本出願は、CCR5(またはCXCR4)およびCD4のうちのいずれか1つから選択されるCR標的抗原を特異的に認識するキメラ受容体(「CR」)、ならびに免疫細胞を活性化することができる細胞内CRシグナル伝達ドメインを発現する免疫細胞(例えばT細胞)を提供する。いくつかの実施形態では、CRが共刺激ドメインを含まない場合、CRは、CCOR共刺激ドメインを含み、CCR5(もしくはCXCR4)またはCD4(CCOR標的抗原)のうちの他方を特異的に認識するキメラ共受容体(「CCOR」)と共発現させることができる。このように、CCORは、CCOR標的抗原の結合時に必要な共刺激を提供することで、CR標的抗原とCCOR標的抗原の両方が存在し、免疫細胞に認識された場合にのみ免疫細胞が活性化されるようにする。免疫細胞はさらに、1または複数の共受容体(「COR」)、例えば、濾胞(CXCR5受容体)および腸管(α4β7受容体またはCCR9受容体)などの所望の位置への免疫細胞の遊走を容易にする共受容体をさらに発現することができる。加えて、免疫細胞をさらに改変して、CCR5受容体の発現を減少させるか、またはノックアウトすることで、免疫細胞(例えばCD4+免疫細胞)のウイルス感染に対する抵抗性を高めることができる。
したがって、本発明の一態様では、CRおよびCCORを含む免疫細胞が提供される。別の態様では、CRおよびCORを含む免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CR、CCOR、および1または複数のCORを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞をさらに修飾して、CCR5の発現が減少されるか、またはノックアウトされる。
また、免疫細胞におけるCR、CCOR、および/またはCORを発現する核酸系も提供される。
また、治療目的のための改変された免疫細胞の作製方法および使用方法、ならびにそのような方法に有用なキットおよび製造物品も提供される。
定義
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、特に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体フラグメントを対象に含める。
本明細書では、「ネイティブ型抗体」、「完全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」という用語は、以下に定義されるような抗体フラグメントではなく、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。これらの用語は、特に、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。ネイティブ型抗体は、通常、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1個のジスルフィド共有結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド結合の数は、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖と軽鎖はまた、規則的な間隔で鎖内ジスルフィド橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、それに続けて複数の定常ドメインがある。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、他端に定常ドメインを有し、すなわち、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並んでおり、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の境界面を形成していると考えられている。
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含む免疫グロブリンの他の部分である可変ドメインと比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメイン(総称してCH)と、軽鎖のCHL(またはCL)ドメインとを含む。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「VH」と呼ばれることがある。軽鎖の可変ドメインは「VL」と呼ばれることがある。これらのドメインは、一般的に抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分が、抗体間で配列が広範囲に異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性に使用されているという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方で高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブ型の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、主にβシート配置をとり、3つのHVRによって接続された4つのFR領域を含み、当該4つのFR領域はβシート構造を接続、場合によっては一部を形成するループを形成している。各鎖におけるHVRは、FR領域によって他の鎖からのHVRと共に極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体と抗原との結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など、様々なエフェクター機能を示す。
任意の哺乳動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプのうちの1つに分類することができる。
本明細書で使用される用語IgG「アイソタイプ」または「サブクラス」は、それらの定常領域の化学的および抗原性特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
抗体(免疫グロブリン)は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに分類することができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのクラスいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に区別することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置は周知であり、一般的には、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に記載されている。抗体は、抗体と1つもしくは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合によって形成される、より大きな融合分子の一部であってもよい。
本明細書では、「完全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」という用語は、以下に定義されるような抗体フラグメントではなく、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。これらの用語は、特に、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部を含み、好ましくは、その抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体フラグメントは、抗原結合フラグメントである。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、その名称が容易に結晶化する能力を表す、残りの「Fc」フラグメントとが生成される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋することができるF(ab')2フラグメントが生じる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。一実施形態では、二本鎖Fv種は、堅固な非共有結合性会合で1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種のものと類似した「二量体」構造で会合することができるように、柔軟性のあるペプチドリンカーによって共有結合され得る。この配置では、各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上に抗原結合部位を画定する。集合的に、6つのHVRは抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりもアフィニティーは低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
Fabフラグメントは、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含むほか、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab'フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1または複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端の数個の残基が付加されているという点でFabフラグメントとは異なる。Fab'−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'についての本明細書での呼称である。F(ab')2抗体フラグメントは、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab'フラグメントの対として生成された。抗体フラグメントの他の化学結合も知られている。
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、1本鎖ポリペプチド中に存在する。一般的に、scFvポリペプチドはさらに、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にするVHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、例えば、Pluckthuen,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies.Springer Berlin Heidelberg,1994.269−315を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと強制的に対形成して、2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、二価または二重特異性であってもよい。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第1993/101161号;Hudson et al., Nat.Med.9:129−134(2003);およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)に記載されている。トリアボディおよびテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
「重鎖のみの抗体」または「HCAb」という用語は、重鎖を含むが、通常であれば抗体に見られる軽鎖を欠いた機能性抗体を指す。ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ、またはアルパカ)は、HCAbを生成することが知られている。
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントを指す。場合によっては、単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物のHCAbから改変され、そのようなsdAbは、本明細書では「ナノボディ」または「VHHs」と呼ばれる。ラクダ科動物のsdAbは、既知の最小の抗原結合抗体フラグメントのうちの1つである(例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−8(1993);Greenberg et al.,Nature 374:168−73(1995);Hassanzadeh−Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013−26(2013)を参照されたい)。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在する可能性のある突然変異、例えば、自然発生の突然変異を除いて同一である。このように、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の性質が別々の抗体の混合物ではないことを示す。特定の実施形態では、そのようなモノクローナル抗体としては、典型的には、標的を結合するポリペプチド配列を含む抗体が挙げられ、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスによって得られる。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなど、複数のクローンの中からユニークなクローンを選択することであり得る。選択された標的結合配列はさらに、例えば、標的に対するアフィニティーを向上させるため、標的結合配列をヒト化するため、細胞培養での生産を向上させるため、インビボでの免疫原性を低下させるため、多重特異性抗体を作製するためなどに改変させることができ、改変された標的結合配列を含む抗体は、本発明のモノクローナル抗体であることも理解されるべきである。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向されている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には、他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。
「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の性質を示しており、抗体を任意の特定の方法で生産しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495−97(1975);Hongo et al.,Hybridoma 14(3):253−260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版 1988);Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)を参照されたい)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299ー310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);およびLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照されたい)、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部もしくは全部を有する動物においてヒト抗体またはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;および同第5,661,016号明細書;Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);およびLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照された)をはじめとする技術によって作製することができる。
本明細書でのモノクローナル抗体としては、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、鎖の残りの部分が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびに所望の生物学的活性を示す限りにおいて、そのような抗体のフラグメントが挙げられる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体としては、抗体の抗原結合領域が、例えば、目的の抗原でマカクザルを免疫することによって産生された抗体に由来する、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられる。
「非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、所望の特異性、アフィニティー、および/またはキャパシティを有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに向上させるために行うことができる。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。例えば、VaswaniおよびHamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998);Harris, Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);HurleおよびGross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号明細書および同第7,087,409号明細書も参照されたい。
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生された抗体のものに対応し、かつ/または本明細書に開示されているようなヒト抗体を作製するための任意の技術を使用して作製されアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義では、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体は除外されている。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野で知られている様々な技術を用いて産生することができる。HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製のために、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86−95(1991)に記載されている方法も利用可能である。van Dijk and van de Winkel, Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば免疫されたキセノマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号明細書を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体に関するLi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:3557−3562(2006)も参照されたい。
本明細書で使用される「結合する」、「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、生体分子を含む分子の異種集団の存在下での標的の存在を決定づける、標的と抗体との間の結合などの測定可能で再現可能な相互作用を指す。例えば、ある標的(エピトープであってもよい)に結合する、または特異的に結合する抗体は、他の標的に結合する抗体よりも、より高いアフィニティー、アビディティーで、より容易に、かつ/または、より長い期間で、この標的に結合する抗体である。一実施形態では、無関係な標的への抗体の結合の程度は、例えば、放射性免疫沈降法(RIA)によって測定して、標的への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種のタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合には、排他的結合が含まれ得るが、必須ではない。
本明細書で使用される「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、T細胞などの細胞上に1または複数の抗原特異性をグラフトする遺伝子改変された受容体を指す。CARは、「人工T細胞受容体」、「キメラT細胞受容体」、または「キメラ免疫受容体」としても知られている。いくつかの実施形態では、CARは、腫瘍抗原に特異的な抗体の細胞外可変ドメイン、およびT細胞または他の受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば1または複数の共刺激ドメインを含む。「CAR−T」とは、CARを発現するT細胞を指す。
本明細書で使用される「T細胞受容体」または「TCR」とは、MHC分子に結合した特異的抗原性ペプチドに結合する細胞外抗原結合ドメインを含む内因性または組換えT細胞受容体を指す。いくつかの実施形態では、TCRは、TCRαポリペプチド鎖およびTCRβポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、TCRは腫瘍抗原を特異的に結合する。
「組換え」という用語は、(1)その自然発生の環境から除外されているか、(2)その遺伝子が自然界で見出されるポリヌクレオチドの全部もしくは一部と関連していないか、(3)自然界において連結されていないポリヌクレオチドに作用可能に連結されているか、または(4)自然界に存在しない、生体分子、例えば遺伝子またはタンパク質を指す。「組換え」という用語は、クローン化されたDNA分離株、化学的に合成されたポリヌクレオチドアナログ、または異種系によって生物学的に合成されたポリヌクレオチドアナログ、ならびにそのような核酸によってコードされたタンパク質および/またはmRNAに関連して使用することができる。
「発現する」という用語は、核酸をタンパク質に翻訳することを指す。タンパク質は、発現して細胞内にとどまったり、細胞表面膜の構成要素となったり、または細胞外マトリックスもしくは培地に分泌されたりすることがある。
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターの複製または発現をサポートすることができる細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞であってもよいし、酵母、昆虫細胞、両生類細胞、または哺乳動物細胞などの真核細胞であってもよい。
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入れるかまたは導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞をいう。
「インビボで(in vivo)」という用語は、細胞が得られる生物の体内を指す。「エクスビボで(Ex vivo)」または「インビトロで(in vitro)」とは、細胞が得られる生物の体外であることを意味する。
「細胞」という用語には、初代対象細胞とその子孫が含まれる。
CD3を発現する細胞に関連して本明細書で使用される「活性化」とは、細胞増殖およびサイトカイン産生を含むがこれらに限定されないCD3シグナル伝達経路の下流エフェクター機能の検出可能な増加を誘導するために十分に刺激された細胞の状態を指す。
タンパク質の一部を指す場合の「ドメイン」という用語は、タンパク質を構成する1つもしくは複数のポリペプチドの構造的および/または機能的に関連する部分を含むことを意味する。例えば、二量体受容体の膜貫通ドメインは、膜全体に広がる受容体の各ポリペプチド鎖の部分を指してもよい。ドメインはまた、1本鎖ポリペプチドの関連部分を指してもよい。例えば、単量体受容体の膜貫通ドメインは、膜全体に広がる受容体の1本鎖ポリペプチドの部分を指してもよい。ドメインはまた、ポリペプチドの単一部分のみを含んでいてもよい。
本明細書で使用される「単離された核酸」という用語は、ゲノム、cDNA、もしくは合成由来の核酸、またはそれらのいくつかの組み合わせた核酸を意味することが意図されており、その由来によって、「単離された核酸」は、(1)その「単離された核酸」が自然界で見出されるポリヌクレオチドの全部または一部と関連していないか、(2)自然界において連結されていないポリヌクレオチドに作用可能に連結されているか、または(3)より大きな配列の一部として自然界に存在していない、ということである。
特に定めのない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いに縮重したタイプのものである、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするフレーズヌクレオチド配列はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのタイプでイントロンを含むことができる範囲でイントロンを含んでいてもよい。
「作用可能に連結された」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結が後者の発現をもたらすことを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関連して配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作用可能に連結されている。例として、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、コード配列に作用可能に連結されている。一般的に、作用可能に連結されたDNA配列は、連続しており、必要に応じて、同じリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域をつなぐ。
「誘導性プロモーター」という用語は、1または複数の特定のシグナルの付加または除去によって活性を調節することができるプロモーターを指す。例えば、誘導性プロモーターは、作用可能に連結された核酸の転写を特定の一連の条件下で、例えば、誘発剤の存在下で、またはプロモーターを活性化し、かつ/もしくはプロモーターの抑制を緩和する条件の下で活性化してもよい。
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」は、臨床結果を含む有益な結果または所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、以下のうちの1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない:疾患に起因する1つもしくは複数の症状の緩和、疾患の程度の低下、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の防止もしくは遅延)、疾患の広がり(例えば、転移)の防止もしくは遅延、疾患の再発の防止もしくは遅延、疾患の進行の遅延もしくは減速、疾患の寛解(部分的または全体的)の提供、病態の改善、疾患の寛解(部分的もしくは全体的)の提供、疾患の治療に必要な1つもしくは複数の他の薬剤の用量の減少、疾患の進行の遅延、生活の質を増加もしくは改善、体重増加の増大、および/または生存期間の延長。また、疾患の病理学的帰結(例えば、癌の腫瘍体積など)の減少も「治療」に包含される。本発明の方法は、治療のこれらの態様のうちのいずれか1つまたは複数を企図する。
「治療上有効な量」という用語は、本明細書に開示されているように、個体の疾患または障害を「治療する」のに有効な組成物の量を指す。感染性疾患の場合には、患者の状態を改善することができる組成物を含む組成物の治療上有効な量である。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に適合性がある」とは、生物学的または他の点で望ましくないわけではない材料を意味し、例えば、その材料は、いかなる重大な望ましくない生物学的作用も引き起こしたりせず、またはそれが含まれる組成物の他の成分のいずれとも有害に相互作用したりせずに、患者に投与される医薬組成物に組み込まれてもよい。薬学的に許容される担体または医薬品添加剤は、好ましくは、毒性試験および製造試験の要求される基準を満たしており、かつ/または米国食品医薬品局によって作成された不活性成分ガイドに含まれている。
治療の目的のための「対象」または「個体」とは、哺乳動物に分類される任意の動物であって、ヒト、家畜および有用動物、動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む動物を指す。
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「〜からなる」および/または「本質的に〜からなる」実施形態を含むことが理解される。
本明細書での「約」の付いた値またはパラメーターのへの言及は、その値またはパラメーター自体に向けられた変動を含み(かつ説明する)。例えば、「約X」に言及した説明には、「X」についての説明が含まれている。
本明細書で使用される場合、値またはパラメーター「でない」という言及は、一般的に、値またはパラメーター「以外」を意味し、記載する。例えば、方法がX型の癌を治療するために使用されないということは、この方法がX型以外の癌を治療するために使用されることを意味する。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「or」、および「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。
共受容体システム
本発明は、いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRを含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(「CR」)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(「CR」)をコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択される。
いくつかの状況下では、CRシグナル伝達ドメインを介して生成されたシグナルだけでは免疫細胞の完全な活性化には不十分であり、二次的または共刺激性のシグナルも必要とされる。したがって、いくつかの実施形態では、免疫細胞の活性化は、2つの異なるクラスの細胞内シグナル伝達配列、すなわち、CR(例えば細胞内CRシグナル伝達ドメインのシグナル伝達配列)を介して抗原依存性の初代活性化を開始するものと、二次的または共刺激性のシグナル(本明細書では「共刺激シグナル伝達配列」と呼ばれる)を提供するものとによって媒介される。共刺激シグナル伝達配列は、CRに存在し得る。言い換えれば、CRはさらに、CR共刺激ドメインを含み得る。
いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達配列は、共受容体によって提供される。特に、いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CR、ならびにb)キメラ共受容体(CCOR)であって、i)CCOR標的抗原を特異的に認識するCCOR標的抗原結合ドメイン、ii)CCR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CCOR共刺激ドメインを含む、CCORを含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4であり、CCOR標的抗原はCD4であるか、またはCR標的抗原はCD4であり、CCOR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4である。いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする第1の核酸であって、CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、第1の核酸、ならびにb)キメラ共受容体(CCOR)をコードする第2の核酸であって、CCORは、i)CCOR標的抗原を特異的に認識するCCOR標的抗原結合ドメイン、ii)CCR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CCOR共刺激ドメインを含む、第2の核酸を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4であり、CCOR標的抗原はCD4であるか、またはCR標的抗原はCD4であり、CCOR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4である。いくつかの実施形態では、CRおよびCCORは、核酸から発現され、免疫細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、CRは共刺激ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。遺伝子発現をかく乱するための細胞の修飾としては、例えば、RNA干渉(例えば、siRNA、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPR−またはTALENベースの遺伝子ノックアウト)などを含む、当該技術分野で知られている任意のそのような技術が挙げられる。
