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JPH06277052A - α2,3−シアリルトランスフェラーゼ - Google Patents

α2,3−シアリルトランスフェラーゼ

Info

Publication number
JPH06277052A
JPH06277052A JP5071934A JP7193493A JPH06277052A JP H06277052 A JPH06277052 A JP H06277052A JP 5071934 A JP5071934 A JP 5071934A JP 7193493 A JP7193493 A JP 7193493A JP H06277052 A JPH06277052 A JP H06277052A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sialyltransferase
dna
cells
added
plasmid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5071934A
Other languages
English (en)
Inventor
Katsutoshi Sasaki
克敏 佐々木
Etsuyo Sasaki
悦代 佐々木
Kaoru Kawashima
薫 川島
Nobuo Hanai
陳雄 花井
Mamoru Hasegawa
護 長谷川
Tatsuya Nishi
達也 西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KH Neochem Co Ltd
Original Assignee
Kyowa Hakko Kogyo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyowa Hakko Kogyo Co Ltd filed Critical Kyowa Hakko Kogyo Co Ltd
Priority to JP5071934A priority Critical patent/JPH06277052A/ja
Publication of JPH06277052A publication Critical patent/JPH06277052A/ja
Pending legal-status Critical Current

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    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】本発明は、新規α2,3-シアリルトランスフェラ
ーゼ、該α2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードす
るcDNA、該cDNAを含有する組換え体プラスミ
ド、該組換え体プラスミドで形質転換した宿主細胞、形
質転換細胞を用いる該ポリペプチドを製造する方法、製
造した該ポリペプチドを用いて糖鎖を製造する方法、お
よび該ポリペプチドを形質転換細胞内に発現させること
により糖鎖を製造する方法。 【効果】本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼ
は、有用生理活性を有するシアリルルイスa、シアリル
ルイスx等の糖鎖とその修飾物の製造等に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規α2,3-シアリルト
ランスフェラーゼ、該α2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードするDNA、該DNAが組み込まれた組換え
体ベクターおよび該組換え体ベクターを含有する細胞な
らびにそれらの製造法に関する。さらに、該α2,3-シア
リルトランスフェラーゼを用いる糖鎖の製造法および該
α2,3-シアリルトランスフェラーゼを形質転換細胞内に
発現させることによる糖鎖の製造法に関する。さらに
は、本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼをコー
ドするDNAを用いる該α2,3-シアリルトランスフェラ
ーゼの検出法およびその生産の抑制法に関する。本発明
のα2,3-シアリルトランスフェラーゼは、シアリルルイ
スa、シアリルルイスx等の有用生理活性を有する糖鎖
とその修飾物の製造等に有用である。
【0002】
【従来の技術】大腸菌などの原核生物によって生産され
るタンパク質が糖鎖を有していないのに対し、酵母、カ
ビ、植物細胞、動物細胞等の真核生物によって生産され
るタンパク質および脂質には糖鎖が結合している場合が
多い。動物細胞の糖鎖としては、タンパク質に付加する
ものとして、タンパク質中のアスパラギン(Asn)残
基に結合するN−グリコシド結合型糖鎖(N−グリカン
とも呼ばれる)、およびセリン(Ser)またはスレオ
ニン(Thr)残基に結合するO−グリコシド結合型糖
鎖(O−グリカンとも呼ばれる)が知られている。最
近、数多くのタンパク質には糖鎖を含むある種の脂質が
共有結合しており、この脂質を介してそれらのタンパク
質は細胞膜に付着していることが明らかとなった。糖鎖
を含むこの脂質はグリコシル・ホスファチジルイノシト
ール・アンカー(glycosyl phosphatidylinositol anch
or)と呼ばれる。
【0003】他に、動物細胞の糖鎖としては、グリコサ
ミノグリカン(glycosaminoglycan)があげられる。タン
パク質とグリコサミノグリカンが共有結合している化合
物はプロテオグリカン(proteoglycan)と呼ばれる。プロ
テオグリカンの糖鎖を構成するグリコサミノグリカン
は、糖タンパク質糖鎖であるO−グリカンと構造が類似
しているが化学的には異なっている。グリコサミノグリ
カンは、グルコサミン(glucosamine) またはガラクトサ
ミン(galactosamine) とウロン酸〔但し、ケラタン硫酸
(keratan sulfate) はウロン酸を有していない〕を含む
2糖単位の繰り返し構造から成り、硫酸基が共有結合し
ている〔但し、ヒアルロン酸(hyaluronicacid) は硫酸
基を有していない〕という特徴を有している。
【0004】さらに、動物細胞の糖鎖として、糖脂質(g
lycolipid)と呼ばれる物質に含まれる糖鎖が挙げられ
る。動物細胞の糖脂質としては、糖と長鎖脂肪酸と長鎖
塩基であるスフィンゴシン(sphingosine) が共有結合し
たスフィンゴ糖脂質(sphingoglycolipid) と、糖鎖がグ
リセロールに共有結合したグリセロ糖脂質(glyceroglyc
olipid) とが知られている。
【0005】最近、糖鎖の機能については分子生物学や
細胞生物学の進歩とともに急速に解明が進んでおり、現
在までに糖鎖の多様な機能が明らかにされてきている。
血中における糖タンパク質のクリアランスに糖鎖は重要
な役割を果たしている。大腸菌に遺伝子を移入して作ら
れたエリスロポイエチン(erythropoietin)は、生体外(i
n vitro)では活性を示すが、生体内(in vivo) では急速
にクリアランス(clearance) されることが知られている
〔ドーダル(Dordal)ら:エンドクリノロジー(Endocrino
logy),116, 2293 (1985)およびブローネ(Browne)ら:コ
ールド・スプリング・ハーバー・シンポジア・オン・ク
アンティテェイティブ・バイオロジー(Cold Spr. Harb.
Symp. Quant. Biol.) 51, 693 (1986) 〕。ヒト顆粒球
・マクロファージコロニー刺激因子(human granulocyt
e-macrophage colony stimulating factor;hGM−C
SF)は、天然ではN−グリコシド結合型糖鎖を2本持
っているが、糖鎖の本数を減らすとそれに比例してラッ
ト血漿のクリアランス速度が速まることが知られている
〔ドナヒュー(Donahue) ら:コールド・スプリング・ハ
ーバー・シンポジア・オン・クアンティテェイティブ・
バイオロジー(ColdSpr. Harb. Symp. Quant. Biol.),5
1, 685 (1986) 〕。クリアランスの速度およびクリアラ
ンスされる部位は糖鎖の構造によっても変化し、シアル
酸がついたhGM−CSFは腎臓でクリアランスされる
のに対し、シアル酸を除去したhGM−CSFはクリア
ランス速度が速まり、肝臓でクリアランスされることが
知られている。ラット肝初代培養の系で各種のアスパラ
ギン結合型糖鎖生合成阻害剤存在下に生合成された、糖
鎖構造の異なるα1-acid glycoprotein について、ラッ
トの血漿中のクリアランス速度及びラット灌流液からの
クリアランス速度を調べたところ、どちらの場合も、高
マンノース型、糖鎖欠損型、ハイブリッド型、複合型
(天然型)の順でクリアランス速度が遅くなった。血栓
溶解剤としてすでに医薬品として用いられている組織型
プラスミノーゲン活性化因子(t−PA;tissue-type
plasminogen activator )の血中でのクリアランスもそ
の糖鎖の構造が大きく影響を与えることが知られてい
る。
【0006】糖鎖がタンパク質にプロテアーゼ抵抗性を
付与することが知られており、例えば、フィブロネクチ
ン(fibronectin)の糖鎖形成をツニカマイシンで阻害す
ると、得られた糖鎖欠損フィブロネクチンの細胞内タン
パク質の分解の速度が増進する。糖鎖の付加により、熱
安定性や抗凍結性が増大することも知られている。エリ
スロポイエチンやβ−インターフェロンなどにおいて
は、タンパク質の溶解性の増大に糖鎖が寄与しているこ
とが知られている。
【0007】糖鎖は、タンパク質が正しい立体構造を保
持するのにも役立っている。水泡性口内炎ウイルスの膜
結合糖タンパク質の天然に存在する2本のN−グリコシ
ド結合型糖鎖を除去すると、タンパク質の細胞表面への
輸送が阻害されるが、そのタンパク質に新たな糖鎖が付
加されるとそれが回復することが知られている。この場
合、糖鎖の除去により、ジスルフィド結合によるタンパ
ク質分子間の会合が誘起され、その結果タンパク質の輸
送が阻害されることが明らかとなった。また、新たに糖
鎖を付加すると、この会合が阻害されることによりタン
パク質の正しい立体構造が保持されるため、タンパク質
の輸送が可能になる。その際新たな糖鎖が付加される位
置については、かなりの融通性があることが示されてい
る。その反面、導入される位置によっては天然の糖鎖を
有するタンパク質の輸送をも完全に阻害する場合がある
ことも明らかとなった。
【0008】糖鎖がポリペプチド上の抗原部位をマスク
している例も知られている。hGM−CSF、プロラク
チン(prolactin) 、インターフェロン−γ、ラウシャー
(Rauscher)白血病ウィルスgp70およびインフルエンザ
ヘマグルチニン(influenza hemagglutinin) において、
ポリクローナル抗体またはペプチド上の特定の領域に対
する単クローン抗体を用いた実験から、これらタンパク
質の糖鎖が、抗体との反応を阻害していると考えられて
いる。また、糖鎖自身が糖タンパク質の活性発現に直接
かかわっている場合があることも知られており、例え
ば、黄体形成ホルモン、濾胞刺激ホルモン、絨毛性性腺
刺激ホルモン等のような糖タンパク質ホルモンの活性発
現に糖鎖が関与していると考えられている。
【0009】特開平2-227075に顆粒球コロニー刺激因子
(G−CSF;granulocyte colony-stimulating facto
r )やプロウロキナーゼ(pro-UK; pro-urokinase )等
の有用生理活性タンパク質に、組換えDNA技術を用い
て人為的に糖鎖を導入することにより、これらのタンパ
ク質の性質を改善することができることが開示されてい
る。
【0010】糖鎖の重要な機能として、糖鎖が細胞間、
タンパク質間または細胞とタンパク質間の認識現象に関
与していることが挙げられる。例えば、糖鎖の構造の違
いにより生体内でクリアランスされる場所が異なること
が知られている。最近、炎症反応に対し、特異的に血管
内皮細胞上に発現し、好中球との接着を促すタンパク質
ELAM-1のリガンドがシアリルルイスx(Sialyl-Lewis
x)と呼ばれる糖鎖〔NeuAc α2-3Galβ1-4(Fuc α1-3)G
lcNAc、NeuAc :シアル酸;Gal :ガラクトース;Fuc
:フコース;GlcNAc:N−アセチルグルコサミン〕で
あることが判明し、糖鎖自体あるいは糖鎖の修飾物が医
薬品などに利用できる可能性が出てきた〔フィリプス
(Phillips) ら:サイエンス(Science),250, 1130 (199
0)、ゲルツ(Goelz) ら:トレンズ・イン・グライコサイ
エンス・アンド・グライコテクノロジー(Trends in Gly
coscience and Glycotechnology),4, 14 (1992) 〕。一
部のTリンパ球や好中球に発現しているL-セレクチン
(L-selectin)や炎症刺激によって血小板や血管内皮細
胞の膜表面に発現するGMP-140 (P-セレクチンとも呼
ぶ)はELAM-1と同じく炎症反応に関係しており、それら
のリガンドもELAM-1のリガンドであるシアリルルイスx
(Sialyl-Lewis x)糖鎖に類似した糖鎖であることが示
唆されている〔ローゼン(Rosen) ら:トレンズ・イン・
グライコサイエンス・アンド・グライコテクノロジー(T
rends in Glycoscience and Glycotechnology),4, 1 (1
992)、ラーセン(Larsen)ら:トレンズ・イン・グライコ
サイエンス・アンド・グライコテクノロジー(Trends in
Glycoscience and Glycotechnology),4,25 (1992) 、
アルフォ(Aruffo)ら:トレンズ・イン・グライコサイエ
ンス・アンド・グライコテクノロジー(Trends in Glyco
science and Glycotechnology),4,146 (1992)〕。
【0011】炎症反応と同様に、癌の転移においても、
ELAM-1やGMP-140 は癌細胞の血管内壁への接着や癌細胞
と血小板との凝集を引き起こすことにより癌転移を促進
していることが示唆されている〔ゲルツ(Goelz) ら:ト
レンズ・イン・グライコサイエンス・アンド・グライコ
テクノロジー(Trends in Glycoscience and Glycotechn
ology),4, 14 (1992) 、ラーセン(Larsen)ら:トレンズ
・イン・グライコサイエンス・アンド・グライコテクノ
ロジー(Trends in Glycoscience and Glycotechnolog
y),4, 25 (1992) 〕。このことは転移能の高い癌細胞で
はシアリルルイスx(Sialyl-Lewis x)糖鎖の発現量が
高いという知見とも符合する〔入村(Irimura) ら:実験
医学(Experimental Medicine),6, 33 (1988)〕。
【0012】これらの知見から、シアリルルイスx(Si
alyl-Lewis x)糖鎖あるいはそれらの誘導体は、ELAM-
1、L-セレクチンまたはGMP-140 に結合することにより
優れた抗炎症効果を発揮すること、および癌転移が抑制
されることが期待される。上述の炎症反応と癌転移の機
構を考慮すると、ELAM-1、L-セレクチン、GMP-140 が認
識するリガンド糖鎖の合成を司る糖転移酵素の発現を抑
制することによっても炎症反応を抑制したり、癌転移を
防止できることが期待される。ある特定の遺伝子の発現
を抑制するには、アンチセンスRNA/アンチセンスD
NA技術〔徳久(Tokuhisa):バイオサイエンスとインダ
ストリー 50, 322 (1992) 、村上(Muakami) :化学 46,
681 (1991) 〕またはトリプル・ヘリックス (Triple h
elix) 技術〔チュブ(Chubb) とホーガン(Hogan) :トレ
ンズ・イン・バイオテクノジー(Trends in Biotechnolo
gy),10, 132 (1992)〕が有用である。このアンチセンス
RNA/DNA技術を用いて所望の糖転移酵素の発現を
抑制するには、その遺伝子あるいは遺伝子の塩基配列情
報が必要であるため、所望の糖転移酵素の遺伝子をクロ
ーン化すること、およびその塩基配列情報を解析するこ
とは重要である。
【0013】炎症性白血球や癌細胞での特定の糖転移酵
素の発現を調べることにより、炎症性疾患や癌の悪性度
を診断することもできる。所望の糖転移酵素遺伝子の発
現を調べるには、該遺伝子を放射能などで標識したもの
をプローブとするノーザンハイブリダイゼーション法
〔サンブルック(Sambrook)、フリッチ(Fritsch) 、マニ
アチス(Maniatis)(モレキュラー・クローニング:ア・
ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning, A labo
ratory manual)、第2版、コールド・スプリング・ハー
バー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Labo
ratory Press) 、1989年刊〕やポリメラーゼ・チェ
イン・リアクション法(以下、PCR法と略記する)
〔イニス(Innis) ら:PCRプロトコールズ (PCR Prot
ocols)、アカデミック・プレス(Academic Press)、1990
年刊〕が有用である。これらの手法を適用するには、所
望の糖転移酵素遺伝子あるいは遺伝子の塩基配列情報が
必要である。この点からも、所望の糖転移酵素の遺伝子
をクローン化すること、およびその塩基配列情報を解析
することは極めて重要である。
【0014】特開平2-227075に顆粒球コロニー刺激因子
(G−CSF;granulocyte colony-stimulating facto
r )やプロウロキナーゼ(pro-UK; pro-urokinase )等
の有用生理活性タンパク質に、組換えDNA技術を用い
て人為的に糖鎖を導入することにより、これらのタンパ
ク質の性質を改善することができることが開示されてい
る。
【0015】以上のように、糖タンパク質の糖鎖の構造
を改変したり、特定の糖鎖あるいはその修飾物を大量に
調製することは産業上重要な課題である。糖鎖の構造を
改変する手段については近年著しく進展している。特に
糖鎖を逐次解離してゆく特異性の高い酵素(エキソグリ
コシダーゼ)やペプチド鎖との結合点をペプチド鎖と糖
鎖の双方を変化させずに解裂させるグリコペプチダーゼ
やエンド型グリコシダーゼによって、糖鎖の構造を改変
させることができ、糖鎖の生物学的な役割についても詳
細な研究ができるようになった。さらに、最近、糖脂質
の糖鎖とセラミドの間を開裂するエンドグリコセラミダ
ーゼ(endoglycoceramidase) が見出され〔伊東と山形:
ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.
