I.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物又は生物学的系に限定されず、それらが言うまでもなく多種多様であることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組み合わせを任意に含むといった具合である。
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
本明細書で使用されるとき、「処置」という用語は、臨床的病変の経過中に処置される個体又は細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復又は緩和、及び予後の寛解又は改善が挙げられる。例えば、個体は、がん性細胞の増殖の低減(若しくは破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の低減、及び/又は個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、がんに関連する1つ以上の症状が軽減又は排除された場合、「処置」に成功する。
本明細書で使用されるとき、「疾患の進行を遅延させる」とは、疾患(がん等)の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、かつ/又は延ばすことを意味する。この遅延は、病歴及び/又は処置される個体に応じて様々な期間のものであり得る。当業者に明らかであるように、十分又は著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症等の末期がんを遅延させることができる
「持続的応答」とは、処置の休止後に腫瘍成長を低減させることに対する持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるか、又はより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続的応答は、処置期間と少なくとも同じ期間、処置期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍又は3.0倍の期間を有する。
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒な更なる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は、滅菌である。「薬学的に許容可能な」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
本明細書において使用される「と併せて」は、別の処置様式に追加された、1つの処置様式の投与を表す。したがって、「と併せて」とは、個体への1つの処置法の施行前、施行中、又は施行後の別の処置法の施行を指す。
「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん性細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるとき、相互排他的ではない。
本明細書に使用されるとき、「がん」及び「がん性」は、典型的に制御されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか、又は表す。この定義には、良性がん及び悪性がん、並びに休眠腫瘍又は微小転移が含まれる。がんの例としては、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるがこれらに限定されない。かかるがんのより具体的な例としては、限定されないが、扁平上皮細胞がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮癌を含む)、黒色腫、癌腎細胞、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)(消化管がんを含む)、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん(kidney cancer)又は腎臓がん(renal cancer)、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌、及び様々な種類の頭頸部がん、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連するもの等)、及びメイグス症候群と関連する異常な血管増殖が挙げられる。がんの例としては、上記の種類のがんのいずれかの原発性腫瘍、又は上記の種類のがんのいずれかに由来する第2の部位における転移性腫瘍を挙げることができる。
本明細書に使用されるとき、「転移」は、その原発部位から体内の他の場所へのがんの拡がりを意味する。がん細胞は、原発腫瘍から離脱し、リンパ管及び血管に浸透し、血流を通じて循環し、体内の他の場所の正常組織内の遠位焦点で成長する(転移する)場合がある。転移は、局所的又は遠位であり得る。転移は、腫瘍細胞が原発腫瘍から離脱し、血流を通じて移動し、遠位部位で停止することを条件とする逐次プロセスである。新たな部位で、細胞は、血液供給を確立し、成長して、生命を脅かす塊を形成し得る。腫瘍細胞内の刺激性と阻害性との両方の分子経路がこの挙動を制御し、遠隔部位における腫瘍細胞と宿主細胞との間の相互作用もまた重要である。
「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞に有害である(例えば、細胞死を引き起こすか、増殖を阻害するか、又はさもなければ細胞機能を妨害する)任意の薬剤を指す。細胞毒性剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤;成長阻害剤;核分解酵素等の酵素及びその断片;及び細菌、真菌、植物又は動物由来の低分子毒素又は酵素的に活性な毒素等の毒素(その断片及び/又は変異体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な細胞毒性剤は、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類縁体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH-A阻害剤、脂肪酸生合成阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、並びにがん代謝阻害剤から選択され得る。一実施形態では、細胞毒性剤は、タキサンである。一実施形態では、タキサンは、パクリタキセル又はドセタキセルである。一実施形態では、細胞毒性剤は、白金剤である。一実施形態では、細胞毒性剤は、EGFRの拮抗薬である。一実施形態では、EGFRのアンタゴニストは、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ)である。一実施形態では、細胞毒性剤は、RAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、BRAF及び/又はCRAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、細胞毒性剤は、PI3K阻害剤である。
「化学療法剤」は、がんの処置に有用な化合物を含む。化学療法剤及びその誘導体の例としては、以下のものが挙げられる:エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、エピガロカテキンガレート、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラジコール、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナサン酸塩(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン((登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、AstraZeneca)、AG1478、チオテパ、CYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メチュレドーパ、ウレドパ等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンとブラタシノン);カンプトテシン(トポテカンとイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);アドレノコルチコステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリド及びデュタステリドを含む5α-レダクターゼ);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレタロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレスタミン、メクロレスタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード等の窒素マスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンのようなニトロソウレア;エニジン系抗生物質のような抗生物質(例えば、カリチェマイシン、特にカリチェマイシンγ1I及びカリチェマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.1994 33:183-186);ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネート等のビスホスホネート;エスペラマイシンと同様に、ネオカルジノスタチン発色団及び関連する発色団エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、デオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピュロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトゾシン、ツベルクリジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の抗メタボローム剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリンアナログ。アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン等のピリミジン類縁体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオステイン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロステイン等の抗アドレナール;フロリン酸等の葉酸補充剤;エースグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジキオン;エルフォミチン;酢酸エリプチン;アンエポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンティナン;ロニダイニン;メイタンシン、アンサミトシン等のメイタンシノイド類 ミトグアゾン;マイトキサントロン;モピダムノール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジキオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;マイトブロニトール;マイトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)、ABRAXANE(登録商標)(クレモフォフリー)、パクリタキセルのアルブミン設計ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、イリノイ州シャウンバーグ)、及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル、ドクセタキセル(doxetaxel);Sanofi-Aventis)、クロランブシル、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金アナログ;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イボスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(vinorelbine);ノバンドロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、及び誘導体。
また、化学療法剤としては、以下が挙げられる:(i)抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)等、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)を含む;クエン酸タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフィン);(ii)副腎においてエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メグストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボルゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、ARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)等の抗アンドロゲン剤、(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロライド、及びゴセレレリン等の抗アンドロゲン剤;ブセレリン、トリプレリン、メドロキシプロゲステロンアセテート、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全てのトランスレチオン酸、フェンレチニドと並んでトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類縁体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Ralf及びH-Ras;;(vii)VEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤等のリボザイム;(viii)遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標)等のワクチン;PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)等のトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;並びに(ix)上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸及び誘導体。
化学療法剤としては、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体-薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も挙げられる。本発明の化合物と組み合わせた薬剤としての治療可能性を有する更なるヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エピラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブ・オゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブ・テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブ・セルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、及びインターロイキン12 p40タンパク質を認識するように遺伝的に改変された、組換え型で専らヒト配列の完全長IgG1λ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が挙げられる。
化学療法剤はまた、「EGFR阻害剤」を含み、これは、EGFRに結合するか、又はそうでなければEGFRと直接相互作用し、EGFRのシグナル伝達活性を阻害又は低減する化合物を指し、「EGFR拮抗剤」と代替的に呼ばれる。このような薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体及び低分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号を参照されたい、Mendelsohn et al.)及びその変異体、例えばキメラ化225(C225又はセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))及びリシェイプヒト225(H225)(国際公開第96/40210号を参照されたい、Imclone Systems Inc.);完全ヒト、EGFR標的化抗体IMC-11F8(Imclone);II型突然変異型EGFRを結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されているようなEGFRを結合するヒト化抗体及びキメラ抗体;並びにABX-EGF又はパニツムマブ(国際公開第98/50433号を参照されたい、Abgenix/Amgen)のようなEGFRと結合するヒト抗体;EMD 55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer 32A:636-640(1996));EGFR結合のためにEGF及びTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対するヒト化EGFR抗体であるEMD7200(マツズマブ);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3及びE7.6.3として知られ、米国特許第6,235,883号に記載される完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc.);並びにmAb 806又はヒト化mAb 806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされ、それにより免疫コンジュゲートを生成することができる(例えば、EP659439A2,Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストは、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、並びに以下のPCT公報:国際公開第98/14451号、同第98/50038号、同第99/09016号、及び同第99/24037号に記載の化合物等の小分子を含む。特定の低分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharmaceuticals)、PD183805(CI1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.)、ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca)、ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca)、BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim)、PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール)、(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン)、CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド)、EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth)、AG1478(Pfizer)、AG1571(SU5271、Pfizer)、及び二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016又はN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が挙げられる。
化学療法剤としては、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(Pfizer及びOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、及びCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);又は以下の特許公報:米国特許第5,804,396号、国際公開第1999/09016号(American Cyanamid)、同第1998/43960号(American Cyanamid)、同第1997/38983号(Warner Lambert)、同第1999/06378号(Warner Lambert)、同第1999/06396号(Warner Lambert)、同第1996/30347号(Pfizer,Inc)、同第1996/33978号(Zeneca)、同第1996/3397号(Zeneca)及び同第1996/33980号(Zeneca)のいずれかに記載されるものが挙げられる。
化学療法剤としては、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩も挙げられる。
また、化学療法剤としては、以下が挙げられる:ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ベタメタゾンナトリウムリン酸塩、デキサメタゾン、デキサメタゾンナトリウムリン酸塩、フルオコルトン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、アクロメタゾンジプロピオン酸塩、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオン酸塩、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾール-17-プロピオン酸塩、フルオコルトンカプロエート、フルオコルトンピバル酸塩及びフルプレドニデンアセテート、フェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)及びそのD異性体形態(feG)等の免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAID)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);アザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミデミノサイクリン、スルファサラジン等の抗リウマチ薬;エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アダリムマブ(ヒュミラ)、セルトリズマブペゴール(チムジア)、ゴリムマブ(シンポニ)、アナキンラ(キネレ)等のインターロイキン1(IL-1)遮断薬、アバタセプト(オレンシア)等のT細胞共刺激ブロッカー、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標))等のインターロイキン6(IL-6)ブロッカー、レブリキズマブ等のインターロイキン13(IL-13)遮断薬;ロンタリズマブ等のインターフェロンアルファ(IFN)ブロッカー;rhuMAb Beta7等のBeta7インテグリンブロッカー;抗M1 prime等のIgE経路ブロッカー、分泌されたホモ三量体LTa3及び抗リンホトキシンアルファ(LTa)等の膜結合ヘテロ三量体LTa1 /β2ブロッカー;放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);チオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH3、又はファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832)等のその他の治験薬;ケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びそれらの誘導体等のポリフェノール;クロロキン等のオートファジー阻害剤;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸及びその誘導体;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))等のビスホスホネート)、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));並びに上皮成長因子受容体(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン等のワクチン;ペリホシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);CCI-779;ティピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))等のBcl-2阻害剤:ピキサントロン;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))等のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;及び上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体;並びにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法の略であるCHOP、及び5-FUとロイコボリンを組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))の処置レジメンの略であるFOLFOXのような上記の2つ以上の組み合わせ。
化学療法剤としてはまた、鎮痛効果、解熱効果、及び抗炎症効果を有する非ステロイド抗炎症薬が挙げられ得る。NSAIDには、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤を含む。NSAIDの具体的な例としては、アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、及びナプロキセン、酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、エノール酸誘導体、例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、及びイソキシカム、フェナム酸誘導体、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、並びにCOX-2阻害剤、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが挙げられる。NSAIDの適応は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、炎症性関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛及び片頭痛、術後疼痛、炎症及び組織損傷に起因する軽度~中程度の疼痛、発熱、腸閉塞症、並びに腎疝痛等の状態の症状軽減であり得る。
本明細書で使用されるとき、「成長阻害剤」とは、インビトロ又はインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を指す。一実施形態では、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防又は低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく減少させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断薬としては、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが挙げられる。G1を停止させるそれらの薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル及びara-C等のDNAアルキル化剤もS期停止へと導く(spill over)。更なる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled ’’Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs’’ by Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995),e.g.,p.13に見ることができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗がん薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類縁体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管のアセンブリを促進し、脱重合を妨害することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
「放射線治療」とは、正常に機能するか、又は細胞を完全に破壊する能力を制限するように、細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線又はベータ線の使用を意味する。用量及び処置期間を決定するために、当技術分野で既知の方法が多く存在することが理解されるだろう。典型的な処置は、1回投与として与えられ、典型的な線量は、1日10~200単位(グレイ)の範囲である。
処置の目的のための「対象」又は「個体」は、哺乳類に分類される任意の動物を指し、ヒト、家畜及び農場動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えば犬、馬、猫、牛等を含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定及び分離され、かつ/又は回収された抗体である。その自然環境の夾雑物成分は、抗体の試験的、診断的、又は治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニング・カップ・シークエネーターを使用して、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)例えば、クマシーブルー又は銀染色を使用して、還元又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、並びに軽鎖のCHL(又はCL)ドメインを含有する。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの一方に割り当てられ得る。
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成が周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞傷害性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処置は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されているという点でFab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)において、より完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載される。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組み換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)におけるもの)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全てを有する動物において、ヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号、国際公開第1996/34096号、国際公開第1996/33735号、国際公開第1991/10741号、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照されたい)によって作製され得る。
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体にとしては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的とする抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾を加えて、抗体の性能を更に洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)、並びに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、かつ/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で既知の様々な技法を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991).Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に使用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた、参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
「種依存性抗体」は、第2の哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳類種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に」結合する(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体では、H3及びL3が、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる、天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含されている。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(Chothia及びLesk J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabatナンバリング)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothiaナンバリング)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)、及び89~97又は89~96(L3)、並びにVHにおいて、26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)、及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)、及び89~97又は89~96(L3)、並びにVHにおいて、26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)、及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「Kabatにあるような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatにあるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」又は「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
本明細書で使用される場合、「結合する」、「に特異的に結合する」、又は「に特異的な」という用語は、生物学的分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、又はそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/又はより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含むことができるが、必須ではない。
