定義:
本発明の各種実施形態及び態様を本明細書において示し、また記載するが、かかる実施形態及び態様は、単なる例示として提供されるものであることが当業者に明らかである。当業者であれば、多くの変形、変更及び置換を、本発明を逸脱しない範囲で行うことができる。本明細書に記載される本発明の実施形態の各種の代替形態を、本発明の実施の際には使用できることを理解すべきである。
本明細書において用いられるセクション見出しは、編集目的でのみ設けられるものであり、記載される主題を限定するものとして解釈すべきでない。限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍、マニュアル及び論文などの、本願において引用されるすべての文献(又は文献の一部)は、いかなる目的においても参照によりその全体を本明細書に組み込む。
本明細書において開示され定義される本発明は、そこで言及されるように、又は記載若しくは図面から自明なように、個々の特徴を2つ以上組み合わせたすべての代替物にも及ぶことが理解されよう。これらの異なる組合せはすべて、本発明の各種の代替的態様を構成する。
本発明の更なる態様及び前節に記載される該態様の更なる実施形態は、以下の詳細な説明、実施例から、並びに添付の図面を参照することにより、明らかになる。
以下に本発明の特定の実施形態を参照しつつ詳細な説明を行う。本発明を、その実施形態との関係において記載するが、それは本発明をかかる実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されよう。むしろ本発明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の技術思想及び範囲に含まれる変形、修飾又は均等物をも網羅するものである。
本発明者らは、CXCR2に結合し、その活性を阻害する又はそれを低減させる抗原結合部位(例えば抗体)を開発した。本明細書に記載される抗原結合部位は、炎症、腫瘍増殖及びCXCR2により媒介される転移活性の1つ以上の態様を阻害又は低減させる能力を有する。
I. 総論
本明細書の全体にわたり、特に断りのない限り、又は文脈が許容する範囲において、単一の工程、物質組成、工程群又は物質組成群について言及するときは、それらの工程、物質組成、工程群又は物質組成群を、1つ又は複数(すなわち1つ以上)含む場合も含むものとする。したがって、文脈がそうでない旨明確に示さない限り、本明細書において用いられる単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、複数の態様を含み、また逆も真である。例えば、「1つ(a)」というときは1つ及び2つ以上を含み、「1つ(an)」というときは1つ及び2つ以上を含み、「その(the)」というときは1つ及び2つ以上を含む、等である。
当業者であれば、本発明が、具体的に記載されるもの以外の態様に変形及び変更できることを理解するであろう。本発明には、かかる変形及び変更がすべて含まれることを理解すべきである。本発明はまた、本明細書に参照される又は示される、すべての工程、特徴、組成物及び化合物を、個々に又は集合的に含み、また、前記工程又は特徴のいかなる2つ以上の組合せをも含む。
当業者であれば、本明細書に記載されるものと類似の又は同等の多くの方法及び材料を認識し、それが本発明の実施において使用できることを認識するであろう。本発明は、記載される方法及び材料にいかなる場合も限定されるものではない。
本明細書において参照されるあらゆる特許及び刊行物は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例によりその範囲が限定されるものではなく、むしろそれは例示を意図するものに過ぎない。機能的に均等な製品、組成物及び方法は、明らかに本発明の範囲内である。
本明細書に記載される本発明のいかなる実施例又は実施形態も、特に断りのない限り、本発明の他のいかなる例又は実施形態に対して準用されるものと理解すべきである。
特に断りのない限り、本明細書において用いられるすべての専門的及び科学的用語は、(例えば細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学及び生化学における)当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有するものと理解すべきである。
特に明記しない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養及び免疫学的技術は、標準的な手順であり、また当業者に周知である。かかる技術は、例えばJ. Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(編),Essential Molecular Biology: A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover及びB.D.Hames(編),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M. Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、その他の改訂版も含む)、Ed Harlow及びDavid Lane (編)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coliganら、(編)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(その他の改訂版も含む)などの多くの文献に記載され、詳細に説明されている。
「核酸」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、及びその一本鎖又は二本鎖の形状のポリマー、及びその相補物を指す。用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの直鎖状配列を意味する。用語「ヌクレオチド」は、典型的にはポリヌクレオチドを構成する一個の単位(すなわちモノマー)を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はその変性バージョンであってもよい。本明細書において想定されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNA(siRNAを含む)、並びに一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。本明細書で用いられる核酸はまた、天然に存在する核酸と同じ基本的化学構造を有する核酸を指すこともある。かかるアナログは、修飾糖及び/又は修飾環置換基を有するが、天然に存在する核酸と同じ基本的化学構造を保持するものである。核酸擬態物とは、核酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在する核酸と同様の様式で機能する化学的化合物を指す。かかるアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド及びペプチド核酸(PNAs)が挙げられるが、これらに限定されない。
「アミノ酸」という用語は、天然に存在する及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸擬態物のことを指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるもの、並びにその後に、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸塩及びO-ホスホセリンなどのように修飾されたアミノ酸を有するものである。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸(すなわち、水素原子に結合したα炭素原子、カルボキシル基、アミノ基及びR基が結合)と同じ基本的化学構造を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。かかるアナログは、修飾されたR基(例えばノルロイシン)又は修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸擬態物とは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化学的化合物を指す。
アミノ酸は、それらの一般的に公知の3文字記号により、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature委員会により推奨される1文字記号により表記されうる。ヌクレオチドは、同様に、それらの一般的に受け入れられている一文字記号により表記されうる。
アミノ酸又はヌクレオチド塩基の「位置」は、参照配列のN末端(又は5’末端)を基準として各アミノ酸(又はヌクレオチド塩基)を順次数えたときの相対的位置として同定される数として表記される。一般には、最適なアラインメントを決定するときに考慮されうる削除、挿入、欠失、融合等の存在により、単にN末端から数えることにより決定される試験配列のアミノ酸残基番号が、参照配列のその対応する位置の番号と必ずしも一致するわけではない。例えば、ある変異体が、それに整列配置された参照配列に対して削除を有する場合、その変異体には削除の部位に対応する参照配列中のアミノ酸が存在しない。整列配置された参照配列に挿入がある場合、その挿入は、参照配列中の付番されたアミノ酸位に対応しない。欠失又は融合がある場合、参照又は整列配置された配列中に、対応する配列のいずれかのアミノ酸に対応しないアミノ酸の伸長部が存在することとなる。
「…に対して何番目の」又は「…に対応する」という用語は、所定のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列の付番に関する文脈において用いられるときは、所定のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列を参照配列と比較したときの、特定された参照配列中の残基の付番のことを指す。タンパク質中のアミノ酸残基は、それがタンパク質中の所定の残基と同じ基本的構造的位置を占めるとき、当該所定の残基に「対応する」という。
抗体中のアミノ酸残基は、それが抗体中の所定の残基と同じ基本的構造的位置を占めるとき、当該所定の残基に「対応する」という。例えば、比較抗体中のある選択された残基が、当技術分野において適用できる方法を使用して評価した場合に、本明細書において提供される抗体の(本明細書に記載されるカバット付番方法に従う)カバット位置1と同じ基本的な空間的又は構造的関係を占めるとき、当該選択された残基は、その位置1に対応するという。例えば、本明細書において提供される抗体との間で最大の配列相同性を有するよう比較抗体を整列配置することができ、その際、カバット位置1と整列配置する整列配置された比較抗体中の位置は、それに対応するものと判断することができる。あるいは、上記の一次配列アラインメントの代わりに(又はそれに加えて)、三次元構造的な整列配置を用いることもでき、例えば、本明細書において提供される抗体との間で最大の適合性となるよう比較抗体の構造を整列配置し、全体構造を比較する。この場合、構造モデル中のカバット位置1と同じ基本的位置を占めるアミノ酸のことを、対応する、ということができる。
本明細書における、可変領域及びその部分、免疫グロブリン、抗体及びその断片に関する説明及び定義は、更にKabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991;Borkら、J Mol.Biol.242,309-320,1994;Chothia及びLesk J.Mol Biol.196:901-917,1987;Chothiaら、Nature 342,877-883,1989及び/又はAl-Lazikaniら、J Mol Biol 273,927-948,1997の考察によって更に明確になり得る。
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味するものと理解され、両方の意味又はいずれかの意味について、明確な根拠を与えるものとする。
本明細書において、「由来する」という用語は、指定されたものが、必ずしもその起源から直接得られることを必要とせず、特定の起源から得られうることを示すものとする。
本明細書において、例えば残基の範囲をいうときは、その端点を含むものと理解される。例えば、「アミノ酸56~65を含む領域」というときは、その端点を含む態様にて理解されるものとし、すなわち、当該領域は、指定された配列中の56、57、58、59、60、61、62、63、64及び65の一連の番号を有するアミノ酸の配列を含む。
II.各論における定義:
CXCR2は、C-X-Cのモチーフケモカイン受容体2としても公知である(CD182、IL8R2、IL8RA、IL8RB、CMKAR2、CDw128b)。CXCR2は、好中球、肥満細胞、CD8+T細胞、上皮、内皮、平滑筋肉及び中枢神経系の様々なタイプの細胞など、様々な細胞及び組織にて発現されるGタンパク質共役受容体(GPCR)である。CXCL1(増殖関連癌遺伝子α[GRO-α])、CXCL8(インターロイキン-8)、及びCXCL5(ENA-78)などのいくつかの高親和性リガンド、並びにCXCL2(GRO-β)、CXCL3(GRO-γ)、CXCL6(GCP-2)及びCXCL7(NAP-2)などの低親和性リガンドが同定されている。
本明細書において提供される用語「CXCR2」には、CXCR2の活性(例えば天然タンパク質と比較し少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以内の活性)を維持するC-X-Cのモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)の天然に存在するタンパク質形態、ホモログ又はバリアントのいずれをも包含する。いくつかの実施形態では、バリアント又はホモログは、天然に存在する形態と比較し全部の配列又は一部の配列(例えば50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態において、CXCR2タンパク質は、UniProt配列参照番号P25025として同定されるタンパク質、そのホモログ又は機能性断片である。
ヒトCXCR2の例示的なアミノ酸配列は、限定するわけではないが、命名上、配列番号52である。
本明細書において、CXCR2というときは、CXCR2の少なくとも1つの生化学的又は生物物理学的活性を有する分子を指し、かかるCXCR2の生化学的又は生物物理学的活性としては、抗原性刺激による細胞表面受容体シグナリング経路に対する急性の炎症反応、細胞の防御反応、化学走性、樹状細胞化学走性、炎症反応、後腎管形成、中脳発達、好中性アポトーシスのプロセスの負の調節、好中球活性化、好中球化学走性、ホスホリパーゼC活性化Gタンパク質共役受容体シグナリング経路、脈管形成の正の調節、心筋細胞アポトーシスプロセスの正の調節、細胞増殖の正の調節、サイトゾルカルシウムイオン濃度の正の調節、好中球化学走性の正の調節、血管透過性の正の調節、受容体内部移行及びシグナル伝達が挙げられる。
「CXCR2活性を阻害する」という語句は、本発明の抗原結合部位がCXCR2の以下のいずれか1つ以上の活性を阻害又は低減することを意味すると理解され、かかる活性としては、限定されないが、CXCR2に対するリガンドの結合、リガンドの誘導によるCXCR2のコンホメーション変化、CXCR2の活性化、Gタンパク質の活性化、CXCR2の媒介による細胞シグナル伝達、CXCR2の媒介による細胞遊走、炎症、腫瘍増殖、インビトロ若しくはインビボにおける血管形成若しくは転移応答、CXCR2の媒介による腫瘍細胞増殖、及び/又は、CXCR2の媒介による白血球(例えば好中球、好酸球、肥満細胞又はT細胞)の遊走が挙げられる。「CXCL2、CXCL3及び/又はCXCL6により媒介されるCXCR2活性を阻害する」とは、本発明の抗原結合部位が、CXCL2、CXCL3及び/又はCXCL6により媒介される又は誘導される上記の1つ以上の活性を阻害する又は低減させることを意味するものと理解される。更に、活性は適切なインビトロ、細胞内又はインビボアッセイを使用して測定され、また該活性は、抗原結合部位がないことを除き同じ条件における同じアッセイにおけるCXCR2活性と比較し、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、60%、70%、80%又は90%又はそれ以上ブロックされる、又は低減する。好ましくは、CXCR2活性は、例えば高親和性リガンドCXCL1(増殖関連癌遺伝子α[GRO-α])、CXCL8(インターロイキン-8)及びCXCL5、ENA-78)又は低親和性リガンドCXCL2(GRO-β)、CXCL3(GRO-γ)、CXCL6(GCP-2)及びCXCL7(NAP-2)などの、1つ以上のリガンドにより媒介される又は誘導される。最も好ましくは、CXCR2活性は、CXCL2、3及び/又は6により媒介される又は誘導される。
「単離されたタンパク質」又は、「単離されたポリペプチド」という用語は、それが由来するその起源又は供給源に関して、その天然においてはそれに会合している成分と会合していないタンパク質又はポリペプチドのことであり、同じ供給源由来の他のタンパク質を実質的に含まないものである。タンパク質は、天然においては会合している成分を実質的に含まない、又は当技術分野において公知のタンパク質精製技術を用いて単離することにより実質的に精製することができる。「実質的に精製された」とは、タンパク質が実質的に混入物を含まず、例えば、少なくとも約70%又は75%又は80%又は85%又は90%又は95%又は96%又は97%又は98%又は99%、混入物が排除されていることを意味する。
本明細書において使用される場合、「細胞」とは、そのゲノムDNAを保存し又は複製するのに十分な代謝機能又は他の機能を実施する細胞を意味する。細胞は例えば、無傷の膜の存在、特定の色素による染色、後代を産生する能力又は(配偶子である場合には)第2の配偶子と結合して生存可能な子孫を産生する能力を基に、当技術分野において周知の方法により同定できる。細胞としては、原核生物及び真核生物の細胞が挙げられる。原核細胞としては、限定されないが、細菌が挙げられる。真核細胞としては、酵母細胞及び動植物から誘導される細胞(例えば哺乳動物、昆虫(例えばスポドプテラ属)及びヒトの細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
「組換え」という用語は、人工的な遺伝的組換えによる産物を意味するものと理解される。したがって、抗体の抗原結合ドメインを含む組換えタンパク質の文脈においては、この用語には、B細胞成熟の間に生じる天然の組換え産物である対象体内の抗体は含まれない。しかしながら、かかる抗体が単離された場合、それは抗体の抗原結合ドメインを含む単離されたタンパク質と考えられる。同様に、タンパク質をコードする核酸が組換え手段を使用して単離され、発現される場合、得られるタンパク質は抗体の抗原結合ドメインを含む組換えタンパク質である。組換えタンパク質にはまた、人工的な組換え手段が細胞、組織又は対象の体内に存在するときにそこで発現されるタンパク質が包含される。
「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合により連結された一連の連続するアミノ酸、又は共有結合若しくは非共有結合により相互に連結された一連のポリペプチド鎖(すなわちポリペプチド複合体)を包含するものとする。例えば、一連のポリペプチド鎖は、適切な化学物質又はジスルフィド結合を用いて連結された共有結合であってもよい。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力及び疎水的相互作用が挙げられる。
「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」という用語は、前の段落から理解されるように、ペプチド結合により連結された一連の連続するアミノ酸を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すものとして、本明細書において交換可能に用いられる。これらの用語は、対応する天然アミノ酸中の1つ以上のアミノ酸残基が人工的な化学合成擬態物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然のアミノ酸ポリマー及び非天然のアミノ酸ポリマーのいずれにも適用される。
本明細書において使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、「抗原結合ドメイン」と交換可能に用いられ、抗原に対し特異的に結合できる抗体の領域(すなわちVH、又はVL、又はVH及びVLの両方を含むFv)を意味するものとする。抗原結合ドメインは、完全抗体中存在する必要はなく、例えば(ドメイン抗体のように)単離されてもよく、又は本明細書に記載されるようにscFvのような他の形態であってもよい。
本明細書において提供される「抗原」という用語は、本明細書において提供される抗体結合ドメインと結合できる分子を意味する。本明細書において提供される「抗原結合ドメイン」は、抗原(エピトープ)に結合する抗体の領域である。上述の通り、抗原結合ドメインは一般に、重鎖及び軽鎖それぞれの1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインから構成される(それぞれVL、VH、CL及びCH1)。パラトープ又は抗原結合部位は、抗原結合ドメインのN末端上に形成される。抗原結合ドメインの2つの可変ドメインは、典型的に抗原上のエピトープと結合する。
