様々な分子、例えば腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(トレイル(TRAIL)とも称される)、Apo-3リガンド(同じくTWEAKと称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF、又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称されるが、サイトカインの腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリーのメンバーとして同定されてきた[例えば、Gruss及びDowerら, Blood, 85:3378-3404(1995);Schmidら、Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881, 1986年; Dealtryら、Eur. J. Immunol., 17:689, 1987年; Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996);Wileyら, Immunity, 3:673-682(1995);Browningら,Cell, 72:847-856(1993);Armitageら, Nature, 357:80-82(1992)、1997年1月16日に公開された国際公開第97/01633号;1997年7月17日に公開された国際公開第97/25428号;Marstersら、Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら., Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日に公開の国際公開第98/28426号;1998年10月22日に公開の国際公開第98/46751号;1998年5月7日に公開の国際公開第/98/18921号;Mooreら, Science, 285: 260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)]。これら分子の中で、TNF-α、TNF-β、CD30リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド、Apo-2リガンド(Apo2L/TRAIL)及びApo-3リガンド(TWEAK)がアポトーシス細胞死に関わっていることが報告されてきた。TNF-α及びTNF-βの双方が、感受性の強い腫瘍細胞でアポトーシス死を誘導すると報告されている。
Apo2L/TRAILは、数年前にサトカインのTNFファミリーのメンバーとして同定されたものである(例えば、Wileyら、Immunity, 3:673-682, 1995年; Pittiら、J. Biol Chem., 271:12697-12690, 1996年参照)。完全長ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長であり、II型膜貫通タンパク質である。一部の細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素的切断により、天然可溶性形態のポリペプチドを産生することができる(Marianiら、J. Cell. Biol., 137:221-229, 1997年)。可溶性形態のApo2L/TRAILの結晶学的研究により、TNF及びその他関連タンパク質の構造と類似のホモ三量体の構造が明らかになっている(Hymowitzら、Molec. Cell, 4:563-571, 1999年; Hymowitzら、Biochemistry, 39:633-644, 2000年)。しかしながら、Apo2L/TRAILは、他のTNFファミリーのメンバーと異なり、3つのシステイン残基(ホモ三量体の各サブユニットの230位に位置する)により亜鉛原子の位置が決定し、且つ亜鉛の結合が三量体の安定性および生物学的活性に重要であるという点でユニークな構造特徴を有することが分かった(Hymowitzら、上掲; Bodmerら、J. Biol. Chem., 275:20632-20637, 2000年)。
Apo2L/TRAILが、リウマチ性関節炎などの自己免疫疾患を含めた免疫系の変調に関与している可能性があることが、これまでに文献に報告されている(例えば、Thomas他、J. Immunol., 161:2195-2200, 1998年; Johnsen他、Cytokine, 11:664-672, 1999年; Griffith他、J. Exp. Med., 189:1343-1353, 1999年; Song他、J. Exp. Med., 191:1095-1103, 2000年を参照)。
また、可溶形態のApo2L/TRAILは、結腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍、並びに黒色腫、白血病及び多発性骨髄腫を含む、幅広いインビトロの癌細胞にアポトーシスを誘発すると報告されている(例えば、Wiley他、上掲; Pitti他、上掲; Rieger他、FEBS Letters, 427:124-128, 1998年; Ashkenazi他、J. Clin. Invest., 104:155-162, 1999年; Walczak他、Nature Med., 5:157-163, 1999年; Keane他、Cancer Research, 59:734-741, 1999年; Mizutani他、Clin. Cancer Res., 5:2605-2612, 1999年; Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824, 1999年; Yu他、Cancer Res., 60:2384-2389, 2000年; Chinnaiyan他、Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759, 2000年参照)。インビボにおけるマウスの腫瘍モデルの研究により、Apo2L/TRAILが、単独で、または化学療法や放射線療法と組み合わせることにより、有意な抗腫瘍効果を発揮できることがさらに示されている(例えば、Ashkenazi他、上掲; Walzcak他、上掲; Gliniak他、Cancer Res., 59:6153-6158, 1999年; Chinnaiyan他、上掲; Roth他、biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999, 1999年参照)。癌細胞の多くの型と対照的に、正常なヒト細胞の型の多くは、Apo2L/TRAILの特定の組換え形態によるアポトーシスの誘発に耐性を持つように思われる(Ashkenazi他、上掲; Walzcak他、上掲)。Joらにより、Apo2L/TRAILのポリヒスチジン標識可溶形態が、インビトロで、単離された正常ヒト(非ヒトでない)肝細胞にアポトーシスを誘発したことが報告されている(Jo他、Nature Med., 6:564-567, 2000年; Nagata, Nature Med., 6: 502-503, 2000年も参照)。特定の組換えApo2L/TRAILの製剤は、正常細胞に対する罹患細胞の生化学的特性および生物学的活性の点に関して、例えば標識分子の有無、亜鉛含量、および三量体含量(%)によって様々である(Lawrence他、Nature Med., Letter to the Editor, 7: 383-385, 2001年; Qin他、Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386, 2001年参照)。
TNFファミリーの様々な分子も免疫系の機能又は発達に関与していると言われている(Gruss他、Blood, 85:3378, 1995年)。Zheng他は、TNF-αが刺激作用後のCD8陽性T細胞のアポトーシスに関与していることを報告している(Zheng他, Nature, 377:348-351, 1995年)。他の研究者によってCD30リガンドが、胸腺の自己反応性T細胞の欠失に関与している可能性があることが報告されている(Amakawa他, Cold Spring Harbor Laboratory Symposium on Programmed Cell Death, Abstr. No. 10, 1995年)。CD40リガンドは、増殖、免疫グロブリン分泌、および生存を含め、B細胞の多くの機能を活性化する(Renshaw他, J. Exp. Med., 180:1889, 1994年)。最近同定された別のTNFファミリーのサイトカインであるTALL-1(BlyS)は、特定の条件下で、B細胞の増殖および免疫グロブリン分泌を誘発するということが報告されている(Moore他、上掲; Schneider他、上掲; Mackay他, J. Exp. Med., 190:1697, 1999年)。
マウスFas/Apo-1レセプターまたはリガンド遺伝子の突然変異(それぞれlprおよびgldと呼ばれる)は、Apo-1 リガンドが抹消の自己反応性リンパ球のクローン欠失の制御に関与している可能性を含め、いくつかの自己免疫疾患に関連付けられてきた(Krammer他, Curr. Op. Immunol., 6:279-289, 1994年; Nagata他, Science, 267:1449-1456, 1995年)。 Apo-1リガンドはまた、CD4陽性Tリンパ球およびBリンパ球に、刺激後アポトーシスを誘発することが報告されており、またその機能が不要になったときに活性化リンパ球の消失に関与している可能性がある(Krammer他、上掲; Nagata他、上掲)。Apo-1レセプターに特異的に結合するアゴニストマウスモノクローナル抗体は、TNF-αに相当する、またはTNF-αに類似の、細胞死活性を示すことが報告されている(Yonehara他, J. Exp. Med., 169:1747-1756, 1989年)。
OPGリガンドと呼ばれるTNF関連リガンド(RANKリガンド、TRANCE、またはODFとも呼ばれる)は、特定の免疫制御活性にある程度関与していることが文献に報告されている。1998年7月2日公開のWO98/28426は、2型膜貫通タンパク質である可溶形態のリガンド(その文献ではRANKリガンドと称する)が、樹状細胞の成熟を促し、CD1a+樹状細胞の、MLRにおけるallo-刺激能力を増強し、インビトロにおいてTGF-βの存在下で生存能力のあるヒト抹消血T細胞の数を向上させることが明らかになったことを開示している(加えてAnderson他, Nature, 390:175-179, 1997年参照)。WO98/28426にも、リガンドは1マクロファージ腫瘍細胞系(RAW264.7と呼ばれる; ATCC TIB71)によるTNF-αの生産を向上させたが、それら腫瘍細胞による酸化窒素の生産を刺激することはなかったことが開示されている。
樹状細胞の活性の調節(例えば、Wong他, J. Exp. Med., 186:2075-2080, 1997年; Wong他, J. Leukocyte Biol., 65:715-724, 1999年; Josien他, J. Immunol., 162:2562-2568, 1999年; Josien他, J. Exp. Med., 191495-501, 2000年参照)および免疫応答におけるT細胞活性への作用(例えば、Bachmann他, J. Exp. Med., 189:1025-1031, 1999年; Green他, J. Exp. Med., 189:1017-1020, 1999年参照)にOPGリガンド/TRANCE/ODFが関与していると推定されることが文献で述べられている。Kong他, Nature, 397:315-323, 1999年には、破壊opgl遺伝子を有するマウスが、重症の骨粗鬆症を示し、破骨細胞が欠如し、ならびに、TおよびBリンパ球の早期分化の欠損を示したことが報告されている。Kongらは、さらに、インビボにおけるT細胞の系統的活性が、OPGLが媒介する破骨細胞発生および骨の喪失の増大を引き起こしたと報告している(Kong他, Nature, 402:304-308, 1999年)。
TNFファミリーのサイトカインによって媒介されるこれら様々な細胞反応の誘導は、それらが特定の細胞レセプターに結合することにより開始されると考えられる。以前に、約55-kDAおよび75-kDAの、2つの異なるTNFレセプター(それぞれTNFR1とTNFR2)が同定された(Hohman他, J. Biol. Chem., 264:14927-14934, 1989年; Brockhaus他, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131, 1990年; EP417,563, 1991年3月20日公開; Loetscher他, Cell, 61:351, 1990年; Schall他, Cell, 61:361, 1990年; Smith他, Science, 248:1019-1023, 1990年; Lewis 他., Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834, 1991年; Goodwin他, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026, 1991年)。これらTNFRは、細胞外領域、膜貫通領域および細胞内領域を含め、細胞表面レセプターの典型的な構造を共有していることが分かった。両レセプターの細胞外の部分はまた、天然において可溶性TNF結合タンパク質であった(Nophar, Y.他, EMBO J., 9:3269 1990年; Kohno, T. 他, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:8331, 1990年; Hale 他, J. Cell. Biochem. Supplement 15F, 1991年, p. 113 (P424))。
1および2型TNFRの細胞外領域(TNFR1およびTNFR2)は、NH2末端から始まり1から4までの番号で表される4つのシステインリッチドメイン(CRD)からなる、反復したアミノ酸配列パターンを有する。(Schall他、上掲; Loetscher他、上掲; Smith他、上掲; Nophar他、上掲; Kohno他、上掲; Banner他, Cell, 73:431-435, 1993年)。他の複数の細胞表面タンパク質には、同じようなCRDの反復パターンが存在し、それらタンパク質には、p75神経成長因子レセプター(NGFR)(Johnson他, Cell, 47:545, 1986年; Radeke他, Nature, 325:593, 1987年)、B細胞抗原CD40(Stamenkovic他, EMBO J., 8:1403, 1989年)、T細胞抗原OX40(Mallet 他., EMBO J., 9:1063, 1990年)、およびFas抗原(Yonehara他、上掲、およびItoh他, Cell, 66:233-243, 1991年)が含まれる。CRDはまた、ショープおよび粘液種ポックスウイルスの可溶性TNFR(sTNFR)様T2タンパク質 にも見られる(Upton他, Virology, 160:20-29, 1987年; Smith他, Biochem. Biophys. Res. Commun., 176:335, 1991年; Upton他, Virology, 184:370, 1991年)。これら配列のアラインメントが最適であることは、サイトカイン残基の位置がよく保存されていることを示す。これらレセプターを、集約的に、TNF/NGFレセプタースーパーファミリーのメンバーと称することがある。
今日までに同定されているリンフォトキシン−α以外のTNFファミリーのリガンドは、一般に、2型膜貫通タンパク質であり、そのC末端は細胞外にある。対照的に、今日までに同定されているTNFレセプター(TNFR)ファミリーは、通常1型膜貫通タンパク質である。しかしながら、TNFリガンドファミリーとレセプターファミリーの両方において、ファミリーメンバー間に同定される相同性は主に細胞外ドメイン(「ECD」)で見つかっている。TNF−α、Apo-1リガンドおよびCD40リガンドを含むTNFファミリーサイトカインのいくつかは、細胞表面においてタンパク分解的に切断されている。いずれの場合も、結果として得られるタンパク質は、通常、可溶性サイトカインとして機能するホモ三量体分子を形成する。TNFレセプターファミリーのタンパク質はまた、通常タンパク分解的に切断されており、よって同族サイトカインの抑制因子として機能できる可溶性レセプターECDを放出する。
RANKと呼ばれるTNFRファミリーのメンバーは、OPGリガンドのレセプターとして同定されている(1998年7月2日公開WO98/28426; Anderson他, Nature, 390:175-179, 1997年; Lacey他, Cell, 93:165-176, 1998年)。OPG(FDCR-1またはOCIF)と呼ばれる別のTNFR関連分子もOPGリガンドのレセプターとして同定されている(Simonet他, Cell, 89:309, 1997年; Yasuda他, Endocrinology, 139:1329, 1998; Yun他, J. Immunol., 161:6113-6121, 1998年)。Yun他(上掲)は、OPG/FDCR-1/OCIFは膜結合形態と分泌形態の両方で発現し、樹状細胞、EBV形質転換B細胞系、および扁桃B細胞を含む免疫系の細胞内において限定的な発現パターンを有することを開示している。Yun他はまた、B細胞および樹状細胞におけるOPG/FDCR-1/OCIFの発現は、B細胞の活性に関与する分子であるCD40によって上方制御することが可能であることを開示している。しかしながら、Yun他は、OPG/FDCR-1/OCIFが免疫応答の制御においてどのように機能するかは不明であるとしている。
さらに最近になって、TNFRファミリーの他のメンバーが同定された。von Bulowらによる、Science, 278:138-141, 1997年には、膜貫通活性化体およびCAML相互作用因子(CAML-Interactor)または「TACI」と呼ばれる原形質膜レセプターが記載されている。TACIレセプターは、TNFRファミリーの特徴であるシステインリッチモチーフを持つことが報告されている。インビボアッセイでは、形質移入されたJurkat細胞表面上のTACIと、TACIに特異的な抗体との架橋により、NF-KBの活性が起こった(1998年9月18日公開WO 98/39361も参照のこと)。
Laabiら(EMBO J., 11:3897-3904, 1992年)は、発現時期がB細胞末端の成熟と一致していることが分かった「BCM」と呼ばれる新規遺伝子の同定について報告している。BCMの正常cDNAのオープンリーディングフレームは、単一の膜貫通ドメインを有する184アミノ酸長ポリペプチドを予測した。この遺伝子は後に「BCMA」と名付けられた(Laabi他, Nucleic Acids Res., 22:1147-1154, 1994年)。BCMA mRNAの発現は、前Bリンパ球段階を示すヒト悪性B細胞系には無く、よってリンパ球の分化段階に関係していると考えられる(Gras他, Int. Immunology, 7:1093-1106, 1995年)。Madryらによる Int. Immunology, 10:1693-1702,(1998年)には、マウスBCMA cDNAのクローニングが記載されている。マウスBCMA cDNAは、ヒトBCMAポリペプチドに対して62%の同一性を有する185アミノ酸長のポリペプチドをコードすることが報告されている。マウスおよびヒトBCMAタンパク質の配列のアラインメントにより、N末端領域に6つの保存されたモチーフが存在することが明らかになった。これは、BCMAタンパク質がTNFRスーパーファミリーに属することを示している(Madry他, 上掲)。
Marstersらによる、Curr. Biol., 6:750 (1996年) には、Apo-3と呼ばれる完全長天然配列のヒトポリペプチドが記載されている。それは細胞外システインリッチ反復の点でTNFRに対して類似を示し、細胞質死ドメイン配列を有する点でTNFR1およびCD95に類似している(Marsters他, Curr. Biol., 6:1669, 1996年も参照のこと)。Apo-3はまた、DR3、wsl−1、TRAMP、およびLARDと呼ばれることもある(Chinnaiyan他, Science, 274:990, 1996年; Kitson他, Nature, 384:372, 1996年; Bodmer他, Immunity, 6:79 (1997); Screaton 他, Proc. Natl. Acad. Sci., 94:4615-4619, 1997年)。
Panらにより、「DR4」と呼ばれる別のTNFレセプターファミリーのメンバーが開示されている(Pan他, Science, 276:111-113, 1997年; ならびに1998年7月30日公開のWO98/32856を参照)。このDR4は、細胞自殺機構に関与可能な細胞質死ドメインを有することが報告されている。Panらにより、DR4は、Apo2L/TRAIL として知られるリガンドのレセプターと考えられることが開示されている。
