序論
発明の分野
本発明は、皮膚科障害(皮膚潰瘍を含むが、これに限定しない)の処置及び予防のために適した薬剤を提供する。
発明の背景
慢性創傷(例えば潰瘍など)を含む皮膚障害は、皮膚又は粘膜の痛みを含み、しばしば組織の崩壊を伴う。典型的には、そのような皮膚障害は、表皮、及び、しばしば真皮の一部、及び、さらには皮下脂肪の損失を招きうる。そのような皮膚障害は、多様な要因(例えば、限定しないが、血液循環障害など)により生じ得、起こされ得る。皮膚潰瘍は、ヒト(糖尿病を伴う被験体を含む)において高頻度である(Ndip et al., 2012, Int. J. Gen. Med., vol. 5, p. 129-134)。そのような皮膚障害は、深刻な医学的及び社会的問題を表す。
現在、この型の皮膚科障害のための適した治癒的処置は利用可能ではない。現在の推定によれば、患者は数ヶ月間及び部分的には数年間にわたり処置されなければならず、それは、患者及び社会に相当な費用及び高い負担を招く(Buchberger et al., 2010, GMS Health Technol. Assess., vol. 1(6), doc. 12)。一部の場合では、代替手段、例えばギブス取り外し器具の使用を通じた圧力の軽減などが、そのような障害の管理のための主要な選択肢である(Ndip et al., 2012, Int. J. Gen. Med., vol. 5, p. 129-134)、しかし、そのような代替手段は、治癒的処置をまったく提供しない。
皮膚障害は糖尿病患者においてしばしば生じる。糖尿病は現代社会において高頻度であり、糖尿病を伴う患者の4名中1名が彼らの生涯の間に皮膚障害、特に足潰瘍を発生すると推定されている(Ndip et al., 2012, Int. J. Gen. Med., vol. 5, p. 129-134)。この障害はしばしば、長期入院、リハビリテーション、在宅ケア、及び社会サービスを要求する。このように、糖尿病の結果としての潰瘍は、増加する糖尿病の有病率の観点から、世界全体の疾病負荷に対する甚大な影響を伴う深刻な問題であり、現在の治癒的処置の選択肢の欠如は、関係する被験体にとって、ならびに社会にとって不利である。
治癒的処置についての探索において、過去には、一部のヒト成長因子が皮膚障害の治療及び潜在的な治癒のために提案されてきたが、皮膚潰瘍の処置におけるヒト成長因子の使用を裏付ける限られたエビデンスがあることが現在受け入れられている(Ndip et al., 2012, Int. J. Gen. Med., vol. 5, p. 129-134)。皮膚障害を処置するために過去に想定された成長因子の一例は血小板由来成長因子(ベカプレルミン、商品名レグラネックス)であるが、しかし、その投与は悪性腫瘍を含む重度の副作用に関連付けられることが見出された(Buchberger et al., 2010, GMS Health Technol. Assess., vol. 1(6), doc. 12; https://www.rxlist.com/regranex-side-effects-drug-center.htm#professional)。テストされた別の例は顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)であるが、G−CSFは感染の消散又は創傷治癒の可能性に有意に影響を及ぼさないないことが見出された(Cruciani et al., 2005, Diabetes Care, vol. 28, p. 454-460)。文献において提案されているさらなる例は上皮成長因子(EGF)であり、それは最初、予想外の正の治癒効果を有すると提案されたが(例、WO/2003/075949 A1)、しかし、EGFベースの処置は実際には商業的に入手可能ではなく、この薬剤における最初の希望に裏付け又は確認が見出されなかったことを示唆する。あるいは、血管新生促進特性を有し、創傷修復を促進することが提案されているヒト神経成長因子(hNGF)(Graiani et al., 2004, Diabetologia, vol. 47, p. 1047-1054)が特定の神経障害性臨床状態の処置のために提案されていたが、臨床テストは落胆させるものであり(Apfel et al., 2000, J. Amer. Med. Assoc., vol. 284, p. 2215-2221)、その結果、NGFベースの 医薬品は開発されなかった(例:https://www.gene.com/media/press−releases/4875/1999−04−08/phase−iii−trial−with−nerve−growth−factorを参照のこと)。例えば、Graianiらは、NGFの同種異系効果について具体的にコメントしていないが、ヒトNGFが疼痛を誘導することは一般的に公知である(Dyck et al. 1997, Neurology, vol. 48, p. 501-505,;Svensson et al., 2003, Pain, vol. 104, p. 241-247)。その結果、ヒトNGFは、とりわけ、その疼痛が活動を起こすこと、及び/又は許容用量での効率の欠如のため、皮膚潰瘍の処置のための適した治療用薬剤として確立することはできなかった。結果的に、成長因子に基づく処置は、とりわけ望ましくない副作用のために、限られた成功又は証明を有していたことを考慮し、医学会は他の潜在的な薬物を研究してきた。上に基づき、インターロイキン及び他の非成長因子分子が、特定の皮膚潰瘍の処置のためにより最近提案されてきた。例えば、インターロイキンの誘導体、特にインターロイキン22(免疫系を調節する際に提案された役割を有する)が、皮膚潰瘍(糖尿病性皮膚潰瘍を含む)を処置又は予防するために適しうることがGenentechにより提案されたが(例、https://www.gene.com/stories/mechanisms−of−healingを参照のこと)、しかし、そのような医薬品は患者に利用可能ではなく、これが最終的に変わりうることは現在確実である。
このように、有害効果(例えば耐えられない又は、他には、望ましくない副作用など)を受けない皮膚状態の効果的な処置についての、及びそのような目的のために適しており、哺乳動物の被験体(ヒトを含む)への投与のために信頼でき、及び許容可能な純度で開業医が利用可能な治療用薬剤についての必要性が依然としてある。
解決すべき問題。
本発明の主な目的は、望ましくない又は有痛性の副作用に関連付けられない、糖尿病及び非糖尿病の被験体において、皮膚科障害(潰瘍を含む)のための処置又は予防を提供することである。そのような処置を可能にするために、十分な収量及び純度で治療的に活性な薬剤を提供することも望ましい。このように、本発明の目的は、最先端技術に関連付けられる不利を排除することを含む。特定の目的は、望ましくない副作用を伴わず、皮膚科障害を伴う被験体を処置するための信頼できる方法の提供を含む。
発明の概要。
本発明は、哺乳動物の被験体における皮膚科障害の処置及び/又は予防における使用のためのポリペプチドを提供し、それにおいてポリペプチドは、配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドの間で選択される。これらのポリペプチドは、ヒトNGFのアミノ酸配列(配列番号2)の変異により特徴付けられ、それにおいて前記変異は、低下した侵害受容活性に関連付けられる。特に、hNGFの位置100のアルギニンはグルタミン酸により置換されている。
特に好ましいポリペプチドは、配列番号4のポリペプチドである。前記ポリペプチドは、少なくとも位置61のプロリンの非存在、より好ましくは位置61のプロリンの、別のアミノ酸による置換により特徴付けられる。配列番号4において、配列番号3の位置61のプロリンがセリンにより置換されている。
好ましくは、哺乳動物の被験体はヒトである。
好ましくは、皮膚科障害は、被験体の身体の少なくとも一部での創傷表面により特徴付けられる。好ましくは、皮膚科障害は創傷表面により特徴付けられる。より好ましくは、皮膚科障害は皮膚病変であり、好ましくは真皮の少なくとも部分的な切除、及び場合により真皮の切除により特徴付けられる。
好ましくは、皮膚科障害は、好ましくは糖尿病性潰瘍、外傷性潰瘍、外科的潰瘍、褥瘡、慢性潰瘍、及びこれらの潰瘍のいずれかの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの潰瘍を含む。代替の、しかし、相互に排他的ではない実施形態では、皮膚科障害は火傷又は機械的傷害を含む。
好ましくは、哺乳動物、好ましくは、ヒトは、真性糖尿病を患っている、又は真性糖尿病を患う素因を有する。典型的な実施形態では、真性糖尿病は、1型真性糖尿病及び2型真性糖尿病の間で選択される。
一実施形態では、ポリペプチドは単回投与において投与される。
代替のより好ましい実施形態では、ポリペプチドは反復で投与される。特に好ましい実施形態では、ポリペプチドは、1日当たり1回から5回、好ましくは1日当たり2回反復投与される。
一実施形態では、ポリペプチドは、創傷身体表面の閉鎖まで反復投与される。あるいは、ポリペプチドは、3日から30日、好ましくは7日から14日の期間にわたり反復投与される。場合により、投与は、前記間隔の完了後に中止される。
一実施形態では、ポリペプチドは、糖尿病神経障害性足潰瘍(DFU)を伴う被験体に、好ましくは被験体の足首より下の足に投与される。
好ましくは、ポリペプチドは局所投与用である。より好ましくは、ポリペプチドは創傷身体表面に投与される。
好ましくは、投与されるポリペプチドの用量は、処置される創傷身体表面の面積に基づいて決定される。好ましくは、決定は治療の開始時に行われる。一実施形態では、投薬は、そのような後の投与の時点での創傷身体表面の面積に依存して、後の投与のために調整される。代替の実施形態では、投薬は、後の投与のために調整されず、そのため、投与の用量は、投与の開始(最初の投薬)時に処置される創傷身体表面の面積にのみ依存し、及びその後の投与量は最初の用量に対応する。
一実施形態では、用量/各々の用量は、処置される創傷身体表面のmm2当たり0.3〜6μgのポリペプチドの量(0.3〜6μg/mm2)を有する。
一実施形態では、ポリペプチドは水性培地中に含まれ、水性培地は哺乳動物の被験体に投与される。
好ましくは、処置及び/又は予防は、哺乳動物の被験体において痛覚過敏を起こさない。
一実施形態では、配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドは、生物学的供給源から入手できる。これは、精製、即ち、他のタンパク質(例えば宿主細胞タンパク質など)を含む他の分子からの分離を含みうる。場合により、配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドは、(再)折り畳み及び/又はクロマトグラフィー精製及び/又はプロテアーゼ消化、ならびに場合により最終タンパク質濃度への調整及び所望の製剤の調製を含むプロセスにおいて入手できる。一実施形態では、ポリペプチドは、組換え発現及び精製により入手できるが、それにおいて精製は、混合モード固定相での精製を含む。
このように、本発明はまた、組換え供給源からの配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドを提供し、本明細書中に記載するように、治療によるヒト又は動物の身体の処置のための方法における使用のために本明細書中に記載するように精製する。
発明の詳細な開示
本明細書はその全体が、特許請求の範囲及び図面と一緒に、本発明の個々の特徴の特定の及び/又は好ましい実施形態及び変形を開示する。本発明はまた、特に好ましい実施形態として、本発明について本明細書中に記載する特定の及び/又は好ましい実施形態及び変形の2つ又はそれ以上を組み合わせることにより生成されるそれらの実施形態を熟慮する。このように、本開示はまた、本明細書中に参照する又は示す実体、化合物、特徴、工程、方法、又は組成物の全て、及び前記実体、化合物、特徴、工程、方法、又は組成物の任意の及び全ての組み合わせ、又は任意の2つ又はそれ以上を個々に又は集合的に含む。このように、本明細書中で他に具体的に記載しない場合、又は文脈が他に要求しない場合、単一の実体、化合物、特徴、工程、方法、又は組成物への言及は、それらの実体、化合物、特徴、工程、方法、又は組成物の1つ及び複数(即ち、1を上回る、例えば2つ又はそれ以上、3つ又はそれ以上あるいは全てなど)を包含すると解釈されるものとする。他に具体的に記載しない場合、又は文脈が他に要求しない場合、本明細書中に開示する各々の実施形態、態様、及び実施例は、本明細書中に開示する任意の他の実施形態、態様、又は実施例に適用可能であり、それらと組み合わせ可能であると解釈されるものとする。
当業者は、本明細書中に記載する本発明が、具体的に記載するもの以外の変形及び修飾を受けやすいことを理解するであろう。このように、本開示は、例証及び例示の目的のために本明細書中に提供する、本明細書中に記載する特定の実施形態により範囲が限定されない。機能的に又は、他には、等価の実体、化合物、特徴、工程、方法、又は組成物は、本開示の範囲内にある。本開示が、本明細書中に文字通り記載する実体、化合物、特徴、工程、方法、又は組成物の全ての変形及び修飾を含むことは、当業者には明らかであろう。
本明細書中に引用する参考文献(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様、指示、提示などを含む)の各々は、上又は下を問わず、参照によりそれらの全体が本明細書により組み入れられる。本明細書中のいかなるものも、本発明が特定の教示に先行する資格がないであろうことの承認として、及び/又は共通の一般知識以外の特定の参考文献が、それが当業者により実施されるために十分に明確で完全な情報を含むことの承認として解釈されるべきではない。
一般的に、他に具体的に定義しない場合、本明細書中で使用する全ての技術的及び科学的用語は、当業者(例、医学、皮膚学、神経学、遺伝学、分子生物学、遺伝子発現、細胞生物学、 細胞培養、免疫学、神経生物学、クロマトグラフィー、タンパク質化学、及び生化学)により一般に理解されるのと同じ意味を有する。公開された教科書及び総説(例、英語)は典型的には、当業者により一般に理解されるような意味を定義する。
表現「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、「及び」の、「又は」の、及び両方の意味(「及び」又は「又は」)の明示的な開示を提供するものと解釈されるものとする。
本明細書中で使用するように、他に特定しない場合、用語「約(about)」、「およそ(ca.)」、及び「実質的に」の全てが、約(approximately)又はほぼ(nearly)を意味し、本明細書中に示す数値又は範囲の文脈において、好ましくは、列挙又は請求される数値又は範囲の辺りの+/−10%、より好ましくは+/−5%を指定する。
他に明示的に特定しない場合、単語「含む(comprise)」、又は変形、例えば「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」などは、本文書の文脈において、さらなるメンバーが場合により、「含んでいる」により導入されたリストのメンバーに加えて存在しうることを示すために使用される。それは、しかし、本発明の特定の実施形態として、用語「含んでいる」は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含し、即ち、この実施形態の目的のために、「含んでいる」は、「からなる」の意味を有するとして理解されるべきであると熟慮される。
他に明示的に特定しない場合、本発明に関する相対量の全ての表示は、重量/重量ベースで作られる。一般用語により特徴付けられる成分の相対量の表示は、前記一般用語により包含される全ての特定の変異体又はメンバーの総量を指すことを意味する。一般用語により定義された特定の成分が特定の相対量で存在するように特定され、及びこの成分が一般用語により包含される特定の変異体又はメンバーであるとさらに特徴付けられる場合、一般用語により包含される他の変異体又はメンバーが追加で存在せず、一般用語により包含される成分の合計の相対量が特定された相対量を超える;より好ましくは、一般用語により包含される他の変異体又はメンバーは全く存在しない。
本明細書中に記載する全てのAI方法及びプロセスは、本明細書中に他に示さない場合、又は文脈が他に明らかに指示しない場合、任意の適した順序で実施することができる。
本明細書中で使用する用語「薬剤」は、他に特定しない場合、一般的に、化合物又は組成物、好ましくは化合物を指す。薬剤は、生きた生物に、及び/又は生きた生物からの、もしくは生きた生物から由来する細胞に、例えば、細胞に及び/又は身体組織に、あるいは環境中で作用することにより効果を産生することが可能である。薬剤の物理的状態は特に限定されず、他に特定しない場合、空気、水、及び/又は固体状態にありうる。薬剤の種類は特に限定されず、他に特定しない場合、このように、薬剤は、化学物質及び/又は生体分子(例えばタンパク質又は核酸など)でありうる。本明細書中で定義する特定の薬剤は、本発明において有用である。
「有害効果」は、本明細書中で使用するように、被験体への薬剤(薬物)の投与から生じる望ましくない有害効果である。有害効果は、罹患率、死亡率、痛覚過敏症候群、疼痛、体重における変化、酵素のレベル、機能の損失、又は顕微鏡的、肉眼的、又は生理学的レベルで検出された任意の病理学的変化を含むが、これらに限定されない。有害効果は、可逆的又は不可逆的な変化(他の化学物質、食品、又は手順、例えば薬物相互作用などへの個体の感受性における増加又は減少を含む)を起こしうる。
本明細書中で使用するように、用語「クロマトグラフィー」、「クロマトグラフィー的」などは、一般的に、混合物の分離のために適した技術を指し、それにおいて混合物は、混合物の1つ又は複数の成分を少なくとも部分的に分離する目的を伴い、「固定相」と呼ばれる非液体材料に加えられる。その目的のために、固定相は液体に曝露されうる、及び/又は混合物は液体中に溶解されうる;固定相と接触する前記流体は、「移動相」としても言及されうる。一般的に、「クロマトグラフィーにより行われる」任意の工程は、本明細書中に記載するように、同義的に「クロマトグラフィー工程」として言及されうる。
本明細書中で使用する用語「移動相」は、当技術分野において典型的に使用される意味を有し、クロマトグラフィーの間に固定相と接触される全ての液体、即ち、洗浄液体、ならびに目的のタンパク質、例えば本明細書中に記載するタンパク質の1つ又は複数などを含む液体(混合物)を指すことができる。本発明において、クロマトグラフィーに供される混合物は、本明細書中で特定するように、典型的には、1つ又は複数のタンパク質、例えば特に本明細書中に記載するタンパク質、例えば配列番号3又は4のポリペプチド、これらのいずれかの前駆体、プロテアーゼ、及び/又は宿主細胞タンパク質(HCP)などを含む。
「固定相」は、典型的には、ベースマトリックスを含み、それは水不溶性材料であり、普通は粒子形態又はゲル形態(例えば樹脂など)である。多くの場合(本明細書中に記載する実施形態を含む)において、固定相は、ベースマトリックス及び、クロマトグラフィーに供される混合物中に含まれる少なくとも1つの成分に結合することができる部分を含む。ベースマトリックスは通常、水不溶性材料であり、普通は粒子形態又はゲル形態である。ベースマトリックスの非限定的な例は、セファロース及びアガロース、例えば、高度に剛性のアガロースである。
本明細書中で使用する「クロマトグラフィー工程」は、クロマトグラフィー材料(好ましくは固定相)に、分析される及び/又は精製される少なくとも1つの化合物(好ましくはタンパク質(及び本発明の文脈において、前記タンパク質は、最も好ましくは、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドである))を含む液体を加えること、場合により、クロマトグラフィー材料を1つ又は複数の洗浄溶液を用いて洗浄すること、及び前記の少なくとも1つの化合物を溶出することの作用を指す。その文脈において、例証のために2つのクロマトグラフィー工程により特徴付けられるプロセスは、分析される及び/又は精製される少なくとも1つのそのような化合物を含む液体が、上に記載するように、第1のクロマトグラフィー材料に加えられ、そこからの溶出後、少なくとも1つのそのような化合物を含む液体が、第2のクロマトグラフィー材料に加えられ、そこから、上に記載するように、それも溶出されることを特徴とする。固定相、好ましくはクロマトグラフィーに適用される混合物中に含まれる少なくとも1つの成分が固定相に結合することが、任意の「クロマトグラフィー工程」の目的である。そのような化合物は、本明細書中に記載する1つ又は複数のタンパク質でありうる。化合物は、例えば、移動相の交換により及び/又は長期にわたる移動相への継続的な曝露により、固定相から回収されうる。
用語「結合」は、クロマトグラフィーを参照して使用される場合(例えば固定相の結合能力を記載するためなどに)、特に限定しないが、しかし、典型的には非共有結合を指す。このように、典型的には、混合物中に含まれる少なくとも1つの成分(例えば少なくとも1つのタンパク質など)は、固定相に非共有結合する。クロマトグラフィー工程は、場合により、しかし、好ましくは、少なくとも1つの成分が結合している固定相の洗浄を含む。少なくとも1つの成分は、少なくとも1つのタンパク質、例えば本明細書中に記載する少なくとも1つのタンパク質などでありうる。
本明細書中で使用するような用語「異種」は、複数の異なるエレメントからなる何かを記載する。
用語「ジスルフィド」及び「ジスルフィド結合」は、本発明の文脈において、当技術分野において一般に使用される意味の範囲内で使用される。一般的に、「ジスルフィド」は、構造R−S−S−R’を伴う官能基を指す。この連結は「SS結合」とも呼ばれ、普通は2つのチオール基のカップリングにより生成される。タンパク質中のジスルフィド結合は、酸化的折り畳みのプロセスによりシステイン残基のチオール基間に形成される;2つのシステイン残基のチオール基間のそのような特定のジスルフィド結合はまた、「ジスルフィド架橋」としても言及されうる。特定の理論に拘束されることを望まないが、真核細胞においては、ジスルフィド架橋が小胞体の内腔(及びミトコンドリア膜間腔)中で形成されるが、しかし、一般的に細胞質ゾル中では形成されないこと、及び、原核生物に関して、ジスルフィド架橋が(それぞれの生物、特にグラム陰性菌の)ペリプラズム中に形成されること;ジスルフィド架橋が、真核細胞及び原核細胞の両方の細胞外環境のタンパク質中でも見いだされることが通常当技術分野において理解されている。
用語「発現する」、「発現される」及び「発現」、「遺伝子発現」などは、本明細書中で使用するように、機能的遺伝子産物の合成における遺伝子からの情報の使用に関する。遺伝子発現は少なくとも転写を含み、場合により、翻訳及び翻訳後修飾を含むオープンリストから場合により選択される、より多くの追加の特徴の1つを含む。宿主細胞中でのタンパク質の組換え発現の文脈において、この用語は通常、文脈が他を指示しない場合、タンパク質が宿主細胞により(細胞の任意の区画において、ならびに/あるいは分泌されて及び/又は封入体中に組み入れられて)産生されることを意味する。
本明細書中で使用する用語「異種」は、複数の異なるエレメント又は起源からなる何かを記載する。例えば、ヒト遺伝子(又は非天然ポリペプチド、例えば本発明のポリペプチドなどをコードする遺伝子)を含む非ヒト宿主細胞において、前記遺伝子は細胞に対して「異種」であり、及び細胞はそれぞれの遺伝子の「異種」発現を可能でありうる。異種遺伝子発現は「組換え」としても言及されうる。
用語「封入体」は、当技術分野において典型的に使用される意味を有し、宿主細胞のサイトゾル中に又はペリプラズム中に見出される凝集体又は粒子を指すことを意味する;封入体は、典型的には、タンパク質、例えば特に宿主細胞中で組換え的に発現されるタンパク質などを含む。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、組換え発現の分野において、封入体は、典型的には、組換え発現されたタンパク質を含むが、しかし、宿主細胞タンパク質(HCP)、リボソーム成分、又はDNA/RNAフラグメントは比較的少ないことが理解される。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、封入体は、典型的には、少なくとも部分的に、適切に折り畳まれていないタンパク質(誤って折り畳まれたタンパク質)、特に誤って折り畳まれた組換え発現されたタンパク質を含むことが理解される。封入体は、典型的には、不適切に折り畳まれた形態のタンパク質を含み、即ち、本発明の文脈において、それらは、典型的には、本発明によるポリペプチド及び/又はその前駆体を不適切に折り畳まれた形態で含むことが理解される。用語「誤って折り畳まれた」は、一般的に、天然の立体構造上にはない、即ち、不適切に折り畳まれた形態の生体分子(例えば核酸又はポリペプチドなど)を記載する。
「単離された」により、通常はその天然状態においてそれに伴う成分を実質的又は本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離されたペプチド」又は「単離されたタンパク質」は、本明細書中で使用するように、それぞれ、自然発生状態においてそれを囲む細胞環境及び細胞外環境(例えば組織など)から、例えば、それが発現された細胞(例えば宿主細胞など)から精製されたペプチド又はタンパク質を指す。代替の記載において、「単離されたペプチド」又は「単離されたタンパク質」などは、本明細書中で使用するように、それぞれ、その天然の細胞環境からの、及びペプチド又はタンパク質が通常存在する環境の他の成分との会合からのペプチド又はタンパク質のインビトロ単離及び/又は精製を指す。別の例では、「単離された細胞」は、本明細書中で使用するように、自然発生状態においてそれを囲む、細胞環境及び細胞外環境(例えば組織又は細胞コロニーなど)から精製された細胞、例えば、通常は細胞に隣接する環境から除去された宿主細胞を指す。単語「隔離された」の上の定義によれば、「隔離するために」は、本明細書中で使用するように、「隔離された」材料、例えば、例、単離された細胞又は単離されたペプチドもしくはタンパク質などを得るための活性を記載する動詞である。
本明細書中で使用する用語「複数」及び「複数の」は、多数の、即ち、2つ又はそれ以上の任意の数を意味する。
