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JPH1121255A - 機能性分子輸送体及びその製造方法 - Google Patents

機能性分子輸送体及びその製造方法

Info

Publication number
JPH1121255A
JPH1121255A JP9177262A JP17726297A JPH1121255A JP H1121255 A JPH1121255 A JP H1121255A JP 9177262 A JP9177262 A JP 9177262A JP 17726297 A JP17726297 A JP 17726297A JP H1121255 A JPH1121255 A JP H1121255A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
functional molecule
transporter
histone
oligonucleotide
functional
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9177262A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Goto
武 後藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Original Assignee
Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc filed Critical Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Priority to JP9177262A priority Critical patent/JPH1121255A/ja
Publication of JPH1121255A publication Critical patent/JPH1121255A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 機能性分子を効率よく放出できる機能性分子
輸送体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 ヒストンサブユニットのうちH1を含ま
ないことを特徴とする機能性分子輸送体;ヒストンサブ
ユニットを H2a→H2b→H3→H4 の順序で混合
することを特徴とする機能性分子輸送体の製造方法;核
酸等の機能性分子とヒストンタンパク質由来の上記機能
性分子輸送体との複合体;及び該複合体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業の属する技術分野】本発明は、細胞内に機能性分
子を導入するための新規機能性分子輸送体及びその製造
方法、ならびに該機能性分子と機能性分子輸送体との複
合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明
は、主として遺伝子治療など遺伝子導入の際に有用な、
核酸等の機能性分子を細胞内に効率良く安全に導入する
ためのヒストンタンパク質由来の機能性分子輸送体及び
その製造方法、ならびに該核酸等の機能性分子とヒスト
ンタンパク質由来の上記機能性分子輸送体との複合体及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】遺伝子治療とは、薬剤として作用する外
来遺伝子(以下、「薬物遺伝子」という)を体内に導入
し発現させることで疾患の治療を行おうとする全く新し
い治療方法である。遺伝子治療によって治療効果が期待
できる疾患は先天性、後天性を問わず遺伝子の異常が原
因で発症する疾患すべてが含まれるが、特に、致死的で
あり、かつ治療法が確立されていない癌やAIDSに対
しては非常に有用性の高い治療方法であると考えられて
いる。
【0003】遺伝子治療は、異常(原因)遺伝子をその
ままにして、新しい(正常)遺伝子を付け加える付加遺
伝子療法(Augmentation Gene Th
erapy)と、異常遺伝子を正常遺伝子で置き換える
置換遺伝子療法(Replacement Gene
Therapy)に大別される。
【0004】遺伝子治療の臨床応用としては、1989
年米国において初めて遺伝子治療の臨床試験が行われて
以来、すでにイタリア、オランダ、フランス、イギリ
ス、中国においても臨床試験が開始されている。しかし
ながら、遺伝子治療の臨床応用において、薬物遺伝子を
効率良く安全に標的細胞へ導入するための最適な遺伝子
の形態や方法の開発が大きな技術的課題の1つとなって
いる。
【0005】1980年代初期には、マイクロインジェ
クション等物理的手法の応用が試みられたが、疾患治療
のために必要な薬物遺伝子を安定かつ効率良く導入する
ことができず、臨床応用には至らなかった。
【0006】その後、外来遺伝子を効率良く細胞に導入
するための担体となる組み換えウイルス(ウイルスベク
ター)が開発され、初めて遺伝子治療の臨床応用が可能
となった(Miller.,A.D.Human Ge
ne Therapy,1,5一14、1990)。し
かしながら、治療に必要な量のウイルスベクターを生産
するためには大量の細胞を培養する必要があり、一般的
な薬物の生産コストに比べて非常に高価になってしまう
ということ、また、ウイルスベクターによっては、細胞
毒性や免疫原性等が確認されるなど、まだまだ改良する
点が多い。
【0007】非ウイルス性の輸送体に関する従来の技術
としては、細胞表面に付するレセプターを介した手法も
しくはカチオン性脂質を介した手法に視点が絞られてい
る。レセプターを介したオリゴヌクレオチド導入例とし
てはトランスフェリン(transferrine)や
アシアログリコタンパク質(asialoglycop
rotein)、のようなリガンドとDNAとの複合体
を使って、これを細胞内へ輸送しようとした報告があ
る。((1) Wagner, E.,Proc. Na
tl. Acad. Sci., USA 88, 425
5−4259 (1991),(2) Wilson,
J. M.,J. Biol. Chem., 267,
11483−11489 (1992)) また、生体膜類似の脂質二分子膜構造を有する構造体で
あるリポソームを利用したシステムが多く見られる。例
えば、リポソームにオリゴヌクレオチド薬物を封入して
安定性の向上をはかると同時に、リポソームを化学修飾
することにより標的細胞に対する親和性を増したという
報告例がある。((1) Felgner, P. L.
