以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
(インクジェット記録装置の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、記録媒体14に直接的に画像を形成する直接描画方式の一形態として、圧胴が構成された圧胴直描方式のインクジェット記録装置である。
また、本装置は、圧胴により枚葉紙(記録媒体)を搬送しながらインクを打滴して画像を記録する枚様式インクジェット記録装置であって、圧胴周面の記録媒体で覆われない非保持位置に開口部と吸引部を一体に設けて、該開口部を介してインク打滴の際に発生するインクミストや、インクジェットヘッドからパージされたインクなどを吸引するように構成されている。なお、上述した圧胴の構造や吸引制御の詳細については後述する。
このインクジェット記録装置10は、記録媒体14を供給する給紙部22と、記録媒体14に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部24と、記録媒体14にインク凝集剤などの処理液を付与する処理液付与部26と、記録媒体14に色インクを付与して画像形成を行う印字部28と、色インクの溶媒を乾燥させる溶媒乾燥部30と、画像を堅牢化する熱圧定着部32と、画像が形成された記録媒体14を搬送して排出する排出部34とから主に構成される。
給紙部22には、枚葉紙の形態の記録媒体14を供給する給紙トレイ36が設けられている。給紙トレイ36から粘着ローラ37によって送り出された記録媒体14は、渡し胴38を介して、グリッパ(不図示)で浸透抑制処理部24の圧胴40の周面に給紙される。
また、本装置は、インクジェットを用いた各種メディアへの良好な画像形成を目的として凝集処理剤を用いている。特に光沢安定ポリマー粒子(Lx)を添加した凝集処理剤を付与乾燥した記録媒体に定着用ポリマー粒子を添加したインクを打滴して画像を形成し、凝集後に加熱して水分を除去しポリマー粒子を溶融して記録媒体に固定する方式が採用されている。
本方式では凝集処理剤やインクの乾燥を添加ポリマー粒子の溶融状態や乾燥温度に配慮して均一に効率良く行うことが望まれる。
(浸透抑制処理部の説明)
浸透抑制処理部24には、圧胴40の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴40の周面に対向する位置に、液体塗布装置42、用紙押さえ44、及び浸透抑制剤乾燥ユニット46がそれぞれ設けられている。
図2は浸透抑制処理部24の構成図である。図2に示すように、液体塗布装置42は、回転する圧胴40に対して、転造などで外周にらせん溝を形成したスパイラルローラ48を押し当て、該スパイラルローラ48を圧胴40の回転方向と逆方向(同図において反時計回り方向)に所定の一定速度で回転駆動することにより、圧胴40のグリッパ(不図示)に保持されて回転移動する記録媒体14の所望領域に対して選択的に浸透抑制剤を付与する装置である。
なお、圧胴40の周面は弾性層41により覆われており、これにより、圧胴40とスパイラルローラ48の間の位置ずれが緩和され、また、記録媒体14の巻き付けが安定する。圧胴40の周面にある弾性層41を硬度20〜80°の弾性体とすることにより、スパイラルローラ48の接触が安定し塗布が均質化する。さらに、圧胴40の周面にある弾性層41の材質をフッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素エラストマー、シリコン系エラストマーのいずれかとすることにより、表面張力(表面エネルギー)が10〜40mN/mに設定でき、撥液性も確保できるので圧胴40の周面のクリーニング性にも優れる。また、用紙の巻付密着性も向上して好ましい。
具体例として、圧胴40を鋳鉄などで効率的に形成し、表面に厚み0.1〜1mmのフッ素ゴム、又はウレタンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素エラストマー(信越化学工業株式会社:SIFEL600シリーズなど)の撥液性の弾性層41を付与すること、が考えられる。なお、弾性層41の材質としては、ゴムの表面にPFAなどを被覆したものでもよい。
図3にスパイラルローラ48の拡大図を示す。スパイラルローラ48は、その外周面にダイスの転造やワイヤの巻き付けなどにより、ほぼその回転方向に沿って溝(窪み)が形成された塗布用ローラであり、記録媒体14の被塗布面の幅寸法と同等以上の長さ(幅寸法)を有する。スパイラルローラ48の溝形状、ピッチa、溝深さb等は、塗布すべき液量(塗布後の液膜の厚さ)に応じて適宜選択される。例えば、本実施形態の液体塗布装置42の場合、ピッチa=0.08〜0.2mm、溝深さb=5〜20μmのスパイラルローラが好適である。
図4はスパイラルローラ48の溝形状を表す概要図である。なお、図4では、溝形状の特徴を分かりやすくするため、溝形状や溝のピッチ等を簡略化して示している。図4に示すように溝形状としては、螺旋状(図4(a))の他、独立溝(図4(b))や左右螺旋(図4(c))、多条螺旋(不図示)などが考えられる。特に、独立溝の場合には被塗布媒体の幅方向への液流れが抑制でき、また、左右螺旋の場合には被塗布媒体(記録媒体14)のシワが抑制できる。なお、左右螺旋の場合の変形例として、1つのスパイラルローラ48を、左螺旋状が外周面に形成されたスパイラルローラと右螺旋状が外周面に形成されたスパイラルローラに分割した例も考えられる。
図5は、スパイラルローラ48の外周面の断面形状を表す概要図である。図5に示すように外周面の断面形状としては、S字状曲面(図5(a))の他、山部を平面にした形状(図5(b))又は谷部を平面にした形状(図5(c))、山部と谷部を平面にした形状(図5(d))も考えられる。特に、山部を平面にすれば耐磨耗性が向上し、また、谷部を平面にすれば溝内に多くの液体が入り込んでローラ外周面に多くの液体を付着させることができる。
かかる構成のスパイラルローラ48に対し浸透抑制剤(第1液)を付与する手段として、図2に示した液体塗布装置42は容器50内に液体噴射部52を備える(図2参照)。この液体噴射部52の噴射部材として、噴射角を制御できる一流体フラットスプレーノズル、或いは加圧式二流体フラットスプレーノズルが適用される。具体的には、例えば、オリフィス径0.2〜0.4mm程度で噴射角60〜100°が実現される一流体フラットスプレーや、これと同等サイズの加圧式二流体フラットスプレーが挙げられる。
図2のように、液体噴射部52は、スパイラルローラ48の下方からスキージブレード60の先端付近に向けて浸透抑制剤の噴射を行う。その際、画像形成領域の幅に合わせた付与幅となる噴射角となるように、噴射圧力が制御される。すなわち、液体噴射部52は、塗布液を供給する幅を制御する供給幅制御手段として、スパイラルローラ48の外周面における浸透抑制剤を供給する幅を制御する。
図6に示したように、フラットスプレーノズルは、噴射角αで流体が噴射されるため、液体噴射部52のノズルボディ54の吐出面と吹き付け面56との距離Lによって、噴射範囲58の実質的な噴射幅Wspが規定される。なお、フラットスプレーノズルは、単数で用いる態様に限らず、複数をスパイラルローラ48の幅方向に並べて用いてもよい。この場合は、搬送方向の他、幅方向の除去制御も可能となる。
図7は液体噴射部52の噴射圧と噴射幅の関係を模式的に示した説明図である。図示のように、液体噴射部52のノズルは、少なくとも2種類の噴射幅(幅方向の噴射範囲)の切り替えが可能である。図7では噴射圧力の強弱によって2種類の噴射幅を実現する例を示しているが、記録媒体14の用紙サイズの種類や画像形成範囲の違いに対応して、3種以上の噴射幅を実現する態様も可能である。記録媒体14の情報は、センサ等によって自動的に取得してもよいし、オペレータによって入力されることにより取得してもよい。
フラットスプレーによる液体の噴射パターンは、図8に示すように、幅方向について液量分布が生じる。また、噴射圧力によっても噴射量(流量)が変化する。しかし、本例の場合、有効画像エリアの幅よりも広い範囲が塗布できるよう、スキージブレード60で余分な液体を除去するため、結果的にスパイラルローラ48に対する液体の付与量を安定に保つことができ、塗布幅を制御した均一な塗布が可能である。
本実施例では、螺旋状の溝が形成されたスパイラルローラ48を用いるので、溝部の凹凸により浸透抑制剤の幅方向への液溢れが低減できる。そのため、幅制御性が一層向上し、コート紙の潤滑効果で幅方向非塗布部に対しても接触摩擦の低減が図れる。
このスパイラルローラ48の一部(図2において下側の部分)に液体噴射部52から浸透抑制剤を噴射することで、スパイラルローラ48の溝内に浸透抑制剤が入り込み、ローラ外周面に浸透抑制剤が付着する(塗布液供給工程)。
図2に示すとおり、容器50内には、スパイラルローラ48の外周面から余剰液を掻き落とす手段としてのスキージ部材であるスキージブレード60が立設されている。ここでいう「余剰液」は、スパイラルローラ48の外周面に付着した液体のうち、スパイラルローラ48に形成された溝の外に付着した分である。このスキージブレード60は、その先端部がスパイラルローラ48に接するように配設され、該先端部はスパイラルローラ48の周面を押す方向に付勢されている。当該付勢力はスキージブレード60自体の弾性変形によるものであってもよいし、バネその他の付勢部材(図示せず)を用いて外部から付与するものでもよい。
こうして浸透抑制剤を付与したスパイラルローラ48を回転させながら、スキージブレード60で浸透抑制剤の余剰液を掻き落とすことにより、溝内に保持された液体のみがスキージブレード60を抜けてくる(スキージ工程)。
また、本実施形態では、記録媒体14の搬送方向(以下「媒体搬送方向」という場合がある。)について浸透抑制剤の塗布範囲を制御する観点から、液体塗布装置42において、スパイラルローラ48の回転方向に対して、スキージブレード60の下流側に、ブレード部材であるメインブレード62を配置し、スパイラルローラ48外周面に対し当接離間するように制御する。
メインブレード62をスパイラルローラ48の外周面の一部範囲に当接させることにより、スパイラルローラ48の溝内の浸透抑制剤を含め外周面に塗布された液体を除去することができる(ブレード当接工程)。
メインブレード62によるスパイラルローラ48上からの液体の除去範囲を制御することにより、記録媒体14への浸透抑制剤の塗布範囲(媒体搬送方向についての領域)を制御できる(ブレード当接離間制御工程)。
具体的には、記録媒体14上の非画像形成部に相当する領域に対してメインブレード62をスパイラルローラ48の外周面に当接させ、記録媒体14上の画像形成部に相当する領域に対してメインブレード62をスパイラルローラ48の外周面から離間させる。このように、記録媒体14上の非画像形成部への処理液の塗布は行われず、選択的に画像形成部のみについて処理液を塗布することができる(図9(a)参照)。
図9(a)は記録媒体14の搬送方向について塗布範囲(塗布面積)を制御したものである。図9(b)は記録媒体14の幅方向及び搬送方向について塗布範囲を制御したものである。
記録媒体14は、画像が形成される有効画像部68の領域よりも大きい幅を有し、有効画像部68よりも広い領域(符号70で示す塗布部)に対して浸透抑制剤が塗布される。
図9(c)は、メインブレード62の離接制御のタイミングを表している。図9(d)は、スパイラルローラ48への塗布液(処理液)の付与制御を表している。
図9(d)が示すとおり、スパイラルローラ48自体には塗布液を一定に付与し続けており、(c)に示すメインブレード62の離接制御によって、搬送方向についての塗布範囲が制御される(図9(a)、(b)参照)。
また、記録媒体14の用紙サイズの変更に対応して、液体噴射部52の噴射圧を制御し、幅方向の塗布範囲を変更する。
かかる態様によれば、不要な領域への浸透抑制剤の塗布を抑制でき、枚葉紙など非連続的に用紙を供給する場合でも圧胴40への浸透抑制剤の付着が防止できる。このため、装置の動作が安定し、経時での汚れや腐食などの信頼性も向上する。なお、図2のように、容器50の底部には液体排出口64が形成されており、この液体排出口64は図示せぬ排出弁を介して回収タンクに接続されている。回収された液は塗布用の液として再利用することが可能である。
図10は、液体塗布装置42を構成するスパイラルローラ48の移動機構(当接/離間機構)や回転駆動手段、スキージブレード60、メインブレード62の回転機構などの概要を示す斜視図である。
図10に示すように、スパイラルローラ48の回転駆動手段の一例として、モータ72とタイミングベルト74等の巻き掛け伝動手段との組み合わせによる形態がある。ただし、この構成に限らず、インバータモータによるダイレクト駆動(軸直結)や、各種モータと減速機(ギア等)との組み合わせなどであってもよい。なお、スパイラルローラ48の回動軸には軸受け76が設けられている。
