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JP4132297B2 - オリゴ糖の製造方法 - Google Patents

オリゴ糖の製造方法 Download PDF

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JP4132297B2 JP30274698A JP30274698A JP4132297B2 JP 4132297 B2 JP4132297 B2 JP 4132297B2 JP 30274698 A JP30274698 A JP 30274698A JP 30274698 A JP30274698 A JP 30274698A JP 4132297 B2 JP4132297 B2 JP 4132297B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−L−フコシダーゼを用いたα1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖タンパク質や糖脂質中に含まれる複合糖質の糖鎖の非還元未端あるいは枝分れ部分には、α−L−フコシル基を含むものが多く見出されている。例えば、植物キシログルカン由来のフコースを含むオリゴサッカライドにエリシター様の活性があることが報告されている。また、L−フコースを含む複合脂質中の糖鎖は、血液型の型決定基、肝臓への血清糖タンパク質の取り込み、マクロファージ遊走阻止因子の受容体、細胞−細胞相互作用など、さまざまな生理活性を有していると言われている。さらに細胞のガン化に伴い血中のL−フコース量が増加することが観察されている。
【0003】
α−L−フコシダーゼは糖鎖中のα−L−フコシド結合を加水分解する酵素であり、複合糖質中の糖鎖の構造解析や、構造と機能との関連あるいは生理活性などを研究する上で、L−フコースを特異的にはずす酵素試薬として重要な意味を持っている。一方、同様の理由から、α−L−フコシダーゼのL−フコース転移能を利用して、L−フコースを含むオリゴ糖を人工的に合成することが求められている。しかしながら、フコースを含む糖鎖の合成は一部のものが化学合成法または酵素法によりなされているにすぎないのが現状である。
【0004】
すなわち、化学合成法においては、水酸基のうちで反応に関与しない水酸基を保護した受容体の1位を活性化し、残りの水酸基を保護した供与体を作用させて縮合反応を行い、反応終了後に保護基を脱離させて目的物を得るという繁雑な工程を必要とする。しかも、工程の数が多いために必然的に収率は低いものとならざるを得ない。
【0005】
一方、酵素を用いてL−フコースを含むオリゴ糖を合成する試みは数多く行われている。例えば、スベンソン(Svensson)およびチエム(Thime)は、ブタ肝臓由来のα−L−フコシダーゼを用いて、L−フコースがα1→2またはα1→6結合したL−フコシル−メチル−β−D−ガラクトピラノシドを合成している(Carbohydr. Res., 200, 391-402. 1990)。しかしながら、このα−L−フコシダーゼは酵素活性が低く、またこのα−L−フコシダーゼを用いてα1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を製造することはできない。
【0006】
また、微生物由来のα−L−フコシダーゼを用いてL−フコースを含むオリゴ糖を製造する方法として、特開平5−137589号公報には、コリネバクテリウム属細菌由来のα−L−フコシダーゼを用いて、糖転移反応を行わせることにより、α1→2結合したL−フコースを含むオリゴ糖を製造する方法が記載されている。しかしながら、このα−L−フコシダーゼを用いて、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を製造することはできない。
【0007】
さらに、特開平8−242876号公報には、アルカリジェネス属に属する細菌の生産するα−L−フコシダーゼを用いて、糖転移反応を行わせることにより、α1→2結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法が記載されている。しかしながら、このα−L−フコシダーゼを用いて、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を製造することはできない。
【0008】
また、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法として、特開平4−99492号公報には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のα−L−フコシダーゼを用いて、糖転移反応を行わせることにより、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法が記載されている。そして実施例において、受容体としてD−グルコースまたはN−アセチル−D−グルコサミンの単糖を用いて糖転移反応を行うことにより、D−グルコースまたはN−アセチル−D−グルコサミンにα−L−フコースがα1→3結合した二糖類(オリゴ糖)を製造している。
【0009】
しかしながら、上記のα−L−フコシダーゼは、受容体としてD−ガラクトースを用いた場合には糖転移反応は起こらない(Carbohydr. Res., 224, 291-299(1992))。またラクトースまたは1−O−メチルラクトース等の二糖類に糖転移反応を行った実施例はなく、α−L−フコースがα1→3結合した三糖以上のオリゴ糖を製造することはできない。従って、糖転移反応受容体についてはスペクトラムが狭く、生体中での糖鎖の生理活性を明らかにするための試薬としては不向きである。
【0010】
またペニシリウム・マルチコラー(Penicillium multicolor)由来のα−L−フコシダーゼ(Carbohydr. Res., 309, 125-129(1998))も知られているが、このα−L−フコシダーゼの受容体に対する特異性は、前記特開平4−99492号公報のアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のα−L−フコシダーゼと同じであり、従って糖転移反応受容体についてはスペクトラムが狭く、生体中での糖鎖の生理活性を明らかにするための試薬としては不向きである。