用語「変異」は、本明細書中で使用するように、生物、ウイルス、又は染色体外DNAもしくは他の遺伝的エレメントのゲノムのヌクレオチド配列の変化を指す。この用語はまた、アミノ酸配列、特に少なくとも1つの(非サイレント)変異を持つ遺伝子のアミノ酸配列の変異に及ぶ。他に特定しない場合、ヌクレオチド配列の変異は恒久的な変化である。生殖系列において存在する変異は通常遺伝性である。一般的に、ヌクレオチド配列の変異は、配列中に多くの異なる型の変化をもたらしうる:遺伝子中の変異は、効果を有さない、又は遺伝子の産物を変える、又は遺伝子が適切もしくは完全に機能するのを予防しうる。変異はまた、非遺伝子領域中に存在しうる。他に特定しない場合、野生型配列は、変異を記載するための参照配列として使用される。このように、例えば、所与の変異体がポリペプチド配列の位置100の変異により特徴付けられると言われる場合、これは、位置100で、変異体が野生型ポリペプチドと同じアミノ酸残基を有さないことを示す。ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列の変異の特定の型は、変化、例えば欠失、置換、付加、挿入、及びスプライス変異体などを含む。ヌクレオチド配列に関する「欠失」は、ヌクレオチド配列中での1つ又は複数のヌクレオチドの非存在を指す。アミノ酸配列に関する「欠失」は、ポリペプチド中での1つ又は複数のアミノ酸残基の非存在を指す。ヌクレオチド配列に関する「付加」は、ヌクレオチド配列中での1つ又は複数の追加のヌクレオチドの存在を指す。アミノ酸配列に関する「付加」は、関連するポリペプチド中での1つ又は複数の追加のアミノ酸残基の存在を指す。ヌクレオチド配列に関する「置換」は、ヌクレオチド配列中での他のヌクレオチドによる1つ又は複数のヌクレオチドの置換を指す。アミノ酸配列に関する「置換」は、ポリペプチド中での他のアミノ酸残基による1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を指す。ヌクレオチド配列への、例えばオープンリーディングフレームなどへの追加、欠失、及び置換は、5’末端、3’末端、及び/又は内部でありうる。ポリペプチドへの付加、欠失、及び置換は、アミノ末端、カルボキシ末端、及び/又は内部でありうる。ヌクレオチド配列及び/又はポリペプチド配列に関する「挿入」は、それぞれ、特にそれぞれの配列の内部位置での、1つ又は複数のヌクレオチド、あるいは1つ又は複数のアミノ酸残基の付加である。用語「スプライス変異体」は、ポリペプチド配列をコードするRNAがそれぞれの野生型RNAとは異なってスプライシングされ、典型的には核酸レベルでの変異の結果として、通常は 野生型ポリペプチドとは異なるポリペプチド翻訳産物をもたらすことを記載するために使用する。用語「スプライス変異体」は、それぞれのRNAに関してだけでなく、しかし、また、それぞれの鋳型DNA配列(典型的にはゲノムDNA)に関して、及びそのようなRNAによりコードされるポリペプチドの配列に関して使用することができる。
用語「変異体」は、一般的に、野生型配列とは異なる核酸配列又はアミノ酸配列を指すことが意図される。変異型核酸配列又はアミノ酸配列は、このように、それぞれの野生型配列に関して少なくとも1つの変異を有する。核酸配列での多型が存在するが、それらは、しかし、それぞれのコードされたポリペプチドのレベルでは反映されない場合(サイレント変異、遺伝暗号の縮重)、核酸レベルでの用語「変異体」は、具体的には、 変異体ポリペプチドをコードするそれらの核酸変異体だけを指す。変異体は、変異の異なる組み合わせ(1を上回る変異及び異なる型の変異を含む)を単独で又は組み合わせにおいて含むことができる。
用語「神経成長因子」は、「NGF」又は「ベータ−NGF」と略され、当技術分野における一般の意味により、特定のニューロン及び他の細胞の成長、維持、増殖、及び生存の調節において含まれる神経栄養因子及び神経ペプチドを表す(例、Levi-Montalcini, 2004, Progress in Brain Research, vol. 146, p. 525-527を参照のこと)。文脈が他に指示しない場合、用語「神経成長因子」は野生型NGFだけを表し、配列番号3又は4のポリペプチドを含まない。野生型NGFは、NGF前駆体から入手できる2.5S、26kDaのベータサブユニットであり、それは生物学的に活性であり:野生型NGFは少なくとも2つのクラスの受容体と結合する:トロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)及び低親和性NGF受容体(LNGFR/p75NTR)。用語「NGF」は、他に特定しない場合、任意の種、好ましくは哺乳動物種のNGFを指す;しかし、ヒトNGFが常に好まれる。「hNGF」は、本明細書中で使用するように、ヒトNGFを表す。文脈が他に指示しない場合、用語「NGF」及び「hNGF」は野生型NGFを指し、即ち、hNGFは野生型NGFを表す。野生型ヒトNGFのアミノ酸配列は、配列番号1の位置121〜239に対応する(図24中の灰色)。非ヒトNGFの配列は、例えば、科学文献において、ベイトとして配列番号1の位置121〜239を使用した配列検索(例えばBLASTなど)を通じて、及び公開タンパク質データベース(例えばSwissprotなど)において入手可能である。
用語「NGFムテイン」及び「NGFのムテイン」を(又は「そのNGFムテイン」を参照して)を本明細書中で互換的に使用し、本明細書中でさらに詳細に記載するように、野生型NGFと比較し、少なくとも1つの変異により特徴付けられるポリペプチドを指す。配列番号3及び配列番号4のポリペプチドは、NGFのムテインである。好ましくは、NGFのムテインは、NGF、特にヒトNGFと80から99.5%の配列同一性を有し、より好ましくは、ムテインは、NGF、特にヒトNGFと90から99%の配列同一性を有する。
用語「成熟部分」「成熟部分」は、NGFを参照して、用語「ベータNGF」と互換的に使用され、NGFのプロペプチドを含まない(それ故に、無論、プレプロペプチドを含まない)ことを特徴とするNGFのポリペプチドを指す。類似して、用語「成熟部分」はまた、配列番号3又は4のポリペプチドを指すために使用され、なぜなら、これらのポリペプチドは同様にプロペプチドを含まない(それ故に、無論、プレプロペプチドを含まない)。好ましくは、成熟部分はまた、野生型NGFオープンリーディングフレームによりコードされるC末端切断可能ペプチドを含まない;そのようなC末端切断可能ペプチドは、ヒトNGFの場合では、2つのアミノ酸残基「RA」(配列番号1中の240及び241)からなる。特に、成熟部分は、限定しないが、プロテアーゼフューリン及びNGFの第1のアミノ酸残基のN末端を直接的に正確に切断することが可能な他のプロテアーゼを用いたプロNGFの、又はそれぞれ配列番号3もしくは4のポリペプチドの切断により入手できる。例えば、ヒトNGFの、及び多くのオルソログのフューリン切断部位は、配列R1S2K3R4(1文字アミノ酸コード、N末端からC末端まで番号付けられた配列;図25中に取り囲んでいる)からなることが周知である。成熟NGFにおいては、通常、フューリン切断部位又はフューリン切断部位のN末端の任意のアミノ酸は存在しない。例証のために、ヒトNGFの成熟部分は、配列番号1のアミノ酸位置122〜239により表されるポリペプチドからなる。非ヒトNGFの成熟部分は、例えば、配列検索及び/又は配列分析により同定されうるが、それにおいてヒトNGFの前記成熟部分は、配列アラインメントのために使用される。
用語「前駆体」は、本明細書中でNGFを参照して使用するように、NGFがタンパク質分解切断により入手できる任意のペプチド配列を指す。例証のために、プロNGF及びプレプロNGFの両方、ならびにそれらの変異体は、NGFの前駆体の典型的な例である。本明細書中で使用する用語「前駆体」は、最もC末端のアミノ酸残基がNGFの最もC末端の残基である前駆体、及びまた、NGFの最もC末端の残基を超えてC末端に伸長する前駆体を指すことができる(NGFがタンパク質分解切断によりそこから入手できる限り):野生型ヒトプロNGFの天然発生前駆体(配列番号1)はC末端ジペプチド(配列番号1中のアミノ酸残基240及び241、図1中の太字)を含むが、前駆体が、野生型NGFオープンリーディングフレームによりコードされるC末端切断可能ペプチドを含まないことが本発明において好ましい;そのようなC末端切断可能ペプチドは、ヒトNGFの場合では、2つのアミノ酸残基「RA」(配列番号1中の240及び241)からなる。
用語「プレペプチド」又は「プレ配列」は、本明細書中で使用するように、一般的に、プロペプチドにN末端で直接的に隣接するNGFオープンリーディングフレームの一部によりコードされるポリペプチド配列を互換的に指す。例証のために、プレペプチドは、配列番号1の残基1から配列番号1の残基18までの範囲の連続配列を含む配列からなるNGFである。非ヒトNGFの前駆体のそれぞれのプレペプチドの配列は、例えば、科学文献において、配列検索(例えばBLASTなど)を通じて、配列番号1の位置1〜18をベイトとして使用し、及び公開タンパク質データベース(例えばSwissprotなど)において入手可能である。プレペプチド及びプロNGFからなり、それにおいてプレペプチドのC末端がプロNGFのN末端に直接的に隣接しているポリペプチド又はタンパク質は、本明細書において「プレプロ−NGF」として言及することができる。
用語「プロペプチド」又は「プロ配列」は、本明細書中で使用するように、一般的に、成熟NGFにN末端で直接的に隣接するが、しかし、ポリペプチド配列がプレペプチドを含まない、NGFオープンリーディングフレームの一部により自然においてコードされるポリペプチド配列を互換的に指す。例証のために、プロペプチドはNGFの野生型前駆体中に含まれている。NGFの前駆体のプロペプチドは、配列番号1の残基19から配列番号1の残基121までの範囲の連続配列を含む配列からなる。非ヒトプロNGFのそれぞれのプロペプチドの配列は、例えば、科学文献において、配列検索(例えばBLASTなど)を通じて、配列番号1の位置19〜121をベイトとして使用し、及び公開タンパク質データベース(例えばSwissprotなど)において入手可能である。
「プロNGF」は、本明細書中で使用するように、NGFの成熟部分及びそれぞれのプロペプチドの両方を含むが、しかし、それぞれのプレペプチドを含まないペプチド配列を指す。ヒトプロNGFは、配列番号1の残基19から配列番号1の少なくとも残基239までの範囲の連続配列を含む配列からなる。野生型ヒトプロNGFはC末端ジペプチド(配列番号1中のアミノ酸残基240及び241)を含むが、本発明中で得られ、使用されるプロNGFは、野生型NGFオープンリーディングフレームによりコードされるC末端切断可能ペプチドを含まないことが好ましい;そのようなC末端切断可能ペプチドは、ヒトNGFの場合では、2つのアミノ酸残基「RA」(配列番号1中の240及び241)からなる。非ヒトプロNGFの配列は、例えば、科学文献において、配列番号1の位置19〜239をベイトとして使用した配列検索(例えばBLASTなど)を通じて、及び公開タンパク質データベース(例えばSwissprotなど)において入手可能である。
用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は本明細書中で互換的に使用され、RNA及びDNA(cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、ならびにヌクレオチド類似体、リン酸類似体、及び/又は糖類似体を含むDNA/RNA同等物を含む)の両方を指す。核酸は二本鎖又は一本鎖(即ち、センス鎖又はアンチセンス鎖)でありうる。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、遺伝子、オープンリーディングフレーム、遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、siRNA、マイクロRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の型の単離された核酸及び配列核酸プローブ、ならびにプライマー、ならびに核酸類似体を含む。核酸は、任意の型の三次元構造を有しうる。
本発明による用語「ペプチド」は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合により鎖に共有結合的に連結されている、2つ又はそれ以上、好ましくは3つ又はそれ以上、好ましくは4つ又はそれ以上、好ましくは6つ又はそれ以上、好ましくは8つ又はそれ以上、好ましくは10又はそれ以上、好ましくは13又はそれ以上、好ましくは16又はそれ以上、好ましくは21又はそれ以上、及び好ましくは8、10、20、30、40、又は50、特に100のアミノ酸を含む物質を指す。
用語「タンパク質」は、好ましくは大きなペプチド、好ましくは100を上回るアミノ酸残基を伴うペプチドを指すが、しかし、一般的には、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は同義語であり、文脈が他に指示しない場合、本明細書中で互換的に使用される。このように、用語「配列番号4のポリペプチド」及び「配列番号4のタンパク質」は同一の意味を有する。
用語「医薬的に許容可能な」は、一般的に、特定の物質を、使用される投与量で、薬剤が耐えられない有害作用を起こすことを伴わず、場合により及び好ましくは薬剤との組み合わせにおいて被験体に投与することができることを記載する。
用語「医薬的に許容可能な担体」及び「医薬的に許容可能な賦形剤」は、生理学的に適合性があり、本明細書中に記載するように、被験体への投与のために適している、又はさもなければそのような投与に干渉しない溶媒、分散培地、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などのいずれか1つ又は複数を指す。そのような医薬的に許容可能な担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ又は複数、ならびにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。特に液体医薬組成物の場合では、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えばマンニトール、ソルビトールなど)、又は塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましいであろう。医薬的に許容可能な担体は、補助物質(例えば湿潤剤又は乳化剤、防腐剤又は緩衝剤など)をさらに含みうるが、それらによって薬剤の有効期間又は有効性が増強される。医薬的に許容可能な担体は、典型的には、本発明による組成物中に含まれる。
用語「医薬的に活性な薬剤」は、薬剤が、例えば、疾患又は障害の症状を寛解させる際に有益でありうる被験体への投与において使用できる薬剤を指す。また、「医薬的に活性な薬剤」は、治療有効量で被験体に投与された場合、被験体の状態又は病状に対して正の又は有利な効果を有することができる。好ましくは、医薬的に活性な薬剤は、治癒特性を有し、疾患又は障害の1つ又は複数の症状の発症を寛解、軽減、緩和、逆転、遅延する、又は重症度を減らすために投与されうる。医薬的に活性な薬剤は、予防的特性を有しうる、及び疾患の発症を遅延させるため、あるいはそのような疾患又は病的状態の重症度を減らすために使用されうる。例えば、本発明の薬剤は、請求されているように、嚢胞性線維症の処置のための医薬的に活性な成分として本明細書中で考えられる。別の例では、医薬的に活性なタンパク質を使用し、通常はタンパク質を発現しない、又は所望のレベルではない、あるいはタンパク質を誤って発現する細胞又は個体を処置することができ、例えば、医薬的に活性なタンパク質が、変異を、又は十分に高い発現の欠如を、望ましいタンパク質を供給することにより補うことができる。用語「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、タンパク質又はポリペプチド全体を含み、その医薬的に活性なフラグメントも指すことができる。それはまた、ペプチド又はタンパク質の医薬的に活性な類似体を含みうる。
「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、開始コドンで始まり終止コドンで終わるコドンの連続的なストレッチである。
用語「被験体」及び「患者」は、本明細書中で使用するように、哺乳動物に関する。例えば、本発明の文脈における哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、家畜化動物(イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマなどを含むが、これらに限定されない)、実験動物(マウス、ラット、ウサギなどを含むが、これらに限定されない)、ならびに飼育中の動物(例えば動物園の動物など)である。本明細書中で使用する用語「被験体」及び「患者」は特にヒトを含む。被験体(ヒト又は動物)は2組の染色体を有する;つまり、被験体は2倍体である。用語「患者」は、状態に苦しんでいる、状態に苦しむリスクがある、状態に苦しんできた、又は状態に苦しむと予測される、及び、例えば、薬剤の投与による治療に供されうる被験体を指す。患者の状態は慢性及び/又は急性でありうる。このように、「患者」はまた、治療に供される及び/又は治療を必要とする被験体として記載することができる。
用語「治療」は広く理解されるべきであり、被験体において状態を予防又は処置する目標を伴う被験体の処置を指す。好ましい実施形態では、治療は、具体的には、被験体への薬剤の投与を含む。
用語「トリプシン」は、本明細書中で使用するように、一般的に、EC 3.4.21.4として分類されるタンパク質分解酵素を指す。トリプシンは、主にアミノ酸のリジン又はアルギニンのカルボキシル側でペプチド鎖を切断するが、通常、いずれかの後にプロリンが続く場合を除く。理論により拘束されることを望まないが、トリプシンはセリンプロテアーゼであり、及びトリプシンは多くの脊椎動物の消化器系において自然に見いだされ、そこでそれはタンパク質を加水分解することが理解されている。本発明において好ましいのは、組換え供給源からのトリプシンである。インビボでは、トリプシンはプロペプチド(「トリプシノーゲン」と呼ばれる)と一緒に形成されるが、用語「トリプシン」は、本明細書中で使用するように、好ましくは、任意のプロペプチドを欠く成熟トリプシンを指す。タンパク質分解切断のためのトリプシンの使用はまた、「トリプシンタンパク質分解」又は「トリプシン処理」として言及され、及びトリプシンを用いた切断から生じるタンパク質は「トリプシン処理」されていると言われる。
NGFの前駆体の又は配列番号3もしくは4のポリペプチドの「変異体」は、成熟NGF(ベータNGF)の一部ではない、又はそれぞれ配列番号3もしくは4の一部ではないアミノ酸配列が、NGFの野生型前駆体と、例えば野生型プロNGF又は野生型プレプロNGFなどとの比較における少なくとも1つの変異(前記少なくとも1つの変異は、好ましくは、成熟NGF(ベータNGF)のアミノ酸配列のN末端で見出される)により特徴付けられるポリペプチド又はタンパク質を指す。このように、本明細書中で使用する場合、NGFなどの前駆体の「変異体」は、プレペプチド及び/又はプロペプチドが、プレペプチド及び/又はプロペプチドのアミノ酸配列に関して、少なくとも1つの変異、例えば、限定しないが、WO 2013/092776 A1において及びUS2018/0086805 A1において記載されている変異体により特徴付けられるペプチド又はタンパク質を指す。例証のために、WO 2013/092776 A1は、(野生型)フューリン切断部位が1つ又は複数の特定の変異のために存在しないプロNGFの「変異体」を記載する。
用語「ベクター」又は「クローニングベクター」は、一般的に、宿主細胞中に導入することができる核酸を指す。ベクターの例は、限定しないが、プラスミド、ファージ、及び宿主細胞中に導入することができる全ての他の型の核酸を含む。用語「ベクター」は広く理解されるべきであり、異種発現のためのペプチド又はタンパク質をコードするベクター(そのようなベクターは、転写物の生成のための鋳型としての役割を果たしうる)、及びコードしないベクターを含む。最初の型のベクターは、タンパク質又はペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むであろうが、それは、ベクターが宿主細胞中に存在している場合に発現されうる。当業者が選びうるベクターの型は、当業者が選びうる宿主細胞の型に依存的であろうが、特定の場合では、全ての一般の宿主細胞(大腸菌を含む)用のクローニングベクターが商業的に入手可能であり、当業者は、このように、選ばれた宿主細胞を十分に考慮して特定のベクターを選ぶであろう。
用語「野生型」を本明細書中で使用し、自然において、好ましくは健康な被験体において典型的に見出される遺伝子又はタンパク質を指す。「野生型」ではない遺伝子又はタンパク質は、本明細書中では「変異体」又は「変異型」などとして言及する。例証のために、配列番号1は、野生型ヒトNGFの前駆体のアミノ酸配列を示す;配列番号2は、野生型ヒトNGFのアミノ酸配列を示す。
本発明はいくつかの発見に基づいており、それらは相互に関係付けられ、このように、本発明者らが本発明の種々の態様に達するように導き、それらは全て以下において個別に記載する。
本発明による薬剤
本発明は、哺乳動物の被験体における皮膚科障害の処置及び/又は予防のための薬剤を提供する。薬剤は、薬剤が、例えば、疾患又は障害の症状を寛解する際に有益である被験体への投与において使用することができる。特に、本発明において有用な薬剤は配列番号3又は配列番号4のポリペプチドである。このように、本発明は、特に、治療における使用のための配列番号3又は配列番号4のポリペプチドを提供する。治療は、典型的には、本明細書中で以下に記載するように、ヒト又は動物の身体への前記ポリペプチドの投与を含む。
本発明によれば、配列番号3及び配列番号4のポリペプチドは、医薬的に活性な薬剤として提供される。本発明により、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、医学的使用、特に哺乳動物の被験体における皮膚科障害の処置及び/又は予防のために提供される。場合により、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、組換え供給源からである。このように、本発明はまた、本明細書中に記載するように、医学的使用のための配列番号3又は配列番号4の組換えポリペプチドを提供する。
本発明による薬剤は、本明細書中で「配列番号3のポリペプチド」又は「配列番号4のポリペプチド」とも呼ばれ、本明細書でより詳細に記載する。用語「配列番号3のポリペプチド」及び同様の用語は、本明細書中で、配列番号3により定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及び/又は等価の生物学的活性を伴う薬剤を指示する。用語「配列番号4のポリペプチド」及び同様の用語は、本明細書中で、配列番号4により定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及び/又は等価の生物学的活性を伴う薬剤を指示する。このように、これらの用語中には、そのようなポリペプチドの機能的に等価の部分又は類似体も含まれる。ポリペプチドの生物学的に等価な部分の一例は、配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドのドメイン又は部分配列でありうるが、それは、ドメイン又は部分配列が、配列番号3の完全長ポリペプチド又は配列番号4の完全長ポリペプチド、又は代わりにそのようなポリペプチドをコードする遺伝子と実質的に同じ生物学的活性を発揮することを可能にする結合部位を含む。用語「実質的に同じ生物学的活性」は、実施例3及び4において記載するアッセイでの配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を有する等価の部分又は類似体ポリペプチドを指す。ポリペプチドの生物学的に等価の類似体の例は、配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも一部を含む融合タンパク質でありうるが、しかし、それはまた、ポリペプチドの相同類似体でありうる。また、配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドの特定の生物学的活性を模倣する完全に合成的な分子は、「生物学的に等価の類似体」を構成するであろう。
より好ましくは、用語「配列番号3のポリペプチド」及び同様の用語は、本明細書中では、配列番号3により定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指示する;そのような薬剤は、場合により、とりわけ、配列番号3により定義されるアミノ酸配列を含む融合タンパク質である。最も好ましくは、用語「配列番号3のポリペプチド」及び同様の用語は、本明細書中で、配列番号3により定義されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを指示する;この実施形態では、薬剤は、配列番号3により定義される連続的な順序における118のアミノ酸残基からなるポリペプチドからなる。この及び他の実施形態では、ポリペプチドは、場合により、1つ又は2つ又は3つの内部システイン結合を持ち、 システイン(Cys、C)残基は互いに共有結合的に連結され、分子内ジスルフィド架橋を形成する。システイン結合は、好ましくは、野生型ヒトNGF中のものと等価である。
等しくより好ましくは、用語「配列番号4のポリペプチド」及び同様の用語は、本明細書中では、配列番号4により定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指示する;そのような薬剤は、場合により、とりわけ、配列番号4により定義されるアミノ酸配列を含む融合タンパク質である。最も好ましくは、用語「配列番号4のポリペプチド」及び同様の用語は、本明細書中では、配列番号4により定義されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを指示する;この実施形態では、薬剤は、配列番号4により定義される連続的な順序における118のアミノ酸残基からなるポリペプチドからなる。この及び他の実施形態では、ポリペプチドは、場合により、1つ又は2つ又は3つの内部システイン結合を持ち、 システイン(Cys、C)残基は互いに共有結合的に連結されて、分子内ジスルフィド架橋を形成する。システイン結合は、好ましくは、野生型ヒトNGF中のものと等価である。
本発明のポリペプチドは、場合により、さらなる翻訳後修飾により特徴付けられうる。そのような翻訳後修飾は、場合により、グリコシル化及び/又はリン酸化を含む。好ましくは、しかし、本発明によるポリペプチドは、グリコシル化及び/又はリン酸化を含まない。実際に、本明細書中の実験例が皮膚障害の治癒に対する有益な効果及び有益な利益対有害効果比を実証することを考慮し、それにより、使用されるポリペプチドは、細菌におけるサイトゾル組換え発現により得られ、それは典型的には、グリコシル化及び/又はリン酸化をもたらさず、本発明の有益な効果がそのような型の翻訳後修飾に依存的ではないことはもっともである。従って、好ましい実施形態では、本発明によるポリペプチドは、グリコシル化及び/又はリン酸化により特徴付けられない。
典型的には、本発明によるポリペプチドは、ポリペプチドが投与される被験体により天然に産生されない非天然ポリペプチドである。これは、投与後の被験体における検出可能性の利点だけでなく、しかし、また、(外部供給源、例えば、例、本開示により調製された組成物などからの)投与が、障害の処置又は予防における成功を達成するために、被験体に投与される必要があるとの証拠に関連付けられる。
好ましくは、本発明によるポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。より好ましくは、本発明によるポリペプチドは、宿主細胞タンパク質、分解産物(例えば、des−nona変異体など)、及びプロテアーゼ(例えば、トリプシンなど)を本質的に含まない。本発明によるポリペプチドが本質的に宿主細胞タンパク質を含まない場合、分解産物(例えば、des−nona変異体など)、及びプロテアーゼ(例えば、トリプシンなど)はまた、「純粋なポリペプチド」として言及されうる。好ましくは、本発明によるポリペプチドは、純粋なポリペプチドとして投与される。より好ましくは、配列番号3からなる純粋なポリペプチド及び/又は配列番号4からなる純粋なポリペプチドは、組成物中の総タンパク質に対して、90%又はそれ以上、好ましくは92%又はそれ以上、より好ましくは93%又はそれ以上、好ましくは94%又はそれ以上、より好ましくは96%又はそれ以上、より好ましくは97%又はそれ以上、より好ましくは98%又はそれ以上、より好ましくは99%又はそれ以上、より好ましくは99.2%又はそれ以上、より好ましくは99.4%又はそれ以上、より好ましくは99.6%又はそれ以上、より好ましくは99.8%又はそれ以上、より好ましくは99.9%又はそれ以上の重量パーセントを有する。そのような純粋なポリペプチドは、実施例1及び2を含む、本明細書中の開示に基づいて入手可能である。最も好ましくは、本発明による純粋なポリペプチドは、適正製造基準(GMP)に適合する純度グレードを有する。
