JP6439086B1 - MnCoZn系フェライトおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本明細書において、角形比は23℃での値をいう。
このMnZnフェライトは、アモルファス金属等と比較して安価なことから、スイッチング電源等のノイズフィルタやトランスやアンテナの磁心として幅広く使用されている。
例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等には、Fe2O3成分を50mol%未満としてFe2+含有量を減らすことで比抵抗を高めたMnZnフェライトが報告されている。しかし、これらもNiZnフェライトと同様に負の磁気異方性を持つイオンのみから成るため、角形比の低減という課題は全く解決されていない。
なお、異常粒成長とは、何らかの原因により局部的に粒成長のバランスが崩れた際に起こるもので、粉末冶金法を用いた製造時にしばしば見られる現象である。この異常成長粒内には、不純物や格子欠陥等の磁壁の移動を大きく妨げる物質が混入するため、残留磁束密度が上昇し、その結果角形比が上昇する。同時に、結晶粒界形成が不十分になることから比抵抗は低下する。
一方、近年の自動車の電装化の動きは目覚ましく、MnCoZnフェライトも自動車に搭載されるケースが増えているが、同用途にて重要視される特性が機械的強度である。それまでの主用途であった電気製品や産業用機器と比較して、自動車では走行時に振動が発生することから、車載用途ではセラミックスであるMnCoZnフェライトにも振動による衝撃に対し欠損しないものが求められるようになってきている。
すなわち、特許文献7に開示された技術は、得られる磁気特性は十分である一方で、この欠損に対する機械的強度に関しては必ずしも十分ではないところに問題を残していた。
しかしながら、TiO2の添加は一方で、結晶粒内に固溶しTi4+が生成され、価数バランスから一部のFe3+がFe2+に還元されるために、比抵抗の大幅な低下を招くという不利があった。
なお、本明細書では、前述したとおり、角形比については23℃における値を問題とする。というのは、アンテナやノイズフィルタの用途で用いられるMnZnフェライトコアの中には、熱源となる電源トランスや半導体から離れた位置で用いられるものも多く、これらは常温(5〜35℃)で作動する。そのため常温(5〜35℃)範囲の代表値である23℃での磁気特性が良好、すなわち角形比が小さいことが重要だからである。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.基本成分として、
鉄:Fe2O3換算で45.0mol%以上、50.0mol%未満、
亜鉛:ZnO換算で15.5〜24.0mol%、
コバルト:CoO換算で0.5〜4.0mol%および
マンガン:残部
を含み、
上記基本成分に対して、副成分として、
SiO2:50〜300massppmおよび
CaO:300〜1300massppm
を含み、残部は不可避的不純物からなるMnCoZn系フェライトであって、
上記不可避的不純物におけるP、B、SおよびCl量をそれぞれ、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
に抑制し、
さらに、上記MnCoZn系フェライトにおいて、
ラトラー値が0.85%未満、
23℃における角形比が0.35以下、
比抵抗が30Ω・m以上および
キュリー温度が100℃以上
であるMnCoZn系フェライト。
上記仮焼工程で得られた仮焼粉に、所定の比率に調整した副成分を添加して、混合、粉砕する混合−粉砕工程と、
上記混合−粉砕工程で得られた粉砕粉にバインダーを添加、混合した後、造粒粉の粒度分布d90の値が300μm以下および/または圧壊強度が1.50MPa未満となるよう造粒し、得られた造粒粉を成形後、最高保持温度:1290℃以上、保持時間:1時間以上の条件で焼成して、前記1または2に記載のMnCoZn系フェライトを得る焼成工程と
を有するMnCoZn系フェライトの製造方法。
本発明のMnCoZnフェライトは、23℃、1kHzにおける初透磁率が3000以上、23℃、1MHzにおける初透磁率が2000以上、23℃、10MHzにおける初透磁率が150以上という、優れた磁気特性を有する。
まず、本発明において、MnCoZnフェライトの組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、基本成分として本発明に含まれる鉄や亜鉛、コバルト、マンガンについてはすべてFe2O3、ZnO、CoO、MnOに換算した値で示す。また、これらFe2O3、ZnO、CoO、MnOの含有量についてはmol%で、一方副成分および不純物成分の含有量についてはフェライト全体に対するmassppmで表すことにした。
Fe2O3が過剰に含まれた場合、Fe2+量が増加し、それによりMnCoZnフェライトの比抵抗が低下する。これを避けるために、Fe2O3量は50mol%未満に抑える必要がある。しかし、少なすぎた場合には、角形比の上昇及びキュリー温度の低下を招くため、最低でも鉄はFe2O3換算で45.0mol%は含有させるものとする。好ましいFe2O3の範囲は47.1mol%以上、50.0mol%未満であり、より好ましくは47.1〜49.5mol%である。
ZnOは、フェライトの飽和磁化を増加させること、また比較的飽和蒸気圧が低いことから焼結密度を上昇させ、飽和磁束密度を上昇させる働きがあり、角形比の低下に有効な成分である。そこで、最低でも亜鉛はZnO換算で15.5mol%は含有させるものとする。一方、亜鉛含有量が適正な値より多い場合には、キュリー温度の低下を招き、実用上問題がある。そのため、亜鉛はZnO換算で上限を24.0mol%とする。好ましいZnOの範囲は15.5〜23.0mol%であり、より好ましくは17.0〜23.0mol%である。
CoOにおけるCo2+は正の磁気異方性エネルギーをもつイオンであり、このCoOの適正量の添加に伴い、磁気異方性エネルギーの総和の絶対値が低下する結果、角形比の低下が実現される。そのためには、CoOを0.5mol%以上添加することが必須である。一方、多量の添加は比抵抗の低下、異常粒成長の誘発、また磁気異方性エネルギーの総和が過度に正に傾くことから、逆に角形比の上昇を招く。これを防ぐため、CoOは最大4.0mol%の添加に止めるものとする。好ましいCoOの範囲は1.0〜3.5mol%、より好ましくは1.0〜3.0mol%である。
本発明は、MnCoZnフェライトであり、基本成分組成の残部はMnOである必要がある。その理由は、MnOでなければ、高飽和磁束密度、低損失および高透磁率の良好な磁気特性が得られないためである。好ましいMnOの範囲は26.5〜32.0mol%である。
SiO2:50〜300massppm
SiO2は、フェライトの結晶組織の均一化に寄与することが知られており、適量の添加に伴い結晶粒内に残留する空孔を減少させ、残留磁束密度を低下させることで角形比を低下させる。また、SiO2は、粒界に偏析することで比抵抗を高め、同時に粗大な粒径の結晶を減少させることから、焼結体の欠損の指標であるラトラー値を低減することができる。そのため、最低でもSiO2を50massppm含有させることとする。一方、添加量過多の場合には反対に異常粒が出現し、これは欠損の起点となるためラトラー値が上昇し、同時に角形比も上昇することから、SiO2の含有は300massppm以下に制限する必要がある。SiO2の好ましい含有量は、60〜250massppmである。
CaOは、MnCoZnフェライトの結晶粒界に偏析し、結晶粒の成長を抑制する働きを持つ。そのため、適量の添加に伴い、比抵抗が上昇し、残留磁束密度を低下させることで角形比も下げ、なおかつ粗大な結晶を減少させるためラトラー値も低減することができる。そのため、最低でもCaOを300massppm含有させることとする。一方、添加量過多の場合には異常粒が出現し、ラトラー値および角形比も上昇することから、CaOの含有は1300massppm以下に制限する必要がある。CaOの好ましい含有量は、350〜1000massppmである。
P:50massppm未満、B:20massppm未満、S:30massppm未満及びCl:50massppm未満
これらは、酸化鉄等の原料中に不可避的に含まれる成分である。これらの含有がごく微量であれば問題はないが、ある一定以上含まれる場合にはフェライトの異常粒成長を誘発し、得られるフェライトの諸特性に重大な悪影響を及ぼす。本発明のようにFe2O3を50mol%未満しか含まない組成のフェライトは、50mol%以上含むものに比べて、結晶の粒成長が進行しやすく、そのためP,B,S及びCl量が多いと異常粒成長が発生しやすくなる。その場合、残留磁束密度の上昇に伴い角形比が上昇し、結晶粒界の生成が不十分となることから比抵抗は低下し、欠損の起点となるためラトラー値も上昇する。
そこで、本発明では、P,B,S及びClの含有量はそれぞれ、50、20、30及び50massppm未満に抑制するものとした。
なお、上記したP、B、SおよびClを含め、不可避的不純物の許容量は全体で70massppm以下とする必要がある。好ましくは該不可避的不純物の許容量は65massppm以下である。
MnCoZnフェライトは、焼成処理により焼結および粒成長が進み、結晶粒および結晶粒界が構成される。高い飽和磁束密度および低い残留磁束密度を実現可能な結晶組織、すなわち結晶粒界に存在すべき非磁性成分が適切に結晶粒界に偏析し、結晶粒は適度な粒径を保ちかつ均一な磁性を有する成分にて構成される形態を実現するためには、焼結反応が十分に進む必要がある。また欠損防止の観点からも、焼結が不十分な場合には強度が低下するため好ましくない。
以上の観点から、本発明のMnCoZnフェライトは、焼結密度が4.85g/cm3以上とすることが好ましい。これを満たすことで、角形比が低減し、かつラトラー値を低く抑制することができる。なお、この焼結密度を実現するためには、焼成時の最高保持温度を1290℃以上とし、かつこの温度での保持時間を1h以上で焼成する必要がある。最高保持温度は1290〜1400℃が好ましく、保持時間は1〜8時間が好ましい。また、異常粒成長が発生した場合には焼結密度が高まらないことから、異常粒が出現しないよう、先に述べた添加物量や不純物量を適切な範囲内に収めて作製する必要がある。
・造粒粉圧壊強度が1.50MPa未満である造粒粉を用いて作製する。
一般的にMnCoZnフェライトは、造粒粉を金型に充填した後、約100MPaの圧力で圧縮する粉末成形工程を経て、得られた成形体を焼成し焼結させることで得られる。このフェライトの表面には造粒粉同士の隙間に起因する微小な凹凸が焼結後も残存し、これが衝撃に対する欠損の起点となるため、微小凹凸の残存の増加に伴いラトラー値が高くなる。そのため造粒粉同士の隙間を減らすべく、粒度の粗い造粒粉を除去しかつ造粒粉の圧壊強度も一定値以下に抑制することが好ましい。
この条件を満たすために有効な手段としては、粒度に関しては得られた造粒粉を篩に通すことで粒度を調整することが効果的である。一方、造粒粉の圧壊強度を低下させるためには、噴霧造粒法のような熱をかけ造粒する際、温度が過度に高くならないようにすることが効果的である。粒度分布に関しては、JIS Z 8825に記載されたレーザ回折・散乱法による粒子径解析により測定する。「d90」とは、粒度分布曲線における、小粒径側から体積累計90%の粒径を表わす。また、造粒粉の圧壊強度についてはJIS Z 8841に規定された手法にて測定する。
なお、粒度分布d90の値があまりに小さいと、造粒粉間の接触点の増加に起因し流動性が低下することから、粉体成形時の粉の金型充填の不具合および成形時の成形圧力増加の問題が生じるので、d90の下限は75μmとするのが好ましい。また、造粒粉圧壊強度が大きく低下すると輸送時および粉の金型充填の際に造粒粉が圧潰してしまい、流動性が低下することで、やはり粉の金型充填時の不具合および成形時の成形圧力増加の問題が生じるので、圧壊強度の下限は0.50MPaとするのが好ましい。
MnCoZnフェライトの製造については、まず所定の比率となるようFe2O3、ZnO、CoO及びMnO粉末を秤量し、これらを十分に混合した後に仮焼を行う。次に得られた仮焼粉を粉砕し、粉砕粉を得る。この際、本発明にて規定された副成分を所定の比率で加え、仮焼粉とあわせて粉砕する。この工程にて、添加した成分の濃度に偏りがないよう粉末が充分に均質化し、同時に仮焼粉を目標の平均粒径の大きさまで微細化させる。ここに、目標とする粉砕粉の平均粒径は1.4〜1.0μmである。
ついで、目標組成とした粉末に、ポリビニルアルコール等の有機物バインダーを加え、望ましい粒度および圧壊強度の試料が得られるよう適切な条件下にてスプレードライ法等による造粒により造粒粉とする。スプレードライ法であれば、排風温度を270℃より低くすることが望ましい。ここに、造粒粉の好適粒度は、粒度分布d90の値で75〜300μmである。また、造粒粉の好適圧壊強度は、0.50MPa以上1.50MPa未満である。
次に、必要に応じて粒度調整のための篩通し等の工程を経たのち、成形機にて圧力を加えて成形後、適した焼成条件の下で焼成を行う。なお、篩では350μmの目開きのものを通し、篩上の粗粉を除去することが望ましい。また、適正な焼成条件は、最高保持温度は1290以上、保持時間は1時間以上である。
なお、得られたフェライト焼結体は、表面研磨等加工を施しても構わない。
・ラトラー値が0.85%未満
・23℃における角形比が0.35以下
・比抵抗が30Ω・m以上
・キュリー温度が100℃以上
という優れた特性を全て同時に満たす、MnCoZnフェライトを得ることができる。
含まれる鉄、亜鉛、コバルトおよびマンガンをすべてFe2O3、ZnO、CoOおよびMnOとして換算した場合に、Fe2O3、ZnO、CoOおよびMnO量が表1に示す比率となるように秤量した各原料粉末を、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中にて925℃、3時間の仮焼を行った。次に、この仮焼粉に対し、SiO2、CaOをそれぞれ150、700massppm相当分秤量した後に添加し、ボールミルで12時間粉砕した。ついで、得られた粉砕スラリーに、ポリビニルアルコールを加えて、排風温度250℃でスプレードライ造粒し、目開き350μmの篩を通して粗粉を除去した後に、118MPaの圧力をかけトロイダルコアおよび直方体コアに成形した。成形に用いた造粒粉の粒度分布d90は230μm、また圧壊強度は1.29MPaであった。
その後、この成形体を焼成炉に装入して、最高温度1350℃で2時間、窒素ガスと空気を適宜混合したガス流中で焼成し、外径:25mm、内径:15mm、高さ:5mmの焼結体トロイダルコアと、5個の直径:10mm、高さ:10mmの焼結体円柱形状コアを得た。
なお、高純度原料を用いたことから、フェライト中に含有する不純物P,B,SおよびCl量は全て5massppmであった。また、P,B,SおよびClの含有量は、JIS K 0102(IPC質量分析法)に従って定量した。
得られた結果を表1に併記する。
これに対し、Fe2O3を50.0mol%以上含有する比較例1−1、1−2では、Fe2+の生成に伴い比抵抗が大幅に低下している。一方、Fe2O3量が45.0mol%未満である比較例1−3では、角形比の上昇およびキュリー温度の低下が見られる。
また、ZnO量が適正範囲を超える比較例1−4では、キュリー温度の低下が見られる。一方、ZnO量が適正範囲に満たない比較例1−5では、角形比が上昇し、ともに好ましい磁気特性を実現できていない。
さらに、CoO量が適正範囲に満たない比較例1−6では、残留磁束密度が高まるため角形比が高く、一方CoO量が適正範囲を超える比較例1−7でも、磁気異方性の高まりのために角形比が高くなり、ともに好ましい範囲から逸脱している。
含まれる鉄、亜鉛、コバルトおよびマンガンをすべてFe2O3、ZnO、CoOおよびMnOとして換算した場合に、Fe2O3量が49.0mol%、ZnO量が21.0mol%、CoO量が2.0mol%および残部MnO組成となるよう原料を秤量し、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中にて925℃、3時間の仮焼を行った。次に、この仮焼粉に対し、表2に示す量のSiO2、CaOを加え、ボールミルで12時間粉砕を行った。ついで、得られた粉砕スラリーに、ポリビニルアルコールを加えて、排風温度250℃でスプレードライ造粒し、目開き350μmの篩を通して粗粉を除去した後に、118MPaの圧力をかけトロイダルコアおよび円柱コアに成形した。なお、成形に用いた造粒粉の粒度分布d90は230μmであり、圧壊強度は1.29MPaであり、フェライト中の不純物P,B,SおよびCl量は全て5massppmであった。
その後、この成形体を焼成炉に装入して、最高温度1350℃で2時間、窒素ガスと空気を適宜混合したガス流中で焼成し、外径:25mm、内径:15mm、高さ:5mmの焼結体トロイダルコアと、5個の直径:10mm、高さ:10mmの円柱形状コアを得た。
これらの各試料について、実施例1と同じ手法、装置を用いそれぞれの特性を評価した。
得られた結果を表2に併記する。
これに対し、SiO2、CaOのうちどちらか1つでも適正範囲に満たない比較例2−1、2−3では結晶粒界の生成が不十分であることから結晶粒の大きさが整っていないため、ラトラー値が0.85%より高く、また粒界厚みも不十分であることから比抵抗が30Ω・m未満に止まっている。
また、同成分のうち1つでも過多である比較例2−2、2−4および2−5水準では、異常粒が出現しており、焼結が阻害されることから焼結密度が低く、ラトラー値も高い。加えて結晶粒界の生成が不十分であるため比抵抗が低く、かつ残留磁束密度の上昇に伴い、角形比も高くなっている。
実施例1、2に示した手法により、基本成分および副成分が実施例1−2と同じ組成となるような割合になる一方、含有する不純物量が種々に異なる原料を用いて外径:25mm、内径:15mm、高さ:5mmの焼結体トロイダルコアと、5個の直径:10mm、高さ:10mmの円柱形状コアを作製し、実施例1と同じ手法、装置を用いて特性を評価した結果を表3に示す。なお、成形に用いた造粒粉の粒度分布d90は230μm、また圧壊強度は1.29MPaであった。
これに対し、これら4水準のうち1つ、もしくは複数が規定値を上回っている比較例3−1〜3−6はいずれも、異常粒が出現しており、焼結が阻害されることから焼結密度が低いためラトラー値が高く、しかも結晶粒界の生成が不十分であるため比抵抗が低く、さらに残留磁束密度の上昇に伴い角形比も高くなっている。
実施例1、2に示した手法により、基本成分、副成分および不純物成分が実施例1−2と同じ組成となるような割合で作製した成形体を、表4に示す種々の温度条件下にて焼成した。
これらの各試料について、実施例1と同じ手法、装置を用いてそれぞれの特性を評価した。得られた結果を表4に併記する。なお、成形に用いた造粒粉の粒度分布d90は230μm、また圧壊強度は1.29MPaであった。
これに対し、焼成温度が1290℃未満、もしくは保持時間が1時間未満であり、焼結密度が4.85g/cm3未満である比較例3−1〜3−6では、焼結密度が低いため、ラトラー値が高くなっており、かつ結晶粒成長が不十分であるためヒステリシス損失が増大しており、残留磁束密度Brの上昇した結果角形比が高くなっており、強度、磁気特性両方の観点から好ましくない。
実施例1、2に示した手法により、実施例1−2と同じ組成、同じスプレードライ条件にて得られた造粒粉を用い、篩通し条件を変更することで表5に示す粒度分布d90の値としたもの(圧壊強度:1.29MPa)を、118MPaの圧力をかけトロイダルコアおよび円柱コアを成形した。その後、この成形体を焼成炉に装入して、最高温度1350℃で2時間、窒素ガスと空気を適宜混合したガス流中で焼成し、外径:25mm、内径:15mm、高さ:5mmの焼結体トロイダルコアと、5個の直径:10mm、高さ:10mmの円柱形状コアを得た。
これらの各試料について、実施例1と同じ手法、装置を用いてそれぞれの特性を評価した。得られた結果を表5に併記する。
これに対し、d90の値が300μmより大きい比較例5−1〜5−3では、造粒粉間の空隙が多く、欠損の起点が多いことからラトラー値が高く、強度が低下している。
実施例1、2に示した手法により作製した実施例1−2同じ組成で作製したスラリーを、表6に示す排風温度条件下にてスプレードライすることで圧壊強度の異なる造粒粉を得て、目開き350μmの篩を通して粗粉を除去した後に、118MPaの圧力をかけトロイダルコアおよび円柱コアに成形した。なおこの時の造粒粉の粒度分布d90は230μmであった。
その後、この成形体を焼成炉に装入して、最高温度1350℃で2時間、窒素ガスと空気を適宜混合したガス流中で焼成し、外径:25mm、内径:15mm、高さ:5mmの焼結体トロイダルコアと、5個の直径:10mm、高さ:10mmの円柱形状コアを得た。
これらの各試料について、実施例1と同じ手法、装置を用いてそれぞれの特性を評価した結果を表6に併記する。
これに対し、排風温度が過度に高く造粒粉圧壊強度が1.5MPa以上である比較例6−1〜6−3に着目すると、造粒粉潰れ不良に起因する欠損の起点が多いことからラトラー値が高くなっており、強度が低下している。
Claims (5)
- 基本成分、副成分および不可避的不純物からなるMnCoZn系フェライトであって、
上記基本成分として、
鉄:Fe 2 O 3 換算で45.0mol%以上、50.0mol%未満、
亜鉛:ZnO換算で15.5〜24.0mol%、
コバルト:CoO換算で0.5〜4.0mol%および
マンガン:残部
を含み、
上記基本成分に対して、上記副成分として、
SiO 2 :50〜300massppmおよび
CaO:300〜1300massppm
を含み、
上記不可避的不純物におけるP、B、SおよびCl量をそれぞれ、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
に抑制し、
さらに、上記MnCoZn系フェライトにおいて、
ラトラー値が0.85%未満、
23℃における角形比が0.35以下、
比抵抗が30Ω・m以上および
キュリー温度が100℃以上
であり、
かつ上記MnCoZn系フェライトが、粒度分布d90の値が300μm以下の造粒粉の成形−焼結体からなるMnCoZn系フェライト。 - 基本成分、副成分および不可避的不純物からなるMnCoZn系フェライトであって、
上記基本成分として、
鉄:Fe 2 O 3 換算で45.0mol%以上、50.0mol%未満、
亜鉛:ZnO換算で15.5〜24.0mol%、
コバルト:CoO換算で0.5〜4.0mol%および
マンガン:残部
を含み、
上記基本成分に対して、上記副成分として、
SiO 2 :50〜300massppmおよび
CaO:300〜1300massppm
を含み、
上記不可避的不純物におけるP、B、SおよびCl量をそれぞれ、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
に抑制し、
さらに、上記MnCoZn系フェライトにおいて、
ラトラー値が0.85%未満、
23℃における角形比が0.35以下、
比抵抗が30Ω・m以上および
キュリー温度が100℃以上
であり、
かつ上記MnCoZn系フェライトが、圧壊強度が1.50MPa未満の造粒粉の成形−焼結体からなるMnCoZn系フェライト。 - 前記MnCoZn系フェライトの焼結密度が4.85g/cm 3 以上である請求項1または2に記載のMnCoZn系フェライト。
- 基本成分の混合物を仮焼する仮焼工程と
上記仮焼工程で得られた仮焼粉に副成分を添加して、混合、粉砕する混合−粉砕工程と、
上記混合−粉砕工程で得られた粉砕粉にバインダーを添加、混合した後、造粒粉の粒度分布d90の値が300μm以下および/または圧壊強度が1.50MPa未満となるよう造粒し、得られた造粒粉を成形後、最高保持温度:1290℃以上、保持時間:1時間以上の条件で焼成して、
基本成分、副成分および不可避的不純物からなるMnCoZn系フェライトであって、
上記基本成分として、
鉄:Fe 2 O 3 換算で45.0mol%以上、50.0mol%未満、
亜鉛:ZnO換算で15.5〜24.0mol%、
コバルト:CoO換算で0.5〜4.0mol%および
マンガン:残部
を含み、
上記基本成分に対して、上記副成分として、
SiO 2 :50〜300massppmおよび
CaO:300〜1300massppm
を含み、
上記不可避的不純物におけるP、B、SおよびCl量をそれぞれ、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
に抑制し、
さらに、上記MnCoZn系フェライトにおいて、
ラトラー値が0.85%未満、
23℃における角形比が0.35以下、
比抵抗が30Ω・m以上および
キュリー温度が100℃以上
であるMnCoZn系フェライトを得る焼成工程と
を有するMnCoZn系フェライトの製造方法。 - 前記造粒がスプレードライ法である請求項4に記載のMnCoZn系フェライトの製造方法。
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Citations (5)
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2018
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