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JP5087242B2 - ゲル状組成物を用いた後眼部組織への非侵襲性ドラッグデリバリーシステム - Google Patents

ゲル状組成物を用いた後眼部組織への非侵襲性ドラッグデリバリーシステム Download PDF

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Description

本発明は、網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織および硝子体等の後眼部組織への非侵襲性ドラッグデリバリーシステムに関する。
網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織、硝子体等の後眼部組織における疾患には難治性疾患が多く、失明の原因となり得る重篤な症状を示すものも少なくない。代表的な疾患として、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、ぶどう膜炎、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、網膜剥離、サイトメガロウイルス網膜炎、緑内障に伴う視神経障害等が挙げられる。これらはすべて視力の低下および失明の原因となり得る疾患であり、このような後眼部組織の疾患に対して効果的な薬物治療法の開発が望まれている。
後眼部疾患に対して有効な薬物としては、ベタメタゾン、デキサメタゾン等のステロイド剤、ブロモフェナック等の抗炎症剤、キノロン系化合物、エリスロマイシン等の抗菌剤、ガンシクロビル、アシクロビル等の抗ウイルス剤、メトトレキサート、MMP阻害剤等の抗癌剤、エンドスタチン、VEGF阻害剤等の血管新生阻害剤、MK−801、チモロール等の神経保護剤、カテキン、ビタミンE等の抗酸化剤、ビスホスホネート等の骨吸収阻害剤、レチノイン酸及びその誘導体等の視機能維持に関わる薬剤等といった多くの薬物を挙げることができる。しかし、有用な薬物が多く認められているものの、疾患部位である後眼部組織が眼組織の奥に位置し、該部位へ薬物を移行させることが非常に困難であるため、後眼部疾患に対する薬物治療法を開発する上で課題となっていた。
ここで、眼疾患の薬物治療においては、点眼投与による治療がもっとも一般的であり、利便性も優れている。しかし、点眼投与では後眼部組織へ薬物が移行しにくいという問題がある。
そこで、後眼部疾患に対する薬物の投与方法としては、静脈内注射、経口投与といった全身投与が試みられている。しかし、これらの投与方法は、疾患部位である後眼部組織への薬物の移行量が微量であるため、十分な薬物量を後眼部組織へ送達させるには高頻度および高用量の投与が必要となり、後眼部組織の薬物治療という観点からすると効率の点で問題がある。
一方で、硝子体内、テノン嚢下、結膜下への注射およびインプラントといった投与方法も後眼部疾患の薬物治療法に試みられている。例えば、非特許文献1には、硝子体内注射による後眼部組織へのドラッグデリバリーシステムが記載されており、特許文献1および2には、薬物を含有させた徐放性微粒子を結膜下投与することによる後眼部組織へのドラッグデリバリーシステムや薬物を含有させた微粒子をテノン嚢下投与することによる後眼部組織へのドラッグデリバリーシステムが記載されている。また、特許文献3には、後眼部組織へ薬物を移行させるための生体適合インプラントが記載されている。これらの投与方法では、薬物を疾患部位またはその近傍組織に直接的に投与およびインプラントするため、十分な薬物量を疾患部位に移行できるというメリットがある。しかし、その反面、これらは眼組織の侵襲を伴う投与方法および送達技術であるため、投与時において、患者はストレスや痛みを負うこともある。また、これらの投与方法は、患者自身の手で行うことができず、専ら医師の手によりなされる必要があるため、利便性の面においても課題がある。
特開2003−313119号公報 特開2005−097275号公報 特表2004−535886号公報 Journal of ocular pharmacology and therapeutics, (2001) 17/4 393-401
従って、注射やインプラントといった投与方法に伴う投与時の組織侵襲性がないドラッグデリバリーシステムであって、疾患部位へ薬物を効率よく移行できる非侵襲性のドラッグデリバリーシステムの開発が望まれていた。
すなわち、眼局所組織を介した後眼部組織への薬物移行性が優れた非侵襲性投与によるドラッグデリバリーシステムを開発することは重要な課題である。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、薬物と粘膜付着性物質からなるゲル状組成物を眼表面に投与する手段が、直接的な後眼部組織への薬物移行性に優れた非侵襲性ドラッグデリバリーシステムとして非常に有用であることを見出した。
