以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態においては、第1の光記録媒体である「使用波長405nm、NA0.85、光照射側基板厚0.1mmの青色系光記録媒体(以下、光記録媒体(BD)という)」と第2の光記録媒体である「使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体(以下、光記録媒体(HD)という)」をともに記録または再生できる光ピックアップについて説明する。
図1は本発明の実施の形態1における光ピックアップの概略構成を示した図である。ここで、前記従来例を示す図17において説明した構成部材に対応し実質的に同等の機能を有するものには同一の符号を付して示し、以下の各図においても同様とする。
図1に示す光ピックアップの要部は、波長405nmの半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系114、偏向プリズム105、液晶開口制限素子116、1/4波長板117、対物レンズ109、検出レンズ111、受光素子112より構成されている。
また、光記録媒体は、前述したように光記録媒体(BD)110a、光記録媒体(HD)110bはそれぞれ基板厚さが異なり、記録あるいは再生時にはいずれかの光記録媒体のみが図示しない回転機構にセットされて高速回転される。
まず、図1に示す光ピックアップにおいて、光記録媒体(BD)110aを記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103を透過し、エキスパンダ光学系114にて所定の収斂光に変換され、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶開口制限素子116を不感透過し、1/4波長板117を通過し円偏光とされ、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(BD)110a上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。
また、対物レンズ109はフォーカス,トラッキングなどの可動機能を有するアクチュエータ108a上に設置されており、アクチュエータ108aに設けられた開口部108bによってNA0.85に制限されている。光記録媒体(BD)110aから反射した光は、1/4波長板117を通過して往路とは反対回りの円偏光となり、エキスパンダ光学系114を通過後再び略平行光とされ、往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
次に、光記録媒体(HD)110bを記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103を透過し、エキスパンダ光学系114にて所定の収斂光に変換され、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶開口制限素子116でNA0.65に制限され、1/4波長板117を通過し円偏光とされ、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(HD)110b上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。
光記録媒体(HD)110bから反射した光は、1/4波長板117を通過して往路とは反対回りの円偏光となり、エキスパンダ光学系114を通過後再び略平行光とされ、往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
また、倍率変換手段であるエキスパンダ光学系114はレンズ114a,114bの2つのレンズから構成されており、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)いずれの記録、再生を行うかでレンズ間隔を変更している。また液晶開口制限素子116も媒体に応じて開口制限を行うか、不感透過させるかの切り換えを行っている。
図2は、一般的な対物レンズの基板厚みと発散度の関係を示したグラフである。横軸は基板厚み、縦軸は対物レンズに入射する光束における発散度の関数で使用状態における対物レンズの倍率である。対物レンズより基板側へ出射する光束は常に収斂光であるので、対物レンズに収斂光が入射するときの符号を「+」,発散光が入射するときの符号は「−」とする。また、この倍率が「0」のときは、対物レンズへは平行光が入射する。図2中の曲線は各基板厚に対し、波面収差を最小とする倍率を結んだものであり、例えば基板厚Bで平行光入射が最良の場合、基板厚が厚くなるほど「−」すなわち発散光、薄くなるほど「+」すなわち収斂光を入射させてやると収差が小さくなるということが一般に知られ、図3(a),(b)はその一例である。図3(a),(b)に示す光記録媒体(BD)110aの場合に収斂光入射で、光記録媒体(HD)110bの場合に光記録媒体(BD)110aの場合よりは緩い収斂光入射で収差最良となる対物レンズ形状が得られる。このような収斂度合いの切り換えは、光記録媒体の種類の判別に応じて行われる。