薬品を用いた処置に対する患者の「有効な応答」又は患者の「応答性」及び類似の単語は、がん等の疾患若しくは障害の危険性があるか、又はそれを患う患者に付与される臨床的又は治療的有益性を指す。一実施形態では、そのような利益としては、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効若しくは部分奏効を含む)をもたらすこと、又はがんの徴候若しくは症状を改善することのいずれか1つ以上が挙げられる。
処置に「有効な応答を示さない」患者とは、生存期間(全体的な生存及び無増悪生存期間を含む)が延長すること、客観的応答(完全奏効若しくは部分奏効を含む)がもたらされること、又はがんの兆候又は症状が改善されることのうちのいずれも有しない患者を指す。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合:CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御等が挙げられるそのようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とし、そして、例えば、本明細書の定義に開示されているように、様々なアッセイを使用して評価することができる。
本明細書で使用される「サンプル」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/又は生理学的特性に基づいて、特徴づけ及び/又は特定される細胞及び/又は他の分子の実体を含有する、目的とする対象及び/若しくは個体から得られるか、又はそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患サンプル」という語句及びその変化形は、特性評価される細胞及び/又は分子実体を含有することが予期されるか、又は含有することが既知である、目的の対象から得られた任意のサンプルを指す。サンプルとしては、初代又は培養細胞又は細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、サンプルは、腫瘍細胞及び任意に腫瘍浸潤免疫細胞を含む個体のがんから得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)である。例えば、サンプルは、パラフィンブロックに包埋された腫瘍標本、又は新たに切断された連続非染色切片を含む腫瘍標本であり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは生検からのものであり、50個以上の生存腫瘍細胞(例えば、コアニードル生検によるものであり、任意にパラフィンブロックに埋め込まれる;切除生検、切開生検、パンチ生検又は鉗子生検;又は腫瘍組織切除によるものである)を含む。
「組織サンプル」又は「細胞サンプル」は、対象又は個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織又は細胞サンプルの供給源は、新鮮な、凍結した、及び/又は保存された器官、組織サンプル、生検、及び/又は吸引液から等の固形組織;血漿等の血液又は任意の血液構成物;脳脊髄液、羊水、腹水、又は間質液等の体液;対象の妊娠又は発育における任意の時期の細胞であってもよい。組織サンプルは、初代又は培養細胞又は細胞株であってもよい。任意に、組織又は細胞サンプルは、疾患組織/器官から得られる。組織サンプルは、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、又は抗生物質等の天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
「ヒトエフェクター細胞を有する」がん又は生体サンプルは、診断試験において、サンプル中に存在するヒトエフェクター細胞(例えば、浸潤性ヒトエフェクター細胞)を有するものである。
「FcR発現細胞を有する」がん又は生体サンプルは、診断試験において、サンプル中に存在するFcR発現(例えば、浸潤性FcR発現細胞)を有するものである。いくつかの実施形態では、FcRはFcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、活性化FcγRである。
II.処置方法
個体においてがんを処置するため又はがんの進行を遅延させるための方法であって、該個体に本開示の抗PD-L1抗体を2回以上の4週間又は28日間のサイクルで投与することを含む方法が本明細書中に提供される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は1680mg/サイクル(例えば、抗PD-L1抗体は、4週間毎又は28日間毎に1680mgの用量で投与される)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
個体においてがんを処置するため又はがんの進行を遅延させるための方法であって、該個体に本開示の抗PD-L1抗体を2回以上の2週間又は14日間のサイクルで投与することを含む方法が本明細書中に提供される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は840mg/サイクル(例えば、抗PD-L1抗体は、2週間毎又は14日間毎に840mgの用量で投与される)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、2回以上のサイクルのそれぞれの約1日目に投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、2回以上のサイクルのそれぞれの1日目に投与される。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、1680mg又は840mgの用量で、2回以上のサイクルの各々において投与される。
いくつかの実施形態では、本開示の処置は、導入期及び維持期(又は「維持療法」)を含む。当技術分野で知られているように、維持期又は維持療法は、例えばがんの再発を予防するために、導入期又は初期療法の後に提供される1つ以上の処置を指し得る。いくつかの実施形態では、維持期又は維持療法は、導入期又は初期療法よりも長期間にわたって与えられ得る。いくつかの実施形態では、維持期又は維持療法は、導入期又は初期療法よりも少ない副作用又は毒性(例えば、短期及び/又は長期使用に関連する)を特徴とし得、より長い使用期間を可能にする。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、導入期若しくは初期療法、維持期若しくは維持療法、又はその両方の一部として個体に投与され得る。いくつかの実施形態では、維持期又は維持療法は、疾患の進行又は許容できない毒性が生じるまで個体に投与することである。
いくつかの実施形態では、がんを有するヒト患者を処置する方法は、ヒト患者に導入期を適用し、続いてヒト患者に維持期を適用することを含む。いくつかの実施形態では、がんを有するヒト患者を処置する方法は、ヒト患者に導入期を適用し、続いて1つ以上の追加の治療剤、例えばベバシズマブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンの1つ以上を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、処置の維持期に個体に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、本開示の1つ以上の化学療法剤(例えば、パクリタキセル及びカルボプラチン、又はカルボプラチン及びエトポシド)を処置の導入期に4~6サイクル(例えば、4、5、又は6サイクル)にわたって個体に投与し、次いで、例えば本明細書中に記載されるように、処置の維持期に抗PD-L1抗体を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、処置の維持期の前に、本開示の抗PD-L1抗体を処置の導入期に個体に投与する。
いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期中に1回以上の2週間又は14日間のサイクルで個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期中に1回以上の2週間又は14日間のサイクルで840mgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1及び15日目に840mgの用量で個体に投与する。
いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の間に1回以上の3週間又は21日間のサイクルで個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の間に1回以上の3週間又は21日間のサイクルの約1日目に個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の間に1回以上の3週間又は21日間のサイクルの1日目に個体に投与する。
いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期中に1回以上の3週間又は21日間のサイクルで1200mgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期中に1回以上の3週間又は21日間のサイクルの1日目に1200mgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の1回以上の3週間又は21日間のサイクルのそれぞれの間に1200mgの用量で個体に投与する。
本明細書に記載される実施形態のいずれかによるいくつかの実施形態では、方法は、個体に、本開示の抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を、1つ以上の化学療法又は他の抗新生物薬(複数可)(例えば、カルボプラチン及びエトポシド、又はカルボプラチン、パクリタキセル及びベバシズマブ)での処置の前に、1200mgの用量で、1回以上の3週間又は21日間のサイクルで投与することを更に含む。
いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の間に1回以上の4週間又は28日間のサイクルで個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の間に1回以上の4週間又は28日間のサイクルの約1日目に個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の間に1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1日目に個体に投与する。
いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期中に1回以上の4週間又は28日間のサイクルで1680mgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期中に1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1日目に1680mgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を、処置の導入期の1回以上の4週間又は28日間のサイクルのそれぞれの間に1680mgの用量で個体に投与する。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、個体に、1680mgの用量で、1回以上の4週間又は28日間のサイクルで、30(±15分)にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、個体に、1680mgの用量で、1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1日目に、30(±15分)にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、個体に、1680mgの用量で、1回以上の4週間又は28日間のサイクルで、60(±15分)にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、個体に、1680mgの用量で、1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1日目に、60(±15分)にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、処置の導入期の期間中における1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1日目に1680mgの用量で60(±15分)にわたって個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、処置の維持期の期間中における1回以上の4週間又は28日間のサイクルの1日目に1680mgの用量で60(±15分)にわたって個体に静脈内投与される。
いくつかの実施形態では、これらの方法は、追加の治療を更に含み得る。いくつかの実施形態では、上記方法は、個体に追加の治療剤を投与することを更に含み得る。追加の治療は、放射線治療、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイルス治療、RNA治療、免疫療法、骨髄移植、ナノ治療、モノクローナル抗体治療又は前記の組み合わせであり得る。追加の治療は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、化学療法剤を含む。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、処置対象のがんの標準治療である。いくつかの実施形態では、追加の治療は、小分子酵素阻害剤又は抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態では、追加の治療は、副作用制限剤(例えば、処置の副作用の発生及び/又は重症度を軽減するように意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤等)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の治療は放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の治療は手術である。いくつかの実施形態では、追加の治療は放射線療法と手術の組合せである。いくつかの実施形態では、追加の治療はγ線照射である。
いくつかの実施形態では、追加の治療はタキサンを含む。いくつかの実施形態では、追加の治療は、処置の導入期中に投与される。タキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)は、最初はイチイに由来する広く処方された抗がん剤である。タキサンは、チューブリン二量体からの微小管の構築を促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定化し、有糸分裂及び細胞死の阻害をもたらす。ドセタキセルは、パクリタキセルの半合成類縁体である。
パクリタキセルは、本明細書に記載の方法で使用される例示的なタキサンである。原薬TAXOL(登録商標)は、化学名5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン4,10ジアセタート2-ベンゾエート13と、分子式C47H51NO14及び分子量853.9を有する(2R,3S)-Nベンゾイル-3-フェニルイソセリンとのエステルを有する。本明細書におけるパクリタキセル等のタキサンへの言及には、ABRAXANE(登録商標)として市販されているパクリタキセルのアルブミン結合型であるnab-パクリタキセル等のそのコンジュゲートも含まれる。
パクリタキセルは、TAXOL(登録商標)、ABRAXANE(登録商標)、XYTOTAX(登録商標)、OPAXIO(登録商標)、GENEXOL-PM(登録商標)、TAXOPREXIN(登録商標)等として市販されている。ドセタキセルは、TAXOTERE(登録商標)、JEVTANA(登録商標)等として市販されている。
いくつかの実施形態では、追加の治療はトポイソメラーゼII阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療は、処置の導入期中に投与される。トポイソメラーゼIIの阻害剤(例えば、エトポシド(VP-16)、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトキサントロン、アムサクリン、エリプチン、オーリントリカルボン酸、及びHU-331)もまた、酵素媒介DNA切断の形成後に、トポイソメラーゼII:DNA共有結合複合体(すなわち、「開裂複合体」)を安定化させる、広く使用されている抗腫瘍剤である。このような開裂複合体の蓄積は、細胞死の経路を誘導する。
エトポシドは、本明細書に記載の方法で使用される例示的なトポイソメラーゼII阻害剤である。エトポシドは、通常、プロドラッグであるエトポシドリン酸塩として投与されるが、その化学名は以下の通りである:4’-デメチレピポフィロトキシン9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-グルコピラノシド]、4’(リン酸二水素)。
エトポシドのリン酸エステルであるエトポシドリン酸塩は、ポドフィロトキシンの半合成誘導体であり、脱リン酸化によりエトポシドに変換される。エトポシドは、DNAトポイソメラーゼIIとの相互作用やフリーラジカルの形成によりDNA鎖切断を誘導し、細胞周期停止(主に細胞周期のG2段階)や細胞死を引き起こす。エトポシドは以下として市販されている:ETOPOPHOS(登録商標)、TOPOSAR(商標)、VP-16、VEPESID(登録商標)、ACTITOP、ASIDE、BIOPOSIDE、CTOP、CYTOP、EPOSED、ESIDE、ETHOPUL、ETOLON、ETONIS、ETOPLAST、ETOSID、ETOVEL、FYTOP、FYTOSID、LASTET、NZYTOP、ONCOSIDE、PLACID、POSID、RETOPSON、TEVASIDE、TOPOK、TOPOSIDE等。
いくつかの実施形態では、追加の治療は代謝拮抗物質を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療は、処置の導入期中に投与される。代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、及びメトトレキサート等)は、DNA合成に必要な1つ以上の酵素を妨害する、広範に使用されている抗腫瘍薬である。代謝拮抗剤は、典型的には、例えば核酸への取込みによるアポトーシスの誘発、又は例えばヌクレオチド合成に関与する酵素の結合部位に対する競合を含む、種々の機構によって作用し、それによって、DNA及び/又はRNA複製並びに細胞増殖に必要な供給を枯渇させる。
ペメトレキセドは、本明細書に記載の方法で使用される例示的な代謝拮抗剤である。ペメトレキセドは葉酸類縁体ある。原薬であるペメトレキセド二ナトリウム七水和物は、化学名L-グルタミン酸,N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5イル)エチル]ベンゾイル]-、二ナトリウム塩、C20H19N5Na2O6・7H2Oの分子式及び597.49の分子量の七水和物を有する。
ペメトレキセド二ナトリウム七水和物は次の構造を有する:
ペメトレキセドはチミン及びプリン合成に使用される複数の葉酸依存性酵素、すなわちチミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase:TS)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase:DHFR)、及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(glycinamide ribonucleotide formyltransferase:GARFT)を阻害する(Shih et al.(1997)Cancer Res.57:1116-23を参照されたい)。ペメトレキセドは、前駆体のプリン及びピリミジンヌクレオチドの形成を阻害することにより、正常細胞及びがん細胞の両方の増殖及び生存に必要であるDNA及びRNAの形成を防ぐ。ペメトレキセドは、ALIMTA(登録商標)、GIOPEM、PEXATE、PEMANAT、PEMEX、PEMMET、PEXATE、RELITREXED、及びTEMERAN、CIAMBRA等として市販されている。
いくつかの実施形態では、追加の治療は、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療は、処置の導入期中及び/又は処置の維持期中に投与される。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体はモノクローナル抗体であり得る。VEGFアンタゴニストの他の例としては、限定されないが、VEGFに特異的に結合する可溶性VEGF受容体又は可溶性VEGF受容体断片、VEGF受容体分子又はそのVEGF結合断片(例えば、VEGF受容体の可溶性形態)、及びキメラVEGF受容体タンパク質が挙げられる。
VEGF抗体の産生に使用されるVEGF抗原は、例えば、VEGF165分子並びに所望のエピトープを含有するVEGF又はその断片の他のアイソフォームであり得る。一実施形態では、所望のエピトープは、ハイブリドーマATCC HB 10709(本明細書で定義される「エピトープA.4.6.1」として知られている)によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A.4.6.1と同じエピトープに結合するベバシズマブによって認識されるエピトープである。本発明の抗VEGF抗体を生成するのに有用なVEGFの他の形態は、当業者には明らかであろう。
本発明の方法において有用な抗VEGF抗体には、VEGFに対して十分な親和性及び特異性で結合し、VEGFの生物学的活性を低減又は阻害することができる任意の抗体又はその抗原結合断片が含まれる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF-B又はVEGF-C等の他のVEGFホモログにも、PIGF、PDGF、又はbFGF等の他の成長因子にも結合しない。
特定の実施形態では、抗VEGF抗体として、限定されないが、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体;Presta et al.(1997)Cancer Res.57:4593-4599に従って作製した組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体が挙げられる。一実施形態では、抗VEGF抗体は、「rhuMAb VEGF」又は「アバスチン(登録商標)」としても知られる「ベバシズマブ(BV)」である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFの、その受容体への結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大部分を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%は、ヒトIgG1に由来し、配列の約7%は、マウス抗体A4.6.1に由来する。
いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブである。ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))は、FDAによって承認された最初の抗血管新生療法であり、転移性結腸直腸がん(静脈内5-FUベースの化学療法と組み合わせた第一選択及び第二選択処置)、進行性非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)(カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせた切除不能な局所進行性の再発性又は転移性NSCLCの第一選択処置)、及び転移性HER2陰性乳がん(パクリタキセルと組み合わせた以前に処置されていなかった転移性HER2陰性乳がん)の処置に承認されている。
ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日発行の第6,884,879号に更に記載されている。追加の抗体は、PCT公報の国際公開第2005/012359号、PCT公報の国際公開第2005/044853号、及び米国特許出願第60/991,302号に記載されるG6又はB20シリーズ抗体(例えば、G6-31、B20-4.1)を含み、これらの特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。追加の抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号、同第6,054,297号、国際公開第98/45332号、同第96/30046号、同第94/10202号、欧州特許第0666868号B1、米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号、並びにPopkov et al.,Journal of Immunological Methods 288:149-164(2004)を参照されたい。他の抗体としては、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I191、K101、E103、及びC104で構成されるか、又はあるいは、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83、及びQ89を含む、ヒトVEGF上の官能性エピトープに結合するものが挙げられる。
本発明の一実施形態では、抗VEGF抗体は、以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR.(配列番号11);及び/又は以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号12)を有する。
いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの超可変領域(HVR)配列を含む。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、(a)GYTFTNYGMN(配列番号13)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号14)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)YPHYYGSSHWYFDV(配列番号19)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)SASQDISNYLN(配列番号20)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)FTSSLHS(配列番号21)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;(f)QQYSTVPWT(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1、2、3、4、5、又は6個の超可変領域(HVR)配列を含む。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、米国特許第6,884,879号に記載されている抗体の1、2、3、4、5、又は6つの超可変領域(HVR)配列を含む。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域の1、2、又は3つの超可変領域(HVR)配列:DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR.(配列番号11)及び/又は以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の1、2若しくは3つの超可変領域(HVR)配列:EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号12)を含む。
「G6シリーズ抗体」は、その開示全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、PCT公報の国際公開第2005/012359号の図7、図24~26、及び図34~35のいずれか1つによるG6抗体又はG6由来抗体の配列に由来する抗VEGF抗体である。その全開示が参照により本明細書に明確に組み込まれる、PCT公開番号の国際公開第2005/044853号も参照されたい。一実施形態では、G6シリーズ抗体は、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合する。
「B20シリーズ抗体」は、その開示全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる、PCT公開番号の国際公開第2005/012359号の図27~図29のいずれか1つによるB20抗体又はB20由来抗体の配列に由来する抗VEGF抗体である。国際公開第2005/044853号及び米国特許出願第60/991,302号も参照されたい(これらの特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。一実施形態では、B20シリーズ抗体は、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103及びC104を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合する。
「機能性エピトープ」は(VEGFエピトープに関して使用される場合)、抗体の結合にエネルギー的に寄与する抗原のアミノ酸残基を指す。抗原のエネルギー的に寄与する残基(例えば、アラニン又はホモログ変異による野生型VEGFの変異)のいずれか1つの変異は、抗体の相対親和性比(IC50突然変異体VEGF/IC50野生型VEGF)が5より大きくなるように抗体の結合を破壊する(国際公開第2005/012359号の実施例2を参照されたい)。一実施形態では、相対親和性比は、ELISAを示す溶液結合ファージによって決定される。簡潔には、96ウェルMaxisorp免疫プレート(NUNC)を、PBS中2μg/mlの濃度でFab形態の試験する抗体で4℃で一晩コーティングし、PBS、0.5%BSA、及び0.05%Tween20(PBT)で室温にて2時間ブロックする。PBT中のhVEGFアラニン点突然変異体(残基8~109形態)又は野生型hVEGF(8~109)を示すファージの連続希釈液を、最初にFab被覆プレート上で室温にて15分間インキュベートし、プレートをPBS、0.05% Tween20(PBST)で洗浄する。結合したファージを、PBTで1:5000希釈した抗M 13モノクローナル抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Amersham Pharmacia)コンジュゲートで検出し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、Kirkegaard&Perry Labs、メリーランド州ゲーサーズバーグ)基質で約5分間発色させ、1.0M H3PO4でクエンチし、450nmで分光光度的に読み取る。IC50値の比(IC50、ala/IC50、wt)は、結合親和性(相対結合親和性)の低下の倍数を表す。
いくつかの実施形態では、追加の治療は、白金剤又は白金含有化学療法を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療は、処置の導入期中に投与される。白金剤/白金含有化学療法剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、スターラプラチン等)は、モノアダクト、鎖間クロスリンク、鎖内クロスリンク、又はDNAタンパク質クロスリンクとしてDNAの架橋を引き起こす、広く使用されている抗腫瘍剤である。白金剤は通常、グアニンの隣接するN-7位に作用し、1,2鎖内架橋(Poklar et al.(1996).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93(15):7606-11;Rudd et al.(1995).Cancer Chemother.Pharmacol.35(4):323-6)を形成する。結果として生じる架橋は、がん細胞におけるDNA修復及び/又はDNA合成を阻害する。
カルボプラチンは、本明細書に記載の方法で使用される例示的な白金配位化合物である。カルボプラチンの化学名は、白金,ジアミン[1,1-シクロブタンジカルボキシラト(2-)-O、O’]-、(SP-4-2)であり、カルボプラチンは次の構造式を有する:
カルボプラチンは、C6H12N2O4Ptの分子式、及び371.25の分子量を有する結晶性粉末である。これはおよそ14mg/mLの速度で水に溶け、1%溶液のpHは5~7である。エタノール、アセトン、及びジメチルアセトアミドにはほとんど溶けない。カルボプラチンは主に鎖間DNA架橋を生成し、この効果は細胞周期に非特異的である。カルボプラチンは、PARAPLATIN(登録商標)、BIOCARN、BLASTOCARB、BLASTOPLATIN、CARBOKEM、CARBOMAX、CARBOPA、CARBOPLAN、CARBOTEEN、CARBOTINAL、CYTOCARB、DUCARB、KARPLAT、KEMOCARB、NAPROPLAT、NEOPLATIN、NISCARBO、ONCOCARBIN、TEVACARB、及びWOMASTIN等として市販されている。
シスプラチンは、本明細書に記載の方法で使用される別の例示的な白金配位化合物である。シスプラチンの化学名はジクロロ白金ジアンモニエート(dichloroplatinum diammoniate)であり、シスプラチンは次の構造式を有する:
シスプラチンは、Pt(NH3)2Cl2の分子式、及び300.046の分子量を有する無機及び水溶性の白金錯体である。加水分解された後、これはDNAと反応して、鎖内架橋及び鎖間架橋の両方を形成する。これらの架橋はDNAの複製及び転写を阻害するようである。シスプラチンの細胞毒性は細胞周期のG2期における細胞停止と相関する。シスプラチンは、PLATINOL(登録商標)、PLATINOL(登録商標)-AQ、CDDP、CISPLAN、CISPLAT、PLATIKEM、PLATIONCO、PRACTICIS、PLATICIS、BLASTOLEM、CISMAX、CISPLAN、CISPLATINUM、CISTEEN、DUPLAT、KEMOPLAT、ONCOPLATIN-AQ、PLATINEX、PLATIN、及びTEVAPLATIN等として市販されている。
いくつかの実施形態では、追加の治療又は薬剤が、処置の導入期の期間中に個体に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療又は薬剤が、処置の維持期の期間中に個体に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、抗体が、処置の維持期の期間中に個体に投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いた治療の前に、個体は、例えば上記のように、白金含有化学療法で処置されている。いくつかの実施形態では、個体は、例えば上記のように、白金含有化学療法に不適格である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法を用いた処置の前に、個体は、アジュバント化学療法又はネオアジュバント化学療法で処置されている。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の非小細胞肺がんであり、個体は、本明細書に記載の方法を用いた処置前に化学療法で処置されている。
いくつかの実施形態では、個体のがんからのサンプルは、PD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、個体のがんからのサンプルは、PD-L1を発現し、腫瘍領域の1%以上を覆う腫瘍浸潤免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞は、免疫組織化学アッセイ、例えば、VENTANA SP142アッセイを介してアッセイされる。