本発明のドラッグデリバリーシステムは、非侵襲性のドラッグデリバリーシステムであるため、医療現場で汎用されている注射やインプラントといった投与方法とは異なり、投与による組織侵襲性がない。また、患者は、注射剤やインプラントのような投与に伴うストレスや痛みを負うことはない。
本発明のドラッグデリバリーシステムで用いられるゲル状組成物は眼表面へ投与するものであり、患者自身での投与が可能であるため、従来、医療現場で汎用されている注射剤やインプラントと比べて利便性の面で優れている。
すなわち、本発明は、
(1)薬物と粘膜付着性物質からなるゲル状組成物を眼表面に投与することを特徴とする後眼部組織への非侵襲性ドラッグデリバリーシステム、
(2)薬物および粘膜付着性物質を含有し、眼表面へ投与するゲル状組成物であって、該粘膜付着性物質を含有することにより後眼部組織への薬物の移行性が向上したゲル状組成物、
(3)後眼部組織への薬物の移行が眼局所組織を介した移行である前記(1)記載の非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたは前記(2)記載のゲル状組成物、
(4)粘膜付着性物質がポリアクリル酸系誘導体、セルロース系誘導体およびそれらの塩から選択される1種または複数の組合せである前記(3)記載の非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたはゲル状組成物、
(5)ポリアクリル酸系誘導体がカルボキシビニルポリマーまたはポリアクリル酸である前記(4)記載の非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたはゲル状組成物、
(6)セルロース系誘導体がヒドロキシプロピルセルロースである前記(4)記載の非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたはゲル状組成物、
(7)薬物が脂溶性化合物である前記(3)記載の非侵襲性ドラッグテリバリーシステムまたはゲル状組成物、
(8)後眼部組織が網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織または硝子体である前記(3)記載の非侵襲性ドラッグテリバリーシステムまたはゲル状組成物、
(9)薬物が網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織または硝子体疾患の治療または予防のための薬物である前記(3)記載の非侵襲性ドラッグテリバリーシステムまたはゲル状組成物、
(10)薬物が抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、抗血栓剤、血管新生抑制剤、視神経保護剤、抗菌剤、抗真菌剤または抗酸化剤である前記(3)記載の非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたはゲル状組成物、
に関する。
本発明において用いられる粘膜付着性物質としては、例えばカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系誘導体およびその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース系誘導体、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース系誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース系誘導体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボキシアルキルセルロース系誘導体およびその塩等といったセルロース系誘導体およびその塩;アルギン酸およびその塩;キトサン、寒天、デキストラン、ゲランガム、キサンタンガム、ペクチン等の多糖類およびその誘導体、これらの組合せ等が挙げられる。好ましい物質としてはカルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸ナトリウムおよびカルボキシビニルポリマーとヒドロキシプロピルセルロースの組合せ(重量比が100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは3:1〜1:3)が挙げられる。
本発明において、粘膜付着性物質の配合量は、ゲル状組成物に使用される該物質の種類によって異なり、また、含有させる薬物の種類、薬物の有効治療濃度などにより適宜選択される。
本発明のドラッグデリバリーシステムは、後眼部組織への直接的な薬物の移行性に優れている。後眼部組織への直接的な薬物の移行とは、後眼部組織への薬物の移行が全身経路によらずに、眼局所組織を介して薬物が後眼部組織に移行することをいう。すなわち、本発明のドラッグデリバリーシステムは、眼局所組織を介した後眼部組織への薬物の移行性が優れている。特に、本発明のドラッグデリバリーシステムは、結膜組織および強膜組織を介した後眼部組織への薬物の移行性が優れている。
