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JP2024504869A - Pten阻害剤による脊髄損傷の治療 - Google Patents

Pten阻害剤による脊髄損傷の治療 Download PDF

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JP2024504869A
JP2024504869A JP2023558306A JP2023558306A JP2024504869A JP 2024504869 A JP2024504869 A JP 2024504869A JP 2023558306 A JP2023558306 A JP 2023558306A JP 2023558306 A JP2023558306 A JP 2023558306A JP 2024504869 A JP2024504869 A JP 2024504869A
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アン,グァンウク
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コロン ティッシュジーン,インク
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Abstract

本願は、神経損傷の部位における神経の再生又は神経変性の減弱を含む脊髄損傷、又は脊髄損傷と関連付けられるか又はそれに起因する状態を治療する方法であって、神経を再生する又は神経変性を減弱させる量のホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチドを、損傷された神経にて又はその近傍の領域にて投与することを含む、方法を開示する。
【選択図】なし

Description

関連出願への相互参照
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2020年12月4日出願の米国仮特許出願第63/121,336号に対する優先権の利益を主張するものである。
発明の背景
1.発明の分野:
本願は、神経を再生すること又は損傷神経の変性を減弱させることによって脊髄損傷又は脊髄損傷と関連付けられる状態を治療する方法に関し、方法は、神経を再生する量の又は神経変性を減弱させる量のホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチドを、脊髄の損傷された神経にて若しくはその近傍の領域にて投与することを含む。
2.一般的な背景と最先端技術:
成体哺乳動物神経系において、ダメージを受けたニューロンの再生は、神経損傷に対する治癒応答ではほとんど起こらない。成人のCNSニューロンが損傷後に再生しない主な理由は2つあり、軸索は、損傷時に分泌される細胞外阻害因子によるその阻害だけでなく、加齢により急速に低下する内因性軸索成長能力の喪失のため、成人の中枢神経系で再生しない[Schwabら;1996,Goldbergら 2002;Filbinら 2006;Fitchら 2008]。しかし、神経損傷時に分泌される細胞外抑制分子の排除は、インビボでの非常に限られた軸索再生を引き起こすだけである[Yiuら 2006;Hellalら 2011]。そのため、内因性神経伸長の調節による軸索再生プロセスの促進は現在、神経損傷治療の治療標的の焦点である。
PTEN(ホスファターゼ及びテンシンホモログ)タンパク質は、二元的なホスファターゼであり、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)シグナル伝達経路を負に調節することにより腫瘍抑制因子として重要であると考えられる。PI3Kシグナル伝達経路は、細胞の増殖、生存及び分化並びにタンパク質合成、代謝及び運動性にとって重要なシグナル伝達経路である[Zhangら 2010]。脂質ホスファターゼとして、PTENは、PIPの3つの位置を脱リン酸化することにより、ホスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸(PIP)へのホスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸(PIP)の変換を触媒し、したがって、PI3K活性に拮抗することによりPI3Kシグナル伝達経路を抑制する[Di Cristofanoら 2010]。PTENの欠失又は不活性化は、PI3K活性を増強し、PDK1、Akt及びラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を含むPI3Kシグナル伝達経路の下流の構成因子の活性化を促進し、これは、腫瘍形成をもたらす[Di Cristofanoら 2010;Stambolicら 1998]。
PTENによるPI3K媒介シグナル伝達の調節はまた、神経系における神経再生プロセスに深く関連する。最近の研究は、PTENタンパク質の阻害又はPTEN遺伝子の欠失が、損傷時に成人CNS/PNS神経の内因性再生伸長を促進することを明らかにしている[Parkら 2008;Liuら 2010;Sunら 2012;Christieら 2012]。例えば、Parkらは、条件付きノックアウトマウスを用いる成体ラット網膜神経節細胞(RGC)におけるPTENの欠失が、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路を再活性化することにより、視神経損傷後の強力な軸索再生を実際に促進することを見出した。mTOR経路の別の負の制御因子の条件付きノックアウトによりmTOR経路を再活性化することもまた、軸索再生をもたらし、PI3K-mTORシグナル伝達の促進が内因性軸索再生能を回復するための重要な要因であり得ることを示している。また、Liuらは、インビボCNS損傷モデルにおけるPTENの条件付き欠失が、PI3Kシグナル伝達経路を上方制御することにより、CNS損傷時のニューロンmTOR活性の低下を実際に増加させ、それは、損傷していないCST軸索の代償性発芽の増強と脊髄損傷後に損傷したCST軸索の良好な再生をもたらすことを報告した。PNS損傷の場合、インビトロとインビボの両方でのPTENの阻害はまた、軸索伸長を増加させる[Christieら 2012]。そのため、PI3K-mTORシグナル伝達経路を促進するためのPTEN阻害剤の開発は、損傷した神経系における軸索再生を増強するための良い治療標的である。PTEN阻害剤は、CNS又はPNS損傷後の神経再生に有効な他の試薬を含む既存の又は新規の細胞療法と組み合わせた治療法において使用され得る。
本研究では、PI3Kシグナル伝達経路を刺激することにより神経再生及び/又は神経変性からの保護に有効な潜在的PTEN阻害剤を開発した。脂質ホスファターゼとしてのPTENの活性化のために、PTENは、適切な配向で原形質膜中に局在しなければならない[Leslieら 2008]。そのため、ペプチド形態の潜在的なPTEN阻害剤候補を設計するためにPTEN膜局在のメカニズムを調べた。3つの異なるペプチドTGN-1、TGN-2及びTGN-3を、潜在的なPTEN阻害剤として設計及び合成し、インビトロPTEN活性アッセイを使用してPTEN活性に対するそれらの阻害能力を調べた。また、PI3Kシグナル伝達経路の制御に対するそれらの効果を、神経細胞株を用いて特徴付けた。発明者らは、PTENのC末端領域のリン酸化部位を模倣する修飾ペプチドであるTGN-1及びTGN-2ペプチドが、インビトロPTEN活性アッセイにおいて実際にPTEN脂質ホスファターゼ活性を低下させたことを発見した。TGN-1ペプチドはまた、PC12細胞においてAktタンパク質の活性化レベルを増強し、これらのペプチドがPI3K-Aktシグナル伝達経路を上方制御するのに有効であることを示した。神経細胞を用いる神経突起アッセイは、TGN-1及びTGN-2ペプチドが、神経突起微小管構造を増強することにより神経突起伸長を促進し、ならびに神経突起変性を遅延させることを示した。したがって、TGNペプチドは、CNS損傷後の神経再生の治療剤として有用である。
脊髄損傷(SCI)は、重度の又は永久的な障害を引き起こす重篤な外傷である。SCIは、一次的な機構的損傷を誘発し、次に脊髄に二次的な損傷を引き起こす。SCIの一次損傷は、外傷直後の実際の機械的組織破壊によって発生する。二次損傷は、複雑な細胞のプロセス及び分子プロセスによって媒介される。SCI患者の治療にはゴールドスタンダードはない。様々な細胞型を用いる様々な治療法がそれぞれSCI患者に適用されるにもかかわらず、効率的な方法は現時点ではまだない[McDonaldら(2002);Witiwら(2015);Fakhoury2015)]。
神経因性膀胱(NB)は、SCIと関連付けられる一般的な健康問題である。SCI患者のほとんどは、排尿機能障害及び正常な排尿ができないことに苦しんでいる。さらに、SCI患者はしばしば、尿路感染症及び尿路結石などのNB関連有害事象を経験する。NBを改善する試みは多くあった。しかし、NBに有効な治療剤は今のところない[Jeongら(2020);Nseyoら(2017);Braggeら(2019)]。SCI患者のNBは、神経損傷によって誘導される。そして、損傷した神経組織の再生のために幹細胞及び他の生体材料を使用する多くの前臨床試験及び臨床試験が行われてきた[Kimら(2020);Choら(2014);Saheli-Pourmehrら(2020)]。しかし、幹細胞療法の有効性は十分でなく、新しいアプローチが必要である。
神経再生のための難易度の高い療法の1つは、10番染色体上で欠失されるホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)の阻害剤である。PTENは、中枢神経系及び末梢神経系の軸索再生のその調節のため強い注目を集めている。PTEN阻害剤は、後根神経節ニューロン、網膜神経節細胞、皮質ニューロン、及び脊髄の皮質脊髄路への病変後の神経保護及び軸索伸長を促進するために使用されている[Christieら(2010);Zhaoら(2013)]。発明者らは、脊髄における排尿機能、運動機能、及び血管新生因子の発現に対するPTEN阻害剤の効果を調べた。
一態様において、本発明は、以下のことを対象とする:
一態様において、本発明は、神経を再生する量の又は神経変性を減弱させる量のホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチド又はペプチドをコードする核酸を、損傷された神経で又はその近傍の領域に投与することを含む神経損傷の部位で神経を再生する方法又は神経の変性を減弱させる方法を対象とする。PTEN阻害剤ペプチドは、修飾されたPTENペプチド又はその断片であり得、そのリン酸化部位は、リン酸化部位のセリン又はスレオニンがリン酸化されるように修飾される。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Thr-366、Ser-370、Ser-380、Thr-382、Thr-383又はSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-370、Ser-380及び/又はSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-370、Ser-380及びSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-380及びSer-385の位置に位置し得る。ペプチドは、リン酸化部位及び/又はPDZドメイン結合モチーフのペプチドの断片であり得る。ペプチドは、ペプチド伝達ドメイン(PTD)をさらに含んでよい。神経損傷は、中枢神経系に存在し得る。
別の態様において、本発明は、ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ活性を阻害するペプチドを対象とする。PTEN阻害剤ペプチドは、修飾されたPTENペプチド又はその断片であり得、そのリン酸化部位は、リン酸化部位のセリン又はスレオニンがリン酸化されるように修飾される。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Thr-366、Ser-370、Ser-380、Thr-382、Thr-383又はSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-370、Ser-380及び/又はSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-370、Ser-380及びSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-380及びSer-385の位置に位置し得る。ペプチドは、リン酸化部位及び/又はPDZドメイン結合モチーフのペプチドの断片であり得る。ペプチドは、ペプチド伝達ドメイン(PTD)をさらに含んでよい。神経損傷は、中枢神経系に存在し得る。
さらに別の態様において、本発明は、テンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチドと神経細胞を接触させることを含む神経細胞を成長させる、増殖させる又はその活性を増強する方法を対象とし、特に、神経細胞は、脊髄にある。