SheridanらによるScience, 277:818-821(1997年)およびPanらによるScience, 277:815-818(1997年)には、Apo2L/TRAILのレセプターと考えられる別の分子が開示されている(1998年11月19日公開のWO98/51793; 1998年9月24日公開のWO98/41629も参照)。この分子はDR5と称される(あるいは、Apo-2; TRAIL-R, TR6, Tango-63, hAPO8, TRICK2またはKILLERとも称される)(Screaton他, Curr. Biol., 7:693-696, 1997年; Walczak他, EMBO J., 16:5386-5387, 1997年; Wu他, Nature Genetics, 17:141-143, 1997年; 1998年8月20日公開のWO98/35986; 1998年10月14日公開のEP870,827; 1998年10月22日公開のWO98/46643; 1999年1月21日公開のWO99/02653; 1999年2月25日公開のWO99/09165; 1999年3月11日公開のWO99/11791 参照)。DR4と同様に、DR5は細胞質死ドメインを有し、アポトーシスの信号を出すことができると報告されている。Apo-2L/TRAILとDR5の間に形成された複合体の結晶構造が、HymowitzらによるMolecular Cell, 4:563-571(1999年)に記載されている。
死ドメインを含むさらに別のレセプターであるDR6が最近同定された(Pan他, FEBS Letters, 431:351-356, 1998年)。4つの推定のシステインリッチ細胞外ドメイン、および1つの細胞質死ドメインを含む他に、DR6は、細胞質領域のプロリンに富むモチーフと重複する推定上のロイシン−ジッパー配列を含むと考えられる。プロリンに富むモチーフは、src-相同-3ドメインに結合する配列と類似しており、多くの細胞内シグナル伝達分子に見出される。上述した死ドメインを含む他のレセプターと対照的に、DR6は、アポトーシスに敏感な指標細胞株MCF-7に細胞死を誘発しない。これはこのレセプターの別の機能を示すものである。このような観察から、DR6は、現在、活性化した死レセプターからの下流のシグナル伝達を媒介する、FADD, RAIDD及びRIPなどの死ドメインを含むアダプター分子と関連していないと考えられている(Pan他, FEBS Lett., 431:351, 1998年)。
最近同定されたレセプターのさらなるグループは、「デコイレセプター」と呼ばれるもので、シグナル伝達分子というよりはむしろ抑制因子として機能すると考えられている。このグループは、共に細胞表面分子であるDCR1(TRID, LITまたはTRAIL-R3とも呼ばれる)(Pan他, Science, 276:111-113, 1997年; Sheridan他, Science, 277:818-821, 1997年; McFarlane他, J. Biol. Chem., 272:25417-25420, 1997年; Schneider他, FEBS Letters, 416:329-334, 1997年; Degli-Esposti他, J. Exp. Med., 186:1165-1170, 1997年; およびMongkolsapaya他, J. Immunol., 160:3-6, 1998年)およびDCR2(TRUNDDまたはTRAIL-R4とも呼ばれる)(Marsters他, Curr. Biol., 7:1003-1006, 1997年; Pan他, FEBS Letters, 424:41-45, 1998年; Degli-Esposti他, Immunity, 7:813-820, 1997年)、ならびに、共に分泌性の可溶タンパク質である、OPG(Simonet他, 上掲; Emery他、下掲)およびDCR3(Pitti他, Nature, 396:699-703, 1998年)を含む。
これらに加えて新規に同定されたTNFRファミリーのメンバーには、CAR1、HVEM、GITR、ZTNFR-5、NTR-1、およびTNFL1が含まれる(Brojatsch他, Cell, 87:845-855, 1996年; Montgomery他, Cell, 87:427-436, 1996年; Marsters他, J. Biol. Chem., 272:14029-14032, 1997年; Nocentini他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:6216-6221, 1997年; Emery他, J. Biol. Chem., 273:14363-14367, 1998年; 1999年1月28日のWO99/04001; 1999年2月18日公開のWO99/07738; 1999年7月8日公開のWO99/33980 )。
Tewariらにより最近述べられたように、 TNFR1、TNFR2およびCD40は 、転写因子であるNF-κBの活性を通じて炎症誘発性サイトカインおよび同時刺激性サイトカイン、サイトカインレセプター、および細胞接着分子の発現を調節する(Tewari他, Curr. OP Genet. Develop., 6:39-44, 1996年)。NF-κBは、サブユニットに保存Rel領域を含む二量体転写因子のファミリーの原型である(Verma他, Genes Develop., 9:2723-2735, 1996年; Baldwin, Ann. Rev. Immunol., 14:649-681, 1996年)。その潜伏形態において、NF-κBはIκB抑制因子ファミリーのメンバーと複合する。特定の刺激に対してIκBが非活性化されると、放出されたNF-κBは、特定のDNA配列に結合する核に転座し、遺伝子転写を活性化する。上述したように、今日までに同定されているTNFRのメンバーは、細胞内死ドメインの領域を含むか、または欠いている。死ドメインを欠く一部のTNFR分子、例えばTNFR2、CD40、HVEM、およびGITRは、NF-κB活性を調節することができる(例えば、Lotz他, J. Leukocyte Biol., 60:1-7, 1996年参照)。
TNFファミリーのサイトカインおよびそれらのレセプターに関する概説については、AshkenaziおよびDixit, Science, 281:1305-1308, 1998年; Golstein, Curr. Biol., 7:750-753, 1997年; Gruss and Dower, 上掲, Nagata, Cell, 88:355-365、1997年; およびLocksley他, Cell, 104:487-501, 2001年を参照のこと。
I.定義
本明細書で使用する用語「Apo-2リガンド」または「Apo-2L」(TRAILとしても知られている)は、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーの特定のメンバーであって、特に様々な癌細胞にアポトーシスを誘発する(1997年7月17日公開のWO 97/25428; 1997年1月16日公開のWO97/01633; Pitti他, J. Biol. Chem, 271:12687, 1996年; Marsters他, Curr. Biol., 6:79, 1997年; Wiley, S.他, Immunity, 3:637, 1995年を参照)。 ここで使用する「Apo-2L」という用語は、それら参考文献に開示されているポリペプチドに加えて、DR4レセプター、Apo-2(DR5)レセプター、DcR1レセプターおよびDcR2レセプターのうちの少なくとも1つに対する結合の点で生物学的に活性であるか、または哺乳動物細胞の少なくとも1つの型に結合できる、その断片および変異体も含む。随意的に、本明細書に開示する生物学的アッセイの目的において、Apo-2リガンドはアミノ酸114から211(配列番号3)を有するポリペプチドであり、エピトープタグ配列を有さない(例えば、Ashkenazi他, J. Clin. Invest. 104: 155-162, 1999年に記載のApo-2リガンドを参照)。
Apo-2Lのレセプターが同定され、DR4と呼ばれている。DR4は、細胞自殺機構で使用できる細胞質「死ドメイン」を有するTNFレセプターファミリーのメンバーである(Pan他, Science, 276:111, 1997年)。DR4は、1998年7月30日公開のWO98/32856にも記載されている。本明細書で使用する「死レセプター4」または「DR4」という用語は、天然配列のDR4およびDR4変異体(後述でさらに定義する)を包含する。これらの用語はヒトを含めた様々な哺乳動物に発現するDR4を含む。DR4は、様々なヒト組織系統に天然に生じるように内因的に発現されることがあり、あるいは組換え法または合成法により発現する場合もある。「天然配列のDR4」には、天然DR4由来のアミノ酸配列と同じ配列を有するポリペプチドが含まれる。よって、天然配列のDR4は、任意の哺乳動物から自然に生じたDR4のアミノ酸配列を持つことができる。このような天然配列DR4は、自然から単離することができるか、あるいは組換え手段または合成手段により生成することができる。「天然配列DR4」という用語は特に、DR4の自然発生的切断形態または分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列などを含む可溶形態)、自然発生的変異体の形態(例えば、別のスプライス形態)、およびDR4の自然発生的対立変異体を含む。本発明の一実施態様では、天然配列のDR4は、アミノ酸1から468(配列番号1)を有する、成熟した、または完全長の天然配列DR4である。
本明細書では、「細胞外ドメイン」又は「ECD」という用語は、DR4の膜貫通及び細胞質ドメインを基本的に有しないDR4の型を指す。通常、DR4 ECDは、そのような膜貫通及び/又は細胞質ドメインの約1%未満、好ましくは0.5%未満のそのようなドメインを有する。随意で、DR4 ECDは図1(配列番号1)のアミノ酸残基1から218または残基24から218を有する。
「DR4変異体」とは、ヒトDR4の細胞外ドメイン配列または完全長天然配列について、細胞外ドメイン図1(配列番号1)に示す推定上のアミノ酸配列を有するDR4と少なくとも約80%または85%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性のDR4を意味する。このようなDR4変異体には、例えば、図1の配列(配列番号1)のN末端またはC末端に1以上のアミノ酸残基が付加されているか、または欠失されている(つまり断片)DR4ポリペプチドが含まれる。通常、DR4変異体は、図1のアミノ酸配列(配列番号1)に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
ここに同定されるDR4配列(またはDR4抗体配列)に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、DR4配列(またはDR4抗体配列)中のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセントとして定義されている。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばALIGN(商標)、Megalign(DNASTAR)またはALIGN-2(ジェネンテック社により著作され、1991年12月10日米国著作権事務所に出願された)のような公的に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。ALIGN-2はジェネンテック社から公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータははALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
「単離された」とは、ここで開示された種々のタンパク質を記述するために使用する場合は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の夾雑成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を概して妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに十分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元又は還元条件下でのSDS-PAGEによって均一になるまで精製される。単離されたポリペプチドには、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれるが、これはDR4またはDR4抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離された」核酸分子は、通常はポリペプチド核酸の天然供給源に関連する少なくとも1つの夾雑核酸分子から同定され分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、天然に見られるのとは異なる形態、または環境にある。したがって、単離された核酸分子は天然細胞に存在する核酸分子と区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば核酸分子が天然細胞の位置とは異なる染色体位置にある場合、通常ポリペプチドを発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される相同性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにする(緊縮性を高める)ことになり、低い温度は緊縮性を低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応の緊縮性の更なる詳細及び説明については、Ausubelら, Current Protocols in Molecular BiologyWiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
ここで定義される「ストリンジェントな条件」又は「高度にストリンジェントな条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;又は(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃での50%ホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるもの、と定義される。
「中程度のストリンジェントな条件」は、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (ニューヨーク: コールド・スプリング・ハーバー出版, 1989)に記載されているように同定され、上記の緊縮性より低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度の緊縮性条件の例は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識する。
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、状況に応じてはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているならば、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
「アミノ酸」という用語は、天然に生じるL−α−アミノ酸すべてを意味する。この定義は、ノルロイシン、オルニチン、およびホモシステインを含むことを意図する。アミノ酸はアルファベット1文字または3文字で表す:
Asp D アスパラギン酸
Thr T トレオニン
Ser S セリン
Glu E グルタミン酸
Pro P プロリン
Gly G グリシン
Ala A アラニン
Cys C システイン
Val V バリン
Met M メチオニン
Ile I イソロイシン
Leu L ロイシン
Tyr Y チロシン
Phe F フェニルアラニン
His H ヒスチジン
Lys K リジン
Arg R アルギニン
Trp W トリプトファン
Gln Q グルタミン
Asn N アスパラギン
配列表および図面において使用されている上記以外の1文字または3文字の略表記は、配列中の任意の位置における2つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドを表す。
「アゴニスト」および「アゴニスト的」という用語は、本明細書で使用する場合、直接的または間接的に、DR4の生物学的活性またはDR4の活性化を、実質的に誘発、促進または亢進することができる分子を指すか、または意味する。随意的に、「アゴニストDR4抗体」は、Apo-2リガンド(TRAIL)として知られるDR4のリガンドに匹敵する活性を有する抗体であるか、またはDR4レセプターを活性化することにより、カスパーゼ3、カスパーゼ8、カスパーゼ10またはFADDの活性を含みうる1以上の細胞内シグナル伝達経路を活性化させることができる。
「アンタゴニスト」および「拮抗的」という用語は、本明細書で使用する場合、直接的または間接的に、DR4の生物学的活性またはDR4の活性化を、実質的に相殺、低減または抑制することができる分子を指すか、または意味する。随意的に、アンタゴニストは、DR4の活性、またはDR4とそのリガンド、例えばApo-2リガンドとの複合体形成の結果として得られるr生物学的活性を中和する分子である。
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に、単一の抗-DR4モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、および中和または阻害抗体を含む)と、ポリペプチド特異性を持つ抗-DR4抗体組成物を含む。本明細書で使用する「抗体」は、本明細書で述べる所望のアゴニスト的特性または拮抗的特性を示すものである限り、無傷免疫グロブリンまたは抗体分子、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(つまり、少なくとも2つの無傷抗体から形成された二重特異性抗体)、および免疫グロブリン断片(例えばFab、F(ab')2、またはFv)を含む。
典型的に、抗体は、特定の抗原に対する結合特性を示すタンパク質またはポリペプチドである。天然の抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖からなるヘテロ四量体の糖タンパク質である。通常、軽鎖の各々は、共有ジスルフィド結合により1つの重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は免疫グロブリンのイソタイプによって異なる。また、各重鎖および軽鎖は、等間隔に並ぶ鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖の一端には可変ドメイン(VH)があって、それに複数の定常ドメインが続いている。各軽鎖の一端(VL)には可変ドメインが、他端には定常ドメインがある;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと整列しており、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖の可変ドメインと重鎖の可変ドメインの界面を形成すると考えられている(Chothia他, J. Mol. Biol., 186:651-663, 1985年; Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:4592-4596, 1985年)。任意の脊椎動物の種由来の抗体の軽鎖は、その定常ドメインアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる2つの明確に区別される型の一方に割り当てることができる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、免疫グロブリンを複数のクラスに分けることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG およびIgMがあり、これらのうち複数をさらにサブクラス(イソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3およびIgG-4、ならびにIgA-1およびIgA-2に分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖の定常ドメインを、それぞれ、α、δ、υ、γおよびμと呼ぶ。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、通常は無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
「可変」という用語は、抗体間で配列が異なる可変ドメインの特定の部分を表すために使用され、特定の抗原に対する特定の抗体の各々の結合および特異性に利用される。しかしながら、抗体の可変ドメインにおいて可変性は通常一様に分布してはいない。典型的には、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメイン両方の相補性決定領域(CDR)または高頻度可変領域と呼ばれる3つの染色体部分に集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分をフレームワーク(FR)と呼ぶ。天然の重鎖および軽鎖の各可変ドメインは、大部分がβ−シート構造を取り入れ、3つのCDRにより連結された4つのFR領域を有しており、それらCDRはβ−シート構造を連結するループを形成するか、場合によってはβ−シート構造の一部を形成する。各鎖のCDRはFR領域によって互いに近接して保持されており、別の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat, E.A.他、Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institute of Health, Bethesda, メリーランド州、1987年参照)。定常ドメインは抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性への抗体の関与など、様々なエフェクター機能を示す。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に指向する。
