[go: up one dir, main page]

JP7480652B2 - 電解液中のニカワの分析方法 - Google Patents

電解液中のニカワの分析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7480652B2
JP7480652B2 JP2020155170A JP2020155170A JP7480652B2 JP 7480652 B2 JP7480652 B2 JP 7480652B2 JP 2020155170 A JP2020155170 A JP 2020155170A JP 2020155170 A JP2020155170 A JP 2020155170A JP 7480652 B2 JP7480652 B2 JP 7480652B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glue
electrolyte
concentration
calibration curve
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020155170A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021181972A (ja
Inventor
大樹 志賀
公彦 冨士田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Publication of JP2021181972A publication Critical patent/JP2021181972A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7480652B2 publication Critical patent/JP7480652B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Sampling And Sample Adjustment (AREA)
  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)

Description

本発明は、電解液中のニカワの濃度を分析測定する方法に関する。
銅製錬プロセスにおいては、電気銅(銅純度≧99.99%)を得るため、乾式製錬で得られた粗銅(銅純度≧99%)をアノードとし、種板(銅純度≧99.99%)をカソードとして、硫酸銅を主成分とする電解液中で電解精製が行われている。
電解液は、主成分が硫酸銅であって、pH<0程度の強い酸性を示す。電解液中の硫酸銅濃度は、50℃~60℃程度の操業温度から冷却されると硫酸銅が晶出してしまうほどの高濃度であり、例えば250g/L程度である。
また、電解液には、その他の成分として、微量のニカワ(「ゼラチン」ともいう)が添加されていることが知られている。ニカワは、電気銅の外観や機械的強度等の性状を良好に保つために添加される重要な添加剤である。そのため、操業中に電解液中のニカワの濃度を所定に範囲に維持することが重要となる。
ところが、ニカワは分解しやすい性質を持っており、また、電解液中のニカワは極めて低濃度(ppm(≒mg/L)オーダー)であるため、電解液中の硫酸銅をはじめとする、ニカワよりも濃度の高い成分の影響もあり、ニカワの濃度を高い精度で分析することは困難であった。
例えば、特許文献1又は2には、サイズ排除クロマトグラフィー(「SEC」(Size Exclusion Chromatography)又は「SEC分析」とも呼ばれる)を利用する分析において、SEC分析に先立ち、両親媒性ポリマーに電解液を接触させることによりニカワをポリマーに吸着させ、次いでポリマーからニカワを溶離させるステップを有する技術が開示されている。この方法によれば、溶離液中においてはニカワ以外の成分の濃度が小さくなりバックグラウンドが低減されるため、ニカワの分析精度を向上させることができる。
特許文献1又は2に開示の方法は、それまでの技術に比べて分析精度を向上させることができる点で優れた技術である。しかしながら、電解液中での濃度が非常に低いニカワを濃縮する手段として、樹脂による吸着及び溶離のステップが必要となり、またその樹脂は高価であるため繰り返し利用することが一般的となり、繰り返し使用に伴う樹脂の劣化による分析誤差は避けられず、分析精度の向上には一定の限界がある。
特開2009-192491号公報 特開2009-69001号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、銅電解液等の電解液中のニカワの濃度を効果的にかつ効率的に測定する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、電解液中のニカワの濃度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)や全有機炭素(TOC:Total Organic Carbon)により分析測定するにあたって、その前処理として、分析対象の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことにより、ニカワを有効に濃縮させた溶液を得ることができ、SECやTOCによる分析の精度を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、電解液に含まれるニカワの濃度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析する方法であって、前記SECによる分析に先立ち、前記電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって、該電解液中のニカワを濃縮する、電解液中のニカワの分析方法である。
(2)本発明の第2の発明は、電解液に含まれるニカワの濃度を全有機炭素(TOC)により分析する方法であって、前記TOCによる分析に先立ち、前記電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって、該電解液中のニカワを濃縮する、電解液中のニカワの分析方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は2の発明において、前記電解液のpHは0.5以下である、電解液中のニカワの分析方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記限外濾過膜を備えた定容容器を使用して、前記電解液を遠心分離処理する、電解液中のニカワの分析方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対して、さらに洗浄処理を行う、電解液中のニカワの分析方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第1の発明において、ニカワ濃度が既知の水溶液を用いたSECによる分析を行うことで検量線を作製し、前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対する前記SECによる分析値から、前記検量線に基づいて、前記電解液に含まれるニカワの濃度を測定する、電解液中のニカワの分析方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記ニカワ濃度が既知の水溶液は、ニカワ濃度が既知の検量線作製用の電解液であり、前記検量線を作製するに際しては、前記検