明細書
窒化物半導体発光素子およびその製造方法
技術分野
本発明は、 p型窒化物半導体層と、 該層に正孔を注入するための電極である P 側電極とを有する窒化物半導体発光素子、 およびその製造方法に関する。
背景技術
近年、 窒化物半導体を主要部に用いた半導体素子の開発が精力的に行われてお り、 中でも、 可視 (緑色) 〜近紫外領域の光を発生させることが可能な発光ダイ オード (LED) やレーザダイオード (LD) などの発光素子は、 実用化される に至っている。
窒化物半導体は、 一般式 A 1 a I nbG a卜 a bN (0≤ a≤ 1N 0≤ b≤ 1 、 0≤ a + b≤ 1) で表される化合物半導体であって、 例えば、 二元系の G aN 、 A 1 N、 I n N、 三元系の A 1 G a N、 I n G a N I nA I N、 四元系の A 1 I nGa Nなど、 任意の組成のものが例示される。 ここで、 3族元素の一部を 、 B (ホウ素) 、 T 1 (タリウム) 等で置換したものや、 N (窒素) の一部を P (リン) 、 A s (ヒ素) 、 S b (アンチモン) 、 B i (ビスマス) 等で置換した ものも、 窒化物半導体に含まれる。
窒化物半導体は、 欠陥として含まれる窒素空孔が電子のドナーとして働く n型 欠陥であるために、 アンドープでも n型半導体となるが、 更に、 S i (ケィ素) 、 G e (ゲルマニウム) 、 S e (セレン) 、 Te (テルル) 、 C (炭素) 等の元 素をドープすることによって n型導電性が向上する。 すなわち、 これらの元素は 窒化物半導体に対して n型不純物として働く。
また、 窒化物半導体は、 Mg (マグネシウム) 、 Z n (亜鉛) 、 B e (ベリリ ゥム) 、 C a (カルシウム) 、 S r (ストロンチウム) 、 B a (バリウム) 等の 元素をドープすることにより、 p型半導体とすることができる。 すなわち、 これ らの元素は窒化物半導体に対して p型不純物として働く。
図 9は、 従来の窒化物 LEDの模式図である。 同図の LEDは、 窒化物半導体
を用いた LED (以下、 「窒化物 LED」 という。 ) の典型的な構造であるダブ ルヘテロ p n接合型の LED構造を有する。 この窒化物 LEDは、 結晶成長用の 基板 1の上に、 有機金属化合物気相成長 (MOVPE) 法によって、 窒化物半導 体からなる n型コンタクト層 2、 n型クラッド層 3、 活性層 4、 p型クラッド層 5、 p型コンタクト層 6が順次成長され、 その後、 ドライエッチングにより露出 した n型コンタクト層 2の表面に n側電極 P 1が形成され、 p型コンタクト層 6 の表面に p側電極 P 2が形成されることによって、 作製される。
なお、 「n型」 は、 n型伝導性の窒化物半導体からなる層であることを表し、 「p型」 は、 p型伝導性の窒化物半導体からなる層であることを表している。 こ こで、 p側電極 P 2は、 p型窒化物半導体層である p型コンタクト層 6および p 型クラッド層 5に正孔を注入する電極である。
従来の窒化物 LEDにおいて、 p側電極 P 2は、 p型窒化物半導体と良好なォ 一ミック接触を形成する金属である N i (ニッケル) P t (白金) 、 P d (パ ラジウム) 、 Rh (ロジウム) 等で形成される。
p側電極 P 2の接触抵抗を低下させるためには、 p側電極 P 2をこれらの金属 で形成するとともに、 p型コンタク ト層 6の正孔濃度を高くすることが必要であ るとされ、 そのために、 p型コンタクト層 6には多量の; 型不純物がドープされ る。
p型不純物として Mgを用いる場合であれば、 Mgを l X 1 020 c m一3以上 という高濃度にドープすることが好ましいといわれている。
図 9に示す窒化物 LEDの製造にあたり、 p型クラッド層 5および p型コンタ クト層 6は!)型不純物をドープしつつ成長される。 ここで、 MOVPE法により 900°C〜 1 200°C程度の成長温度で; 型クラッド層 5および p型コンタクト 層 6を成長した後、 成長炉内にアンモニアを流しながら基板を室温まで冷却する と、 p型クラッド層 5や ρ型コンタクト層 6は p型伝導性とはならずに、 絶縁性 ( i型) となる。 この現象は水素パッシベーシヨンと呼ばれており、 p型不純物 が水素原子と結合を形成して不活性化されることが原因とされている。 この水素
原子は、 結晶成長時にキャリアガスとして供給される水素ガスや、 5族原料ガス として供給されるアンモニアに由来するとも、 あるいは、 冷却時に供給されるァ ンモユアに由来するともいわれている。
ここで、 成長炉内にアンモニアを流しながら冷却を行うのは、 窒化物半導体は 平衡蒸気圧が比較的高く、 例えば G a Nの場合、 常圧では 6 0 0 °C以上で結晶の 分解が起こり、 表面が劣化するのに対し、 アンモニアを成長炉内に流しながら冷 却すると、 この劣化が抑制されるからである。
このように、 MO V P E法によって p型窒化物半導体を作製すると、 気相成長 終了後の冷却時にアンモニアを流せば水素パッシベーションが起こり、 流さなけ れば表面が劣化するという問題がある。 そのため、 一段階形成法 (即ち、 MO V P E法で成長を行った後、 電子線照射処理やアニーリングといった別の後処理工 程を行うことなく、 冷却を行うだけで!)型窒化物半導体を形成する方法) を実現 することは困難であると考えられている。
それでも、 一段階形成法は、 製造効率上好ましい方法であることから、 それに ついての検討が行われており、 例えば、 水素パッシベーシヨンを抑えると同時に 、 表面の劣化による n型の欠陥 (窒素空孔) の生成を抑制するために、 成長後の 冷却雰囲気を、 アンモニアを 0 . 1 ~ 3 0 V o 1 %の割合で含む雰囲気とする方 法 (特開 2 0 0 4— 1 0 3 9 3 0号公報) などが提案されている。
一段階形成法のひとつとして、 MO V P E法により p型不純物をドープした窒 化物半導体を成長した後の冷却過程において、 基板へのアンモニア供給方法や、 雰囲気中のアンモニアの濃度を制御することによって、 水素パッシベーションと 表面劣化のバランスを取り、 該窒化物半導体の p型伝導性を発現させようとする 方法がある。 しかし、 これを従来構造の窒化物 L E Dの作製に適用すると、 冷却 雰囲気中のアンモニア濃度をかなり低く抑えた場合であっても、 p側電極 P 2の 接触抵抗が十分に低下しないという問題があることが判明した。
発明の開示
本発明の目的は、 新たな P側電極の構造を有する窒化物半導体発光素子と、 そ
の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、 発光部を構成する P型層に隣接して成長させた n型層をエッチ ングし、 そのエッチング面に電極を形成すれば、 その電極から p型層へ好ましく 正孔を注入し得ることを見出し、 本発明を完成させた。
本発明は、 次の特徴を有する。
( 1 ) 窒化物半導体層からなる積層体を有する窒化物半導体発光素子であって、 該積層体には、 第一の n型層と p型層とによって活性層を挟んだ積層構造を有 してなる発光部と、 該発光部の外側にあつて前記 p型層の側に位置する第二の n 型層とが含まれており、
該第二の n型層は、 ドライエッチングが施されて露出した面を有し、 このドラ ィエッチングを施されて露出した面には、 前記発光部の p型層へ正孔を注入する ための p側電極が形成されていることを特徴とする、
前記窒化物半導体発光素子。
( 2 ) 上記積層体が、 基板上に窒化物半導体層を順次成長させることによって形 成されたものであって、
基板が下側にあるとして、 発光部は、 第一の n型層が下側、 p型層が上側とな るように積層体中に含まれており、 かつ、
第二の n型層が、 発光部よりも上側に位置している、 上記 (1 ) 記載の窒化物 半導体発光素子。
( 3 ) 発光部の第一の n型層が、 n型コンタクト層を兼用している、 上記 (2 ) 記載の窒化物半導体発光素子。
( 4 ) 上記積層体に、 発光部の n型層よりも下側に専用の n型コンタクト層が含 まれているか、 または、 上記基板が n型の窒化物半導体からなる基板であって、 該基板が n型コンタクト層を兼用している、 上記 (2 ) 記載の窒化物半導体発光 素子。
( 5 ) n型コンタクト層が、 ドライエッチングによって露出した表面を有し、 該 表面に n側電極が形成されている、 上記 (3 ) または (4 ) 記載の窒化物半導体
発光素子。
(6) 上記第二の n型層の上面が、 全面にわたってドライエッチングを施された 面であり、 このドライエッチングを施された面に上記 p側電極が形成されている 、 上記 (1) 記載の窒化物半導体発光素子。
(7) 上記 p側電極が、 上記ドライエッチングを施された面の略全面に形成され ている、 上記 (6) 記載の窒化物半導体発光素子。
(8) 上記 p側電極が、 透明電極、 開口電極または、 A 1または A 1合金からな る反射性を有する電極である、 上記 (7) 記載の窒化物半導体発光素子。
