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JP7552080B2 - 析出硬化系ステンレス鋼粉末、コンパウンド、造粒粉末、析出硬化系ステンレス鋼焼結体および析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法 - Google Patents

析出硬化系ステンレス鋼粉末、コンパウンド、造粒粉末、析出硬化系ステンレス鋼焼結体および析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、析出硬化系ステンレス鋼粉末、コンパウンド、造粒粉末、析出硬化系ステンレス鋼焼結体および析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法に関するものである。
粉末冶金法では、金属粉末と有機バインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形した後、得られた成形体を脱脂して脱脂体とし、さらに脱脂体を焼成することにより、焼結体を製造する。このような焼結体の製造過程では、金属粉末の粒子同士の間で原子の拡散現象が生じ、これにより成形体が徐々に緻密化して焼結に至る。
このような粉末冶金法において、成形体を脱脂する際には、成形体を加熱することによって有機バインダーを熱分解させ、除去する。成形体中に有機バインダーが残存すると、焼結体の特性が低下するため、有機バインダーの除去方法に関して、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、金属材料粉末と、ポリオキシメチレン樹脂を含有する結合剤と、を含む成形体を、酸含有雰囲気下で加熱することにより、脱脂処理を施すことが開示されている。このように酸含有雰囲気下で脱脂処理を施すことにより、酸が結合剤を分解するため、結合剤を効率よく除去することができる。そのため、前述した課題を低減することができる。
特開平4-247802号公報
特許文献1に記載の方法では、脱脂処理において大半の有機バインダーが除去されると考えられる。しかしながら、一部の有機バインダーは成形体中に残存し、その後の焼成処理において、金属材料粉末の焼結が進行するのと並行して除去されることになる。このとき、例えば、用いられる金属材料粉末の粒径が小さい場合等には、焼結の進行が速くなる傾向がある。つまり、より低温の段階で焼結が開始してしまう場合がある。そうすると、焼成処理の際に有機バインダーが成形体内に閉じ込められてしまうことがある。その結果、焼結体における炭素原子濃度の上昇を招き、焼結体の機械的特性が低下することが懸念される。
本発明の適用例に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末は、
Crが15.00質量%以上17.50質量%以下の範囲内の濃度Aで含まれ、
Siが0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Bで含まれ、
Nbが0.15質量%以上0.45質量%以下の範囲内の濃度Cで含まれ、
Niが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Dで含まれ、
Mnが0.05質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Eで含まれ、
Cuが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Fで含まれ、
下記式(1)で規定されるδの値が10.0質量%以上13.5質量%以下であること
を特徴とする。
δ=3(A+1.5B+0.5C)-2.8(D+0.5E+0.5F)-19.8・
・・(1)
実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法を示す工程図である。
以下、本発明の析出硬化系ステンレス鋼粉末、コンパウンド、造粒粉末、析出硬化系ステンレス鋼焼結体および析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
1.析出硬化系ステンレス鋼粉末
まず、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末について説明する。
粉末冶金技術では、金属粉末とバインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形した後、脱脂処理および焼成処理に供することにより、所望の形状の焼結体を得ることができる。このような粉末冶金技術によれば、その他の技術に比べ、複雑で微細な形状の焼結体をニアネットシェイプ、すなわち最終形状に近い形状で製造することができる。
実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末は、Cr、Si、Nb、Ni、MnおよびCuを含む析出硬化系ステンレス鋼で構成された粉末である。そして、かかる粉末では、Crが15.00質量%以上17.50質量%以下の範囲内の濃度Aで含まれ、Siが0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Bで含まれ、Nbが0.15質量%以上0.45質量%以下の範囲内の濃度Cで含まれ、Niが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Dで含まれ、Mnが0.05質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Eで含まれ、Cuが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Fで含まれている。また、かかる粉末では、下記式(1)で規定されるδの値が10.0質量%以上14.0質量%以下である。
δ=3(A+1.5B+0.5C)-2.8(D+0.5E+0.5F)-19.8 ・・・ (1)
このような析出硬化系ステンレス鋼粉末によれば、析出硬化系ステンレス鋼に由来する優れた機械的強度を維持しつつ、焼結性を抑えることができる。このため、焼成処理において、焼結が開始する温度を上昇させることができる。その結果、成形体中に残存していた有機バインダーをより確実に除去することができ、焼結体における炭素原子濃度の上昇を抑制することができる。したがって、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末は、機械的強度が高い焼結体を製造することが可能である。
以下、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末の合金組成についてさらに詳述する。なお、以下の説明では、析出硬化系ステンレス鋼粉末を単に「金属粉末」ということもある。
1.1 Cr
Cr(クロム)は、製造される焼結体に対し、主に耐食性を付与する元素である。Crを含む金属粉末を用いることで、耐食性が高くなり、良好な耐食性を有する焼結体が得られる。
金属粉末におけるCrの濃度Aは、15.00質量%以上17.50質量%以下とされるが、好ましくは15.20質量%以上16.90質量%以下とされ、より好ましくは15.50質量%以上16.70質量%以下とされる。Crの濃度Aが前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐食性が不十分になるおそれがある。一方、Crの濃度Aが前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、焼結性が低下し、焼結体の高密度化が困難になるため、焼結体の耐食性や機械的特性が低下するおそれがある。
なお、焼結体の機械的特性とは、例えば機械的強度、硬度といった特性のことを指す。
1.2 Si
Si(ケイ素)は、製造される焼結体に対し、主に耐食性および高い機械的特性を付与する元素である。Siを含む金属粉末を用いることで、耐食性および機械的特性が高くなり、良好な耐食性を有する焼結体が得られる。
金属粉末におけるSiの濃度Bは、0.30質量%以上1.00質量%以下とされるが、好ましくは0.35質量%以上0.95質量%以下とされ、より好ましくは0.40質量%以上0.90質量%以下とされる。Siの濃度Bが前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐食性や表面性状、機械的特性が低下するおそれがある。一方、Siの濃度Bが前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、組成のバランスが崩れやすくなるため、製造される焼結体の耐食性や表面性状、機械的特性が低下するおそれがある。
なお、焼結体の表面性状とは、例えば鏡面性、平滑性といった特性のことを指す。
1.3 Nb
Nb(ニオブ)は、製造される焼結体に析出物を析出させ、焼結体の機械的特性を高める元素である。
金属粉末におけるNbの濃度Cは、0.15質量%以上0.45質量%以下とされるが、好ましくは0.20質量%以上0.40質量%以下とされ、より好ましくは0.25質量%以上0.35質量%以下とされる。Nbの濃度Cが前記下限値を下回ると、焼結体において析出物の析出が制限されるため、焼結体の機械的特性を十分に高めることができないおそれがある。一方、Nbの濃度Cが前記上限値を上回ると、析出物が過剰に析出し、焼結体の密度が低下するとともに、焼結体の機械的特性がかえって低下する。
1.4 Ni
Ni(ニッケル)は、製造される焼結体に対し、主に耐食性および耐熱性を付与する元素である。Niを含む金属粉末を用いることで、耐食性および耐熱性が高くなり、良好な耐食性および表面性状を有する焼結体が得られる。
金属粉末におけるNiの濃度Dは、3.00質量%以上5.00質量%以下とされるが、好ましくは3.50質量%以上4.70質量%以下とされ、より好ましくは3.80質量%以上4.50質量%以下とされる。Niの濃度Dが前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐食性や表面性状を十分に高められないおそれがある。一方、Niの濃度Dが前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、組成のバランスが崩れやすくなるため、製造される焼結体の耐食性や表面性状が低下するおそれがある。
1.5 Mn
Mn(マンガン)は、Siと同様、製造される焼結体に耐食性および高い機械的特性を付与する元素である。Mnを含む金属粉末を用いることで、耐食性および機械的特性が高くなり、良好な耐食性および機械的特性を有する焼結体が得られる。
金属粉末におけるMnの濃度Eは、特に限定されないが、0.05質量%以上1.00質量%以下であるのが好ましく、0.07質量%以上0.50質量%以下であるのがより好ましく、0.10質量%以上0.40質量%以下であるのがさらに好ましい。Mnの濃度Eが前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐食性や表面性状、機械的特性を十分に高められないおそれがあり、一方、Mnの濃度Eが前記上限値を上回ると、かえって耐食性や表面性状、機械的特性が低下するおそれがある。
1.6 Cu
Cu(銅)は、製造される焼結体に金属間化合物を析出させ、焼結体の機械的特性を高める元素である。
金属粉末におけるCuの濃度Fは、3.00質量%以上5.00質量%以下とされるが、好ましくは3.10質量%以上4.50質量%以下とされ、より好ましくは3.20質量%以上4.20質量%以下とされる。Cuの濃度Fが前記下限値を下回ると、焼結体において金属間化合物の析出が制限されるため、焼結体の機械的特性を十分に高めることができないおそれがある。一方、Cuの濃度Fが前記上限値を上回ると、金属間化合物が過剰に析出し、焼結体の密度が低下するとともに、焼結体の機械的特性がかえって低下する。
1.7 δの値
本実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末は、下記式(1)で規定されるδの値が10.0質量%以上14.0質量%以下である。
δ=3(A+1.5B+0.5C)-2.8(D+0.5E+0.5F)-19.8 ・・・ (1)
このような式(1)で規定されるδの値は、析出硬化系ステンレス鋼粉末を用いて製造される焼結体の機械的特性を損なうことなく、析出硬化系ステンレス鋼粉末の焼結性を抑えることができる。具体的には、式(1)の右辺の第1項は、主にフェライトを生成する元素に関連する項であり、第2項は、主にオーステナイトを生成する元素に関連する項である。フェライトは、オーステナイトに比べて、焼結時の拡散速度が速いため、析出硬化系ステンレス鋼粉末の焼結性を高める方向へ寄与する。
これを踏まえ、本実施形態では、フェライトを生成する元素の濃度と、オーステナイトを生成する元素の濃度と、の比を、式(1)に基づいて最適化することにより、得られる焼結体において、析出硬化系ステンレス鋼に由来する優れた機械的強度を維持しつつ、焼結性を抑えている。より具体的には、式(1)で規定されるδの値を前記範囲内に設定することにより、焼結体の機械的強度を維持しつつ、析出硬化系ステンレス鋼粉末の焼結性を抑え、従来よりも拡散速度を遅くすることを可能にしている。これにより、成形体を焼成処理に供した際、金属粉末の焼結が開始する温度をより高めることができる。その結果、金属粉末が焼結を開始するよりも前の段階で、成形体中に残存していた有機バインダーをより確実に除去することができる。
なお、有機バインダーの除去とは、例えば、有機バインダーまたはその分解物が揮発すること、有機バインダーに含まれる炭素原子が金属粉末に含まれる酸素原子または金属粉末に吸着した酸素原子と反応し、その反応物が揮発すること等を指す。
ここで、有機バインダーは、有機化合物を主材料としているため、炭素原子を含んでいる。成形体中の有機バインダーを十分に除去することができない場合、焼結体中に従来よりも多くの炭素原子が残留し、焼結体の機械的強度を低下させる懸念がある。これに対し、本実施形態では、析出硬化系ステンレス鋼粉末の焼結性を抑えることによって、焼結処理における有機バインダーの除去効率を高めることができる。これにより、焼結体中の炭素原子濃度を抑えることができ、機械的強度が高い焼結体を製造することが可能になる。
δの値は、10.0質量%以上14.0質量%以下とされるが、好ましくは10.5質量%以上13.5質量%以下とされ、より好ましくは11.0質量%以上13.0質量%以下とされる。δの値が前記下限値を下回ると、オーステナイトを生成する元素の濃度が高くなる。この場合、析出硬化系ステンレス鋼粉末の焼結性は低下するものの、焼結性が低くなりすぎる傾向が生じ、焼結体の密度を高めにくくなる。これにより、得られる焼結体の機械的強度の低下を招く。一方、δの値が前記上限値を上回ると、フェライトを生成する元素の濃度が高くなる。この場合、析出硬化系ステンレス鋼粉末の焼結性が高くなりすぎて、得られる焼結体中の炭素原子濃度が高くなる。これにより、焼結体の機械的強度の低下を招く。
1.8 Fe
Fe(鉄)は、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末に含まれる元素のうち、含有率が最も高い元素、すなわち主成分であり、製造される焼結体の特性に大きな影響を及ぼす。Feの含有率は、特に限定されないが、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。
1.9 その他の元素
実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末は、上述した元素の他、必要に応じて、C、Mo、W、N、SおよびPのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
C(炭素)は、製造される焼結体に対し、侵入型元素として固溶体硬化を生じさせたり、Cまたは他の元素を含む析出物によって析出硬化を生じさせたりする元素である。Cを含む金属粉末を用いることで、高い機械的特性を有する焼結体が得られる。一方、Cの濃度、すなわち炭素原子濃度が高すぎると、焼結体の機械的特性、例えば硬度が低下する。
金属粉末におけるCの濃度は、0.07質量%以下とされるが、好ましくは0.01質量%以上0.05質量%以下とされる。Cの濃度が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、組成のバランスが崩れやすくなるため、製造される焼結体の機械的特性が低下するおそれがある。
Mo(モリブデン)は、製造される焼結体の耐食性を強化する元素である。
金属粉末におけるMoの濃度は、特に限定されないが、1.00質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上0.50質量%以下であるのがより好ましい。Moの濃度を前記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の耐食性をより強化することができる。
W(タングステン)は、製造される焼結体の耐熱性を強化する元素である。
金属粉末におけるWの濃度は、特に限定されないが、1.00質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上0.50質量%以下であるのがより好ましい。Wの濃度を前記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の耐熱性をより強化することができる。
N(窒素)は、製造される焼結体の耐力等の機械的特性を高める元素である。
金属粉末におけるNの濃度は、特に限定されないが、1.00質量%以下であるのが好ましく、0.001質量%以上0.50質量%以下であるのがより好ましく、0.05質量%以上0.30質量%以下であるのがさらに好ましい。Nの濃度を前記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の耐力等の機械的特性をより高めることができる。
なお、Nが添加された金属粉末を製造するには、例えば、窒化した原料を用いる方法、溶融金属に対して窒素ガスを導入する方法、製造された金属粉末に窒化処理を施す方法等が用いられる。
S(硫黄)は、製造される焼結体の被削性を高める元素である。
金属粉末におけるSの濃度は、特に限定されないが、0.50質量%以下であるのが好ましく、0.001質量%以上0.30質量%以下であるのがより好ましい。Sの濃度を前記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、製造される焼結体の被削性をより高めることができる。
P(リン)は、製造される焼結体に対し、侵入型元素として固溶体硬化を生じさせたり、他の元素と化合してなる析出物によって析出硬化を生じさせたりする元素である。Pを含む金属粉末を用いることで、高い機械的特性を有する焼結体が得られる。
金属粉末におけるPの濃度は、0.50質量%以下とされるが、好ましくは0.001質量%以上0.35質量%以下とされ、より好ましくは0.005質量%以上0.30質量%以下とされる。Pの濃度が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、Pを添加したとしても焼結体の機械的特性を十分に高めることができないおそれがある。一方、Pの濃度が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、組成のバランスが崩れやすくなるため、製造される焼結体の機械的特性が低下するおそれがある。
O(酸素)は、意図的に添加されたり不可避的に含んでいたりしてもよいが、その濃度は0.01質量%以上0.70質量%以下であるのが好ましく、0.15質量%以上0.60質量%以下であるのがより好ましい。金属粉末中のOの濃度をこの範囲内に収めることにより、金属粉末の粒子表面に酸化ケイ素が析出するため、MnやCr等の元素の酸化を抑制することができる。その結果、最終的に製造される焼結体の耐食性および表面性状を高めることができる。
なお、Oの含有率が前記下限値を下回ると、酸化ケイ素の析出量が少なくなるため、MnやCr等の元素の酸化が進行するおそれがある。この場合、製造される焼結体の耐食性や表面性状、機械的特性が低下するおそれがある。一方、Oの含有率が前記上限値を上回ると、酸化ケイ素に加えて、金属粉末の製造時点で、MnやCrの酸化物も生成されることとなる。このため、製造される焼結体の密度が上がりにくくなり、また、それに伴って、耐食性や表面性状、機械的特性の低下を招くおそれがある。
また、Oの濃度は、0.20質量%以上0.55質量%以下であるのがさらに好ましく、0.33質量%以上0.53質量%以下であるのが特に好ましい。金属粉末中のOの濃度をこの範囲内に収めることにより、上記効果に加え、金属粉末中の酸素原子を有機バインダー由来の炭素原子と反応させることができる。例えば、金属粉末中の酸素原子が酸化ケイ素として存在している場合、下記式(2)で表される反応によって、焼結体中から酸素原子および炭素原子を除去することができる。
SiO2+2C→Si+2CO↑ ・・・(2)
このような反応により、酸素原子を用いて、有機バインダー由来の炭素原子を消費し、除去することができる。したがって、所定量の酸素原子を含めることにより、焼結体に残留する有機バインダー由来の炭素原子濃度を抑制することができる。
なお、Oの濃度が前記下限値を下回ると、焼結体において炭素原子を十分に消費することができないおそれがある。一方、Oの濃度が前記上限値を上回ると、組成のバランスが崩れやすくなり、製造される焼結体の機械的強度や耐食性が低下するおそれがある。
析出硬化系ステンレス鋼粉末には、上述した元素の他、焼結体の特性を高めるため、H、Be、B、Al、Co、As、Sn、Se、Zr、Y、Ti、Hf、Ta、Te、Pb等が添加されていてもよい。その場合、これらの元素の濃度は、特に限定されないが、前述した焼結体の特性を阻害しない程度とされ、それぞれ0.1質量%未満であるのが好ましく、合計でも0.2質量%未満であるのが好ましい。なお、これらの元素は、不可避的に含まれる場合もある。
さらに、析出硬化系ステンレス鋼粉末には、不可避的な不純物が含まれていてもよい。不純物としては、上述した元素以外の全ての元素が挙げられる。これらの不純物の各濃度は、それぞれFe、Cr、Si、Nb、Ni、Mn、Cuの各濃度よりも少なければよい。また特に、これらの不純物の濃度は、それぞれ0.03質量%未満であるのが好ましく、不純物の濃度の合計は0.30質量%未満であるのが好ましい。なお、これらの不純物は、その濃度が前記範囲内であれば、前述したような効果が阻害されないので、意図的に添加されていてもよい。
析出硬化系ステンレス鋼粉末のタップ密度は、3.5g/cm3以上5.5g/cm3以下であるのが好ましく、4.0g/cm3以上5.0g/cm3以下であるのがより好ましい。このような析出硬化系ステンレス鋼粉末であれば、成形体を得る際に、粒子間の充填性が特に高くなる。このため、最終的に、特に緻密な焼結体を得ることができる。
析出硬化系ステンレス鋼粉末の比表面積は、0.10m2/g以上0.70m2/g以下であるのが好ましく、0.15m2/g以上0.50m2/g以下であるのがより好ましい。このような析出硬化系ステンレス鋼粉末であれば、表面の活性(表面エネルギー)が最適化されるため、適度な焼結性が得られる。このため、有機バインダーやその分解物、炭素原子の反応物等が焼結体中に残存するのを抑制しつつ、十分な焼結速度を得ることができる。その結果、炭素原子濃度の低減を図りつつ、緻密な焼結体を得ることができる。
1.10 分析方法
実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末の組成比は、例えば、JIS G 1257:2000に規定された鉄及び鋼-原子吸光分析法、JIS G 1258:2007に規定された鉄及び鋼-ICP発光分光分析法、JIS G 1253:2002に規定された鉄及び鋼-スパーク放電発光分光分析法、JIS G 1256:1997に規定された鉄及び鋼-蛍光X線分析法、JIS G 1211~G 1237に規定された重量・滴定・吸光光度法等により特定することができる。具体的には、例えばスパーク放電発光分光分析装置であるSPECTRO社製固体発光分光分析装置、モデル:SPECTROLAB、タイプ:LAVMB08Aや、株式会社リガク製ICP装置、CIROS120型が挙げられる。
なお、JIS G 1211~G 1237は、下記の通りである。
JIS G 1211:2011 鉄及び鋼-炭素定量方法
JIS G 1212:1997 鉄及び鋼-けい素定量方法
JIS G 1213:2001 鉄及び鋼中のマンガン定量方法
JIS G 1214:1998 鉄及び鋼-りん定量方法
JIS G 1215:2010 鉄及び鋼-硫黄定量方法
JIS G 1216:1997 鉄及び鋼-ニッケル定量方法
JIS G 1217:2005 鉄及び鋼-クロム定量方法
JIS G 1218:1999 鉄及び鋼-モリブデン定量方法
JIS G 1219:1997 鉄及び鋼-銅定量方法
JIS G 1220:1994 鉄及び鋼-タングステン定量方法
JIS G 1221:1998 鉄及び鋼-バナジウム定量方法
JIS G 1222:1999 鉄及び鋼-コバルト定量方法
JIS G 1223:1997 鉄及び鋼-チタン定量方法
JIS G 1224:2001 鉄及び鋼中のアルミニウム定量方法
JIS G 1225:2006 鉄及び鋼-ひ素定量方法
JIS G 1226:1994 鉄及び鋼-すず定量方法
JIS G 1227:1999 鉄及び鋼中のほう素定量方法
JIS G 1228:2006 鉄及び鋼-窒素定量方法
JIS G 1229:1994 鋼-鉛定量方法
JIS G 1232:1980 鋼中のジルコニウム定量方法
JIS G 1233:1994 鋼-セレン定量方法
JIS G 1234:1981 鋼中のテルル定量方法
JIS G 1235:1981 鉄及び鋼中のアンチモン定量方法
JIS G 1236:1992 鋼中のタンタル定量方法
JIS G 1237:1997 鉄及び鋼-ニオブ定量方法
また、C(炭素)およびS(硫黄)の特定に際しては、特に、JIS G 1211:2011に規定された酸素気流燃焼 高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法も用いられる。具体的な分析装置としては、LECO社製炭素・硫黄分析装置、CS-200が挙げられる。
さらに、N(窒素)およびO(酸素)の特定に際しては、特に、JIS G 1228:2006に規定された鉄及び鋼の窒素定量方法、JIS Z 2613:2006に規定された金属材料の酸素定量方法も用いられる。具体的な分析装置としては、LECO社製酸素・窒素分析装置、TC-300/EF-300が挙げられる。
また、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼粉末を用いて製造された焼結体には、各種熱処理が施されることにより、マルテンサイト型の結晶構造を析出させることが可能である。マルテンサイト型の結晶構造は、焼結体に高い硬度を付与する。焼結体がマルテンサイト型の結晶構造を有しているか否かは、例えばX線回折法により判定することができる。
析出硬化系ステンレス鋼粉末の平均粒径は、0.50μm以上50.00μm以下であるのが好ましく、1.00μm以上30.00μm以下であるのがより好ましく、2.00μm以上10.00μm以下であるのがさらに好ましい。このような粒径の析出硬化系ステンレス鋼粉末を用いることにより、焼結体中に残存する空孔が極めて少なくなるため、高密度で機械的特性に優れた焼結体を製造することができる。
なお、析出硬化系ステンレス鋼粉末の平均粒径が前記下限値を下回った場合、成形し難い形状を成形する際に成形性が低下し、焼結密度が低下するおそれがある。一方、析出硬化系ステンレス鋼粉末の平均粒径が前記上限値を上回った場合、成形時に粒子間の隙間が大きくなるので、焼結密度が低下するおそれがある。
析出硬化系ステンレス鋼粉末の平均粒径は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
析出硬化系ステンレス鋼粉末の最大粒径は、平均粒径が前記範囲内であれば特に限定されないが、200μm以下であるのが好ましく、150μm以下であるのがより好ましい。析出硬化系ステンレス鋼粉末の最大粒径を前記範囲内に制御することにより、析出硬化系ステンレス鋼粉末の粒度分布をより狭くすることができ、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
なお、上記の最大粒径とは、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から99.9%となるときの粒径のことをいう。
析出硬化系ステンレス鋼粉末の粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたとき、S/Lで定義されるアスペクト比の平均値は、0.4以上1以下程度であるのが好ましく、0.7以上1以下程度であるのがより好ましい。このようなアスペクト比の析出硬化系ステンレス鋼粉末は、その形状が比較的球形に近くなるので、成形された際の充填率が高められる。その結果、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
なお、前記長径とは、粒子の投影像においてとりうる最大長さであり、前記短径とは、長径に直交する方向においてとりうる最大長さである。また、アスペクト比の平均値は、100個以上の粒子について測定されたアスペクト比の平均値である。
2.析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法
次に、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法について説明する。
図1は、実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法を示す工程図である。
図1に示す析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法は、焼結体製造用の組成物を調製する組成物調製工程S1と、組成物を成形する成形工程S2と、成形体に脱脂処理を施す脱脂工程S3と、脱脂体に焼成処理を施す焼成工程S4と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
2.1 組成物調製工程S1
まず、析出硬化系ステンレス鋼粉末と有機バインダーとを混練機により混練し、混練物、すなわち実施形態に係るコンパウンドを得る。かかる混練物は、前述した析出硬化系ステンレス鋼粉末と、有機バインダーと、を含む組成物である。このような混練物によれば、有機バインダーが使用されているものの、機械的強度が高い焼結体を製造可能である。
析出硬化系ステンレス鋼粉末は、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法のようなアトマイズ法、還元法、カルボニル法、粉砕法等の各種粉末化法により製造される。
このうち、析出硬化系ステンレス鋼粉末は、アトマイズ法により製造されたものであるのが好ましく、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造されたものであるのがより好ましい。アトマイズ法は、溶湯を、高速で噴射された液体または気体に衝突させることにより、微粉化するとともに冷却して、金属粉末を製造する方法である。析出硬化系ステンレス鋼粉末をこのようなアトマイズ法によって製造することにより、極めて微小な粉末を効率よく製造することができる。また、得られる粉末の粒子形状が表面張力の作用により球形状に近くなる。このため、成形した際に充填率の高いものが得られる。すなわち、高密度な焼結体を製造可能な粉末を得ることができる。
なお、アトマイズ法として、水アトマイズ法を用いた場合、溶湯に向けて噴射される水の圧力は、特に限定されないが、好ましくは75MPa以上120MPa以下程度とされ、より好ましくは、90MPa以上120MPa以下程度とされる。
また、アトマイズ水の水温も、特に限定されないが、好ましくは1℃以上20℃以下程度とされる。
さらに、アトマイズ水は、溶湯の落下経路上に頂点を有し、外径が下方に向かって漸減するような円錐状に噴射される場合が多い。この場合、アトマイズ水が形成する円錐の頂角θは、10°以上40°以下程度であるのが好ましく、15°以上35°以下程度であるのがより好ましい。これにより、前述したような組成の析出硬化系ステンレス鋼粉末を、確実に製造することができる。
また、水アトマイズ法、特に高速回転水流アトマイズ法によれば、とりわけ速く溶湯を冷却することができる。このため、広い合金組成において高品質な粉末が得られる。
アトマイズ法において溶湯を冷却する際の冷却速度は、1×104℃/s以上であるのが好ましく、1×105℃/s以上であるのがより好ましい。このような急速な冷却により、均質な析出硬化系ステンレス鋼粉末が得られる。その結果、高品質な焼結体を得ることができる。
なお、このようにして得られた析出硬化系ステンレス鋼粉末に対し、必要に応じて、分級を行ってもよい。分級の方法としては、例えば、ふるい分け分級、慣性分級、遠心分級のような乾式分級、沈降分級のような湿式分級等が挙げられる。
有機バインダーとしては、脱脂処理または焼成処理において短時間で分解可能な樹脂が用いられる。かかる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこれらの共重合体、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
有機バインダーの混合比率は、混練物全体の2質量%以上20質量%以下程度であるのが好ましく、5質量%以上15質量%以下程度であるのがより好ましい。有機バインダーの混合比率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに、密度を高め、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、これにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。すなわち、高密度でかつ寸法精度の高い焼結体を得ることができる。
また、混練物中には、必要に応じて、可塑剤が添加されていてもよい。この可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
さらに、混練物中には、析出硬化系ステンレス鋼粉末、有機バインダー、可塑剤の他に、例えば、滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物や、その他の金属粉末、セラミックス粉末等を必要に応じて添加することができる。
混練条件は、用いる析出硬化系ステンレス鋼粉末の合金組成や粒径、有機バインダーの組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、混練温度:50℃以上200℃以下程度、混練時間:15分以上210分以下程度とすることができる。
また、混練物は、必要に応じ、ペレット化される。ペレットの粒径は、例えば、1mm以上15mm以下程度とされる。
なお、後述する成形方法によっては、混練物に代えて、実施形態に係る造粒粉末を用いるようにしてもよい。これらの混練物および造粒粉末等が、後述する成形工程に供される組成物の一例である。
かかる造粒粉末は、析出硬化系ステンレス鋼粉末に造粒処理を施すことにより、複数個の金属粒子同士を有機バインダーで結着してなるものである。すなわち、造粒粉末は、前述した析出硬化系ステンレス鋼粉末と、有機バインダーと、を含む組成物である。このような造粒粉末によれば、有機バインダーが使用されているものの、機械的強度が高い焼結体を製造可能である。
造粒粉末の製造に用いられる有機バインダーとしては、例えば前述した有機バインダーが挙げられる。
有機バインダーの混合比率は、造粒粉末全体の0.2質量%以上10質量%以下程度であるのが好ましく、0.3質量%以上5.0質量%以下程度であるのがより好ましい。有機バインダーの混合比率が前記範囲内であることにより、著しく大きな粒子が造粒されたり、造粒されていない金属粒子が大量に残存してしまったりするのを抑制しつつ、造粒粉末を効率よく形成することができる。また、成形性が向上するため、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、有機バインダーの混合比率を前記範囲内としたことにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。
さらに、造粒粉末中には、析出硬化系ステンレス鋼粉末、有機バインダー、可塑剤の他に、例えば、滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物や、その他の金属粉末、セラミックス粉末等が添加されていてもよい。
造粒処理としては、例えば、スプレードライ法、転動造粒法、流動層造粒法、転動流動造粒法等が挙げられる。
造粒処理では、必要に応じて、バインダーを溶解する溶媒が用いられる。かかる溶媒としては、例えば、水、四塩化炭素のような無機溶媒や、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒のような有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物が用いられる。
造粒粉末の平均粒径は、特に限定されないが、10μm以上200μm以下程度であるのが好ましく、20μm以上100μm以下程度であるのがより好ましく、25μm以上60μm以下程度であるのがより好ましい。このような粒径の造粒粉末は、良好な流動性を有し、成形型の形状をより忠実に反映させ得るものとなる。
なお、平均粒径は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
2.2 成形工程S2
次に、混練物または造粒粉末を成形して、目的の焼結体と同形状の成形体を製造する。
成形方法としては、例えば、圧粉成形法、金属粉末射出成形法、押出成形法等が挙げられる。
このうち、圧粉成形法の場合の成形条件は、用いる析出硬化系ステンレス鋼粉末の組成や粒径、有機バインダーの組成、およびこれらの配合量等の諸条件によって異なるが、成形圧力が200MPa以上1000MPa以下程度であるのが好ましい。
また、金属粉末射出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80℃以上210℃以下程度、射出圧力が50MPa以上500MPa以下程度であるのが好ましい。
また、押出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80℃以上210℃以下程度、押出圧力が50MPa以上500MPa以下程度であるのが好ましい。
なお、作製される成形体の形状寸法は、後述する脱脂工程および焼成工程における成形体の収縮分を見込んで決定される。
2.3 脱脂工程S3
次に、得られた成形体に脱脂処理を施し、脱脂体を得る。具体的には、有機バインダーを分解、除去することにより、脱脂処理がなされる。
この脱脂処理としては、例えば、成形体を加熱する方法、有機バインダーを分解するガスに成形体を曝す方法等が挙げられる。
成形体を加熱する方法を用いる場合、成形体の加熱条件は、有機バインダーの組成や配合量によって若干異なるものの、温度100℃以上750℃以下×0.1時間以上20時間以下程度であるのが好ましく、150℃以上600℃以下×0.5時間以上15時間以下程度であるのがより好ましい。これにより、成形体を焼結させることなく、成形体の脱脂を必要かつ十分に行うことができる。その結果、脱脂体の内部に有機バインダー成分が多量に残留してしまうのを防止することができる。
また、成形体を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、大気のような酸化性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
一方、有機バインダーを分解するガスに成形体を曝す方法としては、例えば酸脱脂法が用いられる。酸脱脂法は、酸含有雰囲気下で成形体を加熱することにより、酸の触媒作用を利用して脱脂する方法である。酸脱脂法によれば、有機バインダーを低温でも短時間で分解することができるので、体積の大きな成形体であっても、効率よく脱脂処理を施すことができる。
酸含有雰囲気とは、有機バインダーを分解可能な酸を含む雰囲気のことをいう。かかる酸としては、例えば、硝酸、シュウ酸、オゾン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの酸と他のガスとを混合した混合ガスを用いるようにしてもよい。混合ガスの一例としては、発煙硝酸が挙げられる。なお、雰囲気圧力は、大気圧であっても、減圧下であっても、加圧下であってもよい。
成形体の加熱条件は、有機バインダーの組成や配合量、酸含有雰囲気の種類によって若干異なるものの、温度100℃以上750℃以下×0.1時間以上20時間以下程度であるのが好ましく、150℃以上600℃以下×0.5時間以上15時間以下程度であるのがより好ましい。これにより、比較的低温でも短時間で、成形体の脱脂を行うことができる。また、成形体が焼結してしまったり、酸化してしまったりするのを抑制することができる。
なお、このような脱脂工程は、脱脂条件の異なる複数の過程に分けて行うことにより、成形体中のバインダーをより速やかに、そして、成形体に残存させないように分解・除去するようにしてもよい。
また、必要に応じて、脱脂体に対して切削、研磨、切断等の機械加工を施すようにしてもよい。脱脂体は、硬度が比較的低く、かつ比較的可塑性に富んでいるため、脱脂体の形状が崩れるのを防止しつつ、容易に機械加工を施すことができる。このような機械加工によれば、最終的に寸法精度の高い焼結体を容易に得ることができる。
2.4 焼成工程S4
次に、得られた脱脂体に焼成処理を施す。焼成処理により、析出硬化系ステンレス鋼粉末の粒子同士の界面では、表面拡散が生じ、焼結に至る。その結果、焼結体が得られる。
焼成温度は、成形体および脱脂体の製造に用いた析出硬化系ステンレス鋼粉末の組成や粒径等によって異なるが、一例として980℃以上1330℃以下程度とされる。また、好ましくは1050℃以上1260℃以下程度とされる。
また、焼成時間は、0.2時間以上7時間以下とされるが、好ましくは1時間以上6時間以下程度とされる。
なお、焼成工程においては、途中で焼成温度や後述する焼成雰囲気を変化させるようにしてもよい。
焼成条件をこのような範囲に設定することにより、焼結が進み過ぎて過焼結となり結晶組織が肥大化するのを防止しつつ、脱脂体全体を十分に焼結させることができる。その結果、高密度であり、かつ特に機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。
また、このようにして製造された焼結体に対し、必要に応じて追加処理を施すようにしてもよい。追加処理としては、例えば、固溶化処理、時効硬化処理、二重時効処理、サブゼロ処理、焼き戻し処理、熱間加工処理、冷間加工処理等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が組み合わされて用いられる。
なお、上述した追加処理の具体例としては、1000℃以上1250℃以下の温度から30分以上120分以下の時間で冷却する固溶化処理を施した後、600℃以上800℃以下の温度から6時間以上48時間以下の時間で冷却する時効硬化処理を施す処理が挙げられる。
3.析出硬化系ステンレス鋼焼結体
以上のように、本実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼焼結体は、Cr、Si、Nb、Ni、MnおよびCuを含む析出硬化系ステンレス鋼で構成された焼結体である。そして、かかる焼結体では、Crが15.00質量%以上17.50質量%以下の範囲内の濃度Aで含まれ、Siが0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Bで含まれ、Nbが0.15質量%以上0.45質量%以下の範囲内の濃度Cで含まれ、Niが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Dで含まれ、Mnが0.05質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Eで含まれ、Cuが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Fで含まれている。また、かかる焼結体では、下記式(1)で規定されるδの値が10.0質量%以上14.0質量%以下である。
δ=3(A+1.5B+0.5C)-2.8(D+0.5E+0.5F)-19.8 ・・・ (1)
このような析出硬化系ステンレス鋼焼結体によれば、炭素原子濃度の上昇が抑制されるため、析出硬化系ステンレス鋼に由来した、機械的強度が高い焼結体が得られる。特に、焼結体が小さい場合や形状が複雑な場合等でも、有機バインダーに由来する炭素原子の残留が抑制され、高品質な焼結体が得られる。
析出硬化系ステンレス鋼焼結体は、例えば、自動車用部品、自転車用部品、鉄道車両用部品、船舶用部品、航空機用部品、宇宙輸送機用部品のような輸送機器用部品、パソコン用部品、携帯電話端末用部品、タブレット端末用部品、ウェアラブル端末用部品のような電子機器用部品、冷蔵庫、洗濯機、冷暖房機のような電気機器用部品、工作機械、半導体製造装置のような機械用部品、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、製油所、化学コンビナートのようなプラント用部品、時計用部品、金属食器、宝飾品、眼鏡フレームのような装飾品の全体または一部を構成する材料として用いることができる。
また、前述したように、本実施形態に係る析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法は、析出硬化系ステンレス鋼粉末を含むコンパウンドまたは造粒粉末を成形し、成形体を得る成形工程と、成形体を焼成し、焼結体を得る焼成工程と、を有する。このような製造方法においては、焼結体における炭素原子濃度は、析出硬化系ステンレス鋼粉末における炭素原子濃度より小さいことが好ましい。これは、前述した炭素原子と酸素原子との反応により、焼結体における炭素原子濃度が低下したことに由来する。このようにして焼結体における炭素原子濃度を低下させることにより、炭素原子濃度が高い析出硬化系ステンレス鋼粉末を使用した場合であっても、焼結体における炭素原子濃度を前述した範囲内に収めることができる。これにより、機械的強度が高い焼結体を効率よく製造することができる。
なお、析出硬化系ステンレス鋼粉末における炭素原子濃度を第1濃度c1とし、焼結体における炭素原子濃度を第2濃度c2としたとき、(c1-c2)/c1は、70質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。これにより、第1濃度c1を確実に低下させることができるため、第2濃度c2を前述した範囲内に収められる確率が高くなる。その結果、析出硬化系ステンレス鋼に由来した、機械的強度、硬度および耐食性が高い焼結体をより確実に製造することができる。
以上、本発明の析出硬化系ステンレス鋼粉末、コンパウンド、造粒粉末、析出硬化系ステンレス鋼焼結体およびその製造方法について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、コンパウンドおよび造粒粉末には、任意の添加物が添加されていてもよい。
本発明の析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が追加されたものであってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
4.焼結体の製造
(サンプルNo.1)
[1]まず、水アトマイズ法により製造された表1に示す組成の析出硬化系ステンレス鋼粉末を用意した。
また、表1に示す金属粉末の組成の同定、定量は、誘導結合高周波プラズマ発光分析法、および、株式会社リガク製ICP装置CIROS120型を用いた。また、Cの同定、定量には、LECO社製炭素・硫黄分析装置CS-200を用いた。さらに、Oの同定、定量には、LECO社製酸素・窒素分析装置TC-300/EF-300を用いた。
[2]次に、金属粉末および有機バインダーを質量比で89:11となるように秤量して混合し、混合原料を得た。なお、有機バインダーには、ブタンジオール2.5質量%を含有するポリアセタール樹脂と、ポリエチレンと、を質量比で50:6になるように混合した樹脂を使用した。
[3]次に、この混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
[4]次に、このコンパウンドを、以下に示す成形条件で、射出成形機にて成形し、成形体を作製した。
<成形条件>
・材料温度:180℃
・射出圧力:11MPa(110kgf/cm2
[5]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で脱脂処理を施し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :400℃
・脱脂時間 :1時間(脱脂温度での保持時間)
・脱脂雰囲気:窒素と硝酸との混合ガス雰囲気、硝酸の濃度は2体積%
[6]次に、得られた脱脂体に対して、以下に示す焼成条件で焼成処理を施し、焼結体を得た。なお、焼結体の形状は、直径10mm、厚さ5mmの円柱形状とした。
<焼成条件>
・焼成温度 :1300℃
・焼成時間 :3時間(焼成温度での保持時間)
・焼成雰囲気:アルゴン雰囲気
[7]次に、得られた焼結体に対し、以下に示す条件で固溶化処理および時効硬化処理を順次施した。
<固溶化処理条件>
・加熱温度 :1120℃
・加熱時間 :30分
・冷却方法 :水冷
<時効硬化処理条件>
・加熱温度 :700℃
・加熱時間 :24時間
・冷却方法 :水冷
(サンプルNo.2~13)
析出硬化系ステンレス鋼粉末の組成等を表1に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の場合と同様にして焼結体を得た。なお、サンプルNo.5の粉末の製造には、ガスアトマイズ法を使用した。
また、表1では、各サンプルNo.の析出硬化系ステンレス鋼粉末および焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
なお、各焼結体には微量の不純物が含まれていたが、表1への記載は省略した。
5.析出硬化系ステンレス鋼粉末および析出硬化系ステンレス鋼焼結体の評価
5.1 粉末の平均粒径の測定
表1に示す各サンプルNo.の粉末について、平均粒径を測定した。測定結果を表1に示す。
5.2 粉末のタップ密度の測定
表1に示す各サンプルNo.の粉末について、タップ密度を測定した。タップ密度の測定には、ホソカワミクロン株式会社製、粉体特性評価装置、パウダテスタ(登録商標)PT-Xを用いた。なお、タップ回数は125回とした。測定結果を表1に示す。また、サンプルNo.5の粉末は、粒径が大きいため、タップ密度の測定を省略した。
5.3 粉末の比表面積の測定
表1に示す各サンプルNo.の粉末について、比表面積を測定した。比表面積の測定には、BET法を用い、株式会社マウンテック社製のBET式比表面積測定装置HM1201-010を用いた。なお、検体の量は5gとした。測定結果を表1に示す。また、サンプルNo.5の粉末は、粒径が大きいため、比表面積の測定を省略した。
5.4 焼結体の炭素原子濃度の測定
表1に示す各サンプルNo.の焼結体について、炭素原子濃度を測定した。測定結果を表1に示す。
5.5 焼結体の機械的強度の評価
表1に示す各サンプルNo.の焼結体から、ISO 2740:2009に規定する試験片を切り出した。そして、JIS Z 2241:2011に規定の試験方法により、試験片の引張強度を測定した。
次いで、サンプルNo.10の焼結体について測定された引張強度を1とし、各実施例および各比較例の焼結体について測定された引張強度の相対値を算出した。
次いで、算出した相対値を以下の評価基準に照らして評価した。
<引張強度の評価基準>
A:引張強度が非常に大きい(相対値が1.1超)
B:引張強度が大きい(相対値が1超1.1以下)
C:引張強度が小さい(相対値が0.9超1以下)
D:引張強度が非常に小さい(相対値が0.9以下)
評価結果を表1に示す。
5.6 焼結体の硬度の評価
表1に示す各サンプルNo.の焼結体について、ビッカース硬度を測定した。
次いで、サンプルNo.10の焼結体について測定されたビッカース硬度を1とし、各実施例および各比較例の焼結体について測定されたビッカース硬度の相対値を算出した。
次いで、算出した相対値を以下の評価基準に照らして評価した。
<硬度の評価基準>
A:硬度が非常に大きい(相対値が1.1超)
B:硬度が大きい(相対値が1超1.1以下)
C:硬度が小さい(相対値が0.9超1以下)
D:硬度が非常に小さい(相対値が0.9以下)
評価結果を表1に示す。
5.7 焼結体の相対密度の評価
表1に示す各サンプルNo.の焼結体について、アルキメデス法に準じた方法により密度を測定した。そして、測定された密度と、軟磁性粉末の真密度から、焼結体の相対密度を算出した。
次に、算出した相対密度を以下の評価基準に照らして評価した。
<相対密度の評価基準>
A:相対密度が98.0%以上である
B:相対密度が98.0%未満である
評価結果を表1に示す。
5.8 焼結体の耐食性の評価
表1に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS G 0591:2012に規定されたステンレス鋼の硫酸腐食試験方法に準じて、腐食度を測定した。なお、硫酸としては、沸騰させた5質量%硫酸を使用した。
次いで、各サンプルNo.の焼結体について測定された腐食度について、サンプルNo.10の焼結体について測定された腐食度(単位:g/m2/h)を1としたときの相対値を算出した。そして、算出した相対値を、以下の評価基準に照らして評価した。
<耐食性の評価基準>
A:焼結体の腐食度の相対値が0.75未満である
B:焼結体の腐食度の相対値が0.75以上1.00未満である
C:焼結体の腐食度の相対値が1.00以上1.25未満である
D:焼結体の腐食度の相対値が1.25以上である
以上の評価結果を表1に示す。
Figure 0007552080000001
表1から明らかなように、実施例の焼結体は、機械的強度、硬度および耐食性が良好であった。
また、各実施例では、焼結体における炭素原子濃度が、粉末における炭素原子濃度よりも低下していた。このことから、各実施例では、焼結処理の際に、炭素原子の反応物が効率よく除去されており、その結果として、機械的特性の向上および耐食性の向上が図られているものと考えられる。
なお、上記では、析出硬化系ステンレス鋼粉末を含むコンパウンドを用い、射出成形法によって製造された成形体を用いて焼結体を得ている。一方、析出硬化系ステンレス鋼粉末を含む造粒粉末を用い、加圧成形法によって製造された成形体を用いた焼結体についても、上記と同様の評価を行った。その結果、コンパウンドを用いた場合と同様の傾向が認められた。
S1…組成物調製工程、S2…成形工程、S3…脱脂工程、S4…焼成工程

Claims (8)

  1. Crが15.00質量%以上17.50質量%以下の範囲内の濃度Aで含まれ、
    Siが0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Bで含まれ、
    Nbが0.15質量%以上0.45質量%以下の範囲内の濃度Cで含まれ、
    Niが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Dで含まれ、
    Mnが0.05質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Eで含まれ、
    Cuが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Fで含まれ、
    下記式(1)で規定されるδの値が10.0質量%以上13.5質量%以下であること
    を特徴とする析出硬化系ステンレス鋼粉末。
    δ=3(A+1.5B+0.5C)-2.8(D+0.5E+0.5F)-19.8・
    ・・(1)
  2. Oが0.01質量%以上0.70質量%以下の範囲内の濃度で含まれる請求項1に記載
    の析出硬化系ステンレス鋼粉末。
  3. Oが0.33質量%以上0.53質量%以下の範囲内の濃度で含まれる請求項2に記載
    の析出硬化系ステンレス鋼粉末。
  4. 平均粒径が0.50μm以上50.00μm以下である請求項1ないし3のいずれか1
    項に記載の析出硬化系ステンレス鋼粉末。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の析出硬化系ステンレス鋼粉末と、有機バイン
    ダーと、を含むことを特徴とするコンパウンド。
  6. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の析出硬化系ステンレス鋼粉末と、有機バイン
    ダーと、を含むことを特徴とする造粒粉末。
  7. Crが15.00質量%以上17.50質量%以下の範囲内の濃度Aで含まれ、
    Siが0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Bで含まれ、
    Nbが0.15質量%以上0.45質量%以下の範囲内の濃度Cで含まれ、
    Niが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Dで含まれ、
    Mnが0.05質量%以上1.00質量%以下の範囲内の濃度Eで含まれ、
    Cuが3.00質量%以上5.00質量%以下の範囲内の濃度Fで含まれ、
    下記式(1)で規定されるδの値が10.0質量%以上13.5質量%以下であること
    を特徴とする析出硬化系ステンレス鋼焼結体。
    δ=3(A+1.5B+0.5C)-2.8(D+0.5E+0.5F)-19.8・
    ・・(1)
  8. 請求項5に記載のコンパウンドまたは請求項6に記載の造粒粉末を成形し、成形体を得
    る工程と、
    前記成形体を焼成し、焼結体を得る工程と、
    を有し、 前記焼結体における炭素原子濃度は、前記析出硬化系ステンレス鋼粉末にお
    ける炭素原子濃度より小さいことを特徴とする析出硬化系ステンレス鋼焼結体の製造方法
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