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、1または複数の共受容体をさらに含むように改変されている。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CR、ならびにb)CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される共受容体(COR)を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、iii)細胞内CR共刺激ドメイン、およびiv)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CR、ならびにb)CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される共受容体(COR)を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7とCCR9の両方を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5、α4β7、およびCCR9のすべてを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択され、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、iii)細胞内CR共刺激ドメイン、およびiv)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択され、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7をコードする核酸およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5をコードする核酸、α4β7をコードする核酸、およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、CRおよびCORは、核酸から発現され、免疫細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸であって、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、iii)細胞内CR共刺激ドメイン、およびiv)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原は、CCR5、CXCR4、およびCD4からなる群から選択され、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とCCR5結合部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、抗CCR5部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、抗CCR5部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7をコードする核酸およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5をコードする核酸、α4β7をコードする核酸、およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、CRおよびCORは、核酸から発現され、免疫細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)および広域中和抗体(「bNAb」)部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸であって、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)および広域中和抗体(「bNAb」)部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CR共刺激ドメイン、およびiv)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸であって、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とbNAb部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、bNAb部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、bNAb部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7をコードする核酸およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5をコードする核酸、α4β7をコードする核酸、およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、CRおよびCORは、核酸から発現され、免疫細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)および広域中和抗体(「bNAb」)部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸であって、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)および広域中和抗体(「bNAb」)部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CR共刺激ドメイン、およびiv)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸、ならびにb)共受容体(COR)をコードする核酸であって、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位とbNAb部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位は、bNAb部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位は、bNAb部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7をコードする核酸およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5をコードする核酸、α4β7をコードする核酸、およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、CRおよびCORは、核酸から発現され、免疫細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、本明細書に記載される1または複数のCR、CCOR、およびCORを発現するように改変されている。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CR、b)キメラ共受容体(CCOR)であって、i)CCOR標的抗原を特異的に認識するCCOR標的抗原結合ドメイン、ii)CCR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CCOR共刺激ドメインを含む、CCOR、ならびにc)共受容体(COR)を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4であり、CCOR標的抗原はCD4であるか、またはCR標的抗原はCD4であり、CCOR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4である。いくつかの実施形態では、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7とCCR9の両方を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5、α4β7、およびCCR9のすべてを含む。いくつかの実施形態では、CRは、CR細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、a)キメラ受容体(CR)をコードする第1の核酸であって、CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、第1の核酸、b)キメラ共受容体(CCOR)をコードする第2の核酸であって、CCORは、i)CCOR標的抗原を特異的に認識するCCOR標的抗原結合ドメイン、ii)CCR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CCOR共刺激ドメインを含む、第2の核酸、ならびにc)共受容体(COR)をコードする第3の核酸を含む、改変された免疫細胞が提供され、ここで、CR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4であり、CCOR標的抗原はCD4であるか、またはCR標的抗原はCD4であり、CCOR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4である。いくつかの実施形態では、CORは、CXCR5、α4β7、CCR9、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、α4β7をコードする核酸およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CXCR5をコードする核酸、α4β7をコードする核酸、およびCCR9をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、CR、CCOR、およびCORは、核酸から発現され、免疫細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、CRは、CR細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞のCCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の内因性TCRサブユニットの1つもしくは両方の発現をブロックするか、または減少させるように修飾されている。
いくつかの実施形態では、CRをコードする核酸配列、CCORをコードする核酸配列、および/またはCORをコードする核酸配列を含む核酸が提供される。いくつかの実施形態では、CR、CCOR、およびCOR核酸配列は、それぞれ異なるベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、核酸配列の一部または全部が同じベクターに含まれる。ベクターは、例えば、哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスに由来するもの)からなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、1または複数のベクターは、免疫細胞の宿主ゲノムに組み込まれている。いくつかの実施形態では、CR、CCOR、および/またはCOR核酸配列は、それぞれ異なるプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、プロモーターは同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターは異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸配列の一部または全部が単一のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部または全部が誘導可能である。例えば、CCORおよびCOR核酸は、免疫細胞の活性化時に誘導可能なプロモーターの制御下にあることができる。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部または全部が構成的である。
上記の任意の実施形態に従ういくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、好酸球、マクロファージ、リンパ球細胞、およびマスト細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、およびナチュラルキラーT細胞から選択される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、細胞毒性T細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CD4発現のために富化されている。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CD8発現のために富化されている。
いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、初代免疫細胞に由来する。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、免疫活性を有するように人工的に誘導された細胞(例えば、iPS細胞)に由来する。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CD4+免疫細胞(またはCD4発現のために富化された免疫細胞)に由来する。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CD8+免疫細胞(またはCD8発現のために富化された免疫細胞)に由来する。
いくつかの実施形態では、CR、CCOR、およびCORをコードする2つ以上の核酸が単一のプロモーターの制御下にある場合には、核酸は、内部リボソーム進入部位(IRES)および2A自己切断ペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A、またはF2A)をコードする核酸からなる群から選択されるリンカーを介して連結することができる。
キメラ受容体(CR)コンストラクト
本明細書に記載されるCRは、CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、CR膜貫通ドメイン、および細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、CR膜貫通ドメインに直接または間接的に融合されている。例えば、CRは、N末端からC末端まで、CR抗原結合ドメイン、CR膜貫通ドメイン、およびCR細胞内シグナル伝達ドメインを含む単一のポリペプチドであり得る。CR抗原結合ドメイン、CR膜貫通ドメイン、およびCR細胞内ドメインは、互いに直接融合していてもよいし、リンカー配列を介して間接的に融合していてもよい。
いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、CR膜貫通ドメインを含むポリペプチドに非共有結合的に結合している。これは、例えば、結合対の2つのメンバーを使用することによって達成することができ、一方のドメインはCR抗原結合ドメインに融合(例えば、CR抗体結合ドメインのC末端に融合)しており、他方のドメインはCR膜貫通ドメインに融合(例えば、CR膜貫通ドメインのN末端に融合)している。この2つの構成要素は、結合対の2つのメンバーの相互作用によって一つにされる。例えば、CRは、i)CR抗原結合ドメインおよび結合対の第1のメンバーを含む第1のポリペプチド、ならびにii)結合対の第2のメンバーを含む第2のポリペプチドを含む、細胞外ドメインを含むことができ、ここで、第1のメンバーと第2のメンバーとは互いに非共有結合的に結合している。結合対の第1のメンバーは、CR抗原結合ドメインに直接または間接的に融合され得る。類似して、結合対の第2のメンバーは、CR膜貫通ドメインに直接または間接的に融合され得る。適切な結合対としては、ロイシンジッパー、ビオチン/ストレプトアビジン、MICリガンド/iNKG2Dなどが挙げられるが、これらに限定されない。Cell 173,1426−1438,Oncoimmunology.2018;7(1):e1368604,米国特許第10259858B2号明細書を参照されたい。
いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは2つ以上の抗原結合ドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、タンデムに連結されたCD4結合部位とCCR5結合部位とを含む。いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、タンデムに連結されたCD4結合部位とbNAb部位とを含む。いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、タンデムに連結されたCCR5結合部位とbNAb部位とを含む。いくつかの実施形態では、CD4結合部位、CCR5結合部位、および/またはbNAb部位は、scFvまたはsdAbからなる群から選択される。
いくつかの実施形態における細胞内CRシグナル伝達ドメインは、機能的な初代免疫細胞シグナル伝達配列を含み、これには、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるタンパク質中に見出されるものが含まれるが、これらに限定されない。「機能的な」初代免疫細胞シグナル伝達配列は、適切な受容体に作用可能に結合された場合に、免疫細胞活性化シグナルを変換することができる配列である。「非機能的な」初代免疫細胞シグナル伝達配列は、一次免疫細胞シグナル伝達配列のフラグメントまたは変異体を含んでいてもよく、免疫細胞活性化シグナルを変換することができない。本明細書に記載されるCCORは、機能的な初代免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、CCORは、任意の初代免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。
いくつかの実施形態では、CR膜貫通ドメインは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154に由来する1または複数の膜貫通ドメインを含む。
CR抗原結合ドメインは、抗体部位であってもよいし、またはCR標的抗原を特異的に認識するリガンドであってもよい。いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、a)他の分子に対するその結合アフィニティーの少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、200、300、400、500、750、1000倍以上のいずれかを含む)のアフィニティー、またはb)他の分子との結合に対するそのKdのわずか約1/10倍(例えば、わずか約1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/75、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/750、1/1000倍以下のいずれか)のKdで標的抗原に特異的に結合する。結合アフィニティーは、ELISA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析、または放射性免疫沈降法(RIA)などの当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。Kdは、例えば、Biacore機器を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、または例えば、Sapidyne機器を利用した結合平衡除外法(KinExA)などの当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。
いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、およびCR標的抗原に特異的に結合するペプチドリガンドからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは抗体部位である。いくつかの実施形態では、抗体部位は単一特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は多重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は二重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、一本鎖ダイアボディ(scDb)、dual−affinity retargeting(DART)抗体、二重可変ドメイン(DVD)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体、またはヘテロコンジュゲート抗体である。いくつかの実施形態では、抗体部位はscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部位は単一ドメイン抗体(sdAb)である。いくつかの実施形態では、抗体部位は、完全ヒトであるか、ヒト抗体フレームワーク領域と半合成であるか、またはヒト化されている。
いくつかの実施形態における抗体部位は、1つもしくは複数の抗体部位(例えばモノクローナル抗体)に由来する特異的CDR配列、または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むそのような配列の特定の変異体を含む。いくつかの実施形態では、変異体配列におけるアミノ酸置換は、標的抗原を結合する抗原結合ドメインの能力を実質的に低下させない。標的抗原結合アフィニティーを実質的に改善するか、または特異性および/もしくは標的抗原の関連変異体との交差反応性などの他の一部特性に影響を与える改変も企図される。
いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、約0.1pM〜約500nM(例えば、約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、50nM、100nM、または500nMのいずれかであって、これらの値の間の任意の範囲を含む)のKdでCR標的抗原を結合する。
いくつかの実施形態では、例えば、単独で発現されるか、またはCCORを伴わずにCORと共発現される場合、CRはさらに、細胞内CR共刺激ドメインを含んでいてもよい。細胞内CR共刺激ドメインは、例えば、CD28、4−1BB(CD137)、CD27、OX40、CD27、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、TNFRSF9、TNFRSF4、TNFRSF8、CD40LG、ITGB2、KLRC2、TNFRSF18、TNFRSF14、HAVCR1、LGALS9、CD83、およびCD83と特異的に結合するリガンドを含む共刺激分子の細胞内ドメインの一部であり得る。いくつかの実施形態では、細胞内CR共刺激ドメインは、4−1BBのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、細胞内CCOR共刺激ドメインは、CD28のフラグメントおよび4−1BBのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、例えばCCORと共発現される場合、CRは機能的な共刺激ドメインを含まない。
したがって、例えば、いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRが提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、1つもしくは複数のCOR(例えばCXCR5)または1つもしくは複数のCOR(例えばCXCR5)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRが提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、1つもしくは複数のCOR(例えばCXCR5)または1つもしくは複数のCOR(例えばCXCR5)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRが提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)であって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、CRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、CRは、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とCCR5結合部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、CCR5部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、CCR5部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、1つもしくは複数のCOR(例えばCXCR5)または1つもしくは複数のCOR(例えばCXCR5)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCRは、キメラ抗原受容体(「CAR」)である。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、抗CD4 CARであって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、抗CD4抗体部位、例えばscFvまたはsdAb)、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CD4 CARが提供される。いくつかの実施形態では、抗CD4 CARであって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、抗CD4抗体部位、例えばscFvまたはsdAb)、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CD4 CARを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD4 CARをコードする核酸であって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、抗CD4抗体部位、例えばscFvまたはsdAb)、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CD4 CARをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CR抗原ドメインは、ドメイン1を特異的に認識する。例えば、CR抗原ドメインは、CD4のドメイン1を特異的に認識する抗CD4抗体(例えば、scFvまたはsdAb)であり得る。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、抗CCR5 CARであって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、抗CCR5抗体部位、例えばscFvまたはsdAb)、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CCR5−CARが提供される。いくつかの実施形態では、抗CCR5 CARであって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、抗CCR5抗体部位、例えばscFvまたはsdAb)、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CCR5−CARを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CCR5 CARをコードする核酸であって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、抗CCR5抗体部位、例えばscFvまたはsdAb)、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CCR5−CARをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4抗CCR5 CARであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むタンデム抗CD4抗CCR5−CARが提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4抗CCR5 CARであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むタンデム抗CD4抗CCR5−CARを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4抗CCR5 CARをコードする核酸であって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むタンデム抗CD4抗CCR5−CARをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とCCR5結合部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、CCR5結合部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、CCR5結合部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、CR抗原ドメインは、ドメイン1を特異的に認識する。例えば、CR抗原ドメインは、CD4のドメイン1を特異的に認識する抗CD4抗体(例えば、scFvまたはsdAb)を含み得る。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4−bNAb CARであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むタンデム抗CD4−bNAb CARが提供される。いくつかの実施形態では、抗CD4−bNAb CARであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CD4−bNAb CARを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD4−bNAb CARをコードする核酸であって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CD4−bNAb CARをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とbNAb部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、bNAb部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、bNAb部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、CR抗原ドメインは、ドメイン1を特異的に認識する。例えば、CR抗原ドメインは、CD4のドメイン1を特異的に認識する抗CD4抗体(例えば、scFvまたはsdAb)を含み得る。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含み、例えば、VRC01、PGT121、3BNC117、10−1074、N6、VRC07、VRC07−523、eCD4−IG、10E8、10E8v4、PG9、PGDM1400、PGT151、CAP256.25、35O22、8ANC195などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、タンデム抗CCR5抗bNAb CARであって、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むタンデム抗CCR5抗bNAb CARが提供される。いくつかの実施形態では、抗CCR5抗bNAb CARであって、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)およびbNAb部位(例えば、scFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CCR5抗bNAb CARを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CCR5抗bNAb CARをコードする核酸であって、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどのCCR5抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のヒンジ配列(例えばCD8に由来するヒンジ配列)、iii)CR膜貫通ドメイン(例えばCD8膜貫通ドメイン)、iv)細胞内共刺激ドメイン(例えば4−1BBまたはCD28に由来する共刺激ドメイン)、およびv)細胞内CRシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む抗CCR5抗bNAb CARをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位とbNAb部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位は、bNAb部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位は、bNAb部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含み、例えば、VRC01、PGT121、3BNC117、10−1074、N6、VRC07、VRC07−523、eCD4−IG、10E8、10E8v4、PG9、PGDM1400、PGT151、CAP256.25、35O22、8ANC195などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCRは、キメラTCR受容体(「cTCR」)である。cTCRは、典型的には、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3ε、およびCD3δなどのTCRサブユニットの全長または一部に(直接または間接的に)融合したCR抗原結合ドメインを含む。融合ポリペプチドは、他のTCRサブユニットと共に機能的なTCR複合体に組み込むことができ、TCR複合体に抗原特異性を付与する。いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインは、CD3εサブユニット(「eTCR」と呼ばれる)の全長または一部に融合されている。cTCRの細胞内CRシグナル伝達ドメインは、TCRサブユニットの細胞内シグナル伝達ドメインに由来し得る。TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン。いくつかの実施形態では、細胞内CRシグナル伝達ドメインとCR膜貫通ドメインとは、同じTCRサブユニットに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内CRシグナル伝達ドメインとCR膜貫通ドメインとは、CD3εに由来する。いくつかの実施形態では、CR抗原結合ドメインとTCRサブユニット(またはその一部)とは、リンカー(例えばGSリンカー)を介して融合され得る。いくつかの実施形態では、cTCRはさらに、TCRサブユニットまたはその一部の細胞外ドメインを含み、これは、細胞内CRシグナル伝達ドメインおよび/またはCR膜貫通ドメインが由来するTCRユニットと同じであっても異なっていてもよい。
したがって、例えば、いくつかの実施形態では、抗CD4 cTCRであって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む抗CD4−cTCRが提供される。いくつかの実施形態では、抗CD4−cTCRであって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む抗CD4−cTCRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD4−cTCRをコードする核酸であって、i)CD4を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む抗CD4−cTCRをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CR抗原ドメインは、ドメイン1を特異的に認識する。例えば、CR抗原ドメインは、CD4のドメイン1を特異的に認識する抗CD4抗体(例えば、scFvまたはsdAb)であり得る。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットは、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3εからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、同じTCRサブユニットに由来する。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、CD3εに由来する。いくつかの実施形態では、cTCRは、全長CD3εのN末端に融合したCR抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、抗CCR5−cTCRであって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む抗CCR5−cTCRが提供される。いくつかの実施形態では、抗CCR5−cTCRであって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む抗CCR5−cTCRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CCR5−cTCRをコードする核酸であって、i)CCR5を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む抗CCR5−cTCRをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットは、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3εからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、同じTCRサブユニットに由来する。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、CD3εに由来する。いくつかの実施形態では、cTCRは、全長CD3εのN末端に融合したCR抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4抗CCR5−cTCRであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CD4抗CCR5−cTCRが提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4抗CCR5−cTCRであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CD4抗CCR5−cTCRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4抗CCR5−cTCRをコードする核酸であって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびCCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CD4抗CCR5−cTCRをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CR抗原ドメインは、ドメイン1を特異的に認識する。例えば、CR抗原ドメインは、CD4のドメイン1を特異的に認識する抗CD4抗体(例えば、scFvまたはsdAb)であり得る。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットは、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3εからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、同じTCRサブユニットに由来する。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、CD3εに由来する。いくつかの実施形態では、cTCRは、全長CD3εのN末端に融合したCR抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とCCR5結合部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、CCR5部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、CCR5部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含む。
いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4−bNAb cTCRであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CD4−bNAb cTCRが提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4−bNAb cTCRであって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CD4−bNAb cTCRを含む、改変された免疫細胞が提供される。ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメイン。いくつかの実施形態では、タンデム抗CD4−bNAb cTCRをコードする核酸であって、i)CD4結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CD4抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CD4−bNAb cTCRをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、CR抗原ドメインは、ドメイン1を特異的に認識する。例えば、CR抗原ドメインは、CD4のドメイン1を特異的に認識する抗CD4抗体(例えば、scFvまたはsdAb)を含み得る。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットは、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3εからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、同じTCRサブユニットに由来する。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、CD3εに由来する。いくつかの実施形態では、cTCRは、全長CD3εのN末端に融合したCR抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD4結合部位とbNAb部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、bNAb部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CD4結合部位は、bNAb部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含み、例えば、VRC01、PGT121、3BNC117、10−1074、N6、VRC07、VRC07−523、eCD4−IG、10E8、10E8v4、PG9、PGDM1400、PGT151、CAP256.25、35O22、8ANC195などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、タンデム抗CCR5−bNAb cTCRであって、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CCR5−bNAb cTCRが提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CCR5−bNAb cTCRであって、i)CCR5結合部位(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CCR5−bNAb cTCRを含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗CCR5−bNAb cTCRをコードする核酸であって、i)CCR5結合部位ン(例えば、scFvまたはsdAbなどの抗CCR5抗体部位)およびbNAb部位(例えばscFvまたはsdAb)を含むCR抗原結合ドメイン、ii)任意のリンカー(例えばGSリンカー)、iii)TCRサブユニットまたはその一部の任意の細胞外ドメイン、iii)TCRサブユニットに由来するCR膜貫通ドメイン、およびiv)TCRサブユニットに由来する細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むタンデム抗CCR5−bNAb cTCRをコードする核酸を含む、改変された免疫細胞が提供される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットは、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3εからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、同じTCRサブユニットに由来する。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットまたはその一部のCR膜貫通ドメイン、細胞内CRシグナル伝達ドメイン、および任意の細胞外ドメインは、CD3εに由来する。いくつかの実施形態では、cTCRは、全長CD3εのN末端に融合したCR抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位とbNAb部位とはタンデムに連結されている。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位は、bNAb部位のN末端側にある。いくつかの実施形態では、CCR5結合部位は、bNAb部位のC末端側にある。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(bNAb)またはbNAbをコードする核酸を含み、例えば、VRC01、PGT121、3BNC117、10−1074、N6、VRC07、VRC07−523、eCD4−IG、10E8、10E8v4、PG9、PGDM1400、PGT151、CAP256.25、35O22、8ANC195などが挙げられる。
キメラ共刺激受容体(CCOR)
本明細書に記載されるキメラ共刺激受容体(CCOR)は、CCOR標的抗原に特異的に結合し、標的結合時に機能的に発現される表面上の免疫細胞を刺激することを可能にする。CCORは、標的結合特異性を提供するCCOR抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および免疫細胞を刺激することを可能にするCCOR共刺激ドメインを含む。CCORは、機能的な初代免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、CCORは、すべての初代免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞におけるCCORの発現は誘導可能である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞の発現は、CRを介したシグナル伝達時に誘導可能である。
本発明のCCORにおいて使用するための共刺激免疫細胞シグナル伝達ドメインの例としては、CR会合に続くシグナル伝達を開始するためにCRと協働して作用し得るT細胞受容体(TCR)の共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変異体および同様の機能的な能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
細胞内CCOR共刺激ドメインは、例えば、CD28、4−1BB(CD137)、CD27、OX40、CD27、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、TNFRSF9、TNFRSF4、TNFRSF8、CD40LG、ITGB2、KLRC2、TNFRSF18、TNFRSF14、HAVCR1、LGALS9、CD83、およびCD83と特異的に結合するリガンドを含む共刺激分子の細胞内ドメインの一部であり得る。いくつかの実施形態では、細胞内CCOR共刺激ドメインは、4−1BBのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、細胞内CCOR共刺激ドメインは、CD28のフラグメントおよび4−1BBのフラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、CCOR膜貫通ドメインは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154に由来する1または複数の膜貫通ドメインを含む。
いくつかの実施形態におけるCCOR抗原結合ドメインは、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、およびCCOR標的抗原に特異的に結合するペプチドリガンドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CCOR抗原結合ドメインは、a)他の分子に対するその結合アフィニティーの少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、200、300、400、500、750、1000倍以上のいずれかを含む)のアフィニティー、またはb)他の分子との結合に対するそのKdのわずか約1/10倍(例えば、わずか約1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/75、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/750、1/1000倍以下のいずれか)のKdでCCOR標的抗原に特異的に結合する。結合アフィニティーは、ELISA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析、または放射性免疫沈降法(RIA)などの当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。Kdは、例えば、Biacore機器を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、または例えば、Sapidyne機器を利用した結合平衡除外法(KinExA)などの当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。
いくつかの実施形態では、CCOR抗原結合ドメインは、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、およびCR標的抗原に特異的に結合するペプチドリガンドからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、CCOR抗原結合ドメインは抗体部位である。いくつかの実施形態では、抗体部位は単一特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は多重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は二重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、一本鎖ダイアボディ(scDb)、dual−affinity retargeting(DART)抗体、二重可変ドメイン(DVD)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体、またはヘテロコンジュゲート抗体である。いくつかの実施形態では、抗体部位はscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部位は単一ドメイン抗体(sdAb)である。いくつかの実施形態では、抗体部位は、完全ヒトであるか、ヒト抗体フレームワーク領域と半合成であるか、またはヒト化されている。
いくつかの実施形態における抗体部位は、1つもしくは複数の抗体部位(例えばモノクローナル抗体)に由来する特定のCDR配列、または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むそのような配列の特定の変異体を含む。いくつかの実施形態では、変異体配列におけるアミノ酸置換は、標的抗原を結合する抗原結合ドメインの能力を実質的に低下させない。標的抗原の結合アフィニティーを実質的に改善するか、または特異性および/もしくは標的抗原の関連変異体との交差反応性などの他の一部特性に影響を与える改変も企図される。
いくつかの実施形態では、CCOR抗原結合ドメインは、約0.1pM〜約500nM(例えば、約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、50nM、100nM、または500nMのいずれかであって、これらの値の間の任意の範囲を含む)のKdでCCOR標的抗原を結合する。
CRおよびCCOR抗原結合ドメイン
本明細書に記載されるCRおよびCCORは、CD4、CCR5およびCXCR4からなる群から選択される標的抗原を特異的に認識する。上述したように、CRがCD4を特異的に認識する場合、CCORはCCR5またはCXCR4を特異的に認識するであろう。あるいは、CRがCCR5またはCXCR4を特異的に認識する場合、CCORはCD4を特異的に認識するであろう。標的抗原および抗原結合ドメインは、以下のセクションでより詳細に議論され、これらは、CR抗原結合ドメイン(およびCR標的抗原)ならびにCCOR抗原結合ドメイン(およびCCOR標的抗原)の両方に一般的に適用可能である。
いくつかの実施形態では、標的抗原はCCR5である。CCR5は、7つの膜貫通ドメインを持ち、膜内在性タンパク質のβケモカイン受容体ファミリーに属しているGタンパク質共役型受容体である。CCR5は352個のアミノ酸から構成されており、約41キロダルトン(kDa)である。
CCR5は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、好酸球を含む免疫系の細胞に主に発現されるが、内皮、上皮、血管平滑筋、線維芽細胞にも発現される。さらに、中枢神経系に見られるミクログリア、ニューロン、およびアストロサイトにも発現される。(Barmania,F. and Pepper,MS.Applied & Translational Genomics(2013)2(2013):3−16.を参照されたい)。
CCR5はほとんどのHIV−1初代分離株に発現され、感染の確立と維持に非常に重要である。初期疾患のHIV−1分離株は、CD4+T細胞内に侵入するためのCD4との共受容体としてCCR5を使用する傾向がある。CCR5は、非感染対照と比較して、HIV感染個体のCD4+T細胞上でアップレギュレーションされていることが示されている(Ostrowski,MA,et al.J.Immunol.(1998)161(6):3195−3201を参照されたい)。個体間でCCR5表面発現の変動の測定可能な量がある。
いくつかの実施形態では、標的抗原は、CCR5の細胞外ドメイン変異体である。他の実施形態では、標的抗原は、CCR5の膜貫通ドメイン変異体である。さらに他の実施形態では、標的抗原は、CCR5の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインの変異体である(いくつかのCCR5変異体の解析とその結果としてのHIV感染性の解析については、Zack Howard,OM,et al.J.Biol.Chem.(1999)274(23):16228−16234を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CCR5を認識するリガンド、CCR5を認識することができるそのフラグメントである。CCR5を認識するリガンドとしては、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTESが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、MIP−1αであり、CCL3としても知られている。MIP−1αは、急性炎症時の多形核白血球のリクルートメントと活性化に関与するサイトカインである。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、MIP−1βであり、CCL4としても知られている。MIP−1βは、ナチュラルキラー細胞および単球を含む多くの免疫細胞の化学誘引物質である。MIP−1βは、単球、T細胞、B細胞を含む免疫系の様々な細胞によって産生されるほか、線維芽細胞および内皮細胞および上皮細胞によっても産生される。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、リガンドがRANTESであり、CCL5としても知られている。RANTESは、白血球を炎症部位にリクルートし、T細胞、好塩基球、および好酸球を含む免疫系の様々な細胞の化学誘引物質として作用する。さらに他の実施形態では、抗原結合ドメインは、CCR5に結合する別のリガンドである。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CCR5を認識する抗体部位、例えば、本明細書に記載される抗体部位のいずれかである。例示的な抗CCR5抗体は、国際公開第2006103100号に見出すことができ、これは参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、標的抗原はCXCR4である。CXCR4は、C−X−Cケモカイン受容体4型としても知られているα−ケモカイン受容体であり、リガンドであるSDF−1と結合し、いくつかの異なる経路を介して細胞内シグナルを伝達することで、カルシウムの増加および/またはcAMPレベルの低下をもたらす。それは、CD4+T細胞を含む免疫細胞に主に発現されるが、中枢神経系の細胞にも発現される。CXCR4は、7つの膜貫通らせんを持つGタンパク質共役型受容体であり、352個のアミノ酸から構成されている。
CXCR4は、HIV分離株がCD4+T細胞に感染するために使用することができるいくつかのケモカイン受容体のうちの1つである。HIVのT細胞指向性分離株は、その表面にCXCR4を発現しているCD4+T細胞に感染することができる。CXCR4は、HIVがT細胞内に侵入するための共受容体であり、特定のマウス抗CXCR4抗体は、HIV分離株のT細胞への侵入を抑制できることが実証されている(Hou,T.et al.(1998)J.Immunol.160:180−188;Carnec,X.et al.(2005)J.Virol.79:1930−1938を参照されたい)。CXCR4は、ウイルスが細胞内に侵入するための受容体として使用することができ、CXCR4を受容体として使用するウイルスの細胞内侵入を抑制するために、CXCR4に対する抗体が使用されてきた。国際公開第2008060367号および国際公開第2011098762号を参照されたい。
CXCR4は、非感染対照と比較して、HIV感染個体のCD4+およびCD8+T細胞ならびにCD14+単球上でダウンレギュレートされている(Ostrowski,MA,et al.J.Immunol.(1998)161(6):3195−3201を参照されたい)。HIV−1分離株は、CXCR4を共受容体としてCD4と共に使用し、疾患の進行に伴って細胞に侵入するが、CXCR4は、CCR5の場合のように感染の初期には共受容体として使用されない。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CXCR4リガンド、例えば間質細胞由来因子1(SDF−1、もしくはCXCL12)、またはCXCR4を認識するそのフラグメントである。SDF−1は、リンパ球に対して強い走化性を示し、胸腺、脾臓、および骨髄を含む多くの組織で発現されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、SDF−1の7つのアイソフォームのうちの1つである。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、MIF、ユビキチン、またはそのフラグメントである。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CXCR4を認識する抗体部位、例えば本明細書に記載される抗体部位のいずれかである。例示的な抗CXCR4抗体は、国際公開第2008060367号および国際公開第2011098762号に見出すことができ、これらは参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、標的抗原はCD4であり、分化抗原群4としても知られている。CD4は、免疫細胞、特にCD4+、またはヘルパーT細胞の表面に見られる糖タンパク質である。CD4は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CD4は、4つの細胞外免疫グロブリンドメイン(D1〜D4)で構成されている。D1およびD3は、免疫グロブリン可変ドメインとの類似性を示し、D2およびD4は、免疫グロブリン定常ドメインとの類似性を示す。
CD4は、HIV−1の侵入および感染に必要な重要な細胞表面分子である。HIV−1の侵入は、ウイルスエンベロープ(Env)糖タンパク質gp120とT細胞受容体CD4のドメイン1(D1)との相互作用によって引き起こされる。HIV感染が進行すると、より多くのCD4+T細胞が標的化され、ウイルスによって破壊され、その結果、免疫系がますます損なわれる。そのため、CD4+T細胞数は、個体のHIV/AIDSの進行度と病期の代用として使用される。さらに、HIV感染時のCD4のダウンレギュレーションには、HIV遺伝子産物Env、Vpu、およびNefが関与している(Tanaka,M.,et al.Virology(2003)311(2):316−325を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、a)他の分子に対するその結合アフィニティーの少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、200、300、400、500、750、1000倍以上のいずれかを含む)のアフィニティー、またはb)他の分子との結合に対するそのKdのわずか約1/10倍(例えば、わずか約1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/75、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/750、1/1000倍以下のいずれか)のKdでCD4−D1またはCD4−D2/D3に特異的に結合する。結合アフィニティーは、ELISA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析、または放射性免疫沈降法(RIA)などの当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。Kdは、例えば、Biacore機器を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、または例えば、Sapidyne機器を利用した結合平衡除外法(KinExA)などの当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、およびCD4に特異的に結合するペプチドリガンドからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは抗体部位である。いくつかの実施形態では、抗体部位は単一特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は多重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は二重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部位は、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、一本鎖ダイアボディ(scDb)、dual−affinity retargeting(DART)抗体、二重可変ドメイン(DVD)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体、またはヘテロコンジュゲート抗体である。いくつかの実施形態では、抗体部位はscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部位は単一ドメイン抗体(sdAb)である。いくつかの実施形態では、抗体部位は、完全ヒトであるか、ヒト抗体フレームワーク領域と半合成であるか、またはヒト化されている。
いくつかの実施形態における抗体部位は、1つもしくは複数の抗体部位(例えば本明細書に開示される特異性抗体のいずれか)に由来する特異的CDR配列、または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むそのような配列の特定の変異体を含む。いくつかの実施形態では、変異体配列におけるアミノ酸置換は、標的抗原を結合する抗原結合ドメインの能力を実質的に低下させない。標的抗原の結合アフィニティーを実質的に改善するか、または特異性および/もしくは標的抗原の関連変異体との交差反応性などの他の一部特性に影響を与えるような改変もまた企図される。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、約0.1pM〜約500nM(例えば、約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、50nM、100nM、または500nMのいずれかであって、これらの値の間の任意の範囲を含む)のKdでCD4−D1またはD2/3に結合する。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CD4のD1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、以下の領域のいずれか1つまたは複数に該当するエピトープに結合する:CD4のアミノ酸26〜125、26〜46、46〜66、66〜86、86〜106、106〜125であって、アミノ酸のナンバリングは配列番号1に従う。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、以下の領域のいずれか1つまたは複数に該当するエピトープに結合する:配列番号1のアミノ酸26〜125、26〜46、46〜66、66〜86、86〜106、106〜125。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、約0.1pM〜約500nM(例えば、約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、50nM、100nM、または500nMのいずれかであって、これらの値の間の任意の範囲を含む)でCD4のD1に結合する。いくつかの実施形態では、CD4はヒトCD4である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、例えば国際公開第1997013852号に開示されているように、ザノリムマブに由来する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、ザノリムマブに対する結合のために競合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、ザノリムマブのエピトープと同じまたは重複するエピトープに結合する。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CD4のD2またはD3のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、以下の領域のいずれか1つまたは複数に該当するエピトープに結合する:CD4のアミノ酸126〜317、126〜203、204〜317、126〜146、146〜166、166〜186、186〜206、206〜226、226〜246、246〜266、266〜286、286〜306、および306〜317であって、アミノ酸のナンバリングは配列番号1に従う。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、以下の領域のいずれか1つまたは複数に該当するエピトープに結合する:配列番号1のアミノ酸126〜317、126〜203、204〜317、126〜146、146〜166、166〜186、186〜206、206〜226、226〜246、246〜266、266〜286、286〜306、および306〜317。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、約0.1pM〜約500nM(例えば、約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、50nM、100nM、または500nMのいずれかであって、これらの値の間の任意の範囲を含む)のKdでCD4のD2またはD3に結合する。いくつかの実施形態では、CD4はヒトCD4である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、例えば米国特許出願公開第20130195881号明細書および国際公開第2004083247号に開示されているように、イバリズマブまたはトレガリズマブに由来する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、イバリズマブまたはトレガリズマブに対する結合のために競合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、イバリズマブまたはトレガリズマブのエピトープと同じまたは重複するエピトープに結合する。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CD4のリガンド、またはCD4を結合することができるそのフラグメントである。いくつかの実施形態では、CD4のリガンドは、T細胞の活性化を調節し、HIVの複製を阻害する多多機能性サイトカインであるIL−16である。他の実施形態では、CD4のリガンドは、クラスII主要組織適合性複合体(MHCクラスII)である。MHCクラスII分子は、典型的には、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、単核貧食細胞、胸腺上皮細胞を含む免疫系の抗原提示細胞に見られる。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIリガンドは、免疫系への後続提示のためのCD4に提示される病原性ペプチドを提示する。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、エンベロープ糖タンパク質gp120またはそのフラグメントである。HIV env遺伝子にコードされるネイティブ型gp120は、HIVウイルスエンベロープに見られる120kDaの糖タンパク質で、HIVの標的細胞への接着に重要な役割を果たしている。gp120は、標的細胞のCD4およびCCR5を含むケモカイン受容体ファミリーのメンバーに結合し、標的細胞のHIV感染を効率的に行うことができる。gp120とCD4との複合体がCCR5と特異的に相互作用し、MIP−1αおよびMIP−1βのようなナチュラルCCR5リガンドの結合を阻害することが示されている(Wu,L.,et al.(1996)Nature 384:179−183)。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインがgp120である場合には、改変された免疫細胞はCCORを含まない。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞におけるCRは、CR共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CD4、CCR5、およびCXCR4のうちの1つまたは複数に結合しない修飾gp120である。例えば、いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CD4に結合するが、CCR5またはCXCR4には結合しない修飾gp120である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CCR5に結合するが、CD4またはCXCR4には結合しない修飾gp120である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CXCR4に結合するが、CCR5またはCD4には結合しない修飾gp120である。
共受容体(「COR」)
いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はさらに、1または複数の共受容体(「COR」)を含む。
いくつかの実施形態では、CORは、濾胞への免疫細胞の遊走を容易にする。いくつかの実施形態では、CORは、腸管への免疫細胞の遊走を容易にする。いくつかの実施形態では、CORは、皮膚への免疫細胞の遊走を容易にする。
いくつかの実施形態では、CORはCXCR5である。いくつかの実施形態では、CORはCCR9である。いくつかの実施形態では、CORはα4β7(インテグリンα4β7とも呼ばれる)である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CXCR5、α4β7、およびCCR9からなる群から選択される2つ以上の受容体を含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、α4β7とCCR9の両方を含む。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CXCR5、α4β7、およびCCR9を含む。
