医療診断物品
本発明の目的は、接触移動の減少した及び/又は洗浄時の微生物(例えば、細菌)除去が向上した表面を有する物品を提供することであり、本明細書に記載される医療用物品は、典型的には、鼻腔栄養チューブ、創傷接触層、血流カテーテル、ステント、ペースメーカーシェル、心臓弁、整形外科用インプラント(股関節、膝、肩など)、歯周インプラント、歯列矯正ブラケット及びその他の歯列矯正器具、義歯、歯冠、コンタクトレンズ、眼内レンズ、軟組織インプラント(乳房インプラント、陰茎インプラント、顔面及び手インプラントなど)、外科用器具、縫合糸(分解性縫合糸を含む)、蝸牛インプラント、鼓室形成チューブ、シャント(水痘症用シャントを含む)、術後廃液チューブ及び廃液デバイス、尿道カテーテル、気管内チューブ、心臓弁、創傷包帯、他のインプラント型デバイス、並びに他の留置デバイスなどの(例えば、殺菌された)医療用物品ではない。
記載した医療用物品は、単回使用物品として特徴付けられることができ、すなわち、物品は一度使用された後、廃棄される。上記の物品はまた、一人の患者用の物品としても特徴付けられることができる。したがって、そのような物品は、典型的には、洗浄(滅菌ではなく)されず、他の患者に再利用されない。
対照的に、本明細書に記載の物品及び表面は、微細構造化表面が周囲(例えば、屋内又は屋外)環境に晒され、かつ、接触対象となる、又は複数の人々及び/若しくは動物、並びに他の汚染物質(例えば、汚れ)と触れ合うものを含む。
本明細書に記載の物品は、非インプラント型医療診断デバイス又はその構成要素である。本明細書で使用される場合、医療診断デバイスとは、人間又は他の動物における、疾患若しくはその他の症状の診断、又は疾患の治療、緩和、処置、若しくは予防に使用するように意図された機器、装置、器具、機械(構成要素、部品、付属品を含む)を指す。医療診断デバイスは、一般に、人間又は他の動物の体内又は体表での化学作用によってその本来の目的を達成するものではなく、また、その本来の目的を達成するために代謝されることに依存することはない。
インプラント型デバイスは、典型的には、(例えば、米国FDAの)医療デバイスの定義に含まれるが、インプラントは、典型的には、一人の患者によって利用される単回使用物品である。したがって、そのようなデバイスは、洗浄されたり、複数の患者で再利用されたりすることはない。更に、インプラント型デバイスは生体内にあるため、そのようなデバイスは、触れられたり、複数の患者(人及び/又は動物)に接触したりすることはない。
本明細書に記載の微細構造化表面は、デバイスの通常の使用中に複数の患者(すなわち、人及び/又は動物)と接触する医療診断デバイス及びその構成要素にとって最も有益である。そのようなデバイス及びその構成要素は、典型的には、別々の患者への使用の間に洗浄される。
聴診器ダイアフラムの場合などのいくつかの実施形態では、デバイス又はその構成要素の微細構造化表面は、デバイスの通常の使用中に患者と直接(例えば、皮膚)接触する。赤外線体温計などの他の実施形態では、デバイスは、患者と直接(例えば皮膚)接触していなくても、患者に近接し得る。しかしながら、デバイスは患者に近接しているため、このようなデバイスは、微生物(例えば細菌)で汚染され易くなり得、したがって、後続の患者への微生物の拡散を防ぐために、患者と患者の間で洗浄される。
いくつかの実施形態では、医療診断デバイスは、光の特性を利用する光センサ、又は聴覚を含む音の特性を利用する音響センサなどのセンサを備える。
音響構成要素を含む1つの例示的な医療診断デバイスは、聴診器、又はダイアフラムなどその構成要素である。聴診器は、患者の心臓又は呼吸を聞くためのものであり、典型的には、チェストピースに取り付けられて胸に当てられる小さな円盤状の共振器(すなわちダイアフラム)13と、イヤーピースに接続された2本のチューブとを有している。聴診器のダイアフラムは、患者の身体からの小さな振動を増幅し、それらを聴診器チェストピース内で音に変換する。増幅された音は聴診器のチューブを通ってイヤーピースに伝わり、医師は、イヤーピースを介して音を聞く。
図9を参照すると、聴診器10は、チェストピース12に取り付けられたダイアフラム13を含む。ダイアフラム13は、聴診器チェストピースの製造に利用される従来の材料、例えばエポキシ樹脂で形成される。ダイアフラム13を有するチェストピース12が、米国特許第4,200,169号に記載されているような従来のヘッドセットに取り付けられる。このヘッドセットは、イヤーチップ18まで延びている(例えば剛性の)チューブ16に分かれる細長い可撓性チューブ14を含む。可撓性チューブ14の下端は、チェストピース12の従来のステム取り付け部に結合されるようになっている。その結合は、米国特許第4,770,270号(その全内容は参照により明示的に本明細書に組み込まれる)に教示されているように割出し回り止めを利用することができる。聴診器のバイノーラルチューブは、Packardらの、米国特許第5,111,904号、同第5,380,182号、及び同第5,324,471号(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)の教示に従って調製することができる。
イヤーチップ18は、使用者の耳の表面に係合する大きさ及び形状が決められる。イヤーチップ18は、任意の適切なイヤーチップを含むことができる。一実施形態では、イヤーチップ18は、米国特許第4,852,684号、同第4,913,259号、及び同第5,449,865号(全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているソフトイヤーチップを含む。
いくつかの実施形態では、チェストピース12は、第1の集音側と、典型的には第1の集音側に対して平行である、反対側の第2の集音側(図示せず)とを含む両面型である。あるいは、ダイアフラムは、片面ダイアフラムであってもよい。いくつかの実施形態では、聴診器は、ダイアフラムを有するチェストピースの第1の側又は第2の側のいずれかを使用している間に、音のチューニングができるようにするものである。第1の集音側は、成人の患者から集音するために大きさ及び形状が決められる。第2の集音側は、小児科の患者又はやせ型の患者に十分な面接触が得られる大きさ及び形状になっている。第2の集音側は、多くの場合、第1の集音側よりも実質的に小さくもあるベル型の空洞を有し、ダイアフラムのない開放ベル構成で使用され小柄な患者にフィットし、離れた場所又は届きにくい場所へのアクセスを容易にする。両面チェストピースに関する更なる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,213,181号に記載されているように、当該技術分野において既知である。
ダイアフラムは、通常の使用中に複数の患者と接触するため、ダイアフラムの少なくとも外側(例えば、皮膚接触)面が、本明細書に記載されるように微細構造化表面を含むことが好ましい。可撓性又は剛性のチューブ及びイヤーチップなどの聴診器の他の構成要素もまた、任意選択で、本明細書に記載の微細構造化表面を含み得る。
いくつかの実施形態では、図9に示すように、医療診断デバイス(例えば、聴診器)は事前に組み立てられてもよい。他の実施形態では、医療診断デバイス(例えば、聴診器)の1つ以上の未組み立ての構成要素が、本明細書に記載の微細構造化表面を含んでもよい。例えば、図10は、イヤーチップ18と、(例えば、ノンチル)ベルスリーブ15と、成人用のチューニング可能なシングルピースダイアフラム12Aと、小児用のチューニング可能なシングルピースダイアフラム12Bと、を含む3Mリットマン聴診器用の(例えばスペアパーツ)キットを示す。このような構成要素のいずれか1つ又は任意の組み合わせが、本明細書に記載の微細構造化表面を含み得る。
以下の実施例によって証明されるように、微細構造体を含んでも音響センサの機能が低下しないことが見出された。言い換えれば、微細構造化音響センサは、微細構造化表面を欠いた同様の医療診断デバイス又はその構成要素と実質的に等しい音響診断特性を有する。
図13は、(実施例で更に詳細に説明されるように)微細構造化表面を有する聴診器ダイアフラムの音響を、平滑な表面を有する同様のダイアフラムと比較したグラフである。曲線は互いに一致しており、微細構造化表面を有するダイアフラムが、微細構造化表面を欠いた同様の(例えば、平滑な表面の)ダイアフラムと実質的に等しい、20~2000ヘルツの周波数範囲にわたる伝達関数周波数応答曲線を有することを実証している。このグラフは、微細構造化表面を含んでも、脈拍又は心拍を検出する聴診器のダイアフラムの機能が低下しないことを示している。
音響構成要素を含む別の例示的な医療診断デバイスは、超音波又はプローブなどその構成要素である。超音波デバイスは、プローブを使用して、高周波(1~5メガヘルツ)の音響振動パルスを患者の体内に送信する。音響波は患者の体内に伝わり、組織間の境界(例えば、体液と軟組織、軟組織と骨の間)に当たる。反射波は、プローブによって拾われ、機械に中継される。
超音波トランスデューサは、プローブとも呼ばれ、体組織に跳ね返ってエコーを発生させる音波を生成する。トランスデューサはまた、エコーを受信して、それらのエコーをコンピュータに送信し、コンピュータは、それらのエコーを使用してソノグラムと呼ばれる画像を作成する。したがって、プローブは、超音波を生成すると共に受信する。超音波プローブは、典型的には、ビームフォーマ、データプロセッサ、スキャンコンバータ、及び表示ユニットを備える。超音波プローブは、超音波信号と電気信号とを互いに変換するように動作する少なくとも1つのトランスデューサ素子を含み得る。ビームフォーマは、超音波プローブによって提供される受信信号をアナログ/デジタル変換することができ、各トランスデューサ素子の位置及び集束点を考慮してデジタル信号の時間を遅延させることができ、時間遅延デジタル信号を合計することによって、超音波データ、すなわち無線周波数(RF)データを形成する。データプロセッサは、超音波画像を形成するために必要な超音波データに対して様々なデータ処理を実行する。スキャンコンバータは、処理された超音波データをスキャン変換して画像として表示する。
典型的な実施形態では、超音波プローブは、その前部の内側に組み込まれた圧電デバイスモジュールを含む。圧電デバイスは、圧電材料で形成されている。高い音響電気変換効率を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックが一般に用いられる。圧電材料は、振動し、音波のパルスを生成して人体内に送信することができ、反射されたエコーを受信して電気信号に変換することができる。
超音波診断デバイスは、超音波プローブから超音波データを受信し、患者の内臓に関する高解像度を有する超音波画像を提供することができる。超音波診断デバイスは、パーソナルコンピュータ(例えば、ラップトップ)、スマートフォン、又はタブレットデバイスなどの様々な電子表示デバイスと通信することができる。
図11は、様々な例示的な超音波プローブの概略図である。
超音波プローブは、通常の使用中に複数の患者と接触するため、超音波プローブの少なくとも外側(例えば、皮膚接触)面は、本明細書に記載されるように微細構造化表面を含むことが好ましい。超音波デバイスの他の構成要素もまた、任意選択で、本明細書に記載の微細構造化表面を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、図12に示されるように、超音波プローブ100は、米国特許出願公報第2015/0320402号に記載されているようなプローブキャップ120を更に備えてもよい。プローブキャップ120は、プローブ本体110の前端部と結合され、プローブ本体110を保護する。加えて、プローブキャップ120は、プローブ110の圧電デバイスを試験している間、超音波エコーを生成することができる。いくつかの実施形態では、プローブキャップの内面及び/又は外面は、本明細書に記載されるように、微細構造化表面を含んでもよい。
本明細書に記載されるような微細構造化表面を有することによって利益を得るであろう他の(例えば、非インプラント型)医療診断物品には、例えば、耳鏡(耳の中を見るのに使用される)、検眼鏡(患者の目の中を見るのに使用される)、食道聴診器、内視鏡、結腸鏡等を含む種々の再使用可能な医療診断スコープ、パルスオキシメータ(患者の血液の酸素飽和度及び皮膚の血液量の変化を監視する)、(例えば、デジタル指)血圧計及び(例えば、再使用可能な又は使い捨ての)血圧計カフ、電子体温計を含む温度プローブ(例えば、額、口、脇の下、直腸、若しくは耳など、測定する身体の特定の部位にセットされる)、水分又は汗を監視するセンサ、並びに磁気共鳴画像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャン、及びX線診断用物品の表面が含まれる。
本明細書に記載の微細構造化表面は、微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)、黄色ブドウ球菌(Staphyloccus aureus)、緑膿菌(Psueodomonas aeruginosa)又はφ6バクテリオファージなどの細菌)が微細構造化表面上に存在することを防止しない、又は言い換えれば、バイオフィルムを形成することを防止しない。以下の実施例によって証明されるように、本明細書に記載の平滑な平坦面及び微細構造化表面の両方には、洗浄前には、ほぼ同じ量、すなわち、80コロニー形成単位を超える微生物(例えば、細菌)が存在していた。したがって、本明細書に記載される微細構造化表面は、無菌インプラント型医療用デバイスに有益であるとは期待されないであろう。
しかしながら、以下の実施例によって証明されるように、本明細書に記載される微細構造化表面は、洗浄がより容易であり、洗浄後に存在する微生物(例えば、細菌)は少量である。理論に束縛されることを意図するものではないが、走査型電子顕微鏡画像は、大きな連続したバイオフィルムが、典型的には平滑な表面上に形成されることを示唆している。しかしながら、山部及び谷部が、微生物(例えば、細菌)よりもはるかに大きい場合でも、微細構造化表面によって、バイオフィルムは分断される。いくつかの実施形態では、バイオフィルム(洗浄前)は、連続したバイオフィルムではなく、微細構造化表面上に不連続な凝集体及び細胞の小さなグループとして存在する。洗浄後、小さなパッチの状態のバイオフィルム凝集体が平滑な表面を覆う。しかしながら、微細構造化表面は、洗浄後、少量の細胞のグループ及び個々の細胞のみを有することが観察された。好ましい実施形態では、微細構造化表面が、洗浄後に、少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)のlog10減少値をもたらし得る。いくつかの実施形態では、諸試験方法に従って調製された高度に汚染された表面について、微細構造化表面が、洗浄後に、6、5、4、又は3未満の、微生物の回収されたコロニー形成単位の平均log10値を有する。典型的な表面は、初期汚染が少ないことが多く、したがって、洗浄後の回収コロニー形成単位が更に少ないと予想される。これらの特性についての試験方法は、実施例において説明される。
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、同じポリマー(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合樹脂)材料の平滑な表面と比較して、水性又は(例えば、イソプロパノール)アルコール系洗浄溶液が玉形成する(beading up)のを防ぐことができる。洗浄溶液が玉形成する、又は言い換えれば、ディウェッティングする場合、消毒剤は、微生物を死滅させるのに十分な時間、微生物と接触しない可能性がある。しかしながら、洗浄溶液を微細構造化表面に適用した1分後、2分後、及び3分後に、微細構造化表面の少なくとも50、60、70、80、又は90%は、(実施例に記載の試験方法に従って)洗浄溶液を含み得ることが見出された。
以下の例によっても証明されるように、微細構造化表面が、同様の非構造化(例えば、平滑な)表面と比較して、少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%の微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)の接触移動の減少をもたらす。この特性についての試験方法は、実施例において説明される。
好ましい実施形態では、同じ微細構造化表面が、洗浄後の微生物(例えば、細菌)の減少及び微生物の接触移動の減少の両方をもたらす。
しかしながら、他の実施形態では、微細構造化表面は微生物の接触移動の減少をもたらし得るが、山部及び谷部の寸法特徴及び/又は角度により、洗浄後の微生物(例えば、細菌)の減少をもたらさない場合があることが推測される。
微細構造化表面
図1を参照すると、微細構造化表面は、デカルト座標系をその構造に重ね合わせることによって、三次元空間で特徴付けることができる。第1の基準面124は、主表面112と114との間の中心にある。y-z平面と称される第1の基準面124は、その法線ベクトルとしてx軸を有する。x-y平面と称される第2の基準面126は、表面116と実質的に同一平面上に延びており、その法線ベクトルとしてz軸を有する。x-z平面と称される第3の基準面128は、第1の端面120と第2の端面122との間の中心にあり、その法線ベクトルとしてy軸を有する。
いくつかの実施形態では、物品は、マクロスケールで三次元である。ただし、マイクロスケール(例えば、少なくとも2つの隣接する微細構造体と、それらの微細構造体間に配置された谷部又はチャネルとを含む表面領域)では、ベース層/ベース部材は、微細構造体に対して平面であると見なすことができる。微細構造体の幅及び長さは、x-y平面にあり、微細構造体の高さは、z方向にある。更に、ベース層は、x-y平面に平行であり、z平面に直交している。
図2は、微細構造化表面200の例示的な断面図である。このような断面は、複数の個別の(例えば、ポスト又はリブ)微細構造体220を表す。微細構造体は、(例えば、加工)平坦面216(基準面126と平行である図1の表面116)に隣接するベース部212を含む。上(例えば、平面状の)面208(表面216及び図1の基準面26に平行)は、微細構造体の高さ(「H」)だけベース部212から間隔が空いている。微細構造体220の側壁221は、平坦面216に垂直である。側壁221が平坦面216に垂直であるとき、微細構造体は、側壁角度が0度である。垂直側壁の場合、ある山部微細構造体の垂直側壁は互いに平行であり、垂直側壁を有する隣接する微細構造体とも平行である。あるいは、微細構造体230は、平坦面216に対して垂直ではなく角度付けされた側壁231を有する。側壁角度232は、側壁231と平坦面216に垂直な基準面233(図1の基準面126に垂直であり、基準面128に平行)との交点によって画定することができる。米国特許第9,335,449号に記載されているようなプライバシーフィルムの場合、壁角度は、典型的には、10、9、8、7、6、又は5度未満である。プライバシーフィルムのチャネルは光吸収材料を含むため、壁角度が大きくなると透過率が低減する可能性がある。しかしながら、本明細書に記載されるように、壁角度が0度に近づくと、洗浄することがより困難にもなる。
本明細書で記載されるのは、10度を超える側壁角度を有する微細構造体を含む微細構造化表面である。いくつかの実施形態では、側壁角度は、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20度である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30度である。例えば、いくつかの実施形態では、微細構造体は、30度の側壁角度を有するキューブコーナー山部構造である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45度である。例えば、いくつかの実施形態では、微細構造体は、45度の側壁角度を有するプリズム構造である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60度である。側壁のいくつかがより低い側壁角度を有する場合でも、微細構造化表面は有益であろうことが理解される。例えば、山部構造の配列の半分が所望の範囲内の側壁角度を有する場合、改善された微生物(例えば、細菌)除去の利点の約半分が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1度未満の側壁角度を有する。いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、30、25、20、又は15度未満の側壁角度を有する。いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、40、35、又は30度未満の側壁角度を有する。あるいは、上述のように、山部構造の少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%が、十分に大きな側壁角度を有する。
