概要
本発明は、そのC末端カルボン酸官能基を介してコンジュゲートしている疎水性アウリスタチンF(AF)化合物が、より多いコピー数の標的化される抗原によって特徴付けられる標的化されるがん細胞に対して免疫学的に特異的な細胞傷害活性、およびより少ないコピー数または検出不可能なレベルの標的化される抗原によって特徴付けられる近くのがん細胞に対してバイスタンダー活性を有し、腫瘍細胞のMDR状態の不均質性に関係なく腫瘍全体にわたって十分に細胞傷害性であるアウリスタチン抗体薬物コンジュゲートを提供するという、予想しなかった知見に部分的に基づく。親ADCのAFに対する疎水性の増大によって特徴付けられる疎水性AF化合物へのコンジュゲーションを有するADCにがん細胞を曝露すると、そのC末端カルボン酸官能基を介してAFへのコンジュゲーションを有する親ADCについて以前観察されているMDR+活性の十分な保持が、バイスタンダー活性の出現と共に生じたこと、ならびにAFの疎水的修飾の結果としてその狭い範囲の増大について、バイスタンダーおよびMDR+の二重活性が観察されたことが、予想外に見出された。そのバイスタンダー活性は、非荷電疎水性アウリスタチンコンジュゲート、例えばAEおよびMMAEのADCについて生じることが以前に示されており、その後者は、カルバメート官能基を介するN末端構成成分を介してコンジュゲートしている。
理論に拘泥するものではないが、二重活性を保持するための本明細書に開示される狭い範囲を外れた疎水性によって特徴付けられる、そのC末端構成成分を介して疎水性AF化合物にコンジュゲートしているADCは、少ないコピー数もしくは検出不可能なレベルの標的化される抗原を有するがん細胞への透過性が不十分であることによって、バイスタンダー効果を示すことができないか、またはADCの免疫学的に特異的な内部移行後に放出された疎水的に修飾されたAF遊離薬物がMDR基質になるほどに疎水性であるかのいずれかであると考えられる。さらに、それらの知見は、免疫学的に選択的な結合の後に、修飾されたAF遊離薬物としてその薬物単位を細胞外で放出するコンジュゲートへと拡張可能である。その場合、修飾された遊離薬物の疎水性が不十分であれば、対象とする細胞傷害性またはバイスタンダー効果をもたらすのに十分な細胞透過性は提供されず、それが、細胞のMDR状態とは無関係である一方、過度に疎水的に修飾されたAF遊離薬物は、対象とする細胞傷害性に対して容易に細胞透過可能であるが、MDR輸送体によってその修飾されたAF遊離薬物が排除されることに起因して、近くのMDR+がん細胞に対してバイスタンダー効果をもたらすことができない。
アウリスタチン感受性がん細胞に対する細胞傷害性が容認しがたく減少する程度までは遊離薬物のチューブリン結合活性に有害な影響を及ぼさないAF内の代替部位に、疎水性が導入されるか、または追加的に導入されるとMDR+およびバイスタンダーの二重効果を有する、疎水的に修飾されたAF遊離薬物を提供するための本明細書に開示されるその狭い範囲内に、親AF遊離薬物の疎水性がとどまると同時に増大される場合にも、N末端修飾のための先の原則が適用される。
1.定義
文脈によって別段記述または暗示されない限り、本明細書で使用される用語は、以下に定義される意味を有する。例えば、それらの定義に、また本明細書の全体にわたって互いに排他的な要素または選択肢を含めることによって、別段禁忌とされないかまたは暗示されない限り、「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、1つまたは複数を意味し、「または」という用語は、文脈によって許容される場合、および/またはを意味する。したがって、本明細書および添付の特許請求の範囲に提示される通り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」は、文脈によって別段明記されない限り、複数の指示対象を含む。
本開示の様々な箇所で、例えば開示される任意の実施形態または特許請求の範囲において、1つまたは複数の特定の構成成分、要素またはステップを「含む」化合物、組成物、または方法について言及される。本発明の実施形態はまた、それらの特定の構成成分、要素またはステップであるか、またはそれからなるか、またはそれから本質的になる化合物、組成物、組成物または方法を具体的に含む。「から構成される」という用語は、「含むこと」という用語と交換可能に使用され、等価な用語として記述される。例えば、構成成分またはステップを「含む」、開示される組成物、デバイス、製造品または方法は、オープンであり、それらの組成物または方法に加えて追加の構成成分またはステップを含む、またはそのように読まれる。しかし、それらの用語は、その意図された目的で開示される組成物、デバイス、製造品または方法の機能性を破壊するおそれがある、列挙されていない要素を包含しない。同様に、構成成分またはステップ「からなる」、開示される組成物、デバイス、製造品または方法は、クローズドであり、認識できる量の追加の構成成分または追加のステップを有する組成物または方法を含まない、またはそのように読まれないはずである。さらに、「から本質的になる」という用語は、本明細書でさらに定義される通り、その意図された目的で開示される組成物、デバイス、製造品または方法の機能性に対する実質的な効果を有さない、列挙されていない要素を含むことを認める。本明細書で使用される節の見出しは、単に構造化する目的のためのものであり、記載される主題を制限するものと解釈されるべきではない。別段特定されない限り、質量分析法、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法が用いられる。
「約」は、用語が本明細書において化合物または組成物の特有の特性を説明するための数値または値の範囲と関連して使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、値または値の範囲が、特有の特性を依然として説明しながらも、当業者に妥当とみなされる程度に逸脱し得ることを示す。妥当な逸脱は、特有の特性の測定、決定または誘導において使用される機器の正確度または精密度の範囲内の逸脱を含む。具体的に、「約」という用語は、この文脈で使用される場合、数値または値の範囲が、特有の特性を依然として説明しながらも、列挙される値または値の範囲の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、または0.01%、典型的に10%〜0.5%、より典型的には5%〜1%で変わり得ることを示す。
本明細書でさらに定義される通り、リガンド薬物コンジュゲート組成物における薬物リンカー部分の平均数を示す下付き文字pに関して、「約」という用語は、サイズ排除、HICクロマトグラフィーまたはHPLC−MSの標準方法によって決定される通り、その組成物内のリガンド薬物コンジュゲート化合物の分布からその値を決定するのに当技術分野で認められている不確実性を反映する。
「本質的に保持する」、「本質的に保持すること」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、検出可能に変化していないか、または関連構造の化合物もしくは組成物もしくは部分のその同じ活性、特徴もしくは特性の決定の実験誤差内にある、化合物または組成物またはその部分の特性、特徴、機能または活性を指す。
「実質的に保持する」、「実質的に保持すること」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、関連構造の別の化合物または組成物または部分のその同じ物理的特性の決定とは統計的に異なり得るが、このような差異が、その活性または特性を評価するのに適した生物学的試験系において生物活性または薬理学的特性の統計的に有意なまたは意味のある差異に翻訳されない(すなわち、生物活性または特性が保持されるか、または本質的に保持される)、化合物または組成物またはその部分の物理的特性または特徴の測定値を指す。したがって、「実質的に保持する」という句は、化合物または組成物の物理的特性または特徴が、その物理的特性または特徴と明確に関連する生理化学的もしくは薬理学的特性、または生物活性に対して有する効果に言及して用いられる。
「バイスタンダー活性」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、遊離薬物が、その薬物を有するリガンド薬物コンジュゲートから薬物単位の形態で標的化される細胞(一部の態様では、標的化される細胞は、異常細胞、例えばがん細胞である)に放出されると、最初に標的化された細胞を出、近くの細胞に対して細胞傷害性効果を発揮するように、その近くの細胞に入る、能力を指す。一部の態様では、近くの細胞は、検出可能なレベルの標的化される部分がより低いまたはそれを有していない、標的化される異常細胞のサブセットである。バイスタンダー活性を有するコンジュゲートは、典型的に、不均質な標的細胞の集団に対してより有効であり、不均質な標的細胞の集団は、一部の態様では、異常細胞の固体塊、例えば固形腫瘍のがん細胞である。遊離薬物は、その初期の放出部位から周辺に拡散し、正常細胞に入ることができるので、バイスタンダー効果は、最初に標的化された細胞から出る遊離薬物の透過性に起因して、非固形腫瘍についてはある程度あまり望ましくない場合がある。その事象では、コンジュゲートは、非コンジュゲート形態の薬物の投与に普通は起因する、望ましくない副作用に寄与するおそれがある。
「十分に保持する」、「十分に保持すること」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、所望の物理的特性もしくは特徴から逸脱し得る程度まで、親化合物、組成物もしくはその部分のその同じ物理的特性の決定から実際に逸脱する、構造的に関連する化合物もしくは組成物もしくはその部分の所望の物理的特性もしくは特徴の測定値を指すか、または意図された同じ目的のために十分な程度まで、構造的に関連する化合物、組成物もしくはその部分によって保持される、親化合物もしくは組成物もしくはその部分の所望の物理的特性の測定値を指す。
代替として疎水性AF薬物単位を有するコンジュゲートまたは疎水性AFコンジュゲートと呼ばれる、疎水的に修飾されたアウリスタチンF化合物へのコンジュゲーションを有するアウリスタチンリガンド薬物コンジュゲートのMDR+細胞傷害性を十分に保持するかどうかを決定する文脈では、アウリスタチン感受性の抗原陽性MDR+細胞系の細胞に対するそのコンジュゲートの活性は、疎水性AFコンジュゲートの効力が、親AFコンジュゲートの効力と本質的に同じかもしくはそれを超える場合、または両方を同じ試験系で別個に試験して、その試験系におけるMDR+がん細胞に対する親コンジュゲートの効力が約1ng/mL〜約100ng/mLもしくは約2〜約40ng/mLもしくは約4〜約20ng/mLであるという条件で、疎水性AFコンジュゲートの効力が、親AFコンジュゲートの効力から約1.2log単位以下、典型的に約1.1log単位以下もしくは約1.0log単位以下もしくは約0.5log単位以下低減する場合、アウリスタチン薬物単位が親AF化合物の薬物単位であること以外は同一のLDCから十分に保持されている。
バイスタンダー活性の十分な保持について決定する文脈では、細胞膜を透過する遊離薬物の能力と相関することが示されている遊離アウリスタチン薬物のin vitro細胞傷害性は、アウリスタチン薬物が標的化される細胞への遊離薬物の容易な細胞内放出を可能にする切断可能なリンカーを介してコンジュゲートするという条件で、対応するリガンド薬物コンジュゲートの薬物関連バイスタンダー活性の代用物と考えられることが、当技術分野で認められている。その活性は、その疎水性アウリスタチンF化合物へのコンジュゲーションを有するコンジュゲートによって標的化されるべき細胞系に対して、非コンジュゲート疎水性アウリスタチンF化合物の効力を、非コンジュゲートモノメチルアウリスタチンE(MMAE)または非コンジュゲートアウリスタチンE(AE)の効力と比較することによって決定される。疎水性アウリスタチンF化合物のバイスタンダー活性は、疎水性アウリスタチンF化合物と同じ試験系において別個に試験する場合、MMAEのIC50値が約0.1nM〜約2nMの範囲であり、AEのIC50値が約0.1nM〜約2nMの範囲であるという条件で、非コンジュゲート疎水性AF化合物について得られたIC50値が、MMAEもしくはAE遊離薬物とほぼ同じであるか、または約1.2log単位以下、約1log単位以下もしくは約0.5log単位以下増大する場合に、MMAEまたはAEのバイスタンダー活性に対して十分に保持されているとみなされる。
あるいは、疎水性アウリスタチンF化合物へのコンジュゲーションを有するリガンド薬物コンジュゲート(LDC)、例えば抗体薬物コンジュゲート(ADC)についてバイスタンダー活性の十分な保持を決定する文脈では、その活性は、それ以外では本質的に同じ遺伝的背景を有し、類似の成長速度を有する抗原陽性および抗原陰性異常細胞系由来の細胞の、ほぼ等しい混合物を有する異常細胞系の共培養に対するその効力を、MMAEのLDCの効力と比較することによって決定される。前記比較は、その薬物単位の遊離薬物としての効率的な細胞内放出を可能にする切断可能なリンカーを含有するコンジュゲートで実施される。疎水性アウリスタチンFのLDCのバイスタンダー活性は、疎水性アウリスタチンF化合物と同じ試験系で別個に試験した場合、コンパレーターMMAEのLDCのIC50値が約5ng/mL〜約25ng/mLであるという条件で、疎水性AFのLDCについて得られたIC50値が、コンパレーターMMAEのLDCのIC50値と同じであるか、または約1.2log単位、約1log単位もしくは約0.5log単位増大する場合に、コンパレーターMMAEのLDCから十分に保持されているとみなされる。
さらに、疎水性アウリスタチンF化合物へのコンジュゲーションを有するリガンド薬物コンジュゲート、例えば抗体薬物コンジュゲート(ADC)についてバイスタンダー活性の十分な保持を決定する文脈では、その活性は、混和腫瘍異種移植モデルを使用して、その有効性をMMAEのLDCの有効性とin vivoで比較することによって決定される。それらのモデルでは、腫瘍は、本質的に同じ遺伝的背景を有し、類似の成長速度を有する抗原陽性および抗原陰性細胞系由来の細胞の、ほぼ等しい混合物を含有する。前記比較は、その薬物単位の遊離薬物としての効率的な放出を可能にする切断可能なリンカーを含有するコンジュゲートで実施される。疎水性アウリスタチンFのLDCのバイスタンダー活性は、著しい腫瘍退縮を引き起こす、典型的に約2mg/Kg〜約6mg/Kgの範囲の用量レベルが、コンパレーターMMAEのLDCの用量レベルと同じもしくはそれ未満であることが観察されるか、または約5倍以下、約3倍以下もしくは約2倍以下増大される場合に、コンパレーターMMAEのLDCのバイスタンダー活性に対して十分に保持されているとみなされる。
「無視できるほど」、「無視できる」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、HPLC分析による定量化レベル未満の不純物の量であり、光学的不純物が存在する場合、その不純物が混入する組成物の約0.5w/w%〜約0.1w/w%になる。あるいはそれらの用語は、文脈に応じて、測定値の間もしくはアウトカムの間に統計的に有意な差異が観察されないか、またはそれらの値を得るために使用される計測手段の実験誤差内であることを意味し得る。実験的に決定されたパラメーターの値における無視できる差異は、そのパラメーターによって特徴付けられた不純物が、無視できる量で存在することを暗示するものではない。
「主に含有する」、「主に有する」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、混合物の主要な構成成分を指す。混合物が2つの構成成分を有する場合には、主要な構成成分は、混合物の50重量%よりも多くなる。3つまたはそれよりも多い構成成分の混合物では、主な構成成分は、混合物に最大量で存在する構成成分であり、混合物の質量の大部分になってもならなくてもよい。
「電子求引基」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、それが誘導的にかつ/または共鳴を介して、そのどちらがより優勢であろうと(すなわち、官能基または原子は、共鳴を介して電子供与性であり得るが、全体的には誘導的に電子求引性であり得る)結合している原子から電子密度を求引し、アニオンまたは電子豊富部分を安定にする傾向がある、官能基または電気陰性原子を指す。電子求引効果は、典型的に、電子求引基(EWG)によって電子欠損にされた結合原子に結合している他の原子に、減衰形態ではあるが誘導的に伝達され、したがって、より離れた反応性中心の電子密度を低減する。
電子求引基(EWG)は、典型的に、−C(=O)、−CN、−NO2、−CX3、−X、−C(=O)OR’、−C(=O)NH2、−C(=O)N(R’)Rop、−C(=O)R’、−C(=O)X、−S(=O)2Rop、−S(=O)2OR’、−SO3H2、−S(=O)2NH2、−S(=O)2N(R’)Rop、−PO3H2、−P(=O)(OR’)(ORop)2、−NO、−NH2、−N(R’)(Rop)、−N(Rop)3 +、およびそれらの塩からなる群から選択され、Xは、−F、−Br、−Cl、または−Iであり、Ropは、出現するごとに独立に、必要に応じた置換基について以前に記載されている群分けから選択され、一部の態様では、C1〜C6アルキルおよびフェニルからなる群から独立に選択され、R’は、水素であり、Ropは、必要に応じた置換基について他所に記載されている通りの群分けから選択され、一部の態様では、C1〜C12アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C6アルキルまたはC1〜C4アルキルである。EWGはまた、その置換に応じてアリール(例えば、フェニル)またはヘテロアリールであってよく、ある特定の電子欠損ヘテロアリール基(例えば、ピリジン)であってよい。したがって一部の態様では、「電子求引基」はさらに、電子欠損のC5〜C24ヘテロアリールおよびC6〜C24アリールを包含し、後者は、電子求引性置換基で置換されている。より典型的には、電子求引基は、−C(=O)OH、−C(=O)OR’、−CN、−NO2、−NH3 +、−N(R’)H2 +、および−N(R’)3 +、−CX3、および−Xからなる群から独立に選択され、Xは、典型的に−Fおよび−Clからなる群から独立に選択されるハロゲンであり、各R’は、C1〜C12アルキル、典型的にC1〜C6アルキルから独立に選択される。必要に応じて置換されているアルキル部分は、その置換基に応じて電子求引基であってもよく、したがってこのような態様では、電子求引基についての用語によって包含され得る。
「電子供与基」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、それが誘導的にかつ/または共鳴を介して、そのどちらがより優勢であろうと(すなわち、官能基または原子は、誘導的に電子求引性であり得るが、全体的には共鳴を介して電子供与性であり得る)結合している原子の電子密度を増大し、カチオンまたは電子不足の系を安定にする傾向がある、官能基または電気陽性原子を指す。電子供与効果は、典型的に、電子供与基(EDG)によって電子を豊富にされた結合原子に結合している他の原子に共鳴を介して伝達され、したがって、より離れた反応性中心の電子密度を増大する。典型的に、電子供与基は、非プロトン化形態の−OH、−OR’および−NH2、−NHR’およびN(R’)2からなる群から選択され、各R’は、C1〜C12アルキル、典型的にC1〜C6アルキルから独立に選択される。C6〜C24アリール、C5〜C24ヘテロアリール、または不飽和C1〜C12アルキル部分は、その置換基に応じて電子供与基であってもよく、一部の態様では、このような部分は、電子供与基についての用語によって包含される。
「化合物」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、命名されているまたは構造によって表されている化学化合物自体、および明確に述べられていてもいなくても、文脈によってこのような塩形態が除外されるべきであることが明らかにされていない限り、その塩形態を指し、それらを包含する。化合物の塩には、双性イオン塩形態、ならびに有機対イオンまたは無機対イオンを有する酸付加および塩基付加塩形態、ならびに同じでも異なっていてもよい2個またはそれよりも多い対イオンを含む塩形態が含まれる。一部の態様では、塩形態は、化合物の薬学的に許容される塩形態である。「化合物」という用語はさらに、溶媒が化合物と非共有結合によって会合しているか、または化合物のカルボニル基が水和してgem−ジオールを形成する場合のように、化合物と共有結合によって可逆的に会合している、化合物の溶媒和物形態を包含する。溶媒和物形態には、化合物自体およびその塩形態の溶媒和物形態が含まれ、水和物を含めた半溶媒和物、一溶媒和物、二溶媒和物が含まれ、化合物が2個またはそれよりも多い溶媒分子と会合し得る場合、2個またはそれよりも多い溶媒分子は同じでも異なっていてもよい。ある場合には、本発明の化合物は、先の形態、例えば塩および溶媒和物の1つまたは複数への明示的な言及を含むが、それは化合物の任意の固体状態の形態を暗示するものではない。しかしこの言及は、単に強調するためのものであり、先に特定される通りの形態の任意の他の形態を除外すると解釈されるべきではない。さらに、化合物またはリガンド薬物コンジュゲート組成物の塩および/または溶媒和物形態に明示的に言及されない場合、その省略は、文脈によって塩および/または溶媒和物形態が除外されるべきであることが明らかにされていない限り、化合物またはコンジュゲートのこのような塩および/または溶媒和物形態を除外すると解釈されるべきではない。
「光学異性体」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、共に、反対の立体化学的立体配置において同一の原子接続性を有するが、1つまたは複数のキラル中心によって構造的に異なっている、参照化合物と比較した関連化合物を指す。
「部分」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、分子または化合物の特定のセグメント、断片、または官能基を意味する。化学的部分は、時として、分子、化合物または化学式に包埋または付加されている化学実体(すなわち、置換基または可変基)として示される。
文脈によって別段記述または暗示されない限り、所与の範囲の炭素原子によって本明細書に記載される任意の置換基または部分について、指定された範囲は、炭素原子の任意の個々の数が記載されていることを意味する。したがって、例えば「必要に応じて置換されているC1〜C4アルキル」または「必要に応じて置換されているC2〜C6アルケニル」への言及は、それぞれ具体的に、本明細書で定義されている通り必要に応じて置換されている1個、2個、3個もしくは4個の炭素アルキル部分が存在すること、または本明細書で定義されている通り必要に応じて置換されている2個、3個、4個、5個もしくは6個の炭素アルケニル部分が存在することを意味する。このようなすべての数値表示は、個々の炭素原子基のすべてを開示することを明確に意図し、したがって「必要に応じて置換されているC1〜C4アルキル」には、置換または非置換にかかわらず、それらの位置異性体のすべてを含めたメチル、エチル、3−炭素アルキル、および4−炭素アルキルが含まれる。したがって、アルキル部分が置換されている場合、数値表示は、非置換塩基部分を指し、その塩基部分の置換基に存在し得る、塩基部分に直接的に結合していない炭素原子を含むことを意図しない。本明細書で定義されている通り、所与の範囲の炭素原子によって特定されているエステル、カーボネート、カルバメート、およびウレアでは、指定された範囲は、それぞれの官能基のカルボニル炭素を含む。したがって、C1エステルは、ギ酸エステルを指し、C2エステルは、酢酸エステルを指す。
本明細書に記載される有機置換基、部分および基、ならびに他については本明細書に記載される任意の他の部分は、通常、不安定な部分が、本明細書に記載される使用の1つまたは複数にとって十分な化学的安定性を有する化合物を作成するために使用できる過渡種である場合を除き、このような不安定な部分を除外する。五価の炭素を有するものをもたらす、本明細書で提供される定義の操作による置換基、部分または基は、特に除外される。
「アルキル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、メチル、または炭素原子の1個が一価であり、炭素原子の1個もしくは複数が飽和しており(すなわち、1個または複数のsp3炭素から構成される)、直鎖状、第二級、第三級もしくは環式配置、すなわち直鎖、分枝鎖、環式配置もしくはいくつかのその組合せで共有結合によって一緒になって連結している連続的な炭素原子の集まりを指す。連続的な飽和炭素原子が環式配置にある場合、このようなアルキル部分は、一部の態様では、本明細書でさらに定義される通りカルボシクリルと呼ばれる。
アルキル部分または基をアルキル置換基と呼ぶ場合、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている別の有機部分に対するそのアルキル置換基は、メチル、またはアルキル置換基のsp3炭素を介してその構造もしくは部分に共有結合によって結合している連続的な炭素原子の鎖である。したがって、アルキル置換基は、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の飽和部分を含有し、シクロアルキル、または芳香族もしくは複素芳香族の部分もしくは基で必要に応じて置換されているか、あるいはアルケニルまたはアルキニル部分を含有して不飽和アルキルをもたらすこともできる。したがって、必要に応じて置換されているアルキル置換基は、1個、2個、3個またはそれよりも多い独立に選択された二重結合および/または三重結合をさらに含有することができ、一部の態様では、1個または複数の水素原子がアルケニルもしくはアルキニル部分またはいくつかのその組合せによって置き換えられている飽和アルキルから導出されて、不飽和アルキル置換基を画定し、本明細書に記載されている通り適切な必要に応じた置換基を含む他の部分によって置換されていてもよい。飽和アルキルにおける炭素原子の数は、変わってよく、典型的に1〜50個、1〜30個または1〜20個、より典型的には1〜8個または1〜6個であり、不飽和アルキル部分または基における炭素原子の数は、典型的に3〜50個、3〜30個または3〜20個の間で変わり、より典型的には3〜8個の間で変わる。
飽和アルキル部分は、飽和非環式炭素原子(すなわち、非環式sp3炭素)を含有し、sp2またはsp炭素原子を含有しないが、本明細書に記載されている通り必要に応じた置換基で置換されていてよく、ただしこのような置換は、必要に応じた置換基が本明細書に記載されている通り塩基性単位である場合を除き、そのように置換されている塩基性アルキル部分の同一性に影響を及ぼし得るので、必要に応じた置換基のsp3、sp2またはsp炭素原子を介してではない。文脈によって別段示されないか、または暗示されない限り、「アルキル」という用語は、炭化水素ラジカルが、共有結合によって連結している指示数の飽和炭素原子を有する、飽和非環式炭化水素ラジカルを示し、したがって「C1〜C6アルキル」、「C1〜C6アルキル」、C1〜6アルキルまたはC1〜6アルキルなどの用語は、1個の飽和炭素原子を含有する(すなわち、メチルである)または2個、3個、4個、5個もしくは6個の連続的な非環式飽和炭素原子を含有するアルキル部分または基を意味し、「C1〜C8アルキル」は、1個の飽和炭素原子または2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の連続的な飽和非環式炭素原子を有するアルキル部分または基を指す。典型的に、飽和アルキルは、メチル以外であればその連続的な炭素鎖にsp2またはsp炭素原子を含有しないC1〜C6またはC1〜C4アルキル部分であり、後者は時として低級アルキルと呼ばれ、一部の態様では、炭素原子の数が示されない場合、メチル以外であればその連続的な炭素鎖にsp2またはsp炭素原子を含有しない、1個の炭素原子〜8個の連続的な非環式sp3炭素原子を有する飽和C1〜C8アルキル部分を指す。他の態様では、メチルまたは炭素原子の連続的な鎖を包含するある範囲の炭素原子が、「アルキル」という用語を画定するが、それを飽和または不飽和として特定しない場合には、その用語は、特定の範囲を有する飽和アルキル、および範囲の下限が2個の炭素原子によって増大する不飽和アルキルを包含する。例えば、「C1〜C8アルキル」という用語は、限定なく、飽和C1〜C8アルキルおよびC3〜C8不飽和アルキルを包含する。
飽和アルキル置換基、部分または基が特定される場合、種には、親アルカンから水素原子を除去することにより導出されたものが含まれ(すなわち、アルキル部分は一価である)、一部の態様では、メチル、エチル、1−プロピル(n−プロピル)、2−プロピル(イソ−プロピル、−CH(CH3)2)、1−ブチル(n−ブチル)、2−メチル−1−プロピル(イソ−ブチル、−CH2CH(CH3)2)、2−ブチル(sec−ブチル、−CH(CH3)CH2CH3)、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル、−C(CH3)3)、アミル、イソアミル、sec−アミル、ならびに他の直鎖および分枝鎖アルキル部分が含まれる。
「アルキレン」は、用語が別の用語の一部として、それ自体で、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、炭素原子の1個または複数が飽和している(すなわち、1個または複数のsp3炭素から構成される)、1〜50個または1〜30個の範囲の記述される数の炭素原子、典型的に1〜20個または1〜12個の炭素原子、より典型的には1〜8個、1もしくは6個、または1〜4個の炭素原子の、親アルカンの同じまたは2個の異なる飽和(すなわち、sp3)炭素原子からの2個の水素原子の除去によって導出された2個のラジカル中心を有する(すなわち、二価である)、置換または非置換の飽和分枝鎖または直鎖炭化水素ジラジカルを指す。アルキレン部分は、一部の態様では、水素原子がその飽和炭素の別の炭素から、またはアルキルラジカルのラジカル炭素から除去されてジラジカルを形成する、本明細書に記載されている通りのアルキルラジカルである。他の態様では、アルキレン部分は、親アルキル部分の飽和炭素原子から水素原子を除去することによって導出された二価の部分であるか、またはそれによってさらに包含され、限定なく、メチレン(−CH2−)、1,2−エチレン(−CH2CH2−)、1,3−プロピレン(−CH2CH2CH2−)、1,4−ブチレン(−CH2CH2CH2CH2−)、および類似のジラジカルによって例示される。一部の態様では、アルキレンは、sp3炭素だけを含有する分枝鎖または直鎖炭化水素であり(すなわち、ラジカル炭素原子であるにもかかわらず、完全に飽和している)、これらおよび他の態様の一部では、非置換である。他の態様では、アルキレンは、1個もしくは複数の二重および/もしくは三重結合官能基、典型的に1個もしくは2個、より典型的には1個のこのような官能基の形態の不飽和内部部位を含有し、したがって、不飽和アルキレン部分の末端炭素は一価のsp3炭素原子であるか、またはアルキレンは、二重もしくは三重結合官能基の形態の1個の不飽和末端部位を含有し、したがって、不飽和アルキレン部分の一方の末端炭素は、一価のsp2もしくはsp炭素原子であり、他方の末端炭素原子は、一価のsp3炭素原子である。さらに他の態様では、アルキレンは、置換アルキレンが、非置換アルキレンに対して連続的な非芳香族炭素原子の数だけが異なっている場合、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニルおよび任意の他の部分を除き、必要に応じた置換基について本明細書で定義されている通り、飽和アルキレン部分の飽和炭素原子または不飽和アルキレン部分の飽和および/もしくは不飽和炭素原子において、1〜4個、典型的に1〜3個、または1個もしくは2個の置換基で置換されている。
「カルボシクリル」は、用語が別の用語の一部として、それ自体で、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、環系を形成する原子のそれぞれ(すなわち、骨格原子)が炭素原子であり、環式環系の各環におけるこれらの炭素原子の1個または複数が飽和している(すなわち、1個または複数のsp3炭素から構成される)、単環式、二環式または三環式環系のラジカルを指す。したがって、カルボシクリルは、飽和炭素の環式配置であるが、不飽和炭素原子を含有することもでき、したがってその炭素環式環は、飽和もしくは部分的に不飽和であってよく、または芳香族部分と縮合してよく、シクロアルキルおよび芳香環への縮合点は、カルボシクリル部分の隣接する不飽和炭素および芳香族部分の隣接する芳香族炭素への縮合点である。
別段特定されない限り、カルボシクリルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールなどについて記載される部分で置換されていてよく(すなわち、必要に応じて置換されている)、または別のシクロアルキル部分で置換されていてよい。シクロアルキル部分、基または置換基には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルまたはそれらの環式環系中に炭素原子だけを有する他の環式部分が含まれる。
カルボシクリルがマーカッシュ群(すなわち、置換基)として使用される場合、カルボシクリルは、マーカッシュ式またはそれが結び付いている別の有機部分に、カルボシクリル部分の炭素環式環系に関与する炭素を介して結合しており、ただし、炭素は芳香族炭素ではない。カルボシクリル置換基を含むアルケン部分の不飽和炭素が、マーカッシュ式またはそれが結び付いている別の有機部分に結合している場合、そのカルボシクリルは、時としてシクロアルケニル置換基と呼ばれる。カルボシクリル置換基における炭素原子の数は、その炭素環式環系の骨格原子の総数によって定義される。その数は変わってよく、別段特定されない限り、典型的に3〜50個、1〜30個または1〜20個、より典型的には3〜8個または3〜6個の範囲であり、例えばC3〜C8カルボシクリルは、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素環式炭素原子を含有するカルボシクリル置換基、部分または基を意味し、C3〜C6カルボシクリルは、3個、4個、5個または6個の炭素環式炭素原子を含有するカルボシクリル置換基、部分または基を意味する。一部の態様では、カルボシクリルは、親シクロアルカンまたはシクロアルケンの環原子からの1個の水素原子の除去によって導出される。代表的なC3〜C8カルボシクリルとして、それらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、1,4−シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、1,3−シクロヘプタジエニル、1,3,5−シクロヘプタトリエニル、シクロオクチル、およびシクロオクタジエニルが挙げられる。
したがって、カルボシクリル置換基、部分または基は、典型的に、その炭素環式環系中に3個、4個、5個、6個、7個、8個の炭素原子を有し、一部の態様では、エキソもしくはエンド環式二重結合、またはエンド環式三重結合、またはその両方の組合せを含有し、エンド環式二重もしくは三重結合、またはその両方の組合せは、4n+2個の電子の環式共役系を形成しない。二環式環系は、2個の炭素原子を共有することができ、三環式環系は、合計3個または4個の炭素原子を共有することができる。一部の態様では、カルボシクリルは、C3〜C8またはC3〜C6カルボシクリルであり、これは時として、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリールについて本明細書に記載される1個または複数、1〜4個、典型的に1〜3個、または1個もしくは2個の部分で、かつ/あるいは必要に応じた置換基について本明細書で定義されている通りの置換基を含めた他の部分で置換されており(すなわち、必要に応じて置換されている)、他の場合は非置換である。他の態様では、シクロアルキル部分、基または置換基は、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルからなる群から選択されるC3〜C6シクロアルキルであるか、またはその群を包含し、それらの環式環系中に8個以下の炭素原子を有する他の環式部分をさらに包含するC3〜C8シクロアルキルである。炭素原子の数が示されていない場合、カルボシクリル部分、基または置換基は、1個の炭素環式環系(carboxcylic ring system)中に3〜8個の炭素原子を有する。
「カルボシクロ(carbocyclo)」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、そのシクロアルキル環系の別の水素原子が除去されている(すなわち、二価である)、先に定義される通り必要に応じて置換されているカルボシクリルを指し、C3〜C50またはC3〜C30カルボシクロ、典型的にC3〜C20またはC3〜C12カルボシクロ、より典型的にはC3〜C8またはC3〜C6カルボシクロであり、一部の態様では、非置換であるか、または必要に応じて置換されているC3、C5もしくはC6カルボシクロである。炭素原子の数が示されていない場合、カルボシクロ部分、基または置換基は、その炭素環式環系(carboxcylic ring system)中に3〜8個の炭素原子を有する。
一部の態様では、その別の水素原子が、シクロアルキルの一価の炭素原子から除去されて、二価の炭素原子を提供し、それが、ある場合にはアルキル部分をその炭素環式炭素原子で中断するスピロ炭素原子になる。このような場合、スピロ炭素原子は、中断されたアルキル部分の炭素原子計数に、またアルキル部分に組み込まれるものとして示されるカルボシクロを有するカルボシクロ環系にも起因する。それらの態様では、カルボシクロ部分、基または置換基は、スピロ環系の形態のC3〜C6カルボシクロであり、シクロプロパ−1,1−ジイル、シクロブチル−1,1−ジイル、シクロペンタ−1,1−ジイルおよびシクロヘキサ−1,1−ジイルからなる群から選択されるか、またはその群を包含し、それらの環式環系中に8個以下の炭素原子を有する他の二価の環式部分によってさらに包含されるC3〜C8カルボシクロである。カルボシクロは、飽和もしくは不飽和カルボシクロであってよく、そして/または非置換であってもよく、もしくはカルボシクリル部分について記載される方式と同じ方式で非置換であってもよい。一部の態様では、カルボシクロ部分の一方または両方の一価の炭素原子は、不飽和である場合、同じまたは異なる二重結合官能基からのsp2炭素原子であり、他の態様では、両方の一価の炭素原子は、隣接するまたは隣接していないsp3炭素原子のいずれかである。
「アルケニル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、1個もしくは複数の二重結合官能基(例えば、−CH=CH−部分)、またはこのような官能基の1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個もしくはそれよりも多く、典型的に1個、2個もしくは3個、より典型的には1個のこのような官能基を含み、一部の態様では、フェニルなどのアリール部分もしくは基で置換されていてよく(すなわち、必要に応じて置換されている)、またはアルケニル置換基、部分もしくは基がビニル部分(例えば、−CH=CH2部分)でない限り、塩基部分の一部として連結した非芳香族の直鎖状、第二級、第三級もしくは環式炭素原子、すなわち直鎖、分枝鎖、環式もしくはその任意の組合せを含有することができる、有機部分、置換基または基を指す。複数の二重結合を有するアルケニル部分、基または置換基は、連続的に配置された二重結合(すなわち、1,3−ブタジエニル部分)、または1個もしくは複数の介在する飽和炭素原子と非連続的に配置された二重結合、またはその組合せを有することができ、ただし二重結合の環式連続配置は、4n+2個の電子の環式共役系を形成しない(すなわち、芳香族ではない)。
アルケニル部分、基または置換基は、少なくとも1個のsp2炭素原子(その炭素原子は、二価であり、それが結び付いている別の有機部分またはマーカッシュ構造に二重結合している)を含有するか、または互いにコンジュゲートしている少なくとも2個のsp2炭素原子を含有する(sp2炭素原子の1個は、一価であり、それが結び付いている別の有機部分またはマーカッシュ構造に単結合している)。典型的に、アルケニルがマーカッシュ群として使用される(すなわち、置換基である)場合、アルケニルは、マーカッシュ式またはそれが結び付いている別の有機部分に、アルケニル部分のアルケン官能基のsp2炭素を介して単結合している。一部の態様では、アルケニル部分が特定される場合、種は、そのsp2炭素原子が一価の、および親アルケン化合物のsp2炭素からの水素原子の除去によって導出された一価の部分である、1つまたは複数のエンド二重結合を有する、本明細書に記載される必要に応じて置換されているアルキルまたはカルボシクリルである基、部分または置換基のいずれかに対応するものを包含する。このような一価の部分は、限定なく、ビニル(−CH=CH2)、アリル、1−メチルビニル、ブテニル、イソ−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、シクロペンテニル、1−メチル−シクロペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、およびシクロヘキセニルによって例示される。一部の態様では、アルケニルという用語は、sp2炭素原子の1個が一価である少なくとも1個の二重結合官能基を含有する、それらおよび/または他の直鎖、環式および分枝鎖の、すべての炭素含有部分を包含する。
アルケニル部分における炭素原子の数は、アルケニル置換基としてそれを定義するアルケン官能基のsp2炭素原子の数、ならびにアルケニル部分が可変基である他の部分またはマーカッシュ構造の任意の炭素原子およびアルケニル部分に対する任意の必要に応じた置換基からの炭素原子を含まない、これらのsp2炭素のそれぞれに付加された連続的な非芳香族炭素原子の総数によって定義される。その数は、二重結合官能基がマーカッシュ構造に二重結合している場合(例えば、=CH2)、1〜50個もしくは1〜30個、典型的に1〜20個もしくは1〜12個、より典型的には1〜8個、1〜6個もしくは1〜4個の炭素原子の範囲であるか、または二重結合官能基がマーカッシュ構造に単結合している場合(例えば、−CH=CH2)、2〜50個、典型的に2〜30個、2〜20個もしくは2〜12個、より典型的には2〜8個、2〜6個もしくは2〜4個の炭素原子の範囲である。例えば、C2〜C8アルケニルまたはC2〜C8アルケニルは、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含有するアルケニル部分を意味し、少なくとも2個は、一価であるこれらの炭素原子の1個と互いに共役しているsp2炭素原子であり、C2〜C6アルケニルまたはC2〜C6アルケニルは、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を含有するアルケニル部分を意味し、少なくとも2個は、一価であるこれらの炭素原子の1個と互いに共役しているsp2炭素である。一部の態様では、アルケニル置換基または基は、一価であるこれらの炭素原子の1個と互いに共役しているsp2炭素を2個だけ有するC2〜C6またはC2〜C4アルケニル部分であり、他の態様では、そのアルケニル部分は、非置換であるか、または置換アルケニルが非置換アルケニルに対して連続的な非芳香族炭素原子の数だけが異なっている場合、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルケニル、アルキニルおよび任意の他の部分を除いた、必要に応じた置換基について本明細書で定義されている通りの置換基を含めた、1〜4個もしくはそれよりも多い、典型的に1〜3個、より典型的には1個もしくは2個の本明細書に開示される通りの独立に選択された部分で置換されており、置換は、もしあればアルケニル部分の連続的なsp2炭素およびsp3炭素原子のいずれかにおいてであり得る。典型的に、アルケニル置換基は、互いにコンジュゲートしているsp2炭素を2個だけ有するC2〜C6またはC2〜C4アルケニル部分である。炭素原子の数が示されていない場合、アルケニル部分は、2〜8個の炭素原子を有する。
「アルケニレン」は、用語が別の用語の一部として、それ自体で、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、記述される数の炭素原子のアルケニルについて以前に記載されている通り、1個または複数の二重結合部分を含み、アルケン官能基の同じもしくは2個の異なるsp2炭素原子からの2個の水素原子の除去、または親アルケンの2個の別々のアルケン官能基からの2個の水素原子の除去によって導出された2個のラジカル中心を有する、有機部分、置換基または基を指す。一部の態様では、アルケニレン部分は、アルケニルラジカルの二重結合官能基の同じもしくは異なるsp2炭素原子から、または異なる二重結合した部分由来のsp2炭素から水素原子が除去されてジラジカルを提供する、本明細書に記載されている通りのアルケニルラジカルのアルケニレン部分である。典型的に、アルケニレン部分は、−C=C−または−C=C−X1−C=C−の構造を含有するジラジカルを包含し、X1は、存在しないか、または本明細書で定義されている通り必要に応じて置換されている飽和アルキレンであり、典型的にC1〜C6アルキレンであり、より典型的には非置換である。アルケニレン部分における炭素原子の数は、アルケニレン部分としてそれを定義するそのアルケン官能基のsp2炭素原子の数、ならびにアルケニル部分が可変基として存在する他の部分またはマーカッシュ構造の任意の炭素原子を含まない、そのsp2炭素のそれぞれに付加された連続的な非芳香族炭素原子の総数によって定義される。その数は、別段特定されない限り、2〜50個または2〜30個、典型的に2〜20個または2〜12個、より典型的には2〜8個、2〜6個または2〜4個の炭素原子の範囲である。例えば、C2〜C8アルケニレンまたはC2〜C8アルケニレンは、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子(このうち少なくとも2個は、一方が二価であるかまたは両方が一価であるsp2炭素であり、互いに共役している)を含有するアルケニレン部分を意味し、C2〜C6アルケニレンまたはC2〜C6アルケニレンは、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子(このうち少なくとも2個は、一方が二価であるかまたは両方が一価であるsp2炭素(このうち少なくとも2個は、一方が二価であるかまたは両方が一価である)であり、互いに共役している)を含有するアルケニル部分を意味する。一部の態様では、アルケニレン部分は、互いに共役している2個のsp2炭素を有するC2〜C6またはC2〜C4アルケニレンであり、両方のsp2炭素原子は一価であり、一部の態様では、非置換である。炭素原子の数が示されていない場合、アルケニレン部分は、2〜8個の炭素原子を有し、非置換であるか、またはアルケニル部分について記載される方式と同じ方式で置換されている。