本発明のドラッグデリバリーシステムは、網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織または硝子体の疾患の治療または予防のために用いられる。具体的な疾患例としては、種々の原因による炎症、ウイルスや細菌の感染症、網膜脈絡膜の血管新生に起因する疾患、網膜の虚血に起因する疾患、緑内障に起因する視神経障害が挙げられる。さらに具体的に述べると、ぶどう膜炎、サイトメガロウイルス網膜炎、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、増殖性硝子体網膜症、網膜剥離、網膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症等が挙げられる。
本発明のゲル状組成物に含有させる薬物については特に制限は無く、対象疾患に適した薬物を選択することができる。具体的にはベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ハイドロコルチゾン、フルオシノロンアセトニド等のステロイド剤またはそれらの誘導体;プロゲステロンやテストステロン等のホルモン剤またはそれらの誘導体;ブロモフェナック、ジクロフェナック等の抗炎症剤;TNF−α阻害剤、抗TNF−α抗体、PDE−IV阻害剤、ICE阻害剤等のサイトカイン抑制剤;シクロスポリン、タクロリムス等の免疫抑制剤;ガンシクロビル、アシクロビル、インターフェロンβ等の抗ウイルス剤;キノロン系化合物、クラリスロマイシン、エリスロマイシン等の抗菌剤;カプトプリルなどのACE阻害剤;プラバスタチン、シンバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害剤;フルオロウラシル、メトトレキサート、MMP阻害剤等の抗癌剤;エンドスタチン、VEGF阻害剤、抗VEGF抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、PKC阻害剤、接着因子阻害剤、血管静止性ステロイド等の血管新生阻害剤;MK−801、チモロール、クレアチン、タウリン、BDNF等の神経保護剤・神経栄養因子、アセタゾラミド等の炭酸脱水酵素阻害剤、ウロキナーゼ等の血栓溶解剤、循環改善剤、抗真菌剤、カテキン、ビタミンE等の抗酸化剤、ビスホスホネート等の骨吸収阻害剤、レチノイン酸及びその誘導体等の視機能維持に関わる薬剤等が挙げられる。
本発明のゲル状組成物に含有される薬物は、脂溶性化合物であることが好ましい。ここで、脂溶性化合物とは、オクタノール/水分配係数をあらわすLogPが1以上である化合物であって、好ましくはLogPが2〜5である化合物である。LogPは、例えば、汎用されている方法や予測ソフトを用いて求めることができる。
本発明のゲル状組成物の投与量は、薬物の種類、有効治療濃度、薬物の放出期間、症状等に応じて適宜増減すればよく、例えば、薬物の含有量が0.01〜95重量%、好ましくは、0.1〜30重量%のものを1日1〜数回点眼すればよい。
本発明のゲル状組成物は、例えば粘膜付着性物質を含有する基剤に薬物を溶解、あるいは分散させて調製される。ゲル状組成物の基剤は好ましくは水、特に精製水である。ゲル状組成物には、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の等張化剤、リン酸、ホウ酸、トロメタモール等の緩衝剤、塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、エデト酸等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸メチル等の防腐剤、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンヒマシ油等の可溶化剤等を必要に応じて配合することができる。また、ゲル状組成物の具体的な製造例として、粘膜付着性物質としてカルボキシビニルポリマーおよびヒドロキシプロピルセルロースを用いたゲル状組成物等を後述の実施例に示す。なお、実施例で調製したゲル状組成物は、後眼部組織への移行性を簡便かつ高感度に評価する手法として汎用されている方法、すなわち、薬物の代わりに蛍光色素であるフルオレセインおよびフルオレセインナトリウムを用いて評価した。
本発明のドラッグデリバリーシステムに使用するゲル状組成物は眼表面へ投与すればよく、投与時において、特に専門的な技術を必要とせず、患者自身で眼表面へ投与することができる。
本発明のゲル状組成物の投与回数は症状、年齢、基剤等によって適宜選択することができるが、1日1〜数回(例えば、1〜6回)投与すればよい。
後述する試験の項で詳述するが、蛍光色素と粘膜付着性物質であるポリアクリル酸またはカルボキシビニルポリマーとヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含有するゲル状組成物を眼表面へ投与することにより、投与眼と非投与眼の網脈絡膜中に存在する蛍光色素の濃度で明らかな差異が認められる。すなわち、薬物と粘膜付着性物質を含むゲル状組成物を眼表面へ投与することにより、眼局所組織を介した後眼部組織への直接的な薬物の移行を向上させることができる。また、ゲル状組成物に含有される蛍光色素が、脂溶性の蛍光色素である方が、一定時間経過後においても投与眼と非投与眼の網脈絡膜中の蛍光色素の濃度で明確な差異が認められる。すなわち、ゲル状組成物に含有される薬物は脂溶性である方が後眼部組織への薬物の移行性をより向上させることができる。
