JPWO2002014387A1 - フォトクロミック硬化体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、短時間で容易に重合でき、かつその硬化体が、優れたフォトクロミック特性を有する硬化体を製造することを目的とする。(A)ラジカル重合性単量体、(B)紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤、(C)熱重合開始剤、例えば、半減期が10時間となるような温度が60℃以上である熱重合開始剤、および(D)フォトクロミック化合物を含有してなる光重合性組成物に、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有する活性エネルギー線を照射して、好ましくは被硬化体の温度が50℃以上とならないように光重合を行い、さらに加熱することによって熱重合を行う。
Description
技術分野
本発明は、光重合法と熱重合法を組合せて短時間で重合硬化して良好なフォトクロミック特性を示すフォトクロミック硬化体を製造する方法に関する。
背景技術
フォトクロミズムとは、ここ数年来注目されてきた現象であって、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所に置くと元の色に戻る可逆現象のことである。この性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、従来から色々な化合物が合成されてきたが、その構造には特別な共通性は認められない。
フォトクロミック性を示す硬化体は、フォトクロミック化合物をあらかじめ成形した重合体の表面に被覆させる方法、あるいはラジカル重合性単量体にフォトクロミック化合物を溶解させた後重合硬化させる方法(以下、練り込み法と略す)等によって得られる。
ところで、ラジカル重合性単量体を重合させる方法としては、一般に熱により重合を進行させる方法と、光により重合を進行させる方法が知られている。ところが、練り込み法において、光重合でラジカル重合性単量体を重合させようとすると、含有されるフォトクロミック化合物が紫外線重合開始剤の開裂に必要な紫外線を吸収すること、および紫外線の吸収によりフォトクロミック化合物自身が発色することによって光の透過が阻害されることなどから、ラジカル重合性単量体の好適な重合が望めない。
これらの問題を解決する手法として、特開平7−292011号公報には、フォトクロミック化合物の濃度を低くすることにより、重合を進行させる方法が開示されている。しかし、この方法では得られるフォトクロミック硬化体の発色濃度を高くすることができない。また、PCT出願公開公報WO96/37573には、特定の紫外線重合開始剤と特定発光スペクトルを有する活性エネルギー線を組合せる方法が開示されている。しかし、この方法で得られたフォトクロミック硬化体のフォトクロミズム耐久性はまだ十分とは言えない。
本発明者らの知見によれば、光重合法の採用により重合不十分な重合体中では、フォトクロミック特性の耐久性が著しく低下することが分かった。完全な重合体を得るためには、光の照射時間を長くする必要があるが、光の照射時間が長いと、光の照射によりフォトクロミック化合物の劣化が進行する。
こうしたことからフォトクロミック硬化体を得る場合において、ラジカル重合性単量体の重合方法としては、熱重合による方法が採用されるのが一般的である。しかしながら、この熱重合による方法は光重合に比べ重合に必要な時間が著しく長く、例えば重合時間が数十時間におよび、硬化体の生産性の面で満足できるものではなかった。
発明の開示
以上の背景から、本発明の目的は、ラジカル重合性単量体にフォトクロミック化合物を溶解させた後に重合硬化させる方法によって、発色濃度が高くしかも十分な硬度を持つフォトクロミック硬化体を短時間で製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、重合時にフォトクロミック化合物の劣化がないフォトクロミック硬化体を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、太陽光もしくは水銀灯の光のような紫外線を含む光で無色から着色状態に変化し、その変化が可逆的で優れた調光性および繰り返し耐久性を有するフォトクロミック硬化体を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、光学歪みが少なく、メガネレンズとして好適に使用し得るフォトクロミック硬化体を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、(A)ラジカル重合性単量体、(B)紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤、(C)熱重合開始剤および(D)フォトクロミック化合物を含有してなる重合性組成物に、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有する活性エネルギー線を照射して光重合を行った後、さらに加熱して熱重合を行うことを特徴とするフォトクロミック硬化体の製造方法によって達成することができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明のフォトクロミック硬化体の製造方法に用いるラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性基を有する単量体が何ら制限なく使用できる。ラジカル重合性基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基およびビニル基などが挙げられる。
本発明において好適に使用できる代表的なラジカル重合性単量体としては、次のような化合物を例示することができる。
下記式(1)
[ここで、2つのR1は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、Aは置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいオキシアルキレン基または、下記式(1)−1
(ここで、R2は水素原子またはメチル基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0〜5の整数であり、aはハロゲン原子の置換数を示す0〜4の整数である。)で表される基であり、そしてnは1〜20の整数である。ただし、nが2〜20のとき、複数のAは同一でも異なっていてもよい。]
で示されるジアクリレート化合物またはジメタクリレート化合物;
下記式(2)
(ここで、R3およびR6は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に置換されていてもよいアルキレン基または下記式(2)−1
で示される基でありそしてgおよびhは、それぞれ独立に、0〜20の数である。)
で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物;
下記式(3)
(ここで、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立に、同種または異種のハロゲン原子であり、Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子であり、j、kおよびlは、それぞれ独立に、0または1である。ただし、k=0のときj=0であり、またl=0のときk=j=0であり、j=k=l=1のときY1、Y2、およびY3が同時に硫黄原子となることはないものとする。)
で示されるビニルベンジル化合物;
下記式(4)
(ここで、R12、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基であり、R15は、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜25のアルキル基)、アルコキシアルキル基、アリール基、アシル基、末端にエポキシ基を有するアルキル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ハロアルキル基、またはオレイル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、tは1〜70の整数であり、t′は0〜70の整数である。ただし、R12が水素原子でありかつR15がメタクリロイル基およびアクリロイル基以外の基または水素原子である場合は、tは4〜70の整数であり、R12がアルキル基でありかつR15がメタクリロイル基である場合は、tは7〜70の整数である。)
で示される長鎖オキシアルキレン化合物を例示することができる。
本発明におけるラジカル重合性単量体としては、上記に例示した各化合物の他、不飽和カルボン酸化合物、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物、フマル酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
本発明において好適に使用できるラジカル重合性単量体を具体的に示すと、次の通りである。
上記式(1)で示されるジアクリレート化合物またはジメタクリレート化合物としては、例えばジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサメチレンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサメチレンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
上記式(2)で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレートおよびビスフェノールA−モノグリシジルエーテルメタクリレートおよび平均分子量538のグリシジルポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
上記式(3)で示されるビニルベンジル化合物としては、例えばビス−4−ビニルベンジルエーテル、ビス−4−ビニルベンジルスルフィド、1,2−(p−ビニルベンジルオキシ)エタン、1,2−(p−ビニルベンジルチオ)エタンおよびビス−(p−ビニルベンジルオキシエチル)スルフィド等が挙げられる。