別の態様において、本発明は、神経を再生する量の又は神経変性を減弱させる量のホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチドを損傷された神経で又はその近傍の領域で投与することを含む、脊髄損傷、又は限定されないが、神経因性膀胱、運動機能の喪失、又は筋肉協調能力の喪失などの脊髄損傷と関連付けられるか若しくはそれに起因する状態を治療する方法を対象とする。PTEN阻害剤ペプチドは、修飾されたPTENペプチド又はその断片であり得、そのリン酸化部位は、リン酸化部位のセリン又はスレオニンがリン酸化されるように修飾される。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Thr-366、Ser-370、Ser-380、Thr-382、Thr-383又はSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-370、Ser-380及び/又はSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-370、Ser-380及びSer-385の位置に位置し得る。リン酸化されるセリン又はスレオニンは、Ser-380及びSer-385の位置に位置し得る。ペプチドは、リン酸化部位及び/又はPDZドメイン結合モチーフのペプチドの断片であり得る。ペプチドは、ペプチド伝達ドメイン(PTD)をさらに含んでよい。
本発明のこれらの及び他の目的は、本発明の以下の説明、本明細書に添付される参照図面及び本明細書に添付される特許請求の範囲からより完全に理解されるであろう。
本発明は、本明細書に与えられる以下の詳細な説明、及び例示としてのみ与えられ、かつそのため本発明を限定するものではない添付の図面から、より完全に理解されるようになる。
図1A~1Bは、潜在的なPTEN阻害剤としてのTGNペプチドの設計を示す。図1A)PTENのC末端領域の図。PTENのC末端領域は、C2ドメイン(AA186-403)、リン酸化部位(AA352-399)及びPDZドメイン結合モチーフ(400~403)を含む。リン酸化部位及びPDZドメイン結合モチーフ含有領域(AA352-403)を、TGNペプチド設計の鋳型として用いた。図1B)TGNペプチドのアミノ酸配列。TGN-1、TGN-2及びTGN-3ペプチドは、示される残基がリン酸化によって修飾された、PTENリン酸化部位を模倣する。TGN-4ペプチドは、TGN-1スクランブルペプチドであり、TGN-5ペプチドは、TGN-2のスクランブルペプチドである。 図2A~2Cは、TGNペプチドを用いるインビトロPTEN活性アッセイを示す。図2A)マラカイトグリーンアッセイキット(Malachite Green Assay Kit)を用いるインビトロPTEN活性アッセイのメカニズム。C8-PIPを、PTEN基質として使用し、他のリン脂質(DOPC及びDOPC)を有するリポソームとして調製した。C8-PIP3からPTENによって生成されたリン酸イオンを、620nmでリン酸イオン-マラカイトグリーン試薬複合体の光学濃度をモニターすることによって測定した。図2B)インビトロPTEN活性に対するTGNペプチドの効果。TGN-1、TGN-2及びTGN-3ペプチドを、インビトロPTEN活性アッセイを介してそれらのPTEN阻害効果について調べた。10μMの各ペプチドを、100μLの反応容量で20ngのヒト組換えPTENタンパク質及びリポソームとして0.1mMのC8-PIPとインキュベートした。TGN-4及びTGN-5ペプチドを、それぞれ、TGN-1及びTGN-2/3ペプチドの配列特異性を調べるために用いた。全てのデータは、3回の実験結果を表す。図2C)TGN-1及びTGN-2ペプチドについてのIC50曲線。IC50値を、用量依存的にTGN-1及びTGN-2ペプチドを用いるインビトロPTEN活性アッセイにより測定し、Prism 5ソフトウェアにより計算した。TGNペプチドのIC50値は、TGN-1については19.93μM、TGN-2については4.83μM及びTGN-3については87.12μMである。 図3A~3Cは、TGN-1ペプチドが、インビボでAkt活性化レベルを増加させることによってPI3K-Aktシグナル伝達を促進することを示す。図3A)TGN-1を用いてPTEN活性をブロックすることによるAkt活性化のメカニズム。PI3Kシグナル伝達経路におけるTGN-1の導入は、PI3Kシグナル伝達を促進し、Akt活性化(リン酸化)レベルを促進する。図3B)PC12細胞溶解物を用いたウェスタンブロットデータ。PC12細胞を、TGN-1ペプチド(10μM、100μM)又はTGN-4ペプチド(10μM)のいずれかで処理し、24時間インキュベートした。抗リン酸化Akt抗体を用いるウェスタンブロットデータは、TGN-1が用量依存的に内因性Akt活性化レベルを特異的に促進することを示した。図3C)PTEN及びβ-アクチンの発現レベルもまた、陽性のローディング対照としてモニターした。 図4A~4Bは、神経栄養効果及び神経突起変性に対する神経保護効果を示す、TGN-1及びTGN-2ペプチドを示す。図4A)分化したPC12細胞を、まずノコダゾール(0.5μM)で1時間処理し、NGF(10ng/mL)及びTGNペプチド(TGN-1及びTGN-2、100μM/各々)を含む新鮮な培地でさらに72時間インキュベートした。相対的な神経突起安定性を、Image Jソフトウェアを用いて免疫蛍光画像からの緑/赤蛍光シグナル強度の比率として計算した。全ての蛍光シグナル強度を、緑/赤の比率の計算のために、試料ごとに少なくとも3回測定し、正規化した(培地のみ=100%)。図4B)分化したPC12細胞上の神経突起伸長の定量。PC12細胞を、NGF(50ng/ml)を含む分化培地で24時間処理した後、TGNペプチド(100μM/各々)とさらに2日間インキュベートした。TGN-4ペプチドを、TGN-1の陰性対照として用いた。神経突起の定量を、3日目に神経突起定量キット(Millipore)を用いて分光光度法で行い、正規化した(培地のみ=100%)。 図5は、細胞膜表面におけるPTENの界面活性化の仮説モデルを示す。PTENは現在、生体内で2つの立体構造状態を有すると考えられており、その脂質ホスファターゼ活性を完全に発現するために、膜局在で局在するように立体構造変化を受けると提案されている。PTENの可溶型は、「閉じた」立体構造を伴う不活性状態にあり、PTENのC末端領域のリン酸化された部位が、PTEN活性部位とC2ドメインを空間的にマスクして、PTEN膜会合を防ぐ。「リン酸化部位」でリン酸化された残基が脱リン酸化されると、PTENは、その立体構造を「閉じた」立体構造から「開いた」立体構造に変化させる。この段階で、PTENのC2ドメインに位置する複数の膜結合モチーフは、露出され、膜と会合できる状態である。PTEN活性部位の結合ポケットもまた、膜表面に存在するPIP基質へのアクセスに利用可能である。PTENが、その脂質ホスファターゼ活性が起こるのに必要とされる適切な位置で細胞膜表面上に局在した後に、N末端PIP結合モチーフとの膜表面上のPIPの結合及び補助タンパク質(NHERF1)中のPDZドメインへのC末端PDZドメイン結合モチーフの結合が起こる。 図6は、PTEN阻害剤による治療スケジュールを示す。10番染色体上で欠失されるPTEN、ホスファターゼ及びテンシンホモログ、特にTGN-2の投与を、SCIの誘導後3日目から始めて14日間、2日に1回、脊髄損傷部位に直接7回行った。図中で言及されるTGNは、TGN-2である。 図7A及び7Bは、バッソ、ビーティ及びブレスナハン(BBB)の自発運動スケール試験及び水平ラダー歩行試験を示す。図7Aは、TGN-2投与を行うまたは行わないBBB試験からの機能回復結果を示す。図7Bは、TGN-2投与を行うまたは行わない水平ラダー試験からの運動機能及び協調能力の解析結果を示す。図中で言及されるTGNは、TGN-2である。 図8は、TGN-2の投与後の膀胱内圧測定からの排尿機能を示し、収縮圧(CP)及び収縮時間(CT)が、SCI群と比較して有意(P<0.05)に増加した。図中で言及されるTGNは、TGN-2である。 図9は、SCIの誘発後18日目における脊髄組織の組織学的変化を示し、TGN治療がSCI誘発破壊病変を減少させ、かつ新しい組織が損傷組織の周囲で増加された。 図10A~10Cは、血管内皮増殖因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、及び脳由来神経栄養因子(BDNF)発現に対するTGN-2の効果を示す。
好ましい実施形態の詳細な説明
本願において、「1つ(a)」及び「1つ(an)」は、単一の対象物と複数の対象物の両方を指すために使用される。
本明細書で使用される場合、損傷された神経又は神経系の「近傍」での細胞の注入は、損傷された部位における神経を再生する又は損傷された神経細胞の変性を予防する有効な結果をもたらすために、注入部位と損傷領域の間の十分に近い領域を意味する。したがって、損傷された神経での又はその近傍での細胞の注入は、損傷の部位又は注入される細胞が有効なポリペプチドを発現するのに十分近い場所を含み、ポリペプチドは、神経再生又は神経変性を予防する結果に直接的又は間接的に影響を与えることが可能である。末梢神経のために、特に脊髄損傷において、細胞が損傷部位から漏れる傾向があるため、注入は、損傷の部位の「上流」で行われ得る。
本明細書で使用される場合、「神経突起」は、ニューロンの細胞体からの何らかの突起を指す。この突起は、軸索又は樹状突起のいずれかであり得る。この用語は、未熟な又は発達中のニューロン、特に培養中の細胞について話すときに頻繁に使用され、なぜなら分化が完了する前に軸索と樹状突起を区別するのが難しい可能性があるためである。
本明細書で使用される場合、「神経の再生」は、中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)のいずれかにおける神経損傷時の新しい神経細胞、ニューロン、グリア、軸索、ミエリン又はシナプスの生成を意味する。再生は、PTENの阻害によるPI3K-mTOR媒介シグナル伝達の活性化を介して回復された内因性神経再生能力により促進される。
本明細書で使用される場合、神経変性の「減弱」又は「予防」は、中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)のいずれかにおける神経損傷によって引き起こされる軸索、グリア又は髄鞘の構造の変性を遅延させることを意味する。「減弱」又は「予防」は、PTEN阻害により活性化されるPI3K-mTOR媒介シグナル伝達と密接に関連する神経微小管構造の安定化により達成される。
ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)
PTENのアミノ酸配列は、以下の通りである:
PTENタンパク質は現在、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達を促進することにより低下された内因性神経再生能力を回復させることにより成人CNS系における損傷神経を再生するための、治療材料開発の一般的な目標になりつつある[Parkら 2008;Liuら 2010;Sunら 2012]。新規PTEN阻害剤の開発は、PTEN活性調節分子を開発するための優れた戦略であると考えられる。残念ながら、PTENタンパク質のX線結晶構造[Leeら 1999]は、PTEN-基質結合を直接ブロックする効果的なPTEN阻害剤を設計するために重要である、PTEN-基質(PIP)結合状態に関する十分な情報を提供するのに十分ではない。その代わり、それによりPTENがその活性のために原形質膜を標的にするメカニズムが、集中的に研究されている。PTEN酵素の基質であるホスファチジルイノシトール(3,4,5)二リン酸(PIP)は、細胞膜脂質二重層に見られるリン脂質のメンバーであるが、PTENタンパク質はもともと、可溶性タンパク質として産生され、立体構造変化を介してその脂質ホスファターゼ活性のために界面的に活性化されなければならず、適切な配向でのPTEN膜会合がそれに続く[Dasら 2003;Leslieら 2008]。PTEN C2ドメインに位置するいくつかの荷電アミノ酸及び結合モチーフは、細胞膜表面上にPTENタンパク質を付着させるための主要なアンカーであると考えられている[Leeら 1999;Georgescuら 2000;Leslieら 2008]。他の結合部分を用いるさらなる結合がまた、PTENの脂質ホスファターゼ活性が起こるように、PTENが細胞膜上に適切に配向されるために必要である[Chambellら 2003;Walkerら 2004;Odriozolaら 2007]。
PTENのC末端領域中の非構造化部分(AA352-399)は、この領域がリン酸化修飾部位として知られる6つのセリン/スレオニン(Thr-366、Ser-370、Ser-380、Thr-382、Thr-383、及びSer-385)残基を含むので、「リン酸化部位」と呼ばれる[Leeら 1999;Vazquezら 2001]。以前の研究は、この「リン酸化部位」におけるこれらの6つの残基の変異又は欠失が、腫瘍抑制因子活性の増大、PTEN膜親和性の増強、及びタンパク質安定性の低下をもたらすことを明らかにした[Vasquezら 2001;Dasら 2003;Okaharaら 2004;Rahdarら 2009]。
現在、PTENタンパク質は2つの立体構造状態(図4)を有すると考えられている。「閉じた」立体構造では、「リン酸化部位」を含むPTENのC末端領域がC2ドメインに位置する膜結合モチーフとPTEN活性部位ポケットをマスクし、細胞膜へのPTEN会合及び活性部位へのPIPのアクセスを妨げるため、PTENは不活性である。一方で、PTENは、PTEN活性部位ポケットとC2ドメインが両方ともマスクされておらず、かつ細胞膜とその基質PIPに完全に露出される「開いた」立体構造状態で界面的に活性状態になる。また、「リン酸化部位」のこれらの6つのセリン/スレオニン残基のリン酸化状態は、それがPTENタンパク質の「閉じた」立体構造から「開いた」立体構造への立体構造変化を直接制御するため、PTENの界面的活性化の重要な因子であると考えられる[Dasら 2003,Vasquezら 2006;Odriozolaら 2007、Rahdarら 2009]。