(9) 上記第二の n型層のドライエッチングを施された側の面が、 該ドライエツ チングによって凹凸面とされた面である、 上記 (1) 記載の窒化物半導体発光素 子。
(10) 上記第二の n型層のドライエッチングを施された側の面には、 ドライエ ツチングに先立って、 該面に重ねて窒化物半導体層が形成されており、 該第二の n型層へのドライエッチングは、 前記の重ねて形成された窒化物半導体層の表面 から施され第二の n型層に達したものである、 上記 (9) 記載の窒化物半導体発 光素子。
(1 1) p側電極が、 凹凸面の略全面を覆って形成されている、 上記 (9) また は (10) 記載の窒化物半導体発光素子。
(1 2) 上記 p側電極が、 透明電極または、 A 1または A 1合金からなる反射性 を有する電極である、 上記 (1 1) 記載の窒化物半導体発光素子。
(1 3) p側電極が、 凹凸面の凹部内のみに形成されており、 凸部の上方には、 該 p側電極が形成されていない、 上記 (9) または (10) 記載の窒化物半導体 発光素子。
(14) 基板上に窒化物半導体層からなる積層体を成長させた素子構造を有する 窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
第一の n型層、 活性層、 p型層、 第二の n型層を、 この順に該基板上に成長さ せる工程と、
前記第二の n型層の上面にドライエッチングを施す工程と、
前記工程によって、 第二の n型層のドライエッチングが施されて露出した面に 、 発光部の p型層へ正孔を注入するための p側電極を形成する工程とを少なくと も有する、 窒化物半導体発光素子の製造方法。
図面の簡単な説明
図 1は、 本発明による窒化物 LEDの構造の一例を示す説明図である。 ハッチ ングは、 領域を区別する目的で、 適宜施している (他の図も同様である) 。
図 2は、 本発明において、 ドライエッチングにより露出した n型窒化物半導体 の表面に p側電極を形成する態様を説明する図である。
図 3は、 本発明において、 ドライエッチングにより露出した n型窒化物半導体 の表面に p側電極を形成する態様を説明する図である。
図 4は、 本発明において、 部分的なドライエッチングにより露出した n型窒化 物半導体の表面に p側電極を形成する態様を説明する図である。
図 5は、 本発明において、 部分的なドライエッチングにより露出した n型窒化 物半導体の表面に p側電極を形成する態様において、 ドライエッチングにより形 成される凹部のパターンを例示する説明図である。 斜線で示した部分が凹部に対 応している。
図 6は、 本発明による窒化物 LEDの構造の一例を示す説明図である。
図 7は、 図 6に示す構造の窒化物 LEDの製造工程を説明する図である。 図 7 (b) 〜 (d) では、 主として、 新しく加えられた層だけに符号を記入しており 、 同じ層への重複した符号の付与は省略している。 図 7 (a) と (e) では、 分 力 りやすいように、 全ての層に符号を記入している。
図 8は、 本発明による窒化物 LEDの構造の一例を示す説明図である。
図 9は、 従来の窒化物 LEDの構造を示す図である。
図における各符号が示すものはそれぞれ次のとおりである。 1 1 ;サファイア 基板、 1 2 ; n型コンタクト層、 1 3 ; n型クラッド層、 14 ;活性層、 1 5 ; P型クラッド層、 1 6 ; p側コンタクト層、 P 1 1 ; n側電極、 P 1 2 ; p側電
極。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態を、 図を参照して説明する。
図 1は本発明の一実施形態に係る窒化物 LEDの構造を模式的に示す断面図で ある。 この LED 1 0は、 サファイア基板 1 1を有しており、 そのサファイア基 板 1 1上に G a Nバッファ層 (図示せず) 、 S i ドープ G a Nからなる厚さ約 2 μπιの n型コンタクト層 1 2、 S i ドープ A 1 G a Nからなる厚さ約 2 111の11 型クラッド層 (=第一の n型層) 1 3、 厚さ 6!!!!!の。 a N障壁層と厚さ 2 nm の I nG a N井戸層とが交互に 10層ずつ積層された多重量子井戸構造の活性層 14、 Mg ドープ A 1 G a Nからなる厚さ 1 00 nmの p型クラッド層 1 5、 S i ドープ G a Nからなる厚さ 10 nmの p側コンタクト層 (=第二の n型層) 1 6が、 順に成長された積層体を有している。
該積層体は、 その一部が、 第二の n型層である p側コンタクト層 1 6の表面か ら、 n型コンタクト層 1 2に達する深さまで、 ドライエッチングによって除去さ れ、 これにより露出した n型コンタクト層 1 2の表面には、 n側電極 P 1 1とし て A 1 /T i積層電極が形成されている。 また、 残された p側コンタクト層 1 6 の表面には、 ρ側電極 P 1 2として、 厚さ 50 nmの A 1層の上に厚さ 50 nm の P d層と厚さ 100 nmの A u層が順に積層された A 1 /P d/Au積層電極 力 p側コンタクト層 1 6の表面をほぼ全面的に覆うように形成されている。 こ の: p側電極 P 1 2は、 上面から見ると p側コンタクト層 1 6が露出した開口部を 有するパターンに形成された、 開口電極である。 なお、 ワイヤボンディング用の パッド電極の図示は省略している。
以下に、 半導体成長工程、 基板冷却工程、 電極形成工程を詳細に説明すること によって、 本発明の製造方法と、 本発明の素子構造とを同時に説明する。
[半導体成長工程]
半導体成長工程では、 サファイア基板 1 1の上に、 図示しないバッファ層と、 n型コンタクト層 1 2、 発光部 (第一 n型層 1 3、 活性層 14、 p型クラッド層
1 5 ) 、 第二 n型層 (p側コンタクト層) 1 6までの窒化物半導体層を、 MO V P E法により成長する。
基板としては、 サファイア基板の他にも、 S i C基板、 G a N基板、 A 1 N基 板、 S i基板、 スピネル基板、 Z n O基板、 G a A s基板、 N G O基板等、 窒化 物半導体結晶のェピタキシャル成長に使用可能な従来公知の基板を適宜用いるこ とができる。
基板上に形成される積層体は、 窒化物半導体結晶層からなるものであるが、 目 的に応じて、 窒化物半導体以外の材料からなる構造物を含んでいてもよい。 発光部は、 キヤリァ注入によって光を発生する発光ダイォード構造が構成され るように、 第一 n型層と p型クラッド層とによって活性層を挟んだ積層構造を有 するものであればよい。 好ましくは、 活性層を、 それよりもバンドギャップの大 きな第一 n型層と p型クラッド層とで挟んだダブルへテ口構造とする。 活性層は 、 単一量子井戸 (S QW) 構造や、 多重量子井戸 (M QW) 構造とすることが好 ましい。
図 1のように、 発光部の第一 n型層を基板側とする場合、 第一 n型層は、 専用 の n型クラッド層であってもよいし (その場合、 専用の n型コンタクト層が、 別 途設けられる) 、 n型コンタクト層と n型クラッド層とを兼用する層であっても よい。 前者の場合、 基板として、 n型 G a N基板などの、 n型窒化物半導体から なる基板を用いる場合には、 基板を専用の n型コンタクト層として用いることも できる。 これら積層体の層の構成は、 公知の窒化物半導体発光素子の構成を参照 してよい。
MO V P E法により各窒化物半導体層を成長する方法は公知であり、 MO V P E装置や、 窒化物半導体の原料、 成長条件等に限定はなく、 制御系、 配管系、 成 長炉、 有機金属原料、 ガス原料、 キャリアガス、 サブフローガス、 基板の加熱方 法、 原料 'ガスの供給条件、 成長温度条件、 その他について、 従来公知の方法を 適宜参照することができる。
第二 n型層である p側コンタクト層 1 6を除く各窒化物半導体層の結晶組成、
ドーパントとその濃度、 厚さ等の設計についても、 公知技術を参照することがで きる。 これらは図 1に例示する構成に限定されず、 公知技術を参考にして種々の 変形を行い得る。 一例として、 各層は、 半導体組成や不純物濃度が層内で均一で ある必要はなく、 例えば、 p型クラッド層 1 5が、 その中に、 半導体組成および Zまたは不純物濃度の異なる複数の層を含んでいてもよい。 また、 n型伝導層を 拡散する電子と p型伝導層を拡散する正孔が、 活性層で再結合して発光するとい う発光の仕組みを変更させない限りで、 図 1の構造に省略を行ったり、 あるいは 、 付加的な構造を追加することができる。
M g ドープ A 1 G a Nからなる p型クラッド層 1 5の成長には、 3族原料とし てトリメチルガリウム (T MG) およびトリメチルアルミニウム (T MA) 、 5 族原料としてアンモニア、 p型不純物原料としてビスシクロペンタジェ二ルマグ ネシゥム (C p 2 M g ) を使用することができる。 これらの原料は、 水素ガスを キヤリァガスとして成長炉に供給する。 基板付近のガスの流れを整えるために、 サブフローガスとして窒素ガス等を成長炉内に流してもよい。 基板温度は 9 0 0 °C〜1 2 0 0 °Cとすることが好ましい。
