特許法第30条第2項適用 2021年3月10日にウェブページで本願発明の機能に関連する内容を公開(URL:https://txpmedical.jp/pharma/#clinical-trial)
特許法第30条第2項適用 2021年2月18日、2月26日、3月5日、3月24日、3月25日、3月30日、4月9日、5月20日に、それぞれ個別の会社に本願発明の機能に関連する内容を説明
製薬会社が治験を行うにあたって公表するガイドラインにおける基準では,一般的に,「臨床診断名」,「年齢」,「合併疾患(既往歴)の有無」,「常用薬の有無」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」,「疾患の重要度(スコアリング)」,「画像所見」などが含まれている。これらの情報の多くは患者のカルテに記載されていることから,治験担当医師が治験対象の候補となる患者を選定する場合には,患者のカルテの情報を参考にする。なお,治験担当医師は,患者の担当医師ではないことも多い。
治験の基準の中でももっとも重要な基準の一つが「臨床診断名」である。しかし,カルテには臨床診断名(臨床病名)が記載されていない場合も多い。またカルテに記載されている場合であっても,臨床診断名がどこに記載されているかがすぐには分からない場合も多い。
これは,カルテには,臨床診断名を記載する義務がないことに起因する。カルテは,患者の属性情報などの定型的な情報を表示,記録する欄と,医師が患者を診察するにあたって聴取した情報や自らの所見などを表示,記録する自由記載欄と,患者に対する処置や検査,処方する薬剤などの指示内容の情報を表示,記録するオーダリングの欄とに大別される。
カルテの自由記載欄は,当該医師がフリーテキスト形式,すなわち,医師が患者から聴取した情報や所見などを自由に制約なくテキスト入力する表示,記録欄であるから,そこに医師が臨床診断名を記載することもあるが,記載しないこともある。そして,臨床診断名を記載する場合であっても,医師が自由記載欄のどこに臨床診断名を記載するかも定められておらず,各医師の自由である。このように,自由記載欄はいわば医師の備忘録であるから,自らが理解できる程度の記載がされていることも多く,臨床診断名も正確な表現がされているとは限らず,適宜,略語などで入力されていることもある。
そのため,ある患者が治験の基準における臨床診断名を有する患者であるか否かは,自らが担当する患者であればすぐに特定できるが,当該患者を担当している医師ではない治験担当医師がカルテを閲覧した場合には,カルテの自由記載欄に記載された臨床診断名を探し出し,あるいはカルテの自由記載欄に記載された情報を読み解いて臨床診断名を推測する,という作業を行わなければならない。しかし,多忙な治験担当医師にとってかかる作業を行うのは負担が重い。
また,カルテとして電子カルテが導入されている医療機関も多いことから,電子カルテと製薬会社のガイドラインにおける治験の基準をマッチングすることで,対象の疾患名を検索することが考えられる。しかし,従来の電子カルテでは,電子カルテの自由記載欄に記載されたテキスト情報が単に記憶されているだけであるから,治験の基準における臨床診断名を検索キーに,電子カルテから対応する疾患名を検索,マッチングをしようとしても,それが当該患者の現在の臨床診断名であるか,既往歴としての臨床診断名であるかなどの区別をすることもできない。
そのため,この場合であっても治験担当医師は,電子カルテの情報を読み解くなどの必要性が生じてしまう。
仮に,マッチングをすることを前提に,患者の臨床診断名,症状,常用薬などを定型的な文言で電子カルテに記入することを医師に求めることは,医師にとって負担が大きい。とくに救急外来のように一分一秒を争う医師の場合には,そのような入力の負担は極めて大きいものである。また,医師は自らのスタイルで電子カルテに記入をしたいという要望を持っているため,そこに定型的な文言,定型的な文章で入力を求めることも医師の心理的な負担にもなる。
また,電子カルテにおけるオーダリングの欄には,保険請求を行うためのレセプトの情報が記載されており,レセプトには患者に対して付された診断名が記載されている。しかし,レセプトに記載されている診断名は,保険請求を行うために便宜的に付された診断名(保険診断名,保険病名)であって,患者の実際の疾患を医師が判断した臨床診断名と必ずしも一致するものではない。そのため,レセプトを参考にしただけでは,その患者の実際の疾患(臨床診断名)を必ずしも判断することができない。
さらに,臨床診断名に基づいて治験対象者の候補を選定する場合,患者に確定した臨床診断名が付されるまでは,治験対象の候補として選定することはできない。そのため,急性期疾患に対する新薬のための治験対象者の候補の選定には適用できない。
たとえば,麻痺や痺れ,四肢脱力などの症状を訴える患者が救急車で救急外来に搬送されてきた場合,その患者に対して確定した臨床診断名,たとえば脳梗塞が決定するのは,医療機関に搬送されてから数時間後である。それまでは当該患者に確定した臨床診断名は付されていない。一方,脳梗塞などの急性期疾患の新薬の治験対象者の候補を選定したい場合には,搬送後,すぐに当該患者が治験対象者の候補となり得るかを選定する必要があるが,従来のシステムではそれに対応することができない。
そのため,急性期疾患の新薬の治験対象者の候補の選定は,救急外来の医師が自発的に治験担当医師に連絡を取ることで治験担当医師が候補者の患者の存在を知ることができるが,救急外来の医師にとってはその負担も大きいものである。
本発明者は,上記課題に鑑み,治験対象の候補となる患者の同定を支援する情報処理システムを発明した。
第1の発明は,治験対象の候補となる患者の選定を支援する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,所定の画面に入力されたテキスト情報を構造化する構造化処理部と,前記入力されたテキスト情報を構造化した情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部と,を有しており,前記候補処理部は,前記治験の基準の情報のうち少なくとも臨床診断名を除いた,治験の基準の一部の情報を用いて,治験対象の候補となる患者を同定し,前記同定した患者のうち,その患者の臨床診断名に,前記治験の基準の情報における臨床診断名以外の臨床診断名が含まれている患者を前記候補から除外することで,前記治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理システムである。
電子カルテの自由記載欄は,医師が自由にテキスト入力を行う入力欄であるから,臨床診断名や症状等の表記の揺らぎなどがある。そのため,電子カルテの自由記載欄に入力された情報と治験の基準の情報とをマッチングしただけでは,適切に治験対象の候補となる患者を同定することができない。そこで,本発明のように,電子カルテの自由記載欄や入力支援処理部の入力画面などの画面に入力されたテキスト情報を構造化することで,臨床診断名なのか既往症なのかといったように,疾患の属性の相違も含めて適切に判定して,治験対象の候補となる患者を同定することができる。また,入力の際には,入力方法を変更しないので,医師によるテキスト情報の入力の自由度を損なうこともない。
治験対象の候補となる患者を選定する場合,通常は,新薬が適用対象とする臨床診断名が確定して付された患者から選定される。そのため,確定した臨床診断名を用いて治験対象の候補となる患者が選定され,確定した臨床診断名が付されていない患者は選定されない。しかし,急性期疾患の場合には,確定した臨床診断名が付される前に,治験として新薬を投与したい場合もある。そこでこれらの発明を用いることで,確定した臨床診断名が付される前に,適切に治験対象の候補となる患者を選定することができる。
上述の発明において,前記情報処理システムは,前記候補処理部で同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補となる患者であることを示す出力を行う通知処理部,を有する情報処理システムのように構成することができる。
第3の発明は,治験対象の候補となる患者の選定を支援する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,所定の画面に入力された患者の疾患についてのテキスト情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部と,前記同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補であることを示す出力を行う通知処理部と,を有しており,前記候補処理部は,前記治験の基準の情報のうち少なくとも臨床診断名を除いた,治験の基準の一部の情報を用いて,治験対象の候補となる患者を同定し,前記同定した患者のうち,その患者の臨床診断名に,前記治験の基準の情報における臨床診断名以外の臨床診断名が含まれている患者を前記候補から除外することで,前記治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理システムである。
これらの発明のように,治験対象の候補となる患者を同定した場合には,所定の画面で患者の情報を表示する場合に,治験対象の候補であることを示す出力を行うことが好ましい。これによって,診察を行う担当医師が,当該患者が治験対象となったことを認識することができる。
治験対象の候補となる患者を選定する場合,通常は,新薬が適用対象とする臨床診断名が確定して付された患者から選定される。そのため,確定した臨床診断名を用いて治験対象の候補となる患者が選定され,確定した臨床診断名が付されていない患者は選定されない。しかし,急性期疾患の場合には,確定した臨床診断名が付される前に,治験として新薬を投与したい場合もある。そこでこれらの発明を用いることで,確定した臨床診断名が付される前に,適切に治験対象の候補となる患者を選定することができる。