上記式(4)で示される長鎖オキシアルキレン化合物としては、例えば平均分子量526のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量496のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量622のポリプロピレングリコールメタアクリレートおよび平均分子量620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸およびフマル酸等;アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物としては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、トリブロモフェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリフロロメチルメタクリレートおよびウレタンアクリレート等;フマル酸エステル化合物としては、例えばフマル酸モノメチル、フマル酸ジエチルおよびフマル酸ジフェニル等;芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ブロモスチレンおよびジビニルベンゼン等を挙げることができる。
これらのラジカル重合性単量体は1種または2種以上を混合して用いてもよい。
上記ラジカル重合性単量体の中でも、後述のフォトクロミック化合物とラジカル重合性単量体との混合物を重合して得られる硬化体のフォトクロミック性の耐久性および発色−消色等の物性を勘案すれば、前記式(1)で示されるジアクリレート化合物またはジメタクリレート化合物、式(2)で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物、および式(4)で示される長鎖オキシアルキレン化合物を含むラジカル重合性単量体混合物を用いるが、または、前記式(1)で示されるジアクリレート化合物とジメタクリレート化合物を併用し、さらに式(2)で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物を含むラジカル重合性単量体混合物を用いることが好ましい。
本発明においては、紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤を用いることが必須である。波長400nm以上の可視光領域に主吸収がある紫外線重合開始剤を用いると、それ自体が着色しているため、フォトクロミック化合物がフォトクロミック性を示して発色する前から硬化体が着色していることになり好ましくない。さらに、紫外領域に主吸収があっても、波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)未満の場合、後述する波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとする活性エネルギー線の照射では、開裂が生じにくく短時間に硬化体を得ることが困難になる。すなわち、一般にフォトクロミック化合物は波長380nmから400nmの紫外線を吸収して発色するため、紫外線重合開始剤が開裂するための活性エネルギー線をフォトクロミック化合物が吸収してしまい紫外線重合開始剤の開裂が生じにくくなり、短時間で重合を完結することができない。そして重合を完結するために長時間活性エネルギー線を照射すると、フォトクロミック化合物の劣化が生じ、好ましくない。
紫外線重合開始剤は大別して、自己開裂型と水素引き抜き型とに分けることができる。後者の紫外線重合開始剤は一般に光増感剤と併用される。この光増感剤としてはアミン化合物が一般に使用されるが、これらアミン化合物を用いた場合、重合体の初期着色が大きくなる。そのため、紫外線重合開始剤としては自己開裂型のものを用いることが好ましい。自己開裂型の紫外線重合開始剤の中でも、得られる硬化体の無色透明性の点から、α−アミノアルキルフェノン系紫外線重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤およびビスアシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤が好ましく採用される。
上記好適な紫外線重合開始剤としては特に制限はないが、代表的なものとして、下記式(5)
(ここで、2つのR7は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。)で示される化合物、下記式(6)
(ここで、複数のR8は、それぞれ独立に、メチル基、メトキシ基または塩素原子であり、eは2または3でありそしてR9はフェニル基またはメトキシ基である。)
で示される化合物および下記式(7)
(ここで、複数のR10は、それぞれ独立に、メチル基、メトキシ基または塩素原子であり、fは2または3でありそしてR11は2,4,4−トリメチルペンチル基またはフェニル基である。)
で示される化合物が挙げられる。
本発明において、紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤として好適に使用し得る紫外線重合開始剤を具体的に例示すると、次の通りである。
α−アミノアルキルフェノン系紫外線重合開始剤;
▲1▼2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、
アシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤;
▲1▼2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
▲2▼2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
▲3▼2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
▲4▼2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
ビスアシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤;
▲1▼ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲2▼ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲3▼ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲4▼ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲5▼ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド。
なお、これらの紫外線重合開始剤は単独で、または2種以上を一緒に使用することができる。
紫外線重合開始剤の添加量は、重合条件や開始剤の種類およびラジカル重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概には限定できないが、好ましくは、ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜1重量部の範囲である。この添加量範囲においては、十分な硬度の硬化体が得られる。得られる硬化体は内部均一性に優れ、色相も良好である。
本発明で用いられる熱重合開始剤は特に限定されず、公知のものが使用できる。好ましくは、開始剤の半減期(ある一定温度で、開始剤が分解してその活性酸素量が1/2になるまでに要する時間)が10時間となるような温度が40℃を越えるもの、より好ましくは50℃を越えるものが好適である。半減期が10時間となるような温度が40℃を越える場合、光重合中に発生する重合熱によっては熱重合開始剤が分解し難いため、光重合と熱重合とが同時に進行することなく、フォトクロミック特性の耐久性が良好であり、かつ、光学歪みの小さい硬化体を得ることができる。熱重合開始剤の半減期が10時間となるような温度の上限は特に制限されないが、市販の熱重合開始剤では一般に100℃以下である。
本発明において好適に使用できる熱重合開始剤を具体的に例示すると、次の通りである。
ジアシルパーオキサイド;
▲1▼ベンゾイルパーオキサイド、
▲2▼オクタノイルパーオキサイド、
▲3▼ラウロイルパーオキサイド、
▲4▼アセチルパーオキサイド、
パーオキシエステル;
▲1▼t−ブチルパーオキシイソブチレート、
▲2▼t−ブチルパーオキシベンゾエート、
▲3▼1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、
その他;
▲1▼アゾビスイソブチロニトリル、
▲2▼2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)。
なお、これらの熱重合開始剤は単独でまたは2種以上を一緒に使用することができる。
熱重合開始剤の添加量は、重合条件や開始剤の種類およびラジカル重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概には限定できないが、好ましくは、ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
本発明において、フォトクロミック化合物としては、その発色時の吸収が可視光域にあるものであれば何ら制限なく使用できる。可視域の吸収を具体的に示すと、波長400〜480nm付近に吸収スペクトルを有するフォトクロミック化合物は黄色からオレンジ色の発色色調を示し、480〜550nm付近に吸収スペクトルを有するフォトクロミック化合物は赤色から紫色の発色色調を示し、550〜600nm付近に吸収スペクトルを有するフォトクロミック化合物は紫から青色の発色色調を示す。これらフォトクロミック化合物は単独で用いてもよいが2種以上組合せることによって、グレー、ブラウンおよびアンバーといった中間色の発色色調を得ることもできる。
本発明において好適に使用されるフォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギドまたはフルギミド化合物、およびスピロオキサジン化合物を挙げることができる。
クロメン化合物としては、クロメン骨格を有し、フォトクロミック性を有する公知の化合物を何ら制限なく使用することができる。具体的に例示すると下記の通りである。
▲1▼5−イソプロピル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン、
▲2▼5−t−ブチル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン、
▲3▼スピロ(ノルボルナン−2,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
