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JP2022520997A - イミプリドンを使用する方法 - Google Patents

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Abstract

イミプリドンの投与に応答するがん患者を選択および処置するためのマーカーとして、ClpPレベルおよび変異状態を使用する方法が、本明細書において提供される。また、ペロー(Perrault)症候群を有する患者を処置する方法も提供される。また、イミプリドンを使用して細菌細胞を死滅させる方法および細菌感染症を処置する方法も提供される。TIFF2022520997000019.tif68168

Description

関連出願の参照
本出願は、2019年9月30日付で出願された米国特許仮出願第62/908,105号、および2019年2月22日付で出願された米国特許仮出願第62/809,140号の優先権の恩典を主張するものであり、その各々の内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。2020年1月29日に作成された前記のASCIIコピーは、UTFC1440WO_ST25.txtという名称であり、サイズが2.8キロバイトである。
1. 分野
本発明は広くは、医学および腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本発明は、イミプリドンによる処置のための患者を選択するための方法、およびそのように選択された患者を処置するための方法に関する。
2. 関連技術の説明
新たに開発された標的薬剤にもかかわらず、血液悪性腫瘍および固形腫瘍の大部分は不治である。これには、TP53変異を有する本質的に全ての患者が含まれる。証拠の蓄積から、ミトコンドリア機能が白血病(Cole et al., 2015; Farge et al., 2017; Kuntz et al., 2017; Moschoi et al., 2016; Samudio et al., 2010; Skrtic et al., 2011)および特定の固形腫瘍(Birsoy et al., 2014; Kotschy et al., 2016; Viale et al., 2014)の維持および治療抵抗性に重要であることが実証されており、ミトコンドリアの完全性を効果的に破壊するための治療戦略が調べられている(Birsoy et al., 2014; Cole et al., 2015; Konopleva et al., 2006; Konopleva et al., 2016; Kotschy et al., 2016; Kuntz et al., 2017; Pan et al., 2014; Pan et al., 2017; Skrtic et al., 2011; Viale et al., 2014)。とは言え、ミトコンドリアの構造および機能を破壊しうる抗腫瘍剤がある。
概要
したがって、ミトコンドリアの構造および機能を破壊することによりがん患者を処置する方法が本明細書において提供される。そのような方法は、がんを有する患者にイミプリドンを投与する段階を含む。また、ミトコンドリアプロテアーゼClpPのレベルに基づいて、患者がイミプリドンの抗がん活性に感受性であるかどうかを予測する方法も、本明細書において提供される。
1つの態様において、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤による処置のための、がんを有する患者を選択する方法であって、(a) 該がんにおけるClpPレベルを決定する段階、および(b) 該がんにおけるClpPレベルが参照レベルよりも高い場合に、該処置のための患者を選択する段階を含む、方法が本明細書において提供される。いくつかの局面において、参照レベルは、健常な集団における平均ClpPレベルより1標準偏差低いレベルである。いくつかの局面において、本方法は、有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与する段階をさらに含む。
いくつかの局面において、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤は、ClpP活性化剤である。特定の局面において、ClpP活性化剤はイミプリドンである。特定の局面において、イミプリドンは、ONC201、ONC206、ONC212、またはONC213である。
1つの態様において、がんを有する患者を処置する方法であって、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を患者に投与する段階を含み、患者のがんが、参照レベルよりも高いClpPレベルを有する、該方法が本明細書において提供される。いくつかの局面において、参照レベルは、健常な集団における平均ClpPレベルより1標準偏差低いレベルである。
1つの態様において、がんを有する患者を処置する方法であって、(a) (i) がんから生物学的サンプルを取得するかまたは取得が完了していること; および(ii) ClpPレベルを決定するために生物学的サンプルに対してアッセイを実施するかまたは実施が完了していることによって、患者のがんが参照レベルよりも高いClpPレベルを有するかどうかを検出する段階; (b) 該がんが、参照レベルよりも高いClpPレベルを有する場合に、該処置のための患者を選択するかまたは選択が完了している段階; ならびに(c) 選択された患者に、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与するかまたは投与が完了している段階を含む、該方法が本明細書において提供される。いくつかの局面において、参照レベルは、健常な集団における平均ClpPレベルより1標準偏差低いレベルである。
いくつかの局面において、がんにおけるClpPレベルは、ウエスタンブロット、ELISA、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、または質量分析によって決定される。いくつかの局面において、本方法は、少なくとも第2の抗がん療法を患者に施す段階をさらに含む。特定の局面において、第2の抗がん療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。特定の局面において、化学療法はベネトクラクスである。特定の局面において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤である。
いくつかの局面において、本方法は、ClpPレベルを報告する段階をさらに含む。特定の局面において、報告する段階は、書面によるまたは電子的な報告書を作成することを含む。特定の局面において、本方法は、対象、医師、病院、または保険会社に報告書を提供する段階をさらに含む。
1つの態様において、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤による処置のための、がんを有する患者を選択する方法であって、(a) 該がんにおけるClpPタンパク質変異状態を決定する段階、および(b) 該がんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有する場合に、該処置のための患者を選択する段階を含む、方法が本明細書において提供される。いくつかの局面において、本方法は、有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与する段階をさらに含む。特定の局面において、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤は、ClpP活性化剤である。特定の局面において、ClpP活性化剤はイミプリドンである。特定の局面において、イミプリドンは、ONC201、ONC206、ONC212、またはONC213である。
1つの態様において、がんを有する患者を処置する方法であって、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を患者に投与する段階を含み、患者のがんが、ClpPタンパク質におけるD190A変異を有する、該方法が本明細書において提供される。
1つの態様において、がんを有する患者を処置する方法であって、(a) (i) 該がんから生物学的サンプルを取得するかまたは取得が完了していること; および(ii) 該患者のがんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有するかどうかを検出するために生物学的サンプルについてアッセイを実施するかまたは実施が完了していることによって、該患者のがんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有するかどうかを検出する段階; (b) 該がんが、ClpPタンパク質におけるD190A変異を有する場合に、該処置のための患者を選択するかまたは選択が完了している段階; ならびに(c) 選択された患者に、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与するかまたは投与が完了している段階を含む、方法が本明細書において提供される。
いくつかの局面において、ClpPタンパク質におけるD190A変異は、ウエスタンブロット、ELISA、質量分析、または ClpPをコードする核酸の配列決定によって検出される。特定の局面において、ウエスタンブロットまたはELISAは、D190A変異を有する ClpPを特異的に検出する抗体を用いて実施される。特定の局面において、核酸は、ClpPをコードするmRNAである。特定の局面において、核酸は、ClpPをコードするゲノムDNAである。
いくつかの局面において、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤は、 ClpP活性化剤である。特定の局面において、 ClpP活性化剤はイミプリドンである。特定の局面において、イミプリドンは、ONC201、ONC206、またはONC212である。
いくつかの局面において、本方法は、少なくとも第2の抗がん療法を患者に施す段階をさらに含む。特定の局面において、第2の抗がん療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。特定の局面において、化学療法はベネトクラクスである。特定の局面において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤である。
いくつかの局面において、本方法は、ClpP D190A変異状態を報告する段階をさらに含む。特定の局面において、報告する段階は、書面によるまたは電子的な報告書を作成することを含む。特定の局面において、本方法は、対象、医師、病院、または保険会社に報告書を提供する段階をさらに含む。
いくつかの局面において、患者は寛解状態にあり、本方法は再発を予防する。いくつかの局面において、本方法は、化学療法抵抗性細胞を排除する。いくつかの局面において、がんはAMLである。いくつかの局面において、患者は、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている。いくつかの局面において、患者はヒトである。
1つの態様において、細菌細胞を死滅させる方法であって、細菌細胞を致死量のイミプリドンと接触させる段階を含む該方法が本明細書において提供される。特定の局面において、イミプリドンは、ONC201、ONC206、またはONC212である。いくつかの局面において、細菌はグラム陽性細菌である。いくつかの局面において、細菌は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、連鎖球菌(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、およびペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属からなる群より選択される。いくつかの局面において、細菌はブドウ球菌属である。
1つの態様において、それを必要とする対象における細菌感染症を処置する方法であって、治療的有効量のイミプリドンを対象に投与する段階を含む該方法が本明細書において提供される。特定の局面において、イミプリドンは、ONC201、ONC206、またはONC212である。いくつかの局面において、細菌は抗生物質耐性である。いくつかの局面において、細菌はグラム陽性細菌である。いくつかの局面において、細菌は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、連鎖球菌(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、およびペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属からなる群より選択される。いくつかの局面において、細菌はブドウ球菌属である。
1つの態様において、ペロー(Perrault)症候群を有する患者を処置する方法であって、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を患者に投与するかまたは投与が完了している段階を含む該方法が本明細書において提供される。いくつかの局面において、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤は、ClpP活性化剤である。いくつかの局面において、ClpP活性化剤はイミプリドンである。いくつかの局面において、イミプリドンは、ONC201、ONC206、ONC212、またはONC213である。いくつかの局面において、患者はCLPPまたはHSD17B4において変異を有する。いくつかの局面において、本方法は、患者の聴力を改善し、患者のさらなる難聴(聴力低下)を予防し、かつ/または患者における難聴の発生を予防する。いくつかの局面において、患者は女性であり、本方法は、患者における卵巣機能を改善し、患者におけるさらなる卵巣形成不全を予防し、および/または患者における卵巣形成不全の発生を予防する。
1つの態様において、ClpP遺伝子におけるD190A変異を有するがんまたは高レベルの ClpPを発現するがんを有する患者を処置するための医薬(medicament)の製造における、例えば、イミプリドンなどの、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤の使用が本明細書において提供される。1つの態様において、ClpP遺伝子におけるD190A変異を有するがんまたは高レベルの ClpPを発現するがんを有する患者の処置において使用するための、例えば、イミプリドンなどの、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤が本明細書において提供される。
本明細書において用いられる場合、特定の成分に関して「本質的に含まない」とは、特定成分がいずれも意図的に組成物に配合されていないおよび/または混入物質としてまたは微量でのみ存在することを意味する。意図的でない組成物の混入から生じる特定成分の合計量は、それゆえに、0.05%よりかなり低く、好ましくは0.01%より低い。最も好ましいのは、そのような特定成分の量を標準的な分析方法で検出することができない組成物である。
本明細書において用いられる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は1つまたは複数を意味しうる。本明細書において特許請求の範囲で用いられる「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語は、「含む(comprising)」という単語と一緒に用いられる場合、1つまたは2つ以上を意味しうる。
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみまたは相互に排他的な選択肢をいうように明示的に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみと「および/または」をいう定義を支持する。本明細書において用いられる場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味しうる。
本出願を通して、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために利用されている装置、方法の固有の誤差変動、研究対象の間に存在する変動、または記載値の10%以内である値を含むことを示すために用いられる。
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解すべきである。というのは、本発明の趣旨および範囲内のさまざまな変更および修飾がこの詳細な説明から当業者には明らかになるからである。
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために提供される。本発明は、本明細書において提示された具体的な態様の詳細な説明と併せて、これらの図面の1つまたは複数を参照することにより、よりよく理解されうる。
図1A~D: ミトコンドリアClpP活性化は、インビトロおよびインビボで抗腫瘍効果を誘導する。(図1A)OCI-AML3細胞およびZ138細胞における野生型ClpPまたは構成的に活性なY118A変異型ClpPのテトラサイクリン誘導性過剰発現。細胞を、示された濃度のテトラサイクリンで144時間処理した。データは、アポトーシス(アネキシンV陽性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す(上)。***P<0.001, ****P<0.0001。ClpPタンパク質レベルをイムノブロット分析によって調べた(下)。 (図1B)テトラサイクリン誘導性Y118A変異型ClpP過剰発現を伴うZ138細胞を用いた異種移植マウスの生存。テトラサイクリン(飲料水中2 mg/mL)有りまたは無しでマウス(各n=10)を処置した。「テトラサイクリン」生存曲線は、約51日でx軸と交差する曲線である。 (図1C)組み換えWT ClpPによるFITC-カゼインの分解に及ぼすADEP1の効果。平均±SD。 (図1D)薬物への72時間の曝露後にアラマーブルーアッセイによって測定されたOCI-AML2細胞の生存性に及ぼすADEP1の効果。平均±SD。 図2A~E: イミプリドンONC201およびONC212はミトコンドリアClpPを活性化する。(図2A)747分子の化学物質ライブラリを、組み換えWT ClpPによる蛍光性基質FITC-カゼインの分解速度に及ぼすその効果についてスクリーニングした。 (図2B)ONC201およびONC212の化学構造。 (図2Cおよび2D)組み換えWT ClpPによる蛍光性基質(AC-WLA-AMC (図2C)およびFITC-カゼイン(図2D)の分解に及ぼすONC201およびONC212の効果。平均±SD。 図2Cの説明を参照。 (図2E)SDS-PAGEで検出された、FITC-カゼインアッセイ緩衝液中のONC201、ONC212、または媒体対照(DMSO)で3時間処理された、精製された組み換えWT ClpPおよびClpXPの複合体によるα-カゼインの分解。 図3A~H: ONC201は、ClpPに結合し、白血病細胞およびリンパ腫細胞に対して細胞毒性を示す。(図3A)等温熱量結合実験から、100μM ONC201を20μM ClpP (ClpP単量体の濃度)に滴定した場合に非標準的な挙動を示した。 (図3B)ONC201は2つのサブユニット間の疎水性ポケット内に結合する(左, 水素結合は破線で示されている; 水分子は赤い球の水素結合を媒介する)。 (図3C)ONC201のClpPへの結合は、軸方向の細孔を開き、タンパク質の圧縮を誘導する(上面図および正面図; アポグレイ(apo-grey) PDB ID:1TG6)。最下段: 温度因子(B因子)の変動によって証明されるように、ONC201結合は、N末端(細孔領域)および七量体界面のダイナミクスを増加させる。 (図3D)ClpPへのONC201の結合は、七量体界面における細孔を誘導する(集合したClpP十四量体の断面; 細孔の位置は黒い三角形で示されている)。鎖C (左下)、D (右下)、および対称性に関連する鎖K (上)の間の細孔の近接写真(挿入図)。タンパク質鎖は、残基B因子(灰色の陰影のタンパク質表面)に基づいて色付けされたリボンで示されている。 (図3E)ClpPへのONC212結合のモデル。ONC212は、2つのヒトClpPサブユニットの界面にある2つの表面くぼみに固定される。トリフルオロメチル置換基は深く伸びており、ONC201複合体の結晶構造内でその4-(2-メチルベンジル)基を収容するポケットにうまく適合する。リガンドはスティックとして表示され、周囲のタンパク質は表面表現で示されている。 (図3F)細胞サーマルシフトアッセイ(CETSA)を用いて評価されたOCI-AML2細胞における内因性ClpPの熱安定性に及ぼすONC201 (I)およびONC212 (II)での処理の濃度依存性効果。UHC: 非加熱対照。OCI-AML2細胞を漸増濃度のONC201またはONC212で30分間処理し、洗浄し、プロテイナーゼ阻害剤を含有するPBS中に再懸濁し、67℃で3分間加熱した後に、イムノブロッティング用の細胞溶解物の回収を行った。(III) インタクトなOCI-AML2細胞における内因性ClpPの熱安定性に及ぼす、培地からのONC201の除去の効果。ONC201(10μM)処理細胞をPBSで洗浄し、CETSAの前に最大75分間新鮮な培地中で再インキュベートした。w=洗浄。 (図3G)OCI-AML2、TEX、OCI-AML3、およびZ138細胞の生存性に及ぼすONC201およびONC212の効果。データは、薬物への72時間の曝露後、OCI-AML2、TEX細胞でのアラマーブルーアッセイによって、またはOCI-AML3細胞およびZ138細胞でのアネキシンVアッセイによって測定された、生存細胞またはアポトーシス細胞の割合(%)の平均±SDを表す。 (図3H)原発性AMLおよび正常骨髄単核細胞(BM-MNC)における未処理対照と比較したONC201およびONC212による生細胞数の変化。細胞を、表示された濃度のONC201およびONC212で72時間処理した。アネキシンVおよびDAPI陰性細胞をフローサイトメトリーによって測定し、未処理対照のものに対して正規化した。#、##: ONC201に対して比較的耐性であったサンプル(表3において指定されている)。 図4A~H: イミプリドンの細胞毒性はClpP依存性である。(図4A)ClpP +/+およびClpP -/- T-REx HEK293細胞の生存性に及ぼすONC201およびONC212の効果。データは、薬物への72時間の曝露後にアラマーブルーアッセイによって測定された生細胞の割合(%)の平均±SDを表す。 (図4B)薬物への72時間の曝露後にアネキシンVアッセイによって測定された原発性AMLサンプルの生存性に及ぼすONC201の効果とClpPの処置前発現レベルとの間の相関。ClpPレベルは、未処理サンプルのイムノブロット分析によって定量化された。