スパイラルローラ48は、プッシュラッチ78などの移動機構(当接/離間機構)によって、前記の図2の上下方向に移動自在に支持されている。そのため、圧胴40に対してスパイラルローラ48を押し当てた状態(図2に示した当接(ニップ)状態)と、記録媒体14からスパイラルローラを離間(退避)させた状態とに切り替える制御を行うことができる。
図10に示すように、メインブレード62は、カムモータ80により偏芯カム82を回転させて回動軸82aを中心にして回転させることができる。これにより、スパイラルローラ48に対し押し当てて当接させた状態と、スパイラルローラ48から離間させた状態とに切り替える制御を行うことができる。
また、図2の破線で示したように、メインブレード62の付勢力を大きくして、スパイラルローラ48を圧胴40から離間させることも考えられる。これにより、待機中などの非塗布時や液体クリーニング停止時におけるスパイラルローラ48と被塗布媒体の間の摩擦を回避でき、また、圧胴40に設けられたグリッパ(不図示)の段差部分とスパイラルローラ48の接触も回避させることができる。なお、スパイラルローラ48を圧胴40から離間させてプッシュラッチ78(図10参照)により固定支持をしておけば、さらに装置の信頼性が向上する。
上記構成からなる液体塗布装置42によれば、液体噴射部52によって幅方向の処理液付与幅が制御され、メインブレード62によって、用紙搬送方向(スパイラルローラ48における円周方向)の液体与範囲が制御される。
また、図2で説明した形態に代えて、図11に示すように、メインブレード62の付勢力を切り替え可能とし、スキージブレード60を用いることなくメインブレード62のみ(1枚のブレードのみ)で塗布制御を行う液体塗布装置42´の形態も可能である。
その他、図示しないが、液体噴射部52を備えず、スパイラルローラ48を容器50内に導入された浸透抑制剤に浸すことで、スパイラルローラ48の外周面に浸透抑制剤を付着させてもよい。
また、表面に塗工層が施された記録媒体14、又は、潤滑成分を含む液体が付与された記録媒体14を使用すれば、非塗布部でもスパイラルローラ48と記録媒体14との接触摩擦の低減が図れ、一段と安定で信頼性の高い塗布ができる。
本実施形態で用いる浸透抑制剤としては、表1に記載したLX−1やLX−2などのポリマー粒子を水や溶剤に添加したラテックス溶液が好適に用いられ、調液の一例を後述の『<各液の調整>(1)浸透抑制剤の調整』に示す。
上記[表1]中、「Tg」は、液中に添加されているポリマーのガラス転移点、「MFT」は、該ポリマーの最低造膜温度(Minimum film forming temperature)、「Tm」は、該ポリマーの融点である。
もちろん、浸透抑制剤は、ラテックス溶液に限定されるものではなく、例えば、平板粒子(雲母等)や撥水剤(フッ素コーティング剤)などを適用することも可能である。
浸透抑制剤を塗布する液体塗布装置42(42’)の下流側に配置された用紙押さえ44(図2,図11参照)は、圧胴40の周面に給紙された記録媒体14の両端や後端を押さえながら圧胴40の回転方向に送り出すためのローラである。
浸透抑制剤乾燥ユニット46には、50〜130℃の範囲で温度制御可能なヒータと、5〜50m/sの風速で下流に向かって吹き出すファンが設けられる。塗布胴である圧胴40に保持された記録媒体14は、浸透抑制剤乾燥ユニット46に対向する位置から下流を通過する際、ヒータによって50〜130℃に熱せられた熱風がファンにより記録媒体14に当てられ、記録媒体14を加熱して浸透抑制剤をプレ乾燥する。
浸透抑制処理部24に続いて処理液付与部26が設けられている。浸透抑制処理部24の圧胴40と処理液付与部26の圧胴86との間には、これらに対接するようにして渡し胴84が設けられている。これにより、浸透抑制処理部24の圧胴40に保持された記録媒体14は、浸透抑制処理とプレ乾燥が行われた後に、渡し胴84を介して、グリッパ(図1中不図示、図12の符号91又は92)で処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。
(渡し胴の構造)
ここで、渡し胴84の構造例について説明する。
図12は渡し胴84の構造例の詳細を示す断面図であり、図12には、先の記録媒体(図12の左側)が渡し胴84から圧胴86に受け渡され、該記録媒体の先端部を圧胴86のグリッパ87が挟持して搬送し、さらに、次の記録媒体(図12の右側)が圧胴40から渡し胴84に受け渡され、次の記録媒体の先端部を渡し胴84のグリッパ91が挟持して搬送する状態を図示する。
図12に示したように、渡し胴84の外周部には記録媒体14(以下「用紙」という場合がある。)を挟み込んで(咥えて)保持・搬送するためのグリッパ91、92が2ケ所に対称に配置されている。このグリッパ91、92を備えた渡し胴84の内部には、記録媒体14を所定の温度に加熱するためのヒータ110が固定設置され、ヒータ110により放射される熱は渡し胴84の周面を介して記録媒体14に伝搬される。また、渡し胴84の周面の中心軸をはさんで対称となる位置には2カ所のグリッパ支持部101,102が設けられている。即ち、図12において、グリッパ支持部101とグリッパ支持部102とのなす角度は180度となっている。
渡し胴84に内蔵されるヒータ110は、渡し胴84の中心部にその軸に沿って延在する形態で配置される。なお、ヒータ110として、例えば、ハロゲンヒータ、赤外線(IR)ヒータを用いることができる。
上記構成の渡し胴84と対向する位置には、記録媒体14を静電吸引するとともに、ヒータ110により加熱された記録媒体14近傍の空気(加熱空気)を排出するための開口(排気穴)152が幅方向や搬送方向に沿って多数配置された搬送ガイド150が設けられている。この搬送ガイド150は、記録媒体14の搬送路を構成する所定位置に固定設置されており、排気穴152を介して搬送ガイド150の内部に流れ込んだ加熱空気は当該搬送ガイド150の排気接続口154から排出される。
また、搬送ガイド150には、電磁誘導式の加熱手段156が設けられており(図1参照)、当該搬送ガイド150に接触して搬送される記録媒体14は50〜90℃に加熱される。
グリッパ91,92で渡し胴84に受け渡された記録媒体14は搬送ガイド150に静電吸引されながら、渡し胴84に内蔵されたヒータ110の輻射熱で画像記録面が加熱乾燥される。このとき、記録媒体14(用紙)は間隔をもって搬送されているので、記録媒体14の乾燥処理により加熱された記録媒体14近傍の空気は、用紙の後端と次に搬送される用紙の先端との隙間から搬送ガイド150の排気穴152を通して排気される。このため、加熱乾燥してもシワやベコなどの不具合を生じにくく排気穴の痕も残りにくく、装置の蒸気汚染も防止できる。
図12で説明した構成によれば、渡し胴84のグリッパ91又は92に保持された用紙は搬送ガイド150に静電吸引されているので、記録面(浸透抑制剤が付与された面)が渡し胴84の部材に接触せず、また、加熱乾燥してもシワやベコなどの不具合を生じにくく排気孔の痕も残りにくい。
また、搬送ガイド150の排気幅(排気穴152が設けられている幅)を用紙幅より広くした構成により、加熱された空気を幅方向にも速やかに移動させることが可能であり、用紙の乾燥や加熱空気の排出回収が一層安定化する
なお、搬送ガイド150の記録媒体吸着面の設けられた排気穴152は、直径をφ0.5〜3mm、開口の数をピッチで穴径の2〜5倍の千鳥配置にするのが好ましい。また、開口152の径を変えたり、開口152の数を増したりすることも可能である。例えば、搬送方向の上流ほど開口152直径を大きくするとともに、幅方向の中央部の開口径を端部に比べて大きくした開口152のパターン有することも可能である。かかるパターンを適用すると、用紙後端が搬送ガイドから抜け出した後の加熱空気の排気効率がより向上する。また、幅方向の中央部の吸着力を強くすることにより、用紙吸着性が向上する。
なお、搬送ガイド150に設けた図示せぬ超音波振動式の加振手段も制御すれば、一層応答性に優れた制御も可能で乾燥性が一段と安定する。
(渡し胴センサの説明)
次に、渡し胴84に設けられるセンサについて説明する。以下の説明では、浸透抑制処理部24の下流側に位置する渡し胴84について説明するが、同様の構成を他の渡し胴に適用することも可能である。
図12に示すように、渡し胴84のグリッパ支持部101,102には、センサユニット182が内蔵されている。センサユニット182は、記録媒体14に付与された液体(凝集処理液)温度を検出する赤外線温度計、又は水分量を検出する水分計(不図示)を含んで構成され、センサユニット182による温度検出結果若しくは水分量検出結果に応じて渡し胴84に内蔵されるヒータ110の放射熱量や、搬送ガイド150の加熱手段156の放射熱量が制御される。
例えば、センサユニット182により用紙先端付近の同一箇所の温度若しくは水分の時間変化(好ましくは立ち上がり特性)を測定し、この測定結果に基づいてヒータ110、加熱手段156を制御することにより、渡し胴84で乾燥中の用紙に対しても加熱量の補正ができるので、用紙ごとの紙厚や吸湿度合い、浸透抑制剤付与量や後述する処理液付与量などのバラツキに対しても安定した乾燥が可能となる。
図13は、センサユニット182によるモニタ位置183の例を示す図である。ここでは面付け(8ページ)の印刷を例示するが、多面取りの印刷形態には限定されず、1枚の用紙に1ページ分の印刷を行うものであってもよい。
図13の上方向が印刷方向(用紙搬送方向)であり、用紙サイズL×Wのうち、先端部余白M1(グリッパ91,92による咥えしろとなる部分)、後端部余白M2、左余白M3、右余白M4をとった内側が印刷有効領域186である。なお、この印刷有効領域186の全面に浸透抑制剤が付与される。そして、この印刷有効領域の内側に、製品仕上げ寸法α×βとその天地左右に所定量の断ちしろγ、δを確保した画像記録が行われる。
図13において、用紙の幅方向の中央付近に符号183を付して斜線ハッチで示した部分がセンサユニット182のモニタ位置183である。図12で説明したように、渡し胴84の各グリッパ91,92について同じ場所にセンサユニット182を配置することにより、当該渡し胴84に記録媒体14が受け渡たされたときから次の圧胴へ受け渡すまでの間における温度を連続的に検出できる。温度の時間変化を記録することにより、渡し胴84と搬送ガイド150で記録媒体14の乾燥を始めてからの表面温度の時間変化(立ち上がりカーブ)を取得できる。
例えば、搬送ガイド150による加熱と渡し胴84による加熱で検出直後から温度が急激に上昇し、湿り空気層が形成される。その後、蒸発が続くときに、ある平衡状態になり、水分などの溶媒が減ってくるとまた温度が上昇する。
浸透抑制剤や後述する処理液の付与量は1〜10μmの液膜厚なので、かかる温度変化が短時間で起こる。図12に図示する位置に放射温度センサ(センサユニット182)を設けることにより、グリッパ91又は92が用紙を咥えたときから、すぐに温度の立ち上がりに入り、この温度変化の勾配を見てヒータ110や搬送ガイド150の加熱手段156の加熱量を制御する。
加熱が強すぎる場合には、水などの溶媒蒸発前に添加ポリマーの成膜が始まるので乾燥不良になりやすい一方、加熱が弱すぎる場合には、ポリマーが成膜するが、水などの溶媒の乾燥に時間がかかりすぎるため、搬送ガイド150の通過時間内で乾燥しきれず、記録媒体14に水などの溶媒が残り、インクによる描画性や定着性が低下するという問題がある。
かかる問題が生じないように、本実施形態では、表面温度の時間変化を計測して適切に加熱量を制御する。即ち、センサユニット182によって温度や水などの溶媒の時間変化(好ましくは、立ち上がり特性)を測定して、強い加熱を最適な時間だけ行うことができ、乾燥の立ち上がりが速く、ポリマー粒子のMFTに適した温度に調整できる。このため、溶融状態や成膜欠陥(空隙率)、溶媒の乾燥量や浸透量のバラツキが低減し、画像品質や定着品質の安定化も可能となる。搬送ガイド150に設けた超音波振動式の加振手段(不図示)も制御すれば、一層応答性に優れた制御も可能で乾燥性が一段と安定する。
(処理液付与部26の説明)
次に、渡し胴84の後段に配置される処理液付与部26(図1参照)について説明する。
処理液付与部26には、圧胴86の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴86の周面に対向する位置に、処理液ヘッド202、処理液乾燥ユニット204が設けられている。
処理液ヘッド202は、圧胴86に保持される記録媒体14に対して処理液を打滴するものであり、印字部28に配置される各インクヘッド210Y,210M,210C,210Kと同様の構成が適用されるが、処理液(凝集処理剤)の粘度や表面張力、pH(水素イオン濃度)などに応じて、ノズルの形状や表面処理、駆動波形などを調整してもよい。なお、処理液ヘッド202に代わり、図2〜図11を用いて説明した浸透抑制処理部24と同様の構成を適用してもよい。
