(特定の化学用語)
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的な用語は、請求項に係る主題が属する当該分野の知識を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。他に明記されない限り、本明細書の開示全体にわたって参照される特許、特許出願、公開された出願および出版物、GENBANK配列、ウェブサイト、および、他の出版物はすべて、全体として引用されることで組み込まれる。本明細書の用語に複数の定義がある場合、この表題の定義が優先される。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスについて言及する場合、そのような識別子は変更可能であり、インターネット上の特定の情報は変動することがあるが、同等の情報は、インターネットの検索および/または適切なデータベースなどによって、知られており、容易に入手可能である。そのようなものについての言及は、そのような情報の利用可能性と好適な普及を証拠づけるものである。
本明細書で使用されているように、範囲と量は、「約(about)の」特定の値または範囲として表現することができる。「約」は正確な量も含んでいる。ゆえに、「約5μg」は「約5μg」も「5μg」も意味する。一般に、用語「約」は、実験誤差内にあると予想される量を含んでいる。
本明細書で使用されているように、再構成されたHC−HA/PTX3(rcHC−HA/PTX3)複合体は、複合体の成分分子の集合によって生体外で形成されるHC−HA/PTX3複合体である。rcHC−HA/PTX3を組み立てるプロセスは、生物学的起源からの精製された天然のタンパク質または分子、組み換え方法によって生成された組換えタンパク質を用いる再構成、あるいは、生体外の合成による分子の合成を含んでいる。いくつかの例において、rcHC−HA/PTX3の組立に使用される精製された天然タンパク質は、他のタンパク質(すなわち、多量体、多連鎖タンパク質、または、他の複合体)を含む複合体中のタンパク質である。いくつかの例において、PTX3は、細胞からの多量体(例えば、ホモ多量体)として精製され、rcHC−HA/PTX3複合体の組立のために使用される。
本明細書で使用されているように、精製された天然のHC−HA/PTX3(nHC−HA/PTX3)複合体は、細胞、組織、または生体液などの生物学的起源から精製されるHC−HA/PTX3複合体を指す。このような複合体は、被験体においてインビボで、あるいは、ヒトまたは他の動物を含む被験体からの細胞、組織、または生体液において生体外で、一般に組み立てられる。
本明細書で使用されているように、PTX3/HA複合体は、固定化したHAにPTX3を接触させることにより形成される中間の複合体を指す。本明細書で提供される方法において、PTX3/HA複合体は、HAに対するHC1の追加の前に生成されるものである。
本明細書で使用されているように、「ヒアルロナン」、「ヒアルロン酸」、または「ヒアルロン酸塩」(HA)は、Dグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミン(D−グルクロノシル−N−アセチルグルコサミン)の反復二糖単位を含む、十分に非硫酸化型のリニアグリコサミノグリカン(GAG)を指すために、交互に使用される。
本明細書で使用されているように、用語、「高分子量」または「HMW」は、高分子量ヒアルロナン(HMW HA)でのように、約500キロダルトン(kDa)よりも大きな、例えば、約500kDaと約10,000kDaの間、約800kDaと約8,500kDaの間、約1100kDaと約5,000kDaの間、または、約1400kDaと約3,500kDaの間の、重量平均分子量を有するHAを指すことを意図している。いくつかの実施形態では、HMW HAは3000kDa以上の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、HMW HAは3000kDaの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、HMW HAは約3000kDaの重量平均分子量を備えたHealon(登録商標)である。いくつかの実施形態では、HMW HAは、約500kDa乃至約10,000kDaの間の分子量を有する。いくつかの実施形態では、HMW HAは、約800kDa乃至約8500kDaの間の分子量を有する。いくつかの実施形態では、HMW HAは約3,000kDaの分子量を有する。
本明細書で使用されているように、用語、「低分子量」または「LMW」は、低分子量ヒアルロナン(LMW HA)でのように、500kDa未満、例えば、約400kDa未満、約300kDa未満、約200kDa未満、約200−300kDa、または、約1−300kDaの重量平均分子量を有するHAを指すことを意図している。
本明細書で使用されているように、ペントラキシン3またはPTX3のタンパク質またはポリペプチドは、限定されないが、組み換え生成されたタンパク質、合成的に生成されたタンパク質、天然のPTX3タンパク質、および、細胞または組織から抽出されたPTX3タンパク質を含む、任意のPTX3タンパク質を指す。PTX3は、限定されないが、自然にまたは人為的に生成された、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、四量体、八量体、および、他の多量体の形状を含む、PTX3の多量体の形態(例えばホモ多量体)を含んでいる。
本明細書で使用されているように、腫瘍壊死因子である刺激遺伝子−6(TSG−6)は、限定されないが、組み換え生成されたタンパク質、合成的に生成されたタンパク質、天然のTSG−6タンパク質、および、細胞または組織から抽出されたTSG−6タンパク質を含む、任意のTSG−6タンパク質またはポリぺプチドを指す。
本明細書で使用されているように、インターαインヒビター(IαI)は、軽鎖(すなわち、ビクニン)と、コンドロイチン硫酸鎖によって共有的に結合したHC1またはHC2の一方または両方の重鎖とで構成された、IαIタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、IαIの源は、血清からの、または、IαIを生成する細胞、例えば、IL−1またはTNF−αなどの炎症性サイトカインによる構成的な様式での刺激下での、肝細胞、羊膜の上皮または間質細胞、臍の緒の上皮または間質細胞からのものである。
本明細書で使用されているように「ヒアルロナン結合タンパク質」、「HA結合タンパク質」、または、「HABP」は、HAに特異的に結合する任意のタンパク質を指す。
本明細書で使用されているように、「リンクモジュール」は、ヒアルロナン結合ドメインを意味する。
本明細書で使用されているように、「生物活性」は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体のインビボの投与で生じる生理反応、あるいは、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含有する組成物または混合物のインビボ活性を指す。生物活性は、このように、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体、および、その組成物と混合物の治療効果と薬学的な活性を包含する。
本明細書で使用されているように、「被験体」、「個体」、および、「患者」との用語は、交互に使用される。これらの用語のいずれも、医療専門家(例えば、医者、看護師、医師助手、看護助手、ホスピスワーカー)の監督を必要とするものであるとは解釈されない。本明細書で用いられているように、被験体は、哺乳動物(例えば、ヒトまたはヒト以外の動物)と非哺乳動物を含む任意の動物である。本明細書で提供される方法と組成物の1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
本明細書で用いられているように、「処置する(treat)」、「処置している(treating)」、または、「処置(treatment)」との用語、および、他の文法的な同等物は、疾患または疾病の1以上の症状を緩和、軽減、または、寛解すること、疾患または疾病の1以上の追加の症状の出現、重篤性、または、頻度を軽減、予防、または減少させること、疾患または疾病の1以上の追加の症状の根底にある代謝の原因を改善または予防すること、疾患または疾病を抑制すること、例えば、疾患または疾病の進行を停止すること、疾患または疾病を緩和すること、疾患または疾病を退行させること、疾患または疾病により生じる状態を緩和すること、あるいは、疾患または疾病を予防的および/または治療的に抑制することを含む。非限定的な実施例では、予防的な利益について、本明細書で開示されたrcHC−HA/PTX3複合体または組成物は、特定の障害を進行させるか、特定の病気にかかりやすい危険のある個体に、あるいは、ある障害の生理的な症状の1つ以上を報告している個体に投与される。
本明細書で使用されているように、「胎盤」とは、母体の血液供給によって栄養分を摂取、廃棄物を排出し、およびガス交換を可能にするために、母体の子宮壁と発育中の胎児とをつなぐ臓器を指す。胎盤は3層からなる。胎児を包む最も内側の胎盤の層は羊膜と呼ばれる。尿膜は(胚の後腸に由来する)胎盤の中心の層であり、臍から始まる血管はこの膜を横断する。胎盤(絨毛膜)の最も外側の層は子宮内膜と接触する。絨毛膜と尿膜は絨毛尿膜を形成するために融合する。
本明細書で使用されているように、「絨毛膜」とは、胚外中胚葉と栄養芽層の2つの層によって形成された膜を指す。絨毛膜は2つの層:栄養芽層によって形成された外側と、壁側中胚葉によって形成された内側からなり、羊膜は後者に接している。栄養芽層は、立体細胞または角柱細胞の内部層、ラングハンスの栄養膜細胞層、および、細胞境界を欠いた豊富に核が形成された原形質の外層、合胞体栄養細胞から構成されている。無血管羊膜は絨毛膜の中間層に結合している。
本明細書で使用されているように、「羊膜絨毛膜」は、羊膜と絨毛膜を含む生成物を指す。いくつかの実施形態では、羊膜と絨毛膜は分離していない(すなわち、羊膜は、絨毛膜の中間層に自然に結合している)。いくつかの実施形態では、羊膜は絨毛膜から最初に分離し、その後、処理中に絨毛膜と結合する。
本明細書で使用されているように、「臍の緒」は、胎盤に発育中の胎児をつなぐ臓器を指す。臍の緒は、大部分がムコ多糖から作られたゼラチン状の物質であるワルトンゼリーからできている。臍の緒は、酸素を含んだ栄養の豊富な血液を胎児に運ぶ1つの静脈と、脱酸素化した栄養が足りない血液を取り除く2つの動脈を含んでいる。
本明細書で使用されているように、「胎盤の羊膜」(PAM)とは、胎盤に由来する羊膜を指す。いくつかの実施形態では、PAMは実質的に単離する。
本明細書で使用されているように、「臍の緒の羊膜」(UCAM)は、臍の緒に由来する羊膜を意味する。UCAMは半透明の膜である。UCAMには多くの層、上皮層、基底膜、緻密層、繊維芽細胞層、および、海綿層、を含む。UCAMは血管または直接的な血液供給を欠いている。いくつかの実施形態において、UCAMはワルトンゼリーを含む。いくつかの実施形態では、UCAMは血管および/または動脈を含む。いくつかの実施形態では、UCAMはワルトンゼリーと血管および/または動脈を含む。
本明細書で使用されているように、「精製された」および「単離した」との用語は、その天然の状態で通常それに伴う成分を実質的にまたは本質的に含まない材料(例えば、nHC−HA/PTX3複合体)を意味する。いくつかの実施形態では、「精製された」または「単離した」とは、その天然の状態で、通常それに伴う成分を約50%以上含んでいない、例えば、その天然の状態で、通常それに伴う成分を約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%、含んでいない材料(例えば、nHC−HA/PTX3複合体)を意味する。
概観:nHC−HA/PTX3とrcHC−HA/PTX3の複合体
ヒアルロナン(HA)は、GlcUA−−β1,3−GlcNAc−β1,4−結合を介して、Dグルクロン酸およびN−アセチル−Dグルコサミンの反復二糖類サブユニット単位から構成された、十分に非硫酸化型のリニアグリコサミノグリカン(GAG)である。HAはHAシンターゼ(例えば、HAS1、HAS2、およびHAS3)によって合成されて、細胞外マトリックスに堆積し、組織の構造の完全性に寄与するとともに、細胞表面受容体を含むタンパク質との相互作用によって多くの細胞のプロセスも制御する。HAの分子量は一般に、約200乃至約10,000kDaまでの大きさに及ぶ。HAの標準レベルは、Hyal1などのヒアルロニダーゼによるHASの酵素および異化反応によって、生合成のバランスを介して組織中で維持される。
一般に500kDa以上の高分子量HA(HMW HA)は、目の軟骨と硝子体(体液)といった組織の細胞の休止と構造的な完全性を促し、瘢痕のない胎児の創傷治癒に関連付けられている。特定の例において、HMW HAは、炎症誘発性メディエーターおよび血管形成の遺伝子発現を阻害する。
特定の病原性疾患において、HMW HAは、(例えば、ヒアルロニダーゼまたは遊離基酸化によって)より小さなフラグメントとオリゴ糖に分解される。LMW HAフラグメントは、炎症誘発性および血管新生促進の媒介物質の遺伝子発現を促すことによって、血管内皮細胞の増殖、遊走、コラーゲン合成、スプラウトの形成(sprout formation)、およびラットの皮膚における血管形成、心筋梗塞、ならびに、クリオ損傷した(cryo−injured)皮膚移植片モデルを刺激する。
HAの生物学的機能は、ヒアルアドヘリン(hyaladherins)とも呼ばれる、HA結合タンパク質(HABP)とのHAの相互作用を媒介としている。このようなタンパク質は、限定されないが、腫瘍壊死因子α刺激遺伝子6(TSG−6)、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、LYVE−1、CD44、および、インターαインヒビター(IαI)を含む。いくつかの例においては、HABPは、HAに結合するリンクモジュールドメインを含む。TSG−6、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、LYVE−1、および、CD44は、リンクモジュールを含有する典型的なHABPである。
IαIは2つの重鎖(HC1とHC2)を含み、その両方が、軽鎖(すなわち、ビクニン)に付くコンドロイチン硫酸鎖に対するエステル結合によって結合している。いくつかの例においては、HAはIαI重鎖に対する共有結合によって、IαIのHCの1つまたは両方を含む共有結合複合体(以下に「HC−HA」)を形成する。特定の例では、IαIは、血清中で見られるか、および/または、IL−1またはTNF−αなどの炎症性サイトカインによる構成的な様式での刺激下で、IαIを生成する細胞、例えば、肝細胞、羊膜の上皮または間質細胞、臍の緒の上皮または間質細胞から得られる。
特定の例において、TSG−6は、HAに対するIαIのHC1とHC2の伝達を促進し、触媒し、および/または、HAに対してIαIのHC1とHC2を伝達する。TSG−6は固定化したHA(TSG−6・HA)を含む安定した複合体を形成し、HC−HA複合体を形成するためにHAへのHC1とHC2の伝達をもたらすとともに、該複合体からのTSG−6の放出をもたらす。TSG−6の発現は、TNF−αやインターロイキン1などの炎症性メディエーターによって、および、排卵や子宮頸部熟化などの炎症のようなプロセス中に、しばしば引き起こされる。
羊膜(AM)は、成体の創傷治癒を調節して組織再生を促す。特定の例において、AMは上皮化を促進するとともに、間質の炎症、血管新生および瘢痕を抑止する。AMは、限定されないが、持続性の上皮欠損、深部角膜潰瘍、感染性角膜炎、症候性の水疱性角膜症、急性のスティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症(SJS/TEN)、角膜縁幹細胞欠陥、翼状片、瞼裂斑、結膜弛緩症、瞼球癒着、円蓋再構成(formix reconstruction)、および、結膜の腫瘍を含む、角膜と結膜の表面の再構成を必要とする、眼の疾病の処置のための手術移植片または一時的な生物学的パッチとして成功裡に使用されてきた。
AMの無血管間質のマトリックスは多量のHAを包含しており、IαI(Zhang et al. (2012) J. Biol. Chem. 287(15):12433−44)を構造的に発現する。AMでHMW HAはnHC−HA複合体を形成する(He et al. (2009) J. Biol. Chem. 284(30):20136−20146)。提供される実施例において本明細書で示されるように、このnHC−HA複合体は、ペントラキシン 3、PTX3(図1)を含有しており、ゆえに、本明細書では「nHC−HA/PTX3複合体」とも呼ばれる。AMから抽出された天然のHC−HA/PTX3複合体は、TGF−βプロモーター活性の抑制、マクロファージ細胞死の促進、および、血管発達の抑制を示す。AMのnHC−HA/PTX3複合体は、このようにAMの抗炎症作用、抗瘢痕作用、および、血管新生抑制作用において、積極的な役割を担う。
本明細書に記載されるように、nHC−HA/PTX3複合体は臍の緒(UC)でも見られる。UC HC−HA/PTX3複合体は、HA含有量と存在、および/または、小ロイシン豊富なプロテオグリカン(SLRP)などのプロテオグリカンを含む複合体の様々な成分の相対存在量に関して、その生化学的組成において異なる。いくつかの実施形態では、SLRPはデコリン、バイグリカン、および/または、オステオアドへリンである。本明細書に記載されるように、複合体は、硫酸ケラタンなどの特定の硫酸化型グリコサミノグリカンの存在に関して、含有量において異なる。加えて、本明細書に記載されるように、様々な抽出方法(例えば、PBS対GnHCl抽出)を使用してAMまたはUCから単離した複合体は、様々な生化学的組成と生物学的特性を備えた複合体を結果として生じた。特定の例では、臍の緒の組織からのGnHCl抽出によって不溶性の画分から単離した複合体は、改善された特徴を示すことが分かっている。
PTX3は、TSG−6およびIαI HCと直接相互に作用すると示された多量体タンパク質である。PTX3は炎症性のレギュレーターに応じてアップレギュレートされ、卵成熟の間に卵丘(cumulous oophorous)の細胞外マトリックス中のHAの組織化に重要な役割を果たすことが示されてきた。本明細書に実証されるように、PTX3は、羊膜と臍の緒のnHC−HA複合体(すなわち、nHC−HA/PTX3)で見られ、M2マクロファージの極性化に重大な役割を果たす。
M1マクロファージ、または、古典的に活性化された炎症誘発性のマクロファージは、インターフェロン(IFN)単独によって、あるいは、リポ多糖類(LPS)または腫瘍壊死因子(TNF)αと組み合わせて、誘発される。M1マクロファージは、典型的には、インターロイキン12(IL−12)およびIL−23の高発現と、低レベルのIL−10を特徴とする。対照的に、M2マクロファージまたは「選択的活性化」マクロファージ」は、創傷治癒と組織再生の特性を示し、低いIL−12/IL−23と高いIL−12、および、同じ比率のIL−10対IL−10を特徴とする。特定の例においては、M2マクロファージはさらにTGF−βの高発現を備えている。
本明細書で提供される実施例は、PTX3が、解離剤に対する耐性によって証拠づけられるように、固定化したHAに直接結合することを実証している。PTX3に結合したHAの生体外で再構成された複合体は、TSG−6に対して結合したHAの生体外の再構成された複合体と比較すると、様々な特性を示すことが本明細書で実証されている。例えば、いくつかの実施形態では、PTX3/HA複合体は、凝集せずにLPSで刺激されたマクロファージの結合を促し、LPSで刺激されたマクロファージ中でのIL−10の発現を誘導する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるPTX3/HA複合体は、PTX3/HA複合体の不在下でのIL−10発現と比較して、LPSで刺激されたマクロファージ中で、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35% 40% 45% 50% 55% 60% 65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%、IL−10の発現を増加させる。対照的に、いくつかの実施形態では、TSG−6/HA複合体は、細胞の結合を減らし、LPSで刺激されたマクロファージの凝集を促し、LPSで刺激されたマクロファージ中のIL−10の発現を誘導しない。加えて、いくつかの実施形態では、HAにあらかじめ結合したTSG−6は、複合体に対するPTX3のその後の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、TSG−6/HA複合体とPTX3/HA複合体の双方は、LPSで刺激されたマクロファージ中のIL−12の発現を減少させた。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたPTX3/HA複合体またはTSG−6/HA複合体は、PTX3/HA複合体またはTSG−6/HA複合体の不在下でのIL−12発現と比較して、LPSで刺激されたマクロファージ中でIL−12の発現を、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%、減少させる、または、阻害する。いくつかの実施形態では、TSG−6/HA複合体およびPTX3/HA複合体の両方は、LPS/IFNγで刺激されたマクロファージ中のIL−23の発現を増加させた。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたPTX3/HA複合体またはTSG−6/HA複合体は、PTX3/HA複合体またはTSG−6/HA複合体の不在下でのIL−23発現と比較して、LPS/IFNγで刺激されたマクロファージ中で、IL−23の発現を、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%、減少させるまたは阻害する。
加えて、生体外で再構成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、rcHC−HA/PTX3複合体が、IαIの存在下でTSG−6にあらかじめ結合したHAを用いて、その後、PTX3またはPTX3にあらかじめ結合したHAを加え、その後、IαIを含むTSG−6を加えて形成されるかどうかに依存して、異なる生物活性を有することが、本明細書で実証されている。TSG−6に対してあらかじめ結合したHA、または、PTX3に対してあらかじめ結合したHAを用いて形成されるrcHC−HA/PTX3の複合体の再構成のための典型的な方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、TSG−6にあらかじめ結合した固定化HAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、LPSで刺激されたマクロファージの凝集を結果としてもたらす。いくつかの実施形態では、PTX3に対してあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、凝集せずにLPSで刺激されたマクロファージの結合を促進する。
いくつかの実施形態では、PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、IL−12およびIL−23のようなM1マクロファージマーカーの発現を阻害する。いくつかの実施形態では、PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、rcHC−HA/PTX3複合体の不在下でのIL−12発現と比較して、LPSで刺激されたマクロファージ中のIL−12の発現を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたrcHC−HA/PTX3複合体は、rcHC−HA/PTX3複合体の不在下でのIL−12発現と比較して、LPSで刺激されたマクロファージ中でIL−12の発現を、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%減少させるまたは阻害する。いくつかの実施形態では、PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、rcHC−HA/PTX3複合体の不在下でのIL−12発現と比較して、LPS/IFN−γで刺激されたマクロファージ中でIL−23の発現を減少させるまたは阻害する。いくつかの実施形態では、PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、rcHC−HA/PTX3複合体の不在下でのIL−23発現と比較して、LPS/IFNγで刺激されたマクロファージ中で、IL−23の発現を、約5%10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%、減少させるまたは阻害する。いくつかの実施形態では、PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、羊膜から分離されたnHC−HA/PTX3複合体の活性を複製する。
いくつかの実施形態では、TSG−6にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、IL−12のようなM1マクロファージマーカーの発現を減少させるまたは阻害するが、IL−23の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、TSG−6にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、IL−12の発現を減少させるまたは阻害する。いくつかの実施形態では、TSG−6にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて形成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、IL−23の発現を増加させる。
PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法とその使用が、本明細書で提供される。同様に、PTX3にあらかじめ結合した固定化したHAの複合体とその使用も、本明細書で提供される。さらに、TSG−6にあらかじめ結合した固定化したHAを用いて、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法とその使用についても本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、限定されないが、炎症、自己免疫または免疫の拒絶反応につながる免疫反応、接着、瘢痕、血管新生、細胞または組織の回復を必要とする疾病、心筋梗塞と脳卒中を含む虚血による組織の再潅流障害、および、それによって引き起こされる症状の阻害、減少、予防、または、危険性の低下といった処置を含む、様々な疾患または疾病を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、炎症を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、瘢痕を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、血管新生を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、自己免疫または免疫の拒絶反応につながる免疫反応を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、細胞粘着の阻害を必要とする疾病を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される再構成されたHC−HA/PTX3複合体は、細胞または組織の再生を必要とする疾病を処置するために投与される。
加えて、本明細書で提供される実施例は、HC−HA/PTX3複合体の能力が、未分化の状態で幹細胞を維持するだけでなく、ヒトの角膜の繊維芽細胞モデルにおいて若い前駆体に対して成体の分化した繊維芽細胞を誘導するということを実証する。ヒトの角膜の繊維芽細胞は、角膜実質細胞から外因性のTGFの−β1の追加後に分化し、さらに分化して瘢痕を形成する筋線維芽細胞になる。本明細書で提供されるデータは、HC−HAの存在下で細胞を培養することで、細胞がTGF−β1刺激下の筋線維芽細胞に分化するのを防いだことを実証している。TGF−β1の不在下で、HC−HA/PTX3複合体は、ケラトカンとCD34を発現する角膜実質細胞へとヒトの角膜の繊維芽細胞を戻す。TGF−β1のヒトの角膜の繊維芽細胞の存在下では、ケラトカン発現を欠くものの、Osr2、FGF10、およびSox9などの多くの神経堤細胞マーカー、および、c−myc、KLF4、Nanog、ネスチン、Oct4、Rex−1、Sox−2、および、SSEA−4などの胚性幹細胞マーカーを発現する、より若い前駆体に再プログラムされる。
転写因子Sox2、Oct4、c−Myc、および、KLF4は、成人の分化細胞からの前駆体の幹細胞(iPSCs)の誘導に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるHC−HA/PTX3複合体は、成人の分化細胞をiPSCに再プログラムするために使用される。いくつかの実施形態では、Sox2、Oct4、c−Myc、および、KLF4の1つ以上と組み合わせてHC−HA/PTX3複合体を使用するiPSCsの誘導は、HC−HA/PTX3のないこれらの4つの転写因子を使用する従来の方法よりもはるかに高い効率で行われる。いくつかの実施形態では、HC−HA/PTX3複合体の追加は、分化を防ぐためにTGF−βシグナル伝達をオフにすることによって、および、iPSCsのような若い前駆細胞への再プログラムを促すためにBMPシグナル伝達をオンにすることによって、幹細胞誘導を促進する。いくつかの実施形態では、HC−HA/PTX3複合体の追加は、若い前駆体に細胞を再プログラムすることによる幹細胞の誘導および幹細胞マーカーの誘発を促進する。いくつかの実施形態では、HC−HA/PTX3の複合体の追加は、生体外での拡張の間に幹細胞の特徴を維持するのを助け、したがってマウスの胚の繊維芽細胞でできた支持細胞層を使用する必要性がなくなる。ゆえに、いくつかの実施形態では、HC−HA/PTX3複合体は、前記幹細胞治療の効能を促すために、ヒトの患者に生体外で拡大した幹細胞を送達するのを助けるべく、担体またはスキャフォールドとして使用される。
(単離したnHC−HA/PTX3複合体の生成方法)
本明細書では、単離した天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)を生成する方法が開示される。
いくつかの実施形態では、単離したnHC−HA/PTX3複合体は、羊膜組織から単離している。いくつかの実施形態では、単離したnHC−HA/PTX3複合体は、羊膜または臍の緒から単離される。いくつかの実施形態では、単離したnHC−HA/PTX3複合体は、新鮮な、冷凍した、または、あらかじめ冷凍した胎盤の羊膜(PAM)、新鮮な、冷凍した、または、あらかじめ冷凍した臍の緒の羊膜(UCAM)、新鮮な、冷凍した、または、あらかじめ冷凍した胎盤、新鮮な、冷凍した、または、あらかじめ冷凍した臍の緒、新鮮な、冷凍した、または、あらかじめ冷凍した絨毛膜、新鮮な、冷凍した、または、あらかじめ冷凍した羊膜の絨毛膜、あるいは、これらの任意の組み合わせから単離される。このような組織は、任意の哺乳動物、例えば、限定されないが、ヒト、ヒト以外の霊長類、雌ウシ、または、ブタなどから得ることができる。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3は、任意の適切な方法によって精製される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、遠心分離(例えば、超遠心分離、勾配遠心分離)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、サイズ排除、および、ヒドロキシアパタイトのクロマトグラフィー)、ゲルろ過、または、差次的な溶解度、エタノール沈殿、あるいは、タンパク質の精製のために利用可能な他の技術によってによって精製される(例えば、Scopes, Protein Purification Principles and Practice 2nd Edition, Springer−Verlag, New York, 1987; Higgins, S. J. and Hames, B. D. (eds.), Protein Expression: A Practical Approach, Oxford Univ Press, 1999; and Deutscher, M. P., Simon, M. I., Abelson, J. N. (eds.), Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology (Methods in Enzymology Series, Vol 182), Academic Press, 1997, all incorporated herein by reference)を参照のこと)。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3は、抽出物から単離される。いくつかの実施形態では、抽出物は羊膜の抽出物から調製される。いくつかの実施形態では、抽出物は臍の緒の抽出物から調製される。いくつかの実施形態では、臍の緒の抽出物は臍の緒の間質および/またはワルトンゼリーを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、超遠心分離によって調製される抽出物に含まれる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、CsCl/4−6MのグアニジンHCl勾配を使用する超遠心分離によって調製される抽出物に含まれる。いくつかの実施形態では、抽出物は、少なくとも2回の超遠心分離によって調製される。いくつかの実施形態では、抽出物は、2回を超える超遠心分離(すなわち、nHC−HA/PTX3 2nd)によって調製される。いくつかの実施形態では、抽出物は、少なくとも4回の超遠心分離(すなわち、nHC−HA/PTX3 4th)によって調製される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、HC1、HA、PTX3、および/または、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。
いくつかの実施形態では、超遠心分離は、等張液中での抽出によって調製された抽出物上で行われる。いくつかの実施形態において、等張液はPBSである。例えば、いくつかの実施形態では、組織は、PBS中で均質化されることで、均質化されたサンプルが生成される。均質化されたサンプルは、遠心分離によって可溶性部分と不溶性部分とに分離される。いくつかの実施形態では、超遠心分離はPBSで抽出された組織の可溶性部分で行われる。そのような実施形態では、PBSで抽出された組織の超遠心分離によって精製されたnHC−HA/PTX3は、nHC−HA/PTX3可溶性複合体と呼ばれる。いくつかの実施形態では、nHC−HA可溶性複合体は、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3可溶性複合体は、HC1、HA、PTX3、および/または、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。
いくつかの実施形態では、超遠心分離は、羊膜および/または臍の緒の組織の直接的なグアニジンHCl抽出(例えば、4−6MのGnHCl)によって調製された抽出物で行われる。いくつかの実施形態では、GnHCl抽出物組織は、その後、遠心分離機にかけられ、GnHCl可溶性部分とGnHCl不溶性部分が生成される。いくつかの実施形態では、超遠心分離はGnHCl可溶性部分上で行われる。そのような実施形態では、グアニジンのHClで抽出された組織の超遠心分離によって精製されたnHC−HA/PTX3は、nHC−HA/PTX3不溶性複合体と呼ばれる。いくつかの実施形態では、nHC−HAの不溶性の複合体は、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3の不溶性複合体は、HC1、HA、PTX3、および/または、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。
いくつかの実施形態では、超遠心分離は、PBSで抽出された組織の不溶性部分のさらなるグアニジンHCl抽出によって調製された抽出物上で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、組織はPBS中で均質化されることで、均質化されたサンプルが生成される。その後、均質化されたサンプルは、遠心分離によって可溶性部分と不溶性部分とに分離される。不溶性部分は、グアニジンHCl(例えば4−6MのGnHCl)中で抽出され、遠心分離機にかけられることで、グアニジンHClの可溶性部分と不溶性部分とが生成される。いくつかの実施形態では、超遠心分離はグアニジンHCl可溶性部分で行われる。そのような実施形態では、グアニジンのHClで抽出された組織の超遠心分離によって精製されたnHC−HA/PTX3は、nHC−HA/PTX3不溶性複合体と呼ばれる。いくつかの実施形態では、nHC−HAの不溶性複合体は、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3の不溶性複合体は、HC1、HA、PTX3、および/または、小ロイシン豊富なプロテオグリカンを含む。
いくつかの実施形態では、単離したnHC−HA/PTX3抽出物を精製する方法は、以下の工程を含む:(a)CsCl混合物を生成するために、1.35g/mlの当初の密度でCsCl/4−6MグアニジンHClにおいて単離した抽出物(例えば、本明細書に記載の可溶性または不溶性の方法によって調製される)を溶解させる工程、(b)第1の精製された抽出物を生成するために、15°Cで48時間、125,000倍のgでCsCl混合物を遠心分離機にかける工程、(c)透析物を生成するために、第1の精製された抽出物を抽出し、それを蒸留水に対して透析する工程であって、それによって、CsClグアニジンHClを除去する、工程。いくつかの実施形態では、単離した抽出物を精製する方法は、さらに、(d)第1の透析物/エタノール混合物を生成するために、1時間、0°Cで、透析物を、3容量の95%(v/v)のエタノール含有1.3%(w/v)酢酸カリウムと混合する工程、(e)第2の精製された抽出物を生成するために、15,000倍のgで第1の透析物/エタノール混合物を遠心分離機にかける工程、および、(f)第2の精製された抽出物を抽出する工程、を含む。いくつかの実施形態では、単離した抽出物を精製する方法は、さらに以下の工程を含む:(g)第2の精製された抽出物/エタノール混合物を生成するために、第2の精製された抽出物をエタノール(例えば、70%エタノール)で洗浄する工程、(h)第3の精製された抽出物を生成するために、第2の精製された抽出物/エタノール混合物を遠心分離機にかける工程、および、(i)第3の精製された抽出物を抽出する工程。いくつかの実施形態では、単離した抽出物を精製する方法は、さらに以下の工程を含む:(j)第3の精製された抽出物/エタノール混合物を生成するために、第3の精製された抽出物をエタノール(例えば、70%エタノール)で洗浄する工程、(k)第4の精製された抽出物を生成するために、第3の精製された抽出物/エタノール混合物を遠心分離機にかける工程、および、(l)第4の精製された抽出物を抽出する工程。いくつかの実施形態では、精製された抽出物は、nHC−HA/PTX3複合体を含む。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、免疫親和性クロマトグラフィーによって精製される。いくつかの実施形態では、抗HC1抗体、抗HC2抗体、または、その両方が生成され、定常的な支持体に付けられる。いくつかの実施形態では、未精製のHC−HA複合体(すなわち移動相)は、支持体上を通過する。特定の例においては、HC−HAの複合体は、(例えば、(a)抗HC1抗体とHC1、(b)抗HC2抗体とHC2、(c)抗PTX抗体とPTX3、(d)抗SLRP抗体とSLRP、または、(e)その任意の組み合わせ、の作用によって)抗体と結合する。いくつかの実施形態において、支持体が(例えばPBSで)洗浄されることで、任意の結合していないまたは緩く結語した分子が除去される。いくつかの実施形態では、支持体は、支持体(例えば、1%のSDS、6Mのグアニジン−HCl、または、8Mの尿素)からのnHC−HA/PTX3複合体の溶離を可能にする溶液で洗浄される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、親和性クロマトグラフィーによって精製される。いくつかの実施形態では、HABPは生成され、定常的な支持体に付けられる。いくつかの実施形態では、未精製のnHC−HA/PTX3複合体(すなわち、移動相)は、支持体上を通過する。特定の例では、nHC−HA/PTX3複合体は、HABPに結合する。いくつかの実施形態において、支持体は(例えばPBSで)洗浄されることで、任意の未結合のまたは緩く結合した分子が取り除かれる。いくつかの実施形態では、支持体は、支持体からのHC−HA複合体の溶離を可能にする溶液で洗浄される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、HABP親和性クロマトグラフィー、および、抗HC1抗体、抗HC2抗体、抗PTX3抗体、SLRPまたはSLRPの組み合わせに対する抗体、あるいは、これらの抗体の任意の組み合わせを使用する免疫親和性のクロマトグラフィーの組み合わせによって精製される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、1つ以上の抗体を用いて本明細書に記載されるように、不溶性の画分から精製される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、抗SLRP抗体を使用して、本明細書に記載されるように、不溶性の画分から精製される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、本明細書に記載されるように、可溶性の画分から精製される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、抗PTX3抗体を使用して、本明細書に記載されるように、可溶性の画分から精製される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、小ロイシン豊富なプロテオグリカン(SLRP)を含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体は、I型、II型、III型のSLRPを含む。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、デコリンおよびバイグリカンのようなI型SLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、フィブロモジュリン、ルミカン、PRELP(プロリンアルギニン豊富な末端を有するロイシン豊富なタンパク質)、ケラトカン、および、オステオアドへリンのようなII型SLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、エピピカンとオステオグリシンのようなIII型SLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、ビクニン、デコリン、バイグリカン、および、オステオアドへリンの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なタンパク質は、グリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、硫酸ケラタンを含む。
(rcHC−HA/PTX3複合体の生成方法)
SLRPで、または、SLRPなしで、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)を生成する方法が本明細書で開示される。同様に、そのような方法によって生成された成分のrcHC−HA/PTX3複合体および中間の組み合わせが、本明細書で開示される。
いくつかの実施形態では、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法は、(a)PTX3/HA複合体を形成するために、適切な条件下で、固定化した高分子量ヒアルロナン(HMW HA)をペントラキシン 3(PTX3)に接触させる工程、および、(b)PTX3/HA複合体を、IαIと、腫瘍壊死因子に刺激された遺伝子−6(TSG−6)とに接触させる工程を含む。そのような方法によって生成されたrcHC−HA/PTX3複合体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、TSG−6は、HAに対するインターαインヒビター(IαI)の重鎖1(HC1)の伝達を触媒する。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、HAとの共有結合を形成する。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)と(b)は順番に連続して行われる。
いくつかの実施形態では、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法は、PTX3/HA複合体をIαIおよびTSG−6に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、TSG−6は、HAに対する、インターαインヒビター(IαI)の重鎖1(HC1)の伝達を触媒する。そのような方法によって生成されたrcHC−HA/PTX3複合体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、HAとの共有結合を形成する。
いくつかの実施形態では、PTX3に結合したHAの複合体を生成する方法は、PTX3/HA複合体を形成する適切な条件下で、固定化した高分子量ヒアルロナン(HMW HA)を、ペントラキシン 3(PTX3)に接触させる工程を含む。そのような方法によって生成されたPTX3/HA複合体が、本明細書で提供される。
いくつかの実施形態では、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法は、(a)TSG−6にあらかじめ結合したHC−HA複合体を形成するために、IαIとTSG−6を含む固定化した高分子量ヒアルロナン(HMW HA)を、HAに接触させる工程、および、(b)rcHC−HA/PTX3複合体を形成する適切な条件下で、HC−HA複合体をペントラキシン 3(PTX3)と接触させる工程を含む。そのような方法によって生成されたrcHC−HA/PTX3複合体は、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、HAとの共有結合を形成する。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)と(b)は順番に連続して行われる。いくつかの実施形態では、該方法は、TSG−6にあらかじめ結合したHC−HA複合体をPTX3に接触させる工程を含む。
いくつかの実施形態では、該方法は、PTX3/HA複合体を形成するために適切な条件下で、高分子量ヒアルロナン(HMW HA)をペントラキシン 3(PTX3)にまず接触させる工程、その後、PTX3/HA複合体をIαIとTSG−6に接触させる工程を含む。
いくつかの実施形態では、IαIタンパク質とTSG−6タンパク質は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、または、20:1(IαI:TSG−6)のモル比で複合体に接触する。いくつかの実施形態において、IαI:TSG−6の比率は、約1:1乃至約20:1、例えば、約1:1乃至約10:1、例えば、約1:1乃至約5:1、例えば、約1:1乃至約3:1の範囲である。いくつかの実施形態では、IαI:TSG−6の比率は、3:1以上である。いくつかの実施形態では、IαI:TSG−6の比率は、3:1である。
いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)と(b)は順番に連続して行われる。いくつかの実施形態では、該方法は、PTX3/HA複合体をIαIとTSG−6に接触させる工程を含む。
特定の例において、TSG−6は、IαIと相互に作用し、IαIのHC1とHC2との共有結合の複合体(すなわち、HC1・TSG−6およびHC2・TSG−6)を形成する。特定の例では、HAの存在下で、HCはrcHC−HAを形成するためにHAに移される。いくつかの実施形態では、TSG−6・HC1複合体は、HAへのHC1の伝達を触媒するために、あらかじめ結合したPTX3/HA複合体に加えられる。いくつかの実施形態では、該方法は、PTX3/HA複合体を形成するために適切な条件下で、固定した高分子量ヒアルロナン(HMW HA)をペントラキシン 3(PTX3)にまず接触させる工程、その後、PTX3/HA複合体をHC1・TSG−6複合体と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、HC1・TSG−6複合体およびHC2・TSG−6複合体の組み合わせは、PTX3/HA複合体に加えられる。
いくつかの実施形態では、固定化したHMW HAにPTX3を接触させる工程は、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、または、少なくとも24時間以上、生じる。いくつかの実施形態では、固定化したHMW HAに対してPTX3を接触させる工程は、少なくとも2時間以上生じる。いくつかの実施形態では、固定化したHMW HAに対してPTX3を接触させる工程は、少なくとも2時間生じる。いくつかの実施形態では、固定化したHMW HAに対してPTX3を接触させる工程は、37°Cで生じる。いくつかの実施形態では、固定化したHMW HAに対してPTX3を接触させる工程は、PBS中の5mMのMgCl2で生じる。
いくつかの実施形態では、IαIおよびTSG−6を含むPTX3/HA複合体を、HAに接触させる工程は、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、または、少なくとも24時間以上、生じる。いくつかの実施形態において、PTX3/HA複合体をHC1・TSG−6複合体および/またはHC2・TSG−6複合体に接触させる工程は、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、または、少なくとも24時間以上、生じる。いくつかの実施形態において、PTX3/HA複合体をHC1・TSG−6複合体および/またはHC2・TSG−6複合体に接触させる工程は、少なくとも2時間以上生じる。いくつかの実施形態において、PTX3/HA複合体をHC1・TSG−6複合体および/またはHC2・TSG−6複合体に接触させる工程は、少なくとも2時間生じる。いくつかの実施形態において、PTX3/HA複合体をHC1・TSG−6複合体および/またはHC2・TSG−6複合体に接触させる工程は、37°Cで生じる。いくつかの実施形態において、PTX3/HA複合体をHC1・TSG−6複合体および/またはHC2・TSG−6複合体に接触させる工程は、PBS中の5mMのMgCl2で生じる。
いくつかの実施形態では、該方法は、HC−HA/PTX3複合体を形成するために適切な条件下で、高分子量ヒアルロナン(HMW HA)を、ペントラキシン 3(PTX3)タンパク質、重鎖1(HC1)を含むインターαインヒビター(IαI)タンパク質、および、腫瘍壊死因子αで刺激された遺伝子6(TSG−6)を、同時に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、HMW HAを、PTX3、IαI、および、TSG−6に接触させる工程は、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、または、少なくとも24時間以上、生じる。いくつかの実施形態において、HMW HAを、PTX3、IαI、および、TSG−6に接触させる工程は、37°Cで生じる。いくつかの実施形態において、HMW HAを、PTX3、IαI、および、TSG−6に接触させる工程は、PBS中5mMのMgCl2で生じる。
いくつかの実施形態では、該方法は、HC−HA/PTX3複合体を形成するために、適切な条件下で、高分子量ヒアルロナン(HMW HA)を、ペントラキシン 3(PTX3)タンパク質、重鎖1(HC1)を含むインターαインヒビター(IαI)タンパク質、および、腫瘍壊死因子αで刺激された遺伝子6(TSG−6)に、任意の順番で連続して接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、HMW HAを、PTX3、IαI、および、TSG−6に接触させる工程は、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、または、少なくとも24時間以上、生じる。いくつかの実施形態において、HMW HAを、PTX3、IαI、および、TSG−6に接触させる工程は、37°Cで生じる。いくつかの実施形態において、HMW HAを、PTX3、IαI、および、TSG−6に接触させる工程は、PBS中の5mMのMgCl2で生じる。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体の産生のための方法は、1つ以上の小ロイシン豊富なプロテオグリカン(SLRP)の追加をさらに含む。いくつかの実施形態では、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法は、(a)PTX3/HA複合体を形成するために適切な条件下で、固定化した高分子量ヒアルロナン(HMW HA)をペントラキシン 3(PTX3)に接触させる工程、(b)PTX3/HA複合体を、IαIおよび腫瘍壊死因子で刺激された遺伝子−6(TSG−6)に接触させる工程、(c)PTX3/HA複合体を1つ以上のSLRPSに接触させる工程を含む。そのような方法によって生成されたrcHC−HA/PTX3複合体が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、TSG−6は、インターαインヒビター(IαI)の重鎖1(HC1)の、HAへの伝達を触媒する。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、HAとの共有結合を形成する。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)、(b)、および、、(c)は、順番に連続して行われる。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)、(b)、および、(c)は、同時に行われる。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)が行われ、その後、該方法の工程(b)と(c)が順番に連続して行われる。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)が行われ、その後、該方法の工程(b)と(c)が同時に行われる。
いくつかの実施形態では、再構成されたHC−HA/PTX3複合体を生成する方法は、(a)TSG−6にあらかじめ結合したHC−HA複合体を形成するために、IαIとTSG−6を含む固定化した高分子量ヒアルロナン(HMW HA)を、HAに接触させる工程、(b)HC−HA複合体をペントラキシン 3(PTX3)に接触させる工程、および、(c)rcHC−HA/PTX3複合体を形成するために、適切な条件下で、HC−HA複合体を、1つ以上のSLRPSに接触させる工程を含む。そのような方法によって生成されたrcHC−HA/PTX3複合体が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、HAとの共有結合を形成する。いくつかの実施形態では、該方法は、TSG−6にあらかじめ結合したHC−HA複合体を、PTX3に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)、(b)、および、(c)は、順番に連続して行われる。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)、(b)、および、(c)は、同時に行われる。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)が行われ、その後、該方法の工程(b)と(c)が順番に連続して行われる。いくつかの実施形態では、該方法の工程(a)が行われ、その後、該方法の工程(b)と(c)が、同時に行われる。
いくつかの実施形態では、SLRPは、I型、II型、またはIII型のSLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、SLRPは、デコリンおよびバイグリカンのような、I型のSLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、フィブロモジュリン、ルミカン、PRELP(プロリンアルギニン豊富な末端を有するロイシン豊富なタンパク質)、ケラトカン、および、オステオアドへリンのようなII型のSLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、エピピカンとオステオグリシンのようなIII型のSLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、ビクニン、デコリン、バイグリカン、および、オステオアドへリンの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なタンパク質は、グリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、硫酸ケラタンを含む。
PTX3
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、細胞、または、複数の細胞(例えば組織抽出物)から単離される。PTX3の発現に適している典型的な細胞は、限定されないが、動物細胞(限定されないが、哺乳動物の細胞、霊長類の細胞、ヒトの細胞、げっ歯類の細胞、昆虫の細胞、細菌、および、酵母菌を含む)、および、植物細胞(限定されないが、藻類、被子植物、裸子植物、シダ植物、および、コケ植物を含む)を含む。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、ヒト細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、PTX3発現をアップレギュレートするために、1つ以上の炎症性サイトカインで刺激される細胞から単離される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、羊膜細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、臍の緒からの羊膜細胞から単離される。いくつかの実施形態では、羊膜細胞は、PTX3発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、臍の緒の細胞から単離される。いくつかの実施形態では、臍の緒の細胞は、PTX3発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、羊膜の上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、臍の緒の上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態では、羊膜の上皮細胞または臍の緒の上皮細胞は、PTX3発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、羊膜の間質細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、臍の緒の間質細胞から単離される。いくつかの実施形態では、羊膜の間質細胞または臍の緒の間質細胞は、PTX3発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3は、細胞から単離された天然のPTX3タンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞は、PTX3発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、PTX3は組み換え技術によって調製される。いくつかの実施形態では、PTX3は、組み換え発現ベクターから発現される。いくつかの実施形態では、核酸符号化PTX3は、構成的プロモーターに動作可能に結合する。いくつかの実施形態では、核酸符号化PTX3は、誘導性プロモーターに動作可能に結合する。いくつかの実施形態では、PTX3は遺伝子導入動物で発現する。いくつかの実施形態において、PTX3は組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、PTX3は細胞から単離した組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、PTX3は細胞を含まない抽出物中で生成された組換えタンパク質である。
いくつかの実施形態では、PTX3は、羊膜、臍の緒、臍の緒の羊膜、絨毛膜、羊水、または、これらの組み合わせから精製される。いくつかの実施形態では、PTX3は羊膜細胞から精製される。いくつかの実施形態において、羊膜細胞は羊膜の上皮細胞である。いくつかの実施形態では、羊膜細胞は臍の緒の上皮細胞である。いくつかの実施形態において、羊膜細胞は羊膜の間質細胞である。いくつかの実施形態では、羊膜細胞は臍の緒の間質細胞である。いくつかの実施形態では、羊膜細胞は、PTX3発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカイン刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、PTX3は、細胞、または、複数の細胞(例えば組織抽出物)から単離されない。
いくつかの実施形態では、PTX3は、SEQ ID NO:33で明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NO:33で明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているその変異体を含む。典型的な変異体は、例えば、種変異体、対立遺伝子変異体、および、保存的および非保存的アミノ酸変異を含む変異体を含んでいる。いくつかの実施形態では、PTX3は、HAに結合するとともに、かつ、rcHC−HA/PTX3複合体の形成を促進するのに十分なPTX3のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、PTX3は、ヒトPTX3のGlu18からSer277を含む。提供される方法で使用されるPTX3の変異体は、アミノ酸の置換(置換術)、欠失、または挿入である、アミノ酸修飾を含む変異体を含んでいる。いくつかの実施形態では、そのような修飾は、rcHC−HA/PTX3複合体の1つ以上の治療特性(例えば、抗炎症、抗免疫、抗血管新生、抗瘢痕、抗接着、再生、または、本明細書に記載されるような他の治療活性)を改善するなどといった、PTX3ポリペプチドの1つ以上の特性を改善する。
いくつかの実施形態において、PTX3タンパク質は商用源から得られる。PTX3のための典型的な商用源は、限定されないが、PTX3(Catalog No. 1826−TS; R&D Systems, ミネソタ州ミネアポリス)である。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3タンパク質は、多量体タンパク質である。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるPTX3タンパク質は、ホモ多量体である。いくつかの実施形態では、ホモ多量体は、二量体、三量体、四量体、六量体、五量体、または八量体である。いくつかの実施形態では、PTX3ホモ多量体は、三量体、四量体、または八量体である。特定の実施形態において、PTX3ホモ多量体は、八量体である。いくつかの実施形態では、多量体化ドメインは、PTX3タンパク質の多量体化を改善するために修正される。いくつかの実施形態では、多量体化ドメインは、PTX3に融合するとPTX3の多量体化を改善する、異種起源の多量体化ドメイン(例えば、Fc多量体化ドメインまたはロイシンジッパー)と取り替えられる。
TSG−6
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、細胞、または、複数の細胞(例えば組織抽出物)から単離される。TSG−6の発現に適している典型的な細胞は、限定されないが、動物細胞(限定されないが、哺乳動物の細胞、霊長類の細胞、ヒトの細胞、げっ歯類の細胞、昆虫の細胞、細菌、および、酵母菌を含む)、および、植物細胞(限定されないが、藻類、被子植物、裸子植物、シダ植物、および、コケ植物を含む)を含む。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、ヒト細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、1つ以上の炎症性サイトカインで刺激される細胞から単離される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は羊膜細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、臍の緒からの羊膜細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、1つ以上の炎症性サイトカインで刺激される羊膜細胞から分離される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は臍の緒の細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、1つ以上の炎症性サイトカインで刺激される臍の緒の細胞から単離される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、羊膜の上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、臍の緒の上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、1つ以上の炎症性サイトカインで刺激される羊膜の上皮細胞または臍の緒の上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、羊膜の間質細胞から単離される。いくつかの実施形態において、該方法で使用されるTSG−6は、臍の緒の間質細胞から単離される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、1つ以上の炎症性サイトカインで刺激される羊膜の間質細胞または臍の緒の間質細胞から単離される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、該方法で使用されるTSG−6は、細胞から単離した天然のTSG−6タンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、TSG−6は組み換え技術によって調製される。いくつかの実施形態では、TSG−6は組み換え発現ベクターから発現される。いくつかの実施形態では、核酸符号化TSG−6は、構成的プロモーターに動作可能に結合する。いくつかの実施形態では、核酸符号化TSG−6は、誘導性プロモーターに動作可能に結合する。いくつかの実施形態において、TSG−6は、遺伝子導入動物で発現する。いくつかの実施形態において、TSG−6は、組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、TSG−6は細胞から単離された組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、TSG−6は細胞を含まない抽出物中で生成された組換えタンパク質である。
いくつかの実施形態では、TSG−6は、羊膜、羊膜、絨毛膜、羊水、またはその組み合わせから精製される。いくつかの実施形態では、PTX3は羊膜細胞から精製される。いくつかの実施形態において、羊膜細胞は羊膜の上皮細胞である。いくつかの実施形態では、羊膜の上皮細胞は臍の緒の上皮細胞である。いくつかの実施形態において、羊膜細胞は羊膜の間質細胞である。いくつかの実施形態では、羊膜細胞は臍の緒の間質細胞である。いくつかの実施形態では、羊膜細胞は、TSG−6発現をアップレギュレートするために、より多くの炎症性サイトカインで刺激される。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインはIL−1またはTNF−αである。
いくつかの実施形態では、TSG−6は、細胞、または、複数の細胞(例えば組織抽出物)から単離されない。
いくつかの実施形態では、TSG−6は、HAに対する、IαIのHC1の伝達を促進するまたは触媒するのに十分なTSG−6のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、TSG−6は、TSG−6のリンクモジュールを含む。いくつかの実施形態では、TSG−6は、TSG−6のLeu277によってアミノ酸Trp18を含む。いくつかの実施形態では、TSG−6は、SEQ ID NO:2で明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NO:2で明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているその変異体を含む。典型的な変異体は、例えば、種変異体、対立遺伝子変異体、および、保存的および非保存的アミノ酸変異を含む変異体を含んでいる。ヒトTSG−6の天然の対立遺伝子変異体は、例えば、アミノ酸置換Q144Rを包含するTSG−6を含んでいる。提供される方法で使用されるフラグメントを結合するTSG−6またはHAの変異体は、アミノ酸の置換(置換術)、欠失、または挿入であるアミノ酸修飾を含む変異体を含んでいる。いくつかの実施形態では、このような修飾は、TSG−6ポリペプチドの1つ以上の特性を改善する(例えば、HAに対するIαIのHC1の伝達の改善、または、HAに対するIαIのHC1の伝達後のrcHC−HA/PTX3からのTSG−6ポリペプチドの放出の改善)。
いくつかの実施形態では、TSG−6はアフィニティタグを含む。典型的なアフィニティタグは、限定されないが、ヘマグルチニンタグ、ポリ−ヒスチジンタグ、mycタグ、FLAGタグ、グルタチオン−S−転移酵素(GST)タグを含む。そのようなアフィニティタグは精製で使用される技術では周知である。いくつかの実施形態では、そのようなアフィニティタグは、融合タンパク質として、または、化学的リンカーによって、TSG−6ポリペプチドに組み込まれる。いくつかの実施形態では、TSG−6はアフィニティタグを含み、結合していないTSG−6は、アフィニティ精製によって、rcHC−HA/PTX3複合体から取り除かれる。
いくつかの実施形態において、TSG−6タンパク質は商用源から得られる。TSG−6のための典型的な商用源は、限定されないが、TSG−6(Catalog No. 2104−TS R&D Systems, ミネソタ州ミネアポリス)である。
IαI
いくつかの実施形態において、IαIはHC1鎖を含む。いくつかの実施形態では、IαIはHC1とHC2の鎖を含む。いくつかの実施形態において、IαIはHC1とビクニンを含む。いくつかの実施形態では、IαIは、HC1とHC2の鎖、および、ビクニンを含む。いくつかの実施形態では、IαIは、コンドロイチン硫酸鎖によって結合した、HC1とHC2の鎖、および、ビクニンを含む。
いくつかの実施形態において、IαIは生体サンプルから単離される。いくつかの実施形態において、生体サンプルは哺乳動物からの生体サンプルがある。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。1つの実施形態において、生体サンプルは、血液、血清、血漿、肝臓、羊膜、絨毛膜、または、羊水のサンプルである。いくつかの実施形態では、生体サンプルは、血液、血清、または、血漿のサンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血清サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血漿サンプルである。いくつかの実施形態では、IαIはヒトの血液、血漿、または、血清から精製される。いくつかの実施形態では、IαIはヒトの血清から単離される。いくつかの実施形態では、IαIは血清からは単離されない。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、羊膜細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、臍の緒の細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、臍の緒からの羊膜細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、羊膜の上皮細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、臍の緒の上皮細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、羊膜の間質細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、臍の緒の間質細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、該方法で使用されるIαIは、肝細胞中で生成される。いくつかの実施形態では、IαIは組み換え技術によって調製される。
いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、生体サンプルから単離される。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、哺乳動物からの生体サンプルである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液、血清、血漿、肝臓、羊膜、絨毛膜、または、羊水のサンプルである。いくつかの実施形態では、生体サンプルは、血液、血清、または血漿のサンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血清サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血漿サンプルである。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、ヒトの血液、血漿、または血清から精製される。いくつかの実施形態では、IαIはヒトの血清から単離される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、血清からは精製されない。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、組み換え技術によって調製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、肝細胞から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、羊膜細胞から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、羊膜の上皮細胞または臍の緒の上皮細胞から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC1は、羊膜の間質細胞または臍の緒の間質細胞から精製される。
いくつかの実施形態では、HC1は、SEQ ID NO:47で明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NO:47で明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、生体サンプルから単離される。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、哺乳動物からの生体サンプルである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液、血清、血漿、肝臓、羊膜、絨毛膜、または羊水のサンプルである。いくつかの実施形態では、生体サンプルは、血液、血清、または血漿のサンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血清サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血漿サンプルである。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、ヒトの血液、血漿、または血清から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、ヒトの血清から単離される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、ヒトの血清から単離される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、血清からは単離されない。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、組み換え技術によって調製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、肝細胞から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、羊膜細胞から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、羊膜の上皮細胞または臍の緒の上皮細胞から精製される。いくつかの実施形態では、IαIのHC2は、羊膜の間質細胞または臍の緒の間質細胞から精製される。
いくつかの実施形態では、HC2は、SEQ ID NO:49で明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NO:49で明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態において、IαIはビクニンを含む。いくつかの実施形態では、ビクニンは、SEQ ID NO:53で明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NO:53で明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、IαIはコンドロイチン硫酸鎖を含む。
HA
いくつかの実施形態では、HAは細胞、組織、または流体サンプルから精製される。いくつかの実施形態では、HAは、市販の供給元(例えば、Sigma Aldrich or Advanced Medical Optics,カリフォルニア州アーバイン(例えば、Healon))から得られる。いくつかの実施形態では、HAは粉末として市販の供給元から得られる。いくつかの実施形態では、HAは細胞中で発現する。HAの発現に適している典型的な細胞は、限定されないが、動物細胞(限定されないが、哺乳動物の細胞、霊長類の細胞、ヒトの細胞、げっ歯類の細胞、昆虫の細胞、細菌、および、酵母菌を含む)、および、植物細胞(限定されないが、藻類、被子植物、裸子植物、シダ植物、および、コケ植物を含む)を含む。いくつかの実施形態では、HAはヒトの細胞で発現する。いくつかの実施形態では、HAは遺伝子導入動物で発現する。いくつかの実施形態では、HAは、ヒアルロナン・シンターゼ(例えば、HAS1、HAS2、および、HAS3)を発現する細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞は、HAシンターゼを発現する組み換え発現ベクターを包含している。特定の例においては、HAシンターゼは、それが細胞膜を介して細胞外空間に押し出される際に、発生期の多糖類にグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンを繰り返し加えることによって、ヒアルロナンを延ばす。
該方法で使用されるHAは、典型的に高分子量(HMW)HAである。いくつかの実施形態では、HMW HAの重量平均分子量は、約500キロダルトン(kDa)よりも大きく、例えば、約500kDaと約10,000kDaの間、約800kDaと約8,500kDaの間、約1100kDaと約5,000kDaの間、または、約1400kDaと約3,500kDaの間である。いくつかの実施形態では、HMW HAの重量平均分子量は、約3000kDaである。
追加成分
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加成分が加えられ、rcHC−HA/PTX3複合体を生成する。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカン(SLRP)は、rcHC−HA/PTX3複合体を生成するために加えられる。いくつかの実施形態では、SLRPは、I型、II型、またはIII型のSLRPである。いくつかの実施形態では、SLRPは、デコリンおよびバイグリカンのようなI型SLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、SLRPは、フィブロモジュリン、ルミカン、PRELP(プロリンアルギニン豊富な末端を有するロイシン豊富なタンパク質)、ケラトカン、および、オステオアドへリンのようなII型SLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、SLRPは、エピピカンとオステオグリシンのようなIII型SLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、SLRPは、ビクニン、デコリン、バイグリカン、および、オステオアドへリンの中から選択される。いくつかの実施形態において、SLRPは、グリコサアミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、SLRPは硫酸ケラタンを含む。
HA固定化
いくつかの実施形態では、HMW HAは任意の適切な方法によって固定化される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、固形の支持体、例えば、培養皿、ビーズ、カラム、または、例えば移植可能な医療装置またはその一部の表面といった他の適切な表面に、あるいは、本明細書に記載されるような移植可能な医療装置と実質的に結合させたまたは組み合わせた表面上に、固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、化学結合などによって、固形の支持体に直接固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、リンカーまたは中間タンパク質によって、固形の支持体に間接的に付けられる。アミノ基とチオール基の間で共有結合を形成し、かつ、チオール基をタンパク質に導入するために使用される多数のヘテロ二官能性の架橋試薬は、当業者に知られている。いくつかの実施形態では、HMW HAは、固形の支持体に架橋することによって固形の支持体に直接固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、固形の支持体に架橋せずに、固形の支持体に直接固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、コーティング剤として固形の支持体に直接固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、Covalink(商標)−NH表面に固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、コーティング剤として固形の支持体に直接固定される。いくつかの実施形態では、HMW HAは、4°Cで約16時間Covalink(商標)−NH表面に固定される。
いくつかの実施形態では、該方法は、固形の支持体(すなわち、中間タンパク質のない)に対する直接結合によって、固体の表面にHMW HAを固定する工程を含む。いくつかの実施形態では、固形の支持体は、固定化したHAをPTX3に接触させる前に、結合していないHMW HAを取り除くために洗浄される。いくつかの実施形態では、固定化したHAをPTX3に接触させる前に、結合していないHMW HAを取り除くために、固形の支持体は8MのGnHClとPBSの洗浄液で洗浄する。
いくつかの実施形態では、該方法は、中間タンパク質またはリンカーによって、固体の表面にHAを固定する工程を含む。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、中間タンパク質はHA結合タンパク質(HABP)である。いくつかの実施形態では、HABPは、(例えば、架橋、化学結合、または化学的リンカーによって)固形の支持体にまず結合する。いくつかの実施形態では、HABPを含む固形の支持体は、その後、HAに対するHABPの結合によって、固形の支持体にHAを固定するために、HA(例えばHMW HA)に接触する。いくつかの実施形態では、固形の支持体は、固定化したHMW HAをPTX3に接触させる前に、結合していないHMW HAを取り除くために洗浄される。いくつかの実施形態では、固定化したHAをPTX3に接触させる前に、結合していないHMW HAを取り除くために、固形の支持体は、8MのGnHClとPBSの洗浄液で洗浄される。
いくつかの実施形態では、該方法は、固形の支持体へのペプチドリンカーの結合と、ペプチドリンカーへのHAの結合によって、固体の表面にHAを固定する工程を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含む。
いくつかの実施形態では、該方法は、限定されないが、ジスルフィド化学的リンカーなどの切断可能な化学的リンカーの結合によって、固体の表面にHAを固定する工程を含む。
いくつかの実施形態では、該方法で使用するのに選ばれたHABPは、rcHC−HA/PTX3複合体の形成後に、HAから解離されるHABPである。いくつかの実施形態において、HABPは非特異的にHAに結合する。いくつかの実施形態では、該方法は、1つ以上の解離剤を用いて、rcHC−HA/PTX3複合体をHABPから解離する工程をさらに含む。非共有結合の相互作用を破壊するための解離剤(例えば、塩酸グアニジン、尿素、および、様々な洗剤(例えば、SDS))は、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、解離剤は尿素である。いくつかの実施形態では、解離剤は塩酸グアニジンである。いくつかの実施形態では、解離剤は、約4M乃至約8Mのグアニジン−HClである。いくつかの実施形態では、解離剤は、約4M、約5M、約6M、約7M、約8Mのグアニジン−HClである。いくつかの実施形態では、解離剤は、pH7.5のPBS中の、約4M乃至約8Mのグアニジン−HClである。
いくつかの実施形態では、そのような解離剤は、中間HABPからrcHC−HA/PTX3複合体を解離するために採用される。該方法で使用されるHABPは、典型的には、HAの結合親和性がrcHC−HA/PTX3複合体の組立を可能にするほど十分に強力であるが、適切な解離剤を含むrcHC−HA/PTX3複合体から分離されるように、選択される。いくつかの実施形態では、解離剤は塩酸グアニジンである。
本明細書で提供される該方法とともに使用される典型的なHABPは、限定されないが、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、TSG−6、CD44、スタビリン−1、スタビリン−2、または、HAを結合するのに十分なこれらの一部(例えば、これらのリンクモジュール)を含む。いくつかの実施形態では、HABPは、SEQ ID NOS:54−99のいずれかで明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NOS:54−99のいずれかで明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、HABPはバーシカンである。いくつかの実施形態では、HABPは組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、HABPは、組換え哺乳動物タンパク質である。いくつかの実施形態では、HABPは、組換えヒトタンパク質である。いくつかの実施形態では、HABPは、組み換え型のバーシカンタンパク質、または、HAに結合するのに十分なその一部である。いくつかの実施形態では、HABPは、組み換え型のアグリカンタンパク質、または、HAに結合するのに十分なその一部である。いくつかの実施形態では、HABPは、天然のHABP、または、HAに結合するのに十分なその一部である。いくつかの実施形態では、天然のHABPは、哺乳動物の組織または細胞から単離される。いくつかの実施形態では、HABPは、ウシの鼻軟骨(例えば、アグリカンとリンクタンパク質のHA結合領域を含む、SeikagakuからのHABP)から単離される。
いくつかの実施形態では、HABPは、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、TSG−6、CD44、スタビリン−1、または、スタビリン−2のリンクモジュールを含む。いくつかの実施形態では、リンクモジュールを含むHABPは、SEQ ID NOS:54−99の結合ドメインのいずれかで明記される配列を有するポリペプチド、あるいは、SEQ ID NOS:54−99の結合ドメインのいずれかで明記される配列を有するポリペプチドに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有しているポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、HABPは、バーシカンのリンクモジュールを含む。いくつかの実施形態では、リンクモジュールを含むHABPは、組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、バーシカンのリンクモジュールを含むHABPは、組換えタンパク質である。
いくつかの実施形態では、HABPのような中間タンパク質は、フューリン、3Cプロテアーゼ、カスパーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、または、TEVプロテアーゼのような部位に特異的なプロテアーゼによって認識されて加水分解される、タンパク質切断配列を包含している。そのような実施形態では、組み立てられたrcHC−HA/PTX3複合体は、固定化した複合体を、特定の切断配列を切断するプロテアーゼに接触させることにより、固形の支持体から解放される。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体が精製される。いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体は、任意の適切な方法または方法の組み合わせによって精製される。下記に述べられる実施形態は、排他的になるように意図されたものではなく、単なる典型的なものである。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、サイズ排除、および、ヒドロキシアパタイトのクロマトグラフィー)、ゲルろ過、遠心分離(例えば、勾配遠心分離)または差次的な溶解度、エタノール沈殿、あるいは、タンパク質の精製のための他の利用可能な技術によって、精製される。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体は、免疫親和性クロマトグラフィーによって精製される。いくつかの実施形態において、抗体は、rcHC−HA/PTX3複合体の成分に対して生成され(例えば、抗HC1、抗PTX、rcHC−HA/PTX3複合体の1つ以上のSLRPに対する抗体、例えば、抗ビクニン、抗デコリン、抗バイグリカン、または、抗オステオアドへリン)、固形の支持体に付けられる。いくつかの実施形態では、精製されていないrcHC−HA/PTX3複合体(すなわち移動相)は、支持体上を通過する。特定の例では、rcHC−HA/PTX3複合体は抗体に結合する。いくつかの実施形態では、支持体は、任意の結合していない分子または緩く結合した分子を取り除くために、(例えばPBSで)洗浄される。いくつかの実施形態では、支持体は、支持体からのrcHC−HA/PTX3複合体の溶離を可能にする溶液で洗浄される(例えば、1%のSDS、6Mのグアニジン−HCl、または、8Mの尿素)。いくつかの実施形態では、解離剤は、解離したrcHC−HA/PTX3複合体から取り除かれる。いくつかの実施形態では、解離剤は、限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、透析、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外ろ過、または、ダイアフィルトレーションを含む方法によって、解離したrcHC−HA/PTX3複合体から取り除かれる。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体は、親和性クロマトグラフィーによって精製される。いくつかの実施形態では、HABPは、複合体を精製するべく、rcHC−HA/PTX3複合体に結合するように採用され、および、定常的な支持体に貼付される。いくつかの実施形態では、精製されていないrcHC−HA/PTX3複合体(すなわち移動相)は、支持体上を通過する。特定の例では、rcHC−HA/PTX3複合体は、HABPに結合する。いくつかの実施形態において、支持体は、任意の結合していない、または、緩く結合した分子を取り除くために、(例えばPBSで)洗浄される。いくつかの実施形態では、その後、支持体は、支持体からのrcHC−HA/PTX3複合体の溶離を可能にする溶液(例えば解離剤)で洗浄される。いくつかの実施形態では、解離剤は、限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過または、ダイアフィルトレーションを含む方法によって、解離したrcHC−HA/PTX3複合体から取り除かれる。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体は、rcHC−HA/PTX3複合体の1つ以上の成分に対する抗体を使用して、HABP親和性クロマトグラフィーと免疫親和性クロマトグラフィーの組み合わせによって精製される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたrcHC−HA/PTX3複合体の1つ以上の成分は、アフィニティタグ(例えば、アフィニティタグを含む、PTX3またはHC1の融合タンパク質)を含む。いくつかの実施形態においてrcHC−HA/PTX3複合体の1つ以上の成分に組み込まれる典型的なアフィニティタグは、限定されないが、ヘマグルチニンタグ、ポリ・ヒスチジン、mycタグ、FLAGタグ、または、グルタチオン−S−転移酵素配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、アフィニティタグのリガンドは、固形の支持体に結合する。いくつかの実施形態では、未精製のrcHC−HA/PTX3複合体は、支持体上を通過する。特定の例では、rcHC−HA/PTX3複合体は、リガンドに結合する。いくつかの実施形態において、支持体は、任意の結合していない、または、緩く結合した分子を取り除くために、(例えばPBSで)洗浄される。いくつかの実施形態では、支持体は、支持体からの本明細書で開示されたrcHC−HA/PTX3複合体の溶離を可能にする溶液で洗浄される。いくつかの実施形態では、溶離剤は、限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過またはダイアフィルトレーションを含む方法によって、解離したrcHC−HA/PTX3複合体から取り除かれる。
いくつかの実施形態では、PTX3、TSG−6、および/またはHC1は、標識と共役する。「標識」とは、標識したポリペプチドを生成するために、ポリペプチドと直接的または間接的に共役する、検知可能な化合物または組成物を指す。いくつかの実施形態では、標識はそれ自体で検知可能(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)であるか、または、酵素標識の場合には、検知可能な基質化合物組成物の化学変化を触媒する。非限定的な標識の例は、蛍光発生部分、色素、蛍光タグ、緑色蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼを含んでいる。
(nHC−HA/PTX3とrcHC−HA/PTX3の複合体の活性を評価する方法)
本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3とrcHC−HA/PTX3の複合体の特性は、生体外とインビボの方法を含む任意の適切な方法によって、評価される。典型的な生体外の方法が本明細書で提供されており、限定されないが、固定化したnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体に対するマクロファージの結合を促進するために、マクロファージの凝集を阻害するまたは減少させるために、好中球のアポトーシス、アポトーシス性の好中球のマクロファージ貪食、および、刺激されたマクロファージのM2極性化を促進するために、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の能力を評価する細胞培養方法を含んでいる。いくつかの実施形態では、アッセイで使用されるマクロファージは、LPSまたはIFN−γへの曝露などによって、刺激される。いくつかの実施形態では、刺激されたマクロファージ中の遺伝子またはタンパク質の発現は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体との接触の後に評価される。nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の活性を評価するそのような方法では、適切な対照が比較のために使用される。いくつかの実施形態では、対照は、nHC−HA/PTX3、または、rcHC−HA/PTX3の複合体を用いた処置が欠けている(すなわち、陰性対照)。
いくつかの実施形態では、rcHC−HA/PTX3複合体の活性は、天然のHC−HA/PTX3複合体の活性と比較される。いくつかの実施形態において、天然のHC−HA/PTX3は羊膜から単離される。
いくつかの実施形態では、処置されたマクロファージ中の遺伝子発現は、PCR、RT PCR、ノーザンブロット法、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、免疫組織化学的検査、クロマトグラフィー、あるいは、タンパク質または核酸を検知する他の適切な方法によって評価される。いくつかの実施形態では、IL−10、IL−12、IL23、LIGHT、および、SPHK1の発現のレベルが評価される。
本明細書で提供される nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の活性を評価する典型的な生体外の方法は、限定されないが、様々な疾患および疾病の動物モデルを含む。様々な動物モデルが、限定されないが、虚血、再潅流障害、1型および2型の糖尿病、炎症性疾患、コラーゲン誘発性関節炎、関節リウマチ、コラーゲン誘発性関節炎およびミエリンペプチド誘発性の実験的アレルギー性脳脊髄炎などの抗原誘発性自己免疫疾患、炎症性腸疾患(IBD)/潰瘍性結腸炎、多発性硬化症、手術誘発性の変形性関節症および腎炎、乾癬、炎症性の皮膚疾患、LPS誘発性のエンドトキシンショック、LPS誘発性の肺損傷、アレルギー性鼻炎、肝臓損傷、慢性ストレス、喘息、および、様々な癌の異種移植片と同種移植片のモデルを含む、様々な炎症性疾患と自己免疫疾患の動物モデル(例えば、げっ歯類および霊長類のモデル)を含む、疾患と疾病の技術分野では入手可能であり、周知である。
いくつかの実施形態では、動物モデルは、慢性移植片対宿主病(cGVHD)、HSV1誘発性の壊死性の間質性角膜炎、または、ハイリスクの角膜移植などの炎症のげっ歯類モデルである。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の処置による炎症の減少は、T細胞の増殖と活性化、ならびに、IL−1α、IL−2、IL−6、IFN−γ、および、TNF−αなどの免疫サイトカインの産生を測定することにより評価される。いくつかの実施形態では、動物モデルは、エキシマー・レーザー支援レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)などのげっ歯類モデルの瘢痕である。そのような動物モデルに使用される典型的な方法は、本明細書で提供される実施例において提供される。
いくつかの実施形態では、動物モデルは、炎症性および自己免疫性の疾患および障害の遺伝モデルであり、これは、該疾患または障害を引き起こす1つ以上の遺伝子変化を包含している。いくつかの実施形態では、このようなモデルは商用源から得られる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、特定の疾患または疾病の動物モデルに投与され、その疾患または疾病の1つ以上の症状を阻害するまたは減少させるrcHC−HA/PTX3の複合体の能力が評価される。
(医薬組成物)
特定の実施形態において、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物が本明細書で開示される。特定の実施形態において、本明細書で提供された方法によって生成されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物が、本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、薬学用途に適した調製物にする処理を促進する賦形剤および助剤を含む、1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方法で調剤される。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。修復の技術、担体、および、賦形剤のいずれも、適切に、当該技術分野で理解されているように、使用することができる。
特定の実施形態において、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アジュバント、賦形剤、防腐剤、吸収を遅らせる薬剤、充填剤、結合剤、吸着剤、緩衝液、および/または、可溶化剤をさらに含む。本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を包含するように調剤された典型的な医薬組成物は、限定されないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、顆粒、粉末、軟膏、錠剤、カプセル、丸剤、またはエアロゾルを含んでいる。
剤形
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、水性懸濁液として投与される。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、水、リンゲル液、および/または、生理食塩液を含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、甘味料または香料添加剤、着色料または色素を、さらに、必要に応じて、希釈剤、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、または、その組み合わせと一緒に、乳化剤または懸濁化剤を含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は懸濁化剤を含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、および/または、アラビアゴムを含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、分散剤または浸潤剤を含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、天然のリン脂質、例えば、レシチン、または、脂肪酸を含むアルキレンオキシドの縮合物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、または、長連鎖脂肪族アルコールを含むエチレンオキシドの縮合物、例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノール(oxycetanol)、または、脂肪酸由来、および、ポリオキシエチレンソルビトールモノクレアートなどのヘキシトール由来の部分エステルを含むエチレンオキシドの縮合物、または、脂肪酸に由来する、および、例えば、ポリエチレンソルビタンモノクレアートなどのヘキシトール無水物に由来する、部分エステルを含むエチレンオキシドの縮合物、を含む。いくつかの実施形態において、水性懸濁液は防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、エチル、または、n−パラオキシ安息香酸プロピルを含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は甘味剤を含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、ショ糖、サッカリン、またはアスパルテームを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、油性懸濁液として投与される。いくつかの実施形態では、油性懸濁液は、植物油(例えば、落花生油、オリーブオイル、ごま油、またはココナッツ油)、または、鉱油(例えば、流動パラフィン)中の活性成分を懸濁することによって調剤される。いくつかの実施形態では、油性懸濁液は、増粘剤(例えば、蜜ろう、固形パラフィン、またはセチルアルコール)を含む。いくつかの実施形態では、油性懸濁液は、甘味剤(例えば上に明記したもの)を含む。いくつかの実施形態では、油性懸濁液は、酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシアニソールまたはαトコフェロール)を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、非経口注入(例えば、動脈内、心臓内、皮内、十二指腸内、髄内、筋肉内、骨内、腹腔内、鞘内、血管内、静脈内の、硝子体内、硬膜外、および/または、皮下を含む注入または点滴によって)のために調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、無菌液、懸濁液、またはエマルジョンとして投与される。
いくつかの実施形態では、非経口投与のための製剤は、実施形態によっては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および/または、製剤を、意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでいる、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の水性および/または非水性(油性)の無菌の注入溶液、および/または、実施形態によっては、懸濁化剤および/またはを増粘剤含んでいる、水性および/または非水性の無菌の懸濁液を含む。いくつかの実施形態では、非経口投与のための製剤は、高濃度溶液の調製を可能にするために、本明細書で開示されたrcHC−HA/PTX3複合体の溶解度を増加させる、適切な安定剤または薬剤を含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、活性成分が油相に溶けた水中油型ミクロエマルジョンとして投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、脂肪油(例えば、ゴマ油または合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド、またはリポソーム)に溶かされる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、ダイズ油および/またはレシチンの混合物で溶かされる。いくつかの実施形態では、油剤は、水とグリセロールの混合物に入れられ、処理されると、マイクロエマルジョンが形成される。
いくつかの実施形態では、非経口投与のために調剤された組成物は、単回ボーラスショットとして投与される。いくつかの実施形態では、非経口投与のために調剤された組成物は、連続的な静脈内送達装置(例えば、Deltec CADD−PLUS(商標)model 5400 intravenous pump)によって投与される。
いくつかの実施形態では、注入される製剤は、単位剤形、例えば、追加の防腐剤を含む、アンプルまたは複数回投与容器で提示される。いくつかの実施形態では、注入される製剤は、使用の直前に、無菌の液体担体、例えば、塩水または無菌の発熱物質を含まない水を追加することのみを必要として、粉末形態で、または、冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で、貯蔵される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、局所投与のために調剤される。局所製剤は、限定されないが、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、溶液、ペースト剤、ゲル、薄膜、スティック、リポソーム、ナノ粒子を含んでいる。いくつかの実施形態では、局所製剤は、パッチ、包帯、または創傷包帯を用いて投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、固体、架橋ゲル、またはリポソームの形状の組成物として、調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、不溶性の架橋ヒドロゲルとして調剤される。
いくつかの実施形態では、局所製剤は、ゲル化(または増粘)剤を含む。適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーゴム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸)、ケイ酸塩、デンプン、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ペトロラタム、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ(bladderwrack)、ベントナイト、カルボマー、カラゲーニン、カルボポール(carbopol)、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、ツノマタ属、デキストロース、ファーセレラン(furcellaran)、ゼラチン、ガティ(ghatti)ガム、グアーゴム、ヘクトライト(hectorite)、ラクトース、ショ糖、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ステルクリアガム(sterculia gum)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 200−4500)、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、プロピレンカーボネート、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、または、その組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される局所製剤は、皮膚軟化薬を含む。皮膚軟化薬としては、限定されないが、ヒマシ油エステルカカオバターエステル、ベニバナ油エステル、綿実油エステル、トウモロコシ油エステル、オリーブオイルエステル、たら肝油エステル、アーモンド油エステル、アボカド油エステル、パーム油エステル、ごま油エステル、スクアレンエステル、ククイオイル(kikui oil)エステル、大豆油エステル、アセチル化モノグリセリド、エトキシ化モノステアリン酸グリセリン、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、オレイン酸デシル(decyloleate)、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸メチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、アジピン酸ジヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および、乳酸セチル、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイルおよびオレイン酸オレイル、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ヒドロキシステアリルアルコール、オレイルアルコール、リシノレイル(ricinoleyl)アルコール、ベヘニル(behenyl)アルコール、エルシル(erucyl)アルコール、2−オクチルドデカニルアルコール、ラノリンおよびラノリン誘導体、蜜ろう、鯨ろう、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、カルナウバワックス、カンデリラワックス、レシチン、および、コレステロールが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、1つ以上の天然のポリマーで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ケラチン、フィブリン、フィブリノゲン、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸である天然のポリマーで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、天然のポリマーから調剤されたポリマーゲルで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、限定されないが、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ケラチン、フィブリン、フィブリノゲン、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、および、その組み合わせなどの天然のポリマーから調剤されたポリマーゲルで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、架橋ポリマーで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、架橋していないポリマーで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、架橋していないポリマーと架橋ポリマーで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、架橋したヒアルロナンゲルで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、不溶性の架橋したHAヒドロゲルで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、架橋していないヒアルロナンゲルで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、コラーゲンマトリックスで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、フィブリンマトリックスで調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、フィブリン/コラーゲンマトリックスで調剤される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、目またはそれに関連する組織に投与するために調剤される。目への投与に適している製剤は、限定されないが、溶液、懸濁液(例えば、水性懸濁液)、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、リポソーム、ニオソーム(niosomes)、ファーマコソーム(pharmacosomes)、ナノ粒子、または、この組み合わせを含んでいる。いくつかの実施形態では、目への局所性投与のための本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体は、噴霧、洗浄、または、その組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、注射可能なデボー製剤によって目に投与される。
本明細書で使用されているように、「デボー製剤」は、目または関連する組織(例えば強膜)に(例えば、皮下に、筋肉内に、硝子体内に、または結膜下内に)移植される制御放出製剤である。いくつかの実施形態では、デボー製剤は、生分解性ポリマーで、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体のマイクロカプセル化されたマトリックス(マイクロカプセル化マトリックスとしても知られている)を形成することにより調剤される。いくつかの実施形態では、デボー製剤は、リポソームまたはマイクロエマルジョンで、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を捕捉することにより調剤される。
目に投与される製剤は、眼に許容可能な張性を備えている。特定の例においては、涙液は、0.9%の塩化ナトリウム溶液と同等の等張性値を有している。いくつかの実施形態では、約0.6%乃至約1.8%の塩化ナトリウム等価からの等張性価値は、目への局所投与に適している。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された目に投与される製剤は、約200乃至約600mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有している。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された目に投与される製剤は低浸透圧性であり、したがって、適切な張性範囲に到達するのに適切な追加を必要とする。張性を調節する眼に許容可能な物質としては、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、および、硫酸アンモニウムが挙げられる。
目に投与される製剤は、眼に許容可能な透明性を備えている。眼に許容可能な清澄剤の例としては、限定されないが、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはその組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、目に投与される製剤は、眼に許容可能な粘性エンハンサーを含む。いくつかの実施形態では、粘性エンハンサーは、本明細書で開示された製剤が目に留まる時間を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示示された製剤が目に留まる時間を増加させることは、大きな薬物吸収と効果をもたらす。粘膜付着性ポリマーの非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/アクリル酸ブチルコポリマー、アルギン酸ナトリウム、および、デキストランを含む。
いくつかの実施形態では、目に投与される製剤は、後眼部(例えば、網膜、脈絡膜、硝子体、および、視神経)に投与されるまたは送達される。例えば、いくつかの実施形態では、後眼部に送達するための本明細書で開示された目に投与される局所製剤は、可溶化剤、例えば、グルカン硫酸塩および/またはシクロデキストリンを含む。いくつかの実施形態で使用されるグルカン硫酸塩は、限定されないが、硫酸デキストラン、シクロデキストリン硫酸塩、および、β−1,3グルカン硫酸塩、その天然および誘導体の双方、または、繊維芽細胞増殖因子(FGF)を包含している組織に一時的に結合するか、該組織で保持され、薬物の安定性および/または溶解性を改善し、および/または、本明細書で開示された目に投与される局所製剤の浸透と眼での吸収を改善する任意の化合物を含む。可溶化剤としていくつかの実施形態で使用されるシクロデキストリン誘導体は、限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ、シクロデキストリン、硫酸化型α−シクロデキストリン、硫酸化型β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、直腸または膣への投与のために調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、坐薬として投与される。いくつかの実施形態では、直腸投与に適している組成物は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、常温では固体であるが、直腸温では液体であり、したがって、直腸中で溶けて薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって、調製される。いくつかの実施形態では、直腸投与に適している組成物は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、カカオバター、グリセリンゼラチン、水素化した植物性油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、または、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルと混合することにより調製されている。
特定の実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、制御放出粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、微粒子、微小粒子、ナノカプセル、または、皮膚への局所的な送達を増強または促進する他の薬剤に、随意に組み込まれる。製剤の従来のマイクロカプセル化プロセスの一例は、米国特許番号3,737,337号に記載されており、これはこのような開示について参照により本明細書で組み込まれる。
投与量
投与された医薬組成物の量は、処置される個体にある程度は依存する。医薬組成物がヒト被験体に投与される例において、一日の投与量は、処方する医師によって決定され、投与量は一般に、個体の年齢、性別、食事、体重、全体的な健康および反応、個体の症状の重症度、処置されている詳細な疾患または疾病、処置されている疾患または疾病の重症度、投与時間、投与経路、組成物の性質、排泄速度、薬物の組み合わせ、および、処方する医師の裁量に応じて、変わる。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与量は、約0.001乃至約1000mg/kg(体重)/日である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、約0.5乃至約50mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、約0.001乃至約7g/日である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、約0.01乃至約7g/日である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、約0.02乃至約5g/日である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、約0.05乃至約2.5g/日である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、約0.1乃至約1g/日である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、疾患または疾病の発症前後、または、その最中に、投与される。いくつかの実施形態では、併用療法は、疾患または疾病の発症前後、または、その最中に、施される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、疾患または疾病の発症前後、または、その最中に、併用療法で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3を含む組成物を投与するタイミングは変動する。ゆえに、いくつかの例において、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3HAの複合体は、予防薬として使用され、疾患や疾病の発症を防ぐために、疾病や疾患を進行させる傾向のある被験体に継続的に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、症状の発症中に、または、症状の発症後できるだけすぐに、被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与は、症状の発症の最初の48時間以内に、好ましくは症状の発症の最初の48時間以内、より好ましくは症状の発症の最初の6時間以内、最も好ましくは症状の発症の3時間以内に開始される。いくつかの実施形態では、最初の投与は、例えば、静脈注入、ボーラス注入、5分〜約5時間までの点滴、丸薬、カプセル剤、経皮パッチ、口腔送達、またはそれらの組み合わせなど、あらゆる経路を介して行われる。本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、疾患または疾病の発症が検知されるか疑われた後に実行可能となるやいなや、疾患の処置に必要な期間、例えば、約1ヶ月から約3ヶ月間、投与されるのが好ましい。いくつかの実施形態では、処置の期間は、それぞれの被検体ごとに変わり、その期間は既知の基準を用いて決定される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体、または、化合物を含む製剤は、少なくとも2週間、好ましくは約1ヶ月乃至約5年間、および、さらに好ましくは約1ヶ月乃至約3年間、投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、毎日1回、単回投与で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、1日2回以上、複数回投与で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、毎日2回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、毎日3回投与される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、毎日4回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、毎日5回以上投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、予防的処置および/または治療的処置のために投与される。治療的な用途では、いくつかの実施形態において、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、疾患または疾病の症状を直すか部分的に阻止するのに十分な量で、疾患または疾病に既に苦しんでいる個体に投与される。このような使用に有効な量は、疾患または疾病の重症度および経過、以前の治療、個体の健康状態、体重、および薬物への反応性、ならびに、処置を行う医師の判断に左右される。
予防的な用途では、いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、特定の障害の危険性がある個体に投与される。このような量は、「予防上有効な量または投与量”であると定義される。そのような用途では、正確な量は、個体の健康状態、体重、および、他の肉体的なパラメータによって変わる。
個体の疾病が改善しない場合、医者の判断に基づき、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体が、長期的に、すなわち、個体の疾患または疾病の症状を寛解させるか、またはそうでなくとも制御するか、制限するために個体の寿命の間を含む長期間にわたって、投与される。
いくつかの実施形態では、個体の状態が改善した場合、医者の判断に基づき、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体が連続的に投与されるか、あるいは、投与されている薬物の容量が一時的に減られるか、あるいは、一定の期間にわたって一時的に停止される(すなわち「休薬期間」)。いくつかの実施形態では、休薬期間の長さは、ほんの一例ではあるが、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および、365日を含む、2日から1年までの間である。いくつかの実施形態では、休薬期間中の投与量の減少は、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%を含む、10%〜100%までである。
ひとたび個体の状態が改善すると、必要に応じて維持用量が投与される。いくつかの実施形態では、その後、投与量もしくは投与頻度またはその両方が、症状に応じて、疾患、症状、または疾病の改善が維持される水準になるまで減らされる。いくつかの実施形態において、個体は、任意の症状の再発時に長期的な間欠的処置を必要とする。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形である。単位剤形において、製剤は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の適切な量を含む単位用量に分割される。単位用量は、製剤の離散量を含有するパッケージ形状である。非限定的な例は、包装された錠剤またはカプセル剤、および、バイアルまたはアンプル中の粉末である。いくつかの実施形態において、水性懸濁組成物は、単回用量用の再密閉できない容器に包装される。いくつかの実施形態では、複数回用量用の再密閉できる容器が使用され、この場合、組成物中に防腐剤を含めることが一般的である。いくつかの実施形態では、非経口注射用の製剤は単位剤形で提供され、これは、限定されないが、防腐剤を添えたアンプルまたは複数回投与用の容器を含む。
本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体に適切な毎日の投与量は、例えば、体重当たり約0.01〜2.5mg/kgである。ヒトを含む(ただし、ヒトに限定されない)大型哺乳動物で表示される一日の投与量は、約0.5mgから約100mgの幅であり、一日に4度(ただし、これに限定されない)の複数回投与で、または、持続放出形態で都合よく投与される。経口投与に適切な単位剤形は、約1mg−50mgの活性成分を含む。個々の処置レジメンに関する変数が大きいため、前述の範囲は単に示唆的なものでしかなく、これらの推奨値からのある程度の逸脱は珍しいわけではない。いくつかの実施形態では、上記のような投与量は、多くの変数に依存して変化するが、この変数とは、限定されないが、用いられるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の能力、治療される疾患または疾病、投与方法、個体の被験体の要件、治療される疾患または疾病の重篤度、および、実践者の判断を含む。
いくつかの実施形態では、このような処置レジメンの毒性および治療効果は、限定されないが、LD50(個体群の50%致死量)およびED50(個体群の50%における治療上有効な用量)の決定などを含む、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定される。いくつかの実施形態では、毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50とED50との間の比率として表現される。高い治療指数を示すnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体が好ましい。いくつかの実施形態では、ヒトに使用する容量の範囲を策定する際に、細胞培養アッセイと動物研究から得られるデータを用いられる。本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の用量は、最小の毒性を備えたED50を含む、一連の血中濃度内にあるのが好ましい。いくつかの実施形態では、用量は、採用される剤形と利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化する。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の医薬組成物は、包装材料、疾患または疾病の予防および/または処置に有効な医薬組成物、および、医薬組成物が疾患または疾病を処置するために使用される使用されることを明記したラベルを包含している製品としてパッケージ化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は単位剤形でパッケージ化され、単回投与または複数回投与のための医薬組成物の量を包含している。いくつかの実施形態では、パッケージ化された組成物は、投与前に(例えば水または食塩水で)再構成される、医薬組成物の凍結乾燥粉末を包含している。
医療装置と生体材料の組成物
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、表面上で直接組み立てられる、または移植可能な医療装置のためのコーティングとして調剤された。限定されないが、金属、重合体、セラミック、シリカ、および、複合物の表面などの表面に対するヒアルロナンの共有結合の方法は、当該技術で周知のものであり、いくつかの実施形態では、そのような表面上にnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を組立てるために本明細書で提供される方法とともに使用される(参照、例えば、米国特許第5,356,433; 5,336,518、4,613,665、4,810,784、5,037,677、8,093,365)。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、移植可能な医療装置またはその一部の表面にで直接組み立てられる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供された方法に従って生成されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体が精製され、その後、移植可能な医療装置またはその一部の表面に直接取り付けられる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供された方法に従って生成されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体が精製され、その後、医療装置またはその一部に結合するためのコーティング剤として調剤される。いくつかの実施形態では、コーティング剤は、表面に直接塗られるか、または、あらかじめ処理されたまたはコーティングされた表面に適用され、前処理とコーティングは基質にコーティング剤を接着するのを助けることを意図している。いくつかの実施形態では、本明細書で提供された方法に従って生成されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体が精製され、その後、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の結合を促す物質でコーティングされた医療装置またはその一部に取り付けられる。例えば、いくつかの実施形態では、医療装置またはその一部は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体のヒアルロナンの共有結合のために、その表面上に官能基を供給する粘着ポリマーでコーティングされる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、ポリマーコーティングに結合させるために、限定されないが、カルボジイミドなどのカップリング剤が使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って生成されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、医療装置またはその一部に共有結合させるために、光固定化(photoimmobilization)が使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供された方法に従って生成されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、光化学的にまたは熱化学に反応基を含むスペーサ分子を使用して、医療装置またはその一部に取り付けられる。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含むコーティング製剤は、例えば、浸漬被覆によって基質に適用される。他の使用方法としては、限定されないが、噴霧、洗浄、蒸気蒸着、ブラシ、ローラー、カーテン、スピンコーティング、および、当該技術で既知の他の方法が挙げられる。
典型的な移植可能な医療装置としては、限定されないが、人工関節、整形外科装置、骨インプラント、コンタクトレンズ、縫合糸、外科用ステープル、外科用クリップ、カテーテル、血管形成バルーン、センサー、外科用器具、電極、針、シリンジ、創傷排水管、シャント、尿道の挿入物、金属またはプラスチックの移植組織、心臓弁、人工器官、ラップバンド、人工弁輪、ガイドワイヤー、K−ワイヤー、または、Denhamピン、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、ペースメーカー、ペレット剤、ウェーハ、医療用チューブ、点滴スリーブ、移植可能な除細動器、神経刺激剤、グルコースセンサー、髄液シャント、移植可能な薬ポンプ、脊椎ケージ(spinal cage)、人工椎間板、眼の移植組織、人工内耳、乳房インプラント、髄核用の置換装置、耳チューブ、眼内レンズ、薬物送達システム、微小粒子、ナノ粒子、およびマイクロカプセルが挙げられる。
特定の実施形態では、移植可能な医療装置は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む、移植組織または装具である。特定の実施形態において、装具は人工関節である。いくつかの実施形態では、装具は、人工股関節、人工膝、人工の肩関節、人工の足首である。
いくつかの実施形態では、移植物はステントである。いくつかの実施形態では、移植物は、冠動脈ステント、尿管ステント、尿道ステント、前立腺ステント、骨ステント、または、食道ステントである。特定の実施形態では、移植物は、骨インプラントである、限定されないが、オッセオインテグレーテッドインプラントまたは頭蓋顔面の移植物(例えば、人工の耳、眼窩装具、鼻の装具)。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、被験体に対して、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を送達するために、微小粒子またはナノ粒子で直接組み立てられる(例えば、WO 03/015755とUS2004/0241248を参照)。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、本明細書に記載される、または、当該技術で知られている任意のそのような移植可能な医療装置の表面またはその一部に、取り付けられ、組み立てられ、または、コーティング剤として提供される。いくつかの実施形態において、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、移植後に、コーティング剤から周囲の組織に溶離する。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞またはインスリン産生細胞などの生体材料の送達のために使用される、スキャフォールド、微小粒子、マイクロカプセル、または、マイクロキャリア上で直接組み立てられる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルに直接取り付けられるか、または、マイクロカプセル上で組み立てられる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルを形成するために使用される材料と組み合わされるか、または、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を包含するマイクロカプセルが生成される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルの内面を覆うために使用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルの外面を覆うために使用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルの内面と外面を覆うために使用される。
細胞をカプセル化するための典型的な材料としては、限定されないが、アガロース、アルギン酸塩、および、人工ポリマー、例えば、ポリ(NiPAAm−co−AAC)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、および、PEG ジアクリレートやオリゴ(ポリ(エチレングリコール))フマレート(fumerate)のようなPEG誘導体などの熱硬化性ヒドロゲルが挙げられる。幹細胞の培養とマイクロカプセル化の方法は、いくつかの実施形態では、当該技術分野で知られており、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含むマイクロカプセルを生成するために使用される。
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、細胞、複数の細胞、または、他の生体材料を包含している。いくつかの実施形態では、細胞は、限定されないが、間葉系幹細胞などの幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、限定されないが、インスリン産生細胞などの分化細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、自己細胞(すなわち、細胞のレシピエントからの、またはこれに由来する細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、同種異型細胞(すなわち、細胞のレシピエントからではない、または、これに由来しない細胞)である。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、細胞、複数の細胞、または他の生体材料を包含しており、マイクロカプセルの内面は、本明細書で提供されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体でコーティングされる。いくつかの実施形態において、マイクロカプセルは、細胞、複数の細胞、または他の生体材料を包含しており、マイクロカプセルの外面は、本明細書で提供されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体でコーティングされる。いくつかの実施形態において、マイクロカプセルは、細胞、複数の細胞、または他の生体材料を包含しており、マイクロカプセルの外面と内面は、本明細書で提供されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体でコーティングされる。いくつかの実施形態においては、マイクロカプセルは、疾患または疾病を治療するために投与される。典型的な疾患および疾病と、マイクロカプセルを投与可能な処置の方法は、本明細書の他の場所に明記されており、限定されないが、炎症および免疫に関連する疾患を含んでいる。
(処置方法)
特定の実施形態において、個体を処置する方法が本明細書で開示され、該方法は、本明細書に記載されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を個体に投与する工程を含む。特定の実施形態において、個体を処置する方法が本明細書で開示され、該方法は、本明細書に記載された方法によって生成されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、個体に投与する工程を含む。以下は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与を含む、非限定的な処置方法の例である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、下記の少なくとも1つを阻害するために使用される:瘢痕、炎症、自己免疫または免疫の拒絶反応につながる免疫反応、接着、血管形成、および、細胞または組織の再生を必要とする状態。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、創傷治癒を促すために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞の拡張を促すために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、組織再生を促すために使用される。
いくつかの実施形態では、個体を処置する方法が本明細書で開示され、該方法は、任意の適切な方法によって、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を個体に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、個体を処置する方法が本明細書で開示され、該方法は、任意の適切な投与経路によって、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を個体に投与する工程を含む。投与に適切な方法は、処置される疾患または状態に依存する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、処置の部位に局所的に投与される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、全身に投与される。本明細書で提供されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の投与のための典型的な方法は、限定されないが、非経口、腸内、皮下、経皮的、経皮的、皮内、静脈内、局所的、吸入、または、移植を含む。
瘢痕
特定の実施形態において、被験体の瘢痕を防ぐ、減らす、または、逆行させる方法が本明細書に記載され、該方法は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む組成物を、被験体に投与する工程を含む。
本明細書で使用されているように、「瘢痕化」は瘢痕の形成を指す。1つの態様では、瘢痕は、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、または、ざ瘡に由来する瘢痕である。本明細書で使用されているように、「瘢痕」は、コラーゲンの過剰生成に起因する線維組織の領域である。特定の例においては、創傷治癒は、損傷の部位への繊維芽細胞の移動を含む。特定の例においては、繊維芽細胞はコラーゲンを沈殿させる。特定の例においては、繊維芽細胞は創傷部位に過剰なコラーゲンを沈殿させ、瘢痕を結果として生じさせる。
特定の例では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、TGF−βシグナル伝達を防ぐか阻害する。特定の例においては、TGF−βは、繊維増殖とコラーゲン沈着を刺激し、および、(プロテアーゼ阻害剤の合成をアップレギュレートすることによって)細胞外マトリックス分解を阻害することにより、細胞外マトリックスを制御する。特定の例においては、TGF−βの発現を防ぐまたは阻害することにより、瘢痕の予防、または、瘢痕の強度の減少がもたらされる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与は、瘢痕を防ぐまたは減らす。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、筋線維芽細胞に分化する繊維芽細胞の能力を阻害するまたは防ぐ。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した筋線維芽細胞を繊維芽細胞に戻す。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、瘢痕の形成を防ぐか、減らすか、逆行させるために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を、瘢痕化(例えば、皮膚炎瘢痕、ケロイド瘢痕、痙縮瘢痕、肥厚性瘢痕、または、ざ瘡により生じる瘢痕)をもたらす障害を抱えている個体に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、外傷の前後に、必要としている個体に、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、手術の前後に、必要としている個体に、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を投与する工程を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、目または周囲の組織の瘢痕の形成を防ぐまたは減らすために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、目または周辺組織の瘢痕をもたらす障害(例えば、末熟児網膜症)の個体に、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、目または周囲の組織への外傷の前後に、必要としている個体に、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された方法は、目または周囲の組織への手術の前後に、必要としている個体に、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を投与する工程を含む。
炎症
特定の実施形態において、被験体の炎症を防ぐまたは減少させる方法が本明細書に記載されており、該方法は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む組成物を、被験体に投与する工程を含む。本明細書で使用されているように、「炎症」とは、感染または外傷(例えば、鈍力外傷、鋭的外傷、または外科手術)の部位に対する血漿および/または白血球(例えば、リンパ球、マクロファージ、顆粒球、および、好中球)の移動の結果として生じる生理反応を意味する。
特定の例においては、白血球は、抗原との接触後に、サイトカインを分泌する。本明細書で使用されているように、「サイトカイン」は、シグナル伝達タンパク質または糖タンパク質である。特定の例では、サイトカインは、細胞の表面に受容体を結合する。特定の例においては、サイトカインは、感染部位に対する白血球の走化性を引き起こす。特定の例においては、白血球上の細胞表面受容体は、サイトカインの化学的勾配を検知する。特定の例では、白血球は感染部位に対する勾配を伴う。特定の例では、細胞表面受容体へのサイトカインの結合は、特定の遺伝子とそれらの転写因子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを結果としてもたらす。特定の例においては、遺伝子発現の変化は、サイトカインの産生、サイトカインの産生の増加、または、細胞表面受容体の提示の増加をもたらす。
非限定的な例として、サイトカインは、インターロイキンIL−1、IL−6、IL−8、MCP−1(CCL2としても知られている)、および、TNF−αを含んでいる。インターロイキン1は、2つのアイソフォーム:IL−1αおよびIL−1β中の本体にある。特定の例では、IL−1の存在は、内皮細胞上での接着因子の発現を増加させる。これは、次には、感染部位に対する白血球の血管外移動を可能にする。特定の例において、IL−8は、白血球の走化性を誘発する。特定の例においては、TNF−αは、白血球の走化性を誘発する。特定の例においては、MCP−1は、組織損傷と感染の部位に対して白血球を補充する。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、サイトカインの産生および/または活性を抑制する。特定の例においては、サイトカイン濃度の減少は、白血球の数、および/または、損傷部位への白血球の移動速度を減少させることによって、炎症を減らすまたは防ぐ。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、白血球(例えば、マクロファージ、好中球、またはリンパ球)のアポトーシスを引き起こす。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、活性化した白血球の数、または、白血球が活性化する速度を減少させる。特定の例において、白血球の濃度の減少は、損傷部位へ移動する細胞の数を減少させる(例えば、アポトーシスによるこのような細胞の死を促す)ことによって、炎症を減らすまたは防ぐ。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、炎症性の表現型(すなわち、M1表現型)へのマクロファージの極性化を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、刺激されたマクロファージ中でIL−12またはIL−23の発現を減らすまたは阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、制御性のまたは創傷治癒のM2表現型への、刺激されたマクロファージの極性化を促す。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、被験体の炎症を阻害するまたは減らす。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、被験体の炎症反応によって引き起こされた組織損傷を抑制するまたは減らす。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、被験体の炎症を引き起こす疾病または疾患によって引き起こされた組織損傷を阻害するまたは減らす。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、炎症を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、急性炎症を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、慢性炎症を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、炎症性障害を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、マクロファージ媒介性の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、T細胞媒介性の炎症障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、Th−17媒介性の免疫障害である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、急性の炎症反応を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、急性の炎症反応は、例えば、アレルギー、敗血症、エンドトキシンショックまたは虚血、例えば、限定されないが、心筋梗塞や脳卒中などによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、急性の炎症反応は、細菌感染、原虫感染、原虫感染、ウイルス感染、真菌感染、または、この組み合わせの結果である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、急性炎症を阻害するまたは減少させる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、急性炎症により引き起こされた組織損傷を阻害するまたは減少させる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、心筋梗塞と脳卒中を含む虚血による組織再潅流障害を阻害するまたは減らす。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、適応免疫によるリンパ球の活性化に関連付けられる慢性炎症を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、Th1反応を備える被験体に投与される。いくつかの実施形態において、Th1反応は、生物学的移植の免疫拒絶反応につながる。いくつかの実施形態では、移植片は同種移植片である。いくつかの実施形態では、移植片は自己移植片である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、移植片対宿主病または組織移植拒絶反応である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、被験体の慢性炎症を阻害するまたは減少させる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、炎症性障害に関連したTh17免疫反応に関連付けられる慢性炎症を抱える被験体に投与される。いくつかの実施形態では、炎症性障害は自己免疫疾患または白血球欠損である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病;強直性脊椎炎;抗リン脂質抗体症候群;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性肝炎;自己免疫性内耳疾患;水疱性類天疱瘡;シャーガス病;慢性閉塞性肺疾患;セリアック病;皮膚筋炎;1型糖尿病;2型糖尿病;子宮内膜症;グッドパスチャー症候群;グレーブス病;ギラン・バレー症候群;橋本病;特発性血小板減少性紫斑病;間質性膀胱炎;全身性エリテマトーデス(SLE);メタボリック症候群、多発性硬化症;重症筋無力症;心筋炎、ナルコレプシー;肥満;尋常性天疱瘡;悪性貧血;多発性筋炎;原発性胆汁性肝硬変;関節リウマチ;統合失調症;強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;白斑;ヴェーゲナー肉芽腫症;アレルギー性鼻炎;前立腺癌;非小細胞肺癌;卵巣癌;乳癌;黒色腫;胃癌;結腸直腸癌;膵癌;リンパ腫、鼻茸;消化器癌;潰瘍性大腸炎;クローン病;コラーゲン大腸炎;リンパ球性大腸炎;虚血性大腸炎;空置大腸炎(Diversion colitis);ベーチェット症候群;感染性大腸炎;不確定大腸炎;炎症性の肝障害、虚血、心筋梗塞、脳卒中、エンドトキシンショック、敗血症性ショック;リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎、痛風性関節炎、リウマチ性多発生筋痛、アルツハイマー病、パーキンソン病、癲癇、エイズ、認知症、喘息、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎、嚢胞性線維症、急性白血球媒介性の肺損傷、遠位直腸炎(distal proctitis)、ヴェーゲナー肉芽腫症、結合組織炎、ぶどう膜炎、結膜炎、乾癬、湿疹、皮膚炎、平滑筋増殖障害、髄膜炎、帯状疱疹、脳炎、腎炎、結核、網膜炎、アトピー性皮膚炎、膵臓炎、歯周歯肉炎、凝固壊死、液化壊死、線維素壊死、新生内膜過形成、あるいは、これらの組み合わせである炎症性障害を抱える被験体に投与される。
いくつかの実施形態では、炎症性障害は目または周囲の組織の炎症性の障害である。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は結膜炎である。特定の例においては、結膜炎はアレルゲンへの曝露に起因する。特定の例においては、結膜炎は細菌感染に起因する。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は角膜炎である。本明細書で使用されているように、「角膜炎」とは角膜炎によって特徴付けられる障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、角結膜炎(すなわち、結膜炎と角膜炎の組み合わせ(すなわち、角膜の炎症))である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は眼瞼炎である。本明細書で使用されているように、「眼瞼炎」とは、眼瞼辺縁の炎症によって特徴付けられた眼の障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、眼瞼結膜炎(すなわち、結膜炎と眼瞼炎の組み合わせ(すなわち眼瞼の炎症))である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は強膜炎である。本明細書で使用されているように、「強膜炎」とは、強膜の炎症によって特徴付けられる障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は上強膜炎である。本明細書で用いられているように、「上強膜炎」とは、充血や結膜浮腫によって特徴付けられた上強膜の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害はブドウ膜炎である。本明細書で使用されているように、ブドウ膜炎は、ブドウ膜の炎症性び障害である。いくつかの実施形態では、障害は網膜炎である。本明細書で使用されているように、「網膜炎」とは網膜の炎症性の障害である。いくつかの実施形態では、障害は脈絡膜炎である。本明細書で用いられているように、「脈絡膜炎」とは、ブドウ膜、毛様体、および脈絡膜の炎症性の障害である。
異常な血管新生
特定の実施形態において、被験体の血管新生を防ぐまたは減少させる方法が本明細書で開示され、該方法は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む組成物を、被験体に投与する工程を含む。本明細書で使用されているように、「血管新生」とは、新しい血管の形成のことを言う。特定の例において、血管新生は、腫瘍の成長と転移を促進する。さらに、特定の例において、異常な血管新生は、滲出型加齢黄斑変性(wARMD)と糖尿病性増殖網膜症の基盤である。特定の例では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、血管新生を防ぐまたは減らす。
特定の例においては、VEGF受容体−2(VEGFR−2)へのリガンドの結合は、チロシンキナーゼシグナル伝達カスケードを開始させ、これは、血管透過性(NOを生成するeNOS)、増殖/生存(bFGF)、遊走(ICAM/VCAM/MMP)、および、最後には成熟した血管への分化をさまざまに刺激する因子の産生を刺激する。特定の例においては、VEGFR−2がそのリガンドに結合した後に、内皮細胞は、毛細管に似たチューブ構造を形成する。
本明細書で使用されているように、「滲出型加齢黄斑変性」、「wARMD」、または「滲出型ARMD」は、脈絡膜からの血管の増殖によって特徴付けられる目の障害を意味する。特定の例においては、滲出型ARMDは、黄斑よりも下での血液とタンパク質の漏出による、視力喪失を引き起こす。特定の例においては、これらの血管からの出血、漏出、および、瘢痕は、治療せずに放っておくと、光受容体への復元不能な損害と急速な視力喪失をもたらす。
本明細書で使用されているように、「糖尿病性増殖性網膜症」は、血管壁の機能不全によって特徴付けられた目の障害を意味する。特定の例では、網膜中の酸素の欠乏は、網膜に沿った、および、硝子体液中の血管新生を引き起こす。特定の例では、新しい血管は出血し、視覚を曇らせ、網膜を破壊する。
特定の例では、毛細管の増殖は腫瘍に栄養分を与えて、腫瘍を拡大させる。特定の例では、毛細管の増殖により、細胞廃棄物の迅速な除去が可能となり、腫瘍の成長を可能にする。特定の例において、血管新生は転移を促す。特定の例では、毛細管の増殖により、癌細胞が血管に入って、新しい部位で新しい腫瘍を確立することができる可能性が増える。
いくつかの実施形態で、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を使用して処置される典型的な癌型は、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、エイズ関連の癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、星細胞腫、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腺腫、バーキットリンパ腫、類癌腫、癌、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、子宮頚部癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、食道癌、性腺外胚細胞腫瘍、目癌、眼球内黒色腫、目癌、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸間質性腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(頭蓋外)、胚細胞腫瘍(性腺外)、胚細胞腫瘍(卵巣)、栄養膜腫瘍、神経膠腫、ヘアリー・セル白血病、頭頚部癌、肝細胞性(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部と視覚路の神経膠腫、眼球内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、喉頭癌、白血病(急性リンパ芽球性)、白血病(急性骨髄性)、白血病(慢性リンパ球性)、白血病(慢性骨髄性)、口唇癌と口腔癌、肝臓癌、肺癌(非小細胞)、肺癌(小細胞)、リンパ腫(皮膚のT細胞)、リンパ腫(非ホジキン)、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、原因不明の転移性頚部扁平上皮癌、多発性内分泌腺腹、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨の骨肉腫/悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、低悪性度卵巣腫瘍、膵癌、副甲状腺癌、陰茎癌、クロム親和細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経上皮腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(カポジ)、肉腫(子宮)、セザリー症候群、皮膚癌(非メラノーマ)、皮膚癌(メラノーマ)、皮膚癌(メルケル細胞)、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(胃)癌、T細胞性リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、栄養膜腫瘍、妊娠性の尿道癌、子宮癌、子宮内膜の子宮肉腫、膣癌、視覚路と視床下部の神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、および、ウィルムス腫瘍が挙げられる。
創傷治癒および組織再生
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物は、創傷被覆として使用されるか、または、創傷治癒を促すために使用される。いくつかの実施形態では、組織は損傷され、危険にさらされ、または、傷害(例えば、熱傷、外科的切開、感染、外傷、または毒素に由来する壊死の領域、裂傷)によって失われる。いくつかの実施形態では、組織は損傷され、危険にさらされ、または、熱傷により失われた。いくつかの実施形態では、組織は損傷され、危険にさらされ、または、創傷(例えば、切開、裂傷、摩耗)により失われた。いくつかの実施形態では、組織は損傷され、危険にさらされ、または、壊死により失われた。いくつかの実施形態では、組織は損傷され、危険にさらされ、または、潰瘍により失われた。
熱傷
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、熱傷に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、第1度熱傷に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、第2度火傷に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、第3度熱傷に適用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、熱傷に置かれる前に基質に適用される。
創傷
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、皮膚の創傷(例えば、切開、裂傷、摩耗、潰瘍、穿刺、貫通)に適用される。いくつかの実施形態において、創傷は虚血性創傷である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷を処置する。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、臓器の切開(例えば、皮膚、脳、胃、腎臓、肝臓、腸、肺、膀胱、気管、食道、膣、尿管、および血管壁)に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、外科的切開に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、結腸切除の部位に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、胃切除の部位に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、胸の外科手術(例えば、乳房縮小手術、豊胸手術、および乳房切除術)の部位に適用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷に置かれる前に基質に適用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、皮膚の切開(例えば、上皮、真皮、および/または皮下組織の切開)の上の被覆として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、痔疾の手術後に皮膚を修復または補充するために使用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷を処置する。
壊死
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、(例えば感染からの)壊死組織の領域一帯の保護移植片(protective graft)として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、壊死した皮膚の領域一帯の保護移植片に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、壊死組織の領域に置かれる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、壊死組織に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、壊死組織を処置する。
潰瘍
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍上の保護被覆として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍を処置する。いくつかの実施形態では、潰瘍は、糖尿病性足病変または下腿潰瘍のような糖尿病性潰瘍である。いくつかの実施形態において、潰瘍は虚血性創傷である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍を処置する。いくつかの実施形態では、潰瘍は非治癒性の潰瘍である。例えば、いくつかの実施形態では、非治癒性の潰瘍は、治療せずに約3−4週間存在した皮膚上の創傷または潰瘍である。
いくつかの実施形態では、潰瘍は、足潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍または動脈不全潰瘍)である。いくつかの実施形態では、足潰瘍の処置は、(a)創傷を(例えば、創傷を清拭して)準備することと、(b)本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物を、創傷上に置くこと、を含む。いくつかの実施形態では、足潰瘍の治療は、(a)創傷を(例えば、創傷を清拭して)準備することと、(b)本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物を、創傷上に置くことと、(c)防護壁(例えば、Silvercellのドレッシング材、metipel、ガーゼ、または包帯)で医薬組成物を覆うこと、を含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍を処置する。
いくつかの実施形態では、潰瘍は静脈うっ血(VS)潰瘍である。いくつかの実施形態では、VS潰瘍の処置は、(a)創傷を(例えば、創傷を清拭して)準備することと、(b)本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物を、創傷上に置くことを含む。いくつかの実施形態では、VS潰瘍の処置は、(a)創傷を(例えば、創傷を清拭して)準備することと、(b)本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物を、創傷上に置くことと、(c)防護壁(例えば、創傷ベール、抗菌ドレッシング、ガーゼ、または包帯)で医薬組成物を覆うことを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍を処置する。
いくつかの実施形態では、潰瘍は角膜潰瘍(すなわち、潰瘍性角膜炎)である。いくつかの実施形態では、角膜潰瘍の処置は、(a)創傷を(例えば、創傷を清拭して)準備することと、(b)本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物を、創傷上に置くことを含む。いくつかの実施形態では、角膜潰瘍の処置は、(a)創傷を(例えば、創傷を清拭して)準備することと、(b)本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物を、創傷上に置くことと、(c)防護壁(例えば、コンタクトレンズまたは包帯)で医薬組成物を覆うことを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、創傷に置かれる前に基質に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、潰瘍を処置する。
治療用細胞による治療
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、細胞療法と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、治療用細胞とともに同時投与される。治療用細胞は、疾患または疾病の処置のための治療的性質を示す任意の細胞を含んでいる。いくつかの実施形態では、治療用細胞は1つ以上の治療用の遺伝子産物を異種発現する組み換え細胞である。いくつかの実施形態では、治療用細胞は移植される。いくつかの実施形態では、治療用細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、治療用細胞は、1つ以上の幹細胞マーカー(例えば、Oct−3/4 (Pou5f1), Sox2, c−Myc, and Klf4)を発現する細胞である。
いくつかの実施形態では、細胞療法は幹細胞の移植である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、移植の幹細胞の拡張と組織の再生を促すために投与される。いくつかの実施例において、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞の移植によって引き起こされる炎症、瘢痕化、および、異常な血管新生を減少させるまたは阻害するために、使用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、支持細胞層を置換することによって、生体外で拡張中に幹細胞の特徴を維持するために使用される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化細胞を幹細胞に再プログラム化するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、その後、被験体に移植するために、生体外で幹細胞を増殖して培養するべく使用される。
いくつかの実施形態では、幹細胞治療は胚性幹細胞の治療である。いくつかの実施形態では、幹細胞治療は成体幹細胞の治療である。いくつかの実施形態では、幹細胞治療は間葉系幹細胞の治療である。いくつかの実施形態では、幹細胞治療は、限定されないが、心疾患、癌、糖尿病、脊髄損傷、神経変性病、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、デュシェンヌ型筋ジストロフィ、筋損傷またはジストロフィ、脳卒中、熱傷、肺疾患、網膜疾患、腎臓病、変形性関節症、および、関節リウマチなどの疾患または障害の処置のために施される。
いくつかの実施形態では、幹細胞は糖尿病を処置するために使用される。1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のインスリン分泌β細胞の自己免疫媒介性の破壊に起因する。2型糖尿病は、全身性のインスリン抵抗性と、膵臓のβ細胞によるインスリン分泌の減少に起因する。幹細胞はインスリン産生細胞に分化するように生体外で示されている(例えば、Schuldiner et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97:11307−11312; Guo et al., (2009) Endocr Rev 30:214−227を参照)。したがって、いくつかの実施形態では、ESCとASCを含む幹細胞、および、部分的に分化した幹細胞などのその誘導体は、膵臓のβ細胞の再生のための幹細胞治療で使用される。
いくつかの実施形態では、治療のために使用される幹細胞または分化細胞は、マイクロカプセル装置にカプセル化される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む。いくつかの実施形態において、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルに共有結合される。いくつかの実施形態において、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、マイクロカプセルの表面、例えば、内表面または外表面、あるいは、その両方で組み立てられる。いくつかの実施形態において、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、マイクロカプセルをコーティングするように調剤される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、細胞への栄養分の通路がマイクロカプセルに至ることを可能にする孔を備え、および/または、カプセルに包まれた細胞によって分泌されたタンパク質と分子(例えば、インスリン)が、マイクロカプセルから流れ出ることを可能にする。いくつかの実施形態では、細胞は、まず、Matrigel(登録商標)でコーティングされたビーズなどのマイクロキャリア上で固定され、その後、マイクロカプセル内に封入される。例えば、幹細胞のような細胞のカプセル封入のための方法は、当該技術分野では知られており、例えば、Serra et al. (2011) PLoS ONE 6(8):e23212に記載されている。いくつかの実施形態では、細胞のカプセル化のための任意の方法は、本明細書で提供された方法を用いて使用される。
いくつかの実施形態では、同種異系の治療用幹細胞(例えば、インスリン産生膵島細胞)は、インスリンの産生のためにマイクロカプセル装置に封入される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞の拡張を促す。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、糖尿病の治療のために使用される幹細胞を含むマイクロカプセルに対する炎症反応を阻害するまたは減少させる。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞を含むマイクロカプセルに対する炎症反応を阻害するまたは減少させる。
軟組織の使用
特定の実施形態において、レシピエントの損傷した、危険に晒された、または、失われている軟組織(例えば、腱)を、修復する、再構成する、置換する、または、補充するための、本明細書で開示されnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用が本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、組織に直接適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、細胞または組織に基づいた治療と共に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、細胞、複数の細胞、または、組織と混合され、組織に基づいた治療の一部として投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、細胞、複数の細胞、または組織を覆うために使用され、組織に基づいた治療の一部として投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、軟組織の切開にわたって被覆として使用される(例えば、眼瞼は、軟組織の異なる層の間に組織面を形成する)。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、その後、軟組織の切開にわたって被覆として使用される(例えば、眼瞼は、軟組織の異なる層の間に組織面を形成する)。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、軟組織の構造の(形成術的)支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節または腱の修復における接着を防ぐ。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、腱または関節の修復(回旋筋腱板修復、手の腱の修復など)で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、腱または関節を強化するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、周囲の組織、腱または関節に、治癒しつつある腱が接着するのを防ぐために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、腱での瘢痕組織の形成を防ぐために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、後脛骨腱、腓骨腱、屈筋腱と伸筋腱、および、外側の足首の靭帯を含む、足と足首の小さな腱と靭帯を強化するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、四頭筋と膝を囲む膝蓋腱の第1次修復を強化するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、関節置換の骨移植のための骨膜パッチとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、全体的な関節修正手術の後に、不十分な殿部と膝のカプセル状組織を強化するために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、断裂した回旋筋腱板の修復で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、回旋筋腱板の筋肉または腱(例えば、棘上筋腱)にわたるパッチとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、回旋筋腱板の筋肉または腱(例えば、棘上筋腱)を再構成するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、回旋筋腱板の筋肉または腱(例えば、棘上筋腱)を増強するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、回旋筋腱板の筋肉または腱(例えば、棘上筋腱)を強化するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、回旋筋腱板の筋肉または腱(例えば、棘上筋腱)に対する軟組織の接着を防ぐために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯肉の修復で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯肉退縮の修復で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、歯肉上のパッチとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、露出した歯根表面にわたるパッチとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯肉を再構成するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯肉を増強するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯肉を強化するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯肉に対する軟組織の接着を防ぐために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、筋膜の切開または断裂にわたる保護グラフトとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、筋膜中の構造(形成術的)支持体として用いられる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、筋膜の置換または補充として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、ヘルニアを修復するために(例えば、筋膜を修復するために)使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、鼠径ヘルニアを修復するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、大腿ヘルニアを修復するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、臍ヘルニアを修復するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、瘢痕ヘルニアを修復するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、横隔膜ヘルニアを修復するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3複合体は、クーパーヘルニア、上腹壁ヘルニア、裂孔ヘルニア、リトルヘルニア、腰ヘルニア、マイドルヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、パンタロンヘルニア、傍食道型ヘルニア、臍傍ヘルニア、会陰ヘルニア、腹膜前ヘルニア、リクターヘルニア、滑脱ヘルニア、坐骨ヘルニア、半月状線ヘルニア(spigelian hernia)、スポーツヘルニア、ベルポーヘルニア、または、アミアンドヘルニアを修復するために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、脊椎円板のヘルニア形成を修復するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、脊椎円板の切開または断裂にわたる保護グラフトとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、線維輪の切開または断裂にわたる保護グラフトとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、脊椎円板の構造的(形成術的)な支持体として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、線維輪の構造的(形成術的)な支持体として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、脊椎円板の置換または補充として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、脊椎円板の構造的(形成術的)な支持体として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、線維輪の置換または補充として使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、脳、または、髄膜(すなわち、硬膜、軟膜、および/または、くも膜)のうちの1つ(またはすべて)の切開にわたって使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、髄膜(すなわち、硬膜、軟膜、および/または、くも膜)のうちの1つ(またはすべて)の構造的(形成術的)な支持体として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、髄膜(すなわち、硬膜、軟膜、および/または、くも膜)のうちの1つ(またはすべて)の代用品として使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、肺または胸膜の切開にわたって使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、胸膜の構造的(形成術的)な支持体として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、胸膜の代用品として使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、鼓膜の切開にわたって使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、鼓膜の構造的(形成術的)な支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、鼓膜の代用品として使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、心臓または心膜中の切開にわたって保護グラフトとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、心膜の構造的(形成術的)な支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、心膜の代用品として使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、腹膜中の切開にわたって保護グラフトとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、腹膜の構造的(形成術的)な支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、腹膜の代用品としてに使用される。
眼科用途
特定の実施形態において、レシピエントの損傷した、危険に晒された、または、失われつつある眼組織を、修復する、再構成する、置換する、または、補充するための、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の使用が、本明細書で開示されている。
緑内障の処置
本明細書で使用されているように、「緑内障」とは、視神経中の視神経細胞の喪失によって特徴付けられる障害を意味する。特定の例において、緑内障は、前眼房(AC)中の眼内圧の増加に部分的にまたは完全に起因する。眼内圧は、目の毛様体突起の液体の房水の産生と、線維柱帯網を介した房水のドレナージとに依存して変化する。
緑内障ドレナージ装置(GDD)は、房水を排出する代替経路を提供することによって眼内圧を軽減するために、目に埋め込まれる医療装置である。被覆されていないままであれば、GDDチューブは腐食して、目を眼内の感染症にかかりやすくする。したがって、GDDチューブを被覆される必要がある。現在、GDDチューブを被覆するために使用されるパッチは、心膜、強膜、および角膜から作られる。これらのパッチは約400−550ミクロンの厚さである。このような薄さのパッチは、結果として2年間で25%溶けてしまい、シャントチューブを再度晒したままにする可能性がある。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、GDDチューブを被覆するために使用される。いくつかの実施形態では、基質/nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、300−600ミクロンの厚さである。いくつかの実施形態では、基質/nHC−HA/PTX3または基質/rcHC−HA/PTX3複合体は、2年で25%も溶けない。
眼潰瘍の処置
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、目の持続的な上皮の欠損および/または潰瘍を覆うために使用される。
いくつかの実施形態では、潰瘍の基底部は、手術用スポンジで清拭され、潰瘍の端に(例えば、上皮が完全に接着するようになる目の部分に)隣接している接着性に乏しい上皮は取り除かれる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、レシピエントの目に移される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、その後、埋められる縫合糸の結び目(例えば、結節された10−0のナイロンの縫合糸、または、連続している10−0のナイロンの縫合糸)によって、目に固定される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、フィブリン接着剤を用いることによって目に固定される。いくつかの実施形態では、保護層は、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体、あるいは、目(例えばコンタクトレンズ)全体に適用される。いくつかの実施形態では、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、さらに抗生物質(例えば、ネオマイシン、ポリミキシンb硫酸塩、および、デキサメタゾン)を含む。
結膜、強膜、眼瞼、および、眼窩縁の表面の再構成
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、結膜、強膜、眼瞼、および、眼窩縁の表面の再構成に使用される。いくつかの実施形態では、結膜の表面に対する損傷は、瞼球癒着の溶解、腫瘍、病変、および/または、瘢痕組織の外科的摘出、エキシマー・レーザーによるレーザー屈折矯正角膜切除術および治療用の角膜切除、またはそれらの組み合わせに起因する。
冠状動脈用途
特定の実施形態において、レシピエントの損傷した、危険に晒された、または、失われつつある冠状動脈を、修復する、再構成する、置換する、または、補充するための、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の使用が、本明細書で開示されている。
虚血再灌流損傷の予防
例えば心筋梗塞または脳卒中などの虚血によって引き起こされた急性急性炎症の結果として生じる組織損傷の阻害または減少のための、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の使用が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、限定されないが、心筋梗塞または脳卒中などの虚血性の疾病を抱える被験体に投与される。
冠動脈バイパス術
冠動脈バイパス術における本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の使用が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、アテローム性動脈硬化を特徴とする動脈の部分を迂回するために、冠動脈に移植される。
心臓弁
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、心臓弁にわたって適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、心臓弁の構造的(形成術的)な支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、心臓弁の代替物として使用される。
静脈および動脈
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、血管または動脈に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、血管または動脈の構造的(形成術的)な支持体として使用される。
神経用途
特定の実施形態において、レシピエントの損傷した、危険に晒された、または、失われつつある神経組織を、修復する、再構成する、置換する、または、補充するための、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の使用が、本明細書で開示されている。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、神経(例えば末梢神経)にわたって被覆として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、神経移植片、神経移行術、または修復された神経にわたる被覆として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、神経(例えば末梢神経)中の切開にわたる被覆として、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、神経(例えば末梢神経)の構造的(形成術的)な支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、神経修復における接着を防ぐ。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、損傷した神経のための非収縮性の容器(encasement)として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、瘢痕形成、カプセル化、慢性的な圧縮、神経の拘束(tethering)および神経絞扼を防ぐまたは最小限に抑える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、神経腫形成を防ぐまたは最小限に抑える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、神経修復の間に存在する内因性の成長因子(すなわち、神経成長因子)の移動を防ぐまたは最小限に抑える。
脊髄用途
特定の実施形態において、脊椎手術中の、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物の使用が、本明細書で開示されている。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物は、椎弓切除中に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば、椎弓切除)の後に、硬膜外繊維症および/または瘢痕接着を減らすまたは防ぐために、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば、椎弓切除)の後に、硬膜と重なった組織の間に注入される。いくつかの実施形態では、脊椎手術(例えば、椎弓切除)の後に、硬膜と重なる組織との間で本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物を注入することで、硬膜への繊維芽細胞の移動と硬膜上でのコラーゲン沈着を減らすまたは防ぐ。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば椎弓切除)後に増殖性の瘢痕化の進行を低下させるまたは防ぐために、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、手術後の(例えば、椎弓切除後の)硬膜外/硬膜上の/神経周囲の瘢痕の進行を低下させるまたは防ぐために、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば、椎弓切除)後に、増殖性の瘢痕化の進行を低下させるまたは防ぐために、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、椎弓切除後の膜の進行を低下させるまたは防ぐために使用される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3または本明細書に記載のrcHC−HA/PTX3複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば椎弓切除)後の硬膜外の圧縮または硬膜の係留の進行を低下させるまたは防ぐために、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば椎弓切除)後の、係留された神経根の進行を低下させるまたは防ぐために、使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎手術(例えば椎弓切除)後の、くも膜炎の進行を低下させるまたは防ぐために、使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3、または、rcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、小片に分けた(morselized)骨組織をさらに含む。いくつかの実施形態では、小片に分けた骨組織を含む、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、脊椎固定術手順の間に使用される。いくつかの実施形態では、小片に分けた骨組織を含む、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、隣接する椎骨間に注入される。いくつかの実施形態では、2つの隣接する椎骨間に小片に分けた骨組織を含む、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の注入は、椎骨の融合を促進する。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、硬膜中の切開にわたって保護グラフトとして使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、硬膜の構造的(形成術的)な支持体として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、基質に適用され、基質/nHC−HA/PTX3、または、基質/rcHC−HA/PTX3の複合体は、硬膜の代替物として、使用される。
nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の様々な用途
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、パッチまたは創傷ドレッシングに適用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、皮膚の充填剤として使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、皮膚下の化粧紙に注入される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、顔のしわと加齢線(例えば、ほうれい線、melomental folds、「カラスの足」、および、前頭部のしわ)の下に注入される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、口唇拡大術に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、唇に注入される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節炎(例えば、変形性関節症、関節リウマチ、化膿性関節炎、強直性脊椎炎、脊椎症)を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節炎の関節(例えば膝)に注入される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、足の関節炎を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、第1の中足指節(MTP)関節(例えば、強剛母趾)の関節炎を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、背側の唇切除術(dorsal cheilectomy)後にMTP関節に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物の投与は、強剛母趾または背側の唇切除術の手順に関連した1つ以上の有害な症状(例えば、瘢痕化、関節硬直、腫脹、炎症、および痛み)を減少させる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、骨棘に関連した1つ以上の症状(例えば、瘢痕、関節硬直、腫脹、炎症、および痛み)を処置するために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、個体の骨吸収を阻害するために使用される。いくつかの実施形態では、個体は、関節炎、骨粗鬆症、歯槽骨の劣化、パジェット病、または、骨腫瘍を患っている。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節に注入される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、(例えば、創傷ドレッシングまたは包帯を使用することによって)骨と接触する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、骨ステント、骨インプラント、または人工骨(例えば、オッセオインテグレーテッドインプラント)をコーティングする。本明細書で使用されているように、「オッセオインテグレーテッドインプラント」は、骨芽細胞と支持する結合組織が移動する先の孔部を含む、3次元のインプラントを意味する。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨の髄内管に挿入される。いくつかの実施形態では、骨ステントは足根洞に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは膝または関節に置かれた。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨折箇所に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは拡張および収縮可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、個体の骨形成を促進するまたは誘導するために使用される。いくつかの実施形態では、個体は、関節炎、骨粗鬆症、歯槽骨の劣化、パジェット病、または骨腫瘍を患っている。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節に注入される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、(例えば、創傷ドレッシングまたは包帯を用いることによって)骨と接触する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、骨ステント、骨インプラント、または人工骨(例えば、オッセオインテグレーテッドインプラント)をコーティングする。本明細書で使用されているように、「オッセオインテグレーテッドインプラント」は、骨芽細胞と支持する結合組織が移動する先の孔部を含む、3次元のインプラントを意味する。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨の髄内管に挿入される。いくつかの実施形態では、骨ステントは足根洞に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは膝または関節に置かれた。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨折個所に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは拡張および収縮可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、破骨細胞分化を阻害するために使用される。いくつかの実施形態では、個体は、関節炎、骨粗鬆症、歯槽骨の劣化、パジェット病、または骨腫瘍を患っている。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節に注入される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、(例えば、創傷ドレッシングまたは包帯を用いることによって)骨と接触する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、骨ステント、骨インプラント、または人工骨(例えば、オッセオインテグレーテッドインプラント)をコーティングする。本明細書で使用されているように、「オッセオインテグレーテッドインプラント」は、骨芽細胞と支持する結合組織が移動する先の孔部を含む、3次元のインプラントを意味する。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨の髄内管に挿入される。いくつかの実施形態では、骨ステントは足根洞に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは膝または関節に置かれた。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨折個所に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは拡張および収縮可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、個体の骨芽細胞による鉱化作用を促すために使用される。いくつかの実施形態では、個体は、関節炎、骨粗鬆症、歯槽骨の劣化、パジェット病、または骨腫瘍を患っている。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節に注入される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、(例えば、創傷ドレッシングまたは包帯を用いることによって)骨と接触する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、骨ステント、骨インプラント、または人工骨(例えば、オッセオインテグレーテッドインプラント)をコーティングする。本明細書で使用されているように、「オッセオインテグレーテッドインプラント」は、骨芽細胞と支持する結合組織が移動する先の孔部を含む、3次元のインプラントを意味する。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨の髄内管に挿入される。いくつかの実施形態では、骨ステントは足根洞に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは膝または関節に置かれた。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨折個所に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは拡張および収縮可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、個体の骨吸収と骨形成の平衡を保つために使用される。いくつかの実施形態では、個体は、関節炎、骨粗鬆症、歯槽骨の劣化、パジェット病、または骨腫瘍を患っている。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、関節に注入される。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、(例えば、創傷ドレッシングまたは包帯を用いることによって)骨と接触する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、骨ステント、骨インプラント、または人工骨(例えば、オッセオインテグレーテッドインプラント)をコーティングする。本明細書で使用されているように、「オッセオインテグレーテッドインプラント」は、骨芽細胞と支持する結合組織が移動する先の孔部を含む、3次元のインプラントを意味する。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨の髄内管に挿入される。いくつかの実施形態では、骨ステントは足根洞に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは膝または関節に置かれた。いくつかの実施形態では、骨ステントは骨折個所に置かれる。いくつかの実施形態では、骨ステントは拡張および収縮可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯科矯正または歯周の状態を処置するために、使用される。いくつかの実施形態では、歯周の状態は、歯肉炎、歯肉退縮、または、歯周炎から選ばれる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、抗炎症剤として使用されるか、または、骨結合または治癒を促すために使用される。いくつかの実施形態では、インプラントの骨結合、抗炎症、および、治癒を促進するために、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、歯科インプラントと組み合わせて使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、嗄声または発声障害を処置する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、声帯を修復するため喉頭形成術のために注入されるべく使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む医薬組成物は、医療用移植組織(例えばステント)上でコーティングされる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示された医療用の移植組織/nHC−HA/PTX3、または、移植組織/rcHC−HA/PTX3の複合体は、個体注入され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、個体に部分的にまたは完全に放出される。いくつかの実施形態では、医療用の移植組織は、ステント(例えば骨ステントまたは冠状動脈ステント)である。いくつかの実施形態では、医療用の移植組織は骨ステントである。いくつかの実施形態では、医療用の移植組織は冠状動脈ステントである。
組み合わせ
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、第2の治療薬と共に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、2つ以上の治療薬と共に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、1つ以上の治療薬と共に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上治療薬と共に使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と第2の治療薬は、同じ剤形で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と第2の治療薬は、個別の剤形で投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と第2の治療薬は、同時に(例えば、同時に、本質的に同時に、または同じ処置プロトコルで)投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と第2の治療薬は、連続して投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、第2の治療薬の前後に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の第2の活性薬剤の投与間の時間は、医薬品の効能、可溶性、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、および、動態プロファイルといった、それぞれの医薬品の特性に依存して、数分から数時間まで変動する。いくつかの実施形態では、標的分子濃度の日周期の変化は、最適な投与間隔を決定する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体と、第2の活性剤の投与間の時間は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週、約2週、約3週、約1か月、あるいは、それよりも長い。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の同時投与は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を単独で投与する際に必要とされる投与量よりも少ない投与量のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3複合体がが必要とされる。いくつかの実施形態では、第2の治療薬の同時投与は、第2の治療薬を単独で投与する際に必要とされる投与量よりも少ない投与量の第2の治療薬が必要とされる。併用療法レジメンで使用される薬物と他の薬剤の治療上有効な量を実験的に決定する方法は、当該技術分野では知られており、記載されている。例えば、メトロノミック投与の使用、すなわち、有毒な副作用を最小限に抑えるため、より頻繁により少ない投与量を提供することは、当該技術分野で広範囲に述べられている。併用療法は、個体の臨床管理を助けるために様々な時点で開始および停止する定期的処置もさらに含む。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と、1つ以上の追加の治療薬の併用療法が修正される。いくつかの実施形態では、併用療法は修正され、それによって、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、第2の治療薬の量に対して増加する。いくつかの実施形態では、併用療法は修正され、それによって、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量は、第2の治療薬の量に対して減少する。いくつかの実施形態では、併用療法は修正され、それによって、第2の治療薬の量は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量に対して増加する。いくつかの実施形態では、併用療法は修正され、それによって、第2の治療薬の量は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の量に対して減少する。
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、細胞毒性薬、抗菌剤、抗血管形成剤、化学療法剤、抗腫瘍薬、または、放射線療法から選ばれる。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、アルキル化剤、抗代謝産物、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxins)、抗悪性腫瘍酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、プロカルバジン、ミトキサントロン、白金配位化合物、生体応答修飾物質および成長抑制剤、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血成長因子、アロマターゼ阻害薬、抗エストロゲン、抗アンドロゲン、コルチコステロイド、ゴナドレリン・アゴニスト、微小管活性薬剤、ニトロソウレア、脂質またはタンパク質キナーゼ標的薬剤、剤、免疫調節剤(IMiDs)、タンパク質または脂質ホスファターゼ標的薬剤、抗血管新生薬、Akt阻害剤、IGF−I阻害剤、FGF3修飾物質、mTOR阻害剤、Smac模倣薬、HDAC阻害剤、細胞分化を引き起こす薬剤、ブラジキニン1受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ヘパラナーゼ阻害剤、リンホカイン阻害剤、サイトカイン阻害剤、IKK阻害剤、P38MAPK阻害剤、HSP90阻害剤、多標的キナーゼ阻害剤、ビスホスホネート、ラパマイシン誘導体、抗アポトーシス経路阻害剤、アポトーシス経路アゴニスト、PPARアゴニスト、RARアゴニスト、RASアイソフォームの阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、SHIP活性化剤−AQX−MN100、Humax−CD20(オファツムマブ)、CD20アンタゴニスト、IL2−ジフテリア毒素融合物、または、および、これらの組み合わせから選ばれる。いくつかの実施形態において、抗菌剤は、抗ウイルス剤、抗菌剤、または、抗真菌剤である。非限定的な典型的な抗菌剤は、アミノグリコシド、ベータ・ラクタム、キノロンまたはフルオロキノロン、マクロライド、スルホンアミド、スルファメトキサゾール(sulfamethaxozoles)、テトラサイクリン、ストレプトグラミン、オキサゾリジノン(リネゾリドなど)、クリンダマイシン、リンコマイシン、リフォマイシン、グリコペプチド、ポリミキシン(polymxins)、リポ−ペプチド系抗生物質、同様に、薬理学的に許容可能なナトリウム塩、薬理学的に許容可能なカルシウム塩、薬理学的に許容可能なカリウム塩、脂質製剤、上記のものの誘導体および/またはアナログとして分類されたものを含んでいる。抗真菌薬の非限定的な典型的な分類としては、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、テルコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール(UK109,496)、ポサコナゾール、ラブコナゾール、または、フルトリマゾールといった、イミダゾールまたはトリアゾール;アムホテリシンB、リポソームアムホテリシンB、ナタマイシン、ナイスタチン、および、ナイスタチン脂質製剤といったポリエン抗真菌薬;カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン(anidulfungin)、シロファンギン(cilofungin)などのエキノキャンディンを含む、細胞壁の活発な環式リポペプチド抗真菌剤;LY121019;LY303366;テルビナフィン(terbinafme)などの抗真菌剤のアリルアミン基が挙げられる。抗真菌薬のさらに別の非限定的な例としては、ナフチフィン、トルナフテート、メディオシディン(mediocidin)、カンジシジン、トリコマイシン、ハマイシン、オーレファンギンン(aurefungin)、アスコシン、アイファッティン(ayfattin)、アザコルチン(azacolutin)、トリコマイシン、レボリン、ヘプタマイシン(heptamycin)、キャンディマイシン(candimycin)、グリセオフルビン、BF−796、MTCH 24、BTG−137586、プラジミシン(pradimicins)(MNS 18184)、ベナノマイシン(benanomicin);アムビゾーム;ニッコマイシン Z;フルシトシン、または、ペリマイシンが挙げられる。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、シドホビル、アマンタジン、リマンタジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル(pencyclovir)、ファムシクロビル、ホスカーネット(foscamet)、リバビリン、または、バラシクロビル(valcyclovir)を含んでいる。いくつかの実施形態において、抗菌剤は、自然免疫ペプチドまたはタンパク質である。先天性のペプチドまたはタンパク質のいくつかの典型的なクラスは、トランスフェリン、ラクトフェリン、デフェンシン、ホスホリパーゼ、リゾチーム、カテリシジン、セルプロシジン(serprocidins)、殺菌性透過性増加タンパク質、両親媒性のα螺旋形ペプチド、および、他の合成抗菌タンパク質である。いくつかの実施形態において、抗菌剤は防腐剤である。
幾つかの実施形態では、第2の治療薬は、ARRY−797、ダカルバジン(DTIC)、アクチノマイシンC2、C3、D、およびF1、シクロホスファミド、メルファラン、エストラムスチン、マイタンシノール、リフォマイシン、ストレプトバリシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、デトルビシン(detorubicin)、カルミノマイシン、エソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシンA、A2、および、B、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン(methylenedioxycamptothecin)、9−ニトロカンプトテシン(nitrocamptothecin)、ボルテゾミブ、テモゾロミド、TAS103、NPI0052、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA−2、コンブレタスタチンA−4、カリチアマイシン、ネオカルジノスタチン(neocarcinostatins)、エポチロンA B、C、および、半合成の変異体、ハーセプチン、リツキサン、CD40抗体、アスパラギナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ロイプロリドおよびペガスパルガーゼ、5−フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、プトラフル(ptorafur)、5’−デオキシフルオロウリジン(deoxyfluorouridine)、UFT、MITC、S−1カペシタビン、ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、トレミフェン(toremefine)、トルムデックス(tolmudex)、チミタック(thymitaq)、フルタミド、フルオキシメステロン、ビカルタミド、フィナステリド、エストラジオール、トリオキシフェン(trioxifene)、デキサメタゾン、酢酸リュープロレリン、エストラムスチン、ドロロキシフェン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、アミノグルテチミド、テストラクトン、テストステロン、ジエチルスチルベストロール、ヒドロキシプロゲステロン、マイトマイシンA、B、およびC、ポルフィロマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、テトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチン、サリドマイド、レナリドミド、CI−973、テロメスタチン、CHIR258、Rad 001、SAHA、チューバシン(Tubacin)、17−AAG、ソラフェニブ、JM−216、ポドフィロトキシン、エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、タルセバ、イレッサ、イマチニブ、ミルテホシン、ペリフォシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロ・メトトレキサート、6−メルカプトプリン、チオグアニン、アザッツオプリン(azattuoprine)、アロプリノール、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン、2−クロロアデノシン(chloroadenosine)、デオキシシチジン、サイトシンアラビノサイド、シタラビン、アザシチジン、5−アザシトシン、ゲムシタビン、5−アザシトシン・アラビノシッド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ロイロシン(leurosine)、ロイロシジン(leurosidine)およびビンデシン、パクリタキセル、タキソテール(taxotere)、および/または、ドセタキセルから選ばれる。
いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、ナイアシン、フィブラート、スタチン、Apo−A1模倣ポリペプチド(例えば、DF−4、Novartis)、apoA−Iの転写アップレギュレータ(up−regulator)、ACAT阻害剤、CETP修飾薬、糖タンパク質(GP)IIb/IIIa受容体アンタゴニスト、P2Y12受容体アンタゴニスト、Lp−PLA2阻害剤、抗腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン−1(IL−1)受容体アンタゴニスト、インターロイキン−2(IL−2)受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6(IL−6)受容体アンタゴニスト、インターロイキン−12(IL−12)受容体アンタゴニスト、インターロイキン−17(IL−17)受容体アンタゴニスト、インターロイキン−23(IL−23)受容体アンタゴニスト、細胞毒性薬、抗菌剤、免疫調節剤、抗生物質、T細胞同時刺激遮断薬、障害を緩和する抗リューマチ剤、B細胞除去剤、免疫抑制剤、抗リンパ球抗体、アルキル化剤、抗代謝産物、植物アルカロイド、テルペノイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、モノクローナル抗体、ホルモン療法(例えば、アロマターゼ阻害薬)、または、この組み合わせである。
いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、抗TGF−β抗体、抗TGF−β受容体遮断抗体、抗TNF抗体、抗TNF受容体遮断抗体、抗IL1β抗体、抗IL1β受容体遮断抗体、抗IL−2抗体、抗IL−2受容体遮断抗体、抗IL−6抗体、抗IL−6受容体遮断抗体、抗IL−12抗体、抗IL−12受容体遮断抗体、抗IL−17抗体、抗IL−17受容体遮断抗体、抗IL−23抗体、または、抗IL−23受容体遮断抗体である。
いくつかの実施形態において、第2の活性薬剤は、ナイアシン、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、DF4;(Ac−D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F−NH2)DF5;RVX‐208(Resverlogix);アバシミベ(avasimibe);パクチミベ(pactimibe)硫酸塩(CS−505);CI−1011(2,6−ジイソプロピルフェニル[((2、4,6−トリイソプロピルフェニル)アセチル]スルファメート));CI−976(2,2−ジメチル−N−(2,4,6−トリメトキシフェニル)ドデカンアミド);VULM1457(1−(2,6−ジイソプロピル−フェニル)−3−[4−(4’−ニトロフェニルチオ)フェニル]尿素);CI−976(2,2−ジメチル−N−(2,4,6−トリメトキシフェニル)ドデカンアミド);E−5324(n−ブチル−N’−(2−(3−(5−エチル−4−フェニル−1H−イミダゾール−1−イル)プロポキシ)−6−メチルフェニル)尿素);HL−004(N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)テトラデシルチオアセトアミド);KY−455(N−(4,6−ジメチル−1−ペンチルインドリン−7−イル)−2,2−ジメチルプロパンアミド):FY−087(N−[2−[N’−ペンチル−(6,6−ジメチル−2,4−ヘプタジイニル)アミノ]エチル]−(2−メチル−1−ナフチル−チオ)アセトアミド);
MCC−147(Mitsubishi Pharma);F12511((S)−2’,3’,5’−トリメチル−4’−ヒドロキシ−アルファ−ドデシルチオアセトアニリド);SMP−500(Sumitomo Pharmaceuticals);CL277082(2,4−ジフルオロ−フェニル−N[[4−(2,2−ジメチルプロピル)フェニル]メチル]−N−(ヘプチル)尿素);F−1394((1s,2s)−2−[3−(2,2−ジメチルプロピル)−3−ノニルウレイド(nonylureido)]アミノシクロヘキサン−1−イル 3−[N−(2,2,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサン−4−カルボニル)アミノ]プロピオネート);CP−113818(N−(2,4−ビス(メチルチオ)−6−メチルピリジン−3−イル)−2−(ヘキシルチオ)デカン酸アミド);YM−750;トルセトラピブ;アナセトラピブ(anacetrapid);JTT−705(Japan Tobacco/Roche);アブシキシマブ;エプチフィバチド;チロフィバン;ロキシフィバン;バリアビリン(variabilin);XV459(N(3)−(2−(3−(4−ホルムアミジノフェニル(formamidinophenyl))イソキサゾリン−5−イル)アセチル)−N(2)−(1−ブチルオキシカルボニル)−2,3−ジアミノプロピオネート(diaminopropionate);SR 121566A(3−[N−{4−[4−(アミノイミノメチル)フェニル]−1,3−チアゾール−2−イル}−N−(1−カルボキシメチルピペリド−4−イル)アミノールプロピオン酸、トリヒドロクロリド);FK419((S)−2−アセチルアミノ−3−[(R)−[1−[3−(ピペリジン−4−イル)プロビオニル]ピペリジン−3−イルカルボニル]アミノ]プロピオン酸三水和物);クロピドグレル;プラスグレル;カングレロール(cangrelor);AZD6140(AstraZeneca);MRS 2395(2,2−ジメチル−プロピオン酸3−(2−クロロ−6−メチルアミノプリン−9−イル)−(2−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメチル)−プロピルエステル);Bx 667(Berlex Biosciences);Bx 048(Berlex Biosciences);ダラプラディブ(SB 480848);SB‐435495(GlaxoSmithKline);SB‐222657(GlaxoSmithKline);SB‐253514(GlaxoSmithKline);アレファセプト、エファリズマブ、メトトレキサート、アシトレチン、イソトレチノイン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、6−チオグアニン、ドボネックス、タクロネックス(Taclonex)、ベタメタゾン、タザロテン、水酸化クロロキン、スルファサラジン、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、リツキシマブ、トラスツズマブ、抗CD45モノクローナル抗体AHN−12、ヨウ素−131抗B1抗体(Corixa Corp.)、抗CD66モノクローナル抗体BW 250/183(NCI,Southampton General Hospital)、抗CD45モノクローナル抗体(NCI,Baylor College Medicine)、抗体抗anb3インテグリン(NCI)、BIW−8962(BioWa Inc.)、抗体BC8(NCI)、抗体muJ591(NCI)、インジウム In 111モノクローナル抗体MN−14(NCI)、イットリウムY 90モノクローナル抗体MN−14(NCI)、F105モノクローナル抗体(NIAID)、モノクローナル抗体RAV12(Raven Biotechnologies)、CAT−192(ヒト抗−TGF−Beta1モノクローナル抗体,Genzyme)、抗体3F8(NCI)、177Lu−J591(Weill Medical College of Cornell University)、TB−403(BioInvent International AB))、アナキンラ、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリンA、レフルノミド、d−ペニシラミン、アミトリプチリンまたはノルトリプチリン、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード、プラステロン、LJP 394(abetimussodium)、LJP1082(La Jolla Pharmaceutical)、エクリズマブ、ベリムマブ(belibumab)、rhuCD40L(NIAID)、エプラツズマブ、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、サリドマイド、抗胸腺細胞グロブリン−ウマ(Atgam,Pharmacia Upjohn)、抗胸腺細胞グロブリン−ウサギ(サイモグロブリン、Genzyme)、ムロモナブ−CD3(FDA Office of Orphan Products Development)、バシリキシマブ、ダクリズマブ、リルゾール、クラドリビン、ナタリズマブ、インターフェロンベータ−1b、インターフェロンベータ−1a、チザニジン、バクロフェン、メサラジン、アサコール、ペンタサ、メサラミン、バルサラジド、オルサラジン、6−メルカプトプリン、AIN457(抗IL−17モノクローナル抗体、Novartis)、テオフィリン、D2E7(Knoll Pharmaceuticalsからのヒト抗TNF mAb)、メポリズマブ(抗−IL−5抗体,SB 240563)、カナキヌマブ(抗−IL−1ベータ抗体,NIAMS)、抗−IL−2受容体抗体(ダクリズマブ、NHLBI)、CNTO 328(抗IL−6モノクローナル抗体,Centocor)、ACZ885(完全にヒト抗インターロイキン−1ベータモノクローナル抗体,Novartis)、CNTO1275(完全にヒト抗−IL−12モノクローナル抗体,Centocor)、(3S)−N−ヒドロキシ−4−({4−[(4−ヒドロキシ−2−ブチニル)オキシ]フェニル}スルホニル)−2,2−ジメト−hyl−3−チオモルホリンカルボキサミド(アプラタスタット(apratastat))、ゴリムマブ(CNTO 148)、オネルセプト(Onercept)、BG9924(Biogen Idec)、セルトリズマブペゴル(CDP870,UCB Pharma)、AZD9056(AstraZeneca)、AZD5069(AstraZeneca)、AZD9668(AstraZeneca)、AZD7928(AstraZeneca)、AZD2914(AstraZeneca)、AZD6067(AstraZeneca)、AZD3342(AstraZeneca)、AZD8309(AstraZeneca)、[(1R)−3−メチル−1−({(2S)−3−フェニル−2−[(ピラジン(pyrazin)−2−イルカルボニル)アミノ]プロパノイル}アミノ)ブチル]ボロン酸(ボルテゾミブ)、AMG−714(抗IL15ヒトモノクローナル抗体、Amgen)、ABT−874(抗IL−12モノクローナル抗体,Abbott Labs)、MRA(トシリズマブ、抗IL−6受容体モノクローナル抗体,Chugai Pharmaceutical)、CAT−354(ヒト抗インターロイキン13モノクローナル抗体,Cambridge Antibody Technology,MedImmune)、アスピリン、サリチル酸、ゲンチジン酸、サリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、サリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸ナトリウム、ジフルニサル、カプロフェン、フェノプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルロビプロフェン(flurobiprofen)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブトン(nabutone)、ケトロラク(ketolorac)、ケトロラクトロメタミン、ナプロキセン、オキサプロジン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、meclofenamate、メクロフェナム酸ナトリウム(meclofenamate sodium)、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、CS−502(Sankyo)、JTE−522(Japan Tobacco Inc.)、L−745,337(Almirall)、NS398(Sigma)、ベタメタゾン(Celestone)、プレドニゾン(Deltasone)、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ホルモテロール、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone aceponate)、ヒドロコルチゾンブテプレート(hydrocortisone buteprate)、酪酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone butyrate)、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニソロン、メチルプレドニソロンアセポネート(methylprednisolone aceponate)、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、ウロベタゾール;シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン;シクロホスファミド、クロラムブシル、ビンクリスチン;ビンブラスチン、ビノレルビン;ビンデシン、アザチオプリン;メルカプトプリン、フルダラビン;ペントスタチン、クラドリビン、5−フルオロウラシル(5FU);フロクスウリジン(FUDR);サイトシンアラビノサイド;メトトレキサート、トリメトプリム;ピリメタミン;ペメトレキセド;パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、テニポシド、イリノテカン;トポテカン;アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン;バルルビシン(valrubicine);イダルビシン(idarubicine);エピルビシン;ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン;トラスツズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、フィナステリド;ゴセレリン;アミノグルテチミド、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、エキセメスタン、4−アンドロステン−3,6,17−トリオン(「6−オキソ」);1,4,6−アンドロスタトリエン−3,17−ジオン(ATD);ホルメスタン;テストラクトン、ファドロゾール;またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は抗生物質である。いくつかの実施形態において、第2の治療薬は抗菌剤である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロール、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル(defprozil)、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン(ticarcillan)、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェナイド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニミリミド(sulfanimilimde)、スルファサラジン(sulfsalazine)、スルフイソキサゾール(sulfsioxazole)、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン(oxtetracycline)、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン(quinuspristin)/ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、および、これらの組み合わを含む。
いくつかの実施形態において、第2の治療薬剤は、抗ウイルス薬剤である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、アバカビル、アシクロビル、アデホビル(adfovir)、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール(arbidol)、アタザナビル、アトリプラ(artipla)、ブリブジン、シドホビル、コンビビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ホミビルセン(fomvirsen)、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、ガーダシル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンI型(例えば、IFNαおよびIFNβ)、インターフェロンII型、インターフェロンIII型を含む、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド(loviride)、MK−0518、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサバール(nexavir)、ヌクレオシドアナログ、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビル ジソプロキシル(disoproxil)、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン(viramidine)、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、および、これの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、第2の治療薬は抗真菌薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、アモロルフィン(amrolfine)、ブテナフィン(utenafine)、ナフチフィン、テルビナフィン、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ニッコマイシンZ、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アンフォテリシンB、リポソームニスタチン(nystastin)、ピマリシン、グリセオフルビン、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸、クリオキノール、および、これらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、第2の治療薬は抗寄生虫薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、アミトラズ、アモスカネート、アベルメクチン、カルバドックス、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamizine)、ジメトリダゾール、ジミナゼン、イベルメクチン、マクロフィラリサイド、マラチオン、ミタバン(mitaban)、オキサムニキン、ペルメトリン、プラジカンテル、パモ酸ピランテル(prantel pamoate)、セラメクチン、スチボグルコン酸ナトリウム、チアベンダゾール、および、それらの組み合わせである。
細胞と組織を用いた組み合わせ
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、細胞、複数の細胞、または、組織と同時投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、治療用細胞と同時投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、組織移植片と同時投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞移植と同時投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、臓器移植と同時投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、組織移植と同時に(例えば、同時に、本質的に同時に、または、同じ処置プロトコルで)投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、組織移植の前後に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と組織移植片の投与間の時間は、医薬品の効能、可溶性、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、および、動態プロフィールのような、それぞれの医薬品の特性に依存して、数分から数時間までの範囲である。いくつかの実施形態では、標的分子濃度の日周期の変化は、最適な投与間隔を決定する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と第2の活性剤の投与間の時間は、約1時間未満、1日未満、1週間未満、または、1か月未満である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、組織移植と免疫抑制剤で同時投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、組織移植およびカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンまたはタクロリムス);mTOR阻害剤(シロリムス;エベロリムス);抗増殖性薬の剤(アザチオプリンまたはミコフェノール酸);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロンまたはヒドロコルチゾン);モノクローナル抗−IL−2Rα受容体抗体(例えば、バシリキシマブまたはダクリズマブ);ポリクローナル抗T細胞、抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)または抗リンパ球グロブリン(ALG));またはそれらの組み合わせと同時投与される。
いくつかの実施形態では、組織は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体で覆われる。いくつかの実施形態では、複数の幹細胞は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体で覆われる。いくつかの実施形態では、臓器は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体で覆われる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3で組織を覆うことまたは本明細書で開示されたrcHC−HA/PTX3複合体による組織の被覆は、宿主免疫系によって影響を受けるのを防ぐ。
いくつかの実施形態では、器官、組織、または、複数の細胞は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と接触さする。いくつかの実施形態では、器官、組織、または、複数の細胞は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む組成物と接触する。いくつかの実施形態では、組成物は約7.0〜約7.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、組成物はpH7.4を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、カリウム、マグネシウム、および、ラフィノースを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、アデノシン、グルタチオン、アロプリノール、および、ヒドロキシエチルデンプンの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体で補われたUW溶液である。
いくつかの実施形態では、器官、組織、または、複数の細胞は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、または、約48時間、接触する。いくつかの実施形態では、接触は、組織および血管条件付け(例えば、周囲温度未満)を保護する温度で生じる。いくつかの実施形態では、条件付けは4°Cである。
医療装置の組み合わせ
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、医療装置で同時投与される。いくつかの実施形態では、医療装置またはその一部は、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体と接触する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、本明細書で別に記載される医療装置またはその一部を覆うために用いられる。いくつかの実施形態において、医療装置と組み合わせる、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与は、移植された医療装置に対する炎症反応を減少させ、阻害し、または、防ぐ。いくつかの実施形態において、医療装置と組み合わせる、本明細書で開示されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与は、移植される医療装置上の微生物の成長(すなわち、長期的なバイオフィルム感染症)によって生成する、感染性のバイオフィルムの形成を減少させ、阻害し、または、防ぐ。典型的なこのようなバイオフィルムは、限定されないが、黄色ブドウ球菌などの細菌によって生成される。
製品とキット
本明細書で提供される製品は、パッケージ材料を含む。医薬品をパッケージ化する際に使用される包装材料は、当業者に周知である。薬学的な包装材料の例としては、限定されないが、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器(例えば、加圧した定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、噴霧器(例えば、ジェットまたは超音波噴霧器)、および、他の単回呼吸用液体システム)、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、瓶、および、選択された製剤と所望の投与および処置に適した任意の包装材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、インプラント、カテーテル、人工関節、ステント、バルブ、ナノ粒子、またはマイクロカプセルなどの医療装置に組み込まれ、適用され、該装置上でコーティングされる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物または医薬配合物は、キットとして提供される。キットは、随意に、取扱説明書、装置、および、追加の試薬(例えば、組成物の希釈および/または凍結乾燥したタンパク質の再構成のための、滅菌水または食塩水)、ならびに、方法を実施するためのチューブ、容器、およびシリンジの構成要素、などの1以上の構成要素を含んでいる。典型的なキットは、本明細書で提供される医薬組成物また医薬配合物、および、随意に、使用説明書、被験体に医薬組成物または医薬配合物を投与するための装置、被験体のnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を検知するための装置、被験体から得られたサンプルのnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を検知するための装置、および、被験体に追加の治療薬を投与するための装置を含む。
キットは随意に使用説明書を含み得る。使用説明書は、典型的には、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体、および、随意に、キットに含まれる他の成分、および、被験体の適切な状態、適切な投与量、投薬レジメン、および、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を投与する適切な投与方法を含む、投与方法を記載した実体のある表現を含んでいる。いくつかの実施形態では、説明書は、処置時間の持続期間にわたって被験体をモニターするためのガイダンスを含んでいる。
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の医薬組成物、および、診断用のアイテムも含んでいる。例えば、そのようなキットは、被験体の選択されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の濃度、量、または活性を測定するためのアイテムを含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるキットは、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を被験体に投与するための装置を含んでいる。いくつかの実施形態では、被験体に薬物を投与するための当該技術で知られていた様々な装置のうちのいずれも、本明細書で提供されるキットに含まれている。典型的な装置としては、限定されないが、吸入器(例えば、加圧した定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、噴霧器(例えば、ジェットまたは超音波噴霧器)、および、他の単回呼吸用液体システム)、皮下針、静脈注射針、カテーテル、および、点眼器のような液体ディスペンサーを含んでいる。典型的に、nHC−HA/PTX3またはキットのrcHC−HA/PTX3複合体を投与するための装置は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の投与の所望の方法と適合する。
幹細胞培養物の拡張
特定の実施形態において、本明細書で提供されたnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上の単離した幹細胞を増殖させる方法が本明細書で開示される。本明細書に記載されるように、HC−HA/PTX3複合体は、幹細胞の凝集を促し、細胞の分化を防ぎ、および、幹細胞マーカーの発現を保存する。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3複合体またはrcHC−HA/PTX3複合体の拡張は、胚性幹細胞(ESC)マーカー(例えば、Oct4、Nanog、Sox2(SRY(性決定領域Y)−ボックス2)、Rex1(Zfp42)、SSEA4(段階特異的な胚抗原−4)、MYC/c−Myc、および、KLF4、周皮細胞マーカー(例えば、NG2(ニューロン神経膠の抗原2/コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4))、PDGFR−β(血小板由来増殖因子受容体B)、および、α−SMA(α−平滑筋アクチン)、ならびに、血管新生マーカー(例えば、CD133/2、FLK−1(VEGF−R2、Ly−73)、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)、CD34、CD31(PECAM−1)、および、CD146の1つ以上の発現を保存する。いくつかの実施形態では、幹細胞マーカーの発現は、従来の方法、例えば、タンパク質発現分析(例えば、ウエスタンブロット、免疫蛍光検査、免疫組織化学検査、蛍光活性化細胞分類)、または、mRNA分析(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)あるいはノーザン)によって測定される。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、培養細胞のTGF−βシグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、培養された幹細胞のTGF−βシグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態では、TGF−βシグナル伝達の抑制は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下と比較して、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の存在下における、細胞中のpSMAD2/3シグナル伝達のようなTGF−β細胞シグナル伝達経路における、または、α平滑筋形成における、1つ以上のタンパク質またはマーカーの活性または発現の減少を指す。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、培養細胞でBMPシグナル伝達を引き起こす。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、培養された幹細胞でBMPシグナル伝達を引き起こす。いくつかの実施形態では、TGF−βシグナル伝達の抑制は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下と比較して、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の存在下における、細胞中の、BMP−2、BMP−4、BMP−6、および、pSMAD1/5/8などのBMPシグナル伝達経路での1つ以上のタンパク質の活性または発現の増加を指す。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、胚性幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、成体幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、胎児の幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、誘導多能性/前駆体幹細胞(iPSC)である。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、脂肪幹細胞(ASC)である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、臍の緒の幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、羊膜幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、角膜縁ニッチ細胞または角膜縁上皮前駆細胞などの各膜縁細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、内皮幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、造血幹細胞である。いくつかの実施形態では、単離した幹細胞は骨髄幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、神経幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、内皮前駆細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、骨格筋幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、乳房幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、腸の幹細胞である。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、誘導多能性/前駆体幹細胞(iPSC)である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、生体の分化したまたは部分的に分化した細胞に由来する、誘導多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、繊維芽細胞に由来する誘導多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、ヒトの角膜の繊維芽細胞に由来する誘導多能性幹細胞である。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、胎盤組織または臍の緒の組織に由来する、胎児の組織である。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、羊膜に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、脂肪組織に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、角膜縁組織に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、骨髄に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、内皮組織に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、角膜縁組織に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、神経組織に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、角膜縁組織に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、骨格筋に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、皮膚に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、消化器系に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、膵臓に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、肝臓に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、嗅粘膜に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、生殖細胞集団に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、血液に由来する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3上で培養された単離した幹細胞は、臍帯血に由来する。
いくつかの実施形態では、HC−HA/PTX3複合体は、羊膜または臍の緒から単離したnHC−HA/PTX3である。いくつかの実施形態では、HC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA複合体である。いくつかの実施形態では、HAはHCに共有結合する。いくつかの実施形態では、IαIのHCは重鎖1(HC1)である。いくつかの実施形態では、HC−HA複合体は、ペントラキシン 3(PTX3)を含む。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、小ロイシン豊富なプロテオグリカン(SLRP)を含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、I型、II型、またはIII型のSLRPを含む。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、PTX3、および、小ロイシン豊富なプロテオグリカン(SLRP)を含む。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、デコリンおよびバイグリカンのような、I型のSLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、フィブロモジュリン、ルミカン、PRELP(プロリンアルギニン豊富な末端を有するロイシン豊富なタンパク質)、ケラトカン、および、オステオアドへリンのようなII型のSLRPの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは、エピピカンとオステオグリシンのようなIII型のSLRPの中から選択される。
いくつかの実施形態では、単離した幹細胞は、固定化したnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3を含む基質上で増殖する。いくつかの実施形態では、固定化したnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、1つ以上の小ロイシン豊富なプロテオグリカン類(SLRP)を含む。いくつかの実施形態では、SLRPは、ビクニン、デコリン、バイグリカン、および、オステオアドへリンの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なタンパク質はグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは硫酸ケラタンを含む。
いくつかの実施形態では、単離した幹細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む培地で増殖する。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3は、1つ以上の小ロイシン豊富なプロテオグリカン類(SLRP)を含む。いくつかの実施形態では、SLRPは、ビクニン、デコリン、バイグリカン、および、オステオアドへリンの中から選択される。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なタンパク質はグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、小ロイシン豊富なプロテオグリカンは硫酸ケラタンを含む。いくつかの実施形態では、培地は、胚性幹細胞培地、修飾された胚性幹細胞培地、補充したホルモン上皮培地、および/または、その組み合わせである。いくつかの実施形態において、培地は、1またはそれ以上の増殖因子で補充される。いくつかの実施形態では、培地は、EGF、bFGF、および/または、LIFで補充される。いくつかの実施形態では、培地は、Rho−に関連するキナーゼの阻害剤(ROCK阻害剤)で補充される。
多能性の誘導と維持
特定の実施形態において、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で、細胞の多能性を誘導する、または、幹細胞の多能性を維持する方法が、本明細書で開示されている。本明細書に記載されるように、HC−HA/PTX3複合体は、幹細胞マーカー発現の維持を助け、幹細胞集団の連続的な通路一帯で細胞の分化を防ぐ。加えて、本明細書に記載されるように、HC−HA/PTX3複合体は、分化したまたは一部分化した細胞集団で幹細胞の特性の誘導を促す。
特定の実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化したまたは一部分化した細胞の多能性を促すまたは誘導する。特定の実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下で培養された分化したまたは一部分化した細胞と比較して、分化したまたは一部分化した細胞の多能性を促すまたは誘導する。典型的な方法では、分化細胞または一部分化した細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養され、それによって、多能性は細胞内で誘導される。
特定の実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、幹細胞の多能性を促すまたは誘導する。特定の実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下で培養された幹細胞と比較して、幹細胞の多能性を促すまたは誘導する。典型的な方法では、幹細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養され、それによって、多能性は幹細胞内で維持される。典型的な方法では、幹細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養され、それによって、多能性は幹細胞内で誘導される。
タンパク質転写因子を用いる遺伝子の再プログラミングを用いて、胚性幹細胞と同等の多能性幹細胞は、ヒトの成人の皮膚組織から得られた。iPSC細胞は一般に、成人の繊維芽細胞のような非多能性細胞に、特定の幹細胞結合型の遺伝子を遺伝子導入することによって得られる。遺伝子導入は、一般に、多能性遺伝子が遺伝子発現のプロモーターに動作可能に結合しているレトロウイルスのようなウイルス・ベクターによって達成される。多能性幹細胞の産生にとって不可欠な4つの重要な多能性遺伝子は、Oct−3/4 (Pou5f1), Sox2, c−Myc, and Klf4である。他の遺伝子は誘導の効率を高めることができる。いくつかの研究では、Oct4、Sox2、Nanog、および、Lin28は、多能性を誘導するために使用されてきた。特定の例においては、3−4週間後に、少数のトランスフェクトされた細胞は、多能性幹細胞に形態学的に、かつ、生化学的に類似するようになり始め、形態学的選択、倍加時間、あるいは、レポーター遺伝子と抗生物質の選択によって、一般的に単離される。
いくつかの実施形態では、本質的な転写因子OCt−3/4(Pou5f1)、Sox2、c−Myc、および、Klf4の4つよりも少ない異種の発現を用いて、分化したまたは一部分化した細胞の多能性を誘導するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、多能性を誘導するための方法が提供され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用は、異種遺伝子の導入により、OCt−3/4(Pou5f1)、Sox2、c−Myc、および、Klf4の少なくとも1つを発現する分化したまたは一部分化した細胞の多能性の誘導を高める。いくつかの実施形態では、多能性を誘導するための方法が提供され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用は、異種遺伝子の導入により、OCt−3/4(Pou5f1)、Sox2、c−Myc、および、Klf4の中から選択された1つ、2つ、または、3つの因子を発現する分化したまたは一部分化した細胞の多能性の誘導を高める。いくつかの実施形態では、多能性を誘導するための方法が提供され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用は、異種遺伝子の導入により、OCt−3/4(Pou5f1)を発現する分化したまたは一部分化した細胞の多能性の誘導を高める。いくつかの実施形態では、多能性を誘導するための方法が提供され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用は、異種遺伝子の導入により、Sox2を発現する分化したまたは一部分化した細胞の多能性の誘導を高める。いくつかの実施形態では、多能性を誘導するための方法が提供され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用は、異種遺伝子の導入により、c−Mycを発現する分化したまたは一部分化した細胞の多能性の誘導を高める。いくつかの実施形態では、多能性を誘導するための方法が提供され、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の使用は、異種遺伝子の導入により、Klf4を発現する分化したまたは一部分化した細胞の多能性の誘導を高める。
いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)、SOX2、c−Myc、および、Klf4の1つ以上を発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)、SOX2、c−Myc、および、Klf4の少なくとも1つを発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)、SOX2、c−Myc、および、Klf4の1つ、2つ、または、3つを発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)、SOX2、c−Myc、および、Klf4を発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)を発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、SOX2を発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、c−Mycを発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Klf4を発現するために形質導入され、および、形質導入された細胞は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体を含む基質上で培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、Nanog、Fbx15、ERas、ECAT15−2、Tcl1、および、β−カテニンなどの1つ以上の追加の遺伝子を発現するために形質導入される。
いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)、SOX2、c−Myc、および、Klf4の1つ以上をコードする1つ以上の遺伝子を含むウイルス・ベクターで形質導入される。いくつかの実施形態では、分化したまたは一部分化した細胞は、Oct−3/4(Pou5f1)、SOX2、c−Myc、および、Klf4の1つ以上をコードする1つ以上の遺伝子を含む2以上のウイルス・ベクターで形質導入される。
誘導、誘導多能性幹細胞の培養と維持、および、幹細胞マーカーの評価と様々な細胞系統の誘導を含む誘導幹細胞の多能性の評価のための様々な方法は、当外技術分野では周知であり、例えば、米国特許第7,682,828号、8,048,999号、8,211,697号、7,951,592号、および、米国特許公報第2009/0191159号と2010/000375号に述べられていた方法を含んでいる。
いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下で培養された形質導入された細胞と比較して、形質導入された細胞の多能性の誘導にかかる時間を減少させる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下で培養された複数の形質導入された細胞と比較して、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体の不在下で培養された形質導入された細胞と比較して、形質導入された細胞の集団中において多能性が誘導された形質導入された細胞の割合を増加させる。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、形質導入された細胞における多能性の値を高める。いくつかの実施形態では、nHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、形質導入された細胞の多能性の誘導に必要な異種の転写因子の数を減少させる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCのTGFβ1シグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCのSMAD2またはSMAD3の核移行を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCのα平滑筋アクチン形成を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCのBMP4シグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCのBMP6シグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCの胚細胞マーカーの発現を誘導する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるnHC−HA/PTX3またはrcHC−HA/PTX3の複合体は、分化した細胞、幹細胞、またはiPSCのc−myc、KLF−4、Nanog、ネスチン、Oct4、Rex−1、Sox−2、および、SSEA−4の発現を誘導する。
以下の実施例は説明目的のためだけに含まれたものにすぎず、請求される内容の範囲を制限することは意図していない。
実施例1.ヒトの羊膜抽出物(AME)からの天然のHC−HA/PTX3(nHC−ha/PTX3)複合体の精製
羊膜抽出物(AME)とAM粉末(AMP)の調製
Bio−tissue(フロリダ州マイアミ)から入手した冷凍のヒトAMをPBSで2−3回洗浄して、貯蔵培地を取り除いた。AMEを調製するために、AMを無菌の50mlの遠心分離管に移し、5000gで5分間、4°Cで遠心分離機にかけて余分な流体を取り除いた。AMの重さを量り(〜10mg/cm2)、100mmまたは150mmの無菌のペトリ皿に移す。使い捨てのメスでに薄く切って小片にし、PBS中でTissue−Tearor(オクラホマ州バートルズビルのBiospecProducts,Inc)で均質化する前に、20分間、液体窒素容器の空気相で凍らせる。ホモジネートを30分間4°Cで混合し、30分間48,000のgで遠心分離機にかけた。上清を集め、AMEと指定し、nHC−HA/PTX3の精製に使用するか、−80°Cで保存した。
凍結乾燥しAM粉末(AMP)を調製するために、−80°Cの冷凍装置で凍らせたAMを、ベンチトップの凍結乾燥装置に移し、16時間(Freezone4.5,Labconco、ミズーリ州カンザス)凍結乾燥させた。その後、凍結乾燥させたAMを、Mixer Mill(Retsch、ペンシルベニア州ニュータウン)によってそのマトリックス形状(AMP)に微粒子化した。さらなる分析のために、AMPを−20°C以下で保存した。
天然のHC−HA/PTX3(nHC−HA/PTX3)複合体の精製
AMEを1.35g/mlの初期密度でCsCl/4MグアニジンHCl混合物中に溶かし、15°Cで48時間、125,000gで遠心分離機にかけた。合計15の画分(0.8ml/画分)をそれぞれの管の上部と底部から採取した。それぞれの画分の総タンパク濃度をBCAタンパク質アッセイキットで測定した。それぞれの画分のヒアルロナン(HA)濃度を、Corgenix(コロラド州ウエストミンスター)のELISAベースのHA定量テストキットによって測定した(図1A)。HAを含むが検知可能なタンパク質を含まない画分#8−15をプールし、第2の超遠心分離に使用した。プールした画分(最初にAMと指定したもの)のサンプルを分析のために保存した。プールした画分を、1.40g/mlの当初密度でCsCl/4MグアニジンHClで調節し、遠心分離機にかけ、上に記載されているのと同じ方法で分画した(図1B)。HAを含むが検知可能なタンパク質を含んでいなかった画分#3−15をプールし(第2のAMと呼ぶ)、蒸留水に対して透析を行い、CsClおよびグアニジンHClを取り除いた。AMPについて上記と同じ方法で透析物を凍結乾燥させた。代替的に、透析物を、1時間0°Cで、1.3%(w/v)の酢酸カリウムを含む95%(v/v)のエタノールの3容量と混合した。15,000のgの遠心分離の後、ペレットを70%(v/v)のエタノールで洗浄し、再度、遠心分離機にかけた。ペレットを軽く空気乾燥させ、−80°Cで保存した。粉末とペレットをnHC−HA/PTX3複合体と呼んだ。
いくつかの例において、プールしたサンプルを3または4回の超遠心分離にかけた。これらの超遠心分離において、画分#7−12だけをプールした。CsCl/4MグアニジンHClの当初の密度は1.42g/mlである。3回または4回の超遠心分離の後、プールした画分#7−12を、nHC−HA/PTX3(第3)またはnHC−HA/PTX3(第4)と呼ぶ。
1回目、2回目、3回目、または、4回目の超遠心分離の後のAMEのプールした画分を、1時間25°Cで0.05NのNaOHを用いてまたは用いずに、処理した。1回目、2回目、3回目、または、4回目の超遠心分離からプールした画分を、2時間60°Cで20ユニット/mlのヒアルロニダーゼ(HAase)(Seikagaku Biobusiness Corporation,日本・東京)で消化した。
その後、プールした画分からのサンプルと、NaOHおよびHAaseで処理したサンプルを、0.5%のアガロースゲル上に置き、Stains−all染色(図1C)による染色によって、または、IαI重鎖1(HC1)(図1Dと1F)、ペントラキシン 3(PTX3)(図1Eと1G)、IαI重鎖2(HC2)(図1H)、IαI重鎖3(HC3)(図1I)、ビクニン(図1J)、TNFで刺激された遺伝子6(TSG−6)(図1K)、トロンボスポンジン−1(TSP−1)(図1L)、または、IGFBP 1−3およびPF4(図1M)に対する抗体を使用するウエスタンブロットによって分析され、このうち、後者の2つは、ヒト血管新生アレイ(それぞれのアレイは56の異なる血管新生タンパク質を含んでいる。R&D Systems,ミネソタ州ミネアポリス)を用いるタンパク質ドットアッセイを使用して分析された。簡潔に言えば、1.5mlのヒトのAM抽出物(25μg/ml HA)と精製されたnHC−HA/PTX3(2番目)(25μg/ml HA)を、4°Cで一晩、膜上にあらかじめコーティングした検出抗体とは別にインキュベートし、その後、第2の抗体を用いてインキュベートした。信号はX線膜に晒した化学発光の光で検知された。現像したX線フィルム上のアレイデータを、転送方式のスキャナーでフィルムをスキャンすることにより定量化し、アレイの画像ファイルを、ImageJ1.46ソフトウェア(国立衛生研究所、メリーランド州ベテスダ)によって分析した。
生化学的な特性評価によれば、nHC−HA/PTX3は、IαIとPTX3の重鎖1(HC1)に共有結合した高分子量HA(HMW HA)(図1C)からができている。nHC−HA/PTX3中のHC1とPTX3の両方は、ヒアルロニダーゼ(HAase)またはNaOH(図1DG)の処置の後にのみ解放され、HC1が、報告されるように、エステル結合によってHAに結合していることを証明している。
対照的に、nHC−HA/PTX3は、HC2(図1H)、HC3(図1I、NaOHの処理の後にのみ検知される12kDaまでの帯域は非特異的である可能性が高い)、ビクニン(図1J)、TSG−6(図1K)、および、TSP−1(図1L)を含まない。インスリン様増殖因子結合タンパク質1−3(IGFBP1−3)および血小板第4因子(PF4)は、nHC−HA/PTX3(2番目)でタンパク質ドットアッセイ(ELISAに類似)によって検知され(図1J)、これらが依然としてnHC−HA/PTX3(4番目)にあるかどうかは不明のままである。
実施例2.共有結合による固定化したHA(iHA)の調製
HMW HA(Healon, Advanced Medical Optics,カリフォルニア州サンタアナ)またはnHC−HA/PTX3(2番目)からの一連のヒアルロナン(HA)量(0、0.25、0.5、1.0、2.5、5、10、および、25μg/ウェル)を、Sulfo−NHS(0.184mg/ml)とEDAC(0.123mg/ml)(両方ともイリノイ州ロックフォードのThermo Fisher Scientificからのものである)を含む結合溶液に加え、Covalink(登録商標)−NH 96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.)で4°Cで16時間インキュベートした。8Mのグアニジン−HCl(GnHCl)の3度洗浄した後、PBSで洗浄し、HMW HAまたはnHC−HA/PTX3からの結合したHAを、メーカーの説明書によってCorgenix(コロラド州ウエストミンスター州)からHA ELISAによって定量的に測定した(図6A)。AMから精製されたHMW HAおよびnHC−HA/PTX3は、用量依存的であり、Covalink−NH 96のウェルの表面に共有結合する。結果として生じたiHAまたは固定化したnHC−HA/PTX3を、8MのグアニジンHClによる洗浄剤に対する耐性を備えている。HMW HAまたはnHC−HA/PTX3のHAは、2μg/ウェルのHA等価入力で最大に結合した(図6A)。
結合効率を測定するために、HMW HAまたはnHC−HA/PTX3からのからHAを、96ウェルプレートのウェルごとのCovalink(登録商標)−NHに結合し、HMW HAまたはnHC−HA/PTX3からの結合していないまたは結合したHAを、HA ELISAによって測定した(図6B)。HMW HAまたはnHC−HA/PTX3からの2μgのHAを、H2O中のSulfo−NHS(0.184mg/ml)とEDAC(0.123mg/ml)[1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド]を含む結合溶液に加え、Covalink(登録商標)−NH 96ウェルプレートで、4°Cで16時間インキュベートした(Thermo Fisher Scientific,イリノイ州ロックフォード)。洗浄溶液(プールした)中のウェルに結合したまたは結合していないHAは両方とも、メーカーの説明書に従ってCorgenix(コロラド州ウエストミンスター州)からのHA ELISAによって測定した。結合したまたは結合していない状態のそれぞれのウェル中のHVの合計量は、結合の効率または結合していない割合を計算するために、入力されたHA量(2μg/ウェル)によって分割される。平均結合効率は、HMW HAに関して70.5±13.4%であり、nHC−HA/PTX3に関して69.0±5.7%であると測定された(図6B)。したがって、2μg/ウェルの入力HAはおよそ1.4μgのiHAをもたらす。
実施例3.精製された天然のHC−HA/PTX3(nHC−ha/PTX3)複合体の活性
固定化したnHC−HA/PTX3に対するLPSで刺激されたマクロファージの結合
DMEM/10%FBS(Life Technologies,ニューヨーク州グランドアイランド)中のRAW264.7細胞(2.5×105細胞/mlの100μl)[American Type Culture Collection (ATCC),バージニア州マナサス]を、固定化したHA(Advanced Medical Optics,カリフォルニア州サンタアナ、2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)、または、PBS対照を含む96ウェルプレート中に播種し、リポ多糖類(LPS)(1μg/ml)(n=3)で刺激した[LPS−EB Ultrapure, InvivoGen、カリフォルニア州サンディエゴ]。Covalink−NH 96の表面上でのHAおよびnHC−HA/PTX3の固定化は、上に記載されるのと同じように行われた。簡潔に言えば、Covalink−NHの96ウェルプレートを2時間70%のアルコールで殺菌し、蒸留水で3度洗浄し、96ウェルプレート(PBS対照ウェルはHAとnHC−HA/PTX3を除いてすべての試薬を含む)毎に20μg/mlのHAまたはnHC−HA/PTX3を含む蒸留水中で、0.184mg/mlのSulfo−NHS(Thermo Fisher Scientific,イリノイ州ロックフォード)100μlと、0.123mg/mlのEDAC(Thermo Fisher Scientific,イリノイ州ロックフォード)と加えた。結合溶液を取り除く前に、プレートを4°Cで夜通しまたは25°Cで2時間インキュベートし、2MのNaClと50mM のMgSO4をを含有するPBSで3度洗浄し、その後、PBSで3回洗浄した。90分のインキュベーション後、結合しなかった細胞を取り除き、結合した細胞を撮影し、CyQuantアッセイによって数えた(図2A)。対照のウェルと比較して、固定化したnHC−HA/PTX3を含むウェルについて、LPSで刺激されたマクロファージの結合の3倍以上の増加が観察された。固定化したHAを含むウェルは、LPSで刺激されたマクロファージの結合を阻害した。
その後、結合したLPSで刺激されたマクロファージの細胞生存率を調べた。上に記載されたように、LPSで刺激されたRAW264.7細胞(2.5×105細胞/mlの100μl)を、24時間、固定化したPBS対照、HA、またはnHC−HA/PTX3上でDMEM/10% FBS中でインキュベートした(n=3)。インキュベーション後、結合したマクロファージの細胞生存率をMTTアッセイによって測定した。これらの固定化した基質上の細胞の細胞生存率に何ら有意差(すべてのp値>0.05)は観察されなかった(図2B)。
その後、固定化したnHC−HA/PTX3に対するLPSで刺激されたマクロファージの結合を阻害する遮断抗体とペプチドの能力を調べた。RAW264.7細胞(2.5x105細胞/mlの濃度)を、30分間、氷上で、アイソタイプ対照抗体[ラットIgG(10μg/ml)、マウスIgG(10μg/ml)、または、アルメニアンハムスターIgG(20μg/ml)]、あるいは、RGD対照ペプチド(1mg/ml)と一緒に、CD44(10μg/ml)、TLR2(10μg/ml)、TLR4(10μg/ml)、インテグリンαv(20μg/ml)、β1(20μg/ml)、β2(20μg/ml)、または、β3(20μg/ml)、または、RGDペプチド(SDGRG、RGDS、GRGDS、すべて1mg/ml)に対する遮断抗体を含むDMEM10%FBS中で、あらかじめインキュベートした(n=3)。(CD44とラットIgGに対する抗体は、BD Pharmingen(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手し、TLR2、TLR4、およびマウスIgGに対する抗体はInvivoGen(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手し、インテグリンαv、β1、β2、β3、および、アルメニアンハムスターIgGに対する抗体は、Biolegend(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手し、RGDペプチドはSigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手した)。LPS(1μg/ml)を加えた後に、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)、または、PBS対照を含むプレートに細胞を播種し、90分間インキュベートした(n=3)。インキュベーション後、結合しなかった細胞を取り除き、結合した細胞を撮影し、CyQuantアッセイによって数えた(図2C)。その結果は、CD44とTLR4に対する抗体が、LPSで刺激されたマクロファージの結合を著しく阻害したことを示しており、これらの受容体が固定化したnHC−HA/PTX3へのLPSで刺激されたマクロファージの結合に関与することを実証している。
LPS刺激したマクロファージの極性化
固定化したnHC−HA/PTX3によるM1またはM2の表現型へのLPS刺激したマクロファージの極性化を、RNAおよびタンパク質の分析によってM1およびM2のマーカーをコード化する遺伝子の発現を決定することによって検査した。
DMEM/10%のFBS中でのRAW264.7細胞(100μlの2.5×105細胞/ml)を、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)またはPBS対照を含有している96ウェルのプレートにおいて播種し、4時間(n=3)LPS(1μg/ml)で刺激した。インキュベーション後に、非付着性細胞を取り除き、総RNAを付着性細胞から抽出した。M1マーカー(腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)(Mm00443258_m1)およびインターロイキン12サブユニットp40(IL−12p40)(Mm00434165_m1))およびM2マーカー(インターロイキン10)(IL−10)(Mm00439614_m1)、アルギナーゼ−1(アルギニン−1)(Mm00475988_m1)、LIGHT/TNSF14(Mm00444567_m1、およびスフィンゴシンキナーゼ−1(SPHK1)(Mm0044884_g1))のmRNA発現を、内在性コントロールとしてグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)(Mm99999915_g1)を用いて定量的リアルタイムPCRによって測定した。リアルタイムPCRを、7300 Real−time PCR System (Applied Biosystems, Foster City, CA)上で行った。増幅プログラムは、95℃での10分の初期活性、その後の40サイクルの95℃での15秒の変性、および60℃での1分のアニーリングおよび伸展(extension)から構成された。相対的な遺伝子発現データを、相対的なCT方法(ΔΔCT)によって分析した。すべてのアッセイを、3回繰り返して行い;結果を、内部標準としてGAPDHによって正常化した。すべてのプライマーは、Applied Biosystemsからのものであった。対照と比較した、M2マーカーIL−10、Arg−1、LIGHT、およびSPHK1の発現の著しい誘発を、HAではなく、固定化したnHC−HA/PTX3に付着した細胞中で観察した(図3のA)。さらに、両方のM1マーカー、TNF−αおよびIL−12p40の発現は減少した。
分泌されたTNF−αタンパク質の量を、上に記載されるような(n=3)、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)またはPBS対照を含有しているプレート上のDMEM/10%のFBS中で4時間、LPS(1μg/ml)刺激で処置した細胞の培養上清において測定した。TNF−αの量を、製造業者のプロトコル(R&D Systems, Minneapolis, MN)に従ってELISAにより測定した。
減少した量のTNF−αを、PBS対照と比較して、固定化したnHC−HA/PTX3を含有しているプレート上でインキュベートされた細胞の細胞培養上清において観察した(図3のB)。TNF−αの量の変化は、固定化したHAプレート上で観察されなかった。
IRF−5の高い発現は、M1マクロファージの特徴である。IRF−5は、IL−12p40、IL−12p35およびIL−23p19をコード化する遺伝子の転写を直接活性化し、IL−10をコード化する遺伝子を抑制する。IRF−5タンパク質の発現および固定化したnHC−HA/PTX3上のその細胞内局在(cytolocalization)を検査した。固定化した対照またはnHC−HA/PTX3上で播種した細胞を、DMEM/10%のFBS中で4時間または24時間、LPS(1μg/ml)で刺激した。細胞可溶化物(24時間のLPS刺激)中のIRF−5タンパク質の発現を、ウェスタンブロットによって検出した(図3のC、左)(一次抗体:アブカム(abcam),Cambridge,MA;二次抗体、DAKO,Carpinteria,CA)。並列実験では、細胞(4時間のLPS刺激)を、抗IRF−5抗体で固定して免疫染色した。IRF−5の細胞内局在を、共焦点免疫蛍光顕微鏡検査法(LSM 700 共焦点顕微鏡,Zeiss,Oberkochen,Germany)(図3のC、右)によって検査した。固定化したnHC−HA/PTX3は、発現を減少させ、IRF−5の核局在化を防いだ。これらの結果は、固定化したnHC−HA/PTX3によってM1表現型の抑制と一致している。
活性化した好中球のアポトーシスおよびアポトーシス性好中球のマクロファージによる食作用
好中球を、製造業者の指示に従い、デキストラン密度[Lymphocyte Poly(R), Cedarlane USA, Burlington, NC]の遠心分離を使用して、正常ヒト末梢血から単離した。単離した好中球を、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)またはPBS対照上でIMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium, Life Technologies, Grand Island, NY)中の2×106細胞/mlで播種し、24時間(n=3)、PBS(休止)、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP)(1μM)(Sigma− Aldrich, St Louis, MO)またはLPS(1μg/ml)で処置した。好中球のアポトーシスを、製造業者のプロトコルに従って、細胞可溶化物中でCell Death Detection ELISA (Roche Applied Science, Indianapolis, IN)によって測定した。HAではない、固定化したnHC−HA/PTX3は、休止する好中球ではなく、fMLPまたはLPS活性の好中球のアポトーシスを促進する(図3のD)。
その後、休止する又はLPS刺激したマクロファージによるアポトーシス性の好中球の食作用を検査した。RAW264.7細胞(1×105細胞/ml)を、6日間(n=3)、LPS(1μg/ml)刺激なしで又は刺激とともに、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)またはPBS対照上のDMEM/10%のFBS中で培養した。その後、細胞培養培地を取り除き、(8時間、ロスコビチン(20μM)(Sigma− Aldrich, St Louis, MO)を用いた単離した休止するヒト好中球の処置によって準備した)IMDM中の100μlのアポトーシス性の好中球の2×106細胞/mlを、休止する又はLPS刺激のマクロファージを含有する各ウェルに加えた。37℃の30分間のインキュベーション後、各ウェルを、冷たいPBSで3回洗浄し、(マクロファージおよび貪食した好中球を含む)細胞可溶化物を、マクロファージによる貪食した好中球を測定するELISAアッセイによって、ヒトのミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を決定するために収集した。細胞可溶化物を、収集して、製造業者のプロトコルに従って、ヒトのミエロペルオキシダーゼ(MPO)ELISAアッセイ(n=4)(R&D Systems, Minneapolis, MN)にさらした。その後、MPOを、それぞれの細胞可溶化物中でBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)によって測定された総タンパク質で正常化し、食作用の指標として表わした。LPS(LPS)刺激のない休止細胞の食作用の指標を、この実験において100%として定義した。HAではない、固定化したnHC−HA/PTX3は、休止するマクロファージまたはLPS処置のマクロファージのいずれかによって、アポトーシス性の好中球の食作用を促進した(図3のE)。
これらの結果は、固定化したnHC−HA/PTX3(2nd)が、活性化した好中球のアポトーシスおよびマクロファージによるアポトーシス性の好中球の食作用を増強することを実証している。
固定化したnHC−HA/PTX3によるM2マクロファージの極性化に関係する受容体の分析
M2マクロファージ極性化における特定の受容体の関与を決定するために、受容体遮断抗体の存在または欠如下でのM1およびM2のマクロファージマーカーの定量的mRNA発現を行った。DMEM/10%のFBS中のRAW264.7細胞(2.5×105細胞/ml)を、氷上で30分間(n=3)、CD44(10μg/ml)、TLR4(10μg/ml)、またはCD44/TLR4(各々10μg/mlで)に対するPBS(対照)または遮断抗体で予めインキュベートした。その後、細胞を、LPS(1μg/ml)で刺激し、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)またはPBS対照上で4時間37℃でインキュベートした。総核酸を、総細胞から抽出した。M1マーカー(IL−12p40)およびM2マーカー(IL−10、LIGHT、およびSPHK1)の相対的なmRNA発現を、上に記載されるような内在性コントロールとしてGAPDHを用いて定量的PCRによって測定した(図4のA)。IL−12p40の発現を無効にし、一方で、IL−10、LIGHTおよびSPHK1の発現を、HAではなく、固定化したnHC−HA/PTX3によって促進した。この発現パターンは、TLR4遮断抗体よりもCD44遮断抗体によってより阻害された。対照的に、固定化したHAによるIL−12p40およびIL−10の転写物の発現は、CD44に対する遮断抗よりもTLR4に対する遮断抗体による影響をより受けた。
IL−12およびIL−10のタンパク質発現も測定した。細胞培養上清を、24時間(4時間の代わり)(n=3)、上に記載されるように処置された、固定化したHA(2μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2μg/ウェル)またはPBS対照上で培養された細胞から収集した。細胞培養上清中のIL−12またはIL−10のタンパク質の量を、製造業者のプロトコルに従って、ELISA(Biolegend, San Diego, CA)によって測定した(図4のB)。IL−12タンパク質の発現が無効にされ、一方で、IL−10タンパク質の発現は、固定化したnHC−HA/PTX3によって著しく促進される。この発現パターンは、CD44に対する遮断抗体によって阻害される。対照的に、IL−12タンパク質の発現は促進され、一方で、IL−10の発現は、固定化したHAによって抑制され、発現パターンは、TLR4に対する遮断抗体による影響をより受けた。
nHC−HA/PTX3(2nd)およびnHC−HA/PTX3(4th)の複合体の比較
nHC−HA/PTX3(2nd)およびnHC−HA/PTX3(4th)の複合体を、マクロファージの細胞凝集を誘発する(不十分な細胞付着を示す)及び/又はM2マクロファージの極性化を促進する各複合体の能力を検査することによって比較した。RAW264.7細胞(2.5×105細胞/ml)を、固定化したHA(2、μg/ウェル)、nHC−HA/PTX3(2、μg/ウェル)またはPBS対照上のDMEM/10% のFBS中ので培養し、4時間または24時間(n=3)、200ユニット/mlのIFN−γ/1μg/mlのLPS(その両方は、InvivoGen, San Diego, CAからのもの)で刺激した。4時間後、細胞凝集を、光顕微鏡検査法によって検査し、撮影した(図5のA)。nHC−HA/PTX3(2nd)ではなく、固定化したnHC−HA/PTX3(4th)は、マクロファージの細胞凝集を促進し、これは、nHC−HA/PTX3(4th)が、プレートへの細胞付着を促進せず、一方で、nHC−HA/PTX3(2nd)が促進することを示している。
24時間後、サンプルを、細胞培養上清から得て、IL−12p40タンパク質およびIL−23タンパク質の濃度を、製造業者のプロトコルに従って、それぞれのELISA(Biolegend, San Diego, CA)によって測定した(図5のBおよびC)。nHC−HA/PTX3(2nd)およびnHC−HA/PTX3(4th)の両方は、IFN−γ/LPS刺激したマクロファージにおいてIL−12p40およびIL−23のタンパク質の産生を阻害する。
実施例4:IαIの欠如下での固定化したHA(iHA)に対するTSG−6およびPTX3のインビトロでの結合
iHAに対するTSG−6の結合
固定化したHA(2μg/ウェルの投入量)を、上に記載されたように調製した。一連のヒトTSG−6(C端末10Hisタグを用いる、ヒトTSG−6のLeu277からTrp18でのマウス骨髄腫細胞株NS0中の過剰発現、Accession # P98066; R&D Systems, Minneapolis, MN, Cat. No. 2104−TS)の濃縮物(concentrations)(1ウェル当たり、0、0.24、1.2、6、12、および24μg/ml、100μlの容量)を、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中で37°Cで2時間iHAでインキュベートした。非結合TSG−6を、8Mのグアニジン−HClおよびPBSの洗浄によって取り除いた。結合TSG−6を、修正したTSG−6 ELISA(R&D Systems, Minneapolis, MN)によって測定した。TSG−6がウェル中で連結されたiHAに既に結合されていたため、予めコーティングしたTSG−6抗体によってサンプルをインキュベートする工程を省略した。続く工程は製造業者のプロトコルに従うものであった(図7のA)。TSG−6は、iHAを用量依存的に結合し、iHAが約1.4μg(〜70%の結合効率に基づく1ウェル当たり2μgのHA)であるときに、約6μg/ml(または0.1mlの反応溶液中に0.6μg)でその最大の結合能力に達した。TSG−6のHAに対するモル比は、TSG−6が35kDaであること及びHAが〜3,000kDaであることに基づいて、約37:1であった。
その後、解離(dissociation)に抵抗するTSG−6/iHA複合体の能力を検査した。iHA(2μg/ウェルの投入量)を、上に記載されるように調製した。
TSG−6(100μl中に6μg/ml)を、37℃で2時間iHAでインキュベートした。非結合TSG−6を、PBS(対照として)による洗浄、あるいは異なる解離剤または還元剤:6MのグアニジンHCl/PBS、8MのグアニジンHCl/PBS、2%のSDS/PBS、100mMのDTT/PBS、および25mMのNaOH/H2Oによる洗浄によって取り除いた。結合TSG−6を、上に記載されるような修正したTSG−6 ELISAによって測定した(図7のB)。形成されたTSG−6/iHA複合体は安定しており、様々な解離剤及び/又は還元剤による処置に耐性があった。すべての群間で統計的有意差は言及されなかった。
iHAに対するPTX3の結合
固定化したHA(2μg/ウェルの投入量)を、上に記載されるように調製した。一連のPTX3(C端末6Hisタグを用いる、ヒトPTX3のGlu18からSer277でのマウス骨髄腫細胞株NS0中の過剰発現、Accession # P26022; R&D Systems, Minneapolis, MN)の濃縮物(1ウェル当たり、0、0.04、0.2、1、5、および25μg/ml、100μlの容量)を、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中で37°Cで2時間iHAでインキュベートした。非結合PTX3を、8MのGnHClおよびPBSでの洗浄によって取り除いた。結合PTX3を、修正したPTX3 ELISA(R&D Systems, Minneapolis, MN)によって測定した。PTX3がウェル中で連結されたiHAに既に結合されていたため、予めコーティングしたPTX3抗体によってサンプルをインキュベートする工程を省略した。続く工程は製造業者のプロトコルに従うものであった(図8のA)。PTX3は、iHAを用量依存的に結合し、iHAが約1.4μg(70%の結合効率に基づく1ウェル当たり2μgのHA)であるときに、約5μg/ml(または0.1mlの反応溶液中に0.5μg)でその最大の結合能力に達した。PTX3のHAに対するモル比は、PTX3が45kDaであること及びHAが〜3,000kDaであることに基づいて、約24:1であった。
その後、解離に抵抗するPTX3/iHA複合体の能力を検査した。iHA(2μg/ウェルの投入量)を、上に記載されるように調製した。PTX3(100μl中に5μg/ml)を、37℃で2時間iHAでインキュベートした。非結合PTX3を、PBS(対照として)による洗浄、あるいは異なる解離剤または還元剤:6MのグアニジンHCl/PBS、8MのグアニジンHCl/PBS、2%のSDS/PBS、100mMのDTT/PBS、および25mMのNaOH/H2Oによる洗浄によって取り除いた。結合PTX3を、上に記載されるような修正したPTX3 ELISAによって測定した(図8のB)。形成されたPTX3/iHA複合体は安定しており、様々な解離剤及び/又は還元剤による処置に耐性があった。すべての群間で統計的有意差は言及されなかった。
iHAに対するTSG−6およびPTX3の同時結合
iHA(2μg/ウェルの投入量)を、上に記載されるように調製した。6μg/mlのTSG−6および5μg/mlのPTX3(上に記載されるような最大の結合に対する濃縮物)を、iHA単独で又は反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中に混合してインキュベートした。結合TSG−6またはPTX3を、上に記載されるような、それぞれの修正したELISAによって測定した。TSG−6またはPTX3が単独で加えられたとき(p>0.05)と比較して、両方のタンパク質がiHAで同時にインキュベートされたときのTSG−6またはPTX3によるiHAへの結合に対する競合や相乗作用はなかった。これらのデータは、TSG−6およびPTX3に対するiHA上の結合部位が、異なっており、重なっていないかもしれないということを示した(図9)。
iHAに対するTSG−6およびPTX3の逐次結合
予め結合したTSG−6またはPTX3が、iHAに対する他のタンパク質の結合を阻害するかどうかを決定するために、iHAに対するTSG−6およびPTX3の逐次付加を検査した。6μg/mlのTSG−6または5μg/mlのPTX3を、上に記載されるように準備された、iHAに予め結合させた。8MのGnHClおよびPBSによる洗浄後、PTX3(0、5または5μg/ml)またはTSG−6(0、1.2、または6μg/ml)の連続する濃縮物を、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中で、それぞれ、予め結合したTSG−6/iHAまたは予め結合したPTX3/iHAによって続けてインキュベートした。続けて結合したTSG−6およびPTX3を、それぞれの修正したELISAによって測定した。
予め結合したTSG−6(6μg/ml)は、続くPTX3がiHAに結合するのを部分的に防いだ(図10のA)(続くPTX3を1μg/mlおよび5μg/mlで加えたときに、それぞれ、p=0.05および0.01)(図5のA)。予め結合したPTX3(5μg/ml)は、TSG−6がiHAに結合することを妨害しなかった(続くTSG−6を1.2μg/mlおよび6μg/mlで加えたときに、それぞれ、p=0.56および0.74)(図10のB)。これらのデータは、iHAが、続くPTX3結合を妨害するように、TSG−6結合後に構造的に変化することを示している。
実施例5:固定化したTSG−6/iHAおよびPTX3/iHAの複合体に対するLPS刺激したマクロファージの付着
Covalink−NH 96ウェルを、上に記載されるように、PBS(対照)、HA(iHA)、または天然のHC−HA/PTX3(nHC−HA/PTX3)と共有結合させた。その後、TSG−6(6μg/ml)またはPTX3(5μg/ml)を、iHAに加えて結合させた。DMEM/10%のFBS中のRAW264.7マクロファージ(100μlの1×105細胞/ml)を、各々が連結したウェルへと播種し、1μg/mlのLPSで処置した。24時間のインキュベーション後、細胞形態を撮影した。
マクロファージは、プラスチック制御(plastic control)と比較したときに、iHAに不十分に付着した(すなわち、より多くの凝集した細胞を結果的にもたらす)。そのような付着は、TSG−6/iHAによってさらに妨げられ、結果的に多くの数の及びより大きな細胞凝集をもたらす。対照的に、PTX3/iHAは、細胞付着を促進し、結果的に固定化したnHC−HA/PTX3に示されるものと類似したパターンをもたらした(図11)。
実施例6:TSG−6/iHAおよびPTX3/iHAの複合体によるM1およびM2のマーカーの調節
RAW264.7細胞を、実施例5におけるように培養し、PBS(対照)、固定化したHA(iHA)、TSG−6/iHA、PTX3/iHA、またはnHC−HA/PTX3上で4時間、1μg/mlのLPSで刺激した。総RNAを、細胞から単離し、M2マーカーIL−10およびM1マーカーIL−12p40のmRNA発現を、上に記載されるような定量的PCRによって測定さした(図12Aおよび図12D)。あるいは、細胞を、24時間、1μg/mlのLPS(図12Bおよび図12E)またはIFN−γ/LPS(図12C)で刺激し、IL−10、IL−12p70、およびIL−23のタンパク質発現を、それぞれのELISAを使用して、細胞培養培地中で測定した。
IL−12p40のmRNA(IL−12p70の2つのサブユニットの1つ)の発現は、対照(Ctrl)(p>0.05)の発現と比較して、iHA(なし(none))上で著しく変化しなかった(図12A)。対照的に、IL−12p40のmRNAは、TSG−6/iHA(p<0.01)の上で著しくアップレギュレートされたが、PTX3/iHAおよびnHC−HA/PTX3(p<0.05)上で著しくダウンレギュレートされた(図12A)。しかしながら、IL−12p70タンパク質の発現は、対照またはiHA単独上で有意差(p>0.05)なしで検出可能なだけであったが、TSG−6/iHA、PTX3/iHA、およびnHC−HA/PTX3上では検出できない(図12B)。IL−12p40はまた、IL−23のサブユニットとして機能する。IL−23タンパク質の発現が、TSG−6/iHAおよびPTX3/iHA(p<0.01)上で著しくアップレギュレートされたが、nHC−HA/PTX3(p<0.05)上では検出できないことが観察された(図12C)。これらのデータは、TSG−6/iHAおよびPTX3/iHAの両方が、IL−23ではなくIL−12を抑制するのに有効であることを示している。
RAW264.7細胞によるIL−10のmRNAの発現は、対照(p>0.05)と比較して、iHA単独上で著しく変化しなかったが、TSG−6/iHA、PTX3/iHA、およびnHC−HA/PTX3(p<0.05)上で著しくアップレギュレートされた(図12D)。しかしながら、IL−10タンパク質の発現は、固定化したnHC−HA/PTX3(p<0.05)(図12E)の陽性対照に類似したPTX3/iHAの上で単に著しくアップレギュレートされる。これらのデータは、異なるパターンの細胞付着後に(実施例5)、結果として生じた細胞が異なる機能を示し、PTX3/iHAが、TSG−6/iHAよりもIL−10をアップレギュレートすることにより有効であることを示している。
実施例7:IαIから固定化したHAへのHC1およびHC2のインビトロでの移送
Covalink−NH 96ウェルを、上に記載されているような、PBS(対照)、HA(iHA)、または天然のHC−HA/PTX3(nHC−HA/PTX3)と共有結合させた。連続するTSG−6濃縮物(100μl中に0、0.24、1.2、6、12μg/ml)を、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中でiHAによって個々にインキュベートした。(Blom et al. (1999) J. Biol. Chem. 274, 298−304に従ってヒト血漿から調製した)ヒトIαI(5μg/ml)を、TSG−6と同時に又は連続して(2時間後)加えた。結合HC1、HC2(HC1およびHC2に対する抗体はアブカム,Cambridge,MAからのものであった)、またはIαI(DAKO、Carpinteria,CA)を、上に記載されるTSG−6およびPTX3のELISAに類似したそれぞれの修正したELISAによって測定した。
データは、TSG−6およびIαIが同時に加えられたときよりも、TSG−6が、IαIを続いて加えることでiHAに予め結合されたときに、iHAに結合したHC1(図13A)またはIαI(図13B)の量が、より高いTSG−6濃度(6および12μg/ml)でより少ないことを示している。HC2は、サンプル中で検出されなかった(データは示されず)。結合HAを消化し、HAから結合タンパク質を放出するために、ウェルをヒアルロニダーゼでインキュベートし、これらのサンプルを、抗−TSG−6抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて、ウェスタンブロットによって分析した;iHAに結合したTSG−6の量は、IαIが続けて加えられたとき(すなわち、TSG−6がiHAに結合された後(図13C))よりも、TSG−6と同時に加えられたときにより少なかった。5μg/mlのPTX3および5μg/mlのIαIを、iHAで同時にインキュベートしたときに、IαIではなくPTX3が、iHAに結合された(図13D)。
これらのデータは、溶液中で遊離した(free)TSG−6が、iHAに結合したTSG−6よりも、HC1をIαIからiHA上へと移送する際により効果的であることを示している(図13Aおよび図13B)。TSG−6およびIαIがiHAで同時にインキュベートされるとき(図13C)よりも、TSG−6がiHA単独に予め結合されるときに、より多くのTSG−6がiHAに結合され、これは、TSG−6を同時に加えた場合に、TSG−6がiHAに結合することをIαIが防ぎ、TSG−6が、iHAよりもIαIに結合する際により高い親和性を有するかもしれないことを示している。
さらに、溶液中で遊離したまたはiHAに結合したTSG−6は、HCをIαIからiHAに移送しない(図13D)。
実施例8:HC1・TSG−6およびHC2・TSG−6の複合体の形成に対するPTX3の効果
IαI(40μg/ml)およびTSG−6(6μg/ml)を、PTX3(20μg/mlまたは120μg/ml)とともに又はそれなしで、37℃で2時間、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中でインキュベートしれた。反応サンプルを、HC1(図14A)、HC2(図14B)、TSG−6(図14C)、ビクニン(アブカム、Cambridge,MA)(図14D)、およびPTX3(データは示されず)に対する抗体を用いてウェスタンブロットによって分析した。HMW HAのない溶液中で、TSG−6は、HC1・TSG−6およびHC2・TSG−6の複合体を形成し、HMW IαI(図14Aおよび14B)を生成する。HMW IαIの形成は、図14Eで例証される。このデータは、HC1およびHC2の両方が、溶液中のTSG−6によってHMW HAに移送されることを示す。
PTX3の同時付加は、HC1・TSG−6ではなく、HC2・TSG−6の形成を用量依存的に阻害する(図14Aおよび図14B)。対照的に、HC2を含有しているHMW IαIは増加されるが、HC1を含有しているHMW IαIは減少される(図14Aおよび図14B)。TSG−6は、PTX3とともに又はそれなしで、HMW HAのない溶液中に加えられるときに、二量体を形成する(図14C)。これらの結果は、1)IαI中のHC1およびHC2の両方が、TSG−6の作用を介して、TSG−6またはHMW IαIのいずれかとの複合体を形成し;2)PTX3が、TSG−6によるHC1およびHC2の移送に関して上記のプロセスを別々に妨害することを示している。HC1またはHC2の切断型はない。PTX3によるHC2・TSG−6の阻害は、図14Fで例証される。
約40kDaおよび45kDaの、それぞれ、ビクニンのグリコシル化形態およびグリコシル化且つコンドロイチン硫酸結合した形態を、それぞれ、TSG−6およびPTX3によって放出した(図14D)。このデータは、TSG−6およびPTX3の両方がIαIと相互作用することを示している、公表されたデータと一致しており、またTSG−6およびPTX3が、IαIと別々に相互作用し、結果的にビクニンの異なる結果をもたらすことを示唆している。
別々の実験において、HMW HA(250μg/ml)、IαI(40μg/ml)、およびTSG−6(6μg/ml)を、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中のPTX3(1、2.5および5μg/ml)とともに又はそれなしで、37°Cで24時間溶液中でインキュベートした。反応サンプルを、IαIに対する抗体を用いてウェスタンブロットによって分析した(図14G)。PTX3なしではあるが、HMW HAを有する溶液中で、IαIからのHCを、TSG−6によってHMW HAに完全に移送した。PTX3の存在下で、TSG−6媒介性のHC移送は、用量依存的に阻害され、結果的にLMW中間物(〜130kDaおよび恐らくHC1−TSG−6から成る)または未処理のプレ(pre)IαI(〜130kDa、未処理のIαI)(220kDa)、およびHMW IαI(充填ウェル(loading wells)内で保持された)の蓄積をもたらす(図14G)。これらのデータは、PTX3が、HC2−TSG−6の形成をとりわけ防ぎ、結果的にHC2移送および起こり得るHC1移送の阻害をもたらす結果と一致している。
実施例9:TSG−6、PTX3、およびIαIの同時付加による固定化したHAからのインビトロでの再構成したHC−HA/PTX3(rcHC−HA/PTX3)複合体の形成
固定化したHA(各ウェルにおける100μl中の〜14μg/mlまたは1.4μg)を、実施例3に記載されるように調製した。IαI(5μg/ml)およびTSG−6(12μg/ml)を、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中で37℃で2時間、PTX3(1、5または20μg/ml)とともに又はそれなしで、iHA上で同時にインキュベートした。8MのGnHClおよびPBSでの洗浄後、結合したHC1、TSG−6、およびPTX3を、それぞれの修正したELISA(それぞれ、図15のA、D、およびF)によって測定した。ウェルを、8MのGnHClおよびPBSで再び洗浄し、結合成分を有するiHAを、75mMのNaCl、pH6.0を用いて10mMの緩衝酢酸溶液中で60℃で2時間、1ユニット/mlのヒアルロニダーゼによって消化した。サンプルを、HC1(図15のB)、HC2(図15のC)、TSG−6(図15のE)、およびPTX3(図15のG)に対する抗体を用いてウェスタンブロットによって分析した。
iHAへのTSG−6、PTX3およびIαIの同時付加は、結果的に、HC2ではなく、HMW HC1を含有しているrcHC−HA/PTX3複合体、および切断されたHC1およびHC2をもたらした(図15のA−C)。PTX3は、複合体中でHMW HC1の量を用量依存的に減少した。データは、PTX3が、TSG−6によるHC2へのHC1およびHC2の移送を用量依存的に妨害し(図15のA−C)、結果的に、より少ないHC1/切断されたHC1および切断されたHC2をもたらしたことを示している(図15のBおよびC)。TSG−6モノマーは減少されたが、一方で、HMW TSG−6(PTX3及び/又はHCによって多量体であるか複合体のいずれか)は変わらなかった(図15のDおよびE)。
データはまた、PTX3が、IαIの存在下または欠如下で、iHAに結合されたTSG−6を妨害しないことを示している。公表されたデータは、より小さなMW HAが試験されるときに、TSG−6が、iHAによって二量体を形成することを示唆している(Baranova et al. (2011) J Biol Chem. 286(29):25675−86)。本明細書に示されるデータは、TSG−6が、IαIの存在下でHMW HC−HA/PTX3複合体中で複合化されることを示している。遊離TSG−6が、用量依存的な方法でPTX3によって減少されるため、PTX3が、IαIの存在下でHC−HA/PTX3複合体へのTSG−6の結合を促進することがさらに示される。この状況下で、大多数のPTX3は、nHC−HA/PTX3中で観察されたものに類似した、HC−HA/PTX3複合体中の多量体として存在し、単量体、二量体または三量体の量は減少している(図15のFおよびG)。
実施例10:固定化したHAに対する、TSG−6およびIαIによるインビトロで作られた再構成されたHC−HA/PTX3(rcHC−HA/PTX3)複合体へのPTX3の逐次付加の効果
固定化したHA(〜14μg/ml)を、実施例3に記載されるように調製した。IαI(5μg/ml)およびTSG−6(12μg/ml)を、37℃で2時間、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中のiHA上でインキュベートした。非結合のIαIおよびTSG−6を取り除いた後に、PTX3(1、5または20μg/ml)を有する又はそれなしでの反応緩衝液を、37℃で2時間、予め結合したHCおよびTSG−6でインキュベートした。8MのGnHClおよびPBSでの洗浄後、結合HC1、TSG−6、およびPTX3を、それぞれのELISA(それぞれ、図16のA、D、およびF)によって測定した。その後、ウェルを、8MのGnHClで再び洗浄した。その後、結合成分を有するPBS対照およびiHAを、60℃で2時間、1ユニット/mlのヒアルロニダーゼによって消化した。サンプルを、HC1(図16のB)、HC2(図16のC)、TSG−6(図16のE)、PTX3(図16のG)に対する抗体を用いてウェスタンブロットによって分析した。
TSG−6およびHCがiHAに予め結合された後に続いてPTX3が加えられるときに、PTX3は、HMW複合体へのHC1移送を用量依存的に減少させる(インタクトな(intact)HC1および切断されたHC1の両方が減少される)が、複合体中の切断されたHC2の量を増加させる。実施例7に示されるデータと一致して、結合TSG−6は、TSG−6ほどiHAへのHCの移送に有効ではない。
実施例8に示されるデータに類似して、PTX3はまた、HMW TSG−6および単量体のTSG−6を用量依存的に減少させ(図16のDおよびE)、これは、PTX3の続く追加が、予め結合したTSG−6を連続的に消耗させることを示している。
しかしながら、PTX3は、TSG−6/HC−HA複合体中にこれ以上組み込むことはできない(図16のFおよびG)。iHA中の予め結合されたTSG−6はまた、PTX3がiHAに結合することを部分的に防ぐため(実施例4を参照)、この結果は、TSG−6およびIαIによるrcHC−HA/PTX3複合体の形成が、iHAへのPTX3結合が完全に除外される範囲で、TSG−6/iHAとは構造上異なることを示している。
実施例11:固定化したHA上の予め結合されたPTX3によるインビトロでの再構成されたHC−HA/PTX3(rcHC−HA/PTX3)複合体の形成およびTSG−6およびIαIの逐次付加
固定化したHA(〜14μg/ml)を、実施例3に記載されるように調製した。PTX3(5μg/ml)およびiHAを、反応緩衝液(PBS中に5mMのMgCl2、pH7.5)中の37℃で2時間、反応緩衝液中でインキュベートした。非結合PTX3を取り除いた後に、TSG−6(6μg/ml)およびIαI(5、25および125μg/ml)を含有している反応緩衝液を、37℃で2時間インキュベートした。8MのGnHClおよびPBSでの洗浄後、結合HC1、TSG−6、およびPTX3を、それぞれのELISA(それぞれ、図17のA、C、およびE)によって測定した。その後、ウェルを、8MのGnHClで再び洗浄した。結合成分を有するPBSまたはiHAを、75mMのNaCl、pH6.0を用いて10mMの緩衝酢酸溶液中で60℃で2時間、1ユニット/mlのヒアルロニダーゼによって消化した。サンプルを、PTX3(図17のB)、TSG−6(図17のD)、HC1(図17のF)およびHC2(図17のG)に対する抗体を用いてウェスタンブロットによって分析した。
IαIおよびTSG−6の存在下で、予め結合されたPTX3は、PTX3に対するELISAの免疫反応力および多量体のPTX3の量を用量依存的に増加させたが、HC−HA/PTX3複合体中の単量体のPTX3の量を減少させた(図17のAおよびB)。このデータは、多量体のPTX3が、この抗体によって免疫反応力を促進することを示している。
予め結合されたPTX3は、単量体のTSG−6を用量依存的に除外したが、一方で、rcHC−HA/PTX3複合体中のTSG−6を減少させた(図17のCおよびD)。IαIのTSG−6に対するモル比が3:1であるときに、結合TSG−6(単量体およびHMW形態の両方)の著しい減少が検出され、結合された多量体のPTX3も同様に最大限にされる。
HC1 ELISAデータ(図17E)に基づく結合HC1の著しい変化はなかった。HC2の移送は、IαI濃度を増加させることによって用量依存的に増加された。
実施例12:固定化したHA上の予め結合されたPTX3に対する予め結合されたTSG−6によってインビトロで形成された、再構成されたHC−HA/PTX3(rcHC−HA/PTX3)複合体間のマクロファージ細胞付着活性の比較
Covalink−NH 96ウェルを、実施例3に記載されるように、PBS(対照)、HA(iHA)、またはnHC−HA/PTX3と共有結合させた。IαI(5μg/ml)、TSG−6(6μg/ml)またはPTX3(5μg/ml)を、以下のように同時にまたは連続してiHAに結合させた:(1)(IαI/TSG−6/PTX3)/iHA:IαI、TSG−6、およびPTX3を、反応緩衝液中で37℃で2時間、iHAで同時にインキュベートした;(2)(IαI/TSG−6)/PTX3/iHA:IαIおよびTSG−6を、反応緩衝液中で37℃で2時間iHAで最初にインキュベートした。非結合のIαI/TSG−6を取り除いた後、8MのGnHClおよびPBSで洗浄し、PTX3を加え、反応緩衝液中で37℃で2時間インキュベートした;(3)(PTX3)/IαI/TSG−6/iHA:PTX3を、反応緩衝液中で37℃で2時間、iHAで最初にインキュベートさした。非結合のPTX3を取り除いた後、8MのGnHClおよびPBSで洗浄し、IαI/TSG−6を加え、反応緩衝液中で37℃で2時間インキュベートした。複合体の形成後、100μlのRAW264.7細胞(1×105細胞/ml)を、各々が連結したウェルへと播種し、1μg/mlのLPSで処置した。24時間のインキュベーション後、細胞形態を撮影した。
マクロファージは、制御としてiHAに不十分に付着した。
IαIの存在下で、iHA((IαI/TSG−6/PTX3)/iHAまたは(IαI/TSG−6)/PTX3/iHA)に対する同時に又は予め結合されたTSG−6は、細胞付着を阻害し、IαIのない状態に類似した細胞凝集(図18)を促進する(実施例5を参照)。対照的に、iHA[(PTX3)/IαI/TSG−6/iHA]に対する予め結合されたPTX3は、実施例5において示されるようなIαIのない予め結合されたPTX3に類似した細胞付着を促進する。後者は、nHC−HA/PTX3の陽性対照に似ている(図18)。
実施例13:固定化したHA上の予め結合されたPTX3に対する予め結合されたTSG−6によってインビトロで形成された、再構成されたHC−HA/PTX3(rcHC−HA/PTX3)複合体間のM1およびM2のマーカー発現の調整の比較
rcHC−HA/PTX3複合体上で培養されたマクロファージにおけるIL−10およびIL−12p40の発現
RAW264.7細胞を、実施例12に記載されるように、固定化した基質上でDMEM/10%のFBS中に培養し、4時間1μg/mlのLPSで刺激した。総RNAを単離した、IL−10およびIL−12p40 mRNAの発現を、上に記載されるように定量的PCRによって測定した(図19Aおよび図19C)。あるいは、細胞を、24時間1μg/mlのLPSで刺激し、細胞培養上清中のIL−10およびIL−12p70のタンパク質を、それぞれのELISAによって測定した(図19Bおよび図19D)。
PBS対照と比較して、IL−10 mRNAの発現は、iHA(p=0.56)によっては著しく変化しなかったが、iHA上のTSG−6、IαI、およびPTX3(図19におけるIαI/TSG−6/PTX3(a))(p=0.0008)の同時付加によって形成された複合体上で著しくアップレギュレートされた。同様に、IL−10 mRNAの発現は、IαIおよびPTX3(図19におけるIαI/TSG−6/PTX3(b))(p=0.04)の続く追加および陽性対照nHC−HA/PTX3(p=0.008)とともにiHAに対する予め結合されたTSG−6によって形成された複合体上で著しくアップレギュレートされた。IL−10 mRNAの発現は、IαI/TSG−6/PTX3(a)(p=0.04)よりnHC−HA/PTX3上で著しくより高かったが、IαI/TSG−6/PTX3(b)(p=0.55)上ほど著しく高くはなかった。対照的に、IL−10 mRNAの発現は、iHAに対する予め結合されたPTX3(図19におけるIαI/TSG−6/PTX3(c))(p=0.74)によって形成された複合体上で著しくアップレギュレートされなかった(図19A)。IL−10タンパク質の発現は、ELISAによって測定されるように、nHC−HA/PTX3(p=0.03)によって単に著しくアップレギュレートされた(図19B)。
対照と比較して、IL−12p40(IL−12p40は、IL−12p70の2つのサブユニットの1つであり、もう1つのサブユニットは、IL−12p35である)mRNAの発現は、iHAによって著しく変化しなかった(p=0.1)。対照的に、IL−12p40 mRNAの発現は、iHA上のTSG−6、IαI、およびPTX3(図19におけるIαI/TSG−6/PTX3(a))(p=0.05)の同時付加によって形成された複合体上で、およびiHAに対する予め結合されたTSG−6(図19におけるIαI/TSG−6/PTX3(b))(p=0.04)によって形成された複合体の上で著しくアップレギュレートされた。対照的に、IL−12p40 mRNAの発現は、予め結合されたPTX3(図19におけるIαI/TSG−6/PTX3(c))によって形成された複合体上で完全に無効にされ、nHC−HA/PTX3(p=0.01)によって著しくダウンレギュレートされた。後者の2つの状態(p=0.04)間に統計的有意差があった(図19C)。対照と比較して、IL−12p70タンパク質の発現は、iHA(p=0.32)によって著しく変化しなかったが、予め結合されたPTX3(IαI/TSG−6/PTX3(c))(p=0.03)によって形成された複合体上で著しくダウンレギュレートされた(図19D)。対照的に、IL−12p70タンパク質の発現は、iHA上のTSG−6、IαI、およびPTX3(IαI/TSG−6/PTX3(a))の同時付加によって形成された複合体、予め結合されたPTX3(IαI/TSG−6/PTX3(c))によって形成された複合体、およびnHC−HA/PTX3(それぞれ、p=0.05、0.02、および0.01)上で無効にされた。
様々な刺激の存在下で培養されたマクロファージにおけるIL−23の発現
別々の実験において、休止するRAW264.7細胞(無)の細胞培養上清、または24時間のDMEM/10%のFBS中のIFN−γ(200ユニット/ml)、LPS(1μg/ml)、IFN−γ/LPS、免疫複合体またはIC(LPS/IC)[ICは、150μg/mlのIgGオプソニン化のOVA(IgG−OVA)を含有し、25℃で30分間、OVA(Worthington Biochemical Corp.,Lakewood,NJ)に対するウサギ抗OVA IgG(Cappel,Durham,NC)の10倍のモル過剰量を混合することによって作られた]を有するLPS(1μg/ml)、またはIL−4(10ng/ml)(R&D Systems, Minneapolis, MN)の刺激による細胞培養上清中のIL−23タンパク質を測定した。細胞培養上清中のIL−23タンパク質を、製造業者のプロトコルに従って、IL−23 ELISA(Biolegend, San Diego, CA)によって測定した(図19E)。IL−23タンパク質は、休止するRAW264.7細胞、およびLPS(1μg/ml)、免疫複合体を有するLPS(LPS/IC)、またはIL−4(10ng/ml)による4時間の刺激下での細胞の細胞培養上清において検出できなかったが、IFN−γ(200ユニット/ml)およびIFN−γ/LPSによる24時間の刺激下で検知可能になった(図19E)。
rcHC−HA/PTX3複合体上で培養されたマクロファージにおけるIL−23の発現
別々の実験において、RAW264.7細胞を、上に記載されるような固定化した基質上で培養し、24時間IFN−γ/LPSで刺激した。細胞培養上清中のIL−23を、上に記載されるようにIL−23 ELISAによって測定した(図19F)。
対照と比較して、24時間の200ユニット/mlのIFN−γ/1μg/mlのLPSの刺激によるRAW264.7細胞の細胞培養上清中のIL−23タンパク質は、iHA(p=0.02)によって著しく影響されなかったが、iHA上のTSG−6、IαI、およびPTX3(IαI/TSG−6/PTX3(a))(p=0.002)の同時付加によって形成された複合体、およびiHAに対する予め結合されたTSG−6(IαI/TSG−6/PTX3(b))(p=0.0005)によって形成された複合体上で著しくアップレギュレートされた。対照的に、IL−23タンパク質は、nHC−HA/PTX3(p=0.05)に類似した予め結合されたPTX3(IαI/TSG−6/PTX3(c))(p=0.05)によって形成された複合体上で完全に無効にされる(図19F)。
実施例14:慢性移植片対宿主病の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
同種異型の造血幹細胞移植(HSCT)は、血液悪性腫瘍のための治癒の可能性のある処置である。しかしながら、慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、主な合併症のままである。GVHDは、45−60%でいくつかの眼症状発現を引き起こし、その中でも、眼乾燥は、同種異型のHSCTレシピエントのほぼ50%で生じる、最も頻繁な合併症である。実際に、眼乾燥は、cGVHDの診断に対する特有な兆候および症状である。cGVHDを有する患者は、cGVHDに関連する初期の軽度の眼乾燥疾患またはNIHのコンセンサス会議の分類に応じたいわゆる「cGVHDの示差的特徴」のいずれかを示す。
HSCT後の2つのタイプの眼乾燥が言及されている;1つは、眼乾燥の発症後すぐに生じる反射涙の減少を有する、重度の眼表面および涙機能の損傷を有し、一方で、もう1つは、正常な反射涙を有して軽度である。眼乾燥は、典型的に移植の6か月後に生じ、重症度は、cGVHDおよびマイボーム腺疾患の存在と関連していることが報告された。cGVHD関連の重度の眼乾燥の発症は、軽度の眼乾燥の発症より早い。例えば、重度の眼乾燥は、HSCTの6.8±2.5か月後に生じ、一方、軽度の眼乾燥は、HSCTの13.2±9.1か月後に生じる。25人のHSCT後の患者の50の眼と14人の年齢が一致した健康な対照の28の眼との比較試験は、MG閉塞、減少した角膜知覚、角膜の感受性、増強された涙液蒸発速度、減少した結膜のGCD、増加した結膜の扁平上皮化生および炎症細胞が、眼乾燥の被験体のない正常な対照およびHSCT後よりもcGVHD関連の眼乾燥においてより顕著であったことを示した。さらに、結膜の炎症細胞は、軽度の眼乾燥と比較して、重度の眼乾燥において著しくより多かった(P<0.03)。さらに、最も重度の眼乾燥患者は、全身性のcGVHDを有していたが、軽度の眼乾燥患者の群においては、ほんの少しの患者しか全身性のcGVHDを有さなかった。これらの結果は、cGVHD関連の重度および軽度の眼乾燥疾患における異なる病理過程を示唆した。包括的な眼表面の変更が、HSCT後の患者において顕著であったため、患者がcGVHD関連の眼乾燥を有してしていたか否かにかかわらず、それらの結果は、炎症過程の程度がcGVHD関連の眼乾燥の結果における中心的な役割を有するようであることを示唆している。結膜のブラシ細胞診の検体は、眼乾燥の被験体のない正常な対照およびHSCT後と比較して、cGVHD関連の重度の眼乾燥および軽度の眼乾燥両方の患者における炎症細胞のかなりの増加を示した。その上、重度の眼乾燥の検体における炎症細胞の数は、軽度の眼乾燥の検体におけるよりも著しく多かった。さらに、多くの炎症性マーカーが、cGVHD関連の眼乾燥患者から、結膜および涙腺の生検サンプル中に現れ、炎症が、cGVHD関連の眼乾燥の病因に関係することが確認された。
cGVHD中の多くの瘢痕化の合併症をもたらす可能性のある1つの原因は、浸潤性ドナーリンパ球による慢性炎症によって放出されたサイトカインの結果としての結膜の基底上皮および涙腺筋上皮のEMTによるものある。以前に、炎症および過度の繊維症が、慢性移植片対宿主病(cGVHD)の顕著な組織学的特徴であることが認識されたが、これらの変化の根底にある機構は未知のままである。cGVHDは、強皮症に似た特徴を表わし、これは、皮膚病変における顕著な線維症、肺線維症、および慢性免疫不全症を示している。眼のcGVHDの臨床像は、乾燥した、ゴロゴロした(gritty)、または有痛性の眼、結膜下の線維性血管性組織の形成を含む瘢痕性結膜炎、および結膜線維症の特性である、強膜短縮の発症を含む。皮膚病変における硬化の特徴に加えて、口腔における粘膜萎縮、食道の上部から中部3分の1における狭窄または狭窄症、硬化症による関節の硬直または拘縮、および肺内の閉塞性気管支炎も一緒に、全身性のGVHD媒介性の線維症の特性を示している。影響を受けた外分泌腺および粘膜における主な組織学的結果は、軽度のリンパ球浸潤に付随する、間質の著しい線維化および線維芽細胞の数の顕著な増加である。臨床的に、眼乾燥の重症度は、リンパ球浸潤の量よりもむしろ、線維性変化の程度に関連しており、これは、過度の細胞外マトリックスの蓄積が、主として、外分泌腺の機能不全に寄与することを示唆している。間質での線維芽細胞はまた、リンパ球に付着することによって、およびヒト白血球抗原クラスIIおよび副刺激分子を発現することによって、炎症において役割を果たす。これらの結果はとともに、線維芽細胞がcGVHDの病因に重要な役割を果たすことを示唆している。さらに、cGVHD患者の涙腺に蓄積された線維芽細胞が、キメラ状態であることを発見した。したがって、循環するドナー由来の前駆体から生じる線維芽細胞およびレシピエント由来の線維芽細胞は、相互作用するT細胞によってcGVHDを有する患者における過度の線維症に関係し得る。T細胞浸潤の抑制による炎症の制御が、cGVHDにおけるそれほど瘢痕性でない合併症につながるかどうかは未知のままである。
以前に、ドナー由来の線維芽細胞が、ヒトcGVHDの組織サンプルにおいて免疫組織化学的検査およびY染色体蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)の方法を組み合わせることによって検出された。Zhang et al. ((2002) J Immunol. 168:3088−3098)によって確立されたcGVHDのネズミモデルを使用すると、上記の結果が再現され得る。このモデルでは、涙液量は、移植の3週間後に減少し始める。涙腺管のまわりの初期の線維症および進行性の線維症は、早くて移植の3週間後に検出され、ヒトのサンプルに類似した方法で最大で8週間徐々に進行する。GVHDおよび対照の群の両方で成功させるために、この実験を20回以上行い、結果として、全体的な再現は、涙腺組織サンプルおよび涙液量の分析に基づいて、70−80%になる。
典型的な移植試験では、7−8週齢の雄および雌のB10.D2(H−2d)およびBALB/c(H−2d,Sankyo Laboratory,Ltd)のマウスは、成熟したT細胞のソースとして加えられた脾臓細胞を使用して、それぞれ、ドナーおよびレシピエントとして使用される。簡潔に言うと、雌のレシピエントのマウスは、Gammacel 137Csのソース(J. L.Shepherd & Associates, San Fernando, CA)から700 cGyを致死的に照射される。およそ6時間後に、それらは、尾静脈によって、RPMI 1640(BioWhittaker,Walkersville,MD)中に懸濁された雄ドナーの骨髄(1×106/マウス)および脾臓(2×106/マウス)の細胞を注入される。対照群(同遺伝子型BMT)は、同数の雄のBALB/c脾臓および骨髄の細胞を受け取る雌のBALB/cのレシピエントのマウスから成る。(Zhang et al. (2002) J Immunol. 168:3088−3098)。HC−HA/PTX3処置に対して、HC−HA/PTX3複合体は、骨髄移植の7、14、21および28日後などに、骨髄移植後の所定時間に結膜下注射によって投与される。
処置の効果は、限定されないが、Mallory染色を使用する涙腺線維症の測定、活性化された線維芽細胞のマーカーとしての、コラーゲン特異的分子シャペロンである、HSP47を使用する、フィールド(field)当たりの活性化された線維芽細胞の数の測定、木綿糸の試験を使用する、ピロカルピン刺激下での涙液(lacrimal tear)の産生の測定、およびRT−PCRを使用する、HSP47、IL−4、IL−6、およびTGFベータのような線維形成性サイトカインのレベルの決定を含む、アッセイを使用して評価される。
HC−HA/PTX3複合体による処置が、結果として、マウスモデルにおける涙腺線維症の減少をもたらすと予期される。その後、HC−HA/PTX3複合体は、cGVHDによって引き起こされた眼乾燥の処置のために、ヒト被験体への結膜下注射によって臨床設定中に投与される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、分離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例15:マウスモデルにおける炎症の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
この例では、抗炎症効能は、HSV−1壊死性の角膜実質性角膜炎のネズミモデルにおいて試験される。Charles River Wiga(Sulzfeld,Germany)から得た合計240匹の雌のBALB/cマウス(6−8週齢)は、2mgのケタミンHClおよび400ngのメピバカインHClの腹腔内注射によって麻酔をかけられる。各マウスに対して、片目の中央の角膜は、外科用顕微鏡の下で、27ゲージの針を使用して、8つの水平の引っかき傷および8つの垂直の引っかき傷を有する十字模様で引っ掻かれる。各々の損傷した角膜に、HSV−1ウイルス(KOS株)の1×105のプラーク形成単位を含有している5μlの懸濁液が適用され、それらは、Vero細胞上で慣例的に繁殖され、−80℃で保存され、および標準プラークアッセイによって定量化される。HSV−1注入後の14日目に、重度の潰瘍化する実質性角膜炎を進行させたマウスの角膜は、研究用に含まれ(約50%の収率)、3つの群に細分化され、その各々は、40の角膜(臨床検査に対してn=6、組織学的検査に対してn=5、免疫染色に対してn=5、サイトカインELISAに対してn=6、TUNELに対してn=5、およびフローサイトメトリーに対してn=10、および摩耗/バックアップ(backup)に対してn=3)から成る。無感染の僚眼は、陰性対照群として使用される。陽性対照群は、眼瞼を閉じるために、2 10−Oナイロン縫合を使用して瞼板縫合術を受ける。実験のHC−HA/PTX3群は、陽性対照と同じ瞼板縫合術を受け、精製されたHC−HA/PTX3複合体を含有している組成物の局所適用を1日4回受ける。実験のHA群は、同じ瞼板縫合術を受けるが、1日4回HA単独の組成物の局所適用を受ける。2日後に、瞼板縫合術は、すべての3つの群で除去される。手術用顕微鏡(Zeiss,Germany)を使用して、各角膜の間質炎症の重症度は、0乃至4+のスコアによって評価され、1+は25%未満、2+は50%未満、3+は75%未満、および4+は75%から100%の間の、角膜血管新生、角膜浮腫、および角膜菲薄化のある角膜混濁を有している。CO2チャンバー(chamber)による安楽死に続く頸椎脱臼後に、各群からの5つの角膜は、CD11b(好中球およびマクロファージ)、F4/80(マクロファージ)、Gr−1(PMN)、およびCD3(T細胞)に対する一次抗体を使用して、凍結切片の免疫染色にさらされ(方法(Method)を参照)、各群からの別の5つの角膜は、ヘマトキシリン−エンジン染色およびTUNEL染色を受ける。さらに、各群からの6つの角膜から調製された角膜のホモジェネートは、IL−1α、IL−2、IL−6、IFN−γおよびTNFαのレベルのELISA測定にさらされる。コラゲナーゼによって各群の10の角膜から放出された細胞は、MTTアッセイによって生細胞を、およびAnnexin V−PE Apoptosis Detection Kit(BD−Pharmingen,Heidelberg,Germany)によってアポトーシス細胞を定量するフローサイトメトリーのために調製される。
50%のマウス HSV−1感染の角膜が、研究のために含められる接種後の2週間で、重度の角膜実質性角膜炎(炎症)、角膜浮腫、および角膜潰瘍を進行させると予期される。2日後に、無感染の角膜は正常なままであるが、一方で、対照群での感染した角膜は、瞼板縫合術が除去されるときに、同様の重度な炎症を維持する。対照群に類似して、実験のHA群における角膜は、同様の重度な炎症を示す。対照的に、実験のHC−HA/PTX3群の角膜は、炎症の減少を示し、これは、CD11b、F4/80、Gr−1、およびCD3に対する組織学的検査および免疫染色に基づく炎症性(PMN/マクロファージ)および免疫(T細胞)の浸潤の大幅な減少、ELISAに基づくIL−1α、IL−2、IL−6、IFN−γ、およびTNF−αのような炎症性および免疫性のサイトカインの大幅な減少、および角膜組織におけるTUNEL陽性細胞、および陽性対照群および実験のHA群と比較されたときに角膜からコラゲナーゼによって放出される(Annexin−V/7−AADを使用するフローサイトメトリー)死(MTT)細胞およびアポトーシス細胞の大幅な増加に関連し、それらによって具体化される。まとめると、これらのデータは、HC−HA/PTX3複合体が、このネズミのHSV−1モデルにおいて臨床的な抗炎症効能を発揮するという観念を支持している。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法で使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法で使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例16:ウサギモデルにおける瘢痕化の阻害のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、抗瘢痕化の効能が、エキシマーレーザー支援のレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)のウサギモデルにおいて試験された。いずれかの性別の、2.5−3.0kgの体重(BW)の合計30羽のNew Zealand白ウサギが、使用され、以下の3つの群(各々n=10)に細分化される:非PRK対照群、PRK HA群、およびPRK HC−HA/PTX3群。PRKの前に及びすべてのCMTF試験の間、ウサギは、5mg/kgのBWキシラジンおよび30mg/kgのBWケタミンの筋肉内注射によって、および局所的に0.5%のテトラカインHCl点眼剤(Ortopics Laboratories Corp,,Fairton,NJ)によって麻酔をかけられる。2つのPRK群について、各動物の片目の角膜上皮は、切除領域よりわずかに大きな領域で鈍いスパーテルで軽く削ることによって、手動で除去され、剥皮された間質は、通常生理食塩水で灌注され、および過剰流体は、セルローススポンジで軽く除去される。標準の6mmの直径の、9.0 D PRKの近視矯正PRKは、118μmの予測される理論的な間質の切除深さを達成するために、LaddarVision Excimer Laser (Alcon, Ft. Worth, TX)を使用して行なわれる。PRKの直後およびその後に、PRK HC−HA/PTX3基は、HC−HA/PTX3複合体を含有している組成物を適用され、一方で、PRK HA基は、HA単独を含有している組成物を、1日4回、その後、合計3週間の両方で適用される。さらに、すべてのPRK処置された眼は、局所的な0.1%のナトリウムジクロフェナク(PRK後に一滴)および0.3%の硫酸ゲンタマイシン(3日間毎日3回)を注入される。
インビボでのCMTFが、24X面接触の対物レンズを有する修正されたTandem Scanning Confocal Microscope (Tandem Scanning Corporation, Reston, VA)を使用して、PRK前に、およびその1、2、3、および4週間後、2か月後および4か月後に、すべての手術された眼(各群からn=6)上で行われる。角膜形態の標準的な共焦点の検査後に、ビデオカメラ設定(ゲイン、キロボルト、および黒レベル)は、マニュアルに切り替えられ、研究の間に一定を保たれて、すべてのスキャンの直接の比較を可能にする。CMTFは、全体の角膜にわたって、連続的な、Z軸スキャンとして行われる。角膜、上皮、および間質の厚さは、すべての領域をカバーする領域で10の連続するCMTFスキャンを行うことによって、中央の3mmの領域内にマッピングされる。光剥離特性の中心に対応する最も薄い間質領域から得られたデータのみが、続く計算に使用される。画像強度の深さに基づくCMTF特性は、CMTF録画から生じる。角膜の光反射率が、CMTF特性によって測定され、角膜薄濁の評価としてのμm*pixel強度として定義された任意の単位(U)で表わされる。
間質線維性組織の存在を特定および測定するために、各群(対照群および処置群)からの3のPRK処置された動物は、以前に報告されたように、0.2Mの炭酸水素ナトリウム中に溶解された、0.5%の5−(4,6−ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン(DTAF)で生体染色される。2分の染色後に、眼は、局所用抗生物質の投与の前に、過剰な色素を除去するために徹底的に洗い流される。PRKの4か月後に、動物は、ナトリウムペントバルビタール(120mg/kgのBW)の静脈内注射によって安楽死させられる。安楽死後に、すべての角膜は、3分間、pH7.2のPBS中で2%のパラホルムアルデヒドの前眼房の灌流によってインサイツで固定され、切除され、新鮮な固定剤に入れられ、および4℃で保存した。組織は、その後、OCTに埋め込まれ、液体窒素中で急速凍結され、および凍結ミクロトームを使用して切断された。組織は、光剥離の中央および最も深い部分を特定するために連続的に階段状に切断(stepped section)され、ケラトカン、CD3434、FITC結合したファロイジン、ED−Aフィブロネクチン、S−100A4およびα−平滑筋アクチン(α−SMA)に対する抗体を使用して、免疫染色にさらされることで、(CMTF光反射率による)角膜薄濁の変化を、角膜実質細胞から線維芽細胞または筋線維芽細胞までの表現型の変化と相互に関連付けられる。さらに、DTAFで染色されるこれらの眼において、堆積される線維性組織の厚さは、基底上皮細胞と、元来の、損傷されていない角膜基質を表わすDTAF染色された角膜組織との間の距離を決定することによって測定される。
インビボでの共焦点顕微鏡検査法は、特徴的な、上皮、基底膜、間質および内皮の特徴を明らかにすることが予期され、これは、インビボでのCMTF特性が、非PRK対照の角膜に加えて、PRKを受ける角膜についても分析されるときに、経時的に強度および位置が変化する十分に定義されたピークと好適に相関する。公開されたデータによると、PRK処置された角膜は、表在性の上皮、光切除された間質表面、スピンドル状の線維芽細胞の層、および内皮から生じる4つのピークを示すが、一方で、非PRK対照の角膜は、PRKの1週間後に、表在性の上皮、基底膜、および内皮から生じる3つのピークを示す。PRKの1週間後に、2つの実験群間の差はそれほどないことが予期される。PRKの2週間後に、実験のPRK HA群は、スピンドル状の線維芽細胞の細胞移動の進行が原因で、光切除された間質表面に近い、増加するピークの強度を示す。しかしながら、(ピークの高さによる)再増殖する線維芽細胞の強度が、実験のPRK HC−HA/PTX3群において非常に低下されることが予期される。PRKの3週間後から4か月後までの期間に、スピンドル状の線維芽細胞の層に対応するピークは、実験のPRK HA群において無細胞の前部間質の再増殖の完了が原因で、光切除された間質表面から生じるピークと合わさり、結果として、光切除された間質表面に対応するピークの反射率の劇的な増加をもたらす。対照的に、実験のPRK HC−HA/PTX3群においては、反射率のそのような劇的な増加はない。そのような光反射率の差はまた、特定の角膜内の構造から生じるCMTFピークの領域を計算することによって定量され得る。実験のPRK HA群が、PRK後の最初2乃至3週間以内に、反射率強度の相当な線形増加を示し、その後、反射率のゆっくりとした線形低下を示すと予期される。対照的に、両方の期間に、実験のPRK HC−HA/PTX3群の反射率の大幅な減少があると予期される。まとめると、これらのCMTFデータは、HC−HA/PTX3複合体が、無細胞の前部間質の再増殖中の、角膜実質細胞の活性化、移動および細胞動員の阻害作用を働かせることを支持しており、これは、なぜ角膜の光散乱(薄濁)が、以前に報告された抗TGF−β抗体に類似して減少されるかを説明している。結果として、活性化された、移動する、間質内の創傷治癒の角膜実質細胞の細胞性および反射性はほとんどなく、新しい間質細胞外マトリックスの沈着もほとんどなく、および前部間質において正常な休止状態の角膜実質細胞集団がより速く確立される。この結論は、PRK後の2乃至3週間の期間に、実験のPRK HA群と比較したときの、実験のPRK HC−HA/PTX3群における、活性化された角膜実質細胞(ケラトカンを発現する細胞におけるF−アクチン)、線維芽細胞(S−100A4の細胞質染色、ED−Aフィブロネクチンの細胞膜発現)、および筋線維芽細胞(S100A4の核発現およびα−SMAの細胞質発現)の著しい減少によって確証される。また、PRK HC−HA/PTX3群において、基底上皮細胞とDTAF染色された角膜組織との間の距離の著しい減少があることが予期されるが、これは、PRK HA群と比較したときに、線維性組織がかなり少ないことを示している。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例17:アテローム性動脈硬化の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、アテローム性動脈硬化の処置のために投与される。
アテローム性動脈硬化は、炎症細胞集団、特にマクロファージの関与を含む。マクロファージの表現型転換は、疾患進行中に観察される。アテローム性動脈硬化では、循環する単球は、CCR2および内皮接着媒介性の機構を介して血管の内膜内および内膜下の脂肪性沈着物の蓄積の部位に動員される。到着後、これらの細胞は、活性化されるようになり、マクロファージへと分化する。その後、脂肪性沈着物は、炎症細胞、平滑筋細胞の継続的な動員、および細胞外マトリックスの産生とともにプラークへと成熟し始める。初期のアテローム性動脈硬化における初期の浸潤するマクロファージ集団は、不均質であるが、優性にM2様の表現型を有する。病変の進行および拡張と同時に、優性にM1の表現型への転換が、観察されている。この表現型への転換は、マクロファージによるプラーク内の過剰な酸化された低密度リポタンパク(LDL)の食作用、および局所的なTh1細胞によるIFN−γの産生が原因であり得、結果的に、泡沫細胞マクロファージの発達をもたらす。泡沫細胞マクロファージは、プラークを不安定にする炎症促進性メディエーターおよびMMPの産生につながる、高度に活性化された表現型を示し、これは潜在的に、血栓塞栓症につながる。M2からM1への転換を防ぐ又は選択的にM1マクロファージを消耗する治療は、動脈硬化性プラークの安定のための臨床的有用性の治療である。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、アテローム性動脈硬化を有する被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、炎症の部位で又はその近くでの移植のために、ステントなどの、移植可能な医療機器をコーティングすべく利用される。HC−HA/PTX3複合体でのアテローム性動脈硬化の処置は、炎症を減少させ、血栓塞栓症を防ぐと予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例18:肥満症およびインシュリン抵抗性の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、肥満症およびインシュリン抵抗性の処置のために投与される。
脂肪組織マクロファージ(ATM)は、痩せた状態および肥満状態の脂肪組織の著しい割合の細胞成分を含む。正常ヒトでは、ATMは、組織の細胞構成成分の10パーセントも占める。それに比べて、肥満の被験体では、その数字は40%にも高まる。正常な、非肥満の被験体では、ATMは、増加したベースラインのSTAT6およびPPAR−γの発現によって特徴付けられた、極性化されたM2表現型を有する。これらの細胞は、栄養素代謝に重要且つ有益な役割を果たす。PPAR−γの欠乏は、害されたM2マクロファージ機能および食餌誘発性の炎症およびインスリン抵抗性に対する感受性につながる。
対照的に、肥満中に脂肪組織に蓄積するATMは、強く極性化された炎症促進性のM1表現型を有している。これらの細胞は、高レベルのTNFα、IL−6、およびIL−1βを生成し、それらのすべても、インスリン抵抗性の個体から脂肪組織の増加したレベルにおいて観察される。高レベルの炎症促進性のメディエーターは、内在するインスリン処理の(processing)細胞の機能を局所的に低下させる。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、肥満症またはインシュリン抵抗性に苦しむ被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、処置のためのゲルの溶液として投与される。HC−HA/PTX3複合体での処置が、炎症促進性のM1表現型からM2表現型までの脂肪組織マクロファージ(ATM)の表現型転換を促進し、正常なインスリン処理を回復させると予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例19:1型糖尿病の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、1型糖尿病の処置のために投与される。
真性糖尿病1型(1型糖尿病、T1DM、IDDM、または以前では若年型糖尿病)は、膵臓のインスリンを分泌するベータ細胞の自己免疫性の破壊から結果的に生じる真性糖尿病の形態である。インスリンの続く欠如は、増加した血中および尿中のグルコースにつながる。典型的な症状は、多尿症(頻尿)、多飲症(口渇感増強)、過食(空腹感の増長)、および体重減少である。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、HC−HA/PTX3複合体でコーティングされた自己由来または同種異型のインシュリンを分泌する細胞を含有しているマイクロカプセルの形態で、1型糖尿病に苦しむ被験体に投与される。マイクロカプセルは、例えば、注入によって、被験体に投与される。HC−HA/PTX3でコーティングされたマイクロカプセルでの処置が、被験体において放出されるインスリンの分泌を可能にし、細胞治療またはマイクロカプセルに対する炎症反応を防ぐか、または減少させ、それによって、1型糖尿病およびその症状を軽減すると予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例20:線維症の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、線維症または線維性障害の処置のために投与される。
特発性肺線維症(IPF)、肝線維症および全身性硬化症などの、進行性の線維性疾患は、マクロファージによって厳密に調節される。「線維症促進性の」マクロファージは、M1特性を示し、線維芽細胞および筋線維芽細胞を直接活性化する、TGFβ1、PDGFおよびインスリン様成長因子1を含む、様々なメディエーターを生成し、これは、ECM沈着を制御する。線維症促進性のマクロファージはまた、MMP、TIMP、およびIL 1βを生成する。IL−1βは、IPFの特徴に類似した特徴を有する線維性障害である、ブレオマイシン誘発性の肺線維症の重要な誘発因子である、IL 17を生成するように、TH17細胞を刺激する。M2様のマクロファージによる、IL10、RELMαおよびARG1の生成は、線維症を抑える。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、線維症または線維性障害に苦しむ被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、溶液、ゲルとして、または移植可能な医療機器上のコーティングとして投与される。HC−HA/PTX3複合体での処置が、線繊維芽細胞および筋線維芽細胞のM1のマクロファージおよび活性化を減少させ、被験体の影響を受けた部位に存在するM2マクロファージの量を増加させると予期され、それによって、瘢痕化などの、線維症およびその症状を抑える。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例21:慢性炎症の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、関節リウマチなどの、慢性炎症疾患の処置のために投与される。
関節リウマチを含む、多くの自己免疫性疾患は、Fc受容体を活性化して、マスト細胞およびマクロファージの活性化および好中球浸潤を引き起こす、自己抗体に対する炎症反応を含む。これは、激しい局所的な炎症反応につながり、解消されないと、修復および破壊のサイクルによって時間をかけて組織損傷につながる。関節リウマチでは、CSF1は、構成的に滑膜線維芽細胞によって生成され、組織を浸潤する単球およびマクロファージを動員する。さらに、局所的に生成されたCSF1は、RANKlとともに、単球の破骨細胞への分化を誘発し、これは骨損失を引き起こす。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、関節リウマチなどの、慢性炎症疾患に苦しむ被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、溶液、ゲルとして、または移植可能な医療機器上のコーティングとして投与される。HC−HA/PTX3での処置が、M1の炎症誘発性マクロファージを抑え、好中球アポプトーシスを誘発し、および破骨細胞の分化を阻害し、それによって、炎症性疾患およびその症状を処置すると予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例22:急性炎症反応の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、心筋梗塞、脳卒中または敗血症などの疾病によって引き起こされた急性炎症反応の処置のために投与される。本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、心筋梗塞、脳卒中または敗血症などの疾病によって引き起こされた急性炎症反応を有する被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、静脈注射によって溶液として投与される。HC−HA/PTX3複合体が、M1の炎症性マクロファージの抑制によって、急性炎症によって引き起こされた損傷を減少させるか又は防ぐと予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例23:癌の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、癌の処置のために投与される。
腫瘍の発達および進行における多量の炎症細胞の関与が観察され、これは、一般に「くすぶり型(smoldering)炎症」と記載される。これらの観察は、炎症細胞と、マクロファージ、特に癌との間の確立された関連性につながった。発癌遺伝子の発達が、結果的に、癌の特徴的な(hallmark)微小環境をもらしたと最初に考えられ、その中で、形質転換細胞は、組織発達を促進し、アポトーシスを防ぐとともに、細胞毒性免疫反応(「内因性の経路」と称される)を抑える、サイトカインおよびケモキネスを分泌する。腫瘍形成につながる別の経路が存在することが現在認識されている。この「外因性の経路」は、最初は、持続性の微生物感染、自己免疫性疾患、または未知の起原の他の病因から結果として生じる、慣性的な炎症促進性の環境を特徴とする。これらの場合での大量の炎症メディエーターの慣性的な生成は、腫瘍細胞の増殖および生存に、または正常細胞中の遺伝的不安定性の誘発につながり得、結果的に、発癌遺伝子の発現および免疫抑制性のサイトカインの生成をもたらす。したがって、初期の腫瘍発達は、多くの例において、極性化された炎症性の、M1様のマクロファージ環境を特徴とする。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、固形腫瘍癌を有する被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、局所的、注入、移植的な用途のために、溶液、ゲルとして、または移植可能な医療機器上のコーティングとして投与される。HC−HA/PTX3が、M1マクロファージの極性化を抑えることができるため、HC−HA/PTX3での処置が、癌または後期の表現型へのその進行を阻害するか又は防ぐと予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例24:非治癒性の皮膚の創傷または潰瘍の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、非治癒性の皮膚の創傷または潰瘍の処置のために投与される。
治癒なしで、約3乃至4週間の期間存在する非治癒性の皮膚の創傷または潰瘍は、非治癒性潰瘍と呼ばれる。非治癒性を一般に引き起こす疾患は、血管疾患、糖尿病、皮膚癌および幾つかの感染である。
本明細書に記載される方法によって生成されたHC−HA/PTX3複合体は、非治癒性の皮膚の創傷または潰瘍を有する被験体に投与される。HC−HA/PTX3複合体は、例えば、創傷または潰瘍の部位での処置のために、溶液、局所的にゲルとして、または皮下に投与される。HC−HA/PTX3での処置が、創傷治癒および組織再生のマクロファージのM2表現型を促進することによって、創傷または潰瘍の治癒を促進すると予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例25:高リスクの角膜移植の処置のためのHC−HA/PTX3の使用
本実施例では、HC−HA/PTX3は、高リスクの角膜移植の処置のために投与される。EGFP+マクロファージが両眼に対してLPS(片目に5μg)とともに基質内に注入される、Mafiaマウス。各眼において、OS(左眼(oculus sinister);左目)は、PBS(2つまたは4つの注射部位)で処置され、一方で、OD(右眼(oculus dexter)、右目)は、LPS注入直後に、HC−HA/PTX3(2つまたは4つの注射部位;1つの注射部位当たり、HC−HA/PTX3を含有している1mg/mlのHA組成物5μl)で1回処置される。全体の角膜の画像は、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、および7日目に、インビボでの生体顕微鏡法によって得られる。EGFP陽性細胞は、EGFP浸潤のレベルを決定するために、緑色蛍光の強度に基づいて数えられる。角膜移植のマウスモデルでは、結膜下部位へのHC−HA/PTX3の注入は、PBSのビヒクル対照と比較したときに、炎症(すなわちマクロファージの浸潤)を減少させ、移植角膜の生存率を改善すると予期される。
幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、単離された天然のHC−HA/PTX3複合体(nHC−HA/PTX3)である。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、臍帯組織から単離される。幾つかの例では、nHC−HA/PTX3は、羊膜から単離される。幾つかの例では、本明細書に記載される処置の方法に使用されるHC−HA/PTX3複合体は、再構成されたHC−HA/PTX3複合体(rcHC−HA/PTX3)である。
実施例26:臍帯(UC)中のHA、PTX3、TSG−6、HC1、HC2、HC3およびビクニンの分配(Distribution)
本実施例では、HA、PTX3、TSG−6、HC1、HC2、HC3およびビクニンのインビボでの分配を、免疫染色によって臍帯(UC)中で検出した。UCの組織凍結切片を、HA、PTX3、TSG−6、およびHCおよびビクニンを含むIαIの様々な成分のための免疫染色にさらした。UCは上皮の層から成り、間質は、羊膜下の層および3つの道管、すなわち、1つは静脈、2つは動脈(図20a、1つの動脈管を有する、相)を含むワルトン膠様質から構成された。強力な陽性HA染色を、UC上皮、羊膜下の層およびワルトン膠様質において観察し、弱いHA染色を、血管壁(図20a、HA)において観察した。HAase消化により、HAに対する特異的な染色に一致する、前述のHA染色は消滅した(図20a、HA(+HAase))。
PTX3の強力な陽性免疫染色は、ワルトン膠様質中に存在し、弱いPTX3染色は、羊膜下の層および上皮(図20a、PTX3)中に存在した。HAase消化は、羊膜下の層および上皮(図示せず)においてPTX3染色を増強せず、これは、弱いPTX3染色が、HAによるマスキング効果が原因ではないことを示唆している。陽性PTX3染色をまた、動脈および静脈の血管壁ではなく、道管(図示せず)の内皮において観察した。
TSG−6およびビクニンの両方は、全体のUCにおいて存在し、TSG−6は主に、細胞内および細胞の近くに存在し、およびより多くのTSG−6が、ワルトン膠様質と比較して上皮および羊膜下にあった。上皮および血管壁が、かすかなHC1染色を有していたことを除いて、HC1は、HAと類似した局在性を有していた。HC2およびHC3のない染色に対する弱さ(Weak)は、UCの間質中ではなく上皮中に存在した。これらの結果は、UCが、AMと比較したときに、豊富なHA、PTX3、TSG−6、HC1およびビクニン、および不均衡に、より少ないHC2およびHC3をもたらしたことを示した。UCが、上述のタンパク質、およびHC−HA/PTX3複合体を構成的に発現したことが決定された。
さらに、PTX3は、AMで報告されたものとは異なる分散パターンでUC中に存在した。より多くのPTX3が、UCのワルトン膠様質に存在し、より少ないPTX3が、上皮および羊膜下に存在した。対照的に、より多くのPTX3が、上皮およびAMでの間質の緻密層にあった。UCは、以下のマーカーにおいてAMに類似したパターンを有していた:より多くのHAが、UCの全体の間質中にあり、UCの上皮中にはほとんどなかった。これは、AMでのHAの分散パターンにおいて類似していた。TSG−6を、UCの上皮および羊膜下の細胞において主に局所化し、ビクニンを、全体のUCにおいて発券した。
実施例27:AMおよびUCから連続して得られたPBSおよびGnEの抽出物の比較
本実施例は、AMからのPBS抽出後の不溶性部分が、任意のPTX3、TSG−6およびIαIに加えて、HC−HA/PTX3複合体もまだ含有していたか否かを決定づけた。PTX3、TSG−6およびIαIがあったかどうか確かめるために、タンパク質を、PBS抽出後に4MのGnHClによってAMの不溶性部分から抽出した。さらに、これらの2つの異なる抽出物中のPTX3、TSG−6、HCおよびビクニンを検出するために、PBSを有するUCも、4MのGnHClによって連続して抽出した。
He et al. (2009) J. Biol. Chem. 284:20136−20146)に記載される方法に従って、AM、CHおよびUCを、AMに対して1:1(g/ml)またはUCに対して1:1.5(g/ml)で、冷たいPBS中でブレンダーによって均質化し、1時間4℃で混合した。混合物を、30分間4℃で48,000gでの遠心分離にかけた。PBS抽出物の上清を、AME、CHEおよびUCEとして、それぞれ指定した。さらに、UCからのワルトン膠様質の混合物も、PBSによって抽出し、そのような抽出物を、UJEと名付けた。PBS抽出後のAM、CH、UCおよびUC膠様質混合物の不溶性のペレットを、24時間4℃で、4MのGnHCl緩衝液(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.8、4MのGnHCl、10mMのEDTA、1%のTriton X−100)によってさらに抽出した。30分4℃で、48,000gでの遠心分離後、上清を、収集し、それぞれ、AMGnE、CHGnE、UCGnEおよびUJGnEと名付けた。各抽出物中のHAおよびタンパク質の濃度を、それぞれ、HA ELISAおよびBCAアッセイによって検出した。
GnHClは、PBS抽出後に不溶性ペレットから豊富なHAおよびタンパク質をさらに抽出した。
連続するPBSおよびGnHClの抽出物中のHAおよびタンパク質の濃度を、表1に要約し、ここで、HA/タンパク質の比率も、2つの抽出物間で比較した。一般に、4MのGnHClは、PBS抽出後に、AM、CH、UCおよびUC膠様質混合物の不溶性ペレットから豊富なタンパク質およびHAをさらに抽出した。GnHCl緩衝剤は、不溶性ペレットからPBSよりも多いタンパク質を抽出したが、より少ないHAを抽出した。しかしながら、UCGnEは、AMEおよびCHEに類似した量のタンパク質およびHAをまだ含有していた。すなわち、UCは、PBSおよびGnHClの抽出物の両方において、AMおよびCHよりも多くのHAを含有していた。
単量体、二量体、およびHMW PTX3は、AM細胞と比較して、UC細胞のPBS抽出物のより多い量で存在した。しかし、HMW PTX3は、AM細胞においてGnHCl抽出物のより多い量で存在した。
抗PTX3抗体によるAMEの分析は、天然のPTX3単量体のサイズに対応する〜45kDaのバンド、および充填ウェルの底でHMWバンドを明らかにした(図21のA、レーン4)。NaOH処置は、45kDaのバンドに影響を与えなかったが、HMWバンドを完全に除去し、結果的にPTX3のHMWスミアをもたらし(図21のA、レーン5)、これは、NaOH処置によるHC−HA複合体におけるPTX3の顕著な特徴であり、そこでは、単量体PTX3ではなく、90kDの二量体を、NaOH処置により、またはそれなしで検出した(図21のA、レーン2および3)。PTX3のHMWスミアは、PTX3とHC−HAとの間で形成された複合体を表わした。CHEは、PTX3バンドの同じパターンを有したが、NaOH処置後にPTX3のスミアはより少なく、これは、免疫染色の結果と一致していた。胎盤抽出物でも、CHEと同じ結果であった。顕著なことに、PTX3は、UCEでの単量体を除いて、二量体およびHMWスミアにより存在し、その強度は、NaOH処置後にさらに増加した。AMEと同様に、UCEも、AMEよりも多い、HMWのスミアリングパターンを作り出した。これらの結果は、UCEが、AMEよりも多くのPTX3を含有し、一方で、CHEおよび胎盤抽出物が、PTX3をほとんど含有していなかったことを示した。
AME(図21のA)と比較して、AMGnEは、強いHMW PTX3スミア、弱い二量体、およびPTX3の単量体レベルを示し、HMW PTX3スミアの強度は、NaOH処置後にさらに増加し(図21のB、レーン3および4)、これは、AMGnEが、AMEよりも多いHMW PTX3を含有していたことを示した。より多くのPTX3が、AMの不水溶性部分に存在した。CHGnEは、NaOHによる処置の有無にかかわらず、HMW PTX3スミアでなく、充填ウェル中にHMWバンドのみを有していた。PTX3スミアの強度が、AMGnEにおける強度よりも少し弱かった(図21のB、レーン3および4)ことを除いて、UCGnEおよびUJGnEは、NaOH処置によって又はそれなしで、AMGnEと同じPTX3のパターンを有していた。UCGnE中のPTX3スミアの強度も、UCE中の強度より低く、これは、UCGnEがUCEより少ないHMW PTX3を含有していたことを示し;すなわち、より多くのPTX3が、UCの水溶性部分中に存在した。
上述の結果は、AMおよびUCの両方がHMW PTX3を含有していたことを示した。AMでは、より多くのHMW PTX3が、不水溶性であり、PBS抽出後にGnHClによって抽出され得るが、一方で、PBSによって主に抽出され得る、UC中のより多くのHMW PTX3が水溶性であった。
IαIおよびHC1の両方は、主にAM PBS抽出物中にあるが、UCでは、ほとんどのIαIがPBS抽出物中にあり、一方で、HC1はGnHCl抽出物中にあるが、より多くのビクニンが、他の2つの抽出物と差がなく、UCEよりもUCGnE中に存在する。
図22は、80kDaのHC1バンドが、UCE以外のすべてのPBS抽出物中に存在し、AMGnE以外のすべてのGnE抽出物中に存在したことを示す。このバンドは、GnEではなく、すべてのPBS抽出物中でNaOHによって増加され、これは、AMが、Zhang et al. (2012) J. Biol. Chem. 287:12433−12444に一致して、NaOHによって放出された、遊離した及び結合した水溶性のHC1(すなわち、HC−HAにおいてHAに、およびIαIにおいてビクニンに結合したエステル)の両方を含有していたことを示している。UCは、NaOHによって放出された水溶性の結合された(bounded)HClを含有し、また、SDSおよび2−MEによって分離されたが、NaOHによる影響を受けなかった不水溶性の細胞外成分に結合した、不水溶性の遊離したHClも含有していた。これは、UC中の強力な陽性のHC1染色と一致していた。HMW HC1バンドは、すべてのPBSおよび充填ウェル中のGnHCl抽出物中に存在し、NaOHによって減少され、これが、HC−HA複合体であったことを示している。HMW HC1バンドは、UCJGnEよりもUCGnEにおいてより弱く、これは、ワルトン膠様質が、より多くの不水溶性のHC−HA複合体を含有していたことを示している。遊離したIαIを、すべてのGnE抽出物ではなく、すべてのPBS抽出物において発見し、これは、それが水溶性であったことを示唆している。しかしながら、遊離したPαIを、すべてのPBSおよびGnHClの抽出物において発見し、これは、PαIが、IαIとは異なる作用を有していたことを示唆している。より多くのビクニンを、他の2つの抽出物に差がなく、UCEよりもUCGnEにおいて発見し、これは、ほとんどのビクニンが、UCにおいて他の水不溶性分子に結合し、これが特有の機能を示していたことを強調している。
TSG−6は、UC GnHCl抽出物ではなく、AMのHMW複合体中に存在した。
図23は、AME(Zhang et al. (2012) J. Biol. Chem. 287:12433−12444)で報告された、35kDaのTSG−6バンドが、すべての他の抽出物ではなく、AMGnE中に存在していたことを示し、これは、TSG−6がUCのGnE中に存在しなかったことを示している。このバンドは、NaOHによる影響を受けず、これは、TSG−6が、NaOHによって開裂され得るHMWの種に結合されなかったことを確証している。しかしながら、HMW TSG−6バンドを、UCGnEおよびUJGnEではなく、AMGnEおよびCHGnEにおいて発見した。さらに、このバンドは、NaOHによって変更されず、これは、TSG−6がHMWの種に強く結合されたことを示している。TSG−6は、GnEからの4X超遠心分離によって精製されたHC−HAにおいて検出されず、これは、TSG−6が、不溶性マトリックス中にまだ結合されているが、超遠心分離中にGnHClによって分離可能であることを示唆している。
要約すると、GnHClは、PBS抽出後に、AMおよびUCの不溶性部分から豊富なHAおよびタンパク質をさらに抽出した。UCは、PBSおよびGnHClの抽出物の両方において、AMおよびCHよりも多くのHAを含有していた。HMW PTX3は、AM GnHCl抽出物中でより高いレベルであり、UC PBS抽出物中でより高いレベルであった。より多くのHMW PTX3を、PBS抽出後に不溶性部分において保持した。HC1は、UC GnHCl抽出物ではなく、主にAM PBS抽出物中にあった。HMW TSG−6は、UCGnEおよびUJGnEではなくAMGnE中にあり、これは、TSG−6が、まだ不溶性マトリックス中に結合されており、超遠心分離中にGnHClによって分離可能であったことを示している。
実施例28:AMおよびUC PBSの抽出物からの4回の連続する超遠心分離によるHC−HA複合体の精製、およびHC−HA複合体中のPTX3、HC、ビクニン、およびTSG−6の存在の検出
本実施例では、HC−HA複合体を、4回の連続する超遠心分離によってAMEおよびUCEから精製し、HC、ビクニンおよびTSG−6に加えて、PTX3の存在を、ウェスタンブロットによってAMおよびUC HC−HAの複合体中で検出した。
4th AM HC−HA複合体は、より多くのHMW PTX3およびHC1を含有しており、2ndおよび3rdのHC−HA複合体より純粋であった。
抗PTX3抗体を用いて、1−4thのAM HC−HAのウェスタンブロット解析は、PBS抽出物中で発見された単量体と比較して、90kDaのバンド(二量体)を示した。これは、二量体の状態が、超遠心分離によって4M GnHCl中でさらなる抽出によって分解されたことを示し、これによって、1st、2nd、3rdおよび4thのHC−HA複合体における上部のゲル上部(gel top)のHMWバンドを明らかにしている(図24のa)。精製されたPTX3対照と比較して、90kDaのバンドはPTX3二量体であって、高分子量バンドはPTX3を含有しているHC−HA複合体であった。HAase処置後、90kDaのバンドは、すべてのHC−HA複合体では変化しなかったが、HMWスミアのバンドは、3rdおよび4thの画分で漠然と検出された。すなわち、1stから4thでは、HMWバンドは徐々に消滅し、スミアが徐々に出現し、これは、4thのHC−HA複合体でより増強された。すべてのHC−HA複合体中で45kDaのPTX3単量体バンドはなかった。その結果は、HC−HA複合体が、HC−HAに結合することができるPTX3の多量体の形態を含み、超遠心分離の回数が増加するとともに、PTX3を含有しているHC−HA複合体がより精製されたことを示した。HAaseのある又はそれのないHC−HA複合体中の90kDaのPTX3二量体の存在は以下を示した:1)HC−HA中に存在するPTX3二量体は、SDSおよび2−MEによって分離され、2)HMW PTX3は、SDSおよび2−MEに耐性があった。2MEによる生成物であるPTX3二量体は、以下でさらに確証される(図24のa)。
抗HC1抗体を用いて、80kDaのHC1バンドを、4つのすべてのHC−HA複合体から、初期の1stおよび2ndの画分においてのみ検出した(図24のb)。HAase処置後、HC1バンドは増強され、幾つかのより小さなバンドも、1stから3rdのHC−HA複合体中に現われた。その結果は、精製されたHC−HA複合体が、遊離したHCを含有しておらず、HC−HAがHC1で作られていたことを示した。上述のPTX3ウェスタンブロットの結果に一致して、超遠心分離の回数が増加するとともに、HC−HA複合体は、より精製された。すべてのHC−HA複合体において、HC2(図24のc)、HC3、およびTSG−6(図24のd)は発見されなかった。
TSP−1は、PBS抽出物および1−4thのHC−HA複合体ではなく、AM GnHCl抽出物中にのみ存在した。
トロンボスポンジン−1(TSP−1)は、PBS抽出物および1−4thのHC−HA複合体ではなく、AM GnHCl抽出物中で三量体として検出されただけであった(図25)。HAase処置後、それはスミアとして現われ、これは、TSP−1が、不溶性水であって、HC−HAに強く結合されたことを示している。しかしながら、そのような不溶性マトリックス中のHC−HAへの結合は、GnHClおよびCsClによって分離され得る。
4th AM HC−HA複合体のように、4th UC HC−HA複合体は、HC2、HC3、ビクニンおよびTSG−6ではなく、PTX3およびHC1を含有しており、2MEの欠如によって、PTX3二量体は生成されなかったが、HC1がもたらされた。
抗PTX3抗体を用いて、HAase処置による又はそれのない、4th UC HC−HAのウェスタンブロット解析は、4th AM HC−HA複合体(図26のa、レーン3および4)中のPTX3バンドのパターンに類似した4th UC HC−HA複合体(図26のa、レーン5および6)中のPTX3バンドのパターンを示した。サンプル緩衝剤が2−MEを含有していなかったときに、90kDaのPTX3二量体は、HAaseのある又はそれなしで、UC HC−HA複合体中で消滅し(図26のa、レーン7および8)、これは、HC−HA複合体中の90kDaのPTX3二量体の出現が、サンプル緩衝剤中の2−MEによるHC−HAに結合したPTX3の減少が原因であったことを示している。抗HC1抗体を用いて、高分子量のHC−HAバンドのみが、4th AM HC−HA複合体(図26のb、レーン4)中での検出と同様に、4th UC HC−HA複合体(図26のb、レーン6)中で検出された。HAase後、HC−HAバンドは消滅し、HC1バンドは、4th AM HC−HA複合体(レーン5)のように増加した(レーン7)が、その強度は、4th AM HC−HA中におけるよりも少し弱かった。これは、HC1が、PTX3とS−Sとの複合体を形成したことを示した。サンプル緩衝剤が2−MEを含有していなかったときに、総称的なHC1よりわずかに高いMWを有する強いバンドが現われ、これは、HC1が、S−Sを介してPTX3に連結されたことを示している。4th AMおよびUC HC−HA複合体において、HC2、HC3(図26のc)、ビクニン(図26のd)およびTSG−6(図26のe)は検出されなかった。
実施例29:4回の連続する超遠心分離による全体的なAMおよびUC GnHCl抽出物からのHC−HA複合体の精製およびPBS抽出物の比較
本実施例は、より多くのHC−HA複合体をAMおよびUCから得ることができ、HC−HA複合体が、PTX3およびHC−HAのより合理的な構成を有し、およびそれが診療所においてより有効な治療上の役割を有していたことを決定づけた。AMおよびUCを、6MのGnHCl緩衝剤(200mMのトリス−HCl、pH8.0、6MのGnHCl、10mMのEDTA、10mMのアミノカプロン酸、10mMのN‐エチルマレイミド、2mMのPMSF)によって抽出し:AMおよびUCからのGnHCl抽出を、1:4(g/ml)でAMおよびUCの粉末に6MのGnHCl緩衝剤を加えることによって行った。サンプルを、4℃で一晩混合し、30分間4℃で、48,000gでの遠心分離にかけた。上清は、GnHCl抽出物であった。4th HC−HA複合体を、PBS抽出物からの4th HC−HAの精製用の手順と同じ手順を使用して、AMおよびUC GnHClの抽出から精製した。PTX3、HC、ビクニン、TSG−6および恐らく他のタンパク質を検査するために、HC−HA複合体の特徴づけを、ウェスタンブロッティングによって行った。HC−HAのアガロースゲルを、HAの内容物および分子量を見るために流した(run)。
GnHClは、PBSよりもAMおよびUCから、より多くのHC−HA複合体を抽出した。
AMおよびUCからのGnHCl抽出物を、AMEGおよびUCEGと名付け、それらのHAおよびタンパク質の含有量を、それぞれ、BCAアッセイおよびHA ELISAによって検出した。4th HC−HA複合体を、GnHCl抽出から精製し、それらのHAおよびタンパク質の含有量を、同様に検出した。表2は、PBSおよびGnHClの抽出物の両方におけるタンパク質およびHAの内容物およびそれらの4th HC−HA複合体を要約している。その結果は、AMおよびUC GnHClの抽出物が、相対的なPBS抽出物と比較して、より多くのHAを含有し、より高いHA/タンパク質の比率を有していることを示した。さらに、より多くのHC−HA複合体を、GnHCl抽出物から精製した。
AM 4th GnHCl HC−HA複合体は、HAaseまたはNaOHの処置によって又はそれなしで、より多くのHC1およびHMW PTX3を含有していたが、PBS HC−HAよりは少なく、PBSおよびGnHCl HC−HAの両方は、TSP−1を含有していなかった。
抗HC1抗体を用いて、GnHCl HC−HAは、充填ウェルに加えてPBS HC−HAにおいてもHMWバンドを示したが、HAase消化は、より弱いHC1を放出しただけであった(図27のa、レーン6および7)。NaOH処置はまた、HAaseによって放出されたものよりも、少し高いMWを有したより弱いHC1バンドを放出し(図27のa、レーン8)、これは、NaOH処置後のPBS HC−HAにおいては見られなかった。これらの結果は、GnHCl HC−HAがHC1を含有したが、その量がPBS HC−HAより少なかったことを示している。同様に、PBS HC−HAとは違って、抗PTX3抗体を用いて、GnHCl HC−HAは、HAase消化を有して又はそれなしで、重要なHMW PTX3スミアを示さず、二量体PTX3を示しただけであった(図27のb、レーン6および7)。NaOHはまた、HMWおよび二量体PTX3の出現を結果としてもたらした。これらの結果は、GnHCl HC−HAが、PBS HC−HAより少ないHMW PTX3を含有していたことを示している。
HC1ブロットと同様に、PTX3のより高いMW二量体は、GnHCl HC−HAにおいてHAaseよりもNaOHの後に生じた。これらの結果は、NaOHが、HC1をHAに連結するエステル結合を放出し、PTX3と結合し得ることを集合的に示した。GnHCl HC−HAが、PBS HC−HAよりも多くのHA内容物が有していたため、GnHCl HC−HA複合体は、PTX3またはHC1によって結合されなかったHAを含有し、結果的に、精製された生成物中の実際のHC−HA/PTX3複合体の内容物の減少およびその中のより少ないHC1およびHMW PTX3をもたらした。TSP−1は、抗TSP−1によってPBS HC−HA中で検出されなかった。当然のことながら、TSP−1も、GnHCl HC−HA中で検出されなかった。GnHCl抽出物が、TSP−1を含有していたため、これらの結果は、TSP−1が、超遠心分離によって分離し、そのためGnHCl HC−HA中に存在しなかったことを示した。
アガロースゲルは、GnHCl HC−HA中で豊富なHAを示した。
PBS HC−HAは、上部の充填ウェルからアガロースゲルの下部までの連続的なHAスミアを示し、HAaseは、HAスミアを完全に無効にした(図28、レーン3および4)。GnHCl HC−HAは、充填ウェル中のバンド、および4,570kDaの位置から始まりアガロースゲルの下部までの、HAスミアを示した(図28、レーン5)。
GnHCl HC−HA中のHAは、充填ウェルからHAスミアの開始までの間で休止したが、その強度は、PBS HC−HAにおけるよりも強かった。さらに、HAaseは、GnHCl HC−HAにおいてHAスミアおよびHMW HAバンドを完全には無効にしなかった(図28、レーン6)。4thの超遠心分離後のGnHCl抽出からの上部画分(1−6の画分)もまた、GnHCl HC−HAの「下部画分」と同じHAスミアのパターンを示した(図28、レーン7および8)。これらの結果は、GnHCl HC−HAが、(PBS HC−HAよりも小さなMWを有する)より多くのHMW HAを含有したが、GnHCl HC−HAのウェスタンブロットにおいてHMW PTX3スミアの欠如に対応したHMW HAスミアの一部分を欠いていたことを示した。これは、PBS HC−HA中に存在した、欠けているHMW HAスミアが、PTX3およびHC−HAの交差結合によって少なくとも部分的に形成され、GnHCl HC−HAの充填ウェル中のHMW HAが、PTX3以外の成分によって複合化されたことを示した。
GnHCl HC−HAは、クーマシー青色染色によってPBS HC−HA中に発見されない幾つかのタンパク質を含有していた。
図29のAは、上部の充填ウェル中のバンド、大きな140kDaおよび幾つかの小さな70kDa、ダブレット55kDaおよび20kDaのバンドが、AM GnHCl HC−HAおよびGnHCl HC−HAの上部画分において存在したが、他のすべてのPBS HC−HAでは存在しなかったことを示している。これは、AM GnHCl HC−HAが、PBS HC−HA中に存在しなかった幾つかのタンパク質を含有していたことを示した。さらに、90kDaおよび25kDaのバンドも、GnHCl HC−HAの上部画分において視覚化された。ウェスタンブロットが、PBS HC−HA中でHC1を検出したため、HC1もまた、クーマシー青色染色によってPBS HC−HA中に存在したはずである。それがPBS HC−HA中に存在しなかった理由は、充填されたHC−HAが、過負荷によりゲルに入らなかったという事実が原因であった。140kDaを、広帯バンドとして示したが、これは、それが砂糖部分を含有していたとことを示唆している。さらに、HAaseは、これらのバンドに影響を与えず、これは、これらの種がSDSおよび2−MEによって分離されたことを示している。
AM GnHCl HC−HAと比較して、UC GnHCl HC−HAは、上部の充填ウェル中のバンド、90kDa、70kDa、ダブレット55kDa、35kDaおよび20kDaのバンドを示した(図29のB、レーン4および5)。弱い140kDaのバンドもその中に存在した。これらのバンドは、HAaseによる影響を受けなかった。さらに、GnHCl HC−HAの上部画分はまた、上部ウェルから、HAase処置後に減少した200kDaの部位までのスミアを示した。すべてのバンドは、UC PBS HC−HAにおいて不在であった。これらの結果は、UC GnHCl HC−HAが、PBS HC−HAにおいて不在であった幾つかのタンパク質も含有し、UC GnHCl HC−HAが、それらが含有したタンパク質バンドに関するAM GnHCl HC−HAとは異なっていたことを示した。
上述の結果は、GnHCl HC−HAが、AMおよびUC両方からのPBS HC−HAとは以下の点で異なっていたことを示した:(1)GnHCl HC−HAが、(ウェスタンブロットからの)PBS HC−HAよりも少ないHC1およびHMW PTX3を含有していた一方で、PBS HC−HAのように、TSG−6、HC2およびHC3もまた、GnHCl HC−HA中に存在しなかった。(2)GnHCl HC−HAは、より多くのHMW HAを含有していたが、(アガロースゲルからの)PBS HC−HAによって示されたウェスタンブロッティングにおいてHMW PTX3スミアに対応した一片のHMW HAを欠いていた。(3)GnHCl HC−HAは、(クーマシーの青色染色ゲルからの)PBS HC−HAにおいて発見されなかった、主としてMW 140kDaを有する幾つかのタンパク質を含有していた。
要約すると、GnHClは、AMおよびUCの組織からより多くのHAおよびタンパク質を抽出し、結果として、PBS抽出と比較して、より高いHA/タンパク質の比率をもたらした。(HA内容物に従う)より多くのHC−HA複合体を、AMおよびUC両方のためにGnHCl抽出から精製した。GnHCl HC−HAは、AMおよびUCの両方のために、HC1およびHMW PTX3を含有していたが、PBS HC−HAにおいてははるかに少なかった。GnHCl HC−HAは、PBS HC−HAによって示されたウェスタンブロッティングにおいてHMW PTX3スミアに対応したアガロースゲル中でHMW HAスミアの種を欠いていた。GnHCl HC−HAは、PBS HC−HAにおいて発見された幾つかのタンパク質を含有していた。
実施例30:AMおよびUCから精製されたGnHCl HC−HA複合体中の未知のタンパク質バンドの同一性の決定
本実施例は、SDS−PAGEのゲルを流した後に、脱グリコシルのある又はそれのない、AMおよびUCからのGnHCl HC−HAのCB染色またはウェスタンブロット解析のいずれかによって、GnHCl HC−HAにおいて未知のバンドの同一性を決定した。サンプルを、PBSおよびGnHClの抽出物両方からの凍結乾燥されたAMおよびUCの4x HC−HA(30μgのHAを含有した)であった。凍結乾燥されたHC−HAを、3時間氷上で50μlのTFMSおよび20μlのアニソールでインキュベートし、125μlのN−エチルモルホリンを有するTFMSで中和した。サンプルを、−20Cで一晩または−80Cで1時間、5−10容量のアセトンで沈殿させた。サンプルを、遠心分離にかけ、乾燥したペレットを、電気泳動のためにSDSサンプルの充填緩衝剤に溶解した。ケラチナーゼ(Endo−β−ガラクトシダーゼ)での酵素的脱グリコシル化を、ケラタン硫酸鎖およびN結合したオリゴ糖を除去するために行うか、あるいはコンドロイチナーゼ(Cabc)での酵素的脱グリコシル化を、コンドロイチン硫酸鎖を除去するために行った。HC−HA(30μgのHAを含有した)を、2時間37Cで、pH5.8の、50mMの酢酸ナトリウム中で、0.1U/mlのケラチナーゼでインキュベートするか、2時間37CでPBS中で5U/mlのCabcでインキュベートした。SDS−PAGEのゲルを、CB染色の試験のために流し、その後、ウェスタンブロット解析が続いた。
ケラタン硫酸およびオステオアドへリンは、PBS HC−HAではなく、AM GnHCl HC−HA中に存在した。
ウェスタンブロット解析を行った。結果は、図30のBおよびCで示される。抗ケラタン硫酸抗体でのウェスタンブロットは、HAase消化を有して又はそれなしで、AM GnHCl HC−HAにおいて広域な70kDa(60−80kDa)のバンドを示した(図30のB、レーン6−8)が、PBS HC−HAにおいてはそうではなく、これは、この〜70kDのケラチン硫酸プロテオグリカンが、図30Dで示される陽性の免疫染色の原因であったことを示した。この70kDのバンドは、クーマシー青色染色されたゲル(図30A)で示されたHAase処置を有して又はそれなしで、GnHCl HC−HAにおいて留意された同じバンドに対応した。
この70kDのケラチン硫酸プロテオグリカンがSLRPであるかどうかをさらに決定するために、抗ルミカン、抗フィブロモジュリン、および抗オステオアドへリンの抗体を、ウェスタンブロットにおいて使用した。抗オステオアドへリン抗体は、HAase消化を有して又はそれなしで、GnHCl HC−HAにおいて70kDのバンドではなく60kDのバンドを認識した(図30のC、レーン6−8)が、PBS HC−HAにおいてはそうではなかった。ケラチン硫酸鎖を有するオステオアドへリンが、〜80kDの分子量を有する一方で、その非ケラチン硫酸タンパク質は、〜60kDである。60kDのサイズでのケラチン硫酸バンドが検出されたが、それは70kDの広域のサイズにおいてのみであり、これは、抗オステオアドへリンによって検出された60kDのバンドが、非ケラタン硫酸オステオアドへリンであったことを示した。AM GnHCl HC−HAは、HC−HAと密に結合した非ケラタン硫酸オステオアドへリンを含有し、6MのGnHClおよび塩化セシウムの存在下で4回の超遠心分離に耐性があった。しかし、それは、サンプル緩衝剤中でSDSおよび2−MEによって放出された。その結果はまた、70kDのケラチン硫酸塩プロテオグリカンが、オステオアドへリンではなかったことを示した。GnHCl HC−HAで検出されたルミカンおよびフィブロモジュリンはなく、これは、80kDのプロテオグリカンが、ルミカンでもフィブロモジュリンでもないことを示した。
AM GnHCl HC−HAの脱グリコシル化および分析
ケラチナーゼを使用してすべてのグリカンを除去するために、およびコンドロイチナーゼを使用して特異的なグリカンを除去するために、HC−HAを、TFMSAによって脱グリコシル化して、AM GnHCl HC−HAにおいて140kDおよび〜80kDのバンドに変化があったかどうかを確かめ、および〜80kDのケラチン硫酸プロテオグリカンが、ケラトカン、PRELPまたはオステオグリカン(Osteoglycan)であるかどうかを決定した。上述の脱グリコシル化の効果を確認する第一工程として、クーマシー青色染色を行った。
図31Aでは、クーマシー青色(CB)に染色したゲル、AM GnHCl HC−HA(図31A、レーン2)は、ゲルの上部において、HMWバンドと同様に、優性の140kDa、70kDa、ダブレット50kDa、20kDaおよび弱い35kDaのバンドの同じバンドも示した。K/C/Hは、大きな80kDa、弱い100kDa、および30kDaのバンドの出現をもたらすことを除いて、これらのバンドに大幅に影響を与えなかった(図31A、レーン3)。このパターンは、C/K/H下のAM GnHCl HC−HAの上部画分から生じるパターンに類似していた(図31A、レーン6)。これらの結果は、140kDa、70kDa、および55kDaのバンドが、非ケラタン硫酸化及び/又はコンドロイチン硫酸化されたものではなく、C/K/H後に大きな80kDaの種として放出されたGnHCl HC−HAにおいて他のケラタン硫酸化及び/又はコンドロイチン硫酸化されたタンパク質があったことを示した。TFMSA処置は、20kDaのバンド以外の上述のすべてのバンドの消滅につながり、透明な新しい50kDaのバンドおよびHMWスミアを生成した(図31A、レーン4)。TFMSA/Hは、結果的に新しい25kDaのバンドをもたらスミアを消滅させたが、50kDaのバンドを変化させなかった(図31A、レーン5)。この結果は、140kDa、70kDa、55kDaおよび80kDaのバンドが、異なる量のグリカンを有する50kDaの同じ種であったことを示した。
50kDaのバンドが60kDaのオステオアドへリンから生じたかどうかを決定するために、ウェスタンブロット解析を、抗オステオアドへリン抗体を用いて行った。その結果は、図31Cで示される結果と一致した、AM GnHCl HC−HAにおける60kDaの種を示した(図31B、レーン4)。C/K/Hは、その分子量を変化させなかった(図31B、レーン5および6)が、HAase(T/H)処置を有する又はそれのないTFMSAは、それをより低い強度の55kDaの種へと完全に変化させた(図31、レーン7および8)。T/Hを有するAM GnHCl HC−HAの上部画分は、T/Hなしと比較して、より強いバンドを示したが、強度変更のないより小さなmWは示さなかった(図31B、レーン9および10)。これらの結果は、AM GnHCl HC−HAが、ケラタン硫酸およびコンドロイチン硫酸塩のない、オステオアドへリンを含有していたことをさらに確証した。TFMSA処置後にオステオアドへリンのバンドの強度が減少した理由は、(1)タンパク質がTFMSAによって分解された;(2)それが、TFMSA処置後に放出された同じMWを有する他の大量のタンパク質によって遮断されたことが原因であった。オステオアドへリンは、処置なしではPBS HC−HAにおいて検知不能であったが、TFMSA/HAase処置後に、60kDaのダブレットのバンドが現れ、これは、PBS HC−HAが、HAに密に結合された、微量のオステオアドへリンを含有していたことを示している。
抗デコリン抗体でのウェスタンブロットは、AM GnHCl HC−HAにおいて、非常に強力な広域の140kDaの種(80−160kDa)および弱いダブレット50kDaの種を示した(図31C、レーン4;31D、レーン4および5)が、PBS HC−HAにおいてはそうではなかった(図31C、レーン2;31D、レーン2および3)。広域な140kDaの種が、1つのコンドロイチン硫酸またはデルマタン硫酸の鎖および異なる数のグリカンを有するデコリンに対応した一方で、ダブレット50kDaの種は、それほどグリコシル化しなかったデコリンに対応する傾向があった。HAaseは、デコリン種の影響を受けなかったため、SDSおよび2−MEによって放出され得ることが示された。上述の考えは、70kDaの種を増加させた、C/H(図31C、レーン5)、および同じ結果をもたらした、C/H/Kによって確証された(図31B、レーン6)。故に、70kDaの種は、コンドロイチンのないデコリンであった。大きな広域の140kDaの種が、C/HまたはC/H/Kのいずれによっても大幅に変化させられなかったため、この70kDaの種は少量の成分であった。TFMSA処置は、広域な140kDaの種を完全に消失させた一方で、脱グリコシル化されたデコリンのコアタンパク質に対応した大きな43kDaの種、および小さな95kDa、80kDaおよび弱い30kDaの種を生じさせた(図31C、レーン7)。TFMSA/H処置は、すべてのこれらの種の強度が増強されたということを除いて、TFMSA単独と同じ種のパターンを示し、これは、デコリンがHAに密に結合されたことを示している。TFMSA/Hはまた、結果的に、PBS HC−HAからの弱い43kDaの種の放出につながり、これは、AM PBS HC−HAが、HAに密に結合された微量のデコリンも含有していたことを示している。TFMSA/Hを有する又はそれのない、AM GnHCl HC−HAの上部画分は、後者よりも強い強度を有する下部画分と同じパターンを示し(図31C、レーン9および10)、これは、上部画分が豊富なデコリンも含有していたことを示した。上述の結果は、CB染色のゲルにおける大きな140kDa、70kDa、およびダブレット50kDaの種が、CS、主として非CSおよび非KSを介して、デコリンによって形成されることを示した。
デコリンとは異なり、抗ビグリカン抗体でのウェスタンブロットは、HAaseを有する又はそれのない、AM GnHCl HC−HAいおいて、400kDaでの1つの強力な領域を有するHMWスミア、および弱い45kDaの種を示した(図31E、レーン4;2F、レーン4および5)が、PBS HC−HAにおいてはそうではなかった(図31D、レーン2;F、レーン2および3)。45kDaの種が、ビグリカンのコアタンパク質に対応した一方で、HMWスミアは、2つのコンドロイチン硫酸塩またはデルマタン硫酸の鎖を有するグリコシル化したビグリカンであった。HAaseは、400kDaを超えるHMWスミアがより少ない400kDaの領域を増強し、これは、幾つかのビグリカンがHC−HAにも結合されたことを示した。C/HまたはC/K/Hは、HMWスミアおよび45kDaの種を大幅に変化させなかったが、恐らくコンドロイチンのないビグリカンであった70kDaの種を増加させた(図31E、レーン5および6)。70kDaの種の量が非常に少なく、大きなHMWスミアが、上述の処置によって大幅に変化しなかったため、AM GnHCl HC−HAにおけるほとんどのビグリカンは、CSまたはKSに結合しなかった。TFMSA処置は、HMWスミアを完全に消失させ、脱グリコシル化されたデコリンのコアタンパク質に対応した大きな45kDaの種、および弱い95kDa、80kDaおよび30kDaの種を生じさせ(図31E、レーン7)、これは、AM GnHCl HC−HAにおけるビグリカンの存在を示唆した。95kDaおよび80kDaの種が、部分的に脱グリコシル化されたビグリカンであった一方で、30kDaの種は、分解されたビグリカンであった。HAase処置と併用したTFMSA処置は、すべてのこれらの種の強度が増強されたということを除いて、TFMSA単独と同じ種のパターンを示し、これは、ビグリカンがHAに密に結合されたことを示している。TFMSA/HAaseを有する又はそれのない、AM GnHCl HC−HAの上部画分は、後者よりも強い強度を有する下部画分と同じパターンを示し(図31E、レーン9および10)、これは、上部画分が豊富なビグリカンも含有していたことを示した。抗ケラタン硫酸抗体でのウェスタンブロット解析は、分子の大きさを変更することなく、ケラチナーゼまたはコンドロイチナーゼの処置を有する又は有さない、AM GnHCl HC−HAにおける70kDaのケラタン硫酸化のタンパク質の存在を示し(図31G)、これは、ケラチナーゼが、ケラタン硫酸を完全には除去しなかった、あるいはKSの量がこの種において微量であったことを示唆した。抗PTX3抗体でのウェスタンブロットは、HAase単独の消化(図31G、レーン4および5)を有する又は有さないものと比較して、AM GnHCl HC−HAにおいてKで示された及びK/Hでより多く示された増加したHMW PTX3スミアを示した(図31H、レーン6および8)。コンドロイチナーゼは、そのような効果はなく、これは、幾つかのKSを含有している種が、GnHCl HC−HAにおいてPTX3に結合されたことを示した。同じ結果を、ケラチナーゼ消化を有する又は有さないUC GnHCl HC−HAのウェスタンブロット解析からも得た(以下の図32Gを参照)。ウェスタンブロットは、AM GnHCl HC−HAにおいてビクニンに加えて、フィブロモジュリン、ルミカン、ケラトカン、PRELP、オステオグリシン、エピフィカン、ペリオスチンおよびTSG−6がなかったことを確証した。
要約すると、AM GnHCl HC−HAは、HC−HAに結合された豊富なデコリンおよびビグリカンを含有していたが、PBS HC−HAは、弱いデコリンを含有していただけでビグリカンを含有していなかった。AM GnHCl HC−HAが、オステオアドへリンおよびケラタン硫酸を含有している種を含有していた一方で、PBS HC−HAは、そうではなかった。AM GnHCl HC−HAにおける非常に少量のデコリンおよびビグリカンは、コンドロイチン硫酸鎖を含有していた。
UC GnHCl HC−HAの脱グリコシル化および分析は、PBS HC−HAではなく、UC GnHCl HC−HAにおいてデコリンおよびビグリカンが豊富に存在していたことを示した。ケラタン硫酸、オステオアドへリンおよびビクニンも、UC GnHCl HC−HA中に存在した。
CB染色(図32A)は、UC GnHCl HC−HA(図32A(レーン4))において上部の充填ウェル中で160kDa、90kDa、70kDa、ダブレット50kDa、35kDaおよび20kDaのバンドの同じバンドを示した。大きな80kDaおよび弱い30kDaのバンドの出現を結果的にもたらすことを除いて、C/HまたはC/H/Kは、これらのバンドに大幅に影響を与えなかった(図32A、レーン5および6)。TFMSA処置は、20kDaのバンド以外の上述のすべてのバンドを減少させたが、大きな50kDaバンド、小さな80kDaバンドおよびHMWスミアを増加させた(図32A、レーン7)。TFMSA/Hは、スミアおよび80kDaのバンドを消滅させたが、出現し、新しく形成された50kDaのバンドの強度を減少させた、弱い25kDaのバンドを結果的にもたらした(図32A、レーン8)。これらの結果は、AM GnHCl HC−HAから得られた結果と類似しており(図31A)、これは、UC GnHCl HC−HAが、AM GnHCl HC−HAと類似した構成を有していたことを示している。TFMSA/Hを有する又は有さない、UC GnHCl HC−HAの上部画分は、下部画分と同じパターンを示し(図32A、レーン9および10)、これは、それらが下部画分と同じ成分を有していたことを示した。脱グリコシル化のないUC PBS HC−HAは、充填ウェルにおいて及びその下でHMWバンドを示し、同様に20kDaのバンドも示した。TFMSA/Hは、HMWバンドを消失させたが、弱い80kDaおよび25kDaのバンド以外の50kDaバンドを主として増加させ、これは、UC PBS HC−HAが、完全な脱グリコシル化およびHA分解によって放出されただけの幾つかのグリコシル化したタンパク質を含有していたことを示唆している。
抗デコリン抗体でのウェスタンブロット解析は、HAaseを有して又はそれなしで、UC GnHCl HC−HAにおいて広域な160kDaの種を示した(図32B、レーン4および5)が、PBS HC−HAでは示さず(図32B、レーン2および3)、これは、UC GnHCl HC−HAが、AM GnHCl HC−HAのように、デコリンを含有していたことを示している。その分子量は、異なるレベルのグリコシル化が原因で、AM GnHCl HC−HAにおける量とは異なっていた。HAaseは、160kDaの種を大幅に減少させ、これは、それがHC−HAに結合されたことを示している。HAaseを有する又は有さないケラチナーゼはまた、160kDaの種の強度も減少させ、これは、それが幾つかのKSを含有していたことを示している。顕著なことに、HAase消化を有する又は有さないCは、160kDaの種および上部ウェルの種の消滅につながったが、HMWスミアと同様に強い50kDaおよび90kDaの種を生じさせ、これは、UC GnHCl HC−HA中のデコリンが、AM GnHCl HC−HA中のデコリンと比較して、主としてコンドロイチン硫酸塩だったことを示ており、それらが含有していたンドロイチン硫酸鎖は少なかった。これらの結果は、UC GnHCl HC−HAがデコリンを含有し、UC中のデコリンが、(1)グリコシル化、(2)付けられるグリコサミノグリカンのタイプ、および(3)全体的な量においてAMとは異なっていたことをさらに確証した。
抗ビグリカン抗体でのウェスタンブロットは、上部ウェルにおいて強いHMWの種、400kDaの領域および140kDaの領域でのHMWスミア、およびHAaseを有する又は有さないUC GnHCl HC−HAにおいて45kDaの種を示したが(図31C、レーン4および5)、PBS HC−HAにおいてはそうではなかった(図31C、レーン2および3)。HAaseは、ウェル中でHMWの種に影響を与えることなく、400kDaの領域を増強し、これは、幾つかの種がHAに密に結合されたことを示唆している。HAaseを有する又は有さないケラチナーゼは、45kDaの種を減少させたことを除いて、上述の種を大幅に変化させず(図32C、レーン6および8)、これは、45kDaの種がKSを含有したが、ほとんどの他のものはそうではなかったことを示唆している。コンドロイチナーゼ単独で、上部ウェルにおいてHMWの種を無効にし、400kDaの領域の強度を減少させたが、それらの間のスミアで、強い広域な50kDaの種、100kDaの種および28kDa種を増加させた(図32C、レーン7)。コンドロイチナーゼ+HAaseは、同じ結果を有し、全体のスミアはより増強され、28kDaの種は消滅した(図32C、レーン9)。これらの結果は、デコリンに類似して、UC GnHCl HC−HA中のビグリカンが、主として、コンドロイチン硫酸鎖をもたらすと示唆した。この結果は、コンドロイチンの硫酸化がより少ないAM HC−HAにおける結果とは異なる。また、ほとんどのビグリカンは、HC−HAにおいてHMW複合体を形成し、幾つかはHC−HAに結合する。
抗ビクニン抗体でのウェスタンブロットは、HAase消化を有する又は有さない、UC GnHCl HC−HAにおける広域の35kDaのバンドを示したが、PBS HC−HAにおいてはそうではなかった(図32D、レーン4および5)。35kDaのバンドは、天然のビクニンのMWに対応する。HAaseを有する又は有さないケラチナーゼは、この35kDaのバンドを鋭くした(sharpend)が、そのMWを変化させず(図32D、レーン6および8)、一方で、HAase消化を有する又は有さないコンドロイチナーゼは、35kDaのビクニンを、25kDaのコアビクニンに変化させ(図32D、レーン7および9)、これは、UC GnHCl HC−HAにおけるビクニンの存在、および報告されたように、CSが含有されていたことをさらに確証している。HMWスミアがまた、コンドロイチナーゼ処置の後に形成されたため、ビクニンが、CSを介してHC−HAに密に結合されることを示唆された。これらの結果は、ビクニンを含有していなかったAM GnHCl HC−HAとは異なっていた。
抗PTX3抗体でのウェスタンブロットは、HAase消化のみによる又はそれなしのもの(図32E、レーン4および5)と比較して、H、K、Cの後に、および特に、K/Hで、UC GnHCl HC−HAにおける増加したHMW PTX3スミアを示した(図32E、レーン6および8)。これらの結果は、UC GnHCl HC−HAにおけるHMW PTX3の存在、およびGnHCl HC−HAにおけるその強力な結合を確証した。さらに、そのような強力な結合は、KSを含有している種の存在によってさらに助長され、その同一性は不明確なままである。(酵素的消化のない)我々の以前のデータが、UC GnHCl HC−HAにおけるHMW PTX3の量を少なく見すぎていたかもしれないことも説明されている。
抗ケラタン硫酸抗体でのウェスタンブロットは、ウェル中のHMWの種およびUC PBS HC−HAにおける弱い55kDのバンドを示した。HAaseは、このバンドを変化させなかったが、60kDaのバンドをより明白にした(図32F、レーン2および3)。しかしながら、140kDのバンドは、HAase消化を有する又は有さない、UC GnHCl HC−HAにおける抗ケラタン硫酸抗体によって認識された(図32F、レーン4および5)。HAase処置を有する又は有さないケラチナーゼは、140kDaのバンドを消失させなかったが、主に35kDaのバンド、およびPBS HC−HAに見られる60kDaおよび55kDaのバンドを含む、それらの間の幾つかの他のバンドを増加させた(図32F、レーン6および8)。
HAase処置を有する又は有さないコンドロイチナーゼはまた、140kDaのバンドを消失させなかったが、PBS HC−HAに見られる60kDaおよび55kDaバンドと同様に、90kDaのバンドも増加させた(図32F、レーン7および9)。コンドロイチナーゼ処置はまた、HAase処置後に減少したHMWスミアの出現を結果的にもたらし、これは、UC GnHCl HC−HAが、ケラタン硫酸化のタンパク質以外の豊富なコンドロイチン硫酸化のタンパク質を含有していたことを示唆している。UC GnHCl HC−HA(140kDa)におけるケラタン硫酸化のタンパク質が、AM GnHCl HC−HA(〜80kDa)におけるものとは異なるMWを有していたことは明らかであり、これは、鎖中の異なる量のグリカンが原因かもしれない。
抗オステオアドへリン抗体を用いて、大きな60kDのバンドおよび弱い80kDのバンドが、PBS HC−HAではなく、UC GnHCl HC−HAにおいて検出された(図32G、レーン4)。これらの2つのバンドは、ケラチナーゼまたはコンドロイチナーゼまたはHAaseによる明白な影響を受けなかった。80kDは、ケラチン硫酸化のオステオアドへリンであるはずであり、一方で、〜60kDは、非ケラチン硫酸化のオステオアドへリンであるはずである。その結果は、UC GnHCl HC−HAが、ケラチン硫酸化および非ケラチン硫酸化のオステオアドへリン両方を含有していたことを示唆した。
要約すると、フィブロモジュリン、ルミカン、ケラトカン、PRELP、オステオグリシン、エピフィカン、ペリオスチンおよびTSG−6は、UC GnHCl HC−HAにおいて検出されなかった。UC GnHCl HC−HAは、デコリン、ビグリカン、オステオアドへリン、ケラタン硫酸およびビクニンを含有していた。ビグリカンおよびデコリンは、豊富にあったが、一方で、PBS HC−HAは、これらの種を豊富に含有していなかった。
要約
AMおよびUCのPBSおよびGnHClの抽出両方から、4x 超遠心分離によってHC−HA複合体を精製した。GnEから精製されたHC−HAは、収率および化学構造においてPBS抽出から精製されたHC−HAとはかなり異なっていた(表1を参照)。量において、GnEから精製されたHC−HAは、PBSから精製されたものより多くのHAを含有していた。化学構造において:GnHCl HC−HAは、より多くのHMW HA(PBS HC−HAよりわずかに小さいMW)を含有していたが、(アガロースゲルからの)PBS HC−HAによって示されたウェスタンブロッティングにおいてHMW PTX3スミアに対応した一片のHMW HAを欠いていた。HAase消化を有して又は有さずに、GnHCl HC−HAは、PBS HC−HAよりも少ないHC1およびHMW PTX3を含有していたが、ケラチナーゼ+HAaseの消化後、より多くのPTX3が、(ウェスタンブロットから)検出され、これは、HMW PTX3が、GnHCl HC−HAにおいてケラタン硫酸化のタンパク質に密に結合されたことを示唆している。PBS HC−HAおよびGnHCl HC−HAはいずれも、TSG−6、HC2およびHC3を含有していなかった。ビクニンは、UC GnHCl HC−HA中に存在していたが、UC PBS HC−HA、およびAM PBSおよびGnHCl HC−HAの両方においてはそうではなかった。AM GnHCl HC−HAは、UC GnHCl HC−HAよりも比較的多く、豊富なデコリンを含有していた。AMおよびUC PBS HC−HAの両方は、わずかな量のデコリンを含有していた。AMおよびUC GnHCl HC−HAは、特にUC GnHCl HC−HAにおいて、豊富なビグリカンを含有していた。PBS HC−HAの中にはビグリカンは存在しなかった。AMおよびUC GnHCl HC−HAは、オステオアドへリンを含有していた。AMおよびUC PBS HC−HAは、ビグリカン、ケラタン硫酸を含有している種、フィブロモジュリン、ルミカン、ケラトカン、PRELP、オステオグリシン、エピフィカン、ペリオスチン、およびオステオポンチン、TSP−1を含有していなかった。AMおよびUC GnHCl HC−HAにおいて、フィブロモジュリン、ルミカン、ケラトカン、PRELP、オステオグリシン、エピフィカン、ペリオスチンおよびオステオポンチン、TSP−1、アスポリンはなかった。GnHCl HC−HAは、主として、(クーマシー青色染色のゲルからの)PBS HC−HAにおいて発見されなかったMW 200 kDa、80kDa、および60kDaを有する、可視のタンパク質バンドを含有していた。
実施例31:ヒト羊膜間質細胞によるPTX3の構成的な発現は、HC−HA/PTX3の複合体の形成につながる。
本実施例では、AMから精製されたHC−HAにおけるPTX3発現およびAMにおけるHC−HA/PTX3の複合体の形成に対するその効果を検査した。
実験手順
1.材料
塩酸グアニジン、塩化セシウム、EDTA、無水アルコール、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリス塩基、Triton X−100、3−(N(N,N−ジメチルアニリンパルミチルアンモニオ)プロパンスルフォナート(Zwittergent3−16)、(4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフッ化物塩酸塩、アプロチニン、ベスタチン塩酸塩、E−64、ロイペプチン、およびペプスタチンAを含む)プロテアーゼ阻害剤の混合物、およびフッ化フェニルメタンスルホニルを、Sigma−Aldrich (St. Louis, MO)から得た。ストレプトマイセスヒアルロニダーゼ(HAase)およびビオチン化されたHA結合タンパク質(HABP)は、Seikagaku Biobusiness Corporation (Tokyo, Japan)からのものであった。ダルベッコ変法イーグル培地、Ham’s F12の栄養素混合物、ウシ胎児血清、ハンクス液、ゲンタマイシン、アムホテリシンBおよびRIPA緩衝剤を、Invitrogen (Grand Island, NY)から購入した。Slide−A−Lyzer Dialysis Cassettes (3.5K MWCO)を、Fisher Scientific (Pittsburgh, PA)からのものであった。BCA Protein Assay Kitは、Pierce (Rockford, IL)からのものであった。HA Quantitative Test Kitは、Corgenix (Westminster, CO)からのものであった。4−15%の勾配のアクリルアミドのreadyゲルおよびニトロセルロース膜は、Bio−Rad (Hercules, CA)からのものであった。IαIを、公開された方法(1,38)に従って、我々の研究所でヒト血漿から調製した。PTX3 mAb(MNB4)およびpAbは、Enzo Life Sciences, Inc. (Plymouth, PA)からのものであった。組換え型のヒトTNF、組換え型のヒトPentraxin 3/TSG−14およびヒト/マウスのTSG−6 MAb(MAB2104)は、R&D Systems (Minneapolis, MN)からのものであった。全長ITIH1に対するマウス抗ヒトITIH1ポリクローナル抗体およびアミノ酸124−321に対するウサギ抗ヒトITIH2ポリクローナル抗体は、Abcam Inc.(Cambridge, MA)からのものであった。HiPerFect Transfection ReagentおよびRNeasy Mini RNAの単離キットは、QIAGEN(Valencia,CA)からのものであった。内在性ヒトPTX3(ACACUUGAGACUAAUGAAAGAGAGA)を標的とする、およびsiRNA対照オリゴヌクレオチド(スクランブルしたRNA)siRNAを標的としないための、小型干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチドは、OriGene Technologies, Inc (Rockville, MD)からのものであった。Western Lighting(商標)Chemiluminesence Reagentは、 PerkinElmer, Inc. (Waltham, MA)からのものであった。超遠心機(LM8モデル、SW41ローター)は、Beckman Coulter, Inc. (Fullerton, CA)からのものであった。
2.細胞培養およびアガロースオーバーレイ
ヒト組織を、Declaration of Helsinkiに従って処理した。新鮮なヒト胎盤を、Baptist Health South Florida Institutional Review Boardによる認可(Protocol Number 03−028)によって、Baptist Hospital (Miami, FL)において選択的帝王切開で分娩した後の健康な母体から得た。主要なヒトAMの上皮のおよび間質の細胞(それぞれ、AMECおよびAMSCとして指定された)を、37℃で5%のCO2の加湿雰囲気下で、以前に記載されたように新鮮な胎盤から単離し(Chen et al. (2007) Stem Cells. 25: 1995−2005; Li et at. (2008) J. Cell. Physiol. 215:657−664)、補足的なホルモンの上皮培地(DMEM/F12(1:1、v/v)、5%(v/v)のFBS、0.5%(v/v)のジメチルスルホキシド、2ng/mlのEGF、5μg/mlのインスリン、5μg/mlのトランスフェリン、5ng/mlの亜セレン酸ナトリウム、0.5μg/mlのヒドロコルチゾン、0.1nMのコレラ毒素、50μg/mlのゲンタマイシン、1.25μg/mlのアンホテリシンBから成る、SHEM)中で培養した(Chen et al. (2007) Stem Cells 25:1995−2005; Chen et al. (2011) Tissue Eng Part C Methods 17:537−548)。培地を、2日ごとに変更した。80%のコンフルエンスでの細胞を、48時間、0.5%のFBSを含有しているDMEM/F12に切り替えて、細胞を休止させ、その後、RT−PCRおよびウェスタンブロット解析にさらす前に、4時間または24時間、20ng/mlのTNFまたは20ng/mlのIL−1βで処置した。アガロースオーバーレイの培養物に関して、AMEC、AMSCおよびHSFは、SHEM中の2x104/cm2の密度で、12ウェル(1x105細胞/ウェル)および6ウェル(2x105細胞/ウェル)のプレートにおいて播種される。培地は、1日目に、5%のKnockOut血清代替物および1mMの2−ホスホ−L‐アスコルビン酸を含有している無血清SHEMに変更され、さらに2日間インキュベートされる。培地の除去後、1mMの2−ホスホ−L‐アスコルビン酸を有するDMEM/F12における3%のアガロース(低融点型、VII型、Sigma、A9045)を、1mlまたは0.5mlでオーバーレイし、5ng/mlのTNFとともに又はそれなしで、6または12ウェルのプレートにつき、それぞれ、3mlまたは1.5mlの無血清SHEM培地を加える前に5−10分間、室温で1mmの厚さのゲル層を達成した。細胞を、5日目に培地変更の介入なしで採取した。
3.siRNAトランスフェクション
AMECおよびAMSCを、80%のコンフルエンスまで6ウェルのプレート中のSHEMにおいて培養した。細胞を、48時間0.5%のFBSによってDMEM/F12に切り替え、100nMのPTX3 siRNAまたはスクランブルされた(sc)核酸を用いてPepMute(商標) siRNA Transfection Reagentでトランスフェクトした。48時間後、細胞を採取し、RT−PCRおよびウェスタンブロット解析にさらした。
4.超遠心分離によるAMおよび無血清培養からのHC−HA複合体の精製
HC−HA複合体を、以前に記載されたように、AMおよび細胞培養から精製した(He et al. (2009) J. Biol. Chem. 284: 20136−20146; Yoneda et al. (1990) J. Biol. Chem. 265:5247−5257; He et al. (2008) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 49:4468−447532)。簡潔に言うと、Bio−tissue, Inc. (Miami, FL)から得た、凍結保存されたヒトAMを、小片へとスライスし、液体窒素中で凍結し、BioPulverizerによって微粉末へと粉砕した。粉末を、1:1(g/ml)で冷たいリン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝剤と混合した。混合物を、軽く撹拌しながら、1時間4℃で維持し、その後、4℃で30分間、48,000gで遠心分離にかけた。その後、上清(AM抽出物として指定される)を、10mMのEDTA、10mMのアミノカプロン酸、10mMのN−エチルマレイミド、および2mMのPMSFを含有している、8MのグアニジンHCl/PBS溶液(v/vの1:1の割合で)と混合し、塩化セシウムとの、それぞれ、1.35g/ml(AM抽出物)または1.40g/ml(細胞抽出物)の密度に調節され、48時間、15℃、35,000rpmで等密度遠心法にさらした。結果として生じる密度勾配を、12本のチューブに画分し(1ml/チューブ)、その中で、HAおよびタンパク質の内容物を、それぞれ、HA Quantitative Test KitおよびBCA Protein Assay Kitを使用して測定した。ほとんどのHAを含有していた、第1の超遠心分離からの画分を、貯蔵し、CsClの付加によって1.40g/mlの密度にし、超遠心分離にかけ、上に記載されるのと同じ方法で画分した。HAを含有していたが、検出可能なタンパク質を含有していなかった、第2の超遠心分離からの画分を、貯蔵し、CsClの付加によって1.42g/mlの密度で、第3および第4の超遠心分離を継続した。第2および第4の超遠心分離からの画分を、蒸留水中で透析し、その後、1時間0℃で、1.3%(w/v)の酢酸カリウムを含有している3容量の95%(v/v)のエタノールで2回沈殿させた。15,000gでの遠心分離後、ペレットを、簡単に空気乾燥し、−80℃で保存し、それぞれ、剤はされたので、簡潔に飛行機で乾かされ、AMの2nd HC−HAおよび4th HC−HAとして指定した。
5.免疫染色
アガロースオーバーレイを有する又は有さない、細胞培養物に加えてAMおよび絨毛膜切片(section)を含有しているヒト胎児膜を、15分間室温で、4%のパラホルムアルデヒドによって固定し、20分間、PBS中で0.2%(v/v)のTriton X−100で透過性にした。1時間PBS中で0.2%(w/v)のウシ血清アルブミンによって遮断した後に、切片を、4℃で湿度室において一晩、ビオチン化されたHABP(HAに対して、5μg/ml)、抗PTX3、抗HC1または抗HC2の抗体(すべて、ブロッキング溶液中で1:200に希釈された)でインキュベートした。PBSでの洗浄後、それらを、室温で1時間、Alexa Fluor 488 Streptavidin(HAに対して、1:100に希釈された)、またはそれぞれの二次抗体(すなわち、Alexa Fluor 488の抗マウスIgG、またはAlexa Fluor 555結合の抗ラットIgG)でインキュベートした。アイソタイプが一致した非特異的なIgG抗体を、対照として使用した。あるいは、切片を、固定前に、4時間37℃で、50U/mLストレプトマイセスのHAaseで処置した。核を、Hoechst 33342によって染色し、画像を、Zeiss LSM700の共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss,Germany)を使用して得た。
6.リアルタイムPCR
総RNAを、RNeasy Mini RNA単離キットを使用して、細胞培養物から抽出した。cDNAを、オリゴ(dT)プライマーにより、Cloned AMW First−Strand cDNA合成キットを使用して、1μgの総RNAから逆転写した。第1ストランドのcDNAを、AmpliTaq Gold Fast PCR Master Mixおよび特異的なPTX3プライマー(46−48)を使用して、qPCRによって増幅した。グリセリンアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の遺伝子発現を、増幅された生成物の量を標準化するために使用した。
7.ウェスタンブロット
培養上清を集め、細胞可溶化物を、冷たいPBSで細胞を6回洗浄し、その後、軽く撹拌しながら4℃で30分間14,000gで遠心分離にかけ、1時間4℃でRIPA緩衝液中でインキュベートすることによって得た。培養上清および細胞可溶化物におけるタンパク質濃度を、BCA Protein Assay Kitで定量化した。サンプルを、25℃で1時間、50mMのNaOH中でインキュベートするか、または0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝剤(pH6.0)中に溶解し、20ユニット/mlのストレプトマイセスのHAaseで又はそれなしで、1時間60°Cでインキュベートした。その後、それらを、変性条件および還元条件下で、4−15%(w/v)の勾配アクリルアミドのreadyゲル上でSDS−PAGEによって分解し、ニトロセルロース膜に移した。その後、膜を、150mMのNaClおよび0.05%(v/v)のTween−20を含有している、50mMのTris−HCl、pH7.5の、緩衝液中で、5%(w/v)の無脂肪牛乳で遮断し、その後、異なる一次抗体および続くそれぞれのHRP結合の二次抗体での連続するインキュベーションを行った。免疫反応性のタンパク質を、Western Lighting(商標) Chemiluminesence Reagentによって視覚化した。
結果
AMの上皮および緻密な間質における陽性PTX3染色。
抗ヒトPTX3抗体を使用する蛍光免疫染色を、上皮および無血管の間質の層からなる、新鮮なヒト胎児膜の断面上で行い、これは、緻密層および海綿層、および下位にある細胞が豊富な絨毛膜へとさらに細分化される(図33、相)。陽性PTX3染色は、上皮および緻密な間質の先端面において見られた。対照的に、PTX3染色は、海綿状の間質および絨毛膜(図33(PTX3))において著しく減弱された。HAase消化は、後者においてPTX3染色を増強せず、これは、これらの2つの領域内の弱いPTX3染色が、マスキング効果が原因ではなかったことを示唆している。ビオチン化されたHABPを使用して、強力な陽性HAの免疫染色が、AM間質で見られ、比較的弱い染色が、AM上皮において見られた(図33、HA)一方で、HAの弱い染色が、AM間質の下位にある絨毛膜の上部層おいて見られたが、強い染色が絨毛膜の下部層で見られた。この染色は、組織切片がHAaseによって予め消化されたときに消滅し(図33、HA(+HAase))、これは、HA染色が特異的であったことを示唆している。個々のHCの免疫染色はまた、AMの上皮、間質細胞およびマトリックス、および絨毛膜において、陽性染色を明らかにした(図33、HC1およびHC2)。これらの結果は、主に緻密な間質および上皮において優性なAM中のPTX3の存在を示唆した。
AM可溶性の抽出物および精製されたHC−HA複合体におけるPTX3の存在
AMにおけるPTX3の存在をさらに調査するために、エステル結合を開裂する50mMのNaOHの処置前後に、等張塩緩衝剤によって得られたAM抽出物のウェスタンブロッティング分析を第1に行った。組換え型のPTX3は、45kDa、90kDa、180kDaおよびHMWの種として現われた(図34、レーン2)。可溶性のAM抽出物は、充填ウェル(主としてゲル化に入らない)の底部で、45kDaおよびHMWの種を明らかにした(図34、レーン3)。NaOH処置は、45kDaの種に影響を与えなかったが、HMWの種を完全に除去し、結果的に、PTX3のHMWスミアをもたらした(図34、レーン4)。これらの結果は、PTX3が、AMEにおいて単量体およびHMW複合体として存在していたことを示唆した。後者が、HC−HA間のエステル共有結合を開裂することができるNaOHによって、HMWスミアへと分離され得るため、充填ウェル中のHMW PTX3を含有している種は、HC−HAに結合するかもしれない。
PTX3がAM HC−HA複合体に結合したかどうかをさらに確証するために、以前に報告されたように、2回および4回の連続する超遠心分離によって、AMの可溶性の抽出物からHC−HA複合体を精製し(He et al. (2009) J. Biol. Chem. 284:20136−20146.; Zhang et al. (2012) J. Biol. Chem. 287:12433−12444)、HAase消化を有して又はそれなしで、ウェスタンブロッティング解析を行った。可溶性のAMEに見られた単量体とは対照的に、天然のPTX3二量体のサイズに対応する90kDaの種は、充填ウェルの底部で、HMWバンド以外のAMの2ndおよび4thのHC−HA複合体で示された(図34、レーン5および7)。さらに、HMWスミアも、2nd HC−HAにおいて弱く、4th HC−HA複合体において強いことが分かった。HAase処置後、90kDaの二量体は、両方のHC−HA複合体にとどまったが、HMWスミアは、4th HC−HAにおいて増強され、2nd HC−HAにおいて増加され、ゲル上部におけるHMWバンドの消失(図34、レーン6および8)は、AMEで見られた結果に類似していた。HAaseを有する又は有さないHC−HA複合体における90kDaのPTX3二量体の存在は、この90kDaの種(図示せず)の欠如を結果としてもたらす2−MEの除去として2−MEによって引き起こされたHC−HAからの分離によってもたらされることが分かった。これらの結果は、HC−HA複合体が、4回の超遠心分離にもかかわらず、HC−HA/PTX3複合体を形成するために、HC−HAに結合されたPTX3を含有していたことを示唆した。
抗HC1抗体でのウェスタンブロット解析は、HAase消化後に消滅した、充填ウェルの底部でのHMWの種としてのHC−HA複合体の存在(図34、レーン10−13)、およびHAase消化後にHC−HA複合体から放出された、HC−HA複合体におけるHC1の存在(図34、レーン11および13)を示した。HC2およびTSG−6(図示せず)は検出されなかった。これらの結果は、AMから精製されたHC−HAがHC1を含有していただけであったことを集合的に確証した。また、2nd HC−HA複合体と4th HC−HA複合体との間に主要な違いが見られ、すなわち、遊離した80kDaのHC1バンドが、2nd HC−HA複合体においてのみ検出され、4th HC−HA複合体では検出されず(図34、レーン11)、これは、後者が、遊離したHC1を含有していなかったことを示唆している。4th HC−HAにおけるHAの存在を、上部の充填ウェルからゲルの下部までの連続的なHAスミアとして表示するアガロースゲル電気泳動法によって確証し、そのようなスミアリングは、HAase消化によって解消された。
AMECおよびAMSCによるPTX3 mRNAおよびタンパク質の発現
PTX3が、AMの上皮および間質細胞培養物によって合成されたと、その後断定した。報告されたように、これらの細胞を培養し(Chen et al. (2007) Stem Cells 25(8):1995−2005; Li et al. (2008) J Cell Physiol. 215(3):657−64; Zhang et al. (2012) J. Biol. Chem. 287:12433−12444)、RT−PCRのために総RNAをおよびウェスタンブロット解析のためにタンパク質を抽出し、それらをヒト皮膚線維芽細胞(HCF)と比較し、これは、TNFおよびIL−1などの炎症促進性のサイトカインの刺激下でのみPTX3 mRNAおよびタンパク質を発現すると報告された。予想通り、qRT−PCR結果は、PTX3転写物の発現率が、休止するHSFにおいて低かったが、TNFおよびIL−1βによってアップレギュレートされたことを示した(図35のA)。休止するAMECおよびAMSCにおけるPTX3転写物の発現は低かったが、TNFまたはIL−1βによって劇的に高められた(図35のA)。ウェスタンブロット解析は、PTX3タンパク質が、溶解物(45kDa)において低く、休止するHSFにおける培地中で検出不能であった(図35のB、レーン2)が、TNFまたはIL−1βの追加後に24時間、培地ではなく溶解物中で検出されたことを確認した。対照的に、PTX3タンパク質は、休止するAMECにおいて検出可能であり、溶解物(45kDa)および培地(45kDaおよび90kDa)の両方においてTNFまたはIL−1bよって顕著に増加され(図35のB、レーン5、6および7)、TNFは、IL−1bよりも有効であった。同じ結果が、AMSCで示された(図34のB、レーン8、9および10)。これらのバンドがTNFまたはIL−1bの下の変化しなかったことが原因で、すべての細胞からの溶解物中の75kDaおよび135kDaのバンドおよび培地中の50kDaのバンドが非特異的であったことを確認するために、PTX3 siRNAトランスフェクションを行い、溶解物中の45kDaの種および45kDaおよび90kDaの種の両方を実際にダウンレギュレートしたが、これらの非特異性のバンドではそうでなかった(図35のC)。これらの結果は、PTX3が、休止するAM細胞によって、実際に合成および分泌され、炎症誘発性の刺激によってさらにアップレギュレートされたことを集合的に示唆した。
AMの間質細胞によるHC−HA/PTX3複合体の生成
以前の研究は、HC−HA(すなわち、SHAP−HA)複合体が、FBSを補足された培地中の培養されたマウス経皮線維芽細胞の細胞層からを単離され得、単離されたHC−HAが、FBSから派生したIαIのHC1およびHC2の両方を含有していることを示した(Yoneda et al. (1990) J. Biol. Chem. 265:5247−5257; Huang et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:26725−26730)。しかしながら、我々は、AM細胞が、その内因的に生成されたIαIを使用することによって、HC−HAを生成すると報告した(Zhang et al. (2012) J. Biol. Chem. 287:12433−12444)。AM細胞が、TNFおよびIL−1によってさらに増加されたPTX3タンパク質を合成したため、我々は、それらが、PTX3をも含有していたHC−HAを生成したかどうかを決定することを目指した。血清添加の条件下で、炎症促進性の刺激、例えばTNFおよびIL−1)下のみでPTX3を発現した、対照としてのHSFを使用し(Yoneda et al. (1990) J. Biol. Chem. 265:5247−5257; Huang et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:26725−26730)(図35)、TNFを有する又は有さない、無血清と血清添加の両方の条件下で培養された、AMECとAMSCを比較した。また、細胞単層上に3%のアガロースを重ね、なぜなら、この方法によって、分泌されたプロコラーゲンが、角膜実質細胞の培養物上の培地内よりもむしろ、細胞表面で又はその近くに捕捉されると分かったからである(Hassell et al. (2008) Experimental Eye Resarch. 87:604−611; Etheredge et al. (2010) Matrix Boil. 29:519−524)。
5日間のオーバーレイ後、HSF、AMSCおよびAMECは、特に血清添加の条件下で、より緻密になった(図36)。上皮の形態は、AMECにおいて、より異なった。
その後、3%のアガロースオーバーレイが、HA ELISAアッセイによる培養培地中でHA濃度を測定することによって分泌されたHAを捕捉することにも有効であったかどうかを決定した。アガロースオーバーレイなしで、HAレベルは、AMSCおよびAMECの両方の無血清培地において容易に検出可能であったが、HSFにおいてはそうではなかった。TNFは、すべての3つの細胞培養のHAレベルを著しく増加させた(図37)。上述のパターンを、血清添加培地中でさらに促進した。アガロースオーバーレイは、すべての3つの培養物の中で、無血清および血清添加の両方の条件下で50%を超えるHAレベルを還元した。これらの結果は、アガロースオーバーレイが、実際にHAレベルを培養培地へと還元したことを示唆した。
分泌されたHAが、アガロースオーバーレイ後に細胞外マトリックス中に実際に捕捉されたのがいつなのかを決定するために、HC1およびHC2に対する特異抗体、および2つの異なる抗PTX3抗体、すなわちMNB4およびビオチン標識化されたpAbである、それぞれ、PTX3/HA、HC1/HA、およびビオチン標識化されたHABPを有するHC1/PTX3のための二重免疫染色を行った。無血清条件で、陽性のHA染色は、HSFにおける細胞周囲領域では示され、一方で、PTX3染色は、陰性であった(図38のA)。TNF刺激によって、陽性のPTX3染色を、細胞質で観察し(図38のB)、これは、HSF中のTNFによるPTX3の誘導可能な発現を確証している。TNFは、HA染色の強度を大幅に増加させなかったが、培養された腎臓近位の管状の上皮細胞で報告されたものに類似した、ケーブル様の構造(図38のG)を誘発した(Selbi et al. (2006) Kidney International. 70: 1287−1295)。PTX3のHAとの共局在は観察されなかったが、これは、PTX3が、TNF刺激後にHSFにおいてHAと結合していなかったことを示唆している。
対照的に、陽性のHA染色は、細胞外マトリックスにおいてHAで共局在化されたため、細胞表面および細胞外マトリックス上の線維ネットワークとして休止するAMSCにおいて検出された(図38のCおよび6K)。TNFは、PTX3染色の強度およびHA原線維の量を増加させた(図38のDおよびK)。
休止するAMECにおいて、陽性のHA染色は、幾らかの原線維性の出現のある細胞外空間でも発見されたが、それは、細胞が緻密でなかった散在性の領域でのみ発見された(図38のEおよびL)。PTX3およびHAの共局在は、AMECでも観察された。TNF処置は、PTX3染色の強度およびHA原線維の量をさらに増加させた(図38のF)。これらの結果は、PTX3がAMSCおよびAMECによって構成的に発現されたこと及びその発現がTNFによってさらに増加されたことをさらに確証した。弱い陽性のHC1染色は、TNF処置を有して(図38のGおよびJ)または有さずに(図示せず)、幾つかのHSFでのみ観察され、特にHAのケーブル様の構造(図38のG)においてHAで共局在化された。しかしながら、我々は、HC1とPTX3との間の共局在に言及しなかった(図38のJ)。対照的に、強力な陽性のHC1染色は、AMSCにおいて示され、細胞膜上のHAで共局在化され(図38のH)、細胞質においてPTX3で共局在化された(図38のK)。AMECはまた、強力な陽性のHC1染色、および細胞膜中のHA(図38のI)、および細胞質および細胞膜中のPTX3(図38のL)での共局在を示した。まとめると、これらの結果は、HAが豊富なマトリックスが、AMSC、AMECおよびHSFにおいてアガロースオーバーレイによって効果的に捕捉され、無血清条件下で、AMSCおよびAMECにおいてのみHC1およびPTX3の両方を含有していたことを示唆し、これは、そのようなHC−HA/PTX3複合体が、内因性のIαIによって合成されたことをさらに確証している。
アガロースオーバーレイ下のHC−HA/PTX3複合体の形成をさらに確認するために、6MのGnHClによって細胞層を抽出し、NaOH処置によって又はそれなしで、無血清および血清添加の両方の条件下で、AMSCおよびHSFの培養物においてウェスタンブロット解析を行った。無血清HSFは、TNF刺激およびNaOH処置によって又はそれなしで、170kDaおよび140kDaの種を示したが、対照PTX3に対応する45kDaの種を示さず、これは、これらの2つのバンドが特異的ではなかったことを示唆している(図38のD、レーン2−5)。TNFでの血清添加HSFは、弱い140kDaの種、および無血清HSFで見られたものに類似した幾つかの小さなMWの種を示した(図39、レーン11および12)。対照的に、無血清のAMSCは、弱いHMW PTX3スミア、90kDaおよび45kDaの種を示し(図39、レーン6)、後者の2つは、それぞれ、PTX3二量体および単量体に対応した(図39、レーン2)。これらの結果は、AMEで見られた結果に類似していた(図34)。無血清HSFで見られるのと同じ非特異的な170kDaの種および幾つかの小さな分子種も観察された。NaOH処置は、HMW PTX3スミアを増加させたが、PTX3単量体および二量体(図39、レーン7)および他の種に影響を与えなかった。TNFは、他の種と同様に、HMW PTX3スミア、PTX3二量体および単量体も増加させた(図39、レーン8および9)。TNFでの血清添加AMSCは、強力なHMW PTX3スミア、90kDaのPTX3二量体および45kDaのPTX3単量体を示した(図39、レーン13)。
NaOH処置は、60kDaおよび50kDaでHMW PTX3スミアおよび2つの種を大幅に増加させた(図39、レーン14)。NaOHが、HCとHAとの間のエステル結合を壊し、HC−HAの溶解につながったため、これらの結果は、HMW PTX3が、HC−HA複合体から放出されたことを示唆した。まとめると、上述の結果は、HSFではなくAMSCが、PTX3を含有しているHC−HA複合体を生成したことを示唆した。
HC−HA/PTX3複合体(rcHC−ha/PTX3)のインビトロの再構成
HC−HA/PTX3複合体がどのように生成され得るかをさらに確証するために、我々は、HA、TSG−6、IαIおよびPTX3を用いて、インビトロでHC−HA/PTX3複合体を再構成したい。まず、プラスチック上でHAを固定化し、組換え型のTSG−6を加えることに成功し、IαIの源として、IαIまたは血清を精製した。TSG−6が、固体面上で固定化されるHAに結合することによって、安定したTSG−6/HA複合体を形成することができ(Wisniewski et al. (2005) J Biol Chem. 280:14476−84)、遊離した及びHA結合したTSG−6の両方が、HCをIαIから固定化したHAへと移動させ、HC−HAを形成することができる(Colon (2009) J Biol Chem. 284:2320−31)と報告されている。抗IαI抗体を使用するウェスタンブロットは、予想通り、対照iHA単独において種を検出しなかった(図40のA、レーン2)。IαIおよびTSG−6が、iHAに同時に加えられたときに、弱い220kDaのIαI、85kDaのHC2、強力な〜80kDaのHC1および50kDaの種が検出され(図40のA、レーン3)、これは、HC1およびHC2が両方とも、TSG−6の存在下のiHAに移動され、HC−HAを形成したことを示唆している。HC2のバンド強度に対するHC1のバンド強度の比較は、より多くのHC1が、TSG−6によってHC2よりもiHAに移動され、結果的に、先細りの50kDaの種をもたらしたことを示唆した。PTX3が、iHAへのIαIおよびTSG−6と同時であったときに、IαIの種の強度は減少したが、HC1強度は、PTX3の用量依存的な方法で増加した(図40のA、レーン4−6)一方で、HC2は、検知不能であり、これは、PTX3が、TSG−6によって触媒された固定化したHAへのHC2ではなくHC1の移動を優先的に促進したことを示唆している。PTX3がIαIおよびTSG−6の同時の追加後に加えられたときに、IαIまたはHC2ではなく、HC1が検知され、HC1強度も、PTX3の用量依存的な方法で増加され(図40のA、レーン7−9)、これは、PTX3が、固定化したHAへのHC2ではなくHC1の移動を促進したことを確証している。これらの結果は、PTX3が、固定化したHAへの優位なHC1の移動を一意に促進して、同時であろうが連続していようが、HC1−HA複合体を形成したことを示唆した。抗TSG−6抗体を使用するウェスタンブロットは、35kDaのTSG−6単量体および75kDaの二量体の両方が、iHA上のIαIおよびTSG−6の中央のPTX3の同時又は連続の付加によって形成されたrcHC−HAにおいて検出されたことを示した。TSG−6バンドの強度が、PTX3用量依存的に減少したため、固定化したHAに結合されたTSG−6が、PTX3によってはじき出され(competed out)得たことが示唆される(図40B)。抗PTX3抗体を使用するウェスタンブロットは、PTX3がIαIおよびTSG−6を同時に加えられたときの、弱い四量体および二量体のバンドを有する充填ウェルにおける顕著なHMW PTX3スミアを示し、それらの強度が、PTX3の用量依存的な方法で増加したことを示した(図40のCおよびレーン4−6)。この結果は、PTX3が、rcHC−HA複合体に優先的および強力に結合され、その中で、結合が、8MのGnHCl洗浄に耐性があったことを示唆した。対照的に、PTX3が、IαIおよびTSG−6の付加後に連続して加えられたときに、HMW PTX3および四量体および二量体の種(図40のC、レーン7−9)を検出せず、これは、PTX3と予め形成されたrcHC−HA PTX3との間の結合が、8MのGnHCl洗浄に対する耐性が強くなかったことを示唆している。故に、これらのインビトロの再構成実験は、HC−HA/PTX3の形成を可能にするために、PTX3が、インビボでのHA、IαIおよびTSG−6と同時に生成されなければならなかったことを示唆した。この解釈は、インビボの組織切片に加えてAMSCによって形成された細胞外マトリックスにおける、HA、HCおよびPTX3の免疫共局在化によって支持された。
実施例33:TGFβ1シグナル伝達に対するHC−HA複合体の効果
固定化したHC−HAは、TGF−β1の発現をダウンレギュレートすることによってTGFβ1シグナル伝達を阻害するが、TGF−β3シグナル伝達をアップレギュレートする。TGFβ1シグナル伝達のそのような阻害は、GFβRIIおよびTGFβRIIIのさらなる抑制が原因の、血清または外因性のTGF−β1の付加によるチャレンジ(challenge)に抵抗し得る。したがって、固定化したHC−HAは、SMAD2/3シグナル伝達アルファ平滑筋形成の発現を阻害することによって、角膜の線維芽細胞の筋線維芽細胞分化を防ぐ。この作用はまた、角膜の線維芽細胞を角膜実質細胞に戻すのに十分強力である。HC−HA(不溶性(I))は、追加の小さなロイシンが豊富なタンパク質(SLRP)の構成においてHC−HA(可溶性(S))とは異なり、BMPおよびそれらの受容体の発現をアップレギュレートすることによって、TGFβ1およびBMPのシグナル伝達の発現を活性化し、それ故、凝集の形成を一緒にさらに促進する、pSMAD1/5/8を活性化する。これらの作用は、角膜の線維芽細胞を神経冠前駆体にさらに脱分化することができる。
本実施例では、外因性のTGFβ1のチャレンジによる又はそれのない、ヒトの角膜の線維芽細胞におけるTGF−βシグナル伝達に対する固定化した可溶性および不溶性のHC−HAの効果を検査した。さらに、SMAD2/3のシグナル伝達およびαSMA発現の抑制に対するHC−HA複合体の効果を試験した。
実験的および臨床的な研究は、凍結保存された羊膜(AM)による抗瘢痕化の治療上の作用を支持している。我々の研究は、重鎖ヒアルロナン複合体(HC−HA)が、AMによって一意に生成され、AMから精製され得、ヒトの角膜の線維芽細胞においてTGF−β1プロモーターの活性を抑制することを実証した。HC−HAが、TGF―β1 mRNAおよびタンパク質の発現を抑え、TGF−βシグナル伝達を中和すると知られる、TGF−β3 mRNAおよびタンパク質の発現を促進するかどうかは不明確であり、もしそうであっても、HC−HAによるTGFβシグナル伝達のそのような阻害が、pSMAD2/3の核転位の抑制に変換されるかどうかも不明確である。
マウス角膜実質細胞は、AMの上で培養されれば、プラスチック上の無血清DMEM/ITSまたはDMEM/10%のFBSにおいて未分化の状態(ケラトカンを発現する)を維持することができる。10%の血清または10ng/mlのTGF−β1を有する無血清DMEM/ITSにおける角膜実質細胞の処置は、Smad2/3リン酸化および核局在化(3時間)およびα−SMA発現(5日間)を誘発する。血清またはTGF−β1いずれかの処置によるAMに対する角膜実質細胞におけるSmad2/3およびα−SMAの活性化が抑制される(Kawakita et al. (2005) J Biol Chem. 280(29):27085−92)。我々の研究は、HC−HAが、ヒトの角膜の線維芽細胞においてTGF−β1プロモーターの活性を抑制することを実証した。pSmad2/3シグナル伝達およびα−SMA形成が、HC−HAによって抑制されることが予期された。
ヒト角膜の線維芽細胞(または角膜輪部由来ニッチェ細胞(Limbal niche cells)、p3)を、上に記載されるように、48時間、固定化したHA、可溶性のHC−HA(PBS)(2Xまたは4X)または不溶性のHC−HA(GnHCl)(2Xまたは4X)によって又はそれなしで、プラスチック皿上で播種した。その後、細胞を、mRNAの定量化およびSMAD2/3シグナル伝達の決定のために採取される前に、24時間TGFβ1で又はそれなしで処置した。TGFβ受容体のタンパク質の決定に関して、細胞を、タンパク質サンプルの収集前の48時間、TGF−β1で又はそれなしで処置することで、発現されたmRNAからのタンパク質発現のための時間を与えた。TGF−β1 ELISAに関して、細胞を、24時間、TGF−β1で又はそれなしで処置し、その後、24時間(および48時間)、新鮮な培地中で培養した。上清を、TGF−β1 ELISAのために収集した。TGF−β2およびTGF−β3のELISAに関して、細胞を、48時間、TGF−β1で又はそれなしで処置した。上清を、TGF−β2およびTGF−β3のELISAのために収集した。位相コントラスト画像を、様々な培養物のために最大72時間撮った。
以下の実験を行った:
1.リアルタイムPCRによる、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、およびそれらの受容体のためのmRNA半定量化は:TGF−βファミリーおよびそれらの受容体のmRNA転写物の発現の推定に使用した。リアルタイムRT−PCRプロフィールは、95℃で10分間の最初の活性化、その後の95℃での40サイクルの15秒間の変性、および60℃での1分間のアニーリングおよび拡張から成った。
2.免疫染色による、α−平滑筋形成およびSMAD2/3シグナル伝達の決定を:標準的な免疫染色手順を使用して、α−平滑筋形成およびSMAD2/3シグナル伝達をモニタリングするために行った。
実験1および2のための実験群は次のとおりであった:
3.ウェスタンブロッティングによるTGFβRsの定量化は:その対応する抗体を使用して、TGFβRI、TGFβRII、およびTGFβRIIIのタンパク質濃度を定量するために使用した(R&D Systems)。充填配列は以下のとおりであった:
4.培地中のTGFβsの定量化用のELISA:R&D SystemsからのQuantikine Human TGF−β1およびTGF−β2のELISA KitsおよびNorvus BiologicalsからのTGF−β3 ELISA Kitsは、酸活性化された細胞培養上清、血清、血漿、および尿において、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β13を測定するように設計された、固相ELISAである。それらは、組換え型のヒトのTGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3を含有しており、組換え型因子を正確に定量することが示された。天然のTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3を使用して得られた結果は、組換え型のキット基準を使用して得られた標準曲線と平行した線形曲線を示した。これらのキットを、培地中でTGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3を決定するために使用した。実験4用の実験群は次のとおりであった:
結果
DMEM/10%FBS中で播種されたHCFは、不溶性HC−HA上でのみで72時間ごとに凝集物を形成した(図41)。そのような凝集は、DMEM/ITS(インスリン/トランスフェリン/セレン)の培地中の24時間の血清飢餓後も持続した。その後、細胞を、3つの異なる培養培地へと培養した:A−48時間のDMEM/IT;B−24時間のDMEM/IT、24時間のDMEM/10%のFBS;C−24時間のDMEM/ITS、10ng/mlのTGF−β1での24時間のDMEM/ITS。HC−HA中で培養された細胞は、4X HC−HA(Gn)上で小さな凝集物を形成するが、他の培養条件では違った(図41)。しかしながら、固定化した基質上のDMEM/10%のFBSにおける2時間の播種後に、対照中のHCFだけがよく付着した。HA、HC−HA[HC−HA(4X、PBS)および4X、GnHCl]上の細胞は、すべて丸まっており、これは、それらが十分に付着されていなかったことを示している。72時間のインキュベーション後、すべての細胞は、よく付着したが、固定化したHC−HA上に細胞はほとんどなかった。これらの基質上の細胞の数は、HC−HA(4X、GnHCl)上よりもHC−HA(4X、PBS)上でより多かった。HCFは、24時間の培養後にHC−HA(Gn)上で凝集物を形成し始め、72時間の培養後に、より大きな凝集物に凝縮された。TGFβ1の刺激後、HC−HA(4X、PBS;4X、Gn)上で培養されたHCFの凝集を観察した。
要約すると、HC−HA(Gn)は、TGFβ1のチャレンジで又はそれなしで、HCFの凝集を促進し、一方で、HC−HA(PBS)は、TGFβ1のチャレンジ下で、HCFの凝集を促進する。凝集の有意性は知られていない。
DMEM/ITSでは、TGFβ1およびTGFβ3の転写物の発現は、HC−HA(Gn)によって高められたが、TGFβ3転写物は、HC−HA(PBS)によって高められた(図42)。予想通り、自己誘導では、TGFβ1およびTGFβ3のmRNAは、TGFβ1チャレンジによってプラスチック上で培養されたHCFにおいて、それぞれ、4倍および2倍増加され、それに対応して、TGFβ1タンパク質は、60pg/mlから105pg/mlまで増加した(TGFβ3タンパク質は、実験誤差のため、実験では検出されなかった)。無血清条件下では、可溶性の4X HC−HAは、TGFβ1タンパク質の発現を減少させた。不溶性HC−HAも、TGFβ1 mRNA発現のその促進にもかかわらず、分泌されたTGFβ1を減少させたが、DMEM/ITS中で培養された対照よりもまだ高かった。さらに、可溶性および不溶性両方のHC−HAによるTGFβRIIおよびTGFβRIIIの顕著な抑制が観察された。結果的に、オートクリンTGFβシグナル伝達は、可溶性または不溶性いずれかのHC−HA上で培養されたHCFにおいて抑制されたが、パラクリンTGFβシグナル伝達は、不溶性HC−HA上で培養されたHCFにおいて貯蔵される。さらに、可溶性および不溶性両方の4X HC−HAは、TGF−β1シグナル伝達を中和すると知られている、TGFβ1刺激によって又はそれなしで、無血清条件下でTGFβ3 mRNA発現を3倍アップレギュレートした。TGFβ1による刺激下では、TGFβ3 mRNA発現は、HCFが、可溶性および不溶性のHC−HA上で培養されたときに、それぞれ、5倍および8倍増加され、これは、可溶性および不溶性のHC−HAが、TGFβ3転写物の発現を強力に促進することを示している。これらの結果はまた、AMから精製されたHC−HAが、TGFβ1シグナル伝達の抑制だけでなく、TGFβ3発現の著しいアップレギュレーションによっても、AMの抗瘢痕化作用を促進することを示す。我々の結果から、HC−HA(PBSおよびGn)は、mRNAおよびタンパク質両方のレベルでTGFβ2発現に影響を与えないようである。要約すると、HC−HA(PBS)は、TGFβ1を阻害するが、TGFβ1によってチャレンジされたHCFにおいてTGFβ3シグナル伝達を活性化し、一方で、HC−HA(Gn)は、TGFβ1およびTGFβ3両方のシグナル伝達を活性化する。
プラスチックの対照では、TGFβRII mRNAは、TGFβチャレンジ下で8倍アップレギュレートされた(図43)。TGFβIIおよびTGFβIIIの受容体mRNAは、無血清条件下で、それぞれ、HC−HA(PBSおよびGn)によって2倍から8倍アップレギュレートされたが、TGFβ1チャレンジ下に完全に阻害された。同じ結果は、HAについても言える。TGFβRIIおよびTGFβRIIIの対応するタンパク質発現は、HC−HA(それぞれ、PBSおよびGn)上で培養されたHCFが、TGFβによってチャレンジされたときに、それぞれ、3倍および3倍、また2倍および3倍ダウンレギュレートされた。この状況下では、これらのタンパク質発現は、HAによって変化しなかった。そのようなダウンレギュレーションは、抗炎症性の機構およびAMによる抗瘢痕化の効果の部分的な説明となり得る。要約すると、HCFがHAおよびHC−HA(PBSおよびGn)上で培養されたときに、TGFβR2およびTGFβR3のmRNA発現は増加した。
免疫染色は、HC−HA(PBSおよびGn)が、TGFβ1チャレンジによって又はそれなしで、DMEM/ITS両方においてpSMAD2/3の核転位を阻害したことを示した(図44)。このような効果は、TGFβによってより明白であった。この結果は、TGFβ1、TGFβRIIおよびTGFβRIIIの抑制が、SMAD媒介性のシグナル伝達の抑制に変換されたことをさらに確証した。
さらに、免疫染色の結果は、可溶性および不溶性両方のHC−HAが、阻害されることを示す、TGFβ1のチャレンジの後にα−SMA形成を阻害したことを示しており、これは、可溶性および不溶性のHC−HAによるβ1シグナル伝達のこのような阻害が、TGFβ1の追加で又はそれなしで、筋線維芽細胞へのHCFの分化を阻害することをさらに支持している(図45)。
要約すると、可溶性のHC−HAは、TGF−β1をダウンレギュレートするが、TGF−β3発現をアップレギュレートし、一方で、不溶性のHC−HAは、無血清およびTGFβ1チャレンジの条件下で、HCFにおいてTGF−β1およびTGF−β3両方の発現をアップレギュレートする。可溶性および不溶性両方のHC−HAが、TGFβRIIおよびTGFβRIII両方の発現をダウンレギュレートしたため、これらの変化は、結果的に、pSMAD2/3の核転位の欠如およびアルファ平滑筋形成の抑制によって証拠づけられるように、TGFβシグナル伝達の阻害をもたらした。
実施例34:BMPシグナル伝達に対するHC−HA複合体の効果
本実施例では、BMPシグナル伝達に対する追加のTGF−β1による固定化したHC−HAの効果を検査した。pSMAD1/5/8の活性化を介するBMPシグナル伝達の活性化も決定した。
BMPは、BMP1−3、BMP3b、BMP4−7、BMP8a、BMP8b、BMP9−15を含む、TGFβスーパーファミリーの亜群を構成する。BMPは、タイプII受容体(ALK2、ALK3、またはALK6)を結合し、これは、タイプI受容体を活性化して、Smad1、Smad5、およびSmad8をリン酸化し、結果的に、pSmad1/5/8の核転位をもたらした(Massague 2000; Herpin, 2007で検討される)。どの具体的なBMPおよびBMPの受容体がHCF中に存在するかは明確ではなく、わかったとしても、TGFβシグナル伝達が抑制されるときに、BMPシグナル伝達が、HC−HA(PBSおよびGn)およびさらなるTGFβ1によって活性化されるかどうかは明確ではなく、わかったとしても、BMPおよびBMPの受容体のどの形態が、制御するBMPシグナル伝達において主要な役割をはたすのか、およびBMPシグナル伝達のそのような活性化が、pSMAD1/5/8によるものであるのかどうかは不明確である。
ヒトの角膜の線維芽細胞を、48時間、固定化したHAまたはHC−HA PBS(4X)またはHC−HA Gn(4X)によって又はそれらなしで、プラスチック上で播種し、その後、上に記載されるように、pSMAD1/5/8のmRNAの定量化および決定のために24時間、TGFβ1で又はそれなしで処置した。BMP受容体のタンパク質の決定のために、細胞を、タンパク質サンプルの収集前の48時間、TGF−β1で又はそれなしで処置することで、タンパク質発現を可能にした。BMP ELISAに関して、細胞を、48時間TGF−β1で又はそれなしで処置した。上清を、BMP ELISAのために収集した。位相コントラスト画像を、様々な培養物のために最大72時間撮った。
以下の実験を、培養物上で行った:
1.リアルタイムPCRによるBMPおよびその受容体のためのmRNA半定量化は:BMPファミリーおよびそれらの受容体のmRNA転写物の発現の推定に使用した。
2.免疫染色による、α−平滑筋形成およびSMAD1/5/8シグナル伝達の決定を:免疫染色によって、α−平滑筋形成およびSMAD2/3シグナル伝達をモニタリングするために行った。
実験1および2用の実験群は次のとおりであった:
3.BMPR1A、BMPR1BおよびBMPR2の抗体を使用する、ウェスタンブロッティングによるBMPRの定量化は:それぞれ、BMPR1A、BMPR1BおよびBMPR2のタンパク質濃度を定量するために使用した。充填配列は以下のとおりであった:
4.培地中のBMPの定量化用のELISA:培地中のBMPを決定するために、BMP ELISAキット(R&D Systems)を使用した。実験4用の実験群は次のとおりである:
結果
休止状態下では、HAおよびHC−HA(PBS)およびHC−HA(Gn)の両方は、BMP6の転写物の発現を、それぞれ、7倍および4倍活性化する(図46)。TGFβ1の存在下で、HAおよびHC−HA(PBS)およびHC−HA(Gn)の両方は、HCFにおいて、それぞれ、BMP4の転写物の発現を6倍、11倍および6倍、およびBMP6のmRNA発現を30倍、37倍および46倍活性化し、これは、HAおよび可溶性および不溶性両方のHC−HAが、BMP4/6発現をアップレギュレートすることができる一方で、追加のTGFβ1が、BMP4およびBMP6のシグナル伝達をさらに劇的にアップレギュレートしたことを示している。BMP7およびBMP9は検出されなかった。
TGFβ1自体は、BMPR1Aの転写物の発現を活性化しなかったが、HAではない、HC−HA(PBS)およびHC−HA(Gn)の両方は、TGFβ1の存在下で、BMPR1Aの転写物の発現を、それぞれ、7倍および3倍活性化し、これは、BMPR1Aが、HC−HA+TGFβ1活性化のBMPシグナル伝達において主要な役割を果たし得ることを示している(図47)。さらに、TGFβ1は、BMPR1Bを3倍、およびBMPR2を3倍活性化するが、HAおよびHC−HA(PBS)およびHC−HA(Gn)の両方によって又はそれなしで、プラスチック上で4倍活性化し、これは、TGFβ1自体が、BMPR1BおよびBMPR2のmRNA発現を非特異的に活性化することを示している。HC−HA(PBS)またはHC−HA(Gn)は、BMPR2の転写物の発現を4倍まで増強する。BMP−BMPR1Aが、SMAD1/5/8シグナル伝達を活性化すると予期される一方で、BMP−BMPRIIは、非SMADシグナル伝達を活性化すると予期される。
免疫蛍光の結果は、使用される基質にもかかわらず、TGFβ1自体が、HCFにおいてpSMAD1/5/8の核転位を中程度に活性化することを示している(図48)。pSMAD1/5/8を有するより多くの核およびpSMAD1/5/8のはるかに強力な核染色によって証拠づけられるように、HC−HA(PBSおよびGn)は、pSMAD1/5/8の核転位を介してBMP4/6シグナル伝達の活性化を強力に促進する。
ID1は、SMAD1/5/8シグナル伝達によって調節された既知の下流の遺伝子である、転写因子の塩基性HLHファミリーのメンバーによってヘテロ二量体を形成することができる、ヘリックス・ループ・ヘリックス(HLH)タンパク質である。我々の結果は、HCFがHC−HA(PBS)およびHC−HA(Gn)上で培養されたときに、それぞれ、SMAD1/5/8の活性化が、ID1 mRNAの4倍および8倍のアップレギュレーションに結果的にもたらしたことを実証し、これは、HCFにおけるSMAD1/5/8シグナル伝達が、HC−HA+TGFβによって、実際に活性化されることを示している(図49)。ID1が、DNA結合活性を有さず、それ故、相互作用する塩基性HLHタンパク質のDNA結合および転写活性化の能力を阻害することができるため、我々は、ID1が、細胞の成長、老化および分化に重要な役割を果たすと予想する。
実施例35:筋線維芽細胞の分化に対するHC−HA複合体の効果、および角膜実質細胞またはより若い前駆体へのト角膜の線維芽細胞の転換
角膜基質に埋め込まれた神経冠由来の細胞の特有の集合体である、角膜実質細胞は、角膜に特異的なケラトカンを含む、硫酸ケラタンを含有しているプロテオグリカンを発現する。ケラトカン(Kera)は、成人の脊椎動物の眼中の角膜に特異的なケラタン硫酸プロテオグリカン(KSPG)である。それは、小さなロイシンが豊富なプロテオグリカン(SLRP)の遺伝子ファミリーに属し、脊椎動物の角膜基質における細胞外のKSPGの主成分の1つである。角膜のKSPGは、マトリックス集合において中心的な役割を果たし、これは、角膜の透明度の要因である。ルミカンは、角膜のKSPGのおよそ半分を構成する。残りの角膜のケラタン硫酸のほとんどは、ケラトカンを変性する。成人の組織では、ケラトカンは、角膜基質に限定され、ケラトカン発現は、角膜実質細胞のための表現型マーカーと考えられる(Liu et al.(2003) J. Biol Chem. 278(24):21672−7; Carlson et al. (2005) J Biol Chem. 280(27):25541−7)。プラスチック皿上で、ヒト、ウシ、およびウサギの角膜実質細胞は、血清添加培地中で培養されたときに、それらの特徴的な樹状形態およびケラトカン発現を失う(Espana et al. (2003) Invest Ophthalmol Vis Sci. 44 (12): 5136−41 ; Espana et al. (2004) Invest Ophthalmol Vis Sci.45(9):2985−91)。これらの露出した細胞は、ケラタン硫酸を含有しているプロテオグリカン、ケラトカンおよびCD34の発現をダウンレギュレートし、コンドロイチンデルマタン硫酸を含有しているプロテオグリカンおよびα−SMAの発現をアップレギュレートし、これは、これらの細胞が、より分化されるようになることを示している。
以前の研究は、ヒト(Espana et al. (2003) Invest Ophthalmol Vis Sci. 44 (12): 5136−41 ; Espana et al. (2004) Invest Ophthalmol Vis Sci.45(9):2985−91)およびネズミ(Kawakita et al. (2005) J Biol Chem. 280(29):27085−92)の角膜実質細胞が、TGF−βがSmadシグナル経路のダウンレギュレーションによって血清添加培地中に加えられるときでさえ、AMの間質表面上で培養されたときに、α−SMA発現の筋線維芽細胞への分化なしで、それらの表現型を維持することができることを示した。羊膜間質は、培養物中のケラトカン発現を維持し、角膜実質細胞が、筋線維芽細胞へと分化するのを防ぐことができる(Kawakita et al. (2005) J Biol Chem. 280(29):27085−92)。角膜実質細胞は、樹状形態を維持し、(1:2の分割で)少なくとも5継代の間、角膜基質に特異的なケラトカンを発現し続け、血清添加条件またはTGF−β1の付加の下で、α−SMAを発現しなかった(Espana et al. (2004) Invest Ophthalmol Vis Sci.45(9):2985−91)。ネズミの角膜実質細胞はまた、それらの正常な表現型を失うことなく、少なくとも8継代の間、AM上に拡張され得、Smad媒介性のTGF−βシグナル経路のその抑制は、ケラトカンを発現する表現型の維持において重要である(Kawakita et al. (2005) J Biol Chem. 280(29):27085−92)。本実施例では、固定化したHC−HAが同じことをできるかどうかを検査し、できるのであれば、追加のTGFβ1が、その結果に影響するかどうかを検査した。
結果
HAは、ケラトカン mRNAの発現を4倍アップレギュレートした(図50)。ヒト角膜の線維芽細胞を、固定化したHAで又はそれなしで、48時間プラスチック上で播種し、24時間血清なしで飢えさせ、その後、mRNA定量化およびSMAD2/3シグナル伝達の決定のために採取される前に24時間、TGFβ1で又はそれなしで処置した。TGFβ受容体のタンパク質の決定に関して、タンパク質発現がmRNA発現に遅れているため、細胞を、タンパク質サンプルの収集前に48時間、TGF−β1で又はそれなしで処置した。TGF−β1 ELISAに関して、細胞を、24時間、TGF−β1で又はそれなしで処置し、その後、24時間(および48時間)新鮮な培地中で培養した。上清を、TGF−β1 ELISAのために収集した。TGF−β2およびTGF−β3のELISAに関して、細胞を、48時間、TGF−β1で又はそれなしで処置した。上清を、TGF−β2およびTGF−β3のELISAのために収集した。予想通り、固定化したHC−HAは、ケラトカンのmRNA発現を14倍および16倍促進し、これは、これらのHCFが、TGFβ1なしでHC−HA上で培養されたときに、はるかに若いことを示している。TGFβ1チャレンジ後、ケラトカンのmRNA発現は、プラスチックおよびHA上で劇的にダウンレギュレートされた。しかしながら、ケラトカン発現はそれでも、HC−HA(可溶性、PBS)上で3倍に維持された。ケラトカンの発現は、HC−HA(不溶性、Gn)上で存在しなかった。我々は、HC−HA(I)上の結果として生じる表現型が、角膜実質細胞よりもさらに若いはずであると予想している。
同様に、固定化したHC−HA(I/S)は、ケラトカンのタンパク質レベルを8倍および10倍促進し、これは、これらのHCFが、HC−HA(S/I)上で培養されたときに、実際に角膜実質細胞に戻されたことを示している(図51)。HA(ケラトカン mRNAの4倍の増加)および4X HC−HA(PBS)(ケラトカン mRNAの3倍の増加)を含む、試験された他の処置による、対応するケラトカンタンパク質の発現は見られず、これは、ケラトカン mRNAのそのような中程度の増加が、ケラトカンの対応するタンパク質の発現を促進するのに十分ではなかったことを示している。
実施例36:HCFにおけるESCマーカー発現に対するHC−HA複合体の効果
実施例35は、HCFが、外因性のTGF−β1によるチャレンジ下で、筋線維芽細胞の分化を受けるのを防がれるだけでなく、外因性のTGF−β1によって又はそれなしで、ケラトカンの発現により角膜実質細胞に戻されたという強い証拠を示した。それ故、HCFが、特に固定化したHC−HA(不溶性、GnHCl)上で外因性のTGF−β1で播種されたときに、より若い前駆体へとさらに再プログラムされ得るかどうかを検査し、これは、TGF−βシグナル伝達を抑制し、BMPシグナル伝達を促進するが、ケラトカン発現を止めると示された。血管新生前駆体において見られると我々が最近報告したように、ESCおよび内皮の前駆体および周細胞において見られる多くのマーカーの発現を検査した。HC−HAによって調節されたこれらの条件下でのHCFの再プログラミングの可能性をさらに調査するために、成人の分化した線維芽細胞をiPSCへと再プログラムする重要な役割を果たすと報告された、4つの重要な転写因子、すなわち、Sox2、Oct4、c−Myc、およびKLF4の発現を検査した。
結果
遺伝子発現の検査を、実施例35において上に記載されたHCF培養物上で行った。結果は、HCFが、プラスチック対照(p<0.05、n=3)と比較して、外因性のTGF−β1によってチャレンジされたときでさえ、4X HC−HA上で、cMYC、KLF−4、Nanog、ネスチン、Oct4、Rex−1、SOX−2、およびSSEA−4などの、より多くの(2乃至6倍)ESCマーカー、および2乃至4倍以上のESCマーカー発現したことを示した(図52)。これらの結果は、HC−HA、特にHC−HA(不溶性)が、HCFをより若い前駆体へと再プログラムすることができることを示唆している。
実施例37:溶液中のHC−HAは、MC3T3−E1細胞の生存度および分化に影響を与えることによって骨形成を阻害する。
本実施例では、未分化のMC3T3−E1細胞の生存度および分化に対する溶液中のHC−HA(可溶性画分)およびHAの効果を評価した。MC3T3−E1は、C57BL/6マウスから確立された骨芽細胞の細胞株である。MC3T3−E1細胞は、骨芽細胞および骨細胞に分化する能力を有し、インビトロで鉱化された骨組織を形成することが実証された。
MC3T3−E1細胞を、ビヒクル対照としてのPBSによって、HA(1、5、25、100μg/ml)またはHC−HA(1、5、および25μg/ml)の様々な濃度で、完全培地(α−MEM、10%のFBS、100ユニット/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシン)中で培養し、1.6×104細胞/mlで96ウェルで処置されたプラスチック細胞培養中に播種した。細胞の生存度を、MTTアッセイによって測定した。その結果は、550nmでの吸収度が、25μg/mlのHC−HAを除いて、すべての条件で、24時間から48時間まで増加したことを示し、これは、細胞増殖が、通常は、対照、1乃至100μg/mlのHA、および1乃至5μg/mlのHC−HAにおいて進むことを示唆している(図53)。
次に、骨芽細胞へのMC3T3−E1の分化に対するHC−HAまたはHAの効果は検査した。MC3T3−E1細胞を、非誘発培地(1.6×105/ml)中で再懸濁し、96ウェル中で播種し、コンフルエンスまでインキュベートした。非誘発培地を除去し、誘発培地1(0.2mMのアスコルビン酸 2−リン酸および10mMのグリセロール 2−リン酸塩を有する完全培地、インビトロの骨形成アッセイキットに対する製造業者の説明書、cat# ECM810,Millipore)を加えた。12日間の分化後、アリザリンレッド染色を、骨芽細胞の鉱化を測定し定量化するために使用した。その結果は、ARが、対照において誘発培地によって実際に促進されたことを示した。事前の報告(Kawano (2011) Biochemical and Biophysical Research Communications. 405: 575−580)と一致して、25μg/mlのHAではなく、100μg/mlのHAが、対照と比較したときに、AR染色をさらに促進した。対照的に、AR染色は、5μg/mlのHC−HA(p=0.11)によっては減少されなかったが、25μg/mlのHC−HA(p=0.00002)によって著しく減少された(図54)。これらの結果は、誘発中のHC−HA濃度の増加が、骨形成も減少させたことを示唆した。
実施例38:MC3T3−E1モデル系を使用する、骨芽細胞の分化に対するHC−HAおよびAMPのための用量依存的な反応。
以前の結果は、HC−HAおよびAMPが、RANKL(International PCT Publication No. WO 2012/149486を参照)によって誘発されたRAW264.7細胞からの破骨細胞の分化を用量依存的に阻害することを示した。AMP(羊膜粉末(Amniotic Membrane Powder))は、羊膜の凍結乾燥された及びその後微粉砕された形態である。本実施例では、骨形成のためのHC−HAおよびAMPのIC50を測定し、破骨細胞形成のためのIC50と比較する。
アルカリフォスファターゼ(ALP)アッセイおよびアリザリンレッド染色(AR−S)は、MC3T3−E1細胞の分化を測定するために使用された2つのアッセイである。ALPは、骨芽細胞によって分泌され、長い間、骨芽細胞の活性のための広く認識された生化学的マーカーであり(Sabokbar (1994) Bone Miner. 27(1):57−67)、それ故、骨形成のための初期のマーカーとして機能する。アリザリンレッド(AR)色素は、カルシウムを用いてキレートを形成し、それ故、AR−Sは、鉱化を視覚化するために使用される。ARS色素は、容易に抽出され得るため、鉱化の定量化にも転換され得る(Gregory et al. (2005) Analytical Biochemistry 329: 77−84)。
パートA
実験計画:
MC3T3−E1培養物
10%のFBS、100ユニット/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを含有している、α−MEM(Invitrogen, Cat. # ICM810)の基本培地から成る、Millipore In Vitro Osteogenesis KitからのMC3T3−E1細胞のモデル系を利用した。細胞を、50,000個の細胞/cm2で播種し、100mLの細胞培養皿において37.0℃で95%の空気および5%のCO2中に培養し、コンフルエンス前に継代した。一旦十分な細胞数が得られると、細胞を、1ウェル当たり100μL容量の基本培地(52ウェル)で、96ウェルの培養皿中で1.6x105細胞/mlで播種した。各濃縮を、ALPアッセイに対して2ウェルおよびAR−S染色に対して2ウェルの、4ウェルで行った。細胞を、5%のCO2の加湿空気中で37℃で培養し、培地を、コンフルエンスまで48−72時間ごとに変更した。
調査される投薬範囲は、骨芽細胞の分化で実行された予備データ(上記参照)、および破骨細胞の分化に対するHC−HAおよびAMPのための用量−反応曲線からもたらされた。25μg/mlでのHC−HAが、骨芽細胞へのMC3T3−E1細胞の増殖および分化を著しく阻害し、RAW264.7細胞からの破骨細胞の分化を完全に阻害したため(International PCT Publication No. WO 2012/149486を参照)、それを最も高い濃度として選択した。5μg/mlのHC−HAが、50%未満の阻害を示し、骨芽細胞の分化に対するHC−HAのIC50が、P−214におけるIC50よりも高いかもしれないことを、それが示唆しているため、0.1、0.5、1、5、10、および25μg/mlの範囲のHC−HA濃度を選択した。HC−HAに関する予備データに基づいて、以下の濃度:1、5、25、125、250μg/mlでのAMPを選択した。ALP活性が、MC3T3−E1細胞における分化の12日目にピークに達するため(Maeda (2004) Journal of Cellular Biochemistry 92:458*471; Wang, (2008) J Dent Res. 87(7):650−654)、誘発後の12日目に骨形成を研究することを選択した。
コンフルエンス後に、各ウェルからの媒体を、100μLのOsteogenesis Induction Medium #1と取り替えた。Osteogenesis Induction Mediumは、0.2mMのアスコルビン酸 2−リン酸塩および10mMのβ−グリセリンリン酸を含有している(インビトロの骨形成アッセイキット、cat# ECM810,Millipore)。AMPおよびHC−HAの10μLの使用液を、Induction Medium #1に加えた。PBS中の、AMP(AMP−4; Lot #CB102971, International PCT Publication No. WO 2012/149486を参照)(5mg/ml)およびHC−HA(He et al. (2009) J. Biol. Chem. 284(30): 20136−20146)(250μg/ml)の貯蔵溶液を作り、各々の実験濃度(HC−HAに対して0.1、0.5、1、5、10、および25μg/mlおよびAMPに対して1、5、25、125、250μg/ml)に対して、適切な培養培地(Osteogenesis Induction Medium #1)にしたがって希釈した。培地を、3日ごとに変更した。
分化の6日目に、培地を、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、およびメラトニンを含有している、100μLの新鮮なOsteogenesis Induction Medium #2と交換する。AMPおよびHC−HAの10μLの使用液を、100μLのOsteogenesis Induction Medium #2(0.2mMのアスコルビン酸 2−リン酸塩、10mMのグリセロール 2−リン酸塩および50nMのメラトニン溶液、インビトロの骨形成アッセイキットに対する製造業者の説明書、cat# ECM810,Millipore)へ加えて、培養ウェル中で最終的な実験濃度を得た。培地を、2−3日ごとに変更した。その後、サンプルを、製造業者の説明書に従って、ALPアッセイ(H−156)およびARS Staining Assayによってアッセイした(In Vitro Osteogenesis Assay Kit, (Catalog #ECM810))。
アリザリンレッドS染色
各ウェルからの培地を、細胞を妨害することなく、吸引した。細胞を、200μLのPBSで1X洗浄した。細胞を、100μLの70%のエタノールを加えて、15分間R.T.でインキュベートすることによって固定した。その後、固定剤を除去し、細胞を、細胞単層を妨害することなく、過剰な蒸留水によって3X(各5分)で洗い流した。水を除去し、100μL/ウェルのアリザリンレッド染色液を加えた。ウェルを、1時間R.T.でインキュベートした。過剰な色素を除去し、細胞を、脱イオン水で4X洗浄した(各洗浄による5分間の軽い揺れ(rocking))。0.1−0.15mLの水を、各ウェルに加え、細胞が乾燥するのを防いだ。染色された細胞を、顕微鏡下で撮影した。
その後、余分な水を、各ウェルから取り除いた。100μLの10%の酢酸を、各ウェル加え、30分間振とうさせながらインキュベートした。緩く付着した単層を、細胞スクレーパーによって慎重に除去し、細胞および酢酸を、1.5mLの微小遠心管に移し、30分間活発に攪拌した。サンプルを、10分間85℃まで加熱し、その後、5分間氷に移し、管を冷やした。管中のスラリーを、15分間20,000xgで遠心分離にかけた。400μLの上清を、取り除き、新しい1.5mLの微小遠心管に移した。pHを、150μLの10%の水酸化アンモニウムによって、4.1−4.5の範囲内に中和した。
150μLの各サンプルを、透明な下部の96ウェルのプレートに加え、OD405で読み取った。アリザリンレッド濃度対OD405のプロットを作成した。
ALPアッセイ(BioAssay Systems: QuantiChrom ALP Assay Kit, Cat. #: DALP−250)
各ウェル(96ウェルのプレート)中の細胞を、PBSで洗浄し、R.T.で20分間振とうすることによって、蒸留水中の100μLの0.2%のTriton X−100中で溶解した。200μLの蒸留水および200μLのCalibrator溶液(キットによって供給された)を、対照のための別々のウェルに移した。50μLのサンプルを、別々のウェルに移した。150μLの使用液(200μLのアッセイ緩衝剤、5μLのMg酢酸塩(5mM)、2μLのpNPP液体基質(10mM))を、サンプルウェルに加えた(最終的な反応容積は、200μLであった)。プレートを、短い間軽く叩いて混合した。OD405を、プレートリーダー上で0分および4分で読み取った。
結果
位相差顕微鏡法
陰性対照は、13日間の誘発(図55)にわたって、六角形の形状を維持した。単層は、陽性対照よりも滑らかであり、これは、後者において、より多くの細胞または細胞のより多くの堆積が生じたことを示唆している。陽性対照中の細胞は、誘発が始まった後に、紡錘形状になった。時間が経てば経つほど、スピンドル状の環は、誘発の4日目ごろに、プラスチック培養物の(〜2−3mm離れた)縁に沿って発達した。
0.1μg/mlのHC−HAから10μg/mlのHC−HAまで、細胞単層は、陽性対照とは異ならず、これは、これらの濃度でのHC−HAが、誘発に悪い影響を与えなかったことを示唆している(図55のA)。陽性対照のように、細胞も、紡錘形状に発達し、単層は、スピンドル状の環に発達した。しかしながら、25μg/mlで、細胞密度の劇的な減少および細胞形態の変化が、誘発の13日目に観察された。
25μg/mlを超える濃度で、AMPは、単層上に沈降した粒子状物質を堆積させた(図55のB)。AMP濃度が各々の培地変更後に補充されたため、単層の上部のAMPの堆積は、誘発の期間にわたって増加した。細胞も、スピンドル環を有する紡錘形状を発達させたために、125μg/mlより下のAMPでの処置は、細胞形態学に影響を与えず、これは、AMPが、誘発に悪い影響を及ぼさなかったことを示唆している。125μg/mlを超える濃度で、AMPの粒子密度は、スピンドル環の形成の目視観測を不明瞭にする程度まで増大した。しかしながら、細胞の密度および形態は、陽性対照のそれと変わらないままであり、これも、AMPが、誘発に悪い影響を及ぼさなかったことを確証している。
アリザリンレッド染色
陰性対照は、淡いピンクを示す単層の部分を有する青灰色の背景色をもたらした。対照的に、陽性対照は、ローズピンク色の背景をもたらした(図56)。
0.1μg/mlのHC−HAは、可視性のスピンドル環の赤褐色の染色を有する赤さび色をもたらし、これは、陽性対照の色とは劇的に異なっていた(図56のA)。この傾向は、10μg/mlで色のわずかな淡色化を有する0.5μg/mlから1μg/mlまで続き、これは、鉱化が、0.1乃至5ug/mlまで維持され、0から0.1ug/mlの間の用量依存的な関連性があるかもしれないことを示唆している。25μg/mlのHC−HAで、赤さび色の背景は消え、細胞間結合間で顕著な白色の間隙(gaps)を有する淡いパープルピンクに戻った。
1μg/mlから125μg/mlでのAMPは、0.1ug/mlのHC−HAより淡く見えた、より淡い茶さび色(1μg/ml)からの用量依存的な変色をもたらし、これは、投薬反応がより緩やかであり、赤さび色の背景(5μg/ml&25μg/ml)、赤褐色(125μg/ml)になり、250μg/mlで濃い赤褐色に劇的に増加したことを示唆している(図56のB)。AMPの粒子状物質が、5μg/mlを超えるAMPによって処置された細胞単層の上部に見られ、粒径が、細胞自体よりも小さく、染色された背景色と一致するようであった。
OD値の定量分析によって、0.1μg/mlのHC−HA処置によるARS染色は、統計的有意差(p<0.05)を有して陽性対照から3x増加した(図57のA)。0.1μg/mlから10μg/mlの濃度の幾らかの変化が観察され、これは、小さなサンプルサイズ(N=2)に起因し得る。25μg/mlのHC−HA処置でのOD値の劇的な減少を観察した。AMPに関して、125μg/mlのAMPでの処置は、陽性対照からの鉱化の量を2倍を超える量にし、統計的に有意であった(p<0.05)(図57のB)。陽性対照からのOD値の少しの減少は、1μg/mlのAMPにおいて見られ、1μg/mlから25μg/mlまで、OD値に少しの用量依存的な増加があった。OD405は、125μg/mlと比較して、250μg/mlのAMPにおいて減少した。幾らかの変化は、小さなサンプルサイズ(N=2)に起因し得る。
ALP染色
両方のAM誘導体の群において、陰性対照は、陽性対照よりも5倍以上のALP活性を示し、これは、陰性対照におけるサンプルの喪失から生じ得、サンプルサイズを縮小させた(図58)。より小さなサンプルサイズは、陽性対照よりも陰性対照に対して8x高い標準偏差値に寄与し、このはるかに大きな変化は、その増加に起因し得る。
相当量のHC−HAでの誘発されたMC3T3−E1の処置は、陽性および陰性の対照と比較して、ALP活性を減少させた(図58のA)。ALP活性は、ALP活性が著しく低下した25μg/mlまで、異なる濃度群間で様々であった。実験群および陽性対照の各々における平均からの変化がほとんどなかったことを留意することは有益である。
1μg/mlで、ALP活性は、陽性対照よりもほぼ4倍高かった(図58のB)。この現象は、5μg/mlおよび25μg/mlで遮断され、ALP活性は、陽性対照からほぼ3xを減少した。125μg/mlから250μg/mlに濃度を増加させることで、ALP活性は、1μg/mlに近いレベルまで回復した。したがって、ALP活性は、鉱化の量に一致していなかったようであった。
結果の概要
陰性対照と比較して、陽性対照は、より多くの紡錘状細胞を示し、プラスチックウェルの縁のまわりで環を形成し(図55のA)、アリザリン染色による変色(図56のA)、およびOD405の検出可能であるが有意でない変化(図57のA)を示した。以前に、5x104細胞/35mmのプラスチック皿で播種されたMC3T3−E1細胞はまた、4日目の後に層状の膠原細線維の形成、18日目までに層状の原線維の形成、および21日目の誘発までに結節状領域の形成を明らかにした。(Sudo (1983) J. Cell. Biol. 96: 191−198)。この事前の研究は、我々が観察したのと同じ環の形成を示さなかった。あるいは、それは、環を層状の膠原細線維として解釈したかもしれない。もしそうであれば、環領域は、鉱化を起こしやすいはずである。
アリザリンレッド染色は、鉱化を示すために文献で深紅色として記載されている。鉱化および骨芽細胞の結節は、紅色で染色されると記載され、色の強度は、鉱化とともに増強した(Wang, (2006) Biotechnol. Prog. 22(6):1697−701; Zhao, 2007)。ARS染色は、405nmで読に取られ、これは、可視スペクトル中のスミレ色に対応する。我々の結果とは異なり、公開されたデータからのMC3T3−E1鉱化のARS染色のカラー写真は、単層中で赤さび色または赤褐色を示さなかった。我々の結果におけるより濃い色は、公開された結果と比較して、より多くのARS染色、およびそれ故、より多くの骨形成を示している。ARSの染色および定量化におけるOD変化の量は、培養条件および細胞型に依存して様々であった。30日間6ウェル(10cm2/ウェル)中で培養されたヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、0.5乃至4のOD405の増加を達成した(Gregory et al. (2005) Analytical Biochemistry 329: 77−84)。24ウェルのプレートで28日間培養されたMC3T3−E1細胞(α−MEM、アスコルビン酸、α−グリセリンリン酸)は、0.6のODを達成した。しかしながら、16日目および26日目のODは、それぞれ、0.05および0.2未満で、28日目よりはるかに少なかった(Burkhardt (2006) University of Basel, Master Thesis)。陽性対照中の劇的な変色の欠如は、ALPには最適であるがARSに対しては短すぎる、D13の時間が原因かもしれない。
0.1μg/mlのHC−HAはまた、「環の変化」(図55のA)、色の明らかな増強(図56のA)、および陽性対照(p<0.05)よりも3X高いOD値(図57のA)を誘発し、これは、より少ない投与量でのHC−HAが、鉱化を促進し、用量−反応曲線が、0から0.1ug/mlの間にあることを示唆している。
0.5乃至10μg/mlのHC−HAはまた、「環」を示し(図55のA)、0.1ug/mlと同じ色を維持し(図56のA)、統計的有意差のないOD405をもたらした。25μg/mlでのHC−HAは、細胞密度を減少させ、細胞形態学を変化させ、「環」を失い(図55のA)、(陰性対照を類似した)変色をもたらさず(図56のA)、および(陰性対照のような)取るに足りないOD405を生成した。
25μg/mlからのAMPは、粒子状物質を残し(図55のB)、1μg/mlから、た、陽性の用量応答の関連性を有する色を増加させた(図56のB)が、OD405は、125のμg/mlのAMP(p<0.05)まで統計的に有意でなかった増加を示し、その後、250μg/mlで減少し、これは変色と一致していなかった。HC−HAとは異なり、より高用量のAMPは、細胞形態に有害作用をもたらさなかった。
パートB
その後、アリザリンレッド染色法は、サンプルサイズを増加させ、ヒトMSCのアリザリン染色および当該技術分野で既知の他の方法に使用される、Gregory et al. ((2005) Analytical Biochemistry 329: 77−84)による方法論を組み入れることによって改善された。Gregory et alの方法、上に記載される我々の先の方法、および本実施例で概説される新しい方式の比較は、下記の表に提供される。以前の研究は、誘発下でのMC3T3−E1の分化が、3つの段階、すなわち、増殖(1〜9日目)、ECM形成(9〜16日目)、および鉱化(形成されたECM中の鉱質沈着物(deposit minerals))(16日目+)へと細分化され得ることを示した。(Quarles et al. (1992) Bone Miner Res. 7(6):683−92; Hong et al. (2010) Exp Cell Res. 316(14):2291−300)。異なる群からの研究を比較するために、コンフルエンスから始まる事象を0日目として設定することが重要であった。
実験計画:
細胞を、パ−トAおよび表5に記載されるように、分化培地中で培養且つ刺激した。分化培地を、18日間3日ごとに変更した。0.1μg/mlのHC−HAおよび125μg/mlのAMPを、アッセイのために利用した。ARSアッセイを、表5に言及されるような変化とともにパ−トAに記載されているように行った。
結果
細胞形態および環の形成
非誘発性の細胞は、播種(図59のA)後に水平な立方体形状を達成した。細胞の境界は、4日目に隆起した縁とともにより画定され、6日目に紡錘形状を発達させた細胞もあった。スピンドル細胞または多層は発達されなかった。
1日目から3日目まで、細胞は立方体形状を維持し、単層は平らなままであった(図59のB)。3日目までに、細胞の境界はより明確になりた、細胞の縁は隆起された。さらに、小さな円形細胞様の構造は、単層上で可視性であった(黒丸によって示される)。細胞形態は、紡錘状の細胞および多層で組織された細胞の出現によって4日目までに変化した。小さな円形細胞様の構造の出現は、6日目から7日目にわたって増加し続けた。
HC−HAによって処置された誘導細胞の細胞形態の変化は、陽性対照の変化を反映していた(図60のA)。HC−HAは、AMPのように単層上に粒子状物質を残さなかった。陽性対照のように、小さな円形細胞様の構造(黒丸で示される)が、3日目に現われ、7日目まで増加し続けた。
AMPの粒子状物質(黒い矢印で示される)は、単層の上部に沈降し、真下の単層の観察を妨害した(図60のB)。0日目および1日目にAMPの粒子状物質を欠けている領域は、円形および立方体の形状を示した。2日目に、幾つかの紡錘状の細胞が、単層上に現われた。より小さなAMPの粒子状物質から小さな円形細胞様の構造を特定し、識別することは難しく、これらの構造の発達は知られていないままである。5日目に、紡錘形状がスピンドル状の細胞を形成するため伸張する。6日目に、長いスピンドル細胞は、AMPの粒子状物質(黒丸で示される)とのウェブ状の相互作用を形成した。
3日目に、紡錘状の細胞は、ウェルの縁の近く(縁から1−2mm)で発達した(図61のA)。スピンドル細胞および環の形成は、4日目以降発達しなかった。細胞は、縁で互いに重なり、紡錘形状に成長するように見えた。0日目から2日目に、ウェルの縁に沿ったスピンドル状の細胞はなかった(図61のB)。3日目に、環構成で堆積された同様の紡錘細胞が、縁で見られた。5日目から、これらの細胞は、縁から約2mmの顕著な環として濃縮された(concentrated)。6日目に、単層は、(白色→によって示される)縁の近くの特定領域に沿ったプラスチック表面からの分離を示す。
細胞は、2日目まで、縁に沿って滑らかな且つ立方体のままであった(図62のA)。紡錘状の細胞は、2日目に、縁の近くで発達した。その時に、縁の近くで可視性であった小さな円形細胞様の構造もあった。スピンドル状の細胞は、3日目に発達し、5日目までウェルの縁のまわりの環において厚化し続けた。プラスチックウェルからの単層の分離は、(白の矢印で示される)縁の近くの領域において6日目に観察された。紡錘状の細胞は、2日目にウェルの縁の近くに現われた(図62のB)。スピンドル状の細胞は、3日目に(約1〜2mm離れて)縁から発達し、スピンドル状の細胞の環が、5日目までに形成された。プラスチックウェルからの単層の分離は、5日目に縁の近くの幾つかの領域において観察された。分離は6日目に継続したが、単層は、HC−HAで処置された細胞および陽性対照細胞ほど分離しなかった。
ARS染色および定量化
陰性対照の単層は、幾つかの領域(図63)において淡いピンク色に染色された。陽性対照は、中心で淡いピンク色に染色されたが、スピンドル環の領域で明るい深紅色を示し、これは、MC3T3−E1細胞が、単層の残りよりも、環に鉱化を多量に堆積させることを示している。0.1μg/mlのHC−HAと陽性対照との間の中心の単層およびスピンドル環における染色の強度および色の両方は、同じであった。細胞の上部のAMPの粒子状物質は、赤褐色に染色された。真下の細胞の目視観測は、染色された粒子状物質によって妨害されたが、開口部は、顕著な細胞単層の欠如を示し、陰性対照に類似して、淡いピンク色に染色される低密度細胞もあった。AMPで処置された細胞は、可視性のスピンドル環を示さず、ARSは、陽性対照に類似して、縁のまわりを深紅色に染色しなかった。
GnHCl処置は、細胞マトリックスを可溶性にし、深紅色のARS色素を除去したが、陽性対照およびHC−HAで処置された細胞の両方において単層は無傷なままであった。GnHClは、細胞タンパク質を消化し変性させ、細胞外マトリックスを残した。AMPの実験群では、AMPの粒子密度が減少したが、ほとんどの粒子状物質はウェルの底部に残ったままであった。長い培養時間によって、AMPの粒子状物質は、GnHClによって溶解されなかったECMマトリックスとの密の相互作用を形成し得る。一度明るい赤褐色に染色された粒子状物質は、AMPが本来示す色のような薄茶色を示した。しかしながら、異なる1単層構造は観察されず;これは、AMP間の間隙における細胞の単層の観察を支持した。細胞は、単層からAMPの粒子状物質へと移動するかもしれず、それを分化および鉱化のためのスキャフォールドとして使用した。
ARS標準は、2mMから31.3μMまで連続希釈による、深紅色からクリームピンク色までの進行を示した(図64のA)。HC−HAとAMPでの処置サンプル間に顕著な変色があった。HC−HA処置された細胞抽出物は、明るいクリーム色を示し、一方で、AMP処置された細胞抽出物は、淡いクリームピンク色を示した。陰性対照はまた、HC−HA処置された細胞と同じ色および色の強度のレベルを示したが、一方で、陽性対照は、ライターより淡い色を示し、ブランク(図示せず)に類似していた。OD405値は、先の実施例の値と同じ範囲内にとどまった(図64のB)。陰性対照と比較して、陽性対照は、ODの統計的に有意な2倍の減少を示した。HC−HA処置された(0.1μg/ml)細胞は、陽性対照よりもODのわずかな増加を示したが、その違いは統計的に有意ではない。AMP(125μg/ml)処置は、陽性対照と比較して、わずかにOD値を減少させたが、この減少は統計的に有意ではなかった。
ARS標準は、2mMから31.3μMまでの連続希釈による、深紅色からクリームピンク色までの進行を示した(図65のA)。陰性対照の抽出物は、ブランク(図示せず)よりわずかに濃い淡いクリーム色を示した。陽性対照は、淡い金色を示し、その色は陰性対照より目に見えて濃かった。HC−HAはまた、陽性対照と同じ強度で淡い金色を示した。AMP処置された抽出物は、陽性およびHC−HAの両方の抽出群より濃いオレンジの金色を示した。OD405値は、約0.25で最も高い範囲と同じ範囲内にとどまった(図65のB)。陰性対照は、0に近い、取るに足りないOD値を示した。陽性対照およびHC−HA(0.1μg/ml)で処置された抽出物は、0.05に近い平均OD値を示した。
AMP処置された(125μg/ml)抽出物は、陽性およびHC−HAの両方の処置群からのOD(P=0.039)の統計的に有意な5倍の増加を示した。
要約
細胞形態
αMEM w/10%のFBS中で培養されたMC3T3−E1細胞は、コンフルエンスまで成長し、立方体形状を発達させた。Aim #1および#2における結果のように、細胞は、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、およびメラトニンの付加なしでは分化しなかった。誘発培地なしでは、スピンドル細胞およびスピンドル環は形成されなかった(図59)。MC3T3−E1細胞は、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸およびメラトニンによって分化へと誘発された。播種後、滑らかな単層が、立方体形状の細胞によって形成された。3日間の誘発後、細胞は、紡錘形状を達成した。5日目までに、細胞は、伸張し、スピンドル状になった。
本実施例では、スピンドル環が、誘発の3日目に発達し、スピンドル状の細胞は、ウェルの壁から1〜2mm形成された。6日目に、ウェルの縁およびプラスチックの底部からの単層の分離が観察された(図60)。小さな円形細胞様の構造が、2日目に単層上で発達し始め、6日目に数が増加した(図59)。それらは、培地中に浮かず、単層の中に堅く付着され、主として細胞の境界の間に休止した。これらの構造は、マトリックス小胞(MV)が、軟骨および骨における初期のカルシウム沈着の部位に位置する、細胞外の、膜に包まれた(membrane−invested)粒子状物質であると表わしている。マトリックス小胞の合成は、によって、芽を出しかけて、分化する成長プレートの軟骨細胞および骨芽細胞の外部の原形質膜の特定領域からのベシクルの発芽および摘みによって生じる(Anderson et al. (2003) Curr Rheumatol Rep. 5(3):222−6)。
HC−HAでの処置によって、分化によるMC3T3−E1の細胞形態学的変化は変更されなかった(図60)。紡錘状の細胞、スピンドル状の細胞およびスピンドル環の形成は、陽性対照の報告された時間的経過に従った(図61)。AMPの粒子状物質は、以前の結果に類似して、細胞単層の上部に沈降した(図60)。これによって、誘発による細胞単層および細胞形態の変更の十分な観察が妨げられた。しかしながら、AMPの粒子状物質が沈降しなかった開口部によって観察されたものもあった。HC−HAとは異なり、AMP処置は、細胞形態学的変化を促進し、幾つかの紡錘細胞は、誘発の2日目に1日早く可視性であった。AMP処置された細胞は、HC−HA処置された細胞および陽性対照に類似して、スピンドル環を形成した(図62)。しかしながら、単層は、他の2つの実験群よりも早く分離した(6日目の代わりに5日目)(図62)。
AR染色および定量化
ARS染色は、以前に報告されたよりも劇的に異なる色を示した(図66)。ARSは、陰性対照の細胞単層において灰青色の代わりに淡いピンク色を染色した。ARS染色はまた、陽性対照およびHC−HAで処置された細胞における以前の結果から、茶さび色の代わりにスピンドル環において濃縮された明るい深紅色を示した。AMPの粒子状物質は、暗褐色の代わりに赤褐色で染色され、真下の細胞は、茶さび色の代わりに淡いピンク色に染色された。ARS溶液の分解は、変色に寄与し得る。
酢酸抽出後、単層には、著しい量の染色された色がまだ残っていたようであった。酢酸は、単層から完全にARS染色を取り除くのに有効ではない。酢酸抽出によって、陽性対照(図66)においてより多くのARS染色の目視観測と一致した、陽性および陰性の対照(図68)のOD値間に統計的有意差があった。しかしながら、AMP群の目視観測が、他の2つの群(図67)よりもアッセイ抽出物中により多くの色を有しているにもかかわらず、酢酸抽出は、陽性とおよびHC−HAの群(図66)と比較して、AMPのODの統計的に有意な増加を示すのに有効ではなかった。AMP粒子の堆積物によって、AMP群からARSを取り除くことがより困難なっているのかもしれない。鉱石化されたマトリックスおよび細胞も、ARSの酢酸抽出を妨害するAMPの粒子状物質との相互作用を有し得る。
GnHClは、酢酸処置よりも完全に細胞単層からARSを取り除いた(図69)。さらに、色は、単層を除去するための細胞スクレーパーの使用なしで、GnHCl溶液中で可溶性になった。両方の方法によって、粒子状物質は肉眼で見えないように残り、遠心分離による影響を受けなかったようである。GnHClについて、これは、カルシウムおよび微粉末を形成する溶解されたマトリックスであり得る。これは、各サンプル中で繰り返す間の変化をもたらした。粒子状物質を除去するための670nmでの読み取りは、GnHCl抽出方法に対するこの問題を解決した。
GnHCl抽出は、陰性および陽性の対照間の定量可能な統計的有意差を確立することができず、これは、ARS染色の目視観測と一致した(図71)。GnHCl抽出はまた、0.1μg/mlのHC−HAが、分化するMC3T3−E1細胞において、さらなる鉱化を促進しなかったことを示し(図71)、これは、酢酸抽出の結果と一致した。96ウェル中のアッセイ抽出物の色を注視すると、陽性対照およびHC−HAのウェルでは、色または強度の差は示されなかった(図70)。
GnHCl抽出は、125μg/mlのAMPが、陽性対照よりも分化するMC3T3−E1細胞において、より多くの鉱化を促進したことを示した(図71)。これは、単層のARS染色(図66)および96ウェルのアッセイプレート中の抽出物の目視観測の両方に一致し(図70)、ここで、AMPは、HC−HAまたは陽性対照よりもはるかに深い黄橙色を示した。
これらの結果から、GnHClは、ARS染色を単層からより完全に除去し、無傷なままで残すため、より好適な抽出法であり;単層をウェルからこすり落とす必要がないため、それほど技術的誤差はない。抽出物の色は、分光光度計の読み取りによって定量化され得る。
パートC
上述の予備的研究は、小さなサンプルサイズおよびARSアッセイの不完全な発達が原因で、骨芽細胞分化上のHC−HAおよびAMPのための用量−反応曲線に対する統計的に有意な結果を示さなかった。これは、0.1μg/mlのHC−HAが、鉱化を増強し得ることを示唆した。さらに、10μg/ml乃至25μg/mlでのHC−HAは、細胞の生存率に影響を与え、鉱化を減少させるかもしれない。HC−HAに対する用量曲線は、10μg/mlを超える濃度と同様に、0.1μg/mlより下のより低い濃度も含むはずである。HC−HAとは異なり、5μg/ml乃至125μg/mlでのAMPは、鉱化を促進し得る。この実験では、HC−HAおよびAMPの用量応答を、パートBの方法を使用するので再試験した。この実験では、ARS染色を、15日目にアッセイするために使用し、染色且つ定量するための、10%の酢酸を使用する修正されたプロトコルを利用した。
実験計画
3T3−E1細胞に基づいてパートBで示されるのと同じモデル系を、αMEM培地w/10%のFBSにおいて96ウェルプレート中で3x104細胞/cm2/ウェルを播種することによって使用した。コンフルエンス後に、細胞を、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、メラトニンの誘発培地を加えることによって分化するように誘発した。
各条件について、N=3を試験した。コンフルエンス後に(0日目=播種)、HC−HAを、0.02μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、および25μg/mlで加え、一方で、AMPを、1μg/ml、5μg/ml、25μg/ml、および125μg/mlで加えた。ARS染色のために、パートBの修正された方法を使用した。
結果
陰性対照のMC3T3−E1細胞は、培養中に、スピンドル形状またはスピンドル環を発達させなかった(図66のA)。単層の中心および周辺は、ベージュ色に染色された。陽性対照の細胞は、紡錘状およびスピンドル状の細胞を発達させ、培養する(4日目の誘発)D5のまわりにスピンドル環は出現した。ARS染色は、中心に淡い栗色を示し、主として、濃い深紅色でスピンドル環において濃縮された。1.25μg/mlまでのHC−HA濃度の増加は、細胞形態またはARS染色の強度およびパターンに対する効果がなかった。2.5μg/mlで、MC3T3−E1細胞のスピンドル環は分解し始め、ARSの色は、深紅色から赤褐色に変わった。20μg/mlによって、細胞は、その紡錘およびスピンドルの形状を失い;細胞の縁も、それほど画定されず、それほど隆起しなかった。細胞密度は減少し、単層は以前のように隆起されて出現しなかった。GnHClは、ARS色素を抽出することに成功し、OD450値の変動係数は、5%から19%までの範囲であった。陽性対照は、統計的に有意な増加したOD値を示した(図66のB)。
陰性対照のMC3T3−E1細胞は、培養中に、スピンドル形状またはスピンドル環を発達させなかった(図67のA)。単層の中心および周辺は、ベージュ色に染色された。陽性対照の細胞は、紡錘状およびスピンドル状の細胞を発達させ、培養する(4日目の誘発)D5のまわりにスピンドル環は出現した。ARS染色は、単層の中心に淡い栗色を示した。AMP処置によって、細胞単層の上部に沈降し、上向きの62.5μg/mlの濃度からの単層の観察を不明瞭にした、AMPの粒子状物質が残された。AMPのみで処置され、誘発のない、MC3T3−E1細胞は、縁に沿ったスピンドル環を示さず、ARS染色は、淡いピンク色の背景での濃い深紅色を示した。7.8μg/mlから31.25μg/mlまで、AMPの粒子状物質は、単層を完全には覆わず、細胞は、紡錘形状およびスピンドル形状を示した。縁に沿って、スピンドル環は見られなかった。ARS染色は、淡い栗色に染色された中心の単層、およびスピンドル環に沿って陽性対照のように濃い深紅色に濃縮された色素を示した。GnHClは、ARS色素を抽出することに成功し、OD450値の変動係数は、3%から10%までの範囲であった(67のB)。
結果の概要
細胞形態/ARS染色
先の結果に類似して、MC3T3−E1の分化は、立方体形状から、紡錘およびスピンドルの形状に変化する細胞から進行する。誘導時間が増加するとともに、スピンドル環が、ウェルの縁に沿って(〜2mm離れて)形成され、単層を時間とともに収縮する。陽性対照とは異なり、陰性対照は、スピンドル状の細胞やスピンドル環を決して発達させなかった。陰性対照の単層は、均一なベージュ色で染色されたが、陽性対照は、中心で淡い栗色/ピンク色を示し、スピンドル環で濃縮された濃い深紅色を示した。
10μg/mlのHC−HAで、細胞形態は、より低い濃度から変化し、より少ない細胞は、紡錘とおよびスピンドルの形状を示した。細胞密度は減少し、単層はそれほど隆起されなかったように見えた。20μg/mlのHC−HAでは、細胞密度は劇的に減少し、スピンドル形状の細胞はほとんどなかった。単層は、陰性対照のように滑らかでなかったように見えた。両方の濃度に関して、これらの変化は、5日目の培養および誘発で始まると分かった。両方の濃度では、スピンドル環は、不十分に形成されたか、あるいは存在しなかった。HC−HA濃度の増加は、2.5μg/mlおよびそれより上の濃度でスピンドル環の崩壊を引き起こした。
すべてのAMP処置された細胞において、AMPの粒子状物質が沈降したまわりの領域は、濃い深紅色に染色された。ウェルの縁のまわりで、AMPの粒子状物質の開口部を通る単層を見られなかった。125μg/mlのAMPで処置された非誘発性のMC3T3−E1は、125μg/mlのAMPで処置された誘発性のMC3T3−E1に類似した染色を示した。沈降したAMPを有する細胞は、パッチ中で濃い深紅色で染色され、真下に染色された単層は観察されなかった。7.8μg/mlから15.6μg/mlのAMPで、細胞形態は可視性であった。細胞は、紡錘およびスピンドルの形状を示し、スピンドル環はウェルの縁に沿って形成された。ARS染色は、中心に淡い栗色およびスピンドル環領域に濃い深紅色を有する陽性対照と類似していた。
GnHCl処置は、染色された単層からARS色素を抽出することに成功した。抽出は、陰性対照から陽性対照までのOD450の統計的に有意な(p<0.01)2倍の増加を示した。HC−HA処置された細胞は、HC−HA濃度が増加するにつれ鉱化を減少する傾向を示した。10μg/mlおよび20μg/mlのHC−HAで、陽性対照からの鉱化の統計的に有意(p<0.05)な減少があった。AMPは、分化するMC3T3−E1細胞の鉱化を用量依存的に増加させた。
AMPで処置された非誘発性の細胞はまた、鉱化を示し、AMPは、陽性対照(p<0.01)以上に鉱化を誘発且つ促進したようであった。また、125μg/mlのAMPで、非誘発性の細胞に対する処置は、誘発培地で培養された細胞(p<0.05)以上の鉱化を示した。
実施例39骨芽細胞の分化に対するAMPの効果
ARS染色は、AMPによる染色の明らかな用量依存的増加を示し、125μg/mlで鉱化の統計的に有意な増加を示したが、そのような変化が、AMPへのARSの非特異的結合によってもたらされるかどうかは不明瞭であった。AMPが、特に高用量でHC−HAとは異なって作用した、すなわち、鉱化作用を促進するが、それを阻害しなかったため、AMPの作用が、AMPとの細胞の直接的な接触に依存するかどうかについては除外することが重要であった。この問題は、HC−HAが通り抜けるのに十分であるが、AMPの粒子状物質を排除するのに十分に小さい、3μmの孔径を有するトランスウェルの使用によって対処された。この孔径を有する利用可能なトランスウェルのプレートが、24ウェルのプレートに合うため、アッセイの培養条件は、それにしたがって変更された。125μg/mlのAMPの濃度を、アッセイのために使用した。
実験計画:
MC3T3−E1細胞(P2での細胞;ATCC、カタログ番号:CRL−2593(商標))を、1x105細胞/mlの密度で、12ウェルの水平で、透明な底部ウェル上に播種した。上で使用されるのと同じAMPの貯蔵溶液(AMP−4;Lot #CB102971)を、PBS中で5mg/mlとして調製した。トランスウェルのないウェルに関して、17.5μLのAMPの貯蔵溶液を、0.7mlの培養培地(基剤または誘発培地)中に加え、α−MEM w/10%のFBS(誘発なし)または誘発培地#1に続いて#2(誘発あり)のいずれかにおいて、125μg/mlのAMPの濃度を達成した。トランスウェルを有するウェルに関して、17.5μLのAMPの貯蔵溶液を、上に記載されるのと同じ方法で、トランスウェルの膜の中心へと直接加えた。培養培地(10%のFBSを有するα−MEM;上に記載されるような誘発培地#1および#2)を、0日目の誘発後に3日ごとに変更した。細胞単層が、70%のエタノールの代わりに4%のパラホルムアルデヒドで固定され、1時間の代わりに2時間染色されたことを除いて、ARSの染色および定量化の手順を、上に記載されるように行った。
結果
すべての誘発細胞は、誘発の4日目に環の形成を発達させた(図68)。環は、約2−3mm離れて、プラスチックウェルの縁のまわりで細胞の層から構成された。それらは、層において成長し、巻き付けられ、その後、単層は、多くのウェル中でプラスチックから分離された。誘発なしで、細胞は、培養期間の増加とともに、幾つかの紡錘形状と、主として六角形形状を維持し、単層は、誘発細胞と比較して、滑らかなままであった(図69)。誘発は、細胞を紡錘形状にし、単層は隆起され、細胞間の境界は、より明確になった。誘発によって、4日目までに、スピンドル状の環は、培養皿の縁に沿って発達すると観察された。AMPでの処置は、細胞の生存率に影響を与えず;また環の形成にも影響を与えず、これは、AMP誘発に悪影響を与えなかったことを示唆している。トランスウェルの付加は、細胞の成長または形態に影響を与えなかった。
トランスウェルなしで、125μg/mlでのAMPによって、粒子状物質は細胞単層上に沈降してままであった(図69のA)。誘発なしで、AMP自体によって、細胞が、スピンドル形状を発達させ、環が生成されることはなく、それ故、これは、AMP単独が、陰性対照に類似して、誘発を引き起こすには十分ではなかったことを示唆している。誘発によって、125μg/mlのAMPは、陽性対照のように細胞形態の変更をもたらし、これは、AMP自体が、誘発に悪影響を与えなかったことを示唆している。トランスウェルによって、125のμg/mlのAMPは、取るに足りない粒子状物質を細胞単層上に残した(図69のB)。誘発なしでは、AMPは、細胞の分化を誘発するのに十分ではなく、細胞は陰性対照を類似していた。誘発および125μg/mlのAMPによって、細胞は、紡錘状およびスピンドル状の形状を発達させ、14日目まで陽性対照を類似しており、これも、AMPが誘発に悪影響を与えなかったことを示唆している。
陰性対照は、単層中の淡いピンク色のパッチを有する暗灰色の背景色をもたらし、これは、先の実験における陰性対照の灰青色とは異なった(図70)。誘発はないがトランスウェルによって、単層は、AMPで処置されるときでさえ、陰性対照に類似した、暗灰色の背景色で染色され、これは、AMP自体が誘発をもたらさなかったことを示唆している。トランスウェルなしでは、陰性対照と比較して、背景色の顕著な減少を示す領域があり、これは、単層上に沈降されたAMPの粒子状物質が、(**によってマークされた)色を遮断し、AMP自体が陽性の色を生成しなかったことを示しており、これはそれ故、鉱化を示唆している。
陽性対照は、先の実験にける陽性対照からの深紅色より濃い、赤さび色に染色された環を有するローズピンクをもたらした。トランスウェルの付加は、陽性対照の色に影響を与えず、これは、トランスウェル自体が、誘発に影響を与えなかったことを確証している。AMPがあるがトランスウェルがないと、単層は、陽性対照よりも濃い赤さび色をもたらし、環はより濃く染色され、これは、AMPがさらなる陽性の誘発を働かせたことを示唆している。対照的に、トランスウェルによって、背景色の強度は、陽性対照のレベルに減少した一方で、環は同じ色を維持し、これは、トランスウェルが、誘発に対するAMPの効果に対して悪影響を及ぼしたことを示唆している。
定量化の結果は、統計的有意差をもたらすには十分ではなく、ARS染色の視覚分析に一致しなかった(図71)。しかしながら、全体的な傾向は、陽性対照が、陰性対照以上に鉱化を示すことを示唆した。さらに、トランスウェルが、AMPの存在および誘発に含まれたときにOD405がより少ないことを示唆する傾向があった。
結果の概要
恐らく皿のサイズがより大きかったため、環の形成を容易に観察した(図69のA)。しかしながら、恐らく固定剤の変更が原因で、陰性対照用の背景色は、先の実験とは異なっていた。さらに、特に環領域において、陰性および陽性の対照の間に、より劇的な変色があった(図70)。陽性対照中のトランスウェルの導入は、細胞形態(図69のB)またはARS染色の色(図70)に影響を与えなかった。
誘発がないと、トランスウェルのないAMPは、陽性のARS染色を明らかに遮断し(図70)、トランスウェルのあるAMPは、陰性対照と同じ色を示した。AMPは自体は、非特異的なARSをもたらさず、誘発をもたらさない。誘発によって、トランスウェルのないAMPは、陽性対照よりも多い色をもたらした。対照的に、トランスウェルのあるAMPは、陽性対照と同じ色をもたらすように見えた。
先のARSの定量化結果は、陽性対照(p<0.05)より3X多い鉱化を促進する125μg/mlのAMPを示した(図67)が、図71においてはそうでなかった。
AMPで直接処置された細胞と、およびトランスウェルを介してAMPで処置された細胞との間の細胞形態に違いはなかった(図69のA、B)。両方の細胞群は、環の形成を発達させ、目視観測は、環状構造間の認知可能な違いを示さなかった。ARS染色は、2つの実験群間の背景色の取るに足りない差を示した。しかしながら、AMPで直接処置された細胞は、より拡散した環の形成を示し、これは、AMPの粒子状物質からの散乱効果であり得る(図70)。
AMPは、鉱化に影響を与えるためにMC3T3−E1細胞との直接的な接触を必要としない。この実験から、AMPが鉱化を促進するかは不明確であるが、AMPは、細胞形態または細胞の生存度に影響を与えないと示された(図69)。
パートB
我々の結果は、成長および分化の15日目の陽性対照と比較されたときに、125μg/mLのAMPが、MC3T3−E1細胞(図65)の鉱化を著しく増加させたことを示した。AMPは、培地に直接送達され、AMPの粒子状物質は、細胞単層の上部に沈降し;それ故、Aim 1BにおけるAMPの効果は、直接的な接触を必要とした。
パートAにおいて、AMPの効果が、分化するMC3T3−E1細胞用のスキャフォールドとしての作用によるものであるか、または因子が、鉱化を促進するために粒子状物質から放出されるかどうかを調査した。しかしながら、10%の酢酸を有するARS染色の抽出物における小さなサンプルサイズおよび技術的誤差は、データに影響を及ぼし、統計的有意差は見られなかった。実験を、4MのグアニジンHClを使用して、実施例38において発達された、ARSの染色および抽出の改善された技術的方法を使用して繰り返した。
実験計画:
MC3T3−E1細胞を、上に記載されるように、αMEM培地+10%のFBSを用いて、24ウェル中で、3x104細胞/cm2/ウェルで播種した。コンフルエンス後に、細胞を、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、メラトニンを加えることにより分化するように誘発した。各条件について、N=3を試験した。0日目は細胞播種の日として見なされ、誘発が細胞コンフルエンス後に続いた。合計の誘発時間=15日。2つの実験群があった:AMPは誘発培地に直接加えられ、AMPはトランスウェルによって送達された。AMPの濃度を、125μg/mlで以前と同じように維持した。陰性対照(誘発なし)を、AMPとともに又はそれなしで、しかし挿入物なしで加えた。上に記載されるように、ARSの染色および定量化を、誘発の15日目に行った。
結果
誘発培地なしで、陰性対照の細胞は、幾つかの紡錘形状を有する六角形形状を維持した(図72のA)。スピンドル状の形状は観察されず、スピンドル環も周辺に沿って形成されなかった。ARSは、単層を淡いピンクに染色した。誘発によって、陽性対照の細胞は、スピンドル状の形状を達成した。細胞の境界はより顕著であり隆起され;スピンドル環が、ウェルの縁の近くの周辺に沿って形成された。単層の中心は、栗色で染色され、ARS染色は、強い深紅色を有するスピンドル環において濃縮された。AMPでの処置によって直接、AMPの粒子状物質は、単層上に沈降し、細胞の形態を不明瞭にした。しかしながら、培養ウェルの縁の近くで、AMPの粒子状物質間の間隙は、両方の群における真下の顕著な単層の欠如を示した。AMP処置単独と誘発を有するAMP処置との間の細胞形態に差はなかった。可視性の細胞は、形状がスピンドル状であった。陽性対照のようなスピンドル環は観察されなかった。ARS染色は、中心に深紅色を示し、周辺に沿って赤茶色染色を示した。染色する色およびパターンは、誘発群と非誘発群との間で判別不能であった。トランスウェルを介するAMPでの処置は、単層上のAMP粒子の沈降をもたらさなかった。細胞は、伸張し、スピンドル状になり、ウェルの縁に沿ってスピンドル環が形成された。陽性対照のように、単層の中心は、栗色に染色され、ARS色素は、強い深紅色を有するスピンドル環において濃縮された。GnHClは、ARS色素の抽出に成功し、OD450値の変動係数は、2%から15%までの範囲であった(図72のB)。
結果の概要
形態/ARS染色
21日間、α−MEM w/10%のFBS中で培養された陰性対照は、縁に沿ったスピンドル状の細胞またはたスピンドル環を発達させなかった。AA、β―グリセロリン酸塩、およびメラトニン、MC3T3−E1細胞による20日間の誘発後の陽性対照は、ウェルの縁のまわりの、スピンドル状の細胞およびスピンドル環を発達させた(図72)。細胞単層のARSの色および染色パターンは、陰性および陽性の対照間で異なっていた。陰性対照の単層は、陽性対照と同じくらいの量の色素を収集できず、均一な淡いピンク色を示した。陽性対照の単層の中心は、栗色に染色され、ARS色素は、強い深紅色へとスピンドル環中で濃縮された(図72)。
培養培地中での直接的なAMPでの処置は、AMPの粒子状物質の沈降が原因で、AMPおよび誘発群を有するAMPにおける細胞単層の観察を不明瞭にした。しかしながら、ウェルの縁に沿ったスピンドル環は観察されず、縁に沿った幾つかの細胞は、スピンドル状の形態を示した。AMPの粒子状物質が通る開口部は、真下の単層の欠如を示した。ARS染色は、AMP単独の群と誘発群を有するAMPとの間に色またはパターンの差がなかったことを示した。
トランスウェルを介するAMPでの処置は、単層の上部にAMPの粒子状物質をもたらさなかった。細胞形態は、陽性対照に類似して、スピンドル状の細胞を有し、スピンドル環が成形された。ARS染色の色およびパターンはまた、陽性対照と類似しており、背景の単層は、栗色に染色され、ARS染色は、深紅色でスピンドル環において濃縮された。
AR定量化
GnHClは、単層からのARS染色の抽出において必要であり、十分であった。対照を比較すると、陰性対照から陽性対照(p<0.01)へのOD450の統計的に有意な2倍の増加があった。また、陰性/陽性対照からAMP+誘発へのODの約6倍の増加があった。96ウェルから24ウェルへの表面積の6.5x増加があり、これは、ODの増加の原因となり得る。また、20日目の培養でARSの染色および定量化を行ない、これによって、培養期間を2日伸ばし、鉱化も増加し得る。
AMP単独は、陰性および陽性の対照からのOD450値の、それぞれ、統計的に有意な10倍(p<0.01)および3倍(p<0.01)の増加を誘発した。したがって、AMP単独は、分化の誘発および促進に十分であった。誘発を有するAMPは、AMP単独(p<0.05)からのOD450をわずかに減少させたが、陽性対照(p<0.01)からのODの3倍の増加を示した。誘発培地は、分化および鉱化を妨害した。
誘発を有してトランスウェルを介して送達されたAMPは、AMPより3倍低かったODが、誘発(p<0.01)によって直接送達されたことを示し、陽性対照(p<0.05)よりわずかに低いODを示した。AMPは、分化を促進するために直接的な接触を必要とする。直接的な接触なしで、AMPは、MC3T3−E1の鉱化を阻害する。
実施例40:MSCにおける骨形成の誘発に対するAMPの効果
我々の結果は、AMPが、前骨芽細胞に接しているときにMC3T3−E1の分化を促進することを示した。しかしながら、AMPが、間葉系幹細胞(MSC)などの骨芽細胞系に対する、それほど分化しなかった及びそれほどコミット(committed)しなかった細胞株の成長および分化にどれほど影響を与えるかは不明確であった。
MC3T3−E1細胞は、前骨芽細胞であり、単能性であるため、骨芽細胞へのその分化を押し進めるためのサプリメント(supplements)のみを必要とする。胚性幹細胞(ESC)または間葉系幹細胞(MSC)などの、他の始原細胞株は、それほど分化されず、それぞれ、少能性および多能性である。したがって、人体の異なる領域に由来するMSCに対するAMPの効果を研究することによって、よりよく骨芽細胞の分化のプログラミングおよび関係する因子におけるAMPの役割をよりよく理解することができる。この検査によって、AMPが影響を及ぼす細胞型がどれなのか、およびそれが異なる始原細胞における骨形成の誘発に対してどのような効果を有するのかの答えを絞ることができる。
実験計画
以下の細胞株を使用した:MC3T3−E1(ATCC,Manassas, VA)、ヒト骨髄細胞由来の間葉系幹細胞(Lonza,Wlakerfield,MD)、角膜輪部由来ニッチェ細胞(Tissue Tech, Miami, FL)、ヒト羊膜(hAM)間質細胞(Tissue Tech, Miami, FL)、およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(ATCC,Manassas, VA)。
細胞を、96ウェルのプラスチック培養皿中で、αMEM媒体+10%のFBS中の3x104細胞/cm2/ウェルで播種した。コンフルエンス後に、細胞を、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、およびメラトニン(AGM)を加えることによって、骨芽細胞の分化を誘発させた。各条件について、N=5を試験した。合計の誘発時間=20日。0日目は細胞播種の日として見なされ、誘発が細胞コンフルエンス後に続いた。各細胞型は、以下の3つの実験群を有した:陰性対照、陽性対照、およびAMP処置のみ。AMP処置に対して、125μg/mlのAMP濃度を使用した。培地(100μL)を、20日間の培養期間の間、3日ごとに変更した。(誘発または細胞のない)AMPを有する陰性対照を加えた。ARSの染色および定量化を、20日目に上に記載されるように行った。その後、抽出物を450nmで読み取った。
結果
HUVEC細胞は、4日目までに細胞成長の網状パターンを形成した(図74A)。しかしながら、細胞死があり、21日目まで細胞の網の上部に死細胞が沈降していた。ほとんどのHUVEC細胞は、10%のパラホルムアルデヒドで固定され得ず、ARSによって染色されたわずかな細胞が、暗褐色を示した。AMPが、HUVEC細胞の上部に沈降し、細胞の網を覆ったが、AMPの粒子状物質は、ARS染色後に、細胞によってプラスチックウェルから分離され;わずかな残りのAMPの粒子状物質も、暗褐色に染色された。
hBM MSCは、誘発なしで、長い線維芽細胞の形状を維持した(図74A)。誘発によって、MSCは、4日目までに、より隆起された細胞の縁によって伸張された。10日目までに、誘発されたMSCは、スピンドル状の細胞を発達させ、細胞は、単層上で互いに、重なる層を発達させた。17日目に、重なるスピンドル細胞は、ウェルの中心から約5mmで密な環を形成した。ARS染色は、非誘発性のMSC単層が、クリーム色に染色され、スピンドル環が、赤橙色に染色されたことを示した。AMP処置されたMSCは、単層を覆ったAMPの粒子状物質を含有していた。時間とともに、単層は、AMPの粒子状物質の濃縮した領域の近くで収縮された。ARS染色は、濃い赤褐色を示した。
hAMの間質幹細胞は、誘発なしで、矩形形状を維持した(図74A)。4日目までに、誘発によって、細胞形態は変化し、細胞は、幾つかの発達する紡錘形状を有して伸張した。AMPの粒子状物質は、AMP処置された間質細胞において、4日目までに、沈降し、単層の幾つかを覆った。4日目にAMPの粒子状物質によって覆われなった細胞は、矩形形状であった。17日目までに、AMPの粒子状物質によって覆われなった細胞は、陽性対照における誘発細胞に類似して伸張された。21日目までに、AMPの粒子状物質は、ウェルを覆い、細胞形態を観察することができなかった。ARS染色は、非誘発性の細胞がクリーム色に染色された一方で、誘発された細胞が淡いピンク色に染色されたことを示した。AMP処置された細胞は、AMP処置されたhBM MSCに類似して、濃い赤褐色に染色された。
4M GnHClと抽出物は、2%から15%(図74B)に及ばれたOD450値内での変動係数をもたらした。
結果の概要
結果は、誘発剤またはAMPのいずれかによって、HUVECの陰性対照において鉱化が示されなかったことを示した。hBM MSCおよびhAMの両方の間質幹細胞に関して、鉱化が、誘発剤によって促進され、これは、AMPによって促進されたものよりも少なかった。
実施例41:MC3T3−E1分化中の鉱化および細胞増殖に対するAMPの効果
MC3T3−E1細胞は、成熟した骨芽細胞になる前に、以下の3つの主要な段階を受ける:増殖、マトリックス沈着/成熟、および鉱化(図75)。我々の結果は、AMPが、MC3T3−E1細胞において鉱化を促進することを示した。ARS染色を考察すると、AMPで処置された細胞が、陽性および陰性の対照より濃く及び密に染色されたことを示す(図72)。さらに、AMPの粒子状物質が単層を覆ったときに、AMPの粒子状物質の真下の単層が欠如していた(図77)。1つの可能性として、AMPが、MC3T3−E1細胞用のスキャフォールドとして作用しており、3Dマトリックス中のこの相互作用によって、細胞が成長し、鉱石化したことが挙げられる。したがって、AMPは、MC3T3−E1細胞の増殖を増加させることによって鉱化を促進しているのかもしれない。
実験計画
MC3T3−E1細胞を、上に記載されるように、αMEM培地+10%のFBSを用いて、24ウェル中で3x104細胞/cm2/ウェルで播種した。コンフルエンス後に、細胞を、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、メラトニンを加えることによって分化を誘発させた。各条件について、N=3が試験された。1日目は細胞播種の日として見なされ、誘発が細胞コンフルエンス後に続いた。合計の誘発時間=20日。4つの時間点をサンプリングした:1日目、2日目、7日目、10日目、13日目、20日目。各時間点は、以下の4つの群を有した:陰性対照、陽性対照、AMP処置のみ、AMP+(w/誘発)。利用したAMP濃度は、125μg/mlであった。
MTTアッセイによって測定された増殖アッセイのために、培養期間は、増殖に対して9日であった。4つの時間点をサンプリングした:1日目、2日目、4日目、および9日目。各時間点は、以下の3つの群を有した:細胞のみ、AMPのみ、AMP+細胞。利用したAMP濃度は、125μg/mlであった。
結果
鉱化
1日目に、細胞を、24時間播種し、誘発培地またはAMPによっては処置しなかった(図76)。細胞は、円形であり、単層上でより隆起したようである。ARS染色は、淡いベージュ色を示し、鉱化がほとんどなかった。2日目に、誘発なしで、陰性対照の細胞は六角形になった。ARSは、単層を汚れた、淡い桃色に染色した。誘発によって、陽性対照の細胞は、鉱化がほとんどなく及び淡い桃色でのARS染色を有する陰性対照と同一に見えた。AMPでの処置は、MC3T3−E1細胞形態を変化させ、紡錘形状の細胞およびスピンドル細胞が観察された。ARS染色は、1日目から鉱化の増加を示したが、単層を淡いピンク色に染色した。しかしながら、AMPの粒子状物質が沈降した領域は、赤褐色に染色された。誘発を有するAMP処置はまた、幾つかの細胞形態を変化させた。紡錘形状の細胞が存在し、単層はまた、淡いピンク色に染色され、AMPの粒子状物質のまわりの領域は、赤茶色に染色された。7日目に、陰性対照の細胞は、より六角形に現れ、細胞の境界がより定義される。鉱化が増加し、単層は、淡いいベージュ色に染色された。陽性対照は、誘発によって、スピンドル形状の細胞およびスピンドル環を発達させた。ARSはまた、鉱化するにつれて、濃いピンク色を染色した。AMPおよび誘発を有するAMPでの処置によって、AMPの粒子状物質が沈降し、細胞形態は見られなかった。個々の細胞の細胞単層は見られなかった。ARSは、AMPの粒子状物質のまわりの領域が赤褐色に染色され、単層が淡いピンク色に染色されたことを示した。GnHClは、ARS色素の抽出に成功し、OD450値の変動係数は、6%から16%までの範囲であった。
結果の概要
陰性対照のMC3T3−E1細胞は、2日後にARS染色の増加、およびそれ故、細胞培養が増加する鉱化を示す(図76)。先の結果に類似して、誘発培地によって培養された陽性対照のMC3T3−E1細胞は、7日目までに、細胞形態の変化を受け、紡錘形状の細胞およびスピンドル環を発達させた(図76)。1日目のAMP処置後(D2)、誘発によって又はそれなしで、細胞形態の変化が見られた。細胞は、スピンドルになり、線維芽細胞さえ作られた(図76のA)。この変化は、陰性または陽性の対照で観察されなかった。さらに、この変化は、少なくとも4日間の培養後に、誘発されたMC3T3−E1細胞で観察された(図76のA)。
AMP処置された及び誘発を有してAMP処置された細胞は、ARS定量化)によって示されるように、2日目までに、陽性対照からの鉱化の統計的に有意な増加を示した(図76のB。単層は、淡いピンク色に染色されたが、AMPの粒子状物質が沈降した小さな領域は、鉱化の増加を示し、濃い赤褐色に染色された(図76のA)。鉱化のこの増加は、培養期間にわたって継続した。
誘発処置によるAMPのみと比較したときに、AMPによる鉱化の促進に増加はなかった。
増殖
決定するために、AMPが、細胞増殖の促進によって鉱化を促進したかどうかを決定するために、MC3T3−E1細胞を、αMEM培地+10%のFBS中で、96ウェル中の3x104細胞/cm2/ウェルで播種した。コンフルエンス後に、AMP群を、培地中で3日ごとに加えた、新鮮な125μg/mlのAMPによって処置した。MTTアッセイを、1、2および4日目に行い、BrdUアッセイを、1、2および16日目に行った。
未処置のMC3T3−E1細胞において、細胞の生存度は、1日目から4日目まで増加する(図77のA)。AMP処置された細胞では、細胞の生存度は、細胞のみの群の傾向に従って、2日目に減少し、その後、4日目に2倍を超えた。BrdUアッセイは、細胞のみの群およびAMP処置された細胞群の両方において、1日目の後に細胞増殖の減少を示した(図77のB)。細胞のみの群における細胞増殖は、2日目までに半分以上減少し、16日目まで減少し続けた。AMP処置された細胞では、細胞増殖は、16日目までに統計的に有意な減少のみを示した。これらの結果は、AMPが、16日間の培養期間の間に増殖を促進しなかったことを示唆している。
結果の概要
細胞の生存度は、MTTアッセイによって示されるように、1日目から4日目までMC3T3−E1細胞で増加した。AMP処置されたMC3T3−E1細胞は、1日目から2日目までの細胞の生存度の減少を示したが、未処置の細胞にように増加傾向が続いた。しかしながら、AMP処置された細胞における4日目の細胞の生存度は、未処置のMC3T3−E1細胞の約半分であった。細胞増殖は、BrdUによって測定されるように、1日目から16日目までずっと減少した。AMP処置された細胞とは異なり、未処置のMC3T3−E1細胞におうて、細胞増殖は、2日目までに半分以上減少した。16日目までに、AMP処置された及び未処置のMC3T3−E1細胞は、同じレベルの細胞増殖を示した。
実施例42:AMP処置されたMC3T3−E1およびhBM MSCにおける骨形成の初期段階中に発現した遺伝子の特定。
ヒト骨髄間葉系幹細胞(hBMMSCs)は、多能性であり、骨芽細胞、軟骨細胞、および脂肪細胞などの、複数の組織タイプに分化することができる(Born, 2012 J Cell Biochem. 113(1):313−21.)。インビボに移植されたときに、それらは、新しい骨を形成することができ、インビトロで、hBM MSCは、β−グリセロリン酸塩、アスコルビン酸、ビタミンD3、および低用量のデキサメタゾン中の培養によって、骨形成に向けられる。hBMMSCsに対する骨形成は、ECMの具体的な転写因子、接着分子およびタンパク質を含む、骨芽細胞関連の遺伝子の発現によって調節される(Born (2012) J Cell Biochem. 113(1):313−21;Vater (2011) Acta Biomater. 7(2):463−77.)。成熟した骨芽細胞への進行は、MC3T3−E1の進行を反映し、細胞の拡大能力の損失、骨形成のマーカー発現の増加、およびECMの鉱化とともに生じる(Born (2012) J Cell Biochem. 113(1):313−21)。最初に、細胞は、コラーゲンI(Col I)の発現によってECMの合成を開始する。同時に、骨特異的なアルカリフォスファターゼ(bALP)の発現は増加し、4日目までに、対照から誘発された細胞(6x104細胞/60mmの培養皿)中のALPレベルの著しい増加を観察することができた(Born (2012) J Cell Biochem. 113(1):313−21; Jaiswal (1997) J Cell Biochem. 64:295−312)。分化が継続と、細胞は、骨シアロタンパク質(BSP)、オステオポンチン、オステオネクチンおよびオステオカルシンなどの、タンパク質を生成する。最終的に、ECMの鉱化は、MC3T3−E1細胞における骨形成のように、成熟した骨芽細胞を示す。
本実施例では、遺伝子および転写因子は、3つの細胞株における骨形成の初期段階で発現され:MC3T3−E1細胞およびhBM MSC細胞を決定した。我々の結果は、鉱化の統計的に著しい増加が、2日目までに(1日目の処置)、陽性対照と比較して、AMP処置されたMC3T3−E1細胞で見ることができたことを示した。それ故、実験は、処置後に特定遺伝子に対するAMPの効果を特定するために、骨形成の初期段階に焦点を置いた。
実験計画
MC3T3−E1またはヒト骨髄MSCの細胞を、上に記載されるように、αMEM培地+10%のFBSを用いて、24ウェルのプレート中で3x104細胞/cm2/ウェルで播種した。コンフルエンス後に、細胞を、アスコルビン酸およびβ−グリセリンリン酸を加えることによって分化を誘発させた。各時間点での各々のアッセイについて、N=2を試験した。4つの時間点をサンプリングした:0日目(コンフルエンス後だが、誘発/処置の前)、1日目、4日目、および6日目。各時間点は、以下の3つの群を有した:陰性対照、陽性対照、AMP処置のみ。使用されるAMP濃度は、125μg/mlであった。
結果
hMSC発現
AMPは、24時間の培養期間内に、BMP2およびBMP6の転写物の強い内因性の発現を誘発する(それぞれ、60倍および5倍)(図78A)。BMP2は、D1(120倍)でそのピークに達し、低下を示す前の4日目まで、高レベル(60乃至10倍)を維持した。対照的に、BMP6は、4時間でピークに達し、その後、1日目から徐々に低下した。比較として、AMPは、BMP4、BMP7およびBMP9の発現レベルを変化させなかった。それにもかかわらず、AGは、4日目にのみBMP2およびBMP6の軽度のアップレギュレーション(1−2倍)および1日目の後にBMP4の顕著なアップレギュレーション(4−10倍)を誘発した。比較として、AGMは、BMP7およびBMP9の発現をいずれも変化させなかった。
Runx2は、AMPに対して1日目でピークに達したが、AGMに対して2日目でピークに達した(図78A)。その後、両方の群は、徐々に低下し、その後、6日目に別のピークに達した。Runx2は、未熟な骨芽細胞への多能性の間葉細胞の分化を誘発し、これによって、未熟な骨の形成が進められる。さらに、Runx2は、骨芽細胞の分化の初期段階中に、主要な骨マトリックス遺伝子の発現を引き起こすが、Runx2は、成熟した骨芽細胞においてこれらの遺伝子発現の維持にとって不可欠ではない(Komori (2010) Adv Exp Med Biol. 658:43−9)。
ALPおよびSox9の両方は、4日目にピークに達し、AGMによってアップレギュレートされたレベルは、AMPよりも低い(図78A)。この傾向は、ALPおよびSox9が、Runx2の下流にあるという点で一致している。ALPは、骨形成の初期段階で発現され、カルシウムを溶液から出し結晶化させるアルカリ環境を作り出す。
AMPは、4時間および4日目でピークに達したVEGFをアップレギュレートしたが、AGMは、4日目にのみVEGFをアップレギュレートした(図78A)。AMPは、CXCR4をアップレギュレートし、一方で、AGMは、1日目にSDF1をアップレギュレートし、前者に対して急速な低下があったが、後者に対してよりゆっくりとした低下があった。Kortesidis et al. ((2005) Blood. 105(10):3793−801)は、SDF−1/CXCR4の相互作用を妨害するように作用し得る環境要因に応じて増殖し分化することが必要とされるまで、SDF−1が、その血管周囲のニッチ内で初期のコミットされていない(uncommitted)BMSSCの個体群を局所化するよう作用し得ることを示唆している。MSCの7つのプレコンディショニング実験では、CXCR4の発現は、通常、約2乃至4倍の増加であるが(Cencioni et al. ((2012) Cardiovasc Res. 94(3):400−7)、AMPでの我々の結果は、1日目の後に60倍の増加を示した。
SDF−1発現は、MSCのすべての群において非常に高かったが、図78Aではそうでなかったようである。SDF−1は、サイクル20あたりで見られたが、GAPDHは、サイクル17あたりで見られた。文献から、間質細胞由来の因子−1が、始原細胞上の接着分子を活性化し、SDF−1に対するmAbが、造血前駆細胞の経血管内皮性の移動を阻害すると知られている(Imai et al. (1999) Blood 93(1):149−56)。SDF−1は、CXCR4+/CD34+細胞を活性化し、それらの接着および経血管内皮性の移動につながる(Bhakta et al. (2006) Cardiovasc Revasc Med. 7:19−24.)。GAPDH発現は、2日目から6日目まで、AMP群において増加し、それ故、増殖が仮定される。この傾向は、他のサンプルで見られなかった。さらに、BMP9は、(サイクル40後に)検出不能であり、CXCR4は、サイクル33あたりで検出され、VEGFは、サイクル19あたりで検出され、およびSOX−9は、サイクル27ごろあたりで検出された。BMP4はサイクル28あたりで検出され、BMP7は(サイクル40後に)検出されず、BMP2はサイクル20あたりで検出され、Runx2はサイクル25あたりで検出され、BMP6はサイクル27あたりで検出され、およびALPLはサイクル24あたりで検出された。
MC3T3−E1発現
MSCは、骨前駆体が、さらに系列経路の下に既に押されているため、多能性であり、骨形成のみをもたらすはずであることが知られている。予想とは異なり、BMP2発現は、特にヒトMSCと比較して、マウス細胞においてかろうじて発現された(図79)。BMPは、ヒトにおいて骨形成促進において有効でないことが示され、マウス細胞においても有効であるともいえない(Osyzka et al. (2004) Cells Tissues Organs. 176(1−3):109−19. , Skarzynska et al. (2011) Connect Tissue Res. 52(5):408−14)。BMP−2の発現は、遺伝子アレイによって示されるように、MC3T3細胞において顕著ではない(Beck et al. (2001) Cell Growth & Differentiation 12: 61−83)。ヒト細胞と齧歯類細胞との間で見られる違いは、ヒト細胞におけるSmad1とは異なり、齧歯類Smad1が、骨形成中にERKリンカーのリン酸化を受けないことを示し得る。あるいは、齧歯類細胞におけるSmad1活性は、ERK媒介性のリンカーのリン酸化によって抑制されないかもしれない(Skarzynska et al. (2011) Connect Tissue Res. 52(5):408−14)。不十分な反応性のヒトMSCにおけるBMP誘発性の骨形成は、ERKの調節(阻害)およびホスファチジルイノシトール 3−キナーゼ(PI3−K)の経路を必要とし;インスリン/IGF−I活性化されたPI3K/AKTの経路の阻害によって、ヒトMSCの無血清培養中のBMP誘発性のアルカリフォスファターゼおよびオステオポンチンの発現は減少するが、SmadsのBMP活性化は増加する(Osyzka et al. (2005) Endocrinology. 2005 (8):3428−37)。
Runx2はまた、hMSCと比較して、MC3T3細胞において異なると示された。2日目にMC3T3細胞において遺伝子のアップレギュレーションをもたらす事例が明らかに存在する。AGM群は、AMP群の逆効果を有するようであり、これは、Pi3K、MAPKの経路に関連し得る。Bone Sialprotein(BSP)としても知られている、Ibspは、2日目にAMPにおいてアップレギュレートされるが、他の日には発現されない。陽性群では、BSPは、2日目の後に高度に発現される。
オステオカルシン(OCN)としても知られている、Bglap−rs1もまた、2日目にAMPにおいてアップレギュレートされるが、他の日には発現されない。BSPと一致して、OCは、2日目の後に陽性群において高度に発現される。これらの結果の分析を通して、BSPおよびOCNは、成熟した骨芽細胞によって発現されると知られているため、アップレギュレートされる必要があると考えられる。Runx2は、MC3T3においてCol1、BSPおよびOCNの発現を調節すし、これは我々の結果と一致している。Runx2は、BSPおよびOCNのように、2日目に増加し、他の日では発現されない。要約すると、AMPは、骨形成の遺伝子発現をダウンレギュレートするが、鉱化を促進する。
実施例43:MC3T3−E1モデル系を使用する、鉱化に対するAMから精製されたnHC−HA/PTX3の効果。
先の実験は、アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、およびメラトニン(AGM)などの誘発剤とは関係なく、鉱化を促進するAMPの特有の特性を明確に実証した。これらの実験では、AMPの効能を決定するために、AGMの存在下または不存在下で、AMPを、ネズミの骨芽細胞の始原細胞株(MC3T3)に加えた。GnHCl抽出方法によるアリザリンレッド染色を、さらなる定量化のために、複数の時間点で使用した。AMPが、AGMとは関係なく鉱化を増強しただけでなく、より速い速度で鉱化を増強したと結論付けた。AMPのさらなる検査は、AMPによって示された骨誘発性の効果が、直接的な細胞の接触を必要とすることを示した。すなわち、AMPとの直接的な接触の下では、細胞は、AGMの導入なしで、鉱化を加速し増強するであろう。
以前の研究は、誘発下のMC3T3−E1の分化が、3つの段階、すなわち、増殖(1日目〜9日目)、ECM形成(9日目〜16日目)、および鉱化(形成されたECM中の鉱質沈着物)(16日目+)へと細分化され得ることを示した(Quarles et al. (1992) J Bone Miner Res. 7(6):683−92.; Hong et al. (2010) Exp Cell Res. 316(14):2291−300)。しかしながら、我々の以前のAim 4は、鉱化が、AMPを使用して、7〜10日以内に容易に検出され得ることを示した。それ故、AMから精製されたnHC−HA/PTXSが、鉱化を促進する要因であるかどうかを決定するために、8日目に我々のARSアッセイを行う。Aim 4で見られるように、結果が注目すべきものであるため、8日目を選択し、培地は、0日目、3日目および6日目に取り替えられる必要があるだけである。
nHC−HA/PTX3が、羊膜の既知の抗炎症性、抗血管新生、および抗瘢痕化の治療上の作用の要因であることは既に知られている。固定化したHC−HC/PTX3が、AMPの鉱化の促進に対する効果の要因であると仮定する。それがHAを含有しているため、推定上の効果が、HAではなく、nHC−HA/PTX3において一意に存在することを理確認するために、nHC−HA/PTX3をHAと比較する。ヒアルロナン(HA)は、単一の繰り返し二糖単位から成る、硫酸化されていないグリコサミノグリカンである。それは、マトリックス集合および組織の水和を促進する、結合組織中の重要な成分である。Luben et alは、HAが、再吸収部位から離れて、酵素の拡散に対する障壁として作用する、または破骨細胞の移動性を調節する、カルシウム結合剤として作用すると推測した。SternおよびRaiszは、「ヒアルロン酸が、骨再吸収に明白に関連するため、研究に最も適切であるように見える」と明言した。その吸湿性の性質によって、HAは、それ自体の容量の10,000倍を占めることができる。したがって、HAによって、増殖細胞は、阻害性の接触を避けることができる。ヒアルロン酸の合成は、有糸分裂に先行し、分裂する細胞をその基層から分離し、細胞移動を可能にする(Balazs (2001) Am J Physiol Regulatory Integrative Comp Physiol 280: R466*R472)。
実験計画:
ネズミのMC3T3−E1細胞(C−136)を、液体窒素フリーザーから取り出し、80%のコンフルエンス〜1.5x106細胞[4*(3.1x104)*9=1,116,000細胞]まで3日ごとに変更された、αMEM培地(100mmの皿当たり10ml)+10%のFBS中で、100mmの皿(5皿)上で成長させた。その後、細胞を、3.1x104細胞/cm2/96のプラスチックウェルで播種した。培地(96ウェル当たり100ul)を、2−3日ごとに、すなわち、0日目(水曜)、2日目(金曜)、および5日目(月曜)に交換し、培養を8日目に終了する。N=4を、条件に従って試験した。
群の概要は以下のとおりであった:
対照群:
陰性対照:従来の96ウェルプレートではなし。
陽性対照1:従来の96ウェルプレート上のAGM。
陽性対照2:3日ごとに従来の96ウェルプレート上で125μg/mlのAMPを加えた。
実験群:
陰性対照:Covalink−NH 96ウェルプレート
実験群1:3日ごとにCovalink−NH 96ウェルプレートAGMを加えた。
実験群2:20μg/mlのHAをCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化した。
実験群3:20μg/mlのHAをCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化し、3日ごとにAGMを加えた(H−124)。
実験群4:20μg/mlのnHC−HC/PTX3をCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化した。
実験群5:
20μg/mlのnHC−HC/PTX3をCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化し、3日ごとにAGMを加えた。
AGM群に関して:0日目および3日目に、骨形成誘発培地#1(アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸)を取り替えた。6日目に、骨形成誘発培地#2(アスコルビン酸、β−グリセリンリン酸、メラトニン)を取り替えた。0日目に、0.2mlの10X誘発培地のみを作った。3日目および6日目に、新鮮な10mlの骨形成誘発培地を調製した。誘発培地用の説明書を、インビトロの骨形成アッセイキット(Millipore)から得た。
誘発培地#1:9.88mlのαMEM培地+10%、20μlのアスコルビン酸 2−リン酸 500X(Millipore, Part. 2004011)、100μlのグリセロール 2−リン酸 100X(Millipore, Part. 2004011)。
誘発培地#2:9.87mlのαMEM培地+10%、20μlのアスコルビン酸 2−リン酸 500X(Millipore, Part. 2004011)、100μlのグリセロール 2−リン酸 100X(Millipore, Part. 2004011)、10μlのメラトニン 50uM(Millipore, Part. 2004011)。500ulのdH20を、供給された6ugのメラトニンに加える。
ARSの染色および定量化を、上に記載されるように行った。写真を、Nikon Eclipse CFI60を使用して、10Xで撮った。
結果
MC3T3−E1細胞を、8日間、異なるウェルプレート上で培養した。8日目に、位相コントラスト写真を、ウェルから撮り、それは以下で見られる(図79A、79B)。陰性対照ウェルは、円形細胞を示し、ARSは非常に淡いピンク色を染色した。誘発培地を有するウェルは、はるかに明るい赤色を示し、スピンドル細胞は、ウェルの周辺上で見られた。ARS染色は、外側周辺の環でより豊富に見られた。AMPでの処置は、ARS処置後に深紅色を示し、細胞は、AMPがそれらの上に沈降したため、確認はかなり難しかった。(固定化したHC−HA上に他の細胞型で凝集が見られたが)実験中に凝集は見られなかった。顕微鏡写真を、6、7および8日目に撮った。
塩酸グアニジンの抽出方法を、8日目に使用し、ウェルプレートを一晩インキュベートした。肉眼で確認することは難しかったが、GnHClは、ARS色素を抽出することができ;すべてのウェルは、同じ淡いピンク/赤色を有するようであった。プレートリーダーが、490nmまたはその近くで読み取る性能を有していなかったため、ARS抽出を、450nmで定量化した。結果は、図79C見ることができる。*記号は、p<0.05の統計的有意差を示す。(+はAGMを有することを示し、−はAGMがないことを示す)
先の結果に一致して、AMPは、誘発剤を必要とすることなく、鉱化の促進に成功した。この実験は、8日間続いただけであったため、結果は、20日間続いたAim 4ほど注目すべくことではない。AGMで処置されたすべての条件は、それらの陰性対照の対照物からの鉱化の増加を示した。我々の結果はまた、固定化したnHC−HA/PTXSが、AMPでの鉱化を促進する要因でないことを示す。それ故、鉱化を促進しているAMPの別の活性成分があるはずである。
実施例44:軟骨内骨化に対するHC−HA/PTX3(PBS)およびHC−HA/PTX3(Gn)の効果
骨形成および軟骨形成に対する主要な転写因子(それぞれ、Runx2およびSox9)は、14日間の培養期間にわたって、両方のHC−HA条件下の細胞によって発現された。可溶性および不溶性の両方である、HC−HA/PTX3は、BMP2の発現を促進することができ、骨誘発性の薬剤のないBMP6の程度まで、AGM(すなわち、アスコルビン酸、グリセリンリン酸、メラトニン)が、市販で提供されている(以下を参照)。
軟骨形成マーカー コラーゲン2は、AGMを必要とせずに、HC−HA/PTX3(PBS)によって高度に発現された。AGMを加えたHC−HA/PTX3(Gn)はまた、コラーゲン2をアップレギュレートすることができた。骨形成マーカー(BSP、ALPL、Osx)を、14日目にHC−HA条件によってアップレギュレートし、それ故、軟骨から骨遺伝子型までの移行が確認された。
実験計画:
培養条件:Lonza(Basel,Switzerland)から購入したヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を、液体窒素フリーザーから取り出し、80%のコンフルエンスまで3日ごとに変更された同じ培地中で、100mmの皿上で成長させた。細胞培養培地は、10%のウシ胎児血清および抗生物質を含有しているαMEMであった。培養培地(100mmの皿当たり10ml)を、3日ごとに変更し、細胞は、上述の所望の細胞数に達するまで、80%のコンフルエンスでサブ流路で処理された(subpassaged)。実験のために、細胞を、骨誘発性の薬剤、アスコルビン酸 2−リン酸塩、グリセロール 2−リン酸塩およびメラトニン(AGM)によって又はそれらなしで、固定化したHA、HC−HA(PBS)またはHC−HA(Gn)上で、3.1x104細胞/96プラスチックウェルで播種した。加えたAGMの終末濃度は、それぞれ、0.2mM、10mMおよび50nMであった。細胞が播種されたときに(0日目)、AGMを同時に加え、mRNAを、1、7および14日目に抽出した。遺伝子発現を定量化するために、qPCRを行った。培地(96ウェル当たり100ul)を、3日ごとに取り替えた。
実験群の概要は以下のとおりであった:
陰性対照:Covalink−NH 96ウェルプレート
実験群1:3日ごとにCovalink−NH 96ウェルプレートAGMを加えた。
実験群2:20μg/mlのHAをCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化した。
実験群3:20μg/mlのHAをCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化し、3日ごとにAGMを加えた。
実験群4:20μg/mlの4X nHC−HC/PTX3をCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化した。
実験群5:20μg/mlの4X nHC−HC/PTX3をCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化し、3日ごとにAGMを加えた。
実験群6:20μg/mlの4X nHC−HC/PTX3(GuHCl抽出)をCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化した。
実験群7:20μg/mlの4X nHC−HC/PTX3(GuHCl抽出)をCovalink−NH 96ウェルプレート上に固定化し、3日ごとにAGMを加えた。
AGM誘発群に関して:0日目および3日目に、骨形成誘発培地#1(アスコルビン酸、グリセリンリン酸)を取り替えた。6日目に、骨形成誘発培地#2(アスコルビン酸、グリセリンリン酸、メラトニン)を取り替える。0日目に、10X誘発培地を作った。3日目および6日目に、新鮮な10mlの骨形成誘発培地を調製した。誘発培地の調製のための説明書を、インビトロの骨形成アッセイキット(Millipore)から得た。
誘発培地#1:9.88mlのαMEM培地+10%、20μlのアスコルビン酸 2−リン酸 500X(Millipore, Part. 2004011)、100μlのグリセロール 2−リン酸 100X(Millipore, Part. 2004011)
誘発培地#2:9.87mlのαMEM培地+10%、20μlのアスコルビン酸 2−リン酸 500X(Millipore, Part. 2004011)、100μlのグリセロール 2−リン酸 100X(Millipore, Part. 2004011)、10μlのメラトニン 50uM(Millipore, Part. 2004011)。500ulのdH20を、供給された6ugのメラトニンに加える。
mRNAを、1、7および14日目に細胞から抽出し、遺伝子発現を、QPCRによって決定した(図80A−E)。以下の遺伝子をアッセイした:骨形成マーカー Runx2、アルカリフォスファターゼ(ALPL)、マーカーコラーゲン1(COL1)、Osterix(OSX)および骨サイアロプロテイン(BSP)および軟骨形成マーカーSox9およびコラーゲン2(COL2)、肥大性マーカー、コラーゲン10(COL10)およびMMP13。
ARSの染色および定量化を、上に記載されるように、14日目の培養物上で行った(図81A、81B)。
AGMは、プラスチック上でBMP4をアップレギュレートした。HAは、BMP4をアップレギュレートした(初期)が、BMP6をダウンレギュレートし(後期)、BMP2に影響を与えなかった(図80B)。文献データは、HA自体がBMPをアップレギュレートするとは示唆していない。しかしながら、AGMの付加は、BMP2およびBMP6をアップレギュレートした。
4Xの可溶性のHC−HAは、最初にBMP4をアップレギュレートしたが、BMP4を後にダウンレギュレートし(HAのように)、BMP2を著しくアップレギュレートした(AMPのように、しかし一時的なBMP6なしで)(図80B)。対照的に、AGMの追加は、BMPの発現パターンを変化させなかった。4Xの可溶性のHC−HAは、最初にBMP4をアップレギュレートしたが、BMP4をダウンレギュレートし(後に)(HAのように)、BMP2を著しくアップレギュレートした(可溶性のHCHAのように)(図80B)。[可溶性に一致]同様に、AGMの付加は、発現パターンを変化させなかった。
我々の結果は、可溶性のHC−HAおよび不溶性のHC−HAが、軟骨内の機構によって、骨分化および鉱化を形成することができたことを示す。骨マーカー(Col1、Osx、ALP、およびBSP)の発現は、軟骨マーカー(Col2)および肥大性マーカー(Col10、MMP13)の発現と同様に明白であった(図80A−E)。これらのHC−HA条件間の違いは、可溶性のHC−HAが、遺伝子発現のより大きな振幅およびより顕著な骨結節(AGMがなくても)を促進することができるが、不溶性のHC−HAが、AGMを必要とするということである(データは示されず)。したがって、可溶性および不溶性の両方である、HC−HA/PTX3は、骨誘発性の薬剤 AGMなしで、BMP2の発現を促進することができた。
AGMのないHAはまた、軟骨形成マーカー(COL2)を示したが、ARSで定義された鉱化による骨形成の徴候、およびALPおよびOCのわずかな増加を示した。しかしながら、HC−HA/PTX3(PBS)は、HAよりも、骨マーカーのALP、OsxおよびBSPのより大きな軟骨形成発現およびより高い発現を有していた。しかし、これらの条件はどれも、著しい肥大性マーカーを発現しなかった。HC−HA/PTX3(Gn)は、2つの前述の条件よりも、ALP、OSXおよびBSPのはるかに大きな発現を発現した。肥大性マーカー MMP13も、軟骨形成マーカー COL2のわずかな発現と同様に発現された。
HA+AGMは、BMP2、ALP、Osx、BSPおよびOCの発現が増加すると骨形成を促進し、肥大性マーカー COL10およびMMP13を示す。しかしながら、HAは、HC−HA群ほど、骨特異的なmRNA発現および骨結節の形成をそれほどもたらさなかった。別の重要な違いは、HAが、SOX9をダウンレギュレートしたが、BMP6発現を後に増加させたことであった。
すべての前のデータは、不溶性のHC−HAが、骨の最も強力な誘発因子であり、より重要なことに、軟骨内の機構を誘発することを示している。
実施例45.nHC−HA/PTX3は、炎症性および免疫性の反応を抑制し、ネズミの角膜の同種移植片生着を改善する。
実験的および臨床的な研究は、羊膜(AM)、AM抽出物、およびnHC−HA/PTX3[インター−α−トリプシンインヒビター(IαI)およびヒアルロナン(HA)の重鎖(HC)によって形成された共有結合型錯体]が、炎症促進性の反応を抑制することを示した。本実施例は、nHC−HA/PTX3/PTX3が、T細胞応答を調節することができ、ネズミの角膜の同種移植片拒絶反応を減少させることができることを実証している。
T細胞の活性化は、様々なサイトカインの増殖および生成によって評価され得る(図82)。この例では、脾細胞は、オバルブミン(OVA)に特異的なトランスジェニックTCRを発現するOT−IIマウスから分離され、最大4日目までOVAによって刺激された(図83)。細胞増殖を、BrdU標識化によって測定し、サイトカイン(IFNgおよびIL−2)の発現を、それぞれのELISAによって測定した。1mg/mlでのHAではなくnHC−HA/PTX3は、2日目および4日目に、OVAペプチドを用いて、脾細胞中でIFN−γおよびIL−2(図85)の増殖(図84)および生成を著しく抑制した(すべてのp<0.05)。さらに、角膜のT細胞を、LPS注入によってインビボで活性化した。
LPSの角膜内注入の前または間のnHC−HA/PTX3による注入の部位、量および頻度の最適化を、Mafiaマウスの角膜へのEGFP陽性のマクロファージの流入によって決定した。注入レジメンを、すべての4つの四分円に対して、結膜下と円蓋との間の各注入で5μlを与えることによってさらに最適化した。nHC−HA/PTX3処置後の4日目に、角膜を、1時間37℃で、820ユニット/mlのコラゲナーゼにより消化した。EGFP−およびEGFP+の細胞を、FACSによって単離した。LPS注入の3日前のnHC−HA/PTX3の前処置は、LPS侵襲性の角膜に対するEGFP+マクロファージの流入を著しく抑制した(9.1±0.3対12.3±0.4、nHC−HA/PTX3対PBS、p=0.02)(図86)。重要なことに、たとえEGFP+マクロファージが、角膜に移動されたとしても、それらの幾つかは、Arg−1およびIL−10の著しいアップレギュレーションではあるがIL−12(p<0.05)のダウンレギュレーションによって示唆されるように、M2表現型へと極性化した(図87)。Arg−1、IL−10およびIL−12のmRNA発現を、qPCRによって測定した。最終的に、同種異型の角膜移植を、レシピエントとして野生型のBALB/cマウス、およびドナーとしてC57BL/6マウスを使用して行い、移植片の鮮明度(graft clarity)によって採点されたその結果を、スリットランプの生体顕微鏡検法を使用して、週に2回測定した。分解なしで2つの連続するスコア≧3を受けた移植片は、拒絶されたと考えられた。PBS対照と比較して、同種移植片拒絶反応は、週に1回、1つの四分円で、10μlのnHC−HA/PTX3の注入で著しく抑制され(p<0.05)、週に2回、4つの四分円で、5μlでの注入によってさらに減少された(p<0.002)(図88)。
これらの実験は、nHC−HA/PTX3が、ネズミの角膜の同種移植片拒絶反応を著しく抑制することを実証している。この作用の機構は、炎症促進性のマクロファージをダウンレギュレートする、およびT細胞免疫反応を抑制するnHC−HA/PTX3の能力に寄与し得る。
実施例46:乾燥(Desiccating)応力によってもたらされたマウスの眼乾燥のnHC−HA/PTX3およびAMPによる処置
機能障害の涙症候群としても知られている、眼乾燥は、世界的に高い罹患率および際立った死亡率を有する一般的な眼表面の疾患である。それは、涙機能ユニット(LFU;角膜、結膜、涙腺、およびマイボーム腺)の慣性的な自己反応性T細胞媒介性の炎症および機能不全によって特徴付けられた、自己免疫性ベースの炎症性疾患である。シェーグレン症候群(SS)は、単核細胞による唾液および涙腺の浸潤によって特徴付けられた、慢性的自己免疫疾患であり、実質組織の続発性損傷を引き起こす。
SSにおける乾性角結膜炎(KCS)は、IL−17およびインターフェロン(IFN)−γを生成するCD4+T細胞を浸潤させることによって特徴付けられた、重度の及び潜在的に視界を脅かす眼表面の上皮性疾患である。T細胞の活性化を阻害する化合物(例えば、シクロスポリンA)は、動物およびヒトの両方において眼乾燥疾患を弱める。マクロファージは、(例えば、LPSなどの、IFN−γ及び/又はTLRリガンドによって)典型的なM1活性化を受けて、高レベルの炎症誘発性のサイトカイン(TNF−α、IL−12、およびIL23など)を発現し得、これは、Th1およびTh17のリンパ球(図89)を活性化し、多くの慢性的炎症性疾患につながる。本実施例は、nHC−HA/PTX3およびAMPの投与が、そのような疾病の処置に有用であり得ることを実証している。
角膜へのマクロファージの浸潤は、各眼につき4つの注射部位で阻害される。
MAFIAマウスは、EGFPで標識化されると、マクロファージ流入のインビボのトラッキングを可能にする。nHC−HA/PTX3またはAMPが、角膜に対するLPS誘発性のマクロファージ流入を防ぐかどうかを決定ために、これらのマウスを使用した(角膜炎に対するモデル)。LPSを、各注射部位に、5μl以下の適切な量で、結膜下と円蓋との間に注入した。MAFIAマウスの眼(マクロファージはEGFP+である)に、LPS(1つの眼当たり5μg)を基質内注入した。各眼において、OSをPBS(2つまたは4つの注射部位)で処置し、一方で、ODを、nHC−HA/PTX3(2つまたは4つの注射部位;1つの注射部位当たりnHC−HA/PTX3中に1mg/mlのHA、5μl)またはAMP(2つまたは4つの注射部位;1つの注射部位当たりAMP中に10mg/mlのタンパク質、5μl)のいずれかで、1回処置した。その処置はLPS注入の直後であった。全体的な角膜の画像を、1日目、2日目、3日目および6日目に、インビボの生体内顕微鏡法によって撮った。EGFP陽性の細胞を、緑色蛍光の強度に基づいたので数えた。
1日目に、EGFP陽性のマクロファージは、PBS処置によるLPS注入の後に、ほとんどの角膜の周辺領域において検出される。nHC−HA/PTX3またはAMPのいずれかでの処置は、角膜中のマクロファージを著しく増加または減少さることはなかった。
2日目に、PBS処置での角膜中のマクロファージは、1日目から著しく増加し(p<0.05)、これは、nHC−HA/PTX3(2つおよび4つの注射部位、p<0.05)、およびAMP(2つおよび4つの注射部位、p<0.05)での処置でも同じであった。具体的には、より多くのマクロファージが、PBS処置(p>0.05)よりも、nHC−HA/PTX3の2回の注入によって処置された角膜において浸潤されたが、nHC−HA/PTX3(p>0.05)の4回の注入によって処置された角膜においてはより少なかった。AMP処置に関して、2回の注入では際立った効果がなかったが、4回の注入によって、マクロファージの浸潤はわずかに減少し、これは、各眼に対するnHC−HA/PTX3またはAMPいずれかの4回の注入が、マクロファージの浸潤の減少に対する効果のために必要であることを示唆している。
3日目に、マクロファージの浸潤は、PBS、nHC−HA/PTX3、およびAMPの処置によって継続した。
nHC−HA/PTX3の2回の注入、4回の注入、またはAMPの2回の注入の処置による浸潤の阻害はなかった。AMP(p<0.05)の4回の注入での処置のみが、阻害につながることを示している。
6日目に、マクロファージの浸潤は減少した。しかしながら、HC−HA/PTX3またはAMPの処置は、対照と比較して、際立った阻害効果を有さなかった。
これらのデータは、EGFP陽性のマクロファージが、1日目から3日目までLPS注入した角膜へと浸潤し続け、4日目または5日目にピークに達し、その後、6日目に低下することを示した。これは先の報告されたデータと一致している(図90)。マクロファージの浸潤は、2日目に1つの眼当たりnHC−HA/PTX3の4回の注入による処置によって、または2日目および3日目にAMPの4回の注入による処置によって、わずかに阻害された。これは、AMPが、LPSによって引き出されたマクロファージの流入の遮断において、nHC−HA/PTX3よりも優れた効能を有していることを示唆している。
AMPでの前処置は、もしnHC−HA/PTX3またはAMPのいずれかの注入が続くのであれば、追加の注入が原因である損傷によって刺激されたマクロファージ浸潤を著しく阻害する。
各MAFIAマウスの左眼(OS)を、上に定義されるように、結膜下/円蓋の4つの部位で、PBS(5μl)またはAMP(10mg/mlのタンパク質、5μl)によって前処置した。各マウスの右眼(OD)は、未処置のままであった。3日後に、各眼に、角膜に対してLPS(5μg)を注入し、すぐに4つの部位でのPBS(5μl)、HC−HA/PTX3(1mg/mlのHA、5μl)、またはAMP(10mg/mlのタンパク質、5μl)による処置が続いた。EGFP+マクロファージの浸潤を、インビボの生体内顕微鏡法を使用して数え、これは、マクロファージ流入をマウスの角膜に還元することの有意性(P>0.05)を開示しなかった(データは示されず)。その後、インビボの蛍光顕微鏡法によって、この定量的方法の精度を調査した。
浸潤したマクロファージをより正確に測定し、結果として生じるマクロファージ表現型(例えば、M1対M2)を検査するために、4日目に除去された角膜をコラゲナーゼ消化およびFACSにさらすことによって、EGFP陽性のマクロファージを定量することにした。その後、マクロファージ浸潤の程度を評価するために、EGFP陽性のマクロファージを、比率としてEGFP陰性の細胞によって標準化した。前処置のない群では、LPS注入は、PBSの対照群においてマクロファージ浸潤をもたらした(図91、A、青色バー)。この浸潤は、nHC−HA/PTX3(9.1±0.3対12.3±0.4、p=0.02)またはAMP(2.1±0.1対12.3±0.4、p=0.02)によって著しく阻害された。AMP処置は、マクロファージ浸潤(p=0.02)の阻害においてnHC−HA/PTX3処置よりも優れていた。
前処置を有する群では、LPS注入は、前処置なしと比較して、PBSの対照群において著しいマクロファージ浸潤を引き起こした(37.2±1.3対12.3±0.4、p=0.01)(図91、A、赤色バー)。前処置中になされた4回の結膜下注射が、LPSによって後に処置される角膜に対するマクロファージ流入を増大させた、炎症を引き出した損傷を引き起こしたために、この違いが予期された。それにもかかわらず、この劇的な増加した浸潤は、AMPの前処置に続いて、nHC−HA/PTX3(8.2±0.3対37.2±1.3、p=0.02)またはAMP処置(2.3±0.1対37.2±1.3、p=0.02)のいずれかによって完全に阻害された。再び、AMPの前処置に続くAMP処置は、AMPの前処置に続くnHC−HA/PTX3処置よりも、マクロファージ浸潤を阻害することに優れていた(2.3±0.1対8.2±0.3、p=0.02)。しかしながら、nHC−HA/PTX3またはAMP(p>0.05)に対して、AMPの前処置のない群とある群との間の阻害に有意差はなかった。qPCRデータ(図91、B)は、nHC−HA/PTX3の前処置が、IL−12p40およびIL−12p35の場合にM1マーカーを減少させ、一方で、Arg−1のM2マーカーを増加させたことを示している。AMPの処置および前処置は、IL−12p40およびIL−12p35を著しく減少させるが、アルギニン−1およびIL−10を大幅に増加させる。すべてにおいて、AMPの前処置は、前処理の間のさらなる損傷によって刺激されたマクロファージ浸潤を完全に除去することができる。そのような効果は、LPS注入と同時に、nHC−HA/PTX3またはAMPのいずれかの続く注入によって保持される。この利点は、4日後に顕著であり、AMPは、nHC−HA/PTX3よりも強力である。
nHC−HA/PTX3またはAMPは、ネズミの実験的な眼乾燥モデルにおいてDS誘発性のALKCを減少させることができる。
設計
種:C57BL/6マウス
エンドポイント:角膜の上皮性関門機能(OGD染色)
サンプルサイズ:1群当たり15匹のマウス
群:2つの対照群および3つの処置群(PBS、nHC−HA/PTX3、およびAMP):1)非眼乾燥、未処置の対照(UT)― 別々の動物施設の部屋で保持される;2)実験的な眼乾燥、未処置の対照(EDE);3)PBS;4)nHA−HC/PTX;5)AMP。
乾燥応力(D)
乾燥応力のモデルは、5日間(月曜−金曜)、環境的に管理された部屋で、涙分泌の薬理学的なコリン作用遮断および空気通風および低湿度への曝露によって作り出される。マウスは、ケージを通る気流を可能にするワイヤーメッシュと交換された側面を有する一般的なマウスケージから成る、特別に設計された穿孔されたケージに入れられる。各ケージは、一定の空気の流れの前に置かれる(電気ファン)。涙腺分泌は、5日間1日4回(8:30am、11:30am、1:30pm、4:30pm)、スコポラミン(0.2mL中に0.5mg、Sigma−Aldrich)の皮下投与によって阻害される。環境的に管理された部屋の湿度は、〜25−30%の相対湿度に維持され、これは、4つの持ち運び可能な除湿器および天井の1つの除湿器ユニットによって達成される。
処置手順(5日間のプロトコル)
各実験中に、3つの対照が含まれている:
未処置の対照は、40〜70%の相対湿度下で、動物施設で保持される一群のマウスから成る。
これらのマウスは、決して、DSにさらされたり、局所的処置を受けることはない。
眼乾燥の対照は、環境的な眼乾燥チャンバーに入れられるが処置を受けない、一群のマウスから成る。
ビヒクル対照は、DSにさらされるがPBSを受ける、一群のマウスから成る。
さらに、2つの実験群が含まれる:nHA−HC/PTX3およびAMP
注入のために、ビヒクル対照としてのPBSとともに、nHC−HA/PTX3(1mg/mlのHMW HAを含有している)およびAMP(10mg/mlの総タンパク質を含有している)を使用した。すべての溶液(PBS、nHC−HA/PTX3、およびAMP)を、30Gを有するツベルクリンシリンジに引き込んだ。注入位置は、円蓋(図92)に近くの結膜下である。3、6、9、および12時に1つの注入部位当たり5μlでの4回の(4)注入を行った。拡散した溶液は、結膜の周辺全体を完全に覆い、閉眼、角膜表面の損傷または炎症を妨げた、最小の結膜または眼球の充血/腫張(もしあれば、15分で消滅するはずである)を引き起こした。(すべての試薬に対して)1日目および3日目に合計2回、注入を行った。この注入プロトコルは表6に要約される。
角膜染色の測定
5日目の朝に、マウスは、涙量の測定後に、スコポラミンの1回のS.C.投与を受けた。スコポラミン投与2時間後に、角膜染色を、70kDaの分子サイズ(Molecular Probes)の結合した蛍光色素である、Oregon Green Dextran (OGD−488)を使用して行った。その手順は、安楽死の1分前の、ガラスの毛管ピペットを使用する、角膜上の0.5μlのOGDの滴下から成った。マウスを、イソフルラン麻酔ガスの吸引に続く、頸椎脱臼によって安楽死させた。その後、眼を2mlのBSSで洗い流した。余分な液体を、角膜に触れることなく、濾紙によって眼表面から慎重にふき取って乾かした(blotted)。両眼のデジタル像を、1秒の曝露時間の中、CoolSnap HQ2の冷却CCDカメラを有するNikon SMZ−1500の立体顕微鏡を使用して、470nmの励起および488nmの発光波長下で捕らえた。各動物からの両眼を評価した。中心角膜における固定された定関心領域(1mm直径の円)の蛍光強度を、Nikon Elementsのソフトウェアを使用して、3枚のデジタル像において測定し、データは、データベース(Excel, Microsoft)に保存される。結果を、階調の平均±標準偏差として表わした。3回の別々の実験からの結果を、群の統計的な比較のために平均化した。
ヘルパーT細胞経路のメディエーターのレベルに対するnHC−HA/PTX3および凍結乾燥された羊膜粉末(AMP)の効果を、5日間、C57BL/6マウスにおいて作り出された実験的な眼乾燥(EDE)モデルで比較した。Th1(IL−12、IFN−γ、およびT−Bet)、Th−17(IL−23、IL−17、ROR−γt、IL−6、TGF−β1、MMP−3およびMMP−9)、およびTh2(IL−4、IL−13およびGATA3)に関連する因子の発現を、リアルタイムPCRによって以下の群における角膜上皮および結膜において測定した。
統計分析。
統計分析を、GraphPad Prism 5.0のソフトウェア(GraphPad Inc)を使用して行った。群間の全体的な違いを決定するために、一元配置分散分析(ANOVA)を使用し、その後ポストホックテスト(Tukey’s post hoc)が続いた。非対合t検定は、2つの実験群間の統計的な違いを評価するために使用される。
実施例47:
HC−HAは、血管新生を促進するために、IGF1−HIF1α−VEGFシグナル伝達を活性化し、これは、ヒト角膜の線維芽細胞中のTGFβ1の付加によってさらに促進される。
本実施例では、ヒト角膜の線維芽細胞中の血管新生マーカーの誘発に対するHC−HA複合体の効果は検査した。
ヒト角膜の線維芽細胞(96ウェルプレート中に3000細胞/ウェル)を、上に記載されるように、48時間、固定化したHA、可溶性のHC−HA(PBS)(4X)または不溶性のHC−HA(GnHCl)(4X)によって又はそれらなしで、またはHAなしで、プラスチック皿上で播種した。その後、細胞を、IGF1、HIF1αおよびVEGFのmRNA定量化のために採取する前に、24時間TGFβ1によって又はそれなしで処置した。実験分は次のとおりであった:
総RNAを、RNeasy Mini Kit (Qiagen)を使用して抽出し、High Capacity Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems)を使用して逆転写した。各細胞成分のcDNAを、7000 Real−time PCR System(Applied Biosystems)において、特異的なプライマープローブ混合物およびDNAポリメラーゼを使用して、リアルタイムRT−PCRによって増幅した。リアルタイムRT−PCRプロフィールは、95℃で10分間の最初の活性化、その後の95℃での40サイクルの15秒間の変性、および60℃での1分間のアニーリングおよび拡張から成った。各PCR生成物(IGF1、HIF1αおよびVEGF)の同一性は、EC3 Imaging System (BioImaging System)に従い、2%のアガロースゲルを使用して、またその後のPCRマーカーとともに臭化エチジウム染色によって、サイズの決定が確認された。
細胞が休止する状態であったときに、HC−HAは、IGF1 mRNAの2乃至6倍の増加、およびVEGFmRNAの2倍の増加を誘発した(図92)。対照的に、細胞がTGFβ(10ng/ml)によってチャレンジされたときに、HC−HAは、IGF1 mRNAの5乃至12倍の増加、およびVEGF mRNAの5乃至9倍の増加を誘発した。VEGFは、血管新生の主要な要因であることが実証され、これは、所与の網中の毛細管の数を増加させる。VEGF活性化は、IGF1およびHIF1αなどの、上流の調節因子によって制御される。我々の結果は、HC−HAが、血管新生を促進するために、IGF1−HIF1α−VEGF網を活性化することを実証しており、これは、ヒト角膜の線維芽細胞中のTGFβ1の付加によってさらに促進される。
好ましい実施形態が、本明細書に示され記載されているが、このような実施形態が、ほんの一例として提供されることは当業者に明白となるであろう。多数の変化、変更および置換がここで生じ得る。本明細書に記載される実施形態の様々な代替案が、記載される方法を実行する際に利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が、実施形態の範囲を定義するものであり、これらの特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内の方法及び構造が、それによって包含されることが意図される。