本明細書中の実験、特に実施例3及び4において実証されるように、本発明による薬剤の投与は、薬剤が、完全に露出された侵害受容性線維(神経)と直接接触したという事実にもかかわらず、任意の痛覚過敏症候群(疼痛)を誘導しなかった;それらは皮膚の欠如のために完全に露出していると考えられ、及びそれらは、皮膚病変の結果として活性化過剰であると考えられる。この極端な設定における疼痛の非存在は、薬剤が慢性的な設定においても、損傷した皮膚に局所的に、及び反復的に投与されたため、特に注目すべきである(詳細については、実施例を参照のこと)。これはまた、神経支配領域、即ち、露出された侵害受容器により特徴付けられる領域に曝露されたヒトNGFを用いた早期試験を落胆させることを考慮すると、特に注目すべきである(Svensson et al, 2003, Pain, vol. 104, p. 241-247)。上の驚くべき知見は、本発明による薬剤が以前は「無痛」として記載されてきたという事実だけでは説明することはできない。なぜなら、疼痛を誘導するその能力は、神経支配領域、即ち、皮膚病変の場合のように、活性化過剰の神経は言うまでもなく、露出された侵害受容器により特徴付けられる領域において実験的に研究されたことがないからである。さらに、本発明による薬剤の投与が組織の再神経支配についての原因であるとしても(例、実施例3を参照のこと)、投与は疼痛に関連付けられない。それに加えて、血管新生に対する本発明による薬剤の正の効果(実験例を参照のこと)は驚くべきものであり、最先端技術に基づいて予測可能ではなかった。血管新生は、組織形成及び創傷閉鎖のために特に重要であると理解されている。要約すると、これらの有利な効果の組み合わせは、最先端技術に照らして非常に驚くべきことである。
場合により、本発明によれば、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが、それを必要とする被験体に有効量において投与される。投与、有効量、及びそれを必要とする被験体の詳細を、本明細書中で以下に記載している。
それぞれ配列番号3及び配列番号4からなるポリペプチドは、ヒト神経成長因子(NGF、野生型ヒトNGF又は野生型NGFとしても言及され、配列番号2を参照のこと)のアミノ酸配列とは1つ又は2つの位置において異なる。配列番号2のポリペプチドに関する本発明によるポリペプチドの違いを、本明細書中で詳細に開示し、本明細書中の実験例により裏付けられるように、皮膚障害の処置又は予防及び副作用の非存在に対する顕著な効果を有する。
神経成長因子(NGF)は、特定のニューロン集団の発生及び生存のために要求されるニューロトロフィンである。NGFは、ニューロンの増殖及び恒常性を自然に誘発するホモ二量体ペプチドである。身体においては、NGFは少なくとも2つの型の受容体と結合する:トロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)及び低親和性NGFニューロトロフィン受容体p75(LNGFR/p75NTR/p75)。両方ともヒト及び動物において特定の障害に関連付けられるが、それぞれの作用機構は異なる可能性が高い。NGFについてのいくつかの治療適用が提案されてきたが、市販向けに成熟したものはほとんどない。
しかし、過去に想定されてきたNGFの多くの治療的使用は、市販の治療用NGF産物には成熟しておらず、ニューロンの増殖及び恒常性に対する望ましい効果の他、1つの理由がそのNGFにおいて見ることができ、疼痛に関連付けられる:それは、局所的又は全身的に投与された場合、痛覚過敏を起こしうる(Lewin et al., 1994, Eur. J. Neurosci., vol. 6, p. 1903-1912;Della Seta et al., 1994, Pharmacol. Biochem. Behav., vol. 49, p. 701;Dyck et al, 1997, Neurology, vol. 48, 501-505;McArthur, et al., 2000, Neurology, vol. 54, p. 1080-1088;Svensson et al., 2003, Pain, vol. 104, p. 241-247;Ruiz et al., 2004, Brain Res., vol. 1011, p. 1-6)。解決策として、NGFの変異体バージョン(「ムテイン」)が開発されたが、それは、低下した侵害受容活性(「無痛NG」)に関連付けられ、及びそれは、TrkA受容体と相互作用するNGFのドメインにおける少なくとも1つの変異により特徴付けられる(WO 2008/006893 A1、Malerba et al. PLOS One, 2015, vol. 10, e0136425)。しかし、そのようなポリペプチドは今までのところ医薬的に許容可能な純度において公共に利用可能ではなく、恐らくは、また、一般的にこの治療分野における成長因子に関する研究に伴う偏見及び一般的な否定的な経験を考慮し、皮膚の皮膚科障害の処置又は予防のために提案又は開発されてこなかった。
本発明によれば、その配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの安定性及び、このように、長期純度は、本明細書中に記載する態様及び実施形態により得られる及び/又は改善されることができる。このように、本開示は、皮膚科障害のための新たな処置又は予防を利用可能にするだけでなく、しかし、また、治療適用(哺乳動物への投与を含む)のために適した純度グレードで、そのような処置又は予防のために適した薬剤を提供する。本発明の薬剤は、以前はそのような有利な純度グレードで公共に利用可能ではなかった。
配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、自然において見いだされず、非天然ポリペプチドとしても言及することができる。このように、本発明による薬剤は、野生型NGFではなく、及び特に野生型ヒトNGFではない。
好ましくは、本発明による非天然ポリペプチドは高純度で提供される。場合により、ポリペプチドは内部ジスルフィド架橋を含む。場合により、ポリペプチドは適切に折り畳まれる。場合により、ポリペプチドは水性培地中で可溶性である。
本発明は、部分的に、皮膚潰瘍の2つの動物モデルを用いた実験に基づいている。これらのモデルでは、皮膚潰瘍は、円形生検パンチにより又は圧力負荷のサイクルにより糖尿病マウスにおいて誘導され、及び本発明のポリペプチドが局所的に適用される。ポリペプチドは、プラセボで処置された動物との比較において、潰瘍の治癒時間において有意で用量依存的な改善を誘導した。この改善は、疼痛に関連する副作用を欠く用量で明らかであり、このように、最先端技術を上回る潜在的な利益を実証している。
特に、糖尿病性皮膚潰瘍のデータ生成インビボモデルは、本発明のポリペプチドが無痛であるが、しかし、NGF受容体系を標的化する活性を保持し、及びそれにより皮膚科障害の処置又は予防のための治療手段として提供することを実証してきた。実際に、本発明のポリペプチドは、局所適用の部位で及び全身レベルで野生型NGFの侵害受容促進効果を発揮することを伴わず、潰瘍治癒に有利に働く、血管新生及び再神経支配に対する野生型NGFの栄養特性を保持する。
本発明は、哺乳動物の被験体における皮膚科障害の処置及び/又は予防における使用のためのポリペプチドを提供し、それにおいてポリペプチドは、配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドより選択される。このように、本発明はまた、本明細書中に記載するように、治療によるヒト又は動物の身体の処置における使用のための方法における使用のための配列番号3又は配列番号4のポリペプチドを提供する。
特に、本発明は、配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドの特定の治療的使用に関し、それにおいて特定の治療的使用は、哺乳動物の被験体における皮膚科障害の処置及び/又は予防である。このように、本発明はまた、治療によるヒト又は動物の身体の処置における使用のための方法における使用のための配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドを提供し、それにおいて治療は、哺乳動物の被験体における皮膚科障害の処置及び/又は予防を含む。哺乳動物の被験体は、典型的には、そのような処置の必要性により特徴付けられる被験体である。
配列番号3のポリペプチドならびに配列番号4のポリペプチドは、ヒトNGF(hNGF、配列番号2)のアミノ酸配列の変異により特徴付けられ、それにおいて前記変異は、低下した侵害受容活性に関連付けられる。特に、hNGFの位置100のアルギニンはグルタミン酸により置換されている。本発明は部分的に、治療効果を、先行技術から公知である副作用を伴わずに達成することができるという驚くべき知見に基づいている。
特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明によるポリペプチドは、1つ又は複数のジスルフィド架橋、及び最も好ましくは3つのジスルフィド架橋を含むことが好ましい。成熟及び適切に折り畳まれた成熟ヒトNGFは、3つのジスルフィド架橋により特徴付けられる(連結位置136←→201、179←→229、189←→231、位置番号は配列番号1を指す;Wiesmann et al., 1999, Nature, vol. 401, p. 184-188を参照のこと)。特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明によるポリペプチドは等価のジスルフィド架橋を含むことが好ましい(その位置番号は、本発明によるポリペプチドを配列番号1及びWiesmann et al.(前出)のポリペプチドと整列させることにより当業者に利用可能である)。
有害作用の存在及び非存在の記載
好ましくは、処置及び/又は予防は、ポリペプチドが投与される又は投与されている被験体において副作用又は有害作用を起こさない。この状況において好ましくは存在しない1つの副作用又は有害作用は、痛覚過敏又は疼痛である。このように、好ましくは、本発明による薬剤の投与は、任意の痛覚過敏症候群(疼痛)を誘導しない。
疼痛の非存在は、疼痛に関連付けられる参照化合物(例えば野生型NGFなど)の投与よりも快適な(又は不快感の少ない)処置を起こすだけでなく、しかし、少なくとも部分的には、皮膚障害自体の処置又は予防の成功のための原因となることを指摘することが重要である:本発明によるポリペプチドが好ましくは局所投与され、より好ましくは皮膚障害(例、潰瘍)の部位上に局所的に投与されることを考慮すると、疼痛の非存在によって、処置される被験体が、疼痛に使用するために、有害反応(例えばこすり落とす、もしくは洗い流す、又は他には除去する、など)を伴わず、身体表面上へのポリペプチドの投与を受け入れることが可能になり、その結果として、ポリペプチドは傷ついた身体表面に露出されたままで、治療上の有益な効果(例えば皮膚障害の処置又は予防など)を発揮する。このように、本発明のポリペプチドに関連付けられる疼痛の非存在は、消費者の不本意及び規制当局の懸念を克服するために適しているであろう。言い換えれば、疼痛の非存在は、疼痛に関連付けられる薬剤と比較し、利益対リスク比率における有意な増加に関連付けられる。
特に、好ましくは、処置及び/又は予防は、哺乳動物の被験体において痛覚過敏を起こさない。一実施形態では、本発明のポリペプチドが投与される被験体は、機械的異痛症に苦しまない。より正確には、機械的異痛症は、本発明のポリペプチドが投与される被験体において誘導されず、ポリペプチドが投与される被験体は、機械的異痛症に苦しまない。
一実施形態では、本発明のポリペプチドが投与される被験体は、熱異痛症に苦しまない。より正確には、熱異痛症は、本発明のポリペプチドが投与される被験体において誘導されず、ポリペプチドが投与される被験体は熱異痛症に苦しまない。
この文脈において好ましくは存在しないさらなる副作用又は有害作用は、悪性腫瘍又は癌である。特に、被験体への本発明のポリペプチドの投与は、好ましくは異常な細胞成長に関連付けられず、及びさらにより好ましくは、身体の他の部分に侵入又は伝播する可能性を伴う異常な細胞成長に関連付けられない。被験体への本発明のポリペプチドの投与は、好ましくは、皮膚の、特に真皮又は表皮の癌に関連付けられないことが特に好ましい。この点について、本発明による処置又は投与は、例えば、当技術分野における最先端技術、例えば血小板由来成長因子(ベカプレルミン、商品名レグラネクス)を用いた商業的処置などと比較し、有意な利点に関連付けられる。このように、本発明のポリペプチドに関連付けられる悪性腫瘍の非存在は、消費者の不本意及び規制当局の懸念を克服するために適していると予測される。言い換えれば、悪性腫瘍の非存在は、悪性腫瘍に関連付けられる薬剤と比較し、利益対リスク比における有意な増加に関連付けられる。
このように、要約すると、好ましくは、被験体への本発明のポリペプチドの投与は、有害作用(例えば悪性腫瘍及び/又は疼痛など)に関連付けられない。
典型的には、本発明による薬剤の投与は、被験体により十分に許容される。特に、好ましくは、本発明によるポリペプチドの投与は、被験体における抗薬物抗体の形成に関連付けられない。実際に、本発明によるポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ヒトNGFとは1つ又は2つのアミノ酸位置だけが異なるため、ヒトにおける免疫学的許容性が特に有利であることはもっともであり、及び 本発明のポリペプチドの投与が、ヒトにおける抗薬物抗体の形成に関連付けられないことはもっともである。
好ましくは、本発明による投与は、以下の1つ又は複数に正に影響する:炎症、細胞外マトリックス沈着、神経支配、及び血管新生。
ポリペプチドの検出可能性
好ましくは、本発明による使用のためのポリペプチドは、内因性(例、ヒト)NGFに関して、特定の試薬により選択的に認識されうる。用語「選択的に認識される」及び「検出可能な」は本明細書中で互換的に使用され、一般的に、生物学的サンプル中のタンパク質の、好ましくは分子的手段による特異的な同定を指す。
その点について、本発明によるポリペプチドは、好ましくは、抗体又は他の免疫反応性分子により検出可能である。
抗体又は他の免疫反応性分子により検出可能なタンパク質はまた、抗原として言及されうる。一部の実施形態では、生物学的サンプルは、1つ又は複数の特定の抗原を表示する、又は表示しないことにより特徴付けられうる。本発明の文脈では、被験体に投与されるポリペプチドは、好ましくは、ポリペプチドの投与後に被験体から得られる生物学的サンプル中で検出可能である。タンパク質の存在を示すための1つの非限定的な方法はウエスタンブロットによるが、しかし、他の免疫学的方法が等しく本発明の文脈中に含まれる。抗体又は他の免疫反応性分子は、それ自体が標識されている(例、フルオロフォア標識されている)か、あるいは、その目的のために加えられた、標識された二次抗体又は他の免疫反応性分子により認識される。このように、一部の場合では、例えば、検出において助ける二次分子(例えば、例、場合により標識された二次抗体など)も検出を促進するために加えられる。
本発明によれば、レベルが検出限界を上回っている場合、及び/又はレベルが、サンプルに加えられた抗原特異的抗体による結合を可能にするために十分高い場合、抗原は生物学的サンプル中に存在すると言われる。本発明によれば、発現のレベルが検出限界を下回っている場合、及び/又は発現のレベルが、サンプルに加えられた抗原特異的抗体による結合を可能にするには低過ぎる場合、抗原は細胞上で発現されないと言われる。
抗体又は他の免疫反応性分子は、細胞上のエピトープを認識しうる。用語「エピトープ」は、分子中の抗原決定基(例えば抗原など)を、即ち、例えば、抗体又は他の免疫反応性分子により認識される、免疫系により認識(即ち、結合)される分子の一部又はフラグメントを指す。任意の特定の抗原について特異的なエピトープの検出は、通常、その特定の抗原が、分析されている細胞上に存在していると結論付けることを可能にする。
一実施形態では、被験体、特に本発明によるポリペプチドが投与された被験体から得られたサンプルは、免疫表現型検査により特徴付けることができる。「免疫表現型検査」は、一般的に、細胞又はサンプルが、抗原が存在するか否かを決定するためにサンプルに加えられる抗原特異的分子(例えば抗体又は他の免疫反応性分子など)により特徴付けることができることを意味する。免疫表現型検査は、種々の方法(フローサイトメトリーを含む)を使用した細胞選別、ならびに溶解細胞及び溶解サンプルでの分析方法(例えばウエスタンブロッティングなど)を含む。
本発明では、野生型NGF(例えば野生型ヒトNGFなど)の存在においてでさえ特異的に検出されることができるポリペプチドが特に好ましい。アミノ酸配列の任意の変異(例えば任意の点変異など)は、例えば、それぞれの非変異型野生型ポリペプチド、及び従って、配列番号3のポリペプチドの各々の存在においてでさえ、ポリペプチドを特異的に検出可能にするであろうが、配列番号4のポリペプチドは一応、野生型ヒトNGFの存在においてでさえ特異的に検出されうるが、それは特に、野生型ヒトNGF(WO 2008/006893A1)から前記ポリペプチドを区別することができる抗体が利用可能である配列番号4のポリペプチドである。
このように、好ましくは、ポリペプチドは、少なくとも位置61にプロリン(参照のために、配列番号2の位置61に存在する)の非存在により、より好ましくは位置61のプロリンの、別のアミノ酸による置換により特徴付けられる。特に好ましい実施形態では、位置61のプロリンはセリンにより置換される。この好ましい実施形態では、本発明による使用のためのポリペプチドは、配列番号4のポリペプチドである。このポリペプチドは、少なくとも位置61でのプロリンの非存在により、より好ましくは、位置61のプロリンの、別のアミノ酸による置換により特徴付けられる。配列番号4では、配列番号3の位置61のプロリンがセリンにより置換される。
創傷身体表面
本発明によれば、創傷身体表面は、本発明のポリペプチドの投与に供される。
負傷した身体表面は、潰瘍(静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡、糖尿病性潰瘍)、術後創傷、床ずれ、火傷、裂傷、切開、打撲傷、擦過傷、穿刺創傷)などが含まれるが、これらに限定されない。そのような創傷身体表面を有する被験体を、以下でさらに記載し、及び以下の創傷身体表面の記載は、文脈が他を指示しない場合、全てのそのような被験体に適用可能である。
一実施形態では、本発明による薬剤は、皮膚障害の予防の処置のために本明細書中で提供され、それにおいて皮膚障害は、潰瘍、術後創傷、床ずれ、火傷、裂傷、切開、打撲傷、擦過傷、及び 穿刺創傷より選択される。
一実施形態では、本発明による薬剤は、潰瘍の予防の処置のために本明細書中で提供され、それにおいて潰瘍は、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡、及び糖尿病性潰瘍より選択される。
一部の実施形態では、創傷身体表面は、1mm又はそれ以上の直径を有する。一般的に、本明細書中で創傷身体表面の「直径」に参照する場合、非円形の創傷身体表面について、用語「直径」は、創傷身体表面を横切る創傷身体表面の1つの境界から、創傷身体表面の反対側の境界まで測定された、創傷身体表面の最大直径を指す。円形の創傷身体表面について、直径は無論、創傷身体表面を横切る創傷身体表面の1つの境界から、創傷身体表面の反対側の境界まで、測定の任意の方向について等しい。直径は、創傷身体表面の外面上で、定規又は他の適した手段を用いて決定することができる。
一部の実施形態では、創傷身体表面は1mmから50cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は2mmから20cmの直径を有する。0.5cm又はそれ以上、好ましくは1cm又はそれ以上の直径を伴う創傷身体表面はまた、本明細書中では「大きな」創傷身体表面として言及することができる。本発明はまた、大きな創傷身体表面(例えば大きな潰瘍など)の処置のために適している(例、実施例4を参照のこと)。一部の実施形態では、創傷身体表面は3mmから10cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は4mmから5cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は5mmから4cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は6mmから3cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は7mmから1cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は8mmから1cmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は約6mmの直径を有する。一部の実施形態では、創傷身体表面は約12mmの直径を有する。
本発明による薬剤が特に適している被験体
本発明によれば、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、そのような投与を必要とする被験体に投与されうる。そのような投与を必要とする被験体は、本明細書中に記載する障害に苦しんでいる被験体、そのような障害に苦しむリスクのある被験体、又は他には、そのような障害に悩まされている被験体でありうる。薬剤は治療有効量で被験体に投与される。治療有効量は、本明細書中での開示を考慮して医師により決定されることができる。
特に、本発明によるポリペプチドは、哺乳動物の被験体に投与される。被験体はまた、「患者」として言及することができる。最も好ましくは、哺乳動物の被験体はヒトである。
本発明はまた、皮膚科障害に苦しむ患者を処置する方法に関し、それにおいて方法は、有効量の配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドを患者に投与することを含む。用語「患者」及び「被験体」は、本明細書中で互換的に使用し、特に、本明細書中に記載するように、皮膚科障害により特徴付けられる患者/被験体に言及する。
好ましくは、皮膚科障害は、被験体の身体の少なくとも一部の創傷表面により特徴付けられる。好ましくは、皮膚科障害は創傷表面(創傷身体表面)により特徴付けられる。創傷身体表面は、例えば、上に記載してきたが、及び以下の被験体の記載は、文脈が他に指示しない場合、そのような被験体での全てのそのような創傷身体表面に適用可能である。
より好ましくは、皮膚科障害は、皮膚病変、好ましくは真皮の少なくとも部分的な切除、及び場合により真皮の切除により特徴付けられる皮膚病変である、又はそれを含む。一実施形態では、創傷身体表面は、病変、特に皮膚の病変である、又はそれを含む。
「皮膚科障害」、「創傷」、「創傷身体表面」、「慢性創傷」、「潰瘍」、及び他の用語などの用語が、本明細書中に単数形で使用されているが、本発明はまた、複数の皮膚科障害、創傷、創傷身体表面、慢性創傷、潰瘍、及び他のそのような障害を有する被験体に適用可能である。
好ましくは、創傷身体表面は少なくとも1つの慢性創傷を含む。このように、本発明による薬剤の投与は、少なくとも1つの慢性創傷の処置又は予防のために適している。本発明の文脈では、用語「慢性創傷」は広く理解されるべきであり、本開示において明示的に言及されているか否かにかかわらず、全ての型の潰瘍、床ずれ、火傷、機械的皮膚切除を含むが、これらに限定されない。特に、それぞれの種の健康な被験体における治癒について典型的な時間枠中に治癒しない創傷は、この用語内に含まれる。それに加えて、7日又はそれ以上、例えば14日又はそれ以上、21日又はそれ以上、1ヶ月又はそれ以上、あるいは1年又はそれ以上などにわたって治癒及び/又は閉鎖しなかった被験体の身体表面上の全ての創傷が、用語「慢性創傷」中に含まれる。本発明による薬剤は、そのような慢性創傷を処置又は予防するために、全てのそのような型の慢性創傷に投与してもよい。
本発明の文脈では、用語「予防する」は広く理解されるべきであり、障害の発症の予防だけでなく、しかし、また、障害の進行の予防を含む。特に、創傷身体表面(例えば慢性創傷など、例、潰瘍)の状況では、用語「予防する」はまた、創傷身体表面の拡大のさらなる進行、例えば創傷身体表面のさらなる深化及び/又は創傷身体表面の直径における増加などの予防を含む。
本発明の文脈では、用語「処置する」は、広く理解されるべきであり、障害の症状の寛解を含むが、これに限定されない。実際に、本明細書中の実験例により、皮膚科障害、例えば、例、創傷の(部分的)閉鎖などの寛解を達成することが、本明細書中で請求される本発明の好ましい不可欠な部分であることが好ましく、また実証されている。実際に、請求される治療効果に達することは、本発明の機能的な技術的特徴である。本明細書中の実施例によって、前記の機能的技術的特徴が、本発明のポリペプチドの投与の直接的な結果として達成可能であることがもっともらしくなる。言い換えれば、本発明者らは、本発明のポリペプチドが、皮膚科障害に苦しむ被験体において寛解を達成するための原因となることを明らかにしている。皮膚科障害は、好ましくは、創傷身体表面により特徴付けられる。
本発明は、皮膚科障害に苦しむ被験体のサブグループのために特に適している。そのようなサブグループを、本明細書中に記載している。特定の被験体が本明細書中に記載するサブグループの1つ又は複数に分けられる可能性もある;本明細書中に記載するサブグループの1つに分けられる被験体への本発明によるポリペプチドの投与は、本発明中に記載するサブグループの2つ又はそれ以上に分けられる被験体への本発明によるポリペプチドの投与と等しく本発明により含まれる。
本発明は、創傷身体表面の特定の原因に限定されない。例えば、糖尿病の原因は、非糖尿病の原因と同様に本発明中に含まれる。
創傷身体表面は、身体の任意の1つ又は複数の部分にありうる。好ましいのは、四肢、例えば腕(手を含む)及び脚(足を含む)などの創傷身体表面であるが、しかし、胴体又は頭部又は身体の他の部分の創傷身体表面が、本発明のポリペプチドの投与に同様に供されうる。一部の実施形態では、創傷身体表面は脚又は足であり、及びより好ましくは足である。そのような実施形態は、糖尿病の被験体において高頻度であるが、しかし、そのような特定の創傷身体表面への投与は、糖尿病の被験体に限定されない。
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、手術を受けた被験体への投与用である。したがって、本発明によるポリペプチドは、1つ又は複数の術後合併症(例えば床ずれなど)を処置又は予防するため、ならびに/あるいは外科的創傷を処置するために適している。
好ましくは、創傷身体表面は少なくとも1つの潰瘍を含む。本発明によれば、ポリペプチドは、創傷身体表面の少なくとも一部に投与してもよい。「の少なくとも一部」は、本明細書中で使用するように、0%〜100%の間、例えば10%〜90%の間、20%〜80%の間、30%〜70%の間、40%〜60%の間、及び約50%の任意の比率を含む;このように、ポリペプチドは、創傷身体表面の全体又はその任意の部分に投与してもよい。場合により、投与はまた、創傷身体表面に隣接する皮膚領域を含む。