低Clpp=平均を1 SD下回っていたClpPレベルを有するサンプル。高Clpp=他の全てのサンプル。 (図4C)蛍光性AC-WLA-AMCの分解に及ぼす野生型およびD190A-ClpPの効果。平均±SD。 (図4D)D190A ClpPによる蛍光性基質(AC-WLA-AMC) (左) and FITC-カゼイン (右))の分解に及ぼすONC201およびONC212の効果。平均±SD。 (図4E)D190A-ClpP (20μM; ClpP単量体の濃度)へ滴定されたONC201 (100μM)のITCデータ。 (図4F)ヒトミトコンドリアClpPの明らかに閉じた立体構造における2つの七量体環の界面でのD190およびR226の位置。 (図4G)D190A変異型ClpPを保有するONC201耐性(ONC-R) Z138細胞における野生型ClpPの過剰発現(O/E)。細胞を、表示された濃度のONC201およびONC212で72時間処理した。データは、アポトーシス(アネキシンV陽性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す。E/V; 対照としての空ベクター。ClpPのタンパク質発現レベルをイムノブロッティングによって評価した。**P<0.01, ***P<0.001, ****P<0.0001。 (図4H)親(ONC201感受性) Z138およびOCI-AML3細胞における野生型またはD190A-ClpPの過剰発現。細胞を、表示された濃度のONC201およびONC212で72時間処理した。データは、アポトーシス(アネキシンV陽性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す。ClpPのタンパク質発現レベルをイムノブロッティングによって評価した。**P<0.01, ***P<0.001, ****P<0.0001。 図5A~E: ClpP過剰活性化は、呼吸鎖複合体サブユニットの低減に続いてアポトーシスを誘導する。(図5A)ClpPミトコンドリア相互作用物質のサブセットが、BioID-MSを用いて同定され、選択された遺伝子オントロジーの生物学的プロセスにしたがって分類された。ONC201処理後のスペクトル数の減少が示され、色強度の減少に比例している。 図5A-1の続きを示す。 図5A-2の続きを示す。 図5A-3の続きを示す。 (図5B~E)親(ONC感受性) Z138細胞および野生型ClpPまたは空ベクターの過剰発現を有するONC201耐性Z138細胞(D190A変異型ClpPを保有する単一クローン番号2) (図5B)における; 野生型ClpP、D190A変異型ClpP、または空ベクターの過剰発現を有する親(ONCナイーブ) Z138細胞(図5C)における; Z138細胞でのテトラサイクリン誘導性Y118A変異型ClpP (図5D)における; 原発性AML細胞および正常骨髄(NBM)細胞(図5E)における呼吸鎖複合体サブユニットのイムノブロット分析。AML番号3_1および番号3_2は同じ患者のものであるが、再発の時点が異なる。細胞を、表示された濃度のONC201で24時間処理した。 図5Bの説明を参照。 図5Bの説明を参照。 図5Bの説明を参照。 図6A~E: ONC201によるClpP過剰活性化は、酸化的リン酸化を損なう。(図6A)Z138およびZ138 D190A ClpP細胞における酸素消費量に及ぼすONC201の効果(Seahorse Analyzerによって測定した)。2μMのオリゴマイシンおよび0.25μMのFCCPを用いて、ミトコンドリア呼吸のパラメータを導き出した。 (図6B)OCI-AML2細胞における呼吸鎖複合体I、II、およびIVの活性に及ぼすONC201処理の効果。 (図6C)Z138およびZ138 D190A ClpP細胞におけるミトコンドリアROS産生に及ぼすONC201処理の効果。3つの代表的な実験のうちの1つからの割合(%)の平均±SDが示されている。 (図6D)ミトコンドリアの形態に及ぼすONC201処理の効果。ミトコンドリアは、5 mM ONC201有りまたは無しで24時間処理されたOCI-AML3細胞での透過電子顕微鏡法によって画像化された。 (図6E)Y118A ClpP過剰発現Z138細胞におけるATF4、p-eIF2α、およびeIF2αのイムノブロット。テトラサイクリン誘導性Y118A ClpPを有するZ138細胞をテトラサイクリンにより、表示された濃度で48時間処理した。 図7A~E: ClpP活性化はインビボで抗腫瘍効果を発揮する。(図7A)ONC212有りまたは無しで処理された野生型またはD190A変異型ClpP過剰発現Z138細胞を有する異種移植マウスにおいてIVISイメージングを用いてルシフェラーゼ活性により測定された腫瘍量。マウス(各n=7)を、生着の確認後、ONC212 (1日おきに50 mg/kg, 強制経口投与)または媒体で処置した。 図7A-1の続きを示す。 (図7B)図6AにおけるマウスにおいてIVISイメージングにより検出された発光の強度。 (図7C)WTまたはD190A ClpPで過剰発現されたZ138細胞を用いた異種移植マウスの生存性。ONC212は生存性を高めた。 (図7D)OCI-AML2細胞を用いた異種移植マウスの腫瘍量。マウス(各n=10)は、移植後5日目から13日間、ONC201 (100 mg/kg 1日2回, 強制経口投与)または媒体で処置した。 (図7E)Pdx AMLマウスの生存性。Pdx細胞[t(9;11)(p22; q23)、CEBPA、およびATM変異体]を250 nM ONC212有りまたは無しで36時間処理し、次いでNSGマウスに注射した(各n=10)。ONC212は生存性を高めた。 図8A~C: イミプリドンおよびClpPにおける活性化変異Y118Aは、インビトロで組み換えWT ClpPを過剰活性化する。(図8A)黄色ブドウ球菌(S. aureus) (SEQ ID NO: 9)およびヒトClpP (SEQ ID NO: 10)の配列アライメント。(図8B)WT ClpPおよびY118A ClpP変異体のFITC-カゼイン分解動態。(図8C)WT ClpPによる蛍光性基質(AC-WLA-AMCおよびFITC-カゼイン)の分解に及ぼすONC201およびONC212の効果。エラーバーは三つ組の実験の平均±SDを表す。 図9A~C: イミプリドンによって活性化されたClpPは、インビトロでその特異性を維持しながら、ClpP基質を分解する。(図9A)WT ClpPによる蛍光性基質(Phe-hArg-Leu-ACC、Clptide、およびMCA-Pro-Leu-Gly-Pro-Lys (DNP)-OH)の分解に及ぼすONC201、ONC212、ADEP1、およびONC201不活性異性体の効果。エラーバーは三つ組の実験の平均±SDを表す。 図9A-1の続きを示す。 (図9B)組み換えWT ClpPによるFITC-カゼイン(左)およびAc-WLA-AMC(右)の分解に及ぼすONC201不活性異性体の効果。平均±SD。 (図9C)FITC-カゼインの分解速度に及ぼすONC201とのWT ClpPのプレインキュベーション(0~60分)の効果。平均±SD。 図10A~F: ONC201およびONC212は、インビトロで組み換えWT ClpPを過剰活性化する。(図10A)等温熱量によって測定されたONC201へのClpPの結合。500μM WT ClpPを50μM ONC201に滴定した。 (図10B)対照 - 50μMの薬物へ滴定された緩衝液。 (図10C)ClpPをONC201 (1:1)で実行した場合、ゲルろ過は高分子量種へのシフトを示した。黒色=14-mer; 灰色=7-mer。 (図10D)ONC201は2つのサブユニット間の疎水性ポケット内に結合する(水素結合は破線で示されている; 水分子は球内の水素結合を媒介する)。 (図10E)ONC201は正のmFo-DFc差密度によく適合する。マップを、構造からONC201分子を省くことによって計算し、3σで輪郭形成した。 (図10F)ONC201がClpPに結合すると、触媒三残基は、それ自体を再配列し、His178とAsp227の両方がSer153から離れる(apo-灰色; ONC201結合-紫色)。 図11A~C: ONC201は、OCI-AML2細胞における野生型ClpPに結合し、がん細胞においてアポトーシスを誘導する。(図11A)CETSAによって試験されたOCI-AML2細胞における内因性ClpPの熱安定性に及ぼす、10μM ONC201での処理の効果。U: 未処理対照; T: 10μM ONC201で処理。インタクトな細胞をONC201で30分間処理し、3分間加熱(59~67℃)した後に、イムノブロッティング用の細胞溶解物の回収を行った。 (図11B)HCT-116、HeLa、OC316、およびSUM159細胞の生存性に及ぼすONC212の効果。データは、ONC212への72時間の曝露後にアネキシンVアッセイによって測定された生細胞の割合(%)の平均±SDを表す。 (図11C)ONC201およびONC212で処理されたZ138およびOCI-AML3細胞におけるアポトーシス。細胞を表示された濃度のONC201またはONC212で72時間または120時間処理した。アネキシンVおよびPI陰性の細胞を生細胞としてカウントし(上パネル)、アネキシンV+ 細胞をアポトーシス細胞としてカウントし(下パネル)、未処理サンプルに対して正規化した。 図12A~C: イミプリドンの細胞毒性はClpPに依存性である。(図12A~B)ClpP +/+またはClpP -/- T-REx HEK293 (図12A)およびONC201感受性またはONC201耐性Z138 (図12B)細胞における生存性に及ぼすONC201およびその不活性異性体の効果。データは、化合物への72時間の曝露後にアラマーブルーアッセイによって測定された生細胞の割合(%)の平均±SDを表す。 図12Aの説明を参照。 (図12C)72時間の曝露後にアネキシンVアッセイによって測定された原発性AMLサンプルの生存性に及ぼすONC201の効果。各サンプルにおけるClpP発現レベルは、未処理サンプルのイムノブロット分析によって測定された。 図13A~E: ONC201耐性の単一細胞クローンはONC201およびONC212に耐性であり、ヘテロ接合性D190A変異を担持していた。(図13A)ONC201およびONC212に対するONC201ナイーブおよびONC201耐性Z138の感受性をアネキシンVアッセイによって評価した。データは、生存(アネキシンVおよびPI二重陰性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す。耐性細胞は感受性が低かった。 (図13B)標準的な化学療法剤に対するONC201耐性細胞の感受性。ONC201耐性Z138細胞(クローン番号2)を、表示された濃度のアドリアマイシン(上パネル)およびビンクリスチン(下パネル)で72時間処理した。アネキシンV陽性細胞(左)およびアネキシンV/PI二重陰性細胞(右)をフローサイトメトリーによって測定した。 (図13C)親(ONC感受性)およびONC耐性Z138細胞のRNA配列決定の結果。個々の読み取りは、各細胞株について以下に視覚化され、上の棒グラフは、ゲノムエクソン配列の各ヌクレオチドでの読み取り数(「パイルアップ」)を示している。矢印は、野生型A569およびA569C変異の位置を示す。 (図13D)ONC201耐性Z138細胞の単一細胞クローンのONC201に対する感受性。ONC201耐性Z138細胞に由来する単一細胞クローンを、表示された濃度のONC201で72時間処理した。アポトーシス細胞(アネキシンV陽性)細胞(上)および生(アネキシンVおよびPI二重陰性)細胞(下)をフローサイトメトリーによって測定した。 (図13E)ONC201およびONC212に対するONC201耐性Z138細胞に由来する単一細胞クローン番号2および番号4の感受性を、アネキシンVアッセイによって評価した。データは、生存(アネキシンVおよびPI二重陰性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す。 図14A~E: ClpPにおけるD190A変異は、腫瘍細胞をイミプリドンに耐性にする。(図14A)図4Bに関連するゲノムDNAのサンガー配列。D190Aヘテロ接合変異は、試験した7つの単一細胞クローン全てで検出された。 図14A-1の続きを示す。 (図14B)ヒトミトコンドリアClpPの明らかに閉じた立体構造の3D構造におけるD190およびAsp227の位置。D227 (Asp227)は、D190から6.4オングストローム離れており、ClpPの触媒三残基の一部である。 (図14C~D)ClpP過剰発現Z138およびOCI-AML3細胞でのONC201およびONC212による生細胞数の変化。生細胞をフローサイトメトリーによって測定した。データは、生存(アネキシンVおよびPI二重陰性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す。(図14C)WT ClpP過剰発現性ONC201耐性Z138細胞。 (図14D)WTまたはD190A ClpPを過剰発現するOCI-AML3細胞およびZ138細胞。P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001, ****P<0.0001。 (図14E)HCT116細胞におけるD190A-ClpPの過剰発現。細胞を、表示された濃度のONC201およびONC212で72時間処理した。データは、アポトーシス(アネキシンV陽性)細胞の割合(%)の平均±SDを表す。ClpPのタンパク質発現レベルをイムノブロッティングによって評価した。EV; 空ベクター, OE; 過剰発現。#; 数値の低さのため不可視のバー。***P<0.001, ****P<0.0001。 図15A~D: ClpP過剰活性化は、呼吸鎖複合体サブユニットの低減に続いてアポトーシスを誘導する。(図15A)表示された濃度で24時間ONC212により処理されたOCI-AML3細胞におけるSDHA、SDHB、およびNDUFA12のイムノブロット。 (図15B)呼吸鎖複合体サブユニットのイムノブロット。OCI-AML3細胞を、表示された濃度のONC201またはONC212で24時間処理した。 (図15C)表示された濃度で24時間ONC212により処理されたHCT-116、HeLa、OC316、およびSUM159細胞におけるSDHBおよびNDUFA12のイムノブロット。 (図15D)D190A変異型ClpPまたは空ベクター(EV)の過剰発現を有するHCT116細胞における呼吸鎖複合体サブユニットのイムノブロット分析。 図16A~B: イミプリドンによる呼吸鎖複合体サブユニットの低減は、転写ではなく、ミトコンドリアでのタンパク質分解の活性化によるものである。(図16A)OCI-AML2およびZ138細胞におけるミトコンドリア呼吸鎖サブユニットをコードするmRNAのレベルに及ぼすONC201 (0.6μM)の効果。 (図16B)短時間(3時間)のインキュベーション後の組み換えClpP (6μM)有りまたは無しで漸増濃度のONC201で処理したClpP -/- HEK293T-RexおよびOCI-AML2細胞から単離されたミトコンドリア溶解物におけるクエン酸シンターゼ(CS)、UQCRC2 (複合体III)、およびNDUFB8 (複合体I)のイムノブロット。 AML患者におけるONC201の初期臨床反応。デシタビン、フルダラビン、シアラビン、および2つの治験中のIDH2阻害剤に抵抗性のAMLを有する患者が、ONC201の第1相試験に登録された。単回用量ONC201 (250 mg)の経口投与後に芽球(50%~3%)および血小板輸血の必要性が低減した。矢印はONC201投与を示す。 ClpPの遺伝的活性化は、ベネトクラクス(ABT-199)に対する白血病細胞およびリンパ腫細胞の感受性を増強する。テトラサイクリン誘導性システムを備えた、構成的に活性なClpP変異体(Y118A)を、レンチウイルスによってOCI-AML3細胞およびZ138細胞にトランスフェクトした。細胞をテトラサイクリンで処理し、これによって72時間までにテトラサイクリン用量依存的にY118A ClpP変異体を誘導し、その後、表示された濃度のベネトクラクス(ABT-199)に曝露した。処理後、細胞をアネキシンV染色について評価した。 ONC201臨床試験での応答者は、ClpP陽性白血病細胞を示したが、非応答者はClpP陰性であった。登録された患者30名のうち患者11名からの処置前の骨髄生検サンプルを採取し、ClpPの染色をした。代表的な顕微鏡写真を示す。
詳細な説明
ミトコンドリアのカゼイン分解プロテアーゼP (ClpP)は、誤って折り畳まれたタンパク質を分解することにより、ミトコンドリアのタンパク質品質管理において中心的な役割を果たす。遺伝的および化学的アプローチを使用して、プロテアーゼの過剰活性化は、p53の状態とは無関係に、その呼吸鎖タンパク質基質の選択的分解によってがん細胞を選択的に死滅させ、ミトコンドリアの構造および機能を破壊する一方で、非悪性細胞には影響を与えないことが示された。ClpPの強力な過剰活性化因子(hyperactivator)として抗新生物化合物イミプリドンが同定された。生化学的研究および結晶学を通じて、イミプリドンがClpPに非共有結合し、多様な構造変化によってタンパク質分解を誘導することが示された。これらの知見は、ミトコンドリアタンパク質分解の活性化を通じてがん細胞の致死性を誘導するという一般的な概念を示唆している。さらに、ClpPのレベルが最も低い患者は、ClpP過剰活性化に対する感受性が低い。したがって、ClpPレベルおよび/またはClpP変異状態を用いて、イミプリドンによる処置に応答する可能性が高い患者を選択することができる。
I. ClpP
真核細胞は2つの別個のゲノム; 核DNAおよびミトコンドリアDNAを有する。ミトコンドリアDNAは、2種のrRNA、22種のt-RNA、およびミトコンドリア呼吸鎖における90種のタンパク質のうちの13種をコードする。残りのミトコンドリアタンパク質は核遺伝子によりコードされ、細胞質において翻訳され、ミトコンドリアに輸送される。ミトコンドリアは、ミトコンドリアリボソーム、開始因子、伸長因子を含めて、その独自のタンパク質合成装置を保有している。さらに、ミトコンドリアは、過剰なおよび/または損傷したタンパク質を排除することによってタンパク質レベルを調節するタンパク質分解複合体を有する。現在までに、ミトコンドリアマトリックスに位置する、カゼイン分解プロテアーゼP (ClpP)を含めて、少なくとも15種のプロテアーゼが異なるミトコンドリア区画において同定されている。ClpPは、細胞質/核プロテアソームに類似したオリゴマーセリンプロテアーゼである(Corydon et al., 1998)。
ミトコンドリアへの輸送後、ClpPは、タンパク質分解活性部位を含む中空チャンバを備えた二重リングの十四量体構造に集合する。十四量体構造は、AAA+ ATPaseシャペロンであるClpXにより両端でキャッピングされている(de Sagarra et al., 1999)。ミトコンドリアにおけるClpXP複合体の機能は完全には理解されていないが、構造的相同性を共有するその細菌相同体から洞察が得られている。細菌はユビキチン依存性タンパク質分解システムを欠いており、代わりに細菌のClpXP複合体を含むプロテアーゼファミリーで細胞内タンパク質を排除する。細菌では、ClpXは天然の基質を認識して展開し、分解のためにそれらをClpPプロテアーゼのバレルに供給する。
細菌のClpXP複合体は、リボソーム上で翻訳が停止するタンパク質を含めて過剰なタンパク質の分解に関与している。最近になって、ミトコンドリアClpPが原発性AMLサンプルの45%において過剰発現していることが実証された(Cole et al., 2015)。ClpPは幹細胞およびバルク集団において等しく発現され、過剰発現は広範な細胞遺伝学的および分子的変異にわたって発生する。ClpPの発現は、ミトコンドリアの折り畳まれていないタンパク質応答に関連する遺伝子の発現と正に相関している(Cole et al., 2015)。機能的には、プロテアーゼの阻害が誤って折り畳まれたまたは分解された呼吸鎖複合体サブユニットの蓄積およびAML細胞における呼吸鎖機能不全をもたらすため、ClpPは酸化的リン酸化の完全性を維持する(Cole et al., 2015)。プロテアーゼの化学的または遺伝的阻害は、酸化的リン酸化の障害を引き起こし、インビトロおよびインビボで正常な造血細胞よりもAML細胞および幹細胞を選択的に死滅させる(Cole et al., 2015)。
細菌では、天然に存在する抗生物質であるアシルデプシペプチド(ADEP)が、ClpXとの界面でプロテアーゼを結合し、ClpPプロテアーゼ複合体の細孔を開くことによりClpPを過剰活性化する(Brotz-Oesterhelt et al., 2005)。ADEPによって活性化されると、ClpPはその調節サブユニットClpXなしで完全長の基質を分解することができる。実際、これらのClpP活性化因子は、耐性慢性感染症の原因となる休眠状態の細菌を含む種々のさまざまな微生物種に対して細胞毒性である(Brotz-Oesterhelt et al., 2005; Conlon et al., 2013)。したがって、細胞の恒常性を維持するには、ClpPの活性を厳密に調節する必要がある。
II. 本態様の局面
本明細書で、ClpPの過剰活性化は、ミトコンドリアの呼吸および酸化的リン酸化に関与するミトコンドリアのプロテオームのサブセットでの選択的タンパク質分解により、白血病およびリンパ腫において致死性を誘導することが分かった。対照的に、正常な造血細胞はClpPの過剰活性化に耐性を示し、これはAML細胞と比較して酸化的リン酸化への依存度が低いことおよび呼吸鎖の予備能が大きいことを反映している可能性が高い(Sriskanthadevan et al., 2015)。
ClpP相互作用タンパク質が最近になって同定された(Cole et al., 2015)が、ClpP基質の包括的な評価は実施されていなかった。BioIDアッセイにおいてClpPの化学的活性化および遺伝的活性化を用いて得られた生細胞におけるミトコンドリアClpPの相互作用パートナーの包括的なリストが本明細書において提供される(表1)。呼吸鎖複合体のサブユニットを含む、ミトコンドリア酵素のサブセットは、ClpPを介した分解に対して選択的に感受性がある。BioIDアッセイにおけるトップヒットは、複合体Iサブユニットであった。
(表1)BioID質量分析によって検出された、0.6μM ONC201による処理後のClpP活性化またはY118A ClpP変異体の発現がHEK293TREX細胞におけるミトコンドリアペプチドの分解に及ぼす効果
Figure 2022520997000002
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実際、ClpP活性化は、それほどではないが、同様に阻害された複合体IIおよびIVと比較して、複合体Iを最も効果的に機能的に阻害した。その結果、ClpP活性化は、クリステの構造的破壊、酸化的リン酸化の阻害、およびミトコンドリアROSの蓄積を通じて形態学的および機能的にミトコンドリアを損傷し、抗腫瘍効果をもたらした。がん幹細胞および化学療法抵抗性細胞が酸化的リン酸化に大きく依存していることを示すいくつかの最近の報告を考慮すると(Farge et al., 2017; Kuntz et al., 2017; Lagadinou et al., 2013; Marin-Valencia et al., 2012; Viale et al., 2014)、この治療アプローチは、化学療法抵抗性の悪性細胞集団を排除し、疾患の再発を予防する可能性も有すると推測された。
