明 細 書
プロピレン系樹脂押出発泡複合体
技術分野
[0001] 本発明は、断熱性能に優れた第 1の押出発泡体と、吸音性能に優れた第 2の押出 発泡体力 なり、かつ、制振性能及びエネルギー吸収性能を兼ね備えたプロピレン 系榭脂押出発泡複合体に関する。
背景技術
[0002] 熱可塑性榭脂を押出発泡成形した押出発泡体や、多数の小孔を有するダイからこ れらの熱可塑性榭脂を押し出し、押し出された榭脂の細条^^束してその外面を融 着させて発泡させる、いわゆるストランド押出により成形された押出発泡細条集束体 は、軽量でありながら機械的特性に優れることから、建築 ·土木分野や自動車分野等 の各分野における構造材料として幅広く利用されており、特に、断熱性能や吸音性 能を備えた構造材料としての用途が期待されている。このような熱可塑性榭脂の押出 発泡体としては、ポリスチレン系榭脂からなる押出発泡体が知られている。また、熱硬 化性榭脂の押出発泡体としては、ポリウレタン系榭脂からなる押出発泡体も知られて いる。
[0003] しかし、ポリウレタン系榭脂は、リサイクル特性には必ずしも優れない材料であるた め、建築リサイクル法 (建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)に十分に 対応することができないといった問題があった。また、ポリスチレン系榭脂は、耐熱性 ゃ耐薬品性に劣ることから、これらに代わる熱可塑性榭脂による押出発泡体の提供 が望まれていた。
これに対して、ポリプロピレン系榭脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、電気特 性などに優れ、更には低コスト材料であることから、各成形分野に広く用いられており 、ポリプロピレン系榭脂の押出発泡体も、その工業的有用性が高く期待できるもので あり、近年にあっては、ポリプロピレン系榭脂の押出発泡体による断熱材料や吸音材 料の提供が望まれており、種々の検討がなされている(例えば、特許文献 1及び特許 文献 2参照)。
[0004] 更には、建築'土木分野や自動車分野等にあっては、断熱性能や吸音性能のほか 、制振性能や高い衝撃吸収能力(エネルギー吸収能力)が必要とされている。例えば 、 自動車のドアパネル、フェンダーパネル、天井パネルあるいはトランクリツドなどの振 動基板面に対して押出発泡体を適用できれば、軽量ィ匕を図ることもできて好都合で ある。また、自動車の天井、ドア等に使用される場合には、自動車の衝突時等におけ る衝撃エネルギーを吸収する性能が必要とされるとともに、高い吸音性能等が求めら れる。
[0005] 特許文献 1 :特表 2002— 524635号公報
特許文献 2:特表 2003— 528173号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] し力しながら、これまでに提供された押出発泡体は、断熱特性及び吸音特性の ヽ ずれか一方のみを備えるものはあるものの、これらの特性を兼ね備えたものは少なく 、また、兼ね備えているものについても、その性能は必ずしも良好はといえな力つた。 更には、これらの手段により得られたプロピレン系榭脂押出発泡体は、制振性能や 衝撃エネルギーを吸収する性能も良好ではなぐ改善が求められて 、た。
[0007] 従って、本発明の第 1の目的は、断熱性能、吸音特性を兼ね備えたプロピレン系榭 脂押出発泡複合体を提供することにあり、第 2の目的は、断熱性能、吸音特性、及び 制振性能を兼ね備えたプロピレン系榭脂押出発泡複合体を提供することにあり、第 3 の目的は、断熱性能、吸音特性、及びエネルギー吸収性能を兼ね備えたプロピレン 系榭脂押出発泡複合体を提供することにあり、第 4の目的は、断熱性能、吸音特性、 制振性能及びエネルギー吸収性能を兼ね備えたプロピレン系榭脂押出発泡複合体 を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 前記した目的を達するために、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、プ ロピレン系榭脂を含む成形材料を押出発泡させてなるプロピレン系榭脂押出発泡複 合体であって、独立気泡率が 40%以上であり、発泡倍率が 10倍以上である第 1の押 出発泡体と、独立気泡率が 40%未満で、発泡倍率が 10倍以上である第 2の押出発
泡体からなることを特徴とする。
[0009] この本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、プロピレン系榭脂を押出発泡 させてなり、構成が異なる第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体を備えた押出発泡 複合体である。
このうち、第 1の押出発泡体は、独立気泡率が 40%以上であり、発泡倍率が 10倍 以上であるため、独立した多数の気泡が熱を伝えにくくするため、断熱性能に優れた 押出発泡体となる。また、衝撃強度等の機械的強度や耐湿性にも優れる。
また、第 2の押出発泡体は、独立気泡率が 40%未満であるため、気泡間と繋がつ て ヽる連続的な空気層が形成される連続気泡構造が好適に形成されて ヽるとともに 、発泡倍率が 10倍以上であるため、発泡体中の空気層の割合が高くなることにより、 吸音性能に優れた押出発泡体となる。
そして、力かる構成の第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体を備える本発明のプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体は、断熱性能と吸音性能に優れた押出発泡体となる。 なお、本発明の押出発泡複合体は、発泡倍率を 10倍以上とすることにより、発泡体 も軽量となり、取り扱い性も優れることとなる。
[0010] また、構成材料であるプロピレン系榭脂は、リサイクル性能にも優れ、また、耐薬品 性や耐熱性等も良好であることから、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体も、 これらの諸性能 (リサイクル性能、耐薬品性、耐熱性等)を享受することになる。更に は、低コスト材料であるプロピレン系榭脂を使用することにより、前記した効果を有す る押出発泡複合体を低コストで提供することが可能となる。
[0011] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、押出発泡複合体の厚み方向に前 記第 1の押出発泡体と前記第 2の押出発泡体が積層された積層体であることが好ま しい。
この本発明によれば、押出発泡複合体の構成を、当該押出発泡複合体の厚み方 向に第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体が積層された積層体としているので、異 なる性能を備えた 2種類の押出発泡体が効率よく配置され、前記した効果をより確実 に奏することができる。また、第 1の押出発泡体の表層に表皮層 (スキン層)が存在す るように構成すると、遮音性能にも優れるようになる。
なお、第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体とにより押出発泡複合体を構成するに あたって、各押出発泡体の構造的な配置は用途等に応じて適宜設定してもよい。例 えば、第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体とは押出発泡複合体の全体にわたる積 層構造に限らず、何れか一方の押出発泡体により押出発泡複合体の主要構造を形 成し、これに何れか他方の押出発泡体を分散させた構造としてもよい。
このような構造においては、他方の押出発泡体の分散状態を調整することで、各押 出発泡体による各機能の効果である衝撃吸収性と吸音性とのバランスを調整可能で あり、所望の性能に応じた押出発泡複合体を得ることができる。
更に、他方の押出発泡体は、主体となる一方の押出発泡体の全体に分散させても よいが、押出発泡複合体の厚み方向あるいは表面方向の特定の部分に偏在化させ てもよい。
例えば、他方の押出発泡体として吸音性に対応する第 2の押出発泡体を分散させ る場合、押出発泡複合体の表面 (少なくと何れか片方の表面)に面して露出するよう に分散させることが望ましい。
また、押出発泡複合体の表面の特定区域に集中させることで、当該区域に局部的 な効果が得るようにすることもでき、特定の区域に衝撃吸収性あるいは吸音性が必要 な場合にも適切に対応することができる。
[0012] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 1の押出発泡体の独立気 泡率が 60%以上であることが好まし 、。
この本発明によれば、プロピレン系榭脂押出発泡複合体の第 1の押出発泡体の独 立気泡率が 60%以上であるので、独立した多数の気泡が熱を伝えに《するため、 断熱性能が更に向上するとともに、衝撃強度等の機械的強度や耐湿性も更に向上 する。この第 1の押出発泡体の独立気泡率は、 70%以上あることが更に好ましい。
[0013] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 1の押出発泡体を構成する 発泡セルの平均直径が 500 μ m以下であることが好ましい。
この本発明によれば、プロピレン系榭脂押出発泡複合体の第 1の押出発泡体を構 成する発泡セルの平均直径が 500 μ m以下であるため、押出発泡体中における気 泡壁を多数形成することができ、外部力もの輻射熱を効率よく遮断することが可能と
なる。この結果、断熱性能がより一層優れた押出発泡複合体を提供することができる なお、この第 1の押出発泡体を構成する発泡セルの平均直径が 200 μ m以下であ ることが更に好ましぐこれにより、前記した効果をより効率よく享受することができる。
[0014] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 2の押出発泡体を構成する 発泡セルの平均直径が 0. 005〜5. Ommであることが好ましい。
この本発明によれば、プロピレン系榭脂押出発泡複合体の第 2の押出発泡体を構 成する発泡セルの平均直径が 0. 005〜5. Ommであるので、通常のプロピレン系榭 脂押出発泡体と比較して、押出発泡体中における気泡壁を更に多く形成することが できるため、気泡の壁面における空気の粘性摩擦による音の振動エネルギーの粘性 散逸が効率よくなされるようになり、吸音特性が更に良好となる。
[0015] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 1の押出発泡体及び前記 第 2の押出発泡体の少なくとも一つを構成する前記プロピレン系榭脂として下記 (A) 及び (B)力 なるプロピレン系多段重合体を用いることが好ま U、。
(A) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ 7? ]が lOdLZg超のプロピレン単 独重合体成分またはプロピレンと炭素数が 2〜8の aーォレフインとの共重合体成分 を、全重合体中に 5〜20質量%含有する
(B) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ r? ]が 0. 5〜3. OdLZgのプロピ レン単独重合体成分またはプロピレンと炭素数が 2〜8の α—ォレフインとの共重合 体成分を、全重合体中に 80〜95質量%含有する
[0016] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、成分 (Α)、すなわち、超高分子量 プロピレン系重合体の付与により、高溶融張力化を達成し、また、分子量分布の調整 により粘弾性特性が調整され、優れた粘弾性特性を備えた直鎖状のプロピレン系重 合体を使用原料とする。従って、力かる粘弾性特性に優れたプロピレン系多段重合 体を構成材料とすることにより、発泡倍率が 10倍以上としたプロピレン系榭脂押出発 泡複合体を確実に形成することができることとなる。
[0017] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記プロピレン系多段重合体の 2 30°Cにおけるメルトフローレート(MFR)と、 230°Cにおける溶融張力(MT)との関係
力 下記式 (III)を具備することが好ましい。
[0018] [数 1] l og (MT) >-1. 33 1 o g (MF R) +l. 2 (m)
[0019] この本発明によれば、プロピレン系多段重合体の 230°Cにおけるメルトフローレート
(MFR)と、 230°Cにおける溶融張力(MT)との関係が、前記式 (III)を具備するので 、高倍率の発泡成形の実施が容易となり、発泡倍率を 10倍以上とした押出発泡複合 体を容易かつ確実に得ることができる。
[0020] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、押出発泡された細条が多数集束さ れた押出発泡細条集束体であることが好ま 、。
この本発明によれば、プロピレン系榭脂押出発泡複合体が、細条の押出発泡体が 多数集束された押出発泡細条集束体力 なるようにしているので、押出発泡複合体 の発泡倍率を高くすることができ、発泡倍率が高ぐ十分な厚みを有する押出発泡複 合体を、種々の形状で容易に成形することができる。
[0021] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 2の押出発泡体が、前記細 条が形成されて 、な 、部分を備えることが好まし 、。
この本発明によれば、前記細条が形成されて 、な 、部分により構成される空間が 特定の周波数領域の音波を効果的に吸収することで、一層優れた吸音性能を発揮 することが可能となる。すなわち、前述の空間の構造により吸音される音波の周波数 が変化するため、吸音したい騒音等の周波数が特定される場合にあっては、かかる 特定される周波数に応じて前述の空間の構造を適宜決定するようにすれば、吸音特 性を効率よく発揮することができる。
[0022] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 2の押出発泡体の表面側 の少なくとも一部が外気と連通されて 、ることが好ま 、。
この本発明によれば、発泡体内部の連続気泡構造により形成される空間と外気とが 連通することになり、外部力 の音波を発泡体内の空間が効率よく吸収することで、 吸音性能が向上することになる。
[0023] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 1の押出発泡体と前記第 2
の押出発泡体との少なくともいずれかに、押出発泡体を構成するプロピレン系榭脂 力 温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan δ )が 0. 04〜100であるォレ フィン系重合体を含むことが好まし 、。
[0024] 更に、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記第 1の押出発泡体と前 記第 2の押出発泡体との少なくともいずれかに、構成材料であるプロピレン系榭脂に 対して、温度 298Κ、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan S )が 0. 04〜100以下で あるォレフィン系重合体 (以下、「特定のォレフィン系重合体」とする場合もある)を添 加するようにしている。
この特定のォレフィン系重合体は構成材料であるプロピレン系榭脂とは結合しない ため、結晶性高分子であるポリプロピレンの結晶から排除されて、その結果、押出発 泡体 (第 1の押出発泡体及び第 2の押出発泡体)の気泡セルの表面に粘性物質であ る当該特定のォレフィン系重合体を一様に存在させることとなる。
[0025] すなわち、剛直部分であるプロピレン系榭脂は、エネルギーを伝搬する性質を有す る一方、室温付近で粘性を有する物質 (特定のォレフィン系重合体)は、振動エネル ギーを内部の分子運動の熱エネルギーとして使用するため、振動エネルギーを吸収 する性質を有する。また、振動を吸収するためには、振動面に一様に粘着性物質を 分散させることが望ましぐ振動面であるポリプロピレン系榭脂と分子構造が近い前記 の特定のォレフィン系重合体は、ポリプロピレン系榭脂とある程度の相溶性を有する ため、セルの壁面の表面に一様に分散して、効率よく振動を吸収することになり、制 振性能に優れた押出発泡複合体を提供することができる。
