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JP2010029219A - 動物モデルの開発のための方法 - Google Patents

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JP2010029219A
JP2010029219A JP2009259353A JP2009259353A JP2010029219A JP 2010029219 A JP2010029219 A JP 2010029219A JP 2009259353 A JP2009259353 A JP 2009259353A JP 2009259353 A JP2009259353 A JP 2009259353A JP 2010029219 A JP2010029219 A JP 2010029219A
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animal
mouse
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Tatsuji Nomura
達次 野村
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Center For Advancement Of Health & Biosciences
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Abstract

【課題】ヒト疾患モデルとしての変異動物(遺伝子組換え動物および偶発変異を有する動物を含む)の開発のための方法、生物医学研究においておよびヒト治療薬の開発において有用な生存アッセイシステムとして役立ち得る動物モデルの開発のための統合技術(綿密な仕様および質制御を含む)を提供すること。
【解決手段】変異動物系を確立する方法であって、(a)性的に未熟な変異創始動物(G0)において過排卵を誘発させる工程;(b)この過排卵する性的に未熟な変異創始動物を受精させる工程;(c)妊娠期の完了時に第一世代変異動物(F1)を分娩させる工程;(d)この第一世代変異動物において、この変異の安定性、遺伝子型、および遺伝的バックグラウンドの同一性を確認する工程;および、必要に応じて、(e)1以上のさらなる世代の変異動物を用いて工程(a)から工程(d)を反復する工程、を包含する方法。
【選択図】なし

Description

(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、ヒト疾患モデルとしての変異動物(遺伝子組換え動物および偶発変異を有する動物を含む)の開発のための方法に関する。特に、本発明は、生物医学研究およびヒト治療薬の開発において有用な生存アッセイシステムとして役立ち得る動物モデルの開発のための統合技術(綿密な仕様および質制御を含む)を提供する。
(関連技術の説明)
変異動物(遺伝子組換え動物(例えば、トランスジェニックマウス)、および偶発変異を有する動物を含む)がまず、分子生物学の分野において動物モデルとして役立った。近年では、このような動物の使用は、生命科学の他の多くの部門(疾患関連遺伝子の同定および研究、およびこのような遺伝子を標的とする薬物開発を含む)にまで拡張されている。
過去20年間において、10,000種より多くの遺伝子操作動物(例えば、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウス、およびノックインマウス)が作出され、バイオサイエンスの基礎研究の研究者によって広範に使用されてきたが、遺伝子組換え動物の圧倒的多数は、研究ツールおよび薬物開発のツールとしては重大な欠陥を有する。ほとんどの場合、遺伝子組換え動物の製造者は、これら動物を、綿密で厳密な信頼性のある検証プロセスに供することができず、結果として、これら動物が遺伝的局面および微生物学的局面の両方において同一であることを確実にすることができない。これは、トランスジェニック動物の遺伝的バックグラウンドが、環境的要因へのそれら動物の曝露における差異とともに、インビボでの動物の挙動に対して大きな影響を有するので、重大な問題である。あらゆる遺伝または環境の単一の差異が、遺伝子組換え動物の特徴全体において劇的な差異を生じる。さらに、代表的に、当業者の知識に基づく遺伝子制御および微生物制御の選択および決定は、対象ヒト疾患について知識を有する当業者によって実施されるわけではないので、信頼性のある疾患モデルとしての遺伝子組換え動物の有用性は制限される。
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、変異動物系を確立する方法に関し、この方法は、以下の工程:
(a)性的に未熟な変異創始動物(G0)において過排卵を誘発させる工程;
(b)上記過排卵する性的に未熟な変異創始動物を受精させる工程;
(c)妊娠期の完了時に第一世代変異動物(F1)を分娩させる工程;
(d)上記第一世代変異動物において、上記変異の安定性、遺伝子型、および遺伝的バックグラウンドの同一性を確認する工程;および、必要に応じて、
(e)工程(a)から工程(d)を、1以上のさらなる世代の変異動物を用いて反復する工程
を包含し、ここで各工程において、遺伝的要因および環境的要因がモニタリングされ、全ての動物に対して厳密に同一であるように保たれる。
1つの実施形態では、受精は、自然交配によって実施される。
別の実施形態では、受精が、
(b.1)上記の過排卵する成熟前(premature)変異創始動物から得られる卵母細胞をインビトロ受精に供する工程;
(b.2)上記受精した卵母細胞を初期胚期までインビトロで培養する工程;および
(b.3)上記胚をレシピエント動物に導入する工程
によって実施される。
好ましい実施形態では、上記工程(b.2)において、受精した卵母細胞は、二細胞胚期にまで培養される。初期胚は、レシピエンド動物への導入まで、代表的には液体窒素温度で、胚バンクに貯蔵され得る。
本発明は、いかなる特定の変異動物にも限定されず、詳細には、全ての非ヒト変異哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、モルモット、および実験室実験で代表的に使用される他の動物を含む)を包含するが、これらに限定されない。好ましい変異動物は、変異マウス(トランスジェニックマウス、ノックインマウス、ノックアウトマウス、および偶発変異マウスを含む)である。好ましい実施形態では、変異動物は、トランスジェニックマウスである。
代表的(しかし、限定的ではない)なプロトコルにおいて、創始動物は、過排卵を成し遂げる時点で3〜4週齢である。過排卵は、任意の従来方法(例えば、妊馬血清ゴナドトロピン(PMSG)およびヒト血清およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の使用を含む)によって誘発され得る。
好ましい実施形態では、上述の方法の工程(d)において、遺伝子型は、以下:
(d1)トランスジェニック動物および対応する非トランスジェニック動物から単離されたゲノムDNAに対して、以下のPCRプライマー:
(i)5’トランスジーン/ゲノム連結部の検証のための、染色体特異的プライマーおよびトランスジーン特異的プライマーであって、上記、染色体特異的プライマーおよびトランスジーン特異的プライマーは、それぞれ5’トランスジーン/ゲノム連結部近傍の上記染色体および上記トランスジーンに対して、互いに対向する方向で結合する、プライマー;および
(ii)トランスジーン/トランスジーン連結部の検証のための、2つのトランスジーン特異的プライマーであって、上記2つのトランスジーン特異的プライマーは、5’末端近傍の上記トランスジーンのセグメントに対して、反対方向で結合する、プライマー
を用いてPCR反応を行う工程、
(d2)大きさによって上記増幅されたPCR産物を選別する工程、ならびに
(d3)組み込まれたトランスジーンのコピー数を示す上記増幅されたPCR産物の大きさに基づいて遺伝子型を決定する工程、
によって決定される。
この方法は、工程(d1)において、3’トランスジーン/ゲノム連結部の検証のための、トランスジーン特異的プライマーおよび染色体特異的プライマーの使用をさらに包含し得、上記トランスジーン特異的プライマーおよび染色体特異的プライマーは、3’トランスジーン/ゲノム連結部の近傍のトランスジーンおよびゲノムに対して、互いに対向する方向で結合する。
別の実施形態では、この方法は、工程(d1)において、プレ組み込み部位(pre−integration site)の検証のための、2つの染色体特異的プライマーの使用をさらに包含し得、上記2つの染色体特異的プライマーは、染色体/トランスジーン連結部に対して近傍の染色体に対して、互いに対向する方向で結合する。
代表的なプロトコルにおいて、変異(例えば、トランスジェニック)動物の各々の世代は、定期遺伝的モニタリングおよびスポットチェック(spot check)に供される。好ましくは、遺伝的モニタリングは、遺伝的バックグラウンドにおける1つ以上の遺伝子のモニタリングを包含する。
好ましくは、変異動物の各々の世代は、環境的要因の定期モニタリングおよびスポットチェックに供せられ、ここで、この環境的要因は、発生上かつ近接する環境の要因を包含する。最も好ましくは、創始動物と同じ遺伝子型、表現型、および演出型(dramatype)を有する動物のみが、変異(例えば、トランスジェニック)動物のさらなる世代の生産に含められる。
別の局面では、本発明は、上述の方法によって生産された変異動物に関する。この変異動物は、例えば、トランスジェニックマウス(例えば、ヒトc−Ha−rasトランスジーンを有するTg−rasH2マウス、またはヒトポリオウイルスレセプター(PVR)遺伝子を有するTgPVR21マウス)であり得る。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
変異動物系を確立する方法であって、以下の工程:
(a)性的に未熟な変異創始動物(G0)において過排卵を誘発させる工程;
(b)当該過排卵する性的に未熟な変異創始動物を受精させる工程;
(c)妊娠期の完了時に第一世代変異動物(F1)を分娩させる工程;
(d)当該第一世代変異動物において、当該変異の安定性、遺伝子型、および遺伝的バックグラウンドの同一性を確認する工程;および、必要に応じて、
(e)1以上のさらなる世代の変異動物を用いて工程(a)から工程(d)を反復する工程
を包含し、ここで各工程において、遺伝的要因および環境的要因がモニタリングされ、全ての動物に対して厳密に同一であるように保たれる、方法。
・(項目2)
受精が、自然交配によって実施される、項目1に記載の方法。
・(項目3)
項目1に記載の方法であって、受精が、
(b.1)上記過排卵する成熟前変異創始動物から得られる卵母細胞をインビトロ受精に供する工程;
(b.2)当該受精した卵母細胞を初期胚期までインビトロで培養する工程、および
(b.3)当該胚をレシピエント動物に導入する工程
によって実施される、方法。
・(項目4)
工程(b.2)において、上記受精した卵母細胞が、二細胞胚期にまで培養される、項目3に記載の方法。
・(項目5)
上記初期胚が、レシピエント動物への導入まで、胚バンクに貯蔵される、項目3に記載の方法。
・(項目6)
上記初期胚が、液体窒素温度で貯蔵される、項目5に記載の方法。
・(項目7)
上記変異動物が、トランスジェニック動物である、項目1に記載の方法。
・(項目8)
上記トランスジェニック動物が、マウスである、項目7に記載の方法。
・(項目9)
上記トランスジェニック創始動物が、過排卵を成し遂げる時点で3〜4週齢である、項目8に記載の方法。
・(項目10)
上記トランスジェニック創始動物が、過排卵を成し遂げる時点で4週齢である、項目8に記載の方法。
・(項目11)
過排卵が、妊馬血清ゴナドトロピン(PMSG)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)によって誘発される、項目8に記載の方法。
・(項目12)
項目7に記載の方法であって、工程(d)において、遺伝子型が、以下:
(d1)トランスジェニック動物および対応する非トランスジェニック動物から単離されたゲノムDNAに対して、以下のPCRプライマー:
(i)5’トランスジーン/ゲノム連結部の確認のための、染色体特異的プライマーおよびトランスジーン特異的プライマーであって、当該染色体特異的プライマーおよびトランスジーン特異的プライマーは、それぞれ5’トランスジーン/ゲノム連結部近傍の当該染色体および当該トランスジーンに対して、互いに対向する方向で結合する、プライマー;お
よび
(ii)トランスジーン/トランスジーン連結部の確認のための、2つのトランスジーン特異的プライマーであって、当該2つのトランスジーン特異的プライマーは、5’末端近傍の当該トランスジーンのセグメントに対して、反対方向で結合する、プライマー
を用いてPCR反応を行う工程、
(d2)大きさまたはシグナルの分別によって当該増幅されたPCR産物を分離する工程、ならびに
(d3)組み込まれたトランスジーンのコピー数を示す当該増幅されたPCR産物の大きさまたはシグナルパターンに基づいて遺伝子型を決定する工程、
によって決定される、方法。
・(項目13)
項目12に記載の方法であって、工程(d1)において、3’トランスジーン/ゲノム連結部の確認のための、トランスジーン特異的プライマーおよび染色体特異的プライマーの使用をさらに包含し、当該トランスジーン特異的プライマーおよび染色体特異的プライマーは、3’トランスジーン/ゲノム連結部の近傍のトランスジーンおよびゲノムに対して、互いに対向する方向で結合する、方法。
・(項目14)
項目13に記載の方法であって、工程(d1)において、プレ組み込み部位の確認のための、2つの染色体特異的プライマーの使用をさらに包含し、当該2つの染色体特異的プライマーは、染色体/トランスジーン連結部に対して近傍の染色体に対して、互いに対向する方向で結合する、方法。
・(項目15)
上記大きさまたはシグナルパターンが、サザンブロットによって決定される、項目12に記載の方法。
・(項目16)
上記変異動物の各々の世代が、定期遺伝的モニタリングおよびスポットチェックに供される、項目1に記載の方法。
・(項目17)
遺伝的モニタリングが、上記遺伝的バックグラウンドにおける1つ以上の遺伝子のモニタリングを包含する、項目16に記載の方法。
・(項目18)
遺伝的モニタリングが、各世代における上記変異動物の遺伝的バックグラウンドが上記創始動物の遺伝的バックグラウンドと同一であることを確実にすることを包含する、項目17に記載の方法。
・(項目19)
上記変異動物の各世代が、環境的要因の定期モニタリングおよびスポットチェックに供せられる、項目1に記載の方法。
・(項目20)
上記環境的要因が、発生上かつ近接する環境の要因を包含する、項目19に記載の方法。
・(項目21)
上記創始動物と同じ遺伝子型、表現型、および演出型を有する動物のみが、変異動物のさらなる世代の生産に含められる、項目11に記載の方法。
・(項目22)
上記F1変異動物のバックグラウンド系統が、標的疾患に対する感受性および当該系統の生殖指標に基づいて選択される、項目1に記載の方法。
・(項目23)
上記遺伝的バックグラウンドが、広範な遺伝的多様性を達成するために広げられる、項目22に記載の方法。
・(項目24)
標的疾患のモデリングにおける上記選択されたバックグラウンド系統の有用性が、最終選択の前に検証される、項目22に記載の方法。
・(項目25)
項目1に記載の方法によって生産された変異動物。
・(項目26)
項目1に記載の方法によって生産されたトランスジェニック動物。
・(項目27)
項目12に記載の方法によって生産されたトランスジェニック動物。
・(項目28)
マウスである、項目27に記載のトランスジェニック動物。
・(項目29)
Tg−rasH2マウスである項目28に記載のトランスジェニックマウスであって、ヒトc−Ha−rasトランスジーンを保有する、トランスジェニックマウス。
・(項目30)
毒性試験および発癌性試験について検証されている、項目29に記載のトランスジェニックマウス。
・(項目31)
TgPVR21マウスである項目28に記載のトランスジェニックマウスであって、ヒトポリオウイルスレセプター(PVR)遺伝子を保有する、トランスジェニックマウス。
・(項目32)
項目31に記載のトランスジェニックマウスであって、3型または2型の経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の神経毒性の評価について検証されている、トランスジェニックマウス。
図1は、動物実験の結果に影響する主要因子の模式図である。 図2は、本発明に従う遺伝的要因および環境的要因の制御を説明する。 図3は、本発明の動物実験システムを開発する際の質保証試験の一部として制御される要因を示す。 図4は、本発明の「超速」コンジェニック法の模式図である。 図5は、目的に依存した2つのタイプの遺伝学的質試験を説明する。 図6は、二重(duplex)PCRによるトランスジェニック動物の遺伝子型決定を説明する。 図7は、FISH法によって決定される、N15およびN20のTg−rasH2マウスにおける組み込まれたトランスジーンの染色体局在を示す。両方の場合とも、このトランスジーン位置を表す対になった蛍光シグナルが、染色体15E3領域上で観察された。Tg−rasH2マウスはヘミ接合体であり、そのため、このハイブリダイゼーションシグナルは、一対の姉妹染色分体でのみ検出された。 図8は、Tg−rasH2マウスにおけるトランスジーン組み込みのサザンブロット分析の結果を示す。(A)Tg−rasH2マウスにおけるトランスジーンの制限マップおよび構造(ヒトc−Ha−ras遺伝子の7.0kb BamHIフラグメント)。白のボックス部は、ヒトc−Ha−rasタンパク質をコードする4つのエキソンを表す(Ex1〜Ex4)。XbaIから上流の領域を認識するDIG標識5’−プローブを白丸および棒線で示した。(B)非トランスジェニックマウス、およびN15およびN20のTg−rasH2マウス由来のゲノムDNAをBamHI消化し、0.6%アガロースゲル上で電気泳動し、そしてナイロン膜に転写した。この膜をDIG標識ランダムプライムプローブとハイブリダイズさせた。DNAサンプルを、非トランスジェニックマウス(レーン1)、Tg−rasH2マウス(N15)(レーン2およびレーン3)、およびTg−rasH2マウス(N20)(レーン4およびレーン5)から得た。(C)N20のTg−rasH2マウス由来のゲノムDNAは制限エンドヌクレアーゼ消化し(レーン1;BamHI、2;HpaI、3;XhoI、4;XbaI、5;NcoI、6;BglII、7;SacI、8;HindIII)、0.6%アガロースゲル上で電気泳動し、そしてナイロン膜に転写した。この膜をDIG標識5’−プローブとハイブリダイズさせた。シグナルを、X線フィルム上で化学発光アルカリホスファターゼ基質を用いて検出した。 図9は、Tg−rasH2マウス発現における組み込みについてのノーザンブロット分析の結果を示す。N15およびN20のTg−rasH2マウスにおけるヒトc−Ha−ras mRNAの発現。10μgの全RNAサンプル(B、L、およびFはそれぞれ、脳、肺、および噴門洞を示す)をホルマリン−アガロースゲル上に分画し、ナイロン膜に転写した。この膜を[α−32P]−dCTP標識ヒトc−Ha−ras遺伝子(c−Ha−ras)プローブとハイブリダイズさせ、次いで[α−32P]−dCTP標識ヒトグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼcDNA(GAPDH)プローブと再ハイブリダイズさせた。nTgおよびTgはそれぞれ、非トランスジェニックマウスおよびTg−rasH2マウスから得たサンプルを示す。シグナルをX線フィルム上で検出した。 図10は、Tg−rasH2マウスにおける組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子の正確なコピー数の決定のためのサザンブロットハイブリダイゼーションの結果を示す。N20のTg−rasH2マウス由来のゲノムDNAを、BamHI(レーン1)およびHindIII(レーン2)で完全消化した。HindIII消化ゲノムDNAを、種々の濃度のBamHIでさらに消化した(レーン3〜5)。次いで、この消化されたDNAを、0.4%アガロースゲル上で電気泳動し、ナイロン膜に転写した。この膜をDIG標識ランダムプライムプローブとハイブリダイズさせた。