Biol. Chem.),261, 14278 (1986)〕、これにより、糖脂
質の糖鎖の調製が容易になっただけでなく、糖脂質、特
に細胞表層糖脂質の機能を解明する研究が進展した。ま
た、糖転移酵素により、新たな糖鎖を付加することも可
能となってきた。例えば、シアリルトランスフェラーゼ
により、糖鎖の末端にシアル酸を新たに付加することが
できる〔サベサン (Sabesan)とポールソン (Paulson):
ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ
ー(J. Am. Chem. Soc.),108, 2068 (1986)〕。その他種
々の糖転移酵素やグリコシダーゼの阻害剤〔アランら:
アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann
u. Rev. Biochem.),56, 497 (1097)〕を用いることによ
り、付加する糖鎖を変化させることも可能である。しか
しながら、糖鎖の合成に用いる糖転移酵素を大量に製造
する方法はない。組換えDNA技術を用いて糖転移酵素
をクローン化し、糖転移酵素を宿主細胞内で効率よく発
現させることにより、糖転移酵素を大量に製造すること
が望まれる。
【0016】これまでに糖転移酵素のクローン化法とし
ては、タンパク質を精製後、それに対する抗体を作成
し、それを用いてイムノスクリーニングを行う方法〔ワ
インスタイン(Weinstein) ら:ジャーナル・オブ・バイ
オロジカル・ケミストリー(J.Biol. Chem.),262, 17735
(1987)〕、タンパク質を精製後、アミノ酸配列を決定
し、それに対応する合成DNA作成し、それをプローブ
にハイブリダイゼーションを行う方法〔成松ら:プロシ
ーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ
・サイエンス (Proc. Natl. Acad. Sci.),USA,83, 4720
(1986) 〕が知られている。また、クローン化した糖転
移酵素の遺伝子をプローブにしてハイブリダイゼーショ
ンを行うことにより、その糖転移酵素にホモロジーのあ
る糖転移酵素の遺伝子をクローン化する方法も知られて
いる〔ロウ (John. B. Lowe)ら:ジャーナル・オブ・バ
イオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),266, 17
467(1991)〕。また、糖鎖に対する抗体やレクチンを用
いたパンニング(panning) 法をスクリーニング法として
用いる直接発現クローン化法によるクローン化も知られ
ている〔ロウ (John. B. Lowe)ら:プロシーディング・
オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス
(Proc.Natl.Acad.Sci.),USA,86,8227(1989)、ロウ (Jo
hn. B. Lowe)ら:ジーンズ・アンド・ディベラプメント
(Genes Develop.),4, 1288 (1990)〕。
【0017】レクチン耐性を指標にして糖転移酵素をク
ローン化できた例はない。CHO細胞の各種レクチン耐
性変異株に関する研究から、それらのレクチン耐性変異
株においては、新たな糖転移酵素が発現する場合、ある
糖転移酵素の活性が消失する場合、糖ヌクレオチドの合
成やゴルジ体への移行に障害がある場合があることが明
らかになっている〔スタンレー(Pamela Stanley)ら:メ
ソッド・イン・エンザイモロジー (Methods in Enzymol
ogy),96巻, 157 頁〕。したがって、CHO細胞または
CHO細胞のレクチン耐性変異株に、クローン化しよう
とする糖転移酵素を発現している細胞由来の遺伝子を導
入し、レクチン耐性を指標に糖転移酵素のクローン化が
可能と考えられる〔クマー(Ravindra Kumar)ら:モレキ
ュラー・アンド・セリュラー・バイオロジー(Mol. Cel
l. Biol.),9, 5713(1989)〕。リプカ(James Ripka) ら
は、CHO細胞のレクチン耐性変異株(Lec1)に、A4
31細胞由来のヒトのジェノミックDNAを導入し、コ
ンカナバリンAというレクチンに対する耐性化を指標に
N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIのク
ローン化を試みている。しかしながら、彼らは、このレ
クチン耐性を指標にしたスクリーニング法では糖転移酵
素をクローン化することはできなかった〔リプカ(James
Ripka) ら:バイオケミカル・アンド・バイオフィジカ
ル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem. Biophys.
Res. Commun.),159, 554 (1989)〕。またヘファーナン
らは、ポリオーマのラージT抗原を生産するようにした
CHO細胞〔ヘファーナン(Michael Heffernan) ら:ヌ
クレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Re
s.),19, 85 (1991)〕に、cDNAライブラリーを導入
後、WGA(wheat germ agglutinin )というレクチン
に対する耐性化を指標にマウスのシアル酸水酸化酵素
(sialic acid hyroxylase)のクローン化を行っている
〔ヘファーナン(Michael Heffernan) ら:グライココン
ジュゲート・ジャーナル(Glycoconjugate J.),8, 154
(1991) 〕が、このレクチン耐性を指標にしたスクリー
ニング系で糖転移酵素のクローン化ができたという報告
はない。また、宿主に関しては、スタンレー、リプカ、
ヘファーナンらはいずれもCHO細胞またはCHO細胞
のレクチン耐性変異株を宿主として用いている。
【0018】シアリルトランスフェラーゼに関しては、
βガラクトシドα2,6-シアリルトランスフェラーゼ(β
galactoside α2,6-sialyltransferase)活性を有する酵
素の遺伝子が単離されており、その塩基配列も明らかに
なっている〔ワインスタイン(Weinstein) ら:ジャーナ
ル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol.Che
m.),262, 17735 (1987)〕。βガラクトシドα2,3-シア
リルトランスフェラーゼ(βgalactoside α2,3-sialyl
transferase)活性を有する酵素に関しては、ギルスピー
(Gillespie) らが、糖タンパク質のOグリコシド結合型
糖鎖(セリンまたはスレオニン残基に付加する糖鎖)中
のガラクトースにシアル酸を付加する酵素をコードする
遺伝子のクローン化を報告しているが、その塩基配列は
明らかにされていない〔ギルスピー(Gillespie) ら:グ
ライココンジュゲート・ジャーナル (Glycoconjugate
J.),7, 469 (1990)〕。また、ワインスタイン(Weinstei
n)らは、ラット肝臓からβガラクトシドα2,3-シアリル
トランスフェラーゼ(βgalactoside α2,3-sialyltran
sferase)活性を有する酵素を精製する方法を報告してい
る〔ワインスタイン (Weinstein)ら:ジャーナル・オブ
・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),25
7, 13835 (1982)〕が、この方法では所望の酵素を極め
て少量しか得ることができない。このラット肝臓のβガ
ラクトシドα2,3-シアリルトランスフェラーゼの遺伝子
は、ウェンらによってクローン化された〔ウェン(Wen)
ら:ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー
(J. Biol. Chem.),267, 21011(1992) 〕が、ヒトのガラ
クトシドα2,3-シアリルトランスフェラーゼの遺伝子に
ついては報告はない。また、該酵素の発現を検出および
抑制する方法も知られていない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、タン
パク質の糖鎖の改変および特定の糖鎖の効率的生産を行
うことができる新規α2,3-シアリルトランスフェラーゼ
および該α2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードす
るcDNAおよび該cDNAを含有するベクターを提供
することにある。さらに、癌転移や炎症などの疾病を診
断、治療するための該α2,3-シアリルトランスフェラー
ゼの活性発現を検出する方法および該α2,3-シアリルト
ランスフェラーゼの発現を抑制する方法を提供すること
にある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、動物細胞
から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを
発現クローニングベクターに組み込むことによりcDN
Aライブラリーを構築し、該cDNAライブラリーを細
胞に導入し、得られる細胞をその細胞の増殖を抑制する
活性を有するレクチンの存在下で培養し、増殖する細胞
を単離することによりクローン化された遺伝子を宿主細
胞に導入して発現させたところ、新規なα2,3-シアリル
トランスフェラーゼを発現することを見出し、本発明を
完成させた。
【0021】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む新規α2,
3-シアリルトランスフェラーゼおよび該α2,3-シアリル
トランスフェラーゼをコードするcDNAおよび該cD
NAを含有する組換え体ベクターに関する。本発明のα
2,3-シアリルトランスフェラーゼは、βガラクトシドα
2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を有する糖転移酵
素であり、受容体である糖鎖の末端にα2→3の結合様
式でシアル酸を付加する活性を有する。また、本発明の
α2,3-シアリルトランスフェラーゼは、β1→4結合の
ラクトサミンよりもβ1→3結合のラクトサミンに対し
て転移活性の強いという特徴を有する。
【0022】本発明のα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードするDNAとしては、(a)配列番号1で示
される記載の塩基配列を含むDNA、(b)一つのアミ
ノ酸に対して複数種の遺伝暗号が存在するため、あるい
はヒトを含む動物個々に起こる自然変異などのため配列
番号1で示される塩基配列とは異なる塩基配列を含むD
NA、(c) (a)および(b) で定義されるDNAに対し
て、本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を
失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの
変異が導入されたDNA、例えば、(a) または(b) で定
義されるDNAがコードするα2,3-シアリルトランスフ
ェラーゼに対して、ハイブリダイゼーション法によって
単離できる程度に相同性を有するDNAなどを包含す
る。本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼは上記
(a) 、(b) および(c) で定義されるDNAによってコー
ドされる全てのα2,3-シアリルトランスフェラーゼを包
含する。この相同性を有するDNAとは、配列番号1で
示される記載の塩基配列を含むDNAをプローブとし
て、コロニー・ハイブリダイゼーション法あるいはプラ
ーク・ハイブリダイゼーション法を用いることにより得
られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいは
プラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用い
て、0.7 〜1.0 M のNaClの存在下で65℃でハイブリダイ
ゼーションを行った後、0.1 倍濃度から2倍濃度までの
間の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成
は、150 mM NaCl 、15 mM クエン酸ナトリウムである)
の中、65℃でフィルターを洗浄することにより同定でき
るDNAを意味する。なお、ハイブリダイゼーションの
実験法は、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラト
リー・マニュアル(Molecular Cloning, A laboratory m
anual)、第2版〔サンブルック(Sambrook)、フリッチ(F
ritsch) 、マニアチス(Maniatis)編集、コールド・スプ
リング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring
Harbor Laboratory Press) 、1989年刊〕に記載さ
れている。本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼ
は上記(a) 、(b) および(c) で定義されるDNAによっ
てコードされる全てのα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼを包含する。
【0023】以下に、本発明のα2,3-シアリルトランス
フェラーゼをコードするDNAの製造法を上記(a) で定
義されるDNAの製造法を例にして示す。動物細胞から
抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを発現
クローニングベクター(Expression Cloning Vector) に
組み込むことにより、cDNAライブラリーを構築す
る。このcDNAライブラリーを動物細胞あるいは昆虫
細胞に導入し、その細胞の増殖を抑制する活性を有する
レクチンの存在下で細胞を培養する。cDNAが導入さ
れた細胞クローンのなかに、糖転移酵素をコードする遺
伝子が発現したために、レクチンが認識する糖鎖構造が
変化し、レクチンに対する感受性を失い、レクチン存在
下で増殖する細胞クローンが現れる。この細胞を単離
し、該細胞から所望のα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードするcDNAを得る。
【0024】上記の方法で用いられる動物細胞は、本発
明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼを生産している
動物細胞であればいかなる細胞でも用いることができ
る。例えば、ヒト・メラノーマ細胞株WM266-4 (ATCC CR
L 1676) などが用いられる。これらの細胞から抽出した
mRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベク
ターは、該cDNAを組み込み発現できるベクターであ
ればいかなるものでも用いることができる。例えば、p
AMoERC3Sc等が用いられる。該ベクターにより
構築されるcDNAライブラリーを導入する動物細胞あ
るいは昆虫細胞は、該cDNAライブラリーを導入し、
発現できるものであればいかなるものでも用いることが
できる。例えば、ヒトナマルバ(Namalwa) 細胞〔細井
ら:サイトテクノロジー(Cytotechnology),1, 151(198
8) 〕等が用いられる。また、本発明で用いられるレク
チンは、宿主細胞の増殖を抑制できるものであればいか
なるものでも用いることができる。例えば、ヒママメレ
クチン120などが用いられる。レクチンは使用する宿
主細胞の該レクチンに対する耐性度を決定した後に、宿
主細胞の成育を阻止する濃度で使用する。レクチン存在
下で増殖する細胞から公知の方法、例えば、ハート法
〔ロバート・エフ・マーゴルスキー (Robert F.Margols
kee)ら:モレキュラー・アンド・セリュラー・バイオロ
ジー (Mol.Cell.Biol.),8, 2837(1988) 〕により、本発
明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードするc
DNAを含むプラスミドあるいは該cDNA部分を含む
DNA断片を回収する。本発明の酵素をコードするcD
NAを含むプラスミドとしては、例えば、pUC119-WM16
が挙げられる。pUC119-WM16 を含む大腸菌であるEscher
ichia coli HB101/pUC119-WM16は、平成4年9月22日付
で工業技術院微生物工業技術研究所にFERM BP-4012とし
て寄託されている。
【0025】上記(b) および(c) で定義されるDNAは
上記の製造法で得られるα2,3-シアリルトランスフェラ
ーゼをコードするDNAをもとに、ハイブリダイゼーシ
ョン法やDNAに変異を導入する方法などの周知の組換
えDNA技術〔特開平2-227075;モレキュラー・クロー
ニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Clo
ning, A laboratory manual)、第2版、コールド・スプ
リング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring
Harbor Laboratory Press) 、1989年刊等〕を用い
て製造することができる。また、本発明のα2,3-シアリ
ルトランスフェラーゼをコードするDNAは化学合成法
を用いても製造することができる。
【0026】上記の方法により得られる本発明のα2,3-
シアリルトランスフェラーゼをコードするDNAを適当
なベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベク
ターを造成し、それを宿主細胞に導入し、得られた細胞
を培養することにより、本発明のα2,3-シアリルトラン
スフェラーゼを製造することができる。ここで、用いら
れる宿主細胞としては、原核細胞、動物細胞、酵母、カ
ビ、昆虫細胞など、これまで組換えDNA技術で用いら
れた宿主細胞ならば、いかなる細胞でも用いることがで
きる。例えば、原核細胞としては大腸菌、動物細胞とし
てはチャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細
胞、サルの細胞であるCOS細胞、ヒトの細胞であるナ
マルバ細胞等が挙げられる。宿主としてナマルバ細胞を
用いる直接発現クローン化系は、宿主であるナマルバ細
胞へのcDNAライブラリーの導入効率が極めて高く、
しかも導入されたプラスミド(cDNAライブラリー)
は、染色体外で存在可能であり、取得したレクチン耐性
株からのプラスミドの回収が容易であるという利点を有
しているため、好適に用いられる。
【0027】本発明のα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードするDNAを導入するベクターとしては、該
α2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードするDNA
を組み込むことができ、宿主細胞で発現できるものであ
ればいかなるベクターでも用いることができる。例え
ば、pAGE107〔特開平3-22979,Miyajiら:サイト
テクノロジー(Cytotechnology),3, 133 (1990)〕,pA
S3−3(特開平2-227075),pAMoERC3Sc,
CDM8〔ブライアン・シード(Brian Seed)ら:ネイチ
ャー(Nature),329, 840 (1987)〕等が挙げられる。ま
た、大腸菌内で本発明の酵素を発現するためには、trp
プロモーターなどの強力な転写活性を有するプロモータ
ーの下流に外来DNAを挿入することができ、しかもシ
ャイン−ダルガノ (Shine-Dalgarno) 配列(以下、SD
配列と略記する)と開始コドンの間を適当な距離(例え
ば、6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いること
が好ましい。具体的には、pKYP10(特開昭58-110
600 )、pLSA1〔宮地ら:アグリカルチュラル・ア
ンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Ch
em.),53, 277 (1989) 〕、pGEL1〔関根ら:プロシ
ーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ
・サイエンス (Proc. Natl. Acad. Sci.),USA,82, 4306
(1985) 〕等が挙げられる。
【0028】本発明で用いる組換えDNA技術の一般的
手法については、特開平2-227075あるいはサンブルック
(Sambrook)、フリッチ(Fritsch) 、マニアチス(Maniati
s)らの方法〔モレキュラー・クローニング:ア・ラボラ
トリー・マニュアル(Molecular Cloning, A laboratory
manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・
ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory
Press) 、1989年刊〕に記載されている方法を用い
ることができる。mRNAの単離およびcDNAライブ
ラリーの合成は、上記の方法の他、市販されている多く
のキットを用いて行うことができる。動物細胞へのDN
Aの導入法としては、現在までに知られているいかなる
方法も用いることができる。例えば、エレクトロポーレ
ーション法〔Miyajiら:サイトテクノロジー(Cytotechn
ology),3, 133 (1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平
2-227075)、リポフェクション法〔フィリップ・エル・
フェルグナー(Philip L. Felgner)ら:プロシーディン
グ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエ
ンス (Proc.Natl.Acad.Sci.),USA,84, 7413 (1987)〕等
を用いることができる。形質転換株の取得および培養
は、特開平2-227075あるいは特開平2-257891に記載され
ている方法に準じて行うことができる。
【0029】クローン化したα2,3-シアリルトランスフ
ェラーゼの生産方法としては、宿主細胞内に生産させる
方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞
外膜上に生産させる方法がある。生産部位は、使用する
宿主細胞の種類、生産させる糖転移酵素の形によって変
わってくる。糖転移酵素をそのままの形で動物細胞を宿
主細胞として生産させる場合は、一般的に、宿主細胞内
あるいは宿主細胞外膜上に生産され、一部は、プロテア
ーゼにより切断されて細胞外に分泌される。宿主細胞外
に積極的に分泌させる場合は、ポールソンらの方法〔J.
C. Paulson ら:ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカ
ル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),264, 17619 (198
9) 〕およびロウらの方法〔John. B. Lowe ら:プロシ
ーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ
・サイエンス (Proc. Natl. Acad.Sci.),USA,86 ,8227
(1989) 、John. B. Lowe ら:ジーンズ・アンド・ディ
ベラプメント(Genes Develop.),4, 1288 (1990) 〕に
準じて遺伝子組換えの手法を用いて、糖転移酵素の活性
部位を含む部分にシグナルペプチドを付加した形で生産
させる。
【0030】特開平2-227075に記載されている方法に準
じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増
幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。この
ようにして生産させた本発明のα2,3-シアリルトランス
フェラーゼは、通常の糖転移酵素の精製方法〔J. Evan.
