以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
図1から図12は本発明の実施形態1を示したものであり、図1は画像信号処理装置の構成を示すブロック図である。
この画像信号処理装置は、レンズ系100と、絞り101と、撮像素子たるCCD102と、増幅部103と、A/D変換部104と、バッファ部105と、画像信号判断部106と、階調変換部107と、画質劣化情報取得手段であり画質補正手段たるノイズ低減部108と、表示部109と、ROM110と、制御部111と、閾値設定手段であり閾値入力手段たる外部I/F部112と、を有して構成されている。すなわち、本実施形態の画像信号処理装置は、レンズ系100、絞り101、CCD102、増幅部103、A/D変換部104等の撮像部を備える撮像装置として構成されたものとなっている。
レンズ系100、絞り101、CCD102を介して撮影し出力されたアナログの画像信号は、増幅部103によって増幅される。この増幅部103により増幅されたアナログの画像信号は、A/D変換部104によってデジタル信号へ変換され、バッファ部105へ転送される。
バッファ部105は、画像信号判断部106と、階調変換部107と、ノイズ低減部108と、を介して表示部109へ接続されている。ROM110は、画像信号判断部106と、階調変換部107と、ノイズ低減部108と、へ接続されている。
制御部111は、例えばマイクロコンピュータなどにより構成されていて、増幅部103、A/D変換部104、バッファ部105、画像信号判断部106、階調変換部107、ノイズ低減部108、表示部109、ROM110、外部I/F部112と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
ここに、外部I/F部112は、電源スイッチ,シャッタボタン等を備えたインタフェースである。
次に、図1に示したような画像信号処理装置の作用を、画像信号の流れに沿って説明する。
外部I/F部112を介してシャッタボタンが押されると、撮像装置であるこの画像信号処理装置が、撮影に係る各種の処理を以下に説明するように行う。
レンズ系100は、被写体の光学像をCCD102の撮像面へ結像する。
絞り101は、レンズ系100により結像される被写体光束の通過範囲を規定することにより、CCD102の撮像面に結像される光学像の明るさを変更する。
CCD102は、結像される光学像を光電変換して、アナログの画像信号として出力する。このときに出力されるアナログの画像信号は、公知の相関二重サンプリング等が行われた信号である。
なお、本実施形態においては、CCD102として、ベイヤー(Bayer)型の原色カラーフィルタを前面に配置した単板CCDを想定している。従って、この想定の下では、CCD102から出力される画像信号は、R(赤)、G(緑)、B(青)の三成分からなるカラー画像信号となる。
増幅部103は、制御部111の制御に基づき、CCD102からのアナログの画像信号を増幅する。
A/D変換部104は、増幅部103により増幅されたアナログの画像信号を、デジタルの画像信号に変換して、バッファ部105へ転送する。
バッファ部105は、A/D変換部104から転送された画像信号を記憶する。
画像信号判断部106は、画像信号が高輝度画像信号であるか否かを判定するための閾値(高輝度閾値)をROM110から読み出す。そして、画像信号判断部106は、読み出した高輝度閾値に基づいて、バッファ部105から転送されてきた画像信号に高輝度画像信号があるか否かを判定し、高輝度判定結果を生成する。
そして、画像信号判断部106は、高輝度判定結果と画像信号とを、階調変換部107へ転送する(なお、図1やその他の各ブロック図において、太実線で示される信号は、画像信号を少なくとも含むが、画像信号以外の信号を含むこともある。)。
階調変換部107は、転送されてきた高輝度判定結果に基づいて、画像信号に対応する階調変換処理を該画像信号に対して行い、処理後の画像信号をノイズ低減部108へ転送する。
ノイズ低減部108は、転送されてきた画像信号に対してノイズ低減処理を行い、処理後の画像信号を表示部109へ転送する。
表示部109は、転送されてきた画像信号に基づき表示を行う。
次に、図2は、画像信号判断部106の構成の一例を示すブロック図である。
この画像信号判断部106は、輝度信号変換部401と、合成比率設定手段たる特定輝度域検出部402と、を有して構成されている。
バッファ部105は、輝度信号変換部401と、特定輝度域検出部402と、を介して、階調変換部107へ接続されている。ROM110は、特定輝度域検出部402と接続されている。制御部111は、輝度信号変換部401、特定輝度域検出部402と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
輝度信号変換部401は、本実施形態においては、バッファ部105から画素単位で転送されてくる画素位置(i,j)(ここに、iは画像信号の横方向の座標値、jは画像信号の縦方向の座標値、をそれぞれ示す。)のRGB画像信号(Rij:R信号、Gij:G信号、Bij:B信号)に基づいて、次の数式1に示すように輝度値Kijを画素毎に算出する。
[数1]
Kij=A1×Rij+A2×Gij+A3×Bij
ここに、A1,A2,A3は、輝度値Kijを算出する際に、R信号Rij,G信号Gij,B信号Bijにそれぞれ乗算される所定の定数である。
次に、特定輝度域検出部402は、高輝度画像信号を判断するための高輝度閾値をROM110から読み出して、読み出した高輝度閾値と、バッファ部105から画素単位で転送されてきた輝度値Kijと、を比較する。特定輝度域検出部402は、輝度値Kijが高輝度閾値よりも大きい場合には、該画素の画像信号が高輝度画像信号であると判断する。特定輝度域検出部402は、このような比較を画像に含まれる全画素について行い、高輝度画像信号であると判断された画素の数をカウントする。そして、特定輝度域検出部402は、全画素についての処理を行った後のカウンタの値と、ROM110から読み出した所定の閾値とを比較して、カウンタ値が所定の閾値よりも大きい場合には画像に高輝度画像信号が存在することを高輝度判定結果とし、カウンタ値が所定の閾値以下である場合には画像に高輝度画像信号が存在しないことを高輝度判定結果とする。
その後、特定輝度域検出部402は、高輝度判定結果と画像信号とを階調変換部107へ転送する。
なお、上述では、ROM110に高輝度画像信号を判断するための高輝度閾値が予め記憶されていて、特定輝度域検出部402は、この高輝度閾値をROM110から読み出して用いていたが、これに限らず、高輝度閾値を指定することができるようにしても良い。ここに、高輝度閾値を指定する手段の例としては、ユーザが外部I/F部112を介して手動で設定する手段と、表示部109に含まれる表示装置のγ特性等に基づき自動的に設定する手段と、が挙げられる。
ここに、手動で設定する手段としては、ユーザが外部I/F部112を介して所望の高輝度閾値を手動で設定しても良いし、あるいは、ROM110に複数の高輝度閾値を予め用意しておいて、これらの高輝度閾値の内の何れか一つをユーザが外部I/F部112を介して指定する手段であっても構わない。
また、自動的に高輝度閾値を設定する手段を採用する場合には、特定輝度域検出部402を、次の図5に示すように構成することが考えられる。
図5は、特定輝度域検出部402の構成の一例を示すブロック図である。
この特定輝度域検出部402は、γ(ガンマ)特性データ抽出部4021と、閾値設定手段たる高輝度域閾値検出部4022と、特定輝度域検出手段たる高輝度域判断部4023と、を有して構成されている。
輝度信号変換部401は、γ特性データ抽出部4021と、高輝度域閾値検出部4022と、高輝度域判断部4023と、を介して、階調変換部107へ接続されている。ROM110は、γ特性データ抽出部4021と、高輝度域閾値検出部4022と、高輝度域判断部4023と、へ接続されている。制御部111は、γ特性データ抽出部4021、高輝度域閾値検出部4022、高輝度域判断部4023と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
また、ROM110は、複数種類のγ特性データを予め記憶しているものとする。
スペースインバリアントな階調変換を行うと、変換前には白飛びではない画像信号が、変換後には白飛びになってしまう現象が生じることがある。その原因は、例えば後述する図3に示すような階調変換曲線(γ特性データ)を用いる場合、高輝度域におけるγ特性データの勾配がほぼ水平になっているために、該高輝度域の画像信号を階調変換すると、変換後には濃淡変化がほとんどなくなってしまうことにある。そこで、階調変換曲線における傾きが小さい部分を検出すれば、高輝度閾値を自動指定することが可能となる。
図5に示す特定輝度域検出部402の、このような原理に基づく作用について、図3を参照して説明する。ここに、図3は、γ特性データを示す線図である。