このように、本発明は、断熱性能、吸音性能のほか、制振性能を兼ね備えたプロピ レン系榭脂押出発泡複合体を好適に提供できるものである。
[0026] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記特定のォレフィン系重合体 (a )と前記プロピレン系榭脂 (b)の重量比(aZb)が 1Z100〜80Z100であることが好 ましい。
この本発明によれば、構成材料に対して、重量比(aZb)が 1Ζ100〜80Ζ100と なるように特定のォレフィン系重合体を含むことにより、ポリプロピレン系榭脂からなる 発泡成形体において発泡セルの壁面にォレフィン系重合体が適度に分散されて、制
振性能を向上させることができる。
[0027] また、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記ォレフィン系重合体とし て、下記の第 1態様または第 2態様の 1ーブテン系共重合体を使用することが好まし ぐこのような 1ーブテン系重合体を使用することにより、押出発泡複合体に制振性能 を確実に付与することができる。
[0028] 第 1態様:下記の(1)〜(3)の要件を具備する 1ーブテン系重合体。
(1) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ r? ]が 0. 01〜0. 5dL/g
(2)示差走査型熱量計 (DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下 10°Cで 5分間保持し た後、 10°CZ分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのもっとも高温側に 観測されるピークのピークトップとして定義される融点 (T — D)が 0〜: LOO°Cの結晶 性樹脂
(3)立体規則性指数 { (mmmm) / (mmrr+rmmr) }が 30以下
[0029] 第 2態様:下記の(1 ' )、(2)及び (3 ' )を具備する 1ーブテン系重合体。
(1 ' ) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ r? ]が 0. 25〜0. 5dL/g (2)示差走査型熱量計 (DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下 10°Cで 5分間保持し た後、 10°CZ分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのもっとも高温側に 観測されるピークのピークトップとして定義される融点 (T — D)が 0〜: LOO°Cの結晶 性樹脂
(3 ' ) 13C 核磁気共鳴 (NMR)スペクトルから求めたメソペンタッド分率 (mmmm)が 73%以下
[0030] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記成形材料が、前記第 1の押出 発泡体と前記第 2の押出発泡体との少なくともいずれかに、当該押出発泡体の全体 に対して 0質量%を超え 60質量%以下の繊維状フイラ一を含有することが好ましい。
[0031] 更には、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、構成する成形材料が前記 第 1の押出発泡体と前記第 2の押出発泡体との少なくともいずれかに、当該押出発 泡体の全体に対して 0質量%を超え 60質量%以下の繊維状フイラ一を含有している 。この繊維状フイラ一は、プロピレン系榭脂押出発泡体中の発泡セルにより、ランダム に配置されることになり、繊維状フイラ一は、その繊維長方向がプロピレン系榭脂押
出発泡体の押出し方向に沿うように配置されるだけでなぐ発泡セルの存在により、 厚み方向に沿って配置されることとなる。これにより、プロピレン系榭脂押出発泡体の 厚み方向に少しの歪みが生じた場合でも、高い応力が生じることとなり、エネルギー 吸収能力を向上させることが可能となる。
[0032] ここで、繊維状フイラ一の含有量は、成形材料全体に対して 0質量%を超え 60質量 %以下であり、 5〜30質量%の範囲であることが好ましい。繊維状フイラ一の含有量 力 質量より小さいと、エネルギー吸収能力を向上させるために十分でなぐまた、 30 質量%を超えると、発泡成形性が悪くなる場合があるほか、発泡セルの壁面から繊維 状フイラ一が突出してしまう場合があるため、気泡構造を過剰に壊し、発泡倍率を低 下させるといった問題が生じる場合がある。
なお、繊維状フイラ一の含有量が 60質量%を超えると、発泡成形性が低下するとと もに、発泡セルの壁面力 の繊維状フイラ一の突出が顕著となり、発泡倍率を低下さ せること〖こなる。
[0033] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、前記繊維状フイラ一の総本数のう ち 20%以上が、プロピレン系榭脂押出発泡複合体の押出方向と略直交する厚み方 向に沿って配向して 、ることが好ま U、。
このような本発明によれば、繊維状フイラ一の 20%以上がプロピレン系榭脂押出発 泡体の厚み方向に沿って配向して 、るので、高 、エネルギー吸収能力を備えたプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体となる。
なお、本発明において、厚み方向に沿って配置されている繊維状フイラ一とは、厚 み方向の軸に対し繊維長方向がなす角度が 0° (厚み方向と平行)以上であって 45 ° 以下であるものをいう。
図面の簡単な説明
[0034] [図 1]せん断速度(γ )とせん断粘度(r? )との関係を示す図である。
Μ
[図 2]本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体の一態様を示した模式図である。
[図 3]プロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造に使用される押出用ダイ及び冷却用 サイジングローラの一態様を示す模式図である。
[図 4]本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体のもう一つの態様を示した模式図
である。
[図 5]プロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造に使用される押出用ダイ及び冷却用 サイジングローラのもう一つの態様を示す模式図である。
[図 6]実施例 1で得られたプロピレン系榭脂押出発泡複合体 (押出発泡細条集束体) を構成する第 1の押出発泡体の断面の電子顕微鏡写真である (倍率 50倍)。
[図 7]実施例 1で得られたプロピレン系榭脂押出発泡複合体 (押出発泡細条集束体) を構成する第 2の押出発泡体の断面の電子顕微鏡写真である (倍率 50倍)。
[図 8]プロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造に使用される押出用ダイ及び冷却用 サイジングローラの他の態様を示す模式図である。
[図 9]第 3実施形態における第 1の押出発泡体の構造を示す模式図である。
[図 10]第 3実施形態における第 2の押出発泡体の構造を示す模式図である。
[図 11]第 3実施形態における繊維状フイラ一を含有しないプロピレン系榭脂押出発 泡体の応力一歪み曲線を示す図である。
[図 12]第 3実施形態に係るプロピレン系榭脂押出発泡体の応力 歪み曲線を示す 図である。
[図 13]第 3実施形態におけるプロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造に使用される 押出用ダイ及び冷却サイジングローラの他の態様を示す斜視図である。
符号の説明
1 … プロピレン系榭脂押出発泡複合体 (押出発泡細条集束体 1)
2 … 第 1の押出発泡体
3 … 第 2の押出発泡体
21, 31 … 発泡セル
22, 32 … 細条
23, 33 … 表皮層
34 … 無細条部
5, 6 … 押出用ダイ
51, 61 … 押出孔
7 … 冷却用サイジングローラ
71 … 冷却ローラ
8 … ベル卜
81 … 針状体
9 … 繊維状フイラ一
発明を実施するための最良の形態
[0036] 以下に本発明を具体的に説明するが、以下の態様は、本発明の一態様を示したも のであって、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなぐ本発明 の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内 容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具 体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、 他の構造や形状等としても問題はない。
[0037] <第 1実施形態 >
以下、本発明の第 1実施形態におけるプロピレン系榭脂押出発泡複合体及びプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体の製造方法について説明する。
[0038] 本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 (以下、「押出発泡複合体」とする こともある)は、プロピレン系榭脂を押出発泡させてなり、独立気泡率が 40%以上で あり、発泡倍率が 10倍以上である第 1の押出発泡体と、独立気泡率が 40%未満で、 発泡倍率が 10倍以上である第 2の押出発泡体力も構成されるものであり、このような 構成により、軽量であり、かつ断熱特性と吸音性能を兼ね備えた押出発泡複合体と なる。
[0039] ここで、本実施形態の押出発泡複合体が断熱性能と吸音性能を兼ね備えるのは、 次の理由による。
押出発泡体の断熱性能は、ある程度の発泡倍率 (例えば 10倍以上)にあっては、 発泡倍率と独立気泡率に依存する。すなわち、発泡倍率が高くなると、断熱性に優 れる空気の割合が多くなるため、発泡倍率が高い方が断熱性能は良好となる。また、 独立気泡率が高いと、独立した多数の気泡が熱を伝えにくくするため、断熱性能に 優れた押出発泡体となる。本実施形態の押出発泡複合体にあっては、第 1の押出発 泡体の発泡倍率を 10倍以上、独立気泡率を 40%以上とすることにより、独立した多
数の気泡が熱を伝えにくくするため、断熱性能に優れた押出発泡体となる。更には、 衝撃強度等の機械的強度や耐湿性にも優れることになる。なお、第 1の押出発泡体 の独立気泡率は、 70%以上であることが更に好ましい。
[0040] 力!]えて、押出発泡体の断熱性能は、前記の条件で、発泡体を構成する発泡セルの 平均直径 (平均セル径)にも依存する。つまり、同じ発泡倍率で平均直径が小さくなる と、輻射熱を遮断する気泡壁数が多くなつて伝熱しにくくなり、断熱性が向上するた め、発泡セルの平均直径 (平均セル径)は小さい方が好ましい。本実施形態の押出 発泡複合体にあっては、第 1の押出発泡体を構成する発泡セルの平均直径を 500 μ m以下とすることにより、押出発泡体中における気泡壁を多数形成することができ 、外部力もの輻射熱を効率よく遮断することが可能となる。
なお、第 1の押出発泡体を構成する発泡セルの平均直径は、 200 m以下である ことが更に好ましい。
[0041] また、押出発泡体の吸音性能は、押出発泡体の連続気泡構造と発泡倍率に影響 を受ける。すなわち、押出発泡体において発泡体が破泡され、気泡間と繋がっている 連続的な空気層が形成されていると、その空気の連続層を介して音波が吸収するこ とになるため吸音性能が向上することが知られており、従って、独立気泡率の低い( 独立気泡構造ではない)、連続気泡構造の発泡成形体とすることにより、吸音性能が 優れた押出発泡体となる。更には、音波は発泡体内の空気層で吸収されることにな るため、空気層の割合を高くする、つまり、発泡倍率を高くすることにより吸音特性が 優れること〖こなる。
これに対して、本実施形態の押出発泡複合体は、第 2の押出発泡体の独立気泡率 力 0%未満であることから、押出発泡体は、破泡状態が適度に形成された連続気泡 構造からなり、かつ、発泡倍率を 10倍以上とすることにより、発泡体の個々の気泡が 吸音特性を備えることになるため、吸音特性に優れた押出発泡複合体となる。
なお、この独立気泡率は 20%以下であること力 また、発泡倍率は 20倍以上であ ることが、それぞれ好ましい。
[0042] また、この本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、発泡体を構成する 発泡セルの平均直径が 0. 005-5. Ommとすれば、押出発泡体中における気泡壁
を更に多く形成することができるため、気泡の壁面における空気の粘性摩擦による音 の振動エネルギーの粘性散逸が効率よくなされるようになり、押出発泡複合体の吸音 特性を良好にすることができる。
なお、この発泡セルの平均直径は、 0. 05〜2. Ommであることが更に好ましい。
[0043] 押出発泡複合体を構成するプロピレン系榭脂:
このような構成を有する本実施形態の押出発泡複合体を形成する成形材料として 用いられるプロピレン系榭脂としては、溶融時の溶融張力を高くしたプロピレン系榭 脂、例えば、特開平 10— 279632号、特開 2000— 309670、特開 2000— 336198 、特開 2002— 12717、特表 2002— 542360、特表 2002— 509575等に記載のプ ロピレン系榭脂を使用することができる。
[0044] また、本実施形態の押出発泡複合体を得るには、前記したように、プロピレン系榭 脂として、溶融時の溶融張力を高くすることが望ましぐ粘弾性特性に優れた榭脂材 料を使用することが好ましい。
このような粘弾性特性に優れたプロピレン系榭脂としては、例えば、発泡体を構成 するプロピレン系榭脂として、下記成分 (A)及び成分 (B)力もなるプロピレン系多段 重合体であることが好ま 、。
(A) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ 7? ]が lOdLZg超のプロピレン単 独重合体成分またはプロピレンと炭素数が 2〜8の aーォレフインとの共重合体成分 を、全重合体中に 5〜20質量%含有する
(B) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ r? ]が 0. 5〜3. OdLZgのプロピ レン単独重合体成分またはプロピレンと炭素数が 2〜8の α—ォレフインとの共重合 体成分を、全重合体中に 80〜95質量%含有する
[0045] このプロピレン系多段重合体は、成分 (Α)、すなわち、超高分子量プロピレン系重 合体の付与により、高溶融張力化を達成し、また、分子量分布の調整により粘弾性 特性が調整された直鎖状のプロピレン系重合体である。このような粘弾性特性に優 れたプロピレン系多段重合体を構成材料として使用することにより、前記した本実施 形態の要件 (独立気泡率が 40%未満、発泡倍率が 10倍以上、平均直径が 0. 005 〜5. Ommを具備したプロピレン系榭脂押出発泡体を確実に得ることができるので好
ましい。
なお、粘弾性特性に優れるとは、使用する榭脂材料により異なるが、気泡形成時の 高速変形下で大きな変形が発生する一方で、その後における応力緩和が適度に速 ぃ榭脂材料を指す。応力緩和が遅い場合には、残留応力により、破泡後の押出発泡 体の構造を保てなくなることになる。
[0046] ここで、成分 (A)の極限粘度が lOdLZg以下では、溶融張力が不十分となり、所望 の発泡性能を得ることができな 、場合がある。
また、成分 (A)の質量分率が 5質量%より小さいと、溶融張力が不十分となり、所望 の発泡性能を得ることができない場合があり、一方、質量分率が 20質量%を越えると
、いわゆるメルトフラクチャ一が激しくなる場合があり、押出発泡体の肌荒れ等の原因 となり、製品品質が低下する。