▲4▼スピロ(ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−9,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
▲5▼7′−メトキシスピロ(ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−9,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
▲6▼3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6−モルホリノ−3H−ベンゾ(f)クロメン、
▲7▼2,2−ジメチル−7−オクトキシ(2H)ベンゾ(f)クロメン。
フルギド化合物としては、フルギド骨格を有し、フォトクロミック性を有する公知の化合物が何ら制限なく採用できる。具体的に例示すると下記の通りである。
▲1▼N−メチル−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲2▼N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲3▼N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチル−スピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲4▼N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲5▼N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲6▼N−シアノ−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲7▼N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)スピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン。
スピロオキサジン化合物は、スピロオキサジン骨格を有し、フォトクロミック性を有する公知の化合物が何ら制限なく採用できる。具体的に例示すると下記の通りである。
▲1▼1′,5′−ジメチル−4′−フルオロ−6″−モルホリノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2H),3″−(3H)ナフト(3,2a)(1,4)オキサジン)、
▲2▼6′−フルオロ−1′−メチル−5″−ニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲3▼6′−フルオロ−1′−イソブチル−5″−ニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲4▼4′,5′−ジメチル−1′−イソブチルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲5▼1′−イソブチル−5″−アセトニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲6▼6′−フルオロ−1′−メトキシカルボニルエチル−8″−メトキシ−6″−ピペリジノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲7▼4′−フルオロ−1′−イソブチル−5′−メチル−6″−モルホリノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2H),3″−(3H)ナフト(3,2a)(1,4)オキサジン)。
フォトクロミック化合物の添加量は、発色時の濃度に応じて適宜選択されるが、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、例えば0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲である。この範囲においては、短時間で重合が完結しやすく、得られる硬化体にはフォトクロミック化合物の十分な発色濃度が得られ、またフォトクロミック特性の耐久性も良好である。
本発明に用いる重合性組成物には、公知の離型剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤や添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
本発明において照射する活性エネルギー線は、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有することが必要である。活性エネルギー線の主発光スペクトルが400nm以下である場合、一般にフォトクロミック化合物は380nmから400nmの紫外線を吸収して発色するため、発色後のフォトクロミック化合物が紫外線重合開始剤が開裂するための活性エネルギー線を吸収して紫外線重合開始剤の開裂が生じにくくなり、短時間で重合を完結することができないために好ましくない。そして重合を完結させるために長時間活性エネルギー線を照射すると、フォトクロミック化合物の劣化を生じ、好ましくない。
本発明の活性エネルギー線の照射において使用される光源としては、400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有する活性エネルギー線、言い換えれば可視光域スペクトルを主スペクトルとして発するものであればよい。主発光スペクトルが波長400nm以下である活性エネルギー線を発する光源を用いる場合、紫外線カットフィルター等を使用して、波長400nm以下の活性エネルギー線を遮断あるいは減少させることにより、フォトクロミック化合物の発色を抑制することができ、波長400nm以下の活性エネルギー線を含む光源であっても使用可能とすることができる。しかし、実際の硬化操作では光源の波長400nm未満のスペクトルを完全にカットする必要はなく、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとする限り、活性エネルギー線は一部波長400nm未満の紫外域の活性エネルギー線を含んでいてもよい。この場合、紫外域の活性エネルギー線によってフォトクロミック化合物が弱く発色し活性エネルギー線を一部吸収するものの、400nm以上の活性エネルギー線が実質的に透過することができ、紫外線重合開始剤を開裂できるので、重合硬化が進行する。
本発明において好適に使用できる光源を具体的に例示すると、メタルハライドランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ等を挙げることができる。また、光源が可視光線を発するのと同時に紫外線を発するメタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等のランプを使用する場合、紫外線カットフィルター等を使用して、紫外域の活性エネルギー線を遮断あるいは減少させる必要がある。
照射時間は、光源の波長や強度、硬化体の形状や構成成分によって異なるため、予備的な実験等によってあらかじめ決定しておくのが望ましい。一般には、0.5〜100分の範囲で照射を行うことにより、重合に要する時間を熱重合単独で行う場合に比べて著しく短縮することができる。
活性エネルギー線の照射を行う場合は、一般に重合熱により硬化体の温度が上昇する。この場合、重合温度が極度に上昇すると、重合熱により熱重合開始剤の開裂が生じ、光重合と熱重合とが同時に生じることになる。光重合と熱重合とが同時に生じた場合、重合して得られるフォトクロミック硬化体のフォトクロミック特性の耐久性が低下し、また、光学的な歪みが大きくなるために好ましくない。従って、光重合中は熱重合の生成を抑制するために、光重合中の重合性組成物の硬化体の温度が、熱重合開始剤の半減期温度以下である方が、光学ひずみが少なく、光学特性に優れた硬化体を得ることができる。このため、通常は、光重合中の硬化体の温度は50℃を越えないように、光重合の条件を適当に設定することが好ましい。このための方法としては、例えば、活性エネルギー線の強度を1〜2kWから選択し、活性エネルギー線と硬化体の距離を10〜100cmから選択し、あるいは、必要に応じて硬化体を冷却する方法が好ましい。
活性エネルギー線の照射を行う場合は、鋳型の少なくとも光照射する面は透明であることが必要であり、好ましくはこの部分にはガラスが使用される。特に石英ガラス等の紫外線を透過しやすい材質が好ましいが、透明であれば材質には限定されない。また、成型時に外部から圧力をかけながら重合しても何ら差し支えない。
活性エネルギー線の照射による光重合に続いて、加熱を行って熱重合を行う。本発明の製造方法は活性エネルギー線の照射による光重合でまず予備重合を行い、加熱による熱重合で重合を完結させる。光重合で短時間予備重合を行うことにより、全重合時間が短縮される。順序を逆にし、熱重合で予備重合を行うと短時間では満足な硬化体が得られず、多くの時間を要する。
活性エネルギー線の照射に続いて行われる加熱の条件のうち、特に温度は得られるフォトクロミック樹脂の性状に影響を与える。この温度条件は、熱重合開始剤の種類と量やラジカル重合性単量体の種類によって影響を受けるので一概に限定できないが、活性エネルギー線の照射終了時の発熱温度よりも高温に加熱し、高温下に熱重合を終了させる重合法を行うのが好適である。重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、あらかじめこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適である。
一般には、光重合終了直後の温度から1〜180分間で90〜120℃までの任意の温度に昇温し、この温度を10〜300分間維持して重合を完結する方法を好ましく採用することができる。
本発明の製造方法には、公知の注型重合方法を採用することができる。代表的な方法を例示すると、エラストマーガスケットまたはスペーサーで保持されているモールド間に重合性組成物を注入し、前記活性エネルギー線を照射して硬化させ、さらに引き続き加熱し熱重合によって硬化させた後取り出す。
本発明の方法で得られるフォトクロミック硬化体は、その用途に応じてさらに以下のような処理を施すこともできる。すなわち、分散染料などを用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等のゾル成分を主成分とするハードコート剤や、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子の薄膜の塗布による反射防止処理、帯電防止処理等の加工および2次処理を施すことも可能である。