Sadler ら:メソッド・イン・エンザイモロジー (Meth
ods of Enzymology) 83 巻、458 頁〕に準じて精製でき
る。また、大腸菌内に生産させる場合は、上記の方法と
特開昭63-267292 に記載された方法を組み合わせること
により効率的に精製することができる。また、本発明の
酵素を他のタンパク質との融合タンパク質として生産
し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたア
フィニティークロマトグラフィーを利用して精製するこ
ともできる。例えば、ロウらの方法〔John. B. Lowe
ら:プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンス (Proc. Natl. Acad. Sci.),US
A,86, 8227 (1989) 、John. B. Lowe ら:ジーンズ・ア
ンド・ディベラプメント(Genes Develop.),4, 1288
(1990) 〕に準じて、本発明の酵素をプロテインAとの
融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用
いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製する
ことができる。また、該酵素自身に対する抗体を用いた
アフィニティークロマトグラフィーで精製することもで
きる。
【0031】シアリルトランスフェラーゼの活性は、公
知の測定法〔J. Evan. Sadler ら:メソッド・イン・エ
ンザイモロジー (Methods in Enzymology) 83 巻、458
頁;Naoyuki Tanigutiら:メソッド・イン・エンザイモ
ロジー (Methods in Enzymology) 179 巻、397 頁〕に
準じて測定する。本発明のα2,3-シアリルトランスフェ
ラーゼを用いて、イン・ビトロ(in vitro)で、糖鎖を合
成することができる。例えば、糖タンパク質、糖脂質ま
たはオリゴ糖が有するラクトサミン構造(Gal β1→3
GlcNAc構造またはGal β1→4GlcNAc構造)の非還元末
端にα2→3結合でシアル酸を付与することができる。
また、基質となる糖タンパク質、糖脂質またはオリゴ糖
に本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼを作用さ
せることにより、非還元末端の糖鎖の構造をシアリルル
イスx(Sialyl-Lewisx)構造またはシアリルルイスa
(Sialyl-Lewis a)構造にすることができる。また、非
還元末端にラクトサミン構造を有するオリゴ糖に対し
て、本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼを作用
させた後、公知のα1,3/1,4-フコシルトランスフェラー
ゼ(fucosyltransferase)〔クコウスカ−ラタロ (Kuko
wska-Latallo) ら:ジーンズ・アンド・ディベラプメン
ト(Genes Develop.), 4, 1288(1990) 〕を用いて、シ
アリルルイスx(Sialyl-Lewisx)、シアリルルイスa
(Sialyl-Lewis a)およびその修飾物を非還元末端に有
するオリゴ糖を合成することができる。
【0032】本発明のα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードするDNAを用いて、該α2,3-シアリルトラ
ンスフェラーゼの受容基質である糖鎖を生産している動
物細胞あるいは昆虫細胞の中で、該α2,3-シアリルトラ
ンスフェラーゼと有用生理活性を有する糖タンパク質、
糖脂質またはオリゴ糖とを同時に生産させることによ
り、生産されたα2,3-シアリルトランスフェラーゼを細
胞の中で糖タンパク質、糖脂質またはオリゴ糖に作用さ
せ、糖鎖構造が変化した糖タンパク質、糖脂質またはオ
リゴ糖を細胞の中で生産させることができる。
【0033】さらに、上記の方法により生産される糖鎖
構造が変化した糖タンパク質、糖脂質またはオリゴ糖か
ら公知の酵素的手法または化学的手法によりオリゴ糖の
一部を切り出すこともできる。本発明のα2,3-シアリル
トランスフェラーゼをコードするDNAは、タンパク質
や糖脂質の糖鎖の改変および特定の糖鎖の効率的生産に
用いることができるだけでなく、アンチセンスRNA/
DNA技術を用いて炎症や癌転移などの疾病の治療に利
用すること、ならびにノーザンハイブリダイゼーション
法またはPCR法を用いてそれらの疾病の診断に利用す
ることもできる。
【0034】例えば、本発明のα2,3-シアリルトランス
フェラーゼをコードするDNAを用いて、アンチセンス
RNA/DNA技術〔徳久(Tokuhisa):バイオサイエン
スとインダストリー,50, 322 - 326 (1992) 、村上(Mur
akami):化学,46, 681 - 684(1991)、ミラー(Miller):
バイオテクノロジー(Biotechnology),9, 358 - 362 (19
92) 、コーエン(Cohen) :トレンズ・イン・バイオテク
ノジー(Trends in Biotechnology),10, 87 -91 (1992)
、アグラワル(Agrawal) :トレンズ・イン・バイオテ
クノジー(Trends in Biotechnology),10, 152 -158 (19
92) 〕あるいはトリプル・ヘリックス技術〔チュブ(Chu
bb) とホーガン(Hogan) :トレンズ・イン・バイオテク
ノジー(Trends in Biotechnology),10, 132 -136 (199
2) 〕により、該α2,3-シアリルトランスフェラーゼの
活性発現を抑制することができる。具体的には、本発明
のα2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードするDN
Aの一部の塩基配列、好ましくは翻訳開始領域にある10
〜50塩基の塩基配列を基にしてオリゴヌクレオチドを設
計・調製し、生体内に投与するにより、該α2,3-シアリ
ルトランスフェラーゼの生産を抑制することができる。
合成オリゴヌクレオチドの塩基配列としては、本発明の
該α2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードするDN
Aのアンチセンス鎖の塩基配列の一部と一致するもの、
あるいは該α2,3-シアリルトランスフェラーゼの活性発
現を抑制する活性を失わない範囲内で改変したものを利
用できる。トリプル・ヘリックス技術を用いる場合、セ
ンス鎖およびアンチセンス鎖の双方の塩基配列情報をも
とに合成オリゴヌクレオチドの塩基配列を設計する。
【0035】また、ハイブリダイゼーション法またはP
CR法を用いて、本発明のα2,3-シアリルトランスフェ
ラーゼの発現を検出することができる。ノーザンハイブ
リダイゼーション法またはPCR法を用いて、本発明の
α2,3-シアリルトランスフェラーゼの生産を調べるため
には、本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼをコ
ードするDNAまたはそれらの塩基配列に基づいてDN
Aプローブまたは合成オリゴヌクレオチドを調製する。
ノーザンハイブリダイゼーション法およびPCR法は、
それぞれ公知の方法〔サンブルック(Sambrook)、フリッ
チ(Fritsch) 、マニアチス(Maniatis)(モレキュラー・
クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecul
ar Cloning, A laboratory manual)、第2版、コールド
・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold
Spring Harbor Laboratory Press) 、1989年刊およ
びイニス(Innis) ら:PCRプロトコールズ (PCR Prot
ocols)、アカデミック・プレス(Academic Press)、1990
年刊〕に従って行う。
【0036】以下、本発明の実施例を示す。
【0037】
【実施例】
実施例1 1. 直接発現クローニングベクター(Expression Cloni
ng Vector )pAMoERC3ScおよびpAMoPR
C3Scの造成:pAMoPRC3Scを以下に示す
(1) 〜 (15) の工程に従って造成した。 (1)pAGEL106の造成 (図1参照) 以下に示す方法に従って、シミアン・ウィルス (simian
virus) 40 (SV40) 初期遺伝子プロモーターとヒトT細
胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus type-
1 : HTLV-1) のロング・ターミナル・リピート(long te
rminal repeat: LTR)のR 領域とU5領域の一部を融合し
たプロモーターを有するプラスミドpAGEL106の造成を行
った。R 領域とU5領域の一部を含むDNA 断片〔BanII-Sa
u3A 断片(0.27kb)〕をpATK03から切り出し、合成リンカ
ーを介してpAGE106 のBglI-BamHI間に挿入した。
【0038】pAGE106(特開平2-227075)の1μ
g を10mMトリス−塩酸(pH7.5), 6mM 塩化マグネシウ
ム,100mM 塩化ナトリウム, 6mM 2- メルカプトエタノ
ールからなる緩衝液(以下、Y−100緩衝液と略記す
る)30μl に溶解し、10単位のBgl I (宝酒造社製、以
下、とくに断らないかぎり制限酵素は宝酒造社製のもの
を用いた)と10単位のBamHI を加え、37℃で2時間消化
反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、
約4.9kb のDNA 断片を回収した。
【0039】また、pATK03〔清水ら:プロシーデ
ィング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミィ・オブ・サ
イエンス (Proc. Natl. Acad. Sci. ),USA, 80, 3618
(1983) 〕1μg をY−100緩衝液 30 μl に溶解
し、10単位のBan IIを加え、37℃で2時間消化反応を行
い、アガロースゲル電気泳動後、約0.4kb のDNA 断片を
回収した。回収したDNA 断片は30μl のY−100緩衝
液に溶解し、10単位のSau3AIを加え37℃で2時間消化反
応を行い、アガロースゲル電気泳動後、約0.27kbのDNA
断片を回収した。
【0040】また別に、BglI切断部位と BanII切断部位
を連結するためのリンカーとして以下のDNAリンカー
を合成した。
【0041】
【化1】
【0042】このDNAリンカーの5merと6merの1本鎖
DNAはそれぞれアプライド・バイオシステムズ (Appl
ied Biosystems) 社380A・DNA合成機を用いて合
成した。合成したDNAはそれぞれ0.2 μg ずつ、50mM
トリス−塩酸(pH7.5), 10mM塩化マグネシウム,5mM ジ
チオスレイトール(以下、DTT と略記する), 0.1nMED
TA,および1mM アデノシン3リン酸(以下、ATP と略記
する)を含む緩衝液(以下、T4キナーゼ緩衝液と略記
する)40μl に溶解し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ
(宝酒造社製、以下同じ)30単位を加えて、37℃で2時
間リン酸化反応を行った。
【0043】上記で得られたpAGE106由来のBgl
I -BamHI断片(4.9kb) 0.2 μg とpATK03由来のBa
n II-Sau3A断片(0.27kb) 0.01 μg を 66mM トリス-HCl
(pH7.5), 6.6mM 塩化マグネシウム,10mM DTTおよび0.
1mM アデノシン3リン酸(以下ATP と省略)からなる液
(以下、T4リガーゼ緩衝液と略記する)30μl に溶解
し、上記DNAリンカーを0.01μg とT4DNA リガーゼ
(宝酒造社製、以下同じ)175 単位を加えて、12℃で16
時間結合反応を行った。
【0044】該反応液を用いて大腸菌HB101 株〔ボリバ
ー(Bolivar) ら:ジーン(Gene) 2,75(1988)〕をコーエ
ンらの方法〔エス・エヌ・コーエン(S.N.Cohen) ら:プ
ロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・
オブ・サイエンス (Proc. Natl. Acad. Sci. ), USA,6
9, 2110 (1972)〕(以下、大腸菌の形質転換にはこの方
法を用いる)によって形質転換し、アンピシリン耐性株
を得た。この形質転換株から公知の方法〔エイチ・シー
・バーンボイム (H.C.Birnboim) ら:ヌクレイック・ア
シッド・リサーチ (Nucleic Acids Res.),7, 1513 (197
9)〕(以下プラスミドの単離はこの方法を用いた)に従
ってプラスミドを単離した。このプラスミドをpAGE
L106と名付け、その構造を制限酵素消化により確認
した。
【0045】(2)pASLB3−3−1の造成 (図
2参照) 以下に示す方法に従って、SV40初期遺伝子プロモーター
とHTLV-1のロング・ターミナル・リピート(LTR) のR 領
域とU5領域の一部を融合したプロモーターを有する、ヒ
ト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)の発現プラスミドpA
SLB3-3-1の造成を行った。
【0046】(1)で得られたpAGEL106の 0.5
μg を10mMトリス−塩酸(pH7.5),6mM 塩化マグネシウ
ム,20mM塩化カリウム, 6mM 2- メルカプトエタノール
からなる緩衝液(以下、K−20緩衝液と略記する)30
μl に溶解し、10単位のSmaIを加え、37℃で2時間消化
反応を行った。エタノール沈殿後、30μl のT4リガー
ゼ緩衝液に溶解し、SalIリンカー(5'-pGGTCGACC-
3' :宝酒造社製)0.01μg とT4DNA リガーゼ175 単位
を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。エタノール
沈殿後、10mMトリス−塩酸(pH7.5), 6mM 塩化マグネシ
ウム,175mM 塩化ナトリウム, 6mM 2- メルカプトエタ
ノールからなる緩衝液(以下、Y−175緩衝液と略記
する)30μl に溶解し、10単位のSalIと10単位のMluIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガ
ロースゲル電気泳動後、約1.7kb のDNA 断片を回収し
た。
【0047】一方、pAS3−3(特開平2-227075)の
1μg をY−175緩衝液 30 μlに溶解し、10単位のS
alIと10単位のMluIを加え、37℃で2時間消化反応を行
った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約6.7kb
のDNA 断片を回収した。上記で得られたpAGEL10
6由来のMluI-SalI 断片(1.7kb) 0.1 μg とpAS3−
3由来のMluI-SalI 断片(6.7kb) 0.2 μg をT4リガー
ゼ緩衝液 30 μl に溶解し、T4DNA リガーゼ175 単位を
加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反応液を用
いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によって形質転
換し、カナマイシン耐性株を得た。この形質転換株から
公知の方法に従ってプラスミドを単離した。このプラス
ミドをpASLB3−3−1と名付け、その構造を制限
酵素消化により確認した。
【0048】(3)pASLB3−3の造成 (図3参
照) 以下に示す方法に従って、pASLB3-3-1にアンピシリン耐
性遺伝子を導入したプラスミドpASLB3-3の造成を行うた
め、pAS3-3のアンピシリン耐性遺伝子を含むDNA 断片
〔XhoI-MluI 断片(7.26kb)〕をpASLB3-3-1のXhoI-MluI
間に導入した。(2) で得られたpASLB3−3−1の
1μg を10mMトリス−塩酸(pH7.5),6mM 塩化マグネシウ
ム,150mM 塩化ナトリウム, 6mM 2- メルカプトエタノ
ールからなる緩衝液(以下、Y−150緩衝液と略記す
る)30μl に溶解し、10単位のXhoIと10単位のMluIを加
え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロ
ースゲル電気泳動後、約7.26kbのDNA 断片を回収した。
【0049】一方、pAS3−3の 1μg をY−150
緩衝液 30 μl に溶解し、10単位のXhoIと10単位のMluI
を加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をア
ガロースゲル電気泳動後、約2.58kbのDNA 断片を回収し
た。上記で得られたpASLB3−3−1由来のXhoI-M
luI 断片(7.26kb) 0.2μgとpAS3−3由来のXhoI-Ml
uI 断片(2.58kb) 0.1μg をT4リガーゼ緩衝液30μl
に溶解し、 T4DNAリガーゼ175 単位を加えて、12℃で16
時間結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB101
株をコーエンらの方法によって形質転換し、アンピシリ
ン耐性株を得た。この形質転換株から公知の方法に従っ
てプラスミドを単離した。このプラスミドをpASLB
3−3と名付け、その構造を制限酵素消化により確認し
た。
【0050】(4)pASLBE3−3の造成 (図4
参照) 以下に示す方法に従って、pASLB3-3中のジヒドロ葉酸還
元酵素(dhfr)発現ユニットを除去すると同時に、エプシ
ュタイン・バール・ウイルス(Epstein -Barrvirus )
の複製開始点(oriP)とoriPにトランスに作用し複製を
引き起こす因子であるEBNA-1遺伝子を導入したプラスミ
ドpASLBE3-3 の造成を以下のようにして行った。oriPと
EBNA-1遺伝子は、p201〔ビル・ズグデン(Bill Sugden)
ら、ネイチャー (Nature) ,313、812(198
5)〕のNarI部位にpUC12〔メッシング(Messi
ng) ら:メソッド・イン・エンザイモロジー (Methods
in Enzymology),101, 20 (1983) 〕由来のマルチクロー
ニングサイトを含む SmaI-HaeIII断片が組み込まれたプ
ラスミドであるp220.2から切り出して使用した。
【0051】p220.2の1μg をY−100緩衝液
30μl に溶解し、20単位のEcoRI を加え、37℃で2時間
消化反応を行った。エタノール沈殿後、30μl のDNA ポ
リメラーゼI緩衝液〔50mMトリス−塩酸(pH7.5), 10mM
塩化マグネシウム,0.1mM dATP(デオキシアデノシン3
リン酸),0.1mM dCTP(デオキシシチジン3リン酸),
0.1mM dGTP(デオキシグアノシン3リン酸),0.1mM TT
P (チミジン3リン酸)〕に溶解し、6単位の大腸菌DN
A ポリメラーゼIクレノー断片を加え、37℃で60分間反
応させ、EcoRI 消化によって生じた5’突出末端を平滑
末端に変えた。反応をフェノール抽出によって止め、ク
ロロホルム抽出とエタノール沈殿の後、20μl のT4リ
ガーゼ緩衝液に溶解し、XhoIリンカー(5'-pCCT
CGAGG-3' :宝酒造社製)を0.05μg とT4DNA リガ
ーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行っ
た。エタノール沈殿後、Y−100緩衝液30μl に溶解
し、10単位のBamHI を加え、37℃で2時間消化反応を行
った。エタノール沈殿後、30μl のDNA ポリメラーゼI
緩衝液に溶解し、6単位の大腸菌DNA ポリメラーゼIク
レノー断片を加え、37℃で60分間反応させ、BamHI 消化
によって生じた5’突出末端を平滑末端に変えた。反応
をフェノール抽出によって止め、クロロホルム抽出とエ
タノール沈殿の後、Y−100緩衝液30μl に溶解し、
10単位のXhoIを加え、37℃で2時間消化反応を行った。
該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約4.9kb のDNA
断片を回収した。
【0052】(3)で得られたpASLB3−3の1μ
g をY−100緩衝液 30 μl に溶解し、20単位XhoIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。エタノール沈殿
の後、30μl のDNA ポリメラーゼI緩衝液に溶解し、6
単位の大腸菌DNA ポリメラーゼIクレノー断片を加え、
37℃で60分間反応させ、XhoI消化によって生じた5’突
出末端を平滑末端に変えた。反応をフェノール抽出によ
って止め、クロロホルム抽出とエタノール沈殿の後、10
mMトリス−塩酸(pH7.5), 6mM 塩化マグネシウム, 6m
M 2-メルカプトエタノールからなる緩衝液(以下、Y−
0緩衝液と略記する)30μl に溶解し、20単位のKpnIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガ
ロースゲル電気泳動後、約1.3kb のDNA 断片を回収し
た。
【0053】また、pAGE107〔特願平1- 156
302、Miyajiら:サイトテクノロジー(Cytotechnolog
y),,133(1990)〕1μg をY−0緩衝液 3
0 μl に溶解し、20単位のKpnIを加え、37℃で2時間消
化反応を行った。その後、塩化ナトリウム濃度が100
mMになるように塩化ナトリウムを添加し、20単位のXh
oIを加え、さらに37℃で2時間消化反応を行った。該反
応液をアガロースゲル電気泳動後、約6.0kb のDNA 断片
を回収した。
【0054】上記で得られたp220・2由来のXhoI-B
amHI (平滑末端) 断片(4.9kb) 0.2μg とpASLB3
−3由来のXhoI (平滑末端)-KpnI 断片(1.3kb) 0.1 μ
g およびpAGE107由来のKpnI - XhoI 断片(6.0k
b) 0.2 μg をT4リガーゼ緩衝液 30 μl に溶解し、
T4DNAリガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反
応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエ
ンらの方法によって形質転換し、アンピシリン耐性株を
得た。この形質転換株から公知の方法に従ってプラスミ
ドを単離した。このプラスミドをpASLBE3−3と
名付け、その構造を制限酵素消化により確認した。
【0055】(5)pASLBCの造成 (図5参照) 以下に示す方法に従って、pASLB3-3中のhG-CSF遺伝子を
除去し、そのかわりにマルチクローニングサイトを導入
したプラスミドpASLBCを造成した。マルチクローニング
サイトは、合成DNA を用いて作製した。
【0056】(3)で得られたpASLB3−3の1 μ
g をY−175緩衝液30μl に溶解し、20単位のSalIと
20単位のMluIを加え、37℃で2時間消化反応を行った。
該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約3.1kb のDNA
断片を回収した。また、同プラスミド1 μg をY−0緩
衝液 30 μl に溶解し、20単位のKpnIを加え、37℃で2
時間消化反応を行った。その後、塩化ナトリウム濃度が
150mMになるように塩化ナトリウムを添加し、20単
位のMulIを加え、さらに37℃で2時間消化反応を行っ
た。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約6.0kb の
DNA断片を回収した。
【0057】また別に、SalI切断部位と KpnI 切断部位
を連結するためのリンカーとして以下のDNAリンカー
を合成した。なお、このリンカー中にはHindIII, EcoR
V, SfiI, StuI, NotIの各制限酵素切断部位が組み込ま
れている。
【0058】
【化2】
【0059】このDNAリンカー52mer (配列番号3)
と44mer (配列番号4)の1本鎖DNAはそれぞれアプ
ライド・バイオオシステムズ社380A・DNA合成機
を用いて合成した。合成したDNAはそれぞれ0.2 μg
ずつ、T4キナーゼ緩衝液20μl に溶解し、T4ポリヌ
クレオチドキナーゼ(宝酒造社製、以下同じ)30単位を
加えて、37℃で2時間リン酸化反応を行った。
【0060】上記で得られたpASLB3−3由来のSa
lI - MluI 断片(3.1kb) 0.1 μg と同プラスミド由来の
KpnI - MluI 断片(6.0kb) 0.2 μg をT4リガーゼ緩衝
液30μl に溶解し、上記DNAリンカーを0.01μg とT4
DNA リガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反応
を行った。該反応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエン
らの方法によって形質転換し、アンピシリン耐性株を得
た。この形質転換株から公知の方法に従ってプラスミド
を単離した。このプラスミドをpASLBCと名付け、
その構造を制限酵素消化により確認した。
【0061】(6)pASLBECの造成 (図6参
照) 以下に示す方法に従って、pASLBC中のジヒドロ葉酸還元
酵素(dhfr)発現ユニットを除去し、oriPとEBNA-1遺伝子
を導入したプラスミドpASLBEC を造成した。
【0062】pASLBE3−3の1μg をY−150
緩衝液30μl に溶解し、20単位のMluIと20単位のXhoIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガ
ロースゲル電気泳動後、約1.3kb のDNA 断片を回収し
た。また、同プラスミド1 μg をY−0緩衝液 30 μl
に溶解し、20単位のKpnIを加え、37℃で2時間消化反応
を行った。その後、塩化ナトリウム濃度が150mMに
なるように塩化ナトリウムを添加し、5 単位のMluIを加
え、さらに37℃で20分間部分消化反応を行った。該反応
液をアガロースゲル電気泳動後、約9.6kb のDNA 断片を
