JP3569290B2 - タキソール類似蛋白及びその製造方法 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、新規のタキソール類似蛋白("TALP")及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明はヒトの胎盤組織より単離されタキソール類似作用を有する新規の蛋白、その製造方法、並びに抗癌剤及び抗ウイルス剤としてのその新規の用途に関するものである。
背景技術
微小管は主にサイトソールに存在し、ヘテロダイマーとなるチューブリンサブユニット、すなわちα−チューブリン及びβ−チューブリンから成る蛋白であって、その形成時にGTP及び微小管付随蛋白("MAPs")を必要とすることが知られている(Olmsted,J.B.,1986,Ann.Rev.Cell Biol.,2:421−457;Chen,J.et al,1992,Nature,360:674−677;Brandt,R.and Lee,G.,1993,J.Biol.Chem.,268:3414−3419;Maekawa,S.et al.,1992,Eur.J.Biochem.,205:195−200)。
微小管は有糸分裂時に赤道板に配列された染色体を両極に導く分裂方錘糸の主要な成分であり、分裂間期に細胞の形状、運動性及び付着の維持、並びに細胞内輸送を含む多くの細胞作用において必要不可欠な役割を演じている(Shiff,P.B.and Horwitz,S.B.,1981,「抗癌化学療法剤における分子作用及び標的」の項の「チューブリン:化学療法剤の標的」,pp483−507,Academic Press,NY,USA;Glotz,J.S.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:7026−7030;Rowinsky,E.K.et al.,1990,Nature,82:1247−1259)。それらはまた成長因子と細胞表面上の受容体の相互作用及びこれらの相互作用により誘導される膜通過性の増殖信号を調節することにおいても重要である。
一方、ビンブラスチン及びビンクリスチン等は微小管の形成を抑制することにより抗癌作用を有する。これに対して、イチイ(Taxus)属植物から単離されるジテルペノイドの一種であるタキソールは、固形癌、特に乳癌及び子宮癌等の治療劑として注目されている。これは微小管の形成を促進し,微小管の安定性を増加させることにより、微小管の解重合、微小管ネットワークの正常な動的再編成、及び細胞増殖を抑制して、最終的に抗癌活性を示す(Schiff,P.B.et al.,1979,Nature,277:665−667;Schiff,P.B.and Horwitz,S.B,1981,Biochemistry,20:3247−3252;Crossin,K.L.and Carney,D.H.,1981,Cell,27:341−350;Wilson,L.et al.,1985,Biochemistry,24:5254−5262;Wiernik,P.H.et al.,1987,Cancer Res.,47:2486−2493)。しかしながら、イチイ属植物は限られた地域にしかなく、その成長も遅いために、それから単離されるタキソールの量は当然限られている。さらに、タキソールの製造に必要な大量の植物体を伐採することにより環境破壊も問題となる。
発明の要約
本発明においては、ヒトの胎盤組織より単離されるタキソール類似蛋白(TALP)がin vitroでタキソールと同様の様式で微小管の形成を促進及び安定化させ、これが抗癌剤及び抗ウイルス剤の活性成分として利用できることが見出された。
従って本発明の主な目的は、哺乳動物の組織より単離されタキソール様の作用を持つ新規のタキソール類似蛋白(TALP)を提供することにある。
本発明の他の目的は哺乳動物の組織からTALPを調製する方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は抗癌剤及び抗ウイルス剤の活性成分としてのTALPの新規用途を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
上記及び他の本発明の目的並びに特徴は、添付の図面と合わせて以下に述べる説明から明らかとなる:
図1は、ヒトの胎盤組織より単離されたTALPのSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図2(A)は、ヒトの胎盤組織よりTALPを精製する過程において得られた分画のSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図2(B)は、図2(A)に示されるSDS−PAGEに対応するウェスタンブロット分析を示す写真である。