上述の発明において,前記通知処理部は,前記候補処理部で同定した患者の情報を表示する画面に,前記治験に関連する情報を表示させる,情報処理システムのように構成することができる。
通知処理部は治験に関連する情報を表示させてもよい。これによって,たとえば当該患者を診察した医師が,治験に関し疑問等が生じた場合に,治験コーディネーターや治験担当医師などにすぐに連絡を取ることができる。
上述の発明において,前記通知処理部は,前記候補処理部で同定した患者の情報を表示する画面に,前記治験の基準とその基準を充足しているかの入力欄とを含む表示を行い,前記入力欄への入力情報と前記治験対象の候補となる患者の情報とを所定の者に通知をする,情報処理システムのように構成することができる。
治験対象の候補となる患者を自動的に選定した場合,その選定が誤りである可能性はある。そのため,本発明のように,治験の基準を充足しているかの入力欄を含む表示を行うことで,医師による確認を行うことができ,その精度を向上させることができる。また,入力欄への入力後に,治験担当医師などの所定の者への通知を行うことで,患者の選定の精度を向上させることができる。
上述の発明において,前記通知処理部は,前記候補処理部で同定したことによる治験対象の候補であることを示す出力と,前記入力欄への入力が行われた後の治験対象の候補であることを示す出力とで,異なる出力とする,情報処理システムのように構成することができる。
本発明によって,自動的に選定した治験対象の候補となる患者であるのか,意思の確認が行われた治験対象の候補となる患者であるのかが,容易に識別可能となる。
上述の発明において,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されているか否かを判定し,前記患者に確定した臨床診断名が付されている場合には,前記治験の基準の情報のうち臨床診断名も用いて,治験対象の候補となる患者を同定し,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,前記治験の基準の情報のうち少なくとも臨床診断名を除いた,治験の基準の一部の情報を用いて,治験対象の候補となる患者を同定し,前記同定した患者のうち,その患者の臨床診断名に,前記治験の基準の情報における臨床診断名以外の臨床診断名が含まれている患者を前記候補から除外することで,前記治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理システムのように構成することができる。
治験対象の候補となる患者を選定する場合,通常は,新薬が適用対象とする臨床診断名が確定して付された患者から選定される。そのため,確定した臨床診断名を用いて治験対象の候補となる患者が選定され,確定した臨床診断名が付されていない患者は選定されない。しかし,急性期疾患の場合には,確定した臨床診断名が付される前に,治験として新薬を投与したい場合もある。そこでこれらの発明を用いることで,確定した臨床診断名が付される前に,適切に治験対象の候補となる患者を選定することができる。
第8の発明は,治験対象の候補となる患者の選定を支援する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,所定の画面に入力されたテキスト情報を構造化する構造化処理部と,前記入力されたテキスト情報を構造化した情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部と,を有しており,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状と前記臨床診断名に対応する疾患関連症状を用いて治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理システムである。
第9の発明は,治験対象の候補となる患者の選定を支援する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,所定の画面に入力された患者の疾患についてのテキスト情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部と,前記同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補であることを示す出力を行う通知処理部と,を有しており,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状と前記臨床診断名に対応する疾患関連症状を用いて治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理システムである。
上述の発明において,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状と前記臨床診断名に対応する疾患関連症状とを用いて,前記患者の臨床診断名の確度を推定し,それが所定の条件を充足している場合には,前記患者が治験の基準における臨床診断名を充足していると判定する,情報処理システムのように構成することができる。
第11の発明は,治験対象の候補となる患者の選定を支援する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,所定の画面に入力されたテキスト情報を構造化する構造化処理部と,前記入力されたテキスト情報を構造化した情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部と,を有しており,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状を,所定の深層学習または機械学習の学習モデルに入力値として入力することで,前記患者の臨床診断名の確度を出力させ,前記出力された臨床診断名の確度が所定の条件を充足している場合には,前記患者が治験の基準における臨床診断名を充足していると判定する,情報処理システムである。
第12の発明は,治験対象の候補となる患者の選定を支援する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,所定の画面に入力された患者の疾患についてのテキスト情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部と,前記同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補であることを示す出力を行う通知処理部と,を有しており,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状を,所定の深層学習または機械学習の学習モデルに入力値として入力することで,前記患者の臨床診断名の確度を出力させ,前記出力された臨床診断名の確度が所定の条件を充足している場合には,前記患者が治験の基準における臨床診断名を充足していると判定する,情報処理システムである。
第8の発明および第11の発明では,電子カルテの自由記載欄は,医師が自由にテキスト入力を行う入力欄であるから,臨床診断名や症状等の表記の揺らぎなどがある。そのため,電子カルテの自由記載欄に入力された情報と治験の基準の情報とをマッチングしただけでは,適切に治験対象の候補となる患者を同定することができない。そこで,本発明のように,電子カルテの自由記載欄や入力支援処理部の入力画面などの画面に入力されたテキスト情報を構造化することで,臨床診断名なのか既往症なのかといったように,疾患の属性の相違も含めて適切に判定して,治験対象の候補となる患者を同定することができる。また,入力の際には,入力方法を変更しないので,医師によるテキスト情報の入力の自由度を損なうこともない。
また第9の発明および第12の発明では,治験対象の候補となる患者を同定した場合には,所定の画面で患者の情報を表示する場合に,治験対象の候補であることを示す出力を行うことが好ましい。これによって,診察を行う担当医師が,当該患者が治験対象となったことを認識することができる。
上述の各発明では,患者に確定した臨床診断名が付される前に,これらの発明を用いて,治験対象の候補となる患者を同定することができる。
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,所定の画面に入力されたテキスト情報を構造化する構造化処理部,前記入力されたテキスト情報を構造化した情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記候補処理部は,前記治験の基準の情報のうち少なくとも臨床診断名を除いた,治験の基準の一部の情報を用いて,治験対象の候補となる患者を同定し,前記同定した患者のうち,その患者の臨床診断名に,前記治験の基準の情報における臨床診断名以外の臨床診断名が含まれている患者を前記候補から除外することで,前記治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理プログラムである。
第3の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,所定の画面に入力された患者の疾患についてのテキスト情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部,前記同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補であることを示す出力を行う通知処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記候補処理部は,前記治験の基準の情報のうち少なくとも臨床診断名を除いた,治験の基準の一部の情報を用いて,治験対象の候補となる患者を同定し,前記同定した患者のうち,その患者の臨床診断名に,前記治験の基準の情報における臨床診断名以外の臨床診断名が含まれている患者を前記候補から除外することで,前記治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理プログラムである。