回収した。
【0063】次に、(5)で得られたpASLBCの1
μg をY−0緩衝液 30 μl に溶解し、20単位のKpnIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化ナ
トリウム濃度が100mMになるように塩化ナトリウム
を添加し、20単位のXhoIを加え、さらに37℃で2時間消
化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動
後、約0.6kb のDNA 断片を回収した。
【0064】上記で得られたpASLBE3−3由来の
MluI - XhoI 断片(1.3kb) 0.2 μgと同プラスミド由来
のKpnI - MluI 断片(9.6kb) 0.2 μg 、およびpASL
BC由来のKpnI - XhoI 断片(0.6kb) 0.05μg をT4リ
ガーゼ緩衝液30μl に溶解し、T4DNA リガーゼ175 単位
を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反応液を
用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によって形質
転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質転換株か
ら公知の方法に従ってプラスミドを単離した。このプラ
スミドをpASLBECと名付け、その構造を制限酵素
消化により確認した。
【0065】(7)pASLBEC2の造成 (図7参
照) 以下に示す方法に従って、pASLBEC のマルチクローニン
グサイト中のStuIサイトにBamHI リンカーを導入したプ
ラスミドpASLBEC2を造成した。pASLBEC2では、マルチク
ローニングサイト中のStuIサイトは消失している。
【0066】(6)で得られたpASLBECの1μg
をY−100緩衝液30μl に溶解し、5 単位のStuIを加
え、37℃で20分間部分消化反応を行った。該反応液をア
ガロースゲル電気泳動後、約11.5kbのDNA 断片を回収し
た。回収したDNA 断片を30μl のT4リガーゼ緩衝液に
溶解し、BamHIリンカー(5'-pCCGGATCCG
G-3' :宝酒造社製)を0.01μg とT4DNA リガーゼ175
単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。エタノ
ール沈殿後、Y−100緩衝液30μl に溶解し、20単位
のBamHI を加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反
応液をアガロースゲル電気泳動後、約11.5kbのDNA 断片
を回収した。回収したDNA 断片を20μlのT4リガーゼ
緩衝液に溶解し、T4DNA リガーゼ175 単位を加えて、12
℃で16時間結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌
HB101 株をコーエンらの方法によって形質転換し、アン
ピシリン耐性株を得た。この形質転換株から公知の方法
に従ってプラスミドを単離した。このプラスミドをpA
SLBEC2と名付け、その構造を制限酵素消化により
確認した。
【0067】(8)pAMoEC2の造成 (図8参
照) 以下に示す方法に従って、 pASLBEC2 中のプロモーター
〔SV40初期遺伝子プロモーターとHTLV-1のロング・ター
ミナル・リピート(long terminal repeat :LTR)のR 領
域とU5領域の一部を融合したプロモーター〕をモロニー
・マウス白血病ウイルスのロング・ターミナル・リピー
ト(long terminal repeat:LTR )のプロモーターにす
げかえたプラスミドpAMoEC2 の造成を行った。モロニー
・マウス白血病ウイルスLTR のプロモーターは、プラス
ミドMolp-1〔アキノリ・イシモト(Akinori Ishimoto)
ら、ビロロジー(Virology),141, 30 (1985) 〕から切り
出して使用した。
【0068】(7)で得られたpASLBEC2の1μ
g を10mMトリス−塩酸(pH7.5), 6mM 塩化マグネシウ
ム,50mM塩化カリウム, 6mM 2- メルカプトエタノール
からなる緩衝液(以下、K−50緩衝液と略記する)30
μl に溶解し、20単位のHindIII と20単位のAatII ( 東
洋紡績社製) を加え、37℃で2時間消化反応を行った。
該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約4.8kb のDNA
断片を回収した。
【0069】また、同プラスミド1 μg をK−50緩衝
液 30 μl に溶解し、20単位のAatII を加え、37℃で2
時間消化反応を行った。その後、5 単位のXhoIを加え、
さらに37℃で20分部分消化反応を行った。該反応液を
アガロースゲル電気泳動後、約6.1kb のDNA 断片を回収
した。次に、XhoI切断部位と ClaI 切断部位を連結する
ためのリンカーとして以下のDNAリンカーを合成し
た。
【0070】
【化3】
【0071】上記DNAリンカー9merと7merの1本鎖D
NAはそれぞれアプライド・バイオシステムズ社380
A・DNA合成機を用いて合成した。合成したDNAは
それぞれ0.2 μg ずつ、T4キナーゼ緩衝液40μl に溶
解し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ30単位を加えて、
37℃で2時間リン酸化反応を行った。また別に、Mol
p−1〔アキノリ・イシモト (Akinori Ishimoto) ら、
ビロロジー(Virology),141, 30 (1985) 〕1 μg をY−
50緩衝液30μl に溶解し、20単位のClaIを加え、37℃
で2時間消化反応を行った。エタノール沈殿後、30μl
のT4リガーゼ緩衝液に溶解し、上記DNAリンカー0.01
μg とT4DNA リガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間
結合反応を行った。エタノール沈殿後、K−20緩衝液
30μl に溶解し、20単位のSmaIを加え、37℃で2時間消
化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動
後、約0.6kb のDNA 断片を回収した。回収したDNA 断片
を30μl のT4リガーゼ緩衝液に溶解し、HindIII リン
カー(5'-pCAAGCTTG-3' :宝酒造社製)を0.03
μg とT4DNA リガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間
結合反応を行った。エタノール沈殿後、10mMトリス−塩
酸(pH7.5), 6mM 塩化マグネシウム,50mM塩化ナトリウ
ム, 6mM 2- メルカプトエタノールからなる緩衝液(以
下、Y−50緩衝液と略記する)30μl に溶解し、10単
位のHindIII を加え、37℃で2時間消化反応を行った。
その後、塩化ナトリウム濃度が100mMになるように
塩化ナトリウムを添加し、10単位のXhoIを加え、さらに
37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロース
ゲル電気泳動後、約0.6kb のDNA 断片を回収した。
【0072】上記で得られたpASLBEC2由来のHi
ndIII - AatII 断片(4.8kb) 0.2 μg と同プラスミド由
来のAatII - XhoI断片(6.1kb) 0.2 μg 、およびMol
p−1由来のHindIII - XhoI 断片(0.6kb) 0.05μg を
T4リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ17
5 単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反
応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によっ
て形質転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質転
換株から公知の方法に従ってプラスミドを単離した。こ
のプラスミドをpAMoEC2と名付け、その構造を制
限酵素消化により確認した。
【0073】(9)pAMoEC3の造成 (図9参
照) 以下に示す方法に従って、pAMoEC2 のマルチクローニン
グサイト中のBamHI サイトに、詰め込みDNA (Stuffer
DNA)として、pBR322のテトラサイクリン耐性遺伝子を含
むDNA 断片〔DraI -PvuII 断片(2.5kb) 〕を挿入し、プ
ラスミドpAMoEC3 を造成した。
【0074】(8)で得られたpAMoEC2の1μg
をY−100緩衝液30μl に溶解し、20単位のBamHI を
加え、37℃で2時間消化反応を行った。エタノール沈殿
後、30μl のDNA ポリメラーゼI緩衝液に溶解し、6単
位の大腸菌DNA ポリメラーゼI・クレノー断片を加え、
37℃で60分間反応させ、BamHI 消化によって生じた5’
突出末端を平滑末端に変えた。該反応液をアガロースゲ
ル電気泳動後、約11.5kbのDNA 断片を回収した。
【0075】また、pBR322〔ボリバー(Bolivar)
ら:ジーン(Gene) ,2, 95 (1977)〕1 μg をY−50緩
衝液 30 μl に溶解し、20単位のDraIと20単位のPvuII
を加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をア
ガロースゲル電気泳動後、約2.5kb のDNA 断片を回収し
た。上記で得られたpAMoEC2由来のBamHI ( 平滑
末端) 断片(11.5kb) 0.1μg とpBR322由来のDraI
- PvuII断片(2.5kb) 0.2 μg をT4リガーゼ緩衝液30
μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ175 単位を加えて、12℃
で16時間結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB
101 株をコーエンらの方法によって形質転換し、アンピ
シリンとテトラサイクリンに耐性な株を得た。この形質
転換株から公知の方法に従ってプラスミドを単離した。
このプラスミドをpAMoEC3と名付け、その構造を
制限酵素消化により確認した。
【0076】(10)pAMoERC3の造成 (図1
0参照) 以下に示す方法に従って、pAMoEC3 中のoriPとEBNA-1遺
伝子のユニットの向きを逆にしたプラスミドpAMoERC3を
造成した。
【0077】(9)で得られたpAMoEC3 の1μ
g をY−100緩衝液30μl に溶解し、20単位のXhoIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、1Mト
リス−塩酸(pH8.0) を30μl と大腸菌アルカリフォスフ
ァターゼ(宝酒造社製)1単位を加え、37℃で2時間脱
リン酸化反応を行った。エタノール沈殿後、10mMトリス
−塩酸(pH8.0), 1mM EDTA ( エチレンジアミン4酢酸
ナトリウム) からなる緩衝液(以下、TE緩衝液と略記
する)30μl に溶解し、アガロースゲル電気泳動を行な
い、約9.1kb のDNA 断片を回収した。
【0078】また、同プラスミド1 μg をY−100緩
衝液 30 μl に溶解し、20単位のXhoIを加え、37℃で2
時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気
泳動後、約4.9kb のDNA 断片を回収した。上記で得られ
たpAMoEC3由来のXhoI断片(9.1kb) 0.1 μg と同
プラスミド由来のXhoI断片(4.9kb) 0.2 μg をT4リガ
ーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ175 単位を
加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反応液を用
いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によって形質転
換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質転換株から
公知の方法に従ってプラスミドを単離した。このプラス
ミドをpAMoERC3と名付け、その構造を制限酵素
消化により確認した。
【0079】(11)pAGE207の造成 (図11
参照) 以下に示す方法に従って、pAGE107 中のG418耐性遺伝子
をハイグロマイシン(hyg) 耐性遺伝子にすげかえたプラ
スミドpAGE207 を造成した。hyg 耐性遺伝子は、p201
(ビル・ズグデン(Bill Sugden) ら、ネイチャー (Natu
re),313, 812 (1985) )より切り出して使用した。
【0080】pAGE107( 特開平3-22979)の1μg
をY−50緩衝液30μl に溶解し、20単位のClaIを加
え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化ナト
リウム濃度が150mMになるように塩化ナトリウムを
添加し、20単位のMluIを加え、さらに37℃で2時間消化
反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、
約4.6kb のDNA 断片を回収した。
【0081】p201〔ビル・スグデン (Bill Sugden)
ら:ネイチャー (Nature),313, 812 (1985) 〕0.5 μg
をY−50緩衝液30μl に溶解し、20単位のNarI〔ニュ
ー・イングランド・バイオラボ (New England Biolab)
社製〕を加え、37℃で2時間消化反応を行った。エタノ
ール沈殿後、30μl のDNA ポリメラーゼI緩衝液に溶解
し、6単位の大腸菌DNA ポリメラーゼIクレノー断片を
加え、37℃で60分間反応させ、NarI消化によって生じた
5’突出末端を平滑末端に変えた。反応をフェノール抽
出によって止め、クロロホルム抽出とエタノール沈殿の
後、20μl のT4リガーゼ緩衝液に溶解し、ClaIリンカ
ー(5'p CATCGATG3':宝酒造社製)を0.05μg
とT4DNA リガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合
反応を行った。エタノール沈殿後、Y−50緩衝液30μ
l に溶解し、10単位のClaIを加え、37℃で2時間消化反
応を行った。その後、塩化ナトリウム濃度が150mM
になるように塩化ナトリウムを添加し、10単位のMluIを
加え、さらに37℃で2時間消化反応を行った。該反応液
をアガロースゲル電気泳動後、約1.6kb のDNA 断片を回
収した。
【0082】上記で得られたpAGE107由来のClaI
- MluI 断片(4.6kb) 0.2 μg とp201由来の ClaI
- MluI断片(1.6kb) 0.1 μg をT4リガーゼ緩衝液30μ
l に溶解し、 T4DNAリガーゼ175 単位を加えて、12℃で
16時間結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB10
1 株をコーエンらの方法によって形質転換し、アンピシ
リン耐性株を得た。この形質転換株から公知の方法に従
ってプラスミドを単離した。このプラスミドをpAGE
207と名付け、その構造を制限酵素消化により確認し
た。
【0083】(12)pAGE207ScNの造成
(図12参照) ラビットβグロビン遺伝子中に存在するSfiIサイトの類
似配列を除去するため、pAGE207 のBalIサイトにScaIリ
ンカーを挿入したプラスミドpAGE207ScNを造成した。pA
GE207ScNにおいては、挿入されたScaIリンカーの数は明
らかではない。
【0084】(11)で得られたpAGE207の0.5
μg をY−0緩衝液30μl に溶解し、10単位のBalIを加
え、37℃で2時間消化反応を行った。エタノール沈殿
後、20μl のT4リガーゼ緩衝液に溶解しScaIリンカー
(5'p AAGTACTT3':宝酒造社製)を0.01μg と
T4DNA リガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反
応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエ
ンらの方法によって形質転換し、アンピシリン耐性株を
得た。この形質転換株から公知の方法に従ってプラスミ
ドを単離した。このプラスミドをpAGE207ScN
と名付け、その構造を制限酵素消化により確認した。
【0085】(13)pAMoC3Scの造成 (図1
3参照) 以下に示す方法に従って、pAMoERC3中のラビットβグロ
ビン遺伝子中に存在するSfiIサイトの類似配列を除去す
るため、 pAMoERC3 中のラビットβグロビン遺伝子を、
すでにその類似配列を除去してあるpAGE207ScN中のラビ
ットβグロビン遺伝子にすげかえ、プラスミドpAMoERC3
Scを造成した。造成の都合上、まずpAMoC3Scを造成し、
次いでpAMoERC3Scの造成を行った。前記のpAGE207ScNに
おいては、SfiIサイトの類似配列を除去するために挿入
されたScaIリンカーの数は明らかではないが、pAMoERC3
Scの場合は、造成の際にpAGE207ScNを一度ScaIで切断し
ているため、挿入されたScaIサイトの数は1 つであると
推定される。
【0086】(12)で得られたpAGE207ScN
の1μg をY−0緩衝液30μl に溶解し、20単位のKpnI
を加え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化
ナトリウム濃度が100mMになるように塩化ナトリウ
ムを添加し、20単位のScaIを加え、さらに37℃で2時間
消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動
後、約0.7kb のDNA 断片を回収した。
【0087】また、同プラスミド1μg をY−100緩
衝液 30 μl に溶解し、20単位のScaIと20単位のClaIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガ
ロースゲル電気泳動後、約0.9kb のDNA 断片を回収し
た。また、別に(10)で得られたpAMoERC3の
1μg をY−0緩衝液30μl に溶解し、20単位のKpnIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化ナ
トリウム濃度が100mMになるように塩化ナトリウム
を添加し、20単位のXhoIを加え、さらに37℃で2時間消
化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動
後、約3.2kb のDNA 断片を回収した。
【0088】次に、pAGE107(特開平2-227075)
の1μg をY−100緩衝液 30 μl に溶解し、20単位
のXhoIと20単位のClaIを加え、37℃で2時間消化反応を
行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約4.3k
b のDNA 断片を回収した。上記で得られたpAGE20
7ScN由来のKpnI -ScaI断片(0.7kb) 0.1 μgと同プ
ラスミド由来のScaI - ClaI 断片(0.9kb) 0.1 μg 、p
AMoERC3由来のKpnI - XhoI 断片(3.2kb) 0.3 μ
g 、およびpAGE107由来のXhoI - ClaI 断片(4.3
kb)0.3μg をT4リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4D
NAリガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反応を
行った。該反応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエンら
の方法によって形質転換し、アンピシリン耐性株を得
た。この形質転換株から公知の方法に従ってプラスミド
を単離した。このプラスミドをpAMoC3Scと名付
け、その構造を制限酵素消化により確認した。
【0089】(14)pAMoERC3Scの造成
(図14参照) (10)で得られたpAMoERC3の1μg をY−0
緩衝液30μl に溶解し、20単位のKpnIを加え、37℃で2
時間消化反応を行った。その後、塩化ナトリウム濃度が
150mMになるように塩化ナトリウムを添加し、20単
位のMluIを加え、さらに37℃で2時間消化反応を行っ
た。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約6.8kb の
DNA 断片を回収した。
【0090】また、同プラスミド1 μg をY−150緩
衝液 30 μl に溶解し、20単位のXhoIと20単位のMluIを
加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガ
ロースゲル電気泳動後、約1.3kb のDNA 断片を回収し
た。また別に、(3)で得られたpAMoC3Scの1
μg をY−0緩衝液30μlに溶解し、20単位のKpnIを加
え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化ナト
リウム濃度が100mMになるように塩化ナトリウムを
添加し、20単位のXhoIを加え、さらに37℃で2時間消化
反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、
約5.9kb のDNA 断片を回収した。
【0091】上記で得られたpAMoERC3由来のKp
nI -MluI断片(6.8kb) 0.2 μg と同プラスミド由来のXh
oI - MluI 断片(1.3kb) 0.05μg 、およびpAMoC3
Sc由来のKpnI - XhoI 断片(5.9kb) 0.2 μg をT4リ
ガーゼ緩衝液30μl に溶解し、T4DNA リガーゼ175 単位
を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反応液を
用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によって形質
転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質転換株か
ら公知の方法に従ってプラスミドを単離した。このプラ
スミドをpAMoERC3Scと名付け、その構造を制
限酵素消化により確認した。
【0092】pAMoERC3Scは、異種遺伝子発現
用のプロモーターとして、モロニー・マウス白血病ウイ
ルスのロング・ターミナル・リピート(long terminal
repeat)を有している。また、異種遺伝子の効率良い発
現のために、ラビットβグロビン遺伝子スプライシング
シグナル、ラビットβグロビン遺伝子ポリA付加シグナ
ルおよびSV40初期遺伝子ポリA付加シグナルが、挿
入した異種遺伝子の後ろに付加するように設計されてい
る。また、動物細胞用の薬剤耐性マーカーとしてG41
8耐性遺伝子を、大腸菌用の薬剤耐性マーカーとしてカ
ナマイシン耐性遺伝子(G418耐性遺伝子と同じも
の)とアンピシリン耐性遺伝子を有している。さらに、
エプシュタイン・バール・ウイルス(Epstein -Barr vi
rus )の複製開始点(oriP)とoriPにトランス
に作用し複製を引き起こす因子であるEBNA−1遺伝
子を有するため、ナマルバ細胞をはじめとしてゲッ歯類
を除く多くの細胞中で、染色体に組み込まれることなく
プラスミド状態で存在することができる。
【0093】pAMoERC3Scを用いたcDNAラ
イブラリーの造成は、cDNAの両末端にSfiIリン
カーを付加した後、pAMoERC3Sc中のSfiI
部位に組み込むことにより行うことができる。
【0094】(15)pAMoPRC3Scの造成
(図15参照) ナマルバ細胞のようにEBNA−1遺伝子をもともと発
現している細胞を宿主として用いる際には、プラスミド
pAMoERC3Sc中のEBNA−1遺伝子がなくて
も、宿主に導入したプラスミドは染色体に組み込まれる
ことなくプラスミド状態で存在することが可能であると
考えられる。そこで、pAMoERC3Sc中からEB
NA−1遺伝子を除去したプラスミドpAMoPRC3
Scの造成を以下のようにして行った。pAMoPRC
3Scは、pAMoERC3Scと同様にして直接発現
クローニングベクターとして使用することができる。
【0095】(14)で得られたpAMoERC3Sc
の2μg をY−50緩衝液 30 μlに溶解し、20単位のN
siI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New Engla
ndBiolabs )社製〕を加え、37℃で2時間消化反応を行
った。エタノール沈殿後、30μl のDNA ポリメラーゼI
緩衝液に溶解し、6単位の大腸菌DNA ポリメラーゼIク
レノー断片を加え、37℃で60分間反応させ、NsiI消化に
よって生じた3’突出末端を平滑末端に変えた。反応を
フェノール抽出によって止め、クロロホルム抽出とエタ
ノール沈殿の後、Y−100緩衝液 30 μl に溶解し、
20単位のNotIを加え、37℃で2時間消化反応を行った。
該反応液をアガロースゲル電気泳動後、約8.1kb のDNA
断片を回収した。
【0096】また、同プラスミド 2μg をY−100緩
衝液 30 μl に溶解し、20単位のXhoIを加え、37℃で2
時間消化反応を行った。エタノール沈殿後、30μl のDN
A ポリメラーゼI緩衝液に溶解し、6単位の大腸菌DNA
ポリメラーゼI・クレノー断片を加え、37℃で60分間反
応させ、XhoI消化によって生じた5’突出末端を平滑末
端に変えた。反応をフェノール抽出によって止め、クロ
ロホルム抽出とエタノール沈殿の後、Y−100緩衝液
30 μl に溶解し、20単位のNotIを加え、37℃で2時間
消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動
後、約3.2kb のDNA 断片を回収した。
【0097】上記で得られたpAMoERC3Sc由来
のNsiI (平滑末端) - NotI断片(8.1kb) 0.1μg と同プ
ラスミド由来のXhoI (平滑末端) - NotI断片(3.2kb) 0.
