JP2023549131A - ヒトミトコンドリア核分裂蛋白質1のペプチド阻害剤と使用方法 - Google Patents
ヒトミトコンドリア核分裂蛋白質1のペプチド阻害剤と使用方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年11月6日付出願の米国仮特許出願第63/110,457 号に基づき、その優先権を主張するとともに、その全文を参照により本願に援用する。
本出願は、2020年11月6日付出願の米国仮特許出願第63/110,457 号に基づき、その優先権を主張するとともに、その全文を参照により本願に援用する。
[連邦政府による資金提供を受けた研究の記載]
本発明は、米国立衛生研究所による助成金第R01 HL128240号及び第R01-GM067180号に基づく資金提供を受けてなされたものであり、連邦政府が本発明に対する特定の権利を有する。
本発明は、米国立衛生研究所による助成金第R01 HL128240号及び第R01-GM067180号に基づく資金提供を受けてなされたものであり、連邦政府が本発明に対する特定の権利を有する。
[配列表]
本出願に添付する配列表については、2021年11月5日付で作成した「650053_00834_ST25.txt」と称するASCIIテキスト形式の配列表ファイル(ファイルサイズ:11.4KB)として提出する。該配列表は、EFS-Webを介して本願と共に電子的に提出し、その全体を参照により本願に援用する。
本出願に添付する配列表については、2021年11月5日付で作成した「650053_00834_ST25.txt」と称するASCIIテキスト形式の配列表ファイル(ファイルサイズ:11.4KB)として提出する。該配列表は、EFS-Webを介して本願と共に電子的に提出し、その全体を参照により本願に援用する。
本発明の分野は、核分裂蛋白質1ペプチドと融合ペプチド、並びに血管疾患や2型糖尿病などの疾患の治療方法に関する。
2型糖尿病(T2DM)患者においては、大血管と微小血管の疾患が発病する以前に血管内皮機能障害が認められる。新たに得られたデータでは、ミトコンドリアの形態と機能の異常が、T2DM罹患者由来のヒト血管内皮機能不全の発病に関与していることを示唆している1,2。T2DM罹患者由来内皮細胞内のミトコンドリアは超酸化物を過剰に産生している。かかる超酸化物の過剰産生は、部分的にはミトコンドリア内膜の分極化によって引き起こされる2。内皮細胞におけるミトコンドリア反応性酸素種(mtROS)の過剰産生は深刻な後成的変化を引き起こすとともに細胞シグナル伝達経路を活性化し、それが内皮炎症や血管機能不全につながる3。以前に行った研究からも明らかなとおり、T2DM罹患者由来のヒト抵抗細動脈において、ミトコンドリアを標的とした抗酸化物質や薬理作用物質を投薬してミトコンドリア内膜を部分的に脱分極すると、内皮細胞依存性血管拡張能障害の好転を図れる2,4。
残念ながら、血管疾患の予防と治療を目的とした抗酸化療法に関する第III相臨床試験では、別途実施した小規模な生理学的試験且つ又は非ランダム化試験で見られるプラスの効果を検証できず、また、ミトコンドリア内膜を標的にして薬理作用を奏する既存の作用物質は、臨床使用を妨げる毒性プロファイルを有する7。
したがって、2型糖尿病患者などにおける血管機能不全の治療を標的とした別の療法が求められている。
本開示は、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドとその使用方法を提供する。
本開示の1態様では、(a)配列番号:38(XLPYPZ)のアミノ酸配列、又は配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を持つ配列を含むミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドであり、XとZが0~30個のアミノ酸又は随意に1~20個のアミノ酸からなるペプチドであり得ることを特徴とするミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドを提供する。一部の態様では、阻害ペプチドが、配列番号33~37から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号33~37に対して少なくとも80%の配列同一性を持つ配列を含み、5~50個のアミノ酸又は随意に5~30個のアミノ酸長さのペプチドであることを特徴とする。
本開示の別の態様では、(a)配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)のアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含むFis1阻害ペプチドを提供する。本開示の別の態様では、(b)担体ペプチドやタグペプチド又は細胞結合ペプチドをコード化するアミノ酸配列又は担体に連結している(a)配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)のアミノ酸配列又は配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含むFis1阻害ペプチドを提供する。
本開示の別の態様では、(a)配列番号1、16~21、26又は29のいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号1、16~21、26又は29に対して少なくとも80%の配列類似性、好ましくは少なくとも90%の類似性を持つ配列を含むミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドを提供する。一部の態様では、(a)を含む阻害ペプチドが、(b)担体ペプチドやタグペプチド又は細胞結合ペプチドをコード化するアミノ酸配列又は担体に連結している。一部の態様では、細胞透過性ペプチド配列である担体ペプチド、又は随意にTAT(配列番号2)や、配列番号2に対して少なくとも80%の配列類似性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を持つ配列に、阻害ペプチドが連結又は付着している。一部の態様において、(a)と(b)はペプチドであり、リンカアミノ酸配列によって連結している。一部の態様では、リンカー配列の配列番号が4、11、12、13、14又は15である。
本開示の別の態様では、配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)のアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含むFis1阻害ペプチドを提供する。別の態様では、Fis1阻害ペプチドが、配列番号3(YGRKKRRQRRRGSGSGSSHKHDPLPYPHFLL)又は配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を持つペプチドである。
別の態様では、阻害ペプチドが、配列番号3、配列番号31又は配列番号32、若しくは配列番号3、配列番号31又は配列番号32に対して少なくとも80%の配列類似性、好ましくは90%程度の配列同一性を持つペプチドである。
本開示では、更に別の態様において、2型糖尿病に関連する血管合併症の治療方法であり、血管合併症の治療を目的として本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法を提供する。
本開示の別の態様では、血管拡張能障害の治療を必要とする被検体において血管拡張障害の好転を図る方法であり、被検体における血管拡張能の回復を目的として本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法を提供する。1態様では、被検体が2型糖尿病罹患者である。
本開示の別の態様では、ヒト微小血管内皮細胞における酸化窒素(NO)の生体利用効率を高める方法であり、ヒト内皮細胞におけるNO生体利用効率の向上を目的として本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法を提供する。
本発明は、ペプチドと、該ペプチドをコード化する核酸配列及びベクターと、該ペプチド又はベクターを含有する組成物と、これらを用いて、2型糖尿病(T2DM)や血管疾患などの内皮機能不全や血管機能不全に関連する疾患を治療する方法を提供する。
糖尿病に伴う内皮機能不全をはじめとする様々な疾患にミトコンドリアの過剰な核分裂が関与していると考えられてきた。ミトコンドリア核分裂とは、ミトコンドリアが個々の小さいミトコンドリアに分裂することであり、生体外では、遺伝的又は薬理学的に核分裂を阻害することで血管拡張を改善できる。かかる阻害には、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)をコード化する遺伝子の、RNAiを介した遺伝的サイレンシングが含まれる。これらのデータは、Fis1の阻害が血管拡張能障害を伴う病態を改善する可能性があることを示唆している。本発明者らは、Fis1の阻害剤を同定するために、ミクロモルからサブミクロモルの親和性を持つ組換えFis1に結合する高親和性14残基ペプチドpep213(配列番号1)を開発した。ヒト内皮血管に細胞透過性のpep213を適用すると血管拡張が回復するため、このペプチドはFis1の 生体内活性を阻害して治療効果を奏し得ることが示唆された。pep213は、ファージディスプレイスクリーニング法によりペプチドから派生させたものであり、最初の32残基が欠けている重度短縮型Fis1に結合した新規ペプチドである。更に、本発明者らは、pep213に含まれるアミノ酸のうちFis1への結合に必要な基幹アミノ酸に焦点を当てて、共結晶化と突然変異生成の分析を実施した(図20参照)。
(1)2型糖尿病罹患者から採取したヒト内皮細胞におけるミトコンドリア核分裂1蛋白質(Fis1)の発現増加と、(2)Fis1又はダイナミン関連蛋白質1(Fis1と結合してミトコンドリア核分裂を誘発し得るDrp1)の発現の分子ノックダウンによる、高グルコース誘発性のミトコンドリア超酸化物産生増加及び内皮細胞由来の1酸化窒素合成酵素(eNOS)のSer1177活性化部位におけるリン酸化能障害の阻止と、(3)ヒト抵抗細動脈において、Drp1を薬理的・分子的にノックダウンすることで、低グルコース誘発性の内皮機能不全を好転できること、とを実証した先行研究に基づき、ミトコンドリア核分裂に関与する蛋白質及びペプチドを標的とすることが有望な代替手段として期待されている1,8。Fis1は、そのミトコンドリア動態における役割から、薬理的標的として特に注目されており、低酸素血症や高血糖症などに対する病理学的刺激手段として最も活躍すると考えられている9-12。
本開示では、実施例においても説明するように、Fis1発現のノックダウンが、2型糖尿病患者から採取した抵抗血管と高・低グルコース濃度に急性曝露した健常な個人から採取した血管において、内皮細胞依存性血管拡張及び1酸化窒素(NO)産生を好転できるかどうかを調べる試験を実施した。更に、高グルコース又は低グルコース状態での内皮細胞関門機能や酸素消費及び解糖に対するFis1ノックダウンの影響も調べた。本発明者らは次に、Fis1に結合してFis-1媒介性の核分裂を阻止する新規ペプチドを設計し、T2DM罹患者由来のヒト抵抗小動脈と高グルコース濃度に曝露した健常なヒト血管の内皮細胞依存性血管拡張に好ましく作用するかを調べるための試験も行った。Fis1を薬理学的標的とすることで、T2DMにおける血管疾患の課題に対する有用な治療手段が得られる。
[ペプチド及び組成物]
本発明は、組換えFis1、好ましくはマイクロモルからサブマイクロモルの親和性を有する組換えFis1に結合する新規ペプチドを提供する。
本発明は、組換えFis1、好ましくはマイクロモルからサブマイクロモルの親和性を有する組換えFis1に結合する新規ペプチドを提供する。
本開示の第1の実施形態では、(a)配列番号38(XLPYPZ)のアミノ酸配列、又は配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を持つ配列を含むミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドであり、XとZが0~30個のアミノ酸、又は随意に1~20個のアミノ酸、又は随意に1~10個のアミノ酸からなるペプチドであることを特徴とするミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドを提供する。別の実施形態では、配列番号38のアミノ酸配列、又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む。別の態様では、請求項1の阻害ペプチドが、(a)配列番号33~37から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号33~37に対して少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含み、5~50程度のアミノ酸長さ又は随意に5~30個のアミノ酸長さのペプチドであることを特徴とする。アミノ酸の長さは、10~20程度のアミノ酸、又は12~16程度のアミノ酸であることが好ましい。上記以外にも適切な長さを企図し得る。また、後述の如く、(a)が(b)の担体ペプチド又はタグに連結していることが望ましい。
更なる実施形態では、14量体ペプチドpep213(配列番号1、16~21、26又は29、一実施形態において好ましくは配列番号1)又は少なくとも80%の配列同一性、随意に少なくとも90%の配列同一性を持つ配列が、細胞透過性融合ペプチド(例:pep213-TAT、配列番号3又は配列番号31又は32、若しくは配列番号3、31又は32と少なくとも80%又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列)として得られる場合、生体内でFis1活性を阻害する機能を有する。この阻害ペプチドは、拡張能が減弱している内皮細胞及び血管の拡張能を回復する機能も有する。このように、該ペプチドは、内皮細胞依存性血管拡張障害を好転させる機能を有するため、2型糖尿病に関連する血管機能不全などの血管疾患の治療に使用できる。更に、図19と図20に示す共結晶化とペプチド変異解析の結果では、14量体中のアミノ酸のうち、Fis1結合に重要なアミノ酸を明らかに示している。したがって、一部の態様では、修飾pep213ペプチド(例: 配列番号16~29、好ましくは配列番号16~21、26又は29、若しくは1つ又は複数のアミノ酸Xが任意のアミノ酸、好ましくはアラニン又はグリシンに置換された配列番号30、など)が企図される。
1実施形態では、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドが、担体ペプチドやタグペプチド又は細胞結合ペプチドと連結した本開示に係る阻害ペプチドを含む、又はそれからなる。1態様では、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドが、(a)配列番号38(XPLPYPZ)のアミノ酸配列、又は配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を持つ配列を含み、XとZが0~30個のアミノ酸、又は随意に1~20個のアミノ酸、又は随意に1~10個のアミノ酸からなるペプチドである(該アミノ酸ペプチドは任意の適切なアミノ酸を含み得る)。別の実施形態では、配列番号38のアミノ酸配列、又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む。別の態様では、請求項1の阻害ペプチドが、(a)配列番号33~37から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号33~37に対して少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含み、5~50程度のアミノ酸長さ又は随意に5~30個のアミノ酸長さのペプチドであることを特徴とする。別の態様では、該阻害剤が、(a)配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)のアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む、又はそれからなる。別の実施形態では、Fis1阻害ペプチドが、(b)担体ペプチドやタグペプチド又は細胞結合ペプチドをコード化するアミノ酸配列又は担体に連結している(a)配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む、又はそれからなる。本出願では、「Fis1の阻害ペプチド」及び「Fis1阻害ペプチド」という用語を、細胞内でFis1の活性を阻害できるペプチドを指す同義語として用いる。
1実施形態では、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドが、(a)配列番号1、16~21のアミノ酸配列又は配列番号1、16~21に対して少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列である、又はそれを含む、若しくはそれからなる。別の実施形態では、Fis1の阻害ペプチドが、(b)担体ペプチドやタグペプチド又は細胞結合ペプチドをコード化するアミノ酸配列又は担体に連結している(a)配列番号1、16~21、26又は29のアミノ酸配列、又は配列番号1、16~21、26又は29に対して少なくとも80%の配列同一性を又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む、又はそれからなる。