この記録媒体の判別方法としては、光記録媒体をセットする段階において、LEDと受光素子からなる厚み検出用光学系を設けておき、その出力に基づき判別する。また、フォーカスエラー信号を検出し、その合焦付近でトラックエラー信号が検出されるか否かで判別する。また、光記録媒体のカートリッジ形状を異なるものとしておき、その差に基づいて判別する。また、光記録媒体のラベル上に記載されたバーコードに媒体種類を印刷しておき、その情報をバーコードリーダによって読み取ることにより判別する。また、合焦位置までの対物レンズアクチュエータの可動量に基づいて判別する。前述したいくつかの方法が挙げられる。
次に、エキスパンダ光学系114の構成について説明する。図3(a)、(b)に示すようにエキスパンダ光学系114は、レンズ2枚の2群構成であり、光源側をレンズ114a、光記録媒体側をレンズ114bとすると、レンズ114aは正の屈折力のレンズ、レンズ114bは負の屈折力のレンズであり、ともに単レンズである。そして、両レンズは光源から光記録媒体に向かって出射される出射光束の光軸上に配置されている。そして、エキスパンダ光学系114のレンズは、可動するアクチュエータ手段(図示せず)に設置されている。
アクチュエータ手段は、一般に知られるボイスコイル型アクチュエータや、ピエゾアクチュエータなどを用いればよい。また、その倍率の切り換え、すなわちレンズの駆動方法としては、駆動レンズの可動範囲にストッパを設けておき、2段階の切り換えを行う方法であってもよく、駆動レンズの位置を検出する手段を設けて、各媒体でのレンズ最良位置を予めメモリに記憶させておき、媒体判別に応じてレンズ位置を移動させる方法であってもよい。あるいは、RF信号またはトラックエラー(TE)信号が最大となるような、駆動レンズ位置をサーチ、フィードバックする方法であってもよく、駆動するレンズは一方のレンズであっても、両方のレンズであってもよい。
図1に示す液晶開口制限素子116としては、光記録媒体(BD)110aと光記録媒体(HD)110bでは使用開口数が各々NA0.85,NA0.65と異なり、光記録媒体(BD)110aの集光時にはアクチュエータ108aの開口部108bでNA0.85に制限され、光記録媒体(HD)110bの集光時には液晶開口制限素子116によってNA0.65に制限される。
また、液晶開口制限素子116は、図4(a)に示すような選択的な環状遮光フィルタとして機能する液晶素子を用いればよい。すなわち、環状のパターンを持った液晶シャッタからなり、対物レンズ109に入射する光束の外周部を透過あるいは遮光するものである。図4(b),(c)に示すように、電圧を印加しないとき、すなわち、液晶オフ状態のときは全面透過し、そして、電圧を印加したとき、すなわち、液晶オン状態のときは部分的透過する素子を用いればよい。
ここで、図3(a),(b)に示すような対物レンズ109およびエキスパンダ光学系114の形状に関して具体的な数値事例を示す。
レンズ面の非球面形状は、光軸方向の座標:X,光軸直交方向の座標:Y,近軸曲率半径:R,円錐定数:K,高次の係数:A,B,C,D,E,F,…を用いて、周知の非球面式は(数2)
本実施の形態1における光学系の構成について図3(a),(b)、図5を用いて説明する。図5に示すように対物レンズ109は、使用波長:405nm、NA:0.85、f:1.765mm、nd:1.694、νd:53.2であり、図5中の記号は、以下の通りである。「OBJ」は物点(光源としての半導体レーザ)を意味するが、エキスパンダ光学系114への入射光束は「無限系」であり、曲率半径:RDYおよび厚さ:THIの「INFINITY(無限大)」は光源が無限遠にあることを意味する。なお、特に断らない限り、長さの次元を持つ量の単位は「mm」である。
「S1」〜「S4」はエキスパンダ光学系114の各レンズ面を表し、「S1」はエキスパンダ光学系114のレンズ114aの光源側面、「S2」は対物レンズ側面を意味する。「S1」の厚さ2.00mmがレンズ114aの肉厚を意味する。「S2」の厚さ1.9mm/4.1mmはエキスパンダ光学系114の各レンズ間の距離を表すものであり、1.9mmは光記録媒体(BD)110aの場合で、4.1mmは光記録媒体(HD)110bの場合である。「S6」は光ピックアップの対物レンズ109の光源側面、「S7」は光記録媒体側面を意味する。
本実施の形態1における対物レンズ109の肉厚は2.90mmであり、「S8」の欄の曲率半径の右側に記載された厚さ0.51mm/0.12mmは光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)それぞれの「ワーキングディスタンス:WD」を示す。「S8」は光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)の光照射側基板の光源側面、「S9」は同記録面に合致した面であり、これらの面「S8」,「S9」の間隔、すなわち基板厚は光記録媒体(BD)110aについては0.1mm、光記録媒体(HD)110bについては0.6mmで、nd:1.516310、νd:64.1である。「WL:波長」は使用波長(405nm)を表す。