ここで、モノクローナル抗体は特に、所望の生物学的活性、または特性を有するものである限りにおいて、指定の起源の種、免疫グロブリンのクラス、またはサブクラスに関係なく、定常ドメイン(例えば「ヒト化」抗体)、または重鎖を有する軽鎖、または別の種由来の鎖を有するある種由来の鎖、または異種タンパク質との融合を有する抗-DR4抗体の(高頻度可変を含む)可変ドメインをスプライシングすることにより生成される「キメラ」抗体、ハイブリッド抗体、および組換え抗体、ならびに抗体断片(例えばFab、F(ab’)、F(ab’)2、およびFv)を含む。例えば米国特許第4,816,567号、およびMageらによるMonoclonal Antibody Production Techniques and Applications 79-97ページ(Marcel Dekker, Inc.: New York, 1987年)を参照のこと。
このように、「モノクローナル」との形容は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の性質を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは米国特許第4,816,567号に記載されたような組換えDNA法によって作ることができる(参照)。「モノクローナル抗体」は、また、例えばMcCaffertyらによるNature, 348:552-554(1990年)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することができる。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、あるいはそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分において、ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の能力を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン共通配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域又はドメインの少なくとも一部を含んでなる。
「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、および/またはヒト抗体をつくる既知の技術のいずれかを使用して、またはここに開示するようにして、つくられたものである。ヒト抗体のこのような定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチド、例えばマウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。ヒト抗体は、様々な従来技術を使用して生成することができる。一実施態様では、ライブラリがヒト抗体を発現する場合、そのようなファージライブラリからヒト抗体を選択する(Vaughan他、 Nature Biotechnology, 14:309-314, 1996年; Sheets他 PNAS, アメリカ合衆国、95:6157-6162,1998年; HoogenboomおよびWinter, J. Mol. Biol., 227:381, 1991年; Marks他, J. Mol. Biol., 222:581, 1991年)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座を、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が特異的にまたは完全に非活性化されているマウスに導入することにより生成することができる。実験によりヒト抗体の産生が確認されており、それは遺伝子の再配列、アセンブリ、および抗体のレパートリーを含め、すべての面でヒトに見られる抗体産生に非常に類似している。この方法は、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、および以下の科学文献に開示されている:Marks他, Bio/Technology, 10: 779-783, 1992年; Lonberg他, Nature, 368: 856-859, 1994年; Morrison, Nature, 368:812-13, 1994年; Fishwild他, Nature Biotechnology, 14: 845-51, 1996年; Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826, 1996年; Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13:65-93, 1995年。あるいは、ヒト抗体は、標的となる抗原を志向する抗体を産生するBリンパ球(このようなBリンパ球は個体から回収できるか、またはインビボで免疫することができる)の不死化により調製することもできる。 例えば、Cole他, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77, 1985年; Boerner他, J. Immunol., 147 (1):86-95, 1991年; および米国特許第5,750,373号を参照のこと。
「Fc領域」という用語は、無傷の抗体のパパイン消化により生成される免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は天然配列のFc領域または変異体Fc領域でありうる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界はまちまちであるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、約Cys226または約Pro230に位置するアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで延びていると定義される(ここではKabat他, 上掲による番号付けシステムを使用した)。免疫グロブリンのFc領域は、通常、2つの定常ドメイン、1つのCH2ドメインおよび1つのCH3ドメインを含み、随意でCH4ドメインを含む。
ここで使用する「Fc領域鎖」という表現は、Fc領域の2つのポリペプチド鎖のうちの1つを意味する。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとも呼ばれる)は、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで延びている。CH2ドメインは、別のドメインと親密な対にならないという点で独特である。代わりに、2つのN結合分岐炭水化物鎖が、無傷の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入される。炭水化物はドメイン−ドメイン対の代替物を提供し、CH2ドメインの安定化を助けることができると推測される。BurtonによるMolec. Immunol. 22:161-206 (1985年)を参照のこと。ここで、CH2ドメインは天然配列のCH2ドメインまたは変異体CH2ドメインとすることができる。
「CH3ドメイン」は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまでの範囲(つまり、IgGの約341位のアミノ酸から約447位のアミノ酸)を含む。ここでは、CH3領域は、天然配列のCH3ドメインか、または変異体CH3ドメイン(例えば、その一鎖に「protroberance」が導入され、それに対応して他の鎖に「空洞」が導入されたCH3ドメイン:米国特許第5,821,333号参照)とすることができる。このような変異体CH3ドメインを使用して本明細書に開示する多重特異性(例えば二重特異性)抗体をつくることができる。
「ヒンジ領域」は、通常、ヒトIgG1の約Glu216または約Cys226から約Pro230まで延びていると定義される(Burton, Molec. Immunol.22:161-206, 1985年)。他のIgGイソタイプのヒンジ領域は、同じ位置に内部重鎖S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を配置することによりIgG1と整列させることができる。本明細書のヒンジ領域は、天然配列のヒンジ領域か、または変異体ヒンジ領域とすることができる。変異体ヒンジ領域の2つのポリペプチド鎖は、通常、1つのポリペプチド鎖につき少なくとも1つのシステイン残基を保持しており、よって2つの変異体ヒンジ領域のポリペプチド鎖は2つの鎖の間にジスルフィド結合を形成することができる。本発明の好ましいヒンジ領域は、天然配列のヒトヒンジ領域、例えば天然配列のヒトIgG1ヒンジ領域である。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも1つの「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞障害作用(CDC)、Fcレセプター結合、抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC)、食作用、細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター; BCR)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることを必要とし、そのような抗体のエフェクター機能を評価するための当技術分野で既知の様々なアッセイを使用して評価される。
「天然配列Fc領域」は、天然に由来するFc領域と同じアミノ酸配列を有する。「変異体ポリペプチドを含む。「変異体Fc領域」には、最低1つのアミノ酸修飾だけが天然配列のFc領域と異なるアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域、または親ポリペプチドのFc領域と比較した場合に、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域において少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1から約10のアミノ酸置換、好ましくは約1から約5のアミノ酸置換を有する。ここに開示する突然変異Fc領域は、天然配列のFc領域および/または親ポリペプチドのFc領域に対して、少なくとも約80%の配列同一性を有し、好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用」および「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異性の毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCC、NK細胞を媒介する一次細胞はFcγRIIIのみを発現し、一方単核細胞はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、RavetchおよびKinetによる、Annu. Rev. Immunol., 9:457-92(1991年)の、464ページの表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、インビボADCCアッセイ(例えば米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載)を行うことができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、抹消血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはそれに加えて、目的とする分子のADCC活性をインビボで、例えばClynesらによる PNAS(アメリカ合衆国)、 95:652-656(1998年)に開示されているような動物モデルにおいて評価することができる。
「ヒトエフェクター細胞」は、1以上のFcRsを発現する白血球であり、エフェクター機能を果たす。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、抹消血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単核細胞、細胞障害性T細胞および好中球が含まれ、中でもPBMCとNK細胞が好ましい。エフェクター細胞はその天然供給源、例えば血液またはPBMCからここに開示するように単離することができる。
「Fcレセプター」および「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表すために使用される。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマレセプター)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラス のレセプターを含み、それには対立変異体およびそれらレセプターの変形スプライス形式が含まれる。FcγRIIレセプターはFcγRIIA(「活性化レセプター」)およびFcγRIIB(「抑制レセプター」)を含み、それらは主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似したアミノ酸配列を有する。活性化レセプターであるFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫レセプターのトリオシン(tryosine)に基づく活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害するレセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインにある免疫レセプター チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234, 1997年に記載)。FcRはRavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol., 9:457-92(1991年); Capel他, Immunomethods, 4:25-34(1994年); およびde Haas他, J. Lab. Clin. Med., 126:330-41(1995年)に説明されている。本明細書で使用する「FcR」という語は、将来同定されるものも含め、その他のFcRを包括する。この用語はまた、母性IgGの胎児への移転をつかさどる新生児レセプターであるFcRnを含む(Guyer他, J. Immunol., 117:587, 1976年;およびKim他, J. Immunol., 24:249, 1994年)。
「補体依存性細胞障害作用」および「CDC」は、補体存在下における標的の溶解を指す。補体の活性経路は補体系(C1q)の第一成分の分子の、同族抗原と複合した分子(例えば抗体)への結合により開始される。補体の活性を評価するため、例えばGazzano-SantoroらによるJ. Immunol. Methods, 202:163(1996年)に記載されているようなCDCアッセイを実行することができる。
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のCDRに1つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks他は、 Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994年); Schier他、Gene, 169:147-155 (1995年); Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995年); Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995年); およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992年)に開示されている。
「抗体の免疫特異的結合」に使用される「免疫特異的」という用語は、抗体の抗原混合部位と抗体により認識される特異的な抗原との間に発生する抗原に特異的な結合の相互作用を意味する。
ここでの目的のために「生物学的に活性」および「所望の生物学的活性」という場合、インビボまたはインビトロの少なくとも1種の哺乳動物細胞において、例えばアポトーシスを含め、DR4活性またはDR4活性化を(アゴニスト的にまたは刺激すように、あるいは拮抗的にまたは抑制するように)調節する能力を有するか、Apo-2リガンド(TRAIL)に結合するか、またはカスパーゼ3、カスパーゼ8、カスパーゼ10またはFADDなどの細胞内信号経路内の1つ以上の分子活性を調節することを意味する。そのような細胞内分子の活性を決定するためのアッセイは、従来技術において既知であり、例えばBoldin他、J. Biol. Chem., 270:7795-7798, 1995年; Peter, Cell Death Differ., 7:759-760, 2000年; Nagata, Cell, 88:355-365, 1998年; Ashkenazi他、Science, 281:1305-1308, 1999年に記載されている。
「アポトーシス」および「アポトーシス活性」という用語は、広義で使用され、細胞質の凝縮、原形質膜の微じゅう毛、核分断、染色体DNAの分解、またはミトコンドリア機能の欠失を含め、典型的に1以上の特徴的な細胞変化を伴う哺乳動物において起こる規則的、または制御された形態の細胞死を指す。この活性は、例えば、従来技術において既知である、細胞生存度アッセイ、アネキシンV結合アッセイ、PARPアッセイ、FACS分析、またはDNA電気泳動により決定および測定可能である。随意で、アポトーシス活性は、アネキシンVアッセイまたはPARPアッセイにより決定される。
「癌」、「癌性の」および「悪性の」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、黒色腫、膠腫、肉腫、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、及び白血病を含む悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平細胞癌腫(squamous cell carcinoma)、胃腸癌、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、神経膠腫、卵巣癌、肝癌および肝細胞腫などの肝臓癌、膀胱癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎癌およびビルムス腫などの腎臓癌、基底細胞癌、黒色腫、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、、精巣癌、食道癌、並びに多種多様な頭部及び頸部の癌が含まれる。
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の病理学的状態の原因であるか、媒介又は寄与するものである疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は介在により疾患の進行に改善された効果が付与される疾患も含まれる。この用語には、自己免疫疾患、免疫媒介炎症疾患、非免疫媒介炎症疾患、感染症、及び免疫欠損症が含まれる。そのうちの一部が免疫又はT細胞媒介であり、本発明によって治療することが可能な免疫関連及び炎症性疾患の例には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年型慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(溶血性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年型リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性肺疾患(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚病を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、多形滲出性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹、肺の免疫疾患例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎、拒絶反応及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。感染症疾患には、AIDS(HIV感染)、A、B、C、D及びE型肝炎、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症及び寄生虫症が含まれる。
本明細書の「自己免疫疾患」という語は広義で使用され、一般的な意味で、自己の組織成分に対する個体の体液または細胞の免疫反応から正常または健康な組織の破壊が生じる、哺乳動物の障害、または状態を指す。例として、これらに限定するものではないが、エリテマトーデス、甲状腺炎、リウマチ様関節炎、乾癬、多発性硬化症、自己免疫糖尿病、および炎症性腸疾患が挙げられる。
