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JPWO2006134960A1 - 抗炎症剤のスクリーニング方法 - Google Patents

抗炎症剤のスクリーニング方法 Download PDF

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JPWO2006134960A1 JP2007521318A JP2007521318A JPWO2006134960A1 JP WO2006134960 A1 JPWO2006134960 A1 JP WO2006134960A1 JP 2007521318 A JP2007521318 A JP 2007521318A JP 2007521318 A JP2007521318 A JP 2007521318A JP WO2006134960 A1 JPWO2006134960 A1 JP WO2006134960A1
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久尚 平松
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順 石崎
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Abstract

抗炎症薬を得るための簡便なスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法に用いるポリペプチドは、細胞接着分子の発現に関与しており、血管内皮細胞の白血球への接着において重要な役割を果たしていることから、該ポリペプチドの発現量及びその機能を評価することにより、血管内皮細胞接着抑制物質をスクリーニングすることができる。

Description

本発明は、血管内皮細胞接着抑制物質、及び抗炎症剤のスクリーニング方法に関する。
種々の炎症性疾患は、白血球の炎症巣への集積・浸潤が原因となって引き起こされる。白血球がリンパ節あるいは炎症巣へ集積・浸潤するためには、それが、まず、血管内皮細胞に接着する必要がある。この接着の過程は、以下の3つの段階:1)血管内皮細胞上での白血球のローリング、2) 白血球の活性化、及び3)血管内皮細胞への白血球の強い接着、を含む。最初に起こるローリング(段階1))は、炎症性サイトカインにより血管内皮細胞上に誘導・発現される細胞接着分子の1 つであるE−selectinと、白血球上に発現しているシアリルルイスX(sLeX)糖鎖抗原との結合により、引き起こされることが明らかとなっている。その後に起こる活性化(段階2))、及び強い接着(段階3))は、白血球上に発現しているインテグリン、及び炎症性サイトカインにより血管内皮細胞上に誘導・発現される細胞接着分子VCAM−1 (Vascular Cell Adhension Molecule−1)又は細胞接着分子ICAM−1 (Intercellular Adhension Molecule−1)といわれる免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する細胞接着分子により引き起こされることが明らかとなっている(非特許文献1)。
また、このような様々な細胞接着分子の発現が種々の炎症性病変局所において亢進していることも報告されており、そしてそれらが慢性炎症の病態形成に関与していることが明らかとなっている。
これらの現象は、その病変部位において白血球の浸潤を伴う炎症性疾患、例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、結節性動脈周囲炎、潰瘍性大腸炎等で起こっていると考えられる。また、これらの現象は、白血球の浸潤を伴うアレルギー性疾患の原因となることが知られている。
以上のことから、炎症部位において炎症性サイトカインにより誘導される種々の細胞接着分子の発現を抑制すれば、白血球の炎症巣への集積・浸潤を阻止でき、これにより炎症性疾患の治療が可能になると考えられる。
Molecular Medicine、 1995年、第32巻、p. 90
本発明の課題は、細胞接着分子の発現抑制及び血管内皮細胞の白血球細胞への接着抑制、という新規な作用機構を有する、従来の抗炎症剤によっては治療困難であった種々の炎症性疾患及び自己免疫疾患に対して高い治療効果をもつ有用な物質を得るための簡便なスクリーニング系を提供することである。
本発明者等は、鋭意研究の結果、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に炎症性サイトカインの一種であるTNF−αの添加によって発現が誘導された遺伝子として見出された遺伝子のうち6つの遺伝子が、ICAM−1やVCAM−1等の細胞接着分子の発現、または血管内皮細胞が白血球細胞との接着に関与していることを見出すことより、本発明を完成させた。これらの遺伝子がコードするポリペプチドの発現量を減少させる、もしくは該ポリペプチドの有する機能を阻害するような物質は、血管内皮細胞と白血球の接着を抑制する物質であり、これらの物質は新規のメカニズムに基づく抗炎症薬になると考えられる。
即ち、本発明によれば、
[1]
(1)血管内皮細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)下記のいずれかに記載の遺伝子の発現量を測定する工程を含む血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法:
1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または
2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの、
[2]
(1)血管内皮細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)下記のいずれかに記載のポリペプチドの発現量を測定する工程を含む血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法:
1)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
2)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチド、
[3]
被験物質非存在下よりも前記遺伝子又はポリペプチドの発現量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、上記[1]または[2]に記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[4]
(1)上記[1]に記載の遺伝子を含む発現ベクターで形質転換され、前記遺伝子によってコードされたポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、
(2)白血球を上記細胞に接触させる工程、及び
(3)白血球と上記細胞との接着量を測定する工程を含む、
血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[5]
被験物質非存在下よりも白血球と上記細胞との接着量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、上記[4]記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[6]
(1)上記[1]に記載の遺伝子を含む発現ベクターで形質転換され、前記遺伝子によってコードされたポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)細胞接着分子の発現量を測定する工程を含む、
血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[7]
被験物質非存在下よりも細胞接着分子の発現量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、上記[6]記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[8]
(1)上記[2]に記載のポリペプチドと、被験物質とを、標識した前記ポリペプチドの特異結合体の存在下で、接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチドと前記特異結合体の結合量を測定する工程を含む、
血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[9]
被験物質非存在下よりも特異結合体の結合量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、上記[8]記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法、
[10]
前記細胞接着分子がICAM−1、VCAM−1、及びE−selectinからなる群から選択されるいずれかである、上記[1]から[9]いずれかに記載のスクリーニング方法、
[11]
炎症性サイトカインを接触させる工程をさらに含む、上記[1]から[10]いずれかに記載のスクリーニング方法、
[12]
血管内皮細胞接着抑制物質を抗炎症薬として選択するものである上記[1]〜[11]のいずれかに記載のスクリーニング方法、が提供される。
本発明のスクリーニング方法を用いれば、血管内皮細胞と白血球細胞との接着を抑制することにより抗炎症作用を示す、従来にない抗炎症剤の探索が可能となる。
実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAについて、Cell−ELISAにて実験数を4系列に増やし、ICAM−1の発現抑制効果を再評価した(実施例3a) :二次スクリーニング)。本グラフは、実施例3a)-c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線または灰色のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の二次スクリーニング結果を示す。各カラムは4系列の解析により得られた490nmの吸光度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。尚、斜線のカラムは一次スクリーニングでICAM−1の発現抑制で陽性反応を示したsiRNA、また灰色のカラムは他の接着分子で陽性を示したsiRNAであることを表す。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAについて、Cell−ELISAにて実験数を4系列に増やし、VCAM−1の発現抑制効果を再評価した(実施例3a) :二次スクリーニング)。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線または灰色のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の二次スクリーニング結果を示す。各カラムは4系列の解析により得られた490nmの吸光度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。尚、斜線のカラムは一次スクリーニングでVCAM−1の発現抑制で陽性反応を示したsiRNA、また灰色のカラムは他の接着分子で陽性を示したsiRNAであることを表す。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAについて、Cell−ELISAにて実験数を4系列に増やし、E−selectinの発現抑制効果を再評価した(実施例3a) :二次スクリーニング)。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線または灰色のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の二次スクリーニング結果を示す。各カラムは4系列の解析により得られた490nmの吸光度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。尚、斜線のカラムは一次スクリーニングでE−selectinの発現抑制で陽性反応を示したsiRNA、また灰色のカラムは他の接着分子で陽性を示したsiRNAであることを表す。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1発現抑制効果を示したsiRNAについてその抑制効果を定量的PCRによりmRNA発現レベルで評価した。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子のsiRNAのうちICAM−1の発現抑制を示した7つのsiRNA(斜線カラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の結果を示す。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較してΔCtの差で1以上の減少(50%以上の発現減少)を示したことを表す。 a.ICAM−1のmRNA発現レベル(ΔCt値)を評価した。 b.aの各siRNAがそのターゲットとなる遺伝子をノックダウンするかをmRNA発現レベル(ΔCt値)で評価した。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、VCAM−1発現抑制効果を示したsiRNAについてその抑制効果を定量的PCRによりmRNA発現レベルで評価した。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子のsiRNAのうちVCAM−1の発現抑制を示した5つのsiRNA(斜線カラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の結果を示す。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較してΔCtの差で1以上の減少(50%以上の発現減少)を示したことを表す。 a. ICAM−1のmRNA発現レベル(ΔCt値)を評価した。 b.aの各siRNAがそのターゲットとなる遺伝子をノックダウンするかをmRNA発現レベル(ΔCt値)で評価した。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、E−selectin発現抑制効果を示したsiRNAについてその抑制効果を定量的PCRによりmRNA発現レベルで評価した。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子のsiRNAのうちE−selectinの発現抑制を示した8つのsiRNA(斜線カラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の結果を示す。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較してΔCtの差で1以上の減少(50%以上の発現減少)を示したことを表す。 a.ICAM−1のmRNA発現レベル(ΔCt値)を評価した。尚、サンプル数の関係上、解析が2プレートに分かれたため、それぞれのプレートにおけるデータを分けて表記した。 b.aの各siRNAがそのターゲットとなる遺伝子をノックダウンするかをmRNA発現レベル(ΔCt値)で評価した。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAをHUVECにトランスフェクションし、TNF−αにより誘導されるTHP−1細胞との接着を抑制できるかどうかを検討した(各実験数4系列)。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の解析結果を示す。 各カラムは4系列の解析により得られた蛍光強度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。また、蛍光強度が高いほど多くのTHP−1細胞がHUVECに接着していることを表している。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較して50%以上の接着抑制を示したことを表す。 今回調べたsiRNAの中で顕著なTHP−1細胞の接着抑制効果を示すものは認められなかった。 実施例2d) の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAをHUVECにトランスフェクションし、TNF−αにより誘導されるU937細胞との接着を抑制できるかどうかを検討した(各実験数4系列)。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の解析結果を示す。 各カラムは4系列の解析により得られた蛍光強度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。また、蛍光強度が高いほど多くの U937細胞がHUVECに接着していることを表している。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較して50%以上の接着抑制を示したことを表す。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAをHUVECにトランスフェクションし、TNF−αにより誘導されるMOLT−4細胞との接着を抑制できるかどうかを検討した(各実験数4系列)。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の解析結果を示す。 各カラムは4系列の解析により得られた蛍光強度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。また、蛍光強度が高いほど多くのMOLT−4細胞がHUVECに接着していることを表している。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較して50%以上の接着抑制を示したことを表す。 実施例2d)の一次スクリーニング(Cell−ELISA)において、ICAM−1、VCAM−1、そしてE−selectinの何れかの発現抑制効果を示したsiRNAをHUVECにトランスフェクションし、TNF−αにより誘導されるJurkat細胞との接着を抑制できるかどうかを検討した(各実験数4系列)。本グラフは、実施例3a)−c)の実験結果により炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであると判断された6遺伝子をターゲットとした9つのsiRNA (斜線のカラム)、陰性コントロールsiRNA(白色カラム)、そして陽性コントロールsiRNA(黒色カラム)の解析結果を示す。 各カラムは4系列の解析により得られた蛍光強度の平均値を示し、エラーバーはその標準偏差を示す。また、蛍光強度が高いほど多くのJurkat細胞がHUVECに接着していることを表している。尚、アスタリスク(*)は陰性コントロールsiRNAと比較して50%以上の接着抑制を示したことを表す。
1.炎症性サイトカインによって発現が上昇するポリヌクレオチド
本発明のスクリーニング方法において使用することができる「炎症性サイトカインによって発現が上昇するポリヌクレオチド」とは、ヒトおよび/またはヒト以外の哺乳動物の、炎症性サイトカインの添加(炎症性サイトカイン処理)によって発現が上昇するポリヌクレオチドを意味する。
炎症性サイトカインとは、細菌やウィルス感染、腫瘍、組織損傷などに伴う炎症反応に深く関与するサイトカインをさす。例えば、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)、TNF−α(腫瘍壊死因子)などが知られているが、好ましくはTNF−αである。
炎症性サイトカイン処理によって発現が上昇するポリヌクレオチドは具体的には、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが含まれる。
なお、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、遺伝子工学的手法により、上述した天然型のポリヌクレオチドの配列の一部を他のヌクレオチドへの置換やヌクレオチドの欠失、付加などで改変したポリヌクレオチドを調製することができ、それらは後述する検定方法によって、天然型のポリペプチドと同様の機能有するか否かが確認できる。このような天然型のヌクレオチド配列に一部のヌクレオチドが置換、欠失、もしくは付加されたヌクレオチド配列を有し、天然型の、ポリヌクレオチドと同等の活性を示すポリヌクレオチドもまた本発明のポリヌクレオチドに含まれる。ヌクレオチド配列の改変は、例えば、制限酵素あるいはDNAエキソヌクレアーゼによる欠失導入、部位特異的変異誘発法による変異導入、変異プライマーを用いたPCR法によるヌクレオチド配列の改変、合成変異DNAの直接導入などの方法により行うことができる。炎症性サイトカイン処理によって発現量が変動するポリヌクレオチドの具体例としては、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列のいずれかを含むことからなるポリヌクレオチドをその例としてあげることができるが、これらに限定されない。なお、本発明における「ポリヌクレオチド」という用語には、DNAのみならずそのmRNAやcDNAも含むものとする。また、全長遺伝子やEST(expression sequence tag)も含むものとする。
なお、遺伝子工学的手法については、特に断りのない場合、公知の方法(例えば、Maniatis,T.ら,”Molecular Cloning−A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1982)に従って実施することが可能である。
1.1 炎症性サイトカイン処理によって発現が上昇するポリヌクレオチドの特定方法