いくつかの実施形態では、個体は、「PD-L1高」である。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、サンプル中の全腫瘍細胞の合計50%を超える場合、「高PD-L1」である。いくつかの実施形態では、前処置サンプル中50%超の腫瘍細胞でのPD-L1発現が、「TC3」として定義/スコア付けされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、サンプル中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計10%を超える場合、「高PD-L1」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の10%を超えるPD-L1発現は、「IC3」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、処置前サンプルは、新鮮な腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態では、処置前サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベルは、免疫組織化学的アッセイにより決定される。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイである。
いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、サンプル中の全腫瘍細胞の合計1%~5%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍細胞の1%~5%未満でのPD-L1発現は、「TC1」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、サンプル中の全腫瘍細胞の合計5%~50%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍細胞の5%~50%未満でのPD-L1発現は、「TC2」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、サンプル中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計1%~5%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の1%~5%未満でのPD-L1発現は、「IC1」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、サンプル中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計5%~10%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の5%~10%未満でのPD-L1発現は、「IC2」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、処置前サンプルは、新鮮な腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態では、処置前サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベルは、免疫組織化学的アッセイにより決定される。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイである。
いくつかの実施形態では、個体は、「PD-L1陰性」である。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、サンプル中の全腫瘍細胞の合計1%未満である場合、「PD-L1陰性」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍細胞の1%未満でのPD-L1発現は、「TC0」として定義される。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の処置前サンプルにおいてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、サンプル中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計1%未満である場合、「PD-L1陰性」である。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の1%未満でのPD-L1発現は、「IC0」として定義される。いくつかの実施形態では、処置前サンプルは、新鮮な腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態では、処置前サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態では、処置前サンプル中の腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベルは、免疫組織化学的アッセイにより決定される。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイである。
いくつかの実施形態では、TC0、TC1、TC2、TC3、IC0、IC1、IC2、及びIC3は、以下の表に概説されるように定義/スコアリングされる:
例示的な腫瘍細胞(tumor cell:TC)及び腫瘍浸潤免疫細胞(immune cell:IC)のスコアリングの定義
IC、腫瘍浸潤免疫細胞;PD-L1、プログラム死リガンド1;TC、腫瘍細胞。
Socinski M, et al. the N Engl J Med. Atezolizumab for first-line treatment of metastatic nonsquamous NSCLC. 2018; 378: 2288-301より。
別の態様では、個体は、PD-L1バイオマーカーを発現する(例えば、診断試験において、発現することが示された)がんを有する。いくつかの実施形態では、患者のがんは、低PD-L1バイオマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、患者のがんは、高PD-L1バイオマーカーを発現する。これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、サンプルの0%に含まれる場合、サンプル中に存在しない。
いくつかの実施形態では、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌を有するヒト患者を処置する方法であって、ヒト患者がシスプラチン含有化学療法に適格ではなく、FDA承認試験によって決定される場合、その腫瘍(複数可)がPD-L1を発現する(腫瘍領域の5%以上を覆うPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞[IC])、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌を有するヒト患者を処置する方法であって、ヒト患者が、PD-L1の状態にかかわらず、いかなる白金含有化学療法にも適格ではない、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌を有するヒト患者を処置する方法であって、ヒト患者が、任意の白金含有化学療法の期間中若しくはその後、又はネオアジュバント化学療法若しくはアジュバント化学療法の12ヶ月以内に疾患進行を有する、方法が本明細書で提供される。
いくつかの実施形態では、局所的に進行した尿路上皮癌又は転移性尿路上皮癌を有するヒト患者を処置する方法であって、事前の白金含有化学療法の後に抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、局所的に進行した尿路上皮癌又は転移性尿路上皮癌を有するヒト患者を処置する方法であって、抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含み、ヒト患者がシスプラチン不適格と見なされ、その腫瘍がPD-L1発現5%以上を有する、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は成人である。
いくつかの実施形態では、EGFR又はALKゲノム腫瘍異常のない転移性非小細胞肺がんを有するヒト患者を処置する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、ベバシズマブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、EGFR及び/又はALKゲノム腫瘍異常を有する転移性非小細胞肺がんを有するヒト患者を処置する方法であって、ベバシズマブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含み、該ヒト患者が非小細胞肺がんの標的療法に失敗している、方法が本明細書で提供される。
いくつかの実施形態では、転移性非小細胞肺がんを有するヒト患者を処置する方法であって、ヒト患者が白金含有化学療法中又はその後に進行があった、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記方法は、ヒト患者に抗PD-L1抗体を単剤として投与することを含む。ヒト患者がEGFR又はALKゲノム腫瘍異常を有するいくつかの実施形態では、患者は標的療法の際に進行があった。ヒト患者がEGFR又はALKゲノム腫瘍異常を有するいくつかの実施形態では、患者はFDA承認治療の際に進行があった。
いくつかの実施形態では、局所進行性又は転移性の非小細胞肺がんを有するヒト患者を処置する方法であって、事前の化学療法後に抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
いくつかの実施形態では、局所進行性又は転移性のトリプルネガティブ乳がんを有するヒト患者を処置する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、がんは、切除不能な局所進行性又は転移性トリプルネガティブ乳がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、FDA承認試験によって決定される場合、PD-L1を発現する(腫瘍面積の1%以上を覆う任意の強度のPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞[IC])。いくつかの実施形態では、上記方法は、タンパク質結合パクリタキセルと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む。
上記方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、サンプルの0%超に含まれる場合、サンプル中に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、サンプルの少なくとも1%に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、サンプルの少なくとも5%に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、サンプルの少なくとも10%に存在する。
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光分光法、質量分析、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCR又はRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、及びFISH、並びにそれらの組合せからなる群から選択される方法を使用してサンプル中で検出される。
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、タンパク質発現によってサンプル中で検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、抗PD-L1抗体を使用して検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーはIHCによって弱い染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーはIHCによって中程度の染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーはIHCによって強い染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞及びそれらの任意の組合せで検出される。いくつかの実施形態では、染色は、膜染色、細胞質染色、又はそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイである。
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーの不在は、サンプル中の染色不在又は染色なしとして検出される。これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーの存在は、サンプル中の任意の染色として検出される。
本明細書に記載される実施形態のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体はヒトである。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、30分にわたって、又は60分にわたって静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の第1の用量は60分間にわたる静脈内注入によって投与され、抗PD-L1抗体のその後の用量(複数可)は(例えば、第1の用量が許容される場合)30分間にわたる静脈内注入によって投与される。
本明細書に記載される実施形態のいずれかによるいくつかの実施形態では、本開示の方法によって処置されるがんとしては、限定されないが、結腸直腸がん、腎細胞がん(例えば、腎細胞癌)、黒色腫、膀胱がん、卵巣がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん、HER2陽性乳がん、又はホルモン受容体陽性がん)、及び非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮非小細胞肺がん又は非扁平上皮非小細胞肺がん)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって処置されるがんとしては、限定されないが、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって処置されるがんとしては、限定されるものではないが、扁平上皮細胞がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮癌を含む)、黒色腫、腎細胞癌、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)(消化管がんを含む)、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん(kidney cancer)又は腎臓がん(renal cancer)、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌、及び様々な種類の頭頸部がん、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連するもの等)、及びメイグス症候群と関連する異常な血管増殖が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、早期がんであっても後期がんであってもよい。いくつかの実施形態では、がんは、原発性腫瘍であってもよい。いくつかの実施形態では、がんは、上記の種類のがんのいずれかに由来する第2の部位における転移性腫瘍であってもよい。
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって処置されるがんは、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎細胞癌(RCC)、卵巣がん、黒色腫、及び膀胱がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、例えば、がんはエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、及びHER2陰性である。いくつかの実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、肺がんは小細胞肺がん(SCLC)である。いくつかの実施形態では、膀胱がんは、尿路上皮癌である。
いくつかの実施形態では、がんは局所進行性又は転移性である。
いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌であり、本明細書に記載の方法を用いる処置の前に、個体は、白金含有化学療法で処置されている。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌であり、個体は、白金含有化学療法に不適格である。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌であり、個体は、白金含有化学療法(例えば、シスプラチンを含有する)に不適格であり、がんはPD-L1(例えば、がんから得られたサンプルは、腫瘍領域の5%以上を覆うPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞を示し、これは、例えば免疫組織化学的アッセイを使用して決定することができる。)を発現する。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌であり、本明細書に記載の方法を用いた処置前に、個体は、白金含有化学療法による処置中又は処置後に疾患進行を有していた。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌であり、本明細書に記載する方法を用いた処置前に、個体は、ネオアジュバント化学療法又はアジュバント化学療法による処置の12ヶ月以内に疾患進行を有していた。
いくつかの実施形態では、がんはNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは転移性非扁平上皮NSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR又はALKのゲノム腫瘍の異常又は変異のないNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR又はALKのゲノム腫瘍異常又は変異のないNSCLC(例えば、転移性非扁平上皮NSCLC)であり、該方法は、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、タキサン(例えば、パクリタキセル又はタンパク質結合パクリタキセル)及び白金含有化学療法(例えば、カルボプラチン)を抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)と組み合わせて投与することを更に含む。
いくつかの実施形態では、がんは局所進行性又は転移性のNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは局所進行性又は転移性のNSCLCであり、本明細書に記載される方法を用いた処置の前に、個体は化学療法で処置されている。いくつかの実施形態では、がんは局所進行性又は転移性のNSCLCであり、がんはEGFR活性化又はALK陽性変異を有し、本明細書に記載の方法を用いた処置の前に、個体は標的療法で治療されている。いくつかの実施形態では、がんは局所進行性又は転移性のNSCLCであり、がんはEGFR活性化変異又はALK陽性変異を有し、本明細書に記載される方法を用いた処置前に、個体は、標的療法による処置時に疾患進行を有していた。いくつかの実施形態では、がんは、局所進行性又は転移性のNSCLCであり、本明細書に記載の方法を用いた処置前に、個体は、白金含有化学療法による処置中又は処置後に疾患進行を有していた。
様々な活性化EGFR変異が当技術分野で公知である。EGFR遺伝子は、v-ERB-B、ERBB、ERBB1、HER1及びSA7としても知られる上皮増殖因子受容体をコードする。いくつかの実施形態では、EGFR変異は、EGFRの過剰発現をもたらす(例えば、遺伝子増幅又はEGFR遺伝子コピー数の増加)。いくつかの実施形態では、EGFR変異は、EGFR遺伝子のエクソン18、19、20、又は21に点変異又は欠失を含む。既知のEGFR変異としては、限定されないが、エクソン19欠失、エクソン20挿入、L858R、T790M、S768I、G719A、G719C、G719S、L861Q、C797S、エクソン19挿入、A763_Y764insFQEA、及びキナーゼドメインの重複が挙げられる。更なるEGFR変異は、例えば、the Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology(atlasgeneticsoncology.org/Genes/GC_EGFR.htmlを参照されたい)及びOMIM遺伝子ID:131550に記載されている。EGFR変異を検出するための例示的なアッセイとしては、例えば、ダイレクトシーケンシング、変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC)、高分解能融解分析(HRMA)、パイロシーケンシング、目的の特異的変異を検出するための又は目的の特異的領域を標的とするためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、断片長分析、カチオン性共役ポリマー(CCP)ベースの蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、SmartAMP、ペプチド核酸(PNA)媒介PCRクランピング、IHC、ARMS、リアルタイムPCR、及び次世代シーケンシングが挙げられる。例えば、Ellison,G.et al.(2013)J.Clin.Pathol.66:79-89を参照されたい。
様々なALK変異が当技術分野で公知である。ALK遺伝子は、CD246及びNBLST3としても知られる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)受容体チロシンキナーゼをコードする。いくつかの実施形態では、ALK変異は、ALK遺伝子における再編成又は転座を含み、例えば、EML4-ALK、KIF5B-ALK、KLC1-ALK、又はTFG-ALK等の融合遺伝子をもたらす。ALK変異としては、限定されないが、E13;A20(V10)、E20;A20(V2)、E6a/b;A20(V3a/b)、E14;A20(V4)、E2a/b;A20(V6)、E14;A20(V7)、E15;A20(V4)、E18;A20(V5)、KIF5B-ALK、KLC1-ALK、及びTFG-ALKが挙げられる。更なるALK変異は、Shackelford,R.E.et al.(2014)Genes Cancer 5:1-14に記載されている。ALK変異を検出するための例示的なアッセイとしては、例えば、PCR、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、マイクロアレイ又はエクソンアレイプロファイリング、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)(例えば、ALKブレークアパートプローブ又はスプリットシグナルプローブの使用;Kwak,E.L.et al.(2010)N.Engl.J.Med.363:1693-1703を参照されたい)、IHC、cDNA末端の5’迅速増幅(RACE)分析及び次世代シーケンシングが挙げられる。例えば、Shackelford,R.E.et al.(2014)Genes Cancer 5:1-14を参照されたい。
いくつかの実施形態では、がんは乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。いくつかの実施形態では、がんはTNBC(例えば、切除不能な局所進行性又は転移性のTNBC)であり、該方法は、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)と組み合わせてタキサン(例えば、パクリタキセル又はタンパク質結合パクリタキセル)を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、がんはTNBCであり、がんはPD-L1(例えば、がんから得られたサンプルは、腫瘍領域の1%以上を覆うPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞を示し、これは、例えば免疫組織化学的アッセイを使用して決定することができる)を発現する。いくつかの実施形態では、がんはTNBCであり、がんはPD-L1(例えば、がんから得られたサンプルは、腫瘍領域の1%以上を覆うPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞を示し、これは、例えば免疫組織化学的アッセイを使用して決定することができる)を発現し、該方法は、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)と組み合わせてタキサン(例えば、パクリタキセル又はタンパク質結合パクリタキセル)を投与することを更に含む。
いくつかの実施形態では、がんは小細胞肺がん(SCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、進展型SCLC(ES-SCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、進展型SCLC(ES-SCLC)であり、該方法は、白金含有化学療法(例えば、カルボプラチン)及びトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)を抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)と組み合わせて投与することを更に含む。
NSCLCの処置を含むがこれに限定されないいくつかの実施形態では、方法は、個体に、タキサン(例えば、パクリタキセル又はタンパク質結合パクリタキセル)、白金含有化学療法(例えば、カルボプラチン)、及び任意に抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を4~6サイクル投与し、次いで、個体に、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を1680mgの用量で2回以上の4週間サイクルで投与することを含む。
SCLCの処置を含むがこれに限定されないいくつかの実施形態では、本方法が、個体に白金含有化学療法(例えば、カルボプラチン)及びトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)を4サイクル投与し、次いで、個体に抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を1680mgの用量で2回以上の4週間サイクルで投与することを含む。
いくつかの実施形態では、がんを有するヒト患者を処置する方法であって、がんが進展型小細胞肺がんである方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記方法は、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせて抗PD-L1抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、上記方法は第一選択処置である。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、以前に未処置、例えば化学療法剤で以前に未処置であった。いくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、尿路上皮癌について以前に処置されていない、例えば,化学療法剤で以前に処置されていない。いくつかの実施形態では、がんは、以前に処置されていないがん、例えば化学療法剤で以前に処置されていないがんである。いくつかの実施形態では、がんは、処置ナイーブの局所進行性又は転移性の尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、ヒト患者はシスプラチン不適格である。いくつかの実施形態では、ヒト患者はシスプラチン不適格であり、がんは処置ナイーブの局所進行性又は転移性の尿路上皮癌である。
例示的な処置方法
いくつかの実施形態では、上記方法は、ヒト患者に抗PD-L1抗体を1680mgの用量で2回以上の4週間又は28日間のサイクルで投与することを含み、抗PD-L1抗体は2回以上の4週間又は28日間のサイクルの各々で1680mg/サイクルの用量でヒト患者に投与される(例えば、抗PD-L1抗体はヒト患者に4週間毎又は28日毎に1回投与される)。
いくつかの実施形態では、上記方法は、ヒト患者に抗PD-L1抗体を840mgの用量で2回以上の2週間又は14日間のサイクルで投与することを含み、抗PD-L1抗体は2回以上の2週間又は14日間のサイクルの各々で840mg/サイクルの用量でヒト患者に投与される(例えば、抗PD-L1抗体はヒト患者に2週間毎又は14日毎に1回投与される)。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有する。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌を有する成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者はシスプラチン含有化学療法に適格ではなく、米国FDA承認試験によって決定される場合、その腫瘍がPD-L1を発現する(腫瘍領域の5%以上を覆うPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞[IC])。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌を有する成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者は、PD-L1状態にかかわらず、いかなる白金含有化学療法にも適格ではない。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は、局所進行性又は転移性の尿路上皮癌を有する成人ヒト患者であり、成人ヒト患者は、任意の白金含有化学療法の期間中若しくはその後、又はネオアジュバント化学療法若しくはアジュバント化学療法の12ヶ月以内に疾患進行を有する。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、該方法は、ヒト患者に840mgの用量の抗PD-L1抗体を2週間毎に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、該方法は、ヒト患者に840mgの用量の抗PD-L1抗体を2週間毎に投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、方法は、2週間毎に840mgの用量の抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与され、抗PD-L1抗体の最初の注入が許容される場合、その後の全ての注入は30分間にわたって送達され得る。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、該方法は、ヒト患者に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を4週間毎に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、該方法は、4週間毎に1680mgの用量の抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は尿路上皮癌を有し、該方法は、ヒト患者に4週間毎に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与され、抗PD-L1抗体の最初の注入が許容される場合、その後の全ての注入は30分間にわたって送達され得る。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は非小細胞肺がん(NSCLC)を有する。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者であり、成人ヒト患者は転移性非扁平上皮NSCLCを有する。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、成人ヒト患者は転移性非扁平上皮NSCLCを有し、該方法は、ベバシズマブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体を成人ヒト患者に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、該方法は、EGFR又はALKゲノム腫瘍異常を有さない転移性非扁平上皮NSCLCを有する成人ヒト患者の第一選択処置である。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者は転移性NSCLCを有し、該成人ヒト患者は白金含有化学療法中又はその後に疾患進行を有する。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該ヒト患者はEGFR又はALKゲノム腫瘍異常を有し、該ヒト患者は、本明細書に記載される方法に従って抗PD-L1抗体を投与される前に、これらの異常を有するNSCLCのためのFDA承認された治療法で疾患進行を有していた。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体を投与することを含む方法は、単剤処置である。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者は、EGFR又はALKゲノム腫瘍異常のない転移性非扁平上皮NSCLCを有し、該方法は、ベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体を投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、該方法は、EGFR又はALKゲノム腫瘍異常を有さない転移性非扁平上皮NSCLCを有する成人ヒト患者の第一選択処置に適応される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、抗PD-L1抗体は疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで投与される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、抗PD-L1抗体は、ヒト患者に同日に投与される場合、化学療法又は他の抗新生物薬の前に投与される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、方法は、2週間毎に840mg、3週間毎に1200mg、又は4週間毎に1680mgの用量で抗PD-L1抗体を単剤として投与することを含む。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該方法は、ヒト患者に840mgの用量の抗PD-L1抗体を2週間毎に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該方法は、ヒト患者に840mgの用量の抗PD-L1抗体を2週間毎に投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該方法は、ヒト患者に2週間毎に840mgの用量の抗PD-L1抗体を投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与され、抗PD-L1抗体の最初の注入が許容される場合、その後の全ての注入は30分間にわたって送達され得る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで、標準治療の用量のベバシズマブ、標準治療の用量のパクリタキセル、及び標準治療の用量のカルボプラチンと組み合わせて投与される。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで、15mg/kgの用量のベバシズマブ、175mg/m2又は200mg/m2の用量のパクリタキセル、及びAUC 6mg/mL/分の用量のカルボプラチンと組み合わせて投与される。抗PD-L1抗体がベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて投与される、本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、同日に投与される場合、他の抗新生物薬の前に投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ベバシズマブが中止される場合、ベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む方法の4~6サイクルの完了後に、該方法は、疾患進行又は許容できない毒性まで静脈内に投与される、2週間毎に840mgの用量の抗PD-L1抗体を更に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ベバシズマブが中止される場合、ベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む方法の4~6サイクルの完了後に、該方法は、疾患進行又は許容できない毒性まで静脈内に投与される、4週間毎に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を更に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、60分間にわたる抗PD-L1抗体の最初の注入。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の最初の注入が許容されるならば、その後の全ての注入は30分間にわたって送達される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該方法は、ヒト患者に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を4週間毎に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該方法は、ヒト患者に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を4週間毎に投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、該方法は、ヒト患者に4週間毎に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を投与することを含み、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで60分間にわたって静脈内投与され、抗PD-L1抗体の最初の注入が許容される場合、その後の全ての注入は30分間にわたって送達され得る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで、標準治療の用量のベバシズマブ、標準治療の用量のパクリタキセル、及び標準治療の用量のカルボプラチンと組み合わせて投与される。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで、15mg/kgの用量のベバシズマブ、175mg/m2又は200mg/m2の用量のパクリタキセル、及びAUC 6mg/mL/分の用量のカルボプラチンと組み合わせて投与される。抗PD-L1抗体がベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて投与される、本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、同日に投与される場合、他の抗新生物薬の前に投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ベバシズマブが中止される場合、ベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む方法の4~6サイクルの完了後に、該方法は、疾患進行又は許容できない毒性まで静脈内に投与される、2週間毎に840mgの用量の抗PD-L1抗体を更に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ベバシズマブが中止される場合、ベバシズマブ、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせて抗PD-L1抗体をヒト患者に投与することを含む方法の4~6サイクルの完了後に、該方法は、疾患進行又は許容できない毒性まで静脈内に投与される、4週間毎に1680mgの用量の抗PD-L1抗体を更に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、60分間にわたる抗PD-L1抗体の最初の注入。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の最初の注入が許容されるならば、その後の全ての注入は30分間にわたって送達される。
