JP2025154789A - 離型剤、樹脂組成物および成形体 - Google Patents
離型剤、樹脂組成物および成形体Info
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Abstract
【課題】モンタンワックスなどの石炭系ワックスと同等以上の耐熱性を有し、金型離型性に優れる離型剤および樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である化合物(A’)を75~100質量%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)の前記カルボキシ基と、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する化合物(B’)を75~100質量%含有する組成物(B)の前記ヒドロキシ基とが反応して得られた化合物(I)等を含む離型剤によって解決される。
【選択図】なし
【解決手段】ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である化合物(A’)を75~100質量%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)の前記カルボキシ基と、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する化合物(B’)を75~100質量%含有する組成物(B)の前記ヒドロキシ基とが反応して得られた化合物(I)等を含む離型剤によって解決される。
【選択図】なし
Description
本開示は、離型剤、樹脂組成物および成形体に関する。
成形体の生産性および高品質化には、金型に対する優れた離型性が求められる。離型性を高める方法として離型剤(ワックス)を用いる方法がある。特許文献1には、炭素数14~30の直鎖飽和モノカルボン酸と、炭素数14~30の直鎖飽和1価アルコール、または炭素数2~30の2~6価の多価アルコールとの縮合反応によって得られ、酸価が3mgKOH/g以下、且つ水酸基価が5mgKOH/g以下であるエステル化合物からなる熱可塑性樹脂加工用添加剤が開示されている。特許文献2には、スチレン系単量体単位とシアン化ビニル系単量体を有する共重合体Aと、炭素数16以上の脂肪族アルコール、脂肪酸から選ばれる少なくとも1種類の離型剤Bとを含有する樹脂組成物が開示されている。
従来、モンタンワックスなどの石炭系ワックスなどの天然系ワックスが用いられてきた。しかし、近年の脱炭素の流れで石炭系ワックスの生産量が減少している。また、天然系ワックスは品質が安定しないという問題がある。
本開示は上記背景に鑑みてなされたものであり、従来のモンタンワックスなどの石炭系ワックスと同等以上の耐熱性を有し、金型離型性に優れる離型剤、並びに前記離型剤を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本開示の課題を解決し得ることを見出し、本開示を完成するに至った。
[1]: ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(A’)という)を75~100質量%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)(以下、組成物(A)という)の前記カルボキシ基と、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(B’)という)を75~100質量%含有する組成物(B)(以下、組成物(B)という)の前記ヒドロキシ基とが反応して得られた(A’)-(B’)で表されるエステル化合物(I)(以下、化合物(I)という)、
化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)の反応性官能基が反応して得られた(A’)-(C)-(A’)で表される化合物(II)、並びに
化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含有する混合物(III)、
からなる群より選択される少なくともいずれか1種を含む、離型剤。
[2]: 連結基(C)が一般式(1)で表される、[1]記載の離型剤。
(但し、Xは、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、金属原子、および一般式(2)で表される基からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、Y1、Y2は、互いに独立に、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はイソシアネート基を表す。)
(但し、Z1、Z2は、それぞれに独立に、-O-、―S-、-SO2-、-Si(Me)2-、-N=N-、―NH―、および―NR4―からなる群より選択される2価の基であり、
R1~R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、および-C(CF3)2-からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、R4は炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、nは0以上の整数を表す。)
[3]: 前記Xの前記金属原子がCa、Mg、およびZnからなる群から選択される[2]記載の離型剤。
[4]: 化合物(I)又は(II)を含み、更に、組成物(A)を含む[1]~[3]のいずれかに記載の離型剤。
[5]: さらにポリエチレン成分を含む[1]~[4]のいずれかに記載の離型剤。
[6]: 量子化学計算により算出された化合物(I)および(II)の双極子モーメントSが1.7≦S≦4.7Debyeであり、
混合物(III)の場合には、混合物(III)から得られる化合物(I)の双極子モーメントSが1.7≦S≦4.7Debyeである、[1]~[5]のいずれかに記載の離型剤。
[7]: 樹脂(G)と、[1]~[6]のいずれかに記載の離型剤とを含み、
前記離型剤を、樹脂(G)100質量部に対して0.01~20質量部含む樹脂組成物。
[8]: [7]に記載の樹脂組成物から形成してなる成形体。
[1]: ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(A’)という)を75~100質量%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)(以下、組成物(A)という)の前記カルボキシ基と、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(B’)という)を75~100質量%含有する組成物(B)(以下、組成物(B)という)の前記ヒドロキシ基とが反応して得られた(A’)-(B’)で表されるエステル化合物(I)(以下、化合物(I)という)、
化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)の反応性官能基が反応して得られた(A’)-(C)-(A’)で表される化合物(II)、並びに
化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含有する混合物(III)、
からなる群より選択される少なくともいずれか1種を含む、離型剤。
[2]: 連結基(C)が一般式(1)で表される、[1]記載の離型剤。
R1~R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、および-C(CF3)2-からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、R4は炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、nは0以上の整数を表す。)
[3]: 前記Xの前記金属原子がCa、Mg、およびZnからなる群から選択される[2]記載の離型剤。
[4]: 化合物(I)又は(II)を含み、更に、組成物(A)を含む[1]~[3]のいずれかに記載の離型剤。
[5]: さらにポリエチレン成分を含む[1]~[4]のいずれかに記載の離型剤。
[6]: 量子化学計算により算出された化合物(I)および(II)の双極子モーメントSが1.7≦S≦4.7Debyeであり、
混合物(III)の場合には、混合物(III)から得られる化合物(I)の双極子モーメントSが1.7≦S≦4.7Debyeである、[1]~[5]のいずれかに記載の離型剤。
[7]: 樹脂(G)と、[1]~[6]のいずれかに記載の離型剤とを含み、
前記離型剤を、樹脂(G)100質量部に対して0.01~20質量部含む樹脂組成物。
[8]: [7]に記載の樹脂組成物から形成してなる成形体。
本開示によれば、従来のモンタンワックスなどの石炭系ワックスと同等以上の耐熱性を有し、金型離型性に優れる離型剤、並びに前記離型剤を含有する樹脂組成物を提供できるという優れた効果を奏する。
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値を含む。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。本明細書に記載する数値は、後述する[実施例]に記載の方法にて得られる値をいう。
1.離型剤
本開示の離型剤(以下、本離型剤ともいう)は、以下の化合物(I)、(II)、および混合物(III)いずれか1種を少なくとも含む。化合物(I)、(II)は、それぞれ独立に、1種以上である。同様に、混合物(III)中の組成物(A)に含有する化合物(A’)、および組成物(B)に含有する化合物(B’)は、それぞれ独立に、1種以上である。化合物(I)、(II)、および混合物(III)いずれか1種を本離型剤の主成分とすることが好ましい。「主成分」とは、離型剤(固形分)において、最も多い(質量部)成分をいうものとする。化合物(I)、(II)、混合物(III)それぞれにおいて、1種以上含む場合には、主成分は合計量(質量部)で比較する。混合物(III)は、組成物(A)と組成物(B)の合計量で判断する。
本開示の離型剤(以下、本離型剤ともいう)は、以下の化合物(I)、(II)、および混合物(III)いずれか1種を少なくとも含む。化合物(I)、(II)は、それぞれ独立に、1種以上である。同様に、混合物(III)中の組成物(A)に含有する化合物(A’)、および組成物(B)に含有する化合物(B’)は、それぞれ独立に、1種以上である。化合物(I)、(II)、および混合物(III)いずれか1種を本離型剤の主成分とすることが好ましい。「主成分」とは、離型剤(固形分)において、最も多い(質量部)成分をいうものとする。化合物(I)、(II)、混合物(III)それぞれにおいて、1種以上含む場合には、主成分は合計量(質量部)で比較する。混合物(III)は、組成物(A)と組成物(B)の合計量で判断する。
化合物(I):ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(A’)という)を75~100質量%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)(以下、組成物(A)という)の前記カルボキシ基と、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(B’)という)を75~100質量%含有する組成物(B)(以下、組成物(B)という)の前記ヒドロキシ基とが反応して得られた(A’)-(B’)で表されるエステル化合物。
化合物(II):化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)の反応性官能基が反応して得られた(A’)-(C)-(A’)で表される化合物。
混合物(III):化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含む混合物。
化合物(II):化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)の反応性官能基が反応して得られた(A’)-(C)-(A’)で表される化合物。
混合物(III):化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含む混合物。
組成物(A)の多分散度とは、当該化合物のz平均分子量(Mz)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mz/Mn)を意味する。
飽和炭化水素鎖とは、アルキル基、又はアルキレン基を意味し、アルキル基およびアルキレン基は直鎖状炭化水素鎖とする。
離型剤(固形分)における化合物(I)、(II)および混合物(III)の少なくともいずれか1種の割合(複数含む場合には合計の割合)は40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましく、70質量%以上が更により好ましい。前記を40質量%以上とする離型剤を用いることにより、後述する樹脂組成物の流動性、離形性、連続離形性がより優れたものとなる。本離型剤において、化合物(I)、(II)および混合物(III)から選択される任意の組合せの混合物であってもよい。
流動性の観点からは、主成分を化合物(I)、(II)のいずれかとし、更に、組成物(A)を含む離型剤が好ましい。樹脂組成物の流動性の観点から、離型剤100質量%中、組成物(A)は1~50質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
樹脂組成物との相溶性を向上させる観点から、本離型剤は、ポリエチレン成分を含むことが好ましい。樹脂組成物との相溶性を向上させる観点から、離型剤100質量%中、ポリエチレン成分は5~25質量%が好ましく、15~20質量%がより好ましい。
本離型剤は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において上記以外の成分を含んでいてもよい。例えば、未反応原料を含んでいてもよい。また、化合物(II)において一置換体を含んでいてもよい。更に、化合物(II)において(A’)-(C)-(A’)で表される化合物(II)に加えて、一置換の(A’)-(C)で表される化合物が含まれていてもよい。
本離型剤は、量子化学計算により算出された前記主成分の双極子モーメントS(但し、混合物(III)の場合には化合物(I)の双極子モーメントS)を1.7≦S≦4.7Debyeとすることが好ましい。
双極子モーメントSが前記範囲にある化合物(I)、或いは(II)を主成分として用いることにより、より効果的に離型性を高められる。本離型剤を外部滑剤として利用する場合には、離型剤と樹脂との相溶性が低い方が望ましい。一方、本離型剤を内部滑剤として利用する場合には、離型剤と樹脂との相溶性が高い方が好ましい。本開示の離型剤によれば、平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖の構造を少なくとも2つ有する化合物(I)、(II)を用い、且つ双極子モーメントS(但し、混合物(III)の場合には化合物(I)の双極子モーメントS)が1.7≦S≦4.7Debyeとすることにより、外部滑剤性と内部滑剤性を両立することが可能となる。双極子モーメントSの下限は1.9Debyeがより好ましく、2.1Debyeが更に好ましい。双極子モーメントSの上限は4.5Debyeがより好ましく、4.3Debyeが更に好ましい。
化合物(I)、(II)の双極子モーメントSは、量子化学計算により算出される値であり、以下の手順で算出された値である。化合物(I)、(II)の三次元構造は、ソフトウェアのGaussView6を用いて、以下にルールに基づきモデリングする。
(1)化合物(A’)、化合物(B’)のそれぞれの飽和炭化水素鎖は直線構造とする。
(2)化合物(II)は、連結基(C)を軸として互いに化合物(A’)の飽和炭化水素鎖が同じ側を向いた(連結基(C)を軸として、前記(1)の2つの飽和炭化水素鎖が接近する)立体配座の双極子モーメントSを計算する。
(3)結合角および結合長は変更しない。ここでいう結合角はGaussView6で分子モデリングした際のデフォルトの3原子間の角度をいい、結合長はGaussView6で分子モデリングした際のデフォルトの2原子間の距離である。描画した三次元構造についてGaussView6のクリーン機能を用いて調整を行った後の構造を計算の初期構造とした。
(4)イオン結合から成る塩化合物は対応するカチオンおよびアニオンで構成されるが、Gaussian16ソフトウェアの入力ファイルはカチオンとアニオンが共存した系に対応していないため、本明細書における実施例および比較例の塩化合物についてはカチオンとして計算した。
Gaussian16ソフトウェアを用いた計算手法には、DFT、密度汎関数にはB3LYP、基底関数には6-31G(d)を用い、入力した初期構造の構造最適化計算を実施した。得られた最適化構造をGaussView6ソフトウェアで読み込み、算出された双極子モーメントSを確認した。
(1)化合物(A’)、化合物(B’)のそれぞれの飽和炭化水素鎖は直線構造とする。
(2)化合物(II)は、連結基(C)を軸として互いに化合物(A’)の飽和炭化水素鎖が同じ側を向いた(連結基(C)を軸として、前記(1)の2つの飽和炭化水素鎖が接近する)立体配座の双極子モーメントSを計算する。
(3)結合角および結合長は変更しない。ここでいう結合角はGaussView6で分子モデリングした際のデフォルトの3原子間の角度をいい、結合長はGaussView6で分子モデリングした際のデフォルトの2原子間の距離である。描画した三次元構造についてGaussView6のクリーン機能を用いて調整を行った後の構造を計算の初期構造とした。
(4)イオン結合から成る塩化合物は対応するカチオンおよびアニオンで構成されるが、Gaussian16ソフトウェアの入力ファイルはカチオンとアニオンが共存した系に対応していないため、本明細書における実施例および比較例の塩化合物についてはカチオンとして計算した。
Gaussian16ソフトウェアを用いた計算手法には、DFT、密度汎関数にはB3LYP、基底関数には6-31G(d)を用い、入力した初期構造の構造最適化計算を実施した。得られた最適化構造をGaussView6ソフトウェアで読み込み、算出された双極子モーメントSを確認した。
混合物(III)の双極子モーメントSは、化合物(A’)と化合物(B’)から得られる化合物(I)の双極子モーメントで判断する。化合物(A’)および/又は化合物(B’)が複数種含まれる場合には、各組合せにより得られる化合物(I)の双極子モーメントSをそれぞれ求め、得られる各化合物(I)の割合を乗じて全体の化合物(I)の双極子モーメントSを求める。
なお、主成分となる化合物(I)が2種以上の場合には、以下のように求める。
化合物(I)の双極子モーメント=化合物(I)1の双極子モーメント×配合率+化合物(I)2の双極子モーメント×配合率・・・+・・・化合物(I)nの双極子モーメント×配合率(nは1以上の整数を表す)。主成分となる化合物が化合物(II)の場合も同様である。
化合物(I)の双極子モーメント=化合物(I)1の双極子モーメント×配合率+化合物(I)2の双極子モーメント×配合率・・・+・・・化合物(I)nの双極子モーメント×配合率(nは1以上の整数を表す)。主成分となる化合物が化合物(II)の場合も同様である。
本開示の離型剤によれば、樹脂と相溶する部位と相溶性を示さない部位を有することにより、金型離型性に優れる離型剤を提供できる。その理由は、平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)に由来する化合物(I)、(II)、若しくは化合物(I)を得るための混合物(III)を含有することにより、表層部での樹脂と離型剤の相溶性を確保して、ブリードアウトを防止しつつ、樹脂との相溶性を適度に抑えられたことによると考えられる。
ところで、内部滑剤として利用する場合には、離型剤と樹脂との相溶性が高い方が好ましい。本開示の離型剤によれば、平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)に由来する化合物(I)、(II)、若しくは化合物(I)を得るための混合物(III)を用いることにより、樹脂と離型剤の相溶性を確保しつつ、樹脂と離型剤の相溶性を低く保つことができるので、特に、薄型あるいは小型の成型品において、外部滑剤性と内部滑剤性を両立する用途に好適である。大型の成型品の場合には、表層部での優れた相溶性を実現し、ブリードアウトを防止しつつ金型との離型性を実現する、外部滑剤としての用途に特に好適である。
1-1.組成物(A)
組成物(A)は、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である飽和炭化水素系化合物(化合物(A’))を75~100質量モル%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である。組成物(A)は、化合物(A’)のみからなっていてもよい。この場合は、厳密には組成物ではないが、便宜上、組成物(A)という。組成物(A)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲でポリエチレンと化合物(A’)以外の成分が含まれていてもよいが、組成物(A)100質量%に対して、ポリエチレンと化合物(A’)の合計は75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%が更に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。組成物(A)に含み得る他の成分としては、部分的に不飽和結合を有する化合物炭化水素化合物が例示できる。カルボキシ基は-COOH基だけではなく、水素イオン以外の陽イオンと-COO-とが結合した構造を含む。高耐薬品性、低溶解性の観点からは、長鎖の線状第一級カルボン酸が好適である。
組成物(A)は、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である飽和炭化水素系化合物(化合物(A’))を75~100質量モル%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である。組成物(A)は、化合物(A’)のみからなっていてもよい。この場合は、厳密には組成物ではないが、便宜上、組成物(A)という。組成物(A)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲でポリエチレンと化合物(A’)以外の成分が含まれていてもよいが、組成物(A)100質量%に対して、ポリエチレンと化合物(A’)の合計は75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%が更に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。組成物(A)に含み得る他の成分としては、部分的に不飽和結合を有する化合物炭化水素化合物が例示できる。カルボキシ基は-COOH基だけではなく、水素イオン以外の陽イオンと-COO-とが結合した構造を含む。高耐薬品性、低溶解性の観点からは、長鎖の線状第一級カルボン酸が好適である。
化合物(A’)における飽和炭化水素鎖の平均炭素数の下限は30がより好ましく、38が更に好ましく、50が特に好ましい。化合物(A’)の飽和炭化水素鎖の平均炭素数の上限は100が好ましく、90がより好ましく、80が更に好ましく、72が特に好ましい。化合物(A’)の飽和炭化水素鎖の平均炭素数の下限を24以上とすることにより、蒸気圧を低くすることができ、成形加工時の揮発性を顕著に抑制できる。また、滑性効果を効果的に発揮できる。
化合物(A’)の好適例として下記一般式(3)で表される重合体が挙げられる。
但し、n2は11以上の整数である。
このような重合体を用いることにより、安価な離型剤を提供できる。重合体は、例えば、エチレンを重合し、末端にカルボキシ基を導入する方法が挙げられる。また、ポリエチレンからカルボキシ基含有化合物を合成してもよい。n2の上限は特に限定されないが、流動性の観点から49が好ましく、44がより好ましく39が更に好ましい。n2の下限は耐熱性の観点から14が好ましく、17がより好ましい。
このような重合体を用いることにより、安価な離型剤を提供できる。重合体は、例えば、エチレンを重合し、末端にカルボキシ基を導入する方法が挙げられる。また、ポリエチレンからカルボキシ基含有化合物を合成してもよい。n2の上限は特に限定されないが、流動性の観点から49が好ましく、44がより好ましく39が更に好ましい。n2の下限は耐熱性の観点から14が好ましく、17がより好ましい。
組成物(A)のMn(数平均分子量)は、流動性の観点から500~5000が好ましく、600~4000がより好ましく、700~3000が更に好ましい。
多分散度Mz/Mnを1.8以下とし、且つ化合物(A’)の多分散度Mz/Mnを1.8以下とする組成物(A)を用いて得られた化合物(I)、(II)或いは混合物(III)を含む離型剤を用いることにより、樹脂組成物のシャープメルト性に優れる。また、樹脂組成物の粘度上昇を抑制できる。組成物(A)の多分散度Mz/Mnは、より好ましくは1.78以下であり、更に好ましくは1.75以下である。多分散度Mz/Mnの下限は1である。同様に、化合物(A’)の多分散度Mz/Mnは、より好ましくは1.78以下であり、更に好ましくは1.75以下である。なお、多分散度Mz/Mn1.8以下の組成物(A)は、市販品により入手できる。また、化合物(A’)或いはポリエチレンを添加して調整してもよい。
多分散度Mz/Mnを1.8以下とし、且つ化合物(A’)の多分散度Mz/Mnを1.8以下とする組成物(A)を用いて得られた化合物(I)、(II)或いは混合物(III)を含む離型剤を用いることにより、樹脂組成物のシャープメルト性に優れる。また、樹脂組成物の粘度上昇を抑制できる。組成物(A)の多分散度Mz/Mnは、より好ましくは1.78以下であり、更に好ましくは1.75以下である。多分散度Mz/Mnの下限は1である。同様に、化合物(A’)の多分散度Mz/Mnは、より好ましくは1.78以下であり、更に好ましくは1.75以下である。なお、多分散度Mz/Mn1.8以下の組成物(A)は、市販品により入手できる。また、化合物(A’)或いはポリエチレンを添加して調整してもよい。
1-2.組成物(B)
組成物(B)は、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(化合物(B’))を75~100質量%含有する。組成物(B)は、化合物(B’)のみからなっていてもよい。この場合は、厳密には組成物ではないが、便宜上、組成物(B)という。組成物(B)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲でポリエチレンと化合物(B’)以外の成分が含まれていてもよいが、組成物(B)100質量%に対して、ポリエチレンと化合物(B’)の合計は75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%が更に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。組成物(B)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、任意の構造(例えば、部分的に不飽和結合、反応性置換基)を有していてもよい。離型性および耐熱性を向上させる観点からは、長鎖の線状第一級アルコールが好適である。
組成物(B)は、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(化合物(B’))を75~100質量%含有する。組成物(B)は、化合物(B’)のみからなっていてもよい。この場合は、厳密には組成物ではないが、便宜上、組成物(B)という。組成物(B)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲でポリエチレンと化合物(B’)以外の成分が含まれていてもよいが、組成物(B)100質量%に対して、ポリエチレンと化合物(B’)の合計は75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%が更に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。組成物(B)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、任意の構造(例えば、部分的に不飽和結合、反応性置換基)を有していてもよい。離型性および耐熱性を向上させる観点からは、長鎖の線状第一級アルコールが好適である。
化合物(B’)における飽和炭化水素鎖の平均炭素数の下限は30がより好ましく、42が更に好ましく、50が特に好ましい。化合物(B’)の飽和炭化水素鎖の平均炭素数の上限は、100が好ましく、90がより好ましく、80が更に好ましく、72が特に好ましい。
化合物(B’)の好適例として下記一般式(4)で表される重合体が挙げられる。
但し、n4は11以上の整数である。
このような重合体を用いることにより、安価に離型剤を提供できる。重合体は、例えば、エチレンを重合し、末端にヒドロキシ基を導入する方法が挙げられる。n4の上限は特に限定されないが、流動性の観点から49が好ましく、44がより好ましく39が更に好ましい。n4の下限は耐熱性の観点から14が好ましく、17がより好ましい。
このような重合体を用いることにより、安価に離型剤を提供できる。重合体は、例えば、エチレンを重合し、末端にヒドロキシ基を導入する方法が挙げられる。n4の上限は特に限定されないが、流動性の観点から49が好ましく、44がより好ましく39が更に好ましい。n4の下限は耐熱性の観点から14が好ましく、17がより好ましい。
組成物(B)のMn(数平均分子量)は、流動性の観点から、500~5000が好ましく、600~4000がより好ましく、700~3000が更に好ましい。
1-3.連結基(C)
連結基(C)は、化合物(A’)2分子を連結する役割を担う。連結基(C)は、化合物(A’)のカルボキシ基と反応し得る反応性官能基を2以上有する化合物である。反応性官能基は好ましくは2である。2つの反応性官能基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。好適例として、下記一般式(1)が例示できる。
Xは、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、金属原子、および一般式(2)で表される基からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表す。また、Y1、Y2は、互いに独立に、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はイソシアネート基を表す。
Z1、Z2は、それぞれに独立に、-O-、―S-、-SO2-、-Si(Me)2-、-N=N-、―NH―、および―NR4―からなる群より選択される2価の基であり、
R1~R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、および-C(CF3)2-からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、nは0以上の整数を表す。nの上限は限定されないが、好ましくは100、より好ましくは50、更に好ましくは10である。Y1、Y2は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。R4は、炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基が例示できる。好適例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
連結基(C)は、化合物(A’)2分子を連結する役割を担う。連結基(C)は、化合物(A’)のカルボキシ基と反応し得る反応性官能基を2以上有する化合物である。反応性官能基は好ましくは2である。2つの反応性官能基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。好適例として、下記一般式(1)が例示できる。
R1~R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、および-C(CF3)2-からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、nは0以上の整数を表す。nの上限は限定されないが、好ましくは100、より好ましくは50、更に好ましくは10である。Y1、Y2は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。R4は、炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基が例示できる。好適例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
Xの好適例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンチレン基、2-メチルペンチレン基、3-メチルペンチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基などの直鎖状または分岐状の炭化水素基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの脂環式炭化水素基;
フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などの芳香族炭化水素基;
Ca、Mg、Znなどの金属原子が挙げられる。一般式(2)で表される構造も好適である。
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの脂環式炭化水素基;
フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などの芳香族炭化水素基;
Ca、Mg、Znなどの金属原子が挙げられる。一般式(2)で表される構造も好適である。
R1~R3の好適例として、それぞれ独立に、上記Xで例示した直鎖状または分岐状の炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
連結基(C)の具体例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジエタノールアミンなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。また、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジメチルジフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられる。更に、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカンなどの脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレンなどの芳香環を有するジアミンが挙げられる。また、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,7-ヘプタンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,12-ドデカンジチオール、1,14-テトラデカンジチオール、1,16-ヘキサデカンジチオール、1,18-オクタデカンジチオールなどのジチオールが例示できる。これらの中でも、エチレングリコール、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、Ca、Mg、Znが好適である。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
1-4.エステル化合物(I)
エステル化合物(I)は、化合物(A’)のカルボキシ基と化合物(B’)のヒドロキシ基が反応してエステルにより結合されたエステル化合物であり、(A’)-(B’)で表される。化合物(I)の合成は公知の方法により合成すればよい。例えば、溶媒中で、酸触媒(例えば、ルイス酸)の存在下、組成物(A)と組成物(B)を加熱(例えば、150~300℃)により化合物(A’)と化合物(B’)を反応せしめてエステル化する方法等、公知の方法により合成できる。
エステル化合物(I)は、化合物(A’)のカルボキシ基と化合物(B’)のヒドロキシ基が反応してエステルにより結合されたエステル化合物であり、(A’)-(B’)で表される。化合物(I)の合成は公知の方法により合成すればよい。例えば、溶媒中で、酸触媒(例えば、ルイス酸)の存在下、組成物(A)と組成物(B)を加熱(例えば、150~300℃)により化合物(A’)と化合物(B’)を反応せしめてエステル化する方法等、公知の方法により合成できる。
化合物(I)を得る別の方法として、化合物(A’)をカルボン酸誘導体に変換し、化合物(A’)のカルボン酸誘導体と化合物(B’)を反応させてもよい。カルボン酸誘導体としては、金属塩、アシル基が例示できる。
化合物(I)の具体例としては、以下の一般式(5)の化合物が挙げられる。
n2は一般式(3),n4は一般式(4)の記載を援用する。
化合物(I)の具体例としては、以下の一般式(5)の化合物が挙げられる。
化合物(I)は、略中央部にエステル部位を導入することにより、樹脂との相溶性を高めつつ、持続的な滑性を保ちながらブリードアウトを防止できる。また、エステル部位と炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を2つ有する組合せにより、極性ポリマーとの相溶性に優れる。また、炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を2つ有することにより成形品や塗膜の耐溶剤性を高めることができる。また外部滑剤として求められるブリードアウト機能を高めることができる。更に、炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を2つ有するので、揮発性を顕著に抑制し、臭いも防止できる。優れた耐熱性を有するので、高温処理(例えば300℃程度)が必要な樹脂組成物の成形のための外部滑剤として有用である。
1-5.化合物(II)
化合物(II)は、化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)がモル比2:1で反応して得られた化合物(A’)-連結基(C)-化合物(A’)で表される。連結基(C)は、2分子の化合物(A’)と結合するための官能基を2以上有する。化合物(II)の合成は公知の方法により合成すればよい。例えば、化合物(A’)のカルボキシ基と、上述した連結基(C)として、例えば2つのヒドロキシ基を有する化合物を反応させることにより得られる。エステル化のために、触媒として酸を加え、加熱する工程等により化合物(II)が得られる。化合物(II)を得る別の方法として、化合物(A’)のカルボン酸をカルボン酸誘導体に変換し、化合物(A’)のカルボン酸誘導体と連結基(C)を反応させてもよい。
化合物(II)は、化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)がモル比2:1で反応して得られた化合物(A’)-連結基(C)-化合物(A’)で表される。連結基(C)は、2分子の化合物(A’)と結合するための官能基を2以上有する。化合物(II)の合成は公知の方法により合成すればよい。例えば、化合物(A’)のカルボキシ基と、上述した連結基(C)として、例えば2つのヒドロキシ基を有する化合物を反応させることにより得られる。エステル化のために、触媒として酸を加え、加熱する工程等により化合物(II)が得られる。化合物(II)を得る別の方法として、化合物(A’)のカルボン酸をカルボン酸誘導体に変換し、化合物(A’)のカルボン酸誘導体と連結基(C)を反応させてもよい。
また、連結基(C)として、例えば1,2級アミン塩または1,2級アミン化合物と、化合物(A’)のカルボキシ基とを反応せしめることにより、アミド結合を2つ有する化合物(II)が得られる。
更に、化合物(A’)のカルボキシ基と、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の連結基(C)とから得られる造塩物も化合物(II)として好適である。化合物(II)は、カルボキシラートアニオンと金属カチオンとのカルボキシラート金属塩組成物ともいえる。
化合物(II)の具体例としては、以下の一般式(6)のいずれかの化合物が挙げられる。
n2は一般式(3)の記載を援用する。但し、式中の2つのn2は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは一般式(1)の記載を援用する。
化合物(II)は、略中央部にエステル、アミド、ウレタンなどを導入することにより、樹脂との相溶性を高めつつ、持続的な滑性を保ちながらブリードアウトを防止できる。また、炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を2つ有することにより、外部滑剤としての機能を高めることができる。また、優れた耐熱性を有するので、高温処理(例えば300℃程度)が必要な樹脂組成物の成形のための外部滑剤として有用である。
1-6.混合物(III)
混合物(III)は、化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含有する。化合物(I)を効率よく得るために、化合物(A’):化合物(B’)=1.1:0.9~0.9:1.1が好ましく、1.05:0.95~0.95:1.05がより好ましい。組成物(A)と組成物(B)を混合することにより、単独で配合するよりも耐熱性を高めることができる。
混合物(III)は、化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含有する。化合物(I)を効率よく得るために、化合物(A’):化合物(B’)=1.1:0.9~0.9:1.1が好ましく、1.05:0.95~0.95:1.05がより好ましい。組成物(A)と組成物(B)を混合することにより、単独で配合するよりも耐熱性を高めることができる。
混合物(III)は、例えば、成形の際に加熱するときに化合物(A’)と化合物(B’)を反応せしめることにより化合物(I)を得る。樹脂組成物中に、組成物(A)と組成物(B)の成分が残存していてもよい。混合物(III)によれば、成形時などに化合物(I)が得られるので、組成物(A)、組成物(B)をそれぞれ離型剤として用いる場合に比較して揮発性が低下することにより連続離型性が向上し、化合物(I)を用いる離型剤と同等の効果が得られる。
2.樹脂組成物
本開示の樹脂組成物(以下、本樹脂組成物ともいう)は、樹脂(G)と、本離型剤を含む。本樹脂組成物における離型剤の含有量は用途により適宜設計できる。エンジニアリングプラスチック類の射出成形用途の場合には、樹脂(G)100質量部に対して、離型剤を例えば0.001~30質量部とする。生産性を向上しつつ、金型から成形品を離型しやすくする観点から前記含有量は0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部が更に好ましい。
本開示の樹脂組成物(以下、本樹脂組成物ともいう)は、樹脂(G)と、本離型剤を含む。本樹脂組成物における離型剤の含有量は用途により適宜設計できる。エンジニアリングプラスチック類の射出成形用途の場合には、樹脂(G)100質量部に対して、離型剤を例えば0.001~30質量部とする。生産性を向上しつつ、金型から成形品を離型しやすくする観点から前記含有量は0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部が更に好ましい。
樹脂組成物の成形は、射出成形法、圧縮射出成形法、トランスファー成形法、押出成形法、ブロー成形法、コーティングなどが例示できる。成形温度は通常150~300℃程度であり、成形時に離型剤が揮発せずに残存する耐熱性が求められる。本樹脂組成物によれば、本離型剤を添加することにより、離型剤の揮発を顕著に抑制した優れた耐熱性を有する。
樹脂(G)の種類は限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。好適な樹脂(G)として、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のオレフィン樹脂、酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂が例示できる。ホモポリマーであっても、共重合体であってもよい。また、ポリマーをブレンドしてもよい。
例えば、ポリアミド樹脂は、加熱された機械部分に強く粘着する傾向がある。このため、高濃度フィラーを添加した場合には射出成形工程において流動性が悪化し、ポリアミド樹脂が分解するのみならず、成型品の品質が劣化する。本開示の離型剤を添加することにより、前記問題を改善し、優れた成型品を提供できる。
樹脂(G)の軟化点は用途によるが、離型剤の融点と、耐熱性の観点からは100~300℃であることが好ましい。
本樹脂組成物は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、他の添加剤を有していてもよい。例えば、紫外線防止剤、帯電防止剤、熱伝導性フィラー等の無機フィラー、酸化防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、硬化性化合物、顔料などを添加してもよい。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、本開示の離型剤に該当しない離型剤、内部滑剤などを添加してもよい。
本樹脂組成物は、成型体形成用の組成物として好適に利用できる。金型で熱可塑性樹脂などの樹脂組成物を成形加工するときの離型剤として好適である。
本樹脂組成物の製造は、原料を混合することにより得られる。例えば、各種混練機により製造できる。本樹脂組成物によれば、本離型剤を含有することにより、金型のキャビティ内からの成形後の成形品の離型性を著しく高めることができる。
混合物(III)を主成分とする樹脂組成物は、成形時の熱で組成物(A)の化合物(A’)と組成物(B)の化合物(B’)をエステル化させる。化合物(I)のみの場合と比較して、混合物(III)を主成分とする樹脂組成物では、組成物(A)および組成物(B)は樹脂(G)との相溶性に優れ、一方、加熱により化合物(A’)と化合物(B’)をエステル結合せしめて、混合物(III)の全部又は一部を化合物(I)とする。これにより、離型剤の耐熱性が向上するとともに、金型との離型性が向上し、金型との連続離型性に優れる。このため、外部滑剤性と内部滑剤性の機能を併せ持つことができる。更に、本開示の離型剤を用いた樹脂組成物によれば、シャープメルト性、着色性および耐薬品性が優れたものとなる。
3.成形体
本開示の成形体は、本開示の樹脂組成物から成形してなる。成形は、射出成型、真空成型、ブロー成、押出成形、カレンダー成形などの公知の方法により行うことができる。本樹脂組成物によれば、本離型剤を添加により金型面等との摩擦抵抗を効果的に低下させることができる。その結果、例えば、射出成形のときの流動性を良好に保つことができる。また、成型品を金型から離型させるときの型離れが優れたものとなる。
本開示の成形体は、本開示の樹脂組成物から成形してなる。成形は、射出成型、真空成型、ブロー成、押出成形、カレンダー成形などの公知の方法により行うことができる。本樹脂組成物によれば、本離型剤を添加により金型面等との摩擦抵抗を効果的に低下させることができる。その結果、例えば、射出成形のときの流動性を良好に保つことができる。また、成型品を金型から離型させるときの型離れが優れたものとなる。
以下に、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示の範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」を表す。
a.原料、略号、製品名等
実施例中の略号および製品名を以下に示す。
(組成物(A)等)
ユニシッド350:NuCera社製、Mz/Mn=1.68。飽和炭化水素鎖の平均炭素数=25、カルボキシ基の個数=1、Mz/Mn=1.68の化合物(A’)約80質量%、およびポリエチレンを約20質量%含む。
モンタンS:BASF社製、Mz/Mn=1.97、 飽和炭化水素鎖の平均炭素数=24、カルボキシ基の個数=1
オクタコサン酸:東京化成社製、Mz/Mn=1.03、飽和炭化水素鎖の平均炭素数=28、カルボキシ基の個数=1
(組成物(B))
ユニリン350:NuCera社製、飽和炭化水素鎖の平均炭素数=25、ヒドロキシ基の個数=1、ポリエチレンを約20質量%含む。
オクタコサノール:東京化成社製、飽和炭化水素鎖の平均炭素数=28、ヒドロキシ基の個数=1
(その他)
水酸化カルシウム:東京化成社製
水酸化マグネシウム:東京化成社製
水酸化亜鉛:東京化成社製
水酸化コバルト:東京化成社製
エチレングリコール:東京化成社製
1,4-ジアミノブタン:東京化成社製
(樹脂)
P1:ジュラコンM90-44、ポリプラスチックス株式会社
P2:ナイロン1025SR:ユニチカ社製
実施例中の略号および製品名を以下に示す。
(組成物(A)等)
ユニシッド350:NuCera社製、Mz/Mn=1.68。飽和炭化水素鎖の平均炭素数=25、カルボキシ基の個数=1、Mz/Mn=1.68の化合物(A’)約80質量%、およびポリエチレンを約20質量%含む。
モンタンS:BASF社製、Mz/Mn=1.97、 飽和炭化水素鎖の平均炭素数=24、カルボキシ基の個数=1
オクタコサン酸:東京化成社製、Mz/Mn=1.03、飽和炭化水素鎖の平均炭素数=28、カルボキシ基の個数=1
(組成物(B))
ユニリン350:NuCera社製、飽和炭化水素鎖の平均炭素数=25、ヒドロキシ基の個数=1、ポリエチレンを約20質量%含む。
オクタコサノール:東京化成社製、飽和炭化水素鎖の平均炭素数=28、ヒドロキシ基の個数=1
(その他)
水酸化カルシウム:東京化成社製
水酸化マグネシウム:東京化成社製
水酸化亜鉛:東京化成社製
水酸化コバルト:東京化成社製
エチレングリコール:東京化成社製
1,4-ジアミノブタン:東京化成社製
(樹脂)
P1:ジュラコンM90-44、ポリプラスチックス株式会社
P2:ナイロン1025SR:ユニチカ社製
b.測定法
<多分散度Mz/Mn>
東ソー製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)「HLC―8420 GPC」を用い、カラムに「TSKgel SuperHZM-N」(東ソー社製:GPCカラム:4.6mmID×15mmサイズ)を直列に3本接続して用い、溶離液としてTHFを用い、流量0.3mL/min、圧力6.0MPa、カラム温度40℃の条件で測定を行った。サンプルは、試料濃度0.5質量%となるように上記溶離液に溶解して調製し、溶け残りがあるため、シリンジフィルター(NP-42213-ACF;TOSIC社製)でろ過したろ液を10μL注入した。ブランク由来のピークを除外し、ポリスチレン換算値によりMz、Mnを求め、多分散度を算出した。
<多分散度Mz/Mn>
東ソー製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)「HLC―8420 GPC」を用い、カラムに「TSKgel SuperHZM-N」(東ソー社製:GPCカラム:4.6mmID×15mmサイズ)を直列に3本接続して用い、溶離液としてTHFを用い、流量0.3mL/min、圧力6.0MPa、カラム温度40℃の条件で測定を行った。サンプルは、試料濃度0.5質量%となるように上記溶離液に溶解して調製し、溶け残りがあるため、シリンジフィルター(NP-42213-ACF;TOSIC社製)でろ過したろ液を10μL注入した。ブランク由来のピークを除外し、ポリスチレン換算値によりMz、Mnを求め、多分散度を算出した。
c.評価方法
<耐熱性>
各実施例・比較例の離型剤10mgを、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG/DTA)により、Air雰囲気下、10℃/分のペースで40℃から300℃まで昇温し、その後300℃で30分間維持させたときの質量減少率を測定し、以下の基準で耐熱性を評価した。
+++:20%以下
++:20%越え、40%以下
+:40%越え、60%以下
NG:60%越え
<耐熱性>
各実施例・比較例の離型剤10mgを、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG/DTA)により、Air雰囲気下、10℃/分のペースで40℃から300℃まで昇温し、その後300℃で30分間維持させたときの質量減少率を測定し、以下の基準で耐熱性を評価した。
+++:20%以下
++:20%越え、40%以下
+:40%越え、60%以下
NG:60%越え
<流動性>
各実施例・比較例の離型剤を、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定される方法により測定し、以下の基準で流動性を評価した。ポリアセタール単独でのMFR(250℃、2.16kg)と比較して、ポリアセタールに対し離型剤を0.2質量%添加した際のMFR(250℃、2.16kg)の向上率を評価した。
+++:60%越え
++:40%越え、60%以下
+:20%越え、40%以下
NG:20%以下
各実施例・比較例の離型剤を、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定される方法により測定し、以下の基準で流動性を評価した。ポリアセタール単独でのMFR(250℃、2.16kg)と比較して、ポリアセタールに対し離型剤を0.2質量%添加した際のMFR(250℃、2.16kg)の向上率を評価した。
+++:60%越え
++:40%越え、60%以下
+:20%越え、40%以下
NG:20%以下
<離型性>
各実施例・比較例の樹脂組成物の離型力を以下の方法により求めた。離型力の評価はシリンダー状の成型物を射出成形し、リング状のエジェクターによって成型物を金型から離型させる時の最大突き出し力を離型力と定義した。ポリアミド6単独での離型力と比較して、ポリアミド6に対して離型剤を0.2質量%添加した際の離型力の低下割合を以下の基準で評価した。
+++:(1/20)未満
++:(1/20)以上、(1/10)未満
+:(1/10)以上(1/5)未満、
NG:(1/5)以上
各実施例・比較例の樹脂組成物の離型力を以下の方法により求めた。離型力の評価はシリンダー状の成型物を射出成形し、リング状のエジェクターによって成型物を金型から離型させる時の最大突き出し力を離型力と定義した。ポリアミド6単独での離型力と比較して、ポリアミド6に対して離型剤を0.2質量%添加した際の離型力の低下割合を以下の基準で評価した。
+++:(1/20)未満
++:(1/20)以上、(1/10)未満
+:(1/10)以上(1/5)未満、
NG:(1/5)以上
<連続離型性>
各実施例・比較例の樹脂組成物の連続離型性を以下の方法により測定し、以下の基準で離型性を評価した。ポリアミド6に対し離型剤を0.5質量%添加し1回射出成形した後、ポリアミド6単独で連続して射出成形を行い、金型にポリアミド6の残渣が付着した段階で射出成形を止めその時点での総成形回数を連続離型回数とした。
+++:30回以上
++:20回以上、30回未満
+:10回以上、20回未満
NG:10回未満
<着色色度>
各実施例・比較例の樹脂組成物における着色色度を以下の方法により測定し、以下の基準で評価した。離型剤を耐熱容器に取り、Air雰囲気下175℃で3時間加熱した後室温まで放冷し、加熱前後の色差ΔEを測定した。
+++:ΔE≦5
++:5<ΔE≦10
+:10<ΔE≦15
NG:15<ΔE
各実施例・比較例の樹脂組成物の連続離型性を以下の方法により測定し、以下の基準で離型性を評価した。ポリアミド6に対し離型剤を0.5質量%添加し1回射出成形した後、ポリアミド6単独で連続して射出成形を行い、金型にポリアミド6の残渣が付着した段階で射出成形を止めその時点での総成形回数を連続離型回数とした。
+++:30回以上
++:20回以上、30回未満
+:10回以上、20回未満
NG:10回未満
<着色色度>
各実施例・比較例の樹脂組成物における着色色度を以下の方法により測定し、以下の基準で評価した。離型剤を耐熱容器に取り、Air雰囲気下175℃で3時間加熱した後室温まで放冷し、加熱前後の色差ΔEを測定した。
+++:ΔE≦5
++:5<ΔE≦10
+:10<ΔE≦15
NG:15<ΔE
d.化合物(I)、(II)の合成
<合成例1>
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)226.48gおよびUniLin-350(水酸基価:126.98mgKOH/g)198.85gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこにエステル化触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物0.77gを添加し、ディーンスターク管を用いて副生する水を反応系外に留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例1に係る化合物(淡黄色固体)を得た。
<合成例1>
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)226.48gおよびUniLin-350(水酸基価:126.98mgKOH/g)198.85gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこにエステル化触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物0.77gを添加し、ディーンスターク管を用いて副生する水を反応系外に留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例1に係る化合物(淡黄色固体)を得た。
<合成例2・比較合成例101>
表1に示した原料を変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
表1に示した原料を変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
<合成例3>
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)383.46gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこに水酸化カルシウム26.94gを添加し、副生する水を、ディーンスターク管を用いて反応系外に留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例3の化合物をベージュ色固体として得た。得られた化合物のNMRチャートを図1に、IRスペクトルを図2に示す。
1H-NMR(400MHz、重溶媒:ブロモベンゼン-d5、基準ピーク:重溶媒ピークを基準ピークとして用いた、測定温度130℃、δ(ppm):2.440、1.762、1.245、1.224、0.830、0.804、0.785、0.768)
IRスペクトル(測定方法:ATR、2954.44cm-1、2916.00cm-1、2848.70cm-1、1708.82cm-1、1547.62cm-1、1464.35cm-1、1377.37cm-1、1319.54cm-1、1110.87cm-1、888.67cm-1、719.33cm-1、671.47cm-1、542.18cm-1)
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)383.46gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこに水酸化カルシウム26.94gを添加し、副生する水を、ディーンスターク管を用いて反応系外に留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例3の化合物をベージュ色固体として得た。得られた化合物のNMRチャートを図1に、IRスペクトルを図2に示す。
1H-NMR(400MHz、重溶媒:ブロモベンゼン-d5、基準ピーク:重溶媒ピークを基準ピークとして用いた、測定温度130℃、δ(ppm):2.440、1.762、1.245、1.224、0.830、0.804、0.785、0.768)
IRスペクトル(測定方法:ATR、2954.44cm-1、2916.00cm-1、2848.70cm-1、1708.82cm-1、1547.62cm-1、1464.35cm-1、1377.37cm-1、1319.54cm-1、1110.87cm-1、888.67cm-1、719.33cm-1、671.47cm-1、542.18cm-1)
<合成例4~6、比較合成例102>
表1に示した原料を変更した以外は、合成例3と同様に合成した。
表1に示した原料を変更した以外は、合成例3と同様に合成した。
<合成例7>