光重合法および熱重合法を組合せた本発明の製造方法の採用により、重合時のフォトクロミック化合物の劣化がなく、発色濃度が高くしかも十分な硬度を持つフォトクロミック硬化体を短時間で得ることができる。得られた硬化体は太陽光もしくは水銀灯の光のような紫外線を含む光で無色から着色状態に変化し、その変化が可逆的で優れた調光性、および繰り返し耐久性を有している。従って、得られる硬化体は、フォトクロミック性を有する有機硝子として有用であり、例えばフォトクロミックレンズの用途に好適に使用することができる。
実施例
以下、実施例および比較例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「部」は「重量部」である。
1.ラジカル重合性単量体
以下の実施例で使用したラジカル重合性単量体は、下記の通りである。
M1:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、M2:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、
M3:トリエチレングリコールジメタクリレート、
M4:テトラエチレングリコールジメタクリレート、
M5:グリシジルメタクリレート、
M6:イソボルニルアクリレート、
M7:α−メチルスチレン、
M8:α−メチルスチレンダイマー。
2.フォトクロミック化合物
フォトクロミック化合物は下記の化合物である。
2−1.クロメン化合物
C1:スピロ(ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−9,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
C2:3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6−モルホリノ−3H−ベンゾ(f)クロメン、
C3:5−イソプロピル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン
2−2.フルギド化合物
F1:N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
F2:N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)スピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
2−3.スピロオキサジン化合物
S1:1′,5′−ジメチル−4′−フルオロ−6″−モルホリノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2H),3″−(3H)ナフト(3,2a)(1,4)オキサジン)、
S2:6′−フルオロ−1′−メチル−5″−ニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)。
3.紫外線重合開始剤
紫外線重合開始剤は下記の通りである。化合物名の後の( )内の数字は、400nmにおけるモル吸光係数(リットル/(mol・cm))を示す。
P1:CGI−1700(商品名:日本チバガイギー社製)
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド(550)と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(10以下)の1:3の混合物、
P2:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(250)、
P3:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(200)、
P4:メチルベンゾイルホルメート(10以下)、
P5:Irgacure819(商品名:日本チバガイギー社製)
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(604)。
4.熱重合開始剤
熱重合開始剤は下記の通りである。化合物名の後の( )内の数字は、半減期が10時間のときの温度(℃)を示す。
T1:t−ブチルパーオキシネオデカネート(46)、
T2:t−ブチルパーオキシイソブチレート(77)、
T3:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(65)、
T4:ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(41)、
T5:ベンゾイルパーオキサイド(74)、
T6:オクタノイルパーオキサイド(62)、
T7:2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(51)。
実施例1
前述のラジカル重合性単量体、M1;38部、M2;38部、M5;5部、M6;15部、M7;3部、M8;1部、およびフォトクロミック化合物F1;0.05部、熱重合開始剤T2;0.5部、および紫外線重合開始剤P1;0.5部を添加し十分に混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、メタルハライドランプと鋳型の間に、実質的に波長400nm以上の活性エネルギー線を照射するため、紫外線カットフィルターとして、380nm:99%、390nm:98%、400nm:50%、410nm:15%の活性エネルギー線を遮断することが可能なフィルターを装着し、出力120W/cmのメタルハライドランプを用いて波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとする活性エネルギー線を2分間照射した。なお照射中の温度は、50℃に保持した。その後、空気炉にて60℃から110℃まで30分かけて徐々に温度を上げていき、110℃で保持し、全重合時間が2時間になるように重合した。重合終了後、硬化体を鋳型のガラス型から取り外した。以上の重合条件を表1に示した。
硬度
得られた硬化体(厚み2mm)の硬度は、株式会社アカシ製のロックウェル硬さ試験機にてロックウェル硬度(HL)を測定し、評価した。
光学ひずみ
得られた硬化体の光学ひずみを、直交ニコル下で観察した。光学ひずみのないものは○、光学ひずみの見られたものは×で表した。
発色濃度および重合時の劣化
得られた硬化体の発色濃度は、硬化体に浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して25℃±1℃、硬化体表面でのビーム強度365nm=17mW/cm2で15秒間照射して発色させ、その時のフォトクロミック化合物の発色に基づく最大吸収波長(λmax(nm))における吸光度(ABS.)で評価した。重合時のフォトクロミック化合物の劣化は、硬化体の初期着色(発色させる前の最大吸収波長(λmax(nm))における吸光度(ABS.))の有無で評価した。
繰り返し耐久性
スガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により、硬化体を20時間促進劣化させた後の上記測定法による吸光度の残存率(%)
残存率(%)=(劣化させた後の最大吸収波長における発色時の吸光度)÷
(劣化させる前の最大吸収波長における発色時の吸光度)×100
で評価した。
以上の結果を表3に示した。
実施例2〜9
表1に示したフォトクロミック化合物、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤を用いて、表1に示した条件で重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表3に示した。
比較例1
光重合のみで重合を行った。表1に示した紫外線重合開始剤を用いて、表1に示した光重合条件で、光重合のみの重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
比較例2
紫外線重合開始剤として波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)未満のものを用いて重合を行った。表1に示した紫外線重合開始剤を用いて、光重合条件を表1に示した光重合条件としたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
比較例3
熱重合のみで重合を行った。表1に示した熱重合条件で、熱重合のみで重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
実施例10〜12
フォトクロミック化合物としてフォトクロミック化合物の混合物を用いた。表1に示したフォトクロミック化合物、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤を用いて、表1に示した重合条件で重合したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
比較例4〜6
光重合のみで重合を行った。表1に示した光重合条件で、光重合のみで重合したこと以外は、実施例10〜12と同様に行った。結果を表3に示した。
実施例13〜19
ラジカル重合性単量体の組成が、M3;70部、M4;20部、M5;10部で、表2に示したフォトクロミック化合物、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤を用いて、表1に示した条件で重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に実施し、結果を表3に示した。
比較例7〜10
光重合のみで重合した。紫外線重合開始剤を表2に示したもので行い、光を20分照射するだけで重合したこと以外は、実施例13と同様に実施し、結果を表3に示した。
表1において、同じラジカル重合性単量体、およびフォトクロミック化合物を使用した実施例1〜3と比較例3(熱重合のみ)を比べると、実施例1〜3では硬化体の製造にかかる全重合時間が大幅に短縮された。また、同様に表3において、実施例1〜3と比較例1(光重合のみ)、比較例2(紫外線重合開始剤のモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)未満)を比べると、実施例1〜3では得られた硬化体の硬度が高く、初期の着色がなく、かつ発色濃度が高い。さらに、得られた硬化体の繰り返し耐久性にも優れていた。
本発明は、光重合法と熱重合法を組合せて短時間で重合硬化して良好なフォトクロミック特性を示すフォトクロミック硬化体を製造する方法に関する。