まず、γ特性データ抽出部4021が、制御部111の制御に基づき、表示部109に含まれる所定の表示装置に対応するγ特性データを、ROM110から抽出する。そして、γ特性データ抽出部4021は、抽出したγ特性データと、輝度信号変換部401からの輝度値Kijとを、高輝度域閾値検出部4022へ転送する。
次に、高輝度域閾値検出部4022は、白飛びであると判定される所定の角度ΔTHをROM110から読み出す。そして、高輝度域閾値検出部4022は、γ特性データ抽出部4021からのγ特性データと、ROM110から読み出した角度ΔTHと、に基づいて、次に説明するように、着目点の傾き角度Δを算出する。
ここに、例えば、8ビット(256階調)の画像信号から8ビットの画像信号への階調変換を行う場合には、表示装置に対応するγ特性データは、0〜255までの入力レベルに対応する256点のデータとなる。なお、出力レベルも、入力レベルと同様に0〜255である。
今、小さい方から順に数えてx番目の入力レベルをNxiとし、この入力レベルNxiに対応する出力レベルをNxoとして、(Nxi,Nxo)を着目点とする。さらに、最大入力レベル255に対応する出力レベルをN255oとして、(255,N255o)を最大点とする。
このとき、入力レベルが小さい順に着目点を移動させながら、着目点と最大点とを通る直線の傾き角度Δを次の数式2に示すように算出する。
[数2]
Δ=arctan{(N255o−Nxo)/(255−Nxi)}
そして、着目点の移動に従って順に算出される傾き角度Δ(数式2)が、ROM110から読み出した所定の角度ΔTHよりもはじめて小さくなったときの着目点の入力レベルを、高輝度閾値SThとする。
その後、高輝度域閾値検出部4022は、検出した高輝度閾値SThと、γ特性データ抽出部4021を介して転送された輝度値Kijとを、高輝度域判断部4023へ転送する。
高輝度域判断部4023は、画素単位で転送されてくる輝度値Kijを、転送されてきた高輝度閾値SThと比較して、輝度値Kijが高輝度閾値SThよりも大きい場合には、該画素の画像信号が高輝度画像信号であると判断する。
高輝度域判断部4023は、このような比較を画像に含まれる全画素について行い、高輝度画像信号であると判断された画素の数をカウントする。そして、特定輝度域検出部402は、全画素についての処理を行った後のカウンタの値と、ROM110から読み出した所定の閾値とを比較して、カウンタ値が所定の閾値よりも大きい場合には画像に高輝度画像信号が存在することを高輝度判定結果とし、カウンタ値が所定の閾値以下である場合には画像に高輝度画像信号が存在しないことを高輝度判定結果とする。
その後、高輝度域判断部4023は、高輝度判定結果と、輝度信号変換部401、γ特性データ抽出部4021、高輝度域閾値検出部4022を介して順次転送されてきた画像信号とを、階調変換部107へ転送する。さらに、高輝度域判断部4023は、必要に応じて高輝度閾値SThも階調変換部107へ転送するようになっている。
なお、γ特性データに対応する、上記各入力レベルと各出力レベルとから構成される傾きΔの情報を、前もってROM110に保存しておき、閾値を自動指定するときに、ROM110から各傾きΔ情報を昇順で読みこんで、白飛びであると認定する角度よりも小さい傾きがはじめて出た場合に、その傾きΔに対応する入力値を閾値として設定するようにしても良い。
また、異なる表示装置に対応するγ特性データに応じた閾値を前もってROM110に保存しておき、画像信号を処理するときに、所定の表示装置に対応するγ特性データに応じた閾値を抽出するように構成することも可能である。
次に、図6は、階調変換部107の構成の一例を示すブロック図である。
この階調変換部107は、バッファ部1001と、第1階調変換処理手段たる第1階調補正部1002と、第2階調変換処理手段たる第2階調補正部1003と、合成手段たる合成部1004と、RAM1005と、を有して構成されている。
画像信号判断部106は、バッファ部1001とRAM1005とへ接続されている。バッファ部1001は、第1階調補正部1002と第2階調補正部1003とへ接続されている。第1階調補正部1002および第2階調補正部1003は、合成部1004へ接続されている。第2階調補正部1003および合成部1004は、ノイズ低減部108へ接続されている。RAM1005は、第1階調補正部1002と第2階調補正部1003と合成部1004とへ接続されている。ROM110は、第2階調補正部1003と合成部1004とへ接続されている。
制御部111は、バッファ部1001、第1階調補正部1002、第2階調補正部1003、合成部1004、およびRAM1005と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
画像信号判断部106からの画像信号はバッファ部1001に、画像信号判断部106からの高輝度判定結果はRAM1005に、それぞれ保存される。また、画像信号判断部106から高輝度閾値SThが転送されてきた場合には、この高輝度閾値SThもRAM1005に保存されるようになっている。
階調変換部107は、制御部111の制御に基づき、RAM1005から高輝度判定結果を抽出して、高輝度画像信号が存在するか否かを判定する。そして、階調変換部107は、高輝度画像信号が存在すると判定した場合には、制御部111の制御に基づき、バッファ部1001内の画像信号を第1階調補正部1002および第2階調補正部1003へ転送する。一方、階調変換部107は、高輝度画像信号が存在しないと判定した場合には、制御部111の制御に基づき、バッファ部1001内の画像信号を第2階調補正部1003のみへ転送する。
第1階調補正部1002は、具体的な処理としては、例えば上述した特許第3465226号に記載されているようなスペースバリアントな階調変換処理を行うようになっている。なお、スペースバリアントな階調変換処理とは、処理対象となる画像の画素毎または領域毎(以下ではこれらをまとめて「区域毎」ということがある)に階調変換の特性を定めて、この区域毎に定められた階調変換の特性を用いて、各区域に対して階調変換を行う処理のことである。本実施形態においては、第1階調補正部1002は、次に具体的に説明するような手法によりペースバリアントな階調変換処理を行うようになっている。
すなわち、第1階調補正部1002は、まず最初に、区域毎に輝度ヒストグラムを作成する。次に、第1階調補正部1002は、輝度ヒストグラムの平滑化の度合いを定めるクリップ値を決定して、このクリップ値に基づき上記輝度ヒストグラムをクリッピングし、さらにクリッピング後の輝度ヒストグラムから累積ヒストグラムを作成する。最後に、第1階調補正部1002は、累積ヒストグラムを階調変換の特性を表した階調変換曲線として、この階調変換曲線に基づく階調変換データを作成する。そして、入力された画像信号の区域毎に、区域毎の階調変換データを用いて階調変換処理を行う。その後、第1階調補正部1002は、階調変換処理後の画像信号を合成部1004へ転送する。
また、第2階調補正部1003は、ROM110から表示部109の表示装置に対応するγ特性データを抽出して、バッファ部1001から転送されてきた画像信号に対してスペースインバリアントな階調変換処理を行うようになっている。なお、スペースインバリアントな階調変換処理とは、処理対象となる画像に対して、区域毎に階調変換の特性を定めることはせずに、区域によらない固定的な階調変換の特性を用いて、画像に対する階調変換を行う処理のことである。第2階調補正部1003は、制御部111の制御に基づいて、高輝度画像信号が存在する場合には処理後の画像信号を合成部1004へ転送し、高輝度画像信号が存在しない場合には処理後の画像信号をノイズ低減部108へ転送する。
合成部1004は、第1階調補正部1002から転送されてきたスペースバリアントな階調変換画像と、第2階調補正部1003から転送されてきたスペースインバリアントな階調変換画像と、を用いて画像合成処理を行い、合成後の画像信号をノイズ低減部108へ転送する。
図7は、合成部1004の構成の一例を示すブロック図である。
この合成部1004は、バッファ部901と、バッファ部902と、合成比率設定手段であり合成比率算出手段たる合成比率設定部903と、ブレンド部904と、を有して構成されている。
第1階調補正部1002は、バッファ部901を介してブレンド部904へ接続されている。第2階調補正部1003は、バッファ部902と合成比率設定部903とを介してブレンド部904へ接続されている。ブレンド部904は、ノイズ低減部108へ接続されている。ROM110は、合成比率設定部903へ接続されている。RAM1005は、合成比率設定部903とブレンド部904とへ接続されている。
制御部111は、バッファ部901、バッファ部902、合成比率設定部903、およびブレンド部904と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