本開示の目的の関係から、「抗体」という用語には、Fv中に含まれる抗原結合ドメインにより1又は幾つかの密接に関連する抗原(例えばCXCR2)と特異的に結合できるタンパク質が包含される。本用語には、4鎖抗体(例えば2つの軽鎖及び2つの重鎖)、組換え又は修飾抗体(例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR融合抗体、霊長類化抗体、非免疫抗体、合成ヒト化抗体、半分抗体、2重特異性抗体)が包含される。抗体は一般に定常ドメインを含み、それは定常領域又は定常断片又は結晶化可能断片(Fc)として配置されうる。抗体の例示的な形態は、それらの基本的単位として4鎖構造を有するものである。全長抗体は、共有結合する2つの重鎖(約50~70kDa)及び2つの軽鎖(各々約23kDa)を含む。軽鎖は一般に、(存在する場合)可変領域、及び定常ドメインを含み、哺乳動物においては、κ軽鎖又はλ軽鎖である。重鎖は一般に、可変領域と、更なる定常ドメインへヒンジ領域により連結された、1又は2個の定常ドメインを含む。哺乳動物の重鎖は、α、δ、ε、γ又はμのタイプのうちの1つである。各軽鎖は、重鎖の1つと共有結合する。例えば、2つの重鎖、及び重鎖と軽鎖が、鎖間ジスルフィド結合により、及び非共有結合的な相互作用により束ねられる。鎖間ジスルフィド結合の数は、抗体のタイプの違いに応じて変化しうる。各鎖は、N末端に可変領域(各々約110アミノ酸長であるVH又はVL)を有し、またC末端に1つ以上の定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメイン(約110アミノ酸長であるCL)は、重鎖の第1の定常ドメイン(330~440アミノ酸長であるCH1)と整列配置され、ジスルフィド結合する。軽鎖可変領域は、重鎖可変領域と整列配置される。抗体重鎖は、2つ以上の更なるCHドメイン(CH2、CH3等のような)を含むことができ、CH1とCH2定常ドメイン間にヒンジ領域を含むことができる。抗体は、いかなるタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであってもよい。一例において、抗体は、ネズミ科(マウス又はラット)の抗体、又は霊長類(ヒトのような)の抗体である。一例において、抗体重鎖は、C末端リジン残基を喪失している。一例において、抗体は、ヒト化抗体であるか、合成ヒト化抗体であるか、キメラ抗体であるか、CDR融合抗体であるか、又は脱免疫化抗体である。
「全長抗体」、「完全抗体」又は「全部抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片とは対照的に、その実質的に完全な形態の抗体を指すものとして交換可能に用いられる。具体的には、全部抗体は、Fc領域を含めた、重鎖及び軽鎖を有するものを指す。定常ドメインは、野生型配列の定常ドメイン(例えばヒト野生型配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列バリアントであってもよい。
本明細書において提供される「抗体バリアント」とは、抗原と結合でき、抗体又はその断片の1つ以上の構造的ドメイン(例えば軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメイン)を含むポリペプチドを指す。抗体バリアントの非限定的な例としては、単一ドメイン抗体又はナノボディ、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、一価のIgG、scFv、二重特異性抗体、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、V-NAR、hcIgG、VhH又はペプチボディが挙げられる。本明細書において提供される「ペプチボディ」とは、抗体のFcドメインに(共有結合性又は非共有結合性のリンカーを介して)付加されたペプチド部分を意味する。当技術分野において公知の抗体バリアントの更なる非限定的な例としては、軟骨魚又はラクダ科の動物により産生される抗体が挙げられる。ラクダ科動物由来の抗体及びその可変領域、並びにその製造、単離及び使用のための方法に関する一般的な説明は、その全体があらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれる参考文献国際公開第97/49805号及び第97/49805号パンフレットに見出されうる。同様に、軟骨魚由来の抗体及びその可変領域、並びにその製造、単離及び使用のための方法に関する一般的な説明は、その全体があらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2005/118629号パンフレットに見出されうる。
本明細書において使用される場合、「可変領域」とは、本明細書において定義される抗体の軽鎖及び/又は重鎖内の、抗原と特異的に結合できる部分を指し、それは相補性決定領域(CDR)、(すなわちCDR1、CDR2及びCDR3)、並びにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む。例えば、可変領域は、3つのCDRと共に3又は4つのFR(例えばFR1、FR2、FR3及び任意選択的にFR4)を含む。VHとは、重鎖可変領域を意味する。VLとは、軽鎖可変領域を意味する。
本明細書において使用される場合、「相補性決定領域」(略してCDRs、すなわちCDR1、CDR2及びCDR3)という用語は、その存在が特異的な抗原結合の主な原因となる、抗体可変領域内のアミノ酸残基を指す。各可変領域内のドメイン(VH又はVL)は、CDR1、CDR2及びCDR3として同定される3つのCDRを典型的に有する。本明細書において、VHのCDRは、CDR H1、CDR H2及びCDR H3とも称され、それぞれ、CDR H1がVHのCDR 1に対応し、CDR H2がVHのCDR 2に対応し、CDR H3がVHのCDR 3に対応する。同様に、本明細書において、VLのCDRは、CDR L1、CDR L2及びCDR L3と称され、それぞれ、CDR L1がVLのCDR 1に対応し、CDR L2がVLのCDR 2に対応し、CDR L3がVLのCDR 3に対応する。
軽鎖可変領域のCDRは、本明細書においてLCDR1、LCDR2及びLCDR3と更に称され、それぞれ、LCDR1がVLのCDR 1に対応し、LCDR 2がVLのCDR 2に対応し、LCDR 3がVL(例えば、表1)のCDR 3に対応する。同様に、重鎖可変領域のCDRは、本明細書においてHCDR1、HCDR2及びHCDR3と更に称され、それぞれ、HCDR1がVHのCDR 1に対応し、HCDR 2がVHのCDR 2に対応し、HCDR 3がVHのCDR 3に対応する。
一例において、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(アメリカ国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド、1987及び1991年)(また本明細書において「カバット付番方式」と称される)に従い定義される。他の例において、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Enhanced Chothia Numbering Scheme(http://www.bioinfo.org.uk/mdex.html)に従い定義される。本発明は、カバット付番方式により定義されるFR及びCDRに限定されず、Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.196:901~917頁,1987年、Chothiaら、Nature 342:877~883頁,1989年、及び/又はAl-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁、1997年、Honnegher及びPlukthun、J.Mol.Biol.309:657~670頁、2001年の付番方式、又はGiudicelliら、Nucleic Acids Res.25:206~211頁、1997年に記載のIMGTシステムなど、標準的な付番方式を含むあらゆる付番方式の使用を包含する。一例において、CDRは、カバット付番方式に従い定義される。任意選択的に、カバット付番方式による重鎖CDR2は、本明細書に列挙される5つのC末端アミノ酸を含まない、又は、それらのいずれかのアミノ酸の1つ以上が他の天然アミノ酸によって置換されている。この点については、Padlanら、FASEB J.9:133~139頁、1995年では、重鎖CDR2の5つのC末端アミノ酸が抗原結合に一般には関与しないことが明らかとなっている。
「フレームワーク領域」(FR)は、可変領域のCDR残基以外の残基である。VHのFRは、FR H1、FR H2、FR H3及びFR H4とも称され、本明細書において、それぞれFR H1がVHのFR 1に対応し、FR H2がVHのFR 2に対応し、FR H3がVHのFR 3に対応し、FR H4がVHのFR 4に対応する。同様に、重鎖可変領域のFRは、HFR1、HFR2、HFR3及びHFR4と更に称され、本明細書において、それぞれHFR1がVHのFR 1に対応し、HFR 2がVHのFR 2に対応し、HFR 3がVHのFR 3に対応し、HFR 4がVHのFR 4に対応する。
同様に、VLのFRは、本明細書において、それぞれFR L1、FR L2、FR L3及びFR L4と称され、本明細書において、FR L1がVLのFR 1に対応し、FR L2がVLのFR 2に対応し、FR L3がVLのFR 3に対応し、FR L4がVLのFR 4に対応する。同様に、軽鎖可変領域のFRは、本明細書において、それぞれLFR1、LFR2、LFR3及びLFR4と更に称され、本明細書において、LFR1がVLのFR 1に対応し、LFR 2がVLのFR 2に対応し、LFR 3がVLのFR 3に対応し、LFR 4がVLのFR 4に対応する。
本明細書において使用される場合、「Fv」という用語は、複数のポリペプチド又は単一のポリペプチドから構成されるのとは無関係に、VL及びVHが会合し、抗原結合ドメインを有する、すなわち抗原に異的に結合できる複合体を形成するあらゆるタンパク質を意味するものとする。抗原結合ドメインを形成するVH及びVLは、単一のポリペプチド鎖に存在してもよく、又は異なるポリペプチド鎖に存在してもよい。更に、本発明のFv(並びに本発明のいかなるタンパク質)は、同じ抗原と結合できる又は結合しない多重抗原結合ドメインを有してもよい。本用語は、抗体に直接由来する断片、並びに組換え手段を使用して産生されるかかる断片に対応するタンパク質を包含すると理解されるものとする。いくつかの例において、VHは重鎖定常ドメイン(CH)1に連結されず、及び/又は、VLは軽鎖定常ドメイン(CL)に連結されない。Fvを含むポリペプチド又はタンパク質の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ又は高次複合体、又はCH2又はCH3ドメインなどの定常領域又はそのドメインに連結された上記のもの(例えばミニボディ)が挙げられる。「Fabフラグメント」は、免疫グロブリンの一価の抗原結合断片からなり、酵素パパインにより全部抗体を消化して、完全軽鎖と重鎖の一部とからなる断片を得ることにより産生でき、又は、組換え型手段を使用して産生することもできる。抗体の「Fab’断片」は、ペプシンで全部抗体を処理し、続いて還元して、完全軽鎖と、VHを含む重鎖の一部と、単一の定常ドメインと、からなる分子を生じさせることにより得られる。2つのFab’断片は、このように処理される抗体ごとに得られる。Fab’断片は、組換え手段により産生することもできる。抗体の「F(ab’)2断片」は、2つのジスルフィド結合で束ねられる2つのFab’断片のダイマーからなり、酵素ペプシンで全部抗体分子を処理し、次の還元を行わないことにより得られる。「Fab2」断片は、2つのFab断片を(例えばロイシンジッパー又はCH3ドメイン)を用いて連結させてなる組換え断片である。「単鎖Fv」又は「scFv」は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を、適切な、可撓性のポリペプチドリンカーにより共有結合した、抗体の可変領域断片(Fv)を含む組換え分子である。
本明細書において使用される場合、「結合する」という用語は、抗原と抗原結合部位又はその抗原結合ドメインとの相互作用に関していうときは、該相互作用が抗原上の特定の構造(例えば抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、タンパク質一般というよりもむしろ、タンパク質の構造を認識し、そこに特異的に結合する。抗体がエピトープ「A」と結合する場合、エピトープ「A」(又はフリーの、非標識の「A」)を含む分子の存在は、標識された「A」と該タンパク質を含む反応において、抗体に結合する標識「A」の量を減少させる。
本明細書において使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、本発明の抗原結合部位が、特定の抗原又はそれを発現する細胞と、その他の抗原又は細胞よりも、高い頻度で、急速に、強く、及び/又は強い親和性で反応する又は会合することを意味するものとする。例えば、抗原結合部位は、他のCXCRと比較し、実質的に強い親和性で(例えば1.5倍、又は2倍、又は5倍、又は10倍、又は20倍、又は40倍、又は60倍、又は80倍、又は100倍、又は150倍、又は200倍)、CXCR2(例えばhCXCR2)と結合する。本発明の一例において、抗原結合部位は、CXCR1、CXCR3、CXCR7又はCCR6のような他のケモカイン受容体と比較し、少なくとも1.5倍、又は2倍以上(例えば5倍、又は10倍、又は20倍、又は50倍、又は100倍、又は200倍)強い親和性でCXCR2(好ましくはヒト)に「特異的に結合する」。一般的には、しかし必然的ではないが、結合というときは、特異的な結合を意味し、各用語は、他の用語との区別に関するその明確な根拠が存在するものとする。
本明細書において使用される場合、「検出可能的に結合しない」という用語は、抗原結合部位(例えば抗体)の候補抗原との結合の向上が、バックグラウンドよりも10%、又は8%、又は6%、又は5%未満であることを意味するものとする。バックグラウンドは、タンパク質の非存在下、及び/又は、陰性対照タンパク質(例えばアイソタイプコントロール抗体)の存在下、及び/又は、陰性対照抗原の存在下、で検出される結合シグナルのレベルであってもよい。結合のレベルは、抗原結合部位が固定され、抗原との接触が行われるバイオセンサー分析(例えばBiacore(商標))を用いて検出される。
本明細書において使用される場合、「有意に結合しない」という用語は、ポリペプチドに対する本発明の抗原結合部位の結合レベルがバックグラウンド(例えば、抗原結合部位の非存在下で検出される結合シグナルのレベル、及び/又は陰性対照タンパク質(例えばアイソタイプコントロール抗体)の存在下、及び/又は陰性対照ポリペプチドの存在下で検出される結合レベル)よりも統計学的に有意に高くないことを意味するものとする。結合のレベルは、抗原結合部位が固定され、抗原との接触が行われるバイオセンサー分析(例えばBiacore(商標))を用いて検出される。
「リガンド」は、受容体又は抗体、抗体バリアント、抗体領域又はその断片単独に対して結合できる薬剤(例えばポリペプチド又は他の分子)を指す。
本明細書において使用される場合、「エピトープ」(同義語は「抗原決定基」)という用語は、抗体の抗原結合ドメインを含む抗原結合部位が結合する、CXCR2の領域を意味するものとする。定義されない限り、本用語は、抗原結合部位が接触する具体的な残基又は構造に必ずしも限定されるものではない。例えば、本用語は、抗原結合部位により接触されるアミノ酸領域と、該領域の外側5~10(又はそれ以上)、又は2~5、又は1~3アミノ酸にわたる領域とを含む。いくつかの例において、エピトープは、抗原結合部位がフォールディングするときに互いに付近に配置される一連の不連続なアミノ酸(すなわち「配座エピトープ」)を含む。当業者であれば、「エピトープ」という用語がペプチド又はポリペプチドに限られないことを理解する。例えば、「エピトープ」という用語には、糖側鎖、ホスホリル側鎖又はスルホニル側鎖のような、化学的活性を有する分子表面基が包含され、特定の例においては、特異的な三次元構造的特徴、及び/又は特異的な電荷特性を有する場合もある。実施形態において、エピトープは配列番号53を含む。実施形態において、エピトープは配列番号55を含む。
「標識」又は「検出可能部分」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的又は他の物理的手段により検出可能な組成を指す。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて一般的に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又は、例えば標的ペプチドと特異的に反応するペプチド又は抗体に放射性標識を組み込むことにより検出可能となるハプテン及びタンパク質、又はその他の物質が挙げられる。例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques(1996年、アカデミックプレス社、サンディエゴ)に記載される方法を用いて、標識と抗体とをコンジュゲートするための当技術分野において公知のいかなる適切な方法を用いてもよい。
「接触する」とは、その自明な通常の意味に従い用いられ、少なくとも2つの異なる種(例えば抗体及び抗原)が反応する、相互作用する、又は物理的に接触できるために十分に接近するプロセスを指す。しかしながら、最終的な反応生成物は、1つ以上の添加された試薬間の反応から直接に産生されうる、又は反応混合物中において添加された試薬から産生されうる中間体の反応から産生されうるものと認識すべきである。
「接触する」という用語には、2つの種を反応させ、相互作用させ、又は物理的に接触させることが包含され、その際、2つの種は、例えば本明細書において提供される医薬組成物及び細胞であってもよい。実施形態において、接触には、例えば、本明細書に記載される医薬組成物を細胞と相互作用させることが包含される。
本明細書において使用される場合、「状態」という用語は、通常の機能に対する破壊又は干渉のことを指し、いかなる具体的な状態に限定されるものではなく、また疾患又は障害を包含するものである。
本明細書において定義されるように、細胞増殖(例えば癌細胞増殖)に関する「阻害」、「阻害する」、「阻害している」等の用語は、細胞に負の影響(例えば増殖の低下)を及ぼす又は細胞を殺すことを意味する。いくつかの実施形態では、阻害とは、疾患又は疾患の症状(例えばがん、がん細胞増殖)の低減を指す。したがって、阻害には、少なくとも部分的に、刺激を部分的又は完全にブロックする、活性化を減少させる、防止する、又は遅延させる、又は、シグナル伝達若しくは酵素活性を不活性化する若しくは感度を低下させ、又はタンパク質量を下方制御することが包含される。同様に、「阻害剤」は、受容体又は他のタンパク質に結合することにより、その活性(例えば受容体活性又はタンパク質活性)を部分的に又は完全に、例えばブロックする、減少させる、防止する、遅延させる、不活性化する、感度を低下させる、又は下方制御することにより、阻害する、化合物又はタンパク質である。
本明細書において使用される場合、「予防すること」、「予防する」又は「予防」という用語には、本発明の抗原結合部位を投与し、それにより、状態の少なくとも1つの症状の進行を停止又は妨げることが包含される。本用語にはまた、再発を予防又は遅延させるために、寛解している対象を処置することが包含される。
本明細書において使用される場合、「治療すること」、「治療する」又は「治療」という用語には、本明細書に記載される抗原結合部位を投与することにより、特定の疾患又は状態の少なくとも1つの症状を低減又は除去することが包含される。有益な又は望ましい臨床的結果としては、限定されないが、1つ以上の症状又は状態の緩和又は改善、状態、障害又は疾患の範囲の低減、状態、障害又は疾患の状況の安定化、状態、障害又は疾患の進行の防止、状態、障害又は疾患の拡散の防止、状態、障害又は疾患進行の遅延又は緩徐化、状態、障害又は疾患開始の遅延又は緩徐化、状態、障害又は疾患状況の改良又は緩和、並びに部分的又は完全な寛解が挙げられる。「治療」はまた、治療がない場合に予想される程度を越えて対象の生存を長期化することを意味する場合もある。「治療」はまた、一時的に状態、障害又は疾患の進行を遅らせ、状態、障害又は疾患の進行を阻害することを意味する場合もあるが、いくつかの場合では、永久的に状態、障害又は疾患の進行を停止させることを意味する。本明細書において使用される場合、「治療すること」、「治療する」又は「治療」という用語は、プロテアーゼの発現により特徴づけられる疾患又は状態の1つ以上の症状、又はプロテアーゼの発現により特徴づけられる疾患又は状態の症状による効果を低減させる方法に関連する。したがって、本開示に係る方法において、「治療」は、確立した疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の重症度を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%低減することを指す場合もある。例えば、対象の疾患の1つ以上の症状がコントロールと比較し10%低減される場合、疾患を治療する方法は治療であるとみなされる。したがって、当該低減は、天然又はコントロールのレベルと比較し10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は10%~100%の間のいずれのパーセントの低減であってもよい。治療は必ずしも、疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の治癒又は完全な除去を指すわけではないものと理解される。更に、本明細書において使用される場合、「減少させること」「低減すること」又は「阻害すること」というときは、コントロールのレベルと比較し、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上変化させることが含まれ、ゆえに当該用語は、完全な除去を必ずしも含むわけではない。
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、ヒト(例えば哺乳動物)を含むいかなる動物も意味するものとする。例示的な対象としては、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、対象はヒトである。
抗体:
「抗体」という用語は、当技術分野において公知の意味に従い用いられる。抗体は、未処理のイムノグロブリンとして、又は種々のペプチダーゼ消化により産生され、十分に特性決定されたいくつかの断片として存在する。例えば、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結合で抗体を消化して、それ自体、ジスルフィド結合によりVH-CH1に取り付けられる軽鎖であるFabがダイマーとなったF(ab)’2を産生する。F(ab)’2は穏やかな条件で還元されてヒンジ領域のジスルフィド結合が切断され、それによりF(ab)’2ダイマーはFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的には、ヒンジ領域部分を有するFabである(Fundamental Immunology(Paul編、第3版、1993年)を参照。各種の抗体フラグメントは完全抗体の消化物として定義される一方で、当業者であれば、かかる断片が化学的に、又は組換えDNA法を用いて新たに合成できることを認識する。したがって、本明細書において使用される場合、「抗体」という用語にはまた、全部抗体の修飾により産生される抗体断片、又は組換えDNA法を用いてデノボ合成されたもの(例えば、単鎖Fv)、又はファージディスプレイライブラリー(例えばMcCaffertyら、Nature 348:552~554頁(1990年)参照)を使用し同定されたものが包含される。
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2対の同一のポリペプチド鎖(各対が1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する)から構成される。各鎖のN末端は、主に抗原認識の原因となる約100~110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。用語、可変軽鎖(VL)、可変軽鎖(VL)ドメイン、又は軽鎖可変領域、並びに、可変重鎖(VH)、可変重鎖(VH)ドメイン、又は重鎖可変領域は、それぞれ、これらの軽鎖及び重鎖の領域を指す。本明細書における用語、可変軽鎖(VL)、可変軽鎖(VL)ドメイン及び軽鎖可変領域は、交換可能に使用される。本明細書における用語、可変重鎖(VH)、可変重鎖(VH)ドメイン及び重鎖可変領域は、交換可能に使用される。Fc(すなわち断片結晶化可能領域)は、免疫グロブリンの「基部」又は「尾部」であり、抗体のクラスに応じて、典型的に2つ又は3つの定常ドメインをなす2つの重鎖から構成される。特異的なタンパク質に結合することにより、Fc領域は、各抗体が所定の抗原のための適切な免疫応答を発生させることを確保する。例えば、Fc領域はまた、Fcレセプターのような各種の細胞受容体及び補体タンパク質のような他の免疫分子に結合する。
一例において、いずれかの実施例において本明細書に記載される抗原結合部位又はCXCR2結合タンパク質は、抗体である。
抗体を産生させる方法は当技術分野において公知であり、及び/又はHarlow及びLane(編)「Antibodies:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory(1988年)に記載されている。一般に、かかる方法では、CXCR2(例えばhCXCR2)、又はその領域(例えば細胞外領域)、又は免疫原性断片、又はそのエピトープ、又はそれ(すなわち免疫原)を発現及び提示する細胞を、任意選択的に適切な又は所望の担体、アジュバント又は薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化し、ヒト以外の動物(例えばマウス、ニワトリ、ネズミ、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ又はブタ)に投与する。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹膜内、又は他の公知の経路により投与することができる。
本発明の適切な抗体(例えば組換えモノクローナル又はポリクローナル抗体)、及び本発明の使用のための抗体の調製のために、当技術分野において公知の多くの技術が使用できる(例えばKohler及びMilstein,Nature 256:495~497頁(1975年);Kozborら、Immunology Today 4:72(1983年);Coleら、77~96頁、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」Alan R.Liss,Inc.(1985年);Coligan,「Current Protocols in Immunology」(1991年);Harlow及びLane,「Antibodies,A Laboratory Manual」(1988年);及びGoding,「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」(第2版、1986年)を参照)。目的の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子は、細胞からクローニングすることが可能であり、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子は、ハイブリドーマからクローニングすることが可能であり、それを用いて組換えモノクローナル抗体を産生することができる。モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーは、ハイブリドーマ又は血漿細胞から製造することもできる。重鎖及び軽鎖遺伝子産物のランダムな組合せにより、様々な抗原特異性を有する抗体の大規模なプールを生じさせる(例えばKuby、Immunology、第3版、1997年参照)。単鎖抗体又は組換え抗体の産生技術(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体の産生のために適宜応用することができる。
また、トランスジェニックマウス、又は他の哺乳動物のような他の生物を用いて、ヒト化抗体又はヒト抗体を発現させることができる(例えば米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号;Marksら、Bio/Technology(10):779~783頁(1992年);Lonbergら、Nature 368:856~859頁(1994年);Morrison、Nature 368:812~13頁(1994年)、Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845~51頁(1996年);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826頁、1996年;及びLonberg及びHuszar、Intern.Rev.Immunol.13:65~93頁(1995年)を参照)。あるいは、選択された抗原と特異的に結合する抗体及びヘテロマーのFab断片を同定するために、ファージディスプレイ技術を用いることができる(例えばMcCaffertyら、Nature 348:552~554頁(1990年);Marksら、Biotechnology 10:779~783頁(1992年)を参照)。二重特異性を有する抗体、すなわち、2つの異なる抗原を認識することが可能な抗体を製造することもできる、(例えば国際公開第93/08829号;Trauneckerら、EMBO J.10:3655~3659頁、1991年;及びSureshら、Methods in Enzymology 121:210頁(1986年)を参照)。抗体は、ヘテロコンジュゲート、例えば2つの共有結合した抗体又はイムノトキシンであってもよい(米国特許第4,676,980号、国際公開第91/00360号、第92/200373号、及び欧州特許第03089号を参照)。
ポリクローナル抗体の産生は、免疫後に種々の時点で免疫した動物の血液をサンプリングすることによりモニターすることができる。所望の抗体力価を得る必要がある場合、1つ以上の更なる免疫を行ってもよい。適切な力価が得られるまで、ブースト及び力価測定のプロセスを繰り返す。望ましい免疫原性のレベルが得られたとき、免疫された動物から採血し、血清を単離及び保存し、及び/又は、動物を用いてモノクローナル抗体(mAb)を産生させる。
ヒト以外の抗体をヒト化する又は霊長類化する方法は当技術分野において周知である(例えば米国特許第4,816,567号、第5,530,101号、第5,859,205号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,777,085号、第6,180,370号、第6,210,671号、第6,329,511号明細書、国際公開第87/02671号パンフレット、欧州特許出願公開第0173494号、Jonesら(1986年)Nature 321:522頁、及びVerhoyenら(1988年)Science 239:1534頁を参照)。例えば、ヒト化抗体は、Winter及びMilstein(1991年)Nature 349:293頁に更に記載されている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト起源の供給源に由来する1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はインポート残基としばしば呼ばれ、典型的にはインポート可変ドメインから取られるものである。ヒト化は、Winterらの方法に従い(例えばMorrisonら、PNAS USA(81):6851~6855頁(1984年);Jonesら、Nature 321:522~525頁(1986年);Riechmannら、Nature 332:323~327頁(1988年);Morrison及びOi、Adv.Immunol.44:65~92頁(1988年);Verhoeyenら、Science 239:1534~1536頁(1988年)及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596頁(1992年);Padlan、Molec.Immun.28:489~498頁(1991年);Padlan、Molec.Immun.31(3):169~217頁、1994年)、げっ歯類のCDR又はCDR配列をヒト抗体の対応配列と置換することにより基本的に実施できる。したがって、かかるヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、実質的に完全ヒト可変ドメインの一部がヒト以外の種由来の対応配列により置換されたものである。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基及びおそらくいくつかのFRの残基が、げっ歯類の抗体の類似部位由来の残基により置換されたヒト抗体である。例えば、ヒト化された免疫グロブリンフレームワーク領域をコードする第1配列、及び所望の免疫グロブリン相補性決定領域のセットをコードする第2配列を含むポリヌクレオチドを、合成により、又は適切なcDNA及びゲノムDNAセグメントを組み合わせることにより産生できる。ヒト定常領域DNA配列は、周知の手順に従い、様々なヒト細胞から単離することができる。
モノクローナル抗体は、本発明において企図される抗体の1つの例示的な形態である。「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、同じ抗原に(例えば抗原内の同じエピトープに)結合できる均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の起源又はその製造方法に関して限定されるものではない。
mAbの産生のためには、例えば上記の米国特許第4196265号又はHarlow及びLane(1988年)において例示される手順のような、いくつかの公知技術のうちのいずれかを用いることができる。
例えば、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件で、適切な動物を免疫原により免疫する。ウサギ、マウス及びラットのようなげっ歯動物が、かかる動物の例である。例えば、ネズミ科の抗体を発現しない、ヒト抗体を発現するよう遺伝子工学的に改変されたマウスを用いて、本発明の抗体を産生することができる(例えば国際公開第2002/066630号パンフレットに記載)。
免疫後、抗体を産生する能力を有する体細胞、特にBリンパ球(B細胞)を、mAb産生プロトコル用に選択する。これらの細胞は、脾臓、扁桃又はリンパ節の生検から、又は末梢血液サンプルから得ることが可能である。免疫された動物から得たB細胞を、次に無限に分裂する骨髄腫細胞(一般に免疫原により免疫された動物と同じ種由来)と融合させる。
組織培養培地中でヌクレオチドのde novo合成をブロックする薬剤を含有する選択培地中で、ハイブリッドを培養して増殖させる。かかる薬剤の例は、アミノプテリン、メトトレキセート及びアザセリンである。
増殖したハイブリドーマを用い、例えばフローサイトメトリー、及び/又はイムノヒストケミストリー、及び/又はイムノアッセイ(例えば放射免疫測定、エンザイムイムノアッセイ、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、ドットイムノアッセイ等)により、抗体特異性及び/又は力価に関する機能的選択ステップに供する。
あるいは、MAbを分泌する細胞株を作製するため、ABL-MYC技術(NeoClone,Madison WI 53713,USA)を用いる(例えばLargaespadaら、J.Immunol.Methods.197:85~95頁、1996年等に記載)。
ヒト化抗体は、マウス抗体(「ドナー抗体」、またラット、ハムスター又は他のヒト以外の種であってもよい)由来の少なくとも1つのCDR(又はその機能性断片)をヒト抗体(「アクセプター抗体」)にグラフトした、遺伝子工学的に改変された抗体である。ヒト抗体は、ヒトにおいて免疫応答を誘発しない、ヒトにおいて有意な免疫応答を誘発しない、又はマウスにおいて誘発される免疫応答より弱い免疫応答を誘発する、非天然(例えばヒトにおいて天然に発生せず、又は天然に産生されない)抗体である。実施形態において、複数のマウスCDRをグラフトする(例えば6つのマウスCDRすべてをグラフトする)。アクセプター抗体の配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列(又はその断片)、ヒト抗体配列(又はその断片)の共通配列又は生殖細胞系の領域配列(又はその断片)であってもよい。したがって、ヒト化抗体は、ドナー抗体由来の1つ以上のCDRと、可変領域フレームワーク(FR)とを有する抗体でありうる。FRは、ヒト抗体内の定常領域及び/又は可変領域の一部を形成しうる。加えて、高い結合親和性を保持するため、ヒトアクセプター配列のアミノ酸は、ドナー配列由来の対応する、例えば以下のアミノ酸により置換されてもよい:(1)CDR内のアミノ酸、(2)ヒトフレームワーク領域内のアミノ酸(例えばアミノ酸はCDRの1つのすぐ隣に隣接)。詳細なヒト化抗体の構築方法を提供する、米国特許第5,530,101号及び第5,585,089号(参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。ヒト化抗体にはしばしば、マウス抗体由来の全6つのCDR(例えばKabatにより定義されるもの、しかしながらChothiaによる超可変領域ループH1も含む)が組み込まれるが、それらはより少ない数のマウスCDR、及び/又は完全マウスCDR配列の一部(例えばCDRの機能性断片)を用いて作製することもできる(例えばPascalisら、J.Immunol.169:3076頁、2002年;Vajdosら、Journal of Molecular Biology(320):415~428頁(2002年);Iwahashiら、Mol.Immunol.36:1079~1091頁、1999年;Tamuraら、Journal of Immunology(164):1432~1441頁、2000年を参照)。
典型的には、本明細書において提供されるヒト化抗体は、(i)マウス抗体由来の少なくとも1つのCDR(通常3つのCDR)(また、本明細書においてマウスCDRと称される)とヒト可変領域フレームワークとを含む軽鎖と、(ii)マウス抗体由来の少なくとも1つのCDR(通常3つのCDR)とヒト可変領域フレームワーク(FR)とを含む重鎖とを含みうる。軽鎖及び重鎖可変領域のフレームワーク(FR)は、各々、成熟したヒト抗体可変領域フレームワーク配列(又はその断片)、生殖細胞系の可変領域フレームワーク配列(J領域配列との組合せ)(又はその断片)又はヒト抗体の可変領域フレームワーク配列(又はその断片)の共通配列であってもよい。
「キメラ抗体」は、(a)定常領域若しくはその部分が、抗原結合部位(可変領域)が異なる若しくは変更されたクラス、エフェクター機能及び/若しくは種の定常領域に、若しくはキメラ抗体に新規な特性を付与する完全に異なる分子(例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物など)に、連結された態様で改変、置換若しくは交換された、又は、(b)可変領域若しくはその部分が、異なる若しくは変更された抗原特異性を有する可変領域により改変、置換若しくは交換された、抗体分子である。本発明の、及びそれに係る使用のための好適な抗体としては、ヒト化及び/又はキメラモノクローナル抗体が挙げられる。
ヒト化抗体を設計するための他のアプローチを用いて、上記の米国特許第5,530,101号及び第5,585,089号における方法(例えば「超ヒト化」(Tanら、J.Immunol.169:1119頁、2002年及び米国特許第6,881,557号を参照)又はStudnicakら、Protein Eng.7:805頁、1994年の方法と同じ結果を得ることもできる。さらに、遺伝子改変された、免疫原性の低下したmAbを産生する他の方法としては、例えばVaswamiら、Annals of Allergy,Asthma and Immunology 81:105頁、1998年;Roguskaら、Protein Eng.9:895頁、1996年;並びに米国特許第6,072,035号及び第5,639,641号に記載されている「リシェイピング(reshaping)」、「超キメラ化(hyperchimerization)」)及びベニヤリング(veneering)/リサーフェイシング(resurfacing)が挙げられる。
抗体に治療剤をコンジュゲートする技術は周知である(例えばArnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(編)、243~56頁(Alan R.Liss,Inc.1985年);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623~53頁(Marcel Dekker,Inc.1987年);Thorpe「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)475~506頁(1985年);及びThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.,62:119~58頁(1982年)を参照)。本明細書において使用される場合、「抗体-薬物コンジュゲート又はADC」という用語は、抗体にコンジュゲートする又はそうでなければ共有結合する治療剤を意味する。
本明細書における「治療剤」とは、がん(例えば白血病)のような疾患の治療又は予防の際に有用な組成物を指す。実施形態において、治療剤は抗がん剤である。「抗がん剤」は、その自明な通常の意味に従い用いられ、抗悪性腫瘍特性又は細胞増殖阻害能力を有する組成物(例えば化合物、薬物、アンタゴニスト、阻害剤、モジュレーター)を指す。実施形態において、抗がん剤は化学療法薬である。実施形態において、抗がん剤は、がんを治療する方法において有用性を発揮する、本明細書において同定される薬剤である。実施形態において、抗がん剤は、がんを治療するためFDA又は米国以外の国の同様の管轄機関の承認を得た薬剤である。
抗体はまた、例えば、米国特許第6300064号及び/又は第5885793号に記載されるディスプレイライブラリー(例えばファージディスプレイライブラリー)のスクリーニングにより産生又は単離することもできる。例えば、本発明者らは、ファージディスプレイライブラリーから完全ヒト抗体を単離した。
本発明の抗体は合成された抗体でもよい。例えば、かかる抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、合成ヒト化抗体、霊長類化抗体又は非免疫抗体である。
抗体結合ドメインを含むタンパク質:
単一ドメイン抗体:
いくつかの例において、本発明のタンパク質は、単一ドメイン抗体(「ドメイン抗体」又は「dAb」という用語により交換可能に用いられる)である又はそれを含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変領域の全体又は一部を含む単一のポリペプチド鎖である。特定の例において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis社、ウォルサム、MA、例えば米国特許第6248516号を参照)。
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ:
いくつかの例において、本発明のタンパク質は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ又はより高次のタンパク質複合体(国際公開第98/044001号及び/又は第94/007921号パンフレットに記載のような)である、又はそれを含む。
例えば、ダイアボディは、2つの会合するポリペプチド鎖(各ポリペプチド鎖がVL-X-VH又はVH-X-VLの構造を含む)を含むタンパク質であり、式中、VLは抗体軽鎖可変領域であり、VHは抗体重鎖可変領域であり、Xは、単一のポリペプチド鎖内のVH及びVLを会合させる(又はFvを形成させる)少数の残基を含むリンカーである、又は不在であり、1つのポリペプチド鎖内のVHは、その他のポリペプチド鎖内のVLに結合して抗原結合ドメインを形成し、すなわち、1つ以上の抗原に特異的に結合できるFv分子を形成する。VL及びVHは、各ポリペプチド鎖で同一であってもよく、又は、VL及びVHは、各ポリペプチド鎖において異なることにより、二重特異性ダイアボディ(すなわち異なる特異性を有する2つのFvを含む)を形成してもよい。
単鎖Fv(scFv):
当業者であれば、scFvが、単一ポリペプチド鎖状のVH及びVL領域、並びに、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成(すなわち、単一ポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに会合してFvを形成)できるための、VHとVLとの間のポリペプチドリンカーを含むことを認識する。例えば、リンカーは、12を超えるアミノ酸残基を含み、(Gly4Ser)3(配列番号61)はscFvのためのより望ましいリンカーの1つである。
