以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるデュアル構造のディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aの模式断面図であり、図2は、図1に示すII-II線に沿った模式断面図である。また、図3は、図1に示す隔壁部材の頂壁部の平面図である。図4は、図1に示す遮蔽部材の組立図である。まず、これら図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの構成について説明する。
図1に示すように、ディスク型ガス発生器1Aは、軸方向の一端および他端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての第1点火器組立体30、第2点火器組立体40、第1ガス発生剤51、第2ガス発生剤52、下側支持部材61、上側支持部材62、フィルタ70等が収容されてなるものである。
図1に示すように、ハウジングは、下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とフランジ部23とを有している。
下部側シェル10の周壁部12の上端は、上部側シェル20の周壁部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の周壁部12と上部側シェル20の周壁部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。ここで、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の周壁部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の周壁部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向(すなわち周壁部12、22の軸方向)の一端および他端は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
上部側シェル20に設けられたフランジ部23は、ディスク型ガス発生器1Aを外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。フランジ部23の所定位置には、ハウジングの軸方向と平行な方向に沿って貫通するように貫通孔(図中において当該貫通孔は現われていない)が設けられている。当該貫通孔には、ボルト等の締結部材が挿入されることになり、これによりディスク型ガス発生器1Aが外部の部材に対して固定される。
下部側シェル10の底板部11の所定位置には、第1開口部11aおよび第2開口部11bが設けられている。下部側シェル10の底板部11には、第1開口部11aを閉塞するように第1点火器組立体30が組付けられているとともに、第2開口部11bを閉塞するように第2点火器組立体40が組付けられている。ここで、第1開口部11aは、第1点火器組立体30の下端に設けられた後述する第1雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位であり、第2開口部11bは、第2点火器組立体40の下端に設けられた後述する第2雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位である。
第1点火器組立体30は、第1ホルダ31と、第1点火器32と、第1シール部材33と、カップ体34と、伝火薬36と、燃焼制御部材37Aとを主として含んでいる。第1ホルダ31は、第1点火器組立体30のベースを構成するものであり、当該第1ホルダ31に第1点火器32およびカップ体34および燃焼制御部材37A等が組付けられることにより、第1点火器組立体30が一体の部品として構成されている。
第1ホルダ31は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aが設けられており、底板部11側に位置する第1ホルダ31の下面には、下側凹部31bが設けられている。また、上側凹部31aの底部ならびに下側凹部31bの底部を構成する部分の第1ホルダ31には、これら上側凹部31aおよび下側凹部31bに達するように貫通孔31cが設けられている。
また、第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aを取り囲むようにかしめ部31dが設けられている。このうちの内側に配置されたかしめ部31dは、第1点火器32を第1ホルダ31にかしめ固定するための部位である。
第1点火器32は、火炎を発生させるためのものであり、一般にスクイブと称される火工品からなる。第1点火器32は、基部32aと、点火部32bと、一対の端子ピン32cとを有している。基部32aは、点火部32bおよび一対の端子ピン32cを保持する部位であり、また第1ホルダ31に対して固定される部位でもある。点火部32bは、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン32cは、点火薬を着火させるために点火部32bに接続されている。
より詳細には、基部32aおよび点火部32bは、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン32cが挿通されてこれを保持する塞栓とを含んでおり、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン32cの先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび塞栓は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン32cを介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから第1点火器32が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2[ms]以下である。
第1点火器32は、第1ホルダ31の貫通孔31cに一対の端子ピン32cが上方から挿入されるとともに第1ホルダ31の上側凹部31aに基部32aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部31dが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
ここで、第1ホルダ31と第1点火器32との間には、Oリング等からなる第1シール部材33が介装されており、これによって第1ホルダ31と第1点火器32との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第1点火器32の固定方法は、上述したかしめ部31dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
カップ体34は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成しており、内部に伝火薬36が収容された伝火室35を含んでいる。カップ体34は、伝火室35を規定する頂壁部34aおよび側壁部34bと、側壁部34bの開口端側の部分から径方向外側に向けて延設されたフランジ部34cとを有している。
カップ体34は、その内部に形成された伝火室35が第1点火器32の点火部32bに面するように第1ホルダ31に組付けられており、より詳細には、フランジ部34cが第1ホルダ31の上面に当て留めされた状態において、当該フランジ部34cが後述する燃焼制御部材37Aの押さえ部37dによって第1ホルダ31に向けて押し付けられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