p型クラッド層 1 5が所定の厚さに成長されたら、 T MAおよび C p 2M gの 供給を停止し、 代わりに n型不純物原料としてシラン (S ί Η 4 ) を成長炉内に 供給して、 S i ドープ G a Nからなる!)側コンタク ト層 1 6を成長する。
p側コンタクト層 1 6の成長は、 p型クラッド層 1 5の成長と同じ温度で行つ てもよいし、 異なる温度で行ってもよい。 ' p型クラッド層 1 5の成長と p側コンタクト層 1 6の成長との間に、 窒化物半 導体の成長を行わずに、 成長炉内の雰囲気中のアンモニアの濃度を、 p型クラッ ド層 1 5の成長時よりも低くする、 成長中断時間を設けることもできる。
該成長中断時間では、 P型クラッド層 1 5の表面がまだ p側コンタクト層 1 6 で覆われておらず、 かつ雰囲気中のアンモニアの濃度を!)型クラッド 1 5の成長 時よりも低くするので、 p型クラッド層 1 5の成長時に p型クラッド層 1 5内部 に取り込まれた水素が、 効果的に p型クラッド層 1 5の表面から外部に追い出さ
れる。 そのため、 水素パッシベーシヨンが抑制され、 最終的に得られる p型クラ ッド層 1 5の p型伝導性が向上する。
上述の成長中断時間において、 成長炉内の雰囲気中のアンモニア濃度を] 型ク ラッド 1 5の成長時よりも低くする方法に限定はないが、 成長炉に供給するガス 中に占めるアンモニアの比率を下げる方法が最も簡便で好ましい。 ここで、 アン モユアの比率をゼロとしてもよいが、 その場合には、 p型クラッド層 1 5の表面 が劣化して荒れたり、 特に、 基板温度が高い場合にはエッチングが起こって p型 クラッド層 1 5の膜厚が減少する。 従って、 アンモニアの比率は、 ゼロとしない で、 少量のアンモニアを含むガスを供給する方が好ましく、 具体的には、 不活性 ガスにアンモニアが混合された混合ガスを流すことが好ましい。 ここで、 不活性 ガスとは窒素ガス、 ならびに、 アルゴン、 ネオン、 ヘリゥム等のいわゆる希ガス である。
上記成長中断時間に成長炉内に供給する混合ガスの流量に占めるアンモニアの 流量比は、 2 . 5 %未満とすることが好ましい。 アンモニアの流量比を 2 . 5 % 未満とすると、 p型クラッド層 1 5からの水素の追い出しが特に効果的となるか らである。
なお、 ここでいう混合ガスは、 予め MO V P E装置外で不活性ガスとアンモニ ァとが混合された混合ガスでもよく、 また、 分離された不活性ガス源とアンモニ ァ源からそれぞれ MO V P E装置に供給された不活性ガスとアンモニアとが、 該 装置の配管中や、 成長炉の上流側のガス導入部、 成長炉内等で混合されたもので あってもよい。 ここでいう混合ガスは、 不活性ガスとアンモニアとが分子レベル で均一に混合された混合ガスであることを要しない。
成長中断時間の後、 p側コンタクト層 1 6を成長する時には、 雰囲気中のアン モユア濃度を再ぴ増加させてもよい。
p側コンタクト層 1 6の成長温度 T C O Nを p型クラッド 1 5の成長温度 T C Lよ りも低くし、 上記成長中断時間で基板温度を T C Lから T C O Nに下げるようにする と、 露出した!)型クラッド層 1 5の表面が成長中断時間に劣化することが抑制さ
れる。
この場合、 TCLより低く設定される TCONは 700°C〜900°Cとすることが 好ましく、 700°C以下とすると p側コンタクト層 1 6の結晶品質が低下する傾 向があり、 900°C以上とすると TCLと TCONを変えることの効果が小さくなる α
ρ側コンタクト層 (第二 η型層) 1 6を厚さ 1 0 nmに成長する場合、 厚さが 10 nmに達したところで原料ガスの供給を停止して成長を止めるようにすれば よいが、 厚さが 1 O nmを超えるように成長した後、 原料ガスの供給を停止し、 エッチング効果を有するガスを供給して、 厚さが 1 0 nmとなるまで表面をエツ チングしてもよい。 ここで、 エッチング効果を有するガスとしては、 水素ガスが 例示される。
p型クラッド層 1 5と p側コンタクト層 1 6との界面は、 伝導型の異なる半導 体の接合部となるにもかかわらず、 p側電極 P 1 2の接触抵抗が実用可能な程度 に低くなることから見て、 p型クラッド層 1 5への正孔の注入には、 上記接合部 でのキャリアのトンネリングが関与していると考えられる。 このトンネリングは 、 p側コンタクト層 16の電子濃度を高くする程、 障壁の厚さが薄くなつて、 容 易に生じるようになる。
従って、 p側コンタク ト層 1 6の好ましい電子濃度は 1 X 1018 cm-3以上 であり、 3 X 1 018 cm一3以上とするとより好ましく、 5 X 1018 cm一3以上 とすると更に好ましい。 ; 側コンタクト層 1 6の電子濃度に上限はないが、 電子 濃度が 1 X 102° cm一3を超える程の高濃度に不純物をドープすると、 窒化物 半導体の結晶品質が低下し、 導電率の制御が難しくなる他、 n型不純物が S iの 場合には、 窒化物半導体が 3次元的に成長する傾向が強くなり、 平坦な膜を成長 させることが難しくなる。 電子濃度が 2 X 1019 cm一3以下となる n型不純物 濃度では、 制御性よく、 結晶性の良好な n型窒化物半導体を成長させることがで さる。
そこで、 p側コンタクト層の厚さを 10 nmよりも厚くする場合には、 p型ク
ラッド層 1 5と接する部分に、 電子濃度が 2 X 1 0 1 9 c m一3以上となるように n型不純物を添加した、 膜厚 1 0 n m以上の高電子濃度層を成長させ、 その後、 成長面が平坦化するように、 n型不純物濃度をこれよりも低くした層を成長させ てもよい。
また、 p側コンタクト層の電子濃度は、 p側電極と p側コンタクト層との接触 抵抗を低くするうえでも、 好ましくは 1 X 1 0 1 8 c m_ 3以上であり、 3 X 1 0 1 8 c m一3以上とするとより好ましく、 5 X 1 0 1 8 c m一3以上とすると更に好ま しい。
p側コンタクト層は、 p型クラッド層と接する部分や、 p側電極と接する部分 に、 他の部分よりも高濃度に n型不純物を添加した構成としてもよい。
p型クラッド層と P側コンタクト層との接合部におけるトンネリング障壁を薄 くするうえでは、 該接合部近傍における P型クラッド層の; p型キヤリァ濃度を高 くすることも好ましい。 そのために、 p型クラッド層には、 少なくとも p側コン タク ト層と接する部分に、 M g等の p型不純物を 1 X 1 0 1 9 c m— 3以上の濃度 で添加することが好ましく、 1 X 1 0 2 ° c m一3以上の濃度で添加することが、 より好ましい。
S iを p側コンタクト層 1 6にドープすることに加え、 p型クラッド層 1 5と p側コンタク ト層 1 6の界面に、 薄い S i層を設けることも、 p側電極 P 1 2の 接触抵抗を低下させるうえで好ましい。
それには、 p型クラッド層 1 5の成長が完了した時点で原料供給をー且停止し 、 p型クラッド層 1 5の露出した表面にテトラエチルシラン、 ジシラン、 シラン 等のシラン系化合物を、 水素ガスをキャリアガスとして気相で供給することによ り、 該表面に S iを吸着させた後、 引き続き、 S iをドープした!)側コンタクト 層 1 6を MO V P E法で成長すればよい。 このように形成される S i層の厚さは 単原子層以下〜数原子層の範囲と見積もられる。
このような S i層は、 p型クラッド層 1 5と p側コンタクト層 1 6とを電気的 にショートさせる働きを有しており、 詳しいメカニズムは不明であるが、 キヤリ
ァが p型クラッド層 1 5と p側コンタクト層 1 6との界面を容易に通過し得るよ うにする効果を有している。
p側コンタクト層 1 6に用いる窒化物半導体の組成に限定はないが、 活性層 1 4で発生される光が!)側コンタクト層 1 6で吸収されないように、 活性層 1 4で 発生される光のエネルギーよりも大きなバンドギャップを有する組成とすること が好ましい。 活性層 1 4に I n G a Nを用いると高い発光効率が得られるが、 そ の場合には、 p側コンタクト層 1 6を 2元結晶の G a Nとすると、 良好な結晶性 が得られ、 好ましい。
また、 A 1を含む組成とすると、 A 1は G aや I nよりも Nとの結合力が強い ために、 次の基板冷却工程における p側コンタクト層 1 6の表面劣化を抑制する 効果が期待できる。
また、 ; 側コンタクト層は、 組成の異なる窒化物半導体結晶層を積層した多層 構造や、 厚さ方向に結晶組成が傾斜した構造とすることもできる。
[基板冷却工程]
基板冷却工程では、 p側コンタク ト層 1 6までの窒化物半導体層の成長が完了 したサファイア基板 1 1の温度を室温まで冷却するが、 この冷却の間に、 p型ク ラッド層 1 5が水素パッシベーションによって絶縁性 ( i型) とならないように 、 すなわち、 冷却が完了した時点で p型クラッド層 1 5が p型伝導性となるよう に、 冷却を行う。