[0047] 成分 (A)の極限粘度は、前記したように lOdLZg超であることが好ましいが、 12〜
20dLZgの範囲内であることがより好ましく、 13〜 18dLZgの範囲内であることが特 に好ましい。
また、成分 (A)の質量分率は、 8〜18質量%の範囲内であることが好ましぐ 10〜 18質量%の範囲内であることが特に好ましい。
[0048] 成分 (B)の極限粘度が 0. 5dLZgより小さいと、溶融張力が不十分となり、所望の 発泡性能を得ることができない場合があり、一方、 3. OdLZgを越えると、粘度が高 すぎ、好適な押出成形を実施することができない場合がある。
また、成分 (B)の質量分率が 80質量%より小さいと、好適な押出成形の実施が困 難となる場合があり、質量分率が 95質量%を越えると、溶融張力が低くなり、これも好 適な押出成形の実施が困難となる場合がある。
[0049] 成分 (B)の極限粘度は、前記したように 0. 5〜3. OdLZgの範囲内であることが好 ましいが、 0. 8〜2. OdLZgの範囲内であることが好ましぐ 1. 0〜1. 5dLZgの範 囲内であることが特に好ましい。
また、成分 (B)の質量分率は、 82〜92質量%の範囲内であることが好ましぐ 82〜 90質量%の範囲内であることが特に好ましい。
[0050] このプロピレン系多段重合体にぉ 、て、共重合体成分を構成する炭素数 2〜8の α
ーォレフインとしては、例えば、プロピレン以外の α—ォレフインであるエチレン、 1 ブテン等が挙げられる。このうち、エチレンを使用することが好ましい。
[0051] また、プロピレン系多段重合体は、 230°Cにおけるメルトフローレート(MFR)が 10 OgZlO分以下であることが好ましぐ 20gZlO分以下であることが特に好ましい。 M FRが lOOgZlO分を越えると、多段重合体の溶融張力及び粘度が低くなり、成形が 困難となる場合がある。
[0052] プロピレン系多段重合体は、 230°Cにおけるメルトフローレート(MFR)と、 230°C における溶融張力(MT)との関係が、下記式 (III)を具備することが好ましい。
[0053] [数 2] l o g (MT) >-1. 33 1 o g (MF R) +1. 2 (ΙΠ)
[0054] ここで、 230°Cにおけるメルトフローレート(MFR)と、 230°Cにおける溶融張力(M T)との関係が、前記式 (III)を具備しない場合にあっては、高倍率の発泡成形の実施 が困難となり、発泡倍率が 10倍以上とした押出発泡体を得ることができない場合があ る。前記した定数(1. 2)は、 1. 3以上とすることが好ましぐ 1. 4以上とすることが特 に好ましい。
[0055] なお、プロピレン系多段重合体が前記した式 (III)の関係を具備するようにするには 、成分 (A)を 5〜20質量%含有させるようにすればょ 、。
[0056] また、プロピレン系多段重合体は、溶融状態の動的粘弾性 (角周波数 ωと貯蔵弾 性率 G'との関係)として、高周波数側での貯蔵弾性率の傾きが一定量以上の大きさ であることが好ましぐ具体的には、角周波数が lOmdZsの場合の貯蔵弾性率 G' ( 10)と、角周波数が IradZsの場合の貯蔵弾性率 G' (1)との比である G' (10) /G' (1)が 2. 0以上であることが好ましぐ 2. 5以上であることが特に好ましい。かかる比 G' (10) ZG' (1)が 2. 0より小さいと、押出発泡体に延伸等の外的変化を加えた際 の安定性が低下する場合がある。
[0057] 同様に、プロピレン系多段重合体は、溶融状態の動的粘弾性として、低周波数側 での貯蔵弾性率の傾きが、一定量以下の大きさであることが好ましぐ具体的には、
角周波数が 0. IradZsの場合の貯蔵弾性率 G' (0. 1)と、角周波数が 0. 01rad/s の場合の貯蔵弾性率 G' (0. 01)との比である G' (0. 1) /G' (0. 01)が 6. 0以下で あることが好ましぐ 4. 0以下であることが特に好ましい。かかる比 G' (0. 1) /G' (0 . 01)が 6. 0を越えると、押出発泡体の発泡倍率を高くすることが困難となる場合が ある。
[0058] このようなプロピレン系多段重合体は、下記成分 (a)及び (b)、または下記成分 (a) 、(b)及び (c)からなるォレフィン重合用触媒を用い、 2段階以上の重合工程で、プロ ピレンを重合またはプロピレンと炭素数 2〜8の aーォレフインとを共重合させて製造 することができる。
[0059] (a)四塩ィ匕チタンを有機アルミニウム化合物で還元して得られる三塩ィ匕チタンを、ェ 一テル化合物及び電子受容体で処理して得られる固体触媒成分
(b)有機アルミニウム化合物
(c)環状エステルイ匕合物
[0060] ここで、(a)四塩ィ匕チタンを有機アルミニウム化合物で還元して得られる三塩ィ匕チタ ンを、エーテル化合物及び電子受容体で処理して得られる固体触媒成分 (以下、単 に「 (a)固体触媒成分」とする場合もある)にお!ヽて、四塩化チタンを還元する有機ァ ルミ-ゥム化合物としては、例えば、(ィ)アルキルアルミニウムジノ、ライド、具体的に は、メチルアルミニウムジクロライド、ェチルアルミニウムジクロライド、及び n—プロピ ルアルミニウムジクロライド、(口)アルキルアルミニウムセスキハライド、具体的には、 ェチルアルミニウムセスキク口ライド、(ハ)ジアルキルアルミニウムハライド、具体的に は、ジメチルアルミニウムクロライド、ジェチルアルミニウムクロライド、ジ—n—プロピ ルアルミニウムクロライド、及びジェチルアルミニウムブロマイド、(二)トリアルキルアル ミニゥム、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリェチルアルミニウム、及びトリイソブ チルアルミニウム、(ホ)ジアルキルアルミニウムハイドライド、具体的には、ジェチルァ ルミ-ゥムノ、イドライド等をあげることができる。ここで、「アルキル」とは、メチル、ェチ ル、プロピル、ブチル等の低級アルキルである。また、「ハライド」とは、クロライドまた はブロマイドであり、特に前者が通常である。
[0061] また、三塩ィ匕チタンを得るための、有機アルミニウム化合物による還元反応は、ー6
0〜60°C、好ましくは 30〜30°Cの温度範囲で実施することが通常である。還元反 応における温度が 60°Cより低いと、還元反応に長時間が必要となり、一方、還元 反応における温度が 60°Cを超えると、部分的に過還元が生じる場合があり好ましくな い。還元反応は、ペンタン、ヘプタン、オクタン及びデカン等の不活性炭化水素溶媒 下にお!/、て実施することが好ま 、。
[0062] なお、四塩ィ匕チタンの有機アルミニウム化合物による還元反応によって得られた三 塩化チタンに対して、更にエーテル処理及び電子受容体処理を施すことが好ま ヽ 前記三塩ィ匕チタンのエーテル処理で好ましく用いられるエーテルィ匕合物としては、 例えば、ジェチノレエーテノレ、ジー n—プロピノレエーテノレ、ジ—n—ブチノレエーテノレ、 ジイソアミルエーテル、ジネオペンチルエーテル、ジー n キシルエーテル、ジー n ーォクチルエーテル、ジー 2—ェチルへキシルエーテル、メチルー n ブチルエーテ ル及びェチルーイソブチルエーテル等の各炭化水素残基が炭素数 2〜8の鎖状炭 化水素であるエーテル化合物が挙げられ、これらの中でも特に、ジー n ブチルエー テルを用いることが好適である。
[0063] 三塩ィ匕チタンの処理で用いられる電子受容体としては、周期律表第 III族〜第 IV族 及び第 VIII族の元素のハロゲンィ匕合物を使用することが好ましぐ具体的には、四塩 化チタン、四塩ィ匕ケィ素、三フッ化ホウ素、三塩ィ匕ホウ素、五塩ィ匕アンチモン、三塩 化ガリウム、三塩化鉄、二塩化テルル、四塩化スズ、三塩化リン、五塩化リン、四塩ィ匕 バナジウム及び四塩ィ匕ジルコニウム等を挙げることができる。
[0064] 固体触媒成分 (a)を調製する際に、三塩ィ匕チタンのエーテルィ匕合物及び電子受容 体による処理は、両処理剤の混合物を用いて行ってもよぐまた、一方の処理剤によ る処理後に、他方の処理剤による処理を行うようにしてもよい。なお、これらのうちで は、後者が好ましぐエーテル処理後に電子受容体で処理を行うことが更に好ましい
[0065] エーテル化合物及び電子受容体による処理の前に、三塩化チタンを炭化水素で 洗浄することが好ましい。前記した三塩ィ匕チタンによるエーテル処理は、三塩化チタ ンとエーテルィ匕合物を接触させることによって行われ、また、エーテルィ匕合物による
三塩ィ匕チタンの処理は、希釈剤の存在下で両者を接触させることによって行うのが有 利である。このような希釈剤には、へキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ベンゼン及 びトルエン等の不活性炭化水素化合物を使用することが好適である。なお、エーテ ル処理における処理温度は、 0〜100°Cであることが好ましい。また、処理時間につ いては特に制限されないが、通常 20分〜 5時間の範囲で行われる。
[0066] エーテル化合物の使用量は、三塩化チタン lmolあたり、一般に 0. 05〜3. Omol、 好ましくは 0. 5〜1. 5molの範囲とすればよい。エーテル化合物の使用量が 0. 05m 。はり小さいと、生成される重合体の立体規則性を十分に向上させることができなくな るので好ましくない。一方、エーテルィ匕合物の使用量が 3. Omolを越えると、生成さ れる重合体の立体規則性は向上するものの、収率が低下することとなるので好ましく ない。なお、有機アルミニウム化合物やエーテルィ匕合物で処理した三塩ィ匕チタンは、 厳密に言えば、三塩ィ匕チタンを主成分とする組成物である。
なお、このような固体触媒成分 (a)としては、 Solvay型三塩ィ匕チタンを好適に用い ることがでさる。
[0067] 有機アルミニウム化合物 (b)としては、前記した有機アルミニウム化合物と同様なも のを使用すればよい。
[0068] 環状エステルイ匕合物(c)としては、例えば、 γ—ラタトン、 δ—ラタトン、 ε—ラタトン 等が挙げられるが、 ε—ラタトンを使用することが好ましい。
[0069] また、プロピレン系多段重合体を製造するために用いられるォレフィン重合用触媒 は、前記した成分 (a)〜(c)を混合することにより得ることができる。
[0070] プロピレン系多段重合体を得るには、 2段階の重合方法のうち、水素不存在下でプ ロピレンを重合またはプロピレンと炭素数 2〜8の a—ォレフインを共重合させること が好ましい。ここで、「水素不存在下」とは、実質的に水素不存在下という意味であり 、水素が全く存在しない場合だけでなぐ水素が極微量存在する場合 (例えば、 10m olppm程度)も含まれる。要は、 135°Cテトラリン溶媒中で測定した、 1段階目のプロ ピレン系重合体またはプロピレン系共重合体の極限粘度 [ 7? ]が lOdLZg以下となら ない程度に水素を含む場合でも、「水素不存在下」の意味には含まれる。
[0071] このような水素不存在下でプロピレンの重合またはプロピレンと aーォレフインとの
共重合を行うことにより、超高分子量プロピレン系重合体、すなわち、プロピレン系多 段重合体の成分 (A)を製造することができる。成分 (A)は、水素不存在下で、原料 モノマーを重合温度として、好ましくは 20〜80°C、より好ましくは 40〜70°C、重合圧 力として、一般に、常圧〜 1. 47MPa、好ましくは 0. 39〜: L 18MPaの条件下でス ラリー重合して製造することが好まし 、。
[0072] また、この製造方法では、プロピレン系多段重合体の成分 (B)を、 2段階目以降に 製造することが好ましい。成分 (B)の製造条件としては、前記したォレフィン重合用触 媒を使用すること以外は特に制限はないが、原料モノマーを、重合温度として、好ま しくは 20〜80°C、より好ましくは 60〜70°C、重合圧力として、一般に、常圧〜 1. 47 MPa、好ましくは 0. 19-1. 18MPa、分子量調整剤としての水素が存在する条件 下で重合して製造することが好ま 、。
[0073] なお、前記した製造方法では、本重合を実施する前に、予備重合を行うようにして もよい。予備重合を実施すると、パウダーモルフォロジ一を良好に維持することができ る、予備重合は、一般的に、重合温度として、好ましくは 0〜80°C、より好ましくは 10 〜60°C、重合量として、固体触媒成分 lgあたり、好ましくは 0. 001〜100g、より好ま しくは 0. l〜10gのプロピレンを重合またはプロピレンと炭素数 2〜8の α—才レフィ ンを共重合させることが好まし 、。
[0074] また、押出発泡複合体の構成材料であるプロピレン系榭脂をプロピレン系榭脂組 成物として、前記したプロピレン系多段重合体と、 230°Cにおけるメルトフローレ一ト( MFR)が 30gZlO分以下、かつ、重量平均分子量(M )と数平均分子量(M )との
w n 比である M /Mが 5. 0以下のプロピレン系重合体を含むようにしてもよい。前記し
w n
たプロピレン系多段重合体と他の材料をブレンドして榭脂組成物とすることにより、押 出発泡体の成形性改善と高機能化、低コストィ匕等を図ることができる。
この榭脂組成物を使用することにより、押出発泡複合体は、溶融張力が高ぐ優れ た粘弾性特性を有することとなり、押出発泡複合体に高発泡倍率、良好な表面外観 、シート成形時の延伸切れを防止すると 、つた効果を付与することができる。
[0075] この榭脂組成物は、プロピレン系多段重合体に対する、プロピレン系重合体の重量 比が 6倍以上、より好ましくは 10倍以上である。重量比が 8倍より小さいと、押出発泡
複合体の表面外観が不良となる場合がある。
[0076] プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、 30gZlO分以下であることが 好ましぐ 15gZlO分以下であることがより好ましぐ lOgZlO分以下であることが特 に好ましい。 MFRが 30gZlO分を越えると、押出発泡複合体の成形不良が生じる場 合がある。
[0077] プロピレン系重合体の M /Mは、 5. 0以下であることが好ましぐ 4. 5以下である
w n
ことが特に好ましい。 M /Mが 5. 0を越えると、押出発泡体の表面外観が悪くなる
w n
場合がある。
なお、プロピレン系重合体は、チーグラー ·ナッタ触媒や、メタ口セン触媒等の公知 の触媒を用いた重合方法により製造することができる。
[0078] この榭脂組成物は、溶融状態の動的粘弾性 (角周波数 ωと貯蔵弾性率 G'との関 係)として、高周波数側での貯蔵弾性率の傾きが一定量以上の大きさであることが好 ましぐまた、低周波数側での貯蔵弾性率の傾きが、一定量以下の大きさであること が好ましい。
具体的には、角周波数が lOradZsの場合の貯蔵弾性率 G' (10)と、角周波数が 1 radZsの場合の貯蔵弾性率 G' (1)との比である G' (10) /G' (1)が 5. 0以上であ ることが好ましぐ 5. 5以上であることが特に好ましい。力かる比である G' (10) ZG' ( 1)が 5. 0より小さいと、押出発泡体に延伸等の外的変化を加えた際の安定性が低下 する場合がある。
[0079] また、角周波数が 0. IradZsの場合の貯蔵弾性率 G ' (0. 1)と、角周波数が 0. 01 radZsの場合の貯蔵弾性率 G, (0. 01)との比である G, (0. 1) /G' (0. 01)が 14. 0以下であることが好ましぐ 12. 0以下であることが特に好ましい。かかる比 G' (0. 1 ) /G' (0. 01)が 14. 0を越えると、押出発泡体の発泡倍率を高くすることが困難と なる場合がある。
[0080] ここで、押出発泡体が延伸される場合では、緩和時間が l〜10sの範囲における成 分が、押出発泡体の延伸特性の悪ィ匕をもたらすのが一般的である。この領域の緩和 時間の寄与が大きいほど、角周波数 ωが IradZs付近での貯蔵弾性率 G' (1)の傾 きが小さくなる。そこで、この傾きの指標として、角周波数 ωが lOmdZsのときの貯蔵
