JP3607748B2 - 多層被覆 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は基体上の多層被覆に関し、詳しくは未硬化の樹脂組成物を基体表面上に多層に塗布し、外層方向からの光照射によって基体近くの内層も外層と同じく良好に硬化している基体の多層被覆に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック、木材等の表面性改良のため、光硬化樹脂による被覆が施され、また光ファイバーに用いられているガラスファイバーは脆く損傷し易いので保護、補強等のため、光硬化樹脂による被覆が施されている。
【0003】
例えば光ファイバーの場合には、コア上に設けられたクラッド層上に1次被覆と2次被覆が施されるが、生産性向上の観点や、硬化時の揮発成分の発生防止の観点からも2層に塗布して一回の光照射で硬化させることが望ましい。
【0004】
しかしながら、多層に塗布した硬化性樹脂を一回の光照射で硬化させる場合、外層の光吸収と内層の光吸収が適度に異なっていないと、内層の硬化が不十分になる。
そこで現在では、多層に被覆する場合もそれぞれに光照射を行なって硬化させるプロセスが多く取られており、設備の巨大化、生産性の低下等の点で不利である。
【0005】
しかしながら、最近、生産性の向上の要求に伴い、一回の光照射で内層の硬化が十分となる技術に対する要求が高まっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、基体上に塗布された光硬化性樹脂の複数の被覆層が一度の光照射により硬化して得られる基体上の多層被覆を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第1の被覆層、第2の被覆層および基体がこの順序に積層されてなり、
(i)第1の被覆層は、下記式(1)
【0008】
【化3】
【0009】
(式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜3のアルキルチオ基または4−モルホリノ基を示し、R2はヒドロキシシクロヘキシル基、1,1−ジアルコキシ−1−フェニルメチル基、1,1−ジアルキル−1−(4−モルホリノ)メチル基、ジアルキルヒドロキシメチル基またはジアルキルアミノベンジルアルキルメチル基を示す)
で示される光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物の硬化層であり、
( ii )第2の被覆層は、下記式(2)
【0010】
【化4】
【0011】
(式(2)中、R3はフェニル基、トリアルキルフェニル基、トリアルコキシフェニル基、ジアルキルフェニル基またはジアルコキシフェニル基を示し、R4はフェニル基または炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、R5はR4と同一であるかまたはベンゾイル基、ジアルコキシベンゾイル基、ジアルキルベンゾイル基、トリアルキルベンゾイル基、トリアルコキシベンゾイル基およびアルコキシ基のいずれかを示す)
で示される光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物の硬化層である、
ことを特徴とする基体上の多層被覆が提供されて、上記本発明の目的が達成される。
【0012】
以下、本発明を詳述することにより、本発明の目的、構成、利点および効果が明らかとなろう。
本発明の多層被覆の第1の被覆層および第2の被覆層を形成するにあたって用いられる光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤は、上記式(1)で示されるもの(以下、「化合物I」とする)が第1の被覆層を形成するために用いられ、上記式(2)で示されるもの(以下、「化合物II」とする)が第2の被覆層を形成するために用いられる。
【0013】
化合物Iとしては、前記式(1)において、R1が水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、メチルチオ基または4−モルホリノ基であるものが好ましく、なかでもR1が水素原子、メチルチオ基または4−モルホリノ基であるものがさらに好ましい。
前記式(1)において、R2が1−ヒドロキシシクロヘキシル基、1,1−ジメトキシ−1−フェニルメチル基、1,1−ジメチル−1−(4−モルホリノ)メチル基、1,1−ジメチル−1−ヒドロキシメチル基またはジメチルアミノベンジルエチルメチル基であるものが好ましい。
【0014】
特に好ましい化合物Iは、R1とR2の組合せが下記表1の如き化合物I−1〜I−5である。
【0015】
【表1】
【0016】
化合物IIとしては、R3がフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、2,4,6−トリプロピルフェニル基、2,4,6−トリブチルフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、2,4,6−トリエトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−ジエトキシフェニル基、2,6−ジプロポキシフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基または2,6−ジブチルフェニル基であり、R4がフェニル基または炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、そしてR5がR4と同一であるかまたはベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,6−ジエトキシベンゾイル基、2,6−ジメチルベンゾイル基、2,6−ジエチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,4,6−トリエチルベンゾイル基、2,4,6−トリプロピルベンゾイル基、2,4,6−トリブチルベンゾイル基、2,4,6−トリメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリエトキシベンゾイル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるものが好ましく、なかでもR3がフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基または2,6−ジメトキシフェニル基、R4がフェニル基または炭素数2〜15の1価の炭化水素基であり、そしてR5がR4と同一であるかまたはベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、メトキシ基およびエトキシ基のいずれかであるものがより好ましい。