—例として、 p側コンタクト層 1 6の成長が完了したら、 有機金属原料の T M G、 C p 2 M g、 キャリアガス等として供給していた水素ガスの供給を停止する とともに、 基板の加熱を停止し、 成長炉内に少量のアンモニアと、 不活性ガスと を供給しながら、 自然放冷によって基板温度を室温まで降下させる方法が挙げら れる。
本発明にいう不活性ガスとは、 前述のように、 窒素ガス、 ならびに、 アルゴン 、 ネオン、 ヘリウム等のいわゆる希ガスである。 この工程に限らず、 本発明で用 いる不活性ガスは安価な窒素ガスとすることが、 製造コスト低下のために好まし
い。
また、 p側コンタクト層 1 6の成長温度 T C O Nが 7 0 0 °Cより高い温度であれ ば、 基板加熱の停止後、 基板温度が 7 0 0 °Cとなるまではアンモニアを成長炉内 に流しながら冷却を行い、 7 0 0 °Cでアンモニアを停止して、 その後は成長炉内 に不活性ガスのみを流しながら、 4 0 0 °Cまで 1分間以上かけて冷却を行い、 更 に室温まで冷却する方法が挙げられる。
また、 窒化物半導体の成長完了時に基板加熱を停止するとともに、 アンモニア も停止して、 冷却工程では不活性ガスのみを成長炉内に流すようにすることもで さる。
後者はより高温でアンモニアの供給を停止するために、 p側コンタクト層 1 6 の表面の劣化が大きくなるが、 p側コンタク ト層 1 6は n型伝導性であるために 、 劣化により生じる窒素空孔が電気特性に及ぼす影響は、 p型窒化物半導体の場 合と比べて小さい。
基板冷却工程における基板冷却の方法や、 冷却条件は上記の例に限定されるも のではない。
MO V P E法によって p型不純物をドープしながら成長した窒化物半導体結晶 は、 水素パッシベーシヨンの原因となる水素を実質的に含まない雰囲気中で、 約 1分間以上、 4 0 0 °C以上の温度 (好ましくは 7 0 0 °C以上の温度) に保持され ると、 p型半導体となることが知られているので、 本発明における基板冷却工程 でも、 この条件が満たされるように、 冷却方法や冷却条件を決定すればよい。 ここで、 「水素パッシベーシヨンの原因となる水素」 とは、 水素ガス、 アンモ 二了、 ヒドラジン等に含まれる H— H結合や N— H結合に係る水素である。 この ような水素を実質的に含まない雰囲気とは、 実用上問題となる程の水素パッシベ ーシヨンが発生するような濃度 は含まない雰囲気ということであり、 全く含ま ないことまでを意味するものではない。
「水素パッシベーションの原因となる水素」 を実質的に含まない雰囲気ガスの 主成分として用いるガスに限定はないが、 実際的には、 不活性ガスが好ましく用
いられる。
基板冷却工程において成長炉内にアンモニアを流す場合には、 水素パッシベー ションの発生をできるだけ抑えるため、 不活性ガスにアンモニアが混合された混 合ガスを成長炉内に供給することが好ましい。 この混合ガスに占めるアンモニア の流量比は、 好ましくは 2. 5%未満、 より好ましくは 1%未満、 特に好ましく は 0. 5%未満である。 アンモニアの流量比がこの範囲であれば、 水素パッシベ ーションが効果的に抑制されて、 p型クラッド層 15が p型伝導性となり易くな る。 また、 アンモニアの流量比が 0. 1%程度でも、 p側コンタク ト層 16の表 面劣化を抑制する効果がある。
なお、 ここでいう混合ガスも、 予め MO VP E装置外で不活性ガスとアンモニ ァとが混合された混合ガスであってもよいし、 分離された不活性ガス源とアンモ ユア源からそれぞれ MO V P E装置に供給された不活性ガスとアンモニアとが、 装置の配管中や、 成長炉の上流側のガス導入部、 成長炉内等で混合された混合ガ スであってもよく、 不活性ガスとアンモニアとが分子レベルで均一に混合された 混合ガスであることを要しない。
基板冷却工程において成長炉内に流すアンモニアは、 上記混合ガスを用いる場 合も含めて、 基板温度が 400°C以下に下がる前に停止すると、 水素パッシベー シヨンの抑制のうえで好ましい。 一方、 TCONが 900°C以上の場合には、 少な くとも基板温度が 900°Cに下がるまでは、 アンモニアを成長炉内に供給するこ とが、 p側コンタクト層 16の表面劣化を抑制するうえで好ましい。
なお、 アンモニアを含む雰囲気中で冷却する方法としては、 特開 2004— 1 03930号広報や、 特開 2003— 297841号公報を参照することもでき る。
自然放冷では、 基板加熱の停止により基板温度が降下していく際に、 人為的な 温度調節操作を行わないが、 本発明では、 基板温度の降下を自然放冷に任せる方 法も 「冷却」 操作として取り扱う。 一方、 人為的な温度調節操作の例としては、 基板を保持するサセプタに冷却回路を設けて行う強制冷却や、 ヒータ加熱、 高周
波加熱等、 装置所定のサセプタ加熱手段を動作させることによる降温速度の緩和 などが挙げられる。 本発明の製造方法では、 このような、 人為的な温度調節操作 を行レ、ながら基板を冷却してもよ 、。
また、 冷却時の温度プロファイルも任意に設定してよく、 降温速度を途中で変 化させてもよいし、 時間とともに温度を単調降下させるだけでなく、 一定温度に 保持する時間を設けたり、 部分的にではあるが、 昇温を行う時間を設けることも できる。
雰囲気ガスに少量混合することにより p側コンタクト層 16の表面劣化を抑制 できるガスとして、 アンモニア以外に、 ヒ ドラジン、 有機アミン等、 MOVPE 法において 5族原料となり得る化合物が挙げられる。
その他、 基板冷却工程は、 基板を MO VP E装置の成長炉から他の場所に移し て行うことも妨げられない。
冷却時の雰囲気ガスは、 酸素を含むガスとしてもよい。 酸素を含むガスを用い る場合、 特開 2003— 297842号公報、 特開平 10— 209493号公報 等を参照してもよい。 酸素を含むガスは、 基板温度が 700°C以下となつてから 成長炉に導入することもできる。 上記成長中断時間に成長炉に流すガスを、 酸素 を含むガスとすることもできる。
[電極形成工程]
図 1の LED 10の p側電極 P 1 2は A 1 /P d u積層電極であるが、 こ の!)側電極 P 1 2は、 A 1層で p側コンタク ト層 16に接している。 この電極が p側コンタクト層 1 6に対して低い接触抵抗を示すのは、 A 1が n型窒化物半導 体と良好なォーミック接触を形成する金属であることが関係していると考えられ る。
p側電極 P 1 2は、 単層の A 1膜とすることもできる。 また、 材料は純 A 1に 限定されず、 接触抵抗が著しく大きくならない範囲で、 A 1以外の元素が添加さ れた A 1合金を使用することもできる。
また、 他の金属材料として、 T i、 W (タングステン) 、 C r (クロム) など
を用いることもできる。
また、 金属材料ではないが、 インジウム錫酸化物 (I T O) からなる透明導電 膜も P側電極 P 1 2として用いることができる。
P側電極 P 1 2に A 1を用いる場合、 A 1 と窒化物半導体とは熱膨張係数差が 比較的大きいために、 素子の製造工程で、 あるいは素子の使用中にヒートサイク ルを受けると、 p側電極 P 2と p側コンタク ト層 1 6との間でストレスが発生し 、 A 1膜の変形が生じる恐れがある。
この問題を抑制するために、 A 1の耐熱性を高める元素が添加された A 1合金 を用いることが好ましい。 そのような元素としては、 T i、 S i、 N d、 C u等 が例示され、 特に、 A 1に T iが添加された合金は、 T iも n型窒化物半導体と のォーミック接触性が良好であることから、 好ましい合金である。
p側コンタクト層 1 6の表面に; p側電極 P 1. 2を形成するための方法は、 従来 公知の方法を適宜参照すればよく、 蒸着、 スパッタリング、 C V D等の気相法が 好ましく例示される。 p側電極 P 1 2を形成した後は、 電極膜と p側コンタクト 層 1 6との接触抵抗を低下させるために、 3 0 0 °C〜5 0 0 °Cの熱処理を行うこ とが好ましい。
また、 合金膜の形成方法についても従来公知の方法を参照することができ、 合 金スパッタリングゃ多元蒸着の他、 各成分金属の単体からなる薄膜を積層した後 、 熱処理を行う方法が、 例示される。 例えば、 A l— T i合金膜は、 蒸着によつ て A 1膜と T i膜の積層膜を形成した後、 4 0 0 °C以上で熱処理することによつ て得ることができる。
A 1は窒化物 L E Dの典型的な発光波長である可視波長 (緑色) 〜近紫外波長 において良好な反射性を有することから、 p側電極 P 1 2の、 少なくとも p側コ ンタクト層 1 6に接する部分を、 光反射性となる膜厚に形成された A 1層 (また は A 1合金層) で形成すると、 電極 P 1 2による光吸収が小さくなり、 L E Dの 発光効率が向上する。 そのために、 この A 1層または A 1合金層の厚さを 1 0 n m以上とすることが好ましく、 2 0 n m以上とすることがより好ましい。 また、
A 1は表面が酸化され易いが、 このような膜厚とすれば、 表面の酸化による電極 特性の劣化や不安定化が生じ難くなる。