現在提案されているモデル(図5)によれば、膜表面におけるPTENの界面的活性化に必要とされる3つのステップがある。
1)「リン酸化部位」におけるリン酸化されたセリン/スレオニン残基の脱リン酸化が、PTEN立体構造を「閉じた」立体構造から「開いた」立体構造に変化させ、これは、PTENタンパク質が細胞膜と会合しかつ細胞膜上に位置するPIP基質にPTEN活性部位ポケットを露出させることを可能にする。
2)C2ドメインにおける複数の膜結合モチーフが次いで、細胞膜と相互作用して、膜表面にPTENタンパク質を固定する。
3)細胞膜におけるN末端PIP結合部位(AA6-15)とPIP分子の間のさらなる相互作用[Walkerら 2004]並びにC末端PDZドメイン結合部位(AA400-403)と補助NHERF1タンパク質のPDZドメインの結合[Takahashiら 2006;Molinaら 2010]が、いずれも細胞膜表面上のPTEN配向の調整に必要とされる。
本発明者らは、図4に示されるPTEN膜局在モデル、特に「リン酸化部位」及びPDZドメイン結合部位(AA352-403)に基づき、潜在的なPTEN阻害剤としてTGNペプチドを設計した。潜在的なPTEN阻害剤としてのTGNペプチドの基本的な概念は、PTEN活性部位と膜結合に必要とされるC2ドメインをマスクすることにより、PTENと細胞膜表面の間の会合を防ぐことである。Ser370及びSer385は、カゼインキナーゼIIを介して優先的にリン酸化される[Millerら 2002]ので、膜局在並びにホスファターゼ活性は、他の残基が変異された場合よりも増加する[Odriozolaら 2007]。したがって、これらの2つのうち少なくとも1つのセリン残基が、全てのTGNペプチドに含まれた(TGN-1ではSer370/385、TGN-2/TGN-3ではSer385)。また、380位及び385位でリン酸化されたセリン残基は現在、PTEN活性部位の触媒ポケットが実際の基質PIPにアクセスするのをマスクする「擬似基質」の一部であると考えられている[Odriozolaら 2007]。これらのペプチドは、全てのTGNペプチド中にこれらの2つのセリン残基(Ser380及びSer385)を含むように設計された。
TGN-1ペプチド配列は、PTENリン酸化部位のAA365~388領域を模倣し、3つのリン酸化された修飾残基(Ser370、Ser380及びSer385)を有する4つのセリン/スレオニン残基(Thr366、Ser370、Ser380及びSer385)を含む。TGN-2及びTGN-3ペプチドは、2つのリン酸化されたセリン残基(Ser380とSer385)及びC末端PDZドメイン結合モチーフ(ITKV)を含む、PTENタンパク質のAA376-403領域を模倣する。スレオニン残基のリン酸化はインビボで二次修飾をもたらし、かつまた変異されたた場合PTEN膜結合親和性を変化させるにはそれほど効果的でないため、TGN-1ペプチドとTGN-2ペプチドの両方におけるセリン残基のみをリン酸化して、インビボでPTENのリン酸化部位を模倣した[Odriozolaら 2007;Rahdarら 2009]。TGN-3ペプチドでは、2つのセリン残基(Ser380とSer85)を、比較のためにバリンで置換した。さらに、TGN-1及びTGN-2/3ペプチドの配列を、スクランブルして配列特異性を検討し、これらのペプチドを、それぞれ、TGN-4及びTGN-5ペプチドと命名した。
組換えヒトPTENタンパク質及び基質としてC8-PIPを用いたインビトロ活性アッセイ及びIC50アッセイは、TGN-1及びTGN-2ペプチドが用量依存的にインビトロでPTEN活性を特異的に阻害することを示した(図2)。C8-PIPを、他のリン脂質分子(DOPC/DOPS)と共に、細胞膜脂質二重層の模倣系である合成脂質小胞としてPTENタンパク質に導入した。活性アッセイの結果は、TGN-1及びTGN-2ペプチドが、PTENタンパク質と直接相互作用すること、およびPTEN-小胞膜会合を妨害して基質(C8-PIP3)がPTEN活性部位に結合するのを防ぐことにより、インビトロでPTEN活性を阻害する可能性があることを示唆した。実際に、リポソーム形状の代わりにC8-PIP3脂質のみを直接添加したインビトロPTEN活性アッセイは、PTEN活性を示さない(データ示さず)。TGN-2ペプチドと比較してTGN-3ペプチドによる大幅に低下された阻害効果は、セリン残基(Ser380及びSer385)のリン酸化修飾が、TGNペプチドによるインビトロPTEN阻害の重要な因子であることを示唆する。また、TGN-2ペプチドは、TGN-1ペプチドよりもインビトロPTEN活性に対し約4倍高い阻害効果を示した(TGN-1のIC50値は19.93μMであり、TGN-2のIC50値は4.83μMである)。TGN-1ペプチドとTGN-2ペプチドの構造の主な違いは、TGN-2ペプチドがPDZドメイン結合モチーフ(AA399~403)を含むPTENのC末端領域(AA389~403)の最後の15アミノ酸配列を含むことである。活性アッセイはインビトロ条件で行われたので、TGN-2ペプチドに存在する最後の15アミノ酸配列は、PTENタンパク質に対するより高い結合親和性を提供してPTEN-小胞膜会合をより効率的に妨害するか、又はPTEN活性部位の基質結合ポケットをTGN-1ペプチドよりも効果的にマスクするかのいずれかであると説明され得る。
TGN-1ペプチドは、神経細胞におけるPI3K-Aktシグナル伝達経路を調節するPTEN活性の阻止においても有効である(図3)。内因性の又は過剰発現されたPTENを含むPC12細胞を、TGN-1と24時間インキュベートし、Aktタンパク質の活性化(リン酸化)レベルを、抗リン酸化Akt抗体を用いるウェスタンブロッティングにより調べた。TGN-1ペプチドで処理した細胞溶解物中のAktタンパク質のリン酸化レベルは、TGN-4ペプチド又はDMSOで処理した溶解物よりもはるかに高く、TGN-1ペプチドがPTENを特異的に阻害してPI3K活性に拮抗することを示している。そのため、TGN-1ペプチドは、PTEN活性を抑制することによりPI3K-Aktシグナル伝達経路を促進することにおいて有効である。
微小管安定化は、軸索再生能及び神経分極を促進することによって脊髄損傷を治療するのに重要であると考えられる[Sengottuvelら 2011,Hellalら 2011,Witteら 2008]ので、発明者らは、分化した神経細胞での神経突起変性を誘発するためにノコダゾールを採用し、TGNペプチドが微小管安定化を介して神経保護効果を示すかどうかを試験した。微小管の安定性はα-チューブリンのアセチル化レベルと密接に関連している[Takemuraら 1992]ので、抗アセチル化α-チューブリン抗体を用いて安定な神経突起を免疫染色した。免疫蛍光データ(図4A)は、TGN-1及びTGN-2ペプチドが実際に神経突起微小管構造を安定化して神経突起変性を遅延させることを実証した。さらに、TGN-1ペプチドの添加は、神経細胞の分化プロセスにおいて神経突起伸長を特異的に促進する(図4B)。そのため、TGN-1及びTGN-2ペプチドは、神経栄養効果及び神経突起変性に対する神経保護を示す。
以前の研究では、Odriozolaらは、TGN-1ペプチド配列と似た、PTENのC末端リン酸化部位クラスター(AA368~390)を包含する合成リン酸模倣ペプチド(Cp-23、Cp-23DE)が、インビトロでのPTEN触媒活性の抑制を媒介することを報告した。また、GFPが融合されたリン酸化模倣ペプチドでトランスフェクトされた293T細胞を用いたアッセイは、PTEN膜会合のレベルを低下させ、リン酸化Aktレベルを改善することが示された。しかし、Odriozolaらで用いられたリン酸化模倣ペプチド(Cp-23、Cp-23DE)は、PTEN「リン酸化部位」のAA368~390領域のみを模倣するが、本TGNペプチドのようにリン酸化されるセリン残基を含まない。実際に、Odriozolaのペプチド(Cp23)とTGN-1ペプチドはほぼ同一のアミノ酸配列を共有するが、TGN-1ペプチドの阻害力は、インビトロIC50値を比較することによりOdriozolaのペプチド(Cp23)よりほぼ50倍高い(TGN-1のIC50値は19.93μMであり、Cp23のIC50値は約1033μMである)。さらに、Odriozolaのペプチド(Cp23、1033μM)とそのスクランブルペプチド(Cp23-Der、945μM)の間でIC50値にほとんど差はなかった。しかし、TGN-1ペプチドは、そのスクランブルペプチドTGN-4よりもはるかに高い阻害効果を示し(図2B)、TGN-1ペプチドが、Odriozolaのペプチド(Cp23)が示せなかった、インビトロPTEN活性に対する配列特異的な阻害効果を示すことを示した。さらに、TGN-2ペプチドは、PDZドメイン結合モチーフを含む追加の15アミノ酸残基を含むことによりOdriozolaのペプチド(Cp23)と異なり、それは、PTEN阻害に有効であるとすでに示されている(TGN-2のIC50値は4.93μMである)。また、TGN-1及びTGN-2ペプチドは、N末端にPTD(ペプチド伝達ドメイン)配列を含み、そのためこれらのペプチドは細胞に直接導入され得るが、Odriozolaのペプチドは、GFPに融合されかつ細胞中にトランスフェクトされる必要がある。そのため、TGN-1及びTGN-2ペプチドは、インビトロ及びインビボで有効なPTEN阻害能を有する。
発明者らは、「リン酸化部位」を含むPTENのC末端領域を模倣することによりペプチドを開発した。TGN-1及びTGN-2は、インビトロでPTEN活性に対する特異的かつ効果的な阻害効果及び神経細胞においてPTEN活性を阻止することによる上方制御されたPI3K-Aktシグナル伝達経路を示した。PTENの抑制によりPI3K-Akt-mTORシグナル伝達を促進することはCNS損傷時の神経再生に有効である[Saijilafuら 2013]と知られているので、本発明のペプチドは、CNS損傷に対し治療(therapeutic)剤又は治療(treatment)剤として有用である。分化した神経細胞とTGNペプチドを用いる神経突起アッセイは、TGN-1及びTGN-2ペプチドが、神経栄養効果、及び神経突起微小管構造を増強することによる変性神経突起に対する神経保護効果を明確に示すことを実証した。そのため、これらのペプチドは、CNS損傷を含む神経損傷後の神経再生のための、及び神経変性進行を遅延させるための治療標的である。
ペプチド設計
本明細書で「TGNペプチド」とも称される、本発明のペプチドを、PTEN阻害剤として、PTENのC末端領域(アミノ酸残基352~403)を鋳型として用いて設計した。
全てのTGNペプチドは、膜透過性を増大させるためにN末端にRRRRRRRR(配列番号2)を含み得るPTD(ペプチド伝達ドメイン)配列を含むことが好ましい。
TGNペプチドは、配列番号1のPTENアミノ酸配列のアミノ酸残基352~403内のPTENの断片、又は配列番号1のPTENアミノ酸配列のアミノ酸残基352~403の一部を、その配列の一部として含むPTENの断片であり得る。好ましくは、TGNペプチドは、このペプチド断片中に存在するセリン又はスレオニンのリン酸化を含む。好ましくは、セリン又はスレオニン部位は、配列番号1のPTENタンパク質の366、370、380、382、383、又は385にある。
TGNペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基長、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、又は少なくとも40アミノ酸残基長であり得る。セリン若しくはスレオニン残基、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つのリン酸化がペプチドに含まれることが好ましい。
一態様において、TGNペプチドは、そのペプチドの長さによって制限されないことが、認識されるべきである。ペプチドの少なくとも一部は、アミノ酸残基352~403内に存在することが好ましい。
これに関して、例示されるTGN-1ペプチドは、3つのリン酸化されたセリン残基を有する24個のアミノ酸VTPDVpSDNEPDHYRYpSDTTDpSDPE(配列番号3)、pS=リン酸化セリン)を有する。PTDがN末端で付着される場合、RRRRRRRR-VTPDVpSDNEPDHYRYpSDTTDpSDPE-アミド(配列番号4)は、32個のアミノ酸残基を有すると見なされる。
別の例示的ペプチドは、TGN-2ペプチドであり、これは、2つのリン酸化されたセリン残基を有する28個のアミノ酸HYRYpSDTTDpSDPENEPFDEDQHTQITKV(配列番号5)を有する。PTDがN末端で付着される場合、RRRRRRRR-HYRYpSDTTDpSDPENEPFDEDQHTQITKV-アミド(配列番号6)は36個のアミノ酸残基を有すると見なされる。
TGN-3ペプチドは、TGN-2ペプチドと同じアミノ酸配列を有するが、残基は修飾されず、2つのセリン残基はバリンに置換されたHYRYVDTTDVDPENEPFDEDQHTQITKV(配列番号7)。PTDがN末端で付着される場合、RRRRRRRR-HYRYVDTTDVDPENEPFDEDQHTQITKV-アミド(配列番号8)が見られる。