背景技術
フォトクロミズムとは、ここ数年来注目されてきた現象であって、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所に置くと元の色に戻る可逆現象のことである。この性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、従来から色々な化合物が合成されてきたが、その構造には特別な共通性は認められない。
フォトクロミック性を示す硬化体は、フォトクロミック化合物をあらかじめ成形した重合体の表面に被覆させる方法、あるいはラジカル重合性単量体にフォトクロミック化合物を溶解させた後重合硬化させる方法(以下、練り込み法と略す)等によって得られる。
ところで、ラジカル重合性単量体を重合させる方法としては、一般に熱により重合を進行させる方法と、光により重合を進行させる方法が知られている。ところが、練り込み法において、光重合でラジカル重合性単量体を重合させようとすると、含有されるフォトクロミック化合物が紫外線重合開始剤の開裂に必要な紫外線を吸収すること、および紫外線の吸収によりフォトクロミック化合物自身が発色することによって光の透過が阻害されることなどから、ラジカル重合性単量体の好適な重合が望めない。
これらの問題を解決する手法として、特開平7−292011号公報には、フォトクロミック化合物の濃度を低くすることにより、重合を進行させる方法が開示されている。しかし、この方法では得られるフォトクロミック硬化体の発色濃度を高くすることができない。また、PCT出願公開公報WO96/37573には、特定の紫外線重合開始剤と特定発光スペクトルを有する活性エネルギー線を組合せる方法が開示されている。しかし、この方法で得られたフォトクロミック硬化体のフォトクロミズム耐久性はまだ十分とは言えない。
本発明者らの知見によれば、光重合法の採用により重合不十分な重合体中では、フォトクロミック特性の耐久性が著しく低下することが分かった。完全な重合体を得るためには、光の照射時間を長くする必要があるが、光の照射時間が長いと、光の照射によりフォトクロミック化合物の劣化が進行する。
こうしたことからフォトクロミック硬化体を得る場合において、ラジカル重合性単量体の重合方法としては、熱重合による方法が採用されるのが一般的である。しかしながら、この熱重合による方法は光重合に比べ重合に必要な時間が著しく長く、例えば重合時間が数十時間におよび、硬化体の生産性の面で満足できるものではなかった。
発明の開示
以上の背景から、本発明の目的は、ラジカル重合性単量体にフォトクロミック化合物を溶解させた後に重合硬化させる方法によって、発色濃度が高くしかも十分な硬度を持つフォトクロミック硬化体を短時間で製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、重合時にフォトクロミック化合物の劣化がないフォトクロミック硬化体を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、太陽光もしくは水銀灯の光のような紫外線を含む光で無色から着色状態に変化し、その変化が可逆的で優れた調光性および繰り返し耐久性を有するフォトクロミック硬化体を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、光学歪みが少なく、メガネレンズとして好適に使用し得るフォトクロミック硬化体を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、(A)ラジカル重合性単量体、(B)紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤、(C)熱重合開始剤および(D)フォトクロミック化合物を含有してなる重合性組成物に、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有する活性エネルギー線を照射して光重合を行った後、さらに加熱して熱重合を行うことを特徴とするフォトクロミック硬化体の製造方法によって達成することができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明のフォトクロミック硬化体の製造方法に用いるラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性基を有する単量体が何ら制限なく使用できる。ラジカル重合性基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基およびビニル基などが挙げられる。
本発明において好適に使用できる代表的なラジカル重合性単量体としては、次のような化合物を例示することができる。
下記式(1)
[ここで、2つのR1は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、Aは置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいオキシアルキレン基または、下記式(1)−1
(ここで、R2は水素原子またはメチル基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0〜5の整数であり、aはハロゲン原子の置換数を示す0〜4の整数である。)で表される基であり、そしてnは1〜20の整数である。ただし、nが2〜20のとき、複数のAは同一でも異なっていてもよい。]
で示されるジアクリレート化合物またはジメタクリレート化合物;
下記式(2)
(ここで、R3およびR6は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に置換されていてもよいアルキレン基または下記式(2)−1
で示される基でありそしてgおよびhは、それぞれ独立に、0〜20の数である。)
で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物;
下記式(3)
(ここで、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立に、同種または異種のハロゲン原子であり、Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子であり、j、kおよびlは、それぞれ独立に、0または1である。ただし、k=0のときj=0であり、またl=0のときk=j=0であり、j=k=l=1のときY1、Y2、およびY3が同時に硫黄原子となることはないものとする。)
で示されるビニルベンジル化合物;
下記式(4)
(ここで、R12、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基であり、R15は、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜25のアルキル基)、アルコキシアルキル基、アリール基、アシル基、末端にエポキシ基を有するアルキル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ハロアルキル基、またはオレイル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、tは1〜70の整数であり、t′は0〜70の整数である。ただし、R12が水素原子でありかつR15がメタクリロイル基およびアクリロイル基以外の基または水素原子である場合は、tは4〜70の整数であり、R12がアルキル基でありかつR15がメタクリロイル基である場合は、tは7〜70の整数である。)
で示される長鎖オキシアルキレン化合物を例示することができる。
本発明におけるラジカル重合性単量体としては、上記に例示した各化合物の他、不飽和カルボン酸化合物、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物、フマル酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
本発明において好適に使用できるラジカル重合性単量体を具体的に示すと、次の通りである。
上記式(1)で示されるジアクリレート化合物またはジメタクリレート化合物としては、例えばジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサメチレンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサメチレンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
上記式(2)で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレートおよびビスフェノールA−モノグリシジルエーテルメタクリレートおよび平均分子量538のグリシジルポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
上記式(3)で示されるビニルベンジル化合物としては、例えばビス−4−ビニルベンジルエーテル、ビス−4−ビニルベンジルスルフィド、1,2−(p−ビニルベンジルオキシ)エタン、1,2−(p−ビニルベンジルチオ)エタンおよびビス−(p−ビニルベンジルオキシエチル)スルフィド等が挙げられる。
上記式(4)で示される長鎖オキシアルキレン化合物としては、例えば平均分子量526のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量496のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量622のポリプロピレングリコールメタアクリレートおよび平均分子量620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸およびフマル酸等;アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物としては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、トリブロモフェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリフロロメチルメタクリレートおよびウレタンアクリレート等;フマル酸エステル化合物としては、例えばフマル酸モノメチル、フマル酸ジエチルおよびフマル酸ジフェニル等;芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ブロモスチレンおよびジビニルベンゼン等を挙げることができる。