CCR9は、C−Cケモカイン受容体9型(CCR9)としても知られており、βケモカイン受容体ファミリーのメンバーであり、その結合リガンドであるCCL25に応答して走化性を媒介する。CCR9は、Gタンパク質共役型受容体と構造が類似した7つの膜貫通ドメインタンパク質であると予測されている。CCR9は、胸腺および小腸のT細胞に発現され、Tリンパ球の発生および遊走を調節する役割を果たしている(Uehara,S.,et al.(2002)J.Immunol.168(6):2811−2819)。CCR9/CCL25は、免疫細胞を小腸に誘導することが示されている(Pabst,O.,et al.(2004).J.Exp.Med.199(3):411)。このように、免疫細胞にCCR9を共発現させることで、改変された免疫細胞を腸管に誘導することができる。いくつかの実施形態では、CCR9のスプライシング変異体が使用される。
α4β7(リンパ球パイエル板接着分子(LPAM))は、リンパ球に発現されるインテグリンであり、腸管関連リンパ組織へのT細胞ホーミングの役割を担っている(Petrovic,A.et al.(2004)Blood 103(4):1542−1547)。α4β7は、CD49d(α4インテグリンサブユニットをコードする遺伝子であるITGA4のタンパク質産物)とITGB7(β7インテグリンサブユニットをコードする遺伝子であるITGB4のタンパク質産物)とから構成されるヘテロ二量体である。いくつかの実施形態では、α4のスプライシング変異体がα4β7ヘテロ二量体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、β7のスプライシング変異体がα4β7ヘテロ二量体に組み込まれている。他の実施形態では、α4のスプライシング変異体およびβ7のスプライシング変異体がヘテロ二量体に組み込まれている。α4β7の共発現は、単独でまたはCCR9との組み合わせで、改変された免疫細胞を腸管に誘導することができる。
α4β7とCCR9の両方は腸管へのホーミングに機能しているが、必ずしも共調節されているわけではない。ビタミンAの代謝物であるレチノイン酸は、CCR9とα4β7の両方の発現誘導に役割を果たしている。しかしながら、α4β7の発現は他の手段によって誘導することができ、CCR9の発現にはレチノイン酸が必要である。さらに、大腸指向性T細胞はα4β7のみを発現し、CCR9は発現しないことから、2つの受容体が常に共発現または共調節されているわけではないことが示される。(Takeuchi,H.,et al.J.Immunol.(2010)185(9):5289−5299を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、CCR9およびα4β7は、腸管に標的化するためのCORとして機能する。
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、C−X−Cケモカイン受容体5型としても知られているCXCR5を発現する。CXCR5は、CXCケモカイン受容体ファミリーに属する7つの膜貫通ドメインを含むGタンパク質共役型受容体である。CXCR5とそのリガンドであるケモカインCXCL13は、リンパ節および脾臓を含む二次リンパ組織内の濾胞へのリンパ球の輸送に中心的な役割を果たしている。(Buerkle,A.et al.(2007)Blood 110:3316−3325)。特に、CXCR5は、CXCL13に応答してT細胞がリンパ節B細胞ゾーンに遊走することを可能にする(Schaerli,P.et al.(2000)J.Exp.Med.192(11):1553−1562)。免疫細胞において発現される場合、CXCR5は、改変された免疫細胞を濾胞に標的化するためのCORとして機能することができる。いくつかの実施形態では、CXCR5のスプライシング変異体が使用される。
一般に、上述のCORのいずれかの非自然発生の変異体を、改変された免疫細胞において構成/発現させることができる。これらの変異体は、例えば、1または複数の突然変異を含み得るが、それにもかかわらず、対応するネイティブ型受容体のいくつかまたは複数の機能を維持する。例えば、いくつかの実施形態では、CORは、自然発生のCCR9、α4β、またはCXCR5の変異体であって、この変異体は、ネイティブ型のCCR9、α4β、またはCXCR5と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれかと同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、CORは、自然発生のCCR9、α4β、またはCXCR5の変異体であって、この変異体は、ネイティブ型のCCR9、α4β、またはCXCR5のものと比較して、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下のうちのいずれかのアミノ酸置換を含む。
いくつかの実施形態では、CORはケモカイン受容体である。いくつかの実施形態では、CORはインテグリンである。いくつかの実施形態では、CORは、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CX3CR1、XCR1、ACKR1、ACKR2、ACKR3、ACKR4、CCRL2からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、CORは通常、改変された免疫細胞が由来する免疫細胞において発現されない。いくつかの実施形態では、CORは、改変された免疫細胞が由来する免疫細胞において低レベルで発現される。
抗HIV抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変された免疫細胞はさらに、広域中和抗体(「bNAb」)などの抗HIV抗体をさらに発現(および分泌)する。いくつかの実施形態では、CRがタンデムCRである場合、CR抗原結合ドメインは、抗HIV抗体部位(例えばbNAb部位)を含んでいてもよい。bNAbはHIVエンベロープタンパク質に結合し、ウイルスが宿主細胞の受容体に結合するのをブロックする。本明細書に記載されるbNAb部位とは、広域中和抗体活性および/または結合特異性を保持する抗体またはそのフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、bNAb部位はscFvである。いくつかの実施形態では、bNAb部位はsdAbである。
bNAbは、HIVに感染したものの、抗レトロウイルス薬を服用しなくてもウイルス感染を自然に制御することができるエリートコントローラーにおいて初めて発見された。bNAbは、複数のHIVウイルス株を中和する中和抗体である。bNAbは、ウイルスが突然変異を受けた場合でも、ウイルスの保存されたエピトープを標的とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変された免疫細胞は、新規宿主細胞のHIV感染をブロックするための広域中和抗体を分泌することができる。
いくつかの実施形態では、bNAbは、gp41のMPER、V1V2グリカン、グリカンのouterdomain、V3グリカン、またはCD4結合部位のウイルスエピトープを特異的に認識する。bNAbは、ウイルスエンベロープ糖タンパク質とCD4との相互作用をブロックする。MascolaおよびHaynes,Immunol.Rev.2013 July;254(1):225−44。適切なbNAbとしては、VRC01、PGT−121、3BNC117、10−1074、N6、VRC07、VRC07−523、eCD4−IG、10E8、10E8v4、PG9、PGDM 1400、PGT151、CAP256.25、35O22、8ANC195が挙げられるが、これらに限定されない。Science Translational Medicine 23 Dec 2015:Vol.7,Issue 319,pp.319ra206;PLoS Pathog.2013;9(5):e1003342;Nature.2015 Jun 25;522(7557):487−91;Nat Med.2017 Feb;23(2):185−191;Nature Immunologyvolume 19,pp.1179−1188(2018)。他の適切な広域中和抗体は、例えば、次の刊行物に見出すことができる:Cohen et al.,Current Opin.HIV AIDS,2018 Jul;13(4):366−373;MascolaおよびHaynes,Immunol.Rev.2013 July;254(1):225−44.Nucleic Acids。
また、本明細書に記載されるCR、CCORおよび/またはCORをコードする核酸(または核酸のセット)、ならびにその核酸を含むベクターも本明細書に提供される。
CR、CCORおよび/またはCORの発現は、核酸が、例えば、プロモーター(例えば、リンパ球特異的プロモーター)および3'非翻訳領域(UTR)を含む5'ならびに/または3'調節エレメントに作用可能に連結されるように、適切な発現ベクターに核酸を挿入することによって達成され得る。ベクターは、宿主細胞内での複製および統合に適したものとすることができる。典型的なクローニングおよび発現ベクターは、転写および翻訳ターミネーター、開始配列、および所望の核酸配列の発現調節に有用なプロモーターを含む。
核酸は、多くのタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングすることができる。特に興味深いベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、配列決定ベクターが挙げられる。
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知である。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製の起源、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1または複数の選択可能なマーカーを含む。
哺乳動物細胞への遺伝子導入のために、多くのウイルスベースのシステムが開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該技術分野で知られている技術を用いて、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスは単離され、インビボまたはエクスビボのいずれかの対象の細胞に送達され得る。多くのレトロウイルスシステムが当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。レンチウイルスなどのレトロウイルス由来のベクターは、導入遺伝子を長期的、安定的に取り込んで娘細胞内で増殖させることができるため、長期的な遺伝子導入を達成するのに適したツールである。レンチウイルスベクターは、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルス由来のベクターに比べて、肝細胞などの非増殖細胞を形質導入できるという更なる利点がある。それらはまた、免疫原性が低いという更なる利点もある。
更なるプロモーターエレメント、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の上流30〜110bpの領域に位置しているが、最近では多くのプロモーターが開始部位の下流にも機能的なエレメントを含むことが示されている。多くの場合、プロモーターエレメント間の間隔は柔軟性であり、そのため、エレメントが互いに反転したり移動したりしたときにプロモーターの機能が維持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、活性が低下し始める前に、プロモーターエレメント間の間隔を50bp間隔まで広げることができる。
適切なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、作用可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例は、伸長成長因子−1α(EF−1α)である。しかしながら、他の構成的プロモーター配列を使用してもよく、例えば、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
ポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染されることが求められる細胞の集団からの発現細胞の同定および選択を容易にするために、選択可能なマーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれかまたはその両方を含むことができる。他の態様では、選択可能なマーカーは、DNAの別個のピースに担持され、共トランスフェクション手順で使用されてもよい。選択可能なマーカーとレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞内での発現を可能にするために、適切な調節配列でフランキングされてもよい。有用な選択可能なマーカーとしては、例えば、Neoなどの薬剤耐性遺伝子が挙げられる。
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定したり、調節配列の機能性を評価したりするために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物もしくは組織に存在しないか、またはレシピエント生物もしくは組織によって発現されず、いくつかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって発現が明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後、適切な時期にアッセイされる。適切なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を挙げることができる。適切な発現系は周知であり、公知の技術を用いて調製してもよいし、商業的に入手してもよい。一般に、レポーター遺伝子の最大レベルの発現を示す最小の5'フランキング領域を有するコンストラクトがプロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結されていてもよく、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用される。
哺乳動物細胞における異種核酸の存在を確認するための例示的な方法としては、例えば、当業者には周知である分子生物学的アッセイ、例えば、サザンブロット法およびノーザンブロット法、RT−PCRおよびPCR;生化学的アッセイ、例えば、免疫学的方法(例えばELISAおよびウエスタンブロット)による、特定のペプチドの存在または非存在の検出などが挙げられる。
哺乳動物細胞における異種核酸の存在を確認するための例示的な方法としては、例えば、当業者には周知である分子生物学的アッセイ、例えば、サザンブロット法およびノーザンブロット法、RT−PCRおよびPCR;生化学的アッセイ、例えば、免疫学的方法(例えばELISAおよびウエスタンブロット)による、特定のペプチドの存在または非存在の検出などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、1または複数の核酸配列の各々は、別個のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、核酸配列の少なくとも一部が同じベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、核酸配列の全部が同じベクターに含まれる。ベクターは、例えば、哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスに由来するもの)からなる群から選択されてもよい。
例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、CRポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、任意にCCORポリペプチド鎖をコードする第2の核酸、任意にCORポリペプチド鎖をコードする第3の核酸、および任意にbNAbポリペプチドをコードする第4の核酸を含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は第1のベクターに含まれ、第2の核酸配列は第2のベクターに含まれ、第3の核酸配列は第3のベクターに含まれ、および/または第4の核酸配列は第4のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1および第2の核酸配列は第1のベクターに含まれ、第3の核酸配列および/または第4の核酸配列は第2のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1および第3の核酸配列は第1のベクターに含まれ、第2の核酸配列および/または第4の核酸配列は第2のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第2および第3の核酸配列は第1のベクターに含まれ、第1の核酸配列および/または第4の核酸配列は第2のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および任意に第4の核酸配列は、同じベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および任意に第4の核酸は、内部リボソーム進入部位(IRES)および2A自己切断ペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A、またはF2A)をコードする核酸からなる群から選択されるリンカーを介して互いに連結することができる。
いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は第1のプロモーターの制御下にあり、第2の核酸配列は第2のプロモーターの制御下にあり、第3の核酸配列は第3のプロモーターの制御下にあり、および/または第4の核酸配列は第4のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および/または第4のプロモーターの一部または全部が同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および任意に第4のプロモーターの一部または全部が異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および任意に第4の核酸配列の一部または全部が、多重シストロンベクターにおいて単一のプロモーターの制御下で単一の転写物として発現される。いくつかの実施形態では、1または複数のプロモーターは誘導可能である。いくつかの実施形態では、第3および/または第4の核酸配列は、誘導性プロモーターに作用可能に連結されている。
いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および任意に第4の核酸配列の一部または全部が免疫細胞(例えばT細胞)において類似の(例えば実質的にまたはほぼ同じ)発現レベルを有する。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および任意に第4の核酸配列のいくつかは、少なくとも約2倍(例えば、少なくとも約2、3、4、5倍以上のいずれか)の差がある免疫細胞(例えばT細胞)における発現レベルを有する。発現は、mRNAまたはタンパク質レベルで決定することができる。mRNAの発現レベルは、核酸から転写されたmRNAの量を、ノーザンブロット法、定量的RT−PCR法、マイクロアレイ解析法などを含む様々な周知の方法を用いて測定することによって決定することができる。タンパク質の発現レベルは、免疫細胞化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット解析、発光アッセイ、質量分析、高速液体クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析を含む公知の方法で測定することができる。
細胞(例えば免疫細胞)に遺伝子を導入して発現させる方法は、当該技術分野で知られている。発現ベクターの文脈では、ベクターは、当該技術分野の任意の方法により、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法、パーティクル・ガン法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を生成するための方法は、当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション法によって行われる。
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒトの細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。
宿主細胞(例えば免疫細胞)にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段としては、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに油中水型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質系が挙げられる。インビボおよびインビトロで送達賦形剤として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜ベシクル)である。
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達賦形剤はリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)のために企図されている。別の態様では、核酸は脂質と会合されてもよい。脂質と会合された核酸は、リポソームの水性内部に封入されてもよく、リポソームの脂質二重層内に混在されてもよく、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に会合された連結分子を介してリポソームに付着されてもよく、リポソームに捕捉されてもよく、リポソームと複合体を形成してもよく、脂質を含む溶液に分散されてもよく、脂質と混合されてもよくし、脂質と組み合わせられてもよく、脂質に懸濁液として含まれてもよく、ミセルに含まれるかまたはミセルと複合体を形成してもよく、または他の方法で脂質と会合されてもよい。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター会合組成物は、溶解状態で任意の特定の構造に限定されない。例えば、脂質は、二重層構造で、ミセルとして、または「崩壊した」構造で存在してもよい。脂質はまた、単に溶液中に混在されていることもあり、サイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成している可能性がある。脂質とは、自然発生の脂質であっても合成脂質であってもよい脂肪性物質のことである。例えば、脂質としては、細胞質に自然に存在する脂肪滴、ならびに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物のクラスも挙げられる。
宿主細胞に外因性核酸を導入するか、または他の方法で細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを実施してもよい。例えば、そのようなアッセイとしては、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えばサザンブロット法およびノーザンブロット法、RT−PCRおよびPCRなどの、;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(例えばELISAおよびウエスタンブロット)または本明細書に記載されるアッセイによる、特定のペプチドの存在または非存在の検出などを行って本発明の範囲に該当する薬剤を同定することが挙げられる。
抗体部位
本明細書に記載される様々なコンストラクト(例えばCR抗原結合ドメインまたはCCOR抗原結合ドメインなど)は抗体部位を含む。いくつかの実施形態では、抗体部位は、モノクローナル抗体のVHドメインおよびVLドメイン、またはその変異体を含む。いくつかの実施形態では、抗体部位はさらに、モノクローナル抗体のCH1ドメインおよびCLドメイン、またはその変異体を含む。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えばKohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)ならびにSergeeva et al.,Blood,117(16):4262−4272に記載される方法などを用いて調製することができる。
ハイブリドーマ法では、ハムスター、マウス、または他の適切な宿主動物が、典型的には、免疫剤で免疫されて、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫剤は、目的のタンパク質のポリペプチドもしくは融合タンパク質、またはペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体などの、少なくとも2分子を含む複合体を含むことができる。一般的に、ヒト由来の細胞が所望される場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用されるか、または非ヒト哺乳動物源が所望される場合には脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。次いで、このリンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ、およびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の増殖または生存を阻害する1または複数の物質を含む適切な培地で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)を含み、これがHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
いくつかの実施形態では、不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である。いくつかの実施形態では、不死化細胞株は、例として、Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)およびthe American Type Culture Collection(米国バージニア州マナサス)から入手することができるマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫およびマウスーヒト異種骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている。Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(Marcel Dekker,Inc.: New York,1987)pp.51−63。
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養された培地は、ポリペプチドに対して指向されたモノクローナル抗体の存在をアッセイすることができる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、または放射性免疫沈降法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定することができる。そのような技術およびアッセイは、当該技術分野で知られている。モノクローナル抗体の結合アフィニティーは、例えば、MunsonおよびPollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスカチャード分析によって決定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは、限界希釈手順でサブクローン化され、標準的な方法で増殖させることができる。Goding(上記を参照されたい)。この目的のために適した培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物の腹水でインビボ増殖させることができる。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培地または腹水から単離もしくは精製することができる。
いくつかの実施形態では、抗体部位は、抗体部位ライブラリー(例えば、scFvまたはFabフラグメントを提示するファージライブラリー)から選択されたクローンからの配列を含む。クローンは、所望の活性または複数の活性を有する抗体フラグメントのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体のそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で知られている。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1−37(O'Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2001)に概説されており、さらに、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554;Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);MarksおよびBradbury,Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);ならびにLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)に記載されている。
特定のファージディスプレイ方法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー中で無作為に組み換えられ、これは、次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994).に記載されているように、抗原結合ファージのためにスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントのいずれかとして、抗体フラグメントをディスプレイする。免疫源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、高アフィニティー抗体を免疫原に提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)に記載されているように、ナイーブレパートリーは、クローニングされ(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原と、それに自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載されているように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含むPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配置を達成することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載した特許公報として、例えば、以下のものが挙げられる:米国特許第5,750,373号明細書、米国特許出願公開第2005/0079574号明細書、同第2005/0119455号明細書、同第2005/0266000号明細書、同第2007/0117126号明細書、同第2007/0160598号明細書、同第2007/0237764号明細書、同第2007/0292936号明細書および同第2009/0002360号明細書。
抗体部位は、ファージディスプレイを用いて、標的抗原に特異的な抗体(例えば、CD4、CCR5、またはCXCR4ポリペプチド)のためのライブラリーをスクリーニングするために調製することができる。ライブラリーは、少なくとも1つの×109(例えば、少なくとも約1×109、2.5×109、5×109、7.5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、7.5×1010、または1×1011のうちのいずれか)のユニークなヒト抗体フラグメントの多様性を有するヒトscFvファージディスプレイライブラリーであり得る。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、健康なドナーからのヒトPMBCおよび脾臓から抽出されたDNAから構築されたナイーブなヒトライブラリーであり、すべてのヒト重鎖および軽鎖サブファミリーを包含する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、自己免疫疾患患者、癌患者、および感染性疾患患者などの様々な疾患を有する患者から単離されたPBMCから抽出されたDNAから構築されたナイーブヒトライブラリーである。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、半合成ヒトライブラリーであり、ここで、重鎖CDR3は、完全に無作為化され、すべてのアミノ酸(システインを除く)は、任意の所与の位置において等しく存在する可能性がある(例えば、Hoet,R.M.et al.,Nat.Biotechnol.23(3):344−348,2005を参照されたい)。いくつかの実施形態では、半合成ヒトライブラリーの重鎖CDR3は、約5〜約24(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のいずれか)アミノ酸の長さを有する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、完全合成ファージディスプレイライブラリーである。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、非ヒトファージディスプレイライブラリーである。
高アフィニティーで標的抗原に結合するファージクローンは、固体支持体(例えば、溶液パニングについてはビーズまたは細胞パニングについては哺乳動物細胞など)に結合する標的抗原にファージを反復的に結合させ、その後、非結合ファージを除去し、特異的に結合したファージを溶出させることによって選択することができる。溶液パニングの例では、標的抗原は、固体支持体への固定化のためにビオチン化することができる。ビオチン化された標的抗原をファージライブラリーおよび固体支持体、例えばストレプトアビジン共役Dynabeads M−280と混合し、次いで標的抗原−ファージービーズ複合体を単離する。結合したファージクローンを溶出し、適切な宿主細胞、例えば発現および精製のための大腸菌XL1−Blueを感染させるために使用する。細胞パニングの例では、CD4、CCR5、またはCXCR4を発現する細胞をファージライブラリーと混合し、その後、細胞を回収し、結合したクローンを溶出し、発現および精製のために適切な宿主細胞に感染させるために使用する。パニングは、標的抗原に特異的に結合するファージクローンを富化するために、溶液パニング、細胞パニング、またはその両方の組み合わせのいずれかを用いて、複数回(例えば、約2、3、4、5、6回またはそれより多い回数のいずれか)ラウンドで実施することができる。富化されたファージクローンは、例えばELISAおよびFACSを含む、当該技術分野で知られている任意の方法によって、標的抗原への特異的結合について試験することができる。
ヒトおよびヒト化された抗体部位
本明細書に記載される抗体部位は、ヒトまたはヒト化されたものであってもよい。非ヒト(例えば、マウス)抗体部位のヒト化された形態は、典型的には非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、または抗体の他の抗原結合部分配列)である。ヒト化抗体部位としては、ヒト免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそのフラグメント(レシピエント抗体)が含まれ、レシピエントのCDRの残基が、所望の特異性、アフィニティー、およびキャパシティを有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRの残基(ドナー抗体)で置換されている。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置換されている。ヒト化された抗体部位はまた、レシピエント抗体部位にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体部位は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み得る。例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)を参照されたい。