カップ体34は、頂壁部34aおよび側壁部34bのいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室35を取り囲んでいる。このカップ体34は、第1点火器32が作動することによって伝火薬36が着火された場合に伝火室35内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ体34としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ体34としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部に開口を有し、当該開口を閉鎖するようにシール部材が設けられたもの等を利用することもできる。この場合においては、伝火薬36の燃焼により、当該シール部材が開裂または溶融することで上述した開口が開放されることになる。ここで、上述したシール部材としては、開口を閉鎖するようにカップ体に貼り付けが可能なシールテープや、開口を閉鎖するようにカップ体に対して圧入による組付けが可能なリング状シール体等が利用できる。シールテープとしては、たとえば片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、リング状シール体としては、上述した開口を閉鎖する薄板筒状の部位を含むアルミニウム製のプレス成形品等が好適に利用できる。
伝火室35に充填された伝火薬36は、第1点火器32が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬36としては、第1ガス発生剤51を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
伝火薬36としては、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬36の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
第1ホルダ31の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第1開口部11aに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第1ホルダ31に第1点火器32およびカップ体34等が組付けられることで一体化された第1点火器組立体30が、下部側シェル10に対して固定されることになる。
図1に示すように、燃焼制御部材37Aは、略円筒状の形状を成しており、障壁部37aと、開放部37bと、被固定部37cと、押さえ部37dとを有している。燃焼制御部材37Aは、伝火薬36の燃焼によっても破裂または溶融しない非脆弱な部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材にて構成される。また、作動時に破裂または溶融しない非脆弱な部材として、融点が300℃以上であるポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの耐熱性樹脂で構成としても良い。
燃焼制御部材37Aは、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、底板部11側に位置する開口端が、底板部11に組付けられた第1ホルダ31に固定された被固定部37cとして機能している。より詳細には、被固定部37cは、略円筒状の形状を有しており、当該被固定部37cが、底板部11から後述する第1燃焼室SA1側に向けて突出して位置する部分の第1ホルダ31に圧入されることにより、燃焼制御部材37Aが、当該第1ホルダ31を介して底板部11に組付けられている。
燃焼制御部材37Aは、伝火薬36の燃焼によって着火される後述する第1ガス発生剤51の燃え広がりを制御するためのものであり、より詳細には、伝火薬36が燃焼することで生じる火炎が伝火室35から所定の方向に向けて噴き出すように指向性を与えるものである。この伝火薬36が燃焼することで生じる火炎に指向性を与える機能は、燃焼制御部材37Aに設けられた障壁部37aと開放部37bとによって主として発揮される。
すなわち、障壁部37aは、伝火室35を規定するカップ体34の頂壁部34aおよび側壁部34bのうち、ハウジングの中心軸寄りに位置する部分とは反対側に位置する部分の側壁部34bを直接的に覆うように位置しており、開放部37bは、頂壁部34aと、ハウジングの中心軸寄りに位置する部分の側壁部34bとを露出させるように位置している。
これにより、伝火薬36の燃焼時においては、伝火薬36が燃焼することでカップ体34の頂壁部34aおよび側壁部34bのうちの開放部37bによって露出された部分が破裂または溶融することになり、これによって伝火薬36が燃焼することで生じた火炎が、所定の方向に向けて第1燃焼室S1に噴き出すことになる。
なお、押さえ部37dは、障壁部37aと被固定部37cとの間において燃焼制御部材37Aを折り曲げることで形成されており、当該押さえ部37dによってカップ体34のフランジ部34cが第1ホルダ31の上面に押し付けられることにより、上述したようにカップ体34が第1ホルダ31に固定されている。
図1に示すように、第1ホルダ31の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第1開口部11aに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第1ホルダ31に予め第1点火器32、カップ体34および燃焼制御部材37A等が組付けられることで一体化された第1点火器組立体30が、下部側シェル10に対して固定されることになる。
そのため、第1ホルダ31は、底板部11からハウジングの内部の空間に向けて突出して位置するように構成されることになり、特に第1点火器組立体30の内部に設けられた伝火室35が、ハウジングの内部の空間に配置されることになる。ここで、底板部11と第1ホルダ31との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第1ホルダ31の下側凹部31bには、第1点火器32の一対の端子ピン32cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部31bおよび一対の端子ピン32cによって上述した第1雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第1雌型コネクタ部は、第1点火器32とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第1雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第1雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン32cとの電気的導通が実現されることになる。
第2点火器組立体40は、第2ホルダ41と、第2点火器42と、第2シール部材43と、仕切り部44と、第2ガス発生剤52とを主として含んでいる。第2ホルダ41は、第2点火器組立体40のベースを構成するものであり、当該第2ホルダ41に第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることにより、第2点火器組立体40が一体の部品として構成されている。
第2ホルダ41は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aが設けられており、底板部11側に位置する第2ホルダ41の下面には、下側凹部41bが設けられている。また、上側凹部41aの底部ならびに下側凹部41bの底部を構成する部分の第2ホルダ41には、これら上側凹部41aおよび下側凹部41bに達するように貫通孔41cが設けられている。
また、第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aを取り囲むようにかしめ部41dが設けられている。かしめ部41dは、第2点火器42を第2ホルダ41にかしめ固定するための部位である。
第2点火器42は、火炎を発生させるためのものであり、上述した第1点火器32と同様に、一般にスクイブと称される火工品からなる。第2点火器42は、基部42aと、点火部42bと、一対の端子ピン42cとを有している。基部42aは、点火部42bおよび一対の端子ピン42cを保持する部位であり、また第2ホルダ41に対して固定される部位でもある。点火部42bは、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン42cは、点火薬を着火させるために点火部42bに接続されている。