これらのラジカル重合性単量体は1種または2種以上を混合して用いてもよい。
上記ラジカル重合性単量体の中でも、後述のフォトクロミック化合物とラジカル重合性単量体との混合物を重合して得られる硬化体のフォトクロミック性の耐久性および発色−消色等の物性を勘案すれば、前記式(1)で示されるジアクリレート化合物またはジメタクリレート化合物、式(2)で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物、および式(4)で示される長鎖オキシアルキレン化合物を含むラジカル重合性単量体混合物を用いるが、または、前記式(1)で示されるジアクリレート化合物とジメタクリレート化合物を併用し、さらに式(2)で示されるエポキシ基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物を含むラジカル重合性単量体混合物を用いることが好ましい。
本発明においては、紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤を用いることが必須である。波長400nm以上の可視光領域に主吸収がある紫外線重合開始剤を用いると、それ自体が着色しているため、フォトクロミック化合物がフォトクロミック性を示して発色する前から硬化体が着色していることになり好ましくない。さらに、紫外領域に主吸収があっても、波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)未満の場合、後述する波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとする活性エネルギー線の照射では、開裂が生じにくく短時間に硬化体を得ることが困難になる。すなわち、一般にフォトクロミック化合物は波長380nmから400nmの紫外線を吸収して発色するため、紫外線重合開始剤が開裂するための活性エネルギー線をフォトクロミック化合物が吸収してしまい紫外線重合開始剤の開裂が生じにくくなり、短時間で重合を完結することができない。そして重合を完結するために長時間活性エネルギー線を照射すると、フォトクロミック化合物の劣化が生じ、好ましくない。
紫外線重合開始剤は大別して、自己開裂型と水素引き抜き型とに分けることができる。後者の紫外線重合開始剤は一般に光増感剤と併用される。この光増感剤としてはアミン化合物が一般に使用されるが、これらアミン化合物を用いた場合、重合体の初期着色が大きくなる。そのため、紫外線重合開始剤としては自己開裂型のものを用いることが好ましい。自己開裂型の紫外線重合開始剤の中でも、得られる硬化体の無色透明性の点から、α−アミノアルキルフェノン系紫外線重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤およびビスアシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤が好ましく採用される。
上記好適な紫外線重合開始剤としては特に制限はないが、代表的なものとして、下記式(5)
(ここで、2つのR7は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。)で示される化合物、下記式(6)
(ここで、複数のR8は、それぞれ独立に、メチル基、メトキシ基または塩素原子であり、eは2または3でありそしてR9はフェニル基またはメトキシ基である。)
で示される化合物および下記式(7)
(ここで、複数のR10は、それぞれ独立に、メチル基、メトキシ基または塩素原子であり、fは2または3でありそしてR11は2,4,4−トリメチルペンチル基またはフェニル基である。)
で示される化合物が挙げられる。
本発明において、紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤として好適に使用し得る紫外線重合開始剤を具体的に例示すると、次の通りである。
α−アミノアルキルフェノン系紫外線重合開始剤;
▲1▼2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、
アシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤;
▲1▼2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
▲2▼2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
▲3▼2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
▲4▼2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
ビスアシルフォスフィンオキシド系紫外線重合開始剤;
▲1▼ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲2▼ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲3▼ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲4▼ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、
▲5▼ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド。
なお、これらの紫外線重合開始剤は単独で、または2種以上を一緒に使用することができる。
紫外線重合開始剤の添加量は、重合条件や開始剤の種類およびラジカル重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概には限定できないが、好ましくは、ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜1重量部の範囲である。この添加量範囲においては、十分な硬度の硬化体が得られる。得られる硬化体は内部均一性に優れ、色相も良好である。
本発明で用いられる熱重合開始剤は特に限定されず、公知のものが使用できる。好ましくは、開始剤の半減期(ある一定温度で、開始剤が分解してその活性酸素量が1/2になるまでに要する時間)が10時間となるような温度が40℃を越えるもの、より好ましくは50℃を越えるものが好適である。半減期が10時間となるような温度が40℃を越える場合、光重合中に発生する重合熱によっては熱重合開始剤が分解し難いため、光重合と熱重合とが同時に進行することなく、フォトクロミック特性の耐久性が良好であり、かつ、光学歪みの小さい硬化体を得ることができる。熱重合開始剤の半減期が10時間となるような温度の上限は特に制限されないが、市販の熱重合開始剤では一般に100℃以下である。
本発明において好適に使用できる熱重合開始剤を具体的に例示すると、次の通りである。
ジアシルパーオキサイド;
▲1▼ベンゾイルパーオキサイド、
▲2▼オクタノイルパーオキサイド、
▲3▼ラウロイルパーオキサイド、
▲4▼アセチルパーオキサイド、
パーオキシエステル;
▲1▼t−ブチルパーオキシイソブチレート、
▲2▼t−ブチルパーオキシベンゾエート、
▲3▼1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、
その他;
▲1▼アゾビスイソブチロニトリル、
▲2▼2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)。
なお、これらの熱重合開始剤は単独でまたは2種以上を一緒に使用することができる。
熱重合開始剤の添加量は、重合条件や開始剤の種類およびラジカル重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概には限定できないが、好ましくは、ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
本発明において、フォトクロミック化合物としては、その発色時の吸収が可視光域にあるものであれば何ら制限なく使用できる。可視域の吸収を具体的に示すと、波長400〜480nm付近に吸収スペクトルを有するフォトクロミック化合物は黄色からオレンジ色の発色色調を示し、480〜550nm付近に吸収スペクトルを有するフォトクロミック化合物は赤色から紫色の発色色調を示し、550〜600nm付近に吸収スペクトルを有するフォトクロミック化合物は紫から青色の発色色調を示す。これらフォトクロミック化合物は単独で用いてもよいが2種以上組合せることによって、グレー、ブラウンおよびアンバーといった中間色の発色色調を得ることもできる。
本発明において好適に使用されるフォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギドまたはフルギミド化合物、およびスピロオキサジン化合物を挙げることができる。
クロメン化合物としては、クロメン骨格を有し、フォトクロミック性を有する公知の化合物を何ら制限なく使用することができる。具体的に例示すると下記の通りである。
▲1▼5−イソプロピル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン、
▲2▼5−t−ブチル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン、
▲3▼スピロ(ノルボルナン−2,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
▲4▼スピロ(ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−9,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
▲5▼7′−メトキシスピロ(ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−9,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
▲6▼3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6−モルホリノ−3H−ベンゾ(f)クロメン、
▲7▼2,2−ジメチル−7−オクトキシ(2H)ベンゾ(f)クロメン。
フルギド化合物としては、フルギド骨格を有し、フォトクロミック性を有する公知の化合物が何ら制限なく採用できる。具体的に例示すると下記の通りである。