一般的に、ヒト化抗体部位は、非ヒトである供給源からそれに導入された1または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、これは典型的には「インポート」可変ドメインから取られている。いくつかの実施形態によれば、ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988)に従って、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体部位の対応する配列の代わりに用いることによって本質的に実施され得る。したがって、そのような「ヒト化」抗体部位は、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に少ない量のヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換された抗体部位である(米国特許第4,816,567号明細書)。実際には、ヒト化抗体部位は、典型的には、いくつかのCDR残基および場合によってはいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似の部位からの残基で置換されたヒト抗体部位である。
ヒト化に代わるものとして、ヒト抗体部位を生成することができる。例えば、免疫の際に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが現在可能である。例えば、キメラマウスおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失により、内因性抗体産生が完全に阻害されることが記載されている。そのような生殖系列変異体マウス中へのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入により、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生が生じる。Jakobovits et al.,PNAS USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993);米国特許第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,591,669号明細書;同第5,545,807号明細書および国際公開第97/17852号を参照されたい。あるいは、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活化されたトランスジェニック動物、例えば、マウス中にヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製することができる。チャレンジの際に、遺伝子再構成、アセンブリおよび抗体レパートリーを含むあらゆる点において、ヒトにおいて見られたものと密接に類似したヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,661,016号明細書、ならびにMarks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature,368:856−859(1994); Morrison,Nature,368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology,14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);LonbergおよびHuszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)に記載されている。
ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞(米国特許第5,567,610号明細書および同第5,229,275号明細書を参照されたい)によって、またはファージディスプレイライブラリーを含む当該技術分野で知られている様々な技術を使用して生成することもできる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。ColeらおよびBoernerらの技術は、ヒトモノクローナル抗体を調製するためにも利用可能である。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss,p. 77(1985)およびBoerner et al.,J.Immunol.,147(1):86ー95(1991)。
更なる変異体
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗原結合ドメインのアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗原結合ドメインの結合アフィニティーおよび/または他の生物学的特性を向上させることが望ましい場合がある。抗原結合ドメインのアミノ酸配列変異体は、抗原結合ドメインをコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製することができる。そのような修飾は、例えば、抗原結合ドメインのアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせは、最終的なコンストラクトが所望の特性、例えば、抗原結合を有することを条件として、最終的なコンストラクトに到達するために行うことができる。
いくつかの実施形態では、1または複数のアミノ酸置換を有する抗原結合ドメイン変異体が提供される。置換突然変異誘発の目的の部位には、抗体部位のHVRおよびFRが含まれる。アミノ酸置換は、目的の抗原結合ドメインに導入することができ、産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善または免疫原性の低下についてスクリーニングされる。
保存的置換は、以下の表4に示すとおりである。本明細書で議論される変異体CORはまた、そのような保存的置換を含むことができる。
表1.保存的置換
アミノ酸は、共通の側鎖特性に応じて異なるクラスにグループ化されていてもよい:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg
e.鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
f.芳香性:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
例示的な置換変異体は、例えば、ファージディスプレイベースのアフィニティー成熟技術を使用して、便利に生成され得るアフィニティー成熟抗体部位である。簡単に言えば、1または複数のCDR残基が変異され、変異体抗体部位がファージ上に表示され、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティー)のためにスクリーニングされる。改変(例えば、置換)は、例えば、抗体部位アフィニティーを改善するために、HVRにおいて行われてもよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照されたい)、および/または特異性決定残基(SDR)で行われてもよく、結果として得られる変異体VHまたはVLは、結合アフィニティーについて試験される。二次ライブラリーからの構築および再選択によるアフィニティー成熟化は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O'Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。
アフィニティー成熟のいくつかの実施形態では、多様性は、様々な方法(例えば、エラーを起こしやすいPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指示突然変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーが作成される。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望のアフィニティーを有する任意の抗体部位の変異体を同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6個の残基)が無作為化されるHVR指向的アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを用いて、特異的に同定され得る。特にCDR−H3およびCDR−L3は標的化されることが多い。
いくつかの実施形態では、そのような改変が抗原を結合する抗体部位の能力を実質的に低下させない限り、置換、挿入、または欠失が、1または複数のHVR内で起こり得る。例えば、結合アフィニティーを実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)をHVRに行ってもよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」外またはSDR外にあり得る。上記で提供される変異体VHおよびVL配列のいくつかの実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つもしくは3つ以下のアミノ酸置換を含む。
突然変異誘発の標的とすることができる抗原結合ドメインの残基または領域を同定するための有用な方法は、CunninghamおよびWells (1989)Science,244:1081−1085に記載されているように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基群(例えばarg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)を同定し、それを中性アミノ酸または負荷電アミノ酸(例えばアラニンまたはポリアラニン)で置き換えて、抗原結合ドメインと抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に更なる置換を導入することもできる。これに代えて、またはこれに加えて、抗原−抗原結合ドメイン複合体の結晶構造を決定して、抗原結合ドメインと抗原どの間の接触点を同定することができる。そのような接触残基および近接残基は、置換候補として標的にするか、または除外することができる。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を有しているかどうかを決定することができる。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100残基またはそれ以上を含むポリペプチドまでの長さのアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗原結合ドメインが挙げられる。抗原結合ドメインの他の挿入変種としては、抗原結合ドメインのN末端またはC末端と酵素(例えば、ADEPTの場合)または抗原結合ドメインの血清中半減期を増加させるポリペプチドとの融合が挙げられる。
核酸の発現
本明細書に記載される異種核酸は、免疫細胞に一時的にまたは安定的に組み込まれていてもよい。いくつかの実施形態では、異種核酸は、改変された免疫細胞において一過性に発現する。例えば、異種核酸は、異種遺伝子発現カセットを含む染色体外アレイにおいて、改変された免疫細胞の核内に存在していてもよい。異種核酸は、ウイルス法または非ウイルス法を含む、当該技術分野で知られている任意のトランスフェクション法または形質導入法を用いて、改変された哺乳動物に導入することができる。例示的な非ウイルストランスフェクション法には、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソーム、またはカチオン性ポリマー(例えば、DEAE−デキストランまたはポリエチレンイミン)を使用するなどの化学ベースのトランスフェクション、エレクトロポレーション、細胞圧搾、ソノポレーション、光トランスフェクション、インペルフェクション、プロトプラスト融合、流体力学的送達、またはトランスポゾンなどの非化学的方法;遺伝子銃、マグネクストフェクションまたはマグネットアシストトランスフェクション、パーティクル・ガン法を使用するなどの粒子ベースの方法;およびヌクレオフェクションなどのハイブリッド法が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、異種核酸はDNAである。いくつかの実施形態では、異種核酸はRNAである。いくつかの実施形態では、異種核酸は線状である。いくつかの実施形態では、異種核酸は環状である。
いくつかの実施形態では、異種核酸は、改変された免疫細胞のゲノム中に存在する。例えば、異種核酸は、ウイルス媒介インテグレーション、無作為インテグレーション、相同組換え法、ならびに部位特異的リコンビナーゼまたはインテグラーゼ、トランスポザーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、CRISPR/Cas9、およびジンクフィンガーヌクレアーゼを使用するなどの部位特異的インテグレーション法を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている任意の方法によって免疫細胞のゲノムに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、異種核酸は、改変された免疫細胞のゲノムの特異的に設計された遺伝子座に組み込まれている。いくつかの実施形態では、異種核酸は、改変された免疫細胞のゲノムの統合ホットスポットに組み込まれている。いくつかの実施形態では、異種核酸は、改変された免疫細胞のゲノムの無作為な遺伝子座に組み込まれている。異種核酸の多重コピーが単一の改変された免疫細胞に存在する場合、異種核酸は、改変された免疫細胞のゲノムの複数の遺伝子座に組み込まれていてもよい。
本明細書に記載される異種核酸(例えば、CR、CCOR、およびCORをコードする核酸)は、プロモーターに作用可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、プロモーターは内因性プロモーターである。例えば、核酸(例えば、CR、CCOR、またはCORをコードする核酸)は、CRISPR/Cas9法などの当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、内因性プロモーターの下流にある改変された免疫細胞のゲノムにノックインされてもよい。いくつかの実施形態では、内因性プロモーターは、βーアクチンなどの豊富なタンパク質のプロモーターである。いくつかの実施形態では、内因性プロモーターは、誘導性プロモーターであり、例えば、改変された免疫細胞の内因性活性化シグナルによって誘導可能である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞がT細胞である場合、プロモーターは、T細胞活性化依存性プロモーター(例えば、IL−2プロモーター、NFATプロモーター、またはNFκBプロモーター)である。
いくつかの実施形態では、プロモーターは異種プロモーターである。
いくつかの実施形態では、異種核酸(例えば、CR、CCOR、またはCORをコードする核酸)は、構成的プロモーターに作用可能に連結されている。いくつかの実施形態では、異種核酸(例えば、CR、CCOR、またはCORをコードする核酸)は、誘導性プロモーターに作用可能に連結されている。いくつかの実施形態では、構成的プロモーターは、CRをコードする核酸に作用可能に連結されており、誘導性プロモーターは、CCORまたはCORをコードする核酸に作用可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモーターは、CRをコードする核酸に作用可能に連結されており、第2の誘導性プロモーターは、CCORをコードする核酸に作用可能に連結されており、またはその逆である。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモーターは、CRをコードする核酸に作用可能に連結されており、第2の誘導性プロモーターは、CORをコードする核酸に作用可能に連結されており、またはその逆である。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモーターは、CCORをコードする核酸に作用可能に連結されており、第2の誘導性プロモーターは、CORをコードする核酸に作用可能に連結されており、またはその逆である。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモーターは第1の誘導条件によって誘導可能であり、第2の誘導性プロモーターは第2の誘導条件によって誘導可能である。いくつかの実施形態では、第1の誘導条件は、第2の誘導条件と同じである。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモーターと第2の誘導性プロモーターとは同時に誘導される。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモーターと第2の誘導性プロモーターとは、順次誘導され、例えば、第1の誘導性プロモーターは、第2の誘導性プロモーターよりも先に誘導され、または第1の誘導性プロモーターは、第2の誘導性プロモーターの後に誘導される。
構成的プロモーターは、異種遺伝子(導入遺伝子とも呼ばれる)を宿主細胞内で構成的に発現させる。本明細書で企図される例示的な構成的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒト伸長因子−1α(hEF1α)、ユビキチンCプロモーター(UbiC)、ホスホグリセロキナーゼプロモーター(PGK)、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、およびCMV初期エンハンサー(CAGG)とカップリングされたしたニワトリβーアクチンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。そのような構成的プロモーターが導入遺伝子の発現を駆動する効率は、膨大な数の研究で広く比較されている。例えば、Michael C.Miloneらは、初代ヒトT細胞におけるキメラ抗原受容体発現を駆動するためのCMV、hEF1α、UbiCおよびPGKの効率を比較し、hEF1αプロモーターが、最も高いレベルの導入遺伝子発現を誘導するだけでなく、それにCD4およびCD8ヒトT細胞中で最適に維持されたという結論を下した(Molecular Therapy,17(8):1453−1464(2009))。いくつかの実施形態では、異種核酸中のプロモーターは、hEF1αプロモーターである。
誘導性プロモーターは、例えば、物理的条件、改変された免疫細胞の微小環境、または改変された免疫細胞の生理学的状態、誘導因子(すなわち、誘発剤)、またはそれらの組み合わせなどの1または複数の条件によって誘導され得る。いくつかの実施形態では、誘導条件は、改変された免疫細胞および/または医薬組成物を受ける対象における内因性遺伝子の発現を誘導しない。いくつかの実施形態では、誘導条件は、改変された免疫細胞の誘導因子、照射(例えば電離放射線、光)、温度(例えば熱)、酸化還元状態、腫瘍環境、および活性化状態からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導因子によって誘導可能である。いくつかの実施形態では、誘導因子は、化合物などの低分子である。いくつかの実施形態では、低分子は、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、アルコール、金属、またはステロイドからなる群から選択される。化学的に誘導されたプロモーターが最も広く研究されてきた。そのようなプロモーターとしては、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、アルコール、ステロイド、金属および他の化合物などの低分子化学物質の存在または非存在によって転写活性が制御されているプロモーターが含まれる。逆テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)とテトラサイクリン応答性エレメントプロモーター(TRE)を用いたドキシサイクリン誘導システムが、現在のところ最も成熟したシステムである。国際公開第9429442号には、テトラサイクリン応答性プロモーターによる真核細胞における遺伝子発現の厳格な制御が記載されている。国際公開第9601313号には、テトラサイクリンで制御された転写調節因子が開示されている。さらに、Tet−onシステムなどのTet技術が、例えば、TetSystems.comのウェブサイトに記載されている。本出願の治療用タンパク質の発現を駆動するために、既知の化学的に制御されたプロモーターのいずれかを使用することができる。
いくつかの実施形態では、誘導因子は、成長因子、ホルモン、または細胞表面受容体に対するリガンド、例えば腫瘍抗原を特異的に結合するポリペプチドなどのポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、改変された免疫細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、異種核酸中の核酸によってコードされる。多くのポリペプチド誘導因子も当該技術分野で知られており、それらは本発明での使用に適している場合がある。例えば、エクジゾン受容体系の遺伝子スイッチ、プロゲステロン受容体系の遺伝子スイッチ、およびエストロゲン受容体系の遺伝子スイッチは、ステロイド受容体由来のトランスアクチベーターを用いた遺伝子スイッチに属する(国際公開第9637609号、国際公開第9738117号など)。
いくつかの実施形態では、誘導因子は、低分子成分と1または複数のポリペプチドの両方を含む。例えば、ポリペプチドの二量体化に依存する誘導性プロモーターは当該技術分野で知られており、本発明での使用に適している場合がある。1993年に開発された最初の低分子CIDシステムは、薬物FK506の誘導体であるFK1012を用いてFKBPのホモ二量体化を誘導した。同様の戦略を採用することにより、Wuらは、Rapalog/FKPB−FRB*およびGibberelline/GID1−GAI二量体化依存性遺伝子スイッチを用いて、オンスイッチでCAR−T細胞を滴定可能にすることに成功した(C.−Y.Wu et al.,Science 350,aab4077(2015))。他の二量体化依存性スイッチ系としては、Coumermycin/GyrB−GyrB(Nature 383(6596):178−81)、およびHaXS/Snap−tag−HaloTag(Chemistry and Biology 20 (4):549−57)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、プロモーターは光誘導性プロモーターであり、その誘導条件は光である。哺乳動物細胞における遺伝子発現を制御するための光誘導性プロモーターも当該技術分野で周知である(例えば、Science 332,1565−1568(2011);Nat.Methods 9,266−269(2012);Nature 500:472−476(2013);Nature Neuroscience 18:1202−1212(2015))を参照されたい。そのような遺伝子制御系は、(1)DNA結合、または(2)転写活性化ドメインのDNA結合タンパク質へのリクルートメントの調整に基づいて2つに大きく分類され得る。例として、青色光(480nm)に応答して細胞内カルシウムの増加を誘発し、カルシニューリン媒介のNFATの動員を結果もたらすメラノプシンをベースとした合成哺乳動物青色光制御転写系を開発し、哺乳動物細胞において試験を行った。さらに最近では、MottA−Menaらは、ヒト細胞株およびゼブラフィッシュ胚において、高レベルの青色光感受性の転写開始制御を付与する自然発生のEL222転写因子から開発された新しい誘導性遺伝子発現系を説明している(Nat.Chem.Biol.10(3):196−202(2014))。さらに、シロイヌナズナの光受容体フィトクロムB(PhyB)とフィトクロム相互作用因子6(PIF6)の赤色光誘起相互作用を利用して、赤色光をトリガーとした遺伝子発現制御を行った。さらに、紫外線B(UVB)誘導性遺伝子発現系も開発され、哺乳動物細胞における標的遺伝子の転写に効率的であることが判明した(Chapter 25 of Gene and Cell Therapy:Therapeutic Mechanisms and Strategies,Fourth Edition CRC Press,Jan.20th,2015)。本明細書に記載される光誘導性プロモーターのいずれかを、本発明の治療用タンパク質の発現を駆動するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、プロモーターは、光誘導性分子と光との組み合わせによって誘導される光誘導性プロモーターである。例えば、化学的誘導因子上の光開裂可能な光ケージ基は、光照射または他の手段により光ケージ基が除去されない限り、誘導因子を不活性に保つ。そのような光誘導性分子としては、低分子化合物、オリゴヌクレオチド、タンパク質などが挙げられる。例えば、ケージドエクジゾン、lacオペロンと共に使用するためのケージドIPTG、リボザイム媒介性遺伝子発現のためのケージドトヨカマイシン、Tet−onシステムで使用するためのケージドドキシサイクリン、および光媒介性FKBP/FRB二量体化のためのケージドRapalogが開発されている(例えば、Curr Opin Chem Biol.16(3−4):292−299(2012)を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、プロモーターは放射線誘導性プロモーターであり、誘導条件は放射線、例えば電離放射線である。放射線誘導性プロモーターによる導入遺伝子発現の制御も当該技術分野で公知である。細胞に照射すると遺伝子発現の改変が起こる。例えば、「前初期遺伝子」として知られる一群の遺伝子は、電離放射の際に即座に反応することができる。例示的な前初期遺伝子としては、Erg−1、p21/WAF−1、GADD45α、t−PA、c−Fos、c−Jun、NF−κB、およびAP1が挙げられるが、これらに限定されない。これらの前初期遺伝子は、それらのプロモーター領域に放射線応答性配列を有する。Erg−1プロモーターにはコンセンサス配列CC(A/T)6GGが見出されており、血清応答エレメントと呼ばれるか、またはCArGエレメントとして知られている。放射線誘導性プロモーターと導入遺伝子との組み合わせは広く研究されており、治療上の利益を有効にもたらすことが判明している。例えば、Cancer Biol Ther.6(7):1005−12(2007)およびChapter 25 of Gene and Cell Therapy: Therapeutic Mechanisms and Strategies,Fourth Edition CRC Press,Jan.20th,2015を参照されたい。任意の前初期遺伝子プロモーター、または血清応答エレメントを含む任意のプロモーターが、本発明の治療用タンパク質の発現を駆動する放射線誘導性プロモーターとして有用な可能性がある。
いくつかの実施形態では、プロモーターは熱誘導性プロモーターであり、誘導条件は熱である。導入遺伝子の発現を駆動する熱誘導性プロモーターも、当該技術分野において広く研究されてきた。Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp40、およびHsp10などを含む、熱ショックまたはストレスタンパク質(HSP)は、熱または他の物理的および化学的ストレスのもとで細胞を保護する重要な役割を果たしている。熱ショックタンパク質(HSP)プロモーター、ならびに増殖停止およびDNA損傷(growth arrest and DNA damage)(GADD)153プロモーターを含む、いくつかの熱誘導性プロモーターが前臨床試験において試みられてきた。1985年に初めて記載されたヒトhsp70B遺伝子のプロモーターは、最も高効率な熱誘導性プロモーターの1つであると考えられている。Huangらは、hsp70B−EGFP、hsp70B−TNFα、およびhsp70B−IL12のコード配列の導入後、腫瘍細胞が、熱処理された際に極めて高い導入遺伝子発現を発現した一方で、熱処理が行われなかった場合、導入遺伝子の発現は検出されなかったことを報告した。そして、インビボにおいて、マウスのIL12導入遺伝子+熱処理群で腫瘍増殖が有意に遅延した(Cancer Res.60:3435(2000))。別のグループの科学者たちは、HSVーtk自殺遺伝子をhsp70Bプロモーターに連結し、マウス乳癌を有するヌードマウスでこの系を試験した。hsp70B−HSVtkコード配列を腫瘍に投与し、熱処理したマウスは、熱処理を行わなかった対照と比較して、腫瘍の退縮と有意な生存率の向上を示した(Hum.Gene Ther.Gene Ther.11:2453(2000))。当該技術分野で知られている更なる熱誘導性プロモーターは、例えば、Chapter 25 of Gene and Cell Therapy: Therapeutic Mechanisms and Strategies,Fourth Edition CRC Press,Jan.20th,2015に見出すことができる。本明細書に議論される熱誘導性プロモーターのいずれかを、本発明の治療用タンパク質の発現を駆動するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、プロモーターは酸化還元状態によって誘導可能である。酸化還元状態によって誘導可能な例示的なプロモーターとしては、誘導性プロモーターおよび低酸素誘導性プロモーターが挙げられる。例として、Post DEらは、HIF活性腫瘍細胞における導入遺伝子の発現を特異的かつ強力に誘導する低酸素誘導因子(HIF)応答性プロモーターを開発した(Gene Ther.8:1801−1807(2001);Cancer Res.67:6872−6881(2007))。
いくつかの実施形態では、プロモーターは、改変された免疫細胞の内因性活性化シグナルなどの生理学的状態によって誘導可能である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞がT細胞である場合、プロモーターは、改変されたT細胞の内因性活性化シグナルによって誘導可能なT細胞活性化依存性プロモーターである。いくつかの実施形態では、改変されたT細胞は、PMA、イオノマイシン、またはフィトヘマグルチニンなどの誘導因子によって活性化される。いくつかの実施形態では、改変されたT細胞は、内因性T細胞受容体または改変された受容体(例えば組換えTCRもしくはCAR)を介した腫瘍細胞上の腫瘍抗原の認識によって活性化される。いくつかの実施形態では、改変されたT細胞は、免疫チェックポイントの遮断により、例えば、改変されたT細胞または第2の改変された免疫細胞によって発現される免疫調節剤により活性化される。いくつかの実施形態では、T細胞活性化依存性プロモーターはIL−2プロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化依存性プロモーターはNFATプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化依存性プロモーターは、NFκBプロモーターである。
いかなる理論または仮説にも拘束されるものではないが、IL−2プロモーターからの遺伝子転写によって開始されるIL−2の発現は、T細胞活性化の主要な活動である。ホルボール12−ミリスチン酸13−アセテート(PMA)、またはイオノマイシン、またはフィトヘマグルチニンによるヒトT細胞の非特異的刺激の結果、刺激されたT細胞からのIL−2分泌が起こる。IL−2プロモーターは、遺伝子改変されたT細胞における活性化誘導性導入遺伝子発現のために研究された(Virology Journal 3:97(2006))。ヒトT細胞株において、IL−2プロモーターがPMA/PHA−P活性化の存在下でレポーター遺伝子の発現を開始するのに効率的であることを見出した。T細胞受容体刺激は細胞内反応のカスケードを開始し、細胞質カルシウム濃度を上昇させ、その結果、NFATとNFκBの両方の核内翻訳をもたらす。活性化T細胞核内因子(NFAT)のメンバーは、Tリンパ球の免疫応答を媒介するCa2+依存性転写因子である。NFATは、活性化T細胞における誘導性インターロイキンー2(IL−2)発現に重要であることが示されている(Mol Cell Biol.15(11):6299−310(1995);Nature Reviews Immunology 5:472−484(2005))。本願発明者らは、ヒトT細胞株において、NFATプロモーターがPMA/PHA−P活性化の存在下でレポーター遺伝子の発現を開始するのに有効であることを見出した。核内因子κB(NFκB)を含む他の経路も、T細胞の活性化を介して導入遺伝子の発現を制御するために用いることができる。
免疫細胞
本発明に有用な例示的な免疫細胞としては、樹状細胞(未成熟樹状細胞および成熟樹状細胞を含む)、Tリンパ球(例えばナイーブT細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、細胞毒性Tリンパ球、Tヘルパー細胞、ナチュラルキラーT細胞、Treg細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、γδT細胞、単球、マクロファージ、好中球、顆粒球、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。免疫細胞の下位集団は、当該技術分野で知られている1または複数の細胞表面マーカー(例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD11c、CD123、CD56、CD34、CD14、CD33など)の存在または非存在によって定義することができる。医薬組成物が複数の改変された哺乳動物免疫細胞を含む場合、改変された哺乳動物免疫細胞は、免疫細胞型の特定の下位集団、免疫細胞型の下位集団の組み合わせ、または2つ以上の免疫細胞型の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、均質な細胞集団に存在する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞において増強された異種細胞集団に存在する。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、リンパ球である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はリンパ球ではない。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、養子免疫療法に適している。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はPBMCである。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、PBMCに由来する免疫細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はCD4+T細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はCD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はB細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はNK細胞である。
改変された免疫細胞の調製
本明細書に記載される様々なコンストラクト(例えば、CR、CCOR、および/またはCOR)を発現する免疫細胞は、CR、CCOR、および/またはCORをコードする核酸などの1または複数の核酸(例えば、レンチウイルスベクターを含む)を免疫細胞に導入することによって生成することができる。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクター技術は当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、および他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。