第8の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,所定の画面に入力されたテキスト情報を構造化する構造化処理部,前記入力されたテキスト情報を構造化した情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状と前記臨床診断名に対応する疾患関連症状を用いて治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理プログラムである。
第9の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,所定の画面に入力された患者の疾患についてのテキスト情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部,前記同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補であることを示す出力を行う通知処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状と前記臨床診断名に対応する疾患関連症状を用いて治験対象の候補となる患者を同定する,情報処理プログラムである。
第11の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,所定の画面に入力されたテキスト情報を構造化する構造化処理部,前記入力されたテキスト情報を構造化した情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状を,所定の深層学習または機械学習の学習モデルに入力値として入力することで,前記患者の臨床診断名の確度を出力させ,前記出力された臨床診断名の確度が所定の条件を充足している場合には,前記患者が治験の基準における臨床診断名を充足していると判定する,情報処理プログラムである。
第12の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,所定の画面に入力された患者の疾患についてのテキスト情報と,治験の基準の情報とを用いて治験対象の候補となる患者を同定する候補処理部,前記同定した患者の情報を表示する画面に,治験対象の候補であることを示す出力を行う通知処理部,として機能させる情報処理プログラムであって,前記候補処理部は,前記患者に確定した臨床診断名が付されていない場合には,少なくとも患者の症状を,所定の深層学習または機械学習の学習モデルに入力値として入力することで,前記患者の臨床診断名の確度を出力させ,前記出力された臨床診断名の確度が所定の条件を充足している場合には,前記患者が治験の基準における臨床診断名を充足していると判定する,情報処理プログラムである。
本発明の情報処理システムでは,所定の入力画面に記載された臨床診断名などの情報を構造化して記憶し,あるいは表記揺れを吸収しているので,医師による電子カルテの記入の自由度を妨げることなく,現在の臨床診断名に応じた適切な治験対象の候補となる患者の選定を行うことができる。また,患者に確定した臨床診断名が付されていない場合であっても治験対象の候補として選定できるので,とくに急性期疾患の新薬に対する治験で効果を発揮することができる。
本発明の情報処理システム1の全体の処理機能の一例を図1のブロック図に示す。また本発明の情報処理システム1を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を図2に示す。なお,以下の説明では医療従事者が医師の場合であることを例に説明するが,歯科医師などの他の医療従事者の場合であっても同様に実現することができる。
本発明の情報処理システム1は,本発明の処理を実行するコンピュータ(スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末を含む)であり,主に,医療機関や研究機関(大学,研究所など)などで利用されるコンピュータシステムであることが好ましいが,それに限定するものではない。
情報処理システム1で用いるコンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイ(画面)などの表示装置72と,キーボードやポインティングデバイス(マウスやテンキーなど)などの入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報をインターネットやLANなどのネットワークを介して送受信する通信装置74とを有している。コンピュータ上で実現する各機能(各手段)は,その処理を実行する手段(プログラムやモジュールなど)が演算装置70に読み込まれることでその処理が実行される。各機能は,記憶装置71に記憶した情報をその処理において使用する場合には,該当する情報を当該記憶装置71から読み出し,読み出した情報を適宜,演算装置70における処理に用いる。また,図1の情報処理システム1は一台のコンピュータで実現される場合を示したが,複数のコンピュータに,その機能が分散配置されていてもよい。コンピュータには,サーバやパーソナルコンピュータ,ワークステーションなど各種の情報処理装置が含まれる。また,いわゆるクラウド形式であってもよい。
コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には,表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
本発明における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。また,本発明で説明する処理は一例に過ぎず,その処理プロセスを適宜,変更することが可能である。
また,本発明の情報処理システム1は,医療機関や研究機関などで利用するほかのコンピュータシステム,たとえば電子カルテシステムなどに搭載され,その一部の機能として実現してもよい。
情報処理システム1は,対象情報記憶部20と構造化処理部21と候補処理部22と通知処理部23とを有する。
対象情報記憶部20は,後述する候補処理部22における処理に用いる情報を記憶する。対象情報記憶部20には,たとえば電子カルテ情報記憶部201,検査情報記憶部202,治験関連情報記憶部203が含まれていてよいが,それらに限定するものではない。
電子カルテ情報記憶部201は,患者の電子カルテの情報を記憶する。好ましくは患者の属性(氏名,年齢,性別などの患者個人の情報)のほか,バイタルに関する情報,電子カルテの自由記載欄に関する情報,疾患の重症度(重症度をスコアリングした情報)などの各種の情報を記憶している。バイタルに関する情報としては,たとえば拡張期血圧,収縮期血圧,体温,脈拍,呼吸数,SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)などが一例としてあげられるが,それらに限定されるものではない。また,患者の属性としては,氏名,年齢,性別などが一例としてあげられる。また,電子カルテの情報としては,さらに,たとえばJTAS(Japan Triage and Acuity Scale:緊急度)を記憶していてもよい。
電子カルテの自由記載欄には医療従事者が患者から聞き取った情報,診察した情報が,たとえばテキスト情報などで自由入力される。
また,電子カルテ情報記憶部201には,看護師が記録する看護記録の情報を記憶していてもよい。電子カルテ情報記憶部201には,後述する構造化処理部21において電子カルテの医師の自由記載欄を構造化した情報を,当該患者の電子カルテの情報,好ましくは自由記載欄の情報に対応づけて記憶していてもよい。
検査情報記憶部202は,患者の各種検査の情報を記憶する。検査情報としては,たとえば血液検査,心電図検査,超音波検査,カテーテル検査,遺伝子検査などの各種の検査結果が含まれる。またレントゲン検査,CT検査,MRI検査などによる検査結果の画像情報が記憶されていてもよい。さらに,聴診器で集音した音情報,臓器などの音情報が記憶されていてもよい。加えて,遺伝子検査における遺伝子情報が記憶されていてもよい。
治験関連情報記憶部203は,新薬の治験のための治験対象者を選定するためのガイドラインの情報が記憶されている。たとえば,新薬の種別,治験の種別などに対応づけて,どのような患者を選定するかを示す基準が記憶されている。この基準としては,たとえば「臨床診断名」,「年齢」,「合併疾患(既往歴の有無」,「常備薬の有無」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」,「疾患の重症度」,「画像所見」などが設定されているが,これに限定したものではなく,ほかの基準が設定されていてもよい。さらに,治験関連情報記憶部203には,治験の基準のほか,関係者の連絡先などの情報のほか,治験の基準を充足しているかを示すチェックリストなどが含まれていてよい。関係者としては治験コーディネーターや治験担当医師などが該当するが,それに限定する者ではない。
