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JP5378414B2 - キャリア加工装置、オブジェクト伝送システム及び方法 - Google Patents

キャリア加工装置、オブジェクト伝送システム及び方法 Download PDF

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JP5378414B2 JP2010543704A JP2010543704A JP5378414B2 JP 5378414 B2 JP5378414 B2 JP 5378414B2 JP 2010543704 A JP2010543704 A JP 2010543704A JP 2010543704 A JP2010543704 A JP 2010543704A JP 5378414 B2 JP5378414 B2 JP 5378414B2
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Description

本発明は、スペクトル拡散通信技術を応用して伝送する対象物であるオブジェクトを伝送する際に必要となるキャリアを出力するキャリア加工装置、及びこのキャリア加工装置を組み込んでオブジェクトの伝送を実行するオブジェクト伝送システム及び方法に関する。
前記情報を伝送する場合の従来より用いられている手法のひとつに、スペクトル拡散通信技術がある。直接拡散スペクトル拡散通信技術は前記スペクトル拡散通信技術のひとつの形態であり、相互相関が高いスペクトル拡散符号とスペクトル逆拡散符号という二つの不規則信号を用いた信号伝送方式のひとつであり、耐ノイズ特性、多重性、秘話性、秘匿性、更には小電力密度で他のシステムへの干渉が少ない等の優れた性質を備え、移動体通信、無線LANなど、広い分野で使われている。この明細書では、直接スペクトル拡散通信のことを単にスペクトル拡散通信と記し、以下の説明では、送信機で情報入力信号に乗ずる符号列を拡散符号、受信機で受信した信号に乗ずる符号列を逆拡散符号と記す。
前記スペクトル拡散通信は、拡散符号と逆拡散符号という二つの相互相関が高い不規則信号を用いた信号伝送方式である。独立に動作する送信機及び受信機において、それらが用いる一組の拡散符号と逆拡散符号は、互いに積極的に相互相関を向上させる操作を行わない限り、一般にそれらの相互相関はゼロである。前記スペクトル拡散通信は、その一組の拡散符号と逆拡散符号に積極的な操作を行って、それらの相互相関をゼロの状態からある規定した以上の相互相関状態を確立して情報伝送する。以下では、そのある規定した以上の相互相関状態が確立した状態を相互相関確立状態と記す。
何らかの規則に従った拡散符号や逆拡散符号に対して、相互相関を高めるために行う積極的な操作を同期操作と呼び、その同期操作を用いてスペクトル拡散通信を行う具体的な方法として、参照信号内蔵方式(または蓄積参照信号法、またはSR法:Stored Reference)と、参照信号送信方式(またはTR法:Transmitted Reference)とが知られている。
図40は代表的な参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの構成である(非特許文献1、及び非特許文献2)。今日この構成のスペクトル拡散通信システムが携帯電話のシステムやGPSシステム(GPS:Global Positioning System 全地球測位システム)で広く普及してスペクトル拡散通信システムの標準的な形態となっているので、本明細書ではこのスペクトル拡散通信システムの構成や特性などを比較の基準として用いることとする。前記参照信号内蔵方式では、送信機と受信機とが独立した二値疑似ノイズ発生部(以下、PNG:Pseudo Noise Generator と記す)を有している。それらのPNGは、通信システムが動作を開始する時点では同期しておらず、それらが生成する対で用いる一組の拡散符号cと逆拡散符号cは、相互相関が確立されていない状態である。
そのため、情報の伝送に先立ち、通信システムは、まず、PNG同士の同期を取って、拡散符号cと逆拡散符号cの相互相関を高めておく必要がある。受信機に設けた同期装置はこのための要素であり、図40に示した構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムは、この同期装置を用いた同期捕捉動作と同期保持動作と呼ばれる二つの動作によって同期をとる。
同期捕捉動作は、受信機の逆拡散符号cの送信機の拡散符号cに対する時間領域での符号パターンの位置合わせを行って相互相関確立状態を作り出す動作であり、同期保持動作は、その確立した相互相関確立状態を維持し続ける動作である。
通信システムは、動作を開始すると、まず、同期捕捉動作を行い、それが成功裏に終了すると、動作は同期保持動作に移行し、この同期保持動作のもとで情報入力信号の伝送を行う。受信機が行うこの一連の同期操作に対し、その操作の期間、送信機は拡散符号を含む信号を連続して送出する。
このように、図40に示す構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムは、送信機は拡散符号成分を連続して送出し、受信機はそれと同期装置で受信機のPNGを送信機のPNGに同期させて、拡散符号cと逆拡散符号cの相互相関を確立した状態にして通信を行う。
一方、参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムには幾つかの異なる構成が知られており、そのうちの第一の公知例を図41に示す(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3、非特許文献1、非特許文献2)。
図41に示す形態の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、送信機にのみ設けられたひとつのPNGで発生させるひとつの符号列を拡散符号と逆拡散符号の両方の目的に用いる。
送信機は情報入力信号を拡散符号でスペクトル拡散したスペクトル拡散出力信号(以下、拡散出力信号と記す)と逆拡散符号とを受信機に向けて送出する。この時、拡散出力信号と逆拡散符号とをひとつの伝送媒体で同時に伝送するため、それらが互いに干渉しないようにする目的で、送信機では一方をある規定の時間だけ遅延させ、受信機では送信機では遅延させなかった方の成分を送信機の遅延と同じ時間だけ遅延させる。
送信機と受信機とで行う一連の遅延操作のうちで受信機が行う操作は、送信機で行った一方の信号に対する時間領域での信号処理操作に対して、受信機でもう一方の信号を時間領域で整合させて積極的に相互相関を高める操作であり、これは二つの信号の同期操作に他ならない。
このように、図41の構成の従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、拡散出力信号と逆拡散符号の一方を送信機で遅延させ、受信機ではもう一方の成分を遅延させる同期操作を行い、拡散出力信号の拡散符号cの成分と逆拡散符号cの成分の相互相関を確立した状態にして通信を行う。
次に、図41に示す構成とは異なる参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムとして、第二の公知例を図42に示す(非特許文献3)。
図42に示す形態の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、図41に示した形態と同様に、送信機にのみ設けられたひとつのPNGで発生させるひとつの符号列を拡散符号と逆拡散符号の両方の目的に用い、送信機は拡散出力信号と逆拡散符号とを受信機に向けて送出する。この時、拡散出力信号と逆拡散符号とを異なる周波数帯域のブロードバンド信号にして伝送する。
送信機で発生させた逆拡散符号を拡散出力信号と異なる逆拡散符号に専用の周波数帯域で伝送する伝送メカニズムは、受信機が相互相関の高い送信機からの信号を積極的に利用する目的で設けるものであるため、それは同期装置そのものである。
このように、図42に示す参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、逆拡散符号を拡散出力信号の伝送とは異なる専用の伝送媒体で伝送する同期操作を行い、拡散出力信号の拡散符号cの成分と逆拡散符号cの相互相関を確立した状態にして通信を行う。
横山光雄 「スペクトル拡散通信システム」科学技術出版社、1988年 丸林他「スペクトル拡散通信とその応用」 電子情報通信学会、1999年、P.95〜131 Andre Kesteloot 他 「The ARRL Spread Spectrum Sourcebook」 The American Radio Relay League, Inc.、1997 P8−58〜8−63 米国特許第5,761,238号明細書 特開2000−022593号公報 米国特許第5,774,492号明細書 特開2000−252878号公報
しかし、図40(非特許文献1、及び非特許文献2)に示す構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムは、同期捕捉動作が完了しないと、受信機で同期の取れた逆拡散符号は得られないので、情報伝送を開始できない。
非常に長い不規則信号に対する精密なパターンマッチングという信号解析処理となるこの同期捕捉動作は、単純には拡散符号の非常に長い一周期を構成するビット数の二乗に比例する莫大な回数の積和演算をともなう統計的数値演算処理を必要とするものであり、符号長が数千ビットの場合、全ての符号パターンについてひととおりの相互相関を計算するだけでも数千万回の積和演算を行うこととなり、それには多大の時間が必要となる。また、同期捕捉動作は多数の計算結果の中から同期点として最も高い可能性のある点を選び出す曖昧性を含んだ試行錯誤のプロセスであり、結果によってはそれを最初からふたたびやり直さなければならないこともある、時間のかかるプロセスである。
すなわち、この方式のスペクトル拡散通信システムでは、通信を開始しようとしてから実際に通信を開始できるようになるまでに時間がかかり、通信要求に直ぐに応答することが出来ない。
このように、図40に示す参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムには、通信要求に対する即応性に欠ける課題がある。
また、図40に示す構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムで行われる同期捕捉動作は、伝送媒体からデータを高精度でリアルタイムにサンプルし、それを保持し、多数の繰返し演算操作を限られた時間内に完結させ、パターンや位相などを高精度にリアルタイムで調整する必要性がある。
そのため、前記同期捕捉動作を行う受信機の同期装置は、符号列と同じ長さという大きなメモリ空間と、高速な積和演算器やアナログディジタル変換器(ADC)やディジタルアナログ変換器(DAC)、多ビットのデータを一度に伝送する幅の広いバスやパイプライン処理装置などを有した、大規模な回路資源やソフトウェア資源で構成する装置であるのが一般的である。その結果、この方式の受信機は、この方式以外の通信方式の受信機に比べて装置規模が著しく大きく複雑である。
このように、図40に示すような構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムには、装置が大規模化し複雑化する課題がある。
また、間欠的に発生する通信要求に遅滞なく対応しなければならない用途では、ひとつの通信要求の伝送を終了した後も、いつ発生するかわからない次の通信要求に再び同期捕捉から動作を開始するような無駄な時間をかけることなく即座に対応できるようにする必要がある。
図40に示す構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムでそのような要求に応えるためには、通信システムは送受信機を常に同期状態に保つ必要があるため、伝送すべき情報がないのにもかかわらず、送信機は情報入力信号で変調していない拡散符号を送出し続けるとともに、受信機はその拡散符号を含む信号を入力して相互相関確立状態を保持する同期保持動作を続ける。
この情報を伝送していない期間の伝送信号の送出は、有限な伝送媒体の伝送容量を無駄遣いするばかりでなく、それは同じ伝送媒体を共有して多重伝送を行う他の通信に対して常時無駄なノイズとして働き、その伝送媒体を用いた他の通信に無用な干渉を与えて、各通信のSN比を低下させる要因にもなる。また、その干渉は通信に限らず、その伝送信号を送出する送信機の周囲の機器や人体などにも及ぶものであり、それら周囲の機器や生体に障害を発生させる要因ともなる。
このように、図40に示す参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムには、伝送媒体の伝送容量の浪費と、伝送媒体を共用する他の通信や周囲の機器や生体などに無用な干渉を与える課題がある。
また、前述した間欠的に発生する通信要求に遅滞なく対応しなければならない用途に図40に示す構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムで対応する場合、通信システムは伝送すべき情報がないのにもかかわらず送信機は送信動作を行い、伝送媒体は拡散符号を伝送し、受信機は同期保持動作を行う。その結果、同期保持動作中は送信機も受信機も電力を消費する。
一般に、前記間欠的通信用途では、通信システムは通信要求の発生時に情報を確実に伝えることができる期間だけ通信を行い、その後は次の通信要求が来るまで送信機は動作せず、受信機は間欠的に一時的にだけ受信動作をさせて送信機の情報発信に待機することが望ましい。
これに比べると、図40に示す参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの送信機と受信機とが同期保持動作に消費する電力は無駄な電力と言わざるを得ない。
このように、図40に示す参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムには、間欠的通信用途において同期保持動作に無駄な電力を浪費する課題がある。
一方、伝送媒体で伝送する信号には一般にノイズが重畳する。図41(特許文献1、特許文献2及び特許文献3、非特許文献1、非特許文献2)及び図42(非特許文献3)に示す構成の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの場合、このノイズは拡散出力信号とスペクトル逆拡散用に伝送する拡散符号とに重畳する。スペクトル拡散通信手法では、スペクトル拡散した伝送信号にノイズが重畳しても受信側で行う逆拡散の一連の操作でその影響を抑制することができるが、そのためにはノイズの重畳のない逆拡散符号が必要である。その逆拡散符号に用いる信号にノイズが重畳するこれらの形態のスペクトル拡散通信システムでは、そのノイズの影響を抑制することは出来ないため、逆拡散出力として得られる情報入力信号の成分のSN比は低いものとなる。
また、伝送媒体で伝送する信号には一般にノイズが重畳する。図41(特許文献1、特許文献2及び特許文献3、非特許文献1、非特許文献2)及び図42(非特許文献3)に示す構成の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの場合、このノイズは拡散出力信号とスペクトル逆拡散用に伝送する拡散符号とに重畳する。スペクトル拡散通信手法では、スペクトル拡散した伝送信号にノイズが重畳しても受信側で行う逆拡散の一連の操作でその影響を抑制することができるが、そのためにはノイズの重畳のない逆拡散符号が必要である。その逆拡散符号に用いる信号にノイズが重畳するこれらの形態のスペクトル拡散通信システムでは、そのノイズの影響を抑制することは出来ないため、逆拡散出力として得られる情報入力信号の成分のSN比は低いものとなる。
このように、図41、図42に示す構成の通信システムには共通して、伝送媒体で伝送される信号にノイズが重畳すると受信機で出力される情報入力信号の成分のSN比が低下するという課題があり、また、それは、それらが図40に示した構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムが有する耐ノイズ性がない、あるいはその耐ノイズ性が劣るという課題があることでもある。
また、図42に示す参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムによれば、確かに、即応出来ず大規模な同期装置が必要である図40に示す構成の情報伝送システムを用いずにスペクトル拡散通信は可能となる。
しかし、拡散符号の伝送のために拡散出力信号とは別に信号帯域を必要とし、それが拡散符号という広帯域な信号を伝送する広帯域な伝送チャンネルでなければならない。さらに、この方法で多重通信するためには、拡散出力信号はひとつの伝送チャンネルを共有して伝送できるものの、拡散符号を伝送する広帯域なチャンネルは多重通信のチャンネルごとに必要となり、多重通信システム全体としては著しく広帯域な伝送媒体を必要とする。同じ量の情報を伝送するのにより広い帯域を必要とすることは、伝送媒体の単位帯域幅で伝送できる情報量が少なくなって帯域の活用率が低い。
このように、図42に示す参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムには、多重化しようとすると著しく広帯域な伝送媒体が必要となり、伝送媒体の帯域活用率が低い課題がある。
本発明の目的は、ノイズを含む共通のノイズ信号をスペクトル拡散キャリア及びスペクトル逆拡散キャリアに加工する構成により、積極的な同期装置を必要としないキャリア加工装置及び、そのキャリア加工装置を組み込んだスペクトル拡散オブジェクト伝送システム及び方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係るキャリア加工装置は、オブジェクトを伝送する際に伝送元で必要なスペクトル拡散キャリアと伝送先で必要なスペクトル逆拡散キャリアとをそれぞれ出力するキャリア加工装置であって、ノイズを信号成分として含む不規則性のノイズ信号を出力するノイズ信号供給部と、前記ノイズ信号を前記スペクトル拡散キャリアに加工するスペクトル拡散キャリア加工手段と、前記ノイズ信号を前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するスペクトル逆拡散キャリア加工手段とを含み、前記ノイズ信号供給部は、前記ノイズ信号を前記両キャリア加工手段に共通に供給するものであり、前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とは、前記ノイズ信号を共有することによって前記ノイズ信号を相互相関のとれた不規則性の前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記スペクトル拡散キャリアの値と前記スペクトル逆拡散キャリアの値との積が定数を示す前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアの対を得るものであることを特徴とする。
本発明に係るオブジェクト伝送システムは、スペクトル拡散通信技術を応用してオブジェクトを伝送するオブジェクト伝送システムであって、ノイズを信号成分として含む不規則性のノイズ信号を出力するノイズ信号供給部と、前記ノイズ信号を前記スペクトル拡散キャリアに加工するスペクトル拡散キャリア加工手段と、前記ノイズ信号を前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するスペクトル逆拡散キャリア加工手段とを含み、前記スペクトル拡散キャリアで前記オブジェクトをスペクトル拡散してスペクトル拡散出力オブジェクトを伝送するスペクトル拡散手段と、前記スペクトル逆拡散キャリアで前記スペクトル拡散出力オブジェクトを含む信号から前記オブジェクトの成分をスペクトル逆拡散するスペクトル逆拡散手段とを含み、前記ノイズ信号供給部は、前記ノイズ信号を前記両キャリア加工手段に共通に供給するものであり、前記拡散キャリア加工手段と、前記逆拡散キャリア加工手段とは、前記ノイズ信号を共有することによって前記ノイズ信号を相互相関のとれた不規則性の前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記スペクトル拡散キャリアの値と前記スペクトル逆拡散キャリアの値との積が定数を示す前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアの対を得るものであり、さらに、前記スペクトル拡散手段と前記スペクトル逆拡散手段とを連繋する伝送媒体を有することを特徴とする。
本発明に係るオブジェクト伝送方法は、スペクトル拡散通信技術を応用してオブジェクトを伝送するオブジェクト伝送方法であって、ノイズを信号成分として含む不規則性のノイズ信号を出力する工程と、前記ノイズ信号を共有することによって前記ノイズ信号を相互相関のとれた不規則性の前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記スペクトル拡散キャリアの値と前記スペクトル逆拡散キャリアの値との積が定数を示す前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアの対を得る工程と、前記スペクトル拡散キャリアで前記オブジェクトをスペクトル拡散してスペクトル拡散出力オブジェクトを伝送する工程と、前記スペクトル逆拡散キャリアで前記スペクトル拡散出力オブジェクトを含む信号から前記オブジェクトの成分をスペクトル逆拡散する工程とを実行することを特徴とする。
本発明によれば、スペクトル拡散キャリア加工手段とスペクトル逆拡散キャリア加工手段とが不規則性を有するノイズ信号を共有することによって前記ノイズ信号を相互相関のとれた不規則性の前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記スペクトル拡散キャリアの値と前記スペクトル逆拡散キャリアの値との積が定数を示す前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアの対を得るものであるものであるため、、積極的な同期操作を行うことなく、自由空間に存在する不規則性を有するノイズを用いてスペクトル拡散キャリア及びスペクトル逆拡散キャリアを生成することができる。さらに、耐ノイズ性の高さと即応性とを両立させたオブジェクト伝送システムを提供できる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る情報伝送システムは図1に示すキャリア加工装置を組み込んだ構成であり、参照信号内蔵方式及び参照信号送信方式による情報伝送システムに組み込まれているスペクトル拡散符号を生成するPNGと異なり、構成自体が同期装置を構成するという独自の発想に基づいた参照信号共有方式とも呼べる新たな形態を提供するものである。
スペクトル拡散通信技術は一般的に情報の通信に適用される技術であるため、本発明の実施形態1に係る情報伝送システムも、オブジェクトの一種である情報を伝送するスペクトル拡散情報伝送システムに応用した例に基づいて説明する。前記オブジェクトは伝送する対象物である。ここで言う伝送とは、例えば位置や時間などの物理的に異なる関係にある何らかのものの間で何かを移動させることであり、前記オブジェクトには、例えば、前記情報の他に、エネルギー、或いは単なる信号が含まれる。しかし、本発明の実施形態に係るキャリア加工装置は、その応用がスペクトル拡散情報伝送システムに限られるものではない。本発明の実施形態に係るスペクトル拡散オブジェクト伝送システムの情報以外のオブジェクトの伝送への応用事例については後述する。以下、本発明の実施形態に係るオブジェクト伝送システムの一種であるスペクトル拡散情報伝送システムを本伝送システムと記して説明する。
本伝送システムに組み込まれるキャリア加工装置は、ノイズを信号成分として含むノイズ信号と呼ぶ、共通かつ不規則性を有する対オブジェクト広帯域性を有した信号を共有することによって前記ノイズ信号を相互相関のとれた不規則性のスペクトル拡散キャリア(以下、拡散キャリアと記す)とスペクトル逆拡散キャリア(以下、逆拡散キャリアと記す)に加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記拡散キャリアの値と前記逆拡散キャリアの値との積が定数を示す前記拡散キャリアと前記逆拡散キャリアの対を得るものであって、本発明の実施形態におけるキャリア加工装置を応用した本伝送システムは、前記拡散キャリア及び逆拡散キャリアで、例えば情報信号などのオブジェクトをスペクトル拡散及び逆拡散して伝送することにより、前記参照信号内蔵方式と前記参照信号送信方式が抱える課題を解決するとともに、これらの方式の利点を併せ持ち、且つさらにそれらでは得られない新たな利点を得るように発展させたものである。前記オブジェクトは伝送する対象物を意味するものであって、例えば、従来のスペクトル拡散通信で対象となっていた情報ばかりでなく、エネルギー、或いは単なる信号をも含むものであり、位置や時間などの物理的関係が異なる2点間で伝送すべきものであれば、何れのものであってもよい。これらのオブジェクトの伝送に関しては後述する。
まず、本伝送システムに組み込まれるキャリア加工装置の具体的構成・動作の説明に先立ち、その内容の説明で用いる状態変数について説明する。ここで説明する状態変数は、本発明の実施形態に係るオブジェクト伝送システムで伝送される実体であるオブジェクトの形態を表す関数を指し示している。具体例を用いて説明する。本発明の実施形態に係るオブジェクト伝送システムでは、伝送する実体としてのオブジェクトとして、例えば音声や印刷画像を伝送することが可能である。伝送される前段階での音声は一般的に時間関数としての電気信号による情報として捉え、これを伝送することとなる。したがって、例えば音声の場合、前記オブジェクトの形態は時間関数の状態変数で捉えられる。
また、例えば印刷画像を伝送する場合、伝送される前段階での印刷画像は画像から得られる光の濃淡の平面における分布情報として捉えられるため、前記音声のような時間関数ではなく、光の濃淡が存在する位置の情報であり、例えば印刷画像の場合、前記オブジェクトの形態は位置関数の状態変数で捉えられる。
また、位置関数の状態変数で捉えられるオブジェクトであっても、平面画像の場合には光の濃淡が直交する2軸のXY方向に存在するため、二次元位置関数の状態変数で捉えられる。前記光の濃淡が1軸方向に存在する場合には一次元位置関数の状態変数で捉えられる。前記光の濃淡が直交する3軸XYZ方向に存在する場合には三次元位置関数の状態変数で捉えられる。
このように、伝送される前段階での前記オブジェクトの形態は、時間関数の状態変数で捉えられるものはかりでなく、位置関数の状態変数で捉えられるものもある。後述するように、本発明の実施形態に係るオブジェクト伝送システムでは、伝送される前段階での形態が時間関数の状態変数で捉えられるオブジェクトや、位置関数の状態変数で捉えられるオブジェクトも対象となる。
以下では、理解を容易にするために時間関数の状態変数で捉えられるオブジェクトに絞って説明する。以下の説明では、オブジェクトの形態を捉える時間関数の状態変数を、便宜的に信号と表現することとする。この、以下で用いる信号という表現は、ある状態の連なりを示すもので、例えば、時系列電気信号で言えば、信号波形である。それが時間関数としての電気信号に限定されないとは、前記波形図の横軸が、時間に限らず、位置など内容も次元も任意のものであり、縦軸も、電圧や電流などの電気的状態量に限らず、例えば、光学的な濃淡状態や輝度、音響的圧力など、任意のものでよいことをいう。以下では、特に断らない限り、全ての信号は、時間や電気的状態表現に限定されない、任意の次元の、任意の独立変数uに基づいて変化する関数であるものとする。
これにより、本伝送システムが、時間空間の電気通信への応用ばかりでなく、他の任意の空間や分野で応用できることとなる。
また、電気通信としてのスペクトル拡散通信システムの動作原理は、ある物体の時間空間における電気的状態と、周波数空間における周波数スペクトルの状態とを用いて説明する。それと同様に、本伝送システムの動作原理も、信号とその周波数スペクトルを用いて説明する。
しかし、本伝送システムにおける状態変数は時間関数に限定しないので、以下の説明で用いる周波数空間は、時間関数に対しての周波数空間ではなく、ある信号を表現する状態変数をフーリエ変換して得られる周波数スペクトル密度関数が存在する周波数空間とする。
一般に、フーリエ変換して得られる周波数スペクトル密度関数は複素数となるが、以下では、特に断らない限り、その絶対値を用いた、いわゆるパワースペクトル密度関数を単にスペクトル分布と呼ぶこととする。また、電気通信の応用では、ある周波数領域についてパワースペクトル密度関数を積分したものは、その電気信号のエネルギーに相当する。以下では、例えば、印刷のような電気通信の応用以外の分野も含め、説明上、ある周波数領域についてパワースペクトル密度関数を積分したものを、そのスペクトル成分のエネルギー或いは電力或いはパワーと呼ぶこととする。
次に、図1を用いて本実施形態1に係る本伝送システムの基本構成を説明する。なお、上述したように、この本伝送システムの基本構成は、理解を容易にするために時間関数の状態変数で捉えられるオブジェクトに絞って説明し、位置関数の状態変数で捉えられるオブジェクトの伝送については、その伝送形態が異なるのみであるため、その差異のみを後述する。
本伝送システムは、本実施形態1に係るキャリア加工装置に相当するキャリア加工部1と、スペクトル拡散モジュール(以下、拡散モジュールと記す)3と、スペクトル逆拡散モジュール(以下、逆拡散モジュールと記す)4と、伝送媒体7とで構成する。なお、本明細書の図では、二重丸のシンボルは単なる端子である。
拡散モジュール3は、キャリア加工部1のスペクトル拡散キャリア加工手段(以下、拡散キャリア加工手段と記す)13を含み、これにスペクトル拡散手段(以下、拡散手段と記す)14を加えて構成する。
逆拡散モジュール4は、キャリア加工部1のスペクトル逆拡散キャリア加工手段(以下、逆拡散キャリア加工手段と記す)15を含み、これにスペクトル逆拡散手段(以下、逆拡散手段と記す)16を加えて構成する。
キャリア加工部1は、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに加えて、これらのキャリア加工手段13、15にノイズ信号xを共通に供給するノイズ信号供給部2とで構成する。ノイズ信号供給部2は、素ノイズ信号源10と、ノイズ源12と、伝送媒体11とで構成する。
本伝送システムの主な構成要素は、ノイズ信号供給部2、拡散モジュール3、逆拡散モジュール4である。伝送媒体7、11は適当な任意の伝送媒体である。さらに、本実施形態に係るキャリア加工装置(キャリア加工部)1を本伝送システムに応用した場合、キャリア加工装置1の拡散キャリア加工手段13は、本伝送システムの拡散モジュール3内に組み込まれて、オブジェクトの伝送に必要な拡散キャリアcを出力するように機能し、キャリア加工装置1の逆拡散キャリア加工手段15は、本伝送システムの逆拡散モジュール4内に組み込まれて、オブジェクトの伝送に必要な逆拡散キャリアcを出力するように機能する。
以上の説明では、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とをそれぞれ拡散モジュール3と逆拡散モジュール4の一部分とした構成を示したが、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とを拡散モジュール3や逆拡散モジュール4とは独立した存在として構成しても良いものである。この場合、例えば拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15はノイズ信号供給部2とともにキャリア加工装置(キャリア加工部)を構成する。具体的には、拡散キャリア加工手段13及び逆拡散キャリア加工手段15それぞれがスペクトル拡散やスペクトル逆拡散操作とは別にあらかじめ加工処理を行って拡散キャリア及び逆拡散キャリアを得ておき、そのあらかじめ得ておいた拡散キャリア及び逆拡散キャリアを用いてこれから述べるスペクトル拡散操作やスペクトル逆拡散操作を行う。これは、例えば印刷画像で情報を伝送する場合のように、キャリアの加工作成とオブジェクトの伝送とを異なる時間に独立して行う場合などに用いる。この場合、本実施形態1に係るキャリア加工装置は拡散モジュール3や逆拡散モジュール4とは独立して存在することとなる。その独立したキャリア加工装置は、図1のキャリア加工部1に相当するものであり、ノイズ信号供給部2と、拡散キャリア加工手段13と、逆拡散キャリア加工手段15とを主要部として含むものである。ノイズ信号供給部2と、拡散キャリア加工手段13と、逆拡散キャリア加工手段15との構成及び動作についての説明は、本伝送システムの説明中で行う。
次に、図2に基づいて本伝送システムの概略的な構成及び動作を説明する。
ノイズ信号供給部2の素ノイズ信号源10は、素ノイズ信号xを伝送媒体11に供給する(図2のステップS101)。なお、素ノイズ源10と素ノイズ信号xについては後述する。また、ノイズ源12は、例えばアンテナでノイズxを捕集して伝送媒体11に供給する(図2のステップS102)。なお、ノイズ源12とノイズ信号xの特性についても後述する。
伝送媒体11は、素ノイズ信号源10から供給された素ノイズ信号xとノイズ源12から供給されたノイズxの合計したものを、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とに共通のノイズ信号xとして、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とに伝送する(図2のステップS103)。
拡散モジュール3は、前記共通のノイズ信号xをノイズ信号xとして入力するとともに、オブジェクトを拡散入力オブジェクトaとして入力し、スペクトル拡散出力オブジェクト(以下、拡散出力オブジェクトと記す)sを伝送媒体7に出力する。
ここで、オブジェクトとは拡散モジュールから逆拡散モジュールに伝送する対象の総称である。後述するように、オブジェクトは情報である場合もあるし、特別な情報を表現したものでない単なる繰返し信号の場合もあるし、電力などのエネルギーの場合もある。そのオブジェクトは伝送の過程で様々な異なった形態となり、それぞれ異なった名称で呼ばれる。異なる名称で呼ばれても、その論理的な意味はあくまで変化しない同一のオブジェクトである。本明細書では、単にオブジェクトと呼ぶものは伝送する論理的な対象を指すこととし、特定の部位の状態量を示すものではないものとする。それに対して特定の段階におけるオブジェクトの状態は、例えば拡散入力オブジェクトのように、オブジェクトに接頭辞を付した表現で表すこととする。
前記拡散モジュール3の動作の中で、拡散キャリア加工手段13は、前記ノイズ信号xを入力し、それを拡散キャリアcに加工して拡散手段14に供給する(図2のステップS104)。前記拡散キャリアcは、拡散手段14に入力された拡散入力オブジェクトaをスペクトル拡散するための信号である。
拡散手段14は、前記拡散キャリアcと前記拡散入力オブジェクトaとを入力し、それらを相互に乗じて拡散出力オブジェクトsとする(図2のステップS105)。
伝送媒体7は、前記拡散出力オブジェクトsを逆拡散モジュール4に伝送する。
逆拡散モジュール4は、前記拡散モジュール3と同様に、共通のノイズ信号xをノイズ信号xとして入力するとともに、拡散モジュール3からの拡散出力オブジェクトsをスペクトル逆拡散入力オブジェクト(以下、逆拡散入力オブジェクトと記す)hとして入力し、スペクトル逆拡散出力オブジェクト(以下、逆拡散出力オブジェクトと記す)aを出力する。
前記逆拡散モジュール4の動作の中で、逆拡散キャリア加工手段15は、拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13と同様に、ノイズ信号xを入力し、それを逆拡散キャリアcに加工して逆拡散手段16に供給する(図2のステップS107)。逆拡散キャリアcは、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散入力オブジェクトaの成分をスペクトル逆拡散するための信号である。
逆拡散手段16は、前記逆拡散キャリアcと前記逆拡散入力オブジェクトhとを入力し、それらを乗じて逆拡散出力オブジェクトaとして出力する(図2のステップS106、S108)。この逆拡散出力オブジェクトaは、拡散手段14に入力された拡散入力オブジェクトaと相似するものであり、これによりオブジェクトの伝送が完了することになる。
以上のように、ノイズ信号供給部2は、ノイズ信号xを両キャリア加工手段13、15に共通に供給し、拡散キャリア加工手段13と、逆拡散キャリア加工手段15とは、ノイズ信号xを共有することによって前記ノイズ信号xを相互相関のとれた不規則性(対オブジェト広帯域性を含む)の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアcの値如何に関わらず前記拡散キャリアcの値と前記逆拡散キャリアcの値との積が定数を示す前記拡散キャリアと前記逆拡散キャリアの対を得るものである。前記拡散キャリアcの値と前記逆拡散キャリアcの値との積が前記値の如何に拘わらず定数を示す前記拡散キャリアと前記逆拡散キャリアの対を得ることについては後述する。前記相互相関の取れたとは、従来のように同期装置による積極的な操作で得るものではなく、ノイズ信号xを共有することによって得るものである。
ここで、ノイズ信号xを両キャリア加工手段13、15が共有することに関して説明する。ノイズ信号xWは、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共通に配置された1台のノイズ信号供給部2から共有される信号である。そのノイズ信号xは、ノイズ信号供給部2に含まれる素ノイズ信号源によって出力されるものであるが、そのノイズ信号xを両キャリア加工手段13,15までに伝送する際には、そのノイズ信号xには、ノイズ信号供給部2の内部の電気回路から発生するノイズや素ノイズ信号源から両キャリア加工手段13,15までに伝送する際に重畳するノイズなどが重畳するものである。ノイズ信号供給部2は、前記各種のノイズが重畳した後で前記ノイズ信号xを両キャリア加工手段13,15に共通に供給している。言わば、本発明の実施形態では、前記各種のノイズを信号成分として取り込むために、前記各種のノイズが前記ノイズ信号xに重畳した後の時点、すなわちノイズ信号供給部2がノイズ信号xを両キャリア加工手段13,15に出力する段階、両キャリア加工手段13,15から見れば、ノイズ信号xを入力する段階で、ノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共有させている。
拡散モジュールに向かう信号と逆拡散モジュールに向かう信号は同一の信号なので、拡散モジュールに向かう信号と逆拡散モジュールに向かう信号間の相互相関は最大値をとる状態である。すなわち拡散モジュールと逆拡散モジュールとは相互相関が高いノイズ信号を入力することができる。なお、本発明の実施形態では、前記相互相関は、ノイズ信号を共有しているため、拡散モジュールに向かう信号と逆拡散モジュールに向かう信号との自己相関を取ることとなる。
このように、本発明の実施形態においては、拡散モジュールと逆拡散モジュールとはノイズ信号を共有して共通の信号にすることにより、拡散キャリアと逆拡散キャリアの加工材料として入力する信号を相互相関の高い状態に維持する。
従来のスペクトル拡散通信では、二値の拡散符号と二値の逆拡散符号とを用いているから、二値の拡散符号の値を“1”に設定し、二値の逆拡散符号の値をその逆数に設定し、それらの値の積を“1”という定数に設定していた。
前記不規則信号列同士が乗算すると定数となる性質を利用するためには、前記拡散符号と前記逆拡散符号とを同期させて使う必要があり、従来のスパクトル拡散通信では、送信側と受信側で同じ不規則信号を用いる実質的な方法として、受信側で逆拡散符号に用いる不規則信号を送信側から送信するか、受信側で同じ不規則信号を用意して同期を取って使うようにしている。
そのうち受信側で逆拡散符号に用いる不規則信号を送信側から送信する方法では送信機側が発生させる不規則信号を送受信機で共有する構成をとるが、受信側で逆拡散符号に用いる不規則信号に送信側から伝送する途中でノイズが重畳すると、受信機は送信機が拡散時に使った不規則信号とは違う不規則信号を逆拡散符号に使うことになり、拡散符号と逆拡散符号との同一性(相互相関)が損なわれ、結果として通信のSNは悪くなる。
したがって、ひとつの擬似雑音信号を送信機と受信機とで共有する従来のスペクトル拡散通信システムの構成は、受信側で逆拡散符号に用いる不規則信号に送信側から伝送する途中で重畳するノイズの影響を抑制する能力を有していない。
それに対して本発明の実施形態では、擬似雑音信号をも含めたノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアとに加工することを前提として、ノイズ信号xを両キャリア加工手段13、15に共有させている。この本発明の実施形態によれば、前記ノイズ信号にノイズが重畳しても、そのノイズは信号のひとつの成分として前記ノイズ信号に取り込まれて、両キャリアの加工時の基となるノイズ信号の相互相関性を崩すことにはならず、前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とがそれぞれ生成した拡散キャリアと逆拡散キャリアとは相互相関性を維持することとなり、スペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとを強制的に同期させる必要がなく、同期装置が不要となる。しかも、ノイズ信号に重畳したノイズも信号成分として両キャリアに加工され、ノイズの重畳による影響を回避できる。
前記ノイズ信号を共有するにあたって、例えば、電気通信での実際の応用では電気信号は有限の速度で伝搬するのであり、ノイズ信号供給部2から拡散キャリア加工手段13まで及び逆拡散キャリア加工手段15までの距離が異なる実応用環境の一般的な条件下では、ノイズ信号供給部2が供給する同一のノイズ信号xを用いてもノイズ信号xとノイズ信号xとは時間的な差(位置の相違による時間的なずれ)を有したものとなる。すなわち、位置の相違によって生じる到達に至る距離に相違がある場合に、両信号は時間差を伴うことになる。この時、その両信号間の相互相関の値は、全く同一の信号の相互相関の値に対して、前記両信号間の時間差が大きくなるほど低いものとなる。
このように、実際の応用環境においては、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2が供給する同一のノイズ信号xの供給を受けても、ノイズ信号xとノイズ信号xとは厳密には相互相関の低下はあっても公差の許容範囲内であれば実用上問題とはならない。しかしそのようなノイズ信号xとノイズ信号xも、例えば前記電気通信の場合には、ノイズ信号供給部2と拡散キャリア加工手段13及び逆拡散キャリア加工手段15との距離差をある規定の範囲に制限することにより、実用上は時間差がないものと同一に取り扱えるようになり、それらの相互相関は、理想的に時間差がない場合に比べれば低い値ではあるが、ある程度の高さの最大値を示すようになる。
このように、本明細書で言う拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段とがノイズ信号xを共有するとは、ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアとに加工することを前提とした場合を意味するものであり、実際の応用環境において発生するノイズ信号xとノイズ信号xとの間の差をある規定の範囲以内にして実用上同一とみなせなくなるまでを差の限界とし、その結果として相互相関がある規定以上の高い状態を維持するようにすることである。
また、前記既定以上の状態については、拡散キャリア加工手段13が加工した拡散キャリアcと逆拡散キャリア加工手段15が加工した逆拡散キャリアcとの相互相関値が拡散入力オブジェクトaの伝送に支障を与えない許容値に基づいて個々に決定されるものであり、一義的に決定されるものではない。前記既定以上の状態の設定は、例えば従来において情報伝送を行う場合に送信元と受信先との距離などに応じて送信パワーを設定する場合と同様に一義的に決定できないのと同様である。
次に、本伝送システム各部の詳細な動作について、まずオブジェクト伝送の原理を説明し、続いて拡散キャリアと逆拡散キャリアの供給動作を説明する。
オブジェクト伝送の原理とは、拡散モジュール3に入力される拡散入力オブジェクトaを、オブジェクト伝送出力である逆拡散モジュール4の逆拡散出力オブジェクトaに相似形で出力させるメカニズムである。
また、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの供給動作は、ノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に共通に供給し、ノイズ信号xを共有することによってノイズ信号を相互相関のとれた不規則性の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記拡散キャリアcの値と前記逆拡散キャリアcの値との積が定数を示す前記拡散キャリアcと前記逆拡散キャリアcの対を得て、それらの拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとを、拡散手段14と逆拡散手段16にそれぞれ供給するメカニズムである。
本伝送システムは広い分野で応用が可能なものであるが、実際の応用では、現実の応用環境それぞれに特有の特性に合わせて、構成各部に何らかの特性補償などを必要とする動作条件が発生する。
例えば、リアルタイム信号処理を用いる電気通信の応用では、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15で信号処理回路や伝送媒体の伝搬遅延を補償する必要が生じる場合があるが、バッチ処理による印刷画像を用いたオブジェクト伝送の応用では、そのようなデータ処理時間の補償は必要ないこともある。
ここでは、本伝送システムの応用全般に共通する動作として、理想的な環境条件での動作を説明することとし、個々の応用分野において考慮する必要のある諸条件は後述する。
まず、オブジェクトの伝送原理について、拡散モジュール3の動作から説明する。拡散モジュール3には、拡散入力オブジェクトaが入力される。拡散入力オブジェクトaは本伝送システムの目的である伝送の具体的対象である。その拡散入力オブジェクトaは、規定する周波数以下の制限された周波数帯域にスペクトルが分布する信号とする。これは、従来のスペクトル拡散通信システムにおいて、スペクトル拡散される情報入力信号の場合と同様である。
拡散入力オブジェクトaを制限された周波数帯域にスペクトルが分布する信号とするとは、例えば、一次キャリアを情報で一次変調した信号を拡散入力オブジェクトaとすることである。前記一次キャリアには、例えば、固定の単一周波数の正弦波を用い、一次変調には、例えば、BPSK(Biphase Shift Keying :二相位相シフトキーイング)を用いる。
このような拡散入力オブジェクトaは、一般に、ある連続した範囲の連続した値をとるアナログ信号である。なお、一次変調の具体的構成には本発明の実施形態の特徴がないため、記述は省略してある。
以下の本伝送システムの説明では、各種信号の占有周波数帯域幅が示される場合、特に断らない限り、その場合のシステム構成に用いる拡散入力オブジェクトaの占有周波数帯域幅を評価の基準とし、例えば、広帯域信号とは、拡散入力オブジェクトaの占有周波数帯域幅に対して広い占有周波数帯域幅の信号であることを示すものとする。