TGN-4ペプチドを、TGN-1ペプチドのスクランブルペプチドSDDEYTDNPDSRYVSDTPVDTEH(配列番号9)として設計した。PTDがN末端で付着される場合、RRRRRRRR-SDDEYTDNPDSRYVSDTPVDTEH-アミド(配列番号10)が見られる。TGN-5ペプチドを、TGN-2/TGN-3スクランブルペプチド用に設計したDEHDTEYTPDYRQETHFNSQPTDKSDVI(配列番号11)。PTDがN末端で付着される場合、RRRRRRRR-DEHDTEYTPDYRQETHFNSQPTDKSDVI-アミド(配列番号12)が見られる。
化学的に修飾されたペプチド
ポリペプチド治療には、短い循環半減期、及びタンパク質分解及び低い可溶性の問題がある。本発明のバイオ医薬品の薬物動態及び薬力学の特性を改善するために、アミノ酸配列の操作などの方法が、免疫原性を減少させる又は増加させる、タンパク質分解切断を減少させるために行われてよい。免疫グロブリン及びアルブミンなどの血清タンパク質へのペプチドの融合又はコンジュゲーションが、なされてよい。保護及び徐放のための本発明のペプチド及び抗体などのバイオ医薬品用の薬物送達ビヒクル中への組み込みも行われてよい。かつ天然の又は合成のポリマーへの結合も企図される。特に、合成ポリマーコンジュゲーションについて、ペグ化又はN-アシル化、S-アシル化などのアシル化、アミド化なども企図される。
神経組織
神経組織は、脊索の影響下で胚性外胚葉から派生する。外胚葉は、肥厚した神経板を形成するように誘導され、その後分化し、最終的に末端が融合して、そこから全ての中枢神経系が派生する神経管を形成する。中枢神経系は、脳、脳神経及び脊髄からなる。末梢神経系は、神経堤と呼ばれる神経溝の隣の細胞に由来する。
神経組織は、複雑な統合された連絡ネットワークで全身に分布する。神経細胞(ニューロン)は、非常に単純な回路から非常に複雑な高次回路に及ぶ回路で他のニューロンと連絡する。ニューロンは、実際のメッセージの伝達と統合を行い、一方でグリア細胞と呼ばれる他の神経組織細胞は、ニューロンの支持、保護、防御及び栄養によってニューロンを支援する。脳にはニューロンより約10倍多いグリア細胞がある。グリア細胞は、神経機能に必要とされる微小環境を作り出し、時にはそれらは神経の処理と活動を支援する。ニューロンは、興奮性細胞である。これは、適切に刺激されると、活動電位が開始され、それが細胞膜を越えて伝播されて、遠位の細胞に情報を伝達できることを意味する。ニューロンは、刺激の受信、伝達及び処理を担う独立した機能単位である。
一般に、ニューロンは3つの部分;核と細胞小器官が位置する、細胞体;環境又は他のニューロンからの刺激を受け取る細胞体から伸びる突起である、樹状突起;及び神経インパルスを他の細胞に伝達するために細胞体から伸びる長い単一の突起である、軸索、からなる。軸索は通常、その遠位端で分岐し、別の細胞で終わる各枝は、球根状端部を有する。終末球と隣接細胞の相互作用は、シナプスと呼ばれる構造を形成する。シナプスは、シグナルを受信しかつそれを電位に変換するように特殊化される。
人体に見られるほとんどのニューロンは、多極であり、それらが3つ以上の細胞突起を有し、1つだけが軸索であり、残りの突起は樹状突起であることを意味する。網膜又は嗅粘膜の双極性ニューロンは、1つの樹状突起及び細胞体から出る軸索を有する。脊髄神経節に見られる偽単極ニューロンは、樹状突起によって拾われた感覚インパルスが細胞体を経由せずに、軸索に直接移動することを可能にする。ニューロンは、機能によって分類することもできる。感覚ニューロンは、感覚刺激の受信と伝達に関与する。運動ニューロンは、筋肉及び腺を制御するためにインパルスを送る。他のニューロンである介在ニューロンは、機能ネットワークの一部としてニューロン間の仲介者として作用する。
シナプスは、細胞シグナルを伝播するための特殊化した機能的な細胞接合部である。ほとんどのシナプスは、化学シナプスであり、シナプス前末端での小胞は、シナプス前膜が刺激されたときにシナプス間隙に放出される化学メッセンジャーを含む。化学メッセンジャーは、シナプス間隙を横切って拡散して、シナプス後膜の受容体に結合する。これは、細胞作用に影響を与えるシナプス後膜の分極状態の変化を誘発する。特別な種類のシナプスは、神経筋接合部である。35を超える神経伝達物質が知られており、ほとんどが、小分子(一酸化窒素、アセチルコリン)、カテコールアミン(ノルエピネフリン、セロトニン)、又は神経活性ペプチド(エンドルフィン、バソプレシン)である。一度使用されると、神経伝達物質は、シナプス前細胞による酵素分解、拡散又はエンドサイトーシスにより迅速に排除される。
いくつかのニューロンは、ミエリンと呼ばれる絶縁材料に包まれている。この脂質に富む物質は、グリア細胞:末梢神経系のシュワン細胞により及び中枢神経系のオリゴデンドロサイト、により形成される。絶縁は、脱分極される必要がある膜表面積を減らすことにより、より速い神経伝導を可能にする。有髄ニューロンでは、神経インパルスは、軸索の長さにわたり1つの無髄セグメントから別の無髄セグメントにジャンプする。いくらかの神経組織を脳の大きな末梢神経及び白質のように白く見せるのは、ミエリン鞘と、組織内の神経細胞体の欠如である。星状細胞と呼ばれる他のグリア細胞は、構造的完全性、ニューロン栄養、及び神経組織の微小環境の維持に関与する。星状細胞は、ギャップジャンクションを介して互いに直接連絡し、局所環境の調節によりそれらの支配下のニューロンの生存に影響を与え得る。上衣細胞は、脊髄と脳室を裏打ちし、脳脊髄液を分泌する。ミクログリアと呼ばれる他の小さなグリア細胞は、成人の中枢神経系の炎症と修復に関与する食細胞である。
神経組織は、電気インパルスを受信及び伝達できる興奮性組織である。中心の細胞タイプは、ニューロンと呼ばれる。ニューロンは通常、細胞体、入力を受け取る樹状突起、及び電位を伝達する軸索を有する。
ニューロンは、感覚ニューロン、運動ニューロン、分泌ニューロン又は会合ニューロンとして分類され得る。それらはしばしば、伝導速度、直径及びミエリンと呼ばれる特殊なリポタンパク質絶縁の有無により分類される。A型線維は、有髄であり、12~120m/秒でインパルスを伝導できる。B型もまた、有髄線維であるが、それらは3~5m/秒でインパルスを伝達するにすぎない。C型繊維は、無髄であり、直径が小さく、非常に遅い(2.5m/秒)。A型線維の例は、腓腹筋に神経を分布させる運動ニューロンである。自律神経の節前遠心性ニューロンは、B型線維の一例であり、びまん性疼痛に関する情報を伝える感覚ニューロンは、遅発性C型線維の一例である。
感覚ニューロンは、環境からの特定の種類の情報を検出するように適合される。これらは、圧力及び伸張のようなものを感知する機械受容体、温度受容体、網膜の光受容体、及び味蕾又は嗅覚などの化学受容体を含む。連合ニューロン、又は介在ニューロンは通常、脊髄及び脳に見出され、そこでそれらは、感覚求心性ニューロンを遠心性運動ニューロン又は分泌ニューロンに接続する。
ニューロンは、シナプスと呼ばれる構造を介して互いに連絡する。軸索は、多数の小さな小胞を包含する1以上の終末ボタンで終わる。これらの小さな小胞は、神経伝達物質と呼ばれる化学物質で満たされている。アセチルコリンが通常、シナプスにおける神経伝達物質であるが、ノルエピネフリン、セロトニン及びGABAのような他の化学物質が、ニューロンに依存して使用され得る。インパルスが軸索を下って終末ボタンに到達すると、小胞は、ニューロン膜と融合し、神経伝達物質が、放出される。化学物質は次に、狭いシナプス間隙を横切り受信ニューロンのシナプス後膜上の化学物質特異的受容体へと拡散する。
神経伝達物質と受容体の相互作用は、シナプス後ニューロンに新しいインパルスを誘導し得る膜電位の変化を引き起こす。酵素アセチルコリンエステラーゼは、シナプスに存在してアセチルコリンを分解し刺激を終了する。他の神経伝達物質は、分解されるか、シナプス前ニューロンに戻されて刺激を終了する。
中枢神経系において、多くのニューロンが単一のニューロンに収束し得る。シナプス前ニューロンの各々が、シナプス後ニューロンを有するそのシナプス中に神経伝達物質を放出すると、局所膜電位が発生し、それが統合され、合計される。これらの入力シグナルは、抑制性又は刺激性であり得る。結果として生じる膜電位の合計がそのニューロンの最小閾値に達すると、活動電位が開始される。
活動電位は、跳躍伝導によって細胞体から離れて一方向に進む。最速のニューロンは、ランビエ節と呼ばれる裸のニューロン膜の節で区切られた目立たないセグメントに配置されたミエリン鞘で覆われている。跳躍伝導では、電位が、節から節へと跳躍し、それにより活動電位の伝導に関与する膜面積を減少させ、伝導を加速する。
神経系に見出される非神経細胞は、グリア細胞と呼ばれる。星状細胞は、最も多く、ニューロンの支持及び栄養を提供する。ミクログリアは、神経組織に特異的な小さな食細胞である。脊髄の心室系と中心管を裏打ちし脳脊髄液を作る細胞は、上衣細胞と呼ばれる。中枢神経系では、オリゴデンドロサイトが、複数のニューロンのミエリン鞘のセグメントを形成する。末梢神経系では、ミエリン鞘の各セグメントは、単一のシュワン細胞によって作られる。
中枢神経系
中枢神経系(CNS)は、脳及び脊髄からなる。髄膜(硬膜、クモ膜及び軟膜)は、骨の頭蓋骨と椎骨によって与えられる保護に加えて、CNSを保護し、栄養を与える。脳脊髄液は、クモ膜下腔、脊柱の中心管及び脳室に見出される。軟膜は、最内層であり、神経組織に付着される。軟膜と硬膜の間にはクモ膜層がある。丈夫な繊維状硬膜は、頭蓋骨のすぐ下にある。
脳は、前脳、中脳、及び脳幹の3つの基本領域に分けることができる。前脳は、視床、視床下部、大脳基底核、及び大脳を含む。大脳は、意識的な思考、感覚の解釈、全ての随意運動、精神的能力、及び感情を担う。
大脳組織は、構造領域及び機能領域に分けることができる。大脳の表面は、脳回(堤)と深いしわ(溝)へと畳み込まれる。皮質知覚と運動野は、それぞれ、後中心回と中心溝に位置付けできる。感覚野は、視床処理後に投影される身体の反対側から感覚情報を受け取る。より多くの感覚神経終末を有する身体のそれらの部分は、より多くの皮質感覚野によって表される。運動野は、反対側の身体部分の随意筋運動を制御するが、連合野は、運動の開始にとって重要である。
大脳は、脳の最大の部分であり、いくつかの葉を有する右左2つの半球に分割される。前頭葉は、運動野、ブローカの言語野、連合野を含み、知性と行動において機能する。頭頂葉は感覚野を含み、感覚と聴覚において機能する。主要な視覚連合野は、後頭葉に位置し、側頭葉は、聴覚連合野、嗅覚及び記憶保存のための領域を含む。
視床は、大脳皮質と脳幹の間に位置する。嗅覚を除く全ての感覚入力は、脳の他の領域に投影される前にここで処理される。視床下部は、視床の下にあり、内部刺激の処理と内部環境の維持を担う。刻々と、血圧、体温、心拍数、呼吸、水分代謝、浸透圧、空腹及び神経内分泌活動の無意識の制御がここで扱われる。下垂体後葉からオキシトシンとADHを放出する神経内分泌細胞の核は、視床下部にある。
大脳基底核(尾状核、淡蒼球、黒質、視床下核、赤核)は、大脳の各半球内に埋め込まれたニューロンのグループである。それらは、複雑な運動制御、情報処理及び無意識の全体的な意図的な動きの制御に関与する。
脳幹は延髄及び脳橋を含む。延髄は、呼吸、心臓及び血管運動反射を制御するための重要な機能領域と中継中枢を含む。脳橋は、呼吸の調節に関与する呼吸調節中枢を含む。
小脳は、脳幹の上にあり、身体の位置、動作、姿勢及び平衡について他の場所で処理された感覚情報を使用する。動作は、小脳では開始されないが、それは協調運動に必要である。
末梢神経系
末梢神経系は、脳及び脊髄の外側に位置する神経、神経節、脊髄及び脳神経を含む。12の脳神経は、脳幹にある核から発生し、嗅覚、視覚、唾液分泌、心拍数及び皮膚感覚のような様々な自律神経機能を制御するためのインパルスを運んで特定の場所に移動する。脳神経はしばしば、それらが感覚と運動の構成要素を有するとないまぜにされるが、それらは運動線維又は感覚線維のみを有する場合がある。以下の表は、脳神経とその機能を列挙する。
表1-脳神経
Figure 2024504869000002
末梢神経系の感覚の部分は、様々な種類の受容体からの入力を受け取り、それを処理し、中枢神経系に送る。感覚入力は、固有受容性感覚(関節及び筋肉の位置の感覚)でのような内部ソース、又は皮膚への圧力若しくは熱の感覚でのような外部ソースに由来し得る。特異的脊髄神経により刺激される皮膚の領域は、皮膚分節と呼ばれる。求心性線維は、感覚入力を収集し、脊髄を上って移動し、視床に集まり、最終的に大脳の感覚皮質で終わる。より多くの感覚受容体を有する領域、すなわち指先又は唇は、脳の感覚皮質のより大きな領域に相当する。固有受容性情報を運ぶ繊維は、小脳にも分散される。ほとんど全ての感覚系は、視床の部分にインパルスを伝達する。大脳皮質は、感覚刺激の意識的な知覚と解釈に関与する。
筋肉及び腺への運動入力は、自律神経系及び体性遠心性神経系を介して生じる。関節、腱及び筋肉のCNS神経支配は、体性遠心性神経系を介して伝わる。いくつかの筋肉応答は、脊髄反射を介して処理される。この1つの例は、指が熱いストーブに接触したときに見られる離脱反射である。指を外す動きは、痛みの感覚が脳に到達するずっと前に、単純な脊髄反射を介して生じる。明らかに、これはさらなる怪我を避けるための保護メカニズムである。腺及び平滑筋への運動入力は通常、自律神経系を介して生じる。