本発明の、炎症性サイトカイン処理によって発現が上昇するポリヌクレオチドは、炎症性サイトカイン処理によって発現量が変動するポリヌクレオチドであり、血管内皮細胞に炎症性サイトカイン処理することによって、発現の上昇を確認することができる。具体的には、例えば後述する実施例1に示す方法により、血管内皮細胞より全RNAを調製した後、DNAマイクロアレイ解析を行うことによって、特定することができる。
解析の結果、炎症性サイトカイン処理したヒト臍帯静脈血管内皮細胞と炎症性サイトカイン処理しないヒト臍帯静脈血管内皮細胞で、発現量が著しく異なるポリヌクレオチドを、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドとして特定することができる。そしてこの特定されたポリヌクレオチドを以下、「炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド」とする。
ここで「著しく異なる」とは、例えば、アフィメトリックス社やアジレント社などから市販されているDNAマイクロアレイによる解析により、炎症性サイトカイン処理した場合の遺伝子のmRNA量が炎症性サイトカイン未処理の場合と比べ、2倍以上増加していると判断される場合やアプライドシステム社などから市販されているリアルタイムPCRシステム(定量的PCRシステム)において炎症性サイトカイン処理した場合の遺伝子のmRNA量が炎症性サイトカイン未処理の場合に比べΔCT値の差で1以上の場合、すなわち、mRNA量が2倍以上増加している場合等をいう。
こうして特定された炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドとしては具体的には配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。
1.2 炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド
上記1.1において特定されたポリヌクレオチドの他に、それぞれのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、炎症性サイトカインによって発現が上昇するポリヌクレオチドも本発明のポリヌクレオチドに含めることができる。このようにして特定されたポリヌクレオチドも「炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド」という。すなわち、本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドは、以下の1)又は2)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドである。
1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、
2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの。
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、例えば、市販のハイブリダイゼーション溶液Express Hybridization Solution(クロンテック(Clontech)社製)中、68℃でハイブリダイズすること、または、DNAを固定したフィルターを用いて0.7−1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行なった後、0.1−2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件またはそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
1.3 炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの検定
炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドは、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞において炎症性サイトカイン処理によって、処理しない場合に比べ発現量が著しく増加しており、炎症性サイトカインによって引き起こされる細胞接着分子の発現、及び/又は血管内皮細胞と白血球細胞の接着の変化に影響を与えるポリヌクレオチドであり、細胞接着分子の発現や血管内皮細胞と白血球細胞の接着に影響を及ぼす物質のスクリーニング等に用いることができる。
具体的な検定方法の例としては、まず特定された炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド断片をプローブとして、ヒトcDNAライブラリー等から、コロニーハイブリダイゼーション法等、公知の方法に従い、完全長cDNAを取得する。この完全長cDNAを適当な細胞に導入して高発現させ、血管内皮細胞と白血球細胞の接着に影響が生じるか否かを調べることにより検定することができる。
また、試験する遺伝子の全RNAに対するアンチセンス核酸を、細胞に導入し、各標的細胞の機能にどの様な影響が出るかを調べることもできる。また、遺伝子の発現を抑制する他の方法としては二本鎖の単鎖RNA(siRNA)を用いる方法を挙げることもできる(「ジーンズ・アンド・デヴェロップメンツ(Genes and Developments)」)、2001年1月15日、第15巻、第2号、p.188−200)。例えば、siRNAを文献記載の方法に従って導入し、siRNAの対象となる遺伝子の発現量及び細胞接着分子の発現量を調べることができる。逆に、後述の「5.形質転換細胞の作製方法」に従って形質転換細胞を作製し、細胞の有する機能、具体的には、細胞接着分子の発現量や白血球との接着にどの様な影響が現れるかを検討することができる。
1.4 炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの細胞接着分子の発現誘導機能
炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの発現を抑制した血管内皮細胞では細胞接着分子の発現量の低下が観察される。例えば、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするDNAに対するsiRNAを作製し、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞にトランスフェクションした場合に、陰性コントロールに比べて、ICAM−1、VCAM−1、及びE−セレクチンなどの細胞接着分子のいずれか、もしくは複数の発現量を有意に低下させる。すなわち、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの発現産物である、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは細胞接着分子の誘導に重要な役割(細胞接着分子の発現誘導機能)を果たしている。
1.5 炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドによる血管内皮細胞の白血球との接着誘導機能
炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの発現を抑制させた血管内皮細胞では白血球との接着量の低下が観察される
例えば、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするDNAに対するsiRNAを作製し、標的細胞にトランスフェクションした場合に、陰性コントロールに比べて、白血球細胞との接着量が有意に低下する。すなわち、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの発現産物である、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは血管内皮細胞の白血球細胞との接着誘導に重要な役割(血管内皮細胞の白血球との接着誘導機能)を果たしている。
2.炎症性サイトカイン誘導ポリペプチド
本発明の「炎症性サイトカイン誘導ポリペプチド」は、血管内皮細胞において細胞接着分子の発現誘導や血管内皮細胞と白血球細胞の接着に影響する、本発明のスクリーニングに用いることができるポリペプチドを意味する。本発明における炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞において、炎症性サイトカイン処理すると、処理しない場合に比べ発現量が著しく増加しており、血管内皮細胞において細胞接着分子の発現誘導や血管内皮細胞と白血球細胞の接着に影響を与える被験物質を検出するためのスクリーニング等に利用することができ、本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドである。
本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは、上記1.4及び1.5に示したような、細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は血管内皮細胞の白血球細胞との接着誘導に重要な役割を果たしている。本発明のスクリーニングに用いることができる炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドとは具体的には、以下の1)または2)のいずれかに記載のポリペプチドである。
1)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
2)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチド。
2)のポリペプチドには、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドが含まれ、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等を付加したポリペプチド(すなわち、融合ポリペプチド)も、(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有する限り、含まれる。前記マーカー配列としては、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGエピトープ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを挙げることができる。
なお、本明細書中において「ポリペプチド」という言葉には、タンパク質、これに糖鎖が付加されたもの、塩も含むものとする。
3.炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの生産方法
炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは、in vitroにて合成する、あるいはこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。
3.1 in vitro合成方法
より具体的には、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質およびエネルギー物質を含む溶液中で合成する方法である。例えばロシュ・ダイアグノスティックス(Roche diagnostics)社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)が挙げられるが、これに限定されない。RTSを用いる場合を例に挙げると、目的の遺伝子をT7プロモーターにより制御される発現ベクターにクローニングし、これをin vitroの反応系に添加すると、最初に鋳型DNAよりT7RNAポリメラーゼによりmRNAが転写され、その後大腸菌溶解液中のリボソーム等により翻訳が行われ、目的のポリペプチドが反応液中に合成される(Biochemica、1、20−23(2001)、Biochemica、2、28−29(2001)。
3.2 公知の遺伝子工学的手法により調製する方法
形質転換細胞(すなわち、他の原核生物、または真核生物の宿主細胞を、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換させることによって、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞)を、前記ポリペプチドの発現が可能な条件下で培養し、タンパク質の分離及び精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から目的タンパク質を分離及び精製することにより調製することができる。具体的には、「5.形質転換細胞の作製方法」の項において詳述する。
4.炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドに対する抗体
炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドに対する抗体は、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドまたはその一部を特異的に認識するものである。このような抗体としては、例えば、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドのいずれかに結合するが、他のいかなるタンパク質とも結合しないような抗体を挙げることができる。このような抗体は、後述する「6.スクリーニング方法」の項で記載するポリペプチドの発現を測定するスクリーニング方法に使用できるほか、抗体を含む医薬組成物としても利用することができる。
前記抗体は、常法を用いて(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質1、p.389−397,1992)、抗原となるタンパク質、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein、Nature 256、495−497、1975、Kennet、R.ed.、Monoclonal Antibody p.365−367、1980、Prenum Press、N.Y.)に従って、目的のポリペプチドに対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
抗体を作製するための抗原としては、目的のポリペプチドまたはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体が付加された誘導体を挙げることができる。
前記抗原ポリペプチドは目的のポリペプチドをin vitroにて合成する、あるいは遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質およびエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、または真核生物の宿主細胞を形質転換させることによって該ポリヌクレオチドを発現させることにより、該ポリヌクレオチドを得ることが出来る。
抗原となるポリペプチドは上記、「3.炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの生産」の項に記載した方法によって製造することができる。
上記のようにして得られる抗体は、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法などの各種免疫学的測定法や免疫組織染色などに用いることができる。
目的のポリペプチドと特異的に結合する抗体の例として、目的ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体を挙げることができるが、その取得方法は、以下に記載する通りである。
モノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記のような作業工程が必要である。すなわち、
(a)抗原として使用する生体高分子の精製、
(b)抗原を動物に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)の調製、
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、またはハイブリドーマを移植した動物の飼育、
(h)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、およびその認識特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定、等である。
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞およびミエローマを使用することもできる。
(a) 抗原の精製
抗原としては、前記したような方法で調製した本発明の蛋白質またはその一部を使用することができる。さらに、本発明により本発明の蛋白質の一次構造が明らかにされたので、当業者に周知の方法を用いて、本発明の蛋白質の部分ペプチドを化学合成し、これを抗原として使用することもできる。
(b) 抗体産生細胞の調製
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全または不完全アジュバント、またはカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物としては、マウスが最も好適に用いられるが、これに限定されない。
マウス免疫の際の免疫原投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射いずれでもよいが、皮下注射または腹腔内注射が好ましい。
免疫は、一回、または、適当な間隔で(好ましくは1週間から5週間間隔で)複数回繰返し行なうことができる。その後、免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給原として用いれば、以後の操作の効果を高めることができる。一般的には、最終免疫後3〜5日後の動物由来の抗体産生細胞を後の細胞融合に用いることが好ましい。
ここで用いられる抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(以下「RIA法」という)、固相酵素免疫定量法(以下「ELISA法」という)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法など種々の公知技術があげられるが、検出感度、迅速性、正確性、および操作の自動化の可能性などの観点から、RIA法またはELISA法がより好適である。
本発明における抗体価の測定は、例えばELISA法によれば、以下に記載するような手順により行うことができる。まず、精製または部分精製した抗原をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(以下「BSA」という)により覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中のモノクローナル抗体を結合させる。さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定することにより、抗体価を算出する。
(c) ミエローマの調製工程
ミエローマとしては、一般的にはマウスから得られた株化細胞、例えば8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)ミエローマ株P3X63Ag8U.1(P3−U1)[Yelton, D.E. et al. Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1−7(1978)]、P3/NSI /1−Ag4−1(NS−1) [Kohler, G. et al. European J. Immunology, 6, 511−519 (1976) ]、Sp2 /O−Ag14 (SP−2) [Shulman, M. et al. Nature, 276, 269−270 (1978)]などを用いることが好ましい。これらの細胞株は、適当な培地、例えば8−アザグアニン培地[RPMI−1640培地にグルタミン、2−メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、およびウシ胎児血清(以下「FCS」という)を加えた培地に8−アザグアニンを加えた培地] 、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium ;以下「IMDM」という)、またはダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3から4日前に正常培地[例えば、10% FCSを含むASF104培地(味の素(株)社製)]で継代培養し、融合当日に2×107以上の細胞数を確保しておく。
(d) 細胞融合
抗体産生細胞は、形質細胞、およびその前駆細胞であるリンパ球であり、これは個体のいずれの部位から得てもよく、一般には脾、リンパ節、末梢血、またはこれらを適宜組み合わせたもの等から得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。
最終免疫後、所定の抗体価が得られたマウスから抗体産生細胞が存在する部位、例えば脾臓を摘出し、抗体産生細胞である脾細胞を調製する。この脾細胞と工程(c)で得られたミエローマを融合させる手段として現在最も一般的に行われているのは、細胞毒性が比較的少なく融合操作も簡単なポリエチレングリコールを用いる方法である。この方法は、例えば以下の手順よりなる。
