糖尿病は、持続的な高血糖濃度(高血糖)を特徴とする疾患であり、この高血糖は複数の臓器系に悪影響を及ぼし、重症の場合は死に至る可能性がある。糖尿病は、ネコ、イヌ、ウマなどの伴侶動物でヒトと同様に観察されている。ヒト集団と同様にネコでの糖尿病は健康問題として増大しており、加齢と肥満の両方に関連している。
獣医学では、治療の目標には、動物の世話を担う飼い主またはヒトの看取りおよび必要性を考慮に入れる。目的とする動物の健康を増進するが飼い主に悪影響を与えて、例えば動物の健康に対する飼い主の不安を増大させる疾患治療の手法は、目的とする効力は低いが飼い主の不安を低減する手法よりも劣るように見做される。結果として、獣医の目標として、単純な病気治療とは異なる病気の管理が強調されている。
ヒトの糖尿病には2種の主要な形態があり、それらはインスリン依存性糖尿病(IDDM)としても知られる1型(T1DM)と、インスリン非依存性すなわち非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)としても知られる2型(T2DM)である。
1型糖尿病は、殆どの場合に、多くの生物で膵外分泌部内の膵島と呼ばれる群内に見られるβ細胞として知られる内分泌細胞の喪失により、体がインスリンを生成できないことに起因する。2型糖尿病はインスリン抵抗性の疾患であり、この場合は、膵島のβ細胞はインスリンを生成できるが、血液からのブドウ糖の取込みを担う組織が、生成されるインスリンに適切に反応しない。持続的なT2DMの過程では、β細胞はインスリンを産生する能力が低下する可能性があり、かつ/あるいは定常的に高インスリン産生というストレスに屈する可能性がある。このような状況では、正常な血糖値(正常血糖)を維持するために外部からのインスリンが必要になる場合がある。但しリスクとしてインスリンの過剰投与は低血糖症となり、昏睡や死亡に繋がる可能性がある。
インスリンは、肝臓、筋肉、脂肪組織によるブドウ糖の取込みおよび代謝を刺激して、血中のブドウ糖の濃度を低下させる。インスリンは、グリコーゲンとして肝臓および筋肉へ、またトリグリセリドとして脂肪組織へのブドウ糖の貯蔵を刺激する。インスリンはまた、活力のために筋肉中のブドウ糖の利用を促進する。従って、血中の不十分なインスリン濃度、あるいはインスリンに対する感受性の低下は、血中での過度に高い濃度へのブドウ糖の上昇を引き起こす。血中のブドウ糖濃度が、糖尿の腎閾値と呼ばれる特定の臨界濃度を超えると、ブドウ糖が尿中に出現し始める。糖尿病の信頼性の高い血液に基づく検査が登場する以前は、尿中のブドウ糖の出現がこの病気の最初の兆候とされることが多かった。
通常の条件下では、腎臓は、血液中のブドウ糖を含む低分子量化合物を糸球体濾液として体外に排出することを可能にする。腎臓はこの濾液から、ほぼ全ての水、ナトリウム、カリウム、塩化物イオン、ならびにビタミン、ブドウ糖、その他の糖、およびアミノ酸などの重要な代謝物を選択的に回収する。血漿のほぼ全ての内容物を放出して、続いてこれらの目的成分のみを選択的に再吸収するという活動的な価値の高いプロセスは、腎臓が多くの予測できない多様な毒素を排出する能力が根底となっている。ブドウ糖の再吸収のメカニズムは、血漿中のブドウ糖濃度が高くなり過ぎる際に恒常的な維持能力を提供する。血中のブドウ糖濃度が糖尿での腎臓の閾値を超えると、過剰なブドウ糖の一部分が尿中に放出され、血漿中ブドウ糖の上昇による悪影響をある程度緩和できる。
糖尿の程度の上昇につれて、尿排出量の増大が観察され、この現象の結果は、浸透圧利尿として知られている。濾液中のブドウ糖は、水の再吸収による尿の濃縮を浸透圧的に阻止し、水分の損失率を高くし、すなわち脱水症状を引き起こす。脱水症状は、喉の渇きと水の消費量の増大を引き起こす。ブドウ糖の活力の利用が不可能なことにより、食欲が増大するにも拘わらず、結局は体重減少に繋がる。過剰な水分摂取(多飲症)、食物摂取(多食症または過食症)および尿生成(多尿症)は、進行性糖尿病の一般的な症状である。
ブドウ糖の過剰血漿濃度の毒性的な影響には、細胞および組織の非酵素的(自発的)な糖鎖付加が含まれる。糖鎖付加生成物は、組織中に蓄積して、最終的には架橋タンパク質を形成する可能性があり、これは進行した糖化最終産物と呼ばれる。詳細なメカニズムは殆どの部分で不明ではあるが、糖尿病はいくつかの症状の発生見込みまたは重症度を高めて、痛みを伴う神経障害、循環障害、壊疽、切断、腎不全、失明、心筋梗塞、および脳卒中を引き起こす可能性があることはよく知られている。
全体的な血糖管理度の測定は、糖尿病管理計画の重要な要素となる。分析検査室での血清ブドウ糖の測定、または家庭用血糖計などの臨床現場検査装置を用いる血糖の測定は、血糖状態を評価するのに役立てることができる。血糖計は全血中のブドウ糖を測定するが、分析検査室では、典型的には血液の凝固から生じる液相である血清中のブドウ糖を測定する。個々の血清中ブドウ糖値または血中ブドウ糖値は、1日を通して大幅に変動する可能性があり、典型的には食事後に上昇し長時間の絶食後に低下する。このような1日の変動は、所定の治療介入に起因する血糖管理度を決定するための血清または血液の抜取検査の有用性を低下させる可能性がある。
ネコの糖尿病の管理度をより良く評価するために、典型的にはネコがその測定期間に亘って獣医の診療所に収容される入院による検討として、1日の過程に亘って複数の血液試料を採取することが一般的である。時間の関数として得られた血糖の特性評価は、血糖曲線として知られていて、多くの場合に、初期の診断を確定しあるいは管理計画の有効性を評価するために実施されている。
獣医の診療所内でのネコの拘束は、ネコにストレスを与える可能性があり、ストレスにより報告される結果の1つは高血糖症である。従って、診療所で得られる血糖曲線は、採血や測定精度に影響を与える技術的な制限により混乱することは殆ど無いが、ストレス下で放出される主要なホルモンであるコルチゾールの作用を反映する信頼性に乏しい高い値から構成され、ネコの毎日の血糖濃度の自然な変動過程ではない可能性がある。従って、診療所での測定値には、血糖管理の程度を過小評価する可能性について常に考慮する必要がある。
国際ネコ医学会(the International Society for Feline Medicine)が公表する指標(Sparkes et al., 2015; J Feline Med Surg 17:235を参照)によれば、血糖曲線の基準によって測定されるネコ糖尿病の管理の主要な目標は、血糖を10~14 mmol/L(180~252 mg/dL)の最大値と4.5~8.0 mmol/L(80~144 mg/dL)の最小値の間に保持することにある。糖尿病に対して承認済の唯一の薬剤はインスリンであるが、これを過剰に投与すると危険な低血糖症を引き起こす可能性があるので、最大値と最小値の両方が特定されている。この指標によると、糖尿病のネコは、血糖曲線の測定値が80~252 mg/dLの範囲にある場合に、適切に管理されていることになる。
米国動物病院協会(the American Animal Hospital Association)が発行する関連指標(Rucinsky et al., 2010 J Am Anim Hosp Assoc 46:215を参照)は、1回の血糖測定値が300 mg/dLを超えずかつ最小値が80~150 mg/dLである、250 mg/dL未満の平均血糖値を目標とする在宅血糖曲線による管理を推奨している。
血糖曲線は、管理するのに不便で費用を要する。別の方法として、例えば数週間から数ケ月の長期間にわたる平均血糖値を反映し、かつ1回の血液試料で測定できる血糖管理の代用の測定法を展開できるとよい。
ヒトでは、非酵素的に糖化されたヘモグロビンは、長期の血糖管理を決定する便利な方法を提供する。ヘモグロビンA1のN末端のバリン残基は、還元糖との自発的な化学反応を引き起こし、その還元糖ではブドウ糖を血中に最も豊富に含む。第1の工程は、ブドウ糖アルデヒド互変異性体とN末端アミノ基の間のエナミン(シッフ塩基)の生成である。アマドリ転位と呼ばれる第2の工程では、互変異性化させてβ-ケトアミンを生成し、これは多くの場合アマドリ付加物と呼ばれる。ヒト赤血球の平均寿命は約120日であるために、非酵素的な糖鎖付加の程度は、この時間の半分の平均期間にわたる糖化産物の平均蓄積を表している。糖化ヘモグロビンの比率測定は、ヘモグロビンA1c(HbA1c)測定と呼ばれる測定の基礎となる。HbA1cの百分率が6.5未満の血液試料は、典型的には、良好なあるいは適切な血糖管理を反映していると見做されるが、より高い百分率は、典型的には、糖尿病の存在を示していると解釈される。
ネコの赤血球は、ヒト赤血球よりも半減期が短く、HbA1c濃度は遥かに低く、高精度には測定できない。代わりにネコでの持続的な血糖状態の好ましい測定法は、血清フルクトサミン測定であり、これもまた還元糖と一級アミンとの反応によって生成される非酵素的付加物を測定する。機構的には、これらの付加物は、ヘモグロビンのN末端アミノ基と同一の反応配列によって形成されるが、リジンのε-アミノ側鎖に形成でき、ブドウ糖の場合には、フルクトセリジンとして知られる構造物を形成する。フルクトサミン試験では、アマドリ転位を逆転させて総血清ケトアミンを測定する。アルカリ条件下では、アマドリ生成物は元のエナミンに戻り、その生成物は、ニトロブルーテトラゾリウムを、540 nmで分光光度的に定量できる着色ホルマザン色素に還元する。フルクトサミン測定では、総β-ケトアミンを測定するが、その最大の成分は、血漿中に最も豊富なタンパク質である血清アルブミンに起因する成分である。アルブミンの半減期は約20日であるので、フルクトサミン測定は、3週間の血糖管理の履歴を効率的に測定する。
国際ネコ医学会が発行する指標(Sparkes et al., 2015; J Feline Med Surg 17:235を参照)によれば、350 μmol/L未満の血清フルクトサミン濃度は、優れた血糖管理、インスリンの過量投与、または糖尿病の寛解のいずれかを示し;350~450 μmol/Lの濃度は良好な血糖管理を示し;450~550 μmol/Lの濃度は中程度の血糖管理を示し;かつ550 μmol/Lを超える濃度は血糖管理が不十分であることを示す。血清フルクトサミンの正常濃度の最大値を約350 μmol/Lに設定するこれらの数値範囲は、試験検査室の手法による試験に基づいている。
現在のところ、ネコでの糖尿病を管理するための承認済の経口血糖降下薬は存在しない。ネコ糖尿病の標準治療では、所望の効果に対して用量設定してインスリンを1日2回注射する必要がある。ネコはインスリン感受性では相当の個体間差を示し、致命的または神経学的に壊滅的な低血糖が起こらないことを保証するように注意深く観察する必要がある。インスリンの投与は糖尿病の制御および病気の進行の遅延に役立つが、インスリンの適切な投与量とそのタイミングの提供は困難な場合がある。例えば、インスリンの投与は食餌の前後にタイミングを合わせることが推奨されるが、食餌とインスリンの一貫したタイミングを調整することは困難であり、多くの場合にその遵守の度合いは低くなる。
従って当技術分野では、ネコ糖尿病の高血糖症および高血糖症に関連する臨床的兆候を低減するための方法および組成物の改善が必要であり、特にネコの健康を維持するために注射を伴わずに、注意深い用量調節を要求しない方法が必要である。本開示は、この必要性に対処して、関連する利点を提供する。特に本開示は、SGLT1およびSGLT2として知られるブドウ糖輸送タンパク質を阻害する化合物を含む、ネコ糖尿病を管理する方法および組成物を提供する。
これらのタンパク質について多くの既知の内容は、げっ歯類およびヒトの研究から得られていて、必ずしもネコに応用可能であるとは限らない。ネコは偏った肉食動物であり、通常は炭水化物を殆ど消費しない。ネコは、げっ歯類およびヒトに存在する甘味に対する受容体を欠いており、炭水化物の感知とその移動に関与する受容体および輸送体は、げっ歯類およびヒトの同族と同様の形態で機能するとは考えられない。従って、以下に示す内容は、現状での理解の最大部分が反映される炭水化物の輸送の一般的特性の説明であり、ネコでの輸送の説明とは重要な点で異なる可能性がある。
ブドウ糖は細胞膜を横断して自発的に拡散しないので、げっ歯類およびヒトは、細胞外培地から細胞内へのブドウ糖の移動を促進するために、輸送体と呼ばれる2つの部類の内在性膜タンパク質を有する。一方の「平衡型」と呼ばれる部類は、内部あるいは外部のいずれかが好都合ということはないが、ブドウ糖が高濃度の領域から低濃度の領域に移動する(平衡方向に移動する)ことを可能にする。細胞はブドウ糖を消費するので、これにより、殆どの場合に細胞への正味の流れをもたらす。他方の「濃縮型」と呼ばれる部類は、細胞外区画から細胞内区画へのナトリウムイオンの自然勾配に依存する。この勾配は、細胞内のNa+を細胞外のK+に交換するエネルギーを必要とする(ATP消費の)機構によるNa+の能動的な送出によって維持され、これによってNa+の細胞外濃度とK+の細胞内濃度を増加させる。ナトリウム-ブドウ糖結合輸送体(SGLT)は、1回の作用で、(SGLT2の場合には)1個のブドウ糖と1個のNa+イオン、あるいは(SGLT1の場合には)1個のブドウ糖と2個のNa+イオンを膜を通して輸送させる。Na+イオンは、それらイオンと共にブドウ糖を細胞内に効率的に運搬する。従って濃縮型輸送体は、希薄な細胞外ブドウ糖を細胞の内部に濃縮することを可能にする。
大半の細胞は、平衡型の輸送のみを示す。腸および腎臓は、濃縮型の輸送に依存していて食事からブドウ糖を摂取し、あるいは尿からブドウ糖を回収する。現在までに研究された種では、SGLT1は腸と腎臓の両方に存在しているが、SGLT2は腎臓に見出され、尿細管中のSGLT1の解剖学的に上流に存在する。SGLT2は、SGLT1よりも低いNa+の損失でブドウ糖を取得し、通常の条件下では、濾液中のブドウ糖の約90%の再取込みを担っている。SGLT2が存在しない場合には、SGLT1が部分的に補償されて、ブドウ糖の40~50%が保持される。残りは尿へ排出される。SGLT2の遺伝的欠損は、マウスとヒトで知られていて、一般的に、無作為の尿検査によってのみヒトで検出される良性かつ潜在性の症候群である。SGLT1の遺伝的欠損は、炭水化物の厳格な食事制限によってのみ管理できる重度の下痢のために、ヒトでは潜在的に致命的な症状となる。SGLT1とSGLT2の両者とも、大量の水をNa+およびブドウ糖とともに共輸送する。ヒトとげっ歯類では、SGLT1はブドウ糖とガラクトースの両方を輸送できる。ガラクトースがネコのSGLT1の基質であるかどうかは現状では不明である。
ブドウ糖の腎臓への再取り込みの生理学に関する多くの初期研究は、リンゴの木の樹皮から単離された天然産物であるフロリジンの認識によって促進され、最終的には複数の種でSGLT1およびSGLT2の阻害剤となることが判明した。