ほとんどの器官は、自律神経系の両方の枝から入力を受け取る。一方の枝は一般的に、興奮性であり、もう一方の枝は、その臓器又は組織において抑制性である。自律神経系の交感神経枝は、生理的ストレスに対して身体を準備するように作用する。交感神経枝の刺激は、アクセルを踏むようなものであり、その際に体が応答して逃げるまたは戦う準備をする。心拍数の増加、気道の拡張及びグリコーゲン貯蔵からのグルコースの動員などの影響が見られる。交感神経は、第1胸椎-第4腰椎で生じる。それらは、脊柱に沿って伸びる鎖神経節の1つで終わる、短い神経節前ニューロンを有する。アセチルコリンは、長い神経節後ニューロンを有するシナプスでの神経伝達物質であり、それはその後、交感神経終末の大部分でノルエピネフリンが放出される標的組織に移動する。汗腺又は骨格筋血管系を神経支配するものなどの、いくつかの交感神経節後ニューロンは、アセチルコリンを放出する。
副交感神経枝は、CNSの頭蓋領域及び仙骨領域から生じるニューロンを介して交感神経枝のバランスを整えるように作用する。例えば、副交感神経刺激は、気道を収縮させ、心拍数を低下させる。それは、消化、排尿及び勃起などの安静時活動を調節する。長い神経節前ニューロンは、終末器官近傍のシナプスでアセチルコリンを放出する。短い節後ニューロンもまた、エフェクター組織においてアセチルコリンを放出する。
脊髄損傷及び損傷に起因する状態の治療
本研究は、SCI後の機能的及び分子的障害に対するPTEN阻害剤の効果を示した。PTEN阻害剤治療は、SCI後の歩行能力と調整機能を改善した。さらに、SCIによって誘発される正常な排尿行動の消失は、PTEN治療後に顕著に回復された。しかし、機能回復の改善は、偽グループで観察される正常な機能には至らなかった。損傷した脊髄の組織学的回復が、PTEN治療後に観察された。加えて、NGFとBDNFの顕著な減少が認められ、これらの所見は、PTEN阻害剤による神経回復を示唆した。
いくつかの分子が、ニューロンの再生に関与しており、PTENは、最も効率的な分子の1つであると考えられている。以前の研究は、腫瘍抑制因子PTENノックアウトマウスが損傷後に中枢神経系軸索の顕著な再成長を示したことを報告した[Parkら,(2008);Liuら,(2010)]。PI3K/Akt経路は、新しい軸索の形成と再生に重要な役割を果たし、Aktの過剰発現は、神経再生と分枝に寄与する。加えて、PTENはAkt活性を低下させ、したがって、PTENの抑制は、PI3K/Aktシグナル伝達活性化による神経再生を増加させる[Ohtakeら,(2015)]。PTEN阻害剤を用いた以前の研究は、オリゴデンドロサイトの増加と頸部SCI後の運動の機能回復を観察した[Walkerら,(2012)]。脳動脈閉塞後に、梗塞と関連付けられる機能障害は、長期経過観察で改善した[Maoら,(2013)]。これらの先行研究と同様に、本研究で使用したPTEN阻害剤は、SCI後の動物と比較して、損傷された脊髄の神経再生及び機能改善を誘導できた。さらに、排尿機能が、本研究で改善された。PTEN治療は、偽グループで観察された正常な排尿パターンと同様に排尿を回復した。
成長因子は、組織再生において重要な役割を果たし、あらゆる種類の傷害後の成長因子の量の増加は、損傷組織の回復に寄与する。本研究では、各グループにおけるVEGF、NGF、及びBDNFの変化を比較した。SCIグループにおけるVEGF、NGF、及びBDNFの顕著な過剰発現を、再生プロセスとみなした。Wuら[Wuら,(2008)]及びSangら[Sangら,(2018)]は、VEGF、NGF、及びBDNFなどの成長因子がPI3K/Akt経路を活性化し、神経新生を誘発することを示した。
しかし、運動機能及び排尿に関する機能的研究は、VEGF、NGF、及びBDNFの過剰発現にもかかわらず、機能の障害を示した。一方で、PTEN阻害剤による治療は、機能回復および、SCI動物と比較して顕著に低下されたVEGF、NGF、及びBDNFの発現を誘発した。これらの結果は、PTEN阻害剤と関連づけられ、理由は、PTENの下方制御が成長因子の過剰発現なしににPI3K/Aktシグナル伝達経路により神経再生を誘発したからである。
これは、SCI後の排尿機能及び運動機能の回復におけるPTEN阻害剤の役割を調査するための最初の研究である。しかし、いくつかの制限があった。本研究で、発明者らは、根底にあるメカニズムとしてPI3K/Aktシグナル伝達経路を示唆する。
したがって、本発明は、SCI患者における排尿機能障害を含む機能障害に対する治療分子としてのPTEN阻害剤を対象とする。これは、脊髄損傷に起因する運動機能と排尿機能の両方の改善と治療を実証するための最初の研究である。
治療用組成物
一実施形態では、本発明は、神経変性によって特徴付けられる様々な疾患の治療に関する。このようにして、本発明の治療化合物は、ニューロン変性を阻害する化合物を提供することにより、疾患に罹患しているか、又は罹患しやすいヒト患者に投与され得る。特に、疾患は、脳の神経変性障害、特に海馬及び大脳皮質における神経細胞の喪失、神経伝達物質の減少、脳血管変性、脊椎の神経の圧迫、及び/又は認知能力の喪失と関連付けられる。
治療用化合物の製剤は、当技術分野において一般的に公知であり、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第17版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.USAを都合よく参照できる。例えば、1日当たり体重1キログラムあたり約0.05μg~約20mgが、投与され得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割用量を、毎日投与してよく、又は用量を、治療状況の緊急性によって示されるように、比例的に減少させてもよい。活性化合物は、経口、静脈内(水溶性の場合)、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内若しくは坐剤の経路又は移植(例えば、腹腔内経路による徐放性分子を使用する、又は細胞、例えば、インビトロで感作されレシピエントに養子移入される単球若しくは樹状細胞を使用することによる)などの便利な様式で投与され得る。投与経路に応じて、ペプチドは、酵素、酸及び上記成分を不活性化し得る他の自然条件の作用から保護するための材料でコートされる必要があり得る。
例えば、ペプチドの低い親油性は、それらがペプチド結合を切断できる酵素により胃腸管中で、及び酸加水分解により胃中で破壊されることを可能にするであろう。非経口投与以外によりペプチドを投与するために、それらは、その不活性化を防止するための材料でコートされるか又は共に投与される。例えば、ペプチドは、アジュバント中で投与される、酵素阻害剤と共投与される、又はリポソームで投与され得る。本明細書で企図されるアジュバントは、レゾルシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤を含む。酵素阻害剤は、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DEP)及びトラジロールを含む。リポソームは、水中油中水型CGFエマルジョン及び従来のリポソームを含む。
活性化合物はまた、非経口投与又は腹腔投与され得る。分散液はまた、グリセロール液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物及び油中で調製できる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。
注射用途に適する薬剤の形態は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌注射用溶液若しくは分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、形態は、無菌でなければならず、かつ容易に注射できる程度に流動的でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、並びに植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒子サイズの維持によって及びスーパーファクタント(superfactant)の使用によって維持できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チオメルサール(theomersal)などによってもたらされ得る。多くの場合、等張化剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙される様々な他の成分と共に適切な溶媒中に組み込むこと、続いて濾過滅菌することにより調製される。一般的に、分散液は、基礎となる分散媒及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に様々な滅菌活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を生成する真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
ペプチドが上記のように適切に保護される場合、活性化合物は、例えば、不活性希釈剤と若しくは同化可能な食用担体と共に経口投与されるか、又はそれは、硬質の若しくは軟質のシェルゼラチンカプセルに封入されるか、又はそれは、錠剤へと圧縮されるか、又はそれは、食事の食品と共に直接取り込まれ得る。経口治療投与用に、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハ剤などの形態で使用され得る。そのような組成物及び調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。組成物及び調製物の割合は、当然のことながら、変更されてよく、好都合には単位の重量の約5~約80%である。このような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投与量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物又は調製物は、経口投与単位形態が約0.1μg~2000mgの活性化合物を含むように調製される。
錠剤、丸剤、カプセル剤などはまた、以下のものを含有してよい:トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ若しくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;及びショ糖、ラクトース若しくはサッカリンなどの甘味剤、又はペパーミント、ウィンターグリーンの油、若しくはチェリー香料などの香味剤が、添加されてよい。投与単位形態がカプセル剤である場合、それは、上記の種類の材料に加えて、液体担体を含んでよい。様々な他の材料が、コーティングとして、又はそうでなければ投与単位の物理的形態を変えるために存在してよい。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、シェラック、糖、又はその両方でコートされてよい。シロップ又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、チェリー又はオレンジフレーバーなどの染料及び香味料を含んでよい。当然のことながら、任意の投与単位形態を調製する際に使用されるいかなる材料も、採用される量において薬学的に純粋であり、実質的に無毒であるべきである。加えて、活性化合物は、徐放性調製物及び製剤中に組み入れられてよい。
本明細書で使用される「医薬として許容される担体及び/又は希釈剤」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質用のそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療用組成物におけるその使用が、企図される。補助的な活性成分もまた、組成物中に組み込まれてよい。
投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与単位形態で非経口組成物を製剤化することが、特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、治療される哺乳動物対象のための単一投与量として適する物理的に別々の単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体と会合して所望の治療効果を生じるように計算された活性材料の所定量を含む。本発明の投与単位形態の明細は、(a)活性材料の固有の特性及び達成されるべき特定の治療効果、並びに(b)身体的健康が損なわれる疾患状態を有する生きている対象における疾患の治療のためのそのような活性材料を配合する技術に固有の制限、により決定され、かつそれらに直接依存する。
主要活性成分は、投与単位形態で適切な医薬として許容される担体と共に有効な量で簡便なかつ効果的な投与用に配合される。単位剤形は、例えば、0.5μg~約2000mgの範囲の量で主要活性化合物を含んでよい。比率で表すと、活性化合物は一般的に、約0.5μg/mlの担体中に存在する。補助活性成分を含む組成物の場合、投与量は、上記成分の通常の用量及び投与様式を参考に決定される。
送達システム