第1階調補正部1002から転送されてきたスペースバリアントな階調変換処理後の画像信号(以下、適宜「第1画像信号」」という)は、バッファ部901に記憶される。
また、第2階調補正部1003から転送されてきたスペースインバリアントな階調変換処理後の画像信号(以下、適宜「第2画像信号」」という)は、バッファ部902に記憶される。
合成比率設定部903は、第1画像信号と第2画像信号とを合成するときの比率、つまり、第1画像信号の合成比率R1と第2画像信号の合成比率R2とを設定する。ここに、合成比率R1と合成比率R2との設定は、種々の方法により行うことが可能である。
まず、これら合成比率R1と合成比率R2とを設定する第1の方法として、合成比率R1,R2を変動的に設定する方法が挙げられる。この方法は、合成比率設定部903が、制御部111の制御に基づき、上述したような高輝度閾値STh(図3参照)をRAM1005から抽出して、この高輝度閾値SThに基づき合成比率R1と合成比率R2とを設定する方法である。
具体的には、高輝度域判断部4023により高輝度画像信号が存在すると判断されたときには、画像中の高輝度領域の面積と全画像の面積との比率に応じて、合成比率R1,R2を設定する手段が挙げられる。ここに、面積は、実際の面積である必要はなく、高輝度領域に含まれる画素の画素数と、全画像に含まれる画素の画素数と、を代用することができる。すなわち、本実施形態においては、全画像信号中において入力輝度値が高輝度閾値SThよりも大きい画素のカウント数を高輝度領域の面積とみなし、全画像信号に含まれる全ての画素のカウント数を全画像の面積とみなせば良い。このように、高輝度領域の面積と全画像の面積との比率に応じて合成比率R1,R2を設定する場合には、例えば数式3、数式4で表現されるような関係に従って合成比率R1,R2を設定すると良い。
[数3]
R1=T×(Sh/Sa)
[数4]
R2=1−R1
ここに、Shは高輝度領域の面積、Saは全画像の面積、Tは定数(0≦T≦1)を表し、R1は条件「0≦R1≦1」を、R1およびR2は条件「R1+R2=1」を、それぞれ満たすものとする(従って、R2は条件「0≦R2≦1」を満たす)。
なお、上述では数式3および数式4に基づいて合成比率を求めたが、もちろんこれに限定されるものではなく、高輝度領域の面積と全画像の面積との比率に応じて合成比率を設定することができるような関係式であれば、他の関係式に基づいて合成比率を設定するようにしても構わない。
また、合成比率R1と合成比率R2とを変動的に設定する他の方法としては、処理対象の画像信号の特性に応じて定まる変動的な合成比率を用いる方法が挙げられる。
次に、合成比率R1と合成比率R2とを設定する第2の方法として、合成比率R1,R2を固定的に設定する方法が挙げられる。
この方法としては、例えば、予め定められた固定的な合成比率R1,R2をROM110に記憶させておき、ROM110からこの合成比率R1,R2を読み出して用いる方法が挙げられる。
あるいは、ユーザーが、例えば外部I/F部112を介して合成比率を設定するようにしても構わない。このときには、外部I/F部112を介してユーザが合成比率を自由に設定することができるようにしても良いし、ROM110に複数組の合成比率を予め記憶させておき、これら複数組の合成比率の内の一組を外部I/F部112を介してユーザーが指定することにより設定するようにしても構わない。この場合には、スペースバリアントな階調変換処理を用いることによる階調の改善効果を、人為的にコントロールし易くなる利点がある。
続いて、ブレンド部904は、合成比率設定部903により(上述したように変動的または固定的に)設定された合成比率R1,R2を用いて、第1画像信号と第2画像信号とを例えば数式5に示すように合成する。
[数5]
Fij=R1×Mij+R2×Nij
ここに、Mijは第1画像信号における画素位置(i,j)の輝度値、Nijは第2画像信号における画素位置(i,j)の輝度値、Fijは合成後の画像信号における画素位置(i,j)の輝度値である。
このように合成比率R1,R2を用いて第1画像信号と第2画像信号とを合成することにより、高輝度領域の階調を保つことができる。
なお、上述では数式5に従って合成を行ったが、これに限るものではなく、合成比率設定部903により設定された合成比率R1,R2を用いれば、他の関係式に基づいて合成を行っても構わない。
そして、上述においては、画像信号の全画素に対して一律の(スペースインバリアントな)合成比率を設定する例を示したが、これに限定される必要はない。例えば、画像信号を構成する各画素毎に異なる(スペースバリアントな)合成比率を設定するようにしても構わない。
画素毎に異なる合成比率を設定する具体例としては、輝度値に応じて合成比率R1,R2を変化させる例が挙げられる。これについて、図4を参照して説明する。ここに、図4は、輝度値に応じて合成比率R1ij,R2ijを線形に変化させる例を示す線図である。
なお、ここで説明する合成比率は、画素位置(i,j)毎に異なる合成比率となるために、画素位置(i,j)の合成比率R1を合成比率R1ijにより、画素位置(i,j)の合成比率R2を合成比率R2ijにより、それぞれ表記することにする。また、図7に示す構成においては、合成比率設定部903に入力される輝度値は、スペースインバリアントな階調変換処理がなされた輝度値であり、この輝度値をPijにより表記することにする。
図4に示す合成比率R1ij,R2ijの設定例は、次のようになっている。
まず、輝度値Pijが高輝度閾値SThよりも大きい場合には、スペースバリアントな階調変換画像の合成比率R1ijがT、スペースインバリアントな階調変換画像の合成比率R2ijが(1−T)、となるようにそれぞれ設定する(ここに、Tは0以上1以下の定数である)。すなわち、高輝度閾値SThよりも輝度値が大きい画素により構成される画像信号領域については、合成比率Tを用いて第1画像信号と第2画像信号とを合成する。
これに対して、輝度値Pijが高輝度閾値STh以下である場合には、合成比率R1ijは画像信号の輝度値が大きくなるにつれて単調増加するように設定され(図4および数式6参照)、合成比率R2ijは画像信号の輝度値が大きくなるにつれて単調減少するように設定される(図4および数式7参照)。ただし、このときにも、合成比率R1ijの最小値(輝度値0に対応する)が(1−T)となり、合成比率R2ijの最大値(輝度値0に対応する)がTとなるように設定される。
[数6]
R1ij=(1−T)+{(2T−1)/STh}×Pij
[数7]
R2ij=1−R1ij
なお、数式6および数式7においては、合成比率R1ij,R2ijが輝度値に応じて線形的に単調増加または単調減少するように設定したが、必ずしもこのように設定する必要はない。つまり、輝度値が大きくなるにつれて、第1画像信号(スペースバリアントに対応)の合成比率R1ijが大きくなり、第2画像信号(スペースインバリアントに対応)の合成比率R2ijが小さくなるような設定であれば、適宜の曲線等を用いることが可能である。
例えば、合成比率R1ijが輝度値の増加に対して非線形に単調増加し、合成比率R2ijが輝度値の増加に対して非線形に単調減少するようにしても構わない。このような設定の具体例を図8に示す。ここに、図8は、輝度値に応じて合成比率R1ij,R2ijを非線形に変化させる例を示す線図である。この図8に示す例においては、合成比率R1ijは単調増加領域において上に凸の関数形状をなし、合成比率R2ijは単調減少領域において下に凸の関数形状をなしている。さらに、この図8に示す例においては、輝度値0に対応する合成比率R1ijの最小値は0、輝度値0に対応する合成比率R2ijの最大値は1となっている。また、輝度値Pijが高輝度閾値SThよりも大きいときは、図4に示した例と同様である。
このように、輝度値に応じて画素毎に合成比率R1ijと合成比率R2ijとを設定するようにした場合には、各輝度域の階調を輝度値に応じて柔軟に保つことができるという利点がある。
なお、上述では、スペースインバリアントな階調変換処理がなされた輝度値Pijに基づき、画素毎の合成比率R1ij,R2ijを算出するようにしたが、これに限るものではなく、例えば上述した輝度信号変換部401により数式1に示したように算出される階調変換処理前の輝度値Kijに基づいて、画素毎の合成比率R1ij,R2ijを算出するようにしても構わない。
また、上述したようなスペースバリアントな階調変換処理は、区域毎の階調特性を人為的に調整することができないために、例えば画像の低輝度領域に適用すると暗部のノイズレベルが強調されてしまう可能性がある。これを改善するための合成比率の設定例を、図9を参照して説明する。ここに、図9は、輝度値に応じて合成比率R1ij,R2ijを線形に変化させ、かつ暗部ノイズを低減する例を示す線図である。
