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JPWO2022168885A5 - - Google Patents

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JPWO2022168885A5
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Description

本開示は、電波を吸収する電波吸収体と、この電波吸収体を用いた電波吸収装置に関し、特に、20ギガヘルツ(GHz)からいわゆるミリ波帯と呼ばれる300ギガヘルツ(GHz)までの高い周波数帯域の電波を吸収する電波吸収体に関する。
電気回路などから外部へと放出される漏洩電波や、不所望に反射した電波が受信装置に入射する影響を回避するために、電波を吸収する電波吸収体が用いられている。
近年は、携帯電話などの移動体通信や無線LAN、料金自動収受システム(ETC)などで、数ギガヘルツ(GHz)の周波数帯域を持つセンチメートル波、さらには、30ギガヘルツから300ギガヘルツの周波数を有するミリ波帯の高い周波数を有する電波を利用する技術の研究も進んでいる。
このような、より高い周波数帯域の電波を利用する技術トレンドに対応して、不要な電波を吸収する電波吸収体においても、数十ギガヘルツからミリ波帯域までの電波を吸収可能とするものへの要望が高まっている。
20GHz、または、ミリ波帯域(30GHz)以上の高い周波数帯域の電磁波を吸収する電磁波吸収体として、25~100ギガヘルツの範囲で電磁波吸収性能を発揮するイプシロン酸化鉄(ε-Fe23)結晶を磁性相に持つ粒子の充填構造を有する電磁波吸収体が提案されている(特許文献1参照)。また、イプシロン酸化鉄の微細粒子をバインダーとともに混練したペーストを、金属板からなる基材上に塗布して形成された平板状の電磁波吸収体が提案されている(特許文献2参照)。
また、発明者らは、ミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波を良好に吸収する電波吸収体として、表面積に対して厚さの薄いシート状の電波吸収体である各種の電波吸収シートを提案してきた(特許文献3、特許文献4)。
特開2008- 60484号公報 特開2016-111341号公報 再表2017/221992号公報 国際公開2018/084235号公報
上記従来の電波吸収シートは、樹脂製のバインダーの中に電波吸収材料を分散配合させたものであり、バインダー材料や製造方法等を選択することで可撓性や弾性を有する電波吸収シートとして作製することができる。電波吸収シートは、外部への電波の漏洩を防止する場合にはノイズ源となる機器を覆う筐体の内面に貼着し、外部からの電波の影響を回避したい場合には保護すべき機器が収容された容器の外側表面に貼着するなど、吸収したい電波の入射方向に向き合うようにして所望の位置に容易に配置することができる、という高い利便性を有する。
しかし、電波吸収シートは表面の面積に対して厚さが薄いため、たとえ可塑性の樹脂バインダーを用いたものであっても自立させて使用することは困難である。一方で、固形のブロック形状の電波吸収体は、自立する形状に加工することはできるが、製造が大がかりとなり重量も増すなど、取り扱いの容易性という点では十分なものを得ることが困難である。
本開示は、上記従来の課題を解決し、20GHz以上300GHzまでの高い周波数帯域において十分な電波吸収特性を有する電波吸収体として、一定以上の面積を有しつつ自立させることが可能な電波吸収体、およびこの電波吸収体を用いた電波吸収装置を実現することを目的とする。
上記課題を解決するため本願で開示する電波吸収体は、電波吸収層と、前記電波吸収層の電波入射面側の表面に配置された補強層とを備えた電波吸収体であって、前記電波吸収層は、20GHz~300GHzの周波数帯域で磁気共鳴する磁性酸化鉄粉と炭素系微粒子との少なくともいずれか一方と、樹脂製のバインダーとを含み、前記補強層は誘電体材料により構成され、前記電波吸収体が、主面に対する厚みが小さい板状であり、かつ、自立可能であることを特徴とする。
また、本願で開示する電波吸収装置は、本願で開示する電波吸収体を用いた電波吸収装置であって、前記電波吸収体と、前記電波吸収体の前記電波入射面側の表面を所定の角度で維持可能な支持部材とを備え、前記電波吸収体が、吸収する電波の進行方向上に位置する前記電波入射面側の表面の部分の法線方向と前記電波の進行方向とが所定の角度で交わるように配置されていることを特徴とする。
本願で開示する電波吸収体は、電波吸収層に含まれる磁性酸化鉄粉の磁気共鳴による電波吸収効果や、炭素系微粒子によって誘電損失が大きくなる効果によって所望する周波数の電波を吸収するとともに、電波の入射面側に配置された補強層を有することで、主面に対する厚みが小さい板状であるにもかかわらず、自立することができる。このため、吸収したい電波の経路上に容易に配置することができ、不所望な電波の悪影響を防止することができる。
また、本願で開示する電波吸収装置は、電波吸収体を所定の角度で維持可能な支持部材を備え、電波入射面側の表面が吸収される電波の進行方向に対して傾斜した状態を保つことができる。このため、補強層の表面で反射する電波の影響を抑えた高い反射減衰量の電波吸収装置を実現できる。
実施形態にかかる電波吸収体の構成を説明する断面構成図である。 実施形態にかかる電波吸収体の自立可能性を評価する評価試験の方法を説明するイメージ図である。 実施形態にかかる電波吸収装置の使用状態を示す図である。 電波吸収体の電波入射面の傾斜角度と電波吸収特性との関係の測定状況を示すイメージ図である。 電波吸収体の電波入射面の傾斜角度による電波吸収特性の変化を示す図である。 電波吸収体の電波入射面の傾斜角度による電波吸収特性の変化を示す図である。 電波吸収体の電波入射面の傾斜角度による電波吸収特性の変化を示す図である。
本願で開示する電波吸収体は、電波吸収層と、前記電波吸収層の電波入射面側の表面に配置された補強層とを備えた電波吸収体であって、前記電波吸収層は、20GHz~300GHzの周波数帯域で磁気共鳴する磁性酸化鉄粉と炭素系微粒子との少なくともいずれか一方と、樹脂製のバインダーとを含み、前記補強層は誘電体材料により構成され、前記電波吸収体が、主面に対する厚みが小さい板状であり、かつ、自立可能である。
このようにすることで、本願で開示する電波吸収体は、吸収したい電波が進行する経路を遮るように容易に配置することができ、例えば機器の電波特性を測定する際に不所望な電波による悪影響を容易に回避することができる。
上記構成の電波吸収体において、前記磁性酸化鉄粉が、マグネプランバイト型フェライトの粉体、または、イプシロン磁性酸化鉄の粉体のいずれかであること、さらに、前記炭素系微粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンの少なくとも1種であることが好ましい。電波吸収層において電波を吸収する電波吸収部材としてこれらの部材を用いることで、20GHzから300GHzの周波数帯域における、高い電波吸収特性を実現することができる。
さらに、前記樹脂製バインダーがゴム系部材であることが好ましい。ゴム部材のバインダーを用いることで、主面が大きな面積の電波吸収層を容易に作成することができる。
また、前記電磁波吸収体の自立可能性試験において、電波吸収体試料の変形度合いを示すΔ値が、0.5mm以下であることが好ましい。この場合には、電波吸収体が自立可能であると評価することができる。
さらにまた、電波吸収体を透過する透過電波に対する電波減衰量が-10dB以上であることが好ましい。透過電波に対する電波減衰量が-10dB以上、すなわち、透過減衰量(dB)の絶対値が10以上である電波吸収特性を有することで、不所望な電波の影響を十分低減することができる電波吸収体として用いることができる。
前記補強層は、ハニカム構造を有する補強板材、発泡板材、プラスチック製段ボール、および、プラスチック製板材から選ばれる1種を含んで構成することができる。
本願で開示する電波吸収装置は、本願で開示する電波吸収体を用いた電波吸収装置であって、前記電波吸収体と、前記電波吸収体の前記電波入射面側の表面を所定の角度で維持可能な支持部材とを備え、前記電波吸収体が、吸収する電波の進行方向上に位置する前記電波入射面側の表面の部分の法線方向と前記電波の進行方向とが所定の角度で交わるように配置されている。
なお、本明細書において、電波入射面の表面の部分の法線方向と電波の進行方向とが「所定の角度で交わる」とは、電波入射面の表面の部分の法線方向と電波の進行方向とが重ならないこと、すなわち、両者が0°より大きい角度で交わることを言う。
このようにすることで、本願で開示する電波吸収装置は、電波吸収体の電波入射面を所望する角度で傾斜させた状態を維持することができ、特に、補強層の表面での電波の反射を抑えた高い反射減衰量の電波吸収装置を実現することができる。
上記構成の電波吸収装置において、前記表面の部分が少なくとも一方向に湾曲した湾曲面であることが好ましい。表面が湾曲面であれば、電波の入射方向に反射する電波を低減することができ、反射減衰量を向上させることができる。
また、前記表面の部分の放線方向と前記電波の進行方向とが交わる角度が2°以上20°以下であることが好ましく、さらに、前記交わる角度が3°以上7°以下であることがより好ましい。
以下、本願で開示する電波吸収体について、図面を参照して説明する。
(実施の形態)
本願で開示する電波吸収体の実施形態として、電波吸収層に、磁性酸化鉄粉としてのストロンチウムフェライトと炭素系微粒子としてのカーボンブラックとを電波吸収部材として含み、また、シリコーンゴムを樹脂製バインダーとして含んだ電波吸収体と、補強層としてポリプロピレン製のハニカム構造を有するプラスチックシートを備えたものを例示して説明する。
[電波吸収体の構成]
図1は、本実施形態で説明する電波吸収体の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる電波吸収体は、電波吸収部材としてのストロンチウムフェライトの粉体1aとカーボンブラック微粒子1bとが、シリコーンゴムのバインダー1c内に分散配置された電波吸収層1と、この電波吸収層の電波20が入射する側の表面に配置されたハニカム構造を有するプラスチックシートである補強層2とを有している。
また、本実施形態にかかる電波吸収体は、電波吸収層1や補強層2の面積(主面積)と比較して、電波吸収層1と補強層2の厚さの和である電波吸収体の厚さが十分に小さく、電波吸収体全体として板状のいわば電波吸収ボードと呼ぶべき形状を有している。より具体的には、電波吸収層1の厚みは、一例として1mm~5mm程度であるのに対し、補強層2の厚みは、5mm~30mm程度のものとして構成される。なお、電波吸収層1と補強層2の主面は、一例として、一辺が数cm~数10cmないしは数m程度の矩形(長方形または正方形)として構成されている。
本実施形態にかかる電波吸収体は、電波吸収層1の電波入射側に補強層2が配置されていて、自立可能である。ここで自立とは、電波吸収体の主面を側面として(側方を向くように)立てられた際に、すなわち、電波吸収体の主面の一辺に相当する部分の厚みが底面となるように、水平で平坦な面上に電波吸収体の主面が鉛直方向になるように配置された場合に、電波吸収体の形状が変化しないことを言う。なお、電波吸収体を自立させた状態に維持するための支持部材や脚部を用いることは問題無く、本明細書における自立とは、電波吸収体単独で主面を鉛直にして立っていられることのみを意味するのではない。また、電波吸収体の主面は略鉛直に維持されていれば良く、電波吸収体が立てかけられている状態、すなわち、電波吸収体の上端部近傍や背面部分(電波が入射する補強層2が配置されている側とは異なる側)の一部に支持部材が当接して、電波吸収体の主面が鉛直方向に対して若干傾斜した状態で維持されている場合も、電波吸収体が自立している状態に含まれる。
本実施形態にかかる電波吸収体において、電波吸収層1と補強層2とは、両者が一体化されていて、電波吸収体を自立させた際でもその一体性が崩れないように構成されていればよい。このため、電波吸収層1と補強層2とを別々に作製して、例えばシリコーン系の接着剤や両面テープなどの接着手段を用いて両者を貼り合わせることで、電波吸収体を構成することができる。また、電波吸収層1と補強層2とを密着させて重ね合わせた状態で、複数個所をピン止め、リベット止め、ネジ止めしたり、周囲を枠状に挟み込んだりするなどの機械的な一体化手段を用いて、電波吸収層1と補強層2とを一体化させて電波吸収体を構成することができる。
[電波吸収層]
本実施形態にかかる電波吸収体の電波吸収層は、樹脂製のバインダー1c内に、電波吸収部材であるストロンチウムフェライト粉1aとカーボンブラック粉体1bとが分散して混在されて構成されている。
なお、本実施例では、磁性酸化鉄粉であるストロンチウムフェライト粉と炭素系微粒子であるカーボンブラック粉体の両方が含まれているものを例示したが、樹脂製バインダーに、磁性酸化鉄粉と炭素系微粒子とのいずれか一方のみが含まれた構成とすることができる。
電波吸収層の主面は、電波吸収体によって遮りたい吸収対象電波の経路、ノイズ源となる機器等からの不要電波の放射角度、不要電波から保護する保護対象の機器への外部からの電波の入射角度などを考慮して、一つ、または複数個を並べて不所望な電波を遮ることができる面積を有するように設定される。電波吸収層の厚さは、含まれる電波吸収材料の種類や電波吸収層内に含まれる密度などに基づいて、不要な電波を十分に吸収可能な厚さ以上のものとして設定される。なお一般的には、電波吸収体全体として不所望な電波を10分の1に減衰させることができれば最低限の電波吸収効果が発揮されていると考えることができるため、電波吸収体の電波吸収特性としては、電波吸収体を透過する電波の減衰量である透過減衰量が10dBを実現できるように設定することが好ましい。
具体的には、一例として、電波吸収材料としてストロンチウムフェライトとカーボンブラックを、バインダーとしてシリコーンゴムを用いて76.5GHzの電波を吸収する電波吸収層を作製した場合、その厚さを1mm~4.5mm程度とすることができる。
本実施形態にかかる電波吸収体では、電波吸収層の電波入射側に後述の補強層を配置して自立可能とされるために、電波吸収層単体での剛性や強度への制約はない。このため、バインダーとしてシリコーンゴムや天然ゴムなどの柔らかなゴム系部材を使用するなど、電波吸収層単体では容易に変形してしまうものでも許容される。
(磁性酸化鉄粉)
本実施形態にかかる電波吸収体に用いられる磁性酸化鉄粉としては、20GHzから300GHzの周波数帯域の電波に対して磁気共鳴を起こすものとして、マグネプランバイト型フェライトやイプシロン磁性酸化鉄の粉体が良好に用いられる。
マグネプランバイト型(M型)フェライトとしては、ストロンチウムフェライト(Sr-Fe)やバリウムフェライト(Ba-Fe)の磁性粉を使用することができる。
マグネプランバイト型フェライトは、電波吸収に関係する複素透磁率の虚部(μr’’)が、磁性体を高周波で磁化した際に共鳴を起こす周波数において高くなる。自然共鳴周波数fは、材料の持つ異方性磁界HAと比例関係にあるため、異方性磁界HAの高い材料ほど自然共鳴周波数fの値は高くなる。バリウムフェライト(BaFe1219)の自然共鳴周波数fは、そのHAの値が、1.35MA/mから48GHzと計算され、高いGHz帯域の電磁波を吸収することができる。
また、Fe3+の一部を(TiMn)3+やAl3+などで置換することで、異方性磁界HAの値を制御することで自然共鳴周波数fを5~150GHzの範囲で制御することができる。
例えば、ストロンチウムフェライト(SrFe1219)として、Alを添加することによって、60GHz帯の無線LANに対応した電波吸収体とすることができる。
また、本実施形態にかかる電波吸収体に用いられる磁性酸化鉄粉として、イプシロン磁性酸化鉄(ε-Fe23)を用いることができる。
イプシロン磁性酸化鉄は、酸化第二鉄(Fe23)において、アルファ相(α-Fe23)とガンマ相(γ-Fe23)との間に現れる相であり、逆ミセル法とゾルーゲル法とを組み合わせたナノ微粒子合成方法によって単相の状態で得られるようになった磁性材料である。イプシロン磁性酸化鉄は、数nmから数十nmの微細粒子でありながら常温で約20kOeという金属酸化物として最大の保磁力を備え、さらに、歳差運動に基づくジャイロ磁気効果による自然共鳴が数十ギガヘルツ以上のいわゆるミリ波帯の周波数帯域で生じるため、ミリ波帯域の電波を吸収する電波吸収材料として良好である。
さらに、イプシロン磁性酸化鉄は、結晶のFeサイトの一部をアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)などの3価の金属元素と置換された結晶とすることで磁気共鳴周波数を異ならせることができる。このため、置換する金属の種類や置換する量を調整することで、電波吸収体で吸収したい電波の周波数に対応させることができる。
なお、イプシロン磁性酸化鉄は、一部のFeサイトが金属置換されたものを含めて入手することが可能である。イプシロン磁性酸化鉄は、平均粒径が約30nm程度の略球形または短いロッド形状(棒状)をした粒子として入手することができる。
(炭素系微粒子)
本実施形態にかかる電波吸収体では、電波吸収層に上述の磁性酸化鉄粉とともに、または、単独で炭素系微粒子を有している。
炭素系微粒子としては、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)、または、グラフェン、が好適に用いられる。なお、これらの炭素系微粒子は、いずれかを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
より具体的には、カーボンブラックとしては、ファーネス法導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど各種導電性カーボンブラックを使用することかできる。カーボンナノチューブとしては、シングルウォールナノチューブ(SWNT)、マルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれをも使用することができる。また、グラフェンは、炭素原子のsp2結合により形成される蜂の巣状六角形格子を平面状に敷き詰めた1原子分の厚さのシート状構造を有する炭素材料である。グラフェンは、厳密にはこのように1層のシートを指すが、本実施形態に記載されている電波吸収層に用いられるグラフェンとしては、例えば2層~1000層積層した炭素膜も含む。さらに、グラフェンが3次元的に積層したグラファイトも含む。
炭素系微粒子として、比表面積が30~2300m2/gのものを用いることができ、好ましくは、比表面積が300~2000m2/gのものが、さらにより好ましくは、比表面積が800~1800m2/gのものを用いることが好ましい。カーボンブラックの一次粒子径としては10~60nm、BET値が300~1500m2/gのものが好ましい。また、カーボンナノチューブとしては、直径が3~50nm、長さが3~100μm、BET値が10~1200m2/gのものが好ましい。
(バインダー)
本実施形態にかかる電波吸収体の電波吸収層に用いられるバインダーとしては、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ゴム系樹脂などの樹脂材料を用いることができる。
より具体的には、エポキシ系樹脂として、ビスフェノールAの両末端の水酸基をエポキシ化した化合物を用いることができる。また、ポリウレタン系樹脂として、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、エポキシ系ウレタン樹脂などを用いることができる。アクリル系の樹脂としては、メタアクリル系樹脂で、アルキル基の炭素数が2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルと、官能基含有モノマーと、必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを共重合させることにより得られる官能基含有メタアクリルポリマーなどを用いることができる。
また、ゴム系樹脂として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、クロロブレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSR)、ウレタンゴム(PUR)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、エチレン・酢酸ビニルゴム(EVA)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、多硫化ゴム(T)、ウレタンゴム(U)など、各種のゴム材料を利用することができる。
また、室温でゴム弾性を有する材料というゴムの定義から、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー(SIS)などの熱可塑性エラストマーも、高温では流動性を有するものの室温ではゴム弾性を有するために、本実施形態で説明する電波吸収体の電波吸収層のバインダーとして使用することができる。
これらのゴム材料の中では、耐熱性が高いことから、アクリルゴム、シリコーンゴムを好適に用いることができる。アクリルゴムの場合、高温環境下におかれても耐油性が優れるとともに、比較的廉価でコストパフォーマンスにも優れている。また、シリコーンゴムの場合は、耐熱性に加え耐寒性も高い。さらに、物理的特性の温度に対する依存性が、合成ゴム中で一番少なく、耐溶剤性、耐オゾン性、耐候性にも優れている。さらに、電気絶縁性にもすぐれ、広い温度範囲、および、周波数領域にわたって物質的に安定している。
なお、電波吸収体を成型体として形成するために熱可塑性樹脂として耐熱性のある高融点の熱可塑性樹脂を用いる場合、6Tナイロン(6TPA)、9Tナイロン(9TPA)、10Tナイロン(10TPA)、12Tナイロン(12TPA)、MXD6ナイロン(MXDPA)等の芳香族ポリアミド及びこれらのアロイ材料、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリスチレン(PS)、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
また、環境に配慮する観点から、バインダーとして用いられる樹脂としては、ハロゲンを含まないハロゲンフリーのものを用いることが好ましい。これらの樹脂材料は、樹脂シートのバインダー材料として一般的なものであるため容易に入手することができる。
さらに、電波吸収部材であるマグネプランバイト型フェライトやイプシロン磁性酸化鉄をバインダー内で良好に分散させるために、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジクロリド等のアリールスルホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、プロピルホスホン酸などのアルキルホスホン酸、あるいは、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ニトロトリスメチレンホスホン酸などの多官能ホスホン酸などのリン酸化合物を分散剤として含むことができる。
より具体的に、分散剤としては、和光純薬工業株式会社製、または、日産化学工業株式会社製のフェニルホスホン酸(PPA)、城北化学工業株式会社製の酸化リン酸エステル「JP-502」(製品名)などを使用することができる。
なお、電波吸収層の組成として、マグネプランバイト型フェライトを用いる場合には、一例として、マグネプランバイト型フェライト100部に対して、樹脂製バインダーが2~120部、リン酸化合物の含有量が0.1~15部とすることができる。また、イプシロン酸化鉄を用いる場合には、一例として、イプシロン磁性酸化鉄粉100部に対して、樹脂製バインダーが2~50部、リン酸化合物の含有量が0.1~15部とすることができる。樹脂製バインダーが少ないと、磁性酸化鉄を良好に分散させることができない。また磁性体層としてシート状の形状を維持できなくなる。樹脂製バインダーが多いと、電波吸収層の中で磁性酸化鉄の体積含率が小さくなり、透磁率が低くなるため電波吸収の効果が小さくなる。
また、炭素系微粒子としてカーボンブラックを用いる場合には、一例として、カーボンブラック100部に対して、樹脂製バインダーが300~700部とすることができる。また、カーボンナノチューブまたはグラフェンを用いる場合には、一例として、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブ100部に対して、樹脂製バインダーが300~2500部とすることができる。
(電波吸収層の製造方法)
本実施形態の電波吸収体の電波吸収層は、例えば、磁性酸化鉄粉と樹脂製バインダーとを含んだ磁性塗料を作製してこれを所定の厚さで塗布し、乾燥させた後にカレンダ処理することによって形成することができる。
また、磁性塗料としては、磁性酸化鉄粉と、分散剤であるリン酸化合物と、バインダー樹脂とを高速攪拌機で高速混合して混合物を調製し、その後、得られた混合物をサンドミルで分散処理することでも磁性塗料を得ることができる。
このようにして作製された磁性塗料を用いて、電波吸収層を作製する。
たとえば、樹脂製の基材シート上に上記作製した磁性塗料を塗布する。樹脂シートとしては、一例として、シリコンコートによって表面に剥離処理をされた、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のシートを用いることができる。この樹脂シートの上に、テーブルコータ法やバーコータ法などの塗布方法を用いて、磁性塗料を塗布する。
その後、wet状態の磁性塗料を乾燥し、さらにカレンダ処理を行って、支持体上にシート状の電波吸収層を形成できる。電波吸収層の厚さは、塗布厚やカレンダ処理の条件等によって制御することができる。カレンダ処理が行われた後の電波吸収層を樹脂シートから剥離させて、所望の厚さの電波吸収層を得る。
なお、カレンダ処理は必要に応じて行えばよく、磁性塗料を乾燥させた状態で電波吸収材料の体積含率が所定の範囲内となっている場合には、カレンダ処理を行わなくても構わない。
また、電波吸収層の他の製造方法としては、磁性酸化鉄粉および/または炭素系微粒子と樹脂製バインダーとを混練し、得られた混練物に架橋剤を混合して粘度を調整して得られた磁性コンパウンドを、一例として油圧プレス機などを用いて165℃の温度でシート状に架橋・成型プレスし、その後、恒温槽などにおいて2次架橋処理を施して電波吸収層を形成することができる。
なお、成型は上述したプレス成型の他に、押出成型、射出成型によって行うことができる。具体的には、電波吸収物質と、樹脂製バインダーと、必要に応じて分散剤などを予め加圧式ニーダやエクストルーダー、ロールミルなどでブレンドし、ブレンドされたこれら材料を押出成型機の樹脂供給口から可塑性シリンダ内に供給する。なお、押出成型機としては、可塑性シリンダと、可塑性シリンダの先端に設けられたダイと、可塑性シリンダ内に回転自在に配設されたスクリューと、スクリューを駆動させる駆動機構とを備えた通常の押出成型機を用いることができる。押出成型機のバンドヒータによって可塑化された溶融材料が、スクリューの回転によって前方に送られて先端からシート状に押し出すことで所定の厚さの電波吸収層を得ることができる。
また電波吸収物質と、分散剤、バインダーを必要に応じて予めブレンドし、ブレンドされたこれら材料を射出成型機の樹脂供給口から可塑性シリンダ内に供給し、可塑化シリンダ内においてスクリューで溶融混練の後、射出成型機の先端に接続した金型に溶融樹脂を射出することで、成型体を形成することができる。
なお、樹脂製バインダーとしてゴム系の樹脂材料を用いた場合には、2つのロール間を移動させながら成形するロールtoロール法を用いることができる。ロールtoロール法を用いることで、幅が1m~3m程度のシート状の電波吸収層を作製することができ、上述した押し出し成型などの成型法と比較して、大面積の電波吸収層を容易に実現することができる。
[補強層]
補強層は、誘電体材料の成形体であり、主面の面積に対して厚さが小さい板状部材である。ただし、電波吸収層の電波入射側に配置されて電波吸収体として構成された場合には、その主面を側面として自立する必要があるため、自立可能な剛性を確保できる一定の厚みが必要である。一方で、補強層が重いと電波吸収体全体の重量が増してしまうため、一定の剛性を有しつつもなるべく軽量であることが好ましい。
このような要件を備える誘電体部材として、本実施形態にかかる電波吸収体では、ポリプロピレン(PP)により形成されたハニカムコア材のテクセル(商品名、岐阜プラスチック工業株式会社製)を補強層に好適に用いることができる。テクセルは、2層の薄い平面の間にハニカム構造が挟まれているため、軽量ながら高い強度(剛性)を有している。また、テクセルは、厚さ5mmから30mm、幅が最大1250mm、長さが最大2500mmまでのものが市販されており、電波吸収層の表面形状、大きさに合わせて所望の形状のものを容易に入手することができる。
なお、上記ハニカムコア材以外にも、本実施形態にかかる電波吸収体の補強層として、各種の樹脂製ボードを利用することができる。例えば、ポリプロピレンを発泡成形したパロニア(登録商標、三井化学東セロ株式会社製)は、ポリプロピレンを約3倍に押し出し発泡成形したものであり、合板の代替材料としてコンテナケースの板材として使用されるものである。このため、比重が軽く一定以上の強度を有する誘電体からなる板材として、補強層に有効に使用できる。
さらに、ポリプロピレンを用いたプラスチック製の段ボールであるプラダンも、軽量でありながら一定の剛性を有する部材として、補強層に用いることができる。
また、上述のハニカム構造を有する補強板材や発泡板材、プラスチック製段ボールは、いずれも板材の内部に空洞が存在することで軽量化が図られていることに加え、空気を包含することにより板材として誘電率が低いという特徴を有している。
本実施形態にかかる電波吸収体では、電波吸収層の電波が入射する側の表面に補強層が配置される。このとき、補強層の誘電率が十分に低いことによって、補強層の表面での入射電波の反射が低減され、より多くの電波が電波吸収層に入射して電波吸収層で吸収されることとなる。また、補強層の表面での反射が抑えられることにより、例えば、レーダーなどの送受信機器の電波特性を測定する際に、送信部から放射された電波が電波吸収体の表面で反射して受信部で受信されてしまうことを効果的に抑制することができ、高いS/N比での電波特性の測定を行うことができる。
また、空洞を有する部材ではないが、アクリル板やポリカーボネート板などのプラスチック製の板材も、補強層に用いることができる。ただし、空洞を有さない板材の場合は、比重が大きく、大面積の電波吸収層が固着される補強層としては重量が増してしまう。また、電波吸収体として自立させた場合に、自身の重量によって撓むおそれもあるため、比較的小面積の主面を有する電波吸収層とともに用いられる補強層として有効な材料である。
発明者らの検討によれば、補強層としては、曲げ破壊試験法による曲げ強度が3MPa以上あれば、ゴム材料をバインダーとして用いた電波吸収層のように、電波吸収層が容易に曲げられる柔軟なものであっても、上記補強層と組み合わせれば、電波吸収体として自立可能な実用十分な剛性が得られることが確認できた。
また、長期間使用しても電波吸収体の電波吸収特性が変化しないという観点から、補強層として用いられる誘電体材料は、吸水率が1.5%以下であることが望ましいと考えられる。
[自立可能性の測定]
上述したように、本実施形態にかかる電波吸収体では、その主面が略鉛直方向に配置された状態を維持できることをもって、自立可能であるとしている。そこで発明者らは、本実施形態にかかる電波吸収体の自立可能性の度合いを数値化して評価する評価方法を考案した。
図2は、本実施形態にかかる電波吸収体の自立可能性を評価する測定方法を説明するモデル図である。
図2に示す自立可能性の測定方法は、試料として幅25mm、長さ100mmの電波吸収体21を用いる。この試料21を、金属やプラスチックなどの硬質の台22上に、補強層2を下側にして、台22の縁に対して試料辺21の長さ方向が垂直方向となるように、かつ、台22の縁から長さa(=30mm)はみ出るように載置する。そして、台22上に残る長さb(=70mm)の部分に、重り23を載置する。重り23は、幅25mm、長さc=50mmの直方体であり、高さは任意であるが重量は5kgである。この重り23の端部を台22の縁と一致するように配置する。試料21上に重り23を載置した状態で、室温(=25℃)環境下で10分間放置する。
10分間経過した後、試料21の上面の先端部分(図中B’)の高さと、試料21が変形しなかった場合のBの高さ(台22の端部における試料21の上面Aと同じ高さ)との差Δを測定する。
このようにして得られた、電波吸収体試料の変形度合いを示すΔ値が、0.5mm以下である場合には、自立可能な状態であると評価する。
[電波吸収体の測定結果]
以下、本実施形態にかかる電波吸収体を実際に作製して、電波吸収特性や自立可能性を測定評価した検討内容を説明する。
<電波吸収層>
電波吸収層として、磁性酸化鉄粉としてストロンチウムフェライト磁性粉を用い、炭素系微粒子の種類を変えたものを作製した。なお、バインダーは、いずれもシリコーンゴムを用いた。
電磁波吸収層は、磁性コンパウンドを所定の厚さでプレス成型処理することによって作製した。磁性コンパウンドは、磁性酸化鉄粉と、ゴム製バインダーと、炭素系微粒子とを混練し、得られた混練物に架橋剤を混合して粘度を調整して得た。このようにして作製された磁性コンパウンドを、油圧プレス機を用いて温度165℃でシート状に架橋・成型し、さらに恒温槽内において、温度170℃で2次架橋処置を施して、それぞれ下記に示す厚さの所望する電波吸収層を得た。
磁性コンパウンドを形成する際に用いた磁性酸化鉄粉と炭素系微粒子、およびゴム製バインダーの材料と量は以下のとおりとした。
電波吸収層1
磁性酸化鉄 ストロンチウムフェライト磁性粉 65重量部
炭素系微粒子 カーボンブラック 1.5重量部
バインダー シリコーンゴム:KE-541-U 33重量部
架橋剤 0.5重量部
電波吸収層2
磁性酸化鉄 ストロンチウムフェライト磁性粉 65重量部
炭素系微粒子 カーボンナノチューブ 1.5重量部
バインダー シリコーンゴム:KE-541-U 33重量部
架橋剤 1重量部
電波吸収層3
磁性酸化鉄 ストロンチウムフェライト磁性粉 65重量部
バインダー シリコーンゴム:KE-541-U 34重量部
架橋剤 1重量部
電波吸収層4
炭素系微粒子 カーボンブラック 6重量部
バインダー シリコーンゴム:KE-541-U 92重量部
架橋剤 2重量部。
上記電波吸収層の各材料として、ストロンチウムフェライト磁性粉は、平均粒径2.2μm、BET値が1.5m2/gのものを用いた。カーボンブラックは、一次粒径34nm、BET値が1400m2/gのライオンスペシャリティケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC600JD(製品名)を用いた。カーボンナノチューブは、繊維径150nm、BET値が13m2/gの昭和電工株式会社株式会社製VGCF-H(製品名)を用いた。
バインダーとして用いたシリコーンゴムKE-541-U(製品名)は、信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムである。また、架橋剤としては、2.5ジメチル-2.5ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン(信越化学工業株式会社製のC-8A(製品名))を用いた。
補強層としては、上述したポリプロピレン製のハニカムコア材(テクセル(商品名、岐阜プラスチック工業株式会社製))の厚さ9.7mmのもの(補強層1)と厚さ7.7mmのもの(補強層2)、ポリプロピレンの発泡成形体(パロニア(登録商標、三井化学東セロ株式会社製))の厚さ6.0mmのもの(補強層3)、厚さ10.0mmのアクリル板(補強層4)、厚さ10.0mmのプラダン(補強層5)を用意した。
これら電波吸収層1~4と、補強層1~5を組み合わせた電波吸収体の実施例1~8と、補強層を有しない比較例1とについて、それぞれ自立可能性評価値(Δ)と、電波吸収体の電波吸収特性として、補強層の表面での反射減衰特性(反射減衰量)と、電波吸収体に入射した電波が電波吸収体を透過する際の減衰量(透過減衰量)を測定した。
各実施例の具体的な組み合わせ内容は、実施例1が電波吸収層1と補強層1、実施例2が電波吸収層1と補強層2、実施例3が電波吸収層1と補強層3、実施例4が電波吸収層3と補強層1、実施例5が電波吸収層1と補強層4、実施例6が電波吸収層2と補強層1、実施例7が電波吸収層1と補強層5、実施例8が電波吸収層4と補強層1を組み合わせ、それぞれ、幅25mm、長さ100mmのものを、両面テープで貼り合わせて電波吸収体の試料を構成した。また、比較例1では、電波吸収層として電波吸収層1を用いた。
なお、電波の反射減衰量と透過減衰量は、いずれもフリースペース法を用いて測定した。具体的には、アンリツ株式会社製のミリ波ネットワークアナライザーME7838A(製品名)を用いて、送信アンテナから誘電体レンズを介して電波吸収体の前面側である電波入射面側、すなわち、補強層が配置されている側に76.5GHzの入力波を照射した。このとき、電波吸収体の前面で反射される表面反射波と、電波吸体の背面側、すなわち、電波吸収層側に突き抜けてくる透過波とを、それぞれ受信アンテナを配置して測定した。送信アンテナから照射される電波の強度と、受信アンテナで受信された電波の強度とをそれぞれ電圧値として測定し、「照射波-反射波」から電波吸収体表面での反射減衰量を、「照射波-透過波」から透過減衰量を、それぞれdBで求めた。
上記測定結果を、表1に示す。
表1に示されるとおり、実施例1から実施例8のいずれにおいても、自立可能性評価値Δは、0.5以下で、十分な自立性を有していると判断できる。また、電波吸収特性を示す電波吸収体を透過する際の透過減衰量は、いずれの実施例の場合も、-10dB以上と、実用的に十分な電波吸収特性を有することが確認できた。
一方、補強層を有しない比較例1の電波吸収体は、自立可能性評価値Δが12mmと極めて大きく、電波吸収層単独ではその側面を鉛直方向に向けて立てることが不可能であることがわかる。
このように、本実施形態にかかる電波吸収体は、電波吸収層の電波入射側に補強層を備えることで自立可能となって、所望する位置に容易に配置することができる取り扱い性に優れた電波吸収体が得られることが確認できた。
また、上述した誘電体からなる補強層を電波吸収体の電波が入射する面側に配置することによって、電波吸収体の表面での反射減衰量が向上する効果についても確認できた。
具体的には、表1において、同じ電波吸収層(電波吸収層1)を有する実施例1、実施例2、実施例3、実施例5、実施例7の電波吸収体の反射減衰量と、補強層を有しない比較例1の電波吸収体の透過減衰量、すなわち、電波吸収層の表面での反射減衰量(-5.7dB)とを比較すると、補強層表面での反射減衰量が大きいことがわかる。
このように、電波吸収体として、電波吸収層の電波入射側面に自立可能性を高めるための補強層を配置することによって、電波吸収体の表面での反射も抑えることができる。発明者らの検討によれば、電波吸収体の前面である補強層表面での反射減衰量(dB)をA、電波吸収体の背面である電波吸収層表面での反射減衰量(背面側から電波を照射した場合に電波吸収層の表面で反射される電波における減衰量)(dB)をBとしたとき、比A/Bの値が1.5以上6.5以下であることが好ましいことが確認できた。
[電波吸収装置]
以下、本実施形態にかかる電波吸収体を用いて不所望な電波を吸収する電波吸収装置について、具体例を示して説明する。
上述したように、本願で開示する電波吸収体は、電波吸収層とともに所定の厚さと剛性とを備える補強層を備えているため自立可能である。このことを利用して、例えば、測定対象機器の電波特性を測定する場合には、壁などで反射した不所望な電波と測定機器との経路上に電波吸収体を配置することで、測定の対象となる測定対象機器からの電波以外の電波を測定器が捉えてしまうことを効果的に防止して、高いS/N比での電波特性の測定を行うことができる。
なお、このように、不所望な電波と測定器との経路上に電波吸収体を配置する場合、電波吸収体単体でも自立可能ではあるが、電波吸収体を所望する位置に容易に移動させてその配置位置や配置方向を維持させることを考えると、電波吸収体単体であるよりも、電波吸収体に脚部や支柱などの支持部材を固着した電波吸収装置とすることで実用性が大幅に向上するため好ましい。なお、支持部材は、電波吸収体の位置、電波入射面の向きや傾斜角度など、電波吸収体を不所望な電波を効果的に吸収できる状態で維持することができる部材であればよい。このため、支持部材としては、上記例示した脚部や支柱などの他に、天井面や壁面から電波吸収体を吊り下げるものや電波吸収体の端部を挟み込むようなものなど、その形態は適宜のものを選択できる。
ところで、本願で開示する電波吸収体は、電波吸収層の電波入射面側に誘電体により形成された補強層が配置されているため、上記実施形態で説明したように、電波吸収体に入射する電波の一部が補強層の表面で反射される。発明者らは、この補強層の表面での電波の反射特性が、電波吸収体に入射する電波に対する電波入射面の傾斜角度によって変化することを見いだした。また、この知見に基づいて、電波吸収体での電波吸収特性がより良くなる電波入射面の傾斜角度についての検討を行った。以下、その内容を説明する。
[電波吸収体の傾斜角度と電波吸収特性との関係について]
図3は、本実施形態にかかる電波吸収装置の一例として、電波吸収体を傾斜させている状態を示す図である。
図3に例示する電波吸収装置30は、平板状の電波吸収体31と、この電波吸収体31の両側の辺の部分それぞれに、電波吸収体31の主面である電波入射面に対して直交して延在するように取り付けられた2枚の三角形の支持部材32とで構成されている。このように支持部材32を設けることで、電波吸収体31の電波入射面を所定の角度で傾斜させた状態を維持しながら、電波吸収装置30を移動させて所定の位置に所定の向きで容易に配置することできる。
なお、以下では、本実施形態にかかる電波吸収装置30における電波吸収体31の傾斜角度とは、吸収される電波34の進行方向(電波吸収体31への入射方向)と、この電波の進行方向34上に位置する電波吸収体31の電波入射面側の部分31aの法線の方向(Z方向)とがなす角度、すなわち図3中にθとして示される角度を言うものとする。そして、本願で開示する電波吸収装置では、電波吸収体の電波入射面側の表面の部分における放線の方向と電波の進行方向とが所定の角度で交わること、すなわちθが0°ではないことを特徴とするものである。
ここで、吸収される電波の進行方向34とは、電波の放出源(図3の場合は装置33)と電波吸収体31との間の距離が最短となるように結んだ直線の方向と理解することができる。さらに、電波吸収体31の電波入射面側の部分31aは、上述したように求めた電波の進行方向に位置する小面積の部分であり、その大きさは、一例として、電波の放出源33と電波吸収装置30との間の距離の100分の1程度の直径を有する円形部分(距離が3mの場合、直径3cmの円形部分)と考えることができる。
以上の定義に基づいて、例えば、図3に示すように、電波吸収体31で吸収される電波34が電波の放出源である機器33から水平方向に放出されている場合は、電波吸収体31の傾斜角度θは、平板状の電波吸収体31の電波入射面と鉛直方向とのなす角度と一致する。
また、電波吸収体が平板状ではない場合、すなわち電波吸収体の表面が平面ではなく曲面である場合も、同様に、吸収される電波の進行方向における電波吸収体の電波入射面側の部分における法線方向と電波の進行方向とのなす角度を電波吸収体の傾斜角度θと規定する。
なお、電波吸収体の表面が曲面である場合としては、その湾曲方向が水平方向(図3中のX方向)の場合、または、垂直方向(図3中のY方向)の場合、もしくは、X方向およびY方向のいずれでもない方向の場合が考えられる。さらには、略球面の場合、すなわち、X方向とY方向とのいずれに対しても湾曲している場合も考えられる。しかし、これらいずれの場合においても、電波の進行方向に位置する電波吸収体の電波入射面側の部分の法線方向を定めることができるため、上記の定義によって電波吸収体の傾斜角度を決定することができる。
また、電波吸収体の表面が湾曲した曲面である場合として、電波の入射する側に凸である凸面形状の場合と、電波の入射する側に凹である凹面形状の場合とが考えられるが、いずれの場合でも電波吸収体の表面の部分の法線方向を把握することができるため、上記の定義で電波吸収体の傾斜角度を決定することができる。
さらに、電波吸収体の表面が凹凸形状や波形の形状であるなど高さが異なっている場合は、その高さの平均値を用いて平面としての電波吸収体の表面を規定し、電波の進行方向における電波入射面側の部分の法線方向を定めることで、電波吸収体の傾斜角度を決定することができる。
なお、ここで検討する電波吸収体の電波特性である反射減衰量は、電波を送信する装置から送信した電波の強度に対して、電波吸収体の表面で反射して電波を受信する装置で受信した電波の強度がどの程度減少しているかを示す数値(dB)であり、その測定方法を上述したように、電波を送信する装置と反射した電波を受信する装置とが同じ位置にある状態で測定されるものとなる。電波は直進するが放射状に広がっていくことを考えると、電波吸収体の表面が平面である場合と比較して、表面が湾曲した形状や凹凸が形成されている形状である方が、電波吸収体の表面で反射した電波が散乱して送信源の位置に戻る割合が低減する。このため、電波吸収体の電波入射面側の表面での反射波を低減して、反射減衰量を大きくするためには、電波の進行方向にある電波吸収体の表面の部分は、平面であるよりも少なくとも一方向に湾曲した湾曲面であることが好ましい。すなわち、電波吸収体の表面の部分が傾斜した平面であるよりも、表面の部分の法線方向が電波の進行方向に対して傾斜した曲面である方が、より一層反射減衰量を低減できると考えられる。
<電波吸収体の傾斜角度による電波吸収特性の変化>
発明者らは、実施例として、異なる構成の補強層を備えた3種類の電波吸収体を実際に作製し、傾斜角度θを変化させて電波吸収特性がどのように変化するかを測定した。
図4は、電波吸収体の傾斜角度と電波吸収特性との関係を測定した測定システムを示す模式図である。
電波吸収体の傾斜角度における電波特性の変化は、上記電波吸収体の実施形態で説明したものと同じくアンリツ株式会社製のミリ波ネットワークアナライザーME7838A(製品名:符号41)を用いて、フリースペース法で測定した。
具体的には、図4に示すように、送信アンテナ42から誘電体レンズ43を介して電波吸収体40の前面側である電波入射面側、すなわち、補強層が配置されている側に76.5GHzの入力波(符号46)を照射した。このとき、電波吸収体40の前面で反射される表面反射波S11(符号47)を、誘電体レンズ43を介して受信アンテナ(符号42)で受信した。また、電波吸収体40の背面側、すなわち、電波吸収層側に透過する透過波S21(符号48)を、背面側に配置された誘電体レンズ44と受信アンテナ45で測定した。
そして、電波吸収体40の角度θを0°すなわち垂直に配置された状態から、20°まで徐々に傾斜させながら、送信アンテナ42から照射される電波の強度と受信アンテナ42、45で受信された電波の強度とをそれぞれ電圧値として測定し、電波吸収体表面での反射減衰量と、電波吸収体を透過した透過減衰量とを、それぞれdBで求めた。
図5から図7に、それぞれの電波吸収体における傾斜角度と反射減衰量、傾斜角度と透過減衰量についての測定結果を示す。なお、図5~図7の各グラフにおいて、電波吸収体の傾斜角度の変化に対する反射減衰量の変化を各図の(a)として表し、電波吸収体の傾斜角度の変化に対する透過減衰量の変化を各図の(b)として表している。また、それぞれのグラフは、横軸が電波吸収体の傾斜角度θ(°)を、縦軸が電波減衰量(dB)を示している。
図5は、補強層として上述したポリプロピレン製のハニカムコア材(テクセルT10-2000(商品名、岐阜プラスチック工業株式会社製、厚さ9.7mmのもの:補強層1))を用い、電波吸収層として上述の「電波吸収層1」を用いた場合(実施例1の電波吸収体と同じもの)の測定結果を示している。
図5(a)に示すように、照射波の偏波方向がTE(電界)波を示す実線51、偏波方向がTM(磁界)波を示す破線52のいずれの場合も、反射減衰量は傾斜角度が0°、すなわち、電波吸収体の表面に垂直に入射した場合と比べて、傾斜角度が20°までの間は、より反射減衰量が大きくなる。しかし、傾斜角度が大きくなるにつれて、反射減衰量の値は一律に大きくなっていくのではなく、反射減衰量の値は小さく波打つように上下し、より大きな反射減衰量が得られる範囲が存在していることがわかる。特に、傾斜角度5°付近と13°付近では、TE波の反射減衰量が50dB以上となるなど、極めて大きな電波吸収特性を示すことが確認できる。
一方、透過減衰量の変化を示す図5(b)では、傾斜角度0°~20°の間でほぼ変化がなく、照射波の偏波方向がTE(電界)波を示す実線53、偏波方向がTM(磁界)波を示す破線54のいずれの場合も、-15dB程度の一定の値を示している。
図6は、補強層として、中に空気が入った微細な円筒状の突起が並んで形成されているエアーキャップ(気泡緩衝材)の上下を樹脂製の板で挟んだ樹脂製ボード(プラパール(登録商標)PGPPZ-200(商品名、川上産業株式会社製、厚さ9mmのもの))を用い、電波吸収層として上述の「電波吸収層1」を用いた場合の測定結果を示している。
図6(a)に示すように、照射波の偏波方向がTE(電界)波を示す実線61、偏波方向がTM(磁界)波を示す破線62のいずれの場合も、反射減衰量は傾斜角度が0°、すなわち、電波吸収体の表面に垂直に入射した場合と比べて、傾斜角度が20°までの間は、より反射減衰量が大きくなる。また、傾斜角度が大きくなるにつれて、反射減衰量の値は小さく波打つように上下しながら、全体的に大きな数値へと変化している。なお、傾斜角度が5°~7°のあたりに、電界を示す符号61の実線と電界を示す符号62の点線との双方がともに大きな値となる領域が存在していることがわかる。
一方、透過減衰量の変化を示す図6(b)では、図5(b)に示したポリプロピレン製のハニカムコア材での測定結果と同様に、傾斜角度0°~20°の間でほぼ変化がなく、照射波の偏波方向がTE(電界)波を示す実線63、偏波方向がTM(磁界)波を示す破線64のいずれの場合も-15dB程度の一定の値を示している。
図7は、補強層として、ポリプロピレン製のプラスチック段ボールで、一方向に配列された垂直壁を上下の平板で覆ったものが並んで形成されている樹脂製の中空構造板(ダンプレート(登録商標)J-10-180(商品名、宇部エクシモ株式会社製、厚さ10mmのもの))を用い、電波吸収層として上述の「電波吸収層1」を用いた場合の測定結果を示している。
図7(a)に示すように、照射波の偏波方向がTE(電界)波を示す実線71、偏波方向がTM(磁界)波を示す破線72のいずれの場合も、反射減衰量は傾斜角度が0°、すなわち、電波吸収体の表面に垂直に入射した場合と比べて、傾斜角度が20°までの間は、より反射減衰量が大きくなる。図7(a)に示す中空構造版を補強層として用いた場合は、傾斜角度の変化による反射減衰量の変化が一番大きく、波打つように変化しているが、傾斜角度が4°~7°のあたりに、電界を示す符号71の実線と電界を示す符号72の点線との双方がともに大きな値となる領域が存在していることがわかる。
一方、透過減衰量の変化を示す図7(b)では、図5(b)に示したポリプロピレン製のハニカムコア材での測定結果や、図6(b)に示したエアーキャップを用いた樹脂製ボードと同様に、傾斜角度0°~20°の間でほぼ変化がなく、照射波の偏波方向がTE(電界)波を示す実線73では12dB程度、偏波方向がTM(磁界)波を示す破線74では-14dB程度の一定の値を示している。
このように、電波吸収体の電波入射面側に配置された補強層の表面で反射する電波の反射減衰量は、いずれの補強層の場合でも、傾斜角度が2°以上20°以下の角度で傾斜している方が、傾斜していない状態(傾斜角度が0°)の場合よりも大きくなることがわかる。また、補強層の内部の空間の形状によって反射減衰量の変化の大きさは異なるものの、反射減衰量は傾斜角度に応じて漸増するのではなく、反射減衰量が大きくなる傾斜角度の領域と、反射減衰量が比較的小さくなる傾斜角度の領域とが存在することが確認できた。図5~図7に示すように、傾斜角度が3°以上7°以下の領域では、反射減衰量が大きくなることが確認できた。
このように傾斜角度によって反射減衰量が変化しながら、全体として減衰量が大きくなる理由は定かではないが、電波がハニカムコア材や中空構造、気泡を有する構造物を通過する場合、誘電率が異なる各材料と空気を通過する距離が傾斜角度によって異なるため、傾斜角度により波打ちながら反射減衰量が大きくなる方向に変化したものと推察する。
以上のとおり、補強層の構成によって、特に、補強層に含まれる空気の配置状態によって、入射する電波の角度に対する反射減衰量の変化の傾向が異なることが確認できた。なお、図5で示したハニカムコア材や、図7に示したプラスチック段ボールのように、上下の平板の間の区切られた空間が厚み方向に分割されていない構成である方が、図6に示したエアーキャップの樹脂ボードのように、厚み方向に限られた空間内に空気が閉じ込められている構成のものよりも、傾斜角度に対する反射減衰量の増減の度合いが激しくなるように考えられる。
このため、上下の平板の間に、厚み方向に分割しない区切り部材が配置されている場合は、ハニカム状、一方向への直線状の他に、縦横に直角に交わる格子状、菱形を形成するように斜めに交わる格子状、複数の円柱が並んでいる形態のものなど、区切り部材の形状にかかわらず、反射減衰量の傾斜角度による変化の傾向が類似することが想定される。また、例えば、上面の板材と下面の板材との双方に配置された錐形部材の先端同士がつなぎ合わされて区切り部材を形成するものや、厚み方向に波打つ形の区切り部材が配置されたものの場合は、図6に示す樹脂ボードのように、傾斜角度における反射吸収特性の変化が小さい傾向が現れることが推定される。
また、補強層が発泡体によって構成されている場合は、傾斜角度の変化に対する反射減衰量の変化の度合いが最も小さくなると考えられるが、傾斜角度を2°以上20°以下とすることで、反射減衰量を大きくすることができると考えられる。
以上説明したように、本実施形態に示す電波吸収体は、樹脂製バインダーに20GHz~300GHzの周波数帯域で磁気共鳴する磁性酸化鉄と炭素系微粒子との少なくともいずれか一方が分散混入された電波吸収層と、誘電体材料により構成され電波吸収層の電波の入射面側に配置されたた補強層とを備えることで、20GHz~300GHzの周波数帯域の電波を良好に吸収するとともに、電波吸収体として自立可能である。このため、例えば、電波特性の測定時に、不要電波を遮る位置に衝立のように配置することで測定機器や測定対象の機器を不所望な電波から守ることができ、ノイズの少ない良好な環境下での電波特性の測定を行うことができる。
また、本実施形態に示す電波吸収装置は、本願で開示する電波吸収体を用いた電波吸収装置であって、電波吸収体と、電波吸収体の前記電波入射面側の表面を所定の角度で維持可能な支持部材とを備え、吸収する電波の進行方向上に位置する電波入射面側の表面の部分の法線方向と電波の進行方向とが所定の角度で交わるように配置されている。このため、電波吸収体を所定の傾斜角度で傾斜させた状態を容易に維持することができ、補強層の表面における電波の反射を抑えて、良好な反射減衰特性を有し、所望する位置に容易に配置することができる電波吸収装置を実現することができる。
なお、上記実施形態において、電波吸収体の電波吸収層と補強層の主面が同じ大きさの矩形状のものとして説明したが、電波吸収層と補強層の主面の形状や大きさは必ずしも同一である必要は無く、電波吸収体で遮りたい不所望な電波の経路を十分に塞ぐことができる形状であれば、どちらかが他方よりも大きく、一部がはみ出すようになっていても問題は無い。また、電波吸収層の平面形状が、突起や凹所、空所が形成された複雑なものである場合であっても、補強層がその全体を略鉛直方向に維持できる形状であれば、電波吸収よりも大きな矩形、円形、多角形等の平面形状を持つ補強層を用いてもかまわない。
本願で開示する電波吸収体は、20GHzから300GHzの電波を良好に吸収し、かつ、自立可能であるため、吸収したい電波の経路に容易に配置することができる。また、電波吸収体を所定の傾斜角度で傾斜した状態を維持できる電波吸収装置は、反射層の表面での電波の反射を低減した状態での使用を容易に行うことができる。このため、不所望な電波の影響を抑えた良好な空間を形成することができる電波吸収部材として有用である。
1 電波吸収層
1a 磁性酸化鉄粉
1b 炭素系微粒子
1c 樹脂製バインダー
2 補強層
10 電波(入射波)
30 電波吸収装置
31 電波吸収体
32 支持部材

Claims (12)

  1. 電波吸収層と、前記電波吸収層の電波入射面側の表面に配置された補強層とを備えた電波吸収体であって、
    前記電波吸収層は、20GHz~300GHzの周波数帯域で磁気共鳴する磁性酸化鉄粉と炭素系微粒子との少なくともいずれか一方と、樹脂製のバインダーとを含み、
    前記補強層は誘電体材料により構成され、
    前記電波吸収体が、主面に対する厚みが小さい板状であり、かつ、自立可能であることを特徴とする、電波吸収体。
  2. 前記磁性酸化鉄粉が、マグネプランバイト型フェライトの粉体、または、イプシロン磁性酸化鉄の粉体のいずれかである、請求項1に記載の電波吸収体。
  3. 前記炭素系微粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンの少なくとも1種である、請求項1または2に記載の電波吸収体。
  4. 前記樹脂製バインダーがゴム系部材である、請求項1~3のいずれかに記載の電波吸収体。
  5. 前記電磁波吸収体の自立可能性試験において、電波吸収体試料の変形度合いを示すΔ値が、0.5mm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. 前記電波吸収体を透過する透過電波に対する電波減衰量が-10dB以上である、請求項1~5のいずれかに記載の電波吸収体。
  7. 前記補強層が、ハニカム構造を有する補強板材、発泡板材、プラスチック製段ボール、および、プラスチック製板材から選ばれる1種を含む、請求項1~6のいずれかに記載の電波吸収体。
  8. 前記補強層が、ハニカム構造を有する補強板材、発泡板材、プラスチック製段ボールのいずれかを含む、請求項1~6のいずれかに記載の電波吸収体。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載された電波吸収体を用いた電波吸収装置であって、
    前記電波吸収体と、前記電波吸収体の前記電波入射面側の表面を所定の角度で維持可能な支持部材とを備え、
    前記電波吸収体が、吸収する電波の進行方向上に位置する前記電波入射面側の表面の部分の法線方向と前記電波の進行方向とが所定の角度で交わるように配置されていることを特徴とする、電波吸収装置。
  10. 前記表面の部分が少なくとも一方向に湾曲した湾曲面である、請求項9に記載の電波吸収装置。
  11. 前記表面の部分の放線方向と前記電波の進行方向とが交わる角度が2°以上20°以下である、請求項9または10に記載の電波吸収装置。
  12. 前記交わる角度が3°以上7°以下である、請求項11に記載の電波吸収装置。
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