本発明にはまた、ジスルフィド安定化Fv(又はdiFv又はdsFv)が企図され、それは、単一のシステイン残基がVHのFR及びVLのFRに導入され、該システイン残基がジスルフィド結合により連結されることで安定なFvが産生される。
あるいは、又はそれに加えて、本発明には、非共有結合、又はロイシンジッパードメイン(例えばFos又はJunに由来)などにより共有結合により連結された2つのscFv分子を含むタンパク質である二量体scFvが包含される。あるいは、2つのscFvsは、適切な長さのペプチドリンカーにより連結されることにより、両方のscFvsが所定の形状を有し、抗原に結合することが可能となる(例えば米国特許出願公開第2006/0263367号に記載)。
重鎖抗体:
重鎖抗体は、それらが重鎖を含むが軽鎖を含まない限りにおいて、構造的に他の多くの抗体の形状とは異なる。したがって、これらの抗体は「重鎖のみの抗体」とも呼ばれる。重鎖抗体は、例えばラクダ科の動物及び軟骨魚(IgNARとも呼ばれる)に存在する。
従来の4鎖抗体に存在する重鎖可変領域(「VHドメイン」と呼ばれる)、及び従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変領域(「VLドメイン」と呼ばれる)と区別するために、天然に存在する重鎖抗体に存在する可変領域は、ラクダ科動物の抗体では「VHHドメイン」と、IgNARではV-NARと一般に呼ばれる。
ラクダ科動物由来の重鎖抗体、及びその可変領域、及びそれらの産生及び/又は単離及び/又は使用のための方法に関する一般的な説明は、特に、参照文献である国際公開第94/04678号、第97/49805号及び第97/49805号に見出される。
軟骨魚由来の重鎖抗体、及びその可変領域、及びそれらの産生及び/又は単離及び/又は使用のための方法に関する一般的な説明は、特に、国際公開第2005/118629号に見出される。
他の抗体及びその抗原結合ドメインを含むタンパク質:
本発明にはまた、以下のような他の抗体及びその抗原結合ドメインを含むタンパク質が企図される:
(i)米国特許第5731168号に記載される「鍵及び鍵穴(key and hole)」二重特異性タンパク質、
(ii)ヘテロコンジュゲートタンパク質(例えば米国特許第4676980号に記載)、
(iii)化学架橋剤を用いて産生されるヘテロコンジュゲートタンパク質(例えば米国特許第4676980号に記載)、及び
(iv)Fab3(例えば、欧州特許出願第19930302894号に記載)。
タンパク質に対する変異:
本発明はまた、本明細書において開示される配列と少なくとも80%の同一性を有する抗原結合部位又はそれをコードする核酸を提供する。一例において、本発明の抗原結合部位又は核酸は、本明細書において開示される配列と、少なくとも約85%又は90%又は95%又は97%又は98%又は99%同一の配列を含む。
あるいは、又はそれに加えて、抗原結合部位は、いずれかの実施例に従い本明細書に記載されるVH又はVLのCDRと、少なくとも約80%又は85%又は90%又は95%又は97%又は98%又は99%同一のCDR(例えば3つのCDR)を含む。
他の例において、本発明の核酸は、いずれかの実施例に従い本明細書に記載される機能を有する抗原結合部位をコードする配列と、少なくとも約80%又は85%又は90%又は95%又は97%又は98%又は99%同一の配列を含む。本発明にはまた、本発明の抗原結合部位をコードする核酸であって、遺伝暗号の縮重の結果として本明細書において例示される配列と異なる核酸も包含される。
核酸又はポリペプチドの%同一性は、ギャップ作成ペナルティ=5及びギャップ伸張ペナルティ=0.3を有するGAP(Needleman及びWunsch、Mol.Biol.48,443~453頁、1970年)分析(GCGプログラム)により決定される。クエリー配列は少なくとも50残基長であり、GAP分析は少なくとも50残基の領域にわたり2つの配列をアラインする。例えば、クエリー配列は少なくとも100残基長であり、GAP分析は少なくとも100残基の領域にわたり2つの配列をアラインする。例えば、2つの配列は、それらの全長にわたりアラインされる。
本発明にはまた、本明細書に記載される抗原結合部位をコードする核酸と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸が企図される。本明細書における「適度なストリンジェンシー」とは、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄が、2×SSCバッファー、0.1%(w/v)SDS中、45℃~65℃の温度で、又はそれと同等の条件において実施されるものと定義される。本明細書における「高いストリンジェンシー」とは、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄が、0.1×SSCバッファー、0.1%(w/v)SDS中、又は低い塩濃度にて、少なくとも65℃の温度で、又はそれと同等の条件において実施されるものと定義される。本明細書における特定のレベルのストリンジェンシーには、当業者に公知のSSC以外の洗浄/ハイブリダイゼーション溶液を使用する同等な条件が包含される。例えば、二本鎖の核酸鎖が分離する温度(別名融解温度又はTm)を算出する方法は、当技術分野において公知である。核酸のTmと同等(例えば5℃以内又は10℃以内)又は等しい温度は、高いストリンジェンシーと考えられる。中程度のストリンジェンシーは、核酸の算出Tm値の10℃~20℃、又は10℃~15℃の範囲内であると考えられる。
本発明にはまた、本明細書に記載される配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む本発明の抗原結合部位の変異形態が企図される。いくつかの例において、抗原結合部位は、10以下、例えば9又は8又は7又は6又は5又は4又は3又は2又は1以下の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖及び/又はハイドロパシー及び/又は親水性を有するアミノ酸残基で置換されたものである。
アミノ酸配列に関しては、当業者であれば、コードされた配列において単一のアミノ酸又は数%のアミノ酸の変更、付加又は欠失をもたらし、かかる改変が化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす、核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列への個々の置換、欠失又は付加が、「保存的に修飾されたバリアント」であることを理解する。機能的に類似するアミノ酸をもたらす保存的置換をまとめた表は当技術分野において周知である。かかる保存的に修飾されたバリアントには、本発明の多形性バリアント、種間ホモログ及びアレルも含まれ、それらを除外するものではない。
以下の8つの群は、各々、相互に保存的な置換アミノ酸を含む:
1) アラニン(A)、グリシン(G)、
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4) アルギニン(R)、リジン(K)、
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、
6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、
7) セリン(S)、トレオニン(T)、及び
8) システイン(C)、メチオニン(M)
(Creighton、Proteins、1984年参照)。
「同一の」又は「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈においては、比較ウインドウ上で、又は、以下の配列比較アルゴリズムのいずれかを用いて、若しくは手動アラインメント及び目視確認により決定される指定された領域において、2つ以上の配列又はサブ配列を、最大限適合するよう比較し、整列配置したときに、同一である、又はアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定のパーセンテージの同一性(すなわち、指定された領域(例えば本発明のすべてのポリペプチド配列又は本発明のポリペプチドの個々のドメイン)おいて60%、任意選択的に65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%の同一性)を有することを指す。かかる配列は「実質的に同一である」と言われる。この定義はまた、試験配列の相補配列も意味する。任意選択的に、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長にわたる領域、又はより好ましくは、100~500又は1000以上のヌクレオチド長の領域を通じて存在する。
比較ウインドウ上の2つの最適に整列配置された配列を比較することにより、「配列同一性のパーセンテージ」は決定されるが、その際、比較ウインドウのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の一部には、2つの配列の最適アラインメントのため、参照配列(付加又は欠失を含まない)との比較に基づき、付加又は欠失(すなわちギャップ)を含んでもよい。核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列で同一のマッチ位置の数を計数し、比較のウインドウの全位置の数で当該マッチ位置の数を除算し、結果に100を乗算することにより、配列同一性のパーセンテージが算出される。
配列比較のために、典型的には、1つの配列を参照配列として用い、それと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験及び参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じてサブ配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターを用いてもよく、又は代替パラメーターを指定してもよい。次に、プログラムのパラメーターに基づいて、配列比較アルゴリズムは、参照配列と比較した試験配列のための配列同一性パーセントを算出する。
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの1つの指標は、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが免疫学的に、後述するように、第2の核酸によりコードされるポリペプチドに対して作製した抗体と交差反応することである。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換のみにおいて異なる場合には、あるポリペプチドは第2のポリペプチドと典型的に実質的同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの他の指標は、後述するように、2つの分子又はそれらの相補物がストリンジェントな条件で各々ハイブリダイズするということである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、配列を増幅するために同じプライマーが使用できるということである。
類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において確立されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。ハイドロパシーインデックスは、例えばKyte及びDoolittle、J.Mol.Biol.、157:105~132頁、1982年、及び親水性インデックスは、例えば米国特許第4554101号に記載されている。
本発明にはまた、非保存的アミノ酸変異が企図される。例えば、荷電アミノ酸の、他の荷電アミノ酸による置換、及び中性又は正荷電アミノ酸による置換は、特に興味深い。いくつかの例において、抗原結合部位は、10以下、例えば9又は8又は7又は6又は5又は4又は3又は2又は1以下の非保存的アミノ酸置換を含む。
一例において、変異(複数含む)は、本発明の抗原結合部位の抗原結合ドメインのFR内で生じる。他の例において、変異(複数含む)は、本発明の抗原結合部位のCDR内で生じる。
抗原結合部位の変異形態を産生する方法の例としては、以下のものが挙げられる:
・DNAの変異導入(Thieら、Methods Mol.Biol.525:309~322頁、2009年)又はRNAの変異導入(Kopsidasら、Immunol.Lett.107:163~168頁、2006年;Kopsidasら、BMC Biotechnology、7:18頁、2007年;及び国際公開第1999/058661号パンフレット);
・ポリペプチドをコードする核酸の被変異細胞の導入(例えばXL-1Red、XL-mutS及びXL-mutS-Kanr細菌細胞(Stratagene社);
・DNAシャッフリング(例えば、Stemmer、Nature 370:389~91頁、1994年に開示);及び
・部位特異的変異導入(例えば、Dieffenbach(編)及びDveksler(編)、PCR Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、NY、1995年に記載)。
本発明の変異体抗原結合部位の生物活性を測定する例示的な方法は、当業者にとり自明であり、及び/又は例えば抗原結合について本明細書に記載されるとおりである。例えば、抗原結合を測定する方法、結合の競合阻害、親和性、会合、解離及び治療効能は、本明細書に記載されるとおりである。
定常領域:
本発明の本明細書に記載される抗原結合部位及び/又は抗体には、抗体の定常領域を含むものが包含される。これには、Fcに融合した抗体の抗原結合断片が包含される。
本発明のタンパク質を産生するために有用な定常領域の配列は、様々な供給源から取得できる。いくつかの例において、タンパク質の定常領域又はその部分は、ヒト抗体に由来する。定常領域又はその部分は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEなど、いかなる抗体クラスに由来してもよく、またIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4など、いかなる抗体アイソタイプに由来してもよい。一例において、定常領域は、ヒトアイソタイプIgG4又は安定化IgG4定常領域である。
一例において、定常領域のFc領域は、例えば天然又は野生型ヒトIgG1又はIgG3 Fc領域と比較し、エフェクター機能を誘導する能力が低い。一例において、エフェクター機能は、抗体依存性-細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)及び/又は抗体依存性-細胞媒介性の食作用(ADCP)及び/又は補体依存性の細胞毒性(CDC)である。Fc領域を含むタンパク質のエフェクター機能のレベルを評価する方法は、当技術分野において公知であり、及び/又は本明細書において記載されている。
一例において、Fc領域は、IgG4 Fc領域(すなわちIgG4定常領域由来)であり、例えばヒトIgG4 Fc領域である。適切なIgG4 Fc領域の配列は、当業者に明らかであり、及び/又は、一般公開されているデータベース(例えばNational Center for Biotechnology Information)から入手可能である。
一例において、定常領域は安定化IgG4定常領域である。「安定化IgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換又はFabアーム交換の傾向を減少させるため、又は半分抗体の形成又は半分抗体の形成の傾向を減少させるために、修飾されたIgG4定常領域を意味するものと理解される。「Fabアーム交換」は、ヒトIgG4における一種のタンパク質修飾のことを指し、そこでは、IgG4重鎖及びそれに取り付けられた軽鎖(半分分子)が、他のIgG4分子との間で重鎖-軽鎖対の交換が行われる。したがって、IgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する2本の異なるFabアームを得る(二重特異性分子となる)ことができる。Fabアーム交換は、天然にインビボで生じ、また精製された血球又は例えば還元型グルタチオンのような還元剤によりインビトロで誘導することができる。IgG4抗体が解離して、各々単一の重鎖及び単一の軽鎖を含む2つの分子が形成されることで、「半分抗体」が生じる。
一例において、安定化IgG4定常領域は、カバットの付番方式に従い、ヒンジ領域の位置241にプロリンを含む(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services、1987年及び/又は1991年)。この位置は、EU付番方式によると、ヒンジ領域の位置228に対応する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,2001;及びEdelmanら、Proc.Natl.Acad.USA,63,78~85頁、1969年)。ヒトIgG4において、この残基は一般にセリンである。セリンのプロリンへの置換の後、IgG4ヒンジ領域は配列CPPC(配列番号62)を含む。この点に関して、当業者であれば、「ヒンジ領域」が抗体重鎖定常領域のプロリンリッチな部分であり、FcとFab領域とを連結し、抗体の2本のFabアームに可動性を与えることを認識する。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。カバットの付番方式によると、それはヒトIgG1のGlu226からPro243にわたる部分として一般に定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する第1の及び最後のシステイン残基を同じ位置に配置することにより、IgG1配列と整列配置することができる(例えば国際公開第2010/080538号パンフレットを参照)。
安定化IgG4抗体の更なる例は、(EU付番方式により)ヒトIgG4の重鎖定常領域の位置409のアルギニンがリジン、スレオニン、メチオニン又はロイシンにより置換された抗体である(例えば国際公開第2006/033386号に記載)。定常領域のFc領域は、(EU付番方式により)405に対応する位置に、アラニン、バリン、グリシン、イソロイシン及びロイシンからなる群から選択される残基を更に、又は代替的に含みうる。任意選択的に、ヒンジ領域は、上記の通り位置241にプロリンを含む(すなわちCPPC配列)(配列番号62)。
他の例では、Fc領域は、エフェクター機能を低減させる修飾を有する領域(すなわち「非免疫賦活性Fc領域」)である。例えば、Fc領域は、268、309、330及び331からなる群から選択される1つ以上の位置に置換を含むIgG1 Fc領域である。他の例では、Fc領域はE233P、L234V及びL235Aの1つ以上の変異、並びにG236の欠失、及び/又は、A327G、A330S及びP331Sの1つ以上の変異を含むIgG1 Fc領域である、(Armourら、Eur J Immunol.29:2613~2624頁、1999;Shieldsら、J Biol Chem.276(9):6591~604頁、2001年)。非免疫賦活性Fc領域の更なる例は、例えばDall’Acquaら、J Immunol.177:1129~1138頁、2006年;及び/又はHezareh、J Virol.75:12161~12168頁、2001年)に記載されている。
他の例では、Fc領域は、例えば、IgG4抗体由来の少なくとも1つのCH2ドメインと、IgG1抗体由来の少なくとも1つのCH3ドメインとを含むキメラFc領域であり、ここで、該Fc領域は、(EU付番)240、262、264、266、297、299、307、309、323、399、409及び427からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置に置換を含む(例えば国際公開第2010/085682号に記載)。置換の例としては、240F、262L、264T、266F、297Q、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399S及び427Fが挙げられる。
更なる修飾:
本発明ではまた、Fc領域又は定常領域を含む抗体又は抗原結合部位への更なる修飾が企図される。
例えば、抗体は、タンパク質の半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。例えば、抗体は、新生児Fc領域(FcRn)に対するFc領域の親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFc領域を含む。例えば、Fc領域は低いpH(例えば約pH6.0)においてFcRnに対する高い親和性を有し、それによりエンドソームのFc/FcRnへの結合が促進される。一例において、Fc領域は約pH7.4での親和性と比較し、約pH6においてFcRnに対する高い親和性を有し、それにより細胞のリサイクリング後の血液へのFcの再放出が促進される。これらのアミノ酸置換は、血液からのクリアランスを減少させることにより、タンパク質の半減期の延長において有用である。
アミノ酸置換の例としては、EU付番方式により、T250Q及び/又はM428L又はT252A、T254S及びT266F又はM252Y、S254T及びT256E又はH433K及びN434Fが挙げられる。更なる又は代替的なアミノ酸置換は、例えば米国特許出願公開第2007/0135620号又は米国特許第7083784号明細書に記載されている。
タンパク質の産生:
一例において、任意の実施例に従う本明細書に記載される抗原結合部位は、例えば、本明細書に記載され、及び/又は当技術分野で公知のように、タンパク質を産生させるのに十分な条件でハイブリドーマを培養することにより産生される。
組換え発現:
他の例では、任意の実施例に従う本明細書に記載される抗原結合部位は、組換え型である。