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、抗PD-L1抗体はベバシズマブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンと組み合わせて投与され、抗PD-L1抗体は化学療法又は他の抗新生物薬の前に3週間毎に1200mgの用量で投与される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はNSCLCを有し、パクリタキセルとカルボプラチンの4~6サイクルの完了後、ベバシズマブが中止される場合、抗PD-L1抗体は2週間毎に840mg、3週間毎に1200mg、又は4週間毎に1680mgの用量で投与される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者は切除不能な局所進行性又は転移性のTNBCを有し、該切除不能な局所進行性又は転移性のTNBCの腫瘍は、米国FDA承認試験によって決定される場合、PD-L1を発現する(腫瘍領域の1%以上を覆う任意の強度のPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞[IC])。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、成人ヒト患者は転移性TNBCを有し、該方法は、抗PD-L1抗体を840mgの用量で投与し、続いてタンパク質結合パクリタキセルを100mg/m2の用量で投与することを含み、疾患の進行又は許容できない毒性が生じるまで、各28日間サイクルについて、抗PD-L1抗体は1日目及び15日目に投与され、パクリタキセルタンパク質結合は1日目、8日目、及び15日目に投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、成人ヒト患者は局所進行性TNBC又は転移性TNBCを有し、該方法は、840mgの用量の抗PD-L1抗体及び100mg/m2の用量のタンパク質結合パクリタキセルを投与することを含み、該抗PD-L1抗体は60分かけて静脈内注入として投与され、続いて100mg/m2のタンパク質結合パクリタキセルの投与が行われ、疾患の進行又は許容できない毒性まで、28日間のサイクル毎に、抗PD-L1抗体は1日目及び15日目に投与され、タンパク質結合パクリタキセルは1日目、8日目、及び15日目に、投与される。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の最初の注入は60分間にわたって注入される。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の60分間にわたる最初の注入が許容されるならば、その後の全ての注入は30分間にわたって送達され得る。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者であり、該成人ヒト患者は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を有する。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、成人ヒト患者はES-SCLCを有し、該成人ヒト患者は、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせて抗PD-L1抗体を含む本明細書に記載される方法を使用する第一選択処置が適応される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はSCLCを有し、カルボプラチン及びエトポシドの4サイクルの完了後、該方法は、2週間毎に840mg、3週間毎に1200mg、又は4週間毎に1680mgの用量で投与される抗PD-L1抗体を含む処置をヒト患者に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はSCLCを有し、該ヒト患者はカルボプラチン及びエトポシドを含む4サイクルの初期処置を受けており、4サイクルの初期処置の完了後、該方法は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで2週間毎に静脈内投与される、840mgの用量で投与される抗PD-L1抗体を含む処置をヒト患者に投与することを含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はSCLCを有し、該ヒト患者はカルボプラチン及びエトポシドを含む4サイクルの初期処置を受けており、4サイクルの初期処置の完了後、該方法は、疾患進行又は許容できない毒性が生じるまで4週間毎に静脈内投与される、1680mgの用量で投与される抗PD-L1抗体を含む処置をヒト患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、初期の処置は、3週間毎に1200mgの用量で抗PD-L1抗体を投与することを更に含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の最初の注入は60分間にわたって注入される。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の60分間にわたる最初の注入が許容されるならば、その後の全ての注入は30分間にわたって送達され得る。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はSCLCを有し、カルボプラチン及びエトポシドと共に抗PD-L1抗体を投与する場合、抗PD-L1抗体は、化学療法の3週間毎に1200mgの用量で投与される。
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者はSCLCを有し、抗PD-L1抗体は、ヒト患者に同日に投与される場合、化学療法の前に投与される。
III.抗PD-L1抗体
様々な抗PD-L1抗体が、本開示の方法において使用するために企図され、本明細書に記載される。本明細書における実施形態のうちのいずれかでは、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、又はその変異体に結合することができる。「PD-L1」の代替名としては、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hが挙げられる。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間の結合及び/又はPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。本発明の方法に有用な抗PDL1抗体の例、及びそれらの作製方法は、PCT特許出願第2010/077634号A1及び米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含み、
(a)重鎖可変領域は、GFTFSDSWIH(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)、及びRHWPGGFDY(配列番号3)の、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列をそれぞれ含み、そして、
(b)軽鎖可変領域は、RASQDVSTAVA(配列番号4)、SASFLYS(配列番号5)、及びQQYLYHPAT(配列番号6)の、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列をそれぞれ含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はMPDL3280Aであり、アテゾリズマブ及びTECENTRIQ(登録商標)(CAS登録番号1422185-06-5)としても知られる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)該重鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)を含み、
(b)該軽鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIY SASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号8)を含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号9)を含み、
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)を含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はアベルマブ(CAS登録番号:1537032-82-8)である。MSB0010718Cとしても知られるアベルマブは、ヒトモノクローナルIgG1抗PDL1抗体(Merck KGaA、Pfizer)である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号15)を含み、
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号16)を含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号15及び配列番号16からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号15の3つの重鎖HVR及び配列番号16の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号15からの重鎖可変ドメイン及び配列番号16からの軽鎖可変ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、デュルバルマブ(CAS登録番号:1428935-60-7)MEDI4736としても知られるデュルバルマブは、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載されている、Fc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PDL1抗体(MedImmune、AstraZeneca)である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号17)を含み、
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)を含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号17及び配列番号18からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号17の3つの重鎖HVR及び配列番号18の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号17からの重鎖可変ドメイン及び配列番号18からの軽鎖可変ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、MDX-1105(Bristol Myers Squibb)である。MDX-1105、別名、BMS-936559は、国際公開第2007/005874号に記載の抗PDL1抗体である。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、LY3300054(Eli Lilly)である。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、STI-A1014である。STI-A1014はヒト抗PDL1抗体である。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はKN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダファージディスプレイライブラリーから生成されたシングルドメイン抗体(dAB)である。
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、(例えば、腫瘍微小環境中のプロテアーゼによって)切断されると、抗体抗原結合ドメインを活性化して、例えば、非結合性立体部位を除去することによって、その抗原を結合させることができるようにする、切断可能な部位又はリンカーから構成される。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はCX-072(CytomX Therapeutics)である。
いくつかの実施形態では、PDL1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)、並びに/又は米国特許出願公開第20160108123号(Novartisに譲渡)、国際公開第2016/000619号(出願人:Beigene)、同第2012/145493号(出願人:Amplimmune)、米国特許第9205148号(MedImmuneに譲渡)、国際公開第2013/181634号(出願人:Sorrento)、及び同第2016/061142号(出願人:Novartis)に記載されたPDL1抗体からの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
なお更に具体的な一態様では、本抗体は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。なお更なる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なお更に具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。
なお更に具体的な一態様では、本抗体は、低減された又は最小のエフェクター機能を有する。更に具体的な一態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターのないFc突然変異」又はグリコシル化突然変異から生じる。なお更なる一実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態では、単離された抗PD-L1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1種のヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1種が除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、又はトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン又は保存的置換)との置換によって行われ得る。
なお更なる一実施形態では、本開示は、上述の抗PDL1抗体のうちのいずれかと少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体とを組み合わせて含む組成物を提供する。本明細書に記載の又は当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体のうちのいずれかが使用され得る。
IV.抗体の調製
本明細書に記載される抗体は、抗体を生成するために当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節でより詳細に説明される。
抗体は、目的の抗原(例えば、ヒトPD-L1等のPD-L1)を対象とする。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体が、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイにより説明されるように、目的とする抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間、室温(およそ23℃)でブロッキングする。非吸着プレート(Nunc#269620)で、100pM又は26pM [125I]-抗原を目的のFabの段階希釈液と混合する。その後、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標);Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway,NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を、pH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって、5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流速でインジェクトし、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答ユニット(RU)を達成する。抗原のインジェクション後、1Mのエタノールアミンをインジェクトして、未反応基をブロックする。動態測定のために、2倍に連続希釈したFab(0.78nM~500nM)を、25℃でおよそ25μl/分の流量で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、会合センサグラム及び解離センサグラムを同時に適合することによって、単純1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software第3.2版)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、106M-1s-1を超える場合、オン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップトフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)又は8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計において測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃でのPBS(pH7.2)中の20nM抗-抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する、蛍光消光技法を使用することによって、判定することができる。
キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又は非ヒト霊長類、例えば、サル由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のそれらから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
特定の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性及び親和性は保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体由来であり、かつFR(又はその一部)がヒト抗体配列由来である1つ又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復するか、又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
ヒト化抗体及びこれを製造する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に記載され、更に、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフト接合を記載する);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」を記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載する);及びOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングに対する「ガイド付き選択」手法を記載する)に記載される。
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい);及び(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を使用して作製され得る。ヒト抗体は通常、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
ヒト抗体は、免疫原を、インタクトなヒト抗体又は抗原性チャレンジに応答してヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に投与することによって調製されてもよい。そのような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、又は染色体外に存在するか、又は動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg、Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号、K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号、VELOCIMOUSE(登録商標)技術)を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。そのような動物によって産生されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって更に改変され得る。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって作られるヒト抗体は、Li et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557-3562(2006)にも記載される。更なる方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)及びNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載される。
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても作製され得る。その後、そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する技術は以下に記載される。
抗体断片
抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段又は組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体断片に関する概説については、Hudson et al.(Nat.Med.9:129-134,2003)を参照されたい。
抗体断片を産生するために様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生することができる。Fab、Fv、及びScFv抗体断片は全て、大腸菌(E.coli)で発現され、大腸菌(E.coli)から分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替えとして、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivo半減期が増加した、Fab及びF(ab’)2断片については、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号、及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、それ故に、それらは、インビボでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかでのエフェクタータンパク質の融合をもたらすことができる。上掲のAntibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性又は二重特異性であり得る。
単一ドメイン抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.、例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照されたい)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部からなる。
抗体変異体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本抗体のアミノ酸配列変異体は、本抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾としては、例えば、本抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入、及び/又はその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
置換変異体、挿入変異体、及び欠失変異体
ある特定の実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換による変異誘発に関して目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換を表Aに示す。より実質的な変化は、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される。アミノ酸置換が目的とする抗体に導入され、生成物が所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、又はADCC又はCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化され得る:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
c.酸性:Asp、Glu、
d.塩基性:His、Lys、Arg、
e.影響する残基
鎖配向:Gly、Pro、
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うだろう。
ある種類の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる試験ために選択される結果として生じる変異体(複数可)は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、かつ/又は実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有する。例示的な置換変異体は、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して、簡便に生成され得る。簡潔には、1つ又は複数のHVR残基が変異され、変異体抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
改変(例えば、置換)がHVRに行われて、例えば、抗体親和性を改善することができる。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/又はSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られた変異体VH又はVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.Methods in Molecular Biology 178:1-37に記載されている(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラー.プローンPCR、鎖シャフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟させるために選択された可変遺伝子に導入される。その後、二次ライブラリが作製される。その後、このライブラリがスクリーニングされて、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を特定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にCDR-H3及びCDR-L3が標的とされることが多い。
特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、このような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中で行われてよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」又はSDR外であり得る。上に提供される変異体VH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、変化していないか、又は1つ、2つ若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
変異誘発のために標的とされ得る抗体の残基又は領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって説明される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lys及びglu)が同定され、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、又は加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。変異体は、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体としては、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)又はポリペプチドへの抗体のN末端又はC末端の融合が挙げられる。
グリコシル化変異体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化されている程度を増加又は減少させるように変化する。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作り出されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生されるネイティブ抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の特性が改善された抗体変異体を作製するために、本開示の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
一実施形態では、Fc領域を含む抗体変異体が提供され、Fc領域に結合した炭水化物構造は、フコースが減少しているか、又はフコースを欠き、これによりADCC機能が改善され得る。具体的には、野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフコースが減少した抗体が本明細書で企図される。すなわち、それらは、それらが天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞等の天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、本抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、又は5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であり得る。ある特定の実施形態では、本抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体であり、すなわち、本抗体は、フコースを全く有しないか、又はフコースを有しないか、又はアフコシル化されている。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEuナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体内のわずかな配列変異のため、297位から約±3アミノ酸上流又は下流に、すなわち、294位と300位との間に位置し得る。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠乏」抗体変異体に関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を生成可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化で欠失したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号、Presta,L;及び国際公開第2004/056312A1号、Adams et al.,特に実施例11において)、並びにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)が挙げられる。