ClpPの欠失または変異は、原発性AMLにおいて報告されたことがなく、ClpPが広範なAMLの分子的および細胞遺伝学的サブセットにわたって効果的な標的でありうることを示唆している。しかしながら、ClpPのレベルが最も低い患者サンプルは、ClpP過剰活性化に対する感受性がより低い。したがって、ClpPのレベルは、この治療に応答する可能性が最も高い患者および最も低い患者を選択するためのバイオマーカーとして機能する。
特定の点変異を同定することにより、ヒトClpPを活性化および不活性化するための遺伝子システムが確立された。ヒトClpPにおけるY118A変異は、プロテアーゼの構成的な過剰活性化を引き起こす。D190A変異は、ONC201耐性細胞に存在し、インビトロおよび細胞アッセイの両方で不活性化変異である。
本薬物スクリーニングにより、抗生物質製剤ADEPよりも強力なミトコンドリアClpPのアゴニストが同定された。最も強力な活性化因子であるイミプリドン(例えば、ONC201およびONC212)は、がん細胞を効果的に死滅させるが、正常細胞に対する毒性はずっと低い新規のクラスの抗がん化合物である(Allen et al., 2013; Ishizawa et al., 2016)。それらの効力は、TP53変異状態とは無関係である(Allen et al., 2013; Ishizawa et al., 2016)。これらの化合物の前臨床効力は多くのがんにおいて確証されているが、直接の標的は見つけにくかった。ドーパミン受容体DRD2は、直接結合の証拠に基づくものではないが、相同性モデリングおよび細胞β-アレスチンアッセイに基づいて、ONC201の推定上の標的と提唱されている(Kline et al., 2016; Kline et al., 2018)。また、DRD2ノックアウト細胞はONC201に感受性がある可能性があり(Kline et al., 2018)、それが機能的に重要な作用機序ではない可能性があることを示唆している。ClpP-ONC201複合体の結晶構造により、ClpPがONC201の直接の標的であることが確認され、その結合ポケットが同定された。また、ONC201を介したClpP活性化には、ADEPを介した活性化のものを超える全体的な構造効果があることも示された(Gersch et al., 2015; Lee et al., 2010)。薬物結合は、軸方向の入口細孔を広げるだけでなく、集合したプロテアーゼの「側壁」にチャネルのような細孔を開いた。ペプチド生成物がClpP反応チャンバから脱出する機構は、文献において議論されている(Sprangers et al., 2005)。新しい開口部は、この領域のダイナミクスの増加とともに、これらの細孔が切断されたペプチド生成物の好都合な脱出経路を提供し、ClpP機構が分解チャンバ内のペプチド蓄積を防ぐのに役立つ可能性があることを示唆している。ONC201結合は、ClpXを介した活性化に重要な主要な調節部位としてよく知られている領域であるClpP N末端残基のダイナミクスを増加させるだけでなく(Kang et al., 2004)、活性部位領域に対しての直接的な効果を有する七量体-七量体界面での主要な立体構造変化も誘導する。細菌ClpPの活性化によるADEPの構造的影響は、タンパク質の先端領域で最も顕著であり、七量体-七量体界面はほとんど影響を受けない(Gersch et al., 2015; Lee et al., 2010)。まとめると、これらの知見は、ONC201が酸化的リン酸化を低減することを実証する最近の報告の説明となる(Greer et al., 2018)。ClpP-ONC212複合体の洗練されたモデルは、そのトリフルオロメチル置換基が、ClpPへの結合親和性の増加および構造的相補性の改善を通じてONC212の効力を増強することを示唆している。
遺伝的ClpP活性化は、リン酸化eIF2αの増加なしにZ138細胞のATF4増加をもたらし、ONC201がeIF2α依存性の古典的ISRとは異なりATF4のeIF2α非依存性誘導によって特徴付けられる、非定型の統合ストレス応答(ISR)を誘導するという最近の知見を検証するものである(Ishizawa et al., 2016)。これは、ミトコンドリアの変性ストレス応答(unfolded stress response; UPRmt)の下流にあるeIF2α非依存性ATF4誘導に関する最近の別報告(Munch and Harper, 2016)とも一致しており、ヒトClpP表現型模写UPRmtの活性化を反映している。線虫(C. elegans)において報告されたClpP機能(Haynes et al., 2007; Quiros et al., 2016)とは異なり、いくつかの報告では、ClpPがシグナル伝達の主要調節因子ではない可能性があることが示唆されている。
ONC201は現在、安全性および最適な投薬スケジュールを決定するために、AMLおよび他のがんに対する初期段階の臨床試験にある(Arrillaga-Romany et al., 2017; Kline et al., 2016; Stein et al., 2017)。AMLを有する患者における芽球低減の初期の例が図S10に示されているが、これらの試験はまだ進行中である。一部の固形腫瘍、特に神経膠腫では、重篤な有害事象を伴わない有望な臨床応答が試験で実証されている。したがって、ClpP活性化因子としてのONC201に関連する本知見は、患者において進行中の臨床試験ですぐに検証することができ、ONC206 (Wagner et al., 2017)およびONC212を含む、その改善された類似体の将来の臨床試験でも試験できる可能性がある。注目すべきことに、十分な証拠によって、TP53野生型および変異体腫瘍の致死性が示唆されている(Allen et al., 2013; Ishizawa et al., 2016; Kline et al., 2016)。さらに、ADEPが有望な抗生物質であること、および黄色ブドウ球菌分離株のADEP耐性株が稀有であることを示す以前の報告(Conlon et al., 2013)と併せて、イミプリドンは効果的な抗生物質特性を発揮しうる。
注目すべきことに、ClpPの不活性化変異を保有する、ペロー(Perrault)症候群患者もClpP欠損マウスも腫瘍を発症しない。白血病細胞においてClpPを阻害すると、誤って折り畳まれたまたは損傷された呼吸鎖複合体サブユニットの蓄積をもたらし、呼吸鎖活性を損傷し、細胞死を引き起こす。対照的に、がん細胞においてClpPを過剰活性化すると、呼吸鎖複合体サブユニットの分解が増加し、呼吸鎖活性の障害につながる。したがって、ClpPの阻害と過剰活性化の両方が呼吸鎖活性を損ない、細胞死を引き起こすため、ClpPは悪性腫瘍において厳密に調節される必要があるが、異なる機構によるものである。
結論として、ClpPの過剰活性化は、血液系腫瘍および固形腫瘍に対する新規の治療戦略であり、これはミトコンドリアマトリックスタンパク質の特定のサブセットの選択的タンパク質分解を誘導し、顕著な抗腫瘍効果をもたらす。現在、最も強力なClpP活性化因子であるイミプリドンが臨床試験において評価されている。
III. 処置の方法
A. がん
本発明は、イミプリドン(例えば、ONC201、ONC212、またはONC206; 例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第9,845,324号および同第10,172,862号を参照のこと)などの、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤でがん患者を処置する方法を提供する。そのような処置はまた、化学療法または免疫療法などの別の治療レジメンと組み合わせてもよい。本発明の特定の局面を用いて、患者の腫瘍におけるClpP発現のレベルおよび/または患者の腫瘍におけるClpPの不活性化変異(例えば、D190A)の存在に基づいて、処置のためのがん患者を選択することができる。さまざまな局面において、がんを含む約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の細胞は、患者が処置の候補であることを示すClpP発現レベルまたは変異状態を担持しうる。他の局面において、がんを含むさまざまな割合の細胞は、患者が処置の候補であることを示すマーカーを担持しうる。本発明の他の局面は、患者が以前は抗がん療法の投与に応答することができなかったことに基づいて、処置のためのがん患者を選択することを提供する。
本明細書において用いられる用語「対象」または「患者」は、本主題の方法が実施される任意の個体をいう。一般に、患者はヒトであるが、当業者によって理解されるように、患者は動物でありうる。したがって、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどを含む家畜、ならびに霊長類(サル、チンパンジー、オランウータンおよびゴリラを含む)などの哺乳類を含む他の動物が、患者の定義に含まれる。
「処置」および「処置する」は、疾患または健康関連状態の治療的有用性を得る目的で、対象に治療剤を投与もしくは適用すること、または対象に手技もしくはモダリティを実施することをいう。例えば、処置は、投与化学療法、免疫療法、放射線療法、手術の実施、またはそれらの任意の組み合わせを含みうる。
本明細書において記述される方法は、がんの処置において有用である。一般に、「がん」および「がん性」という用語は、通常、無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる哺乳類における生理学的状態をいうか、または記述する。より具体的には、本明細書において提供される方法に関連して処置されるがんは、固形腫瘍、転移がん、または非転移がんを含むが、これらに限定されることはない。特定の態様において、がんは、肺、腎臓、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯肉、頭部、肝臓、鼻咽頭、首、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮に由来しうる。
がんは、具体的には以下の組織型のものでありうるが、これらに限定されることはない: 悪性新生物; がん腫; 非小細胞肺がん; 腎がん; 腎細胞がん; 淡明細胞型腎細胞がん; リンパ腫; 芽細胞腫; 肉腫; 未分化がん腫; 髄膜腫; 脳腫瘍; 中咽頭がん; 鼻咽頭がん; 胆管がん; 褐色細胞腫; 膵島細胞がん; リ・フラウメニ腫瘍; 甲状腺がん; 副甲状腺がん; 下垂体腫瘍; 副腎腫瘍; 骨肉腫腫瘍; 神経内分泌腫瘍; 乳がん; 肺がん; 頭頸部がん; 前立腺がん; 食道がん; 気管がん; 肝臓がん; 膀胱がん; 胃がん; 膵臓がん; 卵巣がん; 子宮がん; 子宮頸がん; 精巣腫瘍; 結腸がん; 直腸がん; 皮膚がん; 巨大および紡錘細胞がん; 小細胞がん; 小細胞肺がん; 乳頭がん; 口腔がん; 中咽頭がん; 鼻咽頭がん; 呼吸器がん; 泌尿生殖器がん; 扁平上皮がん; リンパ上皮がん; 基底細胞がん; 石灰化上皮腫(pilomatrix carcinoma); 移行上皮がん; 乳頭状移行上皮がん; 腺がん; 消化器がん; 悪性ガストリン産生腫瘍; 胆管がん; 肝細胞がん; 肝細胞がんと胆管がんとの合併症; 小柱腺がん; アデノイド嚢胞がん; 腺腫性ポリープの腺がん; 家族性大腸腺腫症の腺がん; 固形がん; 悪性カルチノイド腫瘍; 鰓肺胞腺がん; 乳頭腺がん; 色素嫌性がん; 好酸性がん; 好酸性腺がん; 好塩基球がん; 淡明細胞腺がん; 顆粒細胞がん; 濾胞性腺がん; 乳頭状および濾胞性腺がん; 非被包性硬化性がん; 副腎皮質がん; 子宮内膜がん; 皮膚付属器がん; アポクリン腺がん; 皮脂腺がん; 耳垢腺がん; 粘膜表皮がん; 嚢胞腺がん; 乳頭状嚢胞腺がん; 乳頭状漿液嚢胞腺がん; 粘液性嚢胞腺がん; 粘液性腺がん; 印環細胞がん; 浸潤性腺管がん; 髄様がん; 小葉がん; 炎症性がん; 乳房パジェット病; 腺房細胞がん; 腺扁平上皮がん; 扁平上皮化生随伴腺がん; 悪性胸腺腫; 悪性卵巣間質腫; 悪性莢膜腫; 悪性顆粒膜細胞腫; 悪性アンドロブラストーマ; セルトリ細胞腫; 悪性ライディッヒ細胞腫; 悪性脂質細胞腫; 悪性傍神経節腫; 悪性乳房外傍神経節腫; 褐色細胞腫; 血管球血管肉腫; 悪性黒色腫; 無色素性黒色腫; 表在拡大型黒色腫; 巨大色素性母斑の悪性黒色腫; 悪性黒子黒色腫; 末端黒子型黒色腫; 結節型黒色腫; 類上皮細胞黒色腫; 悪性青色母斑; 肉腫; 線維肉腫; 悪性線維性組織球腫; 粘液肉腫; 脂肪肉腫; 平滑筋肉腫; 横紋筋肉腫; 胚性横紋筋肉腫; 胞巣状横紋筋肉腫; 間質性肉腫; 悪性混合腫瘍; ミュラー混合腫瘍; 腎芽腫; 肝芽腫; がん肉腫; 悪性間葉腫; 悪性ブレンナー腫瘍; 悪性葉状腫瘍; 滑膜肉腫; 悪性中皮腫; 未分化胚細胞腫; 胚性がん; 悪性奇形腫; 悪性卵巣甲状腺腫; 絨毛がん; 悪性中腎腫; 血管肉腫; 悪性血管内皮腫; カポジ肉腫; 悪性血管周囲細胞腫; リンパ管肉腫; 骨肉腫; 皮質近傍骨肉腫; 軟骨肉腫; 悪性軟骨芽細胞腫; 間葉性軟骨肉腫; 骨の巨大細胞腫瘍; ユーイング肉腫; 悪性歯原性腫瘍; エナメル上皮歯牙肉腫; 悪性エナメル上皮腫; エナメル上皮線維肉腫; 内分泌もしくは神経内分泌がんまたは造血がん; 悪性松果体腫; 脊索腫; 中枢または末梢神経系の組織がん; 悪性神経膠腫; 上衣腫; 星状細胞腫; 原形質性星状細胞腫; 線維性星状細胞腫; 星状芽細胞腫; 膠芽腫; 乏突起膠腫; 乏突起膠芽細胞腫; 原始神経外胚葉性; 小脳肉腫; 神経節芽細胞腫; 神経芽細胞腫; 網膜芽細胞腫; 嗅神経腫瘍; 悪性髄膜腫; 神経線維肉腫; 悪性神経鞘腫; 悪性顆粒細胞腫; B細胞リンパ腫; 悪性リンパ腫; ホジキン病; ホジキン(Hodgkin's); 低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫; 側肉芽腫; 小リンパ球性悪性リンパ種; びまん性大細胞性悪性リンパ腫; 濾胞性悪性リンパ腫; 菌状息肉腫; マントル細胞リンパ腫; ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症; その他の特定の非ホジキンリンパ腫; 悪性組織球増殖症; 多発性骨髄腫; 肥満細胞肉腫; 免疫増殖性小腸疾患; 白血病; リンパ性白血病; 形質細胞白血病; 赤白血病; リンパ肉腫細胞白血病; 骨髄性白血病; 好塩基球性白血病; 好酸球性白血病; 単球性白血病; 肥満細胞白血病; 巨核芽球性白血病; 骨髄性肉腫; 慢性リンパ性白血病(CLL); 急性リンパ芽球性白血病(ALL); 有毛細胞白血病; 慢性骨髄芽球性白血病; ならびに有毛細胞白血病。
本出願を通して用いられる用語「治療的有用性」または「治療的に有効な」とは、その状態の医療処置に関して対象の健康な状態(well-being)を促進または増強するあらゆるものをいう。それには、限定するものではないが、疾患の徴候または症状の頻度もしくは重症度の低減が含まれる。例えば、がんの治療は、例えば、腫瘍の侵襲性の低減、がんの増殖速度の低下、または転移の予防を含みうる。がんの処置はまた、がんを有する対象の生存期間を延長することもいう。
同様に、処置に対する患者の効果的な応答または患者の「応答性」は、疾患もしくは障害のリスクがある、または疾患もしくは障害に苦しんでいる患者に与えられる臨床的または治療的有用性をいう。そのような有用性は、細胞応答もしくは生物学的応答、完全応答、部分応答、安定した疾患(進行もしくは再発なし)、またはその後の再発での応答を含みうる。例えば、効果的な応答は、がんと診断された患者での無増悪生存期間または腫瘍サイズの低減であることができる。
新生物状態の処置に関しては、新生物状態の段階に応じて、新生物状態の処置は、以下の治療法: 新生物組織を除去するための手術、放射線療法、および化学療法の1つまたは組み合わせを伴う。他の治療レジメンは、抗がん剤、例えば、治療用組成物および化学療法剤の投与と組み合わされうる。例えば、そのような抗がん剤で処置される患者はまた、放射線療法を受け、および/または手術を受けうる。
疾患の処置の場合、治療用組成物の適切な投与量は、上記で定められたように、処置される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、以前の治療、患者の病歴および薬剤に対する応答性、ならびに医師の裁量に依るであろう。薬剤は、一度にまたは一連の処置にわたって患者に適切に投与されうる。
1. 併用処置
併用療法を含む、方法および組成物は、治療効果もしくは保護効果を増強し、かつ/または別の抗がん療法もしくは抗過剰増殖療法の治療効果を増大する。治療的および予防的方法および組成物は、がん細胞の死滅化および/または細胞の過剰増殖の阻害などの、所望の効果を達成するのに有効な組み合わせた量で提供することができる。組織、腫瘍、または細胞は、組織、腫瘍、および/または細胞を2つまたはそれ以上の異なる組成物または製剤と接触させることにより、1つまたは複数の薬剤を含む1つまたは複数の組成物または薬理学的製剤と接触させることができる。また、そのような併用療法は、放射線療法、外科的療法、または免疫療法と組み合わせて使用することができると考えられる。
組み合わせでの投与は、同じ剤形での2つまたはそれ以上の薬剤の同時投与、別々の剤形での同時投与、および別々の投与を含むことができる。すなわち、本主題の治療用組成物および別の治療剤は、同じ剤形で一緒に製剤化され、同時に投与されうる。あるいは、本主題の治療用組成物および別の治療剤を同時に投与することができ、両薬剤は別々の製剤中に存在する。別の代替法では、治療剤を投与した直後に他の治療剤を投与することが可能であり、またはその逆も可能である。別々の投与プロトコルでは、本主題の治療用組成物および別の治療剤は、数分間隔、または数時間間隔、または数日間隔で投与されうる。
第1の抗がん処置は、第2の抗がん処置に対して、その前、その間、その後に、またはさまざまな組み合わせで投与されうる。そうした投与は、同時から数分、数日、数週間までの範囲の間隔でありうる。第1の処置が第2の処置とは別に患者に提供される態様では、一般に、2つの化合物が依然として患者に有利な複合効果を発揮することができるように、各送達時間の間に有効期限切れにならないことを確認する必要があろう。そのような場合、第1の治療と第2の治療を互いに約12~24または72時間以内、特に互いに約6~12時間以内に、患者に提供することが考えられる。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週)が経過する場合、処置期間を大幅に延長することが望ましい場合もある。
特定の態様において、処置過程は1~90日またはそれ以上続く(このような範囲は、その間の日数を含む)。1つの薬剤は、1日目から90日目までの任意の日に(このような範囲は、その間の日数を含む)またはそれらの任意の組み合わせで与えられてもよく、別の薬剤は、1日目から90日目までの任意の日に(このような範囲は、その間の日数を含む)またはそれらの任意の組み合わせで与えられることが企図される。1日(24時間)以内に、患者は、薬剤の1回または複数回の投与を与えられうる。さらに、処置過程の後に、抗がん処置が投与されない期間があることが企図される。この期間は、患者の予後、体力、健康などのような、患者の状態に応じて、1~7日、および/もしくは1~5週間、および/もしくは1~12ヶ月またはそれ以上(このような範囲は、その間の日数を含む)続きうる。必要に応じて処置サイクルが繰り返されることが予想される。
さまざまな組み合わせが利用されうる。以下の例では、イミプリドンが「A」であり、別の抗がん療法が「B」である:
Figure 2022520997000008
本発明の任意の化合物または療法の患者への投与は、薬剤の、もしあれば、毒性を考慮に入れて、そのような化合物を投与するための一般的なプロトコルに従うであろう。したがって、いくつかの態様では、併用療法に起因する毒性をモニタリングする段階が存在する。
a. 化学療法
本発明に従って、多種多様な化学療法剤を使用することができる。用語「化学療法」は、がんを処置するための薬物の使用をいう。「化学療法剤」は、がんの処置において投与される化合物または組成物を意味するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのそれらの活性の様式、例えばそれらが細胞周期に影響を与えるかどうか、またどの段階で影響を与えるか、によって分類される。あるいは、薬剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体および有糸分裂の異常を誘発する能力に基づいて、特徴付けることができる。