図3は、微小管の重合に対するTALPの効果をGTP及びタキソールと比較して示すグラフである。
図4は、タキソールにより形成された微小管に対するTALPの効果を示すグラフである。
図5は、GTP、タキソール又はTALPにより形成された微小管に対するCa2+の効果を示すグラフである。
図6は、GTP、タキソール又はTALPにより形成された微小管に対する低温(4℃)の効果を示すグラフである。
図7(A)は、GTP、タキソール又はTALPのそれぞれの存在下における微小管形成について、反応混合液を遠心分離して得られた上清及びペレットのSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図7(B)は、種々の濃度のTALPの存在下における微小管形成について、反応混合液を遠心分離して得られた上清及びペレットのSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図8は、ウイルスによる大腸菌の溶解におけるTALPの効果を示すグラフである。
図9は、TALP及びBSA(ウシ血清アルブミン)の波長走査の結果を示すグラフである。
図10(A)は、αβ−チューブリン又はαβS−チューブリンとのTALPの結合を調べるための、共沈殿後のSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図10(B)は、αβ−チューブリン又はαSβS−チューブリンとのTALPの結合を調べるための、共沈殿後のSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図11(A)は、チューブリン分子とのタウ蛋白及びMAP2の結合を調べるための、共沈殿後のSDS−PAGEパターンを示す写真である。
図11(B)は、図12(A)に示すSDS−PAGEに対応する、タウ蛋白に対するモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析を示す写真である。
図11(C)は、図12(A)に示すSDS−PAGEに対応する、MAP2に対するモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析を示す写真である。
図12(A)は、GTPの存在下におけるタウ蛋白のイムノゴールドラベルの電子顕微鏡写真である。
図12(B)は、TALPの存在下におけるタウ蛋白のイムノゴールドラベルの電子顕微鏡写真である。
図13は、TALPによるHM7ヒト大腸癌細胞の増殖抑制を示すグラフである。
図14は、TALPによるHM7ヒト大腸癌細胞の細胞運動性抑制を示すグラフである。
発明の詳細な説明
TALPをヒト胎盤のような哺乳動物の組織より分離するために、組織をホモジナイズして遠心分離し上清を得た。このようにして得られた上清を陽イオン交換樹脂カラムにのせて、カラムを洗浄した。次いで、TALPを含む分画をカラムから溶出させた後にハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを行い、最終的に約35kDaのTALPが精製された。
MAPsはGTPの存在下でチューブリンの重合化を促進し、そうして重合した微小管はCa2+の存在下及び4℃以下の低温で解重合するが、一方、タキソールはGTPがなくてもチューブリンの重合化を促進し、それにより重合した微小管はCa2+及び4℃以下の低温による分解に対して耐性があり非常に安定化されていることが報告されている(Schiff,P.B.et al.,1979,Nature,277:665−667;Schiff,P.B.and Horwitz,S.B,1981,Biochemistry,20:3247−3252;Crossin,K.L.and Carney,D.H.,1981,Cell,27:341−350;Wilson,L.et al.,1985,Biochemistry,24:5254−5262;Wiernik,P.H.et al.,1987,Cancer Res.,47:2486−2493)。
これに関連して、哺乳動物組織より精製されたTALPの特性決定を行い、TALPはタキソールのようにGTPが無くてもチューブリンの重合化を促進し、それにより重合した微小管はCa2+及び4℃以下の低温により解重合されずタキソールの場合よりもはるかに良く安定化されることが分かった。このことは細胞増殖の抑制によるTALPの抗癌活性がタキソールのそれよりもはるかに高いことを示唆している。また、微小管の形成は微小管上へのTALPの直接結合によって起きるものであって、TALPのこの作用機作はタキソールと同様であることが明らかになった。
従って、本発明における‘TALP'は、GTP又はMAPsがなくてもチューブリンの重合化を促進する蛋白を意味し、そうして重合した微小管はCa2+及び4℃以下の低温に対して耐性を示し非常に安定化されている。