哺乳動物細胞への遺伝子導入のために、多くのウイルスベースのシステムが開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットフォームを提供する。異種核酸は、当該技術分野で知られている技術を用いて、ベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。組換えウイルスは、次に、単離され、インビトロまたはエクスビボで改変された免疫細胞に送達され得る。多くのレトロウイルスシステムが当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。いくつかの実施形態では、自己不活化レンチウイルスベクターが使用される。例えば、免疫調節剤(例えば免疫チェックポイント阻害剤)をコードする配列を有する自己不活化レンチウイルスベクターおよび/またはキメラ抗原受容体を有する自己不活化レンチウイルスベクターは、当該技術分野で知られているプロトコルを用いてパッケージングすることができる。得られたレンチウイルスベクターは、当該技術分野で知られている方法を用いて、哺乳動物細胞(例えば、初代ヒトT細胞など)を形質導入するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた哺乳動物細胞は、異種核酸の導入後、エクスビボで増殖される。いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた哺乳動物細胞は、少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、または14日のうちのいずれかの期間だけ増殖するように培養される。いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた哺乳動物細胞は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、または14日以下のうちのいずれかの期間だけ培養される。いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた哺乳動物細胞をさらに評価またはスクリーニングして、改変された免疫細胞を選択する。
免疫細胞への1または複数の核酸の導入は、当該技術分野で知られている技術を用いて達成することができる。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞(改変されたT細胞など)は、インビボで複製することができ、その結果、標的抗原の発現に関連する疾患(例えばウイルス感染)の持続的な制御につながり得る長期持続性が得られる。
いくつかの実施形態では、本発明は、HIVなどの感染性疾患を有するか、または発症の危険性がある患者の治療のために、本明細書に記載される改変された免疫細胞を投与することに関する。いくつかの実施形態では、自己リンパ球注入が治療に使用される。自家PBMCは、治療を必要とする患者から採取され、T細胞は、本明細書に記載される方法および当該技術分野で知られている方法を用いて活性化および拡大増殖され、次いで、患者に再び注入される。
いくつかの実施形態では、HIVの治療に使用するために、本明細書に記載される改変された免疫細胞が提供される。この細胞は、インビボでロバストな拡大増殖を受けることができ、血液および骨髄において長期間高レベルで持続する標的抗原特異的なメモリー細胞を確立することができる。いくつかの実施形態では、患者に注入された改変された免疫細胞は、ウイルス感染した細胞を除去することができる。いくつかの実施形態では、患者に注入された改変された免疫細胞は、ウイルス感染した細胞を除去することができる。
免疫細胞の拡大増殖および遺伝子修飾に先立って、対象から免疫細胞源が得られる。免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む多くの供給源から得ることができる。本発明のいくつかの実施形態では、当該技術分野で利用可能ないくつもの数の免疫細胞株を使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、免疫細胞は、当業者に知られているいくつもの技術、例えばFICOLL(商標)分離を使用して、対象から採取された血液の単位から得ることができる。いくつかの実施形態では、個体の循環血からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核化白血球、赤血球および血小板を含む。いくつかの実施形態では、アフェレーシスによって採取された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、それに続く処理ステップのために適切な緩衝剤または培地中に細胞を配置してもよい。いくつかの実施形態では、細胞はリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠いていてもよく、またはすべてではないものの、多くの二価のカチオンを欠いていてもよい。当業者が容易に理解するように、洗浄ステップは、当業者に公知の方法によって、例えば、製造元の指示に従って、半自動化「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、Baxter CytoMateまたはHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによって達成され得る。洗浄後、細胞は、様々な生体適合性緩衝剤、例えば、無Ca2+、無Mg2+PBS、PlasmaLyte A、または緩衝剤の有無にかかわらず他の食塩水溶液中に再懸濁させてもよい。あるいは、アフェレーシスサンプルの望ましくない成分を除去し、細胞を直接培地中に再懸濁させてもよい。
いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えばT細胞)は、赤血球を溶解し、例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離によって、またはカウンターフロー遠心分離溶出によって単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。T細胞、例えばCD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞の特異的下位集団は、ポジティブまたはネガティブ選択技術によってさらに単離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、T細胞は、所望のT細胞のポジティブ選択に十分な期間にわたって、抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)共役ビーズ、例えばDYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 Tとインキュベートすることによって単離される。いくつかの実施形態では、期間は約30分である。いくつかの実施形態では、期間は、30分〜36時間以上の範囲(これらの値の間のすべての範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3、4、5または6時間である。いくつかの実施形態では、期間は、10〜24時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーション期間は24時間である。他の細胞型に比べてT細胞が少ない任意の状況では、T細胞の分離のために、より長いインキュベーション時間が使用される可能性がある。さらに、より長いインキュベーション時間を使用して、CD8+T細胞の捕捉効率を高めることができる。このように、間を単に短縮もしくは延長することによって、T細胞は、CD3/CD28ビーズに結合するようになり、および/またはビーズ対T細胞の比率を増減させることによって、T細胞の下位集団を、培養開始の時点で、もしくはプロセス中の他の時点で、有利にまたは不利に優先的に選択することができる。さらに、ビーズまたは他の表面上の抗CD3抗体および/または抗CD28抗体の比率を増減させることにより、T細胞の下位集団を、培養開始時または他の所望の時点で優先的に選択することができる。当業者は、本発明の文脈において、複数ラウンドの選択も使用され得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、活性化および拡大増殖プロセスにおいて、選択手順を実施し、「選択されていない」細胞を使用することが望まれ得る。「選択されていない」細胞をまた、更なるラウンドの選択に供することができる。
ネガティブ選択によるT細胞集団の富化は、ネガティブ選択された細胞に独自の表面マーカーに指向された抗体の組み合わせを用いて達成することができる。1つの方法は、ネガティブ選択を受けた細胞上に存在する細胞表面マーカーに指向されたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負磁気免疫付着またはフローサイトメトリーを介した細胞分取および/または選択である。例えば、ネガティブ選択によってCD4+細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA−DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの実施形態では、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、およびFoxP3+を発現する調節性T細胞を富化またはポジティブ選択することが望まれ得る。あるいは、いくつかの実施形態では、T調節細胞は、抗CD25共役ビーズまたは他の類似の選択方法によって枯渇される。
ポジティブまたはネガティブ選択による細胞の所望の集団の単離のために、細胞の濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変えてもよい。いくつかの実施形態では、細胞とビーズとの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を大幅に減少させること(すなわち、細胞の濃度を増加させること)が望まれ得る。例えば、いくつかの実施形態では、約20億細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約10億細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億個/ml超の細胞が使用される。いくつかの実施形態では、約1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000万個/mlの細胞のうちのいずれのかの個数の細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個/mlの細胞うちのいずれかの個数の細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億25000万個または約1億50000万個/mlの細胞の濃度が使用される。高濃度を使用すると、細胞の収率の増加、細胞の活性化、および細胞の拡大増殖がもたらされ得る。さらに、高濃度の細胞を使用することで、CD28陰性T細胞などの目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、または多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(すなわち、白血病の血液、腫瘍組織など)から、より効率的に捕捉することが可能になる。そのような細胞の集団は、治療的価値を有し得、取得することが望ましい。例えば、高濃度の細胞を使用することで、通常はCD28発現が弱いCD8+T細胞をより効率的に選択できるようになる。
核酸(望ましい核酸CR、CCORおよび/またはCORなど)を発現させるための免疫細胞の遺伝子修飾の前または後のいずれであっても、免疫細胞を活性化して拡大増殖させることができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される免疫細胞(例えばT細胞)は、それに結合したCD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドを有する表面との接触によって拡大増殖される。特に、T細胞集団は、例えば、表面上に固定された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD2抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと組み合わせたタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって、刺激されてもよい。T細胞の表面上のアクセサリ分子の共刺激のために、アクセサリ分子を結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の増殖を刺激するために適切な条件下で、T細胞の集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体が使用される。抗CD28抗体の例としては、9.3、B−T3、XR−CD28(Diaclone,ブサンゾン、フランス国)が挙げられ、当該技術分野で一般的に知られている他の方法と同様に用いることができる(Berg et al.,Transplant Proc.30(8):3975−3977,1998;Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):13191328,1999;Garland et al.,J.Immunol.Meth.227(1−2):53−63,1999)。
遺伝子修飾
いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、CCR5の発現をブロックするか、または減少させるように修飾された免疫細胞(例えばT細胞)である。遺伝子発現をかく乱するための細胞の修飾としては、例えば、RNA干渉(例えば、siRNA、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPR−またはTALENベースの遺伝子ノックアウト)などを含む、当該技術分野で知られている任意のそのような技術が挙げられる。
いくつかの実施形態では、CCR5の発現が低下した改変された免疫細胞(例えばT細胞)は、CRISPR/Casシステムを用いて生成される。遺伝子編集のCRISPR/Casシステムの概説については、例えば、Jian W & Marraffini LA,Annu.Rev.Microbiol.69,2015;Hsu PD et al.,Cell,157(6):1262−1278,2014;およびO'Connell MR et al.,Nature 516:263‐266,2014を参照されたい。いくつかの実施形態では、T細胞の内因性TCR鎖の1つまたは両方の発現が低下した改変された免疫細胞(例えば、改変されたT細胞)は、TALENベースのゲノム編集を用いて生成される。
いくつかの実施形態では、CCR5遺伝子(またはTCR遺伝子)は、CRISPR/Cas9遺伝子編集を用いて不活化される。CRISPR/Cas9は、2つの主な特徴:短いガイドRNA(gRNA)とCRISPR関連エンドヌクレアーゼまたはCasタンパク質を含む。Casタンパク質はgRNAに結合することができ、このgRNAには、目的の遺伝子を直接標的化し、それに続けてノックアウトを可能にする改変されたスペーサーが含まれている。一度標的化されると、Casタンパク質はDNA標的配列を切断し、その結果、遺伝子をノックアウトする。
いくつかの実施形態では、CCR5遺伝子(またはTCR遺伝子)は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(商標))ベースのゲノム編集を用いて不活化される。TALEN(商標)ベースのゲノム編集には、DNAの特定の領域を標的化するように改変することができる制限酵素の使用が含まれる。転写活性化因子様エフェクター(TALE)のDNA結合ドメインが、DNA切断ドメインに融合されている。TALEは、目的の配列にヌクレアーゼを標的化する役割を担い、切断ドメイン(ヌクレアーゼ)はDNAを切断する役割を担い、その結果、DNAのそのセグメントが除去され、それに続けて遺伝子がノックアウトされる。
いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ゲノム編集法を用いて、CCR5遺伝子(またはTCR遺伝子)が不活化される。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとDNA切断ドメインとから構成される人工制限酵素である。ZFNのDNA結合ドメインは、DNAの特定の領域を標的化するように改変することができる。DNA切断ドメインは、目的のDNA配列を切断する役割を担い、その結果、DNAのそのセグメントが除去され、それに続けて遺伝子がノックアウトされる。
いくつかの実施形態では、CCR5遺伝子(またはTCR遺伝子)の発現は、小干渉RNA(siRNA)を用いて低下される。siRNA分子は、目的の遺伝子からのメッセンジャーRNA(mRNA)転写物に相補的な20〜25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド二本鎖である。siRNAは、これらのmRNAを標的化して破壊する。標的化により、siRNAはmRNA転写物が翻訳されるのを防ぎ、それによって細胞がタンパク質を産生するのを防ぐ。
いくつかの実施形態では、CCR5遺伝子(またはTCR遺伝子)の発現は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して低下される。mRNAを標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に当該技術分野で知られており、遺伝子発現をダウンレギュレートするために日常的に使用されている。Watts,J. and Corey,D(2012)J.Pathol.226(2):365−379.)Enrichment of the engineered immune cellsを参照されたい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変された免疫細胞のいずれかに従う改変された免疫細胞の異種細胞集団を富化する方法が提供される。
標的抗原および標的リガンドに特異的に結合する改変された免疫細胞(例えば改変されたT細胞)の特異的下位集団を、ポジティブ選択技術によって富化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞(例えば改変されたT細胞)は、所望の改変された免疫細胞のポジティブ選択に十分な期間にわたって、標的抗原共役ビーズおよび/または標的リガンド共役ビーズとインキュベートすることによって富化される。いくつかの実施形態では、期間は約30分である。いくつかの実施形態では、期間は、30分〜36時間以上の範囲(これらの値の間のすべての範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3、4、5または6時間である。いくつかの実施形態では、期間は10〜24時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーション期間は24時間である。異種細胞集団の中に低レベルで存在する改変された免疫細胞を分離するためには、24時間などの長いインキュベーション時間を使用することで、細胞の収率を高めることができる。他の細胞型に比べて改変された免疫細胞が少ない任意の状況では、改変された免疫細胞の単離のために、より長いインキュベーション時間が使用される可能性がある。当業者は、本発明の文脈において、複数ラウンドの選択も使用され得ることを認識するであろう。
ポジティブ選択による改変された免疫細胞の所望の集団の単離のために、細胞の濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変えてもよい。いくつかの実施形態では、細胞とビーズとの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を大幅に減少させること(すなわち、細胞の濃度を増加させること)が望まれ得る。例えば、いくつかの実施形態では、約20億細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約10億細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億個/ml超の細胞が使用される。いくつかの実施形態では、約1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000万個/mlの細胞のうちのいずれかの個数の細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個/mlの細胞のうちのいずれかの個数の細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億25000万個または約1億50000万個/mlの細胞の濃度が使用される。高濃度を使用すると、細胞の収率の増加、細胞の活性化、および細胞の拡大増殖がもたらされ得る。さらに、高濃度の細胞を使用することで、CR、CCOR、および/またはCORを弱く発現し得る改変された免疫細胞をより効率的に捕捉することが可能になる。
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかでは、富化の結果、改変された免疫細胞の枯渇は最小限に抑えられるか、または実質的に枯渇しなくなる。例えば、いくつかの実施形態では、富化の結果、改変された免疫細胞の約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10、または5%未満のうちのいずれか)が枯渇することになる。免疫細胞の枯渇は、本明細書に記載されている任意の手段を含む、当該技術分野で知られている任意の手段によって決定することができる。
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかでは、富化の結果、改変された免疫細胞の末端分化は最小限に抑えられるか、または実質的に起こらなくなる。例えば、いくつかの実施形態では、富化の結果、改変された免疫細胞の約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10、または5%未満のうちのいずれか)が末端分化する。免疫細胞の分化は、本明細書に記載されている任意の手段を含む、当該技術分野で知られている任意の手段によって決定することができる。
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかでは、富化の結果、改変された免疫細胞上でのCR、CCOR、および/またはCORの内在化が最小限に抑えられるか、または実質的に起こらなくなる。例えば、いくつかの実施形態では、富化の結果、改変された免疫細胞上で約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10、または5%未満のうちのいずれか)のCR、CCOR、および/またはCORが内在化される。改変された免疫細胞上でのCR、CCOR、またはCORの内在化は、本明細書に記載されている任意の手段を含む、当該技術分野で知られている任意の手段によって決定することができる。
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかでは、富化の結果、改変された免疫細胞の増殖が増加することになる。例えば、いくつかの実施形態では、富化の結果、富化後の改変された免疫細胞の数は少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000%以上のうちのいずれか)増加する。
このように、いくつかの実施形態では、CR標的抗原に特異的に結合するCRおよび/またはCCOR標的リガンドに特異的に結合するCCORを発現する改変された免疫細胞の異種細胞集団を富化する方法であって、a)標的抗原またはそれに含まれる1または複数のエピトープを含む第1の分子および/または標的リガンドまたはそれに含まれる1または複数のエピトープを含む第2分子を異種細胞集団に接触させて、第1の分子に結合した改変された免疫細胞を含む複合体および/または第2の分子に結合した改変された免疫細胞を含む複合体を形成するステップ、ならびにb)複合体を異種細胞集団から分離し、それによって改変された免疫細胞が富化された細胞集団を生成する段階を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の分子は、固体支持体に個々に固定化されている。いくつかの実施形態では、固体支持体は微粒子(例えばビーズ)である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、表面(例えばウェルの底)である。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の分子は、個々にタグで標識されている。いくつかの実施形態では、タグは、蛍光分子、アフィニティータグ、または磁気タグである。いくつかの実施形態では、方法はさらに、第1および/または第2の分子から改変された免疫細胞を溶出し、溶出液を回収する段階を含む。
いくつかの実施形態では、免疫細胞または改変された免疫細胞は、例えば、ネガティブ富化の使用により、CD4+細胞および/またはCD8+細胞が富化され、それによって、細胞混合物は、物理的(カラム)および磁気的(MACS磁気ビーズ)精製ステップの両方を含む2段階の精製方法を使用して精製される(Gunzer,M.Immunol.Methods 258(1−2):55−63)。他の実施形態では、細胞の集団は、CD4+細胞またはCD8+細胞の富化のために特異的に設計されたT細胞富化カラムの使用により、CD4+細胞またはCD8+細胞を富化することができる。さらに他の実施形態では、細胞集団は、市販のキットを使用することにより、CD4+細胞を富化することができる。いくつかの実施形態では、市販のキットは、EasySep(商標)Human CD4+ T Cell Enrichment Kit(Stemcell Technologies(商標))である。他の実施形態では、市販のキットは、MagniSort Mouse CD4+ T cell Enrichment Kit(Thermo Fisher Scientific)である。さらに他の実施形態では、市販の富化キットは、当業者に知られているものである。
医薬組成物
また、本明細書に記載される改変された免疫細胞(例えばT細胞)を含む改変された免疫細胞組成物(例えば医薬組成物、本明細書では製剤とも呼ばれる)も本明細書に提供される。
組成物は、同じ細胞型で、同じCRおよび/またはCCORを発現する改変された免疫細胞を含む同種細胞集団、または異なる細胞型で、異なるCR、異なるCCOR、および/または異なるCORを発現する改変された免疫細胞を含む複数の改変された免疫細胞集団を含む異種細胞集団であってもよい。組成物はさらに、改変された免疫細胞ではない細胞を含んでいてもよい。
このように、いくつかの実施形態では、同じ細胞型で、同じCR、CCOR、および/またはCORを発現する改変された免疫細胞(例えば改変されたT細胞)の同種細胞集団を含む改変された免疫細胞組成物が提供される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびサプレッサ−T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞組成物は医薬組成物である。
いくつかの実施形態では、または異なる細胞型で、異なるCR、異なるCCOR、および/または異なるCORを発現する改変された免疫細胞を含む複数の改変された免疫細胞集団を含む異種細胞集団を含む改変された免疫細胞組成物が提供される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、個体、例えばヒト個体に投与するのに適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は注射に適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は注入に適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、細胞培地を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、エンドトキシンまたはアレルゲン性タンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、医薬組成物の総体積または総重量の約10%、5%、1%、0.1%、0.01%、0.001%未満、1ppm未満のいずれかである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、マイコプラズマ、微生物剤、および/または伝染性疾患剤を含まない。
本出願人の医薬組成物は、任意の数の改変された免疫細胞を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、改変された免疫細胞の単一コピーを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、改変された免疫細胞の少なくとも約1、10、100、1000、104、105、106、107、108以上のいずれかのコピーを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単一のタイプの改変された免疫細胞からなる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも2種類の改変された免疫細胞を含み、ここで、異なる種類の改変された免疫細胞は、その細胞源、細胞タイプ、発現された治療用タンパク質、免疫調節剤、および/またはプロモーターなどによって異なる。
組成物の調製中の様々な時点で、細胞を凍結保存することが必要であるか、または有益であり得る。「冷凍/凍結」と「冷凍保存/凍結保存」という用語は、互換的に使用することができる。凍結には凍結乾燥が含まれる。
特定の実施形態では、細胞は、培地から採取され、洗浄され、治療上有効な量で担体に濃縮され得る。例示的な担体としては、食塩水、緩衝食塩水、生理食塩水、水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、NonnosoL−R(Abbott Labs)、PlasmA−Lyte A(登録商標)(Baxter Laboratories,Inc,Morton Grove,IL)、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
特定の実施形態では、担体に、ヒト血清アルブミン(HSA)または他のヒト血清成分またはウシ胎児血清を加えることができる。特定の実施形態では、注入用の担体としては、5%HSAまたはデキストロースを含む緩衝食塩水が挙げられる。更なる等張化剤としては、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、またはマンニトールなどの三価以上の糖アルコールを含む多価糖アルコールが挙げられる。
担体としては、緩衝剤、例えばクエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、および/またはトリメチルアミン塩を挙げることができる。
安定剤は、増量剤から容器壁への細胞の付着を防止するのに役立つ添加剤にまで及ぶ機能を持つことができる医薬品添加剤の幅広いカテゴリーを指す。典型的な安定剤としては、多価糖アルコール;アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グリジン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、およびトレオニン;有機糖または糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール、ガラクチトール、グリセロール、およびシクリトール、例えばイノシトール;PEG;アミノ酸ポリマー;硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(すなわち、<10個の残基);タンパク質、例えばHSA、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;単糖類、例えばキシロース、マンノース、フルクトースおよびグルコース;二糖類、例えばラクトース、マルトースおよびスクロース;三糖類、例えばラフィノース、および多糖類、例えばデキストランを挙げることができる。
必要な場合または有益な場合には、組成物は、注射部位での疼痛を和らげるために、リドカインなどの局所麻酔薬を含むことができる。
例示的な防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化ベンザルコニウム、塩化ヘキサメトニウム、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、および3−ペンタノールが挙げられる。
組成物内の細胞の治療上有効な量は、102個の細胞より多い、103個の細胞より多い、104個の細胞より多い、105個の細胞より多い、106個の細胞より多い、107個の細胞より多い、108個の細胞より多い、109個の細胞より多い、1010個の細胞より多い、または1011個の細胞より多くあり得る。
本明細書に開示される組成物および製剤では、細胞は、一般的に、1リットル以下、500ml以下、250ml以下、または100ml以下の体積である。したがって、投与される細胞の密度は、典型的には、104個の細胞/ml、107個の細胞/ml、または108個の細胞/mlより大きい。
また、本明細書に記載されるCR、CCORおよび/またはCORをコードする核酸のいずれかを含む核酸組成物(例えば医薬組成物、本明細書では製剤とも呼ばれる)も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、核酸組成物は医薬組成物である。いくつかの実施形態では、核酸組成物は、等張化剤、医薬品添加剤、希釈剤、増粘剤、安定剤、緩衝剤、および/または防腐剤;および/または水性賦形剤、例えば精製水、砂糖水溶液、緩衝液、生理食塩水、ポリマー水溶液、またはRNase遊離水なのいずれかをさらに含み得る。そのような添加剤や水性賦形剤の添加量は、核酸組成物の使用形態に応じて適宜選択することができる。
本明細書に開示される組成物および製剤は、例えば、注射、注入、灌流、または洗浄による投与のために調製することができる。組成物および製剤はさらに、骨髄注射、静脈内注射、皮内注射、動脈内注射、鼻腔内注射、リンパ管内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、膀胱内注射、膣内注射、直腸内注射、局所注射、髄腔内注射、筋肉内注射、濾胞内注射、および/または皮下注射のために、さらに製剤化することができる。
インビボ投与に使用する製剤は滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌ろ過膜を介したろ過によって容易に達成される。
医薬品添加剤
本発明の医薬組成物は、治療目的に有用である。このように、免疫調節剤または他の治療用タンパク質を発現する生産細胞などの改変された免疫細胞を含む他の組成物とは異なり、本発明の医薬組成物は、個体への投与に適した薬学的に許容される医薬品添加剤を含む。