「アルキニル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、1個もしくは複数の三重結合官能基(例えば、−C≡C−部分)、またはこのような官能基の1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個もしくはそれよりも多く、典型的に1個、2個もしくは3個、より典型的には1個のこのような官能基を含み、一部の態様では、フェニルなどのアリール部分で、あるいはアルケニル部分によって、またはアルキニル置換基、部分もしくは基が−C≡CH)でない限り、連結した直鎖状、第二級、第三級または環式炭素原子、すなわち直鎖、分枝鎖、環式またはその任意の組合せによって置換されていてよい(すなわち、必要に応じて置換されている)、有機部分、置換基または基を指す。複数の三重結合を有するアルキニル部分、基または置換基は、連続的に配置された三重結合、または1つもしくは複数の介在する飽和もしくは不飽和の炭素原子と非連続的に配置された三重結合、またはその組合せを有することができ、ただし、三重結合の環式連続配置は、4n+2個の電子の環式共役系を形成しない(すなわち、芳香族ではない)。
アルキニル部分、基または置換基は、少なくとも2個のsp炭素原子を含有し、炭素原子は、互いに共役しており、sp炭素原子の一方は、それが結び付いている別の有機部分またはマーカッシュ構造に単結合している。アルキニルがマーカッシュ群として使用される(すなわち、置換基である)場合、アルキニルは、マーカッシュ式またはそれが結び付いている別の有機部分に、末端アルキン官能基の三重結合炭素(すなわち、sp炭素)を介して単結合している。一部の態様では、アルキニル部分、基または置換基が特定される場合、種は、1つまたは複数のエンド三重結合、および親アルキン化合物のsp炭素からの水素原子の除去によって導出された一価の部分を有する、本明細書に記載される必要に応じて置換されているアルキルまたはカルボシクリルである基、部分または置換基のいずれかを包含する。このような一価の部分は、限定なく、−C≡CH、および−C≡C−CH3、および−C≡C−Phによって例示される。
アルキニル置換基における炭素原子の数は、アルキニル置換基としてそれを定義するアルケン官能基のsp炭素原子の数、ならびにアルケニル部分が可変基である他の部分またはマーカッシュ構造の任意の炭素原子を含まない、これらのsp炭素のそれぞれに付加された連続的な非芳香族炭素原子の総数によって定義される。その数は、三重結合官能基がマーカッシュ構造に単結合している場合(例えば、−CH≡CH)、2〜50個、典型的に2〜30個、2〜20個、または2〜12個、より典型的には2〜8個、2〜6個、または2〜4個の炭素原子の範囲で変わり得る。例えば、C2〜C8アルキニルまたはC2〜C8アルキニルは、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含有するアルキニル部分を意味し、少なくとも2個は、互いに共役しているsp炭素原子であり、これらの炭素原子の一方は一価であり、C2〜C6アルキニルまたはC2〜C6アルキニルは、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を含有するアルキニル部分を意味し、少なくとも2個は、互いに共役しているsp炭素であり、これらの炭素原子の一方は一価である。一部の態様では、アルキニル置換基または基は、互いに共役している2個のsp炭素を有するC2〜C6またはC2〜C4アルキニル部分であり、これらの炭素原子の一方は一価であり、他の態様では、そのアルキニル部分は非置換である。炭素原子の数が示されていない場合、アルキニル部分、基または置換基は、2〜8個の炭素原子を有する。アルキニル部分は、一価のsp炭素における置換が許容されないことを除き、アルケニル部分について記載される方式と同じ方式で置換されていても、非置換であってもよい。
「アリール」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、そのそれぞれが必要に応じて独立に置換されている1個、2個、3個または4〜6個の芳香環を含むまたはそれからなる、典型的にそのそれぞれが必要に応じて独立に置換されている1〜3個の芳香環、より典型的には1個または2個の芳香環からなる、環ヘテロ原子を含まない芳香族または縮合芳香環系を有する有機部分、置換基または基を指し、環は、4n+2個の電子(ヒュッケル則)、典型的に6個、10個または14個の電子の環状共役系に関与する炭素原子だけから構成され、その一部は、ヘテロ原子との環外コンジュゲーションにさらに関与し得る(交差共役している、例えばキノン)。アリール置換基、部分または基は、典型的に、6個、8個、10個またはそれよりも多い、24個までの連続的な芳香族炭素原子によって形成されてC6〜C24アリールを含み、一部の態様では、C6〜C20またはC6〜C12アリールである。アリール置換基、部分または基は、必要に応じて置換されており、一部の態様では、非置換であるか、またはビアリールを形成するために、別のアリールもしくはヘテロアリール(hetereoaryl)および本明細書で定義されている通り必要に応じた他の置換基を含めた、本明細書に記載されるアルキル、アルケニル、アルキニルもしくは他の部分について本明細書で定義されている通りの、1個、2個、3個もしくはそれよりも多い、典型的に1個もしくは2個の独立に選択された置換基で置換されている。他の態様では、アリールは、C6〜C10アリール、例えばフェニルおよびナフタレニルおよびフェナントリルである。中性アリール部分における芳香族性は、偶数または電子を必要とするので、その部分についての所与の範囲は、奇数の芳香族炭素を有する種を包含しないことを理解されよう。アリールがマーカッシュ群(すなわち、置換基)として使用される場合、アリールは、マーカッシュ式またはそれが結び付いている別の有機部分に、アリール基の芳香族炭素を介して結合している。
「ヘテロシクリル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、骨格炭素原子のすべてではないが1個または複数が、炭素環式環系内でそれらが結合している水素原子と共に、限定なくN/NH、O、S、Se、B、SiおよびPを含めた、独立に選択されたヘテロ原子またはヘテロ原子部分(許容される場合必要に応じて置換されている)によって置き換えられているカルボシクリルを指し、2個またはそれよりも多い、典型的に2個のヘテロ原子またはヘテロ原子部分は、互いに隣接していても、同じ環系内の1個もしくは複数の炭素原子、典型的に1〜3個の炭素原子によって分離されていてもよい。それらのヘテロ原子またはヘテロ原子部分は、典型的に、N/NH、OおよびSである。ヘテロシクリルは、典型的に、一価の骨格炭素原子、または一価のヘテロ原子もしくはヘテロ原子部分を含有し、合計1〜10個、典型的に合計1〜5個、またはより典型的には合計1〜3個、または1個もしくは2個のヘテロ原子および/またはヘテロ原子部分を有し、ただし、ヘテロシクリルの複素環式環のいずれか1個における骨格原子のすべてが、ヘテロ原子および/またはヘテロ原子部分であるわけではなく(すなわち、環の1個における少なくとも1個の炭素原子が置き換えられている各環では、少なくとも1個の炭素原子は置き換えられない)、環の各ヘテロ原子またはヘテロ原子部分(許容される場合必要に応じて置換されている)は、N/NH、OおよびSからなる群から独立に選択され、ただし、いずれの1個の環も、2個の隣接するOまたはS原子を含有しない。例示的なヘテロシクリルおよびヘテロアリールは、集合的に複素環と呼ばれ、Paquette, Leo A.; "Principles of Modern HeterocyclicChemistry" (W. A. Benjamin, New York, 1968)、特にChapters 1、3、4、6、7、および9、"TheChemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs" (John Wiley& Sons, New York, 1950年から現在まで)、特にVolumes 13、14、16、19、および28、ならびにJ. Am. Chem.Soc. 1960, 82:5545-5473、特に5566-5573)によって提供されている。
ヘテロシクリルがマーカッシュ群(すなわち、置換基)として使用される場合、ヘテロシクリルの飽和または部分的に不飽和の複素環式環は、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の部分に、その複素環式環の炭素原子またはヘテロ原子を介して結合しており、このような結合は、その炭素またはヘテロ原子の不安定なまたは認められない形式的な酸化状態をもたらさない。その文脈におけるヘテロシクリルは、それをヘテロシクリルと定義する複素環式環系の複素環式環が非芳香族であるが、炭素環式、アリールまたはヘテロアリール環と縮合することができる、一価の部分であり、それには、フェニル−(すなわち、ベンゾ)縮合複素環式部分が含まれる。
ヘテロシクリルは、C3〜C50またはC3〜C30カルボシクリル、典型的にC3〜C20またはC3〜C12カルボシクリル、より典型的にはC3〜C8またはC3〜C6カルボシクリルであり、そのシクロアルキル環系のその炭素のすべてではないが1個、2個または3個またはそれよりも多く、典型的に1個、2個、3個または4個、より典型的には1個または2個は、その結合している水素と共に、N/NH、OおよびSからなる群から独立に選択されるヘテロ原子またはヘテロ原子部分(許容される場合必要に応じて置換されている)で置き換えられており、したがって、C3〜C50またはC3〜C30ヘテロシクリル、典型的にC3〜C20またはC3〜C12ヘテロシクリル、より典型的にはC3〜C6、またはC5〜C6ヘテロシクリルであり、ここで下付き文字は、ヘテロシクリルの複素環式環系の骨格原子(その炭素原子およびヘテロ原子を含む)の総数を示す。一部の態様では、ヘテロシクリルは、必要に応じて置換されている0〜2個のN、0〜2個のOもしくは0〜1個のS骨格ヘテロ原子、またはその一部の組合せを含有し、ただし前記ヘテロ原子の少なくとも1個は、ヘテロシクリルの複素環式環系中に存在する。ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和、ならびに/あるいは非置換または骨格炭素原子においてピロリジン−2−オンにおけるようにオキソ(=O)部分で、および/またはそれに限定されるものではないが−N(=O)、−S(=O)−もしくは−S(=O)2−で例示される通り酸化ヘテロ原子を含有するように、骨格ヘテロ原子において1個もしくは2個のオキソ部分で置換されていてよい。完全に飽和または部分的に不飽和のヘテロシクリルは、本明細書で定義されている通りの必要に応じた置換基、または2個、3個もしくはそれよりも多い、典型的に1個もしくは2個のこのような置換基の組合せを含めた、本明細書に記載されている通りのアルキル、(ヘテロ)アリール、(ヘテロ)アリールアルキル、アルケニル、アルキニルまたは他の部分で置換されていてよく、またはさらに置換されていてよい。ある特定の態様では、ヘテロシクリルは、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピペラジニルからなる群から選択される。
「ヘテロシクロ」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、光学的不純物が存在する場合その一価の炭素原子から水素原子が、異なる骨格原子から水素原子が(炭素原子または存在する場合窒素原子)、もしくは許容されかつ光学的不純物が存在する場合骨格窒素原子から電子が除去されるか、または光学的不純物が存在する場合既に一価ではない窒素環原子から電子が除去され、結合で置き換えられている(すなわち、二価である)、先に定義される通りのヘテロシクリル部分、基または置換基を指す。一部の態様では、置き換えられた第2の水素は、親ヘテロシクリルの一価の炭素原子の水素であり、したがってスピロ炭素原子を形成し、それによってある場合には、その炭素環式炭素原子を有するアルキル部分が中断され得る。このような場合、スピロ炭素原子は、中断されたアルキル部分の炭素原子計数、およびアルキル部分に組み込まれるものとして示されるヘテロシクロを有する複素環式環系の骨格原子計数に起因する。
「ヘテロアリール」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、アリールの芳香環系の芳香族炭素のすべてではないが1個または複数がヘテロ原子によって置き換えられている、本明細書で定義されている通りのアリール部分、基または置換基を指す。ヘテロアリールは、典型的に、ヘテロアリール環系の環に合計1〜4個の骨格ヘテロ原子を含有し、ただし、ヘテロアリールのいずれか1個の環系の骨格原子のすべてがヘテロ原子(許容される場合必要に応じて置換されている)であるわけではなく、0〜3個のN、1〜3個のNまたは0〜3個のN骨格ヘテロ原子、典型的に0〜1個のOおよび/または0〜1個のS骨格ヘテロ原子を有し、ただし、少なくとも1個の骨格ヘテロ原子が存在する。ヘテロアリールは、単環式、二環式または多環式であってよい。多環式ヘテロアリールは、典型的にC5〜C50またはC5〜C30ヘテロアリール、より典型的にはC5〜C20またはC5〜C12ヘテロアリールであり、二環式ヘテロアリールは、典型的にC5〜C10ヘテロアリールであり、単環式ヘテロアリールは、典型的にC5〜C6ヘテロアリールであり、ここで下付き文字は、ヘテロアリールの芳香環系の骨格原子(その炭素原子およびヘテロ原子を含む)の総数を示す。一部の態様では、ヘテロアリールは、芳香環の炭素原子の1個、2個、3個、4個もしくはそれよりも多く、典型的に1個、2個もしくは3個、およびそれらが結合している親二環式アリール部分の水素原子が、独立に選択されたヘテロ原子もしくはヘテロ原子部分によって置き換えられている二環式アリール部分であるか、または芳香環の炭素原子の1個、2個、3個もしくはそれよりも多く、典型的に1個もしくは2個、およびそれらが結合している親単環式アリール部分の水素原子が、独立に選択されたヘテロ原子もしくはヘテロ原子部分によって置き換えられている単環式アリール部分であり、N/NH、OおよびSを含めたヘテロ原子またはヘテロ原子部分は、許容される場合必要に応じて置換されており、ただし、親アリール部分のいずれか1つの芳香環系の骨格原子のすべてが、ヘテロ原子によって置き換えられているわけではなく、より典型的には酸素(−O−)、硫黄(−S−)、窒素(=N−)または−NR−によって置き換えられており、したがって、窒素ヘテロ原子は必要に応じて置換されており、Rは、−H、窒素保護基もしくは必要に応じて置換されているC1〜C20アルキルであるか、またはヘテロビアリールを形成するために、必要に応じて置換されているC6〜C24アリールもしくはC5〜C24ヘテロアリールである。他の態様では、芳香環の炭素原子およびそれらが結合している親アリール部分の水素原子の1個、2個または3個は、環式共役系を保持する方式で、別の有機部分で置換されている窒素によって置き換えられている。さらに他の態様では、親アリール部分の芳香族炭素ラジカルは、芳香族窒素ラジカルで置き換えられている。それらの態様のいずれかでは、窒素、硫黄または酸素ヘテロ原子は、環系中の隣接する原子とのパイ結合を介して、またはヘテロ原子上の孤立電子対を介して、共役系に関与する。さらに他の態様では、ヘテロアリールは、その環系が芳香族化されている、本明細書で定義されている通りのヘテロシクリルの構造を有する。
典型的に、ヘテロアリールは、一部の態様では、5員または6員の複素芳香環系を有する単環式である。5員のヘテロアリールは、その複素芳香環系内に1〜4個の芳香族炭素原子および必須の数の芳香族ヘテロ原子を含有する単環式C5ヘテロアリールである。6員のヘテロアリールは、その複素芳香環系内に1〜5個の芳香族炭素原子および必須の数の芳香族ヘテロ原子を含有する単環式C6ヘテロアリールである。5員であるヘテロアリールは、4個、3個、2個または1個の芳香族ヘテロ原子を有し、6員であるヘテロアリールには、5個、4個、3個、2個または1個の芳香族ヘテロ原子を有するヘテロアリールが含まれる。
5員のヘテロアリールとも呼ばれるC5ヘテロアリールは、骨格芳香族炭素から水素原子を、または骨格芳香族ヘテロ原子から、許容される場合、親芳香族複素環化合物から電子を除去することによって導出された一価の部分であり、一部の態様では、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールおよびテトラゾールからなる群から選択される。他の態様では、親複素環は、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール、およびトリアゾールからなる群から選択され、典型的にチアゾールまたはオキサゾール、より典型的にはチアゾールである。
6員であるC6ヘテロアリールは、芳香族炭素から水素原子を、または芳香族ヘテロ原子から、許容される場合、親芳香族複素環化合物から電子を除去することによって導出された一価の部分であり、ある特定の態様では、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、およびトリアジンからなる群から選択される。ヘテロアリールは、本明細書で定義されている通りの必要に応じた置換基、または2個、3個もしくはそれよりも多い、典型的に1個もしくは2個のこのような置換基の組合せを含めた、アルキル、(ヘテロ)アリールアルキル、アルケニルもしくはアルキニルで、またはビアリールを形成するために、アリールもしくは別のヘテロアリールで、または本明細書に記載されている通りの他の部分で置換されていても、さらに置換されていてもよい。
「アリールアルキル」または「ヘテロアリールアルキル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、アルキル部分に結合したアリールまたはヘテロアリール部分、すなわち(アリール)−アルキル−を指し、アルキルおよびアリール基は先に記載されている通りである。典型的に、アリールアルキルは、(C6〜C24アリール)−C1〜C12アルキル−部分、基または置換基であり、ヘテロアリールアルキルは、(C5〜C24ヘテロアリール)−C1〜C12アルキル−部分、基または置換基である。(ヘテロ)アリールアルキルがマーカッシュ群(すなわち、置換基)として使用される場合、(ヘテロ)アリールアルキルのアルキル部分は、それが結び付いているマーカッシュ式に、そのアルキル部分のsp3炭素を介して結合している。一部の態様では、アリールアルキルは、(C6〜C24アリール)−C1〜C12アルキル−または(C6〜C20アリール)−C1〜C20アルキル−、典型的に(C6〜C12アリール)−C1〜C12アルキル−または(C6〜C10アリール)−C1〜C12アルキル−、より典型的には(C6〜C10アリール)−C1〜C6アルキル−であり、限定なく、C6H5−CH2−、C6H5−CH(CH3)CH2−およびC6H5−CH2−CH(CH2CH2CH3)−によって例示される。(ヘテロ)アリールアルキルは、非置換であっても、(ヘテロ)アリールおよび/またはアルキル部分について記載される方式と同じ方式で置換されていてもよい。
「アリーレン」または「ヘテロアリーレン」は、用語がそれ自体でまたは別の用語の一部として本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、別の有機部分内に2個の共有結合的結合を形成する(すなわち、二価である)、芳香族または複素芳香族ジラジカル部分であり、結合は、オルト、メタ、またはパラ立体配置にある。アリーレンおよび一部のヘテロアリーレンには、本明細書で定義されている通り、親アリールまたはヘテロアリール部分、基または置換基からの水素原子の除去による二価の種が含まれる。他のヘテロアリーレンは、親芳香族複素環の2個の異なる芳香族炭素原子から水素原子が除去されてジラジカル種を形成しているか、または芳香族炭素原子もしくはヘテロ原子から水素原子が、および親芳香族複素環由来の異なる芳香族ヘテロ原子から別の水素原子もしくは電子が除去されてジラジカル種を形成している、二価の種であり、1個の芳香族炭素原子および1個の芳香族ヘテロ原子は一価であるか、または2個の異なる芳香族ヘテロ原子はそれぞれ一価である。ヘテロアリーレンにはさらに、ヘテロ原子および/またはヘテロ原子部分が、親アリーレンの芳香族炭素原子のすべてではないが1つまたは複数を置き換えているヘテロアリーレンが含まれる。
残りの位置において必要に応じて置換されている、非限定的な例示的なアリーレンは、以下の構造に示される通り、フェニル−1,2−エン、フェニル−1,3−エン、およびフェニル−1,4−エンである。
「ヘテロアルキル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、完全に飽和しているか、または1〜3の不飽和度を含有し、1〜12個の炭素原子、ならびにO、N/NH、SiおよびSからなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子、典型的に1〜5個のヘテロ原子、より典型的には1個または2個のヘテロ原子またはヘテロ原子部分(許容される場合必要に応じて置換されており、それぞれN−オキシド、スルホキシドもしくはスルホンに必要に応じて独立に酸化されている窒素および硫黄原子を含み、または窒素原子の1個もしくは複数は、必要に応じて置換されているかもしくは四級化されている)を有する、必要に応じて置換されている直鎖または分枝鎖の炭化水素を指す。ヘテロ原子またはヘテロ原子部分、O、N/NH、S、および/またはSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはヘテロアルキルの必要に応じて置換されているアルキル基の末端位置に置かれていてよい。一部の態様では、ヘテロアルキルは、完全に飽和しているか、または1の不飽和を含有し、1〜6個の炭素原子および1〜2個のヘテロ原子を含有し、他の態様では、そのヘテロアルキルは非置換である。非限定的な例は、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2−S(O)−CH3、−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−O−CH3、および−CH=CH−N(CH3)−CH3である。−CH2−NH−OCH3および−CH2−O−Si(CH3)3によって例示される通り、2個までのヘテロ原子が連続してもよい。
ヘテロアルキルは、典型的に、別段または文脈によって示されない限りヘテロ原子に結合している連続的な炭素原子を含めた、その連続的なヘテロ原子および非芳香族炭素原子の数によって示される。したがって、−CH2−CH2−O−CH3および−CH2−CH2−S(O)−CH3は、共にC4ヘテロアルキルであり、−CH2−CH=N−O−CH3および−CH=CH−N(CH3)2は、共にC5ヘテロアルキルである。ヘテロアルキルは、非置換であっても、そのヘテロ原子もしくはヘテロ原子構成成分において、本明細書で定義されている通りの必要に応じた置換基を含めた、本明細書に記載される部分のいずれか1つで置換されていても(すなわち、必要に応じて置換されている)、かつ/あるいはそのアルキル構成成分において、アルキル、(ヘテロ)アリールアルキル、アルケニル、アルキニルおよび別のヘテロアルキルを除く、本明細書で定義されている通りの必要に応じた置換基を含めた、本明細書に記載されている通りの1〜4個またはそれよりも多い、典型的に1〜3個または1個もしくは2個の独立に選択された部分で置換されていてもよい。
アミノアルキルは、本明細書で定義されている通り、その一価の炭素原子以外のアルキル部分の末端炭素原子が、アミノ基によって置き換えられている、例示的なヘテロアルキルである。アルキル部分の一価の炭素原子は、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分に対する置換基として示される場合、それが会合している別の有機部分に結合しており、典型的にアミノ基に結合している炭素原子とは異なる炭素原子である。アミノアルキルは、そのアルキレン部分の連続的な炭素原子の数を単に示すことによる番号付き表示によって、他のヘテロアルキルとは異なっている。
「ヘテロアルキレン」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、親ヘテロアルキルから水素原子またはヘテロ原子の電子を除去して、それらに限定されるものではないが−CH2−CH2−S−CH2−CH2−および−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−によって例示される二価の部分を提供することによってヘテロアルキルから導出された(先に論じられる通り)、二価の基を意味する。ヘテロアルキレンについて、そのヘテロ原子は、その必要に応じて置換されているアルキレン鎖の内部にあってよく、またはそのいずれかの末端もしくは両方の末端を占めることができ、したがってこれらのヘテロ原子の一方または両方は一価である。ヘテロアルキレンがリンカー単位の構成成分である場合、文脈によって示されないか、または暗示されない限り、リンカー単位内のその構成成分の両方の配向が許容される。ヘテロアルキレンは、典型的に、別段または文脈によって示されない限り、ヘテロ原子に結合している連続的な炭素原子を含めた、その連続的なヘテロ原子および非芳香族炭素原子の数によって示される。アルキレンジアミンは、アルキレンの2個の一価の炭素原子がアミノ基によって置き換えられており、したがって、それらの窒素原子のそれぞれが一価であり、そのアルキレン部分の連続的な炭素原子の数を単に示すことによる番号付き表示によって、他のヘテロアルキレンとは異なっている、ヘテロアルキレンである。
「アミノアルキル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、先に定義される通りのアルキレン部分の1個のラジカル末端に結合している塩基性窒素を有して、塩基性窒素がさらに置換されていない第一級アミンを提供するか、または塩基性アミンが、それぞれ先に記載されている通り、1個もしくは2個の独立に選択された必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル部分によってさらに置換されている第二級もしくは第三級アミンを提供する、部分、基または置換基を指す。一部の態様では、必要に応じて置換されているアルキルは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C6アルキルであり、他の態様では、そのアルキルは非置換である。さらに他の態様では、塩基性窒素は、その置換基と一緒になって、典型的に必要に応じて置換されている窒素含有C3〜C6またはC5〜C6ヘテロシクリルの形態の、骨格原子として塩基性窒素を含有する必要に応じて置換されているC3〜C8ヘテロシクリルを画定する。アミノアルキルがマーカッシュ構造の可変基として使用される場合、アミノアルキルのアルキレン部分は、それが結び付いているマーカッシュ式に、その部分のsp3炭素(一部の態様では、前述のアルキレンの他方のラジカル末端である)を介して結合している。アミノアルキルは、典型的に、そのアルキレン部分の連続的な炭素原子の数によって示される。したがって、C1アミノアルキルは、限定なく、−CH2NH2、−CH2NHCH3および−CH2N(CH3)2によって例示され、C2アミノアルキルは、限定なく、−CH2CH2NH2、−CH2CH2NHCH3および−CH2CH2N(CH3)2によって例示される。
「必要に応じて置換されているアルキル」、「必要に応じて置換されているアルケニル」、「必要に応じて置換されているアルキニル」、「必要に応じて置換されているアリールアルキル」、「必要に応じて置換されている複素環」、「必要に応じて置換されているアリール」、「必要に応じて置換されているヘテロアリール」、「必要に応じて置換されているヘテロアリールアルキル」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、その置換基、部分もしくは基の水素原子が、異なる部分もしくは基で必要に応じて置き換えられているか、またはそれらの置換基、部分もしくは基の1個を含む脂環式炭素鎖が、その鎖の炭素原子を異なる部分もしくは基で置き換えることによって中断されている、本明細書に定義または開示される通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、または他の置換基、部分もしくは基を指す。一部の態様では、アルケン官能基は、アルキル置換基の2個の連続的なsp3炭素原子を置き換え、ただし、アルキル部分のラジカル炭素は置き換えられておらず、したがって、必要に応じて置換されているアルキルは、不飽和アルキル置換基になる。
上述の置換基、部分、または基のいずれか1個における水素を置き換える必要に応じた置換基は、C6〜C24アリール、C5〜C24ヘテロアリール、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C6〜C24アリールオキシ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1〜C20フルオロアルコキシ、ならびに−NH2および一置換、二置換および三置換アミノ基を包含するアミノ、ならびにそれらの保護誘導体からなる群から独立に選択されるか、または−X、−OR’、−SR’、−NH2、−N(R’)(Rop)、−N(Rop)3、=NR’、−CX3、−CN、−NO2、−NR’C(=O)H、−NR’C(=O)Rop、−NR’C(=O)Rop、−C(=O)R’、−C(=O)NH2、−C(=O)N(R’)Rop、−S(=O)2Rop、−S(=O)2NH2、−S(=O)2N(R’)Rop、−S(=O)2NH2、−S(=O)2N(R’)Rop、−S(=O)2OR’、−S(=O)Rop、−OP(=O)(OR’)(ORop)、−OP(OH)3、−P(=O)(OR’)(ORop)、−PO3H2、−C(=O)R’、−C(=S)Rop、−CO2R’、−C(=S)ORop、−C(=O)SR’、−C(=S)SR’、−C(=S)NH2、−C(=S)N(R’)(Rop)2、−C(=NR’)NH2、−C(=NR’)N(R’)Rop、およびそれらの塩からなる群から選択され、各Xは、ハロゲン−F、−Cl、−Br、および−Iからなる群から独立に選択され、各Ropは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C6〜C24アリール、C3〜C24ヘテロシクリル、C5〜C24ヘテロアリール、保護基、およびプロドラッグ部分からなる群から独立に選択されるか、またはRopの2つは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、C3〜C24ヘテロシクリルを画定し、R’は、水素またはRopであり、Ropは、C1〜C20アルキル、C6〜C24アリール、C3〜C24ヘテロシクリル、C5〜C24ヘテロアリール、および保護基からなる群から選択される。
典型的に、存在する必要に応じた置換基は、−X、−OH、−ORop、−SH、−SRop、−NH2、−NH(Rop)、−NR’(Rop)2、−N(Rop)3、=NH、=NRop、−CX3、−CN、−NO2、−NR’C(=O)H、NR’C(=O)Rop、−CO2H、−C(=O)H、−C(=O)Rop、−C(=O)NH2、−C(=O)NR’Rop、−S(=O)2Rop、−S(=O)2NH2、−S(=O)2N(R’)Rop、−S(=O)2NH2、−S(=O)2N(R’)(Rop)、−S(=O)2OR’、−S(=O)Rop、−C(=S)Rop、−C(=S)NH2、−C(=S)N(R’)Rop、−C(=NR’)N(Rop)2、およびそれらの塩からなる群から選択され、各Xは、−Fおよび−Clからなる群から独立に選択され、Ropは、典型的に、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C3〜C10ヘテロシクリル、C5〜C10ヘテロアリール、および保護基からなる群から選択され、R’は、水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C3〜C10ヘテロシクリル、C5〜C10ヘテロアリール、およびRopから独立に選択される保護基から典型的になる群から独立に選択される。
より典型的には、存在する必要に応じた置換基は、−X、−Rop、−OH、−ORop、−NH2、−NH(Rop)、−N(Rop)2、−N(Rop)3、−CX3、−NO2、−NHC(=O)H、−NHC(=O)Rop、−C(=O)NH2、−C(=O)NHRop、−C(=O)N(Rop)2、−CO2H、−CO2Rop、−C(=O)H、−C(=O)Rop、−C(=O)NH2、−C(=O)NH(Rop)、−C(=O)N(Rop)2、−C(=NR’)NH2、−C(=NR’)NH(Rop)、−C(=NR’)N(Rop)2、保護基およびそれらの塩からなる群から選択され、各Xは、−Fであり、Ropは、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリールおよび保護基からなる群から独立に選択され、R’は、水素、C1〜C6アルキルおよびRopから独立に選択される保護基からなる群から選択される。
一部の態様では、存在する必要に応じたアルキル置換基は、−NH2、−NH(Rop)、−N(Rop)2、−N(Rop)3、−C(=NR’)NH2、−C(=NR’)NH(Rop)、および−C(=NR’)N(Rop)2からなる群から選択され、R’およびRopは、先のR’またはRop基のいずれか1個について定義される通りである。それらの態様の一部では、R’および/またはRop置換基は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、Ropが水素およびC1〜C6アルキルからなる群から独立に選択される場合のように、塩基性単位(BU)の塩基性官能基を提供する。アルキレン、カルボシクリル、カルボシクロ、アリール、アリーレン、ヘテロアルキル、ヘテロアルキレン、ヘテロシクリル、ヘテロシクロ、ヘテロアリール、およびヘテロアリーレン基は、先に記載されている通り、同様に置換されているか、またはあるとしてもこれらの部分の定義に記載される一部を除いて、非置換である。
「必要に応じて置換されているヘテロ原子」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、ヘテロ原子がさらに置換されていないか、またはそれらに限定されるものではないがアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアルキルおよび(ヘテロ)アリールアルキル−を含めた一価の炭素原子を有する前述の部分のいずれか1個によって置換されているか、または1個もしくは2個の=O置換基による置換によって酸化している、官能基または他の有機部分内のヘテロ原子またはヘテロ原子部分を指す。一部の態様では、「必要に応じて置換されているヘテロ原子」は、非置換であるか、または水素原子が前述の置換基のいずれか1個によって置き換えられている、芳香族または非芳香族−NH−部分を指す。他の態様では、「必要に応じて置換されているヘテロ原子」は、そのヘテロ原子の電子が、前述の置換基のいずれか1個によって置き換えられている、ヘテロアリールの芳香族骨格窒素原子を指す。それらの態様の両方を包含するために、窒素ヘテロ原子は、時として、必要に応じて置換されているN/NHと呼ばれる。
したがって一部の態様では、窒素原子の存在する必要に応じた置換基は、それらの用語が本明細書で定義されている通り必要に応じて置換されている、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C6〜C24アリール、C5〜C24ヘテロアリール、(C6〜C24アリール)−C1〜C20アルキル−、および(C5〜C24ヘテロアリール)−C1〜C20アルキル−からなる群から選択される。他の態様では、窒素原子の存在する必要に応じた置換基は、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C6〜C24アリール、C5〜C24ヘテロアリール、(C6〜C24アリール)−C1〜C12アルキル−、および(C5〜C24ヘテロアリール)−C1〜C12アルキル−からなる群から、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、(C6〜C10アリール)−C1〜C8アルキル−、および(C5〜C10ヘテロアリール)−C1〜C8アルキルからなる群から、またはC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、(C6〜C10アリール)−C1〜C6アルキル−、および(C5〜C10ヘテロアリール)−C1〜C6アルキル−からなる群から独立に選択される。
一部の態様では、存在する必要に応じた置換基は、アルキルまたはアルキレン部分、基または置換基の非環式炭素鎖における炭素原子を置き換えて、C3〜C12ヘテロアルキルまたはC3〜C12ヘテロアルキレンを提供し、その目的では、その置換基は典型的に、必要に応じて置換されている−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−、−NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、S(=O)2NH−、−NHS(=O)2−、−OC(=O)NH−、および−NHC(=O)Oからなる群から選択され、−NH−は、必要に応じた−NH−置換基について以前に記載されている群から独立に選択された置換基によるその水素原子の置換えによって必要に応じて置換されているヘテロ原子部分である。
「O−連結部分」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている別の有機部分に、O−連結部分の酸素原子を介して直接的に結合している部分、基または置換基を指す。一価のO−連結部分は、一価の酸素を介してその結合を有しており、典型的に、−OH、−OC(=O)Rb(アシルオキシ)であり、Rbは、−H、必要に応じて置換されている飽和C1〜C20アルキル、必要に応じて置換されている不飽和C1〜C20アルキル、必要に応じて置換されているC3〜C20シクロアルキルであり、シクロアルキル部分は、飽和もしくは部分的に不飽和の、必要に応じて置換されているC3〜C20アルケニル、必要に応じて置換されているC2〜C20アルキニル、必要に応じて置換されているC6〜C24アリール、必要に応じて置換されているC5〜C24ヘテロアリールもしくは必要に応じて置換されているC3〜C24ヘテロシクリルであるか、またはRbは、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル、必要に応じて置換されているC3〜C12シクロアルキル、必要に応じて置換されているC3〜C12アルケニルもしくは必要に応じて置換されているC2〜C12アルキニルであり、一価のO−連結部分はさらに、アルキル部分が飽和または不飽和である、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキルオキシ(すなわち、C1〜C12脂肪族エーテル)部分であるエーテル基を包含する。
他の態様では、一価のO−連結部分は、必要に応じて置換されているフェノキシ、必要に応じて置換されているC1〜C8アルキルオキシ(すなわち、C1〜C8脂肪族エーテル)および−OC(=O)Rbからなる群から選択される一価の部分であり、Rbは、典型的に飽和している、必要に応じて置換されているC1〜C8アルキルであるか、または必要に応じて置換されている不飽和C3〜C8アルキルである。
さらに他の態様では、O−連結部分は、−OH、および飽和C1〜C6アルキルエーテル、必要に応じて置換されている不飽和C3〜C6アルキルエーテル、および−OC(=O)Rbからなる群から選択される一価の部分であり、Rbは、典型的に、必要に応じて置換されているC1〜C6飽和アルキル、C3〜C6不飽和アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルもしくはフェニルであるか、または−OHおよび/もしくはフェニルを除くその群から選択されるか、またはRbは、必要に応じて置換されているC1〜C6飽和アルキル、C3〜C6不飽和アルキルおよびC2〜C6アルケニルからなる群から選択される一価の部分であり、あるいは一価のO−連結部分は、飽和C1〜C6アルキルエーテル、不飽和C3〜C6アルキルエーテル、および−OC(=O)Rbからなる群から選択される非置換O−連結置換基であり、Rbは、非置換の飽和C1〜C6アルキルまたは非置換の不飽和C3〜C6アルキルである。
他の例示的なO−連結置換基は、カルバメート、エーテルおよびカーボネート官能基の一価の酸素原子が、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分に結合している、本明細書で開示される通りのカルバメート、エーテルおよびカーボネートについての定義によって提供される。
他の態様では、炭素へのO−連結部分は、二価であり、=Oおよび−X−(CH2)n−Y−(XおよびYは、独立にSおよびOであり、下付き文字nは、2または3である)を包含して、XおよびYの両方が結合している炭素と共に、スピロ環系を形成する。
「ハロゲン」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指し、典型的に−Fまたは−Clである。
「保護基」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、それが連結している原子または官能基が、不要な反応に関与する能力を防止するか、または実質的に低減する部分を指す。原子または官能基のための典型的な保護基は、Greene (1999), "Protective groups in organic synthesis, 3rded.", Wiley Interscienceに示されている。酸素、硫黄および窒素などのヘテロ原子のための保護基は、時として、求電子性化合物とのそれらの不要な反応を最小限に抑えるか、または回避するために使用される。他の場合には、保護基は、保護されていないヘテロ原子の求核性および/または塩基性を低減または排除するために使用される。保護された酸素の非限定的な例は、−ORPRによって示され、RPRは、ヒドロキシルのための保護基であり、ヒドロキシルは、典型的にエステル(例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステルまたは安息香酸エステル)として保護されている。ヒドロキシルのための他の保護基は、有機金属試薬または他の高塩基性試薬の求核性とヒドロキシルの干渉を回避し、その目的では、ヒドロキシルは典型的に、限定なく、アルキルまたはヘテロシクリルエーテル(例えば、メチルまたはテトラヒドロピラニルエーテル)、アルコキシメチルエーテル(例えば、メトキシメチルまたはエトキシメチルエーテル)、必要に応じて置換されているアリールエーテルおよびシリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS/TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]−メチルシリル(SEM))を含めたエーテルとして保護されている。窒素保護基には、−NHRPRまたは−N(RPR)2におけるように第一級または第二級アミンのための保護基が含まれ、RPRの少なくとも1つは、窒素原子保護基であるか、または両方のRPRは、一緒になって窒素原子保護基を画定する。
保護基は、分子の他の場所で所望の化学的変換をもたらすのに必要な反応条件下で、望ましい場合には新しく形成された分子の精製中に、不要な副反応および/または保護基の早計な喪失を防止するか、または実質的に回避することができ、その新しく形成された分子の構造または立体化学的完全性に有害な影響を及ぼさない条件下で除去することができる場合、保護に適している。一部の態様では、適切な保護基は、保護官能基について以前に記載されている保護基である。他の態様では、適切な保護基は、ペプチドカップリング反応において使用される保護基である。例えば、非環式または環式塩基性単位の塩基性窒素原子のための適切な保護基は、酸に不安定なカルバメート保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル(BOC)である。
「エステル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、エステル官能基を画定する−C(=O)−O−の構造を有する置換基、部分または基を指し、その構造のカルボニル炭素原子は、別のヘテロ原子に直接的には接続されていないが、それが結び付いている有機部分の水素または別の炭素原子に直接的に接続されており、一価の酸素原子は、ラクトンを提供するために異なる炭素原子において同じ有機部分に、またはマーカッシュ構造に、または一部の他の有機部分に結合している。典型的に、エステルは、エステル官能基に加えて、1〜50個の炭素原子、典型的に1〜20個の炭素原子、またはより典型的には1〜8個、1〜6個もしくは1〜4個の炭素原子および0〜10個の独立に選択されたヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si、ただし通常はO、SおよびN)、典型的に0〜2個のヘテロ原子を含有する有機部分を含むか、またはそれからなり、有機部分は、有機部分−C(=O)−O−または−C(=O)−O−有機部分の式を有する構造を提供するように、−C(=O)−O−構造に結合している(すなわち、エステル官能基を介して)。