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって該電解液中のニカワを濃縮し、得られたニカワの濃縮液に対して洗浄処理を行い、前記洗浄処理後の濃縮液を用いたSECによる分析を行うことで検量線を作製する、電解液中のニカワの分析方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第2の発明において、濃度既知のフタル酸水素カリウム水溶液を用いたTOCによる分析を行うことで検量線を作製し、前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対する前記TOCによる分析値から、前記検量線に基づいて、前記電解液に含まれるニカワの濃度を測定する、電解液中のニカワの分析方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第2の発明において、ニカワ濃度が既知の水溶液を用いたTOCによる分析を行うことで検量線を作製し、前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対する前記TOCによる分析値から、前記検量線に基づいて、前記電解液に含まれるニカワの濃度を測定する、電解液中のニカワの分析方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第9の発明において、前記ニカワ濃度が既知の水溶液は、ニカワ濃度が既知の検量線作製用の電解液であり、前記検量線を作製するに際しては、前記検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって該電解液中のニカワを濃縮し、得られたニカワの濃縮液に対して洗浄処理を行い、前記洗浄処理後の濃縮液を用いたTOCによる分析を行うことで検量線を作製する、電解液中のニカワの分析方法である。
本発明によれば、電解液中のニカワの濃度を効果的にかつ効率的に測定できる。
限外濾過膜を備えた遠心分離用の定容容器の一例を示すとともに、回転数4000rpmで遠心分離処理したときの様子を示す写真図である。 実施例1における、ニカワ濃度既知の水溶液を用いて検量線を作製するに際して行ったSEC分析の結果を示すチャートグラフである。 ニカワ濃度既知の水溶液をSEC分析して得られた検量線を示す図である。 比較例1におけるSEC分析で得られた溶出曲線のチャートグラフである。 ニカワ濃度既知の電解液を用いて検量線を作製するに際して行ったSEC分析の結果を示すチャートグラフである。 ニカワ濃度既知の電解液を用いてSEC分析して得られた検量線を示す図である。 フタル酸水素カリウム濃度が既知の水溶液をTOC分析して得られた検量線を示すグラフ図である。 実施例2における電解液のTOC分析の結果を示すグラフ図である。 比較例2における電解液のTOC分析の結果を示すグラフ図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書にて、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
本発明に係るニカワの分析方法(以下、単に「分析方法」という)は、電解液に含まれる成分であるニカワの濃度を分析測定する方法である。具体的に、そのニカワ濃度の分析方法は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)による分析、又は、全有機炭素(TOC:Total Organic Carbon)による分析が挙げられる。
分析対象である電解液には、ニカワがppmオーダーの割合で含まれている。具体的には、電解液中のニカワ濃度としては、例えば0.01~10ppm程度である。また、電解液には、銅、ニッケル、金、マンガン、鉛等の金属イオン、無機酸、有機酸等の、ニカワよりも高濃度である種々の成分が含まれている。なお、例えば銅電解液の場合、一般的には、Cu:40~70g/L程度、HSO:150~210g/L程度であり、さらにニカワ、チオ尿素、アビトン等の添加剤が含有されている。
本発明に係る分析方法は、このような電解液に含まれる、低含有量のニカワの濃度を分析測定する方法である。
具体的に、この分析方法では、SEC又はTOCによる分析に先立ち、電解液に対する限外濾過膜を用いた前処理を行うことによって、その電解液中のニカワを濃縮することを特徴としている。
このような方法によれば、電解液中のニカワを有効に濃縮でき、濃縮して得られる溶液を用いてSEC又はTOCによる分析を行うようにしているため、その分析結果のチャートにおいてニカワを検出している部分を明確に認識でき、高い精度でニカワの濃度を測定することができる。さらに、このような前処理では、ポリマーの吸着や溶離といった操作が不要となり、極めて簡易にニカワを濃縮した濃縮液、つまりSEC又はTOCによる分析対象の溶液を得ることができる。
また、このような分析方法を適用することで、例えば銅電解操業に用いる銅電解液中のニカワ成分の濃度を有効に管理することができ、従来よりも精度の高い濃度管理のもと、より品質の優れた電気銅を得ることができる。
[サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析]
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析とは、多孔質充填剤を詰めたカラム中において、充填剤表面の細孔と高分子量体とのサイズ排除機構によって物質を分離する手法である。SECでは、分子サイズの大きい高分子量体は多孔質充填剤の深部へは到達できないため結果的に短い流路を通って早く溶出され、一方、分子サイズの小さい低分子量体は深部へ到達できるため流路が長くなり遅く溶出される。このように、SECでは、分子サイズ(分子量)の違いによって分子を分離することができる。なお、本発明に係る分析方法では、上述した高分子量体がニカワであり、低分子量体がニカワ以外の成分である。
SECに用いられる充填剤(カラム)としては、種々のものが市販されており、本発明に係る分析方法においても、ニカワの濃度を適切に分析測定できるカラムであれば特に限定されない。
SECを用いたニカワの濃度分析においては、検量線法を用いることができる。具体的には、保持時間(単位:min)と、UV透過計により測定した溶出量(単位:mV)とから溶出曲線を求め、基準(0mV)よりもプラス側のピーク面積値を算出する。一方で、濃度既知のニカワ溶液に対して同様のSEC測定を行って得られる検量線を作製する。そして、作製した検量線に基づいて、算出したピーク面積値とから、分析対象のニカワ含有溶液(電解液)におけるニカワ濃度を測定する。なお、検量線の作製に関しては、後で詳述する。
[全有機炭素(TOC)による分析]
全有機炭素(TOC)分析とは、有機物含有試料を酸化分解した際に発生する二酸化炭素の量が酸化分解された試料中に含まれる有機物の炭素量に比例することを利用して、発生した二酸化炭素の量を測定することで、試料中の有機物の総量を定量する分析方法である。なお、本発明に係る分析方法では、後述する限外濾過による濃縮後の溶液中における高分子量体の有機物がニカワであり、低分子量体がニカワ以外の成分である。
TOCを用いたニカワの濃度分析においては、検量線法を用いることができる。具体的には、非分散形赤外線ガス検出器等による、測定時間(単位:min)と、二酸化炭素検出量(単位:mV)とを求め、そこから求められる曲線から算出される二酸化炭素検出量の基準(0mV)よりもプラス側のピーク面積値を算出する。一方で、濃度既知のフタル酸水素カリウム水溶液に対して同様のTOC測定を行って得られる検量線を作製する。そして、作製した検量線に基づいて、算出したピーク面積値とから、分析対象のニカワ含有溶液(電解液)におけるニカワ由来のTOCを測定する。なお、検量線の作製に関しては、後で詳述する。