【0011】
以上のように、α−L−フコースがα1→3結合した三糖以上のオリゴ糖を合成することができるα−L−フコシダーゼはこれまで知られておらず、このため糖鎖の構造解析や、生体中での糖鎖の生理活性などを研究する上で必要となるα1→3結合したα−L−フコースを含む三糖以上のオリゴ糖およびこのオリゴ糖を合成することができるα−L−フコシダーゼが求められている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、生体中の複合糖質中の糖鎖においてL−フコースを含むオリゴ糖は構造上および生理活性上重要な位置を占めており、特にα1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖は、その新たな生理活性に興味が持たれるところである。従って、糖転移反応受容体の種類や分子量に影響されることなく、L−フコースを受容体の3位に選択的に糖転移反応させ、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法が求められている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、α−L−フコシダーゼを用いて、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を効率よく製造することができるオリゴ糖の製造方法を提案することである。
【0014】
本発明は次のオリゴ糖の製造方法である。
〔1〕 L−フコースの供与体と、L−フコースの受容体とを含む溶液に、下記の酵素学的性質を有するα−L−フコシダーゼを添加して糖移転反応を行う方法であって、前記α−L−フコシダーゼが、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−16944の受託番号で寄託されているアルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687( Alcaligenes sp. KSF-9687 )菌株由来であることを特徴とするα1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法。
(1)作用
・天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα−L−フコシド結合を特異的に加水分解し、L−フコースを遊離する。
・α−L−フコシド結合しているL−フコースを、受容体である単糖または二糖以上のオリゴ糖に糖転移反応を行い、L−フコースを含むオリゴ糖を生成する。
(2)加水分解での基質特異性
・天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα1→2またはα1→3結合しているL−フコースを加水分解する。
・合成基質であるp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシドを加水分解する。
・天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα1→4またはα1→6結合しているL−フコースには作用しない。
(3)糖転移反応での特異性
・α−L−フコシド結合しているL−フコースを、受容体である単糖または二糖以上のオリゴ糖に糖転移反応を行い、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を生成する。
・α1→2、α1→4またはα1→6結合したL−フコースを含むオリゴ糖は生成しない。
(4)至適pHおよび安定pH範囲
・至適pHはpH7.0〜8.0であり、安定pH範囲は、45℃で1時間の保持条件においてpH6.0〜9.0である。
(5)至適温度および安定温度範囲
・至適温度は55℃であり、pH7.0で10分間処理した時、50℃まで安定であり、65℃以上で失活する。
(6)阻害剤などの影響
・酵素活性は銅、水銀またはパラクロルメルクリ安息香酸により著しく阻害されるが、その他の金属イオン、SH試薬および糖によりほとんど影響を受けない。
(7)分子量
・PAGEにより測定した分子量は約102,000である。
・SDS−PAGEにより測定した分子量は約51,000である。
〔2〕 L−フコースの供与体がp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド、o−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシドまたはα−L−フコピラノシルフルオリドである上記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 L−フコースの受容体が単糖または二糖以上のオリゴ糖である上記〔1〕または〔2〕項記載の製造方法。
〔4〕 L−フコースの受容体がD−ガラクトース、1−O−メチル−D−ガラクトース、D−マンノース、ラクトースまたはN−アセチルラクトサミンである上記〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕 製造するオリゴ糖が下記式(1)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−ガラクトースである上記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化7】
Figure 0004132297
〔6〕 製造するオリゴ糖が下記式(2)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−マンノースである上記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化8】
Figure 0004132297
〔7〕 製造するオリゴ糖が下記式(3)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−1−O−メチル−D−ガラクトースである上記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化9】