A 1 ZP d/Auの 3層構造からなる p側電極 P 1 2において、 Au層は、 耐 食性に優れるために、 電極全体の化学的な保護層となる。 また、 表面に酸化膜が 形成され難いために、 フリップチップボンディング等で用いられるろう材 (Au 、 Au_S n共晶等) との濡れ性を高める効果もある。
P d層は、 A u層の A uが A 1層に拡散して合金化し、 A 1層の電気特性や光 学特性を悪化させることを抑制するためのパリア層である。 A 1層の A 1が Au 層に拡散し、 A u層の表面に析出して酸化膜を形成することを防ぐ目的もある。 バリア層は、 P d膜に限定されず、 Auよりも高融点の金属が使用でき、 T i 、 W、 P d、 Nb、 Mo (モリブデン) 、 P t、 Rh、 I r (イリジウム) 、 Z r (ジノレコニゥム) 、 H f (ハフニウム) 、 N i等の単体または合金からなる単 層膜または多層膜とすることができる。 好ましい合金は、 例えば、 W— T i合金 である。 バリア層は、 これらの金属からなる層と Au層との交互積層膜であって もよく、 P t層と Au層との交互積層膜は好ましいバリア層のひとつである。
A 1層 バリア層 ZAu層の 3層からなる p側電極 P 1 2において、 A 1層の 好ましい厚さは 10 nm〜7 O nm、 バリア層の好ましい厚さは 10 nm〜30 0 nm、 Au層の好ましい厚さは 50 nm〜2000 nmである。
p側電極 P I 2は、 活性層 14で発生する光を p側電極 P 1 2を通して素子外 部に取り出すために、 開口電極とする。 ρ側電極 Ρ 1 2を I TOからなる透明導 電膜とする場合には、 電極材料が光透過性を有するので、 開口電極とする必要は ない。
活性層 14で発生する光をサファイア基板側 1 1から素子外部に取り出す構成 とすることもでき、 その場合は、 p側電極 P 1 2を反射性の金属電極とすること が好ましく、 開口電極としない方がよい。 反射性の金属電極は、 少なくとも p側 コンタクト層 1 6と接する部分を、 反射性の良好な A 1層または A 1合金層で形 成することが好ましい。
ドライエッチングによって n型コンタクト層 1 2の表面を露出させ、 該露出面 に n側電極 P I 1を形成する工程については、 特に限定はなく、 従来公知の方法 を参照して行うことができる。 この工程は、 上記基板冷却工程の終了後であれば よく、 上記電極形成工程の前に行ってもよいし、 後に行ってもよい。
上記露出面の形成を最初に行い、 その後、 n側電極 P 1 1の形成、 p側電極 P 1 2の形成を順次行つてもよい。 ここで、 n側電極 P 1 1の形成と、 p側電極 P 1 2の形成は、 いずれを先に行ってもよい。 また、 これらの電極を、 同じ材料を 用いて同時に形成することもできる。
[好ましい態様 1 ]
上記説明した実施形態の好ましい態様として、 上記半導体成長工程において、 図 2 ( a ) に示すように、 p型クラッド層 2 1 5の上に、 n型窒化物半導体層 2 1 6を成長し、 上記基板冷却工程が終了した後で、 図 2 ( b ) に示すように、 こ の n型窒化物半導体層 2 1 6の一部を残して表面側をドライエッチングにより除 去し、 その残った部分を p側コンタクト層として、 その表面に図 2 ( c ) に示す ように p側電極 P 2 1 2を形成する態様が挙げられる。
またさらに、 半導体成長工程において、 図 3 ( a ) に示すように p型クラッド 層 3 1 5の上に n型窒化物半導体層 3 1 6 1と、 その上に、 更に任意の窒化物半 導体層 3 1 6 2を成長し、 その後、 図 3 ( b ) に示すように、 n型窒化物半導体 層 3 1 6 1の一部を残して、 それより表面側の部分を、 上記任意の窒化物半導体 層 3 1 6 2を含めて、 ドライエッチングで除去し、 図 3 ( c ) に示すように、 n 型窒化物半導体層 3 1 6 1の残された部分を p側コンタクト層として、 その表面 に; 側電極 P 3 1 2を形成してもよい。
これらの態様では、 基板冷却工程で雰囲気中に露出されることによりダメージ を受けた表面をドライエッチングにより除去し、 新たに露出した n型窒化物半導 体の表面に、 p側電極を形成することができる。 ドライエッチングには、 また、 窒化物半導体の表面に形成された自然酸化膜を除去する作用や、 汚染 (コンタミ ネーシヨン) を除去する作用もある。 従って、 ドライエッチングが施されて露出
した面に電極を形成することにより、 電極の接触抵抗を低くしたり、 電極と半導 体との密着性を向上させることができる。
ドライエッチングにより露出した n型窒化物半導体の表面に、 A l、 T i、 I
TO等からなる電極を形成することは、 従来の窒化物 LEDの n側電極で行われ ていることであり、 良好な電気的接触と密着性が得られることが知られている。
ドライエッチングにより露出した n型窒化物半導体の表面に p側電極を形成す る本発明の製造方法は、 p型不純物の活性化を従来法であるアニーリングにより 行う場合においても有用である。 このアニーリング処理は、 アンモニア等の 5族 原料の濃度が低い雰囲気中で加熱を行うことから、 最上層として形成された窒化 物半導体層の表面がダメージを受け易いが、 ダメージを受けた表面層を、 ドライ エッチングにより除去できるからである。 また、 自然酸化膜を除去する作用や、 汚染を除去する作用も、 当然に期待できる。
なお、 従来技術では、 このように、 p側電極をドライエッチング面に形成する ことは困難であった。 従来の窒化物半導体素子においては、 p側電極が p型コン タクト層上に設けられていたが、 p型コンタクト層にドライエッチングを行うと n型欠陥である窒素空孔が形成されて正孔濃度が低下するために、 ドライエッチ ングされた p型コンタクト層の表面には接触抵抗の低い p側電極を形成すること ができなかったからである。
これに対して、 本発明の製造方法では、 A l、 T i、 I TO等からなる p側電 極を、 n型窒化物半導体層の表面に形成するので、 このような問題が生じない。 この態様で用いる窒化物半導体のドライエッチング方法については、 従来公知 の技術を参照することができ、 CF4、 CC 12F2、 CC 14、 BC 13、 S i C 14、 C 12等のハロゲン化合物またはハロゲンガスを反応ガスに用いた、 プラ ズマエッチング (反応性プラズマエッチング、 反応性イオンエッチング) が好ま しい方法として例示される。
図 2に示した例では、 p型クラッド層 21 5の上に成長された n型窒化物半導 体層 21 6の表面が一様にドライエッチングされ、 全体的に厚さが薄くされてい
るが、 このドライエッチングを n型窒化物半導体層に対して部分的に行ってもよ い。
例えば、 p側コンタクト層の表面全体に広がる凹凸パターンが形成されるよう にドライエッチングを行うと、 窒化物半導体層の表面が凹凸状となり、 LEDの 光取り出し効率を向上させることができる。
その場合、 図 4 (a) に示すように、 まず、 半導体成長工程において、 p型ク ラッド層 4 1 5の上に、 n型窒化物半導体層 41 6を、 特定の厚さに成長させて おく。 ここで、 特定の厚さとは、 ドライエッチングにより形成される凹部の深さ を、 LEDの発光波長 (窒化物半導体中の波長) の 4分の 1以上とし得る厚さで ある。
基板冷却工程を行った後、 上記 n型窒化物半導体層 41 6の表面に部分的にド ライエッチングを行うことにより、 図 4 (b) に断面図を示すように、 n型窒化 物半導体層 41 6の表面に凹部 Bを形成する。 ここで、 基板の上方から見た該凹 部 Bの形成パターンは、 図 5 (a;) 〜 (c) に示すような網目状、 図 5 (d) に 示すような分岐状、 図 5 (e) に示すようなミアンダ状、 図 5 (f ) に示すよう な渦巻き状等のパターンとすることができる。
この凹部の深さを、 LEDの発光波長 (窒化物半導体中の波長) の 4分の 1以 上とすると、 LEDからの発光を散乱する効果が生じる。
凹凸の断面形状は、 矩形 (正方形、 長方形の他に、 凸の上部が基部よりも狭い 台形や、 逆台形などをも含む) 波形状、 三角波形状、 サイン波形状などであって よい。
電極形成工程において、 図 4 ( c ) に示すように、 反射性の p側電極 P 4 1 2 を n型窒化物半導体層 41 6の凹部 Bのみに形成すれば、 活性層 14で発生する 光を、 P側電極 P41 2側から取り出し可能な窒化物 LEDとなる。
この窒化物 LEDは、 凹凸による光散乱効果と、 光取り出し側に向かって突出 した凸部 Aから光が外部に出射され易くなることによって、 光取り出し効率が向 上する。
また、 図 4 (d) に示すように、 反射性の p側電極 P 41 2を凹凸面全体を覆 つて形成すると、 基板側から光を取り出す窒化物 LEDとなる。 この場合は、 凹 凸による光散乱効果により光取り出し効率が向上する。
また、 電極を透明導電膜で形成すると、 この透明導電膜を通して光を取り出す 窒化物 LEDとなるが、 透明導電膜からなる電極は図 4 (c) 、 図.4 (d) のい ずれの形に形成した場合も、 屈折率の異なる p側コンタクト層 41 6と透明導電 膜との境界に平坦ではない界面が形成されるので、 光散乱効果によって光取り出 し効率が向上する。
p側電極 P 4 1 2を図 4 (c) のように形成するには、 図 4 (a) の n型窒化 物半導体層 4 1 6の表面に、 凹部 Bのパターンを有する開口部が形成されたエツ チングマスクを形成し、 ドライエッチングを行って凹部 Bを形成した後、 凸部 A にエッチングマスクを残した状態で電極 P 41 2を気相法で形成する。 最後にェ ツチングマスクを除去すると、 部 Bのみに電極 P 4 1 2を残すことができる。 この態様において、 凹部 Bの深さを 0. 5 xm以上とすると、 光散乱効果が特 に高くなるので、 半導体成長工程において、 n型窒化物半導体層 41 6を厚さ 0 . 5 μπι以上に成長し、 ドライエッチングの深さを 0. 5 /zm以上とすることが 好ましい。
また、 この態様において、 p型クラッド層 41 5上に成長した n型窒化物半導 体層 41 6の上に、 更に任意の窒化物半導体層を積層し、 この任意の窒化物半導 体層の表面から、 n型窒化物半導体層 41 6に達する凹部を、 部分的なドライエ ッチングによつて形成することもできる。
p側コンタクト層の厚さと導電性が十分であって、 かつ、 p側コンタクト層の 内部で電流が層の面内方向 (厚さ方向と直交する方向) に十分に拡散し得る場合 には、 電極を形成しても、 活性層で生じた光を!)側コンタクト層の側から取り出 すうえで大きな障害とならない箇所 (例えば、 チップの縁や隅の部分など) に、 p側電極を設けることができる。
図 8は、 このように p側電極を形成した発光素子の断面構造の一例を示してお
り、 P側コンタクト層のうち、 チップの縁にあたる箇所に部分的にドライエッチ ングを施して、 基板冷却工程でダメージを受けた表層を除去し、 該表層を除去し た後の露出面に p側電極を設けている。 なお、 この図 8に示す素子では、 p側電 極を形成しょうとする箇所だけでなく、 : p側コンタクト層の表面の他の領域にも ドライエッチングを施し、 該表面を凹凸面としている。
図 8に示す素子は、 活性層で発生する光を基板側から取り出す態様として使用 してもよいが、 その場合には、 p側コンタクト層の表面の、 p側電極が形成され ていない領域に、 更に反射層を設けることが好ましい。
[好ましい態様 2]
図 6は、 本発明の実施に係る他の窒化物 LEDの断面構造を示す模式図である 。 この LED 20は、 導電性の支持基板 28を有しており、 その支持基板 28の 上に導電性接着層 27、 A 1層で p側コンタクト層 26と接する 3層構造 (A 1 /P d/Au) の p側電極 P 22、 n型窒化物半導体からなる p側コンタク ト層 (第二 n型層) 26、 p型窒化物半導体からなる p型クラッド層 25、 窒化物半 導体からなる活性層 24、 n型窒化物半導体からなる n型クラッド層 (第一 n型 層) 23、 n型窒化物半導体からなる n型コンタクト層 22が順に積層されてい る。 n型コンタクト層 22の表面には、 A 1層で n型窒化物半導体とォーミック 接触する n側電極 P 2 1 (A 1 /P d/Au) が形成されている。
L E D 20は、 n側電極 P 21と : p側電極 P 22とが、 活性層 24を含む窒化 物半導体の積層体を挟んで向かい合う対向電極構造を有している。 p側電極 P 2 2への給電は、 導電性の支持基板 28および導電性接着層 27を介して行われる 力 支持基板 28に設けられる電極の図示は省略している。
この LED 20を製造する場合、 まず、 図 7 (a) に示すように、 成長用基板 21の上に、 図示しないバッファ層と、 n型コンタクト層 22から p側コンタク ト層 26までの窒化物半導体層を MO VP E法により成長する半導体成長工程を 行う。 次に、 P型クラッド層 25が p型伝導性となるように室温まで冷却する基 板冷却工程を行う。 次に、 図 7 (b) に示すように、 P側コンタクト層 26の表
面に P側電極 P 22を形成する電極形成工程を行う。 その後は、 順次、 p側電極 P 22の表面に導電性接着層 27を用いて支持基板 28を貼り付け (図 7 (c) ) 、 成長用基板 21を除去し (図 7 (d) ) 、 それによつて露出した n型コンタ タト層 22の表面に、 n側電極 P 21を形成する (図 7 (e) ) 。
本発明では、 基板の上に窒化物半導体を成長する半導体成長工程を含むが、 半 導体成長工程で使用する該基板が、 最終的な目的物である窒化物半導体素子に含 まれることは必須ではない。
なお、 図 6の LEDでは、 支持基板 28が p側電極 22に接合されているが、 成長用基板 21を除去した後、 支持基板 28を、 成長用基板 2 1と入れ替えるよ うに、 n型コンタクト層 22に接合することもできる。
また、 本発明には、 次の特徴を有する製造方法、 窒化物半導体素子、 発光ダイ ォードが含まれている。
(la) MO VPE装置の成長炉内に基板を設置し、 該基板の上に、 p型不純物が ドープされた窒化物半導体層である p ドープ層と、 その直上に積層される、 n型 不純物がドープされた窒化物半導体層である nドープ層とを含む、 窒化物半導体 層の積層体を、 上記 nドープ層が上記積層体の最上層となるように、 MOVPE 法により成長する半導体成長工程と、 上記半導体成長工程の後、 上記 p ドープ層 が p型伝導性となるように、 上記積層体が成長された基板を上記 nドープ層の成 長温度から室温まで冷却する基板冷却工程と、
上記基板冷却工程の後、 上記 nドープ層の表面に、 上記 p ドープ層に正孔を注入 するための電極を形成する電極形成工程と、 を含む窒化物半導体素子の製造方法
(2a) 上記 nドープ層の電子濃度が 1 X 1 018 cm—3〜: L X 102。 cm 3であ る、 上記 (la) に記載の製造方法。
(3a) 上記電極が n型窒化物半導体とォーミック接触する金属を含む、 上記 (la ) または (2a) 記載の製造方法。
(4a) 上記電極が A 1および または T iを含む、 上記 (la) または (2a) に記
載の製造方法。
(5a) 上記電極がインジウム錫酸化物からなる透明導電膜である、 上記 (la) ま たは (2a) に記載の製造方法。
(6a) 上記 M O V P E法で用いる 5族原料がアンモニアであり、 上記半導体成長 工程において、 上記 p ドープ層の成長と上記 nドープ層の成長との間に、 窒化物 半導体の成長を行わずに上記成長炉内の雰囲気中のアンモニア濃度を上記 p ドー プ層の成長時よりも低くする成長中断時間を設ける、 上記 (la) 〜 (5a) のいず れかに記載の製造方法。
. (7a) 上記成長中断時間には、 アンモニアと不活性ガスとを含む混合ガスが上記 成長炉内に供給され、 該混合ガスに含まれるアンモニアの流量比が 2 . 5 %未満 である、 上記 (6a) に記載の製造方法。
(8a) 上記 nドープ層を成長するときの基板温度 T g nが、 上記 p ドープ層を成 長するときの基板温度 T g pよりも低く、 基板温度の T g pから T g nへの降下 が上記成長中断時間に行われる、 上記 (6a) または (7a) に記載の製造方法。 (9a) 上記 T g nが 7 0 0 °C〜9 0 0 °Cである、 上記 (8a) に記載の製造方法。 ( 10a) 上記基板冷却工程では、 アンモニアと不活性ガスとを含む混合ガスが上 記成長炉内に供給される、 上記 (la) 〜 (9a) のいずれかに記載の製造方法。
(11a) 上記混合ガスに含まれるアンモニアの流量比が 2 . 5 %未満である、 上 記 (10a) に記載の製造方法。
( 12a) 上記混合ガスの供給が、 基板温度が 4 0 0 °C以下に下がる前に停止され る、 上記 (10a) または (11a) に記載の製造方法。
( 13a) 上記窒化物半導体素子が発光素子である、 上記 (la) 〜 (12) のいずれ かに記載の製造方法。
(14a) 上記発光素子が発光ダイオードである、 上記 (13a) に記載の製造方法。 ( 15a) 上記窒化物半導体素子が発光ダイオードであり、 上記電極は、 少なくと も上記 nドープ層の表面と接する部分が、 光反射性の A 1層または A 1合金層か らなる、 上記 (4a) に記載の製造方法。
(16a) (A) MOV P E装置の成長炉内に基板を設置し、 該基板の上に、 p型 不純物がドープされた窒化物半導体からなる第 1の窒化物半導体層と、 その直上 に積層される、 n型不純物がドープされた窒化物半導体からなる第 2の窒化物半 導体層とを含む、 窒化物半導体の積層体を、 MOVP E法により成長する工程と 、 (B) 上記 (A) の工程の後、 上記第 1の窒化物半導体層が!)型伝導性となる ように、 上記積層体が成長された基板を上記積層体の最上層の成長温度から室温 まで冷却する工程と、 (C) 上記 (B) の工程の後、 上記積層体の表面側から、 上記第 2の窒化物半導体層の一部が上記第 1の窒化物半導体層の表面上に残る深 さに、 ドライエッチングを行う工程と、 (D) 上記 (C) の工程の後、 上記ドラ ィエッチングにより露出した上記第 2の窒化物半導体層の表面に、 上記第 1の窒 化物半導体層に正孔を注入するための電極を形成する工程と、 を含む窒化物半導 体素子の製造方法。
(17a) 上記積層体の最上層が上記第 2の窒化物半導体層である、 上記 (16a) に 記載の製造方法。
(18a) 上記第 2の窒化物半導体層の電子濃度が l X 1 018 c m— 3〜1 X 1 02 ° c m— 3である、 上記 (16a) または (17a) に記載の製造方法。
(19a) 上記電極が、 n型窒化物半導体とォーミック接触する金属を含む、 上記 (16a) 〜 (18a) のいずれかに記載の製造方法。
(20a) 上記電極が A 1および Zまたは T iを含む、 上記 (16a) 〜 (18a) のい ずれかに記載の製造方法。
(21a) 上記電極がインジウム錫酸化物からなる透明導電膜である、 上記 (16a) 〜 (18a) のいずれかに記載の製造方法。
(22a) 上記 (C) の工程において、 上記ドライエッチングが上記積層体に対し て部分的に行われる、 上記 (16a) 〜 (21a) のいずれかに記載の製造方法。
(23a) 基板と、 上記基板の上に形成された p型窒化物半導体層と、 上記 p型窒 化物半導体層の直上に形成され、 ドライエッチングにより露出した表面を有する n型窒化物半導体層と、 上記ドライエッチングにより露出した表面に接するよう
に形成された、 上記 P型窒化物半導体層に正孔を注入するための電極とを有する 窒化物半導体素子。
(24a) 基板と、 上記基板の上に形成された p型窒化物半導体層と、 上記 p型窒 化物半導体層の直上に形成され、 少なくとも上記 p型窒化物半導体層と接する部 分に n型窒化物半導体を含むとともに、 上記 p型窒化物半導体層と接する側と反 対側の表面から上記 n型窒化物半導体に達する凹部がドライエッチングにより加 ェされた窒化物半導体層と、 上記囬部に露出した n型窒化物半導体の表面に形成 された、 上記 p型窒化物半導体層に正孔を注入するための電極とを有する発光ダ ィォード。
従来構造の窒化物 L E Dにおいても、 半導体層成長後の冷却時に雰囲気中のァ ンモユア濃度を低くすれば、 p型クラッド層ゃ p型コンタクト層の内部を p型伝 導性にすることが可能である。 しかし、 p型コンタクト層の表面近傍では、 アン モニァ濃度が低すぎると表面劣化が発生し、 それに伴って生成する窒素空孔の働 きで正孔濃度が低下するために、 p側電極の接触抵抗の上昇が起こる。 一方、 こ れを抑制するために、 冷却雰囲気に少量のアンモニアを加えると、 水素パッシベ ーシヨンが発生して正孔濃度が低下し、 やはり、 p側電極の接触抵抗が上昇する 。 つまり、 p型コンタクト層を使用する従来構造の窒化物 L E Dでは、 p側電極 の接触抵抗を抑えることには限界がある。
これに対して、 本発明の窒化物半導体素子の製造方法では、 p型不純物をドー プした窒化物半導体層を成長後、 更に、 その直上に n型不純物をドープした窒化 物半導体層を成長したうえで冷却を行い、 p側電極を、 この n型不純物をドープ した窒化物半導体の表面に形成するために、 冷却雰囲気中のアンモニア濃度が高 すぎても低すぎても P側電極の接触抵抗が上昇するという、 従来技術の問題が解 消される。 なぜなら、 n型不純物をドープした窒化物半導体では、 水素パッシベ ーシヨンによるキャリア (電子) 濃度の減少も、 表面劣化に起因するキャリア ( 電子) 濃度の減少も生じないと考えられるためである。
従って、 本発明の窒化物半導体素子の製造方法によれば、 P型窒化物半導体層
の形成に一段階形成法を用いながら、 P側電極の接触抵抗の低い窒化物半導体素 子を製造することができ、 ひいては動作電圧の低い窒化物半導体素子を製造する ことができる。
実施例
[実施例 1 ]
直径 2インチの C面サファイア基板を MO VP E装置の成長炉內に設けられた サセプタに装着し、 水素雰囲気下で基板温度を 1 1 00°Cまで上昇させて、 表面 のサーマルクリーニングを行った。 その後、 基板温度を 330°Cまで下げ、 3族 原料として TMGおよび TMA、 5族原料としてアンモニアを用いて、 厚さ 20 nmの A 1 G a N低温バッファ層を成長させた。 なお、 この A l Ga N低温バッ ファ層の成長以降、 窒化物半導体層の成長時にはサブフローガスとして成長炉内 に窒素ガスを供給し、 3族原料および 5族原料のキヤリァガスには水素ガスを用 いた。
続いて基板温度を 1 000°Cに上げ、 原料として TMG、 アンモニアを供給し 、 アンドープ G a N層を 2 Aim成長させた後、 更にシランを供給し、 S i ドープ G aNからなる厚さ 3 imの n型クラッド層 (n型コンタクト層を兼用) を成長 させた。
続いて、 基板温度を 800°Cに低下させて、 G a N障壁層と、 I n G a N井戸 層 (発光波長 405 nm) を各 10層交互に積層してなる多重量子井戸構造の活 性層を形成した。 井戸層成長時の I n原料にはトリメチルインジウムを用いた。 次に、 基板温度を 1000°Cに上げ、 Mg原料のビス (ェチルシクロペンタジ ェニル) マグネシウム (E t C p2Mg) と、 TMG、 TMA、 アンモニアを供 給し、 Mgがドープされた A 1 G a Nからなる第一の p型クラッド層を 50 nm 成長させ、 続けて、 TMAの供給を停止して、 Mg ドープ G a Nからなる第二の p型クラッド層を 50 nm成長させた。 この第二の; 型クラッド層の M g濃度は 2 X 1020 c m— 3とした。
次に、 E t Cp 2Mg、 TMG, TMAと水素ガス (キャリアガス) の供給を
停止し、 アンモニアの流量比が 0. 5%となるように、 アンモニアと窒素ガスを 成長炉内に供給しながら、 基温度を 800°Cまで低下させ、 基板温度が 800°C なったところで降温を停止し、 再びアンモニアの流量を元に戻すとともに、 TM Gおよびシランを供給して、 S i濃度が 1 X 1019 cm— 3の n型 G a Nからな る厚さ 100 nmの p側コンタクト層を成長させた。
p側コンタクト層の成長後は、 基板加熱を停止し、 原料の供給も停止して、 窒 素のみを成長炉内に流しながらで室温まで自然放冷した。
このようにして発光波長 405 nmの近紫外 LED構造が形成されたウェハを 得た。
次に、 C 1 2ガスを用いた R I E (リアクティブイオンエッチング) により、 ウェハ全面にわたって p側コンタクト層の表層部分を除去し、 p側コンタク ト層 の膜厚を 50 nmとした。
次に、 p側コンタクト層の上面の局所的な領域に対してさらに R I Eを施し、 該上面から下層側へと掘り下げ、 p側コンタク ト層、 第二の p型クラッド層、 第 一の p型クラッド層、 活性層を順次除去し、 n型クラッド層を局所的に露出させ た。
次に、 前記 R I Eによって露出した!)側コンタクト層の表面と n型クラッド層 の表面のそれぞれに、 電子ビーム蒸着法によって、 厚さ 20 nmの A 1層、 厚さ 5011111の? d層、 厚さ 100 nmの A u層をこの順に積層した 3層構造の電極 を、 同時に形成した。
ここで、 p側コンタク ト層表面に設けた p側電極は、 フォトリソグラフィ技術 を用いて格子状パターンに形成した。 この格子状パターンは、 一辺 6 xmの正方 形の開口部 (p側コンタクト層の表面が露出した部分) 力 縦横とも間隔 2 μπι で正方行列状に配列したパターン、 即ち、 直交する 2方向について、 幅 2 μπιの 電極部と、 幅 6 tmの開口部が交互に繰り返される、 直交網目状パターンとした 続いて、 p側電極および n側電極の上に、 電子ビーム蒸着法により、 厚さ 30
nmの T i層、 厚さ 300 nmの A u層をこの順に積層した、 ワイヤボンディン グ用のパッド電極を形成した。 その後、 RTA (ラビッドサ一マルアニール) 装 置を用いて、 このウェハに 500°CX 5分間の熱処理を施した。 最後に、 サファ ィァ基板の裏面を厚さ 90 mとなるまで研磨し、 通常のスクライビングおょぴ ブレーキングによって素子分離を行い、 35 Omm角の L EDチップを得た。 上記手順で作製した L E Dチップをステム台にダイボンドした後、 ワイヤボン デイングにより通電可能な状態とし、 素子特性を評価したところ、 出力 5. 6 m W (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 3. 2 V (2 OmA通電時) であった。
[実施例 2 ]
本実施例では、 p側コンタクト層を MOVP E法により成長させる際の成長膜 厚を 50 nmに変更したこと、 および、 p側コンタクト層の表層部分を R I Eに より除去しないで、 p側電極を、 成長されたままの p側コンタクト層の表面に形 成したこと以外は、 実施例 1と同様にして LEDチップを作製し、 その評価を行 つた。
その結果、 出力は実施例 1と同等であつたが、 順方向電圧は 3. 6 V (20m A通電時) であった。
[参考実験例 1 ]