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体変異体が更に提供される。このような抗体変異体は、低減されたフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al)、及びFerrara et al.,Biotechnology and Bioengineering,93(5):851-861(2006)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.);国際公開第1998/58964号(Raju,S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載されている。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を有する抗体変異体は、FcγRIIIに結合することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を含む抗体変異体は、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有するか、又はヒトエフェクター細胞の存在下でヒト野生型IgG1Fc領域を有するという点以外は同じ抗体と比較して増加したADCC活性を有する。
Fc領域変異体
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域変異体が生成され得る。Fc領域変異体は、1つ又は複数のアミノ酸位置でアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含んでいてもよい。
ある特定の実施形態では、本開示は、全てではないが一部のエフェクター機能を有し、それによりin vivoでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体及びADCC等)が不要又は有害である用途にとって望ましい候補となる、抗体変異体を企図する。インビトロ及び/又はインビボ細胞毒性アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCの媒介のための主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞内でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の第464頁、表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986))、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリのためのACTI(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、又は加えて、目的のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて、in vivoで評価され得る。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004))を参照されたい)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の判定はまた、当該技術分野で公知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329において1つ以上の置換を含むものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc突然変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上に置換を有するFc突然変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
FcRに対する結合が改善又は減少したある特定の抗体変異体が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、国際公開第2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい)。
特定の実施形態では、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。例示的な一実施形態では、抗体は、そのFc領域に以下のアミノ酸置換:S298A、E333A、及びK334Aを含む。
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、変化した(すなわち、改善されたか又は減少したかのいずれか)C1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす改変が、Fc領域において行われる。
半減期が増加し、母体のIgGの胎児への移行に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する一又は複数の置換を有するFc領域を含む。かかるFc変異体は、1つ以上のFc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434における置換、例えばFc領域残基434の置換を伴うものを含む(米国特許第7,371,826号)。Fc領域変異体の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及び国際公開第94/29351号も参照されたい。
V.医薬組成物及び製剤
抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を含む、例えばがんの処置のための医薬組成物及び製剤も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物及び製剤は、薬学的に許容可能な担体を更に含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、約60mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約120mMの濃度のスクロース、及び約0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)からなる製剤中にあり、製剤は、約5.8のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、約125mg/mLの量の本抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約240mMの濃度のスクロース、及び0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中に存在し、この製剤は、約5.5のpHを有する。
目的の抗体を調製した後(例えば、本明細書に開示されているように製剤化することができる抗体を製造するための技術は、本明細書に精巧に記載されており、当技術分野で知られている)、それを構成する医薬製剤を調製する。ある特定の実施形態では、製剤化される抗体は、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的とする製剤は、水性製剤である。ある特定の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。一実施形態では、製剤中の抗体は、F(ab’)2等の抗体断片であり、この場合、完全長抗体では起こり得ない問題(抗体のFabへのクリッピング等)に対処しなければならない場合がある。製剤中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量体積及び投与様式(複数可)を考慮することによって決定される。約25mg/mL~約150mg/mL、又は約30mg/mL~約140mg/mL、又は約35mg/mL~約130mg/mL、又は約40mg/mL~約120mg/mL、又は約50mg/mL~約130mg/mL、又は約50mg/mL~約125mg/mL、又は約50mg/mL~約120mg/mL、又は約50mg/mL~約110mg/mL、又は約50mg/mL~約100mg/mL、又は約50mg/mL~約90mg/mL、又は約50mg/mL~約80mg/mL、又は約54mg/mL~約66mg/mLは、例示的な製剤中の抗体濃度である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を、約1200mgの用量で投与する。
pH緩衝溶液中に抗体を含む水性製剤が調製される。いくつかの実施形態では、本開示の緩衝液は、約5.0~約7.0の範囲のpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは約5.0~約6.5の範囲であり、pHは約5.0~約6.4、約5.0~約6.3の範囲であり、pHは約5.0~約6.2の範囲であり、pHは約5.0~約6.1の範囲であり、pHは約5.5~約6.1の範囲であり、pHは約5.0~約6.0の範囲であり、pHは約5.0~約5.9の範囲であり、pHは約5.0~約5.8の範囲であり、pHは約5.1~約6.0の範囲であり、pHは約5.2~約6.0の範囲であり、pHは約5.3~約6.0の範囲であり、pHは約5.4~約6.0の範囲であり、pHは約5.5~約6.0の範囲であり、pHは約5.6~約6.0の範囲であり、pHは約5.7~約6.0の範囲であり、又はpHは約5.8~約6.0の範囲である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH6.0又は約6.0である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.9又は約5.9である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.8又は約5.8である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.7又は約5.7である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.6又は約5.6である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.5又は約5.5である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.4又は約5.4である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.3又は約5.3である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.2又は約5.2である。この範囲内でpHを制御する緩衝液の例としては、ヒスチジン(L-ヒスチジン等)又は酢酸ナトリウムが挙げられる。ある特定の実施形態では、緩衝液は、約15mM~約25mMの濃度で酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムを含有する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約15mM~約25mM、約16mM~約25mM、約17mM~約25mM、約18mM~約25mM、約19mM~約25mM、約20mM~約25mM、約21mM~約25mM、約22mM~約25mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、又は約25mMの濃度で酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムを含有する。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.0の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.1の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.4の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.5の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.6の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.7の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.8の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.9の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.0の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.1の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.4の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.5の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.6の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.7の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.8の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.9の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.0の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.1の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。
いくつかの実施形態では、該製剤は、約60mM~約240mMの量のスクロースを更に含む。いくつかの実施形態では、該製剤中のスクロースは、約60mM~約230mM、約60mM~約220mM、約60mM~約210mM、約60mM~約200mM、約60mM~約190mM、約60mM~約180mM、約60mM~約170mM、約60mM~約160mM、約60mM~約150mM、約60mM~約140mM、約80mM~約240mM、約90mM~約240mM、約100mM~約240mM、約110mM~約240mM、約120mM~約240mM、約130mM~約240mM、約140mM~約240mM、約150mM~約240mM、約160mM~約240mM、約170mM~約240mM、約180mM~約240mM、約190mM~約240mM、約200mM~約240mM、約80mM~約160mM、約100mM~約140mM、又は約110mM~約130mMである。いくつかの実施形態では、該製剤中のスクロースは、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、又は約240mMである。
いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約40mg/ml~約125mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約40mg/ml~約120mg/ml、約40mg/ml~約110mg/ml、約40mg/ml~約100mg/ml、約40mg/ml~約90mg/ml、約40mg/ml~約80mg/ml、約40mg/ml~約70mg/ml、約50mg/ml~約120mg/ml、約60mg/ml~約120mg/ml、約70mg/ml~約120mg/ml、約80mg/ml~約120mg/ml、約90mg/ml~約120mg/ml、又は約100mg/ml~約120mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約60mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約65mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約70mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約75mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約80mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約85mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約90mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約95mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約100mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約110mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約125mg/mlである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を、約60mg/mlの濃度で投与する。
いくつかの実施形態では、界面活性剤が抗体製剤に添加される。例示の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80号)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188等)が挙げられる。添加される界面活性剤の量は、それが製剤化抗体の凝集を低減させ、かつ/又は製剤中の微粒子の形成を最小限に抑え、かつ/又は吸着を低減させるような量である。例えば、界面活性剤は、約0.001~約0.5%(w/v)の量で製剤中に存在し得る。いくつかの実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、約0.005%~約0.2%、約0.005%~約0.1%、約0.005%~約0.09%、約0.005%~約0.08%、約0.005%~約0.07%、約0.005%~約0.06%、約0.005%~約0.05%、約0.005%~約0.04%、約0.008%~約0.06%、約0.01%~約0.06%、約0.02%~約0.06%、約0.01%~約0.05%。又は約0.02%~約0.04%である。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.005%又は約0.005%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.006%又は約0.006%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.007%又は約0.007%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.008%又は約0.008%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.009%又は約0.009%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.01%又は約0.01%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.02%又は約0.02%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.03%又は約0.03%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.04%又は約0.04%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.05%又は約0.05%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.06%又は約0.06%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.07%又は約0.07%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.08%又は約0.08%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.1%又は約0.1%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.2%又は約0.2%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.3%又は約0.3%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.4%又は約0.4%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.5%又は約0.5%の量で製剤中に存在する。
一実施形態では、製剤は、上で定義された薬剤(例えば、抗体、緩衝液、糖、及び/又は界面活性剤)を含み、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及びベンゼトニウムCl等の1つ以上の保存料を本質的に含まない。別の実施形態では、保存料が製剤中に含まれてもよく、具体的には、製剤は、複数回投与量製剤である。保存料の濃度は、約0.1%~約2%、好ましくは、約0.5%~約1%の範囲であり得る。1つ以上の他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載のものが製剤中に含まれ得るが、但し、それらが製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下を含む:追加の緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸とメチオニンを含む抗酸化剤;EDTA等のキレート剤;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ポリエステル等の生分解性ポリマー、及び/又は塩形成対イオン。本明細書における例示的な薬学的に許容可能な担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含めた、ある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法が、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
本明細書における製剤は、必要に応じて、処置される特定の適応症のための1つよりも多くのタンパク質、好ましくは、他のタンパク質に悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含み得る。例えば、抗体が抗PDL1(例えば、アテゾリズマブ)である場合、それは、別の薬剤(例えば、化学療法剤、及び抗腫瘍剤)と組み合わせることができる。
本明細書に記載の医薬組成物及び製剤は、所望の純度を有する活性成分(抗体又はポリペプチド等)を1つ以上の任意の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容可能な担体は一般的に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容可能な担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含めた、ある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法が、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
例示的な凍結乾燥した抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤には、ヒスチジン-酢酸緩衝液が含まれる。
本明細書における組成物及び製剤は、処置される特定の適応症に必要な1つより多くの活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
有効成分は、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンにおいて、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセルによって調製されたマイクロカプセル内に封入することができる。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。持続放出調製物の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌性は、例えば、滅菌ろ過膜を通したろ過によって容易に達成され得る。
VI.製品又はキット
本開示の抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)と、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って抗PD-L1抗体を使用するための説明書を伴う添付文書とを含む製造品又はキットが本明細書において更に提供される。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、薬学的に許容可能な担体中に存在する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は単位用量で提供される。いくつかの実施形態では、単位用量は840mgである。いくつかの実施形態では、単位用量は840mgであり、単位用量は14mLの溶液(例えば、薬学的に許容可能な担体を含む)中に提供される。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は容器内に存在する。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、又はポリオレフィン等)、又は金属合金(ステンレス鋼又はハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、容器は、製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を有する添付文書等の商業的視点及び使用者の視点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの実施形態では、製品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗新生物薬)のうちの1つ以上を更に含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。
前述の記述は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると見なされる。以下の実施例は、例証目的で提示されるにすぎず、決して本発明の範囲を限定するようには意図されていない。実際、本明細書に示され、記載される修正に加えて、本発明の種々の修正が前述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内にある。
概要
プログラム死リガンド1(PD-L1)又はプログラム死-1(PD-1)を標的とする免疫チェックポイント阻害は、腫瘍細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1発現が抗がん免疫応答を阻害することができるので、複数のヒトがんの処置における重要なアプローチになっている(Chen et al.,(2013)Immunicty doi:10.1016/j.immuni.2013.07.012)。アテゾリズマブ、ヒト化、操作されたモノクローナル免疫グロブリン(Ig)G1抗体は、PD-L1を選択的に標的とし、その受容体との相互作用を遮断してT細胞活性化を促進し、抗がん活性を再活性化させて増強するが、PD-L2とPD-1との間の相互作用は無傷のままである(Chen et al.,(2013)Immunicty doi:10.1016/j.immuni.2013.07.012;Chen et al.,(2012)Clin Cancer Res doi:10.1158/1078-0432.CCR-12-1362;Herbst et al.,(2014)Nature doi:10.1038/nature14011)。アテゾリズマブは、米国、欧州及びその他の地域における特定の種類の局所進行性又は転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)及び尿路上皮癌(UC)、並びに米国における局所進行性又は転移性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)及び進展型小細胞肺がん(SCLC)の処置に承認されている(Tecentriq(アテゾリズマブ)[添付文書]。カリフォルニア州サウスサンフランシスコ:Genentech,Inc.;2019.米国カリフォルニア州南サンフランシスコ:Genentech,Inc.;Tecentriq(アテゾリズマブ)[製品特性の要約]英国ウェリン・ガーデン・シティ: Roche Registration Limited;2018)。UC及びNSCLCアテゾリズマブ単剤療法の適応症並びにNSCLC及びSCLCアテゾリズマブ併用療法の適応症は、1200mg q3wのIV注入について最初に承認された。
交換可能に使用することができる代替投与レジメンの特定は、特に多様な投与要件を有する併用レジメンについて、患者のがんの処置においてより大きな利便性を提供するであろう。
以下の実施例は、進行した非小細胞肺がん(NSCLC)又は尿路上皮癌(UC)を有する患者におけるアテゾリズマブ曝露と有効性又は安全性との間の曝露応答(ER)関係を決定し、代替投与レジメンを特定するための試験を記載する。特に、以下の実施例は、9つの臨床試験(表1A及び表1B)からの第二選択(2L)非小細胞肺がん(NSCLC)並びに第一選択(1L)シスプラチン不適格及び2L転移性尿路上皮癌(UC)におけるアテゾリズマブについて入手可能な統合された臨床薬理学情報に基づく、アテゾリズマブ単剤療法の薬物動態(PK)モデリング及びシミュレーション予測を提供する。
これらの研究の目的は、有効性及び安全性についてのアテゾリズマブER関係を決定し、この知識を集団PK(popPK)シミュレーション及びアテゾリズマブの既知の安全性プロファイルと共に適用して、代替投与レジメンを特定することであった。
本明細書に記載される結果は、承認された1200mg q3w投与レジメン(最初の投与のために60分間にわたって静脈内注入として投与され、次いで、患者によって忍容される場合、その後の注入が30分間にわたって投与される)のアテゾリズマブ曝露、したがって曝露応答(ER)関係が、本明細書に開示される1680mg q4w及び840 q2w投与レジメン(最初の投与では60分間にわたって静脈内注入として投与され、次いで、患者によって忍容される場合、その後の注入が30分間にわたって投与される)に匹敵することを示唆する。試験PCD4989g、試験GO28915(OAK)及び試験GO29294(IMvigor211)からのデータに基づく安全性分析及び免疫原性データもまた、新しい840mg q2w及び1680mg q4w投与レジメンを支持している。
1L=第一選択;2L=第二選択;2L+=第二選択以降;mUC=転移性尿路上皮癌腫;NSCLC=非小細胞肺がん;ORR=完全奏効率;q3w=3週間毎;OS=全生存期間;PK=薬物動態。
aシスプラチン不適格患者
b 無作為化試験(すなわち、IMvigor211、POPLAR、OAK)について、登録された数には、アテゾリズマブ群に登録された患者が含まれる
実施例1
アテゾリズマブ単剤療法の薬物動態特性
この実施例では、アテゾリズマブの薬物動態(PK)特性を、単剤療法の状況で行われた8つのアテゾリズマブ研究にわたって比較する(表1を参照されたい)。Cmin、Cmax及びAUC等の重要なPK特性を、固定した1200mg q3w用量を使用した臨床試験に基づいて計算し、固定した1680mg q4w及び840mg q2w用量について推定した。重要な患者の特徴も、潜在的な共変量として分析した。
アテゾリズマブPKは、固定1200mg用量のアテゾリズマブを含む、1~20mg/kgのアテゾリズマブの用量範囲にわたって線形であった。アテゾリズマブPKは、サイクル1で同じ用量レベルについて同様に観察されたC
max及びC
minによって示されるように、試験間で同等であるようである(表2)。
方法論
ソフトウェア
いくつかの実施形態では、この実施例及び本明細書で提供される他の全ての実施例において、以下のソフトウェアツール及び方法を使用した。記述統計を含むデータセットの準備、探索、視覚化、及び分析を、Rバージョン3.4.3及びComprehensive R Archive Networkパッケージを使用して実施した。相互作用を伴う一次条件付き推定アルゴリズム(非線形混合効果モデリングツール[NONMEM]バージョン7.3;米国メリーランド州エリコットシティのICON Development Solutions)(Beal et al.,(2011)NONMEM User’s Guides.(1989-2011))を使用した非線形混合効果モデリングを、個々のPKパラメータのベイズ推定に使用した。ロジスティック回帰を、Rにおける一般化線形モデル関数をファミリ「二項」(分散=二項;link=ロジット)と共に使用した。Monte Carlo PKシミュレーションを、NONMEMバージョン7.3を使用して実施し、評価対象のシミュレーションデータセットを、Rを使用して作成した。
popPKモデル
アテゾリズマブの集団PK(popPK)を、2つの臨床試験(「第I相popPKモデル」):試験PCD4989g及び試験JO28944からの第I相データに基づいて最初に評価した。その後、第I相popPKモデルを、UCについてはIMvigor210及びIMvigor211で収集したPKデータ並びにNSCLCについてはBIRCH、POPLAR、FIR及びOAKで収集したデータを使用して、UC及びNSCLCについて別々に外部検証に供した。
分析に用いたデータ
第I相popPKモデルでは、血清中のアテゾリズマブの薬物動態を、研究PCD4989g及びJO28944からの4563のサンプルを用いて472人の患者で評価した。
popPKモデルを、IMvigor210からの1251のサンプルを有する423名の患者(処置429のうち、98.6%)、BIRCH、POPLAR及びFIRからの3891のサンプルを有する920名の患者(処置938のうち、98.1%)、OAKからの2754のサンプルを有する596名の患者(処置608のうち、98%)及びIMvigor211からの1939のサンプルを有する455名の患者(処置467のうち、97%)のアテゾリズマブ血清PKサンプルを用いて外部検証した。
基礎集団PKモデル
第I相popPKモデルについては、NONMEM 7、バージョン7.3(ICON、メリーランド州)における相互作用を伴う一次条件付き推定法を用いた非線形混合効果手法を用いて、基礎popPKモデルを開発した。いくつかの候補モデルをPKデータに当てはめた。様々な残留OMEGAマトリクスモデルを評価した(ブロック:IIV間の相関を考慮する;対角線:互いに独立したIIV)。薬物動態の非線形性は、ミカエリス-メンテンモデルを用いて評価した。
共変量の選択
第I相popPKモデルについては、ベースモデルが完成すると、一次PKパラメータに対する共変量の潜在的影響の評価を実施した。
第1段階では、相関の程度を定性的に評価するために、集団ベースPKモデルによって生成されたPKパラメータの変量効果を分析に含まれる共変量に対してプロットした。散布図を使用して連続変数の影響を調べ、箱ひげ図を使用してカテゴリー変数の影響を調べた。