フロリジン(Phlorizin、文献によってはphloridzin、phloridizin、phlorhizin、およびphloridzineとしても知られている)は、糖尿を促進することが19世紀に注目された。当時は、糖尿病は主に尿中のブドウ糖の存在によって特徴付けられていたため、フロリジンは糖尿病の誘発因子であると考えられていて、初期の文献では「フロリジン糖尿病」と呼ばれた。しかしながら、フロリジンによって誘発された糖尿は、膵臓の損傷または除去による糖尿とは異なる機構に起因することが直ぐに認識されて、世紀が変わる前に、E.Hedon(Compt Rend Soc Biol 4:60 1897)は、フロリジンの投与によってイヌの実験的な糖尿病を処置できることを報告した。フランス語からの彼の観察結果の翻訳では、以下のことを示している。「本研究者の知る限りでは、まだ観察されていない別の事実として、完全な糖尿にある膵臓切除した動物にフロリジンを投与すると、高血糖は消失し、次いで糖尿とブドウ糖の間には、(Minkowskiが知見したように)前者は大きな比率で進展するが、後者は正常の状態に戻るまで減少するという逆の関係が見られた」。1920年代までに、腎臓におけるフロリジンの作用が解明されて、その作用の包括的な論評が発表された(Nash Physiol. Rev. 7: 385 1927を参照)。
ネコの実験的な糖尿病によって生成された高血糖を逆転させるためのフロリジンの使用の報告は、Lukensおよびその共同研究者によって1943年に報告され(Lukens et al., Endocrinology 32:475 1943)、続いて1961年に追加の結果が発表された(Lukens et al., Diabetes 10:182 1961)。ネコでの糖尿病におけるフロリジンの有益な効果には、膵臓のインスリン産生膵島細胞へのストレスの軽減、ならびに高血糖の劇的な減少が含まれていた。Lukensらは、糖尿病のネコにおける血糖降下剤の作用の特徴と考えられる多くの効果を示していた。これら研究者は、例えば、フロリジンが糖尿病の発症から動物を保護でき、糖尿病の動物に対する正常な耐糖能を回復でき、かつ実験的な糖尿病の存在下でランゲルハンス島の枯渇を防止できることを示した(Lukens et al., 1943, 1961)。Lukensおよびその共同研究者が実施した研究の重要な要素は、フロリジン化合物のオリーブ油懸濁液の皮下注射による投与であった。この投与は、数日間にわたって活性剤を送達する徐放性デポー製剤として効率的に機能した。この手法の存在がなければ、これら研究者の結果は成就できなかった可能性がある。O-グルコース配糖体であるフロリジンは、β-グルコース分解酵素の代謝作用の影響を受け易く、大半の種で半減期が短い。
最近の米国公開特許第2015/0164856Al号には、ネコ動物での糖尿病を治療する1種以上のSGLT2阻害剤の使用を教示している。この公開資料は、SGLT2阻害剤の使用は様々であり、例えば膵臓のβ細胞量の減少を防止するか、またはβ細胞の変性を抑止し、糖尿病を予防または治療し、かつ糖尿病に関連する種々の病気または症状を治療できることを教示している。米国公開特許第2015/0164856Al号は、SGLT2の阻害に重点を置いているので、Lukensおよびその共同研究者の非常に類似する論証や主張とは区別できる。フロリジンは、大半の種での混合したSGLT1/2阻害剤として、2つの輸送体に影響を及ぼすが、米国公開特許第2015/0164856Al号は、SGLT2のみの阻害を教示している。実際に米国公開特許第2015/0164856Al号は、SGLT1については述べていない。ネコのSGLT1およびSGLT2に対するフロリジンの選択性は、現時点では解明されておらず、またネコでのブドウ糖の腎臓への再取り込みに対する2種の輸送体の相対的な寄与も解明されていないことも注目に値する。
米国公開特許第2015/0164856Al号はまた、当技術分野では周知ではあるが、ある種での化合物の作用を別の種での経験に基づいて予測することは、医薬品開発では最も危険な予測の1つであることを開示してはいない。標的タンパク質の構造は進化的に変化するので、種間の作用を高精度に予測することは極めて困難である。さらに、種に依存する非特異的な効果は当技術分野では周知である。生体異物の代謝の速度と形態は、薬物曝露の重要な決定要因であり、種ごとに大きなばらつきを示すことが知られている。一部には、このことは、生体異物の代謝経路に適用される強力な遺伝的選択により、一部の種では他の種には毒性となる食物源を消費させてもよいことになる。
図1は、結晶性の(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールの粉末X線回折(XRPD)のスペクトルを示す。
図2は、図1のXRPDスペクトルのXRPDデータの一覧表を示す。
図3は、結晶性の(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールのラマンスペクトルを示す。
図4は、図3のラマンスペクトルのラマンピークの一覧を示す。
図5は、入院環境でベキサグリフロジンを投与された健康なネコの尿中ブドウ糖測定値を示す。
図6は、高い1日用量のベキサグリフロジンを投与した場合の健康なネコでの経時的な体重減少を示す。
図7は、8時間の訪問による各曲線に対して、診療所内での5個の血糖曲線測定値のモデル調整済みの95%の信頼区間での最小二乗平均を示す。診療所内で観察された平均血糖濃度は、治療期間とともに統計的に非常に有意な程度まで減少した。
図8は、試料採取時間の関数として、訪問による血糖曲線を構成する個々の測定値の平均値を示す。最初の測定後には、血糖曲線は訪問毎には殆ど差異が無かった。8週目では、5個の血糖測定値の平均は114.9 mg/dL(95% CI:102.8、128.4)であった。
図9は、訪問によるネコの血清フルクトサミンの平均値を示す。このグラフは、モデル調整済みの95%の信頼区間での最小二乗平均を示している。挿入値Δは、初期値から8週目までの最小二乗平均差を表し、これは対応する95%の信頼区間での正常値の上限の百分率として表される。8週目では、母集団の平均血清フルクトサミンは正常値の上限の86.7%(95% CI:80.0%、93.9%)であり、フルクトサミン濃度の変化は非常に顕著であった。
図10は、ネコの血清ブドウ糖濃度のモデル調整済みの95%の信頼区間での最小二乗平均を示す。挿入値は、初期値から8週目までの対応する95%の信頼区間での最小二乗平均差を示している。8週目での平均血清ブドウ糖は、144(95% CI:127、163)であり、血清ブドウ糖濃度の変化は非常に顕著であった。
図11は、訪問によるネコの体重のモデル調整済みの95%の信頼区間での最小二乗平均を示す。挿入値は、初期値から8週目までの95%の信頼区間での最小二乗平均差を初期体重の百分率として示している。母集団は体重に関して不均一であるので信頼区間は広いが、ネコ1匹あたりの体重増加における治療効果は非常に顕著であった。
図12は、訪問によって減退した多飲症(過度の飲用)に対する飼い主の得点の平均を示す。データは正規分布ではないが、(数値間の有意差を示すが、特定の対を識別してない)ノンパラメトリック検定は非常に有意であった。
図13は、訪問によって減退した多尿症(過度の排尿)の飼い主の得点の平均を示す。データは正規分布ではないが、(数値間の有意差を示すが、特定の対を識別しない)ノンパラメトリック検定は非常に有意であった。
図14は、訪問によって減退した多食症(過度の食餌)の飼い主の得点の平均を示す。データは正規分布ではないが、(数値間の有意差を示すが、特定の対を識別しない)ノンパラメトリック検定は有意であった。
図15は、訪問による95%の信頼区間での血清β-ヒドロキシ酪酸濃度の平均を示す。最初の訪問での広い変動幅は、検討に参加するネコの間での数値が大きな範囲であったことを反映している。8週目での血清β-ヒドロキシ酪酸濃度の平均は1.76 mg/dL(95% CI:1.40、2.20)であり、試験検査室での正常値の上限(1.9 mg/dL)よりも低く、検討開始からの変化は非常に顕著であった。発明の詳細な説明I.概要
本発明は、本来はヒト2型糖尿病の治療のために開発された化合物であるベキサグリフロジンの効力および選択性に意外にも種の依存性があることを開示している。
ベキサグリフロジンは、腎臓に近位の尿細管のS1およびS2区画での尿細管上皮の頂端原形質膜表面に発現される内在性膜タンパク質であるヒトナトリウム-糖結合輸送体2(SGLT2)の高度に選択的な阻害剤であるC-アリールグルコシドである。それは、通常の生理学的条件で濾液中のブドウ糖の大部分の再取り込みに関与している。ベキサグリフロジンは、ヒトSGLT1に比較して2400倍のヒトSGLT2に対する選択性を有する。ベキサグリフロジンは、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、およびヒトでは、顕著に飽和可能な糖尿を生成する。糖尿病のげっ歯類の遺伝モデルを用いる実験では、病勢盛んな既存の糖尿の存在下でさえも、ベキサグリフロジンが血糖値の低下と病気の部分的な軽減をもたらし得ることが示されている。従って糖尿の存在は、糖尿病の管理のためのベキサグリフロジンの応用を排除するものではない。
本発明では、ベキサグリフロジンは、ヒトSGLT2に対してよりもネコSGLT2に対して5倍も効力があり、ヒトSGLT1に対してよりもネコSGLT1に対して235倍も効力があることが見出された。ネコでの二重のSGLT1/2阻害剤として、ベキサグリフロジンは、その作用機序に特徴的な望ましい影響と望ましくない影響の両方を生み出す。特に、糖尿病のネコでは、顕著な糖尿と高血糖の急速な緩和を誘発する一方で、高用量ではSGLT1阻害の特徴的な結果である軟便と下痢を誘発する傾向も示している。従って、低い選択性であるという生体外での予測は、生体内での観察によって実証されている。
ヒトでは、SGLT1、SLC5A1をコードする遺伝子のヌル変異または低形質変異は、内腔の水分量の増加および微生物の異常増殖を反映すると考えられる重度の新生児下痢を引き起こす。但しSGLT1を部分的に阻害すると、ブドウ糖(および、少なくとも一部の種ではガラクトース)の吸収が減少するので、血漿中のブドウ糖濃度に対する食事上の炭水化物の影響が減少して、治療上望ましい結果を生む可能性がある。作用部位は腎臓ではなく腸であるので、二重のSGLT1およびSGLT2の阻害剤のこの利点は、腎機能の低下に伴って減退することはなく、従って、腎疾患または障害を有する糖尿病のネコがベキサグリフロジンの作用から利益を得ることが可能性となる。阻害剤がSGLT1とSGLT2の両方に作用する場合に、それはSGLT阻害剤と呼んでもよい。
従って、二重のSGLT1およびSGLT2阻害剤の作用から利益を得るには、均衡させる必要がある。SGLT阻害剤がSGLT2に比較してSGLT1に高すぎる活性を有する場合には、腸内作用が優勢となり、それに続く下痢は、高血糖に必ずしも不利ではないものの、ネコの飼い主および飼い主の健康に対する看取りに悪影響を及ぼす。SGLT1阻害の悪影響は、ヒトおよび他の種での下痢に限定されずに、鼓腸、腹部の苦痛および膨満などのその他の腸内作用を含む可能性がある。
従って、SGLT2に対する活性よりも低いSGLT1に対する活性を有することが好ましい。入手可能な限られたデータから最適な比率を推定できないが、留意すべき1つの要因は化合物の局所濃度である。経口経路で送達される場合に、腸の内腔中の薬物濃度は、血漿中の濃度よりも何倍も高くなる可能性がある。従って比較的弱いSGLT1阻害剤でも、比較的効力の高い生体内での影響を有する可能性がある。ある程度の生体外のデータは、適切に混合したSGLT1およびSGLT2阻害剤の選択を導くのに役立つものの、ネコでの実際の効果の評価結果が依然最良の手引きとなる。腸への悪影響に関する用量の閾値は、最大の薬力学的効果の90%を生み出す最小用量よりも数倍高く設定すべきである。
下痢の頻度および重症度は、ネコの食餌または体重、品種、病歴、または他の特異な要因に応じて変化する可能性がある。下痢または軟便が飼い主にとって不快になる閾値も、複数の因子の影響を受ける。この説明の目的として、下痢の頻度の上昇とは、服用していないネコの排便の頻度の10%を超える頻度のことである。従って、好ましい二重の阻害剤とは、健康なネコでの下痢または軟便の頻度を3倍以上、より好ましくは5倍以上増大させ、その最小用量は、乾燥フード食などの一般の非処方食を与えられた健康なネコの尿中の最大ブドウ糖の90%を排泄する量である。
SGLT1阻害によって引き起こされる下痢は、炭水化物の少ない食餌を提供して低減できる。上記のように、ネコは偏った肉食動物であり、飼い馴らされていない環境では炭水化物を殆ど消費しない。対照的に糖尿病でないネコのための市販の乾燥フード食は、炭水化物の形態でカロリー値の50%も提供している可能性がある。
いくつかの国では、低炭水化物含有量を含む処方食をネコ糖尿病の管理のために利用可能である。これらの食餌は、典型的には(缶詰の)湿潤フードからなるが、炭水化物含有量が少ない乾燥フード食も利用可能である。国際ネコ医学会(ISFM)の研究班の推奨では、好ましい炭水化物含有量は決定されてないが、炭水化物に由来するカロリー値が12%以下の食餌が糖尿病のネコに適する可能性があると説明している(Sparkes et al., 2015; J Feline Med Surg 17:235)。いくつかの非処方の缶詰フード食もまた、最小限の炭水化物の含量を有する。
乾燥フード食中の炭水化物の多くは、穀物または穀物由来の供給源によってもたらされ、これらは典型的には自然の食餌ではごく僅かの比率しか含まれない。穀物含有量の少ない食餌は、従来からの食餌よりも健康的な代替品として、一部のキャットフード供給者から提供されている。これらの食餌が炭水化物の形態ではより少ない代謝可能エネルギーを提供していない限り、これら炭水化物は糖尿病管理計画への有用な添加物にできる。
ベキサグリフロジンは、糖尿病のマウス、ラット、およびヒトで研究されてきた。以下の情報に付加して、この化合物は現在ネコでも研究されている。それぞれの生物では、この化合物は血糖値を低下させ、げっ歯類やヒトでのHbA1c、ネコのフルクトサミンなどの血糖管理の長期的な尺度を改善することが見出されている。但しネコでは、ベキサグリフロジンの作用は極端に強力であり、他の生物で観察される作用よりも質的に優れている。糖尿病のネコの大半では、ベキサグリフロジンは病気の臨床的寛解をもたらし、健康なネコの基準範囲内にある血清フルクトサミン濃度をもたらす。ネコでのベキサグリフロジンの高い効力にもかかわらず、臨床的に顕著な低血糖の兆候はこれまでに観察されてこなかった。高い効力と低いリスクの組合せにより、ベキサグリフロジンはネコの糖尿病の管理のための優れた選択肢となる。特に興味深く有用なこととして、単剤療法としてのベキサグリフロジンが、監督の無い(家の)環境で飼い主が薬剤をネコに投与するという市場調査では、試験検査室の正常基準範囲内にフルクトサミン濃度を大多数のネコで回復させることが証明されたという観察結果がある。
意外で重要な治療上の利益は、治療されたネコの体重の増加であり、これは、健康な動物および糖尿病の動物の両方でのこの化合物の期待作用に逆行する効果であった。ベキサグリフロジンを投与された糖尿病のヒトの間では、体重の減少は一般的かつ一貫する観察結果であり、例えばSGLT2阻害剤を投与されたネコでの体重の減少は、米国公開特許第2015/0164856号に教示されている。
当業者には明白であるように、薬剤の有効性は、疾患の重症度および期間、有効成分またはその活性代謝物の代謝速度、および薬剤が投与される定時性に依存している。投薬の誤差、特に抜落ちは、投薬の明白な有用性に重大な影響を与える可能性がある。実際に抜落ちはよく起こり、抜落ちの発生頻度は、薬剤の有効性の決定的な因子になる可能性がある。
