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JP7088237B2 - 電場非対称波形イオン移動度分光分析装置 - Google Patents

電場非対称波形イオン移動度分光分析装置 Download PDF

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Description

本発明は電場非対称波形イオン移動度分光分析(field asymmetric waveform ion mobility spectrometry:FAIMS)を行うための装置に関する。
イオン移動度分光分析(ion mobility spectrometry:IMS)はガス相のイオンをキャリアバッファガス中での各イオンの移動度に基づいて分離するために用いられる分析技術である。
リニアIMSではイオンが各イオンの絶対移動度Kに応じて分離される。
非リニア型IMSでは変化する電場に対する各イオンの応答に応じてイオンが分離される。
電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS、非特許文献1)は、微分移動度分光分析(differential mobility spectrometry: DMS、非特許文献2)としても知られており、イオンが分析間隙(「FAIMS間隙」の名でも知られている)を通過する際、電場強度の関数としてのガス中での移動度の違いによりイオンを分離するという、確立された非リニア型IMS法である。移動度の違いはイオン及びガス分子の形状及び物理化学的特性に依存する一方、イオン質量とは弱い相関しかない。このように質量分析(MS)に対する強い直交性があることから、FAIMS/MSシステム(イオンをFAIMSで分離した後、MSで分離する装置)は強力な分析のアプローチとなる。複数のFAIMS/MSシステムが既に市販されているが、これまで顧客の支持は限られている。その大きな理由は、FAIMS分離なしでは満足なMS性能が得られず(つまり、FAIMS/MSシステムのFAIMS装置がFAIMS分離をオフにした「透過モード」で作動している間は満足なMS性能が得られず)、そうするにはFAIMS装置をFAIMS/MSシステムから物理的に取り外すしかないからである。
現在大手ベンダーにより市販されている(単体又はMS接続用の)FAIMS段は大気圧で作動し、周波数とHF/LF比を固定した二重正弦波(2種類の高調波の重畳)又はそれに近いプロファイルを用いている。このプロファイルは、理論的に分解能を最大にする理想的な矩形波から大きく外れている。
特許文献1は真空微分型イオン移動度分光計(DMS)を質量分析装置と組み合わせて用いることを記載している(請求項1参照)。特に特許文献1は多重極形及び平面形を含む様々な構成のDMSの使用について記載している。更に同文献は、多重極形ではイオンのFAIMS分離を行うモード(分離モード)とFAIMS分離を行わずにイオンを通過させるモード(透過モード)という2つの動作モードが利用できることを教示している。動作圧力やFAIMS用電源ユニット(PSU)の設け方も開示されている。特許文献1では、同軸の多重極を、全てのイオンの輸送を許可するデューティ比50%に設定した波形を持つ四重極として作動させることにより透過モードを達成している。
特許文献2は微分イオン移動度分光計用の分割電極について記載している。同文献では、「2つの同心円筒電極の間に形成される、曲率半径が変化する(中略)ものと等し」い電場が形成されるように電圧を印加することができると述べられている(第4欄59~67行参照)。つまり特許文献2は、なぜそうなり得るかは教示していないものの、平面FAIMSを用いても、2つの同心円筒電極の間に形成することができる電場を作り出すことができると指摘している。
米国特許第8610054号 米国特許第7863562号 米国特許第6107628号 米国特許第7045778号 米国特許第7550717号
R・W・パービス(R. W. Purves)他、レビュー・オブ・サイエンティフィック・インスツルメンツ(Review of Scientific Instruments)、1998、69、4094 I・A・ブリャコフ(I. A. Buryakov)他、インターナショナル・ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリ(International Journal of Mass Spectrometry)、イオン・プロセシーズ(Ion Processes)、1993、128、143 「FAIMS パート1 セパレーション・オブ・イオンズ・ウィズ・FAIMS(FAIMS, PART 1. Separation of Ions with FAIMS)」、[online]、[2020年6月30日検索]、インターネット<URL: http://www.faims.com/howpart1.htm> A・A・シュバーツバーグ(A. A. Shvartsburg)他、ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティ・フォー・マス・スペクトロメトリ(Journal of American Society for Mass Spectrometry)、2013、24、109 A・A・シュバーツバーグ(A. A. Shvartsburg)他、アナリティカル・ケミストリ(Analytical Chemistry)、2018、90、936 Y・イブラヒム(Y. Ibrahim)他、ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティ・フォー・マス・スペクトロメトリ(Journal of American Society for Mass Spectrometry)、2006、17、1299 A・V・トルマチェフ(A. V. Tolmachev)、ニュークレア・インスツルメンツ・アンド・メソッズ・イン・フィジックス・リサーチ・セクションB(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B)、1997、124、112 A・A・シュバーツバーグ(A. A. Shvartsburg)他、アナリティカル・ケミストリ(Analytical Chemistry)、2006、78、3706
本発明は以上の事柄に鑑みて成されたものである。
本発明の第1の態様は、電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
電源と
を備えており、前記装置が、
前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモード、及び
前記分析軸の方へイオンを収束させるために前記分析間隙内に閉じ込め電場を生成するように前記電源が第2の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加する透過モード
で作動するように構成されていることを特徴としている。
本発明者らは事実上の透過モードを持つ良好な低圧力のFAIMS分離(LP-FAIMS分離)を提供する上で一対の分割平面電極が特に好適であることを見出した。
ここで、特許文献1及び2のいずれも分割平面電極を透過モードで用いることを開示していないことに注意されたい。
当該技術で公知の原理によれば、(装置がFAIMSモードで作動しているときに)分析間隙内に生成される非対称な時間依存性電場は高電場(HF)状態と低電場(LF)状態の間で繰り返し振動する(2つの状態を行き来する)ことができ、その非対称な時間依存性電場は所定の周波数fで時間周期T毎に繰り返す。時間依存性電場の時間周期Tの1回目の部分の間はセグメント群に高電場(HF)の電圧群を印加することでHF状態を作り出すことができる。時間依存性電場の時間周期Tの2回目の部分の間はセグメント群に低電場(LF)の電圧群を印加することでLF状態を作り出すことができる。こうして、セグメント毎に、FAIMSモードで該セグメントに印加される(各々の)第1の電圧波形は、HF状態を作り出すように構成されたHF電圧と、LF状態を作り出すように構成されたLF電圧とを含むことができる。各セグメントに印加されるHF電圧とLF電圧はセグメント毎に振幅及び極性が異なっていてもよい。特に、HF電圧をLF電圧より大きな振幅でより短い時間だけ印加することができる。しかし、分析間隙内に生成される非対称な時間依存性電場の形状(電場線)はHF状態及びLF状態のどちらでも同じでなければならない。
非対称な時間依存性電場の時間周期Tの間で(HF電圧を各セグメントに印加することによる)HF電場の生成に消費される時間部分(つまり前の段落で言及した「第1の部分」)はデューティ比dとして知られている。非対称な時間依存性電場の時間周期T内で(LF電圧を各セグメントに印加することによる)LF電場の生成に消費される時間と(HF電圧を各セグメントに印加することによる)HF電場の生成に消費される時間との比はf値として知られている。ここで、f値=(1-d)/dである(例えば、d=0.2ならf値は4になる)。
当該技術で公知のように、非分割平面電極を用いるFAIMS装置では、HF状態を得るために装置の平面電極に印加される最大振幅の電圧である「分散電圧」(dispersion voltage:DV)が定義されることがある。
分割平面電極を用いるFAIMS装置の場合、HF状態を得るために分割平面電極のうち1つのセグメント(典型的には中央のセグメント)に印加される最大振幅の電圧を分散電圧と定義することができる。
本発明のいずれの態様においても、電源は、装置がFAIMSモードで作動しているとき、補償電圧(compensation voltage:CV)と呼ばれる追加のDC電圧群を第1の電圧波形群と同時に全てのセグメントに印加するように構成することができる。疑念を避けるために述べておくと、セグメント群に印加されるDC電圧群(CV)はセグメント毎に異なるDC電圧を含んでいてもよい。つまり、各セグメントに印加されるDC電圧は他のセグメントに印加されるDC電圧と同じである必要はない(ただし、例えば収束が必要ない場合等、事例によってはDC電圧が全て同じでもよい)。当該技術で公知のように、補償電圧はどのイオンが分析間隙を通過するようにするかを選択するものであり、時間的に固定したり、非特許文献3で説明されているように、スペクトルを得るために走査したり(時間的に次第に変化させたり)できる。
本装置が収束を行うように構成されている場合(後述する本発明の第2及び第3の態様を参照)、全てのセグメントに補償電圧を印加することにより得られる電場は、第1の電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極に印加することにより生成される電場と略同一の形状を有する電場となることが好ましい。当業者であれば、このような形状を持つ電場を生成する補償電圧を発生する手段を、例えば独立に制御される複数の電源ユニット又は電圧分割器で容易に実装できるだろう。
本装置は分析間隙内のガス圧を制御するためのガス制御部を備えていることが好ましい。
ガス制御部は、透過モードにおける分析間隙内のガス圧がFAIMSモードに比べて低くなるように分析間隙内のガス圧を制御するように構成されていることが好ましい。
ガス制御部は、FAIMSモードにおいて、分析間隙内のガス圧を1~200mbarに、より好ましくは5~100mbarに、更に好ましくは5~50mbarにするように構成されていることが好ましい。
本装置が多価のタンパク質の分離に用いるために構成されている場合、前記ガス制御部は、FAIMSモードにおいて、分析間隙内におけるガス圧を1~20mbarにするように構成されていてもよい。
ガス制御部は、分析間隙内に混合ガスが含まれるように該分析間隙への複数のガスの供給を制御するように構成されていることが好ましい。混合ガスは窒素(N2)、水素(H)及びヘリウム(He)のうち2種類以上を含むものとすることができる。混合ガスはHeとN2、又はHとN2とすることができる。
ガス制御部は、透過モードにおいて、分析間隙内のガス圧を20mbar以下、より好ましくは10mbar以下、更に好ましくは5mbar以下にするように構成されていることが好ましい。このガス圧はFAIMSモードに用いられる圧力と違っていてもよく、それより低いことが好ましい。
第1の電圧波形群は第1の周波数で繰り返し、第2の電圧波形群は第2の周波数で繰り返すことが好ましい。第1の周波数は第2の周波数よりも低いことが好ましい。
前記第1の周波数は5kHz~5MHzの範囲内、10kHz~1MHzの範囲内、又は25kHz~500kHzの範囲内とすることができる。
前記第2の周波数は500kHz以上、1MHz以上、2MHz以上、又は3MHz以上とすることができる。
第1の電圧波形と第2の電圧波形は略矩形状であることが好ましい。
電源はデジタル電源とすることができる。これは第1及び第2の電圧波形が異なる周波数と略矩形状の波形(上記参照)を持つことができるようにする特に簡便な方法である。
本装置はFAIMSモードでは0.5より小さい又は大きいデューティ比で作動するように構成されていることが好ましい。
電源は、一又は複数のRF電圧波形を生成し、容量分圧器の配列を介して前記RF電圧波形を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加することにより、第1の電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するように構成することができる。
電源は、一又は複数のRF電圧波形を生成し、前記RF電圧波形を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに前記容量分圧器の配列を用いずに(例えば該セグメントに直接)印加することにより、第2の電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するように構成することができる。
電源は分割平面電極のセグメントに印加されている電圧波形の周波数を第1の周波数値から第2の周波数値へ略即座に変化させるように構成されていることが好ましい。ここで、「略即座に」とは周波数が変化する前の1サイクルの電圧波形のうちに(つまり、第1の周波数値をf1として1/f1のうちに)その変化が生じることを意味するものとすることができる。これは、電源がデジタルで制御されていれば最も簡便に実現できる。電源は、例えばソフトウェアを介したユーザ入力に従って第1の周波数値から第2の周波数値へ周波数を変えるように構成されていてもよい。
電源は分割平面電極のセグメントに印加されている電圧波形のf値を第1のf値から第2のf値へ略即座に変化させるように構成されていることが好ましい。ここで、「略即座に」とはf値が変化する前の1サイクルの電圧波形のうちにその変化が生じることを意味するものとすることができる。これは、電源がデジタルで制御されていれば最も簡便に実現できる。電源は、例えばソフトウェアを介したユーザ入力に従って第1のf値から第2のf値へf値を変えるように構成されていてもよい。
透過モードにおいて第1及び第2の分割平面電極に印加される第2の電圧波形群は、分析軸の方へイオンを収束させるために、分析間隙内において分析軸に直交する面内に四重極場を生成することが好ましい。閉じ込め場の他の形態は当業者には自明であろう。
本装置が透過モードで作動しているときにセグメントに印加される第2の電圧波形のデューティ比は0.5(f値=1)とすることができる。
第1及び第2の分割平面電極は互いに分析間隙の反対側に配置されていることが好ましい。第1及び第2の平面は平行であることが好ましい。
ここで、分析間隙は、間隙高さ方向、間隙幅方向及び間隙長さ方向の各方向に延在していることが好ましい。第1及び第2の分割平面電極のセグメントは間隙幅方向に分配され、間隙長さ方向に延在していることが好ましい。第1及び第2の分割平面電極は間隙高さ方向に互いに分離されていることが好ましい。間隙長さ方向は分析軸に平行であることが好ましい。
間隙高さ方向(d)における分析間隙の高さを本明細書では間隙高さ、又は単に「g」と呼ぶことがある。
間隙幅方向(d)における分析間隙の幅を本明細書では間隙幅、又は単に「w」と呼ぶことがある。
間隙長さ方向(dl)における分析間隙の長さを本明細書では間隙長さ、又は単に「l」と呼ぶことがある。
ある実施形態ではw≧3gである。また、ある実施形態ではw≧4gである。
第1及び第2の平面が平行である場合、間隙高さ方向は第1及び第2の平面に垂直な方向に延在していることが好ましく、間隙幅方向は第1及び第2の平面の両方に平行で分析軸に垂直な方向に延在していることが好ましく、間隙長さ方向は第1及び第2の平面の両方に平行で分析軸に平行な方向に延在していることが好ましい。従って、間隙高さ方向、間隙幅方向及び間隙長さ方向は互いに直交していることが好ましい。
理論的にはセグメントの数はいくつでも構わないが、本装置に含まれるセグメントを好ましくは100個以下、より好ましくは50個以下、更に好ましくは20個以下、更に好ましくは5~15個とする。少なくとも5個のセグメントがあること好ましいが、数を多くすれば収束力の値(例えば、後述するR2/R1という比でパラメータ化される値)を大きくできる。
推進手段は、分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすためのガス流を供給するように構成されたガス供給部とすることができる。
推進手段は、分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための電場を供給するために、第2の方向wに、本装置の一又は複数の電極(これは例えば第1及び第2の平面電極の分割を含んでいてもよい)に電圧波形を印加するように構成された電源とすることができる。
本発明の第2の態様は、電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
電源と
を備えており、
前記装置が、前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が一組の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモードで作動するように構成され、
微分移動度の異なるイオンを異なる空間領域に向けて収束させるために、前記電圧波形群が、前記分析軸に垂直な面内で見たときに前記非対称な時間依存性電場が曲がった等電場強度線を持つように、構成され、各空間領域は前記分析軸に垂直な面内で見たときにそれぞれ曲がった等電場強度線に沿って延在しており、
前記装置は、前記非対称な時間依存性電場による収束の力を変化させるために前記等電場強度線の曲率を変えることをユーザに許可するように構成された収束制御部を備えることを特徴としている。
このように、非対称な時間依存性電場による収束の力(収束力)をユーザが制御することで、装置により運ばれるイオンの割合と装置による分解能とのバランスをとることができる。従来技術の全ての装置と同様に、装置により運ばれるイオンの割合が高いほど分解能は低くなり、逆も然りである。
当業者であれば、ここでの開示から、各等電場強度線が電場強度の等しい位置を結んでいること、そして異なる線は異なる電場強度を表していることが分かるだろう。
ここで「収束の力」(収束力)とは、FAIMS分離の際に生じるイオン損失がどの程度低減又は防止されるかを表すものと理解することができる。イオン損失の原因には、1)拡散と、2)空間電荷斥力が考えられる。収束は分析間隙gの方向に作用することが好ましい。拡散は(温度が一定の場合)1/√Pで増大し、且つ移動度kに比例するため、収束はLP-FAIMSにおいて特に有益である。これは、収束力が大きいほどイオンがより狭い領域に収束されるからである。収束能力を持つ装置は収束能力のない装置よりも透過率が高くなる。収束能力が可変の装置は、FAIMS分離の分解能に関する与えられた要件に対して透過率を最適化することができる。FAIMSには高い分解能を必要としない用途もあるため、収束能力が可変であればより高い透過率を得ることができる。
ここで「微分移動度」とは、適用される2つの異なるE/N値の間のイオンの移動度kの差と理解することができる。装置のFAIMSモードでは一般に、非対称な時間依存性波形の間に(1)非対称な時間依存性波形の高電場電圧部分にわたるE/Nの値(E/N)と(2)低電場電圧部分にわたるE/Nの値という2つのE/N値が存在する。DMSの場合、K(E/N)が非線形の依存性を持つようにE/Nの値を十分に大きくした方がよい。従って、差K(E/N)はDMSにおける選択又は分離の基準となる。
疑念を避けるために述べておくと、FAIMSモードが装置の唯一の作動モードである必要はない。
前記曲がった等電場強度線は、内側円筒電極の外半径がR1、外側円筒電極の内半径がR2である2つの同軸円筒電極の間の空間内に生成される電場に対応していることが好ましい。
このような電場をここでは「円筒電場」と呼ぶこともある。このような電場は適切にスケーリングされた非対称なRF及びDC電圧を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加することにより生成することができる。実施形態によっては、例えば囲まれた矩形領域を形成するために、後述のように第3及び第4の分割平面電極が存在することもある。どんな円筒電場もそれに関連付けられたR2/R1値を持つ。なお、R1とR2は電場と同等のもの作り出す電極に関連しているということ、つまり数学的にはFAIMS装置の分析間隙を用いて形成(再現)される電場と区別がつかないということを理解すべきである。明確化のために述べておくと、R2/R1という比は収束の力を直接決定する。前述した2つの同軸円筒電極の配置の場合、内側円筒電極における電場をE1、外側円筒電極における電場をE2とすると、間隙を横断する電場の変動はE1/E2=R2/R1である(ただし、分割平面FAIMS装置に関しては内側及び外側の円筒電極は仮想的なものである)。収束力に関してはR1とR2の絶対値は重要ではなく、装置の規模に影響するにすぎない。本発明はいかなる実際的な規模にも適用される。
収束制御部は、例えばソフトウェアを介してFAIMS装置の分析間隙内での円筒電場の比R2/R1を変えることをユーザに許可するように構成されていることが好ましい。
第1及び第2の分割平面電極は互いに分析間隙の反対側に配置されていることが好ましい。
好ましくは、前記装置が、
2つ以上のセグメントを含む第3の分割平面電極であって、該第3の分割平面電極のセグメントが第3の平面内に配置され、装置の分析軸に平行な方向に延在している、第3の分割平面電極と、
2つ以上のセグメントを含む第4の分割平面電極であって、該第4の分割平面電極のセグメントが第4の平面内に配置され、装置の分析軸に平行な方向に延在している、第4の分割平面電極と
を更に備え、
第1及び第2の分割平面電極が互いに前記分析間隙の反対側に配置され、前記分析軸に垂直な間隙幅方向に互いに分離されており、
第3及び第4の分割平面電極が互いに前記分析間隙の反対側に配置され、前記分析軸と前記間隙幅方向に垂直な間隙高さ方向に互いに分離されている。
第3及び第4の分割平面電極の使用は、特にw<約8gである装置において、円筒電場を作り出す簡便な方法の1つである。ただし、2つの分割平面電極だけでも、例えばそれらが十分に細長く、例えばw>8gである装置においては、円筒電場を実現することは可能である。
第1及び第2の平面は互いに平行であってもよい。第3及び第4の平面は互いに平行であってもよい。
好ましくは、前記装置が分析間隙内のガス圧を制御するためのガス制御部を備えており、更に任意選択で、FAIMS装置の分割平面電極が入ったチャンバを備えている。
ガス制御部は前記ガス圧を所望の圧力に維持するように構成されていることが好ましい。
ガス制御部は、FAIMSモードにおいて、分析間隙内のガス圧を1~200mbarに、より好ましくは5~100mbarに、更に好ましくは5~50mbarにするように構成されていることが好ましい。
前記装置が出口スリットを有する障壁を備えており、推進手段が該障壁に向けてイオンを押し動かすように該障壁が分析軸上に位置しており、該障壁が、出口スリットを通過しないイオンを装置の検出器に到達させないように構成されていてもよい。疑念を避けるために述べておくと、障壁と出口スリットは分析間隙より向こう側、つまり例えば間隙長さ方向における電極平面の範囲を超えた位置にあってもよく。更に、任意選択で(もしあれば)クランプ電極より向こう側でもよい。
障壁は物理的な障壁とすることもできるし、電気的な障壁(例えば、当該技術で公知である、2つ以上のブラッドベリ・ニールセン・ゲートから成るもの)でもよい。
出口スリットは(間隙高さ方向に)幅wslitを有するものとすることができる。
障壁は取り外しできるように構成することができる(例えば装置が透過モードで用いられる場合、例えば装置が本発明の第1の態様に従って構成される場合)。障壁が物理的な障壁である場合、それは例えば、モータ(例えばリニアモータ)等を用いて障壁を物理的に取り外しできるように構成された機構により実現できる。障壁が電気的な障壁である場合、それは例えば、オフに切り替わるように該電気的な障壁を構成することにより実現できる。
前記装置は障壁により設けられる出口スリットの幅の調節を許すように構成することができる。障壁が物理的な障壁である場合、それは例えば、出口スリットの幅が異なる多数の交換使用可能な障壁を備える機構により実現できる。障壁が電気的な障壁である場合、それは例えば、該電気的な障壁により設けられる出口スリットの幅の調節を許すように該電気的な障壁を構成すること(例えば、2つ以上のブラッドベリ・ニールセン・ゲートにより形成された電気的な障壁に異なる電圧を供給すること)により実現できる。
本発明の本態様において、出口スリットは、分析軸に垂直な面内で見たときに、非対称な時間依存性電場の1本の曲がった等電場強度線の曲率と一致する曲率を有していることが好ましい。
前記装置は障壁により設けられる出口スリットの曲率の調節を許すように構成することができる。障壁が物理的な障壁である場合、それは例えば、出口スリットの曲率が異なる多数の交換使用可能な障壁を備える機構により実現できる。障壁が電気的な障壁である場合、それは例えば、該電気的な障壁により設けられる出口スリットの曲率の調節を許すように該電気的な障壁を構成すること(例えば、2つ以上のブラッドベリ・ニールセン・ゲートにより形成された電気的な障壁に異なる電圧を供給すること)により実現できる。
前記機構は、非対称な時間依存性電場の1本の曲がった等電場強度線の曲率が収束制御部を用いて変更された後、障壁により設けられる出口スリットの曲率が分析軸に垂直な面内で見たときに前記等電場強度線の曲率と一致するように、該出口スリットの曲率の調節を許すように構成することができる。
疑念を避けるために述べておくと、収束制御部はソフトウェア又はハードウェアに実装することができる。
本発明の本態様の装置は本発明の第1の態様との関係で説明したいずれの特徴又はいずれの特徴の組み合わせも持つことができる。
電源は、装置がFAIMSモードで動作しているとき、分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するために、第1及び第2の分割平面電極の各セグメントに前記電圧波形群からそれぞれの電圧波形を印加するように構成されていることが好ましい。
電源は、装置がFAIMSモードで動作しているとき、分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するために、第1及び第2の分割平面電極の各セグメントに前記電圧波形群からそれぞれの電圧波形を印加するように構成された2つの電源ユニットを含むことが好ましい。
この場合、2つの電源ユニットのうち第1のユニットが分散電圧(例えば、後でV/2及び-V/2と呼ぶ電圧)を供給するように構成され、第2のユニットが収束電圧(例えば、後でVfp及びVfnと呼ぶ電圧)を供給するように構成され、(例えば、特定の形状のために必要なとき)異なる電圧が異なるセグメントに印加されるように装置が一又は複数の容量分圧器を含むものとすることができる。このようにすれば必要な電圧波形を効率良く供給できる。後で図3Aを参照しながら例を説明する。
電源は補償電圧(compensation voltage:CV)と呼ばれる追加のDC電圧群を第1及び第2の電圧波形群と同時に全てのセグメントに印加するように構成することができる。
補償電圧は、所定の微分移動度を有するイオンが出口スリット(例えば先に言及したもの)を通って出て行くように構成された所定の値を持つものとすることができる。
前記装置は、例えば微分イオン移動度スペクトルを出力するために、異なる所定の微分移動度を有するイオンが異なる時点において出口スリットを通って出て行くように補償電圧を走査するように構成することができる。
電源が第1及び第2の分割平面電極のセグメントへの前記電圧波形群の印加と同時に全てのセグメントに補償電圧を印加するように構成されている場合、補償電圧を全てのセグメントに印加することにより生成される電場が、前記電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加することにより生成される電場と略同一の形状を有する電場となることが好ましい。
本発明のいずれの態様においても、前記装置は、該装置の分析軸に平行な方向に分析間隙を通り抜けたイオンを検出するように構成された検出器を含むことができる。
本発明の第3の態様は、電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
電源と
を備えており、
前記装置が、前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモードで作動するように構成され、
微分移動度の異なるイオンを異なる空間領域に向けて収束させるために、前記電圧波形群が、前記分析軸に垂直な面内で見たときに前記非対称な時間依存性電場が略直線状の等電場強度線を持つように、構成され、各空間領域は前記分析軸に垂直な面内で見たときにそれぞれ略直線状の等電場強度線に沿って延在していることを特徴としている。
この場合、本発明者らは、装置に後述のような障壁を設ければ高い透過率と高い分解能が同時に得られることを見出した。
前記装置は、非対称な時間依存性電場による収束の力(例えば分析間隙内の所定の箇所で計算される)を変化させるために等電場強度線の勾配(例えば前記所定の箇所で計算される)を変えることをユーザに許可するように構成された収束制御部を備えることが好ましい。なお、一般に、分析間隙内のある1箇所における等電場強度線の勾配を変化させれば、分析間隙内の他の箇所においても同様に等電場強度線の勾配が変化することになる。
この場合、装置に後述の障壁を設ければ、装置により運ばれるイオンの割合と装置による分解能とのトレードオフを必要とすることなく、非対称な時間依存性電場による収束の力(収束力)をユーザに制御させることができる。一般に、装置により運ばれるイオンの割合が高いほど分解能は低くなり、逆も然りである。
分析間隙内の一定の箇所において、等電場強度線の勾配は間隙高さ方向における距離に対する電場の微分であると近似できる。これは、2本の等電場強度線上にある極めて近い2点における電場強度の差を間隙高さ方向におけるそれら2点間の距離で割ったものに相当する。
前記装置が出口スリットを有する障壁を備えており、推進手段が該障壁に向けてイオンを押し動かすように該障壁が分析軸上に位置しており、該障壁が、出口スリットを通過しないイオンを装置の検出器に到達させないように構成されていてもよい。疑念を避けるために述べておくと、障壁と出口スリットは分析間隙より向こう側、つまり例えば間隙長さ方向における電極平面の範囲を超えた位置にあってもよく。更に、任意選択で(もしあれば)クランプ電極より向こう側でもよい。
障壁は物理的な障壁とすることもできるし、電気的な障壁(例えば、当該技術で公知である、2つ以上のブラッドベリ・ニールセン・ゲートから成るもの)でもよい。
出口スリットは(間隙高さ方向に)幅wslitを有するものとすることができる。
障壁は取り外しできるように構成することができる(例えば装置が透過モードで用いられる場合、例えば装置が本発明の第1の態様に従って構成される場合)。障壁が物理的な障壁である場合、それは例えば、モータ(例えばリニアモータ)等を用いて障壁を物理的に取り外しできるように構成された機構により実現できる。障壁が電気的な障壁である場合、それは例えば、オフに切り替わるように該電気的な障壁を構成することにより実現できる。
前記装置は障壁により設けられる出口スリットの幅の調節を許すように構成することができる。障壁が物理的な障壁である場合、それは例えば、出口スリットの幅が異なる多数の交換使用可能な障壁を備える機構により実現できる。障壁が電気的な障壁である場合、それは例えば、該電気的な障壁により設けられる出口スリットの幅の調節を許すように該電気的な障壁を構成すること(例えば、2つ以上のブラッドベリ・ニールセン・ゲートにより形成された電気的な障壁に異なる電圧を供給すること)により実現できる。
本発明の本態様において、出口スリットは直線状であって、分析軸に垂直な面内で見たときに、非対称な時間依存性電場の1本の直線状の等電場強度線と一致する方向に延在していることが好ましい。
分析軸に垂直な平面で見たときに非対称な時間依存性電場が略直線状の等電場強度線を有し、該等電場強度線が直線状の出口スリットに対して平行に組み合わされる(straight combined with)ように構成された分割平面FAIMS装置は、従来から全てのFAIMS及びDMS装置が抱えていた分解能と透過率の間のトレードオフの問題を解消する。従って、高い透過率とともにより高い分解能を達成できる。最も高い分解能が最も高い収束力において達成できる。
また、略直線状の等電場強度線はスリットの形状が収束力と無関係であることを意味する。
略直線状の等電場強度線はかなりの距離(例えばw/4以上の距離)にわたって略直線状であることが好ましい。完全に直線状の等電場強度線を得ることが困難であることは当業者なら理解できるであろう。
電源は補償電圧(compensation voltage:CV)と呼ばれる追加のDC電圧群を第1及び第2の電圧波形群と同時に全てのセグメントに印加するように構成することができる。
補償電圧は、所定の微分移動度を有するイオンが出口スリット(例えば先に言及したもの)を通って出て行くように構成された所定の値を持つものとすることができる。
前記装置は、例えば微分イオン移動度スペクトルを出力するために、異なる所定の微分移動度を有するイオンが異なる時点において出口スリットを通って出て行くように補償電圧を走査するように構成することができる。
電源が第1及び第2の分割平面電極のセグメントへの前記電圧波形群の印加と同時に全てのセグメントに補償電圧を印加するように構成されている場合、補償電圧を全てのセグメントに印加することにより生成される電場が、前記電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加することにより生成される電場と略同一の形状を有する電場となることが好ましい。
間隙高さ方向における分析間隙の高さを本明細書では間隙高さ、又は単に「g」と呼ぶことがある。
間隙高さに対する間隙幅の比(w/g)は2~6の範囲内、より好ましくは3~5の範囲内、更に好ましくは3.5~4.5の範囲内とすることができ、特に4程度とすることができる。この限定は、装置が(他の箇所で説明した)第3及び第4の分割平面電極を含んでいる場合に好ましいが、第3及び第4の分割平面電極が装置に含まれていない場合にはこの選択は当てはまらない。
本発明の本態様の装置は本発明の第1の態様との関係で説明したいずれの特徴又はいずれの特徴の組み合わせも持つことができる。
本発明の本態様の装置は本発明の第2の態様との関係で説明したいずれの特徴又はいずれの特徴の組み合わせも持つことができる。
本発明の更に別の態様は、
本発明の前記いずれかの態様に係る、FAIMSを行うための装置と、
質量分析を行うための装置と、
を含む分析装置であって、
前記質量分析を行うための装置が前記FAIMSを行うための装置の分析間隙を通過したイオンを分析するように構成されている(この場合、本分析装置を「FAIMS/MS装置」と呼ぶことができる)、又は、前記FAIMSを行うための装置が前記質量分析を行うための装置により選択されたイオンを分析するように構成されている(この場合、本分析装置を「MS/FAIMS装置」と呼ぶことができる)ことを特徴としている。
本発明の更に別の態様は、本発明の前記いずれかの態様に係る、FAIMSを行うための装置を操作する方法を提供する。
記載された態様及び好ましい特徴の組み合わせは、そのような組み合わせが明らかに不可能であるか明示的に回避されている場合を除き、本発明に含まれる。
本発明の原理を説明する実施形態及び実験について添付図面を参照しながら以下に議論する。
例としてLP-FAIMS装置を組み込んだFAIMS/MS装置を示す図。 分割平面電極を組み込んだ模範的なFAIMS装置を示す図。 模範的な電圧分割を用いて図2のFAIMS装置をFAIMSモードと透過モードで作動させるために用いられるFAIMS電源ユニットを示す図。 (a)、(b)透過モードで用いられる調和的電圧波形及び矩形波状電圧波形の印加をそれぞれ示す図。 円筒電場の特性を示す図。 円筒電場の特性を示す図。 別の模範的なFAIMS装置と模範的な等電位面を示す図。 収束を行う分離モード(収束は電場強度線による)で作動させた図6のFAIMS装置と、電場勾配や収束作用のない非分割平面LP-FAIMSとを比較した図。 図6のFAIMS装置を円筒電場により収束を行う分離モードで作動させた場合を示す図。 図6のFAIMS装置をほぼ線形の電場により収束を行う分離モードで作動させた場合を示す図。 各電極の全てのセグメントが同じ電位を持つ分割平面FAIMS装置を示す図。 様々な構成のFAIMS装置について等電場線を示す図。 透過モードで作動する分割平面LP-FAIMS装置のシミュレーションを示す図。 電場勾配がないFAIMS分離モードのシミュレーションの結果得られた補償電圧(分散電圧)曲線を示す図。 平面LP-FAIMS装置を用いて行った実験(線形電場勾配のある場合とない場合)の結果得られた解像度/感度図。 平面LP-FAIMS装置を用いて行った実験から更に得られた結果。
本発明の態様及び実施形態について添付図面を参照しながら以下に議論する。更なる態様及び実施形態は当業者には自明であろう。本稿で言及する全ての文書は参照により本明細書の一部として組み込まれる。
全体として言えば、本願の開示は微分イオン移動度分光分析装置の可能な構造及び質量分析装置との可能な使い方に関係している。特にその使い方は低圧力DMS装置の動作の改善に関係している。
全体として言えば、以下の各例は特許文献1の教示の上に作り上げられたものとみることができ、分割平面電極と、改善された分離モード及び透過モードとを有するFAIMS装置の提供に役立つ。
<発明の背景>
本発明の考案に際し、本発明者らは、特許文献1に記載のような低圧力FAIMS(LP-FAIMS)装置のプロトタイプを、同文献に開示されている多重極の構成(同文献の図2の電極26の形状を有するもの)及び(非分割)平面型の構成(同文献の図2の電極20の形状を有するもの)の両方を用いて組み立てた。低圧力にすることで分析間隙(FAIMS間隙)をかなり広げるとともに、波形周波数とピーク振幅(分散電圧、diffusion voltage: DV)を抑えることができた。分散電圧の周波数とピーク振幅を低くしたことでデジタルスイッチング技術によるDV波形の生成が可能になり、特に、周波数とデューティ比dを幅広く変えられるほぼ矩形状のDV波形を生成できた。なお、先に示した定義によりデューティ比dはf=(1-d)/dというf値で表すことができる。
FAIMSにおける分散電圧と補償電圧(CV)は間隙幅に合わせて調整するために分散電場(E)及び補償電場(E)として表すことが好ましい。LP-FAIMSでは、電場をガスの数密度N(単位体積当たりの分子数)で割ってE/NとE/Nを求めることにより換算電場に変換することが好ましい。これは分離のガス圧依存性を取り除いたり(電気双極子配列を示すマクロ分子を除く)、分離の温度依存性を低くしたりする上で役立つ。低圧力にすることでE/N値を高くすることができ(この値は通常、ガス中での絶縁破壊により制限される)、分離がより深く非線形IMS領域まで及ぶ。これにより分解能が改善され、拡散の増大によるピーク広がりが相殺される(等方性拡散係数はP-1/2に比例する)。本発明者らは平面間隙の構成が多重極の形状よりも高い分解能をもたらし得ることを見出した。
当該技術において、電極を異なる温度に設定することで分析間隙を横断する一定の温度勾配(ひいてはN及びE/Nの勾配)を形成し、間隙中でFAIMS分析を受けているイオンを収束することが提案されている(例えば特許文献4参照)。大気圧FAIMSの技術で知られているように、このような勾配は、イオン移動度KをE/Nの関数として表したK(E/N)の形状が適切なら、イオンを間隙中央線へと収束させる(間隙中央線=間隙に沿った、間隙高さ方向における中央線)。
本発明者らは、本発明つまり平面LP-FAIMSの文脈において一定の温度勾配を実装した。ここで本発明者らは、温度勾配を課すと、温度勾配のない同等の平面間隙型の装置の場合よりも最大分解能を高くできることを見出した。最適な性能を得るには下流の各チャンバ内の圧力を一定に保ちながらLP-FAIMSチャンバ内のガス圧を調節する必要があった。また本発明者らは、温度勾配を課すと、拡散及び空間電荷広がりによる電極表面でのイオン損失が低減することによりイオン透過率が高まることも見出した。信号ゲインも高く、典型的には4倍にもなることがあるが、この透過率のゲインはFAIMS分離の解像度を多少失うことで得られたものである。
そのために、下流のチャンバ内の圧力に影響を与えずにLP-FAIMS内の圧力を素早く変化させて安定させるための手段が考案された。
本発明者らは、平面FAIMS装置に一定の温度勾配を実装した他者の事例を知らない。
我々の市場分析によると、FAIMS/MSの技術を成熟させてより広い支持を得るには、分離なしで(つまり「FAIMSをオフに切り替え」て透過モードにしたとき)FAIMS段を通過するイオンの透過率を最大化することが不可欠である。FAIMS装置を何度も物理的に取り外したり再設置したりするという解決策は受け入れられない。なぜならそれは時間がかかり、熟練した作業者を必要とし、仕事の流れを中断し、一般に再設置のたびに確認を必要とし、両ユニットの部品に負荷をかけるからである。また、FAIMSオンとFAIMSオフの2モードを組み合わせた(事前プログラム式又はデータ依存式の)自動的なデータ取得の機能が望まれている。従って、FAIMSは器械一式の不可分な部分として設計すべきである。市場分析ではもう一つ、高分解能と高感度を同時に達成できないという問題が分かった。例えば、FAIMSは化学的ノイズを除去してトリプシンペプチド等の一定の化学物質群のイオン種に対する検出限界を改善することができる一方、全体的なイオン損失が検出限界の利得に制約を加える。
前述のとおり特許文献1の平面間隙LP-FAIMSの形状は多重極よりも良好な解像度をもたらしたが、FAIMSをオフにすると効果的にイオンを搬送しないことを本発明らは見出した。この限界を克服することが本発明を成した動機の1つである。
言い換えると、解決すべき課題の1つは、微分移動度による識別又は選択をせず事実上全てのイオンを搬送する「透過」モードでありながらも、FAIMS分離モードとの素早い切り替えが機械的な調整なしで可能であるようなモードを提供することである(なお、この問題を、例えば特許文献5で教示されているような正方形状ではなく、平面状の形で克服する必要がある)。
平面FAIMS間隙内でイオンを収束させる公知のアプローチの1つは一方の電極を他方よりも高温に加熱することで間隙を横断する温度勾配を確立することである。温度勾配はイオン拡散及び空間電荷に対抗することによりイオンを収束させる。この収束の手法には複数の大きな問題がある。そのうち4つは手法に固有の問題である。即ち、(1)収束作用はFAIMS分離と一緒にしか働かないため、必要に応じてFAIMSをオフに切り替えることができない(透過モードでイオンを収束する手段がない)。(2)収束力は特定のイオンのK(E/N)特性に強く依存しており、イオン種によっては収束が弱かったり大きく収束がぼやけたりする。(3)ガスを加熱すると収束が移動度の内在的温度依存性と結びつき、結果が予測不能になる。(4)加熱がイオンの解離や異性化を引き起こす恐れがある。以上の他、実際的な問題が2つある。即ち、(5)電極の加熱や冷却は、収束の素早い切り替えやその強度の調節にとって時間が掛かりすぎるため、DDA(Data-Dependent Acquisition)等の多くのモードで利用できない。(6)温度勾配には間隙を横断する熱伝達による上限があり、これが最大収束力を制限する。これらの問題は更なる設計により部分的には対処できるものの、そのコストと複雑さは大変なものになる。このような事情から、本発明者らは電極の温度を操作せずにFAIMS装置におけるイオン収束を達成する方法を見出そうと考えた。
本発明を考案する際、本発明者らは以下の条件を満たすFAIMS装置、好ましくはLP-FAIMS装置を得ることを目指していた。
・分離モードと「透過」モードという2つの動作モードを持つこと。
・分離モードにおけるイオン透過率が改善されること。
・分離モードにおける分解能が向上すること。
・分離モードにおける解像度/感度バランスを容易に調節できること。
・分離モードにおいて分解能と感度が同時に改善されること。
従来技術については、円筒状の間隙(つまり2つの円筒状電極の間の間隙。例えば特許文献1の図2の電極22を参照)やドーム状の間隙(つまり2つの半球間の間隙)を持つFAIMS装置が、平面間隙型の装置(2つの平面電極間に間隙を持つもの。例えば特許文献1の図2の電極20を参照)に比べて透過率が高く解像度が低いものとして知られている。これは、同軸円筒電極に挟まれた環状の間隙内の不均一な(円筒状の)電場が、適切なK(E/N)形状を持つイオンをそのK(E/N)値に対応する領域へ収束させるからである。収束力はR2/R1比で定義される間隙の曲率の増加とともに大きくなる。ここでR1は内側電極の外半径、R2は外側電極の内半径である。
特許文献2は、平面FAIMS電極の複数の特定の要素(各セグメントは分析軸に沿って、つまり間隙中でのイオンの移動方向に沿って延在している)に複数の電圧を印加することで電極間に略円筒状の電場を形成し、それらの電圧を変化させることで真ん中の等電位面の曲率を調節することを教示している。しかしその調節の目的は特に述べられておらず、その調節を達成する手段も開示されていない。更に、特許文献2に示された装置は透過モードにおいてイオンを収束させる手段を提供していない。これらの問題が本願の開示により解決される。
1)本発明の第1の態様
以下に論じる各例では、本発明の本態様を、改善された透過モードを有する平面FAIMS装置を提供するものとみることができる。
本願の開示は平面間隙FAIMSに関し、特に大気圧よりはるかに低いガス圧で作動するもの(LP-FAIMS)に関する。我々は(実験及び/又はシミュレーションで)5~100mbarの圧力範囲を調べたが、それは我々の現有の器械一式とサンプルの関係で制限したものである。より広い1~200mbarという範囲が実用的だと思われる。
本発明の本態様の好ましい特徴は以下の通りである。
1.電極が、間隙中でのイオンの移動方向に沿って延在する少なくとも3つのセグメントに分割されている。こうして得られる装置を以下では分割平面FAIMSと呼ぶことがある。
2.イオンを押し動かして間隙を通過させるための推進手段がある。
3.FAIMSの電源ユニット(PSU)が対称な波形(デューティ比50%、透過モード用)と非対称な波形(デューティ比50%以外の任意の所望の値、FAIMSモード用)とを切り替える手段を有する。
4.2つの電場構成を切り替える手段がある。2つの電場構成は、例えば(a)FAIMS分離用の実質的な双極子場と、(b)イオン閉じ込め(透過モード)用の実質的な四重極場である。後述するように様々な透過モードが考えられる(例えば、後で説明する図3(b)、図3(c)及び図11(a)~(d)参照)。
5.FAIMSのPSUが2つの大きく異なるRF周波数を切り替える手段を有する(例えば、FAIMS分離に最適な値と透過モードにおけるイオン閉じ込めに最適な値は大きく異なるため)。
6.圧力を2つの安定値の間で切り替える手段がある(例えば、FAIMS分離に最適な圧力は透過モードにおけるイオン閉じ込めに最適な圧力を超えることが多いため)。
透過モードでは、絶対移動度又は微分移動度に基づいた意図的な選択又は識別は行わず、拡散やクーロン広がりによる損失を最小限に止めてイオンに間隙を通過させることができる。以下に議論する例では、四重極場がイオンを間隙中央線へと閉じ込めることで、後段のアパーチャを通じた下流段階へのイオンの搬送効率が高められる。
実験によると、特許文献1の多重極型装置は平面間隙型の装置よりもFAIMS分解能が低く、またイオン収束力を調節するための有効な手段を提供していなかった。特許文献1によると、イオンは様々な手段により形成されるガス流又は電場により間隙に沿って動かされる。同様の方法を本願の開示にも適用できる。収束力を変えられるFAIMS装置は多くの用途にとって有用であろう。例えば、化学的干渉を除去して質量分析の検出限界(感度)を高めたり、タンパク質イオンの荷電状態(charge states)の多重度を低減させたりする際、高い感度が重要である。十分な試料が利用できる場合、(例えば脂質やペプチドの)構造異性体のもつれをほどくにはより高い分解能が極めて重要である。
本発明によれば、透過モードにおいて、FAIMS段を通るイオンの透過率を100%まで上げることによりLP-FAIMS装置の本来の性能を取り戻すために該装置を質量分析装置等の機器から物理的に取り外す必要がなくなる。本発明は分割平面電極を有するLP-FAIMS装置に応用可能であり、好ましくは大気圧より低い圧力、より好ましくは1~200mbarの範囲内、最も好ましくは5~50mbarの範囲内で作動する。ガスの組成は窒素100%としたり、ヘリウムと窒素を混合したりできる。本発明者らは、LP-FAIMS装置の場合、ヘリウムと窒素の混合ガスが窒素100%に比べて分解能と透過率を大きく高めることができることを見出した。ガスの組成に制限はなく、他にも例えば二酸化炭素と水素が利用できる。
2)本発明の第2の態様
以下に論じる各例では、本発明の本態様を、可変な収束力、改善された透過率及び改善された分解能を有する実用的な平面FAIMS装置を提供するものとみることができる。
当該技術では、(i)同軸円筒状及び/又は同心球面状の電極を用いて確立される曲がった(特に円筒状の)間隙を持つものと、(ii)平行平面電極を用いて確立される平面状の間隙を持つものという2種類のFAIMS装置の形状が知られている。平面間隙FAIMSはイオン透過率(感度)を犠牲にして最高の解像度をもたらすことが分かっている。収束力を制御する円筒状FAIMSの重要な計量基準は先に定義したような間隙の曲率である。FAIMS Pro(Thermo Fischer Scientific社の現行製品)では強い収束によりほぼ最大のイオン透過率を得るためにR2/R1=1.2としている。他の市販のFAIMSシステム及びFAIMS-MSシステム、特にFAIMSシステムであるLonestar(Owlstone社)や、Sionex社のスタンドアロンシステムから派生したFAIMS/MSシステムであるSelexION(Sciex社)は、平面間隙型の装置を利用している。
これらのFAIMS装置はいずれも大気圧で作動する。SelexIONシステムはイオン損失を限定するためにイオンの滞留時間が短くなっているが、それでもFAIMS Proより高い解像度をもたらす。平面型大気圧FAIMSによりこれまで達成された分解能の上限は、1価のイオン種の場合は150程度、多価のイオン種の場合は400程度である(非特許文献4)が、イオン透過率/感度が非常に限定されている。
特許文献1はより低いガス圧でFAIMSを作動させる方法、つまり「LP-FAIMS」を教示した。その後、四重極又は飛行時間質量分析に結合された平面状で多重極形のセルを持つLP-FAIMSが例示された(例えば非特許文献5)。平面間隙ユニットを用いた分離の代表例としては、名目上は同重体であるアミノ酸の分離(小型分子への応用の代表)やヒトτタンパク質由来の一重及び二重リン酸化ペプチドの翻訳後修飾(PTM)の位置が異なるものの分離(最新のプロテオーム及びエピジェネティック解析の代表)がある。その解像度は一般に、相応なイオン透過率が得られるように構成された市販の大気圧FAIMSシステムに匹敵するか、それを超えたが、高解像度FAIMSの解像度には届かなかった。しかし、これらの研究でのイオンの滞留時間は10ms程度であるのに対し、高解像度FAIMSでは100~500ms程度である。短いフィルタ時間は、前段の液体クロマトグラフィ(LC)又はキャピラリ電気泳動(CE)による分離における適当なピーク溶出時間内でFAIMS走査を入れ子式にできるため有益である。
上述のように、LP-FAIMS内の電場はタウンゼンド(Td)を単位とする不変のE/Nに換算して表すことが好ましい。LP-FAIMS内で測定されるE/NへのE/Nの依存性及びそれから導出されるK(E/N)関数は圧力から厳密に独立しており、電場強度のみに依存している。
低圧力で高度に非線形なK(E/N)の領域にアクセスできることにより分離に柔軟性が加わり、解像度が向上する。
先にも述べたように、FAIMS装置を低圧力で作動させることにより実用可能になるデジタルスイッチングは、周波数とHF/LF比(f値と呼ばれる)を幅広く変えられるほぼ矩形の波形を生成してその周波数と振幅を素早く変えることを可能にする。(この技術は圧力を問わず用いることができるが、消費電力と散逸という実際上の制約から電圧が低く抑えられるため、大気圧では狭い間隙に限られ、低解像度になってしまう)。消費電力を抑えるため、エネルギー回生デジタルPSU技術が好ましい。
上述の通りFAIMSにおいて温度勾配を利用してイオンを収束させることが大気圧平面型FAIMSのために提案され、本発明者らの研究(未公開)においてLP-FAIMSについて実証された。本発明者らはN(局所的ガス温度Tを介する)又はEの変動から生じる収束状況が違うことを理解した。前者は一定のE/N勾配を伴うが、それに重畳される内在的なK(T)依存性(イオン種とガス同一性に依存)が事例毎に固有の複雑な挙動を生み出す。後者(曲がった間隙中)は非一定のE/N勾配を伴い、Eは円筒状間隙における1/R又は球状間隙における1/Rとともに増大する。このように、2つのアプローチは同等ではなく、実効的な勾配はいずれも非線形である。上述の通り、温度変化を通じたE/N勾配の確立には内在的及び実用上の不利な面が複数ある。真に線形のE/N勾配であれば相当な動作上の利益を得ることができるが、それは本発明者らが知っている従来技術には見いだせなかった。
本発明の本態様は分割平面電極を用いて実質的に線形のE/N勾配を提供するものとみることができる。これは原理的にはどのガス圧でも可能であるが、LP-FAIMSに最もなじみやすい。なぜなら、物理的により大きな電極の方が機械的な実装が容易である一方、電圧と周波数は低い方が電気的な設計が簡単になるからである。更に、透過モードは大気圧では利用できない。
本発明の本態様の好ましい特徴は以下の通りである。
1.動作圧力範囲は1~200mbarである。
2.LP-FAIMS装置は、間隙中でのイオンの移動方向に沿って延在する少なくとも3つのセグメントをそれぞれ備える2つの平面電極を有している。2つの電極は誘電体スペーサで隔てられていてもよい。
3.イオンを押し動かして間隙を通過させるための手段がある。
4.PSUは少なくとも4つの非対称な波形を出力できる。
5.デューティ比dの非対称な波形が少なくとも2つ、デューティ比(1-d)の非対称な波形が少なくとも1つある。
6.4つの非対称な波形のうち少なくともいくつかと(補償電圧値を確立するために)供給されるDC電圧とが、調節可能な収束力を有する円筒状電場を形成する。
7.LP-FAIMSセル中の圧力を素早く調節して安定させる手段がある。
8.FAIMS間隙内でのイオンのフィルタ時間を決定する手段がある(これは、FAIMS装置より前にあるガス成形ダクトを物理的に交換することにより装置の長さやジェット駆動流を調節することにより行うことができる)。
本願の開示は単純に特許文献2の上に作り上げられているのではなく、いくつかの面では同文献の教示から外れている。特に、特許文献2は可変な実効半径を有する円筒電場を形成するように電圧を印加することを教示している。しかし、それを達成する目的や方法は同文献では着想も教示もされていない。本発明者らは、収束力が、間隙を横断する最大電場半径の最小電場半径に対する比R2/R1と直接関係しており、絶対的な電場半径は収束力にとって重要ではないことを見出した。
電極セグメント上の電圧に由来する円筒電場は物理的な円筒状間隙内の円筒電場と等価である。分割平面LP-FAIMS内の収束力は、所望の実効R2/R1値を持つ電場が生じるように電極電圧を変えることにより調整できる。実効R2/R1値は間隙幅(g)とは独立に設定できる。しかし、今の場合、収束領域(一定の微分移動度を持つイオンが収束される方向にある空間領域)は円弧であり、その曲率が大きいほど収束力が強まる、つまり間隙を横断するE/N勾配が大きくなる。その勾配がなければ、E/Nは次の式(1)で表されるようにE/Nに依存する。
Figure 0007088237000001

ここで、α、α及びαは非線形な移動度の挙動を記述する「アルファ係数」である。F2からF7までの項は波形プロファイルに依存する。例えば、f値が4である理想的な矩形波の場合、これらの項はそれぞれ0.25、0.188、0.203、0.199、0.200、及び0.200である。電場勾配がある場合(円筒FAIMSの場合のように)、式(1)はある(均衡)半径において満たされる。この半径より小さい又は大きい半径にずれたイオンは前記半径への復元力を受ける。つまり安定均衡である。この収束作用は、分離が起きる半径方向への(異方性で縦方向の)拡散を上回る。電極セグメント上の電圧に由来するE/N勾配を持つ平面間隙内では、曲がったE/N等値面に直交する拡散が抑えられる。しかし、それらの面に沿った(横の)拡散は自由なままであり、分離が進行するにつれてイオン群を次第に曲げてゆく。印加する補償電圧(CV)を様々に変えると間隙を横断して全イオン群が走査され、CV値の一定範囲にわたりイオンがFAIMS装置を通過できるようになる。そうするとCVスペクトル内のピークが広がり、分離の解像度が低下する。このことは物理的に曲がった間隙を用いる技術において知られている。
分割平面FAIMSにおいて十分に正確な円筒電場を得るには、横方向の電極のスパン(w)がg(FAIMS間隙の幅)よりも一桁程度大きい必要がある。そうすれば電極のエッジ付近のフリンジ電場は装置の軸付近(間隙に沿って移動するイオンが占める領域内)の電場にあまり影響しなくなる。
適当な収束力が必要である場合、間隙を広くすると所要の電圧を生成する上で困難を持ち込む可能性がある。
完全に閉じ込められた間隙(例えば第1、第2、第3及び第4の分割平面電極を持つもの)の場合、全ての電極に適切な電圧が印加されていれば、必要なw/g比は多少小さくすることができる。セグメント幅は、軸からエッジに向かって増加するように電極のスパンにわたって変えることができる。
3)本発明の第3の態様
以下に論じる各例では、本発明の本態様を、可変な収束力及び改善された分解能とともに改善された透過率も有する平面FAIMS装置を提供するものとみることができる。
本態様では、セグメント電圧を調節して、ほぼ線形のEの勾配を、間隙の中央線と間隙の軸を取り囲むかなりの体積で生じさせることができる。EひいてはE/Nの実質的に平面的な等値面が電極と平行になり、印加される補償電圧に応じていずれかの電極に向かってシフトする。電極形状に対して必要な電圧は数値的な反復により見出すことができる。このような計算の方法は普通に行われており、当業者であれば本願の開示を考慮して実施することができる。本発明者らによる数値計算とモデリングによると、例えば本発明の本態様における各例にとっての最適なw/g比は4程度である。電場を緩和して開放型の間隙にすれば装置の中央線の領域に十分に線形のE/N等値面が得られる。これは好適な線形電場勾配を簡便に形成する方法の一例であるが、他の方法を用いてもよい。
この場合、イオンは前記等値面を取り囲む平面状の層に閉じ込められ、その層の内部で広がることができる。しかし、収束されたイオン群はいまやほぼ平面状になり、特徴的な補償電圧を持つ単一の層だけが平面間隙を通り、狭いアパーチャ(好ましくは間隙面内のスリット)を通ってセルから出て下流の質量分析装置又は他の機器の段階に達する。このアパーチャはFAIMS分離電場を乱さないような形状及び配置とすべきであり、好ましくは「透過」モードが可能になるように取り外し可能又は調節可能とする。アパーチャはフリンジ電場を挟む(該電場の範囲を限定する)電極と一緒に用いてもよく、それをセルの出口付近のかなり強いフリンジ電場の領域を通るイオンを加速するために用いてもよい。イオンがガス流により間隙を通じて運ばれる箇所では、スリットが流れのプロファイルに大きく影響すべきではない。いくつかの実施形態に含まれる障壁はブラッドベリ・ニールセン・ゲートとして作動するワイヤ電極から成るものとすることができる。2つの位相の高周波をゲートに印加するとイオンは止まり、高周波が除去されると通過できる。スリットの有効幅もブラッドベリ・ニールセン・ゲートに印加される高周波の制御により調整可能にすることができる。この構成には、アパーチャを物理的に取り外す必要がなく、所定の方法で素早くオン/オフすることができ、装置から出てくるガス流をあまり乱さないという利点がある。
収束力が大きいほどスリットは細くすべきである。
本発明の本態様の好ましい特徴は、本発明の第2の態様に関して論じた前記特徴1~5、7及び8に加えて以下のものがある。
9.4つの非対称な波形のうち少なくともいくつかと、(補償電圧値を確立するために)供給されるDC電圧とが、独立に変更可能な振幅を有していることで、平面電極に平行な略平面状の等値面を持つ電場を形成する。なお、これは簡単な変更ではなく、線形の電場勾配を達成するにはセグメント間で電圧を分割するやり方を変える必要があるだろう。4つの電圧を単に変えるだけでそのような変化が達成できるとは思えない。
10.装置が出口スリットを有する障壁を備えており、推進手段が該障壁に向けてイオンを押し動かすように該障壁が分析軸上に位置しており、該障壁が、出口スリットを通過しないイオンを分析間隙から外に出さないように構成されていてもよい。
本発明の本態様は、流れ駆動、縦電場駆動又はジェット駆動等、イオンを押し動かして間隙を通過させるどのような仕組みを持つFAIMSにも関係している。前記駆動法は全て特許文献1に記載されている。FAIMSにおけるイオン収束は(例えば装置を長くすることによる)フィルタ時間の増大と組み合わせて用いることができる。普通はこれに伴って拡散やクーロン斥力によりイオンビームが広がってイオン損失が生じるが、ここではそれはない。そのため、イオン損失を緩やかにしながら解像度を高めることができる。
スリットを持つ障壁を強い収束と組み合わせて用いれば、本発明により高い分解能及び短いフィルタ時間とともに良好な透過率が得られる。
<詳細な例>
1)本発明の第1の態様に関する例
図1は例としてLP-FAIMS装置14を組み込んだFAIMS/MS装置1を示している。
図1において、LP-FAIMS装置14を備えるチャンバ6が大気圧イオン化(API)イオン源(本例ではエレクトロスプレイイオン化(ESI)源2)と質量分析(MS)段8との間にある。当該技術で公知のように、適宜の溶媒に溶かした試料がイオン源2に配送され、そのイオン源2が煙状の荷電液滴を生成する。その液滴の少なくとも一部と該液滴から放出されたイオンが脱溶媒管(キャピラリ)4に入り、そこで液滴が蒸発してイオンを放出する。これらのイオンはキャピラリ4から噴出する超音速ガスジェットに運ばれ、1~100mbarの圧力に維持されたチャンバ6に入る。チャンバ6はジェットを減速する手段を含む(特許文献1に開示)。装置14は全てのイオン種をスキマー16へ送るか、その中で選択された微分移動度値を持つ一部のイオン種のみを送る。後者の場合、他のイオン種はFAIMS電極へと偏向させられ、電極表面に当たると同時に中和により破壊される。
図2(a)に示した模範的な分割FAIMS装置は2つの平行な平面電極を備えており、上側の電極にはセグメント18a~18k、下側の電極にはセグメント20a~20kがある。図2(a)は間隙高さ(d)、間隙幅(d)及び間隙長さ(d)の各方向も示している。各電極は3以上のセグメント(例えば100セグメントもの)を備えることができる。今の図では11のセグメントがある。図2(b)は装置の断面を示しており、寸法は例としてg=7.5mm、w=30mmである(ここではw=4g)。各セグメントはL字状で、横方向に2mmのスパンを持ち、互いに0.5mmの隙間を空け、絶縁スペーサにより絶縁された状態で取り付け具に固定されている。図2(c)に示したように、上側と下側の電極はgの値を決める2つの絶縁スペーサ30により分離されている。
円筒状(収束)電場に対応する例として図3(a)に示した電圧についてより詳しく説明する。分割電極の2つの平面内にある全ての電極セグメント(本例の電極p1~p11及びn1~n11)への電圧は2つのPSUだけで供給できる。そのとき2つのPSUは前記電極の平面内にある各電極セグメントに所要の電圧を供給することができる。電極毎に、分散電圧(V/2及び-V/2)並びに収束電圧Vfp及びVfnを供給するためのPSUが設けられている。なお、下付文字のfpは正の収束電圧、fnは負の収束電圧を表す。V/2と-V/2は各平面内の中央の電極p6及びn6にそれぞれ印加され、Vfpは最も外側の電極p1及びp11に印加され、同様にVfnは最も外側の電極n1及びn11に印加される。他のセグメントp2、p3、p4、p5、p7、p8、p9及びp10の電圧は、図3(a)の例においてキャパシタC1~C5とC6~C10を用いて行っているように容量分圧により供給することができる。収束力、つまりR2/R1の値は、電圧比Vfp/V及びVfn/Vを変化させることにより調整する。所要の電圧は図3(a)においてPSUの電圧V/2、-V/2、Vfp及びVfnで定められる。ただし、これらの例示した値は特定の形状にしか適用されないことに注意すべきである。一般に、本アプローチは電極セグメントの数がいくつの場合でも適用できる。図3(a)に提示した各値はキャパシタC(DC遮断キャパシタ)と隣接電極間の容量を考慮したC1~C5及びC6~C10の値を示すものである。通常の能力を有する技術者なら所要の容量値C1~C5及びC6~C10を決定することができるだろう。明確化のために述べておくと、先に述べたように、V/2と-V/2並びにVfpとVfnは非対称なRF電圧である。CはDC及びRF電圧を各電極に印加することを可能にする。DC電圧はRF電圧と同じ相対比で電極セグメントに印加する必要がある。なお、Vは分析間隙を横断して印加される分散電圧の合計である。本例では上側平面に+V/2、下側平面に-V/2が印加されているため、分析間隙を横断する電圧は合計Vである。また、Vfp≠-Vfnであり、Vfp≧+V/2であるためVfpは常に正であること、また、Vfn≧-V/2であるためVfnは正負いずれの値も取り得ることに注意されたい。収束が不要なときはR2/R1=1であり、Vfpは+V/2に、またVfnは-V/2に設定される。
本例では、透過モードが、FAIMSセルの軸にイオンを閉じ込める四重極場を伴っている。この電場は典型的なデューティ比d=0.5を持つ交流電圧VTによる。模範例として、VTを供給するための電子的な構成を2つ、図3(b)と(c)に示す(電極が交互に逆の位相を有する)。図3(b)は実質的な四重極場(透過モード用)を示している。これはDC電圧がなくてもイオンを閉じ込めることができる。図3(c)は線形多重極場(透過モード用)を示している。これは分割電極の平面間に延在する方向にイオンを配置するものの、横方向にイオンを閉じ込めるには追加のDC電圧が必要である。
V及びVT並びにそれらに対応する負の電圧を出力するPSUにデジタル電源を用いれば、d<0.5又はd>0.5も容易に設定できるため好ましい。図3(a)~(c)のいずれの構成も、デジタルコントローラ(図示せず)により操作される分離スイッチ又はリレーを用いることが好ましい。前記コントローラは平面FAIMSモード(イオン収束なし)、グラジエントFAIMSモード(収束力を調節可能)及び透過モードの間で装置を切り替えるように構成されていることが好ましい。透過モード用の対称な高周波は通常の調和的なプロファイル(例えば図4(a)に示したもの)及び矩形波プロファイル(例えば図4(b)に示したもの)を持つものとすることができる。いずれの形態のRFも機能するが、矩形波プロファイルの方が良好な閉じ込めができると考えられる。
デジタルPSUは波形の周波数と振幅を容易に変えることができる。分離モードにおける典型的な周波数は(図2(b)に示した装置寸法の場合)25~500kHzである。この周波数は目的とするイオンの質量及び移動度に大きく依存し、巨大分子(例えばタンパク質)イオンのように重くて移動度の低いイオン種に対しては低く、軽くて小さいイオンに対しては高い。よく用いられる周波数は200kHzである。
少なくとも40mbarまでの圧力で効果的にイオンを閉じ込める(特許文献3及び非特許文献6)には、透過モードにおける最適な周波数をより高くすることが好ましい。これに関係する数量γは1(完全な閉じ込めの場合)から0(閉じ込めがない場合)まで変化するが、これはガス圧とRF周波数に依存する(非特許文献7)。物理的にはイオンの緩和時間はRFの周期に近いかそれを上回る必要がある。従って、ある圧力に対し、周波数を上げることにより閉じ込めを改善することができる。しかし、周波数を上げるとデーメルトの擬似ポテンシャルの深さも小さくなる。この深さは周波数に比例してRF電圧を最大で絶縁破壊上限まで上げることにより回復することができる。周囲ガス温度(300K)における、標準のパパベリン(1+)イオン(換算移動度K=1.04cm/vs)についての模範的な状況を次の表1に示す。透過モードにおいて閉じ込め(透過率)を改善するには様々な周波数が必要であることが分かる。
Figure 0007088237000002
この表から透過モードにおいて良好なイオン透過率を得るために必要な適切な圧力と周波数を推定することができる。例えば、30mbarと200kHzにすれば閉じ込めはごくわずかになる(透過モードでγ=0.001)と推定することができる。同じ圧力で周波数を最大3MHzまで変える(好ましい形態であるデジタル電源なら可能である)とγが大きく増加して0.20になる。ところが、同時に圧力を例えば5mbarまで下げると閉じ込めがほぼ完全になる(γ=0.90)。また、圧力を1mbarまで下げると、元の周波数0.2MHzでも適度なイオン閉じ込め(γ=0.50)が生じる。以上のことは、LP-FAIMS装置の透過モードにおいて良好なイオン透過率を得る条件を広範なイオンについて推定する上で役に立つ。
2)本発明の第2の態様に関する例
2つの同軸円筒電極の内側電極の外半径をR1、外側電極の内半径をR2とするとき、これらの電極に挟まれた環状の間隙内の円筒電場の等電位面と強度はよく分かっている。
例えばχ=R2/R1と定義する。等電位面は直交座標xとyで表して次の式(2)で定められる。
Figure 0007088237000003

また、円筒電場の強度は次の式(3)で定められる。
Figure 0007088237000004
図5A(i)~(iv)はχの様々な値について円筒電場502、504、506、508を示している。
図5Bは円筒電場内の任意の場所に配置できる矩形領域510を示している。この領域では直交座標x、yを基準にして等電位線が定められている。各等電位線は曲率半径Rを有し、その中心518は共通である。矩形領域512が、矩形領域510内に配置された選ばれた間隙gと選ばれた幅wを持つLP分割FAIMS装置と同じ寸法及び形状を持つように選ばれている。半径R1の等電位線は下側電極平面514の内面の中心で該内面に接している。半径R2の等電位線は上側電極平面516の内面の中心で該内面に接している。LP分割FAIMS装置を横断するE/Nの比は(E/Nlower)/(E/Nupper)=χである。
このようにχは収束の直接的な尺度を提供し、間隙gには依存しない。言い換えるとこれは、χの選択に応じて電極への印加電圧を設定することにより、g及びwに拘わらず、そのχを持つ円筒電場を矩形領域内で確立できるということを示している。
説明のため(限定の意図はなく)、図2(b)に示した寸法(g=7.5mm)を用いて、χ=1.1と1.5となるR1及びR2の値を次の表2に示す。この表から、LP分割FAIMSはχのみによって決まるE/N値の範囲でイオンを通過させるということが分かる。間隙の中央における収束の力も電場の勾配に換算して定義することができる。円筒電場の場合、電場の勾配は4/ln(χ)/(R2+R1)で与えられる。つまり、選ばれたK(E/N)依存性を持つイオンが、R1とR2の間にある選ばれた半径の等電場線に向かって収束される。
Figure 0007088237000005
図6は別の模範的な平面FAIMS装置を示している。
この例では、平面FAIMS装置が、平行平面内に配置された第1の分割電極群602~614と第2の分割電極群616~628、並びに、第1の分割電極群に直交する2つの平行平面内に配置された第3の分割電極群630~634と第4の分割電極群636~640を備えている。
図6(a)はこの平面FAIMS装置が適切な円筒電場を生成するために用いられている様子を示している。各電極上の必要な電圧は式(2)で定められる。曲率の中心650は長辺方向の電極群の中央の電極622及び608を二等分する直線上で電極622の内面からR1の距離にある。式(2)による等電位面がFAIMS間隙内において内側電極上の電位が0、外側電極上の電位が1となるように示されている。他の電極上の電圧はその内面の中心座標に対して式(2)から導かれている。例として、電極618、610、638の中心座標をベクトル652、654、656でそれぞれ示している。得られた等電位線は所望のχ値に対して図5A及び5Bの等電位線をほぼ複製したものとなっている。
同じ平面FAIMS装置を、例えば図6Bに示したように間隙の幾何学的中心に原点662を持つ四重極場660を用いて透過モードで作動させることができる。図示した等電位線はここでも、ベクトル664と666で例示したように、(d=0.5の対称な波形を想定として)電極の内面の中心で求められている。
図7は、図6に示した分割平面LP-FAIMS装置を、収束を行う分離モード(収束は円筒電場により行われる)で作動させた状態を、収束のない分割平面LP-FAIMS装置と比較して示している。図6(a)の装置(ここでは符号702を付してある)の円筒電場中のイオンは等電位線716に沿って配置された明瞭な領域を形成する。これらの明瞭な領域は、印加されるE/Nに応じて間隙を横切って、例えば印加されたE/Nの増大とともに符号718から722までシフトする。FAIMS間隙を通過するイオンの強度(y軸)を印加されたE/N(x軸)の関数として測定すると、図7(c)のFAIMSスペクトル706が得られる。真の円筒間隙と同様、間隙内では各イオン種がE/Nの一定の範囲にわたって同じ様に安定であるため、ピークは広がる。しかし、収束を行うと電場に平行な方向への拡散によるイオン損失が防止される。標準的な平面間隙FAIMS714(当該技術で公知)を用いる場合、均一な電場では、定められたE/Nを持つ1つのイオン種だけが間隙中のどこかで均衡することができる。しかし、図7(b)に示したように自由な拡散があるためイオンパケット712は広がる。その広がりは電場に直交する方向よりも電場に平行な方向の方が大きい。得られるFAIMSスペクトル710は図7(d)に示したように、より狭く、強度の低いピークを有している。
より具体的には図8A(i)に示したように、曲がったイオン領域804(装置808を通るイオン束の方向に直交する面で図示)が、間隙中央線に沿って配置された狭い出口スリット810の投影面832よりも上及び下に広がる。図8A(ii)に示した垂直な投影図では、FAIMS装置入口802から入った煙状のイオンが、出口830に向かって進むにつれて収束により垂直方向に押しつぶされ、前述のように等電位線により決まる安定状態の形状に近づいてゆく。間隙の出口に近づいてゆくイオンの一部がスリット810(装置808内のガス流の乱れを最小限にする形状を有している)を通過してイオン転送段812に達する。スリット810の両側の圧力は近いことが好ましい。印加されたE/Nが(増加方向又は減少方向に)走査されるにつれて、曲がったイオン領域が線形間隙を横断して移動し、イオンが一定の補償電圧範囲にわたってスリット810を通過する。これにより図8A(iii)に示したようにFAIMSスペクトルのピークが広がり、強度が低下する。これは理想的ではない。
図8B(i)に示したように、(前述のように確立された)ほぼ線形の電場を中央に有する分割平面LP-FAIMS段820は、間隙のスパンに沿って配置された線形領域818にイオンを収束させる。これは、より狭いE/Nの範囲にわたり、あるいはただ1つのE/Nにおいて、図8B(ii)に示したように垂直方向に狭まった安定状態のイオン煙が出口スリット826を通過できるということを意味している。これにより、図8B(iii)に示したように、より狭く、より強度の高いピーク816がFAIMSスペクトルに生じる。
3)本発明の第3の態様に関する例
図9は各電極の全てのセグメントが同じ電位(一方の電極は正の電位、他方は負の電位)を持つ分割平面FAIMS装置を示している。これにより生じる等電位線と電場強度線を、有限差分法を用いてラプラス方程式を数値的に解くことにより求めた結果が図9(a)及び9(b)にそれぞれプロットされている。間隙中央線付近に電場線がないのは電場勾配がないこと、つまり間隙を横断する電場の均一性を示している。セグメントのエッジ付近では電場線が僅かに勾配を示すが、それはイオン集団が希薄な領域であるため、FAIMS分離にはあまり影響しない。従って、このモードは従来技術の標準的な平面間隙FAIMS装置をエミュレートしたものである。
数値的に解いた電場について詳しく説明する。図10(a)は(例えば図5Bに描いたように)末端のない完全に円筒状の電極に挟まれた円環状の間隙内での理想的な円筒電場の1つのセグメントについて等電場線を示している。これらの円筒状電極をw=4g(両側で空隙が開いた状態)で区切ると図10(b)に示したように空隙の中心付近の線はほぼ平面状で平行になる。同じw/g比の開放型の間隙を持ち、各電極に7つのセグメントがあり、それらが(上記のように計算された)適切な電圧を持つ、平面FAIMS段では、同様の平面状で平行な電場線が間隙の中心付近で等価R2/R1値の広い範囲にわたって特徴的に見られる。例えばR2/R1=1.15の場合は図10(c)、R2/R1=1.6の場合は図10(d)のようになる。
FAIMS間隙の限られた領域にわたって略平面状で平行な電場線を生じさせる方法は他にもあり、上記の例は何ら限定を意図していない。本発明の本態様は、平面FAIMS装置において差分的な電極加熱を行うことにより作り出されるものと実質的に同じE/N勾配を作ることができるが、前述のようないくつもの利点がある。間隙を抜けてMS又は他の下流段で検出されるイオンの通路を制限する出口スリットがあれば、間隙中心から離れた曲がった非平行の電場線は本質的には重要でなくなる。
動作圧力は数mbarまで下げることができる。後で6.2mbarでの実験データを示す。最大543Tdという極端なE/Nにおいてでさえ、大小様々なタンパク質の信号はかなり高く、特に低い荷電状態でそうである。これまで本発明者ら又は他のFAIMSの専門家が実現可能と思ってきた圧力よりも低い超低圧の状況は、巨大分子構造の分離と研究にとって比類のない利点をもたらす可能性がある。