脾細胞とミエローマとを無血清培地(例えばRPMI1640)、またはリン酸緩衝生理食塩液(以下「PBS」という)でよく洗浄し、脾細胞とミエローマの細胞数の比が5:1〜10:1程度になるように混合し、遠心分離する。上清を除去し、沈澱した細胞群をよくほぐした後、撹拌しながら1mlの50%(w/v)ポリエチレングリコール(分子量1000〜4000)を含む無血清培地を滴下する。その後、10mlの無血清培地をゆっくりと加えた後遠心分離する。再び上清を捨て、沈澱した細胞を適量のヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(以下「HAT」という)液およびマウスインターロイキン−2(以下「IL−2」という)を含む正常培地(以下「HAT培地」という)中に懸濁して培養用プレート(以下「プレート」という)の各ウェルに分注し、5% 炭酸ガス存在下、37℃で2週間程度培養する。途中適宜HAT培地を補う。
(e) ハイブリドーマ群の選択
上記ミエローマ細胞が、8−アザグアニン耐性株である場合、すなわち、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株である場合、融合しなかった該ミエローマ細胞、およびミエローマ細胞どうしの融合細胞は、HAT含有培地中では生存できない。一方、抗体産生細胞どうしの融合細胞、あるいは、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマは生存することができるが、抗体産生細胞どうしの融合細胞には寿命がある。従って、HAT含有培地中での培養を続けることによって、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマのみが生き残り、結果的にハイブリドーマを選択することができる。
コロニー状に生育してきたハイブリドーマについて、HAT培地からアミノプテリンを除いた培地(以下「HT培地」という)への培地交換を行う。以後、培養上清の一部を採取し、例えば、ELISA法により抗体価を測定する。
以上、8−アザグアニン耐性の細胞株を用いる方法を例示したが、その他の細胞株もハイブリドーマの選択方法に応じて使用することができ、その場合使用する培地組成も変化する。
(e) クローニング
工程(b)の記載と同様の方法で抗体価を測定することにより、特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移しクローニングを行う。このクローニング法としては、プレートの1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈して培養する限界希釈法、軟寒天培地中で培養しコロニーを回収する軟寒天法、マイクロマニュピレーターによって1個ずつの細胞を取り出し培養する方法、セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」などが挙げられるが、限界希釈法が簡便でありよく用いられる。
抗体価の認められたウェルについて、例えば限界希釈法によるクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体価の認められたものを本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(f) ハイブリドーマ培養によるモノクローナル抗体の調製
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養される。大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、あるいはスピナー培養で行われる。この大量培養における上清を、ゲル濾過等、当業者に周知の方法を用いて精製することにより、本発明の蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、あるいはNu/Nuマウスの腹腔内で該ハイブリド−マを増殖させることにより、本発明のモノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。精製の簡便な方法としては、市販のモノクローナル抗体精製キット(例えば、MAbTrap GIIキット;ファルマシア社製)等を利用することもできる。かくして得られるモノクローナル抗体は、目的のポリペプチドに対して高い抗原特異性を有する。
(g) モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプおよびサブクラスの決定は以下のように行うことができる。まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、またはRIA法が挙げられる。オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。一方、ELISA法またはRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることにより、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキット;バイオラッド社製)等を利用することもできる。
さらに、タンパク質の定量は、フォーリンロウリー法、および280nmにおける吸光度[1.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/ml]より算出する方法により行うことができる。
このようにして得られる本発明のモノクローナル抗体は、その特異性を利用した目的のポリペプチドの検出や分離精製に用いることができる。
5.形質転換細胞の作製方法
本発明のスクリーニングに用いるため、もしくは目的のポリペプチドを産生するために有用である形質転換細胞は、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドを、適当なベクターDNAに組込んだ後、宿主細胞(原核細胞、真核細胞)を形質転換させて作製することができる。
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(I)PCRを用いた方法、(II)常法の遺伝子工学的手法(すなわち、cDNAライブラリーで形質転換した形質転換株から、所望のcDNAを含む形質転換株を選択する方法)を用いる方法、又は(III)化学合成法などを挙げることができるが、好ましくはPCRを用いた方法である。以下、各製造方法について、順次、説明する。
(I)PCRを用いた方法
PCRを用いた方法では、例えば、以下の手順により、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することができる。すなわち、目的のポリペプチドを産生する能力を有するヒト細胞又は組織からmRNAを抽出する。次いで、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて、目的のポリペプチドに相当するmRNAの全長を挟むことのできる2個1組のプライマーセット、あるいは、その一部のmRNA領域を挟むことのできる2個1組のプライマーセットを作成する。逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行なうことにより、目的のポリペプチドの全長cDNA又はその一部を得ることができる。
より詳細には、まず、目的のポリペプチドの産生能力を有する細胞又は組織(例えば、膵臓)から、目的のポリペプチドをコードするmRNAを含む総RNAを既知の方法により抽出する。抽出法としては、例えば、グアニジン・チオシアネート・ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン・塩酸法、又はグアニジン・チオシアネート塩化セシウム法等を挙げることができるが、グアニジン・チオシアネート塩化セシウム法を用いることが好ましい。目的のポリペプチドの産生能力を有する細胞又は組織は、例えば、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はその一部を用いたノーザンブロッティング法、あるいは、目的のポリペプチドに特異的な抗体を用いたウエスタンブロッティング法などにより特定することができる。
続いて、抽出したmRNAを精製する。mRNAの精製は常法に従えばよく、例えば、mRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに吸着後、溶出させることにより精製することができる。所望により、ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAを更に分画することもできる。また、mRNAを抽出しなくても、市販されている抽出精製済みのmRNAを用いることもできる。次に、精製されたmRNAを、例えば、ランダムプライマー、オリゴdTプライマー、及び/又はカスタム合成したプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行ない、第1鎖cDNAを合成する。この合成は、常法によって行なうことができる。得られた第1鎖cDNAを用い、目的ポリヌクレオチドの全長又は一部の領域を挟んだ2つのプライマーを用いてPCRを実施し、目的とするcDNAを増幅することができる。得られたDNAをアガロースゲル電気泳動等により分画する。所望により、前記DNAを制限酵素等で切断し、接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。また、ゲノムDNAから目的とするDNA断片を得ることもできる。
(II)常法の遺伝子工学的手法を用いる方法
常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、例えば、以下の手順により、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することができる。まず、前記のPCRを用いた方法で調製したmRNAを鋳型として、逆転写酵素を用いて1本鎖cDNAを合成した後、この1本鎖cDNAから2本鎖cDNAを合成する。その方法としては、例えば、S1ヌクレアーゼ法(Efstratiadis,A.ら,Cell,7,279−288,1976)、Land法(Land,H.ら,Nucleic Acids Res.9,2251−2266,1981)、O.Joon Yoo法(Yoo,O.J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,1049−1053,1983)、又はOkayama−Berg法(Okayama,H.及びBerg,P.Mol.Cell.Biol.2,161−170,1982)などを挙げることができる。
次に、前記2本鎖cDNAを含む組換えプラスミドを作製した後、大腸菌(例えば、DH5α株)に導入して形質転換させ、例えば、テトラサイクリン又はアンピシリンに対する薬剤耐性を指標として、組換体を選択する。宿主細胞の形質転換は、例えば、宿主細胞が大腸菌の場合には、Hanahanの方法(Hanahan,D.J.Mol.Biol.166,557−580,1983)、すなわち、CaCl2、MgCl2、又はRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に、前記組換えDNA体を加える方法により実施することができる。なお、ベクターとしては、プラスミド以外にもラムダ系などのファージベクターを用いることもできる。
このようにして得られる形質転換株から、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する方法としては、例えば、以下に示す(A)合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法、(B)PCRにより作製したプローブを用いるスクリーニング法、(C)他の動物細胞で目的ポリペプチドを産生させてスクリーニングする方法、(D)目的のポリペプチドに対する抗体を用いて選択する方法、又は(E)セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーション系を用いる方法を採用することができる。
(A)合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。すなわち、目的ポリペプチドの全部又は一部に対応するオリゴヌクレオチドを合成し、これをプローブ(32P又は33Pで標識する)として、形質転換株のDNAを変性固定したニトロセルロースフィルターとハイブリダイズさせ、得られた陽性株を検索して、これを選択する。なお、プローブ用のオリゴヌクレオチドを合成する場合には、コドン使用頻度を用いて導いたヌクレオチド配列とすることもできるし、あるいは、考えられるヌクレオチド配列を組合せた複数個のヌクレオチド配列とすることもできる。後者の場合には、イノシンを含ませてその種類を減らすことができる。
(B)PCRにより作製したプローブを用いるスクリーニング法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。すなわち、目的ポリペプチドの一部に対応するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの各オリゴヌクレオチドを合成し、これらを組合せてPCRを行ない、目的ポリペプチドの全部又は一部をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては、目的ポリペプチドを産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA、又はゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNA断片を、例えば、32P又は33Pで標識し、これをプローブとして用いてコロニーハイブリダイゼーション又はプラークハイブリダイゼーションを行なうことにより、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
(C)他の動物細胞で目的ポリペプチドを産生させてスクリーニングする方法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。すなわち、形質転換株を培養し、ポリヌクレオチドを増幅させ、そのポリヌクレオチドを動物細胞にトランスフェクトし、ポリヌクレオチドにコードされたポリペプチドを細胞表面に産生させる。なお、この場合、自己複製可能で転写プロモーター領域を含むプラスミド、あるいは、動物細胞の染色体に組み込まれ得るようなプラスミドのいずれを用いることもできる。目的のポリペプチドに対する抗体を用いて、目的のポリペプチドを検出することにより、元の形質転換株の中から、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
(D)目的のポリペプチドに対する抗体を用いて選択する方法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。すなわち、予め、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株の細胞表面でポリペプチドを産生させ、目的のポリペプチドに対する抗体及び前記抗体に対する2次抗体を用いて、所望のポリペプチド産生株を検出し、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
(E)セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーション系を用いる方法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。すなわち、形質転換株から得られるcDNAを、ニトロセルロースフィルター等にブロットし、目的のポリペプチドの産生能力を有する細胞から別途調製したmRNAをハイブリダイズさせた後、cDNAに結合したmRNAを解離させ、回収する。回収されたmRNAを適当なポリペプチド翻訳系、例えば、アフリカツメガエルの卵母細胞へ注入したり、あるいは、ウサギ網状赤血球ライゼート又は小麦胚芽等の無細胞系を用いて、ポリペプチドに翻訳させる。目的のポリペプチドに対する抗体を用いて検出して、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
得られた目的の形質転換株より目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを採取する方法は、公知の方法(例えば、Maniatis,T.ら,”Molecular Cloning−A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1982)に従って実施することができる。例えば、細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、得られたプラスミドDNAからcDNA領域を切り出すことにより行なうことができる。
(III)化学合成法を用いた方法
化学合成法を用いた方法では、例えば、化学合成法によって製造したDNA断片を結合することによって、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することができる。各DNAは、DNA合成機[例えば、Oligo 1000M DNA Synthesizer(Beckman社製)、又は394 DNA/RNA Synthesizer(Applied Biosystems社製)など]を用いて合成することができる。また、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的のポリペプチドの情報に基づいて、例えば、ホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.ら,Nature,10,105−111,1984)等の常法に従い、核酸の化学合成により製造することもできる。なお、所望アミノ酸に対するコドンは、それ自体公知であり、その選択も任意でよく、例えば、利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、常法に従って決定することができる(Crantham,R.ら,Nucleic Acids Res.9,43−74,1981)。更に、これら塩基配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用した部位特異的突然変異誘発法(site specific mutagenesis)(Mark,D.F.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,5662−5666,1984)等により実施することができる。
このようにして得られるDNAの配列決定は、例えば、マキサム−ギルバートの化学修飾法(Maxam,A.M.及びGilbert,W.“Methods in Enzymology”,65,499−559,1980)やジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing,J.及びVieira,J.Gene,19,269−276,1982)等により行なうことができる。
原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)などが挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。また、ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与することができる配列を有するものが好ましい。
例えば、大腸菌としてはK12株などがよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株、およびベクターがいずれも使用できる。
プロモーターとしては、大腸菌においては、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等が挙げられ、どのプロモーターも目的のポリペプチドの産生に使用することができる。
枯草菌としては、例えば207−25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura、K.et al.(1984)J.Biochem.95、87−93)などが用いられるが、これに限定されるものではない。枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母などの細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman、Y.(1981)Cell 23、175−182、ATCC:CRL−1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC:CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub、G. and Chasin、L.A.(1980)Proc. Natl.Acad.Sci.USA 77、4126−4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