適切な薬学的に許容される医薬品添加剤は、緩衝剤、例えば中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など;炭水化物、例えばグルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリジン;酸化防止剤;キレート剤、例えばEDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される医薬品添加剤は自己血清を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される医薬品添加剤はヒト血清を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される医薬品添加剤は、非毒性、生体適合性、非免疫原性、生分解性であり、宿主の防御機構による認識を回避することができる。医薬品添加剤はまた、保存安定剤、湿潤剤、乳化剤などのアジュバントを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される医薬品添加剤は、改変された免疫細胞、免疫調節剤またはその分泌された他の治療用タンパク質の安定性を高める。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される医薬品添加剤は、免疫調節剤または、改変された免疫細胞によって分泌される他の治療用タンパク質の凝集を減少させる。最終形態は、滅菌であってもよく、また、中空針のなどの注入デバイスを容易に通過させることができるものであってよい。適切な粘度は、医薬品添加剤の適切な選択によって達成および維持され得る。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4.5〜約9.0の範囲のpH(例えば、約5.0〜約8.0、約6.5〜約7.5、または約6.5〜約7.0のうちのいずれか1つのpH範囲を含む)を有するように製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はまた、グリセロールなどの適切な等張化剤の添加によって血液と等張性にすることができる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒトへの投与に適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与によるヒトへの投与に適している。非経口投与に適した製剤としては、水性および非水性の等張性滅菌注射液(これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されたレシピエントの血液に適合させる溶質を含むことができる)、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含むことができるが含まれる)が挙げられる。製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単回用量または多回用量の密封容器に提示することができ、使用直前に、本明細書に記載される滅菌液体医薬品添加剤の処理方法、投与方法、および注射のための投与レジメン(すなわち、水)の添加のみを必要とする状態で保存することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回使用のバイアル、例えば単回使用の密封バイアルに含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物はマルチユースバイアルに含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物はバルクで容器内に含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は凍結保存される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍部位への局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、体腔内注射用に製剤化される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、個体への投与のための一定の基準を満たさなければならない。例えば、米国食品医薬品局は、21CFR 610および21CFR 610.13を含む、細胞ベースの免疫療法製品の基準を設定する規制ガイドラインを発行している。医薬組成物の外観、同一性、純度、安全性、および/または効力を評価する方法が当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アレルギー作用を生じる可能性のある外因性タンパク質、例えば、改変された哺乳動物免疫細胞以外の細胞培養に使用される動物源のタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、医薬組成物の総体積または総重量の約10%、5%、1%、0.1%、0.01%、0.001%、1ppm未満のいずれかである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、GMPレベルのワークショップで調製される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のためのエンドトキシン約5EU/kg(体重)/h未満を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の改変された免疫細胞の少なくとも約70%は、静脈内投与のために生存している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、米国薬局方(USP)に記載されているような14日間の直接接種試験法を用いて評価した場合、「増殖なし」の結果を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物を投与する前に、改変された免疫細胞と薬学的に許容される医薬品添加剤の両方を含むサンプルを、最終収穫の約48〜72時間前(または培養物の最後の再給餌と同時)に、滅菌性試験のために採取することが望ましい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、マイコプラズマ汚染を含まない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、検出可能な微生物剤を含まない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、HIV I型、HIV II型、HBV、HCV、ヒトTリンパ球性ウイルスI型;およびヒトTリンパ球性ウイルスII型などの伝染性疾患剤を含まない。
改変された免疫細胞を用いた治療方法
本出願はさらに、感染性疾患、EBV陽性T細胞リンパ増殖性障害、T細胞前駆細胞性白血病、EBV陽性T細胞リンパ増殖性障害、成人T細胞白血病/リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性疾患、末梢性T細胞リンパ腫(他に特定されない)、血管性免疫芽球性T細胞リンパ腫、および未分化大細胞リンパ腫、および自己免疫疾患を含むがこれらに限定されない疾患を治療するために、改変された免疫細胞を投与する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、自己リンパ球注入が治療に使用される。自家PBMCは、治療を必要とする患者から採取され、T細胞は、本明細書に記載される方法および当該技術分野で知られている方法を用いて活性化および拡大増殖され、次いで、患者に再び注入される。
この細胞は、インビボでロバストな拡大増殖を受けることができ、血液および骨髄において長期間高レベルで持続するCD4特異的メモリー細胞を確立することができる。いくつかの実施形態では、患者に注入された改変された免疫細胞は、癌またはウイルス感染細胞を枯渇させることができる。いくつかの実施形態では、患者に注入された改変された免疫細胞は、癌またはウイルス感染細胞を除去することができる。ウイルス感染治療は、例えば、ウイルス負荷、生存期間、生活の質、タンパク質発現および/または活性によって評価することができる。
いくつかの実施形態における本発明の改変された免疫細胞は、癌、例えばCD4+T細胞リンパ腫またはT細胞白血病を治療するために、個体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従う改変された免疫細胞を含む組成物(例えば、医薬組成物)の有効量を個体に投与することを含む、個体の癌を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌はT細胞リンパ腫である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される癌を治療する方法はさらに、第2の抗癌剤を個体に投与することをさらに含む。適切な抗癌剤としては、CD70標的化剤、TRBC1、CD30標的化剤、CD37標的化剤、CCR4標的化剤、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、CHOEP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシドおよびプレドニゾン)、EPOCH(エトポシド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミドおよびプレドニゾン)、Hyper−CVAD(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾン)、HDAC阻害剤、CD52抗体ベリノスタット、ベンダムスチン、BL−8040、ボルテゾミブ、CPI−613、モガムリズマブ、ネララビン、ニボルマブ、ロミデプシンならびにルキソリチニブが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体、または抗PD−L1抗体)である。いくつかの実施形態では、第2の抗癌剤は、改変された免疫細胞と同時に投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗癌剤は、改変された免疫細胞の投与と共に(例えば、改変された免疫細胞の投与に先立ってまたは後に)順次投与される。いくつかの実施形態では、本発明の改変された免疫細胞組成物は、標的抗原の発現が関与する疾患または障害を治療するために、第2の薬剤、第3の薬剤剤または第4の薬剤(例えば、抗悪性腫瘍剤、増殖抑制剤、細胞毒性剤、または化学療法剤を含む)と組み合わせて投与される。
本発明の改変された免疫細胞はまた、感染性疾患、例えばHIVを治療するために、個体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従う改変された免疫細胞を含む組成物(例えば、医薬組成物)の有効量を個体に投与することを含む、個体の感染性疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、例えば、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)およびHIV(ヒト免疫不全ウイルス)から選択されるウイルスによって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、HIVを治療する方法が提供され、この方法は、本明細書に記載される改変された免疫細胞のいずれかを投与することを含む。HIVには、HIV−1とHIV−2の2つのサブタイプがある。HIV−1は世界的なパンデミックの原因となるウイルスで、高病原性と高い感染力を併せ持ったウイルスである。しかしながら、HIV−2は西アフリカでのみ流行しており、HIV−1ほどの病原性も感染力もない。HIV−1感染症とHIV−2感染症との間のウイルス性と感染性の違いは、HIV−2感染症のウイルス性タンパク質に対して備わったより強力な免疫応答に根ざしている可能性があり、感染した個体における制御がより効率的なものとなる(Leligdowicz,A.et al.(2007)J.Clin.Invest.117(10):3067−3074)。これもまた、HIV−1の世界的な広がりとHIV−2の限られた地理的な有病率の主たる理由になっている可能性がある。
HIV−2感染症はHIV−1感染症よりも制御されているが、HIV−2感染した個体は依然として治療の恩恵を受けている。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、HIV−1感染症を治療するために使用される。他の実施形態では、改変された免疫細胞は、HIV−2感染症を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、HIV−1およびHIV−2感染症を治療するために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される感染性疾患を治療する方法はさらに、第2の抗感染剤を個体に投与することを含む。適切な抗感染剤としては、抗レトロウイルス剤、広域中和抗体、トール様受容体アゴニスト、潜伏再活性化剤、CCR5アンタゴニスト、免疫刺激剤(例えば、TLRリガンド)、ワクチン、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、および融合阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、第2の抗感染剤は、改変された免疫細胞と同時に投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗感染剤は、改変された免疫細胞の投与と共に(例えば、改変された免疫細胞の投与に先立ってまたは後に)順次投与される。
いくつかの実施形態では、個体は哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、臨床患者、臨床試験ボランティア、実験動物などである。いくつかの実施形態では、個体は、約60歳未満(例えば、約50歳、40歳、30歳、25歳、20歳、15歳、または10歳のうちのいずれかの年齢未満であることを含む)。いくつかの実施形態では、個体は、約60歳を超える(例えば、約70歳、80歳、90歳、または100歳のうちのいずれかの年齢を超えることを含む)。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記載される疾患または障害(例えば、癌またはウイルス感染)の1または複数の疾患または障害を有するか、または環境的もしくは遺伝的に起こりやすいと診断されている。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記載される1または複数の疾患または障害に関連する1または複数の危険因子を有する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、体重1kg当たり少なくとも約104、105、106、107、108、または109個の細胞のうちのいずれかの投与量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、体重1kg当たり約104〜約105、約105〜約106、約106〜約107、約107〜約108、約108〜約109、約104〜約109、約104〜約106、約106〜約108、または約105〜約107個の細胞のいずれかの投与量で投与される。
2つ以上のタイプの改変された免疫細胞が投与されるいくつかの実施形態では、異なるタイプの改変された免疫細胞は、単一の組成物のように、同時に、または任意の適切な順序で順次、個体に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、多回(例えば、2、3、4、5、6回以上のうちのいずれか)投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、または1年に1回投与される。いくつかの実施形態では、投与間の間隔は、約1週間〜2週間、2週間〜1ヶ月、2週間〜2ヶ月、1ヶ月〜2ヶ月、1ヶ月〜3ヶ月、3ヶ月〜6ヶ月、または6ヶ月〜1年のうちのいずれか1つである。特定の患者のための最適な投与量および治療レジームは、疾患の徴候のために患者を監視し、それに応じて治療を調整することによって、医学分野の当業者によって容易に決定することができる。
製造物品およびキット
本発明のいくつかの実施形態では、ウイルス感染(例えばHIVによる感染)などの感染性疾患の治療に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器上または容器に関連付けられたラベルまたは添付文書を含むことができる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料で形成されていてもよい。一般的に、容器は、本明細書に記載される疾患または障害の治療に有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穴をあけることができるストッパーを有するバイアルであってもよい)を有していてもよい。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のCRおよびCCORをその表面に提示する免疫細胞である。ラベルまたは添付文書は、組成物が特定の状態を治療するために使用されるものであることを示す。ラベルまたは添付文書はさらに、改変された免疫細胞組成物を患者に投与するための指示を含む。本明細書に記載される併用療法を含む製造物品およびキットも企図される。
添付文書とは、市販の治療用製品のパッケージに習慣的に含まれる、そのような治療用製品の使用にかかわる適応症、使用法、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含有する指示を指す。他の実施形態では、添付文書は、組成物が、標的抗原陽性ウイルス感染症(例えば、HIVによる感染症)を治療するために使用されるものであることを示す。
さらに、製造物品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝剤を含む第2の容器をさらに含み得る。製造物品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
任意に製造物品と組み合わせた、様々な目的のために、例えば、本明細書に記載される標的抗原陽性疾患または障害の治療のために有用なキットも提供される。本発明のキットは、改変された免疫細胞組成物(または単位剤形および/もしくは製造物品)を含む1または複数の容器を含み、いくつかの実施形態では、別の薬剤(例えば、本明細書に記載される薬剤)および/または本明細書に記載される方法のいずれかに従い使用するための指示をさらに含む。キットはさらに、治療に適した個体の選択についての記載を含み得る。本発明のキット中に供給される指示は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上に書かれた指示であるが、機械により読み取り可能な指示(例えば、磁気または光学的なメモリーディスクに保持された指示)も許容される。
例示的な実施形態
実施形態1改変された免疫細胞であって、a)キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(CR)、ならびにb)キメラ共受容体(CCOR)であって、i)CCOR標的抗原を特異的に認識するCCOR抗原結合ドメイン、ii)CCOR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CCOR共刺激ドメインを含む、CCORを含み、上記CR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4であり、上記CCOR標的抗原はCD4であるか、または上記CR標的抗原はCD4であり、上記CCOR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4である、改変された免疫細胞。
実施形態2改変された免疫細胞であって、キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(CR)を含み、上記CR標的抗原は、CCR5、CXCR4およびCD4からなる群から選択される、改変された免疫細胞。
実施形態3改変された免疫細胞であって、キメラ受容体(CR)であって、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(CR)を含み、上記CR標的抗原は、CCR5、CXCR4およびCD4からなる群から選択され、上記CCR5、CXCR4またはCD4は、広域中和抗体とタンデム化されている、改変された免疫細胞。
実施形態4上記広域中和抗体が、VRC01、PGT121、3BNC117または10−1074である、実施形態3に記載の改変された免疫細胞。
実施形態51または複数の共受容体(「COR」)をさらに含む、実施形態1から4いずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態6改変された免疫細胞であって、a)キメラ受容体(CR)をコードする第1の核酸であって、上記CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含む、第1の核酸、ならびにb)キメラ共受容体(CCOR)をコードする第2の核酸であって、上記CCORは、i)CCOR標的抗原を特異的に認識するCCOR抗原結合ドメイン、ii)CCOR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CCOR共刺激シグナル伝達ドメインを含む、第2の核酸を含み、上記CR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4であり、上記CCOR標的抗原はCD4であるか、または上記CR標的抗原はCD4であり、上記CCOR標的抗原はCCR5もしくはCXCR4である、改変された免疫細胞。
実施形態7改変された免疫細胞であって、キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、上記CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(CR)をコードする核酸を含み、上記CR標的抗原は、CCR5、CXCR4およびCD4からなる群から選択される、改変された免疫細胞。
実施形態8改変された免疫細胞であって、キメラ受容体(CR)をコードする核酸であって、上記CRは、i)CR標的抗原を特異的に認識するCR抗原結合ドメイン、ii)CR膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内CRシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(CR)をコードする核酸を含み、上記CR標的抗原は、CCR5、CXCR4およびCD4からなる群から選択され、上記CCR5、上記CXCR4または上記CD4は、広域中和抗体とタンデム化されている、改変された免疫細胞。
実施形態9上記広域中和抗体が、VRC01、PGT121、3BNC117または10−1074である、実施形態8に記載の改変された免疫細胞。
実施形態101または複数の共受容体(「COR」)をコードする1または複数の核酸をさらに含む、実施形態6から9のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態11上記CRがキメラ抗原受容体(「CAR」)である、実施形態1から10のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態12上記CR膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、4−1BB、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択される分子に由来する、実施形態11に記載の改変された免疫細胞。
実施形態13上記CR膜貫通ドメインがCD8αに由来する、実施形態12に記載の改変された免疫細胞。
実施形態14上記細胞内CRシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、またはCD66dに由来する、実施形態11に記載の改変された免疫細胞。
実施形態15上記細胞内CRシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する、実施形態14に記載の改変された免疫細胞。
実施形態16上記CRがさらに細胞内CR共刺激ドメインを含む、実施形態11から15のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態17上記細胞内CR共刺激シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、4−1BB、OX40、CD40、PD−1、LFA−1、ICOS、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、TNFRSF9、TNFRSF4、TNFRSF8、CD40LG、ITGB2、KLRC2、TNFRSF18、TNFRSF14、HAVCR1、LGALS9、DAP10、DAP12、CD83、CD83のリガンド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激分子に由来する、実施形態16に記載の改変された免疫細胞。
実施形態18上記細胞内CR共刺激シグナル伝達ドメインが、4−1−BBの細胞質ドメインを含む、実施形態17に記載の改変された免疫細胞。
実施形態19上記CR抗原結合ドメインのC末端と上記CR膜貫通ドメインのN末端との間に位置するCRヒンジドメインをさらに含む、実施形態11から18のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態20上記CRヒンジドメインがCD8αに由来する、実施形態19に記載の改変された免疫細胞。
実施形態21上記CRが細胞内共刺激ドメインを含まない、実施形態1から10のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態22上記CRがキメラT細胞受容体(「cTCR」)である、実施形態1から10のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態23上記細胞内CR膜貫通ドメインが、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3ε、およびCD3δからなる群から選択されるTCRサブユニットの膜貫通ドメインに由来する、実施形態22に記載の改変された免疫細胞。
実施形態24上記CR膜貫通ドメインが、上記CD3εの膜貫通ドメインに由来する、実施形態23に記載の改変された免疫細胞。
実施形態25上記細胞内CRシグナル伝達ドメインが、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、CD3γ、CD3ε、およびCD3δからなる群から選択されるTCRサブユニットの細胞内シグナル伝達ドメインに由来する、実施形態22から24のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態26上記細胞内CRシグナル伝達ドメインが、上記CD3εの細胞内シグナル伝達ドメインに由来する、実施形態25に記載の改変された免疫細胞。
実施形態27上記CR膜貫通ドメインおよび細胞内CRシグナル伝達ドメインが、同一または異なる上記TCRサブユニットに由来する、実施形態22から26のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態28上記CRがさらにTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部を含む、実施形態22から27のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態29 上記CRが、上記CD3εのN末端に融合した上記CR抗原結合ドメインを含む、実施形態22から28のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態30上記CRをコードする核酸が誘導性プロモーターの下にある、実施形態6から29のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態31上記CRをコードする核酸が構成的に発現している、実施形態6から29のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態32上記CCORおよび/またはCORをコードする核酸が誘導性プロモーターの下にある、実施形態6から31のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態33上記CCORおよび/またはCORをコードする核酸が構成的に発現している、実施形態6から31のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態34上記CCORおよび/またはCORをコードする核酸が、上記免疫細胞の活性化時に誘導可能である、実施形態32に記載の改変された免疫細胞。
実施形態35上記第1の核酸および上記第2の核酸が同じベクター上にある、実施形態6から34のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態36上記第1の核酸および上記第2の核酸が同じプロモーターの制御下にある、実施形態35に記載の改変された免疫細胞。
実施形態37上記第1の核酸および上記第2の核酸が異なるベクター上にある、実施形態6から31のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態381または複数のCORをコードする核酸が、上記第1の核酸と同じベクター上にある、実施形態10から37のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態391または複数のCORをコードする核酸が、上記第2の核酸と同じベクター上にある、実施形態10から38のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態40上記1または複数のCORをコードする核酸と上記第1の核酸または上記第2の核酸とが同じプロモーターの制御下にある、実施形態38または39に記載の改変された免疫細胞。
実施形態41上記CR標的抗原がCD4である、実施形態1から40のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態42上記CCOR標的抗原がCD4である、実施形態1、5、6および10から40のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態43上記CR標的抗原がCCR5またはCXCR4であり、上記CCOR標的抗原がCD4である、実施形態1、5、6ならびに10から40および42のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態44上記CR標的抗原がCD4であり、上記CCOR標的抗原がCCR5または上記CXCR4である、実施形態1、5、6および10から41のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態45上記CR抗原結合ドメインまたは上記CCOR抗原結合ドメインが、CD4(CD4−D1)のドメイン1を特異的に認識する、実施形態41から44のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態46上記1または複数のCORが、CXCR5、α4β7およびCCR9からなる群から選択される、実施形態5および10から45のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態47上記1または複数のCORがCXCR5である、実施形態46に記載の改変された免疫細胞。
実施形態48上記1または複数のCORがα4β7である、実施形態46または47に記載の改変された免疫細胞。
実施形態49上記1または複数のCORがCCR9である、実施形態46から48のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態50上記1または複数のCORが、α4β7とCCR9の両方を含む、実施形態46から49のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態51上記改変された免疫細胞が、上記細胞内のCCR5の発現を減少させるか、または排除するように改変されている、実施形態1から50のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態52上記改変された免疫細胞が、抗HIV抗体を発現するように改変されている、実施形態1から51のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態53上記抗HIV抗体が広域中和抗体である、実施形態52に記載の改変された免疫細胞。
実施形態54上記広域中和抗体が、VRC01、PGT121、3BNC117または10−1074である、実施形態53に記載の改変された免疫細胞。
実施形態55上記CR抗原結合ドメインが、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、および上記CR標的抗原に特異的に結合するペプチドリガンドからなる群から選択される、実施形態1から54のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態56上記CR抗原結合ドメインがscFvまたはsdAbである、実施形態55に記載の改変された免疫細胞。
実施形態57上記CCOR抗原結合ドメインが、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、および上記CCOR標的抗原に特異的に結合するペプチドリガンドからなる群から選択される、実施形態1、5、6および10から56のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態58上記CCOR抗原結合ドメインがscFvまたはsdAbである、実施形態57に記載の改変された免疫細胞。
実施形態59上記CCOR共刺激ドメインが、CD28、4−1BB(CD137)、CD27、OX40、CD27、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、TNFRSF9、TNFRSF4、TNFRSF8、CD40LG、ITGB2、KLRC2、TNFRSF18、TNFRSF14、HAVCR1、LGALS9、CD83、およびCD83と特異的に結合するリガンドのうちの1または複数の共刺激ドメインからなる群から選択される、実施形態1から58のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態60上記改変された免疫細胞が、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、γδT細胞およびナチュラルキラーT細胞からなる群から選択される、実施形態1から59のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞。
実施形態61上記改変された免疫細胞が細胞毒性T細胞である、実施形態60に記載の改変された免疫細胞。
実施形態62実施形態1から61のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
実施形態63上記医薬組成物が、実施形態1から61のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞の少なくとも2種類の異なるタイプを含む、実施形態62に記載の医薬組成物。
実施形態64実施形態62または63に記載の医薬組成物の有効量を個体に投与する段階を含む、個体の感染性疾患を治療する方法。
実施形態65上記感染症が、HIVおよびHTLVからなる群から選択されるウイルスによる感染性疾患である、実施形態64に記載の方法。
実施形態66上記感染性疾患がHIVである、実施形態65に記載の方法。
実施形態67第2の抗感染剤を個体に投与する段階をさらに含む、実施形態64から66のいずれか一つに記載の方法。
実施形態68上記抗感染剤が、抗レトロウイルス薬、広域中和抗体、トール様受容体アゴニスト、潜伏再活性化剤、CCR5アンタゴニスト、免疫刺激剤、およびワクチンからなる群から選択される、実施形態67に記載の方法。
実施形態69実施形態62または63に記載の医薬組成物の有効量を個体に投与する段階を含む、個体の癌を治療する方法。
実施形態70上記癌がT細胞リンパ腫である、実施形態69に記載の方法。
実施形態71 第2の抗癌剤を個体に投与する段階をさらに含む、実施形態69または70に記載の方法。
実施形態72上記第2の抗癌剤が、CD70標的化剤、TRBC1、CD30標的化剤、CD37標的化剤およびCCR4標的化剤からなる群から選択される、実施形態71に記載の方法。