▲1▼N−メチル−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲2▼N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲3▼N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチル−スピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲4▼N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲5▼N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲6▼N−シアノ−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
▲7▼N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)スピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン。
スピロオキサジン化合物は、スピロオキサジン骨格を有し、フォトクロミック性を有する公知の化合物が何ら制限なく採用できる。具体的に例示すると下記の通りである。
▲1▼1′,5′−ジメチル−4′−フルオロ−6″−モルホリノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2H),3″−(3H)ナフト(3,2a)(1,4)オキサジン)、
▲2▼6′−フルオロ−1′−メチル−5″−ニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲3▼6′−フルオロ−1′−イソブチル−5″−ニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲4▼4′,5′−ジメチル−1′−イソブチルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲5▼1′−イソブチル−5″−アセトニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲6▼6′−フルオロ−1′−メトキシカルボニルエチル−8″−メトキシ−6″−ピペリジノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)、
▲7▼4′−フルオロ−1′−イソブチル−5′−メチル−6″−モルホリノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2H),3″−(3H)ナフト(3,2a)(1,4)オキサジン)。
フォトクロミック化合物の添加量は、発色時の濃度に応じて適宜選択されるが、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、例えば0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲である。この範囲においては、短時間で重合が完結しやすく、得られる硬化体にはフォトクロミック化合物の十分な発色濃度が得られ、またフォトクロミック特性の耐久性も良好である。
本発明に用いる重合性組成物には、公知の離型剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤や添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
本発明において照射する活性エネルギー線は、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有することが必要である。活性エネルギー線の主発光スペクトルが400nm以下である場合、一般にフォトクロミック化合物は380nmから400nmの紫外線を吸収して発色するため、発色後のフォトクロミック化合物が紫外線重合開始剤が開裂するための活性エネルギー線を吸収して紫外線重合開始剤の開裂が生じにくくなり、短時間で重合を完結することができないために好ましくない。そして重合を完結させるために長時間活性エネルギー線を照射すると、フォトクロミック化合物の劣化を生じ、好ましくない。
本発明の活性エネルギー線の照射において使用される光源としては、400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有する活性エネルギー線、言い換えれば可視光域スペクトルを主スペクトルとして発するものであればよい。主発光スペクトルが波長400nm以下である活性エネルギー線を発する光源を用いる場合、紫外線カットフィルター等を使用して、波長400nm以下の活性エネルギー線を遮断あるいは減少させることにより、フォトクロミック化合物の発色を抑制することができ、波長400nm以下の活性エネルギー線を含む光源であっても使用可能とすることができる。しかし、実際の硬化操作では光源の波長400nm未満のスペクトルを完全にカットする必要はなく、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとする限り、活性エネルギー線は一部波長400nm未満の紫外域の活性エネルギー線を含んでいてもよい。この場合、紫外域の活性エネルギー線によってフォトクロミック化合物が弱く発色し活性エネルギー線を一部吸収するものの、400nm以上の活性エネルギー線が実質的に透過することができ、紫外線重合開始剤を開裂できるので、重合硬化が進行する。
本発明において好適に使用できる光源を具体的に例示すると、メタルハライドランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ等を挙げることができる。また、光源が可視光線を発するのと同時に紫外線を発するメタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等のランプを使用する場合、紫外線カットフィルター等を使用して、紫外域の活性エネルギー線を遮断あるいは減少させる必要がある。
照射時間は、光源の波長や強度、硬化体の形状や構成成分によって異なるため、予備的な実験等によってあらかじめ決定しておくのが望ましい。一般には、0.5〜100分の範囲で照射を行うことにより、重合に要する時間を熱重合単独で行う場合に比べて著しく短縮することができる。
活性エネルギー線の照射を行う場合は、一般に重合熱により硬化体の温度が上昇する。この場合、重合温度が極度に上昇すると、重合熱により熱重合開始剤の開裂が生じ、光重合と熱重合とが同時に生じることになる。光重合と熱重合とが同時に生じた場合、重合して得られるフォトクロミック硬化体のフォトクロミック特性の耐久性が低下し、また、光学的な歪みが大きくなるために好ましくない。従って、光重合中は熱重合の生成を抑制するために、光重合中の重合性組成物の硬化体の温度が、熱重合開始剤の半減期温度以下である方が、光学ひずみが少なく、光学特性に優れた硬化体を得ることができる。このため、通常は、光重合中の硬化体の温度は50℃を越えないように、光重合の条件を適当に設定することが好ましい。このための方法としては、例えば、活性エネルギー線の強度を1〜2kWから選択し、活性エネルギー線と硬化体の距離を10〜100cmから選択し、あるいは、必要に応じて硬化体を冷却する方法が好ましい。
活性エネルギー線の照射を行う場合は、鋳型の少なくとも光照射する面は透明であることが必要であり、好ましくはこの部分にはガラスが使用される。特に石英ガラス等の紫外線を透過しやすい材質が好ましいが、透明であれば材質には限定されない。また、成型時に外部から圧力をかけながら重合しても何ら差し支えない。
活性エネルギー線の照射による光重合に続いて、加熱を行って熱重合を行う。本発明の製造方法は活性エネルギー線の照射による光重合でまず予備重合を行い、加熱による熱重合で重合を完結させる。光重合で短時間予備重合を行うことにより、全重合時間が短縮される。順序を逆にし、熱重合で予備重合を行うと短時間では満足な硬化体が得られず、多くの時間を要する。
活性エネルギー線の照射に続いて行われる加熱の条件のうち、特に温度は得られるフォトクロミック樹脂の性状に影響を与える。この温度条件は、熱重合開始剤の種類と量やラジカル重合性単量体の種類によって影響を受けるので一概に限定できないが、活性エネルギー線の照射終了時の発熱温度よりも高温に加熱し、高温下に熱重合を終了させる重合法を行うのが好適である。重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、あらかじめこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適である。
一般には、光重合終了直後の温度から1〜180分間で90〜120℃までの任意の温度に昇温し、この温度を10〜300分間維持して重合を完結する方法を好ましく採用することができる。
本発明の製造方法には、公知の注型重合方法を採用することができる。代表的な方法を例示すると、エラストマーガスケットまたはスペーサーで保持されているモールド間に重合性組成物を注入し、前記活性エネルギー線を照射して硬化させ、さらに引き続き加熱し熱重合によって硬化させた後取り出す。
本発明の方法で得られるフォトクロミック硬化体は、その用途に応じてさらに以下のような処理を施すこともできる。すなわち、分散染料などを用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等のゾル成分を主成分とするハードコート剤や、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子の薄膜の塗布による反射防止処理、帯電防止処理等の加工および2次処理を施すことも可能である。
光重合法および熱重合法を組合せた本発明の製造方法の採用により、重合時のフォトクロミック化合物の劣化がなく、発色濃度が高くしかも十分な硬度を持つフォトクロミック硬化体を短時間で得ることができる。得られた硬化体は太陽光もしくは水銀灯の光のような紫外線を含む光で無色から着色状態に変化し、その変化が可逆的で優れた調光性、および繰り返し耐久性を有している。従って、得られる硬化体は、フォトクロミック性を有する有機硝子として有用であり、例えばフォトクロミックレンズの用途に好適に使用することができる。
実施例
以下、実施例および比較例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「部」は「重量部」である。
1.ラジカル重合性単量体
以下の実施例で使用したラジカル重合性単量体は、下記の通りである。
M1:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、M2:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、