脊椎動物細胞の発現プロモーターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列等を有するものを使用でき、さらにこれは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するpCR3.1(インビトロジェン社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani、S.et al.(1981)Mol.Cell.Biol.1、854−864)等が挙げられるが、これに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、およびRNAスプライス部位を備えたものを用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman、H. and Magnusson、G.(1983)Nucleic Acids Res.11、1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham、F.L. and van der Eb、A.J.(1973)Virology 52、456−457)、および電気パルス穿孔法(Neumann、E.et al.(1982)EMBO J.1、841−845)などによりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook、J.et al.(1989):“Molecular Cloning A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory、NY)やpSV2neo(Southern、P.J. and Berg、P.(1982)J.Mol.Appl.Genet.1、327−341)などをコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、目的のポリペプチドを安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9またはSf−21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham、T.J.et al、(1992) Biotechnol.Prog. I: 391−396)などが宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリンタンパク質のプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd、I.M.and V.C.Emery(1993)The use of baculoviruses as expression vectors.Applied Biochemistry and Biotechnology 42、137−159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性タンパク質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面タンパク質GP67の分泌シグナル配列を目的タンパク質のN末端側に繋げることにより、組換えタンパク質を分泌タンパク質として発現させることも可能である(Zhe−mei Wang、et al.(1998)Biol.Chem.379、167−174)。
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えばパン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母などの真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen、J.L.and Hall、B.d.(1982)J.Biol.Chem.257、3018−3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara、A. et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80、1−5)などを好ましく利用できる。また、分泌型タンパク質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現することも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew、L.Niles、et al.(1998)Biotechnol.Appl.Biochem.28、125−131)。
上記のようにして得られる形質転換体は、常法に従って培養することができ、前記培養により細胞内、または細胞外に目的のポリペプチドが生産される。前記培養に用いることのできる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択することができる。例えば、COS細胞の場合には、例えば、RPMI−1640培地又はダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に、必要に応じて牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加した培地を使用することができる。また、293−EBNA細胞の場合には、牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えた培地を使用することができる。
上記培養により、形質転換体の細胞内または細胞外に産生される組換え体は、目的とするポリペプチドの物理的性質や化学的性質などを利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えば、通常のタンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せなどを例示できる。また、発現させる組換えタンパク質に6残基からなるヒスチジンを繋げることにより、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。上記方法を組み合わせることにより容易に高収率、高純度で目的のポリペプチドを大量に製造できる。また、精製したポリペプチドの分子量は質量分析器、SDS−PAGE等通常の方法で決定することができる。なお、スプライシングバリアントが存在する可能性もあるが、目的のポリペプチドと同一の機能(生物活性)を有する限りにおいてこれらのポリペプチドも目的のポリペプチドに含まれる。
前記形質転換細胞を培養することにより、前記細胞の内外に生産される目的のポリペプチドは、前記ポリペプチドの物理的性質や生化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、分離精製することができる。具体的には、例えば、目的のポリペプチドを発現した細胞を培養し、これらをバッファーに懸濁した後、ホモジナイズし、遠心分離することにより、目的のポリペプチドを含む画分を得ることができる。得られた画分を可溶化した後、通常のタンパク質沈殿剤による処理、限外濾過、各種液体クロマトグラフィー[例えば、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等]、若しくは透析法、又はこれらの組合せ等により、目的のポリペプチドを精製することができる。なお、細胞膜画分を可溶化する際には、できるだけ緩和な可溶化剤(例えば、CHAPS、Triton X−100、又はジキトニン等)を用いることにより、可溶化後も受容体の特性を保持することができる。
目的のポリペプチドは、マーカー配列とインフレームで融合して発現させることにより、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、又は精製等が容易になる。前記マーカー配列としては、例えば、FLAGエピトープ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを挙げることができる。また、マーカー配列と目的のポリペプチドとの間に、プロテアーゼ(例えば、エンテロキナーゼ、ファクターXa、又はトロンビンなど)が認識する特異的なアミノ酸配列を挿入することにより、マーカー配列部分をこれらのプロテアーゼにより切断除去することが可能である。例えば、ムスカリンアセチルコリン受容体とヘキサーヒスチジン・タグとをトロンビン認識配列で連結した報告がある(Hayashi,M.K.及びHaga,T.J.Biochem.120,1232−1238,1996)。
6.本発明のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法に使用するポリペプチドは、血管内皮細胞に炎症性サイトカインの一種であるTNF−αの添加によって発現量が上昇した遺伝子がコードするポリペプチドとして見出されたものである。実施例にも示すようにICAM−1、VCAM−1、E−セレクチン等の細胞接着分子の発現誘導や血管内皮細胞の白血球細胞との接着に関っていることがわかる。
したがって、該ポリペプチドの機能を抑制する物質は、細胞接着分子の発現を抑制し、ひいては血管内皮細胞が白血球細胞と接着することを阻害する物質(以下、「血管内皮細胞接着抑制物質」という)となる。このような物質は、血管内皮細胞と白血球細胞の接着を阻害するので、これらが原因とされる炎症性疾患、自己免疫疾患、喘息、乾癬、移植における拒絶反応、関節リウマチなどにも適応できるが、炎症性疾患への適応が最も好ましい。
また、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも一つの発現量を測定することによって抗炎症薬のスクリーニングをすることができる。
本スクリーニング方法に用いられる「被験物質」とは、本発明のスクリーニング方法で本発明の該ポリペプチドの機能を促進又は抑制する効果を調べる対象となる物質をいう。被験物質としては、化合物、微生物の代謝産物、植物や動物組織の抽出物、それらの誘導体またはそれらの混合物等が挙げられる。また、本発明の該ポリヌクレオチドの発現量を増加するように設計された核酸またはその誘導体(アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA等を含む)を、被験物質として使用することも可能である。被験物質の投与量や濃度は適宜設定するか、または例えば希釈系列を作成するなどして複数種の投与量を設定してもよく、個体、液体等適当な状態で投与することができ、適当なバッファーに溶解したり、安定化剤等を加えてもよい。培養細胞を用いるスクリーニング方法の場合には、培地に添加して培養することができる。培地に添加する場合には培養開始時から添加してもよいし、培養途中で添加しても良く、また、添加の回数も1回に限らない。被験物質存在下で培養する期間も適宜設定してよいが、好ましくは30分から48時間である。哺乳動物個体に被験物質を投与する場合は、被験物質の物性等により経口投与、静脈注射、腹腔内注射、経皮投与、皮下注射等の投与形態を使い分ける。また、投与から、検体を得るまでの時間は適当に選択することができる。
本スクリーニング方法に用いられる細胞としては炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドを発現し、血管内皮細胞または血管内皮細胞に由来する細胞、もしくはTNF−α等の炎症性サイトカインによる刺激により血管内皮細胞に生じる同様の炎症性反応が発現する細胞であれば、特に制限されず用いることができる。またヒトと同じ反応を示せば細胞の動物種に制限されず使用できる。具体的には、本発明である炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドを安定発現するヒト血管内皮細胞株、もしくはレトロウイスルベクターなどで炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドを強制発現させたヒト臍帯静脈血管内細胞(HUVEC)やヒト微小血管内皮細胞(HMEC−1)などを血管内皮細胞用培地(Cell Applications社製)あるいは10%牛胎児血清(FBS)を含むMCDB131培地(インビトロジェン社製を)で培養したものが使用できる。
本スクリーニング方法を実施するにあたって血管内皮細胞を使用する場合においては、生体内の炎症状態を再現するため、培養細胞に刺激を加えることが望ましい。具体的には、炎症性サイトカイン、LPS、百日咳毒素などを培地中に添加する方法が挙げられる。炎症性サイトカインとしては、細菌やウィルス感染、腫瘍、組織損傷などに伴う炎症反応に深く関与するサイトカインをさす。例えば、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン6(IL−6)、腫瘍壊死因子(TNF−α)などが挙げられるが、好ましくは腫瘍壊死因子(TNF−α)である。
本実施態様のための試料を調製するための材料としては、被験物質存在下または非存在下で培養した培養細胞の全細胞抽出液または核抽出画分が用いられ得るが、全細胞抽出液が好適である。全細胞抽出液は、必要により高速遠心することにより不溶性の物質を除去した後、ELISA/RIA用試料やウエスタンブロット用試料の調製工程に供される。
6.1 発現量の測定を利用したスクリーニング方法
炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは、血管接着分子の発現を誘導させることにより血管内皮細胞に白血球細胞との細胞接着を誘導する。したがって、該ポリペプチドの発現量を減少させる物質は血管内皮細胞接着抑制能を有する物質である。これらの物質は具体的には以下の工程を含むスクリーニング方法によって取得することができる。
A−1.遺伝子の発現量を測定する場合
(1)血管内皮細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)下記のいずれかに記載の遺伝子の発現量を測定する工程を含む血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法:
1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または
2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの。
A−2.ポリペプチドの発現量を測定する場合
(1)血管内皮細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)下記のいずれかに記載のポリペプチドの発現量を測定する工程を含む血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法:
1)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
2)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するもの。
B.形質転換細胞を用いる場合
(1)1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または
2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの、を含む発現ベクターで形質転換され、前記遺伝子によってコードされたポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)前記遺伝子の発現量を測定する工程を含む、
血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
6.1.1 ポリヌクレオチドの測定方法
本発明のスクリーニング方法の実施態様としては、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドを指標にして検出する方法がある。このようなポリヌクレオチドとしては、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23に示す配列の全部もしくは一部の配列を有するポリヌクレオチドが挙げられる。下記の方法に従って、該ポリヌクレオチドを測定することができる。
本発明の方法において用いられる培養細胞は、被験物質を添加しない場合には目的とするポリヌクレオチドのいずれか一つを発現可能な条件であれば、いかなる条件で培養してもよい。例えば、該培養細胞について確立された培養条件が知られており、該条件下において該細胞が目的とするポリヌクレオチドを発現する場合は、該条件で培養してよい。
ポリヌクレオチドを測定するにあたっては、まず全RNAの抽出が必要となる。RNAの抽出方法としては、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski、P. and Sacchi、N.、(1987)Anal.Biochem.、162、156−159)などを採用しうるが、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法が好適である。また、市販のRNA抽出用試薬(例えば、ISOGEN(ニッポンジーン製)、TRIZOL試薬(Invitrogen社製)等を試薬に添付のプロトコールに従って用いることもできる。
得られた全RNAは、必要に応じてさらにmRNAのみに精製して用いるのが好ましい。精製方法は特に限定されないが、真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3’末端にポリ(A)配列を持つことが知られているので、この特徴を利用して例えばビオチン化したオリゴ(dT)プローブにmRNAを吸着させ、さらにストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子に、ビオチン/ストレプトアビジン間の結合を利用してmRNAを捕捉し洗浄操作の後、mRNAを溶出することにより、mRNAを精製することができる。また、オリゴ(dT)セルロースカラムにmRNAを吸着させて、次にこれを溶出して精製する方法も採用し得る。さらにショ糖密度勾配遠心法などにより、mRNAをさらに分画することもできる。ただし、本発明の方法のためには、これらmRNAの精製工程は必須ではなく、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の検出が可能である限りにおいて、全RNAをその後の工程に用いることもできる。
スクリーニング方法に含まれる工程において、炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの発現量の測定方法としては、RT−PCR法、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、ランオン・アッセイ、遺伝子チップ等の固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーションに従って実施することができるが、特にRT−PCRを用いて実施することが望ましい。
まず本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドのmRNAを鋳型とする逆転写酵素反応を行ってから、PCRを実施して特異的にDNA断片を増幅する。この方法において、目的のヌクレオチド配列を特異的に増幅するためには、目的のmRNAの特定の部分配列に相補的なアンチセンスプライマーと、該アンチセンスプライマーから逆転写酵素により生成されるcDNAの配列中の特定の部分配列に相補的なセンスプライマーが用いられる。RT−PCRは市販のキット(例えば、RNA PCRキット AMV ver2.1:タカラバイオ社製)を用いて、キットに添付のマニュアルに従って行なうことができるが、以下の方法でもできる。
逆転写酵素反応およびPCRの両方に用いられるアンチセンスプライマーは、実質的に本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列のアンチセンス配列中の、連続した15ヌクレオチドから40ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチドから30ヌクレオチド、更に好ましくは23ヌクレオチドから30ヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる。
一方、PCRにおいて用いられるセンスプライマーの配列は、本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列において、上記アンチセンスプライマーの相補鎖にあたる配列中の最も5’末端側の位置よりもさらに5’末端側領域に存在する配列中の連続した15から40ヌクレオチド、好ましくは18から35ヌクレオチド、更に好ましくは21から30ヌクレオチドの任意の部分配列からなる。ただし、センスプライマーとアンチセンスプライマーに互いに相補的な配列が存在すると、プライマー同士がアニーリングすることにより非特異的な配列が増幅され、特異的なポリヌクレオチド検出の妨げとなるおそれがあるので、そのような組み合わせを避けたプライマーの設計を行うことが好ましい。
これらアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーには、いずれも上記で規定したそれらヌクレオチド配列の5’末端に、本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列とは無関係のヌクレオチド配列がリンカーとして付加されていてもよい。ただし、特異的なポリヌクレオチド検出の妨げとならないよう、該リンカーは反応中に反応液内の核酸と非特異的アニーリングを起こさないようなものであることが好ましい。RT−PCRの反応は常法により行なうことができる。なお、RT−PCRによる検出のための試料は、通常ポリ(A)+RNAにまで精製されている必要はない。
PCR終了後、反応液を電気泳動し、目的の大きさのバンドが増幅されているか否かを検出する。定量的検出を行うためには、予め段階希釈したcDNAクローンを標準の鋳型DNAとして同条件でPCRを実施し、定量的検出が可能な温度サイクル数を定めておくか、または、例えば5サイクル毎に一部反応液をサンプリングしてそれぞれ電気泳動を行う。また例えばPCR反応時に放射標識dCTPを用いることにより、バンド中に取り込まれた放射能の量を指標に定量を行うこともできる。ポリヌクレオチド定量の信頼性を高めた方法として、上記RT−PCR法を改良した競合RT−PCR法(Souaze et al.(1996)BioTechniques 21、280−285)や、TaqManPCR法(Heid et al.(1996) Genom.Res.6、986−994)なども利用可能である。
被験物質存在下で培養した細胞由来の試料と、被験物質非存在下で培養した細胞由来の試料との間で検出結果を比較し、その結果、目的のポリヌクレオチドの発現量を低下させた被験物質は、本発明の該ポリペプチドの機能を抑制する物質であり、該ポリペプチドの発現に起因する血管内皮細胞の接着を抑制することから抗炎症剤の治療または予防剤となり得る。