実施形態73上記個体がヒトである、実施形態64から72のいずれか一つに記載の方法。
実施形態74実施形態1から61のいずれか一つに記載の改変された免疫細胞を作製する方法であって、a)免疫細胞の集団を提供する段階と、b)上記CRをコードする第1の核酸を上記免疫細胞の集団に導入する段階とを含む、方法。
実施形態75c)上記CCORをコードする第2の核酸を上記免疫細胞の集団に導入する段階をさらに含む、実施形態74に記載の方法。
実施形態76上記第1の核酸および上記第2の核酸を同時に上記細胞に導入する、実施形態75に記載の方法。
実施形態77上記第1の核酸および上記第2の核酸を上記細胞に順次導入する、実施形態75に記載の方法。
実施形態781または複数のCORをコードする1または複数の核酸を上記免疫細胞の集団に導入する段階をさらに含む、実施形態74から77のいずれか一つに記載の方法。
実施形態79上記第1の核酸、上記第2の核酸、および/または上記CORをコードする核酸を、ウイルスベクターを介して上記細胞に導入する、実施形態74から78までのいずれか一つに記載の方法。
実施形態80広域中和抗体(bNAb)またはHIV融合阻害ペプチドをコードする核酸を上記免疫細胞の集団に導入する段階をさらに含む、実施形態74から79のいずれか一つに記載の方法。
実施形態81上記細胞のCCR5遺伝子を不活化する段階をさらに含む、実施形態74から80のいずれか一つに記載の方法。
実施形態82上記CCR5遺伝子を、CRISPR/Cas9、TALEN、ZFN、siRNA、およびアンチセンスRNAからなる群から選択される方法を用いて不活化する、実施形態81に記載の方法。
実施形態83個体の末梢血から上記免疫細胞の集団を得る段階をさらに含む、実施形態74から82のいずれか一つに記載の方法。
実施形態84上記免疫細胞の集団が、CD4+細胞についてさらに富化されている、実施形態83に記載の方法。
実施形態85上記免疫細胞の集団が、CD8+細胞についてさらに富化されている、実施形態83または84に記載の方法。
当業者は、いくつかの実施形態が本発明の範囲および精神の範囲内で可能であることを認識するであろう。これから、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明をさらに分かりやすく説明するものであるが、本発明の範囲を制限するものとして当然解釈されるべきではない。
実施例
実施例1:初代T細胞および他の哺乳動物細胞におけるCRおよびCCORの発現
構成的プロモーターhEF1α、ドキシサイクリン誘導性プロモーター(例えばTetOn)、NFAT依存性誘導性プロモーター、または熱誘導性プロモーター(例えばヒト熱ショックタンパク質70プロモーター、HSP70p)によって駆動されるCR、CCOR、および任意にCORをコードする核酸を担持するレンチウイルスベクターを設計し、調製する。ヒト初代末梢血単核球細胞(PBMC)は、健康なドナーから末梢血を密度勾配遠心分離することにより調製する。ヒト初代T細胞は、磁気ビーズ単離を用いてPBMCから精製する。ヒトT細胞をレンチウイルスベクターで形質導入し、数日間エクスビボで拡大増殖させる。受容体の発現は、当該技術分野で知られている方法を用いて検出することができる。形質導入されたT細胞の生物活性は、インビトロ標的細胞致死試験および他のインビトロアッセイおよびインビボ動物モデルを介して評価することができる。
実施例2.材料および方法
細胞.293T細胞をDMEM+10%FBS中で維持した。凍結保存されたヒト末梢血単核球細胞(PBMC)をHemacare社から購入した。T細胞をPBMCからT細胞単離キット(Miltenyi社製)で単離し、T細胞活性化/拡大増殖キット(Miltenyi社製)で活性化した。T細胞をAIM−V培地+5%ウシ胎児血清(FBS)+300IU/mlのIL−2中で維持した。
プラスミドおよびレンチウイルスの産生
キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子またはeTCR遺伝子をpLVXベクター中のEF1プロモーターによって制御した。遺伝子を合成し、GenScriptでベクターにクローニングした。293T細胞を、CARまたはeTCRトランスファープラスミド、第2世代レンチウイルスパッケージングプラスミドおよびVSV−Gエンベロープコードプラスミドでトランスフェクトした。プラスミドを、10%ポリエチレンイミン(PEI)試薬により293T細胞にトランスフェクトした。ウイルス上清をトランスフェクション後48時間および72時間で採取した。上清を0.45μmの滅菌フィルターで濾過し、細胞残屑を除去した。ウイルスをPEG法で濃縮し、アリコートし、−80℃で保存した。
CAR−T構築
パンT細胞をPBMCからパンT細胞分離キット(Miltenyi Biotech社製)で富化し、T細胞活性化/拡大増殖キット(Miltenyi Biotech社製)で48時間活性化した。活性化されたT細胞を8μg/mlのポリブレンの存在下でレンチウイルスとインキュベートし、室温にて1000gで1時間遠心した。細胞をAIM−V培地+5%ウシ胎児血清(FBS)+300IU/mlの組換えヒトIL−2中で拡大増殖させた。形質導入効率はフローサイトメトリーにより、形質導入後4日目のCAR+またはeTCR+の割合として決定した。
細胞毒性アッセイ
標的細胞をPBS中の2.5μM CFSEで5分間室温にて標識した後、1/10体積のFBSを添加して反応を停止させた。細胞を2回洗浄し、培地に再懸濁した。エフェクター細胞と標的細胞を所望のエフェクター:標的比(E:T比)で24時間共培養した。CFSE標識された標的細胞の死滅をフローサイトメトリーで調べた。
SHIV感染アッセイ
CD4−T細胞を4日間インビトロで精製し、活性化した後、SHIVSF162P3ウイルスに感染させた。この細胞を、感染後12日目に標的細胞として使用した。エフェクター細胞として、UNT細胞、抗CD4 CAR−T細胞、抗CCR5 CAR−T細胞、タンデム抗CD4/抗CCR5細胞を使用した。エフェクター細胞と標的細胞を0.5:1および2:1の比率で72時間共培養した。ウイルス陽性細胞率をp27細胞内染色により検出した。
フローサイトメトリー
抗ヒトCD3、CD4、CD8、CCR5およびp27モノクローナル抗体をBiolegend社およびBD Bioscience社から購入した。ヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2ポリクローナル抗体をJackson ImmunoResearch社から購入した。細胞をDPBS+2%FBS+1mM EDTAに再懸濁し、フロー染色を行った。データをBD FACSCelestaフローサイトメーターで収集し、Flowjoソフトウェア(TreeStar社製)で解析した。
HTRFアッセイ
標的細胞をエフェクター細胞と24時間共培養した。細胞培地を採取し、HTRFアッセイ(Cisbio社製)によりIFNγ濃度を検出した。アッセイを製造元のプロトコルに従って実施した。簡単に言えば、16μlのサンプルを、アッセイプレート中で予め混合された4μlの抗IFNγ抗体と混合した。プレートを室温にて一晩暗所でインキュベートした。シグナルをPheraStarマイクロプレートリーダーにより検出した。
qPCRアッセイ
標的T細胞を、同じく強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するHIV偽ウイルスに感染させた。標的細胞とエフェクター細胞を1:1の比で24時間共培養した。細胞を採取し、qPCRのためにゲノムDNAを回収した。統合されたDNAコピー数を、細胞ゲノムDNA中のEGFPコピー数を検出することにより検出した。
リンパ腫マウスモデルでのCAR−T処理
NCGマウスにHH皮膚T細胞リンパ腫細胞を皮下注射で移植した。腫瘍の大きさが120mm3に達した時点で、マウスを3つの群に分けて処理を行った。対照のUNT細胞とCAR−T細胞をHBSS緩衝剤に再懸濁した。細胞を尾静脈注射によりマウスに接種した。1群のマウスには対照として400μlのHBSSを投与した。もう1群のマウスには2500万個のUNT細胞を投与し、最後の群のマウスには500万個のCAR+抗CD4 CAR−T細胞を投与した。マウスを観察し、腫瘍の大きさと体重を実験終了まで記録した。腫瘍の大きさが2000mm3に達した時点でマウスを犠牲にした。
ヒト化マウスモデルでのCAR−Tインビボ試験
新生NCGマウスにヒト造血幹細胞を移植して、マウスをヒト免疫細胞で再構成し、HISマウスと命名した。HISマウスを、抗CD4、抗CCR5またはタンデム抗CD4/抗CCR5 CAR−T細胞で処理した。同時にCD4+/CCR5+細胞の存在を実験中に試験した。
実施例3.CAR−T細胞の評価
本実施例では、本出願で例示されている様々なCARコンストラクトの評価について説明する。
キメラ抗原受容体(CAR)発現ベクターの構築
図6は、抗CD4または抗CCR5または抗CXCR4のscFvもしくはsdAb(図6のA)、またはタンデムに連結された抗CD4および抗CCR5のscFvもしくはsdAb(図6のB)を含むCARコンストラクトの略図を示す。CARは、抗原認識ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、細胞内共刺激ドメイン4−1BB、CD3ζ細胞内ドメインから構成されている。抗原認識ドメインは、scFv、sdAb、リンカーによって連結された2つのタンデムscFv、またはリンカーによって連結された2つのタンデムsdAbであり得る。scFvまたはsdAbは、ヒトCD4またはヒトCCR5またはヒトCXCR4のいずれかを認識することができる。リンカーは(GGGGS)nとすることができ、ここで、nは2〜5までの任意の数であり得る。ここに表示されているヒンジは、ヒトCD8(配列番号2)の細胞外ドメインの一部である。膜貫通ドメインは、ヒトCD8膜貫通ドメイン(配列番号3)由来である。細胞内ドメインは、ヒト4−1BB細胞内領域(配列番号4)およびCD3ζシグナル伝達ドメイン(配列番号5)に由来する。本実施例で使用したCARコンストラクトは、以下の配列を有する。
抗CD4−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ(抗CD4 CAR):配列番号11、49〜64。
抗CCR5−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ(抗CCR5 CAR):配列番号12、35〜48。
抗CXCR4−scFv−CD8ヒンジ−CD8 TM−4−1BB−CD3ζ(抗CXCR4−CAR):配列番号65〜72。
抗CD4−scFv−抗CCR5−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ(タンデム抗CD4−抗CCR5 CAR):配列番号13。
抗CD4−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ−P2A−CXCR5(CXCR5を有する抗CD4 CAR):配列番号14。
抗CCR5−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ−P2A−CXCR5(CXCR5を有する抗CCR5 CAR):配列番号15。
抗CD4−scFv−抗CCR5−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ−P2A−CXCR5(CXCR5を有するタンデム抗CD4−抗CCR5 CAR):配列番号16。
抗CD4−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ−P2A−CXCR5−P2A−VRC01(CXCR5およびVRC01を有する抗CD4 CAR):配列番号17。
抗CCR5−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ−P2A−CXCR5−P2A−VRC01(CXCR5およびVRC01を有する抗CCR5 CAR):配列番号18。
抗CD4−scFv−抗CCR5−scFv−CD8ヒンジ−CD8−TM−4−1BB−CD3ζ−P2A−CXCR5−P2A−VRC01(CXCR5およびVRC01を有するタンデム抗CD4−抗CCR5 CAR):配列番号19。
CAR細胞の構築と表現型
CAR−T細胞を、ヒト末梢単核細胞(PBMC)から単離したT細胞から生成した。PBMCからのT細胞をインビトロで富化し、活性化した後、CAR遺伝子をコードするレンチウイルスで形質導入した。CD8+T細胞は、活性化すると細胞毒性因子であるパーフォリンおよびグランザイムBを分泌して標的細胞を殺傷する機能を有している。CD8 T細胞の細胞毒性機能は、感染した細胞を排除し、内在する異常な細胞形質変換を監視するための適応免疫系にとって非常に重要である。また、人為的に改変されたCAR−T細胞の最も重要な機能は、標的細胞の殺傷機能である。改変されたCAR−T細胞の細胞毒性機能を調べるために、CAR−T細胞をパンT細胞と所望の比率で共培養した。その中でCAR−T細胞をエフェクター細胞(E)と命名し、パンT細胞を標的細胞(T)と命名した。エフェクター細胞と区別するために、標的細胞をCFSEで標識した。標的細胞とエフェクター細胞を24時間共培養した後、フローサイトメトリーのために採取した。細胞毒性効果を反映するために、CFSE標識された標的細胞の割合を記録した。CAR−T細胞の陰性対照として、非形質導入T細胞(UNT)を用いた。CAR−T形質導入後1週間で、それらの重要な機能、すなわち標的細胞の殺傷能力を最初のスクリーニング中に試験した。図7は、抗CCR5 CAR−T細胞、抗CD4 CAR−T細胞、抗CXCR4−CAR−T細胞の定量的なスクリーニング結果を示す。14の抗CCR5 CAR−Tの中で、13番目のものが最も標的殺傷効果が高かった。16の抗CD4 CAR−Tの中で、最も効率が良かったのは13番目であった。8の抗CXCR4−CAR−Tの中で、5番目が最も標的殺傷効果が高い。抗CD4 CAR−T No.13は、CD4 CAR−T(配列番号11)と改名し、scFv配列を、以下のすべての抗CD4設計において使用した。抗CCR5 CAR−T No.13を抗CCR5−CAR−T(配列番号12)と改名し、そのscFv配列を複合体設計に使用した。
CARの構造は互いに類似しているが、すべてのキメラ抗原受容体をT細胞に等しく形質導入できるわけではなかった。ヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2抗体を用いて、フローサイトメトリーによるCAR+T細胞の割合を検出した。図8のA〜図8のEは、形質導入後4日目のCAR+%細胞を示す。
CAR−T細胞をAIM−V培地+5%FBS+300IU/mlのIL−2中で培養した。コンフルエントな場合、細胞をより大きなウェルに移した。細胞の拡大増殖をサポートするために、新鮮な完全培地を供給した。細胞数および生存率を、形質導入後0日目、4日目、6日目および10日目に記録した。抗CD4 CAR−T NO.13の拡大増殖を図9に示す。
CAR−T細胞毒性アッセイ
図10のA、図10のBおよび図10のEは、CAR−T細胞の細胞毒性効果のフローサイトメトリー結果を示す。図10のAに示すように、対照のUNT細胞と共培養した標的細胞中には58%のCD4+T細胞が存在していたが、標的細胞を抗CD4 CAR−T No.13細胞と共培養した場合には、CD4+集団は0%に減少し、標的に対する抗CD4 CAR−T No.13の強い殺傷効果が示唆された。図10のBでは、標的細胞をUNTと共培養した場合、CCR5+集団は約15%であったが、標的細胞を抗CCR5 CAR−T No.13細胞と共培養した場合には、集団は1%未満に減少し、抗CCR5 CAR−T No.13細胞が非常に有効であることが示唆された。図10のEは、タンデム抗CD4/抗CCR5 CARTの効果を示す。タンデムCAR T細胞は、CD4単独陽性細胞とCCR5単独陽性細胞を除去するだけでなく、CD4/CCR5二重陽性集団を効率的に除去することもできた。
CAR−Tサイトカインプロファイル解析
ペルフォリンおよびグランザイムBの他に、CD8+T細胞は、活性化時にサイトカインであるIFNγおよびTNFαも分泌する。これらのプロ炎症性サイトカインは、重要なCD8+T細胞機能指標であるが、養子T細胞療法の副作用であるサイトカイン放出症候群にも役割を果たしている可能性がある。IFNγの産生は、インビトロでのHTRFアッセイによって検出した。形質導入後6日目に上清を採取し、サイトカインレベルを測定した。図11は、抗CD4 CAR−T No.13細胞によるこれらのサイトカインの産生を示す。
実施例4.eTCR T細胞の評価
本実施例では、本出願で例示した様々なキメラTCRコンストラクトの評価について説明する。抗CD4−eTCRおよび抗CCR5−eTCR発現ベクターの構築T細胞受容体αおよびβ鎖は、CD3ε/δ/γ/ζ鎖と複合体を形成する。TCRは、MHCによって提示された抗原を認識し、CD3ζ鎖のリン酸化とそれに続く細胞内の下流経路へのシグナル伝達を導き、T細胞を活性化させる。天然型T細胞の活性化はTCR−MHC相互作用に依存しており、したがってMHC依存性である。本明細書に記載されるこのキメラTCRは、TCR複合体を修飾し、MHCに依存せずにT細胞を活性化する。この修飾はCD3ε上にあり、その完全な名称は、T細胞表面糖タンパク質CD3ε鎖(配列番号6)である。CD3εの配列は、UniprotおよびNCBI Genebankなどの公開データベースから入手可能である。配列番号6に記載された配列は、Uniprot ID P07766からのものである。このキメラTCRを、ここでeTCRと命名する。
eTCR遺伝子はレンチウイルスベクターで発現し、EF1αプロモーターで制御されている。CD3εシグナルペプチド配列(配列番号7)の後に抗原認識配列が続く。抗原認識配列とCD3ε配列との間にリンカー(G4S)3配列を付加した(配列番号8)。DNA配列を最適化し、Genscriptでデノボ合成し、Gateway CloningでpLVXレンチウイルスベクターにクローニングした。本実施例で使用したeTCRコンストラクトは、以下の配列を有する。
抗CD4−CD3ε(抗CD4 eTCR):配列番号20、73。
抗CCR5−CD3ε(抗CCR5 eTCR):配列番号21、74〜76。
抗CD4−CD3ε−P2A−CXCR5(CXCR5有する抗CD4 eTCR):配列番号22。
抗CCR5−CD3ε−P2A−CXCR5(CXCR5を有する抗CCR5 eTCR):配列番号23。
抗CD4−抗CCR5−CD3ε−P2A−CXCR5(CXCR5を有するタンデム抗CD4−抗CCR5 eTCR):配列番号24。
抗CD4−抗CCR5−CD3ε−P2A−CXCR5−P2A−VRC01(CXCR5およびVRC01を有するタンデム抗CD4−抗CCR5 eTCR):配列番号25。
図12のAおよび図12のBは、抗CD4または抗CCR5のscFvもしくはsdAb(図12のA)、またはタンデムに連結された抗CD4および抗CCR5のscFvもしくはsdAb(図12のB)を含む例示的なeTCRの略図を示す。scFv、sdAb、2つのタンデムscFvまたは2つのタンデムsdAbsは、(G4S)3リンカーによってCD3ε鎖に連結されている。
標的細胞の殺傷効果は、eTCR設計をさらに開発するかどうかの重要な決定要因として評価された。改変されたeTCR−T細胞の標的細胞殺傷効果を調べるために、eTCR−T細胞をパンT細胞と所望の比率で共培養した。その中でeTCR−T細胞をエフェクター細胞(E)と命名し、パンT細胞を標的細胞(T)と命名した。エフェクター細胞と区別するために、標的細胞をCFSEで標識した。標的細胞とエフェクター細胞を24時間共培養した後、フローサイトメトリーのために採取した。細胞毒性効果を反映するために、CFSE標識された標的細胞の割合を記録した。eTCR−T細胞の陰性対照として、非形質導入T細胞(UNT)細胞を用いた。図12のCは、CD4 CAR−T No.13、CD4 eTCR、CD4 eTCR No.11の標的細胞殺傷効果を定量的に比較したものである。CD4 eTCR No.11は、イバリズマブ抗体配列からの抗原結合領域を有する。CD4 eTCR No.11の標的細胞殺傷能力は、CD4 eTCRよりも最適ではない。
図12のDは、3つのスクリーニングされた抗CCR5 eTCRコンストラクトの結果を示した。3つの抗CCR5コンストラクトのうち、CCR5 eTCRが最も優れた標的細胞殺傷効果を有しており、さらに研究を進めた。
eTCR−T細胞の表現型
CAR−T細胞と同様に、eTCR細胞を、eTCRをコードするレンチウイルスで活性化されたT細胞を形質導入することによって生成した。すべてのT細胞が同じ効率で形質導入できるわけではない。ヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2抗体を用いて、フローサイトメトリーによるeTCR+T細胞の割合を検出した。図13のAは、形質導入後4日目のeTCR+%細胞を示す。
eTCR−T細胞の拡大増殖
eTCR−T細胞をAIM−V培地+5%FBS+300IU/mlのIL−2中で培養した。コンフルエントな場合には、細胞をより大きなウェルに拡大増殖し、細胞が常に理想的な培養条件にあることを確認するために、新鮮な完全培地を供給した。細胞数および生存率を、形質導入後0日目、4日目、6日目および10日目に記録した。eTCR−T細胞の拡大増殖が、図13のCに示される。
eTCR−T細胞毒性
図14は、eTCR−Tを媒介した標的細胞殺傷力のフローサイトメトリーの代表的な結果を示す。図14のAは、抗CD4 eTCR T細胞が標的細胞のCD4+集団を完全に枯渇させることができるという抗CD4 eTCR−T細胞の細胞毒性効果のフローサイトメトリーの結果を示している。抗CCR5 eTCR−T細胞もまた、図14のBに示すように、CCR5+集団の大部分を死滅させた。
eTCR−Tサイトカインプロファイル解析
IFNγの産生は、インビトロでのHTRFアッセイによって検出した。eTCR−T細胞を標的パンT細胞と2:1および0.5:1の比率で24時間共培養し、上清を回収した。図13のBは、抗CD4 eTCR−T細胞によるIFNγサイトカインの産生を示す。UNT細胞を対照として使用した。eTCR−T細胞によって分泌されたIFNγサイトカインは、UNT対照細胞に比べてわずかに高かった。
実施例5.CXCR5発現T細胞
リンパ節は重要な二次リンパ器官である。B細胞は末梢血中を循環し、成熟のためにリンパ節B細胞濾胞に入り、胚中心樹状細胞および濾胞Tヘルパー細胞の助けを借りて、アイソタイプの切り替えおよびアフィニティー成熟過程を経る。B細胞、樹状細胞、濾胞T細胞は、CXCL13の受容体であるCXCR5を発現する。CXCL13は胚中心で高レベルに存在し、胚中心の間質細胞および樹状細胞で産生される。CD8+T細胞は、通常、B細胞濾胞では非常に稀である。免疫組織学的染色では、濾胞内に隠れているHIVウイルスが高レベルであることが示され、胚中心が主要なHIVリザーバーであることが示唆された。エリートHIVコントローラーの胚中心でCD8+T細胞が増加していたことが報告されている。これらのCD8+T細胞はCXCR5を共発現し、高レベルの細胞毒性エフェクター因子を発現し、ウイルス制御に寄与している。本出願の特定の実施形態は、CAR−T細胞またはeTCR−T細胞にCXCR5を共発現させることを含む。
図15は、CARまたはeTCRを有する改変されたT細胞のほか、CXCR5の発現を示す。CXCR5は、P2AリンカーによってCARまたはeTCR遺伝子に連結されていた。抗原認識領域は、抗CD4、抗CCR5、またはタンデム抗CD4/抗CCR5のいずれかであり得る。scFvまたはsdAbのいずれかであり得る。抗CXCR5抗体を用いてCXCR5の発現を検出した。
この実験で使用したCARおよびeTCRコンストラクトは、上記と同様である。CXCR5は、次の配列を有する:配列番号9。図16のAは、形質導入された抗CD4 CAR−T細胞上のCXCR5の発現を示し、図16のBは、抗CCR5 CAR−T細胞上のCXCR5の発現を示す。図に示すように、CAR+細胞の90%超もCXCR5を高レベルで発現している。
CXCR5を発現するCAR−T細胞は、図10のCおよび図10のDに示すように、CXCR5を発現しないCAR−T細胞と同様に効率的に標的細胞を排除することができた。エフェクター細胞としてCAR−T共発現CXCR5細胞を用い、CFSE標識パンT細胞を用いて24時間培養した。図10のCでは、標的細胞をUNT対照細胞で培養した場合のCD4+T細胞数が63.8%であり、CXCR5を共発現する抗CD4 CAR−T細胞と標的細胞を共培養した場合の集団は1.46%に低下した。UNTサンプルでは、CCR5+%は21.2%であったが、抗CCR5 CAR−CXCR5サンプルでは、図10のDに示すように、パーセンテージは0.609%に減少した。
図10のFは、抗CD4/抗CCR5タンデムCAR−CXCR5−C34T細胞の細胞毒性効果を説明する。抗CD4/抗CCR5タンデムCAR−CXCR5−C34 T細胞は、CD4/CCR5二重陽性集団を効率的に除去し、CD4またはCCR5の単独陽性集団の一部を残し、疾患状況によっては安全性が向上する。
実施例6 広域中和抗体を発現するT細胞
HIV感染集団の中でも、抗レトロウイルス薬を服用せずに自然にウイルス感染を制御できる人はごく一部である。研究の結果、ウイルス感染に対するロバストな抗体応答を起こすことができることがわかった。これらの抗体は、HIV糖タンパク質GP160の比較的保存された領域を認識し、HIVの様々なサブタイプを中和することができることから、広域中和抗体であった。広域中和抗体は、SHIVに感染したアカゲザルで試験されており、21週間の中央値でウイルス負荷を制御することができる。本出願の特定の実施形態は、CAR−T細胞またはeTCR−T細胞において広域中和抗体を共発現させることを含む。CAR−T細胞およびeTCR−T細胞は、広域中和抗体を分泌して、新しい宿主細胞のHIV感染をブロックすることができる。
図17は、抗CD4または抗CCR5またはタンデム抗CD4/抗CCR5 CARまたはeTCR、ケモカイン受容体CXCR5のほか、広域中和抗体(bNAb)を発現する改変されたT細胞を示す。そのコード配列をpLVXレンチウイルスベクターにクローニングした。キメラ遺伝子の転写はEF1αプロモーターによって制御されていた。CARまたはeTCR配列の後にP2A配列を付加した。ヒトCXCR5配列をP2A配列の後ろに付加した。ヒトIL2シグナルペプチド(配列番号34)を有するbNAbは、別のP2AによってCXCR5に連結された。
この実験で使用したCXCR5と同様に、CARおよびeTCRコンストラクトも、上記と同じである。VRC01は、次の配列を有する:配列番号10。T細胞を、Hisタグを標識したVRC01(VRC01−6His)をコードするCAR−Tレンチウイルスで形質導入した。培養上清を、形質導入後8日目に採取した。上清中のVRC01濃度は、抗Hisタグ抗体を用いたELISAにより検出した。検出された濃度は、上清中で約40ng/mlであった。
実施例7
CAR T細胞の機能的応用
抗CD4 CAR−T細胞は、HIV感染の主要な宿主細胞であるCD4+T細胞を死滅させる。これらの細胞がウイルスを排除できるかどうかを説明するために、CD4+T細胞をインビトロでHIV偽ウイルスに感染させた。CAR−T細胞を感染細胞と共培養した。図18のAに示すように、CAR−T細胞は、B細胞マーカーCD19(配列番号77)を標的とする対照CAR−Tと比較して、ウイルス負荷を大幅に減少させた。検出対照としては、ウイルス感染していない細胞を用いた。図18のBでは、T細胞は、HIVシュードウイルスをコードするEGFPを感染させ、その偽ウイルスに正常に感染した任意の細胞はEGFP+になった。これらの細胞を標的細胞として使用し、抗CD4 CAR−T No.13細胞またはUNT細胞と共培養した。異なるE:T比を使用した。細胞を24時間共培養し、フローサイトメトリーによるEGFP割合の検出のために細胞を採取した。E:T比の増加に伴い、EGFP+割合が低下した。E:T比が1:1以上に達すると、偽ウイルス+細胞の割合は0付近まで低下した。図19のAでは、CAR−Tコンストラクトを、SHIV感染CD4+標的細胞とインキュベートした。細胞内染色によりウイルスタンパク質p27を検出した。エフェクターと標的の比率は、0.5:1と2:1の2つの異なるものを使用した。p27陽性率によって示されるように、SHIV感染に成功した細胞は1.3%〜1.6%であった。CAR−T細胞で処理したすべてのサンプルにおいて、p27陽性率は0.207%以下に低下し、これはフロー染色アイソタイプ対照に近いか、またはそれより低い。図19のBは、ウイルスRNAおよび統合DNAの減少を示す。細胞培養上清中では、CAR−T細胞で処理したサンプルでは、UNT細胞で処理したサンプルに比べてウイルス力価が劇的に低下した。統合されたDNAレベルは、PCRプロセスによるバックグラウンドノイズがいくらか存在する検出不能なレベルにまで低下した。これらのデータはすべて、我々のCAR−TがインビトロでSHIV感染を非常に効率的にクリアすることを示した。
本明細書に記載のCARコンストラクトのインビボでの有効性を試験するために、ヒト免疫系を有するマウスを使用した。以下、このマウスをHISマウスと呼ぶ。HISマウスは、重度の免疫不全でT細胞およびB細胞の形成が欠損しているNOD CRISPR Prkdc IL2Rγマウス(NCGマウス)から作製した。新生NCGマウスにヒト造血幹細胞を移植し、HISマウスと改名した。ヒト造血細胞はマウスでT細胞およびB細胞に発達し、マウスの免疫ニッチを満たす。これらのHISマウスを、CAR−T細胞のインビボ試験モデルに使った。2つのCAR−T細胞を、インビボモデルで試験した:CCR5 CAR−T(抗CCR5 CAR)(図23のA)ならびにタンデムCD4CCR5 CAR−T(抗CD4−抗CCR5 CAR)(図23のBおよび図23のC)。UNT細胞を、対照としてレシピエントマウスの別個の群に注入した。図23のAに示すように、UNT細胞処理マウスでは、マウスにUNT細胞を接種した後、CCR5+細胞が増加したが、抗CCR5 CAR−T処理マウスでは、観察期間中、CCR5+%が連続的に減少した。観察期間終了時には、生細胞集団中のCCR5+%は0に近くなっていた。HISマウスの別の群を、図23のBおよび図23のCに示すように、タンデムCD4CCR5 CAR−Tで処理した。CAR−T細胞処理後のマウス末梢血中のCCR5+集団は劇的に減少した。CCR5+集団は、末梢生細胞集団からほぼ完全に欠失した。また、CD4+集団もタンデムCD4CCR5 CAR−T群では元の集団の半分に減少した。生細胞中のCD4+集団の割合は、CAR−T処理前は約3%であったが、観察期間終了時には1%まで減少した。これらのデータは、抗CCR5 CAR−Tが末梢血からCCR5+細胞を除去するのに非常にインビボで効率的であることを示した。CD4+集団は半分に減少し、まだ減少していることから、CCR5+細胞を排除する上で効率が高い他に、タンデムCD4CCR5 CAR−TはCD4+集団を減少させることにも有効であることが示唆された。
抗CD4 CAR−T細胞のもう一つの応用は、CD4+T細胞リンパ腫/白血病治療であろう。図20に示すように、異なる用量のCAR−T細胞を、CD4+であるSup−T1およびHH Tリンパ芽細胞と共培養した。CAR−T細胞はこれらの腫瘍細胞に対して大きな細胞毒性を示したが、UNT対照細胞は腫瘍細胞の生存率に影響を与えなかった。HH細胞をNCGマウスに皮下移植し、細胞由来のキセノグラフト(CDX)マウスモデルを作製した。HH CDXマウスへのCAR−T細胞のインビボ接種は、図21に示すように、CAR−T細胞がマウスの腫瘍負担を有意に減少させることを示した。CAR−T療法を受けたマウスは、CAR−T接種後12日目に腫瘍がなくなっていた。図21のAに示すように、腫瘍は、犠牲化基準を満たす前に、対照ハンクスのバランス塩溶液(HBSS)緩衝剤またはUNT細胞で処理したマウスにおいて連続的に成長した。CAR−T処理したマウスの腫瘍は処理後すぐに縮小し、マウスは全観察期間中生存した。図21のBにおいて、CAR−T処理マウスの体重は、HBSSまたはUNT処理マウスよりもわずかに低いが、これはおそらく腫瘍負担が少ないためであろう。HBSSおよびUNTで処理したマウスは20日目頃に疾患の進行により犠牲になったため、その後の体重記録はなかった。
実施例8.スプリットCARシステム
スプリットCAR−T細胞の構築
本明細書に記載されるスプリットCARシステムは2つの構成要素を含む。一方のタンパク質は、細胞外抗原認識ドメイン、ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、CD28細胞内共刺激ドメインから構成されている。スプリットシグナルCARの他方のタンパク質は、第2の抗原認識ドメイン、ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、細胞内CD3ゼータシグナル伝達ドメインから構成されている。細胞外抗原認識ドメインは、一方の構成要素については抗CD4 scFvまたはsdAbであり得、他方の構成要素については抗CCR5または抗CXCR4のscFvもしくはsdAbであり得る(図1)。本実施例では、2つのタンパク質のコード配列は、中間のP2A配列で連結されていた。全コード配列は、pLVXレンチウイルスプラスミド中のEF1αプロモーターの制御下にあった。CARコンストラクトを形質導入されたT細胞は、両タンパク質を相乗的に発現させる。また、T細胞はホーミング受容体を発現することもできた。ホーミング受容体の1つは、CXCL13ケモカインと相互作用し、二次リンパ器官のB細胞濾胞への細胞ホーミングに重要な役割を果たすCXCR5(図2)であり得る。ホーミング受容体はまた、細胞が腸にホーミングするのを助けるアップレギュレーションされたα4β7であり得る(図3)。
スプリットシグナルCARのインビトロ効果
図22は、例示的なスプリットシグナルCAR−Tのインビトロ効果を示す。この実験では、4つの設計を使用した。ssCD4CCR5 CAR−Tでは、抗CD4がCD3ζシグナル伝達ドメインに接続され、抗CCR5が共刺激ドメインに接続されているのに対し、ssCCR5CD4では、抗CCR5の部分がCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含み、抗CD4が共刺激ドメインに接続されている。
コンストラクトは以下の配列を有する。
ssCD4CCR5 CAR−T:配列番号26。
抗CD4−CD8ヒンジ−CD8 TM−CD3ζ:配列番号27。
抗CCR5−CD8ヒンジ−CD8 TM−4−1−BB:配列番号28。
ssCCR5CD4 CAR−T:配列番号29。
抗CCR5−CD8ヒンジ−CD8 TM−CD3ζ:配列番号30。
抗CD4−CD8ヒンジCD8 TM−4−1−BB:配列番号31。
ssCD4CCR5−CXCR5:配列番号78。
ssCCR5CD4−CXCR5:配列番号79。
2つの部位間はP2Aで連結されており、第1の部位はMycタグを有していた。Mycの発現は、スプリットシグナルCARの発現を表すために、図22のAに示すように、フローサイトメトリーによって検出された。それらの機能を試験するために、CFSE標識パンT細胞を標的細胞として使用し、CAR−T細胞とE:T=0.5:1で共インキュベートした。フローサイトメトリーの結果を図23のBに示す。対照のUNTサンプルでは、CD4+集団は42.2%、CCR5+集団は9.29%、CD4+CCR5+集団は6.64%であった。SsCD4CCR5 CAR−TおよびssCCR5CD4 CAR−TはCD4+CCR5+二重陽性集団の大部分を死滅させ、残ったCD4+CCR5+集団は1%未満であった。ssCCR5CD4 CAR−Tサンプルでは、CD4単独陽性細胞が10.4%、CCR5単独陽性細胞が6.77%残っていた。ssCD4CCR5 CAR−Tサンプルでは、残りのCCR5+細胞は7.89%であった。ssCCR5CD4 CARおよびssCD4CCR5 CARにCXCR5を添加したことで、CCR5+細胞の大部分が保たれ、CAR−T細胞との共培養後も約半分のCD4+単独陽性細胞が生き続けていた。これらのデータは、CD4とCCR5の両方が同じ細胞上に存在する場合に、スプリットCARが最も効果的に機能することを示唆している。SsCCR5CD4、ssCCR5CD4−CXCR5およびssCD4CCR5−CXCR5 CAR−T細胞は、それらの単独陽性細胞の多くを残しておくことができるCD4単独陽性細胞またはCCR5単独陽性細胞を死滅させるのに効率的ではなかった。CCR5指向性HIV感染は、同一細胞上でCD4とCCR5の両方の発現を必要とする。スプリットCARはHIV標的細胞を除去することができるが、HIV感染に対して感受性がより少ないCD4またはCCR5の単独陽性細胞の一部を残しておくことができた。
本発明の実施形態に従う例示的なコンストラクトの配列: