図1は、本発明の原理構成図を示す。
図1において、1次電子1は、照射系で発生された1次電子である。
2次電子2は、1次電子を細く絞ってサンプル8に照射し、放出された2次電子である。
ビームスプリッタ3は、1次電子1をサンプル8に照射し、サンプル8から放出されt2次電子2を1次電子1から分離するものであって、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6から構成されるものである。
第1偏向装置4は、1次電子1を偏向するものであって、磁界、電界、あるいは磁界と電界で構成される4極以上の偏向装置である。
第2偏向装置5は、1次電子1と、走行方向が逆の2次電子2とを分離するものであって、少なくとも磁界あるいは磁界と電界の両者で構成され、各4極以上の偏向装置である。
第3偏向装置6は、第1偏向装置と同様のものであり、2次電子を偏向するものであって、磁界、電界、あるいは磁界と電界で構成される4極以上の偏向装置である。
対物レンズ7は、結像系を構成するものであって、1次電子1を細く絞ってサンプル8に照射し、放出された2次電子を第2偏向装置5に入射させるものである。
サンプル8は、細く絞った1次電子1を照射し、2次電子2を放出させて、高分解能の2次電子像を生成する対象のサンプルであって、例えばマスク、ウェハ上のパターンなどである。
次に、図1の構成の動作を説明する。
(1)1次電子1をビームスプリッタ3を構成する第1偏向装置1に入射し、図に示すように進行方向に向かって左方向に、磁界、電界、あるいは磁界と電界の作用により偏向させる。
(2)(1)で偏向されて第2偏向装置5に入射した1次電子1は、該第2偏向装置5により進行方向に向かって右方向に、磁界あるいは磁界と電界の両者の作用により偏向され、結果として、第1偏向装置の偏向方向と第2偏向装置の偏向方向とが逆であって、偏向収差をキャンセルした後、対物レンズ7の軸上にくるようにする。
(3)(2)で対物レンズ7の軸上に偏向された1次電子1は、当該対物レンズ7で細く絞られてサンプル8を照射すると共に、図示外の2段偏向系でX,Y方向に走査される。そして、2次電子2をサンプル8から放出する。
(4)(3)で放出された2次電子2は対物レンズ7の軸上を上方向に走行し、第2偏向装置5に入射し、磁界と電界の作用により、1次電子1とは反対の図示の走行方向に偏向される。
(5)(4)で進行方向の右方向に偏向された2次電子は、第3偏向装置6に入射し、図に示すように、進行方向の左方向に偏向され、結果として第2偏向装置の偏向と第3偏向装置の偏向方向が逆方向であって、偏向収差をキャンセルした後、2次電子検出系の軸上を上方向に走行する。
以上のように、1次電子1は第1偏向装置4と第2偏向装置5、2次電子は第2偏向装置5と第3偏向装置6とによって偏向収差をそれぞれキャンセルするので、偏向収差を低減してより細く絞った1次電子をサンプル8に照射することで高分解能の2次電子画像を生成することを実現し、かつ放出された2次電子も、第2偏向装置5と第3偏向装置6とによって偏向収差をそれぞれキャンセルするので、偏向収差を低減して2次電子を1次電子から分離し、かつ高感度、高分解能で2次電子を検出することが可能となった。以下順次詳細に説明する。
次に、図1の構成の動作説明する。
(1)第1偏向装置4を通過した1次電子1は内側に偏向される。1次電子1は1エレクトロンボルト程度の電子エネルギー分散があるので、偏向量はエネルギー依存性があり、1次電子のビームが虹のように分散し空間的に膨らむ。
(2)第2偏向装置5では第1の偏向装置とは全く同じ量逆方向に1次電子1を偏向する。全く同じ量だけ逆方向に偏向するため虹のように分散した1次電子軌道は再び1つの軌道に収束する。
以上のようにお互いに全く逆方向に偏向する必要があるため全く同じ特性を有する偏向装置(磁界、電界、磁界と電界)を用いてお互いに逆方向に偏向すると最も良い結果が得られる。第1偏向装置4で分散した1次電子は第2偏向装置5を通過するとともに逆分散作用によりもとの分散の無い1次電子のビーム状態に戻る。このとき、第1偏向装置4と第2偏向装置5の作用により1次電子は最初の軸から所定距離だけ内側にシフトした状態になる。この状態で対物レンズ7に入射し対物レンズ7で絞られてサンプル8の表面に照射される。これにより、1次電子1の分散が小さくなり対物レンズ7における収差が小さくできるので1次電子を小さなスポットに絞ることが出来る。
偏向装置は一種の演算装置と考えることが出来る。1回目に加えた演算(F(x))と全く逆の演算F-1(x)を行うことにより電子ビーム偏向に伴なって発生する色々な収差をキャンセルする原理である。ただしこの演算には不思議な性質があり、逆演算を行うと電子ビームは元の軌道に戻らずに座標系の水平シフトが起こるために、電子ビームの走行を変化させることが出来る。これは、最初の演算から時間が経ってから逆演算を行うことによる。この原理からは、第1の偏向装置と第2あるいは第3の偏向装置の特性が全く同じで作用が逆であることが望ましい。
(3)サンプル8の表面では照射された1次電子1に刺激されて2次電子2が発生しサンプル8と対物レンズ7の間に印可された図示外の電圧(リターディング電圧)によって加速され2次電子2となって対物レンズ7に向かって進行する。対物レンズ7を通過した2次電子は第2偏向装置6によって1次電子1とは逆方向に偏向される。
(4)偏向された2次電子2はエネルギーに依存した偏向が行われて分散が起こるが、第3偏向装置6によって逆方向に偏向することで逆分散が起こり、元の分散の無い2次電子2に戻る。
以上のように、本発明の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6からなるビームスプリッタ3をを利用すると1次電子1あるいは2次電子2にエネルギー分散があっても偏向時に新たに色収差を加えることなく、1次電子と2次電子を分離することが可能となる。これにより写像2次電子の像分解能が格段に向上する。
これにより、本発明では、電磁偏向が90度以上に偏向が可能なので1次電子が来る方向とほぼ同じ逆の方向に2次電子を送り返すことが出来るため、従来の装置のように1次電子用のコラムと2次電子用のコラムが左右に開いた大きな装置にすることなく、同じ方向を向いたように設置可能で電子ビーム装置全体をコンパクトにすることが出来る。このように本発明は並立したコラム、かつコンパクトなので、2つのコラムを1つのコラムのように実装することも出来る。
図2は、本発明の1実施例構成図を示す。これは、図1の原理構成を実際の装置に組み込んだ模式図を示す。ここで、1次電子1、2次電子2、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6、対物レンズ7、サンプル8は図1の同一番号と同じであるので説明を省略する。
図2において、絞り9は、第1偏向装置4で偏向された1次電子1を通過させる開口と、第2偏向装置5で偏向された2次電子2を通過させる開口とを模式的に示したものである。
スペーサ5-1は、第2偏向装置5を対物レンズ7に固定するスペーサである。
コイル7-1は、対物レンズ7を励磁する電流を流すコイルである。
V1,V2は、サンプル8との間に印加する電圧であって、リターディング電圧であり、1次電子1の電位を低くして低加速電圧の1次電子をサンプル8に照射すると共に、サンプル8から放出された2次電子2を加速して上方向に走行させるものである。
次に、図2の構成の動作を説明する。
(1)電子銃で発生した1次電子1は第1偏向装置4にて内側に偏向される。ついで第2偏向装置5で逆方向に曲げられ電子銃から放出された1次電子の軌道と平行に成るように調整される。この状態で図示外のアライメントレンズあるいはメカニカルなアライメント機構などを用いて対物レンズ7の中心(軸)に入射するように調整する。対物レンズ7は純鉄、パーマロイやバーメンジュール等高透磁率材料から出来たポールピースを所望の漏れ磁場が生じるように適切な形に成形した部材にポリウレタン等の被覆を行った銅線などを巻き付けてコイルを形成したものである。漏れ磁場の発生するポールピース先端部の切れ目の場所が最大の磁場密度を示す場所であり電磁レンズとして機能する。もちろん対物レンズ7は小型化や省エネルギーのために必要に応じて永久磁石で構成しても良い。電磁レンズの場合は発熱するので冷却水を流すなどして温度を一定に保つ。偏向装置も電磁式の場合には発熱があるので、偏向量を一定に保つために冷却して室温付近の一定の温度に管理することが望ましい。対物レンズ7の上部に電磁コイル7-1からなる電磁偏向装置を設けるが偏向装置の磁場が対物レンズ7に漏れないようにシールド効果を持たせるために装置間には隙間を設けることが望ましい。
(2)電磁偏向を受けた1次電子が対物レンズ7の中心(軸)を通過できるように電磁偏向装置と対物レンズ7の間にはアライメント用のコイルあるいは電極が存在する。もちろんその制御装置も存在する。対物レンズ7を通過した1次電子は対物レンズ7の磁場によって収束されサンプル8の表面にてnmオーダーのスポットを形成する。
(3)1次電子1の照射の刺激によりサンプル8で発生した2次電子2はサンプル8と対物レンズ7との間に加えられた加速電場(リターディング電圧V1,V2)の力を受けて垂直方向に上昇し対物レンズ7により一旦収束されたのち発散しながら第2偏向装置5にて1次電子1とは反対方向に偏向される。
(4)偏向された2次電子2は次いで第3偏向装置6により逆方向に偏向されて垂直方向に上昇し、結果として2次電子の方向が右方向へとシフトが実現される。2次電子2は検出器の表面にて結像しサンプル8の表面の2次電子像が得られる。尚、実施例では1次電子と2次電子が平行になるような偏向量の場合を示したが、ビームのシフト量は任意であり装置の構成方法によって最適化することが出来る。
図3は、本発明の詳細説明図(電子源)を示す。
図3の(a)は通常のTFE例を示す。
図3の(a)において、エミッター31は、電子を放出するものである。エミッター31としては、タングステン、モリブデン、LaB6のような低仕事関数の材料、金属酸化物等を用いたサーマルエミッターやWチップにZrO拡散を用いて仕事関数を下げた熱電場型エミッタ(TFE)あるいは室温近傍でエミッタ先端を尖らして高い電場を印加することで電子ビームを得るコールドフィールドエミッターあるいは最近ではMEMS(半導体微細加工技術)を用いたコールドフィールドエミッターあるいはアレイ、コヒーレントあるいはパルスレーザー等光で電子を励起するフォトカソードなどがある。
エクストラクター32は、エミッタ31と該エクストラクタ32との間に電圧を印加し、印加電圧で発生する強力な電場によって電子ビームを引き出すものである。
加速電極33は、エクストラクタ32で引き出された1次電子を、所望加速電圧に印加する電圧を印加するものである。
レンズ34は、加速電極33で加速された1次電子を収束するものである。
対物アパチャー35は、該対物レンズアパチャー35を通過した1次電子のみを図示外の対物レンズ8に入射し、細く絞ってサンプル8の上に照射させるものである。
次に、図3の(a)の構成を説明する。
(1)図3の(a)はエミッター31から1つの1次電子のビームを放射させ、1つの穴を有する対物アパチャー35で1つの1次電子のビームを、図示外の対物レンズ7で細く絞ってサンプル8の上に照射するものである。
図3の(b)は、マルチビーム例を示す。この図3の(b)中のエミッター31、エクストラクタ32、加速電極33、レンズ34は、図3の(a)と同一であるので説明を省略する。
図3の(b)において、対物アパチャー35は、複数の穴を有する対物アパチャーであって、該穴に対応した複数の1次電子のビームを形成するものである。穴の直径は数ミクロンから数十ミクロン程度である。
次に、図3の(b)の構成を説明する。
(1)図3の(b)はエミッター31が1つの1次電子のビームを放射させ、複数の穴を有する対物アパチャー35で複数の1次電子のビームを形成し、図示外の対物レンズ7で細く絞ってサンプル8の上にそれぞれ照射する。
図3の(c)は、マルチエミッター例を示す。
図3の(c)において、エミッター31-1は、複数のエミッタを有するものである。
エクストラクタ32-1は、エミッタ31-1に対応した数のエクストラクタを有するものである。
加速電極33-3は、エミッタ31-1に対応した数の加速電極を有するものである。
レンズ34-1は、エミッタ31-1に対応した数のレンズ(収束レンズ)を有するものある。
対物アパチャー35-1は、エミッタ31-1に対応した数の穴を有するものである。
次に、図3の(c)の構成を説明する。
(1)図3の(c)は複数のエミッター31-1が複数の1次電子のビームを放射させ、複数の穴を有する対物アパチャー35で複数の1次電子のビームを形成し、図示外の対物レンズ7で細く絞ってサンプル8の上にそれぞれ照射する。これにより、複数のエミッタから放出された複数の1次電子のビームが細く絞られてサンプル8の上にそれぞれ照射されることとなる。
(2)そのため、図3の(c)では、半導体微細製造技術(MEMS技術)を用いて作られた小さなマルチビーム電子銃用のエミッタのアレイを利用する。コールドフィールドエミッターはエミッタとエクストラクタ間に生じる高い電場を利用してトンネル効果を生じさせ常温で電子を放出させるものである。コールドフィールドエミッターを利用する場合はエミッタ電流を安定化するために超高真空あるいは極高真空を用いることが望ましい。エミッターアレイサイズは自由に変えることが出来る。用途に応じて数平方mm以下から数平方メートル以上と自由に作れる。シリコンやプラスチック等の曲面上に作ることも出来る。従って、検査速度を決定する総電流量はマイクロアンペアーからアンペアオーダーまで自由に作ることが出来る。
(3)MEMS技術を用いれば先端曲率半径が数10nmのエミッターレイを容易に作成可能である。エミッターはシリコン、W、Mo、CNT、ダイヤモンドなど現在知られている材料を使用することが出来る。
エミッター先端とエクストラクターの距離をミクロンオーダーにすることで高々10ボルト程度の非常に低い電圧印可、しかも常温で電子ビームを放出させることが出来る。原理的には従来のコールドフィールドエミッターと同じなので放出された電子ビームのエネルギー幅は0.3エレクトロンボルトと狭くビームを細く絞るのに都合が良い。半導体技術で作られるのでそれぞれのエミッターの特性が非常に良く揃っている。ビームの幅は放出される面積により数ミクロンから数mmまでかなり広い範囲を取ることが出来る。
(4)また、ビーム1本あたり1マイクロアンペアー以下の低い放出電流で運用した場合1年を超える寿命が容易に得られる。各電子ビームは独立した点光源として機能するので、お互いに干渉することなく非常に均一な電流値を持つマルチビームが得られる。電流値は1つの電子源を分割して得た場合とは大きく異なり1つのビーム当たり1ナノアンペアーを容易に超えることが可能でビーム本数を増加することで総電流量を際限なく増加出来る。例えば1万本のビームを使えば総電流は10μAにもなり、従来では考えられない非常に高速な電子ビーム検査装置を作ることが出来る。
(5)エクストラクターやアノード、電子ビームを平行化するためのレンズは静電レンズなどをMEMS技術で電子銃内に作り込むことも出来る。
図4は、本発明の詳細説明図(2次電子検出装置)を示す。
図4の(a)は、1つの2次電子検出装置の場合を示す。この図4の(a)は、サンプル8の表面で発生した2次電子を加速してエネルギーが一定のビーム状にした後にレンズを用いて1点に集中させ、その場所に電子検出装置を配置した例を示す。
次に、特徴を説明する。
(1)この図4の(a)は、元の電子ビームの断面積よりもずっと小さな面積を有する検出器が利用可能なため、検出器の電気容量を小さく保つことが可能で超高速の検出が出来る。入射してくるエネルギーによって検出効率が変化するので、変化を避ける場合は、2次電子発生時に十分に加速を行い、2次電子エネルギー分布が感度に効かないようにすると良い。
(2)また、2次電子のエネルギーの違いによって焦点位置が変化することを利用して焦点位置とは異なる位置に電子検出装置を複数置くことにより、エネルギーを分離して検出することも出来る。これは、元素分析などに2次電子を使用する場合に相当する。エネルギーに対応して色を付けて表示すれば、サンプル8の表面の元素分布をカラー画像の色の変化として得ることが出来る。この場合は、検出する2次電子を検出器の直前で加速して電子検出器の感度を高くする。電子検出装置としてはフォトダイオードやアバランシェダイオード、MCP、フォトマル等が利用できる。
図4の(b)は、複数の2次電子検出素子を有する2次電子検出装置の場合を示す。この図4の(b)は、マルチ電子ビーム検出に対応したものである。
(1)マルチ電子ビームをサンプル8に照射することでサンプル8の表面から2次元的に同時発生した2次電子群はサンプル8と対物レンズ7間に加えられた電圧により加速されたのちレンズで収束されて図示のように2次元の2次電子像を形成する。これは明視野の光学顕微鏡と同じ原理である。従って原理的な分解能は利用している2次電子のビームの波長と開口率NAで凡そ決定される。
(2)焦点面にはサンプル8の表面の2次元の2次電子像が拡大して再現されるため平面上に並べられた複数の2次電子検出装置によってこの像の輝度あるいはコントラスト情報が検出される。2次電子検出装置としては2次電子が直接入射可能なように半導体表面の保護膜を除去加工されたフォトダイオードやアバランシェダイオード、MCP、MPPC、フォトマル、超高速のCCD,CMOS、TDI撮像素子等が利用できる。2次元撮像素子を利用した場合、画像取得速度を1つのデバイス当たりGピクセル毎秒よりも高くすることが出来る。最先端のデバイスで10Gピクセル毎秒を達成できる。取得された信号は直ちにデジタル信号に変換され画像処理用のコンピュータに送られる。通信手段は金属ワイヤをはじめ高速通信用の光ファイバーケーブルを利用出来る。AD変換装置により電子検出器で発生した電気信号はアナログ信号からデジタル信号に変換され、DRAM,SRAM、フラッシュメモリーあるいはHDDなどのメモリーに蓄積される。CPU,ASIC,FPGA、GPU等高速演算装置によりフィルター等画像処理が施されサンプル表面の情報がディスプレイ上に再現される。得られた画像は必要に応じて合成されて必要な大きさ、解像度の画像となる。得られた画像とCAD設計データあるいは近接する同じ形状を持つとされる画像を基準画像として比較して差異を検出することで高速検査を行うことが出来る。
(3)通常のCDSEMと同じように得られた画像の各箇所の長さを測定することでCD測定を行うことが出来る。大画面高精細画像を高速に取り込むことが可能なので、取り込んだ画像の輪郭を抽出しフォトマスクの光学シミュレーションに利用することも出来る。
図4の(c)は、2次元撮像素子からなる2次電子検出装置の場合を示す。この図4の(c)はマルチ電子ビーム検出などに対応したものである。
(1)この図4の(c)は一般の高速光検出素子を利用可能にしたもので、2次電子のビームをレンズで収束させて加速しシンチレータの表面に衝突させて電子を光に変換する。光に変換した2次電子像をフォトダイオードやアバランシェダイオード、MCP、MPPC、フォトマル、CCD、CもS、TDI撮像素子等を利用して検出する。シンチレータには応答速度がnsオーダーと高速な半導体シンチレータであるGaN系や無機材料あるいは有機材料、プラスチック系を用いると好適である。尚、シンチレータに大量の電子ビームが照射されると帯電してしまうため、帯電防止のために表面にnmオーダーのアルミなどの金属膜を蒸着してアースして用いる。シンチレータの発光波長と光検出器が最大感度を持つ波長を合わせると良い。
(2)2次元撮像素子のように画像蓄積を行って電子検出を行う場合は100ns程度の少しゆっくりした応答速度を持つシンチレータが使いやすい場合がある。
図5は、本発明の装置例を示す。この図5はビームスプリッターを利用した電子ビーム式検査装置の外観を示す。
図5において、電子銃41は、1次電子を放出するものである。
ブランキング装置42は、電子銃41から放出された1次電子を、高速に遮断するものである。
ブランキングアパチャー43は、ブランキング装置42で偏向された1次電子を遮断するアパチャーである。
対物アパチャー44は、1次電子の中心の部分を通過させ、対物レンズ48によって細く絞ってサンプルに照射するためのアパチャーである。
第1偏向装置45は、既述した第1偏向装置4である。
第2偏向装置46は、既述した第2偏向装置5である。
第3偏向装置47は、既述した第3偏向装置6である。
対物レンズ48は、1次電子を細く絞ってサンプルに照射するものである。
ミラー49は、レーザー光線を反射するミラーであって、XYZステージ51の位置を精密に測定するためのものである。
偏向装置50は、細く絞った1次電子のビームをサンプル上に平面走査するものである。
XYZステージ51は、サンプル(マスク、ウェハーなど)を裁置し、精密じX、Y、Zの方向に移動させるものである。
真空チャンバー52は、XYZステージ51などを真空中に収納する容器である。
真空ポンプ53は、真空チャンバー52の内部を真空に排気するポンプである。
電子検出装置54は、2次電子を検出する装置である。
次に、構成を説明する。
(1)真空チャンバー52はドライポンプあるいはTMP等により通常マイナス4から5乗パスカル程度の高真空に維持されている。電子銃41は超高真空あるいは極高真空に保たれている。電子銃41で発生した1次電子は必要なエネルギーに成るように加速されレンズで並行ビームに成形される。成型された電子ビームはブランキング装置42およびブランキングアパチャー43を通過する。ブランキング装置42およびブランキングアパチャー43は1次電子のビームを高速にオンオフする機能を有しており、サンプルに1次電子のビームを照射するか否かを決定する。
(2)1次電子のビーム源がマルチ電子ビームの場合は個別のビームをON/OFFする機能をブランキングアパチャー43のアレイに持たせることも出来る。1次電子のビームの全体をON/OFFするブランキングアパチャー43を別途有することも出来る。ブランキングアパチャー43を通過した1次電子のビームは照射電子ビームのサイズや形状を決定する対物アパチャー44に照射される。対物アパチャー44は数ミクロンから数百ミクロンの穴の大きさおよび間隔を有した主に厚み数十ミクロン程度の金属薄膜である。アパチャー材質はモリブデンやタングステンなどの高融点金属が利用される。これらアパチャーに正確に1次電子のビームを通過させるために電磁式あるいはメカニカル方式のビームアライメント手段が付属している。
(3)対物アパチャー44を通過した1次電子のビームは本発明のビームスプリッター(第1偏向装置、第2偏向装置、第3偏向装置)によりビームシフトを行った後、対物レンズ48に入射される。対物レンズ48の中心に正確に入射するために電磁式あるいは機械式アライメント機構をもつことが望ましい。ビームスプリッターに入射する電子ビームは不要な収差が発生しないように電子ビームの断面が小さくなるように収束してあることが望ましい。対物レンズ48には収差を小さくするため垂直に入射することが望ましい。対物レンズ48を通過する前あるいは通過後に1次電子のビーム走査用の偏向装置50にて1次電子のビームは偏向される。対物レンズ48の中心を通して収差を小さくするために2段偏向や対物レンズ48の直下で偏向が行われる。この1次電子のビーム偏向はサンプルの表面にて1次電子のビームを2次元的に走査するために行われる。一般に走査幅はサンプル上にて数ミクロンから数100ミクロン程度である。
(4)一般のSEMあるいは電子ビーム検査装置で知られているように、1次電子のビーム走査はコンピュータからの指令によりピクセルクロック等、画像形成信号に同期してDAコンバーターから送付される階段状電圧波形に基づいて行われる。例えば16ビットのDAコンバーターを用いて走査信号を作った場合、64Kピクセル程度のX軸あるいはY軸に沿った走査を行うことが出来る。DAコンバーターに出力にするX軸とY軸の走査信号を適切に合成することで任意の方向に走査することも出来る。
(5)対物レンズ48の収差を小さくするため対物レンズ48の軸中心を通過するように1次電子のビーム軸を対物レンズ48の入射直前に2段偏向して1次電子のビーム走査を行うことが望ましい。1次電子のビームを大きく走査するとリニアリティーが劣化し走査歪が生じやすい。対物レンズ48の下に走査用の偏向電極を置いて走査すると歪を小さくできる。ただし焦点深度に影響するほど大きく走査すると像がぼけてしまうので、その場合は対物レンズ48の焦点を走査信号に同期して変化させることでぼけを補正する(ダイナミックフォーカス)。
(6)走査に伴ってサンプル表面で発生する2次電子等の信号電子はサンプルと対物レンズ48の間に加えられたバイアス電圧(リターディング電圧9)により加速されて垂直に登っていき、対物レンズ48に入射する。対物レンズ48で発生する収差を小さくするために、15KV程度の出来るだけ大きな加速を行うことが望ましい。一般的には安全のために、対物レンズ48はグランド電位にしてサンプルの電位をマイナスにすることが多い。例えばサンプルへの照射エネルギーを1KVにするときは、サンプルの電位をマイナス14KVに設定する。
(7)対物レンズ48を通過した2次電子のビームは1次電子とは逆方向に進むのでビームスプリッター(第2偏向装置46)の磁界の作用により1次電子のビームとは逆方向に曲げられ1次電子の軌道から2次電子のビームが分離される。
(8)分離された2次電子のビームは1次電子を画像形成のために走査する影響を受けているので、2次電子信号も走査されている。そのままでは電子検出素子上で焦点位置が上下左右に移動してしまい安定した像検出が出来ない。そこで、焦点位置が電子検出素子座標上で一定の位置に停止できるように1次電子ビーム走査に同期して2次電子ビームを再度逆方向に走査を行い、常に電子検出装置上に形成される2次電子像が移動しないように制御する。検出素子のサイズがビームの走査によって変動する2次電子着地点範囲よりも大きい場合は、2次電子ビームの逆走査をしなくても正しい画像検出を行うことが出来る。
図6は、本発明の装置例(その2)を示す。この図6は、図5に加えて対物レンズ中心よりもサンプルに近い側に電子透過可能な薄膜55を設けたことに特徴がある。この薄膜55は数nmから数十nmオーダーの薄いシリコンあるいはその化合物、金属膜あるいはグラフェン膜等の数原子層の炭素膜で出来ている。数百エレクトロンボルト以上に加速された電子ビームはこれらの膜をほとんど散乱することなく通過することが出来る。一方、これら薄膜は10パスカル程度の低真空領域と10のマイナス3乗以上の高真空領域を機械的に分離する役割を有している。同時にこれらの薄膜は導電性を有しバイアス電圧を印加することが出来る。
電子銃41で発生した1次電子のビームは例えば15KV程度のエネルギーを有する。偏向器にて1次電子のビーム位置をシフトした後、対物レンズ48に入射される。対物レンズ48に入射した1次電子のビームは対物レンズ48の収束作用によって細い1次電子のビームに絞られ薄膜55を透過してサンプル表面に照射される。照射された1次電子のビームによりサンプル表面では2次電子が発生する。
発生した2次電子はエネルギーが小さいのでそのままでは薄膜(隔膜)55を通過することが出来ない。そこでサンプルと薄膜55の間にバイアス電圧を印加して2次電子のビームを加速し隔膜55を透過させる。真空チャンバー52は10パスカル程度の低真空状態にあるため、余り高いバイアスを印加すると放電が生じる。そこで、放電が生じなくてかつ薄膜55を十分に透過できる程度のエネルギーを電子に与えられるように数百ボルトの電圧を印加する。このようにすると2次電子は十分にエネルギーを持ち薄膜55を透過して高真空領域に入る。高真空領域に入った2次電子は、放電の心配が無いので薄膜55と対物レンズ48の間でさらに加速されて対物レンズ48に入射し逆収束され電子検出装置54の表面にサンプル表面の像を形成する。
以上の構成を採用することで高エネルギーの1次電子のビームを用いながらも、低真空状態にサンプルを保持することが可能で帯電防止が実現できる。帯電防止が出来ると発生する2次電子のエネルギー分布を小さくできる。同時に発生した2次電子のビームの色収差が大きくならないように対物レンズ48を通過させて検出できるようになる。
図7は、本発明の装置例(その3)を示す。この図7は、収差補正装置58を設けた例を示す。一般的には多段多極子を用いて対物レンズ48等の持つ球面収差および色収差等を補正できる装置である。軸対称電磁レンズは古くからプラスの収差しか作り出すことが出来ないという定理があるため、収差を補正することは不可能と言われてきた。しかしながら20世紀終盤になってローズやハイダーらは6極子あるいは8極子などの多極子レンズとトランスファーレンズを組み合わせて非対称場を作ることで、負の収差を作り出し元の正の収差との合成において収差を0にできる装置を開発した。さらなる多極子化および多段にすることでさらに高次の収差を補正できるようになる。球面収差や色収差が0に出来れば、従来は対物レンズの収差の影響を小さくするために行われていた1次電子ビームのエネルギーを10KV以上に上げる必要が無くなる。
この図7の例では収差補正装置58を1次電子側のコラム、2次電子側のコラムにそれぞれ実装していることに特徴がある。収差補正装置58は多極子の組み合わせを行うことで球面収差や色収差の補正を行うことが出来る素子である。この装置58の利点は1次電子のエネルギーを15KVのように高くしなくても収差補正装置58を用いることで対物レンズ48や収束レンズの収差を補正して1次電子を小さなスポットサイズに絞ることが出来るようになることである。
図6では1次電子のビームのエネルギーを高くすることにより1次電子の持つエネルギー分散の影響が誤差程度となるようにして色収差発生を避けてきた。しかしながら、1次電子ビームを高いエネルギーにすると電子ビームコラムに高い耐電圧が必要で装置が大型に成るだけでなく、1次電子のビームが照射されたアパチャーなどの場所からX線などの不要あるいは有害な電磁波が放射されサンプルが感光するあるいは人体にも悪影響を及ぼし良くない。さらに2次電子の収差を小さくするためにも基板にバイアスを印加して加速する必要があり、サンプルと対物レンズ48の間の狭くて非常に放電しやすい場所に高電圧を印加する必要がある。高耐圧を得るために対物レンズ48とサンプルの距離を離してしまうとNAが小さくなって分解能が低下しビームスポットが大きくなってしまうという弊害がある。
真空耐圧設計は凡そ1mmの間隔当たり数キロボルトと言われているため、15KVの耐圧を得るためにはサンプル表面と対物レンズ48の先端を5mm以上も離す必要があり分解能の劣化は避けられない。ましてや非導電性サンプル表面の帯電を防止するために使用される低真空技術などは数百ボルトのバイアス電圧印加で簡単に放電してしまい取り入れることが出来ない。
本実施例の図7のように、収差補正装置58を用いると、1次電子のビームに対する対物レンズ48によってもたらされる収差および2次電子のビームに対する対物レンズ48の収差が0に補正されるため、5KV以下の低エネルギーを使用しながらも非常に収差の小さなシステムを作ることが出来る。その結果、高エネルギーを使用した場合と同様の小ささの1次電子のビームスポットをサンプル表面に作ることが出来る。同様に2次電子に関しても高い分解能を維持して電子検出装置54に入力することが出来る。
1次電子のビームあるいは2次電子のビームに対して放電の原因となる数百ボルトを超える大きなサンプルバイアス(リターディング電圧)を印加しないので、帯電防止に効果のある低真空モード測定を行うことが出来る。高真空モード測定時の真空チャンバーは通常マイナス4から5乗パスカルに維持されているが、低真空測定を行う場合にはマスフローコントローラ等を利用してチャンバー外部からクリーンな酸素や窒素あるいは空気あるいは不活性ガスを導入して1から100パスカル程度に真空度を維持することが出来る。このように低真空状態にするとサンプル表面の帯電は1次電子のビーム照射に伴って発生するプラスマイナスイオンの作用により中和され、正常な測定状態を保つことが出来る。この効果により、サンプル表面の電位をパターンに無関係に非常に安定に保ちながら高速シングルビームあるいは超高速マルチビーム検査を実行することが出来る。
図8は、本発明のビームスプリッタ例を示す。この図8は、既述した図1、図2などのビームスプリッタ3を構成する第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の例をそれぞれ示す。
図8の(a)は、平行平板の例を示す。並行平板型は2極からなる電界発生のための電極とその電界に直交した磁界を発生させるためのポールピースからなる。
ビームスプリッターで用いる電界発生用の電極は通常は金属であるが、比透磁率が1に近い材料例えば透明電極ITOやアルミニウム、銅、銀、などを使用すると同時印加する磁場との干渉が小さくなり、電界と磁界がお互いに直交して均一に広がる領域を広い範囲で実現することが出来るようになる。これにより写像型検査装置の様に100ミクロンを超える太いビームを用いる場合にも、均一に磁界や電界を印加することが可能となり、良好な偏向特性を得ることが出来るようになる。磁界を加えるためのポールピースは大きな透磁率を有するパーマロイ等の金属で作製する。
図8の(a)において、ポールピース61は、磁界印加用ポールピースと電界印加用の電極との両方を兼ねた図が記してあるが、前述した電極材料を用いた電界印加用の電極(2極)とは別に電界に直交するように磁界印加用のポールピース(2極)を設けると広い範囲で均一な直交電界磁場が得られる。磁場は透磁率1で出来た材料の電極を通過して作用できるので、電界発生用の電極の裏に磁界発生用のポールピースを配置することも出来る。図示の電極兼ポールピース61は、軸対称に4極を通常配置する。更に6極、8極、10極、12極、16極・・・などの多極子にしてもよい。
コイル62は、電流を流して磁界を発生させ、各ポールピース(磁極)に印加するものである。4極であれば、各ポールピース(磁極)毎に各1つのコイル62を設ける。
ヨーク63は、コイル62で発生した磁界が外部に漏れないように短絡するためのヨークである。
以上の構成を有する軸対称の4極、6極、8極、12極などの多極子偏向装置を形成し、電界、磁界、あるいは電界と磁界の両者を軸上に発生させ、1次電子あるいは2次電子を偏向させることが可能となる。第1偏向装置4、第3偏向装置6は、電界、磁界のみで偏向、あるいは電界と磁界の両者で偏向させてもよい。第2偏向装置5は、少なくとも磁界あるいは電界と磁界とで偏向させ、1次電子の走行方向に対する2次電子の逆の走行方向の場合に逆方向に偏向し、両者を分離するように磁界と電界による偏向の度合いを調整する必要がある。
図8の(b)は、パターンヨーク型の例を示す。この図8の(b)のパターンヨーク型は、図6の(a)の電極兼ポールピース61に相当する部分のみを示す。
図6の(b)において、切込み71は、円筒に入れた切り込みであって、図示のような円筒状極素材74を形成するためのものである。
タップ72は、回転場偏向器固定用のタップである。
タップ73は、治具取付用のタップである。
円筒状極素材74は、円筒を図示の切込み71で分離した円筒状の極素材(図6の(a)の電極兼ポールピース61に対応するもの)である。
以上のように、円筒を1次電子(あるいは2次電子)の回転方向に合わせて切込み71を入れて作成した円筒状極素材74を作成し、これを図6の(a)の電極兼ポールピース61にすることにより、1次電子(あるいは2次電子)が走行するに従い回転する度合いに合わせて電極、磁極を回転させることが可能となり、収差を低減することが可能となる。
図8の(c)は、ウィーンフィルターの例を示す。この公知の図8の(c)のウィンフィルタ(8極)は、図示のように、n=1,2,3,4,5,6,7,8の極からなり、内側に電極と磁極を兼ねた極(8極)が軸対称に配置され、その外側に磁界を発生させるコイルが8組、それぞれ設けられている。最外側は磁界を短絡する円筒状のヨークである。
以上の構成のもとで、8極に電界、磁界、あるいは電界と磁界の両者を印加することにより、1次電子、2次電子を偏向したり、1次電子と2次電子とを逆方向に偏向して両者を分離したり、することが可能となる。
図9は、本発明のビームスプリッター例(パターンヨーク型)を示す。この図9は、既述した図8の(b)の円筒状極素材74を、図9のポールピース兼電極65とした例を示し、パターンヨークの上面図を示す。
図9において、ポールピース兼電極65は、既述した図8の(b)の円筒状極素材74に対応するものであって、磁極と電極の両方として動作するものである。
コイル66は、ポールピース兼電極65に、磁界を印加するものである。
磁気シールド67は、コイル61に電流を流して発生した外側(外部)に向かう磁界を短絡する円筒状の磁気シールドである。
以上のように構成することにより、既述した図8の(b)の軸方向に回転する電極と磁極を構成してこれを1次電子あるいは2次電子の走行方向に回転する角度に対応させることにより、1次電子あるいは2次電子に対する偏向の収差を低減することが可能となる。
図10は、本発明の装置動作ブロック説明図を示す。
図10の(a)は1次電子の動作を示し、図10の(b)はサンプルから放出された2次電子の動作を示す。
図10の(a)において、S1は、電子銃が1次電子のビームを放射する。
S2は、平行ビームにする。これは、S1で電子銃から放射された1次電子のビームを図示とのコンデンサレンズにより平行ビームにする。
S3は、第1偏向器で偏向する。これは、既述した図1、図2の第1偏向装置4で図示のように偏向する。
S4は、第2編子器で偏向する。これは、既述した図1、図2の第2偏向装置5で図示のように偏向する。
S5は、対物レンズで収束する。これは、既述した図1、図2の対物レンズ7が1次電子のビームを細く絞る。
S6は、1次電子減速する。これは、既述した図2のV1あるいはV2のリターディング電圧を印加し、1次電子を減速(加速電圧を減速)する。
S7は、サンプルに照射する。これは、S6のリターディング電圧により減速された、細く絞られた1次電子のビームをサンプル8に照射しつつ平面走査する。1次電子をサンプル8に照射すると、2次電子が発生する。
以上によって、既述した図1、図2の構成のもとで電子銃で発生させた1次電子を第1偏向器、第2偏向器で2段偏向して結果として1次電子のビームの走行方向をシフトさせ、細く絞ってサンプル8に照射しつつ平面走査し、2次電子を放出させることが可能となる。
次に、2次電子の動作について図10の(b)の順番に説明する。
図10の(b)において、S11は、2次電子発生する。これは、図10の(a)のS7で1次電子をサンプル8に照射しつつ平面走査したことに対応して。2次電子が放出(発生)される。
S12は、2次電子加速する。これは、S11で発生した2次電子は、既述した図2のV1あるいはV2のリターディング電圧により加速される。
S13は、対物レンズ通過する。これは、S12で加速された2次電子は、既述した図2の対物レンズ7の軸対称の強い磁界の作用により螺旋を描きながら上方向に進行し、該対物レンズ7を通過する。
S14は、第2偏向器で偏向する。これは、既述した図1、図2の第2偏向装置5で図示のように偏向し、1次電子と、当該2次電子が分離される。
S15は、第3偏向器で偏向する。これは、S14で分離された2次電子を逆方向に偏向して偏向収差などをキャンセルする。
S16は、写像レンズで像形成する。これは、S15の第3偏向器で偏向された後の2次電子について、写像レンズで2次電子の像を電子顕出器の面上に形成(結像)させる。
S17は、電子検出器で検出する。S16で結像された2次電子を、2次電子検出器で検出する。
S18は、信号増幅する。これは、S17で検出した2次電子の信号を増幅する。
S19は、PCで画像処理する。
以上によって、既述した図1、図2の構成のもとでサンプル8から放出された2次電子を、第2偏向器、第3偏向器で2次電子を1次電子から分離すると共に、2段偏向して結果として2次電子のビームの走行方向をシフトさせ、2次電子のビームを高分解能に結像してサンプル8の表面の高分解能の2次電子画像を検出することが可能となる。
図11は、本発明の装置調整フローチャートを示す。
図11の(a)は調整フローチャートを示す。
図11の(a)において、S21は、初期電界、磁界を印加する。これは、既述した図1、図2の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6について、それぞれ実験で求めた最適な電圧、電流、電圧と電流の値に初期設定する。
S22は、電界磁界変更する。これは、S21で初期設定した電界、磁界のままでは、図1、図2の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6が十分な動作しない場合、電界(電圧)、磁界(電流)を微細調整し、最適に偏向されて2次電子量が最大となるように調整する。
S23は、2次電子量最大が判別する。YESの場合には、図1、図2の検出器で検出される2次電子の量が最大で、最適な偏向度合に第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電界(電圧)、磁界(電流)、電界と電流が調整されたので、終了する。NOの場合には、S22を繰り返す。
以上によって、図1、図2の構成にいついて、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電界、磁界、電界と磁界を実験で求めた初期値に初期設定し、これから2次電子の量が最大となるように電界、磁界、電界と磁界を調整することにより、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の調整を行うことが可能となる。
図11の(b)は、軸調整フローチャート(偏向収差)を示す。
図11の(b)において、S31は、初期電界、磁界を印加する。これは、既述した図1、図2の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6について、それぞれ実験で求めた偏向収差が最小となる電圧、電流、電圧と電流の値に初期設定する。
S32は、アライメントパラメータ変更する。これは、S31で初期設定した電界、磁界のままでは、図1、図2の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の偏向収差が大きく、十分な量の2次電子の量が検出できない場合、対向する極の電界、磁界を微細調整などし、電界、磁界の中心軸を調整し、2次電子量が最大となるように調整する。
S33は、2次電子量が最大が判別する。YESの場合には、図1、図2の検出器で検出される2次電子の量が最大で、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電界、磁界の軸中心が最適に調整されたので、終了する。NOの場合には、S32を繰り返す。
以上によって、図1、図2の構成のもとで、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の偏向収差が最小となる実験で求めた初期値に初期設定し、これから2次電子の量が最大となるように電界、磁界の対向する極の強さなどを加減し軸中心を調整することにより、偏向収差を最小に調整することが可能となる。
図11の(c)は、軸調整フローチャート(回転方向)を示す。
図11の(b)において、S41は、初期電界、磁界を印加する。これは、既述した図1、図2の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6について、それぞれ実験で求めた最適な回転方向となる電圧、電流、電圧と電流の値に初期設定する。
S42は、アライメントパラメータ変更する。これは、S41で初期設定した電界、磁界のままでは、図1、図2の第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6による回転方向がずれ、十分な量の2次電子の量が検出できない場合、対向する極の電界、磁界などを微細調整して電界、磁界による回転方向を調整し、2次電子量が最大となるように調整する。
S43は、2次電子量最大が判別する。YESの場合には、図1、図2の検出器で検出される2次電子の量が最大で、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電界、磁界による回転方向が最適に調整されたので、終了する。NOの場合には、S42を繰り返す。
以上によって、図1、図2の構成のもとで、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電界、磁界による回転方向を実験で求めた初期値に初期設定し、これから偏向器を通過して検出される2次電子の量が最大となるように電界、磁界の対向する極の強さなどを加減して回転方向を調整することにより、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電圧、磁界による回転方向を最適に調整することが可能となる。原理の上では偏向装置を本来の電子ビーム軌道に対してお互いに対称に配置してかつ通過する電子ビームが出来るだけ同じようにかつお互いに逆に成るように調節すると収差を最も小さくすることが出来る。