なお、第2点火器42は、基本的には上述した第1点火器32と同様の構成のものであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
第2点火器42は、第2ホルダ41の貫通孔41cに一対の端子ピン42cが上方から挿入されるとともに第2ホルダ41の上側凹部41aに基部42aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部41dが折り曲げられることにより、第2ホルダ41に固定されている。
ここで、第2ホルダ41と第2点火器42との間には、Oリング等からなる第2シール部材43が介装されており、これによって第2ホルダ41と第2点火器42との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第2点火器42の固定方法は、上述したかしめ部41dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
図1ないし図2、図3に示すように、仕切り部44は、全体としてカップ状の形状を有しており、隔壁部材45と、遮蔽部材46と、締結部47とを含んでいる。このうち、隔壁部材45および遮蔽部材46が、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間を2室に仕切る圧力隔壁として特に機能する。
ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間は、仕切り部44によって当該仕切り部44よりも外側の空間と当該仕切り部44よりも内側の空間とに仕切られており、このうちの前者の空間が第1燃焼室S1として規定されるとともに、このうちの後者の空間が第2燃焼室S2として規定される。
仕切り部44は、その内部に形成された第2燃焼室S2が第2点火器42の点火部42bに面するように第2ホルダ41に組付けられている。より詳細には、後述するように、仕切り部44のうちの隔壁部材45の下端に設けられた被固定部45cが第2ホルダ41に圧入されることにより、仕切り部44が第2ホルダ41を介して底板部11に組付けられている。
仕切り部44の内部に位置する第2燃焼室S2には、第2ガス発生剤52が収容されている。第2ガス発生剤52は、第2点火器42が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。なお、第2ガス発生剤52の詳細については、後述することとする。
隔壁部材45は、底板部11側の端部が開口した有底略円筒状の形状を有しており、上述したように圧力隔壁として機能するものであるため、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。隔壁部材45は、天板部21側に位置する略円盤状の頂壁部45aと、フィルタ70の内周面に対向する略円筒状の側壁部45bとを有している。側壁部45bは、頂壁部45aの周縁から隔壁部材45の軸方向に沿って底板部11側に向けて延設されている。
隔壁部材45は、その下端に設けられた開口端が第2ホルダ41に挿入されることで底板部11に組付けられている。より詳細には、隔壁部材45の側壁部45bの下端は、第2ホルダ41に固定された被固定部45cとして機能しており、より特定的には、当該被固定部45cが第2ホルダ41に圧入されることにより、隔壁部材45が第2ホルダ41に固定されることで底板部11に対して組付けられている。
図3に示すように、隔壁部材45の頂壁部45aには、複数のガス通過孔48が設けられている。複数のガス通過孔48は、第1ガス通過孔48aと第2ガス通過孔48bがあり、第1ガス通過孔48aよりも第2ガス通過孔48bの開口面積は大きい。ガス通過孔48は第2燃焼室S2にて発生したガスを第1燃焼室S1に向けて通過させるためのものである。第1ガス通過孔48aは、隔壁部材45の頂壁部45aにおいて周方向に沿って点列状に設けられており、その各々は、頂壁部45aの厚み方向に沿って当該頂壁部45aを貫通するように設けられている。第2ガス通過孔45bは、隔壁部材45に遮蔽部材46を固定するための締結部47が挿通される部位が設けられ、頂壁部45aの厚み方向に沿って当該頂壁部45aを貫通するように設けられている。当該第2ガス通過孔48bは、隔壁部材45の周方向に沿って点列状に設けられた複数の第1ガス通過孔48aの各々と等距離に配置されるように、頂壁部45aの中央部に設けられている。
図1及び図3に示すように、遮蔽部材46は、隔壁部材45の頂壁部45aの外側表面に宛がわれた状態で当該隔壁部材45に固定されている。遮蔽部材46は、その外周縁側に位置する第1閉鎖部46aと中心側に位置する第2閉鎖部46bとを含んでいる。第1閉鎖部46aは、隔壁部材45の頂壁部45aに設けられた複数の第1ガス通過孔48aを閉鎖するための部位である。そして、第1閉鎖部46aからは径方向外側に向かって、肩部49が形成され、肩部49は隔壁部材45に沿って湾曲状に形成されている。一方、第2閉鎖部46bは、隔壁部材45の頂壁部45aに設けられた単一の第2ガス通過孔48bを閉鎖するための部位である。遮蔽部材46の第2閉鎖部46bは脆弱部46cが設けられている。第2閉鎖部46bからは、後述する締結部47が延設され、第1閉鎖部46aと締結部47との間は接続部48によって接続されている。
脆弱部46cは、放射状に延びるスリットによって設けられ、遮蔽部材46の締結部47よりも機械的強度が低く構成されている。ここで、脆弱部46cは第2点火器組立体40の点火部42bに対向することとなるように配置されている。また、放射状に延びる前記脆弱部46c以外の部分は、脆弱部より厚肉で遮蔽部材46と同程度の厚みである。
これにより、脆弱部46cは第2燃焼室S2にて発生したガスの燃焼することによって生じる推力によって、脆弱部46cを破裂、変形または溶融するものであり、脆弱部46cの機械的強度が比較的低くなっている。
なお、上述した脆弱部46cの厚みt1および遮蔽部材46の厚みt2は、使用される第2ガス発生剤52の種類や充填量等に基づいて適宜調整されるものであるが、その一例を示す。例えば、上記脆弱部46cの厚みt1は、遮蔽部材46を鉄製またはステンレス製とした場合には、0.6mm以下とされ、好ましくは0.3mm以下とされる。一方、遮蔽部材46の厚みt2は、遮蔽部材46を鉄製またはステンレス製とした場合には、脆弱部46cの厚みt1よりも大きいことを条件に、0.3mm以上0.9mm以下、好ましくは0.4mm以上0.7mm以下とされる。
遮蔽部材46は、円環板状の形状を有しており、上述したように圧力隔壁及び圧力調整として機能するものであるため、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
図3及び図4に示すように、締結部47は、本実施の形態においてはかしめ固定又は溶接にて構成されており、図4(a)に示すように、隔壁部材45の頂壁部45aの外側表面に遮蔽部材46が宛がわれた状態において、隔壁部材45に設けられた第2ガス通過孔48bおよび遮蔽部材46に設けられた締結用突起部47aを上述した第2ガス通過孔48bに挿通して、図4(b)に示すように、締結用突起部47aの周端部が図4(c)に示すように、押し潰されるようにかしめ固定されることにより、隔壁部材45と遮蔽部材46とを挟持することでこれらを固定している。または、締結用突起部47aの周端部を溶接することにより、隔壁部材45と遮蔽部材46とを挟持することでこれらを固定している。
これにより、締結部47によって遮蔽部材46が隔壁部材45の頂壁部45aの中央部に対応した位置に固定されることにより、遮蔽部材46が、頂壁部45aの外側表面に宛がわれた状態で隔壁部材45に固定されている。そのため、隔壁部材45の頂壁部45aに設けられた単一の第2ガス通過孔48bは、いずれも遮蔽部材46の第2閉鎖部46bによって閉塞されている。