TALPはトリプシンによる分解で少なくとも7個のフラグメントとなり、その正確な数はトリプシンの特異活性、TALPの濃度、イオン強度、pH、温度及び培養時間のような要因に左右される。
タウ蛋白及びMAP2のようなMAPsはチューブリンのカルボキシル末端部分に結合することによりチューブリン重合化を促進する。TALPの場合は、MAP2とは異なり、タウ蛋白と競合的にチューブリンに結合し、このことはタウ蛋白イムノゴールドラベルを用いた電子顕微鏡写真でも見ることができる。従って、TALPはチューブリンに対するタウ蛋白の結合を競合的に抑制するため、アルツハイマー病の治療剤の開発に利用できると思われる。
TALPはin vitroでタキソールと同様に作用する。そこで、TALPがタキソールのような抗癌剤としての利用が可能かどうかを調べるために、剥離したNIH 3T3細胞の再生、HM7ヒト大腸癌細胞の増殖及びin vitroでの運動性、及び受精したクセノプス(南アフリカ蛙:Xenopus)の卵母細胞の細胞分裂に対するTALPの効果を調査した。また、ヒト大腸癌細胞をヌードマウスの脾臓に注入して、肝臓への転移に対するTALPの効果を調べた。その結果、TALPはタキソールのように細胞増殖を抑制すること、すなわち、剥離したNIH 3T3細胞の再生、HM7ヒト大腸癌細胞の増殖及びin vitroでの運動性、及び受精したクセノプス卵母細胞の細胞分裂をそれぞれ抑制することが見出された。同様にTALPはHM7の肝への転移も顕著に抑制することが明らかになった。従って、本発明のTALPは抗癌剤、抗転移剤及びアルツハイマー病の治療剤として利用できる。また、ウイルスによる大腸菌の溶解実験で、ウイルスをTALPで前処理することにより大腸菌溶解が起きなくなることが判明したが、これは本発明のTALPが抗ウイルス剤としても利用しうることを示唆している。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。特に、本発明は蛋白の原料に関わらず本発明のTALPと同様の性質及び特徴を示す全ての蛋白に及ぶものであって、以下の実施例で述べるヒトの胎盤組織より単離した35kDa蛋白に限定されるものではない。
実施例1:ヒトの胎盤組織からのTALPの単離
ヒトの満期胎盤を0.154M NaCl溶液で数回洗浄して血液を完全に除去した。洗浄済み胎盤を小片に切断して、100gの胎盤に250mlの0.6Mリン酸バッファーA(0.6Mリン酸カリウム、1mM DTT、1mM EDTA、0.5mM PMSF、0.5μg/mlロイペプチン、10%グリセロール、pH7.0)を加え、Polytron(KinemeticaTM、スイス)で2分間ホモジナイズして1時間氷浴中に放置してTALPの粗抽出物を得た。
上記で得られた抽出物を二重のチーズスロスで濾過し、30,000xgで30分間遠心して上清を得た。この上清を0.6Mリン酸バッファーAで平衡化したホスホセルロースカラムにのせた。同バッファーでカラムを十分洗浄した後、続いて0.6Mから1.8Mのリン酸直線勾配でTALPを溶出させた。TALP活性の測定から、1.0Mから1.3Mのリン酸濃度範囲でTALPが溶出されていることを確認した。
TALPを含む活性分画を回収してグリセロール溶液(1mM DTT、1mM EDTA、0.5mM PMSF及び0.5μg/ml ロイペプチンを含む10%グリセロール溶液)で透析した。次いで遠心分離し、上清を0.35Mリン酸バッファーAで平衡化したハイドロキシアパタイトカラムにのせた。同バッファーでカラムを洗浄した後、続いて0.35Mから0.55Mのリン酸直線勾配でTALPを溶出させた。TALP活性の測定から、0.43Mから0.48Mのリン酸濃度範囲でTALPが溶出されていることが分かった。
活性分画を回収してグリセロール溶液で3倍に希釈した後、上記と同じ手順でハイドロキシアパタイトカラムで分画化した。溶出された分画の12%SDS−PAGEから、35kDaの見かけの分子量に単一のバンドが見られることが分かった(図1参照)。
精製工程は全て4℃以下で行い、TALP活性は通常のチューブリン重合化を濁度で検視することにより測定した(Gaskin,F.et al.,1974,J.Mol.Biol.,89:737−758)。ハメルら又はアスネスらの方法(Hamel E.et al.,1981,Arch.Biochem.Biophys.,209:29−40;Asnes,C.F.and Wilson,L.,1979,Anal.Biochem.,98:64−73)により調製したチューブリンを最終濃度が1mg/mlになるように0.1M MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)バッファー(1mMEGTA及び1mM MgCl2を含む0.1M MES、pH6.8)に加え、TALP含有溶液を加えて最終的な反応容量が250μlになるようにした。反応混合液を37℃で30分間インキュベートし、350nmにおける吸光度の変化をGilford Model 2600分光光度計(Gilford,USA)でモニターした。