1 μg をT4リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4DNAリ
ガーゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行っ
た。該反応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方
法によって形質転換し、アンピシリン耐性株を得た。こ
の形質転換株から公知の方法に従ってプラスミドを単離
した。このプラスミドをpAMoPRC3Scと名付
け、その構造を制限酵素消化により確認した。
【0098】2.ナマルバ細胞のヒママメレクチン12
0に対する耐性度の検討 無血清培地馴化ナマルバ細胞(KJM−1株)〔細井
ら、サイトテクノロジー(Cytotechnology),1, 151 (198
8) 〕を種々の濃度のヒママメ レクチン120存在下
で培養し、KJM−1株のヒママメ レクチン120に
対する耐性度を調べた。KJM−1株をRPMI164
0・ITPSGF培地〔7.5%炭酸水素ナトリウムを1/40
量、200mM L- グルタミン溶液 (GIBCO 社製) を3%、ペ
ニシリン・ストレプトマイシン溶液 (GIBCO 社製、5000
units/ml ペニシリン、5000μg/mlストレプトマイシ
ン) を0.5%、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−
N’−2−エタンスルホン酸(N-2-hydroxyethylpipera
zine-N'-2-hydroxypropane-3-sulfonic acid; HEPES )
(10mM)、インシュリン(3 μg/ml)、トランスフェリ
ン(5 μg/ml)、ピルビン酸ナトリウム(5mM )、アセ
レン酸ナトリウム(125nM )、ガラクトース(1mg/m
l)、プルロニック(Pluronic)F68(0.1% w/v)を添
加したRPMI1640培地(日水製薬社製)〕で 5×
104 細胞/ml の濃度になるように懸濁し、96穴マイクロ
タイタープレートに200 μl ずつ分注した。そこに各種
濃度のヒママメレクチン120(生化学工業社製)を 1
/100量ずつ添加し、炭酸ガスインキュベーターで37℃で
3週間培養した。その結果、KJM−1株の成育を完全
に阻止するヒママメレクチン120の最小濃度は50ng/m
l であった。400 万個のKJM−1株について調べたと
ころ、この濃度において、ヒママメレクチン120耐性
株の自然発生的な出現は見られなかった。
【0099】3.ヒト・メラノーマ細胞であるWM266-4
細胞からのヒママメレクチン120耐性遺伝子(WM16)
のクローン化 (1)ヒト・メラノーマ細胞株であるWM266-4 細胞から
のmRNAの取得 1 ×108 個のWM266-4 細胞(ATCC CRL 1676) より、イン
ビトロジェン (Invitrogen)社製のmRNA抽出キットであ
るファーストトラック(Fast Track ;商品番号K1593-0
2) を用いて、約30μg のmRNAを取得した。具体的試薬
および方法は、キットに付与されている説明書に従っ
た。
【0100】(2)cDNAライブラリーの作製 上記で得られた mRNA の 8μg から、GIBCO BRL 社製の
キットであるcDNA合成システム(cDNA Synthesis Syste
m )を用いて、オリゴdTをプライマーとして2本鎖cD
NAを合成した。その際、逆転写酵素としてはキット中の
Moloney MurineLeukemia Virus (M-MLV) reverse trans
criptase の代わりに、同社のSuper ScriptTM RNase H
− Reverse Transcriptaseを使用した。その後、以下の
ようにして、cDNAの両末端にSfiIリンカーを付与し、ア
ガロースゲル電気泳動によりcDNAをサイズにより分画を
行い、約1.2 kb以上のcDNA断片を回収した。
【0101】
【化4】
【0102】上記SfiIリンカーの11mer (配列番号5)
と8merの1本鎖DNAはそれぞれアプライド・バイオシ
ステムズ社380A・DNA合成機を用いて合成した。
合成したDNAはそれぞれ50μg ずつ、別々にT4キナ
ーゼ緩衝液50μl に溶解し、T4ポリヌクレオチドキナ
ーゼ(宝酒造社製)30単位を加えて、37℃で16時間リン
酸化反応を行った後使用した。上記で得られた2本鎖cD
NAおよび上記でリン酸化したリンカー(11mer のものを
4μg と8merのものを2.9 μg )をT4リガーゼ緩衝液
45μl に溶解し、T4DNA リガーゼ1050単位を加えて、16
℃で16時間結合反応を行った。該反応液をアガロースゲ
ル電気泳動後、約1.2 kb以上のcDNA断片を回収した。
【0103】また、直接発現クローニングベクター(Ex
pression Cloning Vector )であるpAMoPRC3S
cの 24 μg をY−50緩衝液590 μl に溶解し、80単
位のSfiIを加え、37℃で16時間消化反応を行った。この
反応液から5 μl を取り、アガロースゲル電気泳動にか
けて切断が完了したことを確認後、cDNAライブラリー造
成時のcDNAインサートが挿入されていないクローンの量
を減少させるため、40単位のBamHI を加え、さらに37℃
で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル
電気泳動後、約 8.8kbのDNA 断片を回収した。
【0104】上記で得られたpAMoPRC3Sc由来
のSfiI断片(8.8kb) 2 μg と上記で精製したcDNAをT4
リガーゼ緩衝液 250μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ2000
単位を加えて、16℃で16時間結合反応を行った。その
後、トランスファーRNA(tRNA)5 μg を添加し、エ
タノール沈殿後、TE緩衝液20μl に溶解した。該反応
液を用いて大腸菌LE392株〔マニアティス (Maniat
is) ら編集:モレキュラー・クローニング (Molecular
Cloning), 2.58 ,Cold Spring Harbor 1989 年刊行〕
をエレクトロポーレーション法〔ウイリアム・ジェイ・
ドゥワー (William J.Dower)ら:ヌクレイック・アシッ
ド・リサーチ (Nucleic Acids Res.) ,16,6127
(1988)〕により形質転換し、約26万個のアンピシ
リン耐性株を得た。
【0105】(3)α2,3-シアリルトランスフェラーゼ
cDNA(WM16)のクロ−ン化 (2) で得られた約26万個のアンピシリン耐性株(cDNAラ
イブラリー)を混合した後、キィアジェン (Qiagen) 社
製のプラスミド調製キットである>plasmid<maxi kit (
商品番号 41031)を用いてプラスミドを調製した。取得
したプラスミドはエタノール沈殿後、1 μg/μl になる
ようにTE緩衝液に溶解した。
【0106】上記プラスミドは、エレクトロポーレーシ
ョン法〔Miyajiら:サイトテクノロジー(Cytotechnolog
y)、、133(1990)〕により、KJM−1株に
導入した。1.6 × 106細胞あたり4 μg のプラスミドを
導入した後、8ml のRPMI1640・ITPSGF培
地に懸濁し、炭酸ガスインキュベーターで37℃で24時間
培養した。その後、G418( ギブコ社製)を0.5mg/mlにな
るように添加して、さらに7日培養し、形質転換株を得
た。得られた形質転換株は、ヒママメレクチン120(
50ng/ml ) が含まれたRPMI1640・ITPSGF
培地で 5×104細胞/ml になるように懸濁し、96穴マイ
クロタイタープレートに200 μl ずつ分注した。
【0107】炭酸ガスインキュベーター中で37℃で4週
間培養した後、ヒママメレクチン120耐性株を取得し
た。その耐性株を培養した後、約 5×106 の細胞からハ
−ト法〔ロバート・エフ・マーゴルスキー (Robert F.M
argolskee)ら:モレキュラー・アンド・セリュラー・バ
イオロジー (Mol. Cell. Biol.),8, 2837 (1988)〕によ
りプラスミドを回収した。回収したプラスミドは、エレ
クトロポーレーション法〔ウイリアム・ジェイ・ドゥワ
ー (William J.Dower)ら:ヌクレイック・アシッド・リ
サーチ (Nucleic Acids Res.),16, 6127 (1988) 〕によ
り大腸菌LE392株に導入し、アンピシリン耐性株を
取得した。その形質転換株よりキィアジェン (Qiagen)
社製のプラスミド調製キットを用いてプラスミドを調製
し、その構造を各種制限酵素で切断して調べたところ、
約2.2kb のcDNAを含んでいることが明らかとなった。こ
のcDNAを含むプラスミドをpAMoPRWM16と名付
け、これを上記と同様の方法で再度KJM−1株に導入
したところ、再びヒママメレクチン120耐性となった
ことから、このcDNAがα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードするcDNAであると推定される。
【0108】4.α2,3-シアリルトランスフェラーゼcD
NA(WM16)の塩基配列の決定 (1)α2,3-シアリルトランスフェラーゼcDNA(WM16)
のpUC119への組み込み(図16参照) 3項(3) で得られたpAMoPRWM16の2μg をY
−100緩衝液50μlに溶解し、30単位のEcoRV および3
0単位のAsp718〔ベーリンガー・マンハイム(Boehringer
Mannheim) 社製〕を加え、37℃で2時間消化反応を行
った。エタノール沈殿後、30μl のDNA ポリメラーゼI
緩衝液に溶解し、6単位の大腸菌DNA ポリメラーゼIク
レノー断片を加え、37℃で60分間反応させ、Asp718消化
によって生じた5’突出末端を平滑末端に変えた。該反
応液をアガロースゲル電気泳動後、約2.3kb のDNA 断片
を回収した。
【0109】また、pUC119〔メッシング(Messin
g) ら:メソッド・イン・エンザイモロジー (Methods i
n Enzymology),153, 3 (1987) 〕の1 μg をY−10
0緩衝液30μl に溶解し、20単位のHincIIを加え、37℃
で2時間消化反応を行った。その後、1Mトリス−塩酸
(pH8.0) を30μl と大腸菌アルカリフォスファターゼ
(宝酒造社製)1単位を加え、37℃で2時間脱リン酸化
反応を行った。エタノール沈殿後、TE緩衝液30μl に
溶解し、アガロースゲル電気泳動を行ない、約3.16kbの
DNA 断片を回収した。
【0110】上記で得られたpAMoPRWM16由来
のEcoRV - Asp718(平滑末端)断片(2.3kb) 0.05μg と
pUC119由来のHincII断片(3.16kb) 0.05 μg をT
4リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ175
単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反応
液を用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によって
形質転換し、アンピシリン耐性株を得た。これらの形質
転換株から公知の方法に従ってプラスミドを単離した。
その結果、pAMoPRWM16由来のEcoRV- Asp718
(平滑末端)断片のpUC119中での向きが異なる2
種のプラスミドを単離され、それぞれのプラスミドをp
UC119−WM16およびpUC119−WM16R
と名付け、その構造を制限酵素消化により確認した。
【0111】(2)塩基配列決定用欠失変異プラスミド
(デレーションプラスミド)の造成 上記(1) で得られたpUC119−WM16の2 μg お
よびpUC119−WM16Rの 2μg をそれぞれY−
0緩衝液30μl に溶解し、50単位のKpnIを加え、37℃で
16時間消化反応を行った。その後、塩化ナトリウム濃度
が100mMになるように塩化ナトリウムを添加し、40
単位のNotIを加え、さらに37℃で2時間消化反応を行っ
た。エタノール沈殿後、Exo III 緩衝液(宝酒造社製の
キロシークエンス用デレーションキットに添付されてい
る)100 μl に溶解した。エタノール沈殿後、Exo III
緩衝液100 μl に溶解した。
【0112】上記で得られたpUC119−WM16由
来の KpnI - BamHI 断片およびpUC119−WM16
R由来の KpnI - BamHI 断片より、宝酒造社製のキロシ
ークエンス用デレーションキットを用いてそれぞれ数十
種の欠失変異プラスミドを作製した。具体的な試薬およ
び方法は、キットに付与されている説明書に従った。上
記で得られたデレーションプラスミドの塩基配列は、ア
プライド・バイオシステムズ社の塩基配列決定キット
(Taq DyeDeoxyTM Terminator Cycle Sequencing Kit;
商品番号401113)を用いて決定した。決定した塩基配列
を、配列番号1に示した。その結果、α2,3-シアリルト
ランスフェラーゼcDNA(WM16)は、375アミノ酸からな
るタンパク質をコードしていることが明らかになった。
またそのアミノ酸配列より、このタンパク質がグリコシ
ルトランスフェラーゼ(GT)に共通な構造を有すること
が明らかになった。すなわち、N末端の8アミノ酸を細
胞質側に出し、それに続く20アミノ酸からなる疎水性
に富む領域で膜に結合し、残りの大半のC末端部分(触
媒部位を含む)をゴルジ体内腔に露出するといった構造
をとっていると考えられる。
【0113】5.α2,3-シアリルトランスフェラーゼ遺
伝子発現プラスミドを導入したKJMー1株のα2,3-シ
アリルトランスフェラーゼ活性の測定 上記で得られたプラスミドpAMoPRC3Scおよび
pAMoPRWM16をキィアジェン (Qiagen) 社製の
プラスミド調製キットである>plasmid<maxi kit ( 商品
番号 41031)を用いて調製した。取得したプラスミドは
エタノール沈殿後、1 μg/μl になるようにTE緩衝液
に溶解した。その後、両プラスミドを、エレクトロポー
レーション法〔Miyajiら:サイトテクノロジー(Cytotec
hnology),3, 133 (1990)〕により、それぞれナマルバK
JM−1株に導入した。1.6 ×10 6 細胞あたり4 μg の
プラスミドを導入後、8ml のRPMI1640・ITP
SGF培地に懸濁し、炭酸ガスインキュベーターで37℃
で24時間培養した。その後、G418( ギブコ社製)を0.5m
g/mlになるように添加して7日間培養した。その後、22
mlのRPMI1640・ITPSGF培地(0.5mg/mlの
G418を含む)を添加し、さらに5日間培養し形質転換株
を得た。取得した形質転換株は、それぞれG418を0.5mg/
ml含むRPMI1640・ITPSGF培地30mlに5 ×
104 細胞/mlになるように懸濁し、炭酸ガスインキュベ
ーターで37℃で8日間培養した。その後、遠心(160 ×
g、10分間)により細胞を集め、PBS〔8g/l 塩化ナ
トリウム、0.2g/l 塩化カリウム、1.15g/l 無水リン酸
1水素ナトリウム、0.2g/lリン酸2水素カリウム〕10ml
で洗浄後、再度遠心して細胞を集めた。集めた細胞は使
用するまで -80℃で保存した。
【0114】上記で得られた2種類の細胞約1.0 ×107
個に対して、それぞれ50μl の1%トライトン X-100を加
えて懸濁した後、超音波破砕機(Bioruptor ;COSMO BI
O 社製)を用いて細胞を破砕し、遠心(550 × g、10分
間)により、上清を取得した。
【0115】上記で得られた2種類の上清のそれぞれ10
μl を用いて最終容量30μl のアッセイ溶液〔 0.1M カ
コジル酸- 塩酸 (pH7.5), 0.01M 塩化マンガン, 0.45%
トライトンX-100, 0.1mM基質, 5mM CMP- シアル酸 (添
加あるいは無添加) 〕中で、37℃、2 時間反応させた
後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて
生産物を同定することによりそれぞれの上清中のα2,3-
シアリルトランスフェラーゼ活性を測定した。活性測定
に用いた上清のタンパク質の定量は BCA ProteinAssay
Reagent ( PIERCE社製 )を用いて行った。基質として
はアミノピリジンで蛍光標識した糖鎖〔Gal β1-4GlcNA
c β1-3 Gal β1-4Glc (LNT)−アミノピリジンおよびGa
l β1-3GlcNAc β1-3 Gal β1-4Glc (LNnT) −アミノピ
リジン〕を用いた。基質の蛍光標識は、ラクト−N−テ
トラオースおよびラクト−N−ネオテトラオース〔いず
れもオックスフォード・グライコシステムズ社製〕を用
いて、常法〔Akihiro Kondo ら:アグリカルチュラル・
アンド・バイオロジカル・ケミストリー (Agric. Biol.