この場合は、処理液付与部26において記録媒体14を保持搬送する圧胴86は、記録媒体14の先端部を保持するグリッパ87(図12参照)が外周面に対して段差を有して配置されているため、処理液付与部26のスパイラルローラ48(図2参照)は、当該グリッパ87の部分で対応する圧胴の外周面から離間して段差を回避するように構成される。なお、図12に示すグリッパ87の配置及びローラの離間構造は、記録媒体を搬送する他の圧胴40,306,326(図1参照)についても適用されている。一方、印字部28の圧胴216については、ヘッド210K,210C,210M,210Yと記録媒体とを近接させる必要があるので、グリッパ87を外周面から突出させないような構造が適用される。
処理液乾燥ユニット204については、上述した浸透抑制処理部24の浸透抑制剤乾燥ユニット46と同様の構成が適用される。処理液乾燥ユニット204には、50〜130℃の範囲で温度制御可能なヒータ(不図示)と、5〜50m/sの風速で下流に向かって吹出すファン(不図示)が設けられる。処理液付与部26の圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液乾燥ユニット204に対向する位置から下流を通過する際、ヒータによって50〜130℃に熱せられた熱風がファンにより記録媒体14に当てられ、記録媒体14を加熱して処理液を乾燥する。
本例で用いられる処理液は、後段の印字部28に配置される各インクヘッド210K,210C,210M,210Yから記録媒体14に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液が好ましい。具体的には、後述の表2に記載の処理液や、2−ピロリドン−5−カルボン酸、リン酸、コハク酸、クエン酸などの酸を添加した処理液が考えられる。
なお、グリセリンなどの高沸点溶媒や表1に記載したLX−1やLX−2などのポリマー粒子などを少量添加して処理液の浸透を抑制することで、前述の浸透抑制層を不要にするも可能である。そのため、このような浸透抑制効果を有する処理液を液体塗布装置42で塗布することとすれば、処理液付与部26の圧胴86、処理液塗布装置202、及び処理液乾燥ユニット204などが不要となる。
処理液付与部26に続いて印字部28が設けられている。処理液付与部26の圧胴86と印字部28の圧胴216との間には、これらに対接するようにして渡し胴214が設けられている。これにより、処理液付与部26の圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液が付与されて凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴214を介して、グリッパ(不図示)で印字部28の圧胴216に受け渡される。
なお、渡し胴214の周面に対向する位置に、前記の渡し胴84と同様に、搬送ガイド150が設けられている。そして、渡し胴214に内蔵されたヒータ(不図示)から放射される熱(例えば、50〜130℃)と、50〜90℃に温調した静電吸引式の搬送ガイド150によって描画面を非接触搬送しながら、描画面を40〜60℃の範囲で加熱乾燥し、記録媒体14上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)を形成する。ここでいう「固体状又は半固溶状の凝集処理剤層」とは、[数1]に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
渡し胴214の構成は、既述した浸透抑制処理部24の渡し胴84と同様の構成であるため、その説明は省略する。
(印字部28の説明)
印字部28には、30〜50℃に温調した圧胴216の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴216の周面に対向する位置に、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクにそれぞれ対応したインクヘッド210K,210C,210M,210Yが設けられている。
各インクヘッド210K,210C,210M,210Yは、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。各インクヘッド210K,210C,210M,210Yは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴216に真空吸着した状態で保持された記録媒体14に向かって吐出する。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示するが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
〔圧胴の説明〕
図14〜図22を用いて、印字部28の圧胴216について詳細に説明する。
<第1例>
図14は、圧胴216の構造例(第1例)を示す断面図である。同図に示すように、圧胴216は、インクジェットヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面に対向する位置に設けられ、周面に記録媒体14を保持して回転し、記録媒体14を周面に沿って搬送する。
圧胴216の周面の回転軸をはさんで反対側の位置のそれぞれには、記録媒体14の先端部を挟持するグリッパ500,502が設けられ、さらに、周面に設けられる2つの記録媒体保持位置(図14中不図示、図15に符号507で図示)のそれぞれには、記録媒体14に吸引圧力を付与する多数の吸引穴(図14中不図示、図15に符号508で図示)が設けられている。
かかる構造によって、記録媒体14は先端部をグリッパ500,502により挟持されるとともに、画像記録面の裏側面から圧胴216の周面に吸着保持される。一方、圧胴216をはさんでヘッド210K,210C,210M,210Yと反対側には、圧胴216の近接位置に遮蔽板503が設けられ、記録媒体14を渡し胴304(図1参照)に受け渡した後に記録媒体を保持していない記録媒体保持位置が開放状態になるために生じる吸引圧力の低下を抑制している。
また、圧胴216の周面に設けられる2ヶ所の記録媒体保持位置のうち一方には、記録媒体搬送方向上流側に開口部504が設けられている。さらに、開口部504は圧胴216の内部の吸引流路506と連通し、吸引流路506は圧胴216の外部に設けられた吸引ポンプ(図14中不図示、図21に符号592で図示)と接続されている。
記録媒体14に後続する位置に開口部504と吸引流路506とを一体に設け、少なくとも各ヘッド210K,210C,210M,210Yの打滴領域において、該吸引ポンプを動作させて開口部504及び吸引流路506の吸引を行うことで、画像記録中のインク打滴により発生したミストや、記録媒体14の搬送等により発生したちりやほこりが、開口部504から圧胴216の内部に回収される。
また、画像記録後において、各ヘッド210K,210C,210M,210Yの直下の位置に開口部504が位置するタイミングで、開口部504に向けてパージを行うことができ、圧胴216の1回転に1度、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのパージを行うことで、各ヘッド210K,210C,210M,210Yの吐出性能が維持される。
さらに、開口部504にパージされたインクは、吸引流路506を介して圧胴216の内部に確実に収容されるので、圧胴216の回転による遠心力が作用しても、一旦回収されたインク等が圧胴216の外部へ再飛散することが防止される。
図14には、Kヘッド210Kが開口部504へのパージを行うことができる状態を図示している。すなわち、Kヘッド210Kによる記録媒体14への画像記録の終了直後(Kヘッド210Kによる画像記録終了後、Kヘッド210Kによる次の画像記録が開始される前)にパージを実行することで、Kヘッド210Kの所定の吐出性能が維持される。
図15には、圧胴216の周面の展開図を示す。同図に示すように、開口部504の平面形状は、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出幅(記録媒体搬送方向と直交する方向におけるインク吐出領域の長さ)に対応しており、記録媒体の搬送方向には打滴制御で10ライン程度のパージが可能に設定されている。また、開口部504はインク吐出領域(ノズルの配置)に対応して設定することも可能であり、この場合はヘッド210K,210C,210M,210Yのうち1つのヘッドのインク吐出領域の形状に合わせて開口部504の圧胴216の周面における形状が決められる。なお、「インク吐出領域」とは、少なくともインクを打滴するノズル(後述する図23に符号281で図示)が設けられるノズル配設領域を含んでいる。
かかる構成により、各ヘッド210K,210C,210M,210Yについて、すべてのノズルから同時にパージを行う場合にも、パージにより打滴されたインクを開口部504から回収することができる。これらの構成により、連続プリント中でも圧胴216の1回転に1度、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのパージが可能となり、1つのバッチ処理が終了し、次のバッチ処理との間の期間でプリント待ちが必要な場合にもヘッド210K,210C,210M,210Yのパージを行うことで吐出を安定に保つことができる。
なお、圧胴216の軸方向に開口部504を、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出幅やインク吐出領域の一部の形状に対応する複数の小さな開口部に分割し、該複数の小さな開口部を所定のパターン(例えば、千鳥配置)により配置して、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出幅やインク吐出面の全体の形状に対応してもよい。開口部504を複数に分割する場合には、各開口部の配置パターンに対応して各ヘッド210K,210C,210M,210Yから選択的にパージを行うように、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのパージ(打滴)が制御される。
例えば、後述する図24に示すヘッドのように、複数のヘッドモジュール280’をつなぎ合わせた構造を有する場合には、打滴制御によりパージをライン状に行うほか、各ヘッドモジュール280’のインク吐出領域の形状に合わせて開口部504を分割するとともに分割された開口部504を配置し、ヘッドモジュール280’ごとにパージを行うように打滴制御をしてもよい。
なお、圧胴216の周囲に設けられる開口部504へのパージと、記録媒体14へのパージを併用してもよい。連続プリント中は記録媒体14に優先的にパージし、パージ回数の不足分やインク吐出幅と用紙幅の差分を開口部504にパージすれば、インク回収負荷を低減できる。
<第2例>
次に、上述した圧胴の他の構造例(第2例)について説明する。図16は、第2例に係る圧胴216’の構造を示す断面図である。なお、図16中、先に説明した図と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図16に示すように、圧胴216’は、周面に設けられる2ヶ所の記録媒体保持部のそれぞれに開口部504A,504Bが設けられ、各記録媒体保持位置(図17に符号507で図示)に後続して、1回転について2回(圧胴216’の半回転ごとに)、ヘッド210K,210C,210M,210Yのパージを行うことができる。
また、圧胴216’の内部の吸引流路506には、ヘッド210K,210C,210M,210Y側が開口となる半円筒形状であり、圧胴216’の軸方向にヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出幅に対応する長さを有する吸引ガイド510が設けられている。また、吸引ガイド510の開口角度は、ヘッド210K,210C,210M,210Yの吐出領域の角度に対応している。
吸引ガイド510は、吸引流路506内の所定位置(図16では圧胴216’の回転軸上に設けられた軸方向に沿う吸引流路と開口部504A,504Bから回転軸に向かう吸引流路が接続される位置)に固定され、ヘッド210K,210C,210M,210Yの直下の開口部504Bから吸引されるインク受けとして機能するとともに、ヘッド210K,210C,210M,210Yの反対側の開口部504Aからの吸引を妨げる遮断部材としても機能している。
吸引ガイド510は、非浸透性を有するとともに、吸引圧力に耐えうる剛性(強度)を有する材料が好適に用いられ、例えば、撥液処理を施した金属、樹脂などが適用される。
このような吸引ガイド510を備えることで、上側の開口部504Bから回収されたインクによる圧胴216’の内部の汚染を防止するとともに、下側の開口部504Aと連通する吸引流路を遮断して、上側の開口部504Bの吸引圧力の低下が抑制される。また、開口部504A,504Bのそれぞれから連通する吸引流路は、圧胴216’の内部を対称構造で連結するので、圧胴216’の剛性や精度が向上する。