シグナルを、化学発光アルカリホスファターゼ基質を用いてX線フィルム上で検出した。レーンは、M,Expand TM DNA分子量マーカー(Roche Diagnostics GmbH)でマークした。 図11は、ゲノム/トランスジーン連結部のPCR検証の結果を説明する。(A)Tg−rasH2(T)マウスおよび非トランスジェニック(N)マウス由来のゲノムDNAに対して、以下のプライマーセットを用いて、PCRを実施した:5’トランスジーン/ゲノム連結部の検証のため;染色体特異的プライマーAおよびトランスジーン特異的プライマーC、3’トランスジーン/ゲノム連結部の検証のため;トランスジーン特異的プライマーDおよび染色体特異的プライマーB、プレ組み込み部位の同定のため;染色体特異的プライマーAおよび染色体特異的プライマーB、ならびにトランスジーン/トランスジーン連結部の検証のため;トランスジーン特異的プライマーCおよびトランスジーン特異的プライマーD。(B)DプライマーおよびCプライマーを用いて作製されたPCR産物を制限エンドヌクレアーゼBamHIで消化し、トランスジーン/トランスジーン連結部の完全性を確認した。100bp DNAラダーをDNAサイズマーカーとして使用した。(C)マウスゲノム中の中断された遺伝子座での3つのトランスジーン。ヒトc−Ha−rasトランスジーンは、ヘッド−テイルの並びで存在する(塗りつぶしボックス部はエキソンを示す)。矢印は、使用したオリゴヌクレオチドの位置および方向の両方を示し、矢印の先端は、オリゴヌクレオチドの3’末端を表す。 図12は、Tg−rasH2マウスにおけるゲノム/トランスジーンの配列分析の結果を示す。非トランスジェニックマウスDNAおよび注入されたDNAの対応する領域もまた、比較のために示す。アスタリスクは、同一のヌクレオチドを示し、囲まれた領域は、組換え部位でのヌクレオチドとの同一性を示す。水平方向の矢印は、トポイソメラーゼIコンセンサス配列(5’−A/T−G/C−T/A−T−3’)を表す。 図13は、微生物制御および計画生産に関して胚バンク施設を説明する。 図14は、代替的微生物制御法の模式図である。 図15は、本発明の計画生産および供給システムの模式図である。 図16は、TgPVR21マウスにおける組み込まれたPVRトランスジーンのFISH分析および染色体局在の結果を示す。 図17は、TgPVR21マウスにおけるPVRトランスジーンのサザンブロット分析の結果を示す。 図18は、TgPVR21マウスにおけるPVR mRNAの遺伝子発現プロフィールを決定するための、ノーザンブロット、RT−PCR、および直接配列決定分析の結果を示す。 図19は、PVR−α mRNA、PVR−β mRNA、およびPVR−γ mRNAの構造、ならびにプローブ、プライマー、および配列決定の部位を示す。 図20は、TgPVR21トランスジェニックマウスにおける5’ゲノム/トランスジーン連結部の構造を示す。 図21は、TgPVR21トランスジェニックマウスにおける5’ゲノム/トランスジーン連結部の制限マップを示す。 図22は、TgPVR21トランスジェニックマウスにおける5’ゲノム/トランスジーン連結部の配列決定の結果を示す。 図23は、Clone No.2833685に対するTgPVR21マウスにおけるトランスジーン/マウスゲノム連結領域の上流部位の構造の決定を説明する。 図24は、本発明の生産および検証システムの模式図である。 図25は、N−メチル−N−ニトロソ尿素(MNU)陽性コントロールについての腫瘍発生率を示す;噴門洞乳頭腫(単回腹腔内(i.p.)/75mg/kg)。 図26は、MNU陽性コントロールについての腫瘍発生率を示す;悪性リンパ腫(単回腹腔内(i.p.)/75mg/kg)。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(A.定義)
用語「変異」動物は、最も広範な意味において使用され、詳細には、遺伝子組換え(遺伝子操作)動物(例えば、トランスジェニック動物、ノックアウト動物、およびノックイン動物)、偶発変異を有する動物、および1つ以上の遺伝子において人工的変異誘発によって生成された変異を有する動物を包含する。
用語「遺伝子組換え(genetically engineered)」および「遺伝子操作(gene manipulated)」は、互換可能に使用され、トランスジェニック動物、ノックイン動物、およびノックアウト動物をいう。
本明細書中で使用される用語「卵」は、哺乳動物卵に関して使用される場合、透明帯に取り囲まれた卵母細胞およびそれらの付随したプロテオグリカンを伴う一塊の卵丘細胞(卵胞細胞)を意味する。用語「卵」は、卵巣中で卵胞腔から回収された卵(これらの卵は、成熟前卵母細胞を含む)ならびに卵胞腔から放出された卵(破裂した卵胞)に関して使用される。
本明細書中で使用される用語「卵母細胞」は、雌性生殖細胞をいい、一次卵母細胞、二次卵母細胞、および成熟した未受精の卵子を包含する。卵母細胞は、卵質に囲まれた大きな核(すなわち、卵核胞)を有する大きな細胞である。卵質は、非核細胞質内容物(mRNA、リボソーム、ミトコンドリア、卵黄タンパク質などを含む)を含有する。卵母細胞の膜は、本明細書中において、「形質膜」と呼ぶ。
用語「ヘミ接合体」は、トランスジェニック動物に関して、トランスジェニック動物が野生型遺伝子の一倍体とトランスジーンの一倍体(または1コピーより多くのトランスジーンが組み込まれた場合、それらトランスジーンのセットの一倍体)とを有することを意味する。
用語「ゴノソム」は、性染色体をいうために使用される。哺乳動物においては、X染色体およびY染色体が、個体の性別を決定する。雌は、2つのX染色体を有するが、雄は、1つのX染色体と1つのY染色体を有する。
本明細書中で遺伝子改変(例えば、トランスジェニック)動物に関して使用される用語
「ヘミ接合性」とは、言及される遺伝子(例えば、トランスジーン)に対してヘミ接合体であることに適用される。
用語「ホモ接合体」は、所与の遺伝子についての2つの対立遺伝子が同一である二倍体遺伝子型をいう。トランスジェニック動物に関して、この用語は、動物がトランスジーンの二倍体(または1コピーより多くのトランスジーンが組み込まれた場合、それらトランスジーンのセットの二倍体)を有することを意味する。
用語「ヘテロ接合体」は、所与の遺伝子についての2つの対立遺伝子が異なる二倍体遺伝子型をいう。
用語「トランスジェニック動物」は、ヒトが介入した組換えDNAの導入によって改変された動物をいうために使用される。これは、遺伝可能な生殖細胞系DNA変化を伴う動物、および遺伝可能でない体細胞性変化を伴う動物を含む。用語「トランスジーン」は、(1)体細胞に導入されているか、または(2)その動物宿主系統の生殖系列に安定に組み込まれるかのいずれかで、続く世代に伝達可能であるかある核酸(DNA)をいう。
用語「遺伝子型」とは、全ての生存生物が有する「内在的にコードされた遺伝可能な情報」をいう。この貯蔵された情報は、生存生物を作り上げて維持するための「青写真(blueprint)」または一連の指示として使用される。これらの指示は、ほとんど全ての細胞内で見出され(「内在」部)、コード化された言語(遺伝コード)で表され、細胞分裂または生殖の時点で複製され、ある世代から次の世代に伝達される(「遺伝性」)。これらの指示は、細胞または生物の寿命のあらゆる局面と深く関わりあう。「遺伝子型」は、タンパク質高分子の形成から代謝および合成の調節までの全てを制御する。
用語「表現型」は、生物の「外面上の身体的発現」をいう。これらは、身体部分(原子、分子、高分子、細胞、構造物、代謝物、エネルギー利用、組織、器官、反射、および挙動の合計);生存生物の目に見える構造、機能、または挙動の一部であるあらゆるものである。
用語「演出型(dramatype)」は、実験動物の単一の生理学的応答における振る舞いのパターンをいう。このような応答におけるバリエーションは、以下の2つの要因の共同産物である:表現型自体、および動物が試験される近接環境条件(例えば、温度、湿度、食餌、研究者、および動物の世人など)。均一な演出型のために、動物が試験される環境条件は厳密に制御されなければならない。
用語「コンジェニック動物(congenic animal)」は、ドナー系統からの特定のマーカーについて選択して、近交系(バックグラウンド)系統に対する反復戻し交雑によって生産された動物系統をいう。
用語「雑種動物」は、2つの近交系系統の子孫である動物(例えば、マウスまたはラット)であって、同じ方向に交雑され、遺伝的に同一であり、そして両親の大文字省略形(母方系統が最初に示される)およびその後に続くF1を用いて称され得る動物をいう。
用語「定期モニタリング(scheduled monitoring)」は、上述の動物の遺伝学的および微生物学的な質が時間を通して安定であることを保証にするために、定期的に、かつ標準方法によって実施される検査をいう。これは、規定のマウスと対応する近交系系統との遺伝的プロフィールおよび微生物学的プロフィールを比較することによってなされる。この定期モニタリングによって、動物の健常性の維持の情報に加え、特定の質の維持に関する情報もまた付与される。構想的に、実験動物は、「生存測定ツール
」として見られ得る。それらは、物理化学的測定において使用されるツールとは反対に、日毎に変化するという点で独特である。従って、実験動物の質をモニタリングすることは、それらの意図される用途にとって必須である。ペットまたは家畜動物に関しては、この必要性は存在しない。
用語「スポットチェック(spot checking)」は、動物が感染または遺伝的汚染を受けているか否かを決定するために不定期の間隔で実施される、不定期な動物検査をいう。
用語「二層モニタリング」は、定期モニタリングとスポットチェックとを組み合わせたモニタリングシステムをいう。
用語「ノトバイオート」は、無菌的外科手順によって得られたか、または卵の滅菌孵化から得られた動物系統であって、隔離装置条件下で無菌的技術を用いて飼育管理され、かつ付随した動物相および植物相(存在する場合)の組成が、認可されている現行の方法によって十分に規定される、動物系統、をいうために使用される。
(B.詳細な説明)
本発明は、生物医学研究および薬物開発における信頼性のあるツールとして使用され得る変異体(例えば、遺伝子組換え動物または偶発変異を有する動物)の設計および開発のための、統合的な生産および供給システムに関する。上述したように、そのような変異実験動物が、それらの特性の全てにおいて完全に同一であることが不可避である。なぜなら、種々の遺伝的要因および/または環境的要因における最もわずかな差異ですら、動物実験の結果に劇的に影響するからである。詳細には、全ての動物は、同じ遺伝子型、表現型、および演出型を有さなければならず、かつ同じ発生環境(母系効果)および近接環境に供されなければならない。これらの要因(動物実験の結果に有意に影響を与える)を図1に示す。これを達成するために、十分に確立された物理化学アッセイシステムとまさに同程度に再現可能である生存アッセイシステム(インビボ実験システム)として見られ得る変異(例えば、遺伝子組換え)動物モデルの開発のために、新規な生産および検証システムを開発した。この新規な生産および検証システムを、図24に図示する。このシステムにおいて、動物の特性に影響する全ての要因は、緊密に制御される。これらの要因としては、動物自体の緊密な制御(例えば、雑種動物を作出するための育種における種、系統、およびそれらの組み合わせ、性別、齢、同腹子の大きさ(litter size)、および体重)、それらの居住環境(例えば、寝具類、動物室など)、物理化学的要因(例えば、臭気、光、騒音)、室内環境(例えば、空気速度、湿度、温度)、栄養(例えば、食餌、水分、発癌物質への曝露)、微生物(例えば、感染、常在菌叢の質)、および人間的要因(例えば、動物の世話人、研究者など)が挙げられる。さらに、遺伝的に制御されたバックグラウンド系統と遺伝的多様性との間の均衡は、実験動物科学分野における当業者および対象動物疾患に関する当業者によって設計、選択、および決定されている。これらの要因を図2に図示する。
「生存試験道具」として使用され得る標準化された実験動物の開発は、第一工程として、遺伝学および微生物学的に均一な質の仕様に従う参照動物を調製することで始まり、第二工程として、計画生産システムを確立することが続き、十分数の同一動物が、任意の特定の動物実験においてそれらの有用性および制限を評価するために入手され得るようになる。遺伝子組換え動物モデルが確立される前に、何百匹または何千匹もの標準化された動物が、このアプローチに従って開発され、そして徹底的に評価にかけられて、遺伝子組換えモデルが確立する前に、モデルシステムとしての有用性および制限が決定され得る。標準化された遺伝子組換え動物モデルの実際の開発における重大な第三の工程は、十分に特徴付けられた信頼性のある動物モデルを用いた統合「インビボ実験システム」の確立を包
含し、その結果、遺伝子組換え動物(例えば、トランスジェニックマウス)が、ヒト疾患モデルとして、または生物医学研究および薬学研究の他の分野において、信頼性をもって使用され得る。代表的には、実験動物研究者はこの第一工程において責任をとり、動物モデルを用いる医療研究者または薬物研究者は第三工程を完了させるが、第二工程には両方の研究者グループが参加する。このシステムをトランスジェニック動物に関して説明するが、本発明はそのように限定されない。本発明のアプローチは、他の変異動物(全てのタイプの遺伝子組換え(遺伝子操作)動物および1つ以上の偶発変異を有する動物を含む)にも等しく適用可能である。
(工程1:遺伝学および微生物学的に均一な質標準を有する参照動物の調製)
従来、トランスジェニック動物の開発は、以下の工程を包含する:(1)マイクロインジェクションによるマウス卵へのDNAの導入、またはレトロウイルスベクターまたは他の方法による胚性幹細胞(ES細胞)へのDNAの導入;(2)トランスジーンが組み込まれ、伝達されているかを確認する信頼性のある遺伝子型決定アッセイ(例えば、PCRまたはサザンブロット(創始動物))による試験;(3)クローニングまたは有性生殖による生殖;および(4)質制御(生化学的マーカーを使用することによる遺伝学的質制御(遺伝プロフィールモニタリング)および微生物学的質制御(続いて微生物モニタリングシステムを用いる)を含む)。小さな変化ですら、動物が実験室実験でどのように挙動するかにおいて本質的な差異を生じ得るので、各工程のモニタリングおよび質保証、ならびに育種コロニーの維持における卓越性が、変異(例えば、遺伝子組換え)動物モデルの信頼性のために必須である。本発明は、このプロセス全体の各工程において有意な改善を提供する。
特に、本発明は、インビボ実験のための実験動物を開発するプロセスにおける集団の仕様((1)遺伝学的質保証(超速コンジェニック法(super speed congenic method))および(2)微生物学的保証(二層モニタリング)を含む)を提供する。育種プロセスのこの部分を、「集団期(population stage)」と呼ぶ。さらに、本発明は、「計画生産および供給システム」を提供し、この中には、(1)変異体(例えば、トランスジーン)の安定性および機能の進行的モニタリング、(2)危険性管理システム(大量保存)、(3)生殖操作技術、および(4)モデルの特定の目的についてのバックグラウンド系統の選択、および必要に応じて、広範であるが反復可能でありかつ再現可能な遺伝的多様性を達成するために遺伝的多様性の拡大が含まれる。
(遺伝学的質保証(超速のコンジェニック動物開発方法))
本発明の遺伝学的質保証の工程において、遺伝学的および微生物学的に均一な質の標準を有する参照変異体(例えば、トランスジェニック動物(例えば、マウス))の調製および検証、ならびに高速コンジェニックプロセス(speed congenic process)および技術が含まれ、この後、計画的に遺伝的モニタリングされ、必要な質が維持されることを保証する。この工程において、本発明は、トランスジェニック動物の場合、トランスジーンの適切な挿入に加え、マウスまたは他の変異動物のバックグラウンド遺伝子の同一性もまた確実にする。遺伝的バックグラウンドもまた変異動物と同一であることを確実にする重要性は、遺伝的バックグラウンドが100%同一でない場合、変異動物が親動物の表現型を喪失し得ることにある。例えば、p53+/−マウスは、この理由のために、複雑な表現型を示している。本発明のこの工程によって提供される主な改善点は、このプロセスの促進(すなわち、コンジェニック動物の確立に必要な時間の短縮)、および二層遺伝的モニタリングシステムの適用である。
新規な変異(例えば、トランスジェニック、ノックアウト、またはノックイン)動物系の開発は、代表的には、特定の近交系動物(例えば、マウス)系統において遺伝子操作ま
たは偶発変異を確立するために、少なくとも5世代、より頻繁には少なくとも9世代、しばしば12世代までの慎重な戻し交雑を必要とする。このプロセスの結果は、数世代後に、固定された遺伝的バックグラウンドにおける変異(例えば、トランスジェニック、ノックアウト、またはノックイン)動物モデルが確立されることであり、これを「コンジェニック」と呼ぶ。インビトロ受精に供される動物は、代表的には、少なくとも約2ヶ月齢であり、妊娠期間は19日である。このことは、各世代の生産にほぼ3ヶ月かかることを意味する。結果として、コンジェニック動物系統の確立は、非常に長いプロセスであり、これは、代表的には数年かかる。本発明は、コンジェニック動物系統の確立のための高速の方法を提供する。本発明によれば、各世代の雌性動物(例えば、マウス)を処置して過排卵させ、約4週齢の若年時にインビトロ受精に供する。通常、16日齢の雌性マウスに、PMSG注入、続いて28日目にhCG注入を行い、過排卵を成し遂げさせる。29日目に、このマウスを自然交配させるか、またはインビトロ受精に供する。30日目に、二細胞胚を採集し、偽妊娠レシピエントに移植する。妊娠期間は19日間なので、分娩は49日目に起こる。各世代において異例に若い(約4週齢)動物を使用することにより、コンジェニック系統の確立に必要な時間が有意に減少することを理解することは容易である。このプロセスを図4に図示し、実施例1においてより詳細に説明する。
同様のプロセスが、低い排卵能を示す系統からコンジェニック動物を生産するために使用され得る。
(微生物学的質保証−代替的微生物学的質制御法)
微生物環境は、実験動物の演出型に影響する主要な要因の1つである。微生物感染が急激に発生すると、実験動物の健康を変化させ、結果として、生殖の振る舞いのような実験の結果、および血液化学を変化させることは周知の事実である(Nomura,T.Genetic and microbiological control.Immune−Deficient Animals(Sordat,B.ら編),S.Karger
AG,Basel,1984.;Itoh,T.ら、Expr.Anim.,30:491−495,1981;Itoh,T.ら、Jpn.J.Vet.Sci.40:615−618,1978;Iwai,H.ら、Expr.Anim.26:205−212,1977)。さらに、Narushimaら(Narushimaら、Exp Anim 47(2):111−7(1998))は、腸内細菌がトランスジェニックrasH2マウスにおいて発癌物質に対する応答を改変したことを実証した。これらの知見は、微生物環境の厳密な制御が実験動物の演出型の(dramatypical)質の保証に不可欠であることを強く示している。さらに、動物の遺伝的変化は免疫能力の改変を生じ得るので、遺伝子組換え動物の微生物学的質制御に対して特別な配慮が払われるべきである。ヌードマウスに特有であるようである感染もまた存在する。従って、厳密な微生物制御は、実験動物モデルの開発の必須となる部分である。
本明細書中に記載の発明によれば、動物(すなわち、マウス)は、純化された腸内細菌叢を有するようにコロニー化され、厳密な障壁システム下で飼育される。動物が他の施設から受け取ったものである場合、この動物が厳密に制御された微生物モニタリングを受けることなく従来の設備で飼育されていたのであれば、この動物は、代替的微生物学的質制御法(Alternative Microbiological Quality Control Method)(AMQCM)を用いることによりクリーンにされなければならず、これは、本発明の不可欠な部分である。AMQCMの適用により、動物モデルの開発期の間の微生物制御の費用および時間は、有意に減少され得る。二層モニタリングが、この微生物学的質を保証するために実施される。
従って、本発明は、それらの腸内細菌叢が厳密に保証された微生物学的質を有する遺伝子組換え動物の計画生産のための新規な方法を提供する。インビトロ受精(IVF)、胚