入力された拡散入力オブジェクトaは、拡散手段14に供給される。拡散手段14は、拡散入力オブジェクトaを、拡散キャリアcと乗じて、拡散出力オブジェクトsとする。
この操作は次式で示される。
s(u)=a(u)*c(u) (数式1)
拡散入力オブジェクトaは、スペクトルが分布する帯域の上限周波数が制限された信号である。一方、拡散キャリアcは、拡散入力オブジェクトaの帯域の上限周波数に比べて、はるかに高い周波数までの周波数帯域にスペクトルが分布する、任意の値をとる信号とする(以下、この拡散入力オブジェクトaの帯域の上限周波数に比べて、はるかに高い周波数までの周波数帯域にスペクトルが分布する状態を、対オブジェクト広帯域性と記す)。
これは、従来のスペクトル拡散通信システムが情報入力信号の占有周波数帯域幅に対してはるかに広い占有周波数帯域幅の信号を拡散符号に用いることと同様である。また、従来のスペクトル拡散通信システムでは、拡散符号と逆拡散符号に絶対値がゼロでなく等しい正負の二値をとる二値信号が用いられている。
しかし、本伝送システムでは、拡散キャリアと逆拡散キャリアは任意の値をとるものでよいので、アナログ信号を用いてよいものである。拡散キャリアの具体的な加工方法は後述する。
そのような拡散キャリアcを対オブジェクト広帯域性の信号にするとは、例えば、拡散キャリアcの信号を、拡散入力オブジェクトaの状態の変化に対して、高変化率及び高頻度に不規則性をもって変化するものにすることである。
前記高変化率及び高頻度に不規則性をもった変化とは、一次変調した前記拡散入力オブジェクトaの一次キャリアの繰返し周期に対して、例えば、数十分の一から数千分の一の期間で、それまでの状態が、それとは無関係な、または見かけ上無関係といえる別な状態となる変化である。
また、不規則性とは、信号の変化パターンに法則性や規則性がない、または見かけ上無いことで、ある状態の次の状態が、それまでとは無関係で予測できない、または見かけ上無関係で予測できないと言える別の状態となる性質である。具体的には、例えば、一次変調した前記拡散入力オブジェクトaの一次キャリアの繰返し周期程度かそれ以上の区間について自己相関がまったく無い、または実用上無いとみなせる低い値を示す性質である。以下ではこの性質を、不規則性、または不規則様と記す。
次式は、拡散キャリアcの自己相関関数RCT−CTの例を示したものである。
自己相関がまったく無い性質とは、その信号の自己相関関数が、τ=0で最大値となり、τ≠0ではゼロである、グラフの形状がインパルスのものとなることを言うものとする。
CT−CT(τ)=lim〔(2*L)−1*∫{c(w)*c(w−τ)}dw〕 (数式2)
ただし、∫dwは、変数wについての−Lから+L(ただし、L>0)の区間の定積分を示すものとし、lim〔 〕は、カッコ内の関数について、Lを無限大にする極限値を示すものとする。
数式2では積分区間が無限に広いものとしているが、被積分関数が前記高変化率に高頻度に変化する信号の場合、実用上は、一次変調した前記拡散入力オブジェクトaの一次キャリアの繰返し周期程度かそれ以上の長さの区間であれば、無限大の領域と等価とみなすことが出来るものである。
また、前記不規則性には、全く周期性も法則性もない完全に不規則な信号だけでなく、例えば、疑似ノイズのような、ある法則で発生させて周期性を有した信号でも、ある条件下では完全に不規則と見なせるものも含むものである。
完全に不規則と見なせる関数の自己相関関数は、τ=0で最大値となり、ゼロ近傍のτについては、絶対値が増加するにつれて自己相関関数の絶対値はゼロに向かって急激に減少し、0とその近傍以外のτについての自己相関関数の値は、ゼロ近傍のτに対する自己相関関数の値に比べて絶対値が著しく小さくほぼゼロとなる特性を示すものとなる。
理想的な動作の説明においては、不規則性という性質は、完全に不規則なもの、すなわち、その自己相関関数は、τ=0で最大値を示し、それ以外のτに対してはゼロであるとして説明する。また、本明細書では、この完全に不規則な関数の自己相関数が示す状態を、自己相関がない、あるいは自己相関がゼロと記す。
ところで、拡散手段14が行う数式1に示す乗算操作は、算術的には拡散キャリアcと拡散入力オブジェクトaとを乗算する操作であり、電気通信上は、拡散キャリアcを拡散入力オブジェクトaで平衡変調する、いわゆる変調操作である。
この操作でスペクトルが分布する周波数帯域が制限された拡散入力オブジェクトaと、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリアcとを乗ずると、拡散キャリアcを構成する無数の線状スペクトルの一つ一つが、そのスペクトルの周りに拡散入力オブジェクトaのスペクトルの広がりを持つようになり、結果として、拡散キャリアcのスペクトルの広がりを持った信号と見なせる拡散出力オブジェクトsが出力される。
言い換えると、拡散入力オブジェクトaは、拡散キャリアcのスペクトル程度の広がりにスペクトルが拡散され、それが拡散出力オブジェクトsとして出力される。
このような拡散手段14は乗算機能要素であり、拡散キャリアもオブジェクトもアナログ信号でよいので、拡散手段14には、具体的には、例えば、アナログ乗算器や二重平衡変調器(DBM:Double Balanced Mixer)を用いる。
拡散モジュール3は、拡散出力オブジェクトsを逆拡散モジュール4に向けて伝送媒体7に出力する。
続いて、伝送媒体7について説明する。伝送媒体7は、拡散モジュール3から出力される拡散出力オブジェクトsを逆拡散モジュール4に伝送する媒体である。
従来のスペクトル拡散通信技術は、主として無線通信で用いられてきた。また、従来のスペクトル拡散通信技術は、音波を用いた水中の通信に用いられることも知られている。これらの場合、伝送媒体7は無線電波や音波の伝搬空間である。
本伝送システムも、スペクトル拡散通信技術の一種として、無線通信や水中の音波通信に応用することが出来るので、伝送媒体7は無線電波や音波の伝搬空間でも良いものである。
しかし、本伝送システムはそれらへの応用のみならず、多様な伝送媒体でのオブジェクト伝送に適用可能なものである。本伝送システムは、例えば、既存の他の目的に設けたオブジェクトや状態や物質やエネルギーの供給路を用いたオブジェクト伝送にも用いることができるものである。これは、例えば、装置間や装置内の情報、エネルギーの伝送や保安の目的で設けた既存の電気配線、灯火の光、液体やガスの圧力状態などが本来とは異なる目的の伝送媒体となることである。また、本伝送システムは、例えば、電気的導体ではありながらも、いわゆる電気回路要素ではない物体を用いた情報伝送にも用いることができるものである。この場合、例えば、建築物の構造体をなす鉄骨や、車両の骨格や外殻、圧力容器や配管、線路や鋼索、機器筐体構造が伝送媒体となる。
また、本伝送システムは、例えば、一般的には電気的エネルギーの輻射やある周波数帯域への集中を伴うことを好まないオブジェクトの伝送分野への応用も可能なものである。この場合、例えば、人体が伝送媒体となる。さらに、本伝送システムは、電気通信への応用ばかりでなく、例えば、印刷の分野への応用も可能なものである。このように、伝送媒体7には電気信号の伝送媒体に限らず、任意の適当なものを用いてよいものである。これらの応用例については幾つかの例を挙げて後述する。
拡散モジュール3から出力される拡散出力オブジェクトsは、伝送媒体7を介して逆拡散モジュール4に伝送される。理想的な環境条件から、前記伝送では遅延などの位相変化も減衰も生じないものとする。
続いて、逆拡散モジュール4の動作を説明する。逆拡散モジュール4は、拡散モジュール3から逆拡散モジュール4へ拡散出力オブジェクトsを伝送する伝送媒体7上の信号を逆拡散入力オブジェクトhとして入力する。
理想的な動作環境では、前記逆拡散入力オブジェクトhは前記拡散出力オブジェクトsなので、それらの関係は次の通りである。
h(u)=s(u) (数式3)
逆拡散モジュール4は、逆拡散手段16で、次式で示すように、前記逆拡散入力オブジェクトhを逆拡散キャリアcとを乗じて、逆拡散出力オブジェクトaとする。
(u)=h(u)*c(u) (数式4)
ここで、任意のuに対応する拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、乗ずるとゼロで無いある規定の定数kとなる組合せの一対の信号とする。
以下では、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記拡散キャリアcの値と前記逆拡散キャリアcの値との積が定数を示す関係を対をなす関係と記す。そして対をなす関係の組合せの一対の信号を、対の信号と記す。この関係を下式に示す。
(u)*c(u)=k (≠0、定数) (数式5)
定数kはゼロ以外の任意の値でよく、正負は問わないが、以下では正の値であるものとして説明する。
逆拡散キャリアcは拡散キャリアcと同様に対オブジェクト広帯域性を有した信号とする。これもまた、従来のスペクトル拡散通信システムが情報入力信号の占有周波数帯域幅に対してはるかに広い占有周波数帯域幅の信号を逆拡散符号に用いることと同様である。また、従来のスペクトル拡散通信システムでは、拡散符号と逆拡散符号に絶対値がゼロでなく等しい正負の二値をとる二値信号が用いられている。しかし、既述したように、本伝送システムでは、拡散キャリアと逆拡散キャリアは任意の値をとるものでよいので、アナログ信号を用いてよいものである。
そのような逆拡散キャリアcを対オブジェクト広帯域性の信号にするとは、例えば、拡散キャリアcと同様に、拡散入力オブジェクトaの状態の変化に対して、高変化率及び高頻度に不規則性をもって変化するものにすることである。逆拡散キャリアcの具体的な加工方法は後述する。
一方、逆拡散手段16が行う数式4に示す乗算操作は、拡散モジュール3の拡散手段14と同様に、算術的には乗算操作であり、電気通信上は復調操作である。このような逆拡散手段16の乗算操作には、逆拡散キャリアcもアナログ信号でよいので、具体的には、例えば、アナログ乗算器や二重平衡変調器(DBM)を用いる。
拡散モジュール3の拡散手段14と逆拡散モジュール4の逆拡散手段16で行う操作を、乗算機能要素を用いたいわゆる平衡変調とその復調として説明したが、拡散手段14と逆拡散手段16に用いる機能要素は算術的な乗算機能に限るものではないものである。
拡散手段14と逆拡散手段16に用いる機能要素は、例えば、反転増幅器とアナログスイッチを用いて、拡散入力オブジェクトや逆拡散入力オブジェクトに絶対値がゼロで無く等しい正負の二値の拡散キャリアや逆拡散キャリアを乗ずるのと等価な従来より知られている簡易な構成としても良いものである。ただし、ここでは、拡散手段14と逆拡散手段16に用いる機能要素を算術的な乗算器とし、拡散操作と逆拡散操作を平衡変調として説明する。
数式4は、数式3及び数式1を適用すると、次のように展開できる。
(u)=s(u)*c(u)
=a(u)*c(u)*c(u) (数式6)
さらに、この数式6に数式5を適用すると、逆拡散出力オブジェクトaは次のように示される。
(u)=a(u)*k (数式7)
数式7の右辺は、拡散モジュール3が伝送しようとした拡散入力オブジェクトaに比例の関係にあることを示しており、この関係の成分が連なった信号は、波形パターンが拡散入力オブジェクトaのパターンと相似の形状となる。
この逆拡散モジュールで行う逆拡散操作で逆拡散出力オブジェクトaに拡散モジュール3が入力した拡散入力オブジェクトaと相似の形状のパターンを得たことをもって、オブジェクトの伝送を成就したとする。
このように、本伝送システムの構成によれば、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに数式5の特性を与えることにより、伝送過程で不規則様な状態にした拡散入力オブジェクトaを、もとの波形に相似の状態に復元して逆拡散出力オブジェクトaとして出力し、オブジェクトを伝送できるものである。
このように、本伝送システムによるオブジェクトの伝送原理は、制限された占有周波数帯域の拡散入力オブジェクトに対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリアを乗じて拡散入力オブジェクトのスペクトルを拡散した拡散出力オブジェクトを伝送媒体で伝送し、前記伝送媒体から受信した信号に拡散キャリアと対の信号である対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ逆拡散キャリアを乗ずる操作で拡散入力オブジェクトの成分を元の制限された占有周波数帯域にスペクトルが分布する状態に戻し、オブジェクトの伝送を行うものである。この動作は、従来のスペクトル拡散通信の動作と同様に、スペクトル拡散通信動作である。
続いて、キャリア加工部1による拡散キャリアと逆拡散キャリアの供給動作を説明する。
本伝送システムが伝送するオブジェクトをスペクトル拡散及びスペクトル逆拡散するために用いる拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、既述したように、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ、乗ずるとゼロで無い規定の定数となる組合せの対をなす信号とする。
このとき、前記拡散キャリアcと前記逆拡散キャリアcは任意の値をとるものでよく、そのパターンも任意でよいものである。すなわち、前記拡散キャリアcと前記逆拡散キャリアcは、完全に不規則と言われているホワイトノイズのようなアナログ信号でよいものである。
従来のスペクトル拡散情報通信システムは、拡散符号と逆拡散符号に、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ絶対値がゼロでなく等しい正負の二値のPN符号を用いる。
キャリア加工部1は、そのような二値信号はもちろん、その他の任意の二値を取る対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ信号、あるいは任意の三値以上の多値の離散値を取る対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ信号も拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに用いて良いものである。また、同じ伝送媒体7で同時に行う複数の異なるオブジェクトの伝送では、互いに干渉しないために、使用する拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの対は単に異なるパターンにするだけでなく、異なるオブジェクトの伝送が用いる拡散キャリア相互間、および逆拡散キャリア相互間では相互相関がないものとする。
拡散キャリアと逆拡散キャリアの供給動作では、これらの要求を全て満足する拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成して対応する拡散手段と逆拡散手段に供給する。すなわち、拡散キャリアと逆拡散キャリアの供給動作は、相互相関がない多数のパターンを有した、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ、相互に乗ずるとゼロで無い規定の定数となる対をなす拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成して対応する拡散手段と逆拡散手段に供給するものである。
拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの供給動作は、ノイズ信号供給部2で、素ノイズ信号源10が伝送媒体11に素ノイズ信号xを供給することから始まる。素ノイズ信号xは、自由空間に存在する対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ不規則信号、アナログ信号、二値或いは多値符号列又はこれらを組み合わせた信号、自由空間内に存在するノイズ、伝送媒体に混入するノイズ、ノイズ様の信号又はこれらを組み合わせた信号などである。ここに、ノイズ様の信号とはノイズに類する信号である。
前記伝送媒体11は、供給された素ノイズ信号xを、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に共通のノイズ信号xとして伝送する。
拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、前記ノイズ信号xを共有し、キャリア加工部1の伝送媒体11よりそれぞれノイズ信号x、xとして入力する。
前記伝送媒体11による伝送は、理想的な環境なので、ノイズ信号xはそのままノイズ信号x、xとなる。そのままとは、例えば、位相差の発生や減衰を受けることのない、全く同一のものであることを言うものとする。その時のx、x、xの関係は次の通りである。
(u)=x(u) (数式8)
(u)=x(u) (数式9)
すなわち、ノイズ信号供給部2から拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に入力するノイズ信号x、xは、前記伝送媒体11が拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に対して共通に供給したノイズ信号xと同一であり、それは、素ノイズ信号源10が前記伝送媒体11に供給した素ノイズ信号xとも同一である。
その結果、素ノイズ信号源10が前記伝送媒体11に供給した素ノイズ信号xは対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつので、ノイズ信号x、x、xもまた対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつものとなる。
上記のように、伝送先の信号が対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質になる伝送のことを、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質を継承する伝送と記す。
キャリア加工部1の伝送媒体11は、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質を継承する伝送により、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号x、xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給する。
キャリア加工部1の拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、このノイズ信号x、xを、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工材料として入力する。
拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、任意の入力に対して一意な値を出力する、いわゆる写像変換操作を行う手段を有する。その写像変換を行う手段は数学的には関数で表現することが出来、写像変換を表す関数をf、gと置くと、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15の動作は次式で示される。
(u)=f(x(u)) (数式10)
(u)=g(x(u)) (数式11)
その写像変換f、gには、例えば任意の単調変化する関数を用い、その例を以下に示す。
f(x)=x+1 (ただし、x≧0)
=x−1 (ただし、x<0) (数式12)
g(x)=1/(x+1) (ただし、x≧0)
=1/(x−1) (ただし、x<0) (数式13)
数式12および数式13の変換によれば、任意の入力の値に対して、出力は一意に決まる。
このような変換の入出力信号は、変化の程度は異なっても、何らかの因果関係にある。すなわち、出力にある変化が発生する時、出力のその変化に対応して、その変化の原因である何らかの変化が入力に存在する。
その時、出力に現れる状態は、その出力を一意に決定した入力の値に対応するので、入力が次にどんな値をとるか、それまでとは全く無関係で予測できない不規則性を有するものであると、出力は、入力とは異なる値を取るものの、入力と同じように、次の値がそれまでとは全く無関係で予測できない不規則性をもつものとなる。
すなわち、前記写像変換によって、入力した不規則性をもつ信号は、別の変化パターンの不規則性をもつ信号となって出力される。
このように、任意の入力値に対して出力値が一意に決まる変換によれば、不規則性を有する入力信号を、入力信号の変化に対応した別の変化パターンの不規則性の信号に加工できるものである。以下では、不規則性の入力信号を入力信号の変化に対応した別の変化パターンの不規則性の信号に加工することを、不規則性を継承して加工すると記す。
キャリア加工部1の拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、加工材料として入力するノイズ信号x、xの不規則性を継承する加工により、不規則性をもつ拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを作成する。
このように、前記写像変換は加工材料として入力するノイズ信号x、xの不規則性を継承する加工なので、その加工を用いれば、自己相関が無いノイズ信号から、入力したノイズ信号とは異なったパターンの自己相関が無い信号を得ることが出来るものである。すなわち、前記写像変換を行う拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15によれば、自己相関が無いノイズ信号x、xから、自己相関が無い拡散キャリアcと逆拡散キャリアcが得られることとなる。
数式2で示される自己相関関数の形は、自己相関が無い関数においては、τ=0でのみ最大値となり、τ≠0では常にゼロの、インパルス形状のものとなる。
ウィナーの定理(Wiener Theorem)によれば、不規則過程の電力スペクトル密度分布関数は、その不規則過程の自己相関関数のフーリエ変換で与えられる。このフーリエ変換については、文献:高速フーリエ変換pp7(E. Oran Bringham著、宮川・今井共訳、科学技術出版社刊)、及び不規則信号論pp86(Y. W. Lee著、宮川・今井共訳、東京大学出版会刊)に記載されている。
前述したように、ノイズ信号x、xと拡散キャリアc及び逆拡散キャリアcは、それぞれ自己相関が無い不規則過程なので、その自己相関関数はいずれもインパルス形状である。上記の定理により前記ノイズ信号x、x、拡散キャリアc、及び逆拡散キャリアcの電力スペクトル密度はそのインパルス形状の関数のフーリエ変換で与えられる。ここで、インパルス形状の関数のフーリエ変換は、一定のレベルが無限に広がる関数であるから、前記ノイズ信号x、x、拡散キャリアc、及び逆拡散キャリアcの電力スペクトル密度分布関数は無限に広く一様なものといえる。これは、ノイズ信号x、xが素ノイズ信号の性質を継承する伝送によって対オブジェクト広帯域性を有した信号であったのに加え、それを不規則性が継承される加工をした拡散キャリアc、及び逆拡散キャリアcもまた対オブジェクト広帯域性を有した信号となることを示している。
このように、任意の入力値に対して出力値が一意に決まる変換で、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号x、xに不規則性を継承する加工を行うことにより、その加工出力である拡散キャリアc及び逆拡散キャリアcを対オブジェクト広帯域性を有したものとすることが出来るものである。以下では、不規則性を継承する加工によって、対オブジェクト広帯域性の信号を加工して、その出力も対オブジェクト広帯域性を有した信号とすることを、対オブジェクト広帯域性を継承する加工と記す。なお、本伝送システムの説明で用いる広帯域性という表現は、単にある狭い領域にスペクトル分布が制限された拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域に対してスペクトル分布領域がはるかに広いと言うばかりでなく、ここで示したように、自己相関がない、あるいは実用上自己相関がないと見なせるだけ著しく低い自己相関の不規則様な信号であることも意味するものである。
キャリア加工部1は、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号x、xに、不規則性と対オブジェクト広帯域性を継承する加工を行うことにより、対オブジェクト広帯域性及び不規則性をもつ拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを供給するものである。
次に、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15で行う、任意の入力値に対して出力値が一意に決まる変換は、任意の同一の入力に対して、数式5の条件が成立するように行うという点について説明する。
これは、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcについて、逆拡散手段16で逆拡散入力オブジェクトhと逆拡散キャリアcとが乗じられる時、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散キャリアcの成分と、逆拡散キャリアcは、それぞれの信号の流れ方向のどの点においても、数式5に示した対をなす信号となる条件を満足するようにするためのものである。
理想的な動作環境では、前記逆拡散入力オブジェクトh中の拡散キャリアcの成分は、拡散キャリア加工手段13の拡散キャリアcと同一であり、前記逆拡散入力オブジェクトhと乗ずる逆拡散キャリアcと前記拡散キャリアcとは、共通のノイズ信号xから供給された同一とみなせる共通のノイズ信号x、xを加工して作成した信号である。
このとき、数式10および数式11で示した関数fとgが、任意の値を取るwについて数式14を満足するので、wの代わりに同一とみなせる共通のノイズ信号x、xを用いた数式15も成り立つ。
f(w)*g(w)=k (数式14)
f(x(u))*g(x(u))=k (数式15)
同一のノイズ信号x、xからこの条件を満足し不規則性と対オブジェクト広帯域性を継承する加工関数fとgを用いて作成された拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、不規則性と対オブジェクト広帯域性に加え、数式5に示した対をなす信号となる条件を満足するものとなる。既述した数式12および数式13は、この変換関数の例である。
このように、拡散キャリアと逆拡散キャリアの供給動作は、素ノイズ信号源10が供給する対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ素ノイズ信号xを、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に対して、対オブジェクト広帯域性で不規則性を継承する伝送でそれぞれに共通のノイズ信号xとして供給するとともに、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15が、前記ノイズ信号xをノイズ信号x、xとして入力し、その入力した信号を任意の同一の入力について出力値が一意に決まり対オブジェクト広帯域性と不規則性を継承する変換で数式5の条件が成立する対をなすの拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工するものである。なお、相互相関がない複数のパターンの拡散キャリアと逆拡散キャリアの作成方法は後述する。
続いて、ノイズ信号供給部2について説明する。まず、ノイズ信号xと素ノイズ信号xについて説明する。
既述したように、キャリア加工部1は、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを供給する。その拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの対オブジェクト広帯域性で不規則性を持つ特性は、拡散キャリア加工部と逆拡散キャリア加工部の加工特性を、加工材料とするノイズ信号x、xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性を継承することによって得る。そのため、ノイズ信号x、xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ必要がある。よって、キャリア加工部1は、拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段に対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号x、xを供給する。
さらに、ノイズ信号x、xの対オブジェクト広帯域性で不規則性を持つ特性は、伝送媒体11の伝送特性を、伝送対象であるノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性を継承するものにすることによって得る。そのため、ノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ必要がある。よって、キャリア加工部1が取り扱うノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ。
ノイズ信号x、x、xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性という条件を満たせば、取るべき値はまったく任意の信号でよいものである。すなわち、ノイズ信号x、x、xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ、任意の値をとるアナログ信号で良いものである。
ノイズ信号xは素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xが源である。ノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性は、素ノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性から得る。そのため、素ノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性を有する必要がある。よって、キャリア加工部1が取り扱う素ノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性を有するものとする。
また、素ノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性という条件を満たせば、取るべき値はまったく任意の信号でよいものである。すなわち、素ノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ、任意の値をとるアナログ信号でよいものである。
ノイズ信号x、x、xが任意の値を取る全くの不規則性をもつ信号でよいので、ノイズ信号xとなる信号を供給する素ノイズ信号源10を複数設け、それらが供給する複数の素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)を適当に組合わせたものをノイズ信号xとしても良いものである。
適当に組み合わせるとは、複数の素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)を何らかの方法、例えば、算術演算や論理演算、関係演算、あるいはそれらを組み合わせる方法でひとつのノイズ信号xに合成することである。
例えば、電気信号を用いた電気通信の場合、不規則性をもつ電気信号を供給する複数の素ノイズ信号源10と電線を用いた伝送媒体11でノイズ信号供給部2を構成し、それらからの素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)を伝送媒体11に同時に出力して、伝送媒体11上で前記素ノイズ信号を互いに重畳させてひとつのノイズ信号xとして拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給する動作がそれに相当する。
その場合、ノイズ信号xがN個の素ノイズ信号源10からの素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)を組み合わせたノイズ信号xは以下に示される。
(u)=ΣNE{xEi(u)} (数式16)
ただし、ΣNE{ }は、{ }内の1からN番目の要素を加算で合計することを示す。
複数の素ノイズ信号源10を設け、複数の素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)を適当に組み合わせてノイズ信号xを供給する場合、どのような組合せ方法を用いるかは任意である。また、全ての素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)が対オブジェクト広帯域性でなくとも、あるいは、不規則性をもつものでなくとも良いものである。ただし、結果として得られるノイズ信号xは対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつことが必要である。また、この時、ノイズ信号xは任意の値を取る全く不規則性をもつ信号でよいので、複数の素ノイズ信号源10が供給する複数の素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)相互間には、同期などの関係は何も要求されない。
ここでは、複数の素ノイズ信号xEi(i=1、2、…N)は、伝送媒体11の特性により互いに重畳して、算術的な加算で合計されるものとして説明する。
次に、具体的な素ノイズ信号源10について説明する。素ノイズ信号xは、全く不規則な信号でよいので、例えば、天然のノイズでも良いものである。ここで言う天然のノイズとは、例えば、電気通信の応用の場合、抵抗体や真空管、ツェナーダイオードなどの半導体素子に電流を流したときに発生する熱ノイズである。
この熱ノイズは、素子を構成する無数の電子や原子核の不規則性な運動によって生じるものなので、周期性も法則性もなく、波形パターンが次の瞬間にどのような値をとるか全く予測できない不規則性を呈し、スペクトルが広帯域に一様に分布した、理想的なホワイトノイズに近いものと言われている。
そのような素子を複数用い、異なる素子が発する複数の熱ノイズを合算することにより、その性質は、より理想的なホワイトノイズに近づけることができる。
このような熱ノイズは、スペクトル拡散通信技術の原理上、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとして理想的な信号のひとつと言われるが、図40に示した従来の参照信号内蔵方式のような同期装置をもつスペクトル拡散通信システムでは同期捕捉に拡散符号の周期性が求められるために用いることが出来なかった。
しかし、本実施形態に係るキャリア加工部1は、素ノイズ信号xに周期性も規則性も求められないため、そのような理想的なホワイトノイズに近い信号を素ノイズ信号xに使用することが出来るものである。
理想的なホワイトノイズに近い信号を素ノイズ信号xに用いて、ノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質を、より広帯域に、あるいは、より一様なスペクトル分布に、あるいは、より高い不規則性をもつものにすることが出来れば、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを、より広帯域に、あるいは、より一様なスペクトル分布に、あるいは、より高い不規則性をもつものにすることが出来るものである。
また、例えば、印刷への応用の場合、紙の繊維の配列が自然に織り成す模様を、素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xとして用いても良いものである。これも一般に繊維の配列が二つと同じものが無いと言われる、周期性も法則性もない不規則性を有すものである。
一方、素ノイズ信号xを供給する目的で意図して設けた素ノイズ信号源10以外のノイズ源12が供給する信号がノイズ信号xの要素となってもよいものである。例えば、伝送媒体11にキャリア加工部1の外から偶然侵入して、素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xに重畳する外来ノイズもノイズ信号xの要素として良いものである。
そのような外来ノイズは、例えば、電気通信の応用の場合、前記伝送媒体を共有して多重通信を行う他チャンネルの信号、前記伝送媒体近傍の機器や配線、雷や静電気放電などからの電気的な誘導現象で侵入するいわゆるノイズである。
また、伝送媒体11そのものが発生させて、素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xに重畳する内部ノイズもノイズ信号xの要素として良いものである。そのような内部ノイズは、例えば、電気通信の応用の場合、前記伝送媒体に用いる導体の熱ノイズである。また、従来のスペクトル拡散通信の送信機から受信機に向かって情報を伝送する信号は不規則性を有する信号である。また、本伝送システムを応用した情報伝送システムで拡散モジュールから逆拡散モジュールに向かって伝送される拡散出力オブジェクトsもまた、不規則性をもつ信号である。また、本伝送システムのキャリア加工部の拡散キャリア加工手段や逆拡散キャリア加工手段がノイズ信号から拡散キャリアや逆拡散キャリアに加工する過程の信号もまたまた、不規則性をもつ信号である。本実施形態に係るキャリア加工部1は、これらの不規則性をもつ信号も、ノイズ信号xの要素として良いものである。
また、上記の素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xに重畳する、内部または外部からのノイズや、従来のスペクトル拡散通信の送信機から受信機に向かって情報を伝送する信号や、本伝送システムを応用した情報伝送システムで拡散モジュールから逆拡散モジュールに向かって伝送される拡散出力オブジェクトsや、本伝送システムのキャリア加工部の拡散キャリア加工手段や逆拡散キャリア加工手段がノイズ信号から拡散キャリアや逆拡散キャリアに加工する過程の信号は、そのいずれかまたは全てが異なる複数のもので構成されても良いものである。
明示する素ノイズ信号源10と、外来ノイズ、または、内部ノイズとの違いは、素ノイズ信号源10と明示したものはノイズ信号xの一部とする素ノイズ信号xを供給することを目的に意図的に設けたノイズ信号供給部2であるのに対し、外来ノイズ、または、内部ノイズは、本実施形態に係るキャリア加工部1では素ノイズ信号供給の目的で制御できない信号供給部である点である。
この外来ノイズや前記伝送媒体自身が発生させる内部ノイズ、あるいは他の装置が発する信号は、一般には機器の動作を阻害するものと認識されて取り扱われるが、本発明の実施形態に係るキャリア加工部1では、そのいわゆるノイズを素ノイズ信号xと同等な信号のひとつとしても良いものである。そのために、例えば伝送媒体11にアンテナ、或いはさらにそれに増幅器や受信機を設けて積極的にノイズを取り込むようにしてもよいものである。ノイズxとはその様な信号で、便宜的に素ノイズ信号xと分けて表示しているが、ノイズ信号の要素となる信号という論理的な意味は全く同じものである。以下では本伝送システムが存在する環境内外から侵入するノイズをノイズxではなく素ノイズ信号xとして扱う事例も出てくるが、本伝送システムにおいては、結果として拡散モジュールと逆拡散モジュールが拡散キャリアと逆拡散キャリアの加工材料とするに相応しい特性を有する限り、ノイズxと素ノイズ信号xとはそのように同一に扱えるものである。
このように、本実施形態に係るキャリア加工部1では、一般には機器の動作を阻害する排除すべきものと認識されて取り扱われる、いわゆるノイズと呼ばれるものを、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工材料という価値のある信号として使用する。
そこで、本実施形態に係るキャリア加工部1では、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工材料という価値のある信号を、外見的にはノイズと呼ばれるものと同じだが、信号としての明確な目的を有したものであることを示すため、ノイズに信号と言う言葉を付けて、ノイズ信号と呼ぶこととしている。
本実施形態に係るキャリア加工部1は、オブジェクトの伝送のために供給する拡散キャリアと逆拡散キャリアを、全く規則性を必要とせず、とる値も任意でよい対オブジェクト広帯域性を有したノイズ信号xを加工材料としているので、ノイズ信号xにキャリア加工部1の内外のノイズが重畳しても、そのノイズ信号xが対オブジェクト広帯域性であるかぎりキャリア加工部1の動作を阻害されることはないものである。
すなわち、本実施形態に係るキャリア加工部1は、ノイズ信号について、内外から偶然侵入する意図しないノイズの重畳という干渉があっても、それをノイズ信号の一部という価値のあるものとして受け入れて動作するノイズ受容性とも呼べる性質を有している。
図1では、前記内外から侵入するキャリア加工部1が意図しないノイズをx、その信号源をノイズ源12として示している。
既に述べた素ノイズ信号の説明では、ノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性は、素ノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性から得ると述べたが、厳密には素ノイズ信号とノイズの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ特性から得るものである。そのため、本実施形態に係るキャリア加工部1は、素ノイズ信号xとノイズxが重畳した信号が対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつものとする必要がある。しかし、そのとき、ノイズ信号xの要素となっている全ての素ノイズ信号あるいは全てのノイズが、対オブジェクト広帯域性でなくとも、あるいは、不規則性をもつものでなくとも良いものである。ただし、結果として得られるノイズ信号xは対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつことが必要である。
続いて、伝送媒体11について説明する。伝送媒体11は、ノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に伝送する伝送媒体である。伝送する信号の目的は異なるが、任意の媒体を用いて良い点は伝送媒体7と同様である。また、伝送媒体11が伝送する信号が任意の不規則性をもつ信号であり、伝送媒体7が伝送する信号が耐ノイズ性を有する不規則性をもつ信号であるスペクトル拡散通信の拡散出力オブジェクトであるから、その他の事情が許せば、図33及び図34に示すように伝送媒体11と伝送媒体7は同一のものとしてもよいものである。図33及び図34については後述する。
素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xと、キャリア加工部1の外部や内部の何らかのノイズ源から侵入するノイズxは、伝送媒体11上において伝送媒体11の特性で互いに重畳してひとつのノイズ信号xとなる。
そのノイズ信号xは拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に共通のノイズ信号として拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に伝送される。
理想的な環境条件から、前記伝送では遅延などの位相変化も減衰も生じないものとする。すなわち、ノイズ信号xはそのまま拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に入力するノイズ信号x、xとなり、拡散キャリア加工手段13と逆拡散モジュールキャリア加工手段15は同一のノイズ信号を入力する。
続いて、拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段について説明する。
本発明の実施形態に係るキャリア加工部1は、伝送する拡散入力オブジェクトaのスペクトルを拡散したり逆拡散したりする信号である拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に共通に供給したノイズ信号xに基づいて加工する。
その加工の直接的な目的は、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつものとすることと、二つの信号の数式5に示される乗ずるとゼロで無い規定の定数となる対をなす信号にすることと、互いに相互相関のない多数の異なるパターンを利用可能にすることである。
この時、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの対オブジェクト広帯域性と不規則性という性質は、既述したように、加工過程をノイズ信号の対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質を継承するものにすることによって得るものである。
以下で説明する具体的な各種加工方法は、ノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質を継承できるものである。それらは、ひとつで全ての目的を達成させることが出来ない場合もある上、多数の異なる加工方法やキャリアを供給する上では複雑な加工方法が必要となる場合もあるので、いくつかの加工方法を組み合わせてひとつの加工方法を構成してもよいものである。以下では、その組合せの方法についても説明する。
まず、写像変換について説明する。
既述したように、写像変換を拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの加工方法のひとつとして用いてよいものである。写像変換は、数式10および数式11に示したように、ある入力値そのものに対して一意に出力が決まる関数とする。ある入力値そのものとは、時間関数である電気信号を用いた電気通信の場合、例えば、ノイズ信号xの瞬時値に相当する。
この場合、流れていく時間に対応して時々刻々不規則に変化するノイズ信号xから加工作成される拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、ノイズ信号xの時々刻々の値に対して一意に決まる変換出力値の連なりとなる。
また、位置関数である印刷画像を用いた印刷物による情報伝送の場合、前記のある入力値そのものとは、例えば、画像上のある一点の画像の光学的濃淡状態情報に相当する。この場合、画像の適当な走査に対応して変化する走査位置から得られる画像の光学的濃淡状態が不規則に変化するノイズ信号xから加工作成される拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、画像上の位置一点一点ごとのノイズ信号xの値に対して一意に決まる変換出力値の連なりとなる。
このような写像変換という加工は、例えば、算術演算、論理演算、関係演算などの関数演算、マッピングである。さらに、写像変換という加工は、例示したものをはじめとした適当な写像変換を多数適当に組み合わせたものを、ひとつの写像変換として使用してもよいものである。これら写像変換の加工操作によれば、理想環境下では、加工材料のノイズ信号xの不規則性と対オブジェクト広帯域性は継承され、対をなす信号となる性質も得られるものである。また、同一のノイズ信号xを加工材料としながらも、加工内容に応じて異なったパターンの拡散キャリアcと逆拡散キャリアcが得られるものである。