Chem.) , 54, 2169 (1990) 〕に従って行った。それぞ
れの上清について、糖供与体であるCMP-シアル酸を含む
アッセイ溶液と含まないアッセイ溶液を用いてされぞれ
を反応させた後、反応液をそれぞれHPLCで分離し、
CMP-シアル酸を含むアッセイ溶液でのみ出現するピーク
を生成物とした。反応の終了したアッセイ溶液は、100
℃で5 分処理後、10000 × gで10分間遠心分離し、その
上清のうち10μl をHPLCに供した。HPLCは、T
SKgel ODS- 80TMカラム(4.6mm ×30cm;
東ソー社製)を使用し、0.02M 酢酸アンモニウム緩衝液
(pH4.0)を用いて溶出温度50℃、流速 1ml/ 分で溶出を
行った。生成物の検出は、島津製作所製の蛍光検出(Fl
uorescence HPLC MonitorRF-535T )を用いて行った
(励起波長320nm 、放射波長400nm )。生成物の同定
は、シアリルラクト−N−ネオテトラオースc( NeuAc
α2-6Galβ1-4GlcNAc β1-3 Gal β1-4Glc;生化学工
業)あるいはシアリルラクト−N−ネオテトラオースa
( NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAc β1-3 Gal β1-4Glc)あ
るいはシアリルラクト−N−テトラオースa(NeuAc α
2-3Galβ1-3GlcNAc β1-3 Gal β1-4 Glc ;生化学工
業)を同様にしてアミノピリジル化したものをスタンダ
ードとして用い、これらと溶出時間を比較すること、お
よび生成物をシアリダーゼ処理した際に基質が再生成す
ることより行った。生成物の定量は、同様にしてアミノ
ピリジル化したラクトースをスタンダードとして用い、
蛍光強度を比較することにより行った。その結果、図1
7に示すようにラクト−N−ネオテトラオースを基質と
した際には、生成物としてピーク1とピーク2が検出さ
れた。スタンダードと溶出時間が一致すること、および
生成物をシアリダーゼ処理した時に基質が再生成するこ
とから、ピーク1が NeuAcα2-6Galβ1-4GlcNAc β1-3
Gal β1-4Glc- アミノピリジンで、ピーク2は NeuAcα
2-3Galβ1-4GlcNAc β1-3 Gal β1-4Glc- アミノピリジ
ンであることが明らかとなった。また、図18に示すよ
うにラクト−N−テトラオースを基質とした際には、生
成物としてピーク3が検出された。ピーク3は、スタン
ダードと溶出時間が一致すること、および生成物をシア
リダーゼ処理した時に基質が再生成することから、NeuA
c α2-3Galβ1-3GlcNAc β1-3Gal β1-4Glc- アミノピ
リジンであることが明らかとなった。生成物のシアリダ
ーゼ処理は以下のようにして行った。酵素反応後の上清
30μl をHPLCにかけてピーク1、ピーク2あるいは
ピーク3をそれぞれ分取し、凍結乾燥後、20mMトリス-
マレイン酸 (pH6.0), 1mMクエン酸カルシウムからなる
緩衝液50μl に溶解した。ついで、その溶解液20μl に
400mU/ml シアリダーゼ(neuraminidase,シグマ社製,
N-2133)を2 μl 加え、37℃で16時間反応を行った。ま
た、コントロールとして、シアリダーゼの代わりに水を
2 μl 加え、同様に反応を行った。反応の終了した溶液
は、100 ℃で5 分処理後、10000 × gで10分間遠心分離
し、その上清10μl を前述のHPLCに供した。
【0116】生成物量とともに、本発明のα2,3-シアリ
ルトランスフェラーゼのLNT に対する活性を100 とした
ときのLNnTに対する相対活性を第1表に示した。また、
これまでにラットより精製が報告されている公知のα2,
3-シアリルトランスフェラーゼのLNT に対する活性を10
0 としたときのLNnTに対する相対活性〔ワインスタイン
(Weinstein) ら:ジャーナル・オブ・バイオロジカル・
ケミストリー(J. Biol. Chem.),257, 13845 (1982)〕を
第1表に合わせて示した。
【0117】
【表1】
【0118】pAMoPRWM16を導入したKJM−
1株では、ベクターであるpAMoPRC3Scを導入
したKJM−1株に比較して、ラクト−N−テトラオー
スを基質とした際のα2,3-シアリルトランスフェラーゼ
活性が非常に増大した。また、ラクト−N−ネオテトラ
オースを基質とした際のα2,3-シアリルトランスフェラ
ーゼ活性に関しても、pAMoPRWM16を導入した
KJM−1株では、ベクターであるpAMoPRC3S
cを導入したKJM−1株に比較して増加した。以上の
結果から、WM16はα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼをコードすること、WM16のコードするα2,3-シア
リルトランスフェラーゼはラクト−N−ネオテトラオー
スよりもラクト−N−テトラオースに対して基質特異性
が高いこと、および該cDNAがコードするα2,3-シアリル
トランスフェラーゼを用いてシアル酸を付与したオリゴ
糖を製造できることが示された。
【0119】実施例2 α2,3-シアリルトランスフェラーゼ発現プラスミドを導
入したKJM−1株におけるシアリル・ルイスx(Sial
yl Lewis x) 糖鎖の合成 実施例1で得られたpAMoPRWM16(α2,3-シア
リルトランスフェラーゼ発現プラスミド)、あるいはp
AMoPRC3Sc(コントロールプラスミド)を導入
したKJM−1株を、G418を0.5mg/ml含むRPMI16
40・ITPSGF培地で培養した後、それぞれ約 1×
106 個の細胞をマイクロチューブ(1.5ml:エッペンド
ルフ社製)にとり、550 × gで7分間遠心分離し細胞を
集めた。次に、0.1%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩
衝液PBS(以下、A- PBSと略記する)1mlで細胞
を洗浄後、シアリル・ルイスx糖鎖に対する抗体である
CSLEX1〔Fukushima ら:キャンサー・リサーチ
( Cancer Res.),44, 5279 (1984) 〕およびKM93〔F
uruyaら:アンチ・キャンサー・リサーチ ( Anticancer
Res.),12, 27 (1992) 〕を用いて間接蛍光抗体染色を
行い、これらの細胞におけるシアリル・ルイスx糖鎖の
発現を調べた。
【0120】それぞれの細胞に対しCSLEX1あるい
はKM93をそれぞれ50μl ( 10μg / ml )加えて懸濁
し、4 ℃で1時間反応させた。次いで、細胞をA- PB
Sで3回洗浄後、フルオレセインイソチオシアネート(F
ITC)で蛍光標識した抗マウスIgG抗体およびIgM抗
体(カッペル社製、A- PBSで16倍希釈して使用)20
μl を加えて懸濁し、4 ℃で30分間反応させた。反応
後、細胞をA- PBSで3回洗浄した後、再度A- PB
Sに懸濁し、エピックス・エリート・フローサイトメ−
タ−〔EPICS Elite Flow Cytometer;コールター(COUL
TER )社製〕で解析を行った。対照として、CSLEX
1またはKM93の代わりに正常マウス血清(A- PB
Sで500 倍希釈して使用)を用いて上記と同様に解析を
行った。結果を図19に示す。直接発現クローニングベ
クターpAMoPRC3Scを導入したKJM−1株に
おいて、CSLEX1あるいはKM93で染色した細胞
の蛍光強度は、対照の蛍光強度と比較して強いことがわ
かる。このことは、KJM−1株がもともとシアリル・
ルイスx糖鎖を発現していることを示している。また、
本発明のα2,3-シアリルトランスフェラーゼを発現する
プラスミドpAMoPRWM16を導入したKJM−1
株をCSLEX1あるいはKM93で染色した細胞の蛍
光強度は、pAMoPRC3Scを導入したKJM−1
株よりもさらに強くなっていた。このことは、本発明の
α2,3-シアリルトランスフェラーゼが、細胞内でシアリ
ル・ルイスx糖鎖を合成していることを示している。
【0121】実施例3 動物細胞によるα2,3-シアリルトランスフェラーゼの生
産 1.α2,3-シアリルトランスフェラーゼ分泌発現用プラ
スミドpAMoPRSAW16の造成 (1)pAGE147の造成 (図20参照) 以下に示す方法に従って、pAGE107のSV40初期遺
伝子プロモーターをモロニー・マウス白血病ウイルスの
ロング・ターミナル・リピート(long terminal repea
t;LTR )のプロモーターにすげかえたプラスミドpA
GE147の造成を行った。
【0122】特開平1-63394 記載の方法で得られたプラ
スミドpPMOL1の2μg をY−0緩衝液30μl に溶
解し、20単位のSmaIを加え、30℃で3時間消化反応を行
った。その後、塩化ナトリウムを50mMになるように添加
し、20単位のClaIを加えて37℃で2時間消化反応を行っ
た。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、モロニー・
マウス白血病ウイルスのLTR プロモーターを含む約0.6k
b のDNA 断片を回収した。
【0123】次に、実施例1の1項(8)で合成した2
種の合成DNA
【0124】
【化5】
【0125】をそれぞれ25ピコモル(pmoles)ずつT4キナ
ーゼ緩衝液10μl に溶解し、5 単位のT4DNA キナーゼを
加え、37℃で30分間反応させることにより5’末端をリ
ン酸化した。上記で得られたpPMOL1由来のClaI-S
maI 断片(0.6kb)0.05 μg と5’リン酸化された2種の
合成DNA (1ピコモルずつ)およびHindIII リンカー
(5'-pCAAGCTTG-3';宝酒造社製)(1ピコモル)をT4リ
ガーゼ緩衝液30μl に溶解し、T4DNA リガーゼ200 単位
を加え、12℃で16時間結合反応を行った。エタノール沈
殿により該DNA 断片を回収した後、Y−100緩衝液に
溶解し、10単位のHindIII および10単位のXhoIを加えて
37℃で2時間消化反応を行った。反応をフェノールーク
ロロホルム抽出により停止させ、エタノール沈殿により
該DNA 断片を回収した。
【0126】一方、pAGE107〔特開平3- 229
79、Miyajiら:サイトテクノロジー(Cytotechnolog
y),3, 133 (1990)〕1μg を30μl のY−100緩衝液
に溶解し、10単位のHindIII と10単位のXhoIを加えて37
℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲ
ル電気泳動後、G418耐性遺伝子およびアンピシリン耐性
遺伝子を含む約6.0kb のDNA 断片を回収した。
【0127】上記で得られたpAGE107由来のHind
III-XhoI断片(6.0kb)0.3μg とpPMOL1由来のHind
III-XhoI断片(0.6kb)0.01 μg をT4リガーゼ緩衝液20μ
l に溶解し、T4DNA リガーゼ200 単位を加え、12℃で16
時間結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB101
株をコーエンらの方法によって形質転換し、アンピシリ
ン耐性株を得た。この形質転換株から公知の方法に従っ
てプラスミドを単離した。このプラスミドをpAGE1
47と名付け、その構造を制限酵素消化により確認し
た。
【0128】(2)pAGE247の造成 (図21参
照) 以下に示す方法に従って、pAGE207のSV40初期遺
伝子プロモーターをモロニー・マウス白血病ウイルスの
ロング・ターミナル・リピート(long terminal repea
t:LTR )のプロモーターにすげかえたプラスミドpA
GE247の造成を行った。
【0129】上記(1) で得られたpAGE147の2μ
g を30μl のY−100緩衝液に溶解し、10単位のHind
III と10単位のXhoIを加えて37℃で2時間消化反応を行
った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、モロニー
・マウス白血病ウイルスのLTR プロモーターを含む約0.