様々な送達システム、例えば、リポソームへの封入、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現できる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などが、公知であり、本発明の化合物を投与するために使用できる。導入の方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路を含むが、これらに限定されない。化合物又は組成物は、任意の好都合な経路により、例えば注入又はボーラス注射により、上皮若しくは皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介する吸収により投与され、かつ他の生物学的に活性のある薬剤と共に投与され得る。投与は、全身的又は局所的であり得る。加えて、脳室内及び髄腔内注射を含む任意の適切な経路により、中枢神経系に本発明の医薬化合物又は組成物を導入することが望ましい場合がある。脳室内注入は、例えば、オンマヤリザーバーなどのリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより促進され得る。肺投与もまた採用されてよく、例えば、吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化剤との製剤化の使用による。
具体的な実施形態では、本発明の医薬化合物又は組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定されないが、手術中の局所注入、局所適用、例えば、手術後の創傷被覆と併せて、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、又はインプラントによって達成され得、上記インプラントは、シラスティック膜などの膜、又は繊維を含む、多孔質、非多孔質、又はゼラチン状の材料である。好ましくは、本発明の抗体又はペプチドを含む、タンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収しない材料を使用するように注意しなければならない。別の実施形態では、化合物又は組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達できる。さらに別の実施形態では、化合物又は組成物は、制御放出システムで送達できる。一実施形態では、ポンプが、使用され得る。別の実施形態では、ポリマー材料が、使用できる。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的、すなわち脳に近接して配置でき、そのため全身用量のほんの一部のみを必要とする。
組成物は、その投与がレシピエント動物によって許容され得、そうでなければその動物への投与に適する場合、「薬理学的又は生理学的に許容される」と言われる。そのような薬剤は、投与される量が生理学的に重要である場合、「治療的に有効な量」で投与されると言われる。薬剤は、その存在がレシピエント患者の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に重要である。
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の説明及び添付の図から当業者に明らかになる。このような改変は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。以下の実施例は、本発明の例示として提供されるものであり、限定されるものではない。
実施例
実施例1-材料及び実験方法
実施例1.1
ラット副腎髄質PC12褐色細胞腫神経細胞を、ATCC(Manassas,VA)から購入した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ウシ胎児血清(FBS)及びウマ血清を含む細胞培養材料を、Mediatech社(Manassas,VA)から購入した。2.5S神経成長因子を、BD Biosciences社(Bedford,MA 01730)から購入した。ニューロンクラスIII β-チューブリンに対するTUJ-1モノクローナルウサギ抗体を、Covance社(Gaithersburg,MD)から購入した。アセチル化α-チューブリンに対するモノクローナルマウス抗体を、Santa Cruz Biotech社(Santa Cruz,CA)から購入した。ヤギ血清、テキサスレッド(登録商標)ヤギ抗ウサギIgG抗体、Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗マウスIgG抗体、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、ジラクテート(DAPI)及びアラマーブルー(登録商標)を、Molecular Probes-Invitrogen(Eugene,OR)から購入した。ノコダゾールを、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。神経突起伸長アッセイキットを、Millipore(Billerica,MA)から購入した。全ての脂質を、Avanti Polar Lipids社(Alabaster,AL 35007)から購入した。組換えヒトPTENタンパク質及びマラカイトグリーンリン酸検出キットを、R&D Systems社(Minneapolis,MN 55413)から購入した。ヒトPTEN c-DNAを、OriGene社(Rockville,MD 20850)から購入した。リポフェクタミン(商標)2000トランスフェクション試薬を、Invitrogen(商標)から購入した。トリス-グリシン勾配ミニゲル(10~20%)を、Novex(商標)から購入した。全ての抗体を、Santa Cruz Biotechology社(Santa Cruz,CA 95060)から購入した。他の全ての材料を、Fisher Scientific社から購入した。
実施例1.2-ペプチド設計
潜在的なPTEN阻害剤としてのTGNペプチドを、鋳型としてPTENのC末端領域(AA352~403)を使用して設計した。全てのTGNペプチドは、膜透過性を高めるために、N末端にPTD(ペプチド伝達ドメイン)配列(RRRRRRRR)を含む。TGN-1ペプチドは、3つのリン酸化されたセリン残基を有する32個のアミノ酸を有する(MW=4244.18Da,配列:RRRRRRRR-VTPDVpSDNEPDHYRYpSDTTDpSDPE-アミド(配列番号4)、pS=リン酸化されたセリン)。TGN-2ペプチドは、2つのリン酸化されたセリン残基を有する36個のアミノ酸を有する(MW=4776.28Da、配列:HYRYpSDTTDpSDPENEPFDEDQHTQITKV-アミド(配列番号6)、pS=リン酸化されたセリン)。TGN-3ペプチドは、TGN-2ペプチドと同じアミノ酸配列を有するが、残基は修飾されず、2つのセリン残基がバリンに置換された(MW=4640.99Da、配列:RRRRRRRR-HYRYVDTTDVDPENEPFDEDQHTQITKV-アミド(配列番号8))。TGN-4ペプチドを、TGN-1ペプチドのスクランブルペプチドとして設計し(MW=4004.19Da、配列=RRRRRRRR-SDDEYTDNPDSRYVSDTPVDTEH-アミド(配列番号10))、TGN-5ペプチドを、TGN-2/TGN-3スクランブルペプチド用に設計した(MW=4616.88Da、配列=RRRRRRRR-DEHDTEYTPDYRQETHFNSQPTDKSDVI-アミド(配列番号12))。全ペプチドは、21st Century Biochemicals社(Marlboro,MA 01752)により合成された。純度は、95%超であり、HPLCにより確認された。
実施例1.3-インビトロPTEN活性アッセイ
インビトロPTEN活性アッセイを設計して、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP)をホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP)に変換する、およびリン酸イオン(P)を生成するPTEN脂質ホスファターゼ活性を調べた。脂質ホスファターゼとしてPTENは界面の酵素であるため、1,2-ジオクタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-ミオイノシトール-3,4,5-三リン酸)(C8-PIP)を、PTEN基質として使用し、他のリン脂質を有する脂質小胞(リポソーム)として調製した。リポソーム調製のために、C8-PIP、DOPS(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロホスホセリン)及びDOPC(1,2-ジオレオイルsn-グリセロホスホコリン)を、0.1mMのC8-PIP、0.25mMのDOPS及び0.25mMのDOPCの最終濃度へと800μLのリポソーム緩衝液(50mMのTris、100mMのNaCl、10mMのMgCl、5mMのDTT、pH=8.0)を用いて共に混合した。脂質混合物を次いで、4℃で30分間超音波処理して、リポソームを生成した。超音波処理後に、リポソーム溶液を、短時間遠心分離して、残りの脂質を除去した。
PTEN活性アッセイのために、20ngの組換えヒトPTENタンパク質を、40μLの完成されたリポソーム溶液と混合した。PTENアッセイ緩衝液(1mMのTris、20mMのDTT及び0.5%NP-40、pH=8.0)を、最終容量として100μLまで添加した。反応混合物を次いで、37℃の水浴中で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、PTENタンパク質によって生成された無機リン酸イオンを、マラカイトグリーンリン酸検出キットを用いて検出した。最初に、50又は100μLの各反応混合物を、96ウェルプレートに移し、それぞれ、10又は20μLのマラカイト試薬Aを加え、室温で10分間インキュベートした。インキュベーション終了後に、10又は20μLのマラカイト試薬Bを、各試料に再度添加し、室温で20分間さらにインキュベートした。リン酸イオンの検出を、分光光度計を用いて620nmにおけるOD(光学濃度)を測定することにより行った。組換えPTEN活性に対するTGNペプチド(10μM)の阻害効果を決定するために、各TGNペプチドを、1mMの濃度でDMSO溶液中にて調製し、1μLのTGNペプチド溶液を、組換えPTENタンパク質、リポソーム及びPTENアッセイ緩衝液と混合し、上記のプロトコールに従ってPTEN活性についてアッセイした。
実施例1.4-インビトロIC50アッセイ
IC50値を、異なる濃度のTGN-1及びTGN-2ペプチドを用いてインビトロPTEN活性アッセイを行うことにより測定した。IC50アッセイ用のTGN-1又はTGN-2ペプチドの濃度範囲は、それぞれ、0.1、1、10、30、60、及び100μM及び0.05、0.1、0.5、1、5、10、及び100μMであった。全てのデータは、3回の実験によるものであり、IC50値を、Prism5ソフトウェア(GraphPad Software)により計算した。
実施例1.5-PC12細胞培養
PC12ラット褐色細胞腫細胞を、6ウェルプレートに播種し(0.6×10細胞/ウェル)、7.5%FBS及び7.5%ヤギ血清を含むDMEM培地で培養した。細胞コンフルエントが約60~70%に達した後、NGF(神経成長因子、50ng/mL)を、分化のためにPC12細胞に添加し、さらに5日間インキュベートした。次いで、DMSO溶液中に異なる量のTGNペプチドを含む新鮮な培地を、各ウェルに添加し、さらに24時間インキュベートした。PTEN過剰発現のために、PC12細胞を、上記のように6ウェルプレート(0.6×10細胞/ウェル)に播種し、NGF(50ng/mL)で分化させた。DNA-リポフェクタミン2000混合液を、500μlのOpti-MEM中に2~2.5μgのヒトPTEN c-DNAを最初に添加することにより、トランスフェクトされる細胞の各ウェルについて調製した。3.75~8.75μlのリポフェクタミン2000(商標)試薬を、上記の希釈DNA溶液の次に加え、穏やかに混合し、室温で25分間インキュベートした。6ウェルプレート中のPC12細胞の増殖培地を、新鮮な培地と交換し、500μlのDNA-リポフェクタミン2000複合体を、トランスフェクションのために各ウェルに添加した。トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクション後24~48時間、37℃、5.0%CO中でインキュベートし、その後導入遺伝子発現についてアッセイした。
実施例1.6-PC12細胞を用いる神経突起アッセイ
ラット副腎髄質PC12ラット褐色細胞腫神経細胞に、T-75cmフラスコ中で7.5%ウシ胎児血清(FBS)、7.5%ウマ血清(ES)及び0.5%ペニシリンストレプトマイシンを補充し、フラスコを5%COインキュベーター中で37℃にて維持した。細胞を、フラスコからそれらを穏やかに機械的に脱離させることにより50%コンフルエントで分割し、分割比1:7で増殖させた。
神経突起保護アッセイのために、PC12細胞を、2.08×10細胞/足場の播種密度(最適な播種密度として経験的に決定された)で6ウェルプレートに播種し、細胞コンフルエントが60~70%に達するまで24~48時間インキュベートした。PC12細胞を次いで、NGF(50ng/mL)で72~120時間分化させた。神経突起変性を模倣するために、分化したPC12細胞を、ノコダゾール(0.5μM)で処理した。37℃で1時間のインキュベーション後に、ノコダゾールを含む古い培地を、NGF(10ng/mL)及び/又はTGNペプチド(最終濃度として100μM)を含む新鮮な培地に変え、さらに72時間インキュベートした。残りの神経突起を、下記の免疫蛍光アッセイにより分析した。
神経突起伸長アッセイのために、PC12細胞を、1.0×10細胞/ウェルの播種密度で6ウェルプレートに播種した。細胞コンフルエントが60~70%に達した後、PC12細胞の分化を、NGF(50ng/mL)を添加することにより開始した。24時間のインキュベーション後に、TGNペプチド(最終濃度として50μM)を、6ウェルプレートのウェルに添加し、さらに2日間インキュベートした。神経突起状態を、下記の神経突起伸長キット(Millipore)を用いて分光光度計で定量化した。