得られた対物レンズ109とエキスパンダ光学系114を組み合わせた系の軸上波面収差は、光記録媒体(BD)110aを記録再生する系については0.0026λrms、光記録媒体(HD)110bを記録再生する系については0.0007λrmsであり、マレシャル限界0.07λrms以下に抑えられている。
また、図3(a),(b)において入射光束径φ1,φ2の切り換えにより、NA0.85,NA0.65の切り換えを行っているが、本実施の形態1においては、φ1,φ2を通過する光束の2媒体間においてのエキスパンダ光学系114の入射時光束径φ3,φ4が同一径(φ3=φ4)となるエキスパンダ光学系114を採用している。このようなエキスパンダ光学系114を用いれば、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)の場合で光利用効率、RIM強度を同一とすることができる。
なお、前述の実施の形態1では、エキスパンダ光学系114は、光源側に正の屈折力のレンズ114aを使用し、光記録媒体側に負の屈折力のレンズ114bを使用することで収差補正を行ったが、光学系の構成によっては、逆でもよく、具体的には光ピックアップ全体として小型化が可能な方を選べばよい。このように、エキスパンダ光学系114としては、正負異なるパワーを有する2枚のレンズから構成されるガリレー型エキスパンダが望ましい。2枚の正レンズをお互いの焦点距離を重ねて配置するケプラー型エキスパンダでは、光路長を要し、小型化の光学系が望まれた光ピックアップの要求には合致しない。仮に小型のケプラー型エキスパンダを設計しようとすると、光路長を短くするあまり、総合焦点距離を短くせざるを得ず良好な収差が得られないことが一般に知られている。
また、エキスパンダ光学系114が、コリメートレンズとしての役割とを兼ね備えてもよい。この場合には、部品点数を削減することができ、光ピックアップの製造の手間やコストを削減することができる。
さらに、前述の実施の形態1では、対物レンズ109として、単玉レンズを使用しているが、貼り合せレンズなど用いてもよく、あるいは2群以上のレンズから構成されたものを使用してもよい。また、実施の形態1の説明では、光源の波長が405nmの光学系を例示したが、使用波長はこれに限定されるものではなく、その他の波長においてもその効果は変わらない。
図6は本発明の実施の形態2における光ピックアップの概略構成を示した図である。本実施の形態2は前述した実施の形態1のエキスパンダ光学系に代えて、倍率変換手段として回折型倍率変換素子を用いた点で相違している。
図6に示す光ピックアップの要部は、波長405nmの半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光面切換素子104、ハーフミラー103a、偏向プリズム105、回折型倍率変換素子115、偏光選択性開口制限素子116a、対物レンズ109、検出レンズ111、受光素子112より構成されている。
まず、図6に示す光ピックアップにおいて、光記録媒体(BD)110aを記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光面切換素子104で偏光方向を紙面垂直面内で90°回転され、ハーフミラー103aを透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、回折型倍率変換素子115で所定の収斂光とされ、偏光選択性開口制限素子116aを不感帯透過し、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(BD)110a上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。また、対物レンズ109はフォーカス、トラッキングなどの可動機能を有するアクチュエータ108a上に設置されており、アクチュエータ108aに設けられた開口部108bによってNA0.85に制限されている。光記録媒体(BD)110aから反射した光束は、回折型倍率変換素子115で再び略平行光とされ、ハーフミラー103aで反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
次に、光記録媒体(HD)110bを記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光面切換素子104では偏光方向回転はされずにそのまま透過し、ハーフミラー103aを透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、回折型倍率変換素子115において所定の収斂光とされ、偏光選択性開口制限素子116aでNA0.65に制限され、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(HD)110b上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。光記録媒体(HD)110bから反射した光は、回折型倍率変換素子115において再び略平行光とされ、ハーフミラー103aで反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