【0017】
特に好ましい化合物IIは、R3、R4およびR5の組合せが下記表2の如き化合物である。
【0018】
【表2】
【0019】
これら光重合開始剤である化合物Iおよび化合物IIは、充分に硬化を行なうことおよび硬化物の物性を適切に維持する観点から、各々の光硬化性樹脂組成物中に固形分換算で0.05〜10重量%の割合で含有されることが好ましく、0.1〜5重量%の割合で含有されることがより好ましい。
【0020】
第1の被覆層および第2の被覆層を形成するための光硬化性樹脂組成物は重合性成分としてウレタン(メタ)アクリレートを含むことが、耐久性、高速硬化性、高い靭性、柔軟性等の点で好ましい。このウレタン(メタ)アクリレートはポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる。
【0021】
上記ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオール等のポリエーテルジオールが挙げられる。
【0022】
上記ポリエーテルジオールを合成するための原料としてのイオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。
【0023】
また、上記イオン性重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
【0024】
上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフランとブテン−1−オキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の組合せの開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状に結合していてもよい。
【0025】
これらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、PPG1000、EXCENOL 2020、1020(以上、旭オーリン(株)製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂(株)製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販品として入手することができる。
【0026】
他のポリオールとして、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらのジオールはポリエーテルジオールと併用して用いることもできる。
【0027】
上記ポリエステルジオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、(株)クラレ製)等を挙げることができる。
【0028】
また、ポリカーボネートジオールとしては、例えば1,6−ヘキサンポリカーボネート、ポリテトラメチレングリコールポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PC−8000(米国PPG(株)製)、PC−THF−CD2000、PC−THF−CD1000(以上BASF(株)製)等が挙げられる。
【0029】
さらにポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
【0030】
上記以外のジオールもウレタン(メタ)アクリレートを得るためのポリオールとして、上記ジオールと併用して使用することができる。このようなジオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
【0031】
なお、上記したようなジオールを併用する以外にも、ポリオキシアルキレン構造を有するジオールとともにジアミンを併用することも可能である。このようなジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0032】
これらのジオールの好ましい分子量は、数平均分子量で、好ましくは50〜15,000であり、特に好ましくは100〜8,000である。これらのジオールは一種でも二種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
一方、ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは一種でも二種以上を併用して用いてもよい。
【0034】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートあるいは下記式(3)
【0035】
【化5】
【0036】
(式(3)中、R6は水素原子またはメチル基を示し、pは1〜15、好ましくは1〜4の整数である)
で示される(メタ)アクリレート等が挙げられ、さらにはアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げることができる。これらのうち、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは一種でも二種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成する際に、光硬化性樹脂組成物の硬化物のガラスとの密着性を向上させる目的で下記の化合物を添加して反応に関与させることができる。このような化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。これらの化合物のうち、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。また、これらの化合物の市販品としては、KBM573、803、KBE903(以上、信越シリコーン(株)製)、A−189、1100、1120(以上、日本ユニカー(株)製)、SH6020、6062、SZ6083(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン(株)製)等が挙げられる。これらの化合物の添加により分子末端にトリアルコキシシリル基を有するウレタン(メタ)アクリレートを合成することができる。