6.1.2 ポリペプチドの測定方法
また、本発明のスクリーニング方法の別の実施態様としては、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチド(タンパク質)を検出する方法がある。具体的には下記の態様によって、該ポリペプチドの発現量を測定することができる。
ポリペプチド発現量の測定方法の好適な態様として、抗体を利用した方法について説明する。なお、このとき使用する抗体は、上述の「4.炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドに対する抗体」の記載に従って作製することができる。まず、試料中のポリペプチドを96穴プレートや384穴プレート等のマルチウエルプレートのウエル内底面やメンブレン等に固相化しておいてから、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドを特異的に認識する抗体を用いた検出が行われる。このうち、96穴プレートや384穴プレート等のマルチウエルプレートを用いるのは一般に固相酵素免疫定量法(ELISA法)や放射性同位元素免疫定量法(RIA法)と呼ばれる方法である。一方、メンブレンに固相化する方法としては、試料のポリアクリルアミド電気泳動を経てメンブレンにポリペプチドを転写する方法(ウエスタンブロット法)か、または直接メンブレンに試料またはその希釈液を染み込ませる、いわゆるドットブロット法やスロットブロット法が挙げられる。
(1)試料の調製
本実施態様のための試料を調製するための材料としては、被験物質存在下または非存在下で培養した培養細胞の全細胞抽出液または核抽出画分が用いられ得るが、全細胞抽出液が好適である。全細胞抽出液は、必要により高速遠心することにより不溶性の物質を除去した後、ELISA/RIA用試料やウエスタンブロット用試料の調製工程に供される。
ELISA/RIA用試料としては、例えば被験物質存在下または非存在下で培養した培養細胞の全細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット用(電気泳動用)試料は、例えば被験物質存在下または非存在下で培養した培養細胞の全細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動用の2−メルカトルエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合する。ドット/スロットブロットの場合は、例えば被験物質存在下または非存在下で培養した培養細胞の全細胞抽出液そのもの、または緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用するなどして、直接メンブレンへ吸着させる。
(2)試料の固相化
上記のようにして得られた試料中のポリペプチドを特異的に検出するためには、試料を免疫沈降法、リガントの結合を利用した方法等によって、沈殿させ、固相化せずに検出することもできるし、そのまま検出する該試料を固相化することもできる。ポリペプチドを固相化する場合において、ウエスタンブロット法、ドットブロット法またはスロットブロット法に用いられるメンブレンとしては、ニトロセルロースメンブレン(例えば、バイオラッド社製)、ナイロンメンブレン(例えば、ハイボンド−ECL(アマシャム・ファルマシア社製))、またはポリビニリデン・ジフルオリド(PVDF)メンブレン(例えば、バイオラッド社製)等が挙げられる。
電気泳動後のゲルからメンブレンにポリペプチドを移す、いわゆるブロッティング方法としては、ウエット式ブロッティング法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 ed by J. E. Coligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E.M. Shevach, W. Strober)、セミドライ式ブロッティング法(上記CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 参照)等を挙げることができる。ドットブロット法やスロットブロット法のための器材も市販されている(例えば、バイオ・ドット(バイオラッド))。
一方、ELISA法/RIA法で検出・定量を行うためには、専用の96穴プレート(例えば、イムノプレート・マキシソープ(ヌンク社製)等)に試料またはその希釈液(例えば0.05% アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」という)で希釈したもの)を入れて4℃から室温で一晩、または37℃で1から3時間静置することにより、ウェル内底面にポリペプチドを吸着させて固相化する。
(3)検出
抗体は、それを直接標識するか、または該抗体を一次抗体とし、該抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で検出に用いられる。
標識の種類として好ましいものは酵素(アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)またはビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(または標識ストレプトアビジン)を使用する方法のための、予め標識された抗体(またはストレプトアビジン)は種々のものが市販されている。RIAの場合はI125等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
これら標識された酵素の活性を検出することにより、抗原であるポリペプチドの量が測定される。アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼの場合、それら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。
発色する基質を用いた場合、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては目視で検出できる。ELISA法においては、好ましくは市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウエルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定することにより定量する。また好ましくは上記(3)において抗体作製のために使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行って、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することが可能である。
一方、発光する基質を使用した場合は、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においてはX線フィルムまたはイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができ、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。また、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダー(例えば、バイオラッド社製)を用いて酵素活性を測定する。
(4)測定操作
i)ウエスタンブロット、ドットブロットまたはスロットブロットの場合
まず、抗体の非特異的吸着を阻止するため、予めメンブレンをそのような非特異的吸着を阻害する物質(スキムミルク、カゼイン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)を含む緩衝液中に一定時間浸しておく操作(ブロッキング)を行う。ブロッキング溶液の組成は、例えば5% スキムミルク、0.05から0.1% ツイーン20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)が用いられる。スキムミルクの代わりに、ブロックエース(大日本製薬)、1から10%のウシ血清アルブミン、0.5から3%のゼラチンまたは1%のポリビニルピロリドン等を用いてもよい。ブロッキングの時間は、4℃で16から24時間、または室温で1から3時間である。
次に、メンブレンを0.05から0.1% Tween20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、上記(3)記載の方法で作製された抗体をブロッキング溶液で適宜希釈した溶液中に一定時間浸して、抗体をメンブレン上の抗原に結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば上記3)記載の組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備のウエスタンブロッティング実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で2時間行う。抗体反応操作終了後、メンブレンを洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続いて二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば市販のものを使用する場合はブロッキング溶液で2000から20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載に従う)。一次抗体を洗浄除去した後のメンブレンを二次抗体溶液に室温で45分から1時間浸し、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えばまずメンブレンを洗浄液中で15分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
ii)ELISA/RIA
まず、上記(2)の方法で試料を固相化させたプレートのウェル内底面への抗体の非特異的吸着を阻止するため、ウエスタンブロットの場合と同様、予めブロッキングを行っておく。ブロッキングの条件については、ウエスタンブロットの項に記載した通りである。
次に、ウェル内を0.05から0.1% Tween20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、上記(3)記載の方法で作製された抗体を洗浄液で適宜希釈した溶液を分注して一定時間インキュベーションし、抗体を抗原に結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば上記(3)記載の組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備のELISA実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で1時間程度行う。抗体反応操作終了後、ウェル内を洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続いて二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば市販のものを使用する場合は洗浄液で2000から20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載に従う)。一次抗体を洗浄除去した後のウェルに二次抗体溶液を分注して室温で1から3時間インキュベーションし、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えばまずウェル内に洗浄液を分注して5分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
また本発明において、いわゆるサンドイッチ法のELISAは例えば以下に記載する方法により実施することができる。まず、本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドのアミノ酸配列のいずれか一つにおいて、親水性に富む領域を2箇所選んで、それぞれの領域中のアミノ酸6残基以上からなる部分ペプチドを合成し、該部分ペプチドを抗原とした2種類の抗体を取得する。このうち一方の抗体を上記(4)記載のように標識しておく。標識しなかった方の抗体は、上記(2)記載の方法に準じて96穴ELISA用プレートのウェル内底面に固相化する。ブロッキングの後、試料液をウェル内に入れて常温で1時間インキュベーションする。ウェル内を洗浄後、標識した方の抗体希釈液を各ウェルに分注してインキュベーションする。再びウェル内を洗浄後、標識方法に合わせた検出操作を行う。
(5)判定
被験物質存在下で培養した細胞由来の試料と、被験物質非存在下で培養した細胞由来の試料との間で検出結果を比較し、その結果該ポリペプチドの産生量を低下させた被験物質は、対象とするポリペプチドの機能を抑制する物質であり、該ポリペプチドの発現に起因する血管内皮細胞の接着を抑制することから抗炎症剤の治療または予防剤となり得る。
6.2 機能の測定によるスクリーニング
炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは、炎症性サイトカイン刺激による細胞接着分子の発現誘導活性、及び/又は血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導活性を有する。したがって、該ポリペプチドの機能を抑制する物質は血管内皮細胞接着抑制能を有する物質である。これらの物質は具体的には以下の工程を含むスクリーニング方法によって取得することができる。
A.白血球への接着を利用したスクリーニング方法
(1)1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または
2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの、
を含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、
(2)白血球を上記細胞に接触させる工程、及び
(3)白血球と上記細胞との接着量を測定する工程。
B.細胞接着分子の発現誘導活性を利用したスクリーニング方法
(1)1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または
2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、TNF−αの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの、を含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
(2)細胞接着分子の発現量を測定する工程を含む、
血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
具体的には、培養上清に被験物質を加え適当な時間培養し、intercelluler adhesion molecule(ICAM)−1、vascular cell adhesion molecule(VCAM)−1そしてE−selectinなど炎症時に血管内皮細胞に惹起される接着分子の発現を指標に評価する。細胞表面の各接着分子の発現は、内皮細胞を培養器から剥がした後、各接着分子に対する蛍光標識したモノクローナル抗体(BDバイオサイエンス社製)で染色し、フローサイトメーターを用いた手法で検出することができる。また別法して、各接着分子を認識するモノクローナル抗体を用いたenzyme−linked immunosorbent assay(ELISA)を模した方法にてマイクロプレートウェル上で直接定量することもできる。具体的には96穴マイクロプレート上で被験物質を添加した状態で適当な時間培養した内皮細胞の培養上清を取り除き、内皮細胞をメタノール:エタノール(3:1混合比)の固定液で固定し、1%牛血清アルブミン(BSA:シグマ社製)含PBSにてブロッキングした後に内皮細胞を抗ヒトICAM−1、抗VCAM−1、抗E−selectinマウスIgG1モノクローナル抗体(BDバイオサイエンス社製)を0.1%BSA含PBSの希釈液で反応させ、0.05%Tween−20含PBSで洗浄した後再び1%牛血清アルブミン(BSA:シグマ社製)含PBSにてブロッキングした後に、0.1%BSA含PBSで希釈したhorse ladish peroxidase(HRP)標識抗マウスIgG抗体(Kirkegaard&Perry Laboratories社製)を反応させた後0.05%Tween−20含PBSで洗浄し、HRPをペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト社製)を用いて使用説明書のプロトコールにしたがって、各マイクロプレートウェルの490nmの吸光度を測定することにより内皮細胞表面の各接着分子の発現を定量することができる。また培養上清中に分泌された遊離性の接着分子もQuantikine ELISAキット(R&D Systems社製)で添付の使用説明書にしたがって測定することもできる。以上の方法においてコントロール(被験物質未添加)細胞と比較して、何れかの接着分子の発現が減少した被験物質が本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの機能を抑制する物質であると判定することができる。
一方、白血球細胞と血管内皮細胞の接着を測定する方法は、96穴マイクロプレート上で被験物質を添加した状態で適当な時間培養した細胞にVybrant Cell Adhesion Assay Kitを用いて使用説明書に従い蛍光標識したTリンパ球系培養細胞(MOLT−4、Jurkatなど)、単球系培養細胞(THP−1、U937など)あるいはヒト末梢静脈血から分離した白血球細胞を添加し、洗浄後内皮細胞に接着した白血球細胞の蛍光を蛍光マイクロプレートリーダーで測定することにより定量できる。以上の方法において、コントロール(被験物質未添加)細胞と比較して、何れかの白血球細胞の接着を減少させた被験物質が本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの機能を抑制する物質であると判定することができる。
6.3 特異結合体を利用したスクリーニング方法
ここで、特異結合体とは炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと特異的に結合できるようなタンパク質(抗体を含む)、アプタマ―、低分子化合物等が含まれる。 炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドは、細胞の内外において、直接的もしくは間接的に他のタンパク質と結合することにより、その活性を調節していると考えられる。したがって、該ポリペプチドとかかるタンパク質の結合を阻害する物質は血管内皮細胞接着を調節する物質の可能性が高い。これらの物質は具体的には以下の工程を含むスクリーニング方法によって取得することができる。
(1)1)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
2)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を示すポリペプチド、のいずれかと、被験物質とを、標識した前記ポリペプチドの特異結合体の存在下で、接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチドと前記特異結合体の結合量を測定する工程を含む、
血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
特異的に結合できるタンパク質を得る方法としては、例えば、精製した炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドを用いて、これに結合するタンパク質のアフィニティー精製を行う方法が挙げられる。具体的な方法の一例を示せば、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドにヒスチジン6個よりなる配列をアフィニティータグとして融合したものを作製して、これを細胞の抽出液(予めニッケル−アガロースカラムにチャージして、このカラムを素通りした画分)と4℃で12時間インキュベートし、次いで、この混合物に別途ニッケル−アガロース担体を加えて4℃で1時間インキュベートする。ニッケル−アガロース担体を洗浄バッファーで十分洗浄した後、100mMイミダゾールを加えることにより、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと特異的に結合する細胞抽出液中のタンパク質を溶出させて精製し、この構造を決定する。このようにして、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと直接結合するタンパク質、および炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドとの結合活性は持たないが、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドに直接結合するタンパク質と複合体を形成することにより間接的に炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドに結合するタンパク質が精製できる[実験医学別冊、バイオマニュアルシリーズ5「転写因子研究法」pp215−219(羊土社刊)]。
別の方法としては、ファーウエスタンブロット法[実験医学別冊、「新遺伝子工学ハンドブック」p76−81(羊土社刊)]や、酵母や哺乳類動物細胞を用いたツーハイブリッドシステム法[実験医学別冊、「新遺伝子工学ハンドブック」p66−75(羊土社刊)、「チェックメイト・マンマリアン・ツーハイブリッドシステム」(プロメガ社製)]によるクローニングも可能であるが、これらの方法に限定されない。