併用はまた、薬剤の効果に影響を与える可能性がある。例えば、二重のSGLT1およびSGLT2阻害剤は、腎臓でのブドウ糖の再取り込みを阻害するので、加齢の自然な結果として、あるいは腎疾患の進行ために、腎濾過性が低下するにつれて効力を喪失することが予測される場合がある。本発明の二重のSGLT1およびSGLT2阻害剤は、重度の腎疾患を有するネコには魅力的な管理の選択肢とは見做されないが、軽度から中等度の腎障害の環境では有効である可能性があり、かつ臨床研究では広い年齢の範囲のネコに対し有効であることが見出されている。
ヒトがまずT2DMに罹患した際には、糖尿病の危機の苦痛に瀕することはめったにない。代わりに病気は徐々に進行して、定期的な検査結果に付随して、または喉の渇きや頻尿などのより進行した病気を予告する患者の訴えにより診断される。しかし糖尿病のネコは、多くの場合、非常に高い血糖値、糖尿、および体重減少を伴う急性疾患として獣医に知らされる。ネコでの特徴的な高血糖関連の臨床的兆候には、多飲症(過剰な水分摂取)、多食症(過剰な食物摂取)、多尿症(過剰な排尿)および体重減少が含まれる。多くの場合に、飼い主の心配を引き起こすのは、体重減少と倦怠動作である。糖尿病のネコは(上述の腎臓の機序によって)尿中のブドウ糖が大幅に喪失するために栄養不足となるが、意外なことに、尿中のブドウ糖分泌を増加させるベキサグリフロジンの投与は、逆説的に体重減少を阻止して多くのネコで体重の増大を引き起こす。同様に糖尿病のネコへのベキサグリフロジンの投与は、病因性糖尿によって多飲症、多食症、および多尿症の高血糖関連の臨床的兆候は機構的に引き起こされるので、作用機序によってこれら兆候を悪化させると予想される。しかしこの予想に反して、糖尿病のネコにベキサグリフロジンを投与すると、ネコにこれらの兆候を悪化させると予想される薬剤が投与されているにもかかわらず、多飲症、多食症、および多尿症の臨床的兆候が軽減する。当然のことではあるが、薬剤の作用機序のために、これらネコは深刻な糖尿を示し続ける。従って、その機序によってベキサグリフロジンは高血糖関連の臨床的兆候を悪化させると予想されるが、臨床研究では、ベキサグリフロジンは体重減少を逆転させて、ネコが正常な行動あるいはほぼ正常な行動に戻ることを可能にした。
糖尿病のネコでのベキサグリフロジンによる高血糖関連の臨床的兆候の改善機構についての決定的な説明はまだ提示されていない。但しSGLT1およびSGLT2を阻害して、十分な量の追加のブドウ糖が尿中に放出されて血漿ブドウ糖濃度を低下させる可能性がある。血漿ブドウ糖濃度が低下すると、病気とは対照的に、投薬の効果に起因する糖尿の比率が増大して血糖管理がさらに改善できる。最終的にブドウ糖の排泄率は過剰なブドウ糖産生を均衡させて、高血糖関連の臨床的兆候が改善する。
ネコでの糖尿病は、脳下垂体の成長ホルモン産生細胞区画の過形成に起因し、成長ホルモンの不適切な産生をもたらす病態である先端巨大症に関連する可能性がある。続いて成長ホルモンの上昇は、インスリンの作用に拮抗するインスリン様成長因子1(IGF-1)の上昇を引き起こす。糖尿病のネコのインスリン抵抗性は先端巨大症と関連していることが多く(Scott-Moncrieff, JC, Vet Clin North Am Small Anim Pract (2010) 40:241)、欧州での糖尿病のネコの最大4分の1には先端巨大症が潜む可能性があると推定されている(Niessen PLoS One. 2015 10:e0127794)。多くの場合に、先端巨大症を有する糖尿病のネコを管理するには、非常に高用量のインスリンが必要である。効果的なインスリン非依存性抗糖尿病薬は、ネコ糖尿病を管理するための選択肢への重要な追加になると思われる。
化合物1(ベキサグリフロジン)を投与して、ネコ糖尿病の高血糖症および高血糖症に関連する臨床的兆候を低減するための方法および組成物を本明細書に説明する。本明細書に説明の方法は、特定の投薬量および頻度を含む。意外なことに、化合物1の投与は、大多数の動物で試験検査室の基準範囲の正常値の上限を下回る、すなわち健康なネコの正常値範囲内となる血清フルクトサミン濃度をもたらす唯一の治療薬として、糖尿病のネコに治療上の利益を提供する。化合物1は、その他の抗糖尿病薬により治療を受けていないネコの糖尿病を効果的に治療する。比較して言えば、化合物1を糖尿病のラットおよびマウスに投与した場合には、血糖値またはHbA1cを正常範囲に戻すことは不可能である。同様に、化合物1を2型糖尿病のヒトに投与する際にも、多くの場合に血糖値またはHbA1cを正常範囲に戻すために追加の薬剤が必要となる。
好都合なことには、化合物1は低血糖症を起こさない。従って化合物1の投与では、用量または前記用量のタイミングの注意深い制御を必要としない。
さらに、場合によっては、本明細書に説明のネコ糖尿病を管理する方法は、前記ネコでの臨床的寛解をもたらす。
II.定義
「化合物1」は、以下の式を有する化学物質(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールを指す。
本明細書で使用される「薬学的に許容される形態」は、所与の化合物の薬学的に許容される塩、多形、共結晶、および単結晶の各形態を指す。
本明細書で使用される「臨床的寛解」は、疾患での1つ以上の臨床的な測定値が持続的に低下、軽減、または減少し、これら測定値が健康な集団から得られる試験値の許容範囲内に収まることを指す。これら試験値は「正常範囲内」にあると言える。「臨床的寛解」は、治療の中止を意味しない。本明細書で使用される「臨床的寛解」では、疾患の全ての臨床的な測定値が正常範囲内にあることを必要としない。例えば、血清フルクトサミンが正常範囲内にあるが、空腹時の血清ブドウ糖が正常範囲の上限を超えているネコは、臨床的に寛解と言える。
本明細書で使用される「正常範囲」は、試験検査室の機器および手順に依存する可能性があり、従って検査室ごとに異なる可能性がある。数値が本明細書で使用される「正常範囲内」にある場合に、この語句は、測定時に結果を提供する特定の検査室によって確立された範囲内を意味する。
本明細書で使用される「治療不要の寛解」は、治療薬の投与の中止後も持続する寛解状態を示す。
本明細書で使用される「高血糖に関連する臨床的兆候」は、多飲症、多食症、多尿症、または体重減少のうちの1つ以上の特徴的な兆候を示す。体重減少の臨床的兆候は、診療所を訪問中にネコの体重を直接測定して定量できる。他の兆候を記録するには、典型的には、飼い主がネコの行動やそれらの結果を観察する必要がある。
本明細書で形容詞として使用される用語「ネコの(cat)」および「ネコの(feline)」は、互換的に使用され、かつネコ科の動物を意味するかあるいはそれに関連し、特にペット動物すなわち伴侶動物として保持され、典型的にはネコ科、シルベストリス・カトゥス(silvestris catus)種またはカトゥス(catus)種に属し、また多くの場合には飼いネコまたはイエネコと呼ばれるそのネコ科の一部を含む。
本明細書で使用される場合に、名詞として使用される語句「ネコ(cat)」はネコ科の動物を指す。
本明細書で使用される「糖尿病を管理すること」または「糖尿病の管理」は、動物の世話を担う飼い主または他の人が、種々の方法によって、疾患を緩和または治癒するか、症状の緩和を提供するか、あるいは動物の健康状態を改変することを目的とする特定の手段によって疾患に対処するプロセスを指す。これらの手段には、特別食または処方食の提供あるいは提示される食物の種類または量のその他の変更などの動物の食餌変更、あるいは運動または代謝エネルギー消費の増大をもたらす活動の奨励または提供、あるいはハーブ製剤、栄養補助食品、または医薬品の提供が含まれてもよい。
本明細書で使用される「血糖値」、「血糖濃度」、または「血糖レベル」は、全血中のブドウ糖の測定値を指す。典型的には、採取される試料は毛細管血液であり、血糖は血糖値計などの臨床現場検査装置によって測定される。
本明細書で使用される「血糖曲線」は、典型的には8~24時間範囲の期間にわたって経時的に得られ、例えば治療薬の量が多すぎるかどうか、逆に低い血糖値が観察されるかどうかを決定するための疾患管理の程度および管理の適切性を評価する手段として実施される全血の連続試料中の血糖濃度の測定結果を指す。
本明細書で使用される「血清ブドウ糖」、「血清ブドウ糖濃度」または「血清ブドウ糖レベル」は、凝固させた全血、典型的には静脈血の液相中に測定されるブドウ糖濃度を指す。血清ブドウ糖濃度は、多くの場合に、診断試験検査室で実行される自動化手順によって臨床診療で決定される。
本明細書で使用される「血清フルクトサミン」、「血清フルクトサミン濃度」または「血清フルクトサミンレベル」は、凝固させた全血、典型的には静脈血の液相中に測定されるフルクトサミン濃度を指す。血清フルクトサミン濃度は、多くの場合に、診断試験検査室で実行される自動化手順によって臨床診療で決定される。
本明細書で使用される「血漿ブドウ糖」または「血漿ブドウ糖濃度」は、血液を凝固させないような方法で血液の細胞成分から分離された全血、典型的には静脈血の液相の測定によって得られるブドウ糖濃度を指す。
本明細書で使用される語句「絶食」は、試験用の検体の採取を取り巻く環境に応用する場合に、検体を抽出される動物が、長期間、典型的には検体の採取が朝の場合には、6時間以上で通常は一晩中食物を絶たれていたことを示す。空腹時試料は、給餌によって大きな影響を受けるブドウ糖や脂質などの検体の測定に有用である。
本明細書で使用される「高血糖に関連する臨床的兆候の低減」、ならびに「高血糖に関連する臨床的兆候の改善」は、1つ以上の兆候の管理の開始時からの多飲症、多食症、多尿症の改善、または体重減少の防止を意味する。
本明細書で使用される「多飲症の改善」は、消費される水または液体の観察される頻度または量の減少、あるいはネコが通常は消費しない異常な水源を探す頻度の減少を意味する。
本明細書で使用される「多食症の改善」は、消費される食物の量の減少、あるいは異常な量の食物をせがむまたはねだる頻度の減少、または給餌直後などの異常な状況で食物をせがむまたはねだる頻度の減少を意味する。
本明細書で使用される「多尿症の改善」は、排尿の頻度または尿の生成量の減少、あるいはその目的のために提供されるネコ用トイレの外での排尿やそのトイレの溢れなどの排尿に関連する異常行動の減少を意味する。
本明細書で使用される「体重減少の防止」は、管理の開始時から5%以下の体重の減少をもたらすことを意味する。誤解を避けるためではあるが、「体重減少の防止」には、管理開始時からのいずれの体重増加も含まれる。
本明細書で使用される「低血糖症」の定義は、測定された血糖濃度が、3.0~3.5 mM(53~63 mg/dL)未満であるISFM規定(Sparkes et al., 2015; J Feline Med Surg 17:235)の血糖値範囲の上限値を下回る臨床的な状態を指す。誤解を避けるためではあるが、低血糖症は、血糖値が63 mg/dL未満であることを意味する。
糖尿病の臨床マーカーには、限定はされないが、血清フルクトサミン濃度、血糖値または血清ブドウ糖濃度、あるいは糖化ヘモグロビン濃度が含まれる。管理計画は、少なくとも1、3、7、14、28日、またはそれ以上であってもよく、あるいは1、2、3、4ヶ月、またはそれ以上の月数、あるいは残りの寿命であってもよい。実施態様によっては、管理計画は2ヶ月である。実施態様によっては、臨床的寛解は、永続的であり、すなわちネコの寿命にわたって持続する。実施態様によっては、管理不要の寛解が達成される。実施態様によっては、管理不要の寛解期間は、少なくとも1、3、7、14、28日、またはそれ以上の日数であり、あるいは1、2、3、4ヶ月、またはそれ以上の月数、あるいは残りの寿命である。管理不要の寛解が継続する時間は、ネコ種、その食餌、および毎日の運動量などの多くの要因に依存する。非限定的な例として、臨床的寛解は、試験検査室の基準範囲の正常値の上限以下の血清フルクトサミン濃度によって特定できる。さらなる非限定的な例として、臨床的寛解は、170 mg/dL以下の空腹時血漿ブドウ糖濃度によって特定できる。
本明細書で使用される試験検査室の基準範囲(testing laboratory reference range)の「正常値の上限(upper limit of normal)」または「ULN」は、健康な集団から抽出される検体の正常な変動内に見出されると考えられる検査室試験での数値範囲の境界である最小の上限値を意味する。正常値の上限は、典型的には、医師への試験結果の送信に関連して試験検査室によって提供され、かつ試験の較正、試験の実施、または検体準備に応じて、検査室ごとにまたは一つの検査室内で随時変更されてもよい。例えば、以下に報告される現場での検討の過程で、中央検査室での検査方法の変更により、血清フルクトサミンの正常値の上限が356 μmol/Lから275 μmol/Lに変更された。
本明細書で使用される「抗糖尿病剤」は、ヒトでの糖尿病の治療または動物での糖尿病の管理に一般的に使用される薬物、薬剤、または薬品を含む組成物を指す。ヒトのT2DMの治療のための一般的な抗糖尿病薬には、限定はされないが、α-グルコシダーゼ阻害剤、アミリン類似体、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、インクレチンまたはインクレチン模倣物、インスリン、メグリチニド、非スルホニル尿素分泌促進剤、SGLT2阻害剤、スルホニル尿素、およびチアゾリジンジオンが挙げられる。ヒトのT2DMの治療のための経口薬は、ネコの糖尿病の管理には殆ど役に立たないと一般に認められている。現在のところ、米国、欧州連合、または日本の規制当局によって承認されているネコの糖尿病の管理のための経口薬は無い。
本明細書で使用される「低炭水化物食」は、管理の開始時からネコが摂取する食物を指す。特に低炭水化物食は、消費される炭水化物の相対量が特定の閾値水準を超えない食餌である。低炭水化物食は、典型的には、40%、35%、30%、26%、20%、15%、12%未満、またはそれ以下の百分率の炭水化物からのカロリーを含む。
本明細書で使用される「糖尿病食」は、管理の開始時からネコが摂取する食物を指す。特に糖尿食は、比較的大量のタンパク質と少量の炭水化物を含む食餌である。大量のタンパク質は、60%、65%、70%、75%、80%、またはそれ以上の百分率のタンパク質からのカロリーを含むが、少量の炭水化物は上記で定義された通りである。特定の実施態様では、糖尿病食は乾燥キャットフードを含まない。
本明細書で使用される「下痢または軟便の頻度の上昇」は、下痢または軟便のいずれかの頻度が、投薬を受けてない動物の排便の頻度の10%を超えて上昇することを意味する。本明細書で使用される「下痢」は、細菌、ウイルス、玉虫類、または腸内寄生虫による感染などの偶発的な原因を含まずに、その代わりにSGLT1阻害に起因する下痢を指す。実施態様によっては、「下痢」は、治療の過程中に少なくとも3日間にわたって、少なくとも1日に1回発生する軟便または液状便を指す。
本明細書で使用される「SGLT阻害剤」は、SGLT1およびSGLT2の両方に対して活性を有する化合物を指し、特にSGLT1活性に対してSGLT2活性を好ましい比率で有するこれら化合物を指し、これにより糖尿および腸内炭水化物の吸収障害での利点が、下痢、軟便、鼓腸、膨満などの好ましくない胃腸症状のリスクを低くして達成できる。
本明細書で使用される用語「投与」は、経口、口腔、鼻、直腸、膣、または皮膚の経路、または他の局所接触によって、あるいは静脈内、腹腔内、筋肉内、病変内、または皮下経路によって、あるいはポンプ、ゲル、貯蔵、または侵食性物質などの徐放装置または調剤の埋め込みによって送達することを意味する。投与は、非経口的および(例えば、経口、鼻、膣、直腸、または経皮などの)経粘膜を含む任意の経路によって実施できる。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、髄腔内、および頭蓋内が挙げられる。他の送達様式として、限定はされないが、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチなどの使用が含まれる。