組換えタンパク質の場合、それをコードする核酸を発現構築物又はベクターにクローニングし、次に当該タンパク質を通常産生しない宿主細胞(大腸菌(E.coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞のような)、又は哺乳動物細胞(サルのCos細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞のような)、又は骨髄腫細胞に、それをトランスフェクトする。タンパク質を発現させるために使用する細胞の例は、CHO細胞、骨髄腫細胞又はHEK細胞である。これらの目的を達成する分子クローニング技術は、当技術分野において公知であり、例えば例えばAusubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988年、及びその増補改訂版)又はSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)に記載されている。組換え核酸の構築に適する多種多様なクローニング及びインビトロ増幅方法が存在する。また、当技術分野において公知である組換え抗体を産生する方法としては、例えば米国特許第4816567号又は第5530101号を参照。
単離の後、核酸は、発現構築物のプロモーター又は発現ベクターに作動可能に連結する形で挿入され、更なるクローニング(DNAの増幅)、又は無細胞系若しくは細胞内における発現に供される。
本明細書において使用される場合、「プロモーター」という用語は、その最も広義に解釈するものとし、それはゲノム遺伝子の転写調節配列を包含し、これは、正確な転写開始のために必要なTATAボックス又は開始エレメントを含み、例えば発生段階及び/又は外部刺激応答において、又は組織特異的に、核酸の発現を変化させる更なる調節エレメント(例えば上流側活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)を伴う又は伴わない。本明細書の文脈において、「プロモーター」という用語はまた、それに作動可能に連結された核酸の発現を付与し、活性化し、若しくは強化する、組換え、合成若しくは融合核酸、又はその誘導体を表すものとして用いる。プロモーターは例えば、更に発現を強化し及び/又は前記核酸の空間的発現及び/又は時間的発現を変化させるために、1つ以上の特異的な調節エレメントの更なるコピーを含むことがある。
本明細書において使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、核酸の発現がプロモーターにより制御されるよう、核酸と関連してプロモーターが配置されていることを意味する。
細胞における発現のための多くのベクターが利用できる。一般に、ベクターのコンポーネントには、限定されないが、シグナル配列、タンパク質をコードする配列(例えば本明細書において提供される情報に由来)、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列の1つ以上が含まれる。当業者であれば、タンパク質発現のための適切な配列を理解する。例示的なシグナル配列としては、原核生物の分泌シグナル(例えばpelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp又は耐熱性エンテロトキシンII)、酵母の分泌シグナル(例えばインベルターゼリーダー、α因子リーダー又は酸ホスファターゼリーダー)又は哺乳類の分泌シグナル(例えば単純ヘルぺスgDシグナル)が挙げられる。
哺乳動物細胞において活性を示すプロモーターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、核小分子RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、鳥ウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター、CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター又はその活性断片を含むハイブリッド調節エレメントが挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によりトランスフォームされたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎生期腎臓細胞株(293細胞又は懸濁培養における増殖用にサブクローニングされた293細胞)、胎児ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
酵母細胞(ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びS.ポンベ(S.pombe)を含む群から選択される酵母細胞のような)における発現に適する典型的なプロモーターとしては、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター又はTEF1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
単離された核酸又はそれを含む発現構築物を細胞に導入して発現させるための手段は、当業者に公知である。所定の細胞のために使用する技術は、公知の確立された技術に依存する。例えば、組換えDNAを細胞に導入するための手段としては、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランにより媒介されるトランスフェクション、例えばリポフェクトアミン(Gibco社、MD、米国)及び/又はセルフェクチン(cellfectin)(Gibco社、MD、米国)を用いるリポソームにより媒介されるトランスフェクション、PEGにより媒介されるDNA取込み、エレクトロポレーション、及びDNAコーティングしたタングステン又は金粒子(Agracetus社、WI、米国)を用いる微小粒子銃などが挙げられる。
タンパク質産生に用いる宿主細胞は、使用する細胞のタイプに応じて、様々な培地で培養することができる。市販の培地(ハムのFl0(Sigma社)、最小必須培地(MEM)(Sigma社)、RPMl-1640(Sigma社)及びダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)(Sigma社のような)が、哺乳動物細胞の培養に適する。本明細書において述べるもの以外のタイプの細胞の培養培地は、当技術分野において公知である。
タンパク質の単離:
タンパク質を単離する方法は、当技術分野において公知であり、及び/又は本明細書に記載される。
抗原結合部位が培地に分泌される場合、かかる発現系からの上清を、最初に市販のタンパク質濃縮フィルター(例えばAmicon、又はMillipore社のPellicon限外ろ過ユニット)を使用して濃縮することができる。PMSFのようなプロテアーゼインヒビターを前述の段階のいずれかに含めることによりタンパク質分解を阻害でき、また、抗生物質を含めることにより偶発的な混入体の増殖を防止できる。あるいは、又はそれに加えて、例えば連続遠心分離を用いて、タンパク質を発現している細胞から上清を濾過することができ、及び/又は分離することができる。
細胞から調製される抗原結合部位は、例えばイオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー(例えばプロテインAアフィニティークロマトグラフィー又はプロテインGクロマトグラフィー)又はそれらの任意の組合せを使用して精製することができる。これらの方法は、当技術分野において公知であり、例えば国際公開第99/57134号パンフレット又はEd Harlow及びDavid Lane(編)、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、(1988年)に記載されている。
当業者であれば、例えばポリヒスチジンタグ、ヘキサヒスチジンタグ、若しくはインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)タグ、若しくは鳥ウイルス5(V5)タグ、若しくはFLAGタグ、若しくはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグなど、タンパク質に対しタグを付加する修飾を行うことにより、精製又は検出を容易に行えることを認識する。得られたタンパク質を次に、親和性精製のような当技術分野において公知の方法を使用して精製する。例えば、6×hisタグを含むタンパク質は、タンパク質を含むサンプルを、固体又は半固体の担体に固定化された、6×hisタグと特異的に結合するニッケル-ニトリロトリ酢酸(Ni-NTA)と接触させ、サンプルを洗浄して未結合タンパク質を除去し、結合したタンパク質を溶出させることにより精製される。あるいは、又はそれに加えて、タグに結合するリガンド又は抗体を、アフィニティー精製方法において用いる。
抗原結合部位の活性のアッセイ:
CXCR2及びその変異体に対する結合:
当業者であれば、本明細書において開示される本発明の抗原結合部位がCXCR2に結合することは明らかである。タンパク質への結合を評価する方法は、当技術分野において公知であり、例えばScopes(Protein purification:principles and practice、第3版、Springer Verlag,1994年)に記載されている。かかる方法は一般に、抗原結合部位を固定し、標識抗原(CXCR2)とそれとを接触させることを必要とする。非特異的結合したタンパク質を洗浄除去した後、標識の量、すなわち結合した抗原を検出する。当然ながら、抗原結合部位を標識し、抗原を固定化してもよい。パニングタイプのアッセイを用いることもできる。あるいは、又はそれに加えて、表面プラスモン共鳴アッセイを用いることもできる。
任意選択的に、固定化された抗原結合部位のCXCR2又はそのエピトープに対する解離定数(Kd)、会合定数(ka)及び/又は親和定数(KD)を測定する。CXCR2-結合タンパク質の「Kd」又は「ka」又は「KD」は、一例において、放射性識別又は蛍光標識されたCXCR2リガンド結合アッセイにより測定する。「Kd」の場合、このアッセイは、非標識のCXCR2の滴定系列の存在下で、標識CXCR2又はそのエピトープの最小濃度により抗原結合部位を平衡させる。未結合のCXCR2又はそのエピトープを洗浄除去した後、標識の量(タンパク質のKdを表す)を測定する。
他の例によれば、Kd、Ka又はKDは、表面プラスモン共鳴アッセイ(例えば固定化CXCR2若しくはその領域、又は固定化抗原結合部位を有するBIAcore表面プラスモン共鳴(BIAcore社、Piscataway、NJ)を用いて測定される。
阻害活性の測定:
本発明のいくつかの例において、タンパク質はCXCR2活性を阻害できる。
機能的反応をもたらす受容体を通じたリガンドのシグナリングを阻害する又は低減するタンパク質の能力を評価するための各種アッセイが、当技術分野において公知である。
一例において、抗原結合部位は、CXCR2リガンド(例えばCXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5又はCXCL6)の存在下で培養される、CXCR2を発現する免疫細胞(例えば好中球)の遊走を阻害する。遊走を評価する方法は、当技術分野において公知であり、本明細書において記載されている。抗原結合部位による遊走の阻害は、抗原結合部位の非存在下で観察されるレベルと比較し、CXCR2活性、特にCXCR2により媒介されるシグナリング及び遊走を阻害又は低減させることであると考えられる。抗CXCR2抗体の阻害活性を測定する他のアッセイとしては、カルシウム流出アッセイ、放射性リガンド結合アッセイ、cAMPアッセイ及びβアレスチン補充アッセイが挙げられる。本明細書に記載されるアッセイのいずれも、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5又はCXCL6を含む1つ以上のCXCR2リガンドを含んでもよい。
治療効能の評価:
抗原結合部位による中和の測定に関する、治療効能の評価のためのアッセイは、上記したとおりである。
本明細書に記載される抗体のCXCR2阻害活性を試験するインビボアッセイの例としては、イミキモド誘導された皮膚炎モデル、K/BxN血清輸送により誘導される関節炎、及びB16黒色腫同系移植モデルが挙げられる。
例えば、抗原結合部位は、がん(例えば胃がん)のモデルにおいて試験することができる。例えば、gp130のY757F変異体(gp130Y757F/Y757F)に相同なマウスは、胃の腫瘍を発症させる(Jenkinsら、Blood 109:2380~2388頁、2007年)。マウス(例えば8週齢のマウス)を抗原結合部位で処理し、胃のポリープの数及び/又は重量を評価する。ポリープのサイズ及び/又は重量を低減する抗原結合部位は、がんの治療に有用であるとみなされる。同様のアッセイは、大腸がんに対する効果の試験にも用いることができ、その場合、基本的にGretenら、Cell、118:285~296頁、2004年に記載のように、アゾキシメタン(AOM)及びそれに続くデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によりgp130Y757F/Y757Fマウスを処理して大腸がんを誘発させ、その後抗原結合部位による処理を行う。
あるいは、又はそれに加えて、抗原結合部位を、例えばLiら、Oncol.Lett.3:802~806頁、2012年に記載のように、がん転移又はがん関連の骨疾患モデルにおいて試験することができる。
「生体サンプル」又は「サンプル」とは、対象又は患者から得た、又はそれに由来する材料を指す。生体サンプルには、生検及び剖検サンプルのような組織の切片、及び組織学的解析用の凍結切片が包含される。かかるサンプルとしては、血液及び血液画分のような体液、又は生成物(例えば血清、血漿、血小板、赤血球等)、痰、組織、培養細胞(例えば初代培養、外植体及び形質転換細胞)、便、尿、滑液、関節組織、滑液組織、滑膜細胞、線維芽細胞様の滑膜細胞、マクロファージ様の滑膜細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞などが挙げられる。生体サンプルは典型的には、霊長類、例えばチンパンジー又はヒトのような哺乳動物、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯動物(例えばモルモット、ネズミ、ラット)、ウサギ、又は鳥類、爬虫類、又は魚類のような真核生物から得られる。
「コントロール」又は「標準コントロール」とは、試験サンプル、測定又は測定値の比較のための参照(通常公知の参照)として有用なサンプル、測定又は測定値を指す。例えば、試験サンプルは、所定の疾患(例えばがん、炎症性疾患)に罹患するおそれがある患者から採取し、公知の健常(発症していない)個体(例えば標準コントロール対象)と比較することができる。標準コントロールはまた、所定の疾患に罹患しない同様の個体(例えば同様の医療的バックグラウンド、同じ年齢、体重などを有する健常個体)(例えば標準コントロール対象)の集団(すなわち標準コントロール集団)から収集した平均測定値又は値を表す場合もある。標準コントロール値はまた、例えば疾患発症前の患者からの得たサンプルなど、同じ個体から得たものであってもよい。例えば、コントロールを利用して、薬理学的データ(例えば半減期)又は治療手段に基づく治療的利益(例えば副作用の比較)を比較することができる。コントロールはまた、データの有意性を決定するためにも重要である。例えば、所定のパラメーターの値がコントロールから大きく逸脱する場合、試験サンプルの変動は有意とはみなされない。当業者であれば、標準コントロールがいかなる数のパラメーター(例えばRNAレベル、タンパク質レベル、具体的細胞タイプ、具体的な体液、具体的な組織、滑膜細胞、滑液、滑液組織、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞など)の評価のためにも設計できることを認識する。
当業者であれば、いずれの標準コントロールが所定の状況において最適かを理解し、標準コントロール値との比較に基づきデータを解析することができる。標準コントロールはまた、データの有意性(例えば統計的有意性)を決定するためにも重要である。例えば、所定のパラメーターの値が標準コントロールから大きく逸脱する場合、試験サンプルの変動は有意とはみなされない。
治療される状態:
本発明の抗原結合部位は、CXCR2の存在又は過剰発現に関連する、又はそれにより発症するいずれかの状態の治療又は予防において有用である。状態の例はがんである。がんの例としては、嚢胞性及び固形腫瘍、骨及び軟部組織腫瘍(肛門組織の腫瘍を含む)、胆管、膀胱、血球、腸、脳、胸部、カルチノイド、頸部、目、食道、頭頸部、腎臓、喉頭、白血病、肝臓、肺、リンパ節、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、皮膚(例えば扁平上皮腫瘍)、肉腫、胃、精巣、甲状腺、膣、外陰部などのがんが挙げられる。軟部組織腫瘍としては、Benignシュワン細胞腫Monosomy、Desmoid腫瘍、脂肪芽細胞腫、脂肪腫、子宮平滑筋腫、澄明細胞肉腫、皮膚線維肉腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、粘液様脂肪肉腫、Alveolar横紋筋肉腫及び滑膜肉腫が挙げられる。具体的な骨腫瘍としては、非化骨性線維腫、単房性骨嚢腫、内軟骨腫、動脈瘤性骨嚢腫、骨芽細胞腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、化骨性線維腫及びアダマンチノーマ、Giant細胞腫瘍、線維性骨異形成症、ユーイング肉腫好酸球性肉芽腫、骨肉腫、軟骨腫、軟骨肉腫、悪性線維性組織球腫及び転移性癌が挙げられる。白血病には、急性リンパ芽球性、急性骨髄芽球性、慢性リンパ球性及び慢性骨髄性のものが包含される。
他の例としては、胸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、腺癌、中皮腫、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、胚細胞腫瘍、肝がん/cholongio、癌、神経内分泌腫瘍、下垂体性腫瘍、小20円形細胞腫瘍、鱗状細胞がん、黒色腫、非定型繊維黄色腫、セミノーマ、非セミノーマ、支質leydig細胞腫瘍、Sertoli細胞腫、皮膚腫瘍、腎臓腫瘍、睾丸腫瘍、脳腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、口腔腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍、頸部腫瘍、食道腫瘍、喉頭腫瘍、肝腫瘍、肺腫瘍、膣腫瘍及びウィルム腫瘍が挙げられる。
本発明の抗原結合部位はまた、慢性閉塞性肺疾患、喘息、線維形成、乾癬、大腸炎、1型糖尿病、多発性硬化症、敗血症、嚢胞性線維形成、関節炎、慢性関節リウマチ、炎症性大腸疾患、膀胱炎及び移植拒絶のような急性又は慢性の炎症と関連する、又はそれにより生じるいずれかの状態の治療又は予防において有用である。抗原結合部位は、好ましくは自己免疫性の炎症性疾患の治療又は予防へ応用される。
本発明の抗原結合部位は、例えばアレルギー性鼻炎、花粉症及び気管支喘息の治療のためのアレルギー免疫療法剤としても有用である。
CXCL3及び6は炎症の間、好中球に対する化学誘引物質であり、したがって、それらは広範囲な炎症性障害において密接に関与する。CXCL3は、乳がん転移及び前立腺がんにおいて過剰発現する。CXCL6は、嚢胞性線維形成に関与し、肝がん細胞増殖及び肺線維症を促進する。したがって、本発明の抗原結合部位は、かかる障害の治療に応用できる。
「患者」又は「治療を必要とする対象」とは、本明細書において提供される組成物又は医薬組成物の投与により治療されうる疾患又は状態に罹患する又はその傾向を有する生物のことを指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及びその他非哺乳動物動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
「疾患」又は「状態」という用語は、本明細書において提供される化合物又は方法により治療されうる患者又は対象の状況又は健康ステータスのことを指す。疾患は、がんであってもよい。いくつかの更なる例において、「がん」はヒトのがん及び癌、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病を指し、固形及びリンパ系がん、腎臓がん、胸部がん、肺がん、膀胱がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、脳がん、頭頸部がん、皮膚がん、子宮がん、精巣がん、神経膠腫がん、食道がん及び肝がん(肝癌を含む)、リンパ腫(B急性リンパ芽球性リンパ腫を含む)、非ホジキンリンパ腫(例えば、バーキット、小細胞及び非小細胞リンパ腫)、ホジキンリンパ腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、ALL及びCMLを含む)又は多発性骨髄腫が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「がん」という用語は、哺乳動物(例えばヒト)で発見されるすべての種類のがん、新生物又は悪性腫瘍を指し、白血病、癌及び肉腫が包含される。本明細書において提供される化合物又は方法により治療されうるがんの例としては、乳がん、大腸がん、腎臓がん、白血病、肺がん、黒色腫、卵巣がん、前立腺がん、膵がん、脳がん、肝がん、胃がん又は肉腫が挙げられる。
「白血病」という用語は、広義の造血器官における進行性、悪性の疾患を指し、血液及び骨髄における白血球及びその前駆体の異常な増殖及び分化により一般に特徴づけられる。白血病は一般に、(1)疾患の期間及び特徴(急性又は慢性)、(2)関連する細胞のタイプ(骨髄性、リンパ性、又は単核球性)、(3)白血病又は無白血性(下位白血病)の患者の異常な細胞数の増加又は非増加に基づいて臨床的に分類される。例えば、本明細書において提供される化合物又は方法で治療されうる白血病の例としては、急性骨髄性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、無白血性白血病、白細胞血液白血病、好塩基性白血病、芽球白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、白血病皮膚、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロースの白血病、有毛細胞白血病、血球芽細胞白血病、血球芽細胞白血病、組織球性白血病、幹細胞性白血病、急性単球白血病、白血球減少症白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ行性白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞白血病、肥胖細胞性白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性の顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞様白血病、前骨髄球白血病、リーダー細胞白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、下位白血病又は未分化細胞白血病が挙げられる。