第2段階では、形式的な共変量分析は、変数増加法及び変数減少法を伴うステップワイズアプローチを含み、構造モデルをベースラインとして使用し、共変量モデルをますます複雑にした。各モデル推定後、共変量を評価して、いずれが閾値より大きい目的関数値(OFV)の最大の改善をもたらしたかを見た(1自由度及びp<0.01の有意水準についてはΔOFV>-6.64)。その共変量を構造パラメータの回帰モデルに追加し、モデルを推定した。全ての有意な効果が説明されるまで、このプロセスを繰り返した。次いで、除去が閾値未満の適合度の最小の減少をもたらしたパラメータに対する共変量を排除するため、後退的減少法(backward deletion)の反対方向にプロセスを繰り返した(p<0.001の有意水準で1自由度についてはΔOFV>+10.83、2自由度については13.8)。
以下の共変量を調査した:性別、年齢、体重(BW)、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス、腫瘍負荷量、肝転移の存在、脳転移、内臓転移、及び転移部位の数、肝機能(AST、ALT、アルブミン、ビリルビン)、腎機能(クレアチニンクリアランス、推定糸球体濾過量(eGFR))、処置下で出現する抗薬物抗体(ADA)。
統計学的に有意な人口統計学的集団又は病態生理学的共変量を前進的選択法アプローチ及び変数減少法アプローチによって選択した後、追加の共変量を評価した:製剤(F01対F03)、PD-L1状態(ICスコア及びTCスコア)、人種、領域、腫瘍タイプ(尿路上皮癌対その他及びNSCLC対その他)。
外部検証:尿路上皮癌
第I相popPKモデルを使用して、IMvigor210及びIMvigor211で観察されたアテゾリズマブ濃度-時間プロファイルに基づいて個々のPK推定値を導出した。非線形混合効果モデリング手法を、NONMEM 7、バージョン7.3(ICON、メリーランド州)におけるベイズ事後推定(MAXEVAL=0)と共に使用した。
第I相popPKモデルに基づいて予測補正視覚予測検査(pcVPC)を実施し、IMvigor210及びIMvigor211で観察されたピーク(Cmax)及びトラフ(Cmin)を対応する予測分布と比較した。IMvigor210及びIMvigor211の患者レベルの変量効果の個々の推定値を得て、ベースライン共変量に対してプロットして、第I相popPKモデルがIMvigor210及びIMvigor211において共変量効果を適切に捕捉したかどうかを評価した。
外部検証:非小細胞肺がん
第I相popPKモデルを使用して、BIRCH、POPLAR、FIR、及びOAKで観察されたアテゾリズマブ濃度-時間プロファイルに基づいて個々のPK推定値を導出した。非線形混合効果モデリング手法を、NONMEM 7、バージョン7.3(ICON、メリーランド州)におけるベイズ事後推定(MAXEVAL=0)と共に使用した。
第I相popPKモデルに基づいてpcVPCを行い、BIRCH、POPLAR、FIR及びOAKで観察されたピーク(Cmax)及びトラフ(Cmin)を対応する予測分布と比較した。BIRCH、POPLAR、FIR及びOAKの患者レベルの変量効果の個々の推定値を得て、ベースライン共変量に対してプロットして、第I相popPKモデルがBIRCH、POPLAR、FIR及びOAKの患者において共変量効果を適切に捕捉したかどうかを評価した。
結果
第I相popPKモデルの概要
非コンパートメント分析(NCA)は、≧1mg/kgの用量が用量に比例した薬物動態を示すことを示した。
第I相popPKモデルでは、2つの研究PCD4989g及びJO28944(用量範囲:1-20mg/kg q3w(固定用量の1200mg q3wのアテゾリズマブを含む))にわたるアテゾリズマブの血清薬物動態を、一次排除を伴う線形2-コンパートメント配置モデルによって記述した。推定された典型的な集団の総薬物クリアランス(CL)は0.200L/日であり、中央コンパートメント(V1)の典型的な分布容積は、40g/Lのアルブミンを有する男性患者では3.28Lであった。
定常状態条件下での典型的な分布容積(Vss)及び最終t1/2推定値は、それぞれ6.9L及び27日であった。現在の集団におけるシミュレーションに基づいて、以下のq3wサイクルの中央値(範囲)数の後に定常状態の90%が達成される:Cmin、Cmax及びAUCについてそれぞれ3サイクル(1~6)、2サイクル(1~4)及び3サイクル(1~5)。個体間変動(IIV)は、CL、V1、及び末梢コンパートメント内の分布容積(V2)について、それぞれ29%、18%、及び34%と推定された。
popPKモデルによって同定された統計学的に有意なパラメータと共変量との関係を図1に示す。最終的なpopPKパラメータを表3に示す。
ADAが陽性であった患者では、CLはADAのない患者よりも16%高いと推定される。女性では、分布容積は、V1及びV2についてそれぞれ男性よりも13%及び27%低くなる。共変量は、極値に対する典型的なPKモデルパラメータから27%を超える変化を誘発しなかった。
1200mgのアテゾリズマブq3wの複数回投与後のCmin、Cmax、及びAUCについてのpopPKモデル推定幾何平均蓄積率は、それぞれ2.75、1.46、及び1.91倍であった。試験PCD4989gでは、NCAから推定された幾何平均蓄積率は、popPKモデル推定値と一致して、Cmin及びCmaxについてそれぞれ2.07~2.39及び1.21~1.41の範囲であった。観察された蓄積の程度は、q3wを投与した27日間のt1/2で報告されたpopPKに基づいて予測されたものと密接に一致する。
popPKモデルにより推定されたCmin、Cmax及びAUCの幾何平均蓄積率は、840mgのアテゾリズマブq2wの複数回投与後にそれぞれ3.05、1.84及び2.54倍であり、1680mgのアテゾリズマブq4wの複数回投与後にそれぞれ1.88、1.35及び1.72倍であった。
統計学的に有意な共変量がアテゾリズマブの定常状態曝露(定常時血清中濃度-時間曲線下面積[AUCss]、定常時最大血清中濃度[Cmax,ss]及び定常時最小血清中濃度[Cmin,ss])に及ぼす影響を調べるために感度分析を行った。図2は、1200mg用量q3w後のアテゾリズマブ定常状態曝露に対する各共変量(連続共変量について10パーセンタイルと90パーセンタイルとの間で変動する)の孤立した影響を示す。
全体として、男性は女性と比較して中程度に高い曝露を有する。
アルブミンが低い患者は、曝露が低く、Cmin,ssに対する影響が大きい傾向がある。
ベースライン腫瘍量及び処置下で出現した陽性ADAは、この分析で調査された用量範囲にわたる曝露(すなわち、1~20mg/kgのアテゾリズマブq3w、又は固定1200mg用量q3w)にわずかな影響を及ぼす。
全体として、共変量効果は、最も低い極端な体重(すなわち、10パーセンタイル)で評価した場合のBWを除いて、典型的な患者(典型的な患者は、体重77kg、アルブミンレベル40g/L及び腫瘍負荷量63mmの、処置下で発現したADA陰性の男性である)からの曝露の30%を超える変化を誘発しなかった。54 kg未満のBWを有する患者は、典型的な患者よりも、それぞれ最大32%、28%、40%高いAUC,ss、Cmax,ss又はCmin,ssを有するであろう。
これらの共変量効果のいずれも、6μg/mLの目標血清濃度よりも低いCmin,ssをもたらすと予想されない。アテゾリズマブの薬物動態に対するこれらの比較的中程度の効果がある場合の臨床的意義の更なる評価を、以下に提供されるER評価に記載する(例えば、実施例2~3)。
年齢は、年齢範囲21-89歳(n=472)及び中央値62歳の患者に基づいて、アテゾリズマブの薬物動態に影響を及ぼす有意な共変量として特定されなかった。<65歳の患者(n=274)、65-75歳の患者(n=152)及び>75歳の患者(n=46)の間で、アテゾリズマブの薬物動態に臨床的に意味のある差は観察されなかった。年齢に基づく用量調整は必要ない。
アテゾリズマブのCLにおける臨床的に重要な差は、正常な(eGFR 90mL/分/1.73m2以上;n=140)腎機能を有する患者と比較して、軽度(eGFR 60~89mL/分/1.73m2;n=208)又は中等度(eGFR 30~59mL/分/1.73m2;n=116)の腎機能障害を有する患者では見られなかった。重度の腎機能障害を有する患者はほとんどいなかった(eGFR 15~29mL/分/1.73m2;n=8)。
軽度肝機能障害(ビリルビン≦ULN及びAST>ULN、又はビリルビン>1.0~1.5×ULN及び任意のAST;n=71)を有する患者と正常肝機能(ULN以下のビリルビン及びAST;n=401)患者との間でアテゾリズマブのCLに臨床的に重要な差はなかった。中等度~重度の肝機能障害を有する患者のデータは入手できなかった。
ECOGパフォーマンスステータス又は転移(部位数;脳、肝臓又は内臓の転移)は、アテゾリズマブ薬物動態に影響を及ぼすことは見出されなかった。最終モデルにおいて有意な人口統計学的及び病態生理学的共変量効果について調整した後、患者レベルの変量効果のグラフ調査(graphical exploration)により、製剤がアテゾリズマブ薬物動態に影響せず、免疫細胞又は腫瘍細胞のいずれにおいてもPD-L1発現に影響しなかったことが明らかになった。UC又はNSCLCを有する患者は、他の腫瘍型を有する患者とは異なるPKパラメータを有する何らの傾向も示さなかった。
尿路上皮癌に対するpopPKモデルの外部検証
外部検証のため、IMvigor210及びIMvigor211からのPKデータを、IMvigor210及びIMvigor211からの実際の投薬履歴並びに第I相popPKモデルを用いてシミュレートした(1000個の複製)。IMvigor210及びIMvigor211についてのアテゾリズマブデータの予測補正視覚予測検査(pcVPC)をそれぞれ図3A及び図3Bに提供する。
IMvigor210及びIMvigor211のpcVPCは、対応する予測パーセンタイルよりも幾分狭い観察されたサイクル1 Cmaxの95及び5パーセンタイルを除いて、全てのサイクルの観察されたCmax及びCminの中央値、95及び5パーセンタイルが概して良好に捕捉されたことを示唆した。複数回投与時のアテゾリズマブ曝露データの過剰予測又は過小予測に向かう一貫した傾向は見られなかった。pcVPCは、第I相popPKモデルがIMvigor210及びIMvigor211からの全患者のアテゾリズマブPKデータを予測するのに適切であることを示唆した。第I相popPKモデルを用いた事後推定を行って、IMvigor210及びIMvigor211からの患者における個々の変量効果及びPKパラメータを得た。IMvigor210及びIMvigor211のデータにおける共変量効果は、第I相popPKモデルで同定されたものと一致し、第I相popPKモデルで以前に同定されなかった新たな共変量効果はないようであった。
NSCLCに対するpopPKモデルの外部検証
同様に、BIRCH、POPLAR、FIR及びOAKからの実際の投薬履歴並びに第I相popPKモデルを用いて、BIRCH、POPLAR、FIR及びOAKからのPKデータをシミュレートした(1000個の複製)。BIRCH、POPLAR、及びFIRアテゾリズマブプールデータのpcVPCs、及びOAKを別々に図4A及び図4Bに示す。
全ての患者のpcVPC(BIRCH、POPLAR、及びFIR研究の組合せ、OAKは別途)は、全てのサイクルで観察されたCmax及びCminの中央値、95及び5パーセンタイルが概ね良好に捕捉されたことを示唆した。複数回投与時のアテゾリズマブ曝露の過剰予測又は過小予測に向かう一貫した傾向は見られなかった。試験によるpcVPCsは、第I相popPKモデルが、BIRCH(全てのコホート)並びにFIR(全てのコホート)及びOAKにおけるアテゾリズマブPKデータを予測するのに適切であることを示唆した。POPLARでは集団レベルの予測及び残差が負になる傾向が観察されたが、この傾向は個々の予測及び残差で解消され、第I相popPKモデルが全ての研究において個々のパラメータの信頼性の高いロバストなベイズ推定を可能にしたことを示している。第I相popPKモデルを使用した事後推定を実施して、BIRCH、FIR、POPLAR及びOAKに登録された患者から個々の変量効果及びPKパラメータを得た。BIRCH、FIR、POPLAR及びOAKデータにおける共変量効果は、第I相popPKモデルで同定されたものと概ね一致していた。POPLARではCLが速く、V1が大きくなる傾向があるが、POPLARでの曝露はこれらの効果によって中程度にしか影響を受けなかった(すなわち、AUC、Cmax及びCminは、一般に、BIRCH、FIR及びOAKからの推定値の20%以内であった)。CLとBWの変量効果の関係は負の相関係数を特徴とし、NSCLC患者におけるこの関係が第I相popPKモデルによって示唆されるほど急ではない可能性があることを示唆している。BIRCH、FIR、POPLAR及びOAKでは、新たな予想外の共変量効果は特定されなかった。NSCLC患者のBIRCH、FIR、POPLAR及びOAKで得られた組み合わせアテゾリズマブPKデータは、第I相popPKモデル推定値と一致する。
アテゾリズマブのPKに対する内因性因子の効果の要約
高齢患者においてアテゾリズマブの専用研究は行われていない。popPK分析では、年齢は、21歳~89歳の患者(n=472)及び62歳の中央値に基づいて、アテゾリズマブ薬物動態に影響を及ぼす有意な共変量として特定されなかった。<65歳の患者(n=274)、65-75歳の患者(n=152)及び>75歳の患者(n=46)の間で、アテゾリズマブの薬物動態に臨床的に重要な差は観察されなかった。年齢に基づく用量調整は必要ない。小児患者におけるアテゾリズマブの専用研究は完了していない。
popPK分析では、性別は、276人の男性(58.5%)及び196人の女性(41.5%)を含むデータセットに基づいて、CLではなくV1及びV2の両方で統計学的に有意な共変量として特定された。女性では、容積は、それぞれV1及びV2について男性よりも13%及び27%低い。典型的な女性患者(77kgに正規化された体重)では、典型的な男性患者と比較して、アテゾリズマブのAUCss、Cmax,ss、又はCmin,ssの増加は10%未満であろう。
最終的なpopPKモデルにおける共変量効果について調整した後、人種(アジア人n=17、黒人n=15、及び白人n=375)は、アテゾリズマブの薬物動態に対して有意な共変量ではなく、アテゾリズマブCLと臨床的関連性はなかった。
腎機能障害を有する患者において正式なPK試験は行われていない。popPK分析に基づいて、アテゾリズマブのCLにおける臨床的に重要な差は、正常な(eGFR 90mL/分/1.73m2以上;n=140)腎機能を有する患者と比較して、軽度(eGFR 60~89mL/分/1.73m2;n=208)又は中等度(eGFR 30~59mL/分/1.73m2;n=116)の腎機能障害を有する患者では見られなかった。重度の腎機能障害を有する患者はほとんどいなかった(eGFR 15~29mL/分/1.73m2;n=8)。腎機能に関連する共変量に基づく用量調整は必要とされない。
肝機能障害を有する患者において正式なPK試験は行われていない。popPK分析に基づいて、軽度肝機能障害(ビリルビン≦ULN及びAST>ULN、又はビリルビン>1.0~1.5×ULN及び任意のAST;n=71)を有する患者と正常肝機能(ULN以下のビリルビン及びAST;n=401)患者との間でアテゾリズマブのCLに臨床的に重要な差はなかった。軽度肝機能障害患者における用量調整は必要ない。中等度又は重度の肝機能障害を有する患者のデータは入手できなかった。
popPK分析に基づいて、ECOGパフォーマンスステータス又は転移(部位数;脳、肝臓又は内臓の転移)は、アテゾリズマブ薬物動態に影響を及ぼすことは見出されなかった。アルブミン及び腫瘍負荷量は、CLに対する統計学的に有意な共変量として特定された。これらの共変量のいずれも、これらの共変量の分布の極値(すなわち、10パーセンタイル及び90パーセンタイル)で評価した場合、典型的な患者からのAUCss、Cmax,ss、又はCmin,ssにおいて30%を超える変化をもたらさなかった。最終的なpopPKモデルにおける共変量効果について調整した後、腫瘍浸潤免疫細胞(ICスコア)又は腫瘍細胞(TCスコア)のいずれかにおけるPD-L1発現は、アテゾリズマブの薬物動態に影響を及ぼさなかった。UC又はNSCLCを有する患者は、他の腫瘍型を有する患者とは異なるPKパラメータを有する何らの傾向も示さなかった。
アテゾリズマブのPKに対する外因性因子の効果の要約
popPK分析では、アテゾリズマブの薬物動態に対する製剤/製剤の変更の影響はなかった。PK薬物-薬物相互作用研究は行われていない。
最終的なpopPKモデルにおける共変量効果について調整した後、地域(日本対スペイン対フランス対英国対米国)は、アテゾリズマブの薬物動態に対して有意な共変量ではなく、アテゾリズマブCLに対して臨床的関連性はなかった。
実施例2
尿路上皮癌及び非小細胞肺がんにおけるアテゾリズマブの曝露有効性の関係
曝露有効性(ER)分析を実施して、各適応症(UC又はNSCLC)の患者集団並びにプールされた患者集団(UC及びNSCLC)について臨床的有効性とアテゾリズマブ曝露との間の可能性のある関係を評価した。
方法論
プールER分析の概要
以下に記載されるように、客観的奏効率、全生存期間及び有害事象を薬物動態(PK)メトリックに対して評価した。
ベースライン予後因子(Yang et al.,(2013)J Clin Pharmacol doi:10.1177/0091270012445206;Wang et al.,(2014)Clin Pharmacol Ther doi:10.1038/clpt.2014.24)との交絡並びにアテゾリズマブ及び他のチェックポイント阻害剤について観察されているクリアランスの時間依存的変動(Tecentriq(アテゾリズマブ)[添付文書]。カリフォルニア州サウスサンフランシスコ:Genentech,Inc.2019.米国カリフォルニア州南サンフランシスコ:Genentech,Inc.;Bi et al.,(2019)Ann Oncol doi:10.1093/annonc/mdz037;Bajaj et al.,(2017)CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol doi:10.1002/psp4.12143;Li et al.,(2017)J Pharmacokinet Pharmacodyn doi:10.1007/s10928-017-9528-y;Liu et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.656;Wang et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.628).の両方に起因する潜在的なバイアスを最小限に抑えるために、サイクル1データに基づいて以前の臨床試験で評価されたPKメトリックとORR、OS、グレード3~5のAE及びAESIエンドポイントとの間の任意の関係を伝えるためにER分析を行った。これらの分析は、全生存期間(OS)について以下に述べることを除いて、曝露データが利用可能であった、アテゾリズマブで処置されたNSCLC又はUCの患者(PCD4989g、OAK、及びIMvigor211から)からのプールデータを使用して行った。探索的ER分析を、抗PD-1及び抗PD-L1剤について以前に観察された(Li et al.,(2017)J Pharmacokinet Pharmacodyn doi:10.1007/s10928-017-9528-y)応答依存性の時間変動クリアランスの影響を最小限に抑えるために推奨されるように(Liu et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.656)、サイクル1の最大血清濃度(Cmax)、Cmin及び濃度-時間曲線下面積(AUC;時間0~21日)を使用して行った。AUC(時間0~21日)、Cmax及びCminを、サイクル1のデータのみ及び以前に開発されたpopPKモデル(Stroh et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.587)を使用して推定された個々のPKパラメータに基づいてサイクル1で導出した。評価した有効性評価項目は、治験責任医師が評価した固形腫瘍の確認応答評価基準バージョン1.1(RECIST 1.1)の客観的奏効率(ORR;全ての研究における副次評価項目)及びOS(OAK及びIMvigor211の主要評価項目)であった。ORR分析は、PCD4989g、OAK(最初の無作為化患者850名)及びIMvigor211においてNSCLC又はUCを有するアテゾリズマブ処置患者からのデータを使用し、OS分析は、OAK(最初の無作為化患者850名)及びIMvigor211のみからのデータを使用した。評価した安全性評価項目には、国立がん研究所有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)バージョン4及びMedical Dictionary for Regulatory Activitiesバージョン20.1(OAK及びIMvigor211でも評価された、PCD4989gにおける主要評価項目)によるグレード3~5の有害事象(AE)並びに特に注目すべきAE(AESI;全試験で評価)が含まれた。自己免疫障害を示唆する状態であるAESIを事前に定義した(Petrylak et al.,(2018)JAMA Oncol doi:10.1001/jamaoncol.2017.5440)。
ORR及びAEを二値エンドポイント(あり/なし)として評価し、ロジスティック回帰を使用して連続変数として曝露に対して調査した。Wald検定P値を、各ロジスティック回帰について、曝露四分位について計算した割合/頻度及びそれらの95%CIと共に報告した。OSデータについては、患者のベースライン情報とアテゾリズマブのクリアランス及び曝露との間の交絡因子を軽減するために、TGI-OSモデリング(Bruno et al.,(2014)Clin Pharmacol Ther doi:10.1038/clpt.2014.4;Claret et al.,(2018)Clin Cancer Res doi:10.1158/1078-0432.CCR-17-3662)を行った。この分析で評価可能であるためには(TGI評価可能)、患者は処置後の最長径の和(SLD)評価が≧1である必要があった。OSに対する個々のベースライン予後因子及びTGIメトリック(RECIST 1.1による標的病変のSLDの双指数縦断モデルにおける推定腫瘍縮小及び腫瘍増殖速度)の影響を、Kaplan-Meier及びCox回帰分析を用いて調査し、パラメトリック多変量回帰TGI-OSモデルを構築した。最終的なTGI-OSモデルを、異なるサブグループにおける対照と比較したOS分布及びハザード比(HR)を記述する能力(特に、曝露四分位数による)においてシミュレーションによって検証した。HRシミュレーションのために、対照患者のTGIメトリック推定値及びベースライン共変量を以前の分析から得た(Claret et al.,(2018)Clin Cancer Res doi:10.1158/1078-0432.CCR-17-3662;Bruno et al.,(2018)J Clin Oncol doi:10.1200/JCO.2018.36.5_suppl.62)。曝露メトリックを、予後因子との交絡を調整した後の最終多変量モデルで試験した。必要に応じて、「腫瘍タイプ」因子をモデルに組み込んだ。
尿路上皮癌のER分析及びOSモデリング
mUC患者のアテゾリズマブ曝露有効性の関係を、IMvigor210及びIMvigor211の2つの研究で個別に評価した。両方の研究において、サイクル1曝露メトリクスを使用して、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体で以前に観察されたクリアランスのわずかな時間及び応答依存的変化に対応した。IMvigor210については、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)を有効性メトリックとして使用した。IMvigor211については、ORR及び主要評価項目OSを曝露有効性評価に使用した。
アテゾリズマブ曝露メトリクス(AUC、Cmax、及びCmin)を、個々のPKパラメータに基づく模擬PKプロファイルからサイクル1で導出した。アテゾリズマブAUCssを開始用量/CLとして計算した。
ORRを奏効者の状態(あり/なし)によって特徴付けた。奏効者の割合及び95%CIを、等しい数の個体(例えば、四分位数)を用いて曝露間隔について計算した。そのような各相関について、ロジスティック回帰を行い、ロジスティック回帰における奏効確率に対する曝露効果についてのWald検定p値を報告した。
患者の予後因子とアテゾリズマブのクリアランス及び曝露との間の交絡を軽減するために、腫瘍成長阻害-全生存期間(TGI-OS)モデリング(疾患モデリング)を行った。患者レベルの腫瘍成長阻害(TGI)メトリクスは、Stein et al.,(2011)Clin Cancer Res 18:907-917によって以前に記載され、評価可能な患者に適合したClaret et al.,(2013)J Clin Oncol 31:2110-2114によって実施された縦方向腫瘍サイズモデルからのパラメータ推定値を使用して推定した。個々の患者の成長速度定数(KG)によって特徴付けられる成長速度を、TGIモデルからの事後経験的ベイズ推定によって推定した。
多変量パラメトリックOSモデルを、KG及び他の共変量を用いて開発した。最初に単変量分析(Cox、p<0.05)からの全ての有意な共変量を含めることによって「完全な」OSモデルを構築し、次いで、p<0.01のカットオフを使用して後退的ステップワイズ減少法を実行した。OSモデルを、IMvigor211において観察されたOS分布及びハザード比(HR)をシミュレートするその能力において評価した。(Stein et al.,(2011)Clin Cancer Res 18:907-917,Claret et al.,(2013)J Clin Oncol 31:2110-2114)。
NSCLCのためのER分析及びOSモデリング
BIRCHからの固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)v1.1による独立評価施設(IRF)で評価されたORR、並びにPOPLAR及びOAKからのRECIST v 1.1によるOS及び治験責任医師によって評価されたORRを、曝露有効性評価において考慮した。RECIST v1.1によるIRF評価ORRは、BIRCHにおける主要評価項目であり、OSは、POPLAR及びOAKにおける主要評価項目であった。BIRCHの場合、曝露有効性評価における分析集団は、コホート2及び3で処置意図集団を表した二次以降の患者(2L+)TC 2/3又はIC2/3 NSCLC)であった。POPLAR及びOAKについては、曝露有効性評価における分析集団をPD-L1非選択NSCLC患者集団(すなわち、全ての到来者)とした。BIRCHからのRECIST v1.1によるIRF評価ORR及びPOPLAR及びOAKからのRECIST v1.1による治験責任医師評価ORRを、ERについて別々に分析した。
有効性エンドポイントORRを奏効者の状態(あり/なし)によって特徴付けた。頻度の割合及び95%CIを、等しい数の個体(例えば、四分位数)を用いて曝露間隔について計算した。各相関について、ロジスティック回帰を行い、ロジスティック回帰における曝露効果についてのWald検定p値を報告した。
p(ORR)~曝露
式中、p(ORR)は客観的奏効確率であり、曝露はアテゾリズマブ曝露メトリックである。
患者の予後因子とアテゾリズマブのクリアランス及び曝露との間の交絡を軽減するために、(TGI-OS)モデリング(疾患モデリング)を行った。患者レベルのTGIメトリクスは、Stein et al.,(2011)Clin Cancer Res 18:907-917によって以前に記載され、評価可能な患者に適合したClaret et al.,(2013)J Clin Oncol 31:2110-2114によって実施される縦方向腫瘍サイズモデルからのパラメータ推定値を使用して推定した。個々の患者のKGによって特徴付けられる成長速度を、TGIモデルからの事後経験的ベイズ推定によって推定した。
多変量パラメトリックOSモデルを、KG及び他の共変量により、回帰分析を用いて開発した。最初に単変量分析(Cox、p<0.05)からの全ての有意な共変量を含めることによって「完全な」OSモデルを構築し、次いで、p<0.01のカットオフを使用して後退的ステップワイズ減少法を実行した。OSモデルを、POPLAR及びOAKにおいて観察されたOS分布及びHRをシミュレートするその能力において評価した。次いで、モデルをシミュレートして、OS上のKGに起因する(交絡していない)ERを特徴付けた(Stein et al.,(2011)Clin Cancer Res 18:907-917,Claret et al.,(2013)J Clin Oncol 31:2110-2114)。
プール(UC及びNSCLC)ER分析及びOSモデリング
試験PCD4989g、IMvigor211及びOAKにおけるmUC又はNSCLCのいずれかを有する患者のプール分析において、アテゾリズマブ曝露有効性関係を評価した。曝露応答分析のために考慮された有効性エンドポイントは、試験PCD4989g、IMvigor211、及びOAKの全てのアテゾリズマブで処置されたmUC患者及びNSCLC患者におけるORR(RECIST v1.1を用いて治験責任医師が評価)、並びに試験IMvigor211及びOAKの全てのアテゾリズマブで処置されたmUC患者及びNSCLC患者におけるOSであった。サイクル1曝露メトリクスを使用して、抗PD-1及びPD-L1抗体について以前に観察されたクリアランスのわずかな時間及び応答依存的変化に対応した。
有効性エンドポイントORRを奏効者の状態(あり/なし)によって特徴付けた。奏効者の割合及び95%CIを、等しい数の個体(例えば、四分位数)を用いて曝露間隔について計算した。各相関について、ロジスティック回帰を行い、ロジスティック回帰における曝露効果についてのWald検定p値を報告した。
患者の予後因子とアテゾリズマブのクリアランス及び曝露との間の交絡を軽減するために、(TGI-OS)モデリング(疾患モデリング)を行った。患者レベルのTGIメトリクスは、Stein et al.,(2011)Clin Cancer Res 18:907-917によって以前に記載され、Claret et al.,(2013)J Clin Oncol 31:2110-2114によって実施された、評価可能な患者に適合した縦方向腫瘍サイズモデルからのパラメータ推定値を使用して推定した。個々の患者のKGによって特徴付けられる成長速度を、TGIモデルからの事後経験的ベイズ推定によって推定した。
多変量パラメトリックOSモデルを、KG及び他の共変量を用いて開発した。最初に単変量分析(Cox、p<0.05)からの全ての有意な共変量を含めることによって「完全な」OSモデルを構築し、次いで、p<0.01のカットオフを使用して後退的ステップワイズ減少法を実行した。OSモデルを、IMvigor211及びOAK(Stein et al.,(2011)Clin Cancer Res 18:907-917,Claret et al.,(2013)J Clin Oncol 31:2110-2114)において観察されたOS分布及びHRをシミュレートする能力において評価した。
アテゾリズマブ曝露メトリクス(AUC、Cmax、及びCmin)を、個々のPKパラメータに基づく模擬PKプロファイルからサイクル1で導出した。
結果
尿路上皮癌ER分析及びOSモデリングの結果
アテゾリズマブ1200mg q3wで処置されたIMvigor210(コホート1及び2)の患者と見なされる曝露メトリックのいずれとも、奏効確率とアテゾリズマブ曝露との間に統計的に有意なER関係はなかった。アテゾリズマブ1200mg q3wを受けているIMvigor210患者のORRとサイクル1 AUC、サイクル1 Cmin及びAUCssとの関係を、1Lシスプラチン不適格の尿路上皮癌患者については図5A~5Cに、2Lの尿路上皮癌患者については図6A~6Cに示す。
同様に、IMvigor211の患者について、統計学的に有意なER関係(サイクル1 AUC)は、アテゾリズマブ1200mg q3w後のORRでは特定されなかった(図7)。統計学的に有意なER関係は、単変量分析を使用してOSで最初に同定された。しかしながら、最終多変量モデル(p=0.0812)で試験した場合、曝露(AUCサイクル1)はもはや有意ではなく(p>0.01)、多変量OSモデルが単変量分析で見られたAUC-OS関係の交絡を調整したことを示した。TGIメトリクスのLog(KG)又はLog(KS)のいずれもAUCサイクル1と有意に相関しなかった。
popPKモデル(実施例1を参照されたい)で特定されたこれらの統計的に有意な共変量に関連するアテゾリズマブ曝露の変化はいずれも、臨床的に有意であると予想されず、又は用量調整を必要としない。したがって、アテゾリズマブ1200mg q3wフラット用量の投与後の典型的な患者と比較して、極端な重量値(すなわち、90パーセンタイル)で評価した場合のアテゾリズマブ曝露の減少は、臨床的意義があると予想されないか、又はBWによる用量調整を必要としない。
非小細胞肺がんER分析及びOSモデリング結果
BIRCH及びOAKにおいてアテゾリズマブ1200mg q3wで処置された患者について、奏効確率とアテゾリズマブ曝露との間に、検討された曝露メトリクスの少なくとも一方との統計的に有意なER関係があった。
BIRCH及びOAKについて、アテゾリズマブ曝露による奏効確率の増加傾向に関連する曝露メトリクスのうち、AUCss(それぞれp=0.0005343及びp<0.0003)に関連するp値が最も低かった。BIRCHについては、サイクル1 Cmin、サイクル1 AUC、AUCss及び体重のロジスティック回帰をそれぞれ図8A~8Dに提供する。OAKについては、サイクル1 Cmin、サイクル1 AUC、AUCss及び体重のロジスティック回帰をそれぞれ図9A~9Dに提供する。
POPLARにおいてアテゾリズマブ1200mg q3wで処置された患者について、奏効確率とアテゾリズマブ曝露との間に、検討された曝露メトリクスのいずれとも統計的に有意なER関係はなかったサイクル1 Cmin、AUCサイクル1、及びAUCssのロジスティック回帰を、それぞれ図10A~10Cに提供する。POPLAR中の2L/3L TC2/3又はIC2/3 NSCLC患者で感度分析を実施したところ、奏効確率とアテゾリズマブ曝露との間に統計学的に有意なER関係はないことが更に示唆された。
OSのモデルベースの評価もまた、POPLAR及びOAKにおける曝露有効性評価において検討した。POPLAR及びOAKの両方について、KGのLog(LogKG)及び一連の患者予後因子は、OSに対するアテゾリズマブの効果を説明した。
具体的には、POPLAR多変量OSモデルについて、転移部位の数、アルブミンレベル、及びlogKGは、OSに対するアテゾリズマブ効果を説明した。KGの対数はアテゾリズマブAUCssと相関していた。logKG上のERに基づいてOS上のERを推測するために、多変量OSモデルを使用した。AUCss 3分位数の各群において、アテゾリズマブをドセタキセルOSと比較するHRをシミュレートした。AUCss 3分位数及びドセタキセル群にわたる予後因子(転移部位の数及びアルブミンレベル)の不均衡を補正した後のOSモデルのシミュレーションは、全ての患者がアテゾリズマブ処置から利益を得ることを示唆した(低曝露患者におけるHR推定値[95%予測間隔]=0.859[0.820,0.906][1番目の3分位数];高曝露患者では0.614名[0.556,0.681][3番目の3分位数])(図11A)。
具体的には、OAK多変量OSモデルについて、最長直径のベースライン和(BSLD)、アルブミンレベル、ECOGパフォーマンスステータス>0、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル及びlogKGは、OSに対するアテゾリズマブ効果を説明した。logKGはアテゾリズマブAUCssと相関していた。logKGに対するERに基づいてOS上のERを推測するために、多変量OSモデルを使用した。AUCss 3分位数の各群において、アテゾリズマブをドセタキセルOSと比較するHRをシミュレートした。AUCssの3分位数及びドセタキセル群にわたる予後因子(ベースラインBSLD、アルブミン、ECOGパフォーマンスステータス、及びLDHレベル)の不均衡の補正後のOSモデルのシミュレーションは、全ての患者がアテゾリズマブによる処置から利益を得ることを示唆した(低曝露患者におけるHR推定値[95%予測間隔]=0.870[0.831,0.908][1番目の3分位数];高曝露患者では0.624名[0.582,0.670][3番目の3分位数](図11B)。
BIRCHでは、AUCssについてのER関係のシミュレーションにより、AUCssの中央値及び25パーセンタイルの患者について、それぞれ0.16(0.13,0.20)から0.13(0.10,0.17)へのORR(推定[予測間隔])の減少が示唆された。重複信頼区間(CI)、ORRのわずかな減少、及びこの処置設定においてOSと比較してORRによって測定される有効性間の相関の欠如を考慮すると、ORRのこの変化は臨床的意義がある可能性は低いと考えられる。更に、クリアランスの時間及び応答依存的減少が抗PD-1及びPD-L1阻害剤で観察されているので、曝露応答分析における曝露メトリックとしてのAUCssの使用は、曝露とORRとの間の潜在的関係を過大評価する可能性がある。
