I-本発明のポリペプチド
本発明者らは、その天然リガンドに対する親和性の低下を示すように任意に改変されたニドゲンタンパク質由来のG2ドメインが足場として作用し、前記G2ドメイン内のβ鎖と接続する1つ以上のループ領域に挿入されたペプチドを提示するのに十分に安定であることを見出した。さらに、本発明者らは、目的の細胞により発現される受容体に対して親和性を示すリガンドに複合体化された場合、ニドゲンタンパク質のG2ドメインを用いて、治療薬および診断薬/造影剤を含む目的の剤を目的の細胞に送達できることを見出した。本発明者らは、ニドゲンG2ドメインおよびCXCR4特異的リガンドT22を含み、抗癌剤に結合された融合タンパク質が、抗癌剤をCXCR4発現細胞に送達することができ、T22リガンドとGFPまたはStefinA等の異なるタンパク質とが融合した同等の剤によって達成される阻害よりも大幅に優れた程度で細胞の増殖を度阻害し得ることを見出した。
したがって、第1の態様において、本発明は、
(i)A、B、C、D、E、F、G、H、I、JおよびKと指定される11種のβ鎖ドメイン、ならびに
(ii)AB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKループと指定される、2つの連続するβ鎖ドメインを接続する10種のループ領域
を含むポリペプチドであって;
前記ループ領域の少なくとも1つが配列番号62における同族ループ領域変異体であり、該配列番号62における同族ループ領域が、配列番号1(ループ領域AB)、配列番号2(ループ領域BC)、配列番号3(ループ領域CD)、配列番号4(ループ領域DE)、配列番号5(ループ領域EF)、配列番号6(ループ領域FG)、配列番号62のアミノ酸149~150(ループ領域GH)、配列番号7(ループ領域HI)、配列番号8(ループ領域IJ)および配列番号9(ループ領域JK)で定義され、かつ
前記β鎖ドメインの少なくとも1つが配列番号62における同族β鎖の変異体であり、同族β鎖ドメインと少なくとも50%の配列同一性を有し、該配列番号62における同族β鎖ドメインが、配列番号9(β鎖ドメインA)、配列番号11(β鎖ドメインB)、配列番号12(β鎖ドメインC)、配列番号13(β鎖ドメインD)、配列番号14(β鎖ドメインE)、配列番号15(β鎖ドメインF)、配列番号16(β鎖ドメインG)、配列番号17(β鎖ドメインH)、配列番号18(β鎖ドメインI)、配列番号19(β鎖ドメインJ)および配列番号20(β鎖ドメインK)で定義される
ポリペプチドに関する。
ポリペプチドは、以下、「本発明の第1の態様によるポリペプチド」または「本発明のポリペプチド」と呼ばれる。
本明細書で用いられる「ポリペプチド」という用語は、一般に、ペプチド結合で結合された任意の長さのアミノ酸残基の直鎖を指す。本明細書で用いられる「ペプチド」という用語は、ポリペプチドのようにアミノ酸の直鎖を指すが、ポリペプチドのそれよりも短い。ペプチドは一般的に2~50アミノ酸のアミノ酸鎖を指す。「ペプチド結合」、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、当業者に公知であることが理解されよう。
本発明のポリペプチドは、「ニドゲンG2ドメイン」の変異体である。
本明細書で用いられる「ニドゲン-1」という用語は、従来エンタクチンとして知られていた糖タンパク質を指す。ニドゲン-1は、Uniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)においてアクセション番号P14543-1(配列番号72)として開示されている。
本明細書で用いられる「ニドゲン-1のG2ドメイン」という用語は、上記で定義されたニドゲン1タンパク質のG2ドメインを指す。ニドゲン-1のG2ドメインは配列番号62に示される通りであり、これはニドゲン-1タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸番号430~667に対応し、Uniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)の識別番号P14543-1(配列番号72)である。別の実施形態において、ニドゲン1のG2ドメインは配列番号64に示される通りであり、これは配列番号62の最初の2つのアミノ酸を欠き、したがってUniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)の識別番号P14543-1のニドゲン-1タンパク質前駆体のアミノ酸配列(配列番号72)のアミノ酸番号432~667からなる領域に対応する。野生型のニドゲン-1配列において、G2ドメインは短いEGF様ドメインと隣接している。しかしながら、本発明の目的のために、ニドゲン-1のG2ドメインは、N末端またはC末端のEGF様ドメインを欠いている。
一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、N末端メチオニン残基を含む。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、N末端の位置にメチオニンを含まない。
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸残基」とは、任意の天然に存在するアミノ酸、任意のアミノ酸誘導体または当技術分野において公知の任意のアミノ酸模倣体(mimic)を指す。特定の実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸、すなわち天然に存在するアミノ酸である。特定の実施形態において、タンパク質またはペプチドの残基は連続的であり、アミノ酸残基の配列を中断する非アミノ酸を含まない。別の実施形態において、配列は1つ以上の非アミノ酸部分を含み得る。特定の実施形態において、タンパク質またはペプチドの残基の配列は、1つ以上の非アミノ酸部分によって中断され得る。
本明細書で用いられる「β鎖」、「β鎖ドメイン」または「β鎖配列」という表現は、一方の鎖のNH基と他方の鎖のCOとの間の水素結合を介して別のポリペプチド鎖または配列と接続した拡張したポリペプチド鎖または配列を指す。通常、β鎖の長さは約3~10アミノ酸であるが、それより長くなることもあり得、例えば13~15アミノ酸の長さになることもあり得る。このような鎖間の接続の結果、β鎖は、シートに似たタンパク質二次構造を形成する。前記タンパク質二次構造は、本明細書において「βシート」と呼ばれる。βシート内で、β鎖は、平行、逆平行または混合(平行および逆平行)の様式で配置され得る。平行に配置される場合、β鎖は一方の末端(NまたはC)からもう一方の末端まで同じ方向に整列する。逆平行に配置される場合、各β鎖は、それが接続されている鎖の方向とは反対の方向に整列する。
本明細書で用いられる「βバレル」という表現は、βシートによって形成されるタンパク質二次構造であって、第1の鎖と最後の鎖とが水素結合によって結合してもたらされる閉じた環状(toroidal)構造を指す。
本明細書で用いられる「αヘリックス」または「アルファヘリックス」という表現は、アミノ酸のN-H基が水素とタンパク質配列の3または4残基前に位置するアミノ酸の骨格のC=O基とを結合する右側のヘリックスからなるタンパク質の二次構造を指す。
本明細書で用いられる「αヘリックス部分」または「アルファヘリックス部分」という表現は、実質的に1つ以上のαヘリックスを含むタンパク質の二次構造におけるモチーフを指す。
当業者によって理解されるように、本明細書で用いられるβ鎖はタンパク質ドメインを指し、本明細書で用いられるβシートはタンパク質の二次構造を指す。
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドの11個のβ鎖ドメインは、βシートの二次構造に含まれるか、またはそれを構成する。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドの12個のβ鎖ドメインは、βバレル二次構造に含まれるか、またはそれを構成する。
本明細書で用いられる「ループ」、「ループ領域」、「ループ配列」、「オメガループ」、「オメガループ領域」または「オメガループ配列」という用語は、任意のアミノ酸配列を有する6つ以上のアミノ酸残基のポリペプチド鎖からなる、不規則的で非反復のタンパク質構造モチーフを指す。ループの開始および終了を構成する残基は、間に通常の二次構造モチーフが介在することなく、間隙を介して互いに接近している。それらは一般に、β鎖等の二次タンパク質構造、またはαヘリックス等の直接二次タンパク質構造に含まれる2つのタンパク質ドメインを接続する。このようなループは、しばしば、ループの一方の端部に接続しているタンパク質ドメインまたはタンパク質二次構造が、ループの他方の端部に接続している別のタンパク質ドメインまたはタンパク質構造に対してその方向(N-末端からC-末端、またはC-末端からN-末端)を変えることを可能にする。ループはほとんどの場合タンパク質の外表面に位置し、したがって一般にループが属するタンパク質と他の分子との間の相互作用に関与する。
特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、1つ以上のループ領域内に異種ポリペプチドを含むニドゲンG2ドメイン変異体である。一つの実施形態において、異種ポリペプチドはループ領域内に挿入されており、すなわちループ領域は、配列番号62または配列番号63の同族ループドメインに見られるすべてのアミノ酸を保存するが、異種ポリペプチドは、2つの連続するアミノ酸の間に挿入される。別の実施形態において、1つ以上のループ領域内の異種ポリペプチドは、ループ領域の配列を部分的または完全に置換するループ領域内の挿入として見出される。
異種ポリペプチドの長さは特に限定されるものではない。したがって、異種ポリペプチドは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、1つ以上のループ領域内に異種ポリペプチドを含み、1つ以上のβ鎖に突然変異を含み、突然変異が配列番号11で定義されるβ鎖Bの9位(配列番号62の30位のアミノ酸、またはUniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1の配列もしくは配列番号72で定義されるヒトニドゲン1前駆体の459位のアミノ酸に対応する)、配列番号12で定義されるβ鎖Cの1位(配列番号62の39位のアミノ酸、またはUniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1の配列もしくは配列番号72で定義されるヒトニドゲン1前駆体の468位のアミノ酸に対応する)、配列番号19で定義されるβ鎖Jの10位(配列番号62の210位のアミノ酸、またはUniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1の配列もしくは配列番号72で定義されているヒトニドゲン1前駆体の639位のアミノ酸に対応する)、または配列番号20で定義されるβ鎖Kの3位(配列番号62の221位のアミノ酸、またはUniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1の配列もしくは配列番号72で定義されるヒトニドゲン1前駆体の650位のアミノ酸に対応する)に位置する。
一つの実施形態において、配列番号11で定義されるβ鎖Bの9位の突然変異はH459A突然変異であり、配列番号12で定義されるβ鎖Cの1位の突然変異はR468N突然変異であり、配列番号19で定義されるβ鎖Jの10位の突然変異はF639S突然変異であり、かつ/または配列番号20で定義されるβ鎖Kの3位の突然変異はR650Aである。
一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、H459AおよびR468Nの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、H459AおよびF639Sの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、H459AおよびR650Aの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、R468NおよびF639Sの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、R468NおよびR650Aの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、H459A、R468NおよびF639Sの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、H459A、R468NおよびR650Aの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、R468N、F639SおよびR650Aの突然変異を含む。一つの実施形態において、ヒトニドゲンG2ドメイン変異体は、H459A、R468N、F639SおよびR650Aの突然変異を含む。好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号64または65で定義される配列を有する(以下、NIDOmut2と呼ばれる)。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、H459A、R468N、F639SおよびR650Aの突然変異を有し、さらに543位(配列番号62の114位のヒスチジンに対応する)および545位(配列番号62の116位のヒスチジンに対応する)からなる群から選択される位置に突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である。別の実施形態において、H543位はLysに突然変異している。別の実施形態において、H545位はAsnに突然変異している。いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650AおよびH543Kの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である。いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650AおよびH545Nの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である。別の実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、H543K突然変異およびH545N突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、H459A、R468N、F639S、R650A、H543KおよびH545Nの突然変異を含むことを特徴とする配列番号87を含むかまたはそれからなる(以下、NIDOmut3と呼ばれる)。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、下記からなる群から選択される突然変異をさらに含むNIDOmut3変異体である:
-449位(配列番号62の20位に対応する)のバリンの突然変異。好ましくは、449位のバリンはThrに突然変異している。好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号88で定義される配列を有する(以下、NIDOmut3-V45Tと呼ばれる)。
-525位(配列番号62の96位に対応する)のバリンの突然変異。好ましくは、449位のバリンはGlnに突然変異している。好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号89で定義される配列を有する(以下、NIDOmut3-V212Qと呼ばれる)。
-561位(配列番号62の142位に対応する)のフェニルアラニンの突然変異。好ましくは、561位のフェニルアラニンはグルタミン酸に突然変異している。好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号90で定義される配列を有する(以下、NIDOmut3-F157Eと呼ばれる)。
-619位(配列番号62の190位に対応する)のバリンの突然変異。好ましくは、619位のバリンはスレオニンに突然変異している。好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号91で定義される配列を有する(以下、NIDOmut3-V215Tと呼ばれる)。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、さらにV449T、V525Q、F561EおよびV619Tの突然変異を含む。いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、V449T、V525Q、F561EおよびV619Tの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である。いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、V449T、H545N、V525Q、F561EおよびV619Tの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である。いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525Q、F561EおよびV619Tの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である。別の実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号92で定義される配列を含むかまたはそれからなる(以下、NIDOmut4と呼ばれる)。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、さらに619位(配列番号62の190位に対応する)のスレオニンの突然変異を含むNIDOmut4である。好ましくは、619位のスレオニンはバリンに突然変異している。別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、619位(配列番号62の190位に対応する)のアミノ酸が、UniProtデータベースのアクセション番号P14534で定義されるヒトニドゲンG2ドメインにおいてみられるのと同じ残基、すなわちバリンである、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体である。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525QおよびF561Eの突然変異を有するニドゲンG2ドメイン変異体である。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号93の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut4_T215Vと呼ばれる)。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、さらに618位(配列番号62の189位に対応する)のシステインの突然変異を含むNIDOMut4である。好ましくは、618位のシステインはセリンに突然変異している。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525Q、V619T、F561EおよびC618Sの突然変異を有するニドゲンG2ドメイン変異体である。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号94の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut5と呼ばれる)。
別の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、下記からなる群から選択される突然変異をさらに含むNIDOMut3変異体である:
-580位(配列番号62の151位に対応する)のバリンの突然変異。好ましくは、580位のバリンはThrに突然変異している。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号95の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-V176Tと呼ばれる)。
-604位(配列番号62の175位に対応する)のイソロイシンの突然変異。好ましくは、604位のイソロイシンはThrに突然変異している。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号96の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-I200Tと呼ばれる)。
-638位(配列番号62の209位に対応する)のバリンの突然変異。好ましくは、638位のバリンはチロシンに突然変異している。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号97の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-V236Yと呼ばれる)。
-641位(配列番号62の212位に対応する)のロイシンの突然変異。好ましくは、641位のロイシンはスレオニンに突然変異している。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号98の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-L237Tと呼ばれる)。
-469位(配列番号62の40位に対応する)のセリンの突然変異。好ましくは、469位のセリンはIleに突然変異している。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号99の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-S65Iと呼ばれる)。
-518位(配列番号62の89位に対応する)のアルギニンの突然変異。好ましくは、518位のアルギニンはIleに突然変異している。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号100の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-R114Iと呼ばれる)。
-618位(配列番号62の189位に対応する)のシステインの突然変異。好ましくは、618位のシステインはセリンに突然変異している。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号101の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut3-C214Sと呼ばれる)。
いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、さらに469位の突然変異(好ましくはS469Iの突然変異)および518位の突然変異(好ましくはR518Iの突然変異)を含むNIDOmut3変異体である。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、S469IおよびR518Iの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体であり、配列番号102の配列に対応する(以下、NIDOmut3-S65I_R114Iと呼ばれる)。
いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、さらに469位の突然変異(好ましくはS469Iの突然変異)および518位の突然変異(好ましくはR518Iの突然変異)を含むNIDOmut5変異体である。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号103で定義されるH459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525Q、V619T、F561E、S469IおよびR518Iの突然変異を含むニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut5-S65I_R114Iと呼ばれる)。
いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、469位(配列番号62の40位に対応する)のセリンの突然変異をさらに含むNIDOmut5変異体である。好ましくは、469位のセリンはIleに突然変異している。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525Q、V619T、F561EおよびS469Iの突然変異を有するニドゲンG2ドメイン変異体である。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号104の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut5-S65Iと呼ばれる)。
いくつかの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、上記の実施形態のいずれかで定義されるニドゲンG2ドメイン変異体であり、特に、518位(配列番号62の89位に対応する)のアルギニンの突然変異をさらに含むNIDOmut5変異体である。好ましくは、518位のアルギニンはIleに突然変異している。したがって、一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、H459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525Q、V619T、F561EおよびR518Iの突然変異を有するニドゲンG2ドメイン変異体である。一つの実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドは、配列番号104の配列を有するニドゲンG2ドメイン変異体である(以下、NIDOmut5-R114Iと呼ばれる)。
本発明における使用に適したニドゲンG2ドメイン変異体は、以下の表に要約される。
異種ポリペプチドはループ領域内に挿入され得、すなわちループ領域は、配列番号62または配列番号63の同族ループドメインに見られるすべてのアミノ酸を保存するが、異種ポリペプチドは、2つの連続するアミノ酸の間に挿入される。異種ポリペプチドの長さは特に限定されるものではない。したがって、異種ポリペプチドは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。
別の実施形態において、異種ポリペプチドは、ループ領域の一部を置換し得、すなわちループ領域は、配列番号62または配列番号63の同族ループドメインの配列に関して欠失を含み、欠失された配列は異種ポリペプチドで置換され、2つの連続するアミノ酸の間に挿入される。欠失の長さは、異種ペプチドの長さと同じである必要はないことが理解されよう。したがって、ループ領域は、その領域の全長の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%の欠失を含み得る。異種ポリペプチドの長さは特に限定されるものではない。したがって、異種ポリペプチドは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。
ニドゲンG2ドメイン変異体が複数の異種ポリペプチドを含む場合、異種ポリペプチドは同じループ領域内に見出されてもよく、または好ましくは異なるループ領域に見出されてもよい。さらに、ニドゲンG2ドメイン変異体が複数の異種ポリペプチドを含む場合、異種ポリペプチドは同じであってもよく異なっていてもよい。
本発明のニドゲンG2ドメイン変異体の一部を形成する異種ポリペプチドは、標的ペプチドに特異的に結合する。より好ましくは、異種ポリペプチドは、本発明のニドゲンG2ドメイン変異体の他の領域または本発明の第1のポリペプチドの他の領域との特異的結合を示さない標的ペプチドに特異的に結合する。
本発明において「結合する(binding)」、「結合(bond)」、「結合する(binds)」という用語は、特に限定されないが、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス結合、イオン結合または上記の組み合わせのような非共有結合の結果としての、親和性結合分子または特異的結合対の相互作用を指す。
本発明においてポリペプチドの特定のまたは標的分子への結合を指すのに用いられる場合、「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的に結合する(specifically binding)」、「特異的に認識する(specifically recognizes)」または「特異的に相互作用する(specifically interacts)」という表現は、ポリペプチドおよび標的分子の両方の三次元構造の間の相補性によって、好ましくはポリペプチドと標的分子との間の結合が、反応混合物の場合のようにポリペプチドに近接して存在する他の分子とポリペプチドとが結合する前に起こるように、実質的に高い親和性をもってポリペプチドが標的分子と特異的に結合する能力であると理解される。反応混合物中でポリペプチドが標的分子に特異的に結合する能力は、例えば、従来の条件下でポリペプチドと目的の標的分子および(構造的におよび/または機能的に)より近いまたはより遠いいくつかの関連分子との結合を評価することによって試験され得る。ポリペプチドが標的分子に結合するが、標的分子に近い他の関連分子に結合しないかまたは実質的に結合しない場合にのみ、前記結合は標的分子に特異的であると見なされる。ポリペプチドと標的分子との間の結合は、両者の間の結合親和性が10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満の解離定数(KD)を有する場合、特異的であると見なすことができる。ポリペプチドと標的分子との間の結合、および前記結合のKDを決定する方法としては、当分野の専門家によってよく知られている方法が挙げられる。このような方法の非限定的な例としては、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)等のゲルシフトアッセイ、共免疫沈降アッセイおよびそれに続く質量分析、質量分析に関連するガスクロマトグラフィー、質量分析に関連する液体クロマトグラフィー、またはウエスタンブロット分析が挙げられる。さらなる方法としては、オイルクッション法がある[Hesselgesset et al, 1998, J.Immunol., 160:877-883を参照のこと]。
特定の実施形態において、標的分子へのポリペプチドの結合は、ポリペプチドと標的分子との間の結合が10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満の解離定数(KD)を有する場合、特異的であると見なされる。同様に、ループ領域と特定の標的分子との間の結合は、ループ領域と特定の標的分子との間の結合が10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満の解離定数(KD)を有する場合、特異的であると見なされる。
本発明のポリペプチドにおいて、ループ領域ABはβ鎖AとBとを接続し、ループ領域BCはβ鎖BとCとを接続し、ループ領域CDはβ鎖CとDとを接続し、ループ領域DEはβ鎖DとEとを接続し、ループ領域EFはβ鎖EとFとを接続し、ループ領域FG’はβ鎖FとGとを接続し、ループ領域GHはβ鎖GとHとを接続し、ループ領域HIはβ鎖HとIとを接続し、ループ領域IJはβ鎖IとJとを接続し、ループ領域JKはβ鎖JとKとを接続する。
特定の実施形態において、β鎖Aは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域ABによりβ鎖Bと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Bは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域BCによりβ鎖Cと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Cは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域CDによりβ鎖Dと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Dは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域DEによりβ鎖Eと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Eは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域EFによりβ鎖Fと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Fは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域FGによりβ鎖Gと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Gは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域GHによりβ鎖Hと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Hは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域HIによりβ鎖Iと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Iは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域IJによりβ鎖Jと接続される。別の特定の実施形態において、β鎖Jは、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域JKによりβ鎖Kと接続される。
本明細書で用いられる「配列番号62における同族ループ領域」という表現は、ヒト起源の野生型ニドゲンG2ドメインである配列番号62に現れるループ領域を指す。当業者によって理解されるように、本発明の第1の態様のポリペプチドの各ループ領域は、配列番号62におけるその同族ループ領域を有する。
当業者によって理解されるように、2つのアミノ酸配列は、それらがある程度の配列同一性を示し、それらが同じタイプのタンパク質ドメインまたはタンパク質二次構造をコードする場合、すなわちそれらがいずれもβ鎖、ループ領域、αヘリックス、αヘリックス部分、βシートまたはβバレルを形成する場合、同じタンパク質ドメインまたは二次タンパク質構造をコードすると見なされる。特定の実施形態において、同一であると見なされる2つのタンパク質ドメインまたは二次タンパク質構造をコードするアミノ酸配列は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.75%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、少なくとも99.95%、少なくとも99.975%、少なくとも99.99%の程度の配列同一性を示す。2つのアミノ酸配列の間の同一性の程度は、従来の方法により、例えばBLAST[Altschul S.F. et al., J. Mol. Biol.,. 1990 Oct 5; 215(3):403-10]等の本技術分野において公知の標準的な配列アラインメントアルゴリズムにより決定することができる。タンパク質内のアミノ酸配列が特定のドメインまたはタンパク質二次構造を形成または維持するかどうかを決定する方法は、当業者によく知られており、タンパク質の原子座標がX線結晶構造解析やタンパク質NMR等の当業者によく知られている方法に従って取得された後、バイオインフォマティクスツールであるDSSPcont(Carter, Andersen & Rost, 2003)およびSTRIDE(Heinig & Frishman, 2004)等の方法によりタンパク質の二次構造を決定する方法が挙げられる。
ループ領域ABの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号1を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域BCの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号2を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域CDの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号3を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域DEの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号4を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域EFの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号5を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域FGの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号6を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域GHの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号62におけるアミノ酸149~150を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域HIの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号7を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域IJの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号8を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。別の特定の実施形態において、ループ領域JKの配列番号62における同族ループ領域は、配列番号9を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。
特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域は、配列番号62におけるその同族ループ領域変異体である。
本明細書で用いられる「ループ領域変異体」という表現は、その配列中に配列番号62におけるその同族ループ領域に対して1つ以上のアミノ酸の改変(modification)、挿入および/または欠失を含む、第1の態様のポリペプチドのループ領域を指す。特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドのループ領域は、AB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKからなるループ領域の群から選択される。
したがって、特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドの少なくとも1つのループ領域変異体は、配列番号62におけるその同族ループ領域の配列中の少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換または付加による突然変異により生じる。
特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドのループ領域変異体は、配列番号62における同族ループ領域の配列に対して少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の程度の配列同一性を有する。2つの配列の間の配列同一性の程度を決定する方法は、上記した通りである。
特定の実施形態において、ループ領域ABは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域BCは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域CDは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域DEは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域EFは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域FGは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域GHは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域HIは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域IJは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域JKは、配列番号62における同族ループ領域のループ領域変異体である。
特定の実施形態において、本発明のニドゲンG2ドメイン変異体のABループ領域の配列は配列番号1の変異体であるが、本発明の第1の態様のポリペプチドのBC、CD、DE、EF、FG’、GH、HI、IJおよびJKのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたはすべての配列が配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列と同一である。別の特定の実施形態において、ループ領域ABの配列は配列番号1の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域ABの配列は配列番号1の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号1のループ領域AB変異体は、配列番号1と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域ABの配列は、配列番号1である。
特定の実施形態において、ループ領域BCの配列は配列番号2の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域BCの配列は配列番号2の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのAB、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域BCの配列は配列番号2の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたはすべての配列が配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域BCの配列は配列番号2の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号2のループ領域BC変異体は、配列番号2と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域BCの配列は、配列番号2である。
特定の実施形態において、ループ領域CDの配列は配列番号3の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域CDの配列は配列番号3の変異体であり、本発明の第1の態様のAB、BC、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域CDの配列は配列番号3の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列を有する。別の特定の実施形態において、ループ領域CDの配列は配列番号3の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号3のループ領域CD変異体は、配列番号3と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域CDの配列は、配列番号3である。
特定の実施形態において、ループ領域CDの配列は、αヘリックス構造を示さないループ領域において同族領域が改変されている配列の、配列番号62における同族ドメイン変異体である。Hopf et al.(上記)により示されているように、野生型G2ドメインのCDループ領域は、α1、α2およびα3として知られるαヘリックス構造を有する3つの領域を含む。これらの領域は、それぞれ配列番号21、22および23として定義される。これらの領域は、CDループ領域を、β鎖Cの終わりとα1との間の領域(以下、Cα領域と呼ばれる)、α1とα2との間の領域、α2とα3との間の領域、およびα3とβ鎖Dの始まりとの間の領域(以下、αD領域と呼ばれる)にそれぞれ対応する4つのループ領域に分割する。一つの実施形態において、Cα領域は配列番号24を含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。一つの実施形態において、αD領域はアミノ酸GGを含むか、実質的に含むかまたはそれからなる。一つの実施形態において、ループ領域の配列は、配列番号21、22および23の配列が同族領域に関して保存されている配列番号3の同族領域の変異体である。別の実施形態において、ループ領域の配列は配列番号3の同族領域の変異体であり、Cα領域に1つ以上の突然変異を含む。別の実施形態において、ループ領域の配列は配列番号3の同族領域の変異体であり、αD領域に1つ以上の突然変異を含む。別の実施形態において、ループ領域の配列は配列番号3の同族領域の変異体であり、Cα領域およびαD領域に1つ以上の突然変異を含む。
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドにおけるCα領域は、配列番号24と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域Cαの配列は、配列番号24である。
特定の実施形態において、ループ領域αD変異体は、アミノ酸GGからなる配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
特定の実施形態において、ループ領域DEの配列は配列番号4の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域DEの配列は配列番号4の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのAB、BC、CD、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列を含む。別の特定の実施形態において、ループ領域DEの配列は配列番号4の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域DEの配列は配列番号4の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号4のループ領域DE変異体は、配列番号4と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域DEの配列は、配列番号4である。
特定の実施形態において、ループ領域EFの配列は配列番号5の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域EFの配列は配列番号5の変異体であり、本発明の第1の態様のAB、BC、CD、DE、FG、GH、HI、IJおよびJKのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域EFの配列は配列番号5の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域EFの配列は配列番号5の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号5のループ領域EF変異体は、配列番号5と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域EFの配列は、配列番号5である。
特定の実施形態において、ループ領域FGの配列は配列番号6の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域FGの配列は配列番号6の変異体であり、AB、BC、CD、DE、EF、GH、HI、IJおよびJKの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域FGの配列は配列番号6の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域FGの配列は配列番号6の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号6のループ領域FG変異体は、配列番号6と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域FGの配列は、配列番号6である。
特定の実施形態において、ループ領域GHの配列は、配列番号62のアミノ酸149~150(または配列番号63のアミノ酸147~148)に対応する配列TSの変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域GHの配列は配列番号62のアミノ酸149~150に対応する配列の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのAB、BC、CD、DE、EF、FG、HI、IJおよびJKの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域GHの配列は配列番号62のアミノ酸149~150に対応する配列の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域GHの配列は配列番号62のアミノ酸149~150に対応する配列の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列である。
特定の実施形態において、配列番号62のアミノ酸149~150に対応する配列のループ領域GH変異体は、配列番号62のアミノ酸149~150に対応する配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域GHの配列は、配列番号62のアミノ酸149~150に対応する配列である。
特定の実施形態において、ループ領域HIの配列は配列番号7の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域HIの配列は配列番号7の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのAB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、IJおよびJKの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9またはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域HIの配列は配列番号7の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9またはすべての配列は、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域HIの配列は配列番号7の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号7のループ領域HI変異体は、配列番号7と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域HIの配列は、配列番号7である。
特定の実施形態において、ループ領域IJの配列は配列番号8の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域IJの配列は配列番号8の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのAB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HIおよびJKのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9またはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域IJの配列は配列番号8の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列でが、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域IJの配列は配列番号8の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号8のループ領域IJ変異体は、配列番号8と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域IJの配列は、配列番号8である。
特定の実施形態において、ループ領域JKの配列は配列番号9の変異体である。別の特定の実施形態において、ループ領域JKの配列は配列番号9の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのAB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HIおよびIJの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、上記で示した配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域JKの配列は配列番号9の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべての配列が、配列番号62におけるそれらの同族ループ領域の配列である。別の特定の実施形態において、ループ領域JKの配列は配列番号9の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号9のループ領域JK変異体は、配列番号10と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域JKの配列は、配列番号9である。
特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域変異体の上流、上流近傍、下流または下流近傍に位置する配列の少なくとも1つは、ループ領域変異体の同族ループ領域に関して同じ位置に配置されている、配列番号62における配列(その参照配列と呼ばれる)に関して1つ以上のアミノ酸の改変、挿入および/または欠失を含む。しかしながら、少なくとも1つの配列は、配列番号62を有するポリペプチドにおけるその参照配列としての本発明の第1の態様のポリペプチドにおいて、上記で定義されたのと同一のタンパク質ドメインまたは二次構造をコードする。2つのアミノ酸配列がループ領域、αヘリックス部分またはαヘリックス等の同一のタンパク質ドメインまたは二次構造を形成するかどうかを決定する方法は、上記した2つのアミノ酸配列が同じタンパク質構造を形成するかどうかを決定するための方法である。