化学療法剤の例としては、以下が挙げられる: アルキル化剤、例えば、チオテパ、シクロホスファミド; アルキルスルホネート類、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン; アジリジン類、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、ウレドーパ; エチレンイミン類およびメチルメラミン類、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロールメラミン; アセトゲニン類(特に、ブラタシンおよびブラタシノン); ベネトクラクス(ABT-100); カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む); ブリオスタチン; カリスタチン; CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む); クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8); ドラスタチン; デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む); エリュテロビン; パンクラチスタチン; サルコディクチン; スポンジスタチン; ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード; ニトロソウレア類、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン; 抗生物質、例えばエンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1); ダイネミシン、例えばダイネミシンA; ビスホスホネート類、例えばクロドロネート; エスペラミシン; ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン; 代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU); 葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート; プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン; ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン; アンドロゲン類、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン; 抗副腎薬、例えば、ミトタン、トリロスタン; 葉酸補充剤、例えばフォリン酸; アセグラトン; アルドホスファミド配糖体; アミノレブリン酸; エニルウラシル; アムサクリン; ベストラブシル; ビサントレン; エダトレキサート ; デホファミン; デメコルシン; ジアジクオン; エルホルミチン; 酢酸エリプチニウムア; エポチロン; エトグルシド; 硝酸ガリウム; ヒドロキシウレア; レンチナン; ロニダミン; メイタンシノイド類、例えば、メイタンシン、アンサマイトシン類; ミトグアゾン; ミトキサントロン; モピダンモール(mopidanmol); ニトラエリン(nitraerine); ペントスタチン; フェナメット; ピラルビシン; ロソキサントロン; ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド; プロカルバジン; PSK多糖複合体; ラゾキサン; リゾキシン; シゾフィラン; スピロゲルマニウム; テヌアゾン酸; トリアジクオン; 2,2',2”-トリクロロトリエチルアミン; トリコテセン類(特にT-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン); ウレタン; ビンデシン; ダカルバジン; マンノムスチン; ミトブロニトール; ミトラクトール; ピポブロマン; ガシトシン; アラビノシド(「Ara-C」); シクロホスファミド; タキソイド類、例えばパクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン; 6-チオグアニン; メルカプトプリン; 白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン; ビンブラスチン; 白金; エトポシド(VP-16); イホスファミド; ミトキサントロン; ビンクリスチン; ビノレルビン; ノバントロン; テニポシド; エダトレキサート; ダウノマイシン; アミノプテリン; ゼローダ; イバンドロネート; イリノテカン(例えばCPT-11); トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000; ジフルオロメチルオルニチン(DMFO); レチノイド類、例えばレチノイン酸; カペシタビン; カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス-白金、および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体。
b. 放射線療法
DNA損傷を引き起こしかつ広く使用されてきた他の要因には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の定方向送達として一般に知られているものが含まれる。DNA損傷因子の他の形態も考えられ、例えば、マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号および同第4,870,287号)、およびUV照射などである。これらの要因の全ては、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、および染色体の組み立てと維持に広範囲の損傷を与える可能性がきわめて高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)にわたる50~200レントゲンの1日線量から2000~6000レントゲンの単回線量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は大きく異なり、同位体の半減期、放出される放射線の強度と種類、および腫瘍性細胞による取り込みに依存する。
c. 免疫療法
当業者であれば、追加の免疫療法を前記態様の方法と組み合わせてまたは併せて使用できることを理解するであろう。がん処置との関連において、免疫療法は一般に、がん細胞を標的として破壊するための免疫エフェクター細胞と分子の使用に依存している。リツキシマブ(Rituxan(登録商標))がそのような例である。免疫エフェクタは、例えば、腫瘍細胞の表面上の何らかのマーカーに特異的な抗体でありうる。抗体は、単独で治療のエフェクタとしての役割を果たすか、または他の細胞を動員して実際に細胞殺傷に影響を及ぼすことができる。また、抗体を薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートして、ターゲティング剤として使用することもできる。あるいは、該エフェクタは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を担持するリンパ球でありうる。さまざまなエフェクター細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
免疫療法の1つの局面において、腫瘍細胞は、ターゲティングに適している、すなわち大部分の他の細胞には存在しない何らかのマーカーを保有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在しており、それらのいずれも本発明との関係においてターゲティングに適当でありうる。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、がん胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス(Sialyl Lewis)抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、およびp155が挙げられる。免疫療法の別の局面は、抗がん効果と免疫刺激効果とを組み合わせることである。免疫刺激分子もまた存在しており、例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの増殖因子が存在する。
現在研究中であるか、または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号; Hui and Hashimoto, Infection Immun., 66(11):5329-5336, 1998; Christodoulides et al., Microbiology, 144(Pt 11):3027-3037, 1998); サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、γ、IL-1、GM-CSF、およびTNF (Bukowski et al., Clinical Cancer Res., 4(10):2337-2347, 1998; Davidson et al., J. Immunother., 21(5):389-398, 1998; Hellstrand et al., Acta Oncologica, 37(4):347-353, 1998); 遺伝子治療、例えば、TNF、IL-1、IL-2、およびp53 (Qin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(24):14411-14416, 1998; Austin-Ward and Villaseca, Revista Medica de Chile, 126(7):838-845, 1998; 米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号); ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185 (Hanibuchi et al., Int. J. Cancer, 78(4):480-485, 1998; 米国特許第5,824,311号)である。1つまたは複数の抗がん療法が本明細書において記述される抗体療法とともに利用されうることが企図される。
いくつかの態様において、免疫療法は、エクスビボで作出された自己抗原特異的T細胞の移入を伴う、養子免疫療法でありうる。養子免疫療法に使用されるT細胞は、抗原特異的T細胞の拡張または遺伝子操作によるT細胞のリダイレクトのいずれかによって作出することができる。腫瘍特異的T細胞の単離および移入は、黒色腫を処置するのに成功することが示されている。T細胞における新規の特異性が、トランスジェニックT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子移入によって成功裏に作出されている。CARは、単一の融合分子内の1つまたは複数のシグナル伝達ドメインに関連するターゲティング部分からなる合成受容体である。一般に、CARの結合部分は、可動性リンカーによって結び付けられたモノクローナル抗体の軽かつ可変の断片を含む、単鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。受容体またはリガンドドメインに基づく結合部分も成功裏に使用されている。第1世代CARのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの細胞質領域またはFc受容体ガンマ鎖に由来する。CARは、リンパ腫および固形腫瘍を含むさまざまな悪性腫瘍からの腫瘍細胞の表面に発現される抗原に対してT細胞をリダイレクトさせることに成功している。
1つの態様において、本出願は、がんの処置のための併用療法であって、養子T細胞療法およびチェックポイント阻害剤を含む該併用療法を提供する。1つの局面において、養子T細胞療法は、自己および/または同種T細胞を含む。別の局面において、自己および/または同種T細胞は、腫瘍抗原へとターゲティングされる。
免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、シグナルを下げるかのいずれかである。免疫チェックポイント遮断の標的となりうる抑制性免疫チェックポイントには、以下が含まれる: アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3 (CD276としても知られる)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4 (CTLA-4、CD152としても知られる)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3 (LAG3)、プログラム細胞死1 (PD-1)、プログラム死-リガンド1 (PD-L1)、T細胞免疫グロブリンドメイン・ムチンドメイン3 (TIM-3)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸および/またはCTLA-4を標的とする。
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子などの薬物、組み換え型のリガンドもしくは受容体、またはヒト抗体などの抗体でありうる(例えば、国際特許公開WO2015/016718; Pardoll, Nat Rev Cancer, 12(4): 252-264, 2012; 両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。免疫チェックポイントタンパク質またはその類似体の公知の阻害剤を使用することができ、特にキメラ化、ヒト化またはヒト型抗体が使用される。当業者は理解しているように、本開示で言及される特定の抗体については、代替名および/または同等名が使用されている可能性がある。そのような代替名および/または同等名は、本開示の文脈においては交換可能である。例えば、ランブロリズマブ(lambrolizumab)がMK-3475およびペンブロリズマブ(pembrolizumab)の代替名および同等名でも知られていることは公知である。
いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-1リガンド結合パートナーはPD-L1および/またはPD-L2である。別の態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-L1結合パートナーはPD-1および/またはB7-1である。別の態様において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-L2結合パートナーはPD-1である。該アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドでありうる。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記述されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法において使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/0294898号、同第2014/022021号、および同第2011/0008369号に記述されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。
いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびCT-011からなる群より選択される。いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストはイムノアドヘシン(例えば、定常領域(例:免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。ニボルマブは、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびオプジーボ(OPDIVO(登録商標))の別名でも知られており、WO2006/121168に記述される抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブは、MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、キイトルーダ(KEYTRUDA(登録商標))、およびSCH-900475の別名でも知られており、WO2009/114335に記述される抗PD-1抗体である。CT-011は、hBATまたはhBAT-1の別名でも知られており、WO2009/101611に記述される抗PD-1抗体である。AMP-224は、別名をB7-DCIgといい、WO2010/027827およびWO2011/066342に記述されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
本明細書に記述の方法で標的とされうる別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD152としても知られる、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4 (CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4はT細胞の表面に存在し、抗原提示細胞の表面上のCD80またはCD86に結合すると「オフ」スイッチとして機能する。CTLA-4は、T細胞共刺激タンパク質CD28に類似しており、両方の分子は、抗原提示細胞上の、それぞれB7-1およびB7-2とも呼ばれる、CD80およびCD86に結合する。CTLA-4は抑制シグナルをT細胞に伝達し、一方CD28は刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4は制御性T細胞にも見られ、それらの機能にとって重要でありうる。T細胞受容体とCD28を介するT細胞活性化は、B7分子に対する抑制性受容体であるCTLA-4の発現増加をもたらす。
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法で使用するのに適した抗ヒトCTLA-4抗体(またはそれに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において承認されている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、抗CTLA-4抗体は、米国特許第8,119,129号; PCT公開番号WO 01/14424、WO 98/42752、WO 00/37504 (CP675,206、別名をトレメリムマブという; 以前はチシリムマブ); 米国特許第6,207,156号; Hurwitz et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA, 95(17): 10067-10071; Camacho et al. (2004) J Clin Oncology, 22(145): Abstract No. 2505 (antibody CP-675206); およびMokyr et al. (1998) Cancer Res, 58:5301-5304に開示されており、本明細書において開示される方法において使用することができる。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み入れられる。CTLA-4への結合についてこれらの当技術分野において承認されている抗体のいずれかと競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願番号WO2001/014424、WO2000/037504、および米国特許第8,017,114号に記述されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX- 101、およびヤーボイ(Yervoy(登録商標))としても知られる)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、WO 01/14424参照)。他の態様において、該抗体は、イピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、1つの態様において、該抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、イピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の態様において、該抗体は、上述の抗体と結合について競合し、かつ/または上述の抗体と同じCTLA-4のエピトープに結合する。別の態様において、該抗体は、上述の抗体に対して少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブに対して少なくとも約90%、95%、または99%の可変領域同一性)を有する。
CTLA-4をモジュレートするための他の分子には、例えば、全てが参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5844905号、同第5885796号、および国際特許出願番号WO1995001994、WO1998042752に記述されるようなCTLA-4リガンドおよび受容体、ならびに参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8329867号に記述されるようなイムノアドヘシンが含まれる。
d. 外科手術
がん患者のおよそ60%は、予防的、診断的または病期分類的、根治的、および緩和的手術を含む何らかのタイプの手術を受けている。根治目的の手術は、がん性組織の全部または一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する切除術を含み、本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法と併用することができる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去をいう。腫瘍切除に加えて、外科手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気外科療法、および顕微鏡下外科手術(モース術)が含まれる。
がん性細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を切除すると、体に空洞が形成されることがある。処置は、追加の抗がん療法を用いた該エリアの灌流、直接注入、または局所適用によって達成されうる。そのような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごとに、または1、2、3、4、もしくは5週ごとに、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月ごとに繰り返すことができる。こうした処置は、同様にさまざまな投与量のものでありうる。
e. 他の薬剤
処置の治療効果を改善するために、本発明の特定の局面と組み合わせて他の薬剤を使用できると考えられる。こうした追加の薬剤には、細胞表面受容体およびギャップ結合の上方制御に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤および分化剤、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を高める薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。ギャップ結合の数を増やすことによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の態様において、細胞増殖抑制剤または分化剤を本発明の特定の局面と組み合わせて使用して、処置の抗過剰増殖効果を改善することができる。細胞接着阻害剤は本発明の有効性を改善すると考えられる。細胞接着阻害剤の例は、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(focal adhesion kinase: FAK)阻害剤およびロバスタチンである。さらに、アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を高める他の薬剤、例えば抗体c225を、本発明の特定の局面と組み合わせて使用して、処置の有効性を向上させることができると考えられる。
B. 細菌感染
1つの態様において、細菌を死滅させる方法が提供される。本方法は、安全かつ有効な量のイミプリドンを細菌細胞に適用する段階を含む。最小発育阻止濃度(MIC)を決定することは、当技術分野において周知である。薬物の抗菌効果は、通常、関心対象の個々の細菌種に対する薬物のMICをインビトロで決定することによって測定される。したがって、治療的有効量のイミプリドンは、処置されている感染症のMICを上回る量を含む。二種以上の病原体が存在する場合、有効量のイミプリドンは、感染性生物の最高MIC以上であろう。一般に、細菌感染症の治療レジメンは、投薬間隔の少なくとも一部でMICを少なくとも満たし、好ましくはMICを超える薬物濃度(例えば、血液中)を達成する1つまたは複数の薬物用量を患者に投与することを前提としている。場合によっては、投与量は、治療の全過程を通じて同じレベルに維持され、または投与される量を増やすもしくは減らすように調整されうる。いくつかの局面において、イミプリドンの投与量は、耐性を生じるために増加されない(しかし、治療中に適切な用量を投与する目的で増加されうる)。
医薬品(pharmaceutical agent)には普通にあることだが、細菌感染症の処置において使用される抗菌薬の予防的または治療的用量は、感染症の重症度および薬物が投与される経路によって異なるであろう。用量、おそらく投薬頻度も、個々の患者の年齢、体重、および応答によって異なるであろう。イミプリドンの最適な投与量は、当業者によって容易に決定されることができ、種々の方法で定めることができる。
本出願の方法を使用できる細菌は、グラム陽性属およびグラム陰性属の両方を含む。本方法を使用できるグラム陽性属は、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、エンテロコッカス属、クロストリジウム属、ヘモフィルス(Haemophilus)属、リステリア(Listeria)属、コリネバクテリウム属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、真正細菌(Eubacterium)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ペプトストレプトコッカス属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、およびアクチノマイセス(Actinomyces)属を含む。
本方法を使用できる特定のグラム陽性種は、黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、連鎖球菌(S. haemolyticus)、S.ホミニス(S. hominis)、S.サプロフィティカス(S. saprophyticus)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、化膿ブドウ球菌(S. pyogenes)、S.アガラクチアェ(S. agalactiae)、S.アビウム(S. avium)、S.ボビス(S. bovis)、S.ラクティス(S. lactis)、S.サンギウス(S. sangius)、大便連鎖球菌(E. faecalis)、E.フェシウム(E. faecium)、C.ディフィシレ(C. difficile)、C.クロストリジフォルメ(C. clostridiiforme)、C.イノキューム(C. innocuum)、ウエルシュ菌(C. perfringens)、C.ラモーサム(C. ramosum)、L.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)、C.ジェイキウム(C. jeikeium)、E.アエロファシエンス(E. aerofaciens)、E.レンタム(E. lentum)、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.カセイ(L. casei)、L.プランタルム(L. plantarum)、P.アナエロビウス(P. anaerobius)、P.アサカロリティカス(P. asaccarolyticus)、P.マグナス(P. magnus)、P.ミクロス(P. micros)、P.プレボティル(P. prevotil)、P.プロダクトゥス(P. productus)、およびP.アクネ(P. acnes)を含む。
臨床的に顕著な病原体は、本方法を使用できる陽性種を含み、黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む)、表皮ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、化膿ブドウ球菌、S.アガラクチアェ、大便連鎖球菌、E.フェシウム、C.ディフィシレ、C.クロストリジフォルメ、ウエルシュ菌、およびL.モノサイトゲネスを含む。
C. ペロー(Perrault)症候群
ペロー症候群は、男性と女性の両方での両側性感音難聴(SNHL)および女性での卵巣形成不全によって特徴付けられる、伴性障害である。罹患した男性の生殖能力は正常と報告されている。一部の患者は、学習障害や発達遅延、小脳性運動失調、ならびに運動および感覚末梢神経障害を含めて、神経学的兆候も有する。I型ペロー症候群は静的であり、神経疾患を有しない。II型ペロー症候群は神経疾患を伴って進行する。
SNHLは両側性であり、内耳の変化により引き起こされ、言語修得前(先天性)の発症を伴って重度から幼少期の発症を伴って中等度までの範囲に及ぶ。発症が幼少期の場合、難聴は進行性になる可能性がある。
ペロー症候群を有する女性は、その外性器が正常であるものの、卵巣の異常または欠損(卵巣形成不全)を有する。重度の影響を受けた少女は16歳までに月経を開始せず(原発性無月経)、ほとんどの場合、月経期間を有しない。それほど深刻な影響を受けていない女性は、卵巣機能が早期に失われる(原発性卵巣機能不全); その月経期間は青年期に始まるが、頻度は低くなり、最終的には40歳になる前に止まる。ペロー症候群を有する女性は、妊娠するのが困難であるか、または生物学上の子供を産むことができない可能性がある。
ペロー症候群にはいくつかの遺伝的原因がある。TWNK、CLPP、HARS2、LARS2、またはHSD17B4遺伝子変異が、少数の罹患者において見出されている。この状態は常染色体劣性パターンで遺伝し、このことは各細胞における遺伝子の両方のコピーが変異を有することを意味する。
CLPPとHSD17B4の両方の不活性化変異がイミプリドン耐性細胞において同定された。ClpX結合の妨害を引き起こすCLPPの不活化点変異が、ペロー症候群を有する患者において報告されている。このように、イミプリドンはClpXなしでClpPを活性化することができるので、イミプリドンによるClpPの活性化は、ペロー症候群を有する患者での不活化されたCLPP機能を回復し、したがって、そのような患者にとって治療上有益でありうる。さらに、イミプリドンによるClpPの活性化は、ペロー症候群を有する患者での不活化HSD17B4変異を回避しうる。したがって、イミプリドンによるClpPの活性化は、ペロー症候群を有する患者において、および特にCLPPまたはHSD17B4の変異によって引き起こされるペロー症候群を有する患者において、難聴および卵巣機能不全/不妊などの症状を改善するか、または症状の発生/悪化を抑止しうる。
IV. キット
本発明のさまざまな局面において、診断剤、治療剤および/または送達剤を含むキットが想定される。いくつかの態様において、キットは患者サンプルにおける、ClpP発現レベルまたは変異状態などの、患者選択マーカーを評価するための試薬を含みうる。いくつかの態様において、本発明は、本発明の治療を調製および/または投与するためのキットを企図する。キットは、本発明の活性なまたは有効な薬剤の投与に使用できる試薬を含みうる。キットの試薬は、併用療法の1つもしくは複数の抗がん成分、ならびに本発明の成分を調製、処方、および/もしくは投与するための試薬または本発明の方法の1つもしくは複数の段階を実施するための試薬を含みうる。
いくつかの態様において、キットは適当な容器手段を含んでもよく、これは、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、またはチューブなどの、キットの構成要素と反応しない容器である。容器は、プラスチックまたはガラスなどの滅菌可能な材料で作られうる。キットは、方法の手順の段階を概説する指示シートをさらに含んでもよく、本明細書において記述されるのと実質的に同じ手順に従うか、または当業者に知られている。
V. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために提供される。当業者には理解されるように、以下の実施例に開示される技術は、本発明の実践において十分に機能することが本発明者らによって発見された技術を表しており、したがってその実施のための好ましい形態を構成しているとみなすことができる。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された具体的な態様に多くの変更を加えることができ、それでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られることを理解するであろう。
材料および方法
マウス
本研究における全ての動物研究について、研究プロトコルは、プリンセスマーガレットがんセンターおよびMDアンダーソンがんセンターの施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認された。野生型またはD190A変異型ClpP過剰発現ベクターでトランスフェクトされ、ルシフェラーゼで標識された200万個のZ138細胞を、個々のNSGマウスに注射した(処置群あたりn=7、すべて雌性)。移植後9日目にインビボ生物発光イメージングにより測定された生着を確認した後、マウスが瀕死になるまで、ONC212 (50 mg/kg/d)または媒体(水)を1日おきに強制経口投与する。発光によって測定される腫瘍量を、31日目まで毎週追跡した。独立して、テトラサイクリン誘導性Y118A変異型ClpPでトランスフェクトされた200万個のZ138細胞をルシフェラーゼで標識し、個々のNSGマウスに注射した(処置群あたりn=10、全て雄性)。移植後5日目にインビボ生物発光イメージングにより測定された生着を確認した後、瀕死になるまで、マウスを飲料水中のテトラサイクリン(2 mg/mL)有りまたは無しで処置した。100万個のOCI-AML2細胞を個々のSCIDマウスに注射した(処置群あたりn=10、全て雄性)。注射5日後、マウスをONC201で1日2回、経口強制経口投与(100 mg/kg)により13日間ONC201で処置した。患者由来の異種移植AML細胞を使用した生着実験は、既報(Ishizawa et al., 2016)のように実施された。初代AML細胞を6週齢の雌性NSGマウスに移植し、白血病細胞を二次移植マウスから採取した。白血病細胞を250 nMのONC212有りまたは無しで36時間処理した後、70万個のトリパンブルー陰性細胞を処置群ごとに7匹のNSGマウスの各々に尾静脈から注射した。各群のマウスの生存をモニタリングした。
細菌細胞培養
ヒトミトコンドリアClpPタンパク質の発現および精製のため、50μg/mLのカナマイシンを補充したLuria-Bertrani Broth (LB; 10 g/Lトリプトン, 5 g/L酵母エキス, 10 g/L NaCl)中180 rpmで振とうしながら37℃でpETSUMO2-CLPP(-MTS)を保有する大腸菌(E. coli) SG1146を、好気的に増殖させた。
タンパク質の精製および結晶化
ヒトClpPは、既述(Kang et al., 2004) (Kimber et al., 2010; Wong et al., 2018)のように発現および精製された。野生型および変異体(Y118A and D190A)ヒトClpP (ミトコンドリアターゲティング配列なし)を、pETSUMO2発現ベクターにクローニングし、大腸菌SG1146において発現させた(Kimber et al., 2010)。タンパク質発現を誘導するために、OD600およそ0.6に達した後、細菌を1 mMイソプロピル-1-チオ-B-D-ガラクトピラノシド(IPTG)により37℃で4時間処理し、遠心分離によって収集し、溶解緩衝液(25 mM Tris-HCl (pH 7.5), 0.5 M NaCl, 10 mMイミダゾール, 10%グリセロール)中でEmulsiflex C5 (4回通過; Avestin, Ottawa, Canada)により破壊した。細胞溶解後、不溶性物質を遠心分離(26,892×g (SorvallローターSS-34)で30分間)により除去し、上清を、溶解緩衝液で事前に平衡化した5 mL Niセファロース高性能(GE)カラムに通した。タンパク質を40 mMイミダゾールで溶出し、透析緩衝液(25 mM Tris-HCl (pH 7.5), 0.1 M NaCl, 10%グリセロール) 2 mLで希釈し、SUMOプロテアーゼ(1:100; Lee et al., 2008)と混合し、SnakeSkin 10K透析膜(ThermoScientific, Waltham, MA)を使用して透析緩衝液4 L中で軽く撹拌しながら4℃で終夜透析した。次に、透析した物質を2番目の5 mL Niカラム(ThermoScientific, Waltham, MA)に通し、タグなしのClpPを含有する素通り画分溶液を収集した。収集した全ての画分をSDS-PAGEによって分析した。
結晶構造解析のため、Amicon Ultra-15 30K濃縮器(Sigma-Aldrich)を用いタンパク質を濃縮し、陰イオン交換5 mL QSepharoseHP HiTrap (Amersham Biosciences, Little Chalfont, UK)カラムを用い、20 mM Tris-HCl (pH 7.5)中100 mMから1 M NaClの直線勾配でさらに精製した。タンパク質を約200 mMのNaCl濃度で溶出させた。次に、Amicon Ultra-15 30K濃縮器を用いて予備濃縮し、3 mM DTTを含有する25 mM Bis-Tris, pH 6.5中にて4℃で終夜透析した。次に、ClpPを12 mg/mLの終濃度にさらに濃縮した。100% DMSO中に可溶化されたONC201を濃縮タンパク質に添加して、化合物の終濃度を5%のDMSO濃度で2.5 mMにした。
ClpP-ONC201複合体をハンギングドロップ蒸気拡散法により4℃で結晶化した。タンパク質-薬物溶液2μLをリザーバ溶液2μLと混合した。5% (w/v) PEG 4,000、100 mM KCl、および100 mM NaAc (pH 5.2) 500μLのリザーバ溶液を含有するウェルは、3次元の全てで100~200μmの結晶を生成した。結晶は2~3週間で出現し、5% (w/v) PEG 4,000、100 mM KCl、および100 mM NaAc (pH 5.2)、2.5 mM ONC201、および5% DMSOを含有するリザーバ溶液中に収集した; 凍結保護のために20%グリセロールを添加した。標準的なクライオループにおける結晶を、液体窒素中で瞬間凍結した。
回折データの収集および処理
回折データを、カナディアン光源(Canadian Light Source) (Saskatoon, Canada)のビームライン08ID-1で100 Kにて取得し、Pilatus3 S 6M検出器(Dectris, Switzerland)の助けを借りて記録した。波長は0.97949Åで、2500枚の画像を0.1°の振動幅および0.2秒の露光で収集した。結晶から検出器までの距離は392.6 mmであった。XDS (Kabsch, 2010)およびCCP4 (Winn et al., 2011)ソフトウェアパッケージを使用して、データのインデックス作成、統合、およびスケーリングを行った。タンパク質複合体は、ヒトミトコンドリアClpP (PDB-ID:1TG6)の閉構造で以前に見られたように、非対称ユニット(ASU)に1つのClpPヘプタマー環を有する空間群C2で結晶化した(Kang et al., 2004)。
構造解明および精密化
PHENIXソフトウェアパッケージ(Adams et al., 2010; McCoy et al., 2007)を使用した分子置換により、ClpP-ONC201複合体の結晶構造を解明した。精密化および検証のために同じソフトウェアを適用し、モデル構築のためにパッケージCOOT (Emsley and Cowtan, 2004; Emsley et al., 2010)を適用した。構造決定の開始段階は、検索モデルとして水を除去した活性化ClpP七量体構造を使用して計算された(PDB: 6BBA; Wong et al., 2018)。ライディング水素は、ジオメトリを最適化するために最後の数ラウンドの精密化(Afonine and Adams, 2012)の間に使用されたが、最終的に配置された座標ファイルには含まれていなかった。データ整理および精密化の統計値については表2を参照されたい。PyMol v1.3ソフトウェアを使用して、構造図を作出した(DeLano, 2002)。ClpP-ONC201複合構造の座標および構造因子は、RCSB - Protein Data Bankにアクセッション番号6DL7で寄託されている。
(表2)ClpP ONC201複合体のデータ収集および精密化の統計値。最も高分解能のシェルの統計値が括弧内に示されている。
Figure 2022520997000009
化学物質スクリーニング
アッセイ緩衝液は、25 mM HEPES, pH 7.4、5 mM MgCl2、5 mM KCl、0.03% Tween 20、10%グリセロール、16 mMクレアチンリン酸、13 U/mlクレアチンキナーゼ、および3 mM ATPからなっていた。1.0μMのヒトClpP (Cole et al., 2015)を、Biomek FXロボット液体ハンドラ(Beckman Coulter Life Sciences, Indianapolis, IN)を用いてアッセイ緩衝液に溶解し、Beckman Multimek 96/384液体ハンドリングシステム(Beckman Coulter Life Sciences, Indianapolis, IN)を用いて384ウェルプレート中0.625 mMおよび1.25 mM濃度の各化合物とともに1ウェルあたり0.2μLで混合し(終濃度それぞれ4.15および8.3μM)、37℃で10分間インキュベートした。次に、蛍光タグ付き基質であるFITC-カゼイン(4.0μM)を各ウェルに添加し、PHERAstarマイクロプレートリーダー(BMG LABTECH, Ortenberg, Germany)を用いて37℃で70分間5分ごとに485/535 nmで蛍光を測定した。
ClpP酵素アッセイ
アッセイ緩衝液は、FITC-カゼインアッセイの場合には25 mM HEPES, pH 7.5、5 mM MgCl2、5 mM KCl、0.03% Tween 20、10%グリセロール、16 mMクレアチンリン酸、13 U/mlクレアチンキナーゼ、および3 mM ATP、AC-WLA-AMCアッセイの場合には100 mM KCl、5%グリセロール、10 mM MgCl2、20 mM Triton X-100、および50 mM TRIS pH 8、Ac-Phe-hArg-Leu-ACCアッセイの場合には50 mM Tris, pH 8、300 mM KCl、および15%グリセロール、FAPHMALVPV (Clptide)アッセイの場合には5 mM ATPを有する50 mM Hepes, pH 7.5、0.03% Tween 20、15 mM MgCl2、100 mM KClおよび5%グリセロール、ならびにMCA-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Lysアッセイの場合には150 mM NaClを有する25 mM Tris, pH 7.5からなった(Gersch et al., 2016)。
蛍光アッセイの場合、0.7μM (FITC-カゼイン、AC-WLA-AMC、およびAc-Phe-hArg-Leu-ACCアッセイの場合)または7.0μM (FAPHMALVPVおよびMCA-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Lysアッセイの場合)ヒトClpPをアッセイ緩衝液に溶解し、37℃で10分間インキュベートし、三つ組で96ウェルプレート中1ウェルあたり50μLで漸増濃度のONC201、ONC201異性体、およびONC212 (0~100μM)と混合した。次いで、蛍光タグ付き基質であるFITC-カゼイン(4.5μM)またはAC-WLA-AMC (15 mM) (Wong et al., 2018)、Ac-Phe-hArg-Leu-ACC (100μM)、FAPHMALVPV (50μM)およびMCA-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Lys (25μM)を各ウェルに添加し、モノクロメーターマイクロプレートリーダー(Clariostar BMG LABTECH, Ortenberg, Germany)を用いて37℃で90分間30秒ごとにFITCカゼインアッセイの場合には485/535 nmで、AC-WLA-AMCアッセイの場合には360/440 nmで、Ac-Phe-hArg-Leu-ACCアッセイの場合には380/440 nmで、FAPHMALVPV (Clptide)アッセイの場合には320/420 nmで、およびMCA-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Lysアッセイの場合には320/405 nmで蛍光を測定した。ヒル係数は、独立変数としてOrigin7, Pharmacology - 対数での用量応答曲線(化合物濃度)を用いて決定した。
ゲルベースのアッセイの場合、1.5μMのClpPを単独で、および4.5μM ClpXとの組み合わせで、22μMの非標識ウシα-カゼインと混合し、FITC-カゼインアッセイ緩衝液中0.2および6.3μM濃度のONC201およびONC212で処理した。混合物を37℃で3時間インキュベートし、12% SDS-PAGEに負荷し、120 Vで泳動し、クマシーブルーで染色した。
等温滴定熱量測定(ITC)
MicroCal VP-ITCシステム(Malvern, Malvern, UK)を用いてITC結合測定を実施した。精製された野生型およびD190A ClpPのアリコートを、SnakeSkin 10K透析膜(ThermoFisher, Waltham, MA)を用いて20 mM Tris-HCl, 5% DMSO, pH 7.65 (室温の)中へ軽く攪拌しながら4℃で終夜別々に透析した。VP-ITC細胞に20μM ClpP (WTまたはD190A; ClpP単量体濃度)を満たし、100μM ONC201をシリンジで使用した。次の設定を使用した: 注入容量: 281.55μL、細胞容量: 1.4551 mL、注入間の間隔時間: 240秒、注入27回: 各20秒かけて10μL; 4秒かけて最初2μL、フィルタ期間- 2秒、ステアリング速度- 307、温度- 25℃、基準電力- 15μCal/秒。逆実験では、シリンジ内の500μM WT ClpPを50μM ONC201溶液に滴定した; 同じ機器設定をこれらの実験に用いた。リガンドのタンパク質へのおよびタンパク質のリガンドへの滴定に対する希釈効果を説明するために、対照実験を行った。Origin7 MicroCal Analysisソフトウェアでデータを分析した。
ゲルろ過
400μL中0.4 mgのWTまたはD190A ClpP (1:1のモル比 - ClpP単量体とONC201との比率でのONC201有りまたは無し; ランニング緩衝液中)を、分析用サイズ排除カラムSuperdex 200 10/300 GL (Amersham Biosciences, Little Chalfont, UK)に負荷し、ランニング緩衝液(20 mM TrisHCl, 100 mM NaCl, pH 7.5)中0.5 mL/分にて室温で流した。
細胞培養
OCI-AML2細胞は、10% FBSを有するイスコブの改変ダルベッコ培地(IMDM)中で増殖された。OCI-AML3、HCT116、OC316、およびSUM159細胞は、10% FBSを有するRPMI培地中で培養された。TEX細胞(Warner et al., 2005)は、John Dick博士(Ontario Cancer Institute, Toronto, Canada)から提供されたものであり、15% FCS、2 mM L-グルタミン、20 ng/mL幹細胞因子(SCF)、および2 ng/mL IL-3 (R&D Systems, Minneapolis, MN)を補充したIMDM中で増殖された。Z138細胞は、20% FBSを有するRPMI中で培養された。T-REx HEK293細胞は、10% FBSを有するDMEM中で増殖された。
ClpP -/-およびClpP +/+ T-REx HEK293細胞は、Aleksandra Trifunovic博士の研究室(CECAD Research Center, University of Cologne, Germany)からの寄贈品であった。その他の全ての細胞株は、Leibniz-Institut Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen (DSMZ, Braunschweig, Germany)またはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection) (ATCC, Manassas, VA)から購入された。100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを全ての細胞株の培地に添加した。全ての細胞を37℃および5% CO2で培養した。細胞株の真正性は、実験前6 m以内にPowerPlex 16 HS System (Promega, Madison, WI)を用いて、ショートタンデムリピート法でのDNAフィンガープリンティングによって確認された。
初代細胞
AML患者からのバルクAML細胞および健常G-CSF処理幹細胞ドナーからの末梢血幹細胞は、それぞれフィコール密度遠心分離およびアフェレーシスによって単離された。単離された細胞は、10% FBSを補充したIMDMまたは100 ng/mL SCF、10 ng/mL FLT3-L、20 ng/mL IL-7、10 ng/mL IL-3、20 ng/mL IL-6、20 ng/mL G-CSF、20 ng/mL GM-CSFを補充したMyelocult H5100 (Stemcell Technologies, Vancouver, BC)中で維持された。加湿雰囲気中37℃および5% CO2で、細胞に100μg/mlペニシリンおよび100 U/mlストレプトマイシンを補充した。University Health Network (Toronto, ON)およびMD Anderson Cancer Center (Houston, Texas)の機関審査委員会は、この研究のためのヒト組織の収集および使用を承認した。全てのサンプルは、同意した患者から入手した。
細胞生存アッセイ
Alamar-Blueアッセイの場合、細胞(1×104個/ウェル)を96ウェルプレート(終容量100μL/ウェル)にプレーティングし、漸増濃度のONC201およびONC212 (0~100μM)で処理した。37℃で72時間のインキュベーション後、Alamar Blue 10μLを培地に添加し、混合物を37℃でさらに2時間インキュベートした。励起560 nmおよび発光590 nmでの蛍光の分光光度法(SpectraMax M3, Molecular Devices, San Jose, CA)を用いて細胞毒性を測定した。アポトーシス分析のため、アネキシンVおよびPI結合アッセイを実施して、既述(Ishizawa et al., 2016)のようにアポトーシスを評価した。細胞(24ウェルプレート中のAML細胞の場合には1.5×105個/ウェルおよび12ウェルプレート中のHCT116細胞の場合には0.8×105個)をプレーティングし、ONC201およびONC212で処理した。アネキシンVおよびPIを72時間のインキュベーション後に染色した。アネキシンV陰性およびPI陰性の細胞を生細胞としてカウントした。
細胞サーマルシフトアッセイ(CETSA)
CETSAを既述(Jafari et al., 2014)のように行った。OCI-AML2細胞を37℃で30分間、漸増濃度のONC201またはONC212で処理した。次いで、細胞を洗浄し、プロテイナーゼ阻害剤を含むPBS中に再懸濁し、サーマルサイクラー(SimpliAmp, Applied Biosystems)を用いて67℃で3分間加熱した。この温度は、タンパク質の最適な熱シフトを決定するために、薬物で前処理された細胞をさまざまな温度で1時間加熱することによって実験的に導き出された。この段階に続いて、ボルテックスを用いた4回の凍結融解サイクルにより細胞を溶解し、16,000g、4℃で30分間での遠心分離後に純粋な細胞溶解物を回収した。
洗脱(wash-off)実験では、ONC201 (10μM)処理細胞をPBS中で洗浄し、ペレット化し、新鮮培地中に再懸濁し、37℃で15~75分から開始し時間間隔を増やしてインキュベートした。この後、細胞を再度洗浄し、プロテイナーゼ阻害剤を含むPBS中に再懸濁し、67℃で3分間加熱し、細胞溶解物を上記のように回収した。
RNA配列決定
TruSeq Stranded Total RNA Sample Preparation Kit (Illumina, San Diego, CA)を用いて、バーコード化されたイルミナ互換の鎖特異的全RNAライブラリを調製した。簡単に説明すると、DNase I 1μgで処理した全RNAから、Ribo-Zero Gold (Illumina)を用いて細胞質およびミトコンドリアのリボソームRNA (rRNA)を枯渇させた。精製後、二価カチオンを用いてRNAを断片化し、ランダムプライマーを用いて二本鎖cDNAを合成した。得られた二本鎖cDNA断片の末端を修復し、5'-リン酸化、3'-A尾部化およびイルミナ固有のインデックス付きアダプターをライゲーションした。最終的なcDNAライブラリを作出するために、11サイクルのPCRによって産物を精製および濃縮した。ライブラリは、Qubit dsDNA HS Assay Kit (ThermoFisher)を用いて定量化し、Fragment Analyzer (Advanced Analytical, Ankeny, IA)を用いてサイズ分布を評価し、次いでプールごとに4つのライブラリを多重化した。ライブラリプールをqPCRによって定量化し、75 bpペアエンドフォーマットを用いてIllumina HiSeq4000配列決定装置で、レーンごとに1つのプールで、配列決定した。各サンプルについて、TopHatを用いて、FASTQファイルからの読み取りを参照ゲノム(hg19)にアラインし、BAMファイルを作出した。次に、これらをrnaseqmutへの入力として使用し、これにより、読み取りの最小数および割合がバリアント配列、つまり挿入欠失または単一ヌクレオチドバリアント(SNV)を有するゲノムヌクレオチド位置が特定される。既知の単一ヌクレオチド多型(SNPs)を除外するためのフィルタリングはなかった。Z138細胞の親サンプルまたはONC201耐性サンプルのいずれかまたは両方で同定された各SNVについて、rnaseqmutにより、サンプルごとに、WTヌクレオチドがその位置にある読み取りの数(順方向および逆方向)と、SNVがその位置にある読み取りの数が提供された。その位置での読み取りの合計数が合計読み取りの最小数(20)を超えた場合、フィッシャーの直接確率検定を用いて、親細胞 vs. 耐性細胞における変異対立遺伝子頻度(MAF)の差異を比較した。最小読み取り数およびいずれかの方向でのフィッシャー検定有意なMAF差異(すなわち、薬物未処理または耐性の細胞のいずれかで高い)の基準を満たすSNVは、それらが遺伝子間、イントロン、5'もしくは3' UTR内、またはエクソン内にあるかどうかに関して、および後者の場合、それらが同義(サイレント)、非同義(NSV)であるか、または終止コドンの獲得もしくは喪失を伴うかどうかに関して、ANNOVAR (Wang et al., 2010)によってさらに特徴付けられた。全ての生データはSequence Read Archive (SRA), アクセッションID番号SUB4176298に寄託されている。
部位特異的変異誘発
全ての点変異は、Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼまたはQuikChange II部位特異的変異誘発キット(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を使い製造元のプロトコル(New England Biolabs, Ipswich, MA)を用いて誘導された。使用したプライマーは、次の通りであった:
Figure 2022520997000010
インビトロ実験の場合、ミトコンドリアターゲティング配列(MTS)のない変異遺伝子を、pETSUMO2発現ベクターのN末端His6-SUMO-2タグとインフレームで融合させた。哺乳類細胞株を伴う実験の場合、完全長の変異遺伝子(MTSを有する)を、C末端VAタグを有する発現ベクター(StrepIII-His6-TEV-TEV-3xFLAG)にクローニングした。全ての変異を配列決定によって確認した。
イムノブロット分析
細胞をタンパク質溶解緩衝液(0.25 M Tris-HCl, 2%ドデシル硫酸ナトリウム, 4% β-メルカプトエタノール, 10%グリセロール, 0.02%ブロモフェノールブルー)中1×106個/50μL (AML細胞の場合)または1×106個/100μL (HCT116細胞の場合)の密度で溶解させた。Oxphosカクテル抗体のタンパク質溶解物を室温で30分間、それ以外の場合、変性のために95℃で5分間インキュベートした(使用した抗体は以下に記載されている)。既報(Ishizawa et al., 2016)のようにイムノブロット分析を実施した。簡単に説明すると、等量のタンパク質溶解物を10~12% SDS-PAGEゲル(Bio-Rad)に負荷し、Odysseyイメージングシステム(LI-COR Biotechnology, Lincoln, NE)を用いて定量化した。使用した抗体: 総OXPHOSげっ歯類WB抗体カクテル、抗SDHA、抗SDHB、抗NDUFA12、抗ClpP、抗ATF4、抗eIF2α、抗ホスホeIF2α(S51)、抗ClpP、抗CQCRC2、抗CS、抗NDUFB8、抗β-アクチン、および抗GAPDH。
近接依存性ビオチン標識(BioID)
野生型およびY118A変異型ClpP配列をPCR増幅し、テトラサイクリンによって正に調節されるCMVプロモーター下でpcDNA5 FRT/TOプラスミド中に、変異体大腸菌ビオチン結合酵素BirA R118G (またはBirA)とインフレームで融合させた。各コンストラクトについて、インフレームでの融合をサンガー配列決定によって確認した。次に、PolyJet (3μL) (SignaGen, Rockville, MD)を用いてプラスミドをT-REx 293細胞にトランスフェクトした。ハイグロマイシンB (200μg/mL)を用いて、テトラサイクリンにより調製されるBirAタグ付きWTまたは構成的に活性な変異型ClpPタンパク質を発現する安定した細胞を選択した。BirAエピトープタグのみ、または無関係のミトコンドリア酵素であるオルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)に融合されたBirAを発現する細胞プールを陰性対照として用いた。
およそ60%の集密度で、細胞を0.6μMのONC201または媒体対照に加えて1μg/mLのテトラサイクリンおよび50μMのビオチンで48時間処理した。細胞をその培地中でこすり取り、プールし、冷PBS 25 mL中で2回洗浄し、4℃で5分間1000×gでの遠心分離によってペレット化し、氷冷した改変RIPA緩衝液中で1分間溶解した。次に、純粋な細胞溶解物を、転倒型回転器においてRIPAで平衡化したストレプトアビジン-セファロースビーズ(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)とともに4℃で2時間インキュベートした。ビーズを50 mM重炭酸アンモニウム(pH 8.0) 1 mLで7回洗浄し、ビオチン化タンパク質をトリプシンで消化した。野生型ClpP (処理済および未処理)および各変異体について、2つの別々の生物学的複製(クローニング段階から開始)を作出した。ペプチド断片を含むサンプルを質量分析によって分析した。
質量分析
2 cmのプレカラム(Acclaim PepMap(商標) 100; 75μm ID; 3μm, 100 Å C18; ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)および50 cmの分析用カラム(Acclaim(登録商標) PepMap RSLC, 75μm ID; 2μm, 100 Å C18; ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)を使用し、Q-Exactive HF質量分析計(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)とインラインのEASY-nLC1000ポンプ(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)にて120分の逆相勾配(225 nL/分, 0.1% HCOOH中5~40%のCH3CN)を適用し、高性能液体クロマトグラフィーを行った。親イオンMSスキャンを60,000の分解能(200 m/zでFWHM)で実施し、続いてさらに高エネルギーの衝突誘起解離(HCD)断片化を用い最も強力なMSスキャンイオンの最大20のMS/MSスキャン(15,000 FWHM分解能、活性化のための最小イオン数1000)を実施した。
5秒以内に2回検出された同じm/z (10 ppmの範囲内; 排除リストサイズ= 500)のMS/MSが15秒間分析から除外されるように、動的排除がアクティブ化された。タンパク質の同定のため、Thermo .RAWファイルを、Proteowizard (Kessner et al., 2008)を用いて.mzML形式に変換し、次いでHuman RefSeq Version 45データベース(36113エントリを含む)に対してX!Tandem(Craig and Beavis, 2004)およびComet (Eng et al., 2013)を用いた検索した。検索パラメータでは、親イオンの質量許容値を10 ppm、MS/MS断片のイオン許容値を0.4 Daと指定し、トリプシンで最大2回の切断ミスを許容した。MおよびWで+16、MおよびWで+32、N末端で+42、ならびにNおよびQで+1の変数改変が許容された。0.9のiProphetカットオフ(1%以下のFDRに対応)で同定されたタンパク質および少なくとも2つの固有のペプチドをSAINT Express v.3.6で分析した。対照ラン(FlagBirAエピトープタグのみを発現する細胞からの18ラン)は、各プレイの2つの最高スペクトルカウントに折り畳まれ(collapsed)、信頼性の高いインタラクタはBFDR≦0.01のものとして定義された。全ての生の質量分析ファイルは、MassIVEアーカイブ(massive.ucsd.edu), アクセッションID番号MSV000082381に保管されている。
ネットワーク分析
ClpP相互作用データをCytoscape 3.6.0にインポートし、以前に報告された物理的相互作用および機能データにしたがってタンパク質をグループ化した。
レンチウイルス感染およびClpP過剰発現
レンチウイルス野生型またはD190A変異型ClpP過剰発現ベクターは、Z138細胞からプライマーCLPP cDNA fwdおよびCLPP cDNA rev (下記)を用いることでcDNAを増幅し、それをInFusionクローニング(TaKaRa Bio USA, Mountain View, CA)によりプライマーInFusion CLPP fwdおよびInFusion CLPP rev (下記)を用いることでpCDH-EF1a-MCS-BGH-PGK-GFP-T2A-Puro (Systems Biosciences, Palo Alto, CA)のEcoR1部位とBamH1部位との間に挿入することによって作出された。次に、ペアプライマー(CLPP mut D190A fwdおよびCLPP mut D190A rev) (下記)を用いQuikChange II部位特異的変異誘発キット(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)で野生型ベクターからCLPP D190Aを導出した。XL10-Goldの代わりに使用済みのStbl3細胞(ThermoFisher, Waltham, MA)を用いたことを除いて、製造元の方法に従った。的確なクローンをサンガー配列分析によって同定した。プラスミドを構築するために使用した全てのプライマーの配列を以下に示す:
Figure 2022520997000011
2つのレンチウイルスベクターに基づくテトラサイクリン誘導性システムを、既述(Frolova et al., 2012)のように開発した。第1のレンチウイルスベクター(pCD510-rtTA)は、pSLIK-Venus-TmiR-Luc (ATCC ID: MBA-239)からBamHIおよびBstBIで逆テトラサイクリン制御トランスアクチベータ(rtTA)コード配列を切り出し、得られた断片をpCD510-B1 (SystemBio)のNotIおよびBstBI制限部位にクローニングすることによって作出された。したがって、pCD510-rtTAは、CMVプロモーターの下でrtTAを発現し、第2のプロモーターEF-1の下でピューロマイシン選択マーカーを発現する。第2のベクター(pCD550A1-TRE)を作出するために、元のEF1プロモーターを、6つのテトラサイクリン応答エレメント(TRE)とそれに続く最小のCMVプロモーターで構成される誘導性プロモーターに置き換えた。野生型またはY118A変異型ClpPのcDNA配列を、テトラサイクリン誘導性プロモーター(TRE)の制御下に挿入し、続いて最小CMVプロモーターおよび選択マーカーとしてのCopGFPをEF-1プロモーターの制御下に挿入した。レンチウイルス感染の場合、HEK293T細胞(ATCC, Manassas, VA)に、製造元のプロトコルにしたがいJetPrimeトランスフェクション試薬(VWR, Radnor, PA)を用いてレンチウイルスベクターとともにpMD2.GおよびpsPAX2 (Didier Tronoの寄贈品, それぞれ、プラスミド12259および12260、Addgene Inc., Cambridge, MA)をコトランスフェクトした。トランスフェクション培地を6時間後に、10% FBSを有する新鮮なDMEM培地と交換し、24時間後にウイルス上清を収集し、Centricon Plus-70フィルタユニット(Sigma-Aldrich)を用いることによって濃縮した。OCI-AML3、Z138、およびHCT116細胞に、8μg/mLのポリブレン(Sigma-Aldrich)を補充したウイルス上清を終夜感染させた。感染72時間後、安定して形質導入された細胞をFACSにより選択し、GFP標識細胞の均一な集団を得た。
酸素消費速度の測定
Seahorse XF96分析装置(Seahorse Bioscience, North Billerica, MA)を用いて酸素消費量を測定した。細胞をその増殖培地中において漸増濃度のONC201または媒体対照(DMSO)により37℃で72時間処理し、2.0 g/Lグルコースおよび100 mMピルビン酸を補充したXFアッセイ培地中に再懸濁し、XF96プレート中に1×105個の細胞/ウェルで播種した。次に、細胞を無CO2インキュベーター内にて37℃で60分間、非緩衝培地に対して平衡化し、XF96分析装置に移し入れた。ミトコンドリア呼吸鎖の予備能を測定するために、細胞を2μMオリゴマイシンおよび0.25μMカルボニルシアニドp-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP)で連続して処理した。
呼吸鎖複合体活性
呼吸鎖複合体の酵素活性を既述(Sriskanthadevan et al., 2015)のように測定した。複合体IのNADH依存性活性は、NADHをNAD +に酸化し、同時に提供された色素を還元した後に、全細胞溶解物において複合体I酵素活性マイクロプレートアッセイキット(Complex I Enzyme Activity Microplate Assay Kit)を用いて決定された。複合体II (コハク酸デヒドロゲナーゼ)活性は、複合体IIが触媒する50μMデシルユビキノン還元と組み合わせて、170μM 2,6-ジクロロインドフェノールのマロン酸感受性還元をモニタリングすることにより1 mg/mLウシ血清アルブミン、20μMロテノン、および2 mM KCNを含有する20 mMコハク酸ナトリウム補充100 mM HEPES, pH 7.4中2μgの単離ミトコンドリアにおいて測定された(Skrtic et al., 2011)。複合体IV活性は、125 mM KClを補充した25 mM Tris緩衝液, pH 7.0中1 mg/mLのドデシル-D-マルトシドで処理した単離ミトコンドリア3μgにおける2 mg/mLのフェロチトクロームcのKCN感受性酸化によって測定された。フェロチトクロームcは、0.5 M L-アスコルビン酸による40 mg/mLフェリチトクロームcの還元によって得られた(Skrtic et al., 2011)。
ミトコンドリアROS測定
ミトコンドリアにおける活性酸素種レベルを測定するために、細胞をONC201 (0~2.5μM)により37℃で72時間処理し、MitoSox (Molecular Probes/Life Technologies, Eugene, OR)で染色し、加湿雰囲気中37℃および5% CO2で30分間暗所においてインキュベートした。次に、細胞を遠心分離して色素を除去し、アネキシンV-FITC (BioVision, Milpitas, CA)を含有する結合緩衝液中に再懸濁した。この段階に続いて、アネキシンV陰性細胞を同定し、Canto II 96ウェルサイトメーター(Fortessa system, Becton Dickinson, San Jose, CA)においてフローサイトメトリーにより分析した。陽性対照サンプルは、MitoSoxで染色する前に、50μMアンチマイシンA (Sigma-Aldrich)により37℃で5時間処理した。