ここで、遮蔽部材46の厚みは、隔壁部材45に比べて十分に薄く構成されている。具体的には、遮蔽部材46は、第2ガス発生剤52の燃焼時において、複数のガス通過孔48を介して第2燃焼室S2の圧力を第1閉鎖部46aと第2閉鎖部46bが受けることにより、当該第1閉鎖部46aと当該第2閉鎖部46bが外側に向けて変位できるように(すなわち、遮蔽部材46に被固定部46aを基点とした変形が生じるように)、その厚みが十分に薄く構成されている。このように構成することにより、後において詳述する本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの動作が実現できることになる。
図1に示すように、第2ホルダ41の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第2開口部11bに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第2ホルダ41に第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることで一体化された第2点火器組立体40が、下部側シェル10に対して固定されることになる。
そのため、第2ホルダ41は、底板部11からハウジングの内部の空間に向けて突出して位置するように構成されることになり、特に第2点火器組立体40の内部に設けられた第2燃焼室S2が、ハウジングの内部の空間に配置されることになる。ここで、底板部11と第2ホルダ41との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第2ホルダ41の下側凹部41bには、第2点火器42の一対の端子ピン42cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部41bおよび一対の端子ピン42cによって上述した第2雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第2雌型コネクタ部は、第2点火器42とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第2雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第2雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン42cとの電気的導通が実現されることになる。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間には、上述した第1点火器組立体30および第2点火器組立体40に加え、フィルタ70が収容されている。フィルタ70は、円筒状の形状を成しており、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と合致するようにハウジングと同軸上に配置されている。これにより、フィルタ70は、その外周面がハウジングの周壁部の内周面に対向している。
フィルタ70は、その内側の空間に第1点火器組立体30および第2点火器組立体40が配置されるように、これら第1点火器組立体30および第2点火器組立体40を取り巻くように配置されている。これにより、フィルタ70の内側の空間であってかつ仕切り部44の外側の空間に、第1ガス発生剤51が収容される第1燃焼室S1が形成されることになる。なお、フィルタ70は、ハウジングの周壁部から所定の距離をもって配置されており、これによりハウジングの周壁部とフィルタ70との間には、ガス排出室S3が形成されている。
フィルタ70としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
また、フィルタ70として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ70は、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスが確実にフィルタ70中を通過するように構成することが必要になる。
ここで、第1点火器組立体30は、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されており、第2点火器組立体40も、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように(すなわち、仕切り部44の中心軸(より厳密には隔壁部材45の中心軸)がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように)偏心配置されている。このように構成することにより、ハウジングの内部(特にフィルタ70の内側の空間)にデッドスペースが生じることが防止でき、ディスク型ガス発生器1Aを全体として小型に構成することができる。
第1燃焼室S1には、第1ガス発生剤51が収容されている。より具体的には、第1ガス発生剤51は、フィルタ70の内側の空間であってかつ第1点火器組立体30のカップ体34の頂壁部34aおよび側壁部34bに隣り合う空間、ならびに、フィルタ70の内側の空間であってかつ第2点火器組立体40の隔壁部材45の側壁部45bに隣り合う空間に配置されている。第1ガス発生剤51は、第1点火器32が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。
ただし、上述したように、第1燃焼室S1には、第1点火器組立体30の燃焼制御部材37Aが配置されているため、当該燃焼制御部材37Aの障壁部37aが位置する部分においては、カップ体34の側壁部34bが直接的に第1ガス発生剤51に面しておらず、その間に障壁部37aが介在することになる。
上述した第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてこれら第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52が形成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅等の塩基性金属水酸化物、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。また、この他にも、バインダとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体や、二硫化モリブデン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、アルミナ等の無機バインダも好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
ここで、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの組成が同じものであってもよいし、それらの組成が異なるものであってもよい。また、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの形状や大きさが同じものであってもよいし、それらの形状や大きさが異なるものであってもよい。
フィルタ70に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス排出室S3に面するように複数のガス噴出口24が設けられている。この複数のガス噴出口24は、フィルタ70を通過したガスをハウジングの外部にガス排出室S3を介して導出するためのものである。
また、上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記複数のガス噴出口24を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ25が貼り付けられている。このシールテープ25としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ25によってハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。