低温保存、胚移入、レシピエントおよび/または養母による哺乳の工程は、全てこのプロセスに組み込まれる。
特に、微生物感染があると考えられる動物に由来する卵および精子をIVFに供して、無菌胚を得る。この胚を、レシピエントマウスの子宮に移す。感染マウスの精子および卵を有するIVF−胚に由来する仔動物(pup)は、微生物学的にはクリーンである。レシピエントおよび養母マウスは、純化された腸内細菌叢(ACストック)によってコロニー化された厳密に制御されたマウスストックから供給され、これにより仔動物は、乳児期に同じ叢を有する。
代替的微生物学的質制御法においては、順序付けられた障壁の動物飼育システム(例えば、ビニル隔離装置)に加えて、近代的な新しく設計された胚バンク設備が使用される。胚バンク設備は、以下の3つのユニットからなる:1)隔離ユニット(Quarantine Unit)(QU)、2)胚操作および凍結ユニット(Embryo Manipulation and Freezing Unit)(EMFU)、および3)回収ユニット(Recovery Unit)(RU)。胚バンク設備の例を図13に示す。QUは、微生物学的に保証されていないドナーを係留するための動物室、および配偶子(gamate)(卵および精子)の採集のための無菌装置からなる。EMFUは、微生物学的にクリーンなドナーのための動物室、配偶子採集のための無菌設備、無菌IVFおよび凍結設備、および液体窒素タンクのための室からなる。RUは、レシピエントのための室、胚移入のための室、哺乳のための室、および飼育のための室からなる。EMFUおよびRUは、QUによって分離された障壁システム(正に濾過された空気条件(filtered positive air condition)、オートクレーブ、衣服交換室など)を備え付けられる。正に濾過された空気条件を有するQUにおいて、ビニル隔離装置または陰圧式動物飼育装置(negative pressured animal
rearing equipment)が使用される。RUの各室の間、および障壁領域の外側とRUの各室との間に、滅菌ロックが備え付けられ、これは、レシピエントおよび養母、胚などの移動に好都合である。配偶子採集のための設備およびIVFのための設備間に、パスボックスが備え付けられ、これは、無菌管の移動に好都合である。
これらの設備に加えて、隔離装置システムが、純化された腸内細菌叢(ACストック)によってコロニー化された無菌動物およびノトバイオート動物のために備え付けられる。これらの動物は、滅菌ロックを通してビニル隔離装置システムによってRUに運ばれる。
代替的微生物学的質制御方法(Alternative Microbiological Quality Control Method)を図14に示す。大発生していると考えられるかまたは微生物学的に保証されていないと考えられる動物(すなわち、マウス)をQUに収容し、微生物学的に保証された動物(すなわち、SPF(特定病原菌なし(Specific Pathogen Fee))をEMFUに維持する。ドナーマウスを屠殺し、そのマウスの表面を滅菌する。卵および精子を無菌的に採集し、パスボックスに入れてIVF設備に移す。IVFを無菌的に実施し、二細胞胚にまで培養する。この胚を液体窒素中で凍結させるか、またはそのまま移植に使用する。この二細胞胚を、滅菌ロックを通してRUに移し、レシピエントマウスに対して無菌的に移植を実施する。
分娩された仔動物をレシピエント母によって自然に哺乳させる。いくつかの場合では、帝王切開によって分娩された仔動物を、養母によって哺乳させる。両場合とも、腸内細菌叢(ACストック)は、哺乳の間に仔動物の腸にコロニー化される。
この方法を、実施例2においてさらに説明する。
(遺伝学的質試験)
動物モデルとして変異(例えば、遺伝子組換え)動物(例えば、マウス)を使用するためには、遺伝的に相同の動物が多数、生産されなければならない。目的に応じた2タイプの遺伝学的質試験を図4に示す。目的が遺伝子組換え動物の遺伝学的特徴を明確にすることである場合、特定の時点で、所与の系統の遺伝学的特徴をより詳細に決定するために、スポットチェックが実施される。他方で、一貫した遺伝学的質の保証には、質の変化がなかったことを確認するための動物のモニタリングが必要とされ、これは、質標準の所定のセットを定期的に試験することを含む。
論文のほとんどにおいて、トランスジーンおよび/またはその組み込み部位の分子分析は、通常、5世代以下しか及んでいない。マウス宿主ゲノムに組み込まれたトランスジーンの生殖系列伝達の安定性は、詳細な研究の対象にはなっていない。トランスジーン組み込みおよび安定性に関して報告された所見は矛盾しており、遺伝子特異的であるようである。安定な組み込みを確認するために加え、さらに遺伝的不安定性を取り除くかまたは防ぐためには、組み込まれたトランスジーンの徹底的な分子分析が必要であることは明らかである。
遺伝子変化された動物の遺伝子型(トランスジェニックに対してホモ接合体またはヘミ接合体)は、同じ系統についての繁殖者対(breeder pair)の遺伝子型とはしばしば異なる。本発明は、異なる世代においてトランスジーン安定性をモニタリングすることを可能にすることに加え、トランスジーン組み込み部位の周囲のゲノム構造をモニタリングすることもまた可能にする、新規な方法を提供する。本発明の「早期遺伝子検出方法」は、ホモ接合性のトランスジェニック動物(例えば、マウス)とヘミ接合性のトランスジェニック動物(例えば、マウス)との間を通常2日以内に識別することを可能にする。これは、従来のアプローチとは対照的である。従来のアプローチは、同胞交配に依存し、通常1ヶ月より長くかかる。
任意の世代におけるトランスジーンの遺伝的安定性の検査は、代表的には、染色体局在の決定(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)法を使用)で始まる。(Matsudaら、Cytogenet.Cell.Genet.61:282−285(1992);Evans EP.Standard G−banded karyotype,Lyon MF,Rastan S.,Bround SDM,編,Genetic Variations and Stains of the Laboratory Mouse.New York:Oxford University Press;1996,p.1446−1449.) これは、代表的には、この後サザンブロット分析に続き、組み込まれたトランスジーン遺伝子座の周りの制限フラグメントマップを作成し、これによりトランスジーン構造に関する重要な情報が提供される。トランスジーンの発現は、ノーザンブロット分析によって確認され得る。最後に、この分析は、挿入された遺伝子および周囲配列の逆転写PCR(RT−PCR)直接配列決定により完了し、例えば、トランスジェニック動物の次の世代において生じ得る点変異が同定される。
本発明によれば、トランスジェニック動物は、新規で効率的なPCRアプローチを使用することによって遺伝子型決定される。互いに対向する方向で、トランスジェニック動物および対応する非トランスジェニック(野生型)動物から単離された標的DNAの相補鎖に対して結合するように、遺伝子特異的PCRプライマーが設計される。詳細には、図6に示されるように、PCRは、以下のプライマー対を用いて、トランスジェニック動物および非トランスジェニック動物から単離されたゲノムDNAを用いて実施される:(1)染色体特異的プライマーAおよびトランスジーン特異的プライマーC(5’トランスジーン/ゲノム連結部の検証のため);(2)トランスジーン特異的プライマーDおよび染色
体特異的プライマーB(3’トランスジーン/ゲノム連結部の検証のため);(3)染色体特異的プライマーAおよび染色体特異的プライマーB(プレ組み込み部位の同定のため);ならびに(4)トランスジーン特異的プライマーCおよびトランスジーン特異的プライマーD(トランスジーン−トランスジーン連結部の検証のため9。これらのプライマー対を用いることにより作製された増幅PCR産物は、大きさによって(例えば、アガロースゲル上で)分離され、任意の特定の動物の遺伝子型の同定を可能にするバンドパターンを提供し得る。これにより、ヘミ接合体は2つのバンドを生じ、一方は、野生型対立遺伝子に対応し、他方は、トランスジーンに対応する。対して、ホモ接合体は、トランスジーンにのみ対応するバンドを示す。さらに、染色体特異的プライマー対AおよびBから得られるPCR産物の差異が、動物の遺伝的バックグラウンドの差異を示す。
その代わりに、あるいはそれに加えて、このPCR産物はまた、シグナル区別(例えば、蛍光染料で標識した産物の色に基づく区別)によって分離または識別され得る。例えば、トランスジーン特異的プライマーがFITC蛍光染料で標識され、染色体特異的プライマーがHEX染料で染色される場合、トランスジーン特異的プライマーからの産物は、緑色を帯びた色を呈し、対して、染色体特異的プライマーからの産物は赤色を帯びた色を呈するので、蛍光画像化検出器を用いて、この特性に基づいて識別され得る。この特定の例では、ヘミ接合体のDNAに由来する産物は、緑と赤との組み合わせから生じる黄色を帯びた色で検出される。
(工程2:計画生産および供給システム)
さらに、本発明は、計画生産および供給システムを提供し、この中には、(1)トランスジーンの安定性および機能の進行的モニタリング、(2)危険性管理システム(大量保存)、(3)生殖操作技術、および(4)広範な遺伝的多様性を達成するために遺伝的バックグラウンドの拡大が含まれる(図15を参照のこと)。この計画生産は、上述の4つの工程に従って実施される。このプロセスは、胚の凍結保存と共に、核コロニー(nuclear)、拡大(expansion)コロニー、および生産コロニーを使用して、漸進的な生産を成し遂げる。コロニーの使用は危険性管理にとって重要である。この漸進的な生産拡大は、指定した標的のヒト疾患または生理的機能についてそれらの有用性および制限を評価するために十分な数の実験動物(生産系列)を低給するために必要である。
核コロニー期で、同胞交配の受精卵が、低温保存によって保存される。拡大および/または生産期で、この卵は、インビトロ受精後に低温保存によって塊として保存される。卵は多数の雌性マウスから採集されるが、精子は、単一の雄性マウスから採集されて、大量保存されたものである。自然の精子進入によって生産コロニーを確立するには、通常、数十ヶ月かかる。このような核コロニーにおけるその血統系列のための低温保存システム、ならびに拡大コロニーおよび生産コロニーにおける大量保存システムは、事故(例えば、計画生産における汚染、または生産の中止に至る他の問題)の危険性を減少させる。
核コロニーの確立、ならびに計画生産および供給システムによる動物の遺伝子型の決定は、本発明の新規な方法が適用される場合、通常よりもはるかに短い時間内で完了される。実に、トランスジーンの安定性および遺伝子型は、あらゆる世代において1日以内でチェックされる。従って、本発明によると、使用者の仕様に従って、任意の所望の体重または齢の実験動物を迅速に提供することができる。これは、従来の手順に対する顕著な改善である。従来の手順では、幼動物の供給が非常に困難であった。
(工程3 動物モデルの有用性および制限の評価)
真に有用であるヒト疾患の動物モデルについては、そのモデルが規定されなければならず、そして以下の要件を満たす動物のみが、この規定の動物モデルとしてみなされ得る:ヒトに似ている生理的表現型または病理的表現型が、ヒトと同一の遺伝的原因を有してい
なければならず、そしてモデルとしての動物の有用性および制限)が規定されなければならない。これらの要件は、ヒト疾患のモデルとして使用されるべき全ての遺伝子組換え動物に対して等しく適用される。
この工程の重要性の元となる例は、デュシェーヌ型筋ジストロフィーをモデリングするために日本において開発された動物モデルである。このプロジェクトの開始時に、筋ジストロフィーのためのモデルとして国際的に使用されてきたほとんど全ての動物が集められ、評価のために臨床研究グループに提供された(例えば、以下を参照のこと:Gordonら、PNAS USA 77:7350−7384(1980);SugitaおよびNonaka,Animal models utilized in research on muscular diseases in Japan,p.271−286 in:J.KawamataおよびE.C.Melby(編),Animal models:assessing the scope of their use in
biomedical research.Alan R.Liss,Inc.,New York;Bulfieldら、PNAS USA 81:1189−1192(1984);Tanabeら、Acta Neuropathol 69:91−95(1986))。偶発変異体に由来するこれらの筋ジストロフィーモデルは、疾患の病因の分類において非常に有用であったが、デュシェーヌ型筋ジストロフィーの研究にはあまり有用でなかった。研究が進行するにつれて、これらのモデルが、ヒトの筋ジストロフィーの兆候と似た兆候のみを伴う疾患を有することが判明した。同様の考察が、全ての遺伝子組換え動物モデル(トランスジェニック動物、ノックアウト動物、およびノックイン動物)の有用性の評価において適用される。さらなる詳細については、例えば、Nomura,Laboratory Animal Science 47:113−117(1997)を参照のこと。
ヒト疾患の機構の解明における有用性および制限が評価された動物が、ヒト疾患についての動物モデルとして規定される。ポリオウイルスレセプター遺伝子を有するトランスジェニックマウス(TgPVRマウス)を例にとると、ポリオウイルスの神経毒性に対するTgPVRマウスの感受性が、ヒト疾患のポリオのポリオウイルス神経毒性と比較されて、それらが同じであるかを決定する。標的疾患(例えば、ポリオウイルス神経毒性/ポリオに対する感受性)の解明における有用性および制限が評価された動物が、その疾患の解明に有用なヒト疾患モデルとして規定される。
本発明の更なる詳細は、限定ではない以下の実施例によって説明する。実施例1は、超速コンジェニック法(super speed congenic method)の説明である。実施例2は、本発明の代替的微生物学的質制御法(Alternative Microbiological Quality Control Method)(AMQCM)を説明する。実施例3および4は、それぞれ、Tg−rasH2トランスジェニックマウスおよびTgPVR21トランスジェニックマウスにおけるトランスジーンの安定性の決定を説明する。実施例5は、トランスジーン/マウスゲノム連結部位の分析に対しての本発明の新規なアプローチを記載する。実施例6は、広範な遺伝的多様性を達成するために、トランスジェニック動物の遺伝的バックグラウンドを拡大するための本発明のアプローチを説明する。実施例7〜9は、異なるトランスジェニック動物モデルの試験による、本発明の技術の検証として提供される。
(実施例1)
(超速コンジェニック法)
超速コンジェニック法を図4に図示する。性的に成熟前の若年マウス(未熟マウス)は、外因性ゴナドトロピンに対して感受性であることが分かっている。従って、このような
未熟マウスでの過排卵は、ゴナドトロピンの注入によって誘発され得る。動物生産のために過排卵手順を使用することにより、天然の交配に基づく従来の手順に比較して、変異マウス(例えば、トランスジェニック(Tg)マウス)の遺伝的バックグラウンドを他の近交系系統の遺伝的バックグラウンドに変更するのに必要な期間が有意に短縮される。本研究では、未熟マウスにおいて、過排卵の誘発に適切な条件、およびインビトロ受精後の排卵した卵母細胞の発生能を調べた。
(材料および方法)
未熟C57BL/6N雌性マウス(3〜4週齢)を過排卵手順に供し、同じ系統の成熟雄をインビトロ受精(IVF)のための精子ドナーとして使用した。
23日齢、24日齢、25日齢、26日齢、および27日齢の未熟雌性マウスに、1.25IU、2.5IU、5IU、10IU、または20IUの妊馬血清ゴナドロトロピン(PMSG)と5IUヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)とのそれぞれを、48時間間隔をあけて注射して、過排卵を誘発させた。hCGの注入から17〜20時間後、排卵された卵母細胞の数を各群において評価した。28日齢マウス由来のいくつかの卵母細胞をIVF手順に供し、二細胞期までインビトロで培養した。得られた二細胞期胚を、偽妊娠の1日目に成熟Jcl:MCH(ICR)雌性マウスの卵管に移入し、胎児発生を評価した。
(結果および考察)
排卵が誘発されたマウスの割合および排卵された卵母細胞の数は、検査したマウスの齢に関係しなかった。1.25〜10IUのPMSGを注入した場合、75〜100%のマウスが排卵を誘発された。排卵された卵母細胞の最大数は、各群(1マウス当たり平均52.3〜76.3個の卵母細胞)において5IU PMSGの注入によって得られた。15IUまたは20IUのPMSGの注入による排卵誘導効果は、他の投与量よりも少なかった。
排卵した卵母細胞の正常性を評価するために、28日齢マウス由来の卵母細胞をIVF手順に供した。この結果は、95%より多くの卵母細胞が受精し、二細胞期にまで発生することを示した。レシピエントマウスへの胚移入後、得られた胚の50%より多くが、子孫を生じた。このことは、未熟マウス由来の卵母細胞が正常な発生能を有することを示唆する。
これらの結果は、正常な卵母細胞がPMSGおよびhCGの注入により、約4週齢の未熟マウスから得られ得ることを示した。この場合、未熟マウス由来の卵母細胞の数は、成熟マウスの3〜4倍であり、この卵母細胞は、正常に胎児を発生する能力を有した。この手順を用いて、他の系統とのTgマウスの戻し交雑を開始し、新規なコンジェニックマウス系統を確立した。上述のように未熟マウスを用いて、戻し交雑を48日毎に実施し得る。
(実施例2)
(代替的微生物学的質制御法(Alternative Microbiological Quality Control Method)(AMQCM))
(材料および方法)
マウス:C57BL/6Nマウス(10週齢)をウイルス感染のために使用した;JCL:MCH(ICR)マウス(10〜15週齢)をレシピエントとして使用した。ウイルス:センダイウイルス(HVJ MN株)およびマウス肝炎ウイルス(MHV Nu−67株)を使用した。血清学的検査:HVJについて、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)およびヘマグルチニン阻害(HI)試験を実施し、MHVについて、EL
ISAおよび補体結合(CF)試験を実施した。ウイルスをC57BL/6Nマウスに、このマウスの鼻から感染させた(0日目、実験開始日)。排卵のために、PMSG(2日目)およびhCG(4日目)をウイルス感染C57BL/6Nマウスに注入した。インビトロ受精(IVF)のために、卵および精子を5日目に感染マウスから採集し、二細胞胚をJCL:MCH(ICR)マウスの卵管に移入した。分娩(25日目)後、仔動物を離乳(53日目)まで養母によって哺乳させた。離乳マウスを81日目まで飼育し、血清学的検査に供した。血清学的検査はまた、レシピエントマウスおよびウイルス感染ドナーマウスにおいても実施した。
(結果)
IVFおよび胚移入:全部で60個の卵が5匹のHVJ感染C57BL/6Nマウスから採集され(平均:12.0卵/マウス)、そして44個の卵(73.3%)が二細胞卵にまで発生した。40個の二細胞胚をレシピエントに移入され、そして22匹の仔動物(55.0%)が産まれ、最終的に20匹のマウス(90.9%)が離乳された。他方で、全部で163個の卵が5匹のMHV感染C57BL/6Nマウスから採集され(平均:16.3卵/マウス)、そして145個の卵(89.0%)が二細胞卵にまで発生した。80個の二細胞胚がレシピエントに移入され、そして45匹の仔動物(56.3%)が産まれ、最終的に、39匹のマウス(86.7%)が離乳された。
ウイルス検出:HVJ感染ドナーマウス(1匹の雄および5匹の雌)をELISAおよびHI試験に供した。試験したサンプルの全てが、ELISAの光学密度で測定過剰であり;CF試験では1:160価を上回る(範囲1:320〜1:160)ことが示された。MHV感染ドナーマウス(1匹の雄および5匹の雌)をELISAおよびCF試験に供した。試験したサンプルの全てがELISAの光学密度で測定過剰であり;CF試験では1:20価を上回る(範囲1:160〜1:20)ことが示された。これらの結果は、そのウイルスがまさにドナーマウスにおいて感染していたことを示す。一方、HVJ感染ドナー由来およびMHV感染ドナー由来のレシピエントマウス移入胚(各3)を血清学的検査に供した。さらに、HVJ感染ドナー精子および卵に由来ならびにMHV感染由来の仔動物(各5)を血清学的検査に供した。試験したレシピエントマウスおよび仔動物のいずれも、いずれの血清学的検査においても陽性試験結果を示さなかった。