「肉腫」という用語は一般に、胎生期の結合組織のような物質により構成される腫瘍を意味し、一般に原繊維又は均質体に封埋される密に圧縮された細胞から構成される。本明細書において提供される化合物又は方法により治療されうる肉腫としては、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、Abemethy肉腫、脂肪の肉腫、脂肪肉腫、蜂窩性軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、chorio癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性複数色素性出血性肉腫、B細胞免疫芽細胞肉腫、リンパ腫、T細胞免疫芽細胞肉腫、イェンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性肉腫、reticulocytic肉腫、ラウス肉腫、血清嚢胞性肉腫、滑膜肉腫又はtelangiectaltic肉腫が挙げられる。
「黒色腫」という用語は、皮膚及び他の器官の色素細胞系から発生する腫瘍を意味する。本明細書において提供される化合物又は方法で治療されうる黒色腫としては、例えば、肢端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、Cloudman黒色腫、S91黒色腫、Harding-Passey黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫又は表在拡大型黒色腫が挙げられる。
「癌」という用語は、周辺組織に浸潤し、転移を引き起こす傾向がある、上皮細胞から構成される悪性の新たな増殖を意味する。本明細書において提供される化合物又は方法で治療されうる癌の例としては、甲状腺髄様癌、家族性髄様甲状腺癌、小葉癌、小葉癌、アデノ嚢胞性癌、腺様嚢胞癌、腺癌腫(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質癌、肺胞癌、肺胞細胞癌、基底細胞の癌、基底細胞癌、類基底細胞癌、基底鱗状細胞癌、気管支肺胞癌、細気管支癌、気管支癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛膜癌、膠様癌、コメド癌、体癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円筒状癌、円筒細胞癌、腺管癌、デューラム癌、胎児性癌、髄様癌、類表皮癌、アデノイド上皮癌、外方増殖性癌、潰瘍癌、繊維癌、ゼラチン状癌、ゼリー状癌、巨細胞の癌、巨細胞癌、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母基癌、血液様癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、ヒアリン癌、過剰腎癌、小児胎児性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌腫、Krompecher癌、Kulchitzky細胞癌、大細胞癌、レンズ状癌、レンズ状の癌、脂肪腫癌、リンパ上皮癌、髄様癌、髄様の癌、黒色癌、軟性癌、粘液性癌、粘液分泌性癌、粘液細胞性腺癌、粘液性類表皮癌、癌粘液合計、粘液癌、粘液腫様癌、上咽頭癌、燕麦細胞癌、化骨性癌、類骨癌、乳頭状癌、門脈周囲癌、侵襲前の癌、有棘細胞癌、髄質様癌、腎臓腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌、鼻・副鼻腔癌、硬癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソレノイド癌、回転楕円体細胞癌、紡錘体細胞癌、海面状癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、ストリング(string)癌、毛細管拡張性癌、毛細管拡張性の癌、移行上皮癌、結節癌、結節性癌、疣状癌又は絨毛性癌が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「転移」及び「転移性」及び「転移がん」という用語は、交換可能に用いられ、1つの器官から他の非隣接器官又は身体部分への増殖性の疾患又は障害(例えばがん)が拡散することを指す。がんには原発部位があり、例えば胸部で発生した場合、その部位は原発腫瘍(例えば一次性乳がん)と呼ばれる。原発腫瘍又は原発部位のいくつかのがん細胞は、循環系を通じて身体の他の部位及び組織へ移動し、局所領域の周囲の正常組織を透過及び浸透する能力、及び/又はリンパ系又は脈管系の壁を透過する能力を取得する。原発腫瘍のがん細胞から形成される第2の臨床的に検出可能な腫瘍を「転移性」又は「二次腫瘍」と呼ぶ。がん細胞が転移するときは、転移性腫瘍及びその細胞は第1の腫瘍のそれらと類似していると推定される。したがって、肺がんが胸部に転移する場合、胸部の部位の二次腫瘍は、異常な乳房細胞からではなく、異常な肺細胞からなる。胸部の二次腫瘍は、転移性肺がんと呼ばれる。したがって、転移がんとは、対象が原発腫瘍及び1つ以上の二次腫瘍を有する又は有していた疾患のことを指す。「非転移がん」又は「転移しないがんを有する対象」とは、対象が原発腫瘍を有するが1つ以上の二次腫瘍を有さない疾患を意味する。例えば、転移性肺がんは、対象が、一次性肺腫瘍を有する又はその履歴を有し、第2の位置又は複数の位置(例えば胸部)に1つ以上の二次腫瘍を有する疾患のことを指す。
本明細書において使用される場合、「炎症性疾患」という用語は、異所性炎症(例えばコントロール(例えば疾患を患っていない健常者)と比較し炎症のレベルが増加)により特徴づけられる疾患又は状態を意味する。炎症性疾患の例としては、自己免疫疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、青少年ライテル症候群、多発性硬化症、全身性紅斑性狼蒼(SLE)、重症筋無力症、若年型糖尿病、真性糖尿病1型、ギランバレー症候群、橋本の脳炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、乾癬、シェーグレン症候群、血管炎、糸球体腎炎、自己免疫甲状腺炎、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、魚鱗癬、グラーブ眼症、炎症性大腸疾患、アジソン病、白斑、喘息、アレルギー性喘息、尋常性座瘡、セリアック病、慢性前立腺炎、炎症性大腸疾患、骨盤炎症性疾患、再灌流傷害、虚血再灌流傷害、脳卒中、サルコイドーシス、移植拒絶、間質性膀胱炎、アテローム硬化、強皮症及びアトピー性皮膚炎が挙げられる。
物質又は該物質の疾患(例えばがん、例えば白血病、急性骨髄性白血病)と関連する活性若しくは機能の文脈における「関連する」又は「~と関連する」という用語は、疾患(例えばがん、例えば白血病、急性骨髄性白血病)が(全て、又は一部において)、又は該疾患の症状が(すべて、又は一部において)、物質又は該物質の活性若しくは機能により生じることを意味する。あるいは、物質(例えばIL1RAP)は、疾患(例えばがん、例えば白血病、急性骨髄性白血病)のインジケーターであってもよい。したがって、関連物質は、疾患組織(例えばがん細胞、例えば白血病幹細胞、急性骨髄性白血病細胞)を標的とする手段として利用できる。
組成物:
いくつかの例において、本明細書に記載される抗原結合部位は、経口的に、吸入スプレー、吸着、吸収、局所、直腸内、鼻腔内、バッカル、膣内、脳室内で非経口的に、又はインプラントのリザーバを介して、従来公知の無毒性の薬学的に許容される担体を含む投与製剤として、又は他の簡便な剤形として、投与されうる。本明細書において使用される場合、「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鞘内、心室内、内部胸骨及び頭蓋内への注射又は注入技術が包含される。
対象への投与のための適切な形態(例えば医薬組成物)に、抗原結合部位を調製する方法は当技術分野において公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990年)及び米国薬局方:National Formulary(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1984年)に記載される方法が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、特に非経口投与(静脈内投与又は器官又は関節の内腔又はルーメンへの投与のような)において有用である。投与のための組成物は一般に、薬学的に許容される担体(例えば水溶性担体)中に溶解させた抗原結合部位の溶液を含む。様々な水溶性担体(例えば緩衝食塩水等)が使用可能である。組成物は、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等の、pH調整剤及び緩衝剤並びに毒性調整剤等のような、生理学的条件を模倣するのに必要とされる薬学的に許容される助剤を含んでもよい。これらの製剤における本発明の抗原結合部位の濃度は、幅広く変化させることができ、選択した具体的な投与様式及び患者のニーズに従い、主に液量、粘度、体重等に基づいて選択される。担体の例としては、水、食塩水、リンガー液、ブドウ糖溶液及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。非水性のビヒクル(例えば混合油及びオレイン酸エチル)を用いてもよい。リポソームを担体として用いてもよい。ビヒクルは、等張性及び化学的安定性を強化する少量の添加剤(例えばバッファー及び防腐剤)を含んでもよい。
製剤化した後、本発明の抗原結合部位は、投与製剤と互換性を有する方法で、治療的/予防的に効果的である量において投与される。製剤は様々な剤形(上記の注射剤のタイプのような)において容易に投与されるが、また、その他の薬学的に許容される形態、例えば錠剤、ピル、カプセル又は経口投与用の他の固体、坐薬、膣座薬、鼻腔内液又はスプレー、エアゾール、吸入剤、リポソーム型形等も企図される。医薬用の「遅延放出」カプセル又は組成物を用いてもよい。遅延放出製剤は一般に、長期間にわたり一定の薬物レベルを与えるよう設計されており、本発明の抗原結合部位の送達に用いることができる。
国際公開第2002/080967号は、例えば、喘息の治療用の抗体を含むエアロゾル組成物を投与するための組成物及び方法を記載しており、それは本発明の抗原結合部位の投与にも適する。
本発明の組成物は、持続的放出及び/又は快適さを提供できる成分をさらに含んでもよい。かかる成分としては、高分子量の、アニオン性粘液模倣ポリマー、ゲル化多糖類及び微細化された薬物担体基質が挙げられる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号、第5,403,841号、第5,212,162号、第4,861,760号において更に詳細に考察されている。これらの特許の全開示内容は、その全目的において、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の組成物は、身体内での遅延放出のためのマイクロスフェアとして送達されてもよい。例えば、マイクロスフェアは、薬物を含み皮下で徐々に放出するタイプのマイクロスフェアを、生物分解可能及び注射可能なゲル製剤(例えばGao Pharm.Res.12:857~863頁、1995年参照)として皮内注射を経て(Rao、J.Biomater Sci. Polym.第7版:623~645頁、1995年参照)、又は経口投与用のマイクロスフェアとして(例えばEyles、J.Pharm.Pharmacol.49:669~674頁、1997年参照)投与することができる。実施形態において、本発明の組成物の製剤は、リポソームを用いて送達することができ、該リポソームは、細胞膜と融合する、又はリポソームに付加されており、細胞表層膜タンパク質受容体と結合してエンドサイトーシスをもたらす受容体リガンドを用いることによりエンドサイトーシスを受ける。リポソームを用いることにより、特にリポソームの表面が標的細胞に特異的な受容体リガンドを有する場合、又はそれ以外の特異的な器官に優先的に向けられるものである場合、インビボで標的細胞に対して本発明の組成物を送達することが可能となる(例えばAl-Muhammed、J.Microencapsul.13:293~306頁、1996年;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.6:698~708頁、1995年;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.46:1576~1587頁、1989年を参照)。本発明の組成物は、ナノ粒子として送達されてもよい。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、「生理的に許容される」及び「薬理的に許容される」と同義的に用いられる。医薬組成物は一般に、保存のための緩衝剤及び保存剤を含み、投与経路に応じて適切な送達のためのバッファー及び担体を含みうる。
「薬学的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される担体」は、対象に対する活性薬剤の投与及び対象への吸収を補助し、患者に対する有意な毒物学的な効果を引き起こすことなく、本発明の組成物に含めることができる物質のことを指す。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩液、標準のリンゲル液、標準のスクロース、標準のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香味料、塩液(例えばリンゲル液)、アルコール、油剤、ゼラチン、ラクトース、アミロース又はデンプンのような炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン及び着色剤等が挙げられる。かかる調製物は滅菌することができ、必要に応じて、本発明の化合物と有害な反応をしない助剤(滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調節する塩、バッファー、着色剤及び/又は芳香剤等のような)と混合することができる。当業者は、他の医薬賦形剤が本発明において有用であることを理解する。
「薬学的に許容される塩」という用語は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等を含む、当技術分野において周知の様々な有機及び無機の対イオンに由来する塩を指し、分子が塩基性官能基を含む場合は、有機酸又は無機酸の塩(塩酸塩、臭酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等など)である。
投与の量及びタイミング:
本発明の抗原結合部位の適切な投与量は、具体的な抗原結合部位、治療対象の状態及び/又は治療を受ける対象に応じて変化しうる。適切な投与量の決定は、熟練した医師の技量の範囲内であって、例えば最適量以下の投与量から開始し、最適又は有用な投与量を決定するために投与量を徐々に変化させることによりなされる。あるいは、治療/予防のための適切な投与量を決定するために、細胞培養アッセイ又は動物試験から得たデータが用いられ、その場合、適切な用量は、殆ど又は全く毒性を有さない、活性化合物のED50を含む血中濃度の範囲内に存在する。投与量は、用いられる剤形及び用いられる投与経路に依存し、その範囲内で変化しうる。治療的/予防的に有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大抑制の半分値を達成する化合物の濃度又は量)を含む、循環血漿中の濃度範囲を達成できるよう、動物モデルにおいて決定される。かかる情報は、より正確にヒトにおける有用な用量を決定するために用いることができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定される。
いくつかの例において、本発明の方法は、本明細書に記載されているタンパク質の予防又は治療有効量を投与することを含む。
「治療的に有効な用量又は量」という用語は、治療を必要とする対象に投与されたときに、対象の予後及び/又は状況を改善し、及び/又は、本明細書に記載される臨床状態の1つ以上の症状を、その状態の臨床的診断特性又は臨床的特徴として観察され認められるレベル未満にまで、低減又は阻害する量のことである。対象に投与される量は、治療される状態、タイプ及び治療される状態の段階、投与方法及び対象の特徴(全体的な健康、他の疾患、年齢、性別、遺伝子型及び体重のような)などの具体的な特徴に依存し、それらは公知の技術を用いて当業者により確認することができる(例えばLieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(1~3巻、1992年);Lloyd、The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999年);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版、Gennaro,Editor(2003年);及びPickar,Dosage Calculations(1999年)を参照)。当業者は、これら及び他の要因に応じて適切な投与量を決定することができる。したがって、本用語は、本発明を具体的な量(例えば重量又はタンパク質の量)に限定するものと解すべきではなく、むしろ本発明は、対象において所定の結果を得るのに十分な、抗原結合部位の任意の量が包含される。例えば、所定のパラメーターに関しては、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。治療効能は、「倍数」としての増加又は減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、標準コントロールに対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれ以上の効果を示すことができる。治療的に有効な用量又は量は、疾患の1つ以上の症状を改善できる。疾患に罹患するリスクを有する人の治療が投与による効果である場合、疾患の発症又は疾患の1つ以上の症状を予防又は遅延させることができる用量又は量を、治療的に有効な用量又は量という。
本明細書において使用される場合、「予防的に有効な量」という用語は、臨床状態の1つ以上の検出可能な症状の発症を予防する、又は阻害する、又は遅延させるのに十分な量のタンパク質のことを意味するものとする。当業者であれば、かかる量は、例えば投与される具体的な抗原結合部位、及び/又は特定の対象、及び/又は状態のタイプ若しくは重症度若しくはレベル、及び/又は状態の素因(遺伝子的又はそれ以外)に応じて変化しうることを認識する。したがって、本用語は、本発明を具体的な量(例えば重量又は抗原結合部位の量)に限定するものと解すべきではなく、むしろ本発明は、対象において所定の結果を得るのに十分な、抗原結合部位の任意の量を包含する。
「調製物」という用語は、カプセルを提供する担体としての封入材料と共に活性化合物を含む製剤を意図するものであり、その場合、他の担体の有無にかかわらず、活性成分は担体により包埋され、したがって担体は活性成分と会合している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤も包含される。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与に適する固体剤形として用いることができる。
医薬調製物は、任意選択的に単位剤形である。かかる形態において、医薬調製物は、活性成分を適切量含む投与用量に分割される。単位剤形は、包装された調製物であってもよく、該包装は、所定量の包装された錠剤、カプセル、及び散剤のような調製物を、バイアル又はアンプル中に含有しうる。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ在又はトローチ剤自体であってもよく、又は包装された形態のこれらを適切な数で有するものであってもよい。単位剤形は、冷凍された分散でありえる。
キット:
さらに本発明には、以下の1つ以上を含むキットが包含される:
(i)本発明の抗原結合部位又はそれをコードする発現構築物(複数含む)、
(ii)本発明の細胞、
(iii)本発明の複合体、又は
(iii)本発明の医薬組成物。
CXCR2を検出するためのキットの場合、例えば、該キットは本発明の抗原結合部位に連結された検出手段をさらに含んでもよい。
治療的/予防的使用のためのキットの場合、該キットは、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
任意選択的に、本発明のキットは、いずれかの実施例に従い本明細書に記載される方法の取扱説明書が同封される。
本発明は以下の非限定的実施例を含む。
[実施例1]
5mMの酪酸で回収の20時間前に刺激し、完全フロイントアジュバント(腹腔内、初回免疫)、又は不完全フロイントアジュバント(腹腔内、2次~6次免疫)中に乳化させた2×107個のL1.2/hCXCR2トランスフェクション細胞を用い、C57BL/6マウスに2週間隔で計5~6回免疫を行い、ヒトCXCR2(hCXCR2)と反応するモノクローナル抗体を産生させた。最終免疫は、PBS中溶液の静注により行った。4日後に脾臓を摘出し、標準方法を用いSP2/0細胞株と細胞融合させた。10%のFetalclone(HyClone社)、1×HAT補充(Sigma Aldrich社)及びマウスIL-6を含むDMEM(Gibco/Invitrogen社)中でハイブリドーマを増殖させた。10~14日増殖させた後、培養上清を採取し、一次スクリーニングに供した。