本明細書で使用される「化合物または組成物を投与することを含む、障害、疾患、または病状を管理、誘導、低減、改善、または予防する方法」はまた、障害、疾患、または病状を管理、誘導、低減、改善、または予防するための化合物または組成物の使用、ならびに障害、疾患、または病状を管理、誘導、低減、改善、または予防するための薬剤を調製するための化合物または組成物の使用を意味する。
III .ネコの糖尿病を管理する方法
側面によっては、ネコの糖尿病を管理する方法を本明細書に提供し、この方法は、それを必要とするネコに、以下の式またはその薬学的に許容される形態を有する約5~50 mgの化合物1の1日の総用量を投与することを含む。
側面によっては、糖尿病を有するネコでの高血糖関連の臨床的兆候を低減する方法を本明細書に提供し、前記方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。
側面によっては、糖尿病を有するネコでの高血糖関連の臨床的兆候を改善する方法を本明細書に提供し、前記方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。
側面によっては、ネコでの糖尿病の臨床的寛解を誘導する方法を本明細書に提供し、前記方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。
側面によっては、糖尿病のネコの血清フルクトサミン濃度を試験検査室の基準範囲の正常値の上限未満にまで低下させる方法を本明細書に提供し、前記方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。実施態様によっては、試験検査室の標準の正常値の上限は、356 μmol/Lまたは275 μmol/Lである。
側面によっては、血糖の全ての測定値が10 mmol/L(180 mg/dL)の最大値と4.5 mmol/L(80 mg/dL)の最小値の間にある血糖曲線を糖尿病のネコが有するように、ネコの血糖制御を改善する方法を本明細書に提供し、前記方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。
側面によっては、糖尿病のネコの体重減少を防止する方法を本明細書に提供し、前記方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。
側面によっては、試験検査室の基準範囲の正常値の上限を超えるIGF-1濃度を示すネコの糖尿病を管理する方法を本明細書に提供し、この方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。実施態様によっては、試験検査室の基準範囲の正常値の上限は92 nmol/Lである。
実施態様によっては、本明細書に提供される方法は、それを必要とするネコに、約5~50 mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む。炭水化物は、一般的に市販のキャットフード中に存在していて、低炭水化物食を維持することによりネコの臨床的病理が改善される。実施態様によっては、前記低炭水化物食は缶詰食である。缶詰食によるネコは、乾燥キャットフードを与えられない。実施態様によっては、前記低炭水化物食は糖尿病食である。糖尿病食は、一般的にタンパク質が多く、炭水化物が少ない食餌である。実施態様によっては、糖尿病食は、乾燥キャットフードを殆どまたは全く含まない。実施態様によっては、前記低炭水化物食は、ケトン食である。ケトン食には、シーフード、肉、鶏肉、卵が多い食餌が含まれる。実施態様によっては、前記低炭水化物食は、穀物を含まない食餌である。
実施態様によっては、前記低炭水化物食は、炭水化物の形態でカロリーの40%未満を含む。実施態様によっては、前記低炭水化物食は、炭水化物の形態でカロリーの35%未満を含む。実施態様によっては、前記低炭水化物食は、炭水化物の形態でカロリーの30%未満を含む。実施態様によっては、前記低炭水化物食は、炭水化物の形態でカロリーの26%未満を含む。
実施態様によっては、化合物1は、以下の式を有する(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールのビスプロリン複合体であり、
前記化合物1のビスプロリン複合体は、それを必要とするネコに投与される。ビスプロリン複合体に関するさらなる情報は、国際特許公開WO2010/022313号に見出され、その内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
実施態様によっては、化合物1は、以下の式を有する(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールの結晶形態であり、
前記化合物1の結晶形態は、それを必要とするネコに投与される。
この化合物の結晶形態は、図1に示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。実施態様によっては、X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ:5.4、11.2、11.3、11.9、12.9、15.5、16.3、17.8、19.1、20.0、20.6、20.7、21.2、22.8、23.0、23.4、23.6、23.9、24.7、25.4、25.8、27.8、および28.2°(±0.1°)に1本以上のピークを含み、前記XRPDはCuKα1の放射線を用いて実施される。別の実施形態では、この化合物の結晶形態は、2θ:5.4、11.2、11.3、11.9、12.9、15.5、16.3、17.8、19.1、20.0、20.6、20.7、21.2、22.8、23.0、23.4、23.6、23.9、24.7、25.4、25.8、27.8、および28.2°(±0.1°)に2本以上、3本以上、4本以上、または5本以上のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。他の実施態様によっては、この化合物の結晶形態は、2θ:12.9、19.1、および20.7°(±0.1°)にピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。さらに他の実施態様によっては、この化合物の結晶形態は、2θ:11.2、12.9、15.5、17.8、19.1、20.0、および20.7°(±0.1°)にピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。さらに他の実施形態によっては、この化合物の結晶形態は、2θ:5.4、11.2、11.9、12.9、15.5、16.3、17.8、および19.1°(±0.1°)にピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。さらに他の実施態様によっては、この化合物の結晶形態は、2θ:5.4、11.2、11.9、および12.9°(±0.1°)にピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。別の実施態様では、この化合物の結晶形態は、2θ:11.2および12.9°(±0.1°)にピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。他の実施態様では、化合物の結晶形態は、実質的に図2に従うXRPDピークによって特徴付けられる。
本発明の結晶性化合物はまた、実質的に図3に従うラマンスペクトルおよび実質的に図4に従うピークによって特徴付けられる。実施態様によっては、この化合物の結晶形態は、約353、688、825、1178、1205、1212、1608、2945、3010、および3063 cm-1に1本以上のピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる。別の実施態様では、この化合物の結晶形態は、2本以上、3本以上、4本以上、または5本以上のピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる。他の実施態様では、この化合物の結晶形態は、約353、688、および825 cm-1にピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる。他の実施態様によっては、化合物の結晶形態は、実質的に図4に従うラマンピークによって特徴付けられる。
実施態様によっては、化合物1の治療有効量は、約5 mg~50 mgの1日の総用量(例えば、約5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、30、35、40、45、または50 mg/日)である。実施態様によっては、化合物1の1日の総用量は、約10~20 mgである。実施態様によっては、化合物1の1日の総用量は、約15 mgである。
化合物1は、複数の適切な経路を介してネコに投与されてもよい。実施態様によっては、化合物1は経口投与される。さらなる投与方法については、以下の段落で説明する。
実施態様によっては、化合物1は、追加の治療薬と組み合わせて投与される。実施態様によっては、化合物1は単剤療法として投与される。すなわち、化合物1がネコに投与される唯一の抗糖尿病薬である場合に、ネコの糖尿病を管理する際に明確な治療上の利益が付与される。
好都合なことに、化合物1の投与は、食餌または他の事象とタイミングを合わせる必要がない。実施態様によっては、1日の総用量を、(食餌のタイミングを含む)他の活動とは無関係に1日1回投与する。実施態様によっては、1日の総用量を、(食餌のタイミングを含む)他の活動とは無関係に1日2回投与する。実施態様によっては、用量をキャットフードと混合する。実施態様によっては、用量を単回の固体剤形としてネコに送達する。実施態様によっては、用量を経口溶液または経口懸濁液として送達する。実施態様によっては、送達される最大液量は1 mLである。実施態様によっては、送達される最大量は0.5 mLである。実施態様によっては、用量をネコの体重に応じて調整する。実施態様によっては、単回の用量強度により全てのネコに提供する。
管理の過程にわたって、血清フルクトサミン濃度および/または血糖値または血清ブドウ糖濃度を監視して血糖管理の証拠を得ることができる。多尿症、多飲症、多食症、または体重減少などの臨床的兆候もまた監視されてもよい。糖尿病の継続的な兆候が続く場合には、管理計画を変更して他の薬物治療を含む他の機能を含めてもよい。
ネコが臨床的寛解を維持している場合は、ネコは、受け入れた治療計画からの確実な治療上の利益を維持する。実施態様によっては、ネコがネコ糖尿病の1つ以上の臨床マーカーを表示しない場合には、臨床的寛解が維持されている。上述のように、ネコ糖尿病の症状には、血清フルクトサミン濃度の上昇、血糖値または血清ブドウ糖濃度の上昇、多尿症、多飲症、および多食症が含まれる。
実施態様によっては、臨床的寛解を維持するネコは、ネコの血清フルクトサミン濃度によって決定される。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度を、試験検査室の基準範囲の正常値の上限と比較する。実施態様によっては、試験検査室の対照標準の正常値の上限は、約356 μmol/Lまたは約275 μmol/Lである。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、試験検査室の基準範囲の正常値の上限以下の血清フルクトサミン濃度を示す。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、360 μmol/L以下の血清フルクトサミン濃度を示す。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、350 μmol/L以下の血清フルクトサミン濃度を示す。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、検体が提出される試験検査室の正常値の上限以下の血清フルクトサミン濃度を示す。
実施態様によっては、臨床的寛解を維持するネコは、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度によって決定される。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、250 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、200 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。実施形態では、臨床的寛解期のネコは、190 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、180 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。臨床的寛解期のネコは、170 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、160 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。実施態様によっては、臨床的寛解期のネコは、150 mg/dL未満の血糖値または血清ブドウ糖濃度を維持する。
本明細書に説明の方法は、ネコの糖尿病の症状を軽減、低減、または排除する。例えば、実施態様によっては、管理計画の完了後に測定されるネコの血清フルクトサミン濃度は、前記ネコで減少する。実施態様によっては、管理計画の完了後に測定されるネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記ネコで減少する。
実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約20%減少する。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約30%減少する。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約40%減少する。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約50%減少する。
実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に、試験検査室の基準範囲の正常値の上限よりも低い。実施態様によっては、試験検査室の対照標準の正常値の上限は、約356 μmol/Lまたは約275 μmol/Lである。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に500 μmol/L未満である。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に450 μmol/L未満である。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に400 μmol/L未満である。実施態様によっては、ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に350 μmol/L未満である。