(実施例3)
(短期発癌性試験のための動物モデルとしてのrasH2マウスのトランスジーン安定性および特徴)
(材料および方法)
(動物)
12番目のコドンまたは61番目のコドンに単一点変異を有するヒト活性化c−Ha−ras遺伝子の各正常部の連結により、トランスジーンを構築し、次いで、pSV2−gptプラスミドのBamHI部位にサブクローニングした(Sekiya T,ら、Proc Natl Acad Sci USA 1984;81:4771−4775;Sekiya Tら、Jpn J Cancer Res 1985;76:851−855)。本研究において使用したトランスジェニックマウスの生産は以前に記載された通りである(Saitohら、Oncogene 1990;5:1195−1200)。トランスジェニックマウスの基礎コロニーを維持するために、C57BL/6JJic−TgN(RASH2)(Tg−rasH2)マウスを、雄性ヘミ接合性rasH2トランスジェニックマウスを雌性近交系C57BL/6JJicマウスに対して戻し交雑することにより得た。本研究では、N20およびTg−rasH2マウス(N15)(低温保存胚から得た)と自然交配した5週齢の雄性Tg−rasH2マウス、および12週齢の雌性C57BL/6JJic(非トランスジェニック)マウスを使用した。使用した全ての動物は、財団法人実験動物中央研究所(Central Institute for E
xperimental Animals)(日本)により確立された指針に従って取り扱った。
(DNAプローブ)
顕微注入DNA(7.0kb BamHIフラグメント)のアリコートをpBlueScript II KS+(pBSII:Stratagene,La Jolla,CA)プラスミドのBamHI部位にサブクローニングした。このプラスミドをCsCI平衡遠心分離、次いでセファロースCL6Bカラム(Amersham Pharmacia Biotech Inc.,Buckinghamshire,UK)上のゲル濾過によって精製した。ヒトc−Ha−ras遺伝子を含む7.0kb BamHIフラグメントをBamHI消化によってプラスミドから切り出し、アガロースゲルから回収した。この7.0kb BamHIフラグメントを、DIG DNA標識キット(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germany)を用いて、製造者の指示に従ってジゴキシゲニン(DIG)−11−dUTPで標識した(DIG標識ランダムプライムプローブ)。このDIG標識した5’−プローブ(1,793〜2,400位由来)を、鋳型DNAとして7.0−kb BamHIフラグメントを用いて、以下のプライマーを使用してPCR DIG Probe Synthesis Kit(Roche Diagnostics GmbH)によって調製した:
(順方向:
Figure 2010029219
(配列番号2))。
(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション分析)
トランスジーンの染色体位置を、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)法(Matsudaら、Cytogenet Cell Genet,前出;Evans EP,前出)を用いて決定した。N15およびN20のTg−rasH2マウスから得られたマイトジェン活性化脾細胞由来の20の分裂中期を、ヒトc−Ha−ras遺伝子のビオチン−16−dUTP−標識7.0kb BamHIフラグメントを用いて分析した。ビオチン標識DNAを 抗ビオチンヤギ抗体(Vector Laboratories Inc,Burlingame,CA)およびフルオレセインイソチオシアネート標識抗ヤギ免疫グロブリンG(Nordic Immunological Laboratories,Capistrano Beach,CA)で可視化し、次いで、ヨウ化プロピジウム(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Steinheim,Germany)で対比染色した。MICROPHOTO−FXA(NIKON CORPORATION,Tokyo,Japan)で観察を行い、蛍光シグナルを有する染色体をG染色標準(Evans EP,前出)に従って同定した。
(サザンブロット分析)
ゲノムDNAを、標準プロトコル(Sambrook J,Russell DW.Molecular Cloning,Third Edition:A Laboratory Manual.New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press;2001)に従って、プロテイナーゼKとの終夜インキュベーションおよび続くフェノール:クロロホルムでの抽出およびエタノール沈降によって、Tg−rasH2マウスおよび非トランスジェニックマウスの尾生検から調製した。ゲノムDNA(代表的には10μg)を、DNA1μg当たり3Uの制限酵素で37℃
にて一晩消化し、−20℃でエタノール沈降させた。沈降後、このゲノムDNAサンプルを10μlのTE緩衝液(10mM Tris、pH 7.5、1mM EDTA)中に再可溶化し、0.6%アガロースゲル上で一晩電気泳動した。このゲルを、75mM HCl中で逐次脱プリンさせ、1.5M NaCl/0.5M NaOH中で変性させ、1.5M NaCl/0.5M Tris−HCI、pH7.5中で中和させた。DNAを、25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0中のキャピラリー転移によって、一晩、ゲルからナイロン膜(Hybond−N+,Amersham Pharmacia BiotechInc.)に転写した。この膜を風乾し、紫外線架橋させた。2×標準生理食塩水クエン酸(SSC;0.3M NaClおよび30mMクエン酸三ナトリウム、pH7.0)中で短時間リンスした後、この膜を、ハイブリダイゼーションオーブンにおいてChurchハイブリダイゼーション緩衝液(Church GM,ら、Proc Natl Acad Sci U S A 1984;81:1991−1995)中、42℃で6時間、プレハイブリダイズさせた。プローブを、5分間沸騰させることにより変性し、新たなChurchハイブリダイゼーション溶液中でブロットに加えた。このブロットを42℃で一晩ハイブリダイズさせ、次いで、50℃で0.2×SSC/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムで2回、および65℃で0.2×SSC/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムで2回洗浄した。ハイブリダイズしたプローブを、DIG Luminescent Detection Kit(Roche Diagnostics GmbH)を製造者の指示に従って使用することにより検出した。化学発光シグナルの検出のために、このブロットを、ECL−Plus X線フィルム(Amersham Pharmacia Biotech Inc.)に露光した。
(ノーザンブロット分析)
全細胞RNAをTRIzol(Life Technologies Inc.Gaithersburg,MD).を用いて抽出した。このRNA溶液を、DNase I(Life Technologies Inc.)を製造者のプロトコルに従って用いて処理した。RNA(10μg)を1%アガロース/6%ホルムアルデヒドゲル上で分画し、Hybond−Nナイロン膜上に転写した。以前に記載(Maruyamaら、Oncol Rep 2001;8:233−237)のように、ブロットを風乾し、紫外線架橋させ、ハイブリダイズさせた。ヒトc−Ha−ras遺伝子およびマウスグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼcDNA(7.0kb BamHIフラグメント)を、Random Primed DNA Labeling Kit(Roche Diagnostics GmbH)によって[α−32P]−dCTP で標識し、ハイブリダイゼーションプローブとして使用した。膜をKodak ARフィルムに露呈させた。
(ゲノム/トランスジーン連結領域のクローニング)
ゲノム/トランスジーン連結部のクローニングのために、標準的な手順(Sambrook J,ら、前出)によって、Tg−rasH2マウス由来のゲノムDNA100μgを、制限酵素HindIIIおよびBamHIで完全消化し、次いでフェノール:クロロホルムで抽出し、沈降させた。二重消化DNAの6〜9kbフラグメントを、スクロース濃度勾配上での超遠心分離によって分画し、pBSIIプラスミドの同じ部位に連結した。製造者の指示に従って、組換えTaq DNAポリメラーゼ(TaKaRa Inc.Shiga,Japan)を用い、鋳型としてベクター連結ゲノムDNAを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した。PCRプライマー、
Figure 2010029219
(配列番号4))を5’ゲノム/トランスジーン連結部の増幅のために使用し;pBSII−revおよびD(
Figure 2010029219
(配列番号5))を3’トランスジーン/ゲノム連結部の増幅のために使用した。反応混合物を94℃で2分間加熱し、次いで35サイクル(94℃で30秒、66℃で30秒、および72℃で3分)増幅させ、その後この混合物を、ABI PCR2400(Applera Corporation,Applied Biosystems,Foster City,CA)において72℃で5分間保持した。HindIII隣接領域のヌクレオチド配列を、ABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kits(Applera Corporation)を用いてABI PRISM310 Genetic analyzer(Applera Corporation)によって決定した。ゲノム/トランスジーン連結部を単離するために、2つの新規なプライマー、
Figure 2010029219
(配列番号7))を、PCRクローニング法により決定した配列に基づいて設計した。鋳型としてTg−rasH2マウスゲノムDNAと、プライマーC+A(5’ゲノム/トランスジーン連結部のため)、およびプライマーD+B(3’トランスジーン/ゲノム連結部のため)とを用いて、PCR増幅を実施した。トランスジーン/トランスジーン連結部のクローニングのために、PCR増幅をTg−rasH2マウスDNAとプライマーDおよびプライマーCとを用いて実施した。トランスジーン挿入によって生じた組み込みプロセスおよび考えられる位置効果を明確にするために、プレ組み込み部位をプライマーAおよびプライマーBを用いて、非トランスジェニックマウスDNA.およびTg−rasH2マウスDNAから増幅させた。PCR条件は上述と同じであった。
(組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子の配列)
組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子全体の範囲に及んだ5つの重複PCR産物を、プライマーD(上記参照)+E
Figure 2010029219
および
Figure 2010029219
(配列番号13))を用いるPCRによってN20のTg−rasH2から得た。
PCR産物をUltraClean PCR Clean−up DNA Purification Kit(Mo Bio Laboratories Inc.,Solana Beach,CA)を用いて精製し、次いでヌクレオチド配列をプライマーウォーキング法によって決定した。
(結果)
(Tg−rasH2マウスにおけるトランスジーン安定性の検査)
トランスジェニックマウス系rasH2は、ヒトc−Ha−ras遺伝子を含む7.0kbの構築物(BamHIフラグメント)(図8Aに示される)を顕微注入することにより、Saitohら、1990によって確立された。この創始マウスは、元来、雑種(C57BL/6J×DBA/2J)系統として作出され、C57BL/6JJicに戻し交雑されて、遺伝的に均質な集団が作製された。その後、戻し交雑がN20を超えて進行し、30,000匹を超えるトランスジェニックマウスが生産された。多くの世代にわたる大規模繁殖の間に、Tg−rasH2マウスゲノムにおける組み込まれたトランスジーンの遺伝的安定性が調べられている。Tg−rasH2 マウスにおける組み込まれたトランスジーンの染色体局在をFISH法によってN15およびN20で決定した。両方の場合とも、このトランスジーン位置を表す対合した蛍光シグナルは、染色体15E3領域上で観察された(図7)。Tg−rasH2マウスはヘミ接合体であり、そのため、このハイブリダイゼーションシグナルは、一対の姉妹染色分体でのみ検出された。
サザンブロット分析を実施し、組み込まれたトランスジーン遺伝子座の周囲の制限フラグメントマップを作成した。これは、トランスジーン構造について重要な情報を提供した。BamHIでのTg−rasH2マウスDNAの消化は、DIG標識ランダムプライムプローブとハイブリダイズした3つのバンド(7.0kbおよび2つの高分子量バンド)を生じた(図8B)。N15(図8B、レーン2およびレーン3)およびN20(図8B、レーン4およびレーン5)のTg−rasH2マウスの間ではハイブリダイズバンドパターンの差異は観察されなかった。BamHIでの非トランスジェニックマウスDNAの消化は、同じプローブといかなるハイブリダイズバンドも生じなかった(図8B、レーン1)。BamHI消化Tg−rasH2マウスDNAに対するDIG標識5’プローブ(図8C、レーン1)またはDIG標識3’プローブ(6,024〜6,712位;データは示さず)とのハイブリダイゼーションもまた、DIG標識ランダムプライムプローブを用いることにより得られる同じハイブリダイズバンドパターンを示した。本発明者らは、ノーザンブロット分析によってトランスジーンの発現を確認した。ヒトc−Ha−ras遺伝子の発現は、Tg−rasH2マウスの脳(B)において観察されたが、非トランスジェニックマウスでは観察されなかった。脳に加えて、肺(L)および噴門洞(F)が、Tg−rasH2マウスの各世代(N15およびN20)においてトランスジーンを発現した(図9)。逆転写PCR(PT−PCR)直接配列決定分析は、ヒトc−Ha−ras遺伝子におけるコドン12および61に優先的に生じた点変異が、Tg−rasH2マウスのいずれの世代においても見られなかったことを明らかにした。コード領域においては、変異ホットスポットにおける以外には何のヌクレオチド変化も見られなかった(データは示さず)。
(Tg−rasH2マウスにおけるトランスジーンの向きおよびコピー数の決定)
組み込まれたトランスジーンの構造を明確化するために、Tg−rasH2マウスゲノムDNAを、いくつかの制限酵素(HpaI、XhoI、XbaI、NcoI、NglII)で消化してトランスジーン中の公知の単一部位で切断させ、これをサザンブロット分析に供した。組み込まれたトランスジーンがヘッド−y−テイル配置で縦列に存在する場合、これらの制限酵素は7kbフラグメントを生じる。直接反復トランスジーンコピーのXbaI消化は7kbフラグメントを生じるが、逆方向反復は9.1kb(テイル−テイル)または4.9kb(ヘッド−ヘッド)のフラグメントを生じる。実際に、XbaIでのN20のTg−rasH2マウス由来ゲノムDNAの消化は、DIG標識5’プローブとハイブリダイズした7kbのバンドを生じた(図8C、レーン4)。トランスジーン中の公知の単一部位で切断する他の全ての制限酵素もまた、DIG標識5’プローブとハイブリダイズした7kbバンドを生じた(図8C、レーン2、レーン3、レーン5、およびレーン6)。これらの結果は、組み込まれたトランスジーンのいくつかのコピーがヘッド−テイル配置で縦列に存在することを示唆した。同じハイブリダイズバンドパターンはまた、N15のTg−rasH2マウスにおいても観察された(データは示さず)。
組み込まれたトランスジーンのコピー数を決定するために、Tg−rasH2マウスDNAをHindIIIで完全消化し、次いでそのアリコートを種々の濃度のBamHI制限酵素で部分消化した。この消化されたDNAを0.4%アガロースゲル上で電気泳動し、高分子量DNAサンプルを明白に分離した。DIG標識ランダムプライムプローブを用いたサザンブロット分析を図10に示す。ゲノムDNAをHindIIIで完全消化したとき、22.2kbのバンドのみがDIG標識ランダムプライムプローブとハイブリダイズされた(図10、レーン2)。この22.2kbフラグメントは、7.0kbのトランスジーンの最大3コピーを含み得る。HindIIIおよびBamHI二重消化は、DIG標識ランダムプライムプローブとハイブリダイズした8kbのフラグメントおよび複数の7kbのフラグメントを生じた(図10、レーン5)。22.2kb、8kb、および7kbのバンドに加えて、HindIII消化ゲノムDNAをBamHIでさらに部分消化したとき14.2kbおよび15kbのバンドがDIG標識ランダムプライムプローブとハイブリダイズした(図10、レーン3)。これらの結果は、Tg−rasH2マウスがそのゲノム中にトランスジーンを3コピー含むことを実証した。
(ゲノム/トランスジーン連結部およびそれらの対応するプレ組み込み部位のクローニングおよび配列決定)
サザンブロット分析から得られた結果は、HindIIIおよびBamHI二重消化によるTg−rasH2ゲノムDNAに由来する7kbおよび8kbのフラグメントがゲノム/トランスジーン連結領域および/またはトランスジーン/ゲノム連結領域を含むことを示唆した。Tg−rasH2マウスゲノム中のゲノム/トランスジーン連結部の精密な構造を研究するために、6〜9kbのHindIII−BamHI二重消化フラグメント(これは、スクロース濃度勾配上の超遠心分離によって分画した)を、pBSIIプラスミドの同じ部位に連結した。2つのPCRプライマー間に位置する配列を、適切なプライマー(pBSII−revおよびC(5’ゲノム/トランスジーン連結部のため)、pBSII−revおよびD(3’トランスジーン/ゲノム連結部のため))を用いてPCR(第1PCR)によって増幅し、そしてPCR直接配列決定によって分析した(GenBank Accession NO.AB072334)。増幅されたDNAフラグメントがPCRクローニング手順の人工産物である可能性を取り除くために、ゲノム/トランスジーン連結部の各側を、Tg−rasH2マウスゲノムDNAから、第2PCRによって以下のプライマーセットを用いて再クローニングした(C+AおよびD+B、図11C)。プライマーセットC+AおよびD+Bを用いて増幅された各々のPCR産物はTg−rasH2マウスにおいてのみ観察され、それぞれ、867bp(図11A、レーン1)および804bp(図10A、レーン3)の推定サイズであった。第2PCR産物のヌクレオチド配列は、第1PCR産物でのヌクレオチド配列と一致した。これらの結果は、P
CRクローニングによって得られたゲノム/トランスジーン連結部配列が実際にTg−rasH2マウスゲノム中に存在することを示唆した。
PCRアプローチを用いて、非トランスジェニックマウスDNAおよびTg−rasH2マウスDNAからのプレ組み込み部位の増幅および続くクローニングを行った。プレ組み込み部位をプライマーAおよびBを用いて増幅すると、独特の配列がトランスジーンの挿入部位に隣接した。プライマーセットA+Bは、2.2kbのPCR産物を非トランスジェニックマウスだけでなくTg−rasH2マウスにおいても生じた(図11A、レーン5およびレーン6)。さらに、この2.2kbのPCR産物はまた、DBA/2JマウスDNAからも得られた(データは示さず)。この実験において、本発明者らは、C57BL/6JJicマウスを非トランスジェニックコントロールとして使用し、プレ組み込み部位の決定を行った。しかし、オリジナルrasH2マウスはC57BL/6J×DBA/2J雑種系統において生成されたので、本発明者らは、顕微注入したヒトc−Ha−ras遺伝子がDBA/2J対立遺伝子に組み込まれたという可能性を排除できない。Tg−rasH2マウスはヘミ接合体であり、1つの野生型対立遺伝子を有する。2.2kbフラグメントがマウスゲノムDNA配列を含むことが判明したが、この配列は、Tg−rasH2マウスゲノム中では欠失していたかもしれない配列である。本発明者らは、PCR直接配列決定によってこの2.2kbフラグメントのヌクレオチド配列を決定し(GenBank Accession No.AB072335)、これをトランスジーン/ゲノム連結部の配列(GenBank Accession No.AB072334)および顕微注入したDNAの配列と比較した。DNA配列決定分析は、顕微注入したヒトc−Ha−ras遺伝子がマウス宿主ゲノム中に組み込まれた場合に1,820bpの配列が欠失していることを示した。