例えば、国際公開第2013/003373号において記載されているように、5ミクロン以下の断面寸法を有する微細構造体は、HAI、又は抗力の増加、熱伝達の減少、ろ過ファウリングなど他の生物付着の問題に最も関与する標的細菌の定着及び付着を実質的に妨げると考えられる。図2を参照すると、この図に示される微細構造体の断面幅(「WM」)は、隣接する微細構造体間のチャネル又は谷部の断面幅(「WV」)以下である。したがって、この線形プリズムの実施形態において示されるように、微細構造体の断面幅(WM)が5ミクロン以下である場合、微細構造体間のチャネル又は谷部の断面幅(WV)も、5ミクロン以下である。図2の微細構造体220によって示されるように、谷部の両側の微細構造体の側壁角度が0の場合、側壁によって画定されるチャネル又は谷部は、底面212に隣接するのと同じ幅(WV)を上面208に隣接して有する。例えば微細構造体230の線231によって示されるように、微細構造体の側壁角度が0より大きい場合、谷部は、典型的には、底面212に隣接するチャネル又は谷部の幅と比較して、より大きな(例えば最大)幅を上面208に隣接して有する。
側壁角度が小さすぎる場合、及び/又は谷部の最大幅が小さすぎる場合、及び/又は微細構造化表面が、過剰な平坦な表面領域を含む場合、微細構造化表面は、(例えば、細菌及び汚れの)洗浄がより困難になることが見出された。
本明細書で記載されるのは、谷部の最大幅が、少なくとも1、2、3、又は4ミクロン、典型的には5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大250ミクロンまでの範囲の微細構造体を含む微細構造化表面である。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも30、35、40、45、又は50ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、50ミクロンより大きい。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも55、60、65、70、75、85、85、90、95又は100ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも125、150、175、200、225、又は250ミクロンである。谷部の幅が大きいほど、汚れの除去により適し得る。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、225、200、175、150、125、100、75、又は50ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、45、40、35、30、25、20、又は15ミクロン以下である。谷部のいくつかが最大幅よりも小さい場合でも、微細構造化表面が有益であろうことが理解される。例えば、微細構造化表面の谷部の総数の半分が所望の範囲内にある場合、約半分の利点が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、谷部の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、10、9、8、7、6、又は5ミクロン未満の最大幅を有する。あるいは、上述のように、谷部の少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%が最大幅を有する。
典型的な実施形態では、微細構造体の最大幅は、谷部について説明したのと同じ範囲内にある。他の実施形態では、谷部の幅は、微細構造体の幅よりも大きくてもよい。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、微細構造化表面は、典型的には、1ミクロン未満の幅を有するナノ構造を含む、5、4、3、2、又は1ミクロン未満の幅を有する微細構造体を実質的に含まない。ナノ構造を更に含む微細構造化表面のいくつかの例は、先に引用された国際公開第2012/058605号に記載されている。ナノ構造は、典型的には、1ミクロンを超えない少なくとも1つ又は2つの寸法(例えば、幅及び高さ)を含み、典型的には、1ミクロン未満の1つ又は2つの寸法を含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造の全ての寸法は、1ミクロンを超えないか、又は1ミクロン未満である。
実質的に含まないとは、そのような微細構造体が、全く存在しないか、又は後に記載されるようにその存在が(例えば、洗浄性)特性を損なわないことを条件に、いくつかが存在し得ることを意味する。したがって、微細構造化表面又はその微細構造体は、微細構造化表面が本明細書に記載の技術的効果を提供することを条件として、ナノ構造を更に含んでもよい。
表面が本明細書に記載の技術的効果を提供することを条件として、微細構造化表面は、第2の微細構造化表面上に存在してもよい。第2の微細構造化表面は、典型的には、より大きな微細構造体を有する(例えば、より大きな谷部の幅及び/又は高さを有する)。
表面が本明細書に記載の技術的効果を提供することを条件として、微細構造化表面は、マクロ構造化表面上に存在してもよい。マクロ構造化表面は、典型的には、顕微鏡によって拡大することなく、可視である。マクロ構造化表面は、少なくとも1mmの少なくとも2つの寸法(例えば、長さ及び幅)を有する。いくつかの実施形態では、マクロ構造体の平均幅は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mmである。いくつかの実施形態では、マクロ構造体の平均長さは、平均幅と同じ範囲であり得るか、又は幅よりも大幅に大きいこともあり得る。例えば、マクロ構造体がドアによく見られるような木目調の微細構造体である場合、マクロ構造体の長さは(例えば、ドア)物品の全長にわたって延びることがある。マクロ構造体の高さは、典型的には幅よりも小さい。いくつかの実施形態において、高さは、5、4、3、2、1又は0.5mm未満である。
ナノ構造を含むより小さな構造体は、バイオフィルム形成を防止することができるが、小さな谷部及び/又は側壁角度が不十分な谷が多数存在すると、汚れの除去を含む洗浄性が妨げられる可能性がある。更に、より大きな微細構造体及び谷部を有する微細構造化表面は、典型的には、より速い速度で製造することができる。したがって、典型的な実施形態では、微細構造体の寸法はそれぞれ、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15ミクロンである、又は前述のように15ミクロンを超える。更に、いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%の微細構造体の寸法はいずれも、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ミクロン未満ではない。
図14は、不連続な谷部を有する比較例の微細構造化表面を示す。そのような表面はまた、蛇行経路を画定するように互いに対して配置された特徴部のグループを有するものとして説明されている。むしろ、谷部は壁により分割され、個別のセルの配列を形成しており、各セルは壁に囲まれている。セルのいくつかは約3ミクロンの長さであり、一方、他のセルは約11ミクロンの長さである。対照的に、記載された微細構造化表面の谷部は、交差する側壁又は谷部に対する他の障害物を実質的に含まない。実質的に含まないとは、側壁又は他の障害物が、谷部内に存在しないか、又は後に記載されるようにその存在が洗浄性特性を損なわないことを条件に、いくつかが存在し得ることを意味する。谷部は、典型的には、少なくとも1つの方向に連続的である。これは、谷部を通る洗浄溶液の流れを円滑にすることができる。したがって、山部の配置は、典型的には、蛇行経路を画定しない。
山部の高さは、前述のように、谷部の最大幅と同じ範囲内にある。いくつかの実施形態では、山部構造は、典型的には、1~125ミクロンの範囲の高さ(H)を有する。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、少なくとも2、3、4、又は5ミクロンである。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、少なくとも6、7、8、9、又は10ミクロンである。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、100、90、80、70、60又は50ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、45、40、35、30、又は25ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10ミクロン以下である。典型的な実施形態では、谷部又はチャネルの高さは、山部構造について説明したのと同じ範囲内である。いくつかの実施形態では、山部構造及び谷部は、同じ高さを有する。他の実施形態では、山部構造は、高さが様々であり得る。例えば、微細構造化表面は、平面状の表面上ではなく、マクロ構造化表面上又は微細構造化表面上に配置され得る。
谷部のアスペクト比は、谷部の高さ(微細構造体の山部高さと同じとすることができる)を谷部の最大幅で割ったものである。いくつかの実施形態では、谷部のアスペクト比は、少なくとも0.1、0.15、0.2、又は0.25である。いくつかの実施形態では、谷部のアスペクト比は、1、0.9、0.8、0.7、0.6、又は0.5以下である。したがって、いくつかの実施形態では、谷部の高さは、典型的には、谷部の最大幅以下であり、より典型的には、谷部の最大幅よりも小さい。
各微細構造体のベース部は、任意選択で角が丸みを帯びた平行四辺形、矩形、正方形、円、半円、半楕円、三角形、台形、他の多角形(例えば、五角形、六角形、八角形など、及びそれらの組み合わせ)を含むがこれらに限定されない、様々な断面形状を含み得る。
一実施形態では、微細構造化表面は、輝度向上フィルムと同じ表面を有し得る。例えば、米国特許第7,074,463号において説明されるように、バックライト付き液晶ディスプレイは、一般に、拡散体と液晶ディスプレイパネルとの間に配置された輝度向上フィルムを含む。輝度向上フィルムは光をコリメートし、それによって液晶ディスプレイパネルの輝度を増加させ、また光源の電力を低減することを可能にする。したがって、輝度向上フィルムは、微生物(例えば、細菌)又は汚れに曝露されない照明付き表示デバイス(例えば、携帯電話、コンピュータ)の内部構成要素として利用されている。
図3を参照すると、一実施形態では、微細構造化表面300は、規則的な直角プリズム320の直線配列を含む。各プリズムは、第1のファセット321と第2のファセット322とを有する。プリズムは、典型的には、(例えば、予め形成されたポリマーフィルム)ベース部材310上に形成され、このベース部材310は、その上にプリズムが形成される、(基準面126と平行である)第1の平坦面331と、実質的に平ら又は平坦であり、かつ第1の面の反対側の第2の表面332と、を有する。直角プリズムは、頂角θ340が典型的には約90°であることを意味する。しかしながら、この角度は、70°~120°の範囲とすることができ、80°~100°の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、頂角は、60、65、70、75、80、又は85°より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、頂角は、150、145、140、135、130、125、120、110、又は100°未満でもよい。これらの頂点は、(示されるように)鋭利であるか、(図7に示されるように)丸みを帯びているか、又は(図8に示されるように)切頭状であり得る。いくつかの実施形態では、谷部の夾角は、頂角と同じ範囲内である。(例えば、プリズム)山部同士の間の間隔は、ピッチ(「P」)として特徴付けられ得る。この実施形態では、ピッチは、谷部の最大幅にも等しい。したがって、ピッチは、前述のように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大250ミクロンまでの範囲である。(例えば、プリズムの)微細構造体の長さ(「L」)は、典型的には最大寸法であり、微細構造化表面、フィルム、又は物品の寸法全体に延び得る。プリズムファセットは同一である必要はなく、プリズムは、図6に示すように互いに対して傾斜していてもよい。
別の実施形態では、微細構造化表面は、キューブコーナー再帰反射シートと同じ表面を有し得る。再帰反射性材料は、材料に入射した光を発光源に戻す方向に転換できる能力によって特徴付けられる。この特性は、様々な交通安全及び個人安全用途のための再帰反射シートの広範な使用をもたらした。図4Aを参照すると、キューブコーナー再帰反射シートは、典型的には、実質的に平面状の前面を有する薄い透明層と、複数のキューブコーナー要素17を含む後部構造化表面10とを備える。封止フィルム(図示せず)は、典型的には、キューブコーナー要素の裏側に適用される。例えば、米国特許第4,025,159号及び同第5,117,304号を参照されたい。封止フィルムは、境界面での内部全反射を可能にし、かつ汚れ及び/又は水分などの汚染物質の侵入を阻止する、キューブの裏面の空気界面を維持する。
図4Aの微細構造化表面10は、3組の平行な溝(すなわち、谷部)11、12、及び13によって画定されるキューブコーナー要素17の配列として特徴付けられ得る。2組の溝(すなわち、谷部)は、60度を超える角度で互いに交差し、第3の組の溝(谷部)は、他の2組のそれぞれと60度未満の角度で交差して、傾斜したキューブコーナー要素対応対の配列を形成する(米国特許第4,588,258号(Hoopman)を参照されたい)。溝の角度は、溝の交点の直線部において形成される二面角になるように選択され、例えば、代表的なキューブコーナー要素17についての14、15、及び16は、約90度である。
いくつかの実施形態では、三角形の底部は、少なくとも64、65、66、67、68、69、又は70度の角度を有し、他の角度は、55、56、57、又は58度である。
図4Bに示される別の実施形態では、図4Bの微細構造化表面400は、第1のy方向の平行溝(すなわち谷部)の組と第2のx方向の平行溝の組とによって画定される角錐形山部構造420の配列を特徴とし得る。角錐形山部構造のベース部は、溝の間隔に応じて、多角形、典型的には正方形又は長方形である。頂角θ440は、典型的には約90°である。しかしながら、この角度は、典型的には、70°~120°の範囲であり、80°~100°の範囲であってもよい。他の実施形態では、頂角は、少なくとも20°、30°、40°、50°、又は60°である。
「フルキューブ」又は「好適形状(PG)キューブコーナー要素」として記載される他のキューブコーナー要素構造は、典型的には、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,188,960号に記載されているように同一平面上にない少なくとも2つの非二面縁部を含む。フルキューブは、切頭状ではない。一態様では、平面図のフルキューブ要素のベース部は、三角形ではない。別の態様では、フルキューブ要素の非二面縁部は、特徴として全てが同じ平面内にあるわけではない(すなわち、同一平面上にはない)。そのようなキューブコーナー要素は、「好適形状(PG)キューブコーナー要素」として特徴付けられ得る。
PGキューブコーナー要素は、基準面に沿って延びているキューブコーナー要素の構造化表面の文脈で定義され得る。PGキューブコーナー要素は、(1)基準面に対して非平行であり、かつ(2)近隣のキューブコーナー要素の隣接する非二面縁部に実質的に平行である、少なくとも1つの非二面縁部を有するキューブコーナー要素を意味する。矩形(正方形を含む)、台形、又は五角形を含む、反射面を有するキューブコーナー要素は、PGキューブコーナー要素の例である。
図5を参照すると、別の実施形態では、微細構造化表面500は、好適形状(PG)キューブコーナー要素の配列を含み得る。例示的な微細構造化表面は、好適形状(PG)キューブコーナー要素の4つの列(501、502、503、及び504)を含む。好適形状(PG)キューブコーナー要素の各列は、「側溝」とも呼ばれる第1及び第2の溝の組から形成された面を有する。そのような側溝は、隣接する側溝に対して、名目上の平行~1度以内の非平行である。そのような側溝は、典型的には、図1の基準面124に対して垂直である。そのようなキューブコーナー要素の第3の面は、好ましくは、主溝面550を備える。この主溝面範囲は、側溝から形成された面に対して、名目上の垂直~1度以内の非垂直である。いくつかの実施形態では、側溝は、名目上90度の頂角θを形成することができる。他の実施形態では、好適形状(PG)キューブコーナー要素の列は、図5に示されるように、交互になった一対の側溝510及び511(例えば、約75度及び約105度)から形成された山部構造を含む。したがって、隣接する(PG)キューブコーナー要素の頂角540は、90度より大きくてもよいし、又はそれより小さくてもよい。いくつかの実施形態では、同じ列の隣接する(PG)キューブコーナー要素の平均頂角は、典型的には90度である。先に引用された米国特許第7,188,960号に記載されているように、PGキューブコーナー要素を含む微細構造化表面の製造中に、側溝を個々の薄層(薄いプレート)上に独立して形成することができ、各薄層は、そのようなキューブコーナー要素の1つの列を有する。反対の向きを有する薄層の対が、それらのそれぞれの主溝面が主溝552を形成するように配置され、それによって、垂直壁の形成を最小限に抑える。薄層を組み立てて微細構造化表面を形成し、そしてそれを複製して、適切なサイズのツールを形成することができる。
いくつかの実施形態では、全ての山部構造は、同じ頂角θを有する。例えば、図3の前述の微細構造化表面は、各々が90度の頂角θを有する複数のプリズム構造を示す。別の例として、図4Bの前述の微細構造化表面は、各々が60度の頂角θを有する複数の角錐形構造を示す。他の実施形態では、山部構造は、同じではない頂角を形成し得る。例えば、図5に示すように、山部構造のいくつかは、90度を超える頂角を有してもよく、山部構造のうちのいくつかは、90度未満の頂角を有してもよい。いくつかの実施形態では、微細構造体の配列の山部構造は、異なる頂角を有する山部構造を有するが、頂角は、平均して60~120度の範囲の値である。いくつかの実施形態では、平均頂角は、少なくとも65、70、75、80、又は85度である。いくつかの実施形態では、平均頂角は、115、110、100、又は95度未満である。
更に別の例として、図6の断面に示されるように、微細構造化表面600は、それぞれが山部652、654、及び656を有する646、648、及び650などの複数の山部構造を含み得る。微細構造化表面が平坦な表面(すなわち、図1の基準面126と平行である表面)を含まない場合、隣接する山部構造のファセットはまた、隣接する山部間の谷部も画定し得る。いくつかの実施形態では、山部構造のファセットは、90度未満の谷部角度を有する谷部(例えば、谷部658)を形成する。いくつかの実施形態では、山部構造のファセットは、90度を超える谷部角度を有する谷部(例えば、谷部660)を形成する。いくつかの実施形態では、谷部658及び660によって示されるように、谷部は対称である。他の実施形態では、谷部662によって示されるように、谷部は対称である。谷部が対称である場合、谷部を画定している隣接する山部構造の側壁同士は、実質的に同じである。谷部が非対称である場合、谷部を画定している隣接する山部構造の側壁同士は異なっている。微細構造化表面は、対称及び非対称の谷部の組み合わせを有し得る。
図7は、微細構造化表面700の別の実施形態を示し、山部構造は、丸みを帯びた頂上740を有する。これらの山部構造は、弦幅742、断面ベース山部幅744、曲率半径746、及び根元角748によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、弦幅は、断面ピッチ幅の約20%~40%に等しい。いくつかの実施形態では、曲率半径は、断面ピッチ幅の約20%~50%に等しい。いくつかの実施形態では、根元角は、少なくとも50、65、70、80又は85度である。いくつかの実施形態では、根元角は、110、105、100、又は95度以下である。いくつかの実施形態では、少なくとも60、65、70、75、80、又は90度である根元角が好ましい。根元角は、谷部角度と同じであり得る。いくつかの実施形態では、山部構造は、少なくとも2、3、又は4マイクロメートルであり、かつ15、10、又は5マイクロメートル以下の範囲の半径に丸められた頂上を有する。いくつかの実施形態では、谷部は、少なくとも2、3、又は4マイクロメートルであり、かつ15、10、又は5マイクロメートル以下の範囲の半径に丸められている。いくつかの実施形態では、山部及び谷部の両方が、少なくとも2、3、又は4マイクロメートであり、かつ15、10、又は5マイクロメートル以下の範囲の半径に丸められている。
図8は、微細構造化表面800の別の実施形態を示し、山部構造840は、切頂されており、平らな、又は言い換えると平面状の、上面(図1の基準面126に実質的に平行)を有している。これらの山部構造は、平坦化された幅842及び断面ベース山部幅844によって特徴付けることができる。典型的な実施形態では、平坦化された幅は、断面ベース山部幅の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、又は1%以下であり得る。特に、山部構造は、頂上が、鋭利である、丸みを帯びている、又は切頭状であるかどうかに関係なく、同じ側壁角度を有することができる。