Figure 0004132297
〔8〕 製造するオリゴ糖が下記式(4)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−ラクトースである上記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化10】
Figure 0004132297
〔9〕 製造するオリゴ糖が下記式(5)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−1−O−メチルラクトースである上記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化11】
Figure 0004132297
〔10〕 製造するオリゴ糖が下記式(6)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−N−アセチルラクトサミンである上記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化12】
Figure 0004132297
(式中、Acはアセチル基である。)
【0015】
本発明で用いるα−L−フコシダーゼはアルカリジェネス(Alcaligenes)属に属する菌株から得ることができる。アルカリジェネス属に属する菌株としては、、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−16944の受託番号で寄託されているアルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687(Alcaligenes sp. KSF-9687)菌株を用いる。この菌株の菌学的性質は次の通りである。
【0016】
《形態的所見》
(1)細胞の形態、大きさ:桿菌、0.7〜0.8×1.5〜2.5μm
(2)多形性:なし
(3)運動性:あり
(4)胞子:なし
(5)べん毛:周ベん毛
(6)グラム染色性:陰性
【0017】
《生育状態》
(1)肉汁寒天平板培養
集落の形状は円形であり、周縁は平滑で、表面隆起は扁平状である。また、集落の色調は半透明である。
(2)肉汁液体培養
生育し混濁する。
(3)ゼラチン穿刺培養
液化しない。
【0018】
Figure 0004132297
Figure 0004132297
【0019】
《その他》
後述する酵素学的および理化学的性質を有するα−L−フコシダーゼを菌体内および菌体外に産出する。
【0020】
以上の性質から、Bergey's Manual of Systematic Bacteriologyを参照し、この菌株をアルカリジェネスに属する菌株と同定し、アルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687(Alcaligenes sp. KSF-9687)と命名した。最も類似した性質を示すものとしてアルカリジェネス・デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans)があげられる。
【0021】
次に、上記アルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687(Alcaligenes sp. KSF-9687)菌株により生産される本発明のα−L−フコシダーゼの酵素学的および理化学的性質について説明する。
(1)酵素の作用
本発明のα−L−フコシダーゼは天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα−L−フコシド結合を特異的に加水分解し、L−フコースを遊離する。またα−L−フコシド結合しているL−フコースを、受容体である単糖または二糖以上のオリゴ糖に糖転移反応を行い、L−フコースを含む二糖または三糖以上のオリゴ糖を生成する。
【0022】
(2)加水分解での基質特異性
本発明のα−L−フコシダーゼは天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα1→2またはα1→3結合しているL−フコースを加水分解する。また合成基質であるp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド(p−ニトロフェニル−α−L−フコシド)を加水分解する。しかし、天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα1→4またはα1→6結合しているL−フコースには作用しない。
【0023】
本発明のα−L−フコシダーゼの種々のα−L−フコシド結合含有基質に対する酵素活性を表1に示した。表1から明らかなように、本発明のα−L−フコシダーゼはp−ニトロフェニル−α−L−フコシドのような合成基質、ならびにα−L−フコピラノシル−(1→2’)−ラクトース(2′−フコシルラクトース)、α−L−フコピラノシル−(1→3’)−ラクトース(3′−フコシルラクトース)などのオリゴ糖およびムチン等の天然基質に作用することが分かる。すなわち、本発明のα−L−フコシダーゼは、合成基質中のα−L−フコシド結合を加水分解し、またオリゴ糖鎖中のα1→2またはα1→3結合しているフコースを加水分解することが分かる。一方、オリゴ糖鎖中および天然高分子基質中のα1→4またはα1→6結合しているL−フコースには作用しないことが分かる。なお、表1中の相対活性は、p−ニトロフェニル−α−L−フコシドに対する活性を100として表示した。
【0024】
【表1】
Figure 0004132297
【0025】
(3)糖転移反応での基質特異性
本発明のα−L−フコシダーゼが触媒する糖転移反応において、L−フコースの供与体となる化合物は、α−L−フコシド結合しているL−フコースを有する化合物である。供与体の具体的なものとしては、p−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド、o−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシドまたはα−L−フコピラノシルフルオリドなどがあげられる。