図17には、開口部504A,504Bの配置の一例として、開口部504A,504Bが千鳥配置された態様を示す。同図に示す配置パターンにおいて、開口部504A−1,504A−2,504A−3は、所定の配置ピッチで圧胴216’の軸方向に一列に並べられ、開口部504B−1,504B−2もまた、所定の配置ピッチで圧胴216’の軸方向に一列に並べられている。また、開口部504A−1,504A−2,504A−3と、開口部504B−1,504−2は、互いに補間する配置関係を有している。
このように、開口部504A(504A−1,504A−2,504A−3)と、開口部504B(504B−1,504−2)を千鳥配置し、開口部504A及び開口部504Bを合わせて、ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出幅やインク吐出領域の全体の形状に対応している。
かかる態様では、開口部504A,504Bの形状に対応して、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのパージが2分割で選択的に行われ、圧胴216’の1回転で各ヘッド210K,210C,210M,210Yのすべてのノズルについてパージが行われる。
また、圧胴216’の軸方向について、開口部504A−1の図17における右側端部と開口部504A−2の図17における左側端部との間の間隔よりも、開口部504B−1の長さは長くなっている。このように、開口部504Aと開口部504Bの端部をオーバーラップさせることで、各ヘッド210K,210C,210M,210Yに打滴されたインクを確実に開口部504A,504Bから回収することができる。
なお、記録媒体保持位置507を3ヶ所以上供える態様も可能である。例えば、開口部504を3ヶ所備える場合には、各開口部504は圧胴216’の円周を3等分した位置に配置され、ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出幅やインク吐出領域の全域に対応するように、各開口部504を配置すればよい。
このようにして、圧胴216’の周面に設けられる開口部504A(504B)を回転方向及び軸方向に分散させることで、圧胴216’の強度を高めることができる。
<第3例>
次に、上述した圧胴のさらに他の構造例(第3例)について説明する。図18(a)は、第3例に係る圧胴216”の断面図である。同図に示す圧胴216”は、開口部504A,504Bの内部に吸引ユニット540が収容されている。また、吸引ガイドと兼用されるユニットスライド軸542を移動させることで、吸引ユニット540を各ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面のインク吐出領域に対応する領域に密着させることが可能となっている。
なお、吸引ユニット540は、圧胴216”の軸方向に設けられる複数の開口部504A,504Bのそれぞれに設けられている。各ヘッド210K,210C,210M,210Yが記録媒体14の全幅に対応する長さを有するラインヘッドである場合には、ヘッドの長手方向に対して、ヘッド210K,210C,210M,210Yの全幅よりも短い吸引ユニット540を複数設けてヘッド210K,210C,210M,210Yの全幅に対応すると、吸引ユニット540とヘッド210K,210C,210M,210Yとの密着性が向上する。
図18(b)には、吸引ユニット540の詳細構造を図示する。同図に示すように、吸引ユニット540は、ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面に密着させて、ノズルの吸引を行うキャップ544と、インク吐出面のワイピングを行うワイパ546と、を備え、ゴムなどの弾性体で形成されたキャップ544及びワイパ546が樹脂などの硬質体のベース548に支持され、これらが一体に構成されている。
また、キャップ544及びワイパ546のベース548には吸引流路550と接続される接続流路552が形成されている。
図19には、吸引ユニット540(キャップ544)をKヘッド210Kのインク吐出面に当接させた状態を図示する。ユニットスライド軸542を上下方向に移動させることで、吸引ユニット540を開口部504A,504Bの内部の収容位置(図18(a)参照)と、ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面に密着させるキャッピング位置との間を移動可能に構成されている。
図20は、圧胴216”の中心軸を含む切断面による断面図である。同図における符号562は、圧胴216”を回転自在に支持する軸受けである。圧胴216”を回転駆動させる手段として、圧胴216”の周面の適宜位置(本例では圧胴216”の端部周面)にギア564が形成され、圧胴216”駆動用モータ566と該モータの動力をギア564に伝達する駆動ギア568が設けられている。また、圧胴216”は、軸受572により吸引流路506に対して回転自在に支持されている。なお、動力伝達手段としては、歯車伝動機構に限らず、ベルト伝動機構などであってもよい。
また、ユニットスライド軸542を下方向に付勢する付勢部材(例えば、引張りバネ)580と、ユニットスライド軸542を上方向に移動させるための駆動手段として機能する偏芯カムが連結されたモータ581が設けられている。かかる構成により、モータ581が回転するとユニットスライド軸542は偏芯カムによって上方向に移動し、さらにモータ581が回転すると付勢部材580の付勢力とユニットスライド軸542の自重よって、ユニットスライド軸542は下方向に移動する。
即ち、ヘッド210K,210C,210M,210Yをキャッピングする場合には、モータ581を駆動して偏芯カムを回転させることでユニットスライド軸542を上方向に移動させ、吸引ユニット540を開口部504A,504Bに収容するときには、さらにモータ581を駆動して偏芯カムを回転させることで、ユニットスライド軸542を下方向に移動させる。また、インク吐出面のワイピングを行う場合には、キャップ544がインク吐出面から離間し、ワイパ546がインク吐出面に接する位置までモータ581を駆動して偏芯カムを回転させてから、圧胴216”を駆動する。
圧胴216”の軸方向の端部には、記録媒体を吸引するための吸引流路と連通し、ポンプなどの吸引装置が接続される接続部584と、キャップ544を吸引するための吸引流路(図18(b)参照)と連通する接続部582が設けられている。図20には、矢印線でキャップ544を吸引するエアの流れを図示する。
例えば、画像記録のインターバル期間や段取り換えの期間など、記録媒体14を吸引していない期間には、記録媒体14の吸引用の吸引装置を開口部504A,504Bの吸引装置と併用すると、吸引圧力をより高くすることができ好ましい。このような吸引流路の切換構造を模式的に図示したブロック図を図21に示す。
同図に示すように、圧胴216”の記録媒体用の吸引流路(不図示)と連通している接続部582には、バッファタンク588を介して記録媒体用吸引装置(ポンプ)590が接続され、また、キャップ544を吸引するための吸引流路と連通する接続部584にはバッファタンク589を介してキャップ用吸引装置(ポンプ)592が接続されている。
記録媒体用ポンプ590(バッファタンク588)と接続部582との間に切換弁594を備え、切換弁594を介してキャップ544と連通する接続部584’は記録媒体用ポンプ590が接続される。かかる流路構造では、切換弁594を切換制御することにより記録媒体用ポンプ590を併用してキャップ544の吸引を行うことが可能となる。
例えば、1つのバッチ処理が終了し、次のバッチ処理との間でインクジェットヘッドのメンテナンスを行うときなど、記録媒体14が圧胴216”に保持されていないときには、記録媒体用ポンプ590を接続部584’に接続させるように切換弁594が制御されるが、圧胴216”の記録媒体14の搬送経路上に記録媒体14の有無を検出するセンサを備え、該検出信号に基づき記録媒体14の有無を判断してもよい。
記録媒体用ポンプ590を併用することで、キャップ544を用いた高速でかつ高圧による好ましいノズル吸引が行われる。
図22には、吸引ユニット540を用いたヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面(ノズル)の吸引処理のフローチャートを示す。
吸引処理が開始されると(ステップS10)、圧胴216”を所定の方向に回転させて、吸引ユニット540(開口部504A,504B)をKヘッド210K(記録媒体搬送方向の最上流側のヘッド)の直下の位置に移動させる(ステップS12)。
この状態で、図20のモータ581を駆動し、ユニットスライド軸542を上方向に移動させて、Kヘッド210Kのインク吐出面にキャップ544を密着させる(図19参照)。キャップ544によりKヘッド210Kのインク吐出幅に対応したインク吐出面の一部がキャッピングされると、図22に図示したキャップ用ポンプ592を動作させて、キャッピングされた領域のノズルの吸引処理が実行される(図22のステップS14)。
ステップS14において、吸引処理が終了すると、Kヘッド210Kのキャッピングされた領域のノズルについてパージが実行される(ステップS16)。このようにして、Kヘッド210Kについて、1回目の吸引処理及びパージ(以下、ステップS14の吸引処理とステップS16のパージを合わせて単に「処理」と記載することがある)が終了すると、ステップS18に進む。
ステップS18では、ヘッド210K,210C,210M,210Yのすべてについて1回目の処理が実行されたか否か(未処理ヘッドの有無)が判断される。1回目の処理における未処理ヘッドが存在する場合には(NO判定)、圧胴216”を回転させて吸引ユニット540を次の処理対象ヘッド(図16の例ではCヘッド210C)の直下に移動させ、次の処理対象ヘッドについて同様の処理が実行される。
また、この段階でキャップ544がインク吐出面から離間し、ワイパ546インク吐出面に接する位置までモータ581を駆動して偏芯カムを回転させれば、圧胴216”を回転させることで、インク吐出面のワイピングを行うことができる。
このようにしてヘッド210K,210C,210M,210Yのすべてについて1回目の処理が実行されると(ステップS18におけるYES判定)、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのすべてのノズルについて処理が実行されたか否かが判断される(ステップS20)。
即ち、本例に示す吸引処理(及びパージ)は、開口部504Aに配置される吸引ユニット540による処理と、開口部504Bに配置される吸引ユニット540による処理とを施すことで(2回の処理を実行することで)、すべてのノズルについて処理が実行されるように構成されている。したがって、ステップS20では上述した2回の処理が実行されたか否かが判断される。
ステップS20において、すべてのノズルについて処理が実行されていないと判断されると(NO判定)、圧胴216”を半回転させて反対側の開口部(図16の例では開口部504A)をKヘッド210Kの直下に移動させて(ステップS22)、ステップS12〜ステップS18を繰り返す。
一方、ステップS20において、各ヘッド210K,210C,210M,210Yのすべてのノズルについて処理が実行されたと判断されると(YES判定)、ステップS24に進み、当該吸引処理は終了される。
以上、説明した第3例に係る吸引処理は、インクジェットヘッドをメンテナンス位置に移動させなくても、インクジェットヘッドのメンテナンスができるので、1つのバッチ処理が終了してから次のバッチ処理を開始するまでの待ち時間を短縮することができ、段取り換えや給紙などの、印字部28以外のメンテナンスが発生した場合にも、ヘッド210K,210C,210M,210Yのメンテナンスを行い、吐出性能を維持することができる。
〔ヘッドの構造〕
次に、各ヘッド210K,210C,210M,210Yの構造について説明する。色別のヘッド210K,210C,210M,210Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号210によってヘッドを示すものとする。なお、先にも述べたが、処理液付与部26に用いられる処理液塗布装置202についてもインクヘッド210と同様の構造を採用してもよい。