, Proc. Natl. Acad. Sci.,
USA 84 ,7413−7417 (1987),
(2) Malone, R. W., Proc. N
atl. Acad. Sci., USA 86, 60
77−6087 (1989) ,(3) Hawley
−Nelson, P.,Focus 15, 73−7
9(1993)) さらに、核酸が負電荷を有することを利用し、正電荷を
有する合成高分子との間で複合体を形成させることによ
り、標的となる細胞もしくは細胞内へ送達させることを
試みた研究報告もある。((1) Nature ,2
71, 130−135 (1978),(2) J.
Biol. Chem., 262, 4429−443
2(1987),(3) J. Biol. Che
m., 263, 14621−1462(1988),
(4) Proc. Natl. Acad. Sc
i., USA 87, 3410−3414 (199
0)) 列記した人工的合成ポリマーに着眼した研究において、
それら輸送体の使用により核酸の安定な輸送、または効
率良い細胞内導入、ターゲティング機能の増大が確実に
果たされている。しかしながら、輸送した核酸の輸送体
からの放出に関しては、途上の状況にある。
【0008】一方、生体由来の天然のタンパク質を輸送
体として利用する試みもある。例えば、下記文献におい
ては、核タンパク質であるヒストン等を用い、それをプ
ラスミドDNA用の輸送体とした研究を行なっている。
((A)Masaru Yamaizumi, Nat
ure,273,782−784(1978).,
(B)Yasufumi Kaneda, SCIEN
CE, 243,375−378(1989), (C)
Mirjam Breeuwer and David
S. Goldfarb, Cell, 60,999−
1008(1990).,(D)Jian Che
n.,Human Gene Therapy,5,4
29−435(1994)) 文献(A)では、ヒストンの細胞核への移行が非常にス
ムーズに生じることが示されており、文献(B)では、
プラスミドDNAを封入したリポソームに核タンパク質
を導入することにより、培養細胞への取り込みの向上を
はかっている。文献(C)では、ヒストンH1へチトク
ロムCを導入することにより、細胞核内への取り込みの
向上をはかっている。文献(D)では、ガラクトシル化
したヒストンへプラスミドDNAを結合させることによ
り、細胞内への取り込みおよびオリゴヌクレオチド発現
の向上について検討している。
【0009】リポソーム輸送体の場合、これに内包した
オリゴヌクレオチドを放出しにくいといった大きな欠点
がある。また、合成アミノ酸輸送体のような正電荷を有
する高分子は、高い細胞毒性を有することが以前から指
摘されている(Bio−conjugate Che
m., 1, 149−153 (1990))。それと
同時に、それら合成高分子が生体内へ投与される場合
は、異物として認識されることにより、アナフィラキシ
ーショック等の免疫系への影響も懸念されておりいまだ
現実化されていない。
【0010】真核生物において、染色体のDNAはヒス
トンと結合してクロマチンと呼ばれる複合体を形成して
いる。ヒストンは通常、H1、H2a、H2b、H3、
H4の5種類のサブユニットからなり、塩基性アミノ酸
の含量がきわめて多いことが知られている。ヒストンが
多くの正電荷を有することは、この分子の1つの主要な
特徴である。そのために、DNA等負電荷を有する物質
との間で相互作用することが可能となっている。H1以
外のヒストンサブユニットの一次構造は、生物種が異な
っても非常によく保存されており、異種の生物のヒスト
ンサブユニットを組み合わせてもヒストン自体は再構成
されることが知られている。また、ヒストンがタンパク
質の一種であるにもかかわらず、特別な酵素活性をもた
ないことも広く知られており、これは、機能性分子輸送
体としてヒストンを利用する上で有利な特徴であると考
えられる。さらに、ヒストンサブユニットのH2aとH
2bの一次構造中には、細胞核移行性シグナルとしての
機能をもつアミノ酸配列が存在しているとの報告もある
(Robert B. Moreland, Molec