この図9に示す例においては、低輝度閾値STlを設定して、輝度値Pijがこの低輝度閾値STlよりも小さい場合には、合成比率R1ijを0に設定しかつ合成比率R2ijを1に設定するようにしている。すなわち、低輝度閾値STlよりも輝度値が小さい画素により構成される画像信号領域については、スペースバリアントな階調変換処理後の画像信号を用いることなく、スペースインバリアントな階調変換処理後の画像信号のみを階調変換の結果として出力するようにしている。なお、低輝度閾値STlは、予め設定された値をROM110に保存しておいて必要に応じて読み出すようにしても良いし、ユーザーが所望の値を設定するか、もしくはユーザが幾つかの候補の中から値を選択するようにしても良い。
また、輝度値Pijが高輝度閾値SThよりも大きいときは、図4に示した例と同様である。
そして、輝度値Pijが、低輝度閾値STl以上高輝度閾値STh以下である場合には、数式8、数式9を用いて合成比率R1ij,R2ijを算出する。
[数8]
R1ij=T×{(Pij−STl)/(STh−STl)}
[数9]
R2ij=1−R1ij
なお、数式8,数式9に示したような、合成比率R1ijの単調増加および合成比率R2ijの単調減少が、必ずしも線形的である必要はないことは、上述と同様である。
さらに上述では、合成比率R1,R2を、画像全体または画素単位で設定する例について説明したが、これらに限るものではない。例えば、画像信号を複数の区域に分割して、分割された区域毎に輝度平均値または輝度中間値を算出する。そして、輝度平均値または輝度中間値を所定値により割り算して、その結果を合成比率R1とし、1−R1を合成比率R2として設定することが考えられる。そして、区域毎に、合成比率R1をスペースバリアントな階調変換処理後の画像信号に対して用いると共に、合成比率R2をスペースインバリアントな階調変換処理後の画像信号に対して用いて、画像信号を合成するようにすれば良い。このように、区域単位で画像信号の合成を行うようにしても構わない。
ブレンド部904は、合成比率設定部903により設定された合成比率R1ij,R2ijを用いて、第1画像信号Mijと第2画像信号Nijとを例えば数式10に示すように合成する。
[数10]
Fij=R1ij×Mij+R2ij×Nij
そして、ブレンド部904は、制御部111の制御に基づいて、合成した画像信号をノイズ低減部108へ転送する。
その後、ノイズ低減部108は、合成部1004または第2階調補正部1003から転送されてきた画像信号に含まれると推定されるノイズ量(ノイズレベル)をノイズ検出手段により算出して、算出したノイズ量に基づきノイズ低減手段により該画像信号にノイズ低減処理を行う。ここに、ノイズ低減部108は、例えば上述した特開2005−303802号公報に記載されているような公知の技術を用いて、画素毎にノイズ量を推定しノイズ低減処理を行うようになっている。
なお、上述ではレンズ系100、絞り101、CCD102、増幅部103、A/D変換部104を含む撮像部を一体化した構成の画像信号処理装置について説明したが、画像信号処理装置としてはこのような構成に限定される必要はなく、撮像部が別体であっても構わない。すなわち、別体の撮像部により撮像され、未処理のロー(RAW)データの形態でメモリカード等の記録媒体に記録された画像信号を、該記録媒体から読み出して処理する画像信号処理装置であっても構わない。ただし、このときには、撮影時の情報(ISO感度やホワイトバランス係数など)が、ヘッダ部等に記録されているものとする。なお、別体の撮像部から画像信号処理装置への各種情報の伝送は、記録媒体を介して行うに限らず、通信回線等を介して行うようにしても構わない。
さらに、上述ではハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、CCD102からの信号を未処理のままのロー(RAW)データとしてメモリカード等の記録媒体に記録すると共に、制御部111からの撮影時の情報(ISO感度やホワイトバランス係数など)をヘッダ情報として記録媒体に記録しておく。そして、別途のソフトウェアである画像信号処理プログラムをコンピュータに実行させて、記録媒体の情報をコンピュータに読み取らせ、処理することも可能である。なお、撮像部からコンピュータへの各種情報の伝送は、上述と同様に、記録媒体を介して行うに限らず、通信回線等を介して行うようにしても構わない。
図10は、画像信号処理プログラムによる処理を示すフローチャートである。
この処理を開始すると、まず、画像信号や上記ヘッダ情報等を読み込むと共に、該画像信号処理プログラムが予め備えているγ特性データなどの情報も読み込む(ステップS1)。この処理は、撮像装置である画像信号処理装置において、被写体を撮影して画像信号を取得する処理に相当している。
次に、読み込んだ画像信号に高輝度画像信号が存在するか否かを検出する(ステップS2)。この処理は、上述した特定輝度域検出部402が行う処理に相当している。
続いて、ステップS2の検出結果に基づき、画像信号に高輝度画像信号が存在するか否かを判定する(ステップS3)。この処理は、階調変換部107および制御部111が行う処理に相当している。
ここで、高輝度画像信号が存在すると判定された場合には、画像信号に対してスペースバリアントな第1階調補正処理を行う(ステップS4)。この処理は、第1階調補正部1002が行う処理に相当している。
続いて、画像信号に対してステップS1において読み込んだγ特性データを用いてスペースインバリアントな第2階調補正処理を行う(ステップS5)。この処理は、第2階調補正部1003が行う処理に相当している。
なお、ここでは第1階調補正処理を先に行い、第2階調補正処理を後で行うようにしているが、この逆順でも構わないし、第1階調補正処理と第2階調補正処理とを同時並列的に行うようにしても良い。
そして、ステップS4により得られた第1画像信号とステップS5により得られた第2画像信号とを合成する(ステップS6)。この処理は、合成部1004が行う処理に相当している。
また、ステップS3において、高輝度画像信号が存在しないと判定された場合には、画像信号に対してステップS1において読み込んだγ特性データを用いてスペースインバリアントな第2階調補正処理を行う(ステップS7)。この処理も、ステップS5の処理と同様に、第2階調補正部1003が行う処理に相当している。
ステップS6の処理またはステップS7の処理が終了したら、公知のノイズ低減処理を行う(ステップS8)。この処理は、ノイズ低減部108が行う処理に相当している。
その後、ノイズ低減後の画像信号を出力して、表示装置に表示したり、あるいは、メモリカード等に保存したりしてから(ステップS9)、この処理を終了する。
次に、図11は、図10のステップS2における高輝度信号の検出処理の詳細を示すフローチャートである。
この処理を開始すると、まず、所定の表示装置に対応するγ特性データを抽出する(ステップS101)。この処理は、γ特性データ抽出部4021が行う処理に相当している。
次に、図3に示したように、γ特性データに対応する傾き角度Δ(数式2)が白飛びであると認定する所定の角度ΔTHよりもはじめて小さくなったときの入力レベルを、高輝度閾値(図3に示したSTh)とする(ステップS102)。この処理は、高輝度域閾値検出部4022が行う処理に相当している。
続いて、画像に含まれる全画素の輝度値を高輝度閾値と比較して、高輝度閾値よりも輝度値が大きい画素(高輝度画像信号と判定される画素)の数をカウントする(ステップS103)。
そして、高輝度画像信号のカウント数を所定の閾値と比較して、所定の閾値よりも大きい場合には、画像に高輝度画像信号が存在すると判断する。これに対して、高輝度画像信号のカウント数が所定の閾値よりも小さい場合には、画像に高輝度画像信号が存在しないと判断する(ステップS104)。これらステップS103およびステップS104の処理は、高輝度域判断部4023が行う処理に相当している。
このステップS104の処理が終了したら、その後は図10に示した処理へ復帰する。
なお、ここでは高輝度閾値を自動的に設定する例について説明したが、ユーザ入力により手動で設定するようにしても構わない。このときには、図11のステップS101およびステップS102の処理に代えて、高輝度閾値の手動入力処理を行うようにすれば良い。
続いて、図12は、図10のステップS6における合成処理の詳細を示すフローチャートである。
この処理を開始すると、まず、ステップS2により検出された高輝度画像信号の閾値、高輝度領域の面積(高輝度領域の画素数)、および全画像領域の面積(全画像領域の画素数)と、ステップS4の処理により得られたスペースバリアントな階調変換処理後の画像と、ステップS5の処理により得られたスペースインバリアントな階調変換処理後の画像と、等の情報を抽出する(ステップS111)。
次に、ステップS111により抽出された情報に基づいて、例えば上述した数式6および数式7を用いて合成比率R1ijと合成比率R2ijとを算出する(ステップS112)。この処理は、合成比率設定部903が行う処理に相当している。