実施例1.7-ウェスタンブロッティング
培養後、PC12細胞を、6ウェルプレートから収集し、ベンチトップ遠心分離機で遠心分離して細胞ペレットにした(13,000rpm、RTで5分間)。上清を廃棄し、細胞ペレットを、3~500μLの1×PIPA緩衝液(Invitrogen)で再懸濁した。再懸濁細胞を、液体窒素と37℃の水槽(3~4回)を用いる凍結融解サイクルにより溶解した後、27G針付きシリンジを使用して再懸濁された細胞を繰り返し噴霧した。溶解した細胞を、4℃で20分間10,000gにて遠心分離し、上清を、収集し、BCAタンパク質濃縮キット(Thermo Scientific)を用いて総タンパク質濃度について測定した。
ウェスタンブロッティングを、抗リン酸化Akt抗体を用いてPC12細胞中の内因性Aktタンパク質のリン酸化レベルを調べるために行った。SDS-PAGEを、Novex(商標)勾配ミニゲル(10~20%)を用いて実施した。SDS-PAGEゲル中の細胞可溶化液試料とタンパク質を、PVDF膜に移し、続いてブロッキング溶液(0.1%Tween-20を含む1×TBS緩衝液中5%ミルク)とインキュベートした。抗リン酸化Akt抗体を、1:500希釈(0.1%Tween-20を含む1×TBS緩衝液)で一次抗体として使用した。HRP結合抗ウサギ抗体を、1:8000希釈係数で二次抗体として用いた。内因性の又は過剰発現されたPTENタンパク質の発現レベルもまた、抗PTEN抗体(1:400希釈係数)を用いて調べた。β-アクチン発現レベルもまた、ローディング対照としてアッセイした。
実施例1.8-神経突起定量化
全神経突起の定量化のために、発明者らは、分光光度計と共に神経突起伸長アッセイキット(Millipore)を使用した。Millicellインサート(EMD Millipore,Billerica,Massachusetts,USA)の下側を新鮮な細胞外マトリックス(ECM)タンパク質(10μg/mLコラーゲン)で37℃で2時間コートした後、PC12細胞を、インサートごとに播種し、それらを24ウェルプレートの各ウェルに配置した。細胞を、接着のために室温で15分間保持し、次いで合計700μlの分化培地を、ウェルあたり添加した(膜の下及び上で、それぞれ、600μl及び100μl)。神経突起を、3日間伸長させ、その後インサートを、-200℃のメタノールで室温にて20分間固定し、その後新鮮なPBSですすいだ。次に、インサートを、室温で30分間、400μL神経突起染色液中に置き、細胞体を湿らせた綿棒により除去した後、各インサートを、100μlの神経突起染色抽出緩衝液(Millipore)上に置いた。最後に、溶液を、96ウェルプレートに移し、562nmの吸光度を読み取ることにより分光光度計で定量化した。
実施例1.9-免疫蛍光法
細胞培養後に、増殖培地を取り除き、細胞を、室温で15分間、10%ホルマリンで固定した。その後、細胞を、PBS中の0.5Mのグリシン溶液で洗浄し、PBS中の5%ヤギ血清及び0.2%Triton-X溶液で、40℃で一晩ブロックした。一次抗体による免疫染色では、細胞を、全神経突起染色についてニューロンクラスIII β-チューブリンに対するTUJ-1モノクローナルウサギ抗体(1:200希釈)と、及び安定した神経突起染色についてアセチル化されたα-チューブリンに対するモノクローナルマウス抗体(1:100希釈)と40℃で一晩インキュベートした。細胞を1×PBS緩衝液で3回洗浄した後(10分/洗浄)、二次抗体-TUJ-1抗体についてテキサスレッド(登録商標)ヤギ抗ウサギIgG(1:200希釈)及びアセチル化されたα-チューブリン抗体についてAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗マウスIgG(1:200希釈)を、添加し、40℃で一晩インキュベートした。その後、細胞を、1×PBS緩衝液(10分/洗浄)及び1μg/mlの4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドールで3回洗浄した。ジラクテート(DAPI)を、細胞核を染色するために第2洗浄工程の後に添加した。最終洗浄後に、細胞を調製して、蛍光顕微鏡を用いて調べた。励起波長と発光波長は、Alexa Fluor(登録商標)488-IgG(緑)について488nm/519nm、及びテキサスレッド(登録商標)ヤギ抗ウサギIgG(赤色)について595/615nm、及びDAPIについて405/461nmである。細胞の蛍光画像を、異なる倍率で取得し、「Image J」画像処理及び解析プログラム(Wayne RasbandによるPublic Domain,NIH,Bethesda,Maryland,USA)によって分析した。
実施例2-結果
実施例2.1-TGNペプチドはPTENリン酸化部位を鋳型として用いて設計された。
インビボでの脂質ホスファターゼとしてのPTEN活性のブロッキングは、神経損傷後の軸索再生に有効であることが知られている[Parkら 2008,Christieら 2012]。発明者らは、細胞膜表面上のPTEN局在を阻止する潜在的なPTEN阻害剤を設計するためにPTEN膜会合機構を検討した。先行研究[Leeら 1999;Leslieら 2008]によると、PTENタンパク質は、ホスファターゼドメインとC2ドメインの2つの機能ドメインを有し、かつC末端領域に「リン酸化部位」も有し、これは、リン酸化-脱リン酸化プロセスを介してPTENタンパク質の構造変化を制御する「スイッチ」として機能する[Dasら 2003;Leslieら 2008]。PTENの完全な脂質ホスファターゼ活性のために、PTEN膜会合の前にPTEN立体構造を変化させるためにリン酸化部位でのリン酸化されたセリン/チロシン残基の脱リン酸化が起こらなければならない。N末端PIP2結合モチーフ及びC末端PDZドメイン結合モチーフを介する追加の結合は、完全なPTEN活性に必要とされる適切な位置で細胞膜上にPTENタンパク質を局在させる[Walkerら 2004;Molinaら 2010]。そのため、発明者らは、PTEN膜会合を破壊することによる潜在的なPTEN阻害剤としてTGNペプチドを設計するための鋳型として、PTEN「リン酸化部位」とPDZドメイン結合モチーフを使用することを決定した(図1A)。
TGN-1ペプチドは、「リン酸化部位」のアミノ酸配列(365-388)を模倣し、TGN-2及びTGN-3ペプチドは、「リン酸化部位」及びPDZドメイン結合モチーフ(399-403)を含むC末端領域のアミノ酸配列(376-403)を模倣する。「リン酸化部位」におけるセリン残基でのリン酸化はPTEN立体構造の変化にとって重要である[Leslieら 2008;Odriozolaら 2007]ため、TGN-1ペプチドは、「リン酸化部位」内でリン酸化された3つのセリン残基(Ser370、Ser380及びSer385)を含むように修飾される。TGN-2ペプチドは、2つのリン酸化されたセリン残基(Ser380及びSer385)を含む。TGN-3ペプチドでは、2つのセリン残基(Ser380及びSer385)が、比較のためにバリンに交換された。TGN-4及びTGN-5ペプチドは、それぞれ、TGN-1及びTGN-2ペプチド配列をスクランブルするように設計された。全てのTGNペプチドはまた、細胞膜透過性を増加させるために、N末端でのペプチド伝達ドメイン(PTD)として8つのアルギニン残基を含むように修飾された(図1B)。
実施例2.2-TGN-1及びTGN-2ペプチドは、インビトロPTEN活性に対する特異的阻害効果を示す。
合成したTGNペプチドを、インビトロPTEN活性アッセイを用いてそれらのPTEN阻害効果について試験した。ジオクタノイルホスファチジルイノシトール3,4,5三リン酸(diC8-PIP)を、PTENの基質として選択し、2つの異なるリン脂質-ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)とジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)を用いて脂質小胞(リポソーム)として調製した。脂質を、リポソーム緩衝液と混合し、超音波処理によりリポソームにした(総脂質濃度=6.0mM)。調製したリポソーム(0.1mMのdiC8-PIP)を、20ngの組換えヒトPTENタンパク質と室温で30分間インキュベートして、C8-PIP3をC8-PIP2に変換すること及び、リン酸イオンを生成することによりPTEN活性についてアッセイした。PTENにより生成したリン酸イオンを、マラカイトグリーン試薬キットを使用して測定した(図2A)。10μMの各TGNペプチドを、PTEN活性に対するその阻害効果について調べた。図2Bに見られるように、TGN-1とTGN-2ペプチドの両方は、PTEN活性を顕著にブロックした(PTEN活性は、陽性対照と比較してTGN-1で54%及びTGN-2で31%に減少した)。一方、TGN-2ペプチドは、TGN-1又はTGN-2と比較して限定的な阻害を示した(86%)。また、TGN-4とTGN-5ペプチドの両方は、PTEN活性の顕著な阻害を示さず、TGN-1及びTGN-2ペプチドによるPTEN阻害が配列特異的であることを示す。組換えPTENタンパク質及びdiC8-PIP脂質分子を用いるインビトロPTEN活性アッセイのみが、PTEN活性を示すことができなかった(データ示さず)。
TGNペプチドについてのIC50値も、用量依存的(0~100μMの範囲)にTGNペプチドを用いるインビトロPTEN活性を用いて測定した。TGN-1、TGN-2及びTGN-3ペプチドについて計算したIC50値は、それぞれ、19.93μM、87.12μM及び4.83μMであった(図2C)。
実施例2.3-TGN-1ペプチドはインビボでPI3K-Aktシグナル伝達経路を促進する。
神経細胞におけるPI3Kシグナル伝達経路に対するTGN-1ペプチドの効果を、PC12ラット褐色細胞腫の細胞株を用いて決定した。PTEN過剰発現のためのPTEN c-DNAでトランスフェクトされた又は天然状態で分化されたPC12細胞を、37℃で24時間TGN-1ペプチド(10μM及び100μM)又はTGN-4ペプチド(10μM)とインキュベートした。図3Aの図に見られるように、TGN-1ペプチドが実際にPTEN活性をブロックしかつPI3K活性に対するPTENの拮抗効果を抑制するならば、PI3Kシグナル伝達経路におけるAktタンパク質の活性化(リン酸化)レベルは増加されるはずである。抗リン酸化Aktタンパク質抗体を用いるウェスタンブロットデータは、TGN-1ペプチドで処理したPC12細胞における内因性Aktタンパク質の活性化(リン酸化)レベルが、TGN-1ペプチド用量依存的に増加したことを示した(図3B及び3C)。TGN-4ペプチド又はDMSOのいずれかで処理したPC12細胞は、AKTタンパク質の活性化レベルを増加させず、Aktタンパク質のリン酸化レベルの促進はTGN-1ペプチドにより特異的に誘発されることを示唆した。内因性PTEN(図3B)又は過剰発現されたPTEN(図3C)の発現レベルはTGNペプチド又はDMSOでの処理の際の活性において差を示さなかったため、TGN-1ペプチドが、PTEN活性を特異的に阻害して、PI3Kシグナル伝達経路に対するPTENの下方制御効果を抑制し、かつPI3K-Aktシグナル伝達経路を促進することが明らかである。
実施例2.4-TGN-1及びTGN-2ペプチドは神経細胞培養物において神経保護を含む神経栄養効果を示す
本発明者らは、分化された神経細胞での神経突起変性に対するTGNペプチドの効果を検討した。神経突起変性を、ノコダゾールと細胞を接触させることにより、細胞の神経突起微小管動態を妨害することにより、PC12細胞において誘発した。分化されたラットPC12細胞を、最初にノコダゾール(0.5μM)で処理し、72時間NGF(50ng/mL)及びTGNペプチド(100μM)を含む新鮮な培地とインキュベートした。2つの異なるチューブリン抗体(安定神経突起に対するアセチル化α-チューブリン抗体及び全神経突起に対するTUJ-1 β-チューブリン抗体)を用いる免疫蛍光分析は、TGN-1及びTGN-2ペプチドが微小管安定化を介してノコダゾール誘発性神経突起変性を明らかに遅延させたことを実証した(図4A)。さらに、PC12細胞の神経突起伸長に対するTGNペプチドの効果を調べた。分化しているPC12細胞へのTGNペプチドの添加は実際に、神経突起の発達を促進した(TGN-1により2.4倍の増加及びTGN-2により1.6倍の増加、図4B)。まとめると、TGN-1及びTGN-2ペプチドは、神経栄養効果と成熟神経突起を変性から保護する活性を示す。
実施例3-脊髄治療-材料及び方法
実施例3.1-動物及びグループ化
体重250±10gの成体雄Sprague-Dawleyラット(12週齢、n=30)を、商業的ブリーダー(Orient Co.,Seoul,Korea)から取得した。ラットを無作為に、以下の3グループ(各グループn=10):偽手術グループ、脊髄損傷(SCI)誘発グループ、SCI誘発されTGN-2(PTEN阻害剤)治療されたグループ、に分けた。実験手順は、米国立衛生研究所(NIH)の動物飼育ガイドラインに従い行われ、Kyung Hee大学の施設動物管理及び使用委員会(IACUC)により承認された[KHUASP[SE]-17-093]。
実施例3.2-脊髄損傷の誘発及び治療