エステルが、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分の置換基または可変基である場合、その置換基は、構造または他の有機部分に、エステル官能基の一価の酸素原子を介して結合しており、したがって、時としてアシルオキシと呼ばれる一価のO−連結置換基である。このような場合、エステル官能基のカルボニル炭素に結合している有機部分は、典型的に、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C6〜C24アリール、C5〜C24ヘテロアリール、C3〜C24ヘテロシクリルであるか、または例えば1個、2個、3個もしくは4個の置換基を有するこれらのいずれか1つの置換誘導体であり、より典型的にはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C3〜C10ヘテロシクリル、または例えば1個、2個もしくは3個の置換基を有するこれらのいずれか1つの置換誘導体であるか、あるいはC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、またはフェニルまたは例えば1個もしくは2個の置換基を有するこれらのいずれか1つの置換誘導体であり、それぞれ独立に選択された置換基は、必要に応じたアルキル置換基について本明細書で定義されている通りであるか、または非置換C1〜C6アルキルもしくは非置換C2〜C6アルケニルである。
例示的なエステルは、例として限定なく、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、イソプロピオン酸エステル、イソ酪酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、イソ吉草酸エステル、カプロン酸エステル、イソカプロン酸エステル、ヘキサン酸エステル、ヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、フェニル酢酸エステルおよび安息香酸エステルであるか、または−OC(=O)Rbの構造を有し、Rbは、アシルオキシO−連結置換基について定義される通りであり、典型的に、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、2−メチル−プロパ−1−イル、2,2−ジメチル−プロパ−1−イル、プロパ−2−エン−1−イル、およびビニルからなる群から選択される。
「エーテル」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、カルボニル部分に結合していない1個、2個、3個、4個またはそれよりも多い、典型的に1個または2個の−O−(すなわち、オキシ)部分を含む有機部分、基または置換基を指し、2個の−O−部分は、互いに直接的に隣接(すなわち、直接的に結合)していない。典型的に、エーテルは、−O−有機部分の式を含有し、有機部分は、エステル官能基に結合している有機部分について記載されている通りであるか、または必要に応じて置換されているアルキル基について本明細書に記載されている通りである。エーテルが、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分の置換基または可変基として列挙される場合、エーテル官能基の酸素は、それが結び付いているマーカッシュ式に結合しており、時として、例示的なO−連結置換基である「アルコキシ」基と指定される。一部の態様では、エーテルO−連結置換基は、1個、2個、3個または4個、典型的に1個、2個または3個の置換基で必要に応じて置換されているC1〜C20アルコキシまたはC1〜C12アルコキシであり、他の態様では、1個または2個の置換基で必要に応じて置換されているC1〜C8アルコキシまたはC1〜C6アルコキシであり、それぞれ独立に選択された置換基は、必要に応じたアルキル置換基について本明細書で定義されている通りであり、さらに他の態様では、エーテルO−連結置換基は、非置換の飽和または不飽和C1〜C4アルコキシ、例として限定なく、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ−プロポキシ、ブトキシおよびアリルオキシ(すなわち、−OCH2CH=CH2)などである。
「アミド」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、R−C(=O)N(Rc)−または−C(=O)N(Rc)2の構造(これに対する他のヘテロ原子が、カルボニル炭素に直接的に結合することはない)を有する、必要に応じて置換されている官能基を有する部分を指し、各Rcは、独立に、水素、保護基または独立に選択された有機部分であり、Rは、水素または有機部分であり、Rcから独立に選択される有機部分は、エステル官能基に結合している有機部分について本明細書に記載されている通りであるか、または必要に応じて置換されているアルキル基について本明細書に記載されている通りである。アミドが、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分の置換基または可変基として列挙される場合、アミド官能基のアミド窒素原子またはカルボニル炭素原子は、その構造または他の有機部分に結合している。アミドは、典型的に、酸塩化物などの酸ハロゲン化物を、第一級または第二級アミンを含有する分子と縮合させることによって調製される。あるいは、一部の態様ではカルボン酸含有分子の活性化エステルを介して進行する、当技術分野で周知のペプチド合成のアミドカップリング反応が使用される。ペプチドカップリング方法を介するアミド結合の例示的な調製は、Benoiton (2006) "Chemistry of peptide synthesis", CRCPress;Bodansky (1988) "Peptide synthesis: A practical textbook"Springer-Verlag;Frinkin, M. et al. "Peptide Synthesis" Ann. Rev.Biochem. (1974) 43: 419-443に提供されている。活性化カルボン酸の調製に使用される試薬は、Han, et al."Recent development of peptide coupling agents in organic synthesis"Tet. (2004) 60: 2447-2476に提供されている。
したがって一部の態様では、アミドは、カップリング剤の存在下でカルボン酸をアミンと反応させることによって調製される。本明細書で使用される場合、「カップリング剤の存在下」は、カルボン酸をカップリング剤と接触させ、それによって酸を、活性化エステルまたは混合無水物などのその活性化誘導体に変換し(得られた酸の活性化誘導体を単離するか、または単離しない)、その後または同時に、得られた活性化誘導体をアミンと接触させることを含む。ある場合には、活性化誘導体はin situで調製される。他の場合には、活性化誘導体は、任意の望ましくない不純物を除去するために、単離することができる。
「カーボネート」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、カーボネート官能基を画定する構造−O−C(=O)−O−を有する官能基を含有する置換基、部分または基を意味する。典型的に、カーボネート基は、本明細書で使用される場合、−O−C(=O)−O−構造に結合している有機部分から構成され、有機部分は、エステル官能基に結合している有機部分、例えば有機部分−O−C(=O)−O−について本明細書に記載されている通りである。カーボネートが、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分の置換基または可変基として列挙される場合、カーボネート官能基の一価の酸素原子の一方は、その構造または有機部分に結合しており、他方は、エステル官能基に結合している有機部分について以前に記載されている通り、別の有機部分の炭素原子に結合しているか、または必要に応じて置換されているアルキル基について本明細書に記載されている通りである。このような場合、カーボネートは、例示的なO−連結置換基である。
「カルバメート」は、用語がそれ自体でまたは別の用語と組み合わせて本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、−O−C(=O)N(Rc)−または−O−C(=O)N(Rc)2、または−O−C(=O)NH(必要に応じて置換されているアルキル)−または−O−C(=O)N(必要に応じて置換されているアルキル)2によって表される、必要に応じて置換されているカルバメート官能基構造を含有する置換基、部分または基を意味し、独立に選択された必要に応じて置換されているアルキルは、例示的なカルバメート官能基置換基であり、典型的に、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキルまたはC1〜C8アルキル、より典型的には必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルまたはC1〜C4アルキルであり、各Rcは独立に選択され、独立に選択されたRcは、水素、保護基または有機部分であり、有機部分は、エステル官能基に結合している有機部分について本明細書に記載されている通りであるか、または必要に応じて置換されているアルキル基について本明細書に記載されている通りである。典型的に、カルバメート基はさらに、Rcから独立に選択される有機部分から構成され、有機部分は、エステル官能基に結合している有機部分について本明細書に記載されている通り、−O−C(=O)−N(Rc)−構造を介して結合しており、得られる構造は、有機部分−O−C(=O)−N(Rc)−または−O−C(=O)−N(Rc)−有機部分の式を有する。カルバメートが、マーカッシュ構造またはそれが結び付いている他の有機部分の置換基または可変基として列挙される場合、カルバメート官能基の一価の酸素(O−連結)または窒素(N−連結)は、それが結び付いているマーカッシュ式に結合している。カルバメート置換基の連結は、明確に記述されるか(N−またはO−連結)、またはこの置換基が言及される文脈において黙示的であるかのいずれかである。本明細書に記載されるO−連結カルバメートは、例示的な一価のO−連結置換基である。
「リガンド薬物コンジュゲート」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、標的化剤を組み込むかまたはそれに対応するリガンド単位(L)、およびアウリスタチン遊離薬物を組み込むかまたはその構造に対応するアウリスタチン薬物単位(D)から構成された構築物を指し、LおよびDは、リンカー単位(LU)を介して互いに結合しており、リガンド薬物コンジュゲートは、標的化される細胞の標的化される部分に選択的に結合することができる。リガンド薬物コンジュゲート(LDC)という用語は、一態様では、各リガンド単位にコンジュゲートしているアウリスタチン薬物単位の数、および/またはアウリスタチン薬物単位がコンジュゲートしているリガンド単位上の位置が同じであるか、またはそれによってある程度異なっている複数(すなわち、組成物)の個々のコンジュゲート化合物を指す。一部の態様では、用語は、本質的に同じリガンド単位、ならびに同じアウリスタチン薬物単位およびリンカー単位を有し、一部の態様では、各抗体残基に結合しているアウリスタチン薬物リンカー部分の負荷および/または分布が可変的である(例えば、複数のこのような化合物における任意の2つのリガンド薬物コンジュゲート化合物のアウリスタチン薬物単位の数は同じであるが、リガンド単位へのそれらの結合部位の位置が異なるような場合)、コンジュゲート化合物の集まり(すなわち、集団または複数)を指す。それらの場合、リガンド薬物コンジュゲートは、コンジュゲート化合物の平均的アウリスタチン薬物負荷によって説明される。本発明の文脈では、アウリスタチン薬物単位は、疎水的に修飾されたアウリスタチンFまたはアウリスタチンF型化合物を組み込むか、またはそれに対応し、時として集合的に疎水性アウリスタチンF薬物単位と呼ばれる。
リガンド薬物コンジュゲート組成物におけるリガンド単位当たりのアウリスタチン薬物単位の平均数は、リガンド薬物コンジュゲート化合物の集団についての平均的数であり、一部の態様では、リガンド単位に対するコンジュゲートしたアウリスタチン薬物単位の数によっておよび/またはそれらの位置によって主に異なる、これらの化合物の分布である。
本発明のLDCは、典型的に、式1:
L−[LU−(D’)]p (1)
の構造
または一部の態様では薬学的に許容される塩であるその塩[式中、Lは、リガンド単位、特に抗体リガンド単位であり、LUは、リンカー単位であり、下付き文字pは、1〜24の範囲の数であり、D’は、1〜4個のアウリスタチン薬物単位を表し、そのそれぞれは、そのC末端構成成分を介して、特にそのカルボン酸官能基を介してコンジュゲートしている疎水的に修飾されたアウリスタチンFまたはアウリスタチンF型遊離薬物の薬物単位であり、これは時として集合的に疎水性AF薬物単位と呼ばれ、抗体リガンド単位は、後の遊離薬物の放出のために、標的化される細胞の抗原に特異的かつ選択的に結合することができ、標的化される抗原は、一態様では、抗体リガンド単位によって選択的に認識されたがん細胞抗原であり、内部移行後に遊離薬物の細胞内放出を開始するために、前記結合の際に前記がん細胞に内部移行することができ、組成物のリガンド薬物コンジュゲート化合物の各薬物リンカー部分は、式1Aの構造
または一部の態様では薬学的に許容される塩であるその塩を有し、各薬物リンカー部分のDは、疎水性アウリスタチン薬物であり、波線は、Lへの共有結合性結合を示し、LBは、抗体共有結合性結合部分であり、Aは、第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字aは、0または1であり、それぞれAの存在の非存在を示し、Bは、必要に応じた分岐単位であり、下付き文字bは、0または1であり、それぞれBの存在の非存在を示し、LOは、必要に応じた第2のリンカー部分であり、Dは、修飾AF薬物単位であり、下付き文字qは、1〜4の範囲の整数であり、
リガンド薬物コンジュゲート化合物は、下付き文字pが下付き文字p’によって置き換えられており、下付き文字p’が1〜24の範囲の整数である、式1の構造を有する]によって表される。
「リガンド単位」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、その標的化される同族部分に選択的に結合することができ、標的化剤を組み込むか、またはその構造に対応する、リガンド薬物コンジュゲート組成物または化合物の標的化部分を指す。リガンド単位(L)には、限定なく、受容体リガンド、細胞表面抗原に対する抗体、および輸送体基質からの単位が含まれる。一部の態様では、リガンド薬物コンジュゲート組成物のコンジュゲート化合物によって結合される受容体、抗原または輸送体は、忍容性の所望の改善をもたらすか、または非コンジュゲート形態での薬物の投与と関連する1つもしくは複数の有害事象の潜在的な発生もしくは重症度を低減するように、正常細胞とは対照的に、異常細胞上により豊富に存在する。他の態様では、組成物のリガンド薬物コンジュゲート化合物によって結合される受容体、抗原または輸送体は、近くの異常細胞を遊離薬物に選択的に曝露するように、異常細胞部位から遠くにある正常細胞とは対照的に、異常細胞の近傍の正常細胞上により豊富に存在する。抗体リガンド単位を含めたリガンド単位の様々な態様は、本発明の実施形態によってさらに記載される。
「標的化剤」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、標的化される部分に選択的に結合することができ、リガンド単位としてリガンド薬物コンジュゲートに組み込まれる場合、その能力を実質的に保持している薬剤を指す。したがって、リガンド薬物コンジュゲートのリガンド単位は、標的化剤の構造に対応し、したがってリガンド単位は、コンジュゲートの標的化部分である。一部の態様では、標的化剤は、異常細胞に特徴的であるもしくは正常細胞と比較してより多いコピー数で存在する到達可能な抗原に、選択的かつ特異的に結合する抗体もしくはその断片であるか、または遊離薬物の投与と比較して改善された忍容性を達成する程度までこれらの細胞が見出される周囲環境に特有の、到達可能な抗原である。他の態様では、標的化剤は、異常細胞に特徴的なもしくは異常細胞上のより豊富な到達可能な受容体に、または異常細胞の周囲環境に独特の名目上の正常細胞上の到達可能な受容体に選択的に結合する受容体リガンドである。典型的に、標的化剤は、異常哺乳動物細胞の標的化される部分、より典型的には異常ヒト細胞の標的化される部分に選択的に結合する、本明細書で定義されている通りの抗体である。
「標的化される部分」は、本明細書で定義されている通り、標的化剤、または標的化剤に対応するか、もしくはそれを組み込むそのリガンド単位であるリガンド薬物コンジュゲートの標的化部分によって、特異的に認識される部分である。一部の態様では、標的化される部分は、異常細胞の上、その内またはその近傍に存在し、典型的に、遊離薬物の投与に対して改善された忍容性を提供するか、またはその投与からの1つもしくは複数の有害事象の潜在可能性を低減するように、正常細胞または異常細胞部位から遠くにある正常細胞の環境と比較して、これらの細胞上により豊富にまたはより多いコピー数で存在する。一部の態様では、標的化される部分は、抗体薬物コンジュゲート組成物またはその化合物に抗体リガンド単位として組み込まれるか、またはそれに対応する例示的な標的化剤である抗体によって選択的に結合される、到達可能な抗原である。他の態様では、標的化部分は、細胞外で到達可能な細胞膜受容体に対するリガンドの標的化部分であり、細胞膜受容体は、受容体リガンドを組み込むかもしくはその構造に対応するリガンド薬物コンジュゲートもしくはその化合物のリガンド単位によって提供された同族標的化部分の結合の際に内部移行することができるか、または細胞表面受容体の結合後にリガンド薬物コンジュゲート化合物を受動的もしくは促進的に輸送することができる。一部の態様では、標的化される部分は、異常哺乳動物細胞上、またはこのような異常細胞の環境に特徴的な哺乳動物細胞上に存在する。一部の態様では、標的化される部分は、異常哺乳動物細胞の抗原、より典型的には異常ヒト細胞の標的化される部分である。
「標的化される細胞」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、異常細胞の増殖または他の不要な活性を阻害するために、リガンド薬物コンジュゲートが相互作用するように設計されている、意図された細胞である。一部の態様では、標的化される細胞は、過剰増殖細胞または過剰活性化免疫細胞であり、それらは例示的な異常細胞である。典型的に、それらの異常細胞は、哺乳動物細胞、より典型的にはヒト細胞である。他の態様では、標的化される細胞は、異常細胞の近傍内に存在し、したがって、近くの細胞に対するリガンド薬物コンジュゲートの作用は、異常細胞に対して意図された効果を有する。例えば、近くの細胞は、腫瘍の異常血管系に特徴的な上皮細胞であり得る。リガンド薬物コンジュゲート組成物またはその化合物によってそれらの血管細胞を標的化することは、これらの細胞に対して細胞傷害性または細胞増殖抑制性効果のいずれかを有することになり、これは結果として腫瘍の近くの異常細胞への栄養送達を阻害すると考えられる。このような阻害は、異常細胞に対して細胞傷害性または細胞増殖抑制性効果を間接的に有し、これらの細胞の近傍でそのアウリスタチン薬物ペイロード、例えば疎水性アウリスタチンF化合物を放出することによって、近くの異常細胞に対して直接的な細胞傷害性または細胞増殖抑制性効果を有することもできる。
「抗原」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、非コンジュゲート抗体もしくはその抗原結合性断片によって、または非コンジュゲート抗体を組み込むかもしくはその構造に対応する抗体リガンド単位から構成される抗体薬物コンジュゲート化合物に、特異的に結合することができる部分である。一部の態様では、抗原は、異常細胞部位から遠くにある正常細胞と比較して、異常細胞によって優先的に呈示される、細胞外で到達可能な細胞表面タンパク質、糖タンパク質、または炭水化物である。ある場合には、抗原を呈示する異常細胞は、過剰増殖細胞であり、それには哺乳動物のがん細胞が含まれる。他の場合には、抗原を呈示する異常細胞は、哺乳動物の過剰活性化免疫細胞である。他の態様では、疎水性アウリスタチンF薬物単位を含めたアウリスタチン薬物単位を有する抗体薬物コンジュゲート化合物の抗体リガンド単位によって特異的に結合される抗原は、過剰増殖細胞または過剰活性化免疫細胞の非存在下で正常細胞が典型的に経験する環境とは対照的に、哺乳動物におけるこのような異常細胞の特有の環境に存在する。さらに他の態様では、細胞表面抗原は、アウリスタチンF薬物単位および疎水性アウリスタチンF薬物単位を含めたアウリスタチン薬物単位を有する抗体薬物コンジュゲート組成物のコンジュゲート化合物によって選択的に結合されると、内部移行することができる。内部移行後、組成物の抗体薬物コンジュゲート化合物のリンカー単位の細胞内処理によって、そのアウリスタチン薬物単位が遊離アウリスタチン薬物として放出され、それには、疎水性アウリスタチンF薬物単位の疎水性アウリスタチン化合物としての放出が含まれる。抗体薬物コンジュゲートが到達可能な細胞表面である過剰増殖細胞と会合する抗原には、例として限定なく、CD19、CD70、CD30およびCD33が含まれる。
「抗体薬物コンジュゲート」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、式1のリガンド薬物コンジュゲートのサブセットであり、したがって、抗体またはその抗原結合性断片を組み込むかまたはそれに対応する抗体リガンド単位(L)、およびアウリスタチン遊離薬物を組み込むかまたはその構造に対応するアウリスタチン薬物単位(D)から構成された構築物を指し、LおよびDは、リンカー単位(LU)を介して互いに結合しており、抗体薬物コンジュゲートは、一部の態様では異常細胞、例えばがん細胞の抗原である標的化される細胞の標的化される抗原に、その標的化抗体リガンド単位を介して選択的に結合することができる。
抗体薬物コンジュゲート(ADC)という用語は、一態様では、各抗体リガンド単位にコンジュゲートしているアウリスタチン薬物単位の数、および/またはアウリスタチン薬物単位がコンジュゲートしている抗体リガンド単位上の位置が同じであるか、またはそれによってある程度異なっている複数(すなわち、組成物)の個々のコンジュゲート化合物を指す。一部の態様では、用語は、細胞培養からの抗体の生成中に生じる、本明細書に記載されている通りの突然変異アミノ酸変動および様々なグリコシル化パターンを可能にする同じ抗体リガンド単位、ならびに同じアウリスタチン薬物単位およびリンカー単位を有し、一部の態様では、各抗体残基に結合しているアウリスタチン薬物リンカー部分の負荷および/または分布が可変的である(例えば、複数のこのような化合物における任意の2つの抗体薬物コンジュゲート化合物のアウリスタチン薬物単位の数は同じであるが、標的化抗体リガンド単位へのそれらの結合部位の位置が異なるような場合)、コンジュゲート化合物の集まり(すなわち、集団または複数)を指す。それらの場合、抗体薬物コンジュゲートは、コンジュゲート化合物の平均的薬物負荷によって説明される。本発明の文脈では、抗体薬物コンジュゲートのアウリスタチン薬物単位は、疎水的に修飾されたアウリスタチンFまたはアウリスタチンF型化合物を組み込むか、またはそれに対応し、時として集合的にアウリスタチンF化合物と呼ばれる。
抗体薬物コンジュゲート組成物において無傷薬物リンカー部分を有する、抗体リガンド単位またはその抗原結合性断片当たりのアウリスタチン薬物単位の平均数は、抗体薬物コンジュゲート化合物の集団についての平均的数であり、一部の態様では、抗体リガンド単位に対するコンジュゲートしたアウリスタチン薬物単位の数によっておよび/またはそれらの位置によって主に異なる、これらの化合物の分布である。その文脈では、pは、約2〜約24または約2〜約20の範囲の数であり、典型的に約2、約4、または約10または約8である。他の文脈では、pは、抗体薬物コンジュゲート化合物の集団内の抗体薬物コンジュゲートの単一抗体リガンド単位に共有結合によって結合しているアウリスタチン薬物単位の数を表し、その集団の化合物は、一部の態様では、薬物単位の数および/または位置によって主に異なっている。その文脈では、pは、p’と指定され、1〜24または1〜20、典型的に1〜12または1〜10、およびより典型的には1〜8の範囲の整数である。他の態様では、抗体標的化剤の利用可能な反応性官能基の本質的にすべてが、アウリスタチン薬物リンカー部分への共有結合的結合を形成して、最大数の薬物リンカー部分に結合している抗体リガンド単位を提供し、したがって、抗体薬物コンジュゲート組成物のp値は、組成物の抗体薬物コンジュゲート化合物のそれぞれに対するp’値のそれぞれと同じか、またはほぼ同じであり、したがって、より低いp’値を有する抗体薬物コンジュゲート化合物は、仮にあるとしても、適切なクロマトグラフィー方法、例えば電気泳動法、HIC、逆相HPLCまたはサイズ排除クロマトグラフィーを使用して検出される通り、ごく少量存在する。
コンジュゲーション反応からの調製における抗体リガンド単位当たりのアウリスタチン薬物単位の平均数は、一部の態様では、質量分析検出と共に、先に記載されている通りの従来のクロマトグラフィー手段によって特徴付けられる。他の態様では、p’値に関してコンジュゲート化合物の定量的分布が決定される。それらの場合、他の薬物単位負荷を有するものからの抗体薬物コンジュゲート組成物からの、均質な抗体薬物コンジュゲート化合物(p’は、ある特定の値である)の分離、精製、および特徴付けは、前述のクロマトグラフィー方法などの手段によって達成可能である。
一部の態様では、本発明のADCは、MMAEのADCと比較され、これは、時として同じ抗体リガンド単位を有するコンパレーターMMAEコンジュゲートと呼ばれる。他の態様では、本発明のADCは、薬物単位が親AF遊離薬物を組み込むか、またはそれに対応するADCと比較され、これは、本明細書では時としてコンパレーターAFコンジュゲートと呼ばれ、疎水的に修飾されたAFコンジュゲートと同じ放出機序、抗体リガンド単位およびコンジュゲーション部位を有する。
「薬物リンカー化合物」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、アウリスタチン薬物単位を有する化合物を指し、アウリスタチン薬物単位は、原理実施形態では、そのC末端構成成分を介して、特にそのカルボン酸官能基を介してリンカー単位前駆体(LU’)に共有結合によって結合している疎水的に修飾されたアウリスタチンFまたはアウリスタチンF型遊離薬物の薬物単位であり、これは時として、集合的に疎水性AF薬物単位と呼ばれ、LU’は、標的化剤と反応して、リガンド共有結合性結合部分(Lb’)と、リガンド単位、特に抗体を組み込むかまたはそれに対応する抗体リガンド単位との間に共有結合的結合を形成し、したがって式1の抗体薬物コンジュゲート化合物の式1Aの薬物リンカー部分を提供することができる、リガンド共有結合性結合前駆体(Lb’)部分から構成される。
本発明の薬物リンカー化合物は、典型的に、式I:
LU’−(D’) (I)
の一般式
または一部の態様では薬学的に許容される塩であるその塩[式中、LU’は、LU前駆体であり、D’は、1〜4個の疎水性AF薬物単位を表し、そのそれぞれは、特にそのカルボン酸官能基を介してそのC末端構成成分にコンジュゲートしている式H−AFの疎水性AF薬物である]を有し、薬物リンカー化合物は、式IA:
の構造
[式中、LB’は、抗体共有結合性結合部分前駆体であり、残りの可変基は、式1Aについて定義される通りである]によってさらに定義される。
「細胞傷害剤」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、in vitroまたはin vivoで、典型的に異常哺乳動物細胞である細胞の細胞死を誘導するか、または増殖もしくは生存の継続を阻害することができる化合物である。直接的な細胞死滅によってではなく異常細胞の増殖の阻害によって治療効果を主に発揮する細胞増殖抑制剤は、細胞傷害剤の定義によって包含される。一部の態様では、細胞傷害剤は、抗体薬物コンジュゲートからの薬物単位の放出から生じる遊離薬物であり、それには、疎水的に修飾されたアウリスタチンF遊離薬物もしくは関連構造の遊離薬物、親AF遊離薬物、またはMMAEが含まれる。
「疎水性アウリスタチンF化合物」、「遊離疎水性アウリスタチンF薬物」または類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、それらのMDR状態に関係なく標的化される細胞に対して遊離薬物として細胞傷害活性を示すように疎水的に修飾されているアウリスタチンF(AF)またはAF型化合物を指す。
一態様では、疎水性AF化合物は、式H−AF:
によって表される構造
または一部の態様では薬学的に許容される塩であるその塩[式中、Arは、必要に応じて置換された、フェニル、チエニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはベンゾ[b]チオフェン−3−イルであり、R2は、C1〜C2アルキルであり、R3は、水素およびC1〜C2アルキルからなる群から独立に選択され、
R1は、飽和C1〜C9アルキルおよび不飽和C3〜C9アルキルを含めたC1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、または
R1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1、R2およびR3の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、3〜10の間であり、R1、R2およびR3は、メチルではないか、または
R1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、水素もしくは第2の非芳香族疎水性部分であり、R3は、水素であり、Arは、フェニルであり、R1およびR2は、約4.4〜約7.2の間のclogPによって特徴付けられる式H−AFの疎水性アウリスタチンF化合物を提供し、
アウリスタチンFは、R1およびR2がそれぞれメチルであり、R3が水素であり、Arがフェニルである、式H−AFの構造を有する]を有する。
別の態様では、疎水性AF化合物は、式H−AFに関係する疎水的に修飾されたアウリスタチンF型化合物であり、C末端フェニルアラニンアミノ酸残基は、別のカルボン酸含有アミン残基で置き換えられており、かつ/または異なる疎水性α−炭素側鎖を有する別のα−アミノ酸残基で置き換えられた内部バリンアミノ酸残基を有しており、ただし、前記置換えからのそのcLogP値は、約4.4〜約7.2の間の範囲にとどまる。
さらに別の態様では、疎水性AF化合物は、アウリスタチンFの構造を有する疎水的に修飾されたアウリスタチンF型化合物または以前に記載されている疎水的に修飾されたAF化合物のいずれか1つであり、化合物のDil残基のアミド−N−メチルは、可変基R5によって置き換えられているか(R5は、C2〜C6アルキルであるか、または式−(C2〜C6アルキレン)−X’−R6を有しており、X’は、独立に選択されたアミドまたはカルバメート官能基であり、R6は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1、R2、R3およびR5のカルボシクリル(存在する場合)およびアルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、3〜10の間である)、またはより高い疎水性の部分によって置き換えられており、ただし、前記置換えからのそのcLogP値は、約4.4〜約7.2の間の範囲にとどまる。
それらおよび他の態様では、疎水性AF化合物は、本発明の実施形態および特許請求の範囲によってさらに記載される。
「薬物単位」は、句が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リガンド薬物コンジュゲート(LDC)の薬物リンカー部分におけるリンカー単位(LU)に共有結合によって結合しているか、または薬物リンカー化合物のリンカー単位前駆体(LU’)に共有結合によって結合しており、薬物リンカー部分または薬物リンカー化合物から遊離薬物として放出可能な薬物の残基を指す。遊離薬物は、薬物単位に直接的に組み込むことができ、あるいは遊離薬物の構成成分は、LUもしくはLU’またはその中間体に共有結合によって結合させ、その後、薬物単位の構造を完成させるためにさらに精緻化することができる。本発明の文脈では、薬物単位は、疎水性アウリスタチンF薬物単位であり、これは、化合物のC末端構成成分を介して、特にカルボン酸官能基の残基を介してLU/LU’への共有結合性結合を有する、疎水的に修飾されたAFまたはAF型化合物の残基であり、したがって疎水性AF薬物単位が放出されると、カルボン酸が修復されている疎水性AF化合物が提供される。
「その塩」は、句が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、化合物(例えば、薬物、薬物リンカー化合物またはHMWのLDC化合物)の塩形態を指す。化合物の塩形態は、1つもしくは複数の内塩形態のものであり、かつ/または酢酸イオン、コハク酸イオンもしくは他の対イオンなどの別の分子を含むことを伴う。化合物の塩形態の対イオンは、典型的に、親化合物上の電荷を安定にする有機または無機部分である。化合物の塩形態は、その構造内に1個または1個よりも多い荷電原子を有する。複数の荷電原子が塩形態の一部である場合、複数の対イオンおよび/または複数の荷電対イオンが存在する。したがって、化合物の塩形態は、典型的に、化合物の非塩形態のものに対応する1個または複数の荷電原子および1個または複数の対イオンを有する。一部の態様では、化合物の非塩形態は、少なくとも1個のアミノ基または他の塩基性部分を含有し、したがって、酸の存在下では塩基性部分を有する酸付加塩が得られる。他の態様では、化合物の非塩形態は、少なくとも1個のカルボン酸基または他の酸性部分を含有し、したがって、塩基の存在下ではカルボン酸塩または他のアニオン性部分が得られる。
化合物の塩形態の例示的な対アニオンおよび対カチオンとして、それらに限定されるものではないが、硫酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、pトルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’メチレンビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))が挙げられる。
化合物の塩形態の選択は、意図された投与経路、取扱いに適した流れ特徴および低吸湿性(すなわち、相対湿度に対する吸水)を伴う結晶化度、ならびに加速条件下(すなわち、40℃および75%相対湿度で保存した場合の分解または固体状態の変化を決定するため)で化学的および固体状態の安定性を決定することによる必要な保存期間に応じて薬物生成物が示さなければならない、様々なpH値における適切な水溶性を含めた特性に依存する。
「薬学的に許容される塩」は、本明細書に記載されている通り、対象への投与に適した化合物の塩形態であり、一部の態様では、それには、P. H. Stahl and C. G. Wermuth, editors, Handbook of PharmaceuticalSalts: Properties, Selection and Use, Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA, 2002に記載されている通りの対カチオンまたは対アニオンが含まれる。
「抗体」は、本明細書で使用され、最も広範な意味で用語が使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、具体的に、無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を示す抗体断片(その活性は、抗体断片が所望の数の薬物−リンカー部分への結合のための必須の数の部位を有し、標的化されるがん細胞抗原に特異的かつ選択的に結合できることを必要とする)を包含する。抗体のネイティブな形態は、四量体であり、典型的に2つの同一な免疫グロブリン鎖の対からなり、各対は1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖可変領域(VLおよびVH)は一緒になって、抗原への結合に主に関与する。軽鎖および重鎖可変ドメインは、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの高頻度可変領域によって中断されたフレームワーク領域からなる。一部の態様では、定常領域は、エフェクター機能を発揮するように、免疫系によって認識され、それと相互作用する(例えば、Janeway et al., 2001, Immunol. Biology, 5th Ed., Garland Publishing,New Yorkを参照)。抗体には、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)またはそのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)が含まれる。抗体は、任意の適切な種から導出可能である。一部の態様では、抗体は、ヒトまたはマウス起源のものである。このような抗体には、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体が含まれる。
「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する可能な突然変異および/またはグリコシル化パターンの差異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原部位に対するものである。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られるものとしての抗体の特徴を示し、任意の特有の方法による抗体生成を必要とするものと解釈されるべきではない。
「選択的に結合すること」および「選択的に結合する」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、免疫学的に選択的および特異的な方式でその同族がん細胞抗原と結合することができ、多くの他の抗原とは結合しない、抗体薬物コンジュゲートの抗体、その断片、または抗体リガンド単位を指す。典型的に、抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも約1×10−7M、好ましくは約1×10−8M〜1×10−9M、1×10−10M、または1×10−11Mの親和性でその標的化されるがん細胞抗原を結合し、密接に関係する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合するためのその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で、その所定の抗原に結合し、前記親和性は、抗体またはその抗原結合性断片が、抗体リガンド単位として抗体薬物コンジュゲートに対応するか、またはそれに組み込まれる場合、実質的に保持される。
「抗原」は、非コンジュゲート抗体もしくはその抗原結合性断片によって、またはその抗体もしくはその抗原結合性断片に対応するか、もしくはそれを組み込む抗体薬物コンジュゲートの抗体リガンド単位によって選択的に結合され得る実体である。本発明の文脈では、抗原は、がん細胞抗原であり、一部の態様では、がん細胞の細胞外で到達可能な細胞表面タンパク質、糖タンパク質、または炭水化物であり、好ましい態様では、異常細胞に局在されない正常細胞と比較して、がん細胞によって優先的に呈示される糖タンパク質である。それらの態様の一部では、がん細胞を呈示するがん細胞は、哺乳動物のがん細胞である。他の態様では、がん細胞抗原は、がん細胞部位から遠くにある正常細胞と比較して、がん細胞の環境に独特の近くの正常細胞によって優先的に呈示された細胞外で到達可能な抗原である。例えば、近くの細胞は、腫瘍の異常血管系に特徴的な上皮細胞であり得る。抗体薬物コンジュゲートによってそれらの血管細胞を標的化することは、これらの細胞に対して細胞傷害性または細胞増殖抑制性効果を有することになり、これは結果として腫瘍の近くのがん細胞への栄養送達を阻害すると考えられる。このような阻害は、がん細胞に対して細胞傷害性または細胞増殖抑制性効果を間接的に有することになり、抗体薬物コンジュゲート(ADC)化合物による免疫学的に選択的な結合の後、そのアウリスタチン薬物単位をアウリスタチン遊離薬物として放出した後に、近くのがん細胞に対して直接的な細胞傷害性または細胞増殖抑制性効果を有することもできる。それらの態様のいずれかでは、細胞表面抗原は、好ましくは、標的化される細胞へのアウリスタチン遊離薬物の細胞内送達を可能にするために内部移行することができる。
ADCが到達可能な細胞表面であるがん細胞と会合する抗原には、例として限定なく、CD19、CD70、CD30、CD33、NTB−A、およびαvβ6が含まれる。
「リンカー単位」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、薬物単位とリガンド単位(L)(これらの用語は本明細書で定義されている通りである)との間に介在し、それらに共有結合によって結合している、リガンド薬物コンジュゲートの有機部分を指すか、または薬物単位に共有結合によって結合しており、標的化剤と相互作用してLとリンカー単位(LU)との間に共有結合的結合を形成するための反応性官能基もしくは部分を有する、薬物リンカー化合物の有機部分である。薬物リンカーにおけるリンカー単位は、このような結合を形成することができるので、リガンド薬物コンジュゲートのリンカー単位に対する前駆体と考えられ、したがってLU’と示される。リンカー単位は、リガンド薬物コンジュゲート化合物の薬物リンカー部分内のLRとDとの間、または薬物リンカー化合物のLRとDとの間に介在する一次リンカー(LR)および二次リンカー(LO)から構成され、後者の場合、リガンド薬物コンジュゲートのLRに対する前駆体であることを明確に示すために、LR’と表すことができる。
「一次リンカー」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、抗体リガンド単位およびLUの残部に共有結合によって結合している、抗体薬物コンジュゲート(ADC)におけるリンカー単位(LU)の必要な構成成分を指す。一次リンカーの一構成成分は、リガンド共有結合性結合部分(Lb)であり、これは、本明細書に記載されるADCおよび薬物リンカー化合物の一部の態様では、自己安定化する(LSS)リンカーを提供し、それによってLSS一次リンカーを画定し、ADCの他の態様では、LSSから導出可能な自己安定化した(LS)リンカーを提供し、それによって、LS一次リンカーを画定し、これらの用語は本明細書でさらに記載されている通りである。一次リンカーは、必要に応じて、式1Aの下付き文字aおよびbの値に依存して、分岐単位(B)および第1の必要に応じたストレッチャー単位を含有する。
ADCまたは薬物リンカー化合物のLSS一次リンカーは、それぞれ塩基性単位に近接しているスクシンイミド(M2)またはマレイミド(M1)部分によって特徴付けられ、一方、ADC組成物またはその化合物のLS一次リンカーは、塩基性単位に近接しているコハク酸アミド(M3)部分によって特徴付けられる。本発明のLSSまたはLS一次リンカーは、第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)および/または必要に応じた分岐単位によって特徴付けることもでき、Aは、存在する場合、M1もしくはM2のマレイミドもしくはスクシンイミド環系のイミド窒素、またはM3のアミド窒素に結合している、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分から構成され、アルキレン部分は、一部の態様では、非環式塩基性単位によって置換され、必要に応じた置換基によってさらに置換されていてよく、または他の態様では、必要に応じて置換され、必要に応じて置換されている環式塩基性単位を組み込む。
薬物リンカー化合物のリガンド共有結合性結合前駆体またはLSS一次リンカー(時として、リガンド薬物コンジュゲートのLSSに対する前駆体であることを明確に示すためにLSS’と示される)のマレイミド(M1)部分は、高分子量の標的化剤のチオール官能基と反応して、抗体薬物コンジュゲートのリガンド共有結合性結合部分またはLSS一次リンカーにおいてチオ置換スクシンイミド部分(M2)を形成することができ、チオ置換基は、抗体またはその抗原結合性断片を組み込むか、またはその構造に対応する抗体リガンド単位であり、抗体リガンド単位は、抗体のチオール官能基の1個に由来する硫黄原子を介してM2に結合している。その反応の結果、抗体またはその抗原結合性断片は、抗体リガンド単位としてLSS一次リンカーに共有結合によって結合するようになる。LSS一次リンカーにおけるM2のその後の加水分解により、LS一次リンカーが得られ、M2はコハク酸アミド部分(M3)に変換される。そのリンカー部分は、加水分解に対するスクシンイミド環系の2個のカルボニル基の相対的反応性に応じて、2つの位置異性体(M3AおよびM3B)の混合物として存在することができる。
「リガンド共有結合性結合部分」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、そのリガンド単位(L)およびリンカー単位の残部と相互接続し、薬物リンカー化合物のリンカー単位前駆体(LU’)の対応するリガンド共有結合性結合前駆体(Lb’)部分と、抗体またはその抗原結合性断片との間の反応から導出される、リガンド薬物コンジュゲートのリンカー単位(LU)の部分を指す。例えば、LB’がマレイミド部分(M1)から構成される場合、その部分の、抗体の反応性チオール官能基との反応により、LB’がリガンド共有結合性結合(LB)部分に変換され、したがってチオ置換スクシンイミド部分が得られ、そのチオ置換基は、一部の態様では鎖間ジスルフィド結合の還元または遺伝子操作によって得られたシステイン残基によって提供される、抗体リガンド単位の硫黄原子から構成される。別の例では、LB’が活性化カルボン酸官能基から構成される場合、その官能基の、抗体におけるリシン残基とのイプシロンアミノ基の反応により、官能基がアミドに変換され、そのアミド官能基は、LBと、その反応から生じる結合した抗体リガンド単位との間で共有される。他のLB部分およびLB’含有部分からのそれらの変換は、本発明の実施形態に記載される。さらに別の例では、抗体は、二官能性分子で誘導体化されて中間体を提供し、それによって、ある場合にはLB’部分と縮合される反応性チオール官能基が得られる。その縮合の結果、そのように形成されたLB部分は、二官能性分子およびLB’に起因する原子を有する。