図1に示すように、第1燃焼室S1のうち、底板部11側に位置する端部には、下側支持部材61が配置されている。下側支持部材61は、環状の形状を成しており、フィルタ70と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と底板部11とに宛がわれて配置されている。これにより、下側支持部材61は、第1燃焼室S1の上記端部近傍において、底板部11と第1ガス発生剤51との間に位置している。
下側支持部材61は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。下側支持部材61は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
第1燃焼室S1のうち、天板部21側に位置する端部には、上側支持部材62が配置されている。上側支持部材62は、略円盤状の形状を成しており、フィルタ70と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上側支持部材62は、第1燃焼室S1の上記端部近傍において、天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置している。
上側支持部材62は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。上側支持部材62は、上述した下側支持部材61と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この上側支持部材62の内部には、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51に接触するように平面視略C字状のクッション材63が配置されている。これにより、クッション材63は、第1燃焼室S1の天板部21側の部分において天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置することになり、第1ガス発生剤51を底板部11側に向けて押圧している。
クッション材63は、成形体からなる第1ガス発生剤51が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。なお、クッション材63は、第1ガス発生剤51の燃焼によって焼失するものである。
なお、第2ガス発生剤52の振動による破砕を防止する何らかの手当てが必要な場合には、第1ガス発生剤51の場合と同様に、これをクッション材を用いることで実現することができる。その場合には、円盤状のクッション材を仕切り部44の天板部21側に位置する閉塞端と第2ガス発生剤52との間に配置するか、あるいは、円環板状のクッション材を第2点火器42を取り囲む部分の第2ホルダ41の上面と第2ガス発生剤52との間に配置するか、のいずれかとすることができる。
前者の構成を採用した場合には、クッション材によって第2ガス発生剤52が底板部11側に向けて押圧されることになり、後者の構成を採用した場合には、クッション材によって第2ガス発生剤52が天板部21側に向けて押圧されることになる。なお、前者の構成および後者の構成の双方を採用することとしてもよい。ここで、上述した第2ガス発生剤52を押圧するクッション材としては、第1ガス発生剤51を押圧するクッション材63と同様の材質ものを利用することができる。
図5は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第1段階を示す模式断面図であり、図6は、図5中に示すVI-VI線に沿った模式断面図である。また、図7は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの動作時の第2段階を示す模式断面図である。図8は本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの高圧動作時の第3段階を示す模式断面図である。次に、これら図5ないし図8を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの動作について説明する。
ディスク型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電を受け、まずは第1点火器32が作動する。
図5および図6に示すように、第1点火器32が作動した第1段階においては、第1点火器32の点火部32bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部32bが破裂する。これにより、カップ体34の内部に収容された伝火薬36が着火されて燃焼する。
伝火薬36が燃焼することにより、伝火室35の内部において多量の熱粒子が発生し、伝火室35の温度および圧力が上昇することで脆弱な部材からなるカップ体34が破裂または溶融する。カップ体34が破裂または溶融に伴い、伝火室35が第1燃焼室S1に通じることになり、上述した多量の熱粒子が第1燃焼室S1へと流れ込む(矢印AR1参照)。
このとき、カップ体34の頂壁部34aおよび側壁部34bのうち、側壁部34bの一部が燃焼制御部材37Aの障壁部37aによって覆われていることに伴い、頂壁部34aと側壁部34bの残る一部(すなわち、カップ体34のうちの燃焼制御部材37Aの開放部37bによって第1燃焼室S1に向けて露出されている部分)のみが破裂または溶融し、障壁部37aによって覆われた部分は、破裂または溶融せずに残存する。
これにより、伝火薬36が燃焼することで生じた火炎は、図中において矢印AR1にて示すように、上部側シェル20の天板部21側およびハウジングの中心軸側に向けて噴き出すことになり、伝火室35から見て障壁部37aが位置する側に噴き出すことが防止される。そのため、第1点火器組立体30の周囲に位置する第1ガス発生剤51のうち、伝火室35から見て障壁部37aが位置する方向を除く方向に位置する第1ガス発生剤51が着火されて燃焼を開始する。
なお、第1点火器組立体30の周囲に位置する第1ガス発生剤51のうち、伝火室35から見て障壁部37a側に位置する第1ガス発生剤51は、先に燃焼を開始した第1ガス発生剤51の燃え広がりに伴って遅れたタイミングで燃焼を開始することになる。
この第1ガス発生剤51の燃焼に伴い、第1燃焼室S1において多量のガスが発生する。第1燃焼室S1にて発生したガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込む。
このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、複数のガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ25が開裂する。これにより、第1燃焼室S1にて発生したガスは複数のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けての噴出が開始される(矢印AR2参照)。
また、このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21は、外側に向けて膨らむように変形する。これにより、上部側シェル20の天板部21と、仕切り部44の当該天板部21側の端部との間の距離が増加することになる。
一方で、この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、遮蔽部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、遮蔽部材46の第1閉鎖部46a及び第2閉鎖部46bによって閉塞されるとともに、隔壁部材45の天板部21寄りの部分の外周面に遮蔽部材46の第1閉鎖部46a及び第2閉鎖部46bが密着することで当該部分が覆われた状態が維持される。
これにより、隔壁部材45の頂壁部45aに設けられた複数のガス通過孔48が遮蔽部材46の第1閉鎖部46a及び第2閉鎖部46bによっていずれも閉塞された状態が維持されることになる。そのため、当該第1段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