対象情報記憶部20に記憶される情報としては,電子カルテ情報記憶部201に記憶されている医療機関で管理している電子カルテの情報,検査情報記憶部202に記憶されている検査の情報,治験関連情報記憶部203に記憶されている治験に関する情報のほか,当該医療機関の外部(自治体・企業・公的機関・個人等が利用しているサービスシステムやアプリケーションシステムなど)から取得した情報を記憶していてもよい。たとえば,地域医療連携ネットワークを介して,地域の他の医療機関や自治体,企業などから当該患者の電子カルテの情報や検査情報,健康診査情報,請求(レセプト)情報を取得して記憶してもよい。また,医療機関や薬局ごとに記録している個人健康医療介護情報を,他の医療機関や薬局,あるいは患者自身のコンピュータや外部アプリケーションから取得をしてもよい。さらに,救急隊が利用するコンピュータシステムから,救急搬送中の患者のバイタルの情報などを取得して記憶してもよい。外部のコンピュータから情報を取得する場合には,図示しない情報取得部を介して対象情報記憶部20に記憶する。
構造化処理部21は,対象情報記憶部20に記憶する情報のうち,構造化されていない情報を構造化する。とくに電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテの自由記載欄に記載されたテキスト情報を構造化する。
電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテに記録される情報としては,患者の属性情報のほかに大別して,「自由記載欄」の情報と「オーダリング」の情報とがある。「自由記載欄」の情報とは,医師が患者を診察した際の情報であって,一般的には患者から聴取した主訴,現病歴,既往歴,内服薬などのほか,臨床疾患(臨床診断名),所見,経過などの情報が含まれる。主訴とは患者による症状の訴えであり,現病歴とは,主訴がいつからどのように始まり,どのような経過をとってきたのか,などを示す情報であり,主訴に付随する情報である。既往歴とは患者の過去の病歴であり,内服薬は患者が日頃から服用している薬剤を示す情報である。また臨床疾患(臨床診断名)とは,医師が患者の病状に対して最適と想起して自由記載欄に記録した病名または患者の病名を正確に反映した病名である。所見とは,患者を診療した医師による見解を示す情報であり,経過とは患者に対してどのような実施処置や処方をしたかを示す情報である。
電子カルテに記録される「オーダリング」の情報とは,保険疾患(保険診断名,保険病名),医師が看護師や薬剤師などに対して行う,患者に対する処置や検査,処方する薬剤などの指示内容の情報であり,いわゆるレセプトの情報と同じ意義を有する情報である。この患者に対する処置や検査が実施処置であり,処方する薬剤の情報が実施処方である。そして保険疾患(保険診断名,保険病名)とは,保険診療を行うために,患者に対して便宜的に付した疾患である。保険疾患(保険診断名,保険病名)は,必ずしも臨床疾患(臨床診断名)とは一致しておらず,かけ離れていることも多い。そのため,保険疾患だけからではその患者の実際の疾患(臨床疾患)は,医師であっても正確に特定できないことが多い。
電子カルテには臨床的に重要な情報を含む「自由記載欄」の情報と,保険請求の観点から重要な「オーダリング」の情報とがあるが,「自由記載欄」の情報は医師の自由入力によって記録されるため,その情報は構造化されていない。たとえばテキスト入力によって,自由な文章などが自由な表現形態などによって入力される。
構造化処理部21は,対象情報記憶部20に記憶する情報,たとえば電子カルテの「自由記載欄」に記録されたテキスト情報について,係り受け解析,文脈解析などの自然言語解析処理や,辞書情報(図示せず)などを参照して,自由入力されたテキスト情報を構造化し,構造化情報とする。構造化情報は,当該患者の電子カルテの自由記載欄に対応づけて電子カルテ情報記憶部201に記憶させてもよい。構造化処理部21におけるテキスト情報の構造化処理にはさまざまな技術を用いることができ,その限定はない。
また構造化処理部21は,辞書情報を参照して,表記揺らぎ処理を実行してもよい。表記揺らぎ処理とは,同一の事象に対して複数の表記がある場合,それを標準的な表記に統一する処理である。
自然言語解析処理に用いるコンピュータシステムとしては,たとえばマイクロソフト社が提供するMircosoft AzureのLUIS(Language Understanding)を用いることができるが,それに限定するものではない。
テキスト情報の構造化とは,自由入力されたテキスト情報に基づいて,あらかじめ定められた情報種別ごとにその内容を標準化された形にすることである。たとえばテーブル形式で保持される。テキスト情報を構造化する一つの処理としては,次のような処理がある。
電子カルテ情報記憶部201の電子カルテの「自由記載欄」に記録されたテキスト情報に基づいて,文,文節,段落などの所定のテキスト情報の単位に付与されたタグを,辞書情報の参照や,文脈解析などの自然言語解析処理を用いて,標準化タグ付きのテキスト情報(情報種別ごとのテキスト情報の分類)に分割をする。それぞれの情報種別で抽出すべき対象情報が,医学用語の辞書を記憶した医学用語辞書で定められているので,それぞれの情報種別のテキスト情報において,辞書情報の医学用語辞書を参照して,あらかじめ定められた抽出すべき対象情報を抽出する。そして,抽出した対象情報の前後所定範囲内,たとえば前後15文字以内に「関連性の高い情報」(以下,「関連情報」という)があるか探索し,ある場合にはそれらを後述する症状や病名に対する陽性陰性表現や付加情報(備考欄)として抽出し,対応づけて構造化情報として標準化したテーブルに格納する。
たとえば,情報種別として「現病歴」,「既往歴」,「内服薬」,「身体所見」,「来院後経過」などがあり,それらに対応する対象情報として,情報種別「現病歴」には「症状」,情報種別「既往歴」には既往歴としての「病名」,情報種別「内服薬」には「薬剤名」,情報種別「来院後経過」には診断名としての「病名」などがある。そして情報種別の対象情報ごとに,どのような関連情報を抽出するかをあらかじめ対応づけて記憶している。なお,関連情報については任意に設定することができ,たとえば上述のLUISを用いて,自動的に,情報種別の対象情報ごとに,関連情報を抽出してもよい。そして,情報種別ごとにテーブルが生成され,このテーブルには,対象情報と関連情報とが格納される。たとえば情報種別「現病歴」のテーブルには,「症状」とそれに対する陽性陰性表現が対応づけて格納される。どのような情報種別を設けるか,その情報種別に対して対象情報,関連情報をどのように設定するかは,任意に設定することができるが,一般的な医師,看護師の記録ではある程度統一された情報種別セットが存在する。
構造化処理部21において以上のような処理を行うことで,自由記載欄などに入力されたテキスト情報について,構造化することができる。なお,自由記載欄を構造化する処理については上述の処理に限定するものではない。
構造化処理部21は,電子カルテ情報記憶部201の電子カルテの「自由記載欄」のテキスト情報において,辞書情報における医学用語辞書の医学用語の参照,辞書情報のタグパターンの辞書に記憶する情報種別を示すタグの参照,「自由記載欄」に入力されたテキスト情報に対する文脈解析などの自然言語解析処理によって情報種別があることを検出すると,その情報種別に対応するテーブル,たとえば情報種別「現病歴」のテーブル,情報種別「既往歴」のテーブル,情報種別「内服薬」のテーブル,情報種別「身体所見」のテーブル,情報種別「来院後経過」のテーブルがすでに生成されているか否かを判定する。そして,検出した情報種別に対応するテーブルが生成されていない場合には,そのテーブルを生成する。また情報種別のテキスト情報ごとに自然言語解析処理や,辞書情報における医学用語辞書を参照して対象情報を抽出し,対象情報に基づいて関連情報を探索し,抽出する。そして,生成した情報種別のテーブルに対象情報と関連情報とを振り分けて格納する。
一方,検出した情報種別に対応するテーブルがすでにある場合には,情報種別のテキスト情報ごとに自然言語解析処理や,辞書情報における医学用語辞書を参照して対象情報を抽出し,対象情報に基づいて関連情報を探索して抽出する。そして,検出した情報種別に対応するテーブルに,抽出した対象情報と関連情報とを振り分けて格納する。情報種別に対応するテーブルの有無は,情報種別とテーブルとの対応関係をあらかじめ設定しておき,その対応関係に基づいて,テーブルが生成されているか否かを判定することができる。
検出した対象情報や関連情報について,辞書情報を参照し,その対象情報や関連情報が症状名,病名,薬剤名を示す表現の有無を判定し,これらのいずれかである場合には,辞書情報で一致する文字列を特定し,検出した対象情報や関連情報を,辞書情報であらかじめ定めた標準的な表記や標準的なコードを追加または変更し,その表記を統一する処理を実行してもよい。
たとえば情報種別「現病歴」のテキスト情報に対して自然言語解析処理技術を用いて対象情報として「頭が痛い」を検出した場合,辞書情報を参照し,標準的な症状名として「頭痛」に変更するとともに,その陽性陰性表現として「+」であることを判定し,情報種別「現病歴」のテーブルに「頭痛」,「+」を対応づけて格納する。同様に,情報種別「内服薬」のテキスト情報に対して自然言語解析処理技術を用いて対象情報として「アスピリン」,「スタチン」を検出した場合,辞書情報を参照し,標準的な薬剤名として「バイアスピリン」,「スタチン」とし,またそれらのコード(薬効分類コード)を追加して,情報種別「内服薬」のテーブルに対応づけて格納する。
構造化処理部21は,上述のように「自由記載欄」に記録されたテキスト情報から抽出した各情報種別における対象情報や関連情報を標準的な表記に変更し,またコードを追加して,それぞれの情報種別のテーブルに振り分けて格納する。