いくつかの実施形態では、山部構造は、典型的には、少なくとも2つ(例えば、図3のプリズム)、3つ(例えば、図4Aのキューブコーナー)又はより多数のファセットを含む。例えば、微細構造体のベース部が八角形である場合、山部構造は、8つの側壁ファセットを含む。しかしながら、ファセットが、図7、図8に示されるような丸みを帯びた面又は切頭面を有する場合、微細構造体は、特定の幾何学的形状によって特徴付けられない場合がある。
微細構造体のファセットが、頂上と谷部とが鋭利である又は丸みを帯びているが、切頭状ではないように接合される場合、微細構造化表面は、平面状のベース層と平行である平坦な表面を含まないことを特徴とすることができる。しかしながら、頂上及び/又は谷部が切頂されている場合、微細構造化表面は、典型的には、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満の平坦な表面領域を有し、平坦な表面領域は平面状のベース層と実質的に平行である。一実施形態では、谷部は、平坦な表面を有してもよく、山部の側壁のうちの1つのみが、図2Aに示されるように角度付けされている。しかしながら、好ましい実施形態では、谷部を画定している隣接する山部同士の両方の側壁は、前述のように、互いに向かって角度が付けられている。したがって、谷部の両側の側壁は、互いに平行ではない。
図3~図8の各実施形態では、隣接する(例えば、プリズム又はキューブコーナー)山部構造のファセット同士は、典型的には、谷部の底部において、すなわち平面状のベース層の近くで接続されている。山部構造のファセット同士は、同じ方向に連続表面を形成している。例えば、図3では、(例えば、プリズム)山部構造のファセット321及び322は、微細構造体の長さ(L)の方向、又は換言すればy方向に連続している。更に別の例として、図5のPGキューブコーナー要素の主溝452及び550は、y方向に連続表面を形成している。他の実施形態では、ファセットは、同じ方向に半連続表面を形成している。例えば、図4では、(例えば、キューブコーナー又は角錐形)山部構造のファセットは、x方向及びy方向の両方において同じ平面内にある。これらの半連続表面及び連続表面は、表面からの病原体の洗浄を促進することができる。
いくつかの実施形態では、山部構造の頂角は、特に山部構造のファセット同士が山部構造の間の谷部で相互に接続している場合、典型的には、壁角度の2倍である。したがって、頂角は、典型的には20度を超え、より典型的には少なくとも25、30、35、40、45、50、55、又は60度である。山部構造の頂角は、典型的には160度未満であり、より典型的には155、150、145、140、135、130、125、又は120度未満である。
共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を使用して、トポグラフィマップを得た。全てのイメージングに使用されるCLSM装置は、Keyence VK-X200である。CLSMは、集束レーザービームを使用して表面を走査し、表面のトポグラフィをマッピングする光学顕微鏡技術である。CLSMは、レーザービームを光源の開口部に通し、次いで対物レンズによって表面上の小さな領域に集束させることで機能し、試料から放出された光子を収集することによって画像が画素ごとに構築される。これは、ピンホールを使用して画像形成時の焦点外光を遮断する。次元解析を使用して、マニュアル(https://www.imagemet.com/media-library/support-documentsを参照)に従って、SPIP 6.7.7画像計測ソフトウェアを使用して、様々なパラメータを測定した。
表面粗さパラメータ、Sa(粗さ平均)、Sq(二乗平均平方根)、及びSbi(表面ベアリング指数)、Svi(谷部流体保持指数)を、トポグラフィ画像(3D)から計算した。粗さを計算する前に、平面補正を使用した「減算平面」(一次平面フィッティングフォームの除去)。
以下の表は、いくつかの代表的な実施例及び比較例のSパラメータを説明するものである。
粗さ平均Saは、次のように定義される。
式中、M及びNは、データ点X及びYの数である。
平滑な表面では、Saがゼロに近づくことがあるが、洗浄後に微生物除去が不十分であることが見出された比較例の平滑な表面は、少なくとも10、15、20、25、又は30nmの平均表面粗さSaを有していた。比較例の平滑な表面の平均表面粗さSaは、1000nm(1ミクロン)未満であった。いくつかの実施形態では、比較例の平滑な表面のSaは、少なくとも50、75、100、125、150、200、250、300、又は350nmであった。いくつかの実施形態では、比較例の平滑な表面のSaは、900、800、700、600、500、又は400nm以下であった。
洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面の平均表面粗さSaは、1ミクロン(1000nm)以上であった。いくつかの実施形態では、Saは、少なくとも1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nm、1600nm、1700nm、1800nm、1900nm、又は2000nm(2ミクロン)であった。いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、少なくとも2500nm、3000nm、3500nm、4000nm、又は5000nmであった。いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、少なくとも10,000nm、15,000nm、20,000nm、又は25,000nmであった。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面のSaは、40,000nm(40ミクロン)、35,000nm、30,000nm、15,000nm、10,000nm、又は5,000nm以下であった。
いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも2倍又は3倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも4、5、6、7、8、9、又は10倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000倍である。
二乗平均平方根(RMS)パラメータS
qは、次のように定義される。
式中、M及びNは、データ点X及びYの数である。
Sq値はSa値よりもわずかに高いが、Sq値もまたSa値について説明された範囲と同じ範囲内にある。
表面ベアリング指数Sbiは、次のように定義される。
式中、Z
0.05は、5%のベアリング面積での表面高さである。
谷部流体保持指数S
viは、次のように定義される。
式中、Vv(h0.80)は、80~100%のベアリング面積内の谷部ゾーンでの空隙体積である。
上記のSパラメータ表に記載されているように、比較例の平滑な試料のSbi/Svi比は、1及び3であった。洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、3より大きいSbi/Svi比を有していた。微細構造化表面は、少なくとも4、5、又は6であるSbi/Svi比を有する。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、少なくとも7、8、9、又は10であるSbi/Svi比を有していた。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、少なくとも15、20、25、30、35、40、又は45であるSbi/Svi比を有していた。洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、比較例の方形波状微細構造化表面よりも小さいSbi/Svi比を有していた。したがって、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、90、85、80、75、70、又は65未満であるSbi/Svi比を有していた。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、60、55、50、45、40、35、30、25、20、又は10未満であるSbi/Svi比を有していた。
トポグラフィマップを使用して、微細構造化表面の他の特徴部を測定することもできる。例えば、山部高さ(特に同じ高さの繰り返し山部)は、ソフトウェアの高さヒストグラム関数から決定することができる。方形波状フィルムの「平坦な領域」のパーセントを計算するためには、特定の形状(この場合は、微細構造化方形波状フィルムの「平坦な頂部」)を識別する、SPIPの粒子細孔分析機能を使用して「平坦な領域」を識別することができる。
方法
微細構造化表面は、重合性樹脂のコーティング、鋳造及び硬化、射出成形、並びに/又は圧縮技術を含むがこれらに限定されない、様々な高精細方法によって形成することができる。例えば、(例えば、加工)表面の微細構造化は、(1)微細構造パターンを有するツールを使用して溶融熱可塑性樹脂を鋳造すること、(2)微細構造パターンを有するツール上に流体をコーティングすること、その流体を凝固させること、及び得られたフィルムを取り外すこと、(3)熱可塑性フィルムをニップロールに通して、微細構造パターンを有するツールに押し付けて圧縮すること(すなわち、エンボス加工)、及び/又は(4)揮発性溶媒中のポリマーの溶液又は分散体を、微細構造パターンを有するツールに接触させ、例えば、蒸発によって溶媒を除去すること、のうちの少なくとも1つによって達成することができる。ツールは、ある程度はツール材料及び所望のトポグラフィの特徴に応じて選択される、当業者に知られている多数の技術のいずれかを使用して形成することができる。例示的な技術としては、エッチング(例えば、化学エッチング、機械エッチング、又はレーザーアブレーション若しくは反応性イオンエッチングなどの他のアブレーション手段、及びこれらの組み合わせ)、フォトリソグラフィ、ステレオリソグラフィ、マイクロマシニング、ローレット加工(例えば、切削ローレット若しくは酸強化ローレット)、スコアリング、カッティングなど、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、ツールは金属ツールである。ツールは、国際公開第2009/032815号(David)に記載されているようなダイヤモンド様ガラス層を更に含み得る。
(例えば、加工)微細構造化表面を形成する代替的な方法としては、熱可塑性樹脂の押出加工、硬化性流体コーティング法、及び硬化も可能な熱可塑性層のエンボス加工が挙げられる。(例えば、加工)微細構造化表面を形成するための材料及び様々なプロセスに関する追加情報は、例えば、Halversonらの国際公開第2007/070310号及び米国特許出願公開第2007/0134784号、Hanschenらの米国特許出願公開第2003/0235677号、Grahamらの国際公開第2004/000569号、Ylitaloらの米国特許第6,386,699号、Johnstonらの米国特許出願公開第2002/0128578号及び米国特許第6,420,622号、同第6,867,342号、同第7,223,364号、並びにScholzらの米国特許第7,309,519号に見ることができる。
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、医療診断デバイス又はその構成要素の表面の少なくとも一部に組み込まれる。この実施形態では、微細構造化表面は、典型的には、医療診断デバイス又はその構成要素の製造中に形成される。いくつかの実施形態では、これは、(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合性)樹脂の成形、(例えば、熱硬化性又は熱可塑性)シートの圧縮成形、又は微細構造化シートの熱成形によって達成される。
一実施形態では、医療診断デバイスの構成要素(例えば、聴診器のダイアフラム)は、液体(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合性)樹脂を金型内に鋳造することによって調製することができ、モールド面は、微細構造化表面のネガ型複製を含む。
エポキシ樹脂組成物
エポキシ樹脂組成物は、一般に、少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。エポキシド基は、3個の環原子を有する環状エーテルであり、グリシジル基又はオキシラン基とも呼ばれることもある。エポキシ樹脂は、典型的には周囲温度で液体である低分子量モノマーである。
エポキシ樹脂組成物は、概ね、少なくとも1つの環状部分を含む少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。環状部分は、芳香族又は環式脂肪族であってもよい。
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールエポキシ樹脂を含む。ビスフェノールエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリンをビスフェノールAと反応させて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを形成することから形成される。
市販のビスフェノールエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名EPON 828、EPON 1001、EPON 1004、EPON 2004、EPON 1510、及びEPON 1310で入手可能なもの、Dow Chemical Co.から商品名D.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.334、及びD.E.N.439で入手可能なもの);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Huntsman Corporationから商品名ARALDITE GY 281で入手可能なもの)又はMomentive Specialty Chemicals,Inc.製のEPIKOTE 232などのビスフェノールA樹脂とF樹脂とのブレンド;難燃性エポキシ樹脂(例えば、商品名DER 560で入手可能なもの、及びDow Chemical Companyから入手可能なものなどの臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂はまた、ビフェニルジオール及びトリフェニルジオール並びにトリオールなどの芳香族アルコールとエピクロロヒドリンとの反応によって調製することもできる。このような芳香族ビフェニルエポキシ樹脂及び芳香族トリフェニルエポキシ樹脂は、ビスフェノールエポキシ樹脂ではない。1つの代表的な化合物は、Huntsman Corporation(Basel,Switzerland)からTactix(商標)742として入手可能なトリス-(ヒドロキシルフェニル)メタン系エポキシである。
ノボラックエポキシ樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドとの反応によって形成され、その後エピクロロヒドリンでのグリシジル化により、エポキシフェノールノボラック(EPN)及びエポキシクレゾールノボラック(ECN)などのエポキシ化ノボラックを生成する。これらは、固体樹脂に対して非常に粘稠であり、約2~6の典型的な平均エポキシド官能価を有する。代表的な市販のノボラックエポキシ樹脂は、Dowから商品名「D.E.N.431」として市販されている反固形エポキシノボラック樹脂である。このようなノボラックエポキシ樹脂は、25℃で液体であるエポキシ樹脂と組み合わせて使用することができる。
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、1分子当たり2つ以上の1,2エポキシ基を含む脂環式エポキシ樹脂である。これらは概ね、当該技術分野において既知であるように、過酸化水素、又は過酢酸及び過安息香酸などの過酸を使用して、シクロオレフィンなどの不飽和芳香族炭化水素化合物をエポキシ化することによって調製される。このような脂環式エポキシ樹脂は、飽和(すなわち、非芳香族)環構造を有し、エポキシド基は、環の一部であるか、又は環構造に結合している。これらのエポキシ樹脂は、典型的にはエポキシド基の間に1つ以上のエステル結合を含む。アルキレン(C1~C4)結合はまた、典型的にはエポキシド基とエステル結合との間、又はエステル結合の間に存在する。例示的な脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートが挙げられる。別の好適な脂環式エポキシ樹脂としては、2つのエポキシド基(1つは環構造の一部である)を含むビニルシクロヘキサンジオキシド;3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びジシクロペンタジエンジオキシドが挙げられる。グリシジルエーテルを含む他の好適な脂環式エポキシ樹脂としては、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)-エタン;2,3-エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル;ジグリシジルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート;3,4-エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテル;ビス-(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル;ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル;5(6)-グリシジル-2-(1,2-エポキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン;シクロヘキサ-1,3-ジエンジオキシド;3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。
また、1,2-エポキシ基が様々なヘテロ原子又は官能基に結合しているエポキシ樹脂も好適であり、このような化合物としては、例えば、4-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、3-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテル/グリシジルエステル、N-グリシシル(glycicyl)-N’-(2-グリシジルオキシプロピル)-5,5-ジメチルヒダントイン、又は2-グリシジルオキシ-1,3-ビス-(5,5-ジメチル-1-グリシジルヒダントイン-3-イル)プロパンが挙げられる。
エポキシ樹脂は、典型的には、エポキシド基1つ当たり50~250、300、350、400、450、又は500グラムのエポキシ当量を有する。エポキシ樹脂は、典型的には、25℃で約1000cps未満の粘度を有する。いくつかの実施形態において、粘度は、少なくとも50、100、150、200、250、又は300センチポアズである。いくつかの実施形態において、粘度は、900、800、700、600、又は500センチポアズ以下である。単一のエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組み合わせを利用してもよい。エポキシ樹脂組成物は、典型的には、総エポキシ樹脂組成物の重量を基準にして、少なくとも5、6、7、8、9、又は10重量%のエポキシ樹脂を含む。高濃度の熱伝導性無機粒子により、エポキシ樹脂の量は、典型的には20重量%以下であり、いくつかの実施形態において、19、18、17、16、又は15重量%以下である。
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、オリゴマー又はポリマー成分を更に含む。オリゴマー又はポリマー成分は、硬化エポキシ樹脂組成物に可撓性、耐熱衝撃性、耐クラック性、及び耐衝突性を付与することができる。
いくつかの実施形態において、オリゴマー又はポリマー成分は、強化剤として特徴付けることができる。強化剤は、典型的には、硬化エポキシ樹脂中で相分離する有機ポリマー添加剤である。強化剤は、非反応性オリゴマー又はポリマー成分であると特徴付けることができる。強化剤としては、例えば、ブロックコポリマー、両親媒性ブロックコポリマー、アクリルブロックコポリマー、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)、コアシェルゴム(CSR)、直鎖ポリブタジエン-ポリアクリロニトリルコポリマー、オリゴマーポリシロキサン、シリコーンポリエーテル、オルガノポリシロキサン樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。他のエポキシ反応性ポリマー強化剤としては、カルボキシル末端ポリブタジエン、ポリスルフィド系強化剤、アミン末端ブタジエンニトリルゴム、ポリチオエーテル、又はこれらの混合物が挙げられる。