別の実施形態では、図20に示す変異ペプチド分析に基づき、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドが、(a)配列番号30のアミノ酸配列であるか、又はそれを含む、若しくはそれから構成されてなり、該アミノ酸配列における1つ又は複数のXが任意のアミノ酸(例:アラニンやグリシンなど)又はそれに対応する配列番号1からのアミノ酸であることを特徴とする。別の実施形態では、該阻害剤ペプチドが、配列番号30を含む、又はそれから構成されてなり、該配列番号30における2つ以上のXが任意のアミノ酸である、或いは、3つ以上のXが任意のアミノ酸である、或いは、4つ以上のXが任意のアミノ酸である、或いは、5つ以上のXが任意のアミノ酸である、或いは、6つ以上のXが任意のアミノ酸である、或いは、7つ又は8つのXが任意のアミノ酸であることを特徴とする。
別の実施形態では、該阻害ペプチドが、(b)担体ペプチドやタグペプチド又は細胞結合ペプチドをコード化するアミノ酸配列(例:配列番号32)又は担体に連結している(a)配列番号30のアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。
本出願では、「Fis1の阻害ペプチド」及び「Fis1阻害ペプチド」という用語を、細胞内でFis1の活性を阻害できるペプチドを指す同義語として用いる。
Fis1の阻害ペプチドは、該阻害ペプチドに連結した担体又は担体ペプチド、タグペプチド又は細胞結合ペプチドを更に含む。適切な担体ペプチド、タグペプチド、又は細胞結合ペプチドとしては、当技術分野で周知・納得されているものを用いることができる。1実施形態において、担体ペプチドは細胞透過性ペプチドである。細胞透過性ペプチド(CPP:Cell Penetrating Peptides)とは、細胞膜を通り抜けて細胞の内部に到達するペプチドのことである。適切な担体ペプチドの例としては、には、例えば配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を持ち細胞内に浸透できる配列を持つTATが挙げられる。その他の適切なCPPとしては、当技術分野で周知のものを使用でき、その例としては、ペネトラチン(Penetratin)、R8、トランスポータン(Transportan)、エキセントリー(Xentry)などが挙げられる。(例として、Patel,S.G.,Sayers,E.J.,He,L. et al. ゛Cell-penetrating peptide sequence and modification dependent uptake and subcellular distribution of green florescent protein in different cell lines″.SCI Rep 9、6298(2019)// doi.org/10.1038/s41598-019-42456-8
を参照のこと、また参照により本出願に援用する)。他の適切な担体としては、当技術分野で周知のものを使用できる。他の担体の例としては、ポリマー複合体、ポリマーナノ粒子、脂質ベースの担体、デンドリマー、カーボンナノチューブ、金ナノ粒子などのナノ担体が含まれるが、これらに限定されない。脂質ベースの担体は、リポソームとミセルの両方を含む。該担体は、共有結合的又は非共有結合的のいずれかによっても連結し得る。一部の実施形態において、ペプチドは担体と共役結合し得る。
を参照のこと、また参照により本出願に援用する)。他の適切な担体としては、当技術分野で周知のものを使用できる。他の担体の例としては、ポリマー複合体、ポリマーナノ粒子、脂質ベースの担体、デンドリマー、カーボンナノチューブ、金ナノ粒子などのナノ担体が含まれるが、これらに限定されない。脂質ベースの担体は、リポソームとミセルの両方を含む。該担体は、共有結合的又は非共有結合的のいずれかによっても連結し得る。一部の実施形態において、ペプチドは担体と共役結合し得る。
一部の実施形態において、本開示に係るペプチドは更に外因性のタグ又は作用物質を含む。本開示で用いられる「タグ」又は「作用物質」という用語は、本発明のペプチドの精製・同定・検出又は治療的使用を可能にする如何なる有用な部分を含む。本発明では、阻害ペプチドの機能性を妨げないものであれは、如何なるタグ又は作用物質を使用できる。適切なタグは、当技術分野で周知のものであり得るが、それに限らず、親和性タグやエピトープタグ(例:cMyc、HIS、FLAG、V5-tag、HA-tag、NE-tag、S-tag、Ty-tagなど)及び蛍光タグ(RFP、GFPなど)を使用できる。エピトープタグは、一般的に「精製タグ」、すなわち、ポリペプチドの、他の非特異蛋白やペプチドからの単離を容易にするタグとして使用される。
一部の実施形態では、担体ペプチド又はタグがポリペプチドであり、阻害ペプチドとタグが1つの核酸配列にコード化されて同時に翻訳される。一部の実施形態では、タグを切断可能であり、ペプチドの産生・精製後に取り除くことができる。
一部の実施形態では、阻害ペプチドと担体ペプチド又はタグが、リンカー配列を介して連結されている。適切なペプチドリンカーは、3~10個のアミノ酸又は3~25個のアミノ酸のポリペプチドからなり得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーが、セリンとグリシンから選択されるアミノ酸配列(例えばGSGSGS(配列番号4)など)を持つポリペプチドからなり得る。他の適切なリンカーとしては、当業者が納得し得るものを用いることができ、例えば、SGSG(配列番号11)、Gn(nは1から10までの整数)、(SGSG)n(nは1から10までの整数、配列番号11)、GSGS(配列番号12)、SSSS(配列番号13)、GGGS(配列番号14)、GGC、GGS、(GGC)8)、(G4S)3、及び GGAAY(配列番号15)などが挙げられる。ペプチドリンカーはプロテアーゼによって切断可能となり得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーが、配列番号4のアミノ酸配列を持つポリペプチドからなる。本出願では、その他当技術分野で周知の適切なリンカーを使用することが企図される。
1実施形態において、Fis1阻害ペプチドは、配列番号3(YGRKKRRQRRRGSGSGSSHKHDPLPYPHFLL)又は配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を持つペプチドからなり得る。実施例に示されているように、この阻害ペプチドは生体内でFis1活性を阻害することができる。
別の実施形態では、Fis1阻害ペプチドが、配列番号31(YGRKKRRQRRRGSXSHKHDPLPYPHFLL)又は配列番号31と少なくとも80%の配列類似性又は少なくとも90%の配列同一性を持つペプチドからなり、Xは本開示に係るリンカである。別の実施形態では、FIs1阻害ペプチドが、配列番号32又は配列番号32と少なくとも80%の配列類似性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含み、Xは、その少なくとも1つが任意のアミノ酸(例:アラニンなど)であり、Yは、本開示に係るリンカである(表2を参照)。一部の実施形態では、配列番号32が、該配列内の任意のアミノ酸(アラニンなど)から選択される2つ以上のアミノ酸、或いは同配列内の任意のアミノ酸(アラニンなど)から選択される3つ以上、又は4つ以上、若しくは5つ以上のアミノ酸を含むXを持つと企図される、或いは6つ以上のXが、配列番号32内の任意のアミノ酸(アラニンなど)から選択されるアミノ酸である、或いは7つ又は8つのXが、配列番号32内の任意のアミノ酸(アラニンなど)から選択されるアミノ酸であるとも企図される。Yは、本開示に係るリンカーであり、例えば配列番号4、11~15などである。つまり、配列番号32は配列番号2-リンカ-配列番号30であり、配列番号31は配列番号2-リンカ-配列番号1である。リンカーは、本開示に係る如何なるリンカーであり得る。
本開示で用いられる「蛋白質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」という用語は、α-アミノ基と隣接残基のカルボキシ基との間のペプチド結合によって相互に接続される一連のアミノ酸残基を指す同義語として用いられる。「蛋白質」や「ポリペプチド」という用語は比較的大きなポリペプチドを指す場合が多く、「ペプチド」という用語は小さなポリペプチドを指す場合が多いが、当技術分野ではこれらの用語の意味が重なり合っている。「蛋白質」には修飾アミノ酸(リン酸化、糖化、グリコシル化アミノ酸など)やアミノ酸類似体が含まれる場合がある。
阻害ペプチドは、タグや担体ペプチドに直接連結、間接的に連結、又は共役結合しているものであり得る。本開示で用いる「共役結合」という用語は、2つのものが共有結合により接合することを指す。その際、2つのものを直接共有結合することも、標準的な合成カップリング法で各基を連結することによって共有結合することも可能である。例えば、2つのポリペプチドを同時に発現させることで連結させて、融合蛋白又はキメラ蛋白を形成し得る。1つ又は複数のアミノ酸をポリペプチドに挿入し(すなわち、対応する核酸配列をベクターに取り込むことにより)連結基として機能させることも可能である。例えば、一部の実施形態では、ポリセリンとポリグリシンリンカが阻害ペプチド配列とタグ又は担体ペプチドとの間に含まれる。その他に考えられる連結基としては、カルボン酸又はアミノ基を銘々有するアミノ酸側鎖を持つポリペプチドとのアミドカップリングを可能にすることを目的として末端をアミノ基又はカルボン酸基に置換したポリエチレングリコール又は炭化水素が挙げられる。或いは、アミノ基やカルボン酸基をアジド基やアルキン基などの他の結合パートナーを用いて該置換を行い、銅触媒下でトリアゾールを形成することもできる。
また、本開示は、本開示に係る阻害性Fis1ペプチドをコード化するポリヌクレオチドも提供する。本出願では、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、及び「核酸配列」という用語を、ヌクレオチド配列又はその断片を意味する同義語として使用する。これらの語句は、ゲノム起源又は天然起源又は合成起源のDNA又はRNAを指し、単鎖又は二本鎖の分子、並びにかかる分子のセンス鎖又はアンチセンス鎖を含む。1実施形態では、ポリヌクレオチドが、異種プロモータ配列と、配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)又は配列番号16~21、26又は29、或いは配列番号16~21、26又は29に対して少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列のペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドが、異種プロモータ配列と、担体又はタグペプチド(例えば、配列番号3、31又は32又は配列番号3、31又は32と少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列)に連結した配列番号1のペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列を含む。
1実施形態では、ポリヌクレオチドが、異種プロモータ配列と、配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)又は配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列のペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドが、異種プロモータ配列と、担体又はタグペプチド(例えば、配列番号3又は配列番号3と少なくとも80%の配列同一性又は少なくとも90%の配列同一性を持つ配列)に連結した配列番号1のペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列を含む。
上記及び本出願全体に用いられている「配列同一性」という用語については、「少なくとも80%の配列同一性」とい表現が用いられている場合、約80%の如何なる配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性)を含むものとする。同様に、「少なくとも90%の配列同一性」とい表現が用いられている場合は、特定の配列番号に対する約90%以上の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性)を含むものとする。
一部の実施形態において、ポリヌクレオチドはベクターである。一部の実施形態では、ベクターによって、本開示に係る阻害ペプチドを発現することができ、このベクターは、本開示に係る阻害性Fis1ペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列に操作可能に接続された異種プロモータを含む。 このベクターは、異種バックボーン配列を更に含み得る。本発明での使用に適したベクターは、本発明に係る阻害ペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列に操作可能に接続されたプロモータを含む。ベクターは宿主細胞における翻訳制御を可能にする適切な制御配列も含み得る。一部の実施形態では、ベクターが、1つ又は複数の担体ペプチド又はタグの核酸配列を更に含む。一部の実施形態では、ベクターが、シグナル配列などの別の制御配列を更に含む。
本開示で用いられる「ベクター」という用語は、連結先である他の核酸を伝播する機能を有する核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造としてのベクターと、導入先の宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。特定のベクターは、それらが操作可能に連結している核酸の発現を仕向ける機能を有する。本出願においては、このようなベクターを、「発現ベクター」(又は単に「ベクター」)と呼ぶ。ベクターという用語は、最も一般的に使用されるベクター形式である「プラスミド」を含む。プラスミドは円形の二本鎖DNAループであり、更に別のDNA断片(例えば阻害性Fis1ペプチドをコード化するもの)をライゲーション(結紮)し得る。しかしながら、ウイルスベクターのような他の形態の発現ベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデナ関連ウイルス)も本発明で使用し得る。特定のベクター(例えば、細菌起源の複製を伴う細菌ベクターと哺乳類のエピソームベクターなど)は、導入先の宿主細胞において自己複製する機能を有する。他のベクターは、宿主細胞への導入時に該宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって該宿主ゲノムと共に複製される。1実施形態では、ベクターが、ウイルス機構を利用して宿主細胞で発現するペプチドを運ぶウイルスベクターを含む。
一部の実施形態において、本発明のベクターは異種バックボーン配列を更に含む。本開示で用いられている「異種核酸配列」という用語は、ヒト以外の核酸配列、例えば、ヒトには生来見られない細菌、ウイルスその他ヒト以外の核酸配列などを指す。ベクターの伝播、且つ又はコード化されたペプチドの発現には、異種バックボーン配列が必要となる場合がある。一般的に用いられる発現ベクター及びプラスミドの多くは、CMVプロモータなど、ヒト以外の核酸配列を含有している。
本発明の実施に適したプロモータとしては、構造性プロモータ、誘発型プロモータ、時間的に制御されるプロモータ、発生的に制御されるプロモータ、化学的に制御されるプロモータ、物理的に制御される(例:光又は温度によって制御される)プロモータ、組織優先的プロモータ、及び組織特異的プロモータが挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロモータとして「異種プロモータ」というものを挙げているが、これは操作可能なポリヌクレオチドと自然に関連付けられないプロモータを指す用語である。哺乳類細胞における典型的なプロモータには、ラウス肉腫ウイルス(RSV)や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、サイトメガロウイルス(CMV)、SV40ウイルスなどのプロモータや、翻訳伸長因子EF-lαプロモータ、ユビキチンプロモーターなどがある。これ以外にも幅広い多くのプロモータを、様々な細胞の種類に応じて使用できることは、当業者であれば熟知しているはずである。
蛋白質及び核酸配列の同定は、当技術分野で周知の局所配列検索基本ツール(BLAST:Basic Local Alignment Search Tool)を用いて評価する(Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2267-2268; Altschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402)。BLASTプログラムは、照会するアミノ酸又は核酸配列と試験する配列(蛋白質又は核酸配列データベースから得ることが好ましい)との間で類似度スコアの高い断片(本出願では「高得点セグメントペア」と呼ぶ)を同定することによって相同配列を同定する。高得点セグメントペアの統計的有意性については、統計的有意性の公式(Karlin and Altschul, 1990)を用いて評価することが好ましい。前記統計的有意性の公式の開示はその全体を参照により本願に援用する。BLASTプログラムを利用する際、デフォルトのパラメータ、又はユーザが提供する改良パラメータを使用できる。