たとえば電子カルテの自由記載欄に,図4(a)のようにテキスト情報が入力された場合には,構造化処理部21は,情報種別を示すタグとして「S:」で情報種別「現病歴」を,「内服:」で情報種別「内服薬」を,「O:」で情報種別「身体所見」を,「A/P:」で情報種別「来院後経過」を検出する。また,「心筋梗塞でカテーテル治療後。」のテキスト情報に対する文脈解析により,情報種別「既往歴」を検出する。そして検出した情報種別から次の情報種別までの間のテキスト情報を,最初に検出した情報種別のテキスト情報として切り出す(物理的に切り出すほか,処理対象として特定する場合も含む)。すなわち,「S:」の検出によって情報種別「現病歴」を検出し,「心筋梗塞でカテーテル治療後。」のテキスト情報に対する文脈解析により,情報種別「既往歴」を検出する。そして,情報種別「現病歴」と情報種別「既往歴」との間にあるテキスト情報を,情報種別「現病歴」に対応するテキスト情報として分割をする。情報種別ごとにテキスト情報を切り出した状態を模式的に示すのが図4(b)である。
なお,情報種別を示すタグについては,上述のほか,たとえば「現病歴」を「♯」で表記をするなど,任意の文字列,記号などを用いてもよい。
分割した情報種別「現病歴」に対応するテキスト情報から自然言語解析処理や辞書情報における医学用語辞書を参照して,対象情報を抽出する。対象情報は情報種別ごとに対応づけられているので,たとえば情報種別「現病歴」における対象情報「症状」を抽出する。この際に,具体的なテキスト情報として「症状」が含まれているか否かではなく,「症状」に相当する医学用語があるかを,辞書情報における医学用語辞書を参照して抽出する。そして抽出した対象情報「症状」から所定範囲内にある陽性陰性表現を抽出する。そして,抽出した「症状」に陽性陰性表現を対応づけてテーブルに格納する。
このように分割した情報種別ごとに対象情報を振り分けて,構造化情報としてテーブルに格納することで,図4(c)のように情報種別ごとのテーブルができる。
構造化処理部21における処理は,上述の処理に限定されるのではなく,さまざまな自然言語解析処理によって実現できる。たとえば,中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルを参照して機械学習を実行する深層学習(ディープラーニング)による自然言語解析処理を用いてもよい。この場合,学習モデルに対して,電子カルテ情報記憶部201の電子カルテの「自由記載欄」に記録されたテキスト情報を入力し,その出力値として構造化情報を出力してもよい。学習モデルとしては,電子カルテの「自由記載欄」のテキスト情報を入力値とし,それに対する構造化情報を正解情報として与えたものを用いることができる。
また深層学習や機械学習を用いたAI(人工知能)あるいはそれらを用いないAIにより自然言語解析処理を実行してもよい。またSVM(support vector machine)などの機械学習であってもよい。
上述の辞書情報は,症状名,病名,薬剤名などの表記の揺らぎを判定するための表記揺らぎ辞書,否定表現や曖昧表現などのパターンテーブルの辞書,電子カルテや看護記録などの情報処理システム1の目的に応じた,頻出する略語や特異的なタグパターンの辞書(たとえば「主訴:」,「A/P」など),医学用語などの医学用語辞書などを記憶する。医学用語辞書には,対象情報とする医学用語,対象情報とした医学用語に対応する関連情報を抽出する条件や表現,表記を記憶していてもよい。
とくに,構造化処理部21は,辞書情報における医学用語辞書を参照することで,構造化情報とする対象情報を抽出する。医学用語辞書は,標準的な医学用語を記憶する辞書であり,さらに,その周囲の関連性の高いテキスト情報を抽出するので,構造化して抽出される情報には,たとえば医療機関のスタッフ同士の情報共有目的での患者属性情報などの,明らかに非医学的情報記載が含まれないこととなる。
症状名,病名,薬剤名についての表記揺らぎ辞書としては,たとえば症状名,病名,薬剤名に対する標準表記,コード,表記パターンを記憶する。図5では,病名についての表記揺らぎ辞書の一例を示しており,標準病名,ICDコード(国際標準コード),病名変換コード(国内汎用カルテコード),表記パターンを対応づけて記憶している場合を示している。また,図6では,薬剤名についての表記揺らぎ辞書の一例を示しており,標準薬剤名,一般名,薬効分類コード,表記パターンを対応づけて記憶している場合を示している。
辞書情報は,上記に限定するものではなく,テキスト情報に基づいて構造化処理を実行するために必要な辞書を適宜備えればよい。
構造化処理部21で構造化した情報の一例を図7に示す。構造化された情報は,テーブル形式で記憶されていることが好ましいが,それに限定するものではない。またデータベースで記憶していてもよいし,それ以外の記憶形式であってもよい。図7(a)は標準症状名とその有無を示す構造化した情報のテーブルであり,図7(b)は標準化既往歴名とそれに対応する情報(備考)を示す構造化した情報のテーブルであり,図7(c)は標準化常用薬名とそれに対応する薬効分類コードを示す構造化した情報のテーブルであり,図7(d)は標準化診断名(臨床診断名)とそれに対応する情報(備考)を示す構造化した情報のテーブルである。
図7(a)では,当該患者の現在の標準化した症状(表記揺らぎを吸収した症状)とその有無などを示す情報を対応づけて記憶することで構造化しており,図7(b)は標準化した既往歴名(表記揺らぎを吸収した既往歴名)とそれに対する情報とを対応づけて記憶することで構造化しており,図7(c)は標準化した常用薬名(表記揺らぎを吸収した常用薬名)とそれを示すコードとを対応づけて記憶することで構造化している。また図7(d)は標準化した臨床診断名とそれに対する情報(疑いのある(未確定)の臨床診断名か確定した臨床診断名か)とを対応づけて記憶することで構造化している。
なお,上述の構造化処理部21における構造化処理では,情報種別として「主訴」が含まれていないが,情報種別「主訴」が含まれていてもよい。その場合,ほかの情報種別の場合の処理と同様,情報種別「主訴」に対応するタグ,たとえば「#」が設定されており,ほかの情報種別と同様の処理を実行することで,主訴に関するテキスト情報を構造化情報にすることができる。
候補処理部22は,治験関連情報記憶部203に記憶する治験の基準の情報を用いて,電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテ情報,検査情報記憶部202に記憶する検査情報を参照し,治験の基準を充足する患者を,治験対象者の候補として同定(選定)する。たとえば,治験関連情報記憶部203に記憶する基準の情報として,「臨床診断名」,「年齢」,「合併疾患(既往歴の有無)」,「常備薬の有無」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」,「疾患の重症度」,「画像所見」などを抽出し,それらの各基準に合致する患者を,電子カルテ情報,検査情報を参照することで同定する。
一例としては,治験関連情報記憶部203に記憶する基準の「臨床診断名」として「脳梗塞」,年齢として「60歳から85歳」,「合併疾患(既往歴の有無)」として「なし」,「常備薬の有無」として「なし」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」として「1以下」(自立で歩行可能),「疾患の重症度」として「NIHSSスコア(脳卒中重症度)8~22点」が設定されている場合,これらの各基準を充足する患者を,電子カルテ情報記憶部201の電子カルテ情報,検査情報記憶部202に記憶する検査情報を参照することで,治験対象の候補者として同定する。
通知処理部23は,候補処理部22で治験対象の候補者として患者を同定した場合,治験対象であることをその患者の電子カルテで表示する,あるいは治験担当医師に電子メールやメッセージなどで通知をする。同定した患者の電子カルテ上で通知を行う場合には,治験関連情報記憶部203に記憶する治験情報に関する情報,たとえば治験の基準,関係者の連絡先,問い合わせ先などを抽出し,表示をしてもよい。図8に,患者の電子カルテに治験対象の候補者として同定した通知を表示する場合の一例を示す。図8(a)は通常の電子カルテの画面100の一部であり,図8(b)は治験対象の候補者として同定した通知101を表示した場合の電子カルテの画面100の一部である。
つぎに,本発明の情報処理システム1の処理プロセスの一例を図3のフローチャートを用いて説明する。
医師は,所定の操作を行うことで,本発明の情報処理システム1を起動する。そして,患者に対して問診や所定のバイタル情報のチェックなどを行うことで取得した情報を,電子カルテの所定の入力欄,たとえば自由記載欄などに逐次,入力を行う(S100)。なお,検査情報については必要に応じて検査情報の入力欄に入力をしてもよい。
このように入力された情報は,逐次,電子カルテ情報記憶部201,検査情報記憶部202などに記憶される。なお情報の入力は,検査機器などから自動的に入力されてもよい。また電子カルテの自由記載欄,入力欄に対する入力は,音声などによって入力されてもよい。
構造化処理部21は,電子カルテの自由記載欄に入力されたテキスト情報に対して構造化処理を実行し(S110),構造化した情報にする。たとえば「主訴」として「頭痛」を構造化した情報として電子カルテ情報記憶部201に記憶させる。なお,構造化した情報,情報種別「主訴」に対応づけられた「頭痛」は,電子カルテ情報記憶部201に,逐次,記憶される。同様に,電子カルテの自由記載欄に入力されたテキスト情報を,構造化処理部21が,逐次,構造化処理を実行し,電子カルテ情報記憶部201に記憶させる。
候補処理部22は,所定のタイミングで,治験関連情報記憶部203に記憶する各治験の基準に合致する治験対象の候補者を同定する処理を実行する(S120)。たとえば,候補処理部22は,治験関連情報記憶部203に記憶する治験の基準の情報を用いて,電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテ情報,検査情報記憶部202に記憶する検査情報を参照し,治験の基準を充足する患者を,治験対象者の候補として同定する。