[SEC又はTOCによる分析の前処理(限外濾過膜を用いた前処理)]
さて、上述したように、例えば銅電解液等の電解液中には、硫酸銅等の金属化合物のほか、チオ尿素やアビトン等の添加剤の化合物が含まれており、それらの化合物は、電解液中に微量の割合(ppmオーダー)で含まれるニカワに比べて高濃度に含まれている。そのため、従来のSEC分析では、ニカワより高濃度に含まれる他の化合物成分の影響もあり、高い精度でニカワの定量分析を行うことは困難であった。
そこで、本発明に係る分析方法では、SEC又はTOCによる分析に先立つ前処理として、分析対象の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行い、これによりその電解液中のニカワを濃縮することを特徴としている。
このように、分析対象の電解液に対して限外濾過膜を用いた前処理を行うことで、電解液中のニカワ(分子量≧3000)を有効に濃縮できるため、相対的に他の成分の影響を小さくすることが可能となり、その結果として高い精度でSEC分析やTOC分析を行うことができる。また、このような前処理では、ポリマーの吸着や溶離といった操作が不要となり、極めて簡易にかつ効果的にニカワを濃縮することができる。
(限外濾過膜について)
限外濾過膜は、一般に分子の大きさに基づいて分離を行う圧力式の濾過に用いる膜であり、その性能指標は分画分子量により表現される。限外濾過膜は、一次側(流入側)から溶液(電解液)を流入させ、二次側(流出側)として濾過した溶液を流出させるものである。この操作により、限外濾過膜より上に残留した膜上液と、限外濾過膜を通って膜下に移行した膜下液とが得られる。
本発明に係る分析方法において用いる限外濾過膜は、その分画分子量が1000以上である。また、限外濾過膜の分画分子量は、好ましくは2000以上であり、より好ましくは3000以上である。なお、分画分子量の上限値は、特に限定されないが、好ましくは10000以下であり、より好ましくは5000以下である。ここで、分画分子量とは、既知の分子量を持つ標準物質を透過させたときの膜の阻止率が90%に相当する分子量の目安である。
本発明に係る分析方法において、その分析対象は電解液であり、電解液中に含まれる成分のうち、ニカワの分子量は数万~数十万程度、ニカワ以外の成分の分子量は高くても1000未満程度であり、例えば分画分子量(適用分子量)3000の限外濾過膜を用いて処理することで、分画分子量3000より大きい分子量として分画されるものは、明確に電解液中のニカワであると見做すことができ、ニカワを選択的に濃縮することできる。なお、電解液中に意図的に添加する添加剤として、例えばチオ尿素やアビトンが挙げられるが、これらの化合物の分子量は、チオ尿素:80程度、アビトン:300程度である。
具体的には、電解液に対して限外濾過膜を用いた前処理を施すことによって、膜上液と膜下液とに分離することができ、その膜上液中に分画分子量よりも大きな分子量のニカワを残留させ、膜下液中に分画分子量よりも小さな分子量である、ニカワ以外の他の成分を分離して移行させる。このように、本発明に係る分析方法は、電解液に含まれるニカワの濃度をSEC分析により測定するための方法であって、その前処理として、電解液に含まれるニカワと電解液に含まれるその他の成分との分子量の相違を利用し、効果的にかつ効率的に、ニカワを濃縮させた溶液(「膜上液」又は「ニカワ濃縮溶液」ともいう)を得ることを特徴としている。
そして、限外濾過膜を用いた前処理を行ってニカワ濃縮溶液を得た後、そのニカワ濃縮溶液に対してSEC又はTOCによる分析を行う。これにより、SEC分析又はTOC分析の結果のグラフからニカワ濃度を求めることができる。特に、限外濾過膜を用いた前処理を行った得られたニカワ濃縮溶液をSEC分析又はTOC分析に供することで、その分析結果のチャートにおいて、ニカワを検出している部分が明確となる。そして、当該部分のピーク面積と、SEC分析の場合には既知濃度のニカワ溶液に対してSEC分析して得られる検量線とから、またTOC分析の場合には例えば濃度既知のフタル酸水素カリウム水溶液に対してTOC分析して得られる検量線とから、高い精度でニカワの濃度を測定することができる。
ここで、限外濾過膜としては、耐酸性を有するものであることが好ましい。上述したように、この分析方法の対象は電解液であり、強い酸性の溶液である。例えば、銅電解液ではpH≦0.5である。したがって、耐酸性を有する限外濾過膜であることにより、電解液を接触させることによる劣化を抑制して、より精度高く、ニカワを選択的に分画して濃縮液を得ることができる。
なお、耐酸性の高い限外濾過膜として、例えばSartorius社製「Vivaspin Turbo 15」等が市販されており、好適に用いることができる。ただし、限外濾過膜は、1回の分析において1回に限定して使用することが好ましく、これにより限外濾過膜の僅かな劣化に基づく分析精度の低下を確実に防ぐことができる。
(限外濾過膜を用いた処理の一例:遠心分離処理)
上述したように、本発明に係る分析方法では、SEC分析又はTOC分析の前処理として限外濾過膜を用いた処理を行ってニカワを濃縮した溶液を得る。限外濾過膜を用いる処理であれば、その具体的な濃縮の手段は特に限定されないが、例えば、限外濾過膜を備えた遠心分離用の定容容器を使用して、分析対象である電解液を遠心分離処理する方法が挙げられる。
図1は、限外濾過膜を備えた遠心分離用の定容容器の一例を示すとともに、回転数4000rpmで遠心分離処理したときの様子を示す写真図である。なお、図1の写真図では、15mlの電解液を限外濾過膜に流入させて遠心分離処理したときの様子を示し、遠心分離処理の実施前、10分後、20分後、30分後、の4つ時点での状態を示す。
このように、限外濾過膜を用いて遠心分離処理を行うことで、例えば以下のような理由により、電解液中のニカワをより効果的にかつ効率的に濃縮することでき、好ましい。
すなわち、遠心分離処理に用いる遠心分離装置としては様々な型式のものがあるが、例えば電解操業現場の試験室等に設置可能な型式のものも多数存在し、すなわち、電解操業現場の直近で簡易に使用することが可能となる。これにより、電解液のサンプリングから濃縮操作を開始までに要する時間を短縮することができ、不慣れな作業員であっても例えば10分以内の操作時間で前処理を完了させることができる。
また、限外濾過膜を用いた前処理により、例えば電解液中のニカワ濃度を10倍に濃縮するような場合、その濃縮操作が終了するまでの所要時間としては、回転数4000rpmでおよそ30分程度となる。電解液のサンプリングの時間を含めても、濃縮操作が完了するまで40分程度の短時間で済み、例えば上述した特許文献1、2に開示されているポリマーを使用した吸着及び溶離の操作よりも、極めて短時間で完了させることができる。
さらに、限外濾過膜を用いた遠心分離による前処理では、効率的にニカワ濃縮液を得ることができ、その溶液においては分子量の低い成分が有効に除去されているため、液温の低下に基づく硫酸銅の晶出によるSECやTOCの分析精度の低下を防ぐことができる。
ここで、限外濾過膜を用いた遠心分離処理によって電解液中のニカワを濃縮する手順において、遠心分離処理により例えばニカワを10倍に濃縮した濃縮液を得た後、そこに洗浄液を添加して、繰り返し遠心分離による操作を追加することが好ましい。より具体的には、得られた濃縮液に洗浄液を添加し、再度限外濾過膜を用いた遠心分離による操作を行い、得られた膜上液を10倍に洗浄希釈した後、さらにもう一度遠心分離による操作を追加して100倍にまで洗浄希釈する。