SCIモデルを、前述の方法[Kimら,(2019)]に従い誘発した。ラットに、手術中のイソフルラン(30%O及び70%N中の2%イソフルラン、JW pharmaceutical,Seoul,Korea)の吸入により麻酔をかけた。椎弓切除術を、硬膜を破壊することなく胸部レベルT9-10で脊髄を露出させるために、行った。挫傷を、露出された硬膜上に2.5cmの高さから10gのインパクターを落とすことにより、ニューヨーク大学インパクターシステム(NYU impactor,New York,NY,USA)を使用して作成した。手術中の低体温症を防ぐために、体温と直腸の温度を、体と頭を包む恒温ブランケット制御ユニット(Homeothermic Blanket Control Unit (Harvard Apparatus,Massachusetts,MA,USA))を用いて手術中に36±0.5℃で維持した。加えて、それを、手術後さらに2時間モニターした。偽手術グループの動物を、脊髄が皮膚切開後に損傷されなかったことを除いて、同じように扱った。
SCIの誘発後3日目に開始して、TGN治療グループに、14日間脊髄損傷部位に、2日に1回、直接7回TGN-2を投与した(図6)。
実施例3.3-BBBスケール試験
機能分析を最初に、以前に確立された行動試験[Bassoら,(1995)]に従い、Basso、Beattie及びBresnahan(BBB)自発運動スケールを用いて評価した。分析を、SCI誘発後7、11及び15日に行った。実験のグループ化を知らされていない4人の研究者が、騒音のないオープンフィールドアリーナで5分間、各対象の歩行、歩調、四肢の動きの調整、足の位置とスペース、尾の活動及び体の安定性を観察した。
実施例3.4-水平ラダー歩行試験
運動機能及び協調の変化を評価するために、水平ラダー歩行試験を、以前の研究方法[Schiraら,(2012)]に従い実施した。試験を、SCIの誘発の15日目(6回目のTGN治療後)に測定した。簡単に説明すると、各実験動物を、丸い金属棒の間に2cm間隔で設計した長さ1.5mのラダー棒を横切らせた。ラダーを歩きながら、動物の後足が正しく配置されるかどうか、及び前足と後足が有機的(organically)に調整されかどうかを評価した。ポイントの数を移動できない場合、ミスの最高数は20である。ミスの数に依存して、0~1は10点、2~5は7点、6~9は4点、及び10~20は1点が与えられた。
実施例3.5-膀胱内圧測定
排尿機能を、以前に記載された[Koら,2018]ように、手術後18日目に膀胱内圧測定により評価した。ラットを、Zoletil 50(登録商標)(10mg/kg、腹腔内;Vibac Laboratories,Carros,France)で麻酔した。カフ付きの滅菌ポリエチレンカテーテル(PE50)を、ドーム中へと腹部正中線切開を介して膀胱に埋め込み、巾着縫合糸により所定の位置で保持した。カテーテルを、3方向コックを介して圧力トランスデューサー(Harvard Apparatus,Holliston,MA,USA)及びシリンジポンプ(Harvard Apparatus)に接続して、膀胱内圧を記録し、膀胱中に生理食塩水を注入した。膀胱を空にした後、膀胱内圧測定を、0.5mLの生理食塩水を注入して行った。膀胱及び排尿機能を、Labscribeソフトウェア(iWorx/CB Science Inc.,Dover,DE,USA)を用いてモニタした。
実施例3.6-組織調製
膀胱内圧測定の直後に、実験動物を、組織採取のために屠殺した。組織調製を、以前に記載された[Koら,2018;Kimら,2018]ように行った。ラットを、Zoletil 50(登録商標)(10mg/kg、腹腔内;Vibac Laboratories)で麻酔した。ラットを、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、続いてpH7.4で100mMのリン酸ナトリウム緩衝液中4%パラホルムアルデヒドで経心灌流した。脊髄を、取り外し、同じ固定液で一晩固定し、凍結保護のために30%スクロース溶液に移した。40μmの厚さの連続水平切片を、凍結ミクロトーム(Leica,Wetzlar,Germany)を用いて作製した。脊髄を、損傷部位にまたがる領域から選択した。各領域で平均4つの切片を、各ラットから収集した。
実施例3.7-H&E染色による組織学的変化の分析
H&E染色を、以前に記載された[Limら,(2018)]ように実施した。スライドを、メイヤーヘマトキシリン(DAKO,Glostrup,Denmark)に1分間浸漬し、透明になるまで水道水ですすぎ、エオジン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO,USA)に20秒間浸し、再び水ですすいだ。スライドを、以下の溶液:95%エタノール、100%エタノール、50%エタノール、50%キシレン溶液、及び100%キシレンに2回浸漬した。最後に、カバーガラスを、パーマウント(登録商標)(Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を使用して取り付けた。
H&E染色スライドの画像を、光学顕微鏡(Olympus BX61,Tokyo,Japan)に取り付けたImage-Pro(登録商標)プラスコンピュータ支援画像解析システム(Media Cyberbetics Inc.,Silver Spring,MD,USA)を用いて撮影した。スライドの身元を知らない検査官が、画像を評価した。
実施例3.8-ウェスタンブロッティング
ウェスタンブロッティングを、以前に記載された方法[Leeら.,2020]に従い行った。膀胱組織を、1mMのPMSF(Sigma Aldrich, ST Louis,MO,USA)により冷却したRIPA緩衝液(Cell Signaling Technology,Inc.,Danvers,USA)でホモジナイズし、次いで4℃にて30分間14,000rpmで遠心分離した。タンパク質含量を、μドロップリーダー(Thermo Fisher Scientific,Vantaa,Finland)を用いて測定した。次に、30μgのタンパク質を、SDS-PAGEゲル上で分離し、ニトロセルロース膜上に移した。一次抗体は以下のもの:抗マウスNGF抗体、抗マウスVEGF抗体、抗ウサギBDNF抗体(1:1000;Santa Cruz Biotechnology,CA,USA)を含んだ。
二次抗体は以下の通りであった:NGF、VEGFについては西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウス抗体(1:5000;Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA);BDNFについては抗ウサギ抗体(1:5000;Vector Laboratories)。ブロット膜を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合IgG(1:2000;Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)及び強化化学発光(ECL)検出キット(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)を用いて検出した。相対的なタンパク質発現を比較するために、検出されたバンドを、Image-Pro(登録商標)プラスコンピュータ支援画像解析システム(Media Cybernetics Inc)を用いて濃度測定計算した。相対定量化のために、偽手術グループにおける結果を、1.00に設定した。
実施例3.9-データ解析
データを、平均±平均の標準誤差として表す。グループ間の比較のために、一元配置分散分析とダンカン事後検定を行い、p値<0.05を、グループ間の統計的有意差を示すとみなした。
実施例4-脊髄損傷により引き起こされる状態に対するTGN-2効果の結果
実施例4.1-機能回復の変化(BBBスケール及びラダー試験)
BBB試験からの機能回復を、図7Aに示す。SCIの誘発は、偽手術グループと比較してBBB試験でBBBオープンフィールド自発運動スコアを低下させた(p<0.05)。しかし、TGN-2治療は、BBBオープンフィールド自発運動スコアを増加させSCI誘発機能的不均衡を改善した。TGN-2治療による改善効果は、注射回数と共に増加した。
図7Bは、水平ラダー試験からの運動機能及び協調能力の解析結果を示す。SCIの誘発はラダー歩行スコアを低下させたが、TGN治療はSCIによるラダー歩行スコアの低下を増強した。これらの結果は、TGN投与がSCIによって低下された運動機能及び協調性を増加させることによりSCIの回復を促進することを意味した。
実施例4.2-膀胱内圧測定における排尿機能の変化
膀胱内圧測定からの排尿機能を、図8に示す。SCIの誘発は、膀胱収縮圧(CP)、収縮時間(CT)、及び収縮間間隔(ICI)を増加させた。SCI損傷後に、CP及びCTは、偽グループと比較して有意に減少された(p<0.05)。SCIグループのICIは、偽グループと比較して有意に増加された(p<0.05)。TGN-2投与後に、CP及びCTは、SCIグループと比較して有意に増加された(p<0.05)。SCIグループのICIは、SCIグループと比較して有意に増加された(P<0.05)。偽グループと比較して、CP、CT、及びICIの有意差が、TGN-2投与後に観察された(p<0.05)。
実施例4.3-脊髄組織における組織学の変化
SCIの誘発後18日目における脊髄組織における組織学的変化の出現を、図9に示す。正常な形状の脊髄組織が、偽手術グループで観察された。SCIグループでは、組織学的画像は、背部において完全に破壊された病変を示した。しかし、TGN-2治療は、SCI誘発性破壊病変を減少させ、新しい組織が、損傷組織の周囲に現れ増加した。
実施例4.4-膀胱組織におけるVEGF、NGF、及びBDNF発現の変化
本発明者らは、VEGF、NGF、及びBDNF発現に対するその効果を調べることによりTGN治療がSCIを改善するかどうかを決定するためにウェスタンブロッティングを行った(図10A~10C)。SCIの誘発は、脊髄損傷部位組織におけるVEGF、NGF、及びBDNF発現を増加させた(P<0.05)。しかし、TGN治療は、SCI誘発で過剰発現されるVEGF、NGF、及びBDNFの発現を抑制した(P<0.05)。これらの結果は、TGN治療がSCI誘発により増大される過剰な代償応答を抑制することを示している。
本明細書において引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
当業者は、本明細書に具体的に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は単に日常的な実験を使用して確認できるであろう。

Claims (13)

  1. 神経を再生する又は神経変性を減弱させる量のホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチドを、損傷された神経にて又はその近傍の領域にて投与することを含む神経損傷の部位で神経を再生すること又は神経の変性を減弱することを含む脊髄損傷を治療する方法。
  2. 前記PTEN阻害剤ペプチドが、リン酸化部位のセリン又はスレオニンがリン酸化されるようにリン酸化部位が修飾された修飾されたPTENペプチド又はその断片である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リン酸化されるセリン又はスレオニンが、位置Thr-366、Ser-370、Ser-380、Thr-382、Thr-383又はSer-385に位置する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記リン酸化されるセリン又はスレオニンが、位置Ser-370、Ser-380及び/又はSer-385に位置する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記リン酸化されるセリン又はスレオニンが、位置Ser-370、Ser-380及びSer-385に位置する、請求項3に記載の方法。
  6. 前記リン酸化されるセリン又はスレオニンが、位置Ser-380及びSer-385に位置する、請求項3に記載の方法。
  7. 前記ペプチドが、リン酸化部位及び/又はPDZドメイン結合モチーフのペプチドの断片である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記ペプチドが、ペプチド伝達ドメイン(PTD)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記神経損傷が、中枢神経系にある、請求項1に記載の方法。
  10. 神経を再生する又は神経変性を減弱させる量のホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)脂質ホスファターゼ阻害ペプチドを、損傷された神経にて又はその近傍の領域にて投与することを含む神経損傷の部位で神経を再生すること又は神経の変性を減弱することを含む脊髄損傷と関連付けられるか又は脊髄損傷により引き起こされる状態を治療する方法。
  11. 前記状態が、神経因性膀胱である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記状態が、運動機能の損失である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記状態が、運動協調の喪失である、請求項11に記載の方法。
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