好ましくは、皮膚科障害は少なくとも1つの潰瘍を含む。本発明によれば、ポリペプチドは、1つの潰瘍の少なくとも一部に投与してもよい。「の少なくとも一部」は、本明細書中で使用するように、0%〜100%の間、例えば10%〜90%の間、20%〜80%の間、30%〜70%の間、40%〜60%の間、及び約50%の任意の比率を含む;このように、ポリペプチドは、潰瘍の表面全体又はその任意の部分に投与してもよい。場合により、投与はまた、潰瘍に隣接する皮膚領域を含む。
真性糖尿病は、多様な臓器(皮膚を含む)に影響を及ぼす一般の衰弱性疾患である。現在、1型糖尿病及び2型糖尿病の両方の真性糖尿病を伴う患者の30〜70%が、彼らの生涯の間のある時点で真性糖尿病の皮膚合併症を呈すると推定されている。そのような理論的な考慮(本発明を任意の様式において限定しない)に無関係に、糖尿病を検出するための方法は当技術分野において周知である。糖尿病を検出する方法は、一実施形態では、本発明の一部ではないが、しかし、それらは、皮膚科障害(例えば本明細書中に記載するものなど)に苦しむリスクのある被験体サブグループを決定する際に役立ち、及びこれは、本発明によるそのような皮膚科障害の処置又は予防から利益を得うる。一部の実施形態では、本発明による薬剤は、神経障害、特に末梢神経障害などに苦しむ糖尿病の被験体への投与用である。真性糖尿病などの健康状態を伴うヒトにおいて神経障害を検出し、足潰瘍の発生を予測するための方法が公知である(例、限定しないが、WO/2010/128519 A1)。
本発明によるポリペプチドは、糖尿病被験体における皮膚病変、好ましくは、そのような被験体における真皮の少なくとも部分的な切除、及び場合により真皮の切除により特徴付けられる皮膚病変に投与してもよい。一実施形態では、創傷身体表面は、病変、特にそのような被験体の皮膚の病変である、又はそれを含む。好ましくは、投与は、糖尿病の被験体における潰瘍、特に足潰瘍への投与を含む。
糖尿病性潰瘍、特に糖尿病性足潰瘍は、真性糖尿病の主要な合併症である。本発明の文脈内では、用語「糖尿病性潰瘍」は、潰瘍が糖尿病の被験体における潰瘍であるという正確さを別として、特に限定的ではない。一部の推定によれば、糖尿病の被験体は、非糖尿病と比較し、非外傷性切断の5〜15倍高いリスクを有しうる(例:WO/2003/075949 A1)。未処置である又は成功裏に処置されなかった場合、糖尿病性足潰瘍は一部の被験体において治癒が困難でありうる、及び、特に他の合併症又は障害(例えば感染など)を伴う場合は切断さえ要求しうる。実際に、真性糖尿病は複数の臓器系に影響を及ぼしうる。真性糖尿病の皮膚科症状は、審美的に懸念されるものから、未処置では生命を脅かしさえあるものまで、種々の健康への意味を有する。真性糖尿病の皮膚科的な意味が、例えば、Rosen et al., 2000, Endotext, De Groot et al., Eds,, South Dartmouth (MA, USA), MDText.com, Inc.により記載されている。本発明は、糖尿病のそのような皮膚科的な意味に処置及び/又は予防を提供する。
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、手術を受けた糖尿病の被験体への投与用である。したがって、本発明によるポリペプチドは、糖尿病の被験体における1つ又は複数の術後合併症(例えば床ずれなど)を処置もしくは予防するため、及び/又は外科的創傷を処置するために適している。
一般的に、糖尿病性潰瘍、特に糖尿病性足潰瘍、ならびに床ずれ及び大きく/深い外科的創傷は、恐らくは含まれる領域の大きなサイズの結果として、投薬下でさえ治癒するのが困難でありうる。これらの創傷が時間内に処置されない場合、それらは悪化し、及びその後、不治になり、生命を脅かしうる。本発明は、糖尿病のそのような皮膚科的な意味に処置及び/又は予防を提供する。実際に、本発明によれば、効果的な医学的処置は、患者がこれらの皮膚合併症から回復するのを助けるだけでなく、しかし、また、患者をより良い生活の質、低下した医療又は費用、あるいは延長した寿命にさえ導きうる。
本発明はまた、糖尿病において、及び非糖尿病の被験体において、大きなサイズの創傷身体表面、特に潰瘍を処置するために適している。一部の実施形態では、本発明は、5mm又はそれ以上、例えば1cm又はそれ以上などの直径を伴う大きな創傷身体表面の処置のために適している。創傷身体表面のさらなる詳細(創傷身体表面の直径の特定の実施形態を含む)を本明細書中で上に記載している。
このように、本発明は、現在の処置方法を上回る利点を提供し、それはしばしば、大面積の創傷を処置するための効果的な方法を提供することができないであろう。本発明は、糖尿病の被験体及び非糖尿病の被験体において、そのような皮膚科的な意味(大面積の創傷を含む)に処置及び/又は予防を提供する。
本発明によれば、ポリペプチドは、圧迫損傷(慢性圧迫損傷を含む)の処置又は予防のために適している。圧迫損傷は、特に、褥瘡(pressure ulcer)、褥瘡(pressure sore)、褥瘡(decubitus ulcers)、及び床ずれを含む。
好ましい実施形態では、本発明による薬剤は、潰瘍の処置又は予防における使用のためであり、及びその目的のために、潰瘍に投与される。本発明によれば、ポリペプチドが投与される潰瘍は、好ましくは、糖尿病性潰瘍、外傷性潰瘍、外科的潰瘍、褥瘡、慢性潰瘍、及びこれらの潰瘍のいずれかの組み合わせからなる群より選択される。特定の実施形態では、潰瘍は、糖尿病性外傷性潰瘍、糖尿病性外科的潰瘍、糖尿病性褥瘡、糖尿病性慢性潰瘍、外傷性糖尿病性潰瘍、外傷性外科的潰瘍、外傷性褥瘡、外傷性慢性潰瘍、慢性外科的潰瘍、慢性褥瘡、及び他の潰瘍より選択される。一部の実施形態では、潰瘍は、糖尿病の被験体における外傷性潰瘍、外科的潰瘍、褥瘡、及び慢性潰瘍より選択される。一部の実施形態では、潰瘍は、非糖尿病の被験体における外傷性潰瘍、外科的潰瘍、褥瘡、及び慢性潰瘍より選択される。
本発明は、1つの潰瘍を有する被験体に、又は複数の潰瘍を有する被験体にも限定されない。複数の潰瘍を有する被験体の中で、本発明は、それらの潰瘍のうちの1つだけの処置に、又はそれらの潰瘍の特定の数の処置に、又はそれらの潰瘍の全ての処置に限定されない。このように、用語「潰瘍(ulcer)」及び「潰瘍(ulcers)」は、本開示における単数形態又は複数形態でのそれらの使用に非依存的であり、全てのそれらの実施形態を明示的に包括的であり、被験体での任意の特定の数の潰瘍又は処置されている任意の特定の数の潰瘍に限定されない。
糖尿病における足潰瘍は、神経障害(神経障害性潰瘍)、末梢血管疾患(虚血性潰瘍)、又はその両方(神経虚血性潰瘍)のいずれかに関連付けられることが確立されているが、最終的な病因経路はこれらの主要なリスク因子及び他の原因因子(例えば外傷など)の組み合わせを含みうる。このように、一実施形態では、本発明のポリペプチドは、虚血性潰瘍(虚血性足潰瘍を含む)の予防及び/又は処置用である。代替の実施形態では、本発明のポリペプチドは、神経障害性潰瘍(神経障害性足潰瘍を含む)の予防及び/又は処置用でありうる。最後に、本発明のポリペプチドは、神経虚血性潰瘍(神経虚血性足潰瘍を含む)の予防及び/又は処置用でありうる。全ての前述の潰瘍は、場合により糖尿病性潰瘍であるが、これは必要条件ではない。
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、虚血に苦しんでいる被験体に投与される。虚血は局所的又は全身的でありうる。一部の実施形態では、本発明による投与は、被験体における虚血を低下させることができる。虚血の低下は、局所的又は全身的でありうる。
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、神経障害に苦しんでいる被験体に投与される。好ましい実施形態では、本発明による薬剤は、神経障害(特に末梢神経障害など)に苦しんでいる被験体への投与用である。そのような被験体は、糖尿病又は非糖尿病の被験体でありうる。実際に、糖尿病性潰瘍患者の大多数は、基礎となる神経障害を有することが報告されている(Ndip et al., 2012, Int. J. Gen. Med., vol. 5, p. 129-134)。このように、好ましい実施形態では、本発明によるポリペプチドは、神経障害に苦しんでいる糖尿病の被験体に投与される。神経障害は局所的又は全身的でありうる。一部の実施形態では、本発明による投与は、被験体における神経障害を低下させることができる。神経障害の低下は、局所的及び/又は全身的でありうる。一実施形態では、神経障害の低下は、本発明のポリペプチドが投与される領域における神経障害の低下を含む。一実施形態では、神経障害の低下は、本発明のポリペプチドが投与される臓器における神経障害の低下を含む。
本発明による処置又は予防は、本発明のポリペプチドの投与、好ましくは局所投与により行ってもよい。一部の実施形態では、投与は病院で行われる。一部の実施形態では、処置は病院で行われない。
場合により、しかし、相互に排他的ではないが、皮膚科障害は、少なくとも1つの火傷又は機械的損傷を含む。このように、本発明はまた、火傷及び機械的損傷の処置又は予防を含み、それにより、そのような損傷の処置は、予防よりも実際的により意味がある。
好ましくは、本発明のポリペプチドが投与される哺乳動物、好ましくは、ヒトは、真性糖尿病に苦しんでいる、又は真性糖尿病に苦しむ素因を有する;それぞれの被験体は、本明細書中では「糖尿病の被験体」として言及する。典型的な実施形態では、真性糖尿病は、1型真性糖尿病及び2型真性糖尿病の間で選択する。
足潰瘍及び他の皮膚科障害は、糖尿病の被験体において一般的である。そのような他の皮膚科障害は、本発明に基づいて処置及び/又は予防することができる。糖尿病の被験体における足潰瘍の主な原因の1つは神経障害(神経損傷)であり、足への損傷(例えば切り傷、打撲傷、及び圧迫など)を特定するのを困難にする。
このように、一実施形態では、ポリペプチドは、足潰瘍を伴う被験体に投与される。一実施形態では、ポリペプチドは、糖尿病性足潰瘍(DFU)を伴う被験体に投与される。実際に、足潰瘍及びそれらに付随する合併症は、糖尿病を伴う被験体において高頻度であり、その大多数は基礎となる神経障害を有する(Ndip et al., 2012, Int. J. Gen. Med., vol. 5, p. 129-134)。そのような潰瘍はまた、糖尿病性神経障害性足潰瘍として言及される。このように、好ましくは、ポリペプチドは、糖尿病性神経障害性足潰瘍を伴う被験体に投与される。
場合により、本発明によるポリペプチドの投与はまた、被験体、特に被験体の身体表面の美的外観を改善する態様を含む。一部の実施形態では、創傷閉鎖は、本発明による投与の結果として達成される。一部の実施形態では、瘢痕形成は最小限である。このように、本発明による投与はまた、未処置の被験体と比較し、処置された被験体に美容上の利点を提供する。従って、本発明はまた、被験体を美容的に処置する方法に関し、それにおいて、この方法は、配列番号3又は4によるポリペプチドの投与を含む。
別の実施形態では、本発明による薬剤は、皮膚上の癌(例えば、限定しないが、血管腫など)、及び/又はそのような癌に関連付けられる皮膚障害の処置又は予防用である。
さらなる実施形態では、本発明による薬剤は、被験体における遺伝的障害に起因する、又は被験体における遺伝的障害により影響される皮膚科障害の処置又は予防用である。
投与
本発明は、被験体への投与のための異種ポリペプチドを提供する。
好ましくは、ポリペプチドは局所投与用である。このように、好ましくは、本発明のポリペプチドは、皮膚に、又は皮膚が傷つけられている、又は存在しない場合、皮膚が傷つけられていない、又は存在しない場合に皮膚が見出されうる部位の身体の表面に投与される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、表皮上に投与される。一部の実施形態では、ポリペプチドは真皮上に投与される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、表皮の下に通常見られる組織(例えば、限定しないが、皮下領域など)に投与される。
より好ましくは、ポリペプチドは創傷身体表面上に投与される。言い換えれば、本発明によるポリペプチドは、好ましくは局所投与され、より好ましくは、皮膚障害(例、潰瘍)の部位上に局所投与される。
本発明による投与は、典型的には、被験体の手術を含まない。一実施形態では、本発明のポリペプチドの投与は、専門的な医学的専門技術を行うことが要求され、要求される専門的なケア及び専門技術を用いて行われた場合でさえ、実質的な健康リスクを伴う、身体に対する実質的な身体的介入を表す侵襲的工程を含まない、又は包含しない。対照的に、より典型的な実施形態では、本発明のポリペプチドの投与、特に局所投与は、一般的に、被験体にとって安全であると考えられ、及び、従って、ポリペプチドは、特にヒト被験体の場合において、被験体自身により投与されうる。
場合により、潰瘍は、投与の前及び/又は投与の間及び/又は投与の後に創傷ドレッシング材により覆われる。利用可能な莫大に多様な型の創傷ドレッシング材は、本発明により限定されない。このように、任意の創傷ドレッシング材は、技術的に明らかに不適切ではない場合に使用してもよい。一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、創傷ドレッシング材の適用と同時に投与される;場合により、創傷ドレッシング材は、場合により、投与の前に創傷ドレッシング材に適用される水性培地の形態において本発明のポリペプチドを含む。
好ましくは、ポリペプチドは、足首の下の前記被験体の足の上に足潰瘍を伴う被験体に投与される。
一実施形態では、ポリペプチドは単回投与において投与される。
代替の、及びより好ましい実施形態では、ポリペプチドは反復投与される。特に好ましい実施形態では、ポリペプチドは、1日当たり1回から5回反復投与される。一実施形態では、ポリペプチドは、1日当たり1回投与される(実施例3も参照のこと)。一実施形態では、ポリペプチドは、1日当たり2回投与される(実施例5も参照のこと)。一実施形態では、ポリペプチドは1日当たり3回投与される。一実施形態では、ポリペプチドは1日当たり4回投与される。一実施形態では、ポリペプチドは1日当たり5回投与される。ポリペプチドは、ヒト被験体に1日当たり2回投与されることが特に好ましい。全ての前述の投与は、本明細書中で開示するように、好ましくは、数日の経過にわたり反復される。例えば、ポリペプチドは、3日から30日、好ましくは7日から14日の期間にわたり、及び好ましくはこれらの日の各々当たり1回から5回反復投与されうる。
一実施形態では、ポリペプチドは、創傷身体表面の閉鎖まで反復投与される。あるいは、ポリペプチドは単回投与において投与され、及び投与はその単回投与後に中止される。あるいは、ポリペプチドは、3日から30日、好ましくは7日から14日の期間にわたり反復投与される。場合により、投与は、前記間隔の完了後に中止される。
一部の実施形態では、薬剤は、それが侵害受容性線維(神経)と直接接触するような様式における投与薬剤である。一部の実施形態では、薬剤は、それが、完全に露出された侵害受容性線維(神経)と直接接触するような様式における投与薬剤である;侵害受容性線維(神経)は、創傷身体表面の場合において典型的であるように、皮膚の欠如の場合において完全に露出されていると考えられる。一部の実施形態では、薬剤は、それが、活性化過剰の侵害受容性線維(神経)と直接接触するような様式における投与薬剤である;侵害受容性線維(神経)は、皮膚病変の結果として活性化過剰であると考えられる。一部の実施形態では、薬剤は、それが、活性化過剰の侵害受容性線維(神経)と直接接触するような様式における投与薬剤である。好ましくは、特にそのような実施形態では、薬剤は痛覚過敏症候群(疼痛)を起こさない。そのような特性を伴う薬剤は、以前には医学界で自由に使えなかった。この及び他の理由のため、本発明は主要な利点を提供する。
用量
本明細書中に記載する薬剤及び組成物は、有効量において投与される。本発明によれば、「有効量」は、単独で、又はさらなる用量と一緒に、所望の反応又は所望の効果を達成する量又は用量である。特定の障害の処置の場合では、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関連する。これは、疾患の進行を遅くすること、及び好ましくは、疾患の進行を妨害又は逆転させることを含む。疾患の又は状態の処置における所望の反応はまた、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防を含みうる。一部の実施形態では、所望の反応は、局所的及び/又は全身的に、障害の症状の完全な治癒を含む。
本明細書中に記載する薬剤又は組成物の有効量は、処置される状態又は障害、障害の重症度、薬剤が投与される被験体の個々のパラメーター(例えば年齢、生理学的状態、付随する状態(存在する場合)など)、サイズ及び重量、処置の期間、付随する治療の型(存在する場合)、特定の投与の経路及び他のパラメーターに依存する。したがって、本明細書中に記載する薬剤の投与される用量は、種々のそのようなパラメーターに依存しうる。患者における反応が初期用量を用いて不十分である場合では、より高い用量(又は、異なる、より局所的な投与の経路により達成される効果的により高い用量)を使用してもよい。
本発明によれば、皮膚障害(例えば慢性皮膚潰瘍及び火傷など)の処置及び/又は予防のためのヒト被験体への投与のための治療用薬剤の投与のための、適していて、治療上有効な投与量は、皮膚障害(例えば慢性皮膚潰瘍及び火傷など)の処置及び/又は予防のために、げっ歯類の被験体、特にマウスへの投与のための治療用薬剤の投与のための実験的に決定された、適した、治療上有効な投与量に基づいて決定することができる。ガイダンスは、2006年に米国保健福祉省食品医薬品局により発表された「Guidance for Industry Chronic Cutaneous Ulcer and Burn Wounds - Developing Products for Treatment」において入手可能である。
動物の創傷モデル(実施例3及び4)は、薬理学的応答を確立する、ならびに創傷処置産物の潜在的な毒性を査定する際に役立つ。一部の実施形態では、被験体に投与される用量は、実施例3中又は実施例4中又は実施例5中に開示する用量である。
好ましくは、投与されるポリペプチドの用量は、処置される創傷身体表面の面積に基づいて決定される。好ましくは、決定は処置の開始時に行われる。一実施形態では、投薬は、そのような後の投与の時点での創傷身体表面の面積に依存して、後の投与のために調整される。代替の実施形態では、投薬は、後の投与のために調整されず、そのため、投与の用量は、投与の開始(最初の投薬)時に処置される創傷身体表面の面積にのみ依存し、及びその後の投与量は最初の用量に対応する。
一実施形態では、用量/各々の用量は、処置される創傷身体表面のmm2当たり0.3〜6μg(0.3〜6μg/mm2)のポリペプチドの量を有する。
場合により、本発明による全ての実施形態では、用量は、処置の時点での創傷身体表面(例、潰瘍)の実際のサイズに基づいて計算される。言い換えれば、用量は、投与のすべての時点で、その時点での創傷身体表面(例、潰瘍)の実際のサイズに基づく計算(再計算)に供されうる。
ポリペプチドを得るためのプロセス
一実施形態では、配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドは、生物学的供給源から入手できる。場合により、配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドは、組換え発現により入手できる。その目的のために、それぞれのポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームが、組換えタンパク質の供給源、例えば、タンパク質発現のための宿主細胞又は無細胞系中に導入される。実際に、ヒトNGFがインビボで微量だけ産生されることを考慮すると、マウスNGFは通常、種々のタンパク質の異種混合物として産生され(WO 2000/022119 A1を参照のこと)、及び本発明のポリペプチドは非天然であり、このように、インビボでは全く産生されず、本発明のポリペプチドを産生する最も意味のある可能性は、最先端技術における野生型NGFについての等価の提案(WO 2000/022119 A1、WO 2008/006893 A1;Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303、US 2018/0086805 A1)による組換え発現による。しかし、哺乳動物への投与のために十分な純度グレードでそのようなポリペプチドを得ることは、持続する課題であった。この課題は、本明細書中に詳細に開示されているように、本発明者らにより克服された(また、実施例1及び2を参照のこと)。
好ましくは、本発明によるポリペプチドは、細菌中での組換え発現により入手できる。より好ましくは、本発明によるポリペプチドは、細菌中でのサイトゾル組換え発現により入手できる。一般的に、細菌細胞、特に大腸菌は、大量の組換えタンパク質の組換え産生が可能であるが、しかし、多くの他の組換え発現遺伝子についての場合と同様に、細菌中での組換えNGF及び類似のポリペプチドの産生は、生物学的に不活性な翻訳産物をもたらし、それは次に、凝集体の形態において細胞(サイトゾル)中に蓄積される(いわゆる封入体(IB)(WO 2000/022119 A1;US 2018/0086805 A1)。NGFとは対照的に、プロNGFはかなり不安定であることが公知であり、低い回収率でのリフォールディング及び精製のために高い努力が要求され、それによって細菌中でのプロNGFを介したNGF産生のプロセスは比較的困難で高価になる。このように、細菌産生されたNGF及び類似の細菌産生されたポリペプチドに関連付けられる主な困難は、それぞれのプロ形態を介して、組換えタンパク質の折り畳み、プロセシング、及び精製に関する。これらの問題は現在解決されている(実施例1及び2を参照のこと)。結果として、配列番号3及び配列番号4のポリペプチドは、哺乳動物(ヒトを含む)への投与のために適した純度グレードで入手可能になる。
好ましくは、本発明によるポリペプチドは、プロ配列と一緒に発現される。限定しないが、適したプロ配列は、野生型ヒトNGFのプロ配列(配列番号1のアミノ酸位置18から121)であり、典型的には、配列番号3又は4のポリペプチドのN末端に融合されている。野生型NGFについて、成熟NGFの一部ではなく、故にNGFの生物学的機能のために要求されないが、共有結合的に付着されたプロ配列の存在は、成熟部分(ベータ−NGF)の随伴性の二硫化物結合形成を伴う封入体からの組換えNGFのリフォールディングを促進することが示された。このように、共有結合的に付着されたプロ配列の存在は、封入体からの成熟NGFのインビトロでのリフォールディングと比較した場合、リフォールディングの収量及び比率に正に影響する(Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303)。特定の理論に拘束されることを望まないが、同じことがもっともらしく、本明細書中では配列番号3及び4のポリペプチドについて仮定されている。
このように、本発明によるポリペプチドが封入体中で産生された場合、正確な折り畳みが要求され、及び、これは通常、共有結合的に付着されたプロ配列からの切断のように、翻訳後に達成される;折り畳み、切断、及び精製のための洗練された方法が、特に野生型ヒトNGFについて過去に提案されてきた。注目すべきことに、NGFに関する公開された試験の大半が、Rattenhollら(2001, Eur. J. Biochem, vol. 268, p. 3296-3303)により以前に確立された一般的なリフォールディングレジームを適用している。この最初の試験内では、タンパク質のリフォールディングのいくつかのパラメーター(例、温度、リフォールディング時間、リフォールディング反応のpH、アルギニン、グルタチオン、及びタンパク質濃度)が詳細に研究され、及びリフォールディング効率に対するそれらの効果が査定された。Rattenhollらによるプロトコールは、原核生物中での組換え産生後に封入体から入手できる、非常に乏しい溶解性を有する、プロ形態の再天然化に頼り。それにより、プロNGFは変性薬剤の溶液中に変性濃度で可溶化され、変性していない、又は弱く変性している溶液中に移され、溶解性が維持され、溶解した変性プロNGFが生物学的に活性な立体構造(天然NGFにおけるようなジスルフィド結合の形成を含む)をとり、ならびに、その後、NGFが精製され、及びプロ配列がタンパク質分解的に除去される(WO 2000/022119 A1;Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303)。注目すべきことに、本試験内では、低いタンパク質濃度は、より高いタンパク質濃度と比較し、正しく折り畳まれた産物のより高い比収率に導くことが見出された。リフォールディング反応の約50mg/リットルの例示的なタンパク質濃度は、約25%の正しく折り畳まれたプロNGFの比収率をもたらしたが、この画分は、500mg/リットルのタンパク質濃度で10%に低下した。それに基づき、Rattenhollらは、リフォールディング溶液中のタンパク質濃度が非常に低くなければならないことを示唆している:Rattenhollらによると、リフォールディング反応の1リットル当たり15〜20mgの正しく折り畳まれたタンパク質が収量として期待される。しかし、これは、さらに数百mgの組換えタンパク質の精製のためのスケールアップ(例、実験室規模を超える)を要求しうる