ここで使用される場合の「増殖阻害剤」とは、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を指すものである。よって、増殖阻害剤とは、S期におけるそのような遺伝子の過剰発現細胞のパーセンテージを有意に低減させるものである。増殖阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止へ波及する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬(Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs)」と題された、癌の分子的基礎(The Molecular Basis of Cancer)、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親-薬剤(parent drug)に比較して癌細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting, Belfast (1986),及びStella ら, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), pp.147-267, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、これらに限られないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、後述の化学療法剤が含まれる。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は抑制し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び小分子毒素または細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素活性毒素等の毒素、又はそれらの断片および/または変異体を含むことを意図する。
「化学療法剤」は、癌などの状態の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む); エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1 I及びカリケアマイシンθI 1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin); 同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5−FUのようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PKS(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(Navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、例えば4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(Fareston);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
「サイトカイン」なる用語は、1つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-α等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGFs);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインには、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
ここで使用される「治療的」、「治療」および「治療法」という用語は、治療的療法、予防的療法、および防護的療法を指す。
「治療的有効量」という用語は、哺乳動物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的な量を指す。癌の場合、治療的に有効量の薬は癌細胞の数を減じ;腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍増殖をある程度まで阻害し;及び/又は癌に関連する一つ又は複数の症状をある程度まで緩和する。癌の治療法においては、インビボにおける効率は、例えば、腫瘍の重量または容積の評価、疾病進行の時間(TTP)、および/または反応率(RR)を決定することにより測定される。
ここで使用される「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、ヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコを含む。本発明の好ましい実施態様においては、哺乳動物はヒトである。
II. 本発明の組成物および方法
A.DR4抗体
本発明の一実施態様では、DR4抗体を提供する。例示的抗体は、ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、およびヘテロ共同抗体を含む。これら抗体はアゴニスト、アンタゴニスト、または阻止抗体でよい。
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を含み得る。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、DR4ポリペプチド(またはDR4 ECD)またはその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。次いで哺乳動物から採血し,DR4抗体力価について血清アッセイを行うことができる。必要であれば、抗体力価が増大または一定になるまで、哺乳動物に圧力をかけることができる。
2.モノクローナル抗体
あるいは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的には、DR4ポリペプチド(またはDR4 ECD)、またはその融合タンパク質、例えばDR4 ECD-IgG融合タンパク質を含む。あるいは、免疫化剤は、DR4に対するApo-2Lの結合に関与する1以上のアミノ酸を有するDR4の断片または一部を含んでもよい。好ましい実施態様では、免疫化剤は、実施例1に記載のような、IgG配列に融合したDR4の細胞外ドメイン配列を有する。
一般に、ヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用されるか、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986年、pp. 59-103)。不死化細胞系は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は増殖を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化細胞系はマウス骨髄腫系であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやヴァージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より入手可能である。そのようなマウス骨髄腫細胞系はP3X63Ag8U.1(ATCC CRL 1580)であり、下記の実施例2に記載する。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞系も開示されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 ,1984年; Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, 1987年、pp. 51-63)
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、DR4に対するモノクローナル抗体の存在の有無に関し分析する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980年)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で増殖させることができる(Goding, 上掲)。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として増殖させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に挿入することができ、これが宿主細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(Morrisonら, Proc. Nat. Acad. Sci. 81, 6851, 1984年)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このようにして、本発明の抗-DR4モノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を調製することができる。
典型的に、このような非免疫グロブリンポリペプチドは本発明の抗体の定常ドメインに置換されるか、または、本発明の抗体の抗原含有部位の可変ドメインに置換され、DR4に対する特異性を有する1つの抗原含有部位、および異なる抗体に対する特異性を有する別の抗原含有部位を含むキメラ二価抗体をつくることができる。
キメラ抗体またはハイブリッド抗体はまた、架橋剤を使用する方法を含め、合成タンパク質化学において公知の方法を使用してインビトロで調製してもよい。例えば、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合形成により、免疫毒性を構築することができる。この目的のために適切な試薬には、iminothiolateおよびメチル−4−メルカプトブチルイミダーテ(mercaptobutyrimidate)が含まれる。
一本鎖Fv断片も、Iliades他, FEBS Letters, 409:437-441 (1997年)に記載のように生成することができる。様々なリンカーを使用したこのような一本鎖断片は、Kortt他, Protein Engineering, 10:423-433 (1997年)に開示されている。抗体の組換え生成および処置が従来技術で公知である。当業者が使用するそのような技術の典型的な例をいかに詳述する。
(i)ヒト化抗体
一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、基本的に、ウィンター(Winter)及び共同研究者(Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986年);Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988年);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988年))の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。
よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
更に、抗体を、抗原に対する高結合親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をコンセンサス及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
(ii)ヒト抗体
ヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマ法により作成することができる。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのヒト骨髄腫およびマウス−ヒト異種骨髄腫の細胞系は、例えば、Kozbor, J. Immunol. 133, 3001 (1984年), 及びBrodeur他, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987年)に記載されている。
内在性の免疫グロブリン産生がない状態で、免疫化によりヒト抗体のレパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の移入は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993)を参照のこと。
Mendez他(Nature Genetics 15: 146-156 [1997年])はこの技術をさらに改良し、抗原を投与すると親和性の高い完全ヒト抗体を生成する「ゼノマウスII(Xenomouse II)」と称する系列のトランスジェニックマウスを生成した。これは、上述のように、内因性JHセグメントに欠陥を有するマウスに、メガベースのヒト重鎖座および軽鎖座の生殖細胞系に取り込むことにより達成された。ゼノマウスIIは、約66VH遺伝子、完全なDH及びJH領域および3つの異なる定常領域(μ、δおよびχ)を含む1,020kbのヒト重鎖遺伝子座を有し、また32Vκ遺伝子、JκセグメントおよびCκ遺伝子を含む800kbのヒトκ遺伝子座を有する。これらのマウスに生成された抗体は、遺伝子再配列、構成、およびレパートリーを含め、ヒトに見られる抗体に全ての面で非常に類似している。ヒト抗体は、好ましくは、マウス座における遺伝子再配列を抑制する内因性JHセグメントの欠損により、内因性抗体全体にわたって発現する。
別法として、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553, 1990年)を使用して、非免疫化ドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を生産させることができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、フレーム単位で、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のどちらかでクローンし、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として表示させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づく選択によっても、結果としてこれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択が成される。よって、このファージはB細胞のいくつかの特性を模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照せよ。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイのために使用できる。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991年)は、免疫化したマウス脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリから、多様で多くの抗-オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーが構成可能であり、多様で多くの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術にそのまま従うことで単離することができる。自然な免疫応答において、抗体遺伝子は高い率で突然変異を蓄積する(体細胞過剰変異)。導入された変化の一部は高い親和性を提供し、親和性の高い表面免疫グロブリンを示すB細胞は、その後の抗原曝露の間に優先的に複製され、分化される。このような自然の工程を、「チェーンシャフリング」として知られる技術(Marks他, Bio/Technol. 10, 779-783, 1992年)を使用することにより模倣することができる。この方法では、重鎖V領域遺伝子と軽鎖V領域遺伝子を、順に、非免疫化ドナーから取得したVドメイン遺伝子の自然に生じる変異体(レパートリー)のレパートリーで置換することにより、ファージディスプレイによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性を改善することができる。この技術により、nM範囲での親和性を有する抗体および抗体断片の生産が可能である。非常に大きなファージ抗体のレパートリー(「マザーオブオール ライブラリー(the Mother-of-all libraries)」とも呼ばれる)を作る方法が、WaterhouseらによるNucl. Acids Res. 21, 2265-2266 (1993年)に開示されている。また、遺伝子シャフリングは、ヒト抗体が元になっている齧歯類の抗体と類似した親和性および特性を有している場合、齧歯類の抗体からヒト抗体を得るために使用することもできる。「エピトープインプリンティング」と呼ばれるこの方法により、ファージディスプレイ技術により得られた齧歯類抗体の重鎖Vドメイン遺伝子と軽鎖Vドメイン遺伝子をヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、齧歯類−ヒトキメラを作成する。抗原を選択することにより、機能的抗原結合部位を回復することができるヒト可変部が単離される、つまり、エピトープがパートナーの選択をつかさどる(インプリントする)。残りの齧歯類Vドメインを置換するためにこの工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT特許出願WO 93/06213を参照)。伝統的なCDR移植による齧歯類抗体のヒト化と異なり、この技術により、齧歯類起源のフレームワークまたはCDR残基を全く持たない完全なヒト抗体が得られる。
下記に詳述するように、本発明の抗体は、随意で、一量体、抗体、二量体抗体、ならびに抗体の多価形態を含んでよい。当業者は、当分野で既知の技術により、ここに開示するDR4抗体を使用して、そのような二量体または多価形態を構築することができる。一価抗体を調製する方法もまた、当技術分野で周知である。例えば、一方法では、免疫グロブリン軽鎖と修飾された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般にFc領域の任意の点で切断され、重鎖の架橋が形成されることが防止される。あるいは、関連するシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換するか、または削除し、よって架橋結合を防止する。
(iii)二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方はDR4レセプターに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくはレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。例えば、DR4レセプターおよび別のアポトーシス/情報伝達レセプターに特異的に結合する二重特異性抗体は、本発明に含まれる。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の発現に基づく。Millstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983年)。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成されるが、幾分扱いにくく、生産性が低い。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTrauneckerら, EMBO,10:3655-3659 (1991年)に開示されている。
さらに好ましい別の方法により、所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコード化するDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が所最適な収率をもたらす実施態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性がもたらされる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率があまり影響がないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。この手法の好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、1994年3月3日公開の国際公開第94/04690号に開示されている。
二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
(iv)ヘテロ抱合抗体
ヘテロ抱合抗体も本発明の範囲に含まれる。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療のために(WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089)提案されている。ヘテロ抱合抗体は、任意の簡便な架橋法を使用して、調製することができる。適切な架橋剤は当技術分野において既知であり、複数の架橋技術と共に、米国特許第4,676,980号に開示されている。
(v)抗体断片