ular and Cellular Biology
, 7,4048−4057(1987))。これらヒ
ストンの性質を利用し、ヒストンサブユニットをH2a
→H2b→H3→H4→H1の順序で混合してヒストン
を再構築することを特徴とするオリゴヌクレオチド用ヒ
ストン輸送体の製造方法が開示されている(特開平8−
301791)。
【0011】しかしながら、前記機能性分子輸送体にお
ける内包核酸の安定性は高められたが、核酸の放出に関
しては低いものであり、機能性輸送体の性質としては十
分なものとは言えない。
【0012】特に、一度結合したもしくは内包された核
酸を効率良く放出する輸送体は未だ開発されておらず、
これは機能性分子輸送体を開発する上で解決すべき重要
な課題として残されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来技術をふまえ、本発明者らは種々の検討を行
い、ヒストンサブユニットの規則的な混合によってポリ
ペプチドを構築することにより安定に内包された機能性
分子が効率よく放出される機能性分子輸送体及びその製
造方法を提供し、また、上記ポリペプチドを構築の過程
で、機能性分子を共存させることにより機能性分子と機
能性分子輸送体との複合体およびその製造方法を提供す
ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者ら上述した目的
を達成するために鋭意研究した結果、内包した機能性分
子を効率よく放出する輸送体を見出した。
【0015】すなわち、本発明はヒストンサブユニット
のうちH1を含まない機能性分子輸送体を提供する。
【0016】本発明はさらに、ヒストンサブユニットを
H2a→H2b→H3→H4の順序で混合して機能性分
子輸送体を構築することからなる製造方法;およびこの
方法によって得られる機能性分子輸送体を提供する。こ
こで得られる機能性分子輸送体は上記ヒストンサブユニ
ットH1を含まない機能性分子輸送体に属する。
【0017】さらに、本発明は、機能性分子と機能性分
子輸送体との複合体;およびヒストンサブユニットを
H2a→H2b→H3→H4 の順序で混合することか
らなる機能性分子輸送体の製造工程において、機能性分
子を共存させることを特徴とする複合体の製造方法を提
供する。
【0018】ここで、本発明の先行出願である上述の特
開平8−301791の方法と本発明の方法とを比較す
ると、該先行出願がヒストンサブユニットをH2a→H
2b→H3→H4→H1の順序で混合してヒストンを再
構築することを特徴とするオリゴヌクレオチド用ヒスト
ン輸送体の製造方法であるのに対して、本発明はヒスト
ンサブユニットをH2a→H2b→H3→H4の順序で
混合することからなる機能性分子輸送体の製造方法であ
る。
【0019】要するに、本発明においては、H1サブユ
ニットを混合する段階を除くことにより、内包した機能
性分子を効率よく放出する輸送体を得ることができた。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の機能性分子輸送体の製造
方法は、ヒストンサブユニットの混合順序およびH1サ
ブユニットを使用しないことに特徴を有する。上述した
ように、本機能性分子輸送体は、ヒストンサブユニット
のH1を除く、H2a、H2b、H3、H4より構成さ
れ、H2a→H2b→H3→H4の順序で混合して再構
築する。ただし、H2aとH2bとの順序は逆であって
もよいが、まずH2aとH2bとの混合物を作成するこ
とが必要である。次いでこの混合物にH3、H4の順序
でサブユニットを添加する。サブユニットの混合方法と
しては4の階乗すなわち24通りが考えられるが、機能
性分子輸送体の構築過程においては本発明の方法以外の
順序で混合した場合には、白濁や沈殿が生じて再構築ヒ
ストンの生成が観察されなかった。本発明の機能性分子
輸送体の製造方法を図1に模式図として示す。
【0021】本発明の機能性分子輸送体の構築に用いる
サブユニットの例としては、ベーリンガーマンハイム社
製のヒストンH2a、ヒストンH2b 、ヒストンH
3、ヒストンH4が挙げられる。
【0022】本発明の方法で機能性分子輸送体を製造す
るには、まず、各ヒストンサブユニットをイオン強度