ヒトプロNGFはプロテアーゼフューリン(Arg1−Ser2−Lys3−Arg4; R1S2K3R4)の天然切断部位を含み、及びフューリンはインビボで、その部位でプロNGFを切断するが、フューリンは商業的に関連する純度又は量で入手可能ではない。本発明によれば、本発明によるポリペプチドは、プロ配列と一緒に発現される場合、例えば、 大腸菌においては、好ましくは、商業的に入手可能であるプロテアーゼトリプシン(EC 3.4.21.4)により切断される。実際に、野生型NGFについて、トリプシンは満足のいく生物学的に活性な、成熟NGFをもたらし、それは最終的に精製することができることが報告されており(Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303)、及び組換え発現されたプロNGFのトリプシンベースのタンパク質分解は、その間に、他により採用されてきた(例、D’Onofrio et al., 2011, PLoS One, vol. 6, e20839)。しかし、後に、ベータNGFを産生するためのトリプシンを用いた野生型プロNGFの切断は、いくつかの欠点に関連付けられることが示された。なぜなら、少量のトリプシンは非効率的な切断に導きうるのに対し、多量のトリプシンは切断の選択性をさらに減少させうるからである。なぜなら、トリプシンは任意のアルギニン残基及びリジン残基(R残基及びK残基)をC末端で切断することが可能であり、トリプシンによるR1S2K3R4を含むプロNGFの消化により、いくつかの代替の消化産物が得られうる;それにより、切断酵素としてのトリプシンの使用は、正しく切断されたNGFの非常に低い収量に、ならびに精製及び収量の問題(なぜなら、異なる切断産物は、標準的な条件下では経済的に分離されないため)に導きうるからである。1つの解決策として、プロNGFの変異体を発現することが提案されたが、それにおいて、プロペプチドのプロテアーゼ切断部位R1S2K3R4が、ヒト野生型プロNGF配列(配列番号1)の位置101及び103に対応する少なくとも位置R1及びK3で、別のアミノ酸により置換されている(WO 2013/092776A1)。一例では、R1及びK3はそれぞれ、バリン(V)及びアラニン(A)により置換され、本来のフューリン切断部位R1S2K3R4をV1S2A3R4に変換し、それにおいてトリプシンは、R4のC末端だけを特異的に切断することが可能であり;それぞれのプロNGFのトリプシン媒介性切断は、「VSAR方法」として言及することができる。WO 2013/092776 A1は、本発明による配列番号3又は4のポリペプチドについてサイレントであるが、VSAR方法は、プロNGFムテインの特定の変異体に適用可能であると最初に提案されたが、タンパク質分解条件は注意を伴い滴定する必要があると報告された(US2018/0086805A1)。本発明に達する経過において、本発明者らは、VSAR技術が、より早期の提案に反して、満足のいく純度での本発明のポリペプチドの組換え産生に関連付けられる純度の問題を満足に解決しないことを見出した。実際に、宿主細胞タンパク質(HCP)からだけでなく、しかし、また、トリプシン(又は切断のために使用される他のプロテアーゼ)からの組換え発現されたベータ−NGF又はそのムテインの精製は依然として課題である;言うまでもなく、ポリペプチドの貯蔵の間でのタンパク質分解を回避するために、タンパク質分解酵素(トリプシンなど)が医薬タンパク質の最終調製物に存在しないことが要求されうるが、ポリペプチドは、本発明によれば、それを被験体に投与する時点で実質的に純粋であり、及び分解されない。本発明者らは、本明細書中に記載するように、この課題を解決している。このように、本発明は、配列番号3又は4によるポリペプチドを高純度で利用可能にし、このように、トリプシン及び/又はポリペプチドの分解産物を本質的に含まないようにする。NGF(例、WO2013092776 A1)の及び配列番号4のポリペプチド(例、Malerba et al., 2015, PLOS One, vol. 10, e0136425)の産生のための特定の方法が以前に記載されているが、本発明者らは、驚くべきことに、以前に公開されたプロセスが、それぞれのポリペプチドを高純度で得るために不十分であることを発見した。これらの不十分さの解決策として、本発明者らは、本明細書中で詳細に記載するように、新たなプロセス及び関連する態様に達した。
本発明により、例えば、宿主細胞において組換え発現から配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドを得るためのプロセスは精製を含みうる。精製は、最も広い意味において、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが、他のタンパク質(例えば宿主細胞タンパク質など)を含む他の分子から分離されることを意味する。このように、精製は、1つ又は複数の他の分子(他のタンパク質、例えば宿主細胞タンパク質、プロテアーゼ(例、トリプシン)及び/又は本発明によるポリペプチドの分解産物などを含む)からの分離を含みうる。
本発明による配列番号3のポリペプチド及び配列番号4のポリペプチドの産生のためのプロセスは、好ましくは以下の工程を含む:
(a)配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの前駆体を得ること;
(d)精製、
及び工程(d)における精製は、典型的には、混合モード固定相での精製を含む。このように、一実施形態では、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、組換え発現及び精製により入手でき、それにおいて精製は、混合モード固定相での精製を含む。用語「混合モード固定相上」は、広く理解されるべきであり、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドあるいはこれらのいずれかの前駆体を含む混合物が、他の分子種と一緒に、例えば、クロマトグラフィー又は他の適したプロセス工程により混合モード固定相に曝露されることを意味する。実際に、好ましくは、配列番号3又は配列番号4のポリペプチド又はこれらのいずれかの前駆体を他の分子種と一緒に含む混合物がクロマトグラフィーに供され、工程(d)における精製は、混合モードクロマトグラフィーによる精製を含む。好ましくは、混合モードクロマトグラフィーは、荷電基、好ましくは負荷電基、ならびに芳香族基及び/又は疎水性基を有する固定相の使用を含む。
本発明による最も広い意味での精製は、その配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが、他の分子種(他のタンパク質(例えば宿主細胞タンパク質、前駆体、及び/又は分解産物など)を含む)から少なくとも部分的に分離されていることを意味する。結果として、少なくとも部分的に精製された配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが入手できる。他の分子種は、場合により、廃棄されうる、又はされないであろうが、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが好ましくは得られ、精製の結果として保持される。
好ましくは、混合モードクロマトグラフィーは、荷電基、好ましくは負荷電基、ならびに芳香族基及び/又は疎水性基を有する固定相の使用を含む。
これらの工程の各々は、それ自体がいくつかの作用を含みうるが、それらは、単純さのために、工程として言及することもできる。例証のために、及び以下に詳述するように、工程(d)は、例えば1を上回る固定相で、1を上回る精製工程を含みうる。
1つ又は複数のプロセス工程に関して本明細書中で使用する任意の文字又は数字、例えば(a)、(b)、(c)、(d)、(d1)、(d2)などは、限定的としてではなく、しかし、むしろ、参照用として理解されるべきである。本発明によるプロセス又は使用における事象の順序は、アルファベット順の文字又は番号順の数字により限定されうると理解すべきではない。上記にもかかわらず、本発明によるプロセス又は使用における事象の順序は、本明細書中に記載する順序であることが強く好ましい。
混合モードクロマトグラフィーの追加の態様、特に適した固定相を、以下でいくらかさらに詳細に記載するが、しかし、これらの態様は一般的に、本発明に適用可能である。このように、特に、工程(d2)における混合モードクロマトグラフィーのために特に有用であると以下に記載する、全てのそれらの固定相(それらの全ての実施形態を含む)は一般的に、本発明による配列番号3のポリペプチド及び/又は配列番号4のポリペプチドの精製のために有用であり、ならびに全ての型の実施形態(例えば(d1)捕捉クロマトグラフィーの工程を伴う又は伴わない組み合わせなど)において使用することができる。実際に、実施例2Bには、一部の利点が、最先端技術によるプロトコールのバリエーションにおいて混合モードクロマトグラフィーを使用することにより達成することができることを記載している。
場合により、配列番号3のポリペプチド又は配列番号4のポリペプチドは、(再)折り畳み及び/又はクロマトグラフィー精製及び/又はプロテアーゼ消化、ならびに場合により、最終タンパク質濃度への調整及び/所望の製剤の調製を含むプロセスにおいて入手できる。
このように、本明細書中に開示するような、それを必要とする被験体への配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの投与はまた、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの工業的に関連する純度及び収量を通じて可能になり、それは、本明細書中の開示に基づいて当業者に利用可能である。このように、本開示はまた、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの産生のためのプロセスを記載している。
本発明による配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの産生のためのプロセスは、好ましくは以下の工程を含む:
(a)例えば、組換え発現により、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの前駆体を得ること、
(d)精製、それにおいて精製は、混合モード固定相での精製を含む。
また、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの前駆体が、以下の工程に供されることが本発明において好ましい:
(c)プロテアーゼへの曝露。
前記曝露は、典型的には、工程(d)の前に行われる。
本発明のプロセスはまた、好ましくは、クロマトグラフィー精製がプロテアーゼへの曝露の前に実施されないことを特徴とする。実際に、本発明者らは、驚くべきことに、プロテアーゼを用いた消化が、宿主細胞から得られた粗画分中でも、即ち、クロマトグラフィー精製がプロテアーゼへの曝露の前に実施されなかった場合でも、良好に及び効率的に作用することを見出している。
好ましくは、(a)を得る工程は、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの前駆体の発現、好ましくは組換え発現を含む。より好ましくは、組換え発現は宿主細胞中である。宿主細胞を培養した後、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが細胞培養物の画分中で得られる。画分は、宿主細胞からなりうる(即ち、タンパク質が宿主細胞から実質的に分泌されない場合において)。これは、例えば、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドが封入体中で及び/又は他には、細胞内区画(サイトゾルを含む)中で産生される場合に該当する。適した宿主細胞は、原核生物及び真核生物の宿主細胞より選択することができるが、原核生物の宿主細胞が、典型的な実施形態において好ましい。好ましい原核生物の宿主細胞は、大腸菌(E.coli)、好ましくはE.coli Rosetat(DE3)を含む。一実施形態では、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、天然の立体構造以外の立体構造において、及び/又は凝集体において、最も好ましくは封入体において得られる。次に、好ましくは、本発明のプロセスは、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドを(再)折り畳みする工程(b)を含む。好ましくは、工程(c)は、工程(b)の後に行われる。
好ましくは、工程(c)において、プロテアーゼは、配列番号3又は配列番号4の(成熟)ポリペプチドが放出されるような様式において、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドを切断することが可能なプロテアーゼである。特定の実施形態では、前記プロテアーゼは、トリプシン、好ましくはブタトリプシンであり、場合により組換え発現される。
好ましくは、精製の工程(d)は、好ましくは連続した順番で以下の工程を含む:
(d1)捕捉、
(d2)研磨。
好ましくは、捕捉の工程(d1)は、クロマトグラフィー、好ましくはカラムクロマトグラフィーにより行われる。より好ましくは、捕捉の前記工程(d1)は、陽イオン交換クロマトグラフィー固定相又は混合モードクロマトグラフィー固定相を使用して行われる。さらにより好ましくは、捕捉の前記工程(d1)は、混合モードクロマトグラフィー固定相(それは好ましくはCapto MMCである)を使用して行われる。
好ましくは、研磨の工程(d2)は、クロマトグラフィー、好ましくはカラムクロマトグラフィーにより行われる。より好ましくは、研磨の前記工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー固定相を使用して行われる。さらにより好ましくは、捕捉の前記工程(d1)は、SPセファロース、好ましくは小さな粒子サイズを伴うSPセファロースを使用して行われる。SPはスルホプロピルについての略語である。
場合により、本発明によるプロセスは、最終タンパク質濃度への調整及び/又は所望の製剤の調製の追加工程を含む。結果として、本発明による組成物が入手できる。
言い換えれば、本発明は、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの調製のための混合モードクロマトグラフィーを提供する。混合モードクロマトグラフィーは、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの調製において有用である。好ましい実施形態では、その配列番号3又は配列番号4のポリペプチドの前駆体は、消化の目的のためにプロテアーゼに曝露され、及び混合モードクロマトグラフィーは、プロテアーゼへの曝露に続く工程において使用される。好ましい実施形態では、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドのクロマトグラフィー精製は、プロテアーゼへの前記曝露の前に実施されない。
ポリペプチドの純度
本発明のポリペプチドは、その天然状態において通常それに付随する成分を実質的又は本質的に含まない。本発明のポリペプチドは、投与される前に単離される。一実施形態では、「単離されたポリペプチド」は、細胞環境及び細胞外環境、例えば自然発生状態においてそれを囲む組織などから、例えば、それが発現された細胞(例えば宿主細胞など)から精製されたポリペプチドを指す。別の実施形態では、「単離されたポリペプチド」は、それぞれ、その天然の細胞環境からの、及びポリペプチドが通常存在する環境の他の成分との会合からの、ポリペプチドのインビトロ単離及び/又は精製を指す。
好ましくは、本発明による使用のための配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、実質的に不純物を含まない。そのような有利に純粋な配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、本明細書中に記載するように入手できる。
本明細書中に記載する配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質として見なされる。
本発明の特に有利な実施形態では、本発明によるポリペプチドは、前記ポリペプチドの分解産物を本質的に含まずに得られる。特に、本発明者らは、最先端技術における野生型ヒトNGFに関する報告とは反対に、トリプシンへの配列番号4の前駆体の曝露が、精製によってトリプシンが完全に除去されない場合(des−nona変異体、データは示さず)、精製の前又は後のいずれかで、配列番号4のアルギニン(Arg、R)残基9のC末端で前記前駆体を固有に部分的に切断することを観察した。本発明において提供される特定の精製方法により、本発明によるポリペプチドは、トリプシン及び/又はdes−nona変異体を本質的に含まずに得ることができる。
好ましくは、上に記載するように入手できるポリペプチドは、ポリペプチドの分解物を本質的に含まない。特に、本開示によって、本発明のポリペプチドが、新たな、改善された純度グレードで入手可能になり、及びポリペプチドがそのような高純度で投与されることが好ましい。好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも90%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも91%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも92%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも93%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも94%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも95%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも96%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも97%の純度グレードにより特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも98%の純度グレードにより特徴付けられる。さらにより好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも99%の純度グレードにより特徴付けられる。
最も好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、99.0%を上回る純度グレード、例えば99.1%を上回る、99.2%を上回る、99.3%を上回る、99.4%を上回る、99.5%を上回る、99.6%を上回る、99.7%を上回る、99.8%を上回る、99.9%を上回る、などの純度グレードにより特徴付けられる。
本明細書中では、「純度グレード」は、一般的に、本発明のポリペプチド以外の生物学的材料の重量(w)に対する、本発明によるポリペプチドの重量(w)パーセンテージを指す。例証のために、一般的に、99.0%の純度グレードで、本発明のポリペプチドは、99.0単位(例、1.0mg)の相対量(重量)で存在し、及び本発明のポリペプチド以外の全ての生物学的材料の重量の合計は1.0単位(例、1.0mg)である。本発明のポリペプチド以外のそのような生物学的材料は、限定しないが、宿主細胞タンパク質、核酸、プロテアーゼ(例えば、例、トリプシンなど)(不活化されている又はされていない)、本発明のポリペプチドの分解産物、例えば及び生物学的起源の他の高分子を含む。特定の実施形態では、「純度」グレードは、本発明のポリペプチド以外のポリペプチドに対する純度を指す。例証のために、その実施形態では、99.0%の純度グレードで、本発明のポリペプチドは、99.0単位(例、1.0mg)の相対量(重量)で存在し、及び本発明のポリペプチドと同一ではない以下の全てのポリペプチドの重量の合計は1.0単位(例、1.0mg)である。本発明のポリペプチドの分解産物は、疑いの回避のために、「本発明のポリペプチドと同一ではないポリペプチド」中に含まれる。特定の分解産物はdes−nona変異体である(実施例1及び2を参照のこと)。
特に、ポリペプチドのdes−nona変異体を本質的に含まない。des−nona変異体は、ポリペプチドが本明細書中に開示する新たな方法により産生されない場合、本発明のポリペプチドを含むNGFの特定の変異体の産生に関連付けられる本発明のポリペプチドの以前に特徴付けられていない分解産物である(例、 実施例1及び2を参照のこと)。この文脈における「本質的に含まない」は、本発明による使用のための本発明のポリペプチドが、des−nona変異体に関して、99.0%を上回る純度グレード、例えば99.1%を上回る、99.2%を上回る、99.3%を上回る、99.4%%を上回る、99.5%を上回る、99.6%を上回る、99.7%を上回る、99.8%%を上回る、99.9%を上回る(全てが、des−nona変異体に関して)純度グレードにより特徴付けられることを意味することが意図される。最も好ましい実施形態では、des−nona変異体は検出不可能である、及び/又は存在しない。
また、本発明によるポリペプチドは、任意のプロテアーゼ(例えばトリプシンなど)を本質的に含まないことが好ましい。この文脈における「本質的に含まない」は、本発明による使用のための本発明のポリペプチドが、全てのプロテアーゼ(トリプシンを含む)の合計に関して、99.0%を上回る純度グレード、例えば99.1%を上回る、99.2%を上回る、99.3%を上回る、99.4%%を上回る、99.5%を上回る、99.6%を上回る、99.7%を上回る、99.8%%を上回る、99.9%を上回る(全てが、全てのプロテアーゼ(トリプシンを含む)の合計に関して)純度グレードにより特徴付けられることを意味することが意図される。最も好ましい実施形態では、トリプシンは検出不可能である、及び/又は存在しない。
そのような高純度グレードは、上記の実施形態では、規制当局により、改善された許容性に関連付けられ、本発明のポリペプチドを、哺乳動物の被験体(特にヒトを含む)における使用のための医薬として認定する。このように、本発明による純度グレードによって初めて、安全で信頼できる様式における創傷身体表面(ヒトの創傷身体表面を含む)、及び特に潰瘍への投与のためのこのポリペプチドの使用が可能になる。特にプロテアーゼ(トリプシン)に関する高純度グレードによって、非凍結形態においてもポリペプチドの保存が可能になる。
組成物
一部の実施形態では、本明細書中に記載する配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、加えて、1つ又は複数の担体及び/又は1つ又は複数の賦形剤を含む組成物中に含まれる。本明細書中で使用する用語「担体」は、有効成分の適用を可能にし、増強し、又は促進するために、有効成分と一緒に組み合わされる、天然又は合成の性質の有機成分又は無機成分を指す。本明細書中で使用する用語「賦形剤」は、本発明の医薬組成物中に存在しうる、及びそのような有効成分ではない全ての物質を示すことが意図される。
好ましくは、本発明による組成物は、賦形剤として少なくとも水を含む。一部の実施形態では、本発明による組成物は水性培地を含み、及びより好ましくは、本発明による組成物は水溶液の形態である。一実施形態では、ポリペプチドは水性培地中に含まれ、及び水性培地は哺乳動物の被験体に投与される。水性培地は、例えば、水溶液でありうる。水溶液及び他のそれぞれの組成物は、一部の実施形態では、水性培地中のNGFの精製から直接的に入手できる。例えば、本発明による薬剤が、精製により生物学的供給源からの精製により得られる場合、それぞれの水性組成物は、最後の精製工程、例えば、最後のクロマトグラフィーカラム(通常は研磨工程)からの溶出及び/又は濾過から直接的に入手できうる。あるいは、それぞれの組成物は、最終タンパク質濃度への調整及び/又は所望の製剤の調製の追加工程を通じて入手可能である。そのような追加工程は、例えば、本明細書中に記載するような清澄化又は濾過の工程、ならびに/あるいは1つ又は複数の賦形剤及び/又は1つ又は複数の担体の添加を含みうる。本発明において有用な例示的な組成物を、本明細書中に記載しているが、それに限定しない。
このように、本明細書中に記載する配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、組成物中、例えば、医薬組成物中に存在しうる。本明細書中に記載する組成物は、好ましくは無菌であり、好ましくは、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質としての配列番号3又は配列番号4のポリペプチド、及び場合により本明細書中で言及する又は言及しないさらなる薬剤を含む。組成物は任意の状態(例、 液体、凍結、凍結乾燥など)でありうる。
本明細書中に記載する組成物は、塩、緩衝物質、保存剤、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含みうるが、これらの全てが、好ましくは医薬的に許容可能である。用語「医薬的に許容可能な」は、毒性がない、及び/又は医薬組成物の有効成分の作用と相互作用しない何かを記載する。
本発明における使用のための適した緩衝物質は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、及び塩中のリン酸を含む。例えば、本発明のポリペプチドは、本発明の種々の態様の結果として、4.5〜6.5の間、好ましくは5.0〜6.0の間のpHを有する緩衝液中で入手できることが好ましい。一実施形態では、酢酸緩衝液は、そのような目的のための適した緩衝液であり、及び従って、特に好ましい。このように、一実施形態では、本発明のポリペプチドは、4.5〜6.5の間、好ましくは5.0〜6.0の間のpHを有する酢酸緩衝液中で得られる。
本発明による組成物中での使用のための適した保存剤は、当技術分野において公知のものを含み、その中には、例証のためであり、しかし、限定しないが、ベンジルアルコール、ベンザルコニウム及びその塩、M−クレゾール、フェノール、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールがある。
このように、本発明は、治療的使用のために、即ち、治療によるヒト又は動物の身体の処置の方法における使用のために、配列番号3又は配列番号4のポリペプチドを提供する。治療は、状態の予防及び/又は処置を含みうる。治療的使用についての可能性を考慮し、前記ポリペプチドはまた、医薬的に活性なタンパク質又はペプチドとして言及することができる。
場合により、本発明による投与は、少なくとも1つの抗菌薬剤(例えば抗生物質など)の投与を伴う。抗菌薬剤は、本発明によるポリペプチドを含む組成物の一部でありうる、あるいは、同じ又は異なる投与の経路により、同じ又は異なる部位に被験体に別々に投与されうる。
産業上の利用可能性。
本明細書中に記載する配列番号3又は配列番号4のポリペプチドは、多様な目的のために、例えば、本明細書中に記載する治療適用のために適している。
以下の実施例及び図面は、本発明の一部の好ましい実施形態を例証することが意図されており、特許請求の範囲により定義される、本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
実施例。
1を上回る実施例に共通する材料及び方法。
他に特定しない場合、以下の実験例は、具体的には、野生型ヒトNGFに関して、置換P61S R100E(「NGFP61S R100E」と呼ばれる、Malerba et al. PLOS One, 2015, vol. 10, e0136425、配列番号4)、ならびにそのプロ形態などにより特徴付けられる配列番号4のポリペプチドに関する。配列番号4のポリペプチドはまた、「NGFムテイン」として言及されうるが、しかし、このタンパク質について特異的な治療的適合性が、本発明によれば、ならびに実験例、特に実施例3及び4において実証されるように、野生型ヒトNGFとは著しく異なることを留意しなければならない。同様に、実施例2において記載するように、配列番号4のポリペプチドの精製は、野生型NGFについての公開されている精製プロトコールとは異なり、及び本発明による前記ポリペプチドを調製するための特定のプロセスは、高純度、特にdes−nona変異体及びトリプシンの非存在を達成するために適している。
配列番号4のポリペプチドは、前駆体として組換え発現された。その目標のために、配列番号4を野生型ヒトNGFのプロペプチド(配列番号1の位置1〜121)に融合させた。言い換えれば、配列番号4のポリペプチドの前駆体は、ヒト野生型NGF(配列番号1)の成熟部分における置換P61S R100Eを除き、ヒト野生型NGF(配列番号1)の前駆体からなった(しかし、明確さのために、ヒト野生型NGFのポリペプチド配列の一部を形成しない配列番号1の2つの最もC末端のアミノ酸を欠く)。発現は、E.coli Rosetta(DE3)(株:E.coli Rosetta(DE3)/pET11a−hpro NGF P61S R100E)において不溶性封入体の形態で実施した。
本明細書中に記載するタンパク質及びペプチドのタンパク質パラメーター。