実施例2:ウェスタンブロット分析によるTALPの同定
TALPに対するポリクローナル抗体を調製するために、実施例1で精製したTALPを12%SDS−PAGEで分離し、分子量35kDaに対応する蛋白バンドを切断して当該蛋白を得た。得られた蛋白に同量のフロインド完全アジュバントを加えてよく混合し、1.5kgのオスうさぎの皮下及び下肢筋肉に別々に注射した。その後、一ヵ月毎に同量の蛋白を不完全アジュバントと混合して2回追加接種した(Harlow,E.and Lane,D.,1988,Antibodies:Laboratory Manuals.In:Immunization、pp53−137,Cold Spring Harbor Laboratory)。10日後、酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)で抗体産生を確認した。次いで、上記ウサギから血清を採取し、プロテインA−セファロースアフィニティクロマトグラフィーによりポリクローナル抗体を精製した。こうして精製された抗体の濃度は4.0mg/mlであった。
上記で調製したポリクローナル抗体を用いてTALPの結合特異性を調べるために、ウェスタンブロット分析を行なった:ラムリ(Laemmli)の方法を改良した方法により、厚さ1.5mmの12%SDS−PAGEゲル(11x16cm)を調製した(Laemmli U.,1970,Nature,227:680−685)。次いで、蛋白溶液類、すなわち、実施例1でそれぞれ得られた胎盤ホモジネート、ホスホセルロースクロマトグラフィー溶出液、及び2次ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー溶出液を、スラブゲル電気泳動装置(Bio−Rad、USA)を用いてゲルの厚さ当り20mAの流動でSDS−PAGE分析した(図2(A)参照)。続いて、分離された蛋白をニトロセルロース膜上に電気的に転写し、上記で調製したTALPに対するポリクローナル抗体を用いて免疫染色した。その結果、SDS−PAGEにのせた全てのサンプルに存在する35kDa蛋白がポリクローナル抗体によって強く検出され、さらに約32kDaの蛋白が同ポリクローナル抗体によって弱く検出されることが分かった(図2(B)参照)。図2(A)及び図2(B)において、レーン1、2及び3はそれぞれ胎盤ホモジネート、ホスホセルロースクロマトグラフィー溶出液、及び2次ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー溶出液を示す。
このように上記で製造されたポリクローナル抗体はTALPに特異的に結合するために、組織及び細胞小器官中のTALPの検出及び定量に利用できることが分かった。
実施例3:チューブリン重合化におけるTALPの効果
実施例1に述べたのと同様の方法で、GTP、タキソール及びTALPのチューブリン重合化における効果を調べた。図3に示した通り、2mM GTPの存在下で(対照群)、チューブリン重合化は1ないし2分の遅延時間を示す典型的なシグモイド曲線型で起こり;0.5μM TALPの存在下では対照群の2.5倍の高さで双曲線型にチューブリン重合化が起こり、1μM TALPの存在下では対照群の2.5倍の重合化が起きた。これらはTALPが用量依存的にチューブリン重合化を促進することを示している。また、20μMタキソールの存在下では、対照群より2.5倍のチューブリン重合化が起こり、この活性は0.5μM TALPのそれと同等である。このことはTALPがタキソールの約40倍の強度でチューブリン重合化を促進することを示している。さらに、TALPがタキソールと同様に、GTPが無くてもチューブリン重合化を促進することが明らかとなった。
実施例4:タキソールにより形成された微小管に対するTALPの効果
タキソールにより形成された微小管に対するTALPの効果を調べるために、実施例1に述べた重合化アッセイの反応溶液に10μMタキソールを加えた。反応混合液に0.5μM TALPを加えると、TALPを加えていないものよりも2倍以上の高さのチューブリン重合化が起きた(図4参照)。
実施例5:チューブリン重合化におけるCa2+の効果
チューブリン重合化におけるCa2+の効果を調べるため、チューブリンをEGTAを含まない0.1M MESバッファー(pH6.8)に加え、GTP、タキソール又はTALPを加えて37℃で15分間、微小管を重合化させた。その後、反応混合液に4mM CaCl2を加えて、GTP、タキソール又はTALPを加えて形成された微小管の解重合を測定した(図5参照)。図5に示すように、2mM GTPにより形成された微小管はほとんど全て解重合され、10μMタキソールにより形成された微小管も30%が解重合されたが、0.5μM TALPにより形成された微小管は全く解重合されなかった。従って、TALPにより安定化された微小管はCa2+によって起きる解重合に対して耐性があることが明らかにされた。