ヒトCXCR2トランスフェクションL1.2細胞、及び非トランスフェクションL1.2細胞、又は無関係な、若しくはhCXCR1、hCCR5若しくはhCXCR3などの類似する受容体でのトランスフェクションL1.2細胞を用い、免疫蛍光染色及びFACSCalibur(BD Biosciences社)を用いた分析を行い、CXCR2と反応するモノクローナル抗体を同定した。先行文献(Leeら、2006年、Nat.Biotech.24:1279~1284頁)に記載される標準的な手順を用い、細胞のモノクローナル抗体染色を実施した。
抗体産生の際、ハイブリドーマを組織培養フラスコで増殖させ、培地を回収した。いくつかの実験では、培養上清の抗体濃度は、更なる精製なしで十分に使用できるものであった。選択された抗体の産生は、更にスケールアップされ、プロテインGクロマトグラフィーによりモノクローナル抗体を精製し、濃縮し、PBSにバッファー交換した。モノクローナル抗体濃度は、全IgG ELISAを用いて測定した。
hCXCR2を高レベルで発現するL1.2トランスフェクタントを用いてマウスを免疫し、フローサイトメトリーによりhCXCR2でトランスフェクトされたL1.2細胞の反応を観察し、最初のモノクローナル抗体の同定を行った。単クローン性を担保するため、選択されたハイブリドーマを希釈し、384ウェルプレートにプレーティングしてサブクローニングを行った。サブクローンの交差反応性特異性を、L1.2/hCXCR2トランスフェクタントと非トランスフェクションL1.2細胞とのフローサイトメトリーにより確認した。
[実施例2]
受容体結合特異性
トランスフェクション細胞に対するmAbの反応性を評価するため、間接免疫蛍光法染色及びフローサイトメトリーを用いた。細胞をPBSにより1回洗浄し、2%(wt/vol)のBSA及び0.1%(wt/vol)のアジ化ナトリウム及び精製抗体を含む100μl PBS(染色バッファー)中に再懸濁した。4℃で30分経過後、細胞を染色バッファーで2回洗浄し、染色バッファー中に1:500希釈したヒト化mAb検出用のPEコンジュゲート抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)50μl中に、又はマウスmAb検出用のPEコンジュゲート抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)50μl中に再懸濁した。4℃で20分間インキュベートした後、細胞を2回染色バッファーで洗浄し、LSRIIフローサイトメーターで分析した。7-AAD染色を用い、死細胞を除外した。
図1は、フローサイトメトリー実験の結果を示す。抗体はいずれも、ヒトCXCR2を発現する細胞と結合したが、これらの抗体はいずれも、ヒトCCR6、CXCR1、CXCR3又はCXCR7との有意な結合を示さず、それはこれらのケモカイン受容体を発現しない細胞で観察されたフローサイトメトリー染色と同じだったことが理由である。
CXCR2の結合の分析
図2は、フローサイトメトリー又はELISA実験から得た、L1.2 hCXCR2細胞と結合する各抗体のEC50を示す。各タイプの結合アッセイから得たEC50値は、良好に相関し、フローサイトメトリーを用いて得た3H9、CM2及び6G7のEC50値は、それぞれ1.05nM、1.35nM及び1.28nMであり、一方、ELISAを用いて得た3H9、CM2及び6G7のEC50値は、それぞれ1.2nM、1.4nM及び1.46nMであった。
[実施例3]
CXCR2リガンドとの競合結合
リガンド結合分析のため、組換えヒトGRO-g(「リガンド」)をPeprotech社(ニュージャージー、米国)から得た。2200Ci/mMの比活性を有する、125I-ボルトン-ハンター標識GRO-gをPerkin-Elmer社(ボストン、MA、米国)から購入した。細胞を、結合バッファー(50mMのHepes、pH 7.5、1mMのCaCI、5mMのMgCb、0.5%のBSA)で1回洗浄し、2.5×106セル/mlの濃度で結合バッファー中に再懸濁した。96ウェルプレートに、冷却した精製モノクローナル抗体(冷却競合物質)を添加し、続いて1×105細胞を含む等量(40μl)の結合バッファーを添加した。室温で15分間、細胞及び競合物質をプレインキュベートした。次に放射性同位元素識別されたリガンド(最終濃度0.5~2nM)を各ウェルに添加し、120μlの最終反応ボリュームとした。室温で60分間インキュベートした後、150mMのNaClを含む1mlの結合バッファーで細胞を3回洗浄した。細胞ペレットの放射能(結合した標識の量)を、TopCount液体シンチレーションカウンター(Packard社)において計数した。放射性同位元素識別リガンドなしで細胞をインキュベートし、非特異的バックグラウンド結合を算出した。サンプルのアッセイを2度実施した。
図3Aは、すべての抗体が、ヒト好中球上のCXCR2との結合について、CXCL3(Gro-γ;Gro-ガンマ)と競合することを示す。3H9、6G7及びCM2のIC50値は、それぞれ、0.7nM、3.4nM及び11.1nMである。驚くべきことに、3H9はナノモル濃度以下のIC50値を示した。
好中球遊走の阻害
ヒト好中球をスピンダウンし、遊走培地(MM=RPMI 1640、0.5%のBSA)で洗浄し、107細胞/mlで再懸濁した。24ウェル組織培養プレートの各ウェルに、組織培養インサート(Becton Dickinson社、カリフォルニア州マウンテンビュー)を配置し、3mmの直径の孔を有するポリエチレンテレフタレート膜により上部及び下部チャンバーに分離させた。走化性CXCL6(アッセイ培地中に希釈)を、24ウェル組織培養プレートのアッセイ培地600μlに添加した。100μl中の1,000,000個の細胞を、抗体と共に30分間プレインキュベートした。5%のCO2、37℃のインキュベーター内で4時間、精製されたmAbをウェルの上部チャンバーに添加し、細胞を下部チャンバーに遊走させた。インサートを遊走後に除去し、細胞をLSRIIサイトメーター(BD Biosciences社)により計数した。30秒のセット時間の間のイベントを得ることにより、細胞数の相対値を得た。
図3Bは、すべての抗体が、すべての試験した濃度で、CXCR2リガンドであるCXCL6(GCP-2)への好中球の遊走を有意に阻害したことを示す。本実験の結果は、すべての抗体がCXCR2により媒介される機能を強力に阻害できることを明らかに示す。
更に、図7、8及び9はまた、抗CXCR2抗体がそれぞれCXCL1、CXCL2、CXCL5により誘導されるヒト好中球の遊走を強力に阻害できることを示す。
[実施例4]
エピトープマッピング分析
抗CXCR2 mAbにより認識されるCXCR2中の領域を決定するため、エピトープマッピング試験を行った。最初に、N末端領域及びヒトCXCR2の第1、第2及び第3の細胞外ループに対応するビオチン化ペプチドを用い、ELISAを行った。本予備的マッピング試験の結果、すべての抗ヒトCXCR2 mAbがCXCR2のN末端領域を認識することが示された。
次に、ヒトCXCR2の全N末端領域にわたる3つの重なり合うビオチン化ペプチドを合成し、より詳細な抗CXCR2 mAbエピトープマッピング試験において用いた。ペプチド1(MEDFNMESDSFEDFWKGEDLS)(配列番号53)は、ヒトCXCR2のアミノ酸位置1~21に対応し、ペプチド2(SFEDFWKGEDLSNYSYSSTLPP)(配列番号55)は、アミノ酸位置10~31に対応し、ペプチド3(LSNYSYSSTLPPFLLDAAPCEPESLEINK)(配列番号54)は、ヒトCXCR2のアミノ酸位置20~46に対応する。簡潔には、マルチウェルプレートをストレプトアビジンでコーティングし、洗浄し、次にビオチン化ペプチドを個別のウェルに添加し、インキュベートし、プレートへのペプチドの結合を行わせた。次に、プレートのウェルに各抗体を添加し、プレートをインキュベートし、異なる抗ヒトCXCR2抗体を試験した。アイソタイプコントロール及びバッファーのみを、陰性コントロールとして設けた。洗浄後、適切なコンジュゲート抗体を添加し、プレートをインキュベートした。プレートを再び洗浄し、固定化されたペプチドに対する抗体の結合を視覚化した。
図4は、抗体3H9、CM2及び6G7がいずれもペプチドに1及び2と結合するが、ペプチドとは3を結合しないことを示す。したがって、抗体結合に関与するCXCR2上の領域又はエピトープは、SFEDFWKGEDLS(配列番号60)又はアミノ酸10~21(ヒトCXCR2に従い付番)である。
[実施例5]
抗CXCR2抗体のヒト化
抗hCXCR2ハイブリドーマ3H9から得た全RNAを用い、シークエンシング分析用のcDNAを合成した。可変領域遺伝子をマウス軽鎖(mIgCk)及び重鎖(mIgG3)定常領域にアニーリングするプライマーを用いたRT-PCRにより増幅し、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)遺伝子を配列決定した。
ヒト化3H9 mAbは、m3H9 mAbのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)を、標準的な分子細胞的技術を用いてヒトフレームワーク領域に移すことにより作製した。IMGT/V-QUEST及びIMGT/Junctions分析ツールを用いてヒト生殖細胞系遺伝子を同定し、その際、重鎖及び軽鎖の両可変領域からの配列をネズミ科抗体のそれらに密接に整列配置した。これらの選択されたヒト生殖細胞系遺伝子のフレームワーク配列を用い、マウス3H9 CDR(IMGTデータベースによるIGHV1-3*01及びIGKV2-28*01ヒト遺伝子)のためのアクセプター配列とした。しかしながら、ネズミ科での残基は、決定的な「バーニヤ」ゾーンにおいては保存されていた。CHO細胞における発現用にコドン最適化したヒト化VH及びVL遺伝子を、Genescriptにより合成した。
トランスフェクション細胞に対するヒト化mAbの反応性を評価するため、間接免疫蛍光法染色及びフローサイトメトリーを用いた。細胞をPBSにより1回洗浄し、2%(wt/vol)のBSA及び0.1%(wt/vol)のアジ化ナトリウム及び1μgの生成されたキメラ3H9又はヒト化3H9を含む100μl PBS(染色バッファー)中に再懸濁した。4℃で30分経過後、細胞を染色バッファーで2回洗浄し、染色バッファー中に1:500希釈したヒト化mAb検出用のPEコンジュゲート抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)50μl中に再懸濁した。4℃で20分間インキュベートした後、細胞を2回染色バッファーで洗浄し、LSRIIフローサイトメーターで分析した。7-AAD染色を用い、死細胞を除外した。
図5は、ヒト化3H9及びキメラ3H9との、フローサイトメトリー結合分析の結果を示す。両抗体は、同等の程度でCXCR2発現細胞と結合し、すなわちヒト化を施してもCXCR2との親和性には特に悪影響を与えないことを示唆するものである。図6に示される結果によって、マウス及びヒト化3H9がCXCR2 L1.2トランスフェクション細胞への結合に関して同程度のEC50値を有したことが確認された。
本明細書において開示され定義される本発明は、そこで言及されるように、又は記載若しくは図面から自明なように、個々の特徴を2つ以上組み合わせたすべての代替物にも及ぶことが理解されよう。これらの異なる組合せはすべて、本発明の各種の代替的態様を構成する。
P実施形態:
P実施形態1: CXCR2と結合し、CXCL2、CXCL3及び/又はCXCL6により媒介されるCXCR2活性を阻害する抗原結合部位。
P実施形態2: CCR6、CXCR1、CXCR2及び/又はCXCR7と検出可能な程度で結合しない、又は有意に結合しない、P実施形態1に記載の抗原結合部位。
P実施形態3: 抗原結合部位がCXCL2、CXCL3及びCXCL6Pにより誘導されるCXCR2活性を阻害する又は低減させる、P実施形態1又は2に記載の抗原結合部位。
P実施形態4: 抗原結合部位が、CXCR2との結合についてCXCL2、CXCL3及び/又はCXCL6と競合する、P実施形態1又は2に記載の抗原結合部位。
P実施形態5: 抗原結合部位がCXCL2、CXCL3又はCXCL6により刺激される免疫細胞の遊走を阻害する、P実施形態1、2又は4のいずれか一つに記載の抗原結合部位。
P実施形態6: 抗原結合部位が、CXCL2、CXCL3及び/又はCXCL6により媒介されるCXCR2活性を、2nM未満のEC50を示すことで阻害する、P実施形態1~5のいずれか一つに記載の抗原結合部位。
P実施形態7: 抗原結合部位が、CXCL3との競合結合アッセイにおいて、約20、15、12、10、8、6、5、4、3、2又は1nM未満のIC50を示す、P実施形態4に記載の抗原結合部位。
P実施形態8: 抗原結合部位が、CXCL1により媒介されるCXCR2活性を更に阻害する、P実施形態1~7のいずれか一つに記載の抗原結合部位。
P実施形態9: 抗原結合部位が、CXCR2のN末端領域と結合する、P実施形態1~8のいずれか一つに記載の抗原結合部位。
P実施形態10: N末端領域が(ヒトCXCR2に従う付番で)残基10~21を含むか又は残基10~21からなる、P実施形態9に記載の抗原結合部位。
P実施形態11: 残基10~21がSFEDFWKGEDLS(配列番号60)である、P実施形態10に記載の抗原結合部位。
P実施形態12: 抗原結合部位が、CXCR2の残基10~21内で結合し、最初の46残基内の他の残基とは結合しない、P実施形態10又は11に記載の抗原結合部位。
P実施形態13: 抗原結合部位が、配列番号52のアミノ酸配列からなるペプチド、及び更に配列番号53のアミノ酸配列からなるペプチドと結合できるが、配列番号54のアミノ酸配列からなるペプチドとは検出可能な程度で結合しない、P実施形態1~12のいずれか1つに記載の抗原結合部位。
P実施形態14: CXCR2への結合のための抗原結合部位であって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4-リンカー-FR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4aを含み、式中、FR1、FR2、FR3及びFR4が、各々フレームワーク領域であり、CDR1、CDR2及びCDR3が、各々相補性決定領域であり、FR1a、FR2a、FR3a及びFR4aが、各々フレームワーク領域であり、CDR1a、CDR2a及びCDR3aが、各々相補性決定領域であり、フレームワーク領域又は相補性決定領域のいずれかの配列が、本明細書に記載されるとおりである、抗原結合部位。
P実施形態15: CXCR2への結合のための抗原結合部位であって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4-リンカー-FR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4aを含み、式中、FR1、FR2、FR3及びFR4が、各々フレームワーク領域であり、CDR1、CDR2及びCDR3が、各々相補性決定領域であり、FR1a、FR2a、FR3a及びFR4aが、各々フレームワーク領域であり、CDR1a、CDR2a及びCDR3aが、各々相補性決定領域であり、相補性決定領域のいずれの配列も、本明細書の表1に記載されるアミノ酸配列を有する、抗原結合部位。
P実施形態16: (NからC末端に向かい、又はCからN末端に向かい)以下のアミノ酸配列を含むか、以下のアミノ酸配列から本質的になるか、又は以下のアミノ酸配列からなる抗原結合部位:-配列番号7及び8、-配列番号17及び18、-配列番号27及び28、並びに/又は-配列番号31及び32。
P実施形態17: 抗体の抗原結合ドメインを含む抗原結合部位であって、該抗原結合ドメインが、CXCR2と結合する、又はそれと特異的に結合し、該抗原結合ドメインが、以下の少なくとも1つを含む、抗原結合部位:
(i) 配列番号4に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含む相補性決定領域(CDR)1と、
配列番号5に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR2と、
配列番号6に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR3とを含むVH、
(ii) 配列番号8又は32に記載される配列と少なくとも約95%又は96%又は97%又は98%又は99%同一の配列を含むVH、
(iii) 配列番号1に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR1と、
配列番号2に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR2と、
配列番号3に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR3とを含むVL、
(iv) 配列番号7若しくは31に記載される配列と少なくとも約95%同一の配列を含むVL、
(v) 配列番号4に記載される配列を含むCDR1と、配列番号5に記載される配列を含むCDR2と、配列番号6に記載される配列を含むCDR3とを含むVH、
(vi) 配列番号8若しくは32に記載される配列を含むVH、
(vii) 配列番号1に記載される配列を含むCDR1と、配列番号2に記載される配列を含むCDR2と、配列番号3に記載される配列を含むCDR3とを含むVL、
(viii) 配列番号7若しくは31に記載される配列を含むVL、
(ix)配列番号4に記載される配列を含むCDR1と、配列番号5に記載される配列を含むCDR2と、配列番号6に記載される配列を含むCDR3とを含むVH、並びに、配列番号1に記載される配列を含むCDR1と、配列番号2に記載される配列を含むCDR2と、配列番号3に記載される配列を含むCDR3とを含むVL、
(x) 配列番号8に記載される配列を含むVH、及び配列番号7に記載される配列を含むVL、又は、
(xi) 配列番号32に記載される配列を含むVH、及び配列番号31に記載される配列を含むVL。
P実施形態18: 抗体の抗原結合ドメインを含む抗原結合部位であって、該抗原結合ドメインが、CXCR2と結合する、又はそれと特異的に結合し、該抗原結合ドメインが、以下の少なくとも1つを含む、抗原結合部位:
(i) 配列番号14に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含む相補性決定領域(CDR)1と、
配列番号15に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR2と、
配列番号16に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR3とを含むVH、
(ii) 配列番号18に記載される配列と少なくとも約95%又は96%又は97%又は98%又は99%同一の配列を含むVH、
(iii) 配列番号11に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR1と、
配列番号12に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR2と、
配列番号13に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR3とを含むVL、
(iv) 配列番号17に記載される配列と少なくとも約95%同一の配列を含むVL、
(v) 配列番号14に記載される配列を含むCDR1と、配列番号15に記載される配列を含むCDR2と、配列番号16に記載される配列を含むCDR3とを含むVH、
(vi) 配列番号18に記載される配列を含むVH、
(vii) 配列番号11に記載される配列を含むCDR1と、配列番号12に記載される配列を含むCDR2と、配列番号13に記載される配列を含むCDR3とを含むVL、
(viii) 配列番号17に記載される配列を含むVL、
(ix) 配列番号14に記載される配列を含むCDR1と、配列番号15に記載される配列を含むCDR2と、配列番号16に記載される配列を含むCDR3とを含むVH、並びに、配列番号11に記載される配列を含むCDR1と、配列番号12に記載される配列を含むCDR2と、配列番号13に記載される配列を含むCDR3とを含むVL、又は、
(x) 配列番号18に記載される配列を含むVH、及び配列番号17に記載される配列を含むVL。
P実施形態19: 抗体の抗原結合ドメインを含む抗原結合部位であって、該抗原結合ドメインが、CXCR2と結合する、又はそれと特異的に結合し、該抗原結合ドメインが、以下の少なくとも1つを含む、抗原結合部位:
(i) 配列番号24に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含む相補性決定領域(CDR)と、
配列番号25に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR2と、
配列番号26に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR3とを含むVH、
(ii) 配列番号28に記載される配列と少なくとも約95%又は96%又は97%又は98%又は99%同一の配列を含むVH、
(iii) 配列番号21に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR1と、
配列番号22に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR2と、
配列番号23に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むCDR3とを含むVL、
(iv) 配列番号27に記載される配列と少なくとも約95%同一の配列を含むVL、
(v) 配列番号24に記載される配列を含むCDR1と、配列番号25に記載される配列を含むCDR2と、配列番号26に記載される配列を含むCDR3とを含むVH、
(vi) 配列番号28に記載される配列を含むVH、
(vii) 配列番号21に記載される配列を含むCDR1と、配列番号22に記載される配列を含むCDR2と、配列番号23に記載される配列を含むCDR3とを含むVL、
(viii) 配列番号27に記載される配列を含むVL、