候補処理部22が治験対象の候補者を同定する処理は,定期的に行ってもよいし,たとえば電子カルテに新たな情報が記入された段階,当該患者の電子カルテのファイルを開いた,閉じた若しくは保存した段階など任意のタイミングでおこなってよい。
通知処理部23は,候補処理部22で同定した患者の電子カルテが開かれた場合,その患者の電子カルテの画面100に,治験対象の候補であることを表示するマーク101を表示する(図8(b))。なお,治験対象の候補であることの表示はマークに限らず,ポップアップウィンドウであってもよいし,所定の音を出力する,電子カルテの所定箇所の表示を変更するなど,治験対象の候補であることを示す如何なる出力であってもよい。
また,通知処理部23は電子カルテの画面100に表示を行うのではなく,治験担当医師に,治験対象の候補となる患者がいたことを示すメッセージを通知する,リスト化して出力するなどで通知をしてもよい。さらに,当該患者が治験対象の候補であることの表示が選択されると,治験関連情報記憶部203から治験に関する情報を抽出し,図9に示すようにポップアップウィンドウ102で表示をしてもよい。
また,図9に示すポップアップウィンドウ102などの表示では,治験対象の基準を表示し,その各基準にチェックボックスやテキストボックスなどの入力欄を設けておき,その入力欄に再度,医師がチェックを行ってもよい。そしてそのチェックが入力された後,所定の操作,たとえばボタン103が押下されることで,治験担当医師に通知が行われるようにしてもよい。つまり,通知処理部23は,最初に電子カルテに患者が治験対象の候補であることを表示し,そこで表示されたポップアップウィンドウ102などで,当該患者を担当する医師が,治験の基準を充足しているかをチェックボックス等から入力することで,再度,医師による確認を行い,「送信」等のボタン103を押下することで,治験担当医師に,治験対象の候補となる患者がいることを示す通知を送るようにしてもよい。この場合の電子カルテの画面の一例を図10に示す。
このようにポップアップウィンドウ102などで,治験の基準を充足しているかのチェックボックス等の入力欄を設け,医師による入力が行われた場合には,候補処理部22が自動的に同定したことで治験対象の候補となった患者であることを示す表示と,異なる表示などの出力を行うとよい。たとえば,表示の色を変更する,「医師チェック済」等の表示を行うなど,異なる出力を行うことで,自動的に選定された患者なのか,医師によるチェックも終了した患者なのかが容易に識別可能となる。
以上のような処理を実行することで,患者を診察した医師は,すぐに当該患者が治験対象となる患者であることを認識することができ,速やかな治験につなげることができる。また,本発明の情報処理システム1では,電子カルテの自由記載欄に入力された臨床診断名などを構造化して記憶し,また表記揺らぎを吸収しているので,医師による電子カルテの自由記載欄への入力の自由度を損なわずに,かつ適切に治験対象の候補となる患者を同定することができる。
実施例1では電子カルテの自由記載欄に入力されたテキスト情報を用いて処理を行う場合を説明したが,電子カルテへの入力支援を行う入力支援システム(後述の入力支援処理部24)を用いて処理を行うこともできる。この場合の情報処理システム1のシステム構成の一例を図11に示す。
この場合の情報処理システム1は,入力支援処理部24と入力情報記憶部204とを有する。入力支援処理部24は,テキスト入力を支援するシステムであって,入力支援処理部24でテキスト入力を受け付けると,その受け付けたテキスト情報を,たとえば電子カルテの自由記載欄,オーダリングの欄などに反映させる。すなわち,入力支援処理部24で入力を受け付けたテキスト情報を,電子カルテ情報記憶部201に記憶させる。ここで入力支援処理部24の入力画面で入力されたテキスト情報が電子カルテのどの欄に反映されるかは,あらかじめ入力支援処理部24の入力画面で入力欄を設けておき,その入力欄と,電子カルテの各欄とを対応させておくことで実現できる。また,入力支援処理部24の入力画面で入力されたテキスト情報の電子カルテへの反映は,自動的に行われてもよいし,たとえば当該入力画面に設けられたボタンが押下されることで,テキストデータとして出力され,それを電子カルテの自由記載欄などにカットアンドペーストすることで,手動で反映されることでもよい。
入力支援処理部24で入力を受け付けたテキスト情報を電子カルテ情報記憶部201に記憶させた後に,構造化処理部21で構造化処理を実行してもよいし,あるいは入力支援処理部24で入力を受け付けたテキスト情報に対して構造化処理部21で構造化処理を実行した後の構造化した情報(たとえば図7の各テーブルなど)を電子カルテ情報記憶部201に記憶させてもよい。また,入力支援処理部24で入力を受け付けたテキスト情報を電子カルテ情報記憶部201に記憶させるとともに,入力支援処理部24で入力を受け付けたテキスト情報に対して構造化処理部21で構造化処理を実行した後の構造化した情報(たとえば図7の各テーブルなど)を電子カルテ情報記憶部201に記憶させてもよい。
入力情報記憶部204は,入力支援処理部24で入力を受け付けたテキスト情報を記憶する。また,構造化処理部21で構造化処理を実行した後の構造化した情報を記憶してもよい。
本実施例では,電子カルテに直接,情報を入力するのではなく,入力支援処理部24の入力画面(図示せず)を介して入力されたテキスト情報が電子カルテに反映される場合である。そのため,入力支援処理部24の入力は,たとえば医師が入力するほか,医師などの医療従事者や救急隊員が利用するスマートフォンなどの可搬型通信端末に備えた入力支援処理部24から,電子カルテに反映させる場合であってもよい。
入力支援処理部24で用いる入力画面は,電子カルテと同様に,当該患者の属性情報,電子カルテの自由記載欄の情報,オーダリングの欄の情報などの一部または全部が入力可能,表示可能となっていてもよい。この入力画面に電子カルテの情報を表示する場合には,当該患者の電子カルテの情報を電子カルテ情報記憶部201から逐次,抽出し,表示すればよい。
また,入力支援処理部24で用いる入力画面で開いている患者が,治験対象の候補者であると候補処理部22で同定している場合には,通知処理部23は,当該入力画面に,治験対象の候補者であることを表示するマーク101を表示してもよい。この場合,当該患者が治験対象の候補であることの表示が選択されると,治験関連情報記憶部203から治験に関する情報を抽出し,図9に示すようなポップアップウィンドウ102を,当該入力支援処理部24で用いる入力画面で表示をしてもよい。
実施例1の場合と同様に,このポップアップウィンドウ102などの表示では,治験対象の基準を表示し,その各基準にチェックボックスやテキストボックスなどの入力欄を設けておき,その入力欄に再度,医師がチェックを行ってもよい。そして,図10と同様に,ポップアップウィンドウ102の入力欄でのチェックが入力された後,所定の操作,たとえばボタン103が押下されることで,治験担当医師に通知が行われるようにしてもよい。つまり,通知処理部23は,最初に入力支援処理部24で用いる入力画面に患者が治験対象の候補であることを表示し,そこで表示されたポップアップウィンドウ102などで,当該患者を担当する医師が,治験の基準を充足しているかをチェックボックス等から入力することで,再度,医師による確認を行い,「送信」等のボタン103を押下することで,治験担当医師に,治験対象の候補となる患者がいることを示す通知を送るようにしてもよい。
つぎに本実施例の場合の処理プロセスの一例を図12のフローチャートを用いて説明する。
医師は,所定の操作を行うことで,本発明の情報処理システム1を起動する。そして,入力支援処理部24は,電子カルテ情報記憶部201から入力を行おうとする患者の属性情報など,電子カルテの情報を抽出し,所定の入力画面に表示をする。患者に対して問診や所定のバイタル情報のチェックなどを行うことで取得した情報を,入力支援処理部24の入力画面の所定の入力欄に,逐次,入力を行う(S200)。入力画面は,患者の属性情報,自由記載欄,オーダリングの欄などに分かれていてもよいし,分かれていなくてもよい。
このように入力された情報は,入力情報記憶部204に記憶されるとともに,電子カルテ情報記憶部201,検査情報記憶部202などに記憶される(S210)。なお,実施例1と同様に,情報の入力は,検査機器などから自動的に入力されてもよい。また電子カルテの自由記載欄,入力欄に相当する入力欄に対する入力は,音声などによって入力されてもよい。
構造化処理部21は,入力情報記憶部204に記憶された情報または電子カルテ情報記憶部201に記憶された電子カルテの自由記載欄に入力されたテキスト情報に対して構造化処理を実行し(S220),構造化した情報にする。この処理は,実施例1と同様である。
候補処理部22は,所定のタイミングで,治験関連情報記憶部203に記憶する各治験の基準に合致する治験対象の候補者を同定する処理を実行する(S230)。たとえば,候補処理部22は,治験関連情報記憶部203に記憶する治験の基準の情報を用いて,電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテ情報,検査情報記憶部202に記憶する検査情報,入力情報記憶部204に記憶する入力画面に入力されたテキスト情報のうち一以上を参照し,治験の基準を充足する患者を,治験対象者の候補として同定する。