本発明による発光素子の性能を評価するために行なった実験の結果を以下に示 す。
直径 2インチの C面サファイア基板を MOVP E装置の成長炉内に設けられた サセプタに装着し、 水素雰囲気下で基板温度を 1 100°Cまで上昇させて、 表面 のサーマルクリーニングを行った。 その後、 基板温度を 330°Cまで下げ、 3族 原料として TMGおよび TMA、 5族原料としてアンモニアを用いて、 厚さ 20 nmの A 1 G a N低温バッファ層を成長させた。 なお、 この A l GaN低温バッ ファ層の成長以降、 窒化物半導体層の成長時にはサブフローガスとして成長炉内 に窒素ガスを供給し、 3族原料および 5族原料のキャリァガスには水素ガスを用 いた。
続いて基板温度を 1000°Cに上げ、 原料として TMG、 アンモニアを供給し 、 アンドープ G a N層を 2 /zm成長させた後、 更にシランを供給し、 S i ドープ G aNからなる厚さ 3 μηιの n型クラッド層 ( n型コンタクト層を兼用) を成長 させた。
続いて、 基板温度を 800°Cに低下させて、 G a N障壁層と、 I n G a N井戸 層 (発光波長 405 nm) を各 10層交互に積層してなる多重量子井戸構造の活 性層を形成した。 井戸層成長時の I n原料にはトリメチルインジウムを用いた。 次に、 基板温度を 1000°Cに上げ、 Mg原料のビス (ェチルシク口ペンタジ ェニル) マグネシウム (E t Cp2Mg) と、 TMG、 TMA、 アンモニアを供 給し、 Mgがドープされた A 1 G a Nからなる第一の p型クラッド層を 50 nm 成長させ、 続けて、 TMAの供給を停止して、 Mg ドープ G a Nからなる第二の P型クラッド層を 200 nm成長させた。
次に、 E t C p 2Mg、 TMG、 TMAと水素ガス (キャリアガス) の供給を 停止し、 アンモニアの流量比が 0. 5%となるように、 アンモニアと窒素ガスを 成長炉内に供給しながら、 基板温度を 800°Cまで低下させ、 基板温度が 800 ' °Cとなったところで降温を停止し、 再びアンモニアの流量を元に戻すとともに、 TMGおよびシランを供給して、 S i濃度が 1 X 1 019 cm— 3の n型 G a Nか らなる厚さ 10 nmの!)側コンタクト層を成長させた。
p側コンタク ト層の成長後は、 基板加熱を停止し、 原料の供給も停止して、 窒 素のみを成長炉内に流しながらで室温まで自然放冷した。
' このようにして発光波長 405 nmの近紫外 LED構造が形成されたウェハを 得た。
次に、 ウェハ上に成長した窒化物半導体層の上面の局所的な領域に対して、 C 12ガスを用いた R I Eを施し、 該上面から下層側へと掘り下げ、 p側コンタク ト層、 第二の p型クラッド層、 第一の p型クラッド層、 活性層を順次除去し、 n 型クラッド層を局所的に露出させた。
次に、 ϋ側コンタクト層表面と、 R I Εで露出させた η型クラッド層の表面に
、 電子ビーム蒸着法によって、 厚さ 20 nmの A 1層、 厚さ 50 nmの P d層、 厚さ 1 00 nmの A u層をこの順に積層した 3層構造の電極を、 同時に形成した ここで、 p側コンタクト層表面に設けた p側電極は、 フォトリソグラフィ技術 を用いて格子状パターンに形成した。 この格子状パターンは、 一辺 6 / mの正方 形の開口部 (p側コンタク ト層の表面が露出した部分) 力 縦横とも間隔 で正方行列状に配列したパターン、 即ち、 直交する 2方向について、 幅 2 μπιの 電極部と、 幅 6 /i mの開口部が交互に操り返される、 直交網目状パターンとした 続いて、 p側電極および n側電極の上に、 電子ビーム蒸着法により、 厚さ 30 nmの T i層、 厚さ 300 nmの Au層をこの順に積層した、 ワイヤボンディン グ用のパッド電極を形成した。 その後、 RTA (ラビッドサ一マルアニール) 装 置を用いて、 このウェハに 500°CX 5分間の熱処理を施した。 最後に、 サファ ィァ基板の裏面を厚さ 90 μπιとなるまで研磨し、 通常のスクライビングおよび プレーキングによって素子分離を行い、 3 5 Omm角の L EDチップを得た。 上記手順で作製した LEDチップをステム台にダイポンドした後、 ワイヤボン デイングにより通電可能な状態とし、 素子特性を評価したところ、 出力 5. 4 m W (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 3. 6 V (2 OmA通電時) であった。
[参考実験例 2 ]
参考実験例 1において、 第二の p型クラッド層の成長後、 基板温度を変化させ ることなく、 同じ温度で p側コンタクト層を成長し、 その後、 基板加熱を停止す ると同時に、 3族原料の供給を停止し、 アンモニアの流量比が 2%となるように 、 アンモニアと窒素ガスを成長炉内に流しながら室温まで自然放冷する以外は、 参考実験例 1と同様の方法により LEDチップを作製し、 素子特性を評価したと ころ、 出力 5. 3mW (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 3. 9 V (2 QmA通電 時) であった。
[参考実験例 3 ]
上記参考実験例 2において、 p側コンタクト層の成長終了後、 窒素のみを成長 炉内に流しながら室温まで自然放冷したこと以外は、 参考実験例 2と同様の方法 により LEDチップを作製し、 素子特性を評価したところ、 出力 5. 2mW (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 4. 0 V (2 OmA通電時) であった。
[参考実験例 4]
参考実験例 1において、 p側電極および n側電極を、 厚さ 20 nmの T i層、 厚さ 200 nmの A 1層をこの順に積層した 2層構造としたこと以外、 参考実験 例 1と同様の方法により LEDチップを作製し、 素子特性を評価したところ、 出 力 5. OmW (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 3. 6 V (2 OmA通電時) であ つた。
[参考実験例 5]
参考実験例 1において、 n型 G a Nからなる厚さ 10 nmの p側コンタクト層 に代えて、 Mg濃度が 5 X 102。 c m— 3の p型 G a Nからなる厚さ 1 0 nmの p型コンタクト層を形成するとともに、 p側電極を厚さ 20 nmの N i層、 厚さ 1 50 nmの Au層をこの順に積層した 2層構造としたこと以外、 参考実験例 1 と同様の方法により LEDチップを作製し、 素子特性を評価した。
評価の結果、 出力 5. 0 mW ( 20 m A通電時) 、 順方向電圧 4. 5 V (20 mA通電時) であった。
[参考実験例 6]
参考実験例 2において、 n型 G a Nからなる厚さ 10 nmの p側コンタクト層 に代えて、 Mg濃度が 5 X 102。 c m— 3の p型 G a Nからなる厚さ 1 0 nmの p型コンタクト層を形成するとともに、 p側電極を厚さ 20 rlmのN i層、 厚さ 1 50 nmの A u層をこの順に積層した 2層構造としたこと以外、 参考実験例 2 と同様の方法により LEDチップを作製し、 素子特性を評価した。
評価の結果、 出力 5. OmW (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 5. 5 V (20 mA通電時) であった。
[参考実験例 7]
参考実験例 3において、 n型 G a Nからなる厚さ 10 nmの p側コンタク ト層 に代えて、 Mg濃度が 5 X 1 02° c m— 3の; 型 G a Nからなる厚さ 10 nmの p型コンタク ト層を形成するとともに、 p側電極を厚さ 20 nmの N i層、 厚さ 1 50 nmの A u層をこの順に積層した 2層構造としたこと以外、 参考実験例 3 と同様の方法により LEDチップを作製し、 素子特性を評価した。
評価の結果、 出力 4. OmW (2 OmA通電時) 、 順方向電圧 3. 5 V (20 mA通電時) であった。
この参考実験例 7では順方向電圧が比較的低い値となったが、 逆耐圧 (V r) の大幅な低下と、 リーク電流の増加が同時に観察されたことから、 リーク電流パ スを通して電流が流れ易くなつたために素子の抵抗が低下し、 見かけ上、 動作電 圧が低下したかのような結果となったものと考えられる。
産業上の利用分野
本発明の実施に係る LEDの構造については、 図 1、 図 6の構造に限定される ものではなく、 公知技術を参考に、 種々の変形を加えることができる。
本発明は、 LEDだけでなく、 p型窒化物半導体層と、 該層に正孔を注入する ための電極を備える全ての窒化物半導体素子 (LED以外の発光素子、 受光素子 、 電子デバイス等) の製造方法として有用である。 その場合、 素子の構造や、 そ の製造のために必要となる技術については、 公知の技術を適宜参照してよい。 本出願は、 日本で出願された特願 2004-28 9466を基礎としておりそ れらの内容は本明細書に全て包含される。