OAKでは、AUCssについてのER関係のシミュレーションにより、AUCssの中央値及び25パーセンタイルの患者について、それぞれ0.13(0.10,0.16)から0.10(0.07,0.14)へのORR(推定[予測間隔])の減少が示唆された。重複するCI、ORRのわずかな減少、及びこの処置設定においてOSと比較してORRによって測定される有効性間の相関の欠如を考慮すると、ORRのこの変化もまた臨床的意義がある可能性は低いと考えられる。POPLARでは、ORRとの統計的に有意なER関係はなかった。
第I相popPKモデル(すなわち、BW、性別、ADA、アルブミン、及び腫瘍負荷)における単一の効果はAUCssの>25%の減少と関連しなかったので、popPKモデルで同定された統計学的に有意な共変量に関連するAUCssの変化はいずれも、AUCssの25パーセンタイルでのORRの変化、又はBIRCH(図8C)又はOAK(図9C)についてのアテゾリズマブ曝露の最低3分位数でのOSのHRを超えると予想されない。UCと同様に、popPKモデルで特定されたこれらの統計的に有意な共変量に関連するアテゾリズマブ曝露の倍率変化はいずれも、臨床的に有意であると予想されず、又は用量調整を必要としない。
したがって、アテゾリズマブ1200mg q3wフラット用量の投与後に典型的な患者(すなわち、AUCssの21%の減少)と比較して極端な重量値で評価した場合のアテゾリズマブ曝露の減少は、BWによる用量調整又は調整を必要とする可能性は低いと考えられる。BIRCH(図8D)及びOAK(図9D)についてORRとBWとの統計的に有意な関係がないという観察結果は、アテゾリズマブの1200mg q3wフラット用量の選択を更に裏付けている。シミュレーションは、そうでなければ固定の1200mgのアテゾリズマブ用量後のアテゾリズマブ曝露の最低四分位にある患者への重量ベースでの15mg/kgのアテゾリズマブ用量の投与がこれらの患者のORRを改善しないことを示唆している。アテゾリズマブのフラットな1200mg q3w用量の更なる裏付けはOAKに由来し、BWの四分位によるOSのKaplan-Meierプロット(図12)は、より体重の重い患者がより体重の軽い患者と同様のOSを有することを示唆している。
プールされた(NSCLC及びUC)ER分析及びOSモデリング結果
PCD4989g、IMvigor211及びOAKにおいてアテゾリズマブで処置された患者からのmUC及びNSCLCにおけるORRを、曝露有効性評価において評価した。集団は、mUC及びNSCLC患者(曝露データを有する1042名のアテゾリズマブ処置患者)を含んでいた。分析集団におけるRECIST v 1.1あたりのORR(確認されたCR及びPRの割合;治験責任医師による評価)は15.7%であった(曝露データを有する1042名の患者のうち164名の奏効者)。mUC(15.9%、N=541人の患者)及びNSCLC(15.6%、N=501人の患者)ではORRに差はなかったため、腫瘍タイプはロジスティック回帰モデルに含まれなかった。
表4及び図13A~13Bに示されるように、奏効確率とアテゾリズマブ曝露との間に統計的に有意なER関係はなく、曝露メトリックのいずれもが考慮された(AUCサイクル1、C
maxサイクル1、及び
minサイクル1)。
予後因子と、アテゾリズマブのクリアランス及び曝露との間の交絡を軽減するため、概説したようにベースライン予後因子及びTGIメトリックを説明する多変量OSモデルを開発した。NSCLCを有するOAK患者(425人の処置企図[ITT]患者のうちn=388の評価可能なTGI[91%])におけるOS中央値は467日(95%CI、402~508日間)であり、UCを有するIMvigor211患者(467人のうちn=382のITT患者の評価可能なTGI[82%])におけるOS中央値は344日(95%CI、290~383日)であった。OS中央値は、NSCLC患者と比較してmUC患者においてより短かったので、腫瘍タイプを多変量モデルに組み込んだ。770人のTGI評価可能な患者のうち、764人が曝露データを有していた。
Log(腫瘍成長速度[KG])及びベースライン予後因子(ECOGパフォーマンスステータス>0、ベースライン腫瘍サイズ、アルブミンレベル、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルカリホスファターゼ、PD-L1ステータス及び腫瘍タイプ等)の個々の推定値は、OSの強い独立した予測因子であった(表5)。注目すべきことに、最終モデルにおけるベースライン共変量を考慮した後、サイクル1アテゾリズマブ曝露(サイクル1でのAUC、C
min又はC
max)は、最終モデルで試験した場合、もはや有意ではなかった(p>0.01)。
このモデルは、曝露がモデルに含まれていなくても、各腫瘍タイプの曝露四分位によるOS分布及びHRのシミュレーションにおいて良好に機能した。予測及び観察されたOSデータの比較を図14A~14B及び図15A~15Bに提供する。アテゾリズマブのフラットなER関係は、ベースライン共変量(中央値に固定)について調整した後のAUC四分位によるHRのシミュレーションにおいても示された(図16A~16B)。
実施例3
尿路上皮癌及び非小細胞肺がんにおけるアテゾリズマブの曝露安全性関係
曝露安全性分析を実施して、各適応症(UC又はNSCLC)の患者集団並びにプールされた患者集団(UC及びNSCLC)について安全性エンドポイントとアテゾリズマブ曝露との間の可能性のある関係を評価した。
方法
尿路上皮癌
グレード3~5の有害事象(AEG35)並びに試験PCD4989g(UCコホート)、IMvigor210(コホート1及びコホート2)及びIMvigor211(アテゾリズマブ群)からの特別な関心のある有害事象(AESI)を、曝露安全性関係について分析した。安全性エンドポイントを頻度(あり/なし)によって特徴付けた。頻度の割合及び95%CIを、等しい数の個体(例えば、四分位数)を用いて曝露間隔について計算した。そのような各相関について、ロジスティック回帰を行い、ロジスティック回帰における曝露効果についてのWald検定p値を報告した。
p(AE)~曝露
式中、p(AE)は有害事象の確率(すなわち、AEG35又はAESI)であり、曝露はアテゾリズマブ曝露メトリックである。アテゾリズマブ曝露メトリクス(AUC、Cmax、及びCmin)を、個々のPKパラメータに基づく模擬PKプロファイルからサイクル1で導出した。
非小細胞肺がん
研究BIRCH、POPLAR、FIR及びPCD4989g(NSCLCコホート)からのプールデータからのAEG35及びAESI、並びに別々のOAKデータを、曝露安全性分析に使用した。これらの安全性エンドポイントを頻度(あり/なし)によって特徴付けた。頻度の割合及び95%CIを、等しい数の個体(例えば、四分位数)を用いて曝露間隔について計算した。そのような各相関について、ロジスティック回帰を行い、ロジスティック回帰における曝露効果についてのWald検定p値を報告した。
p(AE)~曝露
式中、p(AE)は有害事象の確率(すなわち、AEG35又はAESI)であり、曝露はアテゾリズマブ曝露メトリックである。アテゾリズマブ曝露メトリクス(AUC、Cmax、及びCmin)を、個々のPKパラメータに基づく模擬PKプロファイルからサイクル1で導出した。
プール分析
UC及びNSCLCにおけるアテゾリズマブについての曝露安全性関係のプール分析を、上記及び実施例2の「プールされたER分析の概要」の項に記載されているように行った。
PCD4989g試験、IMvigor211試験及びOAK試験における全てのアテゾリズマブ処置mUC患者及びNSCLC患者におけるグレード2~5の有害事象(AEG25s)、グレード3~5の有害事象(AEG35s)及び特別な関心のある有害事象(AESI)を、曝露と安全性との関係について分析した。安全性エンドポイントを頻度(あり/なし)によって特徴付けた。頻度の割合及び95%CIを、等しい数の個体(例えば、四分位数)を用いて曝露間隔について計算した。そのような各相関について、ロジスティック回帰を行い、ロジスティック回帰における曝露効果についてのWald検定p値を報告した。
p(AE)~曝露
式中、p(AE)は有害事象の確率(すなわち、AEG25、AEG35又はAESI)であり、曝露はアテゾリズマブ曝露メトリックである。アテゾリズマブ曝露メトリクス(AUC、Cmax、及びCmin)を、個々のPKパラメータに基づく模擬PKプロファイルからサイクル1で導出した。
結果
尿路上皮癌
AEG35の発生率の分析は、PCD4989g及びIMvigor210のUC患者の組合せ分析におけるサイクル1 AUC(図17A)、Cmax(図17B)若しくはAUCss(図17C)、又は試験IMvigor211の独立した分析におけるサイクル1 AUC(図18A)又はCmax図18Bを含めて、調査したいずれの曝露メトリックとも統計的にいかなる有意なER関係も示さなかった。
同様に、AESIの発生率の分析は、PCD4989g及びIMvigor210のUC患者の組合せ分析におけるサイクル1 AUC(図19A)、サイクル1 Cmax(図19B)若しくはAUCss(図19C)、又は試験IMvigor211の独立した分析におけるサイクル1 AUC(図20A)又はサイクル1 Cmax図20Bを含めて、調査したいずれの曝露メトリックとも統計的にいかなる有意なER関係も示さなかった。
非小細胞肺がん
AEG35の発生率の分析は、PCD4989g、BIRCH、POPLAR及びFIRのNSCLC患者の組合せ分析におけるサイクル1 AUC(図21A)、サイクル1 Cmax(図21B)及びAUCss(図21C)、又はOAKの独立した分析におけるサイクル1 AUC(図22A)、サイクル1 Cmax(図22B)又はAUCss(図22C))を含めて、調査した任意の曝露メトリックとの統計的に有意な正のER関係を示さなかった。
PCD4989g、BIRCH、POPLAR及びFIRにおけるNSCLC患者のプール分析のAESIの発生率の分析は、サイクル1のAUC(図23A)又はCmax(図23B)との統計学的に有意なER関係を示さなかったが、AUCss(図23C)と統計学的に有意な関係を有していた。OAKについては、AESIの発生率の分析は、サイクル1 AUC(図24A)、サイクル1 Cmax(図24B)又はAUCss(図24C)を含めて、調査した任意の曝露メトリックとの統計的に有意なER関係を示さなかった。
試験BIRCH、POPLAR、FIR及びPCD4989g(NSCLCコホート)からのプールデータについて、AESIはいくつかの異なる事象を含み。最も頻度の高いAESI(15人以上の患者に見られる))をAUCssとの関係について評価した。所見は、AESIの確率のわずかな増加を示唆したが、この増加は臨床的意義があるとも、用量調整を必要とするとも考えられなかった。AESIに関するこの知見は、OAKでは観察されなかった。OAKと以前のプールされた試験データとの間のAUCssについてのAESIアテゾリズマブERの有意性の間の不一致の理由は不明である。以下に詳述するように、AESIのプールされた試験データで特定されたER傾向は、臨床的意義があると見なされないことにも留意されたい。
試験BIRCH、POPLAR、FIR及びPCD4989g(NSCLCコホート)からのプールデータについて、AUCssについてのロジスティック回帰モデルのシミュレーションは、それぞれAUCssの中央値及び90パーセンタイルを有する患者の場合、0.18(0.16、0.21)から0.22(0.18、0.26)へのAESI(推定[予測間隔])の確率の増加を示唆する。プールされた試験データの場合、AESIのこの増加は、臨床的意義があること、又は用量調整を必要とすることは予想されない。第I相popPKモデルによって同定された統計学的に有意な共変量のうち、シミュレーションは、アテゾリズマブAUCssの最大の正の推定変化が>32%であり、体重の極値(すなわち、10%パーセンタイル)と関連していることを示唆した。単一の効果はAUCssの>32%の変化に関連しなかったので、popPKモデルで同定された統計学的に有意な共変量に関連するAUCssの変化のいずれも臨床的意義があると予想されず、又は用量調整を必要としないと予想される。アテゾリズマブ1200mg q3wフラット用量の投与後の典型的な患者と比較して、体重の極値(すなわち、10パーセンタイル)で評価した場合のAUCssの上昇は、臨床的意義があると予想されないか、又はBWによる用量調整を必要とすると予想されない。
プール(NSCLC及びUC)分析
プールしたアテゾリズマブ曝露安全性分析を、曝露データを有する局所進行性若しくは転移性のNSCLC又はUCを有する全てのアテゾリズマブ処置患者で実施した(n=1228)。
グレード3以上のAE及びAESIは、それぞれ1228人の患者のうち209人(17.0%)及び298人(24.3%)で発生した。AE頻度は、UCと比較してNSCLC患者で類似していた(グレード3以上のAEについて14.9%対19.6%;AESIについて24.6%対23.9%)。したがって、腫瘍タイプはロジスティック回帰モデルに含まれなかった。
研究PCD4989g、IMvigor211及びOAKにおける全てのアテゾリズマブ処置mUC及びNSCLC患者におけるAEG35(グレード≧3のAE)の発生率の分析は、サイクル1 AUC(図25A)又はCmax(図26A)を含む、調査したいずれのサイクル1曝露メトリックとも統計的に有意なER関係を示さなかった。
同様に、試験PCD4989g、IMvigor211及びOAKにおける全てのアテゾリズマブ処置mUC及びNSCLC患者におけるAESIの発生率の分析は、サイクル1 AUC(図25B)又はCmax(図26B)を含む、調査したいずれのサイクル1曝露メトリックとも統計的に有意なER関係を示さなかった。
実施例4
観察されたアテゾリズマブ曝露と予測された840mg q2w及び1680mg q4w曝露との比較
実施例1~3の要約
上記のように、承認された1200mg q3w投与レジメンでは、アテゾリズマブは、臨床的に意味がないと考えられるER傾向、又は転移性UC若しくはNSCLC患者における有効性と安全性の両方についての予後因子によって交絡したER傾向を示した。UC及びNSCLCの両方に対する有効性のERに関して、ORR又はOSとの臨床的意義のあるER関係は観察されなかった(実施例2を参照されたい)。これは、承認された1200mg q3w投与レジメンによって達成された曝露がER曲線の平坦部分又はプラトー部分にあることを示唆している。
したがって、任意の新たな投与レジメンが、承認された1200mg q3w投与レジメンで予想される範囲内の曝露を達成する限り、応答に対する影響は予想されない。重要なことに、840mg q2w及び1680mg q4wの投与レジメンは、この曝露範囲内に入ると予想される。
UCとNSCLCの両方の安全性のERに関して、1200mg固定用量q3wレジメンを含む10mg/kg q3w~20mg/kg q3wの範囲の用量では、安全性のためのアテゾリズマブの臨床的意義のあるERは観察されなかった(実施例3を参照されたい)。840mg q2w、1200mg q3w、及び1680mg q4wの固定用量レジメンは、80kg BWに対して正規化した場合、それぞれ10.5mg/kg q2w、15mg/kg q3w、及び21mg/kg q4wに相当する。20mg/kg q3w(一般に忍容性が良好であった、ヒト初回用量決定試験(first-in-human dose-ranging Study)PCD4989gで投与された最高用量)までの範囲の用量について観察された範囲内の曝露を提供する任意の新しいアテゾリズマブ投与レジメンは、以前に観察されたものと同様の曝露安全性関係を示すと予想される。840mg q2w及び1680mg q4w投与レジメンは、承認された1200mg q3w投与レジメン及び20mg/kg q3wについて観察された曝露範囲内に入ると予想される(実施例6を参照されたい)。最大耐量(MTD)は、用量設定試験PCD4989gでは決定されなかったことに留意すべきである。
この実施例では、前述の実施例に記載のpopPKモデルに基づいて、840mg q2w、1200mg q3w、1680mg q4w及び20mg/kg q3wの投与レジメンに関し、仮想患者のPKプロフィールを予測した。次いで、アテゾリズマブ曝露メトリックを、模擬PKプロフィールから導出した。
方法論
以前に開発されたアテゾリズマブの集団PKモデル(前述の実施例を参照されたい)を使用して、以下の投与レジメンについてサイクル1及び定常状態の仮想患者における個々のPKプロフィールを予測した:840mg q2w、1200mg q3w、1680mg q4w及び20mg/kg q3w。
アテゾリズマブ曝露メトリクス(サイクル1及び定常状態でのCmax、Cトラフ及びAUC)を、個々の模擬PKプロフィールから導出し、各投与レジメンについて個体間で要約した。異なる投与間隔(2、3又は4週間毎)を含むいくつかの投与レジメンを比較するために、サイクル1及び定常状態での毎週のAUCも導出した。20mg/kg q3w(ヒト初回用量決定試験PCD4989gで投与された最高用量)の毎週のAUC,ssに対する各投与レジメンの毎週のAUC,ssの幾何平均の差を計算した。
アテゾリズマブ(840mg q2w、1200mg q3w、4週間毎に1680mg[q4w]、及び20mg/kg q3w)の様々なレジメンのPKパラメータをシミュレートするために、PCD4989gデータ(Stroh et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.587)を使用して以前に開発された共変量効果を含むアテゾリズマブのpopPKモデルを使用するMonte Carloシミュレーションを実施して、サイクル1及び定常状態での仮想個別PKプロフィールを得た。PKシミュレーションに使用したpopPKモデルでは、体重、アルブミン、腫瘍負荷量、処置下で出現した抗薬物抗体(ADA)の状態及び性別が、アテゾリズマブPKに統計学的に有意な影響を及ぼすことが分かった。500人の患者の単一複製を各レジメンについてシミュレートした。シミュレーションの再現性を確実にするために、対照ストリームにシード番号を与えた。以前に推定された分布から変量効果をサンプリングし、個々の予測について残差を考慮しなかった。投与レジメン当たりの仮想患者は、1:1の男性:女性比(男性の体重85kg及び女性の体重64kg、popPKモデルを開発するために使用された第1相データベースにおける体重の中央値)を有すると仮定した。アテゾリズマブPKパラメータに影響を及ぼす他の共変量を、カテゴリー共変量:40g/Lのアルブミンレベル、63mmのベースライン腫瘍サイズ、及び抗薬物抗体(ADA)について陰性の中央値又は最も高頻度のカテゴリーに設定した。4つの投与レジメンをシミュレートした:1200mg q3w、20mg/kg q3w(すなわち、男性1700mg及び女性1280mg)、840mg q2w及び1680mg q4w。固定用量レジメン後の曝露に対する体重の影響を評価するために、体重の四分位当たり500人の仮想患者に、アルブミンレベルの中央値、ベースライン腫瘍サイズ、及びADA陰性を割り当て、840mg q2w又は1680mg q4wの用量を割り当てた。患者の第1相集団における体重の分布を以下のように四分位数で除算した:36.5~63.7kg、63.7~77.0kg、77.0~90.9kg、及び90.9~168.0kg。500個の個々の体重を、切断正規分布を仮定して各四分位においてサンプリングした。性別と体重との間の相関関係を維持するために、女性の割合を、popPKモデルを開発するために使用される第1相データベースにおいて観察されるように、最初の四分位において80%、2番目の四分位において50%、3番目の四分位において25%及び最後の四分位において10%に設定した。
アテゾリズマブ曝露メトリクス(サイクル1:AUC[台形法を用いて算出;時間0~21日]、Cmax、及びCmin;定常状態:AUC[用量/クリアランス]、Cmax、及びCmin)を、個々の模擬PKプロフィールから導出し、各投与レジメンについて個体間で要約した。異なる投与間隔(2、3又は4週間毎)を含むいくつかの投与レジメンを比較するために、定常状態の毎週のAUCデータも導出した。
結果
集団PK-2週間毎に840mg(q2w)及び4週間毎に1680mg(q4w)のレジメンの模擬曝露を、3週間毎に1200mg(q3w)の承認されたレジメン及び最大評価用量(MAD;20mg/kg q3w)と比較した。
サイクル1及び定常状態での全ての利用可能な試験からのpopPK推定曝露の要約を、それぞれ以下の表5B及び表6に示す。
4つの投与レジメン(840mg q2w、1200mg q3w、1680mg q4w及び20mg/kg q3w)のPopPK予測模擬アテゾリズマブ曝露プロファイル(濃度-時間プロファイル)を図27に示す。プロファイルは、1200mg q3w、20mg/kg q3w及び840mg q2wについて2回の用量、並びに1680mg q4wについて1用量を示す28日間にわたって表示される。各投与レジメンに関連する対応する曝露メトリック(サイクル1及び定常状態での予測C
max及びC
min値)の要約を表7に示す。
予測された毎週のサイクル1のAUC及びAUC
ssを表8に示す。
840mg q2w投与レジメンは、1200mg q3w投与レジメンの予測Cminよりもサイクル1で13%低く、定常状態で16%高い予測Cmin濃度を有する。しかしながら、サイクル1及び定常状態での840mg q2wレジメンの予測Cmin値は、依然としてCmin目標濃度(6μg/mL(Deng et al.,(2016)MAbs doi:10.1080/19420862.2015.1136043))より少なくとも10倍大きい(>10倍)。840mg q2w投与レジメンの予測Cmaxは、サイクル1及び定常状態での1200mg q3w投与レジメンの予測Cmaxよりも低い。
1680mg q4w投与レジメン(80-kgの患者に対する21mg/kg q4w用量に相当)は、1200mg q3w投与レジメンの予測Cminよりもサイクル1で14%高く、定常状態で6%低い予測Cminを有する。しかしながら、サイクル1及び定常状態での1680mg q4wレジメンの予測Cmin値は、依然としてCmin目標濃度(6μg/mL)より少なくとも10倍大きい(>10倍)。
1680mg q4wレジメンの予測Cmaxは、20mg/kg投与レジメンの予測幾何平均Cmaxと比較して、それぞれサイクル1で12%高く、定常状態で0.8%高く、PCD4989gの20mg/kg q3w投与レジメンの観察された曝露と一致していた(Stroh et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.587;Center for Drug Evaluation and Research(2016)BLA 761034 Clinical Pharmacology Review-Atezolizumab、ウェブサイトwww[dot]accessdata[dot]fda[dot]gov/drugsatfda_docs/nda/2016/761034Orig1s000ClinPharmR.pdfで入手可能)。サイクル1及び定常状態での1680mg q4wレジメンのCmaxの予測された90パーセンタイルは、それぞれ754μg/mL及び1037μg/mLである。サイクル1でのCmaxが20mg/kg投与レジメンよりも高くなるこの傾向にもかかわらず、1680mg q4w投与レジメンの予測曝露は、依然として、試験PCD4989gの20mg/kg q3w投与レジメンで観察された曝露の範囲内である(図28)。
定常状態での840mg q2w及び1680mg q4wのレジメンの予測される毎週のAUCは、1200mg q3wについてシミュレートしたものよりもそれぞれ3.5%及び4.8%高かった。
固定用量レジメンを検討する場合、アテゾリズマブpopPKモデルではクリアランス及び体積は体重に影響されるので(Stroh et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.587)、体重の低い患者は体重の重い患者と比較してより高いアテゾリズマブ曝露を示すと予想される。q2w及びq4wレジメンを更に評価するために、Cmin又はCmaxを、840mg q2w及び1680mg q4wの用量レベルについて体重の四分位によってシミュレートした(表9)。
1680mg q4wレジメンでは、最低体重四分位(63.7 kg未満、大部分が女性)の予測Cmax値は、サイクル1及び定常状態でそれぞれ692及び950μg/mLであり、これは1200mg q3w及び20mg/kg q3wで観察されたCmax値の範囲内である(Stroh et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.587;Center for Drug Evaluation and Research(2016)BLA 761034 Clinical Pharmacology Review-Atezolizumab、ウェブサイトwww[dot]accessdata[dot]fda[dot]gov/drugsatfda_docs/nda/2016/761034Orig1s000ClinPharmR.pdfで入手可能)。840mg q2wレジメンでは、最高体重四分位(90.9kg超、大部分が男性)の予測Cmin値は、サイクル1及び定常状態でそれぞれ58及び158μg/mLであり、これは1200mg q3wの観察されたCmin値の範囲内であり、6μg/mLのCmin目標濃度を超える。
上記のように、1680mg q4wレジメンを服用している最低体重の患者の予測C
max値は、試験PCD4989gにおける20mg/kg q3w投与レジメンの観察されたC
max値の範囲内である(図28)。
要約すると、1680mg q4w及び840mg q2wレジメンは、承認された1200mg q3wレジメンと同等の有効性(例えば、ORR及びOS)及び安全性を有すると予想される。840mg q2w及び1680mg q4wレジメンの予測曝露量(Cmin)は目標濃度(6μg/mL)を超え、承認された1200mg q3wレジメンのCmin値の範囲内であり、1200mg q3wを投与されたNSCLC又はUC患者ではORR又はOSとのアテゾリズマブ曝露の臨床的に意味のあるER関係はないので(実施例2を参照されたい)、承認された1200mg q3wレジメンと比較して、840mg q2w又は1680mg q4wレジメンのいずれかの使用では応答に対する影響は予想されない。
同様に、840mg q2w及び1680mg q4wレジメンの予測max値は、一般に忍容性が良好であった20mg/kgの最大評価用量のCmax値の範囲内であり、1200mg q3w又は20mg/kgを投与されたNSCLC又はUC患者におけるAEグレード3以上又はAESIとアテゾリズマブ曝露との臨床的に意味のあるER関係はないので(実施例3を参照されたい)、840mg q2w及び1680mg q4wレジメンは、承認された1200mg q3wレジメンと同様の安全性プロファイルを有すると予想される。これは、以下の安全性プロファイルの詳細な評価によって更に裏付けられる。(1)20mg/kg q3w対1200mg q3wの投与レジメンを受けている患者、(2)低BWの患者、(3)1680mg q4wレジメンの予測された90パーセンタイルを超えるCmaxを有する患者、(4)1680mg q4wの予測された平均を超えるCmaxを有する患者(実施例6~9を参照されたい)。
実施例5
TNBCにおけるpopPK予測840mg q2w曝露の検証
この実施例では、第3相IMpassion130(NCT02425891)データを使用して、840mg q2wのPKシミュレーションを検証した。
材料及び方法
以前の第1相popPKモデル(外部評価)に基づいて、予測補正視覚予測検査(pcVPC)を行った。第1相popPKモデルを使用して、IMpassion130におけるアテゾリズマブ観察濃度-時間プロファイルに基づいて個々のPKパラメータ推定値を導出した。IMpassion130におけるアテゾリズマブ処置患者のPKデータを、実際の投薬及び患者共変量(体重、性別、ADA状態、アルブミンレベル、及び腫瘍負荷)並びに第1相popPKモデルを使用してシミュレートした(1000の複製)。IMpassion130の観察されたアテゾリズマブピーク(Cmax)及びトラフ(Cmin)濃度を、対応する予測分布と比較した。
結果
第1相popPKモデルの外部評価として、及び840mg q2w PKシミュレーションを確認するために、IMpassion 130試験からのアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルq2w群のPKを、ベースライン患者共変量(pcVPC)に基づいてシミュレートした。43名(445名中)のアテゾリズマブ処置患者がPK分析のための評価可能な血清サンプルを有し、合計で2232名のサンプルであった。結果を図29に示す。用量1及び定常状態の曝露メトリックの両方は、第1相popPKモデルに基づく840mg q2w投与レジメンについて予測されたものと同様であった。長期投与後(用量2、4、6、14及び30+)のアテゾリズマブ曝露データの中央値及び第5パーセンタイル(トラフ)の過小予測の傾向がpopPKモデルで観察され、アテゾリズマブの時間依存性クリアランスと一致した(Tecentriq(アテゾリズマブ)[添付文書]。カリフォルニア州サウスサンフランシスコ:Genentech,Inc.:2019.カリフォルニア州南サンフランシスコ:Genentech,Inc.)。
実施例6
20mg/kg q3w(試験PCD4989gで試験された最高用量)を含む、試験PCD4989gからの臨床安全性データの要約
20mg/kg q3w用量は、1680mg q4w固定用量投与レジメンについての759μg/mLの予測される定常状態最大濃度又はCmax濃度と同様の範囲の臨床曝露を提供する。20mg/kg用量レベルでは用量制限毒性は観察されず、報告されたAEの発生率及び強度は用量に依存することは示されていない。したがって、最大耐量は確立されていない。
この実施例では、試験PCD4989gにおけるアテゾリズマブの安全性を分析する。
1680mg用量について予測C
maxよりも高い又は低いC
maxを有する患者における有害事象の分析
試験PCD4989gの安全性評価可能な640人の患者のうち、82人の患者は、759μg/mLより高いC
maxがいつでも観察されると特定され、これらの患者のうち62人は20mg/kg用量コホートからのものであった。次いで、82人の患者のこの群について観察された安全性を、試験PCD4989gで観察されたC
max≦759μg/mLを有する残りの558人の患者と比較した(表10)。
全体として、試験PCD4989gでは、Cmax>759μg/mLが観察された82人の患者及びCmax≦759μg/mLが観察された558人の患者の安全性プロファイルは同等であり、アテゾリズマブ単剤療法の既知のリスク又はベースライン疾患と一致するようである。
例えば、一般的なAE(≧20%の患者)の大部分は、Cmax>759μg/mLの患者及びCmax≦759μg/mLの患者で同様であり、疲労、発熱、悪心、下痢、便秘、呼吸困難及び食欲不振を含んでいた。Cmax>759μg/mLの患者及びCmax≦759μg/mLの患者においてより高い割合で報告されたAE(≧5%の差)は、疲労、悪寒、インフルエンザ様疾患、悪心、咳、呼吸困難、湿性咳、喀血、肺臓炎、筋骨格痛、食欲不振、乾燥皮膚、上気道感染及び副鼻腔炎であった。これらの事象の重症度は、グレード3又は4として報告された1例の悪心及び5例の呼吸困難を除いて、ほとんどがグレード1又は2であった。これらの事象は、試験処置又は基礎疾患のいずれかで起こると予想されると考えられた。
Cmax>759μg/mLを有する患者は、Cmax≦759μg/mLを有する患者よりも治験責任医師によって評価されるように、より多くの試験処置関連AEを経験した(75.6%対69.7%)。最も一般的な処置関連AEの大部分(≧10%の患者)は、Cmax>759μg/mLの患者及びCmax≦759μg/mLの患者で同様であった。
1680mg用量について予測Cmaxよりも高い又は低いCmaxを有する患者における重篤な有害事象の分析
重篤なAE(SAE)を経験している患者の割合は、Cmax>759μg/mLの患者(35.4%)よりも Cmax≦759μg/mLの患者(43.0%)においてより高く、グレード3~4のSAEもまた、Cmax>759 μg/mLの患者(25.6%)よりもCmax≦759μg/mLの患者(33.7%)においてより高かった。両サブグループで報告された一般的なSAE(≧2%の患者)は、呼吸困難(2.4%対3.9%)及び発熱(3.7%対2.9%)を含んでいた。感染症及び胃腸障害は、Cmax>759μg/mLサブグループよりもCmax≦759μg/mLサブグループでより頻繁に発生したが、記載された差を説明する個々の基本語(PT)は特定されなかった。
Cmax>759μg/mLの患者には致死性AEはなかった;Cmax≦759μg/mLを有する患者において10の致死的AE(1.7%)があった。10の致死的事象には、呼吸不全、肺炎、肺高血圧症、敗血症、頭部外傷、過剰摂取(アルコール及びモルヒネ)、急性心筋梗塞、肝不全、肝血腫、及び死(原因不明)が含まれた。
Cmax>759μg/mLの患者のうち、2名(2.4%)の患者が試験薬の中止をもたらしたAEを報告し、これはCmax≦759μg/mLの患者で報告された頻度よりも低かった(28、5.0%)。Cmax>759μg/mLの患者群において試験薬の中止をもたらした2つのAEは、血中ビリルビン増加及び大腸炎であり、これらはアテゾリズマブについて既知のAEであった。
Cmax>759μg/mLが観察された患者からのこの安全性データ分析に基づいて、1680mg q4wの用量のアテゾリズマブは、管理可能な安全性プロファイルで良好に忍容されると予想される。
実施例7
研究PCD4989g、IMvigor211及びOAKからのアテゾリズマブ処置群に基づく安全性分析の比較
方法
分析集団
この分析内の安全性集団には、少なくとも1用量のアテゾリズマブを投与された研究PCD4989g、IMvigor211、及びOAKの患者が含まれ、患者は投与された実際の処置に従って処置群に割り当てられた。以下の処置群及びサブグループを安全性分析に使用した:
試験PCD4989g:
○ 「PCD4989g 20mg/kg」(N=146):20mg/kg IV q3wのアテゾリズマブ用量を受けた試験PCD4989gの患者。
○ 「PCD4989g 1200mg」(N=210):アテゾリズマブ用量1200mgをq3wで静脈内投与した試験PCD4989gの患者。
BW毎のPCD4989gサブグループの試験:
○ 「最低四分位BW PCD4989g 20mg/kg」(N=37):試験PCD4989g中の患者は、20mg/kgのアテゾリズマブが投与され、そのコホートにおけるBW分布の最低四分位にBWを有していた。
○ 「上位3つの四分位BW PCD4989g 20mg/kg」(N=109):この用量コホートで利用可能なBWを有する残りの患者。
サイクル1で観察されたCmax値による試験PCD4989gサブグループ
○ 「PCD4989g 20mg/kg>90%位Cmax」(N=4):サイクル1のCmax値が1680mgのアテゾリズマブIVについて予測されたCmaxの90パーセンタイルを超えていた、20mg/kgのアテゾリズマブが投与された試験PCD4989gの患者。
○ 「PCD4989g 20mg/kg≦90%位Cmax」(N=134):1680mgのアテゾリズマブIVについて予測されたCmaxの90パーセンタイルまでのサイクル1のCmax値を有していた、20mg/kgのアテゾリズマブが投与された試験PCD4989gの患者。
○ 「PCD4989g 20mg/kg>平均Cmax」(N=40):サイクル1のCmax値が1680mgのアテゾリズマブIVについて予測されたCmaxを超えていた、20mg/kgのアテゾリズマブが投与された試験PCD4989gの患者。
○ 「PCD4989g 20mg/kg≦平均Cmax」(N=98):1680mgのアテゾリズマブIVについて予測されたCmaxの平均値までのサイクル1のCmax値を有していた、20mg/kgのアテゾリズマブが投与された試験PCD4989gの患者。
観察されたCmax値の代わりに患者のサイクル1モデル予測Cmax値を使用した、上記のような試験PCD4989g 20mg/kgサブグループ
試験GO28915(OAK;N=609):アテゾリズマブ用量1200mgをq3wで静脈内投与した試験GO28915の患者。
試験GO29294(IMvigor211;N=459):アテゾリズマブ用量1200mgをq3wで静脈内投与した試験GO29294の患者。
安全性パラメータ
試験PCD4989g、IMvigor211及びOAKのAE用語は、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRAバージョン20.1)を用いて基本語(Preferred Term)にコード化した。重症度は、米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準Version 4.0(NCI CTCAE v4.0)基準に従ってグレードが付けられる。