この回折型倍率変換素子115は、偏光選択性の回折格子と偏光に依存しない回折格子から形成されており、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)いずれの記録,再生を行うかで偏光面を切り換え、偏光面切換素子104の透過光の偏光方向に応じて回折度合いを切り換えている。また偏光選択性開口制限素子116aも記録媒体に応じて開口制限を行うか、不感透過させるかの切り換えを、入射光の偏光方向に応じて行える。
ここで、本実施の形態2の光ピックアップに備えている、記録媒体に応じて、光源からの出射光束の偏光方向を切り換える偏光面切換素子104と、偏光方向に応じて、反射,回折,吸収のいずれかの光学特性を利用して光束径の切り換えを行う偏光選択性開口制限素子116aについて、以下に透過/反射による開口制限を行うことを例に説明する。
偏光面切換素子104としては、TN(ツイスト・ネマティック)型液晶を用いればよい。TN型液晶は電圧を加えたときには液晶の偏光方向を回転させ、電圧を印加させないときは不感透過させることで一般に知られている。
また、偏光選択性開口制限素子116aとしては、例えば偏光方向に応じて、図7(a),(b)のように透過/反射によって光束径を切り換えする手段を用いればよい。偏光選択性開口制限素子116aは図8(a)に示す構造をしている。すなわち、偏光フィルム24aが透明ガラス24bにより挟まれ、特定方向に偏光する光束を透過させる。なお、透明ガラス24bでなく、透明性の高い樹脂であってもよい。すなわち、偏光選択性開口制限素子116aは外周部では、偏光フィルム24aにより特定方向に偏光する光束のみを透過させる。
光記録媒体(BD)の場合、図9(a)のように、TN型液晶である偏光面切換素子104に電圧を加えない。その結果、コリメートレンズ102から出た紙面に平行な方向に偏光する光束は、TN型液晶により構成した偏光面切換素子104により偏光方向を90度変えられ紙面に垂直な方向に偏光するようになり、偏光選択性開口制限素子116aで遮光されず透過し、対物レンズ109方向に進み、アクチュエータ108aに形成された開口部108bでNA0.85に制限される。
また、光記録媒体(HD)の場合、TN型液晶に電圧を加える。その結果、コリメートレンズ102から出た紙面に平行な方向に偏光する光束は、TN型液晶(偏光面切換素子104)により偏光方向を変えられずに透過し、偏光選択性開口制限素子116aで外周部が遮光され内周部を透過した光束だけが対物レンズ109に入射する。
本実施の形態2では、偏光面切換素子104はコリメートレンズ102とハーフミラー103aの間にあるが、ハーフミラー103aと回折型倍率変換素子115の間であってもよい。なお、図8(b)では、内周側に円形の透孔を形成したが、必ずしも円形とする必要はなく、楕円形状であってもよい。
次に、偏光選択性開口制限素子116aの前段に配置される回折型倍率変換素子115について、図10(a),(b),(c)を参照しながら、その作用を説明する。図10(a),(b)は回折型倍率変換素子115の説明をするため、対物レンズ109と回折型倍率変換素子115のみを図示しているが、実際には、間に偏光選択性開口制限素子116a、開口部108bが存在する。
回折型倍率変換素子115は、偏光に依存しない回折格子25aと、偏光選択性の回折格子25c,25eが形成されたものであり、光記録媒体(BD)110aの場合は、偏光に依存しない回折格子25aで収斂光とされ、偏光選択性の回折格子25c,25eの部分は不感帯透過し、対物レンズ109に入射する(図10(a)参照)。一方、光記録媒体(HD)110bの場合には、光記録媒体(BD)110aとは直交する偏光方向の光束が入射し、偏光に依存しない回折格子25aでまず収斂回折され、続いて偏光選択性の回折格子25cの第1面でさらに収斂回折、回折格子25eの第2面で収斂パワーを弱める方向に回折される(図10(b)参照)。回折格子25a,25c,25eはいずれも、平面図としては図10(c)のような同心円状のパターンである。ただし、その周期(ピッチ)は必要な回折角に応じて異なるものであり、回折角が大きいほどピッチは狭くなる。
また、回折型倍率変換素子115は、等方性媒質25dを挟み込むように複屈折性媒質である回折格子25c,25eの面があり、さらにその外側を挟むようにして配置されたガラス基板25bとガラス基板25fとからなる。複屈折性媒質は鋸歯状に形成されたものが円心部から円周に同心円に多数形成された形状とされている。等方性媒質はこの複屈折性媒質と相補的な形状であり、複屈折性媒質の鋸歯状に形成された面に密着している。断面形状はこれに限られるものでなく、階段状に高さが変化した面でもよい。