特定の実施形態において、参照配列に関して1つ以上のアミノ酸の改変、挿入および/または欠失を含む少なくとも1つの配列は、配列番号62におけるその参照配列と少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。2つのアミノ酸配列の間の配列同一性の程度を決定する方法は、上記した通りである。
本明細書で用いられる「配列番号62における同族β鎖ドメイン」という表現は、その間にβ鎖ドメイン変異体が本発明の第1の態様のポリペプチドが位置する配列としての同一のループ領域またはタンパク質二次構造をコードする配列番号62を有するタンパク質のアミノ酸配列の間に位置する配列番号62のβ鎖ドメインを指す。当業者によって理解されるように、本発明の第1のポリペプチドの各β鎖ドメインは、配列番号62にその同族β鎖ドメインを有する。
ニドゲンG2ドメイン変異体の各β鎖ドメインは、配列番号62における同族β鎖と同一であってもよく、またはニドゲンG2ドメイン変異体のβ鎖と配列番号62における同族β鎖ドメインとの間の全体的な配列同一性が少なくとも50%であり得るように1つ以上のアミノ酸が異なっていてもよい。好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体のβ鎖と配列番号62における同族β鎖ドメインとの間の配列同一性は、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。
特定の実施形態において、β鎖ドメインAは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインBは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインCは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインDは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインEは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインFは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインGは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインHは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインIは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインJは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。特定の実施形態において、β鎖ドメインKは、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインのβ鎖ドメイン変異体である。
特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインは、配列番号62におけるその同族β鎖の変異体である。
本明細書で用いられる「β鎖ドメイン変異体」という表現は、その配列中に、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインの配列に対して1つ以上のアミノ酸の改変、挿入および/または欠失を含む本発明の第1の態様のポリペプチドからのβ鎖ドメインを指す。特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドからのβ鎖ドメインは、A、B、C、D、E、F、G、H、I、JまたはKからなる群から選択される。
特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメイン変異体は、配列番号62におけるその同族β鎖ドメインの配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の程度の配列同一性を有する。配列同一性の程度を決定する方法は、上記した通りである。
特定の実施形態において、β鎖ドメインAについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号10を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインBについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号11を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインCについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号12を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインDについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号13を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインEについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号14を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインFについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号15を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインGについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号16を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインHについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号17を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインIについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号18を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインJについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号19を有する。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインKについての配列番号62における同族β鎖ドメインは、配列番号20を有する。
したがって、特定の実施形態において、β鎖Aの配列は配列番号10の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインAの配列は配列番号10の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのB~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Aの配列は配列番号10の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Aの配列は配列番号10の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号10のβ鎖ドメインA変異体は、配列番号11と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインAの配列は、配列番号10である。
特定の実施形態において、β鎖Bの配列は配列番号11の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインBの配列は配列番号11の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA、C~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Bの配列は配列番号11の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Bの配列は配列番号11の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号11のβ鎖ドメインB変異体は、配列番号12と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインBの配列は、配列番号11である。
特定の実施形態において、β鎖Cの配列は配列番号12の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインCの配列は配列番号12の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA、B、D~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Cの配列は配列番号12の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Cの配列は配列番号12の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号12のβ鎖ドメインC変異体は、配列番号12と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインCの配列は、配列番号12である。
特定の実施形態において、β鎖Dの配列は配列番号13の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインDの配列は配列番号13の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~C、E~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Dの配列は配列番号13の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Dの配列は配列番号13の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号13のβ鎖ドメインD変異体は、配列番号13と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインDの配列は、配列番号13である。
特定の実施形態において、β鎖Eの配列は配列番号14の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインEの配列は配列番号14の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~D、F~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Eの配列は配列番号14の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Eの配列は配列番号14の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号14のβ鎖ドメインE変異体は、配列番号14と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインEの配列は、配列番号14である。
特定の実施形態において、β鎖Fの配列は配列番号15の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインFの配列は配列番号15の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~E、G~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Fの配列は配列番号15の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Fの配列は配列番号15の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号15のβ鎖ドメインF変異体は、配列番号15と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインFの配列は、配列番号15である。
特定の実施形態において、β鎖Gの配列は配列番号16の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインGの配列は配列番号16の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~FおよびH~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Gの配列は配列番号16の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Gの配列は配列番号16の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号16のβ鎖ドメインG変異体は、配列番号16と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインGの配列は、配列番号16である。
特定の実施形態において、β鎖Hの配列は配列番号17の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインHの配列は配列番号18の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~G、I~Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Hの配列は配列番号17の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Hの配列は配列番号17の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号17のβ鎖ドメインH変異体は、配列番号17と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインHの配列は、配列番号17である。
特定の実施形態において、β鎖Iの配列は配列番号18の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインIの配列は配列番号18の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~H、J、Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Iの配列は配列番号18の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Iの配列は配列番号18の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号18のβ鎖ドメインI変異体は、配列番号19と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインIの配列は、配列番号18である。
特定の実施形態において、β鎖Jの配列は配列番号19の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインJの配列は配列番号19の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~I、Kのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Jの配列は配列番号19の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Jの配列は配列番号19の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号19のβ鎖ドメインJ変異体は、配列番号19と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインJの配列は、配列番号19である。
特定の実施形態において、β鎖Kの配列は配列番号20の変異体である。別の特定の実施形態において、β鎖ドメインKの配列は配列番号20の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのA~Jのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、上記で示された配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Kの配列は配列番号20の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはすべてが、配列番号62におけるそれらの同族β鎖ドメインの配列を有する。別の特定の実施形態において、β鎖Kの配列は配列番号20の変異体であり、本発明の第1の態様のポリペプチドの残りの配列は、配列番号62の残りの配列と同一である。
特定の実施形態において、配列番号20のβ鎖ドメインK変異体は、配列番号20と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。
別の特定の実施形態において、本発明の第1の態様のポリペプチドのβ鎖ドメインKの配列は、配列番号20である。
一つの実施形態において、本発明の第1の態様によるポリペプチドは、同族ループ領域の配列に関して少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換または付加による突然変異により生じる、配列番号62における同族ループ領域に関して少なくとも1つのループ領域変異体を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域ABである配列番号1に関してループ領域ABに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域BCである配列番号2に関してループ領域BCに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域CDである配列番号3に関してループ領域CDに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域DEである配列番号4に関してループ領域DEに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域EFである配列番号5に関してループ領域EFに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域FGである配列番号6に関してループ領域FGに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、配列番号62のアミノ酸149~150に対応する同族ループ領域GHに関してループ領域GHに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域HIである配列番号7に関してループ領域HIに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域IJである配列番号8に関してループ領域IJに突然変異を含む。一つの実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体は、同族ループ領域JKである配列番号9に関してループ領域JKに突然変異を含む。
ニドゲンG2ドメイン変異体のαヘリックス部分CαDは、配列番号62における同族αヘリックス部分と同一であってもよく、またはニドゲンG2ドメイン変異体のαヘリックス部分CαDと配列番号62における配列番号26の同族αヘリックス部分との間の全体的な配列同一性が少なくとも50%であり得るように1つ以上のアミノ酸が異なっていてもよい。
好ましい実施形態において、ニドゲンG2ドメイン変異体のαヘリックス部分CαDと配列番号62における配列番号24の同族αヘリックス部分との間の配列同一性は、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。
配列同一性の程度を決定する方法は、上記した通りである。特定の実施形態において、上記で示したように1つ以上のアミノ酸が異なるαヘリックス部分CαDは、配列番号62における同族αヘリックス部分のαヘリックス部分変異体と呼ばれる。
特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドはβバレル構造を有する。好ましい実施形態において、第1の態様のポリペプチドは、ニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインのβバレル構造を有する。特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドは、配列番号62を有する配列のβバレル構造を有する。
ニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインおよび配列番号62の配列のβバレル構造は、11本鎖のβバレルからなる。本明細書において、βバレルのβ鎖はI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIと呼ばれる。それらは、第1の態様のポリペプチドのβ鎖A~Kの配列番号62の同族β鎖に対応する。βバレルの内部は、鎖IIIとIVとを接続する疎水性の主にαヘリックス部分によって横断される。バレルのN末端側の半分は、埋め込まれたαヘリックス部分によって連結された2つのβメアンダー(beta-meander)(鎖I~IIIおよびIV~VI)で構成される。そして、ポリペプチド鎖はバレルの底を横断し、ドメインのC末端の半分に5本鎖のグリークキー(Greek key)モチーフを形成する。
本明細書で用いられる「βメアンダー」という表現は、ヘアピンループによって連結された2つ以上の連続する逆平行β鎖を指す。本明細書で用いられる「ヘアピンループ」という用語は、2~5残基の短いループによって連結された2つの逆平行鎖を指し、前記残基の1つは多くの場合グリシンまたはプロリンであり、これらはいずれも急な屈曲(tight turn)またはβバルジループ(bulge loop)に必要な二面角コンフォメーション(dihedral-angle conformation)を担うことができる。
本明細書で用いられる「グリークキー(Greek key)」という表現は、4つの隣接する逆平行鎖およびそれらの連結ループからなる二次タンパク質構造を指す。この構造では、3つの逆平行鎖がヘアピンで接続され、第4の鎖は第1の鎖に隣接し、より長いループにより第3の差に連結される。
したがって、特定の実施形態において、G2ドメインの変異体のA~Cのβ鎖およびD~Fのβ鎖は、βメアンダーを形成する。別の特定の実施形態において、βメアンダーはG2ドメインの変異体のαヘリックス部分CαDによって接続される。別の特定の実施形態において、G2ドメインの変異体のG~Kのβ鎖は、5本鎖グリークキーモチーフを形成する。別の特定の実施形態において、G2ドメインの変異体のβ鎖は、AおよびFのβ鎖を除いて、逆平行に配置されている。
ポリペプチドの二次構造を決定する方法、または2つのアミノ酸配列が同じドメインまたは二次タンパク質構造をコードするかどうかを決定する方法は、上記した通りである。
II-ポリペプチドディスプレイライブラリー
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるポリペプチドを複数含むポリペプチドディスプレイライブラリーであって、複数のポリペプチドが、1つ以上のループ領域の配列が異なるポリペプチドによって形成されるポリペプチドディスプレイライブラリーに関する。
本明細書で用いられる「ポリペプチドディスプレイライブラリー」という表現は、異なるアミノ酸配列を有する複数のポリペプチドを含む、ポリペプチドのライブラリーまたはプールを指す。ライブラリーの各ポリペプチドは、本発明の第1の態様において定義された通りであり、1つ以上のループ領域の配列においてライブラリーの少なくとも別のポリペプチドとは異なる。
本明細書で用いられる「1つ以上のループ領域の配列が異なるポリペプチド」という表現は、ライブラリーの各ポリペプチドが、ライブラリーの少なくとも1つの別のポリペプチドのアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列において少なくとも1つの差異を示し、該少なくとも1つの差異がポリペプチドのループ領域のアミノ酸配列に含まれるものであるという事実を指す。したがって、特定の実施形態において、ライブラリーのポリペプチドは、ライブラリーの別のポリペプチドの対応するループ領域とは異なる、第1の態様で定義されるループ領域変異体の少なくとも1つを含む第1の態様のポリペプチドである。特定の実施形態において、ループ領域変異体は、A、B、C、D、E、F、G、H、I、JまたはKからなる群から選択され、本発明の第1の態様の「ループ領域変異体」の定義および実施形態に記載されている通りのものである。
本明細書で用いられる「ライブラリーの少なくとも1つの別のポリペプチドのアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列において少なくとも1つの差異を示し、該配列がポリペプチドのループ領域のアミノ酸配列に含まれる」という表現は、ライブラリーの第1のポリペプチドの上記で定義されるループ領域変異体が、その配列中に、ライブラリーの第2のポリペプチドにおける対応するループ領域のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸の少なくとも1つの挿入、欠失または改変を含むという事実を指す。当業者に理解されるように、第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域ABである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域ABである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域BCである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域BCである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域CDである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域CDである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域DEである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域DEである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域EFである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域EFである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域FGである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域FGである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域GHである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域GHである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域HIである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域HIである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域IJである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域IJである。第1のポリペプチドにおけるループ領域変異体がループ領域JKである場合、第2のポリペプチドにおける対応するループ領域も第2のポリペプチドにおけるループ領域JKである。
特定の実施形態において、ライブラリーの第1のポリペプチドのループ領域変異体は、ライブラリーの第2のポリペプチドの対応するループ領域と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の程度の配列同一性を示す。別の特定の実施形態において、第1のポリペプチドの全配列は、第2のポリペプチドの全配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.75%、少なくとも99.9%、少なくとも99.95%、少なくとも99.975%、少なくとも99.98%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%の程度の配列同一性を示す。配列同一性のパーセンテージを決定する方法は、本発明の第1の態様で記載した通りである。
特定の実施形態において、ライブラリーの第1のポリペプチドは、ライブラリーの第2のポリペプチドと呼ばれる、ライブラリーの少なくとも1つの別のポリペプチドにおける対応するループ領域に対して少なくとも2個のループ領域、少なくとも3個ループ領域、少なくとも4個のループ領域、少なくとも5個のループ領域、少なくとも6個のループ領域、少なくとも7個のループ領域、少なくとも8個のループ領域、少なくとも9個のループ領域、少なくとも10個のループ領域、少なくとも11個のループ領域のアミノ酸配列における差異を示す。第2のポリペプチドにおける対応するループ領域という用語は、第1のポリペプチドの各ループ領域について上記で示した通りである。アミノ酸配列における差異も上記で定義した通りである。さらに、各アミノ酸配列は、同様に上記で示した第2のポリペプチドにおける対応するループ領域の配列と配列同一性の程度を示す。
特定の実施形態において、ライブラリーのポリペプチドは、それらのループ領域の少なくとも1つによって、例えばサンプル内のそれらに近接して存在する他の分子、好ましくはペプチドまたはタンパク質に特異的に結合することができる。好ましい実施形態において、それらの対応するループ領域の1つ以上におけるアミノ酸配列における差異を示すライブラリーのポリペプチドは、例えばサンプル内でそれらに近接して存在する異なる分子、好ましくはペプチドまたはタンパク質に特異的に結合する。当業者に理解されるように、それらの結合能における差異は、1つのポリペプチドが1つの分子、好ましくはサンプルのペプチドまたはタンパク質と特異的に結合することができ、1つ以上のループ領域における差異を有するライブラリーの別のポリペプチドが1つの分子、好ましくはサンプルのペプチドまたはタンパク質と特異的に結合することができないという点にあり得る。あるいは、1つのポリペプチドが1つ以上の分子、好ましくはペプチドまたはタンパク質に特異的に結合することができるのに対し、1つ以上のループ領域における差異を有するライブラリーの別のポリペプチドが前記1つ以上の分子に特異的に結合することができないが、他の1つ以上の分子、好ましくはサンプル中に存在するペプチドに結合することができるという点にあり得る。特定の実施形態において、ライブラリーの第1のポリペプチドは、ライブラリーの第2のポリペプチドにおける対応するループ領域に対してその配列の差異を示す少なくとも1つのループ領域変異体によって、目的の標的分子、好ましくは目的のペプチドまたはタンパク質に特異的に結合することができるのに対し、ライブラリーの第2のポリペプチドは、前記標的分子に特異的に結合することができない。
別の特定の実施形態において、ライブラリーの第1のポリペプチドのループ領域変異体は標的ペプチドに特異的に結合するのに対し、配列番号62におけるその同族ループ領域は前記標的ペプチドに特異的に結合することができない。
別の特定の実施形態において、AB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJ、JKから選択される1つのループ領域において同一のループ領域変異体を有するポリペプチドライブラリーのポリペプチドは、該ループ領域変異体を介して特定の標的ペプチドと特異的に結合するのに対し、前記特定のループ領域変異体を有さないライブラリーのポリペプチドは該ループ領域変異体を介して特定の標的ペプチドと特異的に結合しない。
「結合する(bind)」、「結合している(binding)」、「特異的に結合する(specifically bind)」、「特異的に結合する(specifically binding)」、「特異的に相互作用する(specifically interact)」という用語は、本発明の第1の態様において定義されている。ポリペプチドと標的分子との間の結合、およびそのような結合のKを決定する方法も、上記定義において記載されている。
特定の実施形態において、標的分子へのライブラリーのポリペプチドの結合は、ポリペプチドと標的分子との間の結合が10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満の解離定数(Kd)を有する場合、特異的であると見なされる。同様に、ループ領域、好ましくはループ領域変異体と特定の標的分子との間の結合は、ループ領域と標的分子との間の結合が10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満の解離定数(KD)を有する場合、特異的であると見なされる。
特定の実施形態において、表現型としての本発明の第2の態様のライブラリーの各ポリペプチドと前記表現型に対応する遺伝子型としての核酸とが直接的または間接的に連結している。
「遺伝子型」という用語は、本発明で用いられる場合、1つまたはいくつかのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子、またはコードする配列を含む核酸分子を指す。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の群は、遺伝子型に対応する表現型と一致する。当業者に理解されるように、遺伝子型は、単一のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする単一の核酸分子によって形成され得る。この場合、表現型は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と一致する。核酸は、以下の核酸の定義で特定される核酸のいずれかであり得る。
特定の実施形態において、遺伝子型は、ポリペプチドディスプレイライブラリーの単一のポリペプチドをコードする単一の核酸分子によって形成される。別の特定の実施形態において、遺伝子型は、ポリペプチドディスプレイライブラリーの同じポリペプチドをコードするいくつかの核酸分子によって形成される。別の特定の実施形態において、核酸分子は同じ核酸配列を有する。
ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質という用語の定義は、本発明の第1の態様において記載されている。
「核酸」、「ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明において交換可能に用いられ、リボヌクレオシドリン酸エステル(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン;「DNA分子」)またはホスホロチオエートおよびチオエステル等のそれらの任意のホスホエステル類似体の一本鎖または二本鎖の形態のポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖のDNAまたはRNA分子が含まれる。また、DNA-DNA鎖、DNA-RNA鎖およびRNA-RNA鎖によって形成される二本鎖分子も含まれる。「核酸配列」という用語、特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次または二次構造のみを指し、特定のタイプの三次構造を限定するものではない。したがって、この用語には、直鎖状または環状のDNA分子、スーパーコイル状のDNAプラスミドおよび染色体に含まれる二本鎖DNAが包含される。特定の実施形態において、核酸はDNA分子である。別の特定の実施形態において、核酸はRNA分子である。
「表現型」という用語は、本発明で用いられる場合、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、またはペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の群を指す。核酸をコードする、またはそれをコードする配列を含む核酸は、表現型に対応する遺伝子型である。当業者に理解されるように、本発明の文脈において、表現型は、単一のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質からなってもよい。表現型に関連する遺伝子型は、それをコードする核酸分子または核酸分子の群である。
特定の実施形態において、表現型は、本発明の第1の態様において、および本発明の本態様において上記で定義されるようなポリペプチドライブラリーのポリペプチドである。特定の実施形態において、表現型は、上記で定義されたライブラリーの第1のポリペプチドである。
「表現型に対応する遺伝子型としての核酸と直接的または間接的に連結している表現型」という表現は、本発明で用いられる場合、それをコードする核酸(すなわち、上記で定義された遺伝子型)と連結しているポリペプチドディスプレイライブラリーのポリペプチド(すなわち、上記で定義された表現型)として理解される。連結により、ライブラリーのポリペプチドとそれをコードする核酸とによって形成される複合体がもたらされる。特定の実施形態において、ポリペプチドは複合体の外表面に露出している。したがって、特定の実施形態において、ポリペプチドディスプレイライブラリーは、それをコードする核酸に直接的または間接的に連結している本発明の第1の態様のポリペプチドを含む複合体によって形成される。ポリペプチドは表現型と見なされ、核酸は表現型に対応する遺伝子型と見なされる。
特定の実施形態において、ライブラリーのポリペプチドは、それらをコードするいかなる核酸とも連結されていない。
ライブラリーの各ポリペプチドは、上記のように複合体の一部であるかどうかにかかわらず、「ライブラリーのメンバー」と呼ばれる。したがって、本明細書で用いられるこの用語は、ポリペプチドと核酸とが直接的または間接的に連結され得、核酸がポリペプチドをコードする配列をコードするかまたは含むか、または単にそれをコードする配列を含む核酸にいかなる手段によっても連結されていない、ライブラリーの任意のペプチドを指す。したがって、特定の実施形態において、ライブラリーのメンバーは、上記で定義されたライブラリーのポリペプチドである。別の特定の実施形態において、ライブラリーのメンバーは、それをコードする核酸に直接的または間接的に連結された本発明の第1の態様のポリペプチドを含む複合体である。
直接的な連結は、ライブラリーのポリペプチドとそれをコードする核酸との間の直接的な相互作用からなり、ポリペプチドがそれをコードする核酸に結合または共有結合するポリペプチド-核酸複合体をもたらし、ポリペプチドは、ポリペプチド-核酸複合体の外表面に含まれる。当業者に理解されるように、複合体はまた、追加のタンパク質および/または核酸を含み得る。
特定の実施形態において、複合体のポリペプチドと核酸との結合は直接的なものである。別の特定の実施形態において、複合体のポリペプチドと核酸との結合は間接的であり、ポリペプチドは、核酸に結合する別のペプチド、タンパク質、タンパク質複合体または分子によって、それをコードする核酸に結合するかまたは共有結合する。
本明細書で用いられる「共有結合した(covalently attached)」、「共有結合(covalent attachment)」または「共有結合した(covalently coupled)」という用語は、互いに化学共有結合を介して直接的に共有結合されるか、またはリンカー、ブリッジまたはスペーサー等の1つまたは複数の介在部分を介して互いに間接的に共有結合される2つの分子間の相互作用を指す。
別の特定の実施形態において、ライブラリーのポリペプチドとそれをコードする核酸との間の共有結合は直接的であり、ポリペプチドは、それをコードする核酸と共有結合される。別の特定の実施形態において、ライブラリーのポリペプチドとそれをコードする核酸との間の共有結合は間接的であり、ポリペプチドは、リンカー、ブリッジまたはスペーサー等の1つまたは複数の介在部分を介してそれをコードする核酸と結合される。好ましい実施形態において、それはリンカーを介して結合される。
本明細書で用いられる「リンカー部分」または「リンカー」という用語は、2つの分子または化合物を連結する分子を指す。連結部分はその化学的な性質および/または構造の点で制限されないことも意図されており、したがって、連結部分は、とりわけ多糖、ポリペプチド、脂肪酸、リン脂質またはそれらの化学的誘導体であり得る。さらに、リンカーを介して別の分子と共有結合している分子の少なくとも1つ、または前記分子の両方ともが、ペプチド結合、イソペプチド結合、アミド結合、イミン結合等の任意の化学結合を介してリンカーに結合することが意図される。
特定の実施形態において、ポリペプチドディスプレイライブラリーは、ポリペプチドをコードする核酸に直接的に連結された本発明の第1の態様のポリペプチドを含む複合体によって形成され、ポリペプチド-核酸複合体は、
-それをコードする核酸に結合するライブラリーのポリペプチドからなる複合体、
-それをコードする核酸に結合するライブラリーのポリペプチドおよび追加のタンパク質、ペプチドおよび/または核酸からなる複合体、
-ポリペプチド-核酸複合体、
-リボソームまたはリボソームの一部
からなる群から選択される。
本明細書で用いられる「複合体」という用語は、2つ以上の個々の化合物または分子の共有結合から生じる任意の化合物を指し、上記で定義されるような共有結合である。定義によれば、複合体は自然界では決して見られない。
本発明の第2の態様の複合体に共有結合している個々の化合物は、ライブラリーのポリペプチドおよびそれをコードする核酸である。したがって、特定の実施形態において、本発明の第2の態様の複合体は、コードする核酸に化学共有結合を介して直接付着したライブラリーのポリペプチドを含む。別の特定の実施形態において、本発明の第2の態様の複合体は、コードする核酸にリンカー、ブリッジ、スペーサー、1つの部分または複数の部分等の1つの介在部分または複数の部分を介して付着したライブラリーのポリペプチドを含む。特定の実施形態において、それらはリンカーを介して付着している。
本明細書で用いられる「リボソーム」という用語は、タンパク質合成に不可欠な非常に複雑な細胞機構を指す。リボソームは、メッセンジャーRNA(mRNA)分子によって指定された順序でアミノ酸を結合する。リボソームは、リボソームRNA(rRNA)として知られる特殊なRNAと数十(正確な数は種によって異なる)の異なるタンパク質とで構成されている。リボソームタンパク質およびrRNAは、一般にリボソームの大小のサブユニットとして知られているサイズの異なる2つの異なるリボソームフラグメントに配置される。
本明細書で用いられる「リボソーム部分」という表現は、リボソームの単離された部分を指し、これは、例えば、リボソームの単離された大きいサブユニットまたは小さいサブユニットからなり得る。また、リボソーム部分は、リボソームタンパク質の一部またはrRNAの一部のみを含むリボソームも指す。
別の特定の実施形態において、本発明の第2の態様のポリペプチド-核酸複合体は、その外表面に、ライブラリーの1つのポリペプチドのみを含む。別の特定の実施形態において、本発明の第2の態様のポリペプチド-核酸複合体は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1×103個のコピーのライブラリーのポリペプチドを含む。特定の実施形態において、前記コピーは同じアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記複合体は、ライブラリーの他のポリペプチドを含まない。
別の特定の実施形態において、本発明の第2の態様のポリペプチド-核酸複合体は、複合体に含まれるライブラリーのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする1つの核酸のみを含む。前記ポリペプチドおよび前記ポリペプチド配列は、上記の実施形態で特定されたものである。
特定の実施形態において、本発明の第2の態様の複合体は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個のコピーの、複合体に含まれるライブラリーのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸を含む。前記ポリペプチドおよび前記ポリペプチド配列は、上記の実施形態で特定されたものである。特定の実施形態において、前記核酸は同じヌクレオチド配列を有する。
間接的な連結は、ポリペプチドおよび核酸の両方を含む微生物による、ライブラリーのポリペプチドと核酸との間の遺伝子融合からなる。ライブラリーのポリペプチドは、微生物の外表面に含まれている。核酸は、好ましくは微生物の内部に含まれる。
特定の実施形態において、微生物は、その外表面に、ライブラリーの1つのポリペプチドのみを含む。特定の実施形態において、微生物は、その外表面に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1×103個のコピーのライブラリーのポリペプチドを含む。特定の実施形態において、前記コピーは同じアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記微生物は、ライブラリーの他のポリペプチドを含まない。
別の特定の実施形態において、微生物は、微生物に含まれるライブラリーのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする1つの核酸のみを含む。前記ポリペプチドおよび前記ポリペプチド配列は、上記の実施形態で特定されたものである。
別の特定の実施形態において、微生物は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個のコピーの、微生物に含まれるライブラリーのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸を含む。前記ポリペプチドおよび前記ポリペプチド配列は、上記の実施形態で特定されたものである。特定の実施形態において、前記核酸は同じヌクレオチド配列を有する。
特定の実施形態において、微生物は複製することができる。特定の実施形態において、複製された微生物は、それが由来する微生物の正確なコピーである。別の特定の実施形態において、前記微生物の複製は、それが由来する微生物に含まれるライブラリーの同じポリペプチドおよびそれをコードする同じ核酸を有する微生物をもたらす。したがって、当業者に理解されるように、微生物の複製は、ライブラリーのポリペプチドの増幅、およびそれをコードする核酸の増幅を可能にする。
特定の実施形態において、微生物は、ファージ、バクテリオファージ、ウイルス、細菌および酵母からなる群から選択される。好ましい実施形態において、微生物はファージである。別の好ましい実施形態において、微生物はバクテリオファージである。
特定の実施形態において、バクテリオファージは、エンテロバクテリアファージM13、T4バクテリオファージ、T7バクテリオファージまたはエシェリヒアλウイルスからなる群から選択される。
特定の実施形態において、本発明の第1の態様で説明されているすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様に等しく適用可能である。
III-ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または本発明の第2の態様によるポリペプチドディスプレイライブラリーのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
ポリヌクレオチドという用語は、本発明の第2の態様で定義されている。
特定の実施形態において、上述した本発明の態様のいずれかにおいて説明されているすべての用語および実施形態は、本発明の第3の態様に等しく適用可能である。
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドまたはDNA分子を操作または細胞に導入することができる媒体を指す。ベクターは、直鎖状または環状のポリヌクレオチドであってもよく、またはより大きなポリヌクレオチド、またはウイルスゲノムのDNAもしくはRNA、ビリオン、およびDNAの操作またはその細胞への導入を可能にする他の生物学的構築物等の他の任意のタイプの構築物であってもよい。「組換えベクター」、「組換えシステム」という用語は、ベクターという用語と交換可能に用いられることが理解される。ベクターは、増殖に適し、ポリヌクレオチドまたは適切な遺伝子構築物または本発明のポリヌクレオチドを生成するのに適した異なる異種生物における発現ベクターを得るのに適したクローニングベクターであり得ることから、当業者は、用いることができるベクターのタイプに関して制限がないことを理解するであろう。したがって、本発明による適切なベクターには、pET(pET14b等)、pUC18、pUC19、Bluescriptおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、CoIE1、pCR1、RP4、ファージ、ならびにpSA3およびpAT28等のシャトルベクター等の原核生物における発現ベクター、2ミクロンプラスミドのタイプのベクター、組み込みプラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミド等の酵母における発現ベクター、pACシリーズベクターおよびpVLシリーズベクター等の昆虫細胞における発現ベクター、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズのベクター等の植物における発現ベクター、ならびにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルスに関連するウイルス、レトロウイルスに関連するウイルス、レンチウイルスに関連するウイルス)およびpSilencer 4.1-CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAX1、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV-10、pBPV-1、pML2dおよびpTDT1等の非ウイルスベクターをベースと高等真核細胞における発現ベクターが包含される。
本発明のベクターを用いて、該ベクターによって形質転換、トランスフェクトまたは感染され得る細胞を形質転換、トランスフェクトまたは感染させることができる。前記細胞は、原核生物または真核生物であり得る。例えば、DNA配列が導入されるベクターは、宿主細胞に導入された場合に該細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体(または複数の染色体)と共に複製するプラスミドまたはベクターであり得る。ベクターは、当業者に公知の従来の方法により得ることができる(Sambrook et al., 2001, “Molecular cloning, to Laboratory Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. Vol 1-3 a)。
したがって、第5の態様において、本発明は、本発明の第3の態様によるポリヌクレオチドまたは本発明の第4の態様によるベクターを含む宿主細胞に関する。
形質転換、トランスフェクトまたは感染した細胞は、当業者に公知の従来の方法により得ることができる(上記のSambrook et al., 2001)。特定の実施形態において、宿主細胞は、適切なベクターでトランスフェクトまたは感染された動物細胞である。
本発明の第3の態様のポリヌクレオチド、または本発明の第4の態様のベクターを含むのに適した宿主細胞としては、限定されないが、哺乳動物、植物、昆虫、真菌および細菌の細胞が挙げられる。細菌細胞としては、限定されないが、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、リステリア属(Listeria)およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus)の種等のグラム陽性細菌細胞、ならびにエシェリヒア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)およびシュードモナス属(Pseudomonas)の細胞等のグラム陰性細菌細胞が挙げられる。真菌細胞としては、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)等の酵母の細胞が挙げられる。昆虫細胞としては、限定されないが、ショウジョウバエ(Drosophila)およびSf9の細胞が挙げられる。植物細胞としては、とりわけ、穀物、薬用植物、観賞用植物または球根状植物等の作物植物の細胞が挙げられる。本発明における適切な哺乳動物細胞としては、上皮細胞株(ヒト、ヒツジ、ブタ等)、骨肉腫細胞株(ヒト等)、神経芽細胞腫細胞株(ヒト等)、上皮癌(ヒト等)、グリア細胞(マウス等)、肝細胞株(サル等)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911、AT1080、A549、293またはPER.C6、NTERA-2ヒトECC細胞、mESC株のD3細胞、HS293細胞、BGV01細胞、SHEF1細胞、SHEF2細胞、HS181細胞、NIH3T3細胞、293T細胞、REH細胞、MCF-7細胞およびhMSC細胞等のヒト胚性幹細胞が挙げられる。
特定の実施形態において、本発明の第1および第2の態様において説明されているすべての用語および実施形態は、本発明の第3の態様に等しく適用可能である。別の実施形態において、本発明の第1、第2および第3の態様において説明されているすべての用語および実施形態は、本発明の第4の態様に等しく適用可能である。別の特定の実施形態において、本発明の第1、第2、第3および第4の態様のすべての用語および実施形態は、本発明の第5の態様に等しく適用可能である。
IV-本発明の複合体
さらなる態様において、本発明は、
(i)ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体を含むポリペプチド、および
(ii)目的の剤
を含む複合体に関する。
複合体の一部を形成し、ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体を含む(上記のポイント(i)で特定される)ポリペプチドは、「本発明の第6の態様の複合体のポリペプチド」、「本発明の複合体のポリペプチド」または「複合体のポリペプチド」とも呼ばれる。
本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドに含まれるニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体は、「複合体の第1のポリペプチド」、「複合体の第1のポリペプチド領域」、「第1のポリペプチド領域」または「複合体のポリペプチドに含まれる第1のポリペプチド領域」とも呼ばれる。