図12は、5’ゲノム/トランスジーン連結部(5’J)および3’トランスジーン/ゲノム連結部(3’J)の配列を、宿主ゲノム配列および注入したDNA配列と比較する。これら両連結部に共通した顕著な特徴は、親配列間の短い相同性の存在であった。5’Jの全長を見ると、注入された配列の5’末端に148bp欠失があり、親配列間で4bpの相同性(CCAG)が最終組み込み体の5’末端に存在した。3’Jの全長を見ると、トランスジーン組み込み体の3’末端で配列間に10bp(TCCTgCTGCC;小文字はミスマッチ位置を示す)が相同であったストレッチ内で90%の相同性があり、このトランスジーン組み込み体は、この3’末端および親配列では24bpの欠失を有した。本発明者らの結果は、この短い相同性の対合部分が染色体組み込み事象に寄与したという仮定を支持する。哺乳動物トポイソメラーゼIの切断部位のコンセンサス配列が、宿主ゲノムの5’Jおよび3’Jの付近で見出された。この配列はまた、5’J部位および3’J部位近辺で、注入されたDNA中で見られた。
(Tg−rasH2マウス中のトランスジェニック構築物および組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子の配列分析)
コンカテマー内のトランスジーン/トランスジーン連結部を、PCR制限フラグメント長多型およびPCR直接配列決定によって分析した。プライマーDおよびプライマーCを用いて増幅されたPCR産物は、Tg−rasH2マウスのみで見られ、これは1.4kbの推定サイズであった(図11A、レーン7、および図11B、レーン1)。増幅された1.4kbのフラグメントは、BamHI消化によって2つの0.7kbフラグメントに分割された(図11B、レーン2)。PCR直接配列決定がまた、トランスジーン/トランスジーン連結部がTg−rasH2マウスゲノム中のBamHI認識配列を保存すること、およびこれらの連結部で配列欠失や再配置がなかったことを示した。
(Tg−rasH2マウス中のトランスジーン構築物および組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子の配列分析)
この7.0kb構築物を、ヒトメラノーマおよび膀胱癌細胞系由来のc−Ha−ras遺伝子の各正常部と連結させることにより調製した(Sekiyaら、PNAS USA
81:4771−4775(1984);Sekiyaら、Jpn Cancer Res 76:851−855(1985))。これらの細胞系中のc−Ha−ras遺伝子のヌクレオチド配列は公共のデータベース上に登録されている(GenBank Accession NO.M30539およびV00574)。この構築物の7.0kbはキメラ人工ras遺伝子であったので、本発明者らには、顕微注入のために使用したこの構築物の正確なヌクレオチド配列が分からなかった。従って、本発明者らは、顕微注入DNAのアリコートのヌクレオチド配列を再確認した。本発明者らは、キメラヒトc−Ha−ras遺伝子(=BamHIフラグメントの7.0kb、6,992bp)のヌクレオチド配列を決定した。このキメラヒトc−Ha−ras遺伝子をメラノーマおよび膀胱癌細胞系由来のヒトc−Ha−ras遺伝子配列と比較したとき、この遺伝子にはいくつかの些細な差異が見られた。しかし、本発明者らは、各エキソンにおいていかなる変化も検出し得なかった。本発明者らはまた、組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子のヌクレオチド配列を決定した。組み込まれたヒトc−Ha−rasトランスジーン全体に及ぶ5つの重複PCR産物を、適切なプライマーを用いたPCRによって得(材料および方法を参照のこと)、これらをPCR直接配列決定によって分析した(GenBank Accession No.AB072334)。本発明者らは、N20のTg−rasH2マウス由来のヌクレオチド配列と、顕微注入したDNAのヌクレオチド配列との間に、縦列に並んだトランスジーンの両末端の小さな欠失を除いていかなる差異も検出し得なかった。
(考察)
オリジナルrasH2マウス(C57BL/6J×DBA/2Jの雑種)は、遺伝的に均質な集団を作出するために、C57BL/6JJic系統に対して戻し交雑された。現時点では、この戻し交雑はN20を超えて進行している。このトランスジェニック系の遺伝的バックグラウンドはC57BL/6JJicバックグラウンドでほぼ置換されたようである(約99.9998%,(Silver LM,Laboratory Mice.Silver LM 編,Mouse Genetics,Concepts and
Applications,New York:Oxford University
Press;1995,p.46−48)。発癌性試験において使用される動物の遺伝的バックグラウンドを考慮することが重要である。なぜなら、偶発的な腫瘍の発生率および化学的に誘発された腫瘍の発生率はマウス系統間で異なるからである。短期発癌性試験のために、本発明者らは、雌性BALB/cByJマウスと雄性Tg−rasH2マウスとの交配によって得られたF1雑種rasH2トランスジェニックマウス(CB6Fl−Tg−rasH2)の使用を推奨している。この独特の育種システムは、2つの利点を有する:1つは、化合物に対する広範な種々の反応を達成できること、そしてもう一方は、検査コントロールとして同胞非トランスジェニック(CB6Fl−NonTg)マウスを使用できることである。
本研究において、本発明者らは、Tg−rasH2マウスにおいて、組み込まれたヒトc−Ha−ras遺伝子が世代を超えて安定に伝達されることを示した。培養細胞または受精マウス卵に顕微注入されたDNA分子は、通常、宿主ゲノム中の単一の部位で組み込まれ、そしてこれらのトランスジーンが多重コピーで存在する場合、それらは主としてヘッド−テイル縦列並びで、またかなり稀な場合であるが、ヘッド−ヘッドまたはテイル−テイルの向きに並べられる(Filgerら、Mol Cell Biol 2:1372−1387(1982);GordonおよびRuddle,Gene 33:121−136(1985);PalmiterおよびBrinster,Annu Rev Genet20:465−499(1986))。Tg.AC トランスジェニックマウスは、陽性コントロール化合物12−0−テトラデカノイルホルボール13−アセテート
に対して応答しない集団を有することが知られ(Thompsonら、Toxicol Pathol 26:548−555(1998);Weaverら、Toxicol Pahthol 26:532−540(1998);Blanchardら、Toxicol Pathol 26:541−547(1998))、この非応答者は、逆方向反復のヘッド−ヘッド連結部の尖端部近辺に遺伝子欠失を示した(Thompsonら、Toxicol Pathol 前出;Honchelら、Mol Carcinog 30:99−110(2001))。いくつかの研究は、トランスジーンにおいてパリンドローム構造を有するこの逆方向反復配列がこの遺伝子の不安定性を生じることを示した(Akgunら、Mol Cell Biol 17:5559−5570(1997);Collickら、EMBO J 15:1163−1171(1996);Ford
and Fried,Cell 45:425−430(1986))。運良く、Tg−rasH2マウスゲノム中の縦列に並んだヒトc−Ha−rasトランスジーン中にはパリンドローム構造は存在しなかったが、本発明者らには、多数の世代にわたる大規模繁殖の間にトランスジーン再配置が生じたか否かは分からない。Aignerらは、育種プログラムは、チロシナーゼ遺伝子トランスジェニックマウスのいくつかの系を観察することにより、確立されたホモ接合性トランスジェニック系においては厳密な分子分析をさらに行うことなく多数の世代まで続けられ得ると提唱した(Aignerら、前出)。しかし、彼らは、彼らの実験において非常に少ない個体ではあるがトランスジーンコピー欠失によって影響を受けることに言及した。本発明者らは、Tg−rasH2マウスにおいて組み込まれたトランスジーンが数世代にわたって、かつ大規模繁殖の間に安定に伝達されたことを本研究において決定した(図7および図8)。450匹のTg−rasH2マウスのサザンブロット分析において、本発明者らは、個々のDNAサンプル間でいかなる差異も見出さなかった(データは公開せず)。しかし、本発明者らは、発癌性試験のために使用されるTg−rasH2マウスにおいて、定期的に遺伝子型および表現型のチェックが必要であると考える。なぜなら、基礎コロニーにおける非応答者変異体による汚染の可能性が発癌性試験結果の信頼性に影響を及ぼすからである。従って、本発明者らは、各世代での親Tg−rasH2(C57BL/6JJic−TgN(RASH2))マウスの完全性を、発現されたヒトc−Ha−ras遺伝子の詳細な分子遺伝学分析(サザンブロットおよびノーザンブロットならびにPCR直接配列決定を含む)によって確認すべきである(N23での最新の結果は明白な変化がない、データは公開せず)。さらに、実際の試験モデルCB6Fl−Tg−rasH2マウスは、標準的な陽性コントロール化合物としてN−メチル−N−ニトロソ尿素を用いる発癌性試験に供されるべきである。
サザンブロット分析の結果は、組み込まれたトランスジーンのコピー数を示した。一般に、組み込まれたトランスジーンの正確なコピー数を決定することは困難である。なぜなら、顕微注入されたDNAは、繰り返されて一部位当たり約1〜数百コピーの縦列のまたは逆方向の並びを形成するからである。Tg−rasH2マウスにおいて、顕微注入されたヒトc−Ha−ras遺伝子は、その配列中にいかなるHindIII認識部位も有さなかった。従って、このトランスジーン組み込み遺伝子座は、HindIII消化によってTg−rasH2マウスゲノムの外側で切断され、サザンブロット分析によって、1つの22.2kbバンドとして検出された。インタクトな7kbのヒトc−Ha−ras遺伝子がTg−rasH2マウスゲノム中に組み込まれた場合、この組み込まれたトランスジーンは3コピーを超えない。さらに、BamHI消化は、7kbのヒトc−Ha−ras遺伝子の全体に及ぶランダムプライムプローブとハイブリダイズした3つのバンドを生じた。このことは、この組み込まれたトランスジーンが、最少で3コピーを有したことを示唆する。しかし、遺伝子が環状形態で存在した場合、同様のバンド形成パターンが、この遺伝子の2コピーの組み込みによっても起こり得る。その場合、BamHI消化は、ハイブリダイゼーションをヒトc−Ha−ras遺伝子の7kbの1,793〜2,400位に及ぶ5’−プローブ(図8C、レーン1)または6,024〜6,712位に及ぶ3’−プローブ(データは公開せず)を用いて実施した場合に、2つのハイブリダイズした
バンドを生じる。これらの領域特異的プローブの両方ともがハイブリダイズし、ランダムプライムプローブと同様の3つのバンドを生じた。これらの結果は、組み込まれたトランスジーンが3コピーを有することを示唆した。両末端でのゲノム/トランスジーン連結部の配列の存在(図12)がまた、環状形態の組み込みの可能性を否定する。
顕微注入されたDNAがマウスゲノム中に組み込まれた場合にトランスジーンコピーが何らかの欠失または再配置を示したかどうかが分からないので、本発明者らは、Tg−rasH2マウスDNAからゲノム/トランスジーン連結部およびトランスジーン/ゲノム連結部を、そして非トランスジェニックマウスからそれらの対応するプレ組み込み部位をクローニングした。顕微注入されたDNAの末端配列は、トランスジェニックマウスにおいて比較的保存されており、最大でも数ヌクレオチドの欠失または挿入によって改変されることが報告されている(Pawlikら、Gene 165:173−181(1995);Hamadaら、Gene 128:1978−202(1993);McFarlaneおよびWilson,Transgenic Res 5:171−177(1996))。サザンブロット分析の結果から、本発明者らは、縦列に並んだトランスジーンコピーの両方の(5’および3’)末端がTg−rasH2マウスゲノムにおいていくらかの欠失を有しているのではないかと推測した。縦列に並んだトランスジーンがインタクトに組み込まれた場合、この組み込まれたトランスジーンコピーは、それらの連結部にBamHIを保存し、BamHI消化によって7.0kbのモノマーフラグメントのみを生じる。トランスジーン/ゲノム連結部の配列および顕微注入されたDNAの配列の比較は、Tg−rasH2マウスがトランスジーン組み込みの際に5’末端に148bp欠失および3’末端に24bp欠失を有することを示した(GenBank Accession No.AB072334)。両末端で見られるこれらの欠失は、トランスジーンコンカテマーが組み込みまで環状形態ではなく直鎖状形態で存在し、この直鎖状コンカテマーの遊離末端が組換えに好ましい部位であることを示唆した。トランスジーンのヌクレオチド配列分析は、組み込み連結部で親配列間に短い相同性(5’末端の4bpおよび3’末端の10bp中9bp)が存在することを示した。組み込み連結部での宿主ゲノムとトランスジーンとの間のこれらの短い相同性は、トランスフェクトされた線維芽細胞およびトランスジェニックマウス系において観察されている(Hamadaら、Gene 128:197−202(1993);McFarln\ana およびWilson,Transgenic Res 5:171−177(1996))。さらに、DNAトポイソメラーゼIは、顕微注入されたDNAの組み込みにおいて重要な役割を果たすようである。哺乳動物トポイソメラーゼIについての切断部位のコンセンサス配列(BeenおよびBurgess,Nucleic Acids Res 12:3097−3114(1984))は、いくつかのトランスジェニック系統(Hamadaら、前出、McFarlaneおよびWilsonら、前出)およびTg−rasH2マウス(図12)において、組み込まれたトランスジーン部位の付近で見出された。
それは、トランスジーン挿入の際に生じる宿主ゲノムの欠失または再配置の場合に依存する。Tg−rasH2の宿主ゲノムでは、顕微注入されたヒトc−Ha−ras遺伝子がマウス宿主ゲノム中に組み込まれた場合、ヌクレオチド欠失(1,820bp)が生じた。Tg−rasH2マウスにおいて欠失したヌクレオチド配列(GenBank Accession No.AB072335)を、BLAST2プログラムを用いてGenBankデータベース由来の配列と比較し、あり得る相同性を同定した。この欠失配列は、データベース上の公知の機能的遺伝子といかなる相同性も有さなかった。しかしながら、この欠失領域は、RPL7(60S Ribosomal Protein L7,GenBank Accession No.AL031589)偽遺伝子を含む染色体22において、クローンRP6−11O7由来のヒトDNA配列に対して相同な配列を有することが見出された。この312bpの欠失領域配列(698〜1,009位)は、ヒトDNAクローンRP6−11O7(9,023〜9,334位)と88%の相同性を示し
たが、RPL7のコード領域内では配列相同性は見られなかった。この欠失配列が種々のフレームおよび向きで対応するアミノ酸配列に翻訳されたとき、アミノ酸レベルでの配列相同性はみられなかった。本発明者らが決定した欠失配列がイントロンまたはプロモーター領域中に位置するという可能性も残っているが、宿主マウスゲノム配列中へのヒトc−Ha−ras遺伝子の挿入は、挿入変異を引き起こさない。Tg−rasH2マウスにおいては、基礎遺伝子発現は、トランスジーン挿入によって影響を受けなかった。この結論は、発現プロファイリングアプローチからの予備の証拠によって支持される。本発明者らは、9,514の単遺伝子(unigenes)の基礎遺伝子発現と比較して、Tg−rasH2マウス肝と非トランスジェニックマウス肝との間に目立った差異を見出すことはできなかった(データは公開せず)。
Tg−rasH2トランスジェニックマウスは、遺伝的に相同な集団であり、分子生物学的分析(トランスジーン構造および宿主ゲノム配列の変化を含む)によって精緻化されているが、これは、短期発癌性試験のために有用なげっ歯類モデルである。
(実施例4)
(神経毒性試験(NVT)のための動物モデルとしてのTgPVR21マウスのトランスジーン安定性)
ヒトポリオウイルスレセプター(PVR)遺伝子を有するトランスジェニックマウスは、Nomoto(PNAS,88:951−955,1991)によって作出された。このマウスは、財団法人実験動物中央研究所(Central Institute for Experimental Animals)(日本)でのサル神経毒性試験(MNVT)に対する代替法として、神経毒性試験(NVT)のための動物モデルとして開発された。トランスジーンの安定性は、NVTのための動物モデルとしてのTgPVR21トランスジェニックマウスの質の再現を保証するために必須の要因の1つである。TgPVR21マウスにおけるトランスジーンの安定性を調べるために、トランスジーンの分子構造をIQI系統に対するコンジェニックプロセスで異なる世代において分析した。
(材料および方法)
TgPVR21マウスにおけるトランスジーンの構造を、IQI系統に対する戻し交雑数N3、N15、およびN20で分析した(表A)。以下に記載のように、標準的な手順に従って、FISH、サザンブロットおよびノーザンブロット、およびRT−PCR分析を実施した(表A)。トランスジーンのコード領域のヌクレオチド配列もまた決定した。
(結果)
(FISH(図16))
FISH分析を、プローブとしてビオチン標識HC5クローンを用いて実施し、そしてアビジン−FITC法によって可視化した。図16に示されるように、それぞれ、N15のトランスジェニックホモ接合体の第13染色体(13B3位)において2つのツインスポットが、そしてN20のヘミ接合体では1つのツインスポットが見られた。この分析において観察されたトランスジーンの染色体位置は、以前の結果(Nomoto,1991、前出)と一致した。
(サザンブロット分析(図17))。
N15のトランスジェニックホモ接合体およびN20マウスのヘミ接合体から得られた10μgのDNAをBamHlで消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。DNAを膜上に転写した。この膜を図17に示すプローブ(PVR−αのコード領域)とハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたバンドは、マウスおよびコントロールのHC5クローンの両方において1.2kb、1.3kb、および10kbの大きさで見られた。これらの
所見は、以前の結果と一致した。このことは、再配置が起こらなかったこと、およびトランスジーンが、TgPVR21系統においてコンジェニックプロセスで安定であったことを示唆する。
(遺伝子発現分析)
ノーザンブロット、PT−PCR、および直接配列決定を、TgPVR21系統の遺伝子発現プロフィールを調べるために実施した(図18)。組み込まれたトランスジーン遺伝子の構造、および遺伝子スプライシングによって生成された3つのmRNA産物、ノーザン分析のためのプローブ、プライマー、および配列決定の一部を図19に示す。全細胞RNAをゲル中に流し、膜上に転写した。この膜を、図17に示すプローブ(PVR−α
mRNAのcDNA)とハイブリダイズさせた。TgPVR21系統のN15およびN20の両方で、1つの3.3kバンドが検出された。ここで得られたデータは、以前の結果(Nomoto,1991、前出)と一致した。TgPVR21マウスのN3、N15、およびN20の脳、腎臓、および腸から得られたRNAをPT−PCR分析に供した。選択的スプライシングによる組み込まれたPVR遺伝子に由来する3タイプのRNA産物(PVR−α、PVR−β、およびPVR−γ)が期待サイズ(149bp、173bp、および308bp)として検出された。N15マウス脳のRNAから得られたcDNAを用いて、PCR直接配列法を実施した。この結果は、組み込まれたトランスジーンが、PVR遺伝子のコード領域(1,254bp、開始コドンのATGから終止コドンのTGAまで)に完全にマッチしたRNAを生じることを確認した。