さらに、ステップS112により算出された合成比率R1ij,R2ijを用いて、例えば上述した数式10を用いて、スペースバリアントな階調変換処理後の画像とスペースインバリアントな階調変換処理後の画像とを合成する(ステップS113)。この処理は、ブレンド部904が行う処理に相当している。
その後に、合成後の画像を後段のノイズ低減処理へ出力して(ステップS114)、この処理から図10に示した処理に復帰する。
なお、上述したような技術は、画像信号が静止画像信号である場合と動画像信号である場合との何れにも適用することが可能である。
また、上述では画像信号処理装置、画像信号処理プログラムについて説明したが、これらに限らず、上述したような処理を行うための画像信号処理方法であっても構わない。
このような実施形態1によれば、高輝度信号が存在する場合には、原画像信号に対して区域毎(画素毎または画素領域毎)にスペースバリアントな階調変換処理を行うようにしたために、高輝度域に属する画素または画素領域の階調特性が圧縮されることなく保たれる。また、高輝度信号が存在しない場合には、スペースインバリアントな階調変換処理のみを行うようにしたために、消費電力を低減して処理を高速化することが可能となる。
さらに、画像信号の高輝度領域に対しては該高輝度領域に対応するスペースバリアントな階調変換処理の結果を実質的に用いるが、高輝度領域以外の領域に対してはスペースバリアントな階調変換画像とスペースインバリアントな階調変換画像とを合成した結果を用いるようにしたために、高輝度領域の階調が保たれると同時に、低輝度域から中輝度域の階調が伸張されることになり、階調再現特性を反映した画像を得ることができる。
そして、スペースバリアントな階調変換画像とスペースインバリアントな階調変換画像とを合成する際の合成比率を、画像中の高輝度領域の面積と全画像の面積との比率に応じて設定する場合には、画像中に高輝度部分が含まれる程度に応じた適切な合成を行うことが可能となる。
加えて、合成比率を画素毎あるいは区域毎に設定する場合には、それぞれの画像部分に応じた適切な合成を行うことが可能となる。
[実施形態2]
図13から図23は本発明の実施形態2を示したものであり、図13は画像信号処理装置の構成を示すブロック図である。この実施形態2において、上述の実施形態1と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この実施形態2は、実施形態1の図1に示した画像信号処理装置において、ノイズ低減部108を画質劣化情報取得手段であり画質補正手段たる色ずれ低減部208へ置換した構成になっている。その他の基本的な構成は上述した実施形態1と同様である。
画像信号判断部106は、階調変換部107と色ずれ低減部208とを介して表示部109へ接続されている。ROM110は、画像信号判断部106と階調変換部107と色ずれ低減部208とへ接続されている。
制御部111は、増幅部103、A/D変換部104、バッファ部105、画像信号判断部106、階調変換部107、色ずれ低減部208、表示部109、ROM110および外部I/F部112と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
次に、図13に示したような画像信号処理装置の作用を、画像信号の流れに沿って説明する。
外部I/F部112を介してシャッタボタンが押されると、レンズ系100、絞り101、CCD102により撮像が行われ、画像信号が出力されて増幅部103により増幅され、A/D変換部104によってデジタル信号へ変換される。なお、本実施形態においても、上記映像信号がR,G,B三成分からなるカラー映像信号であることを想定している。
A/D変換部104からの画像信号は、バッファ部105へ転送されて記憶される。
画像信号判断部106は、バッファ部105から転送されてきた画像信号に対して、所定の高輝度閾値に基づき高輝度画像信号があるか否かを判定すると共に、所定の低輝度閾値に基づき低輝度画像信号があるか否かを判定して、高低輝度判定結果を求める。すなわち、本実施形態の画像信号判断部106は、高輝度画像信号の有無だけでなく、低輝度画像信号の有無も判定するようになっている。なお、高輝度閾値および低輝度閾値は、γ特性データに基づき上述した実施形態1とほぼ同様の技術により自動的に指定するものとする。ただし、高輝度閾値および低輝度閾値を外部I/F部112を通じてユーザーが自由に設定することができるようにしても良いし、ROM110に予め用意されている複数の高輝度閾値および複数の低輝度閾値から一つずつを外部I/F部112を通じてユーザが指定するようにしても構わないのは上述した実施形態1と同様である。そして、画像信号判断部106は、画像信号と共に高低輝度判定結果を階調変換部107へ転送する。
階調変換部107は、転送されてきた高低輝度判定結果に基づいて、画像信号に対応する階調変換処理を該画像信号に対して行い、処理後の画像信号を色ずれ低減部208へ転送する。
色ずれ低減部208は、転送されてきた画像信号に対して色ずれ低減処理を行い、処理後の画像信号を表示部109へ転送する。
表示部109は、転送されてきた画像信号に基づき表示を行う。
次に、画像信号判断部106の構成は、基本的には上述した実施形態1の図2に示したものと同様である。ただし、画像信号判断部106内に設けられた特定輝度域検出部402の構成が上述した実施形態1とは異なるために、図14を参照して説明する。
図14は、特定輝度域検出部402の構成の一例を示すブロック図である。
この特定輝度域検出部402は、γ特性データ抽出合成部4121と、閾値設定手段たる高低輝度域閾値検出部4122と、特定輝度域検出手段たる高低輝度域判断部4123と、を有して構成されている。
輝度信号変換部401は、γ特性データ抽出合成部4121と高低輝度域閾値検出部4122と高低輝度域判断部4123とを介して、階調変換部107へ接続されている。ROM110は、γ特性データ抽出合成部4121と高低輝度域閾値検出部4122と高低輝度域判断部4123とへ接続されている。
制御部111は、γ特性データ抽出合成部4121、高低輝度域閾値検出部4122、高低輝度域判断部4123と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
上述したように、スペースインバリアントな階調変換を行うと、変換前には白飛びではない画像信号が、変換後には白飛びになってしまう現象が生じることがあり、実施形態1ではこのような現象の改善を行うようにしていた。これに対して、この実施形態2では、さらに、スペースインバリアントな階調変換の前には黒つぶれではない画像信号が、変換後には黒つぶれになってしまう現象をも改善することを目的としている。
ここに、白飛びまたは黒つぶれが発生する原因は、例えば後述する図17に示すような階調変換曲線(γ特性データ)を用いる場合、高輝度部の階調特性域および低輝度部の階調特性域に対応するγ特性データの勾配がほぼ水平になっているために、これらの部分に対応する画像信号の濃淡変化が階調変換を行った後にほとんどなくなってしまうことにある。ここに図17は、絵作りγ特性データと表示装置用のγ特性データとを合成して得られたγ特性データを示す線図である。そして、この図17に示すようなγ特性データの場合には、高輝度部画像信号が白飛びに、低輝度部画像信号が黒つぶれになってしまうことになる。このような高輝度部および低輝度部の画像信号の階調特性を改善するためには、まず、高輝度領域および低輝度領域を識別するための高輝度閾値および低輝度閾値を検出する必要がある。
このような特定輝度域検出部402の作用について、図14に沿って説明する。
γ特性データ抽出合成部4121は、画像処理に適したγ特性データ(絵作りγ特性データ)と、表示部109に含まれる表示装置により画像を表示するのに適したγ特性データと、をROM110から抽出し、これらを合成して図17に示すようなγ特性データを生成し、生成したγ特性データを高低輝度域閾値検出部4122へ転送する。ここに、絵作りγ特性データとは、画像の明るさやコントラストの変化を調整するための階調変換データのことである。
高低輝度域閾値検出部4122は、白飛びであると認定する角度ΔHTHと、黒つぶれであると認定する角度ΔLTHと、をROM110から抽出する。そして、高低輝度域閾値検出部4122は、抽出された白飛びであると認定する角度ΔHTHと、γ特性データ抽出合成部4121から転送された図17に示すようなγ特性データと、に基づいて、まず、高輝度閾値SThに対応する傾きΔHを、次の数式11に示すように算出する。
[数11]
ΔH=arctan{(H255o−Hxo)/(255−Hxi)}