なお、上述した第1段階において、複数のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Aの外部へと噴出されたガスは、当該ディスク型ガス発生器Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
次に、上述した第1点火器32の作動から所定時間遅れたタイミングで、上述したコントロールユニットからの通電を受けて第2点火器42が作動する。
図7に示すように、第2点火器42が作動した第2段階においては、第2点火器42の点火部42bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部42bが破裂する。これにより、第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼を開始する。
ここで、第2ガス発生剤52の燃焼の開始に先立って、第1ガス発生剤51が予め着火されて燃焼していることにより、ディスク型ガス発生器1Aが全体として既に高温に加熱された状態にあるため、点火部42bと第2ガス発生剤52との間に伝火薬を設けずとも、第2ガス発生剤52の燃焼がスムーズに開始されることになり、また当該第2ガス発生剤52の燃焼が途切れ難くなる。
その際、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、当該第2燃焼室S2の圧力が、ガス通過孔48を介して遮蔽部材46の第1閉鎖部46aと第2閉鎖部46bに付与される。これにより、第2燃焼室S2の内圧がある程度高まった時点において、遮蔽部材46の第1閉鎖部46aに締結部47を基点とした変形が生じることになり、当該第1閉鎖部46aが外側に向けて(すなわち天板部21側に向けて変位する)ことになる。
この第1閉鎖部46aの変位により、複数の第1ガス通過孔48aの第1閉鎖部46aがいずれも解除されることになり、当該第2段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが複数の第1ガス通過孔48aを介して連通した状態となる。これに伴い、第2燃焼室S2にて発生したガスが、複数のガス通過孔48aを通過して第1燃焼室S1へと導入されることになる(矢印AR3参照)。
第2燃焼室S2にて発生し、上述したガス通過孔48の第1ガス通過孔48aを通過して第1燃焼室S1に導入されたガスは、その後フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR2参照)。
図8に示すように、図7の第2点火器42が作動した第2段階においては、ディスク型ガス発生器1Aの周囲が高温下で、さらに、第1段階でディスク型ガス発生器1Aが全体として既に高温に加熱された状態にあるとき、第3段階へ移行する。第2燃焼室S2が圧力上昇に起因して、当該第2燃焼室S2の圧力が、第2ガス通過孔48bを介して遮蔽部材46の第2閉鎖部46bに付与される。これにより、第2燃焼室S2の内圧がある程度高まった時点において、遮蔽部材46の第2閉鎖部46bに締結部47を基点とした変形が生じることになり、当該第2閉鎖部46bが外側に向けて(すなわち天板部21側に向けて開裂する)ことになる。
この第2閉鎖部46bの変位により、第2ガス通過孔48bの第2閉鎖部46bが解除されることになり、当該第3段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが第2ガス通過孔48bを介して連通した状態となる。これに伴い、第2燃焼室S2にて発生したガスが、第2ガス通過孔48bを通過して第1燃焼室S1へと導入されることになる(矢印AR4参照)。
第2燃焼室S2にて発生し、上述した第2ガス通過孔48bを通過して第1燃焼室S1に導入されたガスは、その後フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR2参照)。
なお、上述した第2段階及び第3段階において、複数のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Aの外部へと噴出されたガスは、上述した第1段階の場合と同様に、当該ディスク型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
その後、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51および第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52のすべてが燃焼し尽くすことにより、ディスク型ガス発生器1Aの動作が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、隔壁部材45の外側表面に宛がわれることで当該隔壁部材45に設けられたガス通過孔48を閉鎖する第1閉鎖部46a及び第2閉鎖部46bを遮蔽部材46に設け、当該遮蔽部材46を締結部47において隔壁部材45に固定することとしている。このように構成することにより、上述したように、動作時における上記第2段階及び第3段階において、第1閉鎖部46aが変位することで第1ガス通過孔48aが開放され、さらに、第2閉鎖部46bが開裂することで第2ガス通過孔48bが開放され、これによって第2燃焼室S2にて発生したガスが第1燃焼室S1へと導入されるように構成されている。
ここで、上記第2段階において、第1ガス通過孔48aを規定する部分の頂壁部45aの外側表面と、当該頂壁部45aの外側表面に対向する部分の第1閉鎖部46aとの間に形成される隙間は、第2燃焼室S2と第1燃焼室S1とを繋ぐガス流路の絞り部となる。
この絞り部の流路断面積を第1ガス通過孔48aの開度と称すれば、当該ガス通過孔48の開度は、第1閉鎖部46aに生じる変位の大きさによって決まることになる。ここで、当該第1閉鎖部46aに生じる変位の大きさは、基本的には第2燃焼室S2の圧力に依存する。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第2燃焼室S2の圧力に依存して第1ガス通過孔48aの開度が変化することになり、より具体的には、第2ガス発生剤52が燃焼することによる第2燃焼室S2の圧力上昇に伴い、第1閉鎖部46aに付与される圧力も徐々に増加してその変位量も大きくなり、これに伴って第1ガス通過孔48aの開度も徐々に大きくなる。
そのため、第2ガス発生剤52の燃焼開始から間もない燃焼初期段階においては、第2燃焼室S2の圧力上昇が比較的小さいため、その間にわたっては第1ガス通過孔48aの開度は比較的小さくなり、これに伴って第2燃焼室S2と第1燃焼室S1とを繋ぐガス流路の絞り部において大きな流路抵抗が生じ、結果として第2燃焼室S2の内圧上昇が促進される。
一方、第2ガス発生剤52の燃焼開始から相当程度の時間が経過した燃焼中期または燃焼終期段階においては、第2燃焼室S2の圧力上昇が比較的大きくなるため、その間にわたっては第1ガス通過孔48aの開度が比較的大きくなり、これに伴って第2燃焼室S2と第1燃焼室S1とを繋ぐガス流路の絞り部において生じる流路抵抗が減じ、結果として第2燃焼室S2の過度な内圧上昇が抑制される。
さらに、上記第3段階において、第2ガス通過孔48bを規定する部分の頂壁部45aの外側表面と、当該頂壁部45aの外側表面に対向する部分の第2閉鎖部46bとの間に形成される隙間は、上記第2段階と同様に第2燃焼室S2と第1燃焼室S1とを繋ぐガス流路の絞り部となる。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第2燃焼室S2の圧力が加えられることによって第2ガス通過孔48bが開裂することになる。より具体的には、第2ガス発生剤52の燃焼による第2燃焼室S2の圧力上昇に伴い、第2閉鎖部46bに付与される圧力も徐々に増加して、これに伴って第2ガス通過孔48bが開裂する。
第2段階及び第3段階で説明したとおり、このことは、ディスク型ガス発生器1Aが置かれた周囲環境の環境温度の相違の影響を排除することにもなり、低温環境下における作動の際の第2ガス発生剤52の持続的な燃焼と、高温環境下における作動の際の第2燃焼室S2の圧力上昇の抑制との、双方に寄与することになる。結果としてディスク型ガス発生器1Aのガス出力特性が安定化する。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aとすることにより、環境温度の相違の影響を可能な限り排除しつつ、作動時において所望のガス出力を確実に得ることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器となる。