「配列同一性の割合(%)」又は「類似率(%)」は、比較用画面に最適に整列させた2本の配列を比較することによって決定される。その際、比較用画面内で2本の配列を最適に整列できるように、ポリヌクレオチド又はペプチド配列の画面表示される部分には、参照配列(追加・削除などの変更なし)と照らし合わせた場合に追加又は削除された箇所が存在し得る(すなわち、参照配列との格差が見られる場合がある)。上記割合(%)を計算する方法としては、両配列において同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が発生する部位の数を判断し、一致する部位の数を求め、該一致する部位の数を比較用画面内の全ての部位の数で割り、その計算結果に100を掛けて、配列同一性の割合(%)を算出する方法を用いる。
「実質的な同一性」又は「実質的な類似性」という用語は、ポリヌクレオチド又はペプチドが少なくとも75%の配列同一性を持つ配列を含むことを意味する。つまり、同一率は75%~100%の任意の整数値であり得る。より好ましい実施形態では、本出願に記載のプログラムを用いて(好ましくは、上記のようにBLASTに標準パラメータを用いて)参照配列と比較した場合の同一率として、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が含まれる。これらの値を適切に調節することで、コドン縮退や、アミノ酸の類似性、読取枠の位置などを考慮ながら、2つのヌクレオチド配列によりコード化した蛋白質のうち、対応するもの同士の同一性を決定することが可能になる。
本発明においては、アミノ酸配列の「実質的な同一性」とは、通常、ポリペプチド配列の同一性が少なくとも75%であることを意味する。ポリペプチドの同一率は、75%から100%の任意の整数であることが好ましい。より好ましい実施形態では、上記同一率として、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.7%、99%が含まれる。
また、本開示は、阻害性Fis1ペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む組成物も提供する。選択した投薬経路と標準的な薬務に基づいて、薬学的に許容可能な担体を選択すべきである。該組成物は、医薬品の分野における標準的な慣行に従って剤形に処方し得る(Alphonso Gennaro、ed.、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.,(1990)Mack Publishing Co., Easton, Paを参照)。適切な剤形としては、例えば、液剤、非経口液剤、又は懸濁液を含み得る。一部の実施形態において、該組成物は本開示に係る単離及び精製されたFis1阻害ペプチドを含む。他の実施形態において、該組成物は、本開示に係るFis1阻害ペプチドをコード化する核酸配列を含む単離及び精製されたポリペプチド又はベクターを含む。
別の態様として、本開示は、本開示に係るベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明では、ベクターによってコード化されたペプチドの発現を可能にするものであれば、如何なる宿主細胞を使用し得る。一般的な宿主細胞の例としては、細菌(例えば、大腸菌、枯草菌など)や酵母菌(例えば、出芽酵母など)や真核細胞株が挙げられる。有利な点として、昆虫又は哺乳類の細胞株を用いてヒトと同様のmRNAスプライシングを行うことができる。多くの発現系及び細胞株(市販されているものの多くを含む)を用いて本発明のペプチドを発現し得ることは、当業者であれば承知されよう。
[方法]
本開示は、本開示に係るFis1阻害ペプチドを用いた血管機能不全の治療方法を提供する。該方法は、血管機能不全を治療するために本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む。一部の実施形態において、血管機能不全は2型糖尿病に関連する。本開示は、一部の実施形態において、2型糖尿病に関連する血管合併症を治療する方法を提供する。該方法は、2型糖尿病に関連する1種類又は複数種の血管合併症を軽減するために、本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む。
本開示は、本開示に係るFis1阻害ペプチドを用いた血管機能不全の治療方法を提供する。該方法は、血管機能不全を治療するために本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む。一部の実施形態において、血管機能不全は2型糖尿病に関連する。本開示は、一部の実施形態において、2型糖尿病に関連する血管合併症を治療する方法を提供する。該方法は、2型糖尿病に関連する1種類又は複数種の血管合併症を軽減するために、本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む。
更に、本開示は、血管拡張能障害の治療を必要とする被検体において血管拡張障害の好転を図る方法であり、被検体における血管拡張機能の回復を目的として本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、被検体は2型糖尿病罹患者である。更に、ヒト抵抗動脈において、2型糖尿病に関連し高グルコースにより誘発された内皮細胞依存性血管拡張障害を抱え持つ被検体を対象とする場合もある。この障害は1酸化窒素合成酵素依存性のものであり得る。
本開示は、別の実施形態において、ヒト微小血管内皮細胞における酸化窒素(NO)の生体利用効率を高める方法であり、ヒト内皮細胞におけるNO生体利用効率の向上を目的として本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、内皮細胞が血管機能不全を抱え持つ被検体の生体内内皮細胞である。
本開示は、別の実施形態において、糖尿病により誘発された内皮組織の細胞傷害を予防する方法であり、本開示に係るFis1阻害ペプチドの有効量を投与することを含む方法を提供する。過剰なミトコンドリア核分裂が糖尿病症例における内皮組織機能障害に関与していると考えられており、Fis1を減少させることで糖尿病誘発性の細胞傷害を防ぐことができる。
本開示は、更に別の実施形態において、ミトコンドリア核分裂を要すると判明しているRAS媒介性癌の治療方法を提供する。該方法は、本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ミトコンドリア核分裂を遮断する能力を与えることによって癌の進行を阻止できる可能性があるので、Fis1阻害剤が癌の進行を抑制するのに有効な作用を発揮し得る、と考えられる。
別の実施形態では、Fis1阻害ペプチドを神経変性疾患の治療に使用し得る。該方法は、神経変性疾患を治療するために本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む。
本実施形態のFis1阻害ペプチドは、幾つもの理由からDrpよりも好ましい標的であると考えられている。まず、標的がDrp1である場合、Drp1は、胚致死性であるとともに、核分裂において膜変形・切断などを担う唯一の力学的酵素であり、癌以外の場合には適した標的とは言えない。Fis1ノックアウトも胚致死性であるが、ストレス状態でのみ誘発されるため、Drp1よりも好ましい標的であると考えられている。
過剰なミトコンドリア核分裂は、糖尿病症例[Shenouda, S. M., Widlansky, M. E., Chen, K., Xu, G., Holbrook, M., Tabit, C. E., ... & Vita, J. A.(2011)and Kizhakekuttu ...Widlansky et al(2012)]及び急性肺機能不全症例における内皮組織機能障害に関係があるとされている。Fis1を標的とすることで、糖尿病患者の血管系損傷を防ぐ際に、Fis1-Drp1軸に焦点を置いた新規薬理学的アプローチをとることが可能になる。前述のように、Drp1のペプチド阻害剤を介してFis1/Drp1軸を標的とすることは、心筋症だけでなく神経変性疾患の症例において効果を示す多くの所見が得られている。
更に、本開示は、内皮機能不全を治療するための方法であり、内皮機能不全を治療するために本開示に係るFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法を提供する。1実施形態では、内皮機能不全にアテローム性動脈硬化症が含まれる。別の実施形態において、内皮機能不全は、アテローム性動脈硬化症、脳血管疾患、冠状動脈疾患、腎血管性疾患、及び末梢動脈疾患のうちのいずれかの疾患と関連している。
「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、有益な又は望ましい生物学的且つ又は臨床的結果をもたらし得る十分な量を指す。例えば、本願発明によるペプチドの治療的に有効な量を、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて組成物を形成し得る。該組成物は、当技術分野で認識されている如何なる様態で投与し得る。かかる方法で使用する用量、投与方法、及び薬学的に許容可能である適切な担体と希釈剤及び賦形剤は、当技術分野に精通した者であれば容易に判断できるが、目前の所定の状況により異なる。
例えば動物実験や臨床試験の結果に基づいて、患者の体重、吸収率、半減期、疾患の重症度などを考慮しながら推定することで適切な投与量を判断し得る。投与回数と治療の過程は個人によって異なり得る。自己免疫疾患の発症又は進行を予防することを目的とした一部の実施形態では、追加投与によるブースター効果を要し得る。ブースター投与の適切な日程については、当技術分野に精通した者であれば容易に判断し得る。例えば、当該ペプチド又はベクターを、毎月、隔月、又は4ヶ月毎、6ヶ月毎、或いは年に1回、2年に1回、若しくはその間の任意の時間間隔で投与し得る。
該組成物の剤形は、単位用量剤型であることが好ましい。かかる剤形の場合、調製物を、適切な量の活性成分を含有するべく単位用量に分ける。調製物を包装したものや、錠剤・カプセルを小分けして包含させたパックや、粉末を包含させたバイアルやアンプルなど、調整剤を個々に適した数量包含した包装を単位用量剤型とし得る。更に、カプセルや錠剤、カシェー剤(オブラートカプセルなど)又はトローチ剤自体を単位用量剤型とし得るし、或いは、これらのいずれかを適切な数包装したものを単位用量剤型とし得る。
本開示で用いられている「被検体」又は「患者」という用語は、哺乳類と非哺乳類の両方を指す。「哺乳類」には、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、チンパンジーなどの類人猿やサルなど)、農用動物(例えば、牛、馬、羊、山羊、豚など)、愛玩動物(ウサギ、犬、猫など)、実験動物(ラット、マウス、モルモットなど)といった哺乳綱に属する如何なる動物を含む。非哺乳類の例には、鳥類が含まれるが、これに限定されない。「被検体」という用語は、特定の年齢や性別を示すものではない。1実施形態では、被検体をヒトとする。特定の実施形態において、ヒトとは、血管疾患又は血管機能不全を患うヒト、又は血管機能不全に関連する疾患(2型糖尿病など)を患うヒトである。
本開示で用いられている「投与する」及び「投与」という用語は、本開示に係るFis1阻害ペプチドを含む医薬品製剤又は組成物を被検体に提供する如何なる方法を指す。かかる方法は、当業者に周知のものであり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼球投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、髄腔内投与及び皮下投与などの注射剤を含む非経口投与を含むが、必ずしもこれらに限定されない。継続投与又は間欠投与を行うことができる。様々な態様において、製剤を治療的に投与可能、つまり既存の疾患や病態を治療するために投与可能である。
当該ペプチド又はベクターを投与し易くするために、当技術分野で周知の薬学的に許容可能な適切な担体と混合し得る。「薬学的に許容可能」という用語は、規制機関(例えば、連邦政府や州政府の機関など)により、被検体への投与が承認された組成物を指す。「担体」という用語は、医薬組成物を投与できる状態にするための希釈剤、賦形剤、又は媒介物を指し得る。薬学的に許容可能な担体としては、当技術分野で周知のものを使用でき、希釈剤や防腐剤、可溶化剤、乳化剤、リポソーム、ナノ粒子などを含むが、必ずしもこれらに限定されない。適切な医薬品担体の例がE.W.マーティン著の『レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)』に記載されている。更に、かかる薬学的に許容可能な担体は、水性又は非水性溶媒中の溶液、懸濁液、及び乳濁液であり得る。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な水性溶媒担体としては、等張溶液、アルコール/水溶液、乳濁液又は懸濁液(生理食塩水及び緩衝液を含む)が含まれる。かかる担体の例としては、水、油(植物油など)、エタノール、生理食塩水(リン酸緩衝食塩水、塩化ナトリウム水溶液など)、ブドウ糖水溶液(含水グルコース)及び関連する糖溶液、グリセリン、又はプロピレングリコールやポリエチレングリコールなどのグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。分解防止剤や抗酸化剤、防腐剤を添加してもよい。適切な抗酸化剤としては、亜硫酸、アスコルビン酸、クエン酸及びその塩、並びにエチレンジアミン四酢酸ナトリウムが挙げられる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン又はプロピルパラベン、及びクロルブタノールが挙げられる。非経口投与のための組成物は、水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液の形をとり得る。該組成物には、生理学的条件を近似するために必要な場合、pH調整・緩衝剤や毒性調整剤(酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)のような薬学的に許容可能な物質を更に含有し得る。
ペプチドの活性を維持する従来から周知の滅菌技術によって該組成物を滅菌することも可能である。投与方法に応じて処方を選ぶ必要がある。緩衝液としては、リン酸塩、クエン酸塩、及びその他の有機酸;アスコルビン酸をはじめとする抗酸化物質;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどの蛋白質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;且つ又はTWEEN(登録商標)ブランドの界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)界面活性剤などの非イオン性界面活性剤が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。薬学的に許容可能な担体としては、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液、又は0.9%生理食塩水が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。他の適切且つ薬学的に許容可能な担体も企図される。
本発明において、「治療する」又は「治療」とは、疾患・病態又は障害と闘う目的で被検体の管理とケアを行うことを言い表す言葉である。治療には、症状又は合併症の発症を削減・抑制又は予防するため、症状又は合併症を軽減又は緩和するため、又は疾患・病態又は障害を排除するために、本発明のペプチドを投与することが含まれる。好ましい1実施形態において、この疾患は血管機能不全である。特定の1実施形態において、この疾患は血管機能不全を伴う2型糖尿病である。
[キット]
前者の方法に関して説明した開示の態様は、文脈上別段の定めがある場合を除き、後者の方法及びキットに適用可能であり、その逆もまた同様である。
前者の方法に関して説明した開示の態様は、文脈上別段の定めがある場合を除き、後者の方法及びキットに適用可能であり、その逆もまた同様である。
本開示に係る方法を実施するために適切なキットも含まれている。本開示に係るFis1阻害ペプチド、又はそのFis1変異ペプチドを含む組成物、及び使用説明書をキット化したものを含み得る。別の実施形態において、該キットは、本開示に係るFis1阻害ペプチドをコード化する核酸配列、又は製造・精製のためにFis1阻害ペプチドを産生できる細胞を含み得る。製造・精製又は使用に関する説明書もキットに含み得る。該キットは、本開示に係るFis1阻害ペプチドを含む医薬組成物を更に含み得る。
すでに説明したもの以外にも、本発明の進歩性ある概念を逸脱することなく様々な変更を加え得ることは当事者にとって明らかなはずである。本開示を解釈する際には、文脈と一致する可能な限り広い範囲で全ての用語を解釈するべきである。「含む(comprising)」という用語、またその語形の変形は、要素・構成部分又は工程について非排他的に触れていると解釈すべきであり、したがって、それが触れている要素・構成部分又は工程を、明示的に触れていない他の要素・構成部分又は工程と組み合わせることもできる。特定の要素を「含む」として説明した実施形態は、当該の要素「から本質的になる(consisting essentially of)」とも、当該の要素「からなる(consisting of)」とも企図される。「~から本質的になる」及び「~からなる」という表現は、米国特許審査便覧及び関連する連邦巡回控訴裁判所の解釈に沿って解釈するべきである。「~から本質的になる」という移行句は、特許請求された発明の特定の材料又は工程「及び基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさないそれら」に、特許請求の範囲を限定する。「~からなる」とは、特許請求の範囲で指定されていない要素・工程又は成分を除外する閉鎖用語である。例えば、「~からなる」配列に関しては、配列番号で列挙された配列を指し、その一部としてその配列番号を含み得るより大きな配列を指す。
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献については、その全体を参照により本願に援用する。矛盾が発生した場合は、本明細書が、各定義も含め、優先される。
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態の説明及び特許請求の範囲から明らかである。別段の定めがない限り、本開示で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されているものと同じ意味を持つものとする。本発明の実施又は試験には、本開示に係る方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を使用することができるが、よりふさわしい方法と材料は以下のとおりである。また、当該の材料と方法及び実施例は、あくまでも例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
[実施例1]
新規ペプチドPep213によるFis1の阻害又は分子抑制によって、ヒト抵抗動脈における糖尿病誘発性及び高グルコース誘発性の内皮機能不全の好転を図る。
新規ペプチドPep213によるFis1の阻害又は分子抑制によって、ヒト抵抗動脈における糖尿病誘発性及び高グルコース誘発性の内皮機能不全の好転を図る。
2型糖尿病(T2DM)患者においては、大血管疾患や微小血管疾患が発病する以前に血管内皮機能障害が認められる。新たに得られたデータでは、ミトコンドリアの形態と機能の異常がT2DM罹患者由来のヒト血管内皮機能不全の発病に関与していることを示唆している1,2。T2DM罹患者由来の内皮細胞内ではミトコンドリアが超酸化物を過剰に産生している。超酸化物の過剰産生は、部分的にはミトコンドリア内膜の分極化によって引き起こされる2。内皮細胞におけるミトコンドリア反応性酸素種(mtROS)の過剰産生は深刻な後成的変化を引き起こすとともに細胞シグナル伝達経路を活性化し、それが内皮炎症や血管機能不全につながる3。前記の如く、T2DM罹患者由来のヒト抵抗細動脈において、ミトコンドリアを標的とした抗酸化物質や薬理作用物質を投薬してミトコンドリア内膜を部分的に脱分極すると、内皮細胞依存性血管拡張能障害の好転を図れる2,4。
残念ながら、血管疾患の予防と治療を目的とした抗酸化療法の第III相臨床試験では、別途実施した小規模な生理学的試験且つ又は非ランダム化試験で見られるプラスの効果を検証できず、また、ミトコンドリア内膜を標的にして薬理作用を奏する既存の作用物質は、臨床使用を妨げる毒性プロファイルを有する7。
(1)2型糖尿病罹患者から採取したヒト内皮細胞におけるミトコンドリア核分裂1蛋白質(Fis1)の発現増加と、(2)Fis1又はダイナミン関連蛋白質1(Fis1と結合してミトコンドリア核分裂を誘発し得るDrp1)の発現の分子ノックダウンによる、高グルコース誘発性のミトコンドリア超酸化物産生増加及び内皮細胞由来の1酸化窒素合成酵素(eNOS)のSer1177活性化部位におけるリン酸化能減弱の阻止と、(3)ヒト抵抗細動脈において、Drp1を薬理的・分子的にノックダウンすることで、低グルコース誘発性の内皮機能不全を好転できること、とを実証した先行研究に基づき、ミトコンドリア核分裂に関与する蛋白質を標的とすることが有望な代替手段として期待されている1,8。Fis1は、そのミトコンドリアの動態における役割から、薬理的標的として特に注目されており、低酸素血症や高血糖症などの病理学的刺激手段として最も活躍すると考えられている9-12。
本実施例において、本発明者らは、Fis1発現のノックダウンが、2型糖尿病患者から採取した抵抗血管と高・低グルコース濃度に急性曝露した健常な個人から採取した血管において、内皮細胞依存性血管拡張及び1酸化窒素(NO)産生を好転できるかどうかを調べる試験を実施した。更に、本発明者らは、高グルコース又は低グルコース状態での内皮細胞関門機能や酸素消費及び解糖に対するFis1ノックダウンの影響も調べた。最後に、本発明者らは、Fis1に結合してFis-1媒介性の核分裂を阻止する新規ペプチド(pep213(配列番号1))を設計して試験を行い、T2DM罹患者由来のヒト抵抗小動脈と高グルコース濃度に曝露した健常なヒト血管の内皮細胞依存性血管拡張に好ましく作用することを実証した。結果として、Fis1を薬理学的標的とすることで、T2DMにおける血管疾患の課題に対する有用な治療手段を提供できることを支持する所見が得られた。
[結果のまとめ]
Fis1をノックダウンすることで、T2DM動脈における内皮細胞依存性血管拡張が改善され(P=0.002)、健常血管においてはHG誘発性の内皮細胞依存性血管拡張(P=0.0008)とLG誘発性の血管拡張を阻害した(P=0.0002)。Fis1のノックダウンにより、NOの生体利用効率を維持でき、HG又はLGに曝露した細胞の内皮層の統合性が改善された(P<0.001)。Fis1のノックダウンは、他のミトコンドリア動態や自食作用関連蛋白質(オートファジー蛋白質)の発現には有意な影響を及ぼさず、内皮細胞の代謝には全く影響を及ぼさなかった。pep213はFis1に対して低いマイクロモル親和性(3.3-7μM)を示した。tat配列連結型pep213は、HGに曝露されたT2DM及び非T2DM血管における内皮細胞依存性血管拡張を改善した。
Fis1をノックダウンすることで、T2DM動脈における内皮細胞依存性血管拡張が改善され(P=0.002)、健常血管においてはHG誘発性の内皮細胞依存性血管拡張(P=0.0008)とLG誘発性の血管拡張を阻害した(P=0.0002)。Fis1のノックダウンにより、NOの生体利用効率を維持でき、HG又はLGに曝露した細胞の内皮層の統合性が改善された(P<0.001)。Fis1のノックダウンは、他のミトコンドリア動態や自食作用関連蛋白質(オートファジー蛋白質)の発現には有意な影響を及ぼさず、内皮細胞の代謝には全く影響を及ぼさなかった。pep213はFis1に対して低いマイクロモル親和性(3.3-7μM)を示した。tat配列連結型pep213は、HGに曝露されたT2DM及び非T2DM血管における内皮細胞依存性血管拡張を改善した。
[方法]
〈被検体の募集と選考〉
前述の心血管系リスク因子を伴わない健常な個人とT2DM罹患者を67名(21~75歳)募集した2,13。T2DM罹患者は、T2DMの治療を目的として薬剤を服用していた者、又は米国糖尿病協会によるT2DM診断基準を満たした者である14。ウィスコンシン医科大学の治験審査委員会が治験方法を審査した後、全被検体が書面によるインフォームドコンセントフォームに署名した上で治験活動を進めた。スクリーニングを行って、全ての被検体が治験選択基準を満たしていることを確認した。全被検体の身長と体重を測定し、心拍数と血圧についてはそれぞれ3回測定した。T2DMの有無にかかわらず、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中又は心筋梗塞の既往)、慢性肝疾患、血漿クレアチニン上昇(男性では>1.5mg/dL、女性では>1.4mg/dL)のいずれかの既往が分かっている者、癌寛解の診断を受けてから1年未満の者、アスピリン以外の抗凝血剤又は抗血小板薬を定期的に服用している者、登録後1年以内に喫煙した者は試験から除外した。T2DMを抱え持たない者でも、LDLコレステロール値が≧160mg/dlの者、又は高血圧(血圧≧140/90mmHg)の者、若しくはこれらのいずれかの状態の治療を目的として薬剤を服用していた者も除外した。pep213-tatとスクランブル化した対照ペプチドの内皮細胞依存性血管拡張への影響を比較するための試験に試供した血管(T2DM非罹患者N=5名、T2DM罹患者N=4 T2DM)は、ウィスコンシン医科大学の治験審査委員会により別途審査・承認済みの治験実施計画書に従って、術時に医療廃棄物として処理された皮下脂肪組織から得たものである。
〈被検体の募集と選考〉
前述の心血管系リスク因子を伴わない健常な個人とT2DM罹患者を67名(21~75歳)募集した2,13。T2DM罹患者は、T2DMの治療を目的として薬剤を服用していた者、又は米国糖尿病協会によるT2DM診断基準を満たした者である14。ウィスコンシン医科大学の治験審査委員会が治験方法を審査した後、全被検体が書面によるインフォームドコンセントフォームに署名した上で治験活動を進めた。スクリーニングを行って、全ての被検体が治験選択基準を満たしていることを確認した。全被検体の身長と体重を測定し、心拍数と血圧についてはそれぞれ3回測定した。T2DMの有無にかかわらず、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中又は心筋梗塞の既往)、慢性肝疾患、血漿クレアチニン上昇(男性では>1.5mg/dL、女性では>1.4mg/dL)のいずれかの既往が分かっている者、癌寛解の診断を受けてから1年未満の者、アスピリン以外の抗凝血剤又は抗血小板薬を定期的に服用している者、登録後1年以内に喫煙した者は試験から除外した。T2DMを抱え持たない者でも、LDLコレステロール値が≧160mg/dlの者、又は高血圧(血圧≧140/90mmHg)の者、若しくはこれらのいずれかの状態の治療を目的として薬剤を服用していた者も除外した。pep213-tatとスクランブル化した対照ペプチドの内皮細胞依存性血管拡張への影響を比較するための試験に試供した血管(T2DM非罹患者N=5名、T2DM罹患者N=4 T2DM)は、ウィスコンシン医科大学の治験審査委員会により別途審査・承認済みの治験実施計画書に従って、術時に医療廃棄物として処理された皮下脂肪組織から得たものである。
〈ヒト抵抗動脈の採取〉
以前にも説明したように、ヒト抵抗動脈については、脂肪組織サンプルのうち、臀部脂肪体の上部外側象限部から抵抗動脈を得た2,8,13,15,16。簡潔に説明すると、滅菌及び1%リドカインにより麻酔を行った後、臀部脂肪体の上部外側象限に1~1.5cmの切り込みを入れた。体積約8cm3の脂肪組織を鋭的剥離により摘出した。止血後、吸収性真皮深層縫合糸を1~2針縫って創傷を閉じ、表皮層をダーマボンド又はステリストリップを使用して閉じた。
以前にも説明したように、ヒト抵抗動脈については、脂肪組織サンプルのうち、臀部脂肪体の上部外側象限部から抵抗動脈を得た2,8,13,15,16。簡潔に説明すると、滅菌及び1%リドカインにより麻酔を行った後、臀部脂肪体の上部外側象限に1~1.5cmの切り込みを入れた。体積約8cm3の脂肪組織を鋭的剥離により摘出した。止血後、吸収性真皮深層縫合糸を1~2針縫って創傷を閉じ、表皮層をダーマボンド又はステリストリップを使用して閉じた。
〈細胞培養〉
抗生物質を含まないMCDB131(ライフテクノロジーズ社、米カリフォルニア州カールスバッド市)に対して10mMのグルタミン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、米マサチューセッツ州ウォルサム市)と10% FBS(シグマアルドリッチ社、米ミズーリ州セントルイス市)、10ng/mLのヒトEGF(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、及び1μg/mLのヒドロコルチゾン(シグマ-アルドリッチ社)を補足添加して得た培地を用いて、ATCC社(米バージニア州マナサス 市)から購入した不死化ヒト微小血管内皮細胞(HMEC-1)を培養した。高グルコース(33mm)、正常グルコース(5mm)、又は低グルコース(2.5mm)状態に関する検定を行うために、抗生物質を含まないMCDB131に上記の補足添加を行ってから、グルコースと滅菌PBSを添加してグルコース濃度を調整した。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMEC)をロンザ社(スイス連邦バーゼル市)から購入し、それに微小血管内皮細胞成長培地2ブレットキット(ロンザ社)を補足添加した。
抗生物質を含まないMCDB131(ライフテクノロジーズ社、米カリフォルニア州カールスバッド市)に対して10mMのグルタミン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、米マサチューセッツ州ウォルサム市)と10% FBS(シグマアルドリッチ社、米ミズーリ州セントルイス市)、10ng/mLのヒトEGF(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、及び1μg/mLのヒドロコルチゾン(シグマ-アルドリッチ社)を補足添加して得た培地を用いて、ATCC社(米バージニア州マナサス 市)から購入した不死化ヒト微小血管内皮細胞(HMEC-1)を培養した。高グルコース(33mm)、正常グルコース(5mm)、又は低グルコース(2.5mm)状態に関する検定を行うために、抗生物質を含まないMCDB131に上記の補足添加を行ってから、グルコースと滅菌PBSを添加してグルコース濃度を調整した。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMEC)をロンザ社(スイス連邦バーゼル市)から購入し、それに微小血管内皮細胞成長培地2ブレットキット(ロンザ社)を補足添加した。
[培養内皮細胞とヒト血管のトランスフェクション手順]
〈Fis1とDrp1 siRNA及びスクランブル化対照の培養細胞へのトランスフェクション〉
Fis1及びDrp1 siRNAの構造モデル(後述の配列)をオリジーン社(米メリーランド州ロックビル市)から取得した。オプティ-MEM(ライフテクノロジーズ社)内のRNAi構造モデル20nMに、リポフェクタミンRNAiマックス(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)媒介物を添加した。得られた混合物を培養培地で希釈し、HMEC‐1細胞と共に4時間培養した後、通常の培養培地に交換した。その後、細胞を24時間培養してから処理と分析を行った。培養後、処理を施した細胞を高グルコース状態に6時間、低グルコース状態に2時間曝露してから、NO産生、生体エネルギー合成、蛋白質発現、及び内皮層の統合性を測定した。
〈Fis1とDrp1 siRNA及びスクランブル化対照の培養細胞へのトランスフェクション〉
Fis1及びDrp1 siRNAの構造モデル(後述の配列)をオリジーン社(米メリーランド州ロックビル市)から取得した。オプティ-MEM(ライフテクノロジーズ社)内のRNAi構造モデル20nMに、リポフェクタミンRNAiマックス(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)媒介物を添加した。得られた混合物を培養培地で希釈し、HMEC‐1細胞と共に4時間培養した後、通常の培養培地に交換した。その後、細胞を24時間培養してから処理と分析を行った。培養後、処理を施した細胞を高グルコース状態に6時間、低グルコース状態に2時間曝露してから、NO産生、生体エネルギー合成、蛋白質発現、及び内皮層の統合性を測定した。
〈ヒト抵抗動脈におけるFis1とDrp1 siRNA及びスクランブル化対照のトランスフェクション〉
ヒト抵抗動脈にsiRNA構造モデルを前述の如くトランスフェクトした8,13。簡潔に説明すると、脂肪組織から剥離した抵抗動脈を、培養ミオグラフチャンバー(204 CM、DMT社、米ミシガン州アナーバー市)内で懸濁した。該血管の一端を微小臓器チャンバー内のガラスピペットの上の縫合した。該動脈の第二端をガラスピペットに縫合する前に、Fis1 siRNA、Drp1 siRNA(インビトロジェン社のリポフェクタミンRNAiマックスを使用したオプティMEM内の20nM)、又は対照スクランブル化siRNA(20nM)を血管内腔にゆっくりと注入した。その後、該血管の未縫合端を別のガラスピペットに縛り付けて、該血管をチャンバー内に吊り下げた状態で、37 ℃の生理的緩衝液に浸浴させ、60mmHgに加圧した。4~6時間培養後、siRNAを低せん断速度(□<5 dyn/cm2)で24時間をかけて内腔からゆっくりと洗い流した。
ヒト抵抗動脈にsiRNA構造モデルを前述の如くトランスフェクトした8,13。簡潔に説明すると、脂肪組織から剥離した抵抗動脈を、培養ミオグラフチャンバー(204 CM、DMT社、米ミシガン州アナーバー市)内で懸濁した。該血管の一端を微小臓器チャンバー内のガラスピペットの上の縫合した。該動脈の第二端をガラスピペットに縫合する前に、Fis1 siRNA、Drp1 siRNA(インビトロジェン社のリポフェクタミンRNAiマックスを使用したオプティMEM内の20nM)、又は対照スクランブル化siRNA(20nM)を血管内腔にゆっくりと注入した。その後、該血管の未縫合端を別のガラスピペットに縛り付けて、該血管をチャンバー内に吊り下げた状態で、37 ℃の生理的緩衝液に浸浴させ、60mmHgに加圧した。4~6時間培養後、siRNAを低せん断速度(□<5 dyn/cm2)で24時間をかけて内腔からゆっくりと洗い流した。
〈内皮細胞依存性血管活性の測定〉
健常者由来の抵抗動脈を、正常グルコース状態(NG、グルコース値5mm)、低グルコース(LG、グルコース値2.5mM;2時間)、高グルコース(HG、グルコース値33mM;6時間)のいずれかに曝露した。T2DM患者由来の血管における全ての試験は5mmグルコース状態で実施された。エンドセリン-1(米シグマ アルドリッチ社)を使って、予め血管を静止直径の約50%に収縮しておいた。その後、アセチルコリン(Ach)の用量を10-10から10-5Mまで少しずつ増やしながら、収縮した動脈をアセチルコリン(Ach)に曝露し、デジタルキャリパゲージとビデオ顕微鏡を用いて血管径の変化を測定した。該用量が10-5Mに達した後、血管を200μMのパパベリンに曝露し、平滑筋の反応性を調べた。30分間の洗浄期間後、同じ動脈を再び収縮させ、1酸化窒素合成酵素の直接阻害剤であるL-NG-ニトロアルギニンメチルエステル(L-NAME、100μM)を用いて30分間培養してから、10-10~10-5MのAchに曝露した後、血管拡張を再測定した。
健常者由来の抵抗動脈を、正常グルコース状態(NG、グルコース値5mm)、低グルコース(LG、グルコース値2.5mM;2時間)、高グルコース(HG、グルコース値33mM;6時間)のいずれかに曝露した。T2DM患者由来の血管における全ての試験は5mmグルコース状態で実施された。エンドセリン-1(米シグマ アルドリッチ社)を使って、予め血管を静止直径の約50%に収縮しておいた。その後、アセチルコリン(Ach)の用量を10-10から10-5Mまで少しずつ増やしながら、収縮した動脈をアセチルコリン(Ach)に曝露し、デジタルキャリパゲージとビデオ顕微鏡を用いて血管径の変化を測定した。該用量が10-5Mに達した後、血管を200μMのパパベリンに曝露し、平滑筋の反応性を調べた。30分間の洗浄期間後、同じ動脈を再び収縮させ、1酸化窒素合成酵素の直接阻害剤であるL-NG-ニトロアルギニンメチルエステル(L-NAME、100μM)を用いて30分間培養してから、10-10~10-5MのAchに曝露した後、血管拡張を再測定した。
〈1酸化窒素(NO)生体利用効率の測定〉
(培養細胞):蛍光NOマーカーと、4,5-ジアミノフルオレセインジアセテート(DAF2-DA)を用いて、HMEC-1細胞と動脈における1酸化窒素(NO)の生体利用効率を測定した。暗室内で、L-NAME(100μM)を用いて、又はそれを用いずに、細胞を2時間培養し、続いてDAF2-DA(5μM)を用いて37℃で15分間培養した。スペクトラフルーアー プラスプレートリーダー(テカン社、米ノースカロライナ州モリスビル市)を用い、励起波長と発光波長をそれぞれ485nmと535nmに設定して蛍光強度を測定した。
(培養細胞):蛍光NOマーカーと、4,5-ジアミノフルオレセインジアセテート(DAF2-DA)を用いて、HMEC-1細胞と動脈における1酸化窒素(NO)の生体利用効率を測定した。暗室内で、L-NAME(100μM)を用いて、又はそれを用いずに、細胞を2時間培養し、続いてDAF2-DA(5μM)を用いて37℃で15分間培養した。スペクトラフルーアー プラスプレートリーダー(テカン社、米ノースカロライナ州モリスビル市)を用い、励起波長と発光波長をそれぞれ485nmと535nmに設定して蛍光強度を測定した。
(ヒト抵抗動脈):健常な被検体の部分集合から2本の血管を採取した後、4種類の条件で実験を行えるように各血管を半分に切断した。当該の条件としては、L-NAMEへの30分間曝露を併用して及び併用無しでFis1 siRNA又はDrp1 siRNAをトランスフェクトした場合と、室温でのL-NAMEへの曝露を併用して及び併用無しでスクランブル化siRNA対照をトランスフェクトした場合が含まれる。その後、10-5MのAchとDAF2-DA(最終濃度5μM)を各血管に加え、37℃で30分間培養した。次に、当該動脈をPBS緩衝液で洗浄し、スライドに載せて、蛍光顕微鏡で撮像した。未処理及び無染色の動脈を蛍光バックグラウンド干渉用の対照として使用した。処理済み血管と対照血管の両方を同じゲイン設定で測定し、その結果をメタモーフ7.8ソフトウェア(ユニバーサルイメージング社、米ペンシルベニア州ウェストチェスター市)で分析した。
〈内皮層の統合性の測定〉
ウェル毎に40,000個のヒト微小血管内皮(HMEC-1)細胞を播種し、金電極アレイプレート(アプライドバイオフィジクス社製8W10E+)上で50%コンフルエント状態になるまで増殖した。該細胞に、Fis-1 siRNA(20nm)又はスクランブル化siRNA(20nm)を予めトランスフェクトしておき、実験当日に、該トランスフェクト化細胞を、異なるグルコース条件で曝露した(高グルコース(33mM)状態に6時間、正常グルコース(5mM)状態に2時間、低グルコース(2.5mM)状態に2時間曝露)。単分子層の統合性を、64,000 Hz、キャパシタンス10nF未満で確認した。次に、電気細胞基質インピーダンスセンシング(ECIS)により該細胞の機能分析を行い、単細胞層にわたっての経上皮/経体皮電気抵抗(TEER)を、ECIS ZTheta装置(アプライドバイオフィジクス社、米ニューヨーク州トロイ市)を用いてリアルタイムで測定した。4,000 Hzを基準として、125 Hz、250 Hz、500 Hz、1,000 Hz、2,000 Hz、4,000 Hz、8,000 Hz、16,000 Hz、32,000 Hz、及び64,000 Hzの周波数で抵抗を測定した。
ウェル毎に40,000個のヒト微小血管内皮(HMEC-1)細胞を播種し、金電極アレイプレート(アプライドバイオフィジクス社製8W10E+)上で50%コンフルエント状態になるまで増殖した。該細胞に、Fis-1 siRNA(20nm)又はスクランブル化siRNA(20nm)を予めトランスフェクトしておき、実験当日に、該トランスフェクト化細胞を、異なるグルコース条件で曝露した(高グルコース(33mM)状態に6時間、正常グルコース(5mM)状態に2時間、低グルコース(2.5mM)状態に2時間曝露)。単分子層の統合性を、64,000 Hz、キャパシタンス10nF未満で確認した。次に、電気細胞基質インピーダンスセンシング(ECIS)により該細胞の機能分析を行い、単細胞層にわたっての経上皮/経体皮電気抵抗(TEER)を、ECIS ZTheta装置(アプライドバイオフィジクス社、米ニューヨーク州トロイ市)を用いてリアルタイムで測定した。4,000 Hzを基準として、125 Hz、250 Hz、500 Hz、1,000 Hz、2,000 Hz、4,000 Hz、8,000 Hz、16,000 Hz、32,000 Hz、及び64,000 Hzの周波数で抵抗を測定した。
〈ミトコンドリアの生体エネルギー測定〉:
XFe96分析装置(シーホース バイオサイエンス社、米マサチューセッツ州ノースビレリカ市)を用いて、酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)を測定し、ミトコンドリアの生体エネルギー合成状態を測定した。ウェルを96個備えるシーホース社製マイクロプレートに4~6時間かけてHMEC-1細胞(20,000個/ウェル)を播種してから細胞を該プレートに接着させる処理を行った。Fis1を標的としたsiRNA及びsiRNAスクランブル化対照を細胞に予めトランスフェクトしておいた。該培地を吸引して捨て、高グルコース培地に交換して6時間、又は正常グルコース培地に交換して2時間培養した。高グルコース培地、正常グルコース培地、又は低グルコース培地を取り出し、最終グルコース濃度が初期培地濃度と同じになるようにグルコース45%を600μL、L-グルタミン(200mM)を1.5 mL、ピルビン酸ナトリウム(100mM)を1.5 mL添加したXF系培地であるダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM、pH 7.40)と交換した。その後、二酸化炭素を使わない培養器において37 ℃で1時間細胞を培養して、温度とpHの較正を行った。ミトコンドリア ストレス試験中に、オリゴマイシンA(最終ウェル濃度2.5 μM)、FCCP(カルボニルシアニド 4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン、最終ウェル濃度1μM)、及びロテノン&アンチマイシン A(最終ウェル濃度1 μM)といった薬物を25μL単位で順次注入した。解糖ストレス試験中には、グルコース(最終ウェル濃度10mm)、オリゴマイシンA(最終ウェル濃度2.5 μM)、及び2-デオキシグルコース(最終ウェル濃度50mm)といった薬物を25μL単位で順次注入した。
XFe96分析装置(シーホース バイオサイエンス社、米マサチューセッツ州ノースビレリカ市)を用いて、酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)を測定し、ミトコンドリアの生体エネルギー合成状態を測定した。ウェルを96個備えるシーホース社製マイクロプレートに4~6時間かけてHMEC-1細胞(20,000個/ウェル)を播種してから細胞を該プレートに接着させる処理を行った。Fis1を標的としたsiRNA及びsiRNAスクランブル化対照を細胞に予めトランスフェクトしておいた。該培地を吸引して捨て、高グルコース培地に交換して6時間、又は正常グルコース培地に交換して2時間培養した。高グルコース培地、正常グルコース培地、又は低グルコース培地を取り出し、最終グルコース濃度が初期培地濃度と同じになるようにグルコース45%を600μL、L-グルタミン(200mM)を1.5 mL、ピルビン酸ナトリウム(100mM)を1.5 mL添加したXF系培地であるダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM、pH 7.40)と交換した。その後、二酸化炭素を使わない培養器において37 ℃で1時間細胞を培養して、温度とpHの較正を行った。ミトコンドリア ストレス試験中に、オリゴマイシンA(最終ウェル濃度2.5 μM)、FCCP(カルボニルシアニド 4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン、最終ウェル濃度1μM)、及びロテノン&アンチマイシン A(最終ウェル濃度1 μM)といった薬物を25μL単位で順次注入した。解糖ストレス試験中には、グルコース(最終ウェル濃度10mm)、オリゴマイシンA(最終ウェル濃度2.5 μM)、及び2-デオキシグルコース(最終ウェル濃度50mm)といった薬物を25μL単位で順次注入した。
これらの測定の後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、1:500に希釈したDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)1.5μg/mLで24時間染色した。細胞の数については、サイテーション5細胞撮像用マルチモードリーダー(バイオテック社、米バーモント州)の自動細胞計測機能を用いてOCRとECARを測定し、その測定値を正規化することで細胞数を得た。
〈ミトコンドリア蛋白質の測定〉
ウェル当たり0.3×106個のHMEC-1細胞を6つのウェルプレート上で培養し、siFis1とsiRNAをトランスフェクトした。4~6時間かけてトランスフェクションを行った後、培地を正常細胞培養培地に交換し、一晩培養を続けた。細胞を、HG(33mM)で6時間、NG(5mM)又はLG(2.5mM)で2時間処理した。その後、該プレートを細胞洗浄緩衝液で2回洗浄し、50μLのRIPA溶解緩衝液(プロテインシンプル社、米カリフォルニア州サンノゼ市)を各ウェルに添加した。該細胞を氷の上でそっと削り取り、標識を付けたチューブに移した。溶解物を10,000rpmで10分間遠心分離し、液体窒素下で瞬間凍結(スナップフリーズ)した後、-80℃で一晩放置した。細胞ペレットと上清を解凍した後、ボルテックスミキサーを用いて短時間攪拌し、10,000rpmの速度で10分間遠心分離した。標識を付けたチューブに該上清を移し、ブラッドフォードアッセイで蛋白質濃度を定量化するとともに、WES(プロテインシンプル社)を利用した自動キャピラリー電気泳動装置の免疫検出法により蛋白質発現を評価した。蛋白質の分析と検出には、12-230kDaのWES分離モジュールと25個のキャピラリーカートリッジを用いた。溶解物を0.1倍のサンプル緩衝液中で、サンプルがマスター経口混合物に対して4:1となるように希釈し、95℃で5分間変性した。免疫検出のために、ブロッキング緩衝液、一次抗体、二次抗体、化学発光基質、サンプル、ビオチン化サイズマーカー、洗浄緩衝液を、付属のマイクロプレート上の指定ウェルに仕込んだ。該プレートを1000Xgで5分間遠心分離してからWESに仕込んだ。蛋白質の検出にはデフォルトの分離パラメータを使用した。プロテインシンプル社のソフトウェア「コンパス フォー SW」(バージョン3.1.7)によってデータを解析し、特異的な抗体ピークを積分した。全サンプルをまたいで蛋白質の発現を正規化することで総蛋白量を得た。ビオチン系の蛋白質標識を用いてWESアッセイを追加で行って総蛋白量を分析した。また、コンパス フォー SWを用いて総蛋白質を抗体ピークの積分として分析した。プレート間の信号強度の変動性を補正するために、プレート間における対照サンプルのキャリーオーバーを使用した。総蛋白質に対するサンプルの抗体ピーク積分の商の平均を求めた。
ウェル当たり0.3×106個のHMEC-1細胞を6つのウェルプレート上で培養し、siFis1とsiRNAをトランスフェクトした。4~6時間かけてトランスフェクションを行った後、培地を正常細胞培養培地に交換し、一晩培養を続けた。細胞を、HG(33mM)で6時間、NG(5mM)又はLG(2.5mM)で2時間処理した。その後、該プレートを細胞洗浄緩衝液で2回洗浄し、50μLのRIPA溶解緩衝液(プロテインシンプル社、米カリフォルニア州サンノゼ市)を各ウェルに添加した。該細胞を氷の上でそっと削り取り、標識を付けたチューブに移した。溶解物を10,000rpmで10分間遠心分離し、液体窒素下で瞬間凍結(スナップフリーズ)した後、-80℃で一晩放置した。細胞ペレットと上清を解凍した後、ボルテックスミキサーを用いて短時間攪拌し、10,000rpmの速度で10分間遠心分離した。標識を付けたチューブに該上清を移し、ブラッドフォードアッセイで蛋白質濃度を定量化するとともに、WES(プロテインシンプル社)を利用した自動キャピラリー電気泳動装置の免疫検出法により蛋白質発現を評価した。蛋白質の分析と検出には、12-230kDaのWES分離モジュールと25個のキャピラリーカートリッジを用いた。溶解物を0.1倍のサンプル緩衝液中で、サンプルがマスター経口混合物に対して4:1となるように希釈し、95℃で5分間変性した。免疫検出のために、ブロッキング緩衝液、一次抗体、二次抗体、化学発光基質、サンプル、ビオチン化サイズマーカー、洗浄緩衝液を、付属のマイクロプレート上の指定ウェルに仕込んだ。該プレートを1000Xgで5分間遠心分離してからWESに仕込んだ。蛋白質の検出にはデフォルトの分離パラメータを使用した。プロテインシンプル社のソフトウェア「コンパス フォー SW」(バージョン3.1.7)によってデータを解析し、特異的な抗体ピークを積分した。全サンプルをまたいで蛋白質の発現を正規化することで総蛋白量を得た。ビオチン系の蛋白質標識を用いてWESアッセイを追加で行って総蛋白量を分析した。また、コンパス フォー SWを用いて総蛋白質を抗体ピークの積分として分析した。プレート間の信号強度の変動性を補正するために、プレート間における対照サンプルのキャリーオーバーを使用した。総蛋白質に対するサンプルの抗体ピーク積分の商の平均を求めた。
〈NMR滴定実験〉
Fis1に対するペプチド結合親和性を求めるために、NMR滴定実験を薬剤フラグメント滴定と同様に行った。{エグナー、2018 #10126} まず、ペプチドをFis1透析緩衝液(100mMのHEPES pH 7.4、200mMのNaCl、1mMのDTT、0.02%v/vのアジ化ナトリウム)において再懸濁し、最終濃度を6mMとした。次に、50μMの15N-hFis1を220μLと、漸増する異なる量のペプチド(0μM、25μM、50μM、150μM、400μM、800μM、1600μM、2000μM)を準備して3mmのNMRチューブに仕込んだ。各サンプルについて、1H、15N HSQCスペクトルを、Z軸傾斜式三重共鳴クリオプローブとサンプルジェットオートサンプラーを備えたブルカー アバンスII600MHz分光計を用いて25oCの温度で収集し、これにより、各サンプルの自動同調とシミング及びデータ収集が可能になった。1H、15N HSQCの実験では、1H及び15N次元の複素点(銘々1024点及び300点)でのスキャンを8回行った。スペクトルの処理は、NMRPipeを使用した自動パイソンスクリプトで行い、タイタービューとCARAソフトウェアを使用して化学シフトを測定した。{デラリオ、1995 #10127}{マッセ、2005 #10128} トレンド分析によって、滴定系列における各スペクトルに対するペプチド結合親和性を決定した。{許、2016#10129} {許、2017#10131} トレンド分析は、主成分分析を行うことでデータの変化を明らかにする分析であり、各濃度点を一意のデータ点として扱い、本開示では、漸増する異なる量のペプチドの各1H,15Nスペクトルが入力データである。主成分分析の実行後、主成分1(PC1)の値を正規化して最大PC1の値(0から1の範囲)を得た。次に、正規化されたPC1値をペプチド濃度に対してプロットし、蛋白質濃度を一定に保った状態でリガンド枯渇関数にフィッティングする(式1)。
Fis1に対するペプチド結合親和性を求めるために、NMR滴定実験を薬剤フラグメント滴定と同様に行った。{エグナー、2018 #10126} まず、ペプチドをFis1透析緩衝液(100mMのHEPES pH 7.4、200mMのNaCl、1mMのDTT、0.02%v/vのアジ化ナトリウム)において再懸濁し、最終濃度を6mMとした。次に、50μMの15N-hFis1を220μLと、漸増する異なる量のペプチド(0μM、25μM、50μM、150μM、400μM、800μM、1600μM、2000μM)を準備して3mmのNMRチューブに仕込んだ。各サンプルについて、1H、15N HSQCスペクトルを、Z軸傾斜式三重共鳴クリオプローブとサンプルジェットオートサンプラーを備えたブルカー アバンスII600MHz分光計を用いて25oCの温度で収集し、これにより、各サンプルの自動同調とシミング及びデータ収集が可能になった。1H、15N HSQCの実験では、1H及び15N次元の複素点(銘々1024点及び300点)でのスキャンを8回行った。スペクトルの処理は、NMRPipeを使用した自動パイソンスクリプトで行い、タイタービューとCARAソフトウェアを使用して化学シフトを測定した。{デラリオ、1995 #10127}{マッセ、2005 #10128} トレンド分析によって、滴定系列における各スペクトルに対するペプチド結合親和性を決定した。{許、2016#10129} {許、2017#10131} トレンド分析は、主成分分析を行うことでデータの変化を明らかにする分析であり、各濃度点を一意のデータ点として扱い、本開示では、漸増する異なる量のペプチドの各1H,15Nスペクトルが入力データである。主成分分析の実行後、主成分1(PC1)の値を正規化して最大PC1の値(0から1の範囲)を得た。次に、正規化されたPC1値をペプチド濃度に対してプロットし、蛋白質濃度を一定に保った状態でリガンド枯渇関数にフィッティングする(式1)。
(式中、△=調整後化学シフト変化、dmax=最大化学シフト摂動、Kd=結合解離定数、p=[蛋白質]、そしてl=[リガンド]である。)
XEASYソフトウェアとアドビ イラストレーターを用いてスペクトルを重ね合わせて表示した。
〈pep213の合成〉:
ペプチドpep213(SHKHDPLPYPHFLL、配列番号1)及びTAT-p213(YGRKRQRRGSGSSHKHDPLPYPHFLL、配列番号3)は全て、N末端アセチル化とC末端アミド化を行い、HPLCにより95%以上の純度を維持した状態で、ジェンスクリプト社(ニュージャージー州ピスカタウェイ市)から購入したものである。TAT-p 213融合ペプチドは TAT細胞透過性配列(YGRKKRRQRRR、配列番号2)とpep213との間にGSGSGS(配列番号4)リンカーを含んでいた。
ペプチドpep213(SHKHDPLPYPHFLL、配列番号1)及びTAT-p213(YGRKRQRRGSGSSHKHDPLPYPHFLL、配列番号3)は全て、N末端アセチル化とC末端アミド化を行い、HPLCにより95%以上の純度を維持した状態で、ジェンスクリプト社(ニュージャージー州ピスカタウェイ市)から購入したものである。TAT-p 213融合ペプチドは TAT細胞透過性配列(YGRKKRRQRRR、配列番号2)とpep213との間にGSGSGS(配列番号4)リンカーを含んでいた。
〈内在性トリプトファン蛍光〉
PTIモデル#814蛍光光度計を用いて、スターナセルズ3-Q-10石英蛍光光度計の矩形セル内で、295nmのλex及び300~400nmのλem(光路長が10mm及び励起/発光スリット幅が4/6nm)でトリプトファン蛍光データをそれぞれ収集した。高濃度ペプチド原液(pep213)を最終的に得られるhFis1透析懸濁液中に再懸濁し、0μM、1μM、3μM、7μM、10μM、30μM、70μM、100μM、300μM、700μM、及び1000μMペプチド点を有する濃縮系列を調製した。滴定点毎に、Fis1を除くサンプルについてトリプトファン発光スペクトルを測定し、次にサンプルに400μMのhFis1を5μL加えて、10μMのhFis1の最終濃度とトリプトファン発光スペクトルを再収集した。ペプチドからの緩衝蛍光及びチロシン蛍光バックグラウンドを考慮するために、Fis1を欠いたスペクトルからバックグラウンド蛍光強度を差し引いて、差分発光スペクトルを生成した。各ペプチド濃度における平均発光波長を式3に従って計算して、ペプチド濃度の自然対数の関数としてプロットしてから、それをボルツマンS字型モデルにフィッティングした(式4)。{ロイヤー、1993 #10132}
PTIモデル#814蛍光光度計を用いて、スターナセルズ3-Q-10石英蛍光光度計の矩形セル内で、295nmのλex及び300~400nmのλem(光路長が10mm及び励起/発光スリット幅が4/6nm)でトリプトファン蛍光データをそれぞれ収集した。高濃度ペプチド原液(pep213)を最終的に得られるhFis1透析懸濁液中に再懸濁し、0μM、1μM、3μM、7μM、10μM、30μM、70μM、100μM、300μM、700μM、及び1000μMペプチド点を有する濃縮系列を調製した。滴定点毎に、Fis1を除くサンプルについてトリプトファン発光スペクトルを測定し、次にサンプルに400μMのhFis1を5μL加えて、10μMのhFis1の最終濃度とトリプトファン発光スペクトルを再収集した。ペプチドからの緩衝蛍光及びチロシン蛍光バックグラウンドを考慮するために、Fis1を欠いたスペクトルからバックグラウンド蛍光強度を差し引いて、差分発光スペクトルを生成した。各ペプチド濃度における平均発光波長を式3に従って計算して、ペプチド濃度の自然対数の関数としてプロットしてから、それをボルツマンS字型モデルにフィッティングした(式4)。{ロイヤー、1993 #10132}
(式中、〈 λ 〉=平均発光波長、In=波長λnで発光する蛍光強度及び310~370nmのλnで計算した総和である。)
(式中、λ=平均発光波長、A=転移前相、B=転移後相、KD=平衡解離定数、p=ペプチド濃度の自然対数、そしてc=転移相の傾きである。)
〈内皮細胞のNO生体利用効率及び内皮依存血管拡張に対するpep213の影響〉
これらの試験を目的として、被検体の部分集合から、T2DMの有無にかかわらず無作為に血管を選択した。健常な被検体由来の血管を、HG(33mM)で6時間前処理し、その後、細胞取り込みを容易にするためにTAT配列に付着させた1μM又は10μMのpep213に曝露した。T2DM被検体の血管をNG条件下(5mM)で培養し、1μM又は10μMのpep213-TATに曝露した。アセチルコリンの用量増加に伴う内皮細胞依存性血管拡張、パパベリンに対する平滑筋の反応性、L-NAMEを用いた場合のアセチルコリンに対する血管拡張反応のeNOS依存性を前記同様に評価した2,4,8,13,15。
これらの試験を目的として、被検体の部分集合から、T2DMの有無にかかわらず無作為に血管を選択した。健常な被検体由来の血管を、HG(33mM)で6時間前処理し、その後、細胞取り込みを容易にするためにTAT配列に付着させた1μM又は10μMのpep213に曝露した。T2DM被検体の血管をNG条件下(5mM)で培養し、1μM又は10μMのpep213-TATに曝露した。アセチルコリンの用量増加に伴う内皮細胞依存性血管拡張、パパベリンに対する平滑筋の反応性、L-NAMEを用いた場合のアセチルコリンに対する血管拡張反応のeNOS依存性を前記同様に評価した2,4,8,13,15。
〈統計分析〉
統計分析は、グラフパッド プリズムV7.03(Windows向けグラフパッド プリズムバージョン8.0.0、グラフパッド ソフトウェア社、米カリフォルニア州サンディエゴ市)又はシグマプロットバージョン12.5(シスタットソフトウェア社、米カリフォルニア州)のいずれかを用いて行った。P<0.05を統計的有意差とした。特に明記されていない限り、データを平均±SEで示す。事後試験を伴う二元分散分析により全ての機能血管データを解析し、各群間の違いを(ダネットの多重比較検定によって)判断し、そして用量反応を(テューキーの多重比較検定によって)判断した。また、TEERアッセイデータと生体エネルギー学的データについても、二元分散分析、引き続き事後試験(テューキーの多重比較検定)によって解析することで、HG、LG、及びNG処理間の違いを判断した。ヒト血管のDAF2-DA蛍光強度、HMEC-1細胞におけるFis1ノックダウン効率、ウエスタンブロット法によるミトコンドリア蛋白質量の測定を、一元配置分散分析で解析した後、テューキーの多重比較検定を行って各群間の違いを評価した。siFis1及びスクランブル化siRNAをトランスフェクトしたHMEC-1細胞のDAF2-DA蛍光強度を、二元分散分析と事後試験(テューキーの多重比較検定)により解析した。A 23187で刺激したHMEC-1細胞におけるP-eNOSとβ-アクチンの産生と相対比を、スチューデントの対応ありt検定を用いて解析した。
統計分析は、グラフパッド プリズムV7.03(Windows向けグラフパッド プリズムバージョン8.0.0、グラフパッド ソフトウェア社、米カリフォルニア州サンディエゴ市)又はシグマプロットバージョン12.5(シスタットソフトウェア社、米カリフォルニア州)のいずれかを用いて行った。P<0.05を統計的有意差とした。特に明記されていない限り、データを平均±SEで示す。事後試験を伴う二元分散分析により全ての機能血管データを解析し、各群間の違いを(ダネットの多重比較検定によって)判断し、そして用量反応を(テューキーの多重比較検定によって)判断した。また、TEERアッセイデータと生体エネルギー学的データについても、二元分散分析、引き続き事後試験(テューキーの多重比較検定)によって解析することで、HG、LG、及びNG処理間の違いを判断した。ヒト血管のDAF2-DA蛍光強度、HMEC-1細胞におけるFis1ノックダウン効率、ウエスタンブロット法によるミトコンドリア蛋白質量の測定を、一元配置分散分析で解析した後、テューキーの多重比較検定を行って各群間の違いを評価した。siFis1及びスクランブル化siRNAをトランスフェクトしたHMEC-1細胞のDAF2-DA蛍光強度を、二元分散分析と事後試験(テューキーの多重比較検定)により解析した。A 23187で刺激したHMEC-1細胞におけるP-eNOSとβ-アクチンの産生と相対比を、スチューデントの対応ありt検定を用いて解析した。
〈詳細結果〉
(被検体の特徴)
計67の被検体(T2DM罹患者14名、健常対照53名)を募集した。本プロジェクトの各試験に参加した被検体の特徴に関する詳細を表1に示す。健常者はT2DM群と比較して年齢が有意に若齢であった(39±15歳対55±12歳、P=0.0002)。本試験の健常対照群では、体重指数、胴回り、収縮期血圧、空腹時血糖、グリコシル化血色素が有意に低かった。健常者はHDLコレステロール値も高目であった。健常被検体には、心代謝薬の慢性使用が一切見られなかった。
(被検体の特徴)
計67の被検体(T2DM罹患者14名、健常対照53名)を募集した。本プロジェクトの各試験に参加した被検体の特徴に関する詳細を表1に示す。健常者はT2DM群と比較して年齢が有意に若齢であった(39±15歳対55±12歳、P=0.0002)。本試験の健常対照群では、体重指数、胴回り、収縮期血圧、空腹時血糖、グリコシル化血色素が有意に低かった。健常者はHDLコレステロール値も高目であった。健常被検体には、心代謝薬の慢性使用が一切見られなかった。
更に、ヒト血管に関する各調査の被検体特性を、付表1(Fis1 siRNA又はスクランブル化対照を血管にトランスフェクトして内皮依存血管拡張試験を行った被検体の特性)と、付表2(Fis1 siRNA又はスクランブル化対照を血管にトランスフェクトしてNO生体利用効率の試験を行った被検体被検体の特性)と、付表3(Drp1 siRNA又はスクランブル化対照を血管にトランスフェクトして内皮依存血管拡張試験を行った被検体の特性)、付表4(Fis1 siRNA又はスクランブル化対照を血管にトランスフェクトしてNO生体利用効率の試験を行った被検体被検体の特性)と、付表5(血管をpep213に曝露して血管活性の試験を行った被検体被検体の特性)に示した。
〈Fis1又はDrp1の抑制による内皮細胞依存性の血管拡張への影響と、ヒト血管におけるNO生体利用効率〉
本願発明者らは、治験実施計画書に従って、T2DM患者に認められたのと同じ濃度のグルコースを用いて培養した健常なヒト抵抗血管における血管拡張を測定した(図1A-B)。高グルコース(33mM)と低グルコース(2.5mm)の両方で、L-NAMEによる阻害に基づくeNOS活性に主に関連していると思われるアセチルコリンに対する内皮細胞依存性血管拡張反応が鈍化した点は、これまでの所見と一致する。この機能的障害にミトコンドリア核分裂蛋白質Fis1が関与している可能性があるかどうかを検討するために、Fis1 siRNAを健常血管にトランスフェクトして、Fis1 mRNAを約30%減少させた(図9)。これらの健常なヒト抵抗血管では、Fis1 siRNAのトランスフェクションにより、内皮細胞依存性血管拡張能のHG誘発性障害とLG誘発性障害を予防できた(図1A-B)。L-NAMEを投与した場合、両者に対する予防効果が完全に阻止されたため、Fis1 siRNA関連の改善はeNOSに依存していることが示唆される。
本願発明者らは、治験実施計画書に従って、T2DM患者に認められたのと同じ濃度のグルコースを用いて培養した健常なヒト抵抗血管における血管拡張を測定した(図1A-B)。高グルコース(33mM)と低グルコース(2.5mm)の両方で、L-NAMEによる阻害に基づくeNOS活性に主に関連していると思われるアセチルコリンに対する内皮細胞依存性血管拡張反応が鈍化した点は、これまでの所見と一致する。この機能的障害にミトコンドリア核分裂蛋白質Fis1が関与している可能性があるかどうかを検討するために、Fis1 siRNAを健常血管にトランスフェクトして、Fis1 mRNAを約30%減少させた(図9)。これらの健常なヒト抵抗血管では、Fis1 siRNAのトランスフェクションにより、内皮細胞依存性血管拡張能のHG誘発性障害とLG誘発性障害を予防できた(図1A-B)。L-NAMEを投与した場合、両者に対する予防効果が完全に阻止されたため、Fis1 siRNA関連の改善はeNOSに依存していることが示唆される。
この解釈を支持するべく、Fis1 siRNAのトランスフェクションを行ったところ、HG[図2A;N=9、Fis1 siRNAとそれ以外の全ての曝露(スクランブル化対照、スクランブル化対照+L-NAME、及びFis1 siRNA+L-NAME)との間のP=0.04)]及びLG(図2B、n=8、Fis1 siRNAとそれ以外の全ての曝露との間のP=0.01)に曝露した健常なヒト血管内で、NOに対する感受性が高い色素DAF2-DAの蛍光発光が有意に増加した。いずれの場合も、L-NAMEの投与によってDAF 2-DA蛍光増加効果が完全に破棄される結果となった。これらのデータは、T2DM患者に見られるストレス状態でFis1サイレンシングを行うことによって、NO依存的に血管拡張を改善できるという考えを支持している。次に、Fis1 siRNA処理によって、T2DM患者の抵抗血管における血管拡張活性を改善できるかどうかを検討した。Fis1 siRNAにより処理を施すことにより、内皮細胞依存性血管拡張能障害が好転した(図3、n=6、全体でP=0.002)。健常被検体由来血管の場合と同様に、糖尿病被検体由来血管へのFis1 siRNAトランスフェクションの好ましい効果が、L-NAMEにより全面的に減弱した。Fis1 siRNAトランスフェクションは、いずれの試験においても、パパベリンの血管拡張に影響しなかった(具体的なデータは省略)。健常者や糖尿病罹患者由来の血管でDrp1の遺伝的サイレンシングを行った場合も同様の所見が得られ(図10-12)、これは、過剰なミトコンドリア核分裂が糖尿病罹患内皮細胞のNO依存性血管拡張能障害において大きな役割を果たしている、という見解と一致する。
〈Fis1発現、NO産生、eNOS活性化、及び核分裂・融合・自食作用に関連するミトコンドリア蛋白質の発現に対するFis1トランスフェクションの影響〉
Fis1 siRNAをトランスフェクトしたHMEC-1細胞では、Fis1発現が70%減少した(図13)。eNOS活性化とNO生体利用効率を増加させるような刺激に対するHMEC-1の反応性を確認した結果、カルシウムイオノフォアA23187によって、Ser1177活性化部位でのeNOSリン酸化及び非トランスフェクト化HMEC-1細胞でのDAF2-DA蛍光強度の両方が有意に増加することが分かった(図14A、N=6、P=0.03、図14B、N=4、P=0.02)。また、Fis1 siRNAトランスフェクションでは、スクランブル化対照siRNAのトランスフェクションと比較して、A23187で刺激したHMEC-1細胞からのDAF2-DAシグナルが有意に増加した(図15、N=7、P<0.0001)。Fis1発現をノックダウンしても、ミトコンドリアの核分裂や融合又は自食作用に関与するミトコンドリア蛋白質(チトクロームc、MFN1、MFN2、Drp1、GABARAP、MFF、POLG、NDUF88、P62、OPA1、又はAMPキナーゼなど)の発現は有意な変化を示さなかった(図16)。HG、LG及びNGの各培養条件下では、これら蛋白質の発現に対する影響が明らかに欠けていた。高グルコース状態や低グルコース状態は、これらの蛋白質のいくつかの発現に影響を与えたが、Fis1ノックダウンによる影響は、所与のグルコース曝露例に全く認められなかった。