エポキシ反応性オリゴマー成分の例としては、例えば、脂肪酸;ポリアゼライン酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物などの脂肪酸無水物;エチレングリコールなどのジオール、ポリオール、エチレングリコールポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのポリマーなどのポリエーテルジオール、脂肪族アルコール、並びにヒドロキシル基、カルボキシルエポキシ、及び/又はカルボン酸無水物官能基を有する他の材料が挙げられる。他の好適なオリゴマー成分としては、三価及び二価のカルボキシル末端、カルボン酸無水物末端、グリシジル末端、及びヒドロキシル末端ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリブチレングリコールが挙げられる。
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含む。エポキシ樹脂の一般的な部類の硬化剤としては、アミン、アミド、尿素、イミダゾール、及びチオールが挙げられる。硬化剤は、典型的には周囲温度においてエポキシド基との反応性が高い。
いくつかの実施形態において、硬化剤は、反応性-NH基又は反応性-NR1R2基を含み、ここで、R1及びR2は、独立してH又はC1~C4アルキルであり、最も典型的にはH又はメチルである。
一部類の硬化剤は、一級、二級、及び三級ポリアミンである。ポリアミン硬化剤は、直鎖、分枝鎖、又は環状であってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、ポリアミン架橋剤は脂肪族である。あるいは、芳香族ポリアミンを利用することができる。
有用なポリアミンは、一般式R5-(NR1R2)xのポリアミンであり、式中、R1及びR2は、独立してH又はアルキルであり、R5は、多価のアルキレン又はアリーレンであり、xは、少なくとも2である。R1及びR2のアルキル基は、典型的にはC1~C18アルキルであり、より典型的にはC1~C4アルキルであり、最も典型的にはメチルである。R1及びR2を組み合わせて、環状アミンを形成し得る。いくつかの実施形態において、xは2(すなわち、ジアミン)である。他の実施形態において、xは3(すなわち、トリアミン)である。更に他の実施形態において、xは4である。
有用なジアミンは、一般式:
[式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立してH又はアルキルであり、R
5は、二価のアルキレン又はアリーレンである]で表すことができる。いくつかの実施形態において、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれHであり、ジアミンは、一級アミンである。他の実施形態において、R
1及びR
4は、それぞれHであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立してアルキルであり、ジアミンは、二級アミンである。更に他の実施形態において、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立してアルキルであり、ジアミンは、三級アミンである。
いくつかの実施形態において、一級アミンが好ましい。例としては、ヘキサメチレンジアミン;1,10-ジアミノデカン;1,12-ジアミノドデカン;2-(4-アミノフェニル)エチルアミン;イソホロンジアミン;ノルボルナンジアミン4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン;及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。例示的な6員環ジアミンとしては、例えば、ピペラジン(piperzine)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(「DABCO」)が挙げられる。
他の有用なポリアミンとしては、少なくとも3つのアミノ基を有するポリアミンが挙げられ、3つのアミノ基は、一級、二級、又はこれらの組み合わせである。例としては、3,3’-ジアミノベンジジン及びヘキサメチレントリアミンが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂を硬化させるために使用される一般的な硬化剤としては、少なくとも1つの無水物基を有するカルボン酸から誘導される無水物が挙げられる。このような無水物硬化剤は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,194,024号に記載される。
一実施形態において、硬化性エポキシ樹脂組成物は、2剤型組成物として提供されてもよい。一般に、2剤型組成物の2つの成分は、エポキシ樹脂組成物を金型に供給する前に混合されてもよい。金型の少なくとも一部は、本明細書に記載の微細構造化表面のネガ型複製を含む。
エポキシ樹脂シートの圧縮成形
別の実施形態では、医療診断デバイスの構成要素(例えば、聴診器のダイアフラム)は、エポキシ樹脂シートの圧縮成形によって調製され、モールド面は、微細構造化表面のネガ型複製を含む。
エポキシ樹脂シートは、潜在性硬化剤を含む合成熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた紙、キャンバス、リネン、又はガラス布の層に熱及び圧力を加えることによって生成される。様々な樹脂の種類及び布材料を使用して、様々な機械的、熱的、及び電気的特性を有する熱硬化性積層体(laminate)を製造することができる。硬化性エポキシ樹脂シートは、モールド面をシートと接触させ、熱及び圧力を加えることによって成形することができる。熱及び圧力は、最初に、微細構造化表面がエポキシ樹脂シートの表面上に複製されるように、材料を軟化させる。熱はまた、微細構造化表面が維持されるように、エポキシ樹脂を硬化(すなわち、固定)する。G-10は、良好な電気的特性、高強度、より高い寸法安定性、及び高耐湿性の組み合わせを有する。G-10の代表的な特性は、以下のとおりである。同様の特性を有する他の材料を使用することもできる。
微細構造化シートを熱成形する方法
別の実施形態では、微細構造化表面を含むベース部材(例えば、シート又はプレート)を提供することを含む、医療診断物品又はその構成要素の製造方法が記載される。ベース部材は、熱可塑性又は熱硬化性材料を含む。山部構造は、山部構造がベース部材よりも高い溶融温度を有するように、ベース部材とは異なる材料を含む。山部構造は、典型的には、硬化した重合性樹脂を含む。この方法は、微細構造化ベース部材(例えば、フィルム、シート、又はプレート)を、山部構造の溶融温度未満の温度で物品に熱成形することを含む。いくつかの実施形態では、真空形成が、二重真空熱成形(DVT)としても知られる熱成形と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、熱成形物品は、超音波プローブキャップなどの三次元シェルであり得る。
ベース部材(例えば、シート)は、Luらの特許米国特許第5,175,030号、及びLuの米国特許第5,183,597号に記載されるように調製することができ、微細構造を有する物品(例えば、輝度向上フィルム)は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターネガ微細構造モールド面上に、マスターの空洞を充填するのに、かろうじて十分な量で重合性組成物を堆積させる工程と、(c)重合性組成物のビーズを(モノリシック、又は多層(例えばPETフィルム)などの)予め形成されたベース部とマスターとの間で(そのうちの少なくとも1つが可撓性である)移動させることによって空洞を充填する工程と、(d)組成物を硬化する工程と、を含む、方法によって調製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅、又は黄銅などの金属製であってもよく、あるいは重合条件下で安定であり、かつ、マスターからの重合材料のきれいな除去を可能にする表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であってもよい。ベースフィルムの表面のうちの1つ以上は、任意選択的に、プライマー処理されるか、又はそうしない場合は、ベース部への光学層の接着を促進するように処理されてもよい。
有用なベース部材材料としては、例えばスチレン-アクリロニトリル、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸に基づくコポリマー又はブレンド、ポリシクロオレフィン、ポリイミド、並びにガラスが挙げられる。任意選択で、ベース材料は、これらの材料の混合物又は組み合わせを含有することができる。一実施形態では、ベース部は多層であってもよく、又は連続相中に懸濁若しくは分散された分散成分を含有してもよい。有用なPETフィルムの例としては、DuPont Film(Wilmington,Del)から入手可能なフォトグレードポリエチレンテレフタレート及びMELINEX(商標)PETが挙げられる。有用な熱成形可能材料の例は、VIVAK PETGとして市販されているポリエチレンテレフタレート(グリコールを含むポリエステル)である。このような材料は、5000~10,000psi(ATMD 638)の範囲の引張強度及び5,000~15,000の曲げ強度(ASTM D-790)を有することを特徴とする。このような材料は、178°F(ASTM D-3418)のガラス転移温度を有する。
微細構造化フィルムの製造に好適な様々な重合性樹脂が記載される。典型的な実施形態では、重合性樹脂は、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基(例えば、Photomer 6210)及び(例えば、マルチ(メタ)アクリレート)架橋剤(例えば、HDDA)を含む少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む。重合性樹脂はまた、好適な有機又は無機充填剤で充填されてもよく、特定の用途において、充填剤は放射線不透過性である。
再帰反射シート及び輝度向上フィルムの材料は、光学特性に基づいて選択されている。したがって、山部構造及び隣接する谷部は、典型的には、少なくとも1.50、1.55、1.60以上の屈折率を有する材料を含む。更に、可視光の透過率は、典型的には85又は90%を超える。しかしながら、本明細書に記載のフィルム、方法、及び物品の多くの実施形態にとって、光学特性は重要ではないこともある。したがって、着色された材料、光透過性の材料、及び不透明な材料を含むより低い屈折率を有する様々な他の材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルム又はシートは、印刷されたグラフィックを更に含み得る。
代替的実施形態では、微細構造体及び(例えば平面状の)ベース部材の材料は、本明細書に記載の改善された微生物除去及び/又は減少された接触移動に加えて、特定の光学特性を提供するように選択され得る。
例えば、一実施形態では、(例えば平面状の)ベース部材は、少なくとも複数の交互の第1及び第2の光学層を含む多層光学フィルムであって、第1及び第2の光学層が、0°、30°、45°、60°、又は75°の入射光角度のうちの少なくとも1つで、100ナノメートル~280ナノメートルの波長範囲における少なくとも30ナノメートル波長反射帯域幅にわたって入射紫外光の少なくとも30パーセントを合計で反射する、多層光学フィルムを含む。このような多層光学フィルムは、国際公開第2020/070589号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれ、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ、及びUV-C光コンセントレータとして有用である。いくつかの実施形態では、少なくとも複数の交互の第1及び第2の光学層を通る入射可視光透過率は、少なくとも400ナノメートル~750ナノメートルの波長範囲内の少なくとも30ナノメートルの波長反射帯域幅にわたって30パーセントを超える。第1の光学層は、少なくとも1つのポリエチレンコポリマーを含み得る。第2の光学層は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンを含むコポリマー、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンを含むコポリマー、又はペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つを含み得る。第1の光学層は、チタニア、ジルコニア、酸窒化ジルコニウム、ハフニア、又はアルミナを含み得る。第2の光学層は、シリカ、フッ化アルミニウム、又はフッ化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、微細構造体は、多層光学フィルムと共に、可視光透過性UV-C(例えば、反射)保護層、又は言い換えればUV-Cシールドを提供する。UVC光を使用して表面を消毒することができるが、これらの波長は、有機材料を損傷し、望ましくない変色を引き起こす可能性がある。本明細書に記載の微細構造化表面をUV-Cシールドと組み合わせることにより、表面は、UVC光及び従来の洗浄法(例えば、拭き取り、こすり取り、及び/又は抗菌溶液の適用)の両方を用いて洗浄され、微細構造化表面を消毒することができる。
図3に示されているように、連続するランド層360は、チャネル又は谷部の底部と(例えば平面状の)ベース部材310の上面331との間に存在することができる。いくつかの実施形態では、微細構造化表面が重合性樹脂組成物を鋳造及び硬化させることから調製される場合、ランド層の厚さは、典型的には、少なくとも0.5、1、2、3、4、又は5ミクロンで、最大50ミクロンまでの範囲である。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さは、45、40、35、30、25、20、15、又は10ミクロン以下である。
いくつかの実施形態では、微細構造化表面(例えば、少なくともその山部構造)は、少なくとも25℃のガラス転移温度(示差走査熱量計で測定される)を有する有機ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、有機ポリマー材料は、少なくとも30、35、40、45、50、55、又は60℃のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、有機ポリマー材料は、少なくとも100、95、90、85、80、又は75℃のガラス転移温度を有する。他の実施形態では、微細構造化表面(例えば、少なくともその山部構造)は、(示差走査熱量計で測定された)25℃未満又は10℃未満のガラス転移温度を有する有機ポリマー材料を含む。少なくともいくつかの実施形態では、微細構造体は、エラストマーであってもよい。エラストマーは、他の材料と比較して、一般に、好適に低いヤング率及び高い降伏歪みを有する粘弾性(又は弾性)の特性を有するポリマーとして理解され得る。この用語は、多くの場合、ゴムという用語と同じ意味で使用されるが、架橋ポリマーを指す場合には、後者が好ましい。
一実施形態では、微細構造体又は微細構造化表面は、硬化可能な熱硬化性材料で作製され得る。溶融及び固化が熱的に可逆的である熱可塑性材料とは異なり、熱硬化性プラスチックは、加熱後に硬化するため、最初は熱可塑性だが、硬化後に再溶融できなくなるか、又は硬化後に溶融温度が著しく高くなる。
いくつかの実施形態では、熱硬化性材料は、重量基準で大半がシリコーンポリマーである。少なくともいくつかの実施形態では、シリコーンポリマーは、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)などのポリジアルコキシシロキサンであって、微細構造体は、重量基準で大半がPDMSである材料から作製される。より具体的には、微細構造体は、全て又は実質的に全てがPDMSであってもよい。例えば、微細構造体はそれぞれ、95重量%を上回ってもよい。PDMSある特定の実施形態では、PDMSは、ビニル官能性PDMSなどの不飽和官能性PDMSとのシリコーン水素化物(Si-H)官能性PDMSのヒドロシリル化によって形成された、硬化した熱硬化性組成物である。Si-H及び不飽和基は、末端、ペンダント、又はそれらの両方であってもよい。他の実施形態において、PDMSは、アルコキシシラン末端PDMSなどの湿気硬化型であり得る。
いくつかの実施形態において、PDMS以外の他のシリコーンポリマーが有用であってもよく、例えば、ケイ素原子のうちのいくつかは、アリール、例えば、フェニル、アルキル、例えば、エチル、プロピル、ブチル、又はオクチル、フルオロアルキル、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル、又はアリールアルキル、例えば、2-フェニルプロピルであってもよい他の基を有するシリコーンがある。シリコーンポリマーはまた、ビニル、水素化ケイ素(Si-H)、シラノール(Si-OH)、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、無水物、メルカプト、及びクロロアルキルなどの反応基を含有し得る。これらのシリコーンは、熱可塑性であってもよく、又は例えば、縮合硬化、ビニル及びSi-H基の付加硬化、又はペンダントアクリレート基のフリーラジカル硬化によって硬化されてもよい。それらはまた、過酸化物の使用で架橋されてもよい。そのような硬化は、熱又は化学線の追加によって達成され得る。
微細構造体又は微細構造化表面に有用な他のポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーであってもよく、ポリウレタン、メタロセンポリオレフィンを含むポリオレフィン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンメタクリレートコポリマー;ポリエステル(エラストマーポリエステル(例えば、Hytrel)など)、生分解性ポリエステル(ポリ乳酸、ポリ乳酸/グリコール酸、コハク酸とジオールとのコポリマー、及び同等物など)、フルオロエラストマーを含むフルオロポリマー、アクリル(ポリアクリレート及びポリメタクリレート)が含まれる。
ポリウレタンは、線状であってもよく、熱可塑性又は熱硬化性であってもよい。ポリウレタンは、ポリエステルポリオール若しくはポリエーテルポリオールと又はそれらの組み合わせと、組み合わせた芳香族又は脂肪族イソシアネートから形成されてもよい。
代表的なフルオロポリマーには、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE);テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン(THV)のコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びフッ化ビニリデン(VDF)由来のサブユニットを含むポリエチレンコポリマー;並びにフッ素化エチレンプロピレン(FEP)コポリマーが含まれる。フルオロポリマーは、Dyneon LLC(Oakdale、MN)、Daikin Industries、Ltd.(Osaka、Japan);Asahi Glass Co.,Ltd.(Tokyo、Japan)及びE.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmoniton、DE)から市販されている。
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルム又は微細構造化表面層は、先に引用された国際公開第2020/070589号に記載されているようなフルオロポリマーを含む多層フィルムを含む。このような多層フィルムは、例えば、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ、及びUV-C光集光器として有用である。他の実施形態では、微細構造化フィルム又は微細構造化表面層は、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ及びUV-C光集光器として有用ではないモノリシック又は多層フルオロポリマー(例えば保護)層を含む。
いくつかの実施形態では、微細構造体又は微細構造化表面は、微細構造化表面がより親水性であるように改質され得る。微細構造化表面は、一般に、改質された微細構造化表面と同じ材料の平坦な有機ポリマーフィルム表面が、脱イオン水と45度以下の前進接触角又は後退接触角を呈するように、改質され得る。そのような改質がない場合、微細構造化表面と同じ材料の平坦な有機ポリマーフィルム表面は、典型的には、脱イオン水と45、50、55、又は60度を超える前進接触角又は後退接触角を呈する。
親水性を有する微細構造化表面を実現するために、任意の好適な既知の方法を利用してよい。プラズマ処理、真空蒸着、親水性モノマーの重合、フィルム表面への親水性部分のグラフト化、コロナ又は火炎処理などの表面処理を使用してもよい。特定の実施形態では、親水性表面処理は、双性イオン性シランを含み、また特定の実施形態では、親水性表面処理は、非双性イオン性シランを含む。非双性イオン性シランとしては、例えば、非双性イオン性アニオン性シランが挙げられる。