【0038】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレートの好ましい数平均分子量は、350〜20,000であり、特に好ましくは400〜15,000である。ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が上記範囲であることにより、光硬化性樹脂組成物の粘度を適切に調整することができ取扱いが良好であり、しかもその硬化物の破断伸びおよび靱性がより好ましく維持され、種々の材料、例えば木材、ポリマーシート、さらには光ファイバーの被覆材料として使用した際に期待する被覆材としての効果がより一層得られる。特に光ファイバーの被覆材料として使用すると、伝送損失も少なくなる。
【0039】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、上記のポリオール、ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよびその他の任意成分を反応させることにより行われる。この反応では、ジイソシアネートのイソシアネート基とジオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基とがそれぞれ反応するウレタン化反応が主に進行する。
【0040】
上記のウレタン化反応においては、通常、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジn−ブチル錫、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンジアミン等のウレタン化触媒を反応物の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いることができる。なお、反応温度は0〜90℃、特に10〜80℃が好ましい。
【0041】
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレートの光硬化性樹脂組成物中の割合は、固形分換算で通常1〜90重量%であることが好ましく、木材、ポリマーシート、光ファイバー等に塗布する際の塗工性、硬化させた後の被覆層の柔軟性、長期信頼性を維持するために30〜80重量%とするのが特に好ましい。
【0042】
第1および第2の被覆層を形成するための光硬化性樹脂組成物は、前述した成分以外に光硬化性樹脂組成物の性質を損なわない範囲で重合性希釈剤および前記光重合開始剤である化合物IおよびII以外の光重合開始剤を含有し、また必要に応じてその他の添加剤も含有することができる。
【0043】
上記重合性希釈剤は、分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも1個有する常温で液体あるいは固体の化合物であり、一般にはエチレン性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を持つ(メタ)アクリレート化合物またはビニル基を持つ化合物が好適に用いられる。(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する化合物には、これらの基を1個有する単官能性化合物と該基を複数個有する多官能性化合物があり、いずれの化合物も用いることができる。比較的弾性率の低い硬化物を所望する場合には主として単官能化合物が用いられ、多官能化合物を適当な割合で併用することにより硬化物の弾性率を調節することもできる。
【0044】
上記単官能性化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類および下記の式(4)〜(6)で表わされる化合物が挙げられる。
【0045】
【化6】
【0046】
(式(4)中、R7は水素原子またはメチル基を示し、R8は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R9は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、qは0〜12、好ましくは1〜8の整数である。)
【0047】
【化7】
【0048】
(式(5)中、R7は式(4)のR7と同意であり、R10は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、rは1〜8、好ましくは1〜4の整数である。)
【0049】
【化8】
【0050】
(式(6)中、R7、R10およびrは式(5)のR7、R10およびrと同意であり、複数のR11は、各々独立に、水素原子またはメチル基を示す。)
【0051】
これらの単官能性化合物の市販品としては、アロニックスM111、M113、M114、M117(以上、東亜合成(株)製)、KAYARAD TC110S、R629、R644(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート3700(大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0052】
また、上記多官能性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、市販品としては、ユピマーUV、SA1002、SA2007(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート700(大阪有機化学工業(株)製)、KAYARAD R−604、DPCA−20、30、60、120、HX−620、D−310、330(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、215、315、325(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。
【0053】
なお、これらの(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する化合物の分子量は、通常200〜3,000程度の範囲である。上記のうち特に好ましい化合物の具体例としては、市販品としてアロニックスM111、M113、M114、M117(以上、東亜合成(株)製)、SA1002(三菱化学(株)製)、DCPA−20、30、60(以上日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0054】