実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約20%減少する。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約30%減少する。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約40%減少する。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約50%減少する。
実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に250 mg/dL未満である。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に200 mg/dL未満である。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に190 mg/dL未満である。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に180 mg/dL未満である。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に170 mg/dL未満である。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に160 mg/dL未満である。実施態様によっては、ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に150 mg/dL未満である。
上述のように、SGLT2の活性よりも低いSGLT1に対する活性を有することが好ましく、SGLT1の阻害は下痢を引き起こす可能性がある。従って、本開示のSGLT阻害剤は、腸内有害作用の閾値濃度よりも低い用量濃度で、ネコの糖尿病の治療での薬力学的効果を提供する。従って、さらなる側面では、ネコの糖尿病を管理する方法を本明細書で提供し、この方法は、それを必要とするネコに有効量のSGLT阻害剤を投与することを含み、前記有効量は、健康なネコで下痢または軟便の上昇を生じさせるのに必要な用量の10~30%以下である。実施態様によっては、健康なネコは、市販の乾燥フード食を与えられている。実施態様によっては、健康なネコは、SGLT阻害剤の投与前に下痢または軟便の頻度の上昇を示していないネコである。実施態様によっては、健康なネコは糖尿病ではない。
実施態様によっては、有効量は、健康なネコで下痢または軟便の増大を生じさせるのに必要な用量の10、12、16、18、20、22、24、26、28、または30%以下である。実施態様によっては、有効量は、健康なネコで下痢または軟便の増大を生じさせるのに必要な用量の30%以下である。実施態様によっては、有効量は、下痢または軟便の増大を生じさせるのに必要な用量の20%以下である。実施態様によっては、有効量は、下痢または軟便の増大を生じさせるのに必要な用量の10%以下である。
有効量には、前記SGLT阻害剤の最大薬力学効果の少なくとも90%を生成する用量が含まれる。
ネコの糖尿病を管理する方法もまた本明細書に提供し、この方法は、それを必要とするネコに有効量のSGLT阻害剤を投与することを含み、前記SGLT阻害剤は、前記有効量の3~10倍以上の用量で健康なネコでの下痢または軟便の頻度を高める。実施態様によっては、健康なネコは、市販の乾燥フード食を与えられている。実施態様によっては、健康なネコは、治療の前に下痢または軟便の頻度の増大を示していないネコである。実施態様によっては、健康なネコは糖尿病ではない。
実施態様によっては、SGLT阻害剤は、有効量の3、4、5、6、7、8、9、または10倍以上の用量で、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大をもたらす。実施態様によっては、SGLT阻害剤は、有効量の3倍以上の用量で、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大をもたらす。実施態様によっては、SGLT阻害剤は、有効量の5倍以上の用量で、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大をもたらす。実施態様によっては、SGLT阻害剤は、有効量の10倍以上の用量で、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大をもたらす。
有効量には、前記SGLT阻害剤の最大薬力学効果の少なくとも90%を生成する用量が含まれる。
本明細書に説明の方法は、あらゆる形態のネコの糖尿病を管理するのに有用である。実施態様によっては、ネコの糖尿病は1型糖尿病である。実施態様によっては、ネコの糖尿病は2型糖尿病である。
IV.医薬組成物
化合物1は、対象への送達に適する種々の組成物に調製してもよい。対象への投与に適する組成物は、典型的には化合物1(またはその薬学的に許容される形態)および薬学的に許容される担体を含む。
化合物1は、治療的投与のための種々の製剤に組み込んでもよい。より具体的には、化合物1は、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤との調合により共にまたは別々に医薬組成物に処方してもよく、かつ錠剤、カプセル、ピル、粉末、顆粒、糖衣錠、ゲル、スラリー、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体、または気体の形態の製剤に処方してもよい。従って、本発明の化合物の投与は、経口、口腔内、非経口、静脈内、皮膚内(例えば皮下、筋肉内)、経皮などの投与を含む様々な方法で達成してもよい。さらに化合物1を、全身的ではなく局所的な方法で、例えばデポー製剤または徐放性製剤として投与してもよい。
化合物1を投与するための医薬組成物は、単位剤形で便宜的に提供してもよく、かつ薬剤学および薬物送達の技術分野で知られるいずれかの方法によって調製してもよい。全ての方法は、有効成分を1種以上の副成分を含む担体と組み合わせる工程を含む。一般に医薬組成物は、有効成分を液状担体または細かく粉砕された固形状担体、あるいはその両方と均一かつ密接に組み合わせて、次いで必要に応じて生成物を所望の製剤に成形して調製する。
本発明で使用するのに適する製剤は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington: 「調剤の科学および実践」THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, 21st Ed., Gennaro, Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2003)に見い出せる。本明細書に説明の医薬組成物は、当業者に既知の方法で、すなわち従来からの混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥の各プロセスによって製造できる。以下の方法および賦形剤は単なる例であり、決して限定するものではない。
実施態様によっては、化合物1は、持効放出性、制御放出性、持続放出性、時限放出性、または遅延放出性の製剤、例えば治療薬を含む固形疎水性ポリマーの半透過性母材で送達するように調製される。様々な種類の持効放出性材料が確立されており、当業者にはよく知られている。現在の持続放出性製剤には、膜被覆錠剤、多粒子またはペレットシステム、親水性または親油性材料を用いる母材技術、および細孔形成賦形剤を含むワックス系錠剤が含まれる(例えば、Huang, et al. Drug Dev. Ind. Pharm. 29:79 (2003);Pearnchob, et al. Drug Dev. Ind. Pharm. 29:925 (2003);Maggi, et al. Eur. J. Pharm. Biopharm. 55:99 (2003);Khanvilkar, et al., Drug Dev. Ind. Pharm. 228:601 (2002);およびSchmidt, et al., Int. J. Pharm. 216:9 (2001)を参照)。持効放出性送達システムは、その設計に応じて、数時間または数日にわたって、例えば、4、6、8、10、12、16、20、24時間、またはそれ以上にわたって化合物を放出できる。通常、持効放出性製剤は、天然起源ポリマーまたは合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマービニルピロリドン;カルボキシビニル親水性ポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの疎水性および/または親水性のハイドロコロイド;およびカルボキシポリメチレンを用いて調製してもよい。
持効放出性または持続放出性の製剤はまた、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、および粘土を含む鉱物などの天然成分を用いて調製してもよい(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,638,521号を参照)。(本明細書に説明のいずれかの形態の)化合物1の送達に使用できる持続放出性の製剤として、米国特許第6,635,680号;6,624,200号;6,613,361号;6,613,358号;6,596,308号;6,589,563号;6,562,375号;6,548,084号;6,541,020号;6,537,579号;6,528,080号;および6,524,621号に説明される製剤を含み、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。特に関心のある制御放出性製剤には、米国特許第6,607,751号、6,599,529号;6,569,463号;6,565,883号;6,482,440号;6,403,597号;6,319,919号;6,150,354号;6,080,736号;5,672,356号;5,472,704号;5,445,829号;5,312,817号;および5,296,483号に説明される製剤を含み、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。当業者なら、その他の適用可能な持効放出性製剤を容易に分かっている。
経口投与の場合に、化合物1を、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせて容易に処方できる。これらの担体により、それを必要とする患者による経口摂取のために、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、乳濁液、親油性および親水性懸濁液、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして化合物を処方できる。経口使用のための医薬製剤を、化合物を固形賦形剤と混合し、必要に応じて得られた混合物を粉砕し、必要に応じて錠剤または糖衣錠のコアを得るために適切な助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理して調製してもよい。適切な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;および例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物などの充填剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、あるいはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤を添加してもよい。
本開示の錠剤は、錠剤の製造に適する非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された有効成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、乳糖、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えばコーンスターチまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;例えばPVP、セルロース、PEG、デンプン、ゼラチン、またはアカシアなどの結合剤;および、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなどの潤滑剤であってもよい。これら錠剤は、既知の技術によって腸内ではまたは他の部分では被覆されていないかまたは被覆されていて、胃腸管での崩壊および吸収を遅らせて、それによって長期間にわたって持続的な作用を提供してもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時限遅延材料を採用してもよい。それらをまた、被覆して制御放出のための浸透圧治療錠剤を形成してもよい。
経口的に使用できる医薬製剤には、ゼラチンで作られた押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から作製される柔軟で密封されたカプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および必要に応じて安定剤と混合した有効成分を含んでもよい。柔軟カプセルでは、有効化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁してもよい。さらに安定剤を加えてもよい。経口投与用の全ての製剤は、そのような投与に適する用量とすべきである。
経口使用のための製剤はまた、有効成分が微結晶性セルロース、乳糖、デンプン、アルファ化デンプン、またはカオリンなどの不活性固形希釈剤と混合される硬質ゼラチンカプセルとして、あるいは有効成分が水、またはピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油などの油性媒体と混合される軟質ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。さらに乳濁液を、油などの非水混和性成分とともに調製し、モノジグリセリド、PEGエステルなどの界面活性剤で安定化させてもよい。
場合によっては、化合物1を、例えば、ボーラス注射などの注射または連続注入による非経口投与のために処方してもよい。注射の場合には、化合物を、植物油または他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪酸エステル、またはプロピレングリコールなどの水性または非水性溶媒中にそれらを溶解、懸濁、または乳化して、必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、および防腐剤などの従来からの添加剤とともに調剤に処方してもよい。好ましくは、化合物1を、水溶液中、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液中に処方してもよい。注射用製剤を、防腐剤を添加した単位剤形、例えばアンプル容器または複数回投与容器で提供してもよい。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、または乳濁液などの形態を取ってもよく、かつ懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの薬剤を含んでもよい。