他の実施形態では、親水性表面処理は、少なくとも1つのケイ酸塩を更に含み、例えば、これらに限定されないが、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、テトラエチルオルトシリケート、ポリ(ジエトキシシロキサン)、又はそれらの組み合わせを含む。1つ以上のケイ酸塩は、微細構造化表面への適用のために、親水性シラン化合物を含有する溶液中に混合されてもよい。
任意選択的に、界面活性剤又は他の好適な薬剤を、微細構造化表面を形成するために利用される有機ポリマー組成物に添加してもよい。例えば、親水性アクリレート及び開始剤を重合性組成物に添加し、熱又は化学線によって重合させることができる。あるいは、微細構造化表面は、親水性ポリマーから形成することができ、親水性ポリマーとしては、エチレン酸化物のホモ及びコポリマー;ビニルピロリドン、カルボン酸、スルホン酸、又はアクリル酸などのホスホン酸官能性アクリレートなどのビニル不飽和モノマーを組み込む親水性ポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル及びその加水分解誘導体(例えばポリビニルアルコール)、アクリルアミド、ポリエトキシル化アクリレートなどのヒドロキシ官能性アクリレート;親水性改質セルロース、並びにデンプン及び改質デンプン、デキストランなどの多糖類などが挙げられる。
このような親水性表面は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0045284号に記載されるように、流体制御フィルムに使用するために記載されている。
微細構造化フィルムの医療診断物品又はその構成要素への接合
いくつかの実施形態では、(例えば、加工)微細構造化表面は、フィルム又はテープとして提供され得、医療診断物品又はその構成要素の(例えば外部)表面に貼り付けられ得る。固定は、機械的結合、接着剤、熱溶接、超音波溶接、RF溶接などの熱処理、又はそれらの組み合わせを使用して提供されてもよい。
一実施形態では、平面状のベース層上に配置された、本明細書に記載の微細構造化表面を含むフィルム(例えば、テープ)が記載される。微細構造体は、平面状のベース層と同じ材料で作製されてもよいし、又は異なる材料で作製されてもよい。
フィルム(例えば、テープ)は、フィルムの反対の面上に感圧接着剤(例えば、図3の350)を含む。感圧接着剤でフィルムを表面に接着することにより、医療診断物品又はその構成要素の表面に微細構造化表面を設けることができる。
平面状のベース層は、隣接する(例えば、感圧)接着層とのより良好に接着のために、通常の表面処理を受けてもよい。更に、ベース部材は、下にあるベース部材への(例えば、鋳造及び硬化された)微細構造化層のより良好な接着のために、通常の表面処理を受けてもよい。表面処理としては、例えば、オゾンへの曝露、火炎への曝露、高圧電撃曝露、電離放射線処理、及び他の化学的又は物理的な酸化処理が挙げられる。化学的表面処理としてはプライマーが挙げられる。好適なプライマーの例としては、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、米国特許第5,677,376号、同第5,623,010号に開示されている改質ポリマー、並びに国際公開第98/15601号及び国際公開第99/03907号に開示されているもの、並びに他の改質アクリルポリマーが挙げられる。一実施形態では、プライマーは、3M Companyから「3M(登録商標)Primer94」として入手可能な、アクリレートポリマー、塩素化ポリオレフィン及びエポキシ樹脂を含む、有機溶媒系プライマーである。
フィルムは、様々な(例えば、感圧)接着剤を含んでよく、例えば、天然又は合成のゴム系感圧接着剤、アクリル感圧接着剤、ビニルアルキルエーテル感圧接着剤、シリコーン感圧接着剤、ポリエステル感圧接着剤、ポリアミド感圧接着剤、ポリα-オレフィン、ポリウレタン感圧接着剤、及びスチレンブロックコポリマー系感圧接着剤などを含んでよい。感圧接着剤は一般に、室温(25℃)で動的粘弾性測定により測定することができる、1Hzの周波数での3×106ダイン/cm未満の貯蔵弾性率(E’)を有する。
いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、天然ゴム系である場合があり、これは、天然ゴムエラストマーが、接着剤(充填剤、粘着付与剤などを全く含まない)のエラストマー成分の少なくとも約20重量%を構成することを意味する。更なる実施形態では、天然ゴムエラストマーは、接着剤のエラストマー成分の少なくとも約50重量%、又は少なくとも約80重量%を構成する。いくつかの実施形態では、天然ゴムエラストマーは、1つ以上のブロックコポリマー熱可塑性エラストマー(例えば、Kraton Polymers(Houston,TX)から商品名KRATONで入手可能な全般的種類)とブレンドされ得る。特定の実施形態では、天然ゴムエラストマーは、少なくとも1つの粘着付与樹脂と共に、天然ゴムエラストマーと組み合わせて、スチレン-イソプレンラジカルブロックコポリマーとブレンドしてもよい。この種類の接着剤組成物は、Maらの米国特許出願公開第2003/0215628号において更に詳細に開示されている。
(例えば、感圧)接着剤は、有機溶媒系、水性エマルジョン、ホットメルト(例えば米国特許第6,294,249号に記載されているものなど)、及び化学線(例えば電子ビーム、紫外線)硬化性の(例えば、感圧)接着剤であってもよい。
いくつかの実施形態において、接着剤層は除去可能である。除去可能な接着剤は、50、60、70、80、90、100、又は120℃(248°F)で4時間エージングした後、基材又は表面(例えば、ガラス又はポリプロピレンパネル)に一時的に接着され、その後25℃に平衡化され、約20インチ/分の除去速度で、基材又は表面からきれい除去される。
いくつかの実施形態では、この接着層は、再配置可能な接着層である。用語「再配置可能」とは、少なくとも初期において、接着能を実質的に損なわずに、基材に繰り返し接着し、取り外すことが可能であることを指す。再配置可能な接着剤は通常、少なくとも初期において、従来の強力な粘着性のPSAの剥離強度よりも低い、基材表面に対する剥離強度を有する。好適な再配置可能な接着剤としては、両方とも3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)により製造されたCONTROLTAC Plus Filmブランド及びSCOTCHLITE Plus Sheetingブランドで使用される接着剤の種類が挙げられる。
接着層は、構造化した接着層、又は少なくとも1つの微細構造化した表面を有する接着層も有し得る。このような構造化した接着層を含むフィルム物品を、基材表面に適用すると、チャネル又は同様構造のネットワークがフィルム物品と基材表面との間に存在する。このようなチャネル又は同様構造の存在により、接着層を通って水平方向に空気が通り抜けることができ、これにより、適用中のフィルム物品及び表面基材の下から空気を抜くことができる。
トポロジー的構造化した接着剤はまた、再配置可能な接着剤を提供するのにも使用され得る。例えば、比較的大規模な接着剤エンボス加工によって、感圧接着剤/基材接触面積が永続的に低減することにより、感圧接着剤の接着強度も低減することが記載されている。様々なトポロジーとしては、凹面及び凸面のV字溝、ダイヤモンド、カップ、半球、コーン、噴火口形、及びその他の三次元形状で、接着層のベース面よりも有意に小さな上部表面領域を有するもの全てが挙げられる。概して、これらのトポロジーは、平滑な表面の接着層に比べ、より低い剥離接着値を有する、接着シート、フィルム及びテープを提供する。多くの場合において、このトポロジー的構造化した表面の接着剤はまた、接触時間の増加に伴う接着の構築が遅いことも示されている。
微細構造化した接着表面を有する接着層には、接着表面の機能部分全体にわたって均一に分布し、かつ接着表面から外向きに突出した、接着剤又は複合接着剤「ペグ」が含まれ得る。このような接着層を備えたフィルム物品は、基材表面上に配置したときに、再配置可能なシート材料を提供する(米国特許第5,296,277号を参照)。このような接着層は、保管及び加工中に接着剤ペグを保護するため、一致した微細構造化した剥離ライナーも必要とする。微細構造化した接着表面の形成は、例えば、対応する微細エンボスパターン(micro-embossed pattern)の剥離ライナー上に接着剤をコーティングすることによって、又は、国際公開第98/29516号に記載されているとおり、対応する微細エンボスパターンの剥離ライナーに対して、接着剤(例えばPSA)を押し付けることによって、達成することもできる。
所望の場合、接着層は、複数の接着剤サブ層を含んでもよく、組み合わせた接着層アセンブリを得ることができる。例えば、接着層は、連続的又は不連続なPSA又は再配置可能な接着剤の被覆層と共に、ホットメルト接着剤のサブ層を含み得る。
アクリル感圧接着剤は、溶液重合、バルク重合、又は乳化重合などのフリーラジカル重合技術によって製造することができる。アクリルポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又はグラフトポリマーなどの任意の種類のものであってよい。重合は、一般に使用される重合開始剤及び連鎖移動剤のいずれを用いてもよい。
アクリル感圧接着剤は、1~14個の炭素原子、好ましくは平均4~12個の炭素原子を含有する(例えば非第三級)アルコールに由来する、1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマーの重合単位を含む。モノマーの例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール;3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールなどの非第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。
アクリル感圧接着剤は、1つ以上の低Tg(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含み、即ち、反応してホモポリマーを形成したときの(メタ)アクリレートモノマーは、0℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、-5℃以下、又は-10℃以下のTgを有する。これらのホモポリマーのTgは、多くの場合、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上又は-50℃以上である。
低Tgモノマーは、次の式を有していてもよい
H2C=CR1C(O)OR8
[式中、R1はH又はメチルであり、R8は1~22個の炭素を有するアルキル、又は2~20個の炭素及び酸素若しくは硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を有するヘテロアルキルである]。アルキル基又はヘテロアルキル基は、直鎖、分枝、環状、又はこれらの組み合わせとすることができる。
例示的な低Tgモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられる。
低Tgヘテロアルキルアクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
典型的な実施形態では、アクリル感圧接着剤は、6~20個の炭素原子を含む、アルキル基を有する、少なくとも1つの低Tgモノマーの重合単位を含む。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、7個又は8個の炭素原子を含む、アルキル基を有する。例示的なモノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及び、2-オクチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸と再生可能資源に由来するアルコールとのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
アクリル感圧接着剤は、典型的には、重合単位の総重量(即ち、無機充填剤又は他の添加剤を除く)に基づいて、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90重量%以上の、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含む。
アクリル感圧接着剤は、少なくとも1つの高Tgモノマーを更に含んでもよく、即ち、(メタ)アクリレートモノマーは反応してホモポリマーを形成する場合に0℃より高いTgを有する。高Tgモノマーは、より典型的には、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃より高いTgを有する。高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-オクチルアクリルアミド及びプロピルメタクリレート又は組み合わせが挙げられる。
アクリル感圧接着剤は、極性モノマーの重合単位を更に含んでもよい。代表的な極性モノマーとしては、例えば、酸官能性モノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸)、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート)モノマー、窒素含有モノマー(例えばアクリルアミド)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、アクリル感圧接着剤は、少なくとも0.5、1、2又は3重量%、かつ典型的には10重量%以下の、アクリルアミドなどの極性モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸などの酸官能性モノマーの重合単位を含む。
(例えば、感圧)接着剤は、必要に応じて1種以上の好適な添加剤を更に含んでもよい。添加剤の例は、架橋剤(例えば多官能性(メタ)アクリレート架橋剤(例えば、HDDA、TMPTA)、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤、メラミン架橋剤、アジリジン架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、フェノール変性テルペン並びにロジンのグリセロールエステル及びロジンのペンタエリスリトールエステルなどのロジンエステル、並びにC5及びC9炭化水素粘着付与剤)、増粘剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、静電気防止剤、界面活性剤、レベリング剤、着色剤、難燃剤、及びシランカップリング剤である。
(例えば、感圧)接着層は、様々な通常のコーティング方法、(例えばグラビア)ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、(例えばロータリ又はスリット)ダイコーティング、(例えばホットメルト)押出コーティング、及び印刷によって、フィルム上に配置することができる。接着剤は、本明細書に記載の基材に直接適用してもよく、又は剥離ライナーを使用して転写コーティングしてもよい。剥離ライナーを使用する場合は、接着剤は、ライナー上にコーティングしてフィルムに積層するか、又は、フィルム上にコーティングしてその後に接着層に剥離ライナーが適用される。接着層は、連続層として、又はパターン化不連続層として、適用することができる。接着層は、典型的には、約5~50μmの厚さを有する。
剥離ライナーは、典型的には、オルガノシリコーン化合物、フルオロポリマー、ポリウレタン及びポリオレフィンなどの低表面エネルギー化合物でコーティング又は改質された、紙又はフィルムを含む。この剥離ライナーはまた、接着剤をはじく化合物を添加したか、又は添加していない、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリエステルから製造されたポリマーシートであり得る。上述のように、剥離ライナーは、接着層に対して構造を付与するための、微細構造化した模様又は微細エンボスパターンを有し得る。微細構造化剥離ライナーを使用して、微細構造化表面を付与し、微細構造化表面を標的表面又は物品への適用前又は適用中に損傷から保護することもできる。
医療診断物品又はその構成要素の表面に貼り付けられた微細構造化フィルムは、上記のように、重合性樹脂を熱可塑性又は熱硬化性フィルム上に鋳造及び硬化させることによって調製され得る。あるいは、微細構造化フィルムは、熱可塑性フィルムの溶融押出成形又はエンボス加工により調製されてもよい。
他の有用な熱可塑性又は熱硬化性ポリマーには、ポリウレタン、メタロセンポリオレフィンを含むポリオレフィン;ポリエステル(エラストマーポリエステル(例えば、Hytrel)など)、生分解性ポリエステル(ポリ乳酸、ポリ乳酸/グリコール酸、コハク酸とジオールとのコポリマー、及び同等物など)、フルオロエラストマーを含むフルオロポリマー、アクリル(ポリアクリレート及びポリメタクリレート)が含まれる。ポリウレタンは、線状であってもよく、熱可塑性又は熱硬化性であってもよい。ポリウレタンは、ポリエステルポリオール若しくはポリエーテルポリオールと又はそれらの組み合わせと、組み合わせた芳香族又は脂肪族イソシアネートから形成されてもよい。
再び図2~図4及び図6を参照すると、本明細書に記載の物品は、典型的には、ベース部材(210、310、410、610)上に配置された(例えば、加工)微細構造化表面(200、300、400、600)を含む。物品がフィルム(例えば、シート)である場合、ベース部材は、平坦(例えば、基準面126に平行)である。ベース部材の厚さは、典型的には、少なくとも10、15、20又は25ミクロン(1ミル)、かつ典型的には500ミクロン(20ミル)以下の厚さである。いくつかの実施形態では、ベース部材の厚さは、400、300、200、又は100ミクロン以下である。(例えば、フィルム)ベース部材の幅は、少なくとも30インチ(122cm)であり、好ましくは少なくとも48インチ(76cm)であり得る。(例えば、フィルム)ベース部材は、その長さが最大約50ヤード(45.5m)~100ヤード(91m)で連続的であってもよく、これにより、微細構造化フィルムは、便利に取り扱われるロール商品の状態で提供される。しかしながら、代替的に、(例えば、フィルム)ベース部材は、ロール商品ではなく個々のシート又はストリップ(例えば、テープ)であってもよい。
熱成形可能な微細構造化ベース部材は、典型的には、少なくとも50、100、200、300、400、又は500ミクロンの厚さを有する。熱成形可能な微細構造化ベース部材は、最大3、4、又は5mm以上の厚さを有し得る。
医療診断基材
医療診断物品又はその構成要素は、金属、合金、有機ポリマー材料、又は前述のうちの少なくとも1つを含む組み合わせなどの材料から形成することができる。具体的には、ガラス、セラミック、金属又はポリマー材料、並びにセラミックコーティングされたポリマー、セラミックコーティングされた金属、ポリマーコーティングされた金属、金属コーティングされたポリマーなどの他の好適な代替物及びそれらの組み合わせが適切であり得る。
基材を形成するために使用されるポリマーは、生分解性、非生分解性、又はこれらの組み合わせとすることができる。
更に、繊維強化ポリマー及び/又は粒子強化ポリマーも使用することができる。
更に、繊維強化ポリマー及び/又は粒子強化ポリマーも使用することができる。好適な非生分解性ポリマーの非限定的な例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレンコポリマー)、スチレンブロックコポリマー(例えば、スチレン-イソブチレン-スチレン-tert-ブロックコポリマー(SIBS)などのスチレン-イソブチレン-スチレンブロックコポリマー);ポリビニルピロリドン(架橋ポリビニルピロリドンを含む);ポリビニルアルコール;ビニルモノマーのコポリマー(EVA及びポリ塩化ビニル(PVC)など);ポリビニルエーテル;ポリビニル芳香族;ポリエチレン酸化物;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど);ポリアミド;ポリアクリルアミド;ポリエーテル(ポリエーテルスルホンなど);ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、高度に架橋されたポリエチレン、及び高又は超高分子量ポリエチレンなど);ポリウレタン;ポリカーボネート;シリコーン;シロキサンポリマー;天然ベースのポリマー(任意選択で改質された多糖体及びタンパク質などであって、これらに限定されないが、セルロースポリマー及びセルロースエステル(セルロースアセテートなど)が含まれる);前述のポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。組み合わせは、混和性及び非混和性ブレンド、並びに積層体を含み得る。