候補処理部22が治験対象の候補者を同定する処理は,定期的に行ってもよいし,たとえば電子カルテや入力支援処理部24で用いる入力画面に新たな情報が記入された段階,当該患者の電子カルテや入力支援処理部24で用いる入力画面のファイルを開いた,閉じた若しくは保存した段階など任意のタイミングでおこなってよい。
通知処理部23は,候補処理部22で同定した患者の電子カルテが開かれた場合,当該患者の入力支援処理部24の入力画面に,治験対象の候補であることを表示するマーク101を表示する。なお,治験対象の候補であることの表示はマークに限らず,ポップアップウィンドウであってもよいし,所定の音を出力する,入力画面の所定箇所の表示を変更するなど,治験対象の候補であることを示す如何なる出力であってもよいことは,実施例1と同様である。
また,通知処理部23は入力支援処理部24の入力画面に表示を行うのではなく,治験担当医師に,治験対象の候補となる患者がいたことを示すメッセージを通知する,リスト化して出力するなどで通知をしてもよい。さらに,当該患者が治験対象の候補であることの表示が選択されると,治験関連情報記憶部203から治験に関する情報を抽出し,図9に示すようにポップアップウィンドウ102で表示をしてもよい。
また,図9に示すポップアップウィンドウ102などの表示では,治験対象の基準を表示し,その各基準にチェックボックスやテキストボックスなどの入力欄を設けておき,その入力欄に再度,医師がチェックを行ってもよい。そしてそのチェックが入力された後,所定の操作,たとえばボタン103が押下されることで,治験担当医師に通知が行われるようにしてもよい。つまり,通知処理部23は,図10と同様に,最初に入力支援処理部24の入力画面に患者が治験対象の候補であることを表示し,そこで表示されたポップアップウィンドウ102などで,当該患者を担当する医師が,治験の基準を充足しているかをチェックボックス等から入力することで,再度,医師による確認を行い,「送信」等のボタン103を押下することで,治験担当医師に,治験対象の候補となる患者がいることを示す通知を送るようにしてもよい。
このようにポップアップウィンドウ102などで,治験の基準を充足しているかのチェックボックス等の入力欄を設け,医師による入力が行われた場合には,候補処理部22が自動的に同定したことで治験対象の候補となった患者であることを示す表示と,異なる表示などの出力を行うとよい。たとえば,表示の色を変更する,「医師チェック済」等の表示を行うなど,異なる出力を行うことで,自動的に選定された患者なのか,医師によるチェックも終了した患者なのかが容易に識別可能となる。
以上のような処理を実行することで,実施例1と同様の効果を得ることができる。
本実施例は実施例1および実施例2の変形例として,臨床診断名が付される前であっても治験対象の候補となる患者を同定する場合を説明する。この場合の候補処理部22の処理プロセスの一例を図13のフローチャートに示す。なお,S120,S230における候補処理部22における処理までの処理プロセスは実施例1,実施例2と同様である。
本実施例の場合,確定した臨床診断名が付される前であるので,電子カルテの自由記載欄には,確定した臨床診断名が記載されていない。そのため,電子カルテ情報記憶部201,入力情報記憶部204には,確定した臨床診断名が記憶されていない(図7(d)の標準化診断名(臨床診断名)が疑いの状態,若しくは標準化診断名が記憶されていない状態など,確定した標準化診断名が記憶されていない状態)。
本実施例における治験関連情報記憶部203では,治験の基準として,臨床診断名のほかに,当該疾患である場合に発生する可能性が高い症状,検査値などをあらかじめ記憶している。たとえば「臨床診断名」として「脳梗塞」の場合,「症状」として「麻痺」,「痺れ」,「意識障害」,「歩行困難」,「四肢脱力」のいずれか一つ以上が含まれていることを基準として記憶している。
なお,疾患とその疾患に発生する可能性が高い症状(疾患関連症状)は,治験の基準として治験関連情報記憶部203に記憶されていてもよいし,あらかじめ疾患と,疾患関連症状とを対応づけて記憶するテーブルを備えていてもよい。また,疾患ごとに対応する疾患関連症状を,深層学習や機械学習などにより特定して治験関連情報記憶部203や所定のテーブルに記憶しておいてもよい。
医師は,所定の操作を行うことで,本発明の情報処理システム1を起動する。そして,患者に対して問診や所定のバイタル情報のチェックなどを行うことで取得した情報を,電子カルテまたは入力支援処理部24で用いる入力画面の所定の入力欄,たとえば自由記載欄などに逐次,入力を行う(S300)。なお,検査情報については必要に応じて検査情報の入力欄に入力をしてもよい。
構造化処理部21は,電子カルテの自由記載欄または入力支援処理部24で用いる入力画面に入力されたテキスト情報に対して構造化処理を実行し(S310),構造化した情報にする。たとえば「主訴」として「頭痛」を構造化した情報として電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶させる。なお,構造化した情報,情報種別「主訴」に対応づけられた「頭痛」は,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に,逐次,記憶される。なお,構造化した情報,情報種別「主訴」に対応づけられた「頭痛」は,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に,逐次,記憶される。同様に,電子カルテの自由記載欄または入力支援処理部24で用いる入力画面に入力されたテキスト情報を,構造化処理部21が,逐次,構造化処理を実行し,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶させる。
そして,候補処理部22は,治験関連情報記憶部203に記憶する各治験の基準に合致する治験対象の候補者を同定する処理を実行する(S320)。
具体的には,まず,候補処理部22は,まず,治験関連情報記憶部203に記憶する治験の基準の情報を抽出する。また,当該患者の電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に確定した臨床診断名,たとえば図7(d)のテーブルなどに,確定した標準化診断名(臨床診断名)が記憶されているかを判定する(S300)。
もし,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されている場合には,抽出した治験の基準の情報における臨床診断名も用いて,電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテ情報,検査情報記憶部202に記憶する検査情報,入力情報記憶部204に記憶する情報のうち一以上を参照し,治験の基準を充足する患者を,治験対象者の候補として同定する(S310)。
一方,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていない場合には,抽出した治験の基準の情報のうち,臨床診断名を用いずに,電子カルテ情報記憶部201に記憶する電子カルテ情報,検査情報記憶部202に記憶する検査情報,入力情報記憶部204に記憶する情報のうち一以上を参照し,その条件を充足する患者を同定する(S320)。
そしてS320で同定した患者のうち,抽出した治験の基準における臨床診断名以外の臨床診断名が,電子カルテ情報記憶部201の電子カルテ情報または入力情報記憶部204の情報に記憶されている患者を除外し(S330),残りの患者を治験対象の候補者となる患者として同定し(S340),通知処理部23は,電子カルテの画面100または入力支援処理部24の入力画面に,治験対象の候補となる患者であることの表示101を表示する。
たとえば,ある治験の基準として,「臨床診断名」(確定した臨床診断名)として「脳梗塞(発症後12時間以内)」,「症状」として「麻痺」,「痺れ」,「意識障害」,「歩行困難」,四肢脱力」のうちいずれか一以上,年齢として「60歳から85歳」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」として「1以下」(自立で歩行可能),「疾患の重症度」として「NIHSSスコア(脳卒中重症度)8~22点」が設定されており,それが治験関連情報記憶部203に記憶されていたとする。なお,臨床診断名における発症後からの時間については,医師が診察で聴取し電子カルテの自由記載欄または入力支援処理部24の入力画面に記載され,標準症状名(図7(a)のテーブル)に記憶された発症時刻の情報や,搬送日時など,適宜の時刻情報から判定できる。
このとき救急外来に搬送されてきた25歳男性の患者に対して,電子カルテに,「症状」として「嘔吐」,「下痢」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」が「1以下」,「疾患の重症度」が「NIHSSスコア(脳卒中重症度)10点」などとして記憶されているとする。救急外来の医師が診察をしてその診察結果が記憶されていてもよいし,あるいは救急搬送前に診察をしていた医療機関の医師などの診察結果が記憶されていてもよい。この場合,救急外来に搬送されてきたばかりの患者であるので,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204には記憶されておらず,標準症状名等が記憶されているに過ぎない。そのため,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていないため(S300),候補処理部22は,治験関連情報記憶部203から抽出した治験の基準のうち,「臨床診断名」を用いずに,当該患者が治験の基準を充足するかを判定する(S320)。