非経口投与用の製剤には、(本明細書に説明のいずれかの形態の)水溶性形態の化合物1の水溶液が含まれる。さらに化合物1の懸濁液を、適切な油性注射懸濁液として調製してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させるナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどの物質を含んでもよい。場合によっては、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。あるいは化合物1は、使用前に、無菌性の発熱物質を含まない水などの適切な媒体で構成するために粉末形態であってもよい。
全身投与はまた、経粘膜的または経皮的手段によってもよい。経粘膜的または経皮的投与の場合には、浸透させる障壁に適する浸透剤を製剤中に用いる。局所投与の場合には、化合物1を、軟膏、クリーム、膏薬、粉末、およびゲルに処方してもよい。一実施態様では、経皮送達剤はDMSOであってもよい。経皮送達システムは、例えばパッチを含んでもよい。経粘膜的投与では、浸透させる障壁に適する浸透剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は、当技術分野では一般的に知られている。本発明で使用できる例示的な経皮送達製剤には、米国特許第6,589,549号;6,544,548号;6,517,864号;6,512,010号;6,465,006号;6,379,696号;6,312,717号;および6,310,177号に説明の製剤が挙げられ、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
前述の製剤に加えて、化合物1はまた、デポー調製物として処方されてもよい。この長時間作用型の製剤は、(例えば皮下または筋肉内への)埋込みまたは筋肉内注射によって投与してもよい。従って例えば化合物1は、(例えば、許容可能な油中の乳濁液として)適切なポリマー材料または疎水性材料またはイオン交換樹脂とともに、あるいは、例えば、難溶性複合体または塩として難溶性誘導体とともに処方されてもよい。
医薬組成物はまた、適切な固相またはゲル相の担体または賦形剤を含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例として、限定はされないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
V.医薬品剤形
本開示は、化合物1またはその薬学的に許容される形態の新規の医薬剤形を含む。本明細書に説明の剤形は、対象への経口投与に適している。この剤形は、限定はされないが、カプセルまたは錠剤を含む経口投与に適するいずれの形態であってもよい。
実施態様によっては、本開示は、以下の式またはその結晶形態を有する5~50 mgの化合物1(ベキサグリフロジン)を含有する単一単位剤形のカプセルまたは錠剤形態を提供する。
実施態様によっては、化合物1の量は、約10~20 mgである。実施態様によっては、化合物1の量は、約15 mgである。
実施態様によっては、化合物1の単一単位剤形はカプセルである。実施態様によっては、化合物1の単一単位剤形は錠剤である。
実施態様によっては、単一単位剤形は、0、1、2、3、4、または5号サイズのカプセルである。実施態様によっては、単一単位剤形は4号サイズのカプセルである。実施態様によっては、単一単位剤形は5号サイズのカプセルである。
VI.キット
化合物1の医薬組成物およびその剤形を含むキットもまた本明細書に提供される。
側面によっては、本発明は化合物1を含むキットを提供する。本明細書に説明のいくつかのキットは、化合物1を投与する方法を説明するラベルを含む。本明細書に説明のいくつかのキットは、ネコの糖尿病を管理する方法を説明するラベルを含む。実施態様によっては、本明細書に説明のキットは、ネコの血清フルクトサミン濃度および/または血糖値または血清ブドウ糖濃度を低下させる方法を説明するラベルを含む。
本発明の組成物は、限定はされないが、ボトル、ジャー、バイアル、アンプル、管、または米国食品医薬品局(FDA)または他の規制当局によって承認された他の密閉容器システム内に化合物1を含む組成物を含み、これら容器は、この化合物を含む1つ以上の用量を提供してもよい。この封入物または分配物には、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態で、容器に関連する通知が添付されていてもよく、この通知は政府機関による承認を示している。特定の側面では、キットは、本明細書に説明の製剤または組成物、製剤または製剤を含む投与単位形態を含む密閉容器システム、および本明細書に説明の使用方法を説明する通知または指示を含んでもよい。
以下の実施例は、例示の目的で提供されていて、いかなる方法においても本発明を限定することを意図するものではない。当業者なら、変更または修正しても本質的に同一の結果をもたらし得る様々な重要ではないパラメータについては容易に識別できる。
実施例1.糖尿病のマウスでのベキサグリフロジンの効果
検討350において、(2:1のプロリン:ベキサグリフロジン共結晶としての)ベキサグリフロジンの効果を、遺伝的な糖尿病を持つdb/dbマウスで調べた。血糖値を、血糖値計(One Touch Ultra Johnson & Johnson (LifeScan)「血糖監視システム」Blood Glucose Monitoring System)を用いて測定した。一般的に、血液は尾に切り傷を入れて採取した。血糖値が血糖値計の定量上限である33.3 mmol/Lを超えた場合には、眼窩神経叢から2滴の血液を採取し、ヘパリンを含む抗凝固性マイクロ遠心管に集めて、その後に血糖の希釈および測定を実施した。表1のベキサグリフロジンの質量は、2:1の組成物の質量の約2/3である。
これらの動物に、28日間の経管投与によって、媒体あるいはプロリン:ベキサグリフロジン共結晶を毎日投与した。動物に、毎日午前10時から午後12時の間に投与した。体重を4日毎に測定し、最新の体重に応じて用量を調整した。用量は、(1 kg体重当たり)10 mL/kgであった。全ての動物を毎日観察して、あらゆる異常な所見を記録した。血糖濃度を、-3、0、1、7、14、21、および28日目の投与後6時間に測定した。
表1に示すように、0.1 mg/kg群を除いて、全ての治療群の非空腹時血糖は、対照群と比較して1、7、14、21、および28日目では有意に低かった。ベキサグリフロジンは、投与後6時間で、db/dbマウスの非空腹時血糖値を用量に依存して低下させた。0.067、0.2、0.67、および2 mg/kgのベキサグリフロジンの28日間投与後の動物の血糖値は、それぞれ対照に対し79.74%、56.33%、51.81%、および53.25%であった。これらのデータは、ベキサグリフロジンが糖尿病マウスでは効果的な抗糖尿病薬であることを示しているが、どの用量群も非糖尿病範囲内への血糖濃度の正常化を示してはいなかった。C57/BL6系統(db/dbマウスの非糖尿病の対照系統)の空腹時マウスでは、平均の空腹時ブドウ糖は7.3 mM(131 mg/dL;Andrikopoulos et al., 2005; J Endocrinol (2005) 187:45)であると報告されている。典型的には、180 mg/dLを超える血糖値は糖尿病の兆候であると考えらる。しかしdb/dbマウスでの唯一の薬剤としてのベキサグリフロジンは、血糖値を300 mg/dL未満に低下させなかった。
実施例2.糖尿病のラットでのベキサグリフロジンの効果
検討338において、(2:1のプロリン:ベキサグリフロジン共結晶としての)ベキサグリフロジンの効果を、遺伝的な糖尿病を持つZDFラットで調べた。フッ化ナトリウムとシュウ酸カリウムを含有するCapiject管(ロット番号HA0931;Terumo Medical Corp.)中にオスのZDFラットの伏在静脈からの血液を採取し、それを用いて空腹時以外の血漿ブドウ糖濃度を測定した。血漿ブドウ糖濃度を、ヘキソキナーゼ法に基づく比色分析測定(ブドウ糖SL測定:Diagnostic Chemicals Ltd.)によって分析した。血漿試料は、分析前に製造元の指示に従って0.9%の生理食塩水で1:2に希釈する必要があった。
これらの動物に、媒体(10%のPEG400)または4個の用量濃度(0.067、0.2、0.67、および2.0 mg/kg)のうちの1種の実験化合物を、28日にわたって1日1回(午前9:00~11:00)経管によって経口投与した。体重は週に3回測定され、それに応じて投与量を調整した。食物(Purina 5008;Formulab Diet)と水の消費量を週に3回測定して、毎日の数値を推定した。代謝ケージでの採尿中に、24時間の食物と水の消費量を記録した。全ての動物を毎日観察して、あらゆる異常な所見を記録した。
7、14、および21日目に、血漿ブドウ糖濃度を決定するために伏在静脈から血液試料を採取し(Capiject ロット番号HA0931;Terumo Medical Corp.)、続いて化合物または媒体を経口投与した。
ベキサグリフロジンによる毎日の経口治療は、僅か7日で血漿ブドウ糖濃度の顕著な低下をもたらした。検討群はこの変数の群間変動を最小限とするように構成されているので、いずれの群間にも投与開始時に血漿ブドウ糖に有意差は見られなかった(F(4,45)=0.04;p=0.99)。治療の7日目には、有意に低下した血漿ブドウ糖濃度が観察され(F(4,45)=3.99;p=0.007)、ペアワイズ比較により、血漿ブドウ糖濃度は、媒体の対照と比較して、最低用量を除いて、ベキサグリフロジンを投与された全ての群でより低くなった(0.2および0.67 mg/kgではp<0.05、かつ2.0 mg/kgではp<0.01)ことが明らかになった(表2)。初期値からの低下もまた有意であり(F(4,45)=4.05;p=0.007)、追跡比較により、0.067 mg/kgのベキサグリフロジン治療群を除く全てでの低下が、媒体対照で観察された血漿ブドウ糖濃度での増加よりも有意に大きい(0.3および1.0 mg/kgでp<0.05、かつ3.0 mg/kgでp<0.01)ことが再度明らかになった(表2)。7日後に観察された血漿ブドウ糖濃度の変化は、以下の通りであった:0.067、0.2、0.67、および2.0 mg/kgのベキサグリフロジンでそれぞれ+2.8%、-16.8%、-17.1%、および-25.3%、かつ媒体参照で+9.6%。
2週間の治療後に、血漿ブドウ糖濃度の低下が観察され(F(4,45)=12.3;p<0.0001)、ペアワイズ比較により、血漿ブドウ糖濃度は、媒体対照と比較して、0.067 mg/kgのベキサグリフロジン群を除く全ての群で有意により低くなった:0.2、0.67、および2.0 mg/kgのベキサグリフロジンでp<0.01(図1および表1)。同様に、2週間の治療後の初期値からの低下もまた有意であり(F(4,45)=5.13;p=0.002)、2.0 mg/kgのベキサグリフロジンによってもたらされた低下は、媒体対照よりも有意に大きかった(p<0.01)(表2)。14日後に観察された血漿ブドウ糖濃度の変化は、0.067、0.2、0.67、2.0 mg/kgのベキサグリフロジンでそれぞれ+9.5%、-5.6%、-8.1%、および-25.1%であり、媒体対照では+17.0%であった。
同様に3週間の治療後に、血漿ブドウ糖濃度は有意に低下し(F(4,44)=7.77;p<0.0001)、血漿ブドウ糖濃度は、0.3、1.0、および3.0 mg/kgを投与されたEGT0001474群で有意により低かった(それぞれp<0.05、<0.01、および<0.01)(表2)。初期値からの低下はここでも有意であり(F(4,44)=3.36;p=0.017)、2.0 mg/kgのベキサグリフロジンによってもたらされた低下は、媒体対照よりも有意に大きかった(p<0.01)(表2)。21日後に観察された血漿ブドウ糖濃度の変化は以下の通りであった:0.067、0.2、0.67、2.0 mg/kgのベキサグリフロジンではそれぞれ+15.5%、+4.3%、+1.5%、および-15.4%、かつ媒体参照では+25.5%。0.67 mg/kgのベキサグリフロジンを投与された1匹のラットは、21日目の採血前に瀕死状態のため安楽死させた。検死の結果により、この動物は投薬の数週間前にいくつかの投薬溶液を吸引した可能性があることが示唆された。この影響は試験薬品に関連するとは見做されなかった。安楽死させた動物のデータは、7日目と14日目の分析には含んだが、21日目の分析には含まなかった(従ってF統計の分母の自由度が低下した)。
これらのデータは、ベキサグリフロジンが糖尿病のラットでは有効な抗糖尿病剤であることを示したが、いずれの用量群も、非糖尿病範囲内への血糖濃度の正常化を示さなかった。典型的には、180 mg/dLを超える血糖値は糖尿病の兆候であると考えられている。しかしZDFラットの唯一の薬剤としてのベキサグリフロジンは、血糖値を287 mg/dL未満に低下させなかった(表2)。
前述の検討が示すように、糖尿病のげっ歯動物へのベキサグリフロジンの投与は、それらの疾患の重症度を実質的に改善するが、動物を正常血糖状態に回復させず、あるいは正常範囲内の血漿ブドウ糖濃度をもたらさない。
実施例3.生体外でのネコSGLT1およびSGLT2輸送体に対するベキサグリフロジンの効果
検討5において、ネコSGLT2をコードするDNA断片を、哺乳類発現ベクターpNL715(pPB-CAG-SGLT2Cat-IRES-EGFP; Egret Pharma Shanghai, 1118 Halei Road 4F, Zhangjiang Hi-Tech Park, Shanghai China 201203)のSalI部位とHind III部位との間にウサギβ-グロビンイントロン(CAGプロモーター)とともに、サイトメガロウイルス前初期タンパク質エンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターの下流に挿入した。プラスミド発現カセットは、PiggyBacトランスポゾン逆方向末端反復配列に隣接し、強化されたGFPオープンリーディングフレームの上流に内部リボソーム侵入部位(IRES)とウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含んでいた。所望のcDNA挿入物を有するプラスミドは、制限酵素切断分析によって同定された。ネコSGLT1をコードするプラスミド(pNL717)を同様にSalI部位とHind III部位の間に挿入して、pPB-CAG-SGLT1Cat-IRES-EGFP(Egret Pharma Shanghai)を形成した。cDNAクローンのfSGLT1コード領域の891位の(アミノ酸残基297に終止コドンを形成する)C→T転位型変異を、ポリメラーゼ連鎖反応によって野生型配列に復帰させた。この復帰は、発現プラスミドに活性を回復させた。