(実施例5)
(トランスジーン/マウスゲノム連結部位の分析)
本発明の生産方法に従えば、トランスジーンは、世代間で安定に伝達され得ることが確認された。この事実により、マウスを遺伝子型決定するための新規な方法を開発することができる。新規なトランスジェニックマウス系統(TgPVR21マウス−上記実施例4を参照のこと、およびrasH2マウス上記実施例3)におけるトランスジーン/マウスゲノム連結領域を含むトランスジーンの組み込み部位をクローニングおよび分析し、これらの系統を用いて新規な遺伝子型決定法の説明を行った。新規な遺伝子型決定法の一般の構想を図6に示す。この図において、濃い方の色の矢印は、野生型を検出するように設計されたPCRプライマーを示し、薄い矢印は、マウスのトランスジェニックタイプを検出するように設計されたPCRプライマーを示す。この方法に従うことにより、種々の遺伝子型(例えば、野生型ホモ接合体、ヘミ接合体(またはへテロ接合体)、およびトランスジェニックホモ接合体)が、容易かつ明確に区別され得る。DNAは、TgPVR21 マウスのトランスジェニックホモ接合体から得た。
(サザンブロット分析)
サザンブロット分析を、トランスジーン/マウスゲノム連結部位の5’領域についての制限酵素マップを得るために実施した。BamHI、EcoRI、BglII、NcoI、HindII、およびXbaIをDNA消化のために使用した。トランスジーンのベクター部分の700bpセグメントを、サザンブロット分析のためのプローブとして使用した(図20)。
サザンブロット分析の結果を図21Aに示す。各バンドの大きさを計算し、そしてこれを図21Bに示す。制限酵素マップをバンドの大きさの情報によって得、そしてこれを図21Cに示す。このマップは、以下の価値のある情報を提供する。第一に、トランスジーン/マウスゲノム連結点に関して非対称のパターンであることは、トランスジーンがヘッド−ヘッド配置を有しないことを示唆する。第二に、各制限酵素消化工程において1つのバンドのみが得られたという事実は、トランスジーンの1つのコピーがTgPVR21トランスジェニックマウスにおいてマウスゲノム中に組み込まれていることを示唆する。
(トランスジーン/マウスゲノム連結部の5’領域のクローニングおよび配列決定)
TgPVR21のトランスジェニックホモ接合体由来のゲノムDNAを、BglIIで完全消化した。2.9kbフラグメントを含むDNAを スクロース濃度勾配上での超遠心分離によって分画し、自己連結に供した(図22A)。5’ゲノム/トランスジーン連結部の増幅のために、連結されたDNAを用いて、逆PCRを実施した(図22B)。このPCR産物を直接配列決定に供し、連結部位のヌクレオチド配列情報を得た(第1PCR)。次いで、トランスジーン/マウスゲノム連結領域を含むDNAフラグメントを、プローブとして第1PCR産物を用いてゲノムDNAからクローニングした(図22C)。第2PCRを、鋳型としてクローニングされたDNAを用いて実施し、期待された1.5kbのPCR産物を増幅した(図22D)。最後に、ウォーキングプライマーを用いたPCR直接配列決定を実施し、トランスジーン/マウスゲノム連結点から1kb上流部のゲノム情報を得た(図22E)。
このトランスジーン/マウスゲノム連結部位の得られたマウスゲノム情報を用いて、BLAST検索を実施した。このBLAST検索は、クローニングされた200bpのフラグメント(PVR遺伝子)と完全な相同性を有する登録クローンNo.2833685を示し、そしてトランスジーン/マウスゲノム連結領域の上流部位の構造を、(図23)に示すように決定した。
(実施例6)
(広範な遺伝的多様性を達成するための遺伝的バックグラウンドの拡大)
実験動物を安全性試験において使用する場合、それらの遺伝的バックグラウンドを拡大(拡張)して、広範な遺伝的多様性を達成する(これは、順に、より広い範囲の感受性、多様な振る舞い、およびより広いスペクトルの表現型局面および演出型局面を生じる)ことが非常に望ましい。さらに、このシステムの再現性は、このような動物の連続的な遺伝子公正および安定性を検証することなく保証されない。広範な遺伝的バックグラウンドおよび連続的な遺伝子平等/安定性の両方を確実にするために、選択された近交系(および完全にコンジェニックの)系統からの雑種動物が生産される。遺伝的多様性のさらなる拡張が必要な場合、雑種系統は、他の雑種系統と交配されて、多交雑雑種が生産され得る。このように、広範な遺伝的多様性は雑種交配によって確実とされるが、連続的な遺伝的同一性/安定性は各選択系統の遺伝的モニタリングによって保証される。このプロセスにおける第一の工程は、第一世代(F1)動物について最も適切なバックグラウンドの選択である。異なる系統は標的疾患に関して異なる感受性、スペクトルおよび振る舞いを示すので、この選択は、種々の系統における標的疾患に関した情報の検討を包含する。このような情報は、例えば、Jackson Laboratoryデータベース(Bar Harbor,Maine,U.S.A.)、および当該標的疾患の当業者から入手可能である。バックグラウンド系統の選択の第二の構成要素は、種々の系統の生殖指標(reproductive index)に関して入手可能な情報の検討である。このような情報は、日本の財団法人実験動物中央研究所(Central Institute for
Experimental Animals)(CIEA)の生殖指標データベース(Reproductive Index Database)から入手可能である。
一般に、いくつかの近交系系統からのF1選択の目標は、ヒト患者において観察される多様性と同様に、標的疾患の多様性(例えば、癌の発生率およびスペクトル)の保存、および安定な生殖率の提供であり、これらにより、必要とされる動物数について良好なプランニングが可能になる。
種々の近交系マウス系統についての生殖データを以下の表Bに示す。
(表B)
Figure 2010029219
CIEAおよび日本クレア。
出生率=交配親マウス数に対する母マウス数の%。同胞の平均=分娩した母マウスの数に対する同胞総数。離乳比率=同胞総数に対する離乳した同胞の数。生殖指標=交配親マウス数に対する離乳した同胞の数。
(表C)
Figure 2010029219
表Bおよび表Cに示したデータを合わせて以下の表Dにする。
(表D)
Figure 2010029219
(実施例7)
(TgPVR21)
霊長類のみがポリオウイルスに感受性であるので、経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の神経毒性に対する安全性および一貫性は、サル神経毒性試験(MNVT)において従来アッセイされてきた。ヒトポリオウイルスレセプター(PVR)の遺伝子を有するトランスジェニック(Tg)マウスの開発の後、これらのマウスがOPV試験についてサルの代わりとなるのに適切であるかを評価した。Tgマウスの2つの系であるTgPVR1およびTgPVR21を試験した。脊髄に接種したTgPVR21マウスは、サル神経毒性試験を通過した3型および2型のOPVロットと、これに落ちたものとの間の識別においてサルと同程度に感受性であった。ポリメラーゼ連鎖反応および制限酵素切断によるこの新規な分子アッセイの結果は、各OPVロットが、ウイルスゲノム中に取るに足らない量の神経毒性復帰変異体を含むことを示した。サル神経毒性試験に落ちた全ての3型OPVロットは、この試験を通過したロットよりも高い割合の472−C復帰変異体を有した。多数の3型OPVロットの分析はまた、472−C 復帰変異体の含有量とTgPVR21マウス試験の結果との間に良好な相関があることを示した。有意なデータセットの全体像は、TgPVR21マウスモデルが3型および2型のOPVの評価に適切であることを示唆する。1型OPV(これは、3つのSabin株の中で最も安定である)の神経毒性についてのTgPVRマウス試験の必要性は、考慮中である。
霊長類のみがポリオウイルスの3つの血清型全てにおいて感受性であるので、経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の安全性およびその一貫性は、サル神経毒性試験(MNVT)において試験されている(1)。三価ワクチンバッチのために、約100匹のサルが使用される。多数の国において、MNVTは2回実施される(1回は、製造者によって、そして1回は国家規制当局によって)。高い費用に加えて、通常、サルは、野生から入手され、ヒトに外来の疾患を伝染する可能性がある。本発明者らは、代替の動物システム−ポリオウイルスに対して感受性であるトランスジェニックマウスの状態を記載する。
2グループの科学者が、ポリオウイルスに対する細胞レセプターをコードするヒト遺伝子をマウスゲノムに導入することによって、ヒトポリオウイルスレセプター(TgPVR)マウスを有するトランスジェニックマウスを得た(Renら、Cell 63:353−362,1990;Koikeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:951−955,1991)。ポリオウイルスに感染した場合、TgPVRマウスは、弛緩性麻痺を発症し(その後いくつかのマウスは死亡した)、そしてサルにおいて観察されるのと同様に、中枢神経系において組織学的病変を生じた。TgPVRマウスは、実験誘発灰白髄炎の病因およびポリオウイルス弱毒化の種々の局面を研究するために広範に使用されている(Renら、Cell 63:353−362,1990;Koikeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:951−955,1991
;Renら、J.Virol.65:1377−1382,1991;Renら、J.Virol.66”296−304,1992;Racanielloら、Develop.Biol.Stand.78:109−116,1993;Koikeら、Develop.Biol.Stand 78:101−107.1993;Horieら、J.Virol.68:681−688,1994;Koikeら、Arch.Virol.139:351−362,1994)。1992年において、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)は、異なる神経毒性度を有する3型ポリオウイルス株の使用により、TgPVRマウスの感受性(Koikeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:951−955,1991)とサルの感受性とを比較することを推奨した(World Health Organization,Bull.W.H.O.,1:233−237,1992)。大脳内に接種されたTgPVR1マウス系に対して米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)(FDA)により実施された研究は、このマウスシステムが、野生型Leon/37株、Sabin 3ワクチン株、および糞便から単離されたワクチンウイルスの実質的に脱弱毒化された(de−attenuated)クローンの間を区別し得ることを示した(Dragunskyら、Biologicals 21:233−237,1993)。しかしながら、大脳内接種TgPVR1マウスは、MNVTを通過したOPVロットとこれに落ちたロットとの間を区別しなかった。後に、Horieら(Horieら、J.Virol.68:681−688,1994)は、このマウスシステムがサルについて比較的低いが異なるレベルの神経毒性を有するポリオウイルス3型株間を識別できなかったことを見出した;この研究においてOPVロットは含まれなかった。TgPVR1マウスシステムはOPVを試験するのに不適切であるので、もう一方のマウス系(TgPVR21)に目を向けられた。MNVTにおけるのと同様に、ウイルスサンプルをマウス脊髄に接種した。MNVTにおけるワクチンバッチに対する合否判定は、サルの中枢神経系における組織学的病変のスコア付けに基づく(World Health Organization,WHO Tech.Rep.Ser.800;Appendix 3,annex 1,1990)。それに反して、MNVTに落ちたOPVロットを検出するためのTgPVR21マウスにおける試験は、灰白髄炎の臨床徴候の評価によって可能となった。有望な結果のため、1993年にはWHOにより共同研究が着手された(World Health Organization,WHO/MIM/PVD/94.1 World Health Organization,Geneva,1993)。この研究の目標は、TgPVR21マウスが、まず3型OPVについて、MNVTにおいてサルの代わりとなるのに適切であるかを評価することであった。財団法人実験動物中央研究所(Central Institute for Experimental Animals)の研究者は、制限された研究ツールから、大量にかつ規定の質標準を有して入手可能な信頼性のある動物供給源に、TgPVR21マウスを開発することに成功した(Hiokiら、Exp.Anim.42:300−303(和文),1993)。TgPVRマウスの維持、封じ込め、および輸送についての推奨は、ヒトウイルスに対して感受性のトランスジェニックマウスに関するWHOメモランダムにおいて与えられた(World Heath Organization,Bull.W.H.O..71:497−502,1993)。接種手順、臨床スコア付け法、統計学的解析の原理が記載された(Abeら、Virology 206:1075−1083,1995;Abeら、Virology 210:160−166,1995;Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)。それらの研究で使用されたウイルスサンプルは、まずMNVTにおいて試験され、そしてFDAで開発されたポリメラーゼ連鎖反応および制限酵素切断による非常に感度の高い分子アッセイを用いて、ウイルスゲノムにおける神経毒性復帰変異体の量について調べられた(Chumakocら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:199−203,1991)。後者の方法は、一価3型OPVの各ロットにおいて、取るに足らない量で472位(U→C)におよびより多い量で2493位(C→U)に復帰変異体を検出した
。3型OPVにおける472−C復帰は、MNVTにおける神経毒性の増大に対する重大な寄与因子として記録されている。MNVTに落ちたワクチンロットは、これらの復帰変異体を1%より多くで含んだ。3型OPVの472位のものと同様の戻り変異は、1型および2型のOPVロットにおいても見出されたが、神経毒性に対するそれらの寄与は、それほど強くはなかった(Rezapkinら、Virology 202:370−378,1994;Taffsら、Virology 209:366−373,1995)。Sabin1型および2型のウイルスのゲノムにおいて生じる神経毒性の原因となる他の変異が存在し得る。
TgPVR21マウスが、MNVTに落ちた3型ワクチンロットを検出し得るか否かを決定するために、WHOの研究は、3% 472−C復帰変異体を含む1つのワクチンロット、および比較のために参照ワクチンWHO/III(これは、0.5% 472−C復帰変異体を含む)を伴った。参加した全ての研究所からの結果は、TgPVR21マウスが明確にこれら2つのワクチン間を識別することを示した(Wood,D.J.,Vaccine(印刷中),1996)。この識別は、臨床スコアおよび感染の臨床徴候の出現日(すなわち、失格時間)を判定基準として使用した場合に、より良好であった。50%麻痺用量および50%致死用量は、より満足のいくものではなかった。MNVTに落ちた3型OPV調製物の大部分は、472−C復帰変異体を3%未満で、それらのほとんどは2%未満で含んだ。簡潔のために、後者のワクチンは、「限界(marginal)」と名付けられた。3つの限界ワクチン(1.3%、1.4%、および1.7%)が、WHO/IIIおよびNC−2(それぞれ、0.5%、0.8%の472−C復帰変異体)と共にFDAで試験された(Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)。3つの限界ロットは全て、神経毒性、臨床スコア、および失格時間のうち2つの主要な指標について高い確率値で、マウス試験に落ちた。1.4%しか472−C復帰変異体を含まず、かつMNVTに通過したもう1ロットのワクチンロットは、このマウス試験に落ちた。この所見は、MNVTよりもこのマウス試験の方が感度が高いことを示唆し得る。
興味深い問いは、ワクチンまたは実験サンプルにおける2493−U復帰変異体の含有量とサルおよびTgPVR21マウスにおける神経毒性との間の関係であった。サルについての神経毒性におけるこれらの復帰変異体の役割に関する報告は、論争の余地があった(Tatemら、J.Virol.66:3194−3197,1992;Chumakovら、J.Virol.66:966−970,1992)。最初の報告は、サルについて神経毒性の増大において最も重要であるとしてこの位置の戻り変異を考察したが、二番目の発表における所見は違った風に示した。この位置の変異は、472位での変異よりも早く発現する。従って、472−Cの割合においていくらかの増大を有するワクチンロットは、通常、非常に高い含有量(100%まで)の2493−Uを有する。いくつかの製造者は、100% 2493−U復帰変異体および非常に低い含有量(0.3%)の472−Cを有する、Sabine 3クローンに由来するワクチンを作製した。これらのワクチンが、2493−U復帰変異体を低い含有量で有するワクチンよりも、ヒトに対して安全ではなかったことを示すデータはない。それらの1つである、MNVTにおいてWHO/IIIおよびNC−2参照と比較した参照ワクチンF313は、前者2つのワクチンほど毒性ではなかった(16,Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)。しかしながら、TgPVR21マウスにおいて、F313は、WHO/IIIおよびNC−2よりも高いレベルの神経毒性を有した(Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)。TgPVR21マウス試験は、F313と472−C復帰変異体の含有量が増大したその誘発体(これは、「不良」ワクチンを模倣する)との間を識別し得るか否かを決定することが必須になった。従って、F313ワクチンに由来し、かつ1.8%および2.4%の472−Cを含む2つの実験通過サンプルを、親F313ワクチンに対してマウスにおいて試験した。TgP
VR21マウス試験は、これらのサンプル間を区別した(Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)。Abeら(Abeら、Virology 210:160−166,1995)は、TgPVR21マウスにWHO/IIIおよびF313参照を接種し、それらを38℃で増殖した2つのF313誘発調製物と比較した。彼らは、MNVTとマウス試験結果との密な相関を認めた。不運にも、38℃で増殖したこれら2つのウイルス調製物は、不良ワクチンに類似しているとはみなされることはなかった。なぜなら、それらはそれぞれ、78%および94%の472−C復帰変異体を含んでおり、弱毒のインビトロ温度感受性マーカーをrct40−からrct40+へ変更したためである。このことは、製造条件下のワクチンにおいて生じ得るよりも高い神経毒性であることを示した。OPV生産の要件(World Health Organization,WHO Tech.Rep.Ser.800:46−49,1990)によれば、細胞培養物におけるワクチンウイルス増殖は、35.5±0.5℃を超えることはない。これよりも高い温度は、より神経毒性であるウイルス粒子の選択的な増殖を生じさせる。