「リガンド共有結合性結合前駆体部分」は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含めたリガンド薬物コンジュゲート(LDC)の調製中に、抗体またはその抗原結合性断片などの標的化剤に共有結合的に結合することができる、薬物リンカー化合物またはその中間体のリンカー単位の部分であり、その結合の際に、リガンド結合部分前駆体(LB’)部分は、リガンド共有結合性結合(Lb)部分に変換される。一部の態様では、LB’部分は、抗体もしくはその抗原結合性断片にネイティブな求核試薬もしくは求電子試薬と反応することができる官能基を有するか、または抗体リガンド単位への変換のために、化学的変換もしくは遺伝子操作(上記参照)によって抗体もしくはその抗原結合性断片に導入される。それらの態様の一部では、求核試薬は、抗体もしくはその抗原結合性断片の軽鎖もしくは重鎖のN末端アミノ基、またはその軽鎖もしくは重鎖のリシン残基のイプシロンアミノ基である。他の態様では、抗体またはその抗原結合性断片の求核試薬は、抗体もしくはその抗原結合性断片の軽鎖もしくは重鎖に遺伝子操作によって、または抗体もしくはその断片の鎖間ジスルフィドの化学的還元から導入された、システイン残基のスルフヒドリル基である。一部の態様では、求電子試薬は、抗体もしくはその抗原結合性断片のグリカン構成成分における炭水化物部分の選択的酸化によって導入されたアルデヒドであるか、または遺伝子操作されたtRNA/tRNA合成酵素対を使用して抗体もしくはその抗原結合性断片の軽鎖もしくは重鎖に導入された非天然アミノ酸由来のケトンである。抗体にコンジュゲーション部位を提供する反応性官能基を導入するためのそれらおよび他の方法は、Behrens and Liu "Methods for site-specific drug conjugation toantibodies" mAB (2014) 6(1): 46-53によって総説されている。
「二次リンカー」、「二次リンカー部分」および類似用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リンカー単位(LU)における有機部分を指し、二次リンカー(LO)は、リガンド共有結合性結合(Lb)部分、必要に応じて第1の必要に応じたストレッチャー単位および/または必要に応じた分岐単位(B)を含有する一次リンカー(LR)に薬物単位を相互接続する単位の構成成分であり、一部の態様では、リガンド薬物コンジュゲート(LDC)、例えば抗体薬物コンジュゲート(ADC)もしくはコンジュゲートの調製に有用な薬物リンカー化合物の自己安定化する(LSS)一次リンカーを提供するか、またはLSSの加水分解の際にADC化合物の自己安定化した(LS)一次リンカーを提供する。一部の態様では、LRは、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)由来のヘテロ原子または官能基を介してLOに結合している。
二次リンカーは、典型的に、構造:
[ここで、A’に隣接する波線は、一次リンカーへの共有結合性結合部位を示し、Yに隣接する波線は、アウリスタチン薬物単位への共有結合性結合部位を示し、A’は、第2の必要に応じたスペーサー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、Wは、切断可能単位であり、下付き文字wは、0または1であり、A’の非存在または存在を示し、Yは、スペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、それぞれスペーサー単位の非存在または存在を示す]を有する。
集合的にアウリスタチンF遊離薬物と呼ばれる、AFおよび疎水的に修飾されたAFおよびAF型遊離薬物について、対応するLDCは、それらのC末端構成成分を介して、特にその構成成分のカルボン酸官能基を介してアウリスタチンF薬物単位のコンジュゲーションを有しており、したがって、LDCの薬物リンカー部分からの薬物単位の放出により、カルボン酸官能基が修復されている遊離薬物が提供される。それらの態様の一部では、Wは、エンドペプチダーゼのための認識部位を提供するペプチド切断可能単位であり、アウリスタチン薬物単位に直接的に結合し、したがって下付き文字yは0である。他の態様では、ペプチド切断可能単位から構成されるペプチド配列は、スペーサー単位を提供する追加のアミノ酸残基を有し、したがって下付き文字yは1である。それらの態様では、W、YおよびDは、−W−Yy−Dによって表される通り、直鎖立体配置に配置され、Wは、ペプチド切断可能単位であり、下付き文字yは、0または1である。下付き文字yが1である場合、エンドペプチダーゼによる切断の後、アウリスタチン遊離薬物が完全に放出されるように、典型的にエキソペプチダーゼの酵素的作用が生じて、スペーサー単位によって寄与される残りのアミノ酸残基が除去される。それらの態様の一部では、エンドペプチダーゼ認識配列、および認識配列のエンドペプチダーゼによる切断後に残るスペーサー単位によって寄与されるアミノ酸残基を提供するアミノ酸配列は、単一ペプチド配列内に含有される。
他の態様では、下付き文字a’は、1であり、下付き文字wは、1であり、下付き文字yは、0であり、第2の必要に応じたスペーサー単位(A’)またはそのサブユニットは、ペプチド切断可能単位(W)にエンドペプチダーゼ認識部位の一部を提供する。その態様では、認識部位は、Wのペプチド配列内にあるか、またはその一部なので、必要に応じた二次リンカー(LO)が存在する。LOが存在する他の態様では、下付き文字a’は、0であり、下付き文字wは、1であり、下付き文字yは、0であり、第1の必要に応じたスペーサー単位(A)のサブユニットは、ペプチド切断可能単位にエンドペプチダーゼ認識部位の一部を提供する。下付き文字a’が0であり、下付き文字yが0であるさらに他の態様では、一次リンカーとC末端にコンジュゲートしている薬物単位との間のアミド結合は、認識部位を提供し、したがってAはペプチド切断可能単位としても働く。その態様では、下付き文字wは、0であり、したがって個別のペプチド切断可能単位が存在しないので、LOは存在しないが、アウリスタチンF遊離薬物の放出のためのエンドペプチダーゼ認識部位は存在する。
Wがペプチド切断可能単位であるLUに、薬物単位が1つだけ結合している場合、例示される通り、リンカー単位のDに結合している二次リンカー(L
O)は、典型的に構造S
1:
[ここで、Dは、アウリスタチンF薬物単位であり、残りの可変基は、LOについて本明細書で定義されている通りであり、
その二次リンカーから構成される薬物リンカー部分または薬物リンカー化合物は、典型的に、それぞれ式1B 式IB:
の構造を有し、
LBは、リガンド共有結合性結合部分であり、LB’は、薬物リンカー部分または薬物リンカー化合物のリンカー単位(LU)における一次リンカー(LR)について本明細書で定義されている通りのリガンド共有結合性結合前駆体部分であり、Aは、第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字aは、0または1であり、Aの非存在または存在を示し、Bは、必要に応じた分岐単位であり、下付き文字bは、0または1であり、Bの非存在または存在を示し、下付き文字qは、1〜4の範囲であり、LB/LB’、AおよびBは、LR/LR’の構成成分であり、ただし下付き文字qが2〜4の範囲である場合、下付き文字bは1であり、残りの可変基は、LOについて本明細書で定義されている通りである]によって表される。
「マレイミド部分」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、薬物リンカー化合物の一次リンカー(一部の態様では自己安定化するリンカーである)の構成成分を指し、時として、薬物リンカー化合物のLR/LSSに対する前駆体であることを明確に示すためにLR’またはLSS’と表される。マレイミド部分(M1)は、抗体またはその抗原結合性断片などの標的化剤の反応性チオール官能基の硫黄原子によってマイケル付加(すなわち、1,4−コンジュゲート付加)に関与して、チオ置換スクシンイミド(M2)部分を提供することができ、チオ置換基は、抗体薬物コンジュゲート組成物またはその化合物の抗体リガンド単位について本明細書で例示される通り、標的化剤を組み込むか、またはその構造に対応するリガンド単位である。薬物リンカー化合物のそのM1部分は、一次リンカーの残部に、典型的には存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)に、またはAおよびBの両方が存在しない場合二次リンカー(LO)に、そのイミド窒素原子を介して結合している。イミド窒素原子以外では、M1部分は、典型的に非置換であるが、そのマレイミド環系の環式二重結合において非対称に置換されていてよい。このような置換は、マレイミド環系の立体障害が少ないか、またはより電子的に欠損している二重結合した炭素原子(より優勢な寄与に依存する)への、高分子量の標的化剤の反応性チオール官能基の硫黄原子の、位置化学的に好ましいコンジュゲート付加をもたらすことができる。そのコンジュゲート付加により、スクシンイミド(M2)部分が得られ、これは、高分子量の標的化剤によって提供されたチオール官能基由来の硫黄原子を介して、抗体リガンド単位によってチオ置換されている。
「スクシンイミド部分」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、一次リンカーの、あるタイプのリガンド共有結合性結合(Lb)部分(リガンド薬物コンジュゲート、例えば抗体薬物コンジュゲートのリンカー単位の構成成分である)を指し、マレイミド部分(M1)(薬物リンカー化合物またはそのM1含有中間体における、あるタイプのリガンド共有結合性結合前駆体(Lb’)部分である)のマレイミド環系への、抗体またはその抗原結合性断片の反応性チオール官能基の硫黄原子のマイケル付加から得られる。したがって、スクシンイミド(M2)部分は、一次リンカーの残部で置換されているそのイミド窒素原子を有するチオ置換スクシンイミド環系から構成される。一部の態様では、その窒素原子は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)に、その単位を構成する必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分を介して結合している。一次リンカーが自己安定化するリンカーである場合、そのアルキレン部分は、存在することが必要とされる第1の必要に応じたストレッチャー単位に環式塩基性単位を組み込むか、または他所に記載されている通り非環式塩基性単位によって置換されており、その他の方法で必要に応じて置換されており、そのM2部分は、M1前駆体上に存在していた可能性がある置換基で、そのスクシンイミド環系において必要に応じて置換されている。
したがって、[HE]と必要に応じて組み合わされる、Aの必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分は、存在する必要に応じた二次リンカー(LO)に、必要に応じて[HE]を介して共有結合によって直接的に、または−[HE]−AO(AOは、式1Aの薬物リンカー部分または式IAの薬物リンカー化合物に存在するAの必要に応じたサブユニットである)を介してLOに間接的に結合している。AOが存在する場合には、Aは、式−A1[HE]−A2−によって表され、A1は、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分から構成されるAの第1のサブユニットであり、AOは、Aの第2のサブユニットであるA2になっている。チオ置換スクシンイミド(M2)部分のスクシンイミド環系の加水分解は、リガンド薬物コンジュゲート化合物の自己安定化するリンカー(LSS)に存在する場合、非環式または環式塩基性単位が近くに存在することに起因してpH制御可能であり、ある場合には、チオ置換基によるその非対称置換に起因して、自己安定化したリンカー(LS)にコハク酸アミド(M3)部分の位置化学的異性体を提供する。それらの異性体の相対量は、M1前駆体に存在していた任意の置換基に少なくとも部分的に起因し得るM2の2個のカルボニル炭素の反応性の差異に、少なくとも部分的に起因する。加水分解は、LRが、塩基性単位を含有していないが塩基性単位によって提供された制御加水分解と比較して高度に可変性のM2部分を有する場合にも、ある程度生じると予想される。
一部の態様では、M2のスクシンイミド環系上に必要に応じた置換基は存在せず、第1の必要に応じたストレッチャー単位は存在し、そのイミド窒素原子への結合部位から遠位の位置で、必要に応じた加水分解増強単位である[HE]に必要に応じて結合している、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分から構成される。その態様では、Aは、単一単位であるか、または存在するAの必要に応じたサブユニットであるAOからさらに構成され、やはり存在する[HE]に結合している。
「コハク酸アミド部分」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リガンド薬物コンジュゲート、例えば抗体薬物コンジュゲート内のリンカー単位の自己安定化したリンカー(LS)の構成成分を指し、LSの別の構成成分によってアミド窒素が置換されているコハク酸アミドヘミ酸残基の構造を有しており、その構成成分は、典型的に、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)またはそのサブユニットであり、[HE]に必要に応じて結合しているC1〜C12アルキレン部分から構成される。Aの可能な構造は、−A[HE]−AOの式によって示され、AOは必要に応じたサブユニットである。そのサブユニットが存在する場合、Aは、A1[HE]−A2−の式によって表され、A1は、Aの第1のサブユニットであり、これは[HE]に必要に応じて結合している、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分から構成され、A2は、以前にAOとして示されているAの第2のサブユニットである。一部の態様では、アルキレン部分は、環式塩基性単位を組み込み、他の態様では、非環式塩基性単位によって置換されており、いずれかの態様では、その他の方法で必要に応じて置換されており、コハク酸アミド(M3)部分は、L−S−による置換をさらに有しており、Lは、標的化剤として抗体もしくはその抗原結合性断片を組み込むか、またはそれに対応する抗体リガンド単位であり、Sは、その抗体または断片由来の硫黄原子である。M3部分は、塩基性単位によって助けられる加水分解によってそのカルボニル−窒素結合の1つが破壊されている、自己安定化する一次リンカーにおけるスクシンイミド(M2)部分のチオ置換スクシンイミド環系から得られる。
したがって、M3部分は、遊離カルボン酸官能基、およびその窒素ヘテロ原子が一次リンカーの残部に結合しているアミド官能基を有しており、そのM2前駆体の加水分解部位に応じて、そのカルボン酸またはアミド官能基に対してアルファである炭素で、L−S−によって置換されている。理論に拘泥するものではないが、M3部分をもたらす前述の加水分解は、チオ置換基の排除によってその標的化リガンド単位(L)のコンジュゲートから早計に喪失される可能性が低い、リガンド薬物コンジュゲートのリンカー単位(LU)を提供すると考えられる。
「自己安定化するリンカー」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、M2含有構成成分を有するリガンド薬物コンジュゲート、例えば抗体薬物コンジュゲートのリンカー単位(LU)の一次リンカー、またはM1含有構成成分(その構成成分は、LDCにおけるLSSのM2含有構成成分に対する前駆体であることを示すために、LSS’と指定することができる)を有する薬物リンカー化合物におけるリンカー単位前駆体(LU’)の一次リンカーを指し、その後、制御加水分解条件下で、対応する自己安定化したリンカー(LS)に変換される。その加水分解は、LSSの塩基性単位の構成成分によって促進され、したがって、LSSから構成されるADCは、そのリンカー単位(LU)がここでLSから構成されることにより、その抗体リガンド単位の早計の喪失に対してより抵抗性を示すようになる。LSS一次リンカーはさらに、そのM1またはM2部分に加えて、存在することが必要とされる第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)から構成され、Aは、[HE]と必要に応じて組み合わされるC1〜C12アルキレン部分から構成され、Aがさらに、存在する必要に応じたサブユニット(AO)から構成される場合、時としてA1と指定され、そのサブユニットは、A2と指定される。Aが、単一の個別単位または2個の個別単位の形態であり得る場合、両方の可能性は、−A[HE]−AO−の式によって表され、それぞれ第2のサブユニットの非存在または存在に応じて−A[HE]−または−A1[HE]−A2−になる。LSS内のAのいずれかの変形形態では、そのアルキレン部分は、環式塩基性単位を組み込むか、または非環式塩基性単位によって置換されており、その他の方法で必要に応じて置換されている。
したがって、薬物リンカー化合物の一次リンカーがLSSである場合(時として、リガンド薬物コンジュゲートのLSSの前駆体であることを示すためにLSS’と示される)、その一次リンカーは、存在することが必要とされる第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)、およびマレイミド(M1)部分(これを介して、抗体は抗体リガンド単位として結合することになる)を含有する。それらの態様では、AのC1〜C12アルキレン部分は、M1のマレイミド環系のイミド窒素に、およびリンカー単位の残部に結合しており、後者の結合は、AOおよび[HE]の非存在または存在に応じて、LSSの[HE]−AOを介して必要に応じて生じる。それらの態様の一部では、加水分解増強部分である[HE]は、必要に応じて置換されている電子求引性のヘテロ原子または官能基からなるか、またはそれから構成され、一部の態様では、BUに加えて、ADC化合物の対応するLSS部分におけるM2部分の加水分解速度を増強することができる。薬物リンカー化合物のADC化合物への組込みの後、ここでLSSはスクシンイミド(M2)部分を含有しており、この部分は、抗体リガンド単位によってチオ置換されている(すなわち、抗体リガンド単位の、その薬物リンカー部分への結合は、M1のマレイミド環系への抗体の反応性チオール官能基の硫黄原子のマイケル付加を介して生じる)。
一部の態様では、環化塩基性単位(cBU)は、その単位の塩基性窒素への形式的環化によって、非環式塩基性単位に対する構造に対応するものであり、したがって環式塩基性単位の構造は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位に、必要に応じて置換されているスピロC4〜C12ヘテロシクロとして組み込まれる。このような構築物では、スピロ炭素は、M1のマレイミドイミド窒素に、したがってM2のその窒素に結合しており、LSS一次リンカー(式1Aの薬物リンカー部分または式IAの薬物リンカー化合物において、必要に応じて−[HE]−AO−を介して存在する前述の第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)から構成される)の残部に、さらに結合している。それらの態様では、環式BUは、非環式塩基性単位の方式に質的に類似の方式で、M2のスクシンイミド部分の、M3によって表されるその対応する開環形態への加水分解を助け、その加水分解は[HE]によっても増強され得る。
一部の態様では、LSS一次リンカー(時として、式IAの薬物リンカー化合物における自己安定化する(LSS)一次リンカーに対する前駆体であることを明確に示すためにLSS’と示される)のLb’−A−は、M1−A(BU)−[HE]−AO−の一般式によって表され、M1は、マレイミド部分であり、Aは、BUを組み込むか、またはそれによって置換されており、他の方法で必要に応じて置換されており、必要に応じた加水分解増強部分である[HE]と必要に応じて組み合わされるC1〜C12アルキレンであり、その式は、Aが単一の個別単位である場合、A(BU)−[HE]−、またはAが2個のサブユニットのものである場合、A1(BU)−[HE]−A2−になり、A1およびA2は、Aのサブユニットである。
他の態様では、式1のADCの式1Aの薬物リンカー部分におけるLSS一次リンカーは、−M2−A(BU)−[HE]−AO−の一般式によって表され、M2は、スクシンイミド部分であり、Aは、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、BUを組み込むか、またはそれによって置換されており、他の方法で必要に応じて置換されており、必要に応じた加水分解増強部分である[HE]と必要に応じて組み合わされるC1〜C12アルキレンから構成され、AOは、Aの必要に応じたサブユニットである。Aが単一の個別単位である場合、LSSは、−M2−A(BU)−[HE]−の式によって表され、Aが2個のサブユニットのものである場合、LSSは、−M2−A1(BU)−[HE]−A2−の式によって表される。
さらに他の態様では、式1のADCの式1Aの薬物リンカー部分におけるLS一次リンカーは、−M3−A(BU)−[HE]−AO−の一般式によって表され、M3は、スクシンイミド酸アミド部分であり、Aは、BUを組み込むか、またはそれによって置換されており、他の方法で必要に応じて置換されており、必要に応じた加水分解増強部分である[HE]と必要に応じて組み合わされるC1〜C12アルキレンであり、AOは、Aの必要に応じたサブユニットであり、A(BU)−[HE]−AO−は、Aが単一の個別単位である場合、−A(BU)−[HE]−、またはAが2個のサブユニットのものであるか、もしくはそれから構成される場合、−A1(BU)−[HE]−A2−になる。
式1の一部の抗体リガンド薬物コンジュゲートについて、式1Aの薬物リンカー部分内にL
SS一次リンカーを含む、例示的な、ただし非限定的な−L
b−A−構造は、
[ここで、波線は、リガンド単位への共有結合性結合部位を示し、番号記号(#)は、分岐単位(B)もしくは下付き文字bの値に応じて存在する必要に応じた二次リンカー(LO)への、またはBおよびLOが両方存在しない場合、Dへの、式1における共有結合性結合部位を示し、点線の曲線は、存在する必要に応じた環化を示し、存在する場合BUは環式塩基性単位であるか、またはBUが非環式塩基性単位である場合存在せず、[HE]は、必要に応じた加水分解増強部分であり、AOは、Aの必要に応じたサブユニットであり、下付き文字qは、0または1〜6の範囲の整数であり、各Rd1は、水素および必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルからなる群から独立に選択されるか、またはRd1の2つ、それらが結合している炭素原子、および介在する任意の炭素原子は、必要に応じて置換されているC3〜C8カルボシクロを画定し、残りのRd1は、もしあれば独立に、水素または必要に応じて置換されているC1〜C6であり、Ra2は、必要に応じて置換されているC1〜C8アルキルであり、これは、環式塩基性単位においてBUおよびRa2が結合している炭素原子と共に、骨格の第二級または第三級塩基性窒素原子を有する必要に応じて置換されているスピロC4〜C12ヘテロシクロを画定し、したがって、環式塩基性単位は、Ra2が水素であり、BUが水素によって置き換えられている対応するコンジュゲートと比較して、示されているスクシンイミド(M2)部分の加水分解速度を増大して、適切なpHでコハク酸アミド(M3)部分を提供することができ、かつ/またはRa2が水素であり、BUが水素によって置き換えられている前述のコンジュゲートよりも、Ra2が水素であり、BUが非環式BUであるADCのものに対応する薬物リンカー部分における加水分解速度の増大を実質的に保持している]によって表される。
抗体薬物コンジュゲート組成物の調製において中間体として使用される式Iの薬物リンカー化合物に時として存在する、例示的な、ただし非限定的なL
SS’を構成するL
b’−A−構造は、
[ここで、BUおよび他の可変基は、LSS一次リンカーを有するADCのLb’−A−構造について先に定義される通りである]によって表される。マレイミド部分から構成される自己安定化するリンカー前駆体(LSS’)を有する薬物リンカー化合物が、ADCの調製に使用される場合、そのLSS’部分は、スクシンイミド部分から構成されるLSS一次リンカーに変換される。BUの塩基性窒素原子は、抗体由来の反応性チオール官能基との縮合の前に、典型的にプロトン化されているか、または酸に不安定な保護基によって保護されている。
「自己安定化したリンカー」は、自己安定化したリンカー(LS)の対応するM3部分を提供するように制御条件下で加水分解を受けている、リガンド薬物コンジュゲート、例えば抗体薬物コンジュゲートの自己安定化するリンカー(LSS)のM2含有部分から導出された有機部分であり、そのLU構成成分は、元のM2含有LSS部分をもたらした、標的化部分のM1含有部分との縮合反応を逆行させる可能性が低い。自己安定化したリンカー(LS)は、M3部分に加えて、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)から構成され、環式塩基性単位を組み込むか、または非環式塩基性単位によって置換されており、Aは、M3およびLS一次リンカーの残部(すなわち、B)に、またはBが存在しない場合、存在する必要に応じた二次リンカー(LO)に、またはBおよびLOの両方が存在しない場合、Dに、共有結合によって結合している。M3部分は、リガンド薬物コンジュゲートのLSSのスクシンイミド部分(M2)の変換から得られ、M2部分は、薬物リンカー化合物におけるLSS’部分のM1のマレイミド環系への、標的化剤の反応性チオール官能基の硫黄原子のマイケル付加から得られたチオ置換スクシンイミド環系を有しており、そのM2から導出された部分は、M2における対応する置換基と比較して、そのチオ置換基の排除のための反応性が低い。それらの態様では、M2から導出された部分は、M2に対応するコハク酸アミド(M3)部分の構造を有しており、M2は、そのスクシンイミド環系のそのカルボニル−窒素結合の1つが加水分解を受けており、その加水分解は、その結合の結果としてのその適切な近接に起因して、BUの塩基性官能基によって助けられる。したがって、その加水分解の生成物は、LSに対するM2含有LSS前駆体のイミド窒素原子に対応するそのアミド窒素原子において一次リンカーの残部で置換されている、カルボン酸官能基およびアミド官能基を有する。一部の態様では、塩基性官能基は、非環式塩基性単位の第一級、第二級もしくは第三級アミン、または環式塩基性単位の第二級もしくは第三級アミンである。他の態様では、BUの塩基性窒素は、グアニジノ部分でのような、必要に応じて置換されている塩基性官能基のヘテロ原子である。いずれかの態様では、塩基触媒型加水分解のためのBUの塩基性官能基の反応性は、塩基性窒素原子のプロトン化状態を低減することによって、pHによって制御される。
したがって、自己安定化したリンカー(LS)は、典型的に、環式塩基性単位を組み込むか、または非環式塩基性単位によって置換されている、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位に共有結合によって結合しているM3部分の構造を有する。一部の態様では、Aは、単一の個別単位であり、他の態様では、2個のサブユニットが[HE]と必要に応じて組み合わされるA/A1と共に存在する場合、典型的にA1−A2によって表される2個またはそれよりも多いサブユニットのものである。次に、ストレッチャー単位Aは、AがM3−A(BU)−[HE]−によって表される単一の個別単位であるか、または−M3−A1(BU)−A2−によって表される2個のサブユニットのものである場合(BUは、塩基性単位(環式または非環式)のいずれかのタイプを表す)、−M3−A(BU)−[HE]−AO−の一般式によって表される方式で配列しているそのM3、A/A1、AO/A2、BU構成成分と共に、一次リンカーLSの残部に共有結合によって結合している。
L
BがM
2またはM
3であり、これらの構造内のA(BU)/A
1(BU)、A
O/A
2および[HE]が、先に示される方式で配列しており、BUが非環式塩基性単位である、ADCのためのL
SSおよびL
S一次リンカーにおけるL
b−A−の例示的な非限定的構造は、例としてそれに限定されるものではないが、
の構造
[ここで、−CH(CH2NH2)C(=O)−部分は、Aが単一の個別単位である場合、Aであり、したがってAOは存在せず、またはAOがA2として存在する場合、A1であり、A/A1は、BUによって置換されており、BUは、非環式塩基性単位であり(−CH2NH2であり、塩基性窒素原子は必要に応じてプロトン化されている)、その部分内の−C(=O)−は、存在する必要に応じた加水分解増強部分[HE]である]によって示される。それらの例示的な構造は、スクシンイミド(M2)部分、またはLSSからLSへの変換においてM2によって助けられた−CH2NH2のスクシンイミド環加水分解から得られたコハク酸アミド(M3)部分を含有する。
L
BがM
2またはM
3であり、これらの構造内のA(BU)/A
1(BU)、A
O/A
2および[HE]が先に示される方式で配列しており、BUが環式塩基性単位である、ADCのためのL
SSおよびL
S一次リンカーにおける−L
b−A−の例示的な非限定的構造は、例としてそれに限定されるものではないが、
の構造
[ここで、これらの−M2−A(BU)−[HE]−AO−および−M3−A(BU)−[HE]−AO−構造は、AOが存在しない場合、−M2−A(BU)−[HE]−および−M3−A(BU)−[HE]−になり、したがって、Aは単一の個別単位として存在し、またはAOがA2として示されるAのサブユニットとして存在する−M2−A1(BU)−[HE]−A2−および−M3−A1(BU)−[HE]−A2−になり、BUは、必要に応じてプロトン化されているアゼチジン−3,3−ジイルの形態の環式塩基性単位であり、その構造は、A1(BU)またはA(BU)部分における非環式塩基性単位のアミノアルキルに対応する、A/A1に組み込まれた例示的なヘテロシクロ塩基性単位であり、非環式塩基性単位の塩基性窒素は、非環式塩基性単位が結合しているM2のスクシンイミド窒素に対してアルファである炭素原子に、Ra2を介して少なくとも部分的に形式的に環化し戻されている]によって示される。
先の−Lb−A−構造のそれぞれにおける波線は、対応する薬物リンカー化合物におけるM1部分のマレイミド環系への硫黄原子のマイケル付加の際に、標的化剤の反応性チオール官能基から導出されたリガンド単位のその硫黄原子の共有結合性結合部位を示す。先の−Lb−A−構造のそれぞれにおける番号記号(#)は、LSSまたはLS一次リンカーの残部への共有結合性結合部位を示す。M2のスクシンイミド環系は、そのチオ置換基に起因して非対称に置換されているので、遊離したカルボン酸基に対して位置が異なる、本明細書で定義されている通りのコハク酸アミド(M3)部分の位置化学的異性体は、M2の加水分解をもたらすことができる。先の構造では、AOに隣接して示されているカルボニル官能基は、本明細書で定義されている通りの加水分解増強剤[HE]を例示している。
BUが非環式または環式塩基性単位である先の−M3−A(BU)−[HE]−AO−、−M3−A(BU)−および−M3−A1(BU)−[HE]−A2−部分は、自己安定化したリンカーである(LS)一次リンカーの例示的な−Lb−A−構造を表し(これらの構造はリガンド単位のチオ置換基を排除する可能性が低いので、自己安定化したと命名した)、したがって、それらが導出される式−M2−A(BU)−[HE]−AO−、−M2−A(BU)−および−M2−A1(BU)−[HE]−A2−の対応するLSS部分と比較して、その標的化部分の喪失を引き起こす。理論に拘泥するものではないが、安定性の増大は、M2と比較して、E2排除にとって好ましい立体構造にチオ置換基をもはや束縛しない、M3の立体構造上の可動性の高さから生じると考えられる。
「塩基性単位」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、LSSを構成するM2部分内のスクシンイミド環系の塩基触媒型加水分解に関与する(すなわち、スクシンイミドカルボニル−窒素結合の1つへの水分子の付加を触媒する)BUによって、対応するLS部分に持ち越される、本明細書に記載されている通りの自己安定化するリンカーである(LSS)一次リンカー内の有機部分を指す。一部の態様では、塩基触媒型加水分解は、LSSに結合している標的化抗体リガンド単位によって許容される制御条件下で開始される。他の態様では、塩基触媒型加水分解は、LSS’から構成される薬物リンカー化合物を、標的化抗体(抗体の反応性チオール官能基の硫黄原子のマイケル付加は、薬物リンカー化合物のLSS’のM1部分の加水分解と有効に競合する)と接触させると開始される。理論に拘泥するものではないが、以下の態様は、適切な塩基性単位の設計についての様々な考察を記載する。このような一態様では、非環式塩基性単位の塩基性官能基およびそのM2構成成分に対するLSSにおけるその相対的位置は、M2のカルボニル基に水素結合するBUの能力に合わせて選択され、それによって、その求電子性、したがって水による攻撃に対するその感受性が有効に増大する。別のこのような態様では、それらの選択は、BUの塩基性官能基への水素結合によって求核性が増大する水分子が、M2カルボニル基に向けられるように行われる。第3のこのような態様では、それらの選択は、塩基性窒素がプロトン化される際に、望ましくない過剰の薬物リンカー化合物による相殺を必要とする早計の加水分解を促進するおそれがある程度まで、誘導的電子求引によってスクシンイミドカルボニルの求電子性が増大されないように行われる。最終的なこのような態様では、それらの機構的効果の一部の組合せは、LSSからLSへの制御加水分解のための触媒作用に寄与する。
典型的に、先の機構的態様のいずれかを介して作用することができる非環式塩基性単位は、1個の炭素原子または2〜6個の連続的な炭素原子、より典型的には1個の炭素原子または2個もしくは3個の連続的な炭素原子から構成され、炭素原子は、非環式塩基性単位の塩基性アミノ官能基を、それが結合しているLSS一次リンカーの残部に接続する。その塩基性アミン窒素原子が、スクシンイミド(M2)部分からその対応する開環コハク酸アミド(M3)部分への加水分解を助けるのに必要な程度近接するために、非環式塩基性単位のアミン担持炭素鎖は、典型的に、M2のスクシンイミド窒素への(したがってその対応するM1−A−構造のマレイミド窒素への)Aの結合部位に対してその部分のC1〜C12アルキレンのアルファ炭素で、LSSの−Lb−A−部分のAに結合している。典型的に、非環式塩基性単位におけるそのアルファ炭素は、立体化学的な(S)立体配置、またはL−アミノ酸のアルファ炭素の立体配置に対応する立体配置を有する。
以前に記載されている通り、非環式形態のBUまたは環化形態のBUは、典型的に、LSSのM1もしくはM2またはLSのM3に、その他の方法で必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分を介して接続されており、その部分は、環化塩基性単位を組み込むか、または非環式塩基性単位によって置換されており、それぞれM1もしくはM2のマレイミドもしくはスクシンイミド窒素、またはM3のアミド窒素原子に結合している。一部の態様では、環式塩基性単位を組み込む、その他の方法で必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分は、[HE]に共有結合によって結合しており、典型的に、エーテル、エステル、カーボネート、ウレア、ジスルフィド、アミドカルバメートまたは他の官能基の仲介を介して、より典型的にはエーテル、アミドまたはカルバメート官能基を介して生じる。同様に、非環式形態のBUは、典型的に、LSSのM1もしくはM2またはLSのM3に、LB’−A−(LB’は、M1である)または−Lb−A−(LBは、M2またはM3である)におけるAのその他の方法で必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分を介して接続しており、その部分は、M1もしくはM2のマレイミドもしくはスクシンイミド環系のイミノ窒素原子、またはM2のスクシンイミド環系の加水分解後のM3のアミド窒素に結合しているC1〜C12アルキレン部分の同じ炭素で、非環式塩基性単位によって置換されている。
一部の態様では、環式塩基性単位は、非環式塩基性単位を、その他の方法で必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル(Ra2)(A/A1のものから独立に選択され、非環式塩基性単位と同じアルファ炭素に結合している)に形式的に環化し、したがってスピロ環式環系を形成することによって非環式BUの構造を組み込み、したがって環式塩基性単位は、BUが非環式である場合のようにA/A1の置換基になるのではなく、A/A1の構造に組み込まれる。それらの態様では、形式的な環化は、非環式塩基性単位の塩基性アミン窒素へのものであり、したがって2個のアルファ炭素置換基における相対的な炭素鎖長に応じて、必要に応じて置換されている対称または非対称スピロC4〜C12ヘテロシクロとして環式塩基性単位を提供し、塩基性窒素は、今度は塩基性骨格ヘテロ原子になる。その環化が、環式塩基性単位において非環式塩基性単位の塩基特性を実質的に保持するためには、非環式塩基性単位窒素の塩基性窒素原子は、環式塩基性単位のヘテロシクロに骨格四級化窒素をもたらし得るという理由で、第三級アミンではなく、第一級または第二級アミンの塩基性窒素原子であるべきである。非環式塩基性単位から環式塩基性単位への形式的な環化の態様では、これらの一次リンカーにおいて得られる環式塩基性単位の構造は、LSSからLSへの変換においてM2からM3への加水分解を助ける塩基性窒素の能力を実質的に保持するために、典型的に3個以下、典型的には1個または2個の介在する炭素原子が、塩基性窒素原子とスピロC4〜C12ヘテロシクロ構成成分のスピロ炭素との間に存在するように位置している塩基性窒素を有する。A/A1に組み込まれた環式塩基性単位、ならびにこれらを構成成分として有するLSSおよびLS一次リンカーは、本発明の実施形態によってさらに記載される。
「加水分解増強部分」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、LSS一次リンカーおよびその加水分解生成物LSのLb’−A−またはLb−A−における第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)内に必要に応じて存在する、電子求引基または部分を指す。加水分解増強[HE]部分は、ADCの薬物リンカー部分においてLSSのA/A1の構成成分として存在する場合(A/A1は、M2部分のイミド窒素に結合している)、そのM2部分が発揮できるその近接に応じて、その部分におけるスクシンイミドカルボニル基の求電子性および[HE]の電子求引効果を増大して、LS一次リンカーのM3部分への変換を促進することができる。それぞれ環式塩基性単位または非環式塩基性単位を組み込むか、またはそれによって置換されているA/A1を用いると、いずれかのタイプのBUの誘導および前述の効果によって、M3への加水分解速度を増大するためのM2のカルボニル基に対する[HE]の潜在的効果が調整され、したがって、式M1−A(BU)−[HE]−AO−(これは、M1−A(BU)−およびM1−A1(BU)−[HE]−A2−の式によって表される2つの変形形態を有し、A/A1は、[HE]と組み合わされる)のLb’−A−構造から構成される薬物リンカー化合物からリガンド薬物コンジュゲートを調製する間、M1の早計の加水分解は、認識できる程度までは生じない。その代わり、リガンド薬物コンジュゲート化合物の一般式−M2−A(BU)−[HE]−AO−、またはより具体的には式−M2−A(BU)−もしくは−M2−A1(BU)−A2−の−Lb−A−構造を、制御条件下で(塩基性単位のプロトン化を低減するように、pHを意図的に増大する場合のように)、その対応する−M3−A(BU)−[HE]−AO−、−M3−A(BU)−またはM3−A1(BU)−[HE]−A2−式に変換する加水分解を促進するためのBUおよび[HE]の組合せ効果は、そのM1部分の加水分解を相殺するために過度のモル過剰の薬物リンカー化合物を必要としないような効果である。したがって、M1のマレイミド環系への標的化剤の反応性チオール官能基の硫黄原子のマイケル付加(それによって、M2のスクシンイミド環系に結合している標的化リガンド単位が提供される)は、典型的に、M1の加水分解と有効に競合する速度で生じる。理論に拘泥するものではないが、低pHでは、例えばBUの塩基性アミンがTFA塩の形態である場合のように、薬物リンカー生成物におけるM1の早計の加水分解は、pHを、適切な緩衝剤を使用して塩基触媒作用に適したpHに上昇させる場合よりもかなり緩慢であり、許容されるモル過剰の薬物リンカー化合物は、薬物リンカー化合物のM1部分への標的化剤の反応性チオール官能基の硫黄原子のマイケル付加を完了させるか、またはほぼ完了させるための時間経過中に実際に生じる早計のM1加水分解に起因する任意の喪失を、適切に相殺できると考えられる。
以前に議論されている通り、いずれかのタイプの塩基性単位によるカルボニル加水分解の増強は、その官能基の塩基性およびM1/M2のカルボニル基に対するその塩基性官能基の距離に依存して決まる。典型的に、[HE]は、M2またはそれから導出されたM3に結合しているA/A1のC1〜C12アルキレンの末端から遠位に位置するカルボニル部分または他のカルボニル含有官能基であり、A2への、または存在する必要に応じた二次リンカー(Bが存在せず、Aが単一の個別単位である場合)への共有結合性結合も提供する。ケトン以外のカルボニル含有官能基には、エステル、カルバメート、カーボネートおよびウレアが含まれる。[HE]が、LSS一次リンカーを有するADCの薬物リンカー部分においてケトン以外のカルボニル含有官能基である場合、A/A1により共有されているその官能基のカルボニル部分は、典型的に、[HE]が−C(=O)−X−である場合のように(Xは、−O−または必要に応じて置換されている−NH−である)、M2のイミド窒素原子への結合部位から遠位にあるA/A1のその他の方法で必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレンに結合している。一部の態様では、[HE]部分は、A/A1が共有結合によって結合するイミド窒素から十分遠くにあってよく、したがって、M2含有部分のスクシンイミドカルボニル−窒素結合の加水分解感度に対する識別可能な効果が観察不可能であるか、または弱い効果が観察可能であるが、その代わり主にBUによって駆動される。
「ストレッチャー単位」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、標的化リガンド単位(L)を、典型的に存在する必要に応じた二次リンカーから物理的に分離する、リガンド薬物コンジュゲート、例えば抗体薬物コンジュゲートの薬物リンカー化合物または薬物リンカー部分のリンカー単位の一次または二次リンカーにおける、必要に応じた有機部分を指す。第1の必要に応じたストレッチャーは、リンカー単位がLSSまたはLS一次リンカーから構成される場合、これらのタイプの一次リンカーに塩基性単位を提供するので存在する。LRにおける第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)の存在は、本明細書に記載されている通りの疎水性アウリスタチンF化合物を含む遊離アウリスタチン薬物として薬物単位を放出するための二次リンカーの効率的な処理を可能にするのに、その必要に応じたストレッチャー単位が存在しないリガンド単位からの立体構造的解放(steric relief)が不十分である場合、いずれのタイプの一次リンカーにも必要とされ得る。それらの必要に応じた構成成分は、立体構造的解放の代替として、またはそれに加えて、薬物リンカー化合物の調製における合成を容易にするために含まれ得る。第1または第2の必要に応じたストレッチャー単位(それぞれAまたはA’)は、それぞれ単一単位であってよく、または複数のサブユニットを含有することができる(例えば、Aが、−A1−[HE]−A2−によって表される2個のサブユニットを有する場合のように)。典型的に、AまたはA’は、1個の別個の単位であるか、または2〜4個の別個のサブユニットを有する。
一部の態様では、LRがLSS/LSである場合、Aは、薬物リンカー化合物のM1またはADC化合物における薬物リンカー部分のM2/M3への共有結合性結合に加えて、分岐単位(B)に、存在する必要に応じた二次リンカー(LO)に、またはLOが存在しない場合、一般にA−[HE]−AO−と表されるA[HE]もしくはA1−[HE]−A2におけるように、必要に応じてAOを介してDに直接的に結合している(A/A1およびAO/A2は、LSS/LSの構成成分でもある)。
一部の態様では、AもしくはA’、またはこれらのストレッチャー単位のいずれかのサブユニットは、−LP(PEG)−の式を有し、LPは、並列コネクター単位であり、PEGは、他所に定義される通りのPEG単位である。したがって、それらの態様の一部では、抗体薬物コンジュゲートまたは薬物リンカー化合物の薬物リンカー部分におけるリンカー単位は、−A1−[HE]−LP(PEG)−Aa’−(−LP(PEG)−は、A2である)または下付き文字a’が1である場合A−[HE]−AO−LP(PEG)−(A’a’は、−LP(PEG)−である)の式を含有する。
一部の態様では、下付き文字aが1であり、したがって第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)が存在する場合、その単位は、典型的にLB/LB’を[HE]に接続する少なくとも1個の炭素原子を有する。LB’が薬物リンカー化合物のLSS’一次リンカーのLB’であるそれらの態様の一部では、そのストレッチャー単位は、塩基性単位によって置換されているかまたはそれを組み込み、その他の方法で必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレン部分から構成され、そのラジカル炭素原子の一方はマレイミド窒素原子に、他方は、存在する必要に応じた加水分解増強部分である[HE]に結合している。他の態様では、LR’がLSS’以外であるが、それでもなおマレイミド部分または一部の他のLB’部分から構成されている場合、LB’は、必要に応じた第1のストレッチャー単位(A)(一部の態様では、[HE]と必要に応じて組み合わされる、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキレンである)に結合している。したがって、LR’がLSS’である一部の態様では、第1の必要に応じたストレッチャー単位は存在し、C1〜C12アルキレン部分、[HE]および必要に応じたサブユニット(AO)(それらはすべて、LSSの構成成分である)から構成され、Aは、イミド窒素原子へのC1〜C12アルキレン部分の結合部位から遠位の位置で、B、LOまたはDに結合している。他の態様では、下付き文字aが1であり、Aが単一の個別単位として存在するか、または2個のサブユニットのものである場合、Aは、−A−[HE]−AO−(AOは、Aの必要に応じたサブユニットである)の一般式を有し、またはより具体的には、AOがAの第2のサブユニットとして存在する場合、−A1−[HE]−A2−の式を有する。このような態様では、AO/A2は、α−アミノ酸、β−アミノ酸または他のアミン含有酸残基である。