一部の実施態様においては、抗-DR4抗体(マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び抗体変異体を含む)は抗体断片である。抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されている(例えば、Morimotoら, J. Biochem. Biophys. Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985年)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992年))。他の実施態様では、ロイシンジッパーGCN4を使用してF(ab')2を形成し、F(ab')2分子の構築を促進する。別の実施態様では、組換え宿主細胞の培地からFv、FabまたはF(ab')2断片を直接分離することができる。抗体断片を生産するための他の技術は当業者には明らかである。例えば、パパインを使用して消化を行うことができる。パパイン消化の例は、1994年12月22日公開のWO94/29348および米国特許第4,342,566号に開示されている。抗体のパパイン消化は、通常、Fab断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成する。各Fab断片は単一の抗原結合部位、および残存性Fc断片を持つ。ペプシン処理により、2つ抗原結合部位を持ち、抗原に架橋結合する能力のあるF(ab')2が生成される。
抗原消化で生成されるFab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、それに加えて、抗原ヒンジ領域由来の1以上のシステインを含む、重鎖のCH1ドメインのカルボキシ末端に少数の残基を持つ点においてFab断片と異なる。本発明では、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab'として、ここではFab'-SHと記載する。F(ab')抗体断片は、もともとそれらの間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生成されたものである。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
(vi)抗体のアミノ酸配列変異体
抗-DR4抗体のアミノ酸配列変異体は、抗-DR4抗体DNAに適切なヌクレオチド変化を導入して、又はペプチド合成により調製される。そのような変異体は、本明細書の実施例の抗-DR4抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失型、又は挿入或いは置換を含む。最終構成物が所望する特徴を有していれば、欠失、挿入又は置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化は、また、グリコシル化部位の数または位置を変えることなどの、ヒト化または変異体抗-DR4抗体の翻訳後プロセスを改変することが可能である。
突然変異誘発に好ましい位置である抗-DR4抗体の特定の残基または領域の同定に有益な方法は、Cunningham and Wells Science, 244:1081-1085 (1989年)に開示されているような、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的となる残基または残基の組が同定され(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電した残基)、中性の、または負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)で置換され、アミノ酸のDR4抗原との相互作用に影響を与える。次いで、置換に対する機能的感受性を示しているそれらアミノ酸位置を、置換の部位において、または置換の部位のために、さらなる、または他の変異体を導入することにより精製する。このように、アミノ酸配列変異体を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定する必要は無い。例えば、任意の部位における突然変異の機能を分析するために、標的コドンまたは領域においてalaスキャンニングまたはランダム突然変異誘発を実行し、発現した抗-DR4抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を有するポリペプチドまでの長さに亘るアミノ−末端融合および/またはカルボキシ−末端融合、ならびに、単一または多重アミノ酸残基の配列内挿入を含む。端末挿入の例には、N−末端メチオニル残基を持つ抗-DR4抗体、またはエピトープタグに融合した抗体が含まれる。抗-DR4抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させる、ポリペプチドまたは酵素の抗-DR4抗体の、N−末端またはC−末端への融合が含まれる(以下参照)。
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これら変異体では、抗-DR4抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、別の残基がそこに挿入されている。置換突然変異誘発に関して最も興味深い部位には高頻度可変領域が含まれるが、FR変換も考慮される。常套的な置換を表1の「好ましい置換」の欄に示す。このような置換により生物学的活性に変化が生じたならば、表1の「例示的置換」の欄に示すか、またはアミノ酸のクラスに関してさらに後述されるさらに重要な変化を導入でき、産物をスクリーニングできる。
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はら旋構造、(b)標的部位の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において実質的に異なる置換基を選択することにより達成される。天然発生残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
ヒト化または変異体抗-DR4抗体の適切な配置の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な一つの方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異である。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された全長抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体とヒトDR4の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
(vii)抗体のグリコシル化変異体
抗体をその定常領域の保存位置でグリコシル化する(JefferisおよびLund, Chem. Immunol. 65:111-128, 1997年; WrightおよびMorrison, TibTECH 15:26-32, 1997年)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boyd他., Mol. Immunol. 32:1311-1318, 1996年; WittweおよびHoward, Biochem. 29:4175-4180, 1990年)、および、糖タンパク質の高次構造及び提示される3次元表面に影響しうる糖タンパク質の部分同士の分子内相互作用(HefferisおよびLund, 上掲; Wyss and Wagner, Current Opin. Biotech. 7:409-416, 1996年)に作用する。オリゴ糖はまた、特異的な認識構造に基づいて任意の糖タンパク質を特定の分子に標的化するのに役立つ。例えば、アガラクトシル化IgGにおいて、オリゴ糖部分はCH2内空間の外に「とび出し(flip)」、末端N−アセチルグリコサミン残基がマンノース結合タンパク質に結合できるようになることが報告されている(Malhotra他, Nature Med. 1:237-243, 1995年)。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、オリゴ糖のグリコペプチダーゼによるCAMPATH-1H(ヒトリンパ球のCDw52抗原を認識する組換えヒト化マウスモノクローナルIgG1抗体)からの除去を実行した結果、補体媒介性溶解(CMCL)が完全に低減したが(Boyd他, Mol. Immunol. 32:1311-1318, 1996年)、ノイラミニダーゼを使用してシアル酸残基を選択的に除去した結果、DMCLの低減は見られなかった。抗体のグリコシル化はまた、抗体依存性の細胞の細胞障害性(ADCC)に影響することが報告されている。特に、バイセクティングGlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン制御発現を持つCHO細胞で、ADCC活性が向上したことが報告されている(Umana他, Mature Biotech. 17:176-180, 1999年)。
抗体のグリコシル化変異体は、抗体のグリコシル化のパターンが変更された変異体である。変更するとは、抗体に見られる1以上の炭水化物部分を除去し、抗体に1以上の炭水化物部分を加え、グリコシル化の組成(グリコシル化パターン)、グリコシル化の範囲、その他を変更することを意味する。グリコシル化変異体は、例えば、抗体をコードする核酸配列について、1以上のグリコシル化部位の、除去、変更、および/または付加を行うことにより調製することができる。
抗体のグリコシル化は、通常、N−結合かO−結合である。N−結合とは、アウパラギン残基の側鎖への炭水化物成分の付与を指す。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸)は、炭水化物成分のアスパラギン側鎖への酵素的付与の認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらトリペプチド配列のいずれかが存在することにより、潜在的グリコシル化部位が創造される。O−結合のグリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの、糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうち1つの付着を指す。5−ヒロドキシプロリン、または5−ヒドロキシリシンを使用してもよい。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N−結合グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列の1または複数を有するようにアミノ酸配列を変更することにより常套的に達成される。変更は、また、(O−結合グリコシル化部位について)元の抗体の配列に対して1以上のセリンまたはトレオニン残基を付加または置換することにより行ってもよい。
抗-DR4抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野において既知の様々な方法により調製される。これら方法は、それらに限定するものではないが、抗-DR4抗体の早期調製変異体、または非変異体形のカセット突然変異誘発、オリゴヌクレオチドが媒介する(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発による、天然供給源からの単離(自然発生のアミノ酸変異体の場合)又は調製を含む。
抗体のグリコシル化(グリコシル化パターンを含む)は、内在するヌクレオチド配列を変更することなく変更可能である。グリコシル化は抗体を発現するために使用される宿主細胞に大きく依存する。潜在的治療法としての、組換え糖タンパク質の発現に使用される細胞の種類、例えば抗体が、まれに天然細胞であることから、抗体のグリコシル化パターンは大きく変化することが予想される(例えばHse他, J. Biol. Chem. 272:9062-9070, 1997年参照)。宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え生産の間のグリコシル化に影響を与える因子には、増殖形態、媒地、製剤、培養密度、酸素添加、pH、精製スキームなどが含まれる。オリゴ等製造に関わるある種の酵素の導入又は過剰発現を含む、特定の宿主生物においてなされたグリコシル化パターンを変えるための様々な方法が提案されている(米国特許第5,047,335号、米国特許第5,510,261号および米国特許第5,278,299号)。グリコシル化、または特定の種類のグリコシル化は、例えばエンドグリコシダーゼH(Endo H)の使用により、糖タンパク質から酵素学的に除去することができる。加えて、組換え宿主細胞を遺伝学的に設計することができ、例えば多糖類の特定種のプロセシングにおいて欠損をつくることができる。これら同様の技術は当技術分野において既知である。
抗体のグリコシル化構造は、レクチンクロマトグラフィ、NMR、質量分析、HPLC、GPC、単糖成分分析、連続酵素消化、および高pHアニオン交換クロマトグラフィを使用して電荷に基づきオリゴ糖を分離するHPAEC-PADなどの、炭水化物分析を行う従来技術により容易に分析できる。分析的な目的のためにオリゴ糖を遊離させる方法も知られており、それらには、限定はしないが、酵素的処理(通常ペプチド−N−グリコシダーゼ F/エンド−β−ガラクトシダーゼを使用して行う)、主にO−結合構造を遊離するのに過酷なアルカリ環境を使用しての除去、およびN−結合とO−結合両方のオリゴ糖を遊離させるための無水ヒドラジンを使用する化学的方法が含まれる。
(viii)例示的抗体
本明細書に開示する発明は、複数の例示的実施態様を有する。本発明の複数の典型的な実施態様を以下に記載する。以下の実施態様は説明のみを目的として提供するのであって、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。
以下の実施例に記載するように、複数のヒト抗-DR4モノクローナル抗体が同定され、調製された。それらのうち1G11、1E10および2A2と呼ばれる特定の抗体が、ATCCに寄託されている(それぞれ、PTA-3361、PTA-3359およびPTA-3360)。1つの実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、ATCCに寄託されている上述のハイブリドーマ細胞系により分泌されるモノクローナル抗体と同じ生物学的特徴を有する。「生物学的特徴」とは、例えばDR4へ特異的に結合する、またはDR4活性化(またはDR4関連活性)を阻止、誘発または亢進する能力など、モノクローナル抗体のインビトロおよび/またはインビボでの活性または特性を指す。例として、阻止抗体は、Apo-2リガンドのDR4に対する結合を阻止したり、またはApo-2リガンドにより哺乳動物細胞(例えば癌細胞)に誘発されたアポトーシスを阻止したりする。随意で、そのようなApo-2リガンドはアミノ酸114から281(配列番号3)から構成される。本明細書に記載するように(図4、7および9参照)、モノクローナル抗体1G11は、DR4に特異的に結合し、アポトーシスを誘発することができる、およびApo-2リガンドがDR4に結合するのを阻止できることを特徴とする。このようなことから、DR4上のApo-2リガンド結合部位と同じであるか、あるいは、DR4上のApo-2リガンド結合部位と重複するか、またはApo-2リガンドがDR4に結合するのを防止する立体配置を作り出すエピトープを有する抗-DR4抗体が、アポトーシスまたは抗腫瘍活性に必須ではない、または必要とされないことを示唆している。しかしながら、そのようなエピトープまたは立体配置を有するDR4抗体は、そのようなアポトーシスまたは抗腫瘍活性の効率の上昇、または有効性を示すことがありうる。ヒトDR4抗体の特性および活性を、後述の実施例(及び表2)でさらに説明する。随意で、本発明のモノクローナル抗体は、ここに開示される1G11、1E10および2A2抗体と同じエピトープに結合する。これは、ここに、および実施例に記載する複数の阿世により決定できる。例えば、モノクローナル抗体がここで特に言及するDR4抗体と同じ特異性を持つかどうかを決定するために、DR4阻止アッセイまたはアポトーシス誘発アッセイにおいて、下記の実施例に記載するようなその活性を比較することができる。
ヒト、キメラ、ハイブリッドまたは組換え抗-DR4抗体(および、たとえばここに開示する二重特異性抗体、または三重特異性抗体)は、完全長重鎖および完全長軽鎖、またはその断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、またはFv断片か、そのような軽鎖または重鎖の単量体または二量体か、そのような重鎖または軽鎖がリンカー分子によって結合している一本鎖Fvを有するか、あるいは、そのような軽鎖または重鎖の可変ドメイン(または高頻度可変ドメイン)を有し、また別の種類の抗体ドメインと組み合わさった抗体を含んでよい。
ここに開示するように、DR4抗体は、随意で1以上の所望の生物学的活性または特性を有する。そのようなDR4抗体は、限定するものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および親和性熟抗体を含む。上述のように、DR4抗体は、様々な技術を使用してそれら所望の活性または特性を達成するように構築または設計できる。1つの実施態様では、DR4抗体は、少なくとも105 M-1、好ましくは少なくとも106 M-1から107 M-1の範囲、さらに好ましくは少なくとも108 M-1 から1012 M-1の範囲、さらに好ましくは少なくとも109 M-1 to 1012 M-1の範囲のDR4レセプター結合親和性を有する。DR4抗体の結合親和性は、スキャッチャード分析(Munson 他, 上掲を参照)を含めた既知の技術に従ってDR4抗体を試験することにより過剰な実験を行うことなく決定できる。
別の実施態様では、本発明のDR4抗体は、Apo-2Lが結合するDR4上の同じエピトープに結合できるか、またはApo-2Lが結合するDR4上のエピトープと一致するか重複するDR4上のエピトープに結合できる。DR4抗体は、また、Apo-2リガンドのDR4に対する結合を防ぐ立体構造を作り出すように相互作用しうる。本発明のDR4抗体のエピトープ結合特性は、従来技術を使用して決定できる。例えば、競合的抑制アッセイなどのインビトロアッセイでDR4抗体を試験し、Apo-2LのDR4に対する結合を阻止または抑制するDR4抗体の能力を決定することができる。随意で、DR4抗体を競合阻害アッセイで試験し、Apo-2Lポリペプチドの、DR4-IgG構成体に対する結合、またはDR4発現細胞に対する結合を、DR4抗体が阻止できる能力を決定することができる。随意で、DR4抗体は、Apo-2LのDR4に対する結合を、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%、阻止はまた抑制することができる。これは、例えば、可溶形態のApo-2リガンド(TRAIL)(例えば、Pitti他、J. Biol. Chem., 上掲に記載の114から281までの細胞外ドメイン配列)およびDR4 ECD-IgG(例えば実施例1に記載)を使用したインビトロの競合阻害アッセイにより決定できる。DR4抗体のエピトープ結合特性はまた、インビトロアッセイを使用して、Apo-2L誘発アポトーシスを阻止するDR4抗体の能力を試験することにより決定できる。随意で、DR4抗体は、選択された哺乳動物の癌細胞種におけるApo-2L誘発アポトーシスを、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%または95%阻止または抑制でき、それは例えばインビトロのアッセイにおいて測定することができる。
さらなる実施態様では、DR4抗体は、Apo-2リガンド(TRAIL)に匹敵する活性を持つアゴニスト抗体を含む。好ましくは、そのようなアゴニストDR4抗体は、少なくとも1種の癌または腫瘍細胞株または原発腫瘍にアポトーシスを引き起こす。アゴニストDR4抗体のアポトーシス活性は、既知のインビトロまたはインビボアッセイを使用して決定できる。そのようなインビトロまたはインビボアッセイの例は当技術分野において周知である。インビトロでは、アポトーシス活性はアネキシンV結合などの既知の技術を使用して決定できる。インビボでは、例えば腫瘍の重量または容積の低減を測定することにより、アポトーシス活性を決定できる。
上述で注記したように、ここに開示する抗体は、特定の生理的相互作用および/またはプロセスを調節する能力を含む複数の特性を有する。実施例5および7に示すように、ここに開示する抗体は、DR4媒介性アポトーシスを引き起こすことができる。本発明の典型的な実施態様では、ここに開示する抗体は、アネキシンV染色により測定されるように、9D細胞(DR4を発現しているヒトBリンパ球株)にDR4媒介アポトーシスをアゴニスト的に引き起こす。本発明の特定の実施態様では、抗体のアゴニスト的な活性は、抗-ヒトIgG Fcで抗体を架橋することにより促進される。本発明の好適な実施態様では、この促進されたアポトーシスは9D細胞におけるApo-2Lのアポトーシス活性に匹敵する。非常に好ましい実施態様では、DR4に接触させた9D細胞は、Apo-2Lに接触させた9D細胞に見られるアポトーシスの約20%以内、好ましくは約10%以内である、一定レベルのアポトーシスを示す。
実施例6に示すように、ここに開示する抗体は、Apo-2リガンドのヒトDR4に対する結合も抑制することができる。例示的実施例においては、酵素結合免疫吸着剤アッセイにおいて測定されたように、ここに開示する抗体は、ビオチニン化したApo-2リガンドの、ヒトDR4-IgGに対する結合を阻止した。