63kbのDNA 断片を回収した。一方、実施例1の1項(1
1)で得られたpAGE207の2μg を30μl のY−
100緩衝液に溶解し、10単位のHindIII と10単位のXh
oIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液を
アガロースゲル電気泳動後、hyg 耐性遺伝子およびアン
ピシリン耐性遺伝子を含む約5.84kbのDNA 断片を回収し
た。
【0130】上記で得られたpAGE147由来のHind
III-XhoI断片(0.63kb)0.05μg とpAGE207由来の
HindIII-XhoI断片(5.84kb)0.1 μg をT4リガーゼ緩衝液
30μl に溶解し、T4DNA リガーゼ100 単位を加え、12℃
で16時間結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB
101 株をコーエンらの方法によって形質転換し、アンピ
シリン耐性株を得た。この形質転換株から公知の方法に
従ってプラスミドを単離した。このプラスミドをpAG
E247と名付け、その構造を制限酵素消化により確認
した。
【0131】(3)pAMN6hygの造成 (図22
参照) 以下の方法に従って、モロニー・マウス白血病ウイルス
のLTR をプロモーターとし、hyg 耐性遺伝子をマーカー
として有する、ヒト顆粒球コロニー刺激因子誘導体の発
現プラスミドpAMN6hygの造成を行った。
【0132】上記(2) で得られたpAGE247の2μ
g をY−50緩衝液30μl に溶解し、20単位のClaIを加
え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化ナト
リウムを175mM になるように添加し、20単位のSalIを加
えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロ
ースゲル電気泳動後、モロニー・マウス白血病ウイルス
のLTR プロモーター、アンピシリン耐性遺伝子およびhy
g 耐性遺伝子を含む約4.8kb のDNA 断片を回収した。
【0133】一方、特開平2-227075記載の方法により得
られたプラスミドpASN6の2μg をY−50緩衝液
30μl に溶解し、20単位のClaIを加え、37℃で2時間消
化反応を行った。その後、塩化ナトリウムを175mM にな
るように添加し、20単位のSalIと20単位のMluIを加えて
37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロース
ゲル電気泳動後、ヒト顆粒球コロニー刺激因子誘導体遺
伝子を含む約5.0kb のDNA 断片を回収した。
【0134】上記で得られたpAGE247由来のClaI
-SalI 断片(4.8kb) 0.1 μg とpASN6由来のClaI-S
alI 断片(5.0kb) 0.1 μg をT4リガーゼ緩衝液20μl に
溶解し、T4DNA リガーゼ200 単位を加え、12℃で16時間
結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌HB101 株を
コーエンらの方法によって形質転換し、アンピシリン耐
性株を得た。この形質転換株から公知の方法に従ってプ
ラスミドを単離した。このプラスミドをpAMN6hy
gと名付け、その構造を制限酵素消化により確認した。
【0135】(4)pAMoERSAの造成 (図23
参照) 以下の方法に従って、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus
aureus )のプロテインAの免疫グロブリンG(Ig
G)との結合領域との融合タンパク質として任意のタン
パク質を分泌発現するための分泌発現ベクターpAMo
ERSAの造成を行った。
【0136】上記(3) で得られたpAMN6hygの 2
μg をY−50緩衝液30μl に溶解し、20単位のSnaBI
を加え、37℃で2時間消化反応を行った。その後、塩化
ナトリウムを100mM になるように添加し、20単位のXbaI
を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をア
ガロースゲル電気泳動後、ヒト顆粒球コロニー刺激因子
のシグナル配列を含む約0.33kbのDNA 断片を回収した。
【0137】また、pPrAS1〔Saito ら:プロテイ
ン・エンジニアリング (Protein Engineering),2, 481
(1989)〕の 2μg をY−50緩衝液 30 μl に溶解し、
20単位のClaIを加え、37℃で2時間消化反応を行った。
エタノール沈殿後、30μl のDNA ポリメラーゼI緩衝液
に溶解し、6単位の大腸菌DNA ポリメラーゼIクレノー
断片を加え、37℃で60分間反応させ、ClaI消化によって
生じた5’突出末端を平滑末端に変えた。反応をフェノ
ール抽出によって止め、クロロホルム抽出とエタノール
沈殿の後、Y−100緩衝液 30 μl に溶解し、20単位
のBamHI を加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反
応液をアガロースゲル電気泳動後、プロテインAのIg
Gとの結合領域を含む約0.21kbのDNA 断片を回収した。
【0138】また、実施例1の1項(14)で得たpA
MoERC3Scの 2μg をY−100緩衝液 30 μl
に溶解し、20単位のXbaIと20単位のBamHI を加え、37℃
で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル
電気泳動後、約12.1kbのDNA断片を回収した。上記
(3)で得られたpAMN6hyg由来のSnaBI - XbaI
断片(0.33kb) 0.05μg とpPrAS1由来のClaI(blun
t) - BamHI 断片(0.21kb) 0.05 μg 、およびpAMo
ERC3Sc由来のXbaI - BamHI断片(12.1kb) 0.1μg
をT4リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ
175 単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該
反応液を用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によ
って形質転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質
転換株から公知の方法に従ってプラスミドを単離した。
このプラスミドをpAMoERSAと名付け、その構造
を制限酵素消化により確認した。
【0139】(5)pAMoPRSAの造成 (図24
参照) 以下の方法に従って、pAMoERSA中のEBNA−
1遺伝子を除去したプラスミドpAMoPRSAの造成
を行った。pAMoPRSAは、pAMoERSAと同
様に分泌発現ベクターとして使用することができる。
【0140】pAMoERSAの2μg を10mMトリス−
塩酸(pH7.5), 6mM 塩化マグネシウム,80mM塩化ナトリ
ウム, 6mM 2- メルカプトエタノールからなる緩衝液
(以下、Yー80緩衝液と略記する)30μl に溶解し、
20単位のXbaIと20単位のAsp718〔ベーリンガー・マンハ
イム(Boehringer Mannheim) 社製〕を加え、37℃で2時
間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳
動後、約1.3kb のDNA 断片を回収した。
【0141】また、実施例1の1項(15)で得られた
pAMoPRC3Scの2μg をY−100緩衝液 30
μl に溶解し、20単位のXbaIと20単位のAsp718を加え、
37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロース
ゲル電気泳動後、約8.5kb のDNA 断片を回収した。
【0142】上記(4)で得られたpAMoERSA由
来のXbaI - Asp718 断片(1.3kb) 0.05 μg とpAMo
PRC3Sc由来の XbaI - Asp718断片(8.5kb) 0.1 μ
g をT4リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、T4DNA リガー
ゼ175 単位を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。
該反応液を用いて大腸菌101 株をコーエンらの方法によ
って形質転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質
転換株から公知の方法に従ってプラスミドを単離した。
このプラスミドをpAMoPRSAと名付け、その構造
を制限酵素消化により確認した。
【0143】(6)pAMoPRSAW16の造成
(図25参照) クローン化したα2,3-シアリルトランスフェラーゼはそ
の一次配列から、N末の8アミノ酸を細胞質側に出し、
それに続く20アミノ酸からなる疎水性に富む領域で膜
に結合し、残りの大半のC末部分(触媒部位を含む)を
ゴルジ体内腔に露出するといった構造をとると推定され
る。そこで、以下のようにして膜結合領域と推定される
部分を除去し、代わりにヒト顆粒球コロニー刺激因子の
シグナル配列ならびにプロテインAのIgGとの結合領
域を付加することによりα2,3-シアリルトランスフェラ
ーゼを生産させた。
【0144】膜結合領域と推定される部分以降〔配列番
号1の32番目のLeuから375 番目のIleまで〕をコ
ードするDNAをPCR法を用いて調製し、上記(4)
で造成した分泌発現ベクターpAMoPRSAに組み込
んだ。PCR用のプライマーとして、以下に示す2種の
合成DNA [ W16-A(32L) (38mer;配列番号6) および
W16-C (37mer ;配列番号7) ] をアプライド・バイオ
システムズ社380A・DNA合成機を用いて合成し
た。
【0145】
【化6】
【0146】W16-A(32L)には StuI サイトが、 W16-Cに
はAsp718サイトがされぞれ導入されるように構築されて
いるため、PCRで増幅されたDNA断片は StuI とAs
p718で切断した後に、pAMoPRSAのStuIサイトと
Asp718サイト間に組み込むことができる。PCR反応
は、宝酒造社製のキット(GeneAmpTMDNA Amplification
Reagent Kit with AmpliTaqTM Recombinant Taq DNA Po
lymerase )を用いて行った。反応液の調製はキットに
添付の説明書に従って行ない、パーキン・エルマー・シ
ータス社のサーマル・サイクラー(PERKIN ELMER CETUS
DNA Thermal Cycler )を用いて、94℃で1分間、5
5℃で1分間、72℃で3分間の反応を30サイクル行
った後、さらに72℃で7分間反応させた。鋳型として
は、1ngのプラスミドpUC119−WM16を使用し
た。反応終了後、クロロホルム抽出およびエタノール沈
殿を行った後、Y−100緩衝液 30 μl に溶解し、20
単位のStuIおよび20単位のAsp718を加え、37℃で2時間
消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動
後、約1.0kb のDNA 断片を回収した。
【0147】また、pAMoPRSAの2μg をY−1
00緩衝液 30 μl に溶解し、20単位のStuIと20単位の
Asp718を加え、37℃で2時間消化反応を行った。該反応
液をアガロースゲル電気泳動後、約9.06kbのDNA 断片を
回収した。上記で得られたPCRで増幅したDNA由来
の StuI - Asp718断片(1.0kb) 0.1μg とpAMoPR
SA由来のStuI - Asp718 断片(9.06kb) 0.1μg をT4
リガーゼ緩衝液30μl に溶解し、 T4DNAリガーゼ175 単
位を加えて、12℃で16時間結合反応を行った。該反応液
を用いて大腸菌HB101 株をコーエンらの方法によって形
質転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質転換株
から公知の方法に従ってプラスミドを単離した。このプ
ラスミドをpAMoPRSAW16と名付け、その構造
を制限酵素消化により確認した。
【0148】2.ナマルバKJM−1細胞を宿主とした
α2,3-シアリルトランスフェラーゼの分泌生産 上記で得られたプラスミドpAMoPRSA(分泌発現
ベクター;コントロール)およびpAMoPRSAW1
6(α2,3-シアリルトランスフェラーゼ分泌発現用プラ
スミド)をキィアジェン (Qiagen) 社製のプラスミド調
製キットである>plasmid<maxi kit ( 商品番号 41031)
を用いて調製した。取得したプラスミドはエタノール沈
殿後、1 μg/μl になるようにTE緩衝液に溶解した。
その後、両プラスミドを、エレクトロポーレーション法
〔Miyajiら:サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,
133 (1990)〕により、それぞれナマルバKJM−1株に
導入した。1.6 ×106 細胞あたり4 μg のプラスミドを
導入後、8ml のRPMI1640・ITPSGF培地に
懸濁し、炭酸ガスインキュベーターで37℃で24時間培養
した。その後、G418( ギブコ社製)を0.5mg/mlになるよ
うに添加して7日間培養した。その後、22mlのRPMI
1640・ITPSGF培地(0.5mg/mlのG418を含む)
を添加し、さらに5日間培養し形質転換株を得た。取得
した形質転換株は、それぞれG418を0.5mg/ml含むRPM
I1640・ITPSGF培地30mlに5 ×104 細胞/ml
になるように懸濁し、炭酸ガスインキュベーターで37℃
で8日間培養した。その後、遠心分離(160 × g、10分
間)により細胞を除き上清を回収し、再度遠心分離(15
00× g、10分間)後、その上清を回収した。このように
して取得した培養上清は、使用するまで -80℃で保存し
た。
【0149】プラスミドpAMoPRSAW16のコー
ドするタンパク質はプロテインAのIgGとの結合領域
との融合タンパク質として分泌発現されるため、IgG
セファロース(Sepharose )を用いて、容易に精製する
ことができる。そこで、上記のようにして取得した培養
上清にアジ化ナトリウムを最終濃度0.1 %になるように
添加した後、添付の説明書に従って前処理したIgGセ
ファロース〔ファルマシア(Pharmacia) 製〕を100 μl
添加し、4℃で1晩緩やかに攪拌した。その後、遠心分
離(160 × g、10分間)によりIgGセファロースを回
収し、50mMトリス−塩酸(pH7.6), 150mM塩化ナトリウ
ム, 0.05% Tween20 を含む緩衝液1ml で3回洗浄した。
次いで、0.5 M 酢酸緩衝液 (酢酸アンモニウムでpHを3.
4 に調整したもの)100μl でIgGセファロースに吸着
したタンパク質を溶出後、遠心分離(160 ×g 、10分
間) によりIgGセファロースを除いた。この溶出液に
2Mトリス−塩酸(pH8.0) を添加することによりpHを7.
0 に調整後、水を加えて最終容量を1ml とした。このよ
うにして調整した溶出液の 5μl を用いて、シアリルト
ランスフェラーゼ活性を測定した。活性測定は30μl の
アッセイ溶液〔 0.1M カコジル酸−塩酸 (pH6.5), 0.01
M 塩化マンガン, 0.45% トライトンX-100, 0.1mM基質,
上記IgGセファロース(5μl), 5mM CMP- シアル酸
(添加あるいは無添加) 〕中で37℃で30分間反応後、高
速液体クロマトグラフィー(HPLC)により生産物の
同定を行うことにより行った。基質としてはラクト−N
−ネオラクトース(Lacto-N-neotetraose; LNnT )、ラ
クト−N−ラクトース(Lacto-N-tetraose; LNT )(い
ずれもオックスフォード・グライコシステムズ社製でそ
れぞれの構造は第2表に示すとおりである)をアミノピ
リジンで蛍光標識したものを使用した。基質の蛍光標識
は、常法〔Akihiro Kondo ら:アグリカルチュラル・ア
ンド・バイオロジカル・ケミストリー (Agric. Biol. C
hem.),54, 2169 (1990)〕に従って行った。それぞれの
IgGセファロースについて、CMP-シアル酸(糖供与
体)を含むアッセイ溶液と含まないアッセイ溶液を用い
て反応後、HPLCで解析し、CMP-シアル酸を含むアッ
セイ溶液でのみ出現するピークを生成物とした。反応の
終了したアッセイ溶液は、100 ℃で5 分処理後、遠心分
離(10000 ×g、10分間)し、その上清のうち10μl を
HPLCに供した。HPLCは、TSKgel ODS
- 80TMカラム(4.6mm ×30cm;東ソー社製)を使用
し、溶出温度50℃、流速 1ml/ 分の条件で0.02M 酢酸ア
ンモニウム緩衝液(pH4.0) を用いて溶出を行った。生成
物の検出は、島津製作所製の蛍光検出器(Fluorescence
HPLC Monitor RF-535T )を用いて行った(励起波長320
nm 、放射波長400nm )。生成物の同定は、スタンダー
ドと溶出時間が一致すること、および生成物のシアリダ
ーゼ処理により基質が再生成することより行った。生成
物の定量は、同様にしてアミノピリジル化したラクトー
スをスタンダードとして用い、蛍光強度を比較すること
により行った。生成物量とともに、本発明のα2,3-シア
リルトランスフェラーゼのLNT に対する活性を100 とし
たときのLNnTに対する相対活性を第2表に示した。ま
た、これまでにラットより精製が報告されているα2,3-
シアリルトランスフェラーゼのLTN に対する活性を100
としたときのLNnTに対する相対活性〔ワインスタイン(W
einstein) ら:ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケ
ミストリー(J. Biol. Chem.),257, 13845 (1982)〕を第
2表に合わせて示した。
【0150】
【表2】
【0151】pAMoPRSAW16を導入したナマル
バ細胞の培養上清由来のIgGセファロースを使用した
際には、いずれの糖鎖を基質とした場合もα2,3-シアリ
ルトランスフェラーゼ活性が検出された。一方、ベクタ
ーであるpAMoPRSAを導入したナマルバ細胞の培
養上清由来のIgGセファロースを使用した際には、い
ずれの糖鎖を基質とした場合も活性は検出されなかっ
た。
【0152】以上の結果から、本発明のα2,3-シアリル
トランスフェラーゼはStaphylococcus aureus のプロテ
インAのIgGとの結合領域との融合タンパク質として
培養上清中に分泌生産されること、およびその分泌性産
物がIgGセファロースを用いて、容易に回収、精製さ
れることが示された。
【0153】本発明のα2,3-シアリルトランスフェラー
ゼは、基質としてラクト−N−ラクトースだけでなくラ
クト−N−ネオラクトースも利用できることから、試験
管内(in vitro)においてSialyl Lewis a糖鎖のみならず
Sialyl Lewis-x 糖鎖も合成できることが示された。さ
らに、今回取得したα2,3-シアリルトランスフェラーゼ
を用いて糖鎖の末端構造をNeuAc α2-3Galβ1-3GlcNAc
あるいはNeuAc α2-3Galβ1-4GlcNAc に変換した後、α
1,4-フコシルトランスフェラーゼ(fucosyltransferas
e)あるいはα1,3-フコシルトランスフェラーゼ(fucos
yltransferase)を用いてシアリルルイスa(Sialyl Le
wis a)糖鎖あるいはシアリルルイスx(Sialyl Lewis-
x)糖鎖を合成できる。
【0154】
【発明の効果】本発明により、シアリルルイスa、シア
リルルイスx等の有用生理活性を有する糖鎖とその修飾
物の製造等に有用な新規α2,3-シアリルトランスフェラ
ーゼが提供される。
【0155】
【配列表】
配列番号: 1 配列の長さ: 2232 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 配列の種類: cDNA to mRNA 起源: 生物名: ヒト 株名: WM266-4細胞 細胞の種類: メラノーマ 配列: CGCGTTGTGG GCTCCCGCCG GGGTCCCCCG CGGCTGTCGC CGCCGCCTAC GCCGCTGCCT 60 CCGCCTTCCT GCCCCGCGTC GGGCCGGGCG CCACCTCCCC CCTGCCTCCC TCTCCGCTGT 120 GGTCATTTAG GAAATCGTAA ATCATGTGAA G ATG GGA CTC TTG GTA TTT GTG 172 Met Gly Leu Leu Val Phe Val 1 5 CGC AAT CTG CTG CTA GCC CTC TGC CTC TTT CTG GTA CTG GGA TTT TTG 220 Arg Asn Leu Leu Leu Ala Leu Cys Leu Phe Leu Val Leu Gly Phe Leu 10 15 20 TAT TAT TCT GCG TGG AAG CTA CAC TTA CTC CAG TGG GAG GAG GAC TCC 268 Tyr Tyr Ser Ala Trp Lys Leu His Leu Leu Gln Trp Glu Glu Asp Ser 25 30 35 AAT TCA GTG GTT CTT TCC TTT GAC TCC GCT GGA CAA ACA CTA GGC TCA 316 Asn Ser Val Val Leu Ser Phe Asp Ser Ala Gly Gln Thr Leu Gly Ser 40 45 50 55 GAG TAT GAT CGG TTG GGC TTC CTC CTG AAT CTG GAC TCT AAA CTG CCT 364 Glu Tyr Asp Arg Leu Gly Phe Leu Leu Asn Leu Asp Ser Lys Leu Pro 60 65 70 GCT GAA TTA GCC ACC AAG TAC GCA AAC TTT TCA GAG GGA GCT TGC AAG 412 Ala Glu Leu Ala Thr Lys Tyr Ala Asn Phe Ser Glu Gly Ala Cys Lys 75 80 85 CCT GGC TAT GCT TCA GCC TTG ATG ACG GCC ATC TTC CCC CGG TTC TCC 460 Pro Gly Tyr Ala Ser Ala Leu Met Thr Ala Ile Phe Pro Arg Phe Ser 90 95 100 AAG CCA GCA CCC ATG TTC CTG GAT GAC TCC TTT CGC AAG TGG GCT AGA 508 Lys Pro Ala Pro Met Phe Leu Asp Asp Ser Phe Arg Lys Trp Ala Arg 105 110 115 ATC CGG GAG TTC GTG CCG CCT TTT GGG ATC AAA GGT CAA GAC AAT CTG 556 Ile Arg Glu Phe Val Pro Pro Phe Gly Ile Lys Gly Gln Asp Asn Leu 120 125 130 135 ATC AAA GCC ATC TTG TCA GTC ACC AAA GAG TAC CGC CTG ACC CCT GCC 604 Ile Lys Ala Ile Leu Ser Val Thr Lys Glu Tyr Arg Leu Thr Pro Ala 140 145 150 TTG GAC AGC CTC CGC TGC CGC CGC TGC ATC ATC GTG GGC AAT GGA GGC 652 Leu Asp Ser Leu Arg Cys Arg Arg Cys Ile Ile Val Gly Asn Gly Gly 155 160 165 GTT CTT GCC AAC AAG TCT CTG GGG TCA CGA ATT GAC GAC TAT GAC ATT 700 Val Leu Ala Asn Lys Ser Leu Gly Ser Arg Ile Asp Asp Tyr Asp Ile 170 175 180 GTG GTG AGA CTG AAT TCA GCA CCA GTG AAA GGC TTT GAG AAG GAC GTG 748 Val Val Arg Leu Asn