実施例6:チューブリン重合化における低温(4℃)の効果
チューブリン重合化における低温の効果を調べるため、チューブリンを0.1M MESバッファー(pH6.8)に加えた。次いで、GTP、タキソール又はTALPを反応混合液に加えて、微小管の重合化を37℃で15分間行った。その後、反応溶液を4℃に冷却し、GTP、タキソール又はTALPを加えて形成された微小管の解重合を測定した(図6参照)。図6に示すように、10μMタキソール及び0.5μM TALPにより形成された微小管はそれぞれ25%及び10%が解重合されたが、2mM GTPにより形成された微小管はほとんど全てが解重合された。従って、TALPにより安定化された微小管は低温(4℃)によって起きる解重合に対して、タキソールにより安定化された微小管と同様に耐性があることが明らかにされた。
実施例7:チューブリン及びTALPの共沈殿の同定
TALPがタキソールと同様の様式で微小管形成を促進するのかどうかを調べるために、ウシの脳から単離したチューブリンを0.1M MESバッファー(pH6.8)に0.4mg/mlの濃度で加えた。次いで、2mM GTP、10μMタキソール又は4μM TALPを反応混合液に加えて37℃で30分間、微小管を重合化させた。反応混合液を20分間遠心分離し、得られた上清及びペレットを12% SDS−PAGEで分析した(図7(A)参照)。図7(A)に見られるように、10μMタキソール及び4μM TALPの存在下ではそれぞれ約20%及びほとんど全てのチューブリンが重合化されたが、2mM GTPの存在下ではほとんどのチューブリンが重合化されなかった。
また、TALPの濃度を変えてチューブリン重合化を調べた。その結果、微小管形成はTALP濃度が上昇するのに連れて増加したが(図7(B)参照)、これは図3の結果に一致している。図7(A)及び図7(B)において、S及びPはそれぞれ上清及びペレットを示す。図7(A)及び図7(B)に示すように、TALPは上清中には存在せず、微小管と共に沈殿されていた。よって、TALPは微小管に直接結合することにより微小管の形成を促進することが示唆され、これはタキソールの作用と一致するものである。
実施例8:微小管の電子顕微鏡分析
実施例1のように微小管の重合化を吸光度測定によってモニターする場合、吸光度の増加は微小管の形成だけでなく、チューブリンの凝集によっても起こりうる。そこで、微小管形成によって濁度の変化がもたらされることを確認するために、電子顕微鏡でこの高分子の形態を調べた。チューブリンを0.1M MESバッファーに1mg/mlの濃度で加え、GTP、タキソール又はTALPを最終反応容量が250μlになるように加えた。反応混合液を37℃で30分間インキュベートし、350nmでの吸光度の変化をモニターした。この時、吸光度の増加を示した反応溶液を固定してカーボンコーティング−グリッドにのせた後乾燥させた。次いでグリッドを1%ウラニルアセテートで5分間染色し、蒸留水で洗浄して乾燥させた。その後、電子顕微鏡(日立H−600、日本)を用いて加速電圧75kvで調べた。その結果、GTP、タキソール又はTALPを加えた反応溶液の全てで典型的な微小管が形成されていることが確認された。
実施例3ないし8の結果から、本発明のTALPはタキソールと同様にGTP又はMAPsが無くてもチューブリンの重合化を促進し、そうして重合化された微小管はCa2+及び4℃以下の低温によって起きる分解に対して耐性を持ちタキソールの場合よりもはるかに良好に安定化されていることが明らかになった。これは後述するような細胞増殖の抑制によるTALPの抗癌活性がタキソールに比べてはるかに高いことを示唆している。
実施例9:TALPによる細胞増殖の抑制
TALPはin vitroではタキソールと同様に作用する。そこで、タキソールのように抗癌剤としての利用が可能であるかどうかを調べるため、剥離したNIH 3T3細胞の再生、及び受精したクセノプスの卵母細胞の細胞分裂を対するTALPの効果を調べた。
実施例9−1:剥離したNIH 3T3細胞の再生の抑制
NIH 3T3細胞株(ATCC CRL 6442)をRPMI 1640培地で95%成長段階まで培養した。その後、滅菌したループで培養皿を掻いて細胞を剥離させ、TALPを培地に加えて、剥離したNIH 3T3細胞の再生に対するTALPの効果を観察した。その結果、TALP処理をしていない細胞は再生されたが、1μM TALPで処理した細胞は再生されなかった。従って、TALPはタキソールと同様に細胞増殖を抑制するために抗癌剤として利用しうることが分かった。
実施例9−2:受精したクセノプス卵母細胞の細胞分裂の抑制