これら(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する化合物を用いることで、硬化物の柔軟性を広い範囲で制御することができる。また、これらの化合物を二種以上併用することによって、得られる組成物の硬化速度を向上させることができる。
【0055】
これらの重合希釈剤は、光硬化性樹脂組成物中に5〜80重量%、特に20〜70重量%配合するのが好ましい。
【0056】
本発明における光硬化性樹脂組成物は、光によって、場合によってはさらに加熱することにより硬化することができる。なお、ここで光とは、赤外線、可視光線、紫外線を意味する。
光硬化性樹脂組成物を光照射と共に熱硬化も行なわせる場合、光重合開始剤である化合物IおよびII以外に重合開始剤として、通常の熱によって分解してラジカルを発生するラジカル重合開始剤を併用することができ、例えば過酸化物、アゾ化合物等を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0057】
また、光硬化性樹脂組成物を光硬化させる場合、化合物IおよびII以外の光重合開始剤および必要に応じてさらに光増感剤を併用することができる。
【0058】
このような光重合開始剤としては、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0059】
また、光増感剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられ、市販品としてはユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB(株)製)等が挙げられる。
これら化合物IおよびII以外の重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物中、0.1〜10重量%配合させるのが好ましい。このような配合割合であることにより充分な硬化が達成できる。
【0060】
光硬化性樹脂組成物には、上記成分以外の添加剤を必要に応じて加えてもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可そ剤、滑剤、溶媒、フィラー、着色剤、漏れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられ、光安定剤の市販品としては、Tinuvin292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられ、シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品としては、SH6062、SZ6030(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン(株)製)、KBE903、KBM803(以上、信越シリコーン(株)製)等が挙げられ、老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW、GA−80(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0061】
また光硬化性樹脂組成物には、その他の添加剤としてエポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ペンタジエン誘導体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブテン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等のポリマーまたはオリゴマーも配合することもできる。
【0062】
本発明における光硬化性樹脂組成物は、前記各成分を常法により混合して調製することができる。このようにして調製される光硬化性樹脂組成物は液状であり、その粘度は、好ましくは100〜20,000cps /25℃、より好ましくは1,500〜15,000cps /25℃である。
【0063】
以上説明した液状の光硬化性樹脂組成物を用いて本発明の多層被覆を製造することができる。
【0064】
本発明の多層被覆が被覆される基体としては、ガラスファイバー、塩化ビニルシート、ポリカーボネートシート、ガラス板、ポリエチレンフィルム、木材、アクリルシート、金属板等を挙げることができる。なかでも、ガラスファイバー、塩化ビニルシート、ポリカーボネートシート、木材等が好ましい。
【0065】
本発明の多層被覆は、光重合開始剤として化合物Iを含む光硬化性樹脂組成物(以下、「組成物I」とする)の硬化層である第1の被覆層および第1の被覆層よりも基体表面近くに設けられた化合物IIをを含む光硬化性樹脂組成物(以下、「組成物II」とする)の硬化層からなる第2の被覆層から少なくともなる。
【0066】
本発明の多層被覆について、光ファイバー芯線の場合を例として説明すると、コア部およびそれを覆うクラッド層上に直接第2の被覆層が存在し、さらに第2の被覆層上に直接第1の被覆層が存在する。
【0067】
このような多層被覆は、クラッド層上にまず組成物IIを塗布し、引き続き組成物Iを塗布した後紫外線照射をすることにより、一度の紫外線照射によって組成物IおよびIIが硬化して、第1の被覆層および第2の被覆層からなる多層被覆が形成される。
【0068】
クラッド層を直接覆う第2の被覆層は応力緩衝層となり低ヤング率であり、その上の第1の被覆層は光ファイバー芯線の取扱い性向上のための保護層であって高ヤング率である。従って、組成物Iおよび組成物IIを構成する硬化性成分は上述の物性を満足すべく前述した成分から適宜に選択される。
なお、好ましい第1の被覆層は約1〜100μmの厚さであり、好ましい第2の被覆層は約1〜100μmの厚さである。
【0069】
また、別の例として、ポリカーボネートに多層被覆する例を挙げることができる。このとき、ポリカーボネート表面と接着性の良い層を第1の被覆層とし、硬度の高い硬化物を与える被覆層を第2の被覆層として硬化させることにより、高硬度で傷が付きにくく、かつ基材に対して密着性の高い被覆層を得ることができる。
【0070】
本発明の多層被覆を有するものとしては、前述した光ファイバー芯線の他に、塩化ビニル床材、液晶パネル用のガラス板、ポリカーボネートシート、プラスチックレンズ、家具用木材等が挙げられる。
【0071】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において部と記述してあるのは重量部を意味する。
【0072】
ウレタンアクリレート合成例1