以下に、本発明のゲル状組成物の調製、後眼部組織中の蛍光色素濃度測定試験ならびに製剤例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
1.試験1
蛍光色素および粘膜付着性物質を含有するゲル状組成物、ならびに、同種の蛍光色素を含有する点眼液を用いて、眼局所組織を介した蛍光色素の後眼部組織への移行性を調べた
1−1.製剤の調製
ヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」という)(0.05g)、カルボキシビニルポリマー(以下、「CVP」という)(0.1g)およびポリソルベート80(0.005g)を50mLの精製水に溶解させた。この水溶液中にフルオレセイン(LogP=3)(0.4g)を徐々に加え、0.8%(W/W)フルオレセイン含有HPC/CVP製剤(ゲル状組成物)を得た。以下、この製剤を被験製剤1とする。なお、HPCは和光純薬製(ヒドロキシプロピルセルロース)を用い、CVPはビーエーエスエフ製(カルボキシビニルポリマー974P)を用いた。
比較例1
フルオレセイン(16mg)を乳鉢に秤量し、0.1%(W/W)ポリソルベート80含有リン酸緩衝生理食塩水2mLを徐々に滴下して懸濁し、0.8%(W/W)フルオレセイン含有懸濁点眼液を得た。以下、この製剤を比較製剤1とする。
1−2.試験方法
実施例1で調製した被験製剤1をラットの片眼(右眼)へ点眼(フルオレセインの投与量:1眼あたり40μg)してから30分後に屠殺し、投与眼および非投与眼の両眼を摘出し、それぞれ網脈絡膜を回収した。回収した網脈絡膜は2眼分を1サンプルとしてこれにメタノール/水(1/1)混合液(250μl)を添加し、ホモジナイズ、遠心分離(13000rpm、10分)を行い、不溶物を除去してから、蛍光強度を測定し(Em:485nm、Ex:530nm)、網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を算出した。フルオレセイン濃度の算出は検量線を用いて行った。検量線は、フルオレセインを溶解したメタノール/水(1/1)混合液を標準溶液とし、これを正常眼の網脈絡膜に添加後、上記と同様の回収操作を行って作成した。
一方で、上述の操作でラットを屠殺する前に採血を行い、得られたサンプルを遠心分離(13000rpm、10分)し、不溶物を除去してから、蛍光強度を測定し(Em:485nm、Ex:530nm)、血漿中のフルオレセイン濃度を算出した。検量線は、フルオレセインを溶解したメタノール/水(1/1)混合液を標準溶液とし、これを血漿に添加後、上記と同様の回収操作を行って作成した。
また、比較製剤1を用いて上述と同様の操作を行い(フルオレセインの投与量:1眼あたり40μg)、投与30分後の網脈絡膜中および血漿中のフルオレセイン濃度を算出した。
1−3.試験結果および考察
図1に、被験製剤1および比較製剤1の投与30分後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示す(例数6眼、3例)。また、図2に、被験製剤1および比較製剤1の投与30分後における血漿中のフルオレセイン濃度を示す(例数6眼、3例)。
図1から明らかなように、網脈絡膜中のフルオレセイン濃度において、被験製剤1の投与眼は非投与眼と比べて明らかに高い値を示したのに対し、比較製剤1の投与眼は非投与眼と比べてやや高い値を示した。また、図2から明らかなように、血漿中のフルオレセイン濃度において、被験製剤1は、比較製剤1と比べて明らかに低い値を示した。よって、本発明のゲル状組成物を用いることにより、眼局所組織を介した網脈絡膜組織への蛍光色素の移行を促進できることが分かった。すなわち、本発明のゲル状組成物を眼表面に投与することにより眼局所組織を介した後眼部組織への薬物の移行を促進できることが示唆された。
2.試験2
粘膜付着性物質を含有するゲル状組成物および粘膜付着性物質を含有しないゲル状組成物を用いて、粘膜付着性物質の有無による蛍光色素の後眼部組織への移行性に対する影響を調べた。
2−1.製剤の調製
比較例2
粘膜付着性物質を含有しないゲル状組成物として、ポリエチレングリコール500000(以下、「PEG500000」という)(1g)およびポリソルベート80(0.005g)を50mLの精製水に溶解させた。この水溶液中にフルオレセイン(LogP=3)(0.4g)を徐々に加え、0.8%(W/W)フルオレセイン含有PEG500000製剤(ゲル状組成物)を得た。以下、この製剤を比較製剤2とする。なお、PEG500000は和光純薬社製(PEG500000)を用いた。
2−2.試験方法
被験製剤1および比較製剤2について「1−2.試験方法」と同様の操作を行い、投与後0.5、1.5時間後の網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を算出した。