Ser Ala Pro Val Lys Gly Phe Glu Lys Asp Val 185 190 195 GGC AGC AAA ACG ACA CTG CGC ATC ACC TAC CCC GAG GGC GCC ATG CAG 796 Gly Ser Lys Thr Thr Leu Arg Ile Thr Tyr Pro Glu Gly Ala Met Gln 200 205 210 215 CGG CCT GAG CAG TAC GAG CGC GAT TCT CTC TTT GTC CTC GCC GGC TTC 844 Arg Pro Glu Gln Tyr Glu Arg Asp Ser Leu Phe Val Leu Ala Gly Phe 220 225 230 AAG TGG CAG GAC TTT AAG TGG TTG AAA TAC ATC GTC TAC AAG GAG AGA 892 Lys Trp Gln Asp Phe Lys Trp Leu Lys Tyr Ile Val Tyr Lys Glu Arg 235 240 245 GTG AGT GCA TCG GAT GGC TTC TGG AAA TCT GTG GCC ACT CGA GTG CCC 940 Val Ser Ala Ser Asp Gly Phe Trp Lys Ser Val Ala Thr Arg Val Pro 250 255 260 AAG GAG CCC CCT GAG ATT CGA ATC CTC AAC CCA TAT TTC ATC CAG GAG 988 Lys Glu Pro Pro Glu Ile Arg Ile Leu Asn Pro Tyr Phe Ile Gln Glu 265 270 275 GCC GCC TTC ACC CTC ATT GGC CTG CCC TTC AAC AAT GGC CTC ATG GGC 1036 Ala Ala Phe Thr Leu Ile Gly Leu Pro Phe Asn Asn Gly Leu Met Gly 280 285 290 295 CGG GGG AAC ATC CCT ACC CTT GGC AGT GTG GCA GTG ACC ATG GCA CTA 1084 Arg Gly Asn Ile Pro Thr Leu Gly Ser Val Ala Val Thr Met Ala Leu 300 305 310 CAC GGC TGT GAC GAG GTG GCA GTC GCA GGA TTT GGC TAT GAC ATG AGC 1132 His Gly Cys Asp Glu Val Ala Val Ala Gly Phe Gly Tyr Asp Met Ser 315 320 325 ACA CCC AAC GCA CCC CTG CAC TAC TAT GAG ACC GTT CGC ATG GCA GCC 1180 Thr Pro Asn Ala Pro Leu His Tyr Tyr Glu Thr Val Arg Met Ala Ala 330 335 340 ATC AAA GAG TCC TGG ACG CAC AAT ATC CAG CGA GAG AAA GAG TTT CTG 1228 Ile Lys Glu Ser Trp Thr His Asn Ile Gln Arg Glu Lys Glu Phe Leu 345 350 355 CGG AAG CTG GTG AAA GCT CGC GTC ATC ACT GAT CTA AGC AGT GGC ATC 1276 Arg Lys Leu Val Lys Ala Arg Val Ile Thr Asp Leu Ser Ser Gly Ile 360 365 370 375 TER CCAGCACCAC CTACACAGGA GTCTTCAGAC CCAGAGAAGG ACGGTGCCAA GGGCCCCAGG 1389 GGCAGCAAGG CCTTGGTGGA GCAGCCAGAG CTGTGCCTGC TCAGCAGCCA GTCTCAGAGA 1449 CCAGCACTCA GCCTCATTCA GCATGGGTCC TTGATGCCAG AGGGCCAGCA GGCTCCTGGC 1509 TGTGCCCAGC AGGCCCAGCA TGCAGGTGGT GGGACACTGG GCAGCAAGGC TGCTGCCGGA 1569 ATCACTTCTC CAATCAGTGT TTGGTGTATT ATCATTTTGT GAATTTGGGT AGGGGGGAGG 1629 GTAGGGATAA TTTATTTTTA AATAAGGTTG GAGATGTCAA GTTGGGTTCA CTTGCCATGC 1689 AGGAAGAGGC CCACTAGAGG GCCCATCAGG CAGTGTTACC TGTTAGCTCC CTGTGGGGCA 1749 GGAGTGCCAG GACCAGCCTG TACCTTGCTG TGGGGCTACA GGATGGTGGG CAGGATCTCA 1809 AGCCAGCCCC CTCCAGCTCA TGACACTGTT TGGCCTTTCT TGGGGAGAAG GCGGGGTATT 1869 CCCACTCACC AGCCCTAGCT GTCCCATGGG GAAACCCTGG AGCCATCCCT TCGGAGCCAA 1929 CAAGACCGCC CCAGGGCTAT AGCAGAAAGA ACTTTAAAGC TCAGGAGGGT GACGCCCAGC 1989 TCCGCCTGCT GGGAAGAGCT CCCCTCCACA GCTGCAGCTG ATCCATAGGA CTACCGCAGG 2049 CCCGGACTCA CCAACTTGCC ACATGTTCTA GGTTTCAGCA ACAAGACTGC CAGGTGGTTG 2109 GGTTCTGCCT TTAGCCTGGA CCAAAGGGAA GTGAGGCCCA AGGAGCTTAC CCAAGCTGTG 2169 GCAGCCGTCC CAGGCCACCC CCATGGAAGC AATAAAGCTC TTCCCTGTAA AAAAAAAAAA 2229 AAA 2232
【0156】配列番号: 2 配列の長さ: 375 配列の型 : アミノ酸 鎖の数: 直鎖状 配列の種類: タンパク質 起源: 生物名: ヒト 株名: WM266-4 細胞 細胞の種類: メラノーマ 配列: Met Gly Leu Leu Val Phe Val Arg Asn Leu Leu Leu Ala Leu Cys 1 5 10 15 Leu Phe Leu Val Leu Gly Phe Leu Tyr Tyr Ser Ala Trp Lys Leu 20 25 30 His Leu Leu Gln Trp Glu Glu Asp Ser Asn Ser Val Val Leu Ser 35 40 45 Phe Asp Ser Ala Gly Gln Thr Leu Gly Ser Glu Tyr Asp Arg Leu 50 55 60 Gly Phe Leu Leu Asn Leu Asp Ser Lys Leu Pro Ala Glu Leu Ala 65 70 75 Thr Lys Tyr Ala Asn Phe Ser Glu Gly Ala Cys Lys Pro Gly Tyr 80 85 90 Ala Ser Ala Leu Met Thr Ala Ile Phe Pro Arg Phe Ser Lys Pro 95 100 105 Ala Pro Met Phe Leu Asp Asp Ser Phe Arg Lys Trp Ala Arg Ile 110 115 120 Arg Glu Phe Val Pro Pro Phe Gly Ile Lys Gly Gln Asp Asn Leu 125 130 135 Ile Lys Ala Ile Leu Ser Val Thr Lys Glu Tyr Arg Leu Thr Pro 140 145 150 Ala Leu Asp Ser Leu Arg Cys Arg Arg Cys Ile Ile Val Gly Asn 155 160 165 Gly Gly Val Leu Ala Asn Lys Ser Leu Gly Ser Arg Ile Asp Asp 170 175 180 Tyr Asp Ile Val Val Arg Leu Asn Ser Ala Pro Val Lys Gly Phe 185 190 195 Glu Lys Asp Val Gly Ser Lys Thr Thr Leu Arg Ile Thr Tyr Pro 200 205 210 Glu Gly Ala Met Gln Arg Pro Glu Gln Tyr Glu Arg Asp Ser Leu 215 220 225 Phe Val Leu Ala Gly Phe Lys Trp Gln Asp Phe Lys Trp Leu Lys 230 235 240 Tyr Ile Val Tyr Lys Glu Arg Val Ser Ala Ser Asp Gly Phe Trp 245 250 255 Lys Ser Val Ala Thr Arg Val Pro Lys Glu Pro Pro Glu Ile Arg 260 265 270 Ile Leu Asn Pro Tyr Phe Ile Gln Glu Ala Ala Phe Thr Leu Ile 275 280 285 Gly Leu Pro Phe Asn Asn Gly Leu Met Gly Arg Gly Asn Ile Pro 290 295 300 Thr Leu Gly Ser Val Ala Val Thr Met Ala Leu His Gly Cys Asp 305 310 315 Glu Val Ala Val Ala Gly Phe Gly Tyr Asp Met Ser Thr Pro Asn 320 325 330 Ala Pro Leu His Tyr Tyr Glu Thr Val Arg Met Ala Ala Ile Lys 335 340 345 Glu Ser Trp Thr His Asn Ile Gln Arg Glu Lys Glu Phe Leu Arg 350 355 360 Lys Leu Val Lys Ala Arg Val Ile Thr Asp Leu Ser Ser Gly Ile 365 370 375
【0157】配列番号: 3 配列の長さ: 52 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 TCGACAAGCT TGATATCGGC CTGTGAGGCC TCACTGGCCG CGGCCGCGGT AC 52
【0158】配列番号: 4 配列の長さ: 44 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 CGCGGCCGCG GCCAGTGAGG CCTCACAGGC CGATATCAAG CTTG 44
【0159】配列番号: 5 配列の長さ: 11 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 CTTTAGACA A 11
【0160】配列番号: 6 配列の長さ: 38 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 CTCTGTAGGC CTTACTCCAG TGGGAGGAGG ACTCCAAT 38
【0161】配列番号: 7 配列の長さ: 37 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 GACTCAGGTA CCACTCAGAT GCCACTGCTT AGATCAG 37
【図面の簡単な説明】
【図1】は、プラスミドpAGEL106の造成工程を示す図で
ある。
【図2】は、プラスミドpASLB3-3-1の造成工程を示す図
である。
【図3】は、プラスミドpASLB3-3の造成工程を示す図で
ある。
【図4】は、プラスミドpASLBE3-3 の造成工程を示す図
である。
【図5】は、プラスミドpASLBCの造成工程を示す図であ
る。
【図6】は、プラスミドpASLBEC の造成工程を示す図で
ある。
【図7】は、プラスミドpASLBEC2の造成工程を示す図で
ある。
【図8】は、プラスミドpAMoEC2 の造成工程を示す図で
ある。
【図9】は、プラスミドpAMoEC3 の造成工程を示す図で
ある。
【図10】は、プラスミドpAMoERC3の造成工程を示す図
である。
【図11】は、プラスミドpAGE207 の造成工程を示す図
である。
【図12】は、プラスミドpAGE207ScNの造成工程を示す
図である。
【図13】は、プラスミドpAMoC3Scの造成工程を示す図
である。
【図14】は、プラスミドpAMoERC3Scの造成工程を示す
図である。
【図15】は、プラスミドpAMoPRC3Scの造成工程を示す
図である。
【図16】は、プラスミドpUC119-WM16 の造成工程を示
す図である。
【図17】は、LNnTを基質として用いた際のシアリルト
ランスフェラーゼ活性測定の結果を示す図である。a、
bはpAMoPRC3Sc(コントロール)を導入したKJM−1
株細胞の、c、dはpAMoPRWM16を導入したKJM−1株
細胞のシアリルトランスフェラ−ゼ活性を測定した時の
HPLCパターンである。a、cは糖供与体であるCMP-シア
ル酸を含まないアッセイ溶液を用いた時の、b、dはCM
P-シアル酸を含むアッセイ溶液を用いた時のHPLCパター
ンである。
【図18】は、LNT を基質として用いた際のシアリルト
ランスフェラーゼ活性測定の結果を示す図である。a、
bはpAMoPRC3Sc(コントロール)を導入したKJM−1
株細胞の、c、dはpAMoPRWM16を導入したKJM−1株
細胞のシアリルトランスフェラーゼ活性を測定した時の
HPLCパターンである。a、cは糖供与体であるCMP-シア
ル酸を含まないアッセイ溶液を用いた時の、b、dはCM
P-シアル酸を含むアッセイ溶液を用いた時のHPLCパター
ンである。
【図19】は、間接蛍光抗体染色後、エピックス・エリ
ート・フローサイトメーター〔EPICS Elite Flow Cytom
eter;コールター(COULTER )社製〕で解析を行った結
果を示す図である。aは、pAMoPRC3Sc(コントロールプ
ラスミド)またはpAMoPRWM16を導入したKJM−1株に
ついてCSLEX1を用いて間接蛍光抗体染色を行った
結果を示す。bは、pAMoPRC3ScまたはpAMoPRWM16を導入
したKJM−1株についてKM93を用いて間接蛍光抗
体染色を行った結果を示す。いずれの場合も、pAMoPRC3
Scを導入したKJM−1株について、正常マウス血清を
用いて間接蛍光抗体染色を行った結果を対照として示し
た。
【図20】は、プラスミドpAGE147 の造成工程を示す図
である。
【図21】は、プラスミドpAGE247 の造成工程を示す図
である。
【図22】は、プラスミドpAMN6hygの造成工程を示す図
である。
【図23】は、プラスミドpAMoERSAの造成工程を示す図
である。
【図24】は、プラスミドpAMoPRSAの造成工程を示す図
である。
【図25】は、プラスミドpAMoPRSAW16 の造成工程を示
す図である。
【符号の説明】
dhfr: ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子 hG-CSF: ヒト顆粒球コロニー刺激因子遺伝子 bp: 塩基対 (base pairs) kb: キロ塩基対 (kilobase pairs) G418 / Km : トランスポゾン5(Tn5) 由来G418、カナ
マイシン耐性遺伝子 hyg : ハイグロマイシン耐性遺伝子 Ap: pBR322由来アンピシリン耐性遺伝子 Tc: pBR322由来テトラサイクリン耐性遺伝子 P1: pBR322由来P1プロモーター Ptk : ヘルペス・シンプレックス・ウイルス(Herpes
simplex virus; HSV)チミジンキナーゼ(tk)遺伝子プロ
モーター Sp. βG : ラビットβグロビン遺伝子スプライシング
シグナル A.βG : ラビットβグロビン遺伝子ポリA付加シグナ
ル A. SE : シミアン・ウィルス (simian virus) 40 (SV
40) 初期遺伝子ポリA付加シグナル Atk : ヘルペス・シンプレックス・ウイルス(Herpes
simplex virus ; HSV)チミジンキナーゼ(tk)遺伝子のポ
リA付加シグナル Pse : シミアン・ウィルス (simian virus) 40 (SV4
0) 初期遺伝子プロモーター Pmo : モロニー・マウス白血病ウイルスのロング・タ
ーミナル・リピート(long terminal repeat : LTR)プ
ロモーター HTLV-1: ヒトT細胞白血病ウイルス(human T-cell le
ukemia virus type-1 :HTLV-1)遺伝子 EBNA-1: エプシュタイン・バール・ウイルス(Epstei
n -Barr virus )のEBNA-1遺伝子 oriP: エプシュタイン・バール・ウイルス(Epstein
-Barr virus )の複製開始点 ori : pUC119の複製開始点 lac'Z : 大腸菌のβガラクトシダーゼ遺伝子の一部 IG: M13 ファージDNA のインタージェニック領域(int
ergenic region) G-CSF der.: ヒト顆粒球コロニー刺激因子誘導体の遺
伝子 S : ヒト顆粒球コロニー刺激因子のシグナルペプチド
をコードする遺伝子部分 A または ProA : 黄色ブドウ球菌 Staphylococcus au
reusのプロテインAのIgGとの結合領域をコードする
遺伝子部分 WM16: WM266-4細胞より取得したα2,3-シアリルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子(全長あるいは活性領域部分の遺
伝子)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 15/54 C12P 19/26 7432−4B 21/00 A 8214−4B C12Q 1/68 Z 7823−4B //(C12N 9/10 C12R 1:91) (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12N 5/10 C12R 1:91) (C12N 15/54 C12R 1:91) (72)発明者 西 達也 東京都町田市中町3−9−13

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号2記載のアミノ酸配列を含むα
    2,3-シアリルトランスフェラーゼ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のα2,3-シアリルトランス
    フェラーゼをコードするcDNAまたは該cDNAと相
    同性を有するDNA。
  3. 【請求項3】 配列番号1記載の塩基配列を含むDN
    A。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のα2,3-シアリルトランス
    フェラーゼをコードするcDNAが組み込まれた組換え
    体ベクター。
  5. 【請求項5】 配列番号1記載の塩基配列を含むDNA
    が組み込まれた組換え体ベクター。
  6. 【請求項6】 動物細胞から抽出したmRNAを鋳型と
    して合成したcDNAを発現クローニングベクターに組
    み込むことによりcDNAライブラリーを構築し、該cD
    NAライブラリーを細胞に導入し、得られる細胞を、その
    細胞の増殖を抑制する活性を有するレクチンの存在下で
    培養し、増殖する細胞を単離し、該細胞よりα2,3-シア
    リルトランスフェラーゼをコードするcDNAを採取す
    ることを特徴とする請求項2記載または3記載のDNA
    の製造法。
  7. 【請求項7】 動物細胞から抽出したmRNAを鋳型と
    して合成したcDNAを発現クローニングベクターに組
    み込むことによりcDNAライブラリーを構築し、該c
    DNAライブラリーを細胞に導入し、得られる細胞を、
    その細胞の増殖を抑制する活性を有するレクチンの存在
    下で培養し、増殖する細胞を選択し、該細胞よりα2,3-
    シアリルトランスフェラーゼをコードするcDNAを単
    離し、該cDNAをベクター中のプロモーターの下流に
    導入することを特徴とする請求項4または5記載の組換
    え体ベクターの製造法。
  8. 【請求項8】 請求項4または5記載の組換え体ベクタ
    ーを保有する細胞を培地に培養し、培養物中にα2,3-シ
    アリルトランスフェラーゼを生成蓄積させ、該培養物か
    らα2,3-シアリルトランスフェラーゼを採取することを
    特徴とする請求項1記載のα2,3-シアリルトランスフェ
    ラーゼの製造法。
  9. 【請求項9】 動物細胞がヒト・メラノーマWM266-4 細
    胞である請求項6記載のDNAの製造法。
  10. 【請求項10】 動物細胞がヒト・メラノーマWM266-4
    細胞である請求項7記載の組換え体ベクターの製造法。
  11. 【請求項11】 レクチンがヒママメレクチン120で
    ある請求項6記載のDNAの製造法。
  12. 【請求項12】 レクチンがヒママメレクチン120で
    ある請求項7記載の組換え体ベクターの製造法。
  13. 【請求項13】 プラスミドpUC119−WM16。
  14. 【請求項14】 請求項4または5記載の組換え体ベク
    ターを含有する細胞。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の細胞を用いて糖タン
    パク質糖鎖または糖脂質が有するラクトサミン構造の非
    還元末端にα2→3結合でシアル酸を付与する方法。
  16. 【請求項16】 請求項14記載の細胞を用いて糖タン
    パク質または糖脂質の糖鎖上にシアリルルイスa(Sial
    yl-Lewis a)構造またはシアリルルイスx(Sialyl-Lew
    is x)構造を導入する方法。
  17. 【請求項17】 請求項1記載のα2,3-シアリルトラン
    スフェラーゼを用いて糖タンパク質糖鎖または糖脂質が
    有するラクトサミン構造の非還元末端にα2→3結合で
    シアル酸を付与する方法。
  18. 【請求項18】 請求項1記載のα2,3-シアリルトラン
    スフェラーゼを用いて糖タンパク質または糖脂質の糖鎖
    上にシアリルルイスa(Sialyl-Lewis a)構造またはシ
    アリルルイスx(Sialyl-Lewis x)構造を導入する方
    法。
  19. 【請求項19】 請求項2または3記載のDNAを用い
    るハイブリダイゼーション法により、請求項1記載のα
    2,3-シアリルトランスフェラーゼを検出する方法。
  20. 【請求項20】 請求項2または3記載のDNAの塩基
    配列に基づくオリゴヌクレオチドを用いるポリメラーゼ
    ・チェイン・リアクション法により、請求項1記載のα
    2,3-シアリルトランスフェラーゼを検出する方法。
  21. 【請求項21】 請求項2または3記載のDNAの塩基
    配列の一部または全部を含むオリゴヌクレオチドを用い
    て請求項1記載のα2,3-シアリルトランスフェラーゼの
    生産を抑制する方法。
  22. 【請求項22】 請求項4または5記載の組換え体ベク
    ターを含有する大腸菌。
  23. 【請求項23】 Escherichia coli HB101/pUC119-WM16
    (FERM BP-4012)。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009126308A3 (en) * 2008-04-11 2010-02-25 Government Of The United States Of America, As Represented By The Secretary, Department Of Health And Human Services Compositions and methods for vaccine and virus production
JP2011517566A (ja) * 2008-04-12 2011-06-16 セルトリオン インク 優秀な組換え蛋白質を生産するためのヒト宿主細胞

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