0.01〜0.05、好ましくはイオン強度0.02の
リン酸緩衝液(pH7.2)に溶解後、それぞれの濃度
が5×10-5M〜1×10-4M、好ましくは1×10-5
Mになるように調整する。ヒストンの再構築は、H2a
溶液とH2b溶液を混合した後、これに対してH3溶液
を、最後にH4溶液を添加する順序で行う。これらサブ
ユニット溶液の混合に際しては、各サブユニットが等モ
ル数になるようにあらかじめ調製する必要がある。本発
明により得られる再構築されたヒストンは機能性分子輸
送体として有用である。
【0023】また、本発明の機能性分子輸送体と機能性
分子との複合体を製造するには、上述した機能性分子輸
送体の製造過程で機能性分子を添加する。機能性分子の
添加は、いつでも良いが、好ましくはH2aとH2bを
混合した後であればいつでもよく、より好ましくはH2
aとH2bを混合した後からH4を添加する前までに添
加する、さらに好ましくはH2aとH2bの混合物に機
能性分子を添加し、次いでH3、H4の順序でサブユニ
ットを添加するのが良い。
【0024】内包させる機能性分子は核酸であり、その
分子の大きさ、種類には制限がない。核酸の種類とし
て、例えば線状二本鎖 DNA、環状二本鎖 DNA、オ
リゴヌクレオチド、RNA等が挙げられ、好ましくは、
アンチセンスヌクレオチド、ホスホロチオエート型アン
チセンスヌクレオチド、リボザイムおよびプラスミドか
ら選択される。
【0025】
【実施例】実施例によって本発明をさらに具体的に説明
するが、本発明はこれら実施例によって制限されるもの
ではない。なお、下記実施例において一連の操作は室温
付近で行った。
【0026】機能性分子として用い得るモデルオリゴヌ
クレオチドの合成とその標識を以下の方法により行っ
た。
【0027】[モデルオリゴヌクレオチドの合成]図2
に示した配列のオリゴヌクレオチドを、DNA合成機
(アプライドバイオシステムズ社製タイプ380Bまた
はタイプ392)を用いて合成した。アミダイト試薬に
は、全て、ミリポア社のものを用いた。図2ではアデノ
シンヌクレオチドをA,グアノシンヌクレオチドをG、
シトシンヌクレオチドをC、チミジンヌクレオチドをT
と記載している。これらは、2’ー水酸基の保護基とし
てtーブチルジメチルシリル基を用いたホスホロアミダ
イト法(Nucleic Acid Res., vo
l.17, 7059−7071 (1989))により
合成した。オリゴヌクレオチドの精製は文献(Nucl
eic Acid Res.,vol.19,5125−
5130(1991))に記載された方法に従った。
【0028】[オリゴヌクレオチドの標識]オリゴヌク
レオチドへの32P標識は、オリゴヌクレオチド(1.8
3OD,260ユニット,5pmol)27.3μl、
オートクレーブした精製水15.7μl、γ−32P−A
TP 1μl、T4−ポリヌクレオチドキナーゼキット
(宝酒造株式会社、Code No. 2030)の10
×キナーゼ緩衝液およびキナーゼ各1μlを混合後、3
7℃にて1時間反応させて行った。
【0029】下記実施例で用いた、H2a→H2b→H
3→H4→H1の順序でオリゴヌクレオチドを内包させ
て構築した再構築ヒストンは特開平8−301791の
再構築ヒストンと同一である。
【0030】[実施例1] 〈吸光度測定と沈殿生成〉4種類のヒストンサブユニッ
トをイオン強度0.02リン酸緩衝液(pH7.2)に
溶解後、それぞれの濃度が1×10-5Mになるように調
整する。各サブユニットおよびオリゴヌクレオチド溶液
(約5pmol/μl)を図3に示すような順序で混合
した。
【0031】得られる生成物の白濁、沈殿生成を360
nmにおける吸光度測定により分光学的に行った。
【0032】吸光度測定の結果を図3に示す。縦軸はヒ
ストンサブユニットの混合順序を、横軸はその混合にお
ける360nmの吸光度すなわち系の濁りを示す。サブ
ユニットの混合方法としては、4の階乗すなわち24通
りが考えられるが、機能性分子輸送体の構築において、
H2a→H2b→H3→H4以外の順序で混合した場
合、その系は白濁した。これに対し、先の規則性を基に
混合した場合、その系においては白濁、沈殿物の生成は
全く観測されなかった。また、上記濃度のオリゴヌクレ
オチドをH2aとH2bの混合溶液に添加後、H3、H