本発明のα−L−フコシダーゼが触媒する糖転移反応において、L−フコースの受容体となる化合物は、D−ガラクトース、1−O−メチル−D−ガラクトースおよびD−マンノースなどの単糖;ラクトースおよびN−アセチルラクトサミンなどの二糖以上のオリゴ糖等である。
【0026】
本発明のα−L−フコシダーゼが触媒する糖転移反応では、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖が選択的に生成し、α1→2、α1→4またはα1→6結合したL−フコースを含むオリゴ糖は生成しない。すなわち、上記受容体の3位にL−フコースがα1→3フコシド結合したオリゴ糖だけが生成する。糖転移反応により生成するオリゴ糖は、二糖以上のオリゴ糖である。例えば、受容体として単糖を用いた場合には、この受容体にL−フコースがα1→3結合した二糖のオリゴ糖が生成し、受容体として二糖を用いた場合には、この受容体にL−フコースがα1→3結合した三糖のオリゴ糖が生成する。
【0027】
(4)至適pHおよび安定pH範囲
加水分解および糖転移反応の至適pHはpH7.0〜8.0である。安定pH範囲は、45℃で1時間の処理条件の場合、pH6.0〜9.0である。
【0028】
(5)力価の測定法
本発明のα−L−フコシダーゼの加水分解活性の測定は、p−ニトロフェニル−α−L−フコシドを基質として、pH7.0のリン酸カリウム緩衝液中、50℃で反応を行い、グリシン−NaOH緩衝液(pH10.0)を加えて反応を停止させた後、遊離したp−ニトロフェノールの量を410nm吸光度を測定することにより行うことができる。酵素の単位は1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを遊離する酵素量を1ユニットとした。その他の基質については、pH7.0のリン酸カリウム緩衝液中、50℃で30分間反応を行った後、沸騰浴中3分間加熱して反応を停止し、次に遠心分離し、その上清中の遊離L−フコース量をシュードモナス由来のL−フコースデヒドロゲナーゼを用いて測定することにより行うことができる。あるいは、ピリジルアミノ化により蛍光ラベルした基質および生成物を高速液体クロマトグラフィーで分析することにより測定することもできる。
【0029】
また糖転移反応の活性の測定方法は次のようにして行うことができる。すなわち、L−フコース供与体と、受容体となるオリゴ糖とを緩衝液などに溶解し、この溶液に本発明のα−L−フコシダーゼを添加し、37℃付近で反応を行う。反応後、薄層クロマトグラフィー(TLC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを用いて、反応生成物を確認する。
【0030】
(6)至適温度および安定温度
加水分解および糖転移反応の至適温度は55℃である。安定温度範囲は、pH7.0の10mMリン酸緩衝液中に各温度で10分間保温して残存活性を測定した時、50℃まで安定であり、55℃で約60%残存活性を示す。
【0031】
(7)pH、温度による失活の条件
65℃で10分間の処理により完全に失活する。またpH11以上において45℃で60分間の処理によって完全に失活する。
【0032】
(8)阻害剤等の影響
本発明のα−L−フコシダーゼに対する種々の添加物質の影響について検討したところ、加水分解および糖転移反応において、銅(0.1mM)、水銀(0.1mM)またはパラクロルメルクリ安息香酸(0.5mM)により著しく阻害されたが、その他の金属イオン(1mM)およびSH試薬(1mM)によりほとんど影響を受けない。また加水分解反応は、生成物であるL−フコース(1mM)によりほとんど影響を受けない。
【0033】
(9)精製方法
本発明のα−L−フコシダーゼの精製は、既知の精製法が単独または併用して利用され得る。本発明のα−L−フコシダーゼは菌体内および菌体外に生産されるが、酵素の精製には菌体外酵素を用いる方が望ましい。例えば、培養液を濾過または遠心分離にかけ菌体を除去し、次いで塩析法、各種クロマトグラフ法等を適宜に組み合せて行うことができる。精製法の一例を次に示す。
【0034】
培養終了後、ストリームライン−ディアエ(ファルマシア製)に菌体を含む培養物を通し、吸着した酵素を溶出する。活性画分を最終濃度1Mになるよう硫酸アンモニウムを加え、ブチルトヨパール650Mカラムに通し、活性画分を溶出する。活性画分を集め、フコース−セルロファインカラムに通し、吸着した酵素を溶出する。活性画分を、一晩透析を行い、FPLC−Mono Qカラムに通し、活性画分を溶出する。溶出された活性画分はこの時点で電気泳動的に単一バンドを示すが、ポリッシングのためセファクリルS−300HRカラムを用いてゲル濾過を行うこともできる。
【0035】
(10)分子量
本発明のα−L−フコシダーゼの分子量は、PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気電気泳動)法により約102,000と測定された。
【0036】
(11)ポリアクリルアミド電気泳動
精製されたα−L−フコシダーゼは、PAGEおよびSDS−PAGE電気泳動において単一のバンドを示した。また、この時の分子量はそれぞれ102,000、51,000と測定された。
【0037】
以上のような本発明のα−L−フコシダーゼは菌体内および菌体外に生産されるため、菌から酵素を得る際には菌体外に生産された酵素を分離するだけで容易に得ることができる。例えば、菌の培養液からα−L−フコシダーゼを分離するだけで容易に得ることができる。このため、菌体を破砕して活性画分を抽出する操作を必要としないので、工業的生産に適している。また本発明のα−L−フコシダーゼは中性付近に至適pHを有し、しかも熱に安定であるので、糖鎖の構造解析や機能の研究に好適に利用することができる。
【0038】
上記性質をもつ新規なα−L−フコシダーゼを用いることによって、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法を確立した。本発明によるL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法を以下に詳細に記述する。