好適な生分解性ポリマーの非制限的例としては、ポリカルボン酸;ポリ無水物(無水マレイン酸ポリマーなど);ポリオルトエステル;ポリ-アミノ酸;ポリエチレンオキシド;ポリホスファゼン;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、並びにコポリマー及びその混合物(ポリ(L乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L,ラクチド)、ポリ(乳酸-コーグリコール酸)、及び50/50重量比の(D,L,ラクチド-コーグリコール酸));ポリジオキサノン;フマル酸ポリプロピレン;ポリデプシペプチド;ポリカプロラクトン及びコポリマー、並びにそれらの混合物(ポリ(D,L,ラクチド-カプロラクトン)及びポリカプロラクトン・コ-ブチルアクリレートなど);ポリヒドロキシブチレートバレレート及びその混合物;ポリカルボネート(チロシン由来ポリカルボネート及びアリレート、ポリイミノカルボネート、並びにポリジメチルトリメチルカルボネート);シアノアクリレート;リン酸カルシウム;ポリグリコサミングリカン;巨大分子(ポリサッカライド(ヒアルロン酸を含む)、セルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);ゼラチン;スターチ;デキストラン;並びにアルギン酸及びその誘導体、タンパク質及びポリペプチド;並びに前述のいずれかの混合物及びコポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーはまた、ポリヒドロキシブチレート及びそのコポリマーなどの表面侵食性ポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ無水物(結晶性及び非晶質の両方)、及び無水マレイン酸であり得る。
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、医療診断デバイス又はその構成要素の少なくとも一部と一体化されてもよい。他の実施形態では、微細構造化表面は、医療診断デバイス又はその構成要素の少なくとも一部に貼り付けられ得るフィルム又はテープとして提供され得る。こうした実施形態では、微細構造体は、ベース部材と同じ材料で作製されても異なる材料で作製されてもよい。固定は、機械的結合、接着剤、熱溶接、超音波溶接、RF溶接などの熱処理、又はそれらの組み合わせを使用して提供され得る。
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、可撓性を有する。いくつかの実施形態では、(例えば、グラフィック)フィルムは、フィルムが複雑な湾曲(例えば、三次元)面に適用されることができる(例えば、接着剤で接着される)ように、十分に可撓性があり、形状適合性がある。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、少なくとも50、75、100、125、150、又は200%の伸びを有する。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、500、450、400、350、300、又は250%以下の伸びを有する。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、1000、750、500MPa以下の引張弾性率を有する。引張弾性率は、典型的には、少なくとも100、150、又は200MPaである。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、50、40、又は30MPa以下の引張強度を有する。引張強度は、典型的には、少なくとも10、15、20、25MPaである。引張試験は、初期グリップ距離1インチ、速度1インチ/分又は100%歪み/分を有するASTMD882-10に従って決定される。
任意選択の添加剤及びコーティング
微細構造化表面の有機ポリマー材料は、抗菌剤(殺菌剤及び抗生物質を含む)、染料、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、熱及び光安定剤(紫外線(UV)吸収剤を含む)、充填剤などを含む他の添加剤を含有し得る。
好適な抗菌剤を、ポリマーに組み込むか、又はポリマー上に堆積することができる。好適な好ましい抗菌剤としては、Scholzらの米国特許出願公開第2005/0089539号及び同第2006/0051384号、及びScholzの米国特許出願公開第2006/0052452号及び同第2006/0051385号に記載されているものが挙げられる。本発明の微細構造体はまた、Aliらの国際出願PCT/US2011/37966号に開示されているものなどの抗菌剤コーティングでコーティングされ得る。
典型的な実施形態では、微細構造化表面は、(例えば、フッ素化(例えば、フルオロポリマー)又はPDMS)低表面エネルギー材料からは調製されず、低表面エネルギーコーティングを含まず、平坦な表面上の材料又はコーティングは、90、95、100、105、又は110度を超える水との後退接触角を有する。この実施形態では、材料の低表面エネルギーは、洗浄性に寄与しない。むしろ、洗浄性の改善は、微細構造化表面の特徴に起因する。この実施形態では、微細構造化表面は、ある材料から調製され、その材料の平坦な表面が、典型的には、90、85、又は80度未満の水との後退接触角を有するように、調製される。
他の実施形態では、低表面エネルギーコーティングを微細構造体に適用してもよい。使用され得る例示的な低表面エネルギーコーティング材料としては、いくつか例を挙げると、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)、又はオルガノシラン(例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、アクリルシラン、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)及びフッ素含有オルガノシラン)などの材料を挙げることができる。当該技術分野で既知の特定のコーティングの例は、例えば、米国特許出願公開第2008/0090010号、及び同一所有者の公開である、米国特許公開第2007/0298216号に見出すことができる。コーティングが微細構造体に適用される実施形態の場合、スパッタリング、蒸着、スピンコーティング、ディップコーティング、ロール・ツー・ロールコーティング、又は他の任意の数の適切な方法など、任意の適切なコーティング方法によって適用され得る。
微細構造体の忠実度を維持するために、微細構造体を形成するために使用される組成物中に表面エネルギー改質化合物を含むことも可能であり、多くの場合で好ましい。いくつかの実施形態では、ブルーム添加剤は、ベース部組成物の結晶化を遅延又は防止し得る。好適なブルーム添加剤は、例えば、Scholzらの国際公開第2009/152345号、及びKlunらの米国特許第7,879,746号に見出すことができる。
微細構造化表面の洗浄
一実施形態では、洗浄時の微生物(例えば、細菌)除去が向上した表面を有する医療診断物品を提供する方法が記載されている。微細構造化表面は、例えば、微細構造化表面を織布又は不織布材料で拭き取るか、又は微細構造化表面をブラシでこすることによって、機械的に洗浄することができる。いくつかの実施形態では、織布材料又は不織布材料の繊維は、谷部の最大幅よりも小さい繊維直径を有する。いくつかの実施形態では、ブラシの毛材は、谷部の最大幅よりも小さい直径を有する。あるいは、微細構造化表面は、微細構造化表面に抗菌溶液を適用することによって洗浄されてもよい。更に、微細構造化表面はまた、(例えば、紫外線)放射型の消毒によって洗浄され得る。そのような洗浄技術の組み合わせを使用することができる。
抗菌溶液は、殺菌成分を含有してもよい。様々な殺菌成分が知られており、例えば、クロルヘキシジン及びその各種の塩(ジグルコネート、ジアセテート、ジメトサルフェート、及びジラクテート塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)、ポリヘキサメチレンビグアニドなどの高分子第四級アンモニウム化合物などのビグアニド及びビスビグアニド;銀及び各種銀錯体;小分子第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム(benzalkoium)及びアルキル置換誘導体など);ジ-長鎖アルキル(C8~C18)第四級アンモニウム化合物;ハロゲン化セチルピリジニウム及びその誘導体;塩化ベンゼトニウム及びそのアルキル置換誘導体;オクテニジン、及びこれらの適合性のある組み合わせなどが挙げられる。他の実施形態では、抗菌成分は、過酸化水素、過酢酸、漂白剤などのカチオン性抗菌剤又は酸化剤であってもよい。
いくつかの実施形態では、抗菌成分は、小分子第四級アンモニウム化合物である。好ましい第四級アンモニウム殺菌剤の例としては、C8~C18、より好ましくはC12~C16のアルキル鎖長、及び最も好ましくは鎖長の混合を有するベンザルコニウムハロゲン化物が挙げられる。例えば、典型的な塩化ベンザルコニウム試料は、40%のC12アルキル鎖、50%のC14アルキル鎖、及び10%のC16アルキル鎖から構成され得る。これらは、Lonza社(Barquat MB-50)を含む多数の供給源から市販されており、ベンザルコニウムハロゲン化物はフェニル環上でアルキル基で置換されている。市販の例は、Lonza社から入手可能なBarquat 4250であり、アルキル基がC8~C18の鎖長を有するジメチルジアルキルアンモニウムハライドである。鎖長の混合(ジオクチル、ジラウリル、及びジオクタデシルの混合など)が特に有用であり得る。例示的な化合物は、Lonza社製のBardac2050、205M、及び2250;Cepacol ChlorideとしてMerrell labsから入手可能な塩化セチルピリジニウムなどのセチルピリジニウムハロゲン化物;Rohm and Haas社から入手可能なHyamine1622及びHyamine10Xなどのベンゼトニウムハロゲン化物及びアルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化物;オクテニジンなどが市販されている。
一実施形態では、(例えば、消毒)抗菌溶液は、エンベロープウイルス(例えば、ヘルペスウイルス、インフルエンザ、B型肝炎)、非エンベロープウイルス(例えば、パピローマウイルス、ノロウイルス、ライノウイルス、ロトウイルス)、DNAウイルス(例えば、ポックスウイルス)、RNAウイルス(例えば、コロナウイルス、ノロウイルス)、レトロウイルス(例えば、HIV-1)、MRSA、VRE、KPC、アシネトバクター、及び他の病原体を3分で死滅させる。水性消毒剤溶液には、ベンジル-C12-16-アルキルジメチルアンモニウムクロリド(8.9重量%)、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド(6.67重量%)、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド(2.67重量%)、界面活性剤(5~10%)、エチルアルコール(1~3重量%)、及びpH1~3に調整されたキレート剤(7~10重量%)を含有する消毒剤濃縮物の1:256の希釈液が含有され得る。
「微生物」という用語は、一般に、1つ以上の細菌(例えば、運動性若しくは非運動性、生長性若しくは休眠性、グラム陽性若しくはグラム陰性、プランクトン性若しくはバイオフィルム生息性)、細菌胞子又は内胞子、藻類、真菌類(例えば、酵母、糸状菌類、真菌胞子)、マイコプラズマ、及び原生動物、並びにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の原核生物又は真核生物の微視的生物を指すために使用される。場合によっては、特に対象となる微生物は病原性を有するものであり、「病原体」という用語は、任意の病原性微生物を指すために使用される。病原体の例には、これらに限定されないが、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方、真菌、及びウイルスが含まれ、腸内細菌科のメンバー、又はミクロコッカス科のメンバー、又はブドウ球菌属種、連鎖球菌種、シュードモナス種、アシネトバクター種、腸球菌種、サルモネラ種、レジオネラ種、赤痢菌種、エルシニア種、エンテロバクター種、エシェリキア種、バチルス種、リステリア種、カンピロバクター種、アシネトバクター種、ビブリオ種、クロストリジウム種、クレブシェラ属、プロテウス属、アスペルギルス属、カンジダ属、及びコリネバクテリウム属が含まれる。病原体の特定の例としては、腸管出血性大腸菌を含むエシェリキア・コライ、例えば、血清型O157:H7、O129:H11;緑膿菌;セレウス菌;炭疽菌;サルモネラ腸炎菌;ネズミチフス菌;リステリア・モノサイトゲネス;ボツリヌス菌;ウェルシュ菌;黄色ブドウ球菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌;カルバペネム耐性腸内細菌科カンピロバクター・ジェジュニ;腸炎エルシニア菌;ビブリオ・バルニフィカス;クロストリジウム・ディフィシル;バンコマイシン耐性腸球菌;クレブシエラ・ニューモニエ;プロテウス・ミラビリス;及びエンテロバクター[クロノバクター]・サカザキを挙げることができるが、それらに限定されない。
本発明の利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量による。
方法
走査型電子顕微鏡-試料調製及びイメージング
試料ディスクを、各ディスクを5%グルタルアルデヒド溶液中に30分間慎重に浸漬することによって、走査型電子顕微鏡(SEM)用に固定した。これに続いて、以下の順序で実施した6つの連続したディスク浸漬洗浄工程(各洗浄工程につき30分の浸漬時間)を行った:1)PBS溶液、2)25%イソプロピルアルコール水溶液、3)50%イソプロピルアルコール水溶液、4)75%イソプロピルアルコール水溶液、5~6)100%イソプロピルアルコール溶液中での2回の最終的な浸漬洗浄。ピンセットを使用して各ディスクを96ウェルプレートに移した。ディスクを約48時間にわたって乾燥させた。次に、ディスクの微細構造化表面がスタブの外側に面した状態で、ディスクを両面テープを使用してSEMスタブに個別に取り付けた。各試料の縁部に導電性銀塗料を塗り、Denton Vacuum Desk V Sputter Coater(Denton Vacuum(Moorestown,NJ))と金のターゲットを使用してスタブアセンブリ全体を90秒間スパッタコーティングした。スパッタコーティング後、スタブを、JEOL JCM-500 NeoScope SEM装置(JEOL USA Incorporated(Peabody,MA))に移動させてイメージングを行った。
培地の調製
トリプシンソイブロス(TSB、Becton,Dickinson and Company(Franklin Lakes,NJ)から入手)を脱イオン水中に溶解し、製造業者の指示に従ってろ過滅菌した。
Brain Heart Infusion(BHIS、Becton,Dickinson and Companyから入手)を脱イオン水中に溶解し、製造業者の指示に従ってろ過滅菌した。
細菌培養
緑膿菌(ATCC 15442)又は黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)のストリークプレートを、Tryptic Soy Agarの凍結ストックから調製した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。プレートから1個のコロニーを10mLの滅菌TSBに移した。培養物を毎分250回転及び37℃で一晩振とうした。接種試料を、培養物(約109コロニー形成単位(cfu)/mL)をTSB中で1:100に希釈することによって調製した。
ストレプトコッカスミュータンス(ATCC 25175)の一晩培養物を、滅菌した血清ピペットを使用して、この微生物の少量の25%グリセロール冷凍ストックをこすり取り、15mLコニカルチューブに移すことによって増殖させた。このチューブには5mLのBHIブロスが入っていた。チューブを静的(振とうなし)条件下で37℃で12~16時間にわたって維持した。接種試料を、この培養物(約109コロニー形成単位(cfu)/mL)をTSB中で1:100に希釈することによって調製した。
微細構造化フィルムを調製するための手順
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。構成成分を高速ミキサーでブレンドし、約70℃のオーブン内で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。線形プリズムフィルムを調製するためのテンプレートとして、銅ボタン(直径2インチ(5.08cm))を使用した。ボタン及び配合樹脂を両方とも約70℃のオーブン内で15分間加熱した。温められたボタンの中央に、トランスファーピペットを使用して、約6滴の加温された樹脂を適用した。MELINEX 618 PET支持フィルム[3インチ×4インチ(7.62cm×10.16cm)、厚さ5ミル]の断片を、適用された樹脂を覆うように置き、続いてガラスプレートを置いた。PETフィルムのプライマー処理された表面を、樹脂と接触するように向けた。樹脂がボタンの表面を完全に覆うまで、ガラスプレートを手で押して所定の位置に保持した。ガラスプレートを慎重に取り外した。気泡が入った場合、ゴムハンドローラを使用してそれらを除去した。
試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industries(Plainfield,IL)から入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に2回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。図3の配列パターンを有する硬化した微細構造化フィルムを、90°の角度でそっと引き離すことによって、銅テンプレートから取り外した。剥離ライナーで裏張りされた接着剤層(厚さ8ミル、3M Corporation製の3M 8188 Optically Clear Adhesiveとして入手)を、ハンドローラを使用して微細構造化フィルムの裏面(すなわち非微細構造化表面)に適用した。調製された線形プリズム微細構造化フィルムの特徴を表1に報告する。
パターン化された微細構造化表面の代わりに樹脂と接触するための平滑な表面を有する銅ボタンを使用したことを除いて、比較例Aフィルムは、上記と同じ手順に従って調製された。これにより、平滑な表面を有するフィルム(すなわち、パターン化された微細構造化表面を有さないフィルム)が形成された。
試料ディスクの調製
直径34mmの中空パンチを使用して、微細構造化フィルムから個々のディスクを切り出した。1つのディスクを、滅菌6ウェルマイクロプレートの各ウェル内に配置し、ディスクの微細構造化表面がウェル開口部に面し、剥離ライナーがウェル底部に面するように向けた。次いで、プレートにイソプロピルアルコールのミストを噴霧して、試料を消毒し、乾燥させた。ディスクを、比較例Aのフィルムからも調製した。
試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法
細菌培養物(上記)の接種試料(4mL)を、ディスクの入った6ウェルマイクロプレートの各ウェルに添加した。6ウェルマイクロプレートに蓋を載せて、プレートをPARAFILM M 実験室フィルム(Bemis Company(Oshkosh,WI)から入手)で包んだ。包まれたプレートを湿った紙タオルの入ったプラスチックバッグに入れ、密封したバッグを37℃のインキュベータに入れた。7時間後、プレートをインキュベータから取り出し、ピペットを使用して液体培地を各ウェルから取り出した。新しい滅菌TSB(4mL)を各ウェルに添加し、プレートの蓋を取り付けた。そのプレートをPARAFILM M 実験室フィルムで再び包み、湿った紙タオルと共にバッグに密封し、インキュベータに戻した。17時間後、プレートをインキュベータから取り出した。液体培地を各ウェルから(ピペットを使用して)取り出し、4mLの滅菌脱イオン水と交換した。その水を取り除き、4mLずつの滅菌脱イオン水と更に2回交換した。最後の分の水を各ウェルから取り除き、次いでディスクを取り出した。ライナー層を各ディスクから剥離して、接着剤バッキングを露出させた。中空パンチを使用して、各ディスクから小さい直径12.7mmのディスクを切り出した。ディスクのうちのいくつか(n=3)を、ディスク上のコロニーカウント(cfu)について分析し、ディスクのうちのいくつか(n=3)を、洗浄手順工程に進ませた。
試料ディスク洗浄手順A
直径12.7mmのディスクを、ディスクの接着剤バッキングを介してElcometer Model 1720 Abrasion and Washability Tester(Elcometer Incorporated(Warren,MI))の洗浄レーンに取り付けた。特に指定のない限り、各ディスクは、ディスク表面の微細構造化チャネルが洗浄キャリッジの動きと同じ方向に向けられるように、テスター内に配置された。不織布シート[SONTARA 8000又はポリプロピレン不織布シート(繊維径5.9ミクロン、40gsm)のいずれかから選択]の2インチ×5インチ(5.08cm×12.7cm)の断片を、脱イオン水中にTWEEN 20(0.05%)を含む溶液に浸漬し、余分な液体を絞り出した。この不織布シートをUniversal Material Clamp Tool(450g)の周りに固定し、このツールを装置のキャリッジに取り付けた。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総洗浄時間=15秒)。