このように、得られた濃縮液に対する洗浄希釈と繰り返しの遠心分離を行うことで、ニカワ濃縮液中のニカワ濃度は10倍に濃縮されたままの状態で、残留している低分子量成分を洗浄希釈によってさらに低減できる。すなわち、その後のSEC分析やTOC分析における分析精度の低下の原因であるバックグラウンド(他の成分)をさらに低減することができる。
繰り返し回数は、多ければ多いほど効果を向上させることができるが、所要時間とのバランスを考慮すれば、例えば2回の繰り返しを行うことで、100倍までの洗浄希釈を行うことができ、十分に低分子量成分を低減することができる。
なお、洗浄液としては、電解液中の成分を含有しないものであれば特に限定されず、例えば超純水を用いることができるが、例えば、リン酸水素2ナトリウム(0.1mol/L)と、リン酸2水素カリウム(0.1mol/L)とを含む溶液を洗浄液として用いることが特に好ましい。このような洗浄液を用いて洗浄希釈することにより、その後のSEC分析やTOC分析により得られる結果チャートから、水によるノイズを低減することできる。
また、限外濾過膜を用いた遠心分離処理によって電解液中のニカワを濃縮する手順において、使用する遠心分離用の定容容器については、使用前に洗浄することが好ましい。例えば納入された状態のままの定容容器には、容器の製造過程で付着した付着物が存在することがあり、より精度の高いSEC分析を可能にする観点から、使用前にその定容容器を洗浄して付着物を除去しておくことが好ましい。
(限外濾過膜を用いた前処理を行うにあたっての電解液の希釈操作)
本発明に係る分析方法において、その分析対象は電解液であり、一般的にpH≦0.5である強い酸性を示す溶液である。そのため、電解液に対する前処理に用いる限外濾過膜の劣化を抑制する観点から、その前処理を行うにあたって、電解液を少なくとも2倍程度以上に希釈することが好ましい。
なお、希釈によって電解液のpHを1上昇させるためには、単純には10倍の希釈をすることが必要となり、希釈率を上げれば上げるほどpHを上昇させることができるが、その希釈操作は、限外濾過膜を用いた前処理によるニカワの濃縮操作とは、ほとんど反対の操作となる。そのことから、操作の手間や所要時間が長くなりすぎることを防ぐために、電解液の希釈は5倍程度までとすることが好ましい。
(限外濾過膜を用いた前処理によるニカワの濃縮率)
限外濾過膜を用いた前処理により、膜上液としてニカワを濃縮させたニカワ濃縮液を得ることができるが、そのニカワの濃縮率としては10倍程度とすることが好ましい。
電解液に含まれるニカワ以外の成分の影響は、ニカワの濃縮率が上昇するにつれて徐々に低減され、濃縮率が10倍を超えるとほぼ頭打ちとなり、それ以上の濃縮率ではニカワ以外の成分による影響はほとんど変わらなくなる。このことから、手間を最小限にして効率的に、かつ精度の高いSEC分析又はTOC分析を可能にするために、ニカワの濃縮率が10倍程度となるように前処理を行うことが好ましい。
ただし、電解操業によっては、電解液中のニカワ含有量が調整されており、適切なニカワの濃縮率も変動することがある。すなわち、ニカワ含有量が多い場合は10倍濃縮までする必要がなく、また反対に、ニカワ含有量が少ない場合は10倍濃縮でも不十分となる可能性がある。したがって、ニカワの濃縮率は、電解操業で使用される電解液中のニカワ含有量に基づいて適宜調整して設定することが好ましい。
[検量線の作製について]
上述したように、SECやTOCを用いた電解液中のニカワの濃度分析においては、検量線法を用いることができる。
(SEC分析を行う場合)
具体的には、分析対象の電解液に対してSEC分析によりニカワ濃度を測定するにあたっては、予め、ニカワ濃度が既知の水溶液を用いたSEC分析を行うことで検量線を作製しておく。そして、限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対するSECによる分析値(SEC分析による、保持時間とUV透過計での溶出量とから求められる溶出曲線から算出されるプラス側のピーク面積値)と、作製した検量線とを比較して、その検量線に基づいて電解液に含まれるニカワの濃度を測定する。
検量線を作製するに際して用いるニカワ濃度が既知の水溶液としては、ニカワ濃度が既知の電解液を用いることができる。なお、この電解液については、分析対象の電解液とは区別するために、ニカワ濃度が既知の「検量線作製用の電解液」とも称する。このように、検量線作製用の電解液を用いて検量線を作製することで、分析対象の電解液中のニカワ濃度の分析において実測の条件に近似させることができ、検量線法による分析精度を高めることができる。
ここで、検量線作製用の電解液を用いて検量線を作製するに際しては、分析対象の電解液に対する処理と同様に、SEC分析を行うに先立って、その検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた前処理を行って電解液中のニカワを濃縮する。検量線の作製にあたっても、電解液を用いる場合には、その電解液中に高濃度に含まれる低分子物質を影響が現れてしまい、ニカワ濃度が既知であっても適切な検量線を作製することが困難となる。そこで、SEC分析に先立ち、検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた前処理を行ってニカワを濃縮させた濃縮液を得るようにする。これにより、検量線作製用の電解液に含まれる低分子物質の影響を排除してSEC分析の精度を高めることができ、その分析結果に基づいて作製する検量線をより適切なものとすることができる。
なお、検量線作製用の電解液に対する限外濾過膜を用いた前処理については、上述した分析対象の電解液に対する前処理と同様にして行うことができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
また、検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことでニカワの濃縮液を得た後、そのニカワ濃縮液に対して洗浄処理を行うことが好ましい。得られたニカワ濃縮液は、検量線作製用の「電解液」に由来するものであることから、電解液が付着している。そのため、ニカワ濃縮液に対して、水等の洗浄液を用いて洗浄処理を行って電解液を洗浄液で置換するようにすることで、付着した電解液を有効に除去できる。このように、得られたニカワ濃縮液を洗浄することで、洗浄処理後のニカワ濃縮液に対するSEC分析の精度を高めることができ、そのSEC分析結果からより適切な検量線を作製することができる。そしてこれにより、分析対象の電解液中のニカワ濃度の分析において、より一層に実測の条件に近似させることができ、検量線法による分析精度を向上させることができる。
(TOC分析を行う場合)
分析対象の電解液に対してTOC分析によりニカワ濃度を測定するにあたっては、予め、濃度既知のフタル酸水素カリウムを含有する水溶液に対して同様のTOC測定を行って得られる検量線を作製する。そして、限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対するTOCによる分析値(TOC分析による、非分散形赤外線ガス検出器での測定時間と二酸化炭素検出量とから求められる曲線から算出されるプラス側のピーク面積値)と、作製した検量線とを比較して、その検量線に基づいて電解液に含まれるニカワに由来するTOCを測定して濃度を算出する。
また、フタル酸水素カリウム含有溶液を用いた検量線作製に限らず、TOC分析によりニカワ濃度を測定するにあたっても、濃度既知のニカワ含有溶液を用いてTOC分析を行うことで検量線を作製することができる。そして、上述したのと同様に、限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対するTOCによる分析値と、作製した検量線とを比較して、その検量線に基づいて電解液に含まれるニカワに由来するTOCを測定して濃度を算出する。
なお、濃度既知のニカワ含有溶液を用いた検量線の作製に際し、そのニカワ含有溶液としては、ニカワ濃度が既知の電解液(検量線作製用の電解液)を用いることができる。検量線作製用の電解液を用いて検量線を作製することで、分析対象の電解液中のニカワ濃度の分析において実測の条件に近似させることができ、検量線法による分析精度を高めることができる。また、検量線作製用の電解液を用いて検量線を作製するに際しては、分析対象の電解液に対する処理と同様に、TOC分析を行うに先立って、その検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた前処理を行って電解液中のニカワを濃縮する。これにより、検量線作製用の電解液に含まれる低分子物質の影響を排除してTOC分析の精度を高めることができ、その分析結果に基づいて作製する検量線をより適切なものとすることができる。さらに、検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことでニカワの濃縮液を得た後、そのニカワ濃縮液に対して洗浄処理を行うことが好ましい。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
本発明に係るニカワの分析方法を適用して、銅電解液に含まれるニカワの濃度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定した。
(電解液の希釈)
具体的には、先ず、分析対象である電解液(pH≦0.5)15mlに対して超純水15mlを添加し、電解液を2倍に希釈した。
(限外濾過膜を用いた前処理)
次に、希釈後電解液を15mlの2つ([a]、[b]とする)に分け、限外濾過膜を備えた定容容器(膜上の容量17ml)に希釈後電解液[a]15mlを装入して、回転数4000rpmの条件で遠心分離処理を施した。ここで、限外濾過膜としては、分画分子量3000のPES(ポリエーテルサルフォン)からなるもの(「Vivaspin Turbo 15」,Sartorius社製)を用いた。また、遠心分離処理は、膜上の電解液(膜上液)が1.5ml(膜下液が13.5ml)となるまで行った(なお、処理時間は約30分であった。)。
次に、得られた膜上液1.5mlに希釈後電解液[b]15mlを加え、再度、限外濾過膜を備えた定容容器に装入して回転数4000rpmの条件で遠心分離処理を施した。遠心分離処理は、膜上の電解液(膜上液)が1.5ml(膜下液が13.5ml)となるまで行い、これにより、膜上液として10倍に濃縮させた濃縮液(1.5ml)を得た。
(濃縮液に対する洗浄処理)
次に、得られた濃縮液1.5mlに対して超純水13.5mlを添加し、限外濾過膜を備えた定容容器に装入して、回転数4000rpmの条件での遠心分離による洗浄処理を施した。さらに、遠心分離による洗浄処理で得られた膜上液1.5mlに対して超純水13.5mlを添加し、再度、限外濾過膜を備えた定容容器に装入して、回転数4000rpmの条件での遠心分離による洗浄処理を施した。これにより、膜上液として洗浄処理後の濃縮液(1.5ml)を得た。
(SEC分析)
次に、得られた濃縮液を用いてSEC分析を行った。
・検量線の作製
先ず、ニカワ濃度が0mg/L、1mg/L、5mg/L、及び10mg/Lの水溶液をそれぞれ調整し、サイズ排除カラムを用いた高速液体クロマクトグラフ(東ソー社製,HLC-8020)によりSEC分析を行った。この分析に基づき、保持時間(単位:min)と、UV透過計により測定した溶出量(単位:mV)とから溶出曲線(図2参照)を求め、基準(0mV)よりもプラス側のピーク面積(図2中の斜線部の面積)を算出し、ニカワ濃度に対する面積の関係を示すグラフにプロットし、近似線から検量線を作製した。なお、図2は、ニカワ濃度が10mg/Lの電解液に対するSEC分析の結果を示す溶出曲線のグラフ図である。
図3は、上述のようにしてニカワ濃度既知の水溶液をSEC分析して得られた検量線を示すグラフ図である。この検量線に基づいて、例えば、分析対象の電解液においてSEC分析により得られる溶出曲線にて検出されるニカワのピーク面積(基準(0mV)よりもプラス側の面積)が2500程度あれば(図3中の白抜き菱形ポイント)、その分析対象の電解液のニカワ濃度が7mg/Lであると測定できる。
・濃縮液に対するSEC分析(ニカワ濃度の測定)
次に、上述した前処理を経て得られた濃縮液に対するSEC分析を行って、ニカワ濃度を測定した。具体的に、サイズ排除クラムを用いた高速液体クロマクトグラフ(東ソー社製,HLC-8020)によりSEC分析を行った。この分析に基づき、保持時間(単位:min)と、UV透過計により測定した溶出量(単位:mV)とから溶出曲線を求め、基準(0mV)よりもプラス側のピーク面積を算出した。
具体的には、SEC分析で得られた溶出曲線のチャートグラフにおいて、ニカワの分子量に相当する部分である保持時間23分~27分の範囲で明確に基準(0mV)よりもプラス(+)の部分を確認された(図2と同様に斜線で示すプラス側の部分)。このことから、その基準よりもプラス側の部分のピーク面積を算出して、そのピーク面積から、作製した検量線に基づいてニカワ濃度を測定することができた。
このように、ピーク面積を算出するための、基準よりもプラス側の部分を明確に確認できたのは、SEC分析に先立ち、限外濾過膜を用いた前処理(遠心分離処理)を行ったことによって、電解液に含まれるニカワ以外の成分を分離除去してニカワを濃縮でき、SEC分析におけるバックグラウンドを効果的に低減できたためであると考えられる。
なお、チャートにおいて、保持時間がおよそ27分~28分の範囲の部分では急激にマイナス(-)側に振れ、28分以上の部分で再度プラスの方向に振れる動きが確認された。これは、後述する比較例でも見受けられる、分子量≦3000の成分の影響であると推測されるが、限外濾過膜を用いた前処理により分子量≦3000の成分が大幅に低減されたため、ニカワの濃度測定に大きな影響となって現れなかったと考えられる。
[比較例1]
実施例1と同様の銅電解液を分析対象として、その銅電解液に含まれるニカワの濃度をSEC分析により測定した。ただし、比較例1では、限外濾過膜を用いた前処理を行わず、すなわち電解液を濃縮させることなく、そのままSEC分析を行った。
図4は、比較例1におけるSEC分析で得られた溶出曲線のチャートグラフである。
ここで、図4中における破線で示すチャートは、純水中にニカワを溶解(分析対象の銅電解液と同様の濃度で溶解)させ、限外濾過膜を用いた前処理で行わず濃縮もしていない溶液をSEC分析したときのチャートである。前処理を行っていないため、測定結果のピークは保持時間27分(分子量≒3000)付近に形成されている。したがって、このチャートからは、分子量がもともと数万~数十万の範囲で分布しているニカワの分解が進んで、分子量3000をピークとする分布になっていることを読み取ることができる。これは、ニカワ以外の成分が無く、すなわちその他の成分の影響がないため、ニカワが正しく検出されたものと考えられる。
これに対して、図4中の実線で示すチャートは、限外濾過膜を用いた前処理を行っていない銅電解液に対してSEC分析したときのチャートである。保持時間23分~27分の範囲では、銅電解液に含まれるニカワ以外の成分の影響により、マイナスの数値を示す部分があり、また、プラス側の部分も明確ではないことがわかる。このことは、ニカワ以外の成分の影響が大きすぎて、すなわちSEC分析に供した銅電解液中のニカワ以外の成分の濃度が高すぎたため、それらがバックグラウンドとなってニカワのピークを明確に観察できなくなっていると考えられる。