2−3.試験結果および考察
図3に、被験製剤1および比較製剤2の投与一定時間(0.5、1.5時間)経過後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示す(例数6眼、3例)。
図3から明らかなように、粘膜付着性物質を含有しない比較製剤2では、投与眼と非投与眼の網脈絡膜中のフルオレセイン濃度にほとんど差異が認められなかった。これに対し、被験製剤1の投与眼は、非投与眼と比べて網脈絡膜中のフルオレセイン濃度において明らかに高い値を示した。よって、ゲル状組成物に含有される粘膜付着性物質が、眼局所組織を介した網脈絡膜組織への蛍光色素の移行を促進する重要な因子であることが分かった。すなわち、網脈絡膜組織といった後眼部組織へ効率よく薬物を移行するには、また、眼局所組織を介した後眼部組織への直接的な薬物の移行性を向上するには、ゲル状組成物に含有される粘膜付着性物質が重要な因子であることが示された。
3.試験3
他の粘膜付着性物質で調製したゲル状組成物を用いて、蛍光色素の後眼部組織への移行性を調べた。
3−1.製剤の調製
粘膜付着性物質としてポリアクリル酸(1g)およびポリソルベート80(0.005g)を50mLの精製水に溶解させた。この水溶液中にフルオレセイン(LogP=3)(0.4g)を徐々に加え、0.8%(W/W)フルオレセイン含有ポリアクリル酸製剤(ゲル状組成物)を得た。以下、この製剤を被験製剤2とする。なお、ポリアクリル酸は日本触媒社製(ポリアクリル酸AS−58)を用いた。
3−2.試験方法
被験製剤2について「1−2.試験方法」と同様の操作を行い、投与後0.5、1.5時間後の網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を算出した。
3−3.試験結果および考察
図4に、被験製剤2の投与一定時間(0.5、1.5時間)経過後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示す(例数4〜6眼、2〜3例)。
図4から明らかなように、被験製剤2の投与眼は、非投与眼と比べて網脈絡膜中のフルオレセイン濃度において明らかに高い値を示した。HPCやCVP以外のポリアクリル酸といった粘膜付着性物質を含有するゲル状組成物であっても、網脈絡膜組織といった後眼部組織へ効率よく薬物を移行でき、また、眼局所組織を介した後眼部組織への直接的な薬物の移行性を向上できることが示された。
4.試験4
脂溶性の蛍光色素であるフルオレセインを含有するゲル状組成物および水溶性の蛍光色素であるフルオレセインナトリウムを含有するゲル状組成物を用いて、眼局所組織を介した後眼部組織への移行性を調べた。
4−1.製剤の調製
HPC(0.05g)、CVP(0.1g)およびポリソルベート80(0.005g)を精製水に溶解させた。この水溶液中に水溶性の蛍光色素としてフルオレセインナトリウム(LogP=−0.5)(0.4g)を徐々に加え、0.8%(W/W)フルオレセインナトリウム含有HPC/CVP製剤(ゲル状組成物)を得た。以下、この製剤を被験製剤3とする。なお、HPCおよびCVPは実施例1と同様のものを用いた。
4−2.試験方法
被験製剤1および3について「1−2.試験方法」と同様の操作を行い(フルオレセインまたはフルオレセインナトリウムの投与量:1眼あたり40μg)、投与後0.5、1.5時間後の網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を算出した。
4−3.試験結果および考察
図5に、被験製剤1および3の投与一定時間(0.5、1.5時間)経過後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示す(例数6眼、3例)。
図5から明らかなように、水溶性の蛍光色素であるフルオレセインナトリウムを含有するゲル状組成物である被験製剤3は、網脈絡膜中のフルオレセイン濃度において、投与0.5時間後では、投与眼は非投与眼に比べて明らかに高い値を示したものの、投与1.5時間後ではほとんど差異を示さなかった。これに対し、脂溶性の蛍光色素であるフルオレセインを含有するゲル状組成物である被験製剤1は、網脈絡膜中のフルオレセイン濃度において、投与0.5時間後および1.5時間後ともに、投与眼は非投与眼に比べて明らかに高い値を示した。すなわち、本発明のゲル状組成物に含有される薬物が脂溶性である方が、本発明の効果である後眼部組織への移行性の向上をより持続できることが示された。
5.製剤例
処方例1 ゲル状組成物 (100g中)
トリアムシノロン 0.8g
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.2g
ポリソルベート80 適量
精製水 適量