これらの方法により、本発明の炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと直接もしくは間接的に相互作用するタンパク質のcDNAが得られれば、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと該タンパク質との相互作用を阻害する物質のスクリーニングに利用することができる。具体的には、まず、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドを発現させた形質転換細胞等の細胞等を破砕して調整したライセート(好ましくは炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの精製標品)を調製する。緩衝液、イオン、及び/又はpHのようなスクリーニング条件を最適化し、最適化したバッファー中で、ライセートと、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと相互作用するタンパク質の標識体とを、試験化合物と共に一定時間インキュベーションする。反応後、ニトロセルロースフィルター等で濾過し、適量のバッファーで洗浄した後、フィルターに残存する放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。得られた標識体の結合阻害を指標に、炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと、これと相互作用するタンパク質の結合を阻害する化合物を選択することができる。なお、この化合物が、アゴニスト又はアンタゴニストであるかについては、この項に記載の他のスクリーニング方法などにより確認することができる。
なお、特異的に結合できるタンパク質が抗体である場合は「4.炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドに対する抗体」の記載に従えば、取得することができる。
炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドと該タンパク質との結合が間接的であり、何らかの別の因子を介しているような場合には、例えば該因子を含むような細胞抽出液存在下で、同様に上記スクリーニングを行う。この場合には、該因子に対して作用するような物質も選択される可能性がある。
特異結合体については、通常はその挙動を検出可能とするため種々の物質で標識されうる。タンパク質を標識するには、例えば「分子細胞生物学基礎実験法」(南江堂 堀江武一ら1994年)等に記載されている常法を用いることにより行うことができる。種々の物質としては化学発光物質、酵素、蛍光物質、着色ビーズ、放射性同位元素、元素、金属類、ビオチンが挙げられる。以下に具体例を示すがこれらに限定されるものではない。化学発光物質とは例えばルミノールやアクリジニウムエステルなどをさす。酵素とは例えばβ-ガラクトシダーゼやアルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどをさす。蛍光物質とは例えばユウロピウムクリプテートやFITC(fluorescein isothiocyanate)やRITC(tetramethylrhodamin isothiocyanate)などをさす。着色ビーズとは例えばプロテイン Aビーズ、wheat germ agglutinin(WGA)ビーズ、ストレプトアビジンビーズなどをさす。放射性同位元素とは例えば14Cや125Iや3Hなどをさす。元素とは例えばユウロピウムなどのランタニド元素をさす。金属類とは例えばフェリチンや金コロイドなどをさす。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
DNAマイクロアレイ解析による炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド候補の探索
血管内皮細胞は白血球の浸潤、サイトカインの分泌などの炎症反応の誘導に重要な機能を有している。そこで血管内皮細胞に発現しかつ炎症反応に重要な役割を果たす遺伝子を見出すため、まず代表的な炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor(TNF)−αの刺激により血管内皮細胞で発現上昇する遺伝子を以下の手順でDNAマイクロアレイ解析により探索した。
a)TNF−α刺激血管内皮細胞の全RNAの調製
購入した冷凍保存ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC:Cambrex BioScienceWalkersville社製)を添付の使用説明書に従い、血管内皮細胞用基礎培地(EGM−2:Cambrex BioScienceWalkersville社製)にEGM−2添加因子セット(Cambrex BioScienceWalkersville社製)を添加した15mlの培養液(以下EGM−2)にて75cm培養フラスコ中で37℃、CO濃度5%条件下でコンフルエントな状態まで培養し、30mM HEPES緩衝液(以下HEPES液:Cambrex BioScienceWalkersville社製)、0.025%トリプシン/0.01% EDTA液(以下トリプシン液:Cambrex BioScienceWalkersville社製)、トリプシン中和液(Cambrex BioScienceWalkersville社製)を用いて細胞を回収した。これを230×g、室温で5分間遠心分離し、4.5×10細胞/mlの細胞濃度になるようにセルバンカー(十慈フィールド株式会社製)に懸濁し、1mlずつセラムチューブに分注した後−80℃で冷凍保存したものをストックとして以下の実験に用いた。そのストックした細胞4本を各15mlのEGM−2に再懸濁し、75cm底面積の培養フラスコに播種し、1日毎に培養上清を新鮮な15mlのEGM−2と交換し、コンフルエントな状態に達するまで培養を続けた。次に細胞をHEPES液、トリプシン液、トリプシン中和液により細胞を剥がし、細胞を230×g、室温で5分間遠心分離し、10mlのEGM−2を加え2.5mlずつ17.5mlのEGM−2の入った15cmシャーレ4枚に分注し、細胞がコンフルエントな状態になるまで1日ごとに培養上清を20mlの新鮮なEGM−2と交換しながら37℃、CO濃度5%の条件下で培養を続けた。細胞がコンフルエントになったシャーレ3枚の培養上清をrecombinant humanTNF−α(GT社製)を20μg/mlの濃度になるように0.1%bovine serum albumin(BSA:シグマアルドリッチ社製)を含むリン酸緩衝液(PBS)に溶解した液10μlを20mlのEGM−2に加えたもの(TNF−α最終濃度10ng/ml)に交換し、37℃、CO濃度5%の条件下で1時間、4時間、24時間培養した後、培養上清を取り除き10mlのPBSで洗浄した後TRIzol試薬(Invitrogen社製)を12ml加え、直ちにセルスクレーパーを使って細胞を溶解し、その細胞溶解液を15ml遠心チューブに移し−80℃で凍結保存した。尚、残りのシャーレ1枚分の細胞はコントロール用のTNF−α未処理の細胞(0時間処理)として、TNF−αを含むEGM−2の代わりに20mlの新鮮なEGM−2を加え、直ちに上記の方法にて細胞溶解液を調製し、−80℃保存した。その後室温で細胞溶解液を融解させた後、TRIzol試薬添付の使用説明書に従い全RNA精製を行った。尚、RNAは500μlのdiethylpyrocarbonate(DEPC)処理水で溶解した。
b)DNAマイクロアレイ解析
以下のDNAマイクロアレイ解析は、Microarray Bar Corded Slide Type 7 Star(以下 Type 7 Star:アマシャムバイオサイエンス社製)に12種類のヒト臓器由来のcDNAをテンプレートに調製したexpressed sequence tag(EST)を含む約5000配列のPCR断片(長さ約500塩基対)をArray Spotter Generation III(モレキュラーダイナミクス社製)を用いてスポッティングした自家作製のDNAマイクロアレイ及びかずさヒトcDNAナイロンマイクロアレイ(以下KDRアレイ:カケンジェネクス社製)を用いて実施した。尚、Type 7 Starには、各PCR断片を2スポットずつ搭載した。
Type 7 Starにおける解析は以下の手順にて実施した。上記a)の全RNA2.5μgをテンプレートにしてMessage Amp aRNA Kit(Ambion社製)を用いて添付の使用説明書に従いmRNAを増幅(aRNA化)した。次にマイクロアレイ1枚につきTNF−α処理0、1、4、24時間それぞれのaRNAを1μg使用し、Atlas Glass Fluorescent Labeling(Clontech社製)により添付の使用説明書に従いcDNA化及びCy3標識またはCy5標識した後、TNF−α処理0時間(コントロール)のCy3標識cDNAとTNF−α処理1、4、24時間のCy5標識cDNAの組み合わせとまた逆にTNF−α処理0時間(コントロール)のCy5標識cDNAとTNF−α処理1、4、24時間のCy3標識cDNAの組み合わせ(計6種類の組み合わせ)でcDNAをミックスし、MinElute PCR Purification Kit(Qiagen社製)にて精製した。そして精製した標識cDNAの各混合液50μl、Hybridization Buffer Version 2(アマシャムバイオサイエンス社製)50μl、そしてホルムアミド100μlを混合し、マイクロアレイ自動ハイブリダイゼーション・洗浄装置Automatic Slide Processor(ASP)(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて使用説明書に従い各組み合わせの混合液1種類につき1枚のマイクロアレイ(計6枚)に対してハイブリダイゼーションおよび洗浄を行った。これらマイクロアレイをArray Scanner Generation III(モレキュラーダイナミクス社製)でスキャニングしマイクロアレイのCy3、Cy5の蛍光シグナルをそれぞれ画像データとして取得した。さらに取得した画像データについて、画像解析ソフトウェアArrayVison(Imaging Research社製)を用いて各スポットをグリッディングし、Cy3、Cy5の両蛍光シグナルの強度を数値化し、この数値化データをテキストファイルに保存した。
また、KDRアレイによる解析は以下の手順で解析した。上記a)のTNF−α処理0、1、4、24時間の全RNAそれぞれ17μgとdT25オリゴマー8μgを混合し、全量18.8μlになるようにDEPC処理蒸留水でメスアップし、70℃10分間加熱後氷上で急冷した。これにSuperScript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen社製)添付の5×1st Strand Buffer 10μl、0.1M dithiothreitol(DTT)5μl、キットに添付外のdATP、dGTP、dTTP(各々Invitrogen社製)をそれぞれ10mMを含む混合液4μl、0.1mMdCTP(Invitrogen社製10mMを100倍希釈して調製)0.2μl、111TBq/mmol,370Mbq/ml[α−33P]dCTP(アマシャムバイオサイエンス社製)10μlを添加し、42℃で2分間インキュベートし、SuperScript II逆転写酵素を2μl加えた後42℃で1時間インキュベートした。次にMinElute PCR Purification Kit(Qiagen社製)により添付の使用説明書に従い精製し、これに10mg/ml Cot−1 DNA(Invitrogen社製)2.5μl、1μg/μlポリアデニル酸(シグマアルドリッチ社製)1μlを加え、100℃、5分間の熱変性後にあらかじめ68℃に暖めておいたPerfectHyb Hybridization Solution(東洋紡社製)420μlに加え68℃、30分間インキュベートした。同時に8枚のKDRアレイを一枚ごとに容量5ml、胴径16.5mmφ、全高45mmのガラス製バイアル瓶(マイティバイアル:テックジャム社製)1本に丸めて入れ、これに3cmの長さのガラス棒を入れ、各バイアル瓶に200μlのPerfectHyb Hybridization Solutionを加え、このバイアル瓶をハイブリダイゼーションボトル(Robbins社製)に直列に入れ、Micro Hybrization Incubator(Robbins社製)でローテーションしながら68℃で30分間プレハイブリダイゼーションを行った。その後、バイアル瓶のPerfectHyb Hybridization Solutionを捨て、これにインキュベートを完了した33P標識cDNAを混合したPerfectHyb Hybridization SolutionをKDRアレイ1枚につき200μl加え、プレハイブリダイゼーションと同様の方法でローテーションを行いながら68℃で一晩インキュベートしハイブリダイズした。尚、TNF−α処理0、1、4、24時間の各サンプルにつき2枚のKDRアレイにハイブリダイゼーションを行った。その後バイアル瓶からKDRアレイを取り出し、2×SSC,1%SDS,68℃,15分間の洗浄を2回、0.1×SSC,1%SDS,68℃,15分間の洗浄を2回実施し、KDRアレイをイメージングプレート(IP:富士フイルム社製)に1、4、7日間露光し、IPに転写されたKDRアレイの放射活性をフルオロ・イメージアナライザーFLA3000G(富士フイルム社製)にて画像データとして取得した。そしてその画像データを用いて画像解析ソフトウェアArrayGauge(富士フィルム社製)により各スポットをグリッディングしてその放射活性を数値化し、テキストファイルに保存した。
次に両マイクロアレイの解析により得られた各スポットの数値データのテキストファイルをマイクロアレイデータ解析ソフトウェアであるGeneSpring(Agilent社製)を用いてデータを統合し、各スポットについてTNF−α1、4、24時間処理のシグナル強度をTNF−α0時間処理(TNF−α未処理)のシグナル強度で割り込んだシグナル比すなわちTNF−α処理により処理時間1,4,24時間後に何倍発現変動するかを算出し、Type 7 Starにおいてマイクロアレイ上の2スポット×サンプルの蛍光標識(Cy3、Cy5)を入れ換えたデータ計4スポットのうち3スポット以上のデータで、またかずさアレイの場合は併行して解析したアレイ2枚分の両方のデータで1、4、24時間後に何れかの点でシグナル強度比が2以上すなわち2倍以上発現上昇しているスポットを抽出した。さらに抽出されたスポットのPCR断片の配列をクエリーとして、BioSCOUT(Lion社製)そしてEuropean Bioinformatics Institute(EBI)とSanger Instituteの公共データベースであるEnsemblを対象に解析した結果、2倍以上発現上昇していると判定されたスポットは、重複を除くと最終的に計142の遺伝子に集約された。そしてデータベース上から全長mRNA配列などの情報を取得し、これらに“TNFUP_通し番号”という形でIDを付けた。尚、これらの142遺伝子のうち後述の実施例2、3の解析にて新規の機能が見出されたことにより本発明の対象とした炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードする遺伝子は、TNFUP_0013(配列番号1)、TNFUP_0064(配列番号3)、TNFUP_0072(配列番号5)、TNFUP_0113(配列番号7)、TNFUP_0114(配列番号9)、TNFUP_0142(配列番号11)の6遺伝子である。このとき、TNFUP_0072については2つ(TNFUP_0072;配列番号5、TNFUP_0072B;配列番号13)の、またTNFUP_0142については6つ(TNFUP_0142;配列番号11、TNFUP_0142B;配列番号15、TNFUP_0142C;配列番号17、TNFUP_0142D;配列番号19、TNFUP_0142E;配列番号21、TNFUP_0142F;配列番号23)のスプライシングバリアントが存在していた。そしてデータベース検索の結果、これら6遺伝子の遺伝子名は公共データベースであるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のEntrez Gene上では、TNFUP_0013はfibronectin type III domain containing 3B(FNDC3B)、TNFUP_0064はinterferon−induced protein 44−like(IFI44L)、TNFUP_0072はTNFAIP3 interacting protein 1(TNIP1)、TNFUP_0113は、TBC1 domain family,member 4(TBC1D4)、TNFUP_0114はnicastrin(NCSTN)、そしてTNFUP_0142はSON DNA binding protein(SON)であった。
RNA干渉(RNAi)を利用した炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの機能的スクリーニング(一次スクリーニング)
実施例1のDNAマイクロアレイ解析から抽出された142の発現上昇遺伝子が内皮細胞において炎症に重要な機能を有するかを、small interfering RNA(siRNA)で各遺伝子をノックダウンすることにより、TNF−αの刺激でHUVECに生じる接着分子の発現誘導を抑制できるかどうかを指標に以下の手順にて検証した。すなわちsiRNAにより接着分子の発現が抑制された場合そのsiRNAのターゲットとなる遺伝子が炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド候補となる。
a)siRNAの調製
RNAiを利用した炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドの機能的スクリーニングのために、CUGA7 in vitro siRNA Synthesis Kit(ニッポンジーン社製)を用いてsiRNAのin vitro転写合成を実施した。尚、今回合成したsiRNAのうち後述の実施例2d)で顕著な接着分子発現抑制効果を認めかつ後述の実施例3の解析により新規の機能を持つことが確証された炎症性サイトカイン誘導ポリペプチド6遺伝子に対するsiRNA、また陰性コントロールsiRNA及び陽性コントロールのsiRNAのターゲット配列、合成用オリゴDNA配列および合成されるsiRNAの配列を表1に例として示す。具体的なsiRNAの合成・調製は以下の通りに行った。実施例1b)で見出された発現上昇遺伝子(142遺伝子)について、全長のmRNA配列からopen reading frame(ORF)を抜き出し、またスプライシング・バリアントがある場合はその共通部分の塩基配列のみを抜き出した。次に下記の表1及び表2の例に示されるように抜き出した塩基配列からsiRNAセンス鎖3'オーバーハング2塩基部分とsiRNAの2本鎖部分(表中のdouble strand region)19塩基部分そしてsiRNAアンチセンス鎖3'オーバーハング部分の2塩基部分からなる23塩基の領域(表中のTarget Sequence:ターゲット配列)を各遺伝子につき4領域選び出し、CUGA7 in vitro siRNA Synthesis Kitの使用説明書に従いターゲット配列の3'にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列の相補配列(5'−CTATAGTGAGTCGTATTA−3')を付加した表1、または配列25−52を例とするセンス鎖鋳型オリゴDNAとアンチセンス鎖鋳型オリゴDNAをデザインし化学合成(シグマジェノシス社製)した。尚、配列番号25−30はTNFUP_0013、配列番号31−32はTNFUP_0064、配列番号33−34はTNFUP_0072、配列番号35−36はTNFUP_0113、配列番号37−38はTNFUP_0114、そして配列番号39−42はTNFUP_0142に対するsiRNA合成用オリゴDNAの塩基配列である。また、配列番号45,46はintercelluler adhesion molecule(ICAM)−1、配列番号47,48はvascular cell adhesion molecule(VCAM)−1、配列番号49,50はE−selectin、配列番号51,52はtumor necrosis factor receptor1(TNFR1)に対する陽性コントロールsiRNA合成用オリゴDNA(その産物のsiRNAが高いノックダウン効果を持つことをあらかじめ確認済)そして配列番号43,44はGenBankに対するBlast検索でいずれの遺伝子にもヒットしないようにデザインした19塩基の配列をターゲット領域に持つ陰性コントロールsiRNA用オリゴDNAの塩基配列である。これらを含む前述の実施例1で検出された142遺伝子とコントロール遺伝子に対してデザインした全てのオリゴDNAを鋳型として用いてCUGA7 in vitro siRNA Synthesis Kitキットにより使用説明書に一部の改変を加えた方法でsiRNAをin vitro転写合成および精製を実施した。改変とはin vitro転写合成したsiRNAをトランスフェクションした細胞に誘発されるインターフェロン応答を5'端のリン酸基を取り除くことにより抑えるもので、Kimら(Nature Biotechnology,2004,22,p321−325)が報告した手法に改良を加えた方法である。具体的には同キットの標準プロトコールの半量にてin vitro転写反応及びヌクレアーゼ反応を実施した後、その50μlの反応液に7μlのStrataClean Resin(Stratagene社製)を加えボルテックスミキサーにて攪拌後1分間室温で静置し、12000rpmで室温1分間遠心し、上清をMicroSpin G−25(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製後、これに20units(2μl)のcalf intestinal, alkaline phosphatase(CIP:New England Biolabs社製)と6μlの10×reaction buffer(CIPに添付)及び2μlのRNase Free蒸留水を加え(全量60μl)、タッピングにより攪拌後37℃1時間インキュベートし、40μlのRNase Free蒸留水を加え、最後にCUGA7 in vitro siRNA Synthesis Kitのプロトコールに従いsiRNAのフェノール・クロロホルム精製を行った。その後分光光度計を用いてsiRNAの濃度測定を行いRNA Free蒸留水で100ng/μlに調製した。尚、これらの配列番号25から52の配列のオリゴDNAを使用し上記の方法でsiRNAを合成した場合、表1及び表2のsiRNA Sequenceに示す配列のものが合成される。