定量化および統計分析
統計分析は、両側スチューデントのt検定、一元配置分散分析、またはPrism (バージョン7.0; GraphPad Software)統計ソフトウェアプログラムによるマンホイットニー検定を用いて実施された。カプランマイヤー法を用いて生存曲線を作成し、ログランク検定を2群の比較のために用いた。0.05未満のP値は統計的に有意であると見なされた(P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001, ****P<0.0001)。別段の指示がない限り、値は、3回の独立した実験を実施することによって計算された平均±SDとして表されている。
データおよびソフトウェア可用性
ONC201と複合体を形成したヒトミトコンドリアClpPの構造は、アクセッション番号6DL7でRCSB - Protein Data Bank (PDB)に寄託された。
実施例1-ミトコンドリアClpPの活性化はインビトロおよびインビボで抗腫瘍効果を誘導する
ClpPの活性化は細菌に対して細胞毒性があるため(Brotz-Oesterhelt et al., 2005; Conlon et al., 2013)、ヒトClpPにおいて点変異(Y118A)の改変によって構成的に活性なClpP変異体を作出することにより、ClpP活性化の抗がん効果を試験した。この部位は、黄色ブドウ球菌ClpPのY63A変異と相同であるために選択された(図8A)。黄色ブドウ球菌のY63A ClpP変異は、細菌酵素の入口孔を拡大し、プロテアーゼの過剰活性化を引き起こす(Ni et al., 2016)。組み換えY118A ClpPを精製し、その酵素活性を試験した。野生型(WT) ClpPと比較して、Y118A ClpPは、無細胞酵素アッセイでその蛍光タンパク質基質FITC-カゼインの切断の増加を示した(Leung et al., 2011) (図8B)。
腫瘍細胞におけるこの変異の影響を評価するために、レンチウイルス感染を介してテトラサイクリン誘導性WTまたは変異型ClpP (Y118A)をOCI-AML3細胞およびZ138細胞に形質導入し、テトラサイクリンで処理して発現を誘導した。WT ClpPではなく、構成的に活性なClpP変異体の誘導は、用量依存的にアポトーシスを誘導した(図1A)。ClpPの遺伝的活性化は、そのアポトーシス促進活性と一致して、インビボでの抗腫瘍効果も発揮した。テトラサイクリン誘導性変異型ClpP (Y118A)を有するZ138細胞をNSGマウスに静脈内注射した。次に、マウスをテトラサイクリンまたは媒体で処置した。テトラサイクリン処置群は、未処置群よりも有意に長く生存した(生存期間中央値: 48日 vs 40日, p<0.0001) (図1B)。
ClpP活性化の抗腫瘍効果を試験するための別の戦略として、アシルデプシペプチド1 (ADEP1)を使用した。ADEP抗生物質は、ClpX界面の活性部位の外側でプロテアーゼに結合してClpP軸方向細孔を開く、細菌ClpPの既知の活性化因子である。ミトコンドリアClpPにおけるADEP1の効果を試験したところ、このミトコンドリアプロテアーゼが活性化し、ClpPによるFITC-カゼインの切断が促進される(EC50 21.33μM [95% CI 20.12~22.61])ことが実証された(図1C)。次に、この化合物でOCI-AML2細胞を処理したところ、50μMのIC50 [95% CI 48.4~51.6]でこれらの細胞の増殖および生存性が低減されることが実証された(図1D)。したがって、これらのデータは、ミトコンドリアClpPの遺伝的または薬理学的活性化がインビトロおよびインビボで腫瘍細胞に致死性を誘導しうることを示している。
実施例2-イミプリドンONC201およびONC212はミトコンドリアClpPを強力に活性化する
ヒトClpPを活性化するためのより強力な薬理学的方法を見つけるために、新しい小分子ClpP活性化因子が同定された。したがって、臨床使用でまたは悪性および非悪性の適応症の臨床試験で承認された特許期間中(on-patent)および特許期限切れ(off-patent)の薬物に焦点を当てた747分子の社内ライブラリの化学スクリーニングを行った。このライブラリは、無細胞酵素アッセイを用いて、その蛍光タンパク質基質FITC-カゼインのClpPを介した切断を増加させる分子を特定するためにスクリーニングされた(Leung et al., 2011)。基本的な条件下では、ClpPはそのシャペロンClpXなしでは完全長タンパク質を切断することができなかった。しかしながら、イミプリドンONC201はプロテアーゼを活性化し、ClpXの非存在下でClpPを介したFITC-カゼインの切断を促進した(図2A)。ONC201 (図2B)は、インビトロおよびインビボで固形腫瘍および血液悪性腫瘍において前臨床効果を有する薬物である(Allen et al., 2016; Allen et al., 2013; Ishizawa et al., 2016; Kline et al., 2016; Tu et al., 2017)。この薬物は現在、さまざまな種類のがんの臨床試験において評価されている(Arrillaga-Romany et al., 2017; Kline et al., 2016; Stein et al., 2017)。そのより強力な誘導体であるONC212 (図2B)は、前臨床評価段階にある(Lev et al., 2017)。注目すべきことに、薬物に物理的に結合し、その細胞毒性にとって機能的に重要なイミプリドンの分子標的は同定されていない。
ONC201は、ClpXを必要とせずにClpPを活性化し、FITC-カゼイン、ならびに蛍光性ペプチドAC-WLA-AMC、Ac-Phe-hArg-Leu-ACC、およびFAPHMALVPC (Clptide)の切断を、それぞれ、0.85μM、1.67μM、0.82μM、および3.23μMのEC50で誘導し、ここでEC50は最大応答の半分を駆動する薬物濃度を表す(図2C、2Dおよび9A)。構造的に関連性のあるイミプリドンである、ONC201不活性異性体(その不活性類似体)およびONC212、ならびに細菌のClpP活性化因子ADEP1の、ClpP活性に及ぼす効果も試験した。ONC212は、FITC-カゼインならびにAC-WLA-AMC、Ac-Phe-hArg-Leu-ACC、およびFAPHMALVPC (Clptide)のClpPを介した切断を、それぞれ、0.46μM、0.18μM、0.37μM、および3.37μMのEC50で増加させた(図2C、2Dおよび9A)。ADEP1はONC201およびONC212と比較してあまり強力なClpP活性化因子ではなく(図9A)、ONC201の不活性異性体はClpPを介したその基質の切断を増加させなかった(図9A、9B)。FITC-カゼインのデータは、ONC201では1.98±0.16、ONC212では4.98±0.47のヒル係数で明確な正の協同性を示した(Gersch et al., 2015)。特に、イミプリドンの活性は、ClpPのY118A変異によって達成された活性化よりも大きかった(図8B、8C)。イミプリドンまたはADEP1でClpPを活性化した後に切断されなかった別の蛍光性ペプチド、非ClpP基質、MCA-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Lys (DNP)-OHペプチドも試験した(図9A)。注目すべきことに、ClpPをONC201およびONC212とプレインキュベーションしても、これらの化合物がClpPを活性化する能力は増加せず、可逆的(非共有的)な活性化モードを示唆するものであった(図9C)。イミプリドンはADEP1と比較してはるかに強力なClpP活性化因子であったため(図1C)、その後の研究ではこれらの化合物に焦点を当てた。
蛍光性アッセイの結果を確認するために、ONC201およびONC212の効果を、ClpPによるα-カゼインの分解を測定するゲルベースのアッセイにおいて試験した(図2E)。ONC201およびONC212の添加により、ClpPが活性化され、ClpXを必要とせずにα-カゼインの切断が誘導された。次に、ClpPの溶液に漸増量のONC201を添加することによって(図3A)、およびONC201の溶液にClpPを滴定する別の設定で(図10A、10B)、等温滴定熱量測定(ITC)を用いて、ONC201は組み換えプロテアーゼと直接相互作用することが示された(Gersch et al., 2015)。ONC201とClpPとの直接相互作用は、ゲルろ過によっても確認され(図10C)、より高分子量への明確なシフトが観察された。ヒトミトコンドリアClpPは、細菌ClpPとは異なり、3 mg/mLを超える濃度でもClpXの非存在下で七量体として存在することが示されたため(Kang et al., 2005)、プロテアーゼに結合するONC201は平衡を7-merから14-merのClpPへ明らかにシフトさせた。このように、まとめると、ONC201およびその類似体ONC212は、このミトコンドリアプロテアーゼに結合して過剰活性化するClpPリガンドと同定された。
実施例3-ONC201はClpXとの界面でClpPに非共有結合する
ONC201とClpPタンパク質との間の正確な分子相互作用を特定するために、ヒトClpPプロテアーゼをこの薬物と共結晶化し、タンパク質-薬物複合体の構造を2Åの分解能で決定した(PDB-ID: 6DL7)。電子密度マップにおいて7つのONC201分子を明確に視認できる。それらは、7つのサブユニットのそれぞれの間の疎水性ポケットを占有する(図3B、10D、およびS10E)。タンパク質残基とONC201活性化因子との間の直接相互作用は、広範な疎水性接触およびTyr-118のヒドロキシル基への水素結合(2.8Å)を伴う(図10D)。さらに、ONC201のオキソ基は、Gln-107の側鎖窒素およびLeu-104のカルボニル酸素と、水を介した水素結合を形成する(図10D)。この薬物のフェニル環はTyr-138とTyr-118の間に位置し、π-スタッキング相互作用に関与している。
ONC201の結合によって軸方向の入口細孔の開口が起こり、その半径が、ヒトミトコンドリアClpPの明らかな閉構造において見られる(Kang et al., 2004)12Åから、17Åに増大し(図3C、上)、細孔径が2倍になる。ClpP 14-merは、よりコンパクトな形状を取り、その高さは93Åから88Åに減少する(図3C、中央)。入口細孔を開口することに加えて、この領域の著しく高い温度因子によって証明されるように、N末端残基は増大したダイナミクスを示す(図3C、下)。最初の7つのN末端残基に対応する電子密度は非常に弱く、残基番号64~73には識別可能な密度がない。Pro-248に続くC末端残基も電子密度マップでは見えない。ONC201結合は、七量体-七量体界面の活性部位領域の周囲にさらなる構造変化を引き起こす。ヒトapo-ClpP構造(Kang et al., 2004)では、この領域は明確に定められている。ClpP-ONC201複合体では、鎖β6の末端、鎖β7の全部、およびヘリックスα5の最初の3分の1を包含する残基番号178~193は、大きな立体構造変化を受け、ダイナミクスの増大を示し、残基番号183~187周辺の領域は電子密度マップではこの場合もやはり見えない(図3C、下)。この変化は、活性部位における触媒三残基(すなわち、Ser-153、His-178、およびAsp-227)の配置に直接影響を及ぼす。His-178の環は、約70°回転しながらSer-153から5Åより大きく離れる。Asp-227は同じ方向に移動するが、2.8Åしか移動しない(図10F)。ONC201複合体では、七量体-七量体界面で互いに向かい合って、十四量体環に隣接しているサブユニットからの触媒アスパラギン酸が互いにかなり接近している(4.6Å)のに対し、それらが無リガンド構造では約17Å離れていることは注目に値する。さらに、それは、最も近い相互作用側鎖であるSer-181であり、想定される触媒作用性Ser-153ではない。Ser-181の側鎖ヒドロキシルは、隣接するサブユニットのAsp-227のカルボキシレートと密接に相互作用する(3.2Å)。ONC201結合によって誘導される立体構造変化には、プロテアーゼ「側壁」の中央領域にあるチャネル様の細孔の開口も含まれ、これは細菌酵素について既述されたものと同様であり、ペプチド生成物の潜在的な脱出経路に相当する(Sprangers et al., 2005) (図3D)。したがって、ONC201は、活性部位の外側でClpPに非共有結合的に結合し、ClpP 14-merを安定化し、酵素の軸方向の細孔を拡大し、触媒三残基を囲みかつ含む残基の構造変化を誘導することによって、プロテアーゼを活性化する。
ONC212では、ONC201に存在する4-(2-メチルベンジル)基が4-(4-トリフルオロメチルベンジル)置換基に置き換えられている。ClpP-ONC201複合体の結晶構造では、ONC201のオルトメチル基がバルク溶媒に向いている。その除去は、その結合エネルギーにわずかな影響しか及ぼさないはずである。タンパク質では、親フッ素性環境にはペプチドCα多極相互作用が含まれる。アルギニン残基の正に帯電した側鎖も、結合増強の機会を提供する(Muller et al., 2007)。
ONC201部位に基づいてモデル化され、2サイクルのMD精密化に供されると(Adams et al., 2010)、ONC212のパラトリフルオロメチル置換基は、CF3基が接続されているベンジル環を受け入れる、ClpPの概ね無極性の結合ポケットの伸展部にくっつく(図3E)。タンパク質残基との強い衝突はなく、観察された原子運動は全て明らかに1Åよりも小さい。Ile 75、Leu 79、Ala 101、およびPhe 105のペプチド結合は潜在的な結合距離にある。さらに、Arg 78およびArg 81の側鎖は両方とも、CF3置換基の周りを回転し、CF3置換基と相互作用することができるほど十分に接近している。Glu 82と塩橋を形成するArg 78は、特に全3つの残基がタンパク質表面にあり、バルク溶媒と接触しているため、この相互作用においてArg 81により容易に置換されうる。したがって、電気陰性度の高いトリフルオロメチル置換基は、多極結合の機会を増やし、ClpPの構造的相補性を向上させることにより、ONC212の効力を増強する可能性が高い。
実施例4-イミプリドンは細胞内のClpPに結合する
上記の無細胞アッセイにおいてClpPを活性化するONC201およびONC212の能力を考慮して、それらが細胞内のClpPに結合できるかどうかを細胞サーマルシフトアッセイ(Cellular Thermal Shift Assay; CETSA)を用いて試験した。CETSAは、細胞内の標的タンパク質の融解温度(Tm)のリガンド誘導性変化を評価して、それらの標的に対するリガンドの結合親和性を決定する(Jafari et al., 2014)。ONC201およびONC212の両方とも、酵素アッセイにおけるプロテアーゼの活性化に関連する濃度で、OCI-AML2内の内因性ClpPに結合した(図3F (IおよびII)ならびに11A)。次に、OCI-AML2細胞において、ONC201で処理した細胞をPBSで洗浄し、CETSAの前に新鮮な培地中でそれらを再インキュベートすることにより、ONC201のClpPへの結合の可逆性を試験した(図3E (III))。ClpPの熱安定性は、媒体から薬物を除去した後に急速に低下し、これは結晶構造において観察された非共有結合と一致していた。
実施例5-イミプリドンONC201およびONC212によるClpP活性化は、ClpP依存性機構を通じて悪性細胞を死滅させる
過剰活性化ClpPが白血病細胞およびリンパ腫細胞の増殖および生存性に及ぼす効果をさらに評価した。OCI-AML2、OCI-AML3、TEX白血病細胞、Z138リンパ腫細胞、ならびにHCT-116 (結腸)、HeLa (子宮頸部)、OC316 (卵巣)、およびSUM159 (乳房)細胞を、漸増濃度のONC201およびONC212で処理した。ONC201およびONC212の両方が、低マイクロモル範囲(ONC201)またはナノモル範囲(ONC212)のIC50値で試験細胞の増殖および生存性を低減した(図3Gおよび11B)。これらの化合物による細胞死およびアポトーシス誘導を、アネキシンV/PIアッセイを用いて確認した(図3Gおよび11C)。イミプリドンによる増殖および生存性の低減は、CETSAによるClpPに結合する能力、および酵素アッセイにおいて酵素を活性化する能力と一致していた。ClpP活性化の効果を、原発性AMLおよび正常な造血細胞でさらに評価した。ONC201およびONC212は、高リスクの細胞遺伝的および分子的変異を有するものを含めて、原発性AML患者サンプルにおいてアポトーシスを誘導した(図3Hおよび表3)。特に、TP53変異腫瘍におけるONC201の強い効力が最近になって報告されており(Ishizawa et al., 2016; Kline et al., 2016)、つまり臨床的な意義の可能性がある所見である。
イミプリドンによって誘導される細胞死においてClpPの活性化が機能的に重要であるかどうかを評価するために、CLPP +/+およびCLPP -/- T-REx HEK293細胞を、漸増濃度のONC201、ONC201不活性異性体、およびONC212で処理した。ONC201およびONC212は野生型細胞の増殖および生存性を低減させたが、プロテアーゼを欠くCLPP -/- T-REx HEK293細胞はONC201およびONC212に耐性であった(図4A)。ONC201異性体は、CLPP +/+またはCLPP -/- T-REx HEK293、およびONC201感受性またはONC201耐性Z138細胞の増殖および生存性を有意には低下させなかった(図12A、12B)。
(表3)図3Hに用いたサンプルの臨床情報
Figure 2022520997000012
#、##: 図2GにおいてONC201に対し比較的耐性であったサンプル。
(表4)図4Bおよび12Cに用いたサンプルの臨床情報
Figure 2022520997000013
実施例6-ClpPのレベルは、原発性AML細胞におけるClpP活性化因子への応答に関連している
原発性AMLサンプルにおけるClpP発現レベルがClpP活性化因子に対する応答を予測するかどうかを特定するために、11例の原発性AMLサンプルにおいて処置前ClpPレベルを測定し、ONC201処置に対するその応答を評価した。ONC201に対する感受性は、これらのサンプルにおける処置前ClpP発現と相関していた(r=-0.82, p=0.003) (図4Bおよび12C; 表4)。より高いClpP発現を有する原発性AML患者サンプルは、平均を1 SD下回っていた処置前ClpP値を有するサンプルと比較して、ClpP活性化因子に対する感受性が有意に高かった(p=0.0003)。したがって、ClpP活性化因子は、正常細胞よりも原発性AMLにおいて選択的に細胞死およびアポトーシスを誘導し、ClpP発現は、ONC201およびONC212を含むClpP活性化因子に応答する患者のバイオマーカーとして機能する。
実施例7-ClpPの不活性化変異は、細胞をイミプリドンに対して耐性にする
ONC201およびONC212を介した細胞死に対するClpPの重要性をさらに評価し、ClpP活性化因子に対する耐性の潜在的な機構を同定するために、Z138細胞を漸増濃度のONC201で処理し、薬物に耐性のある細胞集団(ONC-R Z138)を選択した。ONC-R Z138細胞は、ONC212に対して交差耐性でもあったが(図13A)、アドリアマイシンおよびビンクリスチンに対して同様の感受性を保持していた(図13B)。これらの細胞のONC201およびONC212に対する耐性の機構を同定するために、RNA配列決定(RNA-seq)を実施し、偏りのない分析により、ONC-R Z138細胞集団において47%の対立遺伝子頻度を有するClpPにおけるD190A変異が同定された(図13C)。変異のヘテロ接合性を確認するために、耐性クローンを単離し、分析用に7つのクローンをランダムに選択した。7つのクローン全てがONC201およびONC212に対する耐性を保持し(図13D、13E)、全てのクローンでのゲノムDNAのサンガー配列決定によってCLPPにおけるヘテロ接合性変異(D190A)が検出された(図14A)。
D190A変異がClpP機能にどのように影響を与えるかを評価するために、組み換えD190A ClpPを作出および精製し、その酵素活性ならびにONC201およびONC212に対する応答を測定した。D190A ClpPは最小限のタンパク質分解活性を有し、基礎条件下で蛍光性ペプチドAC-WLA-AMCまたはFITC-カゼインを分解することができなかった(図4C)。さらに、ONC201およびONC212は、ペプチドまたはタンパク質基質のいずれかに対するD190A ClpPのタンパク質分解活性を活性化することができなかった(図4D)。しかしながら、ONC201は、その結合部位が変異部位から離れているため、組み換えD190A ClpPプロテアーゼに結合し続けたが、結合親和性は中等度に低減された(図4E)。
D190A変異がClpPの活性および構造にどのように影響を与えるのかを理解するために、ヒトミトコンドリアClpP (Kang et al., 2004)およびそのClpP-ONC201複合体の結晶構造を比較した。前者において、Asp-190は二量体界面に位置し、2つの隣接するペプチド鎖からのArg-226残基からなる異常な積層アルギニン対に対しての補償電荷として重要である(図4F)。Asp-190はまた、ClpPの触媒三残基のAsp-227からわずか6.4Åである(図14B)。しかしながら、ClpP-ONC201複合体構造では、この領域は大きな立体構造変化を起こし、ほとんどのサブユニットでAsp-93に近接したAsp-190で高い可動性を示す。それゆえ、D190A変異体の負電荷の喪失は、178-193ループの可動性および側鎖相互作用に影響を与えることによって活性部位に悪影響を与えうる。
D190A変異がONC201およびONC212に対する耐性に機能的に重要であるかどうかを判定するために、D190A ClpP変異体(ONC-R Z138)細胞において野生型ClpPを過剰発現させ、親(野生型ClpP) Z138およびOCI-AML3細胞においてD190A変異型ClpPを過剰発現させた。野生型ClpPの過剰発現はONC-R Z138細胞のONC201およびONC212に対する感受性を回復させた(図4Gおよび14C)が、親Z138およびOCI-AML3細胞におけるD190A ClpPの過剰発現はONC201およびONC212に対する耐性を再現し(図4Hおよび14D)、D190A変異型ClpPによる内因性野生型ClpPのドミナントネガティブ阻害を示唆している。ONC201に対する耐性は、D190A ClpPの過剰発現によってHCT116細胞でも誘導された(図14E)。注目すべきことに、親Z138およびOCI-AML3細胞株における野生型ClpPの過剰発現は、ONC201およびONC212に対する感受性を増加させた(図4Hおよび14D)。したがって、これらのデータは、ONC201およびONC212により誘導される細胞死にとってClpPの活性化が機能的に重要であることを示し、ClpP活性化因子に対する耐性の機構を特定するものである。