弾性率 G,(10)との比である G,(10) ZG,(1)を設けると、数値シミュレーション及び 実験解析の結果から、この値が小さいほど、押出発泡における延伸時の破気が大き くなることが見出された。従って、前記した榭脂組成物では、 G' (10) ZG' (1)を 5. 0 以上とすることが好ましい。
[0081] また、気泡成長の最終段階での破泡や、押出発泡成形におけるダイリップ近傍で の高速伸長変形に伴う破泡に対しては、ある程度の歪み硬化性が要求されるため、 適切な緩和時間領域での適量な高分子量成分が必要となり、そのためには、低周波 数領域での貯蔵弾性率 G'がある程度大きくなければならない。そこで、その指標とし て、角周波数 ωが 0. IradZsの場合の貯蔵弾性率 G' (0. 1)と、角周波数が 0. Olr adZsの場合の貯蔵弾性率 G, (0. 01)との比である G, (0. 1) /G' (0. 01)を設け ると、数値シミュレーション及び実験解析の結果から、この値が大きくなると、破泡によ る発泡倍率の低下が顕著になることが見出された。よって、前記した榭脂組成物では 、 G, (0. 1) /G, (0. 01)を 14. 0以下とすることが好ましい。
[0082] なお、この榭脂組成物を含め、本実施形態の押出発泡体を構成するプロピレン系 榭脂には、必要に応じて、本実施形態の効果を妨げない範囲内で、酸化防止剤、中 和剤、結晶核剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤 、蛍光増白剤、金属石鹼、制酸吸収剤などの安定剤または架橋剤、連鎖移動剤、核 剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添カロ 剤を添加することができる。これらの添加剤の添加量は、成形する押出発泡体に要 求される諸特性や成形条件に応じて、適宜決定すればょ ヽ。
[0083] また、プロピレン系榭脂として、前記した溶融粘弾性に優れたプロピレン系多段重 合体を使用する場合にあっては、必要により前記した添加剤を添加した状態で、前も つて公知の溶融混練機を用いて溶融混練してペレット形状とした後に、所望の押出 発泡体を成形するようにしてもょ ヽ。
[0084] プロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造について:
本実施形態の押出発泡複合体は、例えば、前記したプロピレン系榭脂を押出発泡 することにより得ることができるが、製造装置としては、プロピレン系榭脂を溶融状態 に加熱し、適度のせん断応力を付与しながら混練し、管状のダイ力 押出発泡するこ
とができる公知の押出発泡成形装置を使用することができる。また、製造装置を構成 する押出機も、単軸押出機または二軸押出機のいずれのものも採用することができる
。このような押出発泡成形装置としては、例えば、特開 2004— 237729号に開示さ れた、 2台の押出機が接続されたタンデム型押出発泡成形装置を使用するようにして ちょい。
[0085] (2— 1)第 2の押出発泡体の製造について:
また、本実施形態の押出発泡複合体における第 2の押出発泡体を製造する場合に おいて、高い発泡倍率とした上で、連続気泡構造を確実に形成するためには、溶融 混練された成形材料として用いられるプロピレン系榭脂を押出用ダイ力 押出発泡 するにあたり、この押出用ダイの出口近傍の榭脂流路における、流れ方向と垂直方 向の断面積が最小となる部分にぉ 、て、下記式 (I)で表される圧力勾配 (k)を 50MP a/m≤k≤ 800MPaZm、及び下記式(II)で表される減圧速度(v)を 5MPaZs≤ v ≤ lOOMPaZsとなるようにすればよ!ヽ。
[0086] [数 3]
1
圧力勾配 0 = 7^^^ 231+3n) Q
(Α/π)" ) nA
[0087] [数 4] 減比速度(V )
(式 (I)および式 (Π)中、 M及び nは物質定数、 Aは押出用ダイの出口近傍の榭脂 流路における、流れ方向と垂直方向の断面積が最小となる位置における当該断面積 (mm2)、 Qはダイの出口を通過するプロピレン系榭脂の体積流量 (mm3Zs)、をそれ ぞれ示す)
[0088] ここで、連続気泡構造を形成することは、換言すれば発泡体に破泡を形成させるこ とになるが、一般に、破泡現象は、次のようなメカニズムで発生すると考えられている
すなわち、通常の破泡現象は、気泡の成長過程において、発泡ガスの体積分率が 増大してくると、隣接した気泡間の溶融状態の榭脂が局所的に薄肉化して変形しや すくなり、更なる気泡の成長にともない局所的な大変形が進行し気泡間が破れる破 泡 (現象 1)、気泡の成長後において、榭脂の粘弾性的性質による残留応力により気 泡間の局所的薄肉部が更に進行し気泡間が破れる破泡 (現象 2)、及び発泡体に外 的な変形が加わり、薄く変形しやすい気泡間が選択的に大変形して破れる破泡 (現 象 3)が略同時に起こるものと考えられて 、る。
[0089] 一方、非架橋ポリプロピレン系榭脂を用いた押出発泡成形においては、榭脂の溶 融張力が不足しているため、そのような榭脂で構成された気泡が十分成長、壁面を 形成して安定状態となる前に、前記したうちの(現象 1)のメカニズムによる破泡が発 生し、十分な発泡倍率の押出発泡体を得ることができな力つた。
また、気泡の成長過程において気泡が破れてしまうと、多数個の気泡が繋がること によりガスの連続相が形成されてしま 、、これを通してガスが発泡体の外部に逃げて しまうため、ガスを押出発泡体の内部に閉じこめておくことができず、高い発泡倍率 の発泡体を形成することができな 、のである。
[0090] このようにして、連続気泡構造の形成 (破泡の形成)は、発泡倍率を低下させること になるため、連続気泡構造を備え (独立気泡率が 40%未満であり)、発泡倍率を 10 倍以上とした高発泡倍率の押出発泡体を得るには、押出発泡体における壁面が形 成されるまで破泡がなるべく生じないようにして、押出発泡体内のガスが外部に漏れ ることを防止する必要があり、十分な高発泡率が形成されつつある状態、または形成 された後に気泡が破れ、連続相が形成され、この連続相が形成された段階では押出 発泡体の骨格 (壁面の形成)がある程度なされて形状が安定化しており、ガスが外部 に逃げな 、ような状態である必要がある。
更には、押出発泡体に優れた吸音特性を付与するには、破泡構造を形成した連続 気泡構造力もなることに加え、発泡体内部での十分な吸音効果を発現させるため、 発泡倍率を高くする(10倍以上、好ましくは 20倍以上)としなければならない。
[0091] このためには、ダイ出口におけるせん断変形により破泡を適度に促進しつつも、気 泡成長過程における破泡による発泡倍率の低下が少なくなるようにダイ出口におけ
る圧力勾配を適切な範囲内に設定し、かつ、適度な気泡径の大きさとなる気泡核生 成密度となるようにダイ出口における減圧速度を適切な範囲に設定すればよいので ある。
すなわち、ダイ出口における圧力勾配と減圧速度の適切な範囲を規定することによ り(圧力勾配(k)につ!/、て、 50MPaZm≤k≤ 800MPa/m,減圧速度(v)につ!/ヽ て、 5MPaZs≤v≤100MPaZs)、連続気泡構造と十分な発泡倍率を併せ持ち、 吸音特性に優れたポリプロピレン発泡体を簡便な手段により得ることができることにな る。
[0092] これに対して、圧力勾配(k)が 50MPaZmより小さいと、ダイ内部での破泡の発生 が顕著となり、発泡倍率が 10倍以上といった、十分な発泡倍率の押出発泡体を得る ことができない場合がある。一方、圧力勾配 (k)が 800MPaZmを超えると、連続気 泡構造の形成が困難となる。圧力勾配(k)は、 100MPaZm≤k≤500MPaZmの 範囲内とすることが特に好ましい。
[0093] また、減圧速度 (V)が 5MPaZsより小さ!、と、ダイ内部での破泡の発生が顕著とな り、発泡倍率が 10倍以上といった、十分な発泡倍率の押出発泡体を得ることができ ない場合がある。一方、減圧速度 (V)が lOOMPaZsを超えると、連続気泡構造の形 成が困難となり、吸音特性が更に低下することになる。減圧速度配 (V)は、 20MPaZ s≤v≤ 60MPaZsの範囲内とすることが特に好まし 、。
[0094] なお、物質定数の M (Pa'sn)及び nは、以下のようにして算出される値である。
M (Pa'sn)は、プロピレン系榭脂の粘性の程度を示すパラメータであり、榭脂に固 有の値であるせん断速度( γ )とせん断粘度(7? )の関係につ 、て、両者の対数をプ
Μ
ロットした結果を図 1に示す。この図 1に示すように、所定の榭脂温度でのせん断粘度 )は、せん断速度( γ )に依存することとなり、このせん断速度が 10°〜102(s一1)
M
の範囲については、下記式 (IV— 1)により近似することができる。物質定数 Mはこの 式 (IV— 1)における傾きを示すものである。
[0095] [数 5] = (IV- 1 )
[0096] そして、この式 (IV— 1)をもとにして、せん断速度( γ )を 10 (s_1)としたときに得ら れるせん断粘度( 7? )の値を Mとして採用すればょ 、。なお、本実施形態に適用さ
M
れる Mの値は、プロピレン系榭脂の温度や粘性により決定される力 通常は 500〜3 0000 (Pa' sn)程度である。
[0097] また、物質定数 nは、プロピレン系榭脂の非-ユートン性を示すパラメータであり、せ ん断速度(y )が 100 (s_1)の場合におけるせん断粘度(7? )を 7? ( γ = 100)とし
Μ Μ
て、下記式 (IV— 2)を用いて算出することができる。なお、本製法に適用される ηの値 は、通常は 0. 2〜0. 6程度である。
[0098] [数 6] n + g { i^ } +1 (IV.2 )
[0099] このように、前記した式 (I)および式 (II)にあっては、プロピレン系榭脂の物質定数 である M (材料の粘性の程度を示すパラメータであり、材料の粘度や温度によって変 化する)は 500〜30000程度、また n (同様に、材料の非-ユートン性を示すパラメ一 タ)は 0. 2〜0. 6程度であるので、前記した圧力勾配(k)について、 50MPa/m≤k ≤800MPa/m,また減圧速度(v)について、 5MPa/s≤v≤ 100MPa/sとなるよ うにするためには、押出用ダイ出口部における流れ方向と垂直な流路の断面積が最 小となる位置における当該断面積 Aを 0. 1〜4. 0mm2、好ましくは 0. 3〜2. 0mm2 として、一つのダイ出口部を通過する成形材料として用いられるプロピレン系榭脂の 体積流量 Q (内管ダイ一つ当たり)を 5〜300mm3Zs、好ましくは 10〜 150mm3Zs となるようにすればよい。
[0100] なお、この製造方法にあっては、押出用ダイ出口近傍における榭脂流路径が一定 でないことを考慮した (例えば、押出用ダイの出口近傍において、榭脂流路の径が小 さくなる、すなわち、押出用ダイの出口近傍の榭脂流路における、流れ方向と垂直方 向の断面積が最小となる位置が生じることを考慮した)ものであり、押出用ダイの出口 近傍において、榭脂流路の径が略一定であり、断面積も略一定である場合には、式 (
I)及び式 (II)における断面積 Aとしては、力かる一定となる断面積を採用すればよい
[0101] また、押出発泡複合体を製造するにあっては、例えば、複数の管状ダイが集まって 構成される管状ダイ集合体力も多数の細条を押出発泡したり、また、複数個の押出 孔が形成された押出用ダイ力 多数の細条を押出発泡させ、この細条を長手方向に 相互に融着させて多数集束してなる押出発泡細条集束体としてもょ 、。このようにし て、細条の押出発泡体を多数集束した押出発泡細条集束体とすることにより、押出 発泡複合体の発泡倍率を高くすることができ、発泡倍率が高ぐ十分な厚みを有する 押出発泡複合体を、種々の形状で容易に成形することができる。
なお、このような押出発泡細条集束体の製造は、例えば、特開昭 53— 1262号公 報等によっても公知である。
[0102] 図 2は、本実施形態の押出発泡複合体を押出発泡細条集束体とした場合における 構成の一態様を示した模式図である。この押出発泡複合体 1 (押出発泡細条集束体 1)は、第 1の押出発泡体 2と第 2の押出発泡体 3とからなる積層体である。
第 1の押出発泡体 2は、複数の細条 22が多数集束してなるものであり、細条 22に は、複数の発泡セル 21がランダムに存在している。この発泡セル 21の平均直径は、 例えば、 5〜400 m程度の大きさとすることができる。
また、第 2の押出発泡体 3も、複数の細条 32が多数集束してなり、細条 32には複数 の発泡セル 31がランダムに存在している。この発泡セル 31の平均直径は、例えば、 5-5000 μ m程度の大きさとすることができる。
なお、図 2に示す押出発泡複合体 1にあっては、第 1の押出発泡体 2及び第 2の押 出発泡体 3の表面に表皮層 23, 33を形成した例を示している。
[0103] このような図 2の構成の押出発泡複合体 1を得るには、図 3に示すように、第 1の押 出発泡体 2を製造する、複数の押出孔 51が形成された第 1の押出用ダイ 5から押し 出された多数の細条 22と、第 2の押出発泡体 3を製造する、複数の押出孔 61が形成 された第 2の押出用ダイ 6から押し出された多数の細条 32を高温状態で重ね合わせ 、その後、例えば、一対の冷却用サイジングローラ 7で冷却しながら狭圧して、積層体 とすることができる。このように、高温状態の細条 22, 32を重ね合わせ、その後冷却 して積層体とすることにより、第 1の押出発泡体 2と第 2の押出発泡体 3を接着する接 着工程や、当該接着工程にて使用される接着剤が不要となる。
冷却用サイジングローラ 7は、図 3では、 3つの冷却ローラ 71からなり、一対の冷却 用サイジングローラ 7は、押出発泡複合体 1を挟んで対向配置されている態様を示し ている。また、冷却ローラ 71のそれぞれには、表面の温度調整を可能とする図示しな Vヽ水冷式の温度調整手段が配設されて!/ヽる。
[0104] なお、このような押出発泡細条集束体 1を構成する細条 22, 32の形状は、押出用 ダイ 5, 6に形成された押出孔 51, 61の形状に左右される力 押出孔 51, 61の形状 は、円形、菱形、スリット状等の任意の形状とすることができる。なお、成形にあたって は、押出用ダイ 5, 6の出口における圧力損失が 3MPaから 50MPaとなるようにする ことが好ましい。
また、押出用ダイ 5, 6に形成される押出孔 51, 61の形状は、全てを同じ形状として もよいし、一つの押出用ダイ 51, 61中に多種類の形状の押出孔を形成するようにし てもよい。
[0105] 更には、例えば、円形の押出孔とする場合であっても、その径の大きさとして複数の 種類とし、径の異なる円形状の押出孔を多数形成するようにしてもょ 、。
なお、このように、複数の管状ダイを集めて構成された管状ダイ集合体等を使用す る場合にあって、第 2の押出発泡体 3を製造する場合には、管状ダイ等の一つ一つ の孔の圧力勾配 (k)及び減圧速度 (V)が、前記した式 (I)及び式 (II)の要件を具備 するようにすることが好ま 、。
[0106] また、本実施形態の押出発泡複合体 1にあっては、第 2の押出発泡体 3について、 細条 32が形成されて ヽな 、部分 (無細条部 34)を備えるようにしてもよ!ヽ。
図 4は、図 2に示したプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1において、第 2の押出発 泡体 3に無細条部 34を形成した態様を示した模式図である。このような無細条部 34 により形成される空間が特定の周波数領域の音波を効果的に吸収することで、一層 優れた吸音性能を発揮することができる。
[0107] なお、第 2の押出発泡体 2に対して力かる無細条部 34を形成するには、複数の押 出孔が形成された押出用ダイ (例えば、図 3における押出用ダイ 6を参照)について、 部分的に押出孔を形成しないところを設けるようにすれば、力かる部分からは細条が 押し出されず、空隙力もなる無細条部 34が好適に形成されることになる。
[0108] 更には、本実施形態の押出発泡複合体 1にあっては、第 2の押出発泡体 3の表面 の少なくとも一部が外気と連通されているようにしてもよい。このように、第 2の押出発 泡体 3が外部と連通されることにより、外部からの音波を発泡体内の空間が効率よく 吸収するため、吸音性能が向上する。