「複合体」という用語は、本発明の第2の態様で定義されている。本発明の第6の態様の複合体と共有結合している2つの構成要素は、複合体のポリペプチドおよび目的の剤である。以下、本発明の第6の態様の複合体は、「本発明の複合体」とも呼ばれる。
「ポリペプチド」という用語は、本発明の第1の態様で定義されている。「アミノ酸残基」という用語について本発明の第1の態様に示されている定義および実施形態は、本発明の本態様にも適用される。
本明細書で用いられる「目的の剤」という表現は、複合体のポリペプチドと共有結合することができるという条件で、化学構造の制限のない任意の化合物を指す。特定の実施形態において、前記剤は治療薬である。別の特定の実施形態において、前記剤は造影剤である。「治療薬」および「造影剤」という用語は、以下のセクションIV-E.1およびIV-E.2で定義される。
IV.A-複合体の第1のポリペプチド
本発明の複合体は、ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体を含むポリペプチドを含む。
本明細書で用いられる「ニドゲン-1」という用語は、ニドゲンG2ドメインの変異体に関する上記の文脈で定義されており、本発明の複合体に等しく適用される。
本明細書で用いられる「ニドゲン-1のG2ドメイン」という用語は、上記で定義されたニドゲン1タンパク質のG2ドメインを指す。野生型ニドゲン-1配列においては、G2ドメインは短いEGF様ドメインに並んで配置されている。しかしながら、本発明の目的のために、ニドゲン-1のG2ドメインは、Uniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)の識別番号P14543-1(配列番号62)であるニドゲン-1タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸番号430~667によって形成され、N末端またはC末端においてEGF様ドメインを欠いている。別の実施形態において、ニドゲン1のG2ドメインは、配列番号62(配列番号63)の最初の2つのアミノ酸を欠いており、したがって、Uniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)の識別番号P14543-1(配列番号72)であるニドゲン-1タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸番号432~667からなる領域に対応する。
本明細書で用いられる「機能的に同等の変異体」という表現は、ニドゲン-1のG2ドメインの配列、好ましくは配列番号63の配列、より好ましくは配列番号62の配列とある程度の配列同一性を示し、かつニドゲン-1のG2ドメインの機能が実質的に維持されているすべてのペプチドを指す。本発明の第6の態様の複合体において維持されるG2ドメインの機能は、好ましくはそれが複合体の一部ではない場合、ドメインの三次構造であると考えられる。したがって、G2ドメインの機能的に同等の変異体は、好ましくはそれが複合体の一部ではない場合、ニドゲン-1のG2ドメインの三次構造が実質的に維持されている。当業者により理解されるように、維持されるG2ドメインの三次構造は、好ましくはニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインの三次構造である。前記構造は、本発明の第1の態様で定義されている。
本明細書で用いられる「実質的に維持されている」という表現は、ニドゲン-1のG2ドメインの構造、好ましくはニドゲン-1のG2のβバレルドメインの構造が、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、好ましくは95%、より好ましくは99%、より一層好ましくは100%維持されると理解される。
パーセンテージで表される場合、タンパク質ドメインの三次構造の維持は、ドメインの三次構造内のドメインの残りのアミノ酸に対して相対的な位置を維持するドメインに対するアミノ酸のパーセンテージとして理解される。タンパク質の原子座標を決定することを可能にするタンパク質の三次構造を決定する方法は、当業者によく知られており、円偏光二色性分析法、X線結晶構造解析法およびタンパク質NMR法が挙げられる。
特定の実施形態において、G2ドメインの機能的に同等の変異体は、それが本発明の第6の態様の複合体に組み込まれると、上記のニドゲン-1のG2ドメインの構造のパーセンテージが実質的に維持される。好ましい実施形態において、G2ドメインの機能的に同等の変異体が複合体の一部でない場合、ニドゲン-1のG2ドメインの構造のパーセンテージが実質的に維持される。好ましい実施形態において、実質的に維持されるG2ドメインの構造は、本発明の第1の態様において説明されているニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインの構造である。特定の実施形態において、実質的に維持されるG2ドメインが複合体の第1のポリペプチドである場合、実質的に維持されるG2ドメインはニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインの構造である。
特定の実施形態において、配列番号62を有するニドゲン1のG2ドメインと機能的に同等の変異体との間の配列同一性の程度は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%である。別の特定の実施形態において、配列番号63を有するニドゲン1のG2ドメインと機能的に同等の変異体との間の配列同一性の程度は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%である。2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度を決定する方法は、本発明の第1の態様において提供されている。
複合体に組み込まれると、複合体の第1のポリペプチド領域は、ニドゲンG2ドメインの細胞機能または生理学的機能を維持する必要はない。したがって、特定の実施形態において、第1のポリペプチド領域は、本発明の融合タンパク質に組み込まれると生理学的機能が低下するニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体である。別の実施形態において、第1のポリペプチド領域は、ニドゲン-1のG2の生理学的機能または複合体の外側のニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインの生理学的機能を有さないニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体である。好ましい実施形態において、第1のポリペプチド領域は、ニドゲン-1の野生型G2ドメインと比較して、またはニドゲン-1のG2ドメインの野生型βバレルドメインと比較して、本発明の複合体に組み込まれる前に、生理学的機能が低下しているニドゲンG2ドメインの機能的に同等の変異体である。より好ましくは、第1のポリペプチド領域は、不活性化突然変異の存在に起因して、本発明の複合体に組み込まれる前に、ニドゲン-1のG2ドメイン、またはニドゲン-1のG2ドメインの野生型βバレルドメインのいずれの生理学的機能も有さないタンパク質である。
本明細書で用いられる「生理学的機能」または「細胞機能」という表現は、細胞または生物内のペプチドの機能を指す。したがって、ニドゲン-1のG2ドメインの生理学的機能、またはニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインの生理学的機能に言及する場合、上記表現は、ニドゲン-1タンパク質の一部である場合の前記ドメインの機能として理解される。したがって、上記表現は、ニドゲン-1タンパク質が細胞に関与する生化学的経路または分子メカニズムにおけるドメインの役割を指す。したがって、上記表現は、細胞、細胞の外側、または別の細胞の外表面の特定のペプチドまたはタンパク質と相互作用するドメインの能力に直接関係している。したがって、特定の実施形態において、上記表現は、通常のタンパク質結合パートナーと相互作用する、G2ドメイン、またはG2ドメインのβバレルドメインの能力を指す。そのような結合パートナーの非限定的な例としては、コラーゲンIVおよびペルレカン(perlecan)が挙げられる。したがって、特定の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドは、ニドゲン-1のG2ドメインまたはニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインと、ニドゲン-1のG2ドメインまたはニドゲン-1のG2ドメインのβバレルドメインの通常の結合パートナーとの相互作用、好ましくはコラーゲンIVおよび/またはペルレカンとの相互作用を阻害する突然変異を含む、ニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。
本発明の別の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドは、不活性であるニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。特定の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドは、複合体に組み込まれると不活性である。別の特定の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドは、複合体に組み込まれる前にすでに不活性である。
本明細書で用いられる「不活性」という用語は、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメントまたはドメインを指す場合、生理学的活性または生物学的活性を有さない、または生物学的機能のための他の高分子と特異的に相互作用する能力を有さないポリペプチド、タンパク質、フラグメントもしくはドメイン、および公知の治療活性(例えば、抗腫瘍活性)を欠くタンパク質のフラグメントまたはドメインとして理解される。複合体の不活性ポリペプチド部分は非反応性であり、目的の剤との結合のための物理的構造として機能する。不活性ポリペプチドは、それ自体が固有の酵素的、生理学的または生物学的な活性を有するモチーフを含まず、免疫反応性を示さず、すなわち適応免疫応答も自然免疫応答も刺激しないことが意図される。
一般に、複合体の第1のポリペプチドの固有の活性は、本発明の目的には無関係であり、目的の剤の生物学的活性に寄与したり、妨害したりしないことが意図される。
特定の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドは、本発明の第1の態様に記載されるポリペプチドのいずれかとして、ニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。したがって、特定の実施形態において、複合体のポリペプチドは、本発明の第1の態様に記載されているポリペプチドのいずれかと同様に、ニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。
別の特定の実施形態において、第1のポリペプチド領域は、Uniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列のアミノ酸430~667に対応する配列、すなわち配列番号62を有する。別の特定の実施形態において、第1のポリペプチド領域は、Uniprotデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列のアミノ酸432~667に対応する配列、すなわち配列番号63を有する。
別の特定の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドは、UniProtデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列の番号付けにおける459位、468位、639位、650位、543位、545位、449位、525位、561位、618位、619位、151位、604位、638位、641位、469位および518位の1つ以上のアミノ酸残基の突然変異を含むニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。したがって、別の特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドは、UniProtデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列の番号付けにおける459位、468位、639位、650位、543位、545位、449位、525位、561位、618位、619位、151位、604位、638位、641位、469位および518位の1つ以上のアミノ酸残基の突然変異を含むニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。
本明細書で用いられる「突然変異」という用語は、アミノ酸配列中のアミノ酸の任意の改変もしくは欠失、またはアミノ酸配列中のアミノ酸の前または後における少なくとも1つのアミノ酸の挿入を指す。当業者に理解されるように、アミノ酸の改変または欠失の位置は、前記突然変異前のアミノ酸配列中の改変または欠失されたアミノ酸の位置によって言及される。特定の実施形態において、突然変異が挿入である場合、該突然変異の位置は、挿入されたアミノ酸のN末端のアミノ酸を参照することによって定義される。別の特定の実施形態において、突然変異が挿入である場合、該突然変異の位置は、挿入されたアミノ酸のC末端のアミノ酸を参照することによって定義される。したがって、当業者に理解されるように、上記で示されたタンパク質配列の459位、468位、639位、650位、543位、545位、449位、525位、561位、618位、619位、151位、604位、638位、641位、469位および518位における1つ以上のアミノ酸残基の突然変異は、UniProtデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1のアミノ酸配列における前記位置のアミノ酸の改変または欠失を指す。特定の実施形態において、それは1つ以上の前記アミノ酸のC末端における少なくとも1つのアミノ酸の挿入を指す。別の特定の実施形態において、それは1つ以上の前記アミノ酸のN末端における少なくとも1つのアミノ酸の挿入を指す。
好ましい実施形態において、突然変異はアミノ酸改変である。特定の実施形態において、上記で示される459位における突然変異は、H459A突然変異である。別の好ましい実施形態において、上記で示される468位における突然変異は、R468N突然変異である。別の好ましい実施形態において、上記で示される639位における突然変異は、F639S突然変異である。別の特定の実施形態において、上記で示される650位における突然変異は、R650A突然変異である。
したがって、特定の実施形態において、複合体の第1のポリペプチドにおける上記で示される459位、468位、639位または650位における1つ以上の突然変異は、H459A突然変異、R468N突然変異、F639S突然変異またはR650A突然変異である。別の特定の実施形態において、複合体のポリペプチドにおける上記で示される459位、468位、639位または650位における1つ以上の突然変異は、H459A突然変異、R468N突然変異、F639S突然変異またはR650A突然変異である。
複合体の第1のポリペプチド領域に含めることができる適切なニドゲンG2ドメインの変異体としては、限定されないが、それぞれ配列番号64、65および87~104として定義されるNIDOmut2、NIDOmut3、NIDOmut3-V45T、NIDOmut3_V121Q、NIDOmut3-F157E、NIDOmut3-V215T、NIDOmut4、NIDOmut4_T215V、NIDOmut5、NIDOmut3-V176T、NIDOmut3-I200T、NIDOmut3-V236Y、NIDOmut3-L237T、NIDOmut3-S65I、NIDOmut3-R114I、NIDOmut3-C214S、NIDOmut3-S65I_R114I、NIDOmut5-S65I_R114I、NIDOmut3-S65I_R114IおよびNIDOmut5-S65I_R114Iを担持する変異体を含む、本発明の第1の態様の文脈において上記で定義されたいずれかのニドゲンG2ドメイン変異体が挙げられる。
IV-B.複合体の第2のポリペプチド領域
本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドは、任意に、目的の標的と特異的に結合することができる第2のポリペプチド領域を含む。
目的の標的と特異的に結合することができる第2のポリペプチド領域は、「複合体の第2のポリペプチド」、「複合体の第2のポリペプチド領域」、「第2のポリペプチド領域」または「複合体のポリペプチドに含まれる第2のポリペプチド領域」とも呼ばれる。
「特異的に結合する」という表現は、本発明の第2の態様において定義されている。特定の実施形態において、複合体の第2のポリペプチドは、それが10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満、10-15M未満の解離定数(KD)で標的と結合する場合、目的の標的と特異的に結合すると見なされる。ポリペプチドが標的分子と結合することができるかどうかを決定する方法、および前記結合の解離定数を決定する方法は、本発明の第2の態様の「特異的結合」の定義において提供される。
特定の実施形態において、本発明の複合体における第2のポリペプチド領域は、細胞受容体のリガンドである。「細胞受容体」または「細胞表面の受容体」という用語は、「リガンド」と結合する細胞関連タンパク質を意味する。細胞受容体および特定の受容体の特異的リガンドである目的の剤の非限定的な例、またはそれらが結合する細胞タイプは、以下の表2に示されるものである。
特定の実施形態において、複合体の第2のポリペプチドは、表2に示されるリガンドの群から選択される。
特定の実施形態において、目的の標的は、細胞の表面における受容体であり、複合体の第2のポリペプチドは、細胞における複合体の内在化を促進することができる。複合体の第2のポリペプチドに言及する場合、「細胞における複合体の内在化を促進する」という表現は、ポリペプチドの結合に応答してエンドサイトーシスを受ける細胞表面の受容体に結合するポリペプチドを指す。この結合特異性は、複合体の第2のポリペプチド、およびそれを含む複合体の残りの部分を、受容体を発現する細胞、組織または器官に送達することを可能にする。このようにして、ポリペプチド領域を含む複合体は、動物に投与される時、またはin vitroで異なるタイプの細胞の集団と接触される時に、特に前記細胞に向けられる。
本明細書で用いられる場合、「内在化」とは、分子または分子を含む構築物が細胞膜の外面上の標的要素に結合し、結果として生じる複合体が細胞によって内在化されるプロセスを指す。得られた複合体は、内在化の後に細胞質内で解離されてもよい。次いで、標的要素は、分子または構築物とともに、特定の細胞区画に局在化され得る。好ましくは、本発明の複合体の第2のポリペプチドは、内在化の促進に加えて、複合体のエンドソーム脱出を促進する。
本明細書で用いられる「エンドソーム脱出を促進する」という表現は、受容体媒介エンドサイトーシスによる内在化後にエンドソーム区画からの複合体の放出を誘導する、複合体の第2のポリペプチドの能力を指す。
複合体の第2のポリペプチドが結合する受容体を発現する細胞によって内在化される本発明の複合体の能力は、複合体のポリペプチドがGFP等の蛍光タンパク質を含む場合、蛍光法によって便利に決定され得る。このような融合タンパク質は、複合体のポリペプチドをコードする核酸と蛍光タンパク質とがインフレームで融合され、適切な宿主細胞または生物で発現される組換え核酸を調製することによって得ることができる。次いで、融合タンパク質を、上述した受容体を発現する細胞の培養物と接触させるか、またはin vivoで受容体を発現する組織と適切な時間接触させ、その後に蛍光顕微鏡を用いて、構築物が細胞に透過したかどうかを決定することができる。細胞質における蛍光の存在は、蛍光タンパク質から得られた蛍光顕微鏡画像と既知の細胞質染色で得られたものとを比較することによってさらに調査することができる。
より多くの受容体特異的リガンドを有する、多種多様な取り込み受容体および担体が当技術分野で知られている。
第2のポリペプチドによって標的とされ得る受容体の非限定的な例は、上記で提供される。
特定の実施形態において、複合体の第2のポリペプチドは、ポリカチオン性ペプチドである。本明細書で用いられる「ポリカチオン性ペプチド」または「ポリカチオン性領域」という用語は、正に帯電した複数のアミノ酸を含むポリペプチド配列に対応する。ポリカチオン性ペプチドは、正に帯電したアミノ酸にのみによって形成されてもよく、またはpH7において領域全体の正味電荷が正であるという条件で他のアミノ酸を含んでもよい。
アミノ酸およびそれらの対応するアミノ酸残基は、それらの側鎖に応じて異なる特性を有し、それらは特性に応じてグループ化され得ることが当技術分野でよく知られている。したがって、生理的pHにおいては、5つのアミノ酸が電荷を示し;アルギニン、ヒスチジンおよびリジンは正に帯電し、アスパラギン酸およびグルタミン酸は負に帯電する。当業者は、本発明のポリカチオン性ペプチドが、生理的pH条件において2つ以上の正電荷の正味電荷を有するポリペプチドに対応することを理解するであろう。したがって、本発明のポリカチオン性ペプチドは、2つ以上の正味の正電荷をもたらすのに十分な正に帯電したアミノ酸残基が常に存在する限り、1つ以上の負に帯電したアミノ酸残基の存在を制限するものではない。
したがって、本発明の一つの実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドは、
(i)細胞表面の受容体と特異的に相互作用して該細胞への複合体の内在化を促進することができる配列、
(ii)アルギニンに富む配列、
(iii)GW-H1ペプチド、
(iv)CD44リガンド、
(v)血液脳関門を通過できるペプチド、
(vi)細胞透過性ペプチド、および
(vii)ヌクレオリン結合ペプチド
からなる群から選択される。
(i)細胞表面の受容体と特異的に結合して該細胞への複合体の内在化を促進することができる配列
本明細書で用いられる「細胞表面の受容体と特異的に結合して該細胞への複合体の内在化を促進することができる配列」という用語は、目的の標的と特異的に結合することができるポリペプチドをコードする任意の配列を指し、上記で定義されるように、前記標的は細胞の表面上の受容体であり、上記で定義されるように、前記配列によってコードされるポリペプチドは前記細胞への複合体の内在化を促進する。
複合体の第2のポリペプチドについて上記で提供された実施形態は、前記ポリカチオン性ペプチドにも適用される。
本発明のポリカチオン性ペプチド、好ましくは上記の細胞表面の受容体に特異的に結合することができる配列によって標的化され得る受容体の非限定的な例としては、上記で提供されるいずれかの細胞受容体が挙げられる。特定の実施形態において、受容体は、CXCR4受容体、アンギオテンシン受容体、ボンベシン受容体、ブラジキニン受容体、カルシトニン受容体、ケモカイン受容体、コレシストキニン受容体、コルチコトロピン放出因子受容体、エンドセリン受容体、エフリン受容体、ホルミルペプチド受容体、フリズルド受容体、ガラニン受容体、成長ホルモン分泌促進物質受容体(グレリン)受容体、キスペプチン受容体、メラノコルチン受容体、ニューロペプチドFF/ニューロペプチドAF受容体、ニューロペプチドS受容体、ニューロペプチドW/ニューロペプチドB受容体、ニューロペプチドY受容体、ニューロテンシン受容体、オレキシン受容体、ペプチドP518受容体、ソマトスタチン受容体、タキキニン受容体、トール様受容体、バソプレシンおよびオキシトシン受容体ならびにVEGF受容体からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施形態において、細胞表面の受容体に特異的に結合し、該細胞への複合体の内在化を促進することができる配列を含むポリカチオン性ペプチドは、CXCR4リガンドである。
本明細書で用いられる「CXCR4」という用語は、Gタンパク質共役型の7回膜貫通型ケモカイン受容体を指す。他のケモカイン受容体と同様に、CXCR4は、白血球の方向性のある移動および活性化を仲介することにより、免疫応答および炎症反応において重要な役割を果たす。CXCR4は、胸部、前立腺、卵巣、結腸、結腸直腸、膵臓、腎臓および脳を含む様々な癌細胞および組織、ならびに非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病において発現または過剰発現する。CXCR4に対する唯一の既知のリガンドは、間質細胞由来因子-1(SDF-1またはCXCL12)である。CXCR4とSDF-1との間の相互作用は、腫瘍の成長、浸潤、血管新生および転移を含む腫瘍形成の複数の段階で重要な役割を果たす。
「特異的に結合する」という表現は、本発明の第2の態様において定義されている。当業者に理解されるように、本明細書で用いられる「CXCR4に特異的に結合する」という表現は、他の分子と実質的に結合することなく、他の受容体または細胞と比較してより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性をもって、CXCR4またはCXCR4を発現する細胞と結合する本発明の複合体の能力を指す。
結合親和性は、例えば、本発明の第2の態様における「特異的に結合する」の定義において提供される方法のいずれかによって、好ましくは、Tamamura et al.によって記載される方法、オイルクッション法[Hesselgesset et al, 1998, J.Immunol., 160:877-883を参照のこと]によって測定される。前記方法は、ペプチドとCXCR4でトランスフェクトされた細胞株(例えば、CHO細胞)および標識されたCXCR4リガンド(例えば、125I-SDF-1α)とを接触させ、標識されたCXCR4リガンドの結合に対する標的ペプチドの阻害パーセンテージを測定することを含む。
特異的な結合は、例えば、CXCR4がリガンドに対する複数の結合部位を有し、低親和性を有するリガンドが標的化に有用であり得る場合、例えば、少なくとも約10-4MのKdを有する低親和性標的化剤によって示すことができる。特異的結合はまた、高親和性リガンド、例えば、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10MのKdを有するリガンドによって示され得るか、または少なくとも約10-11Mまたは10-12M以上のKdを有し得る。低親和性および高親和性の標的化リガンドはいずれも本発明の複合体への組み込みに有用である。
CXCR4を発現する細胞によって内在化される本発明の複合体の能力は、複合体が任意の細胞受容体に結合する複合体の任意の第2のポリペプチドについて上記で示されるように、複合体がGFP等の蛍光タンパク質を含む蛍光法により決定され得る。より具体的には、CXCR4を発現する細胞によって内在化される複合体は、ポリカチオン性ペプチドをコードする核酸と蛍光タンパク質をコードする核酸とがインフレームで融合され、適切な宿主細胞または生物において発現される組換え核酸を調製することによって得ることができる。次いで、融合タンパク質を、CXCR4を発現する細胞の培養物と接触させるか、またはin vivoでCXCR4を発現する組織と適切な時間接触させ、その後に蛍光顕微鏡を用いて、構築物が細胞に透過したかどうかを決定することができる。細胞質における蛍光の存在は、蛍光タンパク質から得られた蛍光顕微鏡画像と既知の細胞質染色で得られたものとを比較することによってさらに調査することができる。
本発明のより一層好ましい実施形態において、CXCR4リガンドは、RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)、V1ペプチド(配列番号26)、CXCL12ペプチド(配列番号27)、vCCL2ペプチド(配列番号28)、EPI-X4配列(配列番号29)、または配列番号132のペプチド等のそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される。
配列RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)は、T22ペプチドのアミノ酸配列である。前記ペプチドは、タンパク質ポリフェムシンII(アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)からの血球破片から抽出された)に由来するペプチドに対応する。vCCL2は、ヒトヘルペスウイルス8によってコードされるヒトケモカインCCL2のホモログであるウイルスマクロファージ炎症性タンパク質-IIに対応する。V1ペプチドは、vCCL2のN末端の残基1~21に対応する。間質細胞由来因子1(SDF1)としても知られるCXCL12、CXCモチーフケモカイン12は、炎症誘発性メディエーターとして機能するケモカインファミリーのメンバーである。Liang, X. 2008. Chem. Biol. Drug. Des. 72:91-110に示されるように、4つのペプチドすべてがCXCR4受容体と相互作用することが知られている。
EPI-X4は、ヒト血清アルブミン(HSA)の残基408~423に対応する。また、CXCR4受容体に結合することも説明されている(Zirafi et al., 2015, Cell reports, 11:1-11)。1つの実施形態において、より高い受容体親和性および血清安定性を有する最適化されたEPI-X4タンデムバージョン(配列番号132)が用いられる。
一つの実施形態において、ポリカチオン性ペプチドは、
-配列RRX1CYRKX2PYRX3CR(配列番号41)を有し、X1がL-3-(2-ナフチル)アラニン、X2がD-LysおよびX3がL-シトルリンである、T140ペプチド、
-配列RRX1CYX2KX3PYRX4CR(配列番号42)を有し、X1がL-3-(2-ナフチル)アラニン、X2がL-シトルリン、X3がdLysおよびX4がL-シトルリンである、TN14003ペプチド、
-配列RRX1CYEKX2PYRX3CR(配列番号43)を有し、X1がL-3-(2-ナフチル)アラニン、X2がD-シトルリンおよびX3がL-シトルリンである、TC14012ペプチド、
-配列RRX1CYX2KX3PYRX4CR(配列番号44)を有し、X1がL-3-(2-ナフチル)アラニン、X2がL-シトルリン、X3がD-GluおよびX4がL-シトルリンである、TE14011ペプチド、および
-配列RRX1CYX2KX3PYRX4CR(配列番号45)を有し、X1がL-3-(2-ナフチル)アラニン、X2がL-シトルリン、X3がD-LysおよびX4がL-シトルリンまたはその変異体であり、N末端のアルギニン残基がアセチル化されている、TZ14011ペプチド(Ac-TZ14011として知られている)
からなる群から選択されるものである。
「機能的変異体」および「機能的に同等の変異体」という用語は交換可能であり、本明細書では、CXCR4に結合し、複合体を内在化する機能が実質的に維持されているという条件で、1つ以上のアミノ酸の改変、挿入および/または欠失によってT22、V1、CXCL12、vCCL2および/またはEPI-X4ペプチドに由来するすべてのペプチドとして理解される。
一つの実施形態において、カチオン性ポリペプチドの機能的に同等の変異体は、ヒトT22、V1、CXCL12、vCCL2および/またはEPI-X4ペプチドに関してある程度の同一性を示すものであり、それぞれの配列番号に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を示すものである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度を決定する方法は、本発明の第1の態様において提供される。本発明のカチオン性ポリペプチドは、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、ミリストイル化、タンパク質分解プロセシング等の翻訳後修飾を含み得る。
あるいは、カチオン性ポリペプチドの適切な機能的変異体は、1つ以上の位置において、上記のT22、V1、CXCL12、vCCL2および/またはEPI-X4ペプチドに存在するアミノ酸の保存的置換であるアミノ酸を含むものである。「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸を類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸に置換することによるものである。例えば、以下の6つのグループはそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。そのような保存的アミノ酸置換の選択は、当業者の技能の範囲内であり、例えば、Dordo et al. et al. [J. Mol. Biol, 1999, 217;721-739]およびTaylor et al. [J. Theor. Biol., 1986, 119:205-218]に記載されている。
所与のペプチドがその機能的に同等の変異体と見なすことができるかどうかを決定するための適切なアッセイは、例えば、以下のアッセイである:推定上のT22、V1、CXCL12、vCCL2またはEPI-X4ペプチドの変異体をインフレームでマーカーポリペプチド(例えば、蛍光タンパク質)と融合する。このような融合タンパク質は、ペプチドをコードする核酸と蛍光タンパク質をコードする核酸とがインフレームで融合され、適切な宿主細胞または生物において発現される組換え核酸を調製することによって得ることができる。次いで、融合タンパク質を、細胞CXCR4(例えば、HeLa細胞)の培養物と適切な時間接触させ、その後に蛍光顕微鏡を用いて、構築物が細胞に透過したかどうかを決定することができる。ペプチドが対応するペプチドの機能的に同等の変異体である場合、マーカータンパク質は内在化され、細胞の細胞質における蛍光の存在が見えるようになる。さらに、機能的に同等の変異体の性能は、蛍光タンパク質から得られた蛍光顕微鏡画像と既知の細胞質染色(例えば、DAPI)で得られた画像とを比較することによって分析することができる。
(ii)アルギニンに富む配列
上述したように、アルギニンアミノ酸およびその残基は、生理的pHで正電荷を示す。「アルギニンに富む配列」は、複数のアルギニン残基を含むポリペプチド配列を指すことが理解されよう。したがって、ポリペプチド配列は、その完全配列のアミノ酸残基の33%、好ましくは40%、好ましくは45%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは65%、好ましくは70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より一層好ましくは99%、さらにより一層好ましくは100%をアルギニン残基として含み得る。アルギニンに富む配列の配列が、配列の100%未満をアルギニン残基として含むときはいつでも、これらの残基は、互いにすべてが隣接(adjacent)または近接(contiguous)している必要はないことが理解されよう。
当業者は、1つ以上のアルギニン残基を有するポリペプチドは、アルギニン残基の正電荷からだけでなく、正に帯電した他のアミノ酸の正電荷からの結果として、生理的pHにおけるポリペプチドの総正電荷が2以上である限り、ポリカチオン性ペプチドであることを認識するであろう。
本発明の実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドは、アルギニンに富む配列である。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドのアルギニンに富む配列は、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される。
(iii)GW-H1ペプチド
GW-H1ペプチドは、これまでにChenらによって説明されている[Chen, Y-L.S. et al. 2012. Peptides, 36:257-265]。GW-H1ペプチドはまず抗菌ペプチドとして選択されたが、細胞膜に結合し、細胞質に内在化し、真核細胞の核に移動する能力によっても特徴付けられる。細胞内に入ると、GW-H1はアポトーシスを誘導することができる。GW-H1は、両親媒性ヘリックスに折りたたまれることによってその細胞溶解活性を発揮することが提案されている[前出のChenら]。したがって、このペプチドは、細胞膜への結合とそれに続く透過からなる2つの連続したイベントによってその細胞溶解効果を発揮すると考えられている。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドは、配列番号46を有するGW-H1ペプチドである。
(iv)CD44リガンド
CD44は、細胞-細胞相互作用および細胞-マトリックス相互作用、細胞の接着および遊走に関与する細胞表面膜貫通糖タンパク質である。CD44は、炎症や、癌等の疾患に関与している[Bajorath, J. 2000. Proteins. 39:103-111]。多くのアイソフォームが知られており、それらは細胞特異的に発現され、また特異的にグリコシル化されている。
したがって、「CD44リガンド」は、CD44に結合することができる分子である。CD44は、細胞外マトリックスの構成要素であるヒアルロン酸の主要な表面受容体である、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチンのヘパリン結合ドメイン、オステオポンチン、セルグリシン、コラーゲン、ラミニン等の他のリガンドを有している。さらに、CD44はメタロプロテイナーゼおよびセレクチンとも相互作用することができる。
本発明の実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドは、CD44リガンドである。本発明の好ましい実施形態において、CD44リガンドは、A5G27(配列番号34)およびFNI/II/V(配列番号35)からなる群から選択される。
ペプチドFNI/II/Vは、フィブロネクチンのHBFNフラグメントVに対応する。ペプチドA5G27は、ラミニンのα5鎖のペプチドに対応する[Pesarrodona, M. et al. 2014. Int. J. of Pharmaceutics. 473:286-295]。
(v)血液脳関門を通過することができるペプチド
脳の病状の治療的アプローチの開発に対する1つの主要な障害が血液脳関門(BBB)であることは、当技術分野においてよく知られている。脳は、2つのバリアシステム:血液脳関門(BBB)および血液脳脊髄液関門(BCSFB)の存在によって、潜在的に有毒な物質から保護されている。BBBは、その表面積がBCSFBの表面積の約5000倍であることから、血清リガンドの取り込みの主要な経路であると考えられている。BBBを構成する脳内皮は、CNSの多くの障害に対する潜在的な薬物の使用に対する主要な障害を示す。原則として、小さな親油性分子のみがBBBを通過、すなわち循環している全身の血液から脳に移動することができる。より大きなサイズまたはより高い疎水性を有する多くの薬物は、CNS障害を治療するための動物研究において有望な結果を示している。
したがって、「血液脳関門を通過することができるペプチド」は、それ自体、およびそれが結合する任意の分子、好ましくはタンパク質を、血液の流れから中枢神経系に輸送することができるペプチドである。
ペプチド、β-カソモルフィン-5がBBBを克服できることが、1983年に報告された[Ermisch, A. et al. 1983. J. of Neurochemistry. 41:1229-1233]。それ以来、BBB透過特性を有する他の多くのペプチドが特定され、特性評価され、カタログ化され、Van Dorpe et al.によって報告されたように、2012年に包括的なデータベースが確立された[Van Dorpe, S. et al. 2012. Brain Struct. Funct. 217:687-718]。上述したデータベースにリストされているペプチドのほとんどは、本発明の複合体に適している。
本発明の実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドは、血液脳関門を通過することができるペプチドである。本発明の好ましい実施形態において、血液脳関門を通過することができるペプチドは、Seq-1-7(配列番号36)、Seq-1-8(配列番号37)およびAngiopep-2-7(配列番号38)からなる群から選択される。
(vi)細胞透過性ペプチド(CPP)
「細胞透過性ペプチド」(CPP)という用語は、分子カーゴ、特にそれらが含まれるタンパク質の細胞取り込みを促進することができる、典型的には長さが約5~60アミノ酸残基のペプチドを指す。タンパク質は1つ以上のCPPを示し得る。CPPはまた、脂質二重層、細胞膜、細胞小器官膜、小胞膜または細胞壁の1つ以上を横切る/通過する分子カーゴの移動または横断を容易にすることができると特徴付けることができる。本明細書において、CPPはポリカチオン性である。
本明細書で有用なCPPの例、および一般的なCPPのさらなる説明は、Schmidt et al.[2010. FEBS Lett. 584:1806-18l3]、Holm et al.[2006. Nature Protocols 1:1001-1005]、Yandek et al.[2007. Biophys. J. 92:2434-2444]、Morris et al.[2001. Nat. Biotechnol. 19:1173-1176]および米国特許出願公開第2014/0068797号において説明されている。CPPはトランスポーターや受容体に依存せず、他の細胞成分の関与を必要とすることなく、CPPを含むタンパク質の脂質二重層を直接通過する輸送を促進する。
(vii)ヌクレオリン結合ペプチド
したがって、「ヌクレオリン結合ペプチド」は、細胞内のヌクレオリンタンパク質、好ましくはヌクレオリンの細胞表面発現画分に結合することができるペプチドである。
本発明の実施形態において、本発明のポリカチオン性ペプチドは、ヌクレオリン結合ペプチドである。
WO2011/031477A2の国際特許出願公開は、本発明の複合体における使用に適したヌクレオリン結合ペプチドの例を多数提供している。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のヌクレオリン結合ペプチドは、配列番号47の配列のペプチドまたは配列番号48の配列のペプチドである。
IV-C.複合体の第3のポリペプチド領域
特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドは、正に帯電したアミノ酸に富む領域である第3のポリペプチド領域をさらに含む。
正に帯電したアミノ酸に富む領域であり、複合体のポリペプチドに含まれる第3のポリペプチド領域は、「複合体の第3のポリペプチド」、「複合体の第3のポリペプチド領域」、「第3のポリペプチド領域」または「複合体のポリペプチドに含まれる第3のポリペプチド領域」とも呼ばれる。当業者に理解されるように、「複合体の第3のポリペプチド」、「複合体の第3のポリペプチド領域」または「複合体のポリペプチドに含まれる第3のポリペプチド領域」という表現は、「正に帯電したアミノ酸に富む領域」と交換可能である。
本明細書で用いられる「正に帯電したアミノ酸」、「正に帯電したアミノ酸に富む領域」または「正に帯電したアミノ酸に富む領域である第3のポリペプチド領域」という用語は、複数の正に帯電したアミノ酸を含むことを特徴とする、複合体の第2のポリペプチド領域とは異なる、複合体の第3のポリペプチドのポリペプチド配列を指す。また、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、正に帯電したアミノ酸のみによって形成されてもよく、またはpH7において領域全体の正味電荷が正であるという条件で他のアミノ酸を含んでもよい。したがって、正に帯電したアミノ酸に富む領域配列は、その完全配列のアミノ酸残基の33%、好ましくは40%、好ましくは45%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは65%、好ましくは70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より一層好ましくは99%、さらにより一層好ましくは100%を正に帯電したアミノ酸残基として含み得る。
正に帯電したアミノ酸に富む領域は、1つのタイプの正に帯電したアミノ酸のみを含んでもよく、または複数のタイプの正に帯電したアミノ酸を含んでもよい。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリヒスチジン領域である。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリアルギニン領域である。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリヒスチジン領域である。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、リジンおよびアルギニン残基を含む。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、リジンおよびヒスチジン残基を含む。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、アルギニンおよびヒスチジン残基を含む。一つの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、リジン、アルギニンおよびヒスチジン残基を含む。
いくつかの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または少なくとも15個の正に帯電したアミノ酸残基を含み、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジン、リジン、アルギニンまたはそれらの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、100個未満、90個未満、80個未満、70個未満、60個未満、50個未満、40個未満、30個未満、29個未満、28個未満、27個未満、26個未満、25個未満、24個未満、23個未満、22個未満、21個未満、20個未満、19個未満、18個未満、17個未満、16個未満、15個未満、14個未満、13個未満、12個未満、11個未満、10個未満またはさらに少ない正に帯電したアミノ酸残基を含み、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジン、リジン、アルギニンまたはそれらの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、2~50個のアミノ酸、2~40個のアミノ酸、2~30個のアミノ酸、2~25個のアミノ酸、2~20個のアミノ酸、2~10個のアミノ酸または2~8個のアミノ酸を含む。
いくつかの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、3~50個のアミノ酸、3~40個のアミノ酸、3~30個のアミノ酸、3~25個のアミノ酸、3~20個のアミノ酸、3~10個のアミノ酸または3~8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、4~50個のアミノ酸、4~40個のアミノ酸、4~30個のアミノ酸、4~25個のアミノ酸、4~20個のアミノ酸、4~10個のアミノ酸または4~8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、5~50個のアミノ酸、5~40個のアミノ酸、5~30個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、5~20個のアミノ酸、5~5個のアミノ酸、5~10個のアミノ酸または5~8個のアミノ酸を含む。
本発明の実施形態において、本発明の複合体の正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリヒスチジン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリヒスチジン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するヒスチジン残基を含む。
本発明の実施形態において、本発明の複合体の正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリアルギニン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリアルギニン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するアルギニン残基を含む。
本発明の実施形態において、本発明の融合タンパク質の正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリリジン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリリジン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するポリリジン残基を含む。
特定の実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、RKRKRK(配列番号77)、RRRRRR(配列番号78)、KKKKKK(配列番号79)、HHHHHH(配列番号80)、RHRHRH(配列番号81)、RKRKRKRK(配列番号82)、RKRHRK(配列番号83)、RKRHRH(配列番号84)、RHRHRH(配列番号85)またはRKRKRKR(配列番号86)である。
IV-D.複合体のポリペプチドの要素および連結要素の相対位置
本発明の複合体のポリペプチドの異なる要素(複合体の第1、第2および第3のポリペプチド)は、ポリペプチドが好ましくはポリカチオン性ペプチドである第2のポリペプチド、および第3のポリペプチド(または正に帯電したアミノ酸に富む領域)が複合体の任意の位置で機能し、第1のポリペプチドが完全にまたは部分的に機能し続ける(すなわち、ニドゲン-1のG2ドメインの構造が実質的に維持される)限り、任意の相対的位置に配置され得る。
本明細書で用いられる場合、ポリペプチドの「N末端(N-terminal end)」、「N末端(N-terminus)」および「アミノ末端」という用語は区別されない。同様に、「C末端(C-terminal end)」、「C末端(C-terminus)」および「カルボキシ末端」という用語は同等と見なされる。これらの用語は、タンパク質によって構成されるポリペプチド鎖の末端におけるアミノ酸の遊離部分に関し、当業者にとって一般的な使用法である。
したがって、本発明の実施形態において、複合体の第2のポリペプチドが複合体のポリペプチドのN末端に位置し、ポリペプチドの正に帯電したアミノ酸に富む領域(すなわち、複合体の第3のポリペプチド)がポリペプチドのC末端に位置する。本発明の別の実施形態において、複合体のポリペプチドの正に帯電したアミノ酸に富む領域がポリペプチドのN末端に位置し、第2のポリペプチド領域がポリペプチドのC末端に位置する。本発明の別の実施形態において、第1のポリペプチド領域が複合体のポリペプチドのC末端またはN末端のいずれかに位置し、第2のポリペプチドがポリペプチドの中間位置にあり、正に帯電したアミノ酸に富む領域が第1のポリペプチド領域の反対側のポリペプチドの末端にあるか、または正に帯電したアミノ酸に富む領域がポリペプチドの中央位置にあり、第2のポリペプチドが第1のポリペプチド領域の反対側のポリペプチドの末端に位置し得る。
したがって、本発明の複合体のポリペプチドの要素の相対的な順序は:
・N-第2のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-正に帯電したアミノ酸に富む領域-C;
・N-正に帯電したアミノ酸に富む領域-第1のポリペプチド領域-第2のポリペプチド領域-C;
・N-第2のポリペプチド領域-正に帯電したアミノ酸に富む領域-第1のポリペプチド領域-C;
・N-正に帯電したアミノ酸に富む領域-第2のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-C;
・N-第1ポリペプチド領域-第2のポリペプチド領域-正に帯電したアミノ酸に富む領域-C;または
・N-第1のポリペプチド領域-正に帯電したアミノ酸に富む領域-第2のポリペプチド領域-C
であり得る。
特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体のポリペプチド中の要素の順序は、上記に示されたもののいずれかである。
好ましい実施形態において、本発明の第6の態様の複合体のポリペプチド中の要素の順序は、N-第2のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-正に帯電したアミノ酸に富む領域-Cである。
「N末端」および「C末端」という用語は、構成要素が末端から末端まで直接結合する必要があることを意味するものではなく、いずれかの構成要素の末端または構成要素間に挿入されるリンカー/スペーサー等の追加の要素の存在によらず、構成要素が相対的な位置を維持することを意味する。
したがって、本発明の複合体のポリペプチドは、上述した要素((1)第2のポリペプチド領域、(2)第1のポリペプチド領域および(3)正に帯電したアミノ酸に富む領域)を含み、これらは末端間で結合してもよく、それらの間に挿入され、好ましくはペプチド結合によって連結される1つ以上の任意のペプチドまたはポリペプチドである「リンカー」または「スペーサー」を含んでもよい。
本発明によれば、スペーサーまたはリンカーのアミノ酸配列は、構成要素(1)と(2)の間、および構成要素(2)と(3)との間のヒンジ領域として作用し、ペプチドのスペーサーまたはリンカーの存在によって構成要素(1)、(2)および(3)のいずれの機能も変化させない。この意味で、本発明の好ましい中間アミノ酸配列は、この動きを可能にする構造的延性によって特徴付けられるヒンジ領域である。特定の実施形態において、中間アミノ酸配列は柔軟なリンカーである。リンカー領域の効果は、構成要素(1)と(2)との間および(2)と(3)との間にスペースを提供することである。したがって、構成要素(1)、(2)または(3)の2次構造および3次構造は、他のいずれかの存在によって影響を受けないことが保証される。スペーサーはポリペプチドの性質のものである。リンカーペプチドは、好ましくは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸または約100個のアミノ酸を含む。
スペーサーまたはリンカーは、共有結合によって、好ましくはペプチド結合によって、本発明の複合体のポリペプチドの2つの構成要素に隣接する構成要素に結合することができ;また、好ましくはスペーサーは本質的に機能的であり、かつ/またはタンパク質分解性切断を受ける傾向がなく、かつ/またはシステイン残基を含まない。同様に、スペーサーの三次元構造は、好ましくは直鎖状または実質的に直鎖状である。
スペーサーまたはリンカーペプチドの好ましい例としては、結合ペプチドの機能を実質的に低下させることなく、または少なくとも結合ペプチドの1つの機能を実質的に低下させることなくタンパク質を結合するために用いられるものが挙げられる。より好ましくは、ペプチドを結合するために用いられるスペーサーまたはリンカーは、コイルドコイル構造を含む。