裏付け/比較データ
図11は透過モードで作動する分割平面LP-FAIMS装置のシミュレーションを示している。このシミュレーションはソフトウェア「SIMION」を統計的拡散シミュレーション(statistical diffusion simulation:SDS)モードで用いて行った。シミュレーションは、実験的に設定したK(E/N)依存性を持つ質量340Daのプロトン化パパベリン(1+)イオンを対象として行った。バッファガスは温度43℃、圧力33mbarの窒素(N)で、軸方向の流速が10m/s、横方向の速度はゼロとした。セルの寸法はg=7.5mmとw=30mmでw/g=4とし、長さ(L)は100mmとした。従ってフィルタ時間はt=10msとなる。対称な矩形波の周波数は200kHzとした。SDSモデルはイオン移動度が安定状況(即ち、イオンが瞬間電場により制御される最終速度でドリフトしている状況)にあることを想定しており、これは高い圧力と低いRF周波数に対応する。そうすると、γがゼロに近づき、イオンの閉じ込めが弱くなるが、それでもこのシミュレーションではFAIMS電極へのイオン損失は限定的であった。
図11(a)に示した例は、50VのピークRF振幅で図3(c)に従って電圧が印加された31セグメント型の電極を有している。等電場線は50V/cm間隔でプロットされている。軌道は無限持続表示で示されている。従って、各図は10msのシミュレーション時間の間における1000個のイオンの横方向の最大の広がりを示している。イオンの初期位置は軸付近であった。
図11(b)では、図3(c)に従ってRF電圧を印加するとともに、DC電圧を追加で補うことで、イオンを装置の中心軸へと押す勾配を作り出している。イオンはRF電場によりy方向に、そしてDC電場によりx方向に閉じ込められる。同じ条件で電極を7セグメント型にしたときの結果を図11(c)に示す。
四重極場を用いた実施形態をモデル化したものを図11(d)に示す。電場は200Vのピーク振幅で図3(b)に従って電圧を印加することにより作り出した。イオン軌道は前述のように記録した。シミュレーション時間中の電極へのイオン損失は7%で、上述のような本シミュレーションの限界に逆らってさえいる。四重極場はイオンをより良好に閉じ込めるものの、同じ質量範囲内でより高い電圧を必要とする。中心軸へのこの優れた閉じ込め作用は、先に述べたように圧力を下げると共に周波数を高くすることによっても達成可能である(シミュレーションは図示せず)。
本発明者らは更に、図10(c)に従った線形の電場勾配(R2/R1=1.15)を用いたFAIMS分離モードのシミュレーションを行った。周波数200kHz及びd=0.2の非対称な波形を想定し、他の条件は図11(a)~(d)に従った。間隙の出口平面を通る全てのイオンを数えた。即ち、出口アパーチャ(スリット)は考慮しなかった。図12に示したようにE/NとE/Nに換算した補償電圧(分散電圧)曲線は、標準的な平面間隙FAIMSに対して得られた曲線と基本的に合致している。しかし、今度はE/Nピークの幅と強度はE/Nが高くなるほど増加している。
例として、gをやや小さく(5mm)し、w=20mmでw/g=4とし、長さは同じL=100mmとした平面LP-FAIMS装置を用いて測定を行った。こちらも出口スリットはない。イオンの収束は、電極間に温度勾配を課し、以て線形の電場勾配を作り出すことにより達成した。この線形勾配は本発明の前記態様を模している。フィルタ時間はより長く、50msに設定した。
図13に示したように、3つの等価R2/R1値において解像度/感度図(分解能と信号の関係を示す)をE/Nの全範囲にわたって測定した。符号131がR2/R1=1(収束無し)、133がR2/R1=1.03(非常に弱い収束)、そして135がR2/R1=1.07(弱い収束)における曲線である。非常に弱い収束と、特に弱い収束は、収束なしの基準線に比べて同じ解像度における信号を分解能Rの全範囲で大きく増大させ、弱い収束では最大で10倍程度(R=19のとき)に達した。また、非常に弱い収束と、特に弱い収束は、同じ感度における分解能も高める。例えば、同じ信号レベルで収束なしの場合の値19から最大R=43まで上がっている。
この例は、実験又は理論面での従来技術の知識を大きく且つ質的に押しのけるようなやり方で、LP-FAIMSにおける柔軟なイオン収束の重要な利点を明らかに示している。つまり、かつての(物理的な間隙の曲率又は物理的な間隙の曲率+温度勾配により実施される)収束は一般に、解像度と引き換えに全てのイオン種のFAIMS間隙の透過率を高め、以て測定信号を高めるものとみられていた。これは過去に報告された第1原理の計算及び数値シミュレーションと一致している(例えば非特許文献8)。言い換えれば、イオン収束はこれまで、収束がない場合に、解像度/感度曲線で描かれる空間内でFAIMSの性能を移動させて解像度と引き換えに感度を得るものと理解され、期待されてきた。ここで示したように、等しい解像度で感度を得たり、等しい感度で解像度を得たり、図13のように両方を得たりすることは根本的に従来技術を超えている。出口スリットを追加すればいずれの従来技術に対しても解像度/感度のバランスの点で更に利益をもたらすであろう。
更に、有用なFAIMS圧力範囲の下限を探る実験を行った。実験にはg=7.5mm、w=30mm、L=126mmの平面LP-FAIMS装置を使用し、周波数50kHzとd=0.2の波形で駆動した。具体的には、図14に示したように、6.2mbarの圧力において短いフィルタ時間(10ms)で代表的なタンパク質のデータを得た。模範例である2Dのパレット141は荷電状態6+のプロトン化ウシ・ユビキチン(8.6kDa)に対する信号を横軸143にE/N、縦軸145にE/Nをとって示したものであり、E/N=543Tdにある絶縁破壊限界まで優れたSN比で十分な信号が得られている。これは横軸149にE/N、縦軸148にイオン信号をとったE/Nスペクトル147に見て取れる。このE/N範囲におけるFAIMS分析は前例がない。300Tdを超える分析は従来技術では知られていない。
これまで達成できなかった状況は多くの新しい現象及び分離法の調査及び利用を可能にする。例えば図14には2本の別々のE(E)曲線が明瞭に見えるが、これらは恐らく構造又はプロトン化構成の異なる異性体-プロトマーの存在を示している。分解能は最大30であるが、これはより低いE/Nで達成可能な計量基準を超えており、複数の分解されない配座異性体を通常含むタンパク質にも対応できる。より大きなタンパク質や他の巨大分子に対しては、有用な操作をより低い圧力まで広げることでE/Nを更に高める方がよい。圧力Pを1mbar程度まで下げればE/Nを1000Td以上にできる。
<考えられる変形及び応用>
分割LP-FAIMS電極は僅かに曲がっていてもよい。僅かに曲がった電極への印加電圧は、本発明に係る電圧勾配によるイオン収束を弱める又は強めるために利用することができる。
本発明は透過モードとしてLP-FAIMSに用いることが好ましい。この場合、ユーザは通常なら透過率を低下させる装置を質量分析装置から物理的に取り外さなくて済む。このようにすれば、ユーザは質量分析装置の感度の低下により生じる恐れがある問題をあまり心配しなくなり、LP-FAIMSの使用への興味が増すだろう。
ここまでの記述、後述の請求項、又は添付図面に開示された各特徴は、必要に応じて、その具体的な形態で表現されるか、開示された機能を実行するための手段又は開示された結果を得るための方法若しくはプロセスの観点から表現されていたが、それらの特徴は、個別に又はいくつかの特徴を任意に組み合わせて、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
上記では本発明を模範的な実施形態と結びつけて説明してきたが、多くの同等の修正や変形は本願の開示があれば当業者にとって自明であろう。従って、前述した本発明の模範的な実施形態は例証的なものであって限定的なものではないとみなされるべきである。前記実施形態には本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができる。
疑念を避けるために述べておくと、本明細書で行われた理論的な説明はいずれも読者の理解を深めることを目的としたものである。本発明者らはこれらの理論的な説明のいずれによっても束縛されることを望まない。
本明細書で用いた見出しは整理を目的とするものに過ぎず、記載された主題を限定するものと解釈すべきではない。
ここまで、本発明及び該本発明が関連する技術の水準をより十分に説明及び開示するために多くの公開物を引用している。引用文献の完全なリストは先に示した通りである。これらの参考文献のそれぞれの実体は参照により本明細書に組み込まれる。
以下の各項の記述は本明細書の一部を成すものであって、その開示内容を全般的に表現したものである。
(第A1項)電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
電源と
を備えており、前記装置が、
前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモード、及び
前記分析軸の方へイオンを収束させるために前記分析間隙内に閉じ込め電場を生成するように前記電源が第2の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加する透過モード
で作動するように構成されていることを特徴とする装置。
(第A2項)前記透過モードにおける前記分析間隙内のガス圧が前記FAIMSモードに比べて低くなるように前記分析間隙内のガス圧を制御するように構成されているガス制御部を更に備えていることを特徴とする第A1項に記載の装置。
(第A3項)前記ガス制御部が、前記FAIMSモードにおいて、前記分析間隙内のガス圧を1~200mbarにするように構成されていることを特徴とする第A2項に記載の装置。
(第A4項)前記ガス制御部が、前記分析間隙内に混合ガスが含まれるように該分析間隙への複数のガスの供給を制御するように構成されており、前記混合ガスが窒素、水素及びヘリウムのうち2種類以上を含むことを特徴とする第A2項又は第A3項に記載の装置。
(第A5項)前記ガス制御部が、前記透過モードにおいて、前記分析間隙内のガス圧を20mbar以下にするように構成されていることを特徴とする第A2~A4項のいずれかに記載の装置。
(第A6項)前記第1の電圧波形群が第1の周波数で繰り返し、前記第2の電圧波形群が第2の周波数で繰り返すことを特徴とする第A1~A5項のいずれかに記載の装置。
(第A7項)前記第1の周波数が5kHz~5MHzの範囲内で、前記第2の周波数が500kHz以上であることを特徴とする第A6項に記載の装置。
(第A8項)前記第1の電圧波形と前記第2の電圧波形が略矩形状であることを特徴とする第A1~A7項のいずれかに記載の装置。
(第A9項)前記電源がデジタル電源であることを特徴とする第A1~A8項のいずれかに記載の装置。
(第A10項)前記装置が前記FAIMSモードでは0.5より小さい又は大きいデューティ比で作動するように構成されていることを特徴とする第A1~A9項のいずれかに記載の装置。
(第A11項)前記電源が、一又は複数のRF電圧波形を生成し、容量分圧器の配列を介して前記RF電圧波形を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加することにより、前記第1の電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するように構成されていることを特徴とする第A1~A10項のいずれかに記載の装置。
(第A12項)前記電源が前記分割平面電極のセグメントに印加されている電圧波形の周波数を第1の周波数値から第2の周波数値へ略即座に変化させるように構成されていることを特徴とする第A1~A11項のいずれかに記載の装置。
(第A13項)前記電源が前記分割平面電極のセグメントに印加されている電圧波形のf値を第1のf値から第2のf値へ略即座に変化させるように構成されていることを特徴とする第A1~A12項のいずれかに記載の装置。
(第A14項)前記第2の電圧波形のデューティ比が0.5であることを特徴とする第A1~A13項のいずれかに記載の装置。
(第A15項)前記分析間隙の間隙幅方向の幅をw、前記分析間隙の間隙高さ方向の高さをgとするとき、w≧3gであることを特徴とする第A1~A14項のいずれかに記載の装置。
(第A16項)第B1~B17項及び/又は第C1~C11項のいずれかの特徴を含む、第A1~A15項のいずれかに記載の装置。
(第B1項)電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
電源と
を備えており、
前記装置が、前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が一組の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモードで作動するように構成され、
微分移動度の異なるイオンを異なる空間領域に向けて収束させるために、前記電圧波形群が、前記分析軸に垂直な面内で見たときに前記非対称な時間依存性電場が曲がった等電場強度線を持つように、構成され、各空間領域は前記分析軸に垂直な面内で見たときにそれぞれ曲がった等電場強度線に沿って延在しており、
前記装置が、前記非対称な時間依存性電場による収束の力を変化させるために前記等電場強度線の曲率を変えることをユーザに許可するように構成された収束制御部を備える
ことを特徴とする装置。
(第B2項)前記曲がった等電場強度線が、内側円筒電極の外半径がR1、外側円筒電極の内半径がR2である2つの同軸円筒電極の間の空間内に生成される電場に対応していることを特徴とする第B1項に記載の装置。
(第B3項)前記収束制御部が、FAIMS装置の前記分析間隙内での円筒電場の比R2/R1を変えることをユーザに許可するように構成されていることを特徴とする第B1項又は第B2項に記載の装置。
(第B4項)前記収束制御部が、FAIMS装置の前記分析間隙内での円筒電場の比R2/R1を変えることをユーザに許可するように構成されていることを特徴とする第B1~B3項のいずれかに記載の装置。
(第B5項)前記第1及び第2の分割平面電極が互いに前記分析間隙の反対側に配置されていることを特徴とする第B1~B4項のいずれかに記載の装置。
(第B6項)2つ以上のセグメントを含む第3の分割平面電極であって、該第3の分割平面電極のセグメントが第3の平面内に配置され、装置の分析軸に平行な方向に延在している、第3の分割平面電極と、
2つ以上のセグメントを含む第4の分割平面電極であって、該第4の分割平面電極のセグメントが第4の平面内に配置され、装置の分析軸に平行な方向に延在している、第4の分割平面電極と
を更に備え、
第1及び第2の分割平面電極が互いに前記分析間隙の反対側に配置され、前記分析軸に垂直な間隙幅方向に互いに分離されており、
第3及び第4の分割平面電極が互いに前記分析間隙の反対側に配置され、前記分析軸と前記間隙幅方向に垂直な間隙高さ方向に互いに分離されている
ことを特徴とする第B1~B5項のいずれかに記載の装置。
(第B7項)前記分析間隙の間隙幅方向の幅をw、前記分析間隙の間隙高さ方向の高さをgとするとき、w<約8gであることを特徴とする第B6項に記載の装置。
(第B8項)前記FAIMSモードにおいて、前記分析間隙内のガス圧を1~200mbarにするように構成されているガス制御部を更に備えていることを特徴とする第B1~B7項のいずれかに記載の装置。
(第B9項)前記装置が出口スリットを有する障壁を備えており、前記推進手段が該障壁に向けてイオンを押し動かすように該障壁が前記分析軸上に位置しており、該障壁が、前記出口スリットを通過しないイオンを装置の検出器に到達させないように構成されていることを特徴とする第B1~B8項のいずれかに記載の装置。
(第B10項)前記障壁が取り外しできるように構成されていることを特徴とする第B9項に記載の装置。
(第B11項)前記装置が前記障壁により設けられる前記出口スリットの幅の調節を許すように構成されていることを特徴とする第B9項又は第B10項に記載の装置。
(第B12項)前記装置が前記障壁により設けられる前記出口スリットの曲率の調節を許すように構成されていることを特徴とする第B9~B11項のいずれかに記載の装置。
(第B13項)前記出口スリットが、前記分析軸に垂直な面内で見たときに、前記非対称な時間依存性電場の1本の曲がった等電場強度線の曲率と一致する曲率を有していることを特徴とする第B9~B12項のいずれかに記載の装置。
(第B14項)前記装置が、
前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモード、及び
前記分析軸の方へイオンを収束させるために前記分析間隙内に閉じ込め電場を生成するように前記電源が第2の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加する透過モード
で作動するように構成されていることを特徴とする第B1~B13項のいずれかに記載の装置。
(第B15項)前記電源が補償電圧と呼ばれる追加のDC電圧群を前記第1及び第2の電圧波形群と同時に全てのセグメントに印加するように構成されていることを特徴とする第B1~B14項のいずれかに記載の装置。
(第B16項)前記補償電圧が、所定の微分移動度を有するイオンが出口スリットを通って出て行くように構成された所定の値を持つことを特徴とする第B15項に記載の装置。
(第B17項)前記装置が、異なる所定の微分移動度を有するイオンが異なる時点において出口スリットを通って出て行くように補償電圧を走査するように構成されていることを特徴とする第B15項又は第B16項に記載の装置。
(第B18項)第A1~B15項及び/又は第C1~C11項のいずれかの特徴を含む、第B1~B17項のいずれかに記載の装置。
(第C1項)電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
電源と
を備えており、
前記装置が、前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモードで作動するように構成され、
微分移動度の異なるイオンを異なる空間領域に向けて収束させるために、前記電圧波形群が、前記分析軸に垂直な面内で見たときに前記非対称な時間依存性電場が略直線状の等電場強度線を持つように、構成され、各空間領域は前記分析軸に垂直な面内で見たときにそれぞれ略直線状の等電場強度線に沿って延在していることを特徴とする装置。
(第C2項)前記装置が、前記非対称な時間依存性電場による収束の力を変化させるために、前記等電場強度線の勾配を変えることをユーザに許可するように構成された収束制御部を備えることを特徴とする第C1項に記載の装置。
(第C3項)前記装置が出口スリットを有する障壁を備えており、前記推進手段が該障壁に向けてイオンを押し動かすように該障壁が前記分析軸上に位置しており、該障壁が、前記出口スリットを通過しないイオンを装置の検出器に到達させないように構成されていることを特徴とする第C1項又は第C2項に記載の装置。
(第C4項)前記障壁が取り外しできるように構成されていることを特徴とする第C3項に記載の装置。
(第C5項)前記装置が前記障壁により設けられる前記出口スリットの幅の調節を許すように構成されていることを特徴とする第C3項又は第C4項に記載の装置。
(第C6項)前記出口スリットが直線状であって、前記分析軸に垂直な面内で見たときに、前記非対称な時間依存性電場の1本の直線状の等電場強度線と一致する方向に延在していることを特徴とする第C3~C5項のいずれかに記載の装置。
(第C7項)間隙幅方向における前記分析間隙の幅をwとするとき、前記略直線状の等電場強度線がw/4以上の距離にわたって略直線状であることを特徴とする第C1~C6項のいずれかに記載の装置。
(第C8項)前記電源が補償電圧と呼ばれる追加のDC電圧群を第1及び第2の電圧波形群と同時に全てのセグメントに印加するように構成されていることを特徴とする第C1~C7項のいずれかに記載の装置。
(第C9項)前記補償電圧が、所定の微分移動度を有するイオンが出口スリットを通って出て行くように構成された所定の値を持つことを特徴とする第C8項に記載の装置。
(第C10項)前記装置が、異なる所定の微分移動度を有するイオンが異なる時点において出口スリットを通って出て行くように前記補償電圧を走査するように構成されていることを特徴とする第C8項又は第C9項に記載の装置。
(第C11項)前記装置が、
前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモード、及び
前記分析軸の方へイオンを収束させるために前記分析間隙内に閉じ込め電場を生成するように前記電源が第2の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加する透過モード
で作動するように構成されていることを特徴とする第C1~C10項のいずれかに記載の装置。
(第C12項)第A1~B15項及び/又は第B1~C17項のいずれかの特徴を含む、第C1~B11項のいずれかに記載の装置。

Claims (15)

  1. 電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を行うための装置であって、
    3つ以上のセグメントを含む第1の分割平面電極であって、該第1の分割平面電極のセグメントが第1の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在している、第1の分割平面電極と、
    3つ以上のセグメントを含む第2の分割平面電極であって、該第2の分割平面電極のセグメントが第2の平面内に配置され且つ装置の分析軸に平行な方向に延在しており、前記第1の分割平面電極と第2の分割平面電極が互いに分離されていることで両電極間に分析間隙が設けられている、第2の分割平面電極と、
    前記分析間隙を通って装置の分析軸に平行な方向に進むようにイオンを押し動かすための推進手段と、
    電源と
    を備えており、前記装置が、
    前記推進手段により前記分析間隙を通るように押し動かされるイオンのFAIMS分析を行うために、前記分析間隙内に非対称な時間依存性電場を生成するように前記電源が第1の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するFAIMSモード、及び
    前記分析軸の方へイオンを収束させるために前記分析間隙内に閉じ込め電場を生成するように前記電源が第2の電圧波形群を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加する透過モード
    で作動するように構成されていることを特徴とする装置。
  2. 前記透過モードにおける前記分析間隙内のガス圧が前記FAIMSモードに比べて低くなるように前記分析間隙内のガス圧を制御するように構成されているガス制御部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 前記ガス制御部が、前記FAIMSモードにおいて、前記分析間隙内のガス圧を1~200mbarにするように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
  4. 前記ガス制御部が、前記分析間隙内に混合ガスが含まれるように該分析間隙への複数のガスの供給を制御するように構成されており、前記混合ガスが窒素、水素及びヘリウムのうち2種類以上を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
  5. 前記ガス制御部が、前記透過モードにおいて、前記分析間隙内のガス圧を20mbar以下にするように構成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の装置。
  6. 前記第1の電圧波形群が第1の周波数で繰り返し、前記第2の電圧波形群が第2の周波数で繰り返すことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の装置。
  7. 前記第1の周波数が5kHz~5MHzの範囲内で、前記第2の周波数が500kHz以上であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
  8. 前記第1の電圧波形と前記第2の電圧波形が略矩形状であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の装置。
  9. 前記電源がデジタル電源であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の装置。
  10. 前記装置が前記FAIMSモードでは0.5より小さい又は大きいデューティ比で作動するように構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の装置。
  11. 前記電源が、一又は複数のRF電圧波形を生成し、容量分圧器の配列を介して前記RF電圧波形を前記第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加することにより、前記第1の電圧波形群を第1及び第2の分割平面電極のセグメントに印加するように構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の装置。
  12. 前記電源が前記分割平面電極のセグメントに印加されている電圧波形の周波数を第1の周波数値から第2の周波数値へ略即座に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の装置。
  13. 前記電源が前記分割平面電極のセグメントに印加されている電圧波形のf値を第1のf値から第2のf値へ略即座に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の装置。
  14. 前記第2の電圧波形のデューティ比が0.5であることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の装置。
  15. 前記分析間隙の間隙幅方向の幅をw、前記分析間隙の間隙高さ方向の高さをgとするとき、w≧3gであることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の装置。
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