「分岐単位」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リンカー単位(LU)の必要に応じた構成成分である三官能性有機部分を指す。分岐単位(B)は、式1Aの抗体薬物コンジュゲート(ADC)の式1Aの薬物リンカー部分の一次リンカーに存在する。前述の一般化された式を有するADCでは、分岐単位の非存在または存在は、Bbの下付き文字bによって示され、下付き文字bは、それぞれ0または1である。分岐単位は、一次リンカーに組み込まれるために、三官能性である。式−LU−Dの薬物リンカー部分当たりの複数の−LO−D部分に起因して分岐単位を有する薬物リンカーまたはADC化合物は、典型的に、それぞれ式−A’a−Ww−Yy−を含有する二次リンカー(LO)を有しており、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、Wは、切断可能単位であり、下付き文字wは、0または1であり、それぞれWの非存在または存在を示し、Yは、スペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、それぞれスペーサー単位の非存在または存在を示し、ただし、LOが存在する場合、a’+w+yは0ではない。
一部の態様では、官能化側鎖を有する天然もしくは非天然アミノ酸残基、または別のアミン含有酸化合物の残基は、分岐単位として働く。一部の態様では、Bは、L−またはD−立体配置のリシン、グルタミン酸またはアスパラギン酸残基であり、イプシロン−アミノ、ガンマ−カルボン酸またはベータ−カルボン酸官能基は、それぞれ、それらのアミノおよびカルボン酸末端と共に、LUの残部内のBと相互接続する。
「天然アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、天然に存在するアミノ酸、すなわち、文脈によって別段特定または暗示されない限り、LまたはD−立体配置のアルギニン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、グリシン、アラニン、ヒスチジン、セリン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、トレオニン、システイン、メチオニン、ロイシン、アスパラギン、イソロイシン、およびバリンまたはその残基を指す。
「非天然アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、天然アミノ酸の塩基性構造を有するが、天然アミノ酸には存在しないアルファ炭素に結合している側鎖基を有する、アルファ−アミノ含有酸またはその残基を指す。
「非古典的アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、カルボン酸に対してアルファの炭素に結合しているそのアミン置換基を有しておらず、したがってアルファ−アミノ酸ではない、アミン含有酸化合物を指す。非古典的アミノ酸には、天然アミノ酸または非天然アミノ酸におけるカルボン酸とアミノ官能基との間にメチレンが挿入されているβ−アミノ酸が含まれる。
「ペプチド」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、2個またはそれよりも多いアミノ酸の高分子を指し、1個のアミノ酸のカルボン酸基は、ペプチド配列における次のアミノ酸のアルファ−アミノ基と共にアミド結合を形成している。さらにポリペプチドにおいてアミド結合を調製するための方法は、アミドの定義で提供される。ペプチドは、L−もしくはD−立体配置の天然に存在するアミノ酸、ならびに/または非天然および/もしくは非古典的アミノ酸から構成され得る。
「プロテアーゼ」は、本明細書で定義されている通り、ペプチドに典型的に見出されるアミド結合などのカルボニル−窒素結合を酵素的に切断することができるタンパク質を指す。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよびメタロプロテアーゼの主な6つのクラスに分類され、これらは、その基質のカルボニル−窒素結合の切断に主に関与する活性部位における触媒残基にちなんでそのように命名されている。プロテアーゼは、カルボニル−窒素結合のN末端および/またはC末端側にある残基の同一性、ならびに様々な分布(細胞内および細胞外)に依存する様々な特異性によって特徴付けられる。
調節性プロテアーゼは、典型的に、異常なまたは他の不要な細胞において、時として異常または調節不全になる細胞活性の調節に必要な細胞内プロテアーゼである。ある場合には、ペプチド切断可能単位が細胞内で優先的な分布を有するプロテアーゼに向けられる場合、そのプロテアーゼは、細胞の維持または増殖に関与する調節性プロテアーゼである。それらのプロテアーゼには、カテプシンが含まれる。カテプシンには、セリンプロテアーゼであるカテプシンA、カテプシンG、アスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンD、カテプシンE、ならびにシステインプロテアーゼであるカテプシンB、カテプシンC、カテプシンF、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンWおよびカテプシンZが含まれる。
「ペプチド切断可能単位」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、式1Aの疎水性アウリスタチンF薬物リンカー部分によって例示される通りのリガンド薬物コンジュゲート化合物のアウリスタチン薬物リンカー部分、または式IAの疎水性アウリスタチンF薬物リンカー化合物によって例示される通りのアウリスタチン薬物リンカー化合物の二次リンカー内の有機部分を指し、ペプチド切断可能単位は、プロテアーゼのための認識部位を提供し、そのプロテアーゼの作用時に、そのコンジュゲートしている薬物単位(D)を、遊離アウリスタチン薬物、例えば本明細書で定義されている通りの疎水性アウリスタチンF化合物として酵素的に放出することができる。
プロテアーゼによる切断のための認識部位は、時として、異常細胞、例えばがん細胞に、またはリガンド薬物コンジュゲートによって標的化される、近くの異常細胞の環境に特有の名目上の正常細胞内に見出されるプロテアーゼによって認識される部位に限定される。その目的では、ペプチドは、遊離薬物またはその前駆体への全身曝露からのオフターゲット有害事象をそうでなければ引き起こすおそれがある、その薬物の早計の放出を最小限に抑えるために、循環プロテアーゼに対しては典型的に抵抗性を示す。一部の態様では、ペプチドは、その抵抗性を有するために、1つまたは複数のD−アミノ酸、または非天然もしくは非古典的アミノ酸を有する。それらの態様の一部では、配列は、ジペプチドまたはトリペプチドを含み、P2’部位はD−アミノ酸を含有し、P1’部位は、L−プロリン以外の20種の天然に存在するL−アミノ酸の1つを含有する。
一部の態様では、反応性部位は、標的化される抗原への免疫学的に選択的な結合の後に、酵素的に作動する可能性がより高い。それらの態様の一部では、標的化される抗原は異常細胞上に存在し、したがって認識部位は、標的化される異常細胞への抗体薬物コンジュゲート化合物の細胞内部移行後に、酵素的に作動する可能性がより高い。結果として、それらの異常細胞は、正常細胞と比較してより多いコピー数で標的化される抗原を呈示して、オンターゲット有害事象を軽減するはずである。
それらの態様の他では、標的化される抗原は、異常細胞の環境内に存在し、その環境に独特の正常細胞上に存在し、したがって認識部位は、これらの標的化される正常細胞への抗体薬物コンジュゲート化合物の細胞内部移行後に、酵素的に作動する可能性がより高い。結果として、それらの正常細胞は、がん細胞部位から遠くにある正常細胞と比較してより多いコピー数で標的化される抗原を呈示して、オンターゲット有害事象を軽減するはずである。
ある場合には、認識部位に向かうプロテアーゼ反応性は、がん細胞部位には存在しないか、またはがん細胞部位から遠くにある正常細胞と比較して、標的化されるがん細胞内または近くの標的化される正常細胞においてより高い。そのより高い反応性は、一部の態様では、標的化される細胞内の細胞内プロテアーゼ活性の量がより多いことに起因する。しかし、コンジュゲート化合物は、標的化される部分を優先的に呈示しない細胞には到達しにくいので、プロテアーゼは、標的化される細胞に優先的に存在するか、またはより豊富に見出される必要は必ずしもない。ある場合には、細胞内プロテアーゼは、調節性プロテアーゼであり、典型的に、ペプチド切断可能単位のペプチド結合は、血清プロテアーゼと比較して、細胞内調節性プロテアーゼによって選択的に切断され得る。
他の態様では、プロテアーゼは、がん細胞によって、または典型的に標的化される異常細胞の影響下にはないそれらの典型的な環境下にある正常細胞と比較して、それらのがん細胞が見出される環境にある名目上の正常細胞によって優先的に排出される。したがって、プロテアーゼが排出される場合、プロテアーゼは必然的に、不要なオフターゲット効果を低減するように、遠くにある正常細胞と比較して、コンジュゲートによって標的化される細胞の近傍に優先的に存在するか、またはより豊富に見出される必要がある。Wが、標的化されるがん細胞による、またはその排出が異常細胞の環境に独特の、隣接する名目上の正常細胞による優先的な排出に起因してこのような細胞の近傍の細胞外に優先的に分布するプロテアーゼに向けられたペプチド切断可能単位である場合、そのプロテアーゼは、通常、メタロプロテアーゼである。典型的に、このようなプロテアーゼは、組織再構築に関与し、それによって、異常細胞の侵襲性または不適切な部位におけるそれらの蓄積を助け、その結果、このような細胞がさらに動員される。
ペプチド切断可能単位を含有する二次リンカーは、典型的に、−A’a’−Ww−Yy−の式を有し、A’は、第2の必要に応じたスペーサー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、Wは、ペプチド切断可能単位であり、下付き文字wは、1であり、Yは、必要に応じたスペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、ペプチド切断可能単位を構成するペプチド配列に対するプロテアーゼ作用は、下付き文字yが0である場合、Dの直接的な放出をもたらすか、または下付き文字yが1である場合、式Y−Dの薬物−ペプチド断片を遊離薬物の前駆体としてもたらし、Yは、典型的にエキソペプチダーゼによって酵素的処理を受けて、遊離薬物を提供する。
一部の態様では、二次リンカーがペプチド切断可能単位を含有する薬物リンカー化合物は、式IC:
抗体薬物コンジュゲートの対応する薬物リンカー部分は、式1Dまたは式1E:
[式中、Wは、ペプチド切断可能単位であり、式ICのM1−Aa−Bb、式1Dの−M2−Aa−Bb−および式1Eの−M3−Aa−Bb−は、一次リンカーであり、M1は、マレイミド部分であり、M2は、スクシンイミド部分であり、M3は、コハク酸アミド部分であり、Yは、必要に応じたスペーサー単位であり、残りの可変基は、式IAの薬物リンカー化合物および式1Aの薬物リンカー部分について定義される通りである]によって表される。本発明のM1部分を含有する薬物リンカー化合物のLSS’一次リンカー、およびM2部分を含有する一部のADCにおける薬物リンカー部分のLSS一次リンカーは、Aまたはそのサブユニットが塩基性単位によって置換されているかまたはそれを組み込む、式である。他の一次リンカーは、先の式1CのM2含有LSS一次リンカーから、それらのスクシンイミド部分の加水分解によって導出されて、式1DのM3含有部分を提供する、LS一次リンカーである。
先の態様のいずれか1つでは、標的化される細胞によってまたは標的化される細胞内で生成されたプロテアーゼによって特異的に切断されるアミド結合は、集合的にアウリスタチンF薬物単位と呼ばれる、アウリスタチンAFまたは疎水的に修飾されたAF薬物単位またはその関連構造のC末端へのものある。他の態様では、AF薬物単位のC末端に結合しているペプチド配列の内部ペプチド結合は、特異的に切断され、それによって、アミド結合を介してアウリスタチンAF薬物単位のC末端に結合している1個または複数のアミノ酸残基を有する二次薬物リンカー断片が生じる。次いで、その断片に対するその後のエキソペプチダーゼ作用により、遊離薬物が提供される。したがって、Wにおけるペプチド配列のいずれかのタイプに対するプロテアーゼ作用により、Dの、遊離薬物またはその前駆体Y−Dとしての放出がもたらされ、前駆体Y−Dは、遊離薬物を提供するためにさらに処理される。
「スペーサー単位」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、集合的にアウリスタチンF薬物単位と呼ばれる、アウリスタチンF(AF)または疎水的に修飾されたAF薬物単位またはその関連構造に共有結合によって結合しており、一部の態様では、下付き文字a’が1である場合、構造S1の一般化された二次リンカーに存在する場合の第2の必要に応じたストレッチャー単位(A’)にも共有結合によって結合している、抗体薬物コンジュゲートまたは薬物リンカー化合物のリンカー単位(LU)内の二次リンカー(LO)の構成成分を指す。それらの態様では、Yyは、WおよびDに共有結合によって結合しており、Wは、ペプチド切断可能単位であり、Wに結合しているYは、典型的に存在しないか(下付き文字yは0である)、または存在する場合(下付き文字yは1である)、アミノ酸残基もしくはペプチド切断可能単位から導出されたペプチド断片である。
一態様では、LU−Dの二次リンカー(LO)は、一般化された式−A’a’−Ww−Yy−を有しており、下付き文字a’は、0または1であり、下付き文字w’は、1であり、下付き文字yは、0または1である。それらの態様では、W、Yy、およびDは、互いに直鎖立体配置にあり、したがってペプチド切断可能単位としてのWおよび薬物単位は、スペーサー単位に共有結合によって結合している。その直鎖立体配置では、Wに対するプロテアーゼ作用により、遊離アウリスタチン薬物としてのアウリスタチン薬物単位の放出が開始される。一部の態様では、YとWとの間のアミド結合により、切断部位が提供され、他の態様では、Yは、ペプチド切断可能単位の切断部位を薬物単位から分離するように働いて、Wの切断を妨害し得る薬物単位からの立体相互反応を回避する。
「PEG単位」は、本明細書で使用される場合、
の式を有するエチレングリコールサブユニットの反復を有するポリエチレングリコール部分(PEG)を含む基を指す。
PEGには、多分散PEG、単分散PEGおよび離散PEGが含まれる。多分散PEGは、サイズおよび分子量が不均質な混合物であり、一方、単分散PEGは、典型的に不均質な混合物から精製されており、したがって単一の鎖長および分子量を提供する。離散PEGは、重合プロセスを介さずに段階的に合成されている化合物である。離散PEGは、定義された特定の鎖長を有する単一分子を提供する。
PEG単位は、少なくとも2個のサブユニット、少なくとも3個のサブユニット、少なくとも4個のサブユニット、少なくとも5個のサブユニット、少なくとも6個のサブユニット、少なくとも7個のサブユニット、少なくとも8個のサブユニット、少なくとも9個のサブユニット、少なくとも10個のサブユニット、少なくとも11個のサブユニット、少なくとも12個のサブユニット、少なくとも13個のサブユニット、少なくとも14個のサブユニット、少なくとも15個のサブユニット、少なくとも16個のサブユニット、少なくとも17個のサブユニット、少なくとも18個のサブユニット、少なくとも19個のサブユニット、少なくとも20個のサブユニット、少なくとも21個のサブユニット、少なくとも22個のサブユニット、少なくとも23個のサブユニット、または少なくとも24個のサブユニットを含む。一部のPEG単位は、72個までのサブユニットを含む。
「PEGキャッピング単位」は、本明細書で使用される場合、PEG単位の繋ぎ止められていない遊離末端で終端している、名目上、非反応性の有機部分または官能基であり、一部の態様では水素以外である。それらの態様では、PEGキャッピング単位は、メトキシ、エトキシもしくは他のC1〜C6エーテルであるか、または−CH2−CO2H、または他の適切な部分である。したがって、エーテル、−CH2−CO2H、−CH2CH2CO2H、または他の適切な有機部分は、PEG単位の末端PEGサブユニットのためのキャップとして作用する。
「並列コネクター単位」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、典型的に、第1または第2のストレッチャー単位のサブユニットとしてそのリンカー単位に存在する、薬物リンカー化合物の有機部分またはリガンド薬物コンジュゲート化合物の薬物リンカー部分を指し、並列コネクター単位(LP)は、その薬物単位の疎水性を少なくとも部分的に低減するように、それに結合しているPEG単位を、疎水性薬物単位に対して並列配向で配向することができる。一部の態様では、必要な場合、疎水的に修飾されたLDCと親アウリスタチンLDCとの間で同等の薬物負荷を達成するために、親アウリスタチンF薬物単位に対して対応する薬物単位の疎水性の増大を少なくとも部分的に遮蔽するように、疎水性アウリスタチンF遊離薬物から疎水性が低減される。LPおよび関連PEG単位およびPEGキャッピング単位の構造は、参照により本明細書に具体的に組み込まれるWO2015/5057699により記載されており、一部の態様では、LPは、三官能性α−アミノ酸、β−アミノ酸または他の三官能性アミン含有酸残基である。
本明細書で使用される「細胞内で切断される」、「細胞内切断」および類似用語は、リガンド薬物コンジュゲート上などで標的化される細胞内の代謝プロセスまたは反応が生じ、それによって、コンジュゲートのアウリスタチン薬物単位とリガンド単位との間の、そのリンカー単位を介する共有結合性結合が破壊され、その結果、標的化される細胞内でDがアウリスタチン化合物として放出される、例えば疎水性アウリスタチンF化合物として放出されることを指す。
「血液悪性腫瘍」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リンパ系または骨髄性起源の細胞を起源とする血液細胞腫瘍を指し、「液性腫瘍」という用語と同義である。血液悪性腫瘍は、低悪性度、中悪性度または高悪性度と分類され得る。
「リンパ腫」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リンパ系起源の過剰増殖細胞から通常発生する血液悪性腫瘍を指す。リンパ腫は、時としてホジキンリンパ腫(HL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)の2つの主なタイプに分類される。リンパ腫はまた、表現型、分子または細胞発生のマーカーにより、がん細胞に最も類似している正常細胞型に従って分類することができる。その分類に入るリンパ腫サブタイプには、限定なく、成熟B細胞新生物、成熟T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞新生物、ホジキンリンパ腫および免疫不全関連リンパ増殖性障害が含まれる。リンパ腫サブタイプには、前駆体T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T細胞リンパ芽球は骨髄内で生成されるので、時としてリンパ芽球性白血病と呼ばれる)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性リンパ腫(末梢血関与に起因して、時として白血病と呼ばれる)、MALTリンパ腫、バーキットリンパ腫、菌状息肉症およびそのより高悪性度のバリアントであるセザリー疾患、別段特定されない末梢性T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫の結節硬化症、ならびにホジキンリンパ腫の混合細胞型サブタイプが含まれる。
「白血病」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、骨髄性起源の過剰増殖細胞から通常発生する血液悪性腫瘍を指し、それには、限定なく、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)および急性単球性(monocyctic)白血病(AMoL)が含まれる。他の白血病には、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞リンパ管白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ球性白血病および成人T細胞白血病が含まれる。
「過剰増殖細胞」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、周囲の正常組織のものとは無関係であるか、または協調していない、不要な細胞増殖、または細胞分裂の異常に高い速度もしくは持続状態、または他の細胞活性によって特徴付けられる異常細胞を指す。一部の態様では、過剰増殖細胞は、過剰増殖哺乳動物細胞である。他の態様では、過剰増殖細胞は、本明細書で定義されている通りの過剰刺激免疫細胞であり、その細胞分裂または活性化の持続状態は、それらの細胞分裂の変化を最初に誘発した可能性がある刺激の休止後に生じる。他の態様では、過剰増殖細胞は、形質転換した正常細胞またはがん細胞であり、細胞増殖のそれらの制御されていない進行状態は、良性、潜在的悪性(前悪性)または明確に悪性である腫瘍をもたらし得る。形質転換した正常細胞またはがん細胞から生じる過剰増殖状態には、それらに限定されるものではないが、前がん、過形成、異形成、腺腫、肉腫、芽細胞腫、癌腫、リンパ腫、白血病または乳頭腫として特徴付けられるものが含まれる。前がんは、通常、組織学的変化を示しており、がん発生の高い危険性と関連し、時としてがんを特徴付ける分子および表現型特性のすべてではないが一部を有する病変と定義される。ホルモン関連またはホルモン感受性前がんには、限定なく、前立腺上皮内腫瘍(PIN)、特に高グレードのPIN(HGPIN)、非定型小腺房増殖(ASAP)、子宮頚部異形成および非浸潤性乳管癌が含まれる。過形成は、一般に、臓器の全体的な拡大、または良性腫瘍の形成もしくは成長をもたらし得る、普通見られるものを上回る臓器または組織内の細胞増殖を指す。過形成には、それに限定されるものではないが、子宮内膜増殖症(子宮内膜症)、良性前立腺肥大症および乳管過形成が含まれる。
「正常細胞」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、正常組織の細胞完全性の維持、または調節された細胞代謝回転によって必要とされる循環リンパ細胞もしくは血液細胞の補充、または傷害によって必然的に生じる組織修復、あるいは病原体への曝露または他の細胞侵襲から生じる免疫調節または炎症応答に関係する、協調された細胞分裂を受ける細胞を指し、誘発された細胞分裂または免疫応答は、必要な維持、補充または病原体クリアランスの完了時に終了する。正常細胞には、正常増殖細胞、静止状態の正常細胞および正常に活性化された免疫細胞が含まれる。正常細胞には、静止状態の正常細胞が含まれ、これは、それらの休止Go状態にあり、ストレスもしくはマイトジェンによって刺激されていない非がん性細胞であるか、または通常は不活性であるかもしくは炎症促進性サイトカイン曝露によって活性化されていない免疫細胞である。
「異常細胞」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、リガンド薬物コンジュゲートによって防止または処置されることを意図される病状を促進または永続化する原因になる不要な細胞を指す。異常細胞には、過剰増殖細胞および過剰刺激免疫細胞が含まれ、これらの用語は、他所に定義される通りである。異常細胞はまた、他の異常細胞の環境に存在するが、それにもかかわらずこれらの他の異常細胞、例えば腫瘍細胞の増殖および/または生存を支持する、名目上の正常細胞を指す場合があり、したがって名目上の正常細胞を標的化することにより、腫瘍細胞の増殖および/または生存が間接的に阻害される。
「過剰刺激免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、増殖もしくは刺激の変化を最初に誘発した可能性がある刺激の休止後に生じるか、または任意の外部侵襲の非存在下で生じる、異常な持続的増殖または不適切な刺激状態によって特徴付けられる先天性または適応性免疫に関与する細胞を指す。多くの場合、持続的増殖または不適切な刺激状態は、病状または状態に特徴的な慢性炎症状態をもたらす。ある場合には、増殖または刺激の変化を最初に誘発した可能性がある刺激は、外部侵襲に起因しないが、自己免疫疾患におけるように内部で導出されている。一部の態様では、過剰刺激免疫細胞は、慢性炎症促進性サイトカイン曝露を介して過剰活性化された炎症促進性免疫細胞である。
本発明の一部の態様では、リガンド薬物コンジュゲート組成物のリガンド薬物コンジュゲート化合物は、異常に増殖しているか、または不適切もしくは持続的に活性化されている炎症促進性免疫細胞によって優先的に呈示される抗原に結合する。それらの免疫細胞には、古典的活性化マクロファージまたは1型Tヘルパー(Th1)細胞が含まれ、それらは、マクロファージおよびCD8+T細胞活性化に関与するサイトカインである、インターフェロン−ガンマ(INF−γ)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−10(IL−10)、および腫瘍壊死因子−ベータ(TNF−β)を生成する。
「バイオアベイラビリティ」は、文脈によって別段記述または暗示されない限り、患者に投与された所与の量の薬物の全身アベイラビリティ(すなわち、血液/血漿レベル)を指す。バイオアベイラビリティは、投与された剤形から全身循環に到達する薬物の時間(速度)および総量(程度)の両方の測定を示す絶対用語である。
「対象」は、文脈によって別段記述または暗示されない限り、有効量のリガンド薬物コンジュゲートの投与から利益を得ることができる、過剰増殖、炎症もしくは免疫障害、または異常細胞に起因する他の障害を有するか、あるいはこのような障害を生じやすい、ヒト、非ヒト霊長類または哺乳動物を指す。対象の非限定的な例として、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、トリおよび家禽が挙げられる。典型的に、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウスまたはイヌである。
「担体」は、文脈によって別段指定または暗示されない限り、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバントまたは賦形剤を指す。このような医薬担体は、液体、例えば水、および石油、動物、植物または合成起源の油を含めた油、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油であってよい。担体は、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、ウレアであってよい。さらに、助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤を使用することができる。一実施形態では、化合物または組成物および薬学的に許容される担体は、対象に投与される場合、無菌である。水は、化合物が静脈内投与される場合の例示的な担体である。特に注射可能な溶液のための液体担体として、生理食塩水溶液および水性ブドウ糖およびグリセロール溶液を用いることもできる。適切な医薬担体には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどの賦形剤も含まれる。本組成物は、所望に応じて少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。
「塩形態」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段示されない限り、全体的に中性の種を形成するように、対カチオンおよび/または対アニオンとイオン的に会合している荷電化合物を指す。一部の態様では、化合物の塩形態は、親化合物の塩基性または酸性官能基の、それぞれ外部の酸または塩基との相互作用を介して生じる。他の態様では、対アニオンと会合している化合物の荷電原子は、神経種に対する自発的電離が、窒素原子が四級化されている場合のように親化合物の構造的完全性を変えずには生じることができないという意味で、永久的である。したがって、化合物の塩形態は、その化合物内の四級化窒素原子、ならびに/またはそのそれぞれが対アニオンとイオン的に会合している、その化合物の塩基性官能基および/もしくはイオン化カルボン酸のプロトン化形態を含むことができる。一部の態様では、塩形態は、同じ化合物内の塩基性官能基とイオン化酸官能基の相互作用から生じるか、または酢酸イオン、コハク酸イオンもしくは他の対アニオンなどの負電荷分子の包含を含むことができる。したがって、塩形態の化合物は、その構造に1個よりも多い荷電原子を有することができる。親化合物の複数の荷電原子が塩形態の一部である場合、その塩形態は、複数の対イオンを有することができ、したがって化合物の塩形態は、1個もしくは複数の荷電原子および/または1個もしくは複数の対イオンを有することができる。対イオンは、親化合物上の反対の電荷を安定にする任意の荷電有機または無機部分であってよい。
化合物のプロトン化塩形態は、典型的に、第一級、第二級もしくは第三級アミンまたは他の塩基性アミン官能基などの化合物の塩基性官能基が、塩基性官能基のプロトン化に適したpKaの有機または無機酸と相互作用する場合、あるいはカルボン酸などの適切なpKaを有する化合物の酸官能基が、水酸化物塩、例えばNaOHもしくはKOH、または酸官能基の脱プロトン化に適した強度の有機塩基、例えばトリエチルアミンと相互作用する場合に得られる。一部の態様では、塩形態の化合物は、少なくとも1個の塩基性アミン官能基を含有し、したがって酸付加塩は、このアミン基(環式または非環式塩基性単位の塩基性アミン官能基を含む)を用いて形成することができる。薬物リンカー化合物の文脈における適切な塩形態は、標的化剤とリガンド薬物コンジュゲートを提供する薬物リンカー化合物との間の縮合反応を過度に妨害しない塩形態である。
「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使用される場合、文脈によって別段示されない限り、その対イオンの、意図された対象への塩形態での投与に許容される化合物の塩形態を指し、それには無機および有機対カチオンおよび対アニオンが含まれる。環式または非環式の塩基性単位におけるものなどの塩基性アミン官能基のための例示的な薬学的に許容される対アニオンとして、それらに限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))が挙げられる。
典型的に、薬学的に許容される塩は、P. H. Stahl and C. G.Wermuth, editors, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection andUse, Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA, 2002に記載される塩から選択される。塩の選択は、意図された投与経路、取扱いに適した流れ特徴および低吸湿性(すなわち、相対湿度に対する吸水)を伴う結晶化度、ならびに加速条件下(すなわち、40℃および75%相対湿度で保存した場合の分解または固体状態の変化を決定するため)で、凍結乾燥製剤の場合のように化学的および固体状態の安定性を決定することによる必要な保存期間に応じて薬物生成物が示さなければならない、様々なpH値における適切な水溶性を含めた特性に依存する。
「阻害する」、「の阻害」および類似用語は、文脈によって別段記述または暗示されない限り、望ましくない活性またはアウトカムを測定可能な量だけ低減するか、または完全に防止することを意味する。一部の態様では、望ましくないアウトカムまたは活性は、異常細胞に関係し、それには、病状の根本にある過剰増殖または過剰刺激または他の調節不全の細胞活性が含まれる。リガンド薬物コンジュゲートによるこのような調節不全の細胞活性の阻害は、典型的に、細胞培養(in vitro)または異種移植モデル(in vivo)におけるような適切な試験系において、未処置細胞(ビヒクルで処置したシャム)に対して決定される。典型的に、目的の異常細胞上に存在しないか、もしくは少ないコピー数を有するか、または任意の公知の抗原を認識しないように遺伝子操作されている抗原を標的化するリガンド薬物コンジュゲートは、陰性対照として使用される。
「処置する」、「処置」および類似用語は、文脈によって別段示されない限り、再発を防止するための予防策を含めた治療的処置を指し、目的は、望ましくない生理的変化または障害、例えばがんの発生もしくは拡大、または慢性炎症からの組織損傷を阻害または緩徐する(減少させる)ことである。典型的に、このような治療的処置の有益なまたは所望の臨床的利益には、それらに限定されるものではないが、検出可能か否かにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、病状の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患進行の遅延または緩徐、病状の回復または緩和、および寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれる。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存または生活の質と比較して、生存または生活の質を高めることを意味することができる。処置を必要とするものには、状態または障害を既に有しているもの、ならびに状態または障害を有する傾向があるものが含まれる。
がんの文脈では、「処置すること」という用語は、腫瘍細胞、がん細胞もしくは腫瘍の成長を阻害すること、腫瘍細胞もしくはがん細胞の複製を阻害すること、腫瘍細胞もしくはがん細胞の伝播を阻害すること、全体的な腫瘍負荷を減少させること、もしくはがん性細胞の数を低減すること、またはがんと関連する1つもしくは複数の症状を回復させることのいずれかまたはすべてを含む。
「治療有効量」は、用語が本明細書で使用される場合、文脈によって別段記述または暗示されない限り、哺乳動物の疾患または障害を処置するのに有効な遊離薬物、または遊離薬物として放出される薬物単位を有するリガンド薬物コンジュゲートの量を指す。がんの場合、治療有効量の遊離薬物またはリガンド薬物コンジュゲートは、がん細胞の数を低減し、腫瘍サイズを縮小し、末梢臓器へのがん細胞の浸潤を阻害し(すなわち、ある程度緩徐し、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度緩徐し、好ましくは停止させる)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/またはがんと関連する症状の1つもしくは複数をある程度和らげることができる。遊離薬物またはリガンド薬物コンジュゲートは、それが既存のがん細胞の成長を阻害し、かつ/または死滅させることができる程度まで、細胞増殖抑制性または細胞傷害性であってよい。がん治療について、有効性は、例えば奏効率(RR)および/または全生存期間(OS)を決定する疾患進行(TTP)までの時間をアセスメントすることによって測定することができる。
過剰刺激免疫細胞から生じる免疫障害の場合、治療有効量の薬物は、過剰刺激免疫細胞の数、それらの刺激の程度、および/もしくはそれ以外では正常組織への浸潤を低減する、かつ/または過剰刺激免疫細胞に起因する調節不全の免疫系と関連する症状の1つもしくは複数をある程度和らげることができる。過剰刺激免疫細胞に起因する免疫障害について、有効性は、例えば1つもしくは複数のサイトカインレベル、例えばIL−1β、TNFα、INFγおよびMCP−1についてのレベル、または古典的活性化マクロファージの数を含めた1つまたは複数の炎症性代替物をアセスメントすることによって測定することができる。
本発明の一部の態様では、リガンド薬物コンジュゲート化合物は、標的化される細胞(すなわち、異常細胞、例えば過剰増殖細胞または過剰刺激免疫細胞)の表面上の抗原と会合し、次いでコンジュゲート化合物は、標的化される細胞内に受容体媒介性エンドサイトーシスを介して取り込まれる。細胞内部に取り込まれると、コンジュゲートのリンカー単位内の1つまたは複数の切断単位が切断され、その結果、薬物単位(D)が遊離薬物として放出される。次いで、そのように放出された遊離薬物は、サイトゾル内に遊走し、細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性活性を誘導することができるか、または過剰刺激免疫細胞の場合、代替として炎症促進性シグナル伝達を阻害することができる。本発明の別の態様では、薬物単位(D)は、標的化される細胞の外側で、ただし標的化される細胞の近傍内で、リガンド薬物コンジュゲート化合物から放出され、したがって、その放出から生じた遊離薬物は所望の作用部位に局在し、その後、遠位部位で早計に放出されるのではなく細胞に透過することができる。
2.実施形態
本発明のいくつかの実施形態を以下に記載した後、本発明のプロセスにおいて有用な構成成分、例えば、基、試薬、およびステップについてより詳細に議論する。プロセスの構成成分のために選択された実施形態のいずれも、本明細書に記載されている通り、本発明のありとあらゆる態様に適用することができか、または単一の態様に関係し得る。選択された実施形態は、疎水性アウリスタチンF薬物単位を有するアウリスタチンリガンド薬物コンジュゲート、薬物リンカー化合物またはその中間体を説明するのに適した任意の組合せで一緒に組み合わせることができる。
2.1 疎水性アウリスタチン薬物単位
疎水性アウリスタチン薬物単位は、遊離薬物として放出された場合にMDR+およびバイスタンダーの二重活性を示すように親化合物の疎水性が増大されている、コンジュゲート形態の疎水的に修飾されたアウリスタチンFまたはアウリスタチンF型化合物に関する。このような薬物単位を有するリガンド薬物コンジュゲートは、アウリスタチンE(AE)およびモノメチルアウリスタチンE(MMAE)コンジュゲートについて観察されるバイスタンダー細胞傷害性と、アウリスタチンF(AF)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)のMDR+細胞傷害性を組み合わせる。コンジュゲーションは、疎水性AF化合物のC末端構成成分を介して、特にその構成成分のカルボン酸官能基を介してであり、したがって、そのコンジュゲーションから得られたリガンド薬物コンジュゲート化合物の薬物リンカー化合物または薬物リンカー部分から薬物単位が放出されると、カルボン酸官能基が修復されている遊離薬物が提供される。必要な疎水性の増大は、一部の実施形態では、AFの1個または複数の置換基を、より高い疎水性の独立に選択された非芳香族置換基で置き換えることによって、特にN末端メチル置換基の一方もしくは両方を置き換えることによって、かつ/またはDil残基のN−メチル置換基を置き換えることによって達成される。他の実施形態では、置換えは、C末端構成成分が別の酸含有アミン残基で置き換えられており、かつ/または内部バリン残基が異なる疎水性の非芳香族α−炭素側鎖を有するα−アミノ酸残基で置き換えられることによって、AF型化合物で行われる。
それらの実施形態のいずれか1つでは、置換えにより、約4.1の親AF化合物のcLogP値、ならびにそれぞれ約3.7および約3.5のモノメチルアウリスタチンF(MMAF)およびモノメチルアウリスタチンE(MMAE)のcLogP値を提供する方法に従って算出した、約4.4〜7.2の間のcLogP値を有する疎水性AF化合物が提供される。好ましい実施形態では、cLogP値の算出には、Viswanadhan, V.N. et al. J. Chem. Inf. Comput. (1989) 29: 163-172の方法が使用される。中性形態の本明細書に記載される特異的な疎水性AF化合物についてのそれらおよび他のcLogP値を、表1に提供する。
好ましい実施形態では、所望の疎水性の増大は、AFのN末端構成成分における1個または複数のN−メチル置換基を、独立に選択された非芳香族置換基で置き換えることによって得られ、したがって、得られる疎水性AF化合物は、
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[式中、Arは、必要に応じて置換された、フェニル、チエニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはベンゾ[b]チオフェン−3−イルであり、
R2は、C1〜C2アルキルであり、
R3は、水素またはC1〜C2アルキルであり、
R1は、飽和C1〜C9アルキルおよび不飽和C3〜C9アルキルを含めたC1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子のカルボシクリル−アルキル−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、または
R1は、(C2〜C6アルキル)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、
親AF化合物は、R1およびR2がメチルであり、R3が水素であり、Arがフェニルである、先の式の構造を有しており、
ただし、R1、R2およびR3のカルボシクリル(もしあれば)およびアルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、3〜10の間であり、R1、R2およびR3は、メチルではない]を有する。
他の好ましい実施形態では、疎水性AF化合物は、Arが、フェニルであり、R3が、水素であり、R1が、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2が、第2の非芳香族疎水性部分であり、R1およびR2が、約4.4〜約7.2の間のclogPによって特徴付けられる式H−AFの疎水性アウリスタチンF化合物を提供する、式H−AF、またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する。
他の好ましい実施形態では、所望の疎水性の増大は、AFのDilアミノ酸残基のN−メチル置換基を、可変基R5で置き換えることによって得られ、R5は、C2〜C6アルキルであるか、または(C2〜C6アルキレン)−X’−R6の式を有しており、X’は、独立に選択されたアミドまたはカルバメート官能基であり、R6は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1、R2、R3およびR5のアルキル部分における炭素原子の総数は、3〜10の間である。代表的なR5置換基は、−CH2CH2CH3、−CH2CH2CH2CH(CH3)2、−CH2CH2NH(C=O)−O−t−Buおよび−CH2CH2NH(C=O)−CH(CH3)2である。
他の好ましい実施形態では、疎水性AF化合物は、内部バリン残基が、異なる疎水性の非芳香族α−炭素側鎖を有するL−α−アミノ酸残基によって置き換えられている、式H−AFの構造を有する。代表的な内部バリン残基の置換えは、以下の構造:
を有する。
さらに他の好ましい実施形態では、疎水性AF化合物は、C末端構成成分が別の酸含有アミン残基によって置き換えられている、式H−AFの構造を有する。代表的なC末端構成成分の置換えは、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する。
より好ましい実施形態では、R2は、メチルであり、R3は、水素であるか、またはR3は、水素であり、Arは、フェニルであるか、またはR2は、メチルであり、Arは、フェニルであるか、またはR2は、メチルであり、R3は、水素であり、Arは、フェニルである。
先の実施形態のいずれか1つでは、R1が、必要に応じて分枝鎖状のC4〜C9アルキルであるか、または−(CH2)3〜5−N(R7)−C(=O)−R4もしくは−(CH2)3〜5−N(R7)−C(=O)−OR4の式を有しており、R4が、C1〜C4アルキルであり、R7が、水素もしくは非分枝鎖C1〜C3アルキルであるか、あるいは
R1が、分枝鎖C4〜C9アルキルであるか、または−(CH2)3〜5−N(R7)−C(=O)−R4もしくは−(CH2)3〜5−N(R7)−C(=O)−OR4の式を有しており、R4が、t−ブチルまたは−CH2C=CH2であり、R7が、水素またはメチルであり、R2が、メチルであるものがより好ましい。
特に好ましい実施形態では、R2は、メチルであり、R3は、水素であり、Arは、フェニルであり、R1は、−(CH2)3〜5−N(CH3)−C(=O)−O−t−Bu、−(CH2)3−NH−C(=O)−O−t−Bu、−CH2CH2CH2NH−C(=O)−t−Buであるか、または
R1は、−CH2CH2CH2CH3もしくは−CH2CH2CH2CH2CH3であるか、または
より特に好ましい実施形態では、疎水性AF化合物は、化合物1〜10:
のいずれか1つの構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する。
特に好ましい実施形態では、疎水性AF化合物は、化合物1〜4の1つの構造を有する。
2.2 アウリスタチンリガンド薬物コンジュゲート
アウリスタチンリガンド薬物コンジュゲート(AFのLDC)は、介在するリンカー単位(LU)を介してリガンド単位に接続しているアウリスタチン薬物単位を有する組成物またはその化合物である。アウリスタチンF(AF)および疎水性AF薬物単位を含めたアウリスタチンリガンド薬物コンジュゲートは、一般に、式1:
L−[LU−(D’)]p (1)
またはその塩、特に薬学的に許容されるその塩[式中、Lは、リガンド単位であり、LUは、リンカー単位であり、下付き文字pは、1〜24の範囲の数であり、D’は、式−LU−D’の薬物リンカー部分ごとに同じアウリスタチン遊離薬物を組み込むか、またはそれに対応する1〜4個のアウリスタチン薬物単位を表し、リガンド単位は、後の遊離アウリスタチン薬物の放出のために、標的化される部分に特異的かつ選択的に結合することができ、組成物のリガンド薬物コンジュゲート化合物における各アウリスタチン薬物リンカー部分は、式1A:
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容されるその塩を有し、波線は、Lへの共有結合性結合を示し、LBは、リガンド共有結合性結合部分であり、Aは、第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字aは、0または1であり、それぞれAの存在の非存在を示し、Bは、必要に応じた分岐単位であり、下付き文字bは、0または1であり、それぞれBの存在の非存在を示し、LOは、必要に応じた二次リンカー部分であり、Dは、疎水性AF薬物単位であり、下付き文字qは、1〜4の範囲の整数であり、