本発明のオリゴ糖の製造方法は、L−フコースの供与体と、L−フコースの受容体とを含む溶液に、前記本発明のα−L−フコシダーゼを添加して糖移転反応を行って、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を製造する方法である。
【0039】
上記L−フコースの供与体としては、p−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド、o−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシドまたはα−L−フコピラノシルフルオリドなどがあげられる。これらの供与体は精製品はもちろん、これらの化合物を含む化合物などを用いることもできる。
上記L−フコースの受容体としては、D−ガラクトース、1−O−メチル−D−ガラクトース、D−マンノースなどの単糖;ラクトースまたはN−アセチルラクトサミンなどの二糖以上のオリゴ糖等があげられる。これらの受容体は精製品はもちろん、これらの糖を含む糖などを用いることもできる。
【0040】
本発明のオリゴ糖の製造方法では、前記本発明のα−L−フコシダーゼを用いているので、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を選択的に製造することができる。すなわち、本発明のオリゴ糖の製造方法では、α1→2、α1→4またはα1→6結合したL−フコースを含むオリゴ糖は生成しない。本発明のオリゴ糖の製造方法で選択的に得られるオリゴ糖は、前記受容体の3位にL−フコースがα1→3フコシド結合したオリゴ糖、すなわちα−L−フコピラノシル(1→3)基を含むオリゴ糖である。
【0041】
本発明のオリゴ糖の製造方法では、受容体を選択することにより、二糖または三糖以上のオリゴ糖を製造することができる。例えば受容体として単糖を用いることにより、L−フコースがα1→3結合した二糖のオリゴ糖を製造することができる。また、受容体として二糖を用いることにより、L−フコースがα1→3結合した三糖のオリゴ糖を製造することができる。
【0042】
本発明のオリゴ糖の製造方法の好ましい方法として、次の方法が例示できる。まず、リン酸カリウム緩衝液と、ジメチルスルフォキシド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリル等の水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒との混合溶液を調製する。この混合溶液に前記受容体および供与体を添加し、27℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃の間で6時間〜72時間、好ましくは18時間〜48時間反応させる。このときの受容体および供与体の濃度は0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜10重量%とするのが望ましい。また受容体と供与体との混合比は、重量比で1:1〜20:1、好ましくは2:1〜10:1とするのが望ましい。反応温度は27℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とするのが望ましい。反応pHは6〜9、好ましくはpH7〜8とするのが望ましい。使用するα−L−フコシダーゼは精製したほうが好ましいが、粗精製の酵素を使用することもできる。
【0043】
上記のような方法によりL−フコースの糖転移反応を行うことにより、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を選択的に容易に製造することができる。このような方法により製造することができるオリゴ糖の具体的なものとしては、前記式(1)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−ガラクトース、前記式(2)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−マンノース、前記式(3)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−1−O−メチル−D−ガラクトース、前記式(4)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−ラクトース、前記式(5)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−1−O−メチルラクトース、前記式(6)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−N−アセチルラクトサミンなどがあげられる。これらはいずれも新規な化合物であり、糖鎖の構造解析、糖の機能の研究および糖の代謝の研究などに有用であるほか、生理活性が期待される。
【0044】
【発明の効果】
本発明で用いるα−L−フコシダーゼは天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα−L−フコシド結合を特異的に加水分解し、しかもα1→3結合したα−L−フコースを含む三糖以上のオリゴ糖を合成することができるので、糖鎖の構造解析や機能の研究に有用である。
【0046】
本発明で用いるアルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687(Alcaligenes sp. KSF-9687)菌株はα−L−フコシダーゼ生産能を有しており、しかも菌体外にこの酵素を生産するので、この菌株を用いることにより、α−L−フコシダーゼを容易に製造、精製することができる。
【0047】
本発明のL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法は、上記α−L−フコシダーゼを用いて糖転移反応を行っているので、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を容易に製造することができる。
【0048】
本発明で製造するα1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖は新規な化合物であり、糖鎖の構造解析、糖の機能の研究および糖の代謝の研究などに有用である。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