4の順序で各サブユニットを混合することによりオリゴ
ヌクレオチド/機能性分子輸送体複合体の調製を行った
が、その系において白濁、沈殿物の生成は観測されなか
った。これらの結果から、本発明の規則的な混合により
機能性分子輸送体が得られた。
【0033】[実施例2] 〈円偏向二色性測定(CD)〉溶液中のヒストンタンパ
ク質の立体構造は、CD測定により検討した。CD測定
装置には日本分光工業株式会社のJ−720型を、セル
には光路長1mmの円筒型セルを用い、25℃の条件で
200〜250nmの波長領域において4回のスキャン
を行い、CDスペクトルを求めた。
【0034】図4は、ベイリンガー社から購入した天然
のヒストン(商品名ヒストン(Histone)、ベー
リンガー・マンハイム社製)(1)、オリゴヌクレオチ
ドを混合させたベイリンガー社のヒストン(2)、H2
a→H2b→H3→H4→H1の順序でオリゴヌクレオ
チドを内包させて構築した再構築ヒストン(3)、本発
明のH2a→H2b→H3→H4の順序で構築した機能
性分子輸送体(4)、オリゴヌクレオチドを内包した本
発明の機能性分子輸送体(5)のCDスペクトルを示
す。5つのCDスペクトルは、この測定装置の精度内で
完全に一致した。
【0035】この結果から、本発明の機能性分子輸送体
(4)、本発明の機能性分子輸送体へオリゴヌクレオチ
ドを内包させたもの(5)および天然のヒストンとオリ
ゴヌクレオチドを混合したもの(2)は、いずれも天然
のヒストン(1)と同じ立体構造をもつことが示され
た。この結果は、少なくともタンパク質の生理的活性レ
ベルにおいて、本発明の機能性分子輸送体が天然ヒスト
ンに近い機能を持つことを示唆するものである。
【0036】[実施例3]本発明の機能性分子輸送体か
らのオリゴヌクレオチドの遊離量の検討は次の方法で検
討した。
【0037】まず、上述した方法でオリゴヌクレオチド
32P標識し、続いてオリゴヌクレオチドを内包した天
然のヒストン、H1を含む再構築ヒストン、機能性分子
輸送体を作製した。すなわち、天然のヒストン、再構築
ヒストン、本発明の機能性分子輸送体サブユニットを用
い、これらに対して32P−ATPで標識したオリゴヌク
レオチドを薬物として使用し、3種のオリゴヌクレオチ
ド/機能性分子輸送体複合体溶液を作製した。
【0038】上記3種の試料を、天然のヒストン、再構
築ヒストン、本発明の機能性分子輸送体サブユニットは
通過せず、オリゴヌクレオチドのみを透過する分画能を
有する限外濾過用チューブ(日本ミリポアリミテッド
製、ウルトラフリーC3−GCUFC3TGCOO)に
別個に添加し、各種複合体からのオリゴヌクレオチドの
遊離を次の3つの方法から検討した。
【0039】(方法1)オリゴヌクレオチドを内包した
機能性分子輸送体溶液に0.01Nの塩酸(和光純薬工
業株式会社 075−2431)溶液を添加して酸性の
pHへ調製した。
【0040】(方法2)オリゴヌクレオチドを内包した
機能性分子輸送体溶液に最終濃度が7Mとなるように尿
素を添加した。
【0041】(方法3)オリゴヌクレオチドを内包した
機能性分子輸送体溶液を85℃まで昇温した。
【0042】いずれの操作後も30分間静置して3,0
00rpmで15分間遠心した。この遠心により機能性
分子輸送体から遊離したフリーのオリゴヌクレオチドの
みが下層へ集まった。下層溶液は20%のポリアクリル
アミドゲルにて電気泳動後、フジ写真フィルム社製のバ
イオイメージングアナライザ(BAS2000)により残
存オリゴヌクレオチドを定量した。そして、この定量値
から遊離オリゴヌクレオチド量(%)を算出した。これ
らの算出結果を図5−図7に示す。
【0043】図5は、ヒストンまたは機能性分子輸送体
の酸変性によって放出したオリゴヌクレオチドの程度を
観測したものである。ベイリンガー社の天然ヒストンと
H1サブユニットを含む再構築ヒストンの場合、オリゴ
ヌクレオチドの遊離は全く観測されなかった。これに対
して、本発明の機能性分子輸送体からのオリゴヌクレオ
チドの遊離は機能性分子輸送体溶液のpH4.5付近か
ら始まり、pH3付近ではほぼ100%のオリゴヌクレ
オチドが遊離した。これらの結果は、オリゴヌクレオチ
ドを内包した機能性分子輸送体が細胞内へエンドサイト