LDC化合物は、下付き文字pが下付き文字p’によって置き換えられており、下付き文字p’が1〜24の範囲の整数である、式1の構造を有する]によって表される。
本発明の原理実施形態では、Dは、疎水性アウリスタチンF薬物単位であり、標的化リガンド単位(L)は、後のDの、式H−AFの遊離疎水性アウリスタチンF薬物としての放出のために、標的化される部分に選択的に結合することができ、標的化される部分は、好ましくは、前記結合の際に結合した疎水性アウリスタチンFリガンド薬物コンジュゲート化合物を異常細胞内に内部移行して、前記内部移行の際に遊離薬物の細胞内放出を開始することができる。それらの実施形態では、式1のD’は、1〜4個の疎水性AF薬物単位を表し、式1AのDは、式H−AF遊離薬物を組み込むか、またはそれに対応する単一の疎水性AF薬物単位である。
式1Aの薬物リンカー部分の−Lb−Aa−Bb−部分は、一般に、式1のリンカー単位(LU)の一次リンカー(LR)を表し、LOは、LUの必要に応じた二次リンカーであり、これは存在する場合、
[式中、A’に隣接する波線は、一次リンカーへの共有結合性結合部位を示し、Yに隣接する波線は、アウリスタチン薬物単位への共有結合性結合部位を示し、A’は、第2の必要に応じたスペーサー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、Wは、切断可能単位であり、下付き文字wは、0または1であり、A’の非存在または存在を示し、Yは、スペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、それぞれスペーサー単位の非存在または存在を示す]を有する。
集合的にアウリスタチンF遊離薬物と呼ばれる、AF、AF型化合物およびそれらに関連する式H−AFの疎水的に修飾されたAF遊離薬物について、対応するLDCは、それらのC末端構成成分を介して、特にその構成成分のカルボン酸官能基を介してアウリスタチンF薬物単位のコンジュゲーションを有する。それらの実施形態の一部では、Wは、プロテアーゼのための認識部位を提供するペプチド切断可能単位であり、アウリスタチンF薬物単位に直接的に結合し、したがって、下付き文字wは1であり、下付き文字yは0である。それらの実施形態の他では、ペプチド切断可能単位を構成するペプチド配列は、スペーサー単位を提供する追加のアミノ酸残基を有し、したがって、下付き文字wは1であり、下付き文字yは1である。それらの実施形態では、W、YおよびDは、−W−Yy−Dによって表される通り、直鎖立体配置に配置され、Wは、ペプチド切断可能単位であり、Yは、必要に応じたスペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、それぞれYの非存在または存在を示し、Dは、アウリスタチンF薬物単位であり、これは本発明の原理実施形態では、疎水性AF薬物単位である。下付き文字yが1である場合、プロテアーゼによる切断により、式Y−Dの二次薬物リンカー断片が提供され、その後、原理実施形態では式H−AFの構造を有するアウリスタチン遊離薬物が完全に放出されるように、エキソペプチダーゼの酵素的作用が生じて、スペーサー単位(Y)によって寄与される残りのアミノ酸残基が除去される。それらの実施形態の一部では、プロテアーゼ認識配列を提供するアミノ酸配列、および認識配列のエンドペプチダーゼ切断後に残るスペーサー単位によって寄与されるアミノ酸残基は、単一ペプチド配列内に含有される。
他の実施形態では、下付き文字a’は、1であり、下付き文字wは、1であり、下付き文字yは、0であり、第2の必要に応じたスペーサー単位A’またはそのサブユニットは、ペプチド切断可能単位(W)にプロテアーゼ認識部位の一部を提供する。その態様では、認識部位がWのペプチド配列内にある場合のように、必要に応じた二次リンカー(LO)が存在する。LOが存在する他の態様では、下付き文字a’は、0であり、下付き文字wは、1であり、下付き文字yは、0であり、第1の必要に応じたスペーサー単位のサブユニットは、ペプチド切断可能単位にプロテアーゼ認識部位の一部を提供する。下付き文字a’が0であり、下付き文字yが0であるさらに他の実施形態では、一次リンカーとC末端にコンジュゲートしているAF薬物単位との間のアミド結合は、認識部位を提供し、したがってAはペプチド切断可能単位としても働くので、個別のペプチド切断可能単位は存在しない。したがって、下付き文字wが0であるその実施形態では、プロテアーゼ切断部位は存在しないが、LOは、存在しない必要に応じた二次リンカーである。
二次リンカーが存在する実施形態では、式1Aの薬物リンカー部分は、式1B:
によって表される構造
[式中、LBは、薬物リンカー部分または薬物リンカー化合物のリンカー単位(LU)における一次リンカー(LR)について本明細書で定義されている通りのリガンド共有結合性結合部分であり、AおよびBは、それぞれLRの第1の必要に応じたストレッチャー単位および必要に応じた分岐単位であり、下付き文字qは、1〜4の範囲であり、残りの可変基は、LOについて本明細書で定義されている通りである]を有する。親アウリスタチンFおよび疎水性アウリスタチンFのリガンド薬物コンジュゲートを含めたアウリスタチンFリガンド薬物コンジュゲートのそれらおよび他の構成成分を、以下の通りさらに論じる。
2.2.1 リガンド単位
アウリスタチンFリガンド薬物コンジュゲートのリガンド単位(L)は、標的化される部分に特異的に結合するコンジュゲートの標的化部分である。リガンド単位は、標的化される部分として働く細胞構成成分(細胞結合剤)に、または目的の他の標的分子に、特異的に結合することができる。リガンド単位は、DをNAMPTi化合物またはその誘導体として選択的に放出するためにリガンド単位が相互作用する特有の標的細胞集団に対して、リガンド薬物コンジュゲートのアウリスタチンF薬物単位を標的化し、提示するように作用する。リガンド単位を提供する標的化剤には、それらに限定されるものではないが、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが含まれる。例示的なリガンド単位には、それらに限定されるものではないが、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチド、例えば抗体、例えば全長抗体およびその抗原結合性断片、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、ならびにコロニー刺激因子によって提供される単位が含まれる。他の適切なリガンド単位は、ビタミン、栄養輸送分子、または任意の他の細胞結合性分子もしくは物質に由来する単位である。一部の実施形態では、リガンド単位は、非抗体タンパク質標的化剤に由来する。他の実施形態では、リガンド単位は、抗体などのタンパク質標的化剤に由来する。好ましい標的化剤は、より大きい分子量のタンパク質、例えば少なくとも約80Kdの分子量を有する細胞結合剤である。
標的化剤は、薬物リンカー化合物の一次リンカー前駆体(LR’)のリガンド共有結合性結合前駆体(Lb’)部分と反応して、式1Aの薬物−リンカー部分の一次リンカー(LR)のリガンド共有結合性結合(Lb)部分に共有結合によって結合しているリガンド単位を形成する。標的化剤は、天然に存在するか否か(例えば、操作されている)にかかわらず、下付き文字pによって定義される必須の数の薬物−リンカー部分に適応するのに適した数の結合部位を有するか、または有するように修飾される。例えば、下付き文字pの値を6〜14にするためには、標的化剤は、6〜14個の薬物−リンカー部分への結合を形成することができなくてはならない。結合部位は、天然に存在するか、または標的化剤に操作され得る。標的化剤は、標的化剤の反応性または活性化可能なヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を介して、薬物リンカー化合物のリンカー単位のLSS部分との結合を形成することができる。標的化剤上に存在することができる反応性または活性化可能なヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基には、硫黄(一実施形態では、標的化剤のチオール官能基に由来する)、C=Oまたは(一実施形態では、標的化剤のカルボニル、カルボキシルまたはヒドロキシル基に由来する)および窒素(一実施形態では、標的化剤の第一級または第二級アミノ基に由来する)が含まれる。それらのヘテロ原子は、標的化剤の天然状態の標的化剤、例えば天然に存在する抗体上に存在することができるか、または化学修飾もしくは遺伝子操作を介して標的化剤に導入することができる。
一実施形態では、標的化剤は、チオール官能基を有しており、それに由来するリガンド単位は、チオール官能基の硫黄原子を介してリガンド薬物コンジュゲート化合物の薬物リンカー部分に結合している。
別の実施形態では、標的化剤は、リシン残基を有しており、これは、薬物リンカー化合物のリンカー単位のLRの、それらに限定されるものではないがN−ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、およびp−ニトロフェニルエステル)を含めた活性化エステルと反応することができ、したがって、リガンド単位由来の窒素原子と、薬物リンカー化合物のリンカー単位由来のC=O官能基との間にアミド結合をもたらす。
さらに別の実施形態では、標的化剤は、1個または複数のリシン残基を有し、これは、1個または複数のチオール官能基を導入するために化学的に修飾することができる。その標的化剤に由来するリガンド単位は、導入されたチオール官能基の硫黄原子を介してリンカー単位に結合している。リシンを修飾するために使用することができる試薬には、それらに限定されるものではないが、S−アセチルチオ酢酸N−スクシンイミジル(SATA)および2−イミノチオラン塩酸塩(トラウト試薬)が含まれる。
別の実施形態では、標的化剤は、1個または複数の炭水化物基を有することができ、これは、1個または複数のチオール官能基を有するために化学的に修飾することができる。その標的化剤に由来するリガンド単位は、導入されたチオール官能基の硫黄原子を介してリンカー単位に結合しているか、または標的化剤は、1個もしくは複数の炭水化物基を有することができ、これは、アルデヒド(−CHO)基を提供するために酸化することができる(例えば、Laguzza, et al., 1989, J. Med. Chem. 32(3):548-55を参照)。次いで、対応するアルデヒドは、求核性窒素を有する薬物リンカー化合物のLSS部分と反応することができる。標的化剤上のカルボニル基と反応することができるLR上の他の反応性部位には、それらに限定されるものではないが、ヒドラジンおよびヒドロキシルアミンが含まれる。薬物リンカー部分の結合のための、タンパク質の修飾のための他のプロトコールは、Coliganet al., Current Protocols in Protein Science, vol. 2, John Wiley & Sons(2002)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
好ましい実施形態では、薬物リンカー化合物のLRの反応基は、マレイミド(M1)部分であり、LのLRへの共有結合性結合は、標的化剤のチオール官能基を介して達成され、したがって、チオ置換スクシンイミド(M2)部分は、マイケル付加を介して形成される。チオール官能基は、標的化剤の天然状態の標的化剤、例えば天然に存在する残基上に存在することができるか、または化学修飾および/もしくは遺伝子操作を介して標的化剤に導入することができる。
バイオコンジュゲートについて、薬物コンジュゲーション部位は、コンジュゲーションの容易さ、薬物−リンカー安定性、得られるバイオコンジュゲートの生物物理学的特性に対する効果、およびin−vitro細胞傷害性を含めたいくつかのパラメーターに影響を及ぼし得ることが観察された。薬物−リンカー安定性に関して、リガンドとの薬物−リンカーのコンジュゲーション部位は、コンジュゲートした薬物−リンカー部分が排除反応を受ける能力、および薬物リンカー部分が、バイオコンジュゲートのリガンド単位から、例えば血漿における場合アルブミン、遊離システイン、またはグルタチオン中の反応性チオールなどの、バイオコンジュゲートの環境に存在する代替反応性チオールへと移行する能力に影響を及ぼし得る。このような部位には、例えば、鎖間ジスルフィドならびに選択されたシステイン操作部位が含まれる。本明細書に記載されるリガンド−薬物コンジュゲートは、他の部位に加えて、排除反応を受けにくい部位(例えば、Kabatに記載されている通り、EU指数による239位)でチオール残基にコンジュゲートすることができる。
好ましい実施形態では、リガンド単位(L)は、抗体またはその抗原結合性断片のものであり、それによって、抗体薬物コンジュゲート(ADC)の抗体リガンド単位を画定しており、その抗体リガンド単位は、後の式H−AFの遊離疎水性アウリスタチンF薬物の放出のために、がん細胞の標的化される抗原に選択的に結合することができ、標的化される抗原は、好ましくは、式H−AFの遊離薬物の細胞内放出を開始するために、前記結合の際に前記がん細胞に内部移行することができる。
有用な抗体には、免疫動物の血清から導出された抗体分子の不均質な集団であるポリクローナル抗体が含まれる。他の有用な抗体は、特有の抗原決定基(例えば、がん細胞抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、タンパク質、ペプチド、炭水化物、化学物質、核酸、またはその断片)に対する均質な抗体集団であるモノクローナル抗体である。目的の抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)は、培養において連続細胞系によって抗体分子の生成をもたらす当技術分野で公知の任意の技術を使用することによって、調製することができる。
有用なモノクローナル抗体には、それらに限定されるものではないが、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、またはキメラヒト−マウス(または他の種)モノクローナル抗体が含まれる。抗体には、全長抗体およびその抗原結合性断片が含まれる。ヒトモノクローナル抗体は、当技術分野で公知の数々の技術のいずれかによって作成することができる(例えば、Teng et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 80:7308-7312;Kozboret al., 1983, Immunology Today 4:72-79;およびOlsson et al., 1982, Meth. Enzymol.92:3-16)。
抗体は、標的化される細胞(例えば、がん細胞抗原、ウイルス抗原、または微生物抗原)に免疫特異的に結合する抗体、または腫瘍細胞もしくはマトリックスに結合している他の抗体の、機能的に活性な断片、誘導体またはアナログであってよい。これに関して、「機能的に活性な」は、断片、誘導体またはアナログが、標的細胞に免疫特異的に結合できることを意味する。どのCDR配列が抗原を結合するかを決定するために、CDR配列を含有する合成ペプチドを、当技術分野で公知の任意の結合アッセイ法(例えば、BIAコアアッセイ)によって、抗原との結合アッセイにおいて使用することができる(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md;Kabat E et al., 1980,J. Immunology 125(3):961-969を参照)。
他の有用な抗体には、抗体の断片、例えばそれに限定されるものではないが、F(ab’)2断片、Fab断片、Fvs、単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、scFv、scFv−FV、または抗体と同じ特異性を有する任意の他の分子が含まれる。
さらに、標準組換えDNA技術を使用して作成され得る、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含む組換え抗体、例えばキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、有用な抗体である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種から導出されている分子、例えば、マウスモノクローナルおよびヒト免疫グロブリン定常領域から導出された可変領域を有する分子などである。(例えば、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,816,567号および米国特許第4,816,397号を参照)。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,585,089号を参照)。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の組換えDNA技術によって、例えばそのそれぞれが参照により本明細書に具体的に組み込まれる、国際公開第WO87/02671号;欧州特許公開第0184187号;欧州特許公開第0171496号;欧州特許公開第0173494号;国際公開第WO86/01533号;米国特許第4,816,567号、欧州特許公開第012023号;Berter et al., Science (1988) 240:1041-1043;Liu et al., Proc. Natl.Acad. Sci. (USA) (1987) 84:3439-3443;Liu et al., J. Immunol. (1987)139:3521-3526;Sun et al. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1987) 84:214-218;Nishimuraet al. Cancer. Res. (1987) 47:999-1005;Wood et al., Nature (1985) 314:446-449;Shawet al., J. Natl. Cancer Inst. (1988) 80:1553-1559;Morrison, Science (1985)229:1202-1207;Oi et al. BioTechniques (1986) 4:214;米国特許第5,225,539号;Jones etal., Nature 1986) (321:552-525;Verhoeyan et al., Science (1988) 239:1534;およびBeidleret al., J. Immunol. (1988)141:4053-4060に記載されている通りの方法を使用して生成することができる。
完全ヒト抗体が特に好ましく、これは、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して生成することができる。
抗体には、任意のタイプの分子の共有結合性結合によって抗体がその抗原結合の免疫特異性を保持することが可能である限り、いずれかが、すなわちこのような共有結合性結合によって修飾されているアナログおよび誘導体が含まれる。例えば、抗体の誘導体およびアナログには、それらに限定されるものではないが、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞抗体単位または他のタンパク質への連結などによってさらに修飾されているものが含まれる。数々の化学修飾のいずれも、それらに限定されるものではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの存在下での代謝的合成などを含めた公知の技術によって行うことができる。さらに、アナログまたは誘導体は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含有することができる。
抗体は、Fc受容体と相互作用するアミノ酸残基に修飾(例えば、置換、欠失または付加)を有することができる。特に、抗体は、抗FcドメインとFcRn受容体との間の相互作用に関与するものとして特定されているアミノ酸残基に修飾を有することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO97/34631号を参照)。
具体的な実施形態では、がんの処置のための公知の抗体を使用することができる。別の具体的な実施形態では、自己免疫疾患の処置のための抗体が、本発明の組成物および方法に従って使用される。
ある特定の実施形態では、有用な抗体は、活性化リンパ球上に発現された受容体または受容体複合体に結合することができる。受容体または受容体複合体は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー、TNF受容体スーパーファミリーメンバー、インテグリン、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、主要組織適合性タンパク質、レクチン、または補体制御タンパク質を含むことができる。
一部の実施形態では、抗体は、CD19、CD20、CD30、CD33、CD70、アルファ−v−ベータ−6、またはルイスY抗原に特異的に結合する。
抗体は、ヒト化抗CD33抗体(あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2013/0309223)、ヒト化抗Beta6抗体(例えば、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2013/123152を参照)、ヒト化抗Liv−1抗体(例えば、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2013/0259860を参照)、またはヒト化AC10抗体(例えば、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、US8,257,706を参照)であってよい。抗体リガンド単位へのリンカー単位の例示的な結合は、チオエーテル連結を介する。チオエーテル連結は、鎖間ジスルフィド結合、導入されたシステイン残基、およびそれらの組合せを介し得る。
2.2.2 一次リンカー
実施形態の一群では、式H−AFの疎水性AF化合物は、本明細書に開示される−W−Y
y−D構造のいずれか1つにおいて、そのC末端化合物を介してコンジュゲートしている。下付き文字bが0であるそれらの実施形態の一部では、式H−AFの疎水性AF化合物に関する薬物リンカー部分は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、LRは、一次リンカーである]を有する。
一部の実施形態では、薬物リンカー部分のLRは、−Lb−A−の式を有し、LBは、リガンド共有結合性結合部分であり、Aは、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位である。
一部の好ましい実施形態では、式−L
b−A−のL
Rは、自己安定化するリンカー(L
SS)部分またはL
SSのスクシンイミド(M
2)部分の制御加水分解から得られた自己安定化したリンカー(L
S)部分である。いずれかのタイプの一次リンカーを有するアウリスタチンFリガンド薬物コンジュゲート組成物またはそのコンジュゲート化合物の薬物リンカー部分の、例示的なL
SSおよびL
S一次リンカーは、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、波線は、下付き文字a’およびwの値に応じて、A’、Wまたは疎水性アウリスタチンF薬物単位のC末端構成成分への共有結合性結合部位を示し、AOは、Aの必要に応じたサブユニットであり、[HE]は、Aによって提供される構成成分である必要に応じた加水分解増強単位であり、BUは、塩基性単位であり、Ra2は、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル基であり、点線の曲線は、必要に応じた環化を示し、したがって、前記環化の非存在下では、BUは、非環式塩基性単位の塩基性官能基として第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基を有する非環式塩基性単位であるか、または前記環化の存在下では、BUは、環化塩基性単位であり、Ra2およびBUは、両方が結合している炭素原子と一緒になって、環式塩基性単位の塩基性官能基として第二級もしくは第三級アミン官能基の骨格塩基性窒素原子を含有する、必要に応じて置換されているスピロC3〜C20ヘテロシクロを画定し、
非環式塩基性単位または環式塩基性単位の塩基性窒素原子は、塩基性窒素原子の置換度に依存して、窒素保護基によって必要に応じて適切に保護されているか、または必要に応じてプロトン化されており、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF化合物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
他の好ましい実施形態では、式−L
b−A−の一次リンカーは、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩によって例示される塩基性単位を含有しない[式中、可変基は、LSSまたはLS一次リンカーについて以前に記載されている通りである]。
L
Rが、疎水性AFのLDCのリガンド単位(L)に共有結合によって結合している代表的なL−L
R−構造は、以下:
およびその塩、特に薬学的に許容される塩、ならびにスクシンイミド環系が開環形態に加水分解されている構造[ここで、示されている(#)の硫黄原子は、リガンド単位に由来し、波線は、コンジュゲート構造の残部への共有結合性結合部位を示す]である。
[ここで、示されている(#)の窒素、炭素または硫黄原子は、リガンド単位に由来し、波線は、コンジュゲート構造の残部への共有結合性結合部位を示す]である。
2.2.3 ペプチド切断可能単位
下付き文字wが1である先の実施形態のいずれか1つでは、ペプチド切断可能単位(W)が存在し、Wは、プロテアーゼ、特に細胞内プロテアーゼによって認識されるジペプチドもしくはトリペプチド残基から構成されたペプチド配列であるか、またはアウリスタチンF薬物単位のC末端構成成分と組み合わさってもしくはA’とさらに組み合わさってプロテアーゼによって認識されるアミノ酸残基である。好ましい実施形態では、WとアウリスタチンF薬物単位のC末端構成成分のカルボン酸残基との間のアミド結合は、プロテアーゼによって切断されて、遊離アウリスタチンFまたは疎水性AF薬物を提供する。下付き文字wが0であり、下付き文字a’が0である、先の実施形態のいずれか1つでは、Aまたはそのサブユニット(AOがA2として存在する場合のように)と、アウリスタチンF薬物単位との間のアミド結合は、プロテアーゼによって切断されて、遊離アウリスタチンF薬物または疎水性AF薬物を提供し、下付き文字wが0または1であり、下付き文字a’が1である先の実施形態のいずれか1つでは、A’とアウリスタチンF薬物単位との間のアミド結合は、プロテアーゼによって切断されて、遊離アウリスタチンF薬物を提供する。先の実施形態のいずれか1つでは、遊離薬物を放出するためのアミド結合は、好ましくは細胞内プロテアーゼによって、より好ましくは、カテプシンBなどのカテプシンプロテアーゼであり得るリソソームプロテアーゼによって切断可能である。
その結合を切断するためにプロテアーゼのための認識部位を提供するアミド結合として、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介して疎水性アウリスタチン薬物単位に共有結合によって結合している、それ自体またはWのペプチド配列の一部の好ましいアミノ酸残基には、プロリンを除く20種の天然に存在するL−α−アミノ酸のいずれかが含まれる。より好ましいアミノ酸は、L−アラニン、L−リシン、L−アスパラギン酸およびL−グルタミン酸である。
プロテアーゼのための認識部位を提供する、それ自体またはWのペプチド配列の一部の好ましいジペプチド残基は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、ジペプチドのN末端における波線は、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介する、AF薬物単位へのアミド結合としての共有結合性結合部位を示し、アミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、ジペプチドのC末端における波線は、ペプチド配列の残部への、または薬物リンカー部分もしくは薬物リンカー化合物の一次リンカーのAもしくはそのサブユニット(A
OがA
2として存在する場合のように)への共有結合性結合部位を示し、R
34は、水素、−CH
2CH
2CH
2NHC(=O)NH
2またはプロリンを除く天然に存在するα−アミノ酸の側鎖、特に−CH
2CH
2CH
2NHC(=O)NH
2、−CH
3、−C(CH
3)
2、−CH
2CH
2COOHまたは−CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2−であり、R
35は、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシ−ベンジル、−CH
2OH、−CH(OH)CH
3、−CH
2CH
2SCH
3、−CH
2C(=O)NH
2、−CH
2COOH、−CH
2CH
2C(=O)NH
2、−CH
2CH
2COOH、−CH
2CH
2CH
2NHC(=NH)NH
2、−CH
2CH
2CH
2NH
2、−CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)CH
3、−CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)H、−CH
2CH
2CH
2CH
2NHC(=NH)NH
2、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)H、−CH
2CH
2CH
2NHC(=O)NH
2、−CH
2CH
2CH
2CH
2NHC(=O)NH
2、−CH
2CH
2CH(OH)CH
2NH
2、2−ピリジルメチル、4−ピリジルメチル、フェニルもしくはシクロヘキシルであるか、またはR
35は、
の1つの構造を有し、
波線は、ジペプチドの主鎖への共有結合性結合部位を示す]を有する。
細胞内プロテアーゼのための他の好ましい認識部位は、−A’−W−の式を有するか、またはそれから構成され、Wは、AF薬物単位のC末端構成成分のカルボン酸残基に、アミノ酸残基のα−アミノ窒素原子を介して、および存在する必要に応じた第2のストレッチャー単位であるA’に、アミノ酸残基のα−カルボキシル炭素原子を介して結合している、グルタミン酸またはアスパラギン酸残基であり、両方の結合は、アミド結合を介しており、C末端構成成分へのアミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、A’は、カルボン酸側鎖を有するアルキレンジアミンであり、したがって、そのアミンの一方の窒素原子は、グルタミン酸残基に共有結合によって結合しており、他方のアミンの窒素原子は、共有結合によって結合しているAまたはそのサブユニット(AOがA2として存在する場合のように)であり、両方の結合は、アミド結合を介している。
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、グルタミン酸のアルファ−アミノ窒素原子に隣接する波線は、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介する、AF薬物単位へのアミド結合としての共有結合性結合部位を示し、アミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、リシンイプシロンアミン窒素原子に隣接する波線は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)またはそのサブユニットへの共有結合性結合部位を示す]である。
2.2.4 ストレッチャー単位
先のおよび以下の実施形態では、リガンド薬物コンジュゲートの薬物リンカー部分内の一次リンカーは、M2−A(BU)−AO−、M2−A−AO−またはM3−A(BU)−AO−の一般式によって例示され、リガンド薬物コンジュゲートを調製するために使用することができる薬物リンカー化合物の一次リンカーは、M1−A(BU)−AO−またはM1−A−AO−の一般式によって例示され、BUは、非環式または環式塩基性単位であり、[HE]は、存在する場合、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位によって提供される、好ましくは−C(=O)−であり、M2は、スクシンイミド部分であり、M3は、コハク酸アミド部分であり、M1は、マレイミド部分であり、Aは、単一の個別単位またはAの第1のサブユニット(時としてA1と示され、AOが、Aの第2のサブユニットとして存在する場合、時としてA2として示される)のいずれかを表し、下付き文字a’が1である場合、A’に、または下付き文字a’が0であり、下付き文字wが1である場合、Wに、または下付き文字a’が0であり、下付き文字wが0である場合、疎水性AF薬物単位のC末端構成成分のカルボン酸残基に、共有結合によって結合している。
AOがそれらの実施形態のいずれか1つに存在する場合、第1のストレッチャー単位のそのサブユニットは、それをAのサブユニットとして示すためにA2と示され、A2は、必要に応じて置換されているアミン含有酸(例えば、アミノ酸)残基に対応する構造を有しており、アミン含有酸のカルボン酸末端の残基は、好ましくはアミド官能基を介してA’に共有結合によって結合しており、アミン末端の残基は、Aの残部に共有結合によって結合している。AOが存在しない場合、Aは、単一の個別単位であり、これは、好ましくはAによって提供される[HE]を介してA’に結合しており、[HE]は、−C(=O)−である。
それらの実施形態の一部では、A2は、−LP(PEG)−の式を有するか、またはそれから構成され、LPは、並列コネクター単位であり、PEGは、PEG単位である。それらの実施形態では、PEG単位は、合計2〜36個のエチレンオキシモノマー単位を含有し、LPは、好ましくはアミド官能基を介してA’およびAの残部に共有結合によって結合しているアミン含有酸残基、好ましくはアミノ酸残基である。好ましい実施形態では、PEG単位は、合計4〜24個の連続エチレンオキシモノマー単位を含有する。
それらの実施形態の他のでは、A
O/A
2は、式3a、式4aもしくは式5aの構造を有するアミン含有酸残基であるか
[式中、窒素原子に隣接する波線は、Aの残部への共有結合性結合部位を示し、カルボニル炭素原子に隣接する波線は、A’への共有結合性結合部位を示し、下付き文字eおよびfは、独立に、0または1であり、
Gは、水素、−OH、−ORPR、−CO2H、−CO2RPRもしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−OH、−ORPR、−CO2H、および−CO2RPRからなる群から選択され、RPRは、適切な保護であるか、または
Gは、N(RPR)(RPR)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、N(RPR)(RPR)であり、RPRは、独立に保護基であるか、もしくはRPRは、一緒になって適切な保護基を形成するか、または
Gは、−N(R45)(R46)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−N(R45)(R46)であり、R45、R46の一方は、水素もしくはRPRであり(RPRは、適切な保護基である)、他方は、水素もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、
R38は、水素または必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、
R39〜R44は、水素、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されているC6〜C20アリール、および必要に応じて置換されているC5〜C20ヘテロアリールからなる群から独立に選択されるか、または
R39、R40は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R41〜R44は、本明細書で定義されている通りであるか、
またはR43、R44は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R39〜R42は、本明細書で定義されている通りであるか、
またはR40およびR41、もしくはR40およびR43、もしくはR41およびR43は、両方が結合している炭素原子もしくはヘテロ原子、ならびにそれらの炭素原子および/もしくはヘテロ原子間に介在する原子と一緒になって、C5〜C6カルボシクロもしくはC5〜C6ヘテロシクロを画定し、R39、R44およびR40〜R43の残部は、本明細書で定義されている通りである]、
またはAO/A2は、α−アミノもしくはβ−アミノ酸残基であり、そのα−アミノもしくはα−アミノ残基の窒素原子は、Aの残部に共有結合によって結合しており、そのカルボン酸残基のカルボニル炭素原子は、A’に共有結合によって結合しており、両方の結合は、好ましくはアミド官能基を介している。
A’が存在する場合、A’は、好ましくは必要に応じて置換されているC2〜C12ジアミンであり、アミンの一方の窒素原子は、第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)またはそのサブユニットに共有結合によって結合しており、他方のアミンの窒素原子は、Wに共有結合によって結合しており、両方の共有結合性結合は、好ましくはアミド官能基を介している。
それらの実施形態の一部では、A’は、式3b、式4bまたは式5b:
の構造を有するアルキレンジアミン残基である
[式中、下付き文字eおよびfは、0〜6の範囲であり、下付き文字e’およびf’は、1〜6の範囲であり、R38が結合しているアミン残基の窒素原子の隣の波線は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位またはそのサブユニットへの共有結合性結合部位を示し、他方のアミン残基の窒素原子に隣接する波線は、Wへの共有結合性結合部位を示し、残りの可変基は、式3a、式4aまたは式5aについて以前に記載されている通りである]。
好ましい実施形態では、A’は、式3bの構造を有し、Gは、−CO2Hである。他の好ましい実施形態では、Wは、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基、または残基のα−アミノ窒素原子を介してA’に共有結合によって結合しているN末端のグルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基を有するペプチド配列である。より好ましい実施形態では、A’は、式3bの構造を有し、Gは、−CO2Hであり、Wは、A’に結合しているグルタミン酸残基である。特に好ましい実施形態では、A’は、L−リシン残基であり、そのイプシロンアミン残基の窒素原子は、Aまたはそのサブユニットに共有結合によって結合しており、アルファアミン残基の窒素原子は、アミド官能基を介してWに共有結合によって結合している。
2.2.5 薬物リンカー
アウリスタチンFリガンド薬物コンジュゲート化合物の−L
SSおよび−L
S含有薬物リンカー部分の好ましい実施形態では、L
SSおよびL
S部分は、ヘテロシクロ環式塩基性単位を含有する。ペプチド切断可能単位がジペプチドである一次リンカーを有する例示的な薬物リンカー部分は、それぞれ、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、第1のストレッチャー単位のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字Pは、1または2であり、下付き文字Qは、1〜6の範囲であり、Ra3は、−H、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されている−C1〜C4アルキレン−(C6〜C10アリール)、もしくは−RPEG1−O−(CH2CH2O)1〜36−RPEG2であり、RPEG1は、C1〜C4アルキレンであり、RPEG2は、−HもしくはC1〜C4アルキレンであり、Ra3に結合している塩基性窒素は、必要に応じてプロトン化されているか、もしくは塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であるか、またはRa3は、窒素保護基、例えば酸に不安定な適切な保護基であり、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
アウリスタチンFリガンド薬物コンジュゲート化合物の−L
SSおよび−L
S含有薬物リンカー部分の他の好ましい実施形態では、L
SSおよびL
S部分は、非環式環式塩基性単位を含有する。ペプチド切断可能単位がジペプチドである一次リンカーを有する例示的な薬物リンカー部分は、それぞれ、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在する必要に応じた第1のストレッチャー単位の必要に応じたサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字xは、1または2であり、Ra2は、水素または−CH3または−CH2CH3であり、Ra3は、各場合において独立に、水素、−CH3または−CH2CH3であるか、または両方のRa3は、それらが結合している窒素と一緒になって、アゼチジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルヘテロシクリルを画定し、そのように画定された塩基性第一級、第二級または第三級アミンは、必要に応じてプロトン化されているか、もしくは塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
他の好ましい実施形態では、一次リンカーは、塩基性単位を有していない。ペプチド切断可能単位がジペプチドである一次リンカーを有する例示的な薬物リンカー部分は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位の必要に応じたサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、A’の非存在または存在を示し、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
他の好ましい実施形態では、上述の薬物リンカー部分のいずれか1個におけるAF薬物単位の内部バリン残基は、
の構造の1つで置き換えられており、
もしくはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する別のC末端構成成分によって置き換えられている。
より好ましい実施形態では、ヘテロシクロ環式塩基性単位または非環式塩基性単位を有するリガンド薬物コンジュゲート内のL
SS含有薬物リンカー部分は、
またはその塩、特に薬学的に許容される塩によって表され、先の薬物リンカー部分の制御加水分解からのより好ましいL
S含有薬物リンカー部分は、
[ここで、LSSまたはLS含有薬物リンカー部分のそれぞれにおける可変基は、非環式またはヘテロシクロ環式塩基性単位を有する薬物リンカー部分について以前に記載されている通りであり、Ra3が結合している窒素原子は、Ra3が窒素保護基以外である場合では必要に応じてプロトン化されており、したがって塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
環式塩基性単位を含む一次リンカーを有する特に好ましい薬物リンカー部分は、
の構造
およびその塩、特に薬学的に許容される塩
[ここで、AOは、Aの必要に応じたサブユニット(存在する場合、A2と表される)であり、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された塩基性第二級または第三級アミンは、必要に応じてプロトン化されているか、または塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表され、
非環式塩基性単位を含む一次リンカーを有する特に好ましい薬物リンカー部分は、
の構造
およびその塩、特に薬学的に許容される塩
[ここで、AOは、Aの必要に応じたサブユニット(存在する場合、A2と表される)であり、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された塩基性第一級または第二級 第三級アミンは、必要に応じてプロトン化されているか、または塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表され、
塩基性単位を含まない一次リンカーを有する特に好ましい薬物リンカー部分は、
の構造
およびその塩、特に薬学的に許容される塩
[ここで、AOは、Aの必要に応じたサブユニット(存在する場合、A2と表される)であり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
それらの特に好ましい実施形態では、Wは、リシン残基として存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位(A’)に共有結合によって結合しているグルタミン酸残基であり、疎水性AF薬物単位のC末端構成成分と組み合わされるA’−W部分は、遊離疎水性AF薬物の放出のためのグルタミン酸残基とC末端構成成分との間のアミド結合の切断のために、細胞内プロテアーゼによって認識される。
薬物リンカー部分の上述の実施形態のいずれか1つでは、R1は、好ましくは、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH2CH2CH2CH3、CH2CH2CH2C(CH3)2、−CH2CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH2CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−t−Bu、−CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH2CH2CH2NH−C(=O)−O−t−Buであるか、または
特に好ましい実施形態では、疎水性AF薬物単位を有する薬物リンカー部分は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する。