M3:トリエチレングリコールジメタクリレート、
M4:テトラエチレングリコールジメタクリレート、
M5:グリシジルメタクリレート、
M6:イソボルニルアクリレート、
M7:α−メチルスチレン、
M8:α−メチルスチレンダイマー。
2.フォトクロミック化合物
フォトクロミック化合物は下記の化合物である。
2−1.クロメン化合物
C1:スピロ(ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−9,2′−(2H)ベンゾ(h)クロメン)、
C2:3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6−モルホリノ−3H−ベンゾ(f)クロメン、
C3:5−イソプロピル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン
2−2.フルギド化合物
F1:N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
F2:N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)スピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン、
2−3.スピロオキサジン化合物
S1:1′,5′−ジメチル−4′−フルオロ−6″−モルホリノジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2H),3″−(3H)ナフト(3,2a)(1,4)オキサジン)、
S2:6′−フルオロ−1′−メチル−5″−ニトリルジスピロ(シクロヘキサン−1,3′−(3H)インドール−2′−(2′H)3″−(3H)ナフト(3,2−a)(1,4)オキサジン)。
3.紫外線重合開始剤
紫外線重合開始剤は下記の通りである。化合物名の後の( )内の数字は、400nmにおけるモル吸光係数(リットル/(mol・cm))を示す。
P1:CGI−1700(商品名:日本チバガイギー社製)
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド(550)と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(10以下)の1:3の混合物、
P2:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(250)、
P3:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(200)、
P4:メチルベンゾイルホルメート(10以下)、
P5:Irgacure819(商品名:日本チバガイギー社製)
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(604)。
4.熱重合開始剤
熱重合開始剤は下記の通りである。化合物名の後の( )内の数字は、半減期が10時間のときの温度(℃)を示す。
T1:t−ブチルパーオキシネオデカネート(46)、
T2:t−ブチルパーオキシイソブチレート(77)、
T3:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(65)、
T4:ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(41)、
T5:ベンゾイルパーオキサイド(74)、
T6:オクタノイルパーオキサイド(62)、
T7:2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(51)。
実施例1
前述のラジカル重合性単量体、M1;38部、M2;38部、M5;5部、M6;15部、M7;3部、M8;1部、およびフォトクロミック化合物F1;0.05部、熱重合開始剤T2;0.5部、および紫外線重合開始剤P1;0.5部を添加し十分に混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、メタルハライドランプと鋳型の間に、実質的に波長400nm以上の活性エネルギー線を照射するため、紫外線カットフィルターとして、380nm:99%、390nm:98%、400nm:50%、410nm:15%の活性エネルギー線を遮断することが可能なフィルターを装着し、出力120W/cmのメタルハライドランプを用いて波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとする活性エネルギー線を2分間照射した。なお照射中の温度は、50℃に保持した。その後、空気炉にて60℃から110℃まで30分かけて徐々に温度を上げていき、110℃で保持し、全重合時間が2時間になるように重合した。重合終了後、硬化体を鋳型のガラス型から取り外した。以上の重合条件を表1に示した。
硬度
得られた硬化体(厚み2mm)の硬度は、株式会社アカシ製のロックウェル硬さ試験機にてロックウェル硬度(HL)を測定し、評価した。
光学ひずみ
得られた硬化体の光学ひずみを、直交ニコル下で観察した。光学ひずみのないものは○、光学ひずみの見られたものは×で表した。
発色濃度および重合時の劣化
得られた硬化体の発色濃度は、硬化体に浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して25℃±1℃、硬化体表面でのビーム強度365nm=17mW/cm2で15秒間照射して発色させ、その時のフォトクロミック化合物の発色に基づく最大吸収波長(λmax(nm))における吸光度(ABS.)で評価した。重合時のフォトクロミック化合物の劣化は、硬化体の初期着色(発色させる前の最大吸収波長(λmax(nm))における吸光度(ABS.))の有無で評価した。
繰り返し耐久性
スガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により、硬化体を20時間促進劣化させた後の上記測定法による吸光度の残存率(%)
残存率(%)=(劣化させた後の最大吸収波長における発色時の吸光度)÷
(劣化させる前の最大吸収波長における発色時の吸光度)×100
で評価した。
以上の結果を表3に示した。
実施例2〜9
表1に示したフォトクロミック化合物、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤を用いて、表1に示した条件で重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表3に示した。
比較例1
光重合のみで重合を行った。表1に示した紫外線重合開始剤を用いて、表1に示した光重合条件で、光重合のみの重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
比較例2
紫外線重合開始剤として波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)未満のものを用いて重合を行った。表1に示した紫外線重合開始剤を用いて、光重合条件を表1に示した光重合条件としたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
比較例3
熱重合のみで重合を行った。表1に示した熱重合条件で、熱重合のみで重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
実施例10〜12
フォトクロミック化合物としてフォトクロミック化合物の混合物を用いた。表1に示したフォトクロミック化合物、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤を用いて、表1に示した重合条件で重合したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
比較例4〜6
光重合のみで重合を行った。表1に示した光重合条件で、光重合のみで重合したこと以外は、実施例10〜12と同様に行った。結果を表3に示した。
実施例13〜19
ラジカル重合性単量体の組成が、M3;70部、M4;20部、M5;10部で、表2に示したフォトクロミック化合物、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤を用いて、表1に示した条件で重合を行ったこと以外は、実施例1と同様に実施し、結果を表3に示した。
比較例7〜10
光重合のみで重合した。紫外線重合開始剤を表2に示したもので行い、光を20分照射するだけで重合したこと以外は、実施例13と同様に実施し、結果を表3に示した。
表1において、同じラジカル重合性単量体、およびフォトクロミック化合物を使用した実施例1〜3と比較例3(熱重合のみ)を比べると、実施例1〜3では硬化体の製造にかかる全重合時間が大幅に短縮された。また、同様に表3において、実施例1〜3と比較例1(光重合のみ)、比較例2(紫外線重合開始剤のモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)未満)を比べると、実施例1〜3では得られた硬化体の硬度が高く、初期の着色がなく、かつ発色濃度が高い。さらに、得られた硬化体の繰り返し耐久性にも優れていた。
Claims (7)
- (A)ラジカル重合性単量体、(B)紫外領域に主吸収がありかつ波長400nmの光に対するモル吸光係数が150リットル/(mol・cm)以上である紫外線重合開始剤、(C)熱重合開始剤、および(D)フォトクロミック化合物を含有してなる重合性組成物に、波長400nm以上の発光スペクトルを主スペクトルとして有する活性エネルギー線を照射して光重合を行った後、さらに加熱して熱重合を行うことを特徴とするフォトクロミック硬化体の製造方法。
- 熱重合開始剤が、半減期が10時間となるような温度が40℃を越えるものである請求項1に記載の方法。
- 重合性組成物の光重合を、熱重合開始剤の半減期が10時間となるような温度と同温度以下で行う請求項1に記載の方法。
- 重合性組成物の光重合を50℃以下の温度で行う請求項1に記載の方法。
- 重合性組成物の光重合を0.5〜100分間行う請求項1に記載の方法。
- 光重合終了時の硬化体温度よりも高温で熱重合を開始し、さらに温度を上昇させて熱重合を終了させる請求項1に記載の方法。
- 光重合終了後の硬化体を90〜120℃の温度に昇温し、この温度を10〜300分間維持して熱重合を終了させる請求項1に記載の方法。
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