関連するタンパク質のタンパク質パラメーターの理論値を、http://web.expasy.org/protparamで入手可能なExPASyのProtParam-Toolを用いて計算した。これらを以下のように表2中に示す。
分析方法
SDS−PAGE及びウエスタンブロット
SDS−PAGE及びウエスタンブロットは、標準的な手順を使用して実施された。SDS−PAGEについて、12%Bis−TRIS NuPAGEゲル(Thermo Fisherからの品番NP0342BOX)を、NuPAGE MES泳動緩衝液(Thermo Fisherからの品番NP0002)中で一定ボルト(175V)での還元条件下で操作した。ウエスタンブロット用の一次抗体をSanta Cruz Biotechnology(NGF(H−20)sc−548)から購入した。結果の例を、例えば図9A及び図10中に示す。
分析用CEX−HPLC
CEX−HPLCを、DionexからのProPacSCX-10を使用して実施した。カラムは、50mMクエン酸緩衝液(pH 5.5)を用いて1mL/分で操作した。溶出のために、1M NaCl(B)を加えて、0〜100%Bからの50分間にわたる直線勾配を実行した。結果の例を図9B中に示す。
SE−HPLC
SE−HPLCを、GEHealthcareからのSuperdex200 Gain 10/300GLを使用して実施した。カラムをPBS中で操作した。産物を280nmで検出した。
エンドトキシン、DNA、及びHCP
エンドトキシン、DNA、及び宿主細胞タンパク質(HCP)を、標準的なプロトコールにより決定した。
実施例1:前駆体タンパク質としての配列番号4のポリペプチドの発現。
産生株
プロNGFをコードする遺伝子をpET11a発現プラスミドにクローニングした。この遺伝子はH. sapiensから由来し、及び2つの点変異(すなわちP61S及びR100E)がオープンリーディングフレーム中に導入された。その後に、化学的コンピテントRosetta(DE3)細胞を、発現プラスミドを用いて形質転換し、単一コロニーを選択した(結果として得られた株をE5901 STRAIN(=E.coli Rosetta(DE3)/pET11a−pro NGF P61S R100E
NGF RCB C−151101)と呼んだ)。一定分量を1.0mL中で<−60℃で保存した。
実施例1では、菌株E5901 STRAINに基づく初期発酵発生を記載している。
成長培地
発酵用の複合培地
発酵用に使用された複合培地は、49.3g/L酵母エキス、0.61g/L MgSO4*7H2O、0.5g/L NH4Cl、14.2g/L K2HPO4*3H2O、及び10g/Lグルコースで構成された。この発酵用に使用されたフィードは、263g/Lの酵母エキス及び133g/Lのグルコースで構成された。
バッチ相では、両方の基礎培地に30g/Lのグルコースを添加した。他に述べない場合、フィードはそれぞれのバッチ培地と同じ組成を有していたが、しかし、300g/Lのそれぞれの炭素供給源を含んだ。
アンピシリン及びクロラムフェニコールを含むLB寒天プレート
LB寒天プレートを新たに注いだ。培地は、10g/Lペプトン、5g/L酵母エキス、5g/L NaCl、及び15g/L寒天で構成された。オートクレーブ後、培地に100μg/mlアンピシリン及び30μg/mLクロラムフェニコールを添加した。
発酵
他に述べない場合、発酵は、この実施例1では、発酵は、SartoriusからのBiostat Bユニットにより制御される1Lの撹拌ガラスバイオリアクター中で実施した。典型的には、pO2を30%に制御し、培養温度を37℃に設定し、pHを2Mリン酸及び25%水酸化アンモニウムを使用して7に制御した。他に述べない場合、バッチ相の後にF0=6g/L/時間及びμ=0.25/時間の指数関数的フィードが続いた。実際的な理由のため、全ての指数関数的フィードを2つの線形フィードにより近似させた。典型的には、産物発現の誘導を1mM IPTGの添加により実行し、及び誘導後、10g/L/時間の一定のフィード速度を適用した。細胞バイオマスを、Thermo ScientificからのSorvall Evolution RCを使用した遠心分離により収集した。遠心分離機にはSLC-6000ローターが装備され、培養物を8500rpm及び4℃で30分間にわたり遠心分離した。
バイオマスサンプル中の産物の相対的定量化。
所与の時点で、培養サンプルをOD600=10まで希釈し、この希釈液の100μLの一定分量からのバイオマスをペレット化した。ペレットを150μl(非還元)のLaemmli緩衝液中に再懸濁し、及びサンプルを95℃で5分間にわたり煮沸した。各々のサンプルの10μLを、Novexからの10%Bis−Trisゲル上で分析した。電気泳動分離を125Vで90分間にわたり実施し、ゲルをクーマシーで染色した。脱色したゲルをスキャンし、及び配列番号4のポリペプチドの前駆体に対応するバンドの存在量をデンシトメトリーにより定量化した。利用されたバイオマスにおける変動性をさらに補正するために、配列番号4のポリペプチドの前駆体に対応するバンドの強度を、ハウスキーピングタンパク質の強度に対して標準化した。
相対的な産物の蓄積を、誘導後及び誘導前の、配列番号4のポリペプチドの前駆体に対応するバンドの増加から計算した。注目すべきことに、測定値は特定の収量(即ち、OD600=10に標準化)を表す。所与の発酵の絶対収量については、実際の細胞密度を考慮に含めなければならない(以下を参照)。
バイオマスサンプル中の産物の絶対的定量
配列番号4のポリペプチドの前駆体について標準を、European Brain Research Institute(EBRI、イタリア、ローマ)から得た。標準をLaemmli緩衝液中で65μg/mLの濃度に希釈した。述べられているタンパク質濃度をEBRIにより定義した。標準曲線を、配列番号4のポリペプチドの前駆体についての260、520、780、1040、及び1300ngの標準を用いて調製した。サンプルを検量曲線と同じゲル上で分析し、サンプルの希釈係数を、 所与の時間での産物の絶対的な産物収量を計算するために考慮した。
実施例1の要約及び結論
上に基づき、産生株(E5901 STRAIN、上記を参照のこと)を1Lスケール中での発酵のために成功裏に使用したと結論付けた。異なる培地組成を、細菌成長及び産物発現を促進するそれらの能力について査定してきたが、5g/L酵母エキスを添加した最少培地MMIが、発現収量及び入手できる細胞密度の点で有利であることが証明された。産物形成の点で、主培養を、抗生物質を用いて、又は用いずに実施した場合、有意差は観察されなかった(アンピシリン及びクロラムフェニコール、データは示さず)。
実施例1は、工業規模でポリペプチドを生産するために規模拡大することができる。
実施例2:実験室規模の精製、Capto MMCの確立。
配列番号4の前駆体は、この実施例において使用されるように、実施例1において記載するように封入体中で得られた。
最先端技術を考慮した最適化のための開始点。
開始時に、本発明者らは、プロセス開発が、反対の徴候の非存在において、以前に文献中で報告されたNGF精製の基本的な礎に従いうると推論した。しかし、また、大規模での効率的な産生のために、後の規模拡大のために適した適応を考慮すべきであることを念頭に置いた。このように、Rattenholl et al.(上記)に、WO2013092776 A1に、及び他の出版物に基づき、配列番号4のポリペプチドが、トリプシンを使用した非特異的な消化及びその後の精製を用いて、そのプロ形態を介して、少なくとも実験室規模のプロセスで同様に得られうることが推論されている。配列番号4の高純度の成熟ポリペプチドがそれにより得られうると推論した。しかし、配列番号4の高純度の成熟ポリペプチドが得られたのは、この実施例において報告された特定の適応及び改変を通してだけである。従って、それを必要とする被験体への配列番号4のポリペプチドの投与は、特に本明細書中に記載する配列番号4のポリペプチドの高純度を考慮して可能になる。
実施例2において使用される設備のリスト。
この実施例による製造プロセスの詳細(実施例2Bにおいて記載する改善を含む)を図1中のプロセス概要において与える。
他に特定しない場合、分析方法は上のセクション「分析方法」において記載するとおりである。
実施例2A:以前に記載されたプロトコールに基づく精製。
配列番号4のポリペプチドの前駆体(「バイオマス」)を発現する大腸菌細胞を、実施例1において記載するように産生し、及び細胞は、リゾチームの添加及びその後の氷上での超音波処理により溶解させた。封入体(「IB」)を(1)宿主細胞から抽出し、6%Triton X100(1.5M NaCl、60mM EDTA中)で洗浄し、及び(2)6MグアニジニウムHCl(「gHCl」)、0.1M Tris−HCl pH 8.0、1mM EDTA、100mM(新鮮)DTT中で可溶化した。IBを室温で2時間にわたり可溶化した。その後、pHを、37%HClの添加により3〜4まで低下させた。配列番号4のポリペプチドの前駆体の可溶化された前駆体(「可溶化物」)を含む、このようにして得られた溶液を、6M gHCl(pH3〜4)に対して透析した。
配列番号4のポリペプチドの前駆体のリフォールディングは、0.1M Tris−HCl、1M L−アルギニン、5mM EDTA、0.61g/L酸化型グルタチオン、及び1.53g/L還元型グルタチオン(pH9.5)中で、+4℃で実施した。従って、50μgのタンパク質を、1時間毎にリフォールディング緩衝液1mL当たりに加えた。リフォールディング後、反応物を50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)に対して透析した。緩衝液を交換している間に、著しい沈殿が生じた。
配列番号4のポリペプチドの前駆体を、陽イオン交換クロマトグラフィー(50mMリン酸ナトリウム、pH7.0で操作され、及びNaCl勾配で溶出されるSPセファロースHP)及びその後の疎水性相互作用クロマトグラフィー(50mMリン酸ナトリウム、1M硫酸アンモニウムpH7.0で操作されるフェニルセファロースHP)の連続シーケンスにわたり精製した。その後、別の透析を用いて、サンプルの緩衝液を50mMリン酸ナトリウム、pH 7.0に対して交換した(そのような2回目の透析は、しかし、実施例5のプロセスにおいて省略できることに注意)。再び、著しい量の産物が、緩衝液の伝導率の低下のプロセス全体を通じて沈殿した。
このように調製された配列番号4のポリペプチドの前駆体を、250mgのプロNGF当たり1mgのトリプシンを加えることにより、限定的なタンパク質分解に供した。プロテアーゼへの配列番号4のポリペプチドの前駆体の曝露は、2〜8℃で14時間にわたった。
成熟したNGFを最後に、陽イオン交換体(50mMリン酸ナトリウム、pH 7.0で操作され、及びNaCl勾配で溶出されたSPセファロースXL)で研磨した。最後に、産物を0.5〜1mg/mLに濃縮し、<−65℃で凍結した。
実施例2B:改善。
以下では、いくつかの改善(実施例2Aと比較した)を、本発明に達する経過において本発明者らによりテスト及び実施されたように記載する。文脈が他に指示しない場合、明示的に示されていない全ての詳細は、実施例2Aについて上で記載するとおりであった。
IB可溶化の最適化。
少量のIB(例示的として振盪フラスコ培養から受け取った)が可溶化緩衝液(6M GHCL、0.1M TRIS−HCL PH 8.0、1mM EDTA、100mM(新鮮)DTT)中で容易に溶解することが以前に報告されていたが、高細胞密度発酵から得られたIBは完全には分解できなかった。これは、本発明者らにより、前記可溶化緩衝液への2M尿素の添加により解決することができ、それは、可溶化収量を有意に改善することが判明した(データは示さず)。疑いの回避のために:2M尿素が、6M GHCL及び他の成分に加えて存在していた。
リフォールディングの最適化。
最初はRattenhollら(2001, Eur. J. Biochem, vol. 268, p. 3296-3303;Rattenholl, 2001, Dissertation zur Erlangung des akademischen Grades doctor rerum naturalium (Dr. rer. nat.)、Martin-Luther-Universitat Halle-Wittenberg(ドイツ))に基づいて決定されたが、しかし、重要なことに、後の(拡大)拡張性も考慮に入れて、1リットルのリフォールディング反応当たり200から500mgの配列番号4のポリペプチドの前駆体、好ましくは1リットルのリフォールディング反応当たり200から300mgの配列番号4のポリペプチドの前駆体を用いてリフォールディングを実施する。これは、配列番号4のポリペプチドの可溶化前駆体の比較的良好な収量に導く。特に、リフォールディング反応の容積と比較した、そのような増加した量のNGFにより、及びリフォールディング反応が比較的高価な成分(例えばグルタチオン及びアルギニンなど)を含むことを考慮すると、比較的より多くの配列番号4のポリペプチドの前駆体が、リフォールディング反応の容積当たりでリフォールディングすることができ、それは、産生規模でもリフォールディングを経済的に実現可能にするはずであることを考えることが重要である。
配列番号4のポリペプチドの前駆体の精製。
配列番号4のポリペプチドの前駆体の精製は、リフォールディング後、プロNGFのかなり高い等電点を利用し、及び精製のために陽イオン交換固定相(すなわち、SPセファロース)を用いるアプローチにより行った。この型のクロマトグラフィーを実行するために、技術的な理由のため、リフォールディング緩衝液を低い伝導率を伴う緩衝液に対して交換しなければならない。これを行っている間に、著しい量の配列番号4のポリペプチドの前駆体が沈殿した(データは示さず)。この観察所見は、緩衝液中のアルギニン濃度の低下に起因しうる。
従って、いくつかの努力が、捕捉カラムを別のカラム(異なる選択性を伴うカラム)により交換するためになされ、それは、リフォールディング反応におけるアルギニンの存在により許容性であったであろう。これを行うための最初の試みでは、いくつかの固定相の性能を査定したが、しかし、いずれのアプローチも有望な結果をもたらさなかった(表6を参照のこと)。従って、捕捉カラムのために使用される固定相は、以前のプロセスにより定義されたとおりに維持した。しかし、配列番号4のポリペプチドの前駆体の高い等電点(pI)のために、泳動緩衝液の伝導率における増加(250mMのL−アルギニンの添加による)は、性能に影響を及ぼすことなく可能であった。これにより、配列番号4のポリペプチドのリフォールディングされた前駆体を、ある程度安定化することができ、及び沈殿した前駆体の量が低下した(データは示さず)。
混合モードクロマトグラフィーに関して、しかし、特定の理論に拘束されることを望まないが、配列番号4のポリペプチドの前駆体が、混合モードクロマトグラフィーから効率的に溶出しないのに対し、配列番号4の成熟ポリペプチドは溶出することが本発明者らにより理解される。
成熟NGFをもたらすためのプロテアーゼ消化。
配列番号4のポリペプチドの製造のために、プロテアーゼ(トリプシン)が必須であり、及び、従って、理想的には、選択された特定のトリプシンが以下の基準を満たすべきであると推論された:
1.組換え供給源から由来する。動物を含まない原材料の認証は、後に要求されるプロセスのGMP準拠のために極めて重要である。
2.トリプシンの低い副活性。注目すべきことに、トリプシンは自己消化に供されうる。このプロセスは、いわゆる偽トリプシンをもたしうるが、それは広げられた基質スペクトルを有し、及びキモトリプシン様活性を持つ。Ca2+(例、1mM CaCl2)を加えて、自己融解を低下させてもよい。しかし、今日では、典型的に、「修飾トリプシン」をすべてのプロトコールについて適用し、それは、厳格な配列特異性を要求する(例、ペプチドフィンガープリンティングのため)。この修飾トリプシンは、典型的には、トリプシンのリジン残基の曝露されたε−アミノ基のアシル化により得られる。
3.再現性のある産生プロセスを可能にするための低いバッチ間変動性。あるいは、選んだ酵素は、それぞれのバッチの比活性を述べる証明書と送達されるべきである。要求される酵素の量は次に、質量ではなく活性に基づきうる。
包括的な検索にもかかわらず、基準1と2の両方を満たすトリプシンは商業市場において特定されなかった。基準1がより重要であると推論した。自己融解を低下させるために、CaCl2の添加で十分でありうる。結果として、Rocheからの組換え「GMPグレード」トリプシン(Roche 06369880103、ロット:11534700)をプロセスのための原材料として選んだ。ピキアパストリスにおいて発現されるこの酵素の配列は、イノシシから由来する。その証明書によると、利用されたトリプシンバッチは4997U/mgの比活性を有する(USPにより決定される)。
トリプシン処理前の2回目の精製工程の省略。
意図されたトリプシン処理のための最適な酵素/基質比率について検索する最初のスクリーニング内で、捕捉カラム(上を参照のこと)から得られた配列番号4のポリペプチドの前駆体を使用した。以前に確立されたプロセス(European Brain Research Institute(EBRI)、詳細は公開されていない、Rattenholl et al.(前出)に基づく)とは対照的に、本発明者らは、トリプシン処理の前に追加の疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用しないことを決めた。トリプシン処理の前のそのような2回目のカラム精製工程を省略するという決定は、主に2つの考え方に基づいていた:一方では、捕捉カラムの後に得られた産物は、SDS−PAGEによると、既に実質的に純粋であった。他方では、トリプシン処理自体は、残りの宿主細胞タンパク質(HCP)の消化により、不純物プロファイルを改善するのに役立ちうる。
表7は、1回目のラウンド内でスクリーニングされた条件のマトリックスをまとめている。トリプシン処理の結果を12%SDS−PAGEで研究した(データは示さず)。結果(データは示さず)は、トリプシン処理によって、かなり広範囲の酵素/基質比率(即ち、配列番号4のポリペプチドの前駆体375μg当たり1〜5μgのトリプシン)にわたり、配列番号4の安定したポリペプチドが再現性よくもたらされることを示す。消化のタイミングは高度に決定的ではない。従って、反応の停止及び反応を研磨カラムに負荷するために要求される時間は明らかには限定的ではない。この知見は特に重要である。なぜなら、反応を調製用規模で適切に又は経済的にクエンチすることができないからである。
いくつかの追加実験を、予想されるトリプシン処理について最適な酵素/基質比率を精緻化するために行い、1/100から1/200(タンパク質重量/タンパク質重量)の酵素/基質比率では、一方では良好な収量の配列番号4のポリペプチド、及び他方では少量の切断産物を再現性よく得ることができた。利用された条件下(即ち、2〜8℃でのリン酸/アルギニン緩衝液(pH 7.0)内で、及び2〜6時間にわたるインキュベート(プロテアーゼに曝露))では、消化の質が酵素/基質比率に高度に依存的ではなかったことを述べなければならない。この知見は特に重要である。なぜなら、基礎となる酵素消化は、実験設定において小さな変動を起こしやすいためである(例、バッチ間の変動性又は酵素の保存に起因するトリプシンの活性の変化;インキュベーション工程のタイミング及び温度(プロテアーゼへの曝露);タンパク質濃度の決定における誤差)。さらに、これはまた、潜在的な切断産物をさらに低下させるための、小規模での伸長された微調整に意味がないように思われる理由である。「最適な」条件が小規模において特定されうる場合、次に実質的に同じ消化物が大規模で反復された際、わずかに変化した産物パターンを産生する良好な可能性が依然としてある。
トリプシン処理に続き、純粋なポリペプチドを得る目的を伴う研磨クロマトグラフィー。
成熟ポリペプチドの研磨のためにSPセファロース固定相を用いた以前に確立されたプロセス(European Brain Research Institute(EBRI)、詳細は公開されず、Rattenholl et al.(上記)に基づく)とは対照的に(注意:SPセファロースは陽イオン交換固定相である)、本明細書では、より適した固定相を以下の考慮事項に基づき検索した。SPセファロースカラムに効率的に負荷するために、配列番号4のポリペプチドの前駆体を含む溶液の伝導率の低下が、例えば緩衝液交換などにより要求される。しかし、溶液のイオン強度の低下は、標的分子の沈殿をもたらすことが公知であり(例、実施例2A)、従って、低伝導率緩衝液への緩衝液交換は回避すべきである。さらに、陽イオン交換固定相は、配列番号4のポリペプチドの前駆体の捕捉のためにすでに使用されたが、残りの混入物のより良好な分離を達成するために、直交選択性が好ましい。トリプシン処理反応の精製のためのSP固定相の使用に対する第3の及び最後の論拠は、配列番号4のポリペプチドの前駆体のポリペプチドの潜在的に残っている前駆体がこのカラムに結合しうる、及び配列番号4の成熟ポリペプチドから、結合選択性によってではなく、単に溶出選択性により分離されうることである。
配列番号4の成熟ポリペプチドの精製のためのそのような直交研磨カラムを確立するために、最初の例において疎水性相互作用(HIC)カラムを使用することを意図した。この固定相は、直交選択性を有するために選ばれただけでなく、しかし、また、低伝導率緩衝液への緩衝液交換が必要ではないためである。いくつかのHIC固定相及び条件(例、それぞれ1M(NH4)2SO4及び0.5M(NH4)2SO4を用いて操作されたフェニルセファロース及びブチルセファロース)のテストにもかかわらず、HICに基づく満足のいく研磨工程を実施することはできなかった(データは示さず)。
しかし、研磨工程のためのさらなる実験設定において、混合モード固定相Capto MMCをテストし、成功裏に実施することができた。最適化された条件を用いて、固定相が配列番号4のポリペプチドに可逆的に結合し、及び産物を、pHを増加させることにより溶出することができることが見出された(データは示さず)。対照的に、配列番号4のポリペプチドの前駆体は、固定相上に不可逆的に結合し、及び移動相として1M NaOHを使用することによってのみ溶出することができる(データは示さず)。さらに、トリプシンが、同じ条件で操作されたカラム上にはまったく結合しないことを示すことができた(データは示さず)。これらの結果は、Capto MMC固定相が、配列番号4の成熟ポリペプチドをトリプシンから及び配列番号4のポリペプチドの残りの前駆体から効率的に分離することが可能である明確な証拠を提供する。
追加の膜クロマトグラフィーの確立。
エンドトキシン及びDNAをさらに枯渇させるために、追加の陰イオン交換膜がプロセス中に含まれた。一般的に、及び一般に公知であるように、膜クロマトグラフィーは、分析又は精製される成分(今回の場合では、配列番号4のポリペプチド)を含む溶液が、膜(通常は荷電されている)上を又はそれを通じて通過することにおいて特徴付けられる。その目的のために、今回の場合では、STIC膜(Sartorius、ドイツ、ゲッティンゲン)を図1中に示す位置に組み入れた。配列番号4のポリペプチドが膜に結合しないことを示すことができたが、及び、このように、膜クロマトグラフィーが配列番号4のポリペプチドの精製のために適しているという概念実証を提供した。プロセス全体(膜クロマトグラフィーを含む)における組み入れの例証については、図1を参照のこと。
実施例2によるプロセスの再現性。
プロセスのロバスト性を探索するために、プロセスを5回行い、結果として得られた画分を収量及び純度に関して分析した。これらの実行を通じて、プロセスの詳細の着実な最適化を追求し、及び緩衝液組成、勾配などを、最終的な最適化されたプロセスの詳細(図1を参照のこと)が確立されるまで採用した。結果は、実験室規模の約50〜100mgの配列番号4のポリペプチドを、1回の一貫した産生実行からもたらすことができることを示す。注目すべきことに、得られた産物は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、それに続くクーマシー染色又は銀染色により、比較的純粋であることが一貫して見出された(混入する宿主細胞タンパク質の5パーセント未満及びわずかな微量の切断NGF、データは示さず)。
配列番号4のポリペプチドの前駆体について、SE−HPLCのための意味のある方法を確立することはできなかった。対照的に、配列番号4の成熟ポリペプチドについてのSE−HPLC分析は簡単であり、及び配列番号4nのポリペプチドの単量体状態に適合する約16kDaの均一な産物ピークをもたらした(データは示さず)。
要約及び結論。
このプロセスについて、配列番号4のポリペプチドのリフォールディングされた前駆体を、SPセファロースFF(「FF」はFast Flow、即ち、比較的大きな粒子を伴う固定相を表す)を使用して捕捉し、及びその後にトリプシンを用いて処理し、成熟NGFをもたらした。その目的のために、リフォールディング反応のアルギニン濃度を1M(従来技術により推奨されるとおり)から350mMに減少させた。
配列番号4の成熟ポリペプチドをもたらすための、配列番号4のポリペプチドの前駆体のタンパク質分解的切断の制御は、プロセスにとって最も決定的な因子として考えられている。本明細書中では、一方では高効率を伴う切断を再現可能に促進し、及びNGFの分解産物の形成を予防するための条件を特定した。本明細書中の実験データは、明らかにロバストな産生プロセスを、かなり広範囲の酵素/基質比率にわたって確立することができることを示している。トリプシン処理について、工程の収量は明らかに良好であり、及び著しい損失はプロセスのこの段階では予想されない。得られた産物パターンは、使用された反応条件(酵素/基質比率及びインキュベーションの時間(プロテアーゼへの曝露の時間)に関して)に明らかに強く依存しない。注目すべきことに、酵素の研磨のための良好な収量が期待される場合でさえ、×グラムの配列番号4の成熟ポリペプチドを送達するために、少なくとも2*×グラムの配列番号4のポリペプチドをプロセシングしなければならない。
この実施例による精製は、単に2つのクロマトグラフィー精製工程からなる無駄のないプロセスである。既存の精製プロセスをさらに最適化し、及びいくつかの態様を規模拡大のために採用した(図1を参照のこと)。例示的な、以前に使用された細胞破壊の方法を高圧均質化により置換し、及び全ての透析工程を接線流濾過により置換することができた。このように確立されたプロセスは、配列番号4のポリペプチドを高純度で送達することが可能である。
命名された課題にもかかわらず、全体的なプロセスは、許容可能な品質であるように見える産物を送達することが可能であるように思われる。
実施例2による改善を組み入れた完全なプロセス(膜クロマトグラフィーを含む)を図1において模式的に描写する。
実施例2は、工業規模でポリペプチドを産生するために規模拡大することができる。
例3:インビトロ及び非ヒト哺乳動物における概念実証。
本発明は、部分的に、皮膚潰瘍の2つの動物モデルを用いた実験に基づいている。これらのモデルでは、皮膚潰瘍を、円形生検パンチにより又は圧力負荷のサイクルにより糖尿病マウスにおいて誘導し、及び本発明のポリペプチドを局所的に適用する。
本明細書中で報告するのは、非ヒト動物への配列番号4のポリペプチドの投与の試験である。配列番号4のポリペプチドは、実施例1において記載する発現及び実施例2において記載する精製により高純度で入手できる。
この実施例の目的は、糖尿病マウスにおける創傷治癒、関連する組織病理学、疼痛閾値、及び血漿ヒトNGF(hNGF)レベルに対する配列番号4のポリペプチドの局所適用の有効性を研究することである。参照化合物(ヒトNGF(配列番号2)、及びマウスNGF、公的供給源において入手可能なアミノ酸配列)がまた、試験において含まれる。