攪拌機を備えた反応容器に、トリレンジイソシアネート3.0部、数平均分子量4,000のエチレンオキシドとブテンオキシドとの開環共重合体50.5部、および添加剤として重合禁止剤である2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.01部を仕込んだ。そして、これらを攪拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷し、ジブチル錫ジラウレート0.04部を添加した。次いで、液温度を20〜30℃で制御しながら2時間攪拌した。その後にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.3部を加え、30〜40℃で1時間攪拌した。攪拌後、ヒドロキシエチルアクリレート1.2部を加え、液温度50〜60℃にて4時間攪拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートの樹脂液をUA−1とする。
【0073】
ウレタンアクリレート合成例2
攪拌機を備えた反応容器に、トリレンジイソシアネート5.5部、数平均分子量2,000のテトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランとの開環共重合体42.0部および添加剤として重合禁止剤である2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.01部を仕込んだ。そして、これらを攪拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷し、ジブチル錫ジラウレート0.04部を添加した。次いで、液温度を20〜30℃で制御しながら2時間攪拌した。その後、ヒドロキシエチルアクリレート2.2部を加え、液温度50℃〜60℃にて4時間攪拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートの樹脂液をUA−2とする。
【0074】
下層(第2の被覆層)に用いる液状光硬化性樹脂組成物の調製
表3に示す組成の各成分を攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50〜60℃に制御しながら3時間攪拌し、液状光硬化性樹脂組成物を得た。
なお、表3中、M113とM114は東亜合成(株)製のアロニックスM113、アロニックスM114を表わし、Lucirin は光重合開始剤であり、下記式(7)
【0075】
【化9】
【0076】
で示される構造を有し、化合物IIである。
BBTPOはビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドであり、下記式(8)
【0077】
【化10】
【0078】
で示される構造を有し、化合物IIである。
Darocur1173は光重合開始剤であり、下記式(9)
【0079】
【化11】
【0080】
で示される構造を有し、化合物Iである。
Irgacure184およびIrgacure369は光重合開始剤であり、Irgacure184は下記式(10)、Irgacure369は下記式(10’)
【0081】
【化12】
【0082】
で示される構造を有し、化合物Iである。
【0083】
【表3】
【0084】
ウレタンアクリレート合成例3
攪拌機を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート21.0部、ジブチル錫ジラウレート0.06部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.015部およびトリシクロデカンジメタノールジラウレート11.9部を仕込み、15℃以下に冷却した。そして、これらを攪拌しながら液温度が30℃以下に保たれるように冷却しつつヒドロキシエチルアクリレート15.25部を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。次に、トリシクロデカンジメタノール2.64部、数平均分子量2,000のテトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランとの開環共重合体28.5部を加え、20〜55℃で攪拌し、残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートの樹脂液をUA−3とする。
【0085】
ウレタンアクリレート合成例4
攪拌機を備えた反応容器に、トルエンジイソシアネート14部、ジブチル錫ジラウレート0.08部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.02部、N−ビニルピロリドン7.7部およびトリシクロデカンジメタノールジラウレート15.5部を仕込み、5〜10℃に冷却した。次いで、攪拌しながら温度が10℃以下に保たれるようにヒドロキシエチルアクリレート5.8部を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。次にエチレングリコール1.7部および数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール54.7部を加え、30〜50℃で2時間反応させた。さらにヒドロキシエチルアクリレートを0.5部加え、50〜60℃で反応を続け、残留イソソアネートが0.1重量%以下になるまで反応させた。得られたウレタンアクリレートの樹脂液をUA−4とする。
【0086】
ウレタンアクリレート合成例5
攪拌機を備えた反応容器に、トルエンジイソソアネート10.3部、ジブチル錫ジラウレート0.013部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.009部およびイソボルニルアクリレート13.7部を加え、5〜10℃に冷却した。次いで、ヒドロキシエチルアクリレート13.7部を温度が40℃以下になるように滴下した後、さらに1時間、45〜55℃で反応させた。残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートの樹脂液をUA−5とする。
【0087】
上層(第1の被覆層)に用いる液状光硬化性樹脂組成物の調製
表4に示す組成の各成分を攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50〜60℃に制御しながら3時間攪拌し、液状光硬化性樹脂組成物を得た。