2.2.6 薬物リンカー化合物
薬物リンカー化合物は、式I:
LU’−(D’) (I)
の構造
またはその塩[式中、LU’は、LU前駆体であり、D’は、好ましくは互いに同一の1〜4個の疎水性AF薬物単位を表し、そのそれぞれは、そのC末端構成成分に、特にそのカルボン酸官能基を介してコンジュゲートしている式H−AFの疎水性AF薬物である]によって表され、薬物リンカー化合物は、式IAの構造
[式中、LB’は、リガンド共有結合性結合部分前駆体であり、Aは、第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字aは、0または1であり、Aの非存在または存在を示し、Bは、必要に応じた分岐単位であり、下付き文字bは、0または1であり、それぞれBの非存在または存在を示し、ただし、下付き文字qが2〜4の範囲である場合、下付き文字bは1である]によってさらに画定される。薬物リンカー化合物は、式1のリガンド薬物コンジュゲートの調製において特に有用であり、したがって、LU’は、リガンド薬物コンジュゲート化合物の薬物リンカー部分のためのLU前駆体である。
一部の実施形態では、薬物リンカー化合物のL
b’−A−は、
の構造の1つ
またはその塩を有するか、またはそれから構成される[ここで、LG1は、標的化剤である求核試薬による求核置換えに適した脱離基であり、LG2は、標的化剤へのアミド結合形成に適した脱離基であるか、または標的化剤へのアミド結合形成に適した活性化可能なカルボン酸を提供するために−OHであり、波線は、薬物リンカー化合物の構造の残部への共有結合性結合部位を示す]。
他の実施形態では、薬物リンカー化合物のL
b’−A−は、
の構造の1つ
またはその塩を有するか、またはそれから構成される[ここで、AOに隣接する波線は、LOへの共有結合性結合部位を示し、他方の波線は、リガンド単位の硫黄原子への共有結合性結合部位を示し、AOは、Aの必要に応じた第2のサブユニットであり、[HE]は、Aまたはその第1のサブユニットによって提供された構成成分である必要に応じた加水分解増強単位であり、
BUは、塩基性単位であり、Ra2は、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル基であり、点線の曲線は、必要に応じた環化を示し、したがって、前記環化の非存在下では、BUは、非環式塩基性単位の塩基性官能基として第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基を有する非環式塩基性単位であるか、または前記環化の存在下では、BUは、環化塩基性単位であり、Ra2およびBUは、両方が結合している炭素原子と一緒になって、環式塩基性単位の塩基性官能基として第二級もしくは第三級アミン官能基の骨格塩基性窒素原子を含有する、必要に応じて置換されているスピロC3〜C20ヘテロシクロを画定し、
非環式塩基性単位または環式塩基性単位の塩基性窒素原子は、塩基性窒素原子の置換度に依存して、窒素保護基によって必要に応じて適切に保護されているか、または酸付加塩として必要に応じてプロトン化されている]。
一部の好ましい実施形態では、薬物リンカー化合物のL
b’−A−は、
の構造の1つ
または特に酸付加塩としてのその塩を有するか、またはそれから構成される[ここで、AOは、Aの必要に応じた第2のサブユニットである]。
他の好ましい実施形態では、薬物リンカー化合物のL
b’−A−は、
の構造の1つを有するか、またはそれから構成される
[ここで、AOは、Aの必要に応じた第2のサブユニットである]。
L
SS含有薬物リンカー化合物の好ましい実施形態では、L
SS部分は、ヘテロシクロ環式塩基性単位を含有する。ペプチド切断可能単位がジペプチドである一次リンカーを有する例示的な薬物リンカー化合物は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、第1のストレッチャー単位のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字Pは、1または2であり、下付き文字Qは、1〜6の範囲であり、Ra3は、−H、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されている−C1〜C4アルキレン−(C6〜C10アリール)、もしくは−RPEG1−O−(CH2CH2O)1〜36−RPEG2であり、RPEG1は、C1〜C4アルキレンであり、RPEG2は、−HもしくはC1〜C4アルキレンであり、Ra3に結合している塩基性窒素は、必要に応じてプロトン化されているか、もしくは塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であるか、またはRa3は、窒素保護基、例えば酸に不安定な適切な保護基であり、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
L
SS含有薬物リンカー化合物の他の好ましい実施形態では、L
SS部分は、非環式環式塩基性単位を含有する。ペプチド切断可能単位がジペプチドである一次リンカーを有する例示的な薬物リンカー化合物は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在する必要に応じた第1のストレッチャー単位の必要に応じたサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字xは、1または2であり、Ra2は、水素または−CH3または−CH2CH3であり、Ra3は、各場合において独立に、水素、−CH3または−CH2CH3であるか、または両方のRa3は、それらが結合している窒素と一緒になって、アゼチジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルヘテロシクリルを画定し、そのように画定された塩基性第一級、第二級または第三級アミンは、必要に応じてプロトン化されているか、もしくは塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
他の好ましい実施形態では、薬物リンカー化合物の一次リンカーは、塩基性単位を有していない。ペプチド切断可能単位がジペプチドである一次リンカーを有する例示的な薬物リンカー化合物は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位の必要に応じたサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、A’の非存在または存在を示し、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
他の好ましい実施形態では、上述の薬物リンカー化合物のいずれか1つにおけるAF薬物単位の内部バリン残基は、
の構造の1つで置き換えられており、
もしくはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する別のC末端構成成分によって置き換えられている。
より好ましい実施形態では、ヘテロシクロ環式塩基性単位または非環式塩基性単位を有するL
SS含有薬物リンカー化合物は、それぞれ、
またはその塩、特に薬学的に許容される塩
[ここで、LSS含有薬物リンカー化合物のそれぞれにおける可変基は、非環式またはヘテロシクロ環式塩基性単位を有する薬物リンカー化合物について以前に記載されている通りであり、Ra3が結合している窒素原子は、Ra3が窒素保護基以外である場合では必要に応じてプロトン化されており、したがって塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、R34およびR35は、ペプチド切断可能単位の実施形態のいずれか1つについて以前に定義されている通りであり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
環式塩基性単位を含む一次リンカーを有する特に好ましい薬物リンカー化合物は、
の構造
およびその塩、特に薬学的に許容される塩[ここで、AOは、Aの必要に応じたサブユニット(存在する場合、A2と表される)であり、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された塩基性第二級または第三級アミンは、必要に応じてプロトン化されているか、または塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表され、
非環式塩基性単位を含む一次リンカーを有する特に好ましい薬物リンカー化合物は、
の構造
およびその塩、特に薬学的に許容される塩
[ここで、AOは、Aの必要に応じたサブユニット(存在する場合、A2と表される)であり、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された塩基性第一級または第二級 第三級アミンは、必要に応じてプロトン化されているか、または塩形態、好ましくは薬学的に許容される塩形態であり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表され、
塩基性単位を含まない一次リンカーを有する特に好ましい薬物リンカー化合物は、
の構造
およびその塩、特に薬学的に許容される塩
[ここで、AOは、Aの必要に応じたサブユニット(存在する場合、A2と表される)であり、残りの可変基は、式H−AFの疎水性AF薬物の実施形態のいずれか1つについて記載されている通りである]によって表される。
それらの特に好ましい実施形態では、Wは、リシン残基として存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位(A’)に共有結合によって結合しているグルタミン酸残基であり、疎水性AF薬物単位のC末端構成成分と組み合わされるA’−W部分は、遊離疎水性AF薬物の放出のためのグルタミン酸残基とC末端構成成分との間のアミド結合の切断のために、細胞内プロテアーゼによって認識される。
薬物リンカー化合物の上述の実施形態のいずれか1つでは、R1は、好ましくは、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH2CH2CH2CH3、CH2CH2CH2C(CH3)2、−CH2CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH2CH2CH2NH−C(=O)−O−t−Buであるか、または
疎水性AF薬物単位を有する特に好ましい薬物リンカー化合物は、
の構造
またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する。
3.番号付き実施形態
以下の実施形態は、本発明をさらに例示するものであり、いかなる方式でも本発明を制限することを意味しない。
の構造またはその塩を有する式H−AF1の疎水性アウリスタチンF化合物である、化合物[ここで、Arは、フェニル、チエニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはベンゾ[b]チオフェン−3−イルであり、R3は、水素およびC1〜C2アルキルからなる群から独立に選択され、R1は、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されているC1〜C9アルキルであるか、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、R2は、C1〜C2アルキルであり、ただし、R1、R2およびR3の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、3〜10の間であり、R1、R2およびR3は、それぞれメチルではないか、あるいはArは、フェニルであり、R3は、水素であり、R1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
2.R2が、メチルであり、R3が、水素である、実施形態1の化合物。
3.R3が、水素であり、Arが、フェニルである、実施形態1の化合物。
4.R2が、メチルであり、R3が、水素であり、Arが、フェニルである、実施形態1の化合物。
5.R1が、飽和C1〜C9アルキルである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
6.R1が、不飽和C3〜C9アルキルである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
7.R1が、合計9個までの炭素原子のカルボシクリル−アルキル−である、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
8.R1が、必要に応じて分枝鎖状のC3〜C9アルキル、特に必要に応じて分枝鎖状のC4〜C9アルキルである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
9.R1が、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xが、アミド官能基であり、R4が、t−ブチルである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
10.R1が、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xが、カルバメート官能基であり、R4が、t−ブチルまたはCH2C=CH2である、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
11.R1が、−(CH2)3〜5−N(R7)−C(=O)−t−Buの式を有し、R7が、水素または−CH3である、実施形態9の化合物。
12.R1が、−(CH2)3〜5−N(R7)−C(=O)−O−t−Buの式を有し、R7が、水素または−CH3である、実施形態10の化合物。
13.R1が、分枝鎖C4〜C9アルキルである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
14.R
1が、
の構造を有する、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
15.R1が、−CH2CH2CH(CH3)CH2C(CH3)3である、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
16.R1が、−CH2CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−O−t−Buまたは−CH2CH2CH2NH−C(=O)−O−t−Buである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
17.R1が、−CH2CH2CH2CH2N(CH3)−C(=O)−t−Buである、実施形態1〜4のいずれか1つの化合物。
またはその塩である、実施形態1の化合物。
またはその塩である、実施形態1の化合物。
またはその塩を有する式H−AF2の疎水性アウリスタチンF化合物である、化合物[ここで、Arは、フェニル、チエニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはベンゾ[b]チオフェン−3−イルであり、R3は、水素およびC1〜C2アルキルからなる群から独立に選択され、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、R2は、C1〜C2アルキルであり、
波線は、化合物内の共有結合性結合部位を示し、ただし、R1およびR2は、それぞれメチルではなく、化合物は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる]。
またはその塩を有する、実施形態20の化合物。
22.Arが、フェニルであり、R3が、水素である、実施形態20または21の化合物。
23.−AA
2−が、
の構造を有する、実施形態20、21または22の化合物。
またはその塩を有する式H−AF3の疎水性アウリスタチンF化合物である、化合物[ここで、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、R2は、C1〜C2アルキルであり、
またはその塩を有し、波線は、化合物内の共有結合性結合部位を示し、ただし、R1およびR2は、メチルではなく、化合物は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる]。
またはその塩を有する式H−AF4の疎水性アウリスタチンF化合物である、化合物[ここで、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、R2は、C1〜C2アルキルであり、
R5は、C2〜C6アルキルであるか、または(C2〜C6アルキレン)−X’−R6の式を有し、X’は、独立に選択されたアミドまたはカルバメート官能基であり、R6は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1、R2、R3およびR5の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、3〜10の間である]。
26.R5が、−CH2CH2CH3、−CH2CH2CH2CH(CH3)2、−CH2CH2NH(C=O)−O−t−Buまたは−CH2CH2NH(C=O)−CH(CH3)2である、請求項25に記載の化合物。
27.AA
2が、
である、実施形態25または26の化合物。
28.AA
4が、
である、実施形態25、26または27の化合物。
29.R
2が、−CH
3であり、R
1が、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、CH
3CH(CH
3)CH
2−であるか、または
の構造を有する、実施形態25〜28のいずれか1つの化合物。
30.式1:
L−[LU−(D’)]p (1)
またはその塩によって表される、リガンド薬物コンジュゲート組成物[式中、Lは、リガンド単位であり、LUは、リンカー単位であり、D’は、式−LU−D’の各薬物リンカー部分における1〜4個の疎水性アウリスタチンF薬物単位(D)を表し、各疎水性アウリスタチンF薬物単位は、そのC末端構成成分のカルボン酸官能基を介してコンジュゲートしている請求項1〜29のいずれか1つの疎水性アウリスタチンF化合物であり、リガンド単位は、後の疎水性アウリスタチンF化合物の放出のために、標的化される細胞の標的化される部分に選択的に結合することができ、
組成物のリガンド薬物コンジュゲート化合物における各薬物リンカー部分は、式1A:
の構造
またはその塩を有し、波線は、Lへの共有結合性結合を示し、Dは、疎水性AF薬物単位であり、LBは、リガンド共有結合性結合部分であり、Aは、第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字aは、0または1であり、それぞれAの存在の非存在を示し、Bは、必要に応じた分岐単位であり、下付き文字bは、0または1であり、それぞれBの存在の非存在を示し、LOは、必要に応じた二次リンカー部分であり、下付き文字qは、1〜4の範囲の整数であり、リガンド薬物コンジュゲート化合物は、下付き文字pが下付き文字p’によって置き換えられており、下付き文字p’が1〜24の範囲の整数である、式1の構造を有する]。
31.L
Oが、存在する二次リンカーであり、
の式を有する、実施形態30のリガンド薬物コンジュゲート組成物
[ここで、Yに隣接する波線は、疎水性アウリスタチン薬物単位へのLOの共有結合性結合部位を示し、A’に隣接する波線は、薬物リンカー部分の残部へのLOの共有結合性結合部位を示し、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、Wは、ペプチド切断可能単位であり、Yは、ペプチドスペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、それぞれYの非存在または存在を示す]。
またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する、実施形態31のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、R2は、メチルであり、R1は、C3〜C9アルキルであり、前記C3〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間である]。
33.L−L
b−A−が、
の構造の1つを有するか、またはそれから構成される、実施形態32のリガンド薬物コンジュゲート組成物
[ここで、示されている(#)の窒素、炭素または硫黄原子は、リガンド単位に由来し、波線は、コンジュゲート構造の残部への共有結合性結合部位を示す]。
34.複数の薬物リンカー部分における−L
b−A−が、
の構造
またはその塩を有する、実施形態32のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、AOに隣接する波線は、LOへの共有結合性結合部位を示し、他方の波線は、リガンド単位の硫黄原子への共有結合性結合部位を示し、AOは、Aの必要に応じた第2のサブユニットであり、[HE]は、Aまたはその第1のサブユニットによって提供された構成成分である必要に応じた加水分解増強単位であり、BUは、塩基性単位であり、Ra2は、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル基であり、点線の曲線は、必要に応じた環化を示し、したがって、前記環化の非存在下では、
BUは、非環式塩基性単位の塩基性官能基として第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基を有する非環式塩基性単位であるか、または前記環化の存在下では、BUは、環化塩基性単位であり、Ra2およびBUは、両方が結合している炭素原子と一緒になって、環式塩基性単位の塩基性官能基として第二級もしくは第三級アミン官能基の骨格塩基性窒素原子を含有する、必要に応じて置換されているスピロC3〜C20ヘテロシクロを画定し、非環式塩基性単位または環式塩基性単位の塩基性窒素原子は、塩基性窒素原子の置換度に依存して、窒素保護基によって必要に応じて適切に保護されているか、または必要に応じてプロトン化されている]。
35.複数の薬物リンカー部分における−L
b−A−が、
の構造
またはその塩を有する、実施形態34のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
36.A
Oが、存在しA
2と示されるAの第2のサブユニットであり、A
2が、式3a、式4aもしくは式5a:
の構造を有するアミン含有酸残基であるか
[ここで、窒素原子に隣接する波線は、Aの第1のサブユニットの[HE]への共有結合性結合部位を示し、[HE]は、−C(=O)−であり、カルボニル炭素原子に隣接する波線は、LOへの共有結合性結合部位を示し、両方の結合は、アミド官能基を介しており、下付き文字eおよびfは、独立に、0または1であり、
Gは、水素、−OH、−ORPR、−CO2H、−CO2RPRもしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−OH、−ORPR、−CO2H、および−CO2RPRからなる群から選択され、RPRは、適切な保護であるか、またはGは、N(RPR)(RPR)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、N(RPR)(RPR)であり、RPRは、独立に保護基であるか、もしくはRPRは、一緒になって適切な保護基を形成するか、またはGは、−N(R45)(R46)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−N(R45)(R46)であり、R45、R46の一方は、水素もしくはRPRであり(RPRは、適切な保護基である)、他方は、水素もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、
R38は、水素または必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、R39〜R44は、水素、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されているC6〜C20アリール、および必要に応じて置換されているC5〜C20ヘテロアリールからなる群から独立に選択されるか、またはR39、R40は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R41〜R44は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR43、R44は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R39〜R42は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR40およびR41、もしくはR40およびR43、もしくはR41およびR43は、両方が結合している炭素原子もしくはヘテロ原子、ならびにそれらの炭素原子および/もしくはヘテロ原子間に介在する原子と一緒になって、C5〜C6カルボシクロもしくはC5〜C6ヘテロシクロを画定し、R39、R44およびR40〜R43の残部は、本明細書で定義されている通りである]、
またはAOが、α−アミノもしくはβ−アミノ酸残基であり、そのアミノ窒素原子が、Aの残部に共有結合によって結合しており、そのカルボン酸のカルボニル炭素が、A’に共有結合によって結合しており、両方の結合が、アミド官能基を介している、
実施形態34または35のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
37.AOが、存在しA2と示されるAの第2のサブユニットであり、A2が、−NHCH2CH2C(=O)−の構造を有するβ−アミノ酸残基であるか、または−LP(PEG)−の式を有し、LPが、三官能性アミン含有酸残基の構造を有する並列コネクター単位であり、PEGが、PEG単位である、請求項34または35のリガンド薬物コンジュゲート実施形態。
38.A2が、
の構造を有する−L
P(PEG)−である、請求項37に記載のリガンド薬物コンジュゲート実施形態
[ここで、窒素原子に隣接する波線は、Aの第1のサブユニットへの共有結合性結合部位を示し、カルボニル炭素原子または硫黄原子への波線は、LOのA’への共有結合性結合部位を示す]。
39.A’が、式3b、式4bもしくは式5b:
の構造を有するアルキレンジアミン残基
[式中、下付き文字eおよびfは、0〜6の範囲であり、下付き文字e’およびf’は、1〜6の範囲であり、R38が結合しているアミン残基の窒素原子の隣の波線は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位への、またはAOへの共有結合性結合部位を示し、AOは、存在する場合、A2と示されるAの必要に応じた第2のサブユニットであり、他方のアミン残基の窒素原子に隣接する波線は、Wへの共有結合性結合部位を示し、両方の結合は、アミド官能基を介しており、
Gは、水素、−OH、−ORPR、−CO2H、−CO2RPRもしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−OH、−ORPR、−CO2H、および−CO2RPRからなる群から選択され、RPRは、適切な保護であるか、またはGは、N(RPR)(RPR)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、N(RPR)(RPR)であり、RPRは、独立に保護基であるか、もしくはRPRは、一緒になって適切な保護基を形成するか、またはGは、−N(R45)(R46)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−N(R45)(R46)であり、R45、R46の一方は、水素もしくはRPRであり(RPRは、適切な保護基である)、他方は、水素もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、
R38は、水素または必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、R39〜R44は、水素、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されているC6〜C20アリール、および必要に応じて置換されているC5〜C20ヘテロアリールからなる群から独立に選択されるか、またはR39、R40は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R41〜R44は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR43、R44は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R39〜R42は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR40およびR41、もしくはR40およびR43、もしくはR41およびR43は、両方が結合している炭素原子もしくはヘテロ原子、ならびにそれらの炭素原子および/もしくはヘテロ原子間に介在する原子と一緒になって、C5〜C6カルボシクロもしくはC5〜C6ヘテロシクロを画定し、R39、R44およびR40〜R43の残部は、本明細書で定義されている通りである]であるか、
またはA’が、必要に応じて置換されているジアミン残基であり、一方のアミノ窒素原子が、Aの残部に共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子が、Wに共有結合によって結合しており、両方の結合が、アミド官能基を介している、
実施形態31〜39のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物。
またはその塩を有する、実施形態39のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、LP(PEG)の窒素原子への波線は、Aの残部への結合部位を示し、A’の窒素原子への波線は、Wへの結合部位を示し、両方の結合は、アミド官能基を介している]。
41.Wが、プロテアーゼのための認識部位を提供するジペプチドから構成されるアミノ酸配列であり、ジペプチドが、
の構造
またはその塩を有する、実施形態31〜40のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、ジペプチドのN末端における波線は、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介する、AF薬物単位へのアミド結合としての共有結合性結合部位を示し、アミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、ジペプチドのC末端における波線は、アミノ酸配列の残部への、またはAもしくはそのサブユニット(AOがA2として存在する場合のように)への共有結合性結合部位を示し、
R34は、水素、またはプロリンを除く天然に存在するα−アミノ酸の側鎖、特に−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOHもしくは−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシ−ベンジル、−CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2CH2SCH3、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH(OH)CH2NH2、2−ピリジルメチル、4−ピリジルメチル、フェニルもしくはシクロヘキシルであるか、または
波線は、ジペプチドの主鎖への共有結合性結合部位を示す]。
42.Wが、グルタミン酸残基、アスパラギン酸、またはN末端のグルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基から構成されるペプチド配列であり、これらは、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸のα−アミノ窒素原子を介して疎水性AF薬物単位のC末端構成成分のカルボン酸残基に、およびペプチド配列の残部に、またはグルタミン酸もしくはアスパラギン酸のα−カルボキシルを介して、存在する必要に応じた第2のストレッチャー単位であるA’に共有結合によって結合しており、両方の結合が、アミド結合を介しており、C末端構成成分へのアミド結合が、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、A’が、カルボン酸側鎖を有するC2〜C12アルキレンジアミン、特にC2〜C6またはC2〜C4アルキレンジアミンであり、したがって、そのアミンの一方の窒素原子が、グルタミン酸残基にアミド結合として共有結合によって結合しており、他方のアミンの窒素原子が、共有結合によって結合しているAまたはそのサブユニット(AOがA2として存在する場合のように)である、実施形態31〜40のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物。
またはその塩を有する、実施形態31〜38のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、グルタミン酸のアルファ−アミノ窒素原子に隣接する波線は、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介する、疎水性AF薬物単位へのアミド結合としての共有結合性結合部位を示し、アミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、リシンイプシロンアミン窒素原子に隣接する波線は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)またはそのサブユニットへの共有結合性結合部位を示す]。
またはその塩によって表される、実施形態30のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在しないか、またはAの第2のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字Pは、1または2であり、下付き文字Qは、1〜6の範囲であり、Ra3は、−H、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されている−C1〜C4アルキレン−(C6〜C10アリール)、または−RPEG1−O−(CH2CH2O)1〜36−RPEG2であり、RPEG1は、C1〜C4アルキレンであり、RPEG2は、−HまたはC1〜C4アルキレンであり、Ra3に結合している塩基性窒素は、必要に応じてプロトン化されているか、または塩形態であり、
R34は、−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOHまたは−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、メチル、イソプロピル、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2または−CH2CH2CH(OH)CH2NH2であり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩によって表される、実施形態30のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在しないか、またはAの第2のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字xは、1または2であり、Ra2は、水素または−CH3または−CH2CH3であり、Ra3は、各場合において独立に、水素、−CH3または−CH2CH3であるか、または両方のRa3は、それらが結合している窒素と一緒になって、アゼチジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルヘテロシクリルを画定し、そのように画定された塩基性第一級、第二級または第三級アミンは、酸付加塩形態として必要に応じてプロトン化されており、
R34は、−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOHまたは−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、メチル、イソプロピル、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2または−CH2CH2CH(OH)CH2NH2であり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩によって表される、実施形態30のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在しないか、またはAの第2のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、A’の非存在または存在を示し、
R34は、−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOHまたは−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、メチル、イソプロピル、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2または−CH2CH2CH(OH)CH2NH2であり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩によって表される、実施形態44のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された第二級または第三級アミンは、酸付加塩形態として必要に応じてプロトン化されており、AOは、存在しないか、またはα−アミノ酸もしくはβ−アミノ酸残基の構造を有するAの第2のサブユニットであり、A’は、必要に応じて置換されているC2〜C6アルキレンジアミン残基の構造を有する、存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、一方のアミノ窒素原子は、AOに共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子は、R34含有アミノ酸残基に共有結合によって結合しており、両方の結合は、アミド官能基を介しており、R34は、−CH2CO2Hまたは−CH2CH2CO2Hであり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩によって表される、実施形態45のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された第一級または第二級アミンは、酸付加塩形態として必要に応じてプロトン化されており、AOは、存在しないか、またはα−アミノ酸もしくはβ−アミノ酸残基の構造を有するAの第2のサブユニットであり、A’は、必要に応じて置換されているC2〜C6アルキレンジアミン残基の構造を有する、存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、一方のアミノ窒素原子は、AOに共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子は、R34含有アミノ酸残基に共有結合によって結合しており、両方の結合は、アミド官能基を介しており、R34は、−CH2CO2Hまたは−CH2CH2CO2Hであり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩によって表される、実施形態46のリガンド薬物コンジュゲート組成物[ここで、AOは、存在しないか、またはα−アミノ酸もしくはβ−アミノ酸残基の構造を有するAの第2のサブユニットであり、A’は、必要に応じて置換されているC2〜C6アルキレンジアミン残基の構造を有する、存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、一方のアミノ窒素原子は、AOに共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子は、R34含有アミノ酸残基に共有結合によって結合しており、両方の結合は、アミド官能基を介しており、R34は、−CH2CO2Hまたは−CH2CH2CO2Hであり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩によって表される、実施形態47のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
またはその塩によって表される、請求項48に記載のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
またはその塩によって表される、実施形態49のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
53.R
1が、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
2C(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
2CH
2N(CH
3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH
2CH
2CH
2CH
2N(CH
3)−C(=O)−t−Bu、−CH
2CH
2CH
2N(CH
3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)−O−t−Buであるか、または
の構造を有する、実施形態45〜52のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物。
またはその塩を有する、実施形態30のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
55.Lが、無傷抗体またはその抗原結合性断片の抗体リガンド単位である、実施形態30〜54のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物。
56.抗体リガンド単位が、無傷キメラ、ヒト化またはヒト抗体のものである、実施形態55のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
57.下付き文字pが、約2〜約12、または約2〜約10、または約2〜約8の範囲である、実施形態30〜56のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物。
58.下付き文字pが、約2、約4または約8である、実施形態57のリガンド薬物コンジュゲート組成物。
59.抗体またはその断片が、がん細胞抗原に選択的に結合することができる、実施形態55〜58のいずれか1つのリガンド薬物コンジュゲート組成物。
60.請求項30〜59のいずれか1つに記載の有効量のリガンド薬物コンジュゲート組成物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的に許容される製剤。
61.凍結乾燥またはそれを必要とする対象への投与に適した液体である、請求項60の薬学的に許容される製剤。
62.液体製剤の凍結乾燥から得られた固体であって、固体製剤の少なくとも1つの賦形剤が凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)である、請求項61の薬学的に許容される製剤。
[式中、LB’は、リガンド共有結合性結合部分前駆体であり、Aは、第1の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字aは、0または1であり、それぞれAの存在の非存在を示し、Bは、必要に応じた分岐単位であり、下付き文字bは、0または1であり、それぞれBの存在の非存在を示し、LOは、必要に応じた二次リンカー部分であり、下付き文字qは、1〜4の範囲の整数であり、Dは、そのC末端構成成分のカルボン酸官能基を介してコンジュゲートしている請求項1〜29のいずれか1つの構造を有する疎水性AF薬物単位である]。
64.L
Oが、存在する二次リンカーであり、
の式を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物
[ここで、Yに隣接する波線は、疎水性アウリスタチン薬物単位へのLOの共有結合性結合部位を示し、A’に隣接する波線は、薬物リンカー部分の残部へのLOの共有結合性結合部位を示し、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、Wは、ペプチド切断可能単位であり、Yは、ペプチドスペーサー単位であり、下付き文字yは、0または1であり、それぞれYの非存在または存在を示す]。
またはその塩、特に薬学的に許容される塩を有する、実施形態64の薬物リンカー化合物[ここで、R2は、メチルであり、R1は、C3〜C9アルキルであり、前記C3〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間である]。
またはその塩を有するか、またはそれから構成される、実施形態65の薬物リンカー化合物[ここで、LG1は、標的化剤である求核試薬による求核置換えに適した脱離基であり、LG2は、標的化剤へのアミド結合形成に適した脱離基であるか、または標的化剤へのアミド結合形成に適した活性化可能なカルボン酸を提供するために−OHであり、波線は、薬物リンカー化合物の構造の残部への共有結合性結合部位を示す]。
またはその塩を有する、実施形態65の薬物リンカー化合物[ここで、AOに隣接する波線は、LOへの共有結合性結合部位を示し、他方の波線は、リガンド単位の硫黄原子への共有結合性結合部位を示し、AOは、Aの必要に応じた第2のサブユニットであり、[HE]は、Aまたはその第1のサブユニットによって提供された構成成分である必要に応じた加水分解増強単位であり、BUは、塩基性単位であり、Ra2は、必要に応じて置換されているC1〜C12アルキル基であり、点線の曲線は、必要に応じた環化を示し、したがって、前記環化の非存在下では、