図1は、被験製剤1および比較製剤1の投与30分後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示すグラフである。 図2は、被験製剤1および比較製剤1の投与30分後における血漿中のフルオレセイン濃度を示すグラフである。 図3は、被験製剤1および比較製剤2の投与一定時間経過後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示すグラフである。 図4は、被験製剤2の投与一定時間経過後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示すグラフである。 図5は、被験製剤1および3の投与一定時間経過後の投与眼および非投与眼における網脈絡膜中のフルオレセイン濃度を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 薬物および粘膜付着性物質を含有するゲル状組成物を眼表面に投与することを特徴とする後眼部組織への後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグデリバリーシステムであって、
    該薬物が脂溶性化合物であり、
    該粘膜付着性物質がポリアクリル酸系誘導体、セルロース系誘導体およびそれらの塩から選択される1種または複数の組合せであって、該ポリアクリル酸系誘導体がカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸ナトリウムであり、該セルロース系誘導体がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムであり(ただし、該粘膜付着性物質がポリアクリル酸系誘導体の1種のみからなる場合を除く)
    該後眼部組織への薬物の移行が眼局所組織を介した移行である、後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグデリバリーシステム。
  2. 薬物および粘膜付着性物質を含有し、眼表面へ投与するゲル状組成物であって、該粘膜付着性物質を含有することにより後眼部組織への薬物の移行性が向上した後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物であって、
    該薬物が脂溶性化合物であり、
    該粘膜付着性物質がポリアクリル酸系誘導体、セルロース系誘導体およびそれらの塩から選択される1種または複数の組合せであって、該ポリアクリル酸系誘導体がカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸ナトリウムであり、該セルロース系誘導体がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムであり(ただし、該粘膜付着性物質がポリアクリル酸系誘導体の1種のみからなる場合を除く)
    該後眼部組織への薬物の移行が眼局所組織を介した移行である、後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物。
  3. ポリアクリル酸系誘導体がカルボキシビニルポリマーまたはポリアクリル酸である請求項1記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたは請求項2記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物。
  4. セルロース系誘導体がヒドロキシプロピルセルロースである請求項1記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたは請求項2記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物。
  5. 後眼部組織が網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織または硝子体である請求項1記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグテリバリーシステムまたは請求項2記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物。
  6. 薬物が網膜、脈絡膜、強膜、視神経、視神経周囲組織または硝子体疾患の治療または予防のための薬物である請求項1記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグテリバリーシステムまたは請求項2記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物。
  7. 薬物が抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、抗血栓剤、血管新生抑制剤、視神経保護剤、抗菌剤、抗真菌剤または抗酸化剤である請求項1記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のための非侵襲性ドラッグデリバリーシステムまたは請求項2記載の後眼部組織の疾患の治療または予防のためのゲル状組成物。
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