[0109] ここで、第 2の押出発泡体 3の表面側が外気と連通するようにするには、当該第 2の 押出発泡体 3の表面部(図 2の表皮層 33)に孔を形成したり、表皮層 33を削って開 口を設けるようにすればよい。なお、第 2の押出発泡体 3に表皮層 33が形成されてい ない場合には、第 2の押出発泡体の表面に現れる部分に対して、孔ゃ開口を設ける ようにすればよい。孔の径については、 0. 1〜3. Ommとすることが好ましい。
なお、孔の大きさ (径、深さ、容積等)により吸音される音波の周波数が変化するた め、吸音したい騒音等の周波数が特定される場合にあっては、かかる特定される周 波数に応じて孔の大きさ (径、深さ、容積等)を適宜決定するようにすれば、吸音特性 を効率よく発揮することができる。
[0110] なお、このように、第 2の押出発泡体 3の表面側に孔を形成するには、例えば、図 5 に示すように、図 3に示した冷却用サイジングローラ 7に対して、無数の針状体 81が 配設されたベルト 8を掛けるようにして、第 2の押出発泡体 3を通過させれば、当該針 状体 81により第 2の押出発泡体の表面側に孔が好適に形成されることになる。 また、第 2の押出発泡体 3の表皮層 33や表面側に現れる部分に対して切削により 開口を形成する場合には、押出発泡複合体 1を製造する際に (押出発泡工程におい て)切削刃により開口を形成してもよいし、押出発泡複合体 1を製造した後、二次カロ ェにお 、て切削刃により開口を形成するようにしてもよ!、。
[0111] 本実施形態の押出発泡複合体 1を製造するにあたり、第 1の押出発泡体 2や第 2の 押出発泡体 3を発泡させる発泡手段としては、成形時に溶融状態の榭脂材料に流体 (ガス)を注入する物理発泡や、榭脂材料に発泡剤を混合させる化学発泡を採用す ることがでさる。
物理発泡としては、注入する流体としては、不活性ガス、例えば、二酸化炭素 (炭酸 ガス)、窒素ガス等が挙げられる。また、化学発泡としては、使用できる発泡剤として は、例えば、ァゾジカルボンアミド、ァゾビスイソブチ口-トリル等が挙げられる。
[0112] なお、前記した物理発泡にあっては、溶融状態の榭脂材料に対して、超臨界状態 の炭酸ガスや窒素ガスを注入するようにすることが好ま 、。
ここで、超臨界状態とは、気体と液体が共存できる限界の温度及び圧力を超えるこ とによって、気体と液体の密度が等しくなり 2層が区別できなくなった状態をいい、こ の超臨界状態で生じる流体を超臨界流体という。また、超臨界状態における温度及 び圧力が超臨界温度及び超臨界圧力であり、例えば、炭酸ガスでは、例えば、 31°C 、 7. 4MPaである。また、超臨界状態の炭酸ガスや窒素ガスは、榭脂材料に対して 4 〜 15質量%程度注入するようにすればよぐシリンダ内において、溶融状態の榭脂 材料に対して注入することができる。
[0113] 押出発泡複合体 1の形状は、特に制限はなぐ構造材料として公知の形状、例えば
、板状、円柱状、矩形状、凸状、凹状等の公知の形状を採用することができる。
[0114] 力かる第 1の押出発泡体 2と第 2の押出発泡体 3から構成される本実施形態のプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、下記の効果を好適に享受する。
すなわち、押出発泡複合体 1を構成する第 1の押出発泡体 2は、独立気泡率が 40 %以上であり、発泡倍率が 10倍以上であるため、独立した多数の気泡が熱を伝えに くくするため、断熱性能に優れた押出発泡体となる。また、衝撃強度等の機械的強度 や耐湿性にも優れるものである。また、第 1の押出発泡体の表層には表皮層(スキン 層) 23が存在するため、遮音性能にも優れる。
また、第 2の押出発泡体 3は、独立気泡率が 40%未満であるため、気泡間と繋がつ て ヽる連続的な空気層が形成される連続気泡構造が好適に形成されて ヽるとともに 、発泡倍率が 10倍以上であるため、発泡体中の空気層の割合が高くなることにより、 吸音性能に優れた押出発泡体となる。
そして、このような第 1の押出発泡体 2と第 2の押出発泡体 3を備える本実施形態の プロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、断熱性能と吸音性能に優れた押出発泡体と なり、また、発泡倍率を 10倍以上とすることにより、発泡体も軽量となり、取り扱い性も 優れることとなる。
[0115] また、構成材料であるプロピレン系榭脂は、リサイクル性能にも優れ、また、耐薬品 性や耐熱性も良好であることから、本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体
も、これらの諸性能 (リサイクル性能、耐薬品性、耐熱性)を享受することになる。更に は、低コスト材料であるプロピレン系榭脂を使用することにより、前記した効果を有す る押出発泡体を低コストで提供することが可能となる。
[0116] 本実施形態の押出発泡複合体 1は、このようにして断熱性能及び吸音性能に優れ るので、自動車分野の構造材料 (天井、フロア、ドアなどの内装の構成部材)や、建 築 ·土木分野の構造材料 (建材等)等に適用することができる。
特に、建築 ·土木分野における住宅用の構造材料にあっては、内側には吸音性能 力 外側には断熱性能が要求される場合が多いので、カゝかる構造材料に適用する場 合には、本実施形態の押出発泡複合体 1における第 1の押出発泡体 2を内側に、第 2の押出発泡体 3を外側に配するようにすれば、その効果を最大限に発揮させること ができる。
[0117] <第 2実施形態 >
以下、本発明の第 2実施形態におけるプロピレン系榭脂押出発泡複合体及びプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体の製造方法について説明する。
[0118] 本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 (以下、「押出発泡複合体」とする こともある)は、プロピレン系榭脂を押出発泡させてなり、押出発泡体を構成するプロ ピレン系樹脂が、温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan δ )が 0. 04〜1 00であるォレフィン系重合体を含み、独立気泡率が 40%以上であり、発泡倍率が 1 0倍以上である第 1の押出発泡体と、独立気泡率が 40%未満で、発泡倍率が 10倍 以上である第 2の押出発泡体力 構成されるものであり、このような構成により、軽量 であり、かつ断熱特性、吸音性能及び制振特性を兼ね備えた押出発泡複合体となる 本実施形態のプロピレン系榭脂は、基本的に前述した第 1実施形態と同じだが、特 定のォレフイン系重合体を構成材料として前述した第 1実施形態のプロピレン系榭脂 に添加することにより、特に制振性能に優れた押出発泡複合体としたものである。
[0119] 特定のォレフィン系重合体:
本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、構成材料であるプロピレン系 榭脂が、温度 298Κ、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan δ )が 0. 04〜: LOOである
ォレフィン系重合体 (特定のォレフィン系重合体)を含むことを特徴とする。
力かる特定のォレフィン系重合体を構成材料として第 1実施形態のプロピレン系榭 脂に添加することにより、プロピレン系榭脂で構成された押出発泡体の発泡セルの壁 面に対して、粘性物質である特定のォレフィン系重合体を一様に分散して存在させ ることになるので、制振性能に優れた押出発泡複合体となる。
[0120] 特定のォレフィン系重合体は、温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan
3 )が0. 04〜: LOOである力 0. 04〜10であることが特に好ましい。当該損失正接 が 0. 04〜: LOOであれば、粘性挙動を示し、プロピレン系榭脂に含ませて押出発泡 体とした場合にあっては優れた制振性能を発揮することができる。一方、損失正接が 0. 04より小さいと、十分な制振性能を得ることができず、損失正接が 100より大きい と、固体的性質を示し、内部にエネルギー吸収されず、剛直なプロピレン系榭脂と一 緒に振動してしまうため、これも制振性能を発揮することができない。
なお、力かる損失正接は、例えば、市販されている固体粘弾性測定装置 (例えば、 DMS 6100:セイコーインスツルメンッ (株)製など)により測定すればよ!、。
[0121] また、このような特定のォレフィン系重合体 (a)は、ポリプロピレン系榭脂 (b)に対し て、重量比(aZb)が、 1Z100〜80Z100となるように添加すること力好ましく、 5, 100〜60Ζ100となるように添加すること力特に好ましい。重量比が 1/100〜80/ 100となるようにォレフィン系重合体を含むことにより、ポリプロピレン系榭脂からなる 発泡成形体において発泡セルの壁面にォレフィン系重合体が適度に分散されて、制 振性能を向上させることができる。
[0122] この特定のォレフィン系重合体としては、例えば、 WO 03Ζ070788や WO 03 Ζ070790に開示される榭脂材料や、特許 3255697号等に開示される榭脂材料等 を使用することができる。また、具体的には、 WO 03Ζ070788〖こ開示される高流 動 1ーブテン系共重合体、またはそれに類した 1ーブテン系重合体が挙げられる。
[0123] この 1ーブテン系共重合体は、具体的には、下記の第 1態様または第 2態様に示す ものを使用することができる。これらを使用することにより、押出発泡体に制振性能を 確実に付与することができる。
まず、第 1態様として、下記の(1)〜(3)の要件を具備するものである。
(1) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ r? ]が 0. 01〜0. 5dL/g
(2)示差走査型熱量計 (DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下— 10°Cで 5分間保持し た後、 10°CZ分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのもっとも高温側に 観測されるピークのピークトップとして定義される融点 (T — D)が 0〜: LOO°Cの結晶 性樹脂
(3)立体規則性指数 { (mmmm) / (mmrr+rmmr) }が 30以下
[0124] また、この 1ーブテン重合体は、第 2形態として、下記の(1 ' )、(2)及び(3' )を具備 するものである。
(1 ' ) 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度 [ r? ]が 0. 25〜0. 5dL/g (2)示差走査型熱量計 (DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下— 10°Cで 5分間保持し た後、 10°CZ分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのもっとも高温側に 観測されるピークのピークトップとして定義される融点 (T — D)が 0〜: LOO°Cの結晶 性樹脂
(3 ' ) 13C 核磁気共鳴 (NMR)スペクトルから求めたメソペンタッド分率 (mmmm)が 73%以下
[0125] このうち、第 1態様の 1ーブテン系重合体は、 135°C、テトラリン溶媒中で測定した 極限粘度 [ 7? ]が 0. 01-0. 5dLZgであり、この極限粘度 [ 7? ]は、好ましくは 0. 1〜 0. 5dLである。極限粘度 [ 7? ]が 0. OldLZgより小さいと、物性 (強度)が低下する場 合があり、一方、 0. 5dLを超えると、流動性が悪くなる場合がある。
[0126] また、第 2態様の 1—ブテン系重合体は、 135°C、テトラリン溶媒中で測定した極限 粘度 [ r? ]が 0. 25-0. 5dLZgであり、この極限粘度 [ 7? ]は、好ましくは 0. 3〜0. 5 dLZgである。
極限粘度 [ 7? ]が 0. 25dLZgより小さいと、結晶間を結びつける分子が不足して靭 性(引張り破断伸び)が低下し、 0. 5dLZgを超えると、粘度が上昇しすぎるため、流 動性が低下して成形不良が発生する場合がある。
[0127] 前記した第 1態様及び第 2態様の 1ーブテン系重合体は、融点 (T D)が軟質性 の点力も示差走査熱量計 (DSC)で 0〜100°Cの結晶性榭脂であることを必要とする ものであり、好ましくは 0〜80°Cである。
[0128] なお、融点(T -D)は、 DSC (Differential Scanning Calorimetryの略)測定により
m
求められる。すなわち、示差走査熱量計 (DSC— 7 :パーキン 'エルマ一社製)を用い 、試料 10mgを窒素雰囲気下— 10°Cで 5分間保持した後、 10°CZ分で昇温させるこ とにより得られた融点吸熱カーブのもっとも高温側に観測されるピークのピークトップ 1S 測定対象の融点 (T — D)となる。ここで、本明細書における「結晶性榭脂」とは、 この T —Dが観測される榭脂のことをいう。
[0129] また、このような第 1態様の 1—ブテン系重合体において、立体規則性指数 { (mm mm) Z (mmrr+rmmr) }が 30以下であり、好ましくは 20以下、更に好ましくは 15以 下である。この立体規則性指数が 30を超えると、粘性物質の柔軟性が低下したり、 振動吸収効果が低下する場合がある。
[0130] ここで、メソペンタッド分率 (mmmm)は 90%以下であることが好ましぐ 85%以下 であることが更に好ましぐ 80%以下であることが特に好ましい。メソペンタッド分率( mmmm)が 90%を超えると、柔軟性の低下や二次カ卩ェ性の低下が生じる場合があ る。
[0131] 第 2態様の 1ーブテン系重合体は、メソペンタッド分率 (mmmm)が 73%以下であ る。メソペンタッド分率 (mmmm)が 73%を超えると、物理的架橋点が過剰になりすぎ るため、柔軟性が低下する場合がある。
[0132] なお、このような 1ーブテン系重合体において、メソペンタッド分率 (mmmm)は、朝 倉らにより報告された「Polymer Journal, 16、 717 (1984)」、 J. Randallらにより 報告された「Macromol. Chem. Phys. , C29, 201 (1989)」及び V. Busicoらに より報告された「Marcomol. Chem. Phys. , 198, 1257 (1997)」で提案された方 法に準拠して求めた。すなわち、 13c—核磁気共鳴スペクトルを用いてメチレン基、メ チン基のシグナルを測定し、ポリ(1—ブテン)分子中のメソペンタッド分率を求めた。
[0133] なお、 13C—核磁気共鳴スペクトルの測定は、下記の装置及び条件にて行えばよい 装置:日本電子(棟) S^NM— EX400型 13C— NMR装置
方法:プロトン完全デカツプリング法
濃度: 230mgZミリリットル
溶媒: 1, 2, 4 トリクロ口ベンゼンと重ベンゼンの 90 : 10 (容量比)混合溶媒 温度: 130°C
パノレス幅:45°
パルス繰り返し時間: 4秒
演算: 10000回
[0134] また、このような 1 ブテン系重合体にぉ 、て、立体規則性指数 { (mmmm) / (m mrr+rmmr) }は、前記した方法により、 (mmmm) , (mmrr)及び(rmmr)を測定し た値力も算出すればよい。
[0135] また、第 1態様及び第 2態様の 1ーブテン系重合体は、前記の要件の他に、 GPC 法により測定した重量平均分子量(M )が 10, 000-100, 000であることが好まし
w
い。 M力 000未満では、物性(強度)が低下することがある。一方、 M力 S100,
000を超えると、流動性が低下するため加工性が不良となることがある。
なお、前記した M /Mは、 GPC法により、下記の装置及び条件で測定した、ポリ
w n
スチレン換算の質量平均分子量 (M )及び数平均分子量 (M )より算出した値であ
w n
る。
[0136] (GPC測定装置)
カラム : TOSO GMHHR— H (S) HT
検出器 :液体クロマトグラム用 RI検出器 WATERS 150C
[0137] (測定条件)
溶媒 :1, 2, 4 トリクロ口ベンゼン
測定温度 : 145°C
流速 :1. 0ミリリットル Z分
試料濃度 :2. 2mgZミリリットル
注入量 :160マイクロリットル
検量線 : Universal Calibration
解析プログラム: HT— GPC (Ver. 1. 0)
[0138] 第 1態様の 1—ブテン系重合体は、 JIS K7113に準拠した引張試験により測定し た引張弾性率が 500MPa以下であることが好ましぐ 300MPa以下であることが更に
好ましい。引張弾性率が 500MPaを超えると、十分な軟質性が得られない場合があ る。
[0139] 1ーブテン系重合体が共重合体である場合には、ランダム共重合体であることが好 ましい。また、 1—ブテンカも得られる構造単位は 50mol%以上であることが好ましく 、より好ましくは 70mol%以上である。このような 1—ブテンに由来する構造単位が 50 mol%より小さ 、と、二次カ卩ェ性の悪ィ匕が生じる可能性がある。
[0140] また、 1ーブテン系重合体が共重合体である場合、 α—ォレフィン連鎖より下記式( U)により得られるランダム性指数 Rが 1以下であることが好ましい。
[0141] [数 7]
R = 4 [ α α ] [ Β Β ] / [ α Β ] 2 …… (U )
( ί α α ] は α—ォレフィン連鎖分率、 [ Β Β ] はブテン連鎖分率、 [ α Β ] は α—ォレフイン—ブテン連鎖分率、 をそれぞれ示す)
[0142] ここで、 Rはランダム性を表す指標であって、 Rが小さいほど aーォレフイン(コモノ マー)の孤立性が高ぐ組成が均一になる。この Rは 0. 5以下が好ましぐ 0. 2以下 が更に好ましい。
なお、 Rが 0の場合には、 連鎖はなくなり、 α—ォレフィン連鎖は完全に孤立 連鎖のみになる。
[0143] なお、 1ーブテン系重合体がプロピレン'ブテン共重合体である場合のブテン含有 量、及び Rは下記のようにして測定すればよい。
具体的には、ブテン含有量及び Rは、 日本電子 (株)製の JNM— ΕΧ400型 NMR 装置を用いて、下記の測定条件で13 C— NMRスペクトルを測定し、下記の方法によ り算出すればよい。
[0144] (測定条件)
試料濃度: 220mg/NMR溶液 3ミリリットル
NMR溶液: 1, 2, 4—トリクロ口ベンゼン Zベンゼン一 d6 (90Zl〇vol%) 測定温度: 130°C
パノレス幅:45°
パルス繰り返し時間: 10秒
積算回数: 4000回
[0145] 前記測定条件で、 PP、 PB、 BB連鎖は、 J. C. Randall, Macromolecules, 197 8, 11, 592で提案された方法に準拠し、13 C—核磁気共鳴スペクトルの So; a炭素 のシグナルを測定し、共重合体分子鎖中の PP、 PB、 BBダイアツド連鎖分率を求め た。
得られた各ダイアツド連鎖分率 (mol%)より、下記の式 (W)、式 (X)よりブテン含有 量及びランダム性指数 Rを求めた。
[0146] [数 8] ブテン含有量 (モル0) = [BB] + [PB] /2 …… (W)
[0147] [数 9] ランダム性指数 R = 4 [PP] [BB] / [PB] 2 …… (X)
(式 (W) 、 式 (X) 中、 [PP] はプロピレン連鎖分率、 [BB] は ブテン連鎖分率、 [PB] はプロピレンーブテン連鎖分率を表す)
[0148] また、 1ーブテン系重合体がォクチン'ブテン共重合体である場合のブテン含有量 及び Rは下記のようにして測定すればよい。具体的には、ブテン含有量及び Rは、 日本電子 (株)製の JNM— EX400型 NMR装置を用いて、下記の測定条件で13 C— NMRスペクトルを測定し、下記の方法により算出すればよい。
[0149] (測定条件)
試料濃度: 220mg/NMR溶液 3ミリリットル
NMR溶液: 1, 2, 4—トリクロ口ベンゼン Zベンゼン一 d6(90Zl〇vol%) 測定温度: 130°C
パノレス幅:45°
パルス繰り返し時間: 10秒
積算回数: 4000回
[0150] 前記測定条件で、 13C—核磁気共鳴スペクトルの S a a炭素のシグナルを測定し、 40.8〜40. Oppm【こ観 ¾Jされる BB連鎖、 41. 3〜40.8ppm【こ観 ¾Jされる OB連鎖 、42. 5〜41. 3ppmに観測される OO連鎖由来のピーク強度力も共重合分子鎖中
の 00、 OB、 BBダイアツド連鎖分率を求めた。
得られた各ダイアツド連鎖分率 (mol%)より、下記の式 (Y)、式 (Z)よりブテン含有 量及びランダム性指数 Rを求めた。
[0151] [数 10] ブテン含有量 (モル %) = [ B B ] + [O B ] / 2 一… (Y)
[0152] [数 11] ランダム性指数 R = 4 [O O] [ B B ] / [O B ] 2 …… (Z ) (式 (Y) 、 式 (Ζ ) 中、 [O O] はォクテン連鎖分率、 [ B B ] は ブテン連鎖分率、 [O B ] はォクテンーブテン連鎖分率を表す)
[0153] なお、前記の 1ーブテン系共重合体は、 WO 03Z070788に開示される 1ーブテ ン系共重合体の製造方法により、簡便に得ることができる。
[0154] プロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造について:
本実施形態の押出発泡複合体は、例えば、第 1実施形態におけるプロピレン系榭 脂及び前記した特定のォレフィン系重合体を押出発泡することにより得ることができ るが、製造装置としては、プロピレン系榭脂等を溶融状態に加熱し、適度のせん断応 力を付与しながら混練し、管状のダイ力 押出発泡することができる公知の押出発泡 成形装置を使用することができる。また、製造装置を構成する押出機も、単軸押出機 または二軸押出機のいずれのものも採用することができる。このような押出発泡成形 装置としては、例えば、特開 2004— 237729号に開示された、 2台の押出機が接続 されたタンデム型押出発泡成形装置を使用するようにしてもよい。
本実施形態の押出発泡複合体における第 2の押出発泡体の製造については、前 述した第 1実施形態と重複するため説明は省略する。
[0155] 本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、第 1実施形態の効果に加え て、下記の効果を好適に享受する。
すなわち、本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、構成材料である プロピレン系榭脂に対して温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan δ )が 0 . 04〜: LOOであるォレフィン系重合体を含むようにしているので、発泡成形体を構成
する発泡セルの壁面には、粘性物質である当該ォレフィン系重合体が一様に分散さ れた状態で存在することとなるため、効率よく振動を吸収することになり、制振性能に 優れた押出発泡体を提供することができる。
そして、このような第 1の押出発泡体 2と第 2の押出発泡体 3を備える本実施形態の プロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、断熱性能、吸音性能及び制振性能に優れ た押出発泡体となり、また、発泡倍率を 10倍以上とすることにより、発泡体も軽量とな り、取り扱い性も優れることとなる。
[0156] 本実施形態の押出発泡複合体 1は、このようにして断熱性能、吸音性能及び制振 性能に優れるので、自動車分野の構造材料 (天井、フロア、ドアなどの内装の構成部 材のほ力ドアパネル、フェンダーパネル、天井パネルあるいはトランクリツドなどの振 動基板面)や、建築 ·土木分野の構造材料 (建材等)等に適用することができる。 特に、建築 ·土木分野における住宅用の構造材料にあっては、内側には吸音性能 力 外側には断熱性能が要求される場合が多いので、カゝかる構造材料に適用する場 合には、本実施形態の押出発泡複合体 1における第 1の押出発泡体 2を内側に、第 2の押出発泡体 3を外側に配するようにすれば、その効果を最大限に発揮させること ができる。
[0157] <第 3実施形態 >
以下、本発明の第 3実施形態におけるプロピレン系榭脂押出発泡複合体及びプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体の製造方法について説明する。
本実施形態のプロピレン系榭脂は、基本的に前述した第 1実施形態と同じだが、構 成材料として繊維状のフィラーを添加することにより、特にエネルギー吸収能力に優 れた押出発泡複合体としたものである。
[0158] 図 9及び図 10は、本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1 (以下、「押出 発泡複合体 1」とすることもある)の構成を示した図であり、図 9は、第 1の押出発泡体 2の構成を示した模式図であり、図 10は、第 2の押出発泡体 3を示した模式図である ここで、図 9中、 2は第 1の押出発泡体、 21は発泡セル、 22は細条(ともに図 2参照) 、図 10中、 3は第 2の押出発泡体、 31は発泡セル、 32は細条(ともに図 2参照)、また
、 9は繊維状フイラ一である。
本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、プロピレン系榭脂を押出発 泡させてなり、図 9に示される、独立気泡率が 40%以上であり、発泡倍率が 10倍以 上である第 1の押出発泡体 2と、図 10に示される、独立気泡率が 40%未満で、発泡 倍率が 10倍以上である第 2の押出発泡体 3から構成されるものであり、このような構 成により、軽量であり、かつ断熱特性と吸音性能を兼ね備えた押出発泡複合体となる
[0159] また、図 9及び図 10に示すように、押出発泡複合体 1を構成する成形材料は、その 含有量を成形材料全体に対して 0質量%を超え 60質量%以下とする繊維状フイラ一 9を含有する。この繊維状フイラ一 9は、第 1の押出発泡体 2、及び第 2の押出発泡体 3中の発泡セル 21, 31によりランダムに配置されることとなるため、その結果、ェネル ギー吸収能力が優れたものとなる。
本実施形態の押出発泡複合体 1は、このような構成を採用することにより、断熱性 能と吸音性能に加えて、エネルギー吸収性能を兼ね備えた押出発泡複合体となる。
[0160] 本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、当該押出発泡体を構成する 成形材料全体に対して 0質量%を超え 60質量%以下の繊維状フイラ一 9を含有して いる。繊維状フイラ一 9の含有量が 60質量%を超える場合には、繊維状フイラ一 9の 含有量が多すぎるため、発泡成形性の低下を招き、また、気泡構造を過剰に壊し、 発泡倍率が低下してしまう。
なお、力かる繊維状フイラ一 9の含有量は、成形材料全体の 5〜30質量%の範囲 内であることが好ましい。繊維状フイラ一の含有量が 5質量%より小さいと、エネルギ 一吸収能力を向上させることが困難となる場合があり、一方、含有量が 30質量%を 超えると、発泡成形性を低下させるという問題が生じる可能性がある。さらには、 30質 量%を超えると、発泡セルの壁面力 繊維状フイラ一が突出してしまう場合があるた め、場合によっては気泡構造を過剰に壊し、発泡倍率を低下させるといった問題が 生じることがあるので好ましくな!/、。
[0161] 成形材料に含有される繊維状フイラ一 9としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、 その他の無機繊維 (炭化ケィ素繊維、アルミナ繊維、塩基性硫酸マグネシウムゥイス
カー等)が挙げられ、中でも、ガラス繊維が好ましい。また、炭素繊維は、セルロース 系、 PAN系、ピッチ系等の炭素繊維が挙げられる。
ここで、繊維状フイラ一 9とは、通常繊維状と呼ばれるものであって、ゥイスカー形状 のものをも含み、例えば、平均繊維長が約 0. 02〜: LOmm (ゥイスカー形状の場合約 0. 01〜0. 15mm)、平均繊維径が 0. l〜20 /z m程度のものが例示できる。
なお、繊維状フイラ一 9としてガラス繊維を使用する場合には、平均繊維径 5 m以 上、 20 m以下、平均繊維長 0. 1mm以上、 10mm以下のものを使用することが好 ましい。
[0162] また、繊維状フイラ一 9の総本数のうち、 20%以上は、押出発泡複合体 1の厚み方 向に沿って配向している。ここで、厚み方向に沿って配置されている繊維状フイラ一 9 とは、厚み方向の軸に対し繊維長方向がなす角度が 0° (厚み方向と平行)以上〜 4 5° 以下であるものをいう。
このような繊維状フイラ一 9は、発泡セル 21, 31によりランダムに配置されることとな る。すなわち、繊維状フイラ一 9は、繊維長方向が押出発泡複合体 1の押出し方向に 沿うように配置されるだけでなぐ発泡した発泡セル 21, 31の存在により、厚み方向 に沿って配置されることとなる。これにより、押出発泡複合体 1の厚み方向に少しの歪 みが生じた場合でも、高い応力が生じることとなり、エネルギー吸収能力を向上させ ることが可能となる。
[0163] より詳細に説明すると、繊維状フイラ一 9を含有しないプロピレン系榭脂押出発泡体 の応力と歪みとの関係は、図 11のようになる。なお、図 11中、斜線が引かれた部分 力 エネルギー吸収量を示しており、この斜線が引かれた面積が大きなものほど、高 V、エネルギー吸収能力を有するものとなる。
一方で、本実施形態の押出発泡複合体 1では、繊維状フイラ一 9を含有しており、こ の繊維状フイラ一 9は、押出し方向に沿って配向するだけでなぐ繊維状フイラ一 9の 一部が押出発泡複合体 1の厚み方向に沿って配向していることから、応力と歪みとの 関係は、図 12のようになる。
すなわち、小さな歪みで、大きな応力が生じ、図 12の斜線部分の面積は、図 11の 斜線部分の面積よりも大きくなるため、エネルギー吸収能力が向上していることがわ
かる。特に、本実施形態の押出発泡複合体 1では、繊維状フイラ一 9は、押出発泡複 合体 1の厚み方向に沿って 20%以上配向しているので、高いエネルギー吸収能力 を備えたものとなる。
[0164] プロピレン系榭脂押出発泡複合体 1の製造について:
本実施形態の押出発泡複合体 1は、例えば、繊維状フイラ一 9を含有した前記した プロピレン系榭脂からなる成形材料を押出発泡することにより得ることができるが、製 造装置としては、繊維状フイラ一 9とプロピレン系榭脂を含んだ成形材料を溶融状態 に加熱し、適度のせん断応力を付与しながら混練し、管状のダイ力 押出発泡するこ とができる公知の押出発泡成形装置を使用することができる。また、製造装置を構成 する押出機も、単軸押出機または二軸押出機のいずれのものも採用することができる 。このような押出発泡成形装置としては、例えば、特開 2004— 237729号に開示さ れた、 2台の押出機が接続されたタンデム型押出発泡成形装置を使用するようにして ちょい。
[0165] 第 2の押出発泡体の製造について:
本実施形態において、押出発泡複合体 1を製造するにあっては、例えば、複数の 管状ダイが集まって構成される管状ダイ集合体から多数の細条を押出発泡したり、ま た、複数個の押出孔が形成された押出用ダイから多数の細条を押出発泡させ、この 細条を長手方向に相互に融着させて多数集束してなる押出発泡細条集束体としても よい。
後者の例としては、例えば、複数個の押出孔 51, 61 (図 3参照)が形成された押出 用ダイ 5, 6から多数の細条 22, 32 (02,図 3参照)を押出発泡させ、この細条 22, 3 2を長手方向に相互に融着させて多数集束してなる押出発泡細条集束体とすること ができる。
このようにして、細条 22, 32の押出発泡体を多数集束した押出発泡細条集束体と することにより、押出発泡複合体 1の発泡倍率を高くすることができ、発泡倍率が高く 、十分な厚みを有する押出発泡複合体 1を、種々の形状で容易に成形することがで きる。
なお、このような押出発泡細条集束体の製造は、例えば、特開昭 53— 1262号公
報等によっても公知である。
[0166] 第 1の押出発泡体 2や第 2の押出発泡体 3のうち少なくとも一つを製造するにあたつ ては、成形材料として用いられるプロピレン系榭脂を押出用ダイ力も押出した後、押 出用ダイ力 押出された押出発泡体を、押出方向と略直交する方向に沿って真空吸 引するようにすれば、繊維状フイラ一 9 (図 2及び図 4では図示しない)の繊維長の方 向、すなわち、繊維状フイラ一 9の配向方向をプロピレン系榭脂押出発泡体の厚み 方向に沿った方向とすることができ、高いエネルギー吸収能力を有するプロピレン系 榭脂押出発泡複合体 1を得ることができる。
[0167] 図 13は、プロピレン系榭脂押出発泡複合体の製造に使用される押出用ダイ及び冷 却サイジングローラを示す斜視図である。図 13に示すように、押出用ダイ 5, 6の押出 孔 51、 61から押し出された細条 22, 32は、肉厚方向(押出方向と略直交する方向 のこと。図 13に示す矢印 Y方向)に真空吸引され、その後、一対の冷却サイジングロ ーラ 7で挟圧されて、冷去 Pされること〖こなる。
真空吸引は、細条 22, 32を挟んで対向配置された図示しない真空吸引装置により 行われる。
[0168] 本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、第 1実施形態の効果に加え て、下記の効果を好適に享受する。
すなわち、本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、構成する成形材 料全体に対して繊維状フイラ一 9を 0質量%を超えて 60質量%以下となるように含有 しているので、繊維状フイラ一 9は、繊維長方向がプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1の押出し方向に沿うように配置されるだけでなぐ発泡した発泡セル 21, 31の存在 により、厚み方向に沿って配置されている。これにより、プロピレン系榭脂押出発泡複 合体 1の厚み方向に少しの歪みが生じた場合でも高い応力が生じることとなり、前記 の吸音特性だけでなぐエネルギー吸収能力も備えた押出発泡複合体となる。
そして、このような第 1の押出発泡体 2と第 2の押出発泡体 3を備える本実施形態の プロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、断熱性能と吸音性能のほかエネルギー吸収 性能にも優れた押出発泡体となり、また、発泡倍率を 10倍以上とすることにより、発 泡体も軽量となり、取り扱い性も優れることとなる。
[0169] 本実施形態の押出発泡複合体 1は、このようにして断熱性能や吸音性能のほか、 高 ヽ衝撃吸収能力(エネルギー吸収能力)に優れるので、自動車分野の構造材料 ( 天井、フロア、ドアなどの内装の構成部材)や、建築'土木分野の構造材料 (建材等) 等に適用することができる。
特に、建築 ·土木分野における住宅用の構造材料にあっては、内側には吸音性能 力 外側には断熱性能が要求される場合が多いので、カゝかる構造材料に適用する場 合には、本実施形態の押出発泡複合体 1における第 1の押出発泡体 2を内側に、第 2の押出発泡体 3を外側に配するようにすれば、その効果を最大限に発揮させること ができる。また、自動車の天井、ドア等に使用される場合には、自動車の衝突時等に おける衝撃エネルギーの吸収や車外力もの音の吸収に効果を発揮する。
[0170] <第 4実施形態 >
以下、本発明の第 4実施形態におけるプロピレン系榭脂押出発泡複合体及びプロ ピレン系榭脂押出発泡複合体の製造方法について説明する。
本実施形態のプロピレン系榭脂は、基本的に前述した第 3実施形態と同じだが、第
2実施形態と同様のォレフィン系重合体を添加することにより、制振性能及びエネル ギー吸収性能に優れた押出発泡複合体としたものである。
[0171] 本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、押出発泡体を構成する成形 材料として、前述した第 3実施形態の榭脂材料に加えて、温度 298K、周波数 10Hz における損失正接 (tan δ )が 0. 04〜: LOOであるォレフィン系重合体(特定のォレフ イン系重合体)を含有して ヽる。
[0172] このような構成の本実施形態のプロピレン系榭脂押出発泡複合体 1は、発泡成形 体を構成する発泡セルの壁面に、粘性物質である当該ォレフィン系重合体が一様に 分散された状態で存在することとなるため、効率よく振動を吸収することになり、前記 した断熱性能、吸音性能及びエネルギー吸収性能に加えて、制振性能を付与した 押出発泡体を提供することができる。
[0173] <実施形態の変形 >
前記第 2実施形態では、前記第 1実施形態におけるプロピレン系榭脂からなる第 1 の押出発泡体および第 2の押出発泡体にそれぞれ温度 298K、周波数 10Hzにおけ
る損失正接 (tan δ )が 0. 04〜: LOOであるォレフィン系重合体(特定のォレフィン系 重合体)を配合した。
[0174] また、前記第 3実施形態では、前記第 1実施形態におけるプロピレン系榭脂からな る第 1の押出発泡体および第 2の押出発泡体にそれぞれ 0質量%を超え 60質量% 以下の繊維状フイラ一を配合した。
そして、これらの各配合物による効果、つまりォレフィン系重合体による制振性能あ るいは繊維状フイラ一によるエネルギー吸収性能を確保するようにした。
[0175] 前記第 4実施形態では、前記第 1実施形態におけるプロピレン系榭脂からなる第 1 の押出発泡体および第 2の押出発泡体にそれぞれ第 2実施形態と同様のォレフィン 系重合体及び第 3実施形態と同様の繊維状フイラ一を配合し、各々による制振性能 及びエネルギー吸収性能が同時に得られる構成とした。
[0176] ここで、各実施形態では、第 1の押出発泡体及び第 2の押出発泡体のそれぞれに、 同じようにォレフィン重合体あるいは繊維状フイラ一を配合したが、各々の配合比率 は変えても良い。
さらに、ォレフィン重合体あるいは繊維状フイラ一の配合は第 1の押出発泡体また は第 2の押出発泡体何れかの押出発泡体だけであってもよい。
また、第 3実施形態において、繊維状フイラ一の配合は第 1の押出発泡体または第 2の押出発泡体の 、ずれかだけであってもよ 、。
同様に、第 4実施形態においても、ォレフィン系重合体および繊維状フイラ一の配 合は第 1の押出発泡体または第 2の押出発泡体のいずれかだけであってもよい。 すなわち、第 2実施形態において、ォレフィン系重合体の配合は第 1の押出発泡体 または第 2の押出発泡体の 、ずれかだけであってもよ 、。
[0177] 更に、第 4実施形態において、例えば第 1の押出発泡体にォレフィン系重合体のみ を配合し、第 2の押出発泡体に繊維状フイラ一を配合し、全体としてォレフィン系重合 体および繊維状フイラ一が配合されることにより、各々による制振性能およびエネル ギー吸収性能が同時に得られる構成としてもよい。
[0178] 前述した第 1、第 2、第 3、第 4実施形態及び実施形態の変形では、プロピレン系榭 脂押出発泡複合体が、層状の第 1の押出発泡体 2と層状の第 2の押出発泡体 3が 1
層ずつ積層された積層体の構成からなる例を示したが、これには限定されず、例え ば、第 1の押出発泡体 2や第 2の押出発泡体 3は 2層以上の多層であってもよい。 また、押出発泡複合体に対して第 1の押出発泡体 2や第 2の押出発泡体 3がランダ ムに多数配列されているような構成を採用してもよい。すなわち、第 1の押出発泡体 2 と第 2の押出発泡体 3により一つの押出発泡複合体 1が形成されているのであれば、 その構成は任意である。
また、図 2の構成の押出発泡複合体 1を得るには、必ずしも図 3に示すような複数の 押出用ダイが必要なわけではない。例えば、図 8に示すように、押出用ダイは一つで あってもよい。ここで、押出用ダイ 90は、 2種類の押出孔として、複数の押出孔 910と 複数の押出孔 920とを備えて 、る。
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達 成できる範囲で他の構造等としてもょ 、。
実施例 1
[0179] 以下、実施例及び製造例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は 実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
なお、下記の各製造例、実施例における物性値等は、下記の方法で測定した。
[0180] (1) 1段階目のプロピレン重合体成分 (成分 1)及び二段階目のプロピレン重合体成 分 (成分 2)の質量分率:
重合時に連続的に供給されるプロピレンの流量計積算値を用いた物質収支力 求 めた。
[0181] (2)極限粘度 [ τ? ]:
135°Cのテトラリン溶媒中で測定した。なお、成分 2の極限粘度 [ 7? ]は、下記式 (V
2
)により計算した。
[0182] [数 12]
[ 2]二( [ η total] X 100 - [ 77 i] X Wl) / W2 (V)
[ r? ] :プロピレン
total 重合体全体の極限粘度 (dLZg)
[ r? ] :成分 1の極限粘度 (dLZg)
[0183] (3)メルトフローレート(MFR):
JIS K7210に準拠し、温度を 230°C、荷重を 2. 16kgfとして測定した。
[0184] (4)溶融張力:
キヤピログラフ 1C (東洋精機 (株)製)を使用し、測定温度 230°C、引き取り温度 3. lmZ分で測定した。なお、測定には、長さが 8mm、直径が 2. 095mmのオリフィス を使用した。
[0185] (5)粘弾性測定:
下記の仕様の装置で測定した。なお、貯蔵弾性率 G'は、複素弾性率の実数部分 により求めることができるものである。
装置 : RMS— 800 (レオメトリックス社製)
温度 : 190°C
歪み : 30%
周波数 : 100radZs〜0. Olrad/s
[0186] [製造例 1]
プロピレン系多段重合体の製造:
(i)予備重合触媒成分の調製:
内容積 5リットルの攪拌機付き三つ口フラスコを十分に乾燥させ、窒素ガスで置換し た後、脱水処理したヘプタンを 4リットル、ジェチルアルミニウムクロライド 140グラムを 加え、市販品の Solvay型三塩ィ匕チタン触媒 (東ソ一 ·ファインケム (株)製) 20gをカロ えた。これを攪拌しながら 20°Cに保持した状態で、プロピレンを連続的に導入した。 80分後、攪拌を停止し、三塩ィ匕チタン触媒 lgあたり 0. 8gのプロピレンが重合した予 備触媒成分を得た。
[0187] (ii)プロピレンの重合(1段階目):
内容積 10リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレープを十分乾燥させ、窒素 ガスで置換させた後、脱水処理したヘプタン 6リットルを加え、系内の窒素をプロピレ ンで置換した。その後、攪拌しながらプロピレンを導入して、系内を内温 60°C、全圧 0
. 78MPaに安定させた後、前記 (i)で得た予備重合触媒成分を固体触媒換算で 0. 75グラム含んだヘプタンスラリー 50ミリリットルを加えて重合開始とした。プロピレンを 35分間連続的に供給した場合におけるプロピレン流量積算値力も求めた重合体生 成量は 151gであり、その一部をサンプリングして分析した結果、極限粘度は 14. Id LZgであった。その後、内温を 40°C以下に降温させ、攪拌を緩め、脱圧した。
[0188] (iii)プロピレンの重合(2段階目):
脱圧後、再び内温を 60°Cとして、水素を 0. 15MPaカ卩えて攪拌しながらプロピレン を導入した。全圧 0. 78MPaでプロピレンを連続的に供給しながら、 60°Cで 2. 8時 間重合を行った。この際、重合体の一部をサンプリングして分析した結果、極限粘度 は 1. 16dL/gであった。
[0189] 重合終了後、 50ミリリットルのメタノールを添加し、降温、脱圧した。内容物を全量フ ィルター付きろ過槽へ移し、 1—ブタノールを 100ミリリットルカ卩え、 85°Cで 1時間攪拌 した後に固液分離した。更に、 85°Cのヘプタン 6リットルで固体部を 2回洗浄し、真空 乾燥してプロピレン重合体 3. 1kgを得た。
[0190] 以上の結果から、 1段階目と 2段階目の重合重量比は 12. 2/87. 8であり、 2段階 目で生成したプロピレン重合成分の極限粘度は 1. 08dLZgと求められた。
[0191] そして、得られたプロピレン系多段重合体粉末 100重量部に対して、酸化防止剤と してィルガノックス 1010 (チノく'スペシャルティ一'ケミカルズ (株)製)を 600ppm、中 和剤としてステアリン酸カルシウムを 500ppm加えて混合し、ラブプラストミル単軸押 出機 (東洋精機 (株)製、 φ 20mm)で温度を 230°Cとして溶融混練してプロピレン重 合体ペレットを調製した。
得られたプロピレン系多段重合体の物性及び榭脂特性を表 1に示す。
[0192] (プロピレン系多段重合体の物性及び榭脂特性)
[表 1]
製造例 1 一段目の 極限粘度 (dL/g) 14. 1 プロピレン重合体成分
重量分率 (質量 12. 2
二段目の 極限粘度 (dL/g) 1· 08 プロピレン重合体成分
重量分率 (貧量%) 87. 8
プロピレン重合体 棰限粘度 (dL/g) 2. 67 (ペレット状) MFR(g/10分) 3. 3
MT(g) 7. 6
粘弾性特性 G'(10)/G'(l) 2. 68
G'(0.1)/G'(0.01) 2. 96
[0193] [実施例 1]
以下、前述した本発明の第 1実施形態に基づく具体的な実験例について説明する プロピレン系榭脂押出発泡複合体 (押出発泡細条集束体)の製造: 前記した製造例 1で得たペレット状のプロピレン系多段重合体を成形材料として、 特開 2004— 237729号公報に開示されるタンデム型押出発泡成形装置 (スクリュ径 が φ 50mmの単軸押出機と、スクリュ径が φ 35単軸押出機の 2台の単軸押出機を備 える)を 2台用いて、また、 2台の装置それぞれに対して、ダイとして、多数の円形押 出孔(円管ダイ。断面積は全てほぼ同一)が集合したものを用いて、下記の方法によ り、押出発泡された細条が多数集束された板状の押出発泡細条集束体である第 1の 押出発泡体と第 2の押出発泡体が積層されたプロピレン系榭脂押出発泡複合体を 製造した。
なお、発泡は、 φ 50mm単軸押出機にて、 CO
2超臨界流体を注入することにより行 つた o
[0194] 具体的には、 φ 50mm単軸押出機により、成形材料を溶融させながら、 CO超臨 界流体を注入して、当該流体を溶融状態の成形材料中に均一になるように十分溶解
させた後、連接された φ 35mm単軸押出機から、 φ 35mm単軸押出機におけるダイ 出口の榭脂温度が 180°C (第 2の押出発泡では 185°C)となるようにして押し出し、 2 台の装置力 押し出された細条 (第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体)を積層する ことにより、押出発泡複合体を成形した。製造条件の詳細を下記に示した。
なお、 φ 35mm単軸押出機のダイ出口における榭脂温度は、例えば、熱電対温度 計により測定した値を採用すればよぐこの榭脂温度が、発泡しながら押し出された 溶融樹脂の温度と考えることができる。
なお、第 2の押出発泡体の製造にあって、この条件により、式 (I)で算出される圧力 勾配は 450MPaZm、式(II)で算出される減圧速度は 60MPaZsであった。
[0195] (製造条件:第 1の押出発泡体)
CO超臨界流体 : 7質量%
2
押出量 : 8kgZhr
1つのダイ出口の直径 : 0. 5mm
ダイ上流部榭脂圧力 : 8MPa
ダイ出口での押出温度 : 185°C
[0196] (製造条件:第 2の押出発泡体)