図23(a)はインクヘッド210の構造例を示す平面透視図であり、図23(b) はその一部の拡大図である。記録媒体14上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド210におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド210は、図23(a)、(b)に示したように、インク吐出口であるノズル281と、各ノズル281に対応する圧力室282等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)283を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体14の搬送方向(図23中矢印S)と略直交する方向(図23中矢印M)に画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図23(a)の構成に代えて、図24に示すように、複数のノズル281が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール280’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体14の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル281に対応して設けられている圧力室282は、その平面形状が概略正方形となっており(図23(a)、(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル281への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)284が設けられている。なお、圧力室282の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図25は、インクヘッド210における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル281に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図23中のB−B線に沿う断面図)である。
図25に示したように、各圧力室282は供給口284を介して共通流路285と連通されている。共通流路285はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路285を介して各圧力室282に供給される。
圧力室282の一部の面(図25において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)286には個別電極287を備えたアクチュエータ288が接合されている。個別電極287と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ288が変形して圧力室282の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル281からインクが吐出される。なお、アクチュエータ288には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ288の変位が元に戻る際に、共通流路285から供給口284を通って新しいインクが圧力室282に再充填される。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル281に対応したアクチュエータ288の駆動を制御することにより、ノズル281からインク滴を吐出させることができる。記録媒体14を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル281のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体14上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット283を図26に示すごとく主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット283を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPNはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル281が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体14の幅方向(搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図26に示すようなマトリクス状に配置されたノズル281を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル281-11 、281-12 、281-13 、281-14、281-15 、281-16 を1つのブロックとし(他にはノズル281-21 、…、281-26 を1つのブロック、ノズル281-31 、…、281-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体14の搬送速度に応じてノズル281-11 、281-12、…、281-16 を順次駆動することで記録媒体14の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体14とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録媒体14の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ288の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
(溶媒乾燥部30の説明)
印字部28に続いて溶媒乾燥部30が設けられている(図1参照)。図27には、溶媒乾燥部30の概略構成を図示する。
図27に示すように、印字部28の圧胴216と溶媒乾燥部30の圧胴306との間には、これらに対接するように渡し胴304が設けられている。これにより、印字部28の圧胴216に保持された記録媒体14は、各色インクが付与された後に、渡し胴304を介して溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。
渡し胴304の構成は既述した浸透抑制処理部24の渡し胴84と同様の構成であるため、その説明は省略する。
渡し胴304の周面に対向する位置には、前記の渡し胴84と同様に、搬送ガイド150が設けられている。そして、渡し胴304に内蔵されるヒータ110から放射される熱と、50〜90℃に温調した静電吸引式の搬送ガイド150によって描画面を非接触搬送しながら、該描画面を40〜60℃の範囲で加熱し、表面に湿り空気層を形成して、打滴したインクに含まれる水分のうち、主に表面に存在する水を蒸発させる。
また、渡し胴304には、前記の渡し胴84と同様に、グリッパ支持部101,102にセンサユニット182が設けられている。該センサユニット182に光学センサを備え、光学センサにより記録媒体14の非画像部に描画したチェックパターンの光学濃度を読み取り、その読取結果に応じてインク吐出体積や画像データを補正すれば、機内昇温などによりインク吐出体積や処理液付与量などが変化した場合でも、画像濃度の安定化を図ることができる。また、記録媒体14の非画像部に描画したチェックパターンの光学濃度の他、温度や水分量を測定して、リアルタイムで加熱乾燥条件を補正することも可能であり、この場合には画像部の乾燥が安定する。
また、記録媒体14における凝集処理剤の塗布部と非塗布部にインクを打滴して、後述するインラインセンサ(図1の符号348)で前記非塗布部に形成したチェックパターンの他、塗布部のチェックパターンや白地の光学濃度を測定してインクの凝集度合いを検出することで、塗布ローラの回転数や付勢力を制御して凝集処理剤の付与量を制御している。
なお、チェックパターンを千鳥などのドット分離で形成した場合は、インラインセンサにCCDなどの撮像デバイスを用いることで、光学濃度の測定の他、ドット径を計測して凝集度合いを検出することも可能であり、一層精度の良い凝集検出が可能となる。
図27に示すように、渡し胴304から記録媒体14が受け渡される圧胴306の周面に対向して溶媒乾燥ユニット308が配置される。溶媒乾燥ユニット308には、赤外線照射手段、或いは熱風の噴射手段を用いることができる。溶媒乾燥ユニット308による赤外線の照射や熱風の吹付けにより、圧胴306上の記録媒体14の描画面を40〜80℃に加熱して水分を十分に除去し、乾燥防止や粘度調整用としてインクに含有したグリセリンやジエチレングリコール、トリオキシプロピレングリセリルエーテルなどの高沸点溶媒を低粘化する。また、インクに含有したポリマー粒子を溶融成膜すれば、定着性を向上させることも可能である。浸透抑制処理部24で付与された浸透抑制層も処理液付与部26で付与された処理液により、徐々に空隙が形成され高沸点溶媒の記録媒体14への浸透も可能となる。
図27には、溶媒乾燥ユニット308の構成例として、圧胴306の外周面に沿ってIRヒータ310と送風ファン312を交互に配置した態様を図示する。図27に示すように、送風ファン312と圧胴306の外周面との間に加熱制御部材(シャッター)314を備え、送風ファン312から放射される風の風量を制御する態様が好ましい。
図27に示す加熱制御部材314は、送風ファン312と圧胴306の外周面との間をスライド可能に構成され、送風ファン312の放射領域の一部をふさぐことで、記録媒体に放射する風量を低減することができる。なお、図27には、記録媒体14の搬送方向の最下流側の送風ファン312のみに加熱制御部材314を備えているが、もちろん、他の送風ファン312にも加熱制御部材314を備えてもよい。
IRヒータ310は、放射熱量が可変可能に構成されており、記録媒体14の表面温度が設定されると、該設定温度に対応してIRヒータ310の放射熱量(または、IRヒータ310のオンオフ)が制御される。
本例に示す溶媒乾燥ユニット308は、IRヒータ310の放射熱量及び送風ファン312の風量を適宜制御することで、予め設定された記録媒体の表面温度に対応する放射熱量の制御が行われる。また、圧胴306に設けられたセンサユニット182から得られる温度情報に基づいて、IRヒータ310の放射熱量制御及び送風ファン312の放射風量を制御する態様も好ましい。
(熱圧定着部32の説明)
溶媒乾燥部30に続いて熱圧定着部32が設けられている(図1参照)。溶媒乾燥部30の圧胴306と熱圧定着部32の圧胴326との間には、これらに対接するように渡し胴324が設けられている。これにより、溶媒乾燥部30の圧胴306に保持された記録媒体14は、各色インクの水分が除去され高沸点溶媒が低粘化された後に、渡し胴324を介して熱圧定着部32の圧胴326に受け渡される。
熱圧定着部32には、40〜80℃に温調した圧胴326に対向して、60〜120℃に温調したヒートローラ(定着ローラ)328a,328b,328cが設けられている。ヒートローラ328a,328b,328cはゴムなどの表面にPFAやフッ素系エラストマーなどの撥液材料を被覆したものや、剛材に硬質クロムメッキなどの処理を施したものが望ましい。また、ヒートローラ328a,328b,328cには、離型剤塗布機能付きのクリーニングユニット329が当接されている。離型剤としては一般的な離型用シリコンオイルのほか、用紙浸透性を有する高沸点溶媒としても良く、塗布厚としては30nm〜1μmであることが離型性や光沢度の観点から望ましい。
渡し胴324には、巻取式の不織布などを用いたスタンプ型の部材325が配置され、このスタンプ型の部材325が圧胴306や渡し胴324の搬送中に記録媒体14に浸透しきれなかった高沸点溶媒を吸収する。
なお、渡し胴324の周面に対向する位置に、前記の渡し胴84,214,304と同様に、搬送ガイド150が設けられている。そして、渡し胴324から吹出す50〜70℃の熱風と、50〜70℃に温調した静電吸引式の搬送ガイド150によって描画面を非接触搬送しながら、描画面を40〜60℃の範囲で加熱し、溶媒乾燥ユニット308で高温に加熱した記録媒体14の面内温度分布やポリマー粒子の皮膜を安定にする。
そしてその後、不図示の加熱手段により加熱された圧胴326に受け渡された記録媒体14に対し、ヒートローラ328a,328b,328cにより熱圧することにより、インクに添加したポリマー粒子を十分に成膜することで画像を堅牢化して、記録媒体14に定着させる。
図28は、熱圧定着部32の拡大図であり、ローラ切替型の熱圧定着部32の概要を示している。このローラ切替型の熱圧定着部32によれば、記録媒体14に応じた適切な表面光沢を得ることが可能である。
具体的には、圧胴326の回転方向(図28において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴326の周面に対向する位置に、マット仕上げ用のブラスト処理などを施した凹凸面を有するヒートローラ328a、ゴム表面にPFAなどを被覆した平滑面を有するヒートローラ328b、さらに、金属表面にPFAなどを被覆した平滑面を有するヒートローラ328cが設けられている。