試料ディスク洗浄手順B
直径12.7mmのディスクを、ディスクの接着剤バッキングを介してElcometer Model 1720 Abrasion and Washability Testerの洗浄レーンに取り付けた。特に指定のない限り、各ディスクは、ディスク表面の微細構造化チャネルが洗浄キャリッジの動きと同じ方向に向けられるように、テスター内に配置された。Acclean手動歯ブラシ(毛材の平均径約180ミクロン、Henry Schein Incorporated(Melville,NY)から入手)のヘッドを装置のキャリッジ内に保持するために、積層造形によってツールを準備した。歯ブラシヘッド及びディスクを、ディスクの露出した表面全体がブラシの毛材に接触するように並べた。ブラシ毛材を、動作前に水に浸漬した。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総洗浄時間=15秒)。ツールの重量は190gであった。
試料ディスクコロニーカウント方法B
ブラッシング手順に続いて、各ディスクを、PBS緩衝液中にTWEEN 20(0.05%)を含有した1mLずつの溶液で5回洗浄した。洗浄した各ディスクを、個別に、PBS緩衝液(10mL)中にTWEEN 20(0.05%)の溶液を含有した別個の50mL円錐バイアルに移した。各チューブを1分間連続してボルテックスし、Misonix Sonicator Ultrasonic Processor XL(Misonix Incorporated(Farmingdale,NY))を使用して、30秒間超音波処理し(パルス間0.5秒の2秒パルスで、レベル3設定)、1分間ボルテックスした。各チューブからの溶液をバターフィールド緩衝液で段階希釈し(約8希釈)、3M PETRIFILM Aerobic Count Plateのカウント範囲内のコロニー形成単位(cfu)数をもたらす細菌濃度レベルを得した。希釈した各試料のアリコート(1mL)を、製造業者の指示に従って、別個の3M PETRIFILM Aerobic Count Plateにプレーティングした。カウントプレートを、2つのBD GasPak EZパウチ(Becton,Dickinson and Companyから入手)を備えた気密嫌気性ボックス内で密封し、37℃で24時間にわたってインキュベートした。インキュベーション期間後、3M PETRIFILM Plate Readerを使用して、各プレート上のcfuの数をカウントした。カウント値を使用して、ディスクから回収したcfuの総数を計算した。結果を、3つのディスクについて決定された平均cfuカウントとして報告する。
ブラッシング手順を受けなかったディスクを、同じ記載の手順を使用してコロニーカウント(cfu)について分析した。
実施例9
緑膿菌を接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」(上記)に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」(上記)に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」(上記)に従って分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog10cfu減少値と共に表2に報告する。
洗浄前のディスクのSEM画像は、比較例Aのディスクの表面上に大きな連続したバイオフィルムを示していた一方で、実施例1及び2のディスクは、微細構造化ディスク表面上に、細胞の分離した凝集体及び小さなグループを示していた。洗浄手順の後、小さなパッチの状態のバイオフィルム凝集体が、比較例Aのディスクの表面を覆っていた一方で、実施例1及び2のディスクは、微細構造化ディスク表面上に細胞の小さなグループ及び個々の細胞のみを有していた。
実施例10
緑膿菌を接種した実施例3~8、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」に従って分析した。平均log
10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog
10cfu減少値と共に表3に報告する。
実施例11
黄色ブドウ球菌を接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」に従って分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog10cfu減少値と共に表4に報告する。
洗浄前のディスクのSEM画像は、比較例Aのディスクの表面上に大きな連続したバイオフィルムを示していた一方で、実施例1及び2のディスクは、表面上に、細胞の分離した凝集体及び小さなグループを示していた。実施例1及び2のディスクの場合、黄色ブドウ球菌細胞が主に構造化表面の谷部部分にあった。洗浄手順の後、小さなパッチの状態のバイオフィルム凝集体が、比較例Aのディスクの表面を覆っていた一方で、実施例1及び2のディスクは、表面上に細胞の小さなグループ及び個々の細胞のみを有していた。
実施例12
緑膿菌を接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」(上記)に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」に従ってディスクを洗浄した。唯一の例外として、ディスクの半分が、ディスク表面の微細構造化チャネルが洗浄キャリッジの動きと同じ方向に向けられるように、装置内で向けられており、ディスクの半分が、ディスク表面の微細構造チャネルが洗浄キャリッジの動きに垂直な方向に向けられるように、装置内で向けられていた。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」に従って分析した。平均log
10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog
10cfu減少値と共に表5に報告する。
実施例13
緑膿菌を接種した実施例1及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」に記載されたように調製した。ポリプロピレン不織布シート(繊維直径5.9ミクロン、40gsm)を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」に従って分析した。平均log
10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog
10cfu減少値と共に表6に報告する。
実施例14
ストレプトコッカスミュータンスを接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」に記載されたように調製した。ディスクを「試料ディスク洗浄手順B」に従って洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法B」に従って分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog10cfu減少値と共に表7に報告する。
洗浄前のディスクのSEM画像は、比較例Aのディスクの表面上に大きな連続したバイオフィルムを示していたが、実施例1及び2のディスクは、主に微細構造化表面の山部の上部で成長した細胞の分離した凝集体を示していた。洗浄手順の後、バイオフィルム凝集体が依然として比較例Aのディスクの表面のほとんどを覆っていたが、実施例1及び2のディスクは、微細構造化表面の上部で成長した細胞の小さなグループ及び個々の細胞のみを有していた。
実施例15消毒剤溶液による試料ディスクの洗浄
消毒剤洗浄溶液を、3M Disinfectant Cleaner RCT Concentrate 40A(3M Corporationから入手)を滅菌水で希釈(1:256)することにより調製した。緑膿菌を接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」に記載されたように調製した。剥離ライナー層を取り外し、各ディスクを別個の50mL円錐バイアルの壁に取り付けた(すなわち、1チューブ当たり1ディスク)。消毒剤洗浄溶液中にディスクを確実に完全に浸漬するために、ディスクを、チューブの底部に可能な限り近付けて取り付けた。消毒剤洗浄溶液のアリコート(4mL)を各チューブに添加し、チューブを30秒間又は3分間室温で維持した。Dey/Engley中和ブロス(36mL)を直ちに添加し、キャップをしたチューブを手で3回反転させて試料を混合した。各チューブを30秒間連続的にボルテックスし、Branson 2510 Ultrasonic Cleaning Bathを使用して30秒間超音波処理し、30秒間ボルテックスした。各チューブからの溶液をバターフィールド緩衝液で段階希釈し(約8希釈)、3M PETRIFILM Aerobic Count Plateのカウント範囲内のコロニー形成単位(cfu)数をもたらす細菌濃度レベルを得た。希釈した各試料のアリコート(1mL)を、製造業者の指示に従って、別個の3M PETRIFILM Aerobic Count Plateにプレーティングした。カウントプレートを37℃で48時間にわたってインキュベートした。24時間インキュベートした後、3M PETRIFILM Plate Readerを使用して各プレート上のcfu数をカウントした。カウント値を使用して、ディスクから回収したcfuの総数を計算した。
ディスクを消毒剤洗浄溶液で処理しなかったことを除いて、対照ディスクを同じ手順に従って調製し、分析した。結果を、対照ディスク(n=3)で観察された平均cfuカウントと比較した、消毒剤を使用した場合の平均log
10cfu減少値として表8に報告する。
実施例16
アクリル感圧接着剤(PSA)フィルムを、イソオクチルアクリレート(450g、Sigma-Aldrich Company)、アクリル酸(50g、Alfa Aesar(Haverhill,MA))、及びDAROCUR 1173光開始剤(0.15g)を透明なガラス瓶内で組み合わせて混合することによって調製した。試料を窒素で5分間パージし、約2000センチポアズの粘度が達成されるまで、360nmのUV光からの低強度(0.3mW/cm2)のUV照射に曝露した。粘度測定値は、23℃かつ50s-1のせん断速度でLV Spindle #63(AMETEK Brookfield(Middleboro,MA))を有するBrookfield LVDV-II+ Pro Viscometerを使用して判定した。IRGACURE-651光開始剤(1.125g)及びヘキサンジオールジアクリレート(2.7g、Sigma-Aldrich Company)を瓶に添加し、混合物を24時間混合した。得られた粘稠なポリマー溶液を、シリコーン処理したポリエステル剥離ライナー(RF02N及びRF22N、SKC Haas(Seoul,Korea)から入手)間に、設定ギャップを有するナイフコータを使用してコーティングして、100ミクロンの接着剤コーティング厚さを得た。この構造を、総線量1200mJ/cm2のUVA放射線を使用して350nmのUV照射で照射して、最終的なPSAフィルムを準備した。
そのPSAフィルムを、実施例1(表1)の微細構造特徴部を有する線形プリズムフィルムシートの裏面(すなわち、非微細構造化表面)に適用した。得られた積層フィルムを試験ストリップ[1インチ×3インチ(2.54cm×7.62cm)]に切断した。試験ストリップを、ハンドローラを使用して表面が平坦なガラス及びポリプロピレンパネルに適用した。パネルを120℃で4時間コンディショニングし、次いで室温に平衡化した。試験ストリップを、手でパネル表面から剥離した。試験ストリップの除去に続いて、パネル表面を目視検査し、試験ストリップの残留物は、いずれのパネル表面においても観察されなかった。このPSAコーティングされた微細構造化フィルムは、聴診器のダイアフラムなどの医療診断デバイスの表面に接着させることができる。
実施例17
金属ツールをラミネータと共に使用して、実施例3の寸法を有する図3の線形プリズムフィルムを作成した。3M Tape Primer 94(3M Corporationから入手)の層を、ブラシを使用して、VIVAK PET-Gシート(30cm×30cm、シート厚さ=2.1mm)の片面の中心部(12cm×13cm)に適用した。次いで、そのプライマー層を室温で5分間乾燥させた。同じ方法で2つ目のプライマー層を適用し、続いて乾燥させた。UV硬化性樹脂(上記)をピペットでツールに適用し、ディスクのプライマー処理された表面がツールに面し、ツールがシートの中央に置かれた状態で、ツールを覆うようにPET-Gディスクを置いた。ディスクを、50psigのニップ圧力設定及び0.52フィート/分(0.16メートル/分)の速度設定を有するラミネータを使用して積層した。試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industriesから入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に3回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。
得られた積層された微細構造化フィルムシートを、Model C22-S MAAC Thermoformar(MAAC Machines(Carol Stream,IL))を使用して熱成形した。テンプレートモデルは、並んで配置された2つの手動レンチからなっていた。一方のレンチは、調整可能な三日月レンチ(全長110mm)であり、他方のレンチは、全長125mmの7/16インチのコンビネーションレンチ(開放端及びボックス端)であった。シートをホルダに入れ、浸漬時間100~110秒、上部及び底部加熱器出力55%、及び真空30mmHgで熱成形サイクルを開始した。微細構造化表面がレンチテンプレートから離れる方を向くような状態でシートの微細構造化部分がレンチテンプレートと位置合わせされるように、シートを向けた。シートは、レンチを覆うように高忠実度でコンフォーマルに形成された。熱成形された熱可塑性物品をテンプレートから分離して、Keyence VK-X 200シリーズレーザー顕微鏡(Keyence Corporation)を使用して物品の微細構造体を検査及び測定した。微細構造体は、それらの形状、及びそれらの山部高さの名目上60%を保持していた。この例は、微細構造化シート又はフィルムを熱成形することが、超音波プローブキャップなどの医療診断デバイスの構成要素の製造方法として利用できることを示すものである。
実施例18
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。構成成分を高速ミキサーでブレンドし、約70℃のオーブン内で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。銅ボタンを、キューブコーナー微細構造化フィルムを調製するためのテンプレートとして使用した。ボタン及び配合樹脂を両方とも約70℃のオーブン内で15分間加熱した。加温した樹脂を、トランスファーピペットを使用して、加温したボタンの中心に適用した。ボタンよりも大きいMELINEX 618 PET支持フィルム(厚さ5ミル)の断片を、適用された樹脂を覆うように置き、続いてガラスプレートを置いた。PETフィルムのプライマー処理された表面を、樹脂と接触するように向けた。樹脂がボタンの表面を完全に覆うまで、ガラスプレートを手で押して所定の位置に保持した。ガラスプレートを慎重に取り外した。気泡が入った場合、ゴムハンドローラを使用してそれらを除去した。
試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industries(Plainfield,IL)から入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に2回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。硬化した微細構造化フィルムを、90°の角度でそっと引き離すことによって、銅テンプレートから取り外した。微細構造化表面は、図4Aに示されるような傾斜したキューブコーナー構造の配列を有していた。図4Cを参照すると、個々のキューブコーナー微細構造の寸法は以下のとおりであった:三角形底部が、70/55/55度(ベータ1、2、3);側壁角度アルファ2、アルファ3、アルファ1がそれぞれ、60、60、89度;山部高さが、63.3マイクロメートル;谷部幅が、127マイクロメートル及び145マイクロメートル。テンプレートとして利用された銅ボタンは、この微細構造化表面のネガ型複製を有していた。
実施例19
圧縮成形を使用して、実施例1について報告されたものと同じ微細構造化特徴寸法を有する線形プリズム微細構造化表面を有する、G-10エポキシ積層体のシートを調製した。微細構造化表面のネガ型複製を有する金型を、3M ESPE PARADIGM Heavy Body VPS印象材(3M Corporation)を使用してマスターから作製した。金型(15.2cm×15.2cm)を平坦な厚紙の断片上に配置した。G10 Epoxy Fiberboardの2枚のシート(12.7cm×12.7cm)を積み重ねて、金型の中心に置いた。シリコーンの平坦で平滑なシート(約1.27cm)をそれらのエポキシシートの上に置き、平坦なステンレス鋼プレート(厚さ約2.54cm)をそのシリコーンシートの上に置いた。完成した積層物を、液圧プレスの下部プラテン上に置いた。プレスの上部及び下部プラテンを300°F(148.9℃)で加熱し、積層物を2500ポンドの圧力(1平方インチ当たり100ポンドの圧力)下に1時間置いた後、積層物への圧力を維持しながらプラテンを70°F(21.1℃)に冷却した。冷却後、加えた圧力を取り除いた。得られた微細構造化G-10エポキシシートを金型及びシリコーンスペーサから外した。
実施例20
圧縮成形を使用して、実施例19において報告された手順に従ってキューブコーナー微細構造化表面を有するG-10エポキシ積層体のシートを調製した。実施例18に記載された微細構造化表面のネガ型複製を有する金型を、3M ESPE PARADIGM Heavy Body VPS印象材を使用してマスターから作製した。
実施例21
金属ツールを用いた圧縮成形を使用して、キューブコーナー微細構造化表面を有するG-10エポキシ積層体のシートを調製した。
ケイ素含有層を、平行平板容量結合プラズマ反応器を使用して、国際公開第2009/032815号(David)に記載されているように、ツールの微細構造化表面に適用した。反応器のチャンバは、3.61ft2(0.10m3)の表面積を有する中央円筒型被電力供給電極を有していた。微細構造化ツールを被電力供給電極の真下のチャンバの床に置き(ツールと電極との間の公称距離約4インチ(10.16cm))、反応器チャンバを1.3Pa(1mTorr)未満のベース圧力までポンプダウンした。酸素を、600SCCM(1分当たりの標準立方センチメートル)の流量でチャンバに導入した。RF電力を13.56MHzの周波数及び600ワットの印加電力で60秒間反応器に結合することにより処理を行った。微細構造上に薄膜を堆積させる第2の工程は、酸素の流れを停止し、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)を蒸発させて、120SCCMの流量でシステム内に輸送することによって達成された。RF電力を13.56MHzの周波数及び600ワットの印加電力で120秒間反応器に結合することによって、プラズマ強化化学蒸着(CVD)法を用いて処理を行った。第2の工程の完了後、HMDSOの120SCCMの流れに加えて、HMDSOの第2のラインをチャンバに開放した。合わせた流量は、4.1mTorrのチャンバ圧力をもたらした。RF電力を13.56MHzの周波数及び200ワットの印加電力で45秒間反応器に結合することにより処理を行った。プロセス条件により、200nm未満の推定厚さを有する剥離コーティングがもたらされた。工程ごとに、記載されたガス流が安定した後に、電極にrf電力を印加してプラズマを生成した。プラズマ処理の完了に引き続いて、RF電力及びガスの供給を停止し、チャンバを大気圧に戻した。
金属ツール(15.2cm×15.2cm)を平坦な厚紙の断片上に配置した。G10 Epoxy Fiberboardの2枚のシート(12.7cm×12.7cm)を積み重ねて、金型の中心に置いた。シリコーンの平坦で平滑なシート(厚さ約1.27cm)をそれらのエポキシシートの上に置き、平坦なステンレス鋼プレート(厚さ2.54cm)をそのシリコーンシートの上に置いた。完成した積層物を、液圧プレスの下部プラテン上に置いた。プレスの上部及び下部プラテンを300°F(148.9℃)で加熱し、積層物を2500ポンドの圧力(1平方インチ当たり100ポンドの圧力)下に1時間置いた後、積層物への圧力を維持しながらプラテンを70°F(21.1℃)に冷却した。冷却後、加えた圧力を取り除いた。得られた微細構造化G-10エポキシシートを金型及びシリコーンスペーサから外した。微細構造化表面は、図4Aに示されるような傾斜したキューブコーナー構造の配列を有していた。図4Cを参照すると、個々のキューブコーナー微細構造の寸法は以下のとおりであった:三角形底部が、58/58/64度(ベータ1、2、3);側壁角度がそれぞれ、67、67、77度;山部高さが、49.5マイクロメートル;谷部幅が、101.6マイクロメートル及び107.7マイクロメートル。