実施例8に示すポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)アッセイで確認されたように、ここに開示するヒトDR4抗体で処理した細胞は分解された(85Kd)PARPを生成する。図5に示すこの特性の典型的な実施態様では、ヒト抗-DR4抗体で処理し、抗-ヒトIgG Fcで架橋した9D細胞は、切断された85Kd PARPを示す。本発明の特に好ましい実施態様では、ヒト抗-DR4抗体細胞で処理した9D細胞における、無傷(116Kd)のPARPと分解された(85Kd)のPARPの相対比は、Apo-2リガンドで処理した9D細胞における無傷(116Kd)のPARPと分解された(85Kd)のPARPの相対比と匹敵する(図4参照)。
本発明の抗体はまた、DR4エピトープへの免疫特異的結合能に関する多数の特徴を示す。例えば、本発明の抗体は、ヒトDR4分子上の特定のエピトープに対する結合能を有する。加えて、本発明の抗体は、これらのヒトDR4エピトープへの結合を可能にする特異的なアミノ酸配列を有する。また、本発明の抗体は、DR4分子上の同一またはほぼ同一のエピトープを認識する抗体の免疫特異的結合を競合的に抑制する能力を有する。実施例2に示す典型的な実施態様では、DR4エピトープに対する抗体の競合を競合ELISAで評価する。本発明の好ましい実施態様では、第一の非標識抗体のDR4エピトープ結合は、第二の非標識抗体のDR4エピトープ結合と競合する。この実施態様では、標識抗体と非標識抗体の両方が同一または重複エピトープを認識した場合、DR4エピトープ結合に対して非標識抗体が標識抗体と競合し、その結果標識抗体の結合が低減する。
本発明の好適な実施態様は、ここに開示する生理学的および/または免疫特異的結合特性のうちの複数を示すDR4抗体を含む。典型的な実施態様では、ここに開示する本発明により、DR4に対するApo-2リガンドの結合を阻止する能力、9D細胞にアポトーシスを起こす能力、およびポリADP-リボースポリメラーゼアッセイにおいて分解された(85Kd)PARPを生成する能力からなる群から選択された第一の特徴を有し、加えて、DR4分子上の特定のエピトープの認識、DR4分子上の同一またはほぼ同一なエピトープを認識する抗体の免疫特異的結合を競合的に阻止する能力、および/またはヒトDR4分子上の特定のエピトープを認識する抗原結合部位の少なくとも一部を有する特異的なアミノ酸配列からなる群から選択された第二の特徴を示す抗体が提供される。特に好ましい実施態様では、ここに開示される抗体は、本発明の生理学的および/または免疫特異的結合特性のうちの複数を示す。
本発明の典型的な実施態様は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション・アソーシエーション番号のPTA-3359、PTA-3360およびPTA-3361からなる群から選択されたハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体と同じ生物学的特徴を有する、単離された抗-DR4抗体である。関連する実施態様は、アミノ酸配列1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターに結合し、PTA-3359、PTA-3360またはPTA-3361として寄託されているハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体の、DR4レセプターへの結合を競合的に阻止する抗体を含む、単離された抗-DR4レセプターモノクローナル抗体を含む。本発明のその他の関連実施態様は、PTA-3359、PTA-3360またはPTA-3361として寄託されているハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体が結合するものと同じDR4レセプターエピトープに結合する抗体を含む、抗-DR4レセプター抗体を含む。本発明の特定の実施態様は、ATCC番号PTA-3359、PTA-3360およびPTA-3361として寄託されているハイブリドーマを含む。本発明の関連する特定実施態様は、ATCC番号PTA-3359、PTA-3360およびPTA-3361として寄託されているハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を含む。随意で、そのような抗-DR4レセプター抗体は、少なくとも108 M-1 から1012 M-1のDR4レセプターに対する結合親和性を有する。好ましい実施態様では、本発明の抗-DR4レセプター抗体はヒト抗体である。
本発明の抗体は多数の生物学的特性を有する。本発明の好ましい実施態様では、ここに開示する抗-DR4レセプター抗体は、アミノ酸差114から281(配列番号3)を有するApo-2リガンドの、アミノ酸1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターに対する結合を抑制する。通常、本発明の抗-DR4レセプター抗体は、少なくとも1種の哺乳動物細胞において、Apo-2リガンドにより誘発されたアポトーシスを阻止する。好ましい実施態様では、本発明の抗-DR4レセプター抗体は、少なくとも1種の哺乳動物細胞において、アミノ酸114から281(配列番号3)を持つApo-2リガンドのアポトーシス活性を中和する。好ましくは、哺乳動物の癌細胞は大腸細胞または肺細胞である。
本発明の好ましい実施態様では、ここに開示する抗-DR4レセプター抗体は、少なくとも1種の哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘発する。典型的には、ここに開示する抗-DR4レセプター抗体は、哺乳動物細胞中および細胞上に発現されたDR4レセプターに結合すると、哺乳動物細胞の細胞質において、カスパーゼ3、カスパーゼ8、 カスパーゼ10およびFADDからなる群から選択された1以上の分子を活性化する。本発明の特に好ましい実施態様は、アミノ酸1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターに結合し、ATCC番号PTA-3359、PTA-3360、またはPTA-3361として寄託されているハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体の、DR4レセプターに対する結合を競合的に抑制し、少なくとも1種の哺乳動物細胞にアポトーシスを引き起こす抗体を含む、単離された抗-DR4レセプターモノクローナル抗体を含む。例示的実施例では、哺乳動物細胞は癌細胞であり、典型的には大腸癌または肺癌の細胞である。特定の実施態様において、哺乳動物細胞は9D細胞である。
本発明の別の実施態様は、アミノ酸1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターに結合する抗体を含む、単離された抗-DR4レセプターのモノクローナル抗体である。ここで、この抗体は、ATCC番号PTA-3359、PTA-3360またはPTA-3361として寄託されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体の、DR4レセプターに対する結合を競合的に抑制し、また、アミノ酸114から281(配列番号3)を有するApo-2リガンドの、アミノ酸1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターへの結合を抑制し、さらに、哺乳動物細胞中または細胞上に発現したDR4レセプターと結合すると、哺乳動物細胞の細胞質においてカスパーゼ3、カスパーゼ8、カスパーゼ10およびFADDからなる群から選択された1以上の分子を活性化する。
本発明の別の実施態様は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリオキシアルキレンからなる群から選択される1以上の非タンパク様ポリマーに結合する本発明の抗-DR4レセプターを含む。代替的実施態様は、細胞障害剤または細胞障害酵素に結合する本発明の抗-DR4レセプター抗体を含む。また別の実施態様では、本発明の抗-DR4レセプター抗体は、放射性同位元素、蛍光化合物または化学発光化合物に結合される。随意で、本発明の抗-DR4レセプター抗体をグリコシル化あるいは非グリコシル化する。
以下に詳述するように、本発明の抗体は、生理学的工程を調節するための様々な方法に使用することができる。本発明のそのような実施態様は、哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する方法を含む。該方法では、DR4レセプターを発現している哺乳動物細胞に、アミノ酸1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターに結合しPTA-3359、PTA-3360、またはPTA-3361として寄託されているハイブリドーマにより産生されるモノクロナール抗体の、DR4レセプターに対する結合を競合的に抑制する、単離された抗-DR4レセプターモノクローナル抗体の治療的有効量を投与する。このような方法では、哺乳動物細胞は通常癌細胞である。好ましい実施態様では、これらの方法に使用する抗-DR4レセプター抗体はヒト抗体である。
本発明のまた別の実施態様は、哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する方法であって、当該方法では、アミノ酸1から218(配列番号1)を有するDR4レセプターに結合し、PTA-3359、PTA-3360およびPTA-3361として寄託されているハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体の、DR4レセプターに対する結合を競合的に抑制する抗体を含む、単離された抗-DR4レセプターモノクローナル抗体の治療的有効量を、DR4レセプターを発現している哺乳動物細胞に投与する。
3.三重特異性抗体
三重特異性抗体も本発明の範囲内に含まれる。このような抗体は、例えば、Iliades他(上掲)およびKortt他(上掲)に開示されている。
4.その他変形例
ここでDR4抗体のその他の変形例を考察する。本発明の抗体は、抗体を細胞障害剤(例えば毒性分子)か、またはプロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、WO81/01145参照)を抗癌剤に変換するプロドラッグ活性化酵素を抱合させることにより修飾できる。例えば、WO 88/07378および米国特許第4,975,278号参照。この技術は、「抗体依存酵素媒介プロドラッグ療法」(ADEPT)とも呼ばれる。
ADEPTに有用な免疫複合体の酵素成分は、プロドラッグをそのさらに活性な細胞障害性形態に変換するようにプロドラッグに作用することが可能なあらゆる酵素を含む。本発明の方法に有用な酵素は、それらに限定はしないが、リン酸を含有するプロドラッグを遊離剤に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸を含有するプロドラッグを遊離剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5−フルオロシトシンを抗癌剤の5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチドを含有するプロドラッグを遊離剤に変換するのに有用な、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えばカテプシンBおよびL)などのプロテアーゼ;カスパーゼ3などのカスパーゼ;D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するのに有用な、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化したプロドラッグを遊離剤に変換するのに有用なβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼなどの炭水化物切断酵素:β−ラクタムにより誘導された薬剤を遊離剤に変換するのに有用なβ−ラクタマーゼ;および、フェノキシベンザミン基またはフェニルアセチル基の各々によりアミン窒素に誘導された薬剤を変換するのに有用な、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼなどのペニシリンアミダーゼを含む。あるいは、「アブザイム」としても知られる酵素的活性を持つ抗体を使用して、本発明のプロドラッグを遊離活性剤に変えることもできる(例えば、Massey, Nature 328: 457-458, 1987年を参照)。抗体−アブザイム複合体は、アブザイムを腫瘍細胞群に到達させるために、本明細書に開示するようにして調製することができる。
ヘテロ二機能的架橋剤の使用など、当技術分野で周知の技術により、抗体に対して酵素を二重結合的に結合させることができる。あるいは、少なくとも本発明の酵素の機能的に活性な部分に連結した本発明の抗体の抗原結合領域を少なくとも有する融合タンパク質を、当技術分野で周知の組換えDNA技術を使用して構築することができる(例えば、Neuberger他, Nature, 312: 604-608, 1984年を参照)。
さらなる抗体の変形例を考える。例えば、抗体を多様な非タンパク様ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマー)の1つにリンクさせることができる。また、例えば、コロイド状薬剤運搬システム(例えば、リポゾーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルジョン、ナノ−粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンにおける、界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(methylmethacylate))マイクロカプセル、またはコアセルベーション技術により用意したマイクロカプセルに抗体を包むことができる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A., Ed., (1980年)に開示されている。血清の半減期を増大させるため、例えば米国特許第5,739,277号に記載されているように、サルベージレセプター結合エピトープを抗体(特に抗体断片)に組み込むことができる。ここで使用する「サルベージレセプター」という用語は、インビボでIgG分子の血清半減期を増大させるIgG分子(例えばIgG1、IgG2、IgG3、oまたはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
ここに開示する抗-DR4抗体は、免疫リポゾームとして定式化することもできる。抗体を含むリポゾームは、Epstein他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688, 1985年; Hwang他, Proc. Natl Acad. Sci. USA 77:4030 ,1980年; および米国特許第4,485,045号および4,544,545に記載されているような、当技術分野で既知の方法により調製される。特に有用なリポゾームは、ホフファチジルコリン、コレステロールおよびPEG−誘導性ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質成分による逆相揮発法により生成できる。リポゾームは、所望の直径のリポゾームを作成するため、所定の孔サイズのフィルターにより抽出する。本発明の抗体のFab’断片は、Martin他, J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982年)に記載のように、ジスルフィド交換反応によりリポゾームに複合できる。化学療法剤(例えばドキソルビシン)をリポゾームに含ませてもよい。Gabizon他, J. National Cancer Inst.81(19):1484 (1989年)を参照のこと。
本発明の抗体は、「架橋」DR4抗体を含む。ここで使用する「架橋」という用語は、少なくとも2つのIgG分子が結合して1つの(または単一の)分子を形成することを指す。DR4抗体は、様々なリンカー分子を使用して架橋することができ、好ましくは抗-IgG分子、補体、化学的変体または分子設計により架橋する。当業者であれば、抗体が細胞表面膜に結合すると、補体が抗体分子に対して比較的高い親和性を有することを理解するであろう。従って、細胞表面膜に結合した2以上の抗-DR4抗体をリンクさせるための架橋分子として、補体を使用できると考えられる。ヒト抗-DR4抗体の架橋は、ヤギの抗-マウスIgG Fcまたはヤギの抗-ヒトIgG Fcを使用した実施例にも記載する。
5.組換え法
本発明はまた、ここに開示するようなDR4をコードする単離された核酸、ベクター、及び核酸を有する宿主細胞、ならびに抗体産生のための組換え技術を提供する。
抗体の組換え生産のため、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローン化(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに導入する。抗体をコードするDNAは、従来的な方法を使用して(例えば、抗体をコードする遺伝子に対し特異的結合能を有するオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離され順序付けされる。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分は、通常、それらに限定されないが、シグナル配列、複製起点、1以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列のうち1つ以上を含む。
本明細書の方法は、抗-DR4抗体の軽鎖または重鎖(または軽鎖と重鎖の両方)をコードするDNA配列を含むベクターを提供する段階と、該ベクターで宿主細胞を形質移入または形質転換する段階と、組換え抗-DR4抗体産物を産生するのに十分な条件の下で宿主細胞を培養する段階を含む、キメラまたは組換え抗-DR4抗体の産生方法を含む。
(i)シグナル配列成分
本発明の抗-DR4抗体は、直接的な組換えにより生産可能であるだけでなく、非相同ポリペプチドによる融合ポリペプチドとしても生産可能である。該融合ポリペプチドは、好ましくは、シグナル配列であるか、または成熟タンパク質またはポリペプチドのN−末端に特異的切断部位を有するその他ポリペプチドである。好適に選択した非相同シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、処理される(つまり、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識および処理しない原核宿主細胞については、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーからなる群から選択された原核シグナル配列によりシグナル配列を置換する。酵母分泌のため、天然シグナル配列を、例えば、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロミセスおよびKluyvermycesのα−因子リーダーを含む)、または酸性ホスファターゼリーダー、Cアルビカンスグリコアミラーゼリーダー、またはWO 90/13646に記載のシグナルにより置換することができる。哺乳動物細胞の発現において、哺乳動物シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが見られる。
そのような前駆領域のDNAは、リーディングフレーム内で、抗体をコードするDNAに結合されている。
(ii)複製成分起点
発現ベクターとクローンベクターの両方は、ベクターによる1以上の選択された宿主細胞の複製を可能にする核酸配列を有する。一般に、クローンベクターのこの配列は、ベクターが宿主の染色体DNAを個別に複製できるようにするものであり、複製起点、または自己複製配列を有する。このような配列は、細菌、酵母およびウイルスの多くに周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点は、殆どのグラム陰性菌に適しており、2μ核外細胞機嫌は酵母に適しており、様々なウイルス起源(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞におけるクローンベクターに有用である。通常、複製成分起点は哺乳動物発現ベクターに必要でない(典型的に、早期プロモーターを有するため、SV40起源だけが使用できる。)
(iii)選択遺伝子成分
発現ベクターおよびクローンベクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含んでよい。典型的な選択遺伝子は、(a)抗体またはその他毒素、例えば、アンピリシン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに対する耐性を与えるか、(b)栄養要求欠乏を補うか、または(c)複合媒体からは得られない重要な栄養素を供給する(例えばバシラス菌のためのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)
選択方法の一例では、宿主細胞の増殖を停止させる薬剤を利用する。非相同遺伝子によりうまく形質転換したこれら細胞は、薬剤耐性を与えるタンパク質を産生し、よって選択治療法を生き延びる。このような支配的な選択の例では、ネオマイシン、マイコフェノール酸およびハイグロマイシンなどの薬剤を使用する。
哺乳動物細胞に適した選択可能マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-Iおよび-II、好ましくは霊長類のメタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの抗体核酸を取り込む能力を持つ細胞の同定を可能にするものである。