ーシスのルートで取り込まれた場合、内包されたオリゴ
ヌクレオチドがライソソームの酸性pHによって遊離す
る可能性を示唆するものである。
【0044】図6は、ヒストンまたは機能性分子輸送体
の尿素変性によって放出したオリゴヌクレオチドの程度
を観測したものである。ベイリンガー社の天然ヒストン
とH1サブユニットを含む再構築ヒストンの場合、オリ
ゴヌクレオチドの遊離は全く観測されなかった。これに
対して、本発明の機能性分子輸送体からのオリゴヌクレ
オチドの遊離は機能性分子輸送体溶液の尿素濃度の5M
付近から始まり、尿素の高濃度付近では約80%のオリ
ゴヌクレオチドが遊離した。この結果から、ヒストンサ
ブユニットH1はヒストンの構造を強固にしておりこの
サブユニットの欠損した機能性分子輸送体は、外的条件
に対して非常にフレキシブルな構造をとることが示唆さ
れた。
【0045】図7は、ヒストンまたは機能性分子輸送体
の熱変性によって放出したオリゴヌクレオチドの程度を
観測したものである。25℃から85℃の温度範囲内で
受ける熱変性によって、ベイリンガー社の天然ヒストン
とH1サブユニットを含む再構築ヒストンの場合、オリ
ゴヌクレオチドの遊離は全く観測されなかった。これに
対して、本発明の機能性分子輸送体からのオリゴヌクレ
オチドの遊離は機能性分子輸送体溶液の50℃付近から
始まり、80℃付近でほぼ70%以上のオリゴヌクレオ
チドが遊離した。これらの結果は、外部エネルギー的影
響に関しても非常にフレキシブルであることがわかる。
【0046】
【発明の効果】以上、詳しく説明した通り、本発明によ
り、内包した機能性分子を効率よく放出することが可能
である機能性分子輸送体が提供される。このような機能
性分子輸送体は遺伝子治療の際に核酸等の機能性分子を
細胞内に効率良く安全に導入することができ、遺伝子治
療を初めとして遺伝子導入技術などの発展に寄与すると
ころ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】機能性分子輸送体の構築方法を示す模式図であ
る。
【図2】モデル薬物として用いたオリゴヌクレオチドの
塩基配列である。
【図3】ヒストンユニットのランダム混合と本発明の方
法とを比較した吸光度測定のグラフである。
【図4】各種ヒストン物質の円偏向二色性スペクトルを
比較したグラフである。
【図5】種々のpHにおけるオリゴヌクレオチドの放出
試験の結果を示すグラフである。
【図6】種々の尿素濃度におけるオリゴヌクレオチドの
放出試験の結果を示すグラフである。
【図7】種々の温度におけるオリゴヌクレオチドの放出
試験の結果を示すグラフである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒストンサブユニットのうちH1を含ま
    ない機能性分子輸送体。
  2. 【請求項2】 ヒストンサブユニットを H2a→H2
    b→H3→H4 の順序で混合することによって得られ
    る請求項1記載の機能性分子輸送体。
  3. 【請求項3】 ヒストンサブユニットを H2a→H2
    b→H3→H4 の順序で混合することを特徴とする、
    請求項1又は請求項2記載の機能性分子輸送体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 機能性分子と請求項1又は請求項2記載
    の機能性分子輸送体との複合体。
  5. 【請求項5】 機能性分子が、アンチセンスオリゴヌク
    レオチド、ホスホロチオエート型アンチセンスオリゴヌ
    クレオチド、リボザイムおよびプラスミドから選択され
    る核酸である請求項4記載の複合体。
  6. 【請求項6】 ヒストンサブユニットを H2a→H2
    b→H3→H4 の順序で混合することからなる機能性
    分子輸送体の製造工程において、機能性分子を共存させ
    ることを特徴とする請求項4記載の複合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 機能性分子をH2aとH2bの混合後に
    添加する請求項6記載の製造方法。
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