Fis1 siRNAをトランスフェクトしたHMEC-1細胞では、Fis1発現が70%減少した(図13)。eNOS活性化とNO生体利用効率を増加させるような刺激に対するHMEC-1の反応性を確認した結果、カルシウムイオノフォアA23187によって、Ser1177活性化部位でのeNOSリン酸化及び非トランスフェクト化HMEC-1細胞でのDAF2-DA蛍光強度の両方が有意に増加することが分かった(図14A、N=6、P=0.03、図14B、N=4、P=0.02)。また、Fis1 siRNAトランスフェクションでは、スクランブル化対照siRNAのトランスフェクションと比較して、A23187で刺激したHMEC-1細胞からのDAF2-DAシグナルが有意に増加した(図15、N=7、P<0.0001)。Fis1発現をノックダウンしても、ミトコンドリアの核分裂や融合又は自食作用に関与するミトコンドリア蛋白質(チトクロームc、MFN1、MFN2、Drp1、GABARAP、MFF、POLG、NDUF88、P62、OPA1、又はAMPキナーゼなど)の発現は有意な変化を示さなかった(図16)。HG、LG及びNGの各培養条件下では、これら蛋白質の発現に対する影響が明らかに欠けていた。高グルコース状態や低グルコース状態は、これらの蛋白質のいくつかの発現に影響を与えたが、Fis1ノックダウンによる影響は、所与のグルコース曝露例に全く認められなかった。
〈Fis1ノックダウンの影響と内皮細胞層の統合性〉:
Fis1抑制がHGとNG条件下での内皮細胞層の統合性に与える影響を図4Aに示す。NG条件下では、Fis1発現のノックダウンは控えめであるが、内皮細胞層の抵抗の統計的に有意な低下が見られた。HG条件下では、内皮細胞層の抵抗が、Fis1ノックダウンの有無にかかわらず、NG条件下の場合よりも有意に低かった(P<0.001)。Fis1ノックダウンにより、HG条件下では抵抗が増加するが、依然としてNG条件下で測定した抵抗よりも低い状態が続いた。LGについても同様の所見が得られた(図4B)。
Fis1抑制がHGとNG条件下での内皮細胞層の統合性に与える影響を図4Aに示す。NG条件下では、Fis1発現のノックダウンは控えめであるが、内皮細胞層の抵抗の統計的に有意な低下が見られた。HG条件下では、内皮細胞層の抵抗が、Fis1ノックダウンの有無にかかわらず、NG条件下の場合よりも有意に低かった(P<0.001)。Fis1ノックダウンにより、HG条件下では抵抗が増加するが、依然としてNG条件下で測定した抵抗よりも低い状態が続いた。LGについても同様の所見が得られた(図4B)。
〈Fis1ノックダウンの酸素消費と解糖に対する影響〉
グルコース曝露の有無にかかわらず、Fis1のノックダウンによる細胞外酸性化速度又は酸素消費量への影響は認められなかったことから(NG、HG、LG;全測定のn=5、Figure5)、Fis1の阻害はミトコンドリアの生物エネルギー合成に有意な影響を及ぼさないことが示唆される。
グルコース曝露の有無にかかわらず、Fis1のノックダウンによる細胞外酸性化速度又は酸素消費量への影響は認められなかったことから(NG、HG、LG;全測定のn=5、Figure5)、Fis1の阻害はミトコンドリアの生物エネルギー合成に有意な影響を及ぼさないことが示唆される。
〈pep213のFis1に対する親和性の測定〉
以前の研究では、ファージディスプレイ法を用いて短縮型蛋白質に照らしたスクリーニングを行うことにより、Fis1に結合すると期待されるペプチドをいくつか同定している17。本願発明者らは、これらのペプチド部分集合についてFis1への結合を調べたところ、親和性が弱い(高μM)ことが見出された。これらのデータをもとに、本願発明者らは、 Fis1との親和性が高く且つその活性を阻害すると推測される新規ペプチドpep213(配列番号1)を設計した。安定同位体15Nで均一に標識化したFis1のNMRサンプルに、ペプチドの用量を漸増しながら加えて滴定した。得られた 1H -15N HSQCスペクトルを重ね合わせたところ、pep213の添加により多くのシグナルが変化することが分かった(図6A)。結果として得られたデータを、単一部位結合モデルに大域的にフィッティングでき、見掛けのKD=7±2 μMとなった(図6B)。トリプトファン蛍光実験において、p213添加時のトリプトファン発光スペクトルの変化を結合等温線にフィッティングしたところ、類似した見掛けのKD=3.3±0.1μMとなったことから、上記の親和性を確認できた(図6C)。pep213と同じアミノ酸組成(但し順不同)からなる別のペプチド(スクランブル化したpep213)では、2mMにて15N-Fis1を加えても化学シフトの摂動を示さなかったことから、Fis1-pep213 相互作用は特異的であると推定される(図6D)。
以前の研究では、ファージディスプレイ法を用いて短縮型蛋白質に照らしたスクリーニングを行うことにより、Fis1に結合すると期待されるペプチドをいくつか同定している17。本願発明者らは、これらのペプチド部分集合についてFis1への結合を調べたところ、親和性が弱い(高μM)ことが見出された。これらのデータをもとに、本願発明者らは、 Fis1との親和性が高く且つその活性を阻害すると推測される新規ペプチドpep213(配列番号1)を設計した。安定同位体15Nで均一に標識化したFis1のNMRサンプルに、ペプチドの用量を漸増しながら加えて滴定した。得られた 1H -15N HSQCスペクトルを重ね合わせたところ、pep213の添加により多くのシグナルが変化することが分かった(図6A)。結果として得られたデータを、単一部位結合モデルに大域的にフィッティングでき、見掛けのKD=7±2 μMとなった(図6B)。トリプトファン蛍光実験において、p213添加時のトリプトファン発光スペクトルの変化を結合等温線にフィッティングしたところ、類似した見掛けのKD=3.3±0.1μMとなったことから、上記の親和性を確認できた(図6C)。pep213と同じアミノ酸組成(但し順不同)からなる別のペプチド(スクランブル化したpep213)では、2mMにて15N-Fis1を加えても化学シフトの摂動を示さなかったことから、Fis1-pep213 相互作用は特異的であると推定される(図6D)。
〈ヒト抵抗血管における内皮細胞依存性血管拡張に対するpep213の影響〉
TATペプチドに付着したpep213への曝露を通じて細胞の取り込みを容易化すると、高グルコースに曝露した健常被検体由来の血管(図7A、N=6、全体でP<0.0001)とT2DM被検体由良の血管(図7B、N=4、全体でP<0.05)の両方において内皮細胞依存性血管拡張が大幅に改善された。いずれの場合も、pep213-TATで見られる改善が、L-NAMEを用いた処理により覆された。pep213-TATは、高グルコース誘発性の内皮細胞依存性血管拡張能減弱とT2DM被検体由来の血管における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転させたが、同じアミノ酸を順不同な配列で用いてスクランブル化したペプチドはいずれの血管においても何ら影響を示さなかった(図8 N=5、P<0.001)。これらの試験のいずれにおいてもパパベリン反応に差が見られなかったことから(具体的なデータは省略)、pep213-TATは平滑筋反応に影響を及ぼさないことが示唆される。更に、pep213-TATに1時間曝露したヒト微小血管内皮細胞では、DAF2-DA蛍光の発光が有意に増加した(図17、N=3、P=0.04)。
TATペプチドに付着したpep213への曝露を通じて細胞の取り込みを容易化すると、高グルコースに曝露した健常被検体由来の血管(図7A、N=6、全体でP<0.0001)とT2DM被検体由良の血管(図7B、N=4、全体でP<0.05)の両方において内皮細胞依存性血管拡張が大幅に改善された。いずれの場合も、pep213-TATで見られる改善が、L-NAMEを用いた処理により覆された。pep213-TATは、高グルコース誘発性の内皮細胞依存性血管拡張能減弱とT2DM被検体由来の血管における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転させたが、同じアミノ酸を順不同な配列で用いてスクランブル化したペプチドはいずれの血管においても何ら影響を示さなかった(図8 N=5、P<0.001)。これらの試験のいずれにおいてもパパベリン反応に差が見られなかったことから(具体的なデータは省略)、pep213-TATは平滑筋反応に影響を及ぼさないことが示唆される。更に、pep213-TATに1時間曝露したヒト微小血管内皮細胞では、DAF2-DA蛍光の発光が有意に増加した(図17、N=3、P=0.04)。
[考察]
これらの調査を通じて、新たな所見をいくつか得ることができた。第1に、ヒト微小血管内皮細胞は、NOを産生して内皮依存的に拡張することで内皮細胞層関門機能を維持するという能力を有するが、その能力に及ぼされる高グルコース曝露と低グルコース曝露のマイナスの影響をFis1の分子阻害によって阻止できる。また、Fis1発現の分子阻害によって、T2DM患者由来の内皮細胞依存性血管拡張能の障害を好転できる。更に、内皮細胞の代謝や、ミトコンドリアの融合・核分裂・自己作用に関与する他の蛋白質の発現に変化をもたらすことなく上記の好ましい効果を奏することができる。また、本願発明者らは、Fis1上の極めて重要な結合部位の構造に関する知見に基づいて、Fis1に対するミクロモル結合親和性の低いペプチドpep213を設計し、2種類の独立した方法でその結合を確認した。最後に、pep213は生理活性を持ち、ヒト微小血管内皮細胞でNO生体利用効率を向上させるとともに、ヒト抵抗動脈において高グルコース誘発性の内皮細胞依存性血管拡能減弱と2型糖尿病関連の内皮細胞依存性血管拡能障害を、1酸化窒素合成酵素依存的に好転させることを本開示で示したが、これらの所見は、急性及び慢性血糖異常経過中の内皮機能不全において、過剰なFis1の発現と活性が重大な力学的役割を果たすことを示唆している。また、これらのデータは、Fis1を標的とした薬理療法が2型糖尿病患者における血管の健康状態を改善する手段として有望であるという考えを支持している。
これらの調査を通じて、新たな所見をいくつか得ることができた。第1に、ヒト微小血管内皮細胞は、NOを産生して内皮依存的に拡張することで内皮細胞層関門機能を維持するという能力を有するが、その能力に及ぼされる高グルコース曝露と低グルコース曝露のマイナスの影響をFis1の分子阻害によって阻止できる。また、Fis1発現の分子阻害によって、T2DM患者由来の内皮細胞依存性血管拡張能の障害を好転できる。更に、内皮細胞の代謝や、ミトコンドリアの融合・核分裂・自己作用に関与する他の蛋白質の発現に変化をもたらすことなく上記の好ましい効果を奏することができる。また、本願発明者らは、Fis1上の極めて重要な結合部位の構造に関する知見に基づいて、Fis1に対するミクロモル結合親和性の低いペプチドpep213を設計し、2種類の独立した方法でその結合を確認した。最後に、pep213は生理活性を持ち、ヒト微小血管内皮細胞でNO生体利用効率を向上させるとともに、ヒト抵抗動脈において高グルコース誘発性の内皮細胞依存性血管拡能減弱と2型糖尿病関連の内皮細胞依存性血管拡能障害を、1酸化窒素合成酵素依存的に好転させることを本開示で示したが、これらの所見は、急性及び慢性血糖異常経過中の内皮機能不全において、過剰なFis1の発現と活性が重大な力学的役割を果たすことを示唆している。また、これらのデータは、Fis1を標的とした薬理療法が2型糖尿病患者における血管の健康状態を改善する手段として有望であるという考えを支持している。
ミトコンドリアの動態調節に関与するミトコンドリア蛋白質を標的とすることにより、2型糖尿病患者や高グルコース濃度に曝露された患者におけるヒト血管内皮機能に好ましい影響をもたらし得るかどうかを検討することの重要性を支持する論理的根拠が存在する。ミトコンドリア網状組織の動態の適切なバランスを維持することが、ミトコンドリアの正常機能の維持に欠かせない。ミトコンドリア動態が正常であれば、ミトコンドリアは、代謝需要の増加する領域に移動したり、損傷したミトコンドリアを修復したり、ミトコンドリアエネルギーの合成を正常に維持したり、活性酸素種の産生を制限したり、取り返しがつかないほどに損傷を受けたミトコンドリア成分を単離することで自己作用(オートファジー)を可能にしたりできる18-22。グルコースや遊離脂肪酸の上昇など、過剰な栄養素への急性・慢性的な曝露によって、ミトコンドリア網状組織が刺激され、ヒト内皮細胞をはじめとする複数種の細胞で核分裂が起こり、ミトコンドリア内で過剰なROSが産生されることになる1,22-24。培養内皮細胞を用いた精液研究では、高グルコースが原因でミトコンドリア内に過剰のROSが産生されて、細胞シグナル伝達経路とエピゲノム経路を通じて急性・慢性の内皮細胞機能不全が生じることを実証している3,25。また、本願発明者らは、以前に行った研究で、2型糖尿病患者由来の抵抗動脈においてミトコンドリア超酸化物濃度を低下させることで、ヒト抵抗細動脈における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転できることも実証している2。
これらのデータは、ミトコンドリア動態蛋白質を標的にして過剰なミトコンドリア核分裂を抑制することが、急性又は慢性的に異常なグルコース値にさらされた血管の健全性を維持するのに有益であることを示唆している。ミトコンドリアの融合や核分裂の過程に関与する蛋白質は複数存在するが、ミトコンドリア外膜に位置するDrp1用ドッキング蛋白質であるFis1が、糖尿病や高グルコースへの急性曝露経過中や、いくつかの種類の細胞については過剰な遊離脂肪酸への急性曝露経過中に過剰発現することは繰り返し示されている1,26-29。Fis1が必ずしも全ての核分裂に必要というわけではないが30、低酸素症や過度のグルコース曝露などの細胞ストレス条件下ではFis1-Drp1媒介性核分裂が好ましいと考えられる9-12。ヒトの脈管構造を用いて行ったこれまでの研究では、2型糖尿病罹患者由来の内皮細胞でFis1が過剰に発現していることが判明している1。更に、培養ヒト大動脈内皮細胞においては、高グルコースへの曝露によってFis1の過剰発現が生じ、また、高グルコースに曝露したヒト大動脈内皮細胞においては、Fis1又はDrp1発現の分子サイレンシングによって、そのSer1177活性化部位におけるeNOSのリン酸化が増大する1。また、本願発明者らは以前に行った研究で、低グルコース曝露が(臨床的に関連性のある度合いでなされた場合)ヒト内皮細胞におけるミトコンドリア核分裂やmtROSの過剰産生につながるが、かかる核分裂や過剰産生は、ミトコンドリア核分裂蛋白質の活性を抑制することによって覆すことができる8。本願発明者らが新たに得たデータでは、Fis1の分子阻害によって、無傷のヒト抵抗動脈における内皮細胞依存性血管拡張能障害が好転し、これらの血管における一酸化窒素の生体利用効率が向上するとともに、急性血糖異常経過中に内皮細胞層の統合性を保護できることを示し、これまでの研究で示した翻訳効果が大幅に拡大した。更に、たとえFis1を標的としても、内皮細胞のミトコンドリア代謝や、その動態又は自己作用に関与する他のミトコンドリア蛋白質の発現に影響しないことが判明し、Fis1を標的とした際に期待される標的以外の効果を治療の一環として検討するために行った今回の調査結果の妥当性を追認できた。
本願発明者らは、主要な相互作用表面でFis1に結合するように設計したpep213によって、培養内皮細胞におけるNO生体利用効率を向上できるとともに、2型糖尿病誘発性の内皮細胞依存性血管拡張能障害と高グルコース誘発性の内皮細胞依存性血管拡張能減弱を両方とも好転できることを見出した。本願発明者らが今回新規pep213を使って得たデータは、同者らの分子データと併せて、Fis1の直接的な薬理学的阻害が糖尿病性脈管構造に好影響を与えるという考えを支持している。興味深いことに、2型糖尿病の治療を目的としていくつかの薬を投与したところ、そのうち2種類は、T2DMの心血管系リスクを低下させるだけではなく、Fis1発現且つ又はDrp1発現の減少をもたらすことにより「標的外」効果としてミトコンドリア核分裂を阻害する。エンパグリフロジン、及びT2DM患者の心血管系リスクと死亡率及び微小血管性腎疾患に効果を示すSGLT2阻害剤31,32をT2DM(OLEFT)のラットモデルに使用したところ、Fis1の過剰発現を減少させるだけでなく、ミトコンドリア核分裂も減少させ、更に、心筋細胞のミトコンドリア活性酸素分解酵素SOD2を上昇させた33。従来からT2DMの血糖管理ために用いられている第1選択薬であり心血管機能にも効果のあるメトホルミンは、ApoEノックアウト型マウスにおいて、Drp1媒介性核分裂を抑制することにより、アテローム性動脈硬化形成を抑制する34。ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤であるビルダグリプチンは、糖尿病マウスの大動脈内皮において、NO産生を増加させるとともに、Fis1とDrp1の発現を減少させ、細胞質からのDrp1の転座を減少させ、且つミトコンドリア核分裂とROS産生を減少させることが判明している薬物群の一つである35。本願発明者らが得たデータの枠組みの中で解釈すると、これら一般的な糖尿病治療薬は、Fis1とDrp1の発現且つ又は相互作用に対する標的外効果に一部起因する効果として、T2DMの血管系改善効果をもたらし得ると考えられている。これらの改善が血糖管理の改善によるものか、Fis1又はDrp1の相互作用による直接的阻害によるものかについて、今後調査してみる価値がある。