なお、表4中、Irgacure184、Irgacure369およびDarocur1173は表3で示したものと同じである。
Irgacure907は下記式(11)で示される構造を有し、化合物Iである。
【0088】
【化13】
【0089】
SA1002はトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを表わす。
【0090】
【表4】
【0091】
試験例1〜14、比較試験例1〜2
上記の如く調製した上層および下層に使用する液状光硬化性樹脂組成物を以下のような方法で硬化させ、試験片を作製し、下記の如く評価を行なった。この結果を表5および表6(比較)に示した。
【0092】
1. 試験片の作成:
175ミクロン厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に下層用の液状光硬化性樹脂組成物を塗布した。次いで、上層用の液状光硬化性樹脂組成物を石英板に75ミクロン厚のアプリケーターバーを用いて塗布した。その後、下層用の組成物が塗布されたガラス板上に1mm厚のアルミブロックをスペーサーとして置いて、上層用の組成物が塗布された石英板を乗せた。これを窒素中に置き、上層側から10mJ/cm2のエネルギーを有する紫外線で照射し硬化した。上層用および下層用組成物の硬化物それぞれをガラス板から剥し、上層用組成物の硬化物から35ミクロン厚、下層用組成物の硬化物から75ミクロン厚の試験片を得た。別途、硬化の際に用いる紫外線として50mJ/cm2のエネルギーを有する紫外線を使用する以外は上記操作を繰返し、上記と同じ厚さの試験片を得た。以下、上層用組成物の硬化物からの試験片を「上層試験片」、下層用組成物の硬化物からの試験片を「下層試験片」と称する。
【0093】
2. ゲル含率の測定
上層および下層試験片約1gを円筒濾紙に詰め、ソックスレー抽出器でメチルエチルケトンを用いて12時間以上抽出した。抽出後の試験片は真空下で60℃に6時間以上乾燥させた。抽出前後の試験片の重量から下記の式を用いてゲル含率を算出した。
【0094】
【数1】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
表5から明らかなように、上層用および下層用の各々の光硬化性組成物にそれぞれ前記式(1)および(2)で示される光重合開始剤を使用した場合において、10mJ/cm2で照射した場合のゲル含率と50mJ/cm2で照射した場合のゲル含率の比が高く、下層の硬化性樹脂が良好に硬化することが示された。
【0098】
試験例15および比較例3
全高8mのガラスファイバー線引装置(吉田工業(株)製)を用いて、ガラスに接触する第2の被覆層に、表3中に示す組成物L−7(組成物II)、その外層(第1の被覆層)の上に表4中に示す組成物U−2(組成物I)を使用して、180m/minの速度でガラスファイバーを作成しながら塗布した。形成された被覆はUVランプ(HMW−523、3.5KW、オーク製作所製)を用いて紫外線を照射して硬化させた。このようにして得られた被覆されたガラスファイバーは、ガラス芯線の直径が125μm、第1層の厚さが30μm、第2層の厚さは30μmであった。この被覆をガラス芯線より取り除き、多層被覆層全体のゲル含率を前記の方法で測定した。結果を表7に示す。比較のため、上記と同じ条件で第1層に表3中に示す組成物L−7、第2層に表4中に示す組成物U−2を用いて被覆したファイバーを作成した。同様にして、多層被覆層全体のゲル含率を測定した。結果を表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
【発明の効果】
本発明の基体上の多層被覆は、基体上に塗布された光硬化性樹脂組成物の複数の被覆層が、一度の光照射により硬化して得られるものであるから、生産性に優れコストが安い。
【0101】
以上詳述した本発明の基体上の多層被覆の好ましい態様および本欄に記載されている他の発明を以下に付記する。
1. 式(1)で示される光重合開始剤が、前記化合物I−1〜I−4の少なくともいずれかである多層被覆。
2. 式(2)で示される光重合開始剤が、前記化合物II−1〜II−3の少なくともいずれかである多層被覆。
3. 光硬化性樹脂組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含む多層被覆。
4. 多層被覆が光ファイバー芯線のクラッド層を基体としてクラッド層を被覆している多層被覆。
5. 基体上に式(2)で示される光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層(2)を形成し、さらに塗布層(2)上に式(1)で示される光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層(1)を形成した後、光照射して、塗布層(1)および(2)を同時に硬化させることを特徴とする基体上に多層被覆を形成する方法。
Claims (1)
- 第1の被覆層、第2の被覆層および基体がこの順序に積層されてなり、
(i)第1の被覆層は、下記式(1)
(式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜3のアルキルチオ基または4−モルホリノ基を示し、R2はヒドロキシシクロヘキシル基、1,1−ジアルコキシ−1−フェニルメチル基、1,1−ジアルキル−1−(4−モルホリノ)メチル基、ジアルキルヒドロキシメチル基またはジアルキルアミノベンジルアルキルメチル基を示す)
で示される光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物の硬化層であり、
(ii)第2の被覆層は、下記式(2)
(式(2)中、R3はフェニル基、トリアルキルフェニル基、トリアルコキシフェニル基、ジアルキルフェニル基またはジアルコキシフェニル基を示し、R4はフェニル基または炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、R5はR4と同一であるかまたはベンゾイル基、ジアルコキシベンゾイル基、ジアルキルベンゾイル基、トリアルキルベンゾイル基、トリアルコキシベンゾイル基およびアルコキシ基のいずれかを示す)
で示される光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物の硬化層である、
ことを特徴とする基体上の多層被覆。
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