複屈折性媒質は入射される光束の偏光方向にしたがってno_405とne_405の屈折率を持つ。ここで、noは常光線に対する屈折率(正常屈折率)を、neは異常光線に対する屈折率(異常光屈折率)をそれぞれ表す。ここで、等方性媒質の屈折率n1_405とne_405を等しくなるように等方性媒質と複屈折性媒質を選択して回折光学素子を製作した場合について検討する。
光記録媒体(BD)については、光束の偏光方向を異常光線の偏光方向と等しくして入射させる。すると、等方性媒質と複屈折性媒質で屈折率が同じであるから、波長405nmの光束は何の影響もなく透過する。一方、光記録媒体(HD)については光記録媒体(BD)と直交する方向(常光線の偏光方向)に偏光された光束とする。その光束が入射すると、等方性媒質と複屈折性媒質で互いに異なる屈折率となる。したがって、回折光学素子の等方性媒質と複屈折性媒質の境界面の形状によって回折が起きて進行経路が変わる。このとき、回折格子の深さを適切に調節すると、光記録媒体(BD)の記録再生時の光束の回折効率を最大にすることができる。逆に言うと、光量損失の問題を解決することができる。
なお、複屈折材料は方解石、LiNbO3、LiTaO3などの光学結晶で形成してもよい。また液晶を重合硬化させた高分子性液晶や、1軸延伸により複屈折性が発現するポリカーボネートなどの高分子材料で形成してもよい。
図10(a),(b)において入射光束径φ1,φ2の切り換えにより、NA0.85,NA0.65の切り換えを行っているが、本実施の形態2においては、φ1,φ2を通過する光束の2媒体間における回折型倍率変換素子115の入射時光束径φ3,φ4が同一径(φ3=φ4)となる回折型倍率変換素子115を採用している。偏光面切換素子104の偏光方向に応じて対物レンズ109の入射光束の発散度合いを切り換える回折格子として、このような回折型倍率変換素子115を用いれば、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)の場合で光利用効率、RIM強度を同一とすることができる。
図11は本発明の実施の形態3における光ピックアップの概略構成を示した図である。本実施の形態3と前述の実施の形態1,2との相違は倍率変換手段として液晶倍率変換素子を用いている点である。
図11に示す光ピックアップの要部は、波長405nmの半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光ビームスプリッタ103、偏向プリズム105、液晶倍率変換素子115a、液晶開口制限素子116、1/4波長板117、対物レンズ109、検出レンズ111、受光素子112より構成されている。
まず、図11に示す光ピックアップにおいて、光記録媒体(BD)110aを記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103を透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶倍率変換素子115aにおいて所定の収斂光とされ、液晶開口制限素子116を不感帯透過し、1/4波長板117を通過し円偏光とされ、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(BD)110a上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。また、対物レンズ109はフォーカス、トラッキングなどの可動機能を有するアクチュエータ108a上に設置されており、アクチュエータ108aに設けられた開口部108bによってNA0.85に制限されている。光記録媒体(BD)110aから反射した光束は、1/4波長板117を通過して往路とは反対回りの円偏光となり、液晶倍率変換素子115aにおいて再び略平行光とされ、往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
次に、光記録媒体(HD)110bを記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103を透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶倍率変換素子115aにおいて所定の収斂光とされ、液晶開口制限素子116でNA0.65に制限され、1/4波長板117を通過し円偏光とされ、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(HD)110b上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。光記録媒体(HD)110bから反射した光束は、1/4波長板117を通過して往路とは反対回りの円偏光となり、液晶倍率変換素子115aにおいて再び略平行光とされ、往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