また、保持時間27分以上の範囲では、実施例にも見受けられる、分子量≧3000の分子の影響又は硫酸銅成分の晶出等により、チャートはマイナスが側に大きく振れ、保持時間28分以上でプラス側に大きく振り切れてしまい、濃度測定が困難になった。
[検量線作製用の電解液を用いて検量線を作製したときの例]
実施例1で示した検量線の作製例とは異なり、ニカワ濃度が既知の電解液(検量線作製用の電解液)を用いて検量線を作製した例を示す。
すなわち、先ず、ニカワ濃度が0mg/L、1mg/L、5mg/L、及び10mg/Lの電解液をそれぞれ準備し、限外濾過膜を備えた定容容器に電解液15mLを装入して、回転数4000rpmの条件で遠心分離処理を施した。限外濾過膜としては、分画分子量3000のPESからなるもの(「Vivaspin Turbo 15」,Sartorius社製)を用いた。また、遠心分離処理は、膜上の電解液(膜上液)が1.5ml(膜下液が13.5ml)となるまで行った。
次に、限外濾過膜によって捕捉された膜上液には電解液が付着しているため、膜上液(ニカワ濃縮液)に対して水を洗浄液とする洗浄処理を行って電解液を置換することにより除去した。
そして、このようにして得られた洗浄処理後のニカワ濃縮液に対して、サイズ排除カラムを用いた高速液体クロマクトグラフ(東ソー社製,HLC-8020)によりSEC分析を行った。
SEC分析に基づき、保持時間(単位:min)と、UV透過計により測定した溶出量(単位:mV)とから溶出曲線(図5参照)を求め、その溶出曲線のチャートにおいて保持時間27分~28分付近にある下向きのピーク(図5中に「Z」で指し示すピーク)よりも左側であって基準(0mV)よりもプラス側のピーク面積(図5中の斜線部の面積)を算出し、ニカワ濃度に対する面積の関係を示すグラフにプロットし、近似線から検量線を作製した。なお、図5は、ニカワ濃度が10mg/Lの電解液に対するSEC分析の結果を示す溶出曲線のチャートである。
ここで、図5のチャートと、実施例1での検量線作製のために測定したSEC分析の結果を示す図2のチャートとを比較すると、図2で出現している保持時間27分以上の範囲でのチャートがマイナス領域に急激に振れる現象が、図5では確認されなかった。つまり、図5に結果を示す方法によれば、チャート振れの影響が解消し、影響を小さくできることがわかる。このことから、本試験例に示すように検量線を作製することで、より適切な検量線を作製でき、電解液中にニカワ濃度の分析精度を向上できることがわかる。
図6は、上述のようにしてニカワ濃度既知の電解液をSEC分析して得られた検量線を示すグラフ図である。この検量線に基づいて、例えば、分析対象の電解液においてSEC分析により得られる溶出曲線にて検出されるニカワのピーク面積(図5と同様に、チャートにおいて保持時間27分~28分付近にある下向きのピークよりも左側であってプラス側のピークの面積)が2500程度あれば(図6中の白抜き菱形ポイント)、その分析対象の電解液のニカワ濃度が7mg/Lであると測定できる。
[実施例2]
本発明に係るニカワの分析方法を適用して、銅電解液に含まれるニカワの濃度を全有機炭素(TOC)分析により測定した。
(電解液の希釈)
具体的には、先ず、分析対象である電解液(pH≦0.5)15mlに対して超純水15mlを添加し、電解液を2倍に希釈した。
(限外濾過膜を用いた前処理)
次に、希釈後電解液を15mlの2つ([c]、[d]とする)に分け、限外濾過膜を備えた定容容器(膜上の容量17ml)に希釈後電解液[c]15mlを装入して、回転数4000rpmの条件で遠心分離処理を施した。ここで、限外濾過膜としては、分画分子量3000のPES(ポリエーテルサルフォン)からなるもの(「Vivaspin Turbo 15」,Sartorius社製)を用いた。また、遠心分離処理は、膜上の電解液(膜上液)が1.5ml(膜下液が13.5ml)となるまで行った(なお、処理時間は約30分であった。)。
次に、得られた膜上液1.5mlに希釈後電解液[d]15mlを加え、再度、限外濾過膜を備えた定容容器に装入して回転数4000rpmの条件で遠心分離処理を施した。遠心分離処理は、膜上の電解液(膜上液)が1.5ml(膜下液が13.5ml)となるまで行い、これにより、膜上液として10倍に濃縮させた濃縮液(1.5ml)を得た。
(濃縮液に対する洗浄処理)
次に、得られた濃縮液1.5mlに対して超純水13.5mlを添加し、限外濾過膜を備えた定容容器に装入して、回転数4000rpmの条件での遠心分離による洗浄処理を施した。さらに、遠心分離による洗浄処理で得られた膜上液1.5mlに対して超純水13.5mlを添加し、再度、限外濾過膜を備えた定容容器に装入して、回転数4000rpmの条件での遠心分離による洗浄処理を施した。これにより、膜上液として洗浄処理後の濃縮液(1.5ml)を得た。
(TOC分析)
次に、得られた濃縮液を用いてTOC分析を行った。
・検量線の作製
先ず、フタル酸水素カリウム濃度が0mg/L、2.125mg/L、10.625mg/L、21.25mg/L、42.5mg/L、及び106.25mg/L(TOCに換算すると0mg/L、1mg/L、5mg/L、10mg/L、20mg/L、及び50mg/L)の水溶液をそれぞれ調整し、全有機体炭素計(島津製作所製,TOC-V CPH)によりTOC分析を行った。この分析に基づき、非分散形赤外線ガス検出器により測定した測定時間(単位:分)と二酸化炭素検出量(単位:mV)とを、TOCに対する面積の関係を示すグラフにプロットし、近似線から検量線を作製した。
図7は、上述のようにしてフタル酸水素カリウム濃度が既知の水溶液をTOC分析して得られた検量線を示すグラフ図である。この検量線に基づいて、例えば、分析対象の電解液においてTOC分析により検出されるニカワの二酸化炭素検出量が50程度あれば(図7中の白抜き菱形ポイント)、その分析対象の電解液のニカワ由来のTOCが3.6mg/Lであると測定できる。
・濃縮液に対するTOC分析(ニカワ濃度の測定)
次に、上述した前処理を経て得られた濃縮液に対するTOC分析を行って、ニカワ濃度を測定した。具体的に、全有機体炭素計(島津製作所製,TOC-V CPH)によりTOC分析を行った。この分析に基づき、非分散形赤外線ガス検出器により測定した測定時間(単位:分)と二酸化炭素検出量(単位:mV)とから、二酸化炭素検出量の基準(0mV)よりもプラス側のピーク面積値を算出した。なお、図8は、実施例2における電解液のTOC分析の結果を示すグラフ図である。
その結果、電解液中のTOC分析値は、3.5mg/Lであった。この分析結果は、銅電解液に含まれるチオ尿素、アビトン等の他の添加剤由来の有機炭素を含むものではなく、つまり、それら他の添加剤由来の有機炭素が検出されることなく、ニカワ由来の有機炭素のみを検出して得られた結果であった。
[比較例2]
実施例2と同様の銅電解液を分析対象として、その銅電解液に含まれるニカワの濃度をTOC分析により測定した。ただし、比較例2では、限外濾過膜を用いた前処理を行わず、すなわち電解液を濃縮させることなく、純水で10倍希釈してTOC分析を行った。なお、図9は、比較例2における電解液のTOC分析の結果を示すグラフ図である。
その結果、電解液中のTOC分析値は、270mg/Lであった。比較例2の分析では、銅電解液に含まれるチオ尿素、アビトン等の他の添加剤由来の有機炭素も検出されてしまうため、ニカワ由来の有機炭素のみを検出することは困難であった。