当該患者は,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶した標準症状名のテーブル(図7(a))に,症状として,「麻痺」,「痺れ」,「意識障害」,「歩行困難」,四肢脱力」のいずれもが記載されていないので条件を充足していない。そのため,治験対象の候補者としては同定しない。そのため,図14に示すように,通知処理部23は,当該患者の電子カルテの画面100または入力支援処理部24の入力画面では,治験対象の候補者である表示を行わない。
一方,救急外来に搬送されてきた75歳男性の患者に対して,救急外来の医師や救急搬送前に診察をしていた医療機関の医師が電子カルテに,症状として,「麻痺」,「痺れ」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」が「1以下」,「疾患の重症度」が「NIHSSスコア(脳卒中重症度)10点」として記憶させたとする。この場合,救急外来に搬送されてきたばかりの患者であるので,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204には記憶されておらず,標準症状名等が記憶されているに過ぎない。そのため,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていないため(S300),候補処理部22は,治験関連情報記憶部203から抽出した治験の基準のうち,「臨床診断名」を用いずに,当該患者が治験の基準を充足するかを判定する(S320)。
当該患者は,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶した標準症状名のテーブル(図7(a))に,症状として,「麻痺」,「痺れ」が記憶されており,ほかの治験の基準も充足しているので,候補処理部22は,治験対象の候補者として同定する(S320)。そして,当該患者について,(確定若しくは疑いのある)臨床診断名として「脳梗塞」以外の臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていないので,当該患者は治験対象者として除外されず(S330),候補処理部22は,当該患者を治験対象の候補者として同定する(S340)。そのため,図15に示すように,通知処理部23は,当該患者の電子カルテの画面100または入力支援処理部24の入力画面では,治験対象の候補者である表示101を行う(S130)。
また,救急外来に搬送されてきた75歳男性の患者に対して,救急外来の医師や救急搬送前に診察をしていた医療機関の医師が診察をして電子カルテに,症状として,「麻痺」,「痺れ」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」が「1以下」,「疾患の重症度」が「NIHSSスコア(脳卒中重症度)10点」,「疑いのある臨床診断名」として「過換気症候群」を記憶させたとする。この場合,救急外来に搬送されてきたばかりの患者であるので,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204には記憶されておらず,疑いのある臨床診断名が記憶されているに過ぎない。そのため,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていないため(S300),候補処理部22は,治験関連情報記憶部203から抽出した治験の基準のうち,「臨床診断名」を用いずに,当該患者が治験の基準を充足するかを判定する(S320)。
当該患者は,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶した標準症状名のテーブル(図7(a))に,症状として,「麻痺」,「痺れ」が記憶されており,ほかの治験の基準も充足しているので,候補処理部22は,治験対象の候補者として同定する(S320)。そして,当該患者について,疑いのある臨床診断名として「脳梗塞」以外の臨床診断名(過換気症候群)が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されているので,当該患者は治験対象者として除外される(S330)。そのため,図16に示すように,当該患者の電子カルテの画面100または入力支援処理部24の入力画面では,治験対象の候補者である表示を行わない。
さらに,救急外来に搬送されてきた75歳男性の患者に対して,救急外来の医師が診察をして電子カルテに,症状として,「麻痺」,「痺れ」,「疾病罹患前のADL(元気さ)」が「1以下」,「疾患の重症度」が「NIHSSスコア(脳卒中重症度)10点」,「疑いのある臨床診断名」として「脳梗塞」を記憶させたとする。この場合,救急外来に搬送されてきたばかりの患者であるので,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204には記憶されておらず,疑いのある臨床診断名が記憶されているに過ぎない。そのため,確定した臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていないため(S300),候補処理部22は,治験関連情報記憶部203から抽出した治験の基準のうち,「臨床診断名」を用いずに,当該患者が治験の基準を充足するかを判定する(S320)。
当該患者は,電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶した標準症状名のテーブル(図7(a))に,症状として,「麻痺」,「痺れ」が記憶されており,ほかの治験の基準も充足しているので,候補処理部22は,治験対象の候補者として同定する(S320)。そして,当該患者について,疑いのある臨床診断名として「脳梗塞」以外の臨床診断名が電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶されていないので,当該患者は治験対象者として除外されない(S330)。そのため,図17に示すように,通知処理部23は,当該患者の電子カルテの画面100または入力支援処理部24の入力画面では,治験対象の候補者である表示101を行う(S130)。
なお,上述の候補処理部22では,図13のフローチャートの処理により,治験対象の候補となる患者を同定したが,それに限らず,疾患関連症状を用いて同定することもできる。たとえば,治験の基準における「臨床診断名」を用いずに,治験の基準における「臨床診断名」に対応する疾患関連症状などの臨床診断名以外の基準を用いて,当該患者が治験の基準を充足可能であるかの可能性を所定のアルゴリズムで数値化し,それが所定の閾値より高ければ,当該患者が他の治験の基準を充足するかを判定する処理によって同定をすることができる。
このアルゴリズムとしては,一例として,当該患者の電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶する構造化した情報のうち,標準化症状名とその有無を示す構造化した情報のテーブル(図7(a))と,当該治験の基準における「臨床診断名」に対応する疾患関連症状とを対比し,充足している比率を算出する。そして,それが所定の閾値より高ければ,当該患者が他の治験の基準を充足するかを判定することで同定をすることができる。
さらに候補処理部22における別の処理としては,深層学習や機械学習などを用いてもよい。中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルを参照して機械学習を実行する深層学習(ディープラーニング)による自然言語解析処理を用いる。この場合,学習モデルに対して,少なくとも患者の症状を入力し,その出力値として当該患者の臨床診断名の確度を出力してもよい。学習モデルとしては,疾患関連症状を入力値とし,それに対する臨床診断名を正解情報として与えたものを用いることができる。
また,入力値として当該患者の症状のみならず,当該患者の電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶する情報(好ましくは構造化した情報)や患者の属性情報などを入力し,その出力値として当該患者の臨床診断名の確度を出力してもよい。学習モデルとしては,疾患関連症状,さまざまな患者の電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に記憶する構造化した情報や属性情報などを入力値とし,それに対する臨床診断名を正解情報として与えたものを用いることができる。
このように候補処理部22は,当該患者の症状,その他の情報(好ましくは構造化した情報)から,当該患者の臨床診断名の確度を推定し,それが所定の閾値以上であるかを判定することで,治験の基準における臨床診断名を充足するかを推定する。これによって,当該患者の電子カルテ情報記憶部201または入力情報記憶部204に「確定した臨床診断名」が付されていない場合であっても処理を実行することができる。
治験の基準における臨床診断名以外の基準を充足するかは,上述と同様に判定すればよい。
候補処理部22が以上のような処理を行うことで,確定した臨床診断名が付されていない場合であっても,治験対象の候補者となる患者を同定することができる。そのため,急性期疾患に対する新薬の治験対象の候補者も容易に選定することができる。
なお,本明細書では,主として疾患が「脳梗塞」の場合を説明したが,ほかの疾患,たとえば脳出血,くも膜下出血,急性心筋梗塞,中等症から重症のCOVID-19,急性心不全,肺炎/COPD(慢性閉塞性肺疾患)急性憎悪,頭部外傷,脳挫傷,脊髄損傷,骨折などの外傷,アナフィラキシー,敗血症,DIC(播種性血管内凝固症候群),重症呼吸不全,ARDS(急性呼吸促迫症候群),急性膵炎などのICU疾患,喘息,発作などの救急外来で多い疾患などであっても同様に処理ができることは当然である。