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換した細胞は、はじめに、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含む培地ですべての形質転換体を培養することにより同定される。野生型のDHFRを使用する場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性が不十分なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系である。
あるいは、抗-DR4抗体、野生型DHFRタンパク質、および別の選択可能マーカー、例えばアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列により形質転換、または同時形質転換した宿主細胞(特に内因性DHFRを有する野生型の宿主)を、アミノグリコシド抗体(例えばカナマイシン、ネオマイシン、またはG418)などの選択可能マーカーのための選択剤を含む培地中の細胞増殖により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照のこと。
酵母で使用するのに適した選択遺伝子は、酵母のプラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb他, Nature, 282:39 ,1979年)。trp1遺伝子は、例えばATCC番号44076またはPEP4-1などのトリプトファン中での増殖能を欠く酵母の突然変異系統の選択マーカーを提供する。次いで、酵母宿主細胞ゲノムのtrp1の損傷の存在は、トリプトファンが存在しない場合の増殖による形質転換を検出するために効果的な環境を提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977年)を参照のこと。同様に、Leu2を欠く酵母株(ATCC 20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドにより補われる。
加えて、1.6μmの環状プラスミドpKD1から得られたベクターを、クルイベロマイセス酵母の形質転換に使用することができる。あるいは、組換えウシキモシン大規模生産のための発現システムがK.lactisについて報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990年)を参照のこと。クルイベロマイセスの工業生産用株により成熟組換えヒト血清アルブミンを分泌するための安定した多コピー発現ベクターも開示されている。Fleer他, Bio/Technology, 9:968-975 (1991年)を参照のこと。
(iv)プロモーター成分
通常、発現ベクターおよびクローンベクターは、宿主生物によって認識されるプロモーターを持ち、抗体核酸に作用可能に連結する。原核宿主との使用に適したプロモーターは、phoAプロモーター、ペニシリマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターを含む。しかしながら、その他の既知の細菌プロモーターも適している。また、細菌系に使用できるプロモーターは、抗-DR4抗体をコードするDNAに作用可能に連結するシャイン・ダルガルノ(S.D.)配列を含む。
真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的にすべての真核生物の遺伝子は、転写が開始される部位から約25から30の塩基上流に位置するATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70から80塩基上流に見られる別の配列は、CNCAAT領域であり、Nは任意のヌクレオチドでよい。多くの真核生物の遺伝子の3’末端には、コード化配列の3’末端へのポリA尾部の付加のシグナルとなり得るAATAAA配列がある。これら配列の全ては真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
酵母宿主との使用に適切な促進配列の例には、3−ホスホグリセリン酸塩キナーゼまたはその他の解糖酵素のプロモーター、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン塩酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼが含まれる。
さらに増殖状態により転写が制御されるという長所を持つ誘発性プロモーターであるその他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、アシドホスファターゼ、窒素代謝に関連した分解系酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、およびマルトースとガラクトースを利用する酵素のためのプロモーター領域である。酵母発現における使用に適したベクターおよびプロモーターは、EP73,657にさらに記載されている。酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に有利に使用される。
哺乳動物宿主細胞のベクターからの抗-DR4抗体転写は、例えばポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはシミアンウイルス(SV40)などのウイルスのゲノムから取得されたか、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターなどの非相同哺乳動物プロモーターから取得されたか、または熱ショックプロモーターから取得されたプロモーターにより、制御される。但し、これらプロモーターは宿主細胞系と適合することが前提である。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、複製のSV40ウイルス起源も含むSV40制限断片として簡便に取得される。ヒトサイトメガロウイルスの直前のプロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に取得される。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターとして使用して哺乳動物の宿主にDNAを発現させるシステムが、米国特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの変形例は、米国特許第4,601,978号に開示されている。さらに、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼの制御下におけるマウス細胞中のヒトβ−インターフェロンcDNAの発現について、Reyes他, Nature 297:598-601 (1982年)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列もプロモーターとして使用できる。
(v)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による本発明の抗-DR4抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物のプロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982年)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
(vi) (vi)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、多価抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開された DD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、DR4抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリ由来の多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞が同定されている。形質転換のための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Grahamら, J. Gen Virol., 36:59 (1977年));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980年));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587); ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2); イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34); バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442); ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065); マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982年));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2);及びミエローマ又はリンパ腫細胞(例えばY0、J558L、P3及びNS0細胞)(米国特許第5807715号を参照のこと)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM)、(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Hamら, Meth. Enz. 58:44 (1979年), Barnesら, Anal. Biochem. 102:255 (1980年), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(登録商標)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
(ix)精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔に生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carterら, Bio/Technology 10: 163-167 (1992年)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌された抗体の単離方法を記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍する。細胞細片は遠心分離で除去できる。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の増殖を防止してもよい。
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmarkら, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Gussら, EMBO J. 5: 16571575 (1986年))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリクスも使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSE(登録商標)クロマトグラフィー(例えばポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
B.DR4抗体の使用
本発明のDR4抗体は様々な用途を持つ。例えば、DR4のアゴニスト的抗体を、哺乳動物の病理的状態、例えば癌または免疫関連疾患の治療法に使用できる。当該方法では、DR4抗体は、好ましくはアゴニスト的抗体であり、単独で、または他の治療薬または技術と組み合わせて哺乳動物に投与される。
ここに記載の種々の病理学的状態の哺乳動物の診断は、熟練した実務者によって行うことが可能である。診断技術は、例えば、哺乳動物の癌又は免疫関連疾患の診断と検知を考慮する技術分野において入手可能である。例えば、限定するものではないが、触診、血液分析、X線、NMRなどを含む技術により癌を同定することができる。免疫関連疾患藻用意に同定することができる。全身性エリテマトーデスでは、疾患の中心媒介物は自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体、及び引き続き起こる免疫媒介炎症である。腎臓、肺、骨格筋系、皮膚と粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、胃腸管、骨髄及び血液を包含する複数の臓器と系が、臨床的に影響を受けた。
慢性関節リュウマチ(RA)は、主に複数の関節の滑膜に係る慢性全身性自己免疫疾患であり、結果として関節軟骨に傷害が生じる。病原はTリンパ球依存であり、リウマチ因子、自己IgGに指向する自己抗体の生成を付随し、結果として関節体液及び血液において高レベルに達する免疫複合体が形成される。関節におけるこれらの複合体は、滑膜へのリンパ球及び単球の顕著な浸潤と、続いての顕著な滑膜変化を誘発しうる;多数の好中球の添加により同様の細胞で浸潤されるならば関節空間/体液でもである。影響を受けている組織は、多くの場合対称的なパターンで主に関節である。しかしながら、2つの主な形態の関節外疾患も生じる。一方の形態は進行中の進行性関節疾患及び肺線維症の局部的障害、血管炎、及び皮膚潰瘍を伴う関節外障害の発達である。関節外疾患の第2の形態はいわゆるフェルティー症候群であり、RA疾患経路の末期、時々は関節疾患が鎮静した後に生じ、好中球減少、血小板減少及び脾肥大の存在に関与する。これは、梗塞、皮膚潰瘍及び壊疽の形成を伴う多数の器官及び血管炎に付随する。多くの場合、患者では、発病している関節上にある皮下組織にリウマチ様小結節が発達し;小結節は、混合炎症細胞浸潤に包囲された壊死性中心を有する。RAで生じる可能性のある他の徴候には:心外膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、及びリウマチ様小結節が含まれる。
若年性慢性関節炎は、多くの場合16才以下で発症する慢性特発性炎症疾患である。その表現型はRAといくつかの類似点があり;リウマチ因子がポジティブである患者の中には若年性リウマチ様関節炎に分類されるものもいる。この疾患は主な3つのカテゴリー:小関節(pauciarticular)、多関節(polyarticular)及び全身性ものに亜分類される。関節炎は重度で局所的な破壊が生じ、関節強直症及び遅延成長に至るおそれもある。他の徴候には慢性前ブドウ膜炎及び全身性アミロイド症が含まれる。
脊椎関節症は、一般的にHLA-B27遺伝子生成物の発現に関連した、いくつかの共通した臨床的特徴を有する疾患のグループである。疾患には:強直症、脊椎炎(sponylitis)、ライター症候群(反応性関節炎)、炎症性大腸疾患に関連した関節炎、乾癬に関連した脊椎炎、若年発生脊椎関節症及び未分化脊椎関節症が含まれる。区別する特徴には、脊椎炎を伴うか伴わない仙腸関節炎;HLA-B27(血清学的には、クラスI MHCのHLA-B座位にある定義された対立遺伝子)を伴う炎症非対称性関節炎;眼の炎症、及び他のリウマチ疾患に関連した自己抗体の不在が含まれる。疾患の誘導における鍵として関わるほとんどの細胞はCD8+Tリンパ球であり、クラスI MHC分子により付与される抗原を標的としている細胞である。CD8+T細胞は、MHCクラスI分子により発現した外来ペプチドであるかのように、クラスI MHC対立遺伝子HLA-B27と反応する。HLA-B27のエピトープが細菌性又は他の微生物の抗原エピトープを模倣し、よってCD8+細胞の反応が誘発されると仮定されている。
全身性硬化症(強皮症)は病因がよく知られていない。疾患の特徴は皮膚の硬化であり;これは活性化炎症プロセスにより誘発される。強皮症は局部的又は全身的であり:血管障害が一般的で、微小血管系における内皮細胞傷害は全身性硬化症の発達における初期の重要な事象であり;血管傷害は免疫媒介されうる。免疫学的基準では、皮膚障害における単核細胞浸潤の存在、多くの患者において抗細胞核抗体の存在を意味する。多くの場合、ICAM-1は皮膚障害における線維芽細胞の細胞表面をアップレギュレーションし、これらの細胞と相互作用するT細胞が疾患の病因における役割を担っていることが示唆される。関連する他の器官には:胃腸管:萎縮症及び線維症があり、結果として異常なぜん動/運動性となっている平滑筋:腎臓:小弓形及び小葉間動脈に影響を及ぼし、結果として腎皮質の血流が低下し、タンパク尿、高窒素血尿及び高血圧になる同心性内皮下内膜増殖:骨格筋:萎縮、間質性線維症:炎症:肺:間質性肺炎及び間質性線維症:及び心臓:収縮バンド壊死、瘢痕/線維症が含まれる。
皮膚筋炎、多発性筋炎及び他のものを含む特発性炎症ミオパシーは病因がよく知られていない慢性筋肉炎症疾患であり、筋肉の弱化に至る。筋肉損傷/炎症は多くの場合対称的で進行性である。自己抗体は多くの形態と関連している。これらの筋炎特異的自己抗体は、タンパク質合成に係る成分、タンパク質及びRNAに対して産生されてその機能を阻害する。
シェーグレン症候群は、免疫媒介炎症、続く涙腺及び唾液腺の機能破壊によるものである。この疾患は炎症結合組織疾患を伴うか又は伴わない。この疾患は、双方ともが小RNA-タンパク質複合体であるRo及びLa抗原に対する抗体産生に関連している。障害により、結果として乾性角結膜炎、bilary硬変を含む他の徴候又は会合を伴う口内乾燥、末梢又は感覚ニューロパシー、及び明白な紫斑病に至る。
全身性血管炎症症は主な障害が炎症で、続いて血管にダメージを受け、結果として影響を受けた脈管により供給される組織に虚血/壊死/変性が生じ、最終的な末端器官ではいくつかのケースで機能障害になるといった疾患である。また、第2の障害として血管炎(vasculitides)、又は他の免疫炎症媒介疾患、例えばリウマチ様関節炎、全身性硬化症等、特に免疫複合体の形成に関連した疾患等の続発症が生じるおそれがある。主な全身性血管炎症症グループの疾患には:全身壊死性血管炎:多動脈炎結節(polyarteritis nodosa)、アレルギー性脈管炎、及び肉芽腫症、多脈管炎:ヴェゲナー肉芽腫症;リンパ腫様肉芽腫症:及び巨細胞動脈炎が含まれる。種々の血管炎には:粘膜皮膚リンパ節症候群(MLNS又は川崎病)、単離したCNS血管炎、ベヘット(Behet's)病、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)及び皮膚壊死性細静脈炎(venulitis)が含まれる。列挙した血管炎のほとんどの種類の病原メカニズムは、主に脈管壁に免疫グロブリン複合体が付着し、続いてADCC、補体活性又は双方を介して炎症反応が誘発されることによると考えられている。
サルコイドーシスは、体内のほとんど任意の組織中に類上皮細胞肉芽腫が存在し、肺ではほとんど一般的に包含されることにより特徴付けられる、病因がよく知られていない病状である。病原には疾患部位に活性マクロファージ及びリンパ球が残留していることに関連しており、続いてこれらの細胞種より放出される局部的又は全身的活性物質の放出の結果として慢性続発症が生じる。
自己免疫性溶血性貧血、免疫再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿を含む自己免疫性溶血性貧血は、赤血球細胞(いくつかのケースにおいは、血小板を含む他の血液細胞)表面で発現する抗原と反応する抗体が産生される結果によるものであり、補体媒介溶解及び/又はADCC/Fc-レセプター-媒介メカニズムを介して、その抗体被覆細胞の除去に反映される。
他の臨床的セッティング(setting)における血小板減少性紫斑病及び免疫仲介血小板減少を含む自己免疫性血小板減少では、抗体又は補体が血小板に接合し、続いて補体溶解、ADCC又はFc-レセプター-媒介メカニズムによる除去の結果として生じる。
グレーブス疾患、ハシモト甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎を含む甲状腺炎は、甲状腺内に多くの場合特異的に存在するタンパク質と反応する抗体の産生を伴う、甲状腺抗原に対する自己免疫反応の結果によるものである。実験用モデルには:内在的モデルラット(BUF及びBBラット)及びチキン(肥満チキン種);誘導性モデル:チログロブリン、甲状腺ミクロソーム抗原(甲状腺ペルオキシダーゼ)を用いた動物の免疫化が含まれる。
I型真性糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病は膵臓小島β細胞の自己免疫破壊であり;この破壊は自己抗体及び自己反応性T細胞により媒介される。また、インシュリン又はインシュリン様レセプターに対する抗体は、インシュリン-非-反応性の表現型を作り出すことができる。
糸球体腎炎及び尿細管間質性腎炎を含む免疫仲介腎疾患は、腎抗原に対する自己反応性抗体又はT細胞が作り出される結果により直接的に、又は他の非腎抗原に対して反応する、腎臓における抗体及び/又は免疫複合体の沈着の結果により間接的に、腎組織に抗体又はT細胞媒介傷害が生じることによるものである。よって、免疫複合体の形成の結果生じる他の免疫媒介疾患により、間接的続発症等の免疫媒介腎疾患が誘発される。直接的及び間接的免疫メカニズムの双方により、結果として腎組織における障害発達が発生/誘発されるといった炎症反応が生じ、器官機能が損なわれ、いくつかのケースでは腎臓機能不全が進行する。体液及び細胞免疫メカニズムに双方が障害の病原に関与している。