Claims (9)

  1. 電解液に含まれるニカワの濃度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析する方法であって、
    前記SECによる分析に先立ち、前記電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって、該電解液中のニカワを濃縮し、
    前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対して、さらに洗浄処理を行う、
    電解液中のニカワの分析方法。
  2. 電解液に含まれるニカワの濃度を全有機炭素(TOC)により分析する方法であって、
    前記TOCによる分析に先立ち、前記電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって、該電解液中のニカワを濃縮し、
    前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対して、さらに洗浄処理を行う、
    電解液中のニカワの分析方法。
  3. 前記電解液のpHは0.5以下である、
    請求項1又は2に記載の電解液中のニカワの分析方法。
  4. 前記限外濾過膜を備えた定容容器を使用して、前記電解液を遠心分離処理する、
    請求項1乃至3のいずれかに記載の電解液中のニカワの分析方法。
  5. ニカワ濃度が既知の水溶液を用いたSECによる分析を行うことで検量線を作製し、
    前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対する前記SECによる分析値から、前記検量線に基づいて、前記電解液に含まれるニカワの濃度を測定する、
    請求項1に記載の電解液中のニカワの分析方法。
  6. 前記ニカワ濃度が既知の水溶液は、ニカワ濃度が既知の検量線作製用の電解液であり、
    前記検量線を作製するに際しては、
    前記検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって該電解液中のニカワを濃縮し、得られたニカワの濃縮液に対して洗浄処理を行い、
    前記洗浄処理後の濃縮液を用いたSECによる分析を行うことで検量線を作製する、
    請求項に記載の電解液中のニカワの分析方法。
  7. 濃度既知のフタル酸水素カリウム水溶液を用いたTOCによる分析を行うことで検量線を作製し、
    前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対する前記TOCによる分析値から、前記検量線に基づいて、前記電解液に含まれるニカワの濃度を測定する、
    請求項2に記載の電解液中のニカワの分析方法。
  8. ニカワ濃度が既知の水溶液を用いたTOCによる分析を行うことで検量線を作製し、
    前記限外濾過膜を用いた処理により得られたニカワの濃縮液に対する前記TOCによる分析値から、前記検量線に基づいて、前記電解液に含まれるニカワの濃度を測定する、
    請求項2に記載の電解液中のニカワの分析方法。
  9. 前記ニカワ濃度が既知の水溶液は、ニカワ濃度が既知の検量線作製用の電解液であり、
    前記検量線を作製するに際しては、
    前記検量線作製用の電解液に対して限外濾過膜を用いた処理を行うことによって該電解液中のニカワを濃縮し、得られたニカワの濃縮液に対して洗浄処理を行い、
    前記洗浄処理後の濃縮液を用いたTOCによる分析を行うことで検量線を作製する、
    請求項に記載の電解液中のニカワの分析方法。