図12は液晶倍率変換素子の概略構成を示す断面図であり、図12を参照しながらその作用を説明する。液晶倍率変換素子115aは、液晶の電圧印加に依存しない回折格子26と、電圧印加により回折/非回折が切り換え可能な液晶34と回折格子27,28で構成する液晶回折格子からなる。光記録媒体(BD)の場合は、回折格子26で収斂光とされ、液晶回折格子は液晶オフとして不感帯透過し、対物レンズに入射する。一方、光記録媒体(HD)の場合には、回折格子26でまず収斂回折され、続いて液晶オンした液晶回折格子により回折させる。液晶回折格子は2つの回折格子27,28を持ち、順に収斂回折、収斂パワーを弱める方向に回折される。回折格子26,27,28の面はいずれも、平面図としては図10(c)と同じ同心円状のパターンである。ただし、その周期(ピッチ)は必要な回折角に応じて異なるものであり、回折角が大きいほどピッチは狭くなる。
次に、液晶倍率変換素子115aの構成を、図12を用いて説明する。ガラス基板31、32が、導電性スペーサ33により接着され液晶セルを形成している。ガラス基板31の内側表面には、内側表面から電極35、絶縁膜37、配向膜38の順に、またガラス基板32の内側表面には、内側表面から電極36、絶縁膜37、配向膜38の順に被膜されている。電極35は電極の引出部39で接続線によって制御回路と接続できるようパターン配線されている。また電極36は導電性スペーサ33によりガラス基板32上に形成された電極36と電気的に接続されている。したがって、電極36は電極の引出部39で接続線によって液晶倍率変換素子115aの制御回路(図示せず)と接続できる。液晶セル内部には液晶34が充填されている。
液晶は電界の非印加時には配向方向が透明基板に対して略平行であり、電界印加時には配向方向が透明基板に対して略垂直であり、液晶の常光屈折率、異常光屈折率のいずれか一方が透明基板の屈折率にほぼ等しいものを選ぶ。それにより、液晶の常光屈折率が透明基板の屈折率にほぼ等しい場合、液晶の常光屈折率の方向に偏光した光に対してはフレネルレンズホログラムとして機能せず、液晶の異常光屈折率の方向に偏光した光に対してはフレネルレンズホログラムとして機能する。また、液晶の異常光屈折率が透明基板の屈折率にほぼ等しい場合は、液晶の常光屈折率の方向に偏光した光に対してはフレネルレンズホログラムとして機能し、液晶の異常光屈折率の方向に偏光した光に対してはフレネルレンズホログラムとして機能しない。したがって、偏光選択性を有するフレネルレンズホログラムを構成している。
以上のように、本実施の形態3においても図10(a),(b)と同様に対物レンズ109で集光された有効光束の液晶素子への入射時光束径が同一径となる液晶倍率変換素子115aを採用している。透明基板上に同心円状のブレーズ形状を形成した液晶素子の電圧印加により、対物レンズ109への入射光束の発散度合いを切り換える、このような液晶倍率変換素子115aを用いれば、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)の場合で光利用効率、RIM強度を同一とすることができる。
図13は本発明の実施の形態4における光ピックアップに用いる光記録媒体の情報記録面を示す模式図である。光記録媒体110eは、図13に示すように情報記録面が、厚み方向にp層(p≧2)形成され、対物レンズに近い手前側の(p−q)層は記録密度の高い情報記録層41で、それより奥側のq層は記録密度の低い情報記録層44からなる光記録媒体であってもよい。その場合、光ピックアップとしては、情報記録密度の高い(p−q)層にはNA1の光束を集光させ、奥側のq層は、NA1より小さい開口数:NA2の光束を集光させればよい。前述の実施の形態1〜3で説明した倍率変換手段を利用することにより、p層いずれに対しても光利用効率、RIM強度を低下することなく、良好な記録再生動作が可能である。
さらに、多層光記録媒体としては、例えば、図14に示すように、実施の形態1の光記録媒体(BD)および光記録媒体(HD)相当の2つのフォーマットを兼ね備えた記録媒体であってもよい。すなわち、図14において、情報記録面45は「最適NA0.85、光照射側基板厚0.1mm」の層であり、情報記録面46は「NA0.65、光照射側基板厚0.6mm」の層である。
また、図15は、記録系光記録媒体の記録時に必要な発光量と、記録速度の関係を示す図であり、NA0.65とNA0.85の場合について図示している。記録速度は近似的にルート則の関係にあることが知られている。すなわち記録速度が2倍になると、必要光量は√(ルート)2倍となることが知られている。そして、NA0.65とNA0.85ではスポット集光密度が面積に反比例(NAの2乗)で作用するために図15に示すようなNAによる差異が生じる。
このため、記録速度αのとき必要な光源発光量をA、記録速度βのとき必要な光源発光量をBとしたとき、(数3)
の関係を満足するように、媒体および選択記録速度に応じて光源の発光量を切り換えれば、各媒体の集光スポット径の差異に伴うパワー補償が行える。また、光量は光ピックアップに一般に搭載されているレーザ光量モニタ手段を使用することによりフィードバック制御が可能である。