ここに、小さい方から順に数えてx番目の入力レベルをHxiとし、この入力レベルHxiに対応する出力レベルをHxoとして、(Hxi,Hxo)を着目点としている。さらに、最大入力レベル255に対応する出力レベルをH255oとして、(255,H255o)を最大点としている。そして、入力レベルが小さい順に着目点を移動させながら、着目点と最大点とを通る直線の傾き角度ΔHを数式11に示すように算出し、着目点の移動に従って順に算出される傾き角度ΔHが、ROM110から読み出した所定の角度ΔHTHよりもはじめて小さくなったときの着目点の入力レベルを、高輝度閾値SThとする。
次に、高低輝度域閾値検出部4122は、抽出された黒つぶれであると認定する角度ΔLTHと、γ特性データ抽出合成部4121から転送された図17に示すようなγ特性データと、に基づいて、低輝度閾値STlに対応する傾きΔLを、次の数式12に示すように算出する。
[数12]
ΔL=arctan(Lxo/Lxi)
ここに、小さい方から順に数えてx番目の入力レベルをLxiとし、この入力レベルLxiに対応する出力レベルをLxoとして、(Lxi,Lxo)を着目点としている。さらに、最小点は(0,0)である。そして、最大点から入力レベルが小さい方へ向かって順に(つまり、入力レベルが大きい順に)着目点を移動させながら、最小点と着目点とを通る直線の傾き角度ΔLを数式12に示すように算出し、着目点の移動に従って順に算出される傾き角度ΔLが、ROM110から読み出した所定の角度ΔLTHよりもはじめて小さくなったときの着目点の入力レベルを、低輝度閾値STlとする。
その後、高低輝度域閾値検出部4122は、このようにして推定した高輝度閾値SThおよび低輝度閾値STlと、画像信号と、を高低輝度域判断部4123へ転送する。
なお、ここでは、高低輝度域閾値検出部4122が、合成されたγ特性データに基づいて高輝度閾値SThおよび低輝度閾値STlを算出するようにしているが、これに限るものではない。例えば、合成されたγ特性データに対応する高輝度閾値SThおよび低輝度閾値STlを予めROM110に保存しておき、画像信号を処理するときにROM110から高輝度閾値SThおよび低輝度閾値STlを抽出するように構成することももちろん可能である。
高低輝度域判断部4123は、転送されてきた高輝度閾値SThに基づいて、全画像信号中の高輝度画像信号の数を高輝度カウンタによりカウントすると共に、転送されてきた低輝度閾値STlに基づいて、全画像信号中の低輝度画像信号の数を低輝度カウンタによりカウントする。ここに、高輝度画像信号としてのカウントは、輝度値が高輝度閾値SThよりも大きい場合に行われ、低輝度画像信号としてのカウントは、輝度値が低輝度閾値STlよりも小さい場合に行われる。
そして、高低輝度域判断部4123は、全画素についての処理を行った後の高輝度カウンタの値と、ROM110から読み出した所定の閾値(高輝度画像信号閾値)とを比較して、高輝度カウンタの値が所定の高輝度画像信号閾値よりも大きい場合には画像に高輝度画像信号が存在すると判定し、所定の高輝度画像信号閾値以下である場合には画像に高輝度画像信号が存在しないと判定する。
さらに、高低輝度域判断部4123は、全画素についての処理を行った後の低輝度カウンタの値と、ROM110から読み出した所定の閾値(低輝度画像信号閾値)とを比較して、低輝度カウンタの値が所定の低輝度画像信号閾値よりも大きい場合には画像に低輝度画像信号が存在すると判定し、所定の低輝度画像信号閾値以下である場合には画像に低輝度画像信号が存在しないと判定する。
高低輝度域判断部4123は、これら高輝度画像信号の存在の有無と低輝度画像信号の存在の有無とを高低輝度判定結果とする。
その後、高低輝度域判断部4123は、この高低輝度判定結果と、高輝度閾値SThおよび低輝度閾値STlと、画像信号と、を階調変換部107へ転送する。
図15は、階調変換部107の構成の一例を示すブロック図である。
この階調変換部107の構成は、上述した実施形態1の図6に示した階調変換部107とほぼ同様であるが、第2階調変換処理手段たる第2階調補正部1003が第2階調変換処理手段たる第2階調補正部1103に置換された点が異なっている。
バッファ部1001は、第1階調補正部1002と第2階調補正部1103とへ接続されている。第1階調補正部1002および第2階調補正部1103は、合成部1004へ接続されている。第2階調補正部1103および合成部1004は、色ずれ低減部208へ接続されている。RAM1005は、第1階調補正部1002と第2階調補正部1103と合成部1004とへ接続されている。ROM110は、第2階調補正部1103と合成部1004とへ接続されている。
制御部111は、第2階調補正部1103とも双方向に接続されており、これを制御するようになっている。
画像信号判断部106からの画像信号はバッファ部1001に、画像信号判断部106からの高輝度閾値、低輝度閾値、高低輝度判定結果はRAM1005に、それぞれ保存される。
階調変換部107は、制御部111の制御に基づき、RAM1005から高低輝度判定結果を抽出して、高輝度画像信号または低輝度画像信号が存在するか否かを判定する。そして、階調変換部107は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との少なくとも一方が存在すると判定した場合には、制御部111の制御に基づき、バッファ部1001内の画像信号を第1階調補正部1002および第2階調補正部1103へ転送する。一方、階調変換部107は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との両方が存在しないと判定した場合には、制御部111の制御に基づき、バッファ部1001内の画像信号を第2階調補正部1103のみへ転送する。
第1階調補正部1002は、制御部111の制御に基づき、バッファ部1001から転送されてきた画像信号に対して上述した実施形態1と同様にスペースバリアントな階調変換処理を行う。そして、第1階調補正部1002は、階調変換処理後の画像信号を合成部1004へ転送する。なお、高輝度画像信号と低輝度画像信号との両方が存在しないと判定された場合には、バッファ部1001からこの第1階調補正部1002へは画像信号が転送されないよう制御されるために、該第1階調補正部1002は処理を行わない。
また、第2階調補正部1103は、所定の絵作りγ特性データと、表示部109の表示装置により画像を表示するのに適したγ特性データと、をROM1005から抽出し、さらにこれらを合成して合成後のγ特性データを生成する。そして、第2階調補正部1103は、合成後のγ特性データを用いて、バッファ部1001から転送されてきた画像信号に対してスペースインバリアントな階調変換処理を行う。
第2階調補正部1103は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との少なくとも一方が存在すると判定された場合には、制御部111の制御に基づき、処理後の画像信号を合成部1004へ転送する。また、第2階調補正部1103は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との両方が存在しないと判定された場合には、制御部111の制御に基づき、処理後の画像信号を色ずれ低減部208へ転送する。
ここで、図16を参照して、第2階調補正部1103のより詳細な構成および作用について説明する。図16は、第2階調補正部1103の構成の一例を示すブロック図である。
この第2階調補正部1103は、γ特性データ合成部2001と、γ補正部2002と、を有して構成されている。
バッファ部1001は、γ特性データ合成部2001とγ補正部2002とを介して合成部1004へ接続されている。γ補正部2002は、色ずれ低減部208へも接続されている。ROM110は、γ特性データ合成部2001とγ補正部2002とへ接続されている。RAM1005は、γ補正部2002へ接続されている。制御部111は、γ特性データ合成部2001、γ補正部2002と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
γ特性データ合成部2001は、所定の絵作りγ特性データと、所定の表示装置に対応するγ補正データと、をROM110から抽出して、これらを合成し、例えば図17に示すような合成後のγ特性データを生成する。γ特性データ合成部2001は、合成後のγ特性データをγ補正部2002へ転送する。
γ補正部2002は、γ特性データ合成部2001から転送されてきたγ特性データを用いて、γ特性データ合成部2001から転送されてきた画像信号に対してγ補正処理を行う。
γ補正部2002は、さらに、制御部111の制御に基づいて、RAM1005から高低輝度判定結果を抽出して、高輝度画像信号と低輝度画像信号との少なくとも一方が存在するか否かを判定する。そして、γ補正部2002は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との少なくとも一方が存在すると判定した場合には、処理後の画像信号を合成部1004へ転送する。一方、γ補正部2002は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との両方が存在しないと判定した場合には、処理後の画像信号を色ずれ低減部208へ転送する。