比較例B
微細要素金型を、積層物における第2の平坦で平滑なシリコーンシートに置き換えたことを除いて、G-10エポキシ積層体の平坦で平滑なシートを実施例19に記載されたものと同じ圧縮成形プロセスに供給した。これにより、平滑な表面を有するエポキシシート(すなわち、パターン化された微細構造化表面を有さないフィルム)が形成された。
実施例22
実施例19及び比較例Bのディスク(12.7mm)を実施例9に記載の手順に従って調製し、洗浄し、分析した。平均log
10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog
10cfu減少値と共に表9に報告する。
実施例23微生物接触移動の低減
Tryptic Soy Agarを、製造業者の指示に従って調製した。緑膿菌(ATCC 15442)又は黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)のストリークプレートを、Tryptic Soy Agarの凍結ストックから調製し、37℃で一晩インキュベートした。プレートからの2つのコロニーを使用して、9mLの滅菌バターフィールド緩衝液(3M Corporation)に接種した。光学密度(吸光度)を600nmで読み取り、読み取り値が0.040±0.010であることを確認した。必要に応じて、培養物をこの範囲内になるように調整した。培養物の一部(1.5mL)を滅菌50mLコニカルチューブ中のバターフィールド緩衝液45mLに添加して、接触移動実験用の接種溶液を作製した。接種溶液の連続希釈試料を、バターフィールド緩衝液を使用して調製した。希釈試料を3M PETRIFILM Aerobic Countプレート(3M Corporation)にプレーティングし、製造業者の指示に従って評価し、各実験で使用した細胞濃度を確認した。
実施例1、2、18、19、及び20の微細構造化試料(50mm×50mm)を調製し、両面テープを使用して滅菌100mmペトリ皿の内部底面に個別に接着した。各ペトリ皿には1つの試料が入っており、試料は、微細構造化表面が露出されるように取り付けられていた。対応する比較例A及びBの試料も試験し、対照試料としての役目を果たした。比較例Aの試料は、実施例1、2、及び18の微細構造化試料の対照試料としての役目を果たした。比較例Bの試料は、実施例19及び20の微細構造化試料の対照試料としての役目を果たした。各微細構造化試料及び対照試料の露出表面を、95%イソプロピルアルコール溶液で湿潤させたKIMWIPE拭き取り布(Kimberly-Clark Corporation(Irving,TX))を使用して3回拭き取った。試料を、ファンをオンにした状態で、BioSafety Cabinet内で15分間風乾した。次いで、UV光による照射を使用して、キャビネット内で試料を30分間滅菌した。
接種溶液(上記の黄色ブドウ球菌又は緑膿菌のいずれか25mL)を滅菌ペトリ皿(100mm)に注いだ。試料ごとに、オートクレーブ滅菌したWhatman Filter Paper(グレード2、直径42.5mm;GE Healthcare(Marborough,MA))の円形ディスクを、火炎滅菌したピンセットを使用して掴み、接種溶液が入ったペトリ皿に5秒間浸した。その紙を取り出し、25秒間皿の上方で保持して、余分な接種菌液を紙から排出させた。接種した紙ディスクを微細構造化試料の上に置き、新しいオートクレーブ滅菌されたWhatman Filter紙片(グレード2、60×60mm)を、その接種した紙ディスクを覆うように置いた。滅菌したコンラージ棒をその積層物の上部紙表面に押し付けて、表面を横切るように垂直方向に2回移動させた。積層物を2分間維持した。次いで、滅菌ピンセットを使用して、両方のフィルタ紙片を微細構造化試料から取り外した。試料を室温で5分間風乾させた。各試料の微細構造化表面からの細菌の接触移動を、RODACプレート(Trypticase Soy Agar with Lecithin and Polysorbate 80;Thermo Fisher Scientific製)を均一な圧力(約300g)で5秒間フィルム試料に均等に押し付けることによって評価した。RODACプレートを37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション期間に続いて、プレートごとにコロニー形成単位(cfu)をカウントした。試料を3回試験し、平均カウント値を報告した。
RODACプレートごとの平均cfuカウントをlog
10スケールに変換した。接触移動によるcfuカウントのlog
10減少値を、対応する対照試料(平滑表面を有する試料)で得られたlog
10カウント値から微細構造化試料で得られたlog
10カウント値を差し引くことによって決定した。接触移動の平均減少%(n=3)を、式Aによって計算した。結果を表10に報告する。
式A:接触移動の減少%=(1-10
(-log
10
減少値))×100
実施例24微細構造化ダイアフラムを有する聴診器
実施例21で調製した微細構造化G-10エポキシ積層シートから円形ディスク(直径174mm、厚さ0.023mm)をレーザー切断した(CO2レーザー)。次いで、ディスクを可撓性ポリウレタンリムを用いてインサート成形して、3M LITTMANN Cardiology IV Diagnostic Stethoscope(3M Corporationから入手)用の成人用ダイアフラム構成要素を形成した。成形工程では、微細構造化特徴部がダイアフラムの外側を向いた面(すなわち、使用時に被験者の皮膚と接触するダイアフラムの表面)上になるように微細構造化ディスクを向けた。3M LITTMANN Cardiology IV Diagnostic Stethoscopeから元の成人用ダイアフラムを取り外し、微細構造化成人用ダイアフラムと交換した。
比較例C.微細構造化ダイアフラムを含まない聴診器
比較例Bで調製したG-10エポキシ積層シートから円形ディスク(直径174mm、厚さ0.023mm)をレーザー切断した(CO2レーザー)。次いで、ディスクを可撓性ポリウレタンリムを用いてインサート成形して、3M LITTMANN Cardiology IV Diagnostic Stethoscopeの成人用ダイアフラムを形成した。3M LITTMANN Cardiology IV Diagnostic Stethoscopeから元の成人用ダイアフラムを取り外し、G-10エポキシ積層ダイアフラムと交換した。
実施例25聴診器音響試験装置及び手順
聴診器の音響性能は、人間の胴体を模した形式でチェストピースに結合された広帯域ノイズ源又はピンクノイズ源に対するその周波数応答で説明することができる。聴診器の音響性能を特徴付けるために使用した試験装置は、米国特許第10,398,406号の図10に記載されている。この装置には以下が含まれる:Bruel&Kjaer Head and Torso Simulator(HATS) タイプ 4128C 及び 4159C Left Ear Simulator、4158C Right Ear Simulator、並びにCalibrated Left and Right pinnae(Bruel&Kjaer North America(Duluth,GA)。音源は、直径130mm×厚さ30mmの寸法を有するシリコーンゲルパッドを充填した87mmの上部開口部を有する円筒形の音響機チャンバに入れられたラウドスピーカであった。シリコーンゲルパッドは、人間の皮膚/肉を模するために使用されたものであり、ECOFLEX 00-10 Super Soft Shore 00-10 Platinum Silicone Rubber Compound(Reynolds Advanced Materials(Countryside,IL) から作製した。実施例24に従って調製された聴診器、及びダイアフラムに変更を加えない市販の3M LITTMANN Cardiology IV Diagnostic Stethoscope(比較例)を試験した。成人用サイズのダイアフラムを使用して、聴診器チェストピースをゲルパッド上に置いた。軽い力を模するために、チェストピースの上部に100gの重りを適用した。Head simulatorの耳部に聴診器のイヤーチップを挿入した。イヤーカプラ内のマイクが、人間の耳と同等の方法で聴診器の音を検出し、ラウドスピーカの上方に配置された基準マイクが、伝達関数周波数応答の正規化信号を提供した。伝達関数は、以下のように定義される。
H1(f)=(Sxy(f))/(Sxx(f))
式中、Sxy(f) は、HATS のイヤーと基準マイクとの間のクロススペクトルであり、Sxx(f) は、基準マイクの自動スペクトルである。
音は、B&K PULSEソフトウェアを使用したPCで操作されるBruel&Kjaer(B&K) LAN-XI音響試験システムで生成、録音、特徴付けした。オーディオアンプを使用して、LAN-XIシステムによって生成された音を用いてラウドスピーカを駆動した。内部にスピーカを備えた音響機シリンダを、60cmx90cmのISOSTATION Vibration Isolation Workstation(Newport Corporation(Irvine,CA))上に配置した。伝達関数周波数応答(Y軸はデシベル/1パスカル/パスカル)曲線を、各聴診器について20~2,000Hzの周波数範囲にわたって生成した。
図13は、実施例24の聴診器及び市販のLITTMANN Cardiology IV Diagnostic Stethoscope(比較例)を使用して生成された個々の伝達関数周波数応答曲線を示す。それらの応答曲線は周波数範囲全体で概して同じであったため、聴診に使用した場合、これらの聴診器間に知覚可能な差はない。
実施例26
3M Tape Primer 94(3M Corporationから入手)の層を、DURAN PET-Gディスク(ディスク直径=125mm、ディスク厚さ=0.75mm)の片面の表面全体にブラシを使用して適用した。次いで、そのプライマー層を室温で5分間乾燥させた。
金属ツールをラミネータと共に使用して、キューブコーナー特徴部を有する微細構造化表面を作成した。UV硬化性樹脂(上記)をピペットでツールに適用した。コーティングされたツールを真空オーブンに入れ、オーブン内の圧力を635mmHgまでゆっくりと下げた。一旦この真空が達成されると、圧力を上昇させて大気圧まで戻した。PET-Gディスクを、ディスクのプライマー処理された表面がツールに面した状態で、ツールを覆うように置いた。ディスクを、50psigのニップ圧力設定及び0.52フィート/分(0.16メートル/分)の速度設定を有するラミネータを使用して積層した。試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industriesから入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に3回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。ディスクをツールから慎重に取り外した。微細構造化表面は、図4Aに示されるような傾斜したキューブコーナー構造の配列を有していた。図4Cを参照すると、個々のキューブコーナー微細構造の寸法は、以下のとおりであった:三角形底部が、70/55/55度(ベータ1、2、3);側壁角度アルファ2、アルファ3、アルファ1がそれぞれ、60、60、89度;山部高さが、63.5マイクロメートル;谷部幅が、127マイクロメートル及び178マイクロメートル。金属ツールは、微細構造化表面のネガ型複製を有していた。
積層された微細構造化ディスクを、BIOSTAR VI圧力成形機(Scheu-Dental GmbH)を使用して、歯科アライナ物品に形成した。微細構造化ディスクを30秒間加熱し、次いで剛性ポリマーモデルを覆うように引っ張った。微細構造化表面が、モデルと接触するようにフィルムを向けた。フィルムの後ろの成形機のチャンバを冷却しながら30秒間にわたって90psiに加圧し、次いでチャンバを通気して周囲圧力に戻した。熱成形されたフィルムと共にモデルを成形機から取り出し、超音波カッター(モデル NE80、Nakanishi Incorporated(Kanuma City,Japan))を使用して余分なフィルムをトリミングした。完成した熱成形された三次元シェルをモデルから分離した。形成された三次元シェルの微細構造体を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡(Keyence Corporation(Itasca,IL))を使用して検査及び測定した。キューブコーナー微細構造体は、それらの形状、及びそれらの山部高さの名目上80%を保持していた。この例は、キューブコーナー微細構造化シート又はフィルムの熱成形が、超音波プローブキャップなどの医療診断デバイスの構成要素の製造方法として利用できることを示すものである。
比較例D 方形波状微細構造化フィルム
ダイヤモンド(先端幅29.0マイクロメートル、夾角3°、深さ87マイクロメートル)を使用して、複数の平行な直線状溝を有するツールが切断された。溝同士は、59.1マイクロメートルのピッチで間隔が空けられた。以下の表11の材料を混合することによって樹脂Aを調製した。
上記の樹脂A及びツールを使用して鋳造及び硬化高精細プロセスが実施された。ライン条件は、樹脂温度150°F(65.5℃)、ダイ温度150°F(65.5℃)、コータIR120°F(48.9℃)縁部/130°F(54.4℃)中心部、ツール温度100°F(37.8℃)、及びライン速度70fpmであった。ピーク波長が385nmのFusion Dランプ(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD)から入手)を硬化に使用し、100%の電力で操作した。得られた微細構造化フィルムは、図2に示されているように、チャネルによって分離された複数の壁を備えていた。ベース層は、3ミル(76.2マイクロメートル)の厚さを有するPETフィルム(3M Corporation)であった。樹脂と接触したPETフィルムの側を、熱硬化性アクリルポリマー(Dow Chemical(Midland,MI)から入手したRhoplex 3208)でプライマー処理した。硬化した樹脂のランド層は、8マイクロメートルの厚さを有していた。図2を参照すると、得られた微細構造化フィルム表面の寸法は、以下のとおりであった:壁高(H)84.1マイクロメートル、側壁角度0.4度、ピッチ59.1マイクロメートル、壁の上面の幅28.5マイクロメートル、及び最大谷部30.6マイクロメートル。
比較例D及び比較例Aのディスク(12.7mm)を実施例9に記載の手順に従って調製し、洗浄し、分析した。平均log
10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog
10cfu減少値と共に表12に報告する。
比較例E及び比較例F 方形波状微細構造化フィルム
比較例Dに記載されている手順に従い、異なる寸法を有する2つの方形波状微細構造化フィルムを生成した。比較例Eの微細構造化フィルムは、以下の表面寸法を有していた:壁の高さ(H)89.5マイクロメートル、側壁角度1.4度、ピッチ62.3マイクロメートル、壁の上面の幅28.8マイクロメートル、及び最大谷部幅33.3マイクロメートル。比較例Fの微細構造化フィルムは、以下の表面寸法を有していた:壁の高さ(H)45マイクロメートル、側壁角度0.48度、ピッチ30マイクロメートル、壁の上面の幅15マイクロメートル、及び最大谷部幅15マイクロメートル。
微細構造化フィルムの試料を、実施例23(黄色ブドウ球菌を使用)に記載の手順に従って、微生物接触移動の減少について評価した。比較例Eの微細構造化フィルムの微生物接触移動の平均減少率は、25~37%であった。比較例Fの微細構造化フィルムは、対応する対照試料と比較して、微生物接触移動の平均10%増加を示した。
実施例27液体消毒剤の表面被覆率
実施例1、実施例20、及び比較例Aの微細構造化フィルムの試料(7.6cm×20.3cmのストリップ)を、Elcometer Model 1720 Abrasion and Washability Tester(ELCOMETER Incorporated)の洗浄レーンに接着して取り付けた。更に、キューブコーナー微細構造化フィルム(実施例27a)を、実施例20に従って個々のキューブコーナー微細構造が以下の寸法を有するように調製した:三角形底部が、60/60/60度(ベータ1、2、3);側壁角度アルファ2、アルファ3、アルファ1が、45、45、45度;山部高さが、9マイクロメートル;谷部幅が、27.7マイクロメートル及び27.7マイクロメートル。実施例27aの対応する試料ストリップも、装置の洗浄レーンに取り付けた。各レーンには、1つの試験試料が入っていた。微細構造化試料については、微細構造化表面を、反対側の非微細構造化表面を洗浄レーンに取り付けた状態で、露出させた。実施例1の微細構造化フィルムについては、一部の試料を、フィルム表面の微細構造化チャネルがキャリッジの動きと同じ方向(平行方向)に向けられるようにして装置内に置き、その他の試料を、フィルム表面の微細構造化チャネルがキャリッジの動きに垂直な方向に向けられるようにして装置内に置いた。
試験では2つの異なる湿らせた拭き取り布を使用した。第1の湿らせた拭き取り布は、0.025%のクリスタルバイオレット染料(Sigma-Aldrich Companyから入手)を含有したイソプロピルアルコール(70%)の水溶液に浸漬したSONTARA 8000不織布(5.1cmx12.7cm)であった。第2の湿らせた拭き取り布は、0.025%のクリスタルバイオレット染料を含有したイソプロピルアルコール(70%)の溶液に浸漬した、紙タオル(Kimberly-Clark Corporation(Irving,TX)から入手したWypALL L30 General Purpose Wiperの5.1cmx12.7cmの断片)であった。各拭き取り布から液体を手で絞ることによって、全ての拭き取り布から余分な液体を除去した。それぞれの湿らせた拭き取り布をUniversal Material Clamp Tool(450g)の周りに固定し、このツールを装置のキャリッジに取り付けた。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総時間=15秒)。
試験の完了後、各試料の表面の画像を1分後及び3分後に撮影し、試料表面上の染料の被覆率を判定した。カラー画像を8ビットに変換し、各画像の3つのランダムに選択された200×200画素領域を分析した。閾値を設定し、染料で覆われた表面積パーセントを、オープンソース画像処理ソフトウェアImageJ(NIH、Bethesda、MD、https://imagej.nih.gov/ij/)を使用して測定した。結果を、染料で覆われた試験試料表面のパーセントとして表13及び表14に報告した。ここで、100%とは、染料が試験試料表面を完全に覆っていることを表す。報告値は、3つの分析領域から計算された平均値である。
実施例28液体消毒剤の表面被覆率
湿らせた拭き取り布を調製するために別の消毒剤溶液を使用したことを除いて、実施例27で報告された手順と同じ手順に従った。消毒剤溶液は、0.025%のクリスタルバイオレット染料を含有した3M Disinfectant Cleaner RCT Concentrate 40A(第4級アンモニウム系洗浄剤)の希釈水溶液(1:256)であった。第1の湿らせた拭き取り布は、消毒剤溶液に浸漬したSONTARA 8000不織布(5.1cm×12.7cm)であった。第2の湿らせた拭き取り布は、消毒剤溶液に浸漬した紙タオル(WypALL L30 General Purpose Wiperの5.1cm×12.7cm断片)であった。各拭き取り布から液体を手で絞ることによって、全ての拭き取り布から余分な液体を除去した。結果を表15及び16に報告する。
実施例29
実施例1について説明した手順に従って、様々な寸法を有する3つの異なる線形プリズム微細構造化フィルムを調製した。3つのフィルムの寸法を、表17に報告する。実施例1及び比較例Aの試料と共にそれらの3つのフィルムの試料を、実施例9に記載の手順に従って評価した。全ての微細構造化フィルムが、比較例Aについて観察されたものよりも約1.5log大きいlog
10cfuカウント減少を示した。
実施例30
緑膿菌を接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、方法「最終乾燥工程付きの試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」(上記)に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」(上記)に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」(上記)に従って分析した。平均log
10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算されたlog
10cfu減少値と共に表18に報告する。