リンカーペプチドの好ましい例は、グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンからなる群から選択される2つ以上のアミノ酸を含む。柔軟なリンカーの好ましい例は、ポリグリシンリンカーである。リンカー/スペーサー配列として考えられる例としては、GGSSRSS(配列番号39)、GGSSRSSS(配列番号76)、SGGTSGSTSGTGST(配列番号49)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号50)またはGGSGGAP(配列番号51)が挙げられる。これらの配列は、設計されたコイルドコイルと他のタンパク質ドメインとを結合するために用いられる[Muller, K.M., Arndt, K.M. and Alber, T., Meth. Enzymology, 2000, 328: 261-281]。適切なリンカーのさらなる非限定的な例は、アミノ酸配列GGGVEGGG(配列番号52)、コイルドコイルによる二量体化抗体の生成に用いられるマウスIgG3の上部ヒンジ領域の10アミノ酸残基の配列(PKPSTPPGSS、配列番号53)[Pack, P. and Pluckthun, A., 1992, Biochemistry 31:1579-1584]、配列APAETKAEPMT(配列番号54)のペプチド、配列GAPのペプチド、配列AAAのペプチドおよび配列AAALE(配列番号55)のペプチドを含む。別の好ましい実施形態において、リンカーはGGSSRSS(配列番号39)である。
あるいは、本発明の複合体のポリペプチドの構成要素は、その配列がプロテアーゼの切断標的を含み、任意の成分の分離を可能にするペプチドによって接続され得る。本発明の複合体のポリペプチドへの組み込みに適したプロテアーゼ切断部位としては、エンテロキナーゼ(切断部位DDDDK、配列番号56)、第Xa因子(切断部位IEDGR、配列番号57)、トロンビン(切断部位LVPRGS、配列番号58)、TEVプロテアーゼ(切断部位ENLYFQG、配列番号59)、PreScissionプロテアーゼ(切断部位LEVLFQGP、配列番号60)、インテイン等が挙げられる。
好ましい実施形態において、N末端位置のポリペプチドは、リンカー、好ましくは上記のリンカーの例のいずれかから選択されるリンカーによって、複合体のポリペプチドの中間位置のポリペプチドと接続する。別の好ましい実施形態において、中間位置のポリペプチドは、リンカー、好ましくは上記のリンカーの例のいずれかから選択されるリンカーによって、複合体のポリペプチドのC末端位置のポリペプチドと接続する。したがって、本発明の一つの実施形態において、第2のポリペプチドは、リンカーを介して第1のポリペプチド領域と接続される。本発明の別の実施形態において、第1のポリペプチド領域は、リンカーを介して正に帯電したアミノ酸に富む領域と接続される。本発明のさらに別の実施形態において、第2のポリペプチドは、リンカーを介して第1のポリペプチド領域と接続され、第1のポリペプチド領域もまた、リンカーを介して正に帯電したアミノ酸に富む領域と結合される。
したがって、特定の実施形態において、第2のポリペプチド領域は、第1のペプチドリンカーを介して第1のポリペプチド領域と接続され、かつ/または第1のポリペプチド領域は、第2のペプチドリンカーを介して第3のポリペプチド領域と接続される。特定の実施形態において、第1のペプチドリンカーは、GGSSRSS配列(配列番号39)、GGSSRSSS(配列番号76)またはGGGNS配列(配列番号40)を含む。好ましい実施形態において、第1のペプチドリンカーは、GGSSRSS配列(配列番号39)を含む。別の好ましい実施形態において、第1のペプチドリンカーは、GGSSRSS(配列番号39)を含む。
当業者に理解されるように、第2のポリペプチドと第1のポリペプチド領域とを接続するリンカーと、第1のポリペプチド領域と正に帯電したアミノ酸に富む領域とを接続するリンカーとは、リンカーの存在および/または配列が第2のポリペプチド、第1のポリペプチド領域および/または正に帯電したアミノ酸に富む領域の機能的変化(限定されないが、例えば、複合体のポリペプチドの二次もしくは三次構造の改変、またはジスルフィド結合の形成に起因するもの)をもたらさないという上述した制限内において、同じ配列または異なる配列を含み得る。
複合体のポリペプチドの要素のN末端からC末端までの相対位置に関する上述の留意事項は、それらの数またはどの要素が間に配置されているかに関係なく、それらの間にリンカーが存在する場合にも当てはまる。したがって、要素の可能な組み合わせおよび相対的な順序は以下の通りである(要素についての上記の番号付けは保持される:(1)第2のポリペプチド、(2)第1のポリペプチド、(3)正に帯電したアミノ酸に富む領域):
・N-(1)-(2)-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-(3)-C
・N-(1)-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(3)-(2)-(1)-C
・N-(3)-リンカー-(2)-(1)-C
・N-(3)-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(3)-リンカー-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-(1)-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-(3)-C
・N-(2)-(1)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-(3)-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-(1)-C
・N-(2)-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(1)-(3)-(2)-C
・N-(1)-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-(1)-(2)-C
・N-(3)-リンカー-(1)-(2)-C
・N-(3)-(1)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-リンカー-(1)-リンカー-(2)-C。
本発明の好ましい実施形態において、本発明の複合体のポリペプチドのリンカーは、配列GGSSRSS(配列番号39)または配列GGGNS(配列番号40)を含む。
好ましい実施形態において、N末端位置のポリペプチドは、プロテアーゼ切断部位を介して、好ましくは上記で提供されるプロテアーゼ切断部位の例のいずれかから選択されるプロテアーゼ切断部位を介して、複合体のポリペプチドの中間位置のポリペプチドと接続する。別の好ましい実施形態において、中間位置のポリペプチドは、プロテアーゼ切断部位を介して、好ましくは上記で提供される切断部位の例のいずれかからのプロテアーゼ切断部位を介して、複合体のC末端位置のポリペプチドと接続する。
別の実施形態において、第2のポリペプチドは、プロテアーゼ切断部位を介して第1のポリペプチド領域と接続される。本発明の別の実施形態において、第1のポリペプチド領域は、プロテアーゼ切断部位を介して正に帯電したアミノ酸に富む領域と接続される。本発明のさらに別の実施形態において、第2のポリペプチドは、プロテアーゼ切断部位を介して第1のポリペプチド領域と接続され、第1のポリペプチド領域もまた、プロテアーゼ切断部位を介して正に帯電したアミノ酸に富む領域と結合される。
当業者に理解されるように、第2のポリペプチドと第1のポリペプチド領域とを接続するプロテアーゼ切断部位と、第1のポリペプチド領域と正に帯電したアミノ酸に富む領域とを接続するプロテアーゼ切断部位とは、プロテアーゼ切断部位の存在および/または配列によって第2のポリペプチド、第1のポリペプチド領域および/または正に帯電したアミノ酸に富む領域の機能的変化(限定されないが、例えば、複合体のポリペプチドの二次もしくは三次構造の改変、またはジスルフィド結合の形成に起因するもの)をもたらさないという上述した制限内において、同じ配列または異なる配列を含み得る。
複合体のポリペプチドの要素のN末端からC末端までの相対位置に関する上述の留意事項は、それらの数またはどの要素が間に配置されているかに関係なく、それらの間にプロテアーゼ切断部位が存在する場合にも当てはまる。したがって、要素の可能な組み合わせおよび相対的な順序は以下の通りである(要素についての上記の番号付けは保持される:(1)第2のポリペプチド、(2)第1のポリペプチド、(3)正に帯電したアミノ酸に富む領域):
・N-(1)-(2)-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-(3)-C
・N-(1)-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-(2)-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-(1)-C
・N-(3)-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-(1)-(3)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-(3)-C
・N-(2)-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(2)-(3)-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-(1)-C
・N-(2)-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(1)-(3)-(2)-C
・N-(1)-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(3)-(1)-(2)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-(2)-C
・N-(3)-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C。
特定の実施形態において、複合体は、複合体の2つのポリペプチドを接続するリンカー、および複合体の他の2つのポリペプチドを接続するプロテアーゼ切断部位を含む。この場合、複合体の要素のN末端からC末端までの相対位置に関する上述の留意事項は、リンカーおよびそれらの間のプロテアーゼ切断部位の存在下でも、それらの数またはどの要素が間に配置されているかに関係なく適用される。したがって、要素の可能な組み合わせおよび相対的な順序は以下の通りである(要素についての上記の番号付けは保持される:(1)第2のポリペプチド、(2)第1のポリペプチド、(3)正に帯電したアミノ酸に富む領域):
・N-(1)-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-リンカー-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-リンカー-(2)-C。
好ましい実施形態において、複合体のポリペプチドにおける要素の組み合わせおよび相対的順な序は、N-(1)-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-Cである。したがって、好ましい実施形態において、第2のポリペプチドは、リンカーを介して第1のポリペプチド領域に接続され、第1のポリペプチドは、プロテアーゼ切断部位を介して第3のポリペプチド領域に接続される。
別の好ましい実施形態において、リンカーは、配列GGSSRSS(配列番号39)、GGSSRSSS(配列番号76)または配列GGGNS(配列番号40)、好ましくは配列GGSSRSS(配列番号39)を含む。
好ましい実施形態において。本発明の第6の態様の複合体は、以下の要素を含むポリペプチドを含む:
別の特定の実施形態において、正に帯電したアミノ酸、好ましくはアルギニンまたはリジン、より好ましくはリジンが、第6の態様の複合体の第1のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間に含まれる。
別の好ましい実施形態において、本発明の複合体の一部を形成するポリペプチドは、配列番号61のアミノ酸配列を含むか、実質的に含むかまたはそれからなり、任意にアミノ末端にメチオニンを含む。
いくつかの実施形態において、本発明の複合体の一部を形成するポリペプチドは、配列番号61または106~124のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に含むかまたはそれからなり、任意にアミノ末端にメチオニンを含む、
特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体の目的の剤は、治療薬または造影剤である。
IV-E.目的の剤
特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体の目的の剤は、治療薬または造影剤である。
IV-E.1 治療薬
本明細書で用いられる「治療薬」という用語は、化学構造の制限なしに、状態、障害または疾患の治療(therapy)および/または処置(treatment)に適した任意の化合物を指す。
治療薬の性質は、それが複合体中で活性を維持するか、または細胞の内部に送達された場合に活性化され得るものであれば、本発明を特に限定するものではない。したがって、細胞の内部に送達された場合に治療薬が活性を示すか、または複合体化されていない治療薬の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%またはそれ未満の活性を示すという条件で、任意の治療薬を複合体に用いることができる。あるいは、本発明の目的は、治療薬の選択性を高め、そのオフターゲット効果を低減することによって治療薬の作用を促進することであるため、複合体のポリペプチドに結合された治療薬の効果は相乗的であり得、特定の治療薬についてすでに知られているパラメータ化された値を超え得ると考えられる。したがって、本発明の複合体のポリペプチドに結合された治療薬のいくつかの実施形態はまた、治療薬単独の場合の機能の少なくとも101%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、500%、少なくとも1000%またはそれ以上を示すことが意図される。
本発明の実施形態において、本発明の複合体のポリペプチドに結合された治療薬は、
(i)化学療法剤、
(ii)細胞毒性ポリペプチド、
(iii)抗血管新生ポリペプチド、
(iv)腫瘍抑制遺伝子によってコードされるポリペプチド、
(v)アポトーシス促進性ポリペプチド、
(vi)抗転移活性を有するポリペプチド、
(vii)腫瘍に対する免疫応答を活性化することができるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、
(viii)抗血管新生分子、および
(ix)毒素
からなる群から選択される。
特定の実施形態において、複合体のポリペプチドは複数の治療薬と結合され、該複数の治療薬は同じであるかまたは異なる。
(i)化学療法剤
特定の実施形態において、治療薬は化学療法剤である。
「化学療法剤」という用語は、抗癌剤を指すことが理解されよう。
本明細書で用いられる場合、抗癌剤は、例え短期であっても、癌に関連する症状の全部または一部を阻害することを含む、癌の発生または進行を少なくとも部分的に阻害する薬剤である。
いくつかの抗癌剤はDNA損傷剤として分類することができ、それらとしては、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、ランプトテシン、トポテカン、テニポシド、ミトキサントロン)、DNAアルキル化剤(例えば、シスプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、コランブシル、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、カルボプラチン、ダカルバジン、プロカルバジン)、DNA鎖切断誘導剤(例えば、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトマイシンC)、抗微小管剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン)、抗代謝剤(例えば、シタラビン、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、フルダラビン、ペントスタチン、クロロデオキシアデノシン)、アントラサイクリン、ビンカアルカロイドおよびエピポドフィロトキシンが挙げられる。
抗癌剤のさらなる例としては、限定されないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バティマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビザントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ボルテゾミブ(VELCADE);ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベタイマー;カルボプラチン(プラチナ含有レジメン);カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン(プラチナ含有レジメン);クラドリビン;クリスナトールメシル酸塩;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;ジアジクオン;ドセタキセル(TAXOTERE);ドキソルビシン;ドロロキシフェン;ドロモスタノロン;ドゥアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン;エルブロゾール;エルロチニブ(TARCEVA)、エソルビシン;エストラムスチン;エタニダゾール;エトポシド;エトプリン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビン;5-フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシン;ゲフィチニブ(IRESSA)、ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;イダルビシン;イフォスファミド;イルモフォシン;イマチニブメシル酸塩(GLEEVAC);インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-nl;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン;ランレオチド;レナリドマイド(REVLLM1D、REVIMID);レトロゾール;リュープロリド;リアロゾール;ロメトレキソール;ロムスチン;ロソキサントロン;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン;メゲストロール;メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトプリン;メトウレデパ;ミチンドマイド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスパー;マイトタン;ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペメトレキセド(ALIMTA)、ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペントモン;ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピリトレキシム;イセチオネート;ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマー;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン;ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;シトグルシド;スパルフォセート;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;タリソマイシン;タムスロシン;タキソール;タキソテール;テコガラン;テガフール;テロキサントロン;テモポルフィン;テモゾロミド(TEMODAR);テニポシド;テロキシロン;テストトラクトン;サリドマイド(THALOMID)およびその誘導体;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トポテカン;トレミフェン;トレストロン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール;ウラシル;マスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビンデシン;ビンエピジン;ビングリシネート;ビンロイロシン;ビノレルビン;ビンロシジン;ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシンが挙げられる。
一つの実施形態において、抗癌剤は、数単位の抗癌分子を含むオリゴマーとして提供される。一つの実施形態において、抗癌剤は、いくつかのフロクスウリジン分子を含むフロクスウリジンのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。フロクスウリジンのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個またはそれ以上のフロクスウリジン分子を含む。好ましい実施形態において、フロクスウリジンのポリヌクレオチドは、フロクスウリジンのペンタヌクレオチド、すなわち5個のフロクスウリジン分子を含むオリゴヌクレオチドである。
抗癌剤は、限定されないが、チロシンキナーゼ阻害剤、CDK阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤またはEGFR阻害剤を含む酵素阻害剤であってもよい。チロシンキナーゼ阻害剤は、限定されないが、ゲニステイン(4’,5,7-トリヒドロキシイソフラボン)、チルホスチン25(3,4,5-トリヒドロキシフェニル),メチレン]-プロパンジニトリル、ヘルビマイシンA、ダイゼイン(4’,7-ジヒドロキシイソフラボン)、AG-126、トランス-1-(3’-カルボキシ-4’-ヒドロキシフェニル)-2-(2’’,5’’-ジヒドロキシフェニル)エタンまたはHDBA(2-ヒドロキシ5-(2,5-ジヒドロキシベンジルアミノ)-2-ヒドロキシ安息香酸であり得る。CDK阻害剤は、限定されないが、p21、p27、p57、pl5、pl6、pl8またはpl9であり得る。MAPキナーゼ阻害剤は、KY12420(C23H24O8)、CNI-1493、PD98059または4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾールであり得る。EGFR阻害剤は、限定されないが、エルロチニブ(TARCEVA)、ゲフィチニブ(IRESSA)、WHI-P97(キナゾリン誘導体)、LFM-A12(レフルノミド代謝物類似体)、ABX-EGF、ラパチニブ、カネルチニブ、ZD-6474(ZACTIMA)、AEE788およびAG1458であり得る。
抗癌剤は、限定されないが、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS)、ペガプタニブ(MACUGEN)、ソラフェニブ、スニチニブ(SUTENT)、バタラニブ、ZD-6474(ZACTIMA)、アネコルタブ(RETAANE)、スクアラミン乳酸塩およびセマホリンを含むVEGF阻害剤であり得る。抗癌剤は、限定されないが、ベバシズマブ(AVASTIN)、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、アレムツズマブ(CAMPATH、B細胞慢性リンパ性白血病に適応)、ゲムツズマブ(MYLOTARG、hP67.6、抗CD33、急性骨髄性白血病等の白血病に適応)、リツキシマブ(RITUXAN)、トシツモマブ(BEXXAR、抗CD20、B細胞悪性腫瘍に適応)、MDX-210(HER-2/neu腫瘍遺伝子タンパク質産物および免疫グロブリンG(IgG)のI型Fc受容体(FcγRI)に同時に結合する二重特異性抗体)、オレゴボマブ(OVAREX、卵巣癌に適応)、エドレコロマブ(PANOREX)、ダクリズマブ(ZENAPAX)、パリビズマブ(SYNAGIS、RSV感染等の呼吸器疾患に適応)、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン、非ホジキンリンパ腫に適応)、セツキシマブ(ERBITUX)、MDX-447、MDX-22、MDX-220(抗TAG-72)、I0R-C5、10R-T6(抗CD1)、IOR EGF/R3、セロゴバブ(ONCOSCINT OV 103)、エプラツズマブ(LYMPHOCIDE)、ペムツモマブ(THERAGYN)およびグリオマブ-H(脳腫瘍、黒色腫に適応)を含む抗体または抗体フラグメントであり得る。
本発明の特定の実施形態において、血管新生阻害剤として作用するタンパク質は、腫瘍を標的とすることが意図されている。これらの薬物としては、上記の抗血管新生ポリペプチドに加えて、マリマスタット;AG3340;COL-3、BMS-275291、サリドマイド、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、2-メトキシエストラジオール、カルボキシアミドトリアゾール、CMlOl、ペントサンポリサルフェート、アンジオポエチン2(レジェネロン)、ヘルビマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノミド、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニスタイン、TNP470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板第4因子またはミノサイクリンが挙げられる。
他の適切な活性剤は、DNA切断剤である。方法の実施に用いられる複合体に細胞毒素として含めるのに適したDNA切断剤の例としては、限定されないが、アントラキノン-オリゴピロール-カルボキサミド、ベンズイミダゾール、レイナマイシン;ダイネマイシンA;エンジイン;および生物学的に活性なそれらの類似体または誘導体(すなわち、実質的に同等の生物学的活性を有するもの)が挙げられる。例えば、Islam et al., J. Med. Chem. 34 2954-61, 1991;Skibo et al., J. Med. Chem. 37:78-92, 1994;Behroozi et al., Biochemistry 35:1568-74, 1996;Helissey et al., Anticancer Drug Res. 11:527-51, 1996;Unno et al., Chem. Pharm. Bull. 45:125-33, 1997;Unno et al., Bioorg. Med. Chem., 5:903-19, 1997;Unno et al., Bioorg. Med. Chem., 5: 883-901, 1997;およびXu et al., Biochemistry 37:1890-7, 1998)に既知の類似体および誘導体が開示されている.他の例としては、限定されないが、エンジインキノンイミン(米国特許第5,622,958号);2,2r-ビス(2-アミノエチル)-4-4’-ビチアゾール[Lee et al., Biochem. Mol. Biol. Int. 40:151-7, 1996];エピリチシン-サレン.銅複合体[Routier et al., Bioconjug. Chem., 8: 789-92, 1997]が挙げられる。
上述した化学療法剤のいくつかは、代謝拮抗剤として共通のカテゴリーにまとめることができる。本明細書で用いられる「代謝拮抗剤」は、正常な代謝の一部である代謝物の利用を阻害する化合物を指す。代謝拮抗剤は、葉酸の利用を妨げる葉酸拮抗剤のように、それらが干渉する代謝物と構造が類似していることがよくある。代謝拮抗剤の非限定的な例としては、以下の化合物が挙げられる:ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルムスチン、カルボプラチン、クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、プロカルバジン、SN-38、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン。
特定の実施形態において、抗癌剤は代謝拮抗剤である。別の特定の実施形態において、代謝拮抗剤は、ピリミジン類似体またはそのオリゴマー形態である。別の特定の実施形態において、ピリミジン類似体は、フロクスウリジンまたはその五量体形態である。
本明細書で用いられる「ピリミジン類似体」という用語は、ピリミジンの構造を模倣するヌクレオシド類似体代謝拮抗剤を指す。ピリミジン類似体は核酸合成を阻害する。それらの抗増殖効果は、DNAへの取り込みによって達成され、鎖の終結とDNA合成の阻害を引き起こす。それらはまた、DNAポリメラーゼおよびリボヌクレオチドレダクターゼ等の核酸合成に関与する酵素を阻害し得る。ピリミジン類似体の非限定的な例としては、アザシチジン、6-アザウラシル、シタラビン、デシタビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、カペシタビン、テガフールウラシルが挙げられる。
本明細書で用いられる「フロクスウリジン」という用語は、代謝拮抗剤として分類される抗癌剤を指し、これはデオキシウリジンとして分類されるピリミジン類似体である。この抗癌剤のIUPAC名は、5-フルオロ-1-[4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]-1H-ピリミジン-2,4-ジオンである。
本明細書で用いられる「そのオリゴマー形態」という表現は、特定の数の単位に限定されないポリマーとは対照的に、いくつかの繰り返し単位によって形成される分子を指し、各単位はモノマーと呼ばれる。一般に、オリゴマー中のモノマーの数は5~100個である。したがって、本明細書において、ピリミジン類似体のオリゴマー形態は、いくつかのピリミジン類似体の配列によって形成される分子を指す。特定の実施形態において、ピリミジン類似体のオリゴマー形態またはポリマー形態は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個またはそれ以上のピリミジン類似体の配列を含む分子を指す。別の特定の実施形態において、それは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個またはそれ以上のピリミジン類似体の配列からなる分子を指す。
特定の実施形態において、ピリミジン類似体のオリゴマー形態またはポリマー形態は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個またはそれ以上のフロクスウリジンの配列を含む分子である。別の特定の実施形態において、ピリミジン類似体のオリゴマー形態は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個またはそれ以上のフロクスウリジンの配列からなる分子である。
「その五量体形態」という表現は、フロクスウリジン類似体を指す場合、5個のフロクスウリジンの配列を含むか、またはそれからなる分子として理解される。
(ii)細胞毒性ポリペプチド
本明細書で用いられる場合、「細胞毒性ポリペプチド」という用語は、細胞機能を阻害することができる薬物を指す。薬物は増殖を阻害してもよく、細胞に毒性を示してもよい。細胞によって内在化された場合に細胞代謝を阻害または有害に変化させるか、または何らかの方法で細胞の成長または増殖を阻害するポリペプチドは、この用語の範囲内に含まれ、限定されないが、細胞内に輸送された場合その毒性作用が媒介される薬物、およびその毒性作用が細胞表面において媒介される薬物が挙げられる。有用な細胞毒性ポリペプチドとしては、細菌毒素等のタンパク性毒素が挙げられる。
本発明による複合体への組み込みに有用なタンパク性細胞毒素の例としては、限定されないが、1型および2型のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)が挙げられる。有用な1型の植物RIPとしては、限定されないが、ジアンチン30、ジアンチン32、リクニン、サポリン1~9、ヤマゴボウ(pokeweed)活性化タンパク質(PAP)、PAP II、PAP-R、PAP-S、PAP-C、マパルミン、ドデカンドリン、ブリオジン-L、ブリオジン、コリシン1および2、ルフィン-A、ルフィン-B、ルフィン-S、19K-タンパク質合成阻害タンパク質(PSI)、15K-PSI、9K-PSI、α-キリロウィン、β-キリロウィン、ジェロニン、モモルジン、モモルジン-II、モモルジン-Ic、MAP-30、α-モモルカリン、β-モモルカリン、トリコサンチン、TAP-29、トリコキリン;大麦RIP;亜麻RIP、トリチン、トウモロコシRIP、アスパリン1および2が挙げられる[Stirpe et al., 1992. Bio/Technology 10:405-12]。有用な2型のRIPとしては、限定されないが、ボルケンシン、リシン、ニグリン-b、CIP-29、アブリン、モデシン、エブリチン-α、エブリチン-β、エブルチン-γ、ビルクミン、ポレクチン、およびそれらの生物学的に活性な酵素サブユニットが挙げられる[Stirpe et al., 1992. Bio/Technology 10:405-12;Pastan et al., 1992. Annu. Rev. Biochem. 61:331-54;Brinkmann and Pastan, 1994. Biochim. et Biophys. Acta 1198:27-45,;およびSandvig and Van Deurs, 1996. Physiol. Rev. 76:949-66]。
細胞毒素として有用な細菌毒素の例としては、限定されないが、志賀毒素および志賀様毒素(すなわち、同じ活性または構造を有する毒素)、ならびにそれらの触媒サブユニットおよび生物学的に機能的なフラグメントが挙げられる。これらの細菌毒素も2型RIPである[Sandvig and Van Deurs, 1996. Physiol. Rev. 76:949-66;Armstrong, 1995. J. Infect. Dis., 171:1042-5; Kim et al., 1997. Microbiol. Immunol. 41:805-8;およびSkinner et al., 1998. Microb. Pathog. 24:117-22]。有用な細菌毒素のさらなる例としては、限定されないが、シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素が挙げられる[Pastan et al., 1992. Annu. Rev. Biochem. 61:331-54;およびBrinkmann and Pastan, 1994. Biochim. et Biophys. Acta 1198:27-45]。毒素酵素サブユニットの短縮型および変異体も、細胞毒素部分としても用いることができる(Pastan et al., Annu. Rev. Biochem. 61:331-54;Brinkmann and Pastan, Biochim. et Biophys. Acta 1198:27-45, 1994;Mesri et al., J. Biol. Chem. 268:4852-62, 1993;Skinner et al., Microb. Pathog. 24:117-22, 1998;および米国特許第5,082,927号)。他の標的薬剤としては、限定されないが、コリシンA、B、D、E1~9、クロアシンDF13および真菌RNase、α-サルシンを含む34種を超える記載されたRNase毒素のコリシンファミリーが挙げられる[Ogawa et al. 1999. Science 283: 2097-100;Smarda et al., 1998. Folia Microbiol (Praha) 43:563-82;Wool et al., 1992. Trends Biochem. Sci., 17: 266-69]。
(iii)抗血管新生ポリペプチド
腫瘍細胞の増殖は、癌の進行を伴う広範な腫瘍血管新生に大きく依存する。したがって、抗血管新生剤による新しい血管形成の阻害および既存の血管の標的破壊が、腫瘍治療に対する効果的かつ比較的非毒性のアプローチとして導入されてきた。
本明細書で用いられる「抗血管新生ポリペプチド」という用語は、血管新生を阻害することができるポリペプチドを意味する。適切な抗血管新生ポリペプチドとしては、限定されないが、アンギオスタチン、エンドスタチン、抗血管新生抗トロンビンIII、WO2007115376に記載されているsFRP-4、ならびにアニビズマブ、ベバシズマブ(アバスチン)、Fab IMC1121およびF200Fab等の抗VEGF抗体が挙げられる。
(iv)腫瘍抑制遺伝子によってコードされるポリペプチド
本明細書で用いられる場合、「腫瘍抑制因子」は、細胞の無秩序な増殖を抑制するという通常の生物学的役割を有する遺伝子または遺伝子産物である。腫瘍抑制因子の機能的対応物は癌遺伝子であり、正常な細胞増殖を促進する遺伝子は「癌原遺伝子」として知られている。そのような遺伝子または遺伝子産物を活性化する突然変異は、それをさらに「癌遺伝子」に変換し、細胞増殖活性が継続されるが無秩序であり、腫瘍抑制遺伝子および遺伝子産物の例は文献においてよく知られており、PTC、BRCA1、BRCA2、p16、APC、RB、WT1、EXT1、p53、NF1、TSC2、NF2、VHL、ST7、ST14、PTEN、APC、CD95およびSPARCが挙げられる。
(v)アポトーシス促進性ポリペプチド
本明細書で用いられる「アポトーシス促進性ポリペプチド」という用語は、細胞または細胞集団において細胞死を誘導することができるタンパク質を指す。アポトーシスに関与するこれらのタンパク質の過剰発現は、アポトーシスの結果に向けて、抗アポトーシス因子とアポトーシス促進因子との間の微妙なバランスを動かす。適切なアポトーシス促進性ポリペプチドとしては、限定されないが、BAX、BAK、BOK/MTD、BID、BAD、BIK/NBK、BLK、HRK、BIM/BOD、BNIP3、NIX、NOXA、PUMA、BMF、EGL-Iおよびウイルスホモログ、カスパーゼ-8等のカスパーゼ、アデノウイルスE4orf4遺伝子、p53経路遺伝子、TNF、FasL、TRAIL等のアポトーシス促進性リガンド、および/またはTNFR、Fas、TRAIL-R1およびTRAIL-R2等のそれらの受容体等のBCL-2ファミリーのタンパク質のアポトーシス促進性メンバーが挙げられる。
(vi)抗転移活性を有するポリペプチド
本明細書で用いられる「転移抑制剤」という用語は、転移(二次腫瘍)が癌を有する生物の体内に広がるのを遅らせるかまたは防ぐように作用するタンパク質を指す。適切な転移抑制因子としては、限定されないが、BRMS1、CRSP3、DRG1、KAI1、KISS-1、NM23、TIMPファミリータンパク質およびウテログロビン等のタンパク質が挙げられる。
(vii)腫瘍に対する免疫応答を活性化することができるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
本明細書で用いられる場合、免疫刺激性ポリペプチド剤は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、それが投与される対象において免疫応答を活性化または刺激すること(既存の免疫応答を増強することを含む)ができるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドである。免疫刺激性ペプチドの適切な非限定的な例としては、フラゲリン、ムラミルジペプチド、インターロイキンを含むサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-15(またはこれらのサイトカインのスーパーアゴニスト/変異型)、IL-12、IFN-γ、IFN-α、GM-CSF、FLT3-リガンド等)、免疫刺激抗体(例えば、抗CTLA-4、抗CD28、抗CD3、またはこれらの分子の一本鎖/抗体フラグメント)等が挙げられる。
(viii)抗血管新生分子
特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質の介在領域は、腫瘍を標的とする血管新生阻害剤として作用するタンパク質に対応することも意図される。これらの薬剤としては、上記の抗血管新生ポリペプチドに加えて、マリマスタット;AG3340;COL-3、BMS-275291、サリドマイド、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、2-メトキシエストラジオール、カルボキシアミドトリアゾール、CMlOl、ペントサンポリサルフェート、アンジオポエチン2(レジェネロン)、ヘルビマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノミド、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニスタイン、TNP470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板第4因子およびミノサイクリンが挙げられる。また、限定されないが、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS)、ペガプタニブ(MACUGEN)、ソラフェニブ、スニチニブ(SUTENT)、バタラニブ、ZD-6474(ZACTIMA)、アネコルテーブ(RETAANE)、スクアラミン乳酸塩およびセマホリンを含むVEGF阻害剤が挙げられる。
(ix)毒素
本明細書で用いられる場合、「毒素」という用語は、異なる生物から得られる非タンパク性/非ポリペプチド性細胞毒性化合物、ならびにそれらの同じ化合物の化学修飾誘導体および化学合成によって得られる化合物を指す。生物学的起源を有するこのカテゴリーの化合物は、微生物(細菌、古細菌、原生動物または単細胞真菌)または多細胞生物(多細胞真菌、植物、または軟体動物のような動物)から得ることができる。これらの毒素の化学組成および構造は、それらの非ポリペプチド性を超えて決して制限されないことが意図され、したがって、構造に関与するアミノ酸がペプチド結合によって結合されていない限り、それらの基本組成の一部としてであろうとも、化学誘導の結果であろうとも、1つ以上のアミノ酸はそれらの構造の一部であり得る。
本発明に適した毒素の例は、カリケアマイシンγ1、ドラスタチン10、メイタンシノイド(DM1)およびピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD)である。
(x)追加の治療薬
本発明の複合体の特定の実施形態において、治療薬は、以下の表4の第3列に示される治療薬から選択される。
本発明の複合体の特定の実施形態において、第2のポリペプチド領域は、表4に示されるリガンドから選択されるリガンドであり、目的の剤は、表4において前記リガンドと同じ列に示される治療薬から選択される。別の特定の実施形態は、疾患または障害の治療における使用のための、このセクションの既出の実施形態で定義された本発明の複合体を指し、疾患または障害は表4に示されるものから選択される。別の特定の実施形態は、表4において、複合体の第2のポリペプチド領域が示される列に対応するものから選択される疾患または障害の治療における使用のための、このセクションの既出の実施形態で定義された本発明の複合体を指す。
IV-E.2 造影剤
「造影剤」という用語は、本明細書では、生体適合性の化合物を指すために用いられ、その使用は、画像の異なる領域間のコントラストを増加させることによって、画像の異なる部分の区別を容易にする。したがって、「造影剤」という用語は、(例えば、MRIの場合のように)そのような剤がなくても生成され得る画像の品質を高めるために用いられる剤、および(例えば、核イメージングの場合のように)画像を生成するための前処理のための剤を包含する。適切な造影剤としては、限定されないが、放射性核種イメージング、コンピュータ断層撮影、ラマン分光法、磁気共鳴イメージング(MRI)、および光学イメージングのための造影剤が挙げられる。
放射性核種イメージングのための造影剤としては、ヨウ素123、テクネチウム99、インジウム111、レニウム188、レニウム186、銅67、ヨウ素131、イットリウム90、ヨウ素125、アスタチン211、ガリウム67、イリジウム192、コバルト60、ラジウム226、金198、セシウム137およびリン32のイオンが挙げられる。蛍光発生剤の例としては、ガドリニウムおよびレノグラフィンが挙げられる。常磁性イオンの例としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(H)3銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)のイオンが挙げられる。
光学イメージングのための造影剤としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーンの誘導体、エオシン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッドの誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホスクシンイミジルエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、ダポキシル染料が挙げられる。光学イメージングのための造影剤としてはまた、本明細書において、それらが蛍光を示すことを可能にする原子構造を有するタンパク質を指す蛍光タンパク質が挙げられ、これは当技術分野でよく知られている現象である。本発明の複合体に適した一般的に用いられる蛍光タンパク質の非限定的な例は、緑色蛍光タンパク質(GFP、Aequorea victoriaにより最初に発見された)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質、またはその他の変異体であり、これらの例はKremers et al. [Kremers, G-J- et al. 2011. J.Cell Sci. 124:157-160]において見出すことができる。
本発明の複合体に適した蛍光タンパク質のさらなる非限定的な例は、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、強化シアン蛍光タンパク質CFP(ECFP)、強化YFP(EYFP)、GFPS65T、エメラルド、トパーズ(TYFP)、ヴィーナス、シトリン、mシトリン、GFPuv、不安定化EGFP(dEGFP)、不安定化ECFP(dECFP)、不安定化EYFP(dEYFP)、mCFPm、セルリアン、T-サファイア、CyPet、YPet、mKO、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、DsRed-一量体、J-レッド、二量体2、t-二量体(12)、mRFP1、ポシロポリン、レニラGFP、モンスターGFP、paGFP、カエデタンパク質およびキンドリングタンパク質、B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリンおよびアロフィコシアニンを含むフィコビリタンパク質およびフィコビリタンパク質複合体である。別の実施形態において、造影剤は、mHoneydew、mBanana、mOrange、dTomato、tdTomato、mTangerine、mStrawberry、mCherry、mGrapel、mRaspbery、mGrape2、mPlumからなる群から選択される蛍光タンパク質[Shaner et al. (2005) Nat. Methods 2:905-909]等である。
磁気共鳴イメージング装置のための造影剤は、ガドリニウムキレート、マンガンキレート、クロムキレート、19Fおよび鉄粒子である。
MRI造影剤としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)が挙げられる。
IV-E.3 目的の剤と複合体のポリペプチドとの結合
複合体のポリペプチドは、目的の単一の剤または複数の剤と複合体化することができる。複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化される場合、前記剤は同じであってもよく、異なっていてもよい。特定の実施形態において、複数の目的の剤は治療薬であり、上記で定義されたように、それらは同じ治療薬であるかまたは異なる治療薬である。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は造影剤であり、上記で定義されたように、それらは同じ造影剤であるかまたは異なる造影剤である。
以下は、任意の目的の剤、すなわち、上記で定義された治療薬、造影剤、複数の治療薬および複数の造影剤に適用される。したがって、特定の実施形態において、剤に関する以下の実施形態のいずれかは、「剤」という用語を「治療薬」に置換することによって治療薬に適用される。別の特定の実施形態において、剤に関する以下のいずれかの実施形態は、「剤」という用語を「造影剤」で置換することによって造影剤に適用される。別の特定の実施形態において、以下のいずれかの実施形態は、「複数の剤」という表現を「複数の治療薬」に置換することによって複数の治療薬に適用され、前記複数の治療薬は上記で定義した通りである。別の特定の実施形態において、以下のいずれかの実施形態は、「複数の剤」という表現を「複数の造影剤」に置換することによって複数の造影剤に適用され、前記複数の造影剤は上記で定義した通りである。
1つ以上の目的の剤は、複合体のポリペプチドの任意の配列に複合体することができる。
したがって、特定の実施形態において、目的の剤は、第1のポリペプチド領域に複合体化される。特定の実施形態において、目的の剤は、複合体の第2のポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、目的の剤は、複合体の第3のポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、目的の剤は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間の連結領域のいずれかに複合体化される。別の特定の実施形態において、目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体かされる。別の特定の実施形態において、目的の剤は、第1のポリペプチド領域と第2のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、目的の剤は、第1のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。
特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体の同じポリペプチド領域に複合体化される。好ましい実施形態において、複数の目的の剤は、第1のポリペプチド領域に複合体化される。特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体の第2のポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体の第3のポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体のポリペプチドの3つのすべてのポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、ポリペプチドの第1および第2のポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体の第1および第3のポリペプチド領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体の第2および第3のポリペプチド領域に複合体化される。
別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体のポリペプチドの連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第1のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、第1のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、複合体のポリペプチドのプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第1のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、第1のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、ポリペプチドのすべてのプロテアーゼ切断部位に複合体化される。
別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、および複合体のポリペプチドの連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、および第2のポリペプチド領域と第1のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、および第1のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、および第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間の連結領域に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチドのポリペプチド領域のいずれか、およびポリペプチドのすべての連結領域に複合体化される。
別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、および複合体のポリペプチドのプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、および第1のポリペプチド領域と第2のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、ポリペプチドのポリペプチド領域のいずれか、および第1のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、ポリペプチドのポリペプチド領域のいずれか、および第2のポリペプチド領域と第3のポリペプチド領域との間のプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域、およびポリペプチドのすべての切断部位に複合体化される。
別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、ポリペプチドの連結領域、およびポリペプチドのプロテアーゼ切断部位に複合体化される。別の特定の実施形態において、複数の目的の剤は、上記のポリペプチド領域のいずれか、連結領域、および複合体のポリペプチドのプロテアーゼ切断部位に複合体化される。