図16は本発明の実施の形態5における光情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態5の光情報処理装置は、その一形態を示すものであって、前述の実施の形態1〜3の光ピックアップおよび実施の形態4の光記録媒体に対して、情報信号の記録および再生を行う装置であり、前述した光ピックアップに相当する光ピックアップ51を備えて構成されている。なお、図16に示す各ブロック間を接続する矢印は、信号の主な流れを示すものであり、各ブロック間の機能を限定するものではない。
図16に示す光情報処理装置は、光記録媒体110を回転操作するスピンドルモータ58と、情報信号の記録再生を行うにあたって使用される光ピックアップ51を光記録媒体110の内外周に移動操作するための送りモータ52と、所定の変調および復調処理を行う変復調回路54と、光ピックアップ51のサーボ制御などを行うサーボ制御回路53と、光情報処理装置の全体の制御を行うシステムコントローラ56とを備えている。
図16に示すスピンドルモータ58は、サーボ制御回路53により駆動制御され、所定の回転数で回転駆動される。すなわち、記録,再生の対象となる光記録媒体110は、スピンドルモータ58の駆動軸上にチャッキングされ、サーボ制御回路53により駆動制御される。このスピンドルモータ58によって、光記録媒体110は所定の回転数で回転駆動される。
光ピックアップ51は、光記録媒体110に対する情報信号の記録および再生を行うとき、前述したように、回転駆動される光記録媒体110に対してレーザ光を照射し、その戻り光束を検出する。この光ピックアップ51は、変復調回路54に接続されている。そして、情報信号の記録を行う際には、外部回路55から入力され変復調回路54によって所定の変調処理が施された信号が光ピックアップ51に供給される。光ピックアップ51は、変復調回路54から供給される信号に基づいて、光記録媒体110に対して、光強度変調が施されたレーザ光を照射する。また、情報信号の再生を行う際には、光ピックアップ51は、回転駆動される光記録媒体110に対して、一定の出力のレーザ光を照射し、その戻り光から再生信号が生成され、この再生信号が変復調回路54に供給される。
また、この光ピックアップ51は、サーボ制御回路53にも接続されている。そして、情報信号の記録,再生時に、回転駆動される光記録媒体110によって反射されて戻ってきた戻り光束から、前述したように、フォーカスサーボ信号およびトラッキングサーボ信号が生成され、それらのサーボ信号がサーボ制御回路53に供給される。
変復調回路54は、システムコントローラ56および外部回路55に接続されている。この変復調回路54は、情報信号を光記録媒体110に記録するときに、システムコントローラ56による制御のもとで、光記録媒体110に記録する信号を外部回路55から受け取り、この信号に対して所定の変調処理を施す。変復調回路54によって変調された信号は、光ピックアップ51に供給される。
また、この変復調回路54は、情報信号を光記録媒体110から再生するときに、システムコントローラ56による制御のもとで、光記録媒体110から再生された再生信号を光ピックアップ51から受け取り、この再生信号に対して所定の復調処理を施す。そして、変復調回路54によって復調された信号は、変復調回路54から外部回路55へ出力される。
送りモータ52は、情報信号の記録および再生を行うとき、光ピックアップ51を光記録媒体110の径方向で所定の位置に移動させるためのものであり、サーボ制御回路53からの制御信号に基づいて駆動される。すなわち、この送りモータ52は、サーボ制御回路53に接続されており、サーボ制御回路53により制御される。
サーボ制御回路53は、システムコントローラ56による制御のもとで、光ピックアップ51が光記録媒体110に対向する所定の位置に移動されるように、送りモータ52を制御する。また、サーボ制御回路53は、スピンドルモータ58にも接続しており、システムコントローラ56による制御のもとで、スピンドルモータ58の動作を制御する。すなわち、サーボ制御回路53は、光記録媒体110に対する情報信号の記録および再生時に、この光記録媒体110が所定の回転数で回転駆動されるように、スピンドルモータ58を制御する。
さらに、サーボ制御回路53は、光ピックアップ51にも接続されており、情報信号の記録および再生時には、光ピックアップ51から再生信号およびサーボ信号を受け取り、このサーボ信号に基づいて、光ピックアップ51に搭載された2軸アクチュエータ(図示せず)によるフォーカスサーボおよびトラッキングサーボの制御を行い、さらに、実施の形態1の場合は、1軸アクチュエータを制御して、エキスパンダ光学系における各レンズ間の間隔を調整して、実施の形態3の場合は液晶倍率変換素子の切り換えを行う。
これにより、複数種類や多層の光記録媒体に対して、1つの光ピックアップにより情報の記録、再生あるいは消去できる小型化した光情報処理装置を得ることができる。