また、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、上述したように隔壁部材45の頂壁部45aに複数のガス通過孔48を設ける構成としているため、複数のガス通過孔48から噴き出されたガスが、至近距離でフィルタ70に直接的に噴き付けられることがない。そのため、当該フィルタ70の破損が回避される。また、肩部49により迂回するガス流路が形成され、噴き出されたガスが遮蔽部材に衝突する。そのため、スラグ捕集やガスの冷却がより有効に行われる。
この点、フィルタ70の破損防止をさらに確実ならしめるためには、ディスク型ガス発生器1Aが動作する前の状態において、上側支持部材62のフィルタ70と天板部21との境目部分を覆う宛がい部のうちの、フィルタ70の天板部21側の端部を覆う部分に対して、ハウジングの径方向に沿って、隔壁部材45の天板部21側の端部が面するように構成すればよい。
このように構成すれば、複数のガス通過孔48のうち、フィルタ70により近い位置に設けられたガス通過孔45cから噴き出されたガスも、上側支持部材62に噴き付けられることでその進行方向が変更され、もっぱら下部側シェル10の底板部11側に向けて噴き出すことになる。したがって、ガスが直接的にフィルタ70に噴き付けられることが回避可能となり、フィルタ70の破損が未然に防止できる。
また、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、複数のガス通過孔48の各々から噴き出されたガスが第1閉鎖部46aに噴き付けられ、さらにその後、上側支持部材62に噴き付けられる構成であるため、当該ガス中に含まれるスラグを効果的に捕集することが可能になる副次的な効果も得られる。
加えて、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、図8に示すように、第2ガス通過孔48bの締結部47に隔壁部材45が、かしめ又は溶接で固定されている。当該部分を設けることにより、万が一、第2燃焼室S2の内圧が意図しない圧力にまで上昇し、その圧力によって第2ホルダ41に対する固定力に抗して隔壁部材45天板部21側に向けて移動しないように、第2ガス通過孔48bは開放し、その移動が抑制されることになり、隔壁部材45の脱落が防止できる。
さらには、当該部分を設けることにより、隔壁部材45が移動した後に、複数のガス通過孔48が設けられた部分の隔壁部材45と上側支持部材62との間に十分な隙間が形成されず、複数のガス通過孔48が閉塞されてしまうことも防止でき、第2燃焼室S2の過度な内圧上昇を防止することもできる。
なお、本実施の形態においては、ガス通過孔を隔壁部材の頂壁部に複数設けた場合を例示して説明を行なったが、単一のガス通過孔を当該頂壁部に設けてもよい。また、ガス通過孔は、隔壁部材の側壁部に設けてもよく、その場合には、遮蔽部材の閉鎖部が、当該ガス通過孔が設けられた部分の隔壁部材の側壁部の外側表面に宛がわれるように構成すればよい。
また、遮蔽部材は、その閉鎖部によってガス通過孔が閉鎖されるように隔壁部材に固定されていればよく、ガス通過孔が隔壁部材の頂壁部に設けられるかあるいは側壁部に設けられるかの如何を問わず、隔壁部材の頂壁部および側壁部のいずれに設けてもよい。
(実施の形態2)
上述した図1の本発明の実施の形態1では、前記第3段階において遮蔽部材46の第2閉鎖部46bが開裂する形態について説明したが、図9に示すように、前記第3段階で遮蔽部材46が脱落させることで前記第3段落の作動を実現することもできる。例えば、締結部47の径方向の長さを極力短くし、遮蔽部材46の第2閉塞部46bに脆弱部を設けないといった形態とすることで、このような作動が実現され得る。このような形態とした場合、前記第1段階及び前記第2段階での作動の形態は同様となる。そのため、同じ説明は繰り返さず、前記第3段階の作動の状態について説明する。
第1段階及び第2段階を経た後、第3段階へ移行する。第2燃焼室S2が圧力上昇に起因して、当該第2燃焼室S2の圧力が、第2ガス通過孔48bを介して遮蔽部材46の第2閉鎖部46bに付与される。これにより、第2燃焼室S2の内圧がある程度高まった時点において、遮蔽部材46の第2閉鎖部46bに対して圧力が加えられることになり、当該第2閉鎖部46bが外側に向けて(すなわち天板部21側に向けて)脱落することになる。
この第2閉鎖部46bの脱落により、第2ガス通過孔48bの第2閉鎖部46bが解除されることになり、当該第3段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが第2ガス通過孔48bを介して連通した状態となる。これに伴い、第2燃焼室S2にて発生したガスが、第2ガス通過孔48bを通過して第1燃焼室S1へと導入されることになる(矢印AR4参照)。
第2燃焼室S2にて発生し、上述した第2ガス通過孔48bを通過して第1燃焼室S1に導入されたガスは、その後フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR2参照)。
なお、上述した第2段階及び第3段階において、複数のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Bの外部へと噴出されたガスは、上述した第1段階の場合と同様に、当該ディスク型ガス発生器1Bに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
その後、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51および第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52のすべてが燃焼し尽くすことにより、ディスク型ガス発生器1Bの動作が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bにおいては、隔壁部材45の外側表面に宛がわれることで当該隔壁部材45に設けられたガス通過孔48を閉鎖する第1閉鎖部46a及び第2閉鎖部46bを遮蔽部材46に設け、当該遮蔽部材46を締結部47において隔壁部材45に固定することとしている。このように構成することにより、上述したように、動作時における上記第2段階及び第3段階において、第1閉鎖部46aが変位することで第1ガス通過孔48aが開放され、さらに、第2閉鎖部46bへの圧力付与によって遮蔽部材46が脱落することで第2ガス通過孔48bが開放され、これによって第2燃焼室S2にて発生したガスが第1燃焼室S1へと導入されるように構成されている。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3においては、実施の形態1と比較して、隔壁部材45において第1ガス通過孔48bの設けられる場所が相違し、その他の点では実施の形態1と同様である。
図10に示すように、隔壁部材45の頂壁部45aには、第2ガス通過孔48bが設けられている。複数の第1ガス通過孔48aは、隔壁部材45の側壁部45bの頂壁部45a寄りに設けられている。ここで、第1ガス通過孔48aよりも第2ガス通過孔48bの開口面積は大きい。ガス通過孔48は第2燃焼室S2にて発生したガスを第1燃焼室S1に向けて通過させるためのものである。第1ガス通過孔48aは、隔壁部材45の側壁部45bにおいて周方向に沿って設けられており、その各々は、側壁部45bの厚み方向に沿って当該側壁部45bを貫通するように設けられている。第2ガス通過孔48bは、隔壁部材45に遮蔽部材46を固定するための締結部47が挿通される部位が設けられ、頂壁部45aの厚み方向に沿って当該頂壁部45aを貫通するように設けられている。そして、第1ガス通過孔48aは、遮蔽部材46の肩部49によって覆われている。