TgPVR21マウスにおけるOPV−3研究の間に、全ての実験において最も識別するウイルス用量は、50%組織培養感染量(TCID50)の3.5 log10および4.5 log10であった。限界ワクチンの信頼性のある識別はまた、これらの2つの量のみを用いるが、各量を接種したマウスの数を増大させることによって達成され得ることが見出された。一群あたりのマウスの数が十分であることに加えて、もう1つの要因が成功のために重要である;MNVTのための接種材料中のウイルス含有量の1.0 log10TCID50の差異は重要ではない(Contrearasら、J.Biol.Stand.16:195−205,1988)。対照的に、マウス試験において用量依存性がより強いこと、および接種材料の容量が非常に小さいこと(0.5μl)が、マウス試験とサル試験との間の差異について最も考えられる理由である。必要な精度を達成し、研究所間の結果を調和させるために、WHOガイドライン(World Health Organization,DocumentWHO/BLG/95.1,Chap.9,p.67−74,World Health Organization,Geneva,1995)に記載の力価測定アッセイ法に従うことが推奨された。
FDAで実施された2型OPVを用いた実験(Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)では、TgPVR21マウスに、2型参照ワクチンWHO/IIと共に、MNVTに通過した3つのワクチンロットおよびMNVTに落ちた2つのロットを接種した。さらに、3つの実験サンプルを「良好な」ワクチンロットから得た。これらのサンプルのうち1つはMNVTを通過し、そして2つは落ちた。この結果は、MNVTとTgPVR21マウス試験との間の良好な相関を示した。
いずれの1型OPVロットも繰り返してはMNVTに落ちなかったので、FDAは、MNVTに1回は落ちたが繰り返した試験では通過した1つのワクチンロットおよび1つの実験通過調製物を使用した(Dragunskyら、Biologicals 24:77−86,1996)。TgPVR21マウスの脊髄にこのワクチンロットおよび通過サンプルを接種しても、これらの2つの調製物と米国参照ワクチンとの間を識別することはできなかった。この陰性の結果は、むしろ1型OPVの特色によるものである。第一に、Sabin 1株は、これら3つの血清型の中で最も安定であり、おそらく、マウスにおいて試験される「不良」の1型OPVロットは存在しない。いくつかの場合において、1型ワクチンロットは、MNVTに落ちるが、この試験が繰り返された場合、通過することもある(Marsdenら、J.Biol.Stand.8:303−309,1980;Lovenbook,I.,データは公開されず)。当業者の中には、1型OPVについてサル試験を必要とすることに疑問を感じることさえもある。Abeら(16)は、38℃でウイルスを増殖させることにより1型OPVのサンプルを得た。これらの調製物は
、MNVTおよびTgPVR21マウス試験に落ち、rct40マーカーが陰性から陽性に変化した。このことは、再度、3型を用いた彼らの研究(Abeら、Virology
210:160−166,1995)と同様に、これらサンプルの神経毒性が、いかなる不良ワクチンに対して予期されるよりも高かったことを示している。これらの調製物について、MNVTとTgPVR21マウス試験との間の相関があったという事実は、1型OPVについてTgPVR21 マウス試験に落ちたことが、マウスモデルの不適合性ではなく、株が製造条件下で増殖される場合のSabin 1株の安定性によるものであるという意見を強める。
過去数年間に蓄積されたデータの大部分の全体像は、脊髄接種TgPVR21マウスが、3型および2型のOPVの神経毒性の評価のための適切なモデルを提供することを示唆する。このマウスモデルは、サルに代わることができるとみなされ得る。1型OPVについてマウス試験を適用できるかどうかは、未だなお解明されるべきである。TgPVRマウスの生産の確立、それらの病原体のない健康状態、およびサルに比較して費用が低いことが、OPVの神経毒性試験に対して大きな興味となる。
(実施例8)
(Tg cHa−ras)
迅速発癌性試験を、ヒト表現型c−HRAS遺伝子を有するトランスジェニック(Tg)マウス、すなわちBALB/cByJ×C57BL/6JF1−TgN(HRAS)2またはCB6F1−HRAS2マウスを用いて実施した。本研究を、迅速発癌性試験システムのためのモデルとしてのCB6F1−HRAS2マウスの評価における第一の段階として実施した。種々の遺伝子毒性発癌物質の短期試験の結果は、CB6F1−HRAS2マウスが、コントロールの非Tgマウスよりもこれらの発癌物質に対して感受性であることを示す。この第一段階評価研究によれば、コントロール非TgマウスよりもCB6F1−HRAS2マウスにおいて、種々の遺伝子毒性発癌物質での処理の後により高い確率で、より悪性の腫瘍がより急速に発症することおよびその発生率がより高いことが予期され得る。CB6F1−HRAS2マウスは、迅速発癌性試験システムの開発のための動物モデルとしての候補の見込みがあるようである。
基礎医学および臨床医学からのアプローチに加えて公衆衛生からのアプローチを通じて癌を克服するために絶え間ない努力がなされているが、癌はなお、多くの国において死亡原因の第一位となっている。多くのヒト癌は、周囲の化学発癌物質への曝露によって引き起こされ得ると考えられている。その危険性を少なくするために、発癌物質を同定し、取り除く大きな努力がなされてきた。ヒト発癌物質を同定するために、疫学的研究および実験動物を用いた発癌性試験が使用される。疫学的研究は非常に信頼性があり、おそらくヒト発癌物質を確認する唯一の方法であるが、このアプローチはとても遡及的であるので、多くの犠牲者が出現した後にのみ発癌物質の同定がなされ得る。
発癌性試験は、開発のプロセスにおいて薬物の安全性を評価している場合、および周囲の発癌物質を同定している場合、不可欠である。現行の実験動物を用いる発癌性試験は、ヒトの危険性の評価に常に関連があるわけではない;マウスおよびラットが、それらの短い寿命期間および体長の小ささのために、一般に使用される。げっ歯類の発癌性試験は、2年より長くかかり、多数の動物を必要とするので、これは、動物試験のための広い場所、多数の実験技術者、および莫大な費用を必要とする。発癌性試験において陽性結果が得られた場合、新規な薬物の開発のための時間、骨折り、および費用が浪費されたと悟ることも珍しくはない。さらに、現在の環境には、試験されていない多くの化学物質があり、何千もの新規な化学物質が毎年合成される。発癌物質同定のプロセスを改善して、より多くの化学物質が評価され得るようにする必要があることが明らかである。従って、短期間内で発癌性を評価し得る迅速発癌性試験システムの開発は、新規薬物の開発および周囲の
発癌物質の同定の効率を改善するために必須である。
迅速発癌性試験システムを開発するために、発癌物質に対して感受性である動物が不可欠である。プロトオンコジーンを有するトランスジェニック(Tg)動物および/または腫瘍抑制遺伝子を欠く動物は、正常動物よりも種々の発癌物質に対して感受性であると期待される。なぜなら、発癌性は、おそらくプロトオンコジーンおよび/または腫瘍抑制遺伝子の不活性化の結果として、選択的増殖利点を獲得してクローン増殖を受けた感受性細胞において、遺伝的および後成的な損傷によって駆動される多段階プロセスであるからである。
rasファミリー遺伝子は、細胞増殖の調節に関与し、種々のヒト腫瘍において(Lowyら、Annu.Rev.Biochem.62:851−891,1993;Bos,J.L.,Cancer Res.49:4682−4689,1989;Andersonら、Environ.Health Perspect 98:13−24,1992)ならびに実験動物モデルにおいて(Andersonら、Environ.Health Perspect 98:13−24,1992;Guerreroら、Mutat.Res.185:293−308,1987)、体性点変異によって活性化される。点変異によるrasファミリー遺伝子の活性化は、ヒト腫瘍の約30%で観察される。従って、ヒトc−HRAS遺伝子を有するTgマウスは、迅速発癌性試験のための動物モデルとしての候補であり得る。
迅速発癌性試験のための動物モデルとしてのヒトc−HRAS 遺伝子を有するTgマウスの有用性および制限に関する共同の評価研究が、本発明者らの施設、数社の日本製薬企業、および米国国立環境衛生科学研究所(U.S.National Institute of Environmental Health Sciences)(NIEHS)(R.R.Maronpot博士および R.W.Tennant博士)で現在進行中である。Tgマウスの有用性および制限を評価するために、遺伝学的かつ微生物学的に規定されたTgマウスを大量に生産および供給するためのシステムが不可欠である。このあらましにおいて、本発明者らは、c−HRAS遺伝子を有するTgマウスの種々の発癌物質に対する発癌性応答を調査することにより実施した本発明者らの現行の評価研究を導入し、そしてこの応答と、コントロールの非トランスジェニック(非Tg)マウスの応答および2年バイオアッセイの結果とを比較する。
ヒトプロトタイプc−HRAS遺伝子を有するTgマウスの特徴:プロトタイプヒトc−HRAS 遺伝子を有するTgマウスはもともとKatsukiおよびその同僚(財団法人実験動物中央研究所(Central Institute for Experimental Animals)(CIEA))によって確立された(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990);このマウスは、この遺伝子をそれ自身のプロモーター領域と共に有し、この遺伝子は、プロトタイプc−HRAS遺伝子産物(すなわちp21)をコードし、この産物は、NIH3T3細胞を形質転換する能力がない(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。各Tgマウスのゲノムに、縦列の並びで、5または6コピーのヒトc−HRAS遺伝子が組み込まれる(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。トランスジーンは、腫瘍および正常組織において発現され、免疫ブロット分析によって検出されるp21の総量は、非TgマウスにおけるよりもTgマウスにおいて2〜3倍高い(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。Tgマウスの正常組織においては、トランスジーンの変異は検出されない(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。rasH2マウス(C57BL/6×BALB/cF2)の約50%が、生誕18ヶ月後以内に自発腫瘍を発生させた(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。この腫瘍
保持マウスの約60%が、血管肉腫を有する(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。肺腺癌、皮膚乳頭腫、ハーダー腺癌、およびリンパ腫もまた、18ヶ月齢で見られるが、よりずっと低い発生率である(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。しかし、いずれの腫瘍も前新生物病変も、6ヶ月齢のrasH2 マウスのF2トランスジェニック子孫では見られない(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)。
本研究で使用したCB6F1−HRAS2マウスの遺伝的バックグラウンドは、トランスジェニックの雄性C57BL/6Jマウスおよび雌性BALB/cByJマウスのF1であった。トランスジェニック雄性C57BL/J6マウスを、C57BL/6Jマウスとの8回より多くのrasH2マウスの戻し交雑によって確立した。このトランスジーンを有するC57BL/6J雄を、BALB/cByJ雌マウスと交雑した。このF1子孫を、ポリメラーゼ連鎖反応またはサザンブロット分析によって、ヒトプロトタイプc−HRAS遺伝子の存在についてスクリーニングした。ヒトc−HRAS遺伝子を有するF1マウス、すなわちBALB/cByJ×C57BL/6JF1−TgN(HRAS)2(CB6F1−HRAS2)マウス(CIEAで生産、7〜9週齢)を発癌性試験のために使用した。同腹子の間で、ヒトc−HRAS遺伝子を有さないマウス(CB6F1)を非Tgコントロールとして使用した。本研究においては、多数のCB6F1−HRAS2マウスが、規格化された実験動物の形態で必要とされるので、実地開発が必要である。この開発において使用される構想およびシステムは、この問題の最初の概説においてNomuraにより詳細に記載される。
雄および雌のCB6F1−HRAS2マウスの体重は、対応する非Tgマウスの80〜90%であった。試験した器官(脳、甲状腺、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、副腎、精巣、および卵巣)に関して、Tgマウスの器官:体重比は、非Tgマウスに類似した。血液生化学データおよび血液学データは、Tgマウスと非Tgマウスとの間で有意な差異はなかった。77週齢の雄および雌のCB6F1−HRAS2マウスの生存率はそれぞれ、53%および32%であった。CB6F1−HRAS2マウスの約50%が血管肉腫のために死亡し、そしてその死亡動物のうち約20%が、肺腺癌および/または肺腺腫を有していた。このことは、rasH2マウスにおける以前の結果(Saitohら、Oncogene 5:1195−1200,1990)と一致する。本研究においては、6ヶ月の発癌性実験の間に、CB6F1−HRAS2マウスにおいて少数のみの自発肺腺腫が観察されたが他の自発肺腫瘍は観察されなかった。この実験は、遅くとも35週齢までで終結した(35週齢のCB6F1−HRAS2マウスの生存率は95%以上であった)。CB6F1−HRAS2マウスにおいて自発腫瘍の発生率が低いことにより、本発明者らは、このマウスを、迅速発癌性試験のためのツールとして使用することができる。
迅速発癌性試験:迅速発癌性試験に関するこれらの研究は、本発明者らの施設および数社の日本製薬企業でなされている(表1)。
(表1.日本においてCB6F1−HRAS2マウスを用いた迅速発癌性試験の結果)
Figure 2010029219
4NQO=4−ニトロキノリン−1−オキシド;MNNG=N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン;MNU=N−メチル−N’−ニトロソ尿素;DEN=N−メチル−N’−ニトロソ尿素;MAM=メチルアゾキシメタノール;4HAQO=4−ヒドロキシアミノキノリン−1−オキシド。
国立医薬品食品衛生研究所(National Institute of Health Sciences)(NIHS)。山之内製薬株式会社。中外製薬株式会社。三共株式会社。CIEA。米国−日本共同研究。
参考文献9;未公開データ;統計学的に有意でない。
4−ニトロキノリン−1−オキシド(4NQO)(水溶性の遺伝子毒性発癌物質)は、マウスにおいて、皮膚(Nakaharaら、Gann 48:129−136,1957)および口腔(Hawkinsら、Head Neck 16:424−432,1994)の扁平上皮癌、肺腫瘍(Inayama,Y.,Jpn.J.Cancer Res.77:345−350,1986)を誘発することが公知である。4NQQ処理CB6F1−HRAS2マウス(雄および雌)の約90%が、体重1kg当たり15mgの4NQOの単回皮下(s.c.)注射の16週後に皮膚乳頭腫を有した(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。皮膚の扁平上皮癌は、4NQO処理CB6F1−HRAS2マウスにおいてのみ観察され、コントロール非Tgマウスにおいては観察されなかった。4NQO処理非Tgマウスおよびビヒクル処理動物においては、いかなる皮膚腫瘍も観察されなかった。4NQOはまた、肺腫瘍を誘発した。肺腺癌は、4NQO処理CB6F1−HRAS2マウスにおいてのみ観察され、対応する非Tgマウスにおいては観察されなかった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。また、4NQO処理CB6F1−HRAS2マウスにおける肺腺腫の発生率も、対応する非Tgマウスよりも高かった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。
シクロホスファミド(抗新生物剤)は、げっ歯類およびヒトにおいて発癌性である(International Agency for Research on Cancer,IARC vol 26,p 165−202,Lyon,France,1981)。主要標的器官は、膀胱、肺、乳腺、およびリンパ系である(International Agency for Research on Cancer,IARC v
ol 26,p 165−202,Lyon,France,1981)。10mg/kgまたは30mg/kgのシクロホスファミドの25週間の間、週に2回の慢性的な経口投与は、CB6F1−HRAS2マウスおよび非Tgマウスにおいて肺腫瘍を誘発した(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。腺癌は、1匹のシクロホスファミド処理雄性CB6F1−HRAS2マウスにおいてのみ観察され、対応する非Tgマウスやビヒクル処理動物では観察されなかった。シクロホスファミド処理CB6F1−HRAS2マウスにおける肺腺腫の発生率は、対応する非Tgマウスとは有意な差異はなかった。他の器官(例えば、膀胱、乳腺、およびリンパ系)においては、いかなる腫瘍も観察されなかった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。
N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)はアルキル化剤であり、マウスを含む種々の動物種において発癌性である(International Agency for Research on Cancer,IARC vol 4,p 183−195,Lyon,France,1974)。噴門洞および食道は、経口投与後のMNNGの標的器官である(International Agency for Research on Cancer,IARC vol 4,p183−195,Lyon,France,1974)。2.5mgのMNNG/マウスの単回経口投与は、100%の雄性および雌性のCB6F1−HRAS2マウスにおいて噴門洞乳頭腫を誘発したが、非Tgマウスでは、MNNG処理の13週後、11%の雌および0%の雄しか乳頭腫を発生させなかった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。MNNG投与の26週後にあっても、扁平上皮癌が、MNNG処理CB6F1−HRAS2マウスでのみ観察されたが、対応する非Tgマウスでは観察されなかった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。
N−メチル−N−ニトロソ尿素(MNU)は、種々の動物種において発癌性であり、種々の部位(例えば、皮膚、噴門洞、リンパ系、および肺)に腫瘍を誘発する(International Agency for Research on Cancer,IARC vol 17,p117−255,Lyon,France,1978)。MNUの腹腔内(i.p.)注射(75mg/kgの投薬量で1回または15mg/kgの投薬量で5回(5日連続して1日に1回)のいずれか)は、CB6F1−HRAS2マウスにおいて種々のタイプの腫瘍を誘発した(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。対応する非Tgマウスと比較して、MNU処理後のCB6F1−HRAS2マウスにおいて、皮膚乳頭腫の有意に高い発生率が見られた(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。MNUは、皮膚乳頭腫を、CB6F1−HRAS2マウスにおいて高い発生率で誘発したが、非Tgマウスでは、少なくとも14週間の観察の間は、皮膚乳頭腫も過形成も誘発しなかった。MNU処理CB6F1−HRAS2マウスはまた、高い発生率で噴門洞乳頭腫を発生させたが、MNU処理非Tgマウスは乳頭腫を発生させなかった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。噴門洞扁平上皮癌もまたMNU処理CB6F1−HRAS2マウスでのみ観察され、非Tgマウスでは観察されなかった。Andoら(Ando,ら、Cancer