また、ヒートローラのニップ圧は、ヒートローラ328a,328bが0.5〜1.5MPa、ヒートローラ328cが1〜2MPaに設定されている。
ヒートローラ328a,328b,328cの圧胴326へのニップ(on)、圧胴326からの離間(解除)(off)の組む合わせ例を表2に示す。
表2に示すように、記録媒体14がマットコート紙の場合(組み合わせNo.5)には、ヒートローラ328aのみニップし、ヒートローラ328b,328cは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。この状態で記録媒体14を搬送することで、表面がマット状に仕上がり、熱圧により画像を確実に記録媒体14に定着させることができる。
また、記録媒体14がグロスコート紙の場合(表2の組み合わせNo.2)には、ヒートローラ328cのみニップし、ヒートローラ328a,328bは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。この状態で記録媒体14を搬送することで、表面が光沢状に仕上がり、熱圧により画像を確実に記録媒体14に定着させることができる。
また、記録媒体14がマットコート紙とグロスコート紙の間に位置する場合(表2の組み合わせNo.3)には、ヒートローラ328bのみニップし、ヒートローラ328a,328cは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。この状態で記録媒体14を搬送することで、表面が中間状に仕上がり、熱圧により画像を確実に記録媒体14に定着させることができる。
また、記録媒体14が厚手のグロスコート紙の場合やベタ印字を行う場合(表2の組み合わせNo.4)には、ヒートローラ328b,328cをニップし、ヒートローラ328aは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。
また、装置のメンテナンス時や、記録媒体14の塗布不良や打滴不良、乾燥不良などのエラー処理時(表2の組み合わせNo.1)には、すべてのヒートローラ328a,328b,328cを圧胴326からの離間させておく。
また、その他、特殊仕上げの場合(表2の組み合わせNo.6,7,8)には、各々表2に示すように、ヒートローラ328a,328b,328cの圧胴326へのニップ、圧胴326からの離間を行う。
なお、上流に配置したヒートローラ328aは凹凸面を有するので、溶媒が記録媒体14への浸透途上であってもインクの付着が軽度であり、下流に配置したヒートローラ328bは平滑面を有するが、ヒートローラ328aを通過する間に溶媒浸透が進むので、ヒートローラ328aと同様に、インクの付着を軽減できる。
また、下流に配置したヒートローラ328cは平滑面を有しニップ圧も高いが、ヒートローラ328a,328bを通過する間に溶媒浸透が進むので、ヒートローラ328a,328bと同様に、インクの付着を軽減でき、確実な定着も可能となる。
また、ヒートローラ328a,328b,328cは、複数を組み合わせて用いてもよく、この場合は、記録媒体14の厚みや浸透速度、画像に対応したインク打滴量などに応じて設定することで、一段と安定した光沢性や定着性の確保が可能となる。
(排出部34の説明)
熱圧定着部32に続いて排出部34が設けられている(図1参照)。熱圧定着部32の圧胴326と排出部34の排出トレイ346との間には、これらに対接するように渡し胴344が設けられている。これにより、熱圧定着部32の圧胴326に保持された記録媒体14は、熱圧定着部32で画像が堅牢化された後に、渡し胴344を介して排出トレイ346に受け渡され、機外へ排出される。
渡し胴344は不図示の加熱手段により加熱され、さらに高沸点溶媒の浸透促進と記録媒体14のカールの矯正をする。
また、排出部34には、記録媒体14のチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するためのCCDなどの撮像素子や赤外線温度計、赤外線水分計、光沢計などのインラインセンサ348が配置されている。前述の通り、インラインセンサ348により、パッチの光学濃度やドット径を計測して凝集処理剤の塗布量を制御したり、各色のパターンを測定してカラーレジを補正したり、先後端や幅方向のパターンを測定して倍率補正したり、表面温度から定着温度をリアルタイムで調整し、光沢や濃度、倍率、歪みや位置ずれなどの品質を安定に保っている。
(制御系の説明)
図29は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース470、システムコントローラ472、メモリ474、ROM475、モータドライバ476、ヒータドライバ478、プリント制御部480、画像バッファメモリ482、ヘッドドライバ484等を備えている。
通信インターフェース470は、ホストコンピュータ486から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース470にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ486から送出された画像データは通信インターフェース470を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ474に記憶される。
メモリ474は、通信インターフェース470を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ472を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ474は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ472は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ472は、通信インターフェース470、メモリ474、モータドライバ476、ヒータドライバ478等の各部を制御し、ホストコンピュータ486との間の通信制御、メモリ474の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ488やヒータ489を制御する制御信号を生成する。
ROM475には、システムコントローラ472のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM475は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ474は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ476は、システムコントローラ472からの指示にしたがってモータ488を駆動するドライバである。図29には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号488で図示されている。モータ488には、図1で説明した各圧胴40,86,216,306,326、渡し胴84,214,304,324,344、用紙押さえ44、ヒートローラ328a,328b,328cなど駆動するモータ(例えば、図20の圧胴216”を回転駆動するモータ566)や、図2のスパイラルローラ48等を移動(圧胴から離間)させる移動機構のモータ、図20の吸引ユニット540を駆動するモータ581などが含まれている。
ヒータドライバ478は、システムコントローラ472からの指示にしたがって、ヒータ489を駆動するドライバである。図29には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号489で図示されている。また、ヒータ489には、浸透抑制剤乾燥ユニット46、処理液乾燥ユニット204、溶媒乾燥ユニット308のヒータや、渡し胴84の内蔵ヒータ110などが含まれている。
プリント制御部480は、システムコントローラ472の制御にしたがい、メモリ474内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ484に供給する制御部である。プリント制御部480において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ484を介してインクヘッド210のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部480には画像バッファメモリ482が備えられており、プリント制御部480における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ482に一時的に格納される。なお、図29において画像バッファメモリ482はプリント制御部480に付随する態様で示されているが、メモリ474と兼用することも可能である。また、プリント制御部480とシステムコントローラ472とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース470を介して外部から入力され、メモリ474に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ474に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ474に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ472を介してプリント制御部480に送られ、該プリント制御部480において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部480は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部480で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ482に蓄えられる。
ヘッドドライバ484は、プリント制御部480から与えられる印字データ(すなわち、画像バッファメモリ482に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド210の各ノズル281に対応するアクチュエータ288を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ484にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ484から出力された駆動信号がヘッド210に加えられることによって、該当するノズル281からインクが吐出される。記録媒体14を所定の速度で搬送しながらインクヘッド210からのインク吐出を制御することにより、記録媒体14上に画像が形成される。
また、システムコントローラ472は、渡し胴84等による加熱乾燥と搬送ガイド150による静電吸着及び加熱を制御する手段として機能する。即ち、ヒータドライバ478を介して渡し胴84の内蔵ヒータ110の加熱量を制御するとともに、搬送ガイド制御部498を介して搬送ガイド150の動作(静電吸着や内蔵ヒータ)を制御する。
さらに、システムコントローラ472は、圧胴216(216’,216”)の吸引を制御する手段として機能する。即ち、吸引制御部492を介して、図20の記録媒体用ポンプ590やキャップ用ポンプ592のオンオフや流量を制御するとともに、図20の切換弁594の切換を制御する。
図22にフローチャートを示す吸引制御プログラムは、プログラム格納部(不図示)に格納される。プログラム格納部は、メモリ474やROM475と兼用してもよいし、メモリーカードやCD−ROMなどの着脱可能な記録媒体を適用してもよい。装置のモードが図22に示す吸引制御実行モードに移行すると、システムコントローラ472は当該制御プログラムを読み出すとともに、当該吸引制御を実行するように装置各部に指令信号を送出する。
システムコントローラ472は、センサユニット182から得られる検出信号(測定情報)の時間変化を計測する時間変化計測演算部としての機能を担い、その演算結果にしたがってヒータ110や搬送ガイド150の内蔵ヒータを制御する。また、システムコントローラ472は、浸透抑制剤塗布制御部495、溶媒乾燥制御部496、熱圧定着制御部497の動作を制御する。
センサユニット182に反射型光学センサを含む場合には、該光学センサの読取データはシステムコントローラ472に送られ、システムコントローラ472は光学センサから読取データに基づいて浸透抑制剤の付与、処理液の付与、インク打滴を制御するように装置各部に指令信号を送出する。