BUは、非環式塩基性単位の塩基性官能基として第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基を有する非環式塩基性単位であるか、または前記環化の存在下では、BUは、環化塩基性単位であり、Ra2およびBUは、両方が結合している炭素原子と一緒になって、環式塩基性単位の塩基性官能基として第二級もしくは第三級アミン官能基の骨格塩基性窒素原子を含有する、必要に応じて置換されているスピロC3〜C20ヘテロシクロを画定し、非環式塩基性単位または環式塩基性単位の塩基性窒素原子は、塩基性窒素原子の置換度に依存して、窒素保護基によって必要に応じて適切に保護されているか、または酸付加塩として必要に応じてプロトン化されている]。
もしくは特に酸付加塩としてのその塩を有するか、またはL
b’−A−が、
の構造を有する、実施形態67の薬物リンカー化合物。
69.A
Oが、存在しA
2と示されるAの第2のサブユニットであり、A
2が、式3a、式4aもしくは式5a:
の構造を有するアミン含有酸残基
[式中、窒素原子に隣接する波線は、Aの第1のサブユニットの[HE]への共有結合性結合部位を示し、[HE]は、−C(=O)−であり、カルボニル炭素原子に隣接する波線は、LOへの共有結合性結合部位を示し、両方の結合は、アミド官能基を介しており、下付き文字eおよびfは、独立に、0または1であり、
Gは、水素、−OH、−ORPR、−CO2H、−CO2RPRもしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−OH、−ORPR、−CO2H、および−CO2RPRからなる群から選択され、RPRは、適切な保護であるか、またはGは、N(RPR)(RPR)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、N(RPR)(RPR)であり、RPRは、独立に保護基であるか、もしくはRPRは、一緒になって適切な保護基を形成するか、またはGは、−N(R45)(R46)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−N(R45)(R46)であり、R45、R46の一方は、水素もしくはRPRであり(RPRは、適切な保護基である)、他方は、水素もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、
R38は、水素または必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、R39〜R44は、水素、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されているC6〜C20アリール、および必要に応じて置換されているC5〜C20ヘテロアリールからなる群から独立に選択されるか、またはR39、R40は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R41〜R44は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR43、R44は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R39〜R42は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR40およびR41、もしくはR40およびR43、もしくはR41およびR43は、両方が結合している炭素原子もしくはヘテロ原子、ならびにそれらの炭素原子および/もしくはヘテロ原子間に介在する原子と一緒になって、C5〜C6カルボシクロもしくはC5〜C6ヘテロシクロを画定し、R39、R44およびR40〜R43の残部は、本明細書で定義されている通りである]であるか、
またはAOが、α−アミノもしくはβ−アミノ酸残基であり、そのアミノ窒素原子が、Aの残部に共有結合によって結合しており、そのカルボン酸のカルボニル炭素が、A’に共有結合によって結合しており、両方の結合が、アミド官能基を介している、
実施形態67または68の薬物リンカー化合物。
70.AOが、存在しA2と示されるAの第2のサブユニットであり、A2が、−NHCH2CH2C(=O)−の構造を有するβ−アミノ酸残基であるか、または−LP(PEG)−の式を有し、LPが、三官能性アミン含有酸残基の構造を有する並列コネクター単位であり、PEGが、PEG単位である、実施形態67または68の薬物リンカー化合物。
71.A
2が、
の構造を有する−L
P(PEG)−である、実施形態70の薬物リンカー化合物
[ここで、窒素原子に隣接する波線は、Aの第1のサブユニットへの共有結合性結合部位を示し、カルボニル炭素原子または硫黄原子への波線は、LOのA’への共有結合性結合部位を示す]。
72.A’が、式3b、式4bもしくは式5b:
の構造を有するアルキレンジアミン残基
[式中、下付き文字eおよびfは、0〜6の範囲であり、下付き文字e’およびf’は、1〜6の範囲であり、R38が結合しているアミン残基の窒素原子の隣の波線は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位への、またはAOへの共有結合性結合部位を示し、AOは、存在する場合、A2と示されるAの必要に応じた第2のサブユニットであり、他方のアミン残基の窒素原子に隣接する波線は、Wへの共有結合性結合部位を示し、両方の結合は、アミド官能基を介しており、
Gは、水素、−OH、−ORPR、−CO2H、−CO2RPRもしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−OH、−ORPR、−CO2H、および−CO2RPRからなる群から選択され、RPRは、適切な保護であるか、またはGは、N(RPR)(RPR)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、N(RPR)(RPR)であり、RPRは、独立に保護基であるか、もしくはRPRは、一緒になって適切な保護基を形成するか、またはGは、−N(R45)(R46)もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、必要に応じた置換基は、存在する場合、−N(R45)(R46)であり、R45、R46の一方は、水素もしくはRPRであり(RPRは、適切な保護基である)、他方は、水素もしくは必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、
R38は、水素または必要に応じて置換されているC1〜C6アルキルであり、R39〜R44は、水素、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されているC6〜C20アリール、および必要に応じて置換されているC5〜C20ヘテロアリールからなる群から独立に選択されるか、またはR39、R40は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R41〜R44は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR43、R44は、両方が結合している炭素原子と一緒になって、C3〜C6カルボシクロを画定し、R39〜R42は、本明細書で定義されている通りであるか、またはR40およびR41、もしくはR40およびR43、もしくはR41およびR43は、両方が結合している炭素原子もしくはヘテロ原子、ならびにそれらの炭素原子および/もしくはヘテロ原子間に介在する原子と一緒になって、C5〜C6カルボシクロもしくはC5〜C6ヘテロシクロを画定し、R39、R44およびR40〜R43の残部は、本明細書で定義されている通りである]であるか、
またはA’が、必要に応じて置換されているジアミン残基であり、一方のアミノ窒素原子が、Aの残部に共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子が、Wに共有結合によって結合しており、両方の結合が、アミド官能基を介している、
実施形態64〜71のいずれか1つの薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態71の薬物リンカー化合物[ここで、LP(PEG)の窒素原子への波線は、Aの残部への結合部位を示し、A’の窒素原子への波線は、Wへの結合部位を示し、その両方の結合は、アミド官能基を介している]。
74.Wが、プロテアーゼのための認識部位を提供するジペプチドから構成されるアミノ酸配列であり、ジペプチドが、
の構造
またはその塩を有する、実施形態64〜73のいずれか1つの薬物リンカー化合物[ここで、ジペプチドのN末端における波線は、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介する、AF薬物単位へのアミド結合としての共有結合性結合部位を示し、アミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、ジペプチドのC末端における波線は、アミノ酸配列の残部への、またはAもしくはそのサブユニット(AOがA2として存在する場合のように)への共有結合性結合部位を示し、
R
34は、水素、またはプロリンを除く天然に存在するα−アミノ酸の側鎖、特に−CH
3、−C(CH
3)
2、−CH
2COOH、−CH
2CH
2COOHもしくは−CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2−であり、R
35は、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシ−ベンジル、−CH
2OH、−CH(OH)CH
3、−CH
2CH
2SCH
3、−CH
2C(=O)NH
2、−CH
2COOH、−CH
2CH
2C(=O)NH
2、−CH
2CH
2COOH、−CH
2CH
2CH
2NHC(=NH)NH
2、−CH
2CH
2CH
2NH
2、−CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)CH
3、−CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)H、−CH
2CH
2CH
2CH
2NHC(=NH)NH
2、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)H、−CH
2CH
2CH
2NHC(=O)NH
2、−CH
2CH
2CH
2CH
2NHC(=O)NH
2、−CH
2CH
2CH(OH)CH
2NH
2、2−ピリジルメチル、4−ピリジルメチル、フェニルもしくはシクロヘキシルであるか、またはR
35は、
の1つの構造を有し、
波線は、ジペプチドの主鎖への共有結合性結合部位を示す]。
75.Wが、グルタミン酸残基、アスパラギン酸、またはN末端のグルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基から構成されるペプチド配列であり、これらは、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸のα−アミノ窒素原子を介して疎水性AF薬物単位のC末端構成成分のカルボン酸残基に、およびペプチド配列の残部に、またはグルタミン酸もしくはアスパラギン酸のα−カルボキシルを介して、存在する必要に応じた第2のストレッチャー単位であるA’に共有結合によって結合しており、両方の結合が、アミド結合を介しており、C末端構成成分へのアミド結合が、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、A’が、カルボン酸側鎖を有するジアミンであり、したがって、そのアミンの一方の窒素原子が、グルタミン酸残基にアミド結合として共有結合によって結合しており、他方のアミンの窒素原子が、共有結合によって結合しているAまたはそのサブユニット(AOがA2として存在する場合のように)である、実施形態64〜73のいずれか1つの薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態64〜70のいずれか1つの薬物リンカー化合物[ここで、グルタミン酸のアルファ−アミノ窒素原子に隣接する波線は、そのC末端構成成分のカルボン酸残基を介する、疎水性AF薬物単位へのアミド結合としての共有結合性結合部位を示し、アミド結合は、薬物単位を遊離薬物として放出するためにプロテアーゼによって切断可能であり、リシンイプシロンアミン窒素原子に隣接する波線は、存在する第1の必要に応じたストレッチャー単位(A)またはそのサブユニットへの共有結合性結合部位を示す]。
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在しないか、またはAの第2のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字Pは、1または2であり、下付き文字Qは、1〜6の範囲であり、Ra3は、−H、必要に応じて置換されているC1〜C6アルキル、必要に応じて置換されている−C1〜C4アルキレン−(C6〜C10アリール)、または−RPEG1−O−(CH2CH2O)1〜36−RPEG2であり、RPEG1は、C1〜C4アルキレンであり、RPEG2は、−HまたはC1〜C4アルキレンであり、Ra3に結合している塩基性窒素は、酸付加塩として必要に応じてプロトン化されているか、または酸に不安定な保護基によって必要に応じて保護されており、
R34は、−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOHまたは−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、メチル、イソプロピル、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2または−CH2CH2CH(OH)CH2NH2であり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在しないか、またはAの第2のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、それぞれA’の非存在または存在を示し、下付き文字xは、1または2であり、Ra2は、水素または−CH3または−CH2CH3であり、Ra3は、各場合において独立に、水素、−CH3または−CH2CH3であるか、または両方のRa3は、それらが結合している窒素と一緒になって、アゼチジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルヘテロシクリルを画定し、そのように画定された塩基性第一級、第二級または第三級アミンは、酸付加塩形態として必要に応じてプロトン化されているか、または塩基性第一級もしくは第二級アミンは、酸に不安定な保護基によって必要に応じて保護されており、
R34は、−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOHまたは−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、メチル、イソプロピル、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2または−CH2CH2CH(OH)CH2NH2であり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物[ここで、HEは、必要に応じた加水分解増強単位であり、AOは、存在しないか、またはAの第2のサブユニットであり、A’は、第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、下付き文字a’は、0または1であり、A’の非存在または存在を示し、
R34は、−CH3、−C(CH3)2、−CH2COOH、−CH2CH2COOH、または−CH2CH2CH2CH2NH2であり、R35は、メチル、イソプロピル、−CH2C(=O)NH2、−CH2COOH、−CH2CH2C(=O)NH2、−CH2CH2COOH、−CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2、−CH2CH2CH2CH2NH2−、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)CH3、−CH2CH2CH2CH2NH−C(=O)H、−CH2CH2CH2NHC(=O)NH2、−CH2CH2CH2CH2NHC(=O)NH2または−CH2CH2CH(OH)CH2NH2であり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩を有する、実施形態77の薬物リンカー化合物[ここで、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された第二級または第三級アミンは、酸付加塩形態として必要に応じてプロトン化されているか、またはそのように画定された第二級アミンは、酸に不安定な保護基によって必要に応じて保護されており、AOは、存在しないか、またはα−アミノ酸もしくはβ−アミノ酸残基の構造を有するAの第2のサブユニットであり、A’は、必要に応じて置換されているC2〜C6アルキレンジアミン残基の構造を有する、存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、一方のアミノ窒素原子は、AOに共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子は、R34含有アミノ酸残基に共有結合によって結合しており、両方の結合は、アミド官能基を介しており、R34は、−CH2CO2Hまたは−CH2CH2CO2Hであり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩を有する、実施形態78の薬物リンカー化合物[ここで、Ra3は、水素、−CH3または−CH2CH3であり、そのように画定された第一級または第二級アミンは、酸付加塩形態として必要に応じてプロトン化されているか、または酸に不安定な保護基によって必要に応じて保護されており、AOは、存在しないか、またはα−アミノ酸もしくはβ−アミノ酸残基の構造を有するAの第2のサブユニットであり、A’は、必要に応じて置換されているC2〜C6アルキレンジアミン残基の構造を有する、存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、一方のアミノ窒素原子は、AOに共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子は、R34含有アミノ酸残基に共有結合によって結合しており、両方の結合は、アミド官能基を介しており、R34は、−CH2CO2Hまたは−CH2CH2CO2Hであり、
R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、または
R1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、
ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、またはR1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩を有する、実施形態79の薬物リンカー化合物[ここで、
AOは、存在しないか、またはα−アミノ酸もしくはβ−アミノ酸残基の構造を有するAの第2のサブユニットであり、A’は、必要に応じて置換されているC2〜C6アルキレンジアミン残基の構造を有する、存在する第2の必要に応じたストレッチャー単位であり、一方のアミノ窒素原子は、AOに共有結合によって結合しており、他方のアミノ窒素原子は、R34含有アミノ酸残基に共有結合によって結合しており、両方の結合は、アミド官能基を介しており、R34は、−CH2CO2Hまたは−CH2CH2CO2Hであり、R2は、メチルであり、R1は、C1〜C9アルキルであり、前記C1〜C9アルキルは、合計9個までの炭素原子の(カルボシクリル)−アルキレン−を提供するために、C3〜C6カルボシクリルによって必要に応じて置換されており、またはR1は、−(C2〜C6アルキレン)−X−R4であり、Xは、アミドまたはカルバメート官能基であり、R4は、C1〜C6アルキルであり、ただし、R1の(カルボシクリル)アルキル(エン)部分における炭素原子の総数は、4〜10の間であり、R1は、メチルではないか、または
R1は、第1の非芳香族疎水性部分であり、R2は、第2の非芳香族疎水性部分であり、第1および第2の疎水性部分は、約4.4〜約7.2の間のclogP値によって特徴付けられる疎水性AF化合物を提供する]。
またはその塩を有する、実施形態80の薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態81の薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態82の薬物リンカー化合物。
86.R
1が、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
2C(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
2CH
2N(CH
3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH
2CH
2CH
2CH
2N(CH
3)−C(=O)−t−Bu、−CH
2CH
2CH
2N(CH
3)−C(=O)−O−t−Bu、−CH
2CH
2CH
2NH−C(=O)−O−t−Buであるか、または
の構造を有する、実施形態63〜85のいずれか1つの薬物リンカー化合物。
87.
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物。
またはその塩を有する、実施形態63の薬物リンカー化合物。
一般情報。すべての市販の無水溶媒を、さらなる精製なしに使用した。市販のクロロトリチル樹脂およびアルデヒドを、MilliporeSigmaから購入し、さらなる精製なしに使用した。D−Series SynPhase LanternsTMを、MimotopesTMから購入した。4−メチルペンタナールを、4−メチルペンタノールの酸化によって合成した(Meyer et al., J. Org. Chem. 1994, 59, 7549-7552)。アウリスタチンおよび薬物リンカーを、本発明者の以前の報告に従って合成した(Doroninaら、WO2009117531A1;Doroninaet al., Bioconjugate Chem. 2006, 17, 114-124およびDoronina et al, BioconjugateChem. 2008, 19, 1960-1963)。UPLC−MS系1は、Acquity UPLC BEH C18 2.1×50mm、1.7μm逆相カラムを備えたAcquity Ultra Performance LCにインターフェイスさせたWaters SQ質量検出器からなっていた。酸性移動相(0.1%ギ酸)は、3%アセトニトリル/97%水から100%アセトニトリルのグラジエントからなっていた(流速=0.5mL/分)。UPLC−MS系2は、Acquity UPLC BEH C18 2.1×50mm、1.7μm逆相カラム(カラム1)またはCORTECS UPLC C18 2.1×50mm、1.6μm逆相カラム(カラム2)を備えたWaters Acquity H−Class Ultra Performance LCにインターフェイスさせたWaters Xevo G2 ToF質量分析計からなっていた。分取HPLCは、Waters 2998光ダイオードアレイ検出器を伴うWaters 2545 Binaryグラジエントモジュールで行った。生成物は、C12 Phenomenex SynergiTM250×10.0mm、4μm、80Å逆相カラム(カラム1)またはC12 Phenomenex Synergi 250×50mm、10μm、80Å逆相カラム(カラム2)で、水中0.1%トリフルオロ酢酸(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸(溶媒B)を用いて溶出して精製した。精製方法は、一般に、90%水性溶媒Aから10%溶媒Aの勾配の、溶媒Aから溶媒Bの直線グラジエントからなっていた。流速は、254nmでモニタリングして4.6mL/分であった。NMRスペクトルデータは、Varian Mercury 400MHz分光計で収集した。カップリング定数(J)はヘルツで報告する。
アウリスタチンリガンド薬物コンジュゲートまたは遊離アウリスタチン薬物の細胞傷害性は、細胞増殖アッセイによって、Promega Corp.Technical Bulletin TB288(Mendoza et al., 2002, Cancer Res. 62:5485-5488)に記載されているプロトコールを用いて測定し、その方法は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。簡潔には、培地中約104個の細胞(例えば、HL−60、SK−MEL−5など)を含有する一定分量100μlの細胞培養物を、96ウェルの不透明壁プレートの各ウェルに沈着させる。培地を含有するが細胞を含まない対照ウェルを調製した。遊離薬物またはコンジュゲートを、実験ウェルに添加し、96時間インキュベートし、次いでおよそ30分間室温に平衡化し、その時点で各ウェルに存在する細胞培養培地の体積に等しい体積のCellTiter−GloTM試薬を添加する。内容物を、オービタルシェーカーで2分間混合して、細胞溶解を誘導し、プレートを室温で10分間インキュベートして、記録のために発光シグナルを安定にする。
パートA.疎水性AF化合物の調製のための一般手順
(実施例1)
ランタン負荷のための一般手順
D−シリーズトリチルアルコールランタン(8μmol/ランタン)を、10%(V/V)塩化アセチルの乾燥DCM溶液0.5mLで、室温で3時間処理した。溶液を濾過し、ランタンを乾燥DCM(3×3mL)で洗浄し、乾燥させずにすぐに使用した。
ランタンを、Fmoc−アミノ酸(0.14M、70μmol、8.75当量)およびDIPEA(0.5M、260μmol、33当量)のDCM溶液0.5mLで、室温で2時間処理した。溶液を濾過し、ランタンをDMF(3×3分)およびDCM(3×3分)で洗浄し、デシケーター内で真空乾燥させた。
(実施例2)
Fmoc脱保護のための一般手順
ランタンを、20%(V/V)ピペリジンのDMF溶液0.5mLで処理し、30分間振とうした。溶液を除去し、ランタンを同じ脱保護条件に供した。溶液を濾過し、ランタンをDMF(3×3分)およびDCM(3×3分)で洗浄し、デシケーター内で真空乾燥させた。
(実施例3)
アミドカップリングのための一般手順
Fmoc−アミノ酸(128μmol、16当量)を、乾燥DMF(0.6mL、0.2M最終濃度)およびDIPEA(217μmol、27当量)に溶解させ、HATU(124μmol、15.5当量)を逐次的に添加し、反応物を5分間撹拌した。ランタンを、活性化Fmoc−アミノ酸溶液で処理し、2時間振とうした。溶液を濾過し、ランタンをDMF(3×3分)およびDCM(3×3分)で洗浄し、デシケーター内で真空乾燥させた。
(実施例4)
還元的アミノ化のための一般手順
アルデヒド(40μmol、5当量)を、1%(V/V)AcOHのDMF溶液0.6mLに溶解させた後、NaBH3CN(32μmol、4当量)を添加した。ランタンを溶液で処理し、2時間振とうした。溶液を濾過し、ランタンをDMF(3×3分)およびDCM(3×3分)で洗浄し、デシケーター内で真空乾燥させた。
(実施例5)
ランタン切断のための一般手順
ランタンを、96ウェルプレートに個々に入れ、20%(V/V)HFIPのDCM溶液0.5mLで1時間処理する。ランタンを除去し、切断された生成物を、N2ストリームを使用して濃縮する。試料を、UPLC分析および分取HPLCのために溶解させた。
以下の化合物を、パートAの一般手順に従って調製した。
(実施例6)
エチル−AF
エチル−AF(4)を、アセトアルデヒドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:3.2mg(52%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.37分、m/z(ES+)算出値760.52(M+H)+、実測値760.47。
(実施例7)
プロピル−AF
プロピル−AF(5)を、プロピオンアルデヒドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.4mg(38%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.38分、m/z(ES+)算出値774.53(M)+、実測値774.54。
(実施例8)
ブチル−AF
ブチル−AFを、ブチルアルデヒドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.9mg(46%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.43分、m/z(ES+)算出値788.55(M+H)+、実測値788.51。
(実施例9)
ペンチル−AF
ペンチル−AF(7)を、バレルアルデヒドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.2mg(34%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.50分、m/z(ES+)算出値802.56(M+H)+、実測値802.19。
(実施例10)
ヘキシル−AF
ヘキシル−AF(8)を、ヘキサナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:3.0mg(46%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.55分、m/z(ES+)算出値816.58(M+H)+、実測値816.45。
(実施例11)
ヘプチル−AF
ヘプチル−AF(9)を、ヘプタナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:3.8mg(57%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.65分、m/z(ES+)算出値830.60(M+H)+、実測値830.67。
(実施例12)
オクチル−AF
オクチル−AF(10)を、オクタナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:1.2mg(17%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.72分、m/z(ES+)算出値844.61(M+H)+、実測値844.45。
(実施例13)
ノニル−AF
ノニル−AF(11)を、ノナナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:1.5mg(22%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.80分、m/z(ES+)算出値858.63(M+H)+、実測値858.35。
(実施例14)
デシル−AF
デシル−AF(12)を、デカナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:4.0mg(57%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.87分、m/z(ES+)算出値872.64(M+H)+、実測値872.51。
(実施例15)
ウンデシル−AF
ウンデシル−AF(13)を、ウンデカナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.7mg(38%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.96分、m/z(ES+)算出値886.66(M+H)+、実測値886.58。
(実施例16)
ドデシル−AF
ドデシル−AF(14)を、ドデカナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.4mg(33%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=2.06分、m/z(ES+)算出値900.67(M+H)+、実測値900.65。
(実施例17)
ペンタデシル−AF
ペンタデシル−AF(15)を、ペンタデカナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.1mg(28%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=2.27分、m/z(ES+)算出値942.72(M+H)+、実測値942.75。
(実施例18)
4−メチルペンチル−AF
4−メチルペンチル−AF(19)を、4−メチルペンタナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:3.7mg(57%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.55分、m/z(ES+)算出値816.58(M+H)+、実測値816.45。
(実施例19)
3−メチルブチル−AF
3−メチルブチル−AF(21)を、3−メチルブタナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:4.1mg(64%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.48分、m/z(ES+)算出値802.56(M+H)+、実測値802.48。
(実施例20)
ビス(エチル)−AF
ビス(エチル)−AF(22)を、アセトアルデヒドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:3.5mg(57%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.48分、m/z(ES+)算出値774.53(M+H)+、実測値774.44。
(実施例21)
ビス(プロピル)−AF
ビス(プロピル)−AFを、プロピオンアルデヒドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.6mg(41%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.50分、m/z(ES+)算出値802.56(M+H)+、実測値802.80。
(実施例22)
3,5,5−トリメチルヘキシル−AF
3,5,5−トリメチルヘキシル−AF(20)を、3,5,5−トリメチルヘキサナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.8mg(41%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.71分、m/z(ES+)算出値858.63(M+H)+、実測値858.64。
(実施例23)
N−Boc−プロピル−AF
N−Boc−プロピル−AF(18)を、N−(4−オキソプロピル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:2.2mg(31%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.47分、m/z(ES+)算出値889.60(M+H)+、実測値889.39。
パートB.モノメチルアウリスタチンFからの疎水性AF化合物の調製のための一般手順
(実施例24)
樹脂上でのMMAFの還元的アミノ化のための一般手順
Cl−トリチル樹脂上でのFMOC−アミノ酸およびHATUを用いる一般的なペプチドカップリング、ならびに中間体MMAFを、以前に記載されている通り調製した(WO2009117531A1)。アルデヒド(1.4mmol、2当量)を1%(V/V)AcOHのDMF溶液10mLに溶解させた後、NaBH3CN(1.2mmol、1.8当量)を添加した。溶液を、樹脂(1g、0.7mmol/g)を含有するPETフリット付きのシリンジに添加し、混合物を約2時間かき混ぜる。樹脂を濾過し、DMF、DCMおよびエチルエーテルで洗浄し、真空デシケーター内で乾燥させた。
20%(V/V)HFIPのDCMの溶液を、樹脂に1時間添加し、濾過した。樹脂をDCMで洗浄し、合わせた有機層を真空中で乾燥させた。試料を、UPLC分析および分取HPLCのために溶解させた。
以下の化合物を、パートBの一般手順に従って調製した。
(実施例25)
(Boc−N−メチル)−ブチル−AF
(Boc−N−メチル)−ブチル−AF(16)を、N−メチル−N−(4−オキソブチル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:17mg(68%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.21分、m/z(ES+)算出値917.63(M+H)+、実測値917.67。
(実施例26)
(Boc−N−メチル)−ブチル−AF
(Boc−N−メチル)−ブチル−AF(17)を、N−メチル−N−(4−オキソブチル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:14mg(56%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.24分、m/z(ES+)算出値903.61(M+H)+、実測値903.65。
(実施例27)
(Boc−N−メチル)−エチル−AF
Boc−(N−メチル−エチル)−AF(24)を、N−メチル−N−(4−オキソエチル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:4mg(32%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.28分、m/z(ES+)算出値889.60(M+H)+、実測値889.66。
(実施例28)
(Boc−N−メチル)−プロピル−AF
(Boc−N−メチル)−プロピル−AF(25)を、N−メチル−N−(4−オキソプロピル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:7mg(55%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.23分、m/z(ES+)算出値903.61(M+H)+、実測値903.68。
(実施例29)
(Boc−N−メチル)−ペンチル−AF
(Boc−N−メチル)−ペンチル−AF(26)を、N−メチル−N−(4−オキソペンチル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:3mg(25%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.29分、m/z(ES+)算出値931.64(M+H)+、実測値931.71。
(実施例30)
4−(N−メチルピバルアミド)−ブチル−AF
4mLのバイアルに、化合物17(25mg、0.027mmol)およびDCM(0.3mL)を充填した。TFA(1mL、DCM中20%)を混合物に添加し、反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空中で除去した。残留物をDMSO(3mL)に溶解させ、分取HPLCによって精製して、(N−メチル)−ブチル−AF)を得た。収量:17mg(76%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.23分、m/z(ES+)算出値817.58(M+H)+、実測値817.67。
4mLのバイアルに、ピバルアルデヒド(2.7μL、0.025mmol)、DIPEA(11μL、0.066mmol)、HATU(8mg、0.021mmol)およびDMF(0.3mL)を充填した。反応物を室温で15分間撹拌し、N−メチル−ブチル−AF(11mg、0.016mmol)を反応物に添加した。反応物を室温で4時間撹拌し、溶媒を真空中で除去した。残留物をDMSO(3mL)に溶解させ、分取HPLCによって精製して、標題化合物(27)を得た。収量:5mg(33%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.23分、m/z(ES+)算出値901.63(M+H)+、実測値901.69。
パートC.疎水性AF薬物リンカー化合物の調製のための一般手順
(実施例32)
−A’−W−D薬物リンカー化合物中間体の還元のための一般手順
Cl−トリチル樹脂上でのFmoc−アミノ酸およびHATUを用いる一般的なペプチドカップリング、ならびに中間体アウリスタチンを、以前に記載されている通り調製した(WO2009117531A1)。
アルデヒド(0.14mmol、2当量)を1%(V/V)AcOHのDMF溶液10mLに溶解させた後、NaBH3CN(0.12mmol、1.8当量)を添加した。溶液を、樹脂(0.1g、0.07mmol/g)を含有するPETフリット付きのシリンジに添加し、混合物を約2時間かき混ぜた。樹脂を濾過し、DMF、DCMおよびエチルエーテルで洗浄し、真空デシケーター内で乾燥させた。
(実施例33)
アリル位保護基を除去するための一般手順
フェニルシラン(0.7mmol、10当量)をDCM1.4mLに溶解させ、溶液を、樹脂(0.1g、0.07mmol/g)を含有するPETフリット付きのシリンジに添加し、混合物を5分間かき混ぜた。Pd(PPh)3(14μmol、0.2当量)をDCM0.3mLに溶解させ、樹脂混合物に添加した。樹脂を2時間かき混ぜ、濾過し、DMF、DCMおよびエチルエーテルで洗浄し、真空デシケーター内で乾燥させた。
(実施例34)
マレイミドカップリングおよび樹脂切断のための一般手順
3−(マレイミド)プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.09mmol、1.2当量)およびDIPEA(0.14mmol、1.7当量)をDMF1.0mLに溶解させ、溶液を、樹脂(0.1g、0.07mmol/g)を含有するPETフリット付きのシリンジに添加した。混合物を2時間かき混ぜ、濾過し、DMF、DCMおよびエチルエーテルで洗浄し、真空デシケーター内で乾燥させた。20%(V/V)HFIPのDCM溶液を、樹脂に1時間添加し、濾過した。樹脂をDCMで洗浄し、合わせた有機層を真空中で乾燥させた。試料を、UPLC分析のためにACNに、分取HPLCのためにDMSOに溶解させた。
以下の化合物を、パートCの一般手順に従って調製した。
(実施例35)
(Boc−N−メチル)−ブチル−AF−グルタミン酸−リシン−プロピオニルマレイミド
標題化合物(35)を、N−メチル−N−(4−オキソブチル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:27mg(29%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.19分、m/z(ES+)算出値1325.79(M+H)+、実測値1325.87。
(実施例36)
(3−メチルブチル)−AF−グルタミン酸−リシン−プロピオニルマレイミド
標題化合物(36)を、3−メチルブタナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:11mg(12%) 分析UPLC−MS(UPLC1):tr=1.69分、m/z(ES+)算出値1224.74(M+H)+、実測値1224.55。
(実施例37)
(3,5,5−トリメチルヘキシル)−AF−グルタミン酸−リシン−プロピオニルマレイミド
標題化合物(37)を、3,5,5−トリメチルヘキサナールを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:33mg(79%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.26分、m/z(ES+)算出値1266.79(M+H)+、実測値1266.96。
(実施例38)
(Boc−N−メチル)プロピル−AF−グルタミン酸−リシン−プロピオニルマレイミド
標題化合物(38)を、N−(4−オキソプロピル)ピバルアミドを用いる還元的アミノ化によって調製した。収量:1.2mg(0.024mmolの樹脂から4%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.56分、m/z(ES+)算出値1297.76(M+H)+、実測値1297.52。
(実施例40)
4−[(Boc−N−メチル)ピバルアミド]−ブチル−AF−グルタミン酸−2,3−ジアミノプロピオン酸−プロピオニルマレイミド
4mLのバイアルに、Boc−N−メチル−ブチル−AF(25mg、0.027mmol)およびDCM(0.3mL)を充填した。TFA(1mL、DCM中20%)を混合物に添加し、反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空中で除去した。4mLのバイアルに、ピバルアルデヒド(2.7μL、0.025mmol)、DIPEA(11μL、0.066mmol)、HATU(8mg、0.021mmol)およびDMF(0.3mL)を充填した。反応物を室温で15分間撹拌し、N−メチル−ブチル−AF(11mg、0.016mmol)を、アウリスタチン薬物リンカー残基に付加した。反応物を室温で4時間撹拌し、溶媒を真空中で除去した。残留物をDMSO(3mL)に溶解させ、分取HPLCによって精製して、標題化合物(40)を得た。
収量:10mg(11%) 分析UPLC−MS(UPLC2、カラム1):tr=1.13分、m/z(ES+)算出値1309.80(M+H)+、実測値1309.88。
(実施例41)
遺伝的MDR−およびMDR+対のがん細胞に対するアウリスタチン遊離薬物の活性
(実施例41)
他のMDR+細胞系に対するアウリスタチン遊離薬物の活性
(実施例42)
CD70+がん細胞を標的化するアウリスタチンのADCの活性
cAC10コンジュゲートの有効性を、混和Karpas/KarpasBVR(ホジキンリンパ腫)異種移植で評価した。抗体1個当たり平均4個の薬物部分を有するコンジュゲートを使用した。SCIDマウスの混和腫瘍モデルに、Karpas 299(マウス1匹当たり2.5×106個の細胞)およびKarpasBVR(マウス1匹当たり5×106個の細胞)を含有する混合物を皮下移植した。腫瘍有効性研究のために、平均腫瘍サイズが少なくとも100mm3に達したら、処置を開始した。腫瘍体積は、式(0.5×L×W2)(LおよびWは、2つの二方向測定値の長い方および短い方である)を使用して算出する。