p−ニトロフェニル−α−L−フコシド0.05重量%、グルコース1重量%、ペプトン0.5重量%、カザミノ酸0.25重量%、KH2PO4 0.1重量%、MgSO4・7H2O 0.02重量%および寒天2重量%を含む培地をpH9.0に調整した。また静岡県掛川市より採取した土壌を滅菌水により希釈し、土壌懸濁液とした。この土壌懸濁液を上記培地からなる平板培地上に広げ、37℃で2日間培養を行った。培養後、培地中の黄色く発色しているコロニーを分離した。このようにしてアルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687(Alcaligenes sp. KSF-9687)菌株をスクリーニングした。
【0051】
実施例2
《α−L−フコシダーゼの製造》
ペプトン0.5重量%、酵母エキス0.25重量%、塩化ナトリウム0.5重量%(pH7.2)を含む培地500mlにアルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687(Alcaligenes sp. KSF-9687)菌株を植菌し、容振とう培養して種培養液とした。次いで種培養と同組成の培地3 literを5 liter容ジャーファーメンター3基に入れ、121℃で20分間殺菌した。冷却後、上記の種培養液を接種し、37℃で2日間、毎分3 literの通気量と毎分300回転の攪拌速度の条件で培養した。
【0052】
培養終了後、予め10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、同緩衝液で平衡化したストリームライン−ディアエカラム(ファルマシア製、5.0×17cm)に菌体を含む培養物を通し、吸着した酵素を0.2M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液で溶出した。活性画分を集め、最終濃度1Mになるように硫酸アンモニウムを溶解した。1M硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液で予め平衡化したブチルヨパール650Mカラム(東ソー製、2.6×30cm)に通し、1M〜0Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液のリニアーグラジェント法で溶出した。溶出された活性画分を集めて予め10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したフコースセルロファインカラム(1.6×7.5cm)に通し、吸着した酵素を50mM L−フコースを含む同緩衝液で溶出した。活性画分を一晩10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて透析を行った。次に同緩衝液にて平衡化したFPLC−Mono Q(ファルマシア製)に通し、吸着した酵素を0M〜0.3Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液のリニアーグラジェント法で溶出した。
【0053】
この時点で当酵素は電気泳動的に単一バンドを与えるが、ポリッシングのため活性画分を濃縮後セファクリルS−300HR(ファルマシア製、1.6×60cm)を行い、α−L−フコシダーゼの精製標品74μg(比活性126units/mg、収率20重量%)を得た。
【0054】
実施例3
実施例2で得られたα−L−フコシダーゼの種々の基質に対する加水分解活性を次のようにして測定した。
p−ニトロフェニル−α−L−フコシドを基質とした場合は、pH7.0の100mMリン酸カリウム緩衝液に100μlの酵素および200μlの基質を加え、50℃で15分間反応を行った後、グリシン−NaOH緩衝液(pH10.0)を加えて反応を停止させた。次に、遊離したp−ニトロフェノールの量を410nm吸光度を測定することにより定量した。その他の基質についてはpH7.0の100mMリン酸カリウム緩衝液に100μlの酵素および200μlの基質を加え、50℃で30分間反応を行った後、沸騰浴中で3分間加熱して反応を停止し、次に遠心分離し、上清中の遊離L−フコース量をシュードモナス由来のL−フコースデヒドロゲナーゼを用いて定量した。結果は表1に示した通りである。
【0055】
実施例4
《α−L−フコピラノシル−(1→3)−D−ガラクトースの合成》
L−フコースの受容体としての単糖のD−ガラクトース(500mg)と、L−フコースの供与体としてのp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド(50mg)とを、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、10ml)とジメチルスルフォキシド(1000μl)との混合溶液に溶解した。この混合溶液に、実施例2で得られたα−L−フコシダーゼを加え、37℃で48時間糖転移反応を行った。
【0056】
得られた反応物を活性炭素カラムクロマトグラフィーにかけ、0〜20%(v/v)のエタノール水溶液グラジエント(合計400ml)で溶出して、二糖類の画分に相当する分画を集めた。集めた画分の溶媒を蒸留で留去したところ、非晶性固体を20.5mg得た。このときの回収率は18重量%であった。
【0057】
この非晶性固体の分子量を測定したところ326であった。また1H−NMRを測定し、得られたスペクトルを解析した。得られた1H−NMRのスペクトラムを図1に示す。これらの結果から、得られた非晶性固体は前記式(1)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−ガラクトース(3−フコピラノシル−D−ガラクトース)であることが判明した。
【0058】
実施例5
《α−L−フコピラノシル−(1→3)−D−マンノースの合成》
L−フコースの受容体としての単糖のD−マンノース(500mg)と、L−フコースの供与体としてのp−ニトロフェニルα−L−フコピラノシド(100mg)とを、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、10ml)とディメチルスルフォキシド(1000μl)との混合溶液に溶解した。この混合溶液に、実施例2で得られたα−L−フコシダーゼを加え、37℃で48時間糖転移反応を行った。