さらに、本例のインクジェット記録装置10では、処理液を付与する手段としての処理液塗布装置202と、これを制御する処理液塗布制御部501を備えている。処理液塗布制御部501は、プリント制御部480から与えられる画像データに基づいて処理液塗布装置202を制御する。図2で説明した液体塗布装置42の場合、スパイラルローラ48についてのローラ当接/離間機構駆動手段、スパイラルローラ48の回転駆動手段、メインブレード当接/離間機構駆動手段、液体噴射部52の噴射圧を調整する精密可変レギュレータ等が処理液塗布制御部501により制御される。なお、処理液の塗布にインクジェット方式を適用する場合には、処理液ヘッドのアクチュエータ288(図25参照)に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号をアクチュエータ288に印加してアクチュエータ288を駆動する駆動回路を含んで構成される。このように、画像データに応じて処理液を打滴する構成とし、印字部28によってインクが打滴される位置に対して、処理液を選択的に打滴する態様が好ましい態様である。なお、スプレーノズルを用いて一様に付与する態様も可能である。
浸透抑制剤塗布制御部495は、図2で説明した液体塗布装置42の場合、スパイラルローラ48についてのローラ当接/離間機構駆動手段、スパイラルローラ48の回転駆動手段、メインブレード当接/離間機構駆動手段、液体噴射部52の噴射圧を調整する精密可変レギュレータ等が浸透抑制剤塗布制御部495により制御される。
溶媒乾燥制御部496は、システムコントローラ472からの指示にしたがい溶媒乾燥部30における溶媒乾燥ユニット308の動作を制御する。
熱圧定着制御部497は、システムコントローラ472からの指示にしたがい熱圧定着部32におけるスタンプ型の部材854の動作を制御するとともに、ヒートローラ328a〜c、及びクリーニングユニット329の動作を制御する。
また、システムコントローラ472には、排出部34に配置されるインラインセンサ348からチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などの計測結果のデータが入力される。
(インクジェット記録装置10の動作について)
このように構成されたインクジェット記録装置10の作用について説明する。
給紙トレイ36から供給された記録媒体14は、渡し胴38を介して、グリッパ(不図示)で浸透抑制処理部24の圧胴40の周面に給紙される。
なお、記録媒体14は、給紙トレイ36へ送られる前に、40〜50℃にプレヒートされた給紙部(不図示)に予めストックされている。そして、記録媒体14は、給紙トレイ36の給紙面に対向する位置に設けられた粘着ローラ37に接触しながら渡し胴38に供給される。このように、給紙部をプレヒートすることで記録媒体14が加熱乾燥され、記録媒体14を粘着ローラ37に接触させることで紙粉や塵埃などの異物除去が可能になり、浸透抑制剤塗布後の乾燥の高速化や安定化を図ることができる。
記録媒体14は、渡し胴38を介して、浸透抑制処理部24の圧胴40に保持され、液体塗布装置42によって所望領域に対して選択的に浸透抑制剤が付与される。その後、圧胴40に保持された記録媒体14は、用紙押さえ44により案内されつつ圧胴40の回転方向に送り出されながら、浸透抑制剤乾燥ユニット46によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。
こうして浸透抑制処理が行われた記録媒体14は、浸透抑制処理部24の圧胴40から渡し胴84を介して、処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。渡し胴84では、搬送ガイド150により描画面非接触乾燥で浸透抑制剤を加熱乾燥させる。圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液塗布装置202によって処理液が塗布される。その後、圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液乾燥ユニット204によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。これにより、記録媒体14上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された記録媒体14は、処理液付与部26の圧胴86から渡し胴214を介して、印字部28の圧胴216に受け渡される。渡し胴214では、搬送ガイド150による描画面非接触乾燥で浸透抑制層上に酸を残留させる。圧胴216に保持された記録媒体14には、入力画像データに応じて、各インクヘッド210K,210C,210M,210Yからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
凝集処理剤層上にインク液滴が着弾すると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク液滴と凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インク液滴が凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインク液滴と凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録媒体14上に形成される。
インクが付与された記録媒体14は、印字部28の圧胴216から渡し胴304を介して、溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。渡し胴304では、搬送ガイド150により記録媒体14の描画面を非接触で乾燥させる。圧胴306では、溶媒乾燥ユニット308による赤外線の照射や熱風の送風により水分を十分に除去する。
その後記録媒体14は、溶媒乾燥部30の圧胴306から渡し胴324を介して、熱圧定着部32の圧胴326に受け渡される。渡し胴324には、スタンプ型の部材325が配置され、このスタンプ型の部材325が高沸点溶媒を吸収し、処理液や加熱乾燥で増加した浸透抑制層の空隙を通して用紙にも浸透させる。また、渡し胴324では、搬送ガイド150により記録媒体14の描画面を非接触で乾燥させる。そして、不図示の加熱手段により加熱された圧胴326に受け渡された記録媒体14に対し、ヒートローラ328a,328b、328cにより加圧して熱圧することにより、画像を記録媒体14に定着させる。
その後記録媒体14は、熱圧定着部32の圧胴326から渡し胴844を介して、排出部34の排出トレイ346に受け渡され、機外へ排出される。渡し胴344は不図示の加熱手段により加熱され、さらに高沸点溶媒の浸透促進と記録媒体14のカールの矯正をする。
(変形例)
図30は本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置400の構成図である。図30中、図1で説明した構成と同一又は類似する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。図1で説明した溶媒乾燥部30に配置されている圧胴306とその前後の渡し胴304,324の代わりに、図30のようにチェーン412による搬送手段を採用する形態も可能である。
チェーン412は、記録媒体14を咥えるためのグリッパ(不図示)を有している。当該グリッパ付きのチェーン412は、これを駆動するためのスプロケット414,415に巻き掛けられており、チェーン412の搬送路内には、熱風噴射器416が配設されている。チェーン412の搬送面と対向する位置には、記録媒体14の裏面を静電吸着する吸着ガイド450が配置されている。
この吸着ガイド450は、図12で説明した搬送ガイド150と類似の構成からり、搬送ガイド150と同様の役割を果たす。チェーン412のグリッパで記録媒体14を搬送し、これと対向配置した吸着ガイド450で記録媒体14を静電吸着しながら、熱風噴射器416から熱風を噴射して乾燥を行う。なお、熱風噴射器416に代えて、又はこれと組み合わせて、図1で説明した溶媒乾燥ユニット308と同様の乾燥ユニットを用いて加熱乾燥してもよい。この場合も、図1で説明した実施形態に係るインクジェット記録装置と同様の効果が得られるほか加熱部の簡素化が図れるため、インクの色数が少ないなど乾燥量が少ない場合に好適である。
<各液の調整>
次に上述した実施形態に係るインクジェット記録装置に用いる各液の調整例について説明する。
(1)浸透抑制剤の調整
[化1]に示す構造の分散安定用樹脂〔Q−1〕10g、酢酸ビニル100g及びアイソパーH(エクソン社商品名)384gの混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度70℃に加温した。
重合開始剤として2,2′−アゾビス(イソバレロニトリル)(略称A.I.V.N.)0.8gを加え、3時間反応した。開始剤を添加して20分後に白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。さらに、該開始剤を0.5g加え、2時間反応した後、温度を100℃に上げ2時間攪拌し未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は重合率90%で平均粒径0.23μmの単分散性良好なラテックスであった。粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製)で測定した。
上記白色分散物の一部を遠心分離機(回転数1×104 r.p.m.、回転時間60分)にかけて、沈降した樹脂粒子分を補集、乾燥し、該樹脂粒子分の重量平均分子量(Mw)とガラス転移点(Tg)、最低造膜温度(MFT)を測定したところ、Mwは2×105 (ポリスチレン換算GPC値)、Tgは38℃、MFTは28℃であった。
(2)凝集処理剤の調整
(処理液T−1の調整)
下表3の組成にて処理液を調整し、得られた反応液の物性値を測定した結果、粘度4.9mPa・s、表面張力24.3mN/m、pH1.5であった。
これらの凝集処理剤を用いることで、ヘッドの吐出性や記録媒体の濡れに優れた凝集処理剤の付与が可能となる。
(3)インクの調整
(ポリマー分散剤P−1の調製)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は1H−NMRで確認し、GPC(Gel Permeation Chromatography)より求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(シアン分散液の調製)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を10部と、上記で得られたポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトンを42部と、1mol/L NaOH水溶液を 5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%のシアン分散液を得た。
上記のようにして、色材としてのシアン分散液を調液した。
上記で得られた色材(シアン分散液)を用いて、下記インク組成(表4)となるようにインクを調液し、調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、インクC1−1を調整した。得られたインクC1−1の物性値を測定した結果、pH9.0、表面張力32.9mN/m 粘度3.9mPa・sであった。
同様にして、Magenta,Yellow,Blackのインクも調液した。
(4)添加ポリマー
前述の凝集処理剤やインクには、適宜ポリマー樹脂などの粒子を添加する。凝集処理剤には光沢調整用として、また、インクには画像固定用として粒径1μm以下、最低造膜温度28〜50℃、ガラス転移点40〜80℃の粒子を1〜8%入れるのが好ましい。
なお、上述した各液の調整は一例であり、適宜変更可能である。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10(400)の効果は以下のとおりである。
図14に示すように、印字部28の圧胴216の記録媒体14が置かれない非保持領域に開口部504を設け、開口部504を吸引する吸引部(吸引流路506、吸引ポンプ)を開口部504と一体に構成したので、各ヘッド210K,210C,210M,210Yの直下を移動しながら、各ヘッド210K,210C,210M,210Yから開口部504に向けてパージを行うことができ、吐出特性が安定化する。また、パージによるインクの飛散や、一旦開口部504に収容されたインクの再飛散を防止することができる。さらに、ヘッドを多色(複数)配置しても、記録媒体の搬送方向に大型化することなくコンパクトに構成することができる。
さらにまた、開口部504の吸引を画像記録中にも行うことで、画像記録(インク打滴)によって発生するインクミストの回収が可能となる。
図16に示すように、2ヶ所の記録媒体保持位置507に対応して、2つの開口部504A,504Bを備え、2つの開口部504A,504Bは回転軸をはさんで反対側に配置され、かつ、開口部504A,504Bは千鳥配置されることで、開口部が分割配置され、圧胴216’の強度が高まる。