実施例8-ClpP活性化は、呼吸鎖複合体サブユニットの低減および酸化的リン酸化の障害につながる
次に、BioID (Roux et al., 2012)を用いて、化学的または遺伝的活性化後のClpPの相互作用パートナーを同定した。プロテアーゼを化学的に過剰活性化するために、FlagBirA-ClpP (WT)を発現するT-REx HEK293細胞を0.6μM ONC201で48時間処理した。遺伝的アプローチとして、FlagBirA-ClpP (Y118A)を発現させた。活性化されたClpPのインタラクトームを非刺激WT ClpPと比較した。BioIDアッセイにおいて非刺激WT ClpPと相互作用したが、ClpPが活性化されるとスペクトル数が減少したタンパク質は、過剰活性化されたClpPの潜在的な基質に当たると仮定された。
200種を超えるミトコンドリアタンパク質が、信頼性の高いClpP相互作用パートナーとして同定された。これらのポリペプチドのうち90種は、ONC201処理後にスペクトル数の4倍以上の減少(p≦0.001)を示した。最も強い減少を示すタンパク質の中には、電子伝達鎖の構成要素(および特に、呼吸鎖複合体Iのサブユニット)とミトコンドリア翻訳に関与するポリペプチドがあった(図5Aおよび表1)。ONC201に応答して観察されたものと比べて、構成的に活性なY118A ClpP変異体の発現は、重複する相互作用パートナーセットの枯渇をもたらしたが、ペプチド数の低減の程度はより小さく、これは、変異によるプロテアーゼの活性化が弱いことを反映している可能性が高い(表1)。
以前に、呼吸鎖サブユニットSDHAおよびSDHBは推定上のClpP基質として同定されており、ClpPの阻害により、分解されたまたは誤って折り畳まれたサブユニットの蓄積がもたらされた(Cole et al., 2015)。BioIDアッセイにおいて相互作用パートナーとして同定されたタンパク質のレベルに及ぼすClpP活性化の影響を調べるために、Z138を漸増濃度のONC201で処理した。ONC201による処理は、SDHAおよびSDHBなどの呼吸鎖複合体タンパク質のレベルを低下させ、呼吸鎖Iサブユニットの低減が最も顕著であった(図5B)。対照的に、これらのタンパク質のレベルは、D190A変異型ClpPを保有する耐性Z138をONC201で処理した後に、有意に変化しなかった(図5B)。これらの細胞において野生型ClpPを過剰発現させると、呼吸鎖複合体タンパク質が枯渇し、ONC201に対する感受性が回復した(図5B)。最後に、野生型Z138細胞においてD190A ClpP変異体タンパク質を過剰発現させると、呼吸鎖タンパク質の有意な低減なしに、ONC201に対する耐性が得られた(図5C)。ONC212はまた、同定されたClpP相互作用物質のレベルを用量依存的に低減させた(図15A、15B)。ONC212によるNDUFA12およびSDHBの低減は、HCT116、HeLa、OC316、およびSUM159細胞においても観察された(図15C)。Z138細胞において観察された(図5C)のと同様に、HCT116細胞におけるNDUFA12およびSDHBの低減は、不活性化変異体D190A ClpPの過剰発現によってブロックされた(図15D)。呼吸鎖タンパク質の低減が観察されたが、ミトコンドリア呼吸鎖基質をコードするmRNAのレベルは変化しなかったか、または増加した(図16A)。さらに、ClpP -/- HEK293T-RExおよびOCI-AML2細胞から単離されたミトコンドリアの溶解物への組み換えClpPおよびONC201の添加は、複合体IサブユニットNDUFB8および複合体IIIサブユニットUQCRC2のレベルを低下させ、ClpP活性化が、細胞質または核の経路とは無関係に、選択的ClpP基質の分解を増加させうることを示している(図16B)。
同様に、Y118A ClpP活性化変異体の誘導が呼吸鎖サブユニットに及ぼす影響をZ138細胞において調べた。化学的ClpP活性化因子を用いた結果と同様に、Y118A ClpP変異体の誘導は、用量依存的にSDHA、SDHB、およびNDUFA12の低減をもたらした(図5D)。対照的に、別の呼吸複合体サブユニットATP5Aは、Y118A ClpP過剰発現、ONC201、またはONC212により低減されず(図5DおよびS8B)、ClpP活性化による特定のサブユニットの選択的分解を反映している。
ONC201およびONC212の効果を、原発性AML細胞における呼吸鎖タンパク質のレベルでも試験した。細胞株に及ぼす影響と同様に、呼吸鎖タンパク質の低減が、イミプリドンで処理された初代細胞において観察された(図5E)。興味深いことに、呼吸鎖タンパク質の同様の低減が、正常な造血細胞でも観察された(図5E)。したがって、ClpP活性化に対するAML細胞の感受性が高いことは、酸化的リン酸化への依存度が高く、呼吸鎖の予備能が低いことを反映している可能性が高い(Sriskanthadevan et al., 2015)。
次に、酸化的リン酸化およびミトコンドリア機能に及ぼすClpP活性化の影響を調べた。WTおよびD190A ClpPを保有するZ138細胞を、漸増濃度のONC201で処理した。ONC201で処理すると、WT ClpPを有するZ138細胞において基礎OCRおよび予備能が低下したが、D190A ClpPを有するZ138細胞では変化が観察されなかった(図6A)。同様に、ClpP活性化は呼吸鎖複合体I、II、およびIVの酵素活性を低下させ、複合体Iは最も感受性が高かった(図6B)。最後に、ClpP活性化は、WT ClpPを有するZ138細胞においてミトコンドリアROSの産生を増加させたが、D190A ClpPを有するZ138細胞では変化が見られなかった(図6C)。一貫して、ミトコンドリアは、電子顕微鏡法によって評価された場合、ONC201処理により形態学的に損傷を受けており、マトリックスおよびクリステ構造の特定の損傷を実証するものであった(図6D)。
ONC201は、古典的なISRとは異なり、eIF2αのリン酸化状態に関係なくATF4タンパク質の増加が誘導される非定型の統合ストレス応答(ISR)を誘導する(Ishizawa et al., 2016)。実際、Z138細胞におけるY118A ClpPの過剰発現は、eIF2αのリン酸化を増加させることなくATF4タンパク質の増加を示した(図6E)。
実施例9-イミプリドンによるClpP活性化はインビボで抗腫瘍効果を発揮する
ONC212によるClpP活性化がインビボで抗腫瘍効果を誘導するかどうかを試験するために、WTまたはD190A ClpP過剰発現を有するZ138細胞を用いて異種移植マウスモデルを確立し、マウスをONC212の強制経口投与で処置した。Z138細胞をルシフェラーゼ標識し、全身腫瘍負荷の後にIVISイメージングでルシフェラーゼ活性を測定した。インビトロでの知見と一致して、腫瘍量は、WT ClpP群においてONC212処置により有意に低減されたが、D190A ClpP群においては識別可能な抗腫瘍活性がなかった(図7A、7B)。結果として得られた生存は、ONC212処置WT ClpP群において有意に延長されたが、D190A変異体群では延長されなかった(生存期間中央値: WT; 49 vs 55日, p=0.008、D190A変異体; 53 vs 54日, p=0.40) (図7C)。結果から、ONC212のインビボ効力がClpP依存性であることが示された。ONC201のインビボ抗腫瘍効果は、OCI-AML2細胞の異種移植モデルにおいても検証された。経口ONC201は、対照群と比較して、マウスの白血病負荷を有意に低減した(図7D)。まとめると、イミプリドンはリンパ腫およびAMLマウスモデルにおいてインビボで効果的である。白血病を引き起こす細胞(LIC)に及ぼすONC212の効果をさらに評価するために、二次移植(すなわち、LIC濃縮)マウスからの患者由来の異種移植AML細胞をONC212で処理し、次に細胞をレシピエントNSGマウスに注射した。マウスの生存は有意に延長され(生存期間中央値: 36 vs 82日, p<0.0001) (図7E)、ClpP活性化がLICの生着能力を阻害することを示唆している。再発性/難治性AMLを有する患者での進行中の臨床試験において、循環芽球の減少およびその後の血小板数の増加が、ONC201 (250 mg経口)の単回投与後に観察された(図17)。
実施例10-ClpPの遺伝的活性化は、ベネトクラクス(ABT-199)に対する白血病細胞およびリンパ腫細胞の感受性を増強する
テトラサイクリン誘導性システムを備えた構成的に活性なClpP変異体(Y118A)を、レンチウイルスによってOCI-AML3細胞およびZ138細胞にトランスフェクトした。細胞をテトラサイクリンで処理し、これによって72時間までにテトラサイクリン用量依存的にY118A ClpP変異体を誘導し、その後、表示された濃度のベネトクラクス(ABT-199)に曝露した(図18)。ClpPの遺伝的活性化は、ベネトクラクスに対する細胞の感受性を増強したが、これはONC201とベネトクラクスの併用処置における相乗効果と一致しており、併用療法における相乗的ながん細胞死滅化の誘導におけるClpP活性の重要性を示している。
実施例11-ONC201臨床試験での応答者は、ClpP陽性白血病細胞を示したが、非応答者はClpP陰性であった
登録された患者30名のうち患者11名から処置前の骨髄生検サンプルを採取し、ClpPを染色した。代表的な顕微鏡写真を図19に示す。患者番号21および番号22における芽球はClpP陽性であった; 核周囲染色はミトコンドリアの局在と一致していた。この知見は、ONC201処置中にこれらの患者で観察された臨床反応と一致している。その一方で、臨床応答を達成しなかった患者番号25からの芽球は、ClpP陰性であった。
本明細書において開示され、主張される方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく構成および実施することが可能である。本発明の組成物および方法は好ましい態様に関して記述されているが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記述された方法および該方法の段階または段階の順序にさまざまな変形を適用しうることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、本明細書において記述された薬剤の代わりに、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤を使用することができるが、同じまたは同様の結果が達成されうることは明らかであろう。当業者に明らかな、そのような類似の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念内にあると見なされる。
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書において記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲内で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
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Claims (59)

  1. ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤による処置のための、がんを有する患者を選択する方法であって、(a) 該がんにおけるClpPレベルを決定する段階、および(b) 該がんにおけるClpPレベルが参照レベルよりも高い場合に、該処置のための患者を選択する段階を含む、方法。
  2. 前記参照レベルが、健常な集団における平均ClpPレベルより1標準偏差低いレベルである、請求項1記載の方法。
  3. 有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与する段階をさらに含む、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
  4. 前記ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤が、ClpP活性化剤である、請求項3記載の方法。
  5. 前記ClpP活性化剤がイミプリドンである、請求項4記載の方法。
  6. 前記イミプリドンが、ONC201、ONC206、ONC212、またはONC213である、請求項5記載の方法。
  7. がんを有する患者を処置する方法であって、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を該患者に投与する段階を含み、該患者のがんが、参照レベルよりも高いClpPレベルを有する、方法。
  8. がんを有する患者を処置する方法であって、
    (a) (i) 該がんから生物学的サンプルを取得するかまたは取得が完了していること; および
    (ii) ClpPレベルを決定するために、該生物学的サンプルについてアッセイを実施するかまたは実施が完了していること
    によって、該患者のがんが参照レベルよりも高いClpPレベルを有するかどうかを検出する段階;
    (b) 該がんが参照レベルよりも高いClpPレベルを有する場合に、該処置のための患者を選択するかまたは選択が完了している段階; ならびに
    (c) 該選択された患者に、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与するかまたは投与が完了している段階
    を含む、方法。
  9. 前記参照レベルが、健常な集団における平均ClpPレベルより1標準偏差低いレベルである、請求項7または8記載の方法。
  10. 前記がんにおけるClpPレベルが、ウエスタンブロット、ELISA、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、または質量分析によって決定される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
  11. 前記患者に少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む、請求項3~10のいずれか一項記載の方法。
  12. 前記第2の抗がん療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項11記載の方法。
  13. 前記化学療法がベネトクラクスである、請求項12記載の方法。
  14. 前記免疫療法が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項12記載の方法。
  15. 前記ClpPレベルを報告する段階をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
  16. 前記報告する段階が、書面によるまたは電子的な報告書を作成することを含む、請求項15記載の方法。
  17. 対象、医師、病院、または保険会社に前記報告書を提供する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
  18. ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤による処置のための、がんを有する患者を選択する方法であって、(a) 該がんにおけるClpPタンパク質変異状態を決定する段階、および(b) 該がんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有する場合に、該処置のための患者を選択する段階を含む、方法。
  19. 有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与する段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
  20. 前記ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤が、ClpP活性化剤である、請求項19記載の方法。
  21. 前記ClpP活性化剤がイミプリドンである、請求項20記載の方法。
  22. 前記イミプリドンが、ONC201、ONC206、ONC212、またはONC213である、請求項21記載の方法。
  23. がんを有する患者を処置する方法であって、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を該患者に投与する段階を含み、該患者のがんが、ClpPタンパク質におけるD190A変異を有する、方法。
  24. がんを有する患者を処置する方法であって、
    (a) (i) 該がんから生物学的サンプルを取得するかまたは取得が完了していること; および
    (ii) 該患者のがんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有するかどうかを検出するために、該生物学的サンプルについてアッセイを実施するかまたは実施が完了していること
    によって、該患者のがんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有するかどうかを検出する段階;
    (b) 該がんがClpPタンパク質におけるD190A変異を有する場合に、該処置のための患者を選択するかまたは選択が完了している段階; ならびに
    (c) 該選択された患者に、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を投与するかまたは投与が完了している段階
    を含む、方法。
  25. 前記ClpPタンパク質におけるD190A変異が、ウエスタンブロット、ELISA、質量分析、または ClpPをコードする核酸の配列決定によって検出される、請求項18~24のいずれか一項記載の方法。
  26. 前記ウエスタンブロットまたはELISAが、D190A変異を有するClpPを特異的に検出する抗体を用いて実施される、請求項25記載の方法。
  27. 前記核酸が、ClpPをコードするmRNAである、請求項25記載の方法。
  28. 前記核酸が、ClpPをコードするゲノムDNAである、請求項25記載の方法。
  29. 前記ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤が、 ClpP活性化剤である、請求項19~28のいずれか一項記載の方法。
  30. 前記ClpP活性化剤がイミプリドンである、請求項29記載の方法。
  31. 前記イミプリドンが、ONC201、ONC206、ONC212、またはONC213である、請求項30記載の方法。
  32. 前記患者に少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む、請求項19~31のいずれか一項記載の方法。
  33. 前記第2の抗がん療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項32記載の方法。
  34. 前記化学療法がベネトクラクスである、請求項33記載の方法。
  35. 前記免疫療法が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項33記載の方法。
  36. 前記ClpP D190A変異状態を報告する段階をさらに含む、請求項18~35のいずれか一項記載の方法。
  37. 前記報告する段階が、書面によるまたは電子的な報告書を作成することを含む、請求項36記載の方法。
  38. 対象、医師、病院、または保険会社に前記報告書を提供する段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
  39. 前記患者が寛解状態にあり、前記方法が再発を予防する、請求項1~38のいずれか一項記載の方法。
  40. 化学療法抵抗性細胞を排除する、請求項1~39のいずれか一項記載の方法。
  41. 前記がんがAMLである、請求項1~40のいずれか一項記載の方法。
  42. 前記患者が、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている、請求項1~41のいずれか一項記載の方法。
  43. 前記患者がヒトである、請求項1~42のいずれか一項記載の方法。
  44. 細菌細胞を死滅させる方法であって、該細菌細胞を致死量のイミプリドンと接触させる段階を含む、方法。
  45. 前記細菌がグラム陽性細菌である、請求項44記載の方法。
  46. 前記細菌が、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、連鎖球菌(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、およびペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属からなる群より選択される、請求項44記載の方法。
  47. 前記細菌がブドウ球菌属である、請求項46記載の方法。
  48. それを必要とする対象における細菌感染症を処置する方法であって、治療的有効量のイミプリドンを該対象に投与する段階を含む、方法。
  49. 前記細菌が抗生物質耐性である、請求項48記載の方法。
  50. 前記細菌がグラム陽性細菌である、請求項48または49記載の方法。
  51. 前記細菌が、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、エンテロコッカス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、およびペプトストレプトコッカス属からなる群より選択される、請求項48または49記載の方法。
  52. 前記細菌がブドウ球菌属である、請求項51記載の方法。
  53. ペロー(Perrault)症候群を有する患者を処置する方法であって、治療的有効量の、ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤を、選択された患者に投与するかまたは投与が完了している段階を含む、方法。
  54. 前記ミトコンドリアタンパク質分解を活性化する薬剤が、ClpP活性化剤である、請求項53記載の方法。
  55. 前記ClpP活性化剤がイミプリドンである、請求項54記載の方法。
  56. 前記イミプリドンが、ONC201、ONC206、ONC212、ONC213である、請求項55記載の方法。
  57. 前記患者が、CLPPまたはHSD17B4において変異を有する、請求項52~56のいずれか一項記載の方法。
  58. 前記患者の聴力を改善するか、該患者のさらなる難聴を予防するか、または該患者における難聴の発生を予防する、請求項52~57のいずれか一項記載の方法。
  59. 前記患者が女性であり、前記方法が、該患者における卵巣機能を改善するか、該患者におけるさらなる卵巣形成不全を予防するか、または該患者における卵巣形成不全の発生を予防する、請求項52~58のいずれか一項記載の方法。
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