JP2020155170A 2019-09-27 2020-09-16 電解液中のニカワの分析方法 Active JP7480652B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019177740 2019-09-27
JP2019177740 2019-09-27
JP2020086407 2020-05-18
JP2020086407 2020-05-18

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021181972A JP2021181972A (ja) 2021-11-25
JP7480652B2 true JP7480652B2 (ja) 2024-05-10

Family

ID=78606397

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020155170A Active JP7480652B2 (ja) 2019-09-27 2020-09-16 電解液中のニカワの分析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7480652B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001337081A (ja) 2000-05-29 2001-12-07 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd にかわ及びゼラチンの濃度及び分子量分布の測定方法
JP2006087988A (ja) 2004-09-21 2006-04-06 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 光反応管内蔵型光反応装置及びこれを用いる水質モニタリング装置
JP2008241274A (ja) 2007-03-26 2008-10-09 Dowa Technology Kk 有機高分子成分の分子量分布測定装置およびその測定方法
JP2015219226A (ja) 2014-05-21 2015-12-07 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 コチニール色素中のタンパク質の定量分析方法
US20190195891A1 (en) 2016-08-18 2019-06-27 Yeda Research And Development Co. Ltd. Diagnostic and therapeutic uses of exosomes

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3037987B2 (ja) * 1990-09-28 2000-05-08 生化学工業株式会社 グリコサミノグリカンの分析方法
JPH04136761A (ja) * 1990-09-28 1992-05-11 Haimo Kk バイオリアクター内溶存物質濃度定量法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001337081A (ja) 2000-05-29 2001-12-07 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd にかわ及びゼラチンの濃度及び分子量分布の測定方法
JP2006087988A (ja) 2004-09-21 2006-04-06 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 光反応管内蔵型光反応装置及びこれを用いる水質モニタリング装置
JP2008241274A (ja) 2007-03-26 2008-10-09 Dowa Technology Kk 有機高分子成分の分子量分布測定装置およびその測定方法
JP2015219226A (ja) 2014-05-21 2015-12-07 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 コチニール色素中のタンパク質の定量分析方法
US20190195891A1 (en) 2016-08-18 2019-06-27 Yeda Research And Development Co. Ltd. Diagnostic and therapeutic uses of exosomes

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021181972A (ja) 2021-11-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20130095571A1 (en) The method for quick and simultaneous determination of 16 inorganic anions and organic acids in tobacco
CN204154649U (zh) 一种铬元素形态分析装置
Lu et al. Colloidal toxic trace metals in urban riverine and estuarine waters of Yantai City, southern coast of North Yellow Sea
CN109212094B (zh) 万寿菊渣中槲皮万寿菊素的检测方法
Wang et al. Use of a Cu-selective resin for Cu preconcentration from seawater prior to its isotopic analysis by MC-ICP-MS
JP7480652B2 (ja) 電解液中のニカワの分析方法
CN109541062A (zh) 同时测定地表水或污水中个人护理用品浓度的方法
JP3939075B2 (ja) にかわ又はゼラチンの濃度又は分子量分布の測定方法
La’ulu et al. Performance characteristics of six homocysteine assays
CA3020074C (en) Analysis method and analysis device for substance to be measured
WO2013099949A1 (ja) 血漿中の酢酸濃度の測定方法
JP5087727B2 (ja) 有機高分子成分の分子量分布測定装置およびその測定方法
Mushahida-Al-Noor et al. Micro-organic ion-associate phase extraction/micro-volume back-extraction for the preconcentration and GF-AAS Determination of cadmium, nickel and lead in environmental water
US9057145B2 (en) Electrodeposition method with analysis of the electrolytic bath by solid phase extraction
CN209143773U (zh) 组合膜分离实验装置
CN116735751A (zh) 一种光刻胶中氰离子的测定方法
JP2018159560A (ja) 高濃度ニッケル溶液中の微量亜鉛の定量方法
JP4074648B2 (ja) にかわ又はゼラチンの濃度又は分子量分布の測定方法
Wyrwas et al. Tensammetric determination of non-ionic surfactants combined with BiAS separation procedure (Wickbold) 2. Optimisation of the precipitation and investigation of interferences
CN110658286B (zh) 利用rp-hplc法同时快速检测苯乳酸和4-羟基苯乳酸含量的方法
CN105158349A (zh) 高温灰化-离子色谱分析茶叶中f-含量
CN105203358A (zh) 一种水体中腐殖酸亚组分的分级提取方法
CN120352543A (zh) 一种快速测定洗衣液中4,4二氯二羟基二苯醚含量的方法
CN111257493A (zh) 一种水中阴离子和阳离子总量的检测方法和装置
CN118883809B (zh) 一种高纯氨水制备的纯度检测方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230524

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240312

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240326

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240408

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7480652

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150