また、吸引ガイド510(遮断部材)を設けてインクジェットヘッド210K,210C,210M,210Y側の開口部504Bのみから吸引を行い、インクジェットヘッド210K,210C,210M,210Yと反対側の開口部504Aからの吸引を遮断するので、吸引部と圧胴リブとを兼用して精度や剛性を高めることが可能である。
さらに、吸引ガイド510がインク受けと兼用されるとともに、開口部504A,504Bから回収したインクの回収ガイドとしても使用されることで、圧胴216’の内部の汚染が低減され、かつ、インクの回収性が向上する。
図18(a)に示すように、キャップ544を含み、ヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面に対して当接及び離間可能に構成された吸引ユニット540を開口部504A,504Bに備え、非画像形成時に吸引処理を行うように構成することで、ヘッド210K,210C,210M,210Yを移動(退避)させることなくインク吐出面(ノズル)吸引処理を行うことができ、ヘッド210K,210C,210M,210Yのメンテナンス時間が短縮化される。また、プリント開始前やノズルの目詰まり発生時において、簡単にヘッド210K,210C,210M,210Yのメンテナンスが可能となる。
さらに、非画像記録時にキャップ544を用いてヘッド210K,210C,210M,210Yの吸引処理を行うときには、記録媒体14吸着する記録媒体用ポンプ590とキャップ用ポンプ592を併用することで、吸引圧力を高くなり、高速かつ、高圧による吸引処理が可能となる。
図18(b)に示すように、吸引ユニット540にヘッド210K,210C,210M,210Yのインク吐出面を払拭するワイパ546を備えることで、インク吐出面のワイピングが可能となる。
以上、本発明のインクジェット記録装置、ヘッドメンテナンス方法、記録媒体搬送機構を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):記録媒体にインクを打滴するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのインク吐出面と対向する位置に配設され、円筒形状の周面に設けられる記録媒体保持位置に前記記録媒体を保持して回転し前記記録媒体を円周方向に搬送するとともに、記録媒体が保持されない非保持位置に前記インクジェットヘッドのインク吐出幅に対応する開口部が設けられるとともに、内部に前記開口部と連通する吸引流路が前記開口部と一体に設けられる圧胴と、少なくとも前記インクジェットヘッドからインクが打滴される打滴領域において、前記開口部及び前記吸引流路を吸引する吸引手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
発明1によれば、記録媒体を保持搬送する圧胴の周面における記録媒体が保持されない非保持領域にインクジェットヘッドのインク吐出領域に対応する形状を有する開口部が設けられるとともに、開口部と連通する吸引流路が圧胴の内部に開口部と一体に設けられ、少なくともインクジェットヘッドの打滴領域において、開口部及び吸引流路を吸引するように構成されるので、画像記録中におけるインクジェットヘッドの打滴によるインクミストや開口部にパージされたインクを圧胴の内部に回収することができ、回収されたインクの再飛散が防止される。
「記録媒体」は、印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体などと呼ばれる場合がある。記録媒体の形態や材質については、特に限定されず、枚葉紙(カット紙)、シール用紙、連続用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、金属シート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
「インク吐出幅」とは、インクジェットヘッドのインク吐出領域の記録媒体搬送方向における長さである。
前記記録媒体の前記搬送手段の搬送方向と直交する幅方向の長さに対応する長さにわたって複数のノズルを並べたフルライン型のインクジェットヘッドを備える態様において、本発明は特に効果を発揮する。
(発明2):発明1に記載のインクジェット記録装置において、前記打滴領域に前記開口部が位置する状態で、前記インクジェットヘッドのパージを行うように前記インクジェットヘッドの打滴を制御する打滴制御手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、インクジェットヘッドのパージによるインクを受ける媒体が不要であり、インクジェットヘッドのパージによるインクが圧胴の周面に付着しない。また、開口部を吸引することで、圧胴の内部にパージによるインクを効率よく収容でき、該インクの飛散が防止され、さらに、一旦開口部内に収容したインクが圧胴の回転による遠心力の作用による再飛散も防止される。
(発明3):発明2に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドを複数備えるとともに、前記開口部は1つのインクジェットヘッドに対応する形状を有し、前記打滴制御手段は、各インクジェットヘッドの打滴領域に前記開口部が位置する状態で、当該インクジェットヘッドのパージを行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、多色対応などインクジェットヘッドを複数備える場合にも、1つのインクジェットヘッドに対応する開口部を用いて各インクジェットヘッドのパージを行うので、開口部が大型にならず、開口部及び吸引流路をコンパクトに構成可能である。
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記吸引手段は、前記インクジェットヘッドから前記圧胴に保持されている記録媒体上にインクを打滴する際に、前記開口部を吸引することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、記録媒体への画像記録中において、画像記録中の記録媒体に後続して開口部の吸引を行うことで、画像記録時に発生するインクミストを圧胴の内部に回収することができる。
(発明5):発明1乃至4に記載のインクジェット記録装置において、前記開口部はインク吐出幅の方向について複数に分割されるとともに、前記複数の開口部を所定のパターンにしたがって配置して、前記インク吐出幅の全体に対応することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、開口部が分割されるとともに、開口部を吸引する際の吸引圧力が分散されるので、圧胴周面の強度低下が抑制される。
開口部の配置に対応して、インクジェットヘッドの一部について選択的にパージを行うようにインクジェットの打滴を制御する態様が好ましい。
n個の開口部を備える場合には、圧胴の周面をn等分した位置に各開口部を設ける態様が好ましい。また、各開口部は圧胴の軸方向の位置がオーバーラップするように配置するとよい。
(発明6):発明5に記載のインクジェット記録装置において、前記所定のパターンは、千鳥配置を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
部品の共通化や形状の安定性の観点から、開口部の分割配置には千鳥配置が好ましい。
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記圧胴は、前記記録媒体を保持する保持領域を複数有し、前記複数の保持領域のそれぞれに前記開口部及び前記吸引流路が設けられることを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、それぞれの開口部から連通する吸引流路は、圧胴内部を対称構造で連結するので、圧胴の剛性や精度を高めることが可能である。
かかる態様では、記録媒体保持位置の記録媒体搬送方向上流側に開口部を設けるとよい。
(発明8):発明7に記載のインクジェット記録装置において、前記保持領域のそれぞれに設けられた開口部は互いに千鳥配置されることを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、開口部が分散配置されるので、圧胴の周面の強度が保持される。
(発明9):発明7又は8に記載のインクジェット記録装置において、前記吸引流路に設けられ、前記インクジェットヘッドと対向する位置の開口部と連通する吸引口を有するとともに他の開口部からの吸引を妨げる構造を有する吸引ガイドを備えたことを特徴するインクジェット記録装置。
複数の開口部を備える態様において、インクジェットヘッドと対向している開口部のみから吸引を行い、他の開口部からは吸引を行わないことで、吸引圧力の減少が抑制される。
(発明10):発明9に記載のインクジェット記録装置において、前記吸引ガイドは、前記開口部を介して吸引されたインクを受けるインク受けと兼用されることを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、圧胴内部の汚染が低減され、インクの回収性も向上する。
(発明11):発明1乃至10のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドのインク吐出領域に対応するインク吐出面に密着させて、前記吸引手段により吸引圧力を付与して前記インクジェットヘッドのインク吐出面に設けられたノズルの吸引処理を行うとともに、前記開口部内に収容可能な構造を有するキャップ部材を含む吸引ユニットと、前記吸引ユニットを前記開口部内に収容される位置と前記インクジェットヘッドに密着させる位置との間を移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、画像記録開始前やノズル目詰まりなどのヘッドメンテナンスが容易となる。特に、記録媒体の全幅に対応するフルライン型ヘッドを備える場合には、ヘッドを待避させる必要がなく、メンテナンスに要する時間を大幅に短縮可能である。
(発明12):発明11に記載のインクジェット記録装置において、非画像記録時に前ノズルの吸引処理を行うように、前記吸引ユニットを制御するメンテナンス制御手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、画像記録と次の画像記録との間でインクジェットヘッドのメンテナンスを行うことができる。
(発明13):発明11又は12に記載のインクジェット記録装置において、前記圧胴の前記記録媒体保持位置に記録媒体を吸引して保持する記録媒体吸引手段と、非画像記録時に、前記記録媒体吸引手段と前記吸引ユニットとを接続させるように吸引流路を切り換える吸引流路切換手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、インクジェットヘッドを吸引する吸引圧力を高めることができ、高速かつ高圧の吸引が行われる。
(発明14):発明11乃至13のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記吸引ユニットは、前記インクジェットヘッドのインク吐出面を払拭するワイピング部材を具備し、前記移動手段は、前記吸引ユニットを前記キャップ部材が前記インクジェットヘッドから離間するとともに前記ワイピング部材が前記インクジェットヘッドに接するワイピング位置と前記吸引ユニットが前記開口部内に収容される収容位置との間を移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、キャップ部材をインクジェットヘッドから離間させた状態でインクジェットヘッドのインク吐出面にワイピング部材を接触させて、当該インク吐出面にワイピングを行うことができる。
すなわち、ワイピング部材はキャップ部材のインク吐出面との接触面よりも先端部が突き出た形状(大きさ)を有している。
(発明15):記録媒体にインクを打滴する打滴工程と、インクジェットヘッドのインク吐出面と対向する位置に配設される圧胴の周面に記録媒体を保持し、前記圧胴を回転させて前記記録媒体を所定の方向に搬送する工程と、前記圧胴の周面において記録媒体が置かれない非保持領域に設けられた開口部を前記圧胴の内部に設けられ前記開口部と連通する吸引流を介して吸引する吸引工程と、を含むことを特徴とするヘッドメンテナンス方法。
(発明16):発明15に記載のヘッドメンテナンス方法において、前記開口部に前記インクジェットヘッドからパージを行うパージ工程を含むことを特徴とするヘッドメンテナンス方法。
10,400…インクジェット記録装置、14…記録媒体、28…印字部、86,216,16’,216”…圧胴、210Y,210M,210C,210K…インクヘッド、472…システムコントローラ、492…吸引制御部、504,504A,504B…開口部、506…吸引流路、507…記録媒体保持位置、510…吸引ガイド、540…吸引ユニット、544…キャップ、546…ワイパ、590,592…ポンプ