Res.52:978−982,1992)は、MNUの単回腹腔内(i.p.)注射後、rasH2マウスにおいて、対応する非Tgマウスに比較して噴門洞および皮膚の乳頭腫の発生率が高いことを報告した。リンパ腫の発生率は、75mg/kgのMNUで1回処理した雄性CB6F1−HRAS2マウスにおいて、対応する非Tgマウスにおける応答と比較して高かった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。
N,N−ジエチルニトロソアミン(DEN)は、種々の動物種において発癌性である(International Agency for Research on Cancer,IARC vol 17,p 83−124,Lyon,France,1978)。DENの主要標的器官は、肝臓、肺、および噴門洞である(International Agency for Research on Cancer,IARC vol 17,p 83−124,Lyon,France,1978)。90mg/kgのDEN単回腹腔内(i.p.)注射は、CB6F1−HRAS2マウスにおいてのみ、DEN投与の3ヵ月後という早期に、噴門洞扁平上皮癌および肺腺癌を引き起こした(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。DEN投与の6ヵ月後、CB6F1−HRAS2マウスにおける両タイプの悪性腫瘍の発生率とも、実質上増大した(Yamamotoら、Carcinogenesis
17:2455−2461,1996)。6ヶ月の観察期間の間、DEN処理非Tgマウスでは、これらの腫瘍は観察されなかった。CB6F1−HRAS2マウスにおける肺腺腫の発生率は、DEN投与の3ヵ月後では、非Tgマウスと同様であった。DEN投与の6ヶ月後、腺腫の発生率は、CB6F1−HRAS2マウスよりも非Tgマウスにおいて有意に高かった。このことは、CB6F1−HRAS2マウスにおいて肺腺癌の発生が増大したこと(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)に対応する。
ビニルカルバメート(ウレタンの代謝物)は、肺および肝臓の新生物を誘発することが公知である(Masseyら、Carcinogenesis 16:1065−1069,1996;Maronpotら、Toxicology 101:125−156,1995)。60mg/kgのビニルカルバメートの単回腹腔内(i.p.)注射は、肺の腺腫および腺癌を、それぞれ100%および50%のCB6F1−HRAS2 マウスにおいて、この発癌物質投与の16週後に誘発した(Maronpotら、原稿準備中)。また、非Tgマウスも90%より多い発生率で肺腺腫を発生させたが、腫瘍の増加は、対応するCB6F1−HRAS2マウスにおけるよりも低かった。肺腺癌の発生率は、CB6F1−HRAS2マウスにおけるよりも非Tgマウスにおいてずっと低かった。前者のマウスでは約90%が脾臓血管肉腫を有したが、非Tgマウスでは発生しなかった。
メチルアゾキシメタノール(MAM)は、げっ歯類で発癌性であり、結腸腫瘍(Reddyら、J.Natl.Cancer Inst.71:1181−1187,1984;Deschnerら、J.Cancer Res.Clin.Oncol.115:335−339,1989)、肺腫瘍(Reddyら、J.Natl.Cancer Inst.71:1181−1187,1984)、および肛門周囲扁平上皮癌(Kumagaiら、Gann 73:358−364,1982)を誘発する。20mg/kg/週(6週間)のMAMの1回の皮下(s.c.)注射は、初めのMAM投与24週後に、CB6F1−HRAS2マウスにおいて、皮膚乳頭腫、結腸腺腫様ポリープ、直腸の扁平上皮癌、および胃乳頭腫を引き起こしたが、非Tgマウスでは引き起こさなかった(Yamamotoら、Carcinogenesis 17:2455−2461,1996)。皮膚乳頭腫は、肛門および陰嚢に制限された。このことは、異なる系統の非Tgマウスでの以前の報告(Kumagaiら、Gann 73:358−364,1982)と一致する。MAMで処理したCB6F1−HRAS2マウスおよび非Tgマウスにおいて、同様の肺腺腫発生率が観察された。
4−ヒドロキシ−アミノキノリン−1−オキシド(4HAQO,10mg/kgまたは20mg/kg)(遺伝子毒性発癌物質)の単回静脈内(i.v.)投与は、噴門洞および皮膚の乳頭腫をCB6F1−HRAS2マウスにおいて誘発したが、これらの腫瘍は、非Tgマウスにおいては、少なくとも発癌物質の投与26週内ではほとんど観察されなかった。この発生率は低かったが、他の腫瘍(例えば、白血病および胸腺腫)がTgマウス
のみで観察された。4HAQO処理Tgマウスも非TGマウスも、膵臓外分泌部(これまで、この発癌物質の標的組織であると考えられていた(Raoら、Int.J.Pancreatol.2:1−10,1987))においては腫瘍を発生させなかった。これらの迅速発癌性試験の結果を上記の表1に要約し、そして迅速発癌性試験に使用した化学物質のリストを表2に示す。
(表2.迅速発癌性試験のための化学物質リスト)
Figure 2010029219
太字の化学物質=迅速発癌性試験済みまたは現在試験中
a参考文献9; b米国−日本共同研究; CIEAで迅速発癌性試験実施済みまたは実施予定。
Salmonella変異誘発アッセイ陰性発癌物質であるエチレンチオ尿素は、ラットおよびマウスにおいて甲状腺新生物を誘発することが公知である(National Toxicology program of the National Institute of Environmental Health Sciences,Environ.Health Perspect.101:264−266,1993)。発癌性試験のために、雌性マウスのみを使用した。マウスに、0.1%または0.3%のエチレンチオ尿素を含む食餌を、28週間与えた。0.1%の濃度のエチレンチオ尿素は、甲状腺腫瘍を、CB6F1−HRAS2マウスにおいても非Tgマウスにおいても誘導しなかったが、0.3%エチレンチオ尿素は、Tgマウスの26%、および非Tgマウスの20%において、甲状腺腺腫を誘発した。また、甲状腺癌の発生率は同様であり(Tgマウスで9%、そして非Tgマウスで4%)、Tgマウスと非Tgマウスとの間に有意な差異は観察されなかった。
DEN(Ando,ら、Cancer Res.52:978−982,1992)お
よびビニルカルバメート(Maronpotら、Toxicology 101:125−156,1995)は共に、肝腫瘍の強力な誘発因子として公知である。しかしながら、これらの化合物で処理したCB6F1−HRAS2マウスおよびコントロール非Tgマウスはともに、肝腫瘍を発生しなかった。マウスにおいて、多重遺伝子座が肝腫瘍発生を制御することが報告されている(Gariboldiら、Cancer Res.53:209−211,1993;Manentiら、Genomics 23:118−124,1994)。C57BL/6マウスは、C3Hマウス(肝臓癌形成に対して非常に感受性である系統(Diwanら、Carcinogenesis 7:215−220,1986;Draganiら、Cancer Res.51:6299−6303,1991))に比較して、化学的に誘発された肝臓癌形成に対して相対的に低い感受性を有する(Diwanら、Carcinogenesis 7:215−220,1986;Stanleyら、Carcinogenesis 13:2427−2433,1992)。BALB/cマウスは、肝臓癌形成に対して非常に耐性であり、雌性C57BL/6マウスと雄性BALB/cマウスとのF1雑種は、肝臓癌形成に対して低い感受性を有することが公知である(Maronpotら、Toxicology 101:125−156,1995,Stanleyら、Carcinogenesis 13:2427−2433,1992)。従って、CB6F1マウス(雄性C57BL/6マウスと雌性BALB/cマウスとのF1雑種)は、肝臓癌形成に対して、相対的に低い感受性を有するという可能性が非常に高いようである。
HRAS遺伝子の活性化が、いくつかのマウス系統(例えば、C3HおよびB6C3F1)の肝腫瘍において頻繁に検出される(Maronpotら、Toxicology 101:125−156,1995)。しかしながら、HRAS変異の頻度は、DENまたはビニルカルバメートのいずれかで誘発されたB6CF1マウスの肝腫瘍では非常に低い(Maronpotら、Toxicology 101:125−156,1995)。HRASの変異は、肝臓癌形成に対して高い感受性を有するマウス系統において、有意に肝腫瘍誘発の一因となり得るが、低い感受性を有するマウス系統においてはそうではない(Maronpotら、Toxicology 101:125−156,1995)。
皮膚の乳頭種/扁平上皮癌、噴門洞の乳頭種/扁平上皮癌、およびいくつかの他のタイプの腫瘍が、CB6F1−HRAS2マウスにおいて明らかに観察されたが、発癌物質のタイプに関係なく、CB6F1−HRAS2マウスにおけるシクロホスファミド、MNU、DEN、またはMAMによって誘発された肺腺腫の発生率および多発性は、非Tgマウスにおける対応する発癌物質によって誘発された腫瘍に関連した発生率および多発性よりも有意に高いものではなかった。発癌物質曝露後、種々のマウス系統間で、肺腫瘍発生率において有意な差異がある(Malkinson,A.M.,Toxicology 54:241−271,1989)。A/J(肺発癌に対して非常に感受性である)とC57BL/6J(肺発癌に対して耐性)との間の組換え近交系の遺伝学的研究の結果は、3つの遺伝子座が、これらの系統における肺腫瘍形成に対する感受性における差異に寄与することを示唆した(Malkinsonら、J.Natl.CancerInst.75:971−974,1985)。Ki−rasオンコジーンは、これらの感受性遺伝子座の1つとして提唱されているが(Youら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5804−5808,1992;Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1589−1593,1994)、各マウス系統の肺腺腫感受性(例えばA/Jは感受性であり、BALB/cは中間であり、C57BL/6は耐性である)は、このKi−ras遺伝子における多型とよく相関している(Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1589−1593,1994)。本研究で使用したCB6F1マウスは、相対的に高い肺腺腫感受性を有し得る。他方で、肺腺癌は、CB6F1−HRAS2マウスにおいてのみ発生したが、種々の発癌物質に
応答して、全くか、またはほんのわずかしか発生しなかった。このことは、CB6F1−HRAS2マウスが、コントロールCB6F1マウスと比較して、幾分かのさらなる肺腺腫の悪性進行をいくぶんかさらに加速させ得ることを示す。
これらの結果は、コントロール非TgマウスよりもCB6F1−HRAS2マウスにおいて、種々の遺伝子毒性発癌物質での処理の後により高い確率で、より悪性の腫瘍がより急速に発症することおよびその発生率がより高いことが予期され得ることを示す。これらの初期評価研究は、CB6F1−HRAS2マウスが、迅速発癌性試験システムの開発のための動物モデルとしての候補の見込みがあるようであることを示した。
着眼点:変異原性が発癌性の主要なメカニズム決定因子であるが、これは、発癌性のために十分でも必要でもない。非変異原性化学物質のおよそ3分の1が発癌性であることが示されており、そして変異原性化学物質のおよそ3分の1が2年げっ歯類バイオアッセイにおいて発癌性でなかった(Ashbyら、Mutat.Res.257:229−306,1992;Zeigers.,Environ.Mol.Mutagen 16(Suppl.18):1−14,1990)。2種のげっ歯類において腫瘍を誘発する化学物質は、1種のみにおいて腫瘍を誘発する化学物質よりも、異なる種間の遺伝的可変性によって影響を受けないことが、提唱されている(Tennant,R.W.,Mutat.Res.286:111−118,1993)。従って、トランス種の発癌物質の方が、単一種の発癌物質よりも、ヒトに対して危険であるようである。
トランス種発癌物質に関して、本発明者らは、15のSalmonella変異誘発アッセイ陽性発癌物質(4NQO、シクロホスファミド、MNNG、MNU、DEN、ビニルカルバメートMAM、4HAQO、プロカルバジン、チオテパ、NNK、フェナセチン(phenacetin)、4,4’−チオジアニリン、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシド、およびp−クレシジン)および6つのSalmonella変異誘発アッセイ陰性発癌物質(エチレンチオ尿素、1,4−ジオキサン、エチルアクリレート、シクロスポリン、フルフラル、およびベンゼン)の迅速発癌性試験を完了したか、または既に開始している(表2)。これらの発癌物質の中で、シクロホスファミド、プロカルバジン、チオテパ、フェナセチン、シクロスポリン、およびベンゼンは、ヒト発癌物質として分類されるか(グループ1)、またはヒトにおいておそらく発癌性である(グループ2A)。本発明者らは、少なくともさらに2つのsalmonella陽性トランス種発癌物質(クペロンおよびメルファラン)およびさらに1つのsalmonella陰性発癌物質(ジエチルスチルベストロール)を用いて試験を実施する予定である(表2)。メルファランおよびジエチルスチルベストロールは、ヒト発癌物質として分類される。これらの発癌物質の6ヶ月発癌性試験は、このCB6F1−HRAS2マウスが、遺伝子毒性発癌物質および/または非遺伝子毒性発癌物質の迅速かつ正確な同定のための動物モデルとして有用であるか否かをさらに評価し得る。
ヒト発癌物質同定における偽陽性の誤りは、適切な薬物開発の妨げとなり得、そして社会的な困惑を引き起こし得るので、発癌物質の推定過剰はできる限り回避しなければならない。従って、CB6F1−HRAS2マウスが、非発癌物質に対して陰性反応を生じるか否かを明らかにしなければならない。1つのSalmonella変異誘発アッセイ陽性非発癌物質(p−アニシジン)および1つのSalmonella変異誘発アッセイ陰性非発癌物質(レゾルシノール)の迅速発癌性試験が現在進行中である(表2)。この後、本発明者らは、Salmonella陽性非発癌物質およびSalmonella陰性非発癌物質に対してより傾注すべきである。本発明者らは、少なくとも4つのSalmonella陽性非発癌物質(8−ヒドロキシキノリン、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、および2−クロロメチルピリジン)および3つのSalmonella陰性非発癌物質(ロテノン、キシレン、二硫化テトラエチルチウラム)を用いた研究をCIEAで実
施する予定である(表2)。上述の化学物質の中の6つの化学物質を、日本および米国で同時に試験したか、または試験予定である(表3)。
(表3 CB6F1-HRAS2マウスを用いる短期(26週)発癌性試験に関する米国−日本共同研究)
Figure 2010029219
会社1=山之内製薬株式会社
会社2=協和発酵工業株式会社。
欧州連合、米国、および日本における化学物質の発癌能の評価のための現行の規制要件は、2種のげっ歯類における長期げっ歯類発癌性研究を約定している。長期バイオアッセイの費用、それらの広大な動物使用、乏しい基礎メカニズム、およびヒト危険性評価についての相対的に低い関連性のために、日米EU医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for the Registration of Pharmaceuticals for Human Use)(ICH)において、2種のげっ歯類を用いる2年発癌性試験間の必要性が、ヒト安全性を弱めることなく減じられ得るか否かが考慮されてきた。発癌物質同定のための短期バイオアッセイモデルとしてのp53−ノックアウトマウスまたはTG.ACマウス(v−Ha−rasトランスジェニックマウス)のいずれかの使用についての検証に関する近年の研究が、NIEHSでTennantおよびその同僚によって実施されている(Tennantら、Environ.Health Perspect.103:942−950,1995)。現時点では、種々のトランスジェニック動物の間で、p53−ノックアウトマウス、CB6F1−HRAS2マウス、およびTG.ACマウスは、化学発癌物質の同定のための短期バイオアッセイモデルの最も有望な候補であるようである。なぜなら、有用性の可能性を示す相当量のデータが既に蓄積されているからである。Tgマウスを用いる迅速発癌性試験システムの有用性および制限はまだなお十分に評価されていないが、潜在的な発癌物質を検出するためのTgマウスの使用は、ICHのガイドラインの一部としての議論の論題である。現在の2種のげっ歯類を使用する2年発癌性試験は1種(おそらくラット)を使用する2年試験、さらに短期のバイオアッセイおよびメカニズム研究に取って代わられる。
(実施例9 rasH2マウスにおける再現性および反復性ある発癌性応答)
rasH2マウスモデルが、演出型レベルで再現性および反復性のある振舞いを備えるか否かを確認するため、特定の発癌物質に対する発癌性応答を多数の施設で調べ、腫瘍発生の発生率を施設間で比較した。
(材料および方法)
発癌物質:N−メチル−N−ニトロソ尿素(MNU)(アルキル化剤および遺伝子毒性発癌物質)を陽性コントロール発癌物質として使用した。陽性コントロール群中のマウスに、クエン酸緩衝生理食塩水(pH4.5)中に溶解した75mg/kgのMNUの単回腹腔内(i.p.)注射を与えた。75mg/kgの用量は、以前の用量発見研究に基づ
いて確立した。
マウス:1997に、rasH2系統の核コロニー中のマウスをC57BL/6に戻し交雑し、そして戻し交雑の世代はN14を超えた。本研究では、1997〜1990年において財団法人実験動物中央研究所(Central Institute for Experimental Animals)(日本)によって生産されたCB6F1−Tg−rasH2マウスを使用した。
施設:マウスを、11の異なる施設(三共製薬株式会社、田辺製薬株式会社、エーザイ株式会社、帝国臓器製薬株式会社、第一製薬株式会社、塩野義製薬株式会社、大日本製薬株式会社、三菱、藤沢薬品工業株式会社、ワイス株式会社、および日本新薬株式会社)に供給した。各施設での全ての作業を、ILSI、ACT(国際生命科学協会(International Life Sciences Institute)、発癌性試験の代替(Alternative to Carcinogenicity Testing))プロジェクトとしてCIEAのUsui氏によって実施した。
(結果)
噴門洞、皮膚、および膣における腫瘍(例えば、扁平上皮腫瘍)、ハーダー腺(Hardrian gland)における癌、肺における腺腫、ならびに悪性リンパ腫の発生率は、MNU処理rasH2マウスにおいて増大した。噴門洞腫瘍(図25)および悪性リンパ腫(図26)の高くて、一貫した発生率が、施設間で観察された。陽性コントロールとしてのMNUに対するrasH2マウスの発癌物質の振舞い全体が、質的および量的にも一貫した確固とした陽性応答に基づいて十分であると判断された(Usui,T.,ら、Toxicologic Pathology 29(Suppl.):90−108,2001)。
明細書全体の全体にわたって引用した全ての参考文献、および本明細書中に引用した参考文献は、参考として本明細書中に援用される。本発明はそれらの特定の実施形態に関して説明されているが、種々の変更がなされ、そして均等が本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく置換され得ることを、当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセスなどを採用するために、多くの改変がなされ得る。全てのこのような改変は、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲内である。
表Aは、本願のための実験において使用した材料および方法を示すチャートである。
Figure 2010029219
(配列表)
Figure 2010029219
Figure 2010029219

Claims (1)

  1. 本明細書に記載されるような発明。
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