合成部1004は、第1階調補正部1002から転送されてきたスペースバリアントな階調変換処理後の画像(第1画像信号)と、第2階調補正部1103から転送されてきたスペースインバリアントな階調変換処理後の画像(第2画像信号)と、を用いて画像合成処理を行い、合成後の画像信号を色ずれ低減部208へ転送する。
ここに、合成部1004のより詳細な構成は、上述した実施形態1の図7と同様であるために、この図7を参照して本実施形態の合成部1004について説明する。
本実施形態においては、高輝度域だけでなく低輝度域も検出するようになっているために、合成部1004は、第1画像信号と第2画像信号とを合成する際の画素毎の輝度値に応じた変動的な合成比率を、高輝度閾値SThと低輝度閾値STlとに基づき、図18〜図20に示すように設定するようになっている。
すなわち、合成比率設定部903は、RAM1005から高低輝度判定結果をまず抽出する。そして、抽出した高低輝度判定結果が、高輝度画像信号と低輝度画像信号との両方が存在することを示すものである場合には、合成比率設定部903は、RAM1005からさらに高輝度閾値SThと低輝度閾値STlとを抽出して、図18に示すように合成比率を変動的に設定する。
ここに、図18は、高輝度画像信号と低輝度画像信号との両方が存在する場合の合成比率の設定例を示す線図である。この図18においては、実線がスペースバリアントな階調処理画像(第1画像信号)の合成率を、点線がスペースインバリアントな階調処理画像(第2画像信号)の合成率を、それぞれ示している。
この図18に示す例においては、画像信号が低輝度閾値STlよりも小さい場合と、画像信号が高輝度閾値SThよりも大きい場合と、の両方において、第1画像信号の合成比率を1に設定すると共に、第2画像信号の合成比率を0に設定するようになっている。
一方、画像信号値が低輝度閾値STl以上かつ高輝度閾値STh以下である場合には、基本的には、第1画像信号の合成比率を0に設定すると共に、第2画像信号の合成比率を1に設定するようになっている。ただし、低輝度閾値STlと高輝度閾値SThとにおいて階調変換の方式が急激に変化するのを避けるために、低輝度側に緩和幅IntvLの緩和域を、高輝度側に緩和幅IntvHの緩和域を、それぞれ設けて、スペースバリアントな階調処理画像とスペースインバリアントな階調処理画像とが連続的に変化するようにし、画質的に破綻が生じることのないようにしている。
すなわち、合成比率設定部903は、ROM110に予め保存されている所定の緩和幅IntvLのデータを該ROM110から抽出して、輝度値Pijに基づき、緩和幅IntvLの緩和域における第1画像信号の合成比率R3ijを数式13に示すように、また、第2画像信号の合成比率R4ijを数式14に示すように、線形補間によってそれぞれ設定する。
[数13]
R3ij={IntvL−(Pij−STl)}/IntvL
[数14]
R4ij=1−R3ij
ここに、数式13に示すR3ijおよび数式14に示すR4ijは、(STl+IntvL)>Pij≧STlの範囲で定義され、数式14を算出する際には条件式、R3ij+R4ij=1、を用いている。
さらに、合成比率設定部903は、ROM110に予め保存されている所定の緩和幅IntvHのデータを該ROM110から抽出して、輝度値Pijに基づき、緩和幅IntvHの緩和域における第1の画像信号の合成比率R5ijを数式15に示すように、また、第2の画像信号の合成比率R6ijを数式16に示すように、線形補間によってそれぞれ設定する。
[数15]
R5ij={(Pij−STh+IntvH)/IntvH}
[数16]
R6ij=1−R5ij
ここに、数式15に示すR5ijおよび数式16に示すR6ijは、STh≧Pij>(STh−IntvH)の範囲で定義され、数式16を算出する際には条件式、R5ij+R6ij=1、を用いている。
なお、これら数式13〜数式16を算出する前提として、条件式、(STh−IntvH)>(STl+IntvL)、が当然にして成立しているものとする。
そして、(STl+IntvL)≦Pij≦(STh−IntvH)の領域においては、第1画像信号の合成比率が0に、第2画像信号の合成比率が1に、それぞれ設定される。
ここに、緩和幅IntvL,IntvHのデータは、固定値を用いるに限るものではなく、ユーザーが外部I/F部112を介して自由に設定することができるようにしても良いし、あるいはROM110に予め用意された複数の緩和幅データからユーザが外部I/F部112を介して所望の緩和幅データを指定するようにしても構わない。
また、RAM1005から抽出した高低輝度判定結果が、低輝度画像信号のみが存在し、高輝度画像信号が存在しないことを示すものである場合には、合成比率設定部903は、RAM1005から低輝度閾値STlを抽出して、図19に示すように可変合成比率を変動的に構成する。
ここに、図19は、低輝度画像信号のみが存在する場合の合成比率の設定例を示す線図である。この図19においても、実線がスペースバリアントな階調処理画像(第1画像信号)の合成率を、点線がスペースインバリアントな階調処理画像(第2画像信号)の合成率を、それぞれ示している。
この図19に示す例においては、輝度値Pijが低輝度閾値STlよりも小さい場合に、第1画像信号の合成比率を1に設定すると共に、第2画像信号の合成比率を0に設定するようになっている。
また、(STl+IntvL)>Pij≧STlの領域においては、第1画像信号の合成比率R3ijを数式13に示すように設定すると共に、第2画像信号の合成比率R4ijを数式14に示すように設定するようになっている。
さらに、Pij≧(STl+IntvL)の領域においては、第1画像信号の合成比率を0に設定すると共に、第2画像信号の合成比率を1に設定するようになっている。
そして、RAM1005から抽出した高低輝度判定結果が、高輝度画像信号のみが存在し、低輝度画像信号が存在しないことを示すものである場合には、合成比率設定部903は、RAM1005から高輝度閾値SThを抽出して、図20に示すように可変合成比率を変動的に構成する。
ここに、図20は、高輝度画像信号のみが存在する場合の合成比率の設定例を示す線図である。この図20においても、実線がスペースバリアントな階調処理画像(第1画像信号)の合成率を、点線がスペースインバリアントな階調処理画像(第2画像信号)の合成率を、それぞれ示している。
この図20に示す例においては、輝度値Pijが高輝度閾値SThよりも大きい場合に、第1画像信号の合成比率を1に設定すると共に、第2画像信号の合成比率を0に設定するようになっている。
また、STh≧Pij>(STh−IntvH)の領域においては、第1画像信号の合成比率R5ijを数式15に示すように設定すると共に、第2画像信号の合成比率R6ijを数式16に示すように設定するようになっている。
さらに、Pij≦(STh−IntvH)の領域においては、第1画像信号の合成比率を0に設定すると共に、第2画像信号の合成比率を1に設定するようになっている。
なお、上述では、合成比率設定部903が、合成比率を変動的に設定する例を説明したが、上述した実施形態1と同様に、固定的な合成比率を用いるようにしても構わない。このときには、ROM110に記憶された固定値を用いるようにしても良いし、ユーザにより合成比率を指定することができるようにしても構わない。後者の場合には、外部I/F部112を介してユーザが合成比率を自由に設定することができるようにしても良いし、ROM110に複数組の合成比率を予め記憶させておき、これら複数組の合成比率の内の一組を外部I/F部112を介してユーザーが指定することにより設定するようにしても構わない。この場合には、スペースバリアントな階調変換処理を用いることによる階調の改善効果を、人為的にコントロールし易くなる利点がある。
合成比率設定部903は、上述したように設定した合成比率データと、バッファ部902からの画像信号と、をブレンド部904へ転送する。
ブレンド部904は、上述したように、例えば数式10に基づいて画素毎に第1画像信号と第2画像信号とを合成する。そしてブレンド部904は、制御部111の制御に基づいて、合成した画像信号を色ずれ低減部208へ転送する。
色ずれ低減部208は、合成部1004または第2階調補正部1103から転送された画像信号に対して公知の色ずれ低減処理(色ずれ補正処理)を行う。図21は、色ずれ低減部208の構成の一例を示すブロック図である。
この色ずれ低減部208は、画質劣化情報取得手段であり色ずれ検出手段たる色ずれ検出部701と、画質補正手段であり色ずれ補正手段たる色ずれ除去部702と、を有して構成されている。
階調変換部107は、色ずれ検出部701と色ずれ除去部702とを介して表示部109へ接続されている。ROM110は、色ずれ検出部701と接続されている。