【0059】
得られた反応物を活性炭素カラムクロマトグラフィーにかけ、0〜20%(v/v)のエタノール水溶液グラジエント(合計400ml)で溶出して、二糖類の画分に相当する分画を集めた。集めた画分の溶媒を蒸留で留去したところ、非晶性固体を10.3mg得た。このときの回収率は9重量%であった。
【0060】
この非晶性固体の分子量を測定したところ326であった。また1H−NMRを測定し、得られたスペクトルを解析した。得られた1H−NMRのスペクトラムを図2に示す。これらの結果から、得られた非晶性固体は前記式(2)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−マンノース(3−フコピラノシル−D−マンノース)であることが判明した。
【0061】
実施例6
《α−L−フコピラノシル−(1→3)−1−O−メチル−D−ガラクトースの合成》
L−フコースの受容体としての単糖の1−O−メチル−D−ガラクトース(300mg)と、L−フコースの供与体としてのp−ニトロフェニルα−L−フコピラノシド(24mg)とを、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、4.2ml)とディメチルスルフォキシド(420μl)との混合溶液に溶解した。この混合溶液に、実施例2で得られたα−L−フコシダーゼを加え、37℃で48時間糖転移反応を行った。
【0062】
得られた反応物を活性炭素カラムクロマトグラフィーにかけ、0〜20%(v/v)のエタノール水溶液グラジエント(合計400ml)で溶出して、二糖類の画分に相当する分画を集めた。集めた画分の溶媒を蒸留で留去したところ、非晶性固体を10mg得た。このときの回収率は23重量%であった。
【0063】
この非晶性固体の分子量を測定したところ340であった。また1H−NMRを測定し、得られたスペクトルを解析した。得られた1H−NMRのスペクトラムを図3に示す。これらの結果から、得られた非晶性固体は前記式(3)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−1−O−メチル−D−ガラクトース(3−フコピラノシル−1−O−メチルガラクトース)であることが判明した。
【0064】
実施例7
《α−L−フコピラノシル−(1→3’)−ラクトースの合成》
L−フコースの受容体としての二糖のラクトース(500mg)と、L−フコースの供与体としてのp−ニトロフェニルα−L−フコピラノシド(50mg)とを、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、4.2ml)とジメチルスルフォキシド(420μl)との混合溶液に溶解した。この混合溶液に、実施例2で得られたα−L−フコシダーゼを加え、37℃で48時間糖転移反応を行った。
【0065】
得られた反応物を活性炭素カラムクロマトグラフィーにかけ、0〜20%(v/v)のエタノール水溶液グラジエント(合計400ml)で溶出して、三糖類の画分に相当する分画を集めた。集めた画分の溶媒を蒸留で留去したところ、非晶性固体を20.5mg得た。このときの回収率は23重量%であった。
【0066】
この非晶性固体の分子量を測定したところ488であった。また1H−NMRを測定し、得られたスペクトルを解析した。得られた1H−NMRのスペクトラムを図4に示す。これらの結果から、得られた非晶性固体は前記式(4)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−ラクトース(3′−フコピラノシル−ラクトース)であることが判明した。
【0067】
実施例8
《α−L−フコピラノシル−(1→3’)−1−O−メチルラクトースの合成》
L−フコースの受容体としての二糖の1−O−メチルラクトース(300mg)と、L−フコースの供与体としてのp−ニトロフェニルα−L−フコピラノシド(24mg)とを、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、4.2ml)とディメチルスルフォキシド(420μl)との混合溶液に溶解した。この混合溶液に、実施例2で得られたα−L−フコシダーゼを加え、37℃で48時間糖転移反応を行った。
【0068】
得られた反応物を活性炭素カラムクロマトグラフィーにかけ、0〜20%(v/v)のエタノール水溶液グラジエント(合計400ml)で溶出して、二糖類の画分に相当する分画を集めた。集めた画分の溶媒を蒸留で留去したところ、非晶性固体を10mg得た。このときの回収率は23重量%であった。
【0069】
この非晶性固体の分子量を測定したところ502であった。また1H−NMRを測定し、得られたスペクトルを解析した。得られた1H−NMRのスペクトラムを図5に示す。これらの結果から、得られた非晶性固体は前記式(5)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−1−O−メチルラクトース(3′−フコピラノシル−1−O−メチルラクトース)であることが判明した。
【0070】
実施例9
《α−L−フコピラノシル−(1→3’)−N−アセチルラクトサミンの合成》
L−フコースの受容体としての二糖のN−アセチルラクトサミン(500mg)と、L−フコースの供与体としてのp−ニトロフェニルα−L−フコピラノシド(30mg)とを、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、5.0ml)とディメチルスルフォキシド(500μl)との混合溶液に溶解した。この混合溶液に、実施例2で得られたα−L−フコシダーゼを加え、37℃で48時間糖転移反応を行った。
【0071】
得られた反応物を活性炭素カラムクロマトグラフィーにかけ、0〜20%(v/v)のエタノール水溶液グラジエント(合計400ml)で溶出して、二糖類の画分に相当する分画を集めた。集めた画分の溶媒を蒸留で留去したところ、非晶性固体を8.4mg得た。このときの回収率は15重量%であった。
【0072】
この非晶性固体の分子量を測定したところ529であった。また1H−NMRを測定し、得られたスペクトルを解析した。得られた1H−NMRのスペクトラムを図6に示す。これらの結果から、得られた非晶性固体は前記式(6)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−N−アセチルラクトサミン(3′−フコピラノシル−N−アセチルラクトサミン)であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4で得られた1H−NMRのスペクトラムである。
【図2】実施例5で得られた1H−NMRのスペクトラムである。
【図3】実施例6で得られた1H−NMRのスペクトラムである。
【図4】実施例7で得られた1H−NMRのスペクトラムである。
【図5】実施例8で得られた1H−NMRのスペクトラムである。
【図6】実施例9で得られた1H−NMRのスペクトラムである。

Claims (10)

  1. L−フコースの供与体と、L−フコースの受容体とを含む溶液に、下記の酵素学的性質を有するα−L−フコシダーゼを添加して糖移転反応を行う方法であって、前記α−L−フコシダーゼが、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−16944の受託番号で寄託されているアルカリジェネス・スピーシス・KSF−9687( Alcaligenes sp. KSF-9687 )菌株由来であることを特徴とするα1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖の製造方法。
    (1)作用
    ・天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα−L−フコシド結合を特異的に加水分解し、L−フコースを遊離する。
    ・α−L−フコシド結合しているL−フコースを、受容体である単糖または二糖以上のオリゴ糖に糖転移反応を行い、L−フコースを含むオリゴ糖を生成する。
    (2)加水分解での基質特異性
    ・天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα1→2またはα1→3結合しているL−フコースを加水分解する。
    ・合成基質であるp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシドを加水分解する。
    ・天然高分子基質、オリゴ糖または合成基質中のα1→4またはα1→6結合しているL−フコースには作用しない。
    (3)糖転移反応での特異性
    ・α−L−フコシド結合しているL−フコースを、受容体である単糖または二糖以上のオリゴ糖に糖転移反応を行い、α1→3結合したL−フコースを含むオリゴ糖を生成する。
    ・α1→2、α1→4またはα1→6結合したL−フコースを含むオリゴ糖は生成しない。
    (4)至適pHおよび安定pH範囲
    ・至適pHはpH7.0〜8.0であり、安定pH範囲は、45℃で1時間の保持条件においてpH6.0〜9.0である。
    (5)至適温度および安定温度範囲
    ・至適温度は55℃であり、pH7.0で10分間処理した時、50℃まで安定であり、65℃以上で失活する。
    (6)阻害剤などの影響
    ・酵素活性は銅、水銀またはパラクロルメルクリ安息香酸により著しく阻害されるが、その他の金属イオン、SH試薬および糖によりほとんど影響を受けない。
    (7)分子量
    ・PAGEにより測定した分子量は約102,000である。
    ・SDS−PAGEにより測定した分子量は約51,000である。
  2. L−フコースの供与体がp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド、o−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシドまたはα−L−フコピラノシルフルオリドである請求項1記載の製造方法。
  3. L−フコースの受容体が単糖または二糖以上のオリゴ糖である請求項1または2記載の製造方法。
  4. L−フコースの受容体がD−ガラクトース、1−O−メチル−D−ガラクトース、D−マンノース、ラクトースまたはN−アセチルラクトサミンである請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 製造するオリゴ糖が下記式(1)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−ガラクトースである請求項1ないしのいずれかに記載の製造方法。
    Figure 0004132297
  6. 製造するオリゴ糖が下記式(2)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−D−マンノースである請求項1ないしのいずれかに記載の製造方法。
    Figure 0004132297
  7. 製造するオリゴ糖が下記式(3)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3)−1−O−メチル−D−ガラクトースである請求項1ないしのいずれかに記載の製造方法。
    Figure 0004132297
  8. 製造するオリゴ糖が下記式(4)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−ラクトースである請求項1ないしのいずれかに記載の製造方法。
    Figure 0004132297
  9. 製造するオリゴ糖が下記式(5)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−1−O−メチルラクトースである請求項1ないしのいずれかに記載の製造方法。
    Figure 0004132297
  10. 製造するオリゴ糖が下記式(6)で表されるα−L−フコピラノシル−(1→3’)−N−アセチルラクトサミンである請求項1ないしのいずれかに記載の製造方法。
    Figure 0004132297
    (式中、Acはアセチル基である。)
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