Figure 2006134960

Figure 2006134960
b)機能的スクリーニング用HUVECの培養・調製
購入した冷凍保存HUVEC(Cell Applications社製)を使用説明書に従い、ウシコラーゲンI型がコーティングされた底面積75cmの培養フラスコ(住友ベークライト社製)中で内皮細胞増殖培地(Cell Applications社製)によりCO濃度5%、37℃の条件下で培養し、コンフルエントになった状態の細胞をサブカルチャーセットA(Cell Applications社製)を用いて細胞を剥がして継代培養を開始し、培養フラスコ1本分の細胞を2本に継代した場合を1代として、7代から8代継代した後コンフルエントになった1本分の培養フラスコの細胞をサブカルチャーセットAを用いて剥がし、200×gで5分間遠心後2mlのセルバンカー(十慈フィールド社製)に浮遊させ、これを1mlずつ2本のセラムチューブに冷凍保存した細胞をストックとして以下の実験に用いた。冷凍保存したストック1本分の細胞を15mlの培地が入ったウシコラーゲンI型コーティング底面積75cm培養フラスコに加え6時間から18時間後25mlの新鮮な培地と交換して3日間培養し、コンフルエントになった細胞をサブカルチャーセットAを用いて回収し、200×gで5分間遠心後1×10細胞/mlの細胞濃度になるように内皮細胞増殖培地で浮遊液を調製した。これをウシコラーゲンI型がコーティングされた96穴マイクロプレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに100μl(1×10細胞)ずつ分注した。これを18時間から24時間培養した後、各ウェルの細胞は95−100%コンフルエントな状態に達した。尚、一次スクリーニング1回の解析つき上記96穴マイクロプレートをICAM−1解析用、VCAM−1解析用そしてE−selectin解析用の計3枚調製した。
c)siRNAのトランスフェクション
上記b)の各ウェルの細胞に上記a)で合成したsiRNAをTargefect−siRNA transfection kit(TargetingSystems社製)を用いて以下の操作によりトランスフェクションした。尚、スクリーニング1回の解析につき92のsiRNA、3つの陽性コントロールsiRNA(ICAM−1、VCAM−1、E−selectin用)、そして陰性コントロールsiRNA計96のsiRNAについて3枚(ICAM−1測定用、VCAM−1測定用、E−Selectin測定用)の96穴プレートに対してトランスフェクションを実施した。
100ng/μlのsiRNA1つにつき96穴PCRプレートの1ウェルに3.1μl(0.31μg)ずつ分注し、これに同キットに含まれているSolnA 120μl、SolnB 75μlと4500mg/lグルコース含Dulbecco’s modified Eagle's medium(DMEM:シグマアルドリッチ社製)14.8mlの混合液をsiRNAが入ったPCRプレートの各ウェルにつき155μlずつ加え、ABsolute QPCR Seal(ABgene社製)にてPCRプレートをシールしたのち転倒混和し、マイクロプレート用遠心機により混合液をスピンダウンした後25分間37℃でインキュベートした。そして上記b)の細胞を培養した96穴マイクロプレートの培養上清を8連タイプのアスピレータにより抜きとり、直ちに8連マイクロピペットを用いて96穴PCRプレートの各ウェルのsiRNAの混合液を51μlずつ(各ウェルにつき0.1μgのsiRNAに相当)を加え、30分間37℃でインキュベートした。その後直ちに新鮮な内皮細胞増殖培地を100μlずつ8連マイクロピペットで加え、16時間CO濃度5%、37℃の条件下でインキュベートした。その後各ウェルの上清を126μl取り除き、75μlの新鮮な内皮細胞増殖培地を加え上清の全量を100μlとし、ICAM−1測定用プレート及びVCAM−1測定用プレートは8時間、E−selectin測定用プレートは16時間同条件でインキュベーションを継続した。その後ICAM−1用のマイクロプレートの各ウェルに0.75ng/mlの濃度に内皮細胞増殖培地で希釈したヒトTNF−α(GT社製)を50μl(最終濃度0.25ng/ml)を加えて18.5時間、VCAM−1測定用プレートの各ウェルには30ng/μlのTNF−α希釈液を50μl(最終濃度10ng/ml)加え18.5時間、そしてE−selectin測定用プレート各ウェルには30ng/μlのTNF−α希釈液を50μl(最終濃度10ng/ml)加え2.5時間、CO濃度5%、37℃の条件下でインキュベートした。
d)Cell enzyme−linked immunosorbent assay(Cell−ELISA)
次に接着分子を認識するモノクローナル抗体を用いたenzyme−linked immunosorbent assay(ELISA)を模した方法にてマイクロプレート上でHUVEC表面に発現する各接着分子の検出を行った。具体的には上記c)でsiRNAをトランスフェクション後インキュベートした96穴マイクロプレートの上清を取り除き、直ちにメタノール:エタノール(3:1混合比)の固定液を100μl加え1時間室温で静置することにより固定し、プレートウオッシャーを使用して0.05%Tween−20含PBSで3回洗浄した後1%BSA含PBSを100μl加え30分間室温でブロッキングした後に上清を取り除き、抗ヒトICAM−1、抗VCAM−1、抗E−selectinマウスIgG1モノクローナル抗体(BDバイオサイエンス社製)を0.1%BSA含PBSで500倍希釈(最終濃度1μg/ml)した液を対応したマイクロプレートの各ウェルに100μlずつ加え30分間室温で抗体を反応させ、マイクロプレートウオッシャーを使用して0.05%Tween−20含PBSで4回洗浄した。その後再び1%BSA含PBS100μlで30分間室温にてブロッキングし上清を取り除いた後に、0.1%BSA含PBSで1000倍希釈(最終濃度1μg/ml)したhorse ladish peroxidase(HRP)標識抗マウスIgG抗体(Kirkegaard & Perry Laboratories社製)を100μl加えて反応させた後、マイクロプレートウオッシャーを使用して0.05%Tween−20含PBSで5回洗浄し、上清を完全に取り除いた後HRPをペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト社製)を用いて使用説明書のプロトコールに従って発色反応を行い、各マイクロプレートウェルの490nmの吸光度を測定し内皮細胞表面の各接着分子の発現を評価した。すなわち、吸光度が低ければ接着分子の発現がより強く抑制されていることを示す。さらにICAM−1、VCAM−1、E−selectin解析用プレートそれぞれで92のsiRNAにおける490nmの吸光度の平均値(mean)と標準偏差(SD)を算出し“mean−2×SD”以下の吸光度を示すsiRNAを陽性と判定した。その結果18遺伝子に対応する21のsiRNAがICAM−1、VCAM−1、E−selectinの何れかの発現抑制効果を示し、陽性と判定され、その対応遺伝子である18遺伝子を炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドの候補として選択した。
炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド候補の検証
上記実施例2d)にて陽性と判定された21のsiRNAの効果を以下の手順にて再検証した。この再検証により結果として炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドとしてTNFUP_0013(配列番号1)、TNFUP_0064(配列番号3)、TNFUP_0072(配列番号5)、TNFUP_0113(配列番号7)、TNFUP_0114(配列番号9)、TNFUP_0142(配列番号11)の6遺伝子が絞り込まれた。
a)Cell−ELISAによる接着分子発現抑制の再現性(二次スクリーニング)
実施例2d)に記載の一次スクリーニングの結果の再現性を確認するため、陽性反応を示した21のsiRNAについて4系列(4ウェル)ずつに解析数を増やし、実施例2と同一の方法で再解析を行った。その結果、一次スクリーニングで検出されたsiRNAの接着分子発現抑制効果の殆どが再現された。
図1から3は21のsiRNAのうちこの二次スクリーニングで接着分子の発現抑制効果が再現され、さらに後述のb)、c)で炎症に高い関連性を持つと判断された6遺伝子に対する計9つのsiRNAと陰性および陽性コントロールsiRNAにおける結果を示す。尚、図の縦軸は各siRNAをトランスフェクションした場合の490nmの吸光度を示し、斜線のカラムはd)の一次スクリーニングにおいて該当する接着分子の発現抑制効果が陽性であったsiRNAであることを示す。また灰色のカラムは該当の接着分子で陽性ではないが、他の接着分子で陽性であったものを示し、白色、黒色のカラムはそれぞれ陰性コントロール、陽性コントロールのsiRNAにおけるデータを示す。また各データは4ウェルのデータの平均値を示し、エラーバーは4ウェルのデータの標準偏差を示す。
ICAM−1の発現(図1)については陽性コントロールsiRNA(ICAM1−si)のデータから推測すると本バッチのアッセイではICAM−1が通常よりも高く検出されたと考えられるため、siRNAによる抑制効果が若干わかりにくいが、TNFUP_0013に対する3つのsiRNA(TNFUP_0013−1,3,4)、TNFUP_0064に対するsiRNA(TNFUP_0064−4)で陰性コントロールsiRNAよりも490nm吸光度で約40%減少の発現抑制効果を示した。また、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)では約30%の発現抑制が認められた。さらにTNFUP_0142については一次スクリーニングで抑制効果を検出した2つのsiRNAのうち一方のsiRNA(TNFUP_0142−3)で30%程度の抑制効果しか現れなかったが、一方のsiRNA(TNFUP_0142−2)で約40%の抑制効果が認められた。
VCAM−1の発現(図2)については、TNFUP_0064に対するsiRNA(TNFUP_0064−4)、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)、TNFUP_0142に対する2つのsiRNA(TNFUP_0142−2,3)で陰性コントロールsiRNAよりも490nm吸光度で50%以上減少の発現抑制効果を示した。TNFUP_0072に対するsiRNA(TNFUP_0072−2)についてはこれらに比べ効果が若干弱いものの約50%の抑制効果が認められた。
さらにE−selectinの発現(図3)については、一次スクリーニングで抑制効果を検出したTNFUP_0013に対する3つのsiRNAのうち2つ(TNFUP_0013−3,4)において陰性コントロールsiRNAよりも490nm吸光度で約50%減少の発現抑制効果を示した。またTNFUP_0072に対するsiRNA(TNFUP_0072−2)、TNFUP_0113に対するsiRNA(TNFUP_0113−4)、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)で50%以上の抑制効果が認められた。そしてTNFUP_0142については一次スクリーニングで抑制効果を検出した2つのsiRNAのうち一方のsiRNA(TNFUP_0142−2)で50%以上の抑制効果が認められた。
これらの結果から図1から3に示されるsiRNAの対応遺伝子であるTNFUP_0013はICAM−1とE−selectin、TNFUP_0064はICAM−1とVCAM−1、TNFUP_0072はVCAM−1とE−selectin、TNFUP_0113はE−selectin、TNFUP_0114はICAM−1とVCAM−1及びE−selectinそしてTNFUP_0142はICAM−1とVCAM−1及びE−selectinの発現誘導に関わる可能性が高いと判断され、いわゆる炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドであることが明らかとなった。
b)定量的PCRによる遺伝子変動の評価
実施例2d)にて陽性であった21のsiRNAにより各接着分子の発現がmRNAレベルで変動しているかどうか、さらにそのsiRNAがターゲットとしている遺伝子が実際にノックダウンされているかを以下の手順で定量的PCRにより評価した。上記a)にて8代継代培養した後に凍結保存したHUVECのストック1本分の細胞を15mlの内皮細胞増殖培地が入ったウシコラーゲンI型でコーティングされた75cm底面積の培養フラスコに加え6時間から18時間CO濃度5%、37℃の条件で培養した後、25mlの新鮮な培地と交換し、3日間の培養後コンフルエントになった細胞をサブカルチャーセットAを用いて回収し、200×gで5分間遠心後1×10細胞/mlの細胞濃度になるように内皮細胞増殖培地で浮遊液を調製した。これをウシコラーゲンI型でコーティングされた6穴培養プレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに2ml(2×10細胞)ずつ分注し、CO 5%、37℃の条件下で一晩インキュベートし95−100%コンフルエントな状態まで培養した。次にTargefect−siRNA transfection kitキットに含まれているSolnA 8μl、SolnB 5μlと4500mg/lグルコース含DMEM 987μlを混合した液を実施例2d)で陽性であった21のsiRNAまたは陰性コントロール、陽性コントロールsiRNA(各100ng/μl)20μlに加えた後、25分間 37℃でインキュベートし、これをHUVECの培養上清2mlと置換し直ちにCO濃度5%、37℃の条件で30分間インキュベートした後、新鮮な内皮細胞増殖培地2mlを加えCO濃度5%、37℃の条件で14−15時間インキュベートした。そして培養上清を新鮮な内皮細胞増殖培地1.9mlと置換しICAM−1測定用には培地置換より10時間後に5ng/mlTNF−αを100μl(最終濃度0.25ng/ml)、VCAM−1測定用には培地置換より10時間後に200ng/mlTNF−αを100μl(最終濃度10ng/ml)、E−selectin用には培地置換より15.5時間後に200ng/mlTNF−αを100μl(最終濃度10ng/ml)添加した。その後、ICAM−1およびVCAM−1測定の場合は14時間、E−selectin測定の場合は2.5時間CO濃度5%、37℃の条件下でインキュベートした後、RNeasy Micro Kit(Qiagen社製)を用いて添付の使用説明書に従い全RNAを抽出した。次に各サンプルにつき全RNAを0.5μg使用してオリゴdTプライマーを用いてスーパースクリプトファーストストランドシステム(Invitrogen社製)によりその使用説明書に従ってcDNAを合成し、これをQIAquick PCR Purification Kit(Qiagen社製)により精製し(30μlの溶出bufferでcDNAを溶出)、そのうち1反応につき1μlのcDNAをテンプレートにPCRプライマーを0.2μMの濃度でSYBR Green PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社製)の標準プロトコールに準じて反応液(各反応はすべて2系列ずつ)を調製し、GeneAmp 5700(アプライドバイオシステムズ社製)にて95℃10分間加熱後、95℃15秒間、60℃1分間の反応を40回繰り返し増幅曲線を作成した。尚、今回使用した21のsiRNAに対応する18遺伝子のPCRプライマーうち、実施例3a)−c)の解析により見出された炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードする6遺伝子に対するPCRプライマーはTNFUP_0013:配列番号53−54、TNFUP_0064:配列番号55−56、TNFUP_0072:配列番号57−58、TNFUP_0113:配列番号59−60、TNFUP_0114:配列番号61−62、TNFUP_0142:配列番号63−64である。接着分子に対するPCRプライマーはICAM−1:配列番号65−66、VCAM−1:配列番号67−68、E−selectin:配列番号69−70、そして内在性コントロール遺伝子に対するPCRプライマーはβ―actin:配列番号71−72、glyderaldehyde−3−phosphate dehydrogenase(GAPDH):配列番号73−74である(表3参照)。そして得られた増幅曲線からGeneAmp 5700 SDS ソフトウェア(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて各ウェルのCt値を求め、各siRNAをトランスフェクションしたサンプルについてGAPDHとβ―actinのCtの平均値から各遺伝子におけるCt値を差し引いたΔCt値を求め、これと陰性コントロールsiRNAをトランスフェクションした場合のΔCt値と比較することにより各遺伝子の発現の変動を評価した。実施例2d)で陽性であった21のsiRNAのデータのうち実施例3a)−c)の結果から炎症への関連性が高いと判断された6遺伝子(炎症性サイトカイン誘導ポリペプチドをコードする遺伝子)に対する9つのsiRNAをトランスフェクションした場合の各接着分子および各siRNAのターゲット遺伝子のmRNAの発現変動を図4のa−b、図5のa−b、そして図6のa−bに示す。図4a、図5a、そして図6aに示す一部のsiRNAにおいて接着分子mRNAの発現変動の幅が小さいものが存在するものの、図4から6に示す殆どのsiRNAにおいて陰性コントロールとΔCt値の差が1以上すなわち50%の発現減少が認められ、実施例2d)、そして実施例3a)の結果がmRNAレベルでも再現された。
具体的にICAM−1のmRNA発現(図4a)については、TNFUP_0013に対する3つのsiRNAのうち2つ(TNFUP_0013−1,3)、TNFUP_0064に対するsiRNA(TNFUP_0064−4)、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)、TNFUP_0142に対する2つのsiRNAのうち1つ(TNFUP_0142−2)において50%以上の発現減少が認められた。
またVCAM−1のmRNA発現(図5a)については、TNFUP_0064に対するsiRNA(TNFUP_0064−4)、TNFUP_0072に対するsiRNA(TNFUP_0072−2)、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)、TNFUP_0142に対する2つのsiRNA(TNFUP_0142−2,3)において50%以上の発現減少が認められた。
さらにE−selectinのmRNA発現(図6a)については、TNFUP_0013に対する3つのsiRNA(TNFUP_0013−1,3,4)、TNFUP_0113に対するsiRNA(TNFUP_0113−4)、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)において50%以上の発現減少が認められた。また、TNFUP_0072に対するsiRNA(TNFUP_0072−2)及びTNFUP_0142に対する2つのsiRNAのうち1つ(TNFUP_0142−2)においては50%近い発現減少が認められた。
また図4b、図5b、そして図6bに示されるように、これらの6遺伝子に対するsiRNAはそのターゲット遺伝子のmRNAの発現を陰性コントロールとΔCt値の差が1以上すなわち50%以上ノックダウンしていることも確認された。
よってこれらの6遺伝子をそのsiRNAでノックダウンすることによりTNF−αで誘導される接着分子の発現誘導がmRNAでも抑制されることが明らかとなり、これらの6遺伝子は血管内皮細胞の炎症反応に関連性が高い遺伝子(炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド)であることが再確認された。

Figure 2006134960
c)白血球細胞−HUVEC接着解析