制御部111は、色ずれ検出部701および色ずれ除去部702と双方向に接続されており、これらを制御するようになっている。
色ずれ検出部701は、階調変換部107の合成部1004または第2階調補正部1103から転送されてきたRGB画像信号を例えばYCrCb信号へ変換して、輝度信号Yに対してクロマサプレスゲインを算出する。
そして、色ずれ検出部701は、輝度信号Yおよび色差信号CrCbと、算出したクロマサプレスゲインと、を色ずれ除去部702へ転送する。
色ずれ除去部702は、クロマサプレスゲインを用いて、色差信号CrCbに対してクロマサプレス処理を行い、輝度信号Yとクロマサプレス処理後の色差信号CrCbとをRGB信号へ再び変換する。このような色ずれ低減処理を行うことにより、階調変換によって発生した色ずれ、あるいはスペースバリアントな階調変換の結果とスペースインバリアントな階調変換の結果とを合成したことによって発生した色ずれ、を低減することができる。
その後に、色ずれ除去部702は、色ずれ低減後の画像信号を表示部109へ転送する。
なお、上述した実施形態1においては、画像信号の画質劣化を改善する手段としてノイズ低減を例に挙げ、この実施形態2においては色ずれ低減を例に挙げたが、これらに限るものではない。例えば、画像が動画像である場合には、フレーム間で不連続性が発生して、それが動画像のちらつきとして観察される可能性がある。このような点に対応するためには、例えば、次の数式17に示すような公知のちらつき低減処理を行うようにすると良い。
[数17]
Q’ij=Qij×V1+Qbij×V2+Qfij×V3
この数式17において、Qijは対象画像信号における画素位置(i,j)の輝度値、Qbijは前フレーム画像信号における画素位置(i,j)の輝度値、Qfijは後フレーム画像信号における画素位置(i,j)の輝度値、Q’ijは合成した画像信号における画素位置(i,j)の輝度値、V1はQijに対する合成率、V2はQbijに対する合成率、V3はQfijに対する合成率であって、正規化の条件式V1+V2+V3=1を満たす合成率である。
なお、本実施形態においても、上述した実施形態1と同様に、撮像部が別体となった画像信号処理装置であっても構わないし、画像信号処理方法であっても構わないし、画像信号処理プログラムをコンピュータに実行させて同様の処理を行うようにしても良い。
図22は、画像信号処理プログラムによる処理を示すフローチャートである。
この処理を開始すると、まず、画像信号や上記ヘッダ情報等を読み込むと共に、該画像信号処理プログラムが予め備えている画像処理に適したγ特性データ(絵作りγ特性データ)および所定の表示装置により画像を表示するのに適したγ特性データなどの情報も読み込む(ステップS21)。この処理は、撮像装置である画像信号処理装置において、被写体を撮影して画像信号を取得する処理に相当している。
次に、読み込んだ画像信号に、高輝度画像信号が存在するか否かと、低輝度画像信号が存在するか否かと、を検出する(ステップS22)。この処理は、上述した特定輝度域検出部402が行う処理に相当している。
続いて、ステップS22の検出結果に基づき、画像信号に高輝度画像信号と低輝度画像信号との少なくとも一方が存在するか否かを判定する(ステップS23)。この処理は、階調変換部107および制御部111が行う処理に相当している。
ここで、高輝度画像信号と低輝度画像信号との少なくとも一方が存在すると判定された場合には、画像信号に対してスペースバリアントな第1階調補正処理を行う(ステップS24)。この処理は、第1階調補正部1002が行う処理に相当している。
続いて、ステップS21において読み込んだ画像処理に適したγ特性データ(絵作りγ特性データ)と所定の表示装置により画像を表示するのに適したγ特性データとを合成して、合成したγ特性データを用いて画像信号に対しスペースインバリアントな第2階調補正処理を行う(ステップS25)。この処理は、第2階調補正部1103が行う処理に相当している。
なお、ここでは第1階調補正処理を先に行い、第2階調補正処理を後で行うようにしているが、この逆順でも構わないし、第1階調補正処理と第2階調補正処理とを同時並列的に行うようにしても良い。
そして、ステップS24により得られた第1画像信号とステップS25により得られた第2画像信号とを合成する(ステップS26)。この処理は、合成部1004が行う処理に相当している。
また、ステップS23において、高輝度画像信号と低輝度画像信号との何れもが存在しないと判定された場合には、ステップS21において読み込んだ画像処理に適したγ特性データ(絵作りγ特性データ)と所定の表示装置により画像を表示するのに適したγ特性データとを合成して、合成したγ特性データを用いて画像信号に対しスペースインバリアントな第2階調補正処理を行う(ステップS27)。この処理も、ステップS25の処理と同様に、第2階調補正部1103が行う処理に相当している。
ステップS26の処理またはステップS27の処理が終了したら、公知の色ずれ低減処理を行う(ステップS28)。この処理は、色ずれ低減部208が行う処理に相当している。
その後、色ずれ低減後の画像信号を出力して、表示装置に表示したり、あるいは、メモリカード等に保存したりしてから(ステップS29)、この処理を終了する。
次に、図23は、図22のステップS22における高、低輝度信号の検出処理の詳細を示すフローチャートである。
この処理を開始すると、まず、画像処理に適したγ特性データ(絵作りγ特性データ)と、所定の表示装置により画像を表示するのに適したγ特性データと、を合成する(ステップS201)。この処理は、γ特性データ抽出合成部4121が行う処理に相当している。
次に、図17に示したように、合成したγ特性データに対応する傾き角度ΔH(数式11)が白飛びであると認定する所定の角度ΔHTHよりもはじめて小さくなったときの入力レベルを、高輝度閾値(図8に示したSTh)とするとともに、合成したγ特性データに対応する傾きΔL(数式12)が黒つぶれであると認定する所定の角度ΔLTHよりもはじめて小さくなったときの入力レベルを低輝度閾値(図8に示したSTl)と設定する(ステップS202)。この処理は、高低輝度域閾値検出部4122が行う処理に相当している。
続いて、画像に含まれる全画素の輝度値を高輝度閾値と比較して、高輝度閾値よりも輝度値が大きい画素(高輝度画像信号と判定される画素)の数をカウントするとともに、画像に含まれる全画素の輝度値を低輝度閾値と比較して、低輝度閾値よりも輝度値が小さい画素(低輝度画像信号と判定される画素)の数をカウントする(ステップS203)。
そして、高輝度画像信号のカウント数を所定の閾値(高輝度画像信号閾値)と比較して、所定の閾値よりも大きい場合には画像に高輝度画像信号が存在すると判断し、所定の閾値よりも小さい場合には画像に高輝度画像信号が存在しないと判断するとともに、低輝度画像信号のカウント数を所定の閾値(低輝度画像信号閾値)と比較して、所定の閾値よりも大きい場合には画像に低輝度画像信号が存在すると判断し、所定の閾値よりも小さい場合には画像に低輝度画像信号が存在しないと判断する(ステップS204)。これらステップS203およびステップS204の処理は、高低輝度域判断部4123が行う処理に相当している。
このステップS204の処理が終了したら、その後は図22に示した処理へ復帰する。
なお、ここでは高輝度閾値および低輝度閾値を自動的に設定する例について説明したが、ユーザ入力により手動で設定するようにしても構わない。このときには、図23のステップS201およびステップS202の処理に代えて、高輝度閾値および低輝度閾値の手動入力処理を行うようにすれば良い。
このような実施形態2によれば、上述した実施形態1とほぼ同様の効果を奏すると共に、高輝度信号と低輝度信号との少なくとも一方が存在する場合には、原画像信号に対して区域毎(画素毎または画素領域毎)にスペースバリアントな階調変換処理を行うようにしたために、高輝度域または低輝度域に属する画素または画素領域の階調特性が圧縮されることなく保たれる。また、高輝度信号と低輝度信号との両方が存在しない場合には、スペースインバリアントな階調変換処理のみを行うようにしたために、消費電力を低減して処理を高速化することが可能となる。
さらに、画像信号の高輝度領域に対しては該高輝度領域に対応するスペースバリアントな階調変換処理の結果を実質的に用い、画像信号の低輝度領域に対しては該低輝度領域に対応するスペースバリアントな階調変換処理の結果を実質的に用いるが、高輝度領域および低輝度領域以外の領域に対してはスペースバリアントな階調変換画像とスペースインバリアントな階調変換画像とを合成した結果を用いるようにしたために、高輝度領域および低輝度領域の階調が保たれると同時に、中輝度域の階調が伸張されることになり、階調再現特性を反映した画像を得ることができる。
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。