この分析の目的のために、MedDRA-standardized SMQ、治験依頼者が定義した有害事象グループ化用語(Sponsor-defined adverse event grouped terms)(AEGT)、及び高位語(HLT)を使用した包括的な定義のセットを使用して、医療概念によってAE臨床データベースから特に注目すべきAE(AESI)を識別した。医学的概念には、アテゾリズマブ関連の重要な特定されたリスク並びに他の免疫チェックポイント阻害剤で報告された潜在的なリスク及びクラス効果が含まれた。
コルチコステロイド処置の使用を必要とするAESIについて別々の分析を行った。これらのAEは、以下の基準を使用して特定された:
・ AE用語は、特に注目すべきAEのグループ化にある
・ 全身性コルチコステロイド開始日は、AE開始日の30日後又は30日まであった
・ 全身性コルチコステロイド開始日がAE消散日より前であった
コルチコステロイドを、標準的な薬物バスケットに基づいて同定した。全身使用は、以下の投与経路のいずれも有さない任意の薬物として定義された:耳介(耳)、膀胱内、硝子体内、鼻、眼、呼吸器(吸入)、局所又は膣。
潜在的な注入関連反応(IRR)を捕捉するために、アテゾリズマブ注入中又は24時間以内に発症したAEについて分析を行った。
結果
安全性プロファイルの概要
図30に示すように、20mg/kg q3w用量として投与したアテゾリズマブの全体的な安全性プロファイルは、固定1200mg q3w用量として投与した場合に観察されたものと類似していた。他の処置群と比較して、試験PCD4989g 20mg/kgでは、処置群間で発生率にいくつかの差が観察され、AESI及びIRR(注入24時間以内のAE)の発生率が高かった。AESIについては、免疫介在性発疹並びに肝機能検査異常がより頻繁に観察され、IRRについて、20mg/kg処置群におけるより高い発生率は、主に関節痛、発疹及び悪寒のより多くの事象で占められた。
一般的なAE
同様の割合の患者が、全ての処置群について任意のグレードの少なくとも1つのAEを経験した(99.3% PCD4989g 20mg/kg対96.7% PCD4989g 1200mg対94.4% OAK対95.9% IMvigor211)。
20mg/kg及び1200mgの処置群において最も頻繁に観察されたAEは類似していた。任意の1200mg処置群と比較して20mg/kgコホートに≧10%の差があるものは、呼吸困難、悪心及び嘔吐の全身症状であった。これらのうち、全ての1200mg処置群と比較して20mg/kgコホートでより高い発生率で観察された唯一の事象は呼吸困難であった(PCD4989gで32.9%(20mg/kg、N=146);PCD4989gで18%(1200mg、N=210);OAKで19.5%(1200mg、N=609;IMvigor211で15.0%(1200mg、N=459)。個々のAE発生率におけるこれらの所見は、基礎疾患に続発すると考えられ、20mg/kgコホートにおける潜在的な曝露に起因する可能性は低い。
強度毎のAE
IMvigor211の患者のより高い割合(59.5%)は、他の処置群と比較して少なくとも1つのグレード≧3のAEを経験した(49.3% PCD4989g 20mg/kg対55.2% PCD4989g 1200mg対40.2% OAK)。
貧血(5.5% PCD4989g 20mg/kg(N=146)対5.7% PCD4989g 1200mg(N=210)対2.3% OAK 1200mg(N=609)対10.2% IMvigor211 1200mg(N=459))及び尿路感染(0.7% PCD4989g 20mg/kg(N=146)対1.4% PCD4989g 1200mg(N=210)対0.2% OAK 1200mg(N=609)対5.7% IMvigor211 1200mg(N=459))について観察された処置群間で発生率に≧5%の差があった。貧血及び尿路感染は、IMvigor211でより高い頻度で報告され、膀胱がん集団で典型的に観察されるものと一致した。
重篤なAE
処置群全体で、少なくとも1つのSAEを経験した患者の割合は、OAKにおけるより低い発生率(42.5% PCD4989g 20mg/kg対44.3% PCD4989g 1200mg対33.5% OAK対45.5% IMvigor211)を除いて同様であった。1200mg処置群と比較して20mg/kgコホートにおいて≧2%の差を有するものは、呼吸困難、腹痛、胸水及び骨痛のPTであった。これらのうち、任意の1200mg処置群と比較して20mg/kgコホートでより高い発生率で観察された唯一の事象は呼吸困難であった(6.2% PCD4989g 20mg/kg(N=146);3.8% PCD4989g 1200mg(N=210);2.1% OAK 1200mg(N=609);1.5% IMvigor211 1200mg(N=459))。個々のAE発生率におけるこの知見は、基礎疾患に続発するものであり、20mg/kgコホートにおける潜在的曝露に起因する可能性は低いと考えられる。
中止につながるAE
中止につながるAEの発生率は、20mg/kg処置群では4.8%であったのに対して、PCD4989g 1200mgでは4.3%、OAKでは8.2%及びIMvigor211では8.1%であった。
心不全、死亡、無力症、疾患進行、膀胱がん、低酸素症及び呼吸不全のために、20mg/kgコホートにおいてアテゾリズマブを中止した患者が7名いた。
特に注目すべきAE
全ての処置群にわたって、少なくとも1つの AESIを有する患者の割合は、1200mg処置群と比較して20mg/kg処置群(47.3%)で高かった(36.2% PCD4989g 1200mg対32.7% OAK対33.8% IMvigor211)。
全ての処置群において最も頻繁に報告された事象は、免疫介在性発疹(17.1% PCD4989g 20mg/kg対6.7% PCD4989g 1200mg対9.7% OAK対11.3% IMvigor211)及び肝機能検査値の上昇(ALT上昇[6.2%対10.5%対5.7%対4.1%]、AST上昇[6.2%対11.4%対6.2%対4.4%])であった。
20mg/kg処置群におけるAESIのより高い発生率は、主に免疫介在性発疹のより多くの事象、主にグレード1-2で占められた。他のAESIの発生率及び種類は、処置群間で類似していた。
AESIのためにコルチコステロイドを投与された患者の割合は、全ての処置群間で同様であった(9.6% PCD4989g 20mg/kg対9.5% PCD4989g 1200mg対9.2% OAK対9.2% IMvigor211)。
コルチコステロイドの使用を必要とする最も一般的な(任意の処置群の患者の>2%)AESIには、肺臓炎(2.7%対1.4%対1.0%対1.1%)、ALTの増加(0%対2.9%対1.0%対0.4%)及びASTの増加(0%対2.9%対0.8%対0.7%)が含まれた。
注入24時間以内に発生するAE
注入の24時間以内に少なくとも1つのAEを経験した患者の割合は、1200mg処置群と比較して20mg/kg処置群(83.6%)で高かった(68.6% PCD4989g 1200mg対70.4% OAK対67.5% IMvigor211)。
20mg/kg処置群におけるより高い発生率は、主に、より多くの事象の関節痛(9.6% PCD4989g 20mg/kg(N=146);4.8% PCD4989g 1200mg(N=210);4.4% OAK 1200mg(N=609);3.3% IMvigor211 1200mg(N=459))、発疹(6.8% PCD4989g 20mg/kg(N=146);1.4%;3.6% OAK 1200mg(N=609);2.6% IMvigor211 1200mg(N=459))及び悪寒(5.5% PCD4989g 20mg/kg(N=146);1.0% PCD4989g 1200mg(N=210);1.6% OAK 1200mg(N=609);2.0% IMvigor211 1200mg(N=459))で占められた。全ての事象はグレード1-2として報告された。注入の24時間以内に発生する他のAEの発生率及びタイプは、処置群間で概ね同様であった。
24時間以内のAEの発生率がより高いのは、データ捕捉方法論に起因する可能性がある:試験PCD4989gでは、IRRに関連する事象が個々のAEとして捕捉され、試験OAK及びIMvigor211は個々のAEではなくIRRの診断を捕捉した。更に、注入の24時間以内に報告された最も一般的なAEは、主にこの患者集団で起こることが知られている全身症状(例えば、食欲不振、疲労、無力症)であった。IRRは、アテゾリズマブ及び他のモノクローナル抗体の既知のリスクである。関節痛、発疹、及び悪寒は、典型的にはIRRの発症に関連する一連の症状の一部であり得るが、これらの全身症状は、併発疾患又は基礎疾患でも起こり得る。更に、これらのAEは、全てのサブグループにおいて注入の24時間ウインドウの外でも報告された。したがって、IRRの発生は、20mg/kg処置群に関連するとは考えられない。
実施例8
サイクル1中のCmax毎(1680mg用量の予測Cmaxの90%分位の値未満又はそれを超える)の試験PCD4989g 20mg/kgの患者サブグループ
1680mg用量の予測Cmax値のサイクル1の>90%分位で観察されたCmax値を有するPCD4989g 20mg/kg処置群の患者の数は非常に少なかった(n=4)ので、これらの分析からデータの解釈又は結論を引き出すことはできない。
しかしながら、>90%分位のCmaxサブグループが観察されたPCD4989g 20mg/kgの4人の患者についてのグレード3以上のAEについての記述的安全性情報を以下に示す:
・ 患者Aは悪性新生物の進行により81日目に死亡し、これはグレード5の事象として報告された。この患者には肝転移の病歴もあり、64日目に血中ビリルビンのグレード4のAEが増加し、ALT及びASTのグレード3のAEが両方とも70日目に増加した。
・ 患者Bは、43日目に高血圧のグレード3のAE、923日目にグレード3のAE病理学的骨折を報告した。
・ 患者Cは、それぞれ44、93、及び102日目に、国際標準化比の増加、疲労、及び呼吸困難のグレード3 AEを報告した。
・ 患者Dは悪性新生物の進行により145日目に死亡し、これはグレード5のAEとして報告された。
全体として、観察されたC
maxを使用したPCD4989g 20mg/kgサイクル1 C
maxサブグループ分析の結果は、モデル予測C
maxを使用した結果と非常に類似していた(表11)。
実施例9
サイクル1中のCmax毎(1680mg用量の予測Cmaxの平均値未満又は平均値を超える)の試験PCD4989g 20mg/kgの患者サブグループ-
この実施例では、試験PCD4989gの患者サブグループを安全性について分析した。
材料及び方法
(1)1680mg q4wレジメンの予測Cmaxに関連するCmax値に基づいてアテゾリズマブ20mg/kg q3wを受けたPCD4989gから、及び(2)体重四分位に基づいてPCD4989g及びOAKから(最低四分位対四分位2~4)の患者のサブグループについてAE頻度を要約した:これらの分析では、AESIがコルチコステロイドの使用を必要とするかどうかも特定した。
結果
表12は、PCD4989gにおける20mg/kg q3wアテゾリズマブ処置患者の安全性要約を提供し、1680mg q4wレジメンの平均予測Cmaxと比較してサイクル1中に観察されたCmaxを示す。全体的な安全性プロファイルは、サイクル1≦平均中にCmaxが観察された患者の20mg/kgサブグループの試験PCD4989gと1680mg用量の>平均予測Cmax値との間でほぼ同様であった(表12)。一般に、AE頻度はこれらの群間で類似していた。1680mg q4wレジメンの平均予測Cmaxと比較して、PCD4989g患者のモデル化Cmax(すなわち、popPKモデルによって推定された個々の予測)に基づく群で同様の結果が得られた。
全体として、サイクル1中に観察されたC
maxの20mg/kgのPCD4989gの結果は、サイクル1中のC
maxをモデル化した20mg/kgのPCD4989gの結果と同様であった。
同様の割合の患者が、両方の処置サブグループについて少なくとも1つの任意のグレードのAEを経験した(観察された≦平均Cmax99.0%対観察された平均>Cmax100.0%)。発生率が≧10%の差がある任意のグレードのAEは、食欲不振(>平均maxサブグループでより一般的)及び貧血(≦平均Cmaxサブグループでより一般的)であった。
観察された≦平均Cmaxサブグループ中の患者のより高い割合(53.1%)が、観察された>平均Cmaxサブグループ(35.0%)と比較して、少なくとも1つのグレード≧3のAEを経験した。
PTによって報告された最も一般的な(いずれかの処置群の患者の>5%)グレード≧3のAEは、呼吸困難、貧血、及び疲労であった(表13)。平均C
maxを超えるサブグループにおいてより高い(≧5%)発生率で生じたグレード≧3のAEはなかった;観察された>平均
maxサブグループよりも≦平均C
maxサブグループにおいてより一般的に起こった事象は、呼吸困難及び貧血であった。
サイクル1 C
maxが1680mg用量についての予測C
maxの平均値を下回るか上回る患者における重篤な有害事象の分析
同様の割合の患者が、両方の処置サブグループについて少なくとも1つのSAEを経験した(観察された≦平均C
max43.9%対観察された平均>C
max37.5%)。呼吸困難は、観察された≦平均C
maxサブグループよりも>平均C
maxサブグループにおいてより一般的に生じた(表14)。
サイクル1 Cmaxが1680mg用量についての予測Cmaxの平均値を下回るか上回る患者において中止につながった有害事象の分析
全体として、AEのためにアテゾリズマブを中止した患者はほとんどいなかった(観察された≦平均Cmax5.1%対観察された>平均Cmax2.5%)。中止につながる事象が、1人の患者で報告された。≦平均Cmaxの5人の患者は、心不全、無力症、死亡、疾患進行、低酸素症及び呼吸不全のために中止された。>平均Cmaxの1人の患者は、疾患の進行のために中止された。
サイクル1 Cmaxが1680mg用量についての予測Cmaxの平均値を下回るか上回る患者における特別な関心のある有害事象の分析
全体として、両サブグループの患者の同様の割合が、少なくとも1つのAESIを経験した(観察された≦平均Cmax48.0%対観察された平均>Cmaxの45.0%)。免疫介在性発疹(19.4%対12.5%)及び肝機能検査の異常(ALTの増加7.1%対5.0%;AST増加6.1%対7.5%)は、両サブグループにおいて最も頻繁に報告されたAESIであった。
全体として、両サブグループの患者の同様の割合が、AESIに対してコルチコステロイドを受けた(観察された≦平均Cmax8.2%対観察された平均>Cmaxの10.0%)。最も一般的に報告されたコルチコステロイドの使用を必要とするAESIは、肺臓炎(各サブグループの2人の患者)及び発疹(2人の患者対0人の患者)であった。
サイクル1 Cmaxが1680mg用量についての予測Cmaxの平均値を下回るか上回る患者において注入の24時間以内に起こる有害事象の分析
観察された>平均Cmaxサブグループ中の患者のより高い割合(95.0%)が、観察された≦平均Cmaxサブグループ(79.6%)と比較して、注入の24時間以内にAEを経験した。
観察された>平均C
maxサブグループにおいてより頻繁に(≧5%)発生した事象は、悪心、無力症及び下痢であった(表15)。
投与群別安全性
観察された安全性データを曝露サブグループによって評価した。
表16は、用量群毎のアテゾリズマブ曝露毎のPCD4989gの要約を提供する。10mg/kg q3w~20mg/kg q3w及び1200mg q3wの用量範囲では、処置期間の中央値は2.07~9.48ヶ月の範囲であり、投与回数の中央値は4~14.5回の範囲であった。
表17は、用量群毎のPCD4989g患者の安全性の要約を提供する。全体的な安全性プロファイルは、15mg/kg q3w群、20mg/kg q3w群、及び1200mg q3w群の間で一貫していた。10mg/kg q3w用量群の患者は、他の用量群と比較して重篤な有害事象(AE)及び処置関連AEの頻度の増加を示した。これは、他の用量群と比較して安全性追跡調査がより長く、この用量群の患者数がより少ないことに起因し得る。
体重毎の安全性
観察された安全性データを曝露及び体重サブグループによって評価した。
表18は、体重毎のPCD4989g及びOAK患者の安全性の要約を提供する。PCD4989gの20mg/kg処置群の体重中央値は78.2kg(Q1~Q3、63.7~93.0kg)であり、全体的な安全性プロファイルは、最低(n=37)及び上位3(n=109)体重四分位の患者間でほぼ同様であった。最低体重四分位サブグループにおけるグレード3~5のAEのより高い発生率(48.7%対37.3%)が観察され、これはグレード3のAE(38.8%対27.8%)に起因するものであった。グレード3のAEの評価では、サブグループ間で2%以上の差がある個々のAEの基本語は特定されなかった。亜群間で5%以上の差がある重篤なAEには、疲労及び無力症(両方とも悪性腫瘍に共通)並びに肺炎及び心タンポナーデ(胸部がんの既知の合併症)が含まれ、そのような事象は全てまれに起こる。最低体重サブグループでは、無力症及び呼吸器合併症のみが試験処置の中止をもたらし、その他の事象については、試験処置に関する行為は行わなかった。患者のより大きなコホートにおける体重の影響を評価するために、OAK(1200mg q3w投与)からのAEデータも分析した。体重中央値は71.0kg(Q1~Q3、59.5~82.2kg)であった。最小(n=152)と上位3(n=442)の体重四分位の間に差は観察されなかった。
実施例10
免疫原性の分析
アテゾリズマブの免疫原性は、研究PCD4989g、JO28944、IMvigor210、IMvigor211、BIRCH、POPLAR、FIR及びOAKで評価した。
試験PCD4989gにおける20mg/kg q3w対OAKにおける1200mg q3w対IMvigor211における1200mg q3wについてのベースライン後の処置下で発現したADA発生率の分析は、20mg/kg用量での処置下で発現したADA発生率の明確な増加を明らかにしなかった(表19)。
ADA血清サンプル中のアテゾリズマブの存在はADA検出を妨害し得る。検証実験では、ADAアッセイは、200μg/mLのアテゾリズマブの存在下で500ng/mLの代理陽性対照抗アテゾリズマブ抗体を検出することができた。ベースライン後のADAサンプルの以下のパーセンテージは、代理陽性対照に基づくADAアッセイの薬物耐性レベルである200μg/mL未満のアテゾリズマブ濃度を有していた:試験PCD4989g 80.2%、IMvigor210 86.0%、IMvigor211 88.2%、BIRCH 82.8%、POPLAR 89.6%、FIR 86.9%及びOAK 81.9%。
免疫原性データは、使用される試験方法の感度及び特異性に大きく依存する。更に、試験方法における陽性結果の観察された発生率は、サンプル収集のタイミング、薬物干渉、併用療法及び基礎疾患を含むいくつかの要因によって影響され得る。したがって、アテゾリズマブに対する抗体の発生率と他の製品に対する抗体の発生率との比較は誤解を招く可能性がある。
UC患者におけるアテゾリズマブ薬物動態に対する処置下で発現したADAの影響
処置下で発現したADA陽性の発生率(PCD4989g、JO28944、IMvigor210及びIMvigor211試験で16.7%~41.9%の範囲)にもかかわらず、NCA分析は、ADA陽性が、1200mg q3wの固定用量を含む10~20mg/kgの用量でのアテゾリズマブ曝露にわずかな影響を及ぼしたことを示した。popPK分析はまた、処置下で発現したADAの存在がアテゾリズマブ曝露にわずかな影響を及ぼすことを示している。ADA陽性であった患者は、ADA陰性患者と比較して、アテゾリズマブのクリアランスの16%という比較的小さな増加を有していた(例えば、実施例1を参照されたい)。全ての試験において、アテゾリズマブ用量≧10mg/kgを受けている患者について、CminはADA陽性患者において6μg/mLの目標血清濃度を超えて維持された。
NSCLC患者におけるアテゾリズマブ薬物動態に対する処置下で出現するADAの影響
種々の臨床試験にわたって、処置下で発現したADA陽性は、アテゾリズマブ濃度及び薬物動態に大きな影響を及ぼさないようであったが、ADA陽性サブグループにおいてより低いCmin値の傾向があった。popPKモデルは、ADA陽性サブグループがADA陰性患者よりも16%高い薬物クリアランスを有することを決定し、これはADA陽性患者においてより低い曝露の傾向を説明する(例えば、実施例1を参照されたい)。全ての研究において、≧10mg/kgの用量について、Cminは、ADA陽性患者において6μg/mLの目標血清濃度を十分に超えたままであった。
UC患者におけるアテゾリズマブ有効性に対する処置下で出現するADAの影響
UCについての試験PCD4989g、IMvigor210及びIMvigor211にわたるORRのレビューは、処置下で発現したADA陽性が一貫してより低いORRと関連することを実証しなかった。IMvigor211の分析により、ADA陽性患者とADA陰性患者との間に臨床的に関連する差は全ての患者において、又はIC1/2/3群若しくはIC2/3群において明らかにされず、転帰測定について95%CIが重複していた(OS、PFS、ORR、及びDOR)。
NSCLC患者におけるアテゾリズマブ有効性に対する処置下で出現するADAの影響
ORRは一般にADA陽性患者とADA陰性患者との間で同等であり、数値差がある場合、95%CIは重複しており、研究間でORRの一貫した増加も減少もなかった。全体として、ADA陰性患者及びADA陽性患者について信頼区間が重複しており、ORRに基づく有効性に対する処置下で発現したADAの明らかな影響はなかった。
全体として、ADA陽性患者とADA陰性患者との間に臨床的に関連する差は観察されなかった。OSがPOPLARについて成熟していない;POPLAR中央値PFSは、ADA陰性患者と比較してADA陽性患者において数値的に高かったが、PFSの95%CIは重複していた。OAK試験では、OS中央値、ランドマークOS率、及びPFS中央値は、ADA陽性患者と比較してADA陰性患者で数値的に高かったが、これらの転帰測定値の95%CIは重複していた。
アテゾリズマブの安全性に対する処置下で出現するADAの影響
処置下で発現するADA(処置誘発及び処置増強)のベースライン後の発生率は、全ての患者集団で42.5%(540/1272)であり、これは全てのUC集団(41.9%[161/384])及び全てのNSCLC集団(42.7%[379/888])での観察結果と一致している。
全てのグレードのAE、グレード5のAE、処置中止につながるAE、用量中断につながるAE、及びAESIの発生率は、ベースライン後のADA状態(陰性又は陽性)に関係なく類似していた。いくつかの数値差がグレード3~4のAE(ADA陰性患者では38.4%対ADA陽性患者では44.3%)で観察され、これは主にADA陽性患者の胃腸障害SOCで報告されたAEによって引き起こされた(5.7%対8.5%)が、この差を説明する個々のPTは特定できなかった。SAEの発生率は、ADA陰性患者(33.5%)と比較してADA陽性患者(40.2%)においてより高かったが、この差は特定のSOC又は個々のAEの好ましい用語によって引き起こされなかった。
全患者集団において、過感受性及びIRR(MedDRA AE PT)の発生率は低く、ADA陽性患者とADA陰性患者との間で一貫していた。過感受性事象が18名の患者(1.4%):8名のADA陰性(1.1%)及び10名のADA陽性(1.9%)患者で報告された。注入関連反応は20人の患者(1.6%):ADA陰性(1.5%)患者11人及びADA陽性(1.7%)患者9人で生じた。
実施例11
予測されたアテゾリズマブ1680mg q4w固定用量による毒性学的安全マージンの評価
1680mg q4w投与レジメンは、患者に投与される以前の最高用量よりもmg/kgベースで1mg/kg又は5%高い用量を表す。前の実施例で述べたように、1680mg q4wのサイクル1及び定常状態での予測Cminは、20mg/kg q3wで予測されたものよりも低い。サイクル1及び定常状態での予測Cmaxは、それぞれ20mg/kg q3w投与レジメンの場合よりも12%及び0.8%高い。1680mg q4wのより高い予測Cmaxに照らして、アテゾリズマブ毒性学マージンの再評価を実施した。
840mg q2w及び1680mg q4wレジメンの毒性学的安全マージンを、カニクイザルの反復投与毒性試験における50mg/kgの最高耐量及び現在の1200mg q3w用量レベル(図31)でのヒトPKパラメータを用いて評価した。アテゾリズマブの安全係数を、以下の方法を使用して計算した。
・ 曝露AUCベース:提案された臨床用量での予測されたAUCと、反復投与カニクイザル毒性試験における最高耐性50mg/kg用量レベルで計算されたAUCとのそれぞれの比較(AUC動物/AUCヒト)。カニクイザルにおける26週間反復投与毒性試験(試験13-3278)では、動物に、50mg/kg(すなわち、患者のq3wレジメンと比較してより頻繁に)の最大耐量で毎週投与した。したがって、(患者のq3w投与レジメンに適合させるために)3週間にわたって、サルに総用量150mg/kg(すなわち、50mg/kgを週に1回×3週間)を投与した。この総用量150mg/kg及びサルCL値3.7 mL/日/kgを使用して、サルのAUCを40,500日・μg/mL(すなわち、150mg/kgを3.7 mL/日/kgで除算する)と計算した。この40,500日・μg/mLの計算されたサル曝露を6,409日・μg/mLのヒト定常状態曝露(q3wで1200mgから与える、試験PCD4989g)と比較すると、6×(すなわち、40,500を6,409で除算する)の安全マージンが得られる。模擬臨床AUC(図31)を使用して、840mg q2w及び1680mg q4wレジメンについて同様の計算を行った。
・ 濃度Cmaxベース:1200mg q3wレジメンについて試験PCD4989gで報告されたCmax、又は提案された840mg q2w及び1680mg q4wレジメンについての模擬臨床Cmaxと、反復投与カニクイザル試験でそれぞれ50mg/kgの最高耐性用量で観察されたCmax(Cmax動物/Cmaxヒト)との比較(図31)。カニクイザルに50mg/kgのアテゾリズマブを27回IV投与した後のCmaxは3,680μg/mLであった。
上記のように、また曝露及び濃度分析に基づいて、カニクイザルにおけるアテゾリズマブの薬物動態及びトキシコキネティクスは、840mg q2w及び1680mg q4wの臨床投与レジメンを支持するのに十分な安全マージンを提供する。
実施例12
1200mg q3w、840mg q2w及び1680mg q4w投与レジメンの互換性
承認されたアテゾリズマブ1200mg q3w投与レジメンの有効性及び安全性プロファイルは、例えば、2LのNSCLC、2LのmUC、及び/又は1Lのシスプラチン不適格mUC患者において確立されている。患者ケアにおけるより大きな利便性及び柔軟性を提供するために、IV注入としての840mg q2w及び1680mg q4wの投与レジメンが本明細書で提供される。これらの新しい投与レジメンは、アテゾリズマブ1200mg q3w投与レジメンと交換可能であることが意図されている。
UC及びNSCLCについて利用可能なアテゾリズマブ単剤療法のPK及びERデータの評価は、前述の実施例に記載されているように8つの臨床試験に基づいて行われた。重要な知見として以下が挙げられる:
・ mUC又はNSCLC患者にアテゾリズマブを単剤療法として投与した場合、臨床的に有意な曝露有効性又は曝露安全性の関係は特定されなかった。
・ 840mg q2w及び1680mg q4w投与レジメンのモデルベースのシミュレーションに基づいて、予測曝露は、1200mg q3wアテゾリズマブで観察された曝露の範囲内である。サイクル1及び定常状態での840mg q2w及び1680mg q4w投与レジメンの予測Cmin濃度は、6μg/mLの目標Cmin濃度を上回っている。
・ アテゾリズマブに対する処置下で発現したADAの全体的な発生率は、PK、有効性、又は安全性に臨床的意義のある影響を及ぼさなかった。20mg/kg用量では、処置下で発現したADAの発生率の明らかな増加はなかった。
PCD4989g、OAK及びIMvigor211の試験からの安全性データに基づく:
・ 観察されたCmax>759μg/mL(これは、アテゾリズマブ1680mg q4wについて予想されるCmaxである)を有する患者は、投与レジメンに十分に耐容性を示し、Cmax≦759μg/mLを有する患者と比較した場合、安全性プロファイルに差は認められなかった。
・ 全体的な安全性プロファイルは、20mg/kg q3w投与レジメン及び1200mg q3w投与レジメンを受けた患者間で類似していた。
・ BWが低い又は高い患者の安全性プロファイルに有意な差は観察されなかった。
アテゾリズマブ840mgの新たな提示は、アテゾリズマブ840mg q2w及び1680mg q4wの投与スケジュールを支持するために開発された。これらの追加の投与スケジュールは、新たな840mgの提示(840mg q2wスケジュールのための840mgアテゾリズマブの1つのバイアル;1680mg q4wスケジュールのための840mgアテゾリズマブの2つのバイアル)を利用する。アテゾリズマブ製剤(すなわち、1200mg及び840mgの両方の提示における60mg/mLの活性物質の濃度と同一の強度)も、新たな提示を伴う一次包装材料の賦形剤及び組成も変更されていない。
PKモデリング及びシミュレーション、ER評価、安全性分析、及び免疫原性データからの結果に基づいて、NSCLC及びUCにおいて、提案された840mg q2w及び1680mg q4wのアテゾリズマブ用量と、現在承認されている1200mg q3wの用量との間に、曝露、有効性、及び安全性に臨床的に意味のある差があることは予想されない。
入手可能な証拠に基づいて、1200mg q3w、840mg q2w及び1680mg q4wの投与レジメンは交換可能であると考えることができると結論付けることが合理的である。ここでの「交換可能」の使用は、任意のアテゾリズマブ投与レジメンを別のものに置き換えることができることを示すことを意味し、特定の投与レジメンの選択は、アテゾリズマブ投与と患者ケアの他の態様との調整等の患者特有の要因に基づくことができる。
結論
この試験からの結果は、患者に処置のより大きな柔軟性及び利便性を提供しながら、同等の有効性及び安全性プロファイルを実証すると予想されることから、アテゾリズマブに対する840mg q2w、1200mg q3w、及び1680mg q4w投与レジメンの交換可能な使用を支持する。
提案された840mg q2w及び1680mg q4w投与レジメンの全体的な利益/リスクプロファイルは、現在承認されている1200mg q3w投与レジメンのものに匹敵し、これはNSCLC及びUCの患者において陽性であると考えられている。新たな840mg q2w及び1680mg q4wの投与レジメンは、1200mg q3wの投与レジメンに加えて、例えば、処置負荷の軽減及び生活の質の改善、並びに処置施設における資源利用の改善によって、患者ケアにおけるより大きな柔軟性及び利便性を提供する。
上記の結果は、安全性又は有効性について有意なER関係が観察されなかったことを示している。840mg q2w及び1680mg q4wの予測曝露は、1200mg q3w及びMADに匹敵し、IMpassion130からの観察されたPKデータと一致した。観察された安全性は、1680mg q4wについての予測Cmaxを上回るCmaxを有する患者と下回るCmaxを有する患者との間、及び最小体重四分位と上位3体重四分位の患者との間で同様であった。
簡潔に言えば、1200mg q3w及び20mg/kg q3w(第1相試験PCD4989gにおけるMAD)を含むq3w投与頻度を用いて評価した全ての用量レベルからのデータは、臨床的に意味のある曝露有効性又は曝露安全性の関係がないことを実証した。これらのデータは、新しい投与レジメンが1200mg q3w又は20mg/kg q3wについて観察された曝露範囲内の曝露を達成する場合、有効性又は安全性に影響を及ぼす可能性はないことを示唆した。PKシミュレーションは、新しい投与レジメンである840mg q2w及び1680mg q4wが、現在承認されている1200mg q3wのレジメンのものとほぼ同等の曝露を達成すると予測され、1200mg q3w及び20mg/kg用量レベルから観察された曝露の範囲内であることを示唆した。1680mg q4wレジメンの予測Cmaxを上回る及び下回るCmaxを有する患者の観察された安全性プロファイルの更なる特徴付けはまた、1680mg q4wの安全性プロファイルがq3wレジメンによる臨床経験と同様であると予想されることを裏付けている。
1680mg q4w投与レジメンのPKシミュレーションも、現在承認されている1200mg q3wのレジメンと同等の全曝露を示したが、予測された定常状態のCminは、現在承認されているレジメンよりも6%低く、この濃度も目標濃度を超えた。20mg/kg用量と比較した場合、サイクル1及び定常状態の幾何平均Cmaxのわずかな増加(それぞれ12%及び0.8%)が予想されたが、1680mg q4wレジメンの予測Cmaxは、第1相試験PCD4989gで観察された範囲内であった。更に、20mg/kg q3wで処置されたPCD4989gの患者は、そのCmaxが1680mg q4wレジメンの予測サイクル1値を上回っているか下回っているかにかかわらず、同等の安全性を有していた。
1200mg q3wレジメンStroh et al.,(2017)Clin Pharmacol Ther doi:10.1002/cpt.587)での観察と同様に、低体重及び高体重の患者の予測曝露は1200mg q3w及び20mg/kg用量レベルからの観察曝露の範囲内であるので、曝露に対する体重の影響は、840mg q2w又は1680mg q4wレジメンでは臨床的に有意であるとは予想されない。これらの結果は、体重別のPCD4989及びOAKの研究からの安全性分析によっても更に裏付けられ、これは、観察された全体的な安全性プロファイルが、最低体重及び上位3の体重四分位の患者間で概ね類似していることを実証した。
タンパク質治療薬のCminレベルの維持は、最も一貫した疾患制御を提供するだけでなく、ADAの発症の可能性を最小限に抑えると考えられる。TNF阻害剤研究からの臨床データは、タンパク質治療薬(すなわち、曝露とそれに続く完全なウォッシュアウト、更にそれに続く再曝露)への偶発的曝露が、同じレベルの同じタンパク質の一貫した存在よりも免疫応答を誘導する可能性が高いことを示す。840mg q2w及び1680 q4wレジメンの予測Cminレベルは、標的濃度(6μg/mL)を十分に超えており、承認された1200mg q3wレジメンのCmin値の範囲内である。したがって、840mg q2w又は1680mg q4wレジメンは、承認された1200mg q3wレジメンよりも高い免疫原性率をもたらす完全なウォッシュアウト及び再曝露サイクルをもたらすと予想されない。
より低頻度の投与レジメン(すなわち、1680mg q4w)でアテゾリズマブを投与する能力は、患者、介護者、及び医療提供者により大きな柔軟性及び利便性を提供する。アテゾリズマブは静脈内投与されるので、1680mg q4w投与レジメンは、より頻繁に投薬されるレジメンと比較して、処置を受けるのに必要な時間(例えば、処置センターへの訪問回数)を短縮する可能性がある。更に、処置を通してレジメンを切り替える能力はまた、投与スケジュールを個々の患者の進化するニーズを満たすように適合させることができるので、より大きな柔軟性を可能にする。
予測曝露量が観察された曝露量の範囲内であり、臨床的に有意なER関係がないことを考慮すると、840mg q2w及び1680mg q4wのアテゾリズマブレジメンは、1200mg q3wの承認されたレジメンと同等の有効性及び安全性を有すると予想される。更に、アテゾリズマブPKは適応症間で一貫しており、評価された様々な薬剤(限定されないが、化学療法、抗新生物薬、及びチロシンキナーゼ阻害剤を含む)と組み合わせているため、これらの結果は、アテゾリズマブが単剤療法として又は組み合わせて投与される適応症にわたって適用可能である。
要約すると、840mg q2w及び1680mg q4wのアテゾリズマブレジメンは、1200mg q3wの承認されたレジメンと同等の有効性及び安全性を有すると予想され、それらの交換可能な使用を支持し、患者により大きな柔軟性を提供する。
したがって、本明細書で提供される分析は、840mg q2w、1200mg q3w及び1680mg q4wのアテゾリズマブ投与レジメンの交換可能な使用を支持し、患者のアテゾリズマブ処置の間、より大きな柔軟性及び利便性を提供する。これらのデータは、FDAによる特定の種類のがんに対するアテゾリズマブ投与レジメンの拡大に寄与した(Tecentriq(アテゾリズマブ)[添付文書].カリフォルニア州南サンフランシスコ:Genentech,Inc.;2019.米国カリフォルニア州南サンフランシスコ:Genentech,Inc)。