上述したように、目的の剤は複合体のポリペプチドに複合体化され、そのN末端およびC末端に関してポリペプチド内の複合体化の位置は制限されないことが意図される。したがって、目的の剤は、複合体のポリペプチドにおいてN末端およびC末端に関して等距離の位置に複合体化されてもよく、またはそれらのいずれかに近くてもよい。したがって、目的の剤は、ポリペプチドのN末端またはC末端のアミノ酸残基から500個、450個、400個、350個、325個、300個、275個、250個、236個、230個、220個、210個、200個、190個、180個、170個、160個、100個、90個、80個、75個、70個、65個、60個、55個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、30個、25個、20個、15個、20個、10個、5個またはそれ以下のアミノ酸残基の距離でポリペプチド領域に複合体化されてもよく、またはポリペプチドのN末端またはC末端の同じ残基でポリペプチド領域に複合体化されてもよい。この段落は、ポリペプチドに複合体化された各剤に適用され、複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化される。
目的の剤の結合位置について意図される唯一の制限は、剤およびポリペプチドの要素が機能的であり、剤の結合がいずれの剤、ポリペプチドまたは複合体の活性にも干渉しないことである。
したがって、目的の剤、第2のポリペプチド、第1のポリペプチド領域、および正に帯電したアミノ酸に富む領域について、それらの非複合体化形態に対してそれらの機能性の少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%、より一層好ましくは100%が保存される。これは、複合体のポリペプチドにおける結合の位置に関係なく適用される。この段落は、複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化されるポリペプチドに複合体化された各剤にも適用される。剤は、複合体のポリペプチドの残基に直接結合するか、または連結部分を介して間接的に結合することができると意図される。
したがって、特定の実施形態において、目的の剤は、複合体のポリペプチドに直接結合する。別の特定の実施形態において、目的の剤は、連結部分を介して複合体のポリペプチドに結合する。
複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化される別の特定の実施形態において、それらのすべてはポリペプチドの残基に直接結合する。複数の剤が複合体のポリペプチドに結合する別の特定の実施形態において、それらの一部はポリペプチドの残基に直接結合し、残りは連結部分を介して間接的に結合する。別の特定の実施形態において、すべての剤は連結部分を介して結合する。
「連結部分」または「リンカー」という表現は、本発明の第2の態様ですでに定義されている。
当業者は、連結部が目的の剤と複合体のポリペプチドとの間の結合を媒介する場合には、複合体のポリペプチドの要素および剤の機能性に関して上述した規定が適用されると理解するであろう。したがって、目的の剤が連結部分を介して複合体のポリペプチドに結合する場合には、複合体のポリペプチドにおける結合の位置、連結部分の化学組成または構造、ならびに連結部分と剤との間の結合の化学的性質および連結部分と複合体のポリペプチドとの間の結合の化学的性質に関わらず、目的の剤、第2のポリペプチド領域、第1のポリペプチド領域、および正に帯電したアミノ酸に富む領域について、それらの非複合体化形態に対してそれらの機能性の少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%、より一層好ましくは100%が保存される。これは、複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化される場合、すべての目的の剤に適用される。
本発明の好ましい実施形態において、剤と複合体のポリペプチドとの間の結合を媒介する連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは4-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化される別の特定の実施形態において、剤と複合体のポリペプチドとの結合を媒介するすべての連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは4-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。複数の剤が複合体のポリペプチドに複合体化される別の特定の実施形態において、剤と複合体のポリペプチドへとの結合を媒介する連結部分の一部は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは4-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。
別の好ましい実施形態において、剤と複合体のポリペプチドとの間の結合を媒介する連結部分は、ポリペプチドの側鎖に存在するスルフヒドリル基および目的の剤の活性基と反応することができる部分である。ポリペプチドの側鎖に存在するスルフヒドリル基と反応することができる適切な連結基としては、限定されないが、マレイミド試薬、ハロアセチル、アジリジン、アクリロイル、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、TNB-チオールおよびジスルフィド還元剤が挙げられる。これらの基のほとんどは、アルキル化(通常はチオエーテル結合の形成)またはジスルフィド交換(ジスルフィド結合の形成)のいずれかによってスルフヒドリルに結合する。
いくつかの実施形態において、連結部分は、複合体の一部を形成するポリペプチドと接続される連結部分の一部、および目的の剤と接続される連結部分の一部を接続するスペーサー領域を含む。いくつかの実施形態において、連結部分はスペーサーによって目的の剤と接続され、連結部分は対象のスペーサー剤とポリペプチドとを接続する。一つの実施形態において、連結部分はポリペプチドと接続され、連結部分はスペーサー-ポリペプチドと目的の剤とを接続する。
本明細書で用いられる場合、「スペーサー」という用語は、少なくとも2つの他の部分を互いに接続する部分を指す。いくつかの実施形態において、スペーサーはポリマーである。
本明細書で用いられる場合、「ポリマー」という用語は、直鎖状形、環状、分岐鎖状、架橋もしくは樹状またはそれらの組み合わせで化学結合によって接続された繰り返し構造単位、すなわちモノマーを含む分子を意味し、合成起源もしくは生物学的起源または両方の組み合わせであり得る。モノマーは同一であってもよく、その場合ポリマーはホモポリマーであり、またはモノマーは異なっていてもよく、その場合ポリマーはヘテロポリマーである。ヘテロポリマーは「コポリマー」と呼ばれることもあり、例えば、異なるタイプのモノマーが交互に配置される交互コポリマー、異なるタイプのモノマーが繰り返し配列に配置される周期的コポリマー;異なるタイプのモノマーがランダムに配置される統計コポリマー(statistical copolymer);1つのタイプのモノマーのみからなる異なるホモポリマーのブロックが共有結合によって結合されるブロックコポリマー;および異なるモノマーの組成がポリマー鎖に沿って徐々に変化するグラジエントコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマーは1つ以上の他の部分を含み、特定の実施形態において、他の部分は、C1-50アルキル、C2-50アルケニル、C2-50アルキニル、C3-10シクロアルキル、3~10員のヘテロシクリル、8~11員のヘテロビシクリル、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニルおよびテトラリニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、スペーサーは、PEGベースのスペーサーである。
本明細書で用いられる場合、スペーサーに関する「PEGベース」という用語は、スペーサーがPEGを含むことを意味する。そのようなPEGベースの部分または試薬は、少なくとも20%(w/w)のPEG、少なくとも30%(w/w)のPEG、少なくとも40%(w/w)のPEG、少なくとも50%(w/w)、少なくとも60(w/w)のPEG、少なくとも70%(w/w)のPEG、少なくとも80%(w/w)のPEG、少なくとも90%(w/w)のPEG、または少なくとも95%(w/w)のPEGのような少なくとも10%(w/w)のPEGを含む。PEGベースの部分または試薬の残りの重量%は:C1-50アルキル、C2-50アルケニル、C2-50アルキニル、C3-10シクロアルキル、3~10員のヘテロシクリル、8~11員のヘテロビシクリル、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニルおよびテトラリニル;-CR<、>C<または-N<等の分岐点;および破線が部分または試薬の残りの部分との結合を示し、-Rおよび-Raがそれぞれ独立して-HおよびCi-6アルキルからなる群から選択される結合であって;その部分および結合は任意にさらに置換されている;からなる群から選択されるような他の部分であり得る。
本発明のいくつかの実施形態において、剤と複合体のポリペプチドとを結合する連結部分は、細胞質に存在する酵素によって処理されやすく、融合タンパク質に複合体化された治療薬が細胞に内在化されると該治療薬が融合タンパク質から放出される。
さらに、いくつかの剤は、同じ分子の複数のコピーが一緒に結合され、ポリマーの各モノマーが前記分子の1つであるポリマーを形成するように重合され得る。このようなポリマーの非限定的な例は、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(FdU)であり、これはオリゴ-FdUをもたらす。本発明のいくつかの実施形態は、そのようなポリマーを含み得ることが意図される。また、本発明のいくつかの別の実施形態は、剤が互いの生理学的効果または生物学的効果を妨害しないという条件で、2つ以上の異なる分子の剤のポリマーを含み得ることが意図される。当業者は、目的の剤のポリマーを特徴とする本発明のそれらの実施形態が、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10またはそれ以上の割合で1種以上の異なる目的の剤が2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、15個、30個、40個、50個またはそれ以上の重合された分子を特徴とし得ることを理解するであろう
IV-F.レポータータンパク質
本発明の別の実施形態において、本発明の複合体のポリペプチドは、レポータータンパク質をさらに含む。
当業者は、「レポータータンパク質」という用語を、「レポーター遺伝子」の発現から生じるタンパク質を指すものとして理解するであろう。レポータータンパク質は、組織、細胞または細胞小器官の位置、タンパク質間相互作用、形質膜または細胞内膜を透過する輸送、小胞輸送、リガンド-受容体相互作用等におけるレポーター遺伝子の発現の位置のような複数の目的に適したマーカーとしてよく知られており、当技術分野で一般的に用いられる。
本発明において有用なレポータータンパク質としては、フォティナス・ピラリス(Photinus pyralis)由来のルシフェラーゼ-4-モノオキシゲナーゼ、β-ガラクトシダーゼ、チミジンキナーゼ等が挙げられる。レポータータンパク質には、すでに説明した蛍光タンパク質も含まれる。
本発明の複合体のポリペプチドに含まれるレポータータンパク質は、正に帯電したアミノ酸に富む領域に直接隣接しているか、またはリンカーによって分離されている。しかしながら、正に帯電したアミノ酸に富む領域の相対的位置は、融合タンパク質の要素の相対的位置に関する上述した留意事項に従っている。したがって、融合タンパク質内の正に帯電したアミノ酸に富む領域の位置とは無関係に、蛍光タンパク質は、直接またはリンカーによって分離されて、常にそれに隣接している。
したがって、蛍光タンパク質を含む本発明の実施形態において、本発明の複合体のポリペプチドの要素について可能な相対位置は、以下のスキームに適合する(ここで、RPはレポータータンパク質を指し、要素についての上記の番号付けは保持される:(1)第2のポリペプチド領域、(2)第1のポリペプチド領域、(3)正に帯電したアミノ酸領域):
・N-(1)-(2)-RP-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-RP-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-RP-(3)-C
・N-(1)-(2)-リンカー-RP-(3)-C
・N-(1)-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-リンカー-RP-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-RP-(3)-C
・N-(3)-RP-(2)-(1)-C
・N-(3)-RP-リンカー-(2)-(1)-C
・N-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-(1)-C
・N-(3)-RP-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(3)-RP-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(3)-RP-リンカー-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-RP-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(1)-(2)-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-(2)-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-(2)-リンカー-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-(2)-リンカー-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-リンカー-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-リンカー-RP-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-リンカー-(3)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-RP-リンカー-(3)-C
・N-(3)-リンカー-RP-(2)-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-(2)-(1)-C
・N-(3)-リンカー-RP-リンカー-(2)-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-リンカー-(2)-(1)-C
・N-(3)-リンカー-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-(1)-C
・N-(3)-リンカー-RP-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(3)-リンカー-RP-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(3)-リンカー-RP-リンカー-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-リンカー-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(3)-リンカー-RP-リンカー-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-C
・N-(3)-リンカー-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(3)-プロテアーゼ切断部位-RP-リンカー-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-(1)-RP-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-RP-(3)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-RP-(3)-C
・N-(2)-(1)-リンカー-RP-(3)-C
・N-(2)-(1)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-リンカー-RP-(3)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(1)-リンカー-RP-(3)-C
・N-(2)-RP-(3)-(1)-C
・N-(2)-(3)-RP-(1)-C
・N-(2)-リンカー-RP-(3)-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-RP-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-RP-(1)-C
・N-(2)-RP-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-(3)-RP-リンカー-(1)-C
・N-(2)-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-リンカー-RP-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-リンカー-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-RP-リンカー-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(1)-C
・N-(2)-プロテアーゼ切断部位-(3)-RP-リンカー-(1)-C
・N-(1)-RP-(3)-(2)-C
・N-(1)-(3)-RP-(2)-C
・N-(1)-RP-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(1)-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-(3)-RP-リンカー-(2)-C
・N-(1)-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-リンカー-RP-(3)-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-RP-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-RP-(2)-C
・N-(1)-リンカー-RP-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-リンカー-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-RP-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-RP-リンカー-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(1)-プロテアーゼ切断部位-(3)-RP-リンカー-(2)-C
・N-RP-(3)-(1)-(2)-C
・N-(3)-RP-(1)-(2)-C
・N-RP-(3)-リンカー-(1)-(2)-C
・N-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-(2)-C
・N-(3)-RP-リンカー-(1)-(2)-C
・N-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(1)-(2)-C
・N-RP-(3)-(1)-リンカー-(2)-C
・N-RP-(3)-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(3)-RP-(1)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-RP-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-RP-(3)-リンカー-(1)-リンカー-(2)-C
・N-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-RP-(3)-リンカー-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-RP-(3)-プロテアーゼ切断部位-(1)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-RP-リンカー-(1)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(3)-RP-リンカー-(1)-プロテアーゼ切断部位-(2)-C
・N-(3)-RP-プロテアーゼ切断部位-(1)-リンカー-(2)-C。
IV-G.本発明の好ましい複合体
本発明の好ましい実施形態は、構成要素が上記の表3に定義されている通りであり、目的の剤がフロクスウリジンまたはフロクスウリジンペンタヌクレオチドの1つ以上のコピーである複合体である。より好ましい実施形態において、上記で定義された複合体は、複合体を形成するポリペプチドの第1の領域の側鎖におけるアミノ基またはチオール基と、2~35原子の連結部分によって結合されているかまたは結合していない治療薬におけるチオール基またはヒドロキシ基またはリン酸基またはアミノ基またはカルボキシ基との間の連結から生じる。
IV-H.本発明の複合体の化学量論
本発明の融合タンパク質に複合体化される目的の剤の数は、特に限定的ではないが、目的の剤との化学的複合体化に利用できる本発明のポリペプチド中の利用可能な残基の数に依存する。ほとんどの結合は、複合体のポリペプチドの一部を形成するアミノ酸の側鎖に存在するアミノ基またはスルフヒドリル基を介して起こるため、複合体のポリペプチドに結合する剤の数は、リジン残基およびアルギニン残基の数に依存するか(側鎖のアミノ基を介した結合の場合)、またはシステイン残基の数に依存し(側鎖のスルフヒドリル基を介した結合の場合)、かつ結合反応の収率に依存する。したがって、本発明の特定の実施形態において、本発明の複合体のポリペプチドは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、17個、20個、25個、30個の目的の剤と結合する。
剤がポリマーとして提供される特定の場合において、剤の数はまた、ポリマー中のモノマーの数に依存することが理解されよう。FdUオリゴマーの特定の場合、所与の複合体中の目的の剤の数は、複合体のポリペプチドに結合したオリゴマーの数にモノマーの数を掛けた結果である。FdU五量体の好ましい場合において、好ましい実施形態としては、本発明のポリペプチドあたり少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、75個、85個、100個、125個、150個またはそれ以上の治療薬であって、それぞれ分子あたり1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、17個、20個、25個または30個のFdU五量体に対応する治療薬を含む複合体が挙げられる。
さらに、本発明によるナノ粒子は、本発明の複合体の複数のコピーの集合から生じる。好ましい実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、17個、20個、25個、より好ましくは少なくとも15個の本発明の複合体のモノマーを含む。
したがって、各ナノ粒子に結合する目的の剤の総数は、(i)複合体の各ポリペプチドと結合した剤の数、(ii)剤のオリゴマー化状態、および(iii)ナノ粒子を形成する複合体の数に依存する。好ましい実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも30個、35個、40個、45個、50個、60個、65個、70個、57個、80個、85個、90個、59個、100個、125個、150個、175個、200個、225個、250個、275個、300個の目的の剤と結合する。さらに好ましい実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも30個、35個、40個、45個、50個、60個、65個、70個、57個、80個、85個、90個、59個、100個、より好ましくは少なくとも60個のFdU五量体分子と結合する。
特定の実施形態において、本発明の第1、第2、第3、第4および第5の態様において説明されているすべての用語および実施形態は、本発明の第6の態様に等しく適用可能である。i
V-本発明の複合体を調製する方法
第7の態様において、本発明は、本発明の第6の態様の複合体を調製する方法であって:
(i)ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体を含む本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドを提供する工程、および
(ii)前記ポリペプチドと、前記ポリペプチド中の少なくとも1つの基と反応することができる本発明の第6の態様の複合体の目的の剤の活性化形態とを、前記目的の剤中の反応性基と前記ポリペプチド中の基との間の結合を形成するのに適切な条件下で接触させる工程
を含む方法に関する。
別の実施形態において、本発明は、本発明の第6の態様の複合体を調製する方法であって:
(i)ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体を含む本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドであって、活性化形態であるポリペプチドを提供する工程、および
(ii)前記ポリペプチドと、前記ポリペプチド中の反応性基と反応することができる目的の剤とを、前記ポリペプチド中の反応性基と前記目的の剤中の基との間の結合を形成するのに適切な条件下で接触させる工程
を含む方法に関する。
当業者は、本明細書で用いられる「反応性基」が、分子の任意の部分であって、他の分子の他の部分と、通常は1つ以上の追加の分子の放出を伴ってそれら2つの分子が一緒に結合するような方法で化学的に結合することができる部分を指すと理解するであろう。1つの非限定的な例であるカルボキシル基とアミン基との間のペプチド結合の形成のように多くのそのような反応が当技術分野で知られている。
本明細書で分子を指すときに用いられる「活性化」とは、化学修飾を含む修飾型の分子を指し、それにより分子は、従来は該分子に存在しなかった方法で化学反応することができるか(例えば、活性化により従来は存在しなかった反応性基が付加され、従来は実現できなかった結合が可能になる)、または反応性が増大する(すなわち、不活性化状態と比較して、分子と他の分子との反応により低い活性化エネルギーを必要とする)。本発明は、目的の剤を活性化し、次いで活性化剤と複合体のポリペプチドとを接触させるか、または複合体のポリペプチドを活性化し、次いで活性化ポリペプチドと目的の剤とを接触させる可能性を企図する。いずれの場合にも、ポリペプチドまたは目的の剤の活性化は、通常、活性化される分子と活性化される分子に反応性基を導入する試薬とを反応させることにより行われる。目的の剤または複合体のポリペプチドの活性化を可能にする反応性基の例としては、限定されないが、当業者に一般的に知られている他の多くのもののなかで、カルボキシル部分、アミン部分、イミン部分、チオール部分、スルホン部分、ヒドロキシル部分、硫酸塩部分およびリン酸部分が挙げられる。目的の剤の活性化形態は、本明細書では「活性化された目的の剤」とも呼ばれる。複合体のポリペプチドの活性化形態は、本明細書では「活性化ポリペプチド」とも呼ばれる。本発明の第6の態様に記載されるように、活性化ポリペプチド中の1つ以上の反応性基は、目的の剤が複合体化されるポリペプチドの領域に位置する。したがって、特定の実施形態において、反応性基は、第1のポリペプチド領域、第2のポリペプチド領域、第3のポリペプチド領域、前記ポリペプチド領域のいずれかの間のリンカー、または複合体の前記ポリペプチド領域の間のプロテアーゼ切断部位に位置する。別の特定の実施形態において、反応性基は、第1のポリペプチド領域、および/または第2のポリペプチド領域、および/または第3のポリペプチド領域、および/または前記ポリペプチド領域のいずれかの間のリンカー、および/または複合体の前記ポリペプチド領域の間のプロテアーゼ切断部位に位置する。
好ましい実施形態において、反応性基は、複合体のポリペプチドに含まれる第1のポリペプチド領域に位置する。特定の実施形態において、反応性基は、複合体の第1のポリペプチド領域に位置し、また上述した第6の態様の複合体のポリペプチドに含まれる他の領域にも位置する。
連結部分が複合体のポリペプチドと目的の剤との間の結合を媒介する本発明の実施形態において、連結部分は、目的の剤中の基および複合体のポリペプチド中の基と反応する二官能性架橋剤、より好ましくは、中でもチオエーテル、アミノ結合、炭素-窒素二重結合、またはKalia J et al.(Advances in bioconjugation. Curr Org Chem 2010 January, 14(2):138-147)に開示されているような付加環化により生じる結合を用いて、連続的(活性された剤と反応した後にポリペプチドと反応するか、またはポリペプチドと反応した後に活性化された剤と反応するかのいずれか)または同時に目的の剤中の基および複合体のポリペプチド中の基と反応するヘテロ二官能性架橋剤である。例えば、典型的なチオール反応性官能基としては、ヨードアセトアミド、マレイミドおよびジスルフィドが挙げられる。さらに、タンパク質は、活性化エステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を提示する小分子または表面で処理して、リジン側鎖およびN末端のアミノ基とアミド結合を形成することができる。別の実施形態において、連結部分は、チオール基と反応することができる反応性基およびアミノ基と反応することができる反応性基を含むヘテロ二官能性架橋剤である。一つの実施形態において、ヘテロ二官能性架橋剤は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。
好ましい実施形態において、連結部分は、第1の工程で活性化された目的の剤と反応し、第2の工程で複合体のポリペプチドと反応する。別の実施形態において、連結部分は、第1の工程で複合体のポリペプチドと反応し、第2の工程で目的の剤と反応する。
本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドと目的の剤の活性化形態とを接触させる工程は、それらの間の結合を確立する反応に有利な媒体中で行われることが意図される。反応に適した媒体は、水性緩衝液および非水性緩衝液を含めて当業者に一般的に知られている。固体支持体は、活性化された剤の合成、ならびに複合体のポリペプチド、目的の剤および1つを含む実施形態における連結部分の複合体化をもたらす反応工程のいずれかのために、媒体と組み合わせて用いることも意図される。さらに、ポリペプチドと治療薬との間の複合体を調製する方法は、ポリペプチド、活性化された目的の剤および連結部分を含むことに限定されず、いくつかの実施形態は、反応において1つ以上の触媒および補因子の使用も含むことが意図される。
したがって、本発明の一つの実施形態において、目的の剤の活性化形態は、複合体のポリペプチド、好ましくは複合体のポリペプチドに含まれる第1のポリペプチド領域の側鎖の少なくとも1つと反応する基を含む。当業者が理解するように、「ポリペプチドの側鎖」は、ポリペプチド配列のアミノ酸残基の側鎖を指す。
別の好ましい実施形態において、残基は外側のリジンである。本発明のさらに好ましい実施形態において、複合体のポリペプチドの側鎖の少なくとも1つと反応する活性化された目的の剤、好ましくは化学療法剤の基は、チオール基である。
本発明のより一層好ましい実施形態において、活性化された治療薬は、活性化された化学療法剤、より好ましくはチオール官能化オリゴフロクスウリジンである。
好ましい実施形態において、連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、活性化された剤と、このセクションで前述した実施形態で示された複合体のポリペプチドにおける側鎖との間の結合を媒介する。より一層好ましい実施形態において、連結部分の6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、第1の工程において目的の剤、好ましくは活性化FdU、より一層好ましくはスルフヒドリルで官能化されたFdUに結合され、第2の工程において複合体のポリペプチドの側鎖、より好ましくは複合体のポリペプチドの外側のリジン、より一層好ましくは本発明の複合体の第1のポリペプチド領域の外側のリジンに結合される。
本発明の別の好ましい実施形態において、活性化された治療薬は、活性化された化学療法剤、より好ましくはアミノ官能化オリゴフロクスウリジンである。
好ましい実施形態において、連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、活性化された剤と、このセクションで前述した実施形態で示された複合体のポリペプチドにおける側鎖との間の結合を媒介する。より一層好ましい実施形態において、連結部分の6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、第1の工程において目的の剤、好ましくは活性化FdU、より一層好ましくはアミノで官能化されたFdUに結合され、第2の工程において複合体のポリペプチドの側鎖、より好ましくは複合体のポリペプチドの外側のシステイン、より一層好ましくは本発明の複合体の第1のポリペプチド領域の外側のシステインに結合される。
本発明の別の好ましい実施形態において、活性化された治療薬は、活性化された化学療法剤、より好ましくはカルボキシ官能化オリゴフロクスウリジンである。
好ましい実施形態において、活性化FdU、より一層好ましくは活性化形態のカルボン酸で官能化されたFdUは、目的の剤中のカルボキシル基と、ポリペプチド中の反応性基(例えば、目的の剤中のカルボキシル基と共にアミド結合を形成することができるアミノ基)、複合体のポリペプチドの側鎖、より好ましくは複合体のポリペプチドの外側のリジン、より一層好ましくは複合体の第1のポリペプチド領域の外側のリジンとを反応させる。
さらに好ましい実施形態において、目的の剤、より好ましくはFdUまたはその五量体形態はアミノ基で官能化され、連結部分は、目的の剤中のアミノ基およびポリペプチド中の反応性基と反応する二官能性試薬である。いくつかの実施形態において、二官能性試薬は、アミノ基と反応する部分(例えば、目的の剤中のアミノ基とアミド基を形成することができるカルボキシレート基)と、タンパク質の側鎖中のスルフヒドリル基と反応する部分(例えば、ポリペプチドの側鎖中のスルフヒドリル基とチオエーテルを形成することができるマレイミド基)とを含む。
さらに好ましい実施形態において、目的の剤、より好ましくはFdUまたはその五量体形態はカルボキシル基で官能化され、連結部分は、目的の剤中のカルボキシル基およびポリペプチド中の反応性基と反応する二官能性試薬である。いくつかの実施形態において、二官能性試薬は、カルボキシル基と反応する部分(例えば、目的の剤中のカルボキシル基とアミド基を形成することができるアミノ基)と、タンパク質の側鎖のスルフヒドリル基と反応する部分(例えば、ポリペプチドの側鎖のスルフヒドリル基とチオエーテルを形成することができるマレイジイミド基)またはタンパク質のアミノ基と反応する部分とを含む。
本発明の文脈において目的の剤とポリペプチドとの間で用いられ得る追加のリンカーとしては、参照によりそれらの内容が本明細書に組み込まれるLeung et al. (Antibodies 2020, 9, 2; doi:10.3390/antib9010002)(Figure 6を参照のこと)およびBargh et al. (Chem. Soc. Rev., 2019, DOI: 10.1039/c8cs00676h)に開示されているような、抗体-薬物複合体の調製に一般的に用いられるものが挙げられる。
したがって、本発明の一つの実施形態において、複合体のポリペプチドの活性化形態は、目的の剤の少なくとも1つの部分と反応する基を含む。本発明のさらに好ましい実施形態において、複合体の活性化ポリペプチドと反応する目的の剤、好ましくは化学療法剤の基は、チオール基である。
本発明のさらに好ましい実施形態において、複合体の活性化ポリペプチドは、ポリペプチドの側鎖中の1つ以上のアミノ基と、N-ヒドロキシスクシンイミド基等の活性化カルボキシル基を含む二官能性試薬とを反応させることによって得られる。一つの実施形態において、二官能性試薬は、必要に応じて、剤中のアミノ基、チオール基またはヒドロキシル基と反応することができる第2の活性化カルボキシル基を含む。
さらに好ましい実施形態において、連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、複合体のポリペプチド中のアミノ基と目的の剤中のチオール基との間の結合を媒介する。より一層好ましい実施形態において、連結部分の6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、第1の工程において複合体のポリペプチド、より好ましくは複合体のポリペプチドの外側のリジンに結合され、第2の工程において剤中の側鎖、好ましくは活性化された剤のチオール基に結合される。
さらに好ましい実施形態において、連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、複合体のポリペプチド中のチオール基と目的の剤中のアミノ基との間の結合を媒介する。より一層好ましい実施形態において、連結部分の6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、第1の工程において複合体のポリペプチド、より好ましくは複合体のポリペプチドの外側のシステインに結合され、第2の工程において目的の剤、好ましくは目的の剤中のアミノ基に結合される。
さらに好ましい実施形態において、連結部分は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、複合体のポリペプチド中のチオール基と目的の剤中のアミノ基との間の結合を媒介する。より一層好ましい実施形態において、連結部分の6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、第1の工程において、目的の剤、好ましくは目的の剤中のアミノ基に結合され、第2の工程において、複合体のポリペプチド、より好ましくは複合体のポリペプチドの外側のシステインのチオール基に結合される。
特定の実施形態において、前述した本発明の態様で説明されたすべての用語および実施形態は、本発明の第7の態様に等しく適用可能である。
VI-拮抗的なCXCR4リガンドを含む本発明のポリペプチド
本発明らは、拮抗的なCXCR4リガンドおよびニドゲン-1のG2ドメインまたはその変異体を含む融合タンパク質が、CXCR4発現細胞を標的とし、透過することができることを観察した。さらに、この融合タンパク質がポリカチオン領域の存在によってさらに改変されると、融合タンパク質は自発的に集合してナノ粒子となり、CXCR4発現細胞を標的にして透過し、CXCR4発現細胞においてアポトーシスを誘導することもできる。
したがって、別の態様において、本発明は、
(i)ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体を含む第1の領域、および
(ii)拮抗的なCXCR4リガンドを含む第2の領域
を含むポリペプチド(本発明の第2のポリペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明のCXCR4拮抗性ポリペプチドとしても知られる)に関する。
第1の領域は、本発明の第1のポリペプチドの文脈、および本発明の複合体の一部を形成するポリペプチドの第1の領域の文脈において上記で定義されており、本発明の第2のポリペプチドに等しく適用される。いくつかの実施形態において、第1の領域は、ニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体であり、該ニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体は、本発明の第1のポリペプチドにおいて上記で定義された変異体のいずれかである。いくつかの実施形態において、第1の領域が、UniProtデータベースのアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列のアミノ酸430~667を含む、請求項53または54に記載のポリペプチド。いくつかの実施形態において、第1の領域の一部を形成するニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体は、2009年7月7日付けのバージョンのUniProtデータベースのアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列の番号付けに関し、459位、468位、639位、650位、543位、545位、449位、525位、561位、618位、619位、151位、604位、638位、641位、469位および518位の1つ以上のアミノ酸残基における突然変異を含む。したがって、別の特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドは、UniProtデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義されるヒトニドゲン-1の配列の番号付けに関し、459位、468位、639位、650位、543位、545位、449位、525位、561位、618位、619位、151位、604位、638位、641位、469位および518位の1つ以上のアミノ酸残基における突然変異を含むニドゲン-1のG2ドメインの機能的に同等の変異体である。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド領域に含まれ得るニドゲンG2ドメイン変異体は、限定されないが、それぞれ配列番号64、65および87~104で定義されるNIDOmut2、NIDOmut3、NIDOmut3-V45T、NIDOmut3_V121Q、NIDOmut3-F157E、NIDOmut3-V215T、NIDOmut4、NIDOmut4_T215V、NIDOmut5、NIDOmut3-V176T、NIDOmut3-I200T、NIDOmut3-V236Y、NIDOmut3-L237T、NIDOmut3_S65I、NIDOmut3-R114I、NIDOmut3-C214S、NIDOmut3-S65I_R114I、NIDOmut5-S65I_R114I、NIDOmut3-S65I_R114IおよびNIDOmut5-S65I_R114Iを有する変異体を含む、本発明の第1の態様の文脈において上記で定義されたニドゲンG2ドメイン変異体のいずれかを含む。
本発明の第2のポリペプチドの第2の領域は、拮抗的なCXCR4リガンドを含む。本明細書で用いられる「拮抗的なCXCR4リガンド」という用語は、CXCR4に特異的に結合することができ、アゴニストとの相互作用に応答して分子の生物学的活性を低減、阻害または防止する任意のポリペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣物を指す。一つの実施形態において、拮抗的なCXCR4リガンドは、競合的アンタゴニスト、すなわち、必ずしも受容体を活性化することなく、内因性リガンドまたはアゴニストと同じ結合部位(活性部位)でCXCR4と可逆的に結合するアンタゴニストである。
所与のペプチドがCXCR4と結合することができるかどうかを決定するための適切な方法は、本発明の複合体の文脈において上記で定義されており、本発明のポリペプチドに等しく適用可能である。いくつかの実施形態において、第2の領域は、10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満の解離定数(KD)でCXCR4と特異的に結合することができる。ポリペプチドが標的分子と結合することができるかどうかを決定する方法、および前記結合の解離定数を決定する方法は、本発明の第2の態様の「特異的結合」の定義において提供される。
本発明による使用に適したアンタゴニストは、天然リガンドCXCL12によるCXCR4への結合に対して0.1μM以下、0.2μM以下、0.3μM以下、0.4μM以下、0.5μM以下、0.6μM以下、0.7μM以下、0.8μM以下、0.9μM以下、1μM以下、2μM以下、3μM以下、4μM以下、5μM以下、6μM以下、7μM以下、8μM以下、9μM以下、10μM以下、15μM以下、20μM、30μM以下、40μM以下、50μM以下、60μM以下、70μM以下、80μM以下、90μM以下または100μM以下のIC50で競合することで特徴付けられる。
分子が拮抗的なCXCR4リガンドであるかどうかを決定するための適切な方法は、例えば、参照によりそれらの内容が本明細書に組み込まれるZirafi et al. (Cell Rep. 2015, 11, 737)に示されている方法である。これらの方法としては、CXCL12とCXCR4との結合を阻害するアンタゴニストの能力の検出に基づくアッセイ(分子がリガンドであるかどうかの決定のため)、およびHEX293細胞等のCXCR4発現細胞からのCa2+の放出を阻害する分子の能力の検出に基づく方法、Jurkat T細胞のCXCL12指向性トランスウェル移行(CXCL12-directed traswell migration)を阻害する分子の能力に基づく方法および/またはヒトCD34+幹細胞のCXCL12誘導性移行を阻害する分子の能力の検出に基づく方法(分子がアンタゴニストとして作用するかどうかを決定するため)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本発明による拮抗的なCXCR4リガンドを有するポリペプチドの第2の領域は、正に帯電したアミノ酸領域をさらに含む。
正に帯電したペプチド配列は、1種類の正に帯電したアミノ酸のみを含んでもよく、複数の種類の正に帯電したアミノ酸を含んでもよい。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、ポリアルギニン領域である。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、ポリリジン領域である。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、ポリヒスチジン領域である。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、リジン残基およびアルギニン残基を含む。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、リジン残基およびヒスチジン残基を含む。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、アルギニン残基およびヒスチジン残基を含む。一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、リジン残基、アルギニン残基およびヒスチジン残基を含む。
いくつかの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または少なくとも15個の正に帯電したアミノ酸残基を含み、該正に帯電したアミノ酸はアルギニン、リジン、ヒスチジンまたはそれらの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、100個未満、90個未満、80個未満、70個未満、60個未満、50個未満、40個未満、30個未満、29個未満、28個未満、27個未満、26個未満、25個未満、24個未満、23個未満、22個未満、21個未満、20個未満、19個未満、18個未満、17個未満、16個未満、15個未満、14個未満、13個未満、12個未満、11個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満またはそれ以下の正に帯電したアミノ酸残基を含み、該正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジンまたはそれらの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、2~50個のアミノ酸、2~40個のアミノ酸、2~30個のアミノ酸、2~25個のアミノ酸、2~20個のアミノ酸、2~10個のアミノ酸、2~8個のアミノ酸、3~7個のアミノ酸、4~7個のアミノ酸または5~7個のアミノ酸を含む。
いくつかの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、3~50個のアミノ酸、3~40個のアミノ酸、3~30個のアミノ酸、3~25個のアミノ酸、3~20個のアミノ酸、3~10個のアミノ酸または3~8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、4~50個のアミノ酸、4~40個のアミノ酸、4~30個のアミノ酸、4~25個のアミノ酸、4~20個のアミノ酸、4~10個のアミノ酸または4~8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、5~50個のアミノ酸、5~40個のアミノ酸、5~30個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、5~20個のアミノ酸、5~10個のアミノ酸または5~8個のアミノ酸を含む。
別の実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個のアミノ酸、好ましくは6個のアミノ酸を含む。
本発明の一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、アルギニン残基およびリジン残基を含む。本発明の好ましい実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、1~5個のアルギニン、好ましくは3個のアルギニン、および1~5個のリジン、好ましくは3個のリジンを含む。
本発明の一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、アルギニン残基およびヒスチジン残基を含む。本発明の好ましい実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、1~5個のアルギニン、好ましくは3個のアルギニン、および1~5個のヒスチジン、好ましくは3個のヒスチジンを含む。
本発明の一つの実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、リジン残基およびヒスチジン残基を含む。本発明の好ましい実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、1~5個のリジン、好ましくは3個のリジン、および1~5個のヒスチジン、好ましくは3個のヒスチジンを含む。
本発明の実施形態において、本発明の複合体の正に帯電したペプチド配列は、ポリアルギニン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリアルギニン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するアルギニン残基を含む。
本発明の実施形態において、本発明の複合体の正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリリジン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリリジン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するリジン残基を含む。
本発明の実施形態において、本発明の融合タンパク質の正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリヒスチジン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリヒスチジン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するポリヒスチジン残基を含む。
特定の実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、RKRKRK(配列番号77)、RRRRRR(配列番号78)、KKKKKK(配列番号79)、HHHHHH(配列番号80)、RHRHRH(配列番号81)、RKRKRKRK(配列番号82)、RKRHRK(配列番号83)、RKRHRH(配列番号84)またはRHRHRH(配列番号85)である。
好ましい実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、最適化されたEPI-X4の配列(配列番号29)のN末端またはC末端、好ましくは最適化されたEPI-X4の配列(配列番号29)のC末端に結合している。好ましい実施形態において、正に帯電したペプチド配列は、EPI-X4の配列(配列番号132)のN末端またはC末端、好ましくはEPI-X4の配列(配列番号132)のC末端に結合している。
いくつかの実施形態において、本発明の第2のポリペプチドは、正に帯電したアミノ酸に富む領域である第3のポリペプチド領域をさらに含む。本発明の第2のポリペプチドの第3の領域として作用し得る適切な正に帯電したアミノ酸に富む領域は、本発明による複合体の第3のポリペプチド領域に関して上記で定義された通りである。好ましい実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリヒスチジン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリヒスチジン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するヒスチジン残基を含む。好ましい実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリアルギニン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリアルギニン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するアルギニン残基を含む。好ましい実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、ポリリジン領域である。本発明の好ましい実施形態において、ポリアルギニン領域は、2~10個、好ましくは6個の隣接するリジン残基を含む。
好ましい実施形態において、正に帯電したアミノ酸に富む領域は、配列RKRKRK(配列番号77)、RRRRRR(配列番号78)、KKKKKK(配列番号79)、HHHHHH(配列番号80)、RHRHRH(配列番号81)、RKRKRKRK(配列番号82)、RKRHRK(配列番号83)、RKRHRH(配列番号84)またはRHRHRH(配列番号85)を含むかまたはそれからなる。
いくつかの実施形態において、本発明の第2のポリペプチドの第1、第2および第3の領域は、以下の順序で本発明の第2のポリペプチド内に位置する:
・N-第1のポリペプチド領域-第2のポリペプチド領域-第3のポリペプチド領域-C;
・N-第1のポリペプチド領域-第3のポリペプチド領域-第2のポリペプチド領域-C;
・N-第2のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-第3のポリペプチド領域-C;
・N-第2のポリペプチド領域-第3のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-C
・N-第3のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-第2のポリペプチド領域-C;
・N-第3のポリペプチド領域-第2のポリペプチド領域-第1のポリペプチド領域-C。
したがって、本発明の第2のポリペプチドの要素は末端間で接続し得るが、好ましくはペプチド結合によって連結され、それらの間に挿入された1つ以上の任意のペプチドまたはポリペプチドである「リンカー」または「スペーサー」を含み得る。1つ以上のリンカーペプチドは、好ましくは少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸または約100個のアミノ酸を含む。リンカーペプチドの好ましい例は、グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンからなる群から選択される2個以上のアミノ酸を含む。柔軟なリンカーの好ましい例は、ポリグリシンリンカーである。リンカー/スペーサー配列として考えられる例としては、GGSSRSS(配列番号39)、GGSSRSSS(配列番号76)、SGGTSGSTSGTGST(配列番号49)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号50)またはGGSGGAP(配列番号:51)が挙げられる。これらの配列は、設計されたコイルドコイルと他のタンパク質ドメインとを結合するために用いられてきた[Muller, K.M., Arndt, K.M. and Alber, T., Meth. Enzymology, 2000, 328: 261-281]。適切なリンカーのさらなる非限定的な例は、アミノ酸配列GGGVEGGG(配列番号52)、コイルドコイルによる二量体化抗体の生成に用いられるマウスIgG3の上部ヒンジ領域の10アミノ酸残基の配列(PKPSTPPGSS、配列番号53)[Pack, P. and Pluckthun, A., 1992, Biochemistry 31:1579-1584]、配列APAETKAEPMT(配列番号54)のペプチド、配列GAPのペプチド、配列AAAのペプチドおよび配列AAALE(配列番号55)のペプチドを含む。好ましい実施形態において、リンカーはGGSSRSS(配列番号39)である。
いくつかの実施形態において、本発明の第2のポリペプチドの異なる領域を接続するリンカーの存在に応じて、また本発明の第2のポリペプチドを形成する要素の順序に応じて、本発明の第2のポリペプチドは、以下の要素の配置を有し得る(ここで、要素についての上記の番号付けは以下の通りである:(1)第1の領域ポリペプチド、(2)第2のポリペプチド領域、(3)第3のポリペプチド領域):
・N-(1)-(2)-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-(3)-C
・N-(1)-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(1)-リンカー-(2)-リンカー-(3)-C
・N-(3)-(2)-(1)-C
・N-(3)-リンカー-(2)-(1)-C
・N-(3)-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(3)-リンカー-(2)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-(1)-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-(3)-C
・N-(2)-(1)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-リンカー-(1)-リンカー-(3)-C
・N-(2)-(3)-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-(1)-C
・N-(2)-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(2)-リンカー-(3)-リンカー-(1)-C
・N-(1)-(3)-(2)-C
・N-(1)-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-(2)-C
・N-(1)-リンカー-(3)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-(1)-(2)-C
・N-(3)-リンカー-(1)-(2)-C
・N-(3)-(1)-リンカー-(2)-C
・N-(3)-リンカー-(1)-リンカー-(2)-C。
拮抗的なCXCR4リガンドを有する好ましい融合タンパク質は、以下の表に定義される通りである。
VII-本発明のナノ粒子およびその調製方法
さらなる態様において、本発明は、本発明の第6の態様による複合体の複数のコピーを含むナノ粒子を調製する方法であって、前記複合体の調製物を、前記複合体の複数のコピーを集合させてナノ粒子とするのに適切な条件下に置くことを含む方法に関する。
「複合体」という用語は、本発明による複合体の文脈において上記で定義されており、本発明の方法に等しく適用可能である。
別の態様において、本発明は、本発明の第6の態様による複合体の複数のコピーを含むナノ粒子を調製する方法であって、
(i)それぞれが
1.ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体である第1のポリペプチド領域、
2.目的の標的と特異的に結合することができる第2のポリペプチドであって、ポリカチオン性ペプチドである第2のポリペプチド、および
3.正に帯電したアミノ酸に富む領域である第3のポリペプチド領域
を含む複数のポリペプチドを、前記ポリペプチドの複数のコピーを含むナノ粒子を形成するのに適切な条件下に置くことであって、
前記ポリカチオン性ペプチドおよび正に帯電したアミノ酸に富む領域がポリペプチドの末端に位置し、該ポリペプチドが活性化形態で提供され、該活性化形態のポリペプチドが反応性基を含む、前記置くこと、および
(ii)工程(i)で得られたナノ粒子と、前記ポリペプチド中の反応性基とを反応することができる基を含む目的の剤の活性化形態とを、前記ポリペプチド中の反応性基と前記目的の剤の基との間の結合を形成するのに適切な条件下で接触させること
を含む方法に関する。
「第1のポリペプチド領域」、「第2のポリペプチド領域」および「第3のポリペプチド領域」という用語は、本発明の複合体を形成するポリペプチドの文脈において上記で定義されており、複合体の複数のコピーを含むナノ粒子を得る方法に等しく適用可能である。
本明細書で用いられる「ポリペプチドの複数のコピーを含むナノ粒子を形成するのに適切な条件」という用語は、サンプル中のポリペプチドのかなりの割合をナノ粒子に組み込むのに適した任意の条件を指す。一つの実施形態において、前記条件は、集合させる複合体またはポリペプチドを低塩緩衝液中でインキュベートすることを含む。
当業者が理解するように、「ナノ粒子」は、サイズがナノメートルで測定される微細な粒子である。本発明のナノ粒子は、前のセクションで定義された本発明の第6の態様の複合体または複合体のポリペプチドの複数のコピーの集合から生じるナノ粒子を含む。上記の方法(i)および(ii)において、ナノ粒子の調製に用いられる本発明の第6の態様の複合体または複合体のポリペプチドは、熱力学的に非共有静電結合を形成しやすく、低塩緩衝液の条件で自発的に集合する。特定の実施形態において、本発明の第6の態様の複合体の熱力学的に有利な複合体またはポリペプチドは、本発明の第6の態様の複合体のポリペプチドに含まれる第1、第2および第3のポリペプチド領域を含む。特定の実施形態において、ポリペプチド、または複合体に含まれるポリペプチドは、本発明の第6の態様で定義されるポリペプチドであり、第2のポリペプチド領域は、第1のポリペプチド領域のN末端に位置するポリカチオン性ペプチドであり、第3のポリペプチド領域は、複合体の第1のポリペプチド領域のC末端に位置する。
特定の実施形態において、本発明の第8の態様の方法(i)において、複合体の複数のコピーを集合させてナノ粒子とするのに適切な条件は、低塩緩衝液中でのインキュベーションを含む。別の特定の実施形態において、本発明の第8の態様の方法(ii)において、ポリペプチドの複数のコピーを集合させてナノ粒子とするのに適切な条件は、低塩緩衝液中でのインキュベーションを含む。
「低塩緩衝液」という表現は、水に1種以上の塩を溶解することにより生じる、pHの変化を緩和する能力を有する任意の緩衝液を含み、溶解される1種以上の塩の量は、例えば細胞質または細胞外培地等の生理液の浸透圧と同じかまたは低い浸透圧をもたらす。したがって、低塩緩衝液は、pHおよび浸透圧を生理学的値の範囲内に保つと理解され、生理学的温度の範囲内で用いられる。
当業者は、生理学的温度の範囲が15~45℃の間、より好ましくは20~40℃の間、より一層好ましくは25~39℃の間、さらにより一層好ましくは30~37℃の間で振れ得ることを理解するであろう。当業者はまた、低塩緩衝液の浸透圧が100~400ミリオスモル/L(mOsm/L)、好ましくは150~350mOsm/L、より好ましくは200~300mOsm/L、より一層好ましくは225~275mOsm/Lの範囲にあることを理解するであろう。
いくつかの実施形態において、低塩緩衝液は、pH4~pH7、好ましくはpH5~pH6、より好ましくは約pH5.3、pH6.5またはpH7.2のpHを有する。
いくつかの実施形態において、低塩緩衝液は、炭酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、トリス緩衝液およびリン酸緩衝液からなる群から選択される。例えば、本発明に適した低塩緩衝液は、例えば、トリス-デキストロース緩衝液(20mMトリス+5%デキストロース、pH7.4)、トリス-NaCl緩衝液(20mMトリス、500NaCl、pH7.4)、PBS-グリセロール緩衝液(当技術分野でよく知られているリン酸緩衝生理食塩水、PBS、pH7.4、+10%グリセロール)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)-デキストロース(当技術分野でよく知られている20mMトリス-HCl緩衝液、pH7.5、200NaCl、+5%デキストロース)、トリス緩衝生理食塩水-Tween20(TBST)緩衝液(10mMトリス-HCl、pH7.5、200mM NaCl、+0.01%Tween20)、または当技術分野において知られているpH6未満の任意の生理緩衝液である。
一つの実施形態において、低塩緩衝液は、ポリソルベート80および/またはスクロースをさらに含む。さらに別の実施形態において、低塩緩衝液中のスクロースは、20~100mg/ml、より好ましくは50~90mg/ml、好ましくは70mg/mlの濃度である。
一つの実施形態において、低塩緩衝液は、ポリソルベート80(0.4mg/ml)、スクロース(80mg/ml)、クエン酸ナトリウム二水和物(2.7mg/ml)および無水クエン酸(0.146mg/ml)を含み、pHが約6.5のクエン酸緩衝液である。
一つの実施形態において、低塩緩衝液は、スクロース(70mg/ml)、氷酢酸(0.12mg/ml)、酢酸ナトリウム三水和物(2.45mg/ml)を含み、pHが約5.3の酢酸緩衝液である。
別の実施形態において、低塩緩衝液は、ポリソルベート80(0.05mg/ml)、スクロース(50mg/ml)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(0.22mg/ml)、リン酸二水素ナトリウム無水物(0.49mg/ml)を含み、pHが約7.2のリン酸緩衝液である。
いくつかの実施形態において、ナノ粒子を得る方法を行うのに適した低塩緩衝液は、
○40~100mg/ml、好ましくは80mg/mlの濃度のスクロース、
○0.01~10mg/ml、好ましくは4mg/mlの濃度のポリソルベート80、
○2.7mg/mlの濃度のクエン酸ナトリウム二水和物、
○0.146mg/mlの濃度の無水クエン酸
を含み、pHがpH5~pH9、好ましくはpH7~pH8、より好ましくはpH6.5のA9緩衝液である。
いくつかの実施形態において、ナノ粒子を得る方法を行うのに適した低塩緩衝液は、
-50~90mg/ml、好ましくは70mg/mlの濃度のスクロース、
-0.05~25mg/ml、好ましくは0.12mg/mlの濃度の氷酢酸、
-1~4mg/mlの間、好ましくは2.45mg/mlの濃度の酢酸ナトリウム三水和物
を含み、pHがpH4~pH7、好ましくはpH5~pH6、より好ましくはpH5.3のB6緩衝液である。
いくつかの実施形態において、ナノ粒子を得る方法を行うのに適した低塩緩衝液は、
-40~60mg/ml、好ましくは50mg/mlの濃度のスクロース、
-0.01~1mg/ml、好ましくは0.05mg/mlの濃度のポリソルベート80、
-0.1~0.5mg/ml、好ましくは0.22mg/mlの濃度のリン酸一ナトリウム一水和物(sodium phosphate monobasic monohydrate)、
-0.2~1mg/ml、好ましくは0.49mg/mlの濃度のリン酸二ナトリウム無水物
を含み、pHがpH5~pH9、好ましくはpH7~pH8、より好ましくはpH7.2のD1緩衝液である。
本発明者らはさらに、2つのタイプの融合タンパク質をオリゴマー化させることによってバイパラトピックナノ粒子を生成した:第1のタイプの融合タンパク質はT22 CXCR4リガンドおよび足場タンパク質を含み、第2のタイプの融合タンパク質はEPI-X4拮抗性CXCR4リガンドおよび同じ足場を含む。これらのバイパラトピックナノ粒子は、T22CXCR4リガンドを含む融合タンパク質またはEPI-X4CXCR4リガンドを単独で含む融合タンパク質である単一タイプの融合タンパク質によって形成されるナノ粒子よりも、in vitoroでCXCR4+細胞においてより高いレベルの内在化を示した。マウスモデルに投与した場合、バイパラトピックナノ粒子は、単一タイプの融合タンパク質を含む2種類のモノパラトピックナノ粒子のいずれよりも、腫瘍細胞におけるより高いレベルの内在化および腫瘍細胞におけるより多くのアポトーシス体を示した。
別の態様において、本発明は、本発明の第6の態様による2つの異なるタイプの複合体の複数のコピーを含むバイパラトピックナノ粒子を調製する方法であって、第1のタイプの複合体の第2のポリペプチドの配列と第2のタイプの複合体の第2のポリペプチドの配列とが異なり、前記2つのタイプの複合体の調製物を低塩緩衝液中に置くことを含む方法に関する。
第9の態様において、本発明は、第1のタイプの複合体の複数のコピーおよび第2のタイプの複合体の複数のコピーを含むバイパラトピックナノ粒子を調製する方法であって、前記第1および第2のタイプの複合体が異なるポリカチオン性ペプチド配列を有し、前記第1のタイプの複合体の調製物と前記第2のタイプの複合体の調製物とを、該2つのタイプの複合体の複数のコピーを集合させてナノ粒子とするのに適切な条件下で接触させることを含む方法に関する。
別の実施形態において、本発明は、本発明による第1のタイプの複合体の複数のコピーおよび本発明による第2のタイプの複合体の複数のコピーを含むバイパラトピックナノ粒子を調製する方法であって、前記第1および第2のタイプの複合体が異なるポリカチオン性ペプチド配列を有し、
i.第1のポリペプチドの調製物と第2のポリペプチドの調製物とを接触させることであって、前記第1のタイプおよび第2のポリペプチドが、
(i)ニドゲン-1のG2ドメインまたはその機能的に同等の変異体である第1のポリペプチド領域、
(ii)目的の標的と特異的に結合することができる第2のポリペプチド領域であって、前記第2のポリペプチドがポリカチオン性ペプチドであり、かつ一つのポリペプチドのポリカチオン性ペプチドの配列と他のポリペプチドのポリカチオン性ペプチドの配列とが異なる、第2のポリペプチド領域、
(iii)正に帯電したアミノ酸に富む領域である第3のポリペプチド領域
を含み、
前記ポリカチオン性ペプチドおよび前記正に帯電したアミノ酸に富む領域が前記ポリペプチドの末端に位置し、
前記ポリペプチドが活性化形態で提供され、該活性化形態のポリペプチドが反応性基を含み、前記置くことが、ポリペプチドの複数のコピーを含むナノ粒子を形成するのに適切な条件下で行われ、
ii.工程iで得られたナノ粒子と、各ポリペプチド中の反応性基と反応することができる基を含む目的の剤の活性化形態とを、前記ポリペプチド中の反応性基と前記目的の剤中の基との間の結合を形成するのに適切な条件下で接触させこと
を含む方法に関する。
本明細書で用いられる場合、「バイパラトピックナノ粒子」という用語は、少なくとも2つのタイプの複合体によって形成されるナノ粒子を指し、該2つのタイプの複合体は、目的の標的と特異的に結合する配列の性質が異なるポリペプチドを含み、これらの配列は異なる受容体に対するリガンドであるか、より好ましくは同じ受容体に対する2つの異なるリガンドのいずれかである。
上記の方法において第1のタイプまたは第2のタイプの複合体として用いることができる適切な複合体は、本発明による複合体の文脈において上記で定義された通りである。いくつかの実施形態において、複合体を形成するポリペプチドの第1の領域は、それぞれ配列番号64、65および87~104として定義されるNIDOmut2、NIDOmut3、NIDOmut3-V45T、NIDOmut3_V121Q、NIDOmut3-F157E、NIDOmut3-V215T、NIDOmut4、NIDOmut4_T215V、NIDOmut5、NIDOmut3-V176T、NIDOmut3-I200T、NIDOmut3-V236Y、NIDOmut3-L237T、NIDOmut3-S65I、NIDOmut3-R114I、NIDOmut3-C214S、NIDOmut3-S65I_R114I、NIDOmut5-S65I_R114I、NIDOmut3-S65_R114IおよびNIDOmut5-S65I_R114Iからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、複合体を形成するポリペプチドの第2の領域は、CXCR4リガンド、より好ましくは配列RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)を有するT22ペプチド、V1ペプチド(配列番号26)、CXCL12ペプチド(配列番号27)、vCCL2ペプチド(配列番号28)および最適化されたEPI-X4配列(配列番号NO:29)またはEPI-X4配列(配列番号132)であり、EPI-X4配列または最適化されたEPI-X4配列は、ポリカチオン性ペプチド、好ましくは配列RKRKRK(配列番号77)を有するペプチドと融合物として提供されてもよい。いくつかの実施形態において、複合体の一部を形成するポリペプチドの第3の領域は、RKRKRK(配列番号77)、RRRRRR(配列番号78)、KKKKKK(配列番号79)、HHHHHH(配列番号80)、RHRHRH(配列番号81)、RKRKRKRK(配列番号82)、RKRHRK(配列番号83)、RKRHRH(配列番号84)またはRHRHRH(配列番号85)からなる群から選択される正に帯電したアミノ酸に富む領域である。
いくつかの実施形態において、バイパラトピックナノ粒子を調製する方法において用いられる第1および第2のタイプの複合体はいずれもCXCR4リガンドを含み、前記リガンドは配列RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)を有するT22ペプチド、および最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)またはEPI-X4配列(配列番号132)であり、最適化されたEPI-X4配列またはEPI-X4配列はポリカチオン性ペプチド、好ましくは配列RKRKRK(配列番号77)を有するペプチドとの融合物として提供され得る。
上述したバイパラトピックナノ粒子を調製する方法において、ナノ粒子の調製に用いられる2つのタイプの複合体の複合体またはポリペプチドは、熱力学的に非共有静電結合を形成しやすく、低塩緩衝液の条件で自発的に集合する。バイパラトピックナノ粒子を調製する方法において、2つの複合体の複数のコピーを集合させてバイパラトピックナノ粒子とするのに適した条件は、本発明の第8の態様による方法において複合体の複数のコピーを集合させてナノ粒子とするのに適切な条件と同様である。
一つの実施形態において、低塩緩衝液は、ポリソルベート80および/またはスクロースをさらに含む。さらに別の実施形態において、低塩緩衝液中のスクロースは、20~100mg/ml、より好ましくは50~90mg/ml、好ましくは70mg/mlの濃度である。
一つの実施形態において、低塩緩衝液は、ポリソルベート80(0.4mg/ml)、スクロース(80mg/ml)、クエン酸ナトリウム二水和物(2.7mg/ml)および無水クエン酸(0.146mg/ml)を含み、pHが約6.5のクエン酸緩衝液である。
一つの実施形態において、低塩緩衝液は、スクロース(70mg/ml)、氷酢酸(0.12mg/ml)、酢酸ナトリウム三水和物(2.45mg/ml)を含み、pHが約5.3の酢酸緩衝液である。
別の実施形態において、低塩緩衝液は、ポリソルベート80(0.05mg/ml)、スクロース(50mg/ml)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(0.22mg/ml)、リン酸二水素ナトリウム無水物(0.49mg/ml)を含み、pHが約7.2のリン酸緩衝液である。
好ましい実施形態において、バイパラトピックナノ粒子を得る方法において用いられる緩衝液は、A9緩衝液、B6緩衝液およびD1緩衝液を含む群から選択され、その組成は上記に記載されている。
本発明の好ましい実施形態において、本発明の第8の態様の方法(ii)において、複合体のポリペプチドの複数のコピーを集合させてナノ粒子とするのに適切な低塩緩衝液は、炭酸緩衝液、トリス緩衝液およびリン酸緩衝液からなる群から選択される。
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明の第8の態様の方法(ii)の低塩緩衝液は、100~300nMの濃度で重炭酸ナトリウムを含む炭酸塩緩衝液である。本発明の別の特に好ましい実施形態において、本発明の第8の態様の方法(ii)の低塩緩衝液は、10~30nMの濃度でトリスを含むトリス緩衝液である。本発明の第8の態様の方法(ii)の別の特に好ましい実施形態において、本発明の低塩緩衝液は、5~20mMの総濃度でNa2HPO4およびNaH2PO4を含むリン酸緩衝液である。
本発明のより一層好ましい実施形態において、本発明の第8の態様の方法(ii)の低塩緩衝液は、デキストロースおよび/またはグリセロールをさらに含む。
本発明のさらにより一層好ましい実施形態において、本発明の第8の態様の方法(ii)の低塩緩衝液は、6.5~8.5のpHを有する。
第10の態様において、本発明は、本発明による複合体の複数のコピーまたは本発明による拮抗的なCXCR4リガンドを含むポリペプチドの複数のコピーを含むナノ粒子、または上記で説明したいずれかの方法によって得られるナノ粒子に関する。これらのナノ粒子は、単一のタイプの複合体または単一のタイプのポリペプチドによって形成され、したがって、それらは単一特異性(すなわち、ナノ粒子を形成するすべての複合体またはポリペプチドが単一のタイプの標的分子に結合する)であり、およびモノパラトピック(すなわち、ナノ粒子を形成するすべての複合体またはポリペプチドが標的分子の同じ領域に結合する)であると理解されるであろう。
したがって、本発明のナノ粒子は、本発明の第6の態様の複合体の複数のコピーの集合体を含み、生理学的条件におけるそれらの共有的な結合および連結に有利に作用するそれらの構造中の領域間の静電相互作用により生成される。ナノ粒子を調製するための本発明の方法は、本発明の第6の態様の複合体の調製物または複合体のポリペプチドの調製物を低塩緩衝液に入れることを含むので、このようにして形成されたナノ粒子はまた、本発明の第6の態様の複合体の複数のコピーの集合体を含むと理解される。
特定の実施形態において、複合体は、本発明の第6の態様で定義される複合体として存在し、複合体の第2のポリペプチド領域は、複合体の第1のポリペプチド領域のN末端に位置するポリカチオン性ペプチドであり、複合体の第3のポリペプチド領域は、複合体の第1のポリペプチド領域のC末端に位置する。
いくつかの実施形態において、本発明によるナノ粒子は、ナノ粒子を形成する複合体のポリカチオン性ペプチドがCXCR4リガンドであることを特徴とする。いくつかの実施形態において、ナノ粒子を形成する複合体またはポリペプチドのポリカチオン領域は、配列RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)、V1ペプチド(配列番号26)、CXCL12(配列番号27)ペプチド、vCCL2(配列番号28)およびそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される。ナノ粒子が本発明による拮抗的なCXCR4リガンドを含むポリペプチドの複数のコピーの集合から生じるいくつかの実施形態において、拮抗的なCXCR4リガンドは最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)、EPI-X4配列(配列番号132)またはそれらの機能的に同等の変異体である。いくつかの実施形態において、EPI-X4配列(配列番号29)または最適化されたEPI-X4配列は、RKRKRK(配列番号77)配列に結合される。
第11の実施形態において、本発明は、本発明の第1のタイプの複合体および第2のタイプの複合体の複数のコピーを含むバイパラトピックナノ粒子であって、前記第1および第2のタイプの複合体のポリカチオン性ペプチドが異なるバイパラトピックナノ粒子に関する。いくつかの実施形態において、本発明によるナノ粒子は、ナノ粒子を形成する第1のタイプの複合体および第2のタイプの複合体のポリカチオン性ペプチドがCXCR4リガンドであることを特徴とする。いくつかの実施形態において、ナノ粒子を形成する複合体またはポリペプチドのポリカチオン領域は、配列RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)、V1ペプチド(配列番号26)、CXCL12ペプチド(配列番号27)、vCCL2(配列番号28)およびそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される。ナノ粒子が本発明による拮抗的なCXCR4リガンドを含むポリペプチドの複数のコピーの集合から生じるいくつかの実施形態において、拮抗的なCXCR4リガンドは最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)、EPI-X4配列(配列番号132)またはそれらの機能的に同等の変異体である。いくつかの実施形態において、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)またはEPI-X4配列(配列番号132)は、RKRKRK(配列番号77)配列に結合される。
第12の実施形態において、本発明は、本発明による複合体の複数のコピーを含むバイパラトピックナノ粒子であって、ポリカチオン領域がCXCR4リガンドであり、ポリペプチドの複数のコピーが本発明による拮抗的なCXCR4リガンドを含むバイパラトピックナノ粒子に関する。拮抗的なCXCR4リガンドを含む複合体およびポリペプチドは、CXCR4内の異なる領域に結合し、したがって、単一特異性であるにもかかわらず、それらはバイパラトピックであることが理解されよう。
いくつかの実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の複合体に含まれるCXCR4リガンドは、配列RRWCYRKCYKGYCYRKCR(配列番号25)、V1ペプチド(配列番号26)、CXCL12ペプチド(配列番号27)、vCCL2ペプチド(配列番号28)、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)、EPI-X4配列(配列番号132)およびそれらの機能的に同等の変異体を含むペプチドからなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、バイパラトピックナノ粒子を形成するポリペプチドに含まれるCXCR4拮抗的リガンドは、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)およびその機能的に同等の変異体である。いくつかの実施形態において、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)は、EPI-X4配列とRKRKRK配列(配列番号77)との融合から生じるポリカチオン領域の一部を形成して提供される。
一つの実施形態において、本発明によるバイパラトピックナノ粒子は、ポリカチオン性ペプチドが配列RRWCYRKCYKGYCYRKCRを含む本発明による複合体によって、およびCXCR4拮抗的リガンドが最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)であるCXCR4拮抗的リガンドを含むポリペプチドによって、任意にポリカチオン性配列、好ましくはRKRKRK配列(配列番号77)との融合ペプチドの一部を形成することによって形成される
本発明によるバイパラトピックナノ粒子の好ましい形態は、表3で定義される好ましい複合体のいずれか、および表5で定義されるアンタゴニストリガンドを含む好ましい融合タンパク質のいずれかによって形成される。バイパラトピックナノ粒子の一部を形成する第1のタイプの複合体(表3に例示されているもの)は、上記で定義した目的の剤を含まない。いくつかの実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の一部を形成する第1のタイプの複合体は、目的の剤、好ましくは本発明の複合体の文脈において上記で定義されたもののいずれか、より好ましくはフロクスウリジン、より一層好ましくはフロクスウリジン五量体を含む。
特定の実施形態において、「ナノ粒子のポリペプチド」、「ナノ粒子の第1のポリペプチド」、「ナノ粒子の第2のポリペプチド」、「ナノ粒子のポリカチオン性ペプチド」、「ナノ粒子のCXCR4リガンド」、「ナノ粒子の第3のポリペプチド」、「ナノ粒子のポリペプチド領域」、「ナノ粒子の目的の剤」、「目的の剤とナノ粒子との間の連結部分」または「正に帯電したペプチド配列」は、集合して本発明のナノ粒子となった複合体の部分であってナノ粒子の対応する構成要素を指す。したがって、構成要素は、本発明の複合体の文脈において上記で定義された通りであり、したがって、本発明の複合体の対応する部分としてのものである。
当業者は、本発明のバイパラトピックナノ粒子を含む本発明のナノ粒子のサイズが、1~1000nm、より好ましくは2.5~500nm、より一層好ましくは5~250nm、さらにより一層好ましくは10~100nmの範囲にあり得ることを理解するであろう。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、10~100nmの直径を有する。別の好ましい実施形態において、本発明のバイパラトピックナノ粒子は、10~100nmの直径を有する。
当業者に理解されるように、本発明のバイパラトピックナノ粒子は、本発明のナノ粒子の1つと見なされる。したがって、好ましい実施形態において、「本発明のナノ粒子」または「ナノ粒子」に言及する場合、本明細書で定義されるようなバイパラトピックナノ粒子もまた指定される。
特定の実施形態において、本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6および第7の態様に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明の第8の態様に等しく適用可能である。別の実施形態において、本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の態様に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明の第9の態様に等しく適用可能である。
VIII-本発明の複合体およびナノ粒子の医薬的使用
第12の態様において、本発明は、医薬における使用のための本発明による複合体またはナノ粒子に関する。別の態様において、本発明は、本発明の複合体の一部を形成する治療薬に応答する疾患に罹患している患者の治療のための、本発明による複合体またはナノ粒子の使用に関する。
本明細書で用いられる場合、「治療する(treat)」、「治療(reatment)」および「治療する(treating)」という用語は、状態、障害または疾患の進行、重症度および/または継続期間の軽減もしくは改善、または1つ以上の症状(好ましくは1つ以上の認識可能な症状)、状態、障害または疾患の改善を指す。「治療する」、「治療」および「治療する」という用語はまた、必ずしも患者によって認識可能ではない状態、障害または疾患の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに、「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、物理的に、例えば認識可能な症状の安定化によって、生理的に、例えば身体的なパラメータの安定によって、またはそれらの両方によって状態、障害または疾患の進行を阻害することを指す。「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、状態、障害または疾患の軽減または安定化も指し得る。
当業者は、本発明の複合体またはナノ粒子は、医薬において使用することにより、治療反応を誘導するために患者に投与することができることを理解するであろう。
治療反応には、患者が罹患している病的状態または疾患の原因の抑制、軽減または阻止;状態または疾患の兆候の除去、軽減、阻止または改善;または患者における状態または疾患の進行の減衰、停止または減速が含まれる。
当業者は、医薬における使用に適した本発明の複合体またはナノ粒子が、薬学的に許容可能な担体を伴って提示され得ることを理解するであろう。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、非毒性、不活性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意のタイプの製剤補助剤を意味する。Remington's Pharmaceutical Sciences. Ed. by Gennaro, Mack Publishing, Easton, Pa., 1995には、医薬組成物の処方に用いられる様々な担体およびその調製のための既知の技術が開示されている。
したがって、本発明の複合体またはナノ粒子および薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、医薬組成物である。
本発明の医薬組成物は、経口経路および非経口経路を含む当技術分野で知られている任意の手段によって患者に投与することができる。そのような実施形態によれば、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内への注射)によって、直腸に、膣に、局所的に(粉末、クリーム、軟膏または滴等による)、または吸入(スプレー等による)によって投与され得る。
VII.A-癌の治療における本発明の複合体またはナノ粒子の使用
本発明の別の実施形態は、癌の治療における使用のための本発明の複合体もしくはナノ粒子またはそれらの対応する医薬組成物であって、複合体のポリペプチドまたは少なくともナノ粒子のポリペプチドが細胞表面の受容体と特異的に相互作用して細胞への複合体またはナノ粒子の内在化を促進することができる配列を含み、前記受容体を発現する細胞が癌中に存在する腫瘍細胞である複合体、ナノ粒子または医薬組成物に関する。
特定の実施形態において、使用のための前記複合体の目的の剤、または使用のための前記ナノ粒子の目的の剤、または使用のための対応する医薬組成物の複合体もしくはナノ粒子の目的の剤は、
(i)化学療法剤、
(ii)細胞毒性ポリペプチド、
(iii)抗血管新生ポリペプチド、
(iv)腫瘍抑制遺伝子によってコードされるポリペプチド、
(v)アポトーシス促進性ポリペプチド、
(vi)抗転移活性を有するポリペプチド、
(vii)腫瘍に対する免疫応答を活性化することができるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、
(viii)抗血管新生分子、および
(ix)毒素
からなる群から選択される治療薬である。
本明細書で用いられる場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療する(treating)」という用語は、癌の進行、重症度および/または継続期間の軽減もしくは改善、または1つ以上の癌の症状(好ましくは、1つ以上の認識可能な症状)の改善を指す。「治療する」、「治療」および「治療する」という用語はまた、腫瘍の成長等、必ずしも患者によって認識可能ではない、癌の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに、「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、物理的に、例えば認識可能な症状の安定化によって、生理的に、例えば身体的なパラメータの安定化によって、またはそれらの両方によって、癌の進行を阻害することを指す。「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、腫瘍サイズまたは癌性細胞数の減少または安定化も指し得る。
「癌」という用語は、他の組織、器官または一般に生体の離れた部位に浸潤または拡散(転移)する可能性のある、異常な制御されていない細胞の成長および増殖(新生組織形成)を伴う一群の疾患を指し;転移は、悪性の癌および癌性腫瘍の特徴の1つである。癌細胞の異常な成長および/または増殖は、それらの正常な生理機能を変化させる遺伝的要因と環境要因の組み合わせの結果である。癌性細胞の成長および/または増殖の異常は、影響を受ける細胞型、組織および器官の機能不全または機能喪失によって、生理学的障害、および多くの場合、個体の死をもたらす。
「癌」という用語には、限定されないが、腺腫、血管肉腫、星状細胞腫、上皮性腫瘍、胚細胞腫、グリア芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、肝胆道癌、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫および奇形腫等の腫瘍に加えて;限定されないが、乳癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、心臓癌、小腸癌、脾臓癌、腎臓癌、膀胱癌、頭部癌、頸部癌、皮膚癌、骨癌、骨髄腫、血液癌、胸腺癌、子宮癌、睾丸癌、肝胆道系癌および肝臓癌が含まれる。さらに、この用語には、末端黒子型黒色腫、光線角化症腺癌(actinic keratosis adenocarcinoma)、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星状細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管癌腫、癌腫、癌肉腫、胆管癌、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣系肉腫、ユーイング肉腫、限局性結節性過形成、胚細胞腫瘍、グリア芽腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝細胞腺腫症、肝細胞癌、肝胆汁性癌、膵島細胞腫、上皮内癌、扁平上皮細胞上皮内癌、潤性扁平上皮癌、大細胞癌、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽細胞腫、髄様上皮腫、粘膜表皮癌、神経芽細胞腫、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、骨肉腫、漿液性乳頭状腺癌、下垂体部腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽細胞腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、小赤血球癌(microcytic carcinoma)、軟部組織癌、ソマトスタチン産生腫瘍、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、未分化癌、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌、ビポーマ(vipoma)、腎芽細胞腫、脳内癌、頭頸部癌、直腸癌、星状細胞腫、神経膠芽細胞腫、小赤血球癌および非小赤血球癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性前立腺癌、アンドロゲン依存性転移性前立腺癌および乳癌が含まれる。
したがって、本発明の好ましい実施形態において、治療薬は、
(i)化学療法剤、
(ii)細胞毒性ポリペプチド、
(iii)抗血管新生ポリペプチド、
(iv)腫瘍抑制遺伝子によってコードされるポリペプチド、
(v)アポトーシス促進性ポリペプチド、
(vi)抗転移活性を有するポリペプチド、
(vii)腫瘍に対する免疫応答を活性化することができるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、
(viii)抗血管新生分子、および
(ix)毒素
からなる群から選択される。
本発明の特定の実施形態において、治療薬は、BAK、PUMA、GW-H1のBH3ドメイン、およびジフテリア毒素Iの活性セグメント、およびシュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)の毒素Aからなる群から選択される抗腫瘍ペプチドである。
本明細書で用いられる「BAK」は、抗アポトーシスタンパク質を不活性化し、ミトコンドリア膜を透過性にし、その結果のチトクロームCおよび他のミトコンドリア細胞死因子の放出を介するカスパーゼ依存性アポトーシス経路によってプログラムされた細胞死を誘発する、Bcl-2タンパク質ファミリーに属するよく知られたアポトーシス促進因子を指す[Llambi, F. et al. 2011. Mol. Cell, 44:517-31において見られる]。一つの実施形態において、BAKは、全長BAK(配列番号67)を指す。別の実施形態において、BAKは、機能的BH3ドメイン(配列番号68)を含むその任意の短縮型を指す。
本明細書で用いられる場合、「PUMA」は、アポトーシス促進性および抗アポトーシス性のBcl-2ファミリーのタンパク質と相互作用することによって細胞死を誘発するBH3(Bcl-2ホモロジー3)のみのタンパク質(BH3-only protein)である配列番号69に対応する完全な配列によって特徴付けられるタンパク質を指す。
本明細書で用いられる場合、GW-H1は、両親媒性ヘリックスに折り畳まれることによってその細胞溶解活性を発揮する配列番号46の配列を有するポリペプチドを指す。
ジフテリア毒素I(配列番号70)(コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)種の細菌によって産生される)およびP.aeruginosaの外毒素(配列番号71)は、ADPリボシル化毒素のファミリーに属する。いずれの毒素も真核生物の伸長因子-2(eEF-2)に作用するタンパク質であり、それらを包含する細胞の翻訳活性を基本的に阻害し、アポトーシスを誘導する。いずれの毒素の構造も、受容体結合ドメイン(細胞の表面受容体に結合してエンドサイトーシスを誘導する;ジフテリア毒素の場合はヘパリン結合表皮成長因子前駆体、外毒素Aの場合はCD91)、転位ドメイン、およびeEF-2への作用を実行する触媒ドメイン(概要はShapira, A. & Benhar, I., 2010, Toxins, 2:2519-2583に記載されている)を提示する。
本発明のより一層好ましい実施形態において、本発明の複合体または本発明のナノ粒子のポリカチオン性ペプチドはCXCR4リガンドであり、本発明の複合体またはナノ粒子によって治療される標的となる癌は、CXCR4受容体を発現する細胞を含むことにより特徴付けられる。より好ましい実施形態において、CXCR4を発現または過剰発現する癌細胞は、転移性幹細胞である。本明細書で用いられる「転移性幹細胞」という用語は、転移の開始および転移の維持に関与する細胞を指す。
本発明のより一層好ましい実施形態において、本発明の複合体またはナノ粒子のCXCR4リガンドは、T22ペプチド(配列番号25)、V1ペプチド(配列番号26)、CXCL12ペプチド(配列番号27)、vCCL2ペプチド(配列番号28)、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)、EPI-X4配列(配列番号132)またはそれらの機能的に同等の変異体を含む群から選択される。
本発明の別のより好ましい実施形態において、本発明の複合体またはナノ粒子により治療される癌は、膵臓癌および結腸直腸癌からなる群から選択される。
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の複合体およびナノ粒子は、癌性腫瘍の治療に用いられ、該癌性腫瘍は原発腫瘍または転移である。
特定の実施形態において、本発明の上記の態様で説明されたすべての用語および実施形態は、本発明の第12の態様に等しく適用可能である。
VII.B-細菌感染症の治療における本発明の複合体またはナノ粒子の使用
本発明の別の実施形態は、細菌感染によって引き起こされる疾患の治療における使用のための本発明の複合体またはナノ粒子に関する。
本明細書で用いられる場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療する(treating)」という用語は、細菌感染の進行、重症度および/または継続期間の軽減もしくは改善、または1つ以上の細菌感染の症状(好ましくは、1つ以上の認識可能な症状)の改善を指す。「治療する」、「治療」および「治療する」という用語はまた、細菌毒素の存在等、必ずしも患者によって認識可能ではない、細菌感染の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに、「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、物理的に、例えば認識可能な症状の安定化によって、生理的に、例えば身体的なパラメータの安定化によって、またはそれらの両方によって、細菌感染の進行を阻害することを指す。「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、細菌細胞数の減少または安定化も指し得る。
本明細書で用いられる「細菌」という用語は、細菌ドメイン(domain Bacteria)の原核生物を指す。本発明の方法において用いることができる細菌属の非限定的な例としては:アクチノマイセス(Actinomyces)、バチルス(Bacillus)、バクテリオイデス(Bacteroides)、バルトネラ(Bartonella)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ(Brucella)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア(Chlamydia)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、コキシエラ(Coxiella)、エルリチア(Ehrlichia)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリヒア(Eschericia)、フランシセラ(Francisella)、ハモフィラス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、モラクセラ(Moraxella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ネイセリア(Neisseria)、ノカルディア(Nocardia)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトバチルス(Streptobacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネマ(Treponema)、ウレアプラスマ(Ureaplasma)、ビブリオ(Vibrio)およびエルシニア(Yersinia)が挙げられる。細菌ドメインの個々の原核生物は細菌と呼ばれる。
本発明は、限定されないが、中でもN.ゴノレア(N. gonorrhea)およびN.メニンギティデス(N. meningitides)を含むネイセリア種(Neisseria spp.)、ストレプトコッカス・ピオゲネ(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans);ハモフィラス・ダクレイ(Haemophilus ducreyi);ブランハメラ・カタラハリス(Branhamella catarrhalis)としても知られるM.カタラリス(M. catarrhalis)を含むモラクセラ種(Moraxella spp.);B.ペルツシス(B. pertussis)、B.パラペルツシス(B. parapertussis)およびB.ブロンキセプティカ(B. bronchiseptica)を含むボルデテラ種(Bordetella spp.)、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボビス(M. bovis)、M.レプラ(M. leprae)、M.アビウム(M. avium)、M.パラツベルクロシス(M. paratuberculosis)、M.スメグマティス(M. smegmatis)を含むマイコバクテリウム種(Mycobacterium spp.);L.ニューモフィラ(L. pneumophila)を含むレジオネラ種(Legionella spp.)、腸毒性E.コリ(enterotoxic E. coli)、腸管出血性E.コリ(enterohemorragic E. coli)および腸管病原性E.コリ(enteropathogenic E. coli)を含むエシェリヒア種(Escherichia spp.)、V.コレラ(V. cholera)を含むビブリオ種(Vibrio spp.)、S.ソネイ(S. sonnei)、S.ディセンテリア(S. dysenteriae)、S.フレクスネリ(S. flexnerii)を含むシゲラ種(Shigella spp.);Y.エンテロコリティカ(Y. enterocolitica)、Y.ペスティス(Y. pestis)、Y.シュードツベルクロシス(Y. pseudotuberculosis)を含むエルシニア種(Yersinia spp.);C.ジェジュニ(C. jejuni)を含むカンピロバクター種(Campylobacter spp.)、S.ティフィ(S. typhi)、S.エンテリカ(S. enterica)およびS.ボンゴリ(S. bongori)を含むサルモネラ種(Salmonella spp.);L.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)を含むリステリア種(Listeria spp.);H.ピロリ(H. pylori)を含むヘリコバクター種(Helicobacter spp.)、P.アエルギノサ(P. aeruginosa)を含むシュードモナス種(Pseudomonas spp.);S.アウレウス(S. aureus)、S.エピデルミディス(S. epidermidis)を含むスタフィロコッカス種(Staphylococcus spp.);E.ファエカリス(E. faecalis)、E.ファエシウム(E. faecium)を含むエンテロコッカス種(Enterococcus spp.);C.テタニ(C. tetani)、C.ボツリナム(C. botulinum)、C.ディフィシレ(C. difficile)を含むクロストリジウム種(Clostridium spp.)、B.アントラシス(B. anthracis)を含むバチルス種(Bacillus spp.);C.ジフテリア(C. diphtheria)を含むコリネバクテリウム種(Corynebacterium spp.)、B.ブルグドルフェリ(B. burgdorferi)、B.ガリニ(B. garinii)、B.アフゼリ(B. afzelii)、B.アンデルソンフィ(B. andersonfi)、B.ヘルムシ(B. hermsii)を含むボレリア種(Borrelia spp.);E.エクイ(E. equi)を含むエルリチア種(Ehrlichia spp.)およびヒト顆粒球エルリチア症病原体;R.リケットシ(R. rickettsii)を含むリケッチア種(Rickettsia spp.);C.トラコマティス(C. trachomatis)、クラミジア・ニューモニア(Chlamydia pneumoniae)、C.シッタシ(C. psittaci)を含むクラミジア種(Chlamydia spp.);L.インテロガンス(L. interrogans)を含むレプトスピラ種(Leptospira spp.);T.パリダム(T. pallidum)、T.デンティコラ(T. denticola)、T.ヒオディセンテリア(T. hyodysenteriae)を含むトレポネマ種(Treponema spp.)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)、S.ニューモニア(S. pneumoniae)を含むストレプトコッカス種(Streptococcus spp.)、H.インフルエンザB型(H. influenzae type B)および分類不可能なH.インフルエンザ(non typeable H. influenza)を含むハモフィラス種(Haemophilus spp.)等の細菌の感染を治療するための融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子が企図される。
VII.C-ウイルス感染症の治療における本発明の複合体またはナノ粒子の使用
本発明の別の実施形態は、ウイルス感染によって引き起こされる疾患の治療における使用のための本発明の複合体またはナノ粒子であって、ポリカチオン性ペプチドが、感染を引き起こすウイルスに感染した細胞の細胞表面の受容体と特異的に相互作用することができ、介在するポリペプチド領域が抗ウイルス剤である複合体またはナノ粒子に関する。
本明細書で用いられる場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療する(treating)」という用語は、ウイルス感染の進行、重症度および/または継続期間の軽減もしくは改善、または1つ以上のウイルス感染の症状(好ましくは、1つ以上の認識可能な症状)の改善を指す。「治療する」、「治療」および「治療する」という用語はまた、ウイルス力価等、必ずしも患者によって認識可能ではない、細菌感染の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに、「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、物理的に、例えば認識可能な症状の安定化によって、生理的に、例えば身体的なパラメータの安定化によって、またはそれらの両方によって、ウイルス感染の進行を阻害することを指す。「治療する」、「治療」および「治療する」とはまた、ウイルス力価の低下または安定化も指し得る。