配列番号4のポリペプチドが投与される動物は、本明細書中に記載するような皮膚障害により特徴付けられる。動物は、真性糖尿病に苦しむ、又は真性糖尿病、例えば、1型真性糖尿病又は2型真性糖尿病に苦しむ素因を有するヒトの動物モデルを表す。
配列番号4のポリペプチドは、単回用量又は反復用量中で投与してもよい。配列番号4のポリペプチドは、糖尿病性潰瘍を伴う被験体、糖尿病性神経障害性足潰瘍(DFU)についての動物モデルに投与してもよい。
この実施例は以下のセクションを含む:
実施例3A:インビトロPC12神経突起伸長テスト。このセクションの目的は、配列番号4のポリペプチドの有効性を確立することであった。この目的のために、NGF感受性細胞(PC12)における従来のインビトロ神経突起伸長テストを使用した。
実施例3B:インビボ有効性試験。このセクションの目的は、配列番号4のポリペプチドの局所適用が、糖尿病マウスにおける創傷治癒(外科的病変)を改善したか否かを決定することであった。
以下の群が含まれた:
− db/db、無傷 N=8、各々の時点
− db/db、創傷+賦形剤 N=8、各々の時点
− db/db、創傷+配列番号4のポリペプチド、1μg/日; N=8、各々の時点
− db/db、創傷+配列番号4のポリペプチド、10μg/日; N=8、各々の時点
− db/db、創傷+配列番号4のポリペプチド、30μg/日; N=8、各々の時点
− db/db、創傷+hNGF、10μg/日 N=8、各々の時点
− db/db、創傷+mNGF、10μg/日 N=8、各々の時点
(用量(μg)は、創傷当たりに投与されるそれぞれの用量を指す(1つの創傷を有する各々の動物)
試験のこのセクションでは、動物を創傷誘導後7及び30日目に屠殺し、以下の評価項目を用いた:閉鎖までの時間;病変の組織学(N=4)及び免疫組織化学(N=4)。
実施例3C:機構:探索的試験。このセクションの目的は、炎症、細胞外マトリックス沈着、神経支配、血管新生に焦点を当てて、糖尿病マウスにおける創傷治癒に対する配列番号4のポリペプチドの正の効果を支持する分子機構を探索することであった。
以下の群が含まれた:
− db/db、無傷 N=6
− db/db、創傷+賦形剤 N=6
− db/db、創傷+配列番号4のポリペプチド、1μg/日 N=6
− db/db、創傷+配列番号4のポリペプチド、10μg/日 N=6
− db/db、創傷+配列番号4のポリペプチド、30μg/日 N=6
− db/db、創傷+hNGF、10μg/日 N=6
− db/db、創傷+mNGF、10μg/日 N=6
(用量(μg)は、創傷当たりに投与されるそれぞれの用量を指す(1つの創傷を有する各々の動物)
試験のこのセクションでは、動物を創傷誘導後14日目に屠殺し(50%の創傷治癒に相当する)、以下の評価項目を用いた:細胞外マトリックス生物学(N=84)、血管新生(N=84)、成長因子及びニューロトロフィン生物学(N=84)において含まれるタンパク質をコードするmRNA(N=252)の発現及び調節に関する、配列番号4のポリペプチドの治療効果に関与する可能な機構の探索。
この実施例における材料及び方法。
動物及びモニタリング。
糖尿病自然変異(Leprdb)(遺伝的背景C57BL/6J)についてホモ接合性のマウス及び同じコロニーからのそれぞれのヘテロ接合体コントロールを、8〜12週齢で使用した(Charles River Laboratories - Calco - Lecco,T/BKS.CG−M+/+LEPR DB/J and S/BKS.CG−M DB/+)。群構成及び動物屠殺については、序論を参照のこと。
動物は、餌ペレット及び水の自由摂取、及び12時間の暗光サイクルを伴う単一のケージ中に収容した。本明細書中に記載する全ての動物プロトコールを、欧州共同体理事会指令(2010/63/EU)に従って実施し、保健省により承認され(n°350/2015−PB)、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(実験動物の管理と使用に関するNIH指針)において公開されているガイドラインに準拠した。
血糖値を、処置前、最後の処置の翌日、及び屠殺の前に測定した(Contour XT、Bayer、スイス、バーゼル)。
30日コホートについての実験スケジュール:
最初の週:8日コホートに関して
次に:屠殺まで週2回写真
28日目に糖血症
29日目に屠殺
この実施例では、実験を「8日」及び「30日」のコホートとして示しているのに対し、テスト又は屠殺の日を、実験スケジュールにおいて報告しているように示している。
病変、投薬、及びモニタリング。
直径6mmの円形の全層創傷を、マウスの背部中央での皮膚パンチ生検により作製した。簡単には、動物をイソフルラン(+2l/分O2)により深部麻酔した。背中の皮膚を、ワックス化粧品を用いて剪毛し、クロルヘキシジン4%( “Clorexyderm” I.C.F. srl Industria Chimica Fine - CR-Italy)又はポビドンヨード10%( “Poviderm” Nuova Farmec srl - VR - Italy)を用いて消毒した。無菌の直径6mmパンチ生検ツールを使用し、動物の背中に全層の開放創を作製した。創傷領域を、すぐに半閉塞性Tegaderm医薬(Tegaderm Roll −3M Health Care、米国ミネソタ州セントポール)を用いて覆い、胸部の周りに1.5cmの厚さのバンドを作製し、マウスがドレッシング材をかじることができないようにした。26ゲージの針を使用し、50μlの医薬を、Tegadermを通じて創傷床中に創傷後0〜6日目に注入した。注目すべきことに、Tegadermドレッシング材は病変からの溶液の漏出を完全に予防した。
直径6mmの円形の全層創傷は、28.26mm2の表面を有する。
これに基づいて、動物に投与された用量は以下の通りであった:
1μg用量:0.0035μg/mm2
10μg用量:0.35μg/mm2
30μg用量:1.05μg/mm2
動物を、ドレッシング材の完全性及び感染の非存在について毎日モニターした。Tegadermを、完全な創傷治癒まで、全ての動物において毎週変えた。
定規を含む創傷の写真を次に撮り、及び病変領域をコンピューター画像分析(NIS Elements、Nikon)により第1週の間に3回、次に、実験の終了まで週2回測定した。
配列番号4のポリペプチドの投与。
配列番号4のポリペプチドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈し、及び一日の一定分量中に分けた。全ての手順を氷中で実施し、最終的な一定分量を−80℃で保存した。
ヒトNGF(hNGF、組換え、大腸菌、カタログ番号:N−245、Alomone、イスラエル、エルサレム)及び組換えマウスNGF(mNGF、カタログ番号:1156−NG、R&D System)をコントロールNGFとして使用した。
テスト化合物を、創傷誘導日から開始して7日間にわたり毎日投与した。各々の濃度での50μlのテスト化合物溶液を、26ゲージの針を用いて創傷領域のTegadermバンド下に注射した。Tegadermの弾力性によって、針も引っ込め後の針穴の密閉が可能になり、及び液体溶液の漏出は観察されなかった。
疼痛閾値モニタリング。
熱痛覚過敏を、熱足底テスト機器(Ugo Basile-Comerio、Varese)を使用したHargreaveの方法により自由に動く動物において評価した。動物を機器のプレキシガラスボックスにおいて15分間にわたり順応させた。一定強度の放射熱供給源(ビーム直径0.5cm及び強度25I.R.)を後足の下に置き、引っ込め潜時(秒)を、放射熱適用の開始から足引っ込めまでの時間として記録した。4つの測定値の平均値を統計分析のために使用した。動物を、−3日目(手術前)及び7日目(テスト化合物の最後の適用後24時間)に足底テストを用いてテストした。
組織の収集及びプロセシング。
屠殺日に、マウスを深部麻酔し(イソフルラン+2l/分O2)、皮膚サンプル(1cm×1cm)を創傷の領域から取った。試験Bについて、各々の群において、4つのサンプルを免疫組織化学のために収集し、及び4つのサンプルを組織学のために収集した。試験Cについて、6mmの皮膚領域を、切除パンチを用いて取り(創傷領域)、この周りの8mmのリング(創傷周囲領域)及び無傷の皮膚から6mmの領域を収集した。
組織学のために収集されたサンプルをパラフィン中に包埋し、切片化し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)を使用して染色した;免疫組織化学のために収集されたサンプルを後固定し、ショ糖PBS中で洗浄し、凍結切片化し、及び間接免疫蛍光抗体法のためにプロセシングした。
免疫組織化学及び定量分析。
皮膚をSorensen緩衝液0.1M pH 7中のパラホルムアルデヒド4%(w/v)及びピクリン酸飽和水溶液中に24時間にわたり浸漬し、次に0.1Mリン酸緩衝液中の5%スクロースにおいて少なくとも48時間にわたり洗浄した。CO2中での凍結後、切片(厚さ14μm)を、クリオスタット(HM550 Microm、Bio-Optica)を使用して切断した。切片を、最初に0.1M PBS中で、室温で20分間にわたりインキュベートされた、ゼラチンコーティングされたスライド上に収集し、その後に0.3%PBS−Triton X−100(v/v)中で希釈された一次抗体を用いた湿った雰囲気中での4℃で一晩のインキュベーションが続いた。以下の抗血清を本試験において使用した:ラミニン(ウサギ、Sigma、1:1000);タンパク質遺伝子産物9.5(PGP−9.5)(ウサギ、Boheringer、1:2000)。PBS中で20分間(2×10分間)にわたるリンス後、切片を37℃で30分間にわたり湿った雰囲気において、PBSトリトン0.3%中で希釈されたRhodamine Red(商標)−X共役−親和性−純粋ロバ抗ウサギIgG(Jackson Immunoresearch)で共役された二次抗血清を用いてインキュベートした。切片を次に、PBS(上のとおり)中でリンスし、及び1,4−フェニレンジアミン(0.1g/l)を含むグリセロール中にマウントした。
免疫組織学的画像を、デジタルCCDカメラQ Imaging Retiga-2000RV(Q Imaging、Surrey、カナダ、ブリティッシュコロンビア州)を備えたNikon EclipseE600顕微鏡により捕捉した。分析を、Nis-Elements AR3.2ソフトウェアを使用して実施した。ラミニン及びPGP9.5の免疫反応性領域を、皮膚病変の誘導後7日及び30日での表皮層における割合(のパーセンテージ)として計算した。発芽指数は、PGP9、5IRが潰瘍の境界に接近する切片の数を観察することにより推定した。全ての形態学的分析について、5つの画像を各々の動物及び2つのレベル/動物について分析した。全ての分析を盲検様式において実施した。平均値/動物を統計分析のために使用した。
hNGFの定量化。
血液をEDTA-K2 Vacuntainerチューブ中に取り、及び30分以内にそれを3000×gで10分間にわたり4℃で遠心分離した。血漿を収集し、ポリプロピレンチューブ中に分注し、使用するまで−80℃で保存した。
キットHuman Adipokine Magnetic Bead Panel 2(HADK2MAG−61K、EMD Millipore Coorporation、米国マサチューセッツ州ビレリカ)を使用し、xMAP技術及びMAGPIX Luminexプラットフォームを使用して血漿サンプル中のhNGFを定量化した。この技術は、特定のタンパク質に特異的なモノクローナル抗体と共役された色分けされたビーズの異なる集団の使用に基づいており、このように、小さな容積のサンプルからの、高い感度を伴う特定の分析物の同時捕捉及び検出を可能にする。本発明者らは、ヒトNGF−βモノクローナル抗体と共役されたビーズの1つの集団だけを含むキットの単純なバージョンを使用してきた。アッセイを、わずかな改変を伴う製造者の仕様に従って実施した。
簡単には、血漿サンプル(25μl)を用いた、RTでの特定のヒトNGF−βモノクローナル抗体共役ビーズ集団の一晩インキュベーション後、ビーズを洗浄し、最初に検出抗体溶液を用いてRTで1時間にわたり、次にストレプトアビジン−フィコエリトリン共役溶液を用いてRTで30分間にわたりインキュベートした。洗浄後、ビーズを100μlのDrive液中に再懸濁し、MAGPIX機器で読み取った。データをxPONENT4.2(登録商標)ソフトウェアを用いて分析し、結果をpg/mLとして表した。本発明者らは、全てのサンプルについて、標準曲線のダイナミックレンジ(10000〜0,128pg/mL)内で値を得た。標準曲線の相関係数(R2)値>0.98を有した。得られた結果の正確性を、キット中に含まれている品質管理溶液(QC1及びQC2)について得られた値を通じてさらに検証し、それらは、キットの製造者から特定された範囲内であった。ヒトNGF−βの検出限界は0.3〜0.7pg/mLであった。
このアッセイは、他のELISA方法と比較した、hNGFについての高い感度及び特異性のために選ばれた。
PC12培養及び処理。
細胞を、T25cm2フラスコ(NUNC)中の培地(DMEM、馬血清10%、FBS 5%、及びペニシリン/ストレプトマイシン1×)中で標準培養条件において維持した。少なくとも2回継代後、細胞を、細胞培養物で処理した96ウェル平底細胞プレート(NUNC)に播種した(1000個細胞/ウェル)。インビトロで1日後(DIV)、培養培地を除去し、及び細胞を枯渇培地(DMEM、馬血清1%、FBS 0.5%、及びペニシリン/ストレプトマイシン1×)中で維持した。細胞を、血清枯渇後24時間に、3つの異なる濃度の全てのテスト化合物(50、100、及び200nM)を用いて処理した。2 DIV後、培地を新しくし、ならびにDIV 7に、細胞を固定し、及び間接蛍光抗体法を使用することによりベータ−III−チューブリン抗原について染色した(図1)。
免疫細胞化学。
7 DIVに、細胞を、冷パラホルムアルデヒド4%を用いて20分間にわたり固定した。ブロッキング溶液(PBS、triton X−100 0.3%、BSA 1%、及び正常ロバ血清1%)を用いた1時間にわたる処理後、細胞を一次抗血清(マウス抗ベータIIIチューブリン、1:1000;R&D)と4℃で一晩インキュベートした。細胞を次に、二次抗マウス抗体(ロバ抗マウスAlexa−488コンジュゲート;1:500;Jackson)と37℃で30分間にわたりインキュベートした。最後に、細胞を核色素Hoechst33258とRTで20分間にわたりインキュベートした。
細胞ベースのハイコンテントスクリーニング分析。
神経突起伸長の分析を、Neuronal Profiling BioApplicationを使用したCellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニング(HCS;Thermo Scientific)を用いて実施した。ソフトウェアは、核色素蛍光の存在により、各々のウェル中のすべての細胞を認識することができる。各々の核を対象として特定し、すべての対象が単一細胞に対応する。システムによって、細胞体を特定する核の周りの緑色蛍光(ベータ−III−チューブリン免疫反応性)が認識される。Neuronal Profilingツールによって、各々の細胞体から出現する全ての神経炎を認識し、追跡することができる。これによって、すべての細胞からの全ての神経炎を計数し、測定することができる。細胞凝集物は単一細胞ディメンション オブジェクトとして認識せず、分析から除外した。
2000〜4000個の単一細胞/ウェル及び6ウェル/処理の数を分析した。
RT−PCR。
糖尿病マウスにおける創傷治癒に対する配列番号4のポリペプチドの正の効果を支持する可能な機構に関する探索的試験を、探索的戦略(RT2プロファイラーPCRアレイを使用した経路に焦点を合わせた遺伝子発現分析)を使用し、及び修復プロセスの50%で創傷治癒において含まれる主な分子経路(例、血管新生、細胞外マトリックス及び接着タンパク質、成長因子)に焦点を合わせて実施した。サンプルを病変の中心部(直径6mm)から収集し、ならびにRNAを全ての動物(6匹の動物/群)から抽出し、定量化(Nanodrop 2000分光光度計)及びプール(100ng/動物)した。このように、600ngのRNA/群を逆転写のために使用した。
単一のPCRアレイを、CFX96リアルタイムPCR機器(BioRad)を使用し、各々の群について実施した。全てのプレートについて、同じ閾値を使用し、及び遺伝子の相対的発現を2−ΔΔCq比較方法により計算した。マウスの血管新生、細胞外マトリックス及び接着タンパク質(ECM)、ならびに成長因子(GF)Rt2Profiler(商標)アレイ(QIAGEN)を使用し、製造者の指示によりRT2First Strandキット(QIAGEN)を使用して合成されたcDNAを用いて、血管新生、ECM、及びGFにおいて含まれる250の主要遺伝子(各々84遺伝子)の発現をプロファイリングした。
結果。
結果を以下の順序において提示する:
‐PC12インビトロアッセイ
‐有効性、8日
‐有効性、30日
‐機構、14日
実施例3A:インビトロPC12神経突起伸長テスト。
配列番号4のポリペプチドの有効性を、PC12細胞で、インビトロでテストし(実験計画については図1を参照のこと)、以下のパラメーターを使用し、細胞ベースのハイコンテントスクリーニングを用いて神経突起伸長を測定した:
‐平均神経突起平均長:平均神経突起長/細胞を表す;
‐平均神経突起全長:神経突起全長/細胞を表す;
‐高神経突起最大長(%):細胞体の長さと等しい又は最も長い神経突起を示す細胞のパーセンテージを表す。
最初に、全てのテスト化合物の用量を分析し、及び賦形剤群と比較した(データは示さず)。この報告では、各々のテスト化合物のより有効な用量についての結果だけを示している(図1)。全てのテスト化合物の有効用量に曝露された細胞が、賦形剤で処理された細胞と比較し、平均神経突起平均長(A;mNGF、P=0.0394;hNGF、P=0.0196;配列番号4のポリペプチド、P=0.0033)及び平均神経突起全長(B;mNGF、P=0.0338;hNGF、P=0.0006;配列番号4のポリペプチド、P=0.0211;Aloe、P<0.0001)における増加を示した。配列番号4のポリペプチドだけが(P=0.0367)、長い神経炎を示す細胞のパーセンテージを増加させることができた。
実施例3B:有効性試験、8日コホート。
動物モニタリング。
動物を、創傷生成前のグルコース血中レベルについてモニターした。結果は図3中に報告している。糖血症は、パイロット試験において測定されたように、コントロール動物よりも糖尿病マウスにおいて高かった。差は、異なる実験群に割り当てられた動物間で観察されなかった。
病変後0日目から7日目の間での体重増加を図4中に報告している。差は、時間(0日目対7日目)又は処置のいずれかにより観察されなかった。
痛覚過敏。
熱痛覚過敏を、−3日目(皮膚病変の前)及び最後のテスト化合物適用の翌日(7日目)に、熱足底テスト機器を使用したHargreave方法により、自由に動く動物において評価した。結果を図5中に例証する。群間の差は、0日目に観察されなかった。同じ処置群における0日目及び7日目での平均足引っ込め潜時を比較することにより、有意な低下が、7日目にhNGF処置動物において観察された。熱刺激への痛覚過敏は、他の群において観察されなかった。注目すべきことに、より高い閾値が、7日目に配列番号4処置マウスのポリペプチドにおいて観察され、この群におけるより高い疼痛閾値を示している。
閉鎖までの時間。
創傷治癒の評価を、第1週の間に2日毎に0日目(手術日)から開始して撮影された写真の肉眼的観察により実施した。「閉鎖までの時間」を、NISエレメント(Nikon)を使用してこれらの創傷画像上で測定した。結果を図6中に報告しており、そこでは外部領域及び内部領域の両方がプロットされている。二元配置分散分析は、時間効果(F(4,203)=41.25、p<0.0001)及びグループ効果(F(5,203)=2.565、P=0.0282)を示す。
7日目での閉鎖までの時間を図7中に報告している。創傷治癒を促進する用量依存的傾向が配列番号4処置群のポリペプチドにおいて観察されるという事実にもかかわらず、差は群間で観察されない。
NGF血漿レベル。
血液を屠殺時に、このように、テスト化合物の最後の適用後48時間に収集した。NGF血漿レベルを、ヒトNGF、マウスNGF、及びまた、配列番号4によるポリペプチドを検出することが可能である抗体を使用する抗体ベースのアッセイにより決定した。本明細書中では、そのように決定されたNGF血漿レベルを、「総NGF血漿レベル」として言及する。結果を図8中に報告している。総NGF血漿レベルにおける用量依存的な増加が処置マウスにおいて観察され、350pg/mlより高い値に達した。さらに、増加はまた、mNGF処置群において観察された。これは驚くべきことではない。なぜなら、処置のために使用される組換えマウスNGF−βは、ヒトNGFとアミノ酸レベルで約90%の同一性を共有し、及び同じ抗体により認識される2つのアミノ酸ポリペプチドのホモ二量体であるためである。
実施例3C:有効性試験、30日コホート。
動物モニタリング。
動物を、創傷生成前、テスト化合物投与の終了後、及び屠殺時に、グルコース血中レベルについてモニターした。結果を図9中に報告している。本発明者らは、全ての実験群において28日間の観察にわたりグルコース血中レベルにおける漸進的な増加を観察した。処置群間の差は異なる時間で観察されなかった。
病変後0日目から28日目までの体重増加を図10中に報告している。差は、時間又は処置のいずれかにより観察されなかった。
痛覚過敏。
熱痛覚過敏を、−3日目(皮膚病変前)及び7日目に、最後のNGF適用後24時間に熱足底テスト機器を使用したHargreave方法により、自由に動く動物において評価した。結果を図11中に例証している。群間の差は0日目に観察されなかった。同じ処置群において0日目及び7日目での潜時を比較することにより、足引っ込め潜時における低下への有意でない傾向がhNGF処置動物において7日目に観察された。しかし、8日及び30日コホートからのデータをプールした場合、疼痛閾値の有意な低下がhNGF処置動物において観察され、このように、このhNGF製剤が痛覚過敏を誘導することを示唆した。差は、他の群において観察されなかった。結果を図12中に示している。
閉鎖までの時間。
創傷治癒の評価を、−3日目(手術日)から開始して第1週の間に2日毎に、次に屠殺まで週2回写真を撮る肉眼観察により実施した。「閉鎖までの時間」を、NISエレメント(Nikon)を使用し、これらの創傷画像上で測定した。
「閉鎖までの時間」についての個々のデータを表形式において提示する(図13)。連続的な外部創傷面積の測定値を、図14中に時間に対してプロットしている。二元配置分散分析は、時間効果(F(50,434)=417.3、p<0.0001)、処置効果(F(5,434)=21.45、p<0.0001)、及び処置と時間の間での相互作用(F(50,434)=1.638、p=0.0055)を示す。
配列番号4のポリペプチドを用いて処置されたマウスでは、創傷治癒の速度が、用量依存的な様式で、賦形剤処置動物と比較して有意に加速された。
8日目での閉鎖までの時間を図15中に報告しており、そこでは8日及び30日コホートの両方からのデータをプールしている。既にこの時点での創傷治癒の有意な低下が、賦形剤処置群と比較し、30μg/日の用量での配列番号4のポリペプチドを用いて処置された群において観察されている。
NGF血漿レベル。
血液を屠殺時に収集した。NGF血漿レベルを、ヒトNGF、マウスNGF、及びまた、配列番号4によるポリペプチドを検出することが可能である抗体を使用した抗体ベースのアッセイにより決定した。本明細書中では、そのように決定されたNGF血漿レベルを、「 総NGF血漿レベル」として言及する。結果を図16中に報告している。総NGF血漿レベルは非常に低く(図8と比較して)、10pg/ml以下であり、及び全ての群において同様である。
組織学(8日及び30日)(また、パイロット試験の報告を参照のこと)。
無傷の皮膚の5mmの縁を含む潰瘍の領域を含む皮膚のサンプルを切除し、パラフィン中に包埋し、図17B中に提示された模式図に従って連続的に切片化した。切片を次に染色し(H&E)、及び創傷の異なるレベルでの代表的な低倍率画像を図17A中に報告している。高倍率の顕微鏡写真は、創傷境界での再上皮化プロセス(図17D)(そこでは表皮遊走性舌(MET)が明らかである)、表皮層下の真皮における広範な肉芽組織(炎症、細胞増殖、マトリックス沈着(図17E)、及び血管新生(図17F)により特徴付けられる)を例証する。再上皮化は、表皮層の厚さを測定することにより評価されてきた。無傷の動物、賦形剤、配列番号4のポリペプチド(1μg/日)、配列番号4のポリペプチド(30μg/日)で処置されたマウスからの代表的な画像を図18中に提示している。配列番号4のポリペプチドは、表皮層の用量依存的な肥厚を誘導し、これは無傷の皮膚中よりもずっと高いように見える。表皮の基底層は、基底層及び棘層の細胞過形成により特徴付けられ、恐らくは増加した細胞増殖を反映している。さらに、真皮もより厚く、及び強く染色されており、より高い細胞外マトリックス沈着を示唆し、また、用量に従って皮膚の付属物(腺及び毛包)により濃縮されている。全ての群における表皮の厚さをグラフ中に提示している。配列番号4のポリペプチドは、表皮層の用量依存的な肥厚を誘導し、それは、賦形剤群よりもずっと厚く成長する。また、mNGF及びhNGFは、配列番号4のポリペプチドを用いて処置された用量を一致させた群と同等の、同じ効果を誘導する。
免疫組織化学(8日及び30日目)。
皮膚の再神経支配を、タンパク質PGP9.5(皮膚の神経支配を視覚化するために広範に使用されている高い感度の神経外胚葉マーカー)についての免疫染色により分析した。皮膚の神経支配の解剖を図19中に提示しており、そこでは、無傷のマウス皮膚におけるPGP9.5−IR線維が視覚化されている。特に、皮下神経叢、深部皮膚神経叢、及び表皮下神経叢が視覚化されている。表皮下神経叢は、表皮に表皮内自由神経終末を提供する。
修復された皮膚における神経再成長に対する配列番号4のポリペプチドの局所適用の効果を、病変後8日目の病変境界での「噴出指数」、ならびに修復された領域の表皮及び真皮におけるPGP9.5−IRを使用して分析している。代表的な画像を図20中に報告している。パネルA、B、及びCは、無傷の動物、賦形剤、及び配列番号4のポリペプチド(30μg/日)で処置されたマウスにおける30日でのPGP9.5−IRをそれぞれ例証している。形態計測分析の結果を図21中に提示している。配列番号4のポリペプチドの30μg/日適用は、8日での発芽における有意な増加を誘導する(例えばhNGFなど)。30日目に、賦形剤処置動物において神経支配はまだ回復していないが、無傷の動物とNGF処置動物の間での差は、配列番号4のポリペプチド(全ての投与量)及びmNGFを投与した際に観察されなかった。反対に、過剰神経支配が、hNGFを使用した際に観察されている。
血管新生に対する配列番号4のポリペプチドの局所適用の効果を、マーカーとしてラミニンを使用して推定した。ラミニンは基底膜マーカーであり、このように、皮膚中のいくつかの構造(内皮細胞を含む)を標識する。PECAM(また、CD31として公知である)、フォンウィルブランド因子、コラーゲンなどの他の内皮マーカーによって、本試験において使用された固定条件での定量化のために適さない染色が提供された。代表的な画像を図22中に報告している。パネルAは、従来の組織学(H&E)により視覚化された表皮層を例証している。矢印は基底層を示す。パネルBは、表皮の基礎をなす基底膜を例証している(矢印);パネルCは、上衣下(subependimal)神経叢から由来する表皮の感覚神経支配を例証している;パネルDは、8日目(E)及び皮膚修復後(F)の潰瘍境界及び関連する神経支配を例証している。パネルG−Iは、8日目(G、EE;H、ラミニン−IR)及び30日目(I)の血管新生を例証している。