2分割期のカエル受精卵の一方の細胞に微量注射器(Drummond Scientific、USA)を用いて対照としての生理食塩水又はTALPを微量注入した(Hiramoto,Y.,1962,Exp.Cell.Res.,27:416−426参照)。この時、微量注入容量が0.5%未満の誤差範囲になるように注意して調節した。1.2nmの受精卵の場合、全容積の半分を卵黄血小板が占めるものと仮定して、サイトソール容量を450nlとみなし、注入溶液の最終濃度を計算する際にこれを用いた。
その結果、対照細胞は速やかに増殖したが、TALPを注入した細胞は全く増殖しなかった。従って、TALPはタキソールのように細胞増殖を抑制するために、抗癌剤として利用しうることを確認した。
実施例10:TALPの抗ウイルス活性
TALPによるウイルス増殖の抑制効果を調べるため、P4ファージを含む溶液に0.22μmアクロ−ディスクでろ過したアルブミン、TALP又はアルブミンとTALPの混合物を加え、ルリア培地(蒸留水100ml中、トリプトン1g、酵母抽出物0.5g及びNaCl 1g、pH7.5)を加えて最終容量100μlとした。この反応混合物を37℃で30分インキュベートして、E.coli C117を加えてよく混合した。その後、0.7%アガロースを含むルリア培地4mlを混合液に加え、1.4%アガロースを含むルリア培地6mlが予め固定されているプレート中に注いだ。次いで、細胞を37℃で一晩培養して、溶解したプラークの数をカウントした(図8参照)。図8に示すように、アルブミンだけを加えた対照プレートでは平均58個のプラークが認められ;25μg/ml及び50μg/mlのTALPを加えたプレートではそれぞれ30%及び52%のプラーク減少が起こり、100μg/mlのTALPを加えたプレートではプラークが殆ど観察されなかった。また、アルブミンとTALPの混合物を加えたプレートはTALP単独処理のプレートと同様のパターンを示した。
従って、本発明のTALPは抗ウイルス活性を有するために、抗ウイルス剤としても利用しうることが分かった。
実施例11:TALPの波長走査
TALPの特性を調べるため。200nmから340nmまでの紫外線領域でTALP及びBSAの吸光度変化を測定した(図9参照)。図9において、実線と点線はそれぞれBSA及びTALPの吸光度の変化を示す。図9に見られるように、TALPは280nmの吸光度がBSAと比較すると相対的に低い値を示すことが分かり、これはTALPのアミノ酸組成が他の蛋白とは異なっていることを示唆している。
実施例12:αβ−チューブリン及びサブチリシンで切断処理したチューブリンとのTALPの結合
TALPがチューブリン分子のカルボキシル末端に結合するかどうかを調べるために、αβS−チューブリン及びαSβS−チューブリンを調製し、TALPを加えて微小管を形成させた後、共沈殿アッセイを行った。ホスホセルロースクロマトグラフィーにより単離したチューブリンを含まないMAPsを50mM MESバッファー(pH6.8)に0.4mg/mlの濃度で加え、タキソールを20μMの最終濃度で加えて、37℃で30分間インキュベートした。次いで、αβS−チューブリン及びαSβS−チューブリンを調製するためにチューブリンを2%(w/w)サブチリシンでそれぞれ30分及び9時間切断して、PMSFを加えて蛋白分解反応を止めた。サブチリシンで切断されたチューブリンを0.4μM TALPの存在下又はTALP無しで37℃、30分間重合化させた後、20分間遠心分離した。得られた上清及びペレットを9%SDS−PAGEで分析した(図10(A)及び図10(B)参照)。図10(A)及び図10(B)において、S及びPはそれぞれ上清及びペレットを示す。図10(A)において、レーン1はαβ−チューブリン重合化を示し;レーン2はαβS−チューブリン重合化を示し;レーン3は0.4μM TALP存在下でのαβ−チューブリン重合化を示し;レーン4は0.4μM TALP存在下でのαβS−チューブリン重合化を示し;及びレーン5は0.4μM TALP存在下でのαβ−チューブリン及びαβS−チューブリン重合化をそれぞれ示す。図10(B)において、レーン1はαβ−チューブリン重合化を示し;レーン2はαSβS−チューブリン重合化を示し;レーン3は0.4μM TALP存在下でのαβ−チューブリン重合化を示し;レーン4は0.4μM TALP存在下でのαSβS−チューブリン重合化を示し;及びレーン5は0.4μM TALP存在下でのαβ−チューブリン及びαSβS−チューブリン重合化をそれぞれ示す。
図10(A)及び図10(B)に示すように、TALPはαβ−チューブリン及びサブチリシンで切断されたチューブリンの重合化を誘導することが見出された。チューブリンを重合化する目的でαβ−チューブリン、αβS−チューブリン又はαSβS−チューブリンを含むチューブリン溶液にTALPを加えると、TALPはαβ−チューブリンとともに沈殿した。この結果は、完全なチューブリンへのTALPの結合親和性はサブチリシンで切断されたチューブリンのいずれに対するものよりも強く、TALPの高親和性結合部位はチューブリン分子のカルボキシル末端ドメインに存在することを示している。
実施例13:チューブリン重合化におけるタウ蛋白とTALPの競合
微小管形成を活性化するタウ蛋白及びMAPsはチューブリン分子のC−末端に結合することは良く知られている。図10(A)及び図10(B)に見られるように、TALPもチューブリン分子のC−末端に結合する。これに関して、TALPが共存する場合のチューブリンに対するタウ蛋白とMAPsの結合様式を調べるために、MAPsを含むチューブリンを用いた微小管形成及び共沈殿を順次行った。
ウシの脳より得られたチューブリンを50mM MESバッファー(pH6.8)に0.4mg/mlの最終濃度になるように懸濁し、0.5、1、2又は4μM TALPを加えた後37℃で30分間、重合化させた。20分間遠心分離し、得られたペレットを懸濁して12%SDS−PAGEゲルにのせた(図11(A)参照)。図11(A)のゲルをニトロセルロース膜に転写して、免疫染色してタウ蛋白及びMAP2を検出した(図11(B)及び図11(C)参照)。図11(A)、図11(B)及び図11(C)において、S及びPはそれぞれ上清及びペレットを示す。
図11(B)に示すように、TALP共存時には、チューブリンに結合するタウ蛋白のレベルはTALP濃度の上昇に伴い直線的に減少し、高濃度のTALPの存在下では、タウ蛋白は全く結合せずTALPがタウ蛋白の代わりにチューブリンに結合した。しかしながら、図11(C)に示すように、TALP共存時に、チューブリンに結合するMAP2のレベルはTALP濃度の上昇に伴い直線的に増加した。
従って、TALPはチューブリン分子のC−末端に結合し、TALPとタウ蛋白はチューブリン分子の同一のC−末端に競合的に結合することが確認された。
実施例14:タウ蛋白とTALPの競合的結合の電子顕微鏡試験
チューブリンのC−末端へのTALPとタウ蛋白の競合的結合を調べるために、タウ蛋白に対するイムノゴールドラベルを行ない、走査電子顕微鏡(Hitachi H−600、日本)を用いて加速電圧75kvで調べた。チューブリン及びMAPsを含む反応混合液に2mM GTP及び4μM TALPをそれぞれ加えた。続いて、37℃で30分間重合化させ、26℃で3回、0.96%グルタルアルデヒドで架橋させて、ニッケル/フォームバーコーティングしたグリッド上に滴下して乾燥させた。イムノゴールドラベルをマウス抗−タウ蛋白及び12mm金粒子が結合した抗−マウスIgEを用いて行い、1%ウラニルアセテートで5分間染色し、蒸留水で洗浄して乾燥させた後、電子顕微鏡で調べた(図12(A)及び図12(B)参照)。
図12(A)及び図12(B)はそれぞれ2mM GTP及び4μM TALPの存在下でのタウ蛋白のイムノゴールドラベルを30,000倍に拡大した電子顕微鏡写真である。図12(A)の挿入図は8,000倍に拡大された電子顕微鏡写真を示す。図12(A)及び図12(B)に示すように、TALPにより安定化された微小管上の金粒子の数は通常の微小管と比較すると有意に減少していることがわかり、これは実施例13で述べたタウ蛋白に対する免疫染色の結果に合致している。
実施例15:ヒト大腸癌HM7細胞株の増殖抑制
TALPによるヒトの癌細胞の多数化抑制効果を調べるため、ヒト大腸癌LSI74Tに由来するHM7細胞株(Kuan S.F.et al.,Cancer Res.,47:5715−5724,1987;Kuan S.F.et al.,J.Biol.Chem.,264:19271−19277,1989参照)を96ウェルのミクロプレート上に104細胞/200μlの濃度で植え、4日間インキュベートした後、TALPを0.1、0.5、1及び2μMの濃度で加えたが、この濃度は2μM未満の濃度ではTALPがHM7細胞に細胞毒性を示さなかったという実験データから選ばれている。その後さらに4日間インキュベートした後、MTT法で540nmにおける吸光度を測定して細胞数を計算した(図13参照)。
図13に示すように、HM7細胞の多数化に対する抑制率(%)は処理したTALPの濃度によって、それぞれ33.3%、45.8%、52.8%及び55.14%と測定され、ID50は0.83μMと推定された。従って、TALPは低濃度においてもヒトの癌細胞の増殖を抑制しうることが分かった。
実施例16:In vitro運動性アッセイ
TALPによるHM7細胞株における微小管形成の刺激及び安定化が細胞増殖の抑制をもたらすならば、HM7細胞の運動性も当然低減されると考えられる。そこで、その予想を立証するために、ポアサイズが8μmで直径6.5mmのポリカーボネートフィルターの付いたトランスウエル細胞培養チャンバーを用いて以下のようにin vitro運動性アッセイを行った(Yoon et al.,BBRC,222:694−699,1996)。
すなわち、トランスウエル細胞培養チャンバーの上方区画に200μlのHM7細胞懸濁液(2x105細胞/200μl)を加え、下方区画には0.01、0.1及び1μMのTALPとともに800μlの細胞培養液を加えた。3日間培養した後、フィルターの上方領域に付着した細胞を脱脂綿で取り除き、フィルターをヘマトキシリンで染色してフィルターの下方領域に移動した細胞の数を100倍の顕微鏡下で計測した(図14参照)。図14に示すように、対照群の細胞数は41.33±3.32と測定され、0.01、0.1及び1μM TALPで処理した実験群ではそれぞれ26.13±6.05、21.33±2.5及び4.44±2.07であり、これらは細胞運動性をそれぞれ36.8%、48.4%及び89.3%抑制したことに対応する。
よって、TALPが1μM以下の低濃度でも効率よく細胞の運動性を抑制することが明らかになった。このことは、in vitro運動性アッセイは被試験細胞の細胞増殖性と運動性の両方を示すものであるため、TALPが癌転移抑制剤として利用できる可能性を示唆するものである。
実施例17:In vivo転移抑制試験
実施例15及び16で述べたTALPによる細胞増殖及び運動性に対する抑制効果が転移を有意に減少させる結果をもたらすのかどうかを立証するために、ヌードマウスを用いたin vivo試験を行った。
75cm2組織培養フラスコで培養したHM7細胞をトリプシンで数分間処理し、PBSで数回洗浄した後、血清無添加の培養液に107細胞/mlの濃度に懸濁した。この懸濁液100μlを4週齢のBALB/C/nu/nu無胸腺ヌードマウス(雌)の脾臓に注入し、この脾臓を1分後に切除した。その後、100μlのTALP(50μg/100μl)を1日1回ずつ8日間、すなわち脾臓摘出から7日後まで、腹腔内に注射した。4週間後にマウスを屠殺して肝臓の重量と肝臓への転移が起きた病巣の数を測定した。対照としては、TALPの代わりに100μlの滅菌食塩水を注射した。
対照群の肝臓重量は平均5.05gと測定され、これはTALP処置群の平均1.388gという値の3.7倍に相当する。また、対照群の病巣の数を測定しTALP処置群では73個であったため82.8%減少したことを意味する。従って、TALPは抗癌剤と抗転移剤の二つのの役割を演じることが分かった。
以上に明確に説明及び立証したように、本発明は新規のタキソール類似蛋白(TALP)、その製造方法、並びに抗癌剤及び抗ウイルス剤としてのその用途を提供する。本発明のTALPはタキソールと同様に、GTPがなくてもチューブリン重合化を促進し、これにより重合化された微小管はCa2+や4℃以下の低温によって起きる分解に対して耐性が有り、非常に安定化されている。さらに、本発明のTALPは細胞増殖、剥離したNIH 3T3細胞の再生、HM7ヒト大腸癌細胞の増殖及びin vitroでの運動性、受精したクセノプス卵母細胞の細胞分裂、並びにウイルスによる大腸菌の溶解を抑制する。
Claims (9)
- ヒトの胎盤より単離され微小管形成を促進することができる、SDS−PAGEで決定される分子量が約35kDaのタキソール類似蛋白(TALP)。
- TALPにより形成される微小管がCa2+や4℃以下の低温によって起きる分解に対して耐性を有する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- 上記微小管形成をGTP又は微小管付随蛋白なしに促進する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- 細胞増殖を抑制する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- ウイルスの増殖を抑制する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- 細胞の運動性を抑制する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- 癌細胞の転移を抑制する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- タウ蛋白のチューブリン分子に対する結合を抑制する、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)。
- (i)哺乳動物の組織をホモジナイズして遠心分離し、上清を得る工程;及び、(ii)上記で得られた上清を陽イオン交換クロマトグラフィー及びハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより分画する工程を含む、請求項1に記載のタキソール類似蛋白(TALP)の製造方法。
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