実施例2d)の一次スクリーニングにて陽性であった21のsiRNAにより実際にTNF−αにより誘発される白血球細胞とHUVECとの接着が抑えられるかどうかを検証した。具体的には実施例2a)の手順に従いウシコラーゲンI型がコーティングされたブラッククリアボトム96穴マイクロプレート4枚(BDバイオサイエンス社製)に培養・調製した。次に96穴フォーマットの滅菌済みマイクロチューブへ分注した21の各siRNA(100ng/μl)に16.4μl(1.64μg)にTargefect−siRNA transfection kitに含まれているSolnA 164μl、SolnB 102.5μlと4500mg/lグルコース含Dulbecco’s modified Eagle's medium(DMEM:シグマアルドリッチ社製)20.2mlの混合液を820μlずつ加え転倒混和し、スピンダウンした後25分間37℃でインキュベートした。そしてHUVECを培養した96穴マイクロプレートの培養上清を8連タイプのアスピレータにより抜きとり、直ちに8連マイクロピペットを用いて上記のsiRNAの混合液を51μlずつ(各ウェルにつき1μgのsiRNAに相当する。また1つのsiRNAにつき4ウェル×4プレート計16ウェルに対し添加した)を加え、30分間37℃でインキュベートした。その後直ちに新鮮な内皮細胞増殖培地を100μlずつ8連マイクロピペットで加え、15時間CO濃度5%、37℃の条件下でインキュベートした。その後各ウェルの上清を126μl取り除き、75μlの新鮮な内皮細胞増殖培地を加え上清の全量を100μlとし、9時間同条件でインキュベーションを継続した。その後30ng/μlのTNF−α希釈液を50μl(最終濃度10ng/ml)加え18時間、CO濃度5%、37℃の条件下でインキュベートした。一方、10%牛胎児血清(FBS)含RPMI1640培地(シグマアルドリッチ社製)で継代培養したTリンパ球系培養細胞(MOLT−4、Jurkat)、単球系培養細胞(THP−1、U937)それぞれ7×10細胞をVybrant Cell Adhesion Assay Kitを用いて使用説明書に従い蛍光標識し、FBS不含RPMI1640培地により5×10細胞/mlの濃度の浮遊液を調製した。そして上記のTNF−α処理後のマイクロプレート各ウェルの上清を8連タイプのアスピレータにより抜きとり、直ちに1ウェルにつき100μl(5×10細胞)の蛍光標識した各白血球細胞を各々のマイクロプレートに8連マイクロピペットを用いて添加し、37℃で1時間インキュベートした。次に各ウェルにFBS不含のRPMI1640培地100μlを加え直ぐに8連アスピレータ−と8連マルチマイクロピペットを用いて各ウェルにつき200μlのFBS不含RPMI1640培地で2回洗浄し、最後に200μlのPBSを加え、蛍光マイクロプレートリーダーにより蛍光測定(励起/蛍光:485nm/535nm)し、各siRNAにおける4系列(4ウェル)のデータの平均値を求めた。尚、この蛍光強度はマイクロプレートに残っている(HUVECに接着している)白血球細胞の数と比例する。そして、その蛍光強度が陰性コントロールsiRNAにおける蛍光強度の50%以下(50%以下の接着阻害)の場合を陽性と判定した。図7から10は、解析した21のsiRNAのうち実施例3a)−c)の結果から炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチドと判断された6遺伝子に対応する9つのsiRNAまた陰性および陽性コントロールsiRNAにおけるデータを示す。図7から10で示されるように、今回解析したsiRNAのうちTNFUP_0064−4がMOLT−4とJurkat、TNFUP_0114−3がU937とMOLT−4とJurkat、TNFUP_0142−2がMOLT−4とJurkat、TNFUP_0142−3がMOLT−4の接着を50%以上阻害することが示され、TNFUP_0064、TNFUP_0114、そしてTNFUP_0142の3遺伝子が少なくとも今回調べた白血球細胞との接着に関わっていることが明らかとなり、炎症領域の血管内皮細胞で特に白血球の接着・浸潤の誘導に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、今回検討した細胞ではTNFUP_0013、TNFUP_0072、そしてTNFUP_0113については、そのsiRNAで接着抑制効果は認められなかったが、上記a)b)にて接着分子の発現を抑制する事が証明されたことや今回の解析にてsiRNAと白血球細胞種の組み合わせにより接着抑制の様式が異なっていたことから、今回用いなかった他の白血球細胞もしくは末梢血の何れかの白血球の接着に関連している可能性は十分考えられる。
d)炎症性サイトカイン誘導ポリヌクレオチド候補の検証の総括
今回の検証実験を総括すると少なくともHUVECにおいて、TNFUP_0013はICAM−1とE−selectinの発現に関連する遺伝子、TNFUP_0064はICAM−1とVCAM−1の発現に関連しかつTリンパ球系の細胞(MOLT−4、Jurkat)の接着に関連する遺伝子、TNFUP_0072はVCAM−1とE−selectinの発現に関連する遺伝子、TNFUP_0113はE−selectinの発現に関連する遺伝子、TNFUP_0114はICAM−1とVCAM−1及びE−selectinの発現に関連しかつ単球系の細胞(U937)及びTリンパ球系の細胞(MOLT−4、Jurkat)の接着に関連する遺伝子、TNFUP_0142はICAM−1とVCAM−1及びE−selectinの発現に関連しかつ及びTリンパ球系の細胞(MOLT−4、Jurkat)の接着に関連する遺伝子であることが明らかとなった。
配列番号:1は、TNFUP_0013の遺伝子配列である。
配列番号:2は、TNFUP_0013の遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:3はTNFUP_0064の遺伝子配列である。
配列番号:4は、TNFUP_0064の遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:5は、TNFUP_0072の遺伝子配列である。
配列番号:6は、TNFUP_0072の遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:7は、TNFUP_0113の遺伝子配列である。
配列番号:8は、TNFUP_0113の遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:9は、TNFUP_0114の遺伝子配列である。
配列番号:10は、TNFUP_0114の遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:11は、TNFUP_0142の遺伝子配列である。
配列番号:12は、TNFUP_0142の遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:13は、TNFUP_0072のスプライシングバリアントであるTNFUP_0072Bの遺伝子配列である。
配列番号:14は、TNFUP_0072のスプライシングバリアントであるTNFUP_0072Bの遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:15は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Bの遺伝子配列である。
配列番号:16は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Bの遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:17は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Cの遺伝子配列である。
配列番号:18は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Cの遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:19は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Dの遺伝子配列である。
配列番号:20は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Dの遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:21は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Eの遺伝子配列である。
配列番号:22は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Eの遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:23は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Fの遺伝子配列である。
配列番号:24は、TNFUP_0142のスプライシングバリアントであるTNFUP_0142Fの遺伝子配列のコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:25は、TNFUP_0013に対するsiRNA(TNFUP_0013−1)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:26は、TNFUP_0013に対するsiRNA(TNFUP_0013−1)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:27は、TNFUP_0013に対するsiRNA(TNFUP_0013−3)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:28は、TNFUP_0013に対するsiRNA(TNFUP_0013−3)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:29は、TNFUP_0013に対するsiRNA(TNFUP_0013−4)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:30は、TNFUP_0013に対するsiRNA(TNFUP_0013−4)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:31は、TNFUP_0064に対するsiRNA(TNFUP_0064−4)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:32は、TNFUP_0064に対するsiRNA(TNFUP_0064−4)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:33は、TNFUP_0072に対するsiRNA(TNFUP_0072−2)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:34は、TNFUP_0072に対するsiRNA(TNFUP_0072−2)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:35は、TNFUP_0113に対するsiRNA(TNFUP_0113−4)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:36は、TNFUP_0113に対するsiRNA(TNFUP_0113−4)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:37は、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:38は、TNFUP_0114に対するsiRNA(TNFUP_0114−3)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:39は、TNFUP_0142に対するsiRNA(TNFUP_0142−2)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:40は、TNFUP_0142に対するsiRNA(TNFUP_0142−2)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:41は、TNFUP_0142に対するsiRNA(TNFUP_0142−3)のセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:42は、TNFUP_0042に対するsiRNA(TNFUP_0142−3)のアンチセンス鎖合成用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:43は、陰性コントロールsiRNA(N.Ctrl−si)のセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:44は、陰性コントロールsiRNA(N.Ctrl−si)のアンチセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:45は、ICAM−1に対する陽性コントロールsiRNA(ICAM1−si)のセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:46は、ICAM−1に対する陽性コントロールsiRNA(ICAM1−si)のアンチセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:47は、VCAM−1に対する陽性コントロールsiRNA(VCAM1−si)のセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:48は、VCAM−1に対する陽性コントロールsiRNA(VCAM1−si)のアンチセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:49は、E−selectinに対する陽性コントロールsiRNA(E−selectin−si)のセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:50は、E−selectinに対する陽性コントロールsiRNA(E−selectin−si)のアンチセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:51は、TNFR1に対する陽性コントロールsiRNA(TNFR1−si)のセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:52は、TNFR1に対する陽性コントロールsiRNA(TNFR1−si)のアンチセンス鎖用オリゴDNAの塩基配列である。
配列番号:53は、TNFUP_0013定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:54は、TNFUP_0013定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:55は、TNFUP_0064定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:56は、TNFUP_0064定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:57は、TNFUP_0072定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:58は、TNFUP_0072定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:59は、TNFUP_0113定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:60は、TNFUP_0113定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:61は、TNFUP_0114定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:62は、TNFUP_0114定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:63は、TNFUP_0142定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:64は、TNFUP_0142定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:65は、ICAM−1定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:66は、ICAM−1定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:67は、VCAM−1定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:68は、VCAM−1定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:69は、E−selectin定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:70は、E−selectin定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:71は、β―actin定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:72は、β―actin定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:73は、GAPDH定量用のPCRプライマーの塩基配列である。
配列番号:74は、GAPDH定量用のPCRプライマーの塩基配列である。

Claims (12)

  1. (1)血管内皮細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
    (2)下記のいずれかに記載の遺伝子の発現量を測定する工程を含む血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法:
    1)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNA、または
    2)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチドをコードするもの。
  2. (1)血管内皮細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
    (2)下記のいずれかに記載のポリペプチドの発現量を測定する工程を含む血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法:
    1)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
    2)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22又は24で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、炎症性サイトカインの存在下において(a)細胞接着分子の発現誘導機能、及び/又は(b)血管内皮細胞と白血球細胞との接着誘導機能を有するポリペプチド。
  3. 被験物質非存在下よりも前記遺伝子又はポリペプチドの発現量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  4. (1)請求項1に記載の遺伝子を含む発現ベクターで形質転換され、前記遺伝子によってコードされたポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、
    (2)白血球を上記細胞に接触させる工程、及び
    (3)白血球と上記細胞との接着量を測定する工程を含む、
    血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  5. 被験物質非存在下よりも白血球と上記細胞との接着量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、請求項4記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  6. (1)請求項1に記載の遺伝子を含む発現ベクターで形質転換され、前記遺伝子によってコードされたポリペプチドを発現している細胞と、被験物質とを接触させる工程、及び
    (2)細胞接着分子の発現量を測定する工程を含む、
    血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  7. 被験物質非存在下よりも細胞接着分子の発現量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、請求項6記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  8. (1)請求項2に記載のポリペプチドと、被験物質とを、標識した前記ポリペプチドの特異結合体の存在下で、接触させる工程、及び
    (2)前記ポリペプチドと前記特異結合体の結合量を測定する工程を含む、
    血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  9. 被験物質非存在下よりも特異結合体の結合量を減少させる被験物質を、選択する工程をさらに含む、請求項8記載の血管内皮細胞接着抑制物質のスクリーニング方法。
  10. 炎症性サイトカインを接触させる工程をさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  11. 前記細胞接着分子がICAM−1、VCAM−1、及びE−selectinからなる群から選択されるいずれかである、請求項1から10のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  12. 血管内皮細胞接着抑制物質を抗炎症薬として選択するものである請求項1から11のいずれかに記載のスクリーニング方法。
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