ネコSGLT発現プラスミドDNAを、製造業者の推奨手法に従って、Lipofectamine 3000 (Thermo Fisher Corporation, Waltham, MA)を用いて、Cos-7細胞中に遺伝子導入した。遺伝子導入の24時間前に、細胞を約3×106細胞/ウェルで100 mm皿中の10mLの培地に播種して、遺伝子導入時に95%超で集密させた。遺伝子導入された細胞を、トリプシンを用いて遺伝子導入の24時間後に回収し、96ウェルのポリD-リジン被覆ScintiPlates(Perkin Elmer)のウェル当たり100 μLで、10%のFBSおよび2 mMのグルタミンとともに補充したDMEM中に播種して、その後37°Cの5% CO2雰囲気中で48時間培養した。遺伝子導入された細胞を、-195°Cで10%のDMSOを含むDMEMで凍結保存するか、あるいはメチル-α-D-[U-14C]グルコピラノシド(AMG)摂取測定によって輸送体活性を評価した。
SGLT1またはSGLT2を発現する遺伝子導入された細胞(ウェルあたり4×104細胞)を、150 μLのナトリウム緩衝液(137 mMのNaCl、5.4 mMのKCl、2.8 mMのCaCl2、1.2 mMのMgCl2、10 mMのTris/HEPES、pH 7.2)またはナトリウム不含緩衝液(137 mMのN-メチルグルカミン、5.4 mMのKCl、2.8 mMのCaCl2、1.2 mMのMgCl2、10 mMのTris/HEPES、pH 7.2)のいずれかにより2回洗浄した。50 μLの40 μCi/mLのα-メチル-D-グルコピラノシド(AMG;Perkin Elmer)を含むナトリウム不含緩衝液、または8 μCi/mLのAMG、10%のネコ血漿、およびベキサグリフロジンを所望の濃度で含む50 μLのナトリウム緩衝液のいずれかを、プレートの各ウェルに添加して、37°Cで1時間振盪しながら培養した。細胞を150 μLのリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、プレートをTopSeal(Perkin Elmer)で被覆して、AMG摂取をモデル1450のMicroBeta Triluxマイクロプレートシンチレーションカウンター(PerkinElmer Corporation)を用いて定量した。AMG摂取の結果を、GraphPad Prism(Intuitive Software for Science)を用いて分析した。IC50の計算を、勾配が可変の非線形回帰を用いて実行した。
ベキサグリフロジンは、ネコのSGLT1およびSGLT2に対して高い効力を示し、IC50値は、10%のネコ血漿の存在下でそれぞれ23.8 nMおよび412 pMであった。同族のヒト輸送体に対するその活性(Zhang et al., Pharmacological Research 63:284 2011)と比較して、ベキサグリフロジンは、ネコSGLT2に対して5倍以上、ネコSGLT1に対して235倍以上の活性があった。
例4.糖尿病でないネコでのベキサグリフロジンの効果
検討1および2において、ゼラチンカプセルに処方されたベキサグリフロジンを、健康を目的として飼育されたネコに投与し、投与後24時間にわたって尿中ブドウ糖の排泄を記録した。ネコには1回(qd)または2回(bid)(後者の場合は0時間と12時間に)のいずれかで投与した。図5に示すように、最大の糖尿は、約3 mg/kgの用量で観察され、1日2回の投与は、1日1回の投与よりも僅かに効果的であった。大量のベキサグリフロジンに曝露されたネコは、軟便および/または下痢の重症度に用量依存的な増大、および薬剤による腸のSGLT1の阻害と一致する(かつそれに起因する)影響を示した。ネコSGLT2に対する生体外での選択性が低いことを考慮すると、ネコでのベキサグリフロジンの薬理作用は、SGLT1とSGLT2の両方の阻害の結果である可能性が高いように見受けられる。
SGLT1の阻害に起因する望ましくない影響は、最大の薬力学的効果をもたらす用量より5~10倍高い用量で検出されたので、ネコSGLT1に対するベキサグリフロジンの効力はほぼ最適であるように思われる。SGLT1に対する効力がこれ以上高くなると、最大の薬力学的効果と望ましくない副作用との重複が生じる可能性がある。
ネコSGLT1に対するベキサグリフロジンの望ましい効力のさらなる証拠が、健康なネコにベキサグリフロジン15 mg/kgを1日2回(1日当たり30 mg/kg)で21日間投与された検討3で見出された。図6に示すように、糖尿と下痢の組合せによるカロリーの消耗に起因して、検討全体を通してネコの体重は減少した。投薬が終了すると、全てのネコは体重を取り戻した。糖尿病のネコは体重減少の結果として出現することが多いので、下痢の程度は、明らかに逆行するものであり治療とは両立しない。従って、最大の薬力学的効果を生み出す用量の10倍高い用量を維持することはできない。幸運にも、SGLT1に対するベキサグリフロジンの効果は、最大の薬力学的効果をもたらす用量で下痢を引き起こすほど大きくはないが、それにもかかわらず、最大有効用量の比較的低い倍数で結果として生じる腸阻害の明確な証拠を提供するのに十分に実質的な結果である。
実施例5.糖尿病のネコでのベキサグリフロジンの効果
現場での有効性検討では、i)2回の別々の(6時間以上の)空腹時の血糖測定値が250 mg/dL超であること;ii)糖尿があること;iii )フルクトサミンが450 μmol/L超(その後、試験検査室の方法の変更により360 μmol/L超に変更)であること、およびiv)(ネコの医療記録に文書化された)多尿症/多飲症、多食症、および/または体重減少のうちの1つ以上があることに基づいて、糖尿病と診断された依頼人が所有するネコを登録する。糖尿病が疑われるネコを、訪問1(0日目の前の7日以内)中に選別した。適格となるネコを、訪問2(0日目)中に登録し、管理を1日1回経口投与されるベキサグリフロジンを用いて開始した。ネコに糖尿病動物用の食餌(Purina DM、乾燥または湿潤品種のいずれか)を処方した。ネコを、訪問3(14±3日目)、訪問4(28±3日目)、および訪問5(56±3日目)中の血糖管理の評価のために診療所に戻した。治療期間は、訪問2(0日目)から訪問5(56±3日目)までとした。飼い主または調査員が予定外の訪問を必要とすると判断した場合には、その訪問のためにいつでもネコを診療所に戻すことができた。訪問2(0日目)から始まるいずれの訪問でも(2時間±15分ごとに8時間にわたって採取された血液試料の)8時間の血糖曲線測定を実施し、AlphaTRAK 2血糖計(Abbott Laboratories)を用いて血糖を測定した。血液検査および血清検査のための血液試料を、予備選別時および投薬開始後の予定された各予定の訪問中に採取した。中央検査室を使用して、血糖曲線について診療所で分析されない全ての臨床病理試料(血液、血清、および尿)を評価した。血清検査には、フルクトサミンの評価が含まれた。中央検査室での測定方法の変更により、検討過程中に正常値の上限(ULN)を356 μmol/Lから275 μmol/Lに変更した。基準範囲の変化に対応するために、データを、正常値の上限の百分率としての式によって一致させて、対数変換させた百分率を、構造化されていない共分散と固定効果としての訪問による反復測定共分散分析(ANCOVA)によって分析した。空腹時血清ブドウ糖の試験検査室の正常値の上限は155 mg/dLであった。以下のデータを、32匹のネコが56日目の訪問を完了した後に集計した。
この検討では、ベキサグリフロジンに曝露されたネコは、飼い主によって観察され、多飲症、多食症、および多尿症の改善を示した。飼い主が評価した3つの兆候のうち、多食症では改善と判断される可能性が最も低かった。ベキサグリフロジンによって誘発されたカロリーの消耗にもかかわらず、体重増加もまた頻繁に観察された。
驚くほど良好な血糖管理が、血清フルクトサミンの正常化の測定によって明らかになった。検討を完了した32匹のネコのうち、26匹は、対照検査室試験範囲の正常値の上限を下回るフルクトサミン濃度を達成した。意図された臨床用量の高い倍数でのベキサグリフロジンが低血糖を引き起こさないことを示した健康な動物での検討結果と一致して、どのネコも低血糖の症候を示さなかった。低血糖症からの解放はまた、SGLT2を遺伝的に欠損しているマウスとヒトが正常血糖性であるという所見によって予測される。
3匹のネコは血清インスリン様成長因子-1(IGF-1)の上昇を示し、先端巨大症とインスリン抵抗性糖尿病およびインスリン難治性糖尿病との既知の関連性の観点から、先端巨大症がそれら疾患の病因に寄与する可能性があると考えられた。IGF-1が上昇した3匹の全てのネコは、正常なフルクトサミン濃度を達成して検討を完了し、また4ヶ月間の安全性評価の延長期間を完了できた。先端巨大症は、その後にIGF-1濃度が最も高いネコで確認された。検討の完了後に、ネコは毎日11単位のインスリンを必要とし、臨床的には良好な経過ではなかった。
ネコの健康または体調を飼い主が評価し、あるいは獣医が評価した測定値の改善を記録したが、それら変化の多くは統計的な有意性を満たしていた。ケトン血症は、初診時に明らかである場合には、通常は検討の過程で治療した。飼い主の生活の質に対するネコの糖尿病の影響を測定するように設計された検証済みの調査機器を検討に応用して、飼い主の生活の質において統計的に有意な改善を検出した。
詳細な検討成果
それぞれのネコを、56±3日目に血糖管理を達成(または未達成)として分類した(すなわち成功/失敗)。治療の成功を、少なくとも1つの血糖変数(分析時の測定参照範囲に応じて、BGの平均値は250 mg/dL未満;またはフルクトサミンは450 μmol/L未満または360 μmol/L未満)の改善、および最終評価での十分な血糖管理の獣医による判断により定義した。表3に示すように、登録された40匹のネコのうち32匹は治療が成功したと見做された(80%)。V5の検討を続けた全てのネコは、治療が成功したと見做された。治療が失敗と見做された8匹のネコのうち、6匹はSAE後に検討から排除され、1匹は治験依頼者の要請により排除され、1匹は検討で禁止された薬剤を用いてAEを治療したために排除された。表3ではまた、正常値(最初は356 μmol/Lでその後は275 μmol/L)の上限よりも低いフルクトサミン濃度を達成したネコを集計している。
ネコでの急性糖尿病の臨床症状には、体重減少、多尿症、多飲症、および多食症が含まれる。これらの全ては、血漿ブドウ糖濃度が糖尿の腎閾値を超えた後に現れる、糖尿によるカロリーの消耗に引き続くものであると考えられている。ベキサグリフロジンは糖尿の腎閾値を低下させるので、高血糖の臨床的兆候を悪化させることが予想される。しかしながら、もしベキサグリフロジンが血漿ブドウ糖濃度の顕著な低下が達成できる程度まで糖尿を上昇させることができるのなら、正味の効果として、一旦血漿ブドウ糖濃度が正常化すれば、糸球体でのブドウ糖全体の流動を低減させることができると思われる。正常化に続いて、高血糖の臨床的兆候の重症度が軽減される可能性がある。検討群から収集されたデータでは、後者の影響が存在する可能性があることを示している。
糖尿病の臨床的兆候を評価する責任を、飼い主と治療する獣医師とに割り当てた。体重を獣医師が各訪問時に記録し、多飲症、多尿症、および多食症の兆候を、低い得点の方が好ましい評価を表す4点(0~3)の整数の得点を用いて、飼い主が各訪問時に記録した。
時間の関数としてネコの状態の測定値を提供することに加えて、定量評価を用いて、検討完了時に成功・失敗の二値による結果を提示した。体重で成功したとして得点するには、訪問5での体重が訪問2(治療開始)での体重を上回る必要があった。他の兆候で成功したとして得点するには、訪問5での飼い主の得点が訪問2での飼い主の得点よりも低くなる必要があった。
表4は、定量評価からの各ネコでの二値による結果を示す。検討から撤退したいずれのネコも、全ての項目で失敗(0)として記録された。表4の最後の行は、各列の合計、または各列の基準による成功の総数を示している。少なくとも1つの臨床的兆候(「いずれかの成功」の列)の改善は、31匹のネコで観察されたが、この数は、血糖管理を達成したことが分かったネコよりも1匹少ない。事例5は、血糖では成功であったが臨床的兆候では失敗であった。このネコでは、飼い主の得点は、各項目について全ての訪問で同一であり、体重は5.4 kgから5.1 kgに低下した。基準として体重を除くと(「体重以外の成功」の列)、30匹のネコが成功として記録された。体重以外の基準で失敗として追加されたネコは実施例4であった。このネコの場合には、各項目での最終得点と初期得点は同一であった。但し、以下の段落で説明するように、事例4と5の両方のネコは、研究開始時と定性的に比較した場合には、多飲症、多尿症、または多食症の改善を示していたと飼い主は評価していた。
ブドウ糖曲線は、投与後0、2、4、6、および8時間目に試料採取された血液の血糖測定によって構成された。対数変換させたデータを、一次自己回帰共分散構造を用いて、かつ固定効果としての訪問、時間、および時間毎の訪問、また変量効果としての時間を採用して、混合モデル反復測定であるANCOVAによって分析した。以下の図7は、95%の信頼区間で、訪問毎の各曲線の5個の測定値でのモデル調整済み最小二乗平均を示している。個々の訪問の平均値データ(以下の二次プロット)を、固定効果としての時間および一次自己回帰共分散構造を用いる反復測定であるANCOVAによって分析した。登録された40匹のネコからのデータを図8に示す。8週目では、5個の血糖測定値の平均は114.9 mg/dL(95% CI:102.8、128.4)であった。
血清フルクトサミン濃度を、予備選別時(V1)に、かつ登録後の各訪問時(V3、V4、およびV5)に中央検査室が測定した。中央検査室での測定方法の変更により、正常値の上限(ULN)を356 μmol/Lから275 μmol/Lに変更した。データを正常値の上限の百分率としての式によって調和させて、対数変換させた百分率を、非構造化共分散と固定効果としての訪問を用いる反復測定であるANCOVAによって分析した。図9は、95%の信頼区間でモデル調整済み最小二乗平均を表示する。挿入値Δは、対応する95%信頼区間でULNの百分率として表される、初期値から8週目までの最小二乗平均差を示す。8週目では、母集団の血清フルクトサミンの平均値は、正常値の上限の86.7%(95% CI:80.0%、93.9%)であった。
血清ブドウ糖濃度を、予備選別時(V1)に、かつ登録後の各訪問時(V3、V4、およびV5)に中央検査室が測定した。対数変換させたデータを、非構造化共分散と固定効果としての訪問を用いる反復測定であるANCOVAによって分析した。図10は、95%の信頼区間でモデル調整済みの最小二乗平均を表示する。挿入値は、対応する95%信頼区間での初期値から8週目までの最小二乗平均差を示す。8週目では、血清ブドウ糖の平均値は144(95% CI:127、163)であった。
ネコが通常より多くの食物を消費しているにもかかわらず飼い主が体重の減少に気付くことで、多くの場合そのネコを検討に参加させた。図11に示すように、ネコの平均体重は検討の過程にわたって増加した。56日目までに、ネコのうちの82%で体重が維持または増加しており、検討参加時から5%を超えて体重が減少したネコはいなかった。