多発性硬化症を含む中枢及び末梢神経系の脱髄疾患;特発性脱髄性多発神経障害又はギラン-バレー症候群;及び慢性炎症脱髄性多発神経障害は、自己免疫に基礎をなし、オリゴデンドロサイト又はミエリンに直接的に起因する損傷の結果である神経脱髄を起こすと考えられている。MSでは、疾患の誘発及び進行はTリンパ球に依存すると示唆される証拠がある。多発性硬化症は、Tリンパ球依存性であり、再発性弛緩経路又は慢性進行経路のいずれかを有する脱髄疾患である。病因はよく知られていないが、ウイルス感染、遺伝的素因、環境及び自己免疫性の全てが寄与している。病巣はTリンパ球媒介が主である小グリア細胞及び浸潤マクロファージの湿潤を有し;病巣では、CD4+Tリンパ球が主な細胞型である。オリゴデンドロサイトの細胞死とその後の脱髄のメカニズムはよく知られていないが、T細胞で促進されるようである。
好球性肺炎、特発性肺線維症、及び過敏性肺炎を含む炎症及び線維症の肺疾患には、脱制御された免疫免疫炎症反応が関わっている。そのような応答の阻害は、治療的に有益であろう。
水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患は自己抗体により媒介され、その発生はTリンパ球に依存する。
乾癬はTリンパ球媒介炎症疾患である。病巣はTリンパ球、マクロファージ及び抗原プロセシング細胞及びある種の好中球の浸潤を有する。
喘息;アレルギー性鼻炎;アトピー性皮膚炎;食物過敏症及び蕁麻疹等を含むアレルギー性疾患はT細胞依存性である。この疾患は炎症により誘発されるTリンパ球、及びIgE媒介炎症、又は双方の組合せにより主に媒介される。
拒絶反応及び移植片対宿主疾患(GVHD)を含む移植関連疾患は、Tリンパ球依存性であり;Tリンパ球の機能を阻害することで改善される。
免疫及び/又は炎症反応への介在が有益である他の疾患には、限定するものではないがウイルス感染(限定するものではないがAIDS、A型、B型、C型、D型及びE型肝炎、ヘルペス)、細菌感染、真菌感染、原生動物感染及び寄生虫感染(MLRを刺激する分子(又は誘導体/アゴニスト)を治療に利用し、感染要因に対する免疫反応性を増強することができる)、MLRを刺激する(分子/誘導体/アゴニスト)を治療に利用し、受け継ぎ、獲得し、感染誘発された(例えばHIV感染)又は医原性(例えば化学療法)免疫欠損疾患の病状に対する免疫反応増強することができる免疫欠損疾患、及び異常増殖が含まれる。
抗体は好ましくは担体;好ましくは製薬的に許容されうる担体中に含有されて哺乳動物に投与される。適切な担体とそれらの製剤は、Osloらにより編集された、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., 1980, Mack Publishing Co.,に記載されている。典型的には、適量の製薬的に許容可能な塩が、製剤を等浸透圧にするために製剤において使用される。担体の例には、生理食塩水、リンガー液及びデキストロース液が含まれる。溶液のpHは、好ましくは約5から8、さらに好ましくは約7から7.5である。さらに担体には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス等の徐放性製剤が含まれ、このマトリックスは、例えばフィルム状、リポソーム状又はマイクロ粒子状等の成形物の形態をしている。例えば投与される抗体の投与経路及び濃度によっては、ある種の担体がより好ましくなることは、当業者には明らかである。
抗体は、注射(例えば、静脈、腹腔内、皮下、筋内、門脈内)、又は例えば点滴のように、有効な形態で血流への送達を確実にする他の方法で哺乳動物に投与することができる。抗体は、また、単離された組織灌流などの単離された灌流技術で投与されて、局所的治療効果を発揮する。局所的又は静脈注射が好ましい。
抗体を投与するための有効な用量とスケジュールは経験的に決定することができ、そのような決定は当業者の技量の範囲に含まれる。当業者であれば、投与されなければならない抗体の用量が、抗体を受入れる哺乳動物、投与経路、使用される抗体の特定の種類、及び哺乳動物に投与されている他の薬剤に依存して変わりうることは理解できるであろう。抗体の適切な投与量の選択における指針は、抗体の治療的用途に関する文献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies, Ferroneら, eds., Noges Publications, Park Ridge, N.J., (1985年)ch.22及びpp.303-357;Smithら, Antibodies in Human Diagnosis and Therapy, Haberら, eds., Raven Press, New York(1977年)pp.365-389に見出される。単独で使用される抗体の典型的な一日の投与量は、上述の要因に依存し、1日当たり約1μg/kg体重から100mg/kg体重又はそれ以上の範囲である。
また、抗体は、有効量の一又は複数の他の治療薬と組合せて哺乳動物に投与してもよい。一又は複数の治療薬又は治療には、限定されないが、化学療法(化学療法剤)、放射線治療、イムノアジュバント、増殖阻害剤、細胞障害性剤、及びサイトカインが含まれる。哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘発する他の薬剤も用いられ、そのような薬剤にはアポトーシスを誘導する抗体とともにTNF-α、TNF-β、CD30リガンド、4-1BBリガンド及びApo-2リガンドが含まれる。一つ又はそれ以上の治療は治療的抗体(DR4抗体以外)を含んでもよく、そのような抗体は抗-Herレセプター抗体(例えばHerceptin(商品名))、抗-VEGF抗体、抗-CD20抗体(例えばRituxan(登録商標))及びApo−2リガンドに対する他の抗体、例えば抗−Apo−2(DR5)抗体、またはEnbrel(登録商標)などのその他TNFレセプターファミリーのメンバーに対する抗体を含んでもよい。
本発明において考慮される化学療法には、当該分野において既知であって市販されている化学物質又は薬剤、例えばドキソルビシン、5-フルオロウラシル、エトポシド、カンプトテシン、ロイコボリン、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン及びカルボプラチンが含まれる。このような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務家により経験的に決定される。そのような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールはまた、化学療法サービス(Chemotherapy Cervice)編, M.C.Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992年) に記載されている。
化学療法剤は、好ましくは上述したような製薬的に許容可能な担体中で投与される。化学療法剤の投与形態は、DR4抗体に用いたものと同じでもよく、あるいは異なる形態で哺乳動物に投与してもよい。例えば、DR4抗体を注射し、化学療法剤を経口で哺乳動物に投与してもよい。
放射線治療は、この分野で通常用いられ当業者に知られたプロトコールに従って哺乳動物に施すことができる。このような治療は、セリウム、イリジウム、ヨウ素又はコバルト照射であってよい。放射線治療は、全身照射でも、又は身体の特定部位又は組織を局所的に指向してもよい。典型的には、放射線治療は、約1から約2週間の期間に渡ってパルス状に施される。しかし、放射線治療は、より長い時間に渡って施してもよい。場合によっては、放射線治療は、単独線量、多重又は続発的線量として施してもよい。
抗体は、一又は複数の他の治療薬と連続して又は同時に投与してもよい。抗体及び治療薬の量は、例えば、使用される薬剤の種類、治療される病理学的状態、及び投与スケジュールと経路に依存するが、各々が個々に使用される場合よりも一般に少ない。
哺乳動物に抗体を投与した後、哺乳動物の生理学的状態を、当業者によく知られている種々の方法でモニターすることができる。
また、アンタゴニスト又は阻害DR4抗体も治療において使用されうると考えられる。例えば、DR4抗体は、DR4レセプターのApo-2Lに対する結合を阻止するために(上記したように)哺乳動物に投与し、よってApo-2L療法の間に投与されたApo-2Lの、癌細胞中にアポトーシスを誘発する生物学的利用能を増大させることができる。
発明のDR4抗体の治療的効果は、インビトロアッセイ及びインビボ動物アッセイで使用することで調べられる。例えば免疫関連疾患又は癌の発生及び原因におけるここで同定されたDR4抗体の役割を更に理解するために、そして候補治療剤の有効性を試験するために、種々の良く知られた動物モデルが使用できる。これらモデルのインビボの性質によって、ヒト患者における反応を予測できる。免疫関連疾患の動物モデルは、非組換え及び組換え(トランスジェニック)動物の両方を含む。非組換え動物モデルは、例えば、齧歯類、例えばマウスモデルを含む。このようなモデルは、標準的な技術、例えば、皮下注射、尾部静脈注射、脾臓移植、腹膜内移植、腎被膜下移植等により、細胞を同系マウスに導入することにより作成される。
例えば、移植片対宿主疾患のための動物モデルが知られている。移植片対宿主疾患は、免疫担当細胞が免疫抑制又は寛容患者に移植されたときに起こる。ドナー細胞が宿主抗原を認識して反応する。反応は生命を脅かす重篤な炎症から下痢又は体重減少の軽い場合まで変わり得る。移植片対宿主疾患モデルはMHC抗原及び少数の移植抗原に対するT細胞の反応性を評価する手段を提供する。好適な手法は、Current Protocols in Immunology, unit 4.3に詳細に記載されている。
皮膚移植片拒絶の動物モデルは、T細胞がインビボ組織破壊を媒介する能力を試験する手段であり、抗ウイルス免疫および腫瘍免疫におけるそれらの役割の指標である。最も普通で許容されるモデルは、マウスの尾の皮膚移植である。繰り返し実験により、皮膚同種移植片拒絶はT細胞、ヘルパーT細胞および尾キラー効果T細胞に媒介され、抗体ではないことが示された。Auchincloss, H. Jr.及びSachs, D.H., Fundamental Immunology, 2版, W.E. Paul編, Raven Press, NY, 1989年, 889-992。好適な手法は、上記のCurrent Protocols in Immunology, unit 4.4に詳細に記載されている。本発明の組成物の試験に使用できる他の移植片拒絶モデルは、Tanabe, M.ら, Transplantation (1994年) 58: 23及びTinubu, S.A.ら, J. Immunol. (1994年) 4330-4338に記載されている同種心臓移植モデルである。
遅延型過敏症の動物モデルは、同様に細胞媒介免疫機能のアッセイ法を提供する。詳細な型の過敏症反応は、抗原負荷後時間が経過するまでピークに達しない炎症を特徴とするT細胞媒介インビボ免疫反応である。これらの反応はまた、組織特異的自己免疫疾患、例えば多発性硬化症(MS)及び実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE、MSのモデル)を起こす。好適な手法は、上記のCurrent Protocols in Immunology, unit 4.5に詳細に記載されている。
関節炎の動物モデルはコラーゲン誘発関節炎である。このモデルは、ヒトの自己免疫性慢性関節リウマチと臨床的、組織学的及び免疫学的特徴を共有し、ヒトの自己免疫性関節炎の許容されるモデルである。マウス及びラットモデルは、滑膜炎、軟骨及び肋軟骨下骨の浸食を特徴とする。本発明のDR4抗体は、上記のCurrent Protocols in Immunology, unit 15.5に記載されているプロトコールを用いて、自己免疫性関節炎に対する活性について試験できる。また、Issekutz, A.C.ら, Immunology (1996年) 88: 569に記載されているCD18及びVLA-4インテグリンに対するモノクローナル抗体を用いたモデルも参照のこと。
喘息のモデルが開示されており、そこでは抗原誘発気道過剰反応性、肺性好酸球増加症及び炎症が、動物をオボアルブミンで感作し、次いで動物にエアロゾルで運ばれる同じタンパク質を負荷することにより誘発される。幾つかの動物モデル(モルモット、ラット、非ヒト霊長類)は、エアロゾル抗原で負荷した際にヒトのアトピー性喘息に似た徴候を示す。マウスモデルは、ヒト喘息の多くの特徴を持つ。本発明の組成物の喘息治療における活性及び有効性を試験するための好適な方法は、Wolyniec, W.W.ら, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., (1998年) 18: 777 及びその引用文献に記載されている。
さらに、本発明のDR4抗体は、乾癬様疾患の動物モデルでも試験できる。本発明の化合物は、Schon, M.P.ら, Nat. Med. (1997年)3: 183によって記載された、マウスが乾癬に類似する組織病原学的皮膚疾患を示すscid/scidマウスモデルでも試験できる。他の好適なモデルは、Nickoloff, B.J.ら, Am . J. Path. (1995年) 146: 580に記載されたように調製されるヒト皮膚/scidマウスキメラである。
候補治療組成物の抗癌活性の試験のための種々の動物モデルが知られている。これらは、胸腺欠損マウス又はscid/scidマウス、或いはp53ノックアウトマウスのような遺伝的マウス腫瘍モデルへ異種移植するヒト腫瘍を含む。
組換え(トランスジェニック)動物モデルは、ここに同定された遺伝子のコード部分を、トランスジェニック動物作成のための標準的技術を用いて、対象とする動物のゲノムに導入することにより加工できる。トランスジェニック操作の標的として提供できる動物は、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及び非-ヒト霊長類、例えばヒヒ、チンパンジー及びサルを含む。これらの動物に導入遺伝子を導入するのにこの分野で知られた技術は、全核マイクロインジェクション(Hoppe及びWanger, 米国特許第4,873,191号);胚系列へのレトロウイルス媒介遺伝子転移(例えば、Van der Puttenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6148-615, 1985年);胚性肝細胞での遺伝子標的化(Thompsonら, Cell 56, 313-321, 1989年);胚のエレクトロポレーション(Lo, Mol. Cel. Biol. 3, 1803-1814, 1983);精子媒介遺伝子転移(Lavitranoら, Cell 57, 717-73, 1989年)を含む。概説のためには、例えば、米国特許第4,736,866号を参照のこと。
本発明の目的のために、トランスジェニック動物は、その細胞の一部にのみ導入遺伝子を有するもの(「モザイク動物」)を含む。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、又はコンカテマー、例えば頭部と頭部又は頭部と尾部の直列型として組み込まれる。特定の細胞型への導入遺伝子の選択的導入も、例えば、Laskoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-636 (1992年)の技術に従って可能である。
トランスジェニック動物における導入遺伝子の発現は、標準的技術によって監視できる。例えば、導入遺伝子の組み込みの確認にサザンブロット分析又はPCR増幅が用いられる。次いで、mRNA発現のレベルは、インサイツハイブリッド形成、ノーザンブロット分析、PCR、又は免疫組織化学などの技術を用いて分析できる。動物は、例えば、免疫細胞の特定組織への浸潤を決定する組織学的試験により免疫疾患病理の徴候について、或いは癌性または悪性組織の有無について、更に試験してもよい。
あるいは、動物の胚性細胞に導入されたポリペプチドをコードする変更ゲノムDNAと、同じポリペプチドをコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、ここに同定するポリペプチドをコードする欠陥又は変更遺伝子を有する「ノックアウト」動物を作成することができる。例えば、特定のポリペプチドをコードするcDNAは、確立された技術に従い、そのポリペプチドをコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。特定のポリペプチドをコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換したりすることができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む(例えば、相同的組換えベクターについてThomas and Capecchi, Cell, 51: 503 ,1987年を参照のこと)。ベクターは胚性幹細胞に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する(例えば、Liら, Cell,69:915, 1992年参照)。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する(例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987年), pp. 113-152参照)。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、例えば、そのポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
本発明の他の実施態様では、診断アッセイにおける抗体の利用方法が提供される。例えば、抗体は、特定細胞及び組織におけるDR4の発現または過剰発現を検出するための診断アッセイに用いてもよい。当該分野において知られている様々な診断アッセイ技術、例えば、インビボ画像アッセイ、インビトロ競合的結合アッセイ、直接的又は間接的サンドイッチアッセイ及び不均一又は均一相の何れにおいても実施される免疫沈降検定を使用することができる(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques,CRC Press,Inc.,1987年、pp.147-158)。診断アッセイ法に使用される抗体は、検出可能部分で標識することができる。検出可能部分は、直接的に又は間接的に検出可能なシグナルをつくりだすことができなければならない。例えば、検出可能部分は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、もしくはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってもよい。Hunterら, Nature, 144: 945 (1962年)、Davidら, Biochemistry,13:1014(1974年)、Painら, J. Immunol. Meth.,40:219-230 (1981年)及びNygrenら, J. Histochem. and Cytochem.,30:407-412 (1982年)などに記載されている方法を含み、検出可能部分に抗体を抱合させるための当該分野において知られている任意の方法を使用することができる。
また、DR4抗体は天然供給源又は組換え細胞培養からのDR4のアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、DR4に対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製するDR4を含有する試料と接触させ、次いで、固定化された抗体に結合したDR4以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、DR4を抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
本発明のさらなる実施態様においては、病理学的状態の治療又はDR4の検出又は精製に有用な物質を含む製造品およびキットが提供される。製造品にはラベルが付された容器が含まれる。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような種々の材料から作製できる。容器は、病理学的状態の治療又はDR4の検出又は精製に有効な活性剤を有する組成物を収容する。組成物中の活性剤は、DR4抗体であり、好ましくはDR4に特異的なモノクローナル抗体を含む。容器のラベルには、組成物が病理学的状態の治療又はDR4の検出又は精製に使用されることが示され、また上述のもののような、インビボ又はインビトロのいずれかの使用の指示が示されている。
本発明のキットは、上述の容器と、バッファーを収容した第2の容器を具備する。それは、商業上及び使用者の観点から望まれる、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、注入器及び使用説明が記されたパッケージ挿入物を含む他の材料をさらに含んでもよい。
以下の実施例は例示のためにのみ提供されるものであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示していない限りは、製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により次の実施例及び明細書全体を通して特定している細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション,マナサス,バージニア(American Type Culture Collection, Mannasas, Virginia)である。ここに開示した複数の試薬およびプロトコルは、WO 99/37684、WO 00/73349、WO 98/32856およびWO 99/64461でさらに説明されており、出典を明示したことによりその内容をここに取り込む。