形態計測分析からの結果を図23中に提示する。配列番号4のポリペプチド(30μg/日)の適用によって、8日目にラミニン−IRにおける有意な増加が誘導され(例えばhNGFなど)、それは依然として30日目に存在しており、恐らくは血管新生を受けていることを反映している。
機構:探索的試験。
遺伝子発現調節。
本試験の目的は、炎症、細胞外マトリックス沈着、神経支配、血管新生に焦点を当てて、糖尿病マウスにおける創傷治癒に対する配列番号4のポリペプチドの正の効果を支持する分子機構を探索することであった。探索的戦略(RT2 Profiler PCR Arraysを使用した経路に焦点を当てた遺伝子発現分析)を使用し、修復プロセスの50%での創傷における主な分子経路を特定した。マウスの血管新生、細胞外マトリックス及び接着タンパク質(ECM)、ならびに成長因子(GF)Rt2 Profiler(商標)を使用し、血管新生、ECM、及びGFにおいて含まれる252の主要遺伝子(各々84遺伝子)の発現をプロファイリングした。
各々のパネル(血管新生、ECM、成長因子)についての発現分析を以下により提示する:
‐遺伝子リスト;
‐PCRアレイプレートレイアウト上に覆われた2群間の倍率調節発現データの図表示を提供するヒートマップ;
‐大きな遺伝子発現の変化を速く視覚化するために、2群間でアレイ上のすべての遺伝子の標準化発現を互いに対してプロットすることにより比較する散布図、及び発現変化が選択された境界よりも大きい(≧3)遺伝子のリスト。
散布図は、以下のように群比較を例証している:
‐db/db対WTマウス(コントロール群としてのWT)
‐db/db賦形剤対db/db無傷(コントロール群としてdb/db無傷)
‐db/db NGF(配列番号のポリペプチド;mNGF、hNGF)対db/db賦形剤(コントロール群としてのdb/db賦形剤)
‐db/db NGF(配列番号のポリペプチド;mNGF、hNGF)対db/db無傷(コントロール群としてのdb/db無傷)
結果を、細胞外マトリックス及び接着分子及び成長因子及びニューロトロフィンとして評価する(図は示さず)。
本分析からの主な結果及び結論は、以下のとおりである:
遺伝子型効果:
‐db/db無傷とWT無傷の比較によって、多数の血管新生及びECM遺伝子が遺伝子型に従って異なって調節されており、ほとんどのGF遺伝子が差次的に発現されていないことを示し、このように、ECM及び血管新生が、創傷修復について、主に糖尿病状態により影響を及ぼされるプロセスであることを示唆する。
‐db/dbにおける病変効果:
‐病変によって、多数の血管新生及びECM遺伝子の下方調節、ならびに少数のGFs遺伝子の上方調節が誘導され、このように、ECM及び血管新生が、糖尿病マウスにおいても創傷修復を駆動する主なプロセスであることを示唆する。
‐db/dbにおける配列番号4のポリペプチドの効果(対賦形剤):
‐配列番号4のポリペプチドは、以下を含むいくつかの遺伝子を下方調節する:血管新生:akt、Ccl2(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2)、Ctgf(結合組織成長因子)、Hif1a、MMP14、thbs2(トロンボスポンジン2);
‐配列番号4のポリペプチドはいくつかの遺伝子を上方調節し、及びその一部だけが次にまた、hNGF及びmNGFにより調節される。
‐配列番号4のポリペプチドはGF遺伝子を調節せず、それらの一部はhNGF及びmNGFにより調節される。
STRING分析も実施した(データは示さず)。STRINGは、公知の及び予測されるタンパク質間相互作用の生物学的データベース及びWebリソースであり、それは、差次的に発現する遺伝子間での相互作用関係を検索するために広範に使用されている。STRINGソフトウェアによる「クラスタリング」分析は、異なるアレイにおいて調節されている全ての遺伝子に基づいている。
結論。
この実施例からの主な結論は以下のとおりである:
1.分析的アプローチとしてHCSに結合されたPC12細胞は、配列番号4のポリペプチドのインビトロでの有効性を評価するための適したアプローチである;
2.配列番号4のポリペプチドは、用量依存的な様式において創傷治癒を改善する。
3.配列番号4のポリペプチドは、表皮層の修復を強く増加させ、及び強い厚さの増加を誘導する;配列番号4のポリペプチドはまた、再神経支配及び血管新生に正の影響を及ぼす(ラミニン−IRにより評価されるように)。配列番号4のポリペプチドで処置されたマウスにおける全てのこれらのパラメーターが、コントロールの無傷のマウスにおいてより高く、このように、創傷治癒のリモデリング段階をさらなる試験において評価しなければならないことを示唆する。
4.探索的試験は、AKT−mTOR経路が配列番号4のポリペプチドの効果において含まれうることを示唆する。Akt及びmTORは生存及び細胞成長プロモーターと考えられ、及びPI3K−Akt−mTORシグナル伝達軸の一過性の薬理学的活性化が、治癒を加速するための新規臨床介入戦略を表しうることが示唆されている。注目すべきことに、損なわれたAKT−mTOR経路は、糖尿病マウスにおける創傷治癒障害の可能な原因として示されており、及びAKT−mTOR経路は、糖尿病マウスにおけるNotoginsenoside Ft1;アセマンナン;SR−0379;microRNA−99ファミリーなどのいくつかの分子により、改善された創傷治癒において含まれていることが実証されている。
このように、配列番号4のポリペプチドは、ヒト神経成長因子に類似したポリペプチド配列を伴うが、しかし、それを無痛にする(hNGFp)及び治療的に有効にする少なくとも1つの変異を伴う組換えタンパク質である。
実施例4:概念実証:マウスにおける褥瘡モデル。
本明細書中で報告するのは、非ヒト動物への配列番号4のポリペプチドの投与の試験である。配列番号4のポリペプチドは、実施例1において記載するような発現及び実施例2において記載するような精製により高純度で入手できる。
方法。
コントロール(C57BL6、アルビノ)及び遺伝的に糖尿病のC57BL/KsJ−m+/+Leprdb(db/db)雄マウス(Jackson laboratories、8〜10週齢)を実験において含めた。ガス麻酔下で、動物の背中を剪毛し、剪毛領域を、皮膚刺激を予防するために徹底的に洗浄した。皮膚のひだを上げて、及び直径12mm、厚さ5.0mmの2枚の磁性セラミックディスク(平均重量2.4g、磁力1000Gを伴う)(Magnetic Fountain、コロラド州キャッスルロック)を皮膚に適用し、 2つの磁石の間の約5.0mmの皮膚の「ブリッジ」を残した。このプロセスによって、局所組織虚血を起こすために必要であると文書化されているように、2つのプレート間に50mmHgの圧縮圧力を作製する(Peirce et al., 2000, Wound Repair Regen., vol. 8, p. 68-76.)。3サイクルの虚血再灌流(I/R)を適用し、均一な重症度の2つの潰瘍の形成を誘導した。単一サイクルのI/Rは、午前8時から開始する磁石の適用のための12時間の期間、それに続く磁石を伴わない12時間の休止期間からなる。賦形剤及びテスト化合物を用いた処置を、フィブリン滲出液及び壊死組織の除去からなる潰瘍の外科的掻爬を可能にするために、I/Rサイクルの終了後3日に開始した。
一部のマウスを、配列番号4のポリペプチドを用いた研究処置に供し、それは、無痛の組換えヒト変異神経成長因子(hNGFp)として言及されうる。詳細には、以下の実験群を研究した:
‐db/db、賦形剤
‐db/db、配列番号4のポリペプチド、1μg/cm2/日
‐db/db、配列番号4のポリペプチド、10μg/cm2/日
‐db/db、配列番号4のポリペプチド、100μg/cm2/日。
処置を連続14日間にわたり毎日、及び次に、同じ投与量で、閉鎖まで週2回継続した(処置の時点での潰瘍のサイズに関して計算された投与量)。潰瘍を、閉鎖の日を確立するために目視検査によりモニターした。さらに、定規を含む創傷の写真を撮り、及び病変領域を、潰瘍に週2回投薬した際に、コンピューター化された画像分析により測定した。褥瘡の査定を、標準化されたスケールに従って、及びコンピューター化された画像分析により創傷領域を測定することにより実施した。
疼痛閾値に対する化合物の効果を、Bioseb社製の電子Von Frey(げっ歯類における機械的疼痛感受性閾値の決定を可能にする電子装置)を用いて、損傷の部位で、自由に動いている動物において評価した。
病変の組織学、神経支配、及び血管新生を、組織学及び免疫組織化学ならびにコンピューター化された画像分析により分析する。
結果。
糖尿病マウスの背中の皮膚のひだ上に磁石を置くことによって、圧迫の部位の下の真皮表皮組織全体を含め、不可逆的な損傷が誘導された。目視検査(壊死及び出血領域の存在)及び組織学的分析の両方によって、3つのI/Rサイクルによって、褥瘡を連想させる病変を誘導することができることを確認した。
配列番号4のポリペプチドを用いて処置された全ての群において、創傷治癒の速度は、賦形剤で処置された動物と比較して加速した。配列番号4のポリペプチドで処置された動物における潰瘍の閉鎖は、17日目及び21日目から開始して明らかであったのに対し、賦形剤で処置された動物は、23日目から開始して治癒を受けた。
28日目(観察の最終日)に、配列番号4のポリペプチドで処置された動物の80%超において、皮膚潰瘍は完全に閉鎖された;図25中に示すように;賦形剤で処置された動物と比較し、効果は、配列番号4のポリペプチドの全ての用量で統計的に有意であり、前者の群における治癒の確率は60%未満であった。これらのデータは、糖尿病の動物モデルにおいて創傷治癒の比率が損なわれていることを示す文献の証拠と一致しており、及び外科的潰瘍モデルにおいて生成されたデータ(実施例3)と一緒に、それらは、配列番号4のポリペプチドが糖尿病マウスにおける遅延した治癒プロセスを正常化しうることを示唆する。
創傷治癒に対する正の効果に加えて、組織学的及び免疫組織化学データは、配列番号4のポリペプチドが、治癒障害のある糖尿病マウスにおける創傷治癒のパラメーターの程度を改善する生物学的能力を有するというさらなる証拠を提供する。組織学的レベルでは、修復領域において、完全な再上皮化及び正常な皮膚解剖の回復が、配列番号4のポリペプチドを用いた処置後に観察された。免疫組織化学は、配列番号4のポリペプチドがまた、神経支配(表皮におけるPGP9.5免疫反応性により測定される)及び血管新生(皮膚におけるPECAM免疫反応性により測定される)に正の影響を及ぼすことを示した(図26A及びB)。
野生型NGFは投与の部位で疼痛感受性を増加させることが報告されているため、疼痛の機械的閾値を、潰瘍の境界に機械的刺激を加えることにより、配列番号4のポリペプチドを用いた連続14日間の処置後に評価した。疼痛の機械的閾値の改変は、賦形剤で処置された糖尿病マウスと比較して観察されなかったが、慢性局所処置後の配列番号4のポリペプチドが、侵害受容器感作を起こすことなく、大きな投与間隔において皮膚に対してその正の栄養効果を発揮することができることを示唆している( 図27)。
実施例5:糖尿病性神経障害性足潰瘍(DFU)を伴う被験体における単回及び反復漸増用量後の配列番号4のポリペプチドの安全性、許容性、薬物動態学的及び薬力学的プロファイルを研究するための無作為化二重盲検プラセボ対照試験。
本明細書中で報告しているのは、糖尿病性神経障害性足潰瘍(DFU)を伴う参加者における単回及び反復漸増用量の配列番号4のポリペプチドの投与の試験である。参加者はヒト被験体である。
この実施例において記載する治験は、それぞれの当局から倫理的な承認を受けている。
配列番号4のポリペプチドはまた、無痛の組換えヒト変異神経成長因子(hNGFp)として言及されうる。配列番号4のポリペプチドは、あるいは、「組換えヒト神経成長因子(RHNGF)」又は「SUB75752」と呼ばれ、完全な分子式はC580H895N163O176S8である。配列番号4のポリペプチドは、生物学的/生物工学的起源(Advanced Therapy IMP(ATIMP)以外)から入手できる。それは組換え医薬産物である(実施例1も参照のこと)。特に、配列番号4のポリペプチドは、 実施例1において記載する発現及び実施例2において記載する精製により入手できる。特に、好ましくはGMP標準下で、実施例2において記載するように入手できる高い純度によって、配列番号4のポリペプチドの医薬としての使用が可能になる。
この実施例において使用するように、配列番号4のポリペプチドは、治験医薬産物(IMP)である。指令2001/20/ECによると、「IMP」は「臨床治験において参照としてテスト又は使用されている活性物質又はプラセボの医薬形態であって、既に販売承認を伴うが、しかし、承認された形態とは異なる方法において使用又は組み立てられた(製剤化又はパッケージ化された)、あるいは未承認の適応のために使用される場合、又は承認された形態に関するさらなる情報を得るために使用される場合の産物を含む」である。本明細書において、配列番号4のポリペプチドは、ヒトでの最初の臨床治験において使用されるIMPである。このように、この実施例では、ヒトでの最初の臨床治験を記載する。ヒトでの最初のガイダンスによるリスク因子は特定されていない。
この実施例において使用するIMPは、1mg/mlの配列番号4のポリペプチドで調製されたhNGFpの無色透明の溶液として提供する。配列番号4のポリペプチドは、所望の濃度に調整し、ガラスバイアル中に充填する。溶液の濃度は1mg/mlである。
配列番号4のポリペプチドは、それを必要とするヒト被験体に投与する。配列番号4の前記ポリペプチドは、皮膚溶液として投与する。これは特定の小児用製剤ではない。
配列番号4のポリペプチドの投与を必要とするヒト被験体は、糖尿病性神経障害性足潰瘍(DFU)を伴う被験体である。ヒトでの最初のガイダンスによるリスク因子は特定されていない。
配列番号4のポリペプチドは局所投与する。このように、配列番号4のポリペプチドは局所使用(非流動)用である。
配列番号4のポリペプチドは、0.3〜6μg/mm2の総用量で投与する。「mm2」は潰瘍の領域を指す。示した量(μg)は、1日当たりに投与されるポリペプチドの量を指す。
配列番号4のポリペプチドは、連続14日間にわたり1日2回投与する。その後、投与を中止する。
この試験では、プラセボがある。プラセボはPL1として言及する。プラセボは皮膚溶液である。プラセボは局所使用(非流動)用である。プラセボは、配列番号4(PR1)のポリペプチド用のプラセボである。プラセボは、その他の点では、IMP(PR1)と同一である。プラセボは、配列番号4のポリペプチドと同一に投与する。
PR1及びプラセボ1は両方とも、Klifo A/S、Smedeland 36、2600(デンマーク、グロストラップ)で、及びそれにより治験のために調製される。
この試験における他の(比較)医薬産物はない。
この試験に供される被験体は、皮膚及び結合組織疾患である疾患に苦しんでいる、又は罹患している、又はその素因がある。特に、この試験に供される被験体は、糖尿病性神経障害性足潰瘍(DFU)を有する被験体である。糖尿病性足潰瘍は、真皮糖尿病の主要な合併症であり、糖尿病を伴う個人における足首の下の真皮を通る、治癒しない、又は治癒が不十分な全層創傷である。
治験は、独立したデータモニタリング委員会を有する。
治験の期間の最初の推定値は2年1ヶ月である。
計画された被験体数は92名(そのうち60名は年齢範囲18〜64歳;そのうち32名は年齢範囲65歳又はそれ以上)。治験被験体の群は患者からなり、健康なボランティアは含まない。特定の脆弱集団が含まれている。
被験体が治験における彼/彼女の参加を終了した後の処置又はケアは、ケアの標準である。
当局からの倫理的承認が得られている。好ましい意見が出された。
治験の目的:
主な目的:DFUを伴う被験体における配列番号4のポリペプチドを用いた1日及び複数日の局所投薬の安全性及び許容性を査定すること。
二次的な目的:
(a)DFUを伴う被験体における配列番号4のポリペプチドを用いた1日及び複数日の局所投薬に続く、全身的に利用可能な薬物の薬物動態プロファイルを査定すること。
(b)12週間の期間にわたるDFUの治癒に対する配列番号4のポリペプチドの複数日の局所投薬の薬力学的効果を査定すること。
下位試験はない。
主要な組み入れ基準:
パート1SD及びパート2MD:
被験体は、試験への登録のために適格になるためには、以下の全ての基準を満たさなければならない:
1.任意の試験関連の手順の前に得られた被験体の書面によるインフォームドコンセント;
2.年齢18〜80歳(極値を含む)で、糖化ヘモグロビン(HbA1c)≦10%のI型又はII型真性糖尿病と診断された男性又は女性の被験体。
3.妊娠可能性がない女性被験体(WONCBP):‐彼女らは外科的不妊手術(スクリーニングの前の少なくとも6ヶ月に実施)、又は閉経(スクリーニングの前の少なくとも1年間にわたり定期的な月経出血を有しておらず、年齢≧45歳、及びスクリーニング時のFSH≧40mIU/mlを有していなければならない)を報告しなければならない。
4.妊娠可能性のある女性被験体(WOCBP):彼女らは、試験期間の間に、及び最後の試験薬物投与後少なくとも90日以内に、以下の信頼できる避妊方法の1つ又は複数を使用していなければならない:a)子宮内器具(IUD)又は子宮内システム(IUS)の配置。b)ホルモン避妊薬(埋め込み型、パッチ、経口)。c)避妊のバリア方法:殺精子フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/坐剤を伴うコンドーム又は閉塞キャップ(ペッサリー又は頸部円蓋/キャップ)。d)男性パートナーの不妊手術(射精液中での精子の非存在の適切な精管切除後の記録を伴う)。
5.男性被験体;彼らは、試験期間全体の間に2つの効果的な避妊の方法を使用していなければならず、及び最後の試験薬物投与後90日以内に精子を提供してはならない。
6.以下の基準を満たす少なくとも1つの糖尿病性足潰瘍の存在:
a)踝に又はその遠位に位置付けられる全層神経障害性DFUとして診断(足趾間の潰瘍を除くが、踵の潰瘍を含む)。
b)SD:6週間から12ヶ月間にわたり存在、及び鋭いデブリードマン後の領域における3〜5cm2、スクリーニング時に確認。
MD:6週間から12ヶ月間にわたり存在、及び鋭いデブリードマン後の領域における3〜5cm2、2週間の慣らし期間後に確認。
c)適格な試験潰瘍と特定された足の任意の他の潰瘍の間での最低2cmの周縁部。
d)最初の鋭いデブリードマン後、深さ≧5mm、及び「The University of Texas Staging System for Diabetic Foot Ulcers」(22)に従ったグレード1A、嚢、腱、又は骨が曝露されておらず、及びトンネル、浸食、又は洞管を伴わない。
7.被験体は、治験医薬を、ドレッシング材が適用されるまで、流出を通じた物質の有意な損失を伴うことなく、適用することができるような位置及び向きにおいて標的潰瘍を保持できなければならない。
8.以下の少なくとも1つにより定義される、スクリーニングの前の30日以内に実証された患肢の適当な血管灌流。
a)経皮的酸素分圧(TcPO2)>50mmHgにより確認される、足関節上腕血圧比(ABI)≧0.9及び≦1.2。
b)足趾圧(プレチスモグラフィー)>50mmHg
c)SoCにより決定された、罹患四肢への適当な血流と一致する、足首の少なくとも2つの血管でのドップラー超音波(二相性又は三相性波形)。
主要な除外基準:
パート1SD及びパート2MD:
被験体が、試験への登録のために適格となるには、以下の基準のいずれも満たしてはならない:
1.女性だけについて:スクリーニング時の血清妊娠テスト陽性及び1日目の尿テストにより確認される、妊娠中又は授乳中の女性被験体。
2.以下を伴う被験体:
a)米国感染症学会ガイドライン(IDSA)(19)に従った、感染した蜂巣炎、骨髄炎、又は感染の臨床的徴候もしくは症状を伴う潰瘍。
b)罹患肢の任意の部分での壊疽又は壊死。
c)被験肢の活動性又は慢性シャルコー足。
d)登録の前の1ヶ月以内に実施される、計画された血管手術、血管形成術、又は血栓溶解療法もしくは血行再建術。
e)腱、骨、又は関節嚢の曝露を含む潰瘍(潰瘍が真皮を通って肉芽組織の存在を伴う皮下組織中に伸長することは許容可能である)。
f)非糖尿病性病因の潰瘍。
g)同じ標的足での以前の大切断術。
h)任意の理由による実際又は最近(3週間)の抗生物質治療。
i)寝たきりの被験体又は平均余命1年未満を伴う被験体。
3.スクリーニングの前の6ヶ月間における任意の他の成長因子治療の使用。
4.決定的に処置された皮膚の扁平上皮癌又は基底細胞癌を除く、スクリーニングの前の5年間における悪性腫瘍の病歴又は癌の強い家族歴(例、家族性癌障害)を伴う者。
5.治験責任医師の意見において、安定化されていない、又は、他には、被験体の安全性もしくは試験結果に影響しうる(疑わしい場合では、治験依頼者の臨床研究医師に相談すべきである)、臨床的に有意な心血管疾患、肺疾患、腎臓疾患、内分泌疾患、肝臓疾患、神経疾患、精神疾患、免疫疾患、胃腸疾患、血液疾患、又は代謝性疾患。
6.血液透析もしくは腹膜透析を受けている、又は慢性腎不全(血漿クレアチニン>2mg/dl)を伴う被験体。
7.PIの判断に従い、患者の安全に干渉する有意に異常な主要検査パラメーターを伴う被験体。
治験の範囲/治験の部分:
治験には2つのパートがある:
‐パート1SD‐単回漸増用量
‐パート2MD‐複数漸増用量
投与量:
SD:0.3、1、3、及び6μg/mm2
MD:1及び3μg/mm2
評価項目:
主要評価項目:
パート1SD:
安全性:
・有害事象(AE)及び有害薬物反応(ADR)
・バイタルサイン:収縮期(SBP)及び拡張期(DBP)血圧
・ホルターから抽出された12誘導心電図パラメーター(HR、PR、QRS、QTcF、QT)
・臨床検査評価(化学、血液学、及び検尿)。
パート2MD:
安全性:
・AE及びADR;
・バイタルサイン:SBP、DBP;温度;
・三通りの12誘導心電図;
(任意のECG/心血管所見が試験のパート1から出現した場合、SACはまた、示されているように、パート2の一部又は全部についてホルターモニタリングを実施しうる)。
・ホルターから抽出された12誘導心電図パラメーター(HR、PR、QRS、QTcF、QT)。
・24時間ホルターECG異常所見(合計休止>2.5秒、心房細動及び心房粗動、心室性期外収縮、心房性期外収縮(PAC)負荷、心室性期外収縮(PVC)負荷、異常形態);0〜24時間の心拍数(24時間ホルター心電図から)及び1時間ごとの平均HR。
・臨床検査評価(化学、血液学、及び検尿)。
この評価項目の評価の時点:上記に示す。
副次的評価項目:
パート1SD:
薬物動態変数:
以下のPKパラメーターを、配列番号4のポリペプチドの血清濃度から導き出す。
・AUC0−12h、AUC00−24h、AUC0−t、AUC0−∞、Cmax、tmax、t1/2、CL/F、Vd/F;
・AUC0−12h DN、AUC00−24h DN、AUC0−t DN、AUC0−∞DN、CmaxDN。
免疫原性変数:ADA Ct
パート2MD:
薬物動態変数:
以下のPKパラメーターを、配列番号4のポリペプチドの血清濃度から導き出す。
・1日目:AUC 0−12h、Cmax、及びtmax、;
・2日目から13日目まで:Ctrough
・薬物投与の最終日(14日目):AUC 0−12h、AUC0−t、AUC0−∞、Ctrough、Cmax、Cmin、tmax、tmin、Cav、及びRac、t1/2、CL/F、及びVd/F。
免疫原性変数:
・抗薬物抗体(ADA)の血清濃度を、最初の用量の前の1日目、退院の前の15日目、24日目(4週目)、52日目(8週目)、及び80日目(12週目)に評価する。
・Ct
薬力学/有効性変数:
・ベースラインからD14、D21、D28、D56、及びD84までの標的潰瘍の領域及び容積における平均低下。
・標的潰瘍の領域及び容積の治癒までの時間。治癒を「完全な回復」として定義する。異なる「治癒の定義」も適用する(部分的な低下:50%、66%、75%)。
この評価項目の評価の時点:上に示す。
単回漸増用量(SAD)を以下の投与量で行う:コホートA:0.3μg/mm2;コホートB:1μg/mm2;コホートCA:3μg/mm2;コホートD:6μg/mm2。各々のコホートは、コホート間の持ち越し効果の可能性を回避するために、配列番号4ネイティブの被験体で構成されている。これは、痛覚過敏(野生型ヒトNGFについて公知である)に関して特に重要である。必要な場合、用量レベルを調整し、及び、休薬期間を、必要な場合、試験目的を満たすために含めてもよい。
単回漸増用量(SAD)では、標準治療(SOC)が、完全な再上皮化/治癒が生じない場合、スクリーニング時及び経過観察期間の終了時までの各々の連続訪問時に与えられ、2回の連続訪問にわたり持続した。この場合では、SoCを、治験責任医師の評価/決定に従って中止し、被験体の足を管理することができる。SoCは以下の手順からなった:
・標的潰瘍のデブリードマン(デブリードマンにより起こる任意の可能な出血は、脚の圧迫及び挙上だけにより制御された)、
・パラフィンガーゼを用いた病変のドレッシング、及び滅菌ガーゼで作られた保護包帯で覆った。
・包帯を巻いた後の荷降ろし用の取り外し可能な歩行器(経過観察期間の間は取り外しできない)の使用。
試験の間での病変の感染の場合では、病変を微生物培養のためにサンプリングし、及び被験体は、治験責任医師の決定に従って全身の経験的抗生物質治療を処方しなければならず、治験責任医師は、培養の結果に従って治療を調整しなければならなかった。すべての感染を、特に強度において重度である場合、それらの重篤度について評価及び査定しなければならなかった。
複数回漸増用量(MAD)を、2つのコホートにおいて行い、各々が、ネイティブの被験体を順番に伴った。目標一日用量レベルは、配列番号4のポリペプチド(20)又はプラセボ(10)を用いて、1μg/mm2及び3μg/mm2である。スクリーニング後、適格な被験体を標準治療(SOC;慣らし期間)に従って処置する;登録を、潰瘍サイズを測定した後に確認した。この慣らし運転期間の間に潰瘍面積が50%又はそれ以上低下した場合、被験体は登録されない。
治験の範囲:
IMPの安全性、薬物動態、薬力学、及び他(許容性)のヒトにおける決定。
結果。
単回漸増用量(SOC)。
単回漸増用量(SAD)は、以下の投与量で4つの連続コホートにおいて行った:コホートA:0.3□g/mm2;コホートB:1□g/mm2;コホートCA:3□g/mm2;コホートD:6□g/mm2(標準治療に加えて)。全てのそれらコホートにおいて、配列番号4のポリペプチドの定量化可能なレベルが、それぞれのヒト被験体の全身の血液循環において検出可能であった。このように、投与されたポリペプチドは、投与後に被験体の身体において存在している。
被験体を、単回用量の投与に続く28日間にわたり有害事象についてモニターした。配列番号4のポリペプチドの投与に関連する有害事象はなかった。このように、配列番号4のポリペプチドの投与は、任意の観察可能な有害な薬物反応には関連付けられなかった。有害な薬物反応の非存在の結果として、配列番号4のポリペプチドは安全であり、ヒト被験体により十分に許容されると結論付けられる。
見解。
配列番号4のポリペプチドの生物学的活性は、細胞、特に神経細胞の成長、ならびに維持、増殖、及び生存を促進するその能力に由来する。
この実施例の結果として、ヒトにおける単回及び反復漸増用量後の配列番号4のポリペプチドの安全性、許容性、薬物動態学的及び薬力学的プロファイルが研究及び確認される。