このような実施の形態3とすることで、前記第1段階においてガスは隔壁部材45の周方向に噴出され、遮蔽部材46に衝突し、ハウジングの軸方向から見て下方向へ向かって噴き出すこととなる。
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態1においては、第1点火器および第2点火器が異なるタイミングで通電されることにより、第2点火器が第1点火器の作動のタイミングから遅れたタイミングで作動するように構成された場合を例示して説明を行なったが、これらが同時のタイミングで通電されることにより、同時のタイミングで作動するように構成されていてもよい。また、第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電する場合であっても、第2点火器の点火部に点火薬の着火を遅らせる延時薬を設けることにより、第2点火器の通電から点火薬の着火までに要する時間を延長し、これによって第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電しつつも、第2ガス発生剤の燃焼開始のタイミングを第1ガス発生剤の燃焼開始のタイミングよりも遅らせるように構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1においては、第2燃焼室にガス発生剤のみを充填した場合を例示して説明を行なったが、第2燃焼室にガス発生剤に加えて伝火薬を収容することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1においては、第1点火器および第2点火器をそれぞれ金属製の第1ホルダおよび第2ホルダを介してハウジングの底板部に組付けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、これら第1点火器および第2点火器の双方をいわゆるインサート成形によってハウジングの底板部に組付けるように構成してもよい。その場合には、ディスク型ガス発生器は、上述した第1ホルダおよび第2ホルダに代えて、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部を有することになり、第1点火器および第2点火器は、それぞれこれら第1保持部および第2保持部を介してハウジングの底板部に組付けられる。
具体的には、第1保持部は、型を用いた射出成形によって形成することができ、下部側シェルと第1点火器との間の空間を充填するように流動性樹脂材料を流し込んでこれを固化させることで設けることができる。より詳細には、上述した流動性樹脂材料を、下部側シェルの底板部に設けられた第1開口部を経由して底板部の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように当該底板部に付着させるとともに、第1点火器の基部にもこれを付着させ、この状態において流動性樹脂材料を固化させることにより、第1点火器を、第1保持部を介してハウジングの底板部に組付けることができる。
これにより、第1開口部は、第1保持部によって埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が第1保持部によって確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保できることになる。なお、第1点火器の端子ピンは、その一部が第1保持部を貫通して外部に引き出されるように構成すればよい。また、この場合において、たとえばカップ体の開口端を第1保持部に外挿することでカップ体を圧入等によって第1保持部に固定することとすれば、伝火薬を第1点火器の点火部に面するように配置することもできる。
また、第2保持部も、第1保持部と同様に、型を用いた射出成形によって形成することができ、下部側シェルと第2点火器との間の空間を充填するように流動性樹脂材料を流し込んでこれを固化させることで設けることができる。より詳細には、上述した流動性樹脂材料を、下部側シェルの底板部に設けられた第2開口部を経由して底板部の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように当該底板部に付着させるとともに、第2点火器の基部にもこれを付着させ、この状態において流動性樹脂材料を固化させることにより、第2点火器を、第2保持部を介してハウジングの底板部に組付けることができる。
これにより、第2開口部は、第2保持部によって埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が第2保持部によって確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保できることになる。なお、第2点火器の端子ピンは、その一部が第2保持部を貫通して外部に引き出されるように構成すればよい。また、この場合において、たとえば有底略円筒状の隔壁部材の開口端を第2保持部に外挿することで隔壁部材を圧入等によって第2保持部に固定したり、あるいは、隔壁部材を底板部に溶接したりすることとすれば、第2ガス発生剤を第2点火器の点火部に面するように配置することもできる。
ここで、下部側シェルの第1開口部および第2開口部が設けられた部分をハウジングの内側に向けて筒状に突出させることとすれば、第1保持部および第2保持部と底板部との間の固着面積を増加させることでこれらの接合強度を高めることができるとともに、ハウジングの筒状に折り曲げた部分の内側に雌型コネクタ部を形成するスペースを確保することもできる。その場合には、ハウジングの筒状に折り曲げた部分にカップ体あるいは隔壁部材を圧入することも可能になる。
射出成形によって形成される第1保持部および第2保持部の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において第1保持部および第2保持部の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
また、第1保持部および第2保持部によって覆われることとなる部分の底板部の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェルを用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させること等により、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部と第1保持部および第2保持部との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部をより強固に底板部に固着させることが可能になる。したがって、底板部に設けられた第1開口部および第2開口部を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設ければ、当該部分においてより高いシール性を確保することもできる。
ここで、底板部に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を原料として含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
なお、第1点火器および第2点火器の一方を金属製のホルダを介してハウジングに固定するとともに、第1点火器および第2点火器の他方を樹脂成形部からなる保持部を介してハウジングに固定することとしてもよい。
加えて、上述した本発明の実施の形態1ないし3の場合と同様に、第1点火器組立体および第2点火器組立体のベースを第1ホルダおよび第2ホルダにてそれぞれ構成する反面、第1ホルダと第1点火器との間を樹脂成形部にて接合することで第1点火器組立体を構成し、第2ホルダと第2点火器との間を樹脂成形部にて接合することで第2点火器組立体を構成し、第1ホルダおよび第2ホルダをそれぞれ底板部に溶接等によって接合することとしてもよい。
さらには、上述した本発明の実施の形態1において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて相互にこれらを組み合わせることができる。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。