体重をそれぞれの検討訪問時に測定した。対数変換させたデータを上述のように分析した。図11は、95%の信頼区間でモデル調整済みの最小二乗平均を示す。挿入値は、95%の信頼区間で、初期値から8週目までの最小二乗平均差を初期体重の百分率として示している。検討開始時の体重に関して母集団が不均一であるために信頼区間は広いが、ネコ1匹あたりの体重増加に対する治療効果は非常に有意であった(p<0.0001)。体重増加の効果は目覚ましく、ベキサグリフロジン誘発性糖尿によるカロリーの消耗がネコの体重減少に繋がるという予想に反している。
検討の全体を通して、飼い主は、ネコの高血糖関連の臨床的兆候について、0は優れることを表しかつ3は劣ることを表す4点の定性的得点に従って評価するように求められた。多食症、多飲症、多尿症についての評価は別々に記録された。3つの測定値全てで有意差が検出され(図12、13、および14)、飼い主が評価した多食症では、効果の程度は明らかに最小であった。ネコの多食症の兆候が悪化しているという飼い主の認識にもかかわらず、ネコの客観的な体重は増加していた。従って、ベキサグリフロジンの作用機序は糖尿によるカロリー消費を伴うにもかかわらず、高血糖関連の臨床的兆候への影響は、ベキサグリフロジンによって誘発されるカロリー損失の影響よりも顕著であった。
ネコでの先端巨大症に関連する糖尿病は、管理のために特定の課題を有する他とは別個の病因である。このような場合に典型的に出現する深刻なインスリン抵抗性を克服するには、非常に高いインスリン投与量が必要となる場合が多い。長期にわたる疾患に伴う形態的な変化に加えて、IGF-1濃度の上昇は、ネコの先端巨大症にとって特徴的な症状である。正常値の上限(92 nmol/L)を超えるIGF-1濃度を有する3匹のネコ、すなわち事例7(172 nmol/L)、事例28(100 nmol/L)、および事例30(120 nmol/L)が検討に参加した。3匹全ての事例ともV5では治療が成功と見做され、かつ合計6ヶ月の治療のための延長安全性試験を完了した。
ケトン血症およびケトアシドーシスは、血糖管理が重度に欠損した2種の症状である。利用可能なインスリンが血漿ブドウ糖の十分な低下をもたらさないので、ケトン症は、脂肪細胞がブドウ糖負荷を完全に吸収できないことに起因する。ケトン血症の測定に最も信頼できる検体としては、β-ヒドロキシ酪酸である。血清β-ヒドロキシ酪酸(β-OHB)濃度を、予備選別時(V1)に、かつ登録後の各訪問時(V3、V4、およびV5)に中央検査室が測定した。対数変換させたデータを、非構造化共分散と固定効果としての訪問を用いる混合モデル反復測定であるANCOVAによって分析した。図15は、95%の信頼区間でのモデル調整済みの最小二乗平均を示している。挿入値は、対応する95%信頼区間での初期値から8週目までの最小二乗平均差を示す。8週目で、平均血清β-ヒドロキシ酪酸濃度は1.76 mg/dL(95% CI:1.40、2.20)であり、試験検査室での正常値の上限(1.9 mg/dL)よりも低かった。最初の訪問での数値の非常に大きな信頼区間は、検討の開始時にネコが示すケトン血症の程度に観察された極端な変動を反映している。
今まで述べてきた本発明を、理解を明瞭にする目的で例示および実施例によりある程度詳細に説明してきたが、当業者なら特定の変更および修正を添付の特許請求の範囲内で実施してもよいことは分かっている。さらに、本明細書で提供されるそれぞれの参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって個別に組み込まれる場合と同じ程度に、その全体が参照によって組み込まれる。本出願と本明細書で提供される参考文献との間に矛盾が存在する場合には、本出願が優先するものとする。
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.ネコの糖尿病を管理する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50 mgの以下の式を有する化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
2.糖尿病のネコでの高血糖に関連する臨床的兆候を軽減する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
3.糖尿病のネコでの高血糖に関連する臨床的兆候を改善する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
4.ネコでの糖尿病の臨床的寛解を誘発する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
5.糖尿病のネコの血清フルクトサミン濃度を試験検査室の基準範囲の正常値の上限未満まで低下させる方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
6.血糖値の全ての測定値が10 mmol/L(180 mg/dL)の最大値と4.5 mmol/L(80 mg/dL)の最小値の範囲内に収まる血糖曲線を糖尿病のネコが有するように前記糖尿病のネコの血糖管理を改善する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
7.糖尿病のネコの体重減少を予防する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
8.試験検査室の基準範囲の正常値の上限を超えるIGF-1濃度を示すネコの糖尿病を管理する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態の1日の総用量を投与することを含む、方法。
9.IGF-1の試験検査室の基準範囲の正常値の上限は、92 nmol/Lである、上記8に記載の方法。
10.低炭水化物食および約5~50mgの化合物1を含む1日の総用量を、前記管理を必要とするネコに投与することを含む、上記1~9のいずれかに記載の方法。
11.前記低炭水化物食は、缶詰食である、上記10に記載の方法。
12.前記低炭水化物食は、糖尿病食である、上記10に記載の方法。
13.前記低炭水化物食は、ケトン食である、上記10に記載の方法。
14.前記低炭水化物食は、穀物不含食である、上記10に記載の方法。
15.前記低炭水化物食は、炭水化物の形態で40%未満のカロリーを含有する、上記10に記載の方法。
16.前記低炭水化物食は、炭水化物の形態で35%未満のカロリーを含有する、上記10に記載の方法。
17.前記低炭水化物食は、炭水化物の形態で26%未満のカロリーを含有する、上記10に記載の方法。
18.前記低炭水化物食は、炭水化物の形態で12%未満のカロリーを含有する、上記10に記載の方法。
19.ネコの糖尿病を管理する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態を含む1日の総用量を投与することを含み、
ここで、化合物1またはその薬学的に許容される形態は、錠剤、カプセル、または固形剤形の形態である、方法。
20.ネコの糖尿病を管理する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態を含む1日の総用量を投与することを含み、
化合物1またはその薬学的に許容される形態は、経口溶液の形態である、方法。
21.ネコの糖尿病を管理する方法であって、それを必要とするネコに、約5~50mgの化合物1またはその薬学的に許容される形態を含む1日の総用量を投与することを含み、
化合物1またはその薬学的に許容される形態は、薬用飼料の形態である、方法。
22.化合物1は、以下の式を有する(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールのビスプロリン複合体である、上記1~21のいずれかに記載の方法。
23.化合物1は、以下の式を有する(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-(2-シクロプロポキシエトキシ)ベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールの結晶形態である、上記1~21のいずれかに記載の方法。
24.前記1日の総用量は約10~20 mgである、上記1~23のいずれかに記載の方法。
25.前記1日の総用量は約15 mgである、上記1~23のいずれかに記載の方法。
26.化合物1は経口投与される、上記1~25のいずれかに記載の方法。
27.化合物1は1日1回投与される、上記1~26のいずれかに記載の方法。
28.化合物1は管理計画に沿って投与され、前記管理計画は少なくとも1日間持続する、上記1~27のいずれかに記載の方法。
29.化合物1は管理計画に沿って投与され、前記管理計画は少なくとも3日間継続する、上記1~27のいずれかに記載の方法。
30.化合物1は管理計画に沿って投与され、前記管理計画は少なくとも7日間持続する、上記1~27のいずれかに記載の方法。
31.化合物1は管理計画に沿って投与され、前記管理計画は少なくとも14日間持続する、上記1~27のいずれかに記載の方法。
32.化合物1は管理計画に沿って投与され、前記管理計画は少なくとも28日間持続する、上記1~27のいずれかに記載の方法。
33.化合物1は管理計画に沿って投与され、前記管理計画は1日~2ヶ月間持続する、上記1~27のいずれかに記載の方法。
34.化合物1は、前記ネコに投与される唯一の抗糖尿病薬である、上記1~33のいずれかに記載の方法。
35.化合物1の投与により前記ネコでの臨床的寛解をもたらす、上記1~34のいずれかに記載の方法。
36.化合物1は、管理の開始前に前記試験検査室の基準範囲の正常値の上限よりも高い血清フルクトサミン濃度を有する前記ネコに投与される、上記1~35のいずれかに記載の方法。
37.前記試験検査室の基準の正常値の上限は、約356 μmol/Lまたは約275 μmol/Lである、上記36に記載の方法。
38.化合物1は、管理の開始前に450 μmol/L以上の血清フルクトサミン濃度を有する前記ネコに投与される、上記1~35のいずれかに記載の方法。
39.化合物1は、管理の開始前に170 mg/dL以上の血糖値または血清ブドウ糖濃度を有する前記ネコに投与される、上記1~35のいずれかに記載の方法。
40.前記管理計画の完了後に測定される血清フルクトサミン濃度は、前記ネコで減少する、上記28~39のいずれかに記載の方法。
41.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約20%減少する、上記40に記載の方法。
42.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約30%減少する、上記40に記載の方法。
43.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約40%減少する、上記40に記載の方法。
44.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約50%減少する、上記40に記載の方法。
45.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に450 μmol/L未満である、上記40に記載の方法。
46.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に400 μmol/L未満である、上記40に記載の方法。
47.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に350 μmol/L未満である、上記40に記載の方法。
48.前記ネコの血清フルクトサミン濃度は、前記管理計画の完了後に前記試験検査室の基準範囲の正常値の上限よりも低い、上記40に記載の方法。
49.前記試験検査室の基準の正常値の上限は、約356 μmol/Lまたは約275 μmol/Lである、上記48に記載の方法。
50.前記管理計画の完了後に測定される血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記ネコで減少する、上記30~49のいずれかに記載の方法。
51.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約20%減少する、上記50に記載の方法。
52.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約30%減少する、上記50に記載の方法。
53.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約40%減少する、上記50に記載の方法。
54.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に少なくとも約50%減少する、上記50に記載の方法。
55.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に250 mg/dL未満である、上記50に記載の方法。
56.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に200 mg/dL未満である、上記50に記載の方法。
57.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に170 mg/dL未満である、上記50に記載の方法。
58.前記ネコの血糖値または血清ブドウ糖濃度は、前記管理計画の完了後に150 mg/dL未満である、上記50に記載の方法。
59.前記ネコの糖尿病は1型糖尿病である、上記1~58のいずれかに記載の方法。
60.前記ネコの糖尿病は2型糖尿病である、上記1~58のいずれかに記載の方法。
61.臨床的寛解状態にある前記ネコは、血清フルクトサミン濃度を450 μmol/L以下に維持する、上記35~60のいずれかに記載の方法。
62.臨床的寛解状態にある前記ネコは、血清フルクトサミン濃度を350 μmol/L以下に維持する、上記35~60のいずれかに記載の方法。
63.前記ネコは、少なくとも1ヶ月間臨床的寛解の状態を維持する、上記35~62のいずれかに記載の方法。
64.前記ネコは、少なくとも3ヶ月間臨床的寛解の状態を維持する、上記35~62のいずれかに記載の方法。
65.ネコの糖尿病を管理する方法であって、それを必要とするネコに、有効量のSGLT阻害剤またはその薬学的に許容される形態を投与することを含み、
ここで、前記有効量は、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大を生じさせるのに必要な用量の10%~30%以下である、方法。
66.前記有効量は、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大を生じさせるのに必要な用量の30%以下である、上記65に記載の方法。
67.前記有効量は、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大を生じさせるのに必要な用量の20%以下である、上記65に記載の方法。
68.前記有効量は、健康なネコで下痢または軟便の頻度の増大を生じさせるのに必要な用量の10%以下である、上記65に記載の方法。
69.前記健康なネコは、市販の乾燥フードの食餌を摂取している、上記65~69のいずれかに記載の方法。
70.前記有効量は、前記SGLT阻害剤の最大薬力学的効果の約90%をもたらす用量である、上記65~69のいずれかに記載の方法。