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)362.37gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこにエチレングリコール22.35gを加え、エステル化触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物0.68gを添加し、ディーンスターク管を用いて反応系外に副生する水を留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例7に係る化合物(淡黄色固体)を得た。
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)362.37gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこにエチレングリコール22.35gを加え、エステル化触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物0.68gを添加し、ディーンスターク管を用いて反応系外に副生する水を留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例7に係る化合物(淡黄色固体)を得た。
<比較合成例103>
表1に示した原料を変えた以外は、合成例7と同様に合成した。
表1に示した原料を変えた以外は、合成例7と同様に合成した。
<合成例8>
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)362.37gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこに1,4-ジアミノブタン31.73gを加え、アミド化触媒として2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸0.93gを添加し、ディーンスターク管を用いて反応系外に副生する水を留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例8に係る化合物(淡黄色固体)を得た。
1LセパラブルフラスコにUniCid-350(酸価:117.06mgKOH/g)362.37gを秤量し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた。そこに1,4-ジアミノブタン31.73gを加え、アミド化触媒として2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸0.93gを添加し、ディーンスターク管を用いて反応系外に副生する水を留去しながら窒素雰囲気下140℃で7時間反応させた。反応終了後、内容物をテフロンバットにあけ室温まで放冷することで、合成例8に係る化合物(淡黄色固体)を得た。
<比較合成例104>
表1に示した原料を変えた以外は、合成例8と同様に合成した。
表1に示した原料を変えた以外は、合成例8と同様に合成した。
e.離型剤の評価
(実施例1~8、比較例1~4)
合成例1~8、比較合成例101~104により得られた生成物(未反応の反応物を含む)を離型剤として用いた(表2参照)。各離型剤の耐熱性および着色色度を評価した結果を表2に示す。
(実施例1~8、比較例1~4)
合成例1~8、比較合成例101~104により得られた生成物(未反応の反応物を含む)を離型剤として用いた(表2参照)。各離型剤の耐熱性および着色色度を評価した結果を表2に示す。
f.樹脂組成物の評価
[実施例11]
樹脂としてP1を100部用い、離型剤として合成例1の離型剤を0.2部、ラボプラストミルを用いて200℃で混練することにより実施例11の樹脂組成物を得た。
[実施例11]
樹脂としてP1を100部用い、離型剤として合成例1の離型剤を0.2部、ラボプラストミルを用いて200℃で混練することにより実施例11の樹脂組成物を得た。
[実施例12~23,31~43,51~63,比較例11~15,31~35,51~55]
樹脂の種類と配合量、離型剤の種類および配合量を表3~5に変更した以外は、実施例11と同様にして、実施例12~23、31~43、51~63および比較例11~15、31~35、51~55の樹脂組成物を得た。但し、樹脂(G)がP2の場合、混練温度は240℃である。
樹脂の種類と配合量、離型剤の種類および配合量を表3~5に変更した以外は、実施例11と同様にして、実施例12~23、31~43、51~63および比較例11~15、31~35、51~55の樹脂組成物を得た。但し、樹脂(G)がP2の場合、混練温度は240℃である。
各実施例の樹脂組成物の流動性、離型性、連続離型性の評価結果を表3~5に示す。
Mz/Mn=1.97を超える長鎖カルボン酸を用いた比較合成例101~104を用いた離型剤は、比較例1~4に示すように、耐熱性および/又は着色色度において課題があることが確認された。一方、本開示の離型剤は、実施例1~8に示すように、耐熱性および着色色度において優れていることを確認した。また、Mz/Mn=1.97を超える長鎖カルボン酸よりなる離型剤を用いた樹脂組成物は、比較例11~15,比較例31~35、比較例51~55に示すように、離型性等において本開示の離型剤を用いた樹脂組成物よりも劣ることが確認された。
本開示の離型剤は、プラスチック成形時の滑剤、核剤、剤離型剤、分散助剤として好適に用いられる。
Claims (8)
- ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つカルボキシ基を1つ有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(A’)という)を75~100質量%含有し、多分散度Mz/Mnが1.8以下である組成物(A)(以下、組成物(A)という)の前記カルボキシ基と、ポリエチレンを0~25質量%、および平均炭素数が24以上の飽和炭化水素鎖を有し、且つヒドロキシ基を1つ有する飽和炭化水素系化合物(以下、化合物(B’)という)を75~100質量%含有する組成物(B)(以下、組成物(B)という)の前記ヒドロキシ基とが反応して得られた(A’)-(B’)で表されるエステル化合物(I)(以下、化合物(I)という)、
化合物(A’)のカルボキシ基と連結基(C)の反応性官能基が反応して得られた(A’)-(C)-(A’)で表される化合物(II)、並びに
化合物(I)を得るための混合物であり、化合物(I)の前駆体を含む組成物(A)および組成物(B)を含有する混合物(III)、
からなる群より選択される少なくともいずれか1種を含む、離型剤。 - 連結基(C)が一般式(1)で表される、請求項1記載の離型剤。
(但し、Xは、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、金属原子、および一般式(2)で表される基からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、Y1、Y2は、互いに独立に、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はイソシアネート基を表す。)
(但し、Z1、Z2は、それぞれに独立に、-O-、―S-、-SO2-、-Si(Me)2-、-N=N-、―NH―、および―NR4―からなる群より選択される2価の基であり、
R1~R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、および-C(CF3)2-からなる群より選択される2価の基、又は前記群より選択される同種もしくは異種の基を2つ以上組み合わせて構成される2価の基を表し、R4は炭素数1~12の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、nは0以上の整数を表す。) - 前記Xの前記金属原子がCa、Mg、およびZnからなる群から選択される請求項2記載の離型剤。
- 化合物(I)又は(II)を含み、更に、組成物(A)を含む請求項1に記載の離型剤。
- さらにポリエチレン成分を含む請求項1記載の離型剤。
- 量子化学計算により算出された化合物(I)および(II)の双極子モーメントSが1.7≦S≦4.7Debyeであり、
混合物(III)の場合には、混合物(III)から得られる化合物(I)の双極子モーメントSが1.7≦S≦4.7Debyeである、請求項1に記載の離型剤。 - 樹脂(G)と、請求項1~6のいずれかに記載の離型剤とを含み、
前記離型剤を、樹脂(G)100質量部に対して0.01~20質量部含む樹脂組成物。 - 請求項7に記載の樹脂組成物から形成してなる成形体。
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
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| JP2025154789A true JP2025154789A (ja) | 2025-10-10 |
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