(ix) 配列番号24に記載される配列を含むCDR1と、配列番号25に記載される配列を含むCDR2と、配列番号26に記載される配列を含むCDR3とを含むVH、並びに、配列番号21に記載される配列を含むCDR1と、配列番号22に記載される配列を含むCDR2と、配列番号23に記載される配列を含むCDR3とを含むVL、又は、
(x) 配列番号28に記載される配列を含むVH、及び配列番号27に記載される配列を含むVL。
P実施形態20: 抗原結合ドメインが、以下の少なくとも1つを更に含む、P実施形態16~18のいずれか一つに記載の抗原結合部位:
(i) 配列番号40若しくは48に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むフレームワーク領域(FR)1、
配列番号41若しくは49に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR2と、
配列番号42若しくは50に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR3と、
配列番号43若しくは51に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR4とを含むVH、
(ii) 配列番号33、34、35若しくは44に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR1と、
配列番号36若しくは45に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR2と、
配列番号37、38若しくは46に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR3と、
配列番号39若しくは47に記載される配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を含むFR4とを含むVL、
(iii) 配列番号40若しくは48に記載される配列を含むFR1と、配列番号41若しくは49に記載される配列を含むFR2と、
配列番号42若しくは50に記載される配列を含むFR3と、配列番号43若しくは51に記載される配列を含むFR4とを含むVH、
(iv) 配列番号33、34、35若しくは44に記載される配列を含むFR1と、配列番号36若しくは45に記載される配列を含むFR2と、配列番号37、38若しくは46に記載される配列を含むFR3と、配列番号39若しくは47に記載される配列を含むFR4とを含むVL、又は、
(v) 配列番号40若しくは48に記載される配列を含むFR1と、配列番号41若しくは49に記載される配列を含むFR2と、配列番号42若しくは50に記載される配列を含むFR3と、配列番号43若しくは51に記載される配列を含むFR4とを含むVH、並びに、
配列番号33、34、35又は44に記載される配列を含むFR1と、配列番号36又は45において記載される配列を含むFR2と、配列番号37、38又は46に記載される配列を含むFR3と、配列番号39又は47に記載される配列を含むFR4とを含むVL。
P実施形態21: 抗原結合部位が、以下の形態である、P実施形態1~20のいずれか一つに記載の抗原結合部位:
(i) 単鎖Fv断片(scFv)、
(ii) 二量体scFv(di-scFv)、
(iii) 抗体の定常領域、Fc若しくは重鎖定常ドメイン(CH)2及び/若しくはCH3に連結された(i)若しくは(ii)の1つ、又は、
(iv) 免疫エフェクター細胞に結合するタンパク質に連結された(i)若しくは(ii)の1つ。
P実施形態22: 抗原結合部位が、以下の形態である、P実施形態1~20のいずれか一つに記載の抗原結合部位:
(i) ダイアボディ、
(ii) トリアボディ、
(iii) テトラボディ、
(iv) Fab、
(v) F(ab’)2、
(vi) Fv、
(vii) 抗体の定常領域、Fc若しくは重鎖定常ドメイン(CH)2及び/若しくはCH3に連結された(i)~(iv)の1つ、又は、
(viii) 免疫エフェクター細胞に結合するタンパク質に連結された(i)~(vi)の1つ。
P実施形態23: 抗原結合部位が、非コンジュゲート型であり、コンジュゲートを形成するのに適さない、P実施形態1~22のいずれか一つに記載の抗原結合部位。
P実施形態24: P実施形態1~23のいずれか一つに記載の抗原結合部位を含む融合タンパク質。
P実施形態25: P実施形態1~22のいずれか一つに記載の抗原結合部位又は融合タンパク質が、標識又は細胞毒性剤とコンジュゲートした形態のコンジュゲート。
P実施形態26: P実施形態1~25のいずれか一つに記載の抗原結合部位、融合タンパク質又はコンジュゲートと結合させるための抗体。
P実施形態27: P実施形態1~26のいずれか一つに記載の抗原結合部位、融合タンパク質又はコンジュゲートをコードする核酸。
P実施形態28: P実施形態27に記載の核酸を含むベクター。
P実施形態29: P実施形態27及び28に記載のベクター又は核酸を含む細胞。
P実施形態30: P実施形態1~26のいずれか一つに記載の抗原結合部位、融合タンパク質又はコンジュゲートと、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物。
P実施形態31: P実施形態1~26のいずれか一つに記載の抗原結合部位、融合タンパク質又はコンジュゲートを含むキット又は製品。
P実施形態32: P実施形態1~26のいずれか一つに記載の抗原結合部位、融合タンパク質又はコンジュゲートを投与することを含む、対象の炎症性疾患又はがんの治療又は予防方法。
P実施形態33: 炎症性疾患又はがんの治療又は予防用の医薬の製造のための、P実施形態1~26のいずれか一つに記載の抗原結合部位、融合タンパク質又はコンジュゲートの使用。
P実施形態34: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号1に記載のCDR L1、配列番号2に記載のCDR L2及び配列番号3に記載のCDR L3を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号4に記載のCDR H1、配列番号5に記載のCDR H2及び配列番号6に記載のCDR H3を含む、C-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体。
P実施形態35: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号11に記載のCDR L1、配列番号12に記載のCDR L2及び配列番号13に記載のCDR L3を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号14に記載のCDR H1、配列番号15に記載のCDR H2及び配列番号16に記載のCDR H3を含む、C-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体。
P実施形態36: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号21に記載のCDR L1、配列番号22に記載のCDR L2及び配列番号23に記載のCDR L3を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号24に記載のCDR H1、配列番号25に記載のCDR H2及び配列番号26に記載のCDR H3を含む、C-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体。
P実施形態37: ヒト化抗体である、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態38: キメラ抗体である、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態39: Fab’断片である、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態40: 単鎖抗体(scFv)である、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態41: 前記軽鎖可変領域が、以下を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体:カバット位置1に対応する位置にVal若しくはAsp、カバット位置2に対応する位置にIle、Val若しくはAla、カバット位置7に対応する位置にThr、Ala若しくはSer、カバット位置14に対応する位置にSer若しくはThr、カバット位置15に対応する位置にLeu若しくはPro、カバット位置17に対応する位置にAsp若しくはGlu、カバット位置18に対応する位置にGln若しくはPro、カバット位置45に対応する位置にLys若しくはGln、カバット位置67に対応する位置にSer若しくはAla、カバット位置83に対応する位置にLeu若しくはVal、及び/又はカバット位置100に対応する位置にGly若しくはGln。
P実施形態42: 前記重鎖可変領域が、以下を含む、P実施形態34~36又は41のいずれか一つに記載のCXCR2抗体:カバット位置5に対応する位置にGln若しくはVal、カバット位置9に対応する位置にPro若しくはAla、カバット位置11に対応する位置にLeu若しくはVal、カバット位置12に対応する位置にVal若しくはLys、カバット位置20に対応する位置にIle若しくはVal、カバット位置38に対応する位置にLys若しくはArg、カバット位置40に対応する位置にArg若しくはAla、カバット位置43に対応する位置にLys若しくはGln、カバット位置44に対応する位置にLys若しくはArg、カバット位置75に対応する位置にSer若しくはAla、カバット位置81に対応する位置にGln若しくはGlu、カバット位置83に対応する位置にThr若しくはArg、及び/又はカバット位置87に対応する位置にSer若しくはThr。
P実施形態43: 前記軽鎖可変領域が、配列番号7、配列番号17、配列番号27又は配列番号31の配列を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態44: 前記重鎖可変領域が、配列番号8、配列番号18、配列番号28又は配列番号32の配列を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態45: 前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載のFR L1、配列番号36に記載のFR L2、配列番号37に記載のFR L3及び配列番号39に記載のFR L4を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態46: 前記軽鎖可変領域が、配列番号34に記載のFR L1、配列番号36に記載のFR L2、配列番号37に記載のFR L3及び配列番号39に記載のFR L4を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態47: 前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載のFR L1、配列番号36に記載のFR L2、配列番号38に記載のFR L3及び配列番号39に記載のFR L4を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態48: 前記軽鎖可変領域が、配列番号44に記載のFR L1、配列番号45に記載のFR L2、配列番号46に記載のFR L3及び配列番号47に記載のFR L4を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態49: 前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載のFR H1、配列番号41に記載のFR H2、配列番号42に記載のFR H3及び配列番号43に記載のFR H4を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態50: 前記重鎖可変領域が、配列番号48に記載のFR H1、配列番号49に記載のFR H2、配列番号50に記載のFR H3及び配列番号51に記載のFR H4を含む、P実施形態34~36のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態51: IgGである、P実施形態34~48のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態52: IgG4である、P実施形態34~49のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
P実施形態53: P実施形態34~50のいずれか一つに記載のCXCR2抗体をコードする単離された核酸。
P実施形態54: 治療有効量のP実施形態34~50のいずれか一つに記載のCXCR2抗体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
P実施形態55: P実施形態34~50のいずれか一つに記載のCXCR2抗体を含む細胞。
P実施形態56: 炎症性疾患又はがんの治療を必要とする対象の炎症性疾患又はがんを治療する方法であって、対象に治療有効量のP実施形態34~50のいずれか一つに記載のCXCR2抗体を投与することを含み、それにより、前記対象の前記炎症性疾患又はがんを治療する方法。
実施形態:
実施形態1: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むC-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体であって、
前記軽鎖可変領域が、
配列番号1に記載のCDR L1、配列番号2に記載のCDR L2及び配列番号3に記載のCDR L3を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号4に記載のCDR H1、配列番号5に記載のCDR H2及び配列番号6に記載のCDR H3を含む、CXCR2抗体。
実施形態2: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むC-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体であって、
前記軽鎖可変領域が、
配列番号11に記載のCDR L1、配列番号12に記載のCDR L2及び配列番号13に記載のCDR L3を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号14に記載のCDR H1、配列番号15に記載のCDR H2及び配列番号16に記載のCDR H3を含む、CXCR2抗体。
実施形態3: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むC-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体であって、
前記軽鎖可変領域が、
配列番号21に記載のCDR L1、配列番号22に記載のCDR L2及び配列番号23に記載のCDR L3を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号24に記載のCDR H1、配列番号25に記載のCDR H2及び配列番号26に記載のCDR H3を含む、CXCR2抗体。
実施形態4: 軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むC-X-Cモチーフケモカイン受容体2(CXCR2)抗体であって、
前記軽鎖可変領域が、
配列番号1に記載のCDR L1、配列番号2に記載のCDR L2及び配列番号3に記載のCDR L3を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号58に記載のCDR H1、配列番号5に記載のCDR H2及び配列番号6に記載のCDR H3を含む、CXCR2抗体。
実施形態5: ヒト化抗体である、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態6: キメラ抗体である、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態7: Fab’断片である、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態8: 単鎖抗体(scFv)である、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態9: 前記軽鎖可変領域が、以下を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体:
カバット位置1に対応する位置にVal若しくはAsp、
カバット位置2に対応する位置にIle、Val若しくはAla、
カバット位置7に対応する位置にThr、Ala若しくはSer、
カバット位置14に対応する位置にSer若しくはThr、
カバット位置15に対応する位置にLeu若しくはPro、
カバット位置17に対応する位置にAsp若しくはGlu、
カバット位置18に対応する位置にGln若しくはPro、
カバット位置45に対応する位置にLys若しくはGln、
カバット位置47に対応する位置にGlu若しくはGln、
カバット位置67に対応する位置にSer若しくはAla、
カバット位置83に対応する位置にLeu若しくはVal、及び/又は
カバット位置100に対応する位置にGly若しくはGln。
実施形態10: 前記重鎖可変領域が、以下を含む、実施形態1~4又は99のいずれか一つに記載のCXCR2抗体:
カバット位置5に対応する位置にGln若しくはVal、
カバット位置9に対応する位置にPro若しくはAla、
カバット位置11に対応する位置にLeu若しくはVal、
カバット位置12に対応する位置にVal若しくはLys、
カバット位置20に対応する位置にIle若しくはVal、
カバット位置38に対応する位置にLys若しくはArg、
カバット位置40に対応する位置にArg若しくはAla、
カバット位置43に対応する位置にLys若しくはGln、
カバット位置44に対応する位置にLys若しくはArg、
カバット位置75に対応する位置にSer若しくはAla、
カバット位置81に対応する位置にGln若しくはGlu、
カバット位置83に対応する位置にThr若しくはArg、及び/又は
カバット位置87に対応する位置にSer若しくはThr。
実施形態11: 前記軽鎖可変領域が、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号31及び配列番号57の配列を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態12: 前記重鎖可変領域が、配列番号8、配列番号18、配列番号28、配列番号32又は配列番号56の配列を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態13: 前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載のFR L1、配列番号36に記載のFR L2、配列番号37に記載のFR L3及び配列番号39に記載のFR L4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態14: 前記軽鎖可変領域が、配列番号44に記載のFR L1、配列番号59に記載のFR L2、配列番号46に記載のFR L3及び配列番号47に記載のFR L4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態15: 前記軽鎖可変領域が、配列番号34に記載のFR L1、配列番号36に記載のFR L2、配列番号37に記載のFR L3及び配列番号39に記載のFR L4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態16: 前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載のFR L1、配列番号36に記載のFR L2、配列番号38に記載のFR L3及び配列番号39に記載のFR L4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態17: 前記軽鎖可変領域が、配列番号44に記載のFR L1、配列番号45に記載のFR L2、配列番号46に記載のFR L3及び配列番号47に記載のFR L4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態18: 前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載のFR H1、配列番号41に記載のFR H2、配列番号42に記載のFR H3及び配列番号43に記載のFR H4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態19: 前記重鎖可変領域が、配列番号48に記載のFR H1、配列番号49に記載のFR H2、配列番号50に記載のFR H3及び配列番号51に記載のFR H4を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態20: IgGである、実施形態1~19のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態21: IgG4である、実施形態1~20のいずれか一つに記載のCXCR2抗体。
実施形態22: 実施形態1~21のいずれか一つに記載のCXCR2抗体をコードする単離された核酸。
実施形態23: 治療有効量の実施形態1~21のいずれか一つに記載のCXCR2抗体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
実施形態24: 実施形態1~21のいずれか一つに記載のCXCR2抗体を含む細胞。
実施形態25: 炎症性疾患又はがんの治療を必要とする対象の炎症性疾患又はがんを治療する方法であって、対象に治療有効量の実施形態1~21のいずれか一つに記載のCXCR2抗体を投与することを含み、それにより、前記対象の前記炎症性疾患又はがんを治療する方法。