本明細書で用いられる「ウイルス」という用語は、生物の生細胞内でのみ複製することができる小さな感染性病原体を指す。本発明の方法において用いられ得るウイルスファミリーの非限定的な例としては、アデノウイルス科(Adenoviridae)、アフリカブタ熱様ウイルス、アレナウイルス科(Arenaviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アストロウイルス科(Astroviridae)、バキュロウイルス科(Baculoviridae)、ビルナウイルス科(Birnaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、カリシウイルス科(Caliciviridae)、サーコウイルス科(Circoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、デルタウイルス(Deltavirus)、フィロウイルス科(Filoviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ヘペウイルス科(Hepeviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ピコルナウイルス科(Picomaviridae)、ポックスウイルス科(Poxyviridae)、レオウイルス科(Reoviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)が挙げられる。
本発明の融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子による治療に適しているウイルス感染の例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、HSV1またはHSV2のようなヒトヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、特にヒトEpstein-Barrウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス等の肝炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス等のパラミクソウイルス、風疹ウイルス、はしかウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、インフルエンザウイルス、ロタウイルス等のウイルスの感染が挙げられる。
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明の融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子の抗ウイルス剤は、
(i)細胞毒性ポリペプチド、
(ii)アポトーシス促進性ポリペプチド、
(iii)自殺遺伝子によってコードされるポリペプチド、および
(iv)抗レトロウイルスポリペプチド
からなる群から選択される。
細胞毒性ポリペプチド(i)、アポトーシス促進性ポリペプチド(ii)および自殺遺伝子によってコードされるポリペプチドは、融合タンパク質に対応するセクションにおいて既に説明されている。
抗レトロウイルス剤は、抗菌剤の抗ウイルス剤クラスのサブタイプの1つである。抗レトロウイルス剤は、レトロウイルスによって引き起こされるウイルス感染症の治療に特に用いられる。レトロウイルスは、いくつか例を挙げると、アルファレトロウイルス(Alpharetrovirus)、ベータレトロウイルスおよびレンチウイルス(Lentivirus)等の属を含むレトロウイルス科(Retroviridae)のウイルスを含む。それらは、一本鎖のプラス鎖RNAゲノムウイルスであることが特徴である。レトロウイルスは、独自の逆転写酵素を介して、宿主細胞のゲノムに組み込まれるレトロウイルスのゲノムの二本鎖DNAコピーを生成する。当業者は、「抗レトロウイルス剤」が、任意の段階でレトロウイルスの通常の複製サイクルを阻害することができる任意の分子または化合物を含むことを理解するであろう。したがって、本明細書で用いられる抗レトロウイルスポリペプチド(iv)は、抗レトロウイルス特性を有するポリペプチドを指す。
本発明に適した抗レトロウイルスポリペプチドは、例えば、「融合阻害剤」としても知られる「侵入阻害剤」であり、宿主細胞へのレトロウイルスの結合、融合および侵入を阻害するペプチドである。このグループの例は、HIV-1の融合機構と競合する生体模倣ペプチドのエフビルチド、およびケモカイン受容体CCR2およびCCR5をブロックするペプチドのペプチドTである。
侵入阻害剤として含まれるのは、レトロウイルスが細胞と融合するために用いられる受容体に特異的な抗体である。抗体による遮断に適したこれらの受容体の非限定的な例は、CD4、CCR2、CCR5およびCXCR4である。
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、「抗原」と呼ばれる特定のタンパク質に対して特異的な結合活性を示す糖タンパク質を指す。「抗体」という用語は、全長のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、またはそれらのフラグメントを含み、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト由来の抗体を含む。「モノクローナル抗体」は、単一部位または抗原「決定基」に対して向けられた均質で特異性の高い抗体集団である。「ポリクローナル抗体」には、異なる抗原決定基に対して向けられた不均質な抗体集団が含まれる。
本明細書で用いられる場合、本発明に適した抗体には、全長の抗体(例えばIgG)だけでなく、その抗原結合フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、非ヒト由来の抗体、組換え抗体、および遺伝子工学技術によって産生される免疫グロブリンに由来するポリペプチド、例えば、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、重鎖またはそのフラグメント、軽鎖またはそのフラグメント、VHまたはその二量体、VLまたはその二量体、ジスルフィド架橋によって安定化されたFvフラグメント(dsFv)、一本鎖可変領域ドメインを有する分子(Abs)、ミニボディ、scFv-Fc、および抗体を含む融合タンパク質、または所望の特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構造が含まれる。本発明の抗体はまた、二重特異性抗体であり得る。抗体フラグメントは、抗原結合フラグメントを指し得る。抗体としては、任意のクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG(またはそれらのサブクラス)およびIgMの抗体が挙げられ、抗体は特定のクラスである必要はない。
したがって、本発明のより一層好ましい実施形態は、HIV感染症の治療における使用のための本発明の融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子であって、ポリカチオン性ペプチドがCXCR4リガンドであり、細胞がHIV感染細胞である融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子に関する。
本発明のさらにより一層好ましい実施形態は、ウイルス感染の治療における使用のための、本発明の融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子であって、CXCR4リガンドが配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8ならびにそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞またはナノ粒子に関する。
VII.D-神経変性疾患の治療における本発明の複合体またはナノ粒子の使用
本発明の別の実施形態において、本発明は、神経変性疾患の治療における使用のための本発明の複合体またはナノ粒子であって、ポリカチオン性ペプチドが血液脳関門を通過することができるペプチドであり、介在するポリペプチド領域がシャペロンまたはタンパク質集合の阻害剤である複合体またはナノ粒子に関する。
タンパク質集合は、細胞内または細胞外にかかわらず、誤って折り畳まれたタンパク質の蓄積に起因する生物学的現象である。得られるタンパク質集合体は疾患を引き起こす可能性があり、実際、アミロイドーシスとして知られる幅広い疾患に関与していることが分かっている。アミロイドーシスには、ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病およびプリオン病のようないくつかのよく研究されている神経変性疾患が含まれる。
適切なシャペロンまたはタンパク質集合の阻害剤は、上記で定義された通りである。本発明による融合タンパク質、ナノ粒子、ベクターまたは宿主細胞を用いて治療することができる疾患としては、アルツハイマー病、ピック病、α1-アンチトリプシン欠乏症、パーキンソン病およびその他のシヌクレイノパチー、クロイツフェルト-ヤコブ病、緑内障における網膜神経節細胞変性、脳β-アミロイドーシス血管症、プリオン病、タウオパシー、前頭側頭葉硬化症、II型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病および他のトリヌクレチド反復障害、家族性デンマーク認知症、家族性イギリス認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、アレクサンダー病、セイピノパシー、家族性アミロイドーシス神経障害、老人性全身性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、透析アミロイドーシス、封入体筋炎/ミオパシー、白内障、ロドプシン突然変異を伴う色素性網膜炎、甲状腺髄様癌、心臓心房アミロイドーシス、下垂体プロラクチノーマ、遺伝性格子状角膜変性症、皮膚苔癬アミロイドーシス、マロリー体、角膜ラクトフェリンアミロイドーシス、肺胞性タンパク症、歯原性腫瘍アミロイド、精嚢アミロイド、アポリポタンパク質C2アミロイドーシス、アポリポタンパク質C3アミロイドーシス、Lect2アミロイドーシス、インスリンアミロイドーシス、ガレクチン-7アミロイドーシス(原発性限局性皮膚アミロイドーシス)、コルネオデスモシンアミロイドーシス、エンフビルチドアミロイドーシス、嚢胞性線維症、鎌状赤血球病、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、ALアミロイドーシス、AHアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、ApoAIアミロイドーシス、ApoAIIアミロイドーシス、ApoAIVアミロイドーシスおよびフィンランド型家族性アミロイドーシスが挙げられる。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、神経変性疾患の治療における使用のための本発明の複合体またはナノ粒子であって、介在するポリペプチド領域がシャペロンまたはタンパク質集合の阻害剤であり、血液脳関門を通過することができるポリカチオン性ペプチドが、Seq-1-7、Seq-1-8およびAngiopep-2-7からなる群から選択される。
IX-標的細胞を画像化する方法
別の態様において、本発明は、本発明の複合体またはナノ粒子を用いることにより、細胞サンプル内の特定の細胞または細胞群の存在を検出することを可能にする方法に関する。
したがって、第13の態様において、本発明は、本発明の第6の態様による複合体の1つ以上の構成要素、または第9の態様によるナノ粒子の1つ以上の構成要素に対する特異的結合部位を含む標的細胞の画像化の方法であって、
(i)前記細胞を含むサンプルと、本発明の第6の態様による複合体または本発明の第10または第11の態様によるナノ粒子とを、前記複合体または前記ナノ粒子と前記細胞とが結合するのに適切な条件下で接触させことであって、前記目的の剤が造影剤である、接触させること、および
(ii)前記造影剤により提供される信号を検出することにより細胞を画像化すること
を含む方法に関する。
本明細書で用いられる「画像化の方法」という表現は、標的細胞を含むサンプルの画像の部分と、前記細胞を含まない画像の部分との間のコントラストを増大させることによって、細胞サンプル中の標的細胞を視覚化することを可能にする任意の方法を指す。ここでいうコントラストの増大は、上記のセクションIV-E.2で定義されているように、一般的に造影剤によって媒介される。特定の実施形態において、造影剤は、前記セクションで指定されたもののいずれかである。
本明細書で用いられる「標的細胞」という用語は、該標的細胞の表面の特異的結合部位の存在に関連する少なくとも1つの目的の特徴を示す細胞を指す。特定の実施形態において、前記細胞は、本発明の第6の態様で特定される細胞受容体を含む細胞のいずれかである。
好ましい実施形態において、細胞は、CXCR4受容体を発現または過剰発現する。別の好ましい実施形態において、標的細胞は、本発明の第6の態様の「癌」の定義で指定された癌のいずれかの癌細胞である。好ましくは、前記細胞は、乳癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、腎臓癌、脳腫瘍、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病からの細胞である。
本明細書で用いられる「結合部位」という用語は、結合対の任意の対を指し、結合対の他の部分が本発明の複合体またはナノ粒子の構成要素の1つであり、好ましくは本発明の複合体またはナノ粒子の第2のポリペプチドである。「結合対」という表現は、別の分子と相互作用して結合し、結合複合体をもたらすことができる分子であって、第1および第2の構成要素が水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス結合、イオン結合等の非共有結合またはそれらの組み合わせによって互いに結合する分子を指す。結合対は、タンパク質/タンパク質相互作用、ペプチド/タンパク質相互作用、タンパク質領域/タンパク質相互作用、抗原/抗体、抗原/抗体フラグメントまたはハプテン/抗ハプテン等の任意のタイプの相互作用の一部であり得る。「結合している(binding)」または「結合した(bound)」という用語は、本発明の第2の態様で定義されている。
特定の実施形態において、結合部位は、上記のセクションIV-Bで指定された目的の標的のいずれかである。別の特定の実施形態において、結合部位は細胞受容体である。特定の実施形態において、結合部位は上記のセクションIV-Bで指定されたものから選択される細胞受容体である。特定の実施形態において、結合部位はCXCR4受容体である。当業者に理解されるように、前記目的の標的および細胞受容体は、本発明の複合体または本発明のナノ粒子の第2のポリペプチドの結合に必ずしも特異的ではない。目的の標的は、本発明の複合体またはナノ粒子の任意の構成要素の結合、または複合体またはナノ粒子の複数の構成要素の結合にも特異的であり得る。
特定の実施形態において、標的細胞は2つ以上の結合部位を含み、結合部位のいくつかは本発明の複合体または本発明のナノ粒子の1つの構成要素の結合に特異的であり、残りの結合部位は少なくとも別の構成要素の結合に特異的である。
当業者に理解されるように、本発明の複合体またはナノ粒子の構成要素は:本発明の複合体または本発明のナノ粒子の第1、第2および第3のポリペプチド領域、該ポリペプチド領域の間の連結部分、該ポリペプチド領域の間のプロテアーゼ切断部位、本発明のポリペプチドまたはナノ粒子の目的の剤、または該目的の剤と本発明の複合体または本発明のナノ粒子の複合体のポリペプチドとの間の連結部分であり得る。
特定の実施形態において、標的細胞の結合部位と結合する複合体またはナノ粒子の1つ以上の構成要素は、本発明の複合体またはナノ粒子の第2のポリペプチドであり、該ポリペプチドは本発明の第6の態様において定義されたものである。特定の実施形態において、第2のポリペプチドはポリカチオン性ペプチドである。好ましい実施形態において、ポリカチオン性ペプチドはCXCR4リガンドである。より好ましい実施形態において、ポリカチオン性ペプチドは、セクションIV-Bの(i)で指定されたCXCR4リガンドの群から選択されるCXCR4リガンドである。
本発明の画像化方法の好ましい実施形態において、標的細胞はCXCR4を発現または過剰発現し、本発明の複合体またはナノ粒子の1つ以上の構成要素はポリカチオン性ペプチドであり、CXCR4のリガンドである。好ましい実施形態において、リガンドは、セクションIV-Bの(i)で指定されたCXCR4リガンドから選択される。
当業者に理解されるように、ナノ粒子がバイパラトピックナノ粒子である場合、標的細胞の結合部位と結合するナノ粒子の2つの異なる複合体の1つ以上の構成要素は、本発明のバイパラトピックナノ粒子を形成する各複合体の第2のポリペプチドであり、該ポリペプチドはバイパラトピックナノ粒子の異なる複合体間で異なり、本発明の第6の態様で定義されるものから選択される。
特定の実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の2つの複合体のうちの1つの第2のポリペプチド領域はポリカチオン性ペプチドである。好ましい実施形態において、ポリカチオン性ペプチドはCXCR4リガンドである。より好ましい実施形態において、ポリカチオン性ペプチドは、セクションIV-Bの(i)で指定されたCXCR4リガンドの群から選択されるCXCR4リガンドである。別の特定の実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の両方の複合体の第2のポリペプチド領域はポリカチオン性ペプチドである。好ましい実施形態において、両方の複合体のポリカチオン性ペプチドはCXCR4リガンドである。より好ましい実施形態において、両方の複合体のポリカチオン性ペプチドは、セクションIV-Bの(i)で指定されたCXCR4リガンドの群から選択されるCXCR4リガンドであり、それぞれのポリカチオン性ペプチドは異なる。好ましい実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の1つの複合体のポリカチオン性ペプチドは、T22ペプチド(配列番号25、RRWCYRKCYKGYCYRKCR)である。別の好ましい実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の1つの複合体のポリカチオン性ペプチドは、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)である。より好ましい実施形態において、バイパラトピックナノ粒子の1つの複合体のポリカチオン性ペプチドは、T22ペプチド(配列番号25、RRWCYRKCYKGYCYRKCR)であり、バイパラトピックナノ粒子の他の複合体のポリカチオン性ペプチドは、最適化されたEPI-X4配列(配列番号29)である。
本明細書で用いられる「サンプル」または「生物学的サンプル」という用語は、生物、好ましくは被験体から単離された生物学的材料を指す。本発明の第13の態様の生物学的サンプルは、サンプル中に存在する標的細胞を検出するのに適した任意の生物学的材料を含む。生物学的サンプルは、被験体の細胞および/または非細胞材料を含んでもよい。サンプルは、例えば、組織生検、固形腫瘍生検、血液、唾液、脳脊髄液、尿、便、骨髄、乳頭吸引物、固形腫瘍生検、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、糞便、頬側または頬側咽頭の拭い液、精液、手術試料、生検から得られた試料、およびバイパラフィンに包埋された組織サンプル等の任意の適切な組織または生体液から単離することができる。
サンプルは、本発明の複合体または本発明のナノ粒子と、細胞の結合部位と前記複合体または前記ナノ粒子との結合に適切な条件下で接触させられる。「結合に適切な条件下」という表現は、該条件が、好ましくは複合体またはナノ複合体を、BSAまたはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の細胞に対して毒性ではない溶液で希釈することを含むことを意味する。これらの追加の剤は、非特異的なバックグラウンドの低減にも役立つ傾向がある。
「適切な(suitable)」または「適した(adequate)」条件とはまた、インキュベーションが、効果的な結合を可能にするのに十分な温度または期間であるということを意味する。本発明の複合体またはナノ粒子は、任意の適切な時間、例えば少なくとも5分、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間インキュベートされる。それらは、細胞の生存および結合部位への複合体またはナノ粒子の結合を可能にする温度で行われる。好ましくは、前記温度は15~45℃、好ましくは25℃、より好ましくは37℃、または室温である。
インキュベーション後、サンプル中の過剰の複合体および/またはナノ粒子は、この当技術分野の専門家によってよく知られている方法であって、PBS等の適切な媒体の使用を含む方法によって除去される。培地には、Tween20等の界面活性剤が含まれてもよい。サンプル中の過剰の複合体および/またはナノ粒子は、任意の適切な時間、例えば、各洗浄について1~30分または3~10分で洗浄することができる。洗浄は、前記細胞の担体の穏やかな振とうまたは揺り動かしを含んでもよい。洗浄温度は、細胞が生存することができ、結合が破壊されないような温度である。例えば、温度は15~45℃であり得、好ましくは25℃、より好ましくは37℃、または室温であり得る。細胞内の結合部位に結合したポリペプチドによって形成される、すなわち標的細胞の結合部位に結合した本発明の複合体またはナノ粒子によって形成される複合体を洗浄するための適切なプロトコルは、当技術分野においてよく知られている。
サンプル中の細胞のイメージングには、サンプル中に存在する複合体またはナノ複合体に存在するイメージング剤によって放出される信号の検出が含まれる。当業者に理解されるように、洗浄工程の後、複合体およびナノ複合体は、主に、サンプル中に存在する標的細胞の結合部位と結合したものである。したがって、サンプル中の造影剤によって放出される信号を間接的に検出することにより、サンプル中に存在する標的細胞を検出することが可能になる。造影剤を検出するために用いられる技術は、用いられる造影剤に依存するであろう。このような技術は、当技術分野の専門家によってよく知られており、特定の造影剤を検出することができるカメラに結合された顕微鏡の使用を含み得る。例えば、造影剤が蛍光剤である場合、上記技術は蛍光顕微鏡の使用を含み得、造影剤が放射性ヌクレオチドである場合、上記技術は放射線ルミネセンス顕微鏡または単一細胞放射線ルミネセンス顕微鏡の使用を含み得る。特定のタイプの造影剤を検出するのに適した方法は、当技術分野で周知であり、このセクションで指定される造影剤の各グループについて、セクションIV~B.1に示されるタイプのものである。
特定の実施形態において、画像化方法は、サンプル中に存在する標的細胞、およびサンプル中の前記標的細胞の量を決定することを可能にする。当業者に理解されるように、画像化方法は、サンプル中に存在する標的細胞の量を、コントロールサンプル中に存在する細胞の量と比較することを可能にする。
特定の実施形態において、上述した本発明の態様で説明されたすべての用語および実施形態は、本発明の第13の態様に等しく適用可能である。
X-標的ペプチドに結合するポリペプチドを同定する方法
本発明の第1の態様によるポリペプチドは、ループ領域AB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKの1つ以上に挿入される異種ペプチドを提示することができる。これらの変異体ポリペプチドは、異なるポリペプチドがライブラリーの異なるメンバーによって提示されるペプチドライブラリーとして提供することができる。これらのライブラリーは、標的ポリペプチドに結合するライブラリーのメンバーを選択し、結合に関与するポリペプチドライブラリーのメンバー内のペプチドの配列を決定することによって、標的ペプチドと結合することができるペプチドの同定に用いることができる。したがって、別の態様において、本発明は、標的ペプチドに結合するポリペプチドを同定する方法に関する。
i
第14の態様において、本発明は、標的ペプチドに結合するポリペプチドを同定する方法であって、
i)標的ペプチドと、本発明の第2の態様によるポリペプチドディスプレイライブラリーとを、ポリペプチドと前記標的ペプチドとが相互作用することができる条件下で接触させること、
ii)前記標的ペプチドと特異的に相互作用したライブラリーのメンバーを回収すること、および
ii)前記標的ペプチドと相互作用するポリペプチドの配列を特定すること
を含む方法に関する。
本明細書で用いられる「標的ペプチド」という用語は、機能、配列または構造の制限のない任意の目的のペプチドを指す。
「ポリペプチドと標的ペプチドとが相互作用することができる条件下」という表現は、標的ペプチドおよびポリペプチドライブラリーのメンバーの完全性を維持することが可能であり、ライブラリーのポリペプチドおよび標的ペプチドの少なくとも三次構造が維持され、したがって標的ペプチドに対して結合親和性を有するライブラリーのポリペプチドが標的ペプチドに特異的に結合することができる条件を指す。前記条件は、ポリペプチドがその完全性を維持することが可能な特定の緩衝液でライブラリーのメンバーを希釈することを含む。前記緩衝液は、当技術分野の専門家によってよく知られており、BSA、ウシγグロブリン(BGG)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)を含み得る。前記条件はまた、ポリペプチドおよび標的ペプチドが、特異的結合が効果的に起こるのに適切な期間および温度でインキュベートされることを意味する。前記条件は、当技術分野の専門家によってよく知られており、典型的には、好ましくは15~45℃、好ましくは25℃、より好ましくは37℃、または室温で1~4時間のインキュベーションを含むか、または4℃で一晩のインキュベーションであり得る。
「ポリペプチドライブラリーのメンバー」という用語は、本発明の第1の態様で定義されている。したがって、特定の実施形態において、ライブラリーのメンバーは、本発明の第2の態様で定義されるようなライブラリーのポリペプチドである。別の特定の実施形態において、本発明の第2の態様で定義されるように、ライブラリーのメンバーは、それをコードする核酸に直接連結された本発明の第1の態様のポリペプチドを含む複合体である。別の特定の実施形態において、ライブラリーのメンバーは、本発明の第2の態様で定義されるようなライブラリーのポリペプチドを含む微生物である。
「結合する(binding)」および「特異的に結合する(specifically binding)」という用語は、本発明の第1の態様で定義されている。特定の実施形態において、本態様の文脈における「結合」および「相互作用」という用語は交換可能である。別の特定の実施形態において、本方法は、標的ペプチドに特異的に結合するポリペプチドを同定することを目的とし、前記ポリペプチドは、標的ペプチドとの間の結合親和性が10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満である場合、標的ペプチドに特異的に結合すると見なされる。
特定の実施形態において、標的ペプチドは固体支持体に固定化されている。
固体支持体の非限定的な例としては、ポリマー(アガロース、セファロース、セルロース、ニトロセルロース、アルギン酸塩、テフロン、ラテックス、アクリルアミド、ナイロン、プラスチック、ポリスチレン、シリコーン等)、ガラス、シリカ、セラミックおよび金属が挙げられる。そのような固体支持体は、粒子(微粒子を含む)、シート、ディップスティック、ゲル、フィルター、膜、マイクロファイバーストリップ、チューブ、ウェル、プレート(6ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート等を含むマイクロプレート等)、繊維、キャピラリー、コーム、ピペットチップ、マイクロアレイチップ等の任意の形態をとることができる。いくつかの実施形態において、ビオチン結合部分は固体支持体の表面に結合している。いくつかの実施形態において、固体支持体の表面は、多孔質、粒子状、繊維状、ウェブ状または焼結表面等の不規則な表面を含む。
いくつかの実施形態において、固体支持体は、マイクロプレート、マイクロアレイチップおよび微粒子から選択される。いくつかの実施形態において、固体支持体は、少なくとも部分的にポリマーから構成される。いくつかの実施形態において、微粒子固体支持体は、単分散または多分散の球状ビーズを含む。単分散微粒子はサイズが実質的に均一であり(すなわち、直径の標準偏差が5%未満である)、多分散微粒子はサイズが異なります。いくつかの実施形態において、微粒子は、全体にわたって同じポリマーで構成されるか、またはコアシェルポリマーであり、微粒子のコアは1つのポリマーで構成され、外層(または「シェル」)は別のポリマーで構成される。いくつかの実施形態において、微粒子は磁性である。
いくつかの実施形態において、標的ペプチドはリンカー部分を介して固体支持体に結合している。特定の実施形態において、前記リンカーはプロテアーゼ切断部位を含む。
この方法の第2の工程では、標的ペプチドに特異的に結合している1つ以上のライブラリーのメンバーが回収される。標的ポリペプチドに特異的に結合するそれらのポリペプチドを工程(ii)で同定するために、標的ポリペプチドとライブラリーにある非変異型または天然型のポリペプチドとを接触させる別個の結合反応(以下、「ネガティブセレクション工程」と呼ばれる)が並行して行われるべきであることが理解される。好ましくは、前記非変異型または天然型はライブラリーのメンバーと同一であるが、ループ領域は、異種ペプチドまたはポリペプチドの挿入によって改変されていない。標的ポリペプチドがポリペプチドディスプレイライブラリーのメンバーと結合するが、その非変異型または天然型とは結合しない場合にのみ、ポリペプチドライブラリーのメンバーは、標的ポリペプチドに特異的に結合することができるものとして選択される。したがって、例えば、ポリペプチドライブラリーが、配列番号62または63で定義されるようなループ領域AB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKの1つ以上が異種ペプチドの挿入によって改変されたヒトニドゲンG2ドメインの多様な形態によって形成される場合、該異種ペプチドに特異的に結合しないペプチドを除外するために用いられるネガティブセレクション工程が、それぞれ配列番号62または63のポリペプチドを用いて行われる。ポリペプチドライブラリーは、459位、468位、639位、650位、543位、545位、449位、525位、561位、618位、619位、151位、604位、638位、641位、469位および518位におけるに1つ以上の突然変異を含む多様な形態のヒトニドゲンG2ドメインによって形成され得、前記番号付けはUniProtデータベース(2009年7月7日付けのバージョン)のアクセション番号P14543-1で定義された完全長のヒトニドゲン-1の番号付けに対応している。いくつかの実施形態において、ポリペプチドライブラリーは、上記で定義されたようなH459A、R468N、F639S、R650A、H543K、H545N、V449T、V525Q、V619T、F561E、C618S、S469I、R518Iの1つ以上の突然変異を含む多様な形態のニドゲンG2ドメインによって形成される。ポリペプチドライブラリーで用いられ得る適切なニドゲンG2ドメイン変異体としては、限定されないが、それぞれ配列番号64、65、87~104として定義されたNIDOmut2、NIDOmut3、NIDOmut3-V45T、NIDOmut3_V121Q、NIDOmut3-F157E、NIDOmut3-V215T、NIDOmut4、NIDOmut4_T215V、NIDOmut5、NIDOmut3-V176T、NIDOmut3-I200T、NIDOmut3-V236Y、NIDOmut3-L237T、NIDOmut3-S65I、NIDOmut3-R114I、NIDOmut3-C214S、NIDOmut3-S65I_R114I、NIDOmut5-S65I_R114I、NIDOmut3-S65I_R114IおよびNIDOmut5-S65I_R114Iを有する変異体であって、ループ領域AB、BC、CD、DE、EF、FG、GH、HI、IJおよびJKの1つ以上が異種ペプチドの挿入によって改変され、異種ペプチドに特異的に結合しないペプチドを除外するために用いられるネガティブセレクション工程が、上記で定義されたポリペプチドであって異種ペプチドを欠いたポリペプチドを用いて行われた変異体を含む、上記の本発明の態様の文脈で定義されたニドゲンG2ドメイン変異体が挙げられる。
その目的のために、まず標的ペプチドを洗浄して、標的ペプチドに結合していないライブラリーのメンバーを除去する。洗浄条件は当技術分野の専門家によく知られており、PBS等の適切な培地の使用が含まれる。培地には、Tween20等の界面活性剤が含まれていてもよい。標的ペプチドは、任意の適切な時間、例えば各洗浄について1~30分または3~10分で洗浄することができる。洗浄は、標的ペプチドの担体の穏やかな振とうまたは揺り動かしを含み得る。洗浄温度は、標的ペプチドとライブラリーのポリペプチドとの間の結合が破壊されないような温度である。例えば、洗浄温度は15~45℃、または30~40℃とすることができる。通常、洗浄温度は約37℃または室温である。
標的ペプチドが洗浄されると、標的ペプチドに結合したライブラリーのメンバーが回収される。この回収は、標的ペプチドに結合したライブラリーのポリペプチドを溶出することからなってもよい。上記の溶出には、さまざまな手法を用いることができる。例えば、溶出は、複合体の「ライブラリーの標的ペプチドメンバー」を、pH3~6、好ましくはpH4等の、両者の間の結合を破壊する低pH条件下でインキュベートすることによって行うことができる。溶出は、複合体をDTTと共にインキュベートすることによって行われてもよい。あるいは、ポリペプチドおよび標的ペプチドの複合体全体を回収することができる。例えば、標的ペプチドが標的支持体に固定化される場合、該固定化は、プロテアーゼ切断部位を含むリンカーによって媒介され得、これが切断されて複合体全体が回収される。上記の方法は、当技術分野の専門家によってよく知られている。
特定の実施形態において、工程i)およびii)は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも10回、好ましくは少なくとも2回繰り返される。前記反復のそれぞれにおいて、工程i)で用いられるポリペプチドライブラリーのメンバーは、工程ii)で回収されるメンバーに対応する。
したがって、別の特定の実施形態において、第14の態様の方法の工程i)およびii)は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも10回、好ましくは少なくとも2回繰り返され、各反復において工程i)で用いられるポリペプチドライブラリーが、工程(ii)で回収されるライブラリーのメンバーによって形成される。
第3のステップにおいて、ライブラリーのポリペプチドが同定される。ポリペプチドの同定は、ライブラリーのポリペプチドの配列を決定することを含む。
前記決定は、いくつかの方法により媒介され得る。例えば、前記決定は、質量分析等の当業者に周知の任意の技術によって、前記ポリペプチドの配列を決定することから簡単に構成することができる。
ライブラリーのメンバーがライブラリーの表現型としてのポリペプチドである場合、本発明の第2の態様で定義されるように、前記表現型に対応する遺伝子型としての核酸に直接的または間接的に連結され、ライブラリーのポリペプチドの配列の決定は、前記核酸の配列決定からなることができる。本発明の第2の態様で言及される「遺伝子型」の定義に示されるように、核酸は、それに直接または間接的に連結されるライブラリーのポリペプチドをコードするか、またはコードする配列を含む。ポリペプチドに直接的または間接的に連結される核酸の配列を決定する方法は、当技術分野の専門家によってよく知られている。例えば、それらは、PCRによる、または核酸がRNA分子である場合には逆転写酵素およびそれに続くPCR(RT-PCR)による、核酸配列を増幅することを含み得る。次いで、増幅されたcDNAは、当業者にとって周知の技術によって配列決定される。前記配列決定技術の非限定的な例としては、周知のサンガー法、パイロ配列決定、合成による配列決定、またはライゲーションによる配列決定が挙げられる。あるいは、核酸が直接的または間接的に連結されているライブラリーのポリペプチドから核酸が単離され、次いで、核酸がPCRまたはRT-PCRによって増幅され、上述したように配列決定される第1の工程を含み得る。核酸をポリペプチドから分離する技術は、当業者によく知られている。前記技術の非限定的な例としては、ポリペプチドと他の分子との相互作用の破壊、または単にポリペプチドの分解を可能にする任意の技術が挙げられる。これらの技術としては、ジチオスレイトール(DTT)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤、プロテイナーゼK等のプロテイナーゼとのインキュベーションによるタンパク質の分解、または単に高温、好ましくは40~95℃、より好ましくは60℃でのインキュベーションによるタンパク質の変性による核酸とポリペプチドとの結合を破壊が挙げられる。次いで、核酸は、フェノール/クロロホルム、シリカ法、または核酸がRNAの場合のグアニジンチオシアン酸塩-フェノール-クロロホルム抽出等のよく知られた技術によってタンパク質から単離される。核酸がポリペプチドに間接的に連結され、例えば細菌または酵母細胞等の微生物の細胞内に含まれる場合、核酸の分離は、細胞膜を分解することを可能にする技術を含み得る。前記技術はまた、当技術分野の専門家によく知られており、例えば、ポリペプチドと別の分子との相互作用を破壊するための上記の技術のいずれかからなり得る。上述したポリペプチドから核酸を分離するための方法のいくつかは、Kelly M. Elkins, 2013, Forensic DNA Biologyに詳細に記載されている。
したがって、特定の実施形態において、標的ペプチドと相互作用するポリペプチドの配列の同定には、前記ペプチドの配列を決定することが含まれる。別の特定の実施形態において、標的ペプチドと相互作用するポリペプチドの配列の同定には、それに直接的または間接的に連結しそれをコードする核酸の配列を決定することが含まれる。
特定の実施形態において、ライブラリーのいくつかのポリペプチドは、標的ペプチドに特異的に結合することができる。この場合、この方法は、標的ペプチドに結合するポリペプチドを同定するためのものであり、この方法の工程iii)は、標的ペプチドと相互作用するポリペプチドの配列を同定することからなる。1つのポリペプチドの配列を同定するために上記で提供されたのと同じ方法が、いくつかのポリペプチドの配列の同定にも適用可能である。したがって、特定の実施形態において、標的ペプチドと相互作用するポリペプチドの配列の同定は、それらのそれぞれに直接的または間接的に連結された核酸に対する配列を決定することを含む。
別の特定の実施形態において、工程ii)の後、本方法は、回収されたライブラリーのメンバーを増幅する追加の工程を含む。前記増幅は、回収されたポリペプチドライブラリーのメンバーを用いて宿主生物を形質転換すること、または単に回収されたライブラリーのメンバーを増幅することからなり得る。例えば、ライブラリーのメンバーが本発明の第2の態様に記載される微生物であり、ファージ、バクテリオファージまたはウイルス等の生物の感染時に複製することができる場合、工程ii)で回収されるライブラリーのメンバーは、ライブラリーのメンバーに感染したバクテリアを培養することにより増幅され得る。前記メンバーが、本発明の第2の態様に記載された細菌または酵母等の複製可能な微生物である場合、ライブラリーのメンバーの増幅は、単に前記微生物を培養することからなり得る。
したがって、特定の実施形態において、標的ペプチドに結合する1つ以上のポリペプチドを同定する方法は:
i)標的ペプチドと、本発明の第2の態様によるポリペプチドディスプレイライブラリーとを、前記ポリペプチドと前記標的ペプチドとが相互作用することができる条件下で接触させること、
ii)前記標的ペプチドと相互作用したライブラリーのメンバーを回収すること、
iii)工程ii)で回収されたライブラリーのメンバーを増幅すること、
iv)前記標的ペプチドと相互作用するポリペプチドの配列を特定すること
を含む。
特定の実施形態において、工程i)~iii)は少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも10回、好ましくは少なくとも2回繰り返され、各反復の工程i)で用いられるポリペプチドライブラリーは、工程(ii)で回収されるライブラリーのメンバーを形成し、工程iii)で増幅される。
特定の実施形態において、上述の本発明の態様で説明されたすべての用語および実施形態は、本発明の第4の態様に等しく適用可能である。
XI-本発明の第1の態様のポリペプチドの使用
本発明の第1の態様に示されるように、本態様のポリペプチドは、ループ領域への挿入として、またはループ領域の部分的または完全な置換として、1つ以上のループ領域内に1つ以上の異種ペプチドを組み込むのに適している。次いで、これらの変異体ポリペプチドを用いて、「目的のペプチド」として定義することができる1つ以上の異種ペプチドを提示することができる。したがって、第15の態様において、本発明は、ペプチドを提示するための、本発明の第1の態様によるポリペプチドの使用に関し、前記ペプチドは、ループ領域の1つに見出される。
本明細書で用いられる「提示するため」という表現は、異種ペプチドを目的の要素の近接にもたらすポリペプチドの能力を指す。本明細書で用いられる「目的のペプチド」という用語は、それが本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の1つに見出され得るという事実に加えて、いかなる機能、配列または構造的特徴によっても制限されない。一つの実施形態において、異種ポリペプチドは1つ以上のループ領域内に挿入され、すなわち、ループ領域は配列番号62または配列番号63の同族ループドメインに見られるすべてのアミノ酸を保存するが、異種ポリペプチドは2つの連続するアミノ酸の間に挿入される。別の実施形態において、1つ以上のループ領域内の異種ポリペプチドは、ループドメインの配列を部分的または完全に置換するループ領域内の挿入物として見出される。複数のペプチドが本発明のポリペプチドの異なるループに提示される別の実施形態において、1つ以上のペプチドは、ループ領域への挿入物として位置し得、1つ以上のペプチドは、部分または完全なループ領域の置換であり得る。
提示される異種ポリペプチドまたはペプチドの長さは、特に限定的ではない。したがって、異種ポリペプチドは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。
特定の実施形態において、目的のペプチドは本発明の第6の態様で定義される目的の剤のいずれかであり、好ましくは、目的のペプチドはセクションIV-E.1で定義される治療薬、特に細胞毒性ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、腫瘍抑制遺伝子によってコードされるポリペプチド、アポトーシス促進性ポリペプチド、抗転移活性を有するポリペプチド、腫瘍に対する免疫応答を活性化することができるポリペプチドによってコードされるポリペプチド、抗血管新生分子または毒素である。
「結合する(bind)」および「特異的に結合する(specifically bind)」という用語は、本発明の第1の態様で定義されている。ポリペプチドと標的分子との間の結合、および結合複合体のKDを決定する方法は、上述した本発明の第1の態様の定義において提供されている。特定の実施形態において、目的のペプチドとポリペプチドの最後の1つのループ領域との間の特異的結合は、10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満のKdを有する。
特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドが目的のペプチドを提示する、またはもたらす目的の要素は、細胞である。好ましい実施形態において、前記要素はサンプル中の細胞である。別の特定の実施形態において、前記要素は、それが由来する組織または生物から単離された細胞である。別の特定の実施形態において、前記目的の要素は、サンプル中の別のペプチド、タンパク質または核酸である。
「サンプル」という用語は、本発明の第13の態様で定義されている。本態様で言及されるサンプルは目的の要素を含み、該要素は、好ましくは上記で指定された通りである。
特定の実施形態において、本発明は、ペプチドを提示するための、本発明の第1の態様によるポリペプチドの非治療的使用であって、前記ペプチドがループ領域の1つに見出される使用に関する。
特定の実施形態において、上述した本発明の態様で説明されたすべての用語および実施形態は、本発明の第15の態様に等しく適用可能である。
XII-サンプル中の標的ペプチドの存在を決定する方法
上述した態様で示したように、本発明の第1の態様のポリペプチドは、標的分子または標的ペプチドに特異的に結合することができる。したがって、本発明の第1の態様のポリペプチドは、サンプル中のペプチドの存在を決定するのに有用であり得る。
したがって、第16の態様において、本発明は、サンプル中の標的ペプチドの存在を決定する方法であって:
(i)サンプル中に存在するタンパク質と、本発明の第1の態様によるポリペプチドとを接触させることであって、前記ポリペプチド中のループ領域の少なくとも1つの配列が前記標的ペプチドに特異的に結合することができる配列である、接触させること、
(ii)前記標的ペプチドと前記ポリペプチドとの間に相互作用があるかどうかを決定すること
を含み、
前記ポリペプチドと前記標的ペプチドとの間に相互作用がある場合には前記標的ペプチドはサンプル中に存在する方法に関する。
「サンプル」という用語は、本発明の第13の態様で定義されている。本発明の第14の態様のサンプルは、サンプル中に存在するペプチドを検出するのに適した任意の生物学的材料を含む。
本明細書で用いられる「標的ペプチド」という表現は、それが本発明の第1の態様のポリペプチドのループ領域の少なくとも1つの配列に特異的に結合するという事実に加えて、いかなる機能的、配列または構造的特徴によっても制限されない。
特定の実施形態において、標的ペプチドは本発明の第13の態様のものであり、ポリペプチドは、標的ペプチドに特異的に結合するものとして同定された前記態様のものである。
少なくとも1つのループ領域の前記配列と標的ペプチドとの間の特異的結合は、10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満または10-15M未満のKDを有する。「特異的結合」という用語は、本発明の第1の態様で定義されている。ポリペプチドと標的ペプチドとの間の結合を決定する方法もまた、本発明の第1の態様において提供されている。
サンプル中に存在するタンパク質と、標的ペプチドと特異的に結合することができる第1の態様のポリペプチドとを接触させることは、一般的に、単に前記ポリペプチドと前記サンプルとを、前記ペプチドと前記標的ペプチドとが相互作用することができる条件下で混合することである。したがって、特定の実施形態において、本方法の工程i)は、上述した条件下で行われる。「ポリペプチドと標的ペプチドとが相互作用することができる条件下」という表現は、本発明の第14の態様で定義されている。この定義は、「ライブラリーのメンバー」または「ライブラリーのポリペプチド」という用語を「第1の態様のポリペプチド」に置き換えることによって、本発明の本発明の態様に適用される。
相互作用があるかどうか、すなわちポリペプチド-標的ペプチド複合体の形成があるかどうかの決定は、いくつかの方法で行うことができる。
一方では、これは、最初に固体支持体に標的ペプチドを結合させることであって、該支持体に結合し、該ペプチドに特異的な特定の抗体、または該ペプチド中に存在するヒスチジンタグまたはビオチン等のタグに特異的な抗体によって結合させることによって行われる。次いで、第1の態様のポリペプチドを添加し、過剰な試薬を洗い流す。次いで、固体支持体における第1の態様のポリペプチドの存在が決定される。当技術分野で知られているように、様々なブロッキングおよび洗浄工程を利用することができる。洗浄条件は、本発明の第14の態様で指定されたもののいずれかであり得る。当業者に理解されるように、洗浄工程の後、検出される第1の態様のポリペプチドは、標的ペプチドに結合したものである。したがって、第1の態様のポリペプチドの検出は、標的ペプチドへのポリペプチドの結合の間接的な指標であり、したがって、サンプル中の前記ペプチドの存在の間接的な指標である。
サンプル中のポリペプチドまたはペプチドの存在を検出する技術は、当技術分野の専門家によく知られている。例えば、ポリペプチドを標識し、前記標識を検出することができる。前記標識は、任意の放射性、蛍光、生物学的または酵素的なタグであり得る。前記ラベルを検出する方法は、当技術分野の専門家によく知られている。そのような標識の使用に関する特許としては、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号および同第4,366,241号が挙げられる。あるいは、当技術分野で知られているように、一次および二次抗体等の二次結合リガンドおよび/またはビオチン/アビジンリガンド結合配列を用いることにより、さらなる利点を見出だすことができる。サンプル中のポリペプチドを検出するための二次リガンドの使用に基づく技術の非限定的な例としては、ウエスタンブロットまたはイムノブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)またはRIA(ラジオイムノアッセイ)が挙げられる。
一方で、相互作用があるかどうかの決定は、最初に第1の態様のポリペプチドと固体支持体とを、前記固体支持体に結合し前記ポリペプチドに特異的な抗体によって結合させることによって行われ得る。次いで、標的ペプチドを含むと思われるサンプルを添加し、過剰な試薬を洗い流す。最後に、固体支持体中の目的のペプチドの存在が決定される。
残りの工程は、この場合において検出されるポリペプチド-標的ペプチド複合体の部分が標的ペプチドであり、標的ペプチドと結合した標識(上述されたもの)または標的ペプチドに特異的な二次リガンド(上述されたもの)であることを除いて、標的ペプチドが固体支持体に固定化されている上述した工程と同じあり得る。したがって、この場合、標的ペプチドの検出は、ポリペプチドと標的ペプチドとの結合の間接的な指標であり、したがってサンプル中のペプチドの存在の間接的な指標である。
当技術分野の専門家によく知られているように、サンプル中または固体支持体に結合したポリペプチドまたはペプチドの存在を決定することを可能にする上記の技術のいずれも、サンプル中または固体支持体に結合した前記ポリペプチドまたはペプチドの量を決定することも可能にする。したがって、サンプル中の標的ペプチドの存在を決定する方法は、標的ペプチドの存在を決定することができるだけでなく、形成されたポリペプチド-標的ペプチド複合体の量、したがってサンプル中の標的ペプチドの量も決定することを可能にする。
したがって、特定の実施形態において、本発明はまた、サンプル中の標的ペプチドの量を決定する方法であって:
i)サンプル中に存在するタンパク質と、本発明の第1の態様によるポリペプチドとを接触させることであって、前記ポリペプチド中のループ領域の少なくとも1つの配列が、ポリペプチド-標的ペプチド複合体を形成することができる条件下で前記標的ペプチドに特異的に結合することができる配列である、前記接触させること、
ii)形成されたポリペプチド-標的ペプチド複合体の量を決定すること
を含み、
前記形成されたポリペプチド-標的ペプチド複合体の量が前記サンプル中の標的ペプチドの量を示す方法に関する。
本明細書で用いられる「ポリペプチド-標的ペプチド複合体を形成することができる条件下」という表現は、ポリペプチドと標的ペプチドとが相互作用することが可能な上述したのと同じ条件を指す。
第14の態様の特定の実施形態において、第1の態様のポリペプチドは固体支持体に固定化されている。特定の実施形態において、前記固体支持体は、本発明の第14の態様で指定されたもののいずれかである。特定の実施形態において、ポリペプチドは、リンカー部分を介して固体支持体と結合している。
第14の態様の別の特定の実施形態において、標的ペプチドは固体支持体に固定化されている。特定の実施形態において、前記固体支持体は、本発明の第14の態様で指定されたもののいずれかである。特定の実施形態において、ポリペプチドは、リンカー部分を介して固体支持体と結合している。
特定の実施形態において、上述した本発明の態様で説明されたすべての用語および実施形態は、本発明の第16の態様に等しく適用可能である。
別の実施形態において、本発明の任意の態様および実施形態で用いられる「からなる(consist)」および「含む(compise)」、「からなる(consisting)」および「含む(comprising)」という用語は交換可能である。
下記の実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、単なる例示と見なされるべきである。
タンパク質ナノ粒子の製造および精製
T22-GFP-H6、T22-STM-H6および配列番号61のT22-NIDOmut2-H6、モジュラータンパク質をコードするプラスミドベクターで、エシェリヒア・コリ(E. coli)発現系を形質転換し、初期の指数増殖期にイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導して、ルリアブロス(LB)培地中で様々なタンパク質を一晩(O/N)産生した。NIDOmut2ペプチドは、配列番号61のペプチドに対応する。次いで、遠心分離(5000gで5分)によって細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤(Complete EDTA-Free、Roche製)の存在下で洗浄緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、10mM イミダゾール、pH8)に再懸濁し、フレンチプレスで破砕した(1100psiで2~3ラウンド)。次いで、細胞可溶性画分を遠心分離(15.000gで45分)によって分離し、可溶性タンパク質を固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。そのために、可溶性画分を固定化ニッケル含有HiTrap Chelating HPカラム(GE Healthcare製)に充填し、タンパク質をAKTAピュアシステム(GE Healthcare製)で溶出緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、500mM イミダゾール、pH8)の直線勾配で溶出した。最後に、精製されたタンパク質を、T22-STM-H6およびT22-NIDOmut2-H6については炭酸ナトリウム緩衝液(166mM NaCO3H、pH8)に対して、T22-GFP-H6については塩緩衝液を含む炭酸ナトリウム(166mM NaCO3H、333mM NaCl、pH8)に対して透析した。
タンパク質の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびモノクローナル抗His抗体(Santa CruzBiotechnology製)を用いたウエスタンブロット免疫染色により決定された。タンパク質の完全性は、MALDI-TOF質量分析によって検証され、タンパク質量はブラッドフォードアッセイによって定量化され、ナノ粒子のサイズは動的光散乱により決定された。
ナノ複合体の製造
タンパク質-FdUナノ複合体は、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)二官能性リンカーを用いて、タンパク質リジンアミンを介して、タンパク質ナノ粒子と、5単位の5’-(FdU)5-ヘキサエチレングリコールチオール-3’(FdU)を含むオリゴマーとを共有結合させることによって生成された。そのために、チオール結合FdUオリゴマーを最初にEMCS二官能性リンカーのマレイミド基と1:1のモル比で、室温(RT)で10分間エステル基を付加して反応させた。次いで、FdU分子を含む活性エステル基を、タンパク質ナノ粒子内の外側リジンアミン基と1:5のモル比で、室温で一晩反応させた。最後に、タンパク質-FdUナノ複合体をそれぞれの保存緩衝液に対して透析して、反応していない遊離オリゴ-FdU分子を除去した。最終的な複合生成物は、MALDI-TOF質量分析および動的光散乱によって特性化され、複合FdU/タンパク質のモル比は、UV-可視光分光光度計により260nmでのUV光吸収(本実施例のFdUオリゴマーが44500M-1.cm-1のモル吸光係数で光を吸収する波長)によって計算された。すべてのナノ複合体は、タンパク質単位あたり平均2~10個のオリゴFdU分子を組み込み、元の平均ナノ粒子サイズを維持していた。
T22-NIDOmut2-H6 NPs蛍光標識
細胞内追跡のために、T22-NIDOmut2-H6分子をATTO488蛍光分子で共有結合的に標識した。そのために、エステル結合ATTO488分子(Sigma)をT22-NIDOmut2-H6分子の外側のリジンアミン基と1:2(タンパク質:色素分子)で室温で1時間反応させた。次いで、標識されたナノ粒子をそれらの保存緩衝液(炭酸ナトリウム緩衝液)に対して4℃で一晩透析して、非結合の遊離ATTO488分子を除去した。標識されたナノ粒子を、最終的にMALDI-TOF質量分析および動的光散乱によって特性化した。
動的光散乱
すべてのタンパク質ナノ粒子およびナノ複合体の体積サイズ分布を、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments製)により633nmでの動的光散乱(DLS)によって3回測定した。すべてのナノ粒子およびナノ複合体はナノメートルの範囲内にあり、10~50nmの平均ナノ粒子サイズを示した。
ナノ粒子CXCR4依存性の内在化
CXCR4受容体特異的内在化を、CXCR4+ヒト子宮頸部HeLa細胞上において標識されたT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子を用いて研究した。そのために、ATCC(CCL-2)で取得したHeLa細胞を24ウェルプレート上で、10%ウシ胎児血清(Gibco製)を添加したMEM-α培地(Gibco製)により、37℃、5%CO2の加湿雰囲気で70%コンフルエンスに達するまで培養した。次いで、標識されたT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子を、HeLa細胞と共に、L-グルタミンを添加した無血清OptiPRO培地(Gibco製)により、さまざまな時間および濃度でインキュベートした。次いで、細胞に外的に付着しているタンパク質を完全に除去するため「過酷な(harsh)」トリプシン消化の後に、細胞の蛍光を、488nmのアルゴンイオンレーザー(ATTO488分子励起用)およびD検出器(530/30nmフィルター)を用いて、FACS-Cantoフローサイトメーター(Becton Dickinson製)により分析した。
競合アッセイのために、細胞をCXCR4特異的アンタゴニストAMD3100(オクタ塩酸塩水和物-Sigma製)と共に1時間プレインキュベートした後、標識されたT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子を添加した。
共焦点レーザー顕微鏡
標識されたT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子の細胞内局在も、HeLa細胞で共焦点レーザー顕微鏡によって研究した。そのために、HeLa細胞をMatTek培養皿(MatTek Corp.製)で、10%ウシ胎児血清を添加したMEMα培地で70%コンフルエンスに達するまで培養した。次いで、標識されたT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子を、HeLa細胞と共に、L-グルタミンを添加した無血清OptiPRO培地(Gibco製)により、さまざまな時間および濃度でインキュベートした。次いで、細胞膜および核をCellMaskTM DeepRedおよびHoescht(Molecular Probes製)でそれぞれ10分間染色した後、PBSで洗浄した。生細胞を、Apo63x/1.4(オイルHC x PL APOλブルー)対物レンズおよびブルーダイオード(405nm)、アルゴンレーザー(488nm)、HeNeレーザー(633nm)を用いて、Leica TCS-SP5共焦点レーザー走査顕微鏡(Leica Microsystems製)により最終的に記録し、細胞核、細胞膜および標識されたナノ粒子をそれぞれ視覚化した。
MTT
ナノ複合体(T22-GFP-H6-FdU、T22-STM-H6-FdU、T22-NIDOmut2-H6-FdU)を含むFdUのin vitro細胞毒性を、発光細胞生存率アッセイを用いてCXCR4+HeLa細胞で評価した。そのために、HeLa細胞を96ウェルプレート上で、10%ウシ胎児血清を添加した90μlのMEMα培地で24時間培養した。次いで、10μlの異なる濃度のFdU含有タンパク質ナノ複合体を添加し、さらに48時間インキュベートした。最後に、細胞生存率を、供給元の指示に従ってCellTiter-Glo Luminiscent Cell Viability Assay(Promega製)により決定した。
CXCR4+結腸直腸癌モデルの作製
すべてのin vivo手順は、サンパウ病院の動物倫理委員会によって承認され、欧州理事会の指令に従って行われた。特定病原体不在(SPF)の条件下で維持された、体重が18~20gの5週齢の雌NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウス(Charles River製、L-Abreslle、フランス)を用いて、CXCR4過剰発現(CXCR4+)皮下(SC)結腸直腸(CRC)異種移植マウスモデルを作製し、ナノ複合体の抗腫瘍効果の研究を行った。その目的のために、ドナー動物の腫瘍株として永続化された、患者由来のM5結腸直腸腫瘍組織を用いた。したがって、これらの動物から得られた10mgのM5 SC CRC腫瘍組織を、NSGマウスの皮下組織に移植した。
M5 CXCR4+SC CRCモデルにおけるナノ複合体の抗腫瘍効果
腫瘍が120~200mm3の範囲内の体積に達した時点で、マウスをランダムに4つの群に割り当てた:1つはコントロール群(K、n=4)であり、3つは実験群である:T22-STM-FdU(n=4);T22-NIDOmut2-FdU(n=4)およびT22-GFP-FdU(n=4)。すべての実験群に、5回の投与を3日ごとに20μgの投与計画に従う反復投与スケジュールで、対応するナノ複合体の静脈内注射を行った。コントロール群には、同じスケジュールに従って、pH8、166mMのNaHCO3を200μl投与した。3日ごとにノギスを用いて長い(D)および短い(d)腫瘍の直径を登録することにより、時間の経過に伴う腫瘍体積の変化を測定して、抗腫瘍効果を腫瘍の成長の阻害として評価した。腫瘍体積を、楕円体の式、体積=1/2(D×d2)を用いて計算した。ナノ複合体の投与開始から14日後にマウスを安楽死させ、アポトーシス誘導の評価のために皮下腫瘍を採取し、組織学的分析のために肝臓および腎臓の組織を処理した。実験期間中、マウスの体重を週に2回記録した。
腫瘍におけるアポトーシス誘導の評価および正常組織における組織学
腫瘍、肝臓および腎臓の組織を収集し、リン酸緩衝液中の4%ホルムアルデヒドで24時間固定し、次いで、組織学的分析のためにパラフィンに包埋した。実験の最後(最後のナノ粒子投与の2日後)に、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色のために処理された厚さ4μmの腫瘍の切片についてアポトーシス誘導分析を行った。2人の独立した研究者によって評価された盲検サンプルについいて、H&E染色腫瘍スライスの10個の高倍率視野(倍率400倍)あたりの細胞死体の数を数えることによって、アポトーシス誘導を評価した。組織病理学的分析のために、肝臓および腎臓も採取した。代表的な写真を、Cell∧Bソフトウェア(Olympus Soft Imaging v 3.3、長野、日本)を用いて撮影した。
固有蛍光の測定
蛍光スペクトルを、Cary Eclipse分光蛍光光度計(Agilent Technologies製、モルグレイブ、オーストラリア)で記録した。パス長10mmの石英セルおよびサーモスタット付きホルダーを用いた。励起および発光スリットを5nmに設定した。励起波長(λex)を295nmに設定した。発光スペクトルを、310~450nmの範囲で取得した。タンパク質濃度は、炭酸緩衝液(166mM NaCO3H、pH8)中で0.2mg/mLとした。加熱に対するコンフォメーションの安定性を評価するために、1℃/分のスキャン速度で各温度での蛍光スペクトルを取得し、各スペクトルのスペクトル質量中心(CSM)を計算した。CSMは、蛍光スペクトルピークの加重平均である。また、CSMは、タンパク質環境へのTrpの相対的な曝露にも関連している。TrpのCSMの最大赤方偏移(maximum red-shift)は、大きな溶媒露出性(solvent accessibility)(Li, T. M. et al., Biochemistry 1976, 15, 5571-80;Ruan, K and Weber, G, Biochemistry 1989, 28 (5), 2144-53およびMohana-Borges, R. et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 1999, 96 (14), 7888-93)およびタンパク質のフォールディングとの互換性を有する。
各蛍光発光について、スペクトル質量中心(CSM)を方程式1(Eq.1)に従って計算した(Lakowicz, J. R. et al., 1991, Biophys Chem 39(1), 79-84)。I
iは波長λ
iにおける強度測定である。
アンフォールディング温度の決定
中点アンフォールディング温度(Tm)を、CSM対To曲線の変曲点に対応する温度値として決定した。また、CSM値が上昇し始める温度としてT開始を決定した。
統計分析
マンホイットニーU検定を用いて、群間の腫瘍体積またはアポトーシス小体の数の違いをペアごとに比較した。差異はp<0.05で有意であると見なした。すべての統計分析はSPSSバージョン11.0パッケージ(IBM、NY、USA)を用いて行われ、値は平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。
新しいタンパク質クローンの取得と特性化:T22-NIDOmut3-H6ならびにそのすべての誘導体T22-NIDOmut3_V45T-H6、T22-NIDOmut3_V121Q-H6、T22-NIDOmut3_F157E-H6、T22-NIDOmut3_V215T-H6、T22-NIDOmut4_T215V-H6、T22-NIDOmut4-H6およびT22-NIDOmut5-H6
新しいT22-NIDOmut3-H6およびそのすべての誘導体T22-NIDOmut3_V45T-H6、T22-NIDOmut3_V121Q-H6、T22-NIDOmut3_F157E-H6、T22-NIDOmut3_V215T-H6、T22-NIDOmut4_T215V-H6、T22-NIDOmut4-H6およびT22-NIDOmut5-H6をコードする遺伝子は、Geneart(Thermo Fisher製)により提供され、pET26bプラスミド(Novagen製)にサブクローン化した。タンパク質をコードするプラスミドをエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BL21 DE3株(Novagen株)に形質転換し、ルリアブロス(LB)培地中で、20℃で一晩(O/N)0.1mMイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導してタンパク質を生成した。次いで、遠心分離(5000gで15分)によって細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤(cOmplete(商標)EDTA-Free、Roche製)の存在下で洗浄緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8)に再懸濁した。次いで、細胞をEmulsiFlex-C5システム(Avestin製)で8000psiで3ラウンド破壊した。タンパク質を含む細胞溶解物の可溶性画分を遠心分離(15000gで45分)で分離し、次いでHisTrap HPカラム(GE Healthcare製)に充填して、AKTAピュアシステム(GEヘルスケア製)により固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)で精製した。タンパク質の溶出を、溶出緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH8)の直線勾配により行った。次いで、精製したタンパク質画分を炭酸ナトリウム(166mM NaCO3H、pH8)に対して透析した。タンパク質の純度を、SDS-PAGEゲル電気泳動、およびそれに続く抗Hisモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用いたウエスタンブロット免疫検出により決定した。タンパク質の完全性を、MALDI-TOF質量分析によっても決定した。タンパク質の最終濃度を、ブラッドフォードのアッセイおよびNanodropにより決定した。
他の緩衝液での安定性を検討するために、精製されたタンパク質画分を選択されたFDA承認緩衝液およびコントロールとしての炭酸塩に対して透析した。タンパク質濃度は、最初に炭酸緩衝液で2.0mg/mlに設定し、0.5mlの新しい各緩衝液に透析した。サンプルを15000gで15分間遠心分離して沈殿物を除去し、残存する可溶性タンパク質濃度をブラッドフォードのアッセイおよびNanodropで測定した。
タンパク質T22-NIDOmut3-H6およびそのすべてのさらなる誘導体の形態計測的特性評価
タンパク質ナノ粒子の体積サイズ分布を、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments製)で、動的光散乱(DLS)により633nmで3回測定した。
タンパク質T22-NIDOmut3-H6およびそのすべてのさらなる誘導体の分析のための実験で用いられるタンパク質のオリゴ-FdU複合化
T22-NIDOmut3-H6およびT22-NIDOmut2-H6を、二官能性リンカーを用いた2段階反応で、露出したリジンのアミン基を介してオリゴ5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(oligoFdU)分子に共有結合させた。そのために、最初にTCEPを添加してoligoFdU分子のチオール基を保護するSS結合を切断し、NAP-10セファデックス重力カラム(GE Healthcare製)を用いて生成物から不純物を除去した。次いで、チオール-オリゴFdU分子と6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル二官能性リンカー(EMCS)とを1:1のモル比で、チオール-マレイミド反応により室温で30分間反応させた。最後に、得られたヒドロキシスクシンイミド官能化oligoFdU分子と外側のリジンのアミノ基とを1:5のモル比で、室温で5時間反応させ、続いてZeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Scientific製)を用いて精製し、炭酸緩衝液に対して透析して非共有結合したoligoFdU分子を除去した。反応効率を最終的にMALDI-TOF質量分析によってチェックし、複合体オリゴFdU分子をモル吸光係数(ε:43500M-1.cm-1)のUV/可視光分光光度計で260nmのFdU吸光度により決定した。吸光度の値を、同等の濃度における非複合体タンパク質のベースライン260nmの吸光度を差し引くことによって補正した。
新しいタンパク質T22-NIDOmut3-H6およびそのすべてのさらなる誘導体の分析のために行われたin vitro細胞生存率アッセイ
HeLa細胞(ATCC、CCL-2)を、不透明な96ウェルプレートで、5%CO2、37℃の加湿雰囲気下で、10%のウシ胎児血清(Gibco製)を含む90μlのMEMα培地(Gibco製)でインキュベートした。次いで、10μlのT22-NIDOmut3-H6-FdUナノ複合体およびT22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体をコントロールT22-NIDOmut3-H6とともに最終濃度25nMで添加し、さらに48時間インキュベートした。細胞生存率を、Victor3発光プレートリーダー(Perkin Elmer製)でCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega製)によって最終的に試験した。すべてのサンプルを3回分析し、データを生存率の平均%(コントロール細胞に対する)+/-標準誤差として表した。
EPIX4-(RK)-GFP-H6、T22-GFP-H6およびT22-BFP-H6タンパク質のタンパク質設計、生産および精製
モジュラータンパク質をコードする合成遺伝子を、社内で設計した。用いたEPIX-4配列は、高い受容体親和性を有する最適化された二量体型であった。EPIX4-(RK)-GFP-H6の場合、EPIX-4リガンドの後に6つのカチオン性アミノ酸配列(RKRKRK)を追加して、タンパク質の自己集合化を促進させた。また、EPIX-4とタンパク質足場GFPとの間に、柔軟なリンカー(GGSSRSS)を追加し、CXCR4受容体に結合するためのリガンドの近接性(accessibility)を付与した。遺伝子コドンの用法を最適化してE.コリ(E. coli)にプラスミドpET22b(Novagen製)を挿入し、コンストラクトをGeneart(ThermoFisher製)によって得た。ベクターの組換え型を、E.コリ(E. coli)BL21(DE3)(F-ompT hsdSB(rB-、mB-)gal dcm DE3)(Novagen製)で形質転換した。500mLセル三角フラスコ内のLuria-Bertani(LB)培地中で、20℃で一晩(O/N)0.1mM IPTG(イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド)を添加してコードされたタンパク質を産生させた。培養細胞のOD550が約0.5に達した時点で細菌細胞を回収し、4℃で、7000rpmで15分間遠心分離した。細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテルComplete EDTA-Free(Roche製)の存在下で洗浄緩衝液(20mM Tris-HCl、500mM NaCl、40mMイミダゾール、pH8)に再懸濁した。細菌細胞を1200PSIのフレンチプレスで3ラウンド破砕し、遠心分離(45分、15000g、4℃)を行い、可溶性画分をAKTA精製器FPLC(GE Healthcare)のHisTrapキレートHPカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製した。サンプルをろ過し(0.22μm)、カラムに注入した後、収集する画分を溶出緩衝液(20mM Tris-HCl、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH8)で溶出した。精製タンパク質画分を炭酸緩衝液(166mMNaCO3H、pH8)に対して透析した。さらに、CXCR4を標的とするタンパク質T22-GFP-H6およびT22-BFP-H6を産生させ、上述したようにバイパラトピックナノ粒子を形成するために精製した(U. Unzueta et al., Nanotechnology 2017, 28, 505102)。BFPは、GenBankデータベースのアクセション番号EF064258.1で提供されるタンパク質に対応している。
EPIX4-(RK)-GFP-H6、T22-GFP-H6および/またはT22-BFP-H6のタンパク質の特性化
組換えタンパク質の完全性を、質量分析(MALDI-TOF)、TGX(Tris-Glycine eXtended)ステインフリーアクリルアミドゲル電気泳動(BioRad製)、および抗Hisモノクローナル抗体(1:1000;Santa Cruz製、ref.57598))を用いたウエスタンブロット分析によって確認した。タンパク質濃度を、アルブミン(Roche製)標準曲線を用いたブラッドフォード(バイオラッド)アッセイにより決定した。精製タンパク質について、GFP蛍光発光(510nm)を、450nmの励起波長で、Cary Eclipse蛍光分光光度計(Agilent Technologies)を用いて測定した。ナノ粒子の体積およびサイズの分布を、石英キュベットを用いてZetasizer Nano ZS(Malvern Instruments製)により633nmの動的光散乱(DLS)によって測定した。
EPIX4-(RK)-GFP-H6、T22-GFP-H6および/またはT22-BFP-H6タンパク質により産生されたナノ粒子の超微細構造の特性化
近接状態(nearly state)のタンパク質ナノ粒子のサイズおよび形状を、電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)Merlin(Zeiss)によって評価した。タンパク質サンプルをシリコンウェハ上に直接載せ、過剰の液体をワットマン濾紙で吸い取り、風乾し、コーティングすることなく高解像度のレンズ内二次電子検出器を備えたFESEM Zeiss Merlin操作および1kVで観察した。ナノ粒子の代表的な画像を、高倍率(80,000倍~300,000倍)の範囲で撮影した。
EPIX4-(RK)-GFP-H6、T22-GFP-H6および/またはT22-BFP-H6タンパク質を用いた細胞培養、フローサイトメトリーおよび細胞毒性アッセイ
実験を、CXCR4+の頸部および結腸直腸の細胞株(それぞれHeLaおよびSW1417)で行った。HeLa細胞をイーグル最小必須培地(Gibco製)で培養し、SW1417をダルベッコの改良イーグル培地(Gibco製)で培養した。両方の細胞株に10%ウシ胎児血清(Gibco)を添加し、37℃および5%(HeLa)または10%(SW1417)のCO2の加湿雰囲気で培養した。
タンパク質の内在化を試験するために、細胞を24ウェルプレート(Nunc製)に24時間播種した(30000細胞/ウェル)。短時間経過後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。次いで、L-グルタミンを添加したOptiPro培地で希釈した1μMおよび2μMのタンパク質をインキュベートし、細胞株に適切な条件下で異なる時間インキュベートした。次いで、過酷なトリプシン消化(1mg/mlで15分間)(Gibco製)を行い、細胞膜の外側に結合したタンパク質粒子を除去した。細胞内緑色蛍光を、FACS-Caliburシステム(Becton Dickinson製)で、励起波長488nmの15mW空冷アルゴンイオンレーザーを用いたフローサイトメトリーによって分析した。蛍光発光をD検出器(530/30nmバンドパスフィルター)で測定し、精製タンパク質の特異的蛍光によって手動で補正して、比較のために内在化したタンパク質の量を表すデータを取得した。競合アッセイでは、特定のCXCR4アンタゴニストAMD3100(オクタ塩酸塩水和物、Sigma-Aldrich製)を1:10(タンパク質:AMD3100)のモル比で、ナノ粒子を添加する1時間前に添加した。すべての実験を3回行った。
バイパラトピックナノ粒子の製造と特性化
T22-GFP-H6、T22-BFP-H6およびEPIX4-(RK)-GFP-H6タンパク質ナノ粒子(1.5mg/ml)をさまざまな方法で分解した。T22-GFP-H6およびT22-BFP-H6のサンプルでは、NaCl(最終濃度500mM Na+)およびイミダゾール(最終濃度300mM)を炭酸緩衝液(166mM NaCO3H、pH8)に添加し、EPIX4-(RK)-GFP-H6では0.2%SDSを炭酸緩衝液(166mM NaCO3H、pH8)に添加し、室温で2時間静置した。
T22-GFP-H6/EPIX4-(RK)-GFP-H6およびT22-BFP-H6/EPIX4-(RK)-GFP-H6バイパラトピックナノ粒子を、構成するブロックをそれぞれ1:1のモル比で混合することによって生成させ、続いて、炭酸緩衝液(166mM NaCO3H、pH8)に対してそれらを透析した。徹底的な透析を行った(室温で30分ごとに4回交換し、4℃でO/Nで1回交換し、最後に30分ごとに4回交換した)。T22-BFP-H6/EPIX4-(RK)-GFP-H6バイパラトピックナノ粒子をFRETおよび共焦点顕微鏡実験に用い、T22-GFP-H6/EPIX4-(RK)-GFP-H6をFESEM、細胞培養およびin vivo実験に用いた。
EPIX4-(RK)-GFP-H6が異種ナノ粒子を形成し、同時にEPIX4-(RK)-GFP-H6およびT22-BFP-H6タンパク質を運ぶことができるかどうかを判断するために、FRET分析を行った。タンパク質ナノ粒子の蛍光発光は、Cary Eclipse蛍光分光光度計(Agilent Technologies製)で、387nmで励起して測定した。発光は400~600nmから収集した。
EPIX4-(RK)-GFP-H6、T22-GFP-H6および/またはT22-BFP-H6タンパク質の使用を伴う実験のための共焦点アッセイ
HeLa細胞を、Mat-Tekプレート(25,000細胞/ウェル)上で、10%ウシ胎児血清(Gibco製)を添加したイーグル最小必須培地(Gibco製)で、37℃および5%で24時間増殖させた。次いで、L-グルタミンを添加したOptiPro培地に2μMのタンパク質ナノ粒子を添加し、適切な細胞条件で24時間インキュベートした。タンパク質への曝露の際に、細胞核を5μg/mlのHoechst33342(Thermo製)で標識し、原形質膜を2.5μg/mlのCellMask(商標)Deep Red(Thermo製)により室温で10分間標識した。63倍(1.4NA)の油浸対物レンズを用いて、倒立型TCS SP5ライカスペクトル共焦点顕微鏡(ライカ製)で共焦点画像を得た。励起には、405nmの青色ダイオードレーザー(核酸)、488nmのアルゴンイオンレーザー(ナノ粒子)、および633nmのHeNeレーザー(細胞膜)を介して到達した。共焦点ピンホールを1エアリーユニットに設定し、ナイキストサンプリング基準を満たすようにzスタック取得間隔を選択した。Imaris X64 v.7.2.1ソフトウェア(Bitplane製)のSurpassモジュールを用いて、共焦点画像を処理した。
EPIX4-(RK)-GFP-H6、T22-GFP-H6および/またはT22-BFP-H6タンパク質の使用を含む実験の統計分析
細胞内在化、競合アッセイならびに疾患に罹患した臓器におけるアポトーシスおよび有糸分裂病巣の数の対比較を、Tukeyの検定で行った。すべての統計テストを、GraphPadPrismバージョン8.0を用いて行った。in vitroおよびin vivoの実験の両方のすべての定量値は、平均±平均の標準誤差(x±SEM)として表される。群間の差異は、p<0.05で有意であると見なされる。
実施例1:T22-NIDOmut2-H6タンパク質ナノ粒子の特性化
ヒトニドゲン(P14543)は、コラーゲンIV、ペルレカンおよびラミニンと高い親和性で自然に結合する、基底膜(basement membrane)からの136.4kDaの構造タンパク質である。このタンパク質は、おそらくコラーゲンIVとラミニンネットワークとを連結することにより発生中の細胞外マトリックス形成の制御に重要な役割を果たす3つの球状ドメインで構成されている。G2ドメインには、中央にαヘリックスを有する11本鎖のβバレル(図12A、B)が含まれており、アエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)の緑色蛍光タンパク質と同様のフォールディングを有している(図12C、D)。
第1の工程では、GFP様のヒトタンパク質足場を生成するために、マウスニドゲンG2結晶構造(1GL4)およびGFPβバレル(1Q4A)の重ね合わせを行い、一致しないドメインフラグメントを除去して、完全に重なる正確なG2ドメイン配列を選択した。マウスのニドゲン配列は、現在利用可能な唯一の分解された構造であり、ヒトのニドゲンG2と配列が高度に相同である(図13A)。この意味で、両方の構造において最初に重なる残基であり(骨格構造rmsd=1.67)、非常に柔軟なアミノ酸である直前のGly429が先行するN末端リガンドの望ましくないフォールディングパターンを生成し得ることから、設計されたヒトニドゲンタンパク質はSer430から開始することとした。したがって、設計されたタンパク質は、ヒトニドゲン(2009年7月7日付けのバージョンのUniprotデータベースのアクセション番号P14543)のSer430~Ala667のアミノ酸を含み、配列番号62を有している。
第2の工程では、生物学的に中性のタンパク質足場を生成するために、ニドゲンのG2ドメインとペルレカン等の記載された天然リガンドとの相互作用に関係するさまざまな残基を選択的に突然変異させることとした。アミノ酸His456、Arg650、R468およびF639を突然変異させた。13Bに示すように、このモデルに従ってG2βバレルと相互作用すると相互作用ホットスポットにおける影響が確認され、選択した残基がペルレカンによって完全に埋もれた(図13B)。
最後に、超分子組織の観点から、GFPベースのナノ粒子モデルのタンパク質-タンパク質接触に関与することが示唆された残基は、その相対的なニドゲンβバレル構造において非常に類似している(同じグループ)ことが見出され、それらがニドゲン由来の構成ブロックのオリゴマー化における相同相互作用点であることが示唆された。この意味で、突然変異する候補である選択されたアミノ酸は、示差されたタンパク質相互作用領域(具体的にはF639)とわずかに重複しているものの、導入された突然変異(F639S)はこのタンパク質間接触点に有利に作用する。したがって、その将来のオリゴマー化能力に対するニドゲンG2の突然変異の考えられる影響はすべて除去された。これらすべての分析を考慮すると、下記の突然変異が2009年7月7日付けのバージョンのUniprotデータベースのアクセション番号P14543(配列番号72)のヒトニドゲンのSer430~Ala667の配列に組み込まれ:H459A、R468N、F639SおよびR650A、NIDOmut2と名付けられ(図13B)、配列番号64として示されている。
遺伝子工学により、モジュール式の自己集合化タンパク質の合理的な設計と組換え生産が可能となった。本実施例では、1)N末端カチオン性CXCR4特異的リガンド(T22)、2)構造的に安定で生物学的に中性のタンパク質足場、すなわち突然変異したヒトニドゲン-1のG2ドメイン(NIDOmut2、配列番号64)、ステフィンA三重変異タンパク質(Stefin A Triple Mutant Protein(STM))または緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein(GFP))および3)C末端ポリヒスチジンを含む3種の異なるモジュラータンパク質を組換え方式で設計し、E.コリ(E. coli)中で産生した(配列番号61のT22-NIDOmut2-H6、T22-STM-H6およびT22-GFP-H6)。産生されたタンパク質は、IMACアフィニティークロマトグラフィーによって正常に精製され、完全長であり、MALDI-TOF質量分析およびウエスタンブロット免疫検出により決定されるように純粋なタンパク質が得られた。それらはすべて、動的光散乱により決定されるように、T22-STM-H6では25nm、T22-NIDOmut2-H6では12nm、T22-GFP-H6では11nmの範囲の通常サイズのナノ粒子で自己集合化した(図2および図3)。分子量30.3kDaを示すT22-NIDOmut2-H6タンパク質は、細胞内追跡の目的のためのATTO488蛍光色素分子によって正常に標識され、これはMALDI-TOF質量分析によってピーク(約600Daの分子量の追加を有する)であって、追加のATTO488分子の収集に対応する各ピークによって決定される(図4)。
実施例2:配列番号61のCXCR4依存性内在化を伴うT22-NIDOmut2-H6
標識されたT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子は、CXCR4依存プロセスでHeLa細胞に内在化することができ、これはフローサイトメーターで測定された細胞内蛍光の蓄積により決定された(図5)。HeLaは、CXCR4受容体を高度に過剰発現する腫瘍細胞である。CXCR4を介したナノ粒子の取り込みは、HeLa細胞とCXCR4特異的アンタゴニストAMD3100とのプレインキュベーションによってT22-NIDOmut2-H6-ATTO488の内部移行が効率的に阻害される競合アッセイによって実証された。共焦点レーザー顕微鏡画像は、CXCR4+HeLa細胞内のT22-NIDOmut2-H6-ATTO488ナノ粒子の断続的な細胞内核周囲蓄積を示した。
実施例3:T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体の特性化
T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体の特性化をMALDI-TOF質量分析によって行い、追加のオリゴFdU分子の取り込みに対応する30.3kDaを超える追加のピーク(約2kDaの質量増分)が検出された。図6Bでは、最大3個のoligoFdU分子の取り込みに対応するピークが検出された。T22-NIDOmut2-H6-FUナノ複合体を、動的光散乱法により決定されるナノメーターサイズのナノ粒子サイズの範囲に維持した。MTT細胞生存率アッセイで測定をし、T22-NIDOmut2-H6-FdUは、in vitroでCXCR4+HeLa細胞に対してT22-STM-H6-FdUナノ複合体またはT22-GFP-H6-FdUナノ複合体と同様の細胞毒性活性を示した(図7)。3つの異なるナノ複合体が異なる濃度(25nMおよび100nM)で存在するHeLa細胞のインキュベーションによって、ナノモル範囲(IC50<25nM)のIC50で非常に効率的な細胞生存率阻害がもたらされ、すべての場合において、等モル濃度の遊離オリゴFdUよりも有意に効率的であった(図7)。
実施例4:T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体はCXCR4+M5 SC CRCモデルにおいてT22-STM-H6-FdUまたはT22-GFP-H6-FdUよりも高い抗腫瘍効果を示す
CXCR4の過剰発現が高いことから、CXCR4+M5 CRCモデルを用いて、3つの比較したナノ複合体(T22-STM-H6-FdU、T22-NIDOmut2-H6-FdUおよびT22-GFP-H6-FdU)の相対的な効力を評価した。この特徴は、CXCR4+癌細胞を標的とすることができ、したがってCXCR4+CRC幹細胞を選択的に排除することができる3種のナノ複合体の効力を識別するために非常に関連している。
20μg q3dx5の投与量でナノ複合体を繰り返し静脈内投与した後、時間の経過に伴う腫瘍体積を測定したところ、3種のすべてのナノ複合体では、担体で処理した動物と比較して腫瘍増殖の有意な減少を誘発した。腫瘍サイズの縮小は、T22-STM-H6-FdUまたはT22-GFP-H6-FdUによる治療後よりも、T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体による治療後の方が顕著であった。さらに、実験の終了時点で、腫瘍体積の減少(mm3)は、コントロール群の腫瘍体積(1285.2±149.4)と比較の比較において、T22-STM-H6-FdUについて登録された差(699.2±144.6、p=0.027)またはT22-GFP-H6-FdUについて登録された差(661.2±169.2、p=0.050)よりも、T22-NIDOmut2-H6-FdU(456.5±134.9)で有意に高かった(p=0.018)(図8)。
実施例5:T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体はCXCR4+M5 SC CRCモデルでT22-STM-H6-FdUまたはT22-GFP-H6-FdUよりもアポトーシスの誘導物質として高い効力を示す
最後のナノ複合体投与の2日後に安楽死させたマウスにおけるH&E染色腫瘍組織切片の10倍の高倍率視野におけるアポトーシス誘導の評価により、コントロール担体処理群(7.4±0.8)について登録されたもの、またはT22-STM-H6-FdU処理腫瘍(12.0±1.7、p=0.018)もしくはT22-GFP-H6-FdU処理腫瘍(12.3±1.5、p=0.018)においてカウントされたものと比較して、T22-NIDOmut2-H6-FdUについて有意に高いアポトーシス数値がもたらされた(22.7±2.9、p<0.001)。対照的に、T22-STM-H6-FdUまたはT22-GFP-H6-FdUで治療した腫瘍とコントロール腫瘍との間では、アポトーシス誘導に有意差は観察されなかった。
すなわち、T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体は、T22-STM-H6-FdUナノ複合体またはT22-GFP-H6-FdUナノ複合体よりもはるかに強力な抗腫瘍効果を誘導する。この知見および他の2種のナノ複合体よりも処理された腫瘍で有意に多くのアポトーシスの数値を誘発するという事実は、上述したように、ヒトニドゲンタンパク質の突然変異G2ドメインを組み込んだナノ複合体が、このナノ複合体の開発および臨床転用(clinical tanslation)への用途に選択されるものであることを示唆するものである。重要なことに、T22-NIDOmut2-H6-FdUナノ複合体によって示される強力な抗腫瘍活性は、治療終了時の肝臓または腎臓における組織学的変化の欠如を含む正常な臓器において毒性がない場合に観察され(図10)、他の2つのナノ複合体と比較して有意に高い治療指数を示す。
実施例6:配列番号62を有するニドゲンの単離された天然G2ドメインおよび配列番号64を有するH459A、R468N、F639SおよびR650Aの突然変異を含むNIDOmut2変異体は熱安定性ポリペプチドである
NidoWTH6およびSTMH6のサンプルからの中点アンフォールディング温度(Tm)は、検討した温度範囲で最大アンフォールディング状態に達していなかったため決定できなかった。この挙動は、非常に安定なタンパク質であるT22-GFP-H6でも説明されている(Sanchez, JM et al., Biomacromolecules, 2018, 19:3788-3797; doi:10.1021/acs.biomac.8b00924)。一方、Nidomut2H6からTm=55℃が取得されたが、この場合、2つの熱遷移が観察された。ここでも、より高いTmを得ることができなかった(図11)。あるいは、最大CSM値がタンパク質のアンフォールディング状態を表すと仮定して、Tm値(表7、斜体の数字)が提案される。
分析されたすべてのタンパク質は、熱安定性(Tm>65℃)タンパク質および中程度の熱安定性(Tm<65℃)タンパク質4であり、これらはすべてヒトI型コラーゲンよりも安定しており(Leikina et al, (PNAS, 2002, 31314-1318))よりも安定しており、ヒト血清アルブミン(HAS)と同程度のTm値を有する(Pico, G (Int. J. Biol. Macromol. 1997, 20: 63-7))。
実施例7.タンパク質T22-NIDOmut3-H6およびそのすべてのさらなる誘導体の発現試験
それぞれの新しい突然変異タンパク質T22-NIDOmut3-H6、T22-NIDOmut3_V45T-H6、T22-NIDOmut3_V121Q-H6、T22-NIDOmut3_F157E-H6、T22-NIDOmut3_V215T-H6、T22-NIDOmut4_T215V-H6、T22-NIDOmut4-H6およびT22-NIDOmut5-H6について、直接産生および精製されたT22-NIDOmut5-H6を除いて、生存率および品質を評価するための第1のアプローチとして発現試験を行った。すべての培養物は20mLのLB培地で培養され、O/N誘導後のODは3.3~4.5に達した。各タンパク質は、細胞溶解物のウエスタンブロットによって正常に検出された(図14)。分子量は予想されるマーカーバンド内にあり、突然変異F157E(T22NIDOmut3_F157E-H6、T22-NIDOmut4_V215T-H6およびT22-NIDOmut4)を組み込んだタンパク質はわずかに高いバンドを示したことに注目される。T22-NIDOmut3_V121Q-H6およびT22-NIDOmut3_F157E-H6の研究は、これらのタンパク質の主要な画分が不溶性の形態で生成されたため、この時点で中止された。
実施例8.T22-NIDOmut3-H6およびそのすべてのさらなる誘導体のスケールアップされたタンパク質生産
この試験に続いて、タンパク質生産を2L三角フラスコ中の500mLのLB培地に拡大し、金属アフィニティークロマトグラフィーを介して精製を行った。収量を表8に示す。タンパク質は効率的に精製され(純度>95%)、SDS-PAGE/ウエスタンブロットおよびMALDI-TOFによってその完全性が再度裏付けられた(図15)。133mMのNaCO3H緩衝液で透析した後、すべてのタンパク質は安定していた。
実施例9.得られたナノ粒子のサイズ分布
T22-NIDOmut3-H6、T22-NIDOmut4_T215V-H6およびT22-NIDOmut5-H6は、最大生産量(それぞれ、24mg/L、26mg/Lおよび28mg/L)特性を進めるために選択された。この時点で、各候補の体積サイズ分布をDLSを介して調査した(図16)。3種の候補はすべて、ZnCl2(0.04mM)を用いてナノ粒子に集合する前後のサイズが元のT22-NIDOmut2-H6と同等であった。T22-NIDOmut5-H6のみが、より大きなサイズのナノ粒子を示したが、目的のナノスケール(10~100nmの範囲)内に十分収まっていた。Znがこの集合を仲介するために用いられることから、新しいタンパク質がZn誘導沈殿に耐性があるかどうかを試験するために、最大0.16mMのZnCl2の濃度の増加に対して沈殿アッセイを行うことが適切であると考えられた(図17A)。T22-NIDOmut3-H6に由来するすべての新しいタンパク質が、元の可溶性タンパク質に対して最大66%の損失を示したコントロールT22-NIDOmut2-H6とは対照的に、Znと接触したときに可溶性を維持する能力を継承することが実証された。さらに、以前のほとんどのZn濃度で行われたナノ粒子サイズ評価(図17B)により、T22-NIDOmut3-H6ナノ粒子が、17nmの安定したサイズで最小の分散で集合したものであることが明らかになった。
実施例10.緩衝液での安定性の検討
得られたタンパク質の安定性を、FDAが承認した3種の緩衝液、およびコントロール緩衝液としての炭酸塩について検討した。この目的のために、T22-NIDOmut2-H6(コントロール)、T22-NIDOmut3-H6およびT22-NIDOmut5-H6をさらに評価して、より複雑な緩衝液における透析後に全体的な安定性および溶解性を改善できるかどうかを検討した。選択された3種のFDA承認緩衝液の組成を表9に示す。
上述の緩衝液で透析した後、重炭酸ナトリウムコントロールを含むほとんどの条件で沈殿が明らかであった(表10)。しかしながら、T22-NIDOmut2-H6およびT22-NIDOmut3-H6は緩衝液B6に非常に良好に溶解し、緩衝液A9はT22-NIDOmut5-H6に最適であることが示された。
各タンパク質の固有の蛍光を用いて、温度に関連するアンフォールディングパラメータを評価した。CSMプロファイル(図18A~C)により、FDAが承認した3種の緩衝液すべてが、通常の炭酸緩衝液(133mM NaCO3H、pH8)よりもタンパク質の安定性に貢献していることが示唆された。この傾向はA~Cのグラフから明らかであり、炭酸水素緩衝液(C)に属する実線は、ほとんどの温度点において他の緩衝液よりも高いCSM値を維持している。この傾向は、緩衝液A9、B6およびD1がタンパク質をよりコンパクトな状態で保持していることを示唆するものである。どの緩衝液が実際に各タンパク質により良い安定性をもたらしているかを評価するために、主要な指標が各CSMグラフから抽出され、図18Dに示されている。理想的な候補は、3つのインデックスTm、T開始およびΔTのすべてについて高い値を示す必要がある。3種のタンパク質候補を比較すると、T22-NIDOmut3-H6は、1番目に緩衝液A9、2番目にB6に対して高い値を示す。沈殿および安定性のデータを考慮すると、このタンパク質の最良の選択は緩衝液B6であり、安定性の指標が高く、透析中の沈殿がほとんど見られない。より優れた安定性の指標を示す2番目のタンパク質はT22-NIDOmut5-H6であり、安定性および沈殿の点で最良のプロファイルを有する緩衝液D1を提供する。
実施例11-薬物複合体
T22-NIDOmut3-H6およびT22-NIDOmut2-H6を、同様の手順と同一のモル比でoligoFdUに結合した。クリーンな複合体サンプルのOligoFdUおよびタンパク質の定量化では、T22-NIDOmut3-H6およびT22-NIDOmut2-H6について、それぞれ1.79FdU/タンパク質および0.96FdU/タンパク質のペイロード(payload)が示された。ペイロードの推定および結合の有効性を、MALDI-TOFを介して確認した(図19A~B)。両方のナノ複合体は、in vitroで同様の細胞毒性効果を示した(CXCR4+HeLa細胞株、25nM濃度のナノ複合体薬物)。注目すべきことに、同じタンパク質濃度の非複合体タンパク質T22-Nidomut3-H6では、細胞毒性が引き起こされなかった(図19C)。ナノ粒子への22-NIDOmut3-H6-FdUの集合は、2mMのZnCl2を含む炭酸塩緩衝液で達成され;ナノ粒子のサイズは、非複合体型のタンパク質で見られるように17nmのままであった(図19D)。
実施例12.ナノ粒子EPIX4-RK-GFP-H6
ヒトリガンドEPI-X4の能力を、タンパク質ベースの自己集合化ナノ粒子の腫瘍ホーミングペプチドとして試験され、また、T22とともに、CXCR4過剰発現腫瘍細胞を標的にして内部移行するバイパラトピックナノ粒子を形成する可能性を試験した
この目的に対処するために、癌治療に適したサイズの自己集合化タンパク質担体を生成することを目的として、EPI-X4ペプチド配列を提示するための合理的なタンパク質設計を行った(図20A)。より高い受容体親和性および血清安定性を備えた最適化されたタンデム型のEPI-X4を、H6タグ付きGFPのN末端に配置した。アミノ末端のカチオン性ペプチドおよびポリヒスチジン(H6)カルボキシ末端の組み合わせは、二価のカチオン配位を介して約10~80nmのサイズのナノ粒子に集合するタンパク質の制御;血管透過性および保持(EPR)効果と細胞取り込みを改善するだけでなく、腎濾過を最小限に抑えるための理想的なサイズ(腎臓のカットオフは約6~8nm)に有利に働く。EPI-X4ポリペプチド配列には、カチオン性残基が25%しか存在しない。したがって、追加のカチオン性アミノ酸(RKRKRK)[21]がEPI-X4に組み込まれ、EPI-X4の代替プレゼンテーションで50%に到達させた(図20A)。
2つの型のタンパク質(すなわち、EPIX4-GFP-H6およびEPIX4-(RK)-GFP-H6)はエシェリヒア・コリ(Echerichia coli)で効率的に産生され、予想される分子量を有する純粋な完全長ポリペプチドとして精製された(図20B)。親型(EPIX4-GFP-H6)はさまざまなサイズ(4.8~8nmのモノマーまたはダイマー形態から10および50nmのナノ粒子まで)のナノ粒子実体の形態で不安定なオリゴマー化に至ったが、余分なカチオン配列を運ぶタンパク質型(EPIX4-(RK)-GFP-H6)は、約40nm(Pdi=0.343)の通常のナノ粒子として自発的に自己集合化した(図20CおよびD)。これと一致するように、またこれらの結果を完全に裏付けるように、FESEM試験により、超微細構造形態計測を備えたトロイド(リング状)材料が示され(図20E)、動的光散乱(DLS)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた測定値が確認された。
培養CXCR4+HeLa細胞に曝露すると、EPIX4-(RK)-GFP-H6のみが標的細胞に効率的に透過し、特定の受容体エントリーによって細胞内に蓄積し、これは化学薬品CXCR4アンタゴニストAMD3100による阻害によって確認された(図20F)。さらに、共焦点画像はこれらのデータを完全に裏付けており、細胞膜に結合したタンパク質を伴わないEPIX4-(RK)-GFP-H6の細胞内位置を示す(図20G)。EPIX-4リガンドは、CXCR4の2番目の細胞外ループとの相互作用による受容体内在化アンタゴニストとして上記で説明されている。EPIX-4の後にカチオン配列を合理的に追加することによりタンパク質の自己集合化が促進され、天然リガンド(CXCL12)の作用機序を模倣する可能性もある。アルギニン残基のセットとCXCR4N末端との間の相互作用によって、受容体への迅速な結合および効率的な固定が促進され、細胞内在化が促進される。
実施例13.バイパラトピックナノ粒子
同じコンストラクト内の異なる細胞リガンドの組み合わせは、癌治療における魅力的なアプローチであり、細胞特異性を劇的に高め、薬剤耐性の発生を回避する可能性がある。弱い界面活性剤を用いてEPIX4-(RK)-GFP-H6タンパク質ナノ粒子を8.7nmの構築ブロックに分解し、透析によって親ナノ粒子と同じサイズの材料に再集合させた(図21B)。さらに、バイパラトピックナノ粒子は、いずれもCXCR4標的化タンパク質であるEPIX4-(RK)-GFP-H6の分解された部分とT22-BFP-H6とを混合することによって、正常に生成された(図21A)。得られたバイパラトピックナノ粒子は、元のEPIX4-(RK)-GFP-H6(図1E)またはT22-BFP-H6(U. Unzueta et al., Nanotechnology 2017, 28, 505102)と形態学的に区別することができない(図21C)約18nm(図21B)の単分散集団(PdI=0.179)を示した。また、同じ部分における両方のタンパク質の存在は、387nmでの励起時にバイパラトピックナノ粒子に対して異なるタンパク質モノマーの蛍光発光スキャンを比較することにより決定される、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)(青色から緑色への蛍光)によって裏付けられた。この最後の場合において、BFPが387nmで励起されると、BFPの蛍光発光エネルギーがGFP発色団に伝達され、510nmでのGFP蛍光発光のみが観察された(図21D)。
バイパラトピックナノ粒子の生物学的特性を評価するために、CXCR4+細胞株(子宮頸癌HeLa細胞株およびヒト結腸直腸SW1417細胞株)を、生成されたナノ粒子に異なる時間で曝露した。バイパラトピックナノ粒子は、受容体の特異性を失うことなく(図21F)、細胞標的化特性を維持した(図21E)。細胞の取り込みに関して、T22-GFP-H6は短時間で高い取り込みを示し、EPIX4-(RK)-GFP-H6は長時間の取り込みを示し;バイパラトピックナノ粒子は、両者の取り込み挙動を組み合わせて、短時間でさらに良好な細胞取り込みを示した(図21E)。共焦点顕微鏡により細胞の内在化を確認し、緑および青のタンパク質の共局在によってバイパラトピックナノ粒子形成の発生が裏付けられた。
この段階で、標的となるナノ粒子の可能性を詳細に評価するために、患者由来のM5結腸直腸癌のCXCR4+マウスモデルにおいて、in vivoの生体内分布分析を行った。全身投与後、マウスを異なる時点(0.5時間、1時間、2時間、5時間および24時間)で200μgの単回投与で治療した。バイパラトピックナノ粒子は、EPIX4-(RK)-GFP-H6ナノ粒子よりもはるかに速い腫瘍蓄積を誘発し、in vitro分析で予測されるように、より短い時間(0.5~2時間)でより高いレベルの細胞内物質に至った(図21F)。一方、EPIX4-(RK)-GFP-H6は進行性の蓄積を示し、5時間でピークに達し、少なくとも24時間は比較的安定したままであった(図22A)。正常組織を分析すると、すべての型のナノ粒子について非腫瘍組織で蛍光が検出されなかったことから、CXCR4標的化のin vivoでの特異性が非常に高いことがわかる。興味深いことに、腎臓に長時間蛍光がないことは、このヘテロマーオリゴマープラットフォームが親型と同様にin vivoでナノ粒子の安定性を維持していることを示す(表11)。さらに、組織病理学的分析により、CXCR4-組織(腎臓および肝臓)またはCXCR4+(脾臓)のいずれにも全身毒性がないことが裏付けられた(図22D)。
さらに、時間の経過とともに、アポトーシスイベントの劇的な増大が観察され、腫瘍サンプル中の有糸分裂細胞の数が減少し、いずれも5時間の時点で有意であった(図22C)。バイパラトピックナノ粒子の急速な取り込みは、他の型の材料よりも高いレベルの受容体内在化を引き起こした。この事実により、24時間でかなり多くのアポトーシス小体が誘発される(図22B)。これらのナノ粒子のより長い投与は、化学療法の組み合わせ(M. V. Cespedes, et al., EMBO Mol Med 2018, 10)または有毒なタンパク質の融合(R. Diaz et al., Small 2018, 14, e1800665;L. Sanchez-Garcia et al., J Control Release 2018, 274, 81)のいずれかによっても促進され得る持続的なカスパーゼ-3活性化による細胞死が引き起こされ得る(M. V. Cespedes et al., Sci Rep 2016, 6, 35765)。
まとめると、これらすべての観察結果は、ヒト腫瘍ホーミングペプチドとしてのEPI-X4の高い可能性を強く支持している。適切なタンパク質工学により、in vivoでの強力なCXCR4標的化を備える標準的で安定したタンパク質ナノ粒子が得られた。さらに、このタンパク質材料の可塑性により、構造的に堅牢なバイパラトピックナノ粒子タイプで、短時間で高い浸透性を示し、親の特異性と生体内分布パターンを維持する別のCXCR4標的タンパク質と組み合わせることができる。
バイパラトピックナノ粒子の抗腫瘍活性に関して、これらの結果によれば、いずれもCXCR4アンタゴニストであり、おそらく異なるCXCR4ドメインと相互作用するリガンドであるEPI-X4およびT22の多価提示が、おそらくより速い内在化速度、およびバイパラトピック設定でのアポトーシスの誘導の強化の原因であることが示唆される。したがって、治療後24時間に達した400倍の倍率の腫瘍領域あたり約30のアポトーシス像のピークは、細胞死誘導に関して、フロクスウリジンまたは細菌毒素の触媒ドメイン等の強力な細胞毒性薬を組み込むT22に基づくナノ粒子での治療後の結腸直腸腫瘍モデルにおける従来の結果に示されるのと同様の大きさである(L. Sanchez-Garcia et al., J Control Release 2018, 274, 81;M. V. Cespedes, et al., J Control Release 2020, 320, 96)。