JPWO2003062899A1 - 光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置 - Google Patents
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Abstract
ミラー素子(1)、及び薄膜圧電体(3)、電極(4a,4b,4c)、弾性体5よりなる圧電素子(2)が基板(7)上に構成され、電極に電圧を印加することにより薄膜圧電体がたわみ変形し、ミラー素子を駆動する。圧電素子はその長手方向(8)に平行に複数配置され、この長手方向と直交した方向にトーションバネ(6)を設け、ミラー素子を基板に連結して保持する。さらに、ミラー素子は圧電素子とはひずみ吸収部(10)で連結する。このような構成により、トーションバネを回転軸(9)としてミラー素子がこの回転軸まわりに傾斜される。
Description
技術分野
本発明は、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置に関し、特に、ミラー素子を駆動するアクチュエータを備えた光スイッチ及びそれを用いた情報伝送装置に関する。
背景技術
近年、光を用いた情報伝達装置は、波長分割多重などの伝送高速化技術の発達とともに、インターネットのブロードバンド化を実現し、高速大容量の情報通信を可能とするための基幹装置となっている。
さらに、光通信網を効率良く接続するため、光信号レベルでの交換機の機能や光アッテネータ機能を持つ各種の光スイッチが不可欠な装置となっている。
これまで、光通信網は特に基幹系を中心に発達してきたが、これから、さらに、地方都市、地域住宅地単位での、より家庭に近い末端においても益々この光スイッチは必要となってくる。
このように、光通信網で光スイッチをさらに広く普及させるには、−60dB程度の挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、従来に増して簡便な構成で安価に製造できる光スイッチが望まれる。
光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p165〜p170)」には、入力信号の光ファイバーを電磁駆動にて出力信号の光ファイバーに切り替える光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチでは、光ファイバー自体の比較的大きな質量を駆動する必要があり、切り替え時間の短縮に限界があると共に、電磁駆動のための大電流を要する、という欠点がある。
同じく、光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p238〜p242)」には、導波路の一部をオイルで満たし、このオイルを移動させたり、あるいは加熱によりバブルを発生させることにより、光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、反射界面の反射率を反射界面のオイルの有無により制御することに伴い、相対的に挿入損失が大きいという欠点がある。
さらに、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p233〜p237)」には、静電駆動型のミラーによって光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、静電駆動のため一般的に高電圧を要し、また、大きい駆動力を得るためにミクロン単位の静電ギャップが必要なため、その製造に高度の微細加工を要するという欠点がある。
なお、既報の光スイッチの従来技術文献には、本発明に係わる「薄膜圧電体によって圧電駆動する光スイッチ」は開示されていない。
前述したごとく、光スイッチをさらに広く普及させるには、挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、駆動電力も減少させることができ、かつ、簡便な構成で安価に製造できる光スイッチを実現することが重要な課題である。また、多数の光伝送路をコンパクトな構成で切り替えることも必要である。
そこで、特開2000−339725号公報では、図10に示すように、基板121上に、シリコン板の中央部に正多角形の微少ミラー122を配置し、そのミラー122の各辺に沿って片持ちばり123を配置し、その片持ちばり123の一端を固定すると共に他端をミラー122の辺の一端に取り付ける一方、片持ちばり123の表面又は内部に圧電部材を片持ちばり123の長手方向に形成させ、全ての圧電部材へ同一の電圧を印加することによって片持ちばり123の先端部が曲がるのを利用してミラー122を並進移動させるようにしたものが開示されている。なお、124は圧電物質である。
また、特開2001−033713号公報では、図11に示すように、光源から発生した光を光に対して基板101上で45度傾斜していて、その45度の方向並進移動するミラー106によって反射させ、そのミラー106の並進移動はミラー106を正方形の支持体104に載せ、その支持体104の各辺に片持ちばり103をその先端部で支持体104を支えるように配置し、片持ちばり103の表面に105圧電体を配置して、圧電体105への電圧の印加によって圧電体105を変位させ、ひいては片持ちばり103を変位させてミラー106を並進移動させるものが開示されている。
しかしながら、上記2件のいずれの公報でも、ミラー105,122の周囲の4個の片持ちばり103,123にそれぞれたわみ力が発生し、これらの4個のたわみ力のバランスを取ってミラー105,122を並進移動させることが困難であり、並進移動制御が不安定なものとなりやすく、また、4個の片持ちばり103,123が点対称に配置されているため4個のたわみ力のバランスが崩れるとすぐに回転力が発生してしまう可能性もある。これを極力防止するためには、ミラー106,122の中心から数μの範囲内に光を入射させる必要があり、ミラー106,122の実質的に使用可能な面積が微小であるといった課題もあった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替え可能かつ低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで、製造の容易さを含めて、実用レベルの具体的構成を備えて、切り替え制御が安定して行なえ、かつ、実質的に使用可能な面積が大きい、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を提供することにある。
発明の開示
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを提供する。
本発明の第2態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第3態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネにより上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第4態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に上記長手方向沿いのひずみ吸収部を配置する第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第5態様によれば、上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第6態様によれば、上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第7態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第8態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部を構成する第7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第9態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第10態様によれば、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置を有する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第11態様によれば、上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第12態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法を提供する。
本発明の第13態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法を提供する。
本発明の第14態様によれば、上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である第13の態様に記載の光スイッチの製造方法を提供する。
本発明の第15態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置を提供する。
本発明の第16態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第17態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第18態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される第16又は17の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
(第1実施形態)
図1Aは本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図、図1Bは本発明の第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図を示す。また、図2Aは同じく本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図を示す。
基板7上には、ミラー素子1と、ミラー素子1の両側に回転軸9に対して線対称に配置された薄膜圧電体3と、各薄膜圧電体3の上面のミラー素子側に配置された第1上部電極4aと、各薄膜圧電体3の上面の反ミラー素子側に第1上部電極4aとは離れて配置された第2上部電極4bと、各薄膜圧電体3の下面に配置された下部電極4cと、下部電極4cの下面でかつ基板7上に配置された弾性体5とにより、圧電素子2がミラー素子1の両側に線対称に構成され、回路のスイッチ91を閉じることにより電源90からの電圧を第1及び第2上部電極4a,4bと下部電極4cとに印加することにより薄膜圧電体3がたわみ変形し、ミラー素子1を回転軸9周りに回転駆動する。圧電素子2は、隙間を空けて、図1Aでは基板7言い換えれば圧電素子2の長手方向8に平行に一対配置され、この長手方向8と直交した方向にトーションバネ6を設け、トーションバネ6によりミラー素子1を基板7に連結して保持する。さらに、ミラー素子1は、各圧電素子2とはひずみ吸収部10で連結する。
なお、圧電体3上に形成された第1上部電極4aは、第2上部電極4b側から見て、ミラー素子1に向けて圧電体3の変曲点近傍までの位置に配置することが好ましい。すなわち、変曲点を越えて電極を配置しても、たわみ動作が不安定になるなど、悪影響が生じる可能性があるためである。特に、従来の2件の公報では、変曲点を越えて電極を配置しているため、たわみ動作が不安定になりやすく、精度の良い駆動制御が困難なものとなっていた。
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。この理由は、仮に、従来の2件の公報のように、薄膜圧電体3上に上部電極として1つの電極で構成すると、ミラー素子側の部分と反ミラー素子側の部分とではたわみ方向が逆になる変曲点の位置を制御することができなくなり、たわみ動作が不安定なものとなってしまう。これに対して、第1上部電極4aと第2上部電極4bとに分割し、かつ、電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じさせることができて、変曲点の位置を精度良く制御することができ、たわみ動作を安定なものとすることができるからである。この結果、傾斜方向が安定するため、高速、高精度光切り替え可能となり、応答性が良いものとなる。
また、ミラー素子1の平面度は、ミラー素子1に入射する光の波長λの(1/100)λ〜(1/1000)λとするのが好ましい。
このような構成により、トーションバネ6を回転軸9とし、圧電素子2により駆動され、ミラー素子1をこの回転軸9まわりに傾斜させるアクチュエータとなる。トーションバネ6によりミラー素子1の回転軸9を固定することにより、高精度で外乱に対して安定なミラー素子1の駆動ができる。
図2Aの断面図において、この圧電素子2の駆動動作原理を述べる。
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。
薄膜圧電体3を挟んで対向した電極間(電極4a−電極4c間、電極4b−電極4c間)に電圧を印加することにより、薄膜圧電体3の面内に圧電定数d31に応じたひずみが発生し、一方、弾性体5はこの電圧印加によりひずみを発生しないため、圧電体3、電極4a,4b,4c及び弾性体5よりなる圧電素子2にたわみ変形が生じる。
電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じる。この結果、ミラー素子1を保持するトーションバネ6を回転軸9としてミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
図2B〜図2Cは、電極4a及び4bへ逆層の電圧を印加する方法の説明図である。図2Bは、上部電極4a−下部電極4c間に、交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。図2Cは、上部電極4b−下部電極4c間に、これとは逆位相の交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。この結果、上部電極4aと上部電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
構造上、圧電素子2の固定端とトーションバネ6との距離は一定であるため、圧電素子2のこのようなたわみ変形に伴い、この圧電素子2の長手方向のひずみあるいは変位を拘束する傾向を生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることに支障を生じる。この拘束を緩和する手段として、圧電素子2の長手方向の剛性を弱めた構造のひずみ吸収部10を、圧電素子2とミラー素子1の間に設ける。このことにより、上記の多分割電極構成の効果と併せて、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
なお、図1Aの第1実施形態では圧電素子2はその長手方向8に平行に2分割した構成としたが、これは圧電素子2のひずみに伴う湾曲が、その長手方向8だけでなく、その幅方向にも生じるため、この幅方向の湾曲が長手方向のたわみ変形を阻害することを避けるため、このような構成としている。圧電素子2の長手方向8の長さが幅方向の寸法より十分大きい場合には、図1Bに示すように、必ずしも2分割しなくてもよい。
すなわち、図1Bに示すように、圧電素子2は、その長手方向8沿いに1個配置されたものであってもよい。図1Bは、図1Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図1Aの場合に比べて、図1Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。図1C〜図1Eは、ひずみ吸収部10の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図1Cは図1Aに示したひずみ吸収部10と同形状のもの、すなわち、ひずみ吸収部10は英文字「H」の両側をそれぞれ大略C字状及び大略逆C字状に屈曲したものである。これに対して、図1Dは、ひずみ吸収部10Dの圧電素子2へはひずみ吸収部10の中央部のみで接続するように構成したものである。図1Dの場合、ひずみ吸収部10Dの長手方向8の方向の剛性が図1Cに比べて大きくなるため、ミラー素子1の駆動角度は小さくなるが、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れる。さらに、図1Eは、ひずみ吸収部10の別の構成例を示し、ひずみ吸収部10Eをミラー素子1と圧電素子2の異なる端部に互いに連結するように構成したものである。例えば、図1Eにおいて、左側の圧電素子2の下端部とミラー素子1の上側の端部とを両端フック形状部で接続するとともに、ミラー素子1の下側の端部と右側の圧電素子2の上端部とを両端フック形状部で接続するように構成している。このような構造では、ひずみ吸収部10Eの細い梁部を、圧電素子2の長手方向8と直交する方向に長くとれるので、比較的小さなスペースで長手方向8の方向の剛性を小さくすることができ、ミラー素子1の駆動角度を大きくすることができる。
電極4a,4b,4cへの配線構造については図示していないが、2分割した上部電極の可動部に近い(すなわち、ミラー素子1に近い)第1上部電極4aへの配線は、このひずみ吸収部10,10D,10E及びトーションバネ6を通じて基板7の周辺に引き出す構造を採ることができる。
図3は、本発明の第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図を示す。光伝送路11aを出射した光ビーム12aは、ミラー素子1のミラー面1aに入射してミラー面1aで反射される。圧電素子2により駆動されて回転傾斜したミラー面1aが、図3のごとくの傾斜した位置にあるときには、この光ビーム12aは矢印12bの方向にミラー面1aで反射されて光伝送路11bに入射される。ミラー面が逆の方向に回転傾斜した位置では光伝送路11cに入射される。このように、圧電素子2によりミラー素子1の回転角を駆動制御することにより、入力光を、異なった光伝送路に出力することができる。光伝送路が屈折率傾斜型の光ファイバーの場合、入射光ビームは、ある程度コリメートされた状態で出力用光ファイバーに入射される。光スイッチの構成上、この到達距離を長くする必要がある場合には、図示していないが、必要に応じて光ファイバーの入出射端にコリメータレンズを設ける。
図4A,図4Bは、本発明の第1実施形態における光スイッチの周波数応答特性の一例を表すグラフを示す。図4A,図4Bは、図1Aに示した構造の光アクチュエータについて解析計算した光スイッチの周波数特性を示すものである。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10−12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ2mm、幅0.8mm、厚み3μmとし、電極長は可動端側4aの長さを0.6mm、固定端側4bの長さを1.2mmとした。弾性体5としてアルミニウム薄板を用い、その厚みを6μm、トーションバネ6及びひずみ吸収部10も弾性体5と連続した構造とし、その厚みを6μm、幅を50mμとした。基板7にはシリコン基板を用い、ミラー素子2をこの基板7の一部をエッチング加工により残した構造とし、その寸法を0.5mm角、厚み0.2mmとし、全体寸法は長さ6mm、幅3mm、厚み0.2mmとした。
電極の剛性は他の部材に比べて十分小さいので、解析計算上は計算モデルから除き、有限要素法により計算したところ、±15Vの電圧印加により、ミラー素子1を回転軸まわりに±2.9度傾斜できることがわかった。本実施形態のアクチュエータは、圧電体として製膜した数μm膜厚の薄膜圧電体を用いているため、印加電圧が低いにもかかわらず、圧電体内に生じる電界強度を大きくとることができ、低電圧で効率良く変位を発生させることができる。
なお、可動端側の電極4aの長さLaと固定端側の電極4bの長さLbの比は前述した計算例の場合の1:2程度の時に最も効率良くミラー素子1を傾斜できることが、このシミュレーション計算により明らかとなった。少なくとも可動端側4aの電極の長さLaより固定端側の電極4bの長さLbを大きくとることがよい。同様に、ひずみ吸収部10がない構造では、計算されるミラー素子1の角度が大幅に小さいことから、このようなひずみ吸収部10はミラー素子1を効率良く傾斜させる効果の大きいことが裏付けられた。
図4の上のグラフは、横軸を駆動周波数、縦軸をミラー素子の回転軸まわりの傾斜に伴うミラー素子端での変位を表したもの、下のグラフは同じく横軸を駆動周波数、縦軸に駆動周波に対する上記ミラー変位の位相を表したものである。主共振周波数は2.7KHzであり、これより低い周波数では位相ずれなく応答しており、このことから、この光スイッチの切り替え時間は少なくとも1msec以下の高速動作することがわかった。
次に、上記第1実施形態の光スイッチの製造方法について説明する。
第1実施形態の光スイッチの製造方法として、大きく2つの方法をとることができる。第1の方法は、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写する製造法である。図8A〜図8Cにこの製造プロセスの工程をで説明した断面図を示す。図8Aの基板30上に電極4aを蒸着、パターニングした後、基板30の電極4a上に、圧電薄膜3を同じく蒸着、パターニングする。この製造法では、薄膜圧電体の圧電定数等の材料特性に有利な基板材料、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の製膜をスパッタ蒸着により行う場合、PZTのエピタキシャル成長にMgO基板を用いかつ下地層としてPtを用いると、優れた圧電特性を持つPZT膜を得ることができる。この場合、Pt下地層はそのまま電極4aとなる。この薄膜圧電体を弾性体5として、例えばステンレスの薄板に接着性の転写層31を介して転写し(図8B)、その後、この製膜基板を除去することで、上記構成の光スイッチを形成することができる(図8C)。
第2の方法は、薄膜圧電体を基板に直接製膜する製造法である。この場合、薄膜圧電体の良好な圧電特性を得るため、その下地の構成材料の選択に制約を受けるが、転写プロセスが不要な分、簡便な製造法となる。例えば、第1実施形態の図2Aにおける断面図では、薄膜圧電体3が電極4cを介して弾性体5の上に構成されているが、この弾性体として上記計算解析で用いたアルミニウム上に特性の優れた圧電薄膜を形成することは、一般に難しい。直接製膜法をとる場合には、例えば基板のSi上に下地バッファー層を形成した後、電極と薄膜圧電体層を製膜し、この後、弾性体層をその上に形成した上、圧電素子下部のSi基板を除去する方法を採ることができる。この場合の光スイッチの断面構成は、必ずしも図2に記した構成とはならないことは勿論である。薄膜圧電体の製膜法としては、上記のスパッタ法以外にゾルゲル法を用いることもできる。
薄膜圧電体をSi上に直接製膜する場合、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いると、このSOI基板を構成するシリコン薄膜を弾性体として残すことができるので好都合である。図9A〜図9Cに、このシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスの説明図を示す。図9Aにおいて、シリコンオンインシュレータ基板32は、シリコン33上にインシュレータ(シリコン酸化膜)34を下地層としてその上に形成されたシリコン薄膜35によりなる。このSOI基板32を基板として用い、この上に電極4bとしてPtを蒸着した後、これを下地層としてこの上にPZTを蒸着、パターニングし、薄膜圧電体3とする。次に、図9Bのようにシリコン33およびインシュレータであるシリコン酸化膜34をエッチング除去し、最に、図9Cに示すように電極4aを蒸着、パターニングして圧電素子を形成する。
ここで、シリコン薄膜35とシリコン薄膜の下地層であるシリコン酸化膜34とのエッチング選択性を利用することにより、均一な厚みのシリコン薄膜層35を残すことができるので、圧電素子のたわみ変形効率を稼ぐのに望ましい均一で低い曲げ剛性の弾性体層35を形成することができる。
この弾性体としてSOI基板を構成するシリコン薄膜のみを残す例について述べたが、シリコン薄膜とシリコン酸化膜の両方を残すことも、もう一つの選択枝である。この場合、ドライエッチングの時間制御でこのような構成の圧電素子を形成することができる。さらに、製膜時のドーズガス雰囲気条件などのプロセス条件を変えることで、これらの薄膜に残留する内部応力を制御することができ、薄膜圧電体の内部応力とバランスをとることで圧電素子の形状精度を確保することができる。
(第2実施形態)
図5Aは本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図を示す。この第2実施形態では、ミラー面1bを薄膜圧電体の構成面である基板面に対して図5Aの法線方向に設けており、かつミラー素子1Aを上記基板面の法線方向に駆動している。各構成要素のほとんどは第1実施形態の詳細説明として述べた図1Aと同様であるので、共通する構成要素には同じ符号を付与している。圧電素子2を構成する薄膜圧電体3、電極4及び弾性体5は第1実施形態に準じた構成であるので、ここではその図示は省略している。電極4は、第1実施形態と同様に2つの上部電極4a,4bより構成されているが、ここでは簡略化のため1つの電極として図示しているが、実際には図1Aのように構成されている。しかしながら、電極4は、簡略化のため同一曲率にたわむ部分にのみ構成してもよい。このように簡略化した構成では、ミラー素子1Aの駆動される変位が一般には小さくなるが、ひずみ吸収部10を設ける構成以外に、これを補うため、圧電素子2のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ部分に低曲げ剛性部13を構成している。この低曲げ剛性部13は、具体的には、弾性体の形状を電極側である固定端側からミラー素子1Aが搭載される可動端側に向かって除々に細くする形状とすることで、面積を徐々に小さくして、効率良く逆曲率のたわみを発生させ、結果として電極構成の簡略化と、大きな変位効率の両立を実現することができるものである。尚、圧電素子2の中央にその長手方向8に沿って溝15を設けたのは、圧電素子2の幅方向のたわみ変形を軽減し、長手方向8のたわみ変形の効率を上げるための構成である。
図5Bは、図5Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図5Aの場合に比べて、図5Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。
図5C〜図5Fは、低曲げ剛性部13の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図5Cは図5Aに示した低曲げ剛性部13と同形状のもの、すなわち、低曲げ剛性部13は、圧電素子2と大略同一幅の帯部分の中央に、ミラー素子側から電極側に向かって細くなるような大略三角形状の貫通口13fを形成して、面積を徐々に小さくなるようにしたものである。これに対して、図5Dは、低曲げ剛性部13Dの形状を、圧電素子2の幅よりも大幅に小さくかつ幅の均等な両持ち梁にして圧電素子2とひずみ吸収部49との間の幅方向中央部に長手方向8沿いに配置したものである。図5Dの場合、長手方向8のまわりの回転剛性は小さくなるもの、ひずみ吸収部49を設けるスペースが増え、この低曲げ剛性部13Dが位置する部分の低剛性化がしやすくなる。さらに、図5Eは、低曲げ剛性部13Eの別の構成例を示し、低曲げ剛性部13Eを、その幅を圧電素子側から遠ざかるに従って小さくするテーパ状の構成にしたものである。このようなテーパ状の梁は、梁内部の応力及びひずみをその長手方向8に渡って均一にする効果があり、材料強度上、好ましい。さらに、図5Fは、図5Dにおいて、ミラー素子1Aの両側に配置された一対の低曲げ剛性部13a及び13bの剛性を違えた構成例を示す。具体的には、低曲げ剛性部13aの幅は圧電素子2の幅よりも少し小さくし、低曲げ剛性部13bの幅は圧電素子2の幅よりも大幅に小さくしかつ低曲げ剛性部13aの幅より小さくしている。このように、曲げ剛性のバランスを崩すことにより、ミラー素子1Aを上下方向だけでなく、長手方向8と直交する軸のまわりに回転させることもできる。この機能を利用して、例えばミラー素子1Aで反射された戻り光を、電送路からドロップさせることができる。
次に、有限要素法でこの第2実施形態の構成の光スイッチの性能計算した結果について述べる。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10−12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ3.2mm、全幅1.4mm、溝幅0.1mm、厚み3μmとし、電極長は3.2mmとした。弾性体5としてシリコン及びシリコン酸化膜を用い、その厚みをそれぞれ20μmと10μmとし、ひずみ吸収部10及び低曲げ剛性部13も同じ構成とした。また、ミラー素子1Aの質量を200μgとした。この結果、電極4に30V印加した状態で、ミラー素子1Aの変位として90.6μm動かせることが分かった。
また、振動モード解析によれば、その主共振周波数は1.14KHzであり、スイッチング速度として1msecオーダの高速応答性があることが分かった。
図6A,図6Bは、この光スイッチを伝送線路とともに表示した平面図と側面図である。伝送線路11aから出射された入力光ビーム12aは、ミラー素子1Aが上方に駆動されていない位置では、光ビーム12cとなって伝送線路11cに出射される。圧電素子2により駆動されてミラー素子1Aが図6Bの上方の位置にある場合には、伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、90度のV型に構成された反射面1bを持つミラー素子1Aにより反射され、伝送線路11bへの出射光ビームとなる。
ミラー素子1Aは、図6B中、参照番号14で想像線として示すようにミラー素子1Aの保持装置14を配置し、ミラー素子1Aの姿勢を高い精度で保持することが望ましい。前述のミラー回転型では、出射光をモニターし、このモニターによる検出信号を光スイッチの駆動電圧にフィードバックすることで、ミラー姿勢を保つことができるが、この実施形態でのミラー素子1Aの図6Bでの基板表面に対する法線方向の駆動の場合、ミラー素子1Aの上面ないしは下面(下面のミラー素子保持装置の図示は省略)に保持のための基準面を設け、ミラー素子保持装置14によりミラー素子1Aの上面を上方位置で位置保持することにより、予め設計された位置、姿勢に高精度にミラー素子1Aを固定保持することは容易である。
圧電駆動の特徴として、その発生力は、変位するに従って低減する特性を持つことから、このミラー素子保持装置14は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動でミラー素子1Aを保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置14とし、上記ミラー素子1Aの保持時には、薄膜圧電体への電圧印加を制御手段(例えば、図1Aのスイッチ91として配置され、他の装置などからの情報又は信号により、薄膜圧電体への電圧印加回路を開閉するために機能する制御手段)で解除することが望ましい。特に静電駆動は薄い絶縁層を介しての電極間の静電吸着力を利用することができ、この力は電極間隔が小さいほど大きく、また、必要な電流も非常に小さく低電力であり、望ましい。
なお、ここでは、ミラー素子1AとしてV型に構成された反射面1bを持つミラー素子の場合について説明したが、ミラー素子1Aを単に入射光を反射する(例えば図1Aのようなミラー素子1)か透過するミラー素子として光路を切り替えるものとしてもよい。
(第3実施形態)
図7A,図7Bは、本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図を示す。この第3実施形態では、アクチュエータは、その長手方向8を平行に配置した複数の圧電素子2の列よりなり、複数の光伝送路11はこれらの複数の圧電素子2の列と対応して配置している。このような構成を採ることにより、光伝送路11を高密度に多数配置することが可能で、かつ多数の光伝送路を含む光スイッチを小型コンパクトに構成することができる。
特に、光伝送路として使われる光ファイバは、通常、多数のファイバーを束ねて使用され、その端末のコネクターは、個々のファイバーを平行配置した形式のものが一般的である。図7A中、多数の光伝送路11(具体的には、伝送線路11a,11b)を平行配置して、その末端を光コネクタ16に結合している。伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、ミラー素子1の傾斜角に応じてミラー素子1により反射され、伝送線路11bへの出射光ビーム12bとなる。ミラー素子1を傾斜駆動させる形式の光スイッチでは、ミラー素子1をミラー素子保持装置により固定保持することは難しいので、出力光モニター17で検出した出射光量を駆動制御部18に取り込み、この検出信号に基づいた帰還制御をかけて圧電素子2を駆動することにより、安定した情報の伝達、切り替えを行うことができる。
本発明の上記第3実施形態の情報伝送装置は、図7Aにそれぞれ1点鎖線で示すように、上記圧電素子1の駆動制御部18を含めた光スイッチ装置19としてもよく、また、その周辺の機能部品を含んだ情報伝送装置20としてもよい。ここで、光ネットワーク網で波長多重された光伝送路の入力は光増幅器22に入力され、波長多重されたそれぞれの信号に、分波器22により波長λ1〜λnの信号に復調される。各々の光伝送路はサブの情報伝送装置である光スイッチ装置19の光伝送路11aに入射される。光スイッチ装置19により切り替えられた光伝送路11bからの出力は、各々のレシーバR1〜Rnに送られ、各端末に情報が伝送される。
本発明の上記実施形態の光スイッチによれば、その駆動素子の長手方向8を、ファイバーの列と対応して配置することにより、光スイッチ群を高密度に構成することができる。また、光ファイバーコネクターはその位置決め機能がサブミクロン単位で設計されており、本発明の上記実施形態の薄膜Siプロセスで製作される多数の光スイッチ群の優れた配列精度と組み合わせることで、高精度でありながら簡便な構成の光スイッチを提供できる。また、本発明の上記実施形態によれば、上記に説明した光コネクタを一体化することにより光ファイバーコネクタ埋め込み型の超小型光スイッチを実現することも可能であり、極めて顕著な効果を提供できる。また、反射界面での反射率を制度良く制御できるため、従来は数十dB程度の挿入損失であったのが、本発明によれば、−60dB程度の挿入損失、言い換えれば、入射光に対する出射光の損失比率が1万分の1まで減らすことができる。
以上のように、本発明によれば、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替えを低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで製造の容易さを含めて実用レベルの具体的構成を備えて、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を実現するという顕著な効果が得られる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1Bは、本発明の上記第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1C,図1D,図1Eは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図であり(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)、
図2Aは、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図であり、
図2B,図2Cは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの電極4a−電極4c間、及び、電極4b−電極4c間の電圧と時間との関係を示すグラフであり、
図3は、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図であり、
図4A,図4Bは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態におけるミラー端変位と周波数との関係を示す周波数応答特性を表すグラフであり、
図5Aは、本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図5Bは、本発明の上記第2実施形態の変形例における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図5C,図5D,図5E,図5Fは、それぞれ、本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図であり(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)、
図6A,図6Bは、それぞれ、本発明の上記第2実施形態に係る光スイッチを伝送線路とともに記載した平面図と側面図(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図7A,図7Bは、それぞれ、本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図であり、
図8A,図8B,図8Cは、それぞれ、第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図であり、
図9A,図9B,図9Cは、それぞれ、第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図であり、
図10は従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図であり、
図11は従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図である。
本発明は、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置に関し、特に、ミラー素子を駆動するアクチュエータを備えた光スイッチ及びそれを用いた情報伝送装置に関する。
背景技術
近年、光を用いた情報伝達装置は、波長分割多重などの伝送高速化技術の発達とともに、インターネットのブロードバンド化を実現し、高速大容量の情報通信を可能とするための基幹装置となっている。
さらに、光通信網を効率良く接続するため、光信号レベルでの交換機の機能や光アッテネータ機能を持つ各種の光スイッチが不可欠な装置となっている。
これまで、光通信網は特に基幹系を中心に発達してきたが、これから、さらに、地方都市、地域住宅地単位での、より家庭に近い末端においても益々この光スイッチは必要となってくる。
このように、光通信網で光スイッチをさらに広く普及させるには、−60dB程度の挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、従来に増して簡便な構成で安価に製造できる光スイッチが望まれる。
光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p165〜p170)」には、入力信号の光ファイバーを電磁駆動にて出力信号の光ファイバーに切り替える光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチでは、光ファイバー自体の比較的大きな質量を駆動する必要があり、切り替え時間の短縮に限界があると共に、電磁駆動のための大電流を要する、という欠点がある。
同じく、光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p238〜p242)」には、導波路の一部をオイルで満たし、このオイルを移動させたり、あるいは加熱によりバブルを発生させることにより、光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、反射界面の反射率を反射界面のオイルの有無により制御することに伴い、相対的に挿入損失が大きいという欠点がある。
さらに、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p233〜p237)」には、静電駆動型のミラーによって光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、静電駆動のため一般的に高電圧を要し、また、大きい駆動力を得るためにミクロン単位の静電ギャップが必要なため、その製造に高度の微細加工を要するという欠点がある。
なお、既報の光スイッチの従来技術文献には、本発明に係わる「薄膜圧電体によって圧電駆動する光スイッチ」は開示されていない。
前述したごとく、光スイッチをさらに広く普及させるには、挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、駆動電力も減少させることができ、かつ、簡便な構成で安価に製造できる光スイッチを実現することが重要な課題である。また、多数の光伝送路をコンパクトな構成で切り替えることも必要である。
そこで、特開2000−339725号公報では、図10に示すように、基板121上に、シリコン板の中央部に正多角形の微少ミラー122を配置し、そのミラー122の各辺に沿って片持ちばり123を配置し、その片持ちばり123の一端を固定すると共に他端をミラー122の辺の一端に取り付ける一方、片持ちばり123の表面又は内部に圧電部材を片持ちばり123の長手方向に形成させ、全ての圧電部材へ同一の電圧を印加することによって片持ちばり123の先端部が曲がるのを利用してミラー122を並進移動させるようにしたものが開示されている。なお、124は圧電物質である。
また、特開2001−033713号公報では、図11に示すように、光源から発生した光を光に対して基板101上で45度傾斜していて、その45度の方向並進移動するミラー106によって反射させ、そのミラー106の並進移動はミラー106を正方形の支持体104に載せ、その支持体104の各辺に片持ちばり103をその先端部で支持体104を支えるように配置し、片持ちばり103の表面に105圧電体を配置して、圧電体105への電圧の印加によって圧電体105を変位させ、ひいては片持ちばり103を変位させてミラー106を並進移動させるものが開示されている。
しかしながら、上記2件のいずれの公報でも、ミラー105,122の周囲の4個の片持ちばり103,123にそれぞれたわみ力が発生し、これらの4個のたわみ力のバランスを取ってミラー105,122を並進移動させることが困難であり、並進移動制御が不安定なものとなりやすく、また、4個の片持ちばり103,123が点対称に配置されているため4個のたわみ力のバランスが崩れるとすぐに回転力が発生してしまう可能性もある。これを極力防止するためには、ミラー106,122の中心から数μの範囲内に光を入射させる必要があり、ミラー106,122の実質的に使用可能な面積が微小であるといった課題もあった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替え可能かつ低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで、製造の容易さを含めて、実用レベルの具体的構成を備えて、切り替え制御が安定して行なえ、かつ、実質的に使用可能な面積が大きい、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を提供することにある。
発明の開示
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを提供する。
本発明の第2態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第3態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネにより上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第4態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に上記長手方向沿いのひずみ吸収部を配置する第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第5態様によれば、上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第6態様によれば、上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第7態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第8態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部を構成する第7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第9態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第10態様によれば、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置を有する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第11態様によれば、上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第12態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法を提供する。
本発明の第13態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法を提供する。
本発明の第14態様によれば、上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である第13の態様に記載の光スイッチの製造方法を提供する。
本発明の第15態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置を提供する。
本発明の第16態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第17態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第18態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される第16又は17の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
(第1実施形態)
図1Aは本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図、図1Bは本発明の第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図を示す。また、図2Aは同じく本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図を示す。
基板7上には、ミラー素子1と、ミラー素子1の両側に回転軸9に対して線対称に配置された薄膜圧電体3と、各薄膜圧電体3の上面のミラー素子側に配置された第1上部電極4aと、各薄膜圧電体3の上面の反ミラー素子側に第1上部電極4aとは離れて配置された第2上部電極4bと、各薄膜圧電体3の下面に配置された下部電極4cと、下部電極4cの下面でかつ基板7上に配置された弾性体5とにより、圧電素子2がミラー素子1の両側に線対称に構成され、回路のスイッチ91を閉じることにより電源90からの電圧を第1及び第2上部電極4a,4bと下部電極4cとに印加することにより薄膜圧電体3がたわみ変形し、ミラー素子1を回転軸9周りに回転駆動する。圧電素子2は、隙間を空けて、図1Aでは基板7言い換えれば圧電素子2の長手方向8に平行に一対配置され、この長手方向8と直交した方向にトーションバネ6を設け、トーションバネ6によりミラー素子1を基板7に連結して保持する。さらに、ミラー素子1は、各圧電素子2とはひずみ吸収部10で連結する。
なお、圧電体3上に形成された第1上部電極4aは、第2上部電極4b側から見て、ミラー素子1に向けて圧電体3の変曲点近傍までの位置に配置することが好ましい。すなわち、変曲点を越えて電極を配置しても、たわみ動作が不安定になるなど、悪影響が生じる可能性があるためである。特に、従来の2件の公報では、変曲点を越えて電極を配置しているため、たわみ動作が不安定になりやすく、精度の良い駆動制御が困難なものとなっていた。
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。この理由は、仮に、従来の2件の公報のように、薄膜圧電体3上に上部電極として1つの電極で構成すると、ミラー素子側の部分と反ミラー素子側の部分とではたわみ方向が逆になる変曲点の位置を制御することができなくなり、たわみ動作が不安定なものとなってしまう。これに対して、第1上部電極4aと第2上部電極4bとに分割し、かつ、電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じさせることができて、変曲点の位置を精度良く制御することができ、たわみ動作を安定なものとすることができるからである。この結果、傾斜方向が安定するため、高速、高精度光切り替え可能となり、応答性が良いものとなる。
また、ミラー素子1の平面度は、ミラー素子1に入射する光の波長λの(1/100)λ〜(1/1000)λとするのが好ましい。
このような構成により、トーションバネ6を回転軸9とし、圧電素子2により駆動され、ミラー素子1をこの回転軸9まわりに傾斜させるアクチュエータとなる。トーションバネ6によりミラー素子1の回転軸9を固定することにより、高精度で外乱に対して安定なミラー素子1の駆動ができる。
図2Aの断面図において、この圧電素子2の駆動動作原理を述べる。
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。
薄膜圧電体3を挟んで対向した電極間(電極4a−電極4c間、電極4b−電極4c間)に電圧を印加することにより、薄膜圧電体3の面内に圧電定数d31に応じたひずみが発生し、一方、弾性体5はこの電圧印加によりひずみを発生しないため、圧電体3、電極4a,4b,4c及び弾性体5よりなる圧電素子2にたわみ変形が生じる。
電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じる。この結果、ミラー素子1を保持するトーションバネ6を回転軸9としてミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
図2B〜図2Cは、電極4a及び4bへ逆層の電圧を印加する方法の説明図である。図2Bは、上部電極4a−下部電極4c間に、交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。図2Cは、上部電極4b−下部電極4c間に、これとは逆位相の交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。この結果、上部電極4aと上部電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
構造上、圧電素子2の固定端とトーションバネ6との距離は一定であるため、圧電素子2のこのようなたわみ変形に伴い、この圧電素子2の長手方向のひずみあるいは変位を拘束する傾向を生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることに支障を生じる。この拘束を緩和する手段として、圧電素子2の長手方向の剛性を弱めた構造のひずみ吸収部10を、圧電素子2とミラー素子1の間に設ける。このことにより、上記の多分割電極構成の効果と併せて、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
なお、図1Aの第1実施形態では圧電素子2はその長手方向8に平行に2分割した構成としたが、これは圧電素子2のひずみに伴う湾曲が、その長手方向8だけでなく、その幅方向にも生じるため、この幅方向の湾曲が長手方向のたわみ変形を阻害することを避けるため、このような構成としている。圧電素子2の長手方向8の長さが幅方向の寸法より十分大きい場合には、図1Bに示すように、必ずしも2分割しなくてもよい。
すなわち、図1Bに示すように、圧電素子2は、その長手方向8沿いに1個配置されたものであってもよい。図1Bは、図1Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図1Aの場合に比べて、図1Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。図1C〜図1Eは、ひずみ吸収部10の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図1Cは図1Aに示したひずみ吸収部10と同形状のもの、すなわち、ひずみ吸収部10は英文字「H」の両側をそれぞれ大略C字状及び大略逆C字状に屈曲したものである。これに対して、図1Dは、ひずみ吸収部10Dの圧電素子2へはひずみ吸収部10の中央部のみで接続するように構成したものである。図1Dの場合、ひずみ吸収部10Dの長手方向8の方向の剛性が図1Cに比べて大きくなるため、ミラー素子1の駆動角度は小さくなるが、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れる。さらに、図1Eは、ひずみ吸収部10の別の構成例を示し、ひずみ吸収部10Eをミラー素子1と圧電素子2の異なる端部に互いに連結するように構成したものである。例えば、図1Eにおいて、左側の圧電素子2の下端部とミラー素子1の上側の端部とを両端フック形状部で接続するとともに、ミラー素子1の下側の端部と右側の圧電素子2の上端部とを両端フック形状部で接続するように構成している。このような構造では、ひずみ吸収部10Eの細い梁部を、圧電素子2の長手方向8と直交する方向に長くとれるので、比較的小さなスペースで長手方向8の方向の剛性を小さくすることができ、ミラー素子1の駆動角度を大きくすることができる。
電極4a,4b,4cへの配線構造については図示していないが、2分割した上部電極の可動部に近い(すなわち、ミラー素子1に近い)第1上部電極4aへの配線は、このひずみ吸収部10,10D,10E及びトーションバネ6を通じて基板7の周辺に引き出す構造を採ることができる。
図3は、本発明の第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図を示す。光伝送路11aを出射した光ビーム12aは、ミラー素子1のミラー面1aに入射してミラー面1aで反射される。圧電素子2により駆動されて回転傾斜したミラー面1aが、図3のごとくの傾斜した位置にあるときには、この光ビーム12aは矢印12bの方向にミラー面1aで反射されて光伝送路11bに入射される。ミラー面が逆の方向に回転傾斜した位置では光伝送路11cに入射される。このように、圧電素子2によりミラー素子1の回転角を駆動制御することにより、入力光を、異なった光伝送路に出力することができる。光伝送路が屈折率傾斜型の光ファイバーの場合、入射光ビームは、ある程度コリメートされた状態で出力用光ファイバーに入射される。光スイッチの構成上、この到達距離を長くする必要がある場合には、図示していないが、必要に応じて光ファイバーの入出射端にコリメータレンズを設ける。
図4A,図4Bは、本発明の第1実施形態における光スイッチの周波数応答特性の一例を表すグラフを示す。図4A,図4Bは、図1Aに示した構造の光アクチュエータについて解析計算した光スイッチの周波数特性を示すものである。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10−12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ2mm、幅0.8mm、厚み3μmとし、電極長は可動端側4aの長さを0.6mm、固定端側4bの長さを1.2mmとした。弾性体5としてアルミニウム薄板を用い、その厚みを6μm、トーションバネ6及びひずみ吸収部10も弾性体5と連続した構造とし、その厚みを6μm、幅を50mμとした。基板7にはシリコン基板を用い、ミラー素子2をこの基板7の一部をエッチング加工により残した構造とし、その寸法を0.5mm角、厚み0.2mmとし、全体寸法は長さ6mm、幅3mm、厚み0.2mmとした。
電極の剛性は他の部材に比べて十分小さいので、解析計算上は計算モデルから除き、有限要素法により計算したところ、±15Vの電圧印加により、ミラー素子1を回転軸まわりに±2.9度傾斜できることがわかった。本実施形態のアクチュエータは、圧電体として製膜した数μm膜厚の薄膜圧電体を用いているため、印加電圧が低いにもかかわらず、圧電体内に生じる電界強度を大きくとることができ、低電圧で効率良く変位を発生させることができる。
なお、可動端側の電極4aの長さLaと固定端側の電極4bの長さLbの比は前述した計算例の場合の1:2程度の時に最も効率良くミラー素子1を傾斜できることが、このシミュレーション計算により明らかとなった。少なくとも可動端側4aの電極の長さLaより固定端側の電極4bの長さLbを大きくとることがよい。同様に、ひずみ吸収部10がない構造では、計算されるミラー素子1の角度が大幅に小さいことから、このようなひずみ吸収部10はミラー素子1を効率良く傾斜させる効果の大きいことが裏付けられた。
図4の上のグラフは、横軸を駆動周波数、縦軸をミラー素子の回転軸まわりの傾斜に伴うミラー素子端での変位を表したもの、下のグラフは同じく横軸を駆動周波数、縦軸に駆動周波に対する上記ミラー変位の位相を表したものである。主共振周波数は2.7KHzであり、これより低い周波数では位相ずれなく応答しており、このことから、この光スイッチの切り替え時間は少なくとも1msec以下の高速動作することがわかった。
次に、上記第1実施形態の光スイッチの製造方法について説明する。
第1実施形態の光スイッチの製造方法として、大きく2つの方法をとることができる。第1の方法は、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写する製造法である。図8A〜図8Cにこの製造プロセスの工程をで説明した断面図を示す。図8Aの基板30上に電極4aを蒸着、パターニングした後、基板30の電極4a上に、圧電薄膜3を同じく蒸着、パターニングする。この製造法では、薄膜圧電体の圧電定数等の材料特性に有利な基板材料、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の製膜をスパッタ蒸着により行う場合、PZTのエピタキシャル成長にMgO基板を用いかつ下地層としてPtを用いると、優れた圧電特性を持つPZT膜を得ることができる。この場合、Pt下地層はそのまま電極4aとなる。この薄膜圧電体を弾性体5として、例えばステンレスの薄板に接着性の転写層31を介して転写し(図8B)、その後、この製膜基板を除去することで、上記構成の光スイッチを形成することができる(図8C)。
第2の方法は、薄膜圧電体を基板に直接製膜する製造法である。この場合、薄膜圧電体の良好な圧電特性を得るため、その下地の構成材料の選択に制約を受けるが、転写プロセスが不要な分、簡便な製造法となる。例えば、第1実施形態の図2Aにおける断面図では、薄膜圧電体3が電極4cを介して弾性体5の上に構成されているが、この弾性体として上記計算解析で用いたアルミニウム上に特性の優れた圧電薄膜を形成することは、一般に難しい。直接製膜法をとる場合には、例えば基板のSi上に下地バッファー層を形成した後、電極と薄膜圧電体層を製膜し、この後、弾性体層をその上に形成した上、圧電素子下部のSi基板を除去する方法を採ることができる。この場合の光スイッチの断面構成は、必ずしも図2に記した構成とはならないことは勿論である。薄膜圧電体の製膜法としては、上記のスパッタ法以外にゾルゲル法を用いることもできる。
薄膜圧電体をSi上に直接製膜する場合、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いると、このSOI基板を構成するシリコン薄膜を弾性体として残すことができるので好都合である。図9A〜図9Cに、このシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスの説明図を示す。図9Aにおいて、シリコンオンインシュレータ基板32は、シリコン33上にインシュレータ(シリコン酸化膜)34を下地層としてその上に形成されたシリコン薄膜35によりなる。このSOI基板32を基板として用い、この上に電極4bとしてPtを蒸着した後、これを下地層としてこの上にPZTを蒸着、パターニングし、薄膜圧電体3とする。次に、図9Bのようにシリコン33およびインシュレータであるシリコン酸化膜34をエッチング除去し、最に、図9Cに示すように電極4aを蒸着、パターニングして圧電素子を形成する。
ここで、シリコン薄膜35とシリコン薄膜の下地層であるシリコン酸化膜34とのエッチング選択性を利用することにより、均一な厚みのシリコン薄膜層35を残すことができるので、圧電素子のたわみ変形効率を稼ぐのに望ましい均一で低い曲げ剛性の弾性体層35を形成することができる。
この弾性体としてSOI基板を構成するシリコン薄膜のみを残す例について述べたが、シリコン薄膜とシリコン酸化膜の両方を残すことも、もう一つの選択枝である。この場合、ドライエッチングの時間制御でこのような構成の圧電素子を形成することができる。さらに、製膜時のドーズガス雰囲気条件などのプロセス条件を変えることで、これらの薄膜に残留する内部応力を制御することができ、薄膜圧電体の内部応力とバランスをとることで圧電素子の形状精度を確保することができる。
(第2実施形態)
図5Aは本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図を示す。この第2実施形態では、ミラー面1bを薄膜圧電体の構成面である基板面に対して図5Aの法線方向に設けており、かつミラー素子1Aを上記基板面の法線方向に駆動している。各構成要素のほとんどは第1実施形態の詳細説明として述べた図1Aと同様であるので、共通する構成要素には同じ符号を付与している。圧電素子2を構成する薄膜圧電体3、電極4及び弾性体5は第1実施形態に準じた構成であるので、ここではその図示は省略している。電極4は、第1実施形態と同様に2つの上部電極4a,4bより構成されているが、ここでは簡略化のため1つの電極として図示しているが、実際には図1Aのように構成されている。しかしながら、電極4は、簡略化のため同一曲率にたわむ部分にのみ構成してもよい。このように簡略化した構成では、ミラー素子1Aの駆動される変位が一般には小さくなるが、ひずみ吸収部10を設ける構成以外に、これを補うため、圧電素子2のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ部分に低曲げ剛性部13を構成している。この低曲げ剛性部13は、具体的には、弾性体の形状を電極側である固定端側からミラー素子1Aが搭載される可動端側に向かって除々に細くする形状とすることで、面積を徐々に小さくして、効率良く逆曲率のたわみを発生させ、結果として電極構成の簡略化と、大きな変位効率の両立を実現することができるものである。尚、圧電素子2の中央にその長手方向8に沿って溝15を設けたのは、圧電素子2の幅方向のたわみ変形を軽減し、長手方向8のたわみ変形の効率を上げるための構成である。
図5Bは、図5Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図5Aの場合に比べて、図5Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。
図5C〜図5Fは、低曲げ剛性部13の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図5Cは図5Aに示した低曲げ剛性部13と同形状のもの、すなわち、低曲げ剛性部13は、圧電素子2と大略同一幅の帯部分の中央に、ミラー素子側から電極側に向かって細くなるような大略三角形状の貫通口13fを形成して、面積を徐々に小さくなるようにしたものである。これに対して、図5Dは、低曲げ剛性部13Dの形状を、圧電素子2の幅よりも大幅に小さくかつ幅の均等な両持ち梁にして圧電素子2とひずみ吸収部49との間の幅方向中央部に長手方向8沿いに配置したものである。図5Dの場合、長手方向8のまわりの回転剛性は小さくなるもの、ひずみ吸収部49を設けるスペースが増え、この低曲げ剛性部13Dが位置する部分の低剛性化がしやすくなる。さらに、図5Eは、低曲げ剛性部13Eの別の構成例を示し、低曲げ剛性部13Eを、その幅を圧電素子側から遠ざかるに従って小さくするテーパ状の構成にしたものである。このようなテーパ状の梁は、梁内部の応力及びひずみをその長手方向8に渡って均一にする効果があり、材料強度上、好ましい。さらに、図5Fは、図5Dにおいて、ミラー素子1Aの両側に配置された一対の低曲げ剛性部13a及び13bの剛性を違えた構成例を示す。具体的には、低曲げ剛性部13aの幅は圧電素子2の幅よりも少し小さくし、低曲げ剛性部13bの幅は圧電素子2の幅よりも大幅に小さくしかつ低曲げ剛性部13aの幅より小さくしている。このように、曲げ剛性のバランスを崩すことにより、ミラー素子1Aを上下方向だけでなく、長手方向8と直交する軸のまわりに回転させることもできる。この機能を利用して、例えばミラー素子1Aで反射された戻り光を、電送路からドロップさせることができる。
次に、有限要素法でこの第2実施形態の構成の光スイッチの性能計算した結果について述べる。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10−12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ3.2mm、全幅1.4mm、溝幅0.1mm、厚み3μmとし、電極長は3.2mmとした。弾性体5としてシリコン及びシリコン酸化膜を用い、その厚みをそれぞれ20μmと10μmとし、ひずみ吸収部10及び低曲げ剛性部13も同じ構成とした。また、ミラー素子1Aの質量を200μgとした。この結果、電極4に30V印加した状態で、ミラー素子1Aの変位として90.6μm動かせることが分かった。
また、振動モード解析によれば、その主共振周波数は1.14KHzであり、スイッチング速度として1msecオーダの高速応答性があることが分かった。
図6A,図6Bは、この光スイッチを伝送線路とともに表示した平面図と側面図である。伝送線路11aから出射された入力光ビーム12aは、ミラー素子1Aが上方に駆動されていない位置では、光ビーム12cとなって伝送線路11cに出射される。圧電素子2により駆動されてミラー素子1Aが図6Bの上方の位置にある場合には、伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、90度のV型に構成された反射面1bを持つミラー素子1Aにより反射され、伝送線路11bへの出射光ビームとなる。
ミラー素子1Aは、図6B中、参照番号14で想像線として示すようにミラー素子1Aの保持装置14を配置し、ミラー素子1Aの姿勢を高い精度で保持することが望ましい。前述のミラー回転型では、出射光をモニターし、このモニターによる検出信号を光スイッチの駆動電圧にフィードバックすることで、ミラー姿勢を保つことができるが、この実施形態でのミラー素子1Aの図6Bでの基板表面に対する法線方向の駆動の場合、ミラー素子1Aの上面ないしは下面(下面のミラー素子保持装置の図示は省略)に保持のための基準面を設け、ミラー素子保持装置14によりミラー素子1Aの上面を上方位置で位置保持することにより、予め設計された位置、姿勢に高精度にミラー素子1Aを固定保持することは容易である。
圧電駆動の特徴として、その発生力は、変位するに従って低減する特性を持つことから、このミラー素子保持装置14は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動でミラー素子1Aを保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置14とし、上記ミラー素子1Aの保持時には、薄膜圧電体への電圧印加を制御手段(例えば、図1Aのスイッチ91として配置され、他の装置などからの情報又は信号により、薄膜圧電体への電圧印加回路を開閉するために機能する制御手段)で解除することが望ましい。特に静電駆動は薄い絶縁層を介しての電極間の静電吸着力を利用することができ、この力は電極間隔が小さいほど大きく、また、必要な電流も非常に小さく低電力であり、望ましい。
なお、ここでは、ミラー素子1AとしてV型に構成された反射面1bを持つミラー素子の場合について説明したが、ミラー素子1Aを単に入射光を反射する(例えば図1Aのようなミラー素子1)か透過するミラー素子として光路を切り替えるものとしてもよい。
(第3実施形態)
図7A,図7Bは、本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図を示す。この第3実施形態では、アクチュエータは、その長手方向8を平行に配置した複数の圧電素子2の列よりなり、複数の光伝送路11はこれらの複数の圧電素子2の列と対応して配置している。このような構成を採ることにより、光伝送路11を高密度に多数配置することが可能で、かつ多数の光伝送路を含む光スイッチを小型コンパクトに構成することができる。
特に、光伝送路として使われる光ファイバは、通常、多数のファイバーを束ねて使用され、その端末のコネクターは、個々のファイバーを平行配置した形式のものが一般的である。図7A中、多数の光伝送路11(具体的には、伝送線路11a,11b)を平行配置して、その末端を光コネクタ16に結合している。伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、ミラー素子1の傾斜角に応じてミラー素子1により反射され、伝送線路11bへの出射光ビーム12bとなる。ミラー素子1を傾斜駆動させる形式の光スイッチでは、ミラー素子1をミラー素子保持装置により固定保持することは難しいので、出力光モニター17で検出した出射光量を駆動制御部18に取り込み、この検出信号に基づいた帰還制御をかけて圧電素子2を駆動することにより、安定した情報の伝達、切り替えを行うことができる。
本発明の上記第3実施形態の情報伝送装置は、図7Aにそれぞれ1点鎖線で示すように、上記圧電素子1の駆動制御部18を含めた光スイッチ装置19としてもよく、また、その周辺の機能部品を含んだ情報伝送装置20としてもよい。ここで、光ネットワーク網で波長多重された光伝送路の入力は光増幅器22に入力され、波長多重されたそれぞれの信号に、分波器22により波長λ1〜λnの信号に復調される。各々の光伝送路はサブの情報伝送装置である光スイッチ装置19の光伝送路11aに入射される。光スイッチ装置19により切り替えられた光伝送路11bからの出力は、各々のレシーバR1〜Rnに送られ、各端末に情報が伝送される。
本発明の上記実施形態の光スイッチによれば、その駆動素子の長手方向8を、ファイバーの列と対応して配置することにより、光スイッチ群を高密度に構成することができる。また、光ファイバーコネクターはその位置決め機能がサブミクロン単位で設計されており、本発明の上記実施形態の薄膜Siプロセスで製作される多数の光スイッチ群の優れた配列精度と組み合わせることで、高精度でありながら簡便な構成の光スイッチを提供できる。また、本発明の上記実施形態によれば、上記に説明した光コネクタを一体化することにより光ファイバーコネクタ埋め込み型の超小型光スイッチを実現することも可能であり、極めて顕著な効果を提供できる。また、反射界面での反射率を制度良く制御できるため、従来は数十dB程度の挿入損失であったのが、本発明によれば、−60dB程度の挿入損失、言い換えれば、入射光に対する出射光の損失比率が1万分の1まで減らすことができる。
以上のように、本発明によれば、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替えを低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで製造の容易さを含めて実用レベルの具体的構成を備えて、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を実現するという顕著な効果が得られる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1Bは、本発明の上記第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1C,図1D,図1Eは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図であり(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)、
図2Aは、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図であり、
図2B,図2Cは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの電極4a−電極4c間、及び、電極4b−電極4c間の電圧と時間との関係を示すグラフであり、
図3は、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図であり、
図4A,図4Bは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態におけるミラー端変位と周波数との関係を示す周波数応答特性を表すグラフであり、
図5Aは、本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図5Bは、本発明の上記第2実施形態の変形例における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図5C,図5D,図5E,図5Fは、それぞれ、本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図であり(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)、
図6A,図6Bは、それぞれ、本発明の上記第2実施形態に係る光スイッチを伝送線路とともに記載した平面図と側面図(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図7A,図7Bは、それぞれ、本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図であり、
図8A,図8B,図8Cは、それぞれ、第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図であり、
図9A,図9B,図9Cは、それぞれ、第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図であり、
図10は従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図であり、
図11は従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図である。
【0003】
体105を変位させ、ひいては片持ちばり103を変位させてミラー106を並進移動させるものが開示されている。
しかしながら、上記2件のいずれの公報でも、ミラー105,122の周囲の4個の片持ちばり103,123にそれぞれたわみ力が発生し、これらの4個のたわみ力のバランスを取ってミラー105,122を並進移動させることが困難であり、並進移動制御が不安定なものとなりやすく、また、4個の片持ちばり103,123が点対称に配置されているため4個のたわみ力のバランスが崩れるとすぐに回転力が発生してしまう可能性もある。これを極力防止するためには、ミラー106,122の中心から数μの範囲内に光を入射させる必要があり、ミラー106,122の実質的に使用可能な面積が微小であるといった課題もあった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替え可能かつ低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで、製造の容易さを含めて、実用レベルの具体的構成を備えて、切り替え制御が安定して行なえ、かつ、実質的に使用可能な面積が大きい、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を提供することにある。
発明の開示
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを提供する。
本発明の第2態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面に
体105を変位させ、ひいては片持ちばり103を変位させてミラー106を並進移動させるものが開示されている。
しかしながら、上記2件のいずれの公報でも、ミラー105,122の周囲の4個の片持ちばり103,123にそれぞれたわみ力が発生し、これらの4個のたわみ力のバランスを取ってミラー105,122を並進移動させることが困難であり、並進移動制御が不安定なものとなりやすく、また、4個の片持ちばり103,123が点対称に配置されているため4個のたわみ力のバランスが崩れるとすぐに回転力が発生してしまう可能性もある。これを極力防止するためには、ミラー106,122の中心から数μの範囲内に光を入射させる必要があり、ミラー106,122の実質的に使用可能な面積が微小であるといった課題もあった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替え可能かつ低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで、製造の容易さを含めて、実用レベルの具体的構成を備えて、切り替え制御が安定して行なえ、かつ、実質的に使用可能な面積が大きい、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を提供することにある。
発明の開示
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを提供する。
本発明の第2態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面に
【0004】
ミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第3態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネにより上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第5態様によれば、上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第6態様によれば、上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第7態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第8態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部を構成する第7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第9態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
ミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第3態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネにより上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第5態様によれば、上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第6態様によれば、上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第7態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第8態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部を構成する第7の態様に記載の光スイッチを提供する。
本発明の第9態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する第2又は7の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0006】
を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置を提供する。
本発明の第16態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第17態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第18態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される第16又は17の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
図面の簡単な説明
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1Bは、本発明の上記第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1C,図1D,図1Eは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図であり(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)、
図2Aは、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面
を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置を提供する。
本発明の第16態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第17態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える第15の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
本発明の第18態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される第16又は17の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
図面の簡単な説明
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1Bは、本発明の上記第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図であり(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)、
図1C,図1D,図1Eは、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図であり(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)、
図2Aは、本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部(10)を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチ。
【請求項2】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面(1a)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】 上記アクチュエータは、長手方向(8)を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネ(6)により上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる請求項2に記載の光スイッチ。
【請求項4】 上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項5】 上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項6】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項7】 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部(49)を構成する請求項6に記載の光スイッチ。
【請求項8】 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する請求項2又は6に記載の光スイッチ。
【請求項9】 上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置(14)を有する請求項2又は6に記載の光スイッチ。
【請求項10】 上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する請求項2又は6に記載の光スイッチ。
【請求項11】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法。
【請求項12】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法。
【請求項13】 上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である請求項12に記載の光スイッチの製造方法。
【請求項14】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部(10)を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置。
【請求項15】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面(1a)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える請求項14に記載の情報伝送装置。
【請求項16】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える請求項14に記載の情報伝送装置。
【請求項17】 上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される請求項15又は16に記載の情報伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置に関し、特に、ミラー素子を駆動するアクチュエータを備えた光スイッチ及びそれを用いた情報伝送装置に関する。
【0002】
(背景技術)
近年、光を用いた情報伝達装置は、波長分割多重などの伝送高速化技術の発達とともに、インターネットのブロードバンド化を実現し、高速大容量の情報通信を可能とするための基幹装置となっている。
【0003】
さらに、光通信網を効率良く接続するため、光信号レベルでの交換機の機能や光アッテネータ機能を持つ各種の光スイッチが不可欠な装置となっている。
【0004】
これまで、光通信網は特に基幹系を中心に発達してきたが、これから、さらに、地方都市、地域住宅地単位での、より家庭に近い末端においても益々この光スイッチは必要となってくる。
【0005】
このように、光通信網で光スイッチをさらに広く普及させるには、−60dB程度の挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、従来に増して簡便な構成で安価に製造できる光スイッチが望まれる。
【0006】
光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p165〜p170)」には、入力信号の光ファイバーを電磁駆動にて出力信号の光ファイバーに切り替える光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチでは、光ファイバー自体の比較的大きな質量を駆動する必要があり、切り替え時間の短縮に限界があると共に、電磁駆動のための大電流を要する、という欠点がある。
【0007】
同じく、光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p238〜p242)」には、導波路の一部をオイルで満たし、このオイルを移動させたり、あるいは加熱によりバブルを発生させることにより、光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、反射界面の反射率を反射界面のオイルの有無により制御することに伴い、相対的に挿入損失が大きいという欠点がある。
【0008】
さらに、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p233〜p237)」には、静電駆動型のミラーによって光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、静電駆動のため一般的に高電圧を要し、また、大きい駆動力を得るためにミクロン単位の静電ギャップが必要なため、その製造に高度の微細加工を要するという欠点がある。
【0009】
なお、既報の光スイッチの従来技術文献には、本発明に係わる「薄膜圧電体によって圧電駆動する光スイッチ」は開示されていない。
【0010】
前述したごとく、光スイッチをさらに広く普及させるには、挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、駆動電力も減少させることができ、かつ、簡便な構成で安価に製造できる光スイッチを実現することが重要な課題である。また、多数の光伝送路をコンパクトな構成で切り替えることも必要である。
【0011】
そこで、特開2000−339725号公報では、図10に示すように、基板121上に、シリコン板の中央部に正多角形の微少ミラー122を配置し、そのミラー122の各辺に沿って片持ちばり123を配置し、その片持ちばり123の一端を固定すると共に他端をミラー122の辺の一端に取り付ける一方、片持ちばり123の表面又は内部に圧電部材を片持ちばり123の長手方向に形成させ、全ての圧電部材へ同一の電圧を印加することによって片持ちばり123の先端部が曲がるのを利用してミラー122を並進移動させるようにしたものが開示されている。なお、124は圧電物質である。
【0012】
また、特開2001−033713号公報では、図11に示すように、光源から発生した光を光に対して基板101上で45度傾斜していて、その45度の方向並進移動するミラー106によって反射させ、そのミラー106の並進移動はミラー106を正方形の支持体104に載せ、その支持体104の各辺に片持ちばり103をその先端部で支持体104を支えるように配置し、片持ちばり103の表面に105圧電体を配置して、圧電体105への電圧の印加によって圧電体105を変位させ、ひいては片持ちばり103を変位させてミラー106を並進移動させるものが開示されている。
【0013】
しかしながら、上記2件のいずれの公報でも、ミラー105,122の周囲の4個の片持ちばり103,123にそれぞれたわみ力が発生し、これらの4個のたわみ力のバランスを取ってミラー105,122を並進移動させることが困難であり、並進移動制御が不安定なものとなりやすく、また、4個の片持ちばり103,123が点対称に配置されているため4個のたわみ力のバランスが崩れるとすぐに回転力が発生してしまう可能性もある。これを極力防止するためには、ミラー106,122の中心から数μの範囲内に光を入射させる必要があり、ミラー106,122の実質的に使用可能な面積が微小であるといった課題もあった。
【0014】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替え可能かつ低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで、製造の容易さを含めて、実用レベルの具体的構成を備えて、切り替え制御が安定して行なえ、かつ、実質的に使用可能な面積が大きい、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を提供することにある。
【0015】
(発明の開示)
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
【0016】
本発明の第1態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0018】
本発明の第3態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネにより上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0019】
本発明の第4態様によれば、上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0021】
本発明の第6態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部を構成する第6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0023】
本発明の第8態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する第2又は6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0024】
本発明の第9態様によれば、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置を有する第2又は6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0025】
本発明の第10態様によれば、上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する第2又は6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0026】
本発明の第11態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法を提供する。
【0027】
本発明の第12態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法を提供する。
【0028】
本発明の第13態様によれば、上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である第12の態様に記載の光スイッチの製造方法を提供する。
【0029】
本発明の第14態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置を提供する。
【0030】
本発明の第15態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える第14の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
【0031】
本発明の第16態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える第14の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
【0032】
本発明の第17態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される第15又は16の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
【0033】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
【0034】
(第1実施形態)
図1Aは本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図、図1Bは本発明の第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図を示す。また、図2Aは同じく本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図を示す。
【0035】
基板7上には、ミラー素子1と、ミラー素子1の両側に回転軸9に対して線対称に配置された薄膜圧電体3と、各薄膜圧電体3の上面のミラー素子側に配置された第1上部電極4aと、各薄膜圧電体3の上面の反ミラー素子側に第1上部電極4aとは離れて配置された第2上部電極4bと、各薄膜圧電体3の下面に配置された下部電極4cと、下部電極4cの下面でかつ基板7上に配置された弾性体5とにより、圧電素子2がミラー素子1の両側に線対称に構成され、回路のスイッチ91を閉じることにより電源90からの電圧を第1及び第2上部電極4a,4bと下部電極4cとに印加することにより薄膜圧電体3がたわみ変形し、ミラー素子1を回転軸9周りに回転駆動する。圧電素子2は、隙間を空けて、図1Aでは基板7言い換えれば圧電素子2の長手方向8に平行に一対配置され、この長手方向8と直交した方向にトーションバネ6を設け、トーションバネ6によりミラー素子1を基板7に連結して保持する。さらに、ミラー素子1は、各圧電素子2とはひずみ吸収部10で連結する。
【0036】
なお、圧電体3上に形成された第1上部電極4aは、第2上部電極4b側から見て、ミラー素子1に向けて圧電体3の変曲点近傍までの位置に配置することが好ましい。すなわち、変曲点を越えて電極を配置しても、たわみ動作が不安定になるなど、悪影響が生じる可能性があるためである。特に、従来の2件の公報では、変曲点を越えて電極を配置しているため、たわみ動作が不安定になりやすく、精度の良い駆動制御が困難なものとなっていた。
【0037】
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。この理由は、仮に、従来の2件の公報のように、薄膜圧電体3上に上部電極として1つの電極で構成すると、ミラー素子側の部分と反ミラー素子側の部分とではたわみ方向が逆になる変曲点の位置を制御することができなくなり、たわみ動作が不安定なものとなってしまう。これに対して、第1上部電極4aと第2上部電極4bとに分割し、かつ、電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じさせることができて、変曲点の位置を精度良く制御することができ、たわみ動作を安定なものとすることができるからである。この結果、傾斜方向が安定するため、高速、高精度光切り替え可能となり、応答性が良いものとなる。
【0038】
また、ミラー素子1の平面度は、ミラー素子1に入射する光の波長λの(1/100)λ〜(1/1000)λとするのが好ましい。
【0039】
このような構成により、トーションバネ6を回転軸9とし、圧電素子2により駆動され、ミラー素子1をこの回転軸9まわりに傾斜させるアクチュエータとなる。トーションバネ6によりミラー素子1の回転軸9を固定することにより、高精度で外乱に対して安定なミラー素子1の駆動ができる。
【0040】
図2Aの断面図において、この圧電素子2の駆動動作原理を述べる。
【0041】
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。
【0042】
薄膜圧電体3を挟んで対向した電極間(電極4a−電極4c間、電極4b−電極4c間)に電圧を印加することにより、薄膜圧電体3の面内に圧電定数d31に応じたひずみが発生し、一方、弾性体5はこの電圧印加によりひずみを発生しないため、圧電体3、電極4a,4b,4c及び弾性体5よりなる圧電素子2にたわみ変形が生じる。
【0043】
電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じる。この結果、ミラー素子1を保持するトーションバネ6を回転軸9としてミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
【0044】
図2B〜図2Cは、電極4a及び4bへ逆層の電圧を印加する方法の説明図である。図2Bは、上部電極4a―下部電極4c間に、交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。図2Cは、上部電極4b―下部電極4c間に、これとは逆位相の交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。この結果、上部電極4aと上部電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
【0045】
構造上、圧電素子2の固定端とトーションバネ6との距離は一定であるため、圧電素子2のこのようなたわみ変形に伴い、この圧電素子2の長手方向のひずみあるいは変位を拘束する傾向を生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることに支障を生じる。この拘束を緩和する手段として、圧電素子2の長手方向の剛性を弱めた構造のひずみ吸収部10を、圧電素子2とミラー素子1の間に設ける。このことにより、上記の多分割電極構成の効果と併せて、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
【0046】
なお、図1Aの第1実施形態では圧電素子2はその長手方向8に平行に2分割した構成としたが、これは圧電素子2のひずみに伴う湾曲が、その長手方向8だけでなく、その幅方向にも生じるため、この幅方向の湾曲が長手方向のたわみ変形を阻害することを避けるため、このような構成としている。圧電素子2の長手方向8の長さが幅方向の寸法より十分大きい場合には、図1Bに示すように、必ずしも2分割しなくてもよい。
【0047】
すなわち、図1Bに示すように、圧電素子2は、その長手方向8沿いに1個配置されたものであってもよい。図1Bは、図1Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図1Aの場合に比べて、図1Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。図1C〜図1Eは、ひずみ吸収部10の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図1Cは図1Aに示したひずみ吸収部10と同形状のもの、すなわち、ひずみ吸収部10は英文字「H」の両側をそれぞれ大略C字状及び大略逆C字状に屈曲したものである。これに対して、図1Dは、ひずみ吸収部10Dの圧電素子2へはひずみ吸収部10の中央部のみで接続するように構成したものである。図1Dの場合、ひずみ吸収部10Dの長手方向8の方向の剛性が図1Cに比べて大きくなるため、ミラー素子1の駆動角度は小さくなるが、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れる。さらに、図1Eは、ひずみ吸収部10の別の構成例を示し、ひずみ吸収部10Eをミラー素子1と圧電素子2の異なる端部に互いに連結するように構成したものである。例えば、図1Eにおいて、左側の圧電素子2の下端部とミラー素子1の上側の端部とを両端フック形状部で接続するとともに、ミラー素子1の下側の端部と右側の圧電素子2の上端部とを両端フック形状部で接続するように構成している。このような構造では、ひずみ吸収部10Eの細い梁部を、圧電素子2の長手方向8と直交する方向に長くとれるので、比較的小さなスペースで長手方向8の方向の剛性を小さくすることができ、ミラー素子1の駆動角度を大きくすることができる。
【0048】
電極4a,4b,4cへの配線構造については図示していないが、2分割した上部電極の可動部に近い(すなわち、ミラー素子1に近い)第1上部電極4aへの配線は、このひずみ吸収部10,10D,10E及びトーションバネ6を通じて基板7の周辺に引き出す構造を採ることができる。
【0049】
図3は、本発明の第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図を示す。光伝送路11aを出射した光ビーム12aは、ミラー素子1のミラー面1aに入射してミラー面1aで反射される。圧電素子2により駆動されて回転傾斜したミラー面1aが、図3のごとくの傾斜した位置にあるときには、この光ビーム12aは矢印12bの方向にミラー面1aで反射されて光伝送路11bに入射される。ミラー面が逆の方向に回転傾斜した位置では光伝送路11cに入射される。このように、圧電素子2によりミラー素子1の回転角を駆動制御することにより、入力光を、異なった光伝送路に出力することができる。光伝送路が屈折率傾斜型の光ファイバーの場合、入射光ビームは、ある程度コリメートされた状態で出力用光ファイバーに入射される。光スイッチの構成上、この到達距離を長くする必要がある場合には、図示していないが、必要に応じて光ファイバーの入出射端にコリメータレンズを設ける。
【0050】
図4A,図4Bは、本発明の第1実施形態における光スイッチの周波数応答特性の一例を表すグラフを示す。図4A,図4Bは、図1Aに示した構造の光アクチュエータについて解析計算した光スイッチの周波数特性を示すものである。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10-12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ2mm、幅0.8mm、厚み3μmとし、電極長は可動端側4aの長さを0.6mm、固定端側4bの長さを1.2mmとした。弾性体5としてアルミニウム薄板を用い、その厚みを6μm、トーションバネ6及びひずみ吸収部10も弾性体5と連続した構造とし、その厚みを6μm、幅を50mμとした。基板7にはシリコン基板を用い、ミラー素子2をこの基板7の一部をエッチング加工により残した構造とし、その寸法を0.5mm角、厚み0.2mmとし、全体寸法は長さ6mm、幅3mm、厚み0.2mmとした。
【0051】
電極の剛性は他の部材に比べて十分小さいので、解析計算上は計算モデルから除き、有限要素法により計算したところ、±15Vの電圧印加により、ミラー素子1を回転軸まわりに±2.9度傾斜できることがわかった。本実施形態のアクチュエータは、圧電体として製膜した数μm膜厚の薄膜圧電体を用いているため、印加電圧が低いにもかかわらず、圧電体内に生じる電界強度を大きくとることができ、低電圧で効率良く変位を発生させることができる。
【0052】
なお、可動端側の電極4aの長さLaと固定端側の電極4bの長さLbの比は前述した計算例の場合の1:2程度の時に最も効率良くミラー素子1を傾斜できることが、このシミュレーション計算により明らかとなった。少なくとも可動端側4aの電極の長さLaより固定端側の電極4bの長さLbを大きくとることがよい。同様に、ひずみ吸収部10がない構造では、計算されるミラー素子1の角度が大幅に小さいことから、このようなひずみ吸収部10はミラー素子1を効率良く傾斜させる効果の大きいことが裏付けられた。
【0053】
図4の上のグラフは、横軸を駆動周波数、縦軸をミラー素子の回転軸まわりの傾斜に伴うミラー素子端での変位を表したもの、下のグラフは同じく横軸を駆動周波数、縦軸に駆動周波に対する上記ミラー変位の位相を表したものである。主共振周波数は2.7KHzであり、これより低い周波数では位相ずれなく応答しており、このことから、この光スイッチの切り替え時間は少なくとも1msec以下の高速動作することがわかった。
【0054】
次に、上記第1実施形態の光スイッチの製造方法について説明する。
【0055】
第1実施形態の光スイッチの製造方法として、大きく2つの方法をとることができる。第1の方法は、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写する製造法である。図8A〜図8Cにこの製造プロセスの工程をで説明した断面図を示す。図8Aの基板30上に電極4aを蒸着、パターニングした後、基板30の電極4a上に、圧電薄膜3を同じく蒸着、パターニングする。この製造法では、薄膜圧電体の圧電定数等の材料特性に有利な基板材料、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の製膜をスパッタ蒸着により行う場合、PZTのエピタキシャル成長にMgO基板を用いかつ下地層としてPtを用いると、優れた圧電特性を持つPZT膜を得ることができる。この場合、Pt下地層はそのまま電極4aとなる。この薄膜圧電体を弾性体5として、例えばステンレスの薄板に接着性の転写層31を介して転写し(図8B)、その後、この製膜基板を除去することで、上記構成の光スイッチを形成することができる(図8C)。
【0056】
第2の方法は、薄膜圧電体を基板に直接製膜する製造法である。この場合、薄膜圧電体の良好な圧電特性を得るため、その下地の構成材料の選択に制約を受けるが、転写プロセスが不要な分、簡便な製造法となる。例えば、第1実施形態の図2Aにおける断面図では、薄膜圧電体3が電極4cを介して弾性体5の上に構成されているが、この弾性体として上記計算解析で用いたアルミニウム上に特性の優れた圧電薄膜を形成することは、一般に難しい。直接製膜法をとる場合には、例えば基板のSi上に下地バッファー層を形成した後、電極と薄膜圧電体層を製膜し、この後、弾性体層をその上に形成した上、圧電素子下部のSi基板を除去する方法を採ることができる。この場合の光スイッチの断面構成は、必ずしも図2に記した構成とはならないことは勿論である。薄膜圧電体の製膜法としては、上記のスパッタ法以外にゾルゲル法を用いることもできる。
【0057】
薄膜圧電体をSi上に直接製膜する場合、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いると、このSOI基板を構成するシリコン薄膜を弾性体として残すことができるので好都合である。図9A〜図9Cに、このシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスの説明図を示す。図9Aにおいて、シリコンオンインシュレータ基板32は、シリコン33上にインシュレータ(シリコン酸化膜)34を下地層としてその上に形成されたシリコン薄膜35によりなる。このSOI基板32を基板として用い、この上に電極4bとしてPtを蒸着した後、これを下地層としてこの上にPZTを蒸着、パターニングし、薄膜圧電体3とする。次に、図9Bのようにシリコン33およびインシュレータであるシリコン酸化膜34をエッチング除去し、最に、図9Cに示すように電極4aを蒸着、パターニングして圧電素子を形成する。
【0058】
ここで、シリコン薄膜35とシリコン薄膜の下地層であるシリコン酸化膜34とのエッチング選択性を利用することにより、均一な厚みのシリコン薄膜層35を残すことができるので、圧電素子のたわみ変形効率を稼ぐのに望ましい均一で低い曲げ剛性の弾性体層35を形成することができる。
【0059】
この弾性体としてSOI基板を構成するシリコン薄膜のみを残す例について述べたが、シリコン薄膜とシリコン酸化膜の両方を残すことも、もう一つの選択枝である。この場合、ドライエッチングの時間制御でこのような構成の圧電素子を形成することができる。さらに、製膜時のドーズガス雰囲気条件などのプロセス条件を変えることで、これらの薄膜に残留する内部応力を制御することができ、薄膜圧電体の内部応力とバランスをとることで圧電素子の形状精度を確保することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図5Aは本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図を示す。この第2実施形態では、ミラー面1bを薄膜圧電体の構成面である基板面に対して図5Aの法線方向に設けており、かつミラー素子1Aを上記基板面の法線方向に駆動している。各構成要素のほとんどは第1実施形態の詳細説明として述べた図1Aと同様であるので、共通する構成要素には同じ符号を付与している。圧電素子2を構成する薄膜圧電体3、電極4及び弾性体5は第1実施形態に準じた構成であるので、ここではその図示は省略している。電極4は、第1実施形態と同様に2つの上部電極4a,4bより構成されているが、ここでは簡略化のため1つの電極として図示しているが、実際には図1Aのように構成されている。しかしながら、電極4は、簡略化のため同一曲率にたわむ部分にのみ構成してもよい。このように簡略化した構成では、ミラー素子1Aの駆動される変位が一般には小さくなるが、ひずみ吸収部10を設ける構成以外に、これを補うため、圧電素子2のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ部分に低曲げ剛性部13を構成している。この低曲げ剛性部13は、具体的には、弾性体の形状を電極側である固定端側からミラー素子1Aが搭載される可動端側に向かって除々に細くする形状とすることで、面積を徐々に小さくして、効率良く逆曲率のたわみを発生させ、結果として電極構成の簡略化と、大きな変位効率の両立を実現することができるものである。尚、圧電素子2の中央にその長手方向8に沿って溝15を設けたのは、圧電素子2の幅方向のたわみ変形を軽減し、長手方向8のたわみ変形の効率を上げるための構成である。
【0061】
図5Bは、図5Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図5Aの場合に比べて、図5Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。
【0062】
図5C〜図5Fは、低曲げ剛性部13の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図5Cは図5Aに示した低曲げ剛性部13と同形状のもの、すなわち、低曲げ剛性部13は、圧電素子2と大略同一幅の帯部分の中央に、ミラー素子側から電極側に向かって細くなるような大略三角形状の貫通口13fを形成して、面積を徐々に小さくなるようにしたものである。これに対して、図5Dは、低曲げ剛性部13Dの形状を、圧電素子2の幅よりも大幅に小さくかつ幅の均等な両持ち梁にして圧電素子2とひずみ吸収部49との間の幅方向中央部に長手方向8沿いに配置したものである。図5Dの場合、長手方向8のまわりの回転剛性は小さくなるもの、ひずみ吸収部49を設けるスペースが増え、この低曲げ剛性部13Dが位置する部分の低剛性化がしやすくなる。さらに、図5Eは、低曲げ剛性部13Eの別の構成例を示し、低曲げ剛性部13Eを、その幅を圧電素子側から遠ざかるに従って小さくするテーパ状の構成にしたものである。このようなテーパ状の梁は、梁内部の応力及びひずみをその長手方向8に渡って均一にする効果があり、材料強度上、好ましい。さらに、図5Fは、図5Dにおいて、ミラー素子1Aの両側に配置された一対の低曲げ剛性部13a及び13bの剛性を違えた構成例を示す。具体的には、低曲げ剛性部13aの幅は圧電素子2の幅よりも少し小さくし、低曲げ剛性部13bの幅は圧電素子2の幅よりも大幅に小さくしかつ低曲げ剛性部13aの幅より小さくしている。このように、曲げ剛性のバランスを崩すことにより、ミラー素子1Aを上下方向だけでなく、長手方向8と直交する軸のまわりに回転させることもできる。この機能を利用して、例えばミラー素子1Aで反射された戻り光を、電送路からドロップさせることができる。
【0063】
次に、有限要素法でこの第2実施形態の構成の光スイッチの性能計算した結果について述べる。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10-12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ3.2mm、全幅1.4mm、溝幅0.1mm、厚み3μmとし、電極長は3.2mmとした。弾性体5としてシリコン及びシリコン酸化膜を用い、その厚みをそれぞれ20μmと10μmとし、ひずみ吸収部10及び低曲げ剛性部13も同じ構成とした。また、ミラー素子1Aの質量を200μgとした。この結果、電極4に30V印加した状態で、ミラー素子1Aの変位として90.6μm動かせることが分かった。
【0064】
また、振動モード解析によれば、その主共振周波数は1.14KHzであり、スイッチング速度として1msecオーダの高速応答性があることが分かった。
【0065】
図6A,図6Bは、この光スイッチを伝送線路とともに表示した平面図と側面図である。伝送線路11aから出射された入力光ビーム12aは、ミラー素子1Aが上方に駆動されていない位置では、光ビーム12cとなって伝送線路11cに出射される。圧電素子2により駆動されてミラー素子1Aが図6Bの上方の位置にある場合には、伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、90度のV型に構成された反射面1bを持つミラー素子1Aにより反射され、伝送線路11bへの出射光ビームとなる。
【0066】
ミラー素子1Aは、図6B中、参照番号14で想像線として示すようにミラー素子1Aの保持装置14を配置し、ミラー素子1Aの姿勢を高い精度で保持することが望ましい。前述のミラー回転型では、出射光をモニターし、このモニターによる検出信号を光スイッチの駆動電圧にフィードバックすることで、ミラー姿勢を保つことができるが、この実施形態でのミラー素子1Aの図6Bでの基板表面に対する法線方向の駆動の場合、ミラー素子1Aの上面ないしは下面(下面のミラー素子保持装置の図示は省略)に保持のための基準面を設け、ミラー素子保持装置14によりミラー素子1Aの上面を上方位置で位置保持することにより、予め設計された位置、姿勢に高精度にミラー素子1Aを固定保持することは容易である。
【0067】
圧電駆動の特徴として、その発生力は、変位するに従って低減する特性を持つことから、このミラー素子保持装置14は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動でミラー素子1Aを保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置14とし、上記ミラー素子1Aの保持時には、薄膜圧電体への電圧印加を制御手段(例えば、図1Aのスイッチ91として配置され、他の装置などからの情報又は信号により、薄膜圧電体への電圧印加回路を開閉するために機能する制御手段)で解除することが望ましい。特に静電駆動は薄い絶縁層を介しての電極間の静電吸着力を利用することができ、この力は電極間隔が小さいほど大きく、また、必要な電流も非常に小さく低電力であり、望ましい。
【0068】
なお、ここでは、ミラー素子1AとしてV型に構成された反射面1bを持つミラー素子の場合について説明したが、ミラー素子1Aを単に入射光を反射する(例えば図1Aのようなミラー素子1)か透過するミラー素子として光路を切り替えるものとしてもよい。
【0069】
(第3実施形態)
図7A,図7Bは、本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図を示す。この第3実施形態では、アクチュエータは、その長手方向8を平行に配置した複数の圧電素子2の列よりなり、複数の光伝送路11はこれらの複数の圧電素子2の列と対応して配置している。このような構成を採ることにより、光伝送路11を高密度に多数配置することが可能で、かつ多数の光伝送路を含む光スイッチを小型コンパクトに構成することができる。
【0070】
特に、光伝送路として使われる光ファイバは、通常、多数のファイバーを束ねて使用され、その端末のコネクターは、個々のファイバーを平行配置した形式のものが一般的である。図7A中、多数の光伝送路11(具体的には、伝送線路11a,11b)を平行配置して、その末端を光コネクタ16に結合している。伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、ミラー素子1の傾斜角に応じてミラー素子1により反射され、伝送線路11bへの出射光ビーム12bとなる。ミラー素子1を傾斜駆動させる形式の光スイッチでは、ミラー素子1をミラー素子保持装置により固定保持することは難しいので、出力光モニター17で検出した出射光量を駆動制御部18に取り込み、この検出信号に基づいた帰還制御をかけて圧電素子2を駆動することにより、安定した情報の伝達、切り替えを行うことができる。
【0071】
本発明の上記第3実施形態の情報伝送装置は、図7Aにそれぞれ1点鎖線で示すように、上記圧電素子1の駆動制御部18を含めた光スイッチ装置19としてもよく、また、その周辺の機能部品を含んだ情報伝送装置20としてもよい。ここで、光ネットワーク網で波長多重された光伝送路の入力は光増幅器22に入力され、波長多重されたそれぞれの信号に、分波器22により波長λ1〜λnの信号に復調される。各々の光伝送路はサブの情報伝送装置である光スイッチ装置19の光伝送路11aに入射される。光スイッチ装置19により切り替えられた光伝送路11bからの出力は、各々のレシーバR1〜Rnに送られ、各端末に情報が伝送される。
【0072】
本発明の上記実施形態の光スイッチによれば、その駆動素子の長手方向8を、ファイバーの列と対応して配置することにより、光スイッチ群を高密度に構成することができる。また、光ファイバーコネクターはその位置決め機能がサブミクロン単位で設計されており、本発明の上記実施形態の薄膜Siプロセスで製作される多数の光スイッチ群の優れた配列精度と組み合わせることで、高精度でありながら簡便な構成の光スイッチを提供できる。また、本発明の上記実施形態によれば、上記に説明した光コネクタを一体化することにより光ファイバーコネクタ埋め込み型の超小型光スイッチを実現することも可能であり、極めて顕著な効果を提供できる。また、反射界面での反射率を制度良く制御できるため、従来は数十dB程度の挿入損失であったのが、本発明によれば、−60dB程度の挿入損失、言い換えれば、入射光に対する出射光の損失比率が1万分の1まで減らすことができる。
【0073】
以上のように、本発明によれば、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替えを低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで製造の容易さを含めて実用レベルの具体的構成を備えて、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を実現するという顕著な効果が得られる。
【0074】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0075】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
【図1A】 本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図1B】 本発明の上記第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図1C】 本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図である(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)。
【図1D】 本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図である(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)。
【図1E】 本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図である(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)。
【図2A】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図である。
【図2B】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの電極4a−電極4c間、及び、電極4b−電極4c間の電圧と時間との関係を示すグラフである。
【図2C】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの電極4a−電極4c間、及び、電極4b−電極4c間の電圧と時間との関係を示すグラフである。
【図3】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図である。
【図4A】 本発明の上記第1実施形態におけるミラー端変位と周波数との関係を示す周波数応答特性を表すグラフである。
【図4B】 本発明の上記第1実施形態におけるミラー端変位と周波数との関係を示す周波数応答特性を表すグラフである。
【図5A】 本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図5B】 本発明の上記第2実施形態の変形例における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図5C】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図5D】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図5E】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図5F】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図6A】 本発明の上記第2実施形態に係る光スイッチを伝送線路とともに記載した平面図と側面図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図6B】 本発明の上記第2実施形態に係る光スイッチを伝送線路とともに記載した平面図と側面図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図7A】 本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図である。
【図7B】 本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図である。
【図8A】 第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図である。
【図8B】 第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図である。
【図8C】 第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図である。
【図9A】 第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図である。
【図9B】 第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図である。
【図9C】 第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図である。
【図10】 従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図である。
【図11】 従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図である。
【請求項1】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部(10)を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチ。
【請求項2】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面(1a)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】 上記アクチュエータは、長手方向(8)を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネ(6)により上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる請求項2に記載の光スイッチ。
【請求項4】 上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項5】 上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項6】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項7】 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部(49)を構成する請求項6に記載の光スイッチ。
【請求項8】 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する請求項2又は6に記載の光スイッチ。
【請求項9】 上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置(14)を有する請求項2又は6に記載の光スイッチ。
【請求項10】 上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する請求項2又は6に記載の光スイッチ。
【請求項11】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法。
【請求項12】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法。
【請求項13】 上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である請求項12に記載の光スイッチの製造方法。
【請求項14】 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部(10)を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置。
【請求項15】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面(1a)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える請求項14に記載の情報伝送装置。
【請求項16】 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える請求項14に記載の情報伝送装置。
【請求項17】 上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される請求項15又は16に記載の情報伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置に関し、特に、ミラー素子を駆動するアクチュエータを備えた光スイッチ及びそれを用いた情報伝送装置に関する。
【0002】
(背景技術)
近年、光を用いた情報伝達装置は、波長分割多重などの伝送高速化技術の発達とともに、インターネットのブロードバンド化を実現し、高速大容量の情報通信を可能とするための基幹装置となっている。
【0003】
さらに、光通信網を効率良く接続するため、光信号レベルでの交換機の機能や光アッテネータ機能を持つ各種の光スイッチが不可欠な装置となっている。
【0004】
これまで、光通信網は特に基幹系を中心に発達してきたが、これから、さらに、地方都市、地域住宅地単位での、より家庭に近い末端においても益々この光スイッチは必要となってくる。
【0005】
このように、光通信網で光スイッチをさらに広く普及させるには、−60dB程度の挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、従来に増して簡便な構成で安価に製造できる光スイッチが望まれる。
【0006】
光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p165〜p170)」には、入力信号の光ファイバーを電磁駆動にて出力信号の光ファイバーに切り替える光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチでは、光ファイバー自体の比較的大きな質量を駆動する必要があり、切り替え時間の短縮に限界があると共に、電磁駆動のための大電流を要する、という欠点がある。
【0007】
同じく、光スイッチの従来例として、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p238〜p242)」には、導波路の一部をオイルで満たし、このオイルを移動させたり、あるいは加熱によりバブルを発生させることにより、光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、反射界面の反射率を反射界面のオイルの有無により制御することに伴い、相対的に挿入損失が大きいという欠点がある。
【0008】
さらに、「MOEMS97,Technical Digest(1997,p233〜p237)」には、静電駆動型のミラーによって光路を切り替える型の光スイッチが開示されている。この形式の光スイッチは、静電駆動のため一般的に高電圧を要し、また、大きい駆動力を得るためにミクロン単位の静電ギャップが必要なため、その製造に高度の微細加工を要するという欠点がある。
【0009】
なお、既報の光スイッチの従来技術文献には、本発明に係わる「薄膜圧電体によって圧電駆動する光スイッチ」は開示されていない。
【0010】
前述したごとく、光スイッチをさらに広く普及させるには、挿入損失やスイッチング時間等の基本性能を確保するとともに、駆動電力も減少させることができ、かつ、簡便な構成で安価に製造できる光スイッチを実現することが重要な課題である。また、多数の光伝送路をコンパクトな構成で切り替えることも必要である。
【0011】
そこで、特開2000−339725号公報では、図10に示すように、基板121上に、シリコン板の中央部に正多角形の微少ミラー122を配置し、そのミラー122の各辺に沿って片持ちばり123を配置し、その片持ちばり123の一端を固定すると共に他端をミラー122の辺の一端に取り付ける一方、片持ちばり123の表面又は内部に圧電部材を片持ちばり123の長手方向に形成させ、全ての圧電部材へ同一の電圧を印加することによって片持ちばり123の先端部が曲がるのを利用してミラー122を並進移動させるようにしたものが開示されている。なお、124は圧電物質である。
【0012】
また、特開2001−033713号公報では、図11に示すように、光源から発生した光を光に対して基板101上で45度傾斜していて、その45度の方向並進移動するミラー106によって反射させ、そのミラー106の並進移動はミラー106を正方形の支持体104に載せ、その支持体104の各辺に片持ちばり103をその先端部で支持体104を支えるように配置し、片持ちばり103の表面に105圧電体を配置して、圧電体105への電圧の印加によって圧電体105を変位させ、ひいては片持ちばり103を変位させてミラー106を並進移動させるものが開示されている。
【0013】
しかしながら、上記2件のいずれの公報でも、ミラー105,122の周囲の4個の片持ちばり103,123にそれぞれたわみ力が発生し、これらの4個のたわみ力のバランスを取ってミラー105,122を並進移動させることが困難であり、並進移動制御が不安定なものとなりやすく、また、4個の片持ちばり103,123が点対称に配置されているため4個のたわみ力のバランスが崩れるとすぐに回転力が発生してしまう可能性もある。これを極力防止するためには、ミラー106,122の中心から数μの範囲内に光を入射させる必要があり、ミラー106,122の実質的に使用可能な面積が微小であるといった課題もあった。
【0014】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替え可能かつ低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで、製造の容易さを含めて、実用レベルの具体的構成を備えて、切り替え制御が安定して行なえ、かつ、実質的に使用可能な面積が大きい、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を提供することにある。
【0015】
(発明の開示)
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
【0016】
本発明の第1態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0018】
本発明の第3態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネにより上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる第2の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0019】
本発明の第4態様によれば、上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0021】
本発明の第6態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する第1の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部を構成する第6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0023】
本発明の第8態様によれば、上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する第2又は6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0024】
本発明の第9態様によれば、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置を有する第2又は6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0025】
本発明の第10態様によれば、上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する第2又は6の態様に記載の光スイッチを提供する。
【0026】
本発明の第11態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法を提供する。
【0027】
本発明の第12態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法を提供する。
【0028】
本発明の第13態様によれば、上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である第12の態様に記載の光スイッチの製造方法を提供する。
【0029】
本発明の第14態様によれば、入射側光伝送路からの光を反射させるミラー素子と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータとを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体とを備える圧電素子により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、その両端が固定端支持され、長手方向を並行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、(たわみ変形の変形効率を上げるため)上記圧電素子の長手方向の一部を構成する上記弾性体に平面的構造の上記長手方向沿いのひずみ吸収部を設け、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置を提供する。
【0030】
本発明の第15態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える第14の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
【0031】
本発明の第16態様によれば、上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える第14の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
【0032】
本発明の第17態様によれば、上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される第15又は16の態様に記載の情報伝送装置を提供する。
【0033】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
【0034】
(第1実施形態)
図1Aは本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図、図1Bは本発明の第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図を示す。また、図2Aは同じく本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図を示す。
【0035】
基板7上には、ミラー素子1と、ミラー素子1の両側に回転軸9に対して線対称に配置された薄膜圧電体3と、各薄膜圧電体3の上面のミラー素子側に配置された第1上部電極4aと、各薄膜圧電体3の上面の反ミラー素子側に第1上部電極4aとは離れて配置された第2上部電極4bと、各薄膜圧電体3の下面に配置された下部電極4cと、下部電極4cの下面でかつ基板7上に配置された弾性体5とにより、圧電素子2がミラー素子1の両側に線対称に構成され、回路のスイッチ91を閉じることにより電源90からの電圧を第1及び第2上部電極4a,4bと下部電極4cとに印加することにより薄膜圧電体3がたわみ変形し、ミラー素子1を回転軸9周りに回転駆動する。圧電素子2は、隙間を空けて、図1Aでは基板7言い換えれば圧電素子2の長手方向8に平行に一対配置され、この長手方向8と直交した方向にトーションバネ6を設け、トーションバネ6によりミラー素子1を基板7に連結して保持する。さらに、ミラー素子1は、各圧電素子2とはひずみ吸収部10で連結する。
【0036】
なお、圧電体3上に形成された第1上部電極4aは、第2上部電極4b側から見て、ミラー素子1に向けて圧電体3の変曲点近傍までの位置に配置することが好ましい。すなわち、変曲点を越えて電極を配置しても、たわみ動作が不安定になるなど、悪影響が生じる可能性があるためである。特に、従来の2件の公報では、変曲点を越えて電極を配置しているため、たわみ動作が不安定になりやすく、精度の良い駆動制御が困難なものとなっていた。
【0037】
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。この理由は、仮に、従来の2件の公報のように、薄膜圧電体3上に上部電極として1つの電極で構成すると、ミラー素子側の部分と反ミラー素子側の部分とではたわみ方向が逆になる変曲点の位置を制御することができなくなり、たわみ動作が不安定なものとなってしまう。これに対して、第1上部電極4aと第2上部電極4bとに分割し、かつ、電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じさせることができて、変曲点の位置を精度良く制御することができ、たわみ動作を安定なものとすることができるからである。この結果、傾斜方向が安定するため、高速、高精度光切り替え可能となり、応答性が良いものとなる。
【0038】
また、ミラー素子1の平面度は、ミラー素子1に入射する光の波長λの(1/100)λ〜(1/1000)λとするのが好ましい。
【0039】
このような構成により、トーションバネ6を回転軸9とし、圧電素子2により駆動され、ミラー素子1をこの回転軸9まわりに傾斜させるアクチュエータとなる。トーションバネ6によりミラー素子1の回転軸9を固定することにより、高精度で外乱に対して安定なミラー素子1の駆動ができる。
【0040】
図2Aの断面図において、この圧電素子2の駆動動作原理を述べる。
【0041】
薄膜圧電体3には、2分割された上部電極4a及び4bと下部電極4cとが形成されており、薄膜圧電体3はその膜厚方向に分極されている。
【0042】
薄膜圧電体3を挟んで対向した電極間(電極4a−電極4c間、電極4b−電極4c間)に電圧を印加することにより、薄膜圧電体3の面内に圧電定数d31に応じたひずみが発生し、一方、弾性体5はこの電圧印加によりひずみを発生しないため、圧電体3、電極4a,4b,4c及び弾性体5よりなる圧電素子2にたわみ変形が生じる。
【0043】
電極4cを中間電位として電極4a及び4bに異なる電圧を印加することにより、電極4aと電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じる。この結果、ミラー素子1を保持するトーションバネ6を回転軸9としてミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
【0044】
図2B〜図2Cは、電極4a及び4bへ逆層の電圧を印加する方法の説明図である。図2Bは、上部電極4a―下部電極4c間に、交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。図2Cは、上部電極4b―下部電極4c間に、これとは逆位相の交番電圧を印加する場合の電圧波形を示す。この結果、上部電極4aと上部電極4bでは逆の曲率のたわみ変形が生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
【0045】
構造上、圧電素子2の固定端とトーションバネ6との距離は一定であるため、圧電素子2のこのようなたわみ変形に伴い、この圧電素子2の長手方向のひずみあるいは変位を拘束する傾向を生じ、ミラー素子1を効率良く傾斜させることに支障を生じる。この拘束を緩和する手段として、圧電素子2の長手方向の剛性を弱めた構造のひずみ吸収部10を、圧電素子2とミラー素子1の間に設ける。このことにより、上記の多分割電極構成の効果と併せて、ミラー素子1を効率良く傾斜させることができる。
【0046】
なお、図1Aの第1実施形態では圧電素子2はその長手方向8に平行に2分割した構成としたが、これは圧電素子2のひずみに伴う湾曲が、その長手方向8だけでなく、その幅方向にも生じるため、この幅方向の湾曲が長手方向のたわみ変形を阻害することを避けるため、このような構成としている。圧電素子2の長手方向8の長さが幅方向の寸法より十分大きい場合には、図1Bに示すように、必ずしも2分割しなくてもよい。
【0047】
すなわち、図1Bに示すように、圧電素子2は、その長手方向8沿いに1個配置されたものであってもよい。図1Bは、図1Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図1Aの場合に比べて、図1Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。図1C〜図1Eは、ひずみ吸収部10の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図1Cは図1Aに示したひずみ吸収部10と同形状のもの、すなわち、ひずみ吸収部10は英文字「H」の両側をそれぞれ大略C字状及び大略逆C字状に屈曲したものである。これに対して、図1Dは、ひずみ吸収部10Dの圧電素子2へはひずみ吸収部10の中央部のみで接続するように構成したものである。図1Dの場合、ひずみ吸収部10Dの長手方向8の方向の剛性が図1Cに比べて大きくなるため、ミラー素子1の駆動角度は小さくなるが、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れる。さらに、図1Eは、ひずみ吸収部10の別の構成例を示し、ひずみ吸収部10Eをミラー素子1と圧電素子2の異なる端部に互いに連結するように構成したものである。例えば、図1Eにおいて、左側の圧電素子2の下端部とミラー素子1の上側の端部とを両端フック形状部で接続するとともに、ミラー素子1の下側の端部と右側の圧電素子2の上端部とを両端フック形状部で接続するように構成している。このような構造では、ひずみ吸収部10Eの細い梁部を、圧電素子2の長手方向8と直交する方向に長くとれるので、比較的小さなスペースで長手方向8の方向の剛性を小さくすることができ、ミラー素子1の駆動角度を大きくすることができる。
【0048】
電極4a,4b,4cへの配線構造については図示していないが、2分割した上部電極の可動部に近い(すなわち、ミラー素子1に近い)第1上部電極4aへの配線は、このひずみ吸収部10,10D,10E及びトーションバネ6を通じて基板7の周辺に引き出す構造を採ることができる。
【0049】
図3は、本発明の第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図を示す。光伝送路11aを出射した光ビーム12aは、ミラー素子1のミラー面1aに入射してミラー面1aで反射される。圧電素子2により駆動されて回転傾斜したミラー面1aが、図3のごとくの傾斜した位置にあるときには、この光ビーム12aは矢印12bの方向にミラー面1aで反射されて光伝送路11bに入射される。ミラー面が逆の方向に回転傾斜した位置では光伝送路11cに入射される。このように、圧電素子2によりミラー素子1の回転角を駆動制御することにより、入力光を、異なった光伝送路に出力することができる。光伝送路が屈折率傾斜型の光ファイバーの場合、入射光ビームは、ある程度コリメートされた状態で出力用光ファイバーに入射される。光スイッチの構成上、この到達距離を長くする必要がある場合には、図示していないが、必要に応じて光ファイバーの入出射端にコリメータレンズを設ける。
【0050】
図4A,図4Bは、本発明の第1実施形態における光スイッチの周波数応答特性の一例を表すグラフを示す。図4A,図4Bは、図1Aに示した構造の光アクチュエータについて解析計算した光スイッチの周波数特性を示すものである。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10-12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ2mm、幅0.8mm、厚み3μmとし、電極長は可動端側4aの長さを0.6mm、固定端側4bの長さを1.2mmとした。弾性体5としてアルミニウム薄板を用い、その厚みを6μm、トーションバネ6及びひずみ吸収部10も弾性体5と連続した構造とし、その厚みを6μm、幅を50mμとした。基板7にはシリコン基板を用い、ミラー素子2をこの基板7の一部をエッチング加工により残した構造とし、その寸法を0.5mm角、厚み0.2mmとし、全体寸法は長さ6mm、幅3mm、厚み0.2mmとした。
【0051】
電極の剛性は他の部材に比べて十分小さいので、解析計算上は計算モデルから除き、有限要素法により計算したところ、±15Vの電圧印加により、ミラー素子1を回転軸まわりに±2.9度傾斜できることがわかった。本実施形態のアクチュエータは、圧電体として製膜した数μm膜厚の薄膜圧電体を用いているため、印加電圧が低いにもかかわらず、圧電体内に生じる電界強度を大きくとることができ、低電圧で効率良く変位を発生させることができる。
【0052】
なお、可動端側の電極4aの長さLaと固定端側の電極4bの長さLbの比は前述した計算例の場合の1:2程度の時に最も効率良くミラー素子1を傾斜できることが、このシミュレーション計算により明らかとなった。少なくとも可動端側4aの電極の長さLaより固定端側の電極4bの長さLbを大きくとることがよい。同様に、ひずみ吸収部10がない構造では、計算されるミラー素子1の角度が大幅に小さいことから、このようなひずみ吸収部10はミラー素子1を効率良く傾斜させる効果の大きいことが裏付けられた。
【0053】
図4の上のグラフは、横軸を駆動周波数、縦軸をミラー素子の回転軸まわりの傾斜に伴うミラー素子端での変位を表したもの、下のグラフは同じく横軸を駆動周波数、縦軸に駆動周波に対する上記ミラー変位の位相を表したものである。主共振周波数は2.7KHzであり、これより低い周波数では位相ずれなく応答しており、このことから、この光スイッチの切り替え時間は少なくとも1msec以下の高速動作することがわかった。
【0054】
次に、上記第1実施形態の光スイッチの製造方法について説明する。
【0055】
第1実施形態の光スイッチの製造方法として、大きく2つの方法をとることができる。第1の方法は、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写する製造法である。図8A〜図8Cにこの製造プロセスの工程をで説明した断面図を示す。図8Aの基板30上に電極4aを蒸着、パターニングした後、基板30の電極4a上に、圧電薄膜3を同じく蒸着、パターニングする。この製造法では、薄膜圧電体の圧電定数等の材料特性に有利な基板材料、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の製膜をスパッタ蒸着により行う場合、PZTのエピタキシャル成長にMgO基板を用いかつ下地層としてPtを用いると、優れた圧電特性を持つPZT膜を得ることができる。この場合、Pt下地層はそのまま電極4aとなる。この薄膜圧電体を弾性体5として、例えばステンレスの薄板に接着性の転写層31を介して転写し(図8B)、その後、この製膜基板を除去することで、上記構成の光スイッチを形成することができる(図8C)。
【0056】
第2の方法は、薄膜圧電体を基板に直接製膜する製造法である。この場合、薄膜圧電体の良好な圧電特性を得るため、その下地の構成材料の選択に制約を受けるが、転写プロセスが不要な分、簡便な製造法となる。例えば、第1実施形態の図2Aにおける断面図では、薄膜圧電体3が電極4cを介して弾性体5の上に構成されているが、この弾性体として上記計算解析で用いたアルミニウム上に特性の優れた圧電薄膜を形成することは、一般に難しい。直接製膜法をとる場合には、例えば基板のSi上に下地バッファー層を形成した後、電極と薄膜圧電体層を製膜し、この後、弾性体層をその上に形成した上、圧電素子下部のSi基板を除去する方法を採ることができる。この場合の光スイッチの断面構成は、必ずしも図2に記した構成とはならないことは勿論である。薄膜圧電体の製膜法としては、上記のスパッタ法以外にゾルゲル法を用いることもできる。
【0057】
薄膜圧電体をSi上に直接製膜する場合、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いると、このSOI基板を構成するシリコン薄膜を弾性体として残すことができるので好都合である。図9A〜図9Cに、このシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスの説明図を示す。図9Aにおいて、シリコンオンインシュレータ基板32は、シリコン33上にインシュレータ(シリコン酸化膜)34を下地層としてその上に形成されたシリコン薄膜35によりなる。このSOI基板32を基板として用い、この上に電極4bとしてPtを蒸着した後、これを下地層としてこの上にPZTを蒸着、パターニングし、薄膜圧電体3とする。次に、図9Bのようにシリコン33およびインシュレータであるシリコン酸化膜34をエッチング除去し、最に、図9Cに示すように電極4aを蒸着、パターニングして圧電素子を形成する。
【0058】
ここで、シリコン薄膜35とシリコン薄膜の下地層であるシリコン酸化膜34とのエッチング選択性を利用することにより、均一な厚みのシリコン薄膜層35を残すことができるので、圧電素子のたわみ変形効率を稼ぐのに望ましい均一で低い曲げ剛性の弾性体層35を形成することができる。
【0059】
この弾性体としてSOI基板を構成するシリコン薄膜のみを残す例について述べたが、シリコン薄膜とシリコン酸化膜の両方を残すことも、もう一つの選択枝である。この場合、ドライエッチングの時間制御でこのような構成の圧電素子を形成することができる。さらに、製膜時のドーズガス雰囲気条件などのプロセス条件を変えることで、これらの薄膜に残留する内部応力を制御することができ、薄膜圧電体の内部応力とバランスをとることで圧電素子の形状精度を確保することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図5Aは本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図を示す。この第2実施形態では、ミラー面1bを薄膜圧電体の構成面である基板面に対して図5Aの法線方向に設けており、かつミラー素子1Aを上記基板面の法線方向に駆動している。各構成要素のほとんどは第1実施形態の詳細説明として述べた図1Aと同様であるので、共通する構成要素には同じ符号を付与している。圧電素子2を構成する薄膜圧電体3、電極4及び弾性体5は第1実施形態に準じた構成であるので、ここではその図示は省略している。電極4は、第1実施形態と同様に2つの上部電極4a,4bより構成されているが、ここでは簡略化のため1つの電極として図示しているが、実際には図1Aのように構成されている。しかしながら、電極4は、簡略化のため同一曲率にたわむ部分にのみ構成してもよい。このように簡略化した構成では、ミラー素子1Aの駆動される変位が一般には小さくなるが、ひずみ吸収部10を設ける構成以外に、これを補うため、圧電素子2のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ部分に低曲げ剛性部13を構成している。この低曲げ剛性部13は、具体的には、弾性体の形状を電極側である固定端側からミラー素子1Aが搭載される可動端側に向かって除々に細くする形状とすることで、面積を徐々に小さくして、効率良く逆曲率のたわみを発生させ、結果として電極構成の簡略化と、大きな変位効率の両立を実現することができるものである。尚、圧電素子2の中央にその長手方向8に沿って溝15を設けたのは、圧電素子2の幅方向のたわみ変形を軽減し、長手方向8のたわみ変形の効率を上げるための構成である。
【0061】
図5Bは、図5Aに示した構造において溝15を設けず、圧電素子2を分割しない簡便な構成としたものである。図5Aの場合に比べて、図5Bの光スイッチでは、圧電素子2の長手方向8と直交する幅方向のたわみの影響で発生変位は減少するが、圧電素子2の剛性が大きくなるので、高い共振周波数の構造とすることができ、高速応答性に優れたものとすることができる。
【0062】
図5C〜図5Fは、低曲げ剛性部13の異なる形態である種々の変形例を示した部分平面図である。図5Cは図5Aに示した低曲げ剛性部13と同形状のもの、すなわち、低曲げ剛性部13は、圧電素子2と大略同一幅の帯部分の中央に、ミラー素子側から電極側に向かって細くなるような大略三角形状の貫通口13fを形成して、面積を徐々に小さくなるようにしたものである。これに対して、図5Dは、低曲げ剛性部13Dの形状を、圧電素子2の幅よりも大幅に小さくかつ幅の均等な両持ち梁にして圧電素子2とひずみ吸収部49との間の幅方向中央部に長手方向8沿いに配置したものである。図5Dの場合、長手方向8のまわりの回転剛性は小さくなるもの、ひずみ吸収部49を設けるスペースが増え、この低曲げ剛性部13Dが位置する部分の低剛性化がしやすくなる。さらに、図5Eは、低曲げ剛性部13Eの別の構成例を示し、低曲げ剛性部13Eを、その幅を圧電素子側から遠ざかるに従って小さくするテーパ状の構成にしたものである。このようなテーパ状の梁は、梁内部の応力及びひずみをその長手方向8に渡って均一にする効果があり、材料強度上、好ましい。さらに、図5Fは、図5Dにおいて、ミラー素子1Aの両側に配置された一対の低曲げ剛性部13a及び13bの剛性を違えた構成例を示す。具体的には、低曲げ剛性部13aの幅は圧電素子2の幅よりも少し小さくし、低曲げ剛性部13bの幅は圧電素子2の幅よりも大幅に小さくしかつ低曲げ剛性部13aの幅より小さくしている。このように、曲げ剛性のバランスを崩すことにより、ミラー素子1Aを上下方向だけでなく、長手方向8と直交する軸のまわりに回転させることもできる。この機能を利用して、例えばミラー素子1Aで反射された戻り光を、電送路からドロップさせることができる。
【0063】
次に、有限要素法でこの第2実施形態の構成の光スイッチの性能計算した結果について述べる。圧電定数は、製膜した薄膜圧電体(PZT製薄膜圧電体)で測定された圧電薄膜の圧電定数d31=−100×10-12m/Vとし、薄膜圧電体の寸法は長さ3.2mm、全幅1.4mm、溝幅0.1mm、厚み3μmとし、電極長は3.2mmとした。弾性体5としてシリコン及びシリコン酸化膜を用い、その厚みをそれぞれ20μmと10μmとし、ひずみ吸収部10及び低曲げ剛性部13も同じ構成とした。また、ミラー素子1Aの質量を200μgとした。この結果、電極4に30V印加した状態で、ミラー素子1Aの変位として90.6μm動かせることが分かった。
【0064】
また、振動モード解析によれば、その主共振周波数は1.14KHzであり、スイッチング速度として1msecオーダの高速応答性があることが分かった。
【0065】
図6A,図6Bは、この光スイッチを伝送線路とともに表示した平面図と側面図である。伝送線路11aから出射された入力光ビーム12aは、ミラー素子1Aが上方に駆動されていない位置では、光ビーム12cとなって伝送線路11cに出射される。圧電素子2により駆動されてミラー素子1Aが図6Bの上方の位置にある場合には、伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、90度のV型に構成された反射面1bを持つミラー素子1Aにより反射され、伝送線路11bへの出射光ビームとなる。
【0066】
ミラー素子1Aは、図6B中、参照番号14で想像線として示すようにミラー素子1Aの保持装置14を配置し、ミラー素子1Aの姿勢を高い精度で保持することが望ましい。前述のミラー回転型では、出射光をモニターし、このモニターによる検出信号を光スイッチの駆動電圧にフィードバックすることで、ミラー姿勢を保つことができるが、この実施形態でのミラー素子1Aの図6Bでの基板表面に対する法線方向の駆動の場合、ミラー素子1Aの上面ないしは下面(下面のミラー素子保持装置の図示は省略)に保持のための基準面を設け、ミラー素子保持装置14によりミラー素子1Aの上面を上方位置で位置保持することにより、予め設計された位置、姿勢に高精度にミラー素子1Aを固定保持することは容易である。
【0067】
圧電駆動の特徴として、その発生力は、変位するに従って低減する特性を持つことから、このミラー素子保持装置14は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動でミラー素子1Aを保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置14とし、上記ミラー素子1Aの保持時には、薄膜圧電体への電圧印加を制御手段(例えば、図1Aのスイッチ91として配置され、他の装置などからの情報又は信号により、薄膜圧電体への電圧印加回路を開閉するために機能する制御手段)で解除することが望ましい。特に静電駆動は薄い絶縁層を介しての電極間の静電吸着力を利用することができ、この力は電極間隔が小さいほど大きく、また、必要な電流も非常に小さく低電力であり、望ましい。
【0068】
なお、ここでは、ミラー素子1AとしてV型に構成された反射面1bを持つミラー素子の場合について説明したが、ミラー素子1Aを単に入射光を反射する(例えば図1Aのようなミラー素子1)か透過するミラー素子として光路を切り替えるものとしてもよい。
【0069】
(第3実施形態)
図7A,図7Bは、本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図を示す。この第3実施形態では、アクチュエータは、その長手方向8を平行に配置した複数の圧電素子2の列よりなり、複数の光伝送路11はこれらの複数の圧電素子2の列と対応して配置している。このような構成を採ることにより、光伝送路11を高密度に多数配置することが可能で、かつ多数の光伝送路を含む光スイッチを小型コンパクトに構成することができる。
【0070】
特に、光伝送路として使われる光ファイバは、通常、多数のファイバーを束ねて使用され、その端末のコネクターは、個々のファイバーを平行配置した形式のものが一般的である。図7A中、多数の光伝送路11(具体的には、伝送線路11a,11b)を平行配置して、その末端を光コネクタ16に結合している。伝送線路11aからの入力光ビーム12aは、ミラー素子1の傾斜角に応じてミラー素子1により反射され、伝送線路11bへの出射光ビーム12bとなる。ミラー素子1を傾斜駆動させる形式の光スイッチでは、ミラー素子1をミラー素子保持装置により固定保持することは難しいので、出力光モニター17で検出した出射光量を駆動制御部18に取り込み、この検出信号に基づいた帰還制御をかけて圧電素子2を駆動することにより、安定した情報の伝達、切り替えを行うことができる。
【0071】
本発明の上記第3実施形態の情報伝送装置は、図7Aにそれぞれ1点鎖線で示すように、上記圧電素子1の駆動制御部18を含めた光スイッチ装置19としてもよく、また、その周辺の機能部品を含んだ情報伝送装置20としてもよい。ここで、光ネットワーク網で波長多重された光伝送路の入力は光増幅器22に入力され、波長多重されたそれぞれの信号に、分波器22により波長λ1〜λnの信号に復調される。各々の光伝送路はサブの情報伝送装置である光スイッチ装置19の光伝送路11aに入射される。光スイッチ装置19により切り替えられた光伝送路11bからの出力は、各々のレシーバR1〜Rnに送られ、各端末に情報が伝送される。
【0072】
本発明の上記実施形態の光スイッチによれば、その駆動素子の長手方向8を、ファイバーの列と対応して配置することにより、光スイッチ群を高密度に構成することができる。また、光ファイバーコネクターはその位置決め機能がサブミクロン単位で設計されており、本発明の上記実施形態の薄膜Siプロセスで製作される多数の光スイッチ群の優れた配列精度と組み合わせることで、高精度でありながら簡便な構成の光スイッチを提供できる。また、本発明の上記実施形態によれば、上記に説明した光コネクタを一体化することにより光ファイバーコネクタ埋め込み型の超小型光スイッチを実現することも可能であり、極めて顕著な効果を提供できる。また、反射界面での反射率を制度良く制御できるため、従来は数十dB程度の挿入損失であったのが、本発明によれば、−60dB程度の挿入損失、言い換えれば、入射光に対する出射光の損失比率が1万分の1まで減らすことができる。
【0073】
以上のように、本発明によれば、高速大容量化に伴う光通信網の拡大に対応して、高速、高精度光切り替えを低電圧低電力駆動で可能とすると共に、装置自体がコンパクトで製造の容易さを含めて実用レベルの具体的構成を備えて、光スイッチ及びその製造方法、それを用いた情報伝送装置を実現するという顕著な効果が得られる。
【0074】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0075】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
【図1A】 本発明の第1実施形態における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図1B】 本発明の上記第1実施形態の変形例における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図1C】 本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図である(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)。
【図1D】 本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図である(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)。
【図1E】 本発明の上記第1実施形態の様々な変形例における光スイッチのひずみ吸収部の拡大平面図である(理解しやすくするため、ひずみ吸収部をハッチングで示す。)。
【図2A】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの一部を表す断面図である。
【図2B】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの電極4a−電極4c間、及び、電極4b−電極4c間の電圧と時間との関係を示すグラフである。
【図2C】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの電極4a−電極4c間、及び、電極4b−電極4c間の電圧と時間との関係を示すグラフである。
【図3】 本発明の上記第1実施形態における光スイッチの光伝送路の切り替え原理を説明する断面図である。
【図4A】 本発明の上記第1実施形態におけるミラー端変位と周波数との関係を示す周波数応答特性を表すグラフである。
【図4B】 本発明の上記第1実施形態におけるミラー端変位と周波数との関係を示す周波数応答特性を表すグラフである。
【図5A】 本発明の第2実施形態における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図5B】 本発明の上記第2実施形態の変形例における光スイッチの斜視図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図5C】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図5D】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図5E】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図5F】 本発明の上記第2実施形態の様々な変形例における光スイッチの低曲げ剛性部の拡大平面図である(理解しやすくするため、低曲げ剛性部をハッチングで示す。)。
【図6A】 本発明の上記第2実施形態に係る光スイッチを伝送線路とともに記載した平面図と側面図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図6B】 本発明の上記第2実施形態に係る光スイッチを伝送線路とともに記載した平面図と側面図である(理解しやすくするため、電極部分をハッチングで示す。)。
【図7A】 本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図である。
【図7B】 本発明の第3実施形態における情報伝送装置の平面図及び側面図である。
【図8A】 第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図である。
【図8B】 第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図である。
【図8C】 第1実施形態の光スイッチの製造方法を説明するための工程図である。
【図9A】 第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図である。
【図9B】 第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図である。
【図9C】 第1実施形態の光スイッチの製造方法においてシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用いる場合の製造プロセスを説明するための工程図である。
【図10】 従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図である。
【図11】 従来のマイクロミラー・デバイスの構造を示す斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させ、
上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面に又は上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1a,1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜又は上記薄膜圧電体の法線方向に並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置(14)を有する光スイッチ。
【請求項2】
上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項1】
入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させ、
上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面に又は上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1a,1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜又は上記薄膜圧電体の法線方向に並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置(14)を有する光スイッチ。
【請求項2】
上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する請求項1に記載の光スイッチ。
Claims (18)
- 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチであって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄膜圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチ。 - 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面(1a)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させる請求項1に記載の光スイッチ。
- 上記アクチュエータは、長手方向(8)を平行に配置した複数の圧電素子よりなり、上記長手方向と直交に配置したトーションバネ(6)により上記ミラー素子を保持する構成とすることにより、上記トーションバネを回転軸とした回転方向に上記ミラーを傾斜させる請求項2に記載の光スイッチ。
- 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向(8)を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部に上記長手方向沿いのひずみ吸収部(10)を配置する請求項2に記載の光スイッチ。
- 上記アクチュエータは、複数の圧電素子により構成され、かつ各圧電素子は複数の電極に分割され、各電極に異なる電圧を印加することにより上記薄膜圧電体を異なった曲率にたわみ変形させる請求項1に記載の光スイッチ。
- 上記圧電素子を構成する上記弾性体は、少なくともシリコンオンインシュレータ基板を構成する薄膜シリコン又はシリコン酸化膜を含む請求項1に記載の光スイッチ。
- 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動する請求項1に記載の光スイッチ。
- 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子の長手方向の一部に長手方向のひずみ吸収部(49)を構成する請求項7に記載の光スイッチ。
- 上記アクチュエータは、両端が固定端支持され、長手方向を平行に配置した少なくとも複数の圧電素子よりなり、上記圧電素子のたわみ曲率とは逆曲率にたわむ低曲げ剛性部を構成する請求項2又は7に記載の光スイッチ。
- 上記アクチュエータは、上記ミラー素子を並行移動させたのち所定の位置に保持するミラー素子保持装置(14)を有する請求項2又は7に記載の光スイッチ。
- 上記ミラー素子保持装置は、薄膜圧電体の駆動とは別の、静電駆動で上記ミラー素子を保持又は機械的に上記ミラー素子を保持する装置とし、上記ミラー素子の保持時には薄膜圧電体への電圧印加を解除する請求項2又は7に記載の光スイッチ。
- 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、基板上に形成した薄膜圧電体を、別の基板に転写することにより圧電素子を製造する光スイッチの製造方法。 - 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、
上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチの製造方法であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体を基板に直接製膜することによりより圧電素子が製造される光スイッチの製造方法。 - 上記薄膜圧電体が製膜される基板が、シリコンオンインシュレータ基板である請求項13に記載の光スイッチの製造方法。
- 入射側光伝送路(11,11a)からの光を反射させるミラー素子(1,1A)と上記ミラー素子を駆動するアクチュエータ(2)とを備え、上記ミラー素子は、上記アクチュエータの駆動によって上記入射側光伝送路から入射した光の光路を出射側光伝送路(11,11a,11b)へ切り替える光スイッチを用いた情報伝送装置であって、
上記アクチュエータは、薄膜圧電体(3)と、上記薄膜圧電体を駆動するための電圧を印加する電極(4a,4b,4c)と、上記薄膜圧電体と上記電極を有する弾性体(5)とを備える圧電素子(2)により構成され、かつ、上記ミラー素子を挟んで対向する圧電素子の長手方向が並行であり、上記電極に対する電圧印加による上記薄圧電体のたわみ変形により、上記ミラー素子を駆動させる光スイッチを用いた情報伝送装置。 - 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体に平行な面にミラー面(1a)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体に平行な面より傾斜させることにより、上記薄膜のおおよその法線面に配置された複数の光伝送路を、ミラー面の反射角を制御することにより切り替える請求項15に記載の情報伝送装置。
- 上記ミラー素子は、上記薄膜圧電体の法線方向にミラー面(1b)が設けられ、上記アクチュエータは、上記ミラー素子を上記薄膜圧電体の法線方向に駆動することにより、上記薄膜において面内で平行に配置された複数の光伝送路に、上記ミラー素子を挿入し、伝送路を切り替える請求項15に記載の情報伝送装置。
- 上記アクチュエータは、長手方向を平行に配置した複数の圧電素子の列よりなり、上記複数の光伝送路は上記複数の圧電素子の列に対応して配置される請求項16又は17に記載の情報伝送装置。
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