明細書
最尤判定遅延検波方法及びそれを使った遅延検波器
技術分野
この発明は、 ディジタル信号がシンボル周期ごとに位相差系列として伝送され 信号を遅延検波して復号系列を得る遅延検波方法に関し、 特に最尤系列推定を用 いた遅延検波方法及びそれを使つた遅延検波器に関する。
従来の技術
位相変調波の復調には同期検波や遅延検波が広く用いられている。 同期検波で は、 受信側で搬送波を再生して、 それを基準信号として受信波の位相を測定し、 送信符号を推定する。 この場合、 絶対位相が未知であるので、 送信側では位相の 変化に情報を乗せる差動位相変調 (D P S K ) を用いるのが一般的である。 再生 した基準信号は雑音などで擾乱を受けていないので、 優れた誤り率特性が得られ るのが特徴である。
一方、 遅延検波としては位相遅延検波と直交遅延検波が用いられている。 遅延 検波では、 基準波として 1 シンボル時間だけ遅延した受信波を用いる。 従って、 搬送波再生回路が不要なことから、 検波回路が簡単になること、 高速追随性に優 れることから時分割多重通信 (T D M A) におけるバース ト信号の受信に適して いるという利点がある。 しかしながら、 受信信号を 1 シンボル時間だけ遅延させ た信号を基準信号としているため、 基準信号は熱雑音などによる擾乱の影響を受 けることになり、 誤り率特性が同期検波に比較して劣化するという欠点があつた。 したがって、 検波回路の複雑さやバース ト信号受信かどうかなどを考慮して、 ど ちらの検波方式を用いるかを決定していた。
4相 D P S Kの場合、 ビッ ト誤り率 0 . 1%を確保するために必要な 1ビッ トぁ たりの受信エネルギー対雑音電力密度比 E b / N o の、 1 シンボル遅延検波と同 期検波差動復号との差は 1 . 8 d Bになる。 この差を縮めるために直交遅延検波出 力 (遅延素子と乗算器より構成される) を対象に、 最尤系列推定を行う遅延検波 が提案されている。 文献 1 : D. Divsalar and M. K. Simon, "Multiple-symbol differential detection of PS , " IEEE Trans. Commun. , vol. 38, PP. 300-308. March 1990. また、 ビタビアルゴリズムを用いて逐次的に最尤系列推定を行う方
法も提案されている。 文献 2 : D. Makrakis and . Feher, "Optimal noncoherent detection of PSK singals, " Electronics Letters, vol.26, p.398-400, March 1990.
Nシンボル位相差系列 Δ Φ„ (η=1,2,···,Ν) が送信されているものとして、 これを直交遅延検波し、 その送信系列を最尤推定するものとする。 時間 (η-1)Τ≤ t <nTで受信された M相 D P S K信号は、 複素表示を用いて次式
z (t )=(2 Es/T)1/2exp j ίφ,+ θ ]+w( t ) (01)
のように表わせる。 ここで、 0η = { 2τηπ/Μ; m=0, Ι,-, -l} は変調位相、 Es は 1 シンボルあたりのエネルギー、 Tは 1 シンボル長、 は受信波と受信機 局部発振波との位相差、 w(t)は受信機雑音である。 φ =φ η_φη—、 は送信 された η番目の位相差である。 z (t )をフィルタ リ ングした後、 シンボル周期で サンプリ ング (標本化) する。 得られた標本系列を {ζη; η=0,1,···,Ν} で表わ す。 文献 1の方法では次式のメ ト リック
Λ = I ζΝ + ζΝ-ιβχρ j Δ Φ Ν+ζΝ-2βχρ j (Δ Ν+厶 Φ Ν - 1 ) + ···
+ Zoexp j (Δ 0Ν+Δ 0Ν- … +△ ,) I 2 (02)
を最大とする系列を選択する。 式 (02) は次式のように変形できる。
Ν η
Λ = Σ Re [ζ„{∑ ζη-, exp j (△ ø η+Δ 4 +… +Δ ø n i)}*]
η=1 q=l
(03) ここで Re は複素数の実数部を表し、 0 *は複素共役を表す。 式 (03) において qに関する加算の上限を L (<N) とし、
し
λ n=Re [ζΛΣ ζ„-, exp j (Δ Φ Π+Δ Φ + -+Δ φ„-,+.)}*]
q=l
(04) をブランチメ ト リ ックとする ML-' 状態ビタビアルゴリズムにより逐次的に位相 差系列を推定するのが文献 2の方法である。
つまり文献 1の最尤系列推定は、 N+ 1個の送信シンボル周期 Tごとの受信波 サンプルを用いて、 Nシンボルからなる系列の全てに対してメ ト リックを計算し、 それが最大となる系列を出力する。 従って、 メ ト リ ック演算の回数は MN 回とな
る。 これを時点毎の演算回数に換算すると、 MN ZNとなる。
一方、 文献 2のビタビ復号を用いた最尤系列推定は、 ML— 1 個の位相差系列状 態を持ち、 各時点毎に最も確からしいパスを選択する。 各状態には一時点前の M L-' 個の状態の内の M個の状態からパスが入るので、 メ ト リックの演算回数は M い' M = ML となり、 送信シンボル系列の長さには依存しない。 従って、 メ ト リック演算量は文献 1 に比べて大幅に低減できる。 し力、し、 それでも、 変調の多 値数 Mが増大するにつれて演算処理量が指数関数的に増大するという欠点があつ この発明の目的は、 本来の遅延検波の高速追随性という優れた特徴を確保しつ つ、 前述の最尤系列推定法より少ない演算量で、 それと同等またはそれより改善 された誤り率特性を得ることができる、 或いは同等の演算量で著しく誤り率特性 を改善できる最尤復号遅延検波方法及びそれを使った遅延検波器を提供すること ある。
発明の開示
この発明の第 1の観点によれば、 送信シンボル周期 Tで時点 n Tにおける局部 信号を基準にして受信波の位相 η を検出し、 Νシンボル位相差系列の候補 {△ ø II =1,2,···, Ν}のうちの部分系列(△ø , i =n+l-q, n+2-q, ···, n}を用いて、 検出位相 ψη-, にその部分系列 Φ , i =n+l-q, η+2-q, ·'·, n} の和を加算 して位相 Ψπ の推定値を求め、 その推定値と位相 Ψπ との差 n(q)の絶対値の V 乗 (Vは任意の 1以上の実数) を qシンボル位相差検波のメ トリックとし、 この メ トリックを q = 1から nまでの n個を加算してブランチメ トリック ; I„ = I „(1) I v+ I n(2) I v十… + I μΜ I " を求め、 このブランチメ ト リ ックを π = 1から n==Nまで加算して位相差系列の候補 {Δ Φ η =1,2,···,Ν} に対する パスメ ト リック Λ =ス , + λ 2 +…+ λΝ を求め、 このバスメ トリックを最小と する Νシンポル位相差系列を復号系列として出力する。
この発明の第 2の観点によれば、 Μ相 D P S Κ変調波を位相検波して得た位相 信号のシンボル毎の位相差の系列を、 MQ-' 状態のビタビアルゴリズムにより逐 次推定して復号する。 即ち、 時点(n-l)Tにおける MQ— ' 個の状態のうちの一つの 状態 Sn-, = (A0 i ; i =n-i,n- 2,"',n-Q+l}を出発点として上記パスメモリ内の
生き残りパスを L一 Q時点トレースバックして、 状態 S n- , を最終状態とする上 記生き残りパスに沿った系列(△ ; i =i,2, ···,レ 1} を求め、 その系列に、 時点 n Tの位相差 Δ 0 η を最終シンボルとして加えて候補系列 {Δ0 η ; i = 0, 1,2.-,L-1} を構成する。 Lは L≥Qの予め決めた整数である。 上記候補系列 の部分系列 ; i =0,し…, q-1} の位相差の和に時点(n-q)Tの検出位相 Ψ„-, を加算して位相 の推定値を求め、 上記推定値と上記位相 Ψη との差よ り位相誤差 n(q)を求める。 上記位相誤差 ^ (q)の絶対値の V乗を q = 1から L まで加算して、 時点(n- 1)Tの MQ一1 個の状態 S n-, の中から時点 n Tの状態 Sn への遷移可能な M個のブランチの確からしさを表すブランチメ トリック
I
v+ I "2) 1
v+…十 I μ Ι I
v
をそれぞれ求める。 時点 n Tの各状態に至る M個の上記ブランチメ ト リックス
(Sn-. →S„ ) を、 それぞれ上記メ トリックメモリから読みだした時点(n-l)T の対応する状態 Sn-, におけるパスメ トリック Λ (Sn-, ) に加算して、 M個の 上記対応する状態 Sn-, をそれぞれ経由する M個の候補系列のパスメ トリック Λ
(Sn I S„-,) を求め、 それらの大小を比較して最小値を与える状態 Sn-, 'を求 める。 この状態 Sn- は時点 nTの状態 S„ に至る最も確からしいバス (即ち生 き残りパス) の時点(n-l)Tの状態を表す。 この様にして時点 n Tの MQ一' 個の全 ての状態に対して生き残りパスのパスメ トリックを求め、 大小を比較し、 最小値 を与える状態 S„'を求める。 状態 S «'を出発点としてパスメモリを一定時点 DT だけトレースパックし、 到達した状態 Sn-D を構成する Q— 1個の位相差の 1つ である を復号シンボルとして出力する。
この発明の第 3の観点によれば、 シンボル周期 Τ毎に Μ相 DP SK変調された 受信波と同じ周波数の局部信号を基準として上記受信波を位相検波し、 シンボル 周期 Tでその検出位相 Ψη を出力し、 その検出位相 Ψη と、 それより Lシンボル 前までのそれぞれの時点で検出された位相 Ψη-, 、 ただし q = l,2,…,し、 との各 検出位相差 -Ψη-, をそれぞれ得る。 一方、 q— 1 シンボル前までのそれぞ れシンボルごとに判定された判定位相差を加算し、 、 ただ し q = 1,2,···,し、 ∑は i = 1から q— 1までの位相差の加算である、 を求め、 検 出位相差 η— Ψ π- と、 上記加算値 d と位相差候補 Δ φ„'の和との差// π
(q)の絶対値 I η— - {△ ø π' + S ,(q) } I あるいはその V乗を、 qシン ボル位相差検波のメ ト リックとして求め、 L個の位相差検波のメ トリ ックを加算 して上記位相差候補△ Φ η'に対するブランチメ ト リック; I n = I ^„(1 ) I … +
I L) l v を求め、 上記ブランチメ トリックを最小とする位相差候補を判定位 相差厶 „ として出力する。
図面の簡単な説明
図 1 はこの発明を位相遅延検波に適用した場合の遅延検波方法の第 1実施例を 説明するための状態遷移図。
図 2は第 1実施例を適用する位相遅延検波器のブ1 pック図。
図 3は位相遅延検波を使った第 2の実施例を説明するための状態遷移図。
図 4は第 1実施例の計算機シミ ユレーショ ンによるビッ ト誤り率特性を示すグ ラフ。
図 5は第 2実施例の計算機シミ ユレーシヨ ンによるビッ ト誤り率特性を示すグ ラフ。
図 6は位相遅延検波を使つた第 3の実施例を説明するための状態遷移図。
図 7は第 3実施例の計算機シミ ュレーショ ンによるビッ ト誤り率特性を示すグ ラフ。
図 8は直交遅延検波を使った第 4実施例の方法を適用する直交遅延検波器のブ 口ック図。
図 9は第 3または第 4実施例によるこの発明と系列長 Nを Lとした場合の文献 1及び 2に必要とされる計算量を比較する表。
図 1 0は位相遅延検波を使った第 5実施例を適用する位相遅延検波器のブ τπッ ク図。
図 1 1は第 5実施例の計算機シミュレーショ ンによるビッ ト誤り率特性を示す グラフ。
図 1 2は直交遅延検波を使った第 6実施例を適用する直交遅延検波器のブ πッ ク図。
図 1 3は第 6実施例の計算機シミ ュレーショ ンによるビッ ト誤り率特性を示す グラフ。
図 1 4は第 7実施例の計算機シ ミ ュ レーショ ンによるビッ ト誤り率特性を示す グラフ。
発明を実施するための最良の形態
まずこの発明を位相遅延検波に適用した実施例に付いて説明する。
( 1 ) 第 1の実施例
M相 D P S K変調による前回送出の変調位相 に対し、 今回送信すべき情 報に対応した位相偏移量△ 0n =2m^r/M (m = 0, Ι,-,Μ-l) を付加した位相 0η- ,+ Δ0„を今回送出の変調位相 ø η として生成することを順次繰り返すことによ り Νシンボルの位相差 ¾列 {Δ0η ; η=1,2,···,Ν} が送信されているものとす る。 時間(n-l)T≤ t <ηΤで受信されたこの Μ相 DP SK信号は、 前述のように局 部信号の位相を基準にすると、
z (t )=(2 Es/T),/2exp j (ø„+ Θ ) + w(t) ( 1 ) のように表わせる。 ここで、 Φη = 2 ιηττ/Μ (m = 0,l,'",M- 1) は変調位相、 Es は 1 シンボルあたりのエネルギー、 Tは 1 シンボル長、 ( は受信波と受信機 局部発振器出力との位相差、 w(t) は受信機雑音である。 Δ0„ =φ, -φ,-ι は送信された η番目の位相差である。 受信波 z (t )をフィルタリングして帯域外 雑音を除去した後、 局部発振器の局部信号との位相差 Ψη を検出する。 この位相 差 は
で与えられる。 ここで、 ??η は熱雑音に起因する位相雑音である。 また、 mod27r はモジュロ演算であり、 (X +27Γ )mod27r = X となる (ただし、 | χ | ≤ ττ) 。 今、 図 1 に示すように時点 0〜Νでそれぞれ検出された Ν+ 1個の位相 Ψ。 〜Ψ Ν の系列が得られたものとする。 送信側における各シンボル送信時点の DP SK による送信位相は
Φ N = 9 N - 1 +厶
Φ N-1 = 0 Ν-2 + Δ φ Ν- I
Φ H-l + i = Φ tl-i + ^ Φ -i+ \
φ、 = φ n+ Φ \ ( 3 )
で表される。 式 (3) から次式が成立する。
ø N= ø 十厶 ø N+ Δ ø N-I H K厶 mod 2π
q-1
φ n— Ν-,= ∑ Δ <ρ Ν-ι mod 2π ( 4)
i=0
—方、 受信側においては、 t =(N— q )Tから NTまでの時間区間における受信 信号の位相の変化分 ΔΨΝ(ς)は次式で与えられる。
q-1
= ∑ Δ ^ N-i + Δ 77 N(Q) mod 2π (5 )
i=0
受信波と受信機局部発振器との固定位相差 は、 この段階で打ち消される。 ここ で、 Δ 77 N(q)= 7?
N— 7?
Ν-,は位相差雑音である。 ??
Ν及び は平均値ゼロ、 分散 σ
2 の独立ガウス雑音で近似できるので、 Δ 7?
N(q)は平均値ゼロ、 分散 2 σ
2 のガウス雑音となる。 位相雑音 Δ τ?
Ν を推定する位相誤差べク トル μ = ( /
Ν(1),
Ν(Ν))
τ (ただし
t は転置行列を表す) を定義し、
と置くと、 位相差系列 Δ = (Α φ ι , Α Φ ζ , ···, Α " ) τ が送信されたと きの の結合確率密度関数 Ρは次式で表わせる。
1 ^TR-' μ
Ρ ( I Δ ø )= exp { }
(27r)N/2(detR),/2 2
( 7)
ここで、 Rは Δ τ7 = (Δ 7?Ν(1), Δ τ?Ν(2),···, Δ 77 Ν(Ν))Τ の ΝΧΝ共分散行列、 det R及び R-'はそれぞれ行列 Rの行列式及び逆行列である。 M個の位相差が等 確率で現れる場合 (通常成立する) 、 送信位相差系列の最尤判定は、 式 (7) の 確率を最大にする位相差系列 = , Δ 02' , ···, A y を探すことに ほかならない。 これは次の式 (8 ) に示すように ^ R-1 ^ が最小となる位相差 系列 を求めることになる。
厶 ø ' = M I N yUTR-' μ (8 )
over Δ φ
これを求めるには Rを求める必要がある。 所で位相差雑音は前述したようにガウ ス雑音であり、
く厶 7? N(i)>= 0
= σ 2 for i≠ ) ( 9 ) の性質を持つ。 ここで < x (i) >は xの平均処理を示す。 この関係から Rは次式 で表わせる。
ここで、 行列理論を適用すると R一1は次式のようになる,
R-'=び一 V(N+1) (11)
この R-'を式 (8 ) に代入すると式 (8) の最尤判定は、 図 1 に示す MN 通りの 位相差系列候補の内、 次式
N η
Λ= ∑ ∑ (12)
η=1
を最小とする位相差系列を探すことになる。 ここで I n(q) | 2の代りに I /n(q) I ' (Vは 1以上の実数) としてもそれ程結果に変りないことがシミュレーショ
ンからわかった。 そこでこの実施例では
N n
Λ= ∑ ∑ I „(α) I ν (13) η=1 q=l
を最小とする位相差系列を探す。
図 2にこの発明による上述の第 1の実施例の方法を実行する位相遅延検波器の 構成例を示す。
入力端子 1 1からの受信波は位相検波器 1 2により局部発振器 1 3の出力局部 信号を基準として位相差が検出される。 この受信位相変調波は現在の移動通信の 無線機の場合中心周波数が第 2中間周波数の中間周波数信号であってリ ミ ッタ増 幅器あるいは AGC増幅器の出力信号である。 その検出出力は標本化回路 1 4に より一定周期 (シンボル周期 T) で標本化されて、 それぞれ遅延量がシンボル周 期 Tの遅延回路 1 5, 〜1 5N の直列回路に入力され、 これら 0〜Nシンボル分 遅延された位相 Ψπ (η-Ν,Ν-1, ···,())はメ トリック演算部 1 6に入力される。 第 1の実施例では、 —連のシンボルに対し、 受信波 z ( t:)の位相をシンボル周 期 Tで予め決めた数 Nだけ受信する毎に N個の位相差 Δ π (η= 1〜Ν) から 成る系列を最尤判定する。 即ち、 メ トリック演算部 1 6では式 ( 1 2) に基づい て位相差系列の候補に対するパスメ トリックを計算してメ トリックメモリ 1 6 A に記憶し、 これを全ての候補の数 (例えば 4相 DP SKのとき 4N個) だけ繰り 返し、 そのパスメ トリ ックを最小とする位相差系列を求め、 端子 1 7よりその位 相差系列を復号出力として出力する。 具体的には、 時点 (n-q)T (q=l,2,'",n)の 検出位相 η-, に、 Νシンボル位相差系列の候補 ίΔ 0η; η=1,2,···,Ν}のうちの 部分系列 i=n+l-q, η+2-q, -,η} の和を加算して受信波位相 Ψ„ の推 定値 Ψη 'を次式
Ψη'=Ψη— …+厶 十 , mod π (14) で求め、 その値 Ψη 'と受信波位相 との差 (推定誤差) un(q)を式 (6) に基 づいて q = 1〜nについて次式のように求める。
^ η(1) = Ψη-(Ψη-.-ΗΔ 0„) DlCXl 27Γ
2) = ΨΠ—(Ψη-2十△ ø η + Δ ø n-,) mod 2π
n(q) = Yn—( π- + Δ ø "十厶 ø n- ,H h Δ ø n-,+ 1) mod 2π
Λ« η(η) = ψπ— (Ψ0十厶 η + Δ +△ Φ。 mod 2π (15) 次に各推定誤差 ^ (q)の絶対値の ν乗を qシンボル位相差検波のメ ト リックとし、 このメ ト リックを q= 1から nまで n個を加算して得られる次式の値 λ„ = ∑ I ^n(q) I v (16)
q=l
をその位相差系列の候補に対する時点 nTにおけるブランチメ トリックとする。 こ の様に、 この発明で最も重要なことは、 任意の時点 ηにおいて同一の受信波位相 Ψ„ に対し、 従来のようなその直前の受信波位相 Ψη-, を使った推定のみならず、 更にそれ以前の受信波位相 …を使った複数の推定を行い、 それぞれの推定 誤差 ^ (q)を使うことにより、 位相遅延検波による復号のビッ ト誤り率を改善す ることが可能となる。 ここで、 理論上では式 (12) に示したように V = 2となる が、 Vは 1〜 1 0程度の任意の正の実数をとつてもよいことをシミュレーシヨン により確認した。 このブランチメ トリックを時点 1Tから時点 NTまで加算して位相 差系列候補 , Φ ζ , ···, Δ ^ Ν のパスメ トリック Λを次式
Ν
Λ= ∑ n (17)
n=l
で求める。 このパスメ トリックを Nシンボル位相差系列の全ての候補 (MN個) に対して計算してメ ト リックメモリ 1 6 Aに保持し、 それらの中で最小のパスメ トリックに対応する位相差系列候補を復号系列として端子 1 7より出力する。
(2) 第 2の実施例
上述の実施例では、 Nを大きくとるほど誤り率特性が改善する。 しかし、 M相 DP S Kでは M個の位相点をとるので、 図 1に示す MN個の系列候補のすべてに ついてパスメ トリックを計算する必要がある。 このため、 Nを大きくするにつれ て処理量が膨大になる。 そこで第 2の実施例では、 誤り率特性を改善しつつ、 処 理量を削減しょうとするため、 すなわち、 式 (13) において qに関する加算の上 限をし (Lは 2≤L<Nの整数) とし、 次式
し
λ η = ∑ i ,(q) I r (18)
q=l
をブランチメ トリックとして、 図 3に状態遷位図を示すように M9-' 状態ビタビ アルゴリズムにより逐次的に位相差系列を推定する。 この場合、 各時点 nTにお いて取り得る状態 S„ を、 時点 n—Q+ 2から時点 n Tまでの Q— 1個の時点の 位相差系列(Δ ø η, Δ0 Δ Φ n-Q+2}によつて規定する。 各位相差は]i個の 値を取り得るので、 各時点の状態数は MQ-' となる。 一般に Qと Lの関係を 2≤ Q Lとすることができる。
この実施例を適用する位相遅延検波器の構成は図 2を参照するものとする。 伹 し、 縦続接続された遅延回路 1 5 ,〜 1 5 Nの数は Nではなく Lとする。 図 2のメ トリック演算部 1 6で実施される処理アルゴリズムを以下に示す。
ステップ S 1 :時点(n-l)Tの取り得る MQ-' 個の状態 S = 0n-(Q-u,'", Α φ η-i, Δ 0 η-,)の中から時点 nTの 1つの状態 S n =(Δ 0n-(Q-2) ,···, Δ ø„-,, Δ 0η)へ遷移可能な Μ個のブランチのメ トリック; I„(S,,-,-S„)を計算すると き、 状態 Sn -, に至る生き残りバスを L— Q時点ト レースパックして L—〖 シン ボル系列 {△ i =1,2,'",レ1}を求め、 その系列に時点 n Tの位相差 Δ 0n を最終シンボルとして加えて Lシンボル系列を求めて、 式 (18) により; (Sn - .-S») を計算する。 各時点における状態数は MQ一' であるが、 時点 nTの各状 態 S„ に至ることが可能な直前の時点 (n-l)Tの状態 S n-, の数は全状態数 MQ一' の内の M個 (Mは DP S Kの相数) だけである。
ステップ S 2 :状態 S„ に至る M個のブランチについてパスメ トリ ックを
An(Sn | S„-l)=An-l(Sn-l)+ A„(Sn— Sn) (19) より計算する。 これが最小となるパスが状態 S n に至るもっとも確からしい生き 残りパスであり、 どの状態から遷移して来たかをパスメモリ 1 6B (図 2) に保 持するとともに、 その最小パスメ トリ ックの値を各状態 S n のパスメ ト リ ック Λ n(Sn)とし、 メ ト リックメモリ 1 6 Aに保持する。
ステツプ S 3 : MQ一1個の状態 S„ のうちで最小のパスメ ト リ ック An(S„)を 与える状態に至るパスを生き残りバスとして選択し、 パスメモリ 1 6 Bに保持さ れている状態遷移を DT時点分だけトレースパックする。 トレースパックの深さ
Dは 4程度でよい。 ト レースパックにより至った状態(Δ ø n- (D+Q- . ···, Δ φ N- (D+L) , Δ 0 „-D) における位相差 D を復号結果 Δ Ø n-D'として出力する c
4相 D P S Kに第 1の実施例を適用したときの位相遅延検波による誤り率特性 の計算機シミ ュレーショ ン結果を図 4に示す。 ν= 2とした。 横軸は 1 ビッ ト当 たりの信号エネルギー対雑音電力密度の比 Eb /Noである。 N = 2の場合を〇 印でプ ッ トし、 N= 3, N= 4をそれぞれ△印、 □印でプロッ トした。 比較の ため、 従来の 1 シンボル位相遅延検波 (N= 1 ) および同期検波差動復号による 誤り率もそれぞれ X印、 +印でプロッ トしてある。 図中の実線 2 1 , 2 2はそれ ぞれの理論値である。 誤り率 0.196を確保するための所要 Eb /Noの 1 シンポ ル位相遅延検波と同期検波差動復号との差はに 8d Bであるが N== 3とすること により特性差を半分以下に縮めることができる。 N = 4とすれば同期検波差動復 号の特性に 0.6 d Bまで近づく。 図 4には従来の直交遅延検波出力を最尤系列推 定した場合の誤り率の理論特性 (前記文献 1 ) を点線で示した。 図 4より、 第 1 の実施例では前記文献 1とほとんど同様の改善が得られていることがわかる。 第 2の実施例を適用した場合の位相遅延検波による誤り率特性の計算機シミュ レーショ ン結果を図 5に同様に示す。 L =Q== 4を用いることで同期検波差動復 号の特性に 0.2 d Bまで近づく。
以上、 第 2実施例では Qと Lの関係が 2≤Q≤Lである一般的な場合を示した c 次に説明する第 3の実施例は Q= 2 , Q< Lとした場合の例である。
(3) 第 3の実施例
上述の第 2の実施例においては、 状態数 Μβ_' ( 2≤Q≤L) のビタビアルゴ リズムを実施することにより、 演算量を第 1の実施例より低減したが、 更に演算 量を低減した位相遅延検波による実施例を次ぎに示す。 この第 3の実施例も第 2 の実施例と同様にビタビアルゴリズムを用いて最尤系列推定を行うが、 図 6に M = 4の場合の状態遷移図を示すように、 ビタビアルゴリズムの状態数を変調位相 状態数と等しい M個とする。 即ち、 Q= 2の場合である。 従って、 時点 n Tの状 態 Sn は Sn = A 0 nであり、 位相差がそのまま状態を表す。 これによつて、 各時 点ごとに全部で M個のバスが生き残ることになる。 第 2の実施例の方法では生き 残りパスの数は各時点毎に MQ_' 個である。 以下、 第 3実施例に付いて説明する
付いて説明するが、 受信機の構成の説明は図 2を流用することにする。
まず、 局部発振信号を基準にした受信波 z ( t )の位相 ψη を送信シンボル周期 Τ毎に位相検波器 1 2で検出する。 前述したように時点 η Τにおける検出位相は
Ψη = π + θ + ν, であり、 7} η は熱雑音に起因した位相雑音である。 予め決 めた値しに対し L十 1個の受信位相サンプル {Ψη- ; q =0, 1.-.L} を用いる。 式 (5) から明らかなように Ψπ と とは、
q-1 r
ψπ =ψη-,+ ∑ Δ Φ n-i + C??„- ν n-J mod 2π (20) i=0
との関係で結ばれている。 そこで式 (15) と同様に受信位相 Ψ
π とその推定位相 との間の位相誤差/^ (1),
を次式により計算する。
式 (18) と同様にブランチメ トリ ック; として位相誤差の絶対値の V乗の q = 1から Lまでの和を用いることとし、 次式で計算する。
ここで vは 1以上の任意の実数である。 式 (22) のブランチメ トリックを用いて 以下に説明する M状態ビタビアルゴリズムにより復号する。
ステップ S 1 :時点 (n-l)Tにおける M個の位相差状態の中から、 時点 II Tの状 態△ø« に到達する最も確からしい一つのパスを選択するには、 まず時点 (n-l)T における M個のうちの一つの状態 Δ 0 η-, を出発点としてパスメモリ 1 6 Β内に 保持されている生き残りパスを過去の時点(n-L+l)Tまで遡って位相差系列 {Δ φ n-i ; i =1,2,-,L-1} を読みだし、 その系列に、 時点 n Tの 1つの状態厶 0 を最終状態として加えて位相差候補系列 {Δ0 η ; i =0,l,"',L-l} を構成す ステップ S 2 :その位相差候補系列の部分系列 ; i =0,1,···, q-1} の位相差の和に時点 (n-q)Tの検出位相 ψη-, を加算して位相 ψη の推定値 Ψ„ 'を 求め、 その推定値 'と検出位相 との差である推定位相誤差;^ (q)を q= 1 〜しに付いてそれぞれ式 (15) により求める。
ステツプ S 3 :得られた L個の位相誤差/^ (q)のそれぞれの絶対値を V乗し、 これを式 (22) で q- 1から Lまで加算して、 時点(n-l)Tの状態△ 0 n_, から時 点 nTの状態 Δφη への遷移の確からしさを表すブランチメ トリ ックス(Δ 0 η-,― Δ 0η)を求める。 次にこのブランチメ ト リ ックを次式
Λ (厶 0η I Δ η-.)=Λ(Δ π-,)+ (Δ 0η-,-*Δ ^„) (23) のようにメ ト リ ックメモリ 1 6 Αに保持されている時点(n-l)Tの状態 Δ π-, に おけるパスメ ト リ ック ΛίΔ φη ) に加算して、 状態 Δ0η-, を経由する候補系 列のパスメ ト リック Λ(Δ ø η I 厶 を求める。
ステップ S 4 :時点(n-l)Tにおける Μ個の状態 Δ0Π-, のそれぞれに対して以 上の演算を繰り返して Μ個の候補系列に対するパスメ リ トツクを求め、 それらの 大小を比較して最小値を与える状態 Δ 'を求め、 これをステップ S 1で着目 した時点 nTの状態 Δ φ„ に至る最も確からしいパスの時点 (n-l)Tの状態としてバ スメモリ 16 Bに保持するとともに、 そのパスメ ト リ ック Λ (厶 0n I 厶^ η-,') を時点 η Τの状態厶 ø η におけるバスメ トリック Λ(Δ 0η) としてメ トリ ックメ モリ 1 6 Αに保持する。
ステップ S 5 :ステップ S 1〜S 4の処理及び演算を時点]! Tの M個の全ての 状態 Δ0Π に対して繰り返して行なって Μ個のパスメ トリ ックを求め、 大小を比 较し、 最小値を与える状態 を求め、 状態 Δ η 'を出発点としてパスメモリ を一定時点 DTだけト レースバックし、 到達した状態 Δφη-。 を復号シンボルと して出力する。
図 6に第 3の実施例に適用される Μ= 4の場合の状態遷移図の例を示す。 この 例では、 時点 nTの状態 Δ 0η = 0に至る最も確からしいパスを選択するときの 様子を示している。 Δ0η =0へは時点(n-l)Tの 4つの状態厶 - り, π/2, π, 3ττ/2から破線で示すバスが延びている。 時点(ιι-1)Τの各状態へはそれまで に生き残った実線で示すパスがそれぞれ 1つずつ到達している。 例えば、 時点 (n -1)Tの 1つの状態 Δ ø η-, =ττ/2から時点 nTの 1つの状態 Δ =0への遷移 ブランチを含むバスのメ ト リ ックの計算では、 時点(n-l)Tの状態 Δ 4 η- , = 7Γ/2 に到達している唯一の生き残りパス (パスメモリ 1 6 Βに保持されている) に沿 つて状態を L一 1個遡って、 式 U5) 及び (22) に基づいてブランチメ ト リック
λ (Δ Φ„-,-Δ Φ„)を計算し、 メ トリ ックメモリ 1 6 Αに保持されている時点(η -1)Τの状態 - 7Γ/2におけるパスメ トリ ック Λ(Δ iin-i) に加算して候補 系列のバスメ トリック Λ(Δ 0„ Ι を求める。 この様な処理を時点(n-l)T の M個の状態 Δ について繰り返し、 それぞれのパスメ トリックを得る。 こ れら Μ個のパスメ トリ ックの大小を比較して、 時点 η Τの状態 へ至る最も 確からしいパスを一つ選択する。
4相 D P S Κに上述の第 3実施例を適用した場合の誤り率特性の計算機シミュ レーション結果を図 7に示す。 ν = 2とし、 横軸は 1 ビッ ト当たりの信号エネル ギ一対雑音電力密度の比 Eb /No 、縦軸は誤り率である。 比較のため、 従来の 1 シンボル位相遅延検波 (L= l ) および同期検波差動復号による誤り率のシミ ユレーション結果もプロッ トしてある。 図中の実線は理論値である。 誤り率 0.1 %を確保するための所要 Eb /Noの 1シンボル位相遅延検波と同期検波差動復 号との差は 1.8d Bであるが L= 2とすることにより特性差を半分以下に縮める ことができる。 図 7には比較のため文献 1の最尤系列推定の誤り率の理論特性を 点線でプロッ トしてある。 L = 2では文献 1の L = 3に、 L=4では文献 1の L = 5相当の特性が得られている。 し力、し、 Lを大きくするにつれ、 文献 1の特性 に近づく。
このように最尤系列推定をビタビアルゴリズムを用いて行なう場合に、 ビタビ 復号器の状態数を変調位相の相数に等しくすることにより演算量を文献 1より大 幅に削減している。
(4) 第 4の実施例
M状態のビタビ復号を行う上述の第 3実施例では局部発信器 1 3からの局部信 号の位相を基準として受信波 1 ( t:)との位相差を位相検出器 1 2により検出した 場合を示したが、 受信波 2 ( t )を準同期検波を行って得た複素検波出力のサンプ ル系列に対して第 3実施例と同様に M状態ビタビ復号を行ってもよい。 その場合 を第 4実施例とし、 その直交遅延検波器の構成例を図 8に示す。
入力端子 1 1からの受信波 z( t )は準同期検波回路 1 2において入力信号とほ ぼ同一周波数で位相が互いに 90度ずれた局部発信器 1 3からの 2つの局部信号 により準同期検波される。 その複素検波出力は標本化回路 1 4により一定周期
(シンボル周期 T) で標本化されて受信波の複素標本 ζηが得られる。 この複素標 本 ζηはそれぞれがシンボル周期 Τの遅延を与える遅延回路 1 5 , 〜 1 5ι_ の直列 回路に入力され、 各遅延回路 1 5 , 〜 1 5 L から 1〜Lシンボル遅延標本 {ζη-, ; q=1.2,-.L} が求められる。 これら遅延標本と遅延されない標本 znがメ トリ ック演算部 1 6に入力される。 メ トリック演算部 1 5には、 メ トリックメモリ 1 6 Aとパスメモリ 1 6 Bが設けられ、 メ トリツク演算部 1 6では上述の第 3実施 例とほぼ同様の以下に述べる復号アルゴリズムに従った演算が行なわれ、 端子 1 7に復調出力データが出力される。
ステップ S 1 :時点 (n-l)Tにおける M個の位相差状態の中から、 時点 π Τの状 態 に到達する最も確からしい一つのパスを選択するには、 まず時点 (n-l)T における M個のうちの一つの状態厶 を出発点としてパスメモリ 1 6 Β内に 保持されている各時点に到達する生き残りパスを過去の時点 (n-L+1) まで遡って 位相差系列 ; i =1,2 ",レ1} を読みだし、 その系列に、 時点 nTの 1つの状態 ΔφΒ を最終状態として加えて位相差候補系列 ; i =0,1, -.L-1} を構成する。
ステップ S 2 :その候補系列の部分系列 { φ,-ι ; i =0,し…, q-1} の和だ け受信波標本 ζ„-,を位相回転させ、 これを q= 1から Lまで繰り返し、 得られた L個の値を加算して受信波標本 znの推定値 ζη' を求める。
ステップ S 3 :式 (04) で示されるように受信波標本 ζηとその推定値 ζη' との 内積の実数値を、 時点(n-l)Tの状態 Δ から時点 nTの状態 Δ0η への遷移 の確からしさを表すブランチメ ト リック ス 0 η)とし、 これを、 式
(23) と同様に時点 (n-l)Tの状態 Δ η -, におけるバスメ トリック
に加算して、 状態 Δ η-, を経由する候補系列のパスメ トリック Λ(Δ0η I Δ Φ n-l J¾T求め
ステップ S 4 :時点(n-l)Tにおける M個の状態 Δ ø„- , のそれぞれに対して以 上の演算を繰り返して M個の候補系列に対するパスメ リ トツクを求め、 それらの 大小を比較して最大値を与える状態 を求め、 これをステップ S 1で着目 した時点 nTの状態 „ に至る最も確からしいバスの時点(n-l)Tの状態としてパ スメモリ 1 6 Bに保持するとともに、 そのバスメ ト リ ック Λ(Δ φ„ I 厶 „ )
を時点 n Tの状態 Δ Φ におけるパスメ ト リック Λ ( Δ Φ η ) としてメ トリ ックメ モリ 1 6 Αに保持する。
ステップ S 5 :ステップ S 1〜S 4の処理及び演算を時点 n Tの M個の全ての 状態 Δ øに対して繰り返して行なって M個のパスメ トリックを求め、 大小を比較 し、 最大値を与える状態 Δ Φ„'を求め、 状態 Δ Φ„'を出発点としてバスメモリを —定時点 D Tだけト レースパックし、 到達した状態 Δ 0 η-。 を復号シンボルとし て出力する。
文献 2のビタビ復号を用 、た直交遅延検波では時点毎に M L ' 個のパスが生き 残るのに対して、 この発明の第 3及び第 4実施例の方法では Μ個のパスしか生き 残らないので文献 2の方法に比較して誤り率特性が若干劣化することになる。 し かし、 ブランチメ トリ ックの演算回数は時点毎に Μ 2 回のみであり、 文献 2のビ タビ復号の M L 回に比較して大幅に演算量が削減される。 M= 4のときの一時点 当たりのブランチメ トリックの演算回数を図 9に示す。 なお、 文献 2のシミュレ ーシヨン結果によれば、 Mい' 状態ビタビアルゴリズムを用いると文献 1の 2 L 相当の特性が得られる。 そこで、 文献 1の L = 6相当の誤り率特性を得るときの ブランチメ トリックの演算回数を比較する。 文献 1の方法で 6 8 3回、 文献 2の 方法で 4 0 9 6回、 この発明で 1 6回となる。 このように、 この発明ではこれま での方法に比较して大幅に演算量が削減されることが分かる。
( 5 ) 第 5の実施例.
上述の第 3及び第 4実施例ではビクビアルゴリズムを利用しており、 従って各 時点において予め決めた数の状態のそれぞれに対しその直前の時点から到達する 最も確からしいパスを 1つずつ選択し、 それらの中で最も確からしいパスに沿つ て所定の時点数だけ遡った時点における状態に対応したシンボルを復号結果とし て出力している。 従って、 受信位相サンプルに対する復号結果は所定シンボル数 だけ遅れて得られることになる。 この様な遅延が生じない近似最尤復号法の 1つ としてビタビアルゴリズ厶を使わない判定帰還復号アルゴリズムが知られている。 このアルゴリズムでは常にパスを 1つのみ残し、 過去に判定された系列のバスに 基づいて次ぎに遷移すべき状態を判定し、 その判定結果を直ちに出力する。 この 判定帰還復号法を適用した第 5実施例を次ぎに説明する。
図 1 0にこの発明の第 5実施例が適用される位相遅延検波回路を示す。 入力端 子 1 1から受信位相変調波 z ( t )が位相検波器 1 2に入力され、 その位相 Ψ( t ) が局部発振器 1 3からの局部信号を基準として検出される。 位相検波器 1 2の出 力は標本化回路 1 4でシンボル周期 Tで標本化されて受信波の位相サンプル ψη として位相差検出部 1 5に入力される。 位相差検出部 1 5において、 入力された シンボルごとの検出位相 Ψ„ は、 各遅延時間が 1 シンボル周期 Τの L個の遅延回 路 1 5 , , 1 52 , ·'·, 1 5 L の直列回路に供給され、 各遅延回路 1 5 , , 1 5 2 , ···, 1 5 L の各遅延出力 , Ψη-2 , ··', Ψη -, と入力検出位相 ψη と の差 ψπ -Ψπ-i , Ψπ -ΨΠ-2 , ···, Ψ« -Ψη-L が差回路 1 5 S , , 1 5 S
2 , ···, 1 5 SL でそれぞれ求められる。 これらの位相差は式 (5) で表される 位相差に対応し、 メ ト リツク演算部 1 6へ供給される。
メ トリック演算部 1 6から後で述べるような演算により判定位相差 Δ^"η が求 められて出力端子 1 7へ出力される。 この判定位相差 Δ0η は累加算部 1 8へも 供給される。 累積加算部 1 8では、 入力された判定位相差 Δ"^η は各遅延量が Τ の L一 1個の遅延回路 1 8 , , 1 8 : , ·'·, 1 8 L-. 直列回路に入力され、 遅延 回路 1 8 , , 1 82 , ···, 1 8L-. の各遅延出力 Δ π-, , Α~φΏ-2 , ···, 厶 N-L+. はそれぞれ加算回路 1 8 A , , 1 8 Αί , 1 8 A, , ···, 1 8 AL-2 へ供 紿される。 各加算回路 1 8 Ai , 1 8 A2 . …の各出力は順次次段の加算回路 1 8 Α2 , 1 8 Aa , …へ供給される。 初段の遅延回路 1 8. の出力、 加算回路 1 8 A , 〜1 8 AL-2 の各出力はメ トリック演算部 1 6へ供給される。 つまり S N - .(q)=∑ Δ (∑は i = 1から qまでで、 qは 1から L— 1まで) がメ トリ ック演算部 1 6へ供給される。 メ トリック演算部 1 6においては累加算部 1 8か らの各加算値 d に対して M個の位相差候補 Δ Φ„'、例えば 4相 D P S Kの 場合 0、 πΙ、 π、 3ΤΓ/2 の 1つを選択して加える。 これと検出位相差 Ψη — Ψ との差; u n(q) (式 ( 6) に対応) の絶対値あるいは差の V乗値をそれぞれ以下 のように求める。
I '
I
mod 2ττ I '
(24) vは l以上の実数である。 これら L個の I / n(i)i '〜 I ζ
ηα)ι 'を総和; =
∑ I ^ n(q) I r を位相差候補 Δ Φ η'に対するブランチメ トリックとする。 Μ個の 位相差候補 Δ のすべてについてそれぞれのブランチメ トリックを求め、 最小 のブランチメ トリックを与える位相差候補 Δ0η 'を判定位相差 Δ^"η として出力 する。
4DP SKにこの第 5実施例を適用した場合の誤り率特性の計算機シミュレ一 ショ ン結果を図 1 1に示す。 v= 1とした。 横軸は 1ビッ ト当たりの信号エネル ギ一対雑音電力密度の比 EbZN。である。 L= 1の特性は従来の 1シンボル位相 遅延検波での特性である。 比較のため、 同期検波差動復号による誤り率特性も示 してある。 誤り率 0.1%を確保するための所要 EbZN。の 1シンボル位相遅延検 波と同期検波差動復号との差は 1.8d Bであるが L= 3とすることにより特性差 をほぽ半分に縮めることができる。 L=l 0とすれば同期検波差動復号の特性に 0.2dBまで近づく。
(6) 第 6及び第 7の実施例
前述の第 3及び第 4実施例ではビタビ復号の状態数を Mに削減 (即ちブランチ メ トリツクの演算回数を削減) したままで、 時点 (n-l)Tの各状態厶 , に至る 生き残りバスに沿って状態を L一 2偭トレースパックして Δ0η-2 から Δ 0n-L十 ! の位相差を得て、 時点 nTの状態 Δ0Π と過去 L一 1個の状態からブランチメ ト リックを計算して、 ビタビアルゴリズムにより最尤系列推定することにより誤 り率を改善した。 以下に説明する第 6及び第 7の実施例では各時点においてこの トレースバックを行わないでも、 過去の複数の位相状態に基づいてブランチメ ト リックを計算することができ、 従って第 3及び第 4実施例より更に演算処理量を 削減することができる。
冒頭に説明した直交遅延検波の場合の最尤判定のバスメ トリックを表す式 (02) を次式
N n
Λ =∑ ReCz„ (∑ Zn-«exp j (Δ Φ n-,+ i )}*exp-j Δ Φ n]
n=l q=l
(25)
の様に変形し、 式 (25) の括弧 {} 内を次式 zn-,exp j (Δ ø n-i+'-'+Δ ø„ -,十,) (26)
で表すブランチメ トリ ック計算のための参照信号 hn-,とする。 式 (26) を使うと 式 (04) のブランチメ トリ ック; Iは次式
ス =Re [ z nh'n-'exp-j厶 ø„] (27)
で表される。 参照信号 hn-,は式 (26) から分かるように、 時点(ιι-1)Τから 0まで の受信信号サンプルの総和になっている。 ここで式 (26) に忘却係数 (0≤β ≤ 1) を導入することにより、 時点が古いほど h
n_,への寄与が小さくなるように すると次式 »-,+,) (28)
が得られる。 式 (28) の括弧 0 内の位相差部分系列は時点 n— 1から過去へト レースパックする様に規定されているので q== 1の場合の位相差の和は 0である。 従って q〉 Π + 1の領域 (時点 0より前の領域) では zn-,= 0とすると式 (28) は次の漸化式
oo
h„-, = Zn-l +∑ i? ""'Ζη-,ΘΧΡ j (Δ 0 π-1+— + Δ ^„-, + |)
q=2
= z„-i-l- 9hn-2expjA φ n-. (29) で表わすことができる。 式 (27) において状態 Δ0η-, から状態 Δ0η への遷移 に与えるブランチメ ト リックを次式
λ (Δ ø n-i— Δ ø„)=Re [z„h*„-,(A Φ„-i)exp-jA Φ„]
(30) の様に表す。 ここで、 h
n- は時点 n— 1の状態 — , における -, の値を表す。 時点 n— 1の状態 に至る生き残りパスの時点 n— 2の状態 Δ における参照信号 ίι
η-
2(Δ ø„-
2) を用いて、 式 (29) より、 状態 Δ0
η_
, におけ
を逐次的に計算できるので、 第 3及び第 4実 施例のように状態 Δ に至る生き残りパスを遡ることにより式 (26) に基づ いて参照信号 -,を計算しなくてよい。 また第 3及び第 4実施例で示した遅延回 路も不要となる。 以下に、 上述の考えに基づいた復号アルゴリズムの実施例を 2 つ (第 6及び第 7実施例) 示す。
図 1 2は第 6実施例を適用した直交遅延検波器の構成を示す。 図 8の場合と同 様に、 受信波 z(t )は準同期検波回路 1 2で直交検波され、 その複素検波出力は 標本化回路 1 4でシンボル周期 T毎に標本化され、 受信波複素サンプル znが得ら れる。 第 6実施例においては、 図 8における遅延回路 1 5 ,〜1 5 Nを使用しない。 受信波複素サンブル znは、 メ ト リ ックメモリ 1 6 A、 パスメモリ 1 6 B、 ブラン チメ ト リ ック計算部 1 6 C、 ビタビアルゴリズム部 1 6 D、 参照信号計算部 1 6 E、 及び参照信号メモリ 1 6 Fカヽら成るメ トリ ック演算部 1 6に与えられ以下の ように M状態ビタビアルゴリズムにより逐次的に送信位相差系列を推定する。
ステップ S 1 :時点(n-l)Tにおける M個の位相差状態の中から、 時点 nTの状態 Δφ„ に到達する最も確からしいパスを選択するときに、 時点 (n-l)Tにおける Μ 個の内の 1つの状態 Δ における参照信号 ,の値 Ι Δ^,-,)を参照信号メ モリ 1 6 Fから読みだし、 ブランチメ トリック計算部 1 6 Cにおいてその参照値 h(厶 - と受信波サンプル ζπとから、 時点(n-l)Tの状態 Δ0η- , から時点 nTの 状態 Δ π への遷移の.確からしさを表すブランチメ ト リックス
を式 (30) により計算する。
ステップ S 2 :時点(n-l)Tの状態 Δ におけるパスメ ト リ ック A(A 0n-,) をメ ト リ ックメモリ 1 6 Aから読みだし、 ビタビアルゴリズム部 1 6 Dにおいて ブランチメ ト リック λ (Δ η- を、 時点 (n-l)Tの状態△ における 前記読みだしたパスメ ト リ ック に加算し、 状態 を経由する 候補系列のパスメ ト リ ック Λ(Δ 0π i Δ :)を求める。
ステップ S 3 : Μ個の状態 の全てに対してステップ S 1〜S 3の処理 を繰り返して M個の候補系列に対するパスメ ト リ ックをそれぞれ求め、 ビタビア ルゴリズム部 1 6 Dにおいてそれらの大小を比較して最大値を与える状態 Δ0η- を求め、 これを時点 nTの状態△ø„ に至る最も確からしいパスの時点(n-l)T
における状態としてバスメモリ 1 6 Bに保持すると共に、 そのパスメ ト リ ック Λ (Δ I Δ Φ π-. ' ) を時点 η Τの状態 Δ Φ„ におけるパスメ ト リ ック Λ(Δ 0η) としてメ ト リ ックメモリ 1 6 Αに保持する。
ステップ S 4 :次の時点(n+l)Tの演算に用いる、 状態 Δ φη における参照信号 hnの値 hn(A4n) を参照信号計算部 1 6 Eにおいて次式により求めバスメ トリッ ク Λ(Δ0η) と対応させて参照信号メモリ 1 6 Εに保持する。
hn (厶 Φ„)=zB-h/9h„-1(A Φ n - expj厶 φη (31) ステップ S 5 :上述のステップ S 1〜S 4の処理を時点 n Tの M個の全ての状 態に対して繰り返し行い M個の生き残りパスとバスメ トリックを求め、 大小を比 較し、 最大値を与える状態 Δφη'を求める。 その状態 Δ0„ 'を出発点としてパス メモリ 1 6 Βを一定時点 Dだけト レースパックし、 到達した状態を復号シンボル ΑΦ,-υ として出力する。
図 1 3は 4相 DP SKに第 6の実施例を適用したときの誤り率特性の計算機シ ミュレーシヨン結果を示す。 横軸は 1 ビッ ト当たりの信号エネルギー対雑音電力 密度の比 EbZNoである。 比較のため、 従来の 1 シンボル遅延検波及び同期検波 差動復号による誤り率のシミユレーション結果もブ ッ トしてある。 誤り率 0.1 %を確保するため、 従来の 1 シンボル遅延検波と同期検波差動復号との差は 1.8 dBであるが、 = 0.9とすることにより同期検波差動復号との特性差を 0.1 d B以内に縮めることができる。 この様に、 この第 6実施例では第 3及び第 4実施 例より演算量を削減でき、 忘却係数 を 1に近づけることにより、 演算量を増や さないでいくらでも同期検波差動復号の特性に近づけることができる特徴がある。 上述の第 6実施例では各時点における生き残りパスが M個あるが、 第 7実施例 においては各時点のこの生き残りパスを常に 1個だけに限定することにより更に 簡易化を計ったものである。 この実施例が適用される遅延検波器の基本構成は図 1 2の場合と同様であるが、 メ ト リックメモリ 1 6 A及びバスメモリ 1 6 Bは不 要である。 この実施例のメ トリック計算部 1 6における復号アルゴリズムを以下 に示す。
ステップ S 1 :時点 (π-1)Τにおいて判定された位相差状態 Δ から、 時点 ηΤの Μ個の状態 Δ ø η のどれに到達するのが最も確からしいかを判定するときに、
時点 (n- 1 )Tの判定状態 Δ <> η- , に対する参照信号 ,の値 h( Δ η- , )を参照信号 メモリ 1 6 Fから読みだし、 ブランチメ トリック計算部 1 6 Cにおいてその参照 値 1ι(Δ"^η -,)と受信波サンブル znとから、 時点(n-l)Tの判定状態 Δ から時 点 nTの M個の状態 Δ Φ η の Iつへの遷移の確からしさを表すブランチメ トリック ス(厶 — Δ0η)を式 (30) により計算する。
ステップ S 2 : Μ個の状態 Δφη の全てに対してステップ S 1の処理を繰り返 して Μ個の候補状態に対するブランチメ トリックをそれぞれ求め、 ビタビアルゴ リズム部 1 6 Dにおいてそれらの大小を比較して最大値を与える状態 Δ0η を求 め、 これを復号シンボル Δ η として出力する。 なお、 この復号法ではパスメ ト リックは全ての状態に対して 0でよく、 そのためシンボル判定はブランチメ トリ ックの大小のみで行える。
ステップ S 3 :次の時点(n-l)Tの演算に用いる、 状態 Δ^η における参照信号 hnの値 hn(A 0n) を参照信号計算部 1 6 Eにおいて次式により求め参照信号メモ リ 1 6 Eに保持する。
図 1 4は 4相 D P S Kに第 7実施例を適用した場合の誤り率特性の計算機シミ ユレーシヨン結果を示す。 横軸は 1ビッ ト当たりの信号エネルギー対雑音電力密 度の比 EbZNoである。 第 6実施例の場合と同様に = 0.9とする事により同期 検波差動復号との特性差を 0.1 d B以内に縮めることができる。
以上各種実施例で説明したように、 この発明の遅延検波方法は、 従来の 1 シン ボル遅延検波に比較して誤り率特性を大幅に改善でき、 同期検波差動復号に近い 特性を得ることができる。 或いは従来と同等の誤り率特性を得るようにした場合、 従来より演算量を大幅に削減できる。 この発明の第 1、 2、 3及び 5の実施例で は受信波の検出位相系列を用いて最も確からしい位相差系列の候補を求めるので、 リ ミッタ増幅器が適用できるため実用性が高い。 更に、 遅延検波の特徴である髙 速同期の特徴を失っていないので TDMA方式でのバースト受信に適用できる。