本願発明者らが実施した試験にはいくつかの限界がある。まず、高血糖症その他の病理的刺激の発生との関連性が最も高い軸はFis1-Drp1軸であるという結論を従来のデータが支持していること、また、本願発明者らが以前に行った研究結果では糖尿病性内皮細胞におけるFis1の病態生理的役割が支持されていることから、本願発明者らはFis1-Drp1軸に主な焦点を当てて、T2DM及び異常グルコース曝露症例における血管系効果を調節した1,9-12。Fis1を阻害することによりDrp1や他のミトコンドリアドッキング蛋白質(MFF、MiD49/51)との相互作用が阻害されるかどうかは不明であり、今後調査してみる価値がある。また、ミトコンドリア融合蛋白質(例:OPA1、Mfn1、Mfn2など)には意図的に焦点を当てなかった。新たなデータから、T2DM患者の組織でMfn2発現が下方制御されていることと、Fis1が融合蛋白質のGTPase活性を阻害することで核分裂を促進して生体利用効率を更に低下させる可能性があることが示唆されている1,36-38。ヒト血管内皮機能の調節における融合経路の役割と、そのFis1との相互作用の可能性についても、更なる調査を行ってみる価値がある。本願発明者らは、今回の実験では浸透圧の制御を行っていないが、これまでの研究では、ミトコンドリアによる血管機能の制御に関して無傷の血管と内皮細胞を用いて類似した実験を行っており、その際、本願発明者らの結果を左右し得る浸透圧の相違は一切認められていない4,8。疾患との関連性が高いヒト由来組織について本願発明者らが得た所見の新規性、並びに、ミトコンドリア核分裂機構を標的としてヒト脈管構造に対する糖尿病の悪影響を鈍化・好転させるための新規治療介入法の開発は、上記の限界を相殺するに十分なものである。
〈補足結果〉
本願発明者らは、以前に行った研究でも、ミトコンドリア核分裂において膜変形・切断などを担う唯一の力学的酵素であるDrp1の遺伝子サイレンシングを行って、糖尿病性内皮細胞におけるNO依存性血管拡張能の減弱におけるミトコンドリアの過剰核分裂の役割を支持する同様の所見を報告している8。当該の試験では、siRNAをDrp1に導入することで、ヒト細動脈におけるDrp1の発現が大幅に減少し、健常なヒト由来の抵抗動脈における内皮細胞依存性血管拡張能のLG 誘発性障害を予防できることが明らかになった8。今回の試験では、Drp1の遺伝子的サイレンシングにより、内皮細胞依存性血管拡張能のHG誘発性障害も予防できることが明らかになった(図10、N=6、HG以外の全ての曝露に対する全体のP<0.0001)。この効果は、L-NAMEによって完全に破棄されることになったが、パパベリンによっては破棄されなかった(具体的なデータは省略)。また、HGに曝露した健常なヒト血管(図11A、n=9、P=全体で0.02、Drp1 siRNAとスクランブル化対照、スクランブル化対照+ L-NAME、Drp1 siRNA+L-NAMEとの間のP<0.05)とLGに曝露した健常なヒト血管(図11B、n=9、P=全体で0.003、Fis1 siRNAとそれ以外の曝露との間のP<0.04)でもDAF2-DA蛍光発光が有意に増加した。いずれの場合も、L-NAMEの投与によってDAF 2-DA蛍光増加効果が完全に破棄される。また、Drp1 siRNAのトランスフェクションでは、2型糖尿病罹患者由来のヒト血管内で内皮細胞依存性血管拡張が改善される傾向を示した(図12)。
本願発明者らは、以前に行った研究でも、ミトコンドリア核分裂において膜変形・切断などを担う唯一の力学的酵素であるDrp1の遺伝子サイレンシングを行って、糖尿病性内皮細胞におけるNO依存性血管拡張能の減弱におけるミトコンドリアの過剰核分裂の役割を支持する同様の所見を報告している8。当該の試験では、siRNAをDrp1に導入することで、ヒト細動脈におけるDrp1の発現が大幅に減少し、健常なヒト由来の抵抗動脈における内皮細胞依存性血管拡張能のLG 誘発性障害を予防できることが明らかになった8。今回の試験では、Drp1の遺伝子的サイレンシングにより、内皮細胞依存性血管拡張能のHG誘発性障害も予防できることが明らかになった(図10、N=6、HG以外の全ての曝露に対する全体のP<0.0001)。この効果は、L-NAMEによって完全に破棄されることになったが、パパベリンによっては破棄されなかった(具体的なデータは省略)。また、HGに曝露した健常なヒト血管(図11A、n=9、P=全体で0.02、Drp1 siRNAとスクランブル化対照、スクランブル化対照+ L-NAME、Drp1 siRNA+L-NAMEとの間のP<0.05)とLGに曝露した健常なヒト血管(図11B、n=9、P=全体で0.003、Fis1 siRNAとそれ以外の曝露との間のP<0.04)でもDAF2-DA蛍光発光が有意に増加した。いずれの場合も、L-NAMEの投与によってDAF 2-DA蛍光増加効果が完全に破棄される。また、Drp1 siRNAのトランスフェクションでは、2型糖尿病罹患者由来のヒト血管内で内皮細胞依存性血管拡張が改善される傾向を示した(図12)。
[結論]
本開示に記載した研究では、T2DM罹患者由来の無傷抵抗血管と急性血糖異常経過中の血管内皮機能の調節におけるFis1の極めて重要な役割を実証した。本願発明者らは、T2DM患者由来の血管における血管系機能に対するこの相互作用の重要性を実証するために、Fis1の主要結合表面を閉鎖するべく特別に設計した新規ペプチドpep213を用いた。更に、本願発明者らは、Fis1濃度の低下が内皮機能の向上をもたらすが、他の重要なミトコンドリア蛋白質やミトコンドリア酸素消費量には影響しないことを示した。これらのデータを以前の研究結果と併せて検討すると、T2DM関連の血管合併症を軽減することを目的としてFis1の薬理学的標的化に関する更なる研究を行う必要性が認められる。
本開示に記載した研究では、T2DM罹患者由来の無傷抵抗血管と急性血糖異常経過中の血管内皮機能の調節におけるFis1の極めて重要な役割を実証した。本願発明者らは、T2DM患者由来の血管における血管系機能に対するこの相互作用の重要性を実証するために、Fis1の主要結合表面を閉鎖するべく特別に設計した新規ペプチドpep213を用いた。更に、本願発明者らは、Fis1濃度の低下が内皮機能の向上をもたらすが、他の重要なミトコンドリア蛋白質やミトコンドリア酸素消費量には影響しないことを示した。これらのデータを以前の研究結果と併せて検討すると、T2DM関連の血管合併症を軽減することを目的としてFis1の薬理学的標的化に関する更なる研究を行う必要性が認められる。
[実施例2]
本願発明者らは更に、健常なヒト由来の抵抗動脈(ヒトFis1の内皮特異的過剰発現を目的としてプラスミドを培養時間48時間でトランスフェクトした抵抗動脈)におけるFis1の過剰発現が、eNOS依存的な血管拡張能障害につながることを明らかにした(このことは、eNOS阻害剤L-NAMEを使用した場合、アセチルコリンが喪失しても内皮細胞依存性血管拡張を誘発できることから判断できる。)N=5、全般的なP<0.001、図18に示すように、アセチルコリンの適応用量で*P<0.05であった。更に、本発明のペプチド、例えばpep213は、抵抗動脈における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転できる。細胞浸透性を改善する目的でtat配列に付着したpep213(1μM pep213-tat)に1時間曝露することにより、内皮細胞内でFis1を過剰発現(レンチウイルスベクターを用いて内皮特異的なヒトFis1の過剰発現を目的としたプラスミドを血管にトランスフェクトすることにより達成したヒトFis1の過剰発現)を示す健常なヒト抵抗細動脈における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転できる。pep213と同じアミノ酸を順不同に用いてスクランブル化したペプチド1μMではアセチルコリンによる内皮細胞依存性血管拡張に何ら効果を示さなかった。pep213-tatは、eNOS依存的に内皮細胞依存性血管拡張の改善をもたらす。(このことは、eNOS阻害剤L-NAMEを使用した場合、アセチルコリンが喪失しても内皮細胞依存性血管拡張を誘発できることから判断できる。)N=5、全般的なP<0.001、*アセチルコリンの適応用量でのP<0.05。
本願発明者らは更に、健常なヒト由来の抵抗動脈(ヒトFis1の内皮特異的過剰発現を目的としてプラスミドを培養時間48時間でトランスフェクトした抵抗動脈)におけるFis1の過剰発現が、eNOS依存的な血管拡張能障害につながることを明らかにした(このことは、eNOS阻害剤L-NAMEを使用した場合、アセチルコリンが喪失しても内皮細胞依存性血管拡張を誘発できることから判断できる。)N=5、全般的なP<0.001、図18に示すように、アセチルコリンの適応用量で*P<0.05であった。更に、本発明のペプチド、例えばpep213は、抵抗動脈における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転できる。細胞浸透性を改善する目的でtat配列に付着したpep213(1μM pep213-tat)に1時間曝露することにより、内皮細胞内でFis1を過剰発現(レンチウイルスベクターを用いて内皮特異的なヒトFis1の過剰発現を目的としたプラスミドを血管にトランスフェクトすることにより達成したヒトFis1の過剰発現)を示す健常なヒト抵抗細動脈における内皮細胞依存性血管拡張能障害を好転できる。pep213と同じアミノ酸を順不同に用いてスクランブル化したペプチド1μMではアセチルコリンによる内皮細胞依存性血管拡張に何ら効果を示さなかった。pep213-tatは、eNOS依存的に内皮細胞依存性血管拡張の改善をもたらす。(このことは、eNOS阻害剤L-NAMEを使用した場合、アセチルコリンが喪失しても内皮細胞依存性血管拡張を誘発できることから判断できる。)N=5、全般的なP<0.001、*アセチルコリンの適応用量でのP<0.05。
更に、組換えヒトFis1とPep213の共結晶化を行った。その後、ペプチドをFis1緩衝液において再懸濁した。懸滴型蒸気拡散法により結晶を成長させ、抗凍結剤溶液に高速移送した後に液体窒素に入れて急速冷凍した。米先端放射光施設(イリノイ州アルゴンヌ市)のLS-CATビームライン21-ID-Fで、MD2-Sマイクロ回折装置とレイオニクスMX300検出器を用いて複数のデータセットを遠隔収集した。検出器距離260mmで、合計180°のデータを0.5°ずつ収集した。XDSを用いて全てのデータを処理した。フェニックスフェイザーMRを用いて分子置換を行い、その後フェニックスオートビルドを用いてモデルの自動構築を行った。フェニックス.リファインとウィンクートを用いて改良・微調整を行った。最終的な構造分解能は1.85Aであった。共錯体構造(A)を見ても、塩橋形成や水素結合やファンデルワールス相互作用を含む様々な結合相互作用を介して、pep213がFis1と結び合っていることが分かる。
Fis1結合に重要なPep213は、表2に示すように、14個のアミノ酸をそれぞれアラニンに順次置換することにより断定した。Fis1-pep213相互作用に欠かせないpep213残基を断定するためにマイクロスケール熱泳動を用いた。pep213の各残基をアラニンで順次置換し、計14個のペプチドを得た。その後、ペプチドをFis1緩衝液において再懸濁した。ナノテンパーモノリスNT.115装置を用いて、25℃でマイクロスケール熱泳動実験を行い、各ペプチドの16点希釈系列(1:1希釈)を、定濃度の蛍光標識Fis1に対して定量した。ナノテンパーモノリスに附属している親和性分析ソフトウェアによりデータ分析を行ってKD値を断定した。結合親和性の値を用いて反応のΔG°(ΔG°=-RTlnK)を求め、これを用いてΔΔG °値(ΔG°pep213-ΔG°異形)を計算した。ΔΔG°値が低いことからも分かるように、ペプチドの各末端の残基の部分集合は結合に対して有意な寄与を示していない。
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Claims (25)
- (a)配列番号38(XLPYPHZ)のアミノ酸配列、又は配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を持つ配列を含むミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチドであり、XとZが0~30個のアミノ酸、任意に1~20個のアミノ酸からなるペプチドであり得る、ミトコンドリア核分裂蛋白質1(Fis1)活性阻害ペプチド。
- (a)配列番号33~37から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号33~37に対して少なくとも80%の配列同一性を持つ配列を含み、5~50個のアミノ酸、任意に5~30個のアミノ酸長さのペプチドである、請求項1に記載の阻害ペプチド。
- 前記アミノ酸配列が、(a)配列番号1(SHKHDPLPYPHFLL)のアミノ酸配列又は配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を持つ配列、又は配列番号16~21、26及び29のいずれか1つ又は配列番号16~21、26及び29に対して90%の配列類似性を持つ配列を含む、請求項1または請求項2に記載の阻害ペプチド。
- 前記阻害ペプチドが、(b)担体ペプチド、タグペプチド、又は細胞結合ペプチドをコード化するアミノ酸配列又は担体に連結している(a)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の阻害ペプチド。
- 前記阻害ペプチドが担体ペプチドを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の阻害ペプチド。
- 前記担体ペプチドが、細胞透過性ペプチド配列、任意にTAT(配列番号2)又は配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を持つ配列である、請求項1~5のいずれか1項に記載の阻害ペプチド。
- 前記(a)と(b)が両方ともペプチドであり、リンカー配列によって連結されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の阻害ペプチド。
- 前記リンカー配列が配列番号4、11、12、13、14、又は15である、請求項7に記載の阻害ペプチド。
- 前記ペプチドが、配列番号3(YGRKKRRQRRRGSGSGSSHKHDPLPYPHFLL)、配列番号31、配列番号32、配列番号39、又は配列番号3、配列番号31、配列番号32又は配列番号39に対して少なくとも90%の配列同一性を持つペプチドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の阻害ペプチド。
- Fis 1阻害ペプチドをコード化するポリヌクレオチドであり、異種プロモータ配列及び請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
- 前記ポリヌクレオチドがベクターである、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
- 阻害性ペプチドを発現することができるベクターであり、請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項10に記載のポリヌクレオチドをコード化するポリヌクレオチドに操作可能に接続しているプロモータを含むベクター。
- 異種バックボーン配列を更に含む、請求項12に記載のベクター。
- 請求項12又は請求項13に記載のベクターを含み、阻害ペプチドを発現することができる宿主細胞。
- 2型糖尿病に関連する血管合併症を治療する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載のFis1阻害ペプチドを有効量を投与することを含む方法。
- 血管拡張能障害の治療を必要とする被検体において血管拡張障害の好転を図る方法であって、前記被検体における血管拡張能の回復を目的として請求項1~9のいずれか1項に記載のFis1阻害ペプチドを有効量を投与することを含む方法。
- 前記被検体が2型糖尿病を罹患している、請求項15又は請求項16に記載の方法。
- 前記被検体が、一酸化窒素合成酵素依存的にヒト抵抗動脈における高グルコース誘発性及び2型糖尿病に関連した内皮細胞依存性血管拡張能障害を有する、請求項15又は請求項16の方法。
- ヒトの微小血管内皮細胞における酸化窒素(NO)の生体利用効率を高める方法であって、ヒト内皮細胞におけるNO生体利用効率を増加させるために、請求項1~9のいずれか1項に記載のFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法。
- 前記内皮細胞が、血管機能不全を有する被検体の生体内のものである、請求項19に記載の方法。
- 内皮機能不全を治療するための方法であって、内皮機能不全を治療するために請求項1~9のいずれか1項に記載のFis1阻害ペプチドを有効量投与することを含む方法。
- 前記内皮機能不全がアテローム性動脈硬化症を含む、請求項21に記載の方法。
- 内皮機能不全が、アテローム性動脈硬化症、脳血管疾患、冠状動脈疾患、腎血管性疾患、及び末梢動脈疾患のうちのいずれかの疾患と関連している、請求項21に記載の方法。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチド又は前記ペプチドを発現することができる請求項10又は請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項12又は請求項13に記載のベクター、又は請求項14に記載の細胞、及び使用説明書を含むキット。
- 請求項1~9のいずれかに記載の阻害ペプチドと、薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
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| J. BIOL. CHEM., vol. 285, no. 1, JPN6025038141, 2010, pages 620 - 630, ISSN: 0005688179 * |
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