しかし、異なる写像変換で発生させる信号パターンでも、入力に同一のノイズ信号を用いていればそれらの間にはある程度の相互相関があるものである。そのため、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15における相互相関のないパターンを供給する目的のためには、他の加工要素を併用する。
次に、信号を系列方向に推移させる加工について説明する。前記写像変換は、入力信号の値そのものに対して一意に出力が決まる変換で拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを得るものであった。
それに対し、この加工は、ある点の加工出力の値を、入力信号の系列方向の上流或いは下流に推移させた点の値を用いて決定するものである。系列方向に推移させるとは、電気信号を用いた電気通信の場合、例えば、ある規定時間遅延させた情報を用いることに相当する。
また、位置関数である印刷画像を用いた印刷物による情報伝送の場合、系列方向に推移させるとは、例えば、画像を走査して得られる画像の濃淡状態情報の系列の中で、操作位置に対して前後にある規定量だけずれた位置の情報を用いることに相当する。この信号を系列方向に推移させる加工を拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの加工方法のひとつとして用いても良いものである。
この時、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は同一の推移量とする。拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とで同一量だけ推移させることにより、拡散キャリア加工手段13が入力して推移させたノイズ信号xと、逆拡散キャリア加工手段15が入力して推移させたノイズ信号xは同一となる。すなわち、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15で推移させたノイズ信号は、もとのノイズ信号x、xと比べて、推移した点だけが異なり、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15との間では同一のノイズ信号である。
その結果、この推移させたノイズ信号は、対オブジェクト広帯域性で不規則性を持つ性質を継承した信号となる。
一方、推移量τ(τ≠0)だけ推移させたノイズ信号をxとして、その推移させた信号と推移させる前の元のノイズ信号xとの次式に示す相互相関関数RXS−XWを考える。
XS−XW(τ)=lim〔(2*L)−1*∫{x(w)*x(w−τ)}dw〕 (数式17)
数式2で示した自己相関関数の定義と同様に、上式で、∫dwは、変数wについての−Lから+L(ただし、L>0)の区間の定積分を示すものとし、lim〔 〕は、カッコ内の関数について、Lを無限大にする極限値を示すものとする。
数式17では積分区間が無限に広いものとしているが、被積分関数が対オブジェクト広帯域性で不規則性を持つ信号の場合、実用上は、一次変調したオブジェトaの一次キャリアの繰返し周期程度かそれ以上の長さの区間であれば、無限大の領域と等価とみなすことが出来るものである。
数式17に示される相互相関関数RXS−XWは信号xとxとの関係の深さを評価するものであり、相互相関関数RXS−XWがあるτについてゼロであることは、そのτを用いた信号xはxとは全く無関係であることを意味する。以下、あるτの時の数式17に示した相互相関関数RXS−XWがゼロであることを、相互相関がない、あるいは相互相関がゼロと記す。
ここで、x(u)はx(u)をτだけ推移させた信号なので、それらは次の関係である。
(u)=x(u−τ) (数式18)
数式18の独立変数uをwに置換え、そのxを数式17のxに代入すれば、数式17は数式2と同じ形となる。
この時、ノイズ信号xもxも数式2で示した自己相関関数がτ=0以外でゼロである全く規則性のない不規則信号なので、数式18を代入した数式17は、τ=τの時にだけある最大値を示し、その他のτの領域では値はゼロとなる。すなわち、ノイズ信号xをτだけ推移させた信号xは、ノイズ信号xをτだけ推移させた信号であるx自身とだけ相互相関が有り、そのほかの如何なる信号とも相互相関がない。
その信号xは、元の信号xとさえ相互相関はない。これにより、数式2で示した自己相関関数がτ=0以外でゼロである全く規則性のない不規則信号を系列方向に推移させる加工によれば、元の信号も含め、他の信号とは全く相互相関のない信号を作成することが出来ることとなる。
これを用いると、不規則信号を系列方向に推移させる加工では、推移させる量が異なる信号間では同じように相互相関がないので、推移量をわずかずつ変える事により、多くの相互相関のない信号を作成することが出来るものである。
このように、系列方向に推移させる加工によれば、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ性質を継承し、信号パターンは変化させないが、相互相関がない多数の信号を作成できるものである。
しかし、この信号を系列方向に推移させる加工は、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを対をなす信号とする働きはない。そのため、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15における対をなす信号となるパターンを供給する目的のためには、例えば、既述した写像変換のような、他の加工要素を併用する。
次に、複数のノイズ信号を組み合わせる加工について説明する。本実施形態に係るキャリア加工部1の拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工材料とするノイズ信号x、xを入力する。
その時、入力するノイズ信号x、xを複数のノイズ信号xTi(i=1、2、…N)、xRj(j=1、2、…N)で構成し、それらを適当に組み合わせる加工を行ってひとつの信号を作成し、それをノイズ信号x、xとして、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工材料としても良いものである。
そのノイズ信号入力xTi(i=1、2、…N)、xRj(j=1、2、…N)の要素は任意であり、例えば、ノイズ信号供給部2内の素ノイズ信号源10から供給される素ノイズ信号xや、内外から侵入するノイズ信号x、加工途中の対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ信号、拡散キャリアcや逆拡散キャリアc、拡散モジュールが出力する拡散出力オブジェクトsである。前記複数のノイズ信号個々の信号の形式も任意である。
すなわち、アナログ信号でも離散値を取る離散値列の信号でも、連続でも不連続でも良いものである。適当に組み合わせるとは、複数のノイズ信号xTi(i=1、2、…N)、xRj(j=1、2、…N)それぞれを何らかの方法、例えば、算術演算や論理演算、関係演算、あるいはそれらを組み合わせる方法でひとつのノイズ信号x、xに合成することを指す。
この時、ノイズ信号x、xは任意の値を取る全く不規則な信号でよいので、複数のノイズ信号xTi(i=1、2、…N)、xRj(j=1、2、…N)相互間には、同期などの関係は何も要求されない。
また、ノイズ信号x、xが複数の要素信号が組み合わされる場合、全てのノイズ信号xTi(i=1、2、…N)、xRj(j=1、2、…N)が対オブジェクト広帯域性でなくとも、あるいは、不規則性をもつものでなくとも良いものである。ただし、結果として得られるノイズ信号x、xは対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつものとする必要がある。
この複数のノイズ信号を組み合わせる加工は、対オブジェクト広帯域性と不規則性をもつという性質は継承し、信号パターンは変化するが、発生させる信号パターン間にはある程度の相互相関がある場合がある。
そのため、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15における相互相関のないパターンを供給する目的のためには、例えば、全く異なる信号の組合せを用いたり既述した信号を系列方向に推移させる加工のような、他の加工要素を併用する。
次に、高度で複雑な信号処理手法を用いた加工について説明する。
拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15として前述した写像変換や信号を系列方向に推移させる加工、複数の信号を組み合わせる加工は、それぞれ単純で基本的な加工要素である。それに対し、より高度で複雑な信号処理手法を用いて、ノイズ信号を拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工生成しても良いものである。
例えば、積分や微分演算を含む高度な信号処理で信号を加工しても良いものである。また、例えば、任意の次元の空間フィルタを用いて信号のスペクトル構成を調整して信号を加工しても良いものである。
任意の次元の空間フィルタとは、例えば、時間空間の通常の周波数フィルタや、二次元平面画像の空間フィルタ、三次元動画の時間と三次元画像の四次元空間フィルタである。信号のスペクトル構成の調整とは、例えば、特定周波数帯域のスペクトル成分を減衰させたり強調したり、ある周波数帯域のスペクトル成分を別のある周波数帯域に移動させたり合成したり、ある周波数帯域のスペクトル成分と別のある周波数帯域のスペクトル成分とを入れ替えたりすることである。
このような信号処理は、例えば、高速フーリエ変換処理と、スペクトルの成分を調整する適当な逐次データ処理によって行う。このほかにも、例えばノイズ信号の信号波形を数値解析してゼロクロスのような波形の特徴点を検出し、その特徴点の時刻からあらかじめ規定した不規則様な信号波形を発生させる構成としたり、例えばノイズ信号を加工した信号で電圧可変周波数発信器(VCO)を制御して、ノイズ信号の値で周波数が変化する信号を発生させる構成とするなど、様々な方法が考えられる。
この、高度で複雑な信号処理手法を用いた加工は、対オブジェクト広帯域性と不規則性という性質は継承し、信号パターンは変化させ、互いに相互相関がない信号のパターンを多数加工作成することを可能にするものであるが、拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段として対をなす信号となる信号パターンへの加工操作は含まない場合がある。
そのため、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15における対をなす信号となるパターンを供給する目的のためには、必要ならば、例えば、既述した写像変換のような、他の加工要素を併用する。
次に、複数の加工方法を組み合わせてなる加工について説明する。
既述した、写像変換や、信号を系列方向に推移させる加工や、複数の信号を組み合わせる加工や、高度で複雑な信号処理手法を用いた加工は、それぞれ単独、またはそれらの不足する、例えば機能や加工の程度、複雑さ、作成できる信号のパターン数の少なさなどを補完する目的で適当に組合せて拡散キャリア加工13と逆拡散キャリア加工手段15に用いてよいものである。
しかし、それに限らず、前記各加工方法は、任意に組み合わせて、必要とする性質のユニークな拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを作成するようにしてよいものである。
任意に組み合わせるとは、組合わせる対象や数などの組合せが任意であることであり、例えば、各加工方法の入力を、ノイズ信号としての要件を満足する信号、例えば、加工過程の中間的な信号を用いても良いものであり、またその信号の供給関係が、例えば、入れ子構造であったり、フィードバック構造であったり、フィードフォワード構造であったり、並列や直列構造であったりすることである。
なお、本実施形態に係るキャリア加工部1の拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15が共通のノイズ信号から加工作成して拡散手段と逆拡散手段に供給する拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、信号系列の位置と長さについて、拡散入力オブジェクトaの信号系列の中で必要な情報を表現している要素を、少なくとも逆拡散モジュール側で復元可能なだけ存在すればよいものである。
その時、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとしての性質を有す連続した信号であってもよいものである。
また、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、例えば、拡散入力オブジェクトが伝送すべき内容を表現している期間だけのように、ある長さの区間内だけで連続して拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとしての性質を有する信号であってもよいものである。
また、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、前記ある長さの区間内で、拡散キャリアと逆拡散キャリアとしての性質を有すバースト状不連続信号またはインパルス状信号であってもよいものである。バースト状不連続信号またはインパルス状信号とした拡散キャリアや逆拡散キャリアについては後述する。
また、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号x、x、xは、前記拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを加工作成するために必要な波形区間だけ供給すれば良いものであり、素ノイズ信号xは、少なくとも対オブジェクト広帯域性で不規則性を有するノイズ信号xが必要な波形区間で必要なだけ供給すれば良いものである。
このとき、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15が必要とする対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号xを少なくともノイズ信号供給部2以外の本伝送システム内外の何らかの素ノイズ信号源10が必要な波形区間で必要なだけ供給出来る場合、それらがノイズ信号供給部2となるのである。
本実施形態に組み込むキャリア加工部1は、ここに例示したような方法を用い、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつノイズ信号を拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段に共通する加工材料として、拡散キャリアと逆拡散キャリアが、対オブジェクト広帯域性である、あるいは、不規則性をもつものである、あるいは、対をなす信号である、あるいは、異なるパターンである、あるいは、その異なるパターンが多数得られる、あるいは、互いに相互相関のないパターンであるように加工するものである。
このように、図1に示した本実施形態に組み込むキャリア加工部1の構成は、発明を実施するための最良の形態として、既述した拡散キャリアと逆拡散キャリアの供給動作で相互相関がない複数のパターンの、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ、相互に乗ずるとゼロで無い規定の定数となる対をなす信号の組合せの相互相関確立状態の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを拡散手段と逆拡散手段に供給するものであり、その拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを用いて既述した情報伝送原理でスペクトル拡散通信が行われるものである。
続いて、本実施形態に係るキャリア加工部1を適用した本実施形態に係る伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散通信システムと同等の耐ノイズ性が得られることを説明する。
まず、本実施形態1に係る伝送システムの耐ノイズ性について説明する。
既述した説明は理想的環境条件下での動作であるため、拡散モジュール3の出力である拡散出力オブジェクトsは、伝送媒体7を何の変化もせず逆拡散モジュール4まで伝送されるものとした。
しかし、現実の動作環境では、伝送媒体7には、拡散出力オブジェクトs以外にも信号が存在するものである。それは、例えば、従来一般の電気通信と同様に電線を伝送媒体として電気信号でオブジェクトを伝送する場合、本伝送システムが存在する環境の内外の様々な通信や電気・電子システム・機器・部品から電磁誘導などで侵入する信号や、伝送媒体7を共有して多重伝送を行う本伝送システム以外の伝送信号などである。
それらの信号は本伝送システムとは無関係に好むと好まざるとにかかわらず存在するものであり、本伝送システムの拡散出力オブジェクトにとってはいわゆるノイズである。前記ノイズは、伝送媒体7の特性によって、拡散出力オブジェクトsに重畳する。
ここで、伝送媒体7で拡散出力オブジェクトsに重畳するノイズをmとする。このとき、逆拡散モジュール4が伝送媒体7から入力する逆拡散入力オブジェクトhは、次式に示すように、拡散モジュール3が出力した拡散出力オブジェクトsと前記ノイズmとを加算したもので表される。
h(u)=s(u)+m(u) (数式19)
逆拡散モジュール4では、このノイズが重畳した逆拡散入力オブジェクトhに対して逆拡散キャリアを乗ずる逆拡散操作を行うので、その結果は次式となる。
(u)={s(u)+m(u)}*c(u) (数式20)
数式6と同様に、数式20に数式1および数式5を適用すると、次のように展開できる。
(u) =s(u)*c(u)+m(u)*c(u)
=a(u)*c(u)*c(u)+m(u)*c(u)
=a(u)*k+m(u)*c(u) (数式21)
数式21の右辺には、第一項に拡散モジュール3で入力した拡散入力オブジェクトaに相似形状のパターンの信号が現れて拡散入力オブジェクトは伝送されたこととなるが、同時に第二項が重畳することとなる。すなわち、数式21に示される逆拡散手段16から得られる逆拡散出力オブジェクトaは、拡散入力オブジェクトaだけでなく、ノイズmと逆拡散キャリアcとを乗じた信号との混合信号として得られる。
この第二項はノイズの項なので情報伝送には不要なものであり、この項の存在によって例えば逆拡散出力オブジェクトaは拡散入力オブジェクトaを定数倍しただけの項で構成される場合の波形とは異なる波形となって、伝送する情報を正確に表現しなくなる。
そのため、数式21で示される逆拡散出力オブジェクトでは、何らかの方法により、拡散入力オブジェクトの成分をノイズから分離あるいはノイズの成分を低減する必要がある。その分離操作は、従来のスペクトル拡散通信システムと同様に、拡散入力オブジェクトの成分とノイズの成分とのスペクトルの占有周波数帯域幅の違いを利用して行う。数式21の第一項で示される拡散入力オブジェクトの成分は、ある制限された周波数領域にしかスペクトルが分布しない信号であるのに対し、同式第二項に示されるノイズの項は、ノイズが逆拡散キャリアと乗じられたものである。
ここで示されたノイズは逆拡散キャリアと無関係な信号であり、無関係な信号同士では相互相関がゼロである。また、逆拡散キャリアは拡散キャリアと同じように、対オブジェクト広帯域性で不規則性を有する信号である。相互相関がない二つの信号について、少なくともその一方が対オブジェクト広帯域性で不規則性を有する信号であるとき、それらを乗じた信号は、その対オブジェクト広帯域性程度かそれ以上の広帯域性の不規則性を有した信号となる。これはスペクトル拡散操作で得られる効果と同じであり、ノイズは、逆拡散キャリアcによってスペクトル拡散されることとなる。
その結果、ノイズがどのようなスペクトル分布の信号であるかにかかわらず、逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅と同程度かそれ以上の広さにスペクトル拡散されて、対オブジェクト広帯域性で不規則性を持つ信号となる。ここで、逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅をBWCRとし、この拡散キャリアと乗じられてスペクトル拡散されるノイズmは、スペクトル拡散後、占有周波数帯域幅BWCRの信号になるものとする。
また、逆拡散出力オブジェクト中のノイズのエネルギーPは、幅BWCRの周波数帯域に一様に分布するものとする。
ここで、拡散入力オブジェクトaの成分とノイズmの成分の混合信号から拡散入力オブジェクトaの成分をスペクトルの占有周波数帯域幅の違いを利用して分離抽出するとは、例えば混合信号を拡散入力オブジェクトaの占有周波数帯域だけを通過させるフィルタに通すことである。
前記フィルタは、拡散入力オブジェクトaのスペクトルは全て通過させるが、それ以外の帯域のスペクトルは通過させないもので、例えば低域通過フィルタを用いる。このフィルタによれば、ノイズmのスペクトルでは、フィルタの通過帯域である拡散入力オブジェクトaの占有周波数帯域のスペクトルだけが通過できる。その結果、フィルタの出力には拡散入力オブジェクトaのスペクトルとフィルタを通過できたノイズのスペクトルとが現れる。
このフィルタは従来のスペクトル拡散通信システムの受信部でも用いられているもので、スペクトル逆拡散の乗算操作の直後に置かれるのが一般的である。図1に示す本伝送システムの構成においても、逆拡散手段16は数式20に示す乗算機能とそのフィルタ機能で構成し、逆拡散入力オブジェクトhと逆拡散キャリアcとを乗じ、その結果を拡散入力オブジェクトaの占有周波数帯域だけを選択的に通過させるフィルタを通して逆拡散出力オブジェクトaとして出力するものである。乗算機能にもフィルタ機能にもそれらを組合せた逆拡散手段の構成にも本発明の特徴はないので一体のシンボルで表現している。
ここで、前記フィルタの出力に現れる信号について、ノイズの成分のエネルギーに対する拡散入力オブジェクトの成分のエネルギーの比を求めてみる。これは、フィルタが出力する逆拡散出力オブジェクトのSN比であり、オブジェクト伝送手段としての本伝送システムの性能を評価する指標のひとつである。この時、各信号のスペクトルは、各信号の占有周波数帯域に一様に分布するものとして説明する。
逆拡散手段の乗算機能から出力された占有周波数帯域幅がBWCRのノイズの成分の全エネルギーPのうち、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅BWのフィルタを通過して逆拡散出力オブジェクトの一部として現れるエネルギーPMAは次式で示される。
MA=P*BW/BWCR (数式22)
このエネルギーのノイズは前記フィルタを通過して、フィルタ出力のオブジェクトに重畳する。ここで、数式22の帯域比を、従来からスペクトル拡散通信の理論で用いられる処理利得(Process Gain)Gと呼ばれる変数で以下のように表現する。
=BWCR/BW (数式23)
逆拡散出力オブジェクトのSN比SNRは、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域BW内に残留するこのノイズの成分のエネルギーPMAに対する、拡散入力オブジェクトの成分のエネルギーPなので、数式22、数式23を用いて次の様に示される。
SNR=P/PMA
=P/(P*BW/BWCR
=(P/P)*G (数式24)
数式24によれば、拡散入力オブジェクトが、ある占有周波数帯域幅BWにエネルギーPで存在しているとき、同時にあるレベルのノイズがエネルギーPで存在しても、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅BWに対する逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅BWCRを広げて処理利得を上げることにより、拡散入力オブジェクトの成分のエネルギーPやノイズの成分のエネルギーPとは無関係に、逆拡散出力オブジェクトのSN比SNRを改善することが出来ることがわかる。
このように、本伝送システムは、拡散入力オブジェクトと逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅の違いを利用して、拡散入力オブジェクトの成分をノイズの成分から分離するものである。拡散モジュールから逆拡散モジュールへ拡散出力オブジェクトを伝送する伝送媒体で拡散出力オブジェクトに重畳するノイズのエネルギーは、拡散出力オブジェクトのエネルギーに対して大きいのが一般的である。
例えば、ひとつの伝送媒体を多数の多重通信チャンネルで共用して伝送を行う場合、ひとつのチャンネルの伝送にとって他の全てのチャンネルの拡散出力オブジェクトはノイズである。例えば101チャンネルが等しいエネルギーの拡散出力オブジェクトで同時に伝送する場合、ひとつのチャンネルの拡散出力オブジェクトのエネルギーに対してノイズの総エネルギーは百倍という大きなものとなる。この目的とする伝送の信号とノイズの伝送媒体におけるエネルギーの比が逆拡散手段の乗算機能の出力信号中における目的とする伝送の信号とノイズのエネルギー比にも受け継がれるものと考えると、前記乗算機能の出力には、逆拡散された拡散入力オブジェクトに百倍のエネルギーのノイズが重畳した信号が現れる。
しかし、数式24の効果によれば、拡散出力オブジェクトの百倍のエネルギーのノイズの重畳を受けた場合でも、例えば拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅に対する逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅の比を千倍にすれば、逆拡散後の拡散入力オブジェクト抽出フィルタの出力に現れる信号について、ノイズの成分のエネルギーを、逆拡散される拡散入力オブジェクトの成分のエネルギーの十分の一に減少させることが出来る。逆拡散出力オブジェクトにおける拡散入力オブジェクト成分のエネルギーに対するノイズ成分のエネルギーの比は、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅に対する逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅の比を大きくすれば、いくらでも小さくすることができるものである。この時、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅の調整は、例えば拡散入力オブジェクトを作成する時の一次変調キャリアの周波数を調整して行う。また、逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅の調整は、例えばその逆拡散キャリアの加工材料としている素ノイズ信号の占有周波数帯域幅を調整して行う。
伝送媒体7で拡散出力オブジェクトに重畳するノイズの逆拡散出力オブジェクトに残る影響を、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅に対する逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅の比を大きく取り、前記フィルタで逆拡散手段が出力する逆拡散出力オブジェクトの占有周波数帯域を拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅に制限することにより減少させる特性を、以下では耐ノイズ性と記す。
このように、本伝送システムは、耐ノイズ性を実現するものである。
なお、数式21の右辺第二項で示される逆拡散出力オブジェクトのノイズの影響項について、ノイズmと逆拡散キャリアcとがある程度の相関を示す場合もその項の影響を抑制することが可能であるが、その詳細については後述する。
次に、本実施形態に係る伝送システムを比較評価するために、代表的な従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの動作を解析して耐ノイズ性について説明する。
図40に示したのは代表的な参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムで、送信機500、受信機501、伝送媒体502で構成される(非特許文献1、及び非特許文献2)。
送信機500は、拡散符号供給部510、乗算器511で構成され、拡散符号供給部510は、クロック発生器512、二値疑似ノイズ発生器(PNG)513で構成される。
送信機500の動作を、拡散符号供給部510の動作から説明する。拡散符号供給部510では、PNG513が、クロック発生器512が供給するクロック信号に基づいて、絶対値がゼロでなく等しく正負の二値をとる拡散符号cを発生させて乗算器511に供給する。
そして、乗算器511が、外部から入力する情報入力信号aとPNG513が供給する前記拡散符号cとを乗じて情報入力信号aのスペクトルを拡散したスペクトル拡散出力信号b(以下、拡散出力信号と記す)を作成し、それを伝送媒体502に送出する。
ここで、情報入力信号aはスペクトルがある帯域に制限された信号であり、拡散符号cは情報入力信号aの占有周波数帯域幅に対してはるかに広い帯域にスペクトルが分布した信号である。拡散出力信号bには伝送媒体502で伝送される過程で図示しないノイズmが重畳し、受信機501はそのノイズmと拡散出力信号bとを含んだ信号rを入力する。
受信機501は、逆拡散符号供給部520、乗算器521、同期装置522で構成され、逆拡散符号供給部520は、電圧制御による可変周波数クロック発振器(以下、VCOと記す)523、PNG524で構成され、同期制御部522は、制御部525、相関器526、位相差検出器527で構成される。
受信機501の動作を、逆拡散符号供給部520の動作から説明する。逆拡散符号供給部520では、PNG524が、VCO523が供給するクロック信号に基づいて逆拡散符号cを発生させて乗算器521に供給する。
前記VCO523が供給する前記クロック信号は、送信機500のクロック発生器512がPNG513に供給するクロック信号と同一繰返し周期の信号である。また、前記PNG524が発生させる逆拡散符号cは、送信機500のPNG511が発生させる拡散符号cと同じパターンの信号である。
乗算器521は、伝送媒体502から入力する拡散出力信号bを含む受信入力信号rと、PNG524が供給する前記逆拡散符号cとを乗じ、スペクトルを逆拡散した情報入力信号aの成分を含むスペクトル逆拡散出力信号a(以下、逆拡散出力信号と記す)を出力する。実際の受信機においては、乗算器521に続けて情報入力信号aのスペクトルの占有周波数帯域だけを選択的に通過させるフィルタを設け、乗算器521の出力から情報入力信号aのスペクトルの占有周波数帯域の成分だけを抽出して受信機の出力とするが、図40ではそのフィルタの記述は省略している。
続いて、図40に示す従来例における同期装置522の動作を説明する。
参照信号内蔵方式では、送信機と受信機とが独立したPNG513、524を有し、通信システムが動作を開始する時点ではそのPNGは同期しておらず、それらが生成する1組の拡散符号cと逆拡散符号cは、相互相関が取れていない状態である。
相互相関が取れていない状態の拡散符号cと逆拡散符号cはいわば無関係な信号同士なので、これを用いて情報伝送は行えない。
そのため、情報の伝送に先立ち、通信システムはまずPNG513とPNG524の同期を取って、拡散符号cと逆拡散符号cの相互相関を高めておく必要がある。
受信機に設けた同期装置はこのための要素であり、図40に示した構成の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムは、この同期装置を用いた同期捕捉動作と同期捕捉動作と呼ばれる二つの動作によって同期をとる。
同期捕捉動作は、受信機の逆拡散符号cの送信機の拡散符号cに対する時間領域での符号パターンの位置合わせを行って相互相関確立状態を作り出す動作であり、同期保持動作は、その確立した相互相関確立状態を維持し続ける動作である。
通信システムは、動作を開始するとまず同期捕捉動作を行い、それが成功裏に終了すると動作は同期保持動作に移行し、この同期保持動作のもとで情報入力信号の伝送を行う。同期捕捉動作では、送信機500は、例えば、情報入力信号aを+1という定数に固定して、情報としては意味のない情報入力信号を乗じて拡散符号cを連続して伝送媒体502に送出する。
一方、受信機501の同期装置522は、この拡散符号cを含む受信入力信号rを伝送媒体502から入力して相関器526に導く。
相関器526は、受信入力信号rに含まれる拡散符号cと、PNG524が発生する逆拡散符号cとの相互相関値を逆拡散符号cの一周期に渡って計算する。相関器526は、制御部525の制御の下で、この相互相関値を求める演算処理を、PNG524が発生させる逆拡散符号cの周期的パターンについて一周期ごとに1ビットずつシフトさせた全てのパターンに対して行う。相関器526は、全ての逆拡散符号パターンと拡散符号パターンとの相互相関値を得、得られた相互相関値を制御部525内に記憶する。
制御部525は、全ての逆拡散符号パターンと拡散符号パターンとの相互相関値を得ると、全ての相互相関値のうちもっとも高い値が規定のある閾値を越えているかどうかを調べ、もっとも高い相互相関値が規定のある閾値を越えた場合は、その相互相関値を示した時のパターンを相互相関確立状態のパターンとして発生させるようにPNG524を調整し、同期捕捉に成功したとして同期捕捉動作を終了する。
もし規定のある閾値を越える相互相関値がなければ、拡散符号と相互相関が取れた逆拡散符号パターンを発見できなかったと判定し、同期捕捉に失敗したとして相互相関の算出をPNG524の最初のパターンからやり直す。同期捕捉動作を成功裏に終了した受信機501の同期装置522では、この同期捕捉動作によって、受信機で発生させる逆拡散符号列のパターンが、送信機の拡散符号列のパターンに対して、例えば、1ビットの符合分の時間の±50%以内のズレの同期状態になっている。
同期捕捉動作の成功裏の終了に伴って開始される同期保持動作では、同期装置522は位相差検出器527を用いてPNG524が発生させる逆拡散符号cの伝送媒体502から入力する信号rに含まれる拡散符号cの成分に対する位相差を測定し、その位相差が小さくなるように電圧(周波数)制御クロック発振器523を調整する。これらの同期操作によって、受信機のPNG524が発生させる逆拡散符号cは送信機の拡散符号cと高い相互相関が確立された状態となり、これらの拡散符号cと逆拡散符号cを用いた情報伝送が可能となる。
このように、図40に示した構成の参照信号内蔵方式の通信システムでは、受信機501の同期装置522を用いた同期操作によって、拡散符号cと逆拡散符号cの相互相関確立状態が安定して得られるようにして、その拡散符号cと逆拡散符号cとを用いてスペクトル拡散通信を可能にしている。
次に、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの動作を解析して、数式21に示した本通信システムにおける逆拡散出力オブジェクトを比較する。
送信機500が送出する拡散出力信号bは、情報入力信号をaとし、拡散符号をcとすると以下のように表せる。
b=a*c (数式25)
拡散出力信号bは、送信機500から受信機501まで伝送媒体502を伝送される過程でノイズmが重畳するので、受信機が入力する信号rは以下のようになる。
r=b+m
=a*c+m (数式26)
この信号rに送信機の拡散符号cと相互相関確立状態の逆拡散符号cを乗じて得る逆拡散出力信号aは以下のようになる。
=r* c
=(a *c+m)*c
=a* c*c+m*c
=a* kPN +m*c (数式27)
ただし、これには、相互相関確立状態の拡散符号cと逆拡散符号cとは互いに等しく、その値は絶対値がゼロでなく等しい正負の二値であることから言える以下の関係を用いている。
=c=±kPN (数式28)
*c=kPN (数式29)
数式27右辺第一項は送信機が送信した情報入力信号aに比例の関係にあることを示しており、この関係の成分が連なった信号は、波形パターンが情報入力信号aのパターンと相似の形状となり、これによって、通信システムの送信機から受信機に情報が伝達されたこととなる。また、数式27右辺第二項は拡散出力信号に対するノイズの影響項である。
ここで、数式21で示される本通信システムの逆拡散出力オブジェクトと、数式27で示される従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの逆拡散出力信号とを比較する。
まず、数式21の右辺第一項と数式27の右辺第一項を比較する。従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの場合、逆拡散符号は受信機で作成するので、それに伝送媒体で侵入するノイズが重畳することはなく、その様なノイズが逆拡散符号と拡散符号間の数式28、数式29の関係を劣化させる要素となることはない。
その結果、数式27の第1項にはノイズの影響が含まれず、同期操作によって相互相関確立状態さえ実現できれば、数式29の条件を精度良く成立させることができ、数式27の第1項は情報入力信号aと完全に相似形な波形となる。
一方、本伝送システムの場合、逆拡散キャリアはキャリア加工部1の外から入力するノイズ信号を加工して作成されるので、本伝送システム内外から侵入するノイズがそのノイズ信号に重畳すると、加工材料とするノイズ信号が変化するので、逆拡散キャリアはノイズの重畳がない場合とは異なる信号パターンになってしまう。
しかしながら、ノイズの重畳を受けても、重畳したノイズを含めたノイズ信号が拡散キャリアと逆拡散キャリアへの加工材料として適切な対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に共通な信号である限り、本伝送システムの拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、その重畳したノイズを含むノイズ信号から対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ対をなす信号の拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成して供給するものである。
すなわち、ノイズの重畳があるとき、拡散キャリア加工手段はノイズの重畳がないときのノイズ信号xとは異なる加工材料を入力するので、ノイズの重畳がないノイズ信号xから加工作成する拡散キャリアcとは異なる拡散キャリアcを出力するが、そのとき、逆拡散キャリア加工手段が入力するノイズ信号xもノイズ信号xと同時に同じに変化するので、本伝送システムの拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段は、同一とみなせるノイズ信号を入力することとなり、そのノイズを含めたノイズ信号が対オブジェクト広帯域性で不規則性を有す限りは、それを対オブジェクト広帯域性で不規則性を持つ相互相関確立状態で対をなす信号の拡散キャリアと逆拡散キャリアとに加工して供給するものである。
その結果、本伝送システムの拡散キャリアと逆拡散キャリアも、従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの場合と同様に、ノイズが伝送媒体でノイズ信号に侵入しても、そのノイズが逆拡散キャリアにノイズとして重畳することはなく、その様なノイズが逆拡散キャリアと拡散キャリア間の数式5に示す対をなす信号の関係を劣化させる要素となることはない。
その結果、数式21の第1項にはノイズの影響が含まれず、ノイズ信号の相互相関確立状態を継承し拡散キャリアと逆拡散キャリアとを相互相関確立状態の対をなす信号の拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段とによれば、数式5の条件を精度良く成立させることができ、数式21の第1項は拡散入力オブジェクトaと完全に相似形な波形となる。
このように、数式21の右辺第一項と数式27の右辺第一項は物理的に同じ意味であるといえる。
次に数式21の右辺第二項と数式27の右辺第二項を比較する。
従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの場合、受信機で作成する逆拡散符号は伝送媒体で伝送される拡散出力信号に侵入するノイズが重畳とは全く無関係な信号なので、その逆拡散符号とノイズとの間の相互相関はゼロである。また、逆拡散符号は拡散符号と同じように、広帯域性で不規則性を有する信号である。相互相関がない二つの信号について、その一方が広帯域性で不規則性を有する信号であるとき、それらを乗じた信号は、その広帯域性と同程度かそれ以上の広帯域性の不規則性を有した信号となる。これはスペクトル拡散操作で得られる効果と同じであり、ノイズは、逆拡散符号によってスペクトル拡散されることとなる。
一方、本伝送システムの場合、ノイズmとは異なるノイズ信号xを加工して拡散キャリアと逆拡散キャリアとを作成する。ノイズmとノイズ信号xとは全く無関係な信号なのでそれらの間の相互相関はゼロである。この相互相関がない二つの信号について、ノイズ信号xが対オブジェクト広帯域性で不規則性を有する信号なので、それらを乗じた信号は、その対オブジェクト広帯域性程度かそれ以上の広帯域性の不規則性を有した信号となる。すなわち、ノイズは、逆拡散キャリアcによってスペクトル拡散されることとなる。
このように、数式21の右辺第二項と数式27の右辺第二項もまた物理的に同じ意味であるといえる。なお、本伝送システムの場合、ノイズmもまたノイズ信号の一部とする場合がある。この場合はノイズmとノイズ信号xとの間の相互相関がゼロではないことがある。この場合については後述する。
結果として数式21と数式27が示す意味は物理的に同じことといえる。すなわち、従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムは、受信機がその内部で逆拡散符号を作成することにより、伝送媒体で侵入するノイズが逆拡散符号に重畳しないようにしたのに対し、本伝送システムは、伝送媒体11でノイズ信号に重畳するノイズがあっても、そのノイズを有効なノイズ信号要素に取り込むことを許容し、ノイズを有効かつ積極的に含める効果を逆拡散キャリアの加工だけでなく拡散キャリアの加工にも反映させて、伝送媒体で侵入するノイズが逆拡散キャリアに重畳せず、かつ拡散キャリアと逆拡散キャリアとの対をなす信号関係が維持されるようにしている。一方、伝送媒体で侵入するノイズは、従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムでも本伝送システムでも、逆拡散符合または逆拡散キャリアでスペクトル拡散されることとなる。そのノイズの受信機の出力或いは逆拡散出力オブジェクトに対する影響は、逆拡散符合或いは逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅と情報入力信号或いは拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅の比を大きく取ることによって軽減・排除できるものである。
このように、本伝送システムは、ノイズ信号にノイズが侵入してもそれによって逆拡散キャリアにノイズが重畳することも拡散キャリアと逆拡散キャリアの対をなす信号関係が崩れることがない点と、伝送媒体で拡散出力オブジェクトにノイズが侵入してもその影響を受けにくい耐ノイズ性について、従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムと理論的に等価なスペクトル拡散通信を行うこととなる。
続いて、本伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散通信システムの課題が解決されることを説明する。
まず、本伝送システムは、従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムが抱えていた課題を解決することを説明する。
本発明の実施形態に係るキャリア加工装置(キャリア加工部1)によれば、その構成自体が同期装置を構成する。すなわち、共通のノイズ信号を同一の信号と取り扱って、これを加工材料として入力し、その信号の性質を継承する加工で、相互相関確立状態の拡散キャリアと逆拡散キャリアの対を得るものである。このキャリア供給部1を本伝送システムに適用した場合、上述した操作は、莫大な回数の繰返し演算も必要ないし、曖昧な試行錯誤も必要ない、従来の同期装置を用いた参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの様には時間を掛けずに行えるプロセスである。
これにより、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムでは通信に先立って必要だった同期捕捉の操作が、本実施形態では不要となるため、通信の要求に即応できないという課題は、本実施形態では解消されている。
また、本実施形態に係るキャリア加工部1によれば、その構成自体が同期装置を構成するので、このキャリア加工部1を本伝送システムに適用した場合、特に同期装置と呼ばれる装置を必要としない。そのため、本伝送システムの逆拡散モジュールでは、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの受信機で用いられた同期装置を組合わせたPNGは、逆拡散キャリア加工手段で置き換える。逆拡散キャリア加工手段は、たとえば数式13で表せる簡単な写像変換であり簡単なアナログ回路で実現できる。その結果、同期装置に必要だった多量のメモリも、演算器も、信号変換器も、広いバスも、パイプライン処理装置も必要なくなり、受信機は小規模な回路資源やソフトウェア資源で構成できるものとなる。
これにより、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの受信機が大規模化する課題は、本実施形態では解決されている。
また、本実施形態に係るキャリア加工部1によれば、その構成自体が同期装置を構成するので、このキャリア加工部1を本伝送システムに適用した場合、通信の要求が無い時に拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段は動作を止めていても、通信要求が発生した時は特に同期操作を必要とせずに直ぐに相互相関の取れた拡散キャリアと逆拡散キャリアが得られる。そのため、通信の必要がないときには伝送媒体に何の信号も供給せず、その期間には同期保持の動作も同期保持のための通信も必要なく、通信要求があるときには必要なだけ伝送媒体を通して信号を伝送すればよい。
これにより、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの伝送媒体の伝送容量の浪費と、伝送媒体を共用する他の通信に無用な干渉を与えることと、間欠的通信用途において同期保持動作に無駄な電力を浪費するという課題は、本実施形態では解決されている。
次に、本伝送システムを評価するために、図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの動作を解析する(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3、非特許文献1、非特許文献2)。
図41に示したのは特許文献1に示された参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムで、送信機600、受信機601、伝送媒体602で構成される。
送信機600は、拡散符号供給部610、乗算器611、同期装置612、加算器613で構成され、拡散符号供給部610は、クロック発生器614、PNG615より成り、同期装置612は、遅延器616で構成される。
送信機600は次のように動作する。まず、拡散符号供給部610で、クロック発生器614が供給するクロック信号に基づいて、PNG615が、絶対値がゼロでなく等しく正負の二値をとる拡散符号cを発生させて乗算器611に供給する。
乗算器611は、外部から入力する情報入力信号aと、PNG615が供給する前記拡散符号cとを乗じて情報入力信号aのスペクトルを拡散した拡散出力信号bを作成する。一方、同期装置612では、遅延器616が、拡散符号供給部610が供給する前記拡散符号cをある規定の時間だけ遅延させ、それを受信機で逆拡散符号として使わせる信号cとして加算器613で拡散出力信号bに重畳させて伝送媒体602に送出する。なお、特許文献3では、拡散符号に代えて、拡散出力信号に遅延器で遅延時間を与えている点が特許文献1と異なっている。
拡散出力信号bと逆拡散符号cとを重畳した信号には伝送媒体602を伝送される過程で図示しないノイズmが重畳し、受信機601にはノイズmと拡散出力信号bと逆拡散符号cとを含んだ信号rが入力される。
受信機601は、同期装置620、乗算器621で構成され、同期装置620は遅延器622で構成される。
受信機601は次のように動作する。まず同期装置620の遅延器622が、伝送媒体602上の信号を信号rとして入力し、ある時間だけ遅延させて乗算器621に供給する。ある時間とは、送信機600の同期装置612の遅延器616で逆拡散符号cを作成するために拡散符号cを遅延させた時間と同じ時間とする。
そして、乗算器621が、前記遅延器622の出力と伝送媒体602から入力した信号rとを乗じて、結果を逆拡散出力aとして出力する。実際の受信機においては、乗算器621に続けて情報入力信号aのスペクトルの占有周波数帯域だけを選択的に通過させるフィルタを設け、乗算器621の出力から情報入力信号aのスペクトルの占有周波数帯域の成分だけを抽出して受信機の出力とするが、図41ではそのフィルタの記述は省略している。
図41に示す構成の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムでは、PNGは送信機にしか設けず、それで発生させた信号を拡散符号cとして使う一方で、それを遅延させたものを逆拡散符号cとして受信機で使わせるために送信機から受信機へ伝送する。
その信号を受信する受信機601は、受信した信号rに含まれる逆拡散符号cの信号成分を逆拡散符号として用いるが、その逆拡散符号cで逆拡散する受信した信号rに含まれる拡散出力信号bの成分は逆拡散符号cに対して遅延器616の遅延時間分だけ時間が進んだ信号であるから、それらの時間関係を一致させるために、拡散出力信号の成分bを遅延器616の遅延時間と同じだけ遅延器622で遅らせる。
すなわち、送受信機それぞれに設けた等しい時間だけ信号を遅らせる遅延器616、622を用いて、拡散符号の成分cと逆拡散符号の成分cとを相互相関が確立された状態にしている。
このように、図41に示す構成の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、遅延器を利用して、図40に示す参照信号内蔵方式の通信システムにおける受信機のような同期装置を用いることなく、その同期装置が行う操作と等価な内容を含む操作を行って拡散情報入力信号の拡散符号の成分と逆拡散符号の成分とを相互相関確立状態にして、スペクトル拡散通信を可能としている。
ここで、図41に示す参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの動作を解析して、数式21に示した本伝送システムにおける逆拡散出力オブジェクトを比較する。
図41に示す構成の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムでは遅延させた信号を用いるが、ここではその信号の成分が受ける遅延の効果を示すために、信号名に遅延を受けた回数を添え字で表すこととする。すなわち、送信機が伝送しようとしている情報入力信号をaS0、拡散符号をc、送信機側の遅延器で遅延させて送出する拡散符号をc、伝送媒体で加わる外来ノイズをmとすると、受信機が入力する信号rは下式のように表せる。
=aS0*c+c+m (数式30)
受信機は、この信号rに含まれる遅延させた拡散符号cの成分を逆拡散符号として使う。その逆拡散符合で情報入力信号aS0を逆拡散するために、情報入力信号aS0に乗じられている拡散符合cの成分を逆拡散符合と同期させる必要が生じるので、受信した信号rを送信機側の遅延器と同じだけ遅延器で遅延させる。
受信した信号rを遅延させた信号rは以下のように表せる。
=aS1*c+c+m (数式31)
ただし、rは、rを表す数式30の右辺を構成する要素それぞれを受信機の遅延器で遅延させたものを表し、aS0を遅延させたものをaS1、cを遅延させたものをc、mを遅延させたものをmと表す。また、cを遅延させたものは送信機で遅延させたものと遅延時間が同じなのでcで表す。逆拡散操作は、逆拡散符号とする信号成分cを含んだ受信入力信号rと、それと同期させるために上記のように受信機で遅延させた受信入力信号rとを乗ずることで実現する。
その結果得られる逆拡散出力信号aは下式のように表せる。
=r*r
=(aS0*c+c+m0)*(aS1*c+c+m
=aS0*aS1*c*c+aS0*c*c+kPN *aS1
+c*c+(aS0*c+c)*m
+(aS1*c+c)*m+m*m (数式32)
ただし、c、c、cは、時間によらないゼロでない定数をkPNとして、いずれも±kPNの値を取り、以下の性質を持つ。
*c=c*c=c*c=kPN (数式33)
逆拡散出力aを表す数式32の右辺の計算結果は、第三項が逆拡散され遅延を受けた情報入力信号の成分であり、そのほかの項は全て情報入力信号と相似な関係でない信号である。
そのうち、第一項、第二項、第四項はmやmをゼロとしてもゼロにならないものであり、mやmというノイズとは無関係に逆拡散出力信号aに常に含まれて、逆拡散された情報入力信号に対してノイズとして作用する。
すなわち、図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、伝送媒体でノイズの重畳がなくとも、逆拡散出力信号では逆拡散された情報入力信号にノイズが重畳する。
これに対し、基準とする図40に示す参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの場合、数式27に示すように、伝送媒体でノイズの重畳がなければ、逆拡散出力信号に逆拡散された情報入力信号以外の信号は現れない。
また、伝送媒体でノイズの重畳がある場合は、図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、数式32に示すように、逆拡散出力信号にはノイズの項がさらに多数含まれることとなる。
その中で、第五項と第六項は逆拡散符号でスペクトル拡散されたノイズの項であり、スペクトル拡散通信に特有の、情報入力信号と逆拡散符号の占有周波数帯域幅比を調整することで逆拡散後に残る情報入力信号成分への影響を軽減可能なものである。しかし、前記基準システムの場合に比べてノイズの項数が多いので、軽減しなければならないノイズが多く、逆拡散出力信号のSN比が悪くなることを示しており、前記基準システムに比べてSN比が劣る。
一方、第七項は拡散符号も逆拡散符号も乗じられていないので、この項が示すノイズはスペクトル拡散とは無関係のスペクトル構成の信号である。だから、その項が示すノイズは情報入力信号の占有周波数帯域に高いエネルギーのスペクトルを有す可能性もあるし、そのノイズ項の情報入力信号の占有周波数帯域の成分を、スペクトル拡散通信に特有の情報入力信号と逆拡散符号の占有周波数帯域幅比を調整することで軽減することも出来ない。
すなわち、図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムには基準システムが有す耐ノイズ性が無く、例えば伝送媒体で拡散出力信号に重畳するノイズの成分が、逆拡散出力信号中で情報入力信号の占有周波数帯域内に情報入力信号の成分と同程度以上のエネルギーでスペクトルを有す場合、拡散出力信号における情報入力信号の成分のSN比は劣悪となって通信は困難となる。
背景技術の説明で図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムについて示した課題は具体的にはこのようなものである。伝送媒体にノイズがないときでさえ逆拡散出力にはノイズを含み、伝送媒体にノイズがあるときには逆拡散出力信号における情報入力信号の成分のSN比は前記基準システムより劣り、そのノイズの影響は、スペクトル拡散通信に特有の情報入力信号と拡散符号の占有周波数帯域幅比を調整することで軽減することは出来ず、そのノイズの成分が、例えば逆拡散出力信号中で情報入力信号の占有周波数帯域内に情報入力信号の成分と同程度以上のエネルギーでスペクトルを有す場合には通信が困難となる。
また、送信機600の同期装置を構成する遅延器616は二値符号を遅延させるだけなので簡単な構造で小型な二値論理素子が適用できる。
しかし、受信機601の同期装置620の遅延器622は情報入力信号の成分やノイズの成分も含んだアナログの信号を遅延させるので、対オブジェクト広帯域性のアナログ遅延器を用いる必要がある。
広帯域特性を有したアナログ遅延器は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)を用いたり、高速のAD変換器とFIFO(First In First Out Memory:先入れ先出しメモリ)DA変換器などを組み合わせたりした装置で実現されるので、二値論理素子で構成できる送信機600の遅延器616に比べると、回路規模が大規模で高価なものである。
このように、図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムには、伝送媒体で伝送される信号にノイズが重畳すると受信機で出力される情報入力信号のSN比が低下し、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムに比べて耐ノイズ性が劣り、高価で回路規模が大規模となる課題があった。
これに対し、本伝送システムは、伝送媒体にノイズがない場合、前記基準システムと同様に、数式7に示すように、逆拡散出力オブジェクトにノイズは含まれない。
また、伝送媒体で拡散出力オブジェクトにノイズの重畳がある場合、それが拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域内にスペクトルを有す場合でも、本伝送システムは、前記基準システムと同様に、そのノイズの成分を全て逆拡散キャリアでスペクトル拡散し、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅に対する逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅の比を大きくとって逆拡散の乗算後の信号を拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域だけを通過させるフィルタを通して、逆拡散出力オブジェクトに残るそのノイズの影響を事実上排除することができる、基準システムと等価なスペクトル拡散通信に特有の耐ノイズ性を有するものである。
この時、本伝送システムにあっては、拡散モジュール及び逆拡散モジュールのいずれも、アナログ遅延器を必要とはしていないので、アナログ遅延器を必要とすることによる高価で回路規模が大規模となる課題はない。
このように、本伝送システムは、図40に示す従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムと等価な耐ノイズ性を有しており、図41に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの前記課題は、本実施形態では解決されている。
次に、本伝送システムを評価するために、図42に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの動作を解析する。
図42に示したのは非特許文献3に示された参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムで、送信機700、受信機701、伝送媒体702で構成される。
送信機700は、拡散符号供給部710、乗算器711、同期装置713、拡散出力送信部712より構成され、拡散符号供給部710はクロック発生器714、PNG715より成り、同期装置713は、逆拡散符号送信部716より成る。
送信機700は次のように動作する。まず、拡散符号供給部710で、クロック発生器714が供給するクロック信号に基づいて、PNG715が、絶対値がゼロでなく等しく正負の二値をとる拡散符号cを発生させて乗算器711に供給する。
乗算器711は、外部から入力する情報入力信号aと、PNG715が供給する前記拡散符号cとを乗じて情報入力信号aのスペクトルを拡散した拡散出力信号bを作成する。拡散出力信号bは拡散出力送信部712でブロードバンド信号に変換されて伝送媒体702に送出される。
一方、同期装置713では、拡散符号と同じ信号を受信機で逆拡散符号として使わせる信号cとして同期装置713の逆拡散符号送信部716でブロードバンド信号に変換して伝送媒体702に送出する。
送信部712、716は伝送媒体702を共用して拡散出力信号と逆拡散符号とを同時に送るための装置で、ブロードバンドを用いて周波数多重で信号を伝送する送信装置である。拡散出力信号と逆拡散符号は、共用する伝送媒体702で重複しない占有周波数帯域を用いて同時に互いに干渉することなく送信機から受信機へ伝送される。
伝送媒体702では、伝送される拡散出力信号にも逆拡散符号にも図示しないノイズが重畳し、受信機はノイズが重畳した信号を入力する。拡散出力送信部712が出力するブロードバンド信号の拡散出力信号をqST、それに重畳するノイズをmとすると、受信機が入力するノイズが重畳した前記拡散出力信号qSRは次式で表される。
SR=qST+m (数式34)
同様に、逆拡散符号送信部716が出力するブロードバンド信号の逆拡散符号をqDT、それに重畳するノイズをmとすると、受信機が入力するノイズが重畳した逆拡散符号qDRは次式で表される。
DR=qDT+m (数式35)
受信機701は、同期装置720、拡散信号受信部721、乗算器722で構成され、同期装置720は、逆拡散符号受信部723より成る。
受信機701は、まず拡散信号受信部721が、伝送媒体702から数式34で示されるノイズが重畳したブロードバンドの拡散出力信号qSRを入力し、ノイズが重畳したベースバンド信号の拡散出力信号rに変換して乗算器722にむけて出力する。
一方、逆拡散符号受信部723も同様に、伝送媒体702から数式35で示されるノイズが重畳したブロードバンドの逆拡散符号qSRを入力し、ノイズが重畳したベースバンド信号の逆拡散符号cDDに変換して乗算器722にむけて出力する。
なお、非特許文献3の原文では、受信機でブロードバンドの拡散出力信号とブロードバンドの逆拡散符号とをベースバンドに復調せず、ある周波数のブロードバンド信号の状態で直接乗算してそれらの側波帯同士でベースバンドへの変換と逆拡散を同時に行うように示されているものを、ここでは説明を簡単にするために両者を一旦ベースバンドにして、その後であらためて逆拡散処理するように示した。これらによってこの構成の装置の動作原理が変わるものではない。
図42の構成では、異なる周波数帯域の二つの信号の一方を拡散出力信号の伝送に、他方を逆拡散符号の伝送に用いているが、特許文献4には、この異なる二つの周波数帯域の信号に代えて、直交関係にある二つの信号を同様の目的に使用している参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムが示されている。
これは伝送信号の形態が異なるだけで、PNGは送信機にしか設けず、それで発生させた信号を拡散符号cとして使う一方で、それを逆拡散符号cとして受信機で使わせるために送信機から受信機へ伝送し、受信機では受信した信号に含まれる逆拡散符号cの信号成分を逆拡散符号として用いることで拡散符号の成分と逆拡散符号の成分とを相互相関が確立された状態にしているという点では同一である。
このように、図42の構成の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムは、逆拡散符号を専用の伝送媒体で伝送することにより、図40に示す参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの受信機のような同期装置を用いることなく、その同期装置が作る状態と等価な状態を作り、拡散情報入力信号の拡散符号の成分と逆拡散符号の成分とを相互相関確立状態にして、スペクトル拡散通信を可能としている。
ここで、図42に示す参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムが伝送媒体で伝送中の信号にノイズの重畳を受けた場合の逆拡散出力信号への影響を解析してみる。送信機の乗算器で行われるスペクトル拡散操作は、情報入力信号をa拡散符号をcS、拡散出力信号をbとして、既述した従来のスペクトル拡散通信システムの場合と同様に、数式25で示される。
前記拡散操作で得られた拡散出力信号bの伝送媒体702を通した信号伝送にはブロードバンド信号を用いるが、そのために行う、送信機700の拡散出力送信部712におけるベースバンド信号からブロードバンド信号への変換は入力信号と出力信号とが比例関係となる線形な操作であるものとし、比例係数をkとして、次のように表すことが出来るものとする。
ST=k*b (数式36)
同様に、受信機701の拡散信号受信部721におけるブロードバンド信号からベースバンド信号への変換も線形な操作であるものとし、比例係数をkとして、逆拡散入力信号rは次のように表すことが出来るものとする。
r=k*qSR (数式37)
一方、拡散符号cと同一の逆拡散符号cの伝送媒体702を通した信号伝送にもブロードバンド信号を用いるが、そのために行う、送信機700の拡散符号送信部716におけるベースバンド信号からブロードバンド信号への変換と、受信機701の逆拡散符号受信部723におけるブロードバンド信号からベースバンド信号への変換も線形な操作であるものとし、比例係数をk、kとして、次のように表すことが出来るものとする。
DT=k*c
=k*c (数式38)
DD=k*qDR (数式39)
この時、情報入力信号aとrの関係は、数式25、数式34、数式36を用いて次のように表せる。
r=k*(qST+m
=k*(k*b+m
=k*a*c+k*m (数式40)
ただし、kは次式とする。
=k*k (数式41)
同様に、cとcDDの関係は、数式38、数式35、数式39を用いて次のように表せる。
DD=k*(qDT+m
=k*(k*c+m
=k*c+k*m (数式42)
ただし、kは次式とする。
=k*k (数式43)
数式40と数式42とから、逆拡散出力aは以下の様に表せる。
=r*cDD
=(k*a*c+k*m)*(k*c+k*m
=k*a*c +k*a*c*m
+k*m*c+k10*m*m (数式44)
ただし、c、c、cDDは時間によらないゼロでない定数をkPNとしていずれも±kPNの値を取り、k、k、k、k10は以下の通りとする。
=kPN (数式45)
=k*k (数式46)
=k*k (数式47)
=k+k (数式48)
10=k*k (数式49)
実際の受信機においては、乗算器722に続けて情報入力信号aのスペクトルの占有周波数帯域だけを選択的に通過させるフィルタを設け、乗算器722の出力から情報入力信号aのスペクトルの占有周波数帯域の成分だけを抽出して受信機の出力とするが、図42ではそのフィルタの記述は省略している。
数式44が示す図42に示す参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの拡散出力信号は、第一項は情報入力信号が逆拡散されたことを示し、それ以降の項はノイズである。そのノイズの項のうち、第二項と第三項は逆拡散符号でスペクトル拡散されたノイズであり、スペクトル拡散通信に特有の、情報入力信号と逆拡散符号の占有周波数帯域幅比を調整することで逆拡散後に残る情報入力信号成分への影響を軽減可能なものである。一方、前記のノイズの項のうちの第四項は数式32の第七項に示されるノイズ項と同様に、スペクトル拡散とは無関係のスペクトル構成のノイズであり、それは情報入力信号の占有周波数帯域に高いエネルギーのスペクトルを有す可能性もあるし、そのノイズ項の情報入力信号の占有周波数帯域の成分を、スペクトル拡散通信に特有の情報入力信号と逆拡散符号の占有周波数帯域幅比を調整することで軽減することも出来ない。
すなわち、図42に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムには基準システムが有す耐ノイズ性が無く、伝送媒体で逆拡散符号に重畳するノイズの成分が、例えば逆拡散出力信号中で情報入力信号の占有周波数帯域内に情報入力信号の成分と同程度以上のエネルギーでスペクトルを有す場合、拡散出力信号における情報入力信号の成分のSN比は劣悪となって通信は困難となる。
背景技術で説明した図42の従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムについての課題は具体的にはこのようなもので、伝送媒体にノイズがあるときに、そのノイズの影響は、スペクトル拡散通信に特有の情報入力信号と拡散符号の占有周波数帯域幅比を調整することで軽減することは出来ず、そのノイズが含まれる結果、逆拡散出力信号における情報入力信号の成分のSN比は低下し、そのノイズの成分が、例えば逆拡散出力信号中で情報入力信号の占有周波数帯域内に情報入力信号の成分と同程度以上のエネルギーでスペクトルを有す場合には通信は困難となる。
このように、図42に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムには、伝送媒体で伝送される信号にノイズが重畳すると受信機で出力される情報入力信号の成分のSN比が低下するという、図40に示した構成の従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムが有す耐ノイズ性がない課題があった。
これに対し、本伝送システムは、図40に示した構成の従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムと等価な耐ノイズ性を有しており、図42に示す従来の参照信号送信方式のスペクトル拡散通信システムの前記課題は、本実施形態では解決されている。
このように、本実施形態に係るキャリア加工部が、共通のノイズ信号と呼ぶ対オブジェクト広帯域性を有し不規則性の信号から、対オブジェクト広帯域性を有し不規則性で相互相関確立状態で対をなす信号関係の拡散キャリアと逆拡散キャリアを加工作成するため、これを本伝送システムに適用すれば、伝送するオブジェクトをスペクトル拡散したり逆拡散したりすることにより、従来の参照信号内蔵方式と前記参照信号送信方式が抱える課題を解決するとともに、これらの方式の利点を併せ持つスペクトル拡散通技術を利用した伝送システムを提供できるものである。
続いて、本実施形態に係るキャリア加工部1を適用した本実施形態に係る伝送システムにおける拡散キャリアと逆拡散キャリアは相互に乗じて定数となる性質と相互相関確立状態という性質とを両立させるという点について現実の条件を考察する。なお、拡散キャリアと逆拡散キャリアには、連続した信号も、インパルス状あるいはバースト状等のような不連続な信号も利用することができるが、ここでは拡散キャリアと逆拡散キャリアは連続した信号であるものとして考察することとし、インパルス状あるいはバースト状等のような不連続な拡散キャリアと逆拡散キャリアについては後述する。
スペクトル拡散通信では伝送する情報をある長さのある信号で表現する。例えば、固定周波数の正弦波を一次キャリアとし、BPSKで一次変調した情報信号を用いるスペクトル拡散通信では、前記正弦波の半周期で1ビットの情報を表現する。
本伝送システムは拡散キャリアと逆拡散キャリアを乗じて定数となる性質とするが、その性質は少なくとも前記情報を表現した長さに対応した期間にわたるものとする。
その時、本伝送システムは、共通のノイズ信号を加工することにより、理想環境下では拡散キャリアと逆拡散キャリアとを乗ずると必ず定数になるようにしている。しかし、現実には、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15について、ノイズ信号供給部2から拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15の出力までのそれぞれの過程間に、信号の系列方向にズレを生じる要素が避けられない。
それは、例えば、電気通信への応用の場合、ノイズ信号供給部2から拡散キャリア加工手段13までと、ノイズ信号供給部2から逆拡散キャリア加工手段15までの距離の差である。
前記のズレにより、現実の拡散キャリアと逆拡散キャリアは理想環境下で作成される拡散キャリア及び逆拡散キャリアとズレたものとなり、その結果、現実の拡散キャリアおよび逆拡散キャリアは、共通のノイズ信号を加工したものであるにもかかわらず、ところどころにある長さで乗じても規定の定数とならない区間を含んでしまうものである。
拡散キャリア及び逆拡散キャリアが乗じても定数にならないと、数式6の右辺が、伝送しようとした拡散入力オブジェクトaに比例せず、パターンが拡散入力オブジェクトaに相似のものとならなくなる。
拡散出力オブジェクトsの成分に乗じても定数とならない関係の逆拡散キャリアcを用いて行う逆拡散操作は、対オブジェクト広帯域性を有し不規則性をもつ逆拡散キャリアcに、それとは無関係な信号をただ乗ずる操作となり、これは、拡散出力オブジェクトsの成分を逆拡散キャリアcでスペクトル拡散する操作にほかならない。
以下では、拡散キャリアと乗じて定数となる正常な逆拡散キャリアで逆拡散されて拡散入力オブジェクトと相似の関係で得られた信号成分を正常逆拡散成分と記し、拡散キャリアと乗じても規定の定数とならない逆拡散キャリアで逆拡散されて拡散入力オブジェクトとは相似の関係にならなかった信号成分を不正拡散成分と記す。
また、ここでは、不正逆拡散成分は、対オブジェクト広帯域性を有した逆拡散キャリアの占有周波数帯域に均一にスペクトルが拡散されるものとして説明する。
この不正逆拡散成分も、逆拡散出力オブジェクトから拡散入力オブジェクトの成分を抽出するフィルタの通過帯域に存在するスペクトル成分だけは前記フィルタ出力にノイズとして現れるので、不正逆拡散成分が発生することは、前記フィルタ出力のノイズを増加させる。
しかし、前記フィルタの出力には、その不正逆拡散成分のエネルギーのうち、逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅に対する前記フィルタの通過帯域幅の比で示される割合の分しか現れない。
この性質を利用し、逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅と前記フィルタの通過帯域幅の比を、例えば数百倍以上にとり、不正逆拡散成分のエネルギーは、前記フィルタを通過する正常逆拡散成分のエネルギーに対して、実用上ゼロと見なせるほど、充分に小さなものとする。
一方、拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗じても規定の定数とならない期間は逆拡散手段から正常逆拡散成分が得られないので、前記フィルタからの拡散入力オブジェクトの成分の出力はゼロとなる。その結果、フィルタは途切れ途切れの拡散入力オブジェクトの成分を出力することとなり、切れ目のない拡散入力オブジェクトの成分を出力する正常な場合に比べ、フィルタの出力は情報を表現した信号の波形が歪み、拡散モジュールが入力した波形に対して、相似でない部分を含む忠実性の低いものとなる。
逆拡散出力オブジェクトの波形の拡散入力オブジェクトの波形に対する忠実性が低下すると、例えば一次変調した拡散入力オブジェクトを復調して伝送されるオブジェクトである情報を抽出する際に、振幅や位相情報を正確に判別できなくなり、情報を誤る可能性を高めるので好ましくない。拡散キャリアと逆拡散キャリア中に乗じても規定の定数とならない区間が発生することは現実には避けられないが、ここで説明したように、それは伝送されるオブジェクトを誤る可能性を高めるので、発生区間は出来るだけ少ないことが望ましいものである。
なお、インパルス状或いはバースト状等の様な不連続な拡散キャリア及び逆拡散キャリアを用いる場合、拡散キャリアと逆拡散キャリアのない不連続区間の逆拡散信号の値は、拡散キャリアと逆拡散キャリアが存在する区間から得られる逆拡散信号値を外装したり、それらを用いた解析処理で推定するなどして得る。そのため、拡散キャリア及び逆拡散キャリアが存在する部分で逆拡散して得るオブジェクトの正確さは重要である。その正確さのために、拡散キャリアと逆拡散キャリア中に発生する乗じても規定の定数とならない区間が少ないことが望ましいのはこの場合も同様である。
ここでは、拡散キャリア及び逆拡散キャリアが不規則性をもつ対オブジェクト広帯域性を有した信号であることから、伝送するオブジェクトを表現するある長さの信号に対応した拡散キャリア及び逆拡散キャリアの中に含まれる、乗じても規定の定数とならない区間の多さは、オブジェクトが内容を表現している単位区間の長さについての以下に示す拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの相互相関RCT−CRで表現して評価する。
CT−CR(u)=(1/L)*∫LA{c(w)*c(w)}dw (数式50)
ただし、∫LAdwは、変数wについてのuから始まる長さLの区間の定積分を示すものとし、積分区間は[u,u+L]である。
積分区間の長さLは、不規則性信号であるキャリアc、cそれぞれを積分すると充分ゼロに近い小さな値となる区間を与える長さとし、例えば、拡散入力オブジェクトの一次変調キャリアの半周期とする。数式50の積分演算は、拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗ずると定数となる区間では、その定数を積分するので、積分結果は高さがその定数値で長さがその区間長である長方形の領域の面積となる。
一方、その積分演算は、拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗じても規定の定数とならない区間では、相互相関が確立されていない不規則信号としての拡散キャリアと逆拡散キャリアの積を積分することになるので、積分区間全体についての積分結果は、統計的にはゼロに近い小さな値となる。
よって、数式50で示した相互相関は、これらの乗ずると定数となる区間の面積の合計を積分区間の長さで平均化したものとなり、積分区間内の、拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗ずると定数となる区間の長さの合計に比例した量となる。
このように、単独では不規則性を有する関数であり、相互には乗ずると定数となる関係にある拡散キャリアと逆拡散キャリアにおいては、この相互相関は、積分区間について、乗ずると定数になる区間の多さを相対比較するための尺度となる。
また、数式50の相互相関は、積分区間の全区間で拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗ずると定数の関係となっている理想的な場合は、下記のようになる。
CT−CR(u)=(1/L)*∫LCdw
=k*(1/L)*∫LCdw
=k*(1/L)*L
=k (数式51)
これは積分区間の全域で拡散キャリアと逆拡散キャリアが一致した場合なので、数式50の相互相関の最大値であり、これを用いると、数式50は次のように正規化できる。
NRCT−CR(u)=RCT−CR(u)/k (数式52)
ここで、NRCT−CRは、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの正規化した相互相関関数である。正規化した相互相関は最大値が1であり、絶対値が意味を持たなかった数式50で示される相互相関に対して、絶対的な比較尺度を提供できるので、数式50に代えて、数式52の正規化した相互相関を用いて、ある区間についての乗ずると定数になる領域の多さを評価しても良いものである。
これを用いると、ある拡散キャリア及び逆拡散キャリアの区間に含まれる乗じても規定の定数とならない部分を少なくするとは、その拡散キャリア及び逆拡散キャリアの区間の数式52に示される正規化した相互相関値を出来るだけ1に近づけることとなる。
前述したように、ある拡散キャリア及び逆拡散キャリアの区間に含まれる、乗じても定数とならない区間の量とオブジェクトを誤る可能性のようなオブジェクト伝送性能とは因果関係が有り、正規化した相互相関値を出来るだけ1に近づけることはオブジェクトを誤る可能性がゼロに近づけることになる。実際の応用においては、例えばオブジェクト伝送の誤り率のような、オブジェクト伝送に必要なオブジェクト伝送性能を表現するある要素には許容限界値が設けられ、その性能要素が前記許容範囲内では、オブジェクト伝送性能が実用上は支障のない状態であると見なして、その範囲でオブジェクトの伝送を行う。
そのとき、このオブジェクトを誤る可能性と拡散キャリアと逆拡散キャリアの相互相関との関係から、オブジェクト伝送性能に設けた前記許容限界値に対応して、拡散キャリアと逆拡散キャリアの正規化した相互相関に許容限界値を規定できる。
この相互相関の許容限界値の意味は、拡散キャリアと逆拡散キャリアの正規化した相互相関を、その許容限界値以上にすることにより、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリアcと逆拡散キャリアcが、実用上ある区間全域で数式5に示される乗ずるとゼロで無い規定の定数となる対をなす信号となるとみなせる結果、伝送するオブジェクトを誤る可能性が下がり、オブジェクト伝送性能をその許容限界値以上に出来るということである。
一方、拡散キャリア及び逆拡散キャリアがインパルス状或いはバースト状等の様な不連続の場合も、信号がゼロでない部分を用いることにより、連続した拡散キャリア及び逆拡散キャリアの場合と同様に正規化した相互相関が定義できる。この場合においても、前記した相互相関の許容限界値の意味は、その相互相関値をある許容限界値以上にすることにより、拡散キャリア及び逆拡散キャリアが存在する部分について、対オブジェクト広帯域性で不規則性をもつ拡散キャリアcと逆拡散キャリアcが、実用上ある区間全域で数式5に示される乗ずるとゼロで無い規定の定数となる対をなす信号となるとみなせる結果、伝送するオブジェクトを誤る可能性が下がり、オブジェクト伝送性能をその許容限界値以上に出来るということである。
この点に基づき、本伝送システムは、拡散キャリアと逆拡散キャリアの正規化した相互相関を、その許容限界値以上にすることにより、オブジェクト伝送性能をその許容限界値以上にして、オブジェクト伝送性能が実用上は支障のない状態であると見なしてオブジェクト伝送を行うものである。
本明細書の冒頭で、ある規定した以上の相互相関状態を確立した状態を相互相関確立状態と記したが、より厳密には、拡散キャリアと逆拡散キャリアの相互相関確立状態には、何らかのオブジェクト伝送性能の許容限界に対応した相互相関の許容限界内にある状態をも含むものである。また、本伝送システムの構成と動作の説明において、ノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に共通に供給するとは、ノイズ信号xとノイズ信号xとの差をある規定の範囲内にして事実上同一と見なせるようにし、その結果として相互相関がある規定以上になるようにすることであると述べた。これも相互相関確立状態の定義と同様に、より厳密には、ノイズ信号xとノイズ信号xとの差をある規定の範囲内にして、その結果として拡散キャリアと逆拡散キャリアが前記の相互相関確立状態となる範囲内にすることである。
拡散キャリアと逆拡散キャリアの相互相関には、本伝送システムの様々な要素が影響を与える。例えば、伝送媒体11の特性に起因する、拡散モジュールに供給するノイズ信号の特性と逆拡散モジュールに供給するノイズ信号の特性の差や、拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段の特性差である。
しかし、これらの特性は、本伝送システムの実際の応用分野によって異なる。拡散キャリアと逆拡散キャリアの相互相関の下限値は、本伝送システムを応用する個々の事例ごとに、フィルタの特性や、伝送媒体のノイズの特性など、拡散キャリア及び逆拡散キャリア以外の要素の影響も考慮しながら、拡散キャリアと逆拡散キャリアの相互相関の情報伝送性能への影響の深さを明らかにして決定するのが現実的である。
次に本伝送システムで用いることが可能な拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの形態例を図8に示す。拡散キャリアcや逆拡散キャリアcは、このようなアナログの不規則な値の変化を呈し、連続的なとき(同図の30)もあれば、定常的にゼロの中の不規則な位置に瞬間的にゼロでない信号が現れるインパルス状信号(同図の32)や、不規則な位置に不規則な長さで信号がゼロとなるバースト状信号(同図の31)でもよいものである。拡散キャリアcや逆拡散キャリアcを連続的な形態に対してバースト状やインパルス状にすることによって、拡散キャリアcや逆拡散キャリアcの占有周波数帯域幅を広げたり、伝送媒体の信号から拡散出力オブジェクトの存在を発見することや拡散入力オブジェクトの波形を推定することをより困難にすることが出来る。拡散キャリアcや逆拡散キャリアcの占有周波数帯域幅が広がれば、数式23の処理利得GPを向上させることができるので数式24のSNRが向上し、耐ノイズ性が向上する。また、耐ノイズ性を同程度に抑える場合、広がった拡散キャリアの占有周波数帯域幅に対応して拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域幅を広げることが可能となり、これは例えば拡散入力オブジェクトの一次変調キャリアの周波数を上昇させて良いことを意味し、それに伴い単位時間当たりに一次変調キャリアで表現できる情報量を増加させることが出来ることとなる。すなわち、拡散キャリアcや逆拡散キャリアcの占有周波数帯域幅が広がれば、伝送能力が向上する。また、伝送媒体の信号から拡散出力オブジェクトの存在を発見することや拡散入力オブジェクトの波形を推定することをより困難にすることは秘匿性や秘話性を向上させることである。これらの観点から、拡散キャリアcや逆拡散キャリアcにバースト状やインパルス状の形態を利用できることは望ましいものである。
従来のスペクトル拡散通信では、前記インパルス状信号でスペクトルを拡散し、例えばSAWフィルタ(SAW:Surface Acoustic Wave 表面弾性波)やCCDを用いた整合フィルタを用いて、同期装置を構成したり直接的に情報を復調する方法が知られている。それを用いればインパルス状信号を用いた信号伝送が可能であるが、半導体回路素子とは異なる高価な素子を必要とし、モノリシック化が困難であったり長大な素子が必要になるなど小型化に限界があるうえ、電力の伝送には適用できないなど、実用上の制約がある。
そのため、インパルス状信号やバースト状信号を用いた信号伝送が可能で、広い実用性があり、半導体回路素子にモノリシックに実現できるスペクトル拡散及びスペクトル逆拡散伝送技法が望まれている。
本伝送システムに応用するキャリア加工部1によれば、同期操作することなく同期状態の拡散キャリアと逆拡散キャリアとが得られる。
そのとき拡散キャリア及び逆拡散キャリアの信号形態が連続的であるかバースト状あるいはインパルス状に不連続(間欠的)であるかは問わない。どの信号形態であろうと、拡散キャリアと逆拡散キャリアを同期状態と等価に出来る。結果として、逆拡散後の成分に必要充分な伝送拡散入力オブジェクトの成分が得られるなど、期待する効果が得られるならば、拡散キャリアと逆拡散キャリアにゼロなどの特定の状態がどの位置にどれだけの期間含まれていてもよいものである。
なお、拡散キャリアと逆拡散キャリアにゼロなどの特定の状態が含まれて拡散キャリア及び逆拡散キャリアの信号形態がバースト状あるいはインパルス状に不連続(間欠的)になる場合、そのような拡散キャリア及び逆拡散キャリアを用いたスペクトル拡散及びスペクトル逆拡散信号処理で得られる逆拡散出力オブジェクトの拡散入力オブジェクト成分は不連続となったものとなる。逆拡散出力オブジェクトの拡散入力オブジェクト成分がこの様な不連続な信号になる場合は、例えば、不連続な逆拡散出力オブジェクトにトラックホールドと低域通過フィルタを組み合わせた波形包絡線の再生処理、あるいは数値解析による近似波形の再生処理を加えるなどして、拡散入力オブジェクトの成分のもとの連続した波形を再生して出力する。図1に示した本伝送システムの構成において拡散キャリア及び逆拡散キャリアに上記バースト状あるいはインパルス状に不連続(間欠的)な信号形態を用いる場合、上記拡散入力オブジェクトの成分の連続波形再生は、例えば逆拡散手段のひとつの機能として乗算機能やフィルタ機能とともに組み込めばよいものである。
また、従来のスペクトル拡散及び逆拡散を用いた信号処理技法では、本伝送システムの拡散キャリアや逆拡散キャリアに相当する信号に、周波数が変化する信号を用いる方法が知られている。
そのひとつである周波数ホッピングや周波数チャープと呼ばれる手法では、本伝送システムの拡散キャリアや逆拡散キャリアに相当する信号を、ある規定の短時間の間、ある規定の周波数の正弦波とし、次に、同じ規定の時間の間、別のある規定の周波数の正弦波とし、正弦波の周波数を次々に変える。この次々に変える周波数を広い領域に満遍なく分散させ、ひとつの周波数としている期間を非常に短い期間とすることにより、長い時間間隔で見たときに、信号のスペクトルが広い周波数領域に一様に分布しているようにみなすものである。そのうち、周波数ホッピングは周波数を離散的に不規則に変化させるものを指し、周波数チャープは周波数を連続的に変化させるものを指す。
いずれの場合も、従来技法では何らかの同期装置を用いて送信側と受信側とで周波数変化のパターンとタイミングとを同期させてから通信を行う。
本伝送システムでも、そのような周波数を変化させた信号をノイズ信号または拡散キャリアと逆拡散キャリアとして用いても良いものである。いずれの場合も変化させる周波数の範囲や変化速度は、少なくとも拡散入力オブジェクトを伝送するために必要な期間は、結果として得られる信号が対オブジェクト広帯域性を有す必要がある。
特に拡散キャリアと逆拡散キャリアに用いる場合は、拡散キャリアと逆拡散キャリアには同一の信号を用いる。これは、同一周波数で位相が合った二つの正弦波を乗ずるとゼロでない定数成分と元の周波数の二倍の周波数の余弦波となり、その定数成分が数式5の定数と同じ効果を提供するからであり、これは同期検波あるいはダイレクトコンバージョン(Direct Conversion)として広く知られた復調方法である。この時、余弦波の成分は拡散入力オブジェクトの一次変調の周波数に対してはるかに高い周波数なので、逆拡散手段内で拡散入力オブジェクトを抽出するフィルタで容易に完全に排除される。また、拡散キャリアと逆拡散キャリアの周波数変化範囲を拡散入力オブジェクトの一次変調の周波数に対してはるかに広くすることにより、拡散モジュールから逆拡散モジュールへ拡散出力オブジェクトを伝送する伝送媒体で拡散出力オブジェクトに重畳するノイズに対する耐ノイズ性もこれまでの説明と同様に実現できるものである。
このような拡散キャリアと逆拡散キャリアは、例えば、高度な信号処理手法を用いた拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段のひとつとして、ノイズ信号を加工して得た信号で正弦波や矩形波などの適当な波形発生器を制御する構成を設け、発生させる信号の周波数をノイズ信号を加工して得た信号で連続的あるいは離散的に変化させて作成する。
本伝送システムによれば、同期操作が必要ないので、同期操作に必要な周波数の変化パターンの周期性は必要なく、ある規定の期間ある周波数である必要もないので、例えばそれは、周波数の変化パターンは二度と同じものが現れない完全に不規則なもので、その周波数変化の中で変化の速度も方向も全く不規則なものでよいものである。また、そこに複数の周波数の信号を組み合わせても良いものである。
このように拡散キャリアcや逆拡散キャリアcを周波数の変化する信号にすることによって、伝送媒体の信号から拡散出力オブジェクトの存在を発見することや拡散入力オブジェクトの波形を推定することをより困難にすることが出来、秘話性や秘匿性の向上に貢献できるものである。
このように、本発明の実施形態に係るキャリア加工部1は、特殊な素子を用いることなく、モノリシックに実現できる平易な回路素子だけで構成した装置で、インパルス状信号やバースト状信号、周波数ホッピング信号や周波数チャープ信号を含む不規則に周波数が変化する信号、それらを任意に組合わせた形態の拡散キャリアと逆拡散キャリアとを供給するものである。本実施形態1に係るキャリア加工装置を適用したスペクトル拡散オブジェクト伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散通信システムに対して、小型で安価に、耐ノイズ性を向上させたり、伝送能力を向上させたり、秘匿性や秘話性を向上させたりすることができる。
以上の説明では、本実施形態1に係るキャリア加工装置をスペクトル拡散情報システムに応用した例を本伝送システムの一例として説明したが、前述したように本伝送システムは、スペクトル拡散情報システムに限られるものではない。本実施形態1に係るキャリア加工装置を応用した幾つかの本伝送システムについて説明する。
様々な装置、とりわけ電子回路を用いた装置では、クロックと呼ばれるオブジェクトが用いられる。そのオブジェクトを具体的に表現した信号は例えば一定周期の矩形波である。このような信号の伝送では、その伝送回路から単位周波数あたりの高い電力密度(以下単に電力密度と記す)の輻射が起き、周辺の電子回路や電子装置にノイズを侵入させる根源となっている。その回路に本発明の実施形態に係るキャリア加工装置を応用すると、輻射の電力密度を下げることができるものである。
具体的に説明する。図1に示す本伝送システムの構成において、拡散入力オブジェクトを、例えば一定周波数の矩形波とする。
このとき、キャリア加工部1が供給する拡散キャリアと逆拡散キャリアを、前記矩形波の周波数の千倍以上の周波数まで一様にスペクトルが分布する信号となるように素ノイズ信号源10を設定する。すると、伝送媒体7で伝送されるスペクトル拡散された矩形波は、元の矩形波に対して非常に広い周波数帯域に低い電力密度でスペクトルが分布することになる。逆拡散モジュールにおいては逆拡散手段において逆拡散入力オブジェクトと逆拡散キャリアとを乗じた後、その乗じた信号を、例えば、もとの矩形波の周波数以下の周波数帯域を通過帯域とする低域通過フィルタを通した信号を逆拡散出力オブジェクトとして出力する。このようなフィルタによれば、もとの矩形波のスペクトルのうち基本波成分のみが抽出出力され高調波成分が失われるので、逆拡散出力オブジェクトとして出力される信号の波形は正弦波となる。出力される信号にもとの拡散入力オブジェクトの矩形波形が必要な場合は、この正弦波を例えばコンパレータで波形整形する。また、この波形は前記フィルタや伝送媒体や信号処理回路の影響で、もとの拡散入力オブジェクトの矩形波とは位相のずれたものとなる。この時、もとのもとの波形に対する位相の整合が必要な場合は、そのフィルタや伝送媒体や信号処理回路の特性は既知なので、例えば位相補正回路でフィルタなどで受けた位相変化の補償を行えばよいものである。
一般に、伝送線路を伝搬する矩形波から輻射されるノイズは、ある特定の時刻や、ある特定の狭い周波数帯域のエネルギー成分が問題となるが、本伝送システムを用いてスペクトル拡散で伝送すると、ある瞬間の全輻射エネルギーも小さく出来るし、ある狭帯域のエネルギーも低減されるので、他の電子回路や電子装置に侵入するノイズはスペクトル拡散しない場合に比べて著しく小さくなると言える。
クロック信号の伝送線路から輻射されるクロックノイズを低減させることを意図して、従来、クロック信号にクロック周波数の周りで微量の不規則な揺らぎを与えてクロック信号のスペクトルを拡散することが行われている。クロック信号について従来行われていた前記スペクトル拡散では、スペクトル逆拡散操作を伴わないため、スペクトルの拡散幅は非常に微量に限られ、そのため伝送路から輻射されるクロックノイズの全電力の低減もある狭帯域の電力密度の低減効果も限定的である。
それに対して本伝送システムを用いた伝送線路(伝送媒体7に相当する)から輻射されるノイズの電力密度の低減効果は著しいものとなる。また、本伝送システムを用いれば、伝送線路から輻射されるノイズの影響ばかりでなく、伝送するオブジェクトを他のノイズの影響を受けないようにも出来るものである。なお、伝送線路から輻射されるクロックノイズの電力密度の低減のような目的だけに本発明の実施形態に係るキャリア加工装置を適用する場合では、伝送媒体7で外部から侵入するノイズの影響を低減させる必要がないため、拡散入力オブジェクトである矩形波の周波数に対して拡散キャリアと逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅をたとえば数倍から数十倍のように比較的低く抑えても意図する効果は期待できるものである。
前述したクロック信号の伝送においてクロックノイズの輻射やクロック信号に外部から侵入するノイズの影響を軽減するのと全く同様の観点で、本伝送システムの構成は、電力の伝送においてノイズの輻射や外部から侵入するノイズの影響を軽減するのに貢献できるものである。
その説明のための例として、400Hzの正弦波の交流で電力を伝送する本伝送システムを挙げることができる。この電力は周波数が可聴周波数帯にあるので、その伝送ケーブルを電話線やオーディオの配線などと近接させて配線すると、電磁誘導などで電話やオーディオのシステムに侵入して、400Hzの“ビー”という耳障りなハム音と呼ばれるノイズを生じさせる。
このような電力の伝送システムへの本伝送システムの適用は、例えば、図1に示した構成で拡散入力オブジェクトを400Hzの正弦波交流電力とする。この例では、拡散キャリアと逆拡散キャリアの占有周波数帯域は、伝送対象である拡散入力オブジェクトの周波数である400Hzに対して、例えば、千倍程度とする。伝送線路(伝送媒体7)から誘導される電源ノイズの電力密度の低減のような目的だけに本伝送システムを適用する場合では、伝送媒体7で外部から侵入するノイズの影響を低減させる必要がないため、伝送対象の拡散入力オブジェクトである周波数に対して拡散キャリアと逆拡散キャリアの占有周波数帯域幅をたとえば数倍から数十倍のように比較的低く抑えても良いものである。
このように本実施形態に係るキャリア加工装置を応用することにより、電力を供給する電線(伝送媒体7)から周囲に輻射される磁界や電界は不規則で広帯域なものとなるため、その電力密度は本発明の実施形態に係るキャリア加工装置を応用しない場合に比べて著しく低くなる。この結果、伝送媒体7の伝送ケーブルを電話線やオーディオの配線などと近接させて配線しても、電話やオーディオのシステムに侵入するノイズは低い電力密度で広い周波数帯にスペクトルが拡散したものなので、耳障りな特定周波数のノイズにはなり得ないものである。
このように、本伝送システムの構成によれば、特に情報を表現しない電力の伝送に対しても、スペクトル拡散通信の効果を提供できる。
スペクトル拡散とスペクトル逆拡散の一連のプロセスで達成される耐ノイズ性などのスペクトル拡散特有の特性は、従来、情報通信や測距などの目的に用いられるだけであった。しかし、本実施形態に係るキャリア加工装置についての特徴の一つである拡散キャリアと逆拡散キャリアが共通のノイズ信号から加工供給される点によれば、これまでにない新たな用途が生まれるものである。
応用の一例として、図3及び図4に対オブジェクト広帯域性を有した信号を検知するシステムを示す。
この応用ではある幅の周波数帯の無線電波の信号をノイズ信号に用いる。その時に用いる無線電波の信号は、その周波数帯域のスペクトル分布の床(フロア)を構成するいわゆる背景ノイズと呼ばれるものの電力密度に対し、明らかに高いと認識できる高さの電力密度を有した信号である。例えば一般のラジオ放送に用いられる周波数帯では、その放送信号がノイズ信号の成分となる。また、例えば雷雨時のそのラジオ放送の周波数帯において、雷放電のノイズも背景ノイズに対して明らかに高い電力密度のスペクトルを呈すので、これもノイズ信号に用いることが出来る。この応用では、このような放送信号と雷放電の信号とをノイズ信号に用いる。
図3および図4に示した構成において、ノイズ信号供給部2は、例えば、560KHzから1600KHzの中波のAMラジオ放送の周波数帯域に存在する信号をノイズ信号xとして拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共通に供給する。
図3に示す状態は、ノイズ信号供給部2がその周波数帯全域に存在する様々な放送信号全ての信号をひとつのノイズ信号として拡散モジュールと逆拡散モジュールに供給している状態を示すものであって、この状態を定常状態とする。
これに対して、図4に示す状態は、ノイズ信号供給部2が雷放電の信号をノイズ信号として拡散モジュールと逆拡散モジュールに供給している状態を示すものであって、この状態を対オブジェクト広帯域性を有した信号の検出状態とする。
一方、図3及び図4において、拡散入力オブジェクトaとしては、常に一定周波数の正弦波を拡散モジュール3の拡散手段14に供給する。
拡散キャリア加工手段13は、入力するノイズ信号xを拡散キャリアcに加工して拡散手段14に供給する。拡散手段14は、拡散入力オブジェクトaを拡散キャリアcと乗じ、その結果を拡散出力オブジェクトsとして出力する。
図3及び図4に示すシステムでは、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4の間には、スペクトル拡散情報伝送システムでの伝送媒体7に相当する要素としてノイズ源17aと加算手段17bとを配置している。
前記拡散出力オブジェクトsには、ノイズ源17aが出力するノイズmが加算手段17bにより加算される。これは、従来のスペクトル拡散情報伝送システムのモデルの場合において、伝送媒体で拡散出力オブジェクトにノイズが重畳したのと全く同じ状況と言える。
逆拡散モジュール4には、ノイズmが重畳した拡散出力オブジェクトsが逆拡散入力オブジェクトhとして入力する。逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2から入力するノイズ信号xを逆拡散キャリアcに加工して逆拡散手段16に供給する。逆拡散手段16は、前記逆拡散入力オブジェクトhを前記逆拡散キャリアcと乗じ、その結果を逆拡散出力オブジェクトaとして出力する。
つづいて、本実施形態の動作の詳細を、まず、図3に示す定常状態における動作から説明する。
この状態では、ノイズ信号供給部2が拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共通に供給するノイズ信号xは、近隣の電界強度の高い幾つかの放送信号だけで構成された信号となる。遠方の放送信号は電界強度が低いので、そのスペクトルは背景ノイズと区別がつかないものであり、ノイズ信号の成分とはならない。AM放送信号のスペクトルは、その放送信号のキャリア周波数の周りにたかだか数KHzという可聴周波数の幅で広がっているに過ぎず、それはAMラジオ放送の周波数帯全域から見れば線スペクトルのようにスペクトルの広がりは無いに等しいものである。定常状態におけるノイズ信号はそのような放送信号を幾つか含んだものなので、そのスペクトルはAMラジオ放送の周波数帯に高さの異なる何本かの線状スペクトルが存在しただけのまばらな櫛状の構成となる対オブジェクト広帯域性のないものである。ここでは、以降の説明の理解を容易にするために、放送信号がひとつだけで、それは1000KHzの位置に1本の線スペクトルであるとして説明する。
この応用例において、ノイズ信号から拡散キャリアや逆拡散キャリアへの加工は、AMラジオ放送の周波数帯全域の信号を唯一の入力信号として用い、そのスペクトルの広がりをそのままに反映し単純に対をなす信号の拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成するもので、波形や波形パターンの複雑さを高める加工は行わない。それは、例えば入力されるノイズ信号をゼロを基準に絶対値がゼロで無く等しい正負の二値を取る信号にする加工である。ここでは、拡散キャリアと逆拡散キャリアへの加工はその例のような二値化であるとして説明する。
また、放送信号のスペクトルがただ1本の線スペクトルであるとは、ノイズ信号xが固定周波数の正弦波であることである。そして、その信号をゼロを基準に二値化の加工を行うとは、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを一定周波数の矩形波とすることである。その矩形波の周波数はもとの正弦波の周波数であり、それは放送信号のキャリアの周波数であるから、定常状態での拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、もとの放送信号と同じ周波数とその奇数次の高調波の線スペクトルとで構成されたまばらな櫛状のスペクトル構成の対オブジェクト広帯域性のない信号となる。その高調波成分はそれぞれ放送信号と同じ周波数のスペクトルより小さく、その多くはAMラジオ放送の周波数帯より高い周波数となるので、ここでは、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcはもとの放送信号と同じ周波数のスペクトルだけであるとして説明する。その拡散キャリアcは拡散手段に、逆拡散キャリアcは逆拡散手段に供給される。
一方、拡散入力オブジェクトaは、ノイズ信号を得る様々なAMラジオ放送のスペクトルが分布する周波数帯域を対オブジェクト広帯域性と見なすために、拡散入力オブジェクトaの周波数をノイズ信号を得る周波数領域の上限周波数に対して、例えばその数百分の一以下のようにはるかに小さいものとする。ここでは、拡散入力オブジェクトaは、ノイズ信号を得るAMラジオ放送の周波数帯の上限周波数1600KHzの1600分の一に当たる1KHzの正弦波であるとして説明する。この拡散入力オブジェクトaのスペクトルは1KHzの周波数位置にある一本の線スペクトルである。
拡散手段は、その1KHzの線スペクトルの拡散入力オブジェクトaと、1000KHzの線スペクトルの拡散キャリアcとを乗じ、その結果を拡散出力オブジェクトsとして伝送媒体に出力する。
既述したように、拡散手段で行うこの操作は平衡変調操作であり、それから得た拡散出力オブジェクトsは、拡散キャリアcの線スペクトルの位置から拡散入力オブジェクトaの正弦波の周波数分だけ前後に離れた位置の二本の側波帯で構成するスペクトルとなる。すなわち、拡散出力オブジェクトsは999KHzと1001KHzの二本の同じ長さの線スペクトルで構成されたものとなる。このようにただ1本の線スペクトルであるノイズ信号によれば、拡散出力オブジェクトsはスペクトルが広く拡散されていない対オブジェクト広帯域性のない信号になる。拡散モジュールはこの拡散出力オブジェクトをある適当なエネルギーで伝送媒体に出力する。
次に、伝送媒体7ではその拡散出力オブジェクトsにノイズmを重畳させるが、この時、ノイズmには、定常状態時に伝送媒体で伝送される拡散出力オブジェクトsに強く干渉する信号を用いる。それは、拡散出力オブジェクトsのスペクトルの周波数領域に拡散出力オブジェクトsと同程度以上のエネルギーのスペクトルを持つ信号を用いることであり、具体的には、例えば、ノイズmは、拡散出力オブジェクトsと同じエネルギーの999KHzと1001KHzの正弦波信号とすることである。ここでは、ノイズmは、拡散出力オブジェクトsと同じエネルギーの信号で、999KHzと1001KHzのスペクトルで構成したものとする。なお、ノイズmは拡散出力オブジェクトに対してどのような位相関係であってもよいものである。このノイズmの供給部には、例えば999KHzと1001KHzの正弦波の発信器を用いる。
続いて、逆拡散モジュールはこのノイズmが重畳した拡散出力オブジェクトsを逆拡散入力オブジェクトhとして入力し、逆拡散手段でそれに逆拡散キャリアcを乗じる逆拡散操作を行う。この例では、逆拡散キャリアcには拡散キャリアcと同じ信号を用いる。この逆拡散操作は数式21に示された演算操作であり、逆拡散手段はそこから得られる信号に拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域のスペクトルを通過させるフィルタを作用させた結果を逆拡散オブジェクトとして出力する。
その数式21に示された逆拡散操作の結果のうち、右辺第一項の信号は、999KHzと1001KHzの周波数位置の二本の線スペクトルである拡散出力オブジェクトsを、1000KHzの1本の線スペクトルである逆拡散キャリアcで平衡変調して得た信号である。
それによれば、拡散出力オブジェクトsの999KHzの成分と逆拡散キャリアcの1000KHzの成分からは1KHzと1999KHzのスペクトルが生じ、拡散出力オブジェクトsの1001KHzの成分と逆拡散キャリアcの1000KHzの成分からは1KHzと2001KHzの成分が生じる。この時生成される各スペクトルにはもとの信号のエネルギーが等分に分配されるので、1KHzと1999KHzと2001KHzそれぞれのスペクトルに分配されるエネルギーの比は2:1:1となる。そのうち、もとの1KHzの拡散入力オブジェクトのスペクトルだけが、逆拡散手段内に設けられた拡散入力オブジェクトの周波数成分を通過させるフィルタを通過して逆拡散手段の出力に現れる拡散入力オブジェクトの成分となる。
一方、数式21に示された逆拡散操作の結果のうち、右辺第二項の信号は、999KHzと1001KHzの周波数位置の二本の線スペクトル構成のノイズmを、1000KHzの線スペクトルである逆拡散キャリアで平衡変調して得た信号である。
それによれば、ノイズmの999KHzの成分と逆拡散キャリアcの1000KHzの成分からは1KHzと1999KHzのスペクトルが生じ、ノイズmの1001KHzの成分と逆拡散キャリアcの1000KHzの成分からは1KHzと2001KHzのスペクトルが生じる。この時生成される各スペクトルにはもとの信号のエネルギーが等分に分配されるので、1KHzと1999KHzと2001KHzそれぞれのスペクトルに分配されるエネルギーの比は、数式21の右辺第二項の信号のエネルギー分配比と同じ2:1:1となる。このように、対オブジェクト広帯域性のない逆拡散キャリアによれば、数式21の右辺第二項の信号は対オブジェクト広帯域性のない信号となる。そのうち、1KHzの拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域と同じ周波数領域のスペクトルが、逆拡散手段内に設けられた拡散入力オブジェクトの周波数成分を通過させるフィルタを通過して逆拡散手段の出力に現れる拡散入力オブジェクトの成分となる。
ここで、逆拡散操作を示す数式21の右辺各項の信号のエネルギーについて、第一項の成分のエネルギーと第二項の成分のエネルギーの比は、逆拡散入力オブジェクトにおける拡散出力オブジェクトsのエネルギーとノイズmのエネルギーの比と同じである。
この時、伝送媒体で拡散出力オブジェクトsに重畳したノイズmは拡散出力オブジェクトsのエネルギーと同じエネルギーとするから、逆拡散操作を示す数式21の右辺各項の信号のエネルギーについて、第一項の成分のエネルギーと第二項の成分のエネルギーの比は1:1であると言える。
その第一項と第二項それぞれの成分のうち、拡散入力オブジェクトの周波数成分を通過させるフィルタを通過できるのは、例えばそのフィルタに1KHzの低域通過フィルタを用いた場合、この定常状態においては1KHzの成分だけであり、その1KHzの成分はその第一項と第二項それぞれの成分の中で50%のエネルギー分配比を有したものである。だから、そのフィルタを通過して逆拡散出力オブジェクトとして出力される信号は1:1のエネルギー比の数式21の右辺第一項と第二項それぞれの成分の中から同じ分配比で得られるエネルギーの信号なので、逆拡散出力オブジェクトは、同じエネルギーを有した拡散入力オブジェクト成分とノイズmの成分とで構成された信号となることがわかる。
この場合、拡散入力オブジェクト成分とノイズmの成分はいずれも1KHzの信号ではあるが同期を取ったものではないので、それらの間には何らかの位相差があり、それによってそれら二つの信号を合成した信号は拡散入力オブジェクトの波形とは異なったものとなる。
ここで、ノイズmは定常状態時に伝送媒体で伝送される拡散出力オブジェクトsに強く干渉することを目的とした信号で、その干渉の結果、定常状態時の逆拡散出力オブジェクトが拡散入力オブジェクトの波形から常にかけ離れたものとなるようにする。そのため、実際の応用では、ノイズmに拡散出力オブジェクトより高い電力密度で1KHzの信号を不規則信号で変調するなどした信号を用いる。これにより、定常状態時には、逆拡散出力オブジェクトは常に拡散入力オブジェクトとはかけ離れた波形となってしまう。
このように、本実施形態によれば、ノイズ信号供給部が供給するノイズ信号が対オブジェクト広帯域性を有さないと、本システムのオブジェクト伝送メカニズムは、スペクトル拡散通信手法に特有の耐ノイズ性が得られないため伝送媒体でオブジェクトの忠実な伝送を妨害する目的で意図的に重畳させたノイズの影響を抑制することが出来ず、拡散入力オブジェクトに入力する信号波形を逆拡散出力オブジェクトに忠実に出力することが出来ない。
この状態は、例えば逆拡散手段に続けて図示しない比較器を設けて逆拡散出力オブジェクトと拡散入力オブジェクトとを時々刻々比較し、それらの信号間にある規定の期間以上連続して一致した状態がないという比較結果を得るようにすることで検知することが可能である。
ここでは、放送信号がひとつだけで、それは1000KHzの位置に1本の線スペクトルであるとして説明したが、定常状態時にノイズ信号として用いる信号に複数の放送信号のスペクトルがある場合も、上記の動作は同じである。ただし、その場合、拡散出力オブジェクトに現れる各放送信号に対応したスペクトルそれぞれにノイズmが強く干渉するように、例えばノイズmも複数のスペクトルを有すなどの対応もあわせて行うようにする。
次に、本実施形態の動作の詳細を、図4に示す対オブジェクト広帯域性を有した信号の検知状態における動作について説明する。
この状態では、ノイズ信号供給部2が拡散キャリア加工手段13及び逆拡散キャリア加工手段15に共通に供給するノイズ信号xは、放送信号と雷放電の信号が混じったものとなる。
雷放電は人間の目には瞬間的な現象のように見えるが、実際には、不規則に大きさが変化する巨大な電流がある期間連続的に流れる放電が、非常に短い期間に不規則に多数回集中発生する現象であることが知られている。また、この雷放電現象からは巨大な電力密度で非常に広帯域にスペクトルが一様に広がったインパルス状電磁波が連続的に輻射されることもよく知られている。このような雷放電からの信号は、560KHzから1600KHzというAMラジオ放送の周波数帯全域以上の広い周波数帯域にわたり、どの放送信号の占有周波数帯域のエネルギーも放送信号を上回る高い電力密度の強力な信号であるため、放送信号と雷放電の信号が混じったノイズ信号は、事実上雷放電の信号のみで構成されたものとなる。ここでは、ノイズ信号は雷放電の信号のみで構成されたものとし、そのノイズ信号は、2000KHz以上の占有周波数帯域を有し、その周波数帯全域にわたり前記の高い電力密度のスペクトル分布の信号であるとして説明する。すなわち、対オブジェクト広帯域性を有した信号の検知状態におけるノイズ信号は対オブジェクト広帯域性を有した信号である。
拡散キャリア加工手段13及び逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2から共通に提供される雷放電の信号に基づくノイズ信号xを入力し、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工する。拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工は、図3の説明で用いたものと同じ、入力されるノイズ信号をゼロを基準に比較し絶対値がゼロで無く等しい正負の二値を取る信号にする二値化の加工である。広い周波数帯域にわたりスペクトルが分布するノイズ信号を二値化して作成される拡散キャリアcと逆拡散キャリアcは、ノイズ信号と同様に広い周波数帯域にわたりスペクトルが分布した二値信号となる。ここでは、拡散キャリアcも逆拡散キャリアcもノイズ信号と同様に2000KHz以上の占有周波数帯域を有した対オブジェクト広帯域性を有した信号となるとして説明する。その拡散キャリアcは拡散手段に、逆拡散キャリアcは逆拡散手段に供給される。
拡散手段は、その拡散キャリアcを拡散入力オブジェクトaと乗じ、その結果を拡散出力オブジェクトsとして伝送媒体に出力する。この時行われる拡散手段は平衡変調操作である。
拡散キャリアcを2000KHzの周波数帯域に広がった無数の線スペクトルの集合体と考えると、そのひとつの線スペクトルの信号と1KHzの線スペクトルである拡散入力オブジェクトaを平衡変調して得られる信号は、定常状態時の拡散操作時の結果と同様に、拡散キャリアの線スペクトルの周波数を挟んだ前後1KHzの周波数位置の二本の側波帯で構成するスペクトルの信号となる。この平衡変調の効果を2000KHzの周波数帯域に広がった拡散キャリアcの無数の線スペクトル全体について考えると、結果として得られる信号は、拡散キャリアcの占有周波数帯域より1KHz広い周波数帯域にわたりスペクトルが分布した信号となることがわかる。すなわち、拡散出力オブジェクトsは拡散キャリアcのスペクトルで拡散され、拡散キャリアcと同様に広い周波数帯域にわたりスペクトルが分布した対オブジェクト広帯域性を有した信号となる。ここでは、拡散出力オブジェクトsも拡散キャリアcと同様に2000KHzの占有周波数帯域を有した信号になるとして説明する。
また、拡散手段が伝送媒体に出力する拡散出力オブジェクトsに与えるエネルギーは、その全エネルギーが定常状態時に拡散手段が伝送媒体に出力する拡散出力オブジェクトに与える全エネルギーと同じにする。定常状態時には線スペクトルという狭い占有周波数帯域に集中させたエネルギーで伝送されていた拡散出力オブジェクトsは、この対オブジェクト広帯域性を有した信号の検知状態では2000KHzという広い周波数帯域に拡散したエネルギーで伝送される。この時の拡散出力オブジェクトsの電力密度は、例えば定常状態時の拡散出力オブジェクトsの線スペクトルの幅を1Hzとした場合、定常状態時の拡散出力オブジェクトsの電力密度の200万分の一というわずかな値になる。
次に、伝送媒体7ではその拡散出力オブジェクトsにノイズmを重畳させる。このノイズmは定常状態の拡散出力オブジェクトsと同じエネルギーの信号で、999KHzと1001KHzのスペクトルで構成したものである。
続いて、逆拡散モジュールはこのノイズmが重畳した拡散出力オブジェクトsを逆拡散入力オブジェクトhとして入力し、逆拡散手段でそれに逆拡散キャリアcを乗じる逆拡散操作を行う。この逆拡散操作は数式21に示された演算操作であり、逆拡散手段はそこから得られる信号に拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域のスペクトルを通過させるフィルタを作用させた結果を逆拡散オブジェクトとして出力する。
その数式21に示された逆拡散操作の結果のうち、右辺第一項の信号は、2000KHzの周波数帯域に広がったスペクトルを有した拡散出力オブジェクトsの成分と、同様に2000KHzの周波数帯域に広がったスペクトルを有した逆拡散キャリアでcとから得られた信号ではあるが、拡散出力オブジェクトsの拡散キャリアcT成分と逆拡散キャリアでcとが数式5を成立させる特別な関係なので、拡散出力オブジェクトsや逆拡散キャリアでcのスペクトル分布の如何にかかわらず、拡散入力オブジェクトaのただ1本の線スペクトルとなる。
拡散出力オブジェクトsを2000KHzの周波数帯域に広がった無数の線スペクトルの集合体ととらえ、同様に逆拡散キャリアでcを2000KHzの周波数帯域に広がった無数の線スペクトルの集合体ととらえ、それらのスペクトル同士を総当りで乗じて拡散入力オブジェクトaのただ1本の線スペクトルを得るこの数式21の右辺第一項の操作は、2000KHzの周波数帯域に微小な電力密度で拡散した拡散出力オブジェクトのエネルギーをかき集め、そのエネルギーの分布をもとの拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域に戻す操作であるということができる。
一方、数式21に示された逆拡散操作の結果のうち、右辺第二項の信号は、999KHzと1001KHzの周波数位置の二本の線スペクトル構成のノイズmを、2000KHzの周波数帯域に広がったスペクトルを有した逆拡散キャリアでcで平衡変調して得た信号である。
逆拡散キャリアcを2000KHzの周波数帯域に広がった無数の線スペクトルの集合体と考えると、そのひとつの線スペクトルの信号と999KHzと1001KHzの二本の線スペクトルであるノイズmを平衡変調して得られる信号は、定常状態時の拡散操作時の結果と同様に、逆拡散キャリアの線スペクトルの周波数を挟んだ前後999KHzと前後1001KHzの周波数位置の四本の側波帯で構成するスペクトルの信号となる。この平衡変調の効果を2000KHzの周波数帯域に広がった逆拡散キャリアcの無数の線スペクトル全体について考えると、結果として得られる信号は、逆拡散キャリアcの占有周波数帯域より1001KHz広い周波数帯域にわたりスペクトルが分布した信号となることがわかる。すなわち、拡散キャリアcのスペクトルで拡散され、拡散出力オブジェクトsは拡散キャリアcと同様に広い周波数帯域にわたりスペクトルが分布した対オブジェクト広帯域性を有した信号となる。ここでは、数式21の右辺第二項は2000KHz以上の占有周波数帯域を有した信号になるとして説明する。
ここで、逆拡散操作を示す数式21の右辺各項の信号のエネルギーについて、第一項の成分のエネルギーと第二項の成分のエネルギーの比は、逆拡散入力オブジェクトにおける拡散出力オブジェクトsのエネルギーとノイズmのエネルギーの比と同じである。
この時、伝送媒体で拡散出力オブジェクトsに重畳したノイズmは拡散出力オブジェクトsのエネルギーと同じエネルギーとするから、逆拡散操作を示す数式21の右辺各項の信号のエネルギーについて、第一項の成分のエネルギーと第二項の成分のエネルギーの比は1:1であると言える。
その第一項と第二項それぞれの成分のうち、拡散入力オブジェクトの周波数成分を通過させるフィルタを通過できるのは、例えばそのフィルタに1KHzの低域通過フィルタを用いた場合、この対オブジェクト広帯域性を有した信号の検知状態においては、その第一項の成分ではその100%のエネルギーを有した拡散入力オブジェクトの成分であり、その第二項の成分ではそのエネルギーを2000KHz以上と言うその第二項の成分の占有周波数帯域幅に対する1KHzという低域通過フィルタの通過帯域幅の比に抑制した成分である。
だから、そのフィルタを通過して逆拡散出力オブジェクトとして出力される信号に含まれるそれらの成分のエネルギー比は、ノイズの影響成分に対する拡散入力オブジェクトの成分のエネルギー比として二千倍以上のものとなることがわかる。すなわち、拡散入力オブジェクトの成分のエネルギーに対してノイズの影響エネルギーはわずかに二千分の一以下と言うことになる。この結果得られる逆拡散出力オブジェクトにはノイズの影響がほとんど含まれないので拡散入力オブジェクトの波形が忠実に現れる。なお、数式21の右辺第二項に得られる信号のスペクトルは、第一項の場合と同様に厳密には周波数が負となる成分が生じ、それは成分を周波数ゼロを境に正の周波数領域へ折り返したスペクトル分布となるので、そのスペクトル分布は厳密には一様なものとはならないが、既述したように拡散入力オブジェクトに対する影響が小さい点では変わらないものなので、その影響は無視する。
このように、本実施形態によれば、ノイズ信号供給部が供給するノイズ信号が対オブジェクト広帯域性を有していると、本システムのオブジェクト伝送メカニズムは、スペクトル拡散通信手法に特有の耐ノイズ性を得て伝送媒体でオブジェクトの忠実な伝送を妨害する目的で意図的に重畳させたノイズの影響を抑制し、拡散入力オブジェクトの信号波形を逆拡散出力オブジェクトに忠実に出力することが出来る。
この状態は、例えば逆拡散手段の出力に図示しない比較器を設け、逆拡散出力オブジェクトと拡散入力オブジェクトとを時々刻々比較し、それらの信号間にある規定の期間以上連続して一致した状態があるという比較結果で検知することが可能である。
このように、本実施形態によれば、定常状態ではノイズ信号xが対オブジェクト広帯域性を有しないためにオブジェクト伝送メカニズムは耐ノイズ性が得られず、それにより意図的に重畳させたノイズの影響を排除できないために逆拡散出力オブジェクトaとして拡散入力オブジェクトaをSN良く出力することができない。一方、対オブジェクト広帯域性を有した信号検出状態ではノイズ信号xが対オブジェクト広帯域性を有すことによりオブジェクト伝送メカニズムは耐ノイズ性を得、それにより意図的に重畳させたノイズの影響を排除して逆拡散モジュールは逆拡散出力オブジェクトaとして拡散入力オブジェクトaをSN良く出力することができる。すなわち、本伝送システムでは、例えば雷放電のような、対オブジェクト広帯域性を有した信号を検出することができることとなる。
なお、本伝送システムの構成は、雷放電の検知に限るものではなく、任意の対オブジェクト広帯域性を有した信号の検知や、任意の信号の対オブジェクト広帯域性の評価に用いることができるものである。さらに、本伝送システムの構成が拡散モジュールと逆拡散モジュールとに相互相関確立状態のノイズ信号を必要とすることを利用すると、任意の不規則信号の位相差を評価したり、方位を同定するなどの応用も可能となる。
従来のスペクトル拡散の応用であった情報伝送でも測距でもないこのような新たな応用が可能となるのは、本伝送システムのキャリア供給部が、従来のスペクトル拡散通信システムと異なり、拡散モジュールと逆拡散モジュールとが対オブジェクト広帯域性を有し不規則様の共通のノイズ信号を加工して、対オブジェクト広帯域性を有し不規則性の対をなす信号関係を有した拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成するという特徴的な構成を有するからである。
このように、本実施形態1に係るキャリア加工装置を適用したスペクトル拡散オブジェクト伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散の応用であった情報伝送でも測距でもない、任意の信号の対オブジェクト広帯域性の評価に応用が可能なものといえる。すなわち、通信でも測距でもない、スペクトル拡散の新たな用途を開拓することができる。
これまでの本伝送システムの原理や応用の説明では、伝送するオブジェクトが時間関数で捉えられるものであり、そのオブジェクトを電気信号に変換して伝送するシステムの場合について説明したが、本実施形態1に係るキャリア加工装置やオブジェクト伝送システムの適用領域はこれに限られるものではない。伝送すべきオブジェクトが、例えば位置関数の状態変数で捉えられるものであっても、本伝送システムの適用対象とすることができるものである。
その事例として、図5〜図7に基づいて、平面画像を処理対象とした本伝送システムの信号処理プロセスを説明する。
図5は、例えばポスターや写真のような平面画像20のある規定の領域20aを微小な画素の二次元の並びとして表現したモデルである。例えば、図5に示したスナップ画像の背景部分や住宅密集地の航空写真のような細かな柄がランダムに現れる画像では、直線状の画素の並び21aにおいて、並び21aの方向に対して画素の輝度は不規則に変化するものである。本伝送システムはその様な画像上の不規則に変化する輝度の並びをノイズ信号xに利用できるものであり、図7はその様な本伝送システム全体の構成例である。
図7に示したノイズ信号供給部2は、画像20中でノイズ画像とするある規定の領域20aの二次元平面画像から一次元のノイズ信号xを得て、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とに供給する。そのノイズ信号供給部2は、具体的には、例えば、画像のアナログ濃淡状態分布情報をデジタルデータとして読み出すスキャナーである。このスキャナー2は、二次元ノイズ画像をスキャンして二次元画像からノイズ信号xとして用いるデータを逐次読み出して一次元に並べ、そのデータ列21aをノイズ信号xとノイズ信号xとして拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給する。図5ではノイズ信号xとして読み出す領域を平面画像20a上のひとつの直線状領域21として示しているが、実際にはラスタースキャンのテレビ画面の輝点のスキャンの様に、上下に隣接する画素列をつないで画像平面20a全体をノイズ信号xとして読み出す領域とする。以下では、ノイズ信号xはその様にして読み出される一次元データ列であるとして説明する。
拡散キャリア加工手段13はそのノイズ信号xを拡散キャリアcに加工し、その拡散キャリアcを拡散手段14に供給する。
一方、拡散入力オブジェクトaは、伝送オブジェクト源5と拡散入力オブジェクト入力手段6の働きで拡散手段14に供給される。
伝送オブジェクト源5は、本伝送システムで伝送する伝送オブジェクトoの供給源であり、伝送オブジェクトoは例えば何らかの情報である。伝送オブジェクト源5はその伝送オブジェクトoを拡散入力オブジェクト入力手段6に供給する。拡散入力オブジェクト入力手段6は、伝送オブジェクトoを入力すると、それに対応し、占有周波数帯域がある領域に制限された一次元データ列の形式の拡散入力オブジェクトaを作成し、拡散手段14に向けて出力する。この拡散入力オブジェクト入力手段6の操作はいわゆる一次変調と呼ばれる操作であり、例えば固定周波数の正弦波をBPSKで一次変調する場合、伝送する情報をディジタル化し、その1ビットに正弦波の0度から180度までの半周期分の波形を対応付け、波形が正側にあれば1、負側にあれば0のようにして、拡散入力オブジェクトが情報を表現するようにすることである。
この時、拡散入力オブジェクト入力手段6は、拡散入力オブジェクトaをノイズ信号xや拡散キャリアcと同じ形態の信号として供給する。具体的には、例えば、拡散入力オブジェクト入力手段6は、拡散入力オブジェクトaを、ノイズ信号xの様に一次元のデータ列22の形態で供給する。
図6は一次元データ列の形態の拡散入力オブジェクトaを説明したものである。この例は、1と0とが交互に並んだ60ビットの情報を、前述したBPSKで一次変調して拡散入力オブジェクトaとするものである。拡散入力オブジェクト入力手段6は、一次変調で作成した60個の正弦波半周期の波形について、個々の正弦波波形の振幅値を正弦波の周期に対して、例えばその千分の一の様に微小な幅Δzの間隔でサンプリングし、そのサンプル値を一次元に並べて拡散入力オブジェクトaの集合体とするデータ列22を形成する。
このような拡散入力オブジェクト入力手段6は、具体的には、例えば、図6の意味を持つ正弦波の離散的な数値列を数値計算で発生させるプログラムを搭載したコンピュータである。
拡散入力オブジェクト入力手段6は、データ列22の先頭から順にデータを逐次読み出し、それを拡散入力オブジェクトaとして拡散手段14に供給する。
拡散手段14は、拡散キャリアcを、前記データ列22から逐次読み出したデータ(拡散入力オブジェクトa)と乗じ、結果を拡散出力オブジェクトsとして一次元データ列23aに並べる。これは例えば拡散入力オブジェクトaのデータ列22を作成したのと同様に、例えばコンピュータ上でソフトウェアによって実行される。
以上に説明した拡散手段14による拡散出力オブジェクトsのデータ列23aの形成は、伝送する全てのオブジェクトに対応したデータ列22について行われる。
このデータ列23aの形成には、前記オブジェクトに対応したデータ列22とともに、拡散キャリアcのデータ列として、データ列22を構成するデータ数と同じデータ数から成るデータ列が必要である。そして、その拡散キャリアのデータ列を作成するために、例えばそれと同じデータ数のノイズ画像の輝度データ列21aが必要となる。ノイズ画像の領域は、例えばこのようなオブジェクトの伝送に必要とされる大きさの輝度データ列を供給できる大きさとする。例えば図5に示す平面画像20内に設けたある画像の領域20aは、この様にして決めた大きさの領域である。
一方、拡散手段14から出力される拡散出力オブジェクトsのデータ列23aは、論理的には一次元のデータ列であるが、実際の伝送24で用いられるデータ列の物理的な形態は任意でよいものである。
伝送媒体変換7aは、一次元のデータ列として拡散手段から出力される拡散出力オブジェクトsを実際の伝送24で用いる形態に変換する。例えば、実際の伝送24が移動する人の携行である場合、拡散出力オブジェクトsのデータ列23aは、一次元データ列としてではなく、図5に示す平面画像20aのように二次元平面に対応する二次元データ列で表現した平面画像としても良いものである。その場合、伝送媒体変換7aは、一次元から二次元へのデータ列の形態変換と、電子データから平面印刷画像への形態変換を意味しており、それには例えば印刷機を用いる。以下では、実際の伝送24で伝送される拡散出力オブジェクトsは、前記要領で変換して紙に印刷された平面印刷画像の形態であるとして説明する。
伝送24で拡散モジュールから逆拡散モジュールへ移動したオブジェクトは、再び逆拡散モジュールでのデータ処理形態にあわせて一次元の逆拡散入力オブジェクトhのデータ列23bとして逆拡散モジュール4に入力される。伝送24の過程にあわせた形態の拡散出力オブジェクトsは、逆拡散モジュール4に入力される過程で、再度形態が変換される。伝送媒体変換7bはその形態変換を示しており、例えば平面画像の形態で拡散出力オブジェクトsを伝送する場合、伝送媒体変換7bは画像から電子データへという形態変換と、二次元から一次元へのデータ列の形態変換とを行う。これには、具体的には、例えばスキャナーを用いる。
逆拡散モジュール4は、拡散モジュール3と同様に、ノイズ信号供給部2が供給する一次元データ列のノイズ信号xをノイズ信号xとして入力する。ノイズ信号xのデータ列は、拡散モジュールにノイズ信号xとして供給したデータ列そのものでもよいし、それを記憶しておいたものでも良いし、同じ画像を同じ要領で再度スキャンして得たデータ列でもよいものである。逆拡散キャリア加工手段15は、入力したそのノイズ信号xのデータ列を加工して逆拡散キャリアcを作成し、その逆拡散キャリアcを逆拡散手段16に供給する。
逆拡散手段16は、逆拡散キャリアcを、逆拡散入力オブジェクトhと乗じ、逆拡散出力オブジェクトaを出力する。この逆拡散出力オブジェクトaもまた一次元のデータ列25のデータである。
この逆拡散出力オブジェクトaのデータ列25のデータを等間隔に順次プロットして得られるグラフの波形は図6の拡散入力オブジェクトaの波形そのものであり、そのグラフを構成する0度から180度までの周期の正弦波波形の並び方を解析すれば、その並びが表現する情報、すなわちオブジェクトを引き出すことが出来る。図7の符号8はデータ列25から何らかの方法で伝送したオブジェクトである伝送オブジェクトoを抽出して出力する拡散出力オブジェクト出力手段である。
これらの操作で、逆拡散手段16でデータ列23bの要素と乗じられる逆拡散キャリアcの加工材料とするデータ列21aの要素は、データ列23bの元となるデータ列23aの要素が拡散モジュールで作成された時に拡散手段が用いた拡散キャリアcのデータ列を作成するために拡散キャリア加工手段13が加工材料に用いたデータ列21aの要素と同一となるように、各データ列からデータを読み出したりデータ列にデータを書き出したりする順番に揃えておく。
このように、本伝送システムの原理によれば、時間的な変化でないデータを用いてスペクトル拡散による情報の伝送が可能となる。
スペクトル拡散通信は拡散出力オブジェクトを伝送する伝送路で拡散出力オブジェクトに重畳するノイズに対して耐ノイズ性を有す。これは、図7においては、データ列23aを含んだ画像が逆拡散のために用いる画像として送られる何らかの伝送24の過程で、その画像にデータ列23aの個々の画素データとは無関係なノイズが重畳しても、逆拡散出力オブジェクトに対するそのノイズの影響をそのノイズの特性とは無関係に軽減できるということである。
画像にノイズが重畳するとは、例えば画像にインクをこぼすような場合が考えられるが、それ以外に、拡散出力オブジェクトの画像にある別な画像を積極的に重畳させることが考えられる。
具体的には、例えば、何文字かの文字情報をスペクトル拡散した画像情報に、人物の写真画像を重畳させる。このようなノイズの重畳を受けても、スペクトル拡散通信の耐ノイズ性によりノイズの影響を排除できる。この時、文字情報をスペクトル拡散した画像情報は重畳される人物画像より小さな濃淡情報でよいので、二つの画像を合成した画像の濃淡情報で人物画像の濃淡情報が支配的になるようにすることができる。その結果、二つの画像を合成した画像では文字情報をスペクトル拡散した画像情報はわずかなノイズのように見えるだけとなり、事実上その存在がわからなくなる。
これは、例えば、写真画像への情報の刷込みに用いる。例えば、都会の街並の航空写真画像に、その写真に写っている特定の建物の案内情報を刷込むという応用である。この時、例えばその写真画像上の座標と、その座標位置にある建物の名前という二種類の情報を一組にして拡散入力オブジェクトとする。一方、拡散・逆拡散キャリアの加工材料とするノイズ信号源としての画像情報も航空写真画像の適当な部分を用いてよいものである。拡散キャリアで拡散入力オブジェクトをスペクトル拡散した拡散出力オブジェクトは、例えば画像のその建物の周囲の画像領域に重畳させる。画像は拡散出力オブジェクトの重畳を受けるが、拡散出力オブジェクトの値は、画像を構成する画素の濃淡情報がとる値の幅に対して絶対値が例えば十数分の一程度と小さい上にランダムに変化するので、見た目にはもとの航空写真と変わらない。拡散出力オブジェクトを重畳した画像の適当な領域から読み出された画像の濃淡情報列に逆拡散操作を行うと、座標と名前という情報が得られ、画像上のその座標位置に名前を表示することが出来る。このような情報の埋め込みを位置を変えて複数実施したとき、画像上のある領域に、複数の異なる拡散出力オブジェクトが重畳する場合が生じる。この場合でも、重畳した拡散出力オブジェクトは、スペクトル拡散通信の耐ノイズ性により、逆拡散のプロセスで個々の情報ごとに目的とする信号以外の信号成分や重畳した航空写真の成分をノイズとして影響を排除して、目的とする信号だけを抽出することができる。航空写真は地理的案内情報として単なる絵地図に比べてはるかに正確で情報量に富んだものであるが、本オブジェクト伝送システムを応用することによりそこにさらに多くの情報を付加することができることとなる。このように、本伝送システムによれば、画像にその画像の見た目を変えることなく情報の刷込みを可能とし、画像に新たな機能を提供できるものである。
なお、ここでは、本伝送システムが平面画像を用いて情報伝送を行う例を示したが、本伝送システムの適用は平面画像に限るものではなく、立体画像を表現するデータや、記憶装置に記憶された無次元の大量データなど、任意のデータを用いても良いものである。
また、ここでは、ノイズ信号などを一次元の形態で表現して説明したが、その表現形態も一次元に限定するものではなく、二次元以上の多次元としてもよいものである。また、ここでは各種データを一次元の連続データのように表現したが、その表現形態も連続形態に限定するものではなく、周期的に飛び飛びの並びを取るデータ列や、ある規定のパターンの並びを取るデータ列としてもよいものである。
さらに、ここでは、ノイズ信号などをディジタルサンプリングしたデータ列として説明したが、その表現形態もディジタルサンプリングしたデータ列の形態に限定するものではなく、アナログ連続量で表現してもよいものである。
また、ここではノイズ信号とする画像情報を得る画像領域と拡散出力オブジェクトを刷り込む画像領域については特に説明しなかったが、それらの領域は任意に決めてよく、例えばノイズ信号用の画像データとする領域を、拡散出力オブジェクトを埋め込む領域としてもよいものである。
続いて、本伝送システムの特性を説明する。
まず、本伝送システムによれば、スペクトル拡散通信に特有の性質が、従来のスペクトル拡散通信方式と同等以上に得られることを説明する。
本伝送システムは、ノイズ信号がノイズ受容性があることと拡散出力オブジェクトの伝送は耐ノイズ性があることによって伝送媒体に侵入するノイズによる伝送性能の低下はないので、他の信号が存在してもそれがない状態と変わらない状態でオブジェクトを伝送できるという、低干渉感受性を提供できるものである。この特性を用いれば、例えば激しい雷放電のノイズの環境下でもオブジェクトを伝送できるものである。
また、本伝送システムは、前記耐ノイズ性により、他の信号の存在にかかわらず微小なエネルギーの信号でもオブジェクトを伝送できるという、微小信号性を提供できるものである。この特性を用いれば、例えば大きな減衰を受ける媒体を介してもオブジェクトを伝送できるものである。
また、本伝送システムは、前記耐ノイズ性により、本伝送システムの動作とは無関係に既に存在するノイズよりもはるかに低い電力密度でオブジェクトを伝送して本伝送システムの動作の影響を周囲に与えない、低与干渉性を提供できるものである。この特性を用いれば、例えば外部からの干渉を嫌う機器や人体などへの影響も自然な状態と変わらない状態でオブジェクトを伝送できるものである。
また、本伝送システムは、前記耐ノイズ性により、拡散出力オブジェクトを本伝送システムの動作とは無関係に既に存在するノイズよりもはるかに低い微小な電力密度にして拡散モジュールの消費電力を低減する、拡散モジュールの低消費電力性を提供できるものである。この拡散モジュールの低消費電力性は、既述した従来技術の同期保持動作に無駄な電力を浪費するという課題を解決したことによる拡散モジュールの消費電力低減の効果も含めるものである。この特性を用いれば、例えば拡散モジュールを低発熱・長寿命・小型にできるものである。
また、本伝送システムは、従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムの受信機が大規模な同期装置を用いていたのに比較して、複雑で大規模な同期装置を必要としない本伝送システムは逆拡散キャリア加工手段を小規模に構成できるため、逆拡散モジュールも従来方式に比べて低消費電力性を提供できるものである。この特性を用いれば、例えば逆拡散モジュールを低発熱・長寿命・小型にできるものである。
また、本伝送システムは、前記耐ノイズ性により、本伝送システムの動作とは無関係に既に存在する背景ノイズと呼ばれるほかの信号よりも低い電力密度でオブジェクトを伝送して、本伝送システムの伝送信号を前記背景ノイズに隠して存在を見つけにくくするとういう秘匿性を提供できるものである。この特性を用いれば、例えば印刷画像にもとの画像の状態を荒らさずに案内情報などを刷込むことができるものである。
また、本伝送システムは、前記耐ノイズ性により、他の目的の伝送信号をノイズとして扱って同一伝送媒体を共有して他の目的の伝送信号の影響を受けずに目的とするオブジェクトの伝送を同時に行う多重性を提供できるものである。この特性を用いれば、例えば符号分割多重伝送と呼ばれる非同期同時多重伝送を行うことが可能となる。
一方、従来のスペクトル拡散通信では、PN符号という長い周期の不規則性信号を拡散符号と逆拡散符号に用いることにより、拡散出力信号を不規則に変化するものとしてその信号波形から元の情報入力信号を推定することを困難にするとともに、逆拡散符号の推定や複製を困難にして、拡散出力信号からもとの情報入力信号の復元を困難にする秘話性を有している。それに対して本伝送システムは、拡散キャリアと逆拡散キャリアに全く周期性がなく値も任意のアナログ量でよい信号を用いることで、従来の周期性の二値信号を用いた場合に比べて、拡散出力オブジェクトの波形から元の拡散入力オブジェクトを推定することも逆拡散符号の推定や複製もより困難にする。さらに、ノイズ信号の特徴的な要素を用いて系列方向の位置を特定し、その特定位置から発生させたノイズ信号とも無関係な不規則信号をノイズ信号に用いることにより、前記の推定や複製を一層困難にできるので、従来のスペクトル拡散通信以上の秘話性を提供できるものである。
また、従来のスペクトル拡散通信では、伝送媒体に侵入するノイズによる伝送性能の低下の抑制と、不規則に発生する通信要求に対する応答の速さとを両立させることが困難であった。それに対して本伝送システムは、ノイズ信号がノイズ受容性があることと拡散出力オブジェクトの伝送は耐ノイズ性があることによって伝送媒体に侵入するノイズによる伝送性能の低下はなく、また、不規則に発生する通信要求へも同期操作なしに対応できる即応性がある。この特性を用いれば、例えば待機電力ゼロの送信機と、待機電力がスペクトル拡散通信でない通常の通信機並みに小さい小型の受信機を提供できるようになる。
以上説明した本発明の実施形態による効果を総括して説明する。従来のスペクトル拡散通信について説明する。その従来のスペクトル拡散通信は、不規則信号列自身を乗算すると(自己相関関数を計算するに等価)定数になる性質を使っているので、拡散時に使う不規則信号(拡散符号)と逆拡散時に使う不規則信号(逆拡散符号)は同じ信号列であり且つ同期させて使う必要がある。従来のスパクトル拡散通信では、送信側と受信側で同じ不規則信号を用いる実質的な方法として、不規則信号を送信するか受信側で同じ不規則信号を用意して同期を取って使うようにしている。そのうち不規則信号を送信する方法では、不規則信号を伝送する途中でノイズが重畳すると拡散時に使った不規則信号とは同一性が損なわれた不規則信号を使うことになり、結果として通信のSNは悪くなる。
それに対して本発明の実施形態では、ノイズ信号供給部は、ノイズ信号をスペクトル拡散キャリア加工手段とスペクトル逆拡散キャリア加工手段とに共通に供給し、前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とは前記ノイズ信号を共有し、かつそのノイズ信号をスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとに生成するため、前記ノイズ信号にノイズが重畳しても、そのノイズを信号成分として含めて前記ノイズ信号をスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとに加工生成する。
したがって、本発明の実施形態によれば、前記ノイズ信号にノイズが重畳しても、そのノイズは信号成分として前記ノイズ信号に取り込まれて相互相関性を崩すことにはならず、前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とがそれぞれ生成したスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとは相互相関性を維持することとなり、スペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとを強制的に同期させる必要がなく、同期装置が不要となる。しかも、ノイズ信号に重畳したノイズも信号成分として両キャリアに加工生成され、ノイズの重畳による影響を回避できる。
さらに、本発明の実施形態では、前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とは、ノイズが重畳したノイズ信号を共有し、そのノイズ信号はノイズを信号成分としているため、両キャリアの基礎となる前記ノイズ信号の相互相関性が崩れることはなく、前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とがそれぞれ生成したスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとは相互相関が取れた信号として生成でき、前記ノイズ信号を加工生成した両キャリアを用いてスペクトル拡散及びスペクトル逆拡散を正常に行うことができる。そのスペクトル拡散及びスペクトル逆拡散は、強制的に同期させる同期装置を用いることなく行うことができる。
さらに、本発明の実施形態によれば、前記ノイズ信号を加工せずにスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとして用いるのではなく、そのノイズ信号をスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアに加工生成するため、そのノイズ信号としては、アナログ信号、ノイズ、擬似雑音信号又はこれらを組み合わせた信号を用いることができ、前記ノイズ信号として用いる信号の種類を拡張することができる。また、アナログ信号、ノイズ、擬似雑音信号又はこれらを組み合わせた信号を例えば二値或いは多値のスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとに加工するため、秘匿性及び秘話性などに最適なスペクトル拡散キャリアとスペクトル逆拡散キャリアとを取得することができる。
また、本発明の実施形態によれば、ノイズを素にしたノイズ信号を加工してキャリアとしたことで、計測した場合にノイズとの区別が付かないことから、秘匿性が高いキャリアを得ることができる。また、2つとして同じものが無いノイズを信号源とし、かつ加工手段に依る多彩な加工にてキャリアを加工生成するため殆ど無限の種類のキャリアを生成することができることで、秘話性が高いキャリアを得られる。
また、本発明の実施形態によれば、前記ノイズ信号供給部は、前記ノイズ信号をスペクトル拡散キャリア加工手段とスペクトル逆拡散キャリア加工手段とに有線或いは無線の伝送媒体で共通に供給することができ、その伝送媒体に応じて、前記ノイズ信号供給部と前記スペクトル拡散キャリア加工手段及び前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段との配置形態を自由に選ぶことができる。したがって、伝送対象であるオブジェクトとして、従来の伝送対象である情報に加えて、エネルギー例えば電力や印刷物などを用いることができ、応用範囲を拡大できる。
このように、本実施形態に係るキャリア加工装置を適用したスペクトル拡散オブジェクト伝送システムによれば、スペクトル拡散通信技術に特有の耐ノイズ性に由来する、低干渉感受性や、微小信号性、低与干渉性、秘匿性、多重性が、従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムと同程度に提供できるものである。さらに、本伝送システムによれば、従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システム以上の秘話性や、通信の要求に即応できる即応性、低消費電力性、逆拡散モジュールを同期装置なしに構成できる小規模性も提供できるものである。さらに、本伝送システムによれば、インパルス状やバースト状の不連続な、あるいは周波数ホッピングや周波数チャープなどのような、あるいはそれらを適当に組合わせたような拡散キャリアや逆拡散キャリアを用いて従来のスペクトル拡散通信システムに対して、小型で安価に対応でき、耐ノイズ性を向上させたり、伝送能力を向上させたり、秘話性や秘匿性を向上させたりすることができるものである。そのうえ、本伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散の応用であった情報伝送でも測距でもない、特に情報内容を表現しない単純なオブジェクトの伝送や電力伝送に上記の特性を提供できるものである。また、本伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散の応用であった情報伝送でも測距でもない、任意の不規則信号の検知や任意の信号の不規則性の評価、印刷などの新たな用途を開拓することが出来るものである。
(実施形態2)
(実施形態2−1)
次に、本実施形態2−1として、アナログ信号のノイズ信号を入力し、そのノイズ信号をアナログ信号処理の写像変換で拡散キャリアと逆拡散キャリアとに加工し、アナログ信号の拡散キャリアと逆拡散キャリアとを出力する拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段の具体例を説明する。
図9に示す構成が、本実施形態2−1に係るキャリア加工部とそれを用いたオブジェクト伝送システムの構成を示すものであり、ノイズ信号供給部2と、拡散キャリア加工手段13と、逆拡散キャリア加工手段15とを有している。符号14は拡散手段を示し、符号16は逆拡散手段を示すものであり、これらの拡散手段14と逆拡散手段16の間は伝送媒体7を介して連繋される。
ノイズ信号供給部2は図1に示すように、素ノイズ信号源10を構成要素に含む、ノイズ信号xの供給部である。ノイズ信号xはある規定の対オブジェクト広帯域性を有した信号であり、素ノイズ信号源10が供給する素ノイズ信号xはその要件を満足するものである。そのような素ノイズ信号源10には例えば抵抗器を備え、素ノイズ信号xはその抵抗に電流を流したときに抵抗器の両端に得られる熱雑音信号を増幅したアナログ信号とする。なお、素ノイズ信号xには、素ノイズ信号源10が自由空間内で捕捉したアナログ信号である素ノイズ信号が含まれていてもよい。
ノイズ信号供給部2は、この素ノイズ信号源10が出力する信号をノイズ信号xとして拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに供給する。この時、ノイズ信号供給部2は、例えば拡散キャリア加工手段13及び逆拡散キャリア加工手段15とノイズ信号供給部2の採りうる地理的な位置をある範囲に規定して、その規定の範囲内では経路差によるキャリア加工手段13、15が入力するノイズ信号xとx間の差をある小さい範囲とし、相互相関確立状態の実用上同一と見なせる共通のノイズ信号xをキャリア加工手段13、15に供給する。
また、例えば、素ノイズ信号源10から拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに伝送媒体11でノイズ信号xを供給する途中の電線に周辺の電子機器からノイズが重畳することがあるが、そのノイズを重畳した信号が拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに事実上同一と見なせる信号であり、ノイズ信号として規定する対オブジェクト広帯域性を有した信号である限り、そのノイズは素ノイズ信号xのひとつであり、そのノイズが重畳した信号はノイズ信号xである。
このように、ノイズ信号供給部2は、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給するノイズ信号xを、素ノイズ信号xだけでなく、ノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給する伝送媒体11に外部から侵入するノイズや、その伝送媒体それ自身が発するノイズをもノイズ信号xの一部とする。そのため、図9では、ノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給する伝送媒体11そのものも素ノイズ信号源10と同様にノイズ信号供給部2の一要素として捉え、拡散出力オブジェクト伝送用の伝送媒体7のようには明示していない。
拡散キャリア加工手段13は図9に示すように、リミッタ40と、比較器42と、アナログスイッチ43と、加算器44と、定数信号供給部41とで構成される。定数信号供給部41は、リミッタ40に信号k1T、アナログスイッチ43に信号k2T、加算器44に信号k3Tをそれぞれ出力する信号源である。
拡散キャリア加工手段13の具体的動作を説明する。拡散キャリア加工手段13は、ノイズ信号xを拡散キャリアへの加工材料信号であるノイズ信号xとして入力する。リミッタ40は、入力するノイズ信号xを、振幅が信号k1Tで示される値に制限された信号xLTとし、比較器42と加算器44とに供給する。ここで、信号xLTがノイズ信号xの振幅をk1Tに振幅制限されるとは、k1Tを正の定数としたとき、入力信号xの振幅の絶対値がk1T以下であれば、出力信号xLTは入力するノイズ信号xそのままの値となり、入力するノイズ信号xの振幅がk1Tより大きければ、出力信号xLTは定数k1Tとなり、入力ノイズ信号xの振幅が−k1Tより小さければ、出力信号xLTは定数−k1Tとなることを言う。比較器42は、リミッタ40から供給された信号xLTを、ゼロを比較基準に比較し、その結果を用いてアナログスイッチ43で加算器44に供給する信号を切替える。
具体的には、信号xLTが基準値ゼロ以上、すなわちゼロまたは正であれば、比較器42はアナログスイッチ43を閉じる信号を出力し、これによって加算器44には信号k2Tが供給されることとなる。一方、信号xLTが基準値ゼロより小さい、すなわち負であれば、比較器42はアナログスイッチ43を開く信号を出力し、これによって加算器44には信号k2Tは供給されないこととなる。加算器44は、このような信号xLTの極性によって制御された信号と、リミッタ40の出力信号xLTと、信号k3Tとを加算して、その信号を拡散キャリアcとして拡散手段14に供給する。
このような構成の拡散キャリア加工手段13について、k1Tを+1.5に、k2Tを+1.0に、k3Tを−0.5にした場合の入出力特性を図10に示す。この時、拡散キャリアcは、入力したノイズ信号xがx<−1.5なら−2.0で一定の信号となり、−1.5≦x<0ならx−0.5の信号となり、0≦x<1.5ならx+0.5の信号となり、1.5≦xなら+2.0で一定の信号となる。
拡散手段14は、この拡散キャリアcと拡散入力オブジェクトaとを入力して乗算し、拡散入力オブジェクトaのスペクトル拡散した拡散出力オブジェクトsを伝送媒体7に出力する。
伝送媒体7は、拡散出力オブジェクトsを拡散手段14から逆拡散手段16へ伝送するための伝送媒体である。伝送媒体7にはノイズmが侵入し、逆拡散手段16は拡散出力オブジェクトsにノイズmが重畳した逆拡散入力オブジェジュトhを入力する。
逆拡散キャリア加工手段16は、拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13の構成に、逆数演算器45を付加した構成である。
逆拡散キャリア加工手段15の具体的動作を説明する。逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号xを逆拡散キャリアへの加工材料信号であるノイズ信号xとして入力する。逆拡散キャリア加工手段15は、リミッタ40と、比較器42と、アナログスイッチ43と、加算器44と、定数信号供給部41とを拡散キャリア加工手段13と同様に備えており、ノイズ信号xを加工し、その結果得られた信号cTRを逆数演算器45に供給する。逆数演算器45は、信号cTRを逆数変換し、その信号を逆拡散キャリアcとして逆拡散手段16に供給する。
このような構成の逆拡散キャリア加工手段15について、k1Tを+1.5に、k2Tを+1.0に、k3Tを−0.5にした場合の入出力特性を図11に示す。この時、逆拡散キャリアcは、入力したノイズ信号xがx<−1.5なら−0.5で一定の信号となり、−1.5≦x<0なら1/(x−0.5)の信号となり、0≦x<1.5なら1/(x+0.5)の信号となり、1.5≦xなら+0.5で一定の信号となる。
逆拡散キャリア加工手段15は、信号k1R、k2R、k3Rに拡散キャリア加工手段13の信号k1T、k2T、k3Tと同じものを使用し、その結果、同一のノイズ信号xから得られる拡散キャリアcと、逆拡散キャリア加工手段15側の信号cTRとは同一のものとなる。そして、逆拡散キャリアcは、その拡散キャリアcと同一の信号cTRを逆数演算器45で逆数に変換したものなので、同一のノイズ信号xから得られる拡散キャリアcと、逆拡散キャリアcとは常に逆数の関係の信号となる。その結果、同一のノイズ信号xから得られる拡散キャリアcと、逆拡散キャリアcとは、乗じると常にゼロでない定数となる。
この時、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号xから拡散キャリアcへの信号処理に要する時間と、ノイズ信号xから逆拡散キャリアcへの信号処理に要する時間との差が充分に小さくなるようにして、同一のノイズ信号xから異なる信号処理過程で作成される拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとの相互相関を確立された状態とする。その場合、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とで行うこのような信号加工処理は、処理される信号の時間的な特性に作用する要素を含んでいないと見なすことが出来るので、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15ではノイズ信号xの対オブジェクト広帯域性は継承される。
逆拡散手段16は、この逆拡散キャリアcと伝送媒体7から入力する拡散出力オブジェクトsを含む逆拡散入力オブジェクトhとを入力し、それらを乗算して、スペクトル逆拡散された拡散入力オブジェクトaの成分を含む逆拡散出力オブジェクトaを出力する。
この一連の過程を通して、本発明の実施形態2−1において、拡散キャリア加工手段13で共通のノイズ信号xから作成される拡散キャリアcは、対オブジェクト広帯域性を有した信号となり、拡散入力オブジェクトaのスペクトルはその拡散キャリアcと乗じられて拡散される。そして、逆拡散キャリア加工手段15で共通のノイズ信号xから作成される逆拡散キャリアcは、前記拡散キャリアcと乗じて常に定数の関係となり、かつ対オブジェクト広帯域性を有し、かつ前記拡散キャリアcと相互相関が確立された信号となり、この信号を用いて逆拡散操作を行うことにより、受信される逆拡散入力オブジェクトhが拡散出力オブジェクトsの成分に伝送媒体7でノイズmの重畳を受けていても、拡散入力オブジェクトaを精度良く逆拡散するとともに、ノイズのスペクトルを逆拡散キャリアの占有周波数帯域に拡散して、ノイズの影響を事実上受けない程度にまで軽減した拡散入力オブジェクトaと相似な逆拡散出力オブジェクトaを出力する。
なお、本実施形態で例示した構成によれば、振幅の絶対値が1.5以上となるノイズ信号xから得られる拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとは二値の離散信号となる。拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとをアナログ連続量の信号とする場合はノイズ信号xの振幅の絶対値を1.5以下にする必要がある。
以上のように、本発明の実施形態2−1によれば、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とが、ノイズ信号供給部2が供給する対オブジェクト広帯域性を有した相互相関確立状態の共通のアナログのノイズ信号xをノイズ信号x、xとして入力し、それを加工して作成した、乗ずると常にゼロでない定数となる対をなす信号関係の、対オブジェクト広帯域性を有した、相互相関確立状態のアナログの拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとを生成する。この時、本発明の実施形態2によれば、従来のスペクトル拡散通信システムでは用いることが出来なかったアナログの拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを用いたスペクトル拡散通信が実現されたこととなる。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
なお、本実施形態では、現実の応用環境では拡散モジュール3と逆拡散モジュール4に供給する共通のノイズ信号xを、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4に相互相関確立状態で入力させるために、例えば拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とノイズ信号の要素となる信号の信号源との間の地理的な関係をある範囲に制限することを説明した。
相互相関確立状態を実現しなければならない点では、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16において、逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分も相互相関確立状態である必要がある。
もともと拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとは共通のノイズ信号xを加工材料とすることによって相互相関確立状態となるように作成されるが、現実の応用環境では拡散モジュール3から逆拡散モジュール4への拡散出力オブジェクトsの伝送過程には、例えば伝搬遅延があるものであり、それによって逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分との相互相関は低下する。
本伝送システムにおいて、その拡散モジュール3から逆拡散モジュール4への拡散出力オブジェクトsの伝送過程の特性が、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分との相互相関を低下させるという影響は、拡散モジュールと逆拡散モジュールの間の地理的な関係をある範囲に制限することにより実用上ないと見なせるように小さなものとなる。
それにより、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分とが相互相関確立状態となり、逆拡散が高精度に行えるようになる。
また、それとは別に、逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15がノイズ信号を逆拡散キャリアcに加工する過程で逆拡散キャリアcを信号の系列方向に適当にずらして、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcに対して拡散出力オブジェクトが拡散モジュールから逆拡散モジュールに伝送される過程で生じる信号の系列方向のずれを見かけ上小さくするようにしても良いものである。
図33及び図34に示す本発明の実施形態4に係る伝送システムの拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4は、このように逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分とを相互相関確立状態にして動作する。
また、図1に示す本発明の実施形態1に係る伝送システムの拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4も、このように逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分とを相互相関確立状態にして動作する。
以下では、特に断らない限り、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcと、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分とは、何らかの適当な方法で相互相関確立状態にされて動作しているものとする。
(実施形態2−2)
次に、アナログ信号処理により構成した図9に示す実施形態2−1を、ディジタル信号処理による構成とした場合の例を説明する。図12にこれを示す。
ノイズ信号供給部2は図9のものと同一である。図12に示す拡散キャリア加工手段13は、AD変換器50と、マッピング回路51と、DA変換器52と、AD変換器50とDA変換器52とのタイミングをコントロールするタイミングコントローラ53と、タイミングコントローラ53にタイミングパルスを供給する発振器54とで構成される。
また、図12に示す逆拡散キャリア加工手段15は、AD変換器50と、マッピング回路55と、DA変換器52と、AD変換器50とDA変換器52とのタイミングをコントロールするタイミングコントローラ53と、タイミングコントローラ53にタイミングパルスを供給する発振器54とで構成される。この逆拡散キャリア加工手段15の構成は、前記拡散キャリア加工手段13とマッピング回路の入出力特性が異なるだけである。
続いて、各部の動作を説明する。ノイズ信号供給部2は、図9に示す実施形態2−1と同様に、対オブジェクト広帯域性を有したアナログのノイズ信号xを拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共通に供給する。その結果、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とは、相互相関確立状態の、実用上同一と見なせるノイズ信号x、xを入力する。
拡散キャリア加工手段13は、入力したノイズ信号xをAD変換器50でサンプリングし、サンプリング値をマッピング回路51で写像変換し、その値をDA変換器52でアナログ値に戻した信号を拡散キャリアcとして拡散手段14に向けて出力する。
一方、逆拡散キャリア加工手段15は、拡散キャリア加工手段13と同様に、入力したノイズ信号xをAD変換器50でサンプリングし、サンプリング値をマッピング回路55で写像変換し、その値をDA変換器52でアナログ値に戻した信号を逆拡散キャリアcとして逆拡散手段16に向けて出力する。
前記拡散キャリア加工手段13のマッピング回路51と、前記逆拡散キャリア加工手段15のマッピング回路55には、同一の入力から得られるそれらの写像出力を互いに乗ずるとゼロでない定数となるように写像特性を設定する。すなわち、前記拡散キャリア加工手段13のマッピング回路51に、例えば図10に示す入出力特性を与える。これに対応する場合、前記逆拡散キャリア加工手段15のマッピング回路55には、図11に示す入出力特性を与える。
この例のような入出力特性が設定されたマッピング回路を用いた図12の構成は、図9に示した構成と全く等価に機能する。すなわち、ノイズ信号供給部2から共通のノイズ信号xが入力されると、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、乗ずると常に定数となり、対オブジェクト広帯域性を有し、相互相関確立状態の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工する。
拡散キャリアと逆拡散キャリアに求められる、ともに対オブジェクト広帯域性を有し、互いに相互相関確立状態であり、乗ずると常に定数となる対をなす信号関係という条件を満足する上では、例えば図9に示した構成で、逆拡散キャリア加工手段15側の加算器44と逆拡散手段16との間に設けた逆数演算器45を、拡散キャリア加工手段13側の加算器44と拡散手段14の間に移動させても良いものである。これは、図12の構成においては、拡散キャリア加工手段13側の写像変換のマッピング回路51と、逆拡散キャリア加工手段15側の写像変換のマッピング回路55とを入れ替えても良いということである。
拡散手段14と逆拡散手段16が入力する拡散キャリア及び逆拡散キャリアが、前記条件を満足する限り、このような拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段の内部の構成要素の入れ替えや等価な機能要素での置き換えは任意に行ってよいものである。
図9や図12に示した構成について前記条件を満足する構成には、そのほかにも、例えば、逆数演算器と乗算器である逆拡散手段とを除算手段で置き換えても良いものであり、また、それらを拡散モジュールと逆拡散モジュール間で入れ替えても良いものである。このような組合せは他にも考えられるが、前記条件を満足する限り、そのような手法を用いても良いものである。
なお、図12に示した構成について、前記拡散キャリア加工手段13および前記逆拡散キャリア加工手段15においてAD変換やDA変換を行う構成には本実施形態の特徴がないため、例えば、アンティエイリアシングなどのAD変換前の信号処理や、平滑化などのDA変換後の信号処理などの具体的構成については省略してある。
また、図12に示された、AD変換器50、マッピング回路51、55、DA変換器52で構成された、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4の拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15の一連の信号処理部は、時間的に離散的な信号処理を周期的に繰り返すディジタル信号処理装置である。
このようなディジタル信号処理の構成によって、図9の構成のアナログ連続信号処理と等価な信号処理結果を得るためには、タイミングコントローラ53で制御するディジタル信号処理の周期を、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに求められる占有周波数帯域の上限周波数よりも例えば10倍以上のような充分高い周波数の逆数で与えられる時間より短い時間とする。
また、図12に示したディジタル信号処理で構成した拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15で、図9に示したアナログ信号処理で構成した拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15が提供する図10、図11に示した入出力特性と等価な特性を実現する場合、離散値となる信号値で滑らかな特性曲線を表現するため、離散的なサンプル値と離散的なサンプル間隔の両方の離散間隔を小さくして、単位区間をより多数のより差の小さい離散値群で構成する。そのために、図12に示されるAD変換器やDA変換器には、例えば8ビット以上の分解能のものを用い、タイミングコントローラ53で制御するサンプリングとデータ処理の繰返し周期を短くする。前記繰返し周期は、具体的には、例えば、繰返し周波数が拡散キャリアと逆拡散キャリアに求める占有周波数帯域の上限周波数の十倍以上にする。また、前記分解能は、例えばノイズ信号が取りうる値の範囲を256分の一にするというように、任意に決めても良いものである。
このように、離散的な写像変換特性も、横軸と縦軸の離散間隔を小さくして多数の離散値で構成することにより、実用上は連続した特性とみなせるようになり、変換して得られる信号も実用上連続量とみなせるようになる。そのため、この様な実用上連続量とみなせる離散量は、以下では特に断らない限り連続量として扱うものとする。なお、ここでは、ある規定の間隔の飛び飛びの値しか取らないものを離散値と呼び、その飛び飛びの間隔が無限に小さいか実用上無限に小さいと見なせるものを連続量と呼ぶものとする。また、例えば図10、図11の特性はx=0、およびx=0で不連続なので厳密には連続量ではないが、ここでは大部分の信号が実際に存在するそのほかの部分で連続的に変化するので、この様な信号は連続量として扱う。
このように、本発明の実施形態2−2によれば、ディジタル回路を用いてアナログ信号のノイズ信号xをアナログ信号の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcに加工作成してスペクトル拡散通信を行う装置を構成することが出来るものである。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
(実施形態2−3)
次に、連続量の拡散キャリア及び逆拡散キャリアを用いる構成の図9および図12に示す実施形態を、離散的な値をとる拡散キャリア及び逆拡散キャリアを用いる構成とした例を説明する。図13、図14に示す特性は、離散的な値をとる拡散キャリア及び逆拡散キャリアに変換する写像変換器の入出力特性例であり、その特性の具体的な数値例を図17に示す。
図13で示される入出力特性は、ノイズ信号xを拡散キャリアcに写像変換する図10で示される連続的な入出力特性を非常に粗い離散値で表現したものであり、同様に、図14で示される入出力特性は、ノイズ信号xを逆拡散キャリアcに写像変換する図11で示される連続的な入出力特性を非常に粗い離散値で表現したものである。この図13、図14で示される入出力特性は、入力信号のゼロを境界とする部分以外は滑らかな連続量に変換する特性の図10、図11とは異なり、不連続な段階的な値をとる。
このような入出力特性の拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段を用いても、その結果得られる拡散キャリア及び逆拡散キャリアが、ともに対オブジェクト広帯域性を有し、互いに相互相関確立状態であり、乗ずると常に定数となる関係という条件を満足する限り、その拡散キャリアと逆拡散キャリアを用いてスペクトル拡散通信を実現できるものである。
これは、実施形態2−2で述べたディジタル信号処理による構成で、例えば8ビット分解能のAD・DA変換器を用い、ノイズ信号x、xの振幅範囲を“256”という非常に多数の段階に等間隔に分けて、実施形態2−1のアナログ信号処理の拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段が作成する拡散キャリア及び逆拡散キャリアが連続的に変化する信号と等価な信号を作成する例と異なり、拡散キャリア及び逆拡散キャリアはそれほどは細かくない離散値をとる多値ディジタル信号とする。
その多値のディジタル信号として何個のどのような値の離散値を用いるかは、結果として得られる拡散キャリアと逆拡散キャリアが前記の条件を満足する限り任意に決めてよく、例えば、従来のスペクトル拡散通信で一般的に用いられている、絶対値が等しいゼロでない正負の値を取る二値信号としても良いものである。
このように、本発明の実施形態2−3によれば、拡散キャリアと逆拡散キャリアに、アナログ信号や、アナログ信号と等価と見なせる連続的な値を取る信号のみならず、多値の荒い離散値を取るディジタル信号を用いても、従来のスペクトル拡散通信で用いられている絶対値が等しいゼロでない正負の値を取る二値信号を用いても良いものである。
図10、図11に示した特性を実現する図12の構成の装置に比べ、図13、図14に示したような特性を実現する図12の構成の装置は、AD変換器50や、DA変換器52の分解能を低くでき、AD変換器50や、DA変換器52や、マッピング回路51、55のビット幅を狭くできるので、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4が小型かつ低コストとなり、実用上大変有効である。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
(実施形態2−4)
次に、図13、図14に示す単調に変化する入出力特性の写像変換を用いる構成の実施形態2−3を、単調な変化でない入出力特性の写像変換を用いる構成とした例を説明する。ここで、入出力特性が単調に変化するとは、増加する入力に対して増加傾向となる出力においては減少傾向となることがないこと、あるいは、増加する入力に対して減少傾向となる出力においては増加傾向となることがないこととする。図15、図16に示す特性は、離散的な値が単調でない順序で組み合わされた写像変換器の入出力特性例である。
図10と図11で示される特性は、不連続となる横軸のゼロを除き、それを境界にした両側の連続区間では、それぞれ入出力特性は単調に変化する関数となっており、図13と図14で示される特性は、離散的な不連続量ながら、図10と図11で示される特性のように単調に変化する傾向である。
それに対して、図15と図16で示される特性は増加する入力に対して単調でなく、不規則に変化して見える。この図15と図16で示される特性は数表で図18に示されるが、これは図13と図14で示される特性に対応する図17の数表に図19に示した操作を行ったものである。以下でその詳細を説明する。
図18で定義している写像変換規則は、任意のノイズ信号xとxの値に対応して出力される拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの値を示している。
本伝送システムがスペクトル拡散方式でオブジェクトを伝送する目的のために拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとに求められる性質は、対オブジェクト広帯域性で不規則性で互いに乗じてゼロでない定数になる対をなす信号の関係であり、この性質が得られるのであれば、加工材料であるノイズ信号の値に対して拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの値がどのように変化するかは任意でよいものである。前記定数とは、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず拡散キャリアcの値と逆拡散キャリアcの値との積が一定の値を示すものを言う。
前記の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとに求められる性質のうち、図17の表のノイズ信号の値に対して拡散キャリアcと逆拡散キャリアcがとる値の並び方を規定するのは互いに乗じてゼロでない前記定数になる対をなす信号関係とするという条件である。
すなわち、この対をなす信号関係が成立するならばノイズ信号の値に対して拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの値が図17の表の中でどのように並んでいてもよいものである。
具体的に言えば、図17の表では、あるノイズ信号に対する拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの対はどれも互いに乗ずると1となる対をなす信号関係にあるので、例えばある対と別のある対を入れ替えても、ノイズ信号が取りうる値に対して拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを互いに乗ずると1となる対をなす信号関係は崩れない。
また、あるノイズ信号に対する拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの対について、例えば拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとを入れ替えても、ノイズ信号が取りうる値に対して拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを互いに乗ずると1となる対をなす信号関係は崩れない。
図19はそのような入れ替えの操作を示している。
図19中の56で示されるように、56aと56bに対応した図17上の欄にある値を入れ替え、同時に、図19中の57で示されるように、57aと57bに対応した図17上の欄にある値も入れ替えれば、結果として拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗じて1となるという性質が失われることはない。
また、図19中の58で示されるように、58aと58bに対応した図17上の欄にある値を入れ替えても、結果として拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗じて1となるという性質が失われることはない。図18の表の拡散キャリアcと逆拡散キャリアc値は、図17の表の拡散キャリアcと逆拡散キャリアcの値の並びに対して図19に示したこのような入れ替え操作を施したものであり、その時の拡散モジュールの写像変換の入出力特性図が図15であり、逆拡散モジュールの写像変換の入出力特性図が図16である。
さらに、これらを組合せ、図19上の56aと57bに対応した図17上の欄にある値を入れ、同時に、図19中の57aと56bに対応した図17上の値も入れ替えてもよく、この場合も、結果として拡散キャリアと逆拡散キャリアが乗じて1となるという性質が失われることはないものである。
このように、拡散キャリアや逆拡散キャリアの取る値を入れ替えても拡散キャリアと逆拡散キャリアを乗じた結果が変わらない性質を使って、さらに新たな信号のパターンを発生させることが出来る。
このような写像変換は一般には図12に示したようなディジタル信号処理過程の中で行われるが、信号クリップなどの手法を組み合わせるなどしてアナログ信号処理で実現することも出来るので、図9の構成においてもこのような写像変換を組込むことが可能である。
このような写像変換の入出力特性の変更は、それまで存在していた入出力特性を決めていた要素の単純な入れ替えであり、入出力特性の時間的な特性を変えるものではないため、これによって拡散キャリアと逆拡散キャリアの対オブジェクト広帯域性も相互相関確立状態にあるという関係も影響を受けることはない。
ところで、図17、図18、図19で示されるような写像変換を受けて多値の離散値の不規則で不連続な並びの信号は、従来のスペクトル拡散の拡散符号と逆拡散符号には用いられず、同期操作のやりやすさなどの理由から、実用用途においては二値疑似雑音符号だけが拡散符号と逆拡散符号に用いられてきた。
これらに対し、本発明の実施形態2−4によれば、図17、図18、図19で示されるような写像変換で作成した、多値の離散値を拡散キャリアと逆拡散キャリアに用いてスペクトル拡散通信ができるものであり、これは、写像変換により、ひとつの信号から拡散キャリアと逆拡散キャリアに用いることが出来る異なる多数の新たなパターンの信号を提供できることを示している。
このように、本発明の実施形態2−4によれば、拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段に共通のノイズ信号を基に、多数の異なるパターンの拡散キャリアと逆拡散キャリアを加工することができ、それを用いたスペクトル拡散通信を提供できるものである。
このようにして提供するキャリア加工部1の拡散キャリアと逆拡散キャリアは、図40に示す構成の従来例の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムで用いられる二値の拡散・逆算符号と異なり、信号の不規則性には周期性も規則性も全く不要なノイズ信号のもつ不規則性を用いるので、スペクトル拡散した拡散入力オブジェクトからもとの拡散入力オブジェクトを推測したり、偽の信号を偽造することを一層困難にしており、秘話性を高めることに効果的である。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
(実施形態3−1)
次に、ノイズ信号を拡散キャリア及び逆拡散キャリアにそれぞれ加工する拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段とについて、実施形態1及び実施形態2の各例に示した写像変換以外の具体的方法を説明する。
以下では各種加工方法が例示されるが、それらは例えば図20に示される拡散キャリア加工手段13に信号前処理部46を、逆拡散キャリア加工手段15に信号前処理部46を用いている。すなわち、ノイズ信号x、xは信号前処理部46で信号が加工され、その出力xPT、xPRがこれまでの加工過程に供給されて拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとに加工される。特に断らない限り、以下の説明で現れる加工手段は、この信号前処理部46はリミッタ40の前段に置かれたものとして説明する。ただし、図20における信号前処理部46の位置は、同様の効果が得られる場所であれば前記位置に限定されるものではない。
また、特に加工について、時間的に離散的なディジタル信号処理を用いる場合に特有の工程を考慮する場合は図21に示される構成を用いる。これは、図12に示す拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15におけるノイズ信号x、xの入力部に信号前処理部46を配置したもので、図20と等価となる。特に断らない限り、以下の説明で現れる加工手段は、この各信号前処理部の位置に置かれたものとして説明する。図21における信号前処理部46の位置も、前記と同様の効果が得られる場所であれば前記位置に限定されるものではない。
また、加工方法によっては、その加工方法で直接拡散キャリアと逆拡散キャリアとして使用可能な信号を出力できる場合がある。その場合は、その加工方法を図9あるいは図12に示される構成の拡散キャリア加工手段や逆拡散キャリア加工に換えてよいものである。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
(実施形態3−2)
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに遅延器を用いて、図22(A)に示したような入力するノイズ信号x、xに対し、図22(B)に示したように時間tだけ遅延させた信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成してよいものである。
既述したように、図1に示す実施形態1によれば、ノイズ信号xには、自己相関が全くない完全に不規則な信号を使用することができるが、そのような信号を異なる時間だけ遅延させた信号同士に相互相関がないことを利用して、それらを加工して相互相関がない拡散キャリアや逆拡散キャリアを作成する。
相互相関がない前記拡散キャリアや前記逆拡散キャリアを用いたスペクトル拡散通信は互いに干渉しないため、これを用いると多重通信が可能となる。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
このように、本発明の実施形態3−2によれば、同一のノイズ信号を使用しても、異なる遅延時間を用いて相互相関がない多数の拡散キャリアとそれに対応した逆拡散キャリアとを提供できる。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。
(実施形態3−3)
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに、図23に示したような自己相関のない複数の異なるノイズ信号x…x入力と、それらの信号を加算器61で適当に組み合わせて出力信号を生成する組合わせ部60を設けて、信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成してもよいものである。
自己相関のない信号を組み合わせると新たな波形パターンの自己相関のない信号を作ることが出来る。その信号をノイズ信号に用いることにより、作成できる自己相関のない信号の波形パターン数を増やすことができる。
図23では組合せ手法に加算器61を用いた例を示したが、その手法に代わる複数のノイズ信号x…xを組み合わせる方法として、加減乗除を適当に組み合わせて構成する算術演算組合せ、n個のノイズ信号x…xの内からいくつかのノイズ信号を選択する選択組合せ、ノイズ信号x…xをそれぞれ二値や多値に離散値化して論理的に和や積などの論理演算を適当に組合わせて構成する論理演算組合せ、ノイズ信号x…x相互間の大小関係などによって値を決める関係演算組合せ、それらを適当に組み合わせる混合組合せなどの種々の手法を適宜選択することもできるものである。
拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15で前記組合せ加工の結果得られる信号は、相互相関確立状態にあって対オブジェクト広帯域性を有さなければならない。この時、結果としてのノイズ信号xPT、xPRが対オブジェクト広帯域性を有し相互相関確立状態であるならば、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15それぞれが入力する全てのノイズ信号x…xが対オブジェクト広帯域性を有し相互相関確立状態である必要はないものである。
このように本発明の実施形態3−3によれば、多数のノイズ信号を組合すことにより、自己相関がない多数の異なる波形パターンの拡散キャリアとそれに対応した逆拡散キャリアとを提供できる。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。
(実施形態3−4)
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに、図24に示す特性をもつスペクトル構成調整部を設け、ノイズ信号のスペクトル構成を調整した信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成してよいものである。
図24に示す特性は、信号の広帯域な占有周波数帯域幅は変わらないものの、その帯域の中で、周波数fC1〜fC2の特定帯域に対する利得を制限してスペクトル構成を調整するとともに、周波数fC3〜fC6の間で特定帯域に対する利得を強調してノイズ信号のスペクトル構成を調整している例である。なお、図24の平坦な線で示した通過領域の特性を傾けるなどによりスペクトル構成を調整するようにしてもよいものである。このような操作は、フィルタを組み合わせることにより実現でき、また、DSP(ディジタル信号処理)によっても実現できる。このほかにも、周波数ヘテロダインを用いることにより周波数帯をシフトしたり、n乗器、周波数逓倍器、分周器などの信号変換器を用いて周波数帯域を縮小・拡大してもよい。
このような適当にスペクトル構成を調整したノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアへの加工材料に用いると、同じノイズ信号を用いても生成する拡散キャリアと逆拡散キャリアの信号パターンを変えることができ、加工を複雑にして解読の難しさを増加させて秘話性を向上させたり、遅延と組合わせて多数の相互相関の低い信号の生成方法を提供する手段としては有効なものである。
このように本発明の実施形態3−4によれば、同一のノイズ信号を使用しても、異なるスペクトル構成を用いてパターンの異なる拡散キャリアとそれに対応した逆拡散キャリアとを提供できる。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。
(実施形態3−5)
次に、特徴検出処理と信号発生とを組み合わせた加工について図25及び図26に基づいて説明する。
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに、図25に示したような特徴検出手段と信号発生手段で構成された信号前処理部を設けた構成で信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを作成してもよいものである。
これまで説明した加工方法は、いずれも入力する加工材料信号を直接的に加工して加工出力信号そのものに変化させたものであった。
それに対し、入力信号からは入力信号系列中の特定の位置情報を得るだけで、それに基づいた出力信号系列中の位置に入力信号とは無関係な既知の対オブジェクト広帯域性である信号を発生させて加工出力信号としても良いものである。
入力信号から入力信号系列中の特定の位置情報を得るとは、入力信号の特徴的な要素に注目し、入力信号を解析してその特徴要素の存在を発見し、入力信号系列中のその特徴要素の存在位置を出力することである。それは、すなわち、特徴検出処理である。入力信号の特徴的な要素とは、例えば、ある特定の波形パターンや、ゼロクロス点、波形の頂点である。また、その存在の発見のための解析とは、例えば、比較器と基準信号源を用いた方法や、信号系列の連続した区間の情報を信号処理装置でパターンマッチングや回帰分析をする方法である。また、特徴検出のための解析には、例えば本伝送システムのスペクトル逆拡散モジュールと信号処理装置を組み合わせた構成を用い、入力信号の特徴的な要素として逆拡散出力オブジェクトのある特定の波形パターンや、ゼロクロス点、波形の頂点を用いても良いものである。
ノイズ信号の波形パターンは不規則性なので、系列中にその特徴が検出される位置は、その系列中に不規則に現れる。その不規則に現れる位置を基準に発生される信号は不規則な信号となる。
また、同一のノイズ信号について同一の特性の特徴検出処理で検出される特徴の位置はノイズ信号の系列中の同一の点となり、その特徴の位置を基準にした点の並びやその特徴の位置を基準にしたノイズ信号上の適当な点の値の並びは同一なものとなり、それは相互相関確立状態のものである。
また、その同一の検出点を起点として同一の安定した非同期のリズムである規定のパターンの信号を発生させるとき、それらは独立して発生される非同期の信号であっても、短い期間において実用上相互相関が確立されたものとみなせる信号となる。この時、発生させる信号を適当な対オブジュクト広帯域性で不規則性を有する波形パターンの信号をとすることにより、それらはノイズ信号としての要件を満足する信号となる。
さらに、この時、発生させる信号を互いに乗ずるとゼロでない規定の定数になる対をなす信号関係とすることにより、それらは拡散キャリアと逆拡散キャリアとしての要件を満足する信号となる。
本加工方法はこの原理に基づいて、ノイズ信号から、別の波形パターンのノイズ信号としての要件を満足する信号、あるいは、拡散キャリアと逆拡散キャリアとしての要件を満足する信号を加工作成して出力するものである。
図25と図26を用いて、特徴検出手段と信号発生手段を用いた加工について、具体的に説明する。ここでは、検出する特徴として、入力されるノイズ信号の極性を用いるものを例にして説明する。
図25に示す特徴検出手段62は、図26(A)に示した不規則に値が変化するノイズ信号を入力し、ノイズ信号の極性という特徴に対応した信号を出力する。
図26(B)は、図26(A)に示したノイズ信号から検出された特徴検出出力信号zである。
その特徴検出出力信号zは、ノイズ信号がゼロ以上のゼロか正の極性の場合には正のある一定の値となるものであり、ノイズ信号がゼロより小さい負の極性の場合は負のある一定の値となるものである。
この時、拡散キャリア加工手段の特徴検出手段と逆拡散キャリア加工手段の特徴検出手段とは同一の入出力特性で特徴検出を行うものとする。
これにより、拡散キャリア加工手段の特徴検出手段と逆拡散キャリア加工手段の特徴検出手段とは独立した別の装置なのでそれぞれが出力する特徴検出出力信号は別の信号ではあるが、それぞれの特徴検出手段は共通のノイズ信号xを入力して同一の入出力特性で特徴検出を行うので、それぞれが出力する特徴検出出力信号は同一となり、それらは相互相関確立状態のものとなる。
信号発生手段63は、この特徴検出出力信号zを入力し、信号zが負から正に変化する位置で正の極性のある規定の幅と高さの細いパルスを発生させ、信号zが正から負に変化する位置では負の極性のある規定の幅と高さの細いインパルス状のパルスを発生させる。
この時、拡散キャリア加工手段の信号発生手段と逆拡散キャリア加工手段の信号発生手段もまた同一の入出力特性で信号を発生させるものとする。
これにより、拡散キャリア加工手段の信号発生手段と逆拡散キャリア加工手段の信号発生手段とは独立した別の装置なのでそれぞれが出力する発生出力信号は別の信号ではあるが、それぞれの発生出力信号は同一の特徴検出出力信号を入力して同一の入出力特性で信号を発生させるので、それぞれが出力する発生出力信号は同一となり、それらは相互相関確立状態のものとなる。
すなわち、それぞれが出力する発生出力信号は、ノイズ信号の系列について同じ位置から開始する同一の波形の信号となる。
ここで、ノイズ信号は不規則信号なので、その値がゼロ以上であるか負であるかに規則性はなく、その状態が変化するゼロクロス位置は不規則に現れる。だから、図26(C)の信号のインパルス状のパルスが現れる位置は不規則となり、図26(C)の信号は不規則にインパルス状信号が並んだ系列の不規則信号といえる。
また、インパルス状信号の波形について、その波形の幅をこのキャリア加工部を用いる本伝送システムの拡散入力オブジェクトの一次変調キャリアの繰返し周期に対して例えば数千分の一のようにはるかに狭いものにすることにより、発生出力信号を対オブジェクト広帯域性を有したものにすることが出来る。
この結果、共通の不規則性を有したノイズ信号xから図25の構成の加工方法で作成された信号xPTとxPRとは、対オブジェクト広帯域性と不規則性を有し、相互相関確立状態のものとなり、ノイズ信号の要件を満たすので、拡散モジュールと逆拡散モジュールはこれらの信号をノイズ信号として用いることが出来るものである。
この例では、信号発生手段63が発生させる正と負のインパルス状信号の高さは等しくなるようにしている。
この場合、拡散モジュール側にインパルス状信号を発生させているときに、逆拡散モジュール側でも全く同じインパルス状信号を発生させているので、インパルス状信号を発生させている期間については本加工方法の出力信号xPTとxPRとは相互相関確立状態であり、互いに乗ずるとゼロでないある定数となる対をなす信号関係をも成立させる。
すなわち、この場合の本加工方法の出力信号xPTとxPRとは、ノイズ信号として使用できるばかりでなく、インパルス状の不連続な拡散キャリアと逆拡散キャリアとしても使用可能なものである。
このように、本加工方法は、ノイズ信号として使用できる信号の加工としてだけでなく、拡散キャリアと逆拡散キャリアへの加工としても使用可能なものである。
この信号発生手段63が発生させる信号の大きさは、この例で示した一定値に限るものではなく、例えばある規定のパターンで変化する信号としたり、その発生する信号の前の特徴区間のノイズ信号の平均値としたり、その発生する信号の前の特徴区間の長さに比例する信号のように、ノイズ信号を適当に加工して得られるノイズ信号に由来する信号としてもよいものである。
また、この信号発生手段63が発生させる信号の波形もインパルス状の波形に限るものではなく、例えば規定の擬似ノイズ信号のパターンのように、本加工方法の出力信号xPTとxPRとを対オブジェクト広帯域性と不規則性を有し相互相関確立状態とするとともに、必要に応じて対をなす信号関係とするものであれば任意の波形でよいものである。
このように、本発明の実施形態3−5によれば、同一のノイズ信号を使用しても、特徴検出処理と信号発生とを組み合わせた加工を用いて波形パターンの異なる拡散キャリアとそれに対応した逆拡散キャリアとを提供できる。
このような拡散キャリア及び逆拡散キャリアの作成過程は、狭義には出力信号の波形も対オブジェクト広帯域性や不規則性という性質も入力信号の性質を継承したものではないが、出力する波形の開始位置の不規則性は入力信号と因果関係に有るので、これを入力信号の不規則性が出力の不規則性に継承されると広義に解釈し、出力信号を入力信号を加工したものとみなすものである。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。
(実施形態3−6)
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに、図27に示したような複数の加工部を組合わせてなる加工部を設け、ノイズ信号を複数の加工手法を組み合わせて加工した信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを加工してよいものである。
ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程は、図22に示した遅延、図23に示した複数のノイズ信号の組合せ、図24に示したスペクトルの調整、図25に示した特徴検出処理と信号発生とを組み合わせた加工、後述する図28に示す低域制限、後述する図30及び図31に示す高域制限による加工のどれか、または全て、またはその幾つかの種類については複数を、適当に組合わせて構成するようにしても良く、その例を図27に示す。
前記加工或いは前記処理を組み合わせる場合、これらの加工或いは処理を並列的にして合成する方法と、直列的に並べて加工或いは処理を継続して行うことにより組み合わせるようにしてもよいものである。
図27に示す例は、これらの加工或いは処理を並列的にして合成する方法と、直列的に並べて加工或いは処理を継続して行う方法と、それらの加工或いは処理の結果を組み合わせるようにしたものである。加工手段65aは、加工手段65b、65cと並列的に加工処理を行って、ノイズ信号xまたはxから信号zを作成する。加工手段65cは、加工手段65bに対して直列的に加工処理を行って、信号zから信号zを作成して加算器66に供給する。加算器66は、直列的な加工処理の加工手段65cの出力zと加工手段65aの出力zを組合せて、信号xPT、xPRを出力する。
ここでは組み合わせ方法について直列と並列という例を示したが、組み合わせ方法はこれに限ったものではなく、既述したように、例えば、入れ子構造や、フィードバック構造やそれらを任意に組み合わせてなる複雑な構造であってもよいものである。また、例えば、積分や微分、整合フィルタ、ディジタル演算装置による逐次数値処理などはこのような信号処理の基本要素を複雑に組み合わせたものであり、それらを用いて構成してもよいものである。
このように、本発明の実施形態3−6によれば、多数の加工或いは処理を組み合わせて信号xPT、PRを得ることにより、信号パターンや波形の異なるユニークな信号や、相互相関の低いユニークな信号を得て、例えば多重伝送においては互いに干渉しない拡散キャリアと逆拡散キャリアを多数提供し、また例えばセキュアな伝送においては解読や偽造が困難な複雑な拡散キャリアと逆拡散キャリアを多数提供できるものである。
次に、理想的な動作環境と現実の動作環境の差に起因する現象が実用上影響がないと見なせるようにする手法を説明する。これらは本伝送システムの動作に不可欠ではないが、実用上適用することが望ましいものである。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。
(実施形態3−7)
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに、図28に示す特性をもつ低域制限部を設け、ノイズ信号の低周波成分を抑制した信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを加工してよいものである。
ノイズ信号には対オブジェクト広帯域性が求められている。しかし、実際の信号ではスペクトルの分布は時々刻々波打ち、ある一時期だけを見ればある周波数成分の信号が他より大きくなる場合がある。そのうちで、とりわけ低い周波数成分が大きくなることはスペクトル拡散通信の特徴に影響が考えられるので好ましくない。
理解を容易にするために、ノイズ信号を、その正負の極性に対応して絶対値がゼロでなく等しい正負の二値信号に加工する拡散キャリア加工手段を用いて説明する。このような拡散キャリア加工手段13に、図29(A)に示すような小刻みな不規則信号信号の成分に特定の低周波成分が含まれたノイズ信号が入力された場合、それを加工した拡散キャリアは、低周波成分の正負のピーク付近では図29(B)に示したような幅の長いパルス67a、67bが生成されてしまう。これは、他の成分に比べて低周波成分が過大なために発生する。
スペクトル拡散通信の耐ノイズ性や秘話性には、単位時間に高い頻度で変化する信号が効果的であり、このような長いパルス67a、67bは少なくてよい。このような長いパルス67a、67bが発生するのはノイズ信号に低い周波数成分に信号が大きく存在するときなので、それを過大にならないように抑えるために、図28に示す特性をもつ低域を制限するフィルタを用いる。この時、例えば、そのフィルタのカットオフ周波数fCLには、図29の67aに示した長さが過大な矩形の長さを周期とする正弦波の周波数を用いる。具体的にどのような遮断特性が必要かは、使用するノイズ信号が低域成分をどれだけ含むかと言う特性に合わせて決める。図29(A)の信号の低域成分を適当に制限した例を図29(C)に示す。これを前述したのと同様に二値化したものが図29(D)であり、この例では長い幅のパルス67a、67bは発生しない。
このように本発明の実施形態3−7によれば、ノイズ信号の過大な低い周波数成分を適当に抑制することにより、拡散キャリアと逆拡散キャリアの不規則性を維持し、耐ノイズ性や秘話性を提供するものである。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。なお、本実施形態の低減制限部の特性は、図24に示すスペクトル構成調整部と組み合わせることにより双方の利点を得るようにしてもよいものである。
(実施形態3−8)
図20、図21に示される拡散キャリア加工手段13の信号前処理部46と、逆拡散キャリア加工手段15の信号前処理部46とに、図30に示す特性をもつ高域制限部を設け、ノイズ信号の高周波成分を抑制した信号xPT、xPRを作成して拡散キャリアと逆拡散キャリアを加工してよいものである。
理解を容易にするため、ノイズ信号信号を、その正負の極性に対応して絶対値がゼロでなく等しい正負の二値信号に加工する拡散キャリア加工手段を用いて説明する。ノイズ信号を時間的に離散化して取り扱う場合、すなわちノイズ信号をディジタルサンプリングして加工する場合、拡散モジュール3の発信器54と、逆拡散モジュール4の発信器54は独立に動作しているので、それらが供給するクロック信号の位相はずれている。
図31(A)のようにノイズ信号が正から負に変化しようとしており、例えば拡散キャリア加工手段13のAD変換器50は、図31(B)のような波形のクロック信号の立ち上がりエッジのタイミングでサンプルするとする。このAD変換器50は、正から負に変化するノイズ信号を、変化した後の最初のクロック信号の立ち上がりエッジ時刻tではじめてサンプルし、その出力は図31(C)に示されるように時刻tの後に変化する。一方、拡散モジュールとは独立して非同期で動作する逆拡散キャリア加工手段15のクロック信号は拡散キャリア加工手段が用いるクロック信号とは位相が同一ではないので、AD変換器50は、図31(E)のような波形のクロック信号の立ち上がりエッジのタイミングでサンプルするとする。このAD変換器50は、正から負に変化したノイズ信号を、変化した後の最初のクロック信号立ち上がりエッジ時刻tではじめてサンプルし、その出力は図31(D)に示されるように時刻tの後に変化する。
このように、同期していないクロック信号間には必ず位相差があるので、その位相差があるクロック信号で制御される二つのAD変換器50の出力では、入力が変化した直後のサンプリング時に、出力が異なる時間帯tが厳密には必ず生じる。
ノイズ信号のサンプルを制御する拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段のサンプリングクロック信号はある矩形の波形を一定周期で繰り返す信号なので、その周期が同一であるとき、二つのクロック信号間の位相差はそのクロック信号の一周期分の長さを超えることはないので、このサンプリング出力が異なる時間の幅tは最大でも1サンプリング周期分である。この期間は、拡散キャリアcと逆拡散キャリアcとが異なっており、それらは相互相関確率状態の対をなす信号とならないから、この拡散キャリアと逆拡散キャリアとを用いた逆拡散操作では拡散入力オブジェクトaの成分が正しく逆拡散されない。この正しく逆拡散されない部分は拡散キャリアと逆拡散キャリアの値が変化する位置で最大でクロックの1周期分だけ必ず発生するが、この正しく逆拡散されていない部分の単位時間当たりの発生が多いと、逆拡散出力オブジェクトaにおける拡散入力オブジェクトaの成分のSN比を劣化させるので、耐ノイズ性が低下して好ましくない。
この正しく逆拡散されていない部分は拡散キャリアと逆拡散キャリアが変化するところに発生しているのであり、それがノイズ信号の変化によってもたらされているので、単位時間当たりの正しく逆拡散されていない部分の数を減らすためには、ノイズ信号の単位時間あたりの変化を減らせばよい。そのためにノイズ信号の高域を適当に制限する。
図32(A)は高い周波数成分が多く含まれているノイズ信号を示しており、このノイズ信号を二値化すると、図32(B)に示すように、単位時間当たりの変化数が多い拡散キャリアや逆拡散キャリアが得られてしまう。そこで、図30に示すような特性のフィルタでノイズ信号のスペクトルの高い周波数成分を適当に減衰させる。図32(C)は、図32(A)に示す信号の高域を適当に減衰させたもので、この信号をノイズ信号として二値すると、図32(D)に示すように、図32(B)に示した信号に比べて単位時間当たりの変化数が少ない拡散キャリアや逆拡散キャリアが得られる。
図32(B)の信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに用いても、図32(D)の信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに用いても、信号が変化する位置では必ず正しく逆拡散されていない部分は発生している。しかし、図32(B)の信号よりも図32(D)の信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに用いた方が、短時間当たりに発生する正しく逆拡散されていない部分の数が少ないため、逆拡散出力オブジェクトにおける逆拡散された逆拡散された拡散入力オブジェクトのSN比が良好となり、耐ノイズ性が向上する。
ここでは、上記の拡散キャリアと逆拡散キャリアの間の位相差問題を、非同期ディジタル信号処理における問題として説明した。しかし、現実の回路においては、例えばアナログ信号処理においても拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段それぞれの回路間に伝搬遅延の差があるので、同様の位相差問題がある。本実施形態の高域制限部は非同期ディジタル信号処理に限らず適用して有効なものである。
このような高域制限には例えばローパスフィルタを用いる。実際、サンプリング周波数に対して、10分の一程度の周波数にカットオフ周波数を設定したローパスフィルタを用いることで、実用的な多重通信や耐ノイズ性・秘匿性を備えた上に実用的なSN比が得られることを確認している。
このように、本発明の実施形態3−8によれば、ノイズ信号の高い周波数成分を適当に抑制することにより、拡散キャリアと逆拡散キャリアの相互相関の状態を高め、耐ノイズ性や秘話性を提供するものである。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。なお、本実施形態の高域制限部の特性は、図24に示したスペクトル構成調整部、あるいは、図28及び図29に示した低域制限部の特性と図30に示した高域制限部の特性とを組み併せることにより双方の利点を得るようにしてもよいものである。
なお、逆拡散手段における信号処理過程において、拡散入力オブジェクトを構成するスペクトルのうち、一次変調キャリアの周波数より下の部分は伝送する情報内容の表現にはほとんど寄与しない部分があるので、前記低域部分を適当に遮断する低域遮断フィルタに逆拡散出力オブジェクトを通すのは拡散入力オブジェクトの成分のSN比向上に有益である。
このフィルタは、例えば、一次変調にBPSKを用い、その一次キャリアに固定周波数の正弦波を用いる場合、そのキャリアの周波数以下を遮断する低域遮断フィルタである。
また、例えば上記のように一次変調した拡散入力オブジェクトの場合、その拡散入力オブジェクトのスペクトルは、実際には一次キャリアのスペクトルだけでなくその高調波も成分としている。一方、逆拡散モジュールの逆拡散手段における信号処理過程において拡散入力オブジェクトの成分の抽出操作を行うフィルタは、一次キャリアのスペクトルを通過させる程度の通過帯域幅しかないのが一般的なので、上記の高調波成分はフィルタで減衰させられてしまう。その結果、逆拡散出力オブジェクトの波形は厳密には拡散入力オブジェクトに相似のものとはならない。
この時、一次変調後の拡散入力オブジェクトに対して、逆拡散手段での信号処理過程のフィルタで減衰される帯域成分を通過帯域の成分に対してフィルタで相対的に増加させるプリエンファシス操作を行い、逆拡散手段での信号処理過程のフィルタの出力に対して、プリエンファシスの効果を元に戻すフィルタを通すディエンファシス操作を行うことも逆拡散出力オブジェクトの拡散入力オブジェクトに対する忠実性が高まって有益である。
これら低域遮断フィルタ、プリエンファシスフィルタ、ディエンファシスフィルタは従来の通信技術で知られたものであり、本伝送システムの構成に特徴はないので記述は省略している。
このように、ノイズ信号の高域と低域のスペクトルを調整することと、拡散入力オブジェクトの高域と低域のスペクトルを調整することにより、本発明の実際の応用環境を理想的な動作環境に近づけることが出来、より良好な伝送性能を提供できるものである。その他の構成及びその作用効果は図9及び図12の実施形態と同一になっている。なお、ここで述べたスペクトルの調整は、図24に示したスペクトル構成調整部、あるいは、図28及び図29に示した低域制限部の特性、あるいは、図30に示した高域制限部の特性とを組み併せることにより双方の利点を得るようにしてもよいものである。
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。図33は、図1に示す本発明の実施形態1に係るキャリア加工装置に相当するキャリア加工部1をオブジェクトの伝送を行う伝送システムに応用した例を示すものであり、図1に示す本実施形態に係るキャリア加工装置における伝送媒体11と、そのキャリア加工装置を応用した本伝送システムの伝送媒体7とを併合した例である。また図34は、図33に示す伝送システムを拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とに分離して図示したものである。
この形態の伝送システムは、図33及び図34に示す様に、拡散モジュール3、逆拡散モジュール4、ノイズ信号供給部2、伝送媒体11から構成される。図33及び図34に示した伝送システムの構成は、図1に示したものとは伝送媒体の構成に違いがある。図33及び図34に示した構成を図1の構成に対応させて説明すると、図1の構成では、ノイズ信号供給部2の要素としてノイズ信号xを伝送する伝送媒体11と拡散出力オブジェクトsを伝送する伝送媒体7が個別に存在したのに対し、図33及び図34の構成では、伝送媒体がノイズ信号xの伝送と拡散出力オブジェクトsの伝送とに共用する伝送媒体11という単一媒体にまとめられた構成となっている。その他の構成要素の内部は図1に示した伝送システムの構成と同様である。
この単一式伝送媒体11は、図33及び図34に示すように、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とが存在する環境内(系内)に設置してある。この単一式伝送媒体11には、例えば、一般の電線、通信ケーブル、電灯線、鉄道線路、圧力容器、配管、建物の構造体、ガラス、水などを用いることができる。すなわち、単一式伝送媒体11は、信号の双方向への伝送能力をもつものであれば、これらに限らず、これらと同じような性質のものであってよいものである。ここでは信号形態の変換過程(インターフェース)の説明を省くため、単一式伝送媒体11を電線とし、信号形態を電気信号として説明する。
以下、図33及び図34に示す本実施形態4に係る伝送システムのオブジェクトの伝送動作を、図35に基づいて説明する。
ノイズ信号供給部2では、拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4が存在する環境内において、素ノイズ信号源10が素ノイズ信号xを発生させるとともに、その環境内外に存在するノイズxと、例えば多重通信の他のチャンネルの通信信号などのノイズmがノイズ信号供給部2に侵入する(図35のステップS201、S202)。
発生させた素ノイズ信号xは単一式伝送媒体11に供給され、この環境に侵入したノイズxと、例えば多重通信の他のチャンネルの通信信号などのノイズmも単一式伝送媒体11に侵入し、それらは単一式伝送媒体11上で、単一式伝送媒体11の特性により互いに重畳し、それらを合算した信号がノイズ信号xとして単一式伝送媒体11を介して拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに供給される(図35のステップS203)。
拡散モジュール3のオブジェクト伝送動作は、単一式伝送媒体11からノイズ信号xを入力することからはじまる。拡散モジュール3は、拡散キャリア加工手段13で前記ノイズ信号xをノイズ信号xとして入力すると、それを拡散キャリアcに加工する(図35のステップS204)。
具体的に説明すると、拡散キャリア加工手段13は、例えばノイズ信号xに図10に示すような特性の写像を行って、ノイズ信号xに対して−2.0〜−0.5或いは+0.5〜+2.0の範囲の一意の値をとるような拡散キャリアcを生成する。
拡散手段14は、外部から入力する拡散入力オブジェクトaと拡散キャリア加工手段13から供給される拡散キャリアcとを乗じて拡散入力オブジェクトaをスペクトル拡散した拡散出力オブジェクトsを作成し、単一式伝送媒体11に送出する(図35のステップS205)。
単一式伝送媒体11には、それまでの素ノイズ信号xとこの環境に侵入したノイズxと例えば多重通信の他のチャンネルの通信信号などのノイズmに、拡散モジュール3の拡散手段14が出力した拡散出力オブジェクトsが加わり、それらは単一式伝送媒体11上で、単一式伝送媒体11の特性により互いに重畳し、それらを合算した信号がノイズ信号xとして単一式伝送媒体11を介して拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とに供給される(図35のステップS206、S207、S208)。この拡散モジュール3が拡散出力オブジェクトsを単一式伝送媒体11に出力している状態では、拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13は、その拡散出力オブジェクトsを含むノイズ信号xをノイズ信号xとして入力して拡散キャリアcへの加工材料とする。
一方、逆拡散モジュール4の情報通信動作も、単一式伝送媒体11からノイズ信号xを入力することからはじまる。逆拡散モジュール4は、逆拡散キャリア加工手段15で前記拡散出力オブジェクトsを含む前記ノイズ信号xをノイズ信号xとして入力すると、それを逆拡散キャリアcに加工する(図37のステップS209)。具体的に説明すると、逆拡散キャリア加工手段15は、例えばノイズ信号xに図11に示すような特性の写像を行って、ノイズ信号xに対して−2.0〜−0.5或いは+0.5〜+2.0の範囲の一意の値をとるような拡散キャリアcを生成する。
逆拡散手段16は、単一式伝送媒体11から拡散出力オブジェクトsを含むノイズ信号xを逆拡散入力オブジェクトhとして入力し、それを逆拡散キャリア加工手段15から供給される逆拡散キャリアcと乗じて拡散入力オブジェクトaをスペクトル逆拡散した信号を含む逆拡散出力オブジェクトaを出力する(図35のステップS210)。
現実の伝送システムでは、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とが入力するノイズ信号xとxとの間には差があるのが一般的である。それは、ノイズ信号xを構成する個々の信号が、それらの信号源から拡散モジュール3に伝搬される経路と逆拡散モジュール4に伝搬される経路に差があるためである。この差が大きいくなると、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4が入力するノイズ信号xとxとの間の相互相関は低くなる。
この時、例えば拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4とノイズ信号供給部2の採りうる地理的な位置をある範囲に規定することにより、その規定の範囲内では前記の経路差による拡散モジュール3と逆拡散モジュール4が入力する信号間の差をある小さい範囲に抑える。
それにより、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4が入力するノイズ信号間の相互相関が確立状態となり、拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4は、実用上同一のノイズ信号xを入力したと見なせるようになる。図33及び図34に示す本発明の実施形態4に係る伝送システムの拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4の拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、このように実用上同一と見なせる共通のノイズ信号xを入力して動作する。
次に、図33及び図34に示す本発明の実施形態4に係る伝送システムが、伝送媒体を単一としても、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15が相互相関確立状態で、対オブジェクト広帯域性を有した拡散キャリアcと逆拡散キャリアcへの加工材料信号を得ることができるということと、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4の間で干渉などの障害無くスペクトル拡散通信できることとを両立させることができることを確認する。
図33及び図34に示す実施形態4のノイズ信号供給部2は、ノイズ信号xの基となる素ノイズ信号xを出力する素ノイズ信号源10と、素ノイズ信号源10が出力する素ノイズ信号xにノイズxとノイズmを信号成分として重畳した信号を伝送する単一の伝送媒体11と含んでいる。
具体的に説明すると、素ノイズ信号源10が素ノイズ信号xを供給する単一式伝送媒体11には、拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4が設置された環境内に発生するノイズ、例えば自然雑音或いは人工雑音などのノイズxと例えば多重通信の他のチャンネルの通信信号などのノイズmが侵入し、その単一式伝送媒体11は、伝送媒体それ自身の特性により、素ノイズ信号xにノイズxとノイズmを重畳する。
ノイズ信号供給部2は、その素ノイズ信号xにノイズxとノイズmを加えた信号を、ノイズ信号xとして両キャリア加工手段13、15に供給する。素ノイズ信号xに重畳するノイズをnとしてそれらを式で表すと、以下のようになる。
=x+m (数式53)
=x+n (数式54)
ここで、ノイズ信号xは対オブジェクト広帯域性を有した信号であるとする。それは、例えば、素ノイズ信号xもノイズxもノイズmも対オブジェクト広帯域性を有した信号であるか、あるいは、少なくとも素ノイズ信号xを対オブジェクト広帯域性を有しノイズxとノイズmを合計した数式53の信号nより充分大きな信号とするなどして実現する。
拡散キャリア加工手段13は、このノイズ信号xを入力し、関数fで表される入出力特性の拡散キャリア加工手段で拡散キャリアcを作成し、拡散手段14は、その拡散キャリアcを拡散入力オブジェクトaに乗じて作成した拡散出力オブジェクトsを伝送媒体11に送出する。この時、拡散入力オブジェクトaは、例えば、固定周波数ののBPSKなどで一次変調した占有周波数帯域がある領域に制限された信号とする。この過程は以下のように示される。
=f(x) (数式55)
s=a*c
=a*f(x) (数式56)
一方、拡散手段14が出力する拡散出力オブジェクトsを逆拡散手段16に伝送する時、伝送媒体11では、伝送媒体それ自身の特性により、拡散出力オブジェクトsと素ノイズ信号xとノイズxとノイズmとが互いに重畳する。
すなわち、拡散モジュール3が拡散出力オブジェクトsを出力している状態では、伝送媒体11の信号であるノイズ信号xは、それまでの素ノイズ信号xとノイズxとノイズmとに新たに拡散出力オブジェクトsというノイズが重畳したように見える。この場合、数式53で表された素ノイズ信号xに重畳するノイズnは以下のようになる。
=n+m+s (数式57)
そして、この時のノイズ信号xは、この数式57のnを用いた数式54で求められるものとなる。
ここで、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とが入力するノイズ信号xとxに含まれる素ノイズ信号xと単一式伝送媒体11に侵入するノイズxとノイズmを重畳した信号の成分は対オブジェクト広帯域性を有した信号である。
また、対オブジェクト広帯域性を有した拡散キャリアで拡散入力オブジェクトをスペクトル拡散した拡散出力オブジェクトsも対オブジェクト広帯域性を有した信号である。
この拡散出力オブジェクトsについても、現実の伝送システムでは、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とが入力するノイズ信号xとxに含まれる拡散出力オブジェクトsの成分の間には差があるのが一般的である。それは、拡散出力オブジェクトsの成分が拡散モジュール3の拡散手段14から拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13に伝搬される経路と、拡散モジュール3の拡散手段14から逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15に伝搬される経路に差があるためである。この差が大きいくなると、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4が入力する拡散出力オブジェクトsの成分の間の相互相関は低くなる。
この時、例えば拡散モジュール3と逆拡散モジュール4の採りうる地理的な位置をある範囲に規定することにより、その規定の範囲内では拡散モジュール3と逆拡散モジュール4が入力するノイズ信号x中の拡散出力オブジェクトsの成分は相互相関確立状態となり、拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4は実用上同一の拡散出力オブジェクトsの成分を入力したと見なせるようになる。
それにより、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とが入力するノイズ信号xとxは、対オブジェクト広帯域性を有した相互相関確立状態の素ノイズ信号xとノイズxとノイズmを重畳した信号の成分と、同様に対オブジェクト広帯域性を有した相互相関確立状態の拡散出力オブジェクトsの成分が互いに重畳した信号となり、対オブジェクト広帯域性を有した相互相関確立状態の信号となる。
結果として、上記の条件を満足する限り、数式54で表されるノイズ信号xは、拡散出力オブジェクトが含まれる場合も含まれない場合も、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共通に供給されることによって、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに充分高い相互相関状態で入力される信号であり、かつ対オブジェクト広帯域性を有す信号となる。
一方、拡散出力オブジェクトsを受信する逆拡散手段16にとっては、伝送媒体のノイズ信号xは拡散出力オブジェクトsに、素ノイズ信号xと、単一式伝送媒体11に侵入するノイズxと、例えば多重通信の他のチャンネルの通信信号などのノイズmとからなるノイズnが重畳した信号と見える。それらを式で表すと、以下のようになる。
=x+x+m (数式58)
=s+n (数式59)
逆拡散モジュールの逆拡散手段は、数式59で示された伝送媒体の信号xを逆拡散入力オブジェクトhとして入力するとともに、同じ信号xを逆拡散キャリア加工手段の入力信号xとして入力する。逆拡散キャリア加工手段は、信号xを数式11で示される加工特性gによって逆拡散キャリアcに加工する。逆拡散手段の過程で、逆拡散入力オブジェクトhと逆拡散キャリアcは乗じられる。この乗じた結果をAとし、それをここで述べた関係と数式1、数式5、数式11、数式58、数式59などを用いて展開すると次のようになる。
A=h*c
=x*c
=(s+n)*c
=(a*c+n)*c
=a*c*c+n*g(x
=a*k+n*g(x
=a*k+n*g(s+n
=a*k+(x+x+m)*g(s+x+x+m) (数式60)
実際のスペクトル拡散通信の逆拡散手段で行う逆拡散操作では、逆拡散入力オブジェクトと逆拡散キャリアの乗算の後に、スペクトル拡散されたノイズと逆拡散された拡散入力オブジェクトの成分の混合信号から拡散入力オブジェクトの成分を分離抽出するために、拡散出力オブジェクトにオブジェクトの占有周波数帯域を通過させる、例えば低域通過フィルタを作用させる。その結果得られるオブジェクトをaとすると、低域通過フィルタによる処理に記号∫dtの積分演算を用いて下記のように表せる。
=∫Adt
=∫{a*k+(x+x+m)*g(s+x+x+m)}dt
=a*k+∫{(x+x+m)*g(s+x+x+m)}dt (数式61)
ここで、数式61右辺第一項a*kは、フィルタの通過帯域内なので信号がそのまま出力される拡散入力オブジェクトの成分であり、これによって、伝送システムの送信側である拡散モジュール3から受信側である逆拡散モジュール4にオブジェクトが伝送されたことが示されている。
一方、数式61右辺第二項がノイズの影響項であり、通信には不要なもので、ゼロ或いはオブジェクト成分との分離が容易な形式であることが望ましい。数式61右辺第二項を構成する信号s、x、x、mはいずれも不規則様で耐オブジェクト広帯域性な信号である。もし、それらよりなる信号も不規則で耐オブジェクト広帯域性であれば、フィルタを通過できるのはフィルタの通過帯域である拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域の成分だけなので、拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域の幅を小さくすることにより、ノイズの影響を拡散入力オブジェクトよりも小さくすることができる。
ところで、数式61右辺第二項の被積分関数の二つの乗算要素は、x+x+mという共通部分を有している。
また、数式61右辺第二項の逆拡散キャリア加工特性を表す関数gに含まれる拡散出力オブジェクトsは数式56、数式58、数式59より次のように表せる。
s=a*f(x
=a*f(s+n
=a*f(s+x+x+m) (数式62)
すなわち、拡散出力オブジェクトsもまた数式61右辺第二項の被積分関数の二つの乗算要素とx+x+mという共通部分を有している。この結果、数式61右辺第二項を構成するx+x+mとg(s+x+x+m)とはある程度の相関を示すことが考えられる。この場合、不規則様で耐オブジェクト広帯域性な信号s、x、x、mよりなる数式61の右辺第二項を拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域を通過させるフィルタに通すことはx+x+mとg(s+x+x+m)との相互相関の積分操作を行うことと等価となり、ある程度の相関の効果は直流的な信号としてフィルタの出力に現れる。
この場合、拡散モジュール側では拡散入力オブジェクトを直流分のない信号とし、逆拡散モジュール側では逆拡散手段における上記のフィルタ出力を、例えば直流成分を通過させない交流結合として直流分の影響を排除して取り出すことにより、逆拡散出力オブジェクトについて数式61第二項が示すノイズの影響が軽減される。
また、数式10の拡散キャリア加工特性を示す関数fや数式11の逆拡散キャリア加工特性を示す関数gは、例えば時間的に遅れを与えるような、信号を系列方向に推移させる特性を含まない写像のような加工特性を示しているが、既述したように、拡散キャリアと逆拡散キャリアの加工では信号を系列方向に推移させてもよいものである。この場合、数式61右辺第二項を構成するx+x+mとg(s+x+x+m)とは相互相関がなくなり、その結果数式61右辺第二項の被積分関数はただの不規則様で耐オブジェクト広帯域性の信号となるので、フィルタを通過できるのはフィルタの通過帯域である拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域の成分だけとなる。この場合も拡散入力オブジェクトの占有周波数帯域の幅を小さくすることにより、ノイズの影響を拡散入力オブジェクトよりも小さくすることができる。
このように、図33及び図34に示す実施形態4の構成は、相互相関確立状態で対オブジェクト広帯域性を有したノイズ信号を拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15とに共通に供給することと、スペクトル拡散したオブジェクトを伝送してオブジェクトをノイズの影響を排除して逆拡散して分離抽出することとを、単一式伝送媒体11を用いて両立させることが出来る。それにより、図33及び図34に示す実施形態4の構成によれば、単一式伝送媒体11によってスペクトル拡散通信システムが可能となる。
数式60の右辺第二項に示されたノイズの影響項について、ノイズと逆拡散キャリアとがある程度の相互相関を示す場合、そのノイズの影響項の逆拡散出力オブジェクトへの効果は、逆拡散手段に設けた拡散入力オブジェクトを抽出するフィルタによって、逆拡散出力オブジェクトに重畳する直流的な成分となって現れる。
この事象は、図1に示したノイズ信号xを伝送する伝送媒体7と、拡散出力オブジェクトsを伝送する伝送媒体11とが別である本伝送システムの構成においても、オブジェクト伝送の動作原理上は同じである。
すなわち、図1に示した構成の本伝送システムでも、例えば拡散出力オブジェクトsを伝送する伝送媒体11で拡散出力オブジェクトsに重畳するノイズmが、逆拡散キャリアcとある程度の相互相関を示す場合、その効果は逆拡散出力オブジェクトに重畳する直流的な成分となって現れるのである。
これは、例えば、拡散・逆拡散キャリアへの加工材料とするノイズ信号に用いる何らかの信号が拡散出力オブジェクトsを伝送する伝送媒体11にも侵入した場合であり、具体的には、例えば、雷ノイズのような強力な電磁波が本伝送システムの近傍で発生し、伝送媒体7と伝送媒体11の両方に侵入した場合である。
この場合でも、逆拡散手段の出力を交流結合とするなどして直流的な成分を排除することにより、そのノイズ項の影響は排除できるものである。
この図33及び図34に示した、本発明の実施形態4の構成のスペクトル拡散通信システムのオブジェクト伝送性能を、図1に示した実施形態1の構成のスペクトル拡散通信システムのオブジェクト伝送性能と比較して評価してみる。
具体的には、数式21と数式60を比較する。これらは両式とも逆拡散モジュールの逆拡散手段内の信号で、逆拡散入力オブジェクトと逆拡散キャリアとを乗じた結果の信号を示している。両式の右辺第一項はそれぞれ逆拡散された拡散入力オブジェクトの成分を示しており、両式で全く同一である。
一方、右辺第二項はそれぞれ伝送媒体で拡散出力オブジェクトに重畳したノイズが逆拡散キャリアでスペクトル拡散された成分を示している。両式で逆拡散キャリアは表現が異なってはいるものの、これまで説明したその物理的な意味は同じであり、同一のものと言って差し支えない。
その結果、両式間で異なるのは逆拡散キャリアでスペクトル拡散される伝送媒体で拡散出力オブジェクトに重畳したノイズだけであることがわかる。
図1に示した実施形態1の構成のスペクトル拡散通信システムの場合、そのノイズはmだけであるのに対し、図33及び図34に示した実施形態4の構成のスペクトル拡散通信システムの場合は、そのmに加え、xとxが含まれる点が異なる。ここで伝送媒体で拡散出力オブジェクトに重畳するノイズについて考察する。
図1に示した実施形態1の構成におけるノイズmは同じ伝送媒体を共有利用する多重通信の信号であるほか、伝送媒体自身やその外部から侵入するノイズを総合したものである。
一方、図33及び図34に示した実施形態4の構成におけるノイズxは伝送媒体自身やその外部から侵入するノイズであり、この構成におけるノイズmは同じ伝送媒体を共有利用する多重通信の信号だけである。
すなわち、図1のノイズmと図33及び図34のx+mが同じものといえる。
また、図33及び図34に示した実施形態4の構成における素ノイズ信号xは、伝送媒体を共有利用する多重通信の1信号程度のエネルギーの信号で良いものであり、多数の多重通信の信号が伝送される場合、伝送媒体上のエネルギーはその多重通信の全エネルギーであるノイズmのエネルギーが支配的となる。
それは例えば、十数チャンネルの多重度の場合、素ノイズ信号xのエネルギーは全体の十数分の一に過ぎないものとなることである。
また、例えば雷や周囲の機器が発して伝送媒体に侵入するノイズxもまた素ノイズ信号xより大きいエネルギーであると考えてよい。
このことから、現実の応用環境では数式21と数式60のノイズの部分はほとんど同一と考えて良く、両式とも同一の意味であると言ってよいものである。
結果として、図33及び図34に示した、本発明の実施形態4の構成のスペクトル拡散通信システムのオブジェクト伝送性能は、図1に示した実施形態1の構成のスペクトル拡散通信システムのオブジェクト伝送性能と同一と考えてよいものであると言える。
これにより、図33及び図34に示した、本発明の実施形態4の構成のスペクトル拡散通信システムは、図1に示した実施形態1の構成のスペクトル拡散通信システムと同じ特徴を提供できることとなる。
すなわち、図33及び図34に示した、本発明の実施形態4に係るキャリア加工装置を適用したスペクトル拡散オブジェクト伝送システムによれば、スペクトル拡散通信技術に特有の耐ノイズ性に由来する、低干渉感受性や、微小信号性、低与干渉性、秘匿性、多重性が従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムと同程度に提供できるものである。さらに、本伝送システムによれば、従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システム以上の秘話性や、通信の要求に即応できる即応性、低消費電力性、逆拡散モジュールを同期装置なしに構成できる小規模性も提供できるものである。
さらに、本伝送システムによれば、インパルス状やバースト状の不連続な拡散キャリアや逆拡散キャリアを用いて従来のスペクトル拡散通信システムに対して、小型で安価に、耐ノイズ性を向上させたり、伝送能力を向上させたり、秘匿性を向上させたりすることができるものである。そのうえ、本伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散の応用であった情報伝送でも測距でもない、特に情報内容を表現しない単純なオブジェクトの伝送や電力伝送に上記の特性を提供できるものである。また、本伝送システムによれば、従来のスペクトル拡散の応用であった情報伝送でも測距でもない、新たな用途を開拓することが出来るものである。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
実際、絶対値がゼロで無く等しい正負の二値をとる拡散キャリアと逆拡散キャリアを用いた本実施形態のオブジェクト伝送システムで上記の特徴が得られることを確認している。
(実施形態5)
次に、図1に示すノイズ信号供給部2の素ノイズ信号源10の具体的な例を実施形態5として示す。図36に示すのは、擬似雑音信号源を用いた素ノイズ信号源10である。
本実施形態における素ノイズ信号xは、対オブジェクト広帯域性を有す信号とする。また、多重性や、秘話性の目的がある場合は、さらに自己相関がない信号とする。そして、その素ノイズ信号源10は、それが供給する素ノイズ信号を利用する拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段に、その素ノイズ信号を、相互相関確立状態の信号として供給する。この要件に適合する限り、本発明の実施形態ではノイズを含めてどのような信号を用いても良い。
図36に示す実施形態5の素ノイズ信号源10は、二値擬似雑音発生器を多数組合わせてその要件に適合した素ノイズ信号xを供給するものである。
図36に示す実施形態5に係るノイズ信号供給部2の素ノイズ信号源10は、シングルチップのマイクロコントローラ68と、抵抗網69とで構成する。
マイクロコントローラ68は、多数の独立に動作する16ビット長のM系列疑似雑音信号発生器(以下、M系列発生器と記す)は、線形帰還シフトレジスタ68a、68bを有している。M系列発生器68a、68bは、ソフトウェアにより等価的に複数構成されている。ここで、各M系列発生器68a、68bは、帰還タップ位置やシフトレジスタの初期値、スタートタイミング、駆動クロック速度が異なるよう構成されている。また、各M系列発生器68a、68bは、駆動クロック速度を、拡散入力オブジェクトの一次変調のキャリアの周波数に対して、例えば数百倍以上となるようにして作成される素ノイズ信号が対オブジェクト広帯域性を有したものとなるようにしている。
M系列発生器68a、68bの出力はマイクロコントローラのチップ外に引き出された0〔V〕と5〔V〕のCMOS標準ロジック信号レベルを取る二値信号である。全てのM系列発生器68a、68bの出力信号は、−5〔V〕へのプルダウンを組み合わせた抵抗網69で平均値がほぼゼロとなるように合成される。抵抗網69で合成された前記擬似雑音信号には多少の直流分が残るとともに、マイクロコントローラの動作に伴うディジタルノイズが重畳しているが、対オブジェクト広帯域性を有し、自己相関がほとんどない信号である。本素ノイズ信号源10は、このディジタルノイズも出力する素ノイズ信号の一部として有益に用いる。抵抗網69で合成された信号は、図示しない増幅器とコンデンサ結合を通して有線の伝送媒体11に出力される。
図40で示した従来の参照信号内蔵方式のスペクトル拡散通信システムでは、受信機側での同期捕捉動作において、拡散符号に使用する擬似雑音信号が長い周期で繰り返すことを利用して相互相関値を計算して同期点を発見しているので、不規則信号といえども長時間での信号の特性は一定の周期で同一パターンの不規則性を有する波形が繰り返えされる周期性が必要であった。
これに対して本発明の実施形態では、共有することによって相互相関を確立状態にした、対オブジェクト広帯域性を有した信号をノイズ信号xとして拡散モジュール1及び逆拡散モジュール2に供給することが求められるのであって、ノイズ信号xには、周期性は要求されず、求められる前記条件を満足できれば任意の擬似雑音信号をノイズ信号xに利用できるので、その基とする素ノイズ信号の生成が容易であるという利点がある。
このように、本発明の実施形態5によれば、素ノイズ信号を容易に生成・供給できるものである。その他の構成及びその作用効果は図1の実施形態1と同一になっている。
(実施形態6)
次に、ワイヤレスとしての実施形態を説明する。上述した各実施形態では、図1に代表する伝送媒体11として電線に代表される電気的な導体を用いて説明してきた。例えば図33の伝送システムの構成は、1本の電線を伝送媒体11とした有線伝送システムを表現したものであった。
しかしながら、本実施形態に係る伝送システムは、電気的な導体を伝送媒体としたものに限るものではない。例えば光や放射線を含む電磁波を伝播させる空間を伝送媒体としても良いし、音波などの圧力の波動や、変形や位置変動などを伝搬させる固体や液体、気体を伝送媒体としても良いものである。
一例として、図1に示す伝送媒体11として電気的な導体に代わる前記伝送媒体を用いた例を説明する。前記伝送媒体は電気的な導体を用いないので、それを用いた伝送はいわゆるワイヤレス伝送となる。
図37は、図1に代表する本実施形態1をワイヤレス方式としたスペクトル拡散伝送システムの構成例である。
本伝送システムは、拡散モジュール3、逆拡散モジュール4、ノイズ信号供給部2を有している。拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とは伝送媒体(以下、ワイヤレス伝送媒体と記す。)11を介して連繋される。
ノイズ信号供給部2は、素ノイズ信号源10と、送信インターフェース部70とで構成する。拡散モジュール3は、受信インターフェース部71と、拡散キャリア加工手段13と、拡散手段14と、送信インターフェース部72とで構成する。逆拡散モジュール4は、第一の受信インターフェース部73と、逆拡散キャリア加工手段15と、逆拡散手段16と、第二の受信インターフェース部74とで構成する。
図37の構成は、図33及び図34に示した実施形態4の構成について、伝送媒体をワイヤレス伝送媒体とし、それにあわせて拡散モジュール3、逆拡散モジュール4、ノイズ信号供給部2が伝送媒体と入出力する部分に送受信インターフェース部を設けた構成である。
ノイズ信号供給部2では、送信インターフェース部70が素ノイズ信号源10で発生させた素ノイズ信号xをワイヤレス素ノイズ信号wとしてワイヤレス伝送媒体11に送出する。拡散モジュール3では、受信インターフェース部71がワイヤレス伝送媒体11のワイヤレスノイズ信号wをノイズ信号xとして入力して、これを拡散キャリア加工手段13に供給し、送信インターフェース部72は拡散出力オブジェクトsをワイヤレス拡散出力オブジェクトwとしてワイヤレス伝送媒体11に送出する。
逆拡散モジュール4では、第一の受信インターフェース部73がワイヤレス伝送媒体11のワイヤレスノイズ信号wをノイズ信号xとして入力して逆拡散キャリア加工手段13に供給し、第二の受信インターフェース部74がワイヤレス伝送媒体11のワイヤレスノイズ信号wを拡散出力オブジェクトsを含む逆拡散入力オブジェクトhとして逆拡散手段16に供給する。
ワイヤレス伝送媒体11では、ノイズ信号供給部2が供給するワイヤレス素ノイズ信号wと、拡散モジュール3が供給するワイヤレス拡散出力オブジェクトwと、内外のノイズ源12からワイオヤレス伝送媒体11に侵入するノイズwと、伝送媒体11を用いて通信を行っている本伝送システム以外の通信などの信号mとが互いに重畳し、拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4は、それらを合計したワイヤレスノイズ信号wを入力する。なお、逆拡散モジュール4に設ける第一の受信インターフェース部73と第二の受信インターフェース部74とは、機能上問題がなければいずれか一方を共用しても良いものである。
以下では、幾つかの伝送媒体とその伝送媒体を介して伝送する信号形態をワイヤレス方式の例として具体的に説明する。
ここに示すのは伝送媒体あるいはその伝送媒体を介して伝送する信号形態として使用可能な全てのものではなく、本実施形態6で示す各種要件が満足されれば同様に適用して良いものである。
(実施形態6−1)無線電波を伝送媒体とした場合
まず、無線電波を伝送信号形態とした場合について説明する。この場合、伝送媒体は無線電波を伝搬させる空間となる。
図37の構成において、送信インターフェース70、72は、例えば送信用の無線アンテナと無線送信機とを組合わせたものとなる。また、図37の構成において、受信インターフェース71、73、74は、例えば受信用の無線アンテナと無線受信機とを組合わせたものとなる。
ノイズ信号供給部2は、素ノイズ信号源10で対オブジェクト広帯域性を有した素ノイズ信号xを発生させ、それを送信インターフェース70でワイヤレス素ノイズ信号wに変換して空間に送出する。空間には様々な無線通信信号があり、伝送媒体11を用いて通信を行っている本伝送システム以外の通信などの信号をノイズmとする。また、空間には雷放電や静電気放電、周囲の電気機器が発するものなどの様々無線ノイズがあり、それらを総合したノイズをwとする。これらのノイズm、wは前記送出信号wE、に重畳し、それらの合計した信号がワイヤレスノイズ信号wとして拡散キャリア加工手段13、逆拡散キャリア加工手段15に共通に供給される。
拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4は、このワイヤレス素ノイズ信号wとワイヤレス伝送空間のノイズm、wとワイヤレス伝送空間の拡散出力オブジェクトwが重畳したワイヤレス伝送空間のワイヤレスノイズ信号wをノイズ信号x、xとしてそれぞれ入力し、拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15に供給するが、それらのノイズ信号x、xを拡散キャリアcと逆拡散キャリアcを加工するためのノイズ信号として使用するためには、それらのノイズ信号x、xが相互相関確立状態でなければならない。一般に、この相互相関を低下させる要因は信号の発信点から受信点までの信号の伝搬経路差であり、それが小さいノイズ信号供給部2の近傍では相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2の近傍で動作させる。
また、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcは、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分と相互相関確立状態である必要がある。この相互相関を低下させる要因は主にワイヤレス拡散出力オブジェクトwの発信点から受信点までの信号の伝搬経路であり、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4間の距離を近づけると相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とは互いの近傍で動作させる。これは、逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15がノイズ信号を逆拡散キャリアcに加工する過程で逆拡散キャリアcを信号の系列方向に適当に遅延させ、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcに対して拡散出力オブジェクトが拡散モジュールから逆拡散モジュールに伝送される過程で生じる信号の系列方向のずれを見かけ上小さくするようにしても良いものである。
これにより、本発明の実施形態6−1によれば、平易な部品で、小規模な構成で無線電波方式のスペクトル拡散通信を行うことが出来る。
従来、RFIDや小型の無線リモコンなどの小規模な構成の無線通信デバイスではスペクトル拡散通信は用いられてこなかったが、本発明の実施形態6−1を適用すれば、それらにスペクトル拡散通信に特有の、耐ノイズ性や微小な電力密度で通信できる能力、多重性の高さ、セキュリティ性が高いなどの特徴を与えることができる。
(実施形態6−2)音響信号を伝送媒体とした場合
次に、音響信号を伝送信号形態とした場合について説明する。音響信号には、例えば可聴周波数帯の信号や超音波帯や超低周波帯の信号があり、どのようなものを用いても良い。この場合、伝送媒体は例えば空気である。そのほかに、伝送媒体には、ガスや粉体、水や機械油や石油等の液体、コンクリートや鉄骨や配管、鋼索、レールなどの固体、人体などいろいろなものが考えられる。
図37の構成において、送信インターフェース70、72は、例えばスピーカと音響アンプとを組合わせたものとなる。また、図37の構成において、受信インターフェース71、73、74は、例えばマイクロフォンとマイクアンプとを組合わせたものとなる。
ノイズ信号供給部2は素ノイズ信号源10で対オブジェクト広帯域性を有した素ノイズ信号xを発生させ、それを送信インターフェース70でワイヤレス素ノイズ信号wに変換して空間に送出する。また、拡散モジュールが出力する拡散出力オブジェクトsも送信インターフェース72で送出信号wに変換されて空間に送出される。空間には様々な音があり、伝送媒体11を用いて通信を行っている本伝送システム以外の通信の音をノイズmとする。また、空間にはそれ以外の音があり、それを総合したものをノイズwとする。これらのノイズm、wは前記送出信号w、wに重畳し、それらの合計した信号がワイヤレスノイズ信号wとなる。
拡散モジュール3と逆拡散モジュール4は、このワイヤレス素ノイズ信号wとワイヤレス伝送空間のノイズm、wとワイヤレス伝送空間の拡散出力オブジェクトwが重畳した前記ワイヤレス伝送空間のワイヤレスノイズ信号wをノイズ信号x、xとしてそれぞれ入力し、拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段に供給するが、それらのノイズ信号x、xを拡散キャリアと逆拡散キャリアを加工するためのノイズ信号として使用するためには、それらのノイズ信号x、xが相互相関確立状態でなければならない。一般に、この相互相関を低下させる要因は信号の発信点から受信点までの信号の伝搬経路差であり、それが小さいノイズ信号供給部2の近傍では相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2の近傍で動作させる。
また、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcは、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分と相互相関確立状態である必要がある。この相互相関を低下させる要因は主にワイヤレス拡散出力オブジェクトwの発信点から受信点までの信号の伝搬経路であり、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4間の距離を近づけると相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とは互いの近傍で動作させる。これは、逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15がノイズ信号を逆拡散キャリアcに加工する過程で逆拡散キャリアcを信号の系列方向に適当に遅延させ、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcに対して拡散出力オブジェクトが拡散モジュールから逆拡散モジュールに伝送される過程で生じる信号の系列方向のずれを見かけ上小さくするようにしても良いものである。
これにより、本実施形態6−2によれば、平易な部品で、小規模な構成で音響信号方式のスペクトル拡散通信を行うことが出来る。
従来、超音波リモコンやセンシングなどの小規模な構成の音響信号デバイスではスペクトル拡散通信は用いられてこなかったが、本実施形態6−2を適用すれば、それらにスペクトル拡散通信に特有の、耐ノイズ性や微小な電力密度で通信できる能力、多重性の高さ、セキュリティ性が高いなどの特徴を与えることができる。
(実施形態6−3)光信号を伝送媒体とした場合
次に、光信号を伝送信号形態とした場合について説明する。光信号には、可視光の信号や、赤外領域の信号、紫外領域の信号があり、そのほか類似したものとして、放射線のようなものがあり、どのようなものを用いても良い。この場合、伝送媒体は例えば大気中である。そのほかに、伝送媒体には、宇宙空間、ガス、水やオイルなどの液体、ガラスや光ファイバなどの固体などいろいろなものが考えられる。
図37の構成において、送信インターフェース70、72は、例えば発光ダイオード(LED)とLED駆動アンプとを組合わせたものとなる。また、図37の構成において、受信インターフェース71、73、74は、例えばフォトトランジスタとフォトトランジスタアンプとを組合わせたものとなる。
ノイズ信号供給部2は素ノイズ信号源10で対オブジェクト広帯域性を有した素ノイズ信号xを発生させ、それを送信インターフェース70でワイヤレス素ノイズ信号wに変換して空間に送出する。また、拡散モジュールが出力する拡散出力オブジェクトsも送信インターフェース72で送出信号wに変換されて空間に送出される。空間には様々な光があり、伝送媒体11を用いて通信を行っている本伝送システム以外の通信の光をノイズmとする。また、空間にはそれ以外の光があり、それを総合したものをノイズwとする。これらのノイズm、wは前記送出信号w、wに重畳し、それらの合計した信号がワイヤレスノイズ信号wとなる。
拡散モジュール及び逆拡散モジュールは、このワイヤレス素ノイズ信号wとワイヤレス伝送空間のノイズm、wとワイヤレス伝送空間の拡散出力オブジェクトwが重畳した前記ワイヤレス伝送空間のワイヤレスノイズ信号wをノイズ信号x、xとしてそれぞれ入力し、拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段に供給するが、それらのノイズ信号x、xを拡散キャリア及び逆拡散キャリアを加工するためのノイズ信号として使用するためには、それらのノイズ信号x、xが相互相関確立状態でなければならない。一般に、この相互相関を低下させる要因は信号の発信点から受信点までの信号の伝搬経路差であり、それが小さいノイズ信号供給部2の近傍では相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2の近傍で動作させる。
また、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcは、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分と相互相関確立状態である必要がある。この相互相関を低下させる要因は主にワイヤレス拡散出力オブジェクトwの発信点から受信点までの信号の伝搬経路であり、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4間の距離を近づけると相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とは互いの近傍で動作させる。これは、逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15がノイズ信号を逆拡散キャリアcに加工する過程で逆拡散キャリアcを信号の系列方向に適当に遅延させ、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcに対して拡散出力オブジェクトが拡散モジュールから逆拡散モジュールに伝送される過程で生じる信号の系列方向のずれを見かけ上小さくするようにしても良いものである。
これにより、本実施形態6−3によれば、平易な部品で、小規模な構成で光信号方式のスペクトル拡散通信を行うことが出来る。
従来、光リモコンやセンシングなどの小規模な構成の光信号デバイスではスペクトル拡散通信は用いられてこなかったが、本発明の実施形態6−3を適用すれば、それらにスペクトル拡散通信に特有の、耐ノイズ性や微小な電力密度で通信できる能力、多重性の高さ、セキュリティ性が高いなどの特徴を与えることができる。
(実施形態6−4)磁気信号を伝送媒体とした場合
次に、磁気信号を伝送信号形態とした場合について説明する。この場合、伝送媒体は例えば空間や鉄骨などの固体、ガスや水、人体などである。
図37の構成において、送信インターフェース70、72は、例えば送信コイルとコイル駆動アンプとを組合わせたものとなる。また、図37の構成において、受信インターフェース71、73、74は、例えば受信コイルと受信アンプとを組合わせたものとなる。
ノイズ信号供給部2は素ノイズ信号源10で対オブジェクト広帯域性を有した素ノイズ信号xを発生させ、それを送信インターフェース70でワイヤレス素ノイズ信号wに変換して空間に送出する。また、拡散モジュールが出力する拡散出力オブジェクトsも送信インターフェース72で送出信号wに変換されて空間に送出される。空間には様々な磁界があり、伝送媒体11を用いて通信を行っている本伝送システム以外の通信の磁界をノイズmとする。また、空間にはそれ以外の磁界があり、それを総合したものをノイズwとする。これらのノイズm、wは前記送出信号w、wに重畳し、それらの合計した信号がワイヤレスノイズ信号wとなる。
拡散モジュール及び逆拡散モジュールは、このワイヤレス素ノイズ信号wとワイヤレス伝送空間のノイズm、wとワイヤレス伝送空間の拡散出力オブジェクトwが重畳した前記ワイヤレス伝送空間のワイヤレスノイズ信号wをノイズ信号x、xとしてそれぞれ入力し、拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段に供給するが、それらのノイズ信号x、xを拡散キャリア及び逆拡散キャリアを加工するためのノイズ信号として使用するためには、それらのノイズ信号x、xが相互相関確立状態でなければならない。一般に、この相互相関を低下させる要因は信号の発信点から受信点までの信号の伝搬経路差であり、それが小さいノイズ信号供給部2の近傍では相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散キャリア加工手段13と逆拡散キャリア加工手段15は、ノイズ信号供給部2の近傍で動作させる。
また、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcは、逆拡散入力オブジェクトh中の拡散出力オブジェクトsの成分の中の拡散キャリアcの成分と相互相関確立状態である必要がある。この相互相関を低下させる要因は主にワイヤレス拡散出力オブジェクトwの発信点から受信点までの信号の伝搬経路であり、拡散モジュール3と逆拡散モジュール4間の距離を近づけると相互相関確立状態が得易いので、例えば拡散モジュール3と逆拡散モジュール4とは互いの近傍で動作させる。これは、逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15がノイズ信号を逆拡散キャリアcに加工する過程で逆拡散キャリアcを信号の系列方向に適当に遅延させ、逆拡散モジュール4の逆拡散手段16が入力する逆拡散キャリアcに対して拡散出力オブジェクトが拡散モジュールから逆拡散モジュールに伝送される過程で生じる信号の系列方向のずれを見かけ上小さくするようにしても良いものである。
これにより、本発明の実施形態6−4によれば、平易な部品で、小規模な構成で光信号方式のスペクトル拡散通信を行うことが出来る。
従来、磁気カードや磁気式センシングなどの小規模な構成の時期信号デバイスではスペクトル拡散通信は用いられてこなかったが、本発明の実施形態6−4を適用すれば、それらにスペクトル拡散通信に特有の、耐ノイズ性や微小な電力密度で通信できる能力、多重性の高さ、セキュリティ性が高いなどの特徴を与えることができる。また、磁界に代えて電界を用いても同様である。その他の構成及びその作用効果は前述した図1の実施形態1の場合と同一になっている。
(実施形態7)
次に、図33及び図34に示す伝送媒体11を単一の有線式とした実施形態4の応用例を実施形態7として図38に基づいて説明する。
図38に示す本発明の実施形態7は、本発明の実施形態を鉄道模型に適用し、1本の線路上に複数の列車を別々に独立に運行して、実際の鉄道のように衝突の危険のある臨場感を提供しようとしたものである。
図38において、列車83はレール11上を走行する。そして、列車には、逆拡散モジュール4が搭載され、列車を制御するコントローラ82には拡散モジュール3が搭載される。レール11は図33及び図34に示す単一の有線式の伝送媒体11に相当する。
拡散キャリア加工手段13、拡散手段14、逆拡散キャリア加工手段15及び逆拡散手段16の構成及び動作は図33及び図34に示すものと同様である。
図33及び図34に示す構成と相違するのは、拡散入力オブジェクトaが、列車83の動きをコントロールする制御指令であり、その制御指令が操作スイッチ部85から出力される点である。また、逆拡散手段16から出力される拡散入力オブジェクトaに基づいて列車83のモータ86の速度制御が行われる。
レール(単一式伝送媒体)11はアンテナとして作用することにより、拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4が設置された環境内に存在するノイズを捕捉する。その環境内に存在するノイズとは、例えば蛍光灯の放電管やインバータが発するノイズである。本伝送システムは、その蛍光灯の放電管やインバータを素ノイズ信号源10として、そしてレールに捕捉されたその蛍光灯のノイズを素ノイズ信号xとして用いる。それとは別に、レール11には例えばモータ86が発する人工雑音などのノイズxが侵入するとともに、レールを伝送媒体とするほかの通信信号源17aからの信号などのノイズmが存在し、そのレール(単一式伝送媒体)11は、伝送媒体それ自身の特性により、素ノイズ信号xにノイズx、mを重畳する。前記レールで捕捉したノイズ信号x又はこのノイズ信号xにノイズx,mが重畳した信号が図33及び図34のノイズ信号供給部2が拡散モジュール3及び逆拡散モジュール4に供給するノイズ信号xとなる。
ノイズ信号供給部2は、その素ノイズ信号xにノイズx、mを加えた信号を、ノイズ信号xとして両キャリア加工手段13、15に共通に供給する。これにより、両キャリア加工手段13,15はノイズ信号xを共有することになる。
拡散キャリア加工手段13は、このノイズ信号xを入力して拡散キャリアcを作成し、拡散手段14は、その拡散キャリアcを拡散入力オブジェクトaに乗じて作成した拡散出力オブジェクトsをレール11に送出する。拡散入力オブジェクトaは、操作スイッチ部に備えた操作スイッチが操作されたときに操作スイッチ部から出力される信号であり、操作スイッチの操作情報を例えばBPSKなどで一次変調した信号である。
一方、拡散手段14が出力する拡散出力オブジェクトsを逆拡散手段16に伝送する時、レール11では、伝送媒体それ自身の特性により、拡散出力オブジェクトsと、素ノイズ信号xと、ノイズx、mとが互いに重畳する。
この時、レール11の信号をノイズ信号xとして入力する拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13と逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15とにとっては、ノイズ信号xは、素ノイズ信号xにレール11に侵入するノイズx、mと拡散出力オブジェクトsというノイズが互いに重畳した信号と見える。
逆拡散キャリア加工手段15はそのレール11の信号を車輪84を介してノイズ信号xとして入力し、これを逆拡散キャリアcに加工する。同様に逆拡散手段16は、前記したレール11の信号を逆拡散入力オブジェクトhとして入力し、その信号に前記逆拡散キャリアを乗じて伝送した拡散入力オブジェクトを逆拡散出力オブジェクトとしてモータ86に出力する。逆拡散出力オブジェクトを入力したモータ86は、一次変調された信号から操作スイッチ部85のスイッチ操作情報を復調してモータの制御信号を作成し、それに従ったモータの動作に基づいて車輪84の駆動力が調整され、例えば速度や走行方向などが制御される。
このように、本発明の実施形態7によれば、レールと言う既に列車への電力供給媒体に用いられている単一の有線式の伝送媒体を、さらにノイズの捕捉とノイズ信号の供給と情報の伝送とに共用してスペクトル拡散通信応用システムを構成できるものである。その他の構成及びその作用効果は前述した図33及び図34に示す実施形態4と同一になっている。
(実施形態8)
次に、図37に示すワイヤレスの実施形態6の応用例を実施形態8として図39に基づいて説明する。図39に示す本発明の実施形態8は、本発明の実施形態を盲人用の杖と信号機とに適用し、信号の情報を盲人にワイヤレスで伝達する機能を提供しようとしたものである。
図39において、信号機97は拡散モジュール3を備え、また、盲人が携行する杖には内部に逆拡散モジュール4を内蔵した受信機91が仕込まれている。信号機の近傍にあって、その信号機の灯器による表示に従って通行人が通行する領域には、例えば街灯の水銀灯や蛍光灯、ネオンサインの放電管、自動車のガソリンエンジンの点火システムなどのノイズを供給するノイズ源があり、本実施形態はこれらを素ノイズ信号源10とし、それらから供給されるノイズを素ノイズ信号xとして用いる。また、前記領域には、ノイズmとなる他の通信信号を発するノイズ源17a、或いは、例えば雷放電のノイズのような、前記ノイズ以外のノイズxを発するノイズ源12も存在する。
図39での前記素ノイズ信号源10、ノイズ源17a或いはノイズ源12がノイズ信号供給部2として作用する。したがって、図39でのノイズ信号供給部2は信号機97及び信号機97の近傍にあって通行人が通行する領域にノイズ信号xを供給している。この場合、信号機97の近傍での通行領域に位置する盲人が携えている杖90に組み込んだ逆拡散モジュール4及び信号機97の拡散モジュール3と、ノイズ信号供給部2との距離をほぼ等しい距離に設定しておく。
盲人が杖90を使って信号機97の近傍の通行領域に差し掛かると、ノイズ信号供給部2は、信号機97の拡散モジュール3と杖90の逆拡散モジュール4とにノイズ信号xを共通に供給する。これにより、拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13と逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15とは、ノイズ信号供給部2からのノイズ信号xを共有することとなる。
信号機97はこれらのノイズをノイズ信号xとして入力して拡散キャリアcを加工生成し、その拡散キャリアcで信号情報aをスペクトル拡散して拡散出力オブジェクトsとして発信する。
盲人の杖90は、杖自体をアンテナとして用い、そのアンテナで信号機と共通の前記ノイズをノイズ信号xとして入力して逆拡散キャリアcを加工生成し、その逆拡散キャリアcで受信信号hにスペクトル逆拡散操作を行い、信号情報を逆拡散出力オブジェクトaとして得て何らかの報知手段98を用いて信号情報96を盲人に伝える。
具体的に説明すると、拡散モジュール3は信号機97近傍の図示しないコントールボックスに組み込むとともに、受信アンテナ93と送信アンテナ94とを同様に信号機97近傍に設置する。
盲人用の杖90はその目的からして金属製であり、例えばこれをノイズ信号xを受け取るアンテナとして利用する。また、杖90の内部91には、逆拡散モジュール4と音声回路8とを組み込む。
ここで、盲人が杖90を携えて信号の状態を確認したり、信号が変わるのを待機する位置は信号の近傍とし、素ノイズ信号源10と杖90間の距離と、素ノイズ信号源10と信号機の拡散モジュールの受信アンテナ93間の距離はいずれも近く、杖が受信するノイズも信号機が受信するノイズも実用上同一と見なせるものとする。
また、信号機の拡散モジュールの受信アンテナ93と杖90間の距離も同様に充分近いものとする。
この環境では、素ノイズ信号源からのノイズxと、他の通信の信号mと、拡散モジュールが送出する拡散出力オブジェクトsとが互いに重畳してなるノイズ信号xは、信号機側の拡散モジュール3の拡散キャリア加工手段13と、杖側の逆拡散モジュール4の逆拡散キャリア加工手段15とに同一の信号として入力される。
信号機90の灯器による表示が例えば赤から青に変化すると、その変化を示す情報は信号機90内で例えばBPSKで一次変調された拡散入力オブジェクトaとなって拡散手段14に入力され、拡散手段14は、拡散キャリア加工手段13が加工作成した拡散キャリアcを前記拡散入力オブジェクトaに乗じて拡散出力オブジェクトsを作成し、それを送信アンテナ94から空間に出力する。
盲人の杖90は、杖そのものがアンテナとなってその環境の信号を捕捉する。捕捉した信号は、信号機97からの拡散出力オブジェクトsを含むその環境のノイズである。盲人の杖90は、そのノイズを受信すると、その信号を、逆拡散キャリア加工手段15にはノイズ信号xとして、そして逆拡散手段16には逆拡散入力オブジェクトhとして供給する。逆拡散キャリア加工手段15はそのノイズ信号xを加工して逆拡散キャリアcを作成し、逆拡散手段16に供給する。逆拡散手段16は、逆拡散キャリア加工手段15からの逆拡散キャリアcを逆拡散入力オブジェクトhに乗じて拡散入力オブジェクトaの成分を逆拡散・抽出し、逆拡散出力オブジェクトcとして音声回路98に出力する。出力された逆拡散出力オブジェクトaは、音声回路98に入力されて、例えば音声96として信号機97の表示が赤から青に変化したことを盲人に知らせる。
このように、本発明の実施形態8によれば、共有した空間のノイズをノイズ信号として共有し、その共通のノイズ信号を用いてスペクトル拡散通信応用システムを構成できるものである。その他の構成及びその作用効果は図33及び図34に示す実施形態4の場合と同一に成っている。
以上説明したように本発明の実施形態によれば、スペクトル拡散キャリア加工手段とスペクトル逆拡散キャリア加工手段とが不規則性を有するノイズ信号を共有することによって前記ノイズ信号を相互相関のとれた不規則性の前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するとともに、前記スペクトル拡散キャリアの値如何に関わらず前記スペクトル拡散キャリアの値と前記スペクトル逆拡散キャリアの値との積が定数を示す前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアの対を得るものであるものであるため、、積極的な同期操作を行うことなく、自由空間に存在する不規則性を有するノイズを用いてスペクトル拡散キャリア及びスペクトル逆拡散キャリアを生成することができる。さらに、耐ノイズ性の高さと即応性とを両立させたオブジェクト伝送システムを提供できる。
産業上の利用分野
本発明によれば、スペクトル拡散通信方式の技術を情報通信や測距などの目的ばかりでなく、即応やより高い秘話性、小型、低消費電力などの新たな特徴とともに、新たな用途におけるオブジェクトの伝送に応用することができるものである。
本発明の実施形態に係るキャリア加工装置をスペクトル拡散情報伝送システムに応用した例をブロック図である。 図1に開示した実施形態の全体的な動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置の応用例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置の応用例を示すブロック図である。 平面画像の構成を示す図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置を平面画像の伝送に応用した例において、を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置を平面画像の伝送に応用した例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置に用いることが可能な拡散キャリア及び逆拡散キャリアの形態例を示す図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置におけるアナログ構成の拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段の具体例を示すブロック図である。 図9に示す拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段についての入力特性を示す図である。 図9に示す拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段についての入力特性を示す図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置におけるディジタル構成の拡散キャリア加工手段と逆拡散キャリア加工手段の具体例を示すブロック図である。 図12に示す拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段についての入力特性を示す図である。 図12に示す拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段についての入力特性を示す図である。 図12に示す拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段での入力特性を示す図である。 図12に示す拡散キャリア加工手段及び逆拡散キャリア加工手段での入力特性を示す図である。 図15及び図6に示す特性の具体的な数値例である。 図15及び図6に示す特性の具体的な数値例である。 図17に示した数値例に変更を加える手法を示す図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置における拡散キャリア及び逆拡散キャリア加工手段の具体例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るキャリア加工装置における拡散キャリア及び逆拡散キャリア加工手段の具体例を示すブロック図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程に遅延を設けた場合の説明図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、複数のノイズ信号の組合せ処理を行うための構成図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号のスペクトル構成の調整を行うための特性図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、拡散キャリア及び逆拡散キャリアを加工する信号を生成するための構成図である。 図25による信号処理の過程を説明する特性図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号を複数の加工の組合せ処理により行うための構成図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号の低域制限を行う際の特性図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号の低域制限を行う際の説明図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号の高域制限を行う際の特性図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号の高域制限を行う際の説明図である。 ノイズ信号を拡散キャリアと逆拡散キャリアに加工する過程について、ノイズ信号の高域制限を行う際の説明図である。 図1に示す本発明の実施形態に係るスペクトル拡散情報通信システムにおける伝送媒体を1線式とした例を示す構成図である。 図1に示す本発明の実施形態に係るスペクトル拡散情報通信システムにおける伝送媒体を1線式とした例を示す構成図である。 本発明の実施形態3に係るスペクトル拡散情報通信システムの全体的な動作を示すフローチャートである。 図1に示す本発明の実施形態に係るスペクトル拡散情報通信システムにおけるノイズ信号供給部の素ノイズ信号源の一例を示す構成図である。 図1に示す本発明の実施形態に係るスペクトル拡散情報通信システムにおける伝送媒体をワイヤレス式とした例を示す構成図である。 本発明の実施形態3の応用例を示す構成図である。 図37に示す伝送媒体をワイヤレス方式とした実施形態の応用例を示す構成図である。 関連する技術のスペクトル拡散通信システムであって、参照信号内蔵方式の例を示す構成図である。 関連する技術のスペクトル拡散通信システムであって、第一の参照信号送信方式の例を示す構成図である。 関連する技術のスペクトル拡散通信システムであって、第二の参照信号送信方式の例を示す構成図である。
符号の説明
1 キャリア加工部(キャリア加工装置)
2 ノイズ信号供給部
3 拡散モジュール(スペクトル拡散モジュール)
4 逆拡散モジュール(スペクトル逆拡散モジュール)
7、11 伝送媒体
13 拡散キャリア加工手段(スペクトル拡散キャリア加工手段)
14 拡散手段(スペクトル拡散手段)
15 逆拡散キャリア加工手段(スペクトル逆拡散キャリア加工手段)
16 逆拡散手段(スペクトル逆拡散手段)

Claims (3)

  1. 拡散入力オブジェクトを伝送する際に伝送元で必要なスペクトル拡散キャリアと伝送先で必要なスペクトル逆拡散キャリアとをそれぞれ出力するキャリア加工装置であって、
    ノイズ成分を信号成分として含む不規則性のノイズ信号を出力するノイズ信号供給部と、
    前記ノイズ信号を前記スペクトル拡散キャリアに加工するスペクトル拡散キャリア加工手段と、
    前記ノイズ信号を前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するスペクトル逆拡散キャリア加工手段とを含み、
    前記ノイズ信号供給部は、前記ノイズ信号を加工材料として前記両キャリア加工手段に共通に供給するものであり、
    前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とは、前記共通に供給された前記ノイズ信号の不規則性を継承する加工により、不規則性をもつ相互相関のとれた前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するものであることを特徴とするキャリア加工装置。
  2. スペクトル拡散通信技術を応用して拡散入力オブジェクトを伝送するオブジェクト伝送システムであって、
    ノイズ成分を信号成分として含む不規則性のノイズ信号を出力するノイズ信号供給部と、
    前記ノイズ信号を前記スペクトル拡散キャリアに加工するスペクトル拡散キャリア加工手段と、
    前記ノイズ信号を前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するスペクトル逆拡散キャリア加工手段とを含み、
    前記ノイズ信号供給部は、前記ノイズ信号を加工材料として前記両キャリア加工手段に共通に供給するものであり、
    前記スペクトル拡散キャリア加工手段と前記スペクトル逆拡散キャリア加工手段とは、前記共通に供給された前記ノイズ信号の不規則性を継承する加工により、不規則性をもつ相互相関のとれた前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するものであり、
    さらに、前記スペクトル拡散手段と前記スペクトル逆拡散手段とを連繋させる伝送媒体を有することを特徴とするオブジェクト伝送システム。
  3. スペクトル拡散通信技術を応用して拡散入力オブジェクトを伝送するオブジェクト伝送方法であって、
    ノイズ成分を信号成分として含む不規則性のノイズ信号を出力するノイズ信号供給工程と、
    前記ノイズ信号を前記スペクトル拡散キャリアに加工するスペクトル拡散キャリア加工工程と、
    前記ノイズ信号を前記スペクトル逆拡散キャリアに加工するスペクトル逆拡散キャリア加工工程と
    前記スペクトル拡散キャリアで前記拡散入力オブジェクトをスペクトル拡散してスペクトル拡散出力オブジェクトを伝送する工程と、
    前記スペクトル逆拡散キャリアで前記スペクトル拡散出力オブジェクトを含む信号から前記拡散入力オブジェクトの成分をスペクトル逆拡散する工程とを含み、
    前記ノイズ信号供給工程において、前記ノイズ信号を加工材料として前記両キャリア加工工程に共通に供給し、
    前記スペクトル拡散キャリア加工工程と前記スペクトル逆拡散キャリア加工工程とにおいて、前記共通に供給された前記ノイズ信号の不規則性を継承する加工により、不規則性をもつ相互相関のとれた前記スペクトル拡散キャリアと前記スペクトル逆拡散キャリアに加工することを特徴とするオブジェクト伝送方法。
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