物質定数 M (Pa'sn) : 6000 (185°Cでの値)
物質定数 n : 0. 4
CO超臨界流体 : 7質量%
2
押出量 : 8kgZhr
ダイ出口上流部榭脂圧力 : 6MPa
ダイ出口における円管ダイ 1個あたりの流量 : lOOmmVs
1つのダイ出口の直径 : lmm
流路の断面積 : 0. 79mm2
ダイ出口での押出温度 : 185°C
[0197] そして、このようにして得られた実施例 1のプロピレン系榭脂押出発泡複合体にお ける第 1の押出発泡体及び第 2の押出発泡体の発泡倍率、平均直径、独立気泡率 を下記の条件に従って測定した。結果を表 2に示す。
[0198] (測定条件)
発泡倍率 : 得られた押出発泡体の重量を水投法を用いて求めた体積により除す ることにより密度を求め、算出した。
独立気泡率: ASTM D 2856に準拠して測定した。
平均直径: ASTM D3576— 3577に準拠して測定した。
[0199] (測定結果)
[表 2]
[0200] また、図 6は、実施例 1で得られたプロピレン系榭脂押出発泡複合体の第 1の押出 発泡体の断面の電子顕微鏡写真 (倍率 50倍)であり、また、図 7は実施例 1で得ら れたプロピレン系榭脂押出発泡体の第 2の押出発泡体の断面の電子顕微鏡写真で ある (倍率 50倍)。図 6より、実施例 1で得られたプロピレン系榭脂押出発泡体のうち 、第 1の押出発泡体には、平均直径力 00 m未満の発泡セルが無数にかつ均一 に並んでいることが確認できる。また、第 2の押出発泡体には、平均直径が 0. 005〜 5. Ommの発泡セルが無数に並んだ連続気泡構造が形成されて ヽることが確認でき る。
[0201] そして、実施例 1のプロピレン系榭脂押出発泡複合体について、常法を用いて断熱 性能及び吸音性能を評価したところ、良好な結果を得ることができた。
[0202] [実施例 2]
以下、前述した本発明の第 2実施形態に基づく具体的な実験例について説明する プロピレン系榭脂押出発泡複合体 (押出発泡細条集束体)の製造:
前記した製造例 1で得たペレット状のプロピレン系多段重合体 (b)に対して、 WO 03Z070788の実施例 1に開示される 1 ブテン系共重合体 (a)を、重量比(aZb) を 15Z85 (プロピレン系多段重合体を 85質量%、 1—ブテン系共重合体を 15質量 %)として混合して成形材料とした。 1ーブテン系共重合体物性値及び榭脂特性を表 3に示す。
なお、表 3の測定項目については、温度 298 :、周波数 10Hzにおける損失正接 (t an δ )につ 、ては、固体粘弾性測定装置(DMS 6100:セイコーインスツルメンッ( 株)製)により測定し、それ以外の項目は、 WO 03Ζ70788に記載された方法に準 拠して測定した。
( 1ーブテン系共重合体の物性値及び榭脂特性)
[表 3]
(注 1)温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan S )
(注 2) {mmmm/、mmrr+rmmr) }
'測定方法は、損失正接の測定以外は WO 03/070788の記載に準ずる。 この成形材料を、特開 2004— 237729号公報に開示されるタンデム型押出発泡 成形装置 (スクリュ径が Φ 50mmの単軸押出機と、スクリュ径が φ 35単軸押出機の 2 台の単軸押出機を備える)を 2台用いて、また、 2台の装置それぞれに対して、ダイと して、多数の円形押出孔(円管ダイ。断面積は全てほぼ同一)が集合したものを用い
て、下記の方法により、押出発泡された細条が多数集束された板状の押出発泡細条 集束体である第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体が積層されたプロピレン系榭脂 押出発泡複合体を製造した。
なお、発泡は、 φ 50mm単軸押出機にて、 CO超臨界流体を注入することにより行
2
つた o
[0205] 具体的には、 φ 50mm単軸押出機により、成形材料を溶融させながら、 CO超臨
2 界流体を注入して、当該流体を溶融状態の成形材料中に均一になるように十分溶解 させた後、連接された φ 35mm単軸押出機から、 φ 35mm単軸押出機におけるダイ 出口の榭脂温度が 180°C (第 2の押出発泡では 185°C)となるようにして押し出し、 2 台の装置力 押し出された細条 (第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体)を積層する ことにより、押出発泡複合体を成形した。製造条件の詳細を下記に示した。
なお、 φ 35mm単軸押出機のダイ出口における榭脂温度は、例えば、熱電対温度 計により測定した値を採用すればよぐこの榭脂温度が、発泡しながら押し出された 溶融樹脂の温度と考えることができる。
なお、第 2の押出発泡体の製造にあって、この条件により、式 (I)で算出される圧力 勾配は 450MPaZm、式(II)で算出される減圧速度は 60MPaZsであった。
[0206] (製造条件:第 1の押出発泡体)
CO超臨界流体 : 7質量%
2
押出量 : 8kgZhr
1つのダイ出口の直径 : 0. 5mm
ダイ上流部榭脂圧力 : 8MPa
ダイ出口での押出温度 : 185°C
[0207] (製造条件:第 2の押出発泡体)
物質定数 M (Pa' sn) : 6000 (185°Cでの値)
物質定数 n : 0. 4
CO超臨界流体 : 7質量%
2
押出量 : 8kgZhr
ダイ出口上流部榭脂圧力 : 8MPa
ダイ出口における円管ダイ 1個あたりの流量 : lOOmmVs
1つのダイ出口の直径 : 0. 8mm
流路の断面積 : 0. 5mm2
ダイ出口での押出温度 : 185°C
[0208] そして、このようにして得られた実施例 2のプロピレン系榭脂押出発泡複合体にお ける第 1の押出発泡体及び第 2の押出発泡体の発泡倍率、平均直径、独立気泡率 を下記の条件に従って測定した。結果を表 4に示す。
[0209] (測定条件)
発泡倍率 : 得られた押出発泡体の重量を水投法を用いて求めた体積により除す ることにより密度を求め、算出した。
独立気泡率: ASTM D 2856に準拠して測定した。
平均直径: ASTM D3576— 3577に準拠して測定した。
[0210] (測定結果)
[表 4]
[0211] そして、実施例 2のプロピレン系榭脂押出発泡複合体について、常法を用いて断熱 性能、吸音性能及び制振性能を評価したところ、良好な結果を得ることができた。
[0212] [実施例 3]
以下、前述した本発明の第 3実施形態に基づく具体的な実験例について説明する プロピレン系榭脂押出発泡複合体 (押出発泡細条集束体)の製造: 前記した製造例 1で得たペレット状のプロピレン系多段重合体に、下記仕様の繊維 状フイラ一を混合したものを成形材料とした。なお、この繊維状フイラ一の含有量は、 成形材料全体に対し、 10質量%とした。
[0213] (繊維状フイラ一)
材 質 ガラス繊維 (旭ファイバーグラス株式会社製 MA486A (商品名)) 平均繊維長 3mm
平均繊維径 13 111
[0214] この成形材料を、特開 2004— 237729号公報に開示されるタンデム型押出発泡 成形装置 (スクリュ径が φ 50mmの単軸押出機と、スクリュ径が φ 35単軸押出機の 2 台の単軸押出機を備える)を 2台用いて、また、 2台の装置それぞれに対して、ダイと して、多数の円形押出孔(円管ダイ。断面積は全てほぼ同一)が集合したものを用い て、下記の方法により、押出発泡された細条が多数集束された板状の押出発泡細条 集束体である第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体が積層されたプロピレン系榭脂 押出発泡複合体を製造した。
なお、発泡は、 φ 50mm単軸押出機にて、 CO超臨界流体を注入することにより行
2
つた o
[0215] 具体的には、 φ 50mm単軸押出機により、成形材料を溶融させながら、 CO超臨
2 界流体を注入して、当該流体を溶融状態の成形材料中に均一になるように十分溶解 させた後、連接された φ 35mm単軸押出機から、 φ 35mm単軸押出機におけるダイ 出口の榭脂温度が 180°C (第 2の押出発泡では 185°C)となるようにして押し出し、 2 台の装置力 押し出された細条 (第 1の押出発泡体と第 2の押出発泡体)を積層する ことにより、押出発泡複合体を成形した。製造条件の詳細を下記に示した。
なお、 φ 35mm単軸押出機のダイ出口における榭脂温度は、例えば、熱電対温度 計により測定した値を採用すればよぐこの榭脂温度が、発泡しながら押し出された 溶融樹脂の温度と考えることができる。
なお、第 2の押出発泡体の製造にあって、この条件により、式 (I)で算出される圧力 勾配は 450MPaZm、式(II)で算出される減圧速度は 60MPaZsであった。
[0216] (製造条件:第 1の押出発泡体)
CO超臨界流体 : 7質量%
2
押出量 : 8kgZhr
1つのダイ出口の直径 : 0. 5mm
ダイ上流部榭脂圧力 : 8MPa
ダイ出口での押出温度 : 185°C
[0217] (製造条件:第 2の押出発泡体)
物質定数 M (Pa' sn) : 6000 (185°Cでの値)
物質定数 n : 0. 4
CO超臨界流体 : 7質量%
2
押出量 : 8kg/hr
ダイ出口上流部榭脂圧力 : 8MPa
ダイ出口における円管ダイ 1個あたりの流量 : 100mm3Zs
1つのダイ出口の直径 : 0. 8mm
流路の断面積 : 0. 5mm2
ダイ出口での押出温度 : 185°C
[0218] そして、このようにして得られた実施例 3のプロピレン系樹脂押出発泡複合体にお ける第 1の押出発泡体及び第 2の押出発泡体の発泡倍率、平均直径、独立気泡率 を下記の条件に従って測定した。結果を表 5に示す。
[0219] (測定条件)
発泡倍率 : 得られた押出発泡体の重量を水投法を用いて求めた体積により除す ることにより密度を求め、算出した。
独立気泡率: ASTM D 2856に準拠して測定した。
平均直径: ASTM D3576— 3577に準拠して測定した。
[0220] (測定結果)
[表 5] 第 1の押出発泡体 第 2の押出発泡体
発泡倍率 (倍) 25 21
独立気泡率 (%) 45 8
発泡セルの平均直径 ( μ m) 200 300
[0221] また、実施例 3で得られたプロピレン系榭脂押出発泡体のエネルギー吸収能力及 び繊維状フイラ一の配向方向を下記の条件により測定した。
[0222] (エネルギー吸収能力の測定)
圧縮試験機 ( (株)ボールドウィン製 TENSILONZCTM—I— 5000 (商品名)) を用い、 300Kにて、圧縮歪速度 1. 0 X 10_2ZSの条件で圧縮試験を行なった。
[0223] (繊維状フイラ一の配向方向の測定)
厚み方向に垂直な方向にプロピレン系榭脂押出発泡複合体を切断し、プロピレン 系榭脂押出発泡複合体の断面における楕円形状の繊維切断面の長径と短径から配 向角を評価した。この廃向角が 45° 以下である場合にはプロピレン系榭脂押出発泡 複合体の厚み方向に配向して 、るとみなし、プロピレン系榭脂押出発泡複合体の断 面における繊維数の合計に対して、厚み方向に配向している繊維の数の割合を評 価し 7こ。
[0224] 実施例 3で得られたプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、第 1の押出発泡体、第 2 の押出発泡体ともに、繊維状フイラ一の総本数の 25%がプロピレン系榭脂押出発泡 体の厚み方向に沿って配置して 、ることが確認できた。
さらに、エネルギー吸収能力を測定した結果、非常に高い結果であり、実施例 3で 得られたプロピレン系榭脂押出発泡複合体では、小さな歪みでも大きな応力が生じ、 エネルギー吸収能力に優れて 、ることが確認された。
[0225] また、繊維状フイラ一添カ卩によるエネルギー吸収性能向上の効果を調べるため、前 記した製造例 1に示すプロピレン系多段重合体に繊維状フイラ一 (塩基性硫酸マグ ネシゥムゥイスカー)を 10質量%添加し、発泡体の圧縮歪と発生応力の関係を評価し た。
その結果、圧縮歪が 25%のときの発生応力は下記表 6の通りとなり、繊維状フイラ 一添カ卩によりエネルギー吸収性能を向上させることができることを確認した。
[0226] [表 6]
発泡倍率 (倍) 2 5 %歪 発生応力 (P a) プロピレン系樹脂
押出発泡複合体
2 9 . 8 5 8 0 0 0
繊維状フイラ一
無添加
プロピレン系樹脂
押出発泡複合体
3 3 . 5 7 9 0 0 0
繊維状フイラ一
1 0質量%添加
[0227] そして、実施例 3のプロピレン系榭脂押出発泡複合体について、常法を用いて断熱 性能及び吸音性能を評価したところ、良好な結果を得ることができた。
以上より、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体が優れた断熱性能、吸音性 能及びエネルギー吸収性能を備えていることが確認できた。
[0228] [実施例 4]
以下、前述した本発明の第 4実施形態に基づく具体的な実験例について説明する プロピレン系多段重合体 (b)を含む実施例 3の成形材料に WO03Z070788の実 施例 1に開示される 1—ブテン系共重合体をカ卩えた。 WO 03Z070788の実施例 1 に開示される 1—ブテン系共重合体 (a)を、重量比(aZb)を 15Z85 (プロピレン系 多段重合体を 85質量%、 1ーブテン系共重合体を 15質量%)として混合して成形材 料とした。 1ーブテン系共重合体物性値及び榭脂特性を表 7に示す。
なお、表 7の測定項目については、温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (t an δ )につ!/、ては、固体粘弾性測定装置(DMS 6100:セイコーインスッノレメンッ( 株)製)により測定し、それ以外の項目は、 WO 03Ζ70788に記載された方法に準 拠して測定した。他の条件は、実施例 3と同じである。
[0229] (1ーブテン系共重合体の物性値及び榭脂特性)
[表 7]
項目 単位 測定結果
損失正接 (tan S ) (注 1) 1. 0
メソへ "ンタツト'^ · ( ιπιπιπι) モル% 71. 2
立体規則性指数 (注 2) 8
極限粘度 [ 7] ] dh/g 0. 4
重量平均分子量 (Mw) 8 X 104 分子量分布 (Mw/Mn) 2. 0
融点 (Tm— D) 67
融解吸熱量(Δ Η) J/g 38
引張弾性率 MPa 270
(注 1)温度 298K、周波数 10Hzにおける損失正接 (tan S )
(注 2) { mmmm/ (mmrr + rmmr) }
'測定方法は、損失正接の測定以外は WO 03/070788の記載に準ずる。
[0230] このようにして得られたプロピレン系榭脂押出発泡複合体の第 1の押出発泡体及び 第 2の押出発泡体の発泡倍率、平均セル径、独立気泡率を実施例 3と同様の条件に 従って測定した。結果を表 8に示す。
[0231] (測定結果)
[表 8]
[0232] 前記した実施例 3の評価と同様の方法で繊維状フイラ一の配向、エネルギー吸収
能力の測定を行ったところ、第 1の押出発泡体、第 2の押出発泡体ともに、繊維状フィ ラーの総本数の 24%がプロピレン系榭脂押出発泡体の厚み方向に沿って配置して いることが確認でき、また。このプロピレン系榭脂押出発泡体のエネルギー吸収能力 は、非常に高いものであった。
[0233] そして、実施例 4のプロピレン系榭脂押出発泡複合体について、常法を用いて断熱 性能吸音性能、及び制振性能を評価したところ、良好な結果を得ることができた。 以上より、本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体が優れた断熱性能、吸音性 能、制振性能及びエネルギー吸収性能を兼ね備えて ヽることが確認できた。
産業上の利用可能性
[0234] 本発明のプロピレン系榭脂押出発泡複合体は、断熱性能、吸音性能のほか制振 性能及びエネルギー吸収性能に優れるので、例えば、建築や土木分野、自動車分 野において吸音性能を必要とされる構造材料 (例えば、建材や、自動車の天井、フロ ァ、ドアなどの内装の構成部材)について有利に使用することができる。