JP4472100B2 - ポリビニルアルコール系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、熱溶融成形性、耐湿性、水崩壊性、耐久性、強度、形態安定性に優れた成形物を作製し得る樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルアルコールからなる成形物は、水崩壊性、力学物性、耐油性、生分解性等に優れており、農業用、土木用、工業用、医療用、包装用、レジャー用、玩具、雑貨、日用品、容器、部品等の幅広い分野で使用されている。しかしながら、従来、ポリビニルアルコールは融点と分解温度が近いため、熱溶融成形にて成形物を製造することが困難であった。また、射出成形などのように樹脂の流動性を要求される成形方法の場合、ポリビニルアルコールは融点や溶融粘度が比較的高いため、成形品の形状が複雑になると完全に樹脂が充填された成形品を得る事ができず、成形が著しく困難であることが多かった。ポリビニルアルコールに熱溶融性を付与するため、これまで種々の検討がなされてきた。例えば、けん化度を下げたり、他のコモノマーを共重合させたり、可塑剤を添加したりすることで融点や溶融粘度を下げて熱溶融性を付与する方法や重合度を下げて溶融粘度を低下させる方法等が検討されてきた。
【0003】
しかし、けん化度を下げると熱安定性が低下するため、成形時に酢酸臭や分解臭が発生したり、成形物にゲルやブツが発生することがあり問題となることがあるばかりか、得られた成形物を高湿度下に放置した際の強度や弾性率が大きく低下したり、変形したりすることがある。また共重合した場合も、得られた成形物を高湿下で放置した際の強度や弾性率が低下する。さらに液状の可塑剤を添加して融点や、溶融粘度を下げた場合も、得られた成形物を高湿下で放置した際の強度や弾性率が低下したり変形したりすることがあるばかりか、可塑剤が成形物表面に滲み出たりすることがあり、問題となることが多い。また重合度を下げた場合、得られた成形品の物性、特に耐衝撃性が著しく低下するため、問題となることとが多かった。
【0004】
さらに近年、ポリビニルアルコールの持つ優れた水溶性を維持しながら、上記に示すような高湿度下での物性や形態安定性を維持する、即ち耐水性を上げることが要求されている。一般的に、けん化度を上げるなどしてビニルアルコール系重合体の耐水性を上げると、水溶性が低下し、水溶性を維持しながら耐水性を付与することは困難であった。フィラーを添加したりすることによる検討もなされているが、耐水性、耐湿性、形態安定性への効果は不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような背景下において、熱溶融成形性、耐湿性、水崩壊性、、耐久性、強度、形態安定性に優れた成形物を作製し得る樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、重合度200〜2000、けん化度90〜99.5モル%で、カルボン酸およびラクトン環を合計で0.016〜0.412モル%含有し、かつ、エチレン1〜19モル%を主鎖に含有する熱溶融性のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種の固体可塑剤を1〜50重量部含有し、かつ、液体可塑剤の含有量が8重量部未満である樹脂組成物を提供することにより達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル単独またはビニルエステル共重合体のけん化物である。ここでビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは一種あるいは二種以上混合して使用してもよい。
【0008】
本発明に用いられるポリビニルアルコールは、エチレンで変性されており、得られる成形物の耐水性、耐湿性、形態安定性等の点で好ましい。エチレンを特定量共重合することで、得られる成形物の耐水性や耐湿性、形態安定性を損なうことなく、ポリビニルアルコール系樹脂に熱溶融性を付与できるのは驚くべきことである。エチレンの含有量は1〜19モル%であり、2〜15モル%であることがより好ましく、3〜12モル%であることが特に好ましい。エチレンの含有量が1モル%未満では、共重合による効果が顕著に現れず、熱溶融性が低下することがある。一方、エチレンの含有量が19モル%を超えると、得られた成形物の水崩壊性が低下し、用途によっては問題となる場合がある。
【0009】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、α−オレフィン以外の変性がなされていてもよい。ビニルエステルと共重合可能なビニルモノマーとしてはアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;アリルアルコール;ビニルトリメトキシシラン;N−ビニル−2−ピロリドン、イソプロペニルアルコール、7−オクテン−1−オール、アリルアセテート、イソプロペニルアセテート等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂の重合度は200〜2000であることが必要であり、250〜1500であることが好ましく、300〜1000であることが特に好ましい。重合度が200より低いと得られた成形物の物性、特に耐衝撃性や力学物性が低下する。一方、重合度が2000より高いと、溶融粘度が高くなり、熱溶融成形が著しく困難となる。
【0011】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、90〜99.5モル%であることが必要であり、90〜99モル%であることが好ましく、90〜98.5モル%であることが特に好ましい。けん化度が90モル%未満では、得られた成形物の耐水性、耐湿性、形態安定性が低下するばかりか、成形時の熱安定性が悪くなり、酢酸臭を発生したりすることがある。一方、けん化度が99.5モル%を超えると、成形物の水崩壊性が低下する。
【0012】
さらにポリビニルアルコール系樹脂は、これらのコモノマーの種類や量、けん化度、重合度のうち少なくともひとつが異なるポリビニルアルコール系樹脂を混合して使用してもよい。
【0013】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、熱溶融性であることが必要である。熱溶融性とは、熱溶融成形時において著しい劣化やゲル化等の変質をきたさないような成形条件を設定し得るものであり、融点が170〜230℃のポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。融点が170℃未満の場合は、ポリビニルアルコール系樹脂の熱安定性や、耐水性、耐湿性、形態安定性が低下するため、問題となることがある。一方、融点が230℃を超えると、ポリビニルアルコール系樹脂の熱分解温度と近くなるため、成形が困難となる場合がある。また、190℃〜230℃の範囲のいずれかの温度で、2160g荷重におけるメルトフローインデックスが0.1〜500g/10分のものが一般的に用いられる。
【0014】
さらに、本発明者らは、本発明に用いられるα−オレフィン変性ポリビニルアルコール系樹脂は、カルボン酸およびラクトン環の含有量が、0.02〜0.4モル%であることが好ましく、0.022〜0.37モル%が好ましく、0.024〜0.33モル%がより好ましく、0.025〜0.3モル%が特に好ましいことを見出した。本発明におけるカルボン酸はそのアルカリ金属塩を包含し、アルカリ金属としてはカリウム、ナトリウムなどがあげられる。カルボン酸およびラクトン環の含有量が0.02モル%未満の場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を熱溶融成形した際の、増粘、ゲル化が顕著となり、溶融成形性、成形流動性が低下する場合がある。一方、カルボン酸およびラクトン環の含有量が0.4モル%を超えると、ポリビニルアルコール系樹脂の熱分解により溶融成形性が悪くなることがあるばかりか、得られた成形物の耐水性、耐湿性、形態安定性が低下することがある。
【0015】
カルボン酸およびラクトン環を有するα−オレフィン変性ビニルアルコール系樹脂の製法としては、▲1▼酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体とα−オレフィンとカルボン酸およびラクトン環を生成する能力を有する単量体とを共重合して得られたビニルエステル系樹脂を、アルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化する方法、▲2▼メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのカルボン酸を含有するチオール化合物の存在下で、α−オレフィンとビニルエステル系単量体を重合した後それをけん化する方法、▲3▼酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合する際に、ビニルエステル系単量体およびビニルエステル系樹脂のアルキル基への連鎖移動反応を起こし、高分岐ビニルエステル系樹脂を得た後にけん化する方法、▲4▼エポキシ基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共樹脂をカルボキシル基を有するチオール化合物と反応させた後けん化する方法、▲5▼PVAとカルボキシル基を有するアルデヒド類とのアセタール化反応による方法などが挙げられる。
【0016】
ポリビニルアルコール系樹脂のカルボン酸およびラクトン環の含有量はプロトンNMRのピークから求めることができる。けん化度99.95モル%以上に完全にけん化後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間して分析用のPVAを作製した。
上記▲1▼の場合、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。アクリル酸、アクリル酸エステル類、アクリルアミドおよびアクリルアミド誘導体の単量体は、主鎖メチンに由来するピーク(2.0ppm)を用いて、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミドおよびメタクリルアミド誘導体の単量体は、主鎖に直結するメチル基に由来するピーク(0.6〜1.1ppm)を用いて、常法により含有量を算出した。フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体は、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解後トリフルオロ酢酸を数滴加え、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。定量は4.6〜5.2ppmに帰属されるラクトン環のメチンピークを用いて常法により含有量を算出した。
▲2▼および▲4▼の場合、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.8ppm)を用いて含有量を算出した。
▲3▼の場合、作成した分析用PVAをメタノール−D4/D2O=2/8に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定した。末端のカルボン酸もしくはそのアルカリ金属塩のメチレン由来ピーク(下記の化1および化2)は2.2ppm(積分値A)および2.3ppm(積分値B)に帰属し、末端のラクトン環のメチレン由来ピークは(下記の化3)は2.6ppm(積分値C)、ビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.5〜4.15ppm(積分値D)に帰属し、下記の式でカルボン酸およびラクトン環の含有量を算出する。ここで△は変性量(モル%)を表す。
カルボン酸およびラクトン環の含有量(モル%)
=50×(A+B+C)×(100−△)/(100×D)
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
▲5▼の場合、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。アセタール部分のメチンに由来するピーク4.8〜5.2ppm(下記の化4)を用いて、常法により含有量を算出した。
【0021】
【化4】
【0022】
本発明の樹脂組成物には、上記のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、固体性可塑剤1〜50部が配合されていることが必要であり、好適には3〜45重量部であり、最適には5〜40重量部である。ここで固体性可塑剤とは溶融成形時にはポリビニルアルコール系樹脂の可塑剤として作用し、成形後には固体となる物質のことであり、具体的には20℃において固体であり、かつポリビニルアルコールの融点以上の温度においては、液状となり、ポリビニルアルコール系樹脂の成形流動性を改善しうる物質のことであり、水分散性の物質であることが好ましく、ポリビニルルコールと溶融混練した際に、分散性、相溶性の良い物質であることがさらに好ましい。このような物質として、固体多価アルコール、とくに炭素数3〜30、好適には5〜30の固体多価アルコールが挙げられ、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が一例として挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲で、グリセリン、ジグリセリンやそれらの誘導体、ポリエチレングリコール、水等公知の液体可塑剤を併用することもできる。液体可塑剤は、ポリビニルアルコール系樹脂組成物の成形流動性や成形物の柔軟性を改善できるが、添加量が多いと、成形物の耐水性や耐湿性が低下したり、可塑剤が成形品表面ににじみ出たりして問題になることがある。添加量はポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、8重量部未満である。また、他の添加剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、離型剤、フィラー、増量材、界面活性剤など)を本発明の目的が阻害されない範囲で使用できる。
【0024】
さらに本発明者らは、本発明の樹脂組成物にエラストマーを配合することが好ましいことを見出した。即ち固体可塑剤を添加することで、用途によっては成形物の耐衝撃性や伸度が低下し問題となることがある。エラストマーを添加することで、耐衝撃性や伸度を向上させることができる。また液体可塑剤のように成形物の耐水性や耐湿性が低下したり、可塑剤が表面に滲み出したりすることがない。エラストマーの添加量が少ないと耐衝撃性や伸度の向上効果が顕著でなくなり、多いと水崩壊性や強度が低下するため、エラストマーはポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、通常1〜50重量部の範囲で添加され、3〜45重量部が好ましく、5〜40重量部が特に好ましい。
【0025】
ここでエラストマーとは、本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂の耐衝撃性や伸度を向上しうる物質であり、通常は常温で固体であり、ポリビニルアルコール系樹脂に溶融混練した際の分散性、相溶性に優れていることが好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の耐衝撃性や伸度を向上しうる物質であれば、樹脂組成物を成形する際に、該エラストマーは溶融されていても良くそうでなくてもよい。このような物質の一例としてゴム系ポリマー、ゴム系ポリマーをブレンドしたポリオレフィン類等の熱可塑性樹脂、無水マレイン酸やイタコン酸やアクリル酸あるいはグリシジル(メタ)アクリレートなどの極性官能基物質を付加あるいはグラフトしたポリオレフイン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0026】
また本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂組成物及びそれを溶融成形してなる成形物には、水崩壊性、生分解性、光分解性を有する生分解性樹脂や汎用樹脂等の他の熱可塑性樹脂を、本発明の目的が阻害されない範囲でブレンドしたり、積層したりして用いることができる。これら他の熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、生分解性樹脂として、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が一例として挙げられ、汎用樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリスチレン、ABS樹脂、ナイロン、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0027】
本発明の成形物は、上記の樹脂組成物を熱溶融成形することで作製される。成形物の形状や大きさに特に制限は無く、用途、目的により適宜選択でき、塊状、板状、棒状、箱状、円柱状、円筒状、フィルム、ボトル、容器、カップ、シート、キャップ等の成形物に加工される。熱溶融成形法の種類には特に限定が無く、成形物の形状や用途により、公知の方法の中から適宜選択される。成形方法の一例として、射出成形法、押出成形法、Tダイ押出成形法、インフレーション成形法、プレス成形法、中空成形法、真空成形法、圧空成形法などが挙げられる。
【0028】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂組成物は熱溶融成形性に優れており、所望の成形方法にて種々の成形物が作製でき、また得られた成形物は、耐湿性、水崩壊性、、耐久性、強度、形態安定性に優れているため、農業用、土木用、工業用、医療用、包装用、レジャー用、玩具、雑貨、日用品、容器、部品など様々な用途で使用される。
【0029】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例は、実施例1〜7、9〜12および15であり、実施例8、13、14および16は参考例である。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。また、ポリビニルアルコールの分析方法は下記の要領で測定した。
【0030】
PVAの分析方法
PVAの分析方法は特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。
本発明のエチレン変性量は変性ポリビニルエステルを用いて、カルボン酸およびラクトン環の含有量はPVAを用いて500 MHz 1H-NMR(JEOL GX-500)装置による測定から前述のとおり求めた。
本発明のPVAの融点は、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を調べた。
【0031】
実施例1
重合度450、けん化度96.3モル%、エチレン変性度8モル%、カルボン酸およびラクトン環含有率0.054%のエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂100重量部と、固体可塑剤としてペンタエリスリトール20部、熱可塑性エラストマー(グリシジルメタアクリレート変性エチレンーエチルアクリレート共重合体){商品名「レクスパール RA3150」(日本ポリオレフィン社製)}15部をドライブレンド後、2軸押出機を用い、225℃で溶融混練することでペレットを作製した。さらに、ペレットからシリンダー温度、ノズル温度ともに230℃で、金型温度40℃の条件で射出成形を行い、縦5cm、横5cm、高さ1cm、肉厚0.8mmの箱形形状の射出成形品を作製した。成形は1ショットで成形品が6個取りの金型を用いて行った。成形性、成形品の水崩壊性、耐衝撃性、形態安定性、外観を以下の基準で評価した。樹脂組成と結果を表1〜2に示す。
【0032】
評価方法
(1)成形性
成形品への樹脂充填程度から以下の基準で評価した。
◎:樹脂が完全に充填しており、充填不足(不良品)となった成形品はなかった。
○:樹脂がほぼ完全に充填しているが、まれに充填不足(不良品)となる成形品が認められた。
△:樹脂が充填不足(不良品)となる成形品がかなり認められた。
×:全ての成形品において樹脂が充填不足となり、完全に充填した成形品は全く得られなかった。
(2)水崩壊性
得られた成形品を、30℃の水中に28日間浸漬し、崩壊程度を目視で観察した。
◎:成形品のほとんどが崩壊しており、形態をとどめていない。
○:成形品の一部が崩壊し、かなり(指でつぶせる程度に)膨潤しているが、形態はとどめている。
△:成形品のごく一部が崩壊し、膨潤はわずか(指ではつぶせない程度)である。
×:成形品はほとんど崩壊しておらず、膨潤も極めて少ない。もしくは全く膨潤していない。
(3)耐衝撃性
成形品に30gの重り(分銅)を取付け、5℃の恒温槽で1日温度調節後、コンクリート地面に3m高さから落下させ、外観変化を以下の基準で評価した。
◎:割れたり欠けたりすることが全くなく、外観にも変化がない。
○:割れたり欠けたりはしなかったが、外観に白化等の異常が認められた。
:ごく一部が欠けたり、小さな亀裂が認められた。
×:成形品が破断した。
(4)形態安定性
成形品を20℃、65%RHで28日間放置後、変形程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
:変形が全く認められない。
○:変形はほとんど認められない。
△:やや変形が認められる。
×:かなり変形している。
(5)成形品表面外観
成形品を20℃、65%RHで28日間放置後の成形品表面を目視で観察し、固体可塑剤、またはグリセリンが表面に滲み出す程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
:表面に可塑剤の滲み出しが全く認められない。
:表面にごく僅かに可塑剤の滲み出しが認められる。
×:表面にかなり可塑剤の滲み出しが認められる。
【0033】
実施例2〜4、比較例1〜3
固体性可塑剤、熱可塑性エラストマーの添加量が異なる以外は、実施例1と同様に、射出成形品を作製し、評価した。樹脂組成と結果を表1〜2に示す。
【0034】
実施例5〜13、比較例4〜7
ポリビニルアルコールの重合度、けん化度、エチレン変性度、カルボン酸およびラクトン環含有率が異なる以外は、実施例1と同様に射出成形品を作製し、評価した。樹脂組成と結果を表1〜2に示す。
【0035】
実施例14
ポリビニルアルコールに、重合度410、けん化度97.8モル%、プロピレン変性度3モル%、カルボン酸およびラクトン環含有率0.062%であるプロピレン変性ポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様に射出成形品を作製し、評価した。樹脂組成と結果を表1〜2に示す。
【0036】
実施例15、16
ペレット化の際に液状可塑剤として、グリセリンを併用した以外は、実施例1と同様に射出成形品を作製し、評価した。樹脂組成と結果を表1〜2に示す。
【0037】
比較例8
実施例2においてペンタエリスリトール20部の代わりに、液状可塑剤であるグリセリン20部を使用する以外は、実施例2と同様にして射出成形品を作成し。評価した。樹脂組成と結果を表1〜2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
熱溶融成形性、耐湿性、水崩壊性、、耐久性、強度、形態安定性に優れた成形物を作製し得る樹脂組成物を提供することができる。
Claims (3)
- 重合度200〜2000、けん化度90〜99.5モル%で、カルボン酸およびラクトン環を合計で0.016〜0.412モル%含有し、かつ、エチレン1〜19モル%を主鎖に含有する熱溶融性のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種の固体可塑剤を1〜50重量部含有し、かつ、液体可塑剤の含有量が8重量部未満である樹脂組成物。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が250〜2000、けん化度が90〜98.5モル%、エチレン含有量が1〜15モル%であり、前記固体可塑剤がペンタエリスリトールを含有し、該固体可塑剤を該ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、1〜40重量部、さらにエラストマーを1〜50重量部含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形物。
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