174637A JP2020076453A JP2020076453A JP2021174637A JP 2021174637 A JP2021174637 A JP 2021174637A JP 2020076453 A JP2020076453 A JP 2020076453A JP 2020076453 A JP2020076453 A JP 2020076453A JP 2021174637 A JP2021174637 A JP 2021174637A
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lithium
lithium composite
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優治 馬原
Yuji Umahara
秀亮 岡
Hideaki Oka
広幸 中野
Hiroyuki Nakano
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

【課題】耐久性の高い新規なリチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法を提供する。
【解決手段】蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備える。正極は、リチウムと金属元素とフッ素とを含み、X線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有する複合酸化物を正極活物質として有する。
【選択図】図1

Description

本明細書は、リチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法を開示する。
従来、蓄電デバイスに用いられる正極活物質としては、例えば、不規則岩塩構造を有するLi1.4Nb0.2Mn0.531.500.5やLi1.4Nb0.2Mn0.531.750.25などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の組成物は、不規則岩塩組成物の容量、エネルギー密度、電圧減衰、レート性能及び容量維持を改善できるとされている。また、蓄電デバイスに用いられる正極活物質としては、例えば、不規則岩塩構造を有するLi2Mn2/3Nb1/32FやLi2Mn1/2Ti1/22Fなどが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1の材料では、高容量化及び高エネルギー密度化が可能であるとともに、材料の安定化が可能であるとされている。なお、不規則岩塩構造は、ランダム岩塩構造とも称される。
特開2019−523532号公報
Nature,2018,556,185−190
ところで、特許文献1や非特許文献1に示されたMnを含む不規則岩塩構造のリチウム複合酸化物では、層状岩塩構造とは異なり、Liが3次元的に泳動可能であり、高容量を示す。しかしながら、Liが3次元的に動くことで、Mnの電荷が移動してMnが溶解しやすい状態となり、充放電を繰り返すとMnの溶出に伴う相変化等によってランダム岩塩構造からスピネル型構造に変化し、所期の性能が得られなくなることがあった。このため、充放電を繰り返してもランダム岩塩構造がスピネル構造に変化しにくい、耐久性の高いリチウム複合酸化物が望まれていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、耐久性の高い新規なリチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、リチウム複合酸化物において、ランダム岩塩構造を有し、更にマンガンとフッ素を含み、X線吸収分光(XAS)スペクトルにおいて684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するものでは、耐久性が高いことを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示するリチウム複合酸化物は、
蓄電デバイスの電極活物質に用いられるリチウム複合酸化物であって、
リチウムとマンガンとフッ素とを含み、X線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、
X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するものである。
本明細書で開示する蓄電デバイスは、
上述したリチウム複合酸化物を正極活物質として有する正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本明細書で開示するリチウム複合酸化物の製造方法は、
蓄電デバイスの電極活物質に用いられるリチウム複合酸化物の製造方法であって、
斜方晶のリチウムマンガン複合酸化物とフッ化リチウムとを混合粉砕することにより、リチウムとマンガンとフッ素とを含み、X線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するフッ素含有リチウムマンガン複合酸化物を得る調整工程、
を含むものである。
本開示では、耐久性の高い新規なリチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、X線吸収分光スペクトルにおいて684eV以上690eV以下の範囲に現れるピークはMn−F結合を示すものであるが、このMn−F結合によって、Mnの溶出が抑制され、Mnの溶出に伴う相変化が抑制されるためと考えられる。また、例えば、Mnの八面体構造(MnO6)に電気陰性度の高いフッ素が配位してMn(O,F)6が形成されることで、Mnの電荷移動が抑制されてMnの八面体構造(MnO6)からのOの脱離が抑制され、Oの脱離に伴う相変化が抑制されるためと考えられる。なお、X線吸収分光スペクトルの684eV以上690eV以下に現れるピークは、Mn−F結合の存在を示すものであり、特許文献1や非特許文献1では確認されていないピークである。
蓄電デバイス20の構成の一例を示す模式図。 実験例1〜3のリチウム複合酸化物のXRD測定結果。 実験例1〜2のF K端NEXAFSスペクトル。 実験例1、3のdQ/dV曲線。 実験例1〜4のサイクル数と放電時のdQ/dVピーク値との関係図。
(リチウム複合酸化物)
本開示のリチウム複合酸化物は、蓄電デバイスの電極活物質に用いられるものである。このリチウム複合酸化物は、リチウムとマンガンとフッ素とを含み、X線回折(XRD)スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、X線吸収分光スペクトル(XAS)において、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するものである。リチウム複合酸化物は、Li及びMn以外の金属元素Mを含むものとしてもよい。この金属元素Mは、例えば、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo及びGeのうち1以上が挙げられる。金属元素Mは少ない方が好ましく、例えば、Mnと金属元素Mとの合計のうち10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。ランダム岩塩構造は、XRDスペクトルにおいて、2θが35°以上39°以下の範囲、42°以上48°以下の範囲、62°以上68°以下の範囲、及び78°以上84°以下の範囲の4つに回折ピークを有するピークパターンを示す。また、ランダム構造を有することから、回折ピークは比較的ブロードであり、2θ=42°〜48°のメインピークの半価幅が1.5°以上を示し、2θ=62°〜68°のピークの半価幅が2°以上を示す。
このリチウム複合酸化物は、X線吸収分光スペクトル、具体的には全量子収量法(TEY)によるフッ素(F)K端の吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)スペクトルおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有する。以下では、このピークを第1ピークとも称する。この第1ピークは、Mn−F結合に由来するピークであり、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた元素マッピングでMnとFとが共存していることよりも厳しい条件でMn−Fの結合を認めるものである。こうしたMn−F結合によって、ランダム岩塩構造からスピネル構造への変化が抑制される。第1ピークは、685eV以上689eV以下の範囲に現れてもよいし、686eV以上688eV以下の範囲に現れてもよい。また、リチウム複合酸化物は、X線吸収分光スペクトルにおいて、690eV超過696eV以下の範囲にピークを有してもよい。以下では、このピークを第2ピークとも称する。この第2ピークは、Li−F結合に由来するピークである。第2ピークは、第1ピークよりもピーク強度が強くてもよく、第1ピークのピーク強度をI1、第2ピークのピーク強度をI2とすると、ピーク強度比I1/I2の値が0.05以上0.25以下でもよいし、0.10以上0.20以下でもよい。第2ピークは、691eV以上695eV以下の範囲に現れてもよいし、692eV以上694eV以下の範囲に現れてもよい。
このリチウム複合酸化物は、一般式LiaMny1-ybcで表されるものとしてもよい。但し、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo及びGeのうち1以上であり、0<a≦2、1≦b≦2.5、0<c≦1、0<y≦1を満たすものとする。aは、1.3≦a≦2を満たすことが好ましく、1.5≦a≦2を満たすものとしてもよいし、1.5<a≦2を満たすものとしてもよい。bは、1.5≦b≦2.3を満たすことが好ましく、1.9≦b≦2.1を満たすことがより好ましい。cは、0.2≦c≦1を満たすことが好ましく、0.3≦c≦1を満たすことがより好ましく、0.5≦c≦1を満たすものとしてもよいし、0.5<c≦1を満たすものとしてもよい。a、b、cがこうした範囲を満たす場合には、リチウム複合酸化物の構造変化がより抑制される。あるいは、aは、1.2≦a≦1.8を満たすことが好ましく、1.4≦a≦1.6を満たすことがより好ましい。bは、1.5≦b≦2.3を満たすことが好ましく、1.9≦b≦2.1を満たすことがより好ましい。cは0.2≦c≦0.8を満たすことが好ましく、0.4≦c≦0.6を満たすことが好ましい。a、b、cがこうした範囲を満たす場合には、容量を高めることができる。yは0.9≦y≦1を満たすことが好ましく、0.95≦y≦1を満たすことがより好ましい。従来のランダム岩塩構造のリチウム複合酸化物では、y≧0.9を満たすMnの多い組成にすると、LiMn24のようなスピネル構造へ相転移しやすかったが、X線吸収分光スペクトルが上述した第1ピークを有する場合には、Mnの多い組成でもスピネル構造への相転移が生じにくい。このため、本発明の適用の意義が高い。また、y≧0.9を満たす組成では、Li及びMn以外の金属の割合が少ないため、コストの高い材料や、生産地が偏在していて資源リスクの高い材料、環境負荷の高い材料などの使用量を低減できる点でも有利である。
このリチウム複合酸化物は、一般式Li1+xMny1-y2xで表されるものとしてもよい。つまり、上述した一般式LiaMny1-ybcにおいて、a=1+x、b=2、c=xであるものとしてもよい。但し、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo及びGeのうち1以上であり、0<x≦1、0<y≦1を満たすものとする。このリチウム複合酸化物は、一般式Li1+xMnO2xで表されるものとしてもよい。
このリチウム複合酸化物は、このリチウム複合酸化物を有する正極と、金属リチウムの負極と、正極と負極との間に介在する非水系電解液と、を備えたハーフセルを、リチウム基準で2.0V以上5.0V以下の電位範囲、リチウム複合酸化物重量あたり20mA/gの電流値で、定電流定電圧(CCCV)充放電を行ったときに、少なくとも5サイクル目までの充放電においてリチウム複合酸化物重量あたりの放電容量Qを電位Vで微分したdQ/dV値の絶対値が、2.5V以上3.2V以下の電位範囲において250mAh/gV以下となることが好ましい。リチウム複合酸化物がスピネル構造である場合には、放電曲線において2.89V付近に長く平坦度の高いプラトー領域が現れる。このプラトー領域は、dQ/dV曲線においては、ピーク値の絶対値が250mAh/gVを上回るような急峻なピークとして2.89V付近に現れる(後述する図4B参照)。一方、リチウム複合酸化物がランダム岩塩構造である場合には、放電曲線においてスピネル構造のようなプラトー領域が現れない。そして、リチウム複合酸化物がランダム岩塩構造である場合には、dQ/dV曲線において、2.5V以上3.2V以下の範囲に、ピーク値の絶対値が250mAh/gV以下のブロードなピークが現れる(後述する図4A参照)。つまり、dQ/dV値の絶対値が250mAh/gV以下であることは、ランダム岩塩構造からスピネル構造への変化が抑制されていることを示すため、好ましい。また、dQ/dV値の絶対値が250mAh/gV以下である場合には、ランダム岩塩構造のような長く平坦度の高いプラトー領域がなく、プラトー領域の前後での急激な電位低下がないため、蓄電デバイスの制御が容易であり、好ましい。dQ/dV値の絶対値は、10サイクル目までの充放電においても250mAh/gV以下であることが好ましく、100サイクル目までの充放電においても250mAh/gV以下であることがより好ましい。dQ/dV値の絶対値は、定電流放電時の全電位範囲、つまり2.0V超過5.0V未満の電位範囲において、250mAh/gV以下であるものとしてもよい。dQ/dV値の絶対値は200mAh/gV以下でもよい。なお、正極及び非水系電解液としては、例えば、後述する蓄電デバイスの正極や非水系電解液を用いることができる。
このリチウム複合酸化物は、上述したハーフセルを、上述のように定電流定電圧充放電を行ったときに、リチウム複合酸化物重量あたりの初回の放電容量が200mAh/g以上となることが好ましい。また、充放電を繰り返しても200mAh/g以上の放電容量が維持されることが好ましく、5サイクル目以降まで維持されることが好ましく、10サイクル目以降まで維持されることが好ましく、100サイクル目以降まで維持されることがより好ましい。初回の放電容量や充放電を繰り返したときの放電容量は大きいほど好ましく、例えば、225mAh/g以上が好ましく、250mAh/g以上がより好ましく、275mAh/g以上がさらに好ましい。放電容量や上述したdQ/dV値の絶対値は、例えば、リチウム複合酸化物の組成(例えばFの含有量c又はx)や、ランダム岩塩構造のランダム性などを変えることで、調整できる。
(リチウム複合酸化物の製造方法)
本開示の製造方法は、蓄電デバイスの電極活物質に用いられる上述したリチウム複合酸化物の製造方法である。この製造方法は、例えば、複合酸化物の構造を調整する調整工程を含むものとしてもよい。また、この調整工程は、原料作製処理と混合粉砕処理とを含むものとしてもよい。この製造方法では、斜方晶のリチウムマンガン複合酸化物とフッ化リチウムとを混合粉砕することにより、リチウムとマンガンとフッ素とを含み、X線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するリチウム複合酸化物を得るものとしてもよい。フッ化リチウムと混合粉砕する酸化物として、リチウム酸化物とマンガン酸化物とを個別に用いるのではなく、リチウムマンガン複合酸化物にして用いることで、X線吸収分光スペクトルにおいて684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するリチウム複合酸化物が比較的容易に得られる。斜方晶のリチウムマンガン複合酸化物は、上述した金属元素Mを含むものとしてもよい。この製造方法において、原料の配合比は、上述したリチウム複合酸化物が得られるものとすればよく、上記リチウム複合酸化物で説明したa,b,c及びx,yの範囲を適宜採用してもよい。
原料作製処理では、斜方晶のリチウムマンガン複合酸化物を焼成条件を調整しつつ作製する。この処理では、原料のリチウムマンガン複合酸化物として、LiMnO2を作製するものとしてもよい。この処理では、800℃以上1100℃以下、6時間以上15時間以下の範囲で焼成することにより原料のLi2MnO3を得る。LiMnO2は、Li2MnO3とMnOとを等モルで配合し、不活性雰囲気中(例えばAr中)、900℃以上1100℃以下の範囲、6時間以上24時間以下の範囲で焼成することにより得ることができる。
混合粉砕処理では、上記作製した斜方晶のリチウムマンガン複合酸化物とLiFとを所定比率で配合し、粉砕条件を調整しつつ混合粉砕する。この処理では、例えば、一般式LiaMny1-ybc(但し、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo及びGeのうち1以上)であり、0<a≦2、1≦b≦2.5、0<c≦1、0<y≦1を満たす範囲となるよう原料を配合する。この処理では、2時間以上40時間以下の範囲で混合粉砕するものとしてもよい。混合粉砕は、例えば、ボールミルや遊星ボールミルなどで行うことができ、特に遊星ボールミルで行うことが好ましい。遊星ボールミルにおいて、その回転数は、原料を収容する容積に応じて適宜設定すればよいが、例えば、400rpm以上1000rpm以下の範囲が好ましく、500rpm以上800rpm以下の範囲がより好ましく、550rpm以上650rpm以下の範囲がより好ましい。このような調整工程を行うことにより、上述したリチウム複合酸化物を作製することができる。
(蓄電デバイス)
本開示の蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えている。この蓄電デバイスは、上述したリチウム複合酸化物を正極活物質として有する。また、この蓄電デバイスは、金属リチウムやリチウム合金を負極活物質とするリチウム二次電池や、リチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質を有するリチウムイオン二次電池や、イオンを吸着、脱離する負極活物質を有するハイブリッドキャパシタとしてもよい。
正極は、正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に含まれる導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。正極に含まれる結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
負極は、負極活物質と集電体とを密着させて形成したものとしてもよいし、例えば負極活物質と結着材と必要に応じて導電材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素質材料は、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり支持塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時における不可逆容量を少なくできるため、好ましい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。負極活物質としては、このうち、炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
イオン伝導媒体は、リチウムを含む支持塩と、非水系の溶媒とを含む非水系電解液としてもよい。非水系電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。イオン伝導媒体は、リチウムを含む支持塩と、水溶液系の溶媒とを含む水溶液系電解液としてもよい。
支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水系電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。
イオン伝導媒体は、固体であるものとしてもよい。例えば、イオン伝導媒体は、イオン伝導性ポリマーとしてもよい。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、フッ化ビニリデンなどのポリマーと支持塩とで構成されるポリマーゲルを用いることができる。更に、イオン伝導性ポリマーと非水系電解液とを組み合わせて用いることもできる。また、イオン伝導媒体としては、イオン伝導性ポリマーのほか、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
本開示の蓄電デバイスは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本開示の蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、こうした蓄電デバイスを複数直列に接続して電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本実施形態の蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、集電体21に正極合材22を形成した正極シート23と、集電体24の表面に負極合材25を形成した負極シート26と、正極シート23と負極シート26との間に設けられたセパレータ28と、正極シート23と負極シート26との間を満たす非水系電解液29と、を備えている。この蓄電デバイス20では、正極シート23と負極シート26との間にセパレータ28を挟み、これらを捲回して円筒ケース32に挿入し、正極シート23に接続された正極端子34と負極シート26に接続された負極端子36とを配設して形成されている。正極合材22には、リチウムとマンガンとフッ素とを含みX線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するリチウム複合酸化物を正極活物質として含んでいる。
本開示の蓄電デバイスでは、正極がリチウム基準で2.0V以上5.0V以下となる電位範囲、正極のリチウム複合酸化物重量あたり20mA/gの電流値で、定電流定電圧(CCCV)充放電を行ったときに、正極は、少なくとも5サイクル目までの充放電においてリチウム複合酸化物重量あたりの放電容量Qを電位Vで微分したdQ/dV値の絶対値が、2.5V以上3.2V以下の電位範囲において250mAh/gV以下となることが好ましい。上述したリチウム複合酸化物で説明したように、正極のdQ/dV値の絶対値が250mAh/gV以下であることは、ランダム岩塩構造からスピネル構造への変化が抑制されていることを示すため、好ましい。また、本開示の蓄電デバイスでは、上述のように定電流定電圧充放電を行ったときに、正極は、リチウム複合酸化物重量あたりの初回の放電容量が250mAh/g以上となることが好ましい。なお、負極が金属リチウムである場合、dQ/dV曲線及び充放電曲線は、上述したリチウム複合酸化物で説明したハーフセルの場合と同じとなる。一方、負極が金属リチウム以外の場合には、フルセルでの評価となり、dQ/dV曲線及び充放電曲線に負極の影響が表れるが、負極の影響を差し引いて、正極のdQ/dV値の絶対値や、正極の放電容量を求めればよい。
以上詳述した本実施形態のリチウム複合酸化物、リチウム複合酸化物の製造方法及び蓄電デバイスでは、耐久性の高い新規なものを提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、X線吸収分光スペクトルにおいて684eV以上690eV以下の範囲に現れるピークはMn−F結合を示すものであるが、このMn−F結合によって、Mnの溶出が抑制され、Mnの溶出に伴う相変化が抑制されるためと考えられる。また、例えば、Mnの八面体構造(MnO6)に電気陰性度の高いフッ素が配位してMn(O,F)6が形成されることで、Mnの電荷移動が抑制されてMnの八面体構造からのOの脱離が抑制され、Oの脱離に伴う相変化が抑制されるためと考えられる。また、本実施形態のリチウム複合酸化物、リチウム複合酸化物の製造方法及び蓄電デバイスでは、放電容量を高めることができる。こうした効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、組成内にフッ素を含むランダム岩塩型正極材料は、これまで実用されてきた層状型正極とは異なり、Liが3次元的に泳動可能であり、Fの隣接によって金属酸化物クラスターの電子が引かれることによって、レドックス性が向上しより多くのLi+を挿入脱離可能となるものと推察される。このような容量向上効果はFが正極物質内に固溶し、Mn−F結合が形成されている時に得られる効果であると推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本開示のリチウム複合酸化物及び蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1,2が実施例に相当し、実験例3,4が比較例に相当する。
(リチウム複合酸化物の合成)
[実験例1]
斜方晶のLiMnO2とLiFとをモル比1:0.5で混合し、ジルコニアボールと共にAr雰囲気下でメカニカルミリング処理によって下記の処理条件にて混合粉砕し、得られたフッ素含有リチウムマンガン複合酸化物を、実験例1とした。
(処理条件)
ポット:500mLジルコニア製ポット
ボール:直径5mmジルコニア製ボール
回転数:560rpm
処理時間:28h
[実験例2]
斜方晶のLiMnO2とLiFとをモル比1:1で混合した以外は実験例1と同様にして得られたフッ素含有リチウムマンガン複合酸化物を、実験例2とした。
[実験例3]
斜方晶のLiMnO2を単独で用いた以外は実験例1と同様にして得られたフッ素非含有リチウムマンガン複合酸化物を、実験例3とした。
[実験例4]
実験例3のフッ素非含有リチウムマンガン複合酸化物と、LiFを単独で用いた以外は実験例1と同様にして得られたリチウムフッ化物とを、モル比1:0.5でメノウ鉢にて混合して得られたリチウム複合酸化物を、実験例4とした。
(STEM/EDX測定)
得られたリチウム複合酸化物の走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察/エネルギー分散X線(EDX)測定を行った。測定試料は活物質をメタノールに分散させ、Cu製マイクログリッドに滴下することで作製した。測定は、STEM(日本電子製JEM−2100F)、およびEDX(Thermo社製)を用い、加速電圧200kVの条件で行った。
(X線回折測定)
得られたリチウム複合酸化物の粉末X線回折(XRD)測定を行った。測定試料は、リチウム複合酸化物をガラス製試料板に平らに詰めて作製した。測定は放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用したX線回折装置(リガク社製UltimaIV)を用い、大気下にて行った。印加電圧を50kV、電流40mAに設定して測定を行った。また、測定は5°/分の走査速度で2θが10°〜90°の角度範囲で記録した。
(X線吸収分光測定)
得られたリチウム複合酸化物について、X線吸収分光(XAS)測定を行った。測定試料は、Al製サンプルプレートにカーボンテープとIn金属とを貼り付け、その上にリチウム複合酸化物をのせて圧粉して作製した。測定にはあいちシンクロトロン光センターのBL1N2を用い、全量子収量法(TEY)にて、フッ素(F)K端の吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)スペクトルを得た。
(二極式評価セルの作製)
得られたリチウム複合酸化物を正極活物質とし、合材割合として活物質を70質量%、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600)を25質量%、結着材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE,ダイキン工業製F−104)を5質量%秤量してミキサーで解砕し、混合した。得られた乾式合材を直径10mmの円形ペレットに成形し、Alエキスパントメタルに載せプレスし、正極とした。リチウム金属箔(厚さ300μm)を負極として、両電極の間に非水系電解液を含浸させたポリエチレン製セパレータ(東燃化学株式会社製E20MMS)を挟んで二極式評価セルを作製した。非水系電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
(充放電試験)
上記二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、リチウム基準電位で5.0V〜2.0Vの電位範囲で、リチウム複合酸化物重量あたり電流値20mA/gで定電流、定電圧充放電測定を行い、10サイクル分の充放電曲線を得た。得られた充放電曲線から、初回の放電容量を求めた。また、充放電曲線の電気容量を電位で微分してdQ/dV曲線を得た。得られたdQ/dV曲線のうち放電時のdQ/dV曲線について、ピーク強度の絶対値を求めた。
(結果と考察)
実験例1〜4の評価結果を表1にまとめて示す。表1には、実験例1〜4の、正極活物質(リチウム複合酸化物)の組成式、合成条件、F−Mn結合の有無、初回放電容量、放電時のdQ/dVピーク値の絶対値をまとめた。図2は、実験例1〜3のリチウム複合酸化物のX線回折測定結果である。図3は、実験例1,2のF K端NEXAFSスペクトルであり、このうち、図3Aは670〜725eVの範囲のスペクトルであり、図3Bは図3Aの681〜693eVの範囲を拡大したスペクトルである。なお、図3には、比較のためにMnF2及びLiFのスペクトルも示した。図4は、実験例1(図4A)及び実験例3(図4B)のdQ/dV曲線である。図5は、実験例1〜4のサイクル数と放電時のdQ/dVピーク値の絶対値との関係図である。
図2に示すように、実験例1〜3では、結晶構造がランダム岩塩構造であることがわかった。
図3、表1に示すように、実験例1,2では、684eV以上690eV以下の範囲にMn−F結合に由来するF K端NEXAFSスペクトルのプレエッジピーク(第1ピーク)が確認され、Mnに一部Fが配位していることがわかった。一方、実験例3,4では、表1に示すように、Mn−F結合に由来するピークは確認されないと推察された。実験例3では、Fを含まないため、Mn−F結合に由来するピークが現れ得ないためである。実験例4では、STEM/EDX測定において、MnとFとが分離していることが確認されており、全Fの平均情報を表すNEXAFSスペクトルにおいては原理的にF−Mn結合に由来するピークが現れ得ないためである。
図3Aに示すように、実験例1では、684eV以上690eV以下の範囲に確認される第1ピークのピーク強度I1の、Li−F結合に由来する690eV超過696eV以下の範囲に確認されるピークのピーク強度I2に対するピーク強度比I1/I2の値が0.11であった。また、図3Bに示すように、実験例2では、ピーク強度比I1/I2の値が0.20であった。以上より、ピーク強度比I1/I2は、例えば0.05以上0.25以下でもよく、0.10以上0.20以下でもよいことがわかった。
図4,5及び表1に示すように、実験例1,2では、放電時のdQ/dV値の絶対値がピーク値でも250mAh/gV以下であり、充放電サイクルを繰り返してもその値はほぼ一定であった。一方、実験例3では、1サイクル目からdQ/dV値の絶対値が250mAh/gV超過であり、3サイクル目以降は急激に大きな値となった。実験例4では、dQ/dV値の絶対値が実験例3ほど高くはないものの、実験例3と同様に3サイクル目以降に急激に上昇した。また、実験例3,4では、充放電を繰り返すにつれて、放電時のdQ/dV曲線のピーク位置がスピネル構造で現れる2.89Vに近づいていた。以上より、X線吸収分光スペクトルにおいて684eV以上690eV以下の範囲にピークを有する実験例1,2のリチウム複合酸化物では、こうしたピークを有さない実験例3,4のリチウム複合酸化物で生じるランダム岩塩構造からスピネル構造への変化が抑制され、好ましいことがわかった。また、表1に示すように、X線吸収分光スペクトルにおいて684eV以上690eV以下の範囲にピークを有する実験例1,2では、こうしたピークを有さない実験例3,4に比して初回の放電容量が大きく、好ましいことがわかった。また、Li1.5MnO20.5で表される実験例1や、Li2MnO2Fで表される実験例2においてランダム岩塩構造からスピネル構造への変化が抑制されていたことから、リチウム複合酸化物は、一般式LiaMny1-ybcで表される場合に、aは例えば1.5≦a≦2を満たすことが好ましく、bは例えば1.9≦b≦2.1を満たすことが好ましく、cは例えば0.5≦c≦1を満たすのが好ましいことがわかった。また、yは例えば0.9≦y≦1を満たすことが好ましいことがわかった。
Figure 2021174637
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本明細書で開示したリチウム複合酸化物、蓄電デバイス及びリチウム複合酸化物の製造方法は、二次電池の技術分野に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 集電体、22 正極合材、23 正極シート、24 集電体、25 負極合材、26 負極シート、28 セパレータ、29 非水系電解液、32 円筒ケース、34 正極端子、36 負極端子。

Claims (7)

  1. 蓄電デバイスの電極活物質に用いられるリチウム複合酸化物であって、
    リチウムとマンガンとフッ素とを含み、X線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、
    X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有する、
    リチウム複合酸化物。
  2. 一般式LiaMny1-ybc(但し、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo及びGeのうち1以上であり、0<a≦2、1≦b≦2.5、0<c≦1、0<y≦1を満たす)で表される、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  3. 0.2≦c≦1及び0.9≦y≦1のうちの少なくとも一方を満たす、請求項2に記載のリチウム複合酸化物。
  4. 前記リチウム複合酸化物を有する正極と、金属リチウムの負極と、前記正極と前記負極との間に介在する非水系電解液と、を備えたハーフセルを、リチウム基準で2.0V以上5.0V以下の電位範囲、前記リチウム複合酸化物重量あたり20mA/gの電流値で、定電流定電圧充放電を行ったときに、
    (a)少なくとも5サイクル目までの充放電において、前記リチウム複合酸化物重量あたりの放電容量Qを電位Vで微分したdQ/dV値の絶対値が、2.5V以上3.2V以下の電位範囲において250mAh/gV以下となるか、
    (b)前記リチウム複合酸化物重量あたりの初回の放電容量が250mAh/g以上となるか、
    のうちの少なくとも一方を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム複合酸化物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム複合酸化物を正極活物質として有する正極と、
    負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  6. 前記正極がリチウム基準で2.0V以上5.0V以下となる電位範囲、前記リチウム複合酸化物重量あたり20mA/gの電流値で、定電流定電圧充放電を行ったときに、前記正極は、
    (a)少なくとも5サイクル目までの充放電において前記リチウム複合酸化物重量あたりの放電容量Qを電位Vで微分したdQ/dV値の絶対値が、2.5V以上3.2V以下の電位範囲において250mAh/gV以下となるか、
    (b)前記リチウム複合酸化物重量あたりの初回の放電容量が250mAh/g以上となるか、
    のうちの少なくとも一方を満たす、請求項5に記載の蓄電デバイス。
  7. 蓄電デバイスの電極活物質に用いられるリチウム複合酸化物の製造方法であって、
    斜方晶のリチウムマンガン複合酸化物とフッ化リチウムとを混合粉砕することにより、リチウムとマンガンとフッ素とを含み、X線回折スペクトルがランダム岩塩構造のピークパターンを示し、X線吸収分光スペクトルにおいて、684eV以上690eV以下の範囲にピークを有するフッ素含有リチウムマンガン